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房州軌道物語

16兎の集会@虚妄の宴:2003/12/23(火) 11:10
「皆。俺はここを離れて、誰にも頼らずに生きて行く積もりだ」
「馬鹿言うな。何処へ行く気だ。東京か? 今の東京がどんなに食糧難だか知らない訳ではないだろう」
「カツギ屋でも何でもやって食って行くさ。病気のお袋を見殺しにした姑息なヤツらの棲む、こんな痩せ地なんか大嫌いさ。都賀県には二度と戻って来ない」
「政一よう、落ち着け。本村の皆だって内実は食って行くのがやっとなんだ」

上りの最終列車の音は少しづつ近付いて来る。

「教育の機会均等だなんて先生は偉そうに言っていたけど、言うのはタダだからな。連中の言う機会ってのは、外地生まれは含まれていないのさ」
「姉ちゃんはどうする?置いて行くのか?」
「…」

政一は一瞬詰まる。造り酒屋に年季奉公に行っている姉は、僅かに藪入りに帰って来るばかりだ。
「戦争が終わっても、ここじゃ何も変わってない。俺は全てに絶望したんだ。恭介、誠吾、興石、世話になったな。お別れだ」
「おい、待て、政一」
政一は板戸を開けると、黒松の林から影絵のように姿を顕わした軽便の列車に向かって一散に走って行く。それを追う友人達。
最後に繋がった貨車に飛び乗る政一。線路端で立ち尽くす友人。
海岸段丘の下り坂に差し掛かったせいか急に速度を増す最終列車。
今や彼等の間に会話は無い。政一と友人達の間隙を埋めるのは、急にその流量を増した生暖かい雨気を含んだ山風計りである。


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