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俺「ストライクウィッチーズと洒落込もうか」

1名無しさん:2013/04/07(日) 02:07:57 ID:qhlpEsaY
ストパンの世界に俺を入れてイチャイチャしようずwwwwwwwwww っていうスレ
         ∧
         / |
        〃 .|
       .//  |           ___ _,. イ
      / |  /  _ __     /       /
      ( |. /; ; ; ; ; ; ; ;.;.;>、/ /    /
      ヽ.! /; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; < ̄ ̄
      / V; ; ; ; ; i; ; ; ; ;.;.丶; ; ; ;ヽ
     .///; ; ;./; ;/|; ; ; ; ; ;.;.;l; ; ; ; ;.i
     |/; ;./ ; ;/; ;/ .l .ト、; ; ; ;.;ト; ; ; ;.;\ _,
    ノ ; ; |; ;ノイ/⌒l | | ; ;7⌒| ; ; ! ̄
   /!|; ;A ; ; l∧|⌒リ  ! ; ;/ ノヘ!. ; ;l
      |.!/{ ト、 ト弋シア ノ/弋シア; ;ノ
      |.!; ;ヾ; ;\ ,.,.,.     ,.,., !イヽ
      l; ; ;.| ; ; ト、   rt.、_’ ノ ノ ; ;}
     /; ;l ヽ、; ;\>` ー´.ィ /イ /
   ./; ;/; ; ; ;>ーヽー穴t;. |  '´
   /; ;/ ; ;/ヽ、 \ /《ム,\⌒≧
 /イ; ;/ミ>/!L_>< {ミh,,入_}
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  妄想を垂れ流すのもよし、初SSに挑戦してみるのもよし
  そこのお前も書いてみないか?


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前スレ
俺「ストライクウィッチーズ、ブレイクナウ」
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2名無しさん:2013/04/07(日) 02:08:37 ID:qhlpEsaY
俺スレのお約束

1、他の人が投下してるなら割り込まないでね
2、投下予約できるならしてね
3、長時間にわたるようなら分割するか、一旦切り上げて再度予約しよう
4、予約のすっぽかしは迷惑がかかるからやめよう 予約キャンセルの時は一声かけてね
5、>>1の一行目を第一に考えてほしいな

 (クロス・パロディについて)
書き手は、読み手のことをよく考えて設定を練っていこう
過剰なクロス・パロ要素は、読者を置いてけぼりにしてしまうかも
また、読む側にも「気に入らないなら読まない」という選択肢がある事を忘れないで

批判、スルーされても泣かないで!
ストパン愛を忘れない ←重要

3名無しさん:2013/04/07(日) 02:11:35 ID:qhlpEsaY
一応作っとく
いつ使うかはまだ分からないけど

4<検閲>:<検閲>
<検閲>

5衝撃波:2013/06/02(日) 05:46:51 ID:n/.S.IuY
せっかくなので、使わせていただきます。ラル√幕間です

6衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:47:46 ID:n/.S.IuY

廃棄都市を賑わせていた勝利の凱歌が止み、誰もが眠りに就いた夜更け。
都市を這う夜風の音が耳朶を嬲るなか、教会の戸口に通じる壊れかけの階段に俺は独り腰を落としていた。

「まだ動く、か」

雲の切れ間から姿を見せる月から、煤で汚れた手に視線を落とす。
ジグラット内部で意識を喪失する寸前まで、僅かにでも動かせば激痛を生んだ五指も今では思うように動く。
護符で囲んだ空間を自在に創り変える能力だけあって見事に完治しており、男は改めていまこの場にいないかつての仲間に感謝した。

「…………っくし!! あー、ちくしょう」

凍えた音を伴った風に身体が自然と震える。遥か頭上を仰げば月を隠していた雲は消え失せ、天蓋の彼方に座る黄金色の満月がその姿を曝け出していた。
巨大で丸い月。
時に青白く、時に金色へと身に纏う光を変える天体は今宵もまた人間たちの営みを見下ろし続ける。
それが希望に満ちていようと、絶望に染められていようと。変わらずに。

「あー……」

徐に手を伸ばす。届きそうで届かない月に。
ストライカーを開発し、遥か大空を舞うことはできても人類の指は未だ月にかからない。
尤もネウロイなどという異形がこの惑星に蔓延っている以上、月に到達することなど夢物語でしかないのだが。

7衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:48:49 ID:n/.S.IuY

「そういえば薔薇十字の婆様が言っていたな」

淡く朧げな月の光を前にふと己に自ら編み出した術式を授けた魔女の存在を思い出す。
薔薇十字。
偶然にも友人の妹と同じ名を持つ稀代の魔女が、かつて自分や他の仲間たちに囁いた言葉が脳裏に反響する。

――月、ねぇ。安心なさい。あと50年も経たない内に到達出来るわよ――

当時は自分も他の仲間たちも、彼女が洩らした言葉を真っ向から信じようとはしなかった。
生身の膂力で以ってネウロイを撃砕する血気盛んなあの男にいたっては正面から食って掛かったほどだ。
けれどもこと魔法、魔術に関して群を抜いた才を持つ彼女の言葉は。
中世の時代から今日まで存在し続ける正真正銘の魔女の言葉は、今になって思えば不自然なほどの説得力を秘めていた気がしてならない。
あたかも予言者の如き、あの口ぶり。もしかすると彼女は……

「こんなところにいたのか」

音を立てて開くドア。背に投げかけられた言葉に思考が途切れる。
聞き慣れた恋人の声音に口元を緩めながら振り返った途端、俺は息を呑んだ。
月明かりに照らされながら後ろ手に扉を閉めるラルの姿に。
形の良い唇から白く染まった吐息を洩らし、夜風に弄ばれる髪を繊手で押えつける恋人の姿に。
視線が吸い寄せられていることを自覚しつつも、目を逸らすことが出来なかった。
一秒でも長く、この光景を脳裏に焼き付けておきたいという欲求が俺の身体を拘束していた。

8衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:49:55 ID:n/.S.IuY

ラル「どうした?」

絡み合う視線。
見惚れていたことに気づかれたことへの気恥ずかしさと澄んだ瞳が自分だけを見つめている心地良さが混ざり合った奇妙な感覚に苛まれながら、俺は熱を帯びる顔を背けてしまった。

俺「いや。なんでもない」

恋人同士なのだから別段恥ずかしがることでもないのではと彼女への返答を口にしつつ、胸裏に零す。
それでも視線を逸らしたのはきっと彼女の美しさが原因なのだろう。再び月を見上げ、しみじみ思う。
未だ両想いであることも信じられず、もしやこれは夢なのではと俺は頬を摘みあげた。
指が摘んだ部分に宿る熱と痛みから紛れも無い現実であることを実感する。

ラル「姿が見えなくなったから心配したぞ?」

俺「少し考えごとを」

無事生還を果たし、彼女と――ラルと思いを通じ合わせたその後。第502統合戦闘航空団との合流を終えたその後。
自分の姿を捉えるや否や感極まったニパに抱きつかれ、生還の褒美と称されクルピンスキーから頬への口づけを贈られ、すぐさま恋人から鋭い視線を突き立てられるなど何かと騒動は耐えなかった。
口々に自身の帰還を喜び、安堵してくれた仲間たちに囲まれる俺は自らの帰るべき場所がどこなのかを改めて思い知った。
今まで世界中を彷徨ってきたが、もうそろそろ根を下ろす頃合かもしれない。

9衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:50:48 ID:n/.S.IuY

ラル「まったく、こんなに身体を冷やして……風邪でも引いたらどうするつもりだ?」

不意に温かな感触が背中を覆った。後ろから腕を回され、身体を密着させられながら耳元で囁かれる。
叱りつけるような言葉とは裏腹に弾んだ口調。目に見えずとも彼女がいま笑みを口元に携えている姿が容易に想像できる。
背に当たる母性溢れる柔らかな感触に意識を奪われ、耳朶と首筋を交互にくすぐる蜜味の吐息に身を捩らせながらも、

俺「そのときは恋人の手厚い看病に期待するかな」

ラル「……ばかっ」

冗談めかした言葉で反撃に躍り出ると恋人の羞恥を孕んだ愛らしい罵倒が耳元を撫でた。
その耳に心地良い声色を楽しみつつ、胸の前まで伸ばされたラルの手を取る。
瑞々しく柔らかな繊手を握るとすぐさま握り返され、そのことが俺の口元に深い笑みを浮かび上がらせた。
世の恋人たちにとっては当たり前のことなのかもしれない。けれども彼にとって、そんな当たり前が大きな幸せに感じられるのだ。
思えばここまで来るのに随分と遠回りしてきた。
もっと早くに想いを伝えていれば悲しませることも無かったのだろうか。独り物思いに浸りながら手の平を満たす感触に瞼を閉じる。

10衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:52:00 ID:n/.S.IuY

俺「あったかい……」

ラル「お前が冷え過ぎているんだ。どうしてこんな夜更けに出た? 寝付けないのか?」

俺「そんなところかな」

ラル「……なにか悩みごとか?」

俺「……」

ラル「俺?」

俺「……どうして、許してくれたんだ? 俺がまた戦場に出ること」

――無理を承知で頼む。もう一度……もう一度だけ、俺を出させて欲しい

502との合流を終えた俺は彼女たちに頭を下げて自身の前線参加を頼み込んだのだが当然、部隊員の大半は難色を示した。
先の戦闘で死に掛けた事実を踏まえれば俺自身も許可が降りるとは思っておらず、彼女らの反応も想定内だった。
しかし、そんな彼に助け舟を出したのが他ならないラルであったのだ。故に俺は疑問を抱く。
自身に基地待機を命じた彼女が何故、次の作戦への参加を認めたのか。

11衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:53:17 ID:n/.S.IuY

ラル「…………正直、今すぐにでもお前を基地に送り返してやりたいよ。だけどお前のことだ。何をしてもどうせすぐに引き返してくるんだろう?」

本音を言えばラルとて初めは彼の作戦参加を容認することはできなかった。
魔法力の喪失に近づきつつある彼を再び戦場に出すなど恋人として、戦闘航空団の司令として認められるはずが無く、だからこそ基地待機を命じたのだ。
しかし俺は基地を飛び出し、戦闘脚無しでネウロイと渡りあったとはいえ結果として命を落としかけた。
彼の仲間が現れなければ今もこうして温もりを感じることも無かっただろう。
基地に送り返すことは簡単だ。
けれども目に見えぬところで好きに動かれるより、目の届く範囲で行動させたほうが得策であると判断し断腸の思いで彼の作戦参加を認めたのである。

俺「……ごめんよ」

ラル「いいさ……ただ」

身体を抱く腕に篭った力が強まる。
耳朶をくすぐるその声色が、背中に密着する身体が、自然と震えていく。

ラル「もう。あんな真似は…………しないでくれ」

零れ落ちた声音が悲痛な感情を含んだ。
耳にする者の胸を引き裂くほどの鋭さを湛えた声色。
俺の返事を待たずに、そのまま抱き殺す勢いでラルは更に腕の力を強める。
いま自分が身を摺り寄せている男の身体の感触が、温かさが現実であることを確かめるかのように。
きつく、強く。抱きしめる。

12衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:54:35 ID:n/.S.IuY

ラル「あんな思いは。もう、いやだ……」

固く閉ざした瞼の裏側に投影される光景は崩壊していくジグラットと、その内部で命運を共にする俺の姿。
そのとき胸裏を蝕んだ喪失感。それは大切な宝物を池に落としてしまった感覚に近い。
伸ばした手は届かないどころか、泣き叫ぶ自分の意思とは裏腹に宝物は瞬く間に水底へと吸い込まれていく。
死にいく恋人に手を伸ばすことも叶わぬ無力感。
軍人とはいえ十八の少女にとって、それがどれだけ悲痛な体験だったか。逆の立場だった場合を考え、俺は表情を歪めた。
改めて自分がしでかしたことを思い知り、己に対して憤る。

俺「今度からは、お前の目が届く範囲で動くよ。約束する」

ラル「……」

俺「グンドュラ?」

ラル「…………約束、だぞ?」

耳朶をくすぐる震え声。すすり泣く恋人を少しでも安心させようと俺は彼女の繊手を握る力を強める。
すぐさま握り返されるも、これだけではどうにも心もとない。

俺「……いま、そっち向いていいか?」

ラル「な、なんだ?」

俺「約束のおまじない、しようか」

ラル「ま、待て!」

13衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:55:57 ID:n/.S.IuY

抱擁を解くなり恋人の愛らしい悲鳴を切り捨て、背後の彼女へ振り返った瞬間に硬直する俺の身体。次いで彼の口から嘆息が零れ落ちる。
眼差しの先に佇んでいたのは涙で滲んだラルの青い瞳。
それは、どの宝玉でも宿すこと叶わぬ、優美かつ儚げな光を湛えていた。
それは、たとえ歴史に名を残した探険家が世界中を探し歩いたとしても決して手にすることができない、自分だけの宝玉。
ありとあらゆる宝石が安物の硝子細工に映るほどの尊い輝きを宿す恋人の双眸を前に俺はただ深い吐息を洩らすことしかできなかった。

ラル「だ、だから言ったんだ! こんな顔…………見せたくない」

呼吸すら忘れた恋人の直視に耐え切れなくなった少女が赤らめた容貌を背ける。
滲み出てきた涙を乱暴に拭いながら泣き顔を隠すも、すぐさま腕を掴まれ涙で濡れた顔から引き離される。

ラル「やぁ、ん。み、見るな……」

俺「きれいだ……」

泣き濡れた美貌が再び月の光に照らされた途端、か細い声に惚けた言葉で返すも自分でさえ何を告げたのかを俺は正直よく判っていなかった。
自分が放った言葉すら瞬時に忘却の彼方へと置き捨てるほどに、涙を湛えた彼女の面持ちは映えていたのだ。

ラル「変じゃ、ないか……?」

俺「変な顔ならこうまでして拝もうとは思わないよ。本当に……綺麗だ」

泣き濡れる自身の顔を見つめる黒の眼差し。
寒さが厳しい季節とは裏腹に少女の全身は真夏の日差しを浴びているかのような熱を発しはじめていた。
恋人の眼差しにむず痒さまで覚えたラルは何とか話題の転換を図ろうと脳を回転させる。
もしもこのまま見つめ続けられたら気恥ずかしさのあまり身悶えしそうだ。

14衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:56:46 ID:n/.S.IuY

ラル「そ、そうだ! どんなおまじないなんだ!?」

俺「……ん? あ、あぁ。小指出してくれないか?」

ラル「小指? こう、か?」

おずおずと差し出された右手。
ぴんと立てられた細い小指に、俺は同じように立てた自身の小指を絡めた。
直後、薄桃色の唇から迸る愛らしい悲鳴。

俺「ゆびきりだよ。扶桑の約束のおまじないだ」

きゅっと絡めた小指の感触に青年はある記憶を呼び起こす。
まだ彼女に惹かれるよりも前のこと。
まだブリタニアを拠点とする第501統合戦闘航空団の一員として戦場を飛翔していたころのこと。
ペテルブルグへと帰還する当日、俺はひとりの少女と再会の約束を交わした。部隊のなかで最も幼く、親しかった少女と。
泣きじゃくる彼女に再会の約束のゆびきりを交わした俺は、自身が肌身離さず持ち歩いていたお守りを貸した。
歴史さえ容易に捻じ曲げる正真正銘の“魔女“が創り上げた魔具。
きっと今も彼女を守ってくれているだろう。
が、今になって思えばあの魔具さえ手放さなければ瀕死の重傷を負うこともなかったのではないか。
“黄金の夜明け“と”銀の星“、回収を終えた四大元素武器の内の二つも現在は凍結次元に封印されている手前、過ぎたことをいっても仕方ない。

15衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:58:06 ID:n/.S.IuY

ラル「おれ……?」

恋人の不安げな声に視線を絡め合った指からラルへと移す。急に黙り込んだ自分を心配しているのか青い瞳には不安げな光が漂っていた。

俺「あぁ、悪い。こうして小指を絡めたあとで『ゆびきりげんまん、うそついたら針千本飲ます』っていうんだ」

ラル「約束を破ったら針千本も飲まされるのか。案外恐ろしいことを考えるんだな、扶桑の人間は」

俺「だからこそ約束を守らなくちゃいけないって思うんじゃないか?」

ラル「強迫観念みたいなものか?」

俺「そういうこと」

ラル「なら俺は気をつけないといけないな」

くすくすと鈴を転がしたような笑い声を零しながら微笑む恋人に思わず苦笑いで返してしまう俺。
先ほどまで彼女の瞳を覆っていた涙はいつの間にか消えていた。
恋人が涙を流す姿は目にしたくないのだが、涙で濡れたラルの容貌に思わず見惚れた自分もいて、どこか嬉しいような惜しいような……――

俺「っははは……はい。本当に気をつけます……」

どちらともつかない複雑な感慨に浸りつつ、俺は恋人との指切りを楽しむのだった。

16衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:59:08 ID:n/.S.IuY





背を覆う冷えた感触に身体を震わせつつ自分を押し倒す少女を見上げる俺。
ほんのりと紅潮する端正な頬が、夜風に弄ばれる茶の頭髪が、白い息を吐く唇がいつになく扇情的に映り、思わず生唾を飲み込んでしまう。
突如このようにラルに押し倒されたのは夜空に広がる暗闇が一際濃く、厳しさを増した寒さから逢瀬を切り上げようとした矢先のことだった。
押さえつけられる両腕。しかし決して振りほどけないほどの力は込められていない。
加えて今の彼女は魔法力を行使しているものの自身が習得した術式には非術式習得者の固有魔法、魔法力を任意で無力化する力も付与されている。
例え彼女が本気で押さえつけていたとしても脱せられる自信もある。
にも関わらず俺が一切身体を動かす素振りを見せなかったのは偏に見上げる恋人の美しさに息を呑んでいたからだった。

俺「えっと……グンドュラ?」

呼びかけるも返事はなく、無言のまま自分を見下ろす恋人の碧眼。
月を背に使い魔の耳と尾を発現させるその姿は気高くも凛々しい狼を髣髴させた。

ラル「……今の時間なら他の隊員たちも寝ているぞ」

片手を頬に添え、顔を近づける。
互いの吐息がかかるまで。互いの鼻先が触れ合うまで。互いの心が更に重なり合うまで。

ラル「こういうときは……その、察してくれても……良いんじゃないか?」

気恥ずかしそうに身を捩りながら遠回しに自分の欲求を吐露した途端、少女の頬に差し込む紅色が、かあっと濃くなった。
求めている。それも自分から。
はしたないだろうかという不安を半ば無理やり押さえつけ、愛しい男の体躯の上に寝そべるようにして身を摺り寄せる。
逞しい胸板に乳房が押しつぶされ、やや圧迫感を覚えるも恋人の口から迸る小さな悲鳴を聞き逃さなかったラルはさながら悠然と獲物に迫る狼のように身体を一際密着させた。

18衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 05:59:53 ID:n/.S.IuY

ラル「なぁ俺。知っているか?」

頬を密着させ耳元に唇を近づけた状態で囁くように言葉を紡ぐ。

ラル「よく一匹狼なんて言葉を聞くが、本来狼は群れを成して行動する獣だ」

御伽噺などで孤高の象徴として描かれる狼。
ラルも幼い頃、自身の使い魔と同じ動物が登場する絵本を何度も両親にねだっては読み聞かせてもらった。
数ある物語のなかでも最も印象に残った絵が月夜に吼える狼の姿。
たった一匹で彷徨い、獲物を狩る。たった一匹で世を生き抜いていく。そんな孤狼の姿は幼かった彼女に一人で生きる力強さを刻み込んだ。
しかし、

ラル「私は……一匹狼は嫌いだよ」

たった一人で世を生き抜く。たしかにそれは逞しいことなのかもしれない。
けれど、それでは周囲に誰もいないではないか。
悲しみを分かち合い、喜びを共有する仲間もおらず誰にも看取られず朽ちていく。
そんな生き方は悲しすぎやしないか。

ラル「仲間がいて、そしてお前がいてくれないと……嫌だ」

両の手を彼の頬に伸ばし、その顔を背けられないように固定する。

ラル「俺。私は一匹狼にはなれないんだ……」

自分は一匹狼にはなれない。なりたくもない。自分はそんなに強くない。
愛する仲間に囲まれ、愛おしい男の傍で生きていきたい。
だから二度と離れるな。二度と置いていくな。

21衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 06:00:42 ID:n/.S.IuY

俺「…………」

そう物語る青い瞳を捉え、俺は無言で頷き返す。
と、同時に手元にあった石を拾い上げるなり視界の隅――協会の正面に面した建造物の角に向かって投擲した。
鋭い風切音を置き捨てて飛翔する石は弾丸と称しても何ら差し支えない勢いで“標的”へと向かっていった。

ラル「いま何を投げたんだ?」

俺「尖った石があったからな。危ないだろう? それで、だ」

こほんと一度咳き込む。
彼女からこうして求めてきてくれている以上、答えなければ恋人としての立つ瀬がない。

俺「奪うぞ?」

小さく頷くラルの頬に手を添えるなり、俺は彼女の唇を奪った。
均整のとれた肉厚の唇を。洋菓子を思わせる瑞々しい桜色の唇を。
初めはただ重ね合わせるだけの初々しい口づけは時間が経つに連れ互いを激しく求め合う貪欲なものへと変わっていった。
酸素を取り入れようと顔を朱色に染め上げながら身を引くラルを追いすがり、再び唇を捕らえる俺。
頬に伸ばした手をラルのなだらかな背に回し抱きしめる。自身の胸板の上で崩れ形を自在に変える豊かな双つの丸みの感触を楽しみながら。

ラル「お、おれぇ……」

拘束から解放された少女の唇からたどたどしい口調の言葉が零れ落ちる。
魅惑的な桜色の唇はいまや激しいキスによって唾液にまみれ、艶かしい光沢を帯びていた。

俺「すごい……今のグンドュラ。顔が蕩けてるぞ?」

ラル「やぁん……い、言うなぁ……」

24衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 06:01:15 ID:n/.S.IuY

恋人に貪られているという状況に脳髄が蕩けてしまいそうな感覚に囚われるラル。
潤んだ輝きを放つ青い瞳の奥には日頃漂う強い意思の光は消え失せ、代わりに弱々しい輝きが力なく佇んでいる。
キスを通して自分が愛しい男の女にされていく心地よい感覚に溺れながら、熱が篭った甘い吐息を吐き出しては時に彼の唇を受け止め、時に彼の唇を貪っていく。

俺「グンドュラ。舌……入れてみてもいいか?」

ラル「え、あ……」

舌を入れる――俗にいうディープキスの提案にラルは視線を泳がせた。
おそらく今以上に強く繋がれるのだろうが、これ以上激しくされたら本当に頭がおかしくなってしまいそうだ。
愛しい男ともっと深く繋がりたいという甘い欲求と、統合戦闘航空団の司令としての自制心が激しくぶつかり合う。
数秒の間その場を沈黙が支配した後、ラルの首がこくんと小さく縦に振られる。

俺「ありがとう」

背を撫でる俺の手の平の感触に瞼を閉じるラルは改めて自分がいま、一人の女であることを思い知った。
どれだけの肩書きを持とうとも恋人の傍にいるとき、自分は恋する一介の女でしかないのだと男の抱擁によって全身を温かい優しさで満たされたラルは真っ直ぐ俺の顔を見つめる。
黒髪と黒目が特徴的な恋人の顔を。
からかうとすぐに慌てふためく恋人の顔を。

26衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 06:01:48 ID:n/.S.IuY

ラル「そ、その代わり。初めは優しく……ゆっくりと頼む」

俺「もちろん。それじゃ、始めるぞ?」

ラル「あ、あぁ……」

再び重なり合う唇。直後、ぬめりを帯びた生暖かい物体がラルの唇の隙間に潜り込み、瞬く間に彼女の口内への侵入を果たした。
心構えはついていたつもりであったが、口の中に異物を挿入された感覚に思わずむせ返りそうになるのを堪え、恋人の舌を受け入れる。
舌の上に広がる言葉では形容しがたい味。それが俺の唾液だと気づくまでラルは数秒の時間を要した。
口内を満たす恋人の唾液の味と舌の感触にも慣れ、恐る恐る舌先を伸ばしていく。

ラル「んっ! んぅぅ……」

先ほどまで交わしていた唇同士を重ね合わせるのとは比べ物にならないほどの濃厚な交わりに脳が、全身が蕩けていくような感覚が少女の精神を包み込む。
重なり合った唇の隙間から零れ落ちる熱の篭った吐息とくぐもった声。
二枚の舌によって掻き混ぜられる二人分の唾液が卑猥な水音を夜の静寂に響かせていく。

ラル「……んっ……んんっ。ぷはぁ……っ!?」

俺と同時に顔を引き、冷えた夜気を吸い込んだラルの身体が前触れも無く強張った。
自身の身体に押し付けられる熱を帯びた硬質な物体の生々しい感触。
密着する身体を浮かして視線を落とし問題の物体を視界に捉えた瞬間、息を呑む。
あたかもテントを張ったかの如く盛り上がる恋人の股座。その光景が何を意味しているか知らないほど生娘なラルではない。
性的興奮を迎えると男性器は充血し膨れ上がる。
ズボン越しではあるものの自分の身体に押し付けられていたものが隆起した恋人の陰茎だと認識したラルはそわそわと視線を動かし、

28衝撃波 ラル√幕間:2013/06/02(日) 06:02:21 ID:n/.S.IuY

ラル「な、なぁ……俺? そのっ。当たって……いるぞ? 硬くて、あ、熱いのが……」

俺「………………ごめん」

ラル「大丈夫、なのか?」

俺「まぁ……なんとか。抱きたくないって言えば嘘になるけど……いまはこのままが良いかな」

ラル「…………すまない」

俺「どうしてグンドュラが謝るんだよ」

ラル「恋人なのに……今の私は何も、してやれない」

俺「……いいよ。少しばかり興奮してるけど、これくらいは抑え込める。それよりも、この辺りでお開きにしておくか? そのだな……当たっちまっ――」

後に続く言葉が紡がれることはなかった。恋人の口を塞いだラル。瞳に柔和な光を携えながら、今度は自から俺の口内へと舌を捻じ込む。
慣れぬ唾液の味も想いを寄せる男のものと思えば別段どうということはない。
先ほどから主導権を握られてばかりであったことを考えると、この辺りで巻き返しを図らねば部隊長として、何より女としての沽券に関わる。

ラル「もう少しだけ……頼む」

きゅっと俺のジャケットを握り締めて縋りつき、切なさに満ちた声音を零す。
逢瀬を切り上げ、戻った先に待つのはいつ命を落とすかも知れぬ過酷な戦い。

死というものが誰にでも降り注ぐものだと熟知しているからこそ、ラルは恋人にしがみ付く。
せめて一分。いや、一秒でも長くこの穏やかな幸せに浸っていたい。

俺「もちろん」

少女の切なる望みを感じ取った俺は軍服に包まれたなだらかな背に手を回した。

31名無しさん:2013/06/02(日) 06:02:54 ID:n/.S.IuY
以上です

53名無しさん:2013/06/02(日) 09:42:44 ID:KyyCRaH2
おつー

62管理人:2013/06/02(日) 10:49:42 ID:???
失礼、テストなのです。

それと、最初の投下です、ありがとう。

63wiki保管 ◆lJgsyPiAmc:2013/06/02(日) 19:26:13 ID:t3zC6his

何という削除率

64名無しさん:2013/06/02(日) 23:35:02 ID:4NZ1hgHw
ずっと待ってましたぞー!おつぽっぽ!

77名無しさん:2013/06/03(月) 00:26:31 ID:Im4rcgvU
IPを抜いた、ねえ……どうせTorあたりでも使って回線が分からないようにしてるんでしょうけど、本当に抜いてたら手が後ろに回るぞw
出口ノードリストは普通に出てる訳だから、対策は理論上不可能ではないな(面倒だけど)

78名無しさん:2013/06/03(月) 00:30:39 ID:Wrzg/hjs
これもう普通に通報でいいんじゃね?
やらかしたの自分で言っちまってる訳だし

79名無しさん:2013/06/03(月) 00:38:38 ID:Im4rcgvU
通報するならインターネット・ホットラインセンターあたりか、過去にも通報したが対応が遅くて困った記憶がw
個人的には管理人氏にTor対策、出口ノードリスト照合あたりを試してもらいたいところ

80名無しさん:2013/06/03(月) 00:44:28 ID:I6pRobtc
Torなんてまだ使えるとこあるか??

IP抜いたの下りもガセネタだったら笑えねーな……

81名無しさん:2013/06/03(月) 00:46:46 ID:I6pRobtc
あとれだ

IP抜いただけじゃ手は後ろにまわらないから色々慎重にな

82名無しさん:2013/06/03(月) 00:48:48 ID:Im4rcgvU
遠隔操作事件でも使われたという報道があったし、まだまだ可動状態なはず<Tor
ただし大規模なシステム改良はまだないらしいので、傍受問題や出口ノードでは筒抜けな仕様なんかは未だそのままの模様

83名無しさん:2013/06/03(月) 00:51:15 ID:Im4rcgvU
>>81
てっきり「wikiや掲示板の鯖に不正アクセスしてIPデータ取ってきた」と荒らしが騙っていたのかと思ったが違うのか
いずれにせよ煽りの種になりそうなことは控えないとならない点は把握

84名無しさん:2013/06/03(月) 00:51:19 ID:nycAbefk
tor+串挟まれたら詰み

85名無しさん:2013/06/03(月) 00:55:10 ID:Wrzg/hjs
どうかな、運営から警察まで持って行ければ最悪家宅捜索もあり得るネタだろ
ハッタリだろうが自分で認めてる訳だし
合法的にIPぶっこ抜きする方法ってあったっけ?

86名無しさん:2013/06/03(月) 01:02:02 ID:hgJIh.Ic
お前ら詳しいな(驚)
なに言ってるのかさっぱりわからんwww

87名無しさん:2013/06/03(月) 01:02:17 ID:Im4rcgvU
残念ながらこの程度だと警察が動いてくれるか微妙ではある
殺人予告の検挙だと威力業務妨害を用いるが、本件はそこまでじゃないからなあ…

88名無しさん:2013/06/03(月) 01:03:17 ID:w9rkLQnE
まーハッタリだろ
一回wikiのIP抜いて一部黒塗りにしてドヤ顔で晒してたバカがいたが同一かな?画像を残してあるから100%確定して通報する時がきたらくれてやるぜ

私生活に何らかの影響与えてくれないと警察とかは無理っぽいかもだがね

89名無しさん:2013/06/03(月) 01:08:12 ID:Im4rcgvU
>>86
『Tor』という、匿名でインターネットを利用するためのシステムがあって、もしかして荒らしはそいつを使っているんじゃないか?という話 無論、断言はできない
Torはp2pを利用したシステムであり、多数のプロキシを経由して書き込むことができるので発信元の特定が困難になる が、最後の出口だけはリストが複数公表されているし、実は通信内容そのものは暗号化されていないので傍受が懸念されていたりもする

90名無しさん:2013/06/03(月) 01:09:07 ID:zgjFqPOk
>>85
警察関係者でも勝手に他人のサイト&IPを抜くのはNG
と、いうか遠隔操作事件の関係で他人のIPの成り済まし行為はガッツリ捜査対象になってる
(遠隔操作事件は串を使ったIP偽造やそれに関連する、2chでよくある不正アクセスツールが原因だった)

もっと言えば『犠牲者を出すぞ』と予告している段階で、立派な脅迫行為

91名無しさん:2013/06/03(月) 01:10:13 ID:vl.JqVxY
すげー雑にいえば「全自動多段プロキシ設定ツール」みたいなもんだ

92名無しさん:2013/06/03(月) 01:11:24 ID:7zbTbhnM
犠牲者といっても現実に傷つける類いの犠牲者じゃないから無理さね……

93名無しさん:2013/06/03(月) 01:11:40 ID:Im4rcgvU
動くか分からんがみんなでインターネットホットラインセンターに通報しましょう、でFAかな
動かなくても騒がない、泣かないといったところだけど

94名無しさん:2013/06/03(月) 01:14:15 ID:7zbTbhnM
基本管理人が動く必要あり
犠牲のくだりは流れからして殺傷等犯罪とは無関係なので無理
この程度で警察は動いてくれない


まずお前ら落ち着け

95名無しさん:2013/06/03(月) 01:16:07 ID:Im4rcgvU
ジョゼちゃんモフって落ち着いてくるね

96名無しさん:2013/06/03(月) 01:18:06 ID:hgJIh.Ic
みんなサンクス何か少しわかった気がする
でももう、荒らしっていってもwikiとかに被害はないし、もうただ目障りなだけだよね

97名無しさん:2013/06/03(月) 01:20:59 ID:PlGwYdiY
ぶっちゃけると

この程度で警察が動いてくれるなら今頃日本中から荒らしが消えてるってことだ・・・

98名無しさん:2013/06/03(月) 01:23:14 ID:Im4rcgvU
いまや懐かしいARSの奴らも荒らしで逮捕されたわけじゃないからなあ ウイルス作成とかそのへん

99名無しさん:2013/06/03(月) 01:29:52 ID:ivbt9xrk
とりあえず『「IPアドレス抜いた、これから犠牲者を出していく」と予告している奴がいる』
という事をしっかりとネットの通報窓口に提出したほうがいいね

この書き込みが遠隔操作の予告か否かの判断は、俺たちじゃなくこの掲示板の経緯を全く知らない警察官が判断する訳だし。

問題になる点をしっかり伝えて、後は警察の判断を仰ぐしかないさ

100名無しさん:2013/06/03(月) 01:34:40 ID:UPWc69a.
≫99
その書き方だと虚偽になるから、お前が逆に訴えられる可能性があるぞ

101名無しさん:2013/06/03(月) 01:39:55 ID:RhSOUhDw
うわぁ
誰もIP抜いてそれを元に犠牲者を出していくなんて書いてないのに怖いわぁ
冤罪擦り付けられそうですわぁ
>>99を通報しますわぁ

102管理人:2013/06/03(月) 01:39:58 ID:???
寝ようと思ったらレス数爆発してて、ひょえーと思いつつ見てみたら逆の意味で驚きの展開。
皆さん詳しいですね。ありがたいです。

とりあえず今日削除した分のホスト情報は管理画面に残ってますし
同一人物がいろんなやり方で荒らしてきて困ってます、って感じで
したらばの運営会社に通報するところからやろうと思います。
(こっちで削除しちゃった文章、運営会社なら確認できるよな…?)
それまでは対症療法だけしかできませんけどご勘弁くださいまし。
とりあえず後からキレイにだけはできるから、しばらくは我慢してくだされ。

管理人として動ける事ならいろいろやってみるから、有効な方法はやり方教えてね。

寝ます。
とりあえず最後に削除した後にきちゃったもんの処理はまた今度まで待って下しあ。

103名無しさん:2013/06/03(月) 01:41:44 ID:Im4rcgvU
その程度でいちいち起訴処分にしてたらムショが満杯なんですがそれは…

管理人氏乙ーおやすみー
俺も寝よう

104名無しさん:2013/06/03(月) 02:00:13 ID:69oLm2ZU
一部のお馬鹿さんのせいで話がややこしくなりすぎ




荒らし程度じゃ警察は動いてくれない

したらば運営に過度の期待はしない方が吉
大抵は荒らし対策の設定しろか無理サポシで終わる
wikiも同じような結末だったのは記憶に新しいはず。所詮は無料掲示板

無計画なホスト規制で一部が既にとばっちりを食らってた

こんなもんだ。期待はあまりするな。警察がどうにかしてくれると思ってる頭がお花畑なやつらは書き込む前に勉強してこい
馬鹿が真に受けて延々警察ループする

こんなもんだ。寝る


あと関係ないけど携帯類のID固定設定してくれ
じゃないとほぼ書き込む度にIDが変わっちまう

105名無しさん:2013/06/04(火) 23:53:02 ID:AQP7rZaw
管理人氏、衝撃波の人乙乙

106管理人:2013/06/05(水) 01:04:29 ID:???0
>>104
携帯まわりの設定ってIDに識別符号をつけるとか、端末固有番号を発しない端末をNGにする
くらいしか設定が見つからなかったんですけどこれのこと?
とりあえず設定はしておきました。確認出来る人はよろしくです。

ちなみに、通報云々でちょっと盛り上がっているようなので、念のため管理人さんの考えをお伝えしておきます。
俺がこの前言った「運営に通報」云々は、あくまで掲示板を保護するため、くらいにしか考えてません。
運営さんのほうで奴さんをシャットアウトしてくれればホスト規制も解除できますし、みんなの利用性も高まるからね。
2chみたいに、とはいかんでしょうが「シーサーさん、(可能なら)奴さんのプロバに警告とか、なんかして止めてくださいよ」的な。
サービスの利用者として、利用の妨げになる状況については報告するべき、という大義名分もありますし。

くだらないコピペ荒らし、というのは確かにムカつく存在ではありますが「犯罪の構成要件」は満たしてなさそうですから
警察が絡むことは、恐らくないと思います。

そのあたり、自分がとる行動の方針についてはざっくり説明してみました。
…と、いうことで。
今は別にいいけど、投下する人が来たらこの手の話題は管理スレほかに移動おねがいいたしますわね。

107名無しさん:2013/06/05(水) 01:55:46 ID:0.Ry5OJo0
管理人おつ
うまくいくことを祈るばかり

108名無しさん:2013/06/05(水) 23:03:03 ID:/QMUrHhU0
乙乙

114名無しさん:2013/06/10(月) 23:58:23 ID:r7q0ujEM0


115短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:17:15 ID:RT1ivZK20
>管理人様へ
返事が遅くなってしまい大変申し訳ないです。
ありがたく使わせていただきます。

短編『あくび』1話&2話↓
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14336/1365006625/?q=%A4%A2%A4%AF%A4%D3

116短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:20:27 ID:RT1ivZK20
落ちかけている夕日がガリアの山脈から俺達を垣間見ている。

彼女によって雫を帯びた花壇に囲まれた場所。

そして照らされた二人の影が周りに溶けてゆきそうな時間。
仄かに暗く、ほどよい静寂があり、この花壇を所有する近くの復興途中である大きな屋敷から心地よい旋律のクラシックが流れていた。

まるで舞台装置の照明と音響による演出でもあるかのような雰囲気。
先程まで走っていた為の呼吸が落ち着いた自分にとって嘘のような状況を再発見した瞬間だった。

それらの空気感が今、眼に映る自分の一番好きな人を一層引き立てていた。

彼女に対し「胸を焦している」という恥ずかしい喩えが脳裏に浮かんだ。
同時にこれからとろうとする自らの行動が子供びていて今更後悔と悲愴を感じた。

ウィルマ「大事な話…?」

俺「はい」

普段の消極的な感情を殺して、今はただ口を開く。

俺「…ファラウェイランドの将校さんと結婚すると聞いて」

ウィルマ「え、あぁ…うん。決めちゃった。あはは、まさか退役して直ぐに結婚するなんて自分でも思わなかったよー」

相変わらずの明るい声にどこか心が落ち着き、自然と後ろの花壇へと逸らしていた眼をやや無理に彼女へ合わせた。

俺「俺だって思いませんでしたよ。しかも…」

しかし、直ぐにまた眼を逸らしてしまった。

俺「………本当に、好みの…齢の差がある御方と結婚するだなんて…」

118短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:23:33 ID:RT1ivZK20
ウィルマ「……俺…?」

互いに沈黙があった。といっても俺の発言とその仕方に原因がある。気づかれただろうか。
あぁ、いや、既に彼女は気づいているのだった。アメリーちゃんが言っていた、好意のことを彼女は既に。

俺「………」

この間に恐怖を感じ、時が進むのが酷く長く感じた。早く言葉を発したかった。
しかし何と言えばいい。分からない。脳が働かない。眼はうわのそらの方向を泳ぐばかり。

それでも歯を食いしばって伝えたいことがある。本当はどうにもならないとしても、我慢しなくてはならないとしても。

ただ、口にすることが出来ない。彼女に初めて出会った時からの回想を無闇に繰り返し言葉を捜してしまう。
見つからない。でも本当は見つかっている。しかしその見つかっている実直な言葉だけではきっと駄目だろう。

好きだと。

この言葉だけでは今の彼女の心を動かすことは出来ない。どうしても、動かしたい。たとえ無理でも。
今の俺に彼女を動かす言葉さえあれば。

ウィルマ「…私ね」

俺「…え」

先に彼女の口が動いた。

ウィルマ「元々魔法の素養が高くなくて、スナイパーの家系なのに能力もそこそこで…これは前、俺に話したよね」

俺「……はい、あの時の取材で」

ウィルマ「だから自分のことより…他の人が頑張る姿を見るのが好きだった…」

優しく囁くように彼女は続けた。

124短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:26:28 ID:RT1ivZK20
ウィルマ「でもそれじゃ駄目だって、シールドが使えなくなった時、助けてもらったフランに教えられたの。私も頑張らなくちゃって」

俺「…はい」

ウィルマ「…だけどフランだけじゃなくて、俺にも…教えられてたんだ…」

俺「えっ?」

ウィルマ「海辺でのレクの時、今続けている記者の仕事を一生したいって聞いて…その時、ちょっと嫉妬しちゃったけど、私も頑張ろうと思ったんだ」

俺「…あの時の……」

ウィルマ「自分の魔法力がじきに無くなるのは気付いていたけど、でも後悔なんてしないよう、ウィッチであり続けることを最後まで頑張ろうって…ねっ」

覚えている。どこか哀しげな表情をした水着の彼女の写真を撮った時を。

あの時、確かに俺は一生の仕事にしたいと言っていた。
でも今となってそれは銘文などではなく、彼女が結婚を決めてしまった今、意味が消えかけた後生を仕方なくとの皮肉にもなっている。
取材を通して恋をした日々を、取材によって変わってしまった惰性的な日々の中で引きずっている。記者を止めたいとも思う。しかし過去に囚われて、だから続けてしまう。

ウィルマ「…あー安心したっ」

俺「安心?」

ウィルマ「だって俺、まだしっかり記者を続けてるから」

そう言って彼女は俺の脇腹辺りに吊るされていたカメラを指差した。

131短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:29:29 ID:RT1ivZK20
俺「あ…」

気が付かなかった。部屋を飛び出した時、俺は咄嗟にカメラを肩に掛けていたようだった。カメラを外出時に必ずぶら下げるのは仕事によって習慣付いてしまったようだ。
自分の手で触れてみて確認する。そうだ、このカメラはあの時の取材からずっと持ち歩いていたんだ。俺の一生の仕事として。

きっと、彼女の前で誓ってしまった約束を破ることが出来ず、彼女を忘れられないから。

だから俺は記者であり続けるのかもしれない。

ウィルマ「好きだったよ…カメラを持って頑張ってる俺の姿」

俺「……えっ」

頭を上げた俺の目の前に、あの夕日の前で写真を撮った時と同じ笑みの大人っぽい彼女の表情があった。

思わず呼吸を忘れて見とれてしまう。
頬が熱くなってくるのは当然のことだった。

しかし、彼女のその言葉の意味が分かった俺にとって、この反応は胸にだけ冷たい痛みを残した。

好きだった。そう、もう遅い。全ては分かっている。どんなに意地汚い子供であっても分かることだろう。

でも、俺は。

ウィルマ「それに、またこうやって会えるなんて私は」

俺「俺はっ…」

ウィルマ「……」

俺「俺は…まだ好きですよ」

涙が込上げそうな程、情けない声で呟いた。

137短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:32:30 ID:RT1ivZK20
俺「卑怯ですよ、そんな…結婚するだなんて」

俺はなんて場を読まない男なんだろう。どうして大人になろうとしないのだろう。大人になる方法は分かっているのに。

全部、自分の我が儘に彼女を巻き込んでしまっている。

ウィルマ「……」

俺「ずっとあなたが好きだから、此処まで来たのに…」

ウィルマ「…私のこと、好き…なの?」

俺「知っているくせに…っ」

ウィルマ「……うん」

彼女の頬が赤らんだ。

そのまま見つめることが出来ず、先程よりもかなり暗くなってきた周りへ意地を張るように言葉を投げかける。

俺「好きです。ずっと……そう…想っていました…。だから俺と…」

ウィルマ「……」

俺「だから………俺と…っ…」

軍人として誤った行動を取っているに違いない。
上官との結婚が決まった相手への告白なんて。殺されても文句は言えない。

だとしても言ってしまった。

それに言葉は見つからなかった。彼女を動かす言葉は。俺の正直な気持ちしか言葉に出来なかった。

それでも俺は彼女の返答を、自分にとってこれしかなかった告白の返事を待った。

とても長い静寂があった。
気が付けば屋敷から流れ漏れていたクラシックは別の曲へと変わっていた。

ウィルマ「私は…」

俺「っ……」

俺は眼を瞑った。

141名無しさん:2013/06/17(月) 23:34:06 ID:gvM.kquI0
おつおつ

143短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:35:02 ID:RT1ivZK20
ウィルマ「私っ…」

上官「なっ、何をやっているんだお前はっ!!」

な。

上官「きっ、貴様、何故此処にいる!貴様は此処に来る筈が…!」

声のした方向を見ると、そこにはブリタニアの本部の客人室で見かけたファラウェイランド人が銃を構えていた。
あの空軍将校の部下だ。怒りの形相で俺を睨め付け、銃を握り直しじりじりと近づいていく。

空気が逆転し唖然とする。

俺「あ…あんたは…」

その突如訪れた別の緊張感から足が竦み、若干血の気が引いていくのが分かった。

上官「奥様、そいつから離れてください!」

ウィルマ「待って!この人は私の」

動揺した頭を正し、あいつが「此処にいる筈が」と言っていたことを聞き逃さなかった。
やはり俺への手紙が届かなかったことは奴らが原因で。俺が厄介だからといって悪戯の度を越え過ぎている。

また邪魔する気なのか大人の連中は。でも今日だけは絶対に歯向かわせてもらう。

俺「手紙が来なかったから確認しに着ただけですよ。あなたそっくりの王立側のヤギが食べちゃってたみたいで」

上官「なっ、お前……しかし聞いていたぞ。奥様を誑かそうと口説きを入れていたようだな」

俺「奥様…って」

上官が更ににじみ寄り、銃口からの射線が俺の頭を捕らえる。しかし退けはしない。
彼の言った言葉を否定はできないし、何より彼女へ伝えなければならないことがある。

146短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:36:47 ID:RT1ivZK20
上官「連行させてもらう」

俺「…俺が此処にいたら貴方の面子が潰れてしまいますからね」

上官「お前は違反を犯したからだ」

俺「好きだから好きといって何の問題が」

上官「このガキが、減らず口もいい加減にしろ!」

ここで退いたら彼女への想いが無駄になってしまう。

上官「私の上官の愛人に対し、好きです、ずっとそう想っていた、としっかり耳にした。これは重大な規律違反だ。戯言を抜け抜けと…」

俺「戯言なんかじゃない」

ウィルマ「……」

上官が銃を構えなおす。

撃たれてもいい。でも想いだけは伝えたい。

きっと一生に一度しかないこの瞬間だけは見逃したら絶対に後悔する。たとえ俺が死んでも。

俺「それに違反を犯しているのはあなた方ではないでしょうか。いい歳のくせして」

上官「貴様!」

俺「…うるせぇ、どうしても好きなんだよ、俺は!!」

ウィルマ「……俺」

俺「大好きなんだ!!子供で悪かったな!!」

150短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:38:41 ID:RT1ivZK20
何としてでも彼女に伝えたい。

ウィルマさん、あんな年増との結婚を止めて、俺と一緒になってくれ、と。

ずっと好きだった、そして今も好きだ、と。

俺「撃てるもんなら撃ってみろクソ野郎!!」

上官「このっ…!」

ウィルマ「も…もう止めて…俺っ!!」

必死に俺を止めようとするウィルマさんと眼が合った。

俺「あ…」

ウィルマ「…俺」

俺「……くそ…っ」

あぁ、ちくしょう。この人は明日結婚するんだ。

なのに俺は何をやっている。
どうしてなんだ。なんて情けない。どうしてこんなことになってしまった。

俺「…撃てよ!!」

上官「…っ!!」

ウィルマさんは俺に振り向いてくれるのか。振り向いて欲しい、でも。

ウィルマ「……俺っ」

きっと無理だろう。しかし「無理であっても」という自分がいる。
彼女が年上が好きだとしても、それは変えられないことであっても、足掻きたい。

俺「……そうだとしても」

“ウィルマ・ビショップはおじ様好き”か。

そうだ。たとえ無理だとしても。

告白する時ぐらい。
あの将校のオヤジみたいに、笑って出来たらよかった。

空気を読めて。
格好良く、余裕を持った大人みたいに。

子供の俺でも、大人みたいに出来るのであれば。

俺「それでも…俺は本当に……誰よりも好きなんだ」

ウィルマ「…えっ」

ただ彼女を見つめた。
その時だけは、目の前にある銃なんて、彼女の眼なんて、何も怖いものは無かった。

俺「愛してます」


――

154短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:41:02 ID:RT1ivZK20
?「…ありがとう」

上官「…………は?」

上官が俺の頭に銃口を押し当てて止まった。静止した間に気が付き、咄嗟に瞑ってしまった眼を開く。

今の声はウィルマさんの声ではない。
荒く呼吸をしながら体制を崩している俺は、白銀の髪色の彼女が遠くで立っているのを見た。

俺「ら…ラウラ?」

ラウラ「こんなところで告白されたら、照れる」

花壇の奥の壁の方から歩いてくる。懐かしい彼女の静かな声。

ラウラ「明日は友人の結婚式だっていうのに…それに…」

その声が近づきながら聞こえてくる。

ラウラ「どうせするのならもっと近くで告白してもらいたかった」

上官「な…ラウラ少尉、一体何を」

ラウラ「そいつを離してもらえない…?今度はしっかり聞こえるように傍でしてもらいたい」

上官「い…いけません!こいつは奥様に」

ウィルマ「ラ、ラウラ…?」

ラウラ「?」

惚けた顔をして、ラウラは話を続けた。

ラウラ「何を言っているの…?こいつは離れたところから私に叫んで告白してきた。ウィルマにも手伝ってもらって…全く…臆病」

上官「はぁ!?そっそんなわけが…!」

ラウラ「私はあの花壇の後ろにずっといた。あなたは気付いていなかったみたいだけど…」

上官「しかし、好きです、ずっとそう想っていたとこいつは奥様に…!」

ラウラ「だからそれも遠くにいる私に言っていた。俺と私の間にウィルマに被ってそう見えていただけ」

上官が動揺して、掴んでいる俺の襟元を離した。それと同じくして俺も事態を飲み込めていない。

158短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:42:56 ID:RT1ivZK20
ラウラ「そうでしょ、ウィルマ。俺の告白の手伝いをしていたんだよね」

ウィルマ「…え、えっ?…うっ…うん…」

ラウラ「一人じゃ告白する勇気がない…それに魔女に好きと明かすなんて。違反といえば違反だけど」

上官「ごっ…誤魔化すのもいい加減にしろ!」

ラウラ「誤魔化してなんかいない。そうでしょ、俺も」

俺「………」

ラウラ「ウィルマの結婚式に当然同席する私を追って此処まで来た。それでも告白する勇気が出ないからウィルマに手伝ってもらった、違う?」

俺「…いや、俺は…」

ラウラ「…違う?」

俺「………」

ここまで鋭い眼のラウラを見たのは初めてだ。

やっと事態を飲み込めた。

そういうことか。まさかラウラに助けられるなんて。自棄になりながらも告白を果たそうとした自分にやっと気が付いた。
心は勝手に落ち着いた。いや、醒めてしまったのかもしれない。

服は肌蹴て、ぶら提げていたカメラも肩から抜け、花壇の外の草木へと飛んでしまっている。

俺「……うん、その通りだよ」

冷静になった途端、腰から力が抜けていってその場に座り込んだ。

プライドも何もがズタズタだった。

夕日が落ちたあの時、その場にはクラシックだけが流れていた。
今になっても、あの曲だけは忘れることが出来ない。


――

161短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:45:53 ID:RT1ivZK20
挿入曲 バッヘルベル カノン (ttp://www.youtube.com/watch?v=MOBYK_reo-4)


ラウラ「連行されなくてよかった」

眉を顰めた納得のいかない上官が渋々去った後だった。
ラウラが誤魔化しを後押しするように「彼が私に告白したことを摘発してもいいけど、そうした場合、明日の式は彼と共に欠席させてもらう。同時に手紙の件について調査させてもらう」と上官の背に進言した。

昨日いたワイト島分遣隊の旧友が、式当日にいないことに空軍将校が気付けば不審に思うだろうし、何より手紙の件が暴露されるのであれば上官の首はハネられるだろう。

処分は免れたと言っていいか。

ラウラ「それで、どうする…?」

俺「……」

俺とウィルマさんはその場に力が抜けたように座り込んで互いに俯いていた。
夜で暗くなった視界に眼が慣れてきた中、俺は地面の土の方だけを向いていた。周りの様子が気になるが頭が上がらない。

だが不思議と気持ちは、何か引っ掛かっていたものが取れたような少しの開放感があった。

ラウラ「…私が此処にいると邪魔かな」

そう溢し、ラウラは振り返って屋敷へと歩いて行こうとする。

俺「…なぁ、ラウラ」

ラウラ「ん…」

俺「俺がワイト島を去る前の宴の時、ふと起きた俺に“言わなくていいの?”と言ったことはこのことだったのか」

ラウラ「……」

俺「それと…告白をしないであろう俺に対して“そのほうがいい”と言ったことも」

ラウラ「……」

さすが「感覚加速」の固有魔法の持ち主だ。俺が取材で彼女の個性を見抜いていると思ったら、逆に早計に見抜かれていたとは。
しかし俺に後悔は無い。

俺「…言っちゃったよ」

ラウラ「俺は…後悔してる?」

俺「するもんか」

ラウラ「そう…ならいい…」

彼女は微かな笑顔を見せた。きっと今までの俺がこの笑いを見たら、その意味を理解することは出来なかっただろう。
でも今なら理解できる。つられて笑ってしまう程に。

166短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:48:19 ID:RT1ivZK20
ラウラ「任務…完了」

俺と自分に対するであろう本音と冗談を混ぜ、ラウラはまた歩き始めた。

俺「あぁ、後一つ」

ラウラ「…?」

俺「助かった。ありがとう、ラウラ」

ラウラ「……話はこっちでつけとく、俺も前夜祭に参加しよう。明日は式なんだ、空軍将校だって酒を飲めば見逃してくれる」

俺「…そうだな」

ラウラは屋敷の中に入っていった。

今、この花壇に囲まれた敷地に残されているのは俺とウィルマさんの二人。

静寂を遮るよう口が勝手に開いた。

俺「ウィルマさん…ごめんなさい。あなたに迷惑をかけてしまった」

ウィルマ「……」

彼女も頭を上げる。

俺「でも、そんなしおらしい謝罪なんかする前に、渡したいものがあるんだ」

ウィルマ「…渡したいもの?」

俺「うん。始めて会ったあの時の」

彼女は少し驚いたような仕草をした後、クスッと笑った。
そうか、彼女も覚えていて、気付いたようだ。

胸ポケットに手を入れ、古ぼけた一枚の写真を取り出した。

初めてカメラを使って、初めて取った写真。
使い慣れない定着液によってふやけ、あの時からの日々を想わせる写真。

大好きだった人の写真。

169短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:49:54 ID:RT1ivZK20
俺「他の写真はみんな上層部に持ってかれて…でも、この写真だけはどうしても渡したくて。まぁこんな古ぼけたの、渡されても」

ウィルマ「…覚えてるよ。ふふっ…懐かしいな、俺が撮った写真」

俺「…俺が初めてカメラを使って撮った写真」

ウィルマ「えっ?そうだったの?」

俺「だから余計、渡したかったんだ」

ウィルマ「ぷっ…あはははっ」

俺「笑うなよ……ぷっ…」

そう言いながら俺も笑ってしまう。

ウィルマ「あぁー…そっか、大事な写真…」

俺「貰ってくれますか?」

ウィルマ「…貰わないっていったらっ?」

俺「皆に黙ってウィルマさんをベルギガまでかっさらいます」

ウィルマ「あっはっはっ!それって脅迫ー?」

俺「みたいなもんかな」

俺は写真を差し出す。彼女はゆっくりとその写真を受け取った。

俺「よかった…」

173短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:51:33 ID:RT1ivZK20
ウィルマ「……さっきの俺に、動かされちゃったなー」

俺「…?」

ウィルマ「だって眼が合ったまま、あんな告白されるなんて…」

愛してます、と。

俺「………もう二十代なのに…子供っぽかったな」

ウィルマ「うぅん、あの時は大人だったよ…俺」

俺「そうかな?」

ウィルマ「うんっ、すごく……だけど私は明日…」

目を逸らし、少し黙り込んでしまう。
彼女のその仕草は、あの時の取材ではきっと分かりえるものではない。

でも今なら分かる。正解ではないが、俺の返しはこれで良いと思う。

俺「俺はもう、写真を渡せて満足です」

きっと、これで正しいだろう。

俺「…ウィルマさん、どうかお幸せにっ」

ウィルマ「……………くすっ…じゃあ、私もお礼しなくちゃねっ」

俺「お礼?」

ウィルマ「うん…眼をつぶって?」

俺は眼を瞑る。何か渡したいものでもあるのだろうか。

ウィルマ「……」

俺「…あ」

柔らかい感触があり、眼を開けると彼女は俺の額にキスをしていた。

ブロンドの髪が頬にかかる。

それはワイト島での起床から就寝の全ての出来事を思い出し、そして決着が付いた。

177短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:53:08 ID:RT1ivZK20
ウィルマ「……」

唇を離し、暗くて見え難いが、互いに頬が赤く染まった顔を合わせた。

ウィルマ「こんなことしたら…忘れられなくなっちゃうかな?」

ウィルマめ、最後まで俺を子ども扱いして。

でもウィルマ。

俺は前よりもきっと、大人になれたんじゃないかと思うよ。

俺「……いいえ」

あの時が甦る。

“えっ?いや、俺はいいですよ”

“こーいうのは後々いい思い出になったりするから、ねっ?”

“思い出…”

俺「貴女の言ったとおり、いい思い出になりましたよ」

そしてこれからも、こうやって俺は大人になっていくんだろう。


――


アメリー「ご結婚おめでとーございまーす!!」

遠くで鐘が鳴っている。

仲間や親族達からの祝福を受け、将校と手を繋いだ彼女は嬉しそうに笑っている。
ひらひらと花びらが舞い、ブーケを片手にダンスをしているようだった。

ペリーヌ「まさか私の敷地で式を挙げるだなんて、思いもしませんでしたわよ?いくら教会の復興が進んでいないからって…」

リーネ「えへへ、私が勝手に許可しちゃって…」

ペリーヌ「もうっ!…でも、今日ぐらいは良いかしらね…」

雲一つ無い晴天の下、ウィルマ・ビショップの結婚式は行われた。

家族や戦友、ペリーヌが預かった孤児達も手を叩いて歓迎する。

179短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:54:08 ID:RT1ivZK20
ウィルマ「みんなー!ありがとーっ!!」

婿と腕を組み、ウェディングドレスを纏った彼女が大きく手を振っている。
式の最中は真面目に清楚さを保っていたというのに、一通り終えると天真爛漫の幼い彼女の笑顔がそこにはまだ残っていた。

きっと彼女はいつまでもああなのだろう。とても微笑ましいことだ。

角丸「あぁいいわねぇ…私もあんな風に…」

フラン「何、隊長も結婚したいの?」

角丸「へっ!?いいいや別に私は…」

フラン「ふーん…」

フランシーは不満げに頬を膨らませた。

アメリー「どーしたんですか、フランさん?」

フラン「いや別にー。ちょっとウィルマがあんなお年寄りと結婚するのが気に入らないだけ」

アメリー「そっ…そんな言い方…」

角丸「ひょっとしてフラン、ウィルマが結婚することが寂しいの?」

フラン「ちがうわよっ!い、いやちょっと違わないけど…。私はてっきりあいつと…」

リーネ「みなさーん。引き続きパーティーを始めますので、準備をお願いしまーす」

リーネが屋敷の入り口から呼びかける。将校の部下の上官達や話を聞きつけた取材班も続々と入っていく。

角丸「あっ、はーい。さっ皆、今日は美味しいもの沢山食べるわよー」

アメリー「はいっ!……って、あれっ?」

フラン「ん?どーしたのよ、アメリー」

アメリー「いや、さっきから俺さんとラウラさんの姿が見えなくて…」

角丸「あら?本当……どうしたのかしら…。俺さーん!ラウラー!」


――

182短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:55:22 ID:RT1ivZK20
俺「んー…んーっ」

俺は屋敷の裏の木に凭れていた。そして昨日の忘れられないクラシックの曲を口ずさむ。

久々の大勢の人前で疲れたのだろうか。

ラウラ「違う…根性なし」

そしてラウラも木陰で休んでいる。

俺「違うって何だ」

ラウラ「疲れたんじゃなくて、緊張して彼女の前に出れないんじゃないの?」

俺「ぐ…アメリーちゃんといい、お前らワイト島の連中は勘が鋭いな」

ラウラ「鋭いんじゃなくて、俺が分かりやすいだけだよ」

図星を突かれ、そっぽを向いてしまう。

折角あの宿主から燕尾服を貸してもらったというのに、これでは意味が無いな。
まぁ、少し大きくてぶかぶかしているからあまり他の人に見せたくも無いが。

俺「…で、なんでラウラは此処に居るんだ」

ラウラ「私は疲れただけだから」

俺「ラウラこそウェディング姿のウィルマに会いに行くべきじゃないのか」

ラウラ「彼女とはいつでも会える」

俺「……慰めか?」

ラウラ「そんなじゃない」

そう言って、ラウラは俺の傍に寄ってきて座った。

俺「…やっぱり慰めじゃないのか?」

ラウラ「俺がウィルマに会いに行かないから」

俺「っーあー分かった!会いに行くよ!」

俺は衣服を整え始める。ネクタイを引き締め、靴を正し、髪を整え、眼をはっきりと開ける。
せめて、姿だけでもと。

185短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:56:41 ID:RT1ivZK20
俺「……なぁラウラ」

ラウラ「ん…」

俺「もし、あの時俺が本当にラウラに告白していたら……いや、なんでもない。野暮なことを聞いたな」

ラウラ「……」

俺「……」

ラウラ「はぁーっ……」

俺「ん?」

ラウラの蹴りが俺の尻に届いた。

俺「いっ痛てぇ!!何すんだ、せっかくしわを伸ばしたのに…!」

ラウラ「…行くよ」

ラウラは俺の手を曳いて、屋敷の入り口へと向かって行く。

ラウラ「俺…」

俺「ん…何だ?」

ラウラ「今日は飲む?」

吹き出しそうなぐらい当たり前のことを聞いてきたので、少し大きな声で返した。

俺「ふふふ……当たり前だっ!!」


――

186名無しさん:2013/06/17(月) 23:56:43 ID:XJRZ1LqQ0
支援ー
荒らしの奴焦ってやがるw

189短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:58:06 ID:RT1ivZK20
俺「あ、ちょっと待ってくれラウラ」

入口の前で俺は立ち止まって上を見た。雲一つ無い、潔い青。

変わることの無い、誰もが憧れる、広い空を。

肩にぶら提げてあったカメラを構えて、シャッターを下ろした。

俺「…相変わらずだな」

大きく手を広げ、身体をぐっと伸ばした。

そして口を開き、大きなあくびを一つ。

ラウラ「もう行くよ」

これで猫背は直ったはずだ。

俺「あぁ」


――おわり――


エンディングテーマ 堀江由衣 Romantic Flight (ttp://www.youtube.com/watch?v=N2pa2tlj9kw)

192短編『あくび』最終回:2013/06/17(月) 23:59:15 ID:RT1ivZK20
短編『あくび』全三回、完結しました。EDが堀江さんなのはwikiのイメージするウィルマの声を参考にしています。
ここまで読んでくれて本当にありがとう!!

203名無しさん:2013/06/18(火) 00:05:35 ID:WR4TLAdU0
あくびの人乙乙

204名無しさん:2013/06/18(火) 00:06:03 ID:SeUY5Aeo0
乙!
cv堀江由衣は結構面白そうだな

224名無しさん:2013/06/18(火) 00:47:01 ID:E0ogOvTM0
おつおつ
ID同じだからあぼんが捗る

232名無しさん:2013/06/18(火) 00:53:10 ID:tHoodqdE0


なかなか味わい深い話しやね

233名無しさん:2013/06/18(火) 00:53:29 ID:E0ogOvTM0
伸びてる理由ってあらしくんがレスしてるからじゃね?w

うける

235名無しさん:2013/06/19(水) 10:28:06 ID:jNNIRHuM0
乙でした

236名無しさん:2013/07/30(火) 02:27:59 ID:dtOloK/Q0
なあ、今結局ここはどうなってるのよ?
あらしが酷くなってからずいぶんと離れていたし、たまに顔出す程度で現状がわからん。

ここも最終レスが6/19ってことはすでに死んでしまったのか……?

237管理人:2013/07/30(火) 03:04:15 ID:???0
>>236
死んでないよ。
とはいえ、管理人ひとりで騒いでてもアホ丸出しだから見守ってるだけ。
何かあるんだったら管理スレのほうにドゾ。

ちなみに、こんな時間に反応したのは、仕事の都合ですから
常に張り付いてる訳じゃありんせん。念のため

238名無しさん:2013/08/04(日) 19:11:51 ID:uAT7z.iE0
こっちはあんまり人いなさそうだしな…
投降するにしても向こうと両方び投稿するとかどうだろうか?

239管理人:2013/08/05(月) 23:06:24 ID:???0
>>238
そのあたりは、それこそ投下する人の選択次第だから、俺としてはなんとも言えないな。
やっぱり向こうに愛着があるっていう人もいるだろうし
「お前なんか信用できるか」ってんでこっちを忌避してる人もいるだろうしね。
そうでなくても両方で投下するってのも面倒だろうし。

まあ、向こうでふつーにちゃんと復活してくれるんならこっちはゴミ扱いでもどうでもいいしねえ。

240名無しさん:2013/08/06(火) 17:17:56 ID:j6kDAX3U0
個人的には荒らしにすぐ対応してくれるこっちが良いが、向こうにも愛着がある

向こうは荒らしが邪魔、こっちは人が少ない、か

241衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:18:18 ID:BQ30L.Pw0
管野『――攻撃くるぞっ!』

俺「ッ!」

インカムから迸る管野の叫びよりも先に、矢継ぎ早に放たれた熱線に身を翻す。直後それまで飛翔していた空域を疾走する紅蓮光。
欧州各地に点在する高名な建築物の数々を紙細工の如く容易に切り裂き、焼き払うほどの火力に男の面差しが歪に強張った。
前方に佇む中型からの熱線が掻き消えると同時に携行火器の引き金に指をかけ、発射。重い銃声を伴って銃口が発火炎を吐き出す。
連射される7.92mm弾が暗夜よりも深い中型の装甲を削り始める。俺を含めた第502統合戦闘航空団に所属する魔女全員分の集中砲火を浴び、中枢であるコアがその姿を現した。

ロスマン『――コアが見えたわ!』

俺「サーシャ!!」

間髪入れず蒼空に轟く銃声。一発でコアを撃ち貫かれた中型が霧散するよりも先に、次の標的へと肉薄していく魔女たちの後姿から俺は眼下の大地に視線を落とす。
地上部隊に対して立て続けに行われる爆撃。それに伴う爆音、破壊音が人間の断末魔すら掻き消す地獄絵図。
人類側は前回の作戦時での残存戦力に合わせ連合軍からの増援を、ネウロイ側は侵略拠点である都市奪還のため前回以上の戦力を投入した。
地上に展開される歩兵及び陸戦魔女部隊に降りかかる砲火を排除し、逸早く制空圏を確保および拡大せよ。それが第502統合戦闘航空団に課せられた指令であった。

ニパ『――不味い!』

ラル「各機! 目標を軽爆撃級に設定! 攻勢開始!!」

眼前に展開される爆撃機級の編隊が地上に展開されている陸戦部隊に向けて爆撃を開始した。
風切り音を奏でながら大地に吸い込まれていく爆薬の数々に、俺は無言で右手を伸ばして極細状の衝撃波を五指の先端から照射する。
直後、都市と空中の中間にて発生する無数の光。全弾撃墜を確認するとともに爆撃機級の編隊に携行火器の銃口を向けて引き金を引く最中、耳元に装着しているインカムが軽いノイズを走らせた。

242衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:19:06 ID:BQ30L.Pw0

サーシャ『――俺さん……こうなった以上は何も言いません』

俺「悪いな。最後の最後に我侭聞いてもらって」

流れ出した声は真正面の標的を見据えながら断続的に対物ライフルの引き金を絞るサーシャのそれであった。
日頃に比べ幾分か落ち込む声色から彼女が自分の身を案じていることを察した俺は、口許に苦笑を零しながらも引き金を引き続ける。
思えばここ数日は彼女らに心配をかけてばかりだ。基地を飛び出し、戦場に入り込み、ジグラットの崩壊に巻き込まれた。
まだ半世紀も生きていない若造であることは自覚していたが、青臭さだけはとっくの昔に抜け落ちているものとばかり思っていた。
にも拘わらず、この有様だ。魔力障壁を展開すら力を失っているというのに乱戦の渦中に身を置いている始末だ。
どれだけ世界を渡り歩いても。どれだけ砲火のなかを突き進み、実戦経験を積んだとしても。
結局自分は未だ青臭いままの若造なのだと己の未熟さに自嘲の念を禁じえない。
なにが自分をここまで変えたのかと原因を探り始める。時間にして数秒、答えはすぐさま弾き出された。
愛しい女性の笑顔を脳裏に思い浮かべ、銃口炎に照らされる俺の表情が緩やかに綻んでいく。
あの笑顔のためなら、彼女のためなら自分は何度だって命を張れる。
この感情が青臭いというならば自分は一生青臭い小僧だと嘲笑われ続けても構わない。
けれども、

ロスマン『最後だなんて……縁起でもないこと言わないでください』

クルピンスキー『そうだよ。君には何が何でも生き残ってもらうからね? 途中で死んだりして、隊長を泣かせたら一生恨むよ』

俺「わかってる。俺だって惚れた女の泣き顔なんざ見たくないんでね」

それでは無意味なのだ。片方が生き残るような結末など彼女は望んでいない。
彼女が欲しているのは自分が隣にいる平穏な未来。故にここで死ぬわけにはいかない。
露出したコアに銃弾が直撃。砕け散る爆撃機級から視線を外すと同時に再びインカムから雑音が迸った。

243衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:19:58 ID:BQ30L.Pw0

サーシャ『魔法力の消費が激しい衝撃波の使用は可能な限り控えてください。通常火力での破壊が困難な場合はこちらが適時指示を出します』

俺「了解」

返事とともに残る爆撃機級への攻撃を開始。視界に入る敵勢力の観察も並行で行う。
現状は502を含めた航空歩兵部隊の奮迅により制空圏は微かではあるが確実に広まりつつあった。時折入る地上部隊に配備された高射砲による援護射撃がその勢いを後押している。
この状態を維持できれば制空圏確保も時間の問題だろう。

俺「(しかし……ここまで執着する理由はなんだ?)」

人類は廃棄都市の完全なる奪還のために前回以上の戦力を動員した。
同様に怪異側も先の激戦など前哨戦とでも言うように大量の兵力を投入したが、奴らにとってこの廃棄都市は貴重な戦力を投入するほどの価値があるのだろうか。
大型とはいえ所詮は一都市に過ぎない。更に付け足すならば類似する場所など欧州を探せばいくらでも転がっている。だというのに第二波戦力を動かす真意とは何なのか。
疑問と考察を幾度も巡らせた結果、俺の脳裏に一つの仮説が導き出される。
ネウロイが身を削ってまでこの地に執着する理由。それは、それは……

――この地でこれから何かを行おうとするためなのではないか……――

俺「ッ!?」

思考は前触れも無く耳元に届いた、砲声や爆音とはまた異なる轟音によって掻き消された。
視線を十時方向へと向けるや否や俺は反射的に身体を強張らせる。
作戦領域である都市に隣接した山々を越えて姿を見せた歪な影。
甲虫――それも眼下の都市に跋扈する蜘蛛型や蠍型とは比べ物にならないほどの大きさだ。
ジグラットに匹敵するサイズの四つ足。対航空歩兵用の赤い砲門があたかも天道虫の斑点のように散りばめられた背面。それだけならば何ら脅威にはならなかっただろう。

244衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:20:35 ID:BQ30L.Pw0

しかし背面に連結された巨大な砲身の凶悪過ぎるフォルムに否応無く視線が移ってしまう。
一撃で都市一つ消滅させられる程の火力を有していることがサイズと口径から容易に想像できる。
流石にこの乱戦の最中で使用してくることは考え難いが、だとしても迅速に撃破することに越したことは無い。
同じ考えに至ったのか巨大甲虫型を最重要破壊対象と判断し攻撃を開始する各航空歩兵隊。

彼女らが手にする銃器が空に鮮やかな炎の華を咲かせる光景をよそに、ラルは脳裏に策を巡らせていた。
巨体とそれを支える頑強な四つ脚から機動力はさして高くない。問題は機動力の低さを補うほどの防御力にある。
先刻から機銃弾の豪雨を浴びているというのに、巨大甲虫型の歩は止まるどころか鈍る気配すら見せていない。並大抵の火力では決定打はおろか致命傷を与えることすら至難だろう。

下原『――ここからでは脚部しか確認出来ませんが……現状、対地兵装らしき存在は見当たりません』

管野『――けどよ! んなもん無くたってあの脚さえありゃ!!』

ロスマン『――蹴散らされるのは目に見えるわね』

ジョゼ『――空から攻撃するにしてもあの数の砲門です。下手をすれば撃ち落されます』

管野『――だったらあの無駄にでかい脚ごとぶっ壊してやるよ!!』

俺『――よせ。それでお前の手が砕けたらどうする? いや……おい、まて』

245衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:21:12 ID:BQ30L.Pw0

戦意を燃やす管野を諌める俺の何かを察したかのような言葉に、思考の海から現実へと帰還するラル。
視線を標的に注いだ瞬間、悪寒が背筋を駆け抜けた。歩を止めた巨大甲虫――その背の砲門が明滅を開始する姿に。
嫌というほど見慣れたあの現象は――

ラル「――全機ッ! 障壁展開!!」

弾かれた動作でインカムに手を伸ばすなり回線を全航空歩兵に接続。
ワンテンポ遅れ、巨大甲虫の背面から伸びた幾条もの熱線が空中を飛び交う航空歩兵たちに殺到していった。次いでノイズを伴った状況報告が飛び交う。
撃墜された者、ストライカーを大破に追い込まれ飛行が困難になった者。
戦友を墜とされ怒り狂う者。
一瞬で十を超える航空歩兵が戦闘不能に追い込まれた状況にラルは端整な美貌を歪めた。

ラル「なんて範囲だ」

周囲を飛び交う目障りな存在を叩き落した巨大甲虫が再び移動を開始する。
自分が墜とした少女たちが迎える命運など歯牙にもかけぬ標的の態度に腹の底から湧き上がる怒りを抑えつつ、改めて状況整理に徹した。
対物ライフルの一撃を以ってしても貫くことが叶わなかった装甲からやはり最大の難所はあの鉄壁なまでの頑強さにある。
現状、502が有する火器ではあの城壁を破壊することは不可能と断じて良いだろう。
列車砲級の火力ならば損害を与えることも可能だろうが、生憎とこの場には“グスタフ”も“ドーラ”も配備されていない。高射砲も残る爆撃機級の撃墜が終わるまでは巨大甲虫の相手に回せない以上はやはり携行火器で食い止めるしか手は無い。
そのときラルの思考は辿りつく。辿り着いてしまう。
列車砲以上の火力を有する男に。堅牢無比な装甲を突破し、搭載された核の破壊が可能な航空歩兵の存在に。

246衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:22:42 ID:BQ30L.Pw0

俺『――こいつは俺の出番かな』

そして、その男は携行火器を左手に持ち替え空いた右の肩を回していた。
象嵌された黒瞳が硬質なる戦意の光を弾く。あたかも天を舞う狩猟者のそれを髣髴させる眼差しを捉えた瞬間、ラルは全身に寒気が駆け抜ける感覚を抱いた。
不意に視線絡み合う。途端、頬を綻ばせる俺。

俺『――あれほどの装甲じゃ単なる集中砲火だと時間がかかる。出力を上げた衝撃波なら突破口くらいは拓けるさ。ただ、まぁ。少しばかり距離を縮める必要があるけどな』

確かに俺の衝撃波ならば巨大甲虫が放つ熱線を押し返し、損傷を負わせることも可能だろう。けれども彼は既に魔力障壁を展開する力を失っている。
あの数の熱線を全て回避する空戦技量を有しているとしても、防ぐ術が無い以上は一度でも直撃すれば死に至ることは火を見るよりも明らか。
薄皮一枚で繋がる彼をあの紅蓮光の群れに向かわせるなど地獄の淵に突き落とすようなものである。恋人としてそのような特攻を看過できるはずがない。
しかしそれはあくまでグンドュラ・ラルとしての考えでしかなく。今の自分は第502統合戦闘航空団の司令として、この現状を打破しなければならない。軍人としての判断を優先するならば、作戦成功の確率を少しでも引き上げるために彼を巨大甲虫へと送り出すことだろう。

ラル「(……私は、どうすればっ!!)」

躊躇いが脳裏を支配する。愛しい男の身を案ずる自分と軍人としての自分。
二人の己に挟まれたラルは胸中に渦巻く逡巡が次第に痛みを生み出していく感覚を抱いた。
彼を向かわせれば作戦成功率も上がるだろう。けれど彼が確実に生きて還ってくる保証など、どこにもないではないか。
送り出した結果、今度こそ彼が還って来ない結果に終われば……

247衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:23:18 ID:BQ30L.Pw0

ラル「(い、やだ……もう。いやだ……!!)」

悲痛な叫びが胸裏で木霊する。
もうあんな思いは沢山だ。寂しさも、切なさも。痛みも、悲しみも。
二度と味わいたくない。

俺『――なぁ。グンドュラ』

震える身体を包み込んだのは他の誰でもない恋人の声音。
振り向けば真摯な光を宿した黒瞳と視線が絡み合う。
一歩間違えれば確実に命を落とす状況にこれから飛び込むというのに、男は驚くほど柔和な笑みを湛えていた。

俺「こうして俺の出撃を認めてくれたってことは。お前もあのときに覚悟を決めてくれたってことじゃないのか?」

先刻までの凛々しさは消え、大切な存在を喪うやもしれぬ恐怖に震える恋人から目を背けずに紡ぐ。人を愛するということは同時に喪失の恐怖を背負うということ。
その恐怖を背負わせた元凶は間違いなく俺自身だろう。
もしも彼女と出会わなければ、彼女に惹かれなければ、その心を動かしさえしなければラルは優秀な航空歩兵としていられただろう。
けれども、けれども……

俺「信じてくれ、としか言えない」

後悔はない。ラルと出会ったことも、ラルを愛すると決めたことも。彼女もそれは同じであるはず。
今日まで散々世界を放浪してきたし、これからもそうだと思っていたが、今は違う。
守るものが出来た。仕事を終えてまた次の目的地を目指すわけにはいかなくなった。
ならば、そろそろ根を下ろす頃合なのだろう。彼女とともに生きる為に。
しかしそのためには乗り越えなければならない壁が、いま眼前に立ち塞がっている。

248衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:24:10 ID:BQ30L.Pw0

俺「それに。なにも俺だけであのデカブツを倒そうとは思っていないさ」

言うなり周囲を見回す。

指の骨を鳴らした管野が白い歯を見せつけ、不敵な笑みを浮かべた。標的が大きいほど落とし甲斐があると日頃から豪語するだけあり、この状況に一切臆していない。

携行火器を構えるジョゼと定子の姿が視界に入る。既に自分たちの役目を察した彼女ら二人は既に臨戦態勢を整えていた。

日頃自身の不幸体質を嘆く姿は消え去り、断固たる戦意を瞳に宿すニパ。スオムス空軍十指の実力者としての矜持を顕現させる少女の姿に俺は高揚感を伴った頼もしさを抱いた。

柔和な笑みを浮かべるロスマンが頷く。手のかかる教え子を見守るかのような笑みに俺はそっと背中を押されたかのような感覚を覚えた。

新型種が投入されたにも拘わらず普段と変わらぬ流し目を送るプンスキー伯爵が細指で巨大甲虫型を指差す。端整な美貌に象嵌された瞳が物語る意図に俺は頷きを以って返した。

危険な役目を押し付けてしまった負い目から双眸に不安げな光を漂わせるサーシャ。
しかしすぐさま他の手段の模索が無意味だと悟り、自らの役割に徹するかのように対物ライフルを構えなおす。

ラル「本当に…………アレを斃せるんだな?」

声が震える。吐き出したものが言葉として形を成しているのか自分でも確信が抱けないほどに。
ただ判っていることは彼の瞳と言葉に一片の迷いが見出せないということ、
筆舌に尽くしがたい覚悟を傷だらけの全身に宿しているということ、
そして自分が根拠も無しにその光を信じてしまっているということ。

249衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:24:58 ID:BQ30L.Pw0

ラル「……本当に、帰ってくるんだな?」

俺『…………必ず』

耳朶を打つ力強い言葉に頬が綻んでいく。
あぁ、まただ。何一つ根拠も確証もないというのに。
つい先刻まで胸裏を苛んでいた不安と躊躇いの姿が消えていく。

ラル「………わかった。敵の注意は私たちが引きつける。“命令”だ……必ず帰って来い!!」

あのときとは違う。
この手は届く。絶対に死なせない。何が何でも守り切る。
必ず全員で、生きて還る!!

ラル「聞いての通りだ。我々はこれからこいつの援護に入る」

「絶対に死なせはしない! 俺も! そして諸君もだ!!」

自身に刻み込むが如き宣誓。
威厳溢れる声音は空を駆ける雷電にも似た鋭さを秘めていた。

ラル「お前の背中は私たちが守る。思う存分暴れて来い」

言うなり笑みを浮かべる。
周囲の人間を安心させるいつもの微笑み。
既にその青い双眸に迷いは無く、歴戦の航空歩兵が宿すに相応しい凄烈な眼光が宿っていた。

250衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:26:02 ID:BQ30L.Pw0

ラル「あの虫を地面にキスさせてやれ」

俺「……あぁ。委細承知」

口元を綻ばせて応える。
携行火器を背負い、これから自分が対峙すべき怨敵を見据える。

ロスマン『――俺さん。ご武運を』

管野『――今度こそ早く帰って来いよ!!』

クルピンスキー『――もしも無事に帰ってこれたらキスしてあげよう』

ハスキーな声音とともにプンスキー伯爵の妖艶な眼差しが俺へと流される。視線を注がれた本人はというと気恥ずかしそうに頬を掻くなり空を仰いで茶を濁した。
その光景を前にした途端、ラルは胸裏に粘性を帯びたどす黒い感情が渦巻いていく感覚を抱いた。
微かだが自然と膨れる頬。目を細めて非難の意思を顕にする。
こんなにも嫉妬してしまうものなのか、こんなにも容易に妬いてしまうほど自分は嫉妬深かったのかと感じつつも恋人睨む眼差しは下ろさない。

ラル「…………むぅ」

不意に非難めいた眼差しがクルピンスキーの艶を帯びた視線と絡み合った。
跳ね上がるラルの心臓。その目線の奥底に混ざりこんだ不吉な気配が彼女の身体を強張らせる。
その直後、彼女の予感は見事に的中した。

251衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:26:38 ID:BQ30L.Pw0

ラル「あの虫を地面にキスさせてやれ」

俺「……あぁ。委細承知」

口元を綻ばせて応える。
携行火器を背負い、これから自分が対峙すべき怨敵を見据える。

ロスマン『――俺さん。ご武運を』

管野『――今度こそ早く帰って来いよ!!』

クルピンスキー『――もしも無事に帰ってこれたらキスしてあげよう』

ハスキーな声音とともにプンスキー伯爵の妖艶な眼差しが俺へと流される。視線を注がれた本人はというと気恥ずかしそうに頬を掻くなり空を仰いで茶を濁した。
その光景を前にした途端、ラルは胸裏に粘性を帯びたどす黒い感情が渦巻いていく感覚を抱いた。
微かだが自然と膨れる頬。目を細めて非難の意思を顕にする。
こんなにも嫉妬してしまうものなのか、こんなにも容易に妬いてしまうほど自分は嫉妬深かったのかと感じつつも恋人睨む眼差しは下ろさない。

ラル「…………むぅ」

不意に非難めいた眼差しがクルピンスキーの艶を帯びた視線と絡み合った。
跳ね上がるラルの心臓。その目線の奥底に混ざりこんだ不吉な気配が彼女の身体を強張らせる。
その直後、彼女の予感は見事に的中した。

252衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:27:23 ID:BQ30L.Pw0

クルピンスキー「ねぇ、おれ――」

俺『やらんぞ』

返されたのは極限にまで冷気を孕んだ声音。
あたかも罪人を黄泉路へと送る断罪の執行者が如き鋭さにクルピンスキーの身体があたかも金縛りにでもあったかのように硬直した。
初めてストライカーを履き、ネウロイと対峙したときに感じたそれを遥かに上回る恐怖に脳がけたたましく警鐘を鳴らしている。

俺『伯爵。お前の魔手は届かない』

本能が告げる。これ以上、彼女に深く関わるなと。間違っても彼女を口説き落とそうなど考えるなと。

『残 念 だ っ た な!』

クルピンスキー「ははは。いやだなぁ……冗談だよ。そんな風に見つめないでよ!」

ロスマン『――おふざけはその辺りでやめておきなさい。隊長、ご指示を』

ラル「ブレイブウィッチーズ! 全機、攻勢再開!!」

遠方から轟く対空高射砲の砲声。
それを戦闘再開の号砲とし、勇壮なる航空歩兵たちは一斉に標的へと向かっていった。

253衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:28:07 ID:BQ30L.Pw0

猛然と迫る紅蓮の熱線が魔力障壁に激突する。
障壁越しに伝わる衝撃にラルは反射的に歯を喰いしばった。新型だけあってか対象へと突き進む速度も、密度も。通常の航空歩兵とは一線を画している。

ラル「相変わらず凄い火力だな!」

クルピンスキー『――だけど攻撃は僕たちや他の部隊に集中してる! これならいけるかもしれない!』

ロスマン『――いけるかもじゃなくて、上手くいかせなきゃ駄目なのよ!』

二人のやり取りを耳にするラルの視界に影が横切った。
黒髪を靡かせながら対象への距離を詰めていく恋人の背に、少女の身体が僅かに固まる。けれども次の瞬間にはすぐさま攻撃を再開する。
この手で守ると誓った。
ならば自分は自分に出来ることを貫くまで。

ラル「(信じているぞ……信じているからな……)」





俺「(あの砲身が邪魔だな)」

少女の想いを背に受け、男は巨大甲虫が背負う巨砲を改めて観察する。
艦船に搭載されたものよりも遥かに巨大な砲を。都市一つ容易に焼き尽くしてしまうほどの砲を。
威力、射程。そのどちらも、装甲各部に設置された砲門から放たれる熱線の上をいくのはフォルムからみても明らかである。
万が一、地上や航空部隊にでも使用されることになれば連合軍の敗北は確約されてしまう。
それだけではない。放たれたら最後、作戦領域を突き破り遥か遠方の市街地にさえ到達するだろう。

254衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:29:02 ID:BQ30L.Pw0

俺「(砕くか)」

ここで後顧の憂いを断つべきだ。
加えて言えば敵の攻撃手段は少しでも減らしておくに越したことはない。
蜘蛛型が歩行を止めると同時に周辺空域に放射される熱線が消失した。
おそらくは対空用に用いる熱線のエネルギーを全てあの砲身から放つ攻撃に費やしているのだろう。
脚を止めたのは発射時の誤差を少しでも抑えるため。

俺「(ここで使っちまうか?)」

――魔技。
稀代の魔女――薔薇十字が創り上げた術式を基に独自の理論で編み出した術技であり、言うなれば“俺たち“にとって切り札のようなもの。
が、俺が習得した魔技は徹底的に破壊力と範囲を強化されており、その威力は最大時では宇宙一つを砕くほどに至っている。
下手をすればこの星にまで損害を与える危険も孕んでいる以上、現時点では術式による魔技の使用は控えるべきだろう。

ジョゼ『――俺さん!』

砲身の奥底に灯る紅蓮の炎を見咎めた俺は迷わず右の掌を打ち出した。砲身内部へと潜り込んだ衝撃波が放たれた熱線と激突。
衝撃波を通して右腕に伝播するインパクトに面差しを歪める。
あたかも濁流を素手で受け止めているかのような衝撃に右腕の骨格が軋む感覚に苛まれる。
このまま押し返し、砲身を破壊することも可能だが今後の戦況を鑑みればここで魔法力を消耗するのは得策ではない。
思考を巡らせている隙を突いて熱線の出力を引き上げる巨大甲虫型。必然的に砲身内部に放出される衝撃波が押し返されていく。
その単純なまでの力押しから巨大甲虫型が秘める明確な殺意が自身に注がれていることを察し、俺は唇を吊り上げた。低脳な異形の分際で生意気にも意思を有するとは。

255衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:29:44 ID:BQ30L.Pw0

俺「(――は。目にもの見せてやるよ)」

対象を胸裏で嘲笑い、衝撃波の出力を砲身の中間地点まで押し返す段階まで引き上げる。今後どう転ぶか分からぬ戦況を踏まえるとここで砲身を破壊するほどの魔法力の消費は避けなければならない。この後には堅牢な装甲を破壊する作業も控えているのだ。多少時間はかかるものの俺は出力の維持に徹した。

サーシャ『砲身が!!』

航空歩兵と巨大甲虫が鬩ぎ合いを開始して数分足らず。変化は目に見える形となって現れた。突如として黒い巨大な砲身に奔る亀裂。内側から白光を滲ませるそれは瞬く間に砲身全体に駆け巡り、目を凝らせば凶悪な砲身のフォルムがその姿を歪に変えていく。刹那、大音響を伴った衝撃が周囲に迸った。
俺の目論見はこれにあった。自ら貴重な魔法力を消費せずとも衝撃波を砲身内部に押し込めておけば巨大甲虫自身が放つ熱線の熱量と衝撃波の熱量が重なり合う。その結果、砲身内部は熱の過剰供給状態に陥り、許容量を超えた極度の負荷に耐え切れず砲身は破裂する。爆発の影響を直に受け巨大甲虫型が数歩、後退した。その巨体が故に体勢を整えるには幾許かの時間を要するらしい。

ラル「各機! 手を休めるな!」

四肢を曲げ、不気味な間接音を響かせて、周辺に散在する航空歩兵が放つ銃弾を浴びながら体勢を整える巨大甲虫を尻目にラルは青空を舞う男の姿を探していた。
引き金にかける指はそのままに、照準が乱れないよう両腕に力を込めながら。
視界の片隅に対象を捉え、安堵の意思を口元に浮かべる。が、その笑みはすぐさま掻き消えた。
右腕を押さえる、恋人の姿。表情を歪ませながら左腕で右腕を押えつける姿が少女の胸を深く抉る。
痛みが治まったのか俺は巨大甲虫型への接敵を開始する。遠ざかる後姿。
後ろ髪を引かれる思いを振り払い、ラルは標的の注意を引きつけるために陽動を続けた。

256衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:31:29 ID:BQ30L.Pw0

俺「(大人しくはしてくれないか!)」

空を引き千切り、俺が猛然と巨大甲虫型に迫る。大きく身体を捻っては熱線をいなし、衝撃波を放射。
着弾した部分が大きく拉げていることから威力はまだ落ちてはいないようだ。
ネウロイもまた砲身を砕いた彼が最も厄介な戦力だと認識したのか他の航空歩兵への攻撃全て眼前を飛び回る蝿へと向けた。
矢継ぎ早に放たれる熱線の弾幕。

俺「こいつは……凄いな」

口から洩れたのは純粋な感嘆。地獄の針山とはこのような光景を指すのだろう。
容赦無く迫り来る猛威を紙一重の領域で避ける俺の胸裏でそんな考えが過ぎる。黒い山肌から無数の紅い棘が生まれる様は正に針の山と称すに相応しい。
無策に近づけば奈落へ堕ちた罪人と同じ末路を辿るのは必至。
故に一定の距離を保ち防御と攻撃を繰り返しながら突撃のタイミングを図る。

俺「破ッ!!」

大型ネウロイから放たれる極太のビームと衝撃波が両者の中間地点で激突。盛大な爆発を巻き起こす。空中に漂う噴煙を引き千切り、一直線に大型へと肉薄。
両の掌から衝撃波を噴射することで追加推進機の役割を果たすそれは迅速に敵対象との距離を消していく。敵機が攻撃を放つのが先か。それとも自身が先か。
乾坤一擲の大勝負。迷いは無い。決して死に逝くわけでもない。
仲間が開いてくれた血路を無駄にしないため。ただ勝利をもぎ取ることに尋常ならざる妄執を全身に内包した男は一個の砲弾と化していた。

257衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:32:14 ID:BQ30L.Pw0

俺「――ッ!!」

初めて触れる異形の装甲。手の平に伝わる凍てついた感触。
俺はある男を思い出していた。
あの男ならば、魔法力を用いずとも素手でこの堅牢な外殻を叩き砕くことが出来るのだろう。

俺「消し、飛べッ!!」

幾多の航空歩兵を葬ってきた悪しき甲に手を添えた次の刹那、最大出力の衝撃波を零距離発射。
両の掌か放射された破壊の奔流は鉄壁の防殻を易々と粉砕し、核が存在する内部を完膚なきまでに蹂躙していく。両腕に伝わる微弱な振動。轟音に紛れ、微かな破砕音が耳朶を打った。
直後、巨大甲虫型が白光放つ結晶となって砕け散る。
光の破片が降り注ぐなか、歓声を耳にしながら俺は周囲を見回し、敵の全滅を確認した後離脱を開始した。

258衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:33:02 ID:BQ30L.Pw0




巨大甲虫型の撃破から既に数十分の時間が経過した。
魔力切れを起こし、前線から撤退する航空歩兵が何名か現れたものの敵勢力が誇る侵略の要を破壊したことで人類側の反攻に勢いがつく最中。
愛機のエンジンを轟かせながら友軍機とともに敵の布陣を崩すクルピンスキーは背筋に悪寒を感じ、上空を仰ぐ。
青空に走る、黒々とした帯状の雲。それは決して自然界が生み出す暗雲ではなかった。
航空歩兵たちが飛び交う空域よりも更に高高度の空中に集束する暗雲。
帯電し、徐々にその規模を膨れ上がらせ、形を成していくその光景に彼女だけではなく都市上空に展開されていた全ての航空歩兵が動きを止めた。

ジョゼ「うそ……」

クルピンスキー「……そんな」

ラル「まさか……」

ロスマン「巣を……ここに張るつもりッ!?」

祖国を奪われた者にとって決して忘れようが無い光景にロスマンの端整な容貌が悲痛な色を伴って歪んでいく。
巣の誕生。
正に怪異はこの場所に新たな侵略拠点を築き始めたのである。
好転していた戦況が瞬く間に覆された瞬間であった。

259衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:33:53 ID:BQ30L.Pw0



新たな巣の顕現によって戦況は一変した。
頭上に敵の本拠地が出現したことで眼下の歩兵隊は退却を始めていた。作戦司令部から全軍への退却命令が下るのも時間の問題だろう。
都市全域に展開されていた各部隊の士気が著しく低下する空気を肌で感じるクルピンスキーは苦虫を噛み潰した表情を端正な容貌に浮かべていた。
巨大甲虫型を撃破し、活路を開いたと思った矢先に発生した巣の誕生という異常事態。
あえて希望をちらつかせ、一気に叩き落とす。相変わらずの卑怯な戦術に憤りすら覚える。

クルピンスキー「うっ……あぁ……」

不意に視界が歪んだ。
どうやら自分が把握している以上の疲労が蓄積されていたようだ。加えて上空には禍々しい暗雲。
悪化した戦況が精神的重圧へと繋がり、肉体的疲労と相成って眩暈を引き起こしたのだろう。
幸い魔法力はまだ切れていない。障壁も展開できる。
けれど、

ロスマン『――伯爵っ!?』

インカムから聞こえてくる声音は焦燥の色に染まっていた。
先生のこんな声を聞くのはいつ以来だったかなと胸裏で零すクルピンスキーは傍に寄ってきた小さな戦友に笑いかける。

260衝撃波 ラル√最終話前編:2013/08/24(土) 05:34:25 ID:BQ30L.Pw0

クルピンスキー「っははは。大丈夫だよ……そんな顔しないで」

弱々しい笑みを零したその瞬間、何かが視界を掠め飛んだ。
空中を引き裂くかのように吹き飛ばされたそいつは速度を落とすことなく大型に向かって肉薄し、速度と飛翔力を維持したまま激突。
衝突対象と命運を共にするまでの数瞬、遥か眼下の地上から吹き飛ばされた物体の正体が少女たちの視線に晒される。
ボディの左右から、杭を連想させる六つの脚部。打ち上げられた物体が歩兵掃討用の蜘蛛型であると気付くと同時に結晶化。

下原『――今のは……』

クルピンスキー「まさか、陸戦型ッ!?」

砲撃によって吹き飛んできたわけではない。仮にそうであるならば、相応の砲声が轟くはず。
しかし蜘蛛型が打ち上げられた際、火器が放つ砲音は何一つ耳には届かなかった。

俺「来たか」

結晶化する寸前の蜘蛛型を見咎めた俺の口元が歪んだ。その眼差しの先にあったもの――それは、黒の装甲に落ちる拳大の窪み。
自分が知る限り、このような馬鹿げた芸当を行えるのは一人しかいない。
蜘蛛型が殴り飛ばされてきた方角に視線を落とした瞬間、下卑た哄笑が彼の耳朶を打った。

続く

261名無しさん:2013/08/24(土) 05:38:19 ID:BQ30L.Pw0
以上で投下終了
後編はオリ要素が強く投下するほどの内容ではないと判断したのでwiki直投となりました
エピローグも時間の都合上、直投となりました
それとエピローグでラル√はとりあえずの終了となりますが最終話後編からエピローグまで一気に話が飛びます
これは単純にエピローグに至る話を一つずつ書いていたら、いつまで経っても終わらず智子√にも入れないためです。イチャイチャは短編で思う存分やるので
あと最後に、

ラル√はb●d endになりましたのであしからず

262名無しさん:2013/08/25(日) 13:28:30 ID:nnhpYMns0
乙乙
最近イチャイチャが足りない気がするので全裸待機

263名無しさん:2013/09/25(水) 22:21:32 ID:HEN2EUdc0
今更新しい俺書きたいとか言ったらどうなる?

264名無しさん:2013/09/25(水) 22:22:54 ID:HEN2EUdc0
sage忘れたすまん

265名無しさん:2013/09/26(木) 02:11:58 ID:qDfLnbOE0
好きにしたらいい
エタらんようにな

俺は完成してから投下することにしてのんびり書いてるよ
未完成で投下し始めたら途中で飽きそうでな

266名無しさん:2013/09/27(金) 01:01:31 ID:6bk7.h6M0
了解。

ちなみに、オールスターみたいに何人か出したい場合はどうしたらいいだろう。
許可を取ろうにも、正直間違いなく返答は返ってこないだろうし。

今のところ
サンダヘ・キャリバー・蒼穹3・魔女槍・花火・喉・よっさん・父と子・俺TUE・ミノムシ・赤鼻
を出したいなと思ってる。

ただ、そのままの俺を出すんじゃなくて、あくまで参考にする感じ(でないとよっさんが出たら作品が終わる)
作中では呼び方も変えるつもり(なんとなくわかるようにはするけど)

何人か「ご自由に」みたく書いてあるけど、書いてない人は諦めるべきだろうか?

267名無しさん:2013/09/27(金) 07:45:30 ID:FFM26Fnc0
オールスターでご自由になら使っていいはず

まあよっさんよりヤバイのがちらほらいるがwww

268名無しさん:2013/09/27(金) 20:48:53 ID:KaWg0rg20
そんな事するくらいなら出さない方がいいな

269名無しさん:2013/09/28(土) 00:12:30 ID:8V9qhFsA0
そんな事するくらいならっていうのはその部分?
出すならそのまま出せよっていう感じ?

出すこと自体やめたほうっていうなら、違う俺を投下しようと思うけど。

270名無しさん:2013/09/28(土) 00:21:15 ID:98k9I7kU0
書きたいように書いたらええんや!
じゃないとモチベーションが続かん
投下さえあるなら何でもいい

271名無しさん:2013/09/28(土) 00:47:33 ID:8V9qhFsA0
書き手のファンとしては、やっぱり壊されたくないイメージとかもあるのかなぁ・・・と

272名無しさん:2013/09/28(土) 01:12:19 ID:zby9mPDc0
出すならそのまま出した方がいい

それに他の作者の作品はお前の部品でもなきゃ客寄せの撒き餌でもないからな?

273名無しさん:2013/09/28(土) 01:20:52 ID:8V9qhFsA0
了解。

ちなみに出すのは、俺が最終戦で英雄集結みたいな展開が好きだからというだけで、客寄せとかに考えていたわけではないです。
まぁ、読んだ人が「これはww」とか思ってくれたらうれしいけど。

そもそも、最初はここで言うつもりもなくて、最後にわかる人にはわかる程度に出すつもりだった。
ただ今の状況から、少しでもかぶってるとパクリってなるかもだから、それなら最初から言っておいたほうがいいかなと思って。

274名無しさん:2013/09/28(土) 03:08:51 ID:MnOqmx2s0
一行書いてもパクリ言い出すやつがいるから被ってる云々は気にしないが吉
最早被らん方がおかしいぐらいに数はある訳だし

275名無しさん:2013/09/29(日) 00:10:43 ID:e/3yg29I0
うーん、とりあえず呼び名を(最初に少ししか出番ないけど)元俺に戻して、それからまた後日ーって感じにします。

もし投下することになったとして、
妄想の塊なので、文章力がアレなのはご勘弁を。

276名無しさん:2013/10/11(金) 21:14:20 ID:77R3J6Kk0
PCの中身が消えて(SSはバックアップあって無事だったが)、修正したSSが修正しなおしになった。
急いで復旧して、近々投下します。

美「これは―――確かに昔よりも魔力が上がっている・・・!」

的な感じになると思うのでよろしくお願いします。

277衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:14:37 ID:db.pfs5g0

「ペテルブルグ基地にですか? 私が?」

朝食を終えるなり司令室に呼び出された智子は執務用チェアに腰掛けるハッキネンから告げられた辞令に首を傾げた。
また随分と急な話だ。年季の入った木造の執務用デスクを隔てた先にある氷の美貌を見つめながら、そう胸裏で零す智子。
昨夜までハッキネンの口からそのような話を一度も耳にしていなかっただけに智子がそう考えるのも無理はない。
彼女の心情を察したのか、レンズ越しに佇むハッキネンの瞳に浮かぶ光がその鋭さを増した。

ハッキネン「えぇ。貴官には暫くの間、ペテルブルグ基地に出向いてもらいます」

智子「理由を訊いても?」

ハッキネン「知っての通り先の戦いで第501統合戦闘航空団がガリアに展開されていた巣の撃滅に成功しました」

その話は智子の耳にも入っていた。
ブリタニアを拠点とする第501統合戦闘航空団。“ストライクウィッチーズ”と称される少女らの奮迅によってガリアの巣は消滅した。
それは人類がネウロイに占領された領土を奪回したと同時に憎き異形どもの活動圏を大幅に縮めたことに他ならない。
いまや連合軍各部隊はこの勢いに乗るべく戦力の再編を急務とし、攻勢作戦の数を増やそうと画策している。
極北に位置するここスオムスのカウハバ基地もまたその一つだ。

ハッキネン「私たち第507統合戦闘航空団は502や503の背後を防衛する役目があります」

小さく、そして得心がいったように智子はハッキネンの言葉に頷く。
つまるところ、自分たち507とペテルブルグを拠点とする502との相互連携を更に深めるため部隊員の誰かを送ることになった。
そこで自分に白羽の矢が立ったのだろう。
おそらくはここ第507統合戦闘航空団がかつて“いらん子中隊”と呼ばれていた時期から部隊長を務めていたからではと結論付ける智子。

278衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:15:18 ID:db.pfs5g0

智子「つまり相互連携を更に深める必要があると?」

ハッキネン「話が早くて助かります」

智子「ですが私は既に上がりを迎えています。仮に飛べたとしても障壁を張る力はもう残っていません」

ハッキネン「戦闘に出る必要はありません。既にあちらには追加の補充要員がいます。貴官は直接現地に赴き、502の戦況を綿密に把握してもらいたいのです」

――尤もその補充要員も既に障壁を展開する力を消失していますが。
後に続いた言葉が気になり、智子は片眉を上げた。
魔力障壁を失っているということは502が有するその補充要員とやらも自分と同じく上がりを迎えているのだろう。
だとすればそのような状態であるにも拘わらず、何故502に留まっているのか。
502は欧州戦線のなかでも随一の激戦区を担当する攻勢部隊であり、魔力障壁を失った者がそう易々とついていける場所ではない。
障壁に頼らずとも卓越した飛行技術で補っているか。
あるいはあらゆるハンデを覆すほどの強力な固有魔法を有しているか。

智子「(強力な固有魔法…………)」

件の補充要員がどんな航空歩兵なのか推測するなかで、自身が挙げた言葉に智子は表情を曇らせた。
脳裏に蘇るのは今まで見てきたなかで群を抜いた強力な固有魔法を有する航空歩兵の存在。
それはかつて同じ部隊に所属していた航空歩兵であった。今も尚胸に秘めた恋慕の念を向ける相手であった。
自分を庇い、敵が放った凶弾を浴びて故郷の海へと落ちて、沈んでいった彼。
伸ばした手は届かず、血に塗れた彼の体躯は海面に叩きつけられ、暗い水底へと吸い込まれていった彼。

279衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:15:55 ID:db.pfs5g0

智子「(おれ……)」

ハッキネン「穴拭中尉?」

智子「あぁ、すみません」

ハッキネン「気が乗りませんか?」

智子「いえ。そういうわけでは……」

ハッキネン「……当初は“彼女”に出向いてもらおうと考えていたのですが」

智子「……あぁ」

やや強調されて告げられた彼女という言葉。その言葉が誰を指しているのかをハッキネンの曇った表情から察した智子は苦味を含んだ笑みを零した。
同時に何故自分が選ばれたのかにも得心がいった。
なるほど、確かに。“彼女”では下手をすれば502の士気に悪影響を及ぼしかねない。
ただでさえ507は周辺のウィッチ隊から色々と噂されているのだ。
その元凶を送り込めばどうなるか。瞬時に理解した智子は大人しく右腕を持ち上げ、敬礼の仕草を取った。

智子「了解しました。穴拭智子、任に就きます」

ハッキネン「ありがとう。既に出発準備は整いつつあります。貴官の準備が整い次第、今日中に出発できます」

280衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:16:39 ID:db.pfs5g0

柔らかな笑みを携えてそう返すハッキネンの表情はどこか晴れやかなものだった。どうやら本当に自分以外に的確な人員が思い浮かばなかったらしい。
もしも自分がこの任務を引き受けなければ誰が派遣されていたのだろうか。
もしも自分がこの任務を引き受けなければ彼女の心労はどうなっていたのだろうか。
そんなことを考えながら、ハッキネンの眼差しを背に浴びる智子は司令室を後にした。
ペテルブルグで自分を待ち構える数奇な運命の存在など露とも知らずに。

「よぉ」

智子「ペテルブルグ行きが決まったわ。早ければ今日にでも出発できるみたい」

司令室を出た矢先のこと。
廊下の壁に背を預け、口元に含んだ煙草の先端から紫煙を燻らすビューリングを捉え、司令室でのやり取りを簡潔に告げる。
智子の言葉に目を丸くしたビューリングは壁から背を離して咥えていた煙草を手に取り、

ビューリング「随分と急だな」

智子「本当よね。でも向かう先が近くて助かったわ」

仮に行き先がアフリカやブリタニアならば長旅を覚悟しなければならなかったし、簡単に引き受けることもなかっただろう。
そういった意味では出向先がペテルブルグなのは素直に喜べた。

ビューリング「ハルカの奴が聞いたら何て言うだろうな」

智子「初めはあの子を向かわせるつもりだったみたいなんだけど」

ビューリング「確かにあいつを行かせたら大変なことになるな。お前が選ばれて良かったよ」

281衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:17:28 ID:db.pfs5g0

廊下に設置された喫煙所の灰皿に咥えていた煙草の先端を擦り付けるビューリングが小さな笑みを口元に浮かべた。
ハルカと呼んだ問題の人物の人となりを熟知しているからこその笑みだろう。

ビューリング「行くんだな?」

智子「もちろん。そういうことだから、ハルカが暴走しないようにお願いね」

ビューリング「…………あぁ。わかったよ」

厄介そうな表情を浮かべて返すビューリング。
その表情から如何に彼女が件の人物に手を焼いているかが伺える。
智子がその人物の手綱を、隣を歩く戦友に託した直後のことだった。

「それってどういうことですかぁぁぁぁぁ」

智子「そのままの意味よ」

背後から伸びてくる悲哀に塗りつぶされた声音に智子は振り向きざまに返す。
目の前に立っていたのは扶桑海軍の白い軍服を身に纏う少女。
愛らしい容貌の持ち主はいま、その澄んだ瞳に涙を浮かべてこちらを見つめていた。
まるで今生の別れとでもいうかのような。まるで飼い主に捨てられた犬のような。
悲しみに満ち溢れた色を瞳に湛える少女こと迫水ハルカの態度に智子は溜息を吐く。

282衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:18:07 ID:db.pfs5g0

ハルカ「それにっ! どうして智子中尉と離れ離れにならなければいけないんですかぁ……ひっく」

智子「どうしてって言われても…………」

そういう指令なんだから仕方ないでしょうという言葉はあえて呑み込む。
こうなったハルカは何を言っても聞く耳を持たないからだ。
だから後に続く言葉もきっと。

ハルカ「私も一緒に連れていってくださいよぉぉぉぉ」

ほら、やっぱり。

智子「駄目よ。あなたは大人しく待ってなさい」

ハルカ「でもっ! でもぉぉぉぉぉ!!!」

智子「あのねぇ」

太ももの辺りに縋り付きぐずる後輩の姿を前に両手を腰に当てる。何やら指が揉むような動きをしているが、この際それは黙っておこう。
予想していた展開だがこうも酷く悲しむとは。先輩として悪い気はしないがいつまでも縋り付かれては出発の準備にすら取り掛かることが出来ない。
どうしたものかと頭を悩ませ、智子は隣のビューリングに目線を送る。
救難信号をキャッチした彼女はしばらくの間端正な美貌をしかめ、智子の白い太ももに縋るハルカを自分の許へと引っ張り出した。

283衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:18:45 ID:db.pfs5g0

ビューリング「ほら、こっちへ来い」

ハルカ「な、慰めてくれるんですか?」

ビューリング「そんなわけあるか。ただお前がいつまでも駄々を捏ねるとトモコが安心して出発できないだろう」

――お前は尊敬する先輩を困らせるのか。
そう後に続けるビューリングの言葉に俯くハルカ。小柄な身体を小刻みに震わせ、顔を上げる。
既に涙は消え去っていたものの幼さが残る可愛らしい顔には不安の色が残っていた。

ハルカ「ちゃんと……帰って来ますよね? そのままペテルブルグに転属、なんてことはありませんよね?」

智子「仕事が終わればちゃんと帰ってくるわよ」

ハルカ「変な男に誑かされたりしませんよね!?」

智子「あるわけないでしょうが……」

ビューリング「こいつに惚れた男がいることぐらいお前も知ってるだろ」

284衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:19:24 ID:db.pfs5g0

智子「……もういないけど。それでも私はあの人のことを愛しているわ。だから他の男に靡くなんてこと……絶対に無い」

ハルカ「うふふ。どこか貞淑な未亡人っぽい……そんな智子中尉もす・て・き!」

智子「はぁ……じゃあ後のことは頼んだわよ」

両手を頬に添え腰をくねらす後輩に背を向け自室へと歩き出す。
早いところ出発の準備をしなくては。せっかく今日中にも発てるよう取り計らってくれたのだから。
そう自身に言い聞かせ歩く速度を速める智子。

ハルカ「あぁん! 智子中尉ぃぃぃぃ」

艶を帯びた後輩の叫び声を耳にしながら。
その後輩を押さえ込もうと悪戦苦闘する戦友の声を聞きながら。
智子は自室への帰路を辿るのだった。

285衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:19:55 ID:db.pfs5g0

智子「他の男、か」

閉めた自室の扉に背を預け誰にとも無く呟く。
五年以上も前に死んだ男に想いを寄せる自分は世間からみればどんな女に映るだろう。
一途或いは未練がましい女か。
尤もどう評価されようが自分が抱くこの感情が揺れ動くことなど万に一つ有り得ない。
物心ついたときから抱き続けているこの恋慕の念をそう簡単に捨てられるわけがない。

智子「ねぇ、俺。私ね? ペテルブルグに行くことになったの」

棚に立てかけられた写真に。写された自分の隣に立つ彼に語りかける。
まるでそこに想いを寄せる彼がいるかのように頬を智子は綻ばせる。

智子「どれくらいかかるか分からないけど……任せられた以上は精一杯こなしたいの」

柔らかな声音で。
まるで自分が胸の裡に秘めていた想いを告げるかのように智子は言葉を紡いでいく。

智子「あなたが命をかけて守ってくれたこの命を無駄にしないためにも、ね」

写真立てに手を伸ばす。
綺麗だ、と彼が褒めてくれた手を。あのとき届かなかった手を。堕ちる彼の手を掴むことができなかった手を。

智子「だから……お願い。少しだけでいいの。私に、力を貸して」

そっと彼の顔に口付けし、写真立てを鞄の中に仕舞い込む。
万が一の時のためにと愛刀、備前長船を手に智子は自室を後にした。
向かう先にて待ち受ける数奇な運命を彼女が知るのはまだ先の話である。

286衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:21:31 ID:db.pfs5g0

デスクの上に広がる書類を前にラルはマグカップに残る珈琲を飲み干し、腕を組む。
象嵌された一対の青い瞳に浮かぶのは珍しく困惑の光。
彼女の目の前にある書類。それは数日ほど前、隣国スオムスのカウハバ基地から送られてきたものだ。
そこには502との相互連携を深めるために507から一人の航空歩兵をペテルブルグに出向させるといった文章が書き記されている。
それだけなら何の問題は無いのだが彼女の瞳に困惑の光を生み落としたのは送られてくる航空歩兵の存在にあった。
カウハバから送られてくる航空歩兵。名は穴拭智子。
扶桑海の巴御前と称され、扶桑陸軍が誇る屈指のエースが一人。
既にあがりを迎えてはいるものの歴戦の戦士の来訪は502の士気への良い刺激になるだろう。
しかし……

ロスマン「……隊長?」

ラル「穴拭中尉の経歴に扶桑皇国陸軍飛行第一戦隊とある」

書類の一箇所を、その細い指の先端で軽く突く。
扶桑陸軍飛行第一戦隊といえば当事の扶桑陸軍の精鋭が集っていた部隊だ。
そのなかでも“扶桑海の電光”と称された加東圭子とは直接顔を会わせ、彼女の取材を受けたこともあった。

ロスマン「その部隊って…………!!」

ラル「あいつが……俺の奴がかつて所属していた部隊だ」

287衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:22:07 ID:db.pfs5g0

ラルの放った一言にロスマンの小柄な体躯が硬直した。彼女もまた俺の経歴が記載された書類に目を通した一人である。
彼が公式記録で戦死者として処理されていることは他ならぬ彼自身の口から聞かされたことだ。
しかし戦死者の烙印を押された彼が今もこうして生きていることを。戦闘脚を装着して空を舞っていることをかつての仲間らは知っているのだろうか。
胸裏に生じた疑問を抑え切れぬままロスマンは口を開く。

ロスマン「俺さんは第一戦隊の方々に何か連絡は」

ラル「取っていない。あいつは自分の生存を誰にも告げていない」

自身を育てた、たった一人の身内にも。
大切な家族と断じたかつての戦友たちにすら。俺は己が生きている事実を今も伏せたままでいる。

ロスマン「では穴拭中尉にとって彼は」

ラル「死人、だろうな」

同じ部隊に所属していたということは彼が撃墜された瞬間を目の当たりにしていた可能性が高い。
或いは彼が撃墜される切欠となった僚機こそが穴拭智子その人なのかもしれない。
無論どちらもラルの推測でしかない。
確かなのは穴拭智子という女にとって俺という男は今日まで死人であり、その認識があと数時間後には崩れ去るということだ。
死んだと思い込んでいた男の生存を知ったとき彼女はどんな態度を見せるのか。精神的なショックを受けなければ良いのだが。

288衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:22:42 ID:db.pfs5g0

ラル「俺はいまどこにいる?」

ロスマン「今なら滑走路の清掃に向かっているかと」

ラル「そう、か……」

ロスマン「穴拭中尉のこと伝えておきましょうか?」

問いかけに黙り込む。
かつての仲間がペテルブルグにやってくる。そう伝えようとラルは何度も声をかけようとした。
しかし、もしも伝えていたら彼はどうしていただろうか。
大切な家族にすら自身の生存を伝えなかった男だ。
彼女の来訪を告げれば、此処へ来る前に姿を消すことも考えられなくは無い。
広範囲と高威力を兼ね揃えた固有魔法を有する彼が出て行けば502の戦力は大幅に低下してしまう。
そうなれば間違いなく今後の反抗作戦に支障が出る。

ラル「(……本当に、それだけなのか?)」

戦力の低下。本当に自分はそれだけを危惧しているのだろうか。
胸中に生じる言い知れぬ不安。ラルは以前にも同じ感覚が胸裏を満たした記憶を思い出す。
それは彼がブリタニアへと向かう前のこと。あのときも、胸の内を薄ら寒いものが渦巻いていたのを思い出す。
何故こんなにも彼が離れることを不安に思うのだろうか。
自身の胸の裡に満ちる不可思議な感情に対する答えを見出せず、ラルは無言で首を横に振った。

289衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:23:18 ID:db.pfs5g0


前触れも無く鼻の先端が痺れる感覚に思わず右手を伸ばす。
まるで何か柔らかいものに。
例えば唇のようなものを軽く当てられたようなむず痒さに俺は伸ばした右手の指先で鼻頭を軽くこする。
そんな俺の姿を真横から見つめるニパが箒を動かす手を止めた。

ニパ「どうしたんだ?」

俺「……何だか急に鼻の先端がむず痒くなった。何だろ」

ニパ「乾燥しているからとか、かな?」

箒の柄を胸元に寄せ、小さく首を傾げる彼女の姿に愛くるしさを覚えつつ俺は痒みが納まった鼻先から指を離した。
今度買出しに出る時は肌に塗るクリームを買う必要があるな。
そう胸裏でぼやく俺に、

ニパ「それで話しの続きなんだけどさ」

ニパが再び箒を握る手を動かす。
箒を握る手と腕の動きに合わせて微かに揺れたわむ彼女の豊かな連山から俺は目を逸らして秋の空を仰ぎ見た。
ラルから清掃員という隠れ蓑の役割を与えられてからどれだけの月日が経過しただろうか。
今日も今日とて灰色の制服を纏い、箒と塵取り片手に滑走路の掃除に出向いた彼を迎えたのが同じように箒を手にしたニパであった。
その彼女の口からカウハバ基地から補充要員がここペテルブルグ基地にやってくるという話を聞かされたのが僅か数分前のことだ。

290衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:23:52 ID:db.pfs5g0

俺「カウハバ基地からの補充要員の話だったな」

ニパ「うん。第507統合戦闘航空団から航空歩兵が一人こっちに来るみたいなんだ」

俺「カウハバとここは近いから人も送りやすいんだろう。それで誰が来るんだ?」

問いかけに対しニパは首を振るだけだった。

ニパ「実は私もまだ知らないんだ。隊長とロスマン曹長が話しているのを偶然耳にしただけだから」

「綺麗な娘、可愛い娘が来てくれると嬉しいな」

俺「よぉ伯爵。またエディータから逃げてきたか?」

突如として背後から会話に入り込んできた声の主に振り向く。
そこにはもうじきここへやって来るであろう件の航空歩兵に想いを馳せ、嬉しそうに頬を緩ませるクルピンスキーの姿があった。
しかしその嬉しげな表情も俺からの一言により一瞬で掻き消えることとなる。

291衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:24:36 ID:db.pfs5g0

クルピンスキー「僕を見かけたら何かやらかしたって思うのはやめて欲しいね」

俺「じゃあ何で後ろからエディータが走ってきてるんだ?」

不機嫌そうに頬を膨らませる長身の少女の後ろを肩越しに眺め、指差しながら一言。

クルピンスキー「嘘ッ!?」

やや意地の悪い笑みを浮かべながら放たれた俺の言葉に慌てて背後へと振り向く。
そこには顔を紅く染めて得物である指示棒の先端を片方の手の平にぴしぴしと叩きつける小柄な女性の姿が、

いなかった。

冷えた風に冷やされた滑走路の上にあるのは隣接した森林から運ばれてきた落ち葉だけ。
その落ち葉もまたすぐに風に飛ばされ視界から外れていく。

クルピンスキー「いないじゃないか!」

俺「はっはっは。すまんすまん」

クルピンスキー「まったく、女を騙すなんて酷い男だなぁ。ニパ君、こういう男とは付き合っちゃ駄目だからね?」

顔をしかめ。俺から守ろうとニパを抱き寄せるプンスキー伯爵。
単に自分を出しに使ってニパの柔らかな肢体を堪能したいだけなのだろうが、ここではあえて言及するのはやめておこう。
毎度彼女の悪癖に注意をしていては気が保たない。それにいくらクルピンスキーとて越えてはならない一線くらいは弁えているだろう。多分。

292衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:25:18 ID:db.pfs5g0

俺「なによ? 麿のどこが悪い男だというの?」

ニパ「まろ?」

クルピンスキー「何だい? その聞き慣れない言葉は」

俺「その昔、扶桑のやんごとなき方々が使っていた一人称さ。可愛い女の子の写真を沢山箱に詰めて送ると喜ぶよ」

クルピンスキー「カールスラント空軍にも自分のことをわらわと呼ぶ航空歩兵がいるけどね。ただ俺がそれを使うと違和感しかないよ」

彼女にしては珍しく、そして恐ろしく真面目な口調と表情を伴った言葉に肩をすくめた。
どうやら「俺、麿化計画」は早くも頓挫してしまったようだ。
やや気落ちしている最中、伯爵が口にした航空歩兵に俺はある少女の存在を思い出す。
彼女が所属する基地で過ごしたのは何年前だったか。
当時の自分は薔薇十字から与えられた最奥術式を習得し、それを基に自分の魔技を編み出している最中だった。
寝る間も惜しんで修練を重ね、ようやく魔技の基礎段階である“顕現”に到達できたのは彼女――ハインリーケに別れを告げる数日前の出来事だ。
たしか最後にこんなやり取りをしていたはず。

293衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:25:48 ID:db.pfs5g0

―――数年前、某前線基地にて

俺『姫様! 姫様ァ!!』

ハインリーケ『何じゃ騒々しい』

俺『一大事でございます!』

ハインリーケ『一体何事じゃ。申してみよ』

俺『今日を持ってこの基地から出て行くことになった。世話になったな』

ハインリーケ『ふむ……それは寂しくなるのぉ――って、はぁ!?』

俺『そんなわけで行くから! じゃ!!』

ハインリーケ『ちょっ! 待て! わらわはそんな話聞いておらんぞ!!』

俺『わーいわーい。新天地、新天地。わーいわーい』

ハインリーケ『こらぁ! 待たぬか! 俺! おれぇぇぇぇぇ!!!』

―――

思い返せば滑走路で待機している輸送機に向かって走り始めたときに彼女が何かを叫んでいたような気がする。
しかし今となっては確認のしようが無い。彼女が今どこで何をしているのかも分からないし、彼女もまた自分がこうしてペテルブルグ基地にいることも知らない。
もしも再び顔を合わせてしまったとき話を聞かずに飛び出したことへの怒りをぶつけられそうだが、心の広い彼女のことだ。
きっと笑って水に流してくれるに違いない。彼女に世話になった分、少しでも多くのネウロイと不穏分子を始末しよう。

294衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:26:27 ID:db.pfs5g0

ニパ「そ、それで! 話に戻るけど!!」

プンスキー伯爵の抱擁を振りほどきながらニパ。

クルピンスキー「噂の航空歩兵のことだね。そのことなら小耳に挟んだよ」

俺「ほぉ?」

クルピンスキー「何でも既に上がりを迎えているらしいよ」

ニパ「え……」

俺「…………それは、戦力になるのか?」

そう呟く俺の言葉も尤もだった。
上がりを迎えたウィッチは魔力障壁を展開する力を失う。なかには飛ぶための魔法力すら喪失する場合もある。
彼のように衝撃波を強引に障壁の形状へと変化させて代用する例外もいる。
しかし固有魔法すら持たぬウィッチは成人を迎えれば障壁展開能力はおろか飛行する力すら失うことが大半だ。
上がりを迎え、障壁を展開する力を失っているであろう航空歩兵が一体何の目的でここペテルブルグを訪れるのだろうか。

クルピンスキー「補充要員っていうけど実際は502の視察だと思う。こっちの戦況を把握して戦略を練るんじゃないかな?」

そんな俺の疑問を見透かしたかのようにクルピンスキーが口を開いた。
要は502の戦況を直接把握することで自分たち507がどう動くべきかを見極め、互いの戦略的連携を深めるつもりなのだろう。

295衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:27:02 ID:db.pfs5g0

俺「そうなると直接前線に出ることはないってことか」

ニパ「じゃあ今までと変わらないのか……」

戦力の増強を期待していたのか肩を落とすニパを尻目に俺は手を顎下に添える。
スオムスから派遣される“上がり”を迎えた航空歩兵。そのスオムスといえば自身の妹分の智子が派遣された北欧諸国の一つである。
もし彼女が無事に生きているのならば今頃は上がりを迎えているはず。あるいは派遣されてくる件の航空歩兵こそが……

俺「いや、まさかな……」

首を振って俺は思考を打ち切った。
仮に智子が他の航空歩兵と同じように上がりを迎えているのならば扶桑に帰国しているはず。
魔力障壁を展開する力を失った状態のまま欧州戦線に留まったところで一体何ができよう。
きっと故郷に戻って自由に暮らしているに違いない。見目麗しい彼女のことだ。案外好いた男を見つけ幸せな家庭でも築いているのではないか。
自身が愛した妹が障壁を失ったまま今も戦場に出ていることを認めたくなかった俺がそう結論付けていると不意に彼の耳朶をクルピンスキーの弾んだ声音が掠めた。

296衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:27:45 ID:db.pfs5g0

クルピンスキー「おっと! 噂をすれば」

ニパ「もう来たんだ……」

二人の声に顔を上げ、視線を巡らせると滑走路に向かって少しずつ高度を下げてくる点のような物体が視界に入った。
おそらくは例の航空歩兵を乗せてスオムスから出発した輸送機だろう。

俺「それじゃ邪魔にならないよう退散しますかね」

帽子のつばを摘むなり深く被る俺。

ニパ「私も別の所に向かうよ」

箒を片手に基地の中庭を目指して歩き始めるニパ。

クルピンスキー「それなら僕はここで噂の航空歩兵を歓迎するとしよう」

二人が別の方向に向かって歩くなかクルピンスキーは両の手を大きく横に広げた。全ては可憐な航空歩兵をこの手で抱きしめるために。
たおやかな繊手を握るために。
相変わらず自身の軸を固持し続ける戦友の後姿に振り向き、俺は素直に感嘆するのだった。

297衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:28:30 ID:db.pfs5g0

ペテルブルグ基地の滑走路に降りた智子を待ち受けていたのはクルピンスキーと名乗るウィッチだった。
長身に優雅さを漂わせる振る舞いから彼女が噂に聞くプンスキー伯爵であると智子は一目見て察した。
そして、どことなく彼女の全身から自身の後輩と似たような気配も感じ取った。
妖艶な流し目を何度か注いでくる彼女に案内され、智子はいまペテルブルグ基地の司令室にて部屋の主と執務用デスクを挟む形で対面している。

ラル「よく来てくれた穴拭中尉。ようこそ、ペテルブルグへ。歓迎しよう」

統合戦闘航空団の司令を務めるだけあり明るい声色のなかに威厳が含んだ声音が司令室に木霊する。
彼女こそがグンドュラ・ラル。
人類第三位の撃墜数を誇り、欧州戦線随一の激戦区を担当する第502統合戦闘航空団の司令を務める女傑である。

智子「カウハバ基地から参りました穴拭智子中尉です」

ラル「噂は聞いているよ。扶桑海の巴御前殿」

智子「もう昔の話です」

――扶桑海の巴御前。
随分と久しぶりにそのような呼び名で呼ばれた気がする。

ラル「なに階級は気にせず自由に話してくれて構わん。気を遣わず何か気がついたことがあれば遠慮なく言って欲しい」

それが我々502と君たち507の相互連携をより深めていくはずだと続けるラルの言葉に智子は肩の力を落とした。
向こうがそう言ってくる以上、気を遣う方が失礼といえよう。

298衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:29:29 ID:db.pfs5g0

智子「気遣い感謝するわ。それなら早速聞きたいことがあるのだけど」

ラル「我々が抱えている補充要員のことかな?」

自分がどういった質問をぶつけてくるのか、あらかじめ予想していたのだろう。
象嵌された青い瞳を瞼で隠すラルの表情が僅かに翳りを見せた。

智子「えぇ。事前に受け取った資料には肝心の補充要員の情報が記載されていなかったわ」

カウハバ基地を発つ際、ハッキネンから事前に手渡された書類の束を足元に置いておいたバッグから取り出し掲げて見せる。
それは502の部隊員の戦績や経歴といった情報が簡単にまとめられていたものだ。
しかしそのなかに502に属している補充要員の情報が記載されたものは含まれていない。
それはつまりカウハバ基地司令のハッキネンでさえ502が抱える補充要員の詳細を把握していなかったということ。

ラル「追加の補充戦力は非公式なんだ」

智子「非公式?」

ラル「ある人が独自に抱えている戦力といった方が正しいな」

智子「……私兵、ということかしら。それで、そのある人って?」

ラル「ガランド少将だ」

299衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:30:04 ID:db.pfs5g0

意外な人物の名前が飛び出したことに智子は目を丸くした。
アドルフィーネ・ガランドといえばカールスラント空軍のウィッチ隊総監ではないか。
彼女の私兵、それはつまり懐刀と称しても何ら差し支えは無いだろう。
そのような人物が何故ここペテルブルグ基地に派遣されたのか。
いや、欧州随一の激戦区を担当する攻勢部隊が第502統合戦闘航空団だ。今後の反攻戦を少しでも有利に進めるために遣したのだろう。
あのガランド少将が認めた航空歩兵とは一体どんな人間なのか。

ラル「聞きたいことはまだあるだろうが、細かい話はまた今度するとしよう。今は用意した部屋に荷物を置いて身体を休めてくれ。時間はたくさんあるのだからな」

智子の疑問を遮るかのようにラルは笑みを浮かべた。
見ていて安心できる柔らかな笑みだ。幾多の困難もその笑みで周囲の人間の精神を安心させることで士気を保ち乗り越えてきたのだろう。
けれども智子には何故か彼女の微笑が、何かを隠すために繕われたものにしか見えなかった。
おそらくはその補充戦力が深く関わっているのだろう。今ここで問いただすことは出来るが彼女の言うとおり時間はまだ残っている。
今はまだ急ぐ必要は無いと判断した智子は素直にラルの提案を受け入れることにした。




ラル「さて、どうしたものか……」

一礼した智子が司令室を去り、一人残されたラルは背もたれに背を預けて天井を仰ぎ見る。
使い慣れた革張りの椅子が立てる微かに軋む音だけが静まり返った司令室のなかを木霊する。
その日の椅子は何故だかいつもより硬く感じ、大して休むことができなかった。

300衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:30:38 ID:db.pfs5g0

カウハバ基地から持ち出してきたバッグを肩にかけ智子は自身に割り当てられた部屋へと歩を進める。
初めは基地職員の案内に従っていたのだが急に仕事が入ったらしく、502のウィッチたちの部屋がある階に続く階段を上り始めたときに何処かへと去ってしまった。
要塞を改修しただけあって複雑に入り組んだ造りとなっているが既に目的地の目の前まで近づいていたこともあり智子は大して気に留めなかった。
肩にかけたバッグをかけなおし智子は階段を上る。そうして目的の階へと足を踏み入れ自分の部屋がある方向へと歩き始めた矢先のことだ。

智子「きゃっ!」

「おっと!」

曲がり角に差しかかった瞬間、軽い衝撃が智子の身体を襲った。突然の事態に足元が乱れ、全身のバランスが崩れる。
衝突した反動で彼女の身体は体勢を整える暇すらないまま後ろへと引っ張られていく。
そしてそのまま硬い床の上へと背中を打ちつける寸前、なだらかな背に手を回され抱き止められた。

301衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:31:18 ID:db.pfs5g0

「すみません。大丈夫ですか?」

智子「いえ、私の方こそ……――っ!?」

自身の背中に回された手の感触に智子は僅かの間瞼を閉じた。
硬くて、温かくて、触れているだけで自分に安らぎを与えてくれる手の平。
遠い昔、今は亡き彼に背中をさすってもらった記憶を反射的に呼び起こすなか智子は自分を抱きとめてくれた男へと顔を上げた瞬間、息を呑んだ。
灰色の制服を身にまとう長身の男性。智子の身体を強張らせたのは彼の風貌にあった。

302衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:31:55 ID:db.pfs5g0

智子「う、そ……」

帽子のつばから覗かせる黒い髪と黒い瞳の容貌。それは驚くほどに彼と瓜二つの外見だった。
もしも彼が生きていればきっとこの男のような姿に成長しているに違いない。
そう智子に確信させるほどに目の前の男は彼女が心の底から恋し、愛した彼に似ていた。
もちろん彼であるはずが、俺であるはずがない。
たとえ遺体が発見されていなくとも全身を銃弾で穿たれ、上空から海面へと落下したのだ。生きているはずがない。

しかし遺体が見つかっていないからこそ智子は胸裏の片隅で微かに彼の生存を信じていた。
それがどれだけありえない妄想なのかは智子とて自覚していた。
けれども、たとえ葬儀が行われようと。たとえ墓石が用意されようと。
自身が恋慕の念を抱いた男が想いを告げるよりも先に逝った事実を智子は簡単に受け入れることができなかった。
その頑なな想いはいま衝動へと姿を変えて、彼女の唇を開いていく。
理性は必死に静止の叫び声を上げている。彼は俺じゃない、妙な真似は起こすなと。
それでも胸の裡の片隅に残る、彼がまだ生きているという望みがいまの智子を突き動かしていた。

智子「お、れ……? おれ、なの……? あなたなの……?」

303衝撃波 智子√第10話:2013/11/03(日) 06:32:31 ID:db.pfs5g0

自分とぶつかり後ろへと倒れる女性を抱きとめた俺は目を見開いた。
帽子のつばでよく前が見えていなかったが、この女性よく見れば扶桑皇国陸軍の軍服を身に纏っているではないか。
それだけではない。
その優美な黒の長髪も。雪のように白い肌も。黒真珠のような双眸も。大和撫子という言葉を体現するかのような美貌も。
どれも間違いなく見覚えがある。忘れるはずがない。自身の妹の顔を見間違えるはずが無い。

俺「おまえ……智子、か!?」

304名無しさん:2013/11/03(日) 06:33:59 ID:db.pfs5g0

以上で投下は終了となります

読んでくださった方、ありがとうございました

305名無しさん:2013/11/03(日) 13:23:32 ID:WEz.t7yQ0
おつー

306名無しさん:2013/11/03(日) 17:10:06 ID:JlWp45sk0
おっつおつ

307名無しさん:2013/11/06(水) 14:42:38 ID:g4.OYvOU0
この妹がなぁ……

308名無しさん:2013/11/14(木) 23:33:41 ID:P6PwrKNA0

俺「おっ、戸棚開いてんじゃん」

ジョゼ「俺、さん? こんな夜中に何をしているんですか?」

俺「ん? そういうジョゼこそ。こんな夜更けに台所に忍び込んでくるなんて」

ジョゼ「わ、私は……その」

俺「…………夜食でも食べに来たのか?」

ジョゼ「はう!? ど、どうして分かるんですか?」

俺「同類の匂いは良く分かるのさ。かく言う俺も小腹が空いてな」

ジョゼ「そうだったんですか……」

俺「お腹空いてると寝ようと思っても寝れないよな」

ジョゼ「は、はい。だから、何か軽いものでも良いからお腹に入れようと思って」

俺「それなら今から軽食作るんだけど良かったら一緒に食べないか」

309名無しさん:2013/11/14(木) 23:34:16 ID:P6PwrKNA0

ジョゼ「それは構わないんですけど何を作るんですか?」

俺「今日はハニートーストを作ろうと思う」

ジョゼ「ハニートーストですか!?」

俺「はっはっは。食いついてきたな。やっぱり女の子は甘いものが好きなんだな」

ジョゼ「はっ……こほん。お願いします」

俺「それじゃ早速作り始めるぞ。今回は八枚切りを使う」

ジョゼ「どうして八枚切りなんですか?」

俺「寝る前に軽くお腹のなかに入れるんなら分厚いのよりも薄いほうが良いだろう。それに軽食なら尚更薄い方が食べやすいじゃないか」

ジョゼ「たしかに……この時間帯であんまり大きいのは」

俺「勿論好みも人それぞれだから自分が食べやすいものを使うのが一番だな」

「それじゃまずは食パンを二枚取り出して、トースターに入れて焼く」

ジョゼ「焼き加減はどうするんですか?」

俺「トーストはカリカリっとした方が好きなんだよ……。中途半端に火が通っているのは好きじゃないんだよ……」

310名無しさん:2013/11/14(木) 23:35:34 ID:P6PwrKNA0

ジョゼ「その気持ちは分かります」

俺「これも自分好みで良いんだよ。食べたいものを食べたいように食べるのが一番なんだよ……」

ジョゼ「結構大雑把なんですね」

俺「所詮は夜食ですから。ちなみに今使っているオーブントースターは一度ダイヤルを5の所に回した後少し戻すやり方がトーストを作るのに適しているんだ」

ジョゼ「あまり参考になりませんね」

俺「……なんだか少しずつ言葉に冷たさが混じっているんだけど」

ジョゼ「ご、ごめんなさい。お腹が空いて……つい」 トースター<チーン

俺「焼けた焼けた。ジョゼ、冷蔵庫からバターを取り出してくれ」

ジョゼ「マーガリンじゃなくて良いんですか?」

俺「少し位なら使ってもばれないさ」

ジョゼ「そ、そうですよね。バター……えへへ」

俺「焼きあがった食パンにバターを塗ってくぞー」 ヌリヌリ

311名無しさん:2013/11/14(木) 23:36:13 ID:P6PwrKNA0

ジョゼ「トーストの熱であっという間にバターが溶けていって……この香りがまた」

俺「あぁ〜たまらねぇぜ」

ジョゼ「俺さん! 蜂蜜! 早く蜂蜜をください!!」

俺「はっはっは。落ち着きたまえよ。ほら、ちゃんとここにあるから」

ジョゼ「ほっ。今度は大丈夫みたいですね」

俺「あぁ……今度は大丈夫だな。まさか」

ジョゼ「まさか」

「「蜂蜜が固まるとは思わなかった(思いませんでした)」」

ジョゼ「あんなこともあるんですね……」

俺「あぁ。思えば蜂蜜ってあまり使わないよな」

ジョゼ「ヨーグルトに入れたりホットケーキにかけたりはしますけど。そう頻繁に使いませんよね」

312名無しさん:2013/11/14(木) 23:36:43 ID:P6PwrKNA0

俺「前にホットケーキにかけようと思って蜂蜜が固まっていた時のジョゼの表情は今でも覚えているよ」

ジョゼ「だ、だって! せっかく焼きあがったのに肝心の蜂蜜があんなことになっていたなんて……思いもしなくて」

俺「やはり100円ショップの蜂蜜は早く使ったほうが良いということがこれで分かったな」

ジョゼ「はい……」

俺「それじゃ蜂蜜を塗るぞー」

ジョゼ「おー」

俺「……今日のジョゼはやけにノリがいいね。夜中だから?」

313名無しさん:2013/11/14(木) 23:37:29 ID:P6PwrKNA0

ジョゼ「た、たぶん?」

   「あれ? 俺さんは真ん中に垂らすだけですか」

俺「初めはバターが染み込んだ部分を楽しみたいんだよ。あの少しの塩気が好きなんだ」

ジョゼ「それなら……私も」 ハチミツタラー

俺「よっし!」

ジョゼ「それでは!」


「「いただきまーす!!」」


ジョゼ「はむっ……俺さんの気持ちが良く分かりました。確かに溶けたバターが染み込んでいて美味しいですっ。八枚切りをカリカリまで焼いたおかげでサクサクしています!」

俺「八枚切りは薄いし、その分中のもっちり感も六枚切りとかと比べて控えめだけどこうして夜食として食べる分には丁度良いんだな」

ジョゼ「はむっ……はむっ」

俺「うおォん」

314名無しさん:2013/11/14(木) 23:39:35 ID:P6PwrKNA0
ジョゼ「それでは……いよいよ蜂蜜の部分を」

   「ん〜!! 蜂蜜とバターの風味が良い具合に絡み合っていますね!!」

俺「今日のジョゼはやけに興奮しているね。夜中だから?」

ジョゼ「は、すみません。つい……」

俺「気に入ってもらえた様で嬉しいよ。はい、牛乳」

ジョゼ「ありがとうございます。んっ……んくっ……ぷはぁ」

俺「あぁ……食べた食べた」

ジョゼ「何だかいけないことしているみたいです」

俺「この背徳感もまた夜食の醍醐味だな」

ジョゼ「ふふっ。本当にその通りですね。それでは」


「「ごちそうさまでした!!」」

315名無しさん:2013/11/14(木) 23:40:23 ID:P6PwrKNA0

俺「ちゃんとお皿は洗っておこう」 ザー

ジョゼ「証拠隠滅、ですね」 カチャカチャ

俺「その通り」 ジャブジャブ……キュッキュッ

ジョゼ「お皿!」

俺「良し! 蜂蜜と牛乳!」

ジョゼ「元通りです!」

俺「なんだ完璧じゃないか」

ジョゼ「では」


「「おやすみなさい」」



おしまい


俺「おっと! 歯を磨くのを忘れちゃ駄目だぞ」

ジョゼ「虫歯になったら怖いですしね」

316名無しさん:2013/11/14(木) 23:41:30 ID:P6PwrKNA0
投下終了お腹が空いた

317名無しさん:2013/11/15(金) 00:28:55 ID:xOpX8aMM0


ジョゼちゃんの辞書にはダイエットって言葉は無いんだろうなー

上がり迎えるまでは

327名無しさん:2013/12/02(月) 20:41:21 ID:Tnkr.Aw20
21時に投下します。
駄文ですがよろしくお願いします。

328名無しさん:2013/12/02(月) 21:01:55 ID:Tnkr.Aw20
「連合軍の一部がまたウィッチの代わりのなにか作っているみたいですね」

「また?ハッ、懲りてねぇな……。
マロニーのときにどうなるかぐらいわかっただろうが」

「アレはマロニー大将の独断だったらしいけど。
でも本当に懲りて無いよ。なにせウォーロックの時の技術の改良版らしいし」

「ってことはあれか、また501が尻拭いでもするの?
確か迎撃任務についてたと思ったけど」

「トラヤヌス失敗の原因か。
あの硬さを始末するのは結構骨が折れるよね」

「皇帝陛下でも呼べば?」

「呼んで気軽に来るような人じゃないでしょ。
頼まれてくれるのはせいぜい大将くらいかな?」

「俺がわざわざ抹消した記録の再現をすると思うか?
そうやら俺の能力の理論についてじっくり講義を受けたいらしいな?」

「冗談です。隠し事を蒸し返されるのは、自分がされてもいやだし」

335327:2013/12/02(月) 21:07:32 ID:Tnkr.Aw20
名前入れ忘れました。328も327の者です。というか反応早ぇー…

「おい。いい加減本題に移るべきだろうが」

「そですね。さーせん。
じゃあ本題どーぞ」

「……まぁいいか。単刀直入に言おう。

サーズの発生が懸念されている」

「……ぇ、え?
嘘だよね?」

「まさか…と思いたいところだけど、確かにここ最近のネウロイの動きは……おかしいだろうな」

「サーズが発生したなら出し惜しみなど論外。陛下を呼ぶことも考慮に入れなければならない。
もしも残存ネウロイ、最悪、セカンと接触したら、我々も裏方ではいられなくなる」

「ならどうする。セカンを巣ごと駆逐するか?
正直、それをしたって大規模の戦闘を行うんだ。俺達の存在は公表されるぞ」

「そうだ。
連合軍にとって、ネウロイのコアを利用した兵器の実験には、セカンの巣は絶好の獲物だ。
そのなかで俺達が動けば、能無し共も黙ってはいないだろう。
こちらとしても本意ではない。あの時は例外だっただけだ」

339327:2013/12/02(月) 21:09:53 ID:Tnkr.Aw20
「そうは言ったところで、どうするんだ。
サーズが現れるまで作戦練ってるしかないぞ」

「俺達は、な。
今回、『任期満了。転属求ム』との連絡を受けた」

「……『任期満了』?いやな予感しかしないんだが」

「おいおいおいおい。どちらにしたって表舞台に出ることになるぞ」

「いや、今回は都合がいい。
今回打診してきたのは、リベリオンの『ヴァンパイア』だ」

「ハッハー!!
やっぱり出たか!我が国が誇る魔女喰らい!」

「あー……あいつかー……」

「彼なら、連合軍の目論見が失敗したときも対応でき、こちらがサーズの巣に人員を割いても、セカンとの接触を防ぐ防衛線になりえる。
活動そのものも、ストライクウィッチーズの活躍に隠れることもできる」

「まぁ、それはそうですね。
配属したいなら別にいいんじゃないですか?」

341327:2013/12/02(月) 21:11:01 ID:Tnkr.Aw20
「いちいち全員の意見なんて聞かなくていいんだよ。
ストライクウィッチーズに『ヴァンパイア』の派遣がイヤな人挙手ー。
はい全員ですねわかります。彼の能力はとてもうらやまけしからんですねー。彼自身にはつらいでしょうけど」

「全員手を挙げていない上に、話がずれているではないか。
ストライクウィッチーズに『ヴァンパイア』の派遣に異論のあるものは述べろ。
―――いないな。では、『ヴァンパイア』を配属させることとする。

我々は、それぞれ引き続き各所防衛をしながら、サーズ殲滅のため、万全の体制を整えておくこと。
それと、鋼の。陛下に協力要請だけでいいから伝えてもらいたい」

「……なぜ俺なんですか?」

「感だ。できるか?」

「……わかりました。最善は尽くしてみます」

「感謝する。
各隊の決定は、各員に通達を送って検討する。いいな?

それでは諸君」



「我らがヴァンパイアと」
「人類の希望、誇り高き伝説の魔女たち、ストライクウィッチーズに」

「月と牙のご加護を」

343327:2013/12/02(月) 21:11:35 ID:Tnkr.Aw20
本日、眩いほどの晴れ。

わずかに開かれた窓から、カーテンを揺らして運ばれてきた木漏れ日の香りが心地良かったのは、つい数秒前の出来事。






『連合軍総司令部より通達。
アドリア海を北上する新型ネウロイを迎撃、撃滅する任に就く
第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズに新たにウィッチを派遣する。

リベリオン合衆国特殊戦闘航空軍特別戦闘飛行群第2飛行隊

俺 中佐

上記のウィッチを派遣する。
引き続き、新型ネウロイを撃滅せよ。

配属についての詳細は、後日改めて通達する。


なお、派遣するにあたり、該当ウィッチの情報公開を許可する。
特殊戦闘統合軍特別戦闘機関 認』

345327:2013/12/02(月) 21:12:14 ID:Tnkr.Aw20
山積みとなった書類を手際よく片付けていき、その書類を手に取ったとき見えた未だ艶のある執務机本来の色に、ようやく一息入れることができると心の中で小さく溜息をついたミーナだが、その内容をどうしても信じることができずに3回もの見直しをした。

突然ウィッチが派遣されてくることや、自身と同じ階級であることにではない。

ミーナ「…嘘、でも、え?
こ、これってまさか……」

ようやく振り絞った自分の声で現実を認識し、勢いよく立ち上がり、扉へと駆け出す。

―――その際、脛を机に強打し、想定外のダメージに半泣きになりながら誰にも知られることなく数秒ほど悶絶したどことなく萌える司令は、手に持った書類の感触を思い出して執務室を飛び出した。

349327:2013/12/02(月) 21:13:59 ID:Tnkr.Aw20
前から思ってた。とりあえずバルクホルンとペリーヌを出してやってくれ。

ミ「美緒!トゥルーデ!
ちょうどいいところにいたわ」

すっかり飛行技術に鈍りの見える三人の訓練を終えた二人が溜息をつきながら廊下を歩いていると、探す手間が省けたと言わんばかりにミーナが息を切らせて走ってきた。

美緒「どうしたミーナ。急ぎか?」

バルクホルン「緊急だから走ってきたんでしょう少佐……。
だが、ミーナが基地内でここまであわてるのも珍しいな。
……まさか、ネウロイか!?」

慌てて走ってきたミーナを見た美緒の、どこか抜けたようなコメントにやや呆れた声色で答えたバルクホルン。
だが、隊の司令塔であるミーナの様子から敵襲なのかと感じた瞬間に、その表情は一人の軍人のものとなる。

ミ「い、いいえ。勘違いさせてごめんなさいトゥルーデ、そうじゃないの。
ただ……これを見て欲しいのよ」

長い石造りの廊下を走っている際に強く握りしめていたせいか、一部がほんの少しだけしわになってしまった書類を渡すと、それを美緒が受け取り二人で覗き込む。

記されたものをたどって、視線が上から下へ。

二人して眉をひそめて、1度目より時間をかけて、もう1度上に戻り、下へ。

どこか居心地悪げに眉を寄せるミーナの目の前で、バルクホルンが美緒から書類をもぎ取るように奪い取ると、食い入るように見つめた。

353327:2013/12/02(月) 21:15:37 ID:Tnkr.Aw20
バ「リ、リベリオンの、と、特殊戦闘統合軍特別戦闘機関!?」

美「トクトク機関か……都市伝説の幽霊機関が実在したとはな……」

ミ「ただの出鱈目と疑いたいところだけど……」

困ったような悩んでいるようなミーナの声に、先ほどとは違って美緒が書類を覗き込む形で、書類の下部へと視線を向ける。

美「―――この署名か」

美緒が溜息とともに声を漏らす。

書類の下部には間違いなく、ブリタニア首相チャーチルのほか、計四名の大将の名、果てには、ロマーニャの第一公女の名までが記されている。

美「しかしリベリオンの第2飛行隊か。
扶桑の第2飛行隊は確か―――」

ミ「美緒!」
バ「少佐!」

美「……っとすまない」

二人に、静まり返った廊下に響き渡るような声で遮られ、美緒が思い出したかのように口を止めた。

美「そういえば国のトクトク機関の特徴は口外厳禁だったな。
何せ一種の伝説のようなものだからな、すっかり忘れていた。はっはっはっはっは!」

悪びれる様子もなくあっけらかんと笑う美緒に二人で溜息をつきながら、しかし溜息をついたところで悩み事は尽きず。

358327:2013/12/02(月) 21:17:37 ID:Tnkr.Aw20
今度はミーナも覗き込むように、再び書類に目を落とした。

バ「しかしどうするか……。
俺中佐と書かれていても、何の情報もわからないぞ」

ミ「そうね……あの機関である以上、男性なのは間違いないと思うのだけれど。
それ以外がまったく分からないわね」

美「聞けばいいじゃないか」

さも当然のような美緒の言葉に、頭上に疑問符を浮かべながら美緒へと視線を向ける二人。

美「そこに書いてあるじゃないか。
『該当ウィッチの情報公開を許可する』と。
リベリオン出身ならここにもいるだろう?」

ミ「シャーリーさんね。
確かに何も知らないよりかはマシになりそうだけれど……」

美「なに、いつまでも分からないことで時間を費やすよりも、まずは行動あるのみだ。
早速シャーリーに聞きに行ってみようじゃないか」

359327:2013/12/02(月) 21:17:55 ID:31iS2.GM0
名前入れ忘れました。328も327の者です。というか反応早ぇー…

「おい。いい加減本題に移るべきだろうが」

「そですね。さーせん。
じゃあ本題どーぞ」

「……まぁいいか。単刀直入に言おう。

サーズの発生が懸念されている」

「……ぇ、え?
嘘だよね?」

「まさか…と思いたいところだけど、確かにここ最近のネウロイの動きは……おかしいだろうな」

「サーズが発生したなら出し惜しみなど論外。陛下を呼ぶことも考慮に入れなければならない。
もしも残存ネウロイ、最悪、セカンと接触したら、我々も裏方ではいられなくなる」

「ならどうする。セカンを巣ごと駆逐するか?
正直、それをしたって大規模の戦闘を行うんだ。俺達の存在は公表されるぞ」

「そうだ。
連合軍にとって、ネウロイのコアを利用した兵器の実験には、セカンの巣は絶好の獲物だ。
そのなかで俺達が動けば、能無し共も黙ってはいないだろう。
こちらとしても本意ではない。あの時は例外だっただけだ」

362327:2013/12/02(月) 21:19:43 ID:Tnkr.Aw20
シャーリー「SP機関!?
一種の伝説か何かかと思ってたけど。
そっかー。ここにくるってことは実在するってことなんだな」

機械油の独特の臭いが漂う格納庫で、ユニットをいじっていたシャーリーを見つけて書類を渡して事情を説明すると、やはり同じような反応が返ってくる。

ミ「ええ……それで、配属が決定されてしまっている以上、やはり少しでも情報が欲しいのだけど……」

シ「うーん……といっても、アタシもそこまで知っているわけじゃなぁ……」

首にかかったタオルで汗を拭きながら、困ったように小さく笑いながら視線をそらすシャーリーだが、美緒の「構わん」の一言でようやく話し始める。

シ「―――リベリオンの第2トクトク機関は、通称・吸血鬼(ヴァンパイア)だよ。
確か、中距離から白兵戦までの戦闘スタイルだったかなぁ……」

バ「白兵戦?ネウロイ相手にか?」

シ「少佐の刀と同じようなものだよ。
あっちの場合は殴りかかるようなものらしいけどさ」

美「ほぅ……なかなか度胸がある奴と見えるな」

ミ(『変わり者』の間違い、じゃないかしら……)
バ(『変わり者』の間違いじゃ……ハッ……そういえば私も……)
シ(『変わり者』の間違い、だと思うけどなぁ……)

3人とも途中までまったく同じことを考え、1人銃器を鈍器代わりに殴りかかったことを思い出す。

365327:2013/12/02(月) 21:20:24 ID:Tnkr.Aw20
シ「あとは、別のウィッチと組んでいる……とか」

バ「別のウィッチと?SP機関が?」

バルクホルンが信じられないように声を上げる。

幽霊機関とも言われる存在すら怪しかったトクトク機関が、通常のウィッチと行動を共にするとは思えなかった。

シ「固有魔法が集団向けだとか…そんなことを聞いたことがあるなぁ。
たぶん、リベリオンで他のウィッチと組んでいたのはこのヴァンパイアくらい……だと思う」

「他の国は分からないけどさ」と付け加えたシャーリーに、他の三人も考え込む。が、まったく思い当たりはしなかった。

そもそも、自分の国であろうと、噂話以上にこの機関の情報を調べたりしない。

美「しかし、よくこんな空想のような部隊を知っているな」

バルクホルン、ミーナも少しだけ思っていたことを美緒が何気なく呟くと、シャーリーが「その言葉を待ってました!」とばかりに表情を輝かせた。

シ「それはそうさ!
第2の伝説といえば、なんて言ったってそのスピード!」

その一言に、三者とも納得のいった風に頷いた。

367327:2013/12/02(月) 21:21:01 ID:dXSckpdY0
バ「リ、リベリオンの、と、特殊戦闘統合軍特別戦闘機関!?」

美「トクトク機関か……都市伝説の幽霊機関が実在したとはな……」

ミ「ただの出鱈目と疑いたいところだけど……」

困ったような悩んでいるようなミーナの声に、先ほどとは違って美緒が書類を覗き込む形で、書類の下部へと視線を向ける。

美「―――この署名か」

美緒が溜息とともに声を漏らす。

書類の下部には間違いなく、ブリタニア首相チャーチルのほか、計四名の大将の名、果てには、ロマーニャの第一公女の名までが記されている。

美「しかしリベリオンの第2飛行隊か。
扶桑の第2飛行隊は確か―――」

ミ「美緒!」
バ「少佐!」

美「……っとすまない」

二人に、静まり返った廊下に響き渡るような声で遮られ、美緒が思い出したかのように口を止めた。

美「そういえば国のトクトク機関の特徴は口外厳禁だったな。
何せ一種の伝説のようなものだからな、すっかり忘れていた。はっはっはっはっは!」

悪びれる様子もなくあっけらかんと笑う美緒に二人で溜息をつきながら、しかし溜息をついたところで悩み事は尽きず。

369327:2013/12/02(月) 21:21:39 ID:Tnkr.Aw20
扶桑のトクトク機関も、カールスラントのトクトク機関も、リベリオンのトクトク機関も、国の名前が違うだけで、実際は一つの機関だ。

国によって所属しているウィッチは違うものの、いくつか共通しているものの中で最も分かりやすいのが『各隊の特徴』である。

例えば、第2トクトク機関であれば、シャーリーの言ったとおり『速さ』に特徴があることが共通しており、たとえどの国であろうとも、第2であれば『速いウィッチ』もしくは『瞬間的速度を出すウィッチ』であるのは確実といえる。

曰く、光速で動くとか。曰く、早すぎて分裂するとか。

―――ただ、それも全て『噂話』の域を出ず、存在すら怪しい機関のことなど覚えている方が稀である。

シ「少佐の言うとおり、空想のような部隊であることは分かっていたんだけどさ。
やっぱり気になったから調べたことがあるんだ。まさか今になってその人物がここに来るとは思ってなかったなぁ」

と、そこまで言ったところで、シャーリーの表情が一変して翳りが指す。

その表情の変化をいち早く察したミーナが首をかしげた。

ミ「……どうしたのシャーリーさん」

シ「あ、いや……さっきまでのは結構信頼できる情報っていうか、割と簡単に分かることなんだ。
ただ、ここからはちょっと信憑性はあまりないっていうかさ。本当に噂みたいなものなんだけど……」

言いよどむシャーリーに三人とも黙って先を促した。

372327:2013/12/02(月) 21:22:40 ID:Tnkr.Aw20
シ「その俺中佐なんだけどさ……一部だと女誑しとか魔女喰いとか言われてるんだ。
だから、なんていうかさ……」

気まずそうに頬をかいて視線を逸らし、それ以降言葉を発することのないシャーリー。

人のいない格納庫が無音に包まれる。。

外から流れてきた風が全員の肌を撫ぜていくが、この空気ごと換気するには弱く、余計に格納庫が静まり返る様に錯覚する。

ただでさえ得体の知れない機関からの増員だというのに、ウィッチにとって悪影響としか思えない通り名がつけられた人物。

噂とは言えど、不信感が募る。

375327:2013/12/02(月) 21:23:28 ID:Tnkr.Aw20
なんともいえない空気が漂ってしまった格納庫の沈黙を、最初に破ったのは美緒だった。

美「―――所詮噂は噂。しかし、火の無い所に煙は立たぬとも言う。
……一応、警戒はしておくべき……だろうな」

瞑想しているかのように軽く閉じられていた瞳をゆっくりと開き、先ほどまでとは違い、覚悟を決めたとも感じられる雰囲気で言葉を発した。

ミ「そうね。
少なくとも、私たちにとっては初の男性ウィッチ。
みんなにも注意を促すべきかしらね」

美緒の口から発せられた流れに乗る様にミーナが口を開くと、バルクホルンが続く。

バ「万が一を考えて、実力行使も考えておこう」

ミ「実力行使といっても、貴女の場合は加減を考え―――」

ミーナが苦笑を浮かべながらバルクホルンへと視線を向けた、その時。

基地内に警報が鳴り響いた。

384327:2013/12/02(月) 21:28:50 ID:Tnkr.Aw20
とりあえず今日はこの辺で。
これ以上はキリのいいところが見当たらないので。
まだ俺が一言も出てませんが、次にすぐ出てきます。

ちなみにSP機関とトクトク機関は同一です。
扶桑ではトクトク機関で定着していて、ほかではSP機関で定着しているということで。

自分とコピペさん以外いたかどうか知りませんが、見てくださってありがとうございます。

とりあえず、今後はペリーヌとバルクホルンを是非。

391名無しさん:2013/12/02(月) 21:34:01 ID:ohFQw43g0
>>384


まーきにすんな

394327:2013/12/02(月) 21:41:44 ID:Tnkr.Aw20
>>391
この読みにくい駄文を読んだ猛者に非常に感謝。
まさか乙とか言われる日が来るとは・・・

403名無しさん:2013/12/02(月) 21:56:58 ID:ohFQw43g0
>>394
IDポップアップでみれるしな

408名無しさん:2013/12/03(火) 00:38:30 ID:ZOjivdJY0
おつおつ
IDポップアップまじ便利

409名無しさん:2013/12/11(水) 00:40:46 ID:uvNl.nSM0
乙乙

410名無しさん:2014/09/22(月) 18:35:46 ID:DHu9CWtw0
気分転換伯爵劇場

ナオちゃん「・・・おい」

伯爵「なんだいナオちゃん」

ナオちゃん「おまえも」

俺「なんでしょうか」

ナオちゃん「お前ら、オレの部屋で何してんだ」

伯爵「いやー、ちょっと怖い熊さんに追われててね」

俺「いやー、ちょっと怖い伯爵に捕まっちゃって」

伯爵「むっ、怖いとは心外だなあ。これでも熊さんに襲われてドキドキしてる可憐な乙女なんだよ?」

俺「多分可憐な乙女にゃ、大の男の首根っこひっつかんで引きずるような力ないと思うんですよ俺」

伯爵「酷い言い草だなあ、まるで私がナオちゃんみたいじゃないか」

ナオちゃん「よし、わかった出てけ」

伯爵「ごめんなさい」 俺「いや、なんでか知らないんですが、俺までお説教の対象になっちゃってるんでお願いしますナオちゃん匿って」

ナオちゃん「・・・ったく、何やったんだよ」

伯爵「特になにも 俺・ナオちゃん「うそだ」  あちゃー」

411名無しさん:2014/09/22(月) 18:39:01 ID:DHu9CWtw0
伯爵「カクカクシカジカ マルマルウマウマ」

俺「なるほどー、つまり今伯爵がはいてるのは」

ナオちゃん「サーシャのズボンなのかー そーなのかーって馬鹿!」

伯爵「間違えちゃってテヘペロ」

俺「そんな可愛く言っても許されませんよ!」

伯爵「え、今可愛いって ナオちゃん「伯爵おまえ、そこまでやるとちょっと変態だぞ」

俺「そうですよ、ニパさんのならともかく、熊さんのはギリギリアウトでしょう」

ナオちゃん「えっ  伯爵「いや、そうはいってもだね 私のズボンがどこかに行っちゃったんだから仕方ないと思うんだ」

俺「どこかの誰かさんの所で脱ぎっぱなしなんじゃないですか?」

伯爵「うーん…俺君のところにはないよね?」

俺「えっと、多分無いと思います」

伯爵「じゃあナオちゃんの所にあるかも」ゴソガサ

俺「菅野さん、もう少し部屋綺麗にしたほうがいいですよ」

ナオちゃん「おいちょっとまて、どういう流れだこれ」

俺「お、ゼンダ城の虜じゃないですか。菅野さん以外とロマンチック  ナオちゃん「サーシャアァァアァ! ここだああ! はやくきてくれええええ!!」

412名無しさん:2014/09/22(月) 18:42:13 ID:DHu9CWtw0
ラル「ふむ・・・つまりクルピンスキーのズボンが行方不明だと」

先生「まったく…なにをやってるんですか」

下原「えっと、それで大尉は…」

ジョゼ「伯爵からズボンひったくって洗濯しに行きました」

伯爵「ちょっと扱いが酷い気がするんだけど」

俺「いや、多分自業自得ですよ」

ニパ「想像してみなよ伯爵 仮に俺が伯爵の立場だとしたら…」

ナオちゃん「うわぁ…」

俺「えっ、ちょ、なにこの流れは」

先生「まあ、それも自業自得です。ともかくズボンが行方不明だなんて、一体どういう事なのかしら」

ジョゼ「お洗濯したときは、伯爵のもあったはずなんですけど…」

下原「私も手伝いましたけど、取り入れた後にちゃんと中尉のお部屋に運びましたよ」

ラル「んー… なあクルピンスキー、おまえ心当たりは… っておい、なんでお前鼻血だしてるんだ」

伯爵「ん?え、あ、いや、あはは なんでもないよ 気にしないで続けて?」

ニパ「わわっ、ちょっと大丈夫?ジョゼ診てあげてよ」

413名無しさん:2014/09/22(月) 18:45:21 ID:DHu9CWtw0
ナオちゃん「ってうぉい! 俺も鼻血だしてるじゃないかよ!」

俺「え、ああ、いやそのニパさんに罵倒されたって思ったら何でか知らないけど出ちゃいましたテヘペロ」

先生「もうやだこの変態夫婦」

伯爵「おっと、貧血になりそうだからそれ以上刺激的な事は言わないでエディータ」

先生「あなた、私いま友達のよしみを最大限に使って発言してるんだから、ほんとしっかりしてよね…」

俺「おおおれと伯爵がふふふふふ夫婦とかめおととかなになななに何いっちゃってんですか子供せんせーったらもー」ドバドバ

ジョゼ「俺さんの首から下が真っ赤に…っ!」

ラル「とりあえずジョゼ、治癒魔法頼むな 下原も青い顔してないでご飯でも作ってやって」

伯爵「お、おお俺君もいやだなあな、ななにを童貞、じゃなくて動揺して」ドバドバ

ジョゼ「めでぃーっく!」

ニパ「いや、君だよジョゼ・・・」

414名無しさん:2014/09/22(月) 18:48:35 ID:DHu9CWtw0
先生「落ち着いた?」

伯爵「うん ごめん。みっともない所見せちゃったね」

先生「まあ、もう慣れたわ」

ラル「ジョゼに後で礼をいっておけよ?腹の虫がオーケストラ奏でてたからな」

伯爵「うん…まったく、ボクらしくないところをお見せして、恥ずかしいやら悲しいやらだよ」

ニパ「まぁ…事が事だから動揺してたって事でいいんじゃないかな?」

ナオちゃん「そういやごたごたで忘れてたが、結局伯爵のズボンはどこにいったんだろうな」

先生「まさか、ズボン盗難事件なんて起こるとは思わなかったわね…風紀、乱れてるなぁ…」

ラル「そう気を落とすなエディータ とりあえず全員で掃除がてら探してみようじゃないか」

伯爵「うーん…心当たりはないんだよね ボクはただズボンがなかったから、まだ寝てるサーシャの部屋に忍び込んで承諾を取って貸してもらったんだけど」

ニパ「寝てるのにどうやって承諾とったの」

伯爵「借りるよ熊さん って耳元で囁いたら、可愛く う〜ん って」

先生「それ、うなされたんじゃ  って、ちょっと待ちなさい あなた予備のズボンはどうしたのよ」

伯爵「もちろんあるよ!でも予備も一緒になくなっちゃってたんだよう」

先生「えぇぇ?! ちょっと、それって本格的に盗難事件じゃないの!」

415名無しさん:2014/09/22(月) 18:52:58 ID:DHu9CWtw0
ナオちゃん「タンスとかちゃんと調べたのか?」

伯爵「もちろん!でもどういうわけかズボンだけなくなってたんだよね…」

ラル「それはちょっと妙だな 何か心当たりはないか? 怨恨とか」

先生「伯爵に」 ニパ「怨恨」 ナオちゃん「ねぇ…」

伯爵「そんな・・・ 人に恨まれるような事はしてきてないつもりだよ!」

三人「「「えっ」」」

ラル「なにそれこわい  いや、まあとにかく行動しよう 各自自室を調べて来い 下原たちにも伝えて置くように」

ナオちゃん「ちょ、ちょっと待て オレらを疑ってるのか?」

先生「違うわよ 私たちのズボンも盗まれてるかもしれないでしょ?」

ニパ「うわっ、それは困る 急がなくっちゃ」

伯爵「うーん 一体誰がこんなことを…」

熊さん「どーん!」扉ドーン

一同「ビクッ」

熊さん「それには及ばないわ!」

ラル「サーシャ、もう大丈夫なのか?」 熊さん「お陰様で!」

416名無しさん:2014/09/22(月) 18:57:29 ID:DHu9CWtw0
先生「そ、それより一体どういう事?」

下原「えっと…大尉がお話があるそうです」

伯爵「ジョゼは?」

下原「ジャガイモ20kg全部茹でておきましたから、すぐ元気になると思います」

ラル「食料もタダじゃないんだけどなあ」

ニパ「それだけ俺の失血分がすさまじかったって事かな」

ナオちゃん「時々、オレあいつの事不死身なんじゃないかって思うんだけど」

伯爵「あー なんとなくわかるよそれ」

熊さん「どーーーーん!」 一同「ビクッ」


熊さん「つまり、謎は全てまるっとお見通しというわけです!」

一同「な、なんだってー>ΩΩΩ」

熊さん「あと、誰かそこで死んだふりしてる俺さんを起こしてください」

俺「あ、バレてましたか 盛り上がっていたんで口を挟むのもどうかなーって思ったんですが・・・」

417名無しさん:2014/09/22(月) 19:00:34 ID:DHu9CWtw0
伯爵「俺君、気分はどうだい?」

俺「ジョゼさんのおかげでなんとか…」

ラル「ちょっと気持ち悪いくらい鼻血でてたからな あとでジョゼにちゃんと礼をいっておくように」

俺「はっ、了解しました」

熊さん「はいっ!また脱線しない! 皆さん正座させますよ!」


サーシャ「伯爵から取り返したズボンを洗って、ベランダに干し終えた私は、念のため自室に戻りタンスの引き出しをチェックしました」

俺(あれ、そういえば伯爵っていま下に何も)

ラル(俺、今は鼻血は我慢しろ 次は耳から血がでるかもしれんぞ)コソコソ

サーシャ「伯爵の事です。もしかしたら私のズボン一枚では我慢できないかもしれない。そう思ったのですが、引き出しにはちゃんとズボンは入っていました」

伯爵「当然だよ!私はそこまで変態じゃない!」

サーシャ「ええ、たしかに普段の伯爵はそこまでの変態じゃありません。しかし万が一の事もありえます。
     私は戦闘隊長、同僚の不出来は正さねばならない。そのために、時には心を鬼にしなければなりません。
     私はその後、すぐに伯爵の部屋へ行きました。扉はぶち破りました」

伯爵「なにそれひどい」

サーシャ「少しイライラしてましたので。ともかく私は伯爵の部屋のタンスをあけてみました。…驚くべきことに、なんとそこには…」

ナオちゃん「ズボンはいってなかったんだろ?」  サーシャ「えっ?」

418名無しさん:2014/09/22(月) 19:03:44 ID:DHu9CWtw0
先生「そこまでは知ってるわよ」 ラル「伯爵から聞いたな」 熊さん「え、あぁ…えーと こほん」

サーシャ「ともかく、菅野少尉の言うとおり、伯爵のタンスには私のズボンはおろか、彼女のズボンすらありませんでした。
     ありえない事態に、ただならぬ怪しさを感じた私は…精神を研ぎ澄まして伯爵の部屋を探ってみることにしたのです」

ニパ「あはは、伯爵の部屋ってなんか色々ありそうだよn 熊さん「ニパさんはそこに正座!」

サーシャ「家捜しの際、私はある痕跡を発見しました。伯爵、あなたは昨日寝る前にお酒を飲みましたか?」

伯爵「えっ 急に言われても…そういえば、誰かと飲んだような飲んでないような…」

ラル「ああ、それなら私だ クルピンスキーの部屋で昨夜酒を飲み交わしたよ」

先生「ちょっと隊長、私初耳なんですけど?」

ラル「いや、エディータに言うと怒ると思って ちょっといいウイスキーが手に入ったから伯爵と飲もうとおもってね」

伯爵「あぁ、そういえばそんな気もしてきたよ」

ラル「なんでか知らないけど、その日のお前はちょっと落ち込んでたようだったからね」

サーシャ「つまり、伯爵は記憶が飛ぶ程度にアルコールを摂取したというわけですね?」

ラル「のみっぷりは良かった」

伯爵「ははは…面目ない あまりボクのイメージを落とさないでおくれよ熊さん」

サーシャ「では、クルピンスキー大尉に質問します

     なぜ、昨夜はそんなにお酒をのんでしまったのですか?」

419名無しさん:2014/09/22(月) 19:09:05 ID:DHu9CWtw0
伯爵「というか、なんでサーシャはその事を知っているのかな?」

サーシャ「あなたの枕元に、強いウイスキーの香りが染みこんでました。おそらく零してしまったのではないですか?」

ラル「確かにその通りだ 誤ってグラスを落としてしまったが、ベッドの上だったので事なきを得たんだ」

俺「ベッドが酒臭くなっても兵器なんすか伯爵」

伯爵「うーん…記憶が無い」

サーシャ「はい!いいからクルピンスキー大尉はお答えください! なぜそこまで泥酔するほどお酒を飲んだのですか!」

伯爵「うぇーっと…サーシャがボクの健康に気を使ってくれるなんて、とっても感激だよ。お礼にボクと熱い一夜を 熊さん「ギリ」 あう…」

ナオちゃん「なあニパ、ついてけてる?」

ニパ「久々の正座だから、ちょっと気が抜けないんだ ごめんねナオちゃん」

ナオちゃん「んー、下原はどうよ?」

下原「あんなにあせる伯爵初めてみましたけど、なんか、かわいいですねどうしましょうかはあはあ」

熊さん「どーんしますよ?」

下原ナオちゃんニパ「まじめに聞きます」


先生「まあ、サーシャ大尉 隊員のプライバシーも大事でしょう。その件は当事者である隊長は把握してますか?」

ラル「いや、私はただ普段と違うクルピンスキーを心配してただけだからな。理由まで聞くような事はしなかった」

420名無しさん:2014/09/22(月) 19:15:21 ID:DHu9CWtw0
先生「ふむ では、伯爵は隊長にだけ事情を説明するように。二人で飲んでたのですから、当然出来ますよね?」

伯爵「えっ…う、うーん… あ、ひょっとしてエディータったら妬いてる?ごめんね気がつかなくって 先生「どーん?」 了解しました」

        ヒソヒソ  ウンウン コソコソ エッマジ ウン コレハ… メンドウナ… コトニ… ナッタ…

伯爵「後生だから、頼むよ隊長 内緒にしておいて…」

ラル「あ、ああ…いや、しかしまさかお前…」

伯爵「ジトー…」

ラル「えー…あー、わかった。了解だ。 サーシャ、私も大体把握した。探偵役を引き継いでも構わないか?」

サーシャ「……まあいいでしょう。実を言うと、私も確証があるわけじゃありませんし、大尉も反省してくれたみたいですから」

伯爵「サーシャ… やっぱりボクのことをすk ラル「さて、菅野、ニパ、下原の三名は俺の部屋へ!部屋中をくまなく捜索してこい!」

俺「ウェェッ?!な、なんで!」 三人「り、了解!」

ラル「エディータはすまないがジョゼを呼んできてくれ。けが人が出る可能性もある」

先生「わ、わかったわ でもあとで事情は説明してくれるんでしょうね?」

ラル「自ずと分かるさ サーシャは逃げようとしてる俺を拘束 どーんやったれ」

熊さん「どーん!」 俺「ひぎぃっ!」

伯爵「ぽかーん…… え、どゆこと?」

421名無しさん:2014/09/22(月) 19:20:50 ID:DHu9CWtw0
・・・ここまで投下しといてなんだけど
多分俺は何か間違えてると思った

ちょっと頭冷やしてくるorz

422名無しさん:2014/09/23(火) 15:23:31 ID:4CPmQyu60


……と言いたいところだが早く続きを投下するんだ
いいか、俺は面倒が嫌いなんだ

423名無しさん:2014/09/23(火) 22:39:32 ID:O6MR64fE0
ファンタズマ!

424名無しさん:2014/09/26(金) 15:02:14 ID:ex6ToLX60
最近艦これにハマり過ぎていかんな、加賀さんの3スロにエーリカかルーデルさん積みたくなる

425名無しさん:2014/09/27(土) 19:43:16 ID:26tkr82U0
宮藤を積むとボーキの消費が抑えられたりするとうれしい

…それより煽ればまた湧いてきて面倒だというのに何故また煽るのか

426名無しさん:2014/09/27(土) 22:44:20 ID:Vcp/zILI0
学習能力皆無の馬鹿だからだよ

荒らしが顔真っ赤だとかなんとか言ってたけど、真っ赤なのは煽ってる奴らっていうね

427名無しさん:2014/09/28(日) 11:05:16 ID:zoZr/ecc0
まぁこっちはこっちでやっていけばよろし

428名無しさん:2014/09/28(日) 11:19:13 ID:JrE.TUPY0
確実にこっちにも馬鹿共がいるからこっちでも煽って飛び火しなきゃいいけどね……

429名無しさん:2014/09/28(日) 11:38:10 ID:zoZr/ecc0
やっぱストライクの層と艦これ層は被っているんだろうか?

430名無しさん:2014/09/28(日) 16:20:28 ID:qP313oqs0
まあミリ×女の子だから少なからず被ってるだろうね
っていうかこっちでも煽るのは止めよう

431名無しさん:2014/09/30(火) 03:51:16 ID:auMfaRTY0
騙して悪いが…

432名無しさん:2014/10/02(木) 17:02:01 ID:6TfzvMuw0


433名無しさん:2014/10/04(土) 00:33:32 ID:u0ERxQ2Q0
俺もSS初めて書こうかな

駄作でも大目に見てやってください

434名無しさん:2014/10/04(土) 01:27:33 ID:JHmR/8d20
おう、書くが良い
我々は>>1を守るなら誰でも歓迎しよう

435名無しさん:2014/10/04(土) 09:24:07 ID:tdwEYdiE0
パクリじゃなきゃなんでもいいよ

436名無しさん:2014/10/04(土) 18:39:26 ID:v97c2HnM0
>>435
そういうつまらん横槍を入れんのやめろ
どうして他人に喧嘩を売りたがるんだ?

437名無しさん:2014/10/04(土) 23:24:30 ID:h.zqBNhE0
いつものだろ、気にするなよ無視しろ

438名無しさん:2014/10/06(月) 18:33:27 ID:TbWmWwrI0
おまいらは書かんのか?
まぁそれを言うと俺もなんだが自分は話の骨格は出来上がってるんだけど日常パートが難しくてすすまないんだよなぁ

439名無しさん:2014/10/06(月) 19:33:29 ID:6DciB5cY0
>>438
スレ的には日常パートのほうがメインディッシュだからしかたないなw
でもとりあえず最初の1話だけでも書いてしまえ
案外それで踏ん切りが付くってこともあるぞ
投下したい人が増えてきているようでいい流れになってるしな

440名無しさん:2014/10/06(月) 20:05:55 ID:MQdZFIZA0
何だかんだ色々妄想してはいるが自分の場合確実にエタるだろうしね

441名無しさん:2014/10/07(火) 01:37:05 ID:JPZ23hFw0
自分の完結作品読みなおして色々身悶えとかした勢いで組み上げた当社比8割増しくらいのリメイクプロットを組み上げてからもう2年位経ってるけど執筆出来る日は来るのだろうか

442名無しさん:2014/10/07(火) 07:34:45 ID:k9EyfAfU0
>>441
8割り増してww

443名無しさん:2014/10/10(金) 21:22:20 ID:s9GF4IRw0
>>439
1、2話完成飛んで5、9話とかめちゃくちゃな書き方してるわ

444衝撃波:2014/10/18(土) 05:57:33 ID:ViSIjfe60

「本当にいるんだって! 俺の彼女がウィッチなんだけどよ、見たんだって! 鋼鉄の巨兵!!」

「嘘つけよ、そんなデカイのが歩いてたら話題になるに決まってんだろ」

「それがよぉ……ネウロイ倒したらいつの間にか消えちまったらしいんだよ」

廊下から聞こえてくる同僚たちの噂話を耳にしながら俺は顎下に手を伸ばす。
泣き声が響く自室のなか窓辺に設置されたベッドに腰かける青年は状況の把握に追われていた。
すぐ真横に視線を向けると目元に手をやり大粒の涙を零しながら嗚咽を漏らして、端正な容貌を歪ませる智子の姿が視界に入る。
あれから再会を果たしたのも束の間、自分が生きていたと知るや否や泣き崩れた彼女を俺は自室へと連れて行った。
ぶつかった際の反動で床に落ちた鞄から察するに智子は割り当てられた自室へと向かう途中だったのだろう。

本来なら智子の部屋へと連れて行けば良かったのだが、突然の再会に驚いたのは俺も同じだった。
もう会うことなどないと思っていた妹との再会。
思考が追いつかず呆然とするなか泣きじゃくる智子にしがみ付かれたことで俺の動揺は更に膨れ上がった。
判断力も鈍り、気がつけばその場から一番近い自室へと彼女を連れ込んでいた。
それが正しい選択かどうかはこの際置いておこう。
問題は何故、智子がここペテルブルグ基地に来たのか……いいや、答えなど聞かずとも見当はつく。
隣で泣き声を上げる彼女こそがカウハバ基地から派遣されてきた件の補充要員なのだろう。

智子「……ひっぐ……ぐす……ねぇ、おれ?」

俺「ん、どうした?」

445衝撃波:2014/10/18(土) 06:00:37 ID:ViSIjfe60

幾分か落ち着きを取り戻したのか。隣から聞こえる嗚咽が混じった智子の声に俺は努めて落ち着いた口調で返す。
何故、スオムスから来たのか。
とっくに上がりを迎えた筈の身であるのに、どうして未だ欧州に留まっているのか。
聞きたいことは山ほどあるものの、いまは彼女の精神を安定させることが先決だろう。

俺「(綺麗に、なったな)」

視界を占めるのは端正な頬を涙で濡らす智子の泣き顔。
整った顔立ちを泣き濡らし、歪ませながら、しゃくりあげているというのに。
呼吸すら忘れて見惚れてしまうのは彼女が生まれ持って得た美貌によるものだろう。
しばらく会わないうちに随分と美しさに磨きがかかったものだ。
既に智子の容姿から幼さは消え、代わりに備わった大人の艶が彼女の美を引き立てている。
智子がこれほどならば同じ部隊に所属していた“彼女たち”もさぞ美しい女性として成長していることだろう。

智子「ねぇ? ほんとうに、あなた……なの?」

身体を何度も震わせる智子は、自身を見つめる俺の頬へと恐る恐る手を伸ばして涙で濡れて湿った細い指先を添える。
こうして隣に彼が腰掛けている今が夢でないことを確かめるように。
彼が生きているというこの今が現実であることを実感するように。
あのとき届かなかった手を、智子は伸ばす。

446衝撃波:2014/10/18(土) 06:03:43 ID:ViSIjfe60

俺「あぁ……俺だよ。久しぶりだな、智子」

智子「ほん、とう? ほんとうに……ひっく、俺――なの?」

俺「もちろん。色々あったけど……ちゃんとこうして生きてる。ほら、手だって握れるだろう?」

口元に笑みを浮かべる俺は自身の頬に触れる智子の手を包みこむ。空いたもう片方の手は彼女の頭に。
慈しむような手つきで、嗚咽にあわせて震える智子の頭をそっと撫でる。
手の平を充たす温かく柔らかな髪が与える懐かしい感触に俺は小さく感嘆の吐息を漏らした。
まだ二人とも幼かった頃。
食事を摂るのも、風呂に入るのも、遊びに出かけるのも、何をするときも一緒だった頃。
甘えてきた彼女を、夜の暗闇に怯えすがり付いてきた彼女をこうやって撫でては落ち着かせていた記憶が彼の脳裏に蘇っていた。

智子「あ、あ…………あぁぁ……」

伸ばした指先を握る手の感触と自身の頭に乗せられた手の平の温かさに智子の唇からか細い声が零れ落ちる。
長らく忘れていた胸を満たす感覚に智子は再び目頭が熱くなっていくのを感じた。
あぁ、間違いない。
自身を包みこんでくれるこの温もりも、この安寧も。
彼を喪ったあの日から今日に至る何年もの間心の底から欲していたものばかりだ。

智子「本当に、あなた……なのね」

俺「おいおい。さっきからそう言っているじゃないか」

447衝撃波:2014/10/18(土) 06:06:52 ID:ViSIjfe60

自身に触れる彼の手から伝わる温かさとそれがもたらす安心感に智子は目の前にいる男が――俺が生きている現実を実感した。
同時に自分の罪を思い出し、智子は俯く。そもそも俺が撃墜され海中へと沈んだ原因は他ならぬ自分である。
全身を銃弾で穿たれた上に海面に叩きつけられて無傷であるはずがない。彼を死の淵へと追い込んだ自分が再会の喜びだけを抱いて良いはずがないのだ。
その事実を改めて自覚した智子は恋慕の念とはまた別の、胸裏に秘めた思いを告げるために口を開く。
それは長い間、智子の背に圧し掛かり、彼女の心身を縛り続けていたもの。後悔、懺悔、罪悪感といった粘り気を帯びた情念。

智子「――……んなさい」

不意に俯き何かを呟いた智子に俺は訝しげに眉をひそめた。
確かに彼女が何らかの言葉を口にしたのは聞こえたのだが如何せん声が小さいせいか、何を伝えたいのかよく聞き取れない。

俺「ん? どうし――」

智子「ごめっ……なさい! ごめんな……さい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

堰を切ったかの如く、彼女の形の良い唇から雪崩れ落ちたのは悲痛な色に染め上げられた謝罪の言葉だった。
何度も、何度も、何度も。
泣き声が混じった智子の、耳にしていて身を切られるほど悲愴な感情が込められた謝罪が俺の自室に響き渡る。
その勢いは衰えることを知らずまるで機械のように、ただその一言だけを一心に口にし続ける智子を前に俺の表情が曇った。

448衝撃波:2014/10/18(土) 06:10:26 ID:ViSIjfe60

俺「おいおいおいおい! どうしたんだよ!?」

智子「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

問いかけにも応えず謝罪を続ける智子の姿に自然と、曇っていた俺の表情が歪んでいく。
俯いているせいで彼女の顔を窺うことはできない。
けれども許しを乞おうと何度も謝罪の言葉を紡ぐ妹の姿は痛ましく感じられ、そんな彼女を俺は直視することができなかった。
第一に彼女から謝罪の言葉をぶつけられる謂れが、俺には無い。
何が原因で謝られるかも分からない上に妹の慟哭が混じった謝罪に耐えられない彼の手は自然と彼女の両肩に伸びていた。

俺「智子…………ッ!?」

両肩に手を乗せられ、身体を強張らせた智子が顔を上げる。
溜め込んでいた涙を零す一対の黒い双眸に漂う光に俺は息を呑んだ。
少しでも触れようものなら容易く壊れてしまう脆さがいまの智子を包みこんでいた。
本当にこの女はあの智子なのか。常に自信に満ち溢れた笑みを絶やすことのなかったあの穴拭智子なのか。

智子「だって! 私のせいで俺が!」

それは自らの手で愛する人間を死の淵に追い込んだ者の悲痛な叫びだった。

「私さえ前に出なければ! あなたが私を庇うこともなかった!!」

友人たちの静止も聞かず。
彼が傍にいることへの安心感に身を任せ増長した結果、自分は想いを寄せるその彼を死に追いやった。

449衝撃波:2014/10/18(土) 06:13:44 ID:ViSIjfe60

「あのとき、もう少し様子を見ていれば敵に撃たれることもなかった!!」

扉の向こうに繋がる廊下に届く勢いで智子は想いの丈を吐き出していく。
脳裏に蘇っていたのは目の前で大切な人の身体が銃弾で穿たれる光景だった。
頭上に広がる清々しい青空とは反対に色鮮やかな真紅の血飛沫が眼前で飛び散る光景だった。
糸が切れた操り人形のように彼の身体が重力に引かれて海面へと落下を始めた光景だった。
一瞬で、たった一瞬で、大切な物を傷つけられた挙句喪ってしまった光景だった。
何度も悪夢として自分を苛み続けた光景だった。

「私のせいで俺が撃墜された! 私が、あなたから軍人としての人生を奪った!!」

海へと落ちた俺の捜索を扶桑皇国陸軍は早々に打ち切った。
それは陸軍上層部が、俺が戦死したと判断したことに他ならない。たとえ彼が扶桑に戻ろうともその決定は覆らないだろう。
あの時、慢心しなければ彼はまだ扶桑皇国陸軍の軍人として空を飛べていたのではないか。
だとすれば自分が彼の人生を捻じ曲げてしまったのだ。

俺「あぁ……」

吐き出された智子の感情を受け止め、俺は得心がいった表情で、声音で呟いた。
――なるほど。そういうことか
――つまり、こいつは。あのとき俺が撃墜された原因は自分にあって、そのことを謝っているのか

俺「馬鹿だな……」

小さく笑みを零して両の手を彼女の肩に回すなり抱き寄せる。
温かく、柔らかく、肉付きのよくなった智子の身体を。
甘い薫香を放ち柔らかな感触を持つ女のそれとなった妹分の身体を、俺は昔と変わらぬ要領で抱き寄せた。

450衝撃波:2014/10/18(土) 06:17:20 ID:ViSIjfe60

智子「……え?」

突然の抱擁に涙を浮かべる目を丸くした智子が腕のなかで自分を見上げてくる。
涙で潤んだ黒い瞳には笑みを浮かべる自分の姿が映りこんでいた。

俺「智子。お前が気にすることも、ましてや悔やむこともないんだよ」

片方の手で智子の背を撫でながら俺は本心を口にする。
恨んでいるわけがない。
憎んでいるわけがない。
あのとき死ぬことになったとしても自分はそれでもよかった。
そう言外に含まれた俺の言葉に智子が声を震わせながら口を開いた。

智子「……う、嘘よ。だって……だって」

俺「なぁ、智子? こうしてお前と話している俺は……お前のことを恨んでいるように見えるか? 憎んでいるように見えるか?」

智子「……それ、は」

言葉を詰まらせ、智子は自身を抱き寄せる男の表情に視線を注ぐ。
黒い瞳に漂うのは憤怒や怨嗟のような鋭さとは程遠い柔らかさを帯びた光。
少年だった頃と比べて引き締まった頬は優しく綻んでいた。
自らを死に追いやった相手に見せるにはあまりにも穏やかで優しげな微笑みに智子は、ふるふると頭を振った。

俺「だろう? それにな。たとえあのとき死ぬことになってもお前を守ることが出来たなら、俺は別にそれで良かったんだよ」

451衝撃波:2014/10/18(土) 06:20:57 ID:ViSIjfe60

それは紛れも無く嘘偽りの無い本心だった。
そもそも俺が軍に入ったのも幼い頃から可愛がってきた妹分である智子をたった一人で陸軍に入れさせたくなかったからに他ならない。
あのまま軍に入らなければ自分は戦場を飛び交うこともない平凡な人生を送っていただろう。智子を庇い、生死の境を漂うことも無かっただろう。
それでも彼が陸軍の航空歩兵を志願したのは全て妹分であった智子を守りたいから。
だからこそ、

俺「後悔なんかしていない……いいや、しているわけがないんだよ。智子」

――お前を守ることが出来たんだからな。
そう彼女の耳元に口を近づけ囁くなり抱擁の力を強める。
起伏がはっきりと浮き出るまでに成長した智子の身体が大きく強張った。

俺「長い間、寂しい思いさせちまったな。ごめんよ」

後頭部に手の平を添える俺の口から謝罪の言葉が零れ落ちる。
もしかしたら智子だけではなく武子や圭子、綾香。姉代わりであった江藤敏子にも同じく寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。
そうであって欲しいと願いながら俺は智子の髪を撫で続ける。
彼女らが今も自分のことを大切に思っていてくれているのならば、もしも再び巡り会えたときにはこうして謝らなければいけなくなるだろう。
そう胸裏で零しながら俺はそれと、と一度言葉を区切り、

俺「生きていてくれて、ありがとう」

同時に今日まで無事に五体満足で生きていてくれた彼女に感謝の言葉を捧げた。

智子「どうして……よぉ。ぜんぶ……わたしが、わるいのにぃ……」

452衝撃波:2014/10/18(土) 06:23:59 ID:ViSIjfe60

自分を庇ったばかりに彼は若い身でありながら全身を穿たれ、撃墜された。
恨まれていると思っていた。憎まれていると思っていた。
だというのに彼は笑って否定し、自分の身を案じてくれた。自分が生きていることを喜んでくれた。
そのことがどうしようもなく嬉しくて、智子は再び目頭が熱を帯びる感覚を抱いた。

俺「言っただろう。俺はお前のことなんか、これっぽっちも恨んじゃいない」

言うなり俺は腕のなかで震え始めた智子の身体を強く抱きしめる。
抱擁を通して自分の思いを伝えるかのように、抱き殺す勢いで彼女の身体を掻き抱く。

俺「だからもうこれ以上、自分を責めるのはやめろ。せっかく会えたのに泣き顔ばっかり見せられたら堪らないんだ」

温かい手の平が頭を撫でる。柔らかな声音がゆっくりと降り注ぐ。
治まっていたはずの嗚咽が再び込み上げてくる。
目頭が熱くなり視界がまた滲み出す。

智子「う、ぁ……あぁ……うぁぁ……」

俺「ただいま……智子」

その一言を皮切りに智子は再び声を張り上げて涙を零した。
せめて、これ以上みっともない泣き顔を見せまいと愛おしい男の胸元に顔を埋めながら。
背中と頭を撫でる手の平の優しい温もりを感じながら。
涙を流し続けた。
凍てつく風が吹くその日、穴拭智子は長い歳月を経て自責の念から解放された。

453衝撃波:2014/10/18(土) 06:27:28 ID:ViSIjfe60

―――
――



マグカップから立ち昇る白い湯気と甘いカカオの香りに頬を綻ばせながら、智子は隣に腰掛ける男の体躯に身を預けた。
肩と頬から伝わってくる想い人の体温。
それは手の平にあるカップから発せられる熱とは違い、優しくてどこか力強さを帯びていた。
再びこうして彼の体に身を預けることを何度夢見たことか。
全身を充たし、温める幸福に浸っていると不意に肩に手を回されて抱き寄せられた。
自然と智子の笑みが深いものになっていく。

智子「……ねぇ。一つ聞いても良い?」

マグカップに注がれたココアの味を堪能し終え、智子は口を開く。
聞きたいことはただ一つ。
恐らく彼も自分が何を知りたいか既に検討がついているはず。

俺「何で生きていることを黙っていた、か?」

智子「えぇ。どうして? どうして何も……教えてくれなかったの?」

問いかけに対し返答はすぐには返ってこなかった。
続く沈黙から智子は彼が返答に迷っていることを察した。何らかの事情があっての沈黙なのだろう。
それでも知りたい。
どうして生きていることを黙っていたのか。
生きているなら何故、連絡の一つも入れてくれなかったのか。

454衝撃波:2014/10/18(土) 06:30:29 ID:ViSIjfe60

智子「無理にとは言わないわ。けど」

俺「いいや、話すよ。お前には言っておかないといけないことだったな」

言うなり俺は語り始めた。
話によると自分を庇った彼は海へと墜落した後、とある漁師に拾われたようで何でも漁に用いる網にかかっていたらしい。
献身的な治療もあり拾われてから半年後に意識を取り戻し、それからリハビリを続けようやく自分の意思で歩けるようになったときには既に事変は終結していた。
彼が己の戦死を知ったのもそのときだった。
情報が届かぬ田舎だったことも重なり、彼を助けた漁師も網の中で意識を失っていた少年が撃墜されていた航空歩兵と気づくことが出来なかったようだ。
潮流で戦闘脚が流されたことも不運の一つだろう。

智子「……」

俺「驚いたよ。お前を庇ってから目を覚ますまでかなりの時間が経っていたんだな。っははは……まるで浦島太郎みたいな気分だった」

自分はたしかに生きている。意識を取り戻すのに半年もの時間を要したがそれでも死の淵から這い上がった。
にも拘らず世間は、陸軍は自分を死者として処理していた。
撃墜され海に落下した航空歩兵が半年もの間消息不明になっていたのだから陸軍上層部が捜索を打ち切り、戦死と判断するのも無理は無い。

――それでも俺は生きている! 死んでなんかいない!――

そう胸裏で叫んでも世界から摘み出された疎外感と孤独が常に付き纏っていた。
もうこの扶桑に自分が暮らす場所はない。
自分が眠ると言われている真新しい墓石の前で確信した俺は自身の生存を誰にも告げず、故郷を捨て去った。

455衝撃波:2014/10/18(土) 06:33:35 ID:ViSIjfe60

俺「除け者にされた感じがしたよ。だから怖くて、逃げたかったのかも知れないな……自分を死んだ人間として処理した扶桑から」

もしかしたら大切に思っていた家族も自分のことを死人だと思っているのではないか。本音を言うと、この目で確かめたかった。
軍に属している智子たちに会うことは叶わずとも退役後に喫茶店を営み始めたらしい江藤になら会えるはず。
そう思った矢先に一縷の不安が彼の胸裏に芽生えた。
もしも、もしも彼女らが、自分が死んだと思っていたら?
遺体が発見されていないにも関わらず生存の可能性を信じていなかったら?
自分が死んだことを受け入れ、日々の生活を謳歌していたら?

いいや、軍が自分の捜索を打ち切り戦死と判断してから半年もの月日が経っているのだ。自分の生存を諦めていても何ら可笑しくは無い。
だからだろうか。大切な家族が自分のことなど忘れ、過去の人物として記憶の片隅に留めている姿を目にしたくないと思ったのは。
そんな光景を目にするぐらいなら誰にも知られず、故郷を飛び出すほうが良かった。

智子「……ごめんなさい。あなたにとっては辛い話だったわよね……軽率だったわ」

迂闊に尋ねた自身の軽率さに智子は唇を歪める。
知りたいと思っていたこととはいえ、彼にとっては苦痛に満ちた出来事でしかない。
少し頭を働かせれば分かることだというのに、智子は自身の身勝手さを恥じた。

俺「良いさ。もう何年も前の話だ」

智子「ね、ねぇ……みんなに会いたい? 武子や圭子、綾香に江藤隊長に」

返って来た予想外の答えに智子は目を丸くした。
問いかけに対し俺は目を伏せ、静かにかぶりを振ったのだ。

456衝撃波:2014/10/18(土) 06:36:38 ID:ViSIjfe60

智子「会いたく、ないの?」

俺「会いたくないって言えば嘘になる。だけど、あいつらにとって俺はもう死人で過去の人間だ」

自惚れかもしれない。
しかし自分の存在が彼女らに影響を及ぼすほど小さかったとは言い切れない。
それでも撃墜されたあの日から五年以上もの歳月が経っている。
自分が死んだと発表されてから五年以上もの時間が経過している。
今更彼女らの前に現れて何になるというのか。

俺「今更出てきて平穏な生活に水差すわけにもいかないだろう」

心優しい彼女らのことだ。
もしも自分が現れたら色々と気を遣ってくれるかもしれない。
しかし俺は自分のことなど構わずに各々の幸せを追い求めて欲しい。
ただ幸せに。ただ平穏に生きていて欲しい。
故に自分から彼女らの前に姿を見せることは、ないだろう。
もう死んだことになっているから。きっと彼女らも自分のことは思い出の片隅程度に留めているはずだから。

智子「そんなこと……そんなことない!!」

穏やかな笑みの裏に潜む諦観を、その声色と横顔から察した智子は反射的に声を荒げた。
目の前の俺が目を丸くして自分を見つめているのにも気づかずに智子は沸き上がる感情を吐き出さんと口を開く。
確かに、彼の言うとおり親友の武子をはじめ残る彼女らがいつまでも未練を引きずっているとは思えない。
しかし彼がこうして生きていると知れば必ず会いたいと思うはずであることを智子は確信していた。
それは、彼女らと幾度も彼の心を奪い合った経験から生まれる確信だった。
今すぐ声に出して言いたかった。自分も含めた四人全員、あなたに惹かれていたのだと。

457衝撃波:2014/10/18(土) 06:39:51 ID:ViSIjfe60

智子「あなたは過去の人間なんかじゃない!! ちゃんと……今を生きているじゃない!」

自分にとっては今この時間を生きている人間だ。
決して死者でもなければ、思い出のなかに生きている人間でもない。

俺「ありがとうな、智子。だけど死人は死人のままでいいさ。これでも結構、食っていけてるんだ」

智子「どうしてよ……そんなこと、言わないで……」

陸軍時代よりも遥かに逞しくなった彼の胸板に顔を埋め、智子は胸を切る感情を言葉に変えて、弱々しく零した。
こうしてまた巡り会えたというのに。
こうして彼の温もりを再びこの身で感じられるというのに。
こんなにも自分の言葉は、想いは届かなくなってしまったのか。
こんなにも彼と自分の心には深く広い隔たりが生まれてしまっているのか。
胸を抉る想いに、智子は歪ませた容貌を彼の胸元に押し付けた。

458衝撃波:2014/10/18(土) 06:42:57 ID:ViSIjfe60
―――
――





それは書類仕事が終わりつつある時のこと。
気を利かせたロスマンが運んできたマグカップを満たすコーヒーを飲み終わる頃のこと。
最後の書類に目を通している最中、前触れも無く執務室の扉が乾いた音を立てた。
執務室に近づく足音から、扉を叩く音から相手が誰かを察したラルは視線を動かすことなく唇を開き、相手を招き入れる。
統合戦闘航空団の司令としては無用心な対応かもしれないが、扉を叩く力強い音から彼女は訪ねてきた人物が誰なのか瞬時に理解した。
彼がここペテルブルグを拠点とする第502統合戦闘航空団にやって来てから、大した時間も経っていないというのに。
知らぬ内に彼のことを詳しくなっていることを自覚したラルは苦味を含んだ笑みを口元に零し、音を立てて開いた扉へ視線を上げる。

「よっ、お疲れさん。今時間空いてるか?」

快活な笑みを湛えて軽く手を挙げる青年。
相手の心に自然と入り込んでくるその笑みを前にラルの口元も自然と綻んでいく。

ラル「私に何か用か? まぁ、大体は想像がつくが」

書類に走らせていたペンを置き、手元に置いてあったマグカップに手をかけるなり中身を飲み干すラル。
ふぅ、と艶を帯びた吐息を零した彼女が真っ直ぐに自分へと、その青い瞳を向ける。
澄んだ碧眼に浮かぶ光から言葉通り彼女は自分がここへ足を運んだ理由を察しているのだろう。それなら話は早い。

459衝撃波:2014/10/18(土) 06:48:32 ID:ViSIjfe60

俺「知っていたんだろう? 智子がここに来ること」

司令官である筈の彼女が、前触れも無く智子の来訪を知ったとは考えられない。
ましてや502と507の相互連携という重要な戦略的意図があるのだ。今日になって唐突に知らされるわけがない。
いつに無く生真面目な声音と表情にラルは自分でも知らぬ内に綻ばせていた口元を強張らせる。
戦闘時以外では珍しく見せる、彼のその態度に。

ラル「……あぁ、そうだよ。黙っていて、すまなかった」

しばし瞑目し、ラルは静かに首肯した。

俺「お前さんにも事情があったんだろう? ならそれを俺がとやかく言う権利はないさ」

ラル「そう言ってもらえると助かる……なぁ、一つ訊いても良いか?」

俺「ん?」

返すなり俺は静かに目を見開いた。
彼女の青い双眸に、微かに浮かぶ不安げな光を目の当たりにして。

ラル「私がお前に、穴拭大尉が来ることを教えていたら。お前は……ここを、502を出て行ったか?」

俺「俺が? ここを? どうして?」

ラル「それ、は……だな」

460衝撃波:2014/10/18(土) 06:52:27 ID:ViSIjfe60

どうして智子の派遣と、自分がペテルブルグを出て行くことが結びついているのか。
暫しの黙考の後、俺は答えを導き出した。
撃墜され、戦死として処理された俺は誰にも自身の生存を告げずに故郷を去った。
だからこそ己の生存を妹分である智子に知られることが分かれば自分はここを出て行くと彼女は考えていたのだろう。

俺「……ここでの仕事はまだ残っているし、お前たちを置いてどこかへ行くつもりはないよ」

仕事、という言葉にラルは形の良い眉を顰めた。
彼が口にする仕事とは、ここペテルブルグ近隣に散在する反動勢力の撃滅を意味する。
航空歩兵でありながら裏では不穏分子の消去に暗躍している。
怪異を撃滅するために、人々を守るために銃を取る手で邪魔な存在を屠殺する。
それがこの男の真の目的であり、本性。
俺の話によればブリタニアをはじめ連合軍の主要拠点がある地区には同様の仕事を持つ人物がいるようだ。
そして、俺は以前こうも言った。ブリタニアには仲間がいると。
しかしアドルフィーネ・ガランド少将直轄の兵は彼のみ。
だとすれば、彼とその仕事仲間とやらを操る人物が別にいるのではないか
それは、きっとガランドのような表舞台に立つ権力者ではなく。
社会や歴史の闇、いいや。
超常の域に住まう人知を超えた“何か“なのではないか。
何一つ根拠の無い、直感のみの憶測も彼の言葉がもたらした安堵感によって掻き消えていた。

461衝撃波:2014/10/18(土) 06:55:43 ID:ViSIjfe60

ラル「そ、そうか……」

何故かその言葉に安心し、小さく溜息を吐いている自分に気がつきラルは頬を赤らめながらコーヒーカップの残りを飲み干した。
まったく。これでは、まるで彼に出て行って欲しくないと思っているようではないか。

俺「何だ? もしかして心配してくれたのか?」

ラル「う、うるさい」

頬が熱を帯びていく感覚を抱きながら、顔を背けることしかできなかった。

俺「っははは! ありがとうな。大丈夫だよ」

俺「いつか此処を離れるときは必ず来る。それがネウロイとの戦いが終わるまでなのかはわからない」

だけどな、と一度言葉を区切って。

俺「今まで渡り歩いてきた基地に比べると、結構気に入ってるんだよ。ここ」

ラル「前線基地なのにか? 満足な食事も取れない時もあっただろう?」

俺「設備や食事の問題じゃない。空気だよ、空気。ブリタニアも賑やかで楽しかったんだけど……こっちの方が俺には合っているみたいだ」

462衝撃波:2014/10/18(土) 06:58:49 ID:ViSIjfe60

残って欲しい。行かないで。置いてかないで。傍にいて。
何度も彼女にぶつけられた言葉が脳裏を過ぎる。それでも、やはり自分はまだ502(ここ)にいたかった。
もちろん、ブリタニアの彼女らよりも少ない人員で欧州激戦区の前線で戦う此処の少女らのことを放っておけなかったという気持ちもある。
しかし、やはりペテルブルグでの生活の方が自分には合っている気がしてならず、その気持ちはブリタニアでの短い日々を過ごしていく中で強まっていった。
だからこそ……

俺「さよならを言わずにお前たちの前から消えることはしないよ」

ラル「……本当だな?」

俺「信じろよ」

―――
――


463衝撃波:2014/10/18(土) 07:01:53 ID:ViSIjfe60

その後、夕食の席で502の面々による顔合わせを兼ねた智子の歓迎会も恙無く終わりを迎え、俺は一足先に自室へと戻っていた。
歓迎会の会場である談話室を後にする際、どこか寂しげな光を浮かべた智子であったがすぐさま502のウィッチたちとの交流を優先する姿は流石現役の軍人といえよう。
特に同郷の下原、菅野の二人に挟まれ質問攻めを受ける彼女の姿はどこか微笑ましく映った。
瞳を輝かせる下原と菅野。
陸軍と海軍。所属こそ違えど扶桑海の閃光と謳われ、銀幕の主役を務めたエースを前に彼女らが興奮するのも無理はない。
再会して改めて思い知った妹分の高名さ。
可愛がっていた彼女との広がった差を感じ取り、寂しさに似た感情を抱きながら俺は談話室の扉を閉めた。

俺「ん?」

月明かりに照らされる一通の封筒が目に入ったのは部屋に入り、ベッドに身を投げようとした矢先のことだ。
古びたテーブルの上に鎮座する真新しい白の封筒。
検閲はおろか人の手すら触れられていないことが、その表面の純白から察することが出来る。
明らかにこの部屋を出るときにはなかったものだ。
何者かがこの部屋に潜り込んで置き去ったか、否。部屋を出る際は鍵をかけた。
では外部からの侵入者か、それも否。
連合軍、それも統合戦闘航空団の基地である。安易に入り込める警備体制ではない。
現に自分がこの基地を訪れてから行った最初の仕事以降、基地の警備はより厳重なものとなった。
それ以降、侵入者が現れた騒ぎも無い。自分宛の郵便が送られた話も、今日は聞いていない。
つまりこの手紙は十中八九自分が所属する“部隊“から送られたものだ。
真新しい白い封筒を摘むなり裏返せば案の定、幾重にも薔薇が絡み付いた十字の刻印が施されていた。
こうしてわざわざ手紙を寄越すということは恐らく世界各地に散らばる幹部の面々にも、この召集状が行き届いていると判断して間違いない。

464衝撃波:2014/10/18(土) 07:06:42 ID:ViSIjfe60

俺「久しぶりの登館、か。何年ぶりだ?」

現し世と常世の狭間に位置するローゼンクロイツの牙城。其処は伝説に名を刻んだ魔女や術師の魂が眠る殿堂。
彼女に認められた者だけが異界に繋がる回廊に足を踏み入れ登館を許される。
しかし薔薇十字に認められ誉ある殿堂に入ることを許された者皆全て、強さを求めた挙句人間であることを辞めた魔人どもだ。
彼女の傀儡と成り果てても尚、力を求める怪物どもだ。
辿る末路も恐れずに。
無論、自分も含めて。

俺「あの救いようの無い塵どもの相手をまたせにゃならんのか……恨むぞ、仲間A」

今は亡き主宰の代行を務め、彼ら幹部を統括する身としては欠席するわけにはいかないだろう。
近況報告はもちろん、ブリタニアにて残る余生を送っているクロウリーから回収した魔具、“銀の星”も薔薇十字に差し出す必要がある。
我が強い幹部陣と顔を合わせたくはないが、主宰代行という立場が欠席という選択肢を自然と消去していた。
諦観が混じった溜息を吐くなりテーブルの上に置いてあった万年筆を手に取った。
封を開け、白封筒に納められていた召集状の上にペン先を走らせ出席の意を書き記す。
インクを纏った切っ先が紙上から離れた途端に召集状は紅い薔薇の花弁を思わせる燐光を発し、瞬く間にその姿を消した。

俺「またあの緑の石版みたいなもん回収してこいとか……言われないよな?」

以前、歴史の闇に埋没した遺物の回収に奔走した苦い記憶を思い出す男の口から愚痴が零れる。
部屋の扉が何者かによって叩かれたのは、そんな苦味を帯びた言葉が彼の口から零れ落ちるのとほぼ同時だった。
間髪入れずに聞こえて来るのは今日、劇的な再会を果たした妹分の声。
俺は開いてるよ、とだけ返して彼女に入室を促した。

465衝撃波:2014/10/18(土) 07:09:42 ID:ViSIjfe60
智子「こんばんは」

優美な黒髪を靡かせ、歩み寄る智子。
感情の発露によって泣き腫れた目は歓迎会の前には元に戻り、涙で濡れていない彼女の容貌を改めて目の当たりにした俺は静かに嘆息した。
端正な顔立ちに艶やかな黒髪。
最後に彼女の姿を視界に捉えていた頃はまだ少女のそれだったというのに。
今ではその身体は陸軍服の上からでもはっきりと視認できるほど肉付きの良いものへと変わっていた。
未だ薬指に指輪が嵌められていないのが不思議なほど見目麗しく成長した彼女の容姿を前に俺は顔を逸らした。
熱を帯び始めた頬を掻きながら気を紛らわせようと言葉を捜す。
このままでは妹分にあらぬ劣情を抱いてしまいそうになる。

俺「そ、そうだ。歓迎会どうだった? 中々楽しい連中だろう?」

智子「えぇ、とても楽しい時間を過ごせたわ。ただ……一人だけ近くに似たような人がいたから何だか不思議な気分だったわ」

視界の端に入る智子が淡い笑みを浮かべた瞬間、俺は心臓が一際激しい鼓動を放つ感覚を抱いた。

俺「あ、あぁ。まぁ、楽しめたようで何よりだよ……それで? こんな時間に何の用だ?」

左胸から発せられる脈動に息苦しさすら覚える。
どうして自分はこんなにも取り乱しているのか。
どうして彼女の形のよい唇に意識を奪われているのか。
胸裏に生じた動揺を悟られないよう努めて冷静に返すも、不意に視界に入り込み、覗き込むように自身を見上げてくる智子の容貌に思わず後ずさった。

智子「ど、どうしたの? 顔が赤いように見えるけど……」

俺「あ……あ、これはだな。さっきの歓迎会で飲んだ……酒のせい、だと思う」

眉を顰め、自身を案じる智子に俺はとっさに思いついた言い訳を返した。
度数の低い酒とはいえ飲んだことには変わりない。嘘は、ついていない。

466衝撃波:2014/10/18(土) 07:13:01 ID:ViSIjfe60

智子「それなら……良いんだけど。今日は色々と話したいことがあって来たの」

俺「話したいこと?」

えぇ、と頷く智子は一呼吸置き手を胸元に添えて一歩、歩み寄る。

智子「良かったら、聞かせてくれない? 扶桑を去ったあなたが……今日まで、どんなことをしてきたのか」

射抜くような目で自分を見上げる智子の双眸に俺は少しだけ、それこそ彼女に悟られないほどに表情を曇らせた。

俺「…………どんなこと、か」

独り世界を渡り歩き、目の当たりにした光景も。
自身に生きる道を教え説いた男との出会いも。
彼と一緒に非正規の遊撃部隊を結成したことも。
中世の時代から連綿とその存在を保ち続けている正真正銘の魔女との邂逅も。
その魔女から規格外の強さを授かったことも。
話すことなら、それこそ山ほどある。
しかし、もしも彼女が自分の本性を知ったらどう思うだろうか。
人を守るはずの航空歩兵でありながら、人を殺める自身の本性を。
手にかけてきた百をも越える命たちを、枯れ落ちた木葉と同等に扱っている今の自分を知ったら。
怪しげな邪教集団を虐殺した。
上がりを迎えた航空歩兵に卑しい劣情をぶつけようとした将校とその一派を家族諸共首を撥ねた。
世間の枠組みに当て嵌めれば、自身の重ねてきた業は間違いなく悪行、なのだろう。
陸軍人としての自分が死してから今日に至るまで七年に近い歳月が経過していた。
きっと、今の智子にとって自分はまだあの頃のままの自分なのだろう。
そんな彼女は、現実を知ったとき、どんな感情を抱くのだろうか。

467衝撃波:2014/10/18(土) 07:16:04 ID:ViSIjfe60

智子「あと……今日までの私の話も、聞いて……くれる?」

俺「……あぁ、いいよ」

尤も話す必要の無い出来事を自ら話すこともあるまい。
そう割り切った俺は静かにベッドに腰を下ろした。
すぐ真横に花が咲いたかのような笑みを浮かべた智子が腰掛ける。
その艶やかな黒髪から漂う女性特有のどこか甘みを帯びた香りに俺はぎこちない仕草で身じろいだ。
さて何から話すべきか、何から聞くべきか。
決めあぐねているとそれまで視界の片隅で妙に小さく身体を揺らしていた智子が意を決したかのような表情を浮かべて口を開いた。

智子「それで、ね。今日は……このまま同じ布団で、寝ても良いかしら……?」

俺「同じ布団で寝るって……はぁ!?」

真横から放たれた言葉に思わず落としかけていた視線を持ち上げるなり、隣に腰掛ける彼女に向ける。

468衝撃波:2014/10/18(土) 07:20:05 ID:ViSIjfe60

智子「駄目……かしら?」

俺「いやいやいや、いくら何でもそればっかりは流石に……」

智子「子どもの頃は同じ布団で寝たじゃない」

俺「それは……そうだけど。そうなんだけど」

たしかに、子どもの頃は寝る前に色々と話しこんでいたし、眠くなったらそのまま同じ布団で寝たこともあった。
しかし、それはまだ二人とも本当の意味で子どもだった頃の話だ。
軍の学校に通うよりも前の頃の出来事だ。
昔と今とでは状況が全く違う。
今の智子は誰が見ても大人の女だ。もう少女と呼べる年齢でもなければ身体でもない。
すらりと伸びた手足をはじめ陸軍服に包まれる肢体。年相応に膨らんだ乳房と尻。
いくら妹分とはいえ、自分は男だ。
ましてや智子の寝間着姿を知っているからこそ俺は慌てて首を横に振った。

469衝撃波:2014/10/18(土) 07:23:22 ID:ViSIjfe60

俺「やっぱり。だ、駄目だ」

あんな裸の上に半纏を羽織るような格好で密着されたら理性など保つわけがない。

智子「そ、そんな……」

思いがけない拒絶に智子は悲しげに表情を曇らせる。

俺「悪い。話には付き合うけど……同じ布団で寝るのだけは、勘弁してくれ」

智子「…………わかったわ。変なこと言って、ごめんなさい……」

俯く智子の姿を尻目に俺は背けた顔を顰める。
一体何を考えているのだ。あいつは、智子は妹分だろう。
ならば、ここは兄貴分として快く受け入れてやるべきだろう。
だというのに、何故自分は下心など抱いているのだ。
胸裏でそう己を叱咤する俺であったが、その答えはすぐに導き出された。


自分は、美しく成長を遂げた智子を女として意識してしまっている……


続く

470名無しさん:2014/10/18(土) 07:27:23 ID:ViSIjfe60
投下完了。(ストックはもう)ないです

それにしてもFAG……フミカネさんだけに轟雷ちゃんならストパンに出ても違和感ないと思う

471名無しさん:2014/10/18(土) 19:56:36 ID:k/3gPhiE0
2年くらいぶりにこのスレにきてみたがいろいろ変わってるんだね。
以前自分が書いたやつとか再開したいと思ってたんだけど、やり方がよくわからなくなってるし。
編集しようにも編集できなかったりリンクがつながってなかったりするし。

472名無しさん:2014/10/19(日) 01:33:59 ID:6tEqq2ps0
おつかれです!

473名無しさん:2014/10/19(日) 05:27:12 ID:pVoy0JTI0
乙乙

474名無しさん:2014/10/19(日) 10:06:40 ID:Dg3GmjRg0
>>471
ずいぶん前に荒らしにあって以前使ってたwikiはぐちゃぐちゃになったからなあ
もし再開したいけど作品が消えてるってんならこの板にある保管庫スレにいけば
復旧してもらえるかも

作者が戻るのはいいことだから頑張って欲しい

475名無しさん:2014/10/19(日) 19:46:16 ID:Tu2LHlpM0
乙!

476名無しさん:2014/10/19(日) 20:17:22 ID:dqoQljCc0
>>474
ありがとう。とりあえず書き込んでみる。

477名無しさん:2014/10/24(金) 01:11:10 ID:XtpKZZDQ0
書いてみたい……と言うか投下する積りで書いているんだが,プロットが纏まらん……皆どの程度の細かさで書いてる?

478名無しさん:2014/10/24(金) 03:24:03 ID:/7n5JazU0
>>477
「こんなシーン書きたいな」

とりあえず最初のコマは朝のブリーフィングとかで時間を潰す

書きたいシーンに繋がりそうなタイミングでつなぐ

原液をベースに、あとは薄めていくあたりカルピスみたいな作り方

479名無しさん:2014/10/24(金) 03:32:41 ID:XtpKZZDQ0
>>478
有難う。参考にするわ
どうでも良いがカルピスみたいな作り方って例え良いな

480名無しさん:2014/10/27(月) 03:18:29 ID:v.JMI1j20
>>433です
とりあえず書いてみようかなってでもこんな時間だからすぐに終わるかもしれません。
なにとぞご了承願います・・・

481名無しさん:2014/10/27(月) 03:47:29 ID:v.JMI1j20
俺「はいどーも!!!ストライクストライクでーすどーもよろしくお願いしまーす!!」

相方「いやぁ〜最近寒くなってきましたね」

俺「いやぁ〜そうですね俺なんか最近寒くてずっと厚着でここに来てるんですよ」

相方「え?ジャケットとかで?」

俺「いやタンクトップ」

相方「全然行けんじゃねぇか!?」



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482名無しさん:2014/10/27(月) 03:50:52 ID:v.JMI1j20
<オツカレサマデシター

俺「お疲れ様でしたー」

相方「お疲れ様でしたー」

相方「なぁ兄貴ぃ今日はウケなかったな・・・」

俺「何言ってんだ相方。たまたま客が悪かっただけだよ」

相方「いや、でも俺漫才してるときにチラッと観客みてたらよぉ・・・スマホいじってる奴見かけたよ・・・」

俺「・・・俺たちはまだまだ実力不足だってことだもっと磨いてあいつ等を見返してやりゃいいんだよ」

相方「うーん・・・」

俺「さぁ、飯でも食いに行くか腹が減っては戦はできんっていうしな」

相方「・・・うん!!」

483名無しさん:2014/10/27(月) 03:57:04 ID:v.JMI1j20
俺たちは・・・芸人だ
後輩の相方を誘い、小さな芸人プロダクションに入った。
今俺たちは6年目・・・あと4年でm-1の資格はなくなってしまう・・・

相方「でも兄貴・・・俺たちm-1に間に合うかな・・・」

俺「大丈夫だ!!m-1はまだまだ先だ!!これからさ!
これから頑張れば俺たちあと少しでスターだ!」


俺たちの話しているm-1グランプリ通称マンザイNo.1グランプリ俺が中学のころから始まった大会であり、
優勝したものは誰もがスターとなった・・・
だが、俺たちが芸歴3年目でこの大会はおわってしまい、
THE MANZAI CHANPIONにでたいものの事務所が小さすぎて参加できなかった。
俺たちは途方にくれた。
その3年後、ついに光が与えられた。M-1が復活するって話だった。
この話を聞いたときは泣いて喜んだ、まだチャンスはあると・・・

484名無しさん:2014/10/27(月) 04:08:47 ID:v.JMI1j20
相方「なあ兄貴・・・俺たち漫才向いてないんじゃねぇか」

俺「・・・は?」

相方「客は見向きもしないし、俺たちの漫才笑ってくれる人なんてあまり見たことないし、やっぱり今はコントだよ!
コントで日本一に・・・バシィ!!

相方「いてっ」

俺「アホ!!今さら路線変更したって底なし沼に突き進んでいくようなもんだよ!!大体お前にそれなりの演技力とか才能あるのか!?
コントはな舞台やメイクや音響そして演技それをつかって初めて笑いを作る事だぞ!!お前にそれができるのか!」

相方「・・・」

俺「コントはコント、漫才は漫才、俺たちは 漫 才 師だ!!」

相方「・・・」

485名無しさん:2014/10/27(月) 04:13:43 ID:v.JMI1j20
俺「・・・わかったらもうなんも言うな・・・」

相方「・・・なぁ兄貴」

俺「?」

相方「兄貴はなんでそんなに漫才にこだわんだよ?」

俺「それは・・・・・


・・・楽しいから」

相方「・・・はぁ?」

俺「じゃ、店出るか」
<マイドーアリガトーゴザイヤシター
相方「・・・著、っちょっと待ってよ兄貴!!」

486名無しさん:2014/10/27(月) 04:24:38 ID:v.JMI1j20
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チリンチリーン
俺「う〜ん風が気持ちいいなぁ・・・」

相方「・・・」

俺「・・・なんだ相方まだ引きずってんのか?」

相方「・・嫌そうじゃなくてよ・・・なんかこう・・・」

俺「?」

相方「・・・やっぱいいや」
カクッ
相方「おい、兄貴!前!!前!!」

俺「おお!!」
キーッ
<アブネーゾ!キヲツケロー!

487名無しさん:2014/10/27(月) 04:28:21 ID:v.JMI1j20
俺「すいませーん」

相方「前向いてよ兄貴ー」

俺「誰のせいだ誰の」

相方「・・・なあ兄貴」

俺「ん?」

相方「俺たち…売れるかな〜」

俺「何言ってんだ、このm-1で俺たちはスターになる!!ここで踏ん張る時期だ!だから頑張ろうぜ!」

相方「・・・うん!!」

俺「おっしゃ!ターボ全開で事務所に戻るぜー!!!」

相方「おー!!」

シャコシャコシャコシャコシャコシャコ

俺「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

相方「うわああああああああ!!ちょっと兄貴これ死ぬこれ死ぬって!!!」

俺「うっさい!!!ターボ全開って言ったろ!!」

プップー

488名無しさん:2014/10/27(月) 04:33:47 ID:v.JMI1j20
相方「ちょっと兄貴!!前にトラックがトラックが!!」

俺「おうちょっと待ってろ!!このブレーキで!!!」

キキーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・

俺「あれ?」

相方「どうしたの兄貴?」

俺「ブレーキが効かん・・・」

相方「・・・えええええええええええええええええええええええええ!!」

俺「この・・この・・・」

ピン
ブラーン

俺相方「「・・・・・・・・」」

俺相方「「いやあああああああああああああああああ」」

俺「やべぇぶつかる!!!!?」

相方「兄貴いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

489名無しさん:2014/10/27(月) 04:36:55 ID:v.JMI1j20
プーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺相方「「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」





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芸人な俺
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-------------------------

490名無しさん:2014/10/27(月) 04:38:06 ID:TPwfho2c0
芸人…だと…?
面白そうじゃないか

491名無しさん:2014/10/27(月) 04:40:29 ID:v.JMI1j20
今日はここまでにしますm-1復活はマジらしいですねwwww
てゆーかウィッチ出てきてねぇwwwww

こんな文章ですがこれからよろしくお願いします。有難うございました。

492名無しさん:2014/10/27(月) 11:16:56 ID:TPwfho2c0


493名無しさん:2014/10/28(火) 17:10:34 ID:8UujEB6g0
芸人とはまた珍しい選択だな
乙乙

494黄色の15:2014/11/05(水) 14:57:39 ID:Rmq6bzp.0
あんまり面白くないかもしれないが、書き込んでいいのだろうか?
みんなの意見をくれ〜

495名無しさん:2014/11/05(水) 16:17:54 ID:WM1OGK5s0
>>494
自分の書きたい事書く所だし大丈夫よ
それに書き込まないと面白いか否かも解らんよ

496名無しさん:2014/11/05(水) 16:50:49 ID:R65QnjYE0
>>494

ゴーゴー

497黄色の15:2014/11/05(水) 18:16:31 ID:Rmq6bzp.0
わかった。

498黄色の15:2014/11/05(水) 18:19:49 ID:Rmq6bzp.0
被撃墜数の多い俺

5月17日、第302海軍航空隊は何時ものようにB-29の迎撃に出撃した。
この日は珍しく空の視界が良かったため雷電の出撃も許可された。
俺は何時ものように愛機の雷電の座席に座る、無線から僚機の声が聞こえる。
「俺一飛曹!今日こそはB公のやつを叩き落としてやりましょう!
最近は出撃も少なかったし、一飛曹が墜とされて怪我したから出られなかったんですよ。」
が俺に言う。
「撃墜されて怪我したから出れなかったのは俺が悪いが、もう少し遠回しに言えよ。俺の被撃墜数が多いのは知ってるだろ?
他の上官だったら後で張り倒されるか、抗命罪で軍法会議だぞ?」
と俺が釘を刺す。
「すみません。とにかく頑張りましょう?」
と僚機が話を逸らす。
「まあ、いい。やられてばかりでは格好がつかないからな。」
と俺が言う。
無線で話していると、ようやく俺たちの出撃の番になった。
俺は機体のスロットルを開き機体を加速させ、離陸する。こんなことを言えば上官に何言われるかわからんが、我が国の機体ではもうB-29やP-51には対抗できない。
だがあるものでやらなければならない、それに俺達がB-29やP-51を墜とさなければ我が国民に被害が及んでしまう

499黄色の15:2014/11/05(水) 18:40:20 ID:Rmq6bzp.0
米軍の機体は与圧式の操縦席があるが我が国にはそんなものはない、だから高度1万mまで上がるのは一苦労だ。操縦者の肉体だけではない、機体にも過給機が無いため同じように高度1万mに上がるのは辛い。
下手をすれば敵に近づく前に発動機が止まるか失速して墜ちることだってある。前に経験の浅い予備士官が雷電で操縦ミスで死んだのを見たことがある。
高度8千mにようやく上がる。そうするとP-51が一斉に俺達迎撃機に殺到してくる。
「部下1三飛曹!部下2三飛曹!P-51は適当に相手してB-29をやれ!戦闘機より爆撃機を優先しろ!」
俺が無線で怒鳴る。
「了解!」「了解!」
2人からの返答を聞き俺はまずB-29の周りに張り付いているP-51に照準を合わせる。
それに気付いたのかP-51はこっちに向かってくる。誘われて来たP-51を1機撃墜する、さらに向かって来る敵は横から攻撃するように言っておいた僚機の部下1達に奇襲させて墜とす。
「これで丸裸だな!墜とさせてもらう!」
今は亡き先輩が俺に教えてくれたB-29の弱点である機体の真下の爆弾倉。ここには爆弾だけでなく燃料タンクもあるため、上手くいけば一撃で墜とせる。俺はスロットルを全開にして突っ込む、B-29が対空用の機銃を撃って来るがそんなションベン弾じゃあ雷電は墜とされないぞ。
そして銃撃を繰り返すと燃料か爆弾に当たったのかB-29は胴体が爆発し真っ二つになり墜ちて行く。しかし1機撃墜しただけではどうしようもない、米軍は俺達とは違い物量で押して来る。
次の敵機を狙おうとしたその時だった、突然真下からの銃撃を受けて機体に火がつく。しかもB-29の破片がいくつか飛んで来て身体のあちこちに刺さる。頭には刺さりはしなかったが、当たったせいで頭が割れたのか視界が真っ赤に染まる。
そのまま俺の機体は背面飛行しながら墜ちて行った。
「俺一飛曹!俺一飛曹!小隊長!」
僚機達が必死に叫ぶが俺の雷電が機首を上げることは無かった。

500黄色の15:2014/11/05(水) 18:50:16 ID:Rmq6bzp.0
ウィッチーズはまだ出てないがとりあえず、出だしはこんな感じなんだ。
意見があったら言ってくれ。

501名無しさん:2014/11/05(水) 18:53:04 ID:tHTmOyNE0
あぁ、別の人か

502名無しさん:2014/11/05(水) 19:43:39 ID:R65QnjYE0
別の人?

503名無しさん:2014/11/05(水) 19:45:05 ID:sZGGK41.0

誰ルートになるんだろ

504黄色の15:2014/11/05(水) 19:47:45 ID:Rmq6bzp.0
一応エイラルートかエイラーニャルートにするか悩んでいるところ

505名無しさん:2014/11/05(水) 19:50:10 ID:tHTmOyNE0
乙乙
似たような名前の作品があったもんでね

506黄色の15:2014/11/05(水) 19:53:39 ID:Rmq6bzp.0
さっきのつづき
1944年 ブリタニア
「いやー久しぶりに手応えのあるネウロイだったな!今までずっと楽な出撃ばっかだったし。」
シャーリーが着陸した基地の滑走路で言う。
「気が抜けているぞリベリアン。今またネウロイの攻撃があったらどうする?」
ときつめの言い方で釘を刺すバルクホルン。そんな話をしていると上空から航空機のエンジン音が耳に入る。
「おいバルクホルン、この辺に航空機が離発着できる場所ってあったっけ?」
シャーリーが少し不安げに聞く。
「ここぐらいだがここには戦闘機なんて置いてないぞ?」
バルクホルンも少し冷や汗を書かながら言う。そう言って音のする方を見上げる。なんと戦闘機が墜ちて来ていた。
「「「「「「「「「逃げろー!」」」」」」」」」
夜間飛行に出撃するサーニャ以外に出撃していた10人はタキシングしていたはずなのにロケットにも負けないスピードで逃げる。
その瞬間ドーンと言う音と共に戦闘機が滑走路に激突した。どうやらそこまでスピードが出ていなかったため滑走路が壊れることは無かった。
「何なんですの*こんなところに戦闘機なんて!」
ペリーヌが癇癪を起こす。皆が口々に話していると、上から焼け焦げたパラシュートを付けた男が落ちてきた。
男は気絶しているらしく動かない、しかも身体のあちこちを怪我している。
「宮藤さん!今すぐ治療してあげて!それと医療班を今すぐ呼んで!」
ミーナが的確な指示を出す。
「どういうことだ!この辺で戦闘機が飛んでるなんて聞いてないぞ*」
美緒が管制塔に怒鳴る。
「こちらも捉えたのは今なんです。報告が間に合わなかったんです、申し訳ありません。」
と管制官が申し訳なさそうに言う。
「事情はあいつが目覚めてから聞くとして、滑走路がな…片付けが大変だな。
整備兵達に頼んでこよう。」
と美緒が言いながら格納庫にタキシングして行く。
「それにしても見たことない機体だったな、何処かの国の新型か?」
バルクホルンが考え込む。
「考えても仕方ないさ、とにかく格納庫でストライカーを脱がないと。」
とシャーリーはルッキーニを連れて格納庫へ向かう。

507名無しさん:2014/11/05(水) 19:58:58 ID:sZGGK41.0
続き早いなw
あともう少し改行したほうが読みやすいと思われ

508黄色の15:2014/11/05(水) 20:50:51 ID:Rmq6bzp.0
了解、改善するわ

509黄色の15:2014/11/05(水) 21:03:34 ID:Rmq6bzp.0
書いたはいいが次がいつになるかわからん。スマソ

510名無しさん:2014/11/06(木) 19:55:47 ID:0lpgu2LE0
ああ、やっぱり別人なのか
前の人は黄色の13だね

乙乙

511名無しさん:2014/11/06(木) 21:17:35 ID:4rzlvsiE0
最近更新が増えつつある??

512名無しさん:2014/11/06(木) 23:53:57 ID:bTfmHCJI0
ゴミばっかりだけどなー

513名無しさん:2014/11/07(金) 01:44:27 ID:GNBO6ktQ0
>>512が神SSを書くと聞いてアフリカから来ました

514名無しさん:2014/11/07(金) 03:02:03 ID:0oftj8Qw0
>>512が面白い話の書き方を教えると聞いてアンドラからきました

515名無しさん:2014/11/09(日) 20:31:03 ID:4Ri0VIaY0
ルート分岐させて複数ヒロインもいいなぁとか考えてる

516短編『ボレロエロウ』:2014/11/12(水) 23:58:30 ID:BoBF.WIk0
短編『ボレロエロウ』


俺「ちょっと待っててください」

宮藤「は、はぁ」

夕食前だというのに、特別に分け与えた日本料理を黙々と頬張る男に対し、呆れ気味の少女。

俺「うまい」

明日基地を出発する前だというのに、絶えずに懇願してきた手料理を差し出してくれた魔女に対し、感謝感激の輸送機パイロット。

宮藤「時間は大丈夫ですか?明日は出発だから俺さんは身支度とかありますし、それにこの後食事だからすぐみんな来ちゃいますよ?」

ここに2人だけでいるのには理由がある。ウィッチ専用の食堂に男がいたら、当然懲罰が下る。しかしそうまでしても宮藤に伝えなければならない。手料理を頂きたいのもあったが、それは実行に誘導させるための策略。これから俺が口にするだろう宣言に真意が込められている。

俺「ごちそうさまでした」

宮藤「あ、おそまつさまでした」

この基地での対ネウロイ新型強化輸送機のテスト任務が終了したため、俺は明日出発しなくてはならない。その前にどうしても成さなければならないことがある。例え軍規に歯向かったとしても。腹ごしらえを済ませ、準備は整った。

俺「宮藤少尉、実はお話があります」

立ち上がって椅子から離れ、手を後ろに組んで背を向けたまま緊張の面持ちを伏せて喋る。言うぞ、俺は。ついさっき食堂に侵入するという違反を起こしたんだ。それに、俺に侵入を許した彼女は共犯者となった。だからもう何を破っても、何を起こしても怖いものはない。たとえ、俺に社会的な死が訪れようとも、生命的な死が訪れようが構わない。
そんな緊張をする程に確信している。

ファンタジスタが書き垂らしたノスタルジック全開ポエム感情論の雰囲気物語などの死ではなく、養豚の糞を暴食させられながら永遠に皮を剥がされ続け苦楚な拷問を一身に受け止めながら閻魔様に犯されようとも満悦である達成感を伴った演技要らずの顔面で死んでゆくことも厭わない。
そんな誇張をする程に覚悟している。

517短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:02:47 ID:XjWxl/Yw0
俺「この純粋を超えた純正の願いの為ならば、幾多の辛酸を嘗め魂を地獄に落とすことも辞さない」

宮藤「なんていいました?」

俺「いえ」

宮藤「なにかむずかしそーなことを…」

俺「声に出ていました。少尉、」

宮藤「はい?」

俺「その…」

瞼を閉じ大きく深呼吸して息を吸うと鼻腔がより広く開き、脳に酸素がすうっと充満した。吐息と共にぴんと張っていた全身の毛さえも朗らかになり背筋の緊張も解れる。眼を見開く。食堂の鏡に写る自分と視線が会った時、桁がはずれた。希望の光が反射する。お前はなんでもできる、成功する未来しか直視できないと刺激が走る。そして只今から実行する計画への清らかなる雰囲気作りの為か、高尚なクラシックを流そうと近くのラヂオを捻った。

俺「宮藤さん、大変申し訳御座いませんが…」

振り返って宣言をする。

俺「俺がリーネちゃんを」

胸の高まりと同調するように…

俺「レロレロしゅる」

ボレロは流れ出した―― (BGMを流しながらお読みください)ttp://m.youtube.com/watch?v=vgpiJLAbSs4

518短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:06:37 ID:XjWxl/Yw0
宮藤「あ、そうです…へっ?」

俺「先に親友の宮藤ちゃんに宣言する。本当にごめん」

ちゃん付け。もはや敬語など気にするものか。俺は今日、どうせ死ぬのだから。

宮藤「えええっ!?」

俺「ごめん。本当にどんなことをしても舐める」

宮藤「お、俺さん…?」

俺「頭からつま先まで、生毛も含めて1ミクロの隙もなく、全て、誠心誠意――」

気が狂ったのかと俺を見ているだろう、ハイライトの抜けた宮藤の困惑した目。ぶれる瞳孔は心の震えを表しているだろう。だが言わせてもらう。何と罵られようが蔑まられようが、俺は確実に。

俺「――ジュルジュルさせてもらうたい」

ぺりょりぃ!

宮藤「いゃぁ!!」

俺「逃げても遅い…!」

回り込んでドアを閉める。

俺「リーネちゃんの場所を吐け」

宮藤「教えませんっ!」

519短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:09:38 ID:XjWxl/Yw0
俺「本日の食事当番は宮藤ちゃんで舐め取りがいのあるリーネちゃんのことだ懇意的に手伝うに決まってるし俺に分けていた日本料理はしじみなどの海鮮出汁の味噌汁でメインは別に存在する出来上がってないから手間とバランスを考え同じ海の幸でディナーの腕を振るう気だろう食材の調達はまだだ今日の献立は何?」

宮藤「えぇ!?」

俺「今日のメニューぐらいは教えてもらってもいいだろう!」

宮藤「でも…」

俺「いいにょね!?」

噛んだ。

俺「いいにょねぇ!?」

宮藤「に、にょ?…鯛の盛り合わせです…」

俺「女体の盛り合わせ…!?」

つまり素材は。

俺「リネット・ビショップ…!」

宮藤「はぁ…?」

520短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:12:48 ID:XjWxl/Yw0
俺「おい、同級生」

宮藤「あ、私ですか?」

俺「同級生」

宮藤「は、はい…」

俺「料理の素材は何処!」

宮藤「そ、素材なら基地裏の地下倉庫にありますよ?」

俺「つまりは、そこにいる…じゅるっ!」

ついつい涎が垂れてしまいそれを興奮冷めならぬ熱い手で拭う。その行為を見た宮藤の背筋には、悪寒が虫のようなものとなって数匹迸る。
実際に、見知らぬ「虫」が床をさっと横切った。

宮藤「いっ、いやぁ!!」

俺「ひいてるんじゃない…!」

彼女の肩を掴んで押さえ、思いの丈を訴えかける。

宮藤「ひ、ひぃあ…!」

俺「リーネちゃんの体をぺろぺろぉっ!舐めたいっていうのは性別が男として生きてるうちに誰がしも、誰がしも考えることなのでふ、ふっ!ちゅぱちゅぱもしたいのあおぉぉぁぉぉっ!!よ、そうなの。本気で発言してる!でも実行しない側の人間だったんだよ、俺も本当は…だけどそろっちゃったんだ想像通りに俺のコン!ディ!ションも、機会も、憧れのリーネちゃんにペロッ!できるレロッ!可能な距離にヌロッ!来ちゃったんだもんっね!ミュロッ!いくしかねぇっ、じゃん!!見ろ、秘密のリーネちゃんの写真。常に体液で濡れてて湿気、でも今は違うんぞぉっ!!実物にペタペタペタペタペタペタペタペタ、もう、歯でも口、全体でも!タッチュ!レロ、コロロ、にょもんゅゆゆゆゆぬぬぬぬぬくぬく!!!よく味わう、汚くなく、汚いはずがないにょ!ビショップベースの美味しいスープで、15年モノでもプリュプリュしてる?ちょっぴり大人の隠し味かなで、プルンプルン、ゆゆんゆゆ!ああっ、飲みたい!!!これでなんにもしないっつったら、これ…いけませんよ、紳士なんて勿体無い、ゔぁん、そう、素直!俺!リーネちゃんのつま先から天辺ぴょんって跳ねたチャーミングなお毛毛までいやもっと、スメルと共にりねっとぉ抱きしめて!サクリファイスペロペロァンドゥ、吸収ぅだと?ちうちうちゅっん、か!?彼女のそれを…ビショップ成分を…リーネちゃん液を…身体からお出になったものを俺の体内に!?…いれぅッ!!リーネちゃんのモノっが混じり合うの遺伝子に、細胞が…ちゅっちゅしちゅうにゅぷ?それって…超、気持ちいい。誰も知らないホクロの位置とか、似そう。毛の色も、似そう。それはつまり未来へと生命を紡ぐ、合体!!こういうこと!!そう、出し惜しみしない方が相手にとっても真摯な態度なわけで、いまこうして生きてるわけで、ここに俺は立ってるわけで、あなたがいるわけで、それこそ本来の真摯で紳士って、とりあえずレロレロレロレロしてぇんだよ!!舐めるだけならええだろ!!あっ、あああっユクっユクユクぅ!!!!頭にリーネちゃんのヴィジョン、ミライがお…れ…ノ、いっぱいの舌まみれのダエーキ秘薬でテキゴウカされてゆく〜♬繁栄繁栄!リィィィィィネェェェええええええ♫ぱりゅ!?!?!?イきそうなのか!?!?!?舐めりゅ…!」

宮藤「あ、そうですか」

坂本「なにごとだ!!」

521短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:16:55 ID:XjWxl/Yw0
ドアが痛めつけられるように騒々しく開いたら、坂本は鋭い剣幕。
食堂での騒ぎを嗅ぎ付けたようだ。

坂本「先程から悲鳴と演説のようなものが聞こえていたが、ここはそのような場所ではな…操縦士の俺?」

俺「これはこれは」

宮藤「…さっ、坂本さん!この人危険です!」

坂本「どういうことだ。ここはウィッチ以外の出入りを制限しているはずだが」

宮藤「そ、それは…!むぐぅ!ひゃっうっ…!?」

宮藤の口の辺りをアダムタッチのようにソフトな手の仕草で包み込んで塞ぐ。

宮藤「あっ、くっ、くすぐった…ぃ」

この日のために鍛え上げた指遣いだ。最も、先にリーネちゃまにちゅかう予定だったが。

俺「それは、彼女が俺をこの部屋に入れてくれたためです」

宮藤「んんーっ!?」

坂本「宮藤が?」

俺「えぇ。何故なら俺達はそのような仲、いわば他言無用なディープな関係」

坂本「……はぐらかさず本当のことを口にして欲しいな。場合によっては、斬る」

俺「なんとまぁ…!」

522短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:20:25 ID:XjWxl/Yw0
さすが扶桑の魔女たる脅威の重圧だ。魔法力を失った彼女だとしても俺など数秒で細切れにされるだろう。

俺「武士め!貴様がいなければ今すぐにでもリーネ殿へ推参したる次第だと申すのに!」

坂本「?」

宮藤「あ、あっ、ひっ、ふぇっ…!あっあの、く、口はぁっ…!」

触るか触らないかの瀬戸際、産毛をなぞるような撫ででの口止め、もはや口攻めは続く。

坂本「…なぜ此処にいると聞いている」

俺「そっ、それは、腹を空かせたので、飯を頂こうかと宮藤に頼んで…」

坂本「ほぉ、しかしそれは規則に違反するな。バルクホルンほど口を酸っぱくして言うつもりもないが、罰は受けてもらう」

まだこれからだ、ここで終わるわけにはいかないの!

坂本「俺操縦士、その手を離して私に同行してもらう」

近付く坂本の冷徹な表情。しかし打開策は見当たらない。その獲物を捉えた目を見るたびに身体は震えてしまう。
特に手が。

宮藤「ふひゃあぁっ…!?へっ、変な感じぃ…もっもうやめぇ…ひゃううっ?!あっ…あぇぇっ!?」

坂本「どうした、宮藤」

俺「これはっ…!」

数々の試練を乗り越え会得したこの指遣いに振動が加わったことにより施術する快楽は次のステップへ向かった!

523短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:23:40 ID:XjWxl/Yw0
バイブレーター機能を伴った指先が顔面の全神経に悦を伝達させたのだ!
既存の特訓では越えられなかった壁をぶち破り、彼女を快く桃源郷へと誘う!

俺「これは、リーネちゃんへ是非とも試したいな!」

ブルブルブルブル!ペタァ…ペッ……タァ…!

宮藤「こんなっ、知らな…ふあぁっ!?」

坂本「何をしている、俺!?」

俺「へっ、あなたのお陰です――」

宮藤「やっあ、あああっ!?もう口はやめふぇくだひゃ、ふあああっ?!?」

俺「どうだ!?新しいだろう!?」

坂本「いいから手を離せ!」

俺「いいや、まだいけるべ。もっと快楽は追究できるもの」

宮藤「あっ、ふああああっ、ああああっ!!」

俺「実は口が好きなんか宮藤ちゃ」

ぷしっ!じわぁ…。

俺「なっ!?」

宮藤「やめ、れぇっ…あ、あうう!?」

524短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:26:44 ID:XjWxl/Yw0
ぷしゃああああ…。

宮藤「あっ…!ああっ!…う、うええええっ、あ、あ、あっ!」

俺「……」

坂本「え?」

ビクン、ビクンっ!!ぷしっ!!ぷしっ!!

俺「みっ…宮ふ汁…」

ぷしゃああああああああああああああ!!!!

俺「……」

坂本「……」

宮藤「いいっいやぁ!?みないでぇ!!ご、ごめんなさっ…」

ちょろろろろ、じわぁ…。

俺「……あの」

ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん…。

宮藤「うううっ…」

俺「えと、その…ごめんね…」

525短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:30:31 ID:XjWxl/Yw0
ぷしっ!

宮藤「ひぐっ!!」

俺「残っ!?」

ガクガクガクガク…ぺたん。

俺「……」

坂本「…いや、うん」

宮藤「ひっく…もっ、えぅう、なんでぇえっ……」

俺「……」

坂本「……その、なんだ」


俺「――ってな感じになるまで試す」

宮藤「いやですーーーー!!」

俺「そのどうしようもない微妙な雰囲気さえもプレゼントだ!!!」

さわわっ!

宮藤「ふゅう!?」

ビクッ、ぷ…ぷ…ぷし。

526短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:33:46 ID:XjWxl/Yw0
宮藤「いやっ!!坂本さんんっ!!」

俺「こら、逃げるな!」

宮藤「それに私じゃなくてリーネちゃんじゃないんですか!?」

俺「なに…?」

俺の手を拭い払った宮藤は坂本の後ろに隠れる。

坂本「さぁ、覚悟はできているな、俺」

俺「宮藤ちゃん、今、リーネちゃんに標的を変えさせなかったか…?」

宮藤「えっ…?」

俺「仲間なら敵から身を庇うはずなのに、身代わりにするとはどういうことだ!!」

その敵はお前だと宮藤は言いたい。

俺「ストライクウィッチーズだというのに、呆れたぜ!」

どの口が言うかと坂本も言いたい。

坂本「…さぁ、これ以上の横暴を許すわけにはいかない。覚悟し」

宮藤「ひゃうっ!?」

坂本「ん…なんだこの湿気は」

527短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:36:48 ID:XjWxl/Yw0
その瞬間!
坂本が抜刀しようと鞘の先を指先でくいと上げた時、後ろに隠れていた宮藤の股関節付近に触れた。
軽く、濡れているようだが?

坂本「み、宮藤…まさか本当に」

宮藤「ちっ、違います!!これは汗です!俺さんが変なこと言うから緊張してで…!」

坂本「しかしこれは…」

俺「チャンスだあああああ!!!」

坂本が宮藤に気を取られた隙を突き、駆けた俺は坂本の隣に飛び込んだ!

坂本「しまった!」

咄嗟の行動に反応し遅れた坂本は身体を引いたが、背に宮藤の頭が当たってしまいバランスを崩す!
共に衝撃で彼女の豊富な両胸は方向を失った慣性によって西洋冷菓子のように上下左右、四次元的に大きく揺れ動いた!

俺「おおっう!?」

坂本とすれ違う瞬間、その躍動を逃さない俺の手は、意志と理性に反し、抗えぬ性の遵まま豊満な立体へと導かれてゆく!

俺「まっ…ままよ!」

坂本「なにっ!?」

自分の疾走した風によって招き靡いた彼女の髪の匂いは男性的嗅覚を擽り、神経を伝わって欲に更なる拍車が掛かる!
翻弄されたまま、要するに「坂本美緒のおっぱい」へと手を伸ばす!

528短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:41:24 ID:XjWxl/Yw0
俺「なむさっ…!!」

坂本「いい加減にっ…!」

伸ばした手が揉む瞬間をデモンストレーションするように空を切ってわしゃわしゃと邁進する!
残り10センチメートル!
しかし抗う坂本の手刀が俺を弾こうと首に狙いを定めて跳ね上がった!

俺「ちぃぃい!」

間に合うか!?
勝負が決まる瞬間、2人の差は1秒30フレームアニメーションの1フレームに値する!
どちらが1フレーム先に動けるか!?

それ程に僅差!

俺「ちぃぃぃぃい!!」

首への距離は1ミリメートル!
そしてなんと、先に坂本の手刀が俺の喉元へと接触し、打撃が生じる!
鈍い音がスローモーションで鳴り響いてしまった!

俺「ちぃぃぃぃぃぃぃい!!」

熱さと痛み!
衝撃がリンパ管、鎖骨、脊椎へと骨の髄まで響いてくる!
ズキズキズキィ!

俺の負け…。

529短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:44:28 ID:XjWxl/Yw0
………だが、

俺「ちいいいぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!」

坂本「あうっ…」

俺「ち…ぃ…ッ」

完全には揉めなかったが…弾かれた俺の指先、中指は、

俺「ち…ィ…いィ…ッ…っ……!」

確かに坂本の、

――…ピ…――

乳房の「首」を、

俺「ちぃっ…」

――…ピっ…――

捕らえていた!!

――…ピンっ…――

坂本「んああっ…!」

俺「くびいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃいいいィィィィィいいい!!!!」

530短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:47:57 ID:XjWxl/Yw0
不意に敏感な部分を小突かれたことによる刺激に坂本は、軽く顎を上げて仰け反るように身体を捩った。

一方、俺は激痛と共に、首の形を変えられたのかという程に視界が回転し、重力に引き寄せられ地面が迫ってくる。
そうか、俺は転んでいるのか!

ここで倒れたら、リーネちゃんに我が唾液を授けられない。

なるものか!!

俺「ちくびいいいイィ!!!」

脳が体に送った「身体を立て直せ」と「坂本美緒のおっぱい」という新規の命令は激しい痛みと煩悩を遮断させ、弛んだ運動神経に鞭を打つ。

「坂本美緒のおっぱい」の先端に触れたのは相当な戦果。至福。

つまり「坂本美緒のおっぱい」を触ったことによる充実感、背徳感、快感が肉体的対応能力の糧となりて、俺は体を持ちこたえさせた!

坂本「なにをする…かぁ!」

俺はすぐさま出口へ走る!
ほんのり紅潮して胸元を気にする坂本の顔をニヤリと流し目で対応した。紳士の余裕!

宮藤「はわわ…」

隣の小娘は跳びはねた坂本の胸に夢中だ。

痛みはアドレナリンで緩和された。
あとはリーネの元へ。

531短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:51:03 ID:XjWxl/Yw0
勢い良くドアを破るとともに解放感溢れる会心の発声!!身体の芯から果てなき遠方へと声が行き届くようだ!!

俺「リーネ、リーネ、リーネ、リーネ、リーネ、リーネエエエエェーーー♫えっ!?リーネちゃんが6カウント?シックス!?せっ!?」

舐めるために駆け出した!――


ミーナ「――なに?ホルン?」

バルクホルン「どうしたミーナ、呼んだか?」

ミーナ「いいえ、違うの。ホルン、楽器の音みたいなとても太い音が…もしかして誰かの声かしら」

バルクホルン「まさか、この基地でそんな声を出す奴はいないはずだ」

ミーナ「それもそうね…」

バルクホルン「…いや、待て、近付いてくるぞ!」

ミーナ「な、なにかしら…?」

俺「俺がーーリーネちゃんとせせせせせせせっ、せせせせせせっく、くっ、く……くっ…すすすすす!!!

興奮冷めならぬ妄想により、ついつい吃音になってしまう。

バルクホルン「どうなっている…あれは、俺か!?」

ミーナ「俺さん?」

俺「あっ、やばっ…ちょっと、あ、妄想し過ぎてこれ…ダメですって」

532短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:54:40 ID:XjWxl/Yw0
気が付けばムクムクと、身体は前屈みになり過ぎて速度を落としてしまう。

坂本「危険だミーナ!バルクホルン!そいつを捕まえろ!」

ミーナ「美緒?」

坂本「そいつはリーネを狙っているケダモノだ!」

バルクホルン「ケダモノだと?」

前からはミーナとバルクホルン、後ろからは坂本と宮藤の挟み撃ち!廊下なので尚更逃げ道は皆無!

宮藤「油断できませんっ…!」

バルクホルン「そうと分かれば私が相手をしてやる」

しかもいきり立った俺の愚息が揺れ動いて太腿にペチペチと当たり、運動能動率を低下させている。
このままではまずい!

バルクホルンの固有魔法が発揮され、耳と尻尾が生えた。
彼女は大きく息を吸うと共に腕を横へ伸ばし、所謂ラリアットの体制になった!
そして勢いよく脚を踏み込んで俺へと駆け出し、地面にヒビが入る!!

俺の顔面に向けて迫りくる、怒号と覇気!

バルクホルン「ずおりゃあああああああああ!!!」

死ぬ。本当に死んでしまう。
しかしリーネちゃんの皮脂を堪能する前に消えては元も子もない。

533短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 00:58:02 ID:XjWxl/Yw0
飛んでくる剛腕!回避するためにはタイミングよくブレーキを踏み、前に屈んだ身体を全力で仰け反らなければならない。
しかしそうしたら俺のもっこり息子がズボン越しに挨拶をしてしまう!
ちょっと恥ずかしくて戸惑う!
いや、今は気にしている場合ではない!!

俺「うわあああああああああ!!」

スピードを落とすため踵で摩擦を起こしたが勢いは止まらない。

30センチ先は死!

無理やり身体を仰け反らせた!
ブリッジならぬリンボーダンスならぬ姿勢になる。

寸でのところで俺の真上をバルクホルンの腕が通り過ぎていく…はずだった!

しかし速かった、仰け反るのが!計算を誤ったのだ!!

――ビンッ――

上半身は回避できそうだが、仰け反り過ぎたためか、不覚にも下半身の増設された我が主砲が剛腕のデッドラインに入ってしまっている!!

破壊される!

主砲と連携している二つの弾倉がキュっとなって前立腺の警戒アラームは鳴り響き、冷や汗が滲み出た。
しかし、ふと予感が過る…もし主砲にバルクホルンの腕が命中するのであれば、それはそれで気持ちいいのではないだろうか!!

バルクホルン「なにっ!?」

俺「お願いしましゅうううううううううううううう!!!」

534短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:01:49 ID:XjWxl/Yw0
反り返った俺の身体の反り返った男根にラリアットが当たる直前、俺は興奮し過ぎて男根が尚更グインと反り返ってしまった!

そして腕が通り過ぎる!!

バルクホルン「うわあああっ!?」

完全に命中はしなかったが…

俺「んはあっ…!」

バルクホルンの腕は俺の息子の裏筋をかすめ!!摩擦が起き副交感神経が刺激される!!!そして快楽によって分泌され先走る透きとおった歓びの液が俺のズボンを通り越し、彼女の高貴なる軍服の袖さえも透明に染め上げた!!!!

バルクホルン「うわああっ!なんだこれはああっ!?」

俺はほぼイきかけたが、ここは耐える。濃厚な原液は後のお楽しみにとっておいてもよさようだ!!

俺「ふふふッ!心地良いな大尉!」

彼女の腕にアレをつけてしまうこと自体、とてつもない背徳を痛感!

バルクホルン「ひいいっ!?」

ミーナ「トゥルーデ!…させないわ!」

隊員の動揺に困惑しそうな司令官だったが、優秀さ上に、すぐさま俺を捕らえることを優先した!

ミーナ「待ちなさいっ!」

しかし俺は快感に身を委ねるまま、ミーナの手を酔拳使いの如く避け、足を軸とし滑らかにロールして彼女の背後を取った!!
そしてその遠心力を生かし、腰を前に出すことによって回転するモーニングスターとなった我が息子を、

535短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:04:55 ID:XjWxl/Yw0
――ブルン、ブルン――

怪異を200機以上も撃墜し、勲章さえも授けられ、大いに讃えられ、尚且つ501統合戦闘航空団の司令塔として椅子を構え、ガリア共和国、ロマーニャ公国をネウロイの手から解放し数多の戦果を挙げた、その高貴なる「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐の尻」に、

――ペチイィィィィイイン!!――

打ち付けたのだ!!!!

ミーナ「ひゃあああああっ!!!」

飛び散る賛歌の雫!

俺が聴くには勿体無い一兵士としてはなく一女性としての声もいただいてしまった!!!
これはいいものだ!!

宮藤「ミーナ隊長!?」

坂本「なっ…ミーナさえも…!」

息子に響いた音と柔らかく張りのある触れ具合に背筋がゾクゾクと身震いを起こし、先っちょから露を撒き散らした!

ここで俺はある異変に気が付く!

俺「あれ…?俺いつズボン脱いでたっけ?」

いつの間にかズボンは消え、俺の丸々な下半身が顕になっているではないか!?
そして気が付けば、上半身も!

俺は真っ裸になってしまっていた!

536短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:08:37 ID:XjWxl/Yw0
俺「どういうことだ!?まさか身体が勝手に脱ぎ出して…?」

しかし振り返ると、他のウィッチ達もみるみると服が透けていっている!

びくん!

俺「なっ…あ?!」

びくん!びくんっ!

宮藤「ふわあああっ!?!?」

バルクホルン「な、なんだこれは?」

まさか俺は思念が具現化する能力を身につけたのか。目の前には乙女の悲鳴と共に恥じらうヌーディストが次々と出来上がっていき、聳える亀さん象さんキメラの頭は常に天井を仰ぎ続けた。

じりっ…びくびくびくびくっぅ!!

俺「あっ…あ…触って…ないんのにぃ…!?」

予測不可能な現状に、ノロマと自負している亀さん象さんキメラはもう我慢できない駆けさせてくれと全力疾走しそうになって硬く鼻と首を長くし構える!
だが、広がる桃色の光景と幾度の刺激に感化されようと俺は耐えなければならない。リーネちゃんにありのまま、高い濃度を届けたい為に。

ここはなんとしても我慢。

俺「我慢っ…」

――バンッ!――

ペリーヌ「一体何が起きましたの!?わわわ、わたくし、勝手に、はっ、裸にぃっ…!」

537短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:13:42 ID:XjWxl/Yw0
俺「なぁあっ…!?」

廊下の扉が開くと全裸のペリーヌが部屋から飛び出してきた。
しかも俺にしっかり尻を向けて、前のめりで!!

宮藤「ペリーヌさん、後ろ…」

ペリーヌ「へ?…と、殿方…きっ、きゃああああああああああ!!!」

俺「ペリーヌのお…しりぃ…?」

一瞬リーネの笑顔が横切った。
だが、もう遅い!!
もう我慢することができない!!!!

撃鉄が、降ちる――!!

俺「いや、だめ、ペリーヌの尻でなんてっ…これはリーネちゃんに」

――ぴゅろっ。

俺「あ」

しかし、こうなった原因は「虫」にある!!

俺「…アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

――…アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!――

そして突如、俺の絶頂に達する声と重なり合うように、大きな警報が鳴り響いた!

538短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:17:13 ID:XjWxl/Yw0
――アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ………――

俺「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ………」

坂本「…敵襲!」

ミーナ「ネウロイ!?」

バルクホルン「こんなことをしている場合じゃないぞ…!」

目の前には白濁の溜り…。
着床能力の高い散弾を一発無駄にし果てた俺は、身体を震わせ、嫌悪感と疲労感が重くのしかかり膝から崩れ落ちた…。

ルッキーニ「いたー!!みんなこっちにいたよシャーリー!」

シャーリー「中佐、大変だ!」

幼くも艶のある身体のルッキーニと身を埋めたい二つの確かな幸せを晒しものにするシャーリーが見知らぬ機械を片手に後ろの廊下から慌てて駆けて来る。
2人も全裸だが、リーネまで我慢できなかったという敗北が枷となって垣間見るに至らず俯き、息子はふにゃんとしたままだった…。

宮藤「シャーリーさんたちも裸…」

ルッキーニ「あいっ!」

ルッキーニは蹲って抜け殻となっている俺が邪魔だからと跳び箱のように跳び越え、目の前に着地する。

しかしそこには!!

――べちゃっ――

539短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:20:20 ID:XjWxl/Yw0
ルッキーニ「う?…うえーなにこれー?」

ミーナ「……」

坂本「……」

バルクホルン「……」

大人は何も教えてくれない。

ミーナ「…そっそれで、どうしたのシャーリーさん?」

シャーリー「あたしが改良したこの探知機によると、この基地に今小型ネウロイが潜んでいるみたいだ。奴らは服の繊維を溶かす能力を持っている」

宮藤「ええぇっ…!?」

ペリーヌ「お、おぞましい…」

坂本「しかし何故、私達を裸に?」

シャーリー「さだかではありません」

宮藤「あ、そうですか」

シャーリー「ターゲットは蝶のような虫の形をしている…むっ!?反応が近いぞ!」

シャーリーの操作する探知機がビンビンと反応する。
その示す先には、俺!!

シャーリー「お、男?俺か?しかもそんな落ち込んで…どうした?」

540短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:23:49 ID:XjWxl/Yw0
バルクホルン「まさかこの一連の騒動、俺が関係して…」

ルッキーニ「あれー?あっ虫、むしー!白いの飲んでるよ?」

気が付けば、目の前の乾き始めている白濁に蝶型ネウロイが止まり、それを蜜のように吸っている!!

美味しい…のか!?

シャーリー「虫だ!捕まえるぞ!」

ルッキーニ「うー…これっておいしいのかなぁ?舐めてしらべて」

ミーナ「やめなさい、ルッキーニ少尉!!」

これに関してはさすがにといった感じで司令官は即座に少女の手を掴んで倫理観を促す!

だが、その弾みでルッキーニが舐めようと掬った指についている白い蜜がピッと飛んだ…シャーリーの瞼付近めがけて!!

シャーリー「うわっ!?な、なんだこりゃ!」

慌てふためき、異変を感じた目を閉じたままつまづき、探知機ごと俺の方へ倒れこむ!

シャーリー「ヤバい…!」

しかし、彼女は尻に入り込むネウロイが襲来した時のように、またしても探知機は壊させまいと腕で頭上へ持ち上げて地面との衝突を避けようとする。
だがその反動で綺麗な巨乳が振り子となる!!

そして俺の顔面目掛け…

――パイチイイイイイイン!!――

541短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:26:57 ID:XjWxl/Yw0
シャーリー「あうっ…!?」

俺「ぱああああああああああああい!!」

最高の巨乳を打ち付けてくださりまして、誠にありがとうございます!!!

しかもシャーリーは俺との衝突によって跳ね返り、至高な巨乳から地面に倒れ下敷きになった蝶型ネウロイを圧殺!!すぐさま戦果を上げた。
僥倖な巨乳に殺されるなんて、羨ましい虫だ。
そういう俺も、床に蒔いた営み液が幸福な巨乳に付着したがな!!なんだか夢が広がるな!!

再起動がムラムラと始まった。

バルクホルン「た…倒した?」

宮藤「これでネウロイはもう…」

ペリーヌ「しかし、先程の警報は?」

ルッキーニ「うええぇん…!わたしの虫いぃ…」

坂本「いや、待て!!」

近くの緊急電話に耳を当て状況を把握する坂本はまだ緊迫を保ったままだ。

エーリカ『肉眼でネウロイを確認!おっきいのが一体だよ!』

坂本「ハルトマンか!?…アドリア海上空に、基地へ向けて高速移動中のネウロイがいる…消滅していない…まさか、この虫が子機か!?」

ミーナ「上空のネウロイにコア、それが親機ね…困ったわ…今からだと私たちが出撃して間に合うか…」

542短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:29:57 ID:XjWxl/Yw0
宮藤「そういえば、静夏ちゃんの特訓にハルトマンさんが面倒臭がりながら付き合っていたから…」

服部『間もなく交戦します!敵機交戦距離まであと…』

坂本「ともに訓練を中断してネウロイに向かっている。しかし2人でか…」

リーネ『私もいます!』

なっ!?!?え、なに、我が妻?!俺の妻の声した今?
新陳代謝が快さにより極めて良好に、耳垢が自然と剥がれ落ち、より聴力がクリアーに。

坂本「リーネか!」

リーネ『すみません…芳佳ちゃんのご飯のお手伝い中にハルトマンさんから特訓の誘いを受けて…私もストライカーを履いて出撃しています』

ミーナ「分かったわリーネさん。3人とも、気を引き締めて…!」

リーネ・エーリカ・服部『了解!』

エースがいるといえど大型相手に3機で対抗することに、基地に残された各々は緊迫感で息を飲む。

その中で一人俺は、官能感で涎を飲んでいた。

そして服が消え去ったため床に落ちた写真に飲み溢した雫が、我が全ての体液の矛先であるリーネの像に、ぴちゃりと浸った。

俺「はぁぅ」

――びくんッ――

そうか、空だ。

543短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:33:04 ID:XjWxl/Yw0
縦横無尽の世界、ローアングルもよしズームインもよし、どの角度からでも眺め、そして従来とは異なる舐めができるであろう。写真より地上より、より多角的に。

そして、リーネちゃんのストライカーのオイルを、俺の涎と交換したい。

それで飛んでもらいたい。いや、涎だけではない。

俺で飛んでもらいたい。

俺「おあ」

――びぃんッ――

宮藤「…ミーナ隊長!私達は?」

ミーナ「ここにいる各ウィッチは全員出撃!…3人の交戦に今からでも間に合うかもしれない!」

バルクホルン「よし、向かうぞ」

俺「まかせろ…」

ペリーヌ「はい?」

俺「俺について来い裸共…っ!!」

坂本「どうしたんだこいつはまた」

俺「俺がこの基地に滞在し、実行したくともできなかった忍耐と苦悩の粛然たる日々、その涙に引導を渡す時が到来した!」

――ビィィィィィィィンッ!!――

544短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:36:30 ID:XjWxl/Yw0
ルッキーニ「なにあれー?」

シャーリー「そんなに」

俺「こっちか…我が半身の士の先端は今リーネへと方向を指している。そんな能力は持ってないがどう考えてもリーネを印している。いや俺が印すのはこれからだ。スン、この匂い…そろそろ月が近いな。彼女は安定した周期だったからな」

坂本「ようわからん」

俺「征くぞ!!」

宮藤「ど、どこに?」

俺「俺は対ネウロイ新型強化輸送機のパイロットだ。我が花嫁の御友人の方々の御脚では少々お疲れでございましょう。迅速かつ浪費を軽減した輸送を、このっ、見なさい、おいガシッと、この高等且つ教本に記載されるだろう模範的な操縦桿捌きでぅ、おおおぅ、ハアッハアッ!!あっ…イイっ、こんな感じで!!あびゅぅ!実現させる次第でございまするぉっひ!!」

――グリンッグリンッ!!!――

ミーナ「嫌ぁッ…!」

坂本「…とりあえずハンガーへ移動しよう。こんなだが、確かにこいつの操縦する新型輸送機は信頼を置く価値がある、速度も十分だ」

ミーナ「…そ、そうね…」

俺「身体を張って説明した甲斐があった」

エイラ「うぇっ、何してんだー?」

サーニャ「皆、服着てない…」

俺の後ろからさっき迄睡眠していたエイラとサーニャが歩いてきた。
まだ俺の男な裸に気付いていない。

545短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:39:34 ID:XjWxl/Yw0
俺「エイラとサーニャかっ!!」

俺が振り返り、二人の目の前に全裸を晒した。
そして操縦テクを披露した為にバージョンアップされた操縦桿が拡張され、そのままターンライッ!!!
オートパイロットになった操縦桿の先端である発射スイッチに、サーニャの、お手手の甲が、ぴとっ…。

俺「んっま…っ」

サーニャ「…え?」

エイラ「なァ!?」

俺「あぁそうだ、2人ともこの前は恋の相談に乗ってくれてありがとう。タロットとか、で、遂に俺はリーネへの愛を届けに」

エイラ「なななっ…なにやってんだコノへんたいぃーーー!!」

激昂したエイラは会話の途中に、二つの球めがけて大きく足を地獄の鎌の如く、振り下げそして振り上げる!!!

――パァン――

俺「い?」

バルクホルンの時はすんでのところで回避したが、女神は二度も微笑まない。

――めっっきゃ――

あっけなく、快楽とは意を反して、身を割く激痛が脳を占める!!

ワーニング!!!ワーニング!!!
ターンナップ、ターンナップ!!

546短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:42:59 ID:XjWxl/Yw0
俺「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛!!!!!」

…だが!こんなお決まりの定番で倒れている訳にはいかない!!!!!

俺「痛い…っ からなんだうおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「痛み」を凌駕!!
そして地獄の鎌によって変形した睾丸も一瞬にして回復!!!
「身体」を凌駕!!!!
あるのは「快楽」と「希望」のみ!!!!!
リネット・ビショップがいるから。

それだけ。

女神さえ欺く!いや女神は女神ではない。リーネが女神ということを再認識だ!!!

俺「これが魔法かああああああああっ!!!!?」

エイラ「な、な、なんだ!?」

サーニャ「あの…俺さん?」

俺は走った、ハンガーへ。そして、俺を追う仲間たち。
リーネをネウロイに触らせはしない。

リーネを守る。

リーネを守るのはリーネの家族と仲間たちを守ることに繋がる。リーネの家族と仲間たちを守るのは国を守ることに繋がる。国を守るのは人類を守ることに繋がる。

だからまず、リーネをレロレロする――

547短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:45:59 ID:XjWxl/Yw0
エーリカ「なかなかやっかいだね…」

静夏「ハルトマン中尉、援護します!」

戦局は劣勢へと傾きつつある。その新型の敵は、予想を上回る防御の堅さ。
ウィッチ達の表情にも汗が滴る。

リーネ「あの装甲を貫けば……撃ちます!」

放った弾は装甲を貫き輝く黒が弾けるとともに眩しくコアが姿を表すが、回復が迅速に行われ再度装甲に覆われてしまう。

静夏「さっきとコアの場所が違う…まさか移動型の…!」

エーリカ「――シュトゥルム!!」

風を纏い自らを弾丸と化す固有魔法で轟音と共に大型の胴体に穴を開けた!しかし回復は継続したまま。

エーリカ「はずしたか……ん、あれぇ?すごーくスースーする?」

そのネウロイに接触したため、エーリカにも影響が、まだまだ幼さが残る身体がシャランと、全裸になった。
ああっ!!!!

かいていた汗がパッと散ってキラキラとキュートな、きゅるきゃぴエフェクト!!!
ちゅるんと艶があってプニプニしていた!!

リーネ「はっ、ハルトマンさんっ!?」

静夏「は…裸…」

エーリカ「あれぇ?うーなんかさむいー」

548短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:49:04 ID:XjWxl/Yw0
そしてシュトゥルムによって舞ったネウロイの小さな破片がリーネと静夏付近を通り抜ける。

リーネ「えっ…ひゃああっ!?」

静夏「透けてってる!?」

2人の服もじわじわと透け、最年少であり大人へと変化し始めている発育のよろしい静夏の裸体は出っ張りの部分からむちぃと浮き出てくる。

かた、さこつ、ひじ、うで、むね、わき、腰、太腿、ふくらはぎ、おしり、…ふむ、ふむ、ふむ、ふむ…やがて安産型だろう。

静夏「ふわぁ…!?」

そして――


リーネ「いやぁぁぁぁあっ!」


――そこには嘗て宇宙が生まれた瞬間のような生命の美が存在した。真理を見た時、人は突如涙すると聞いたことがあったが、俺は透明ではない全身の体液が混じりリーネ色へと突然変異した涙のようなものが絶え間無く頬を伝った。全てがリーネで満たされた視界はぼやけながらも、被写体である女神の身体は脳裏に人生の走馬灯を駆け巡らせ、やがて全てがリーネのビジョンとなりて、しかし御前は最も狂おしい程に藝術的かつ今を実感させるコンテンポラリーな高熱を帯びた輝きを放っていた。熱によって涙腺が沸騰するほどに、仕草と共に震え恥じらいによって紅潮するなめらかな肌の傲慢さが、人類の遺伝というものをより一層強く表現させている。彫刻的な美を逸脱していた。俺は、見てしまった。見て感じさせられてしまった。見ていただけで達してしまった。希代な事態であるが、確かな存在が栄に浴する展望を啓示させ、遥か未来へと生命を紡ぐ裸体は俺に問い掛ける。

「どう生きる」

蒸し上がった眼を力の限り開き、その光に対しての答えは一つ――


――「レロレロしながら」


俺「――イきますうぅッ!!!!」

549短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:52:10 ID:XjWxl/Yw0
耳を貫く振動音!!高速を超え音速の世界!!!
ウィッチ隊員を乗せた新型輸送機は従来のテストで成し遂げなかった最高速度に、今、リーネへの想いにて到達した!!!!

バルクホルン「減速だ!!身動きが取れん!これじゃ輸送機から出撃できないぞ!!」

俺「あの、舐めさせてくださあああいいいッ!!!…はぁつ!?!?」

突如、最高峰の肌を俗世に晒されたことによって狼狽しているリーネは、大型ネウロイに狙われていることに気が付かなかった!!
しかし人外の声を荒げ標的をリーネへと定める怪異に興奮しながらも反応した俺はすぐさま輸送機を旋回をし盾となる!!

ペリーヌ「ひゃああっ!!」

シャーリー「おい、輸送機ごと盾になる気か!?」

俺「宮藤ッー!!外に出て輸送機とリーネを守れェ!!俺がいなくなったらレロレロできん、リーネちゃあんがいなくなってもレロレロできないぞ!!!」

宮藤「勝手!!」

輸送機のドアを瞬時の判断によって開いた宮藤は大型シールドを展開し高熱のビームを弾いた!!

俺「うわおおおおおおおお!?!?」

宮藤「ビームの威力が…強いっ…!」

間一髪であったが、宮藤のシールドで防がれども機体の側面は甚大な衝撃を被る!!
今にも壊れそうな軋む音が機内全体に荒立ち、ビームを放った方向へと機体は押し出されていく!!

しかしこのまま押し出されてはリーネに激突してしまう!!

いやいや遂にリーネへと接触することができるではないか、なんて、そんな彼女の気持ちも考えられない阿呆な考えは捨て去り、何としても押し返すことにした!!!

550短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:55:29 ID:XjWxl/Yw0
操縦桿をネウロイへと力強く倒し抵抗する!!

俺「宮藤と共にシールドを展開してくれ!!!」

坂本「どういうことだ?」

俺「シールドを一転に集中させてこのまま輸送機ごと押し込む…!!宮藤が復活した時のように、全員でネウロイを貫くんだよっ!!!俺が、リーネを救うんだあああああ!!!!」

ペリーヌ「命令違反ですわ!」

ミーナ「リスクからして私たちが輸送機から出撃して反撃するべきでは!?」

俺「…あれ、そうか!?え、ミーナの言うとおり!?」

ペリーヌ「どっちですの!?」

俺「えっと、あっ、どうしよ…うん、うん、うーん…」

冷静になって考えれば輸送機が最前線へしゃしゃり出てリスクを冒してはならない!!

リーネ『操縦してるのは俺さんですか!?』

俺「ひゃ、ぶぇっう、ふえええええぇぇっう!?!?はっ、はっ、はィ、はうえぇ!?」

無線から俺に向けての女神ダイレクトメッセージが響いた。

リーネ『守ってくれてありがとうございます…』

俺「ふなゥ…!?」

551短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 01:58:32 ID:XjWxl/Yw0
――ビクッ、ビクビクビクビクゥッ!!――

声を感じただけで本日3回目に達しそうになる。

リーネ『接触しないよう輸送機から離れました!敵の攻撃を回避してください!』

俺「しょっ、しょっかあぅ!」

――びゅっ、ぴゅぅっ――

リーネ『こっちです!私の方向へ回避してください!援護します!!』

俺「そそそそっ、しょうそうかあっ!?よおおおっうし、リーネちゃまの方向へっ、回避ダァ!!!」

リーネ自身が安全な空域へと示して下さった。よし、操縦桿を逆へ倒し危機を免れねば。
と、決断し彼女の方向へと操縦桿を激しく倒す!!

俺「……あれぇっ?」

しかし機体が動かない…まさか想定外の負荷と不完全な試作機の為、操作系が故障したのか?

シャーリー「おい、俺…な、ななな、なにやってんだーーーーー!?」

俺「えっ……?」

――ゾクゾクゾクゥッ!!――

俺「うゔぁっ!?こっ…これはっ!」

が、原因は俺自身にあった!!!確かに操縦桿は握っていた!!

552短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:01:34 ID:XjWxl/Yw0
ルッキーニ「なんでぇー?」

ミーナ「しっかり握りなさいっ!!」

俺「ゔゔゔゔゔゔっうああっうう!!」

――びゅっ、びゅびゅびゅびゅっ!!――

リーネ『早くキてください!!』

俺「はっはいぃ…イきましゅうう…」

俺は――

俺「おおおうっ、発射スイッチいぃぃいいい、オンンンンンンンンンンン!!!!」

俺の操縦桿を握っているではないか!!!!

そして無残にも、弾をまた、無駄にしたのだ!!!!!

俺「ああぅ…ああっ…ゔゔゔ……」

我がコントロールの中枢部である矛先をリーネに向けてしまうことは考えてみれば必然であった。

じりじりと体が駄目になるのを感じる。これがリーネへの挑戦。

バルクホルン「早く回避しろおおおお!!!」

エーリカ『――シュトゥルム!』

553短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:04:37 ID:XjWxl/Yw0
高熱線の光によるシールドへの被弾が長引いていたが、エーリカの援護によって遂に遮断される!!
しかし反動と、傾いたままになっている正規の操縦桿によって機体はネウロイへ突っ込んでゆく!!

俺は性器の操縦桿を握ったまま意識が遠退いていく――

シャーリー「このままじゃまずいぞ!」

宮藤「俺さん、すぐに回避を!」

俺「俺…なにしてんだ…?なんのために生きてるんだ…?」

タマが枯れ果てている…回数は少ないものの一回に発射する量が多かったのだ――

宮藤「あーもうっ!みんな、私にシールドを…!!」

ミーナ「…各員、宮藤少尉にシールドを集中!援護して!!」

全ウィッチ「了解!!!」

全員の魔法力が合わさった巨大シールドは操縦不能となった輸送機の側面に展開され、ネウロイに機体ごと突撃!!!
雷のような振動が機全体に響き、対ネウロイ用の特殊装甲が紙のようにいとも簡単に弾け飛ぶが、ウィッチ達によってネウロイの装甲は削られていく!!!

――バキイイイィィイン!!――

そして機体が反れネウロイと離れた時、大きく抉られた敵の装甲の中に一筋の光!!

坂本「コアだ!」

リーネ『はいっ!!』

554短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:07:45 ID:XjWxl/Yw0
女神の目は怪異さえも撃ち抜くのか。

俺の意識が、途切れる――


俺「――……はッあ!?ここは?」

リーネは?

上官「気がついたか」

俺「上官殿…リーネは」

上官「貴様はこれより軍法会議にて裁かれる」

なんだこの鎖は…それより、

リーネはどこだ。

気がつけば俺は拘束され、新たな輸送機で本部へと送検されていた…。

上官「この木偶の坊め」

え、リーネは?

上官「ネウロイはウィッチ隊によって撃退された。満身創痍だったお前は渋々救助され、その後、無事全員脱出した新型輸送機は海に落ちて木っ端微塵だ」

俺「リーネぇぇぇ……」

上官「罰は受けてもらう。ウィッチとの接触も永遠に不可能だ」

555短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:10:47 ID:XjWxl/Yw0
俺「リネットおおおおおおおおおお………――」

親愛なるリーネよ。
レロレロは、不可能だったのだろうか。

もうタマも残っていない。

戦えない――


宮藤「それじゃあ、いろいろありましたけど、晩御飯ができました!」

食堂。苦戦を終えたウィッチ達の食卓には鯛の盛り合わせが豪華に並んでいる。

坂本「…しかし、まさか裸で食事をすることになるとはな」

しかも全員、裸で。辛うじてバスタオルが巻かれている。

ペリーヌ「なんと下品な…」

エイラ「しかたないだろ。あのネウロイやつ、着替え用の服も消しちゃったんだからな」

サーニャ「寒い…」

坂本「それにしてもリーネ、腕を上げたな。今日のコアへの射撃は見事だったぞ」

リーネ「そっ…そんなっ…」

ミーナ「そうね。でも俺さんに会わなくて本当に、本当に…」

556短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:13:51 ID:XjWxl/Yw0
リーネ「あの、俺さんはもう帰ってしまったのでしょうか?」

バルクホルン「ああ。帰ったというより…リーネは知らない方がいい」

リーネ「?…そう…ですか」

想いは人を動かす。

――パリィン――

シャーリー「ん?なんか音がしたか?」

――ガシャン…ガシャン……――

ルッキーニ「そとからー?」

たとえ世界が不可能だと判断しても、戦う力がなくとも、

――たたたたたたたたたっ…――

エーリカ「なんかやってる…」

自分が可能だと判断すれば、それは可能なのだ。判断に正解などない。
踏み出す一歩を決断する想いは自らにのみ、

宮藤「この声……え?」

静夏「どうしたんですか宮藤さん?」

現れりゅ。

557短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:17:12 ID:XjWxl/Yw0
――アアアアアアアアア――

ペリーヌ「なんですの?」

俺、の、想い、は、

――ダダダダダダダダダダダダダダダダ…――

リーネ「近づいてる…」

リーネ、を、レロレロ、いや、

エイラ「サーニャ逃げろ!!」

――バンッ!!――

彼女に、我が体液のドレスを着せること。

さあ踊っておくれ優艶なるフロイライン。

狂おしく響くボレロと共に――


俺「リいいいいいいいいーーーーーーーーーーーネえええええええええええぅえうゔうゔ!!!!!!!」

輸送機をジャックした俺は帰ってきた!!!束縛する鎖を引き千切り軍規に歯向かい!!!!

ただ、リーネをレロレロするためだけにだ!!!!!

558短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:20:26 ID:XjWxl/Yw0
リーネ「俺さん?」

俺「リーネ」

バルクホルン「連行された筈だろう!?」

ペリーヌ「しかも、なんで全裸ですの!?」

宮藤「リーネちゃん逃げて…!」

坂本「敵襲ーーーーー!!!」

ミーナ「各員、戦闘態勢に着け!!」

リーネは一番奥にいた!!そしてバスタオルを巻いていた!!

そうか今日は女体の盛り合わせだったな!!

では私が先ず、皆のナプキン、いやテーブルナプキンを剥ぎ取りディナーの準備させて頂こう!!!

今回は特別…

御友人方である前菜も頂く――


俺が一歩踏み出すと坂本が斬りかかる、しかし指を伸ばすと乳房を刺激されるのかと思った坂本は若干怯み、その隙にナプキンを、ジャッ!!

レロ。

坂本「あぅ…」

559短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:23:28 ID:XjWxl/Yw0
リーネへの二歩目を踏み出すと、ミーナが捕らえにかかるも俺はモーニングスターを突き出し、脅えたところをジャッ!!

レロ。

ミーナ「ひゃう…」


三歩目!バルクホルンがまたもや殴りにかかるが、俺が瞬時にブリッジをすると、飛びかかる直前に足がすくんだ、反ったバネを生かし跳ね上がり、ジャッ!!

レロ。

バルクホルン「うぁっ…」


四歩目、五歩目!シャーリーは意外に割と本気で現状に嫌がっている、ルッキーニは食事に気を取られているその隙に、ジャッ!!ジャッ!!

レロ。

シャーリー「おい…っ!」

レロ。

ルッキーニ「く、くしゅぐったぃ」


六歩目、七歩目!状況を把握できていない発育のよろしい静夏、なんか楽しそうなエーリカの笑顔眩しいな、ジャッ!!ジャッ!!

レロ。

静夏「きゃぅっ…!?」

560短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:26:29 ID:XjWxl/Yw0
レロ。

エーリカ「んっ、もー…」


八歩目、九歩目!猫のよう威嚇するエイラ、脅える姿もキュンとくるサーニャ、「ずっと気になってたけど2人は恋人同士なの?」と言って動揺、未来予知破り、ジャッ!!ジャッ!!

レロ。

エイラ「ばっ、ばかぁ!」

レロ。

サーニャ「ゃ……」


十歩目!トネールを発動させるが今の俺には良い刺激だ、俺の薄ら笑いに一歩引いたペリーヌは何故かお尻を気にし始め、ジャッ!!

レロ。

ペリーヌ「いやぁぁぁぁぁっ!!」


十一歩目!女神の心友、宮藤はシールドを展開するが、俺は宙で彼女の口をなぞる緩やかな手の仕草、快感を思い出し青ざめ狼狽したところを、ジャッ!!

レロ。

宮藤「やめ、れぇっ…」

561短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:29:43 ID:XjWxl/Yw0
そして――


到達した、十二人目、そして、はじまりの一歩。

邪魔をする者はいない、真顔のリーネ、目の前の出来事を全くといっていい程理解出来ていない、純粋無垢な瞳、その真宇宙に吸い込まれるように俺は眼を瞑った。

リーネ「俺…さん?」

次に眼を開けた時、どんな未来が待ち受けているのだろうか。

俺「リーネ」

何も疑問は無かった。

ただ、メインディッシュの羽衣をつまみシュルルルルル……――






十二歩目。






じゅるぅぅ…レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロっぉっ!!!!!!ジュリジュルルルルルルルルルルルじゅるりっう、チュッパァン、チュッチュ、チュッチュレロレロ、レロレ、チュッパァン!!チュッパァン!!じゅじゅじゅゅるるるふ、ズァァアワァ!!ぶぅあっぷじゅふぷぷぷぷレロびゅっ!レロレロレロびゅっ!びゅっ!びゅっ!!!レロレロレロレロすん…スンスン…グワオオオオびゅうゔゔゔゔじゅっっぽつゎ、リーネ、リーネ、リーネ、リーネ!!!アアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!びゅうゔゔゔゔ!!!!ジュルルルルルルルルルルルぴゅっっぽぉん!!レロレロレロレロ、シューうーしゅーすレロ!!レロレロレロ!!!!!!レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロリーネリーネリーネビショップレロレロレロレロレロレロレロレロレロレじゅるっ、じゅるるるるるるるゔゔゔうううぅペロッレロレロっ、チュッパァン、じゅそぞぞぞぞぞぞぞぞ…レロレロ!!!!!ボ!!!!!!ボ!!!!!!!ボ!!!!!!!

562短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:32:44 ID:XjWxl/Yw0






リーネ「ど……う……し…て…?」

レロ――

リーネ「私…出会った時から…俺…さんの…こと――」








俺「え」

十三歩目。

次に目が覚めたら…


牢の中、処刑台に立っていた。


――おわり――

563短編『ボレロエロウ』:2014/11/13(木) 02:36:18 ID:XjWxl/Yw0
音楽「ボレロ(ttp://m.youtube.com/watch?v=vgpiJLAbSs4)」をかけてお読みください。
自分なりに丁度15分ぐらいで読み終わるように書いてみました。

以上です。おやすみなさい。

564名無しさん:2014/11/13(木) 03:23:12 ID:ccjHzpyI0
一字一句見逃さず読んだら19分35コンマ05秒かかったぞwww
彼は……素晴らしい紳士だった。

565名無しさん:2014/11/15(土) 11:36:43 ID:4xcOVPc.0
乙乙

566芸人な俺:2014/11/19(水) 18:01:51 ID:GvwnCGgY0
芸人な俺です

7時か8時くらいに投下しようと思っております

567名無しさん:2014/11/19(水) 19:06:09 ID:vJpoJ/TE0
了解、待ってる

568芸人な俺:2014/11/19(水) 20:38:56 ID:GvwnCGgY0
俺「・・・・・・・・・・・・ウ・・・・・ん?」

あれ?なんで俺病室にいるんだっけ?・・・思い出せ・・・確か、事務所に帰ろうと自転車で全速力帰って・・・
それで、前にトラックが来て避けようとブレーキかけて・・・でもブレーキかからなくて・・・・・
俺「・・・・ッ!?」ガバッ

そうだ!!俺たちトラックに轢かれて・・・・!
俺「そうだ!相方!!」
相方は俺の隣のベットでぐっすり寝ていた・・・

俺「おい、相方起きろ!!おい!!おい!!!!」

返事がない、・・・まさか・・・

俺「死んでんじゃねぇだろうな…」

相方の口元に耳を傾ける

相方「ウーン」

呻き声があった

569芸人な俺:2014/11/19(水) 20:42:01 ID:GvwnCGgY0



俺「死んでる・・・」

570芸人な俺:2014/11/19(水) 20:54:19 ID:GvwnCGgY0
相方「ちょっと待ってよ兄貴!!!!」

相方が即座にツッコんだ。

相方「今のどう考えても生きてたでしょ!!!」

俺「ハハハハハハハスマンスマン、ちょっとした冗談だよ」

相方「もぉ〜」

流石は俺の相方だそのあとに付け加えてさらにツッコむ。俺が教えたとおりだ。
と、そんなこと思ってる場合じゃなかった・・・

相方「そんなことより・・・ここ・・・どこ・・・?」

俺「見りゃわかるだろ。病院だよ・・・」

相方「いやそりゃそうだけど・・・ここ・・・どこの病院?」

571芸人な俺:2014/11/19(水) 21:09:09 ID:GvwnCGgY0
俺「そりゃお前・・・東京にいるんだから、東京の病院だろ」

相方「東京の病院にしてはなんか、ぼろくないか?」

俺「・・・そう言われれば・・・」
辺りを見回すと東京とはかけ離れたすごく古風な石壁にでかい窓そして壁には彫刻された壁画があった。
相方「ねぇ、兄貴・・・ここ・・・本当に病院なのかな?」

俺「・・・・・・」

俺たちが周りを見回していた時だった

ドンドン

俺相方「「??」」

572芸人な俺:2014/11/19(水) 21:30:22 ID:GvwnCGgY0
ガチャッ

???「あら、起きてたの?」

俺相方「「!!」」
そこにいたのは右目の下にほくろがあるおねぇさんであった。しかも極めつけは

相方(あ、兄、、、あ、あ、あ、兄貴)

俺(・・・なんちゅう恰好)

ズボンを穿いてなかったことだ・・・

???「・・・あの、どうしました?」

俺「い、いえ!!なんでもありません!!」

相方「お、俺もです!!!」

???「フフフ二人ともこの状態を見ると大きな怪我はなさそうね」

573芸人な俺:2014/11/19(水) 22:11:55 ID:GvwnCGgY0
俺「は、はい!!」

相方「下の方が一番元気になりました」

俺「何言ってんだお前は!!?」バシッ

相方「あてっ!」

俺「何女の前で下ネタ使ってんだ!!」

相方「いやぁちょっと・・・」

???「はははは二人とも仲いいわね」

相方「いやぁそれほどでも・・・」

????「どうだ?二人の調子は」

俺(今度はスク水かよ・・・)

574芸人な俺:2014/11/19(水) 22:16:50 ID:GvwnCGgY0
???「ええ大丈夫そうよ・・・」

????「そうか・・・とんだ災難に遭ってしまったな、軍に行く途中にまさかネウロイに遭遇するとは・・・」

俺「へ?」

????「それに運悪くお前らの乗っていた輸送機が被弾して墜落してしまったからな」

相方「はい??」

????「大けが間違いなしの墜落だったのにまさかかすり傷で済むとは・・・」

?????「美緒ー!」

相方(今度は外国人・・・)

俺(しかも日本語ペラペラ…)

575芸人な俺:2014/11/19(水) 22:42:20 ID:GvwnCGgY0
?????「二人は無事?」

美緒「あぁ奇跡的にかすり傷で済んだみたいだ・・・」

?????「・・・そう」

俺「あの・・・すみません」
「さっきから、輸送機とかネウロイとか訳のわからないこと言ってますけど俺たちトラックに撥ねられてしまってそれで・・・」

相方「そ、そうだよ兄貴がチャリで全速力で漕いでそれでトラックが前に来て・・・」

美緒「・・・チャリ?」

俺「あの・・・ここどこですか?」

576芸人な俺:2014/11/19(水) 22:56:35 ID:GvwnCGgY0
美緒「ここはロマーニャ公国の基地の医務室だが・・・」

俺「・・・ロマーニャ?」

相方「・・・ここ東京じゃないの?」

?????「・・・トウキョウ?」

美緒「ミーナ・・・まさか事故で混乱して記憶が曖昧に・・・」

ミーナ「・・・そうかもしれないわね」

相方「てゆーかあんたら・・・誰?」

美緒「あ、あんたっ・・・」

俺「おい、相方!お前失礼だろ!」

相方「だって、急に話進めるから・・・」

美緒「ハァ・・・申し遅れてしまったな、私は坂本美緒。階級は少佐だ」

ミーナ「・・・私はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。階級は中佐よ」

俺「坂本さんに・・・ミーナさんですか・・・すいませんうちのモンが失礼なことを・・・」」

577芸人な俺:2014/11/19(水) 23:04:32 ID:GvwnCGgY0
相方「で、でも兄・・・」

俺「うっせぇ!!黙ってろ!!!」

相方「兄貴ぃ・・・」

俺「すいません、僕たちちょっと墜落してる時に頭思いっきり打っちゃって・・・それで自分たちが誰なのかどこにいるのかってのイマイチ思い出せないんです」

相方「ちょ、っちょっと兄貴!!」

俺(黙っとれ!!!いいから俺に合わせろ・・・)

相方(・・・わかったよ)

578芸人な俺:2014/11/19(水) 23:37:37 ID:GvwnCGgY0
美緒「はぁ・・・今回だけは聞き流すことにしよう・・・」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
美緒「・・・以上が事のあらましだ・・・」

俺「はぁ・・・」(俺、中尉だったの・・・)

相方「なぁなぁ兄貴、少尉ってなに?」

俺「お前なぁ…」

美緒「これからよろしく頼むぞ俺中尉、相方少尉」

俺「は・・・はあ」

579芸人な俺:2014/11/19(水) 23:41:09 ID:GvwnCGgY0
相方「あの・・・ちょっと聞きたいんですけど・・・」

美緒「なんだ?」

相方「なんで・・・ズボン穿かないんですか・・・?」

美緒「・・・見てわからないのか?穿いているだろう・・・ズボン」

俺相方「「・・・・・・え?」」

美緒「・・・?」

俺相方「「ええええええええ!!?」」

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---芸人な俺------
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580芸人な俺:2014/11/19(水) 23:46:17 ID:GvwnCGgY0
以上です。
いやぁ〜文才なくて困った困った・・・
ホンット話すすんでねぇ・・・
こんな駄作見てくださってありがとうございました。

あ、あと???の正体明かしてませんでした。女医さんです

581名無しさん:2014/11/22(土) 19:52:39 ID:1rx5Mk/s0


582名無しさん:2014/11/25(火) 23:10:11 ID:3s1oo.b20
おっつおつ!

583名無しさん:2014/12/31(水) 02:44:45 ID:hHDSVqLE0
年越しコタツSS書いたから投下するゾ
尚,30分クオリティの妄想オナニーSSだからクオリティはお察しの模様

584名無しさん:2014/12/31(水) 02:48:55 ID:hHDSVqLE0
12月ももうあと1時間も無い頃

俺「ふむ……」

エーリカ「どったの? もうすぐ年があけるってのに浮かない顔して」

本当なら浮かない顔をするどころか,小躍りして喜ぶところである

20日から始めた筈が,昨日の夜まで続いた大掃除も終わった

年越しそばも食べた。何もさせないのは酷なので,エーリカにはネギを切らせた

初詣も明日の朝は早起きして出る事にした

問題は「来年からもうちょっとしゃんとする」と言う目標を立てたエーリカが,目の前でだらけきってる事だ

585名無しさん:2014/12/31(水) 02:52:01 ID:hHDSVqLE0
俺「なあ。お前さんもうちょっとばかしその姿勢改めても罰(バチ)は当たらんと思うが?」

エーリカ「まだ年は明けてないから」

因みにエーリカの姿は見えない

コタツの向かい側に肩まで浸かり,寝転がってみかんを食べている

カールスラントの人間とは思えない馴染みぶりだ

俺「そうなんだがねえ……」

エーリカ「それに。ほら,起きてる間はまだ年明けてる感じしなくない? 深夜25時とか言うし」

俺「いや,そうだけどさあ……」

エーリカ「んー。わーかったよー」

抗議の色を含んだ声を上げると,エーリカはコタツに潜り込む

何が解っただ。コタツに潜るとか最高の贅沢じゃないか。今にみてろ。どうせすぐ大きくなってできなくなるに決まってる。別に羨ましくなんかない

586名無しさん:2014/12/31(水) 02:57:06 ID:hHDSVqLE0
エーリカ「ほい」

コタツに潜り込むエーリカを羨ましく思っていると,俺の座っている辺から顔を出し,俺の隣に座った

俺「何でまたこっちに?」

エーリカ「え,寂しかったんじゃないの?」

俺「いや……」

まあ,ちゃんと座ってるから良しとしよう。寝転がるよかマシだ。俺の膝の上に座るのも年末位許す。腰にまわした俺の手で遊ぶのも年末だから許される

エーリカ「あーあ」

そう言えば,天井はどう掃除するのだろうか

エーリカは楽しそうに笑い,コタツを引きずって肩の辺りまで浸かる様に持ってくる

別に,年末位コタツで寝ても良いさ。全てコタツとこのカールスラント娘の体温と抱き心地が良すぎるのが悪いんだ

エーリカ「たまには,良いでしょ?」

俺「たまには,良いかもな」

除夜の鐘が聴こえるが,もう何かを言う気力はエーリカにも俺にも残っていない

除夜の鐘とエーリカの小さな寝息を交互に聞きながら,深い眠りについた

587名無しさん:2014/12/31(水) 03:00:09 ID:hHDSVqLE0
エーリカ「やっちゃったねー」

俺「だな」

1月1日,エーリカは見事に風邪を引いた

エーリカ「んー。初詣の予定からコケたし今年はダラダラして良いかな」

俺「駄目だし,それを言うなら今年「も」だろ」

エーリカ「なはは。まあ,俺は行っておいでよ。私は一人で大丈夫だからさ」

朝の6時。今から出れば十分予定には間に合う

俺「馬鹿か。さっさと治せ。なんなら俺に移してくれれば治りの早い物を……」

エーリカ「移して良いの?」

俺「ん? まあ,移したら治るって言うしな」

エーリカ「じゃあ,移させて」

俺「どうやって?」

エーリカ「そりゃ,口から」

今年も,エーリカは俺の一つ,二つ上を行く様だ

588名無しさん:2014/12/31(水) 03:03:21 ID:hHDSVqLE0
お・し・り

589名無しさん:2014/12/31(水) 04:03:52 ID:UbNsrIS.0
古い意味で壁ドン

590名無しさん:2015/01/20(火) 00:38:48 ID:CX4ZTp3Y0
来てよかった

591名無しさん:2015/02/15(日) 01:02:26 ID:U47mMdKk0
バレンタインSS投下するゾ
尚,30分クオリティの妄想オナニー脳死SSだからクオリティはお察しの模様

592名無しさん:2015/02/15(日) 01:03:36 ID:077lyFEI0
阻止すりゃいいのか

593名無しさん:2015/02/15(日) 01:05:29 ID:U47mMdKk0
俺「なあ」

エーリカ「んー?」

俺「チョコくれ」

エーリカ「ほい」

板チョコが視界の下から飛び出す

コタツの向かい側から投げられた板チョコは,俺の頭の横に角から着地した

俺「食い物を投げるな」

エーリカ「はいはいすいませんねーだ」

明らかに不機嫌な声

原因は解っている

朝の事だ

エーリカが起きるなり「デートをしても良いんだよ? まあ,私はしなくても良いんだけどね。俺が今年も一人で過ごすってのは可哀想だし」

と,行ったので俺はそれに「じゃあ,家でゴロゴロしてようぜ。俺寒いの嫌だ」

と,返してしまったのだ

594>>592 阻止するだけのクオリティじゃない:2015/02/15(日) 01:09:43 ID:U47mMdKk0
別に,寒いのなんて厚着すればどうにでもなる

ただ……

こんな時期に変な事言うのも雰囲気に中てられたみたいで嫌だし,なによりそれじゃエーリカにも失礼な気がする

仕方が無い。機嫌取りみたいで嫌――否,実際機嫌取りだが,とっておきを出そう

コタツから這い出て,キッチンの食器棚の奥から透明のビニール袋に入ったチョコを取り出す

俺「なあ,エーリカ」

エーリカ「何さ」

俺「チョコ。やる」

ふてくされてコタツで寝ているエーリカの腹の上にチョコを置く

エーリカ「受け取り拒否。もうちょっと雰囲気を考えて」

流石にこれはカチンと来る

じゃあ,どうすれば良いのか。ベッタベタなのをご所望とあらばやってやる。口だけなら

俺「はあ。そうですかい……じゃあ,どうだい? 夜景の見えるレストランでディナーでも」

595名無しさん:2015/02/15(日) 01:13:25 ID:U47mMdKk0
エーリカ「ホントに?」

俺「え」

久しぶりにこんな目をキラキラさせたエーリカ。いや,人を見た気がする

しかし,こんな日にそんな場所で食事ができるのだろうか

俺「どこか……店が空いてたらね?」

エーリカ「うん」

少し痛い出費だがまあ,たまには良いだろう。それに,こんな可愛い子が楽しみにしているんだ。普通は頑張って出すものだ



俺「その……なんだ。すまんな」

エーリカ「まあ,しょうがないよ。それよか,ごはんできた?」

結局,どこも予約でいっぱいだった

当たり前と言えば当たり前。残念だが仕方無い

それでも,一度期待させた以上,申し訳ないと思う

596名無しさん:2015/02/15(日) 01:16:46 ID:U47mMdKk0
俺「なあ」

エーリカ「んー?」

俺「悪かったな」

エーリカ「良いんだって。まあ,そう言う事を経験したいってのも有るけど……それでも,今日じゃなきゃダメって訳じゃ無いし。それに,私俺の作る御飯大好きなんだよ!?」

俺「すまんなあ……」

これだ

この子はいつもこうやって俺の失敗を許してくれる

多分,俺がこの子に惚れたのはそう言うのも有るのだろう

そして,気付いた時には遅かった

俺は,この雰囲気に中てられた

俺「なあ……エーリカ」

エーリカ「んー?」

御飯を租借しながら小首をかしげる。悶えるのを堪えながら,言う

俺「その……好きだ。恋人になってくれ」

多分,この状況で彼女は断れない。そんな状況でこんな事を言うのは嫌だった。それでも,行ってしまった言葉は今更口には戻せない

597チョコですか?:2015/02/15(日) 01:19:49 ID:U47mMdKk0
エーリカ「は?」



エーリカは箸を止め,立ち上がるとキッチンに行き,手を水で洗ってきた

怒ったときにすると落ち着くと俺が教えた事だが,何故今なのだろうか

それとも,この状況で言った事に彼女も怒っているのだろうか

まずい事をした。と,おびえていると,俺の向かいに座りなおしたエーリカが口を開く

エーリカ「私達付き合ってなかったの?」

俺「え?」

598貰ったと思います?:2015/02/15(日) 01:23:21 ID:U47mMdKk0
エーリカ「え? じゃなくて。じゃあ,今まで手を出さなかったのって……」

俺「うん。付き合ってない内から手を出すのは論外かなー。って」

エーリカ「じゃあ,今まで私がくっついてた時は『めんどいなー』とか,『付き合ってもないのにこいつは……』とか思ってたの?」

俺「まさか! 嬉しかったよ! ずっとエーリカのこと好きだったし」

エーリカ「じゃあ,何で今まで『付き合って』とか『好きだ』とか言わなかったの?」

まずい。かなり怒ってる

ここまで怒ったエーリカは見たことが無い

ここは……

謝りつつ,反論する!

俺「それは……俺がヘタレだからで……でも! エーリカだって『付き合って』とか言った事無いじゃん!」

エーリカ「それは……」

急にエーリカがうつむく

しまった。ここは素直に謝るべきだった

599悲しいんでこの話はやめますね:2015/02/15(日) 01:28:21 ID:U47mMdKk0
俺の悪い癖だ。人の荒をさがしてそこを責める

エーリカ「私だって……私だって夜景の見えるレストランでディナーしながら指輪渡されたりとかそう言うベタベタで使い古されて真っ黒に手垢の付いた様なシチュエーション経験した

いんだもん! バカぁ!」

俺「ご……ごめん」

エーリカ「ん。私もちょっと感情的になった。ごめん」

そう言うと立ち上がり,玄関の方へ歩いて行く

俺「どこ行くんだよ」

エーリカ「外走ってくる」

俺「なんで」

すると,エーリカは振り返らず。しかし,後ろからでも解るほど耳を赤くし,こう言った

エーリカ「夜にお腹出てたら恥ずかしいでしょ。ばか」

「お腹でてても可愛いよ」

そう言うと本気で殴られかねないので,俺はただ

俺「早く帰ってこいよ」

そう言うしか無かったのだ

600でも,来年こそは……:2015/02/15(日) 01:32:24 ID:U47mMdKk0



俺は徹夜が苦手だ

元々睡眠時間を多く取る体質に加え,エーリカとの昼寝が生活リズムを崩す要因となるので出来なくなる

俺「エーリカ。今日は夜まで起きてるのか」

ベッドに腰かけ,全裸でチョコを食べるエーリカに尋ねる

受け取り拒否とか言っていたが。結局受け取ってくれるのか

エーリカ「そだね。今から寝たら夜寝れないし。だから,これ。ちょっと遅いけどバレンタイン」

寝室に置いた小さい冷蔵庫を開け,雄牛がデザインされた缶を取り出し,ゆるく此方に投げる

俺「甘い物じゃないのか」

エーリカ「甘い物は夜にいっぱいくったでしょ」

俺「ああ,それもそうだな」

キンキンに冷えた缶が,俺の胸の上にそっと落ちる

素肌に触れたその冷たさと彼女の想いの熱さに,俺は朝っぱらから叫び声を上げる事になった

601名無しさん:2015/02/15(日) 01:35:30 ID:U47mMdKk0
お・し・り

602名無しさん:2015/02/15(日) 18:17:59 ID:gWRl2dS.0
また君かぁ……乙乙

603名無しさん:2015/02/17(火) 09:45:51 ID:cOXo0O7k0
おっとSS来てるじゃない
乙乙

604芸人な俺:2015/04/09(木) 17:07:59 ID:MhlNlcRo0
皆さんお久しぶりです。
芸人な俺です。
今夜か今投下しようと思っております。今まで書いてなくてスンマセン。

605芸人な俺:2015/04/09(木) 17:19:22 ID:MhlNlcRo0
兵1「おーい俺中尉ー!そこにある工具取ってくれませんかー!!?」

俺「あ、はーい」

兵2「おい、相方!!!まだ道具きてないんだけど!!!」

相方「あ、すいません!!!今取りに行きます!!」

606名無しさん:2015/04/09(木) 22:26:49 ID:KCiwy.WM0
止まった?

607芸人な俺:2015/04/09(木) 22:58:03 ID:S.LwoKy20
俺は芸人だ
とあるお笑い賞レース番組を見て芸人を夢見て後輩を誘ったが未だ売れず。
事務所に帰る途中にトラックが目の前に来て死んだかと思ったら
いきなり1945年にタイムスリップした。
とはいってもここでは日本という国はなくて代わりに扶桑と呼ばれている。
俗にいうパラレルワールドってやつに飛ばされたのかもしれない。
今俺たちが働いてるこの場所もロマーニャという元いたところでは聞いたことのない国だし・・・

608芸人な俺(すいません色々とやることがあって5時間間がありました):2015/04/09(木) 23:07:25 ID:S.LwoKy20
相方「なあ兄貴ぃ・・・」

俺「なんだ・・・?」

相方「兄貴だけずりぃよ・・・なんで俺だけばしばししごかれて、兄貴には何も言われないんだよ・・・」

俺「しょうがねぇだろ・・・俺は中尉でお前は少尉なんだ階級が違うんだからしょうがないだろ」

相方「でもよぉ〜・・・」

兵B「おい、相方ぁ!!なにサボってんだあ!!!!」

相方「ひぃ!!」

俺「おい、相方呼ばれてんぞ。サッサ行った。」

相方「兄貴ぃ〜」

609芸人な俺:2015/04/10(金) 00:12:46 ID:P/P4lTeU0
俺「はぁ〜・・・」

一応ここに来て2日は経った。
ここでは・・・いやこの世界の時代はやはり戦時中だ。でも戦ってる相手が人間じゃない

俺「ネウロイねぇ・・・」

人外と戦ってると聞いたとき、最初はドッキリと思っていたが、事務所が事務所でありこんな大きいセットを作るのは不可能だと俺はすぐ思った
しかも武器は足に何かを履くようなもので・・・俺たちはその整備兵だった。

610芸人な俺:2015/04/10(金) 00:36:32 ID:P/P4lTeU0
俺「一体どうなってんだよ・・・この世界は・・・?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜3日後、夜〜〜〜〜〜〜
俺「ふぅ〜・・・」

相方「なぁ兄貴・・・」

俺「ん?」

相方「ここ脱走しよ・・・」

俺「あぁ?」

相方「いろいろ我慢してきたけど・・・重い物何個も運ばされて・・・仕事が遅いとかで蹴り飛ばされて・・・女の子と会話できると思ったらまったくなくて・・・もう嫌だよ・・・」

俺「相方・・・お前な・・・」

相方「兄貴ぃ・・・」

俺「はぁ〜・・・」

611芸人な俺:2015/04/10(金) 01:04:05 ID:P/P4lTeU0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺「ほら・・・こっちだ・・・」

相方「待ってよ兄貴〜」

俺「お前脱走したいって言ってたのになんで遅いんだよ」

相方「兄貴が早すぎるからだよ〜」

俺「そんなんだからお前は上の人に何度も怒られんだよ。大体お前はいつも・・・」

相方(またはじまった〜兄貴の長い説教・・・)

相方「なぁ兄貴・・・はやくここから・・・・・・・・・・」

俺「だから俺たちはいつもオーディションでってお前聞いて「兄貴見てよ!!!」

俺「あぁ?」

相方「すげぇ星空だ〜!!!」

俺「・・・・・・」

その星空は未来とは違ったきれいな星空だった。俺が見た中でもたぶん一番だ。

俺「・・・綺麗だな」

相方「だろ!!兄貴!!!」

612芸人な俺:2015/04/10(金) 01:19:15 ID:P/P4lTeU0
♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜〜〜

俺相方「「???」」

相方「兄貴、何か歌聞こえない?」

俺「こっちからだ・・・」

♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜
相方「一体だれが歌ってるんだろう?」

俺「おい、相方もう少し後ろに・・・」

相方「だって見えないかr・・・」

♪〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜〜〜

相方「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

613芸人な俺:2015/04/10(金) 01:22:20 ID:P/P4lTeU0
俺「・・・相方?」

相方「・・・・・・・・・・・・・・」

俺「おい・・・相方?」

相方「・・・・・・・・・・」

俺「おーーーーーーーーーい相方ーーーーーーー」

相方「ヴェ!!?え?あ?うわっ!!」

バターーーーーン!!!!

???「!!?」ビクッ

相方「え!?あ、いや・・・その・・・」

???「あの・・・」

俺「おい、相方・・・お前・・・」

614芸人な俺:2015/04/10(金) 01:27:33 ID:P/P4lTeU0
相方「ごめんなさーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」

ズダダダダダダダ!

俺「おい、相方!!!ちょっと待てって!!!」

タッタッタッタッタッタ

???「あの・・・そこ・・・段差が・・・」

バタバタバタバタバタバタ

俺相方「「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」

イッテーーーーー
オマエチャントマエミロヨーーーーーーー
ダッテアニキガーーーーーーーー

???「・・・・・・・・・・」
???「・・・・・・・・フフッ」


-----------------------------------------
------------------------------------
-------------------
------芸人な俺------------------
------------------------------------
---------------------------

615芸人な俺:2015/04/10(金) 01:31:02 ID:P/P4lTeU0
以上です
今日中に終わるかと思ったら1時まで続きました。
本当にすみません。

616名無しさん:2015/04/10(金) 09:33:09 ID:LRJkqMQY0
久しぶりやな



617名無しさん:2015/04/13(月) 03:05:53 ID:E27j6bK.0
最後なにがあったんだw

618名無しさん:2015/04/19(日) 02:35:09 ID:pxHHh2FU0
2,3年ぶりに来てみればまだ投下続いてるのね
お里に戻ってきた感すごくて安心した

619芸人な俺:2015/07/31(金) 01:35:13 ID:qOebAEAc0
深夜ですが投下させてもらいます

620芸人な俺:2015/07/31(金) 02:04:53 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

相方「もういいよ!!!」

俺相方「「どうも、ありがとうございました!!」」

上の人たち(((((・・・・・・・・・・・・)))))

俺相方((・・・・・))

上の人「・・・君たちさぁ・・・芸歴何年?」

俺「・・・え?・・・あ、俺達芸歴7年目です」

上の人「どっちも?」

俺「はい」

上の人「テレビに出たことは?」

俺「全国ではないですが地方で2回ほど・・・」

上の人「・・・」

相方「あの・・・」

上の人「厳しいこと言うけど・・・3年後君たちがこの状態だったらね・・・解散した方がいいよ」

俺「・・・え?」

621芸人な俺:2015/07/31(金) 02:08:17 ID:qOebAEAc0
上の人「ネタが古いし・・・なんかテンポ悪いっていうか・・・君たちさぁ・・・コンビ合ってないんじゃない?」

相方(・・・ッ!!!!)

俺(よせッ!!相方!!)

上の人「まあ芸歴が2ケタじゃないだけマシだね」

上の人「まだ伸び代がありそうなんだけどなぁ・・・芸歴10年以上で売れない人たちってゴロゴロいるから」

俺「はぁ・・・」

上の人「まぁでも三年後・・・こんな感じだったらコンビで話し合った方がいいよ。割と」

上の人「以上です」

俺相方「「・・・ありがとうございました」」

622芸人な俺:2015/07/31(金) 02:31:56 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺相方((・・・・・・・・・・・・))トボトボ

芸人「ははははは・・・でさぁ〜」スタスタ

ガンッ

相方「イテッ!!」

俺「相方ッ!!」

俺「オイッ!!!」

芸人「それでさぁ〜あいつ肝心のネタを忘れてさぁ〜」スタスタ

俺「・・・」

相方「・・・兄貴ぃ・・・」

俺「・・・飯食いに行こう!」

相方「・・・え?」

俺「腹いっぱいになりゃいいネタ思い出すかもしんねぇだろ?あの芸人をビビらすような・・・」

相方「・・・」

俺「ほら!いくぞ!!」

相方「・・・うん!」

623芸人な俺:2015/07/31(金) 02:44:23 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
パチッ

俺「・・・」

俺「夢か・・・」

チラッ
相方「グガーーーーーーーー」

俺「・・・フッ」

624芸人な俺:2015/07/31(金) 03:33:33 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
テクテク
相方「聞いてよ〜兄貴ぃ〜こないだ道具持ってきたのにさぁ・・・お前遅すぎだぁっつって頭殴られてさぁ〜」

俺「あたりまえだ。お前作業の時すっげぇ目立ってんだよ」

相方「え?目立ってる?」

俺「目立ちすぎだよ。なんだよペンチ持って来いって言ったのにベンチ持ってきやがって・・・」

相方「あの後本気でぶん殴られたからな・・・」

俺「お前ネタなのかマジなのかわかんないときあるよな・・・」

相方「いや俺もさ・・・」

625芸人な俺:2015/07/31(金) 06:13:13 ID:qOebAEAc0
???「ソレデナーサーニャ・・・」

サーニャ「・・・フフ、エイラハ・・・」

相方「ちょちょちょ兄貴・・・」

俺「お、おい相方」

スタスタスタスタスタスタスタ・・・

626芸人な俺:2015/07/31(金) 07:55:06 ID:qOebAEAc0
相方「・・・行った?」

俺「・・・ああ、行ったよ」

相方「はぁ〜」

俺「おい、相方」

相方「よ〜し!!今日も一日ガンバッゾ!!」

俺「は?」

相方「それじゃ兄貴今日はこれで!!!」

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ・・・

俺「・・・」

627芸人な俺:2015/07/31(金) 08:10:35 ID:qOebAEAc0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
相方「♪〜♪〜」

チラッ

シーン

相方「あら、誰もいない・・・」

相方「はぁ〜・・・」

俺相方「「あ〜あサーニャちゃんまた来てないのか・・・」」

相方「おわぁっ!!!」

俺「まったくお前は・・・」

相方「脅かさないでよ兄貴ぃ・・・」

俺「別に脅かしてもないけどな・・・」

俺「それで・・・お前惚れてんのか・・・サーニャちゃんに」

相方「べっべつにほれほれほれほれてねぇし!!」

俺「お前嘘つくの下手くそだなぁ〜・・・」

628芸人な俺:2015/07/31(金) 08:17:06 ID:qOebAEAc0
相方「・・・いつから俺「最初からだよ」

相方「えぇ〜・・・」

俺「気付かないと思ってんのか俺が。てかほかの整備兵もうすうす気づいてるから」

相方「・・・・・」

俺「大体お前はなサーニャちゃんの近くに来るといつもおどおどしてんだよ!!お前オタクか!!」

相方「し、しかたないだろ・・・俺んとこ男子校だったし・・・」

俺「嘘つけお前中卒だろうが・・・」

相方「中学は私立でしたー!」

俺「中学は俺と一緒の公立の共学だろうが・・・」

相方「・・・・・」

俺「なんで平気で嘘つくんだよ」

相方「だって兄貴に反論したくて・・・」

俺「反論するんだったらちゃんとしたの用意して来いよ・・・ウソの情報もってきたら倍返しされるわ」

629芸人な俺:2015/07/31(金) 08:46:19 ID:qOebAEAc0
相方「・・・・・」

俺「お前も男だろ?だったら決めるとこまで決めてしまえ」

相方「いや、でもあにき・・・」

俺「相方少尉よ、逝ってらっしゃい」ビシッ

相方「ちょっと兄貴!!なんで特攻隊みたいな感じでいかなきゃいけないんだよ!!」

俺「だってここ戦場だし・・・」

相方「いや・・・まあ確かに戦場だけどもさぁ・・・」

630芸人な俺:2015/07/31(金) 08:56:24 ID:qOebAEAc0
俺「・・・フフッ」

相方「なんだよ兄貴」

俺「いやな・・・お前と会話をしてるとなんだかコンビ組んだ時の頃思い出してな」

俺「あのころの俺たちはタウンダウンさんのようなビッグになる!とか大口叩いてさ・・・何でもできるって思ってたんだけどなぁ・・・」

相方「なんだよ兄貴らしくないなぁ・・・昔話語るなんて兄貴じゃない!後ろを見ずにもっと前へ進むのが兄貴のモットーでしょ!」

俺「フフッそれもそうだな・・・」

631芸人な俺:2015/07/31(金) 09:03:22 ID:qOebAEAc0
相方「なぁ兄貴・・・」

俺「ん?」

相方「星がきれいだね…」

俺「・・・そうだな」

相方「・・・なあ兄貴」

俺相方「「ここで漫才しよう!!」」

俺 フフン

相方「・・・兄貴ィ・・・」

俺「お前の考えてること丸わかりなんだよ。それに俺もこの場所がちょうどいい舞台だと思ってんだ。」

相方「星綺麗だしな・・・」

俺「ここに来てから漫才の練習してないからな・・・よーし!今からここを俺たちのホームグラウンドとする!!漫才の練習する時は必ずここでやるぞ!!」

相方「うん!!」

俺「よ〜しそれじゃまずはだな・・・」

632芸人な俺:2015/07/31(金) 09:14:53 ID:qOebAEAc0
-----------------------------------------
--------------------------------------
サーニャ「・・・」ブーン

サーニャ「今日も異常なしかな・・・」

・・・・・ナン・・・・・オトウサ・・・・・・ダレダ・・・・・

サーニャ「・・・?」

サーニャ「ハンガー前に声が聞こえる・・・誰だろう・・・?」

イヤーヤッパサ・・・チチオヤニアイサツスルノッテコワクナイデスカ
エーソウ・・・カー
だからさ僕ここで練習したいなと思うわけですよだからお前お父さん役やって
わかった
おとうさん、娘さんを僕にください
お前に娘はやらん
ガラガラガラなぜですか父さん!!
まだ部屋に入ってなかったのかよ!!

633芸人な俺:2015/07/31(金) 09:19:13 ID:qOebAEAc0
サーニャ「・・・・・・・・・・・・」

サーニャ「・・・・・・・・・・・・・・・プッ」
おとうさん!!おとうさんをおとうさんでおとうさんしてください!!
もうわけわかんないよ!!

サーニャ「・・・・・・・クックックックック」

もういいわ
どうもありがとうございましたー!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー芸人な俺ーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー

634芸人な俺:2015/07/31(金) 09:23:14 ID:qOebAEAc0
以上で投下を終わります・・・
朝まで続いちゃった・・・ごみんね★
・・・いや本当にごめんなさい・・・

635名無しさん:2015/07/31(金) 23:16:16 ID:Y3mkY0mw0
乙乙

636名無しさん:2015/08/12(水) 12:51:54 ID:FwMWiC2c0
復興してくり

637名無しさん:2015/08/15(土) 02:00:20 ID:pkA0YMSQ0
投下するで。あんま書き貯め無いから完結まで時間かかるかも

638鋼な俺:2015/08/15(土) 02:04:07 ID:pkA0YMSQ0
まだ16の私にとっては随分昔の話だ。でも,わたしはそれを昨日の様に覚えているし。「その日」は,私と同じ国の生まれなら,誰だって鮮明に思い出せる。いや,焼きついているだろう

確か,弾切れだったか,ストライカーの不調だったか。ああ,そんな事はどうでも良いんだけどね。とにかく,何かの問題が有って後ろに下がろうとした時だった

手持ちのレーション――リベリオンの片手で食えて腹が膨れやすいってだけが取り得のアレね――を,僚機におしつけて,Uターンしたんだよね

ネウロイに背を向けて大丈夫かって?

囲まれてるんだから。前か後ろか右か左かなんて,些細な事だよ

で,背を向けて,一度下を見たんだよね。そしたら,居たの

誰って,一々書く必要も無いでしょう。その人に関しての事書いてんだから

彼は。私と,ネウロイと,空との向こう側に有る何かを睨み付ける様にして,立っていた

彼が何を睨んでいたのか。それは,知らないし知ろうとも思わない

ただ,あの鋼の空が彼の祖の風景になるなら。彼が見た鋼の空に0ですらなく。ほんのちょっと,気付かない程中途半端にしかわたしが映っていないなら。いつか,彼の祖が色硝子の様な青い空に上書きされる時。あいつが,嫌でもわたしを意識しちゃうよう。わたしもド真ん中に映りこんでやろうと思うのだ

PS.完成した物は送らないでください。彼に見られたら死ぬほど恥ずかしいので

639鋼な俺:2015/08/15(土) 02:08:50 ID:pkA0YMSQ0
俺「大尉。久しぶりだな。腹が減ったので,この基地に今有る物で,一番旨い物が食いたいのだが」

バルクホルン「少佐。お久しぶりです。その前にミーナ中佐の所へ」

俺「変わらんな」

バルクホルン「貴方は随分変わった」

俺が501の基地に到着した時,最初に出迎えたのはバルクホルン大尉だった

俺とバルクホルンはあの撤退戦で一言二言交わした程度だが,お互いに覚えていた事に,彼は軽く驚いた

俺「覚えていたんだな」

案内すると先導する彼女の背中に声を掛けると,予想しなかった回答が還って来た

バルクホルン「正確にはミーナ中佐が覚えていた形ですね。少佐に関する書類に目を通していた時,ミーナ中佐が」

俺「ふうん」

ミーナ中佐も彼と撤退戦で顔を合わせたが。正直,俺はミーナ中佐が苦手だった

ジョークが通じない上,何でも上手くこなすつまらない人間

それが俺の――少なくとも,今まで――抱いている感情だった

640鋼な俺:2015/08/15(土) 02:14:37 ID:pkA0YMSQ0
バルクホルン「どうぞ」

目的地に到着し,バルクホルンが戸を開ける

中に入ると,インクの匂いとコーヒーの匂いが混ざった匂いが俺の鼻の中にこびり付く

俺「俺少佐です。本日付で此方に配属されました……どうぞ,よろしく」

ミーナ「よろしく……少佐……早速で悪いのだけれど……」

ミーナ中佐の言葉を遮る様に書類の山が崩れる

その横では,フソーのサムライみたいな女が,書類の山を前に頭を抱えていた

ヴィジャ板やらタロットやらも積まれていて,観ている分には面白い

俺「大尉。コーヒーを持ってきてくれ」

バルクホルン「……はい」

それは,観ていられない。と言う意味でもあるのだが

書類を撃墜数に数えられたら,彼女はカールスラントでトップ3には入れるウィッチだ

その夜,ミーナ中佐の手伝いをしながらそんな事を考えた

641鋼な俺:2015/08/15(土) 02:18:27 ID:pkA0YMSQ0
俺「今ので最後ですかね……?」

ミーナ「ええ。有難うございます。お陰で随分早く終わりました」

冷めたコーヒーを一息に飲んで席を立つ

Mr.コックリとは何者なのだろうか

時計は24時を少し過ぎた所を指している

俺「シャワー。男性職員用のを使えば?」

サカモト「ああ,明日までに俺少佐も使える様にしておくから。今日は男性職員用の物を使ってくれ」

俺「有難う」

俺が部屋を出ると,ドア越しに室内の硬かった雰囲気が柔らかくなるのを感じた

流石に,いきなり男性を迎え入れるのは難しいらしい

男性職員舎に向かう途中,整理した書類を思い出す

先ず,半分は俺絡みの書類だった

カールスラント空軍からの物が多かったが,最高司令部からの物も少なくなかった

残りの半分近くはブリタニアからの物

642鋼な俺:2015/08/15(土) 02:26:05 ID:pkA0YMSQ0
補給絡みが大半で,数枚はこの付近の海域への海軍の展開を3ヶ月以内に強化すると言う内容だ

今までのブリタニア本国艦隊に加え

巡洋戦艦2隻,巡洋艦3隻,駆逐艦27隻

それに加え新型と思われる空母3隻

から成る艦隊を追加するらしい

新型空母の内の1隻はブリタニア海軍からの仕様の変更要請で今改修作業中のユニコーンだ

あの書類の日付が2日前なのを考えると,改修作業がもうすぐ終わるらしい

ここに来る前に口頭で伝えられた命令を思い出す

これ自体は「あちら」も気付いているだろう

問題はアタリなら事は更に厄介になる事だった

俺「っと……ここか」

「男性職員舎」とだけ書かれた札の掛かったドアを見つけ,手にかける

俺「……? ああ……引くのか」

643鋼な俺:2015/08/15(土) 02:30:01 ID:pkA0YMSQ0
俺が引くタイプのドアと気付いた瞬間,向こう側から勢い良くドアが開かれる

不幸にも俺にぶつかったドアはそこで動きを止め,ドアを開けた向こう側の人間も,またドアとぶつかる事となる

俺「クソ。悪いな。大丈夫か」

半分程度開かれたドアを開いて向こうを確認すると,大柄な男が小柄な男を抱えて倒れていた

それだけでも異様だが,更にそれを異様な光景にしているのは,二人の衣服を濡らす赤い液体だった

状況からして小柄な男が怪我でもしたのだろう

俺「大丈夫かよ……」

大男「悪い……こいつが怪我してな……医務室まで手を貸してくれないか?」

大男が座ったまま此方を見上げ,そんなことを口にした

正直,この状況で俺がどう手伝うかも解らないし,出来れば目立ちたくなかった

しかし,このまま見捨てるのも気が引ける……

まあ,多少目立っても変わらないか――そんな言葉が,口から漏れた

俺「ここで治そう。どんな怪我だ?」

大男「ノコで脚を切った。随分深くて骨も見えてるが……お前,医者なのか?」

俺「医者より早いぞ。確か此処に……」

644鋼な俺:2015/08/15(土) 02:35:21 ID:pkA0YMSQ0
大男「コイン? なんで……」

俺「まあ」

俺が遮る様に言い放つと,大男はそれっきりだまってしまった

俺「ノコってこんな切れるのな」

脚を包むタオルを取ってそんな事を口にする

この様子じゃかなり痛そうだ

フソーのショーユってのがこれに入ったらどれだけ痛いだろうか

考えるのも痛いのでやめるが,失神してるのは運が良い

大男「お,おい!」

俺「はいはい」

大男にせかされ,処置を始める

と言っても,右手で金属片を握り,左手を傷口に添えるだけだが

俺「はい」

645鋼な俺:2015/08/15(土) 02:38:34 ID:pkA0YMSQ0
右手の鉄がすっと軽くなり,傷口がふさがる

俺「終わりだ。まあ,流れた血が元に戻る訳でも無いし,軍医さんに診てもらうと良い」

大男「あ,有難うございます」

大男は頭を下げると,小柄なのを担いで医務室に走って行く

名前位,聞いておけば良かったかもしれないと呟き,俺は男性職員舎のドアを押す

俺「…………」



今回はこれにて

646名無しさん:2015/08/21(金) 07:54:35 ID:1SSZwX0E0

治癒魔法とは地味なところで来たな

647鋼な俺:2015/09/11(金) 03:09:55 ID:LpmSyaQg0
首の太い血管を,切れ味の良いナイフで断ち切る

かなり深く切れたらしい

血は噴水の様に噴出し,床のタイルの隙間に血が通う

嘘の血管を床に張り巡らせ,自分の一部とする事で,この部屋は工房になる

工房はそれ自体が廃れた魔術だ

作れる人間は自分を除くと数人しか居ない

アンナとか言う老婆と,時計塔の名前が長い魔術師。有名なのはそれ位か

時代が我々を見放したか。我々が時代を見放したか。そんな事に興味は無かった

あの,鋼の空を破る為に

首に手をやると,傷はもう塞がっていた

648鋼な俺:2015/09/11(金) 03:13:12 ID:LpmSyaQg0
此処は暑い

スオムスで数年戦った人間からすれば,この国は何処に居ようと暖炉の前に居る様な錯覚を覚える

太陽が昇っていない事から,五時は周っていないだろう。ベッドの下に置いてある鞄から代えのシャツを引っ張ると,さっさと部屋を出る

基地内の地図を頭に広げ,外への最短経路を探る

恐らくハンガーが一番近い

ハンガーに爪先を向け,歩き出す。今日はフソー式の風呂に入れるだろうか

俺「Wir fliegen durch silberne Weiten……

Selig dem Himmel gesellt……」

「オイ」

俺「はい?」

唐突に背後から声を掛けられる

ああ,この声は聞き覚えが有る

649鋼な俺:2015/09/11(金) 03:16:14 ID:LpmSyaQg0
エイラ「こっち来たのか」

俺「まあね」

そっか。と言ったきり,黙って俺の後ろに付いてくる

エイラとは,スオムスで暫く一緒に戦っていたのだ

俺「珍しいな。早起きなんて。今から走るんだが。一緒にどうだ?」

エイラ「ん」

俺「どうだ? 元気か? 姉さんな。お前のこと心配して――」

エイラ「首」

俺「……」

エイラ「治ってないぞ」

エイラが指した部分に手をやると,確かに切った跡が残っていた

650鋼な俺:2015/09/11(金) 03:19:21 ID:LpmSyaQg0
俺「あー……面倒だな……」

エイラはよく知っているが,他人からみたら過去に誰かに切り付けられた様にも見えるのだ

こればかりは直ぐには治せない

気を取り直して格納庫を通り抜け,靴紐を締めなおす

天気は快晴。出来るだけ薄着にしたのは正解だった

地を蹴り,走り出す

最初はこれが嫌でたまらなかったが,慣れてしまえばそう苦でもない

スオムスに比べたら少々暑いが,身体を壊すほどでもない

ここは,きっと良い場所だ

651鋼な俺:2015/09/11(金) 03:23:00 ID:LpmSyaQg0


サカモト「おい」

どれくらい走っていただろうか。後ろからサカモト少佐が話しかけてくるまで無心で走り続けていた

足音が二人分しか聴こえないので,エイラはへばったのだろう

俺「ああ,少佐。どうしましたか?」

俺が立ち止まると。走り続けろ。と少佐が手で指示する

サカモト「いや,何処にもお前を見なかったからな。起きた時に外で走っているのを観たから,一応確かめに来たら……な」

少佐が俺の後ろに付いて走る

俺「すいません。ご迷惑お掛けしましたか」

サカモト「いいや。構わないが……ずっと走っていたのか?」

俺「まあ,その程度しか出来ませんから」

サカモト「……朝食も食べていないだろう。あと一週したら行くぞ」

652鋼な俺:2015/09/11(金) 03:28:57 ID:LpmSyaQg0


小さい扶桑人「あっ。カールスラントの人!」

サカモトに連れられて食堂に入ると,小さい扶桑人が駆け寄って来た

俺「な,なんだよ」

小さい扶桑人「あ,すいません。あの,私宮藤って言います。えっと……坂本少佐とミーナ中佐からお話は伺っています。朝ごはん出来ているので,食べてください」

俺「あ,ああ。俺少佐だ。よろしくな」

ミヤフジ「はい!」

ミヤフジはそう言ってキッチンに引き返すと,忙しなく皿に料理を盛って行く

カウンター越しに食事を受け取る

にぎやかな食卓から適当に席を探すと,カールスラントのジャケットが目に入った

皿の物は平らげられて,一人で黙って雑誌を読んでいる

行儀は良くないが,隣に座りたくない程ではない

座って良いか? と聴くと,どうぞ。とだけ返される

朝食は扶桑の料理――所謂,和風。と言う物だった

653鋼な俺:2015/09/11(金) 03:32:04 ID:LpmSyaQg0
ライスに魚に卵。あと,サラダとネバつく豆。この豆は単品だとどうも苦手だが,ミヤフジが教えてくれた様に,まぜてライスと一緒に食うと旨かった

綺麗に平らげ,お茶を飲んでも。まだ,隣のカールスラントのジャケットは雑誌を読んでいた

俺「なあ」

カールスラントのジャケット「ん?」

俺「久しぶりじゃあないか。いや,それとも始めましてが正しいかな?」

ハルトマン「好きな方で良いよ。お互い,知らないって訳じゃ無いでしょ?」

俺「まあな」

ハルトマン「で,スオムスから来たの?」

ハルトマンが持っていた雑誌の一節を指差す

『スオムスにて奮戦する「カールスラント撤退遅れ部隊」唯一のウィッチ俺大尉インタビュー』

ハルトマン「ここでは大尉らしいけど」

俺「まあな」

ハルトマン「それに陸戦ウィッチらしいし」

俺「上司に言われてやってるんだ。それより,ハルトマンは200超えたんだろ?」

ハルトマン「まあね」

654鋼な俺:2015/09/11(金) 03:35:30 ID:LpmSyaQg0
君が聞いた様な事はもう起きないよ。と得意げに胸を張る

君が聞いた様な事とは,初出撃の話だろうか

だとしたら胸を張れる事でも無い気がするが

俺「いや,うん。まあ,頼もしいな。出来れば俺が仕上がるまで頑張って欲しい物だ」

ハルトマン「出来上がる?」

俺「ああ。俺はまだ――」

そこまで言った所で,慌しくドアが開け放たれる

バルクホルン「ハルトマンが居ないんだ! 誰か知らないか!?」

ハルトマン「え? ここに居るけど?」

ハルトマンがひらひらと手を振ると,バルクホルンがその場にへたりこむ

どうやら,かなり急いで探していたらしい

俺「お早う,バルクホルン。どうしたよ?」

バルクホルン「い,いえ。すこし,用事を思い出しただけで。少佐は,お気になさらず」

そう言って言葉を濁すと,軽く苦笑いする

こう言う時は,追求しない方が良い

655鋼な俺:2015/09/11(金) 03:39:07 ID:LpmSyaQg0
ハルトマン「あー。そりゃ,いつもは昼近くまで寝てるからね。どこでも寝てないって探してたんでしょ」

他人事みたいに言うと,顔を雑誌の方に戻す

どうやら,バルクホルンは,その事実を隠す為に言葉を濁したらしい

俺にはどうだって良いが,彼女はそれが大切な事だったらしく,怒りを顕わにした

まあ,彼女にも色々有るのだろう

バルクホルン「ハルトマン貴様……」

俺「な,なあ。そんな怒ってどうしたよ……別に仕事さえやれば昼まで寝てても問題なかろう?」

バルクホルン「それだけなら! 百歩譲って! 良いとしても!」

良いのか

バルクホルン「部屋は汚いわだらしないわで! 挙句の果てには少佐にまで……」

知られちゃならん程か

其処まで言われると気になる

656鋼な俺:2015/09/11(金) 03:42:14 ID:LpmSyaQg0
俺「なあ,だらしないとかはどうにもできんとして,部屋の片付け位は手伝うぞ? 無論,無理にとは言わんが……」

ハルトマン「良いの?」

俺「ああ。部屋の片付くらい俺とハルトマンでやればすぐだろ?」

ハルトマン「…………」

バルクホルン「…………えっと」

ハルトマン「……そうだね! じゃあ,お願いしても良いかな?」

今の不穏さしか無い沈黙をねじ伏せ,ハルトマンがにこりと笑う

俺「あの,汚いってどの位?」

ハルトマン「そこそこ?」

657鋼な俺:2015/09/11(金) 03:45:38 ID:LpmSyaQg0
既にバルクホルンはうつむいて黙りきっている

にぎやかだった食卓も,事のなりゆきを見守る様に,静寂に包まれていた

これはすぐには終わらない気がする……!

俺「ハルトマン」

ハルトマン「んい?」

俺「すぐに始めるぞ」

この時点で,今の俺には不安しか無かった

658鋼な俺:2015/09/11(金) 03:51:43 ID:LpmSyaQg0
少佐は,フラウの部屋に入るなり顔色一つ変えずに片付けを始めた

普通驚いたりするものなのだが。と思いつつ,私も参加する

そう言えば,何故フラウは少佐の申し出を受け入れたのだろうか

ハルトマン「知り合いなんだ。昔ウーシュが遊んでもらってて」

俺「まあ,知り合いと言っても顔を知ってる程度だけど」

口に出ていたのか,フラウが私の疑問に答える

まあ,少佐はカールスラント人だから何かの縁で知り合うのも不思議ではないのかもしれない

しかし,あのウルスラが少佐と遊んでもらっていたと言うのは少し以外だった

バルクホルン「少佐はどこでウルスラと知り合ったんですか?」

俺「本屋。ブリタニア語教えて欲しいっていわれてな」

ハルトマン「そうそう。それで教える方もお人よしだけどね」

ああ,そうか。それなら納得できる

確かに,俺少佐はブリタニア人らしい顔立ちをしていた

659鋼な俺:2015/09/11(金) 03:54:52 ID:LpmSyaQg0
今回は以上で

660名無しさん:2015/09/12(土) 20:34:28 ID:A8Ah7DAQ0
乙乙

661名無しさん:2015/12/26(土) 18:37:22 ID:CqmkQtuw0
荒らされて以来久しぶりに来たけど最近は落ち着いたみたい?
来年はブレイブウィッチーズ楽しみですね

662鋼な俺:2016/01/13(水) 02:28:51 ID:UhXOn5zA0
おひさしぶりです。時間が開いて申し訳ありません。投下します

663鋼な俺:2016/01/13(水) 02:31:54 ID:UhXOn5zA0
眼下には海。それより少し手前に6つ。人間の戦闘機にも似た怪異が編隊を組んで進んでいた

背後からは太陽が昇りつつある

俺「敵機6視認! 10……から12m位の戦闘機にも似た形だ! 速度は400! 高度は5000! 南東から基地の方角に向かっている。いつもの定期便だろう。迎撃する。よろしいな?」

ミーナ『ええ,お願いします。取りこぼしても此方から十分に迎撃可能な範囲ですので無理はしない様お願いします』

俺「了解。そう言う事だ,シャーリー,ルッキーニ。燃料的にも十分余裕は有るが,俺は泳げん。手早く片付けよう。シャーリー。戦闘の指揮は予定通り君が執ってくれ」

シャーリー『了解』

出撃前に打ち合わせで,戦闘時の指揮権をイェーガーに渡すと言った時はシャーリーに猛反対された。だが,戦闘直前にもなると,流石に腹を決めたらしい

ルッキーニ『泳げないの? じゃあ,あれやらされるかな?』

俺「あれ?」

ルッキーニ『知らないの? ストライカーの模型履かされて海に入れってやつ』

そんな拷問めいた事をさせられるなんて知らなかった

俺「……ガランドめ……聴いてないぞそんなの」

シャーリー『まあまあ。みんなやってるしさ。じゃあ,さっきの打ち合わせの通りに』

664鋼な俺:2016/01/13(水) 02:35:00 ID:UhXOn5zA0
シャーリー軽く手を振り敵の編隊目掛けて降下する。それに少し遅れてルッキーニが降下を始める

ああ言う形をしたネウロイは一般的に前方への攻撃力が高いとされる為,それに習い初撃は反撃の危険の少ない一番後方に加える

後方上面から降下して一撃,直ぐに上昇,離脱した所に二人目がもう一撃

退屈ではあるが,確実かつこの数の差をひっくり返せる戦術として最も有効な物だった

BARの曳光弾が最後部のネウロイに突き刺さり,装甲を穴だらけにする

続いてルッキーニが止めを刺す

敵の編隊が散開し,追撃しようと上昇する。意外と反応が早かったが,どの敵もそもそもの速度が足りず,射程に収められない様だ

あれなら援護は必要無さそうだ

俺「シャーリー,ルッキーニ。お見事! 敵の反応が少々早いが,あれなら想定範囲内だろう!」

シャーリー『なら良かった。じゃあ予定通り,私が上空待機する』

俺「頼む。ルッキーニ!」

ルッキーニ『了解!』

665鋼な俺:2016/01/13(水) 02:38:14 ID:UhXOn5zA0
どうやら敵はロッテとケッテに分かれてカバーしあう積もりらしい。だが,どうしても数の多いケッテは動きが鈍く,数の少ないロッテは捕らえられた時の危険が少ない。ここはケッテで一番後ろに着いている機を狙うのが良いだろう

俺「ルッキーニ。ケッテの最後尾。通り抜ける前に上昇。良いな? 行くぞ!」

返事も聞かずに降下を始める

基本的には敵はまっすぐ進んでいるので距離600辺りから射撃ができる筈だ

同高度での格闘戦では照準からからはみ出るまで近付けと言うが,今の様な一撃離脱でそれをやると射撃時間が極端に短くなってしまう

MG151/20を構え直し,目標を照準内に収める

距離はあと1000もない

少し銃身をずらし,目標の未来位置に合わせる

真後ろから降下したお陰で,偏差はそこまで難しくない

距離は更に近付き,700を切る

息を大きく吸い,引き金を引く

目標が直前に軽く回避行動を取るが,もう遅い

5発に一発の割合で入っている緑の曳光弾が目標に吸い込まれ,装甲を削る

すぐに敵は照準いっぱいまで近付く

666鋼な俺:2016/01/13(水) 02:41:35 ID:UhXOn5zA0
射撃を切り上げ,敵の真上を通らない様斜め上に向かい上昇を開始すると,前方に少し距離を置き,ロッテを組んだ敵が向かってくるのが見える。しかし,それもシャーリーが危険と判断すれば攻撃を加えるので,あまり脅威にはならないだろう

後ろを振り向くと先ほど攻撃した目標が白い破片となって散って行くのが見える

撃破したルッキーニはロッテを組んだ敵に捕捉されかけていたが,上空からシャーリーがバラ撒いた弾にビビってすぐに追撃を諦めた様だ

シャーリー『ナイスキル』

俺「よし。このまま行けば……!」

667鋼な俺:2016/01/13(水) 02:45:01 ID:UhXOn5zA0
「作戦終了との事です! ネット用意! ラック準備急げ!」

内線を取った整備士がそう声を張り上げるとのんびりしていた整備士は慌しく動き出し,忙しそうにしていた整備士はもっと忙しそうに動き回る

滑走路から格納庫に入って少しの所にネットが張られる

俺はウィッチになってからの殆どの時間を広いアフリカで過ごしていたらしい。なので,501の様な基地での着陸は少々慣れないとの事で,整備士にオーバーラン防止用ネットを頼んだらしい

トゥルーデ「少佐がアフリカに居たなんてな。その前はスオムスに居たらしいし。流石はガランド少将のお気に入りと言う事か」

手に持っていたコーラをトゥルーデが後ろから取り上げ,口を付ける

エーリカ「撤退戦の頃はそんな風に考えられなかったって?」

トゥルーデ「ああ。で,どうだった?」

エーリカ「スオムスの後一週間の空白期間が有って空軍の非ウィッチ航空隊に1ヶ月。その後アフリカに転属して1週間。そして501に着任。あと,元々彼は陸軍の人間だったのに,原隊は空軍管轄の部隊とされている。これ以上はここで調べても解らないと思う。ウルスラに頼む?」

トゥルーデ「いや,良い。本来関係の無い事だ。放って置くのが安全だろう」

そう言って私の横に中身の詰まったコーラの瓶を置く

668鋼な俺:2016/01/13(水) 02:48:05 ID:UhXOn5zA0
エーリカ「んあ……んッ! でも,少し気になるんだよね。何があって空軍の原隊になっているか。とか,そもそもガランド少将がどうやって彼と知り合ったかとか」

トゥルーデ「歯で開けるなよ……まあ,確かにそうだが。知ってどうする?」

エーリカ「ああ,興味が有るだけだよ」

トゥルーデ「珍しいな。お前が」

エーリカ「そりゃね。だってウルスラを振ったんだよ?」

トゥルーデ「はぁ!?」

669名無しさん:2016/01/23(土) 02:23:40 ID:PD6re2B60
しえん

670名無しさん:2016/01/25(月) 22:28:58 ID:6Xw7UFbo0
とりあえず乙でいいのかな

676名無しさん:2016/06/22(水) 05:24:14 ID:DBNn8d3A0
(新年)初投下です

夜の帳が引き上げられ、東の空がうっすらと白みがかる頃。
全身を凍り付ける空気が蔓延するウィッチ用宿舎の通路を、女が一人歩いていた。
割り当てられた自室を出てから、一分もかからない距離を歩く智子は白い頬を赤らめ、とある一室の前で立ち止まった。
そわそわと身体を動かす様から彼女の頬に差し込む赤みが、寒さによるものだけではないことが伺える。
黒真珠を思わせる双眸は潤んだ光を帯び、その奥底に宿る光は嬉々とした色を孕んでいた。

熱の篭った吐息を零し、智子は古ぼけた扉に伸ばした手を、不意に胸元へと引き戻す。
そうしてまた、躊躇いながら扉に手を伸ばしては、胸元に戻すといった動作を何度も繰り返す。
視線の先に立つのは、廊下と目の前の部屋とを隔てる古めかしい扉。
その先で、今もまだ寝息を立てている部屋の主は、昨日再会を果たした彼。
昨夜は同じ布団で寝ることを断られたため、消灯時刻が近づいたことを理由に部屋から追い出されたが、今日は違う。
時間が許す限り――それこそ一日中彼の傍にいることも、話をすることも出来る。
そのことが嬉しくて、嬉しくて。
逸る気持ちを抑え切れず、早朝から足を運んだ智子であったが、この後の行動を決めあぐねていた。

677名無しさん:2016/06/22(水) 05:28:35 ID:DBNn8d3A0

どんな言葉をかけながら、彼を起こせばいいのだろうか。
どんな笑顔を浮かべると、寝起きの彼には魅力的に映るだろうか。
頭の中に浮かび上がるのは、寝ている彼を起こす自分の姿。
あの日彼を喪った後も、妄想のなかで幾度も繰り返してきた、愛しい男性を起こす場面。
しかしいざ実際にその場面に直面してみると、あれやこれやと考えが浮かび、上手くまとまらない。
それでも悩んでいては何も変わらない。智子は思考を切り替える。
成長した彼の無防備な寝顔はどう変わっているのか。寝起きの癖は変わらないままなのか。相変わらず寒さに弱いのか。
七年以上経った彼の寝顔や、寝起きの姿を早く見たいという気持ちを原動力に。
意を決し、冷気によって冷やされた扉を数回ノックする。
返事はない。物音も、聞こえない。

智子「俺? もう起きてる?」

今度はノックの回数を増やし、声もかけてみる。やはり返事はない。
起床時刻前なのだから寝ていて当然かと思いつつ、智子は恐る恐るドアノブを握り、回してみる。
鍵はかかっていない。
部屋の主を起こさぬよう、音を立てずにドアを開けて室内へと足を踏み入れる。
無用心だと思うよりも先に、弾む気持ちが彼女を突き動かしていた。

678名無しさん:2016/06/22(水) 05:31:55 ID:DBNn8d3A0

智子「……は、入るわよぉ?」

暗闇に慣れていくに連れて、徐々に部屋の全体図が明瞭となる。
薄暗い部屋のなか、ベッドの上では部屋の主を寒さから守るかのように、幾重にも折り重なった布団が鎮座していた。
それらに守られ、徐に身体を上下させながら寝息を立てる想い人の影を捉えた途端、智子の頬に差し込む赤みがその色を濃くしていった。
寝ている彼を起こさないよう、後ろ手にドアを閉め、足音殺してベッドに近づく。
一歩進む毎に、胸の高鳴りが激しいものへと変わっていく様を感じながら。

智子「俺? もうすぐ起床時間よ?」

これでは寝顔が見られないではないかと不満を零しつつ、自分に背を向ける部屋の主に柔らかな声音で語りかける。
当然の如く返事は無い。
自身の声に反応して時折、布団に包まれた体躯が布擦れの音を立てて動くだけだ。

智子「ねぇ、俺?」

もう一度呼びかける。今度は布団の上に手を添えて、軽く揺すってみる。
布団越しに彼の身体に触れた瞬間、不意に昨日の記憶が――逞しい成人男性の体躯に成長した彼に抱き留められた記憶が浮かび上がった。
温かく硬い胸板と腕に抱き留められた感触までもが肌の上に蘇り、頬に帯びた熱が際限なく高まっていく。

679名無しさん:2016/06/22(水) 05:34:59 ID:DBNn8d3A0

智子「はぁ……」

形の良い桃色の唇から、熱が篭った吐息が零れ落ちる。
願わくは、またあの頃のように彼の胸元に顔を埋めて眠りに就きたい。
彼の腕に包まれ、その温もりを感じながら、まどろんでいたい。
いいや、出来るものなら彼に覆い被さる布団になりたい。
包まれるだけでなく、今度は自分が彼を包みこんで、癒してあげたい。
こんな布切れよりも、自分の身体のほうが彼を温められるはずだ。
いっそのこと布団を引き剥がして抱きついてみようかと、思考が徐々に危険な領域に足を踏み入れた矢先のこと。

「……ん」

智子「……ぁ」

布が擦れる音を立てて、部屋の主が寝返りを打った。
露となったのは、久方ぶりに目にする想い人の寝顔だった。
もう二度と、目にすることが出来ないと思っていた愛しい男の寝顔だった。
その安らかな寝顔から、改めて彼が生きている現実を実感した智子は、目元に込み上げてきた雫を拭い顔を近づける。
これくらい近くから見つめてもいいわよねと、返す相手のいない言葉を零しながら。

680名無しさん:2016/06/22(水) 05:38:09 ID:DBNn8d3A0

智子「……おれ」

温もりが感じられる距離まで、顔を近づける。すぐ目の前まで、それこそ唇同士が触れ合う寸前の距離にまで。
寝息が頬をくすぐる。その温もりが智子の全身を、芯から温めていく。
このまま時間が止まれば、いつまでも彼の傍にいられるのに。
叶わぬ願いを抱く智子の目の前で、寝顔を晒す男の瞼が不意に強張った。
ベッドの上で横たわる彼の長躯が、布団の山が、微かに震えた。

智子「……あら?」

その寝顔から離れた智子の目に映ったものは、布団からはみ出した彼の下半身だった。
おそらくは寝返りを打った際に、掛け布団を蹴飛ばしてしまったのだろう。

智子「(身体を壊さないうちに、戻したほうがいいわよね)」

視界の隅で何かが蠢いたのは、皺になった掛け布団を掴んだときのことだ。
形の良い眉を顰め、視線を移す。“それ”を捉えた瞬間、智子の全身が硬直した。
視線の先に佇む彼の下半身――その、ある一点。
ちょうど股座に当たる部分が、異様なまでに盛り上がっているではないか。
あたかもテントを張るが如く、棒状の物体が布地を押し上げる光景を前に、智子の白い喉が音を立てた。

681名無しさん:2016/06/22(水) 05:41:33 ID:DBNn8d3A0

智子「あ、わ……わ」

隆起の正体が想い人の盛り上がった男性器だと理解した瞬間、智子は自身の頬がそれまでとは比にならぬほどの灼熱を帯びる様を感じた。

智子「(あ、あああああ、あれよね!? 朝に起こる、生理現象のようなものよね!?)」

初めて目にする、朝勃ちという男性特有の生理現象。
恋慕の念を寄せる相手の逸物は、布地の下からでも形状が分かるほどに雄々しく反り立っていた。
再び智子の喉が、静かに音を立てた。
自然と呼吸が、荒いものへと変わっていく。
視界から外そうにも、目線を逸らすことが出来ない。
それどころか、手が自然と、彼のモノへと伸び始める。

智子「はぁっ……はぁっ……はーっ」

頭のなかに靄のようなものが広がり、それが冷静さと理性を覆い尽くす。
智子の脳裏を駆け巡り、支配していたのは女としての衝動。
妄想のなかで何度も自身の純潔を散らした彼の雄。それが、いま目の前にある。

――どれくらい硬いのだろう。
――どれくらい熱いのだろう。
――触りたい。
――見たい。

――欲しい。

682衝撃波:2016/06/22(水) 05:46:56 ID:DBNn8d3A0

肥大する衝動に比例して、激しさを増す心臓の高鳴り。
一秒が永遠にも感じられるなか、遂に智子の白い指先が、それへと触れた。
指の先端に伝わる熱と硬さを感じた瞬間、智子は頭を槌で殴られたかのように、脳が揺れる感覚を抱いた。
布越しだというのに、こんなにも熱いのか。こんなにも硬いものなのか。
もはやこれ以上、正常な思考を働かせることができなかった。
そのまま残る細指を、牡竿に這わせようと動かす寸前、我に返り瞼を閉じて彼の逸物を下半身ごと布団で覆い隠す。

智子「わ、わたし……何てことを……」

薄桜色の唇から漏れ出す声音に満ちていたのは、怯えの感情。
自身に潜む雌が、自分でも気がつかぬ内に膨れ上がっていた。
もしも理性が戻ることなく、あのまま指を這わせていたらどうなるのだろう。
もしもそれで彼が目を覚ましたら、どうなっていただろう。
きっと、寝込みを襲った女と軽蔑されるに違いない。
また会えただけでも、充分に幸せだったというのに。
いつの間にか、次の欲求が――彼だけの女(もの)になりたいという願いが生まれていることに。
その欲求すら抑え込めない、自身の弱さに智子は唇を噛んだ。

智子「ごめんなさい……」

自分だけが独り、抜け駆けをしていることをかつての仲間たちに向かって。
そして、勝手に部屋に入り込んだことを目の前で寝息を立てる彼に向かって。
小さく謝罪の言葉を漏らした智子は、自身の黒髪をかき上げて、静かに男の寝顔に顔を寄せる。
せめて彼が目を覚ますまで、間近で見つめていたい。
あわや再び唇同士が触れ合う寸前の距離まで近づいた瞬間、想い人が唐突に瞼を開けた。

683衝撃波:2016/06/22(水) 05:50:09 ID:DBNn8d3A0

普段なら目を覚ましてから、思考が働くまでに数分の時間を要する。
けれども、今回ばかりは状況が異なっていた。
瞼を開けた先の視界を占めるのは、見慣れた天井ではなく、息が止まるほどの美貌。
西欧人のそれとはまた異なる柔肌は、雪のように白く。
目にしただけで手触りの良さを期待させる黒の長髪は、漆を思わせるほどの艶を帯びている。
黒真珠を覆い隠す瞼から伸びる睫は、どこか羞恥に耐えるかのように、小刻みに震えていた。
そして、あと少しで自身のそれに触れる距離まで肉薄していたのは、形良い桜色の唇だった。
自身の視界を独占する美貌の主が、昨日に再会を果たした穴拭智子だと気がついた瞬間、俺は息を呑んだ。

俺「(な、何だ!? なんで智子が俺の部屋に!?)」

何故、智子が自分の部屋に入り込んでいるのだろうか。
何故、智子の唇が自身のそれに近づいているのか。
次々と疑問が脳裏を駆け巡るも、それらは眼前に迫る美貌によって、すぐさま掻き消されてしまう。

静止の声をかけようにも、僅かでも身体を動かせば彼女の唇を奪いかねない。
だというのに、智子になら唇を奪われても構わないと思ってしまっているのは。
彼女の黒髪から発せられる仄かに甘い薫香にばかり意識を向けてしまっているのは、男としての悲しい性なのか。

かといって、このような形で大切な妹分の――智子の初めてを奪うわけにもいくまい。
何とか首だけでも動かして彼女の唇が、自身のそれに触れないよう体勢を変える。
その際に生じた微かな布擦れの音に気がついたのか、智子が瞼を開いた。
お互いの瞳を見つめ合う時間が続き、

684衝撃波:2016/06/22(水) 05:54:41 ID:DBNn8d3A0

智子「え? あ、あ……わ……」

俺「よ、よぉ。おはよう……智子」

再会してから、初めて間近で見る彼女の面差しが次第に赤みを増していった。
段々と黒い瞳には透明な雫が滲み出てきた。
そして、感情の高まりを抑え切れなくなったのか。
言葉にならない叫び声が、室内に響き渡った。

智子「ち、違うのよ!? ここここ、これはぁ! ちょっと貴方の髪の毛に埃がついてたから、取ろうと思ってたたたた、だけなのよ!?」

整った美貌を高潮させ、涙まで浮かべて、機銃掃射もかくやの勢いで言い訳を並べ立てる妹分の姿に俺は口元を綻ばせた。
随分と昔にも、こんな風に似たような言い訳を聞かされたことがあったな――と胸裏で独りごちながら。
どれだけ見目麗しく成長しても、あの頃と変わらぬ智子が目の前にいる。
自分が、自分だけが知っている智子が、そこにいる。
そのことに、愛おしさと懐かしさが混じる感慨を抱いた俺は、自然と彼女の頬に手を添えていた。

智子「あっ……」

頬を触れられ、ほんの一瞬だけ身体を強張らせたものの、すぐさま力を抜いて瞼を閉じる。
その手の温もりに、優しさに身を委ねるかのように。
安らぎに満ちた表情が、智子を彩った。

685衝撃波:2016/06/22(水) 05:57:53 ID:DBNn8d3A0

俺「俺のこと、起こしに来てくれたんだよな?」

智子「……うん」

瞼を閉じたままの智子が小さく頷いてみせると俺は静かに破顔した。
手の平を満たす倫子の頬の柔らかさを感じながら。

俺「そっかそっか。ありがとうな、智子」

智子「その、迷惑……だった?」

俺「まさか。俺が寒さに弱いの知っているだろう?」

だから気にするなと笑い飛ばすも、彼女に笑みが戻ることはなかった。
おそらく昨晩、寝床を共にしたいという願いを拒否されたことが智子のなかで尾を引いているのだろう。
俺としては大人の女へと成長した妹分を襲わぬための防衛手段だったのだが、自身を兄貴分として慕う智子は、甘えたかったのかもしれない。
再会するまで智子のなかで自分は死んだ人間だったのだ。
そんな自分とまた巡り会えたことを考えると、些か大人気ない対応だったか。

俺「(もう少し構ってやれば良かったか)」

放っておけば朝食まで昨夜のことを引き摺るかもしれない。
俺は考えを巡らせる。
時間にして一分にも満たない短い間黙考を続け、素直に思いの丈を吐露することを決めた。

686衝撃波:2016/06/22(水) 06:00:57 ID:DBNn8d3A0
俺「あー……智子?」

智子「……なに?」

俺「その、だな。別にお前と一緒にいるのが、嫌なわけじゃないんだぞ? 俺だって……お前にまた会えて嬉しいんだ」

段々と声音が尻すぼみになっていく。
それはきっと、これから紡ぐ台詞が自分でも気障なものだと自覚しているからだろう。
次第に頬が、耳が熱くなっていく様を実感しながら、俺は尚も言葉を続ける。

俺「……ただ、な。お前が綺麗に成長し過ぎて……傍にいると何というか、凄く落ち着かないだけなんだよ」

告げられた台詞に智子は目を丸くした。
小さく口を開け放ち、こちらを見つめる美貌。
思わず心臓が跳ね上がる感覚を抱くも、俺はすぐさま口を開く。

俺「黒髪も……その、陸軍にいた頃と違って艶があるし」

智子「え……あ。そう、かしら?」

言われて、肩から流れる自身の黒髪に手を遣る智子。
形の良い唇は心なしか綻んでみえた。

俺「肌も、あの頃と同じように……いや。あの頃以上にきめ細かくて」

智子「……あ、あぅ」

俺「体つきだって……その、なんだ。ちゃんと大人のそれになってるからさ」

一瞬だけ、彼女の陸軍服を下から押し上げる二つの膨らみに視線を注ぎ、すぐさま逸らす。

687衝撃波:2016/06/22(水) 06:04:43 ID:DBNn8d3A0

智子「そ、それって!!」

弾け飛んだ言葉に続いて智子が身を乗り出した。

俺「う、うん?」

智子「私のことをその、女として……見ているって、ことで……いい、のよね?」

自身のシャツを両の手の指でぎゅっと握り締めながら、真っ直ぐに自分を見つめてくる智子の言葉に俺は首肯した。
途端に智子の頬に朱色が戻る。形の良い唇が更に綻んでいく。

俺「……ぁ」

思わず、声が漏れた。
自分でも、それが声なのだと遅れて気がつくほどの小さな声だった。

智子「そう……なの。っふふ……そう、なんだ」

花が咲いたような笑み――という言葉は、きっと今の智子が浮かべる笑顔を差しているのだろう。
嬉しさと、喜びに満ち溢れた微笑みを前に俺は思う。
この笑顔を、いつまでも見つめていたい。
いつまでも、愛でていたい。

智子「朝からごめんなさい。先に行って待っているから……早く、来てね?」

想い人が自身の笑みに魅了されていることに気づかぬまま、智子は寝台から下りる。
そうするや否や身を翻し、小走りで部屋を出て行った。

688衝撃波:2016/06/22(水) 06:11:05 ID:DBNn8d3A0
俺「智子……」

部屋を出て行く智子の後姿に、返事すら返せないでいた俺は重々しい音によってようやく我に返った。
頬が熱い。胸の辺りから響く鼓動が、やけに煩く感じる。
俺は口を開いて肺一杯に溜め込んだ空気を、大きく吐き出した。
気恥ずかしさを含めたあらゆる感情と一緒に。

俺「あぁ……まずいな」

寝癖のついた髪に遣った手を乱暴に動かす。

俺「ありゃ反則だろう」

彼女の笑みに、俺は心奪われていた。
微笑み一つで奪われるとは随分と安い心だなと自嘲しつつ、今後について思案に耽る。
妹分である智子を女として意識してしまっている自分は、どう彼女と関わっていけばいいのだろうか。
彼女が慕う兄貴分として振舞えるだろうか。
次に彼女と顔を合わせるとき、この気持ちを封じ込めておけるだろうか。
どちらも、やり遂げる自信がなかった。
更には幹部会も近い内に開かれる。
腹に一物抱えた魑魅魍魎どもに足元を掬われぬよう振舞わなければならない。
表と裏の二つとも多難に満ちている現状に、俺は再び深く溜息を吐いた。

689名無しさん:2016/06/22(水) 06:14:22 ID:DBNn8d3A0
今日はここまで

それにしても大雨程度で川の堤防が決壊するとは

690名無しさん:2016/06/23(木) 15:28:28 ID:ot9GkTTk0
なんたるムッツリスケベ (女の方が)
けど、実際智changはもし男ができたら絶対どハマりするよね……
ともあれ乙乙

いらん子は作者がハルキゲニアに旅立ってしまわれたのが残念極まるなぁ

691名無しさん:2016/06/26(日) 17:28:22 ID:ujCJex8s0
乙乙

692ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:25:34 ID:sB6VQk8Q0
新作です。


19XX年、某日、帝政カールスラント。
初夏の太陽が、南の空へと移りつつある。
穏やかな風が、微かに花の香りを運んでいる。
街の教会から、鐘の音が厳かに響く。
扉が開く。礼装の紳士達、華やかに着飾った乙女らが笑みをかわしながら現れる。
彼らは扉の外に集まり、これから出てくる主役を待ち構えている。そよ風に乗って、楽しげな喧騒が届く。

やがて、一際大きな歓声が上がり、
教会の入り口に眩しいほど真っ白なタキシード、ウェディングドレスに身を包んだ新郎・新婦が現れた。

平和なよき日。怪異、ネウロイとの戦争に勝ち、ようやく手に入れた平穏。

だから、今まで誰にも話したことのない話をしよう。
俺とクルト、そしてミーナの話だ。

693ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:30:33 ID:sB6VQk8Q0
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとクルト・クラッハフェルト、そして俺の3人は幼なじみだ。
音楽がきっかけで、俺たちは出会った。

1934年、春。
俺がその日、何をしててそこに行き着いたのかは覚えていない。確か路地裏を散歩だか探険だかしてたんだがだと思うんだが……。
当時俺は、いわゆるガキ大将だった。擦り切れたズボンのポケットに一切れのパンを突っ込んで、朝から晩まで街の裏道や野原を駆けずり回って……
まぁ、どうでもいいか。
とにかく、俺はその日ヴィルケ家の近くにいて、そこで音楽を聞いた。

弦楽器の音色と、微かなソプラノヴォイス。行く手にあった家の、ちょっとした庭園の奥の窓からだった。
俺はぶらぶらと庭園を横切って (悪ガキだったので平気で他人の家の敷地を横切った) 、ほんとうに何の気なしに、窓から声を掛けた。

「へい」

中にいたのは、俺と似たような年頃の少年と、少し年下と見える女の子の二人だった。
少年はヴァイオリンを提げていて、女の子は手ぶら。二人でひとつの譜面台の前で練習をしていたらしい。
二人は急に、しかも窓の外から声を掛けられて、びっくりして演奏をやめてしまっていた。

694ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:35:51 ID:sB6VQk8Q0
少年は柔らかそうなフランネルの白いシャツ、膝丈の紺のズボンをサスペンダーで吊っていた。女の子は胸元にフリルをあしらった淡い桃色のワンピース。
一目でいいところのお坊ちゃんお嬢ちゃんと知れるなりだ。
対して俺は、擦り切れてつぎのあたったズボンと、お袋が毎日洗濯してくれてたから色だけは真っ白だが肌触りはガサガサの麻シャツに、くたびれたハンチング帽。
普段なら、声を掛けたり掛けられたりなんて絶対にありえない相手だ。ただ、彼らが演奏していた音楽について、俺はひとつ我慢ならないことがあった。

俺は窓枠に手をかけながら言った。

「お前ら中々上手いな!だが選曲がなってねぇ。そんな黴臭い音じゃジジィどもしか悦ばないぜ?」
「だ、誰ですか」

そして少年の (当然の) 問いを無視して、ヒョイと窓枠を乗り越え部屋に滑り込んだ。
そこは楽器室だった。ヴァイオリンやギター数丁と、その頃は名前も知らなかった金管楽器。ニスと木材の匂い。


少年は庇うように俺と女の子の間に立った。女の子は少年の服の裾を握って、身体を少年の後ろに隠すようにして、俺を見ていた。
二人ともいきなり上がりこんできた俺を警戒していたのだろう。
あとで知ったが、俺は少年と同い年で、当然ながらそのときは同じガキ同士だった。
だが線の細いタイプだったその少年と比べて、俺はガキながら大柄な方だったし、物言いも腕白だった。
そんなのがズカズカ入ってきたのだから、特に女の子が怯えるのは無理もない話だ。

695ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:42:12 ID:sB6VQk8Q0
俺はそんな彼女の不安に全く気づかず (もっとも、気づいていたところで配慮するようなデリカシーもなかったが) 無遠慮に室内をじろじろ見て回り、目当てのものを見つけた。
磨き上げられたグランド・ピアノ。毛ほどの躊躇いも見せず歩み寄る。女の子が声をかけてくる。

「それ、お父様のピアノ……」

だから触ってはだめ、とはっきり言えはしなかったにせよ、その子の口調は俺を咎める色を含んでいた。
だが俺はそんな控えめな抗議を無視して、勝手に鍵盤蓋を開け、2つ3つ鍵盤を叩いて具合を確かめた。
さすがに見かねた少年が声をかけてきた。

「ちょっと、君――」

俺はチッチッチッ、と気取った仕草で指を振り、それを遮った。

「本物の音楽ってのはこういうもんだ」

鍵盤上で俺の指が踊った。跳ねるようなタッチから、肘ごと押さえ込む重音。
二人ともが一瞬呆気に取られる。

「シュレーゲ・ムジーグ (ジャズ・ミュージック) ?」

少年が呟く。見た目からは、俺の繊細な指捌きが想像できなかったんだろう。二人とも目を丸くしていた。

696ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:48:28 ID:sB6VQk8Q0
俺は酒場つきの宿屋の息子で、酒場の喧騒を子守唄代わりに育ってきた。
酔っ払いのたわ言、喧嘩の怒号、大声の合唱、そして何より、良識ある大人たちが「騒々しい」と形容し眉をひそめる、素晴らしい音楽の数々。
6つの時分には、俺はホールに据えてある年代もののピアノ、ギター、サックスで自分の好きな音を出せるようになっていた。

俺は即興で好きなように弾きながら、まだヴァイオリンを下げたままの少年に話しかけた。

「ほれ、どうしたよ。合わせてみな」

少年は一瞬躊躇ったが、それでも促されるままにヴァイオリンを構えなおした。俺は手を止めずに、入ってくるに任せる。
最初は恐る恐る来るかと思ったが、意外にやつは大胆に参戦してきた。
跳ねる高音、流れる低音、スウィング、スウィング、スウィング。

いつの間にか女の子は、ピョンピョン身体を跳ねさせながら俺たちのセッションに聞き入っていた。
初めて聞いたのかは知らないが、心を揺さぶる本物の力が音楽にはある。
身体の奥からウズウズさせるテンポ、心躍る旋律。

それが、俺とクルトとミーナの出会いだった。

697ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:53:40 ID:sB6VQk8Q0
俺たちはすぐに仲良くなった。
ミーナは偉い先生の下で音楽の手ほどきを受け、お上品な音楽に飽きたときは俺たちとセッションを楽しんだ。

俺は店の手伝いをサボって、ミーナやクルトは音楽の先生の目を盗んで、たびたびこの秘密のギグは催された。
あるときはミーナの屋敷で。あるときは開店前の俺の店で。

俺は二人に秘密の抜け道とハゼが釣れるドブ川とガラクタいじりを教え、二人は俺に詩と読書と静かに語らう喜びを教えてくれた。

クルトが近所の悪タレどもに侮辱されたとき、俺が先にそいつらをぶん殴って大喧嘩になったこともある。
多勢に無勢ではあったが、俺もクルトも絶対に負けは認めなかった。
結局二人して傷だらけになって帰ることになり (勝敗は俺たちの名誉の為に伏せる) 、後で二人ともミーナにしこたま怒られた。一緒に絆創膏を貼ってもらいながら。


何年かの平和な時が過ぎた。少年たちは成長し、女の子は少女となった。

698ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 20:58:17 ID:sB6VQk8Q0
いつの頃からだろう。俺はミーナに惚れていた。

俺のピアノにあわせて歌う彼女を見ていたときからだろうか。
それとも、町外れの草原で、3人でピクニックをしたときからか、
喧嘩の傷に絆創膏を貼ってもらったときからかも知れない。

俺はミーナに惚れていた。
だが同時に、彼女がクルトに惚れていることにも気付いていた。

ミーナのクルトを見る目には、俺や他の誰を見るときとも違う光が宿っていた。
俺自身が彼女に恋をして初めて、俺はその光の正体に気が付いた。

ウジウジ悩むのは性に合わなかったし、『まぁクルトなら仕方ない』と俺はあっさり見切りをつけた。
……つけた、つもりになった。
きっと俺は隠し通せる。いずれ時期が来れば、ただのいい思い出になる。そのときそうは思った。
ただ、その『時期』が来るには、思ってたよりは長い……ずっと長い時間が必要だった。

699ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:03:44 ID:sB6VQk8Q0
 
 
 
そして戦争が始まった。

700ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:07:55 ID:sB6VQk8Q0
大昔から、人類の歴史にはしばしば怪異、ネウロイが出現してきた。
ただ、今回のネウロイの進攻は、これまでのものとは大きくその性質を異にしていた。

『進攻』。
ネウロイの出現にこんな言葉が使われたことはなかった。
これまでのネウロイはあくまでも謎の怪物、局地的な災害のようなもので、組織だった攻勢を仕掛けてくる存在ではなかった。
しかし1937年の扶桑海事変を皮切りに、連中は明らかに、戦争の論理でもって人類の領域を切り取り始めた。

そして1939年。俺たちの住む欧州は帝政カールスラント、その隣国オストマルクに大規模なネウロイの進攻があった。
その勢いは留めがたく、カールスラントに迫るのも遠くないと思われた。

ネウロイは、たとえ破壊できたとしても、瘴気をばら撒いて辺りを人間の住めない土地に変えてしまう。
ゆえに何としても、やつらを封じ込めなければならない。
帝政カールスラントでは軍備の拡張が急ピッチで進められていた。

701ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:14:06 ID:sB6VQk8Q0
3人の中で軍に最初に志願したのは俺だった。
オストマルクがきな臭いってんで、軍が兵を募ってたんだ。
腕っ節には自信があったし、おいおい親父の店を継いだときに、「元歴戦の勇者、今は酒場の主」ってのもカッコいいと思ったからな。

そして幸運にも、俺には戦士の素質、ウィッチの適性があった。
魔力を持ち、魔導エンジンを稼動させてストライカーユニットを動かすことができる異能。
ストライカーユニットはネウロイの攻撃や瘴気を防ぐシールドや、ウィッチ自身の身体能力を強化する機能を持つ。
ストライカーユニットを装着したウィッチは、空を駆け、あるいは地を走り、生身では到底扱えない重火器を軽々と振り回してネウロイと戦う、強力な戦力になる。

ウィッチの適性は、男に現れるのはすごく珍しい。
俺は陸軍で実施されてる適性検査を受けた。規則で男でも全員受検を義務付けられていたものだ。
「一応やっておくか」以上のものではなく、技師たちも機械的に結果を処理していた。
だから俺が機械に乗り、何らかの結果が出たとき、まず連中は首を傾げていた。
彼らは最初は怪訝そうに、やがて目の色を変えてあれこれ操作盤をいじりはじめ、結果を3度確認してようやく納得した。
俺はその週のうちに、陸戦型ストライカーユニットの操縦者となることが決まった。

最初の実戦で、敵中で瘴気に巻かれて孤立していた味方部隊を救出し、俺は鉄十字章を授与された。

クルトは喜んでくれたよ。
ミーナは、無茶をしすぎだと心配そうだったが。

その後、過酷で容赦のない訓練と、より過酷で容赦のない実戦を経て、俺はひとかどの陸戦ウィッチになっていった。

702ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:17:20 ID:sB6VQk8Q0
俺に次いで、ミーナに魔力が発現し、彼女は航空ウィッチに志願した。
航空学校への入学許可証を、誇らしげというよりむしろ申し訳なさそうに見せに来たのを良く覚えている。

クルトは反対したらしいが、俺は彼女の背中を押した。
勇気ある決断、立派な志である、と。一緒に戦えて嬉しいと。
そう、俺は心配よりも喜びが先に立った。

俺がもう少し内省的な人間だったら、俺の中の喜びの正体に気づいただろうか?
彼女と一緒に戦えるのが嬉しいのはもちろんだった。
ただ、俺はむしろ、彼女が俺と――クルトではなく――同じ道を、選んでくれたことで、クルトに対して密かな優越感を抱いていたのだ。
今なら、そうだったのだと分かる。

気づいていたとしたら、その後に起こったことが変わっただろうか。例えば、……いや、詮無い事か。

最後に、クルトも軍に志願した。
ミーナが志願したときから決めていたらしい。

703ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:23:52 ID:sB6VQk8Q0
軍に入ってから、俺たち3人が会う機会はかなり少なくなった。任務であちこちに移動したし、何せ戦時中だ。数少ない非番の日が重なることは少ない。
だから、その日3人が集まることができたのは奇跡的な偶然だった。

前線から少し離れた地方都市の貸しスタジオ。俺が一番最初に到着し、まずミーナを出迎えた。
他愛無い話をしていると、すぐにクルトがやってきた。ミーナが弾む声で出迎えた。

「よく3人とも都合がついたわね」
「ああ。俺は本当は夜までかかるはずだったんだが、思ったより人数が足りてたらしくてな。ミーナは?」
「私は、今度の作戦関係で少し近くに来てたの」

ミーナはそれ以上は言えない、というそぶりをして見せた。まぁそうだろう。一応は軍事機密だ。
秘密にしたところで、ネウロイにどれほど有効なのかは知らないが。
俺はクルトに話を振った。

「そっちの調子はどうなんだ?」
「毎日毎日、油に塗れてばかりさ」

クルトは首をすくめて見せた。クルトは資格を取って整備兵に志願し、先月から近くの基地で働いていた。

「ストライカーの整備兵って、競争率けっこう高いんだろ。ウィッチとお近づきになりたいって男どもが群がるらしいじゃないか」
「確かにそういう傾向はあるかもね」
「実際のところ、どうなんだ?かわいいウィッチと仲良くなれたか?」
「ええと……」

クルトは少し言葉を捜すように黙った。その視線が、ちらとミーナに向かったのを俺は見逃さなかった。
ミーナもまた、その逡巡を見逃さなかった。

704ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:29:55 ID:sB6VQk8Q0
「クルト、なんで言葉を濁すのかしら」
「ミーナ?いや、君が思うようなことはないよ?」
「私が何を想像してたか、分かるのかしら?」

ミーナは顔は微笑みながら、しかし静かな迫力を秘めた口調でクルトを追求している。
クルトはミーナに気圧されたように身を反らせながら、あれこれ言い訳していた。

俺はそんなミーナと一緒になってクルトをからかいながら、しかし同時に軽い苛立ちを感じていた。
ミーナとクルト、二人のやりとりが ――喧嘩しているように見えて単にじゃれあっているだけのやりとりが―― 酷く癇に障った。
俺から振った話題であり、この苛立ちは理不尽なものだ。それは百も承知であったのだが。

「だから、僕はそんなことしないよミーナ。」
「ええ、ええ。知っていますとも。でもね――」
「なぁ、二人とも。そろそろ一曲演らないか?」

俺はやや強引に話に割って入った。おもむろに立ち上がり、スタジオの隅にセットされている楽器類に歩み寄る。

「まだ早いんじゃない?」
「そうだよ。夜は長いんだし……」

言って、くすくすと笑うミーナとクルト。
俺は振り返る。

「いいから、始めるぞ」

ぼそっと、思ったより不機嫌な声が出た。二人の表情から笑みが消えた。

705ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:33:50 ID:sB6VQk8Q0
しまった、まずい。そんなつもりは。
俺は慌てて取り繕う。急いで焦っただけだという風に。

「ほ、ほら、借りてる時間にも限りがあるだろ?」
「え、ええ」
「……そうだね。始めようか」

二人もぎこちなく頷いた。


その日のセッションは、あまりいい出来ではなかった。
俺のリズムキープはやや乱暴になったし、クルトも何度か音を外していた。
歌うミーナがおろおろと困っているのが分かった。罪悪感を感じたが、どうにもならなかった。

706ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:41:33 ID:sB6VQk8Q0
■■■■

ネウロイは封じられねばならない。その目標とは裏腹に、人類は劣勢を強いられていた。
絶えざる瘴気と鉄火の攻勢により、人類はオストマルクから撤退せざるを得なくなった。やがては帝政カールスラントからも。

1940年。
「最も長い撤退戦」が始まった。

大ビフレスト作戦、そしてダイナモ作戦。
後方も予備もない、正真正銘の全力出動。
首都を失い、小ビフレスト作戦で避難し切れなかった民間人と、軍自身の撤退戦。
俺たちは祖国を捨てて逃げたのだ。

必ず奪い返しに来る。
俺は燃えるカールスラントを網膜に刻み付けてから、西へ向けて街道を走り始めた。

707ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:49:11 ID:sB6VQk8Q0
陸戦型ストライカー、「Ⅱ号歩行脚」の機関砲の砲身に一羽の鳩が止まっていた。

照準器の向こうを、多脚型のネウロイが移動している。
金属質の装甲で覆われたずんぐりとした立方体に近い車体に、同じく装甲で覆われた太い六本足。
全体的に左右対称で無機質な平面で覆われた体躯に、短砲身の主砲が唐突に突き出していて、それが前面なのだろうと推測できる。
俺達の部隊は200メートル程離れた茂みに伏せて、そいつらをじっと狙っている。

俺はこの撤退戦で、殿の部隊に居た。
カールスラント軍は民間人を前後に挟んだ編成となっている。
前方部隊がネウロイを追い払いながら、後方部隊がネウロイを押しとどめながら進む。
連合軍が、ダンケルクで港湾部の安全を確保した後、こちらに向かって進軍してくれているはずであり、
彼らと民間人を安全に合流させるのが当面の軍事目標だ。

ネウロイの追撃は厳しく、後方部隊は少なくない損害を出していた。
しかしそれでも、最後尾に位置していた俺達の部隊は、寡兵ながら遅滞戦闘でよく粘っていた。

道は斜めに俺の前を横切っている。
あと少しで敵部隊は完全に俺達のキルゾーンにおさまる。あと少し。あとほんの数十メートル。

目標の左右軸の移動に合わせて、じりじりと狙いを修正する。
その僅かな振動が砲身に伝わり、鳩が飛び立った。
一両のネウロイが、僅かに砲身をこちらに向けたような気がした。
背筋を嫌な汗が伝った。

708ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 21:55:21 ID:sB6VQk8Q0
ネウロイに目はあるのだろうか。人間の目は動くものに特に注意を払う。
同じような茂みがいくつかあり、その中の一つから鳩が飛び立った。人間なら無意識にそこに注目するだろう。
ネウロイはどうだろう。ここで伏撃を狙う俺に気づいただろうか?

ネウロイには人間のような目はついていない。しかし恐らく光を感じるセンサーはあるのだろう。
俺は確かにその「視線」を感じた。
息を殺してそのネウロイの様子を窺う。耳の奥で血潮がごうごうと鳴っている。
敵部隊はまだ完全にキルゾーン内に進入していない。
いまだゆっくりと進行中……否、足を止めた。気づかれた!

「攻撃開始!」

号令が発せられるや、引き金を握りこむ。連続する轟音。伏せていた全車両が攻撃開始。
魔力強化された徹甲弾が、ネウロイの黒い平面装甲に突き刺さる。血が噴出すように火花が飛び散り、装甲が砕けていく。
視界の端で、ぱっと羽が散るのが見えた。
十字砲火を受けて、たちまち数両のネウロイが崩れ落ちた。生き残りが味方の残骸を盾にして反撃を開始する。

ウィッチのシールドは強力だが、さすがにネウロイの砲弾を正面から受け止めるのは危険を伴う。
そこで車体ごとシールドを傾け、斜めに受けて弾く。背筋が凍るような金属音。

鉄の焦げる匂い、瘴気と硝煙。振動、至近の着弾に舞い上がる土煙。空気を弾丸が切り裂く音、爆発音、エンジン音、怒号と悲鳴。
どちらかが死ぬまで続く、無様なセッション。

今回、最後まで生きていたのは俺たちの方だった。

709ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:02:07 ID:sB6VQk8Q0
「なんとか片付いたか」

汗をぬぐいながら呟く。奇襲が功を奏し、こちらの部隊の損害は軽微だった。
何両か被弾し履帯が外れていたが、修理すればすぐにでも移動を再開できるだろう。しかし急がなければ。
突出してきたネウロイをこうやって逐次始末しながら、俺たち自身も撤退しなければならない。大陸に置いてけぼりを食らったらことだ。

ふと見ると、足元に一羽の鳩の死骸があった。嘴から舌をだらんとたらし、血を吐いていた。
先ほどの戦闘で、発砲の衝撃を間近に受けたのだろう。ほんの偶然だ。偶然俺は生きて、こいつは死んだ。
この戦闘の当事者は俺のほうであったのに。

「……すまんな」

俺は小さくひとりごちた。


そのとき、す、と足元を影が走った。同時に空から響くエンジン音。再び背筋が粟立つのを感じながら、仰ぎ見る。
同じように空を見上げた兵士の一人が、悲鳴じみた声を上げた。戦車兵にとって、最も遭遇したくない敵がやってきた。

「ネウロイ攻撃機視認!」
「急降下爆撃が来るぞ!退避!」

もはや修理だの何だの言っている暇はない。全員が手近な動ける車両に掴まり飛び乗り、一目散に森に向かって走り出した。
空中の敵をどうにかする手段を、この戦車隊は持っていない。隠れてやり過ごす以外に手はない。
陸戦型ストライカーは戦車のように人間を乗せられないが、俺も自分の手で一人の兵士を掴み上げて (機関砲に比べれば大した重さじゃない) 履帯に巻き込まないよう注意しながら走った。

710ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:06:56 ID:sB6VQk8Q0
頭上から風切り音がする。サイレンの音にも似た、独特のエンジン音が響く。

急降下爆撃機型ネウロイは目標を定めると、地面に対して40度以上、場合によっては70度もの急角度で急降下し突入してくる。
単に目標の頭上を航過しながら爆弾を放り出すより狙いが付けやすく、また爆弾にもスピードが乗るので命中率も高い。
直撃すれば、いくらストライカーユニットで強化したウィッチのシールドといえど、ひとたまりもない。
戦車のみならず、地上洋上のヴィークルにとって、急降下爆撃機型のネウロイは最も身近な死神だ。

そして今、その鎌の切っ先が俺の首にかかっている。
木立は疎らで、ネウロイの狙いを十分に妨げてはくれない。
抱えている兵士が大声で何事かを喚いている。
放り出してやりたいが、スピードを落とすわけにはいかないし、後続の車両に轢かれてしまったら大変だ。とはいえ、爆撃でぶっとぶのとどっちがマシだろうかな?

「クソが……!」

焦燥を押さえつけ、より隠れるのに適した場所へ向かって走る。エンジン音が近づく。振り返っている余裕はない。
俺は覚悟を決めかけた、その瞬間。

『シュトゥルム!』

無線から少女の声が響き、頭上から唐突に殺気が消えた。
思わず振り仰ぐと、今まさに爆弾を投下せんとしていたネウロイたちの横っ腹を、帝政カールスラントのエンブレムをつけた航空ウィッチの部隊が食い破ったところだった。
被弾したネウロイが火を噴きながら墜ちていく。

711ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:13:42 ID:sB6VQk8Q0
『そこの君、危なかったねー』

編隊の一つを率いている少女 (もちろんウィッチだ) が無線で声をかけてきた。今俺を狙っていた奴を墜とした娘だろう。
短めの金髪、ただ一部分だけ髪の色が変わっている。恐らく、魔力の発現により使い間の耳に当たる部分が現れているのだろう。

「ああ、助かった。さすがにタマが縮み上がったぜ」
『タマ……?男の子?珍しいねぇ』
「まぁな。とにかく、礼を言う。ブリタニアで何か奢らせてくれ、戦友」

そこへ、新しい声が無線に入ってきた。

『フラウ、無駄話しないの。まだ敵が残ってるわよ』
『はぁーい』

フラウ、というのは今俺が話していた娘の名だろうか。見ると、返事をしながら手を振っていた。
そして、彼女に注意するこの飛行隊長と思しき声に聞き覚えがあった。

「もしかして、ミーナか?」
『あら。そういうあなたは……』
「俺だ。助けてくれてありがとうよ。部隊の連中もそう言ってる」
『間に合って良かったわ。幸運を!』
「そっちも」

例の一件以来、ミーナともクルトとも少し顔を合わせづらかったのだが、自然に話すことができた。俺は内心、ほっと息をついた。
フラウと呼ばれた少女が合流していく中隊の先頭に、確かにミーナがいた。長い髪をなびかせ飛んで行く。可憐なウィッチ達の中にあって、なお一層優美に気高く。

「美しい……」

部隊の誰かが呟いた。
俺も心底同意見だった。

712ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:17:37 ID:sB6VQk8Q0
俺たちはその後、何とかダンケルクに辿りついた。これから放棄するとはいえ、一応まだ人類の勢力圏であり、一安心といったところだ。

ガリアのパ・ド・カレーに展開した部隊の撤退が遅れている、という情報が入ってきたのは、そんなときだった。
このままでは、救出船に間に合わない、と。
カレーには、クルトの所属する部隊がいた。

ネウロイがいなければ、人間同士の世界大戦が起こっていただろう、というのはよくある言説だ。
資源や領土を奪い合う相手がネウロイから人間へと変わるだけで、結局のところ歴史に大きな変化は起こらないのだ、としたり顔に語る学者もいる。

ただ、末端の兵士にとって、人間との戦いとネウロイとの戦いには大きな違いがある。それは「降伏が許されるか否か」だ。
人間同士の争いなら、敵地に取り残され、追い詰められた兵士には降伏する権利がある。捕虜にはなるが、少なくとも死にはしない。
無論、降伏が許されず虐殺されたり、捕虜になったとしても非人道的な扱いを受けたりする可能性はあるが。
しかしネウロイ相手にはそもそも降伏という選択肢が意味を持たない。戦えなければ、殺されるだけだ。
そしてカレーで戦う兵士に、後者の運命が容赦なく襲い掛かろうとしていた。

俺は到着してすぐ、まだストライカーすら外していない状態だったが、その場で援軍に志願した。今も胸を張っていえるが、そのときの俺に迷いはなかった。
クルトが恋敵であるということも意識を外れてはいなかったが、その事実は俺の決断を一切鈍らせはしなかった。
部隊が再編成され、俺たちは再び求めて戦場に向かうこととなった。

713ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:21:48 ID:sB6VQk8Q0
カレーはダンケルクから僅か40km程度の距離にある。しかしその主要な連絡線にネウロイが進入し、ちょうど段階的撤退の最中にあったカレーの部隊と鉢合わせたらしい。
立ち往生している間に続々とネウロイが集まってきて、身動きが取れない状況だった。

援軍はダンケルク側からネウロイの前線を突破し、なんとかカレーの連中との合流に成功した。

俺の小隊は彼らが撤退する道路の維持を命じられた。道脇のトーチカに篭って、うぞうぞと街道へ寄って来るネウロイを撃ち続ける。
照準、射撃。照準、射撃。再装填、照準、射撃。単調なビート。
ダンケルクからほんの数十キロしか離れていない場所なのに、ネウロイどもはキリなく現れた。この果てのなさに、カールスラントは、人類は追い詰められたのだ。
返し矢が雨霰と飛んでくるが、幸いなことに小型のやつらばかりで、頑丈で分厚い鉄筋コンクリート製のトーチカを破壊できる大口径砲を装備した大型ネウロイはいなかった。
おそらく軽装の足が早いやつだけが先行して来ているのだろう。この調子ならいくら寄って来ようがⅡ号の機関砲で一掃できる。
だが、あまりグズグズしていると大型が追いついてくるだろう。さっさと片付けてトンズラといきたいところだ。

背後の街道を猛スピードのトラックが次々と通り過ぎていく。あれらの車両には疲れきった兵士たちが詰め込まれている。
彼らはもう祈るくらいしかできない。どうか弾に当たりませんように、地雷も踏みませんように。

やがて残りの弾薬が心もとなくなり始めた頃、最後尾のトラックが見えた。もはやこの部隊より内陸に、生きた人間は残っていない。

「さぁ、もうここに用はない。俺たちも撤退しよう」

ネウロイの攻勢が途切れたタイミングを見計らい、トーチカを出る。

まったく唐突に、目の前を通過中だった最後尾のトラックが爆発し横転した。

714ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:26:35 ID:sB6VQk8Q0
「8時方向、戦車砲!」

だれかが叫ぶ。軽戦車の口径ではありえない。砲弾の飛んできた方角へ首を巡らせると、4kmほど離れた丘の上にゴマ粒のようにネウロイが見えた。
はっきりとは分からないが、大口径砲を装備した支援火器型だろう。足の遅い連中だが、ついに追いついてきたのだ。
見る間に稜線を越え、同じような影が数両現れた。

「退却する!急げ!」

隊長が命令を下した。断固とした口調だった。横転したトラックは捨て置かれた。
トラックは車両前部を撃ち抜かれ吹き飛ばされていた。運転手は即死だ。撃たれたことも痛みも感じる暇はなかっただろう。
この距離の第一射が命中するとは、不運だったとしか言いようがない。
後部車体は比較的原型をとどめていた。生存者がいるかも知れない。しかしすぐにもタンクに火が回り、残った部分も爆発炎上するだろう。
隊長の命令は的確といえた。

だが、俺は見つけてしまった。
横転した荷車の中、何人もの兵士が折り重なって倒れている中に、よりにもよって、クルトがいたのだ。
自分の血の気が引いていく音が聞こえた。ざわざわと、皮膚の下で一万匹の虫が一斉に這っているような。
隊列を離れて駆け寄る。

「おい、どこにいく!?」
「敵が来るぞ」

誰かが声をかけてくる。無視する。脂汗が背中をじっとりと濡らし、一気に寒くなったような錯覚を覚えた。
心臓が早鐘を打つ。叫び出したいような気がしたが、何を叫びたいのか自分でも分からず、また舌が乾燥して口腔にはり付いて声が出せなかった。

715ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:33:53 ID:sB6VQk8Q0
転げるように荷車に取り付き、覗き込む。中は暗く、しかし見える範囲でも其処此処に血糊が飛び散っていた。
被弾の衝撃で何らかの部品が跳ね回ったのだろう。微かにうめき声が聞こえる。幾人かは生きているようだ。
クルトは動かなかった。しかし奴さんを引っ張り出す過程で、その胸が上下していることに気づいた。
呼吸している!生きている!嗚呼!
とはいえ、意識がない。担ぎ上げて、脱出しなければ。他の生存者は……。

俺がそこまで考えたところで、ガソリンに引火し、トラックは再び爆発した。クルト一人をシールドで庇うのが精一杯だった。

俺はクルトを、クルトだけを引きずって離れた。それ以上の余裕はなかった。
燃える車の中から、弱々しく、しかし確かに生きた人間の悲鳴が聞こえた。今でも覚えている。忘れたくても忘れられない。
そして匂い。硝煙と金属が焦げる匂い、ガソリンの匂いに混じって漂う、肉の焼ける匂い。

ただそのときの俺には、感傷や罪悪感に浸る暇はなかった。またぞろ小型ネウロイがわらわらと現れ、追ってきていたのだ。
彼方からの砲撃も始まっていた。俺たちを助けようと飛び出しかけた一人の陸戦ウィッチが、目の前に戦車砲が着弾したために慌てて遮蔽の陰に戻っていった。

小口径の機銃が雨霰と降り注ぐ。背筋が凍るような金属音、擦過音、風切り音。もがくようなエンジンと駆動系のうなり声。足元で土煙が跳ねる。
もちろん地面だけ狙ってくれるような奴らではない。俺の機体に、体に、クルトに容赦なく弾丸が襲い掛かった。クルトを装甲と俺自身の体で庇いながら、俺は進んだ。

車体ごとシールドを傾け、必死でネウロイの攻撃を弾く。それでも何発かが貫通し、シールドを支える腕に衝撃が走る。確認する余裕はない。
俺はそれでも断固として前進した。前方の丘の陰で味方が待っている。援護射撃を繰り出しながら、大声で俺を呼んでいる。
履帯が止まった。何かが挟まったか、ギアに被弾したか。駆動系をカットオフ。普通に歩くように脚を動かして、一歩ずつ前進する。あと少し。あとほんの20か30メートル。
断続的な衝撃。目に血が入る。興奮で痛みを感じないが、確実に被弾している。……もしや、ここが俺の死に場所か?
クルトを抱える腕に力がはいる。と、クルトが小さく身じろぎした。

716ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:38:11 ID:sB6VQk8Q0
「う……」
「クルト!?おい、しっかりしろ!」
「……君、なぜここに」

気絶していた割りに、クルトはしっかりした調子で喋った。確認する暇がなかったが、大きな怪我は無さそうだ。

「こっちの台詞だ。面倒かけさせやがって」
「助けに来てくれたのか……すまない」
「自力で動けるか。あと少しだ。せーので、走るぞ」
「分かった」

俺たちはネウロイの斉射が途切れたタイミングを見計らい、最後の力を振り絞って、駆け出した。
履帯の動かない俺はクルトの少しあとを、後方からの射撃を防ぎながら走った。
小型ネウロイが追いすがってくる。機体後方に向きを固定した機関砲を撃ってけん制する。
一両がめちゃくちゃに機銃を乱射しながら肉薄してきた。俺は腰部ハードポイントに吊ったマインゲショス (魔導手榴弾) で迎撃しようとして、それを取り落とした。

思わず自分の右手を見る。いつの間にか、右手は真っ赤に染まって、指が何本か欠けて骨が見えていた。
呆けたのはほんの一瞬だが、それが致命的な隙となった。肉薄してきたネウロイが俺に体当たりした。
シールドはギリギリ保った。しかしストライカーユニットは過負荷で一時的に行動不能に陥り、俺はもんどりうってうつぶせに倒れこんだ。
クルトが顔色を変えて振り返る。

「おい……!?」
「そのまま走れ!行け!」

俺は怒鳴りつけると、仰向けになって身を起こし、残った指で無理やり俺に体当たりしたネウロイを撃ちまくった。

717ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:42:07 ID:sB6VQk8Q0
正確な狙いは期待できなかったが、その必要もなかった。何せ向こうから寄って来ている。ネウロイは弾が尽きたのか、機銃ではなく踏み潰して俺を殺そうとしているようだった。
俺に撃たれて火花を噴き出しながらも、執念さえ感じる動きで俺に近づいてきていた。

クソが、これが俺の死か。まぁいい。仕事は果たした。俺が殺されてる間に、クルトは逃げ切れるだろう。
静かな諦観と、ちょっとした満足感が俺を満たした。しかし

「うおおおおおお!!!」

クルトが雄叫びを上げながら駆け寄ってくるのが視界の端に映った。
馬鹿野郎、せっかく俺が捨て身で気を引いてるってのに!ウィッチでもないのに何をする気だ。無駄死にだ。
そう叫ぼうとした。

クルトは無意味なバンザイアタックを仕掛けたわけではなかった。
クルトは俺が落としたマインゲショスを片足で軽く蹴り上げ、掴んだ。そのまま流れるように安全ピンを抜き、目の前のネウロイの足元に訓練通りの鮮やかなアンダースローで放り投げた。
完全に回避も防御も不可能な位置。歴戦の兵士もかくやという、冷静で見事な投擲だった。
爆発。未知の金属でできたネウロイの数tはある体躯が、一瞬衝撃で浮き上がる。破壊のエネルギー全てを食らった証拠だ。さすがのネウロイも一撃で崩れ落ちた。

「クルト、お前」
「今のうちだ、早く来い。走れ、兄弟!」

クルトは目を丸くする俺を、整備兵らしい手馴れた操作でストライカーから強制排出し、俺の腕を自分の肩に廻して体を支え、走り出した。
俺はほとんど引きずられるように走った。周囲に弾着の土煙が立つ。もうまともなシールドも装甲もない。被弾すれば今度こそ死ぬ。

そんなときであったのに、俺はガキの頃のことを思い出していた。
街の悪ガキどもと喧嘩になって、ちょうどこんな風に、傷だらけの泥だらけになりながら、二人で肩を貸し合って帰ったことがあった。

俺たちはギリギリで丘の陰に駆け込み、そこでばったりと倒れこんだ。

718ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:46:05 ID:sB6VQk8Q0
その後、俺たちは味方の部隊に救助され、ダンケルクに運び込まれた。

担架に乗せて運ばれていく俺とクルト。ウィッチと一般兵は別のテントだ。
俺はミーナに、クルトの方についてやれと言った。ミーナは少し躊躇うそぶりを見せた。
俺が重ねて促すと、彼女は「ありがとう」と万感を込めて囁き、俺の額にキスをして (その感触の、何と甘いことか!)、俺の傍を離れていった。

その感情が巣食ったのは、生還してできた一瞬の心の隙だったのだと思う。
俺がクルトの方に行け、と言った。
しかし彼女が実際に後ろ姿を見せたとき……告白するが、俺ははっきり後悔した。

『クルトを連れ戻すべきではなかった』
『帰還したのが俺一人だったなら、彼女を独占できたのに』
と。

俺はそんな自分をひどく恥じて、無理やりにミーナの後ろ姿から顔を逸らし、目を閉じた。


クルトは結局大きな怪我はしていなかった。戦車砲の直撃だの弾雨の嵐だのに遭っておいて、運のいいやつだ。

俺は、右手の中指と薬指の一部、小指の殆ど、そして残った指先の細かい触覚を失った。
左手は親指と人差し指の先を少し削れられるだけで済んだ。
喪失したのは第一関節より末端側だったから、少しずつ盛り上がってもとの長さになるかもしれないそうだ。
本来なら両手とも手首から先を切り落とさなければならないような傷だったんだが、俺の頑丈さは並じゃなかったからな。

「握力と人差し指さえあれば、引き金は引ける。大したことじゃねぇさ」
俺は笑って見せた。
クルトは笑ってはいなかった。ミーナは泣いていた。

この手では引き金は引けても、ピアノは弾けないだろう。二度と以前のようには。
いつかの晩の、あの不ぞろいのギグが、俺たちの最後のセッションになった。

719ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:49:57 ID:sB6VQk8Q0
俺は二人に会うのを避けるようになった。クルトに変に責任を感じさせたくはなかったし、
俺自身、俺の弱い心が囁く、
「クルトは俺に命の借りがあるのだから、ミーナを俺に譲って身を引くべきだ」
という声を恐れていた。


心まで鉄でできていたらよかったのに。
誰を傷つけることもなく、誰に傷つけられることもない鉄の心であれば。

俺は強い男になりたかった。
一人でどんな痛みにも耐えられる男になりたかった。

だから誰にも今まで話さなかったし、気取られもしなかった。

俺は耐え切った。
今日、ようやくひとつの区切りがつく。

今日、ミーナとクルトが結婚する。

720ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:53:04 ID:sB6VQk8Q0
19XX年、よく晴れた日。
中天にかかろうという太陽が輝いている。木々の新緑が柔らかな影を落とす。
どこかから子供たちの歓声が聞こえてくる。

今日、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケはクルト・クラッハフェルトと結婚する。

彼女は、教会で、真っ白なドレスを着て、同じく真っ白なタキシードを着た恋人とキスをしている。

信じられないくらい真っ青な空に、白い鳩が飛んでいく。
幸せという言葉を絵にしたら、きっとこういう光景だろう。

俺は教会の外、道一本隔てた庭園から、その様子を見つめている。

俺の話はここまで。
思い出話はハッピーエンドでおしまいだ。

じゃあな。

721名無しさん:2016/07/03(日) 22:57:57 ID:sB6VQk8Q0
ミーナルートに見せかけたやせ我慢は男の美学ルート、おしまい。

722名無しさん:2016/07/05(火) 17:38:58 ID:TpT2ehoQ0
乙乙

723名無しさん:2016/10/08(土) 01:30:13 ID:xp8Sf8vI0
ブレイブウィッチーズ開始で少しは人が増えないものか

724名無しさん:2016/11/12(土) 21:26:04 ID:VNvzfwSg0
ブレパン放送でここのこと思い出して、何年かぶりにきたけど…まだ残ってたかー

725名無しさん:2016/11/25(金) 00:45:09 ID:hgUzOB3o0
直ちゃんが可愛い…ニパも可愛い…502結成小説を参考に何か書いてみようかな…

726名無しさん:2016/12/02(金) 21:24:25 ID:24G8kbHA0
「はっはっ……はぁっ、はっ」

白い息を吐き出しながら智子は基地内の廊下を走る。
その足取りは、彼の部屋へ向かっていた時のそれとは比にならないほど軽やかなものだった。
伝えられた言葉が、自身の息遣いとともに脳裏に蘇る。
それは、心の底から欲しかった言葉だった。
妹としてじゃない。いまの彼は、自分を一人の女として意識している。
ならば、彼が自分のことしか考えられないようにしてみせよう!
そのためにも今日一日、ずっと彼の傍にいよう!

727名無しさん:2016/12/02(金) 21:27:29 ID:24G8kbHA0
―――
――


そのような期待に胸を膨らませていた数時間前の自分を叱咤したい衝動を抑え、智子は物陰に半身を潜めていた。
恨めしげな光を宿す瞳に映るのは、想い人が他の女との談笑を楽しんでいる光景だった。
話によると彼は戦闘時以外は基地清掃の仕事を与えられ、平時は掃除用具を片手に基地内を徘徊しているらしい。
一部の基地職員の口からは彼がモップ片手に天井や基地外壁を歩いていたという信じ難い情報が飛び込んできたが、おそらく何かと見間違えたのだろう。

彼の姿が見えなくなっていることに気がついたのは朝食後だった。
同じ場で食事を摂っていた502の魔女たちですら彼が退室したことに気づかなかったのだから、驚きである。
慌てて基地内を探し回ること数十分。
ようやく彼の姿を発見できたものの、その隣には先客がいた。
そして彼は、その先客と楽しげに談笑していた。
先客である少女もまた、彼との語らいを楽しんでいるのか弾けんばかりの笑みを口元に湛えていた。

728名無しさん:2016/12/02(金) 21:30:32 ID:24G8kbHA0

智子「(何よあの子……あんなに大きいなんて)」

反則じゃないと後に続く言葉を胸裏に零し、目を細める智子。
視線の先で自身の想い人と話す少女。
きめ細やかな白い肌。短めに切られた金の髪。
そして、身に纏うニット生地の軍服の下から押し上げて自己主張している連山。
その二つの山は少女の微かな動きにも敏感に反応し、小さく揺れたわんでいた。
余りの迫力に、思わず半歩ほど後ろに退いた智子は、反射的に視線を自分の胸元へと落とす。
視界に入るは陸軍服を下から押し上げる自身の双丘。決して小さいほうではない。
むしろ今の自分ならば当時同じ部隊に所属していた武子たちとも、良い勝負が出来るのではと確信できるほどには成長している。
しかし、

智子「(俺も、あれくらい……大きいほうが良いのかしら……)」

少女――ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンの胸は余りにも、強大過ぎた。
ただ膨れ上がっているのではない。
むしろ、大きいだけならば自分にも勝ち目はあっただろう。
だが少女のそれは大きさと形が完璧に両立している。
天は二物を与えぬという言葉は嘘だったのか。
どうみても完璧なものが二つもあるじゃないと口のなかで叫びつつ観察を続ける。

729名無しさん:2016/12/02(金) 21:33:40 ID:24G8kbHA0

ラル「二人とも寒いなかご苦労」

ニパ「あっ、隊長」

智子「……なッ!?」

どうにか怪しまれぬよう自然なタイミングで会話に入り込めないかと画策していると、不意にラルが加わった。
昨日、初めて対面した際は意識すらしなかったが、彼女の連山もまたニパに負けずとも劣らぬ姿を軍服の下から見せつけていた。
しかも身に着けているコルセットのせいで余計にサイズが強調されているような気がしてならない。
現に俺を見れば不躾な視線を送らぬよう目線を泳がせているではないか。
それは、自分よりも若い彼女らを女として意識している何よりの証であった。

智子「ぐぬぬ」

悔しさの余り声が漏れる。
朝はあれほど自分の魅力を伝えてくれたのに。
あれほど自分の魅力に戸惑っていると言ってくれたのに。
それなら、それなら……

智子「もう少し……私だけ見てくれても、いいじゃない。ばかっ」

「やぁ、穴拭中尉」

智子「んひゃぁ!?」

730名無しさん:2016/12/02(金) 21:37:31 ID:24G8kbHA0

切なげな想いが冷えた風によって掻き消された矢先のこと。
背後から声をかけられ、思わず裏返った悲鳴を上げてしまう。
情けない姿を見られたことに対する羞恥心に頬を微かに紅潮させながら振り向く。
目の前にはペテルブルグ基地で最初に出会ったウィッチの姿があった。

智子「い、いきなり何よ。悪いけど夜のお誘いならお断りよっ」

出会って早々、晩酌を共にしないかと誘われたことを思い出し、先手を打つ。
どうもこの人間は自分の後輩と同じ類に属している気がしてならない。
うっかり誘いに乗ってしまった日には、どうなることやら。

クルピンスキー「えー、まだ何も言っていないじゃないか」

ほら、残念そうに口を尖らせる。

智子「それで何の用なの? まさか本当に懲りずに晩酌の誘いに来たわけじゃないでしょうね?」

クルピンスキー「いやなに散歩をしていたら、綺麗な後姿を見つけたものでね」

口元に微笑を浮かべるなり、クルピンスキーは片膝をついて智子の指を手に取った。

智子「ちょ、ちょっと……」

クルピンスキー「麗しい巴御前殿。どうか、その優美な黒髪を……この伯爵めに触れさせてはいただけませんか?」

731名無しさん:2016/12/02(金) 21:41:33 ID:24G8kbHA0

姫君に愛を誓う王子、あるいは守護騎士を思わせるほどに真っ直ぐで、熱っぽい声色で想いを紡ぐ。
一瞬でここまで距離を縮めてくるとは。
自身の後輩よりも手練であると認識した智子はそっと指を払った。

智子「じょ、冗談はやめてちょうだい」

クルピンスキー「連れないなぁ。ところでさ、穴拭中尉」

智子「だから晩酌には付き合わないって――」

クルピンスキー「彼のこと、好きなの?」

言いかけた言葉は、それまでの芝居がかったものから一転して親しみやすい陽気さを帯びた声によって遮られた。

智子「は……はぁぁ!? いきなり何を言い出すのよ!?」

クルピンスキー「あれ、違うのかい?」

智子「違うわけがないでしょう! ……っ!?」

反射的に彼女の言葉を否定してしまった智子は一瞬でその美貌を赤らめた。
搦め手に嵌り、彼に抱く自身の恋慕を肯定してしまったのだ。
立ち上がったクルピンスキーは満足げな笑顔を浮かべていた。

732名無しさん:2016/12/02(金) 21:45:18 ID:24G8kbHA0

クルピンスキー「はははっ、扶桑海の巴御前は素直だねぇ」

智子「ううううう、うるさいっ!!」

頬を紅潮させ、声を荒げる智子を前にクルピンスキーはその笑みを濃いものへと変えていった。
彼を見つめる智子の瞳は、大人びた見た目とは裏腹に年端もいかぬ少女のように純粋で美しかった。
想い人を見つめる智子の横顔を目にした瞬間、自分は魅了されていた。
熱を秘める黒の瞳、寒さによるものなのか心の昂ぶりからなのか桜色に染まる頬。
乾燥させぬよう舌で湿らされた形の良い唇。
それら全てに心を奪われていたクルピンスキーは知られぬよう、あえて背後に回って声をかけたのだ。

クルピンスキー「それで、答えはYESってことでいいんだね?」

暫く視線を泳がせていた智子であったが、観念したのか息を深く吐いた。
そして、照れたようにはにかみながら想いを編み込んで、口を開く。

智子「えぇ、好きよ……あの人のことが。どうしようもないくらい、愛しいの」

それは、幼少の頃から抱いていた恋慕の念。
それは、成長するに連れて増していった一途な想い。
彼の周囲にどれだけの女が現れても。自分にどれだけの男が言い寄っても。
変わることがない、変わるはずのない感情だった。

733名無しさん:2016/12/02(金) 21:48:27 ID:24G8kbHA0

智子「だから、彼が生きていて……また会えたことがね。どうしようもないくらい嬉しいの」

クルピンスキー「……あぁ」

凍えた風に黒髪を弄ばれながら、微笑む智子を前にクルピンスキーは静かに嘆息した。
花が咲いたような笑みとは、きっと目の前にいる彼女が浮かべるそれを差す言葉なのだろうと確信する。
寒空の下にいるというのに、見ていて心が温まって、和らいでいく微笑みに知らずと自身の口元まで綻ばせてしまった。
それと同時に、思い知った。
これは口説けない。
これは堕とせない。
仮に男女問わず自分以外の人間が彼女に言い寄ろうと、穴拭智子にとっての特別な人間は、彼一人なのだ。
それは今までも、今も、そしてこれからも変ることはない。
智子とは昨日に出会ったばかりで、彼女の人となりもクルピンスキーはまだ殆ど知らなかった。
にも拘わらず、そう確信させるほどに智子の瞳に宿る光は眩くて、美しいのだ。

734名無しさん:2016/12/02(金) 21:51:36 ID:24G8kbHA0

クルピンスキー「負けたよ……まったく、貴女みたいな人を放って置くなんて。俺も罪な男だよ。辛くなったら、いつでも僕の胸に飛び込んでいいよ?」

智子「お生憎様、彼はそんな酷い人じゃないわ」

クルピンスキー「酷い人じゃない、か。君や、僕たちにとっては……ね」

口から漏れた言葉は巴御前の耳に届かぬよう意図して小さく呟かれたものだった。
航空歩兵でありながら不穏分子を斬って回る彼。
もしも彼女がその事実を知ったら、どうなるのだろうか。
もしも愛した男の裏の顔を見てしまったら、どうなるのだろうか。
自分が見蕩れた笑みは消えてしまうのだろうか。

智子「ねぇ? 聞かせて欲しいの。あの人が此処に来てからどんな風に過ごして来たのか」

クルピンスキー「もちろんさ。その代わり、トモコって呼んでもいいかい?」

一縷の不安を胸に抱くクルピンスキーであったが、自身に詰め寄る智子を前に胸裏をざわめかせる胸騒ぎを押し込めた。
ネウロイ襲撃の警報が鳴り響いたのは、談笑を始めてから五分と経たないときのことだった。

735名無しさん:2016/12/02(金) 21:55:33 ID:24G8kbHA0
―――
――


外の景色から風が吹く音が聞こえる。
それに伴い、全身を包む空気が一層その温度を下げていくのを感じ取れた。
格納庫――そこは魔女たちが有する、機械仕掛けの箒とも称せる戦闘脚が保管、管理されている場所。
彼女らが空を、大地を縦横無尽に駆け巡るために必要な箒が日夜整備されている工房。
そこに智子は手近にあった鉄製のコンテナの上に腰を降ろしていた。
工房を彩る戦闘脚は殆どが先に鳴り響いた警報後すぐに格納庫から目の前の滑走路へと飛び出し、大空へと飛び立って行った。
その中には自身が長年想いを寄せる男のものも含まれていた。
残っているものがあるとすれば、司令でもあるグンドュラ・ラルのそれだけだ。
息を吐き、瞼を閉じて、智子は風の音に意識を向ける。
そのなかに飛び立って行った戦闘脚の音が混ざるのを聞き漏らさないために。
そうしている内に出撃前の出来事が脳裏に蘇った。

――

「駄目よ! 危険過ぎるわ!!」

襲撃に対する編成を伝えられたとき、智子は真っ先に後衛を任された彼に喰ってかかった。
既に俺は成人を迎えている。
飛行はもちろん、固有魔法である衝撃波の使用も可能だが、航空歩兵として致命的な能力が欠落していた。
敵の攻撃から身を守る障壁だ。
障壁を展開する能力を失えば、ネウロイから放たれる熱線を防ぐ術はない。
連中に置き換えれば常時、心臓であるコアを剥き出しにしているようなものである。
未来予知の固有魔法持ちならば障壁など無用の長物に過ぎないのだろう。
現にスオムスから501に派遣されたウィッチはそういった固有魔法を持っていると智子も耳にしていた。

736名無しさん:2016/12/02(金) 21:58:51 ID:24G8kbHA0

「確かに障壁は張れなくなっちまったな」

智子の剣幕とは対象に俺は困ったような笑顔で返すだけだった。

「それなら――」

「だけど、俺の力の根源は残ってる。俺の衝撃波は大勢の敵を消し飛ばすためにあって、それはまだ使える。まだ、まだ戦えるよ」

詰め寄る智子の頭に彼はそっと手を乗せた。
昔から駄々を捏ねると決まって彼は頭を撫でて自分を宥めてきた。
けれど、これは駄々なんかじゃない。
障壁を失ったのは事実で、身を守る術を持たない者が戦場に出たところで逆に危険なだけではないか。

「残り少ないからといって、燻らせるなんて勿体無いだろう? 全部使い切るわけじゃない。それに俺には、仲間がいるからな」

そう反論しようと開きかけた口は、強い意思の光を弾く瞳と言葉によって閉じてしまった。

「大丈夫ですよ。穴拭中尉」

先ほどまで彼を独占していたニパが笑みを作る。彼女ら502の実力を見くびっているわけではない。
ただ、何が起こるか分からないのが戦場ではないか。
彼のことだ。もしも彼女らに危険が迫ったとき、きっと身を呈して守るだろう。
あの日、自分を庇って撃墜されたときのように。

737名無しさん:2016/12/02(金) 22:02:22 ID:24G8kbHA0

「ニパ君の言うとおりだよ、トモコ。大丈夫、必ず僕らが連れて帰るさ」

「というわけだ。頼もしい仲間がいるんだから大丈夫さ」

――わかってよ。
――貴方、もう限界なのよ? いまは飛べて、衝撃波も撃てるけど……それだっていつまで続くかわからないのよ?

「じゃ、行ってくる。ちゃんと全員無事に帰ってくるからな」

「ま、待って! あ、あぁ、行かないで……いかないでよ……」

静止の声は戦闘脚の駆動音によって、掻き消された。
滑走路から飛び立つ魔女たちに紛れた彼の姿が、遠ざかっていく。
もしも、あと数年早く彼を見つけていれば、自分もあの輪のなかに加わることができたのだろうか。
彼が502の面々を眺めたときに見せた信頼の眼差しを、自分も受けることができたのだろうか。
彼と一緒に、あの空へ飛び立つことができたのだろうか。
胸のなかには、もう痛みしか残っていなかった。
かつて扶桑海の巴御前と呼ばれ、銀幕の主役を飾った女は、ただ独り格納庫に取り残された。
徐々に空へと溶け込んでいく想い人の背を、智子は見送ることしかできなかった。


――

738名無しさん:2016/12/02(金) 22:05:43 ID:24G8kbHA0
――

「……ッ」

惨めな思いを振り払うかのように頭を振って瞼を開く。
まるで彼が、もう手の届かないところに行ってしまったみたいだ。
ほんの数年前までは、自分もその輪に加わっていたというのに。
居場所を取られた子どものような、寂寥感を胸の内に秘める智子は不意に背後へと振り返った。

ラル「私を恨むか」

智子「……恨んだって仕方ないじゃない。そんなこと、彼が望まないわ」

足音を伴って声をかけてきたラルに返す。
彼がガランド少将預かりの戦力だという説明を受けた以上、口を挟むつもりはない。
が、それは軍人としての意見であって彼に恋慕の情を抱く女としては今回の出撃は到底受け入れられるものではなかった。

ラル「あいつの力は本物だ」

――そんなこと貴女に言われなくたって、子どもの頃からずっと知っているわよ。
喉下まで出掛かった言葉を無理に飲み込んだ。
彼女に苛立ちをぶつけても仕方がない。

ラル「大型どころかネウロイの部隊すら一撃で殲滅できる破壊力と範囲。もはや戦略兵器の域だ」

智子「そんな、に?」

739名無しさん:2016/12/02(金) 22:09:55 ID:24G8kbHA0
智子「そんな、に?」

告げられた言葉に智子は目を丸くした。
かつて扶桑皇国陸軍として同じ部隊に所属していた際は中型が精々だったはず。
それがこの数年で、ここまで成長するものなのか。
単機で軍勢相手に渡り合うなど、質と量の隷属関係を完全に破綻させているではないか。
そう胸裏で零す智子は知らぬ間に自身の背が粟立っていることに気がついた。
それは決して寒さによるものではないのだろうと思った。
出撃前に自身の頭を優しく撫でていたあの掌から、一体どれだけ強力なエネルギーが放たれるというのか。

ラル「一対多ですらあいつにとっては何ら障害ではないだろう」

陽気な人となりとは反対に、その固有魔法が司る属性は破壊を齎す暴力。
力で以て全てを捻じ伏せる暴君の力だ。
その暴力は間違いなく戦略的価値があるし、いざとなったとき部隊の切札として十分に機能する。
だが、とラルは一つの疑問を抱いた。
どこまでが彼の全力なのだろうか。彼の力はどこまでのものなのだろう。
部隊はおろか大型すら容易く呑み込む彼の異能。
それは、人類を脅かし遥か天空に座する異形の牙城をも滅相し得るほどのものなのか。
疑問が尽きることはなかった。

740名無しさん:2016/12/02(金) 22:12:57 ID:24G8kbHA0
―――
――



戦闘脚の駆動音を耳にした瞬間、格納庫を飛び出した。
速度と高度を徐々に下げ、滑走路へと降り立つ502の魔女たち。
少女たちの無事な姿を捉え安堵しつつ、彼女らとともに出撃した想い人の姿を探す。
しかし、帰還した魔女たちのなかに、男の姿は何処にも見当たらない。
段々と智子の全身を、悪寒が蝕みはじめる。
それは単に外気によるものなのか、それとも忌むべき過去の記憶が蘇ったことによるものか。
もしかしたら――が胸裏を過ぎる。

智子「(ちゃんと帰ってきてよ……。帰ってくるって、自分で言ったじゃない……!!)」

息苦しさを感じ始めたなか、視界の片隅に小さな黒い点を見つけた智子は自然と駆け出していた。
背後からロスマンが放つ静止の声を気にも留めずに。
駆け寄る自分の姿を見つけた男が、口元に笑みを落とす様を見つけ。
智子は両手を広げて彼の胸元へと飛び込んだ。

智子「俺ぇ!」

俺「おっとと! 随分と熱烈なお出迎えなことで……どうした?」

自分の胸元に飛び込むなり、両の手を背中へ回す智子の抱擁に驚きつつも、彼女の頭と背に手を添えてあやすように撫でる。
押し付けられる母性の柔らかさと温もりに多幸感を抱きながら。

741衝撃波:2016/12/02(金) 22:17:50 ID:24G8kbHA0

智子「無事よね!? どこも、怪我とかしてないわよね!?」

俺「あぁ、大丈夫だよ。俺もみんなも」

智子「よかっ……た。よかったぁ……」

それまで自身の胸元に埋まっていた智子の顔がその姿を覗かせた。
瞬間、俺は息を呑んだ。心臓が一際強く脈動する様を確かに感じた。
黒真珠を潤ませながら、安心し切ったように頬を綻ばせる智子の微笑みに、心奪われていた。
自然と指先が、手が彼女の端整な頬へと移る。
そんな自分の手の平が心地よいのか智子は一度短く“んっ”と呟くなり、身を委ねた。
瞼を閉じた際に浮かび上がった涙が零れ、俺の指が静かに濡れた。

俺「ごめんよ……心配かけさせたな」

智子「いいのっ……みんなが、あなたが無事なら……いいのっ」

端正な美貌を涙で濡らしながら見せる笑みに、俺は心臓を潰されたような息苦しさを覚えた。
彼女から視線を注がれると気恥ずかしさにも似たむず痒さが背筋を走るのに、目を背けることが出来ない。
気恥ずかしい感情を抱きながらも、もっと彼女の笑みを見つめていたいと思ってしまっているのはきっと、

俺「あぁ……ただいま、智子」

穴拭智子に完全に惹かれてしまっているからなのだろう。

742名無しさん:2016/12/02(金) 22:20:57 ID:24G8kbHA0
もう誕生日間に合わないけど、一区切り着くまで待ってたら時間かかり過ぎるから先に書いちゃおう

そんなわけで12話はこれにて終了、ハーイチャイチャイ

743名無しさん:2016/12/03(土) 11:17:20 ID:OM06isgg0
乙乙

744名無しさん:2016/12/05(月) 02:16:24 ID:DY9.S6fk0


745名無しさん:2017/02/05(日) 18:37:30 ID:3.42e2Cs0
偉く懐かしいところだ……まだ機能してたのか
何か書いてみようかしらん

746名無しさん:2017/02/08(水) 01:42:27 ID:93F0k3.s0
>>745
まってるぞー

747名無しさん:2017/02/26(日) 21:34:21 ID:QQwVnXfQ0
ケーブルテレビで見た1期2期とブレイブウィッチーズ、
後同人誌のアフリカの魔女くらいしか見たこと無いんだけど、書いてもいいのかしら……
設定面とか不安が多くて踏ん切りがつかない……
キャラ愛があればいい、のかね……

748名無しさん:2017/02/26(日) 21:59:35 ID:zmCSQdik0
どうぞどうぞ、待ってるよ

749彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:13:17 ID:dHC0sQBk0
もう設定の整合性とか何とかぶん投げて、思うままに書いたことを初投下させてもらいます。
芳佳ちゃんは可愛い。後宮藤博士はイケメン。生きてないのかなぁ

750彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:16:52 ID:dHC0sQBk0
それが部屋に現れた時、予感がした。
これは、向こう側への扉なのだと。

歪む空間を前に、その予感を得た時、俺は、ありったけの準備をした。
持てるだけの、科学技術や『魔法』技術に関する資料と文献。莫大な量のデータを取り込んだハードディスク、SDカード、その他の記録媒体。
それを閲覧する為のスマートフォンやパソコンと、バッテリーを充電するための手回し式の充電器。

以前には伝えられなかったことを伝える為に。
あの人に、もっと色々な事を伝える為に。
そして、遂には為し得なかった、あの娘との約束を果たすために。

あらゆるものを詰め込んで、ギチギチになったリュックや鞄を背負う。
その重みは、そのまま、向こう側に残してきた心残りの重みでもあった。

次に、何時戻れるかは分からない。そもそも、戻れるかすらも怪しい。
遺書を書く心持ちで、家族に向けた書き置きを残し、
鍵を閉め、電源ガス栓水道の元栓に至るまで、全てのインフラを根から止め、
使えないとは分かっているが、財布などの貴重品を念の為に持つ。

これで、後始末は成った。
もう、此方側に残した心配事はない。

荷物を引きずるように走り出し、そして、俺は其処へ向かって、意を決して飛び込んだ。

751彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:20:17 ID:dHC0sQBk0
……それから、通り過ぎていった場所には、微かに見覚えがあった。
異空間。
向こう側と、現実を繋ぐ場所。

一度目に此処を通った時は、パニックのままに通り過ぎただけだった。
二度目には、悲しさと辛さで泣きじゃくり、とても風景を見る余裕は無かった。
だから、この空間をまともに見るのは、これが始めてになる。

うねる様な動きを見せる其処は、透明だった。厳密には、そして理論的には、色がついているのだろう。
そうでなければ、人間が視認することは出来ない。しかし、それを視認することが難しいほどに、一面は澄み渡っていた。

飛び込んだ勢いのまま、ふわふわと前へと進む。何もない異空間を、どこまでもまっすぐ、まっすぐ。

それから暫くして、光が見えた。
出口だ。異空間から抜け出す為の、出口。

速度は変わらぬままに、其処へと引き寄せられる。
きっと、出口の向こうにあるのは、
あの場所だ。あの時、あの人と出会った、あの森だ。
あそこに、もう一度行けるのだ。

近づく。光は、どんどんと大きくなる。
それはやがて、視界を覆い尽くし、目が眩みそうになるほど強くなる。
思わず、目を瞑ったその瞬間、光は極限まで強まり、身体はその中へと投げ出された。

752彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:25:32 ID:dHC0sQBk0
そして、立っていた。
嘗て見た、木漏れ日の差す草の絨毯。広がる森からは、木の葉の囁く声が聞こえる。
こんな場所が、『日本』にはないことは、散々に調べ尽くして確認している。
何よりも、強く感覚に訴えてくる既視感。此処は間違いなく、あの森だった。

ただ、あの時とは、違うことが一つ。
俺の前に居たのは、あの人ではなかった。
短く切り揃えた、黒の髪。くりくりとした、茶色の瞳。花束を持った小さなその手は、微かに、震えていた。
忘れられようものか。
あの人と共に俺がこの国を離れて、それから、一度も再会することなく別れてしまった、あの娘だった。
彼女は、花束をぽとりと取り落とし、そして、信じられない、といった響きを隠すことなく、震える言葉を紡いだ。

「おじ、さん?」
「はいはい、おじさんですよ」

そういえば、あの頃もこんな風に話をしたっけな、と、前に来た時のことを思い出す。
おじさんという呼ばれ方も懐かしく、あの頃は、背丈も自分の半分ほどしか無かったこの娘が、
今や、青年の年頃かと思わしきほどの成長を見せていることには、不思議な感動があった。
しかし、それを、再会の言葉にしようと思うと、些か気恥ずかしいものがある。

だから、取り敢えず、これだけは言おうと腹を決めていたことだけは伝えることにした。

「遅うなったけど、約束通り帰ってきたよ」

753彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:30:07 ID:dHC0sQBk0
途端、この娘は、宮藤芳佳は、普段は全く無縁だった涙を目に一杯溜めながら、俺の元へ飛び込んでくる。
以前の小さかった頃のそれとは全く違う、成長を感じる重みを受け止めてやれば、わんわんと泣きじゃくっている。
それだけ、俺が帰ってきたことを喜んでくれている、ということになろうか。
不覚にも、眦が熱くなる。
一時の逗留者に過ぎなかった俺を、これだけ歓迎してくれるとは、思っても見なかった。
或いは、約束のことなど、忘れられているのではないか、とも。
それだけに、感じ入るところは、一入のものでもあった。

ぽろぽろと、涙で服を濡らしながら抱きついてくる芳佳ちゃんの背を軽く叩き、自分の声の震えを努めて抑えながら、
笑みを作って……実際に作れているかは、少々怪しかった。何しろ、今まさに涙が流れそうな心持ちでもあったから……語りかける。

「久し振り。ただいま、芳佳ちゃん」

服の袖で目元を拭い、そして、にっこりと笑って返してきたその笑顔は、
記憶の中に残る、幼い頃の芳佳ちゃんのそれと、何ら変わるものではなかった。

「……お、かえりなさい。おじさん」

754彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:34:28 ID:dHC0sQBk0
これは、二回目の物語だ。
世人の聞けば、嘲けりを以て一笑に付されるであろう、不思議な物語。
向こう側と、俺がそう呼ぶパラレルワールドで起こった、人々との再会と、それに纏わる諸々に関する物語だ。

755彼方より、もう一度:2017/02/27(月) 01:38:26 ID:dHC0sQBk0
以上プロローグです。
また近いうち続きを書きます。
意味が分からないところはその内分かるように書いていきたいです

756名無しさん:2017/03/01(水) 01:11:28 ID:VjaWqMIo0
乙乙

757名無しさん:2017/03/02(木) 20:39:38 ID:gL2a2tCo0
おっつー

758名無しさん:2017/03/04(土) 19:16:09 ID:7fsRiM3U0
おつ

759短編『これから』:2017/03/16(木) 09:40:05 ID:uBNHz4S20
俺「俺が代わりに死ぬー!」

森に墜落し負傷した管野直枝を地上型ネウロイの集中砲火から庇うため、身を呈して彼女の前へ躍り出た。

当然俺は魔法を使えるわけもなく、というかさっきまで鉄橋の上から自殺しようと川へ身を投げたはずなのに気付けばブレパンの世界にいて、彼女の危機が迫っている状況に遭遇したのだった。

管野「お、おいっ…お前!」

俺「まじでなおちゃん大好き過ぎる本当に愛してるバンザーイ!!」

咄嗟に動いて、自分の死を有意義にしようとした。

不細工で、ちゃんとした仕事も恋愛もこなせず今迄中途半端な人生を辿ってきた終止符としては贅沢なぐらいだ。と、にっこり笑って俺は迫り来る攻撃を受け止めようとする。

俺「…ぐぶぉあっ!!」

しかし衝撃は後ろから飛んできた。彼女の拳だった。

管野「バカかテメー!オレはシールドぐらい張れる!」

そういって傷だらけの身体でシールドを急展開し、俺と自分を守る管野。

760短編『これから』:2017/03/16(木) 09:45:58 ID:uBNHz4S20
俺「え、ちょっと…」

管野「誰だか知らねぇが、すっこんでろ!」

俺「あ、で、でも…」

管野「邪魔なんだよ…!」

ズカーンと俺の脳天を貫く言葉。それが今の「邪魔なんだよ」だった。過去のトラウマが沸沸とよみがえる。

せっかく会えた彼女にもこんなこと言われるのか、悲壮感で泣きそうになり唇が震える。

だが、どうせ死ぬんだ。なら最後に!

俺「…っぷりぶおおおおおお!!」

汚ったない声を上げてネウロイに突っ込んだ。

一番近い1体に、振り上げた拳をおもいっきり当てる勢いで非常にカッコ悪く駆けていく。

761短編『これから』:2017/03/16(木) 09:49:52 ID:uBNHz4S20
俺「ちゅるぎいいいいいいい!!」

彼女のように、この拳で打ち砕いてやる。たとえ出来損ないでも、死ぬ前に。

俺「いっしぇえええええええんんん!!!」

ペコォン。

と、金属に生身の手がぶつかった音がし、ただそれだけだった。

そして鉄を殴ったような感触で俺の手は多分骨折し、ネウロイの瘴気により黒くボロボロに。

俺「いたああああああいっ…!!」

その場にいるネウロイは全員「は?」のような空気に。俺に対し彼らでもそんな反応を…

管野「今だ!」

そのネウロイの隙をついて、管野は落ちていた機関銃を拾い上げ連射し、次々を撃墜していった。

俺「うわああああっ…」

銃の音に怯えて蹲る俺。

762短編『これから』:2017/03/16(木) 09:53:16 ID:uBNHz4S20
管野は最後の1体を蹴散らす前に弾切れになった為、銃を投げ捨てる。

管野「ったく」

そしてシールドを圧縮していき、超硬化した拳でネウロイへ突っ込んでいく。

管野「こうやんだよ!」

そのネウロイのビームを弾く真っ直ぐな拳は、俺の鬱屈とは真逆で、光り輝く美しい力強さだった。

管野「剣、一閃!!」


--


管野「やめろ、抱きつくな気持ち悪い!」

俺「…だって…だってええええ」

管野「ああっ!クソっ!」

俺は膝をついて彼女の腰に泣きながら抱きつく。自分の醜さで自棄になっていた。

763短編『これから』:2017/03/16(木) 09:56:51 ID:uBNHz4S20
管野「…ところで、お前は誰なんだよ」

俺「知らない…勝手にここに来た」

管野「なんだそれ、バカか」

俺「でも、なおちゃんが好き…」

管野「……」

彼女は俺を引き剥がして、突き飛ばした。
俺は水溜りに尻餅をつく。

管野「本当にバカで気持ち悪いな、おめぇは」

俺「くうぅ…」

管野「オレを好きになるんだったら、ちったぁ強くなることだな」

俺「…え?」

管野「そしたら考えてやるよ」

俺「…………あ」

水溜りの筈なのに、身体がずぶずぶと沈んでいく。

764短編『これから』:2017/03/16(木) 10:00:00 ID:uBNHz4S20
俺「や、いやだ」

管野「?」

俺「まって、やだ、ここにいたい」

元の世界に戻ってしまうのだと分かった。

俺「俺はここにいたい、ここで強くなりたい、いやだぁっ!」


--


抵抗しても無駄で、水溜りに沈みきって意識が遠のいていった。

しかし足掻けば、まだあちらの世界に残れる気がする。

その中で、

「バーカ、どこでだって強くなれんだろ」

という声が聞こえたような気がした。

その声で、俺は元の世界に戻る覚悟を決めた。

川の岸で目が覚めて、ずぶ濡れ身体を起き上がらせると握り拳が水でキラキラと光っていた。

765短編『これから』:2017/03/16(木) 10:04:49 ID:uBNHz4S20


--


そして5年後、強くなった俺は管野に会いにいく為、また自殺を試みたが、本当にそのまま自殺してしまいそうなので、バカらしくてやめた。

強くなったら、俺は気付けばブレパンから離れていたらしい。

あの時もし、強さより彼女を欲していたら…

俺「ふ〜」

1日の疲れを癒す風呂に入りながらそんなことを考える。

俺「そろそろ寝るか」

そう言って栓を抜く。すると渦巻く排水口に足が吸いつき、身体ごと回転しながら吸い込まれていった。

あまりの出来事に整理がつかないまま、俺は熱湯の中を泳いだ。

しばらくすると光が見える。

その光を目指して泳ぎ、頭をあげると、唇が柔らかい小さな割れ目に当たった。

管野「うぇっ!?///」

これから、これからなんだ。

終了

766名無しさん:2017/03/17(金) 00:49:08 ID:3cWATjQg0
最後の「割れ目」で多分作者の意図とは異なる想像をした。
俺の心は汚れてる。

ともあれ乙乙。
読みやすくて良かったよ

767名無しさん:2017/03/17(金) 03:37:34 ID:uB/L3gqI0
おつおつ

768名無しさん:2017/04/16(日) 06:10:34 ID:94GWF/R.0
ほあぁ…まだスレ残ってたんすねぇ
たまにwikiの方覗いてたけど動き無いからてっきり消えたもんだと

769名無しさん:2017/04/17(月) 01:54:04 ID:2neEuiPk0
ときどき短編が投下されるからブックマークから外せない

770短編『作俺』上:2017/05/03(水) 15:48:06 ID:hBxbThhY0
俺「全く書けない」

脳の中を隅々まで潜り抜けても何一つ出てくるものはない。本当の本当に今度こそ空っぽだ。

口が開きっぱなしのまま座った半開きの目でディスプレイを見つめ、手足の筋肉は重力に従うまま脱力している。霊魂というものがこの世に存在するのであれば、まさにそれが抜けた状態が今の自分だろう。このまま動かず自分は死んでいくのだろうか。まるで売れない安っぽい服を着たマネキンにもなったようだ。

そういった安っぽい想像はいくらでもできるのに、目の前のシナリオプロットは一文字も進まない。〆切、二時間前。これを期限内に提出できなければ今後の仕事が真っ白になり、代わりに真っ黒な不安が到来する。大変おぞましい。

俺「……全く書けない」

また同じことを言ってしまった。周りには誰もいないのに、そんな弱音を何度も吐く自分が誰かに監視されているようで、恥ずかしさもあって恐る恐る背後を気にして振り返る。当然誰もいない。埃をかぶった透明な観賞用ケースの中に飾られているフィギュアの笑顔が自分を馬鹿にしているように感じた。いつもは応援してくれているはずなのに。

771短編『作俺』上:2017/05/03(水) 15:51:14 ID:hBxbThhY0
俺「……だって書けないんだもん」

そう空に呟いて、パソコンの画面と再度にらめっこ。

俺「………そうだ、過去にSSでボツしたやつを引っ張って参考にすれば」


--


「男の俺」

ストライクウィッチーズの女は強い。

でも現実の世界では、男の方が正直強いのかもしれない。
暗黙として男が幅を利かせているかもしれない。

そんな差別的なことを前までは考えてなかったけど、この仕事を始めてから不思議と感じるようになった。

772短編『作俺』上:2017/05/03(水) 15:54:17 ID:hBxbThhY0
店長が彼女達を雇う面接で最後に「映像の方も紹介できるから」と推し、その反応で合否を決める方法は、金を搾り取れる人かどうかを見極めていた質問だったと気付いたし、そういえば過去に父が「女はな、実は全員バカ。男が賢い」と母に内緒で話をしてきたことも思い出した。

自分はそんな風に思いたくはないが、心の底では女に対してそういう意識があるのかもしれない。

俺は男だから。
全然弱いけど。
本当は弱いから差別してしまう。

とにかく男よ、とりあえず優しくあれ。


第1話「彼女は女」


「生きてますか?」

小鳥のさえずりと、知らない女の子の声が聞こえてくる。次第に目が覚め、朝陽で明るくなった周囲を眺めると、そこは海岸の側で、草木が潮風で靡いていた。

773短編『作俺』上:2017/05/03(水) 15:58:25 ID:hBxbThhY0
俺「え…海?」

まさか、海まで来ちゃったか。

繁った草の上に身体は寝転んでいて、起き上がろうとすると鈍い痛みが頭に響いた。

俺「いだっ…!」

「大丈夫ですか?」

飲み過ぎた。確実に二日酔い。おまけに帰る駅を乗り過ごして海の方まで来ちゃってたんだ。ベロベロのまま電車に乗ったのはいいけど、それからの記憶が無い。

海ってことは横浜とか江ノ島の方か。

俺「あの、すいません…ここってどこですか?」

「ここは佐世保ですけど…」

俺「…さ?」

佐世保。佐世保って、長崎、佐世保バーガーの佐世保?九州?

俺「佐世保…?」

「はい、そうですけど」

俺「そんな冗談…」

酔っ払って東京から長崎まで来たなんてあり得ない。無意識のままフェリーか飛行機だぞ、アホか。

774短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:03:07 ID:hBxbThhY0
「立てますか?」

俺「あ、ありがとう…」

ふらつく身体を支えてくれた彼女に感謝し、まだ覚めきってない意識をしっかりさせようと顔を手で揉む。

顔を揉んでいると、頭痛だけでなく頬の痛みにも気が付いた。
昨日殴られた頬が寒気を伴うほど腫れている。

「こ、これどうしたんですか!?」

俺「え?ああ」

「すごい紫ですよ…!」

俺「えぇ…そうなんだ…」

自分でも笑うしかない。

俺「…殴られて。あ、女の子に」

「へ?」

俺「告白して…ふられちゃった」

「ええっ!?」

いきなり見ず知らずの子に何を打ち明けてるんだろうと自嘲しながら、それでも吹っ切れて話し続けてしまう。

俺「働いてたとこで出会ったんだけど、割と…そういうとこではかなり明るい方で、アニメとかが好きの子で。何度か飲みに誘われたり、一緒に映画とかアニメとか観たりしたんだけど…俺が勘違いしちゃってたのか、あっちが仕事的に…気を使っちゃったのか分かんないけど、店の外で告白したら殴られちゃった、グーで」

775短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:06:51 ID:hBxbThhY0
「と…とにかく大変だったんですね…」

俺「うん…ひかりさんっつってね」

「……」

俺「ま、源氏名なんだけど、本名教えてくれなくて」

「ひかり?」

俺「うん」

「わっ、私もひかりって名前です」

俺「…は?」

この声、そうだ聞いたことがある。
確か休憩室でひかりさんに見せてもらって、俺も目覚めてしまった、あのアニメ。

ひかり「私は扶桑皇国佐世保航空予備学生、雁淵ひかりです!」

今日はコスプレDAYなのか。

俺「俺は俺って名前です」

ひかり「俺さんっていうんですね!えっと俺さんは…なにをしてる方?」

俺「ピンサロのボーイです」

ひかり「…え?」

776短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:10:42 ID:hBxbThhY0
俺「お金が無くて、ピンサロで、ボーイのバイトしてます」

ひかり「ピン…サロ?」

俺はまだ眠りから覚めてないようだ。


--


俺「うーん……これを元に風俗で働いていたボーイが異次元に行った話を……」

いや、こういった変化球ものは大抵後からクレームが来るかもしれない。キャラにそういった風俗的な背景を絡めるのはあまり良くない気がする。先方からも明るめと言われているし。

俺「ならもっと、バカバカしく元気が出るものを…」


--

777短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:13:59 ID:hBxbThhY0
「ラル隊長、ママになってください」


ラル「お前は何をいっている」

俺「いやだから、ママになってもらいたいなって」

ラル「そのママとは一体何のことだ」

俺「赤ちゃんの世話をしたり、おっぱいをあげたり、することです」

ラル「一応聞くが、誰のママだ」

俺「俺のママです」

ラル「……消えろ」

俺「まま、ママァーーーーーッ!!!」ガバッ

ダァン

俺「うう…」ピクピク

ラル「訓練弾だ…そんなところで仰向けになってないで早く出ていけ。ん?」

俺「」ボッキーン

778短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:17:06 ID:hBxbThhY0
ラル「……これは」

ボッキーン

ラル「…///」


--


俺「いやダメだろ…これ的なの出したら先方に殺されるわ…」

このままだと同人誌的な展開が予想でき、見慣れた大衆は鼻をほじりながら馬鹿にするだろう。

俺「どうすりゃいいんだ」

引き出しを開け、禁煙していたタバコに手を伸ばす。完全に無意識な行動だった。

俺「あ…」

しかし自分は今こんな切羽詰まった状態なんだと封を切り、しっかりタバコの箱を掴み、別の引き出しからライターも取り出して、溜息をつきながらベランダに出た。

779短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:20:37 ID:hBxbThhY0
俺「もうダメだ」

外はありきたりといえるような満天の星空。

タバコに火をつけようとするも、なかなかライターが着火しない。久々に繰り返す親指の擦れに焦燥感がつのる。自分の「あー…あー!」という声が大きくなっていった。

俺「もおおおお!」

あまりの着かなさにベランダの床にライターを叩きつけた。自分は思い切り投げたはずなのに、コンクリにぶつかる音が意外に小さく余計ストレスを溜める。

壊れていない頑丈なライターを見つめていると、ていうか外はもう夜だったっけと、今更感じた。

そして外の景色を見て、そんなものでは安らがない自分の心とでもいえるような部分が冷めていく。

そんな時に、大きな風が吹いた。

780短編『作俺』上:2017/05/03(水) 16:24:36 ID:6yjpPXYs0
俺「…は?」

その安らがない空のはずなのに、あるものが俺の目を捉えた。

幻覚なのか、分からない。

ただ咄嗟に手に持ったタバコを捨て、ベランダから玄関へ駆け出し、靴のかかとを踏んでアパートの外へと繰り出した。

不慣れな運動で苦しくなる呼吸と興奮で高鳴る心臓を同期させながら、耳に聞こえるレシプロの音を頼りにその方向を探した。

ただの飛行機だろう。そんな疑問を吹き飛ばした理由は、

俺「絶対、俺に笑った…!!」

ここにいるはずのない筈の人物が俺に空から笑いかけたからだった。

ありえないのは当然だ。だけど確かなんだ。

ここから見える二つのレシプロと、人の影をした低空飛行をするその光を信じて、見慣れた町並みを過ぎ去っていく。

靴も脱ぎ捨てて。

幻覚でもなんでもいい。

今まで完結できなかった物語の続きが、目の前にある気がした。

つづく

781名無しさん:2017/05/04(木) 03:28:53 ID:LE3YiuqQ0
おつ

782名無しさん:2017/05/06(土) 00:32:54 ID:GJOvRrRk0
ボツ原稿にはかつての夢とロマンが眠っている

乙乙

783名無しさん:2017/07/08(土) 18:23:28 ID:FolBcXEE0
久しぶりに来たけどまだ続いていることに感謝だな〜

784名無しさん:2018/02/23(金) 08:20:17 ID:ebWAkYZ20
久々に来たけど、まだ残ってんだ、良かった

785名無しさん:2018/07/08(日) 18:29:04 ID:7AMgccFA0
ttp://w-witch.jp/
501再び

786名無しさん:2018/07/08(日) 23:41:44 ID:A94./bK20
新たな作戦が動き出したようだ私もここに戻ってきた

787名無しさん:2018/09/04(火) 19:27:04 ID:bP1Vrti60
まだ残ってたのにびっくりだよ
懐かしいなあ

788名無しさん:2018/12/13(木) 22:21:04 ID:U2P6FncM0
まだ、俺の青春のフィラデルフィアが残っていたとは・・・

789名無しさん:2020/09/12(土) 03:59:57 ID:6eD/mbDc0
まだあったのか…

790名無しさん:2022/03/21(月) 22:47:15 ID:hst0aUow0
この掲示板には2000年代の頃の空気が少しだけど感じられていいね。
数年前に3期が放映されたのにあまり書き込みがないということは
すっかり忘れ去られたか。
ネット上にこういう創作物を書いて後で黒歴史だののたまう連中は
死ぬほど見かけるけど、二次創作は何だかんだ言って楽しいから
こういう意見は寂しい。
俺もいつかこの掲示板に一本は投稿したいけどその時まで残ってるかな。
その時掲示板が無くなってたらハーメルンか自分のサイトにでもあげるかな。


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