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OP案募集スレ

1 ◆eU3JTK49wM:2012/12/29(土) 00:41:03 ID:WdYQabxU0
OP案を投下するスレです
期限は1/7 23:59まで

2 ◆nOp6QQ0GG6:2012/12/31(月) 12:40:06 ID:Wsvgr1/c0
OP案投下します

3プログラム起動 ◆nOp6QQ0GG6:2012/12/31(月) 12:40:55 ID:Wsvgr1/c0
***ROYALE-system Ver2.0***

set up........

dimension chr.# (12)
{Matrix}
{the Wolrd}
{the World R:2}
{Brain Burst}
{Moon Cell}
{Dream Baseball}
{Swrod Art Online}
{ALfheim Online}
and....
:
:
loading......

#1,2:
atttribute=BATLLE ROYALE


succeed
:
:
:
:
:
:
私、速水晶良がふと目を覚ました時、そこには白しかなかった。
白。
前も、後ろも、全方位どこを見渡してもただ白い空間があるだけで、解放感もなければ閉塞感もない。
まるで何も設定されていない世界に私の身体を放り込んだかのようで……

「て、えぇ!」
私は思わず声を上げてしまった。
そこに来て気付いたのだ。
自分の身体が、速水晶良のものでなくなっていることに。
褐色の肌、白い髪、露出度の多い鎧。
それは私本来の姿とかけ離れたものでありながら、同時にひどく馴染みのあるものでもあった。

4プログラム起動 ◆nOp6QQ0GG6:2012/12/31(月) 12:41:35 ID:Wsvgr1/c0
「ブ、ブラックローズ……」
私はその身体の名前を口にした。
それは私の持つもう一つの名前。
ネットゲーム「the Wolrd」において、弟が勝手に作ってしまったPCであり、そしてカイトと共に激戦を繰り広げたPCだ。
精巧なポリゴンで形作られた身体に触れ、それが確かに自分であることを認識する。

「どういうことよ、もう」
悪態を吐きながら、私は「床」と思われる場所に足を付けた。何も見えはしなかったが足を付けることはできるようだ。
ここは……the Worldの中?
周りを見渡しても、手がかりになりそうなものはおろか、他の存在すら見えそうにもなかった。

「ここって……」
何も見えなかったが、私はここに見覚えがあった。
何のグラフィックも設定されていない真っさらな空間。
前にリョースに――システム管理者によってカイトと共に捕えられた場所に、良く似ている。
ということはここはやはりthe Worldの中なのだろうか?

「あれ?」
ふとそこで、とある疑問が私の胸に生じた。
「ここ」がthe worldの中であるのなら――
「私」は一体どこに居るというのだ。
ディスプレイの前……に私は今居ない。
存在する筈のリアルの自分を動かそうとしても、それがどこにあるのか見当も付かなかった。

「えーと。ここは一体……」
愕然としていると、不意に声が聞こえた。
何もなかった筈の場所に、一人の男が現れていたのだ。野球帽を被った男であり、自分と同じく生身の人間ではなくゲーム上のアバターのようだった。
だが、その姿は自分のものとはかけ離れている。
可能な限り現実の質感を再現したブラックローズの身体とは異なり、デフォルメされ頭身の下がったそのキャラクターはよりゲームらしいといえる。
勿論the Wolrdにこんなキャラは存在しない。

「あの」
私はその男に声を掛けてみた。
が、彼には全く聞こえていないようで、私の方を見向きもせずおろおろとしている。

唐突に爆音が響いた。
耳をつんざくような音がして、私は思わず耳をふさいだ。

「しぶといな」
音のした方向を見ると、ボロボロのローブを纏った奇妙なPCが居た。
黒と黄を基調にしたボディを持ち、鋭く尖った耳のような突起が特徴的だ。
爆音の元凶はどうやらそいつのようで、その手から硝煙を立ち上らせている。

「全く、周りのことも少しは省みてくれ。私まで被害を受けそうになった
 君の攻撃力は中々のものだが、この空間はそんなことでは抜け出せそうにないぞ」
そのロボットようなPCの近くに、もう一人別の者がいた。
綺麗なPCだった。黒いドレスを纏った美少女に、漆黒の蝶の羽が生えている。
その言葉に対し、ロボットの方は彼女に目もくれず「ふん」と苛立たしげに唸っただけだ。
彼女の声が聞こえていないのか、はたまたただ無視しているだけなのかは私には判別できなかった。

「おいおい、何だ? もう始めているのかい?」
また新たな声がした。
振り返ると、そこには見たこともない制服に身を包んだ男子生徒がいた。
彼は「馬鹿だね」と言って、やれやれという風に手を上げた。
周りを見下した、神経を逆なでるような口調に私は反感を覚える。
何よ、コイツ。ワカメみたいな髪をして。

「せっかちなことだ。ま、それで聖杯戦争のライバルが減るなら、こっちとしてはありがたいけどね」
私の反感をよそに、彼はぺらぺらと喋り出す。
聖杯戦争? 見慣れぬ言葉を彼は口にした。
自信満々に語る彼は、何かこの状況を知っているのだろうか。

5プログラム起動 ◆nOp6QQ0GG6:2012/12/31(月) 12:42:46 ID:Wsvgr1/c0
と、そこまで来てまた新たな存在が現れた。
これまでとは全く異質な登場の仕方だった。
真っ白な空間にノイズが走り、歪んだ空間からその男は私たちの遥か上に現れた。

それは一見して侍のような恰好をしていた。
和服を着ていて、ちょんまげのように結ってある長髪。
だが、ただそれだけのPCでないことは明らかだ。
そのPCは黒い何かに浸食され、ポリゴンの形が崩れてしまっているのだ。

「諸君、これから私がルールを説明しよう」
私たちを見下ろし尊大な口調でその男は言った。

「ふむ、流石にこれだけの人数を一斉に起動させることはサーバー負荷が強かったようだな。
 スムーズに同期が取れていない者も居るようだが、まあいい。私の姿と声は聞こえるだろう?」
と、そこで私はその場に人が更に増えているのに気付いた。
それもかなり多い。多種多様な格好をした人間たちが白い空間に現れていた。
彼は急に現れたのではないのだろう。男の言葉によれば「同期が取れていなかった」だけで、最初からそこに居たのだ。
そのこと自体はそこまで驚くべきことではないのかもしれない。が、私はその統一感のなさに面食らっていた。
私と同じくファンタジー小説から抜け出してきたかのような者、ロボットのようなメタリックな姿の者、かなりデフォルメされた者、不気味な黒コートの者などなど。
全く違うジャンルのネットゲームからアバターをひっこぬいてきたみたい……、そんな印象を抱いた。

「私の名は榊。このVRバトルロワイアルの進行役を務めさせてもらう。
 今、諸君らには既に基本のルールが記されたテキストデータが配布されている。先ずはメニューウインドウを展開し、アイテム欄からそれを開いて貰いたい
 取り出し方は分かるかね? アイテム欄に触れると【使う】のコマンドが出るからそれを押して貰いたい。また外にあるものをアイテム欄に入れる場合には【拾う】のコマンドを推す必要がある」
そいつ――榊と名乗った男の言う通り私はメニューを開こうとする。
と、すぐに目の前にウインドウが開かれた。勿論ボタンなんて押していない。ただ「開く」と思っただけで開いたのだ。
そのことに戸惑いつつ、開かれたメニューを見るとそれは見慣れたthe Worldのもの――ではなく、無機質なグレーカラーのメニューだった。

【ステータス】
【装備】
【アイテム】
【設定】
 
その四つで構成されたシンプルなメニューだった。その上には小さな文字で時刻0:00:00と記されている。
慣れないメニューに困惑しつつも、【アイテム】の文字に触れ、展開されたアイテム欄の中から「rule.txt」を見つけて選んでみた。
そして、私を更なる衝撃が襲った。

『VRバトルロワイアル
 ・これから貴方たちには殺し合いをしてもらいます。
 ・生き残った一人のみが優勝となります。』

出てきたテキストの冒頭がこれだった。
その文面に私は「なっ……」と思わず声を漏らす。

「フハハ! 驚きかね。そう、諸君らにはこれから殺し合いをしてもらう。
 会場内で参加者PCを全てkillすることが優勝条件だ」
榊の不快な声が響く。

7プログラム起動 ◆nOp6QQ0GG6:2012/12/31(月) 12:46:24 ID:Wsvgr1/c0
「フハハ! 驚きかね。そう、諸君らにはこれから殺し合いをしてもらう。
 会場内で参加者PCを全てkillすることが優勝条件だ」
榊の不快な声が響く。

「詳しいことはそのテキストに書かれているので省くが、先ず覚えて貰わえねばならないことを説明しよう。
 一つはこのVRバトルロワイアルの優勝者へ贈られる賞品だ。
【元の場への帰還】と【ログアウト】そして【あらゆるネットワークを掌握する権利】これが進呈される。
 望むなら現実で使える金銭や地位も加えて与えよう!」
賞品がログアウト?
榊の言葉に不安を覚えた私は急いで他のメニューも確認してみる。
【ステータス】……ブラックローズのパラメータが載っているいる他「状態:健康」なんて記されているだけだ。
【装備】……何もない。恐らくアイテム欄で武器を選択すると変化するのだろう。
【設定】……ウインドウの形式だとか、日本語英語の翻訳システムの設定だとかくらいしかない。
ない。どこにも見当たらない。【ログアウト】の文字がどこにもないのだ。
その事実を目の当たりにして、私の背中に背筋に冷たいものが走る。

「さて、やる気が出たかね、諸君。特に『死の恐怖』のハセヲ君。君には期待しているぞ。
 好きだろう? 得意だろうPKは? PK100人斬りを成し遂げた君ならバトルロワイアルでもいい結果を残せるだろう」
榊の言葉に私は顔を上げた。
『死の恐怖』
それは、私たちが最初に倒した「禍々しき波」である「スケィス」が冠していた名だ。
それと同じ二つ名を持ったプレイヤーが居る?

私はそのハセヲとやらの姿を探してみたが、見当たらなかった。
どうやらまだうまく同期できていないらしい。全ての参加者が見えている訳ではないようだ。

「お前の言う賞品とやらが確実に渡される保証はどこにある」
別のところから声がした。見ると、それは黒いコートに身を包んだ強面の黒人だった。

「たとえ優勝しお前の下に辿りついたとしても、帰還できる保障など一切ない」
「ふむ、確かにそれは君の言う通りだな。私を信じてくれ、としか言いようがない。
 が、諸君らがどうしても戦わなければならない理由、ということなら今示すことができる。
 覚えて貰わなければならないこと、その二つ目だ!
 今、諸君らのPCはウイルスに感染している! 致死性のものに、だ」
榊の言葉に、男は言葉を失った。
致死性のウイルス。その言葉が意味することはつまり……

「今、一人のPCのものが特別早く発動することになっている。そろそろの筈だ」
榊の言葉が終わるのを丁度見計らったかのように、その悲鳴は響いた。

「う、うわぁぁぁぁ! 何でや! 何でワイが……!」
ファンタジー風の装備の男性PCが赤い何かに浸食されている。
毒や麻痺のようなバッドステータス状態とは明らかに違う。PCのポリゴンが醜く崩れ、霧散していく。
彼は、痛切な悲鳴を挙げ続け、そして全身が赤く浸食されると同時に消え去った。
余りのできごとに、私は何も言うことができず、周りの人間もただ呆然とそれを見ていた。

【キバオウ@ソードアートオンライン Delete】

後には何も残らない。ただ白い空間だけがあった。

「さて、これで分かっただろう? たとえ私が信じられずとも、諸君らは戦わなくてはならないことを。
 だが、安心して欲しい。諸君らに仕込まれたウイルスはすぐには障害を表さない。
 ウイルスは遅行性だ。時間と共に進行していき、通常では24時間程度で先の彼のように死亡する。
 これを遅らせる方法はただ一つ。他の参加者PCをkillすることだ。一人PKするごとに原則6時間の猶予が与えられる」
榊の言葉は止まらなかった。
厭味ったらしく間を置き、更なる言葉を口にした。

「そして、最後に諸君らに知って貰いたいことを言おう。
 この場でPKされること――それは即ち真の死を意味する。
 バックアップデータでの修復などあり得ない。永遠にそのデータはロストされることとなるのだ」
真の死。
それが何を意味するかは、私にもすぐ分かった。
意識不明に陥ったカズの――弟の姿が脳裏を過る。

「では、諸君。【VRバトルロワイアル】の開幕だ。次に会う時は6時間後の放送の時になる
 無論、それまで生きていればの話だがね」

その声が響くのと同時に
私は、ここから居なくなった。

「カイト……私は――」
:
:
:
:
program.start
:
:
:
:

8 ◆nOp6QQ0GG6:2012/12/31(月) 12:47:52 ID:Wsvgr1/c0
【進行役:榊@.hack//G.U.】

・参加者は【ステータス】【装備】【アイテム】【設定】で構成されたメニューを表示できる。また時刻も閲覧可。
・アイテム欄の道具は【使う】のコマンドを使うことで発動。外の物をアイテム欄に入れるには、物を手に持った状態で【拾う】のコマンドを使う必要がある。
・死んだものの所持アイテムは実体化して、その場に散らばる。
・参加者には地図とルールの記されたテキストデータが配布されている他、ランダム支給品が3個まで与えられる。
・優勝者には【元の場への帰還】【ログアウト】【あらゆるネットワークを掌握する権利】が与えられる。
・参加者はみなウイルスに感染しており、通常24時間で発動し死亡する。誰か一人殺すごとにウイルスの進行が止まり、発動までの猶予が6時間伸びる。
・放送は6時間ごと、形式は不明。禁止エリアの形式、有無も現時点では不明。


以上、投下終了です

9 ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 17:56:14 ID:I5/VOgKE0
投下乙です。
それでは私もOP案を投下します。

10Tutorial ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 17:59:17 ID:I5/VOgKE0

               そして、開幕の鐘が鳴る。
               平凡な日常は容易く崩れ、運命の歯車が軋みを上げる。

     †


 扉を抜けた世界の奥の奥。
 そこに辿り着くと、どこまでも真っ白な空間へと出た。
 見える範囲には壁や天井、果ては空さえなく、文字通り何も無かった。
 ―――僕は誰なのか?
 その答えを求めて辿り着いた場所だが、本当にここに答えは有るのだろうか。

 ふと聞こえてきた声に辺りを見渡せば、周囲には多くの人たちがいた。
 彼等はおそらく、僕より早くここへ辿り着いた人達だろう。
 だとすれば、彼等ならここの事も、もしかしたら“僕”の事も知っているかもしれない。
 そう思って近くに居た人に話しかけようとして、

「――――ようこそ、選らばれしプレイヤーの諸君。
 この閉ざされた偽りの世界へと」

 唐突なその声に、口から心臓が飛び出しそうなほど驚く。
 バクつく心臓を宥めながら振り返れば、そこには神父服を着た一人の男性がいた。
 いつの間にそこに居たのか、全く気付く事が出来なかった。

「私の事を知る者もいるだろうが、そうでない者のために自己紹介をさせてもらおう。
 私は言峰綺礼。これから行われるゲームの進行役を任されたNPCだ」

 周りよりも一段高い壇上に立つ彼は、ここに居る全員を見渡すとそう名乗った。
 ゲーム? NPC? あまりにも唐突過ぎて、理解が追い付かない。
 周囲を見てみれば、他の人も同様に混乱しているらしい。
 だが彼は、僕達の混乱などお構いなしに話を続けた。

「君達プレイヤーには、あるゲームを行ってもらう。
 そのルールの説明をこれからする訳だが、その前に簡単なチュートリアルを行う。
 先にゲームの内容を聞いて、無闇矢鱈と騒がれても困るのでね。
 ではチュートリアルを始めよう。まずはメニューの出し方からだ」

 言峰はそう言うと、粛々とルールを説明し始めた。
 状況はよく解らないが、そのチュートリアルに従い、一つ一つ確認していく。
 メニューの呼び出し方と操作方法、現在時刻やマップの確認の仕方、アイテムの取り出し方や使い方、その所有権など様々だ。
 そんなチュートリアルの内容を聞いていると、まるで自分がゲームの中に入ったかのような気がしてくる。

「次に、大まかな制限について説明しよう。
 第一に、このゲームにレベルという概念はない。プレイヤー全員が等しく、初期レベルと同程度の強さだ。
 とは言っても、君達が今までに習得したスキル、アビリティなどがなくなる訳ではないし、元となる肉体(アバター)の差だけは変えられん。
 つまり君達の才能と、これまでに培った経験のみが、君達の実力差という訳だ。
 その埋めがたい差を埋めたければ、よくよく頭を使う事だ。

 第二に、プレイヤーの生存判定は基本の最大値を百パーセント、最小値をゼロパーセントとしたHP方式で行われる。当然HPがゼロになれば死亡、ゲームオーバーだ。
 なお、どれだけの重症でもHPが1%でもあれば生存できるが、HPが0%になれば五体満足だろうと死亡することも忘れてはならない。
 また一部を除くHP以外の項目も、HP同様百からゼロパーセントで表記される。
 注意すべき点は、これらはあくまでパーセントであり、具体的なポイントではないという事だ。当然人によって実際のポイントは異なる。
 アイテム等を使わないポイントの回復は、十分ごとに一パーセントの割合で行われる。時間を掛ければ容易く回復するが、連戦になればすぐにポイントが無くなるぞ。
 そして注意点だが、蘇生効果を持つスキルやアイテムは、対象が死亡してから約十秒間のみ有効とする。十分に気を付けたまえ。

 第三に、この中にはそもそも職業というシステムがない者達もいるのでね。大半の装備制限は解除させてもらった。
 だからと言って、剣士が杖を装備したところですぐに呪文が使える訳ではないし、呪文使いが剣を装備しても剣技は使えない。
 自身の職業が変わる訳ではないので、本来使えない武器の習熟度は全てゼロからだ。その辺りを勘違いしないように。
 もっとも、既に習得した呪文や、剣技によっては類似する武器を用いれば、威力や精度こそ落ちるが使えるので、その点は安心していい。
 ちなみに装備状態に関しては、基本的に各部位につき一つまでだ。ただ両手に剣を持ったところで、二刀流にはならない。
 何のスキルもなく二刀流がしたければ、双剣カテゴリの武器を装備する事だな。

 以上で制限に関する大体の説明は終了する。
 その他の細かい制限は実際に確かめるなどして、各々で確認してくれたまえ」

11Tutorial ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 18:00:57 ID:I5/VOgKE0

 神父の話す内容は、確かに何かのゲームの説明だ。
 だが肝心な、ここはどこかという疑問には全く触れていない。
 それを訊こうとするが、チュートリアルはまだ終わっていない。それらを確認するのは後にしよう。

「次は、モンスターとフィールド上の施設。そしてパーティーの編成についてだ。
 既に察しているだろうが、ゲームの舞台であるフィールドにはモンスターが徘徊している。
 そしてこれらの強さは一般の戦闘職が一対一で互角程度の強さに設定されている。
 またフィールド上で遭遇するであろう数も、一度に一体か、多くても二体程度だ。
 例え戦闘職でなくとも、よくよく注意すれば容易に撃破、または逃走が可能だろう。

 フィールド上の施設は、大きく分けて三つの種類がある。タウンと、ダンジョンと、セミダンジョンだ。
 タウンでは条件を満たせばショップの利用が可能であり、またポイントの回復も促進される。そしてモンスターが侵入してくることもない。
 絶対ではないが、一種の安全地帯と言えるだろう。
 逆にダンジョンは危険地帯だ。フィールドの倍以上のモンスターが発生し、場所によってはトラップも存在する。
 しかしそれらを突破し最奥に辿り着くことができれば、強力な装備が報酬として与えられる。命を賭して挑むかどうかは君達しだいだ。
 そしてセミダンジョンだが、端的に言ってモンスターの出現しないダンジョンだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 パーティーの編成は三人一組であり、その中からリーダーとサブリーダーが選ばれる。
 そしてもしリーダーが死亡すれば、サブリーダーがリーダーとなり、残った者がサブリーダーとなる。
 パーティーを組むことにより、一部インベントリの共有と、メンバーのHP以外の項目の確認が可能となる。
 通常は他者のHP以外の項目は表示されないが、これにより効率的な支援が行えるという訳だ。
 加えてリーダーがゲーム中で何かしらの条件を満たしている場合、メンバーもその恩恵を得る事が出来る。
 互いの足を引っ張らぬ様、自身と相性のいいメンバーを探す事だな」

 神父のチュートリアルは、聞けば聞くほどゲームの要素が強くなっていく。
 だとすれば、これは彼の口にした通り、本当にただのゲームなのだろうか。
 それならば、理由のわからない焦燥感が湧きあがって来るのはなぜなのか。

「最後に、放送と禁止エリアについてだ。
 ゲームの途中経過は六時間ごとに放送で行われる。
 放送では死亡したゲーム参加者の名前と残り人数、三ヶ所の進入禁止となるエリア、その他諸連絡が行われる。
 禁止エリアは放送から一時間後、三時間後、五時間に一エリアずつファイヤーウォールによって閉鎖される。これはゲーム終了まで解除されることはない。
 なお、禁止エリア内に取り残された参加者は、死亡時と同様およそ十秒で削除される。
 ただし、死亡とは違うので蘇生効果は発揮されない。十二分に気をつける事だ。

 長々と話したが、以上でチュートリアルを終了する。なお、これらはヘルプ欄で再確認する事が可能だ。
 そしてこれより、ゲームの内容とルール説明を始める。中には既に勘付いている者もいるだろうが、心して聞くように」

 話の節々に出てくる不穏な単語に、少しずつ嫌な予感が強くなっていく。
 それは彼の言うゲームの、そもそもの目的がまだ語られていないからなのか。
 今すぐここから逃げるべきだ。少なくとも、この場所から離れるべきだ。と。
 じわじわと焦燥感が湧き上がってくる。

 ―――そしてそれは、最悪の形で現実になった。

「君達にはこれより、己が命を賭けたデスゲームを行ってもらう。
 このゲームで『死ぬ』ということは、現実で『死』という事と等しい。
 不本意ではあるだろうが、これは決定事項だ。降りる事は出来ん。
 自発的なログアウトもできないので、心して欲しい」

12Tutorial ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 18:02:16 ID:I5/VOgKE0

 一瞬。何を言われたのか、理解できなかった。
 先程までのゲームの様な現実感のなさとはまた違う意味で、全く現実感が湧かない。
 ゲームで死ぬと、現実でも死ぬ? ログアウトできない? ふざけてる。そんなことはあり得ない。
 そう頭で思っていても、理由もなく、それが本当の事なのだと、心が先に理解していた。
 だって“僕”は、そうなることを覚悟して――――

 ……覚悟して?
 いったい僕は、何を覚悟して、どうしたというのか。
 目の前の状況よりも、自己の不明に恐怖して後ずさる。
 直後、ガコン、と。突如といて現れた赤い障壁が、僕を囲んで閉じ込めた。

「いきなりな話で実感の湧かない者もいるだろう。
 故に、彼の犠牲を以って、ここにそれを証明する」

 ガクンと、糸の切れた人形のように、体から力が抜けた。
 そのまま倒れる事をどうにか堪え、自分の手を見る。
 僕の体は、指先から少しずつ薄くなり、崩壊して消え初めている。
 どういうことか、と神父を見れば、彼は憐れな羊を見る様に、僕の事を見ていた。

「彼を囲んでいる障壁は、禁止エリアを閉鎖するものと同じものだ。
 つまり彼は今、禁止エリアに閉じ込められた場合と同じ状態にある」

 それはつまり、そう間もなく、僕は『死ぬ』ということか。
 そう理解すると同時に、脚に力が入らなくなり、床へと倒れ伏した。

 死ぬ。僕は、死ぬ。
 なぜ死ぬのか。どうして死ぬのか。
 多分そこに理由はない。
 無作為に選ばれた生贄として、僕は……死ぬ。

 それに思う事は特にない。
 なぜか僕は、自身の死を覚悟していた。
 僕には資格が無かったのだと、受け入れる事が出来た。
 ……ああ、けれど。
 自分の名前さえもわからない事が、それだけがただ悔しかった。

 そこでふと、ある事に思い至る。
 視線だけを視界の左上へと向け、霞みだした目に最後の力を込める。
 そこには、今にも死にそうなのに一ドットも減っていないHPゲージと、
 その隣に、なぜだか忘れ、それを自覚してからずっと求めてきた僕の名前が――――



 そうして、一人の青年が消滅した。
 役割を終えた障壁は消え、後には何も残らない。
 その異常に、青年の消滅の異質さに、周囲にどよめきが広がる。

「『プレイヤー』はIDによって管理されており、どこに居ようとすぐにその存在を把握できる。
 そして彼のように、主催者の裁量によって一方的に削除する事が可能だ。会話ログなどには十分注意したまえ。
 理解できたかな? ……よろしい。ではルール説明を続けよう」

 だが言峰のその言葉に、騒然としていた『プレイヤー』達が静まり返った。
 彼らは理解したのだ。少しでも情報を聞き洩らせば、次に死ぬのは自分なのだと。
 これで終わりではない。今この時、この瞬間にデスゲームは始まったのだという事を。

「ルールは単純。
 これから君達が送り込まれる会場にある、いずれかのダンジョンに潜むボスを倒せばクリアとなる。
 ただし、この世界からログアウトして生還できるのは、最初にボスを倒したパーティーただ一組だけだ。
 そしてこのデスゲームはPvPを……いや、PKを推奨している。自身が生き残りたければ、他者を殺してでも生き残れ、という事だ。
 もっとも、中にはPKを嫌ってタウンなどに閉じ籠る『プレイヤー』もいるかも知れんが、一つの場所に長時間留まるのは止めておいた方がいい。
 タウンはモンスターの侵入は防げても、『プレイヤー』同士の争いは防げない。
 それに加えてデスゲームを円滑に進めるためのプログラムが、主催者によって設定されているからな。
 なおクリア報酬として、 ボスを倒したパーティーのリーダーには『どんな願いでも叶えられる権利』が与えられる。
 ともすれば、このデスゲームで死亡した者の蘇生さえも叶うかも知れんぞ?」

13Tutorial ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 18:18:42 ID:I5/VOgKE0

 他人を殺して、という言葉に再燃したどよめきが、クリア報酬によって静まり返る。
 ただ強制的に殺し合うだけではなく、望外の報酬も用意されている。
 その事に、多くのプレイヤー達の欲が少なからず刺激されたのだ。
 それを見てとった言峰は最後の締めに入る。

「以上でデスゲームのルール説明を終了する。
 優勝を目指し一人で行動するのも、生き残るために仲間を集めて協力し合うのも自由。
 あるいは、このデスゲームを破綻させるために主催者に反旗を翻すのも、また自由だ。君達の好きにするといい。
 一つ確かな事は、“聖杯はもっとも強き者にのみ与えられる”という事だ。
 ―――それでは今ここに、バトルロワイアルの開始を宣言する! 諸君らの健闘を祈る」

 言峰がそう締めくくると同時に、プレイヤー達が一斉に光に包まれて消える。
 会場のどこかへと転送されたのだ。

 ―――そうして、自身の生き残りをかけたデスゲームが始まった。
    彼らの内何人が死に、何人が生き残るのか。それはまだ、誰にもわからない。


【???@Fate/EXTRA Delete】

     †

 プレイヤー達がフィールドへと転送され、言峰綺礼一人が残された。
 周囲に人影はなく、広間には彼しかいない。

「こんな感じでよかったかね? 須郷伸之」

 それを確認したうえで、言峰は誰もいない空間へと声をかける。
 だが返って来るはずのない問いに、どこからか応える声があった。

「いいんじゃないかな。彼らも、自分の立場を十分に解ってくれたと思うよ」

 そう言いながら転移してきたのは、黄金の長髪と王冠に濃緑色のローブを身に纏った男性だった。
 そして彼の背中からは、薄緑色をした半透明の羽が生えている。
 その存在を知る人物が見れば、彼が妖精と呼ばれる種族である事にすぐに気がつくだろう。

「それはそうと言峰君。前にも言ったけど、僕の事は」
「妖精王オベイロンと呼べ、か。いやすまないな、うっかり失念していたよ」
「わかっているならいいけどね。次からは気を付けてくれよ?」
 そう言ってオベイロンは、言峰の隣に立ってポンと彼の肩を叩く。
 言峰はそれを、特に拒絶することなく受け止める。

「にしても見たかい、言峰君? 見せしめに削除された奴の顔を。
 隔離された瞬間、何が起きたのか理解できずにポカンとしていたよ。いやぁ面白かった。
 その後の反応はつまらなかったけど、他の連中の無様な様子が見れたから良しとしよう」
 別所から眺めていたチュートリアルの光景を思い出し、込み上げる笑いに肩を震わす。
 しかしそれもすぐに収まり、今度はその顔に喜悦の表情を浮かべる。

「だがこれで、ようやく僕が真の神になる準備が整ったという訳だ。
 あぁ、楽しみだなぁ。その瞬間が待ち遠しくて仕方がないよ。今すぐあいつら全員を消してしまいそうなほどだ」
「楽しみにするのは構わんが、少し落ち着いてはどうかね? そんな事をすれば、聖杯は手に入らないかもしれんぞ?」
「わかっているさ。神になりたければ、僕もあいつらと殺し合えって言うんだろう?
 けど心配はいらないよ。だって僕は、既にこの世界の王なんだから!」
 そう言うとオベイロンは大仰な手振りで自身の高ぶりを表す。

「そう! 馬鹿なプレイヤー共が必死でボスを倒したその瞬間、この僕が真のラスボスとして登場してそいつらを嬲り殺す!
 僕にはゲームマスターとしての権限がある! あいつ等は何も出来ずに一人、また一人と虫けらみたいに死んでいくんだ!
 そして僕は、こんな偽物の世界だけではなく、現実世界においても神となる!!
 くははっ、今からでもその光景が目に浮かぶようだよ」
 オベイロンは哄笑を上げながら、約束された未来を想像して歓喜に身を震わせる。
 彼は自身の敗北など想像していないし、システムに従えば事実その通りなのだ。

14Tutorial ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 18:19:34 ID:I5/VOgKE0

「それじゃあ僕は玉座で待っているとしよう。ゲームの進行は全て君に任せたよ、言峰君」
「いいのかね? あるいは私が、君に反旗を翻すかも知れんぞ?」
「くく、それはあり得ないよ。ここはSE.RA.PH.じゃない。君には何の権限もないんだ。
 そんな状況で僕に逆らう程、君は愚か愚鈍じゃないだろう?」
 堪え切れぬ笑いを零しながら、オベイロンはこの空間から立ち去った。
 それを見届けた後、言峰は呆れたように嘲笑を浮かべた。

「まったく、己が道化だと言う事も知らずにいい気なものだ。
 ゲームマスターと同程度の権限があるとはいえ、結局は自身もプレイヤーの一人に過ぎぬというのに」
 加えて言えば、彼の代わりも既に用意されている。
 妖精王オベイロンは、真にこのデスゲームを主催した者に用意された、幾つかの駒の内の一つに過ぎないのだ。
 彼が望み通りに聖杯を手に入れても、後に待つのは主催者の傀儡としての人生だという訳だ。

「このような茶番は、さっさと終わらせて欲しいところだな」
 本来ムーンセルでの聖杯戦争を監督するはずのNPCは、そう溜息をつく。
 彼にとって本来の役割から外れることは好ましくなかった。
 だが強制的にとはいえ、こうして役割を与えられた以上、それを放棄するのもシステムNPCとしての身上に反する。

 故に彼は、己が仕事を果たすためにどこかへと転移する。
 真っ白な空間には、文字通りなにも残らなかった。


【主催者:オベイロン@ソードアート・オンライン、他】
【進行役:言峰綺礼@Fate/EXTRA】

[全体の備考]
※参加者(以下プレイヤー)のHPやそれ以外の項目、状態異常などはSAO形式で表示されます。
 他プレイヤーのHP以外の項目は、パーティーを組む事によってのみ確認できます(例外あり)。
※パーティーの最大人数は3人で、その中から任意でリーダーとサブリーダーを決定できます。
 リーダーが死亡した場合、サブリーダーがリーダーとなり、残ったプレイヤーがサブリーダーとなります。
※メニューはSAOと同様の方法で、ホロウィンドウとして表示できます。なお、メニューでは以下の項目が確認できます。
 ・ステータス ・現在の装備 ・所有アイテム ・現在時刻 ・マップ ・参加者名簿
※ステータスでは、現在使用可能なスキルなど、より詳細な状態を確認できます。
※プレイヤー個人の武具などは基本的に全て没収され、代わりに参加作品の中からランダムで選ばれたアイテムが、1〜3個支給されます。
 ただし、ロワのバランスを崩しかねないアイテムはダンジョンクリアの報酬にするなど、直接支給は避けてください。
※装備制限はほぼ解除されていますが、武具は各項目につき一つしか装備できません(例外あり)。
 また装備品のスキルやアビリティは、その武器を装備しているプレイヤーのみ使用・発揮できます。
※アイテムは基本的に四角いカードになっており、この状態でドロップやトレードが行われます。
 カード状態での使用はできず、カードをタッチしアイテム本体を具現化する事で使用が可能となります。
※装備品やアイテムを奪われた状態で100メートル以上離れると、その装備品の所有権を失います。
 またプレイヤーが死亡した場合、そのプレイヤーの所持していた装備やアイテムは基本的に全てドロップします。
※マップでは現在位置と通行した場所(プレイヤーから一キロ範囲)を、参加者名簿では遭遇したプレイヤー名と残りの人数を確認できます。
 これらの情報は、プレイヤー同士で交換することが可能です。
※バトルロワイアルを円滑に進めるためのプログラムが、主催者によって設定されています。
 長時間同じ場所に留まり続けた場合、何が起こるかわかりません。



【VirtualReality BattleRoyal GAMESTART】

15 ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 18:22:05 ID:I5/VOgKE0
以上でOP案の投下を終了します。
細かい点は、ルールが完全に定まり次第修正させていただきます。

16名無しさん:2013/01/01(火) 02:42:03 ID:Vy.CqfjE0
>【???@Fate/EXTRA Delete】
主人公になり損ねた男…か…
まさかOPで泣かされるとは(;_;)


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