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俺「ストライクウィッチーズと洒落込もうか」

718ミーナの幼馴染な俺:2016/07/03(日) 22:46:05 ID:sB6VQk8Q0
その後、俺たちは味方の部隊に救助され、ダンケルクに運び込まれた。

担架に乗せて運ばれていく俺とクルト。ウィッチと一般兵は別のテントだ。
俺はミーナに、クルトの方についてやれと言った。ミーナは少し躊躇うそぶりを見せた。
俺が重ねて促すと、彼女は「ありがとう」と万感を込めて囁き、俺の額にキスをして (その感触の、何と甘いことか!)、俺の傍を離れていった。

その感情が巣食ったのは、生還してできた一瞬の心の隙だったのだと思う。
俺がクルトの方に行け、と言った。
しかし彼女が実際に後ろ姿を見せたとき……告白するが、俺ははっきり後悔した。

『クルトを連れ戻すべきではなかった』
『帰還したのが俺一人だったなら、彼女を独占できたのに』
と。

俺はそんな自分をひどく恥じて、無理やりにミーナの後ろ姿から顔を逸らし、目を閉じた。


クルトは結局大きな怪我はしていなかった。戦車砲の直撃だの弾雨の嵐だのに遭っておいて、運のいいやつだ。

俺は、右手の中指と薬指の一部、小指の殆ど、そして残った指先の細かい触覚を失った。
左手は親指と人差し指の先を少し削れられるだけで済んだ。
喪失したのは第一関節より末端側だったから、少しずつ盛り上がってもとの長さになるかもしれないそうだ。
本来なら両手とも手首から先を切り落とさなければならないような傷だったんだが、俺の頑丈さは並じゃなかったからな。

「握力と人差し指さえあれば、引き金は引ける。大したことじゃねぇさ」
俺は笑って見せた。
クルトは笑ってはいなかった。ミーナは泣いていた。

この手では引き金は引けても、ピアノは弾けないだろう。二度と以前のようには。
いつかの晩の、あの不ぞろいのギグが、俺たちの最後のセッションになった。


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