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房州軌道物語

23兎の集会@虚妄の宴:2003/12/26(金) 00:42
「…おばあさん、そんな事人に頼む位なら…隆にやらせれば良いじゃないか」
「だって…おじいさん、隆はもう三年も前に…いえ、そうですね。隆にやらせましょうね」
「この頃隆は姿を見せないけど、また仕事が忙しいのかな?」
「…」
「無理して何日も会社に泊まり込んででもいるんだろう。風邪でも引かなきゃ良いがな。おばあさん、気をつけてやらなきゃいけないよ」
「…えぇ、えぇ、そうですね…」

電車は薄暗い林を一瞬で抜け、再びカラリと明るい日本晴れの空の許に踊り出る。
車内案内放送の妙に冷たいテープの女性の声。「次は長船新田、長船新田です。お出口は右側です。お降りの方は運賃表に表示された運賃を、運賃箱に…」
「おばあさん、蝶が飛んできた。ご覧」
「…蝶?どこにも飛んでいないじゃないですか」
「ホラ、網棚の下を飛んでいるだろう。見えないのか。じれったいな。さっき開いた窓から飛んで入って来たんだ」
「窓って…窓は開かないじゃないですか」
「あぁ、蝶は良いなぁ。蝶を見ると昔を思い出すよ」
電車はゆっくりと速度を落とす。
「ほら、おじいさん、着きましたよ。降りますよ。…帰ったら頂き物の柚餅子がありますから…」
「塩羊羹があっただろう」
「あれは一昨日おじいさんが食べちゃいましたよ」
「…そうだったかな。あれは美味かった。隆が買って来たのか?」
「…違いますよ…」
駅に着いてドアが開く。二人はゆっくりと降りて行く。声はまだ聞こえて来る。
「いや、隆が買って来たんだろう…隆は親孝行な息子だから…」
「…ホラホラおじいさん、よそ見していると転びますよ」

おばあさんの心情が切な過ぎて、早くドアが閉まって欲しいと願うが、生憎中々閉まらない。
五月晴天の日。


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