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OP案募集スレ

12Tutorial ◆NZZhM9gmig:2012/12/31(月) 18:02:16 ID:I5/VOgKE0

 一瞬。何を言われたのか、理解できなかった。
 先程までのゲームの様な現実感のなさとはまた違う意味で、全く現実感が湧かない。
 ゲームで死ぬと、現実でも死ぬ? ログアウトできない? ふざけてる。そんなことはあり得ない。
 そう頭で思っていても、理由もなく、それが本当の事なのだと、心が先に理解していた。
 だって“僕”は、そうなることを覚悟して――――

 ……覚悟して?
 いったい僕は、何を覚悟して、どうしたというのか。
 目の前の状況よりも、自己の不明に恐怖して後ずさる。
 直後、ガコン、と。突如といて現れた赤い障壁が、僕を囲んで閉じ込めた。

「いきなりな話で実感の湧かない者もいるだろう。
 故に、彼の犠牲を以って、ここにそれを証明する」

 ガクンと、糸の切れた人形のように、体から力が抜けた。
 そのまま倒れる事をどうにか堪え、自分の手を見る。
 僕の体は、指先から少しずつ薄くなり、崩壊して消え初めている。
 どういうことか、と神父を見れば、彼は憐れな羊を見る様に、僕の事を見ていた。

「彼を囲んでいる障壁は、禁止エリアを閉鎖するものと同じものだ。
 つまり彼は今、禁止エリアに閉じ込められた場合と同じ状態にある」

 それはつまり、そう間もなく、僕は『死ぬ』ということか。
 そう理解すると同時に、脚に力が入らなくなり、床へと倒れ伏した。

 死ぬ。僕は、死ぬ。
 なぜ死ぬのか。どうして死ぬのか。
 多分そこに理由はない。
 無作為に選ばれた生贄として、僕は……死ぬ。

 それに思う事は特にない。
 なぜか僕は、自身の死を覚悟していた。
 僕には資格が無かったのだと、受け入れる事が出来た。
 ……ああ、けれど。
 自分の名前さえもわからない事が、それだけがただ悔しかった。

 そこでふと、ある事に思い至る。
 視線だけを視界の左上へと向け、霞みだした目に最後の力を込める。
 そこには、今にも死にそうなのに一ドットも減っていないHPゲージと、
 その隣に、なぜだか忘れ、それを自覚してからずっと求めてきた僕の名前が――――



 そうして、一人の青年が消滅した。
 役割を終えた障壁は消え、後には何も残らない。
 その異常に、青年の消滅の異質さに、周囲にどよめきが広がる。

「『プレイヤー』はIDによって管理されており、どこに居ようとすぐにその存在を把握できる。
 そして彼のように、主催者の裁量によって一方的に削除する事が可能だ。会話ログなどには十分注意したまえ。
 理解できたかな? ……よろしい。ではルール説明を続けよう」

 だが言峰のその言葉に、騒然としていた『プレイヤー』達が静まり返った。
 彼らは理解したのだ。少しでも情報を聞き洩らせば、次に死ぬのは自分なのだと。
 これで終わりではない。今この時、この瞬間にデスゲームは始まったのだという事を。

「ルールは単純。
 これから君達が送り込まれる会場にある、いずれかのダンジョンに潜むボスを倒せばクリアとなる。
 ただし、この世界からログアウトして生還できるのは、最初にボスを倒したパーティーただ一組だけだ。
 そしてこのデスゲームはPvPを……いや、PKを推奨している。自身が生き残りたければ、他者を殺してでも生き残れ、という事だ。
 もっとも、中にはPKを嫌ってタウンなどに閉じ籠る『プレイヤー』もいるかも知れんが、一つの場所に長時間留まるのは止めておいた方がいい。
 タウンはモンスターの侵入は防げても、『プレイヤー』同士の争いは防げない。
 それに加えてデスゲームを円滑に進めるためのプログラムが、主催者によって設定されているからな。
 なおクリア報酬として、 ボスを倒したパーティーのリーダーには『どんな願いでも叶えられる権利』が与えられる。
 ともすれば、このデスゲームで死亡した者の蘇生さえも叶うかも知れんぞ?」


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