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房州軌道物語

15兎の集会@虚妄の宴:2003/12/23(火) 10:56
強風が板戸を叩き続ける。
彼の苫屋を薄暗く照らし出すのは鯨油のランプ計りで、家具と言っては柳行李が二つ、部屋の隅に重ねてあるだけのがらんとした家の中を揺れながら照らし出している。
すると誰かが板戸を叩く音がする。「政一、おい、政一、いるか。恭介だ」
政一と呼ばれた少年は、心張り棒を外す。ランプの薄明かりに、蓑を着込んだ友人が息を弾ませながら立っている。後には更に数人。

「何を言ったってダメだ。何を言ったって無駄だったよ」
「政一、落ち着け」「そうだよ、お前一人の問題じゃないだろう」
「出て行くよ。俺にはこの村に棲み続ける事が出来ない」
「お母さんの事は気の毒だった。確かに本村の連中は冷たかったが、俺達はずっと…」
「そうだ。恭介にしても誠吾にしても、満州からずっと一緒だったじゃないか。これから内地に戻って、一からやり直せるって、一緒に喜んだじゃないか」
「お前等良く聞けよ。開拓の子供は高校へ行く事は認められないと」
「源爺のヤツそんな事言ったのか」「どうなんだ、政一。ヤツはそんな事を」
「俺等はここで死ぬまで土に縛り付けられる。学問してる暇があれば、働いて土地を提供してもらった恩を返せとよ」

強風は暫し止む。彼等の声高な話が一瞬途切れると、夜の海から潮騒が微かに届く。
時計が9時を打つ。苫屋の脇を走る線路が鳴り出し、海岸段丘を登り詰めて来る「けーべん」の列車の細かい息遣いが潮騒に混じり出す。
−以下次号−


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