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仮投下専用スレッド

1 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:11:12 ID:4IkOmoKg
作品は完成したんだけどいきなり本スレに投下できるほど自信がない……
いろんな人の意見を聞いてもっといい作品にしてから改めて本スレに投下したい!

……そんな人のためのスレッドです。
修正用スレ(本投下した作品をwikiに掲載する時の修正箇所の明記するスレ)
転載用スレ(本投下の最中に規制されてしまって以降のパートを投下するスレ)
これらと混同の無いよう注意してご利用ください。


必要だと思って立てました。不要なら削除してください。

2欲望 その1/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:12:45 ID:4IkOmoKg
先日、『欲望』を題材にしたカメン・ライダーのテレビを見たんですがね。
あれが欲しいだとか、強くなりたいとか。本当に人間の欲望ってのは様々なもんです。
ですが――それを究極まで突き詰めていくと、人間の、と言うより生物の欲望・欲求ってのは――

『睡眠欲』と『性欲』そして『食欲』
と……この三つに絞られるそうです。

では、ここで質問。欲望の対義語ってなんだと思います?
俺はね、『意思』だと思うんですよ。欲望の逆ってのは。
自分の本能的な欲求を確固たる意思で押さえ込む、あるいは、固く決意した意思に反して本能的な行動をとってしまう、と。

で、今回はその『欲望と意思』に関わる話を一つ、みなさんにお話しましょう。
この対極に位置する二つの言葉。何が一番厄介だって、そりゃあ『欲望と意思が同じベクトルを向く』ということ。そんなお話。では――

***

3欲望 その2/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:14:36 ID:4IkOmoKg
彼の名は東方良平。職業は警官。だけども出世とは無縁の、警察官というよりはお巡りさん。
右手には懐中電灯。肩にはデイパック。道路の真ん中を堂々と歩いています。
まあ当然といえば当然でしょう。殺し合いなんか肯定できません。職業柄、その心に宿る正義、あるいはその両方。
とにかく誰か人間……被害者を見つけて保護、また殺し合いに肯定的な人間は説得する。そのために宵闇の中を一人行きます。
主催者に対する法的措置はその後。犯人を逮捕するために人質の安全は二の次、そんな事は絶対にできません。

彼が飛ばされた場所は地図でいうとE‐7。どういう運命か杜王町に――杜王町に限りなく近い場所に飛ばされたのです。
まずは支給された物品の確認。だってそうでしょう、行動方針なんか考えるだけ無駄。分かりきってますから。
地図を見てしばし呆然。『ドノヴァンのナイフ』と書かれた紙を開いて唖然。自分の常識からは想像できないことが立て続けに2連発。
いや、殺し合いという場に放り込まれたこともカウントするなら3連発ですか。まあとにかく驚きっぱなし。
それでも疑問はとりあえず置いておこう、今は目先の被害者を保護しよう、そう考えられるあたりは流石という所でしょうか。
ナイフはデイパックにしまいました。犯人を、あるいは被害者を刺激するような原因は少しでも減らすべきですから。

人っ子一人いない大通りを抜けてたどり着いたのは杜王駅。彼にとってもなじみ深い場所です。
で――見つけました。参加者を。
いや、言い直します。デイパックを見つけました。つまりその周囲に参加者がいる、少なくともいた、ということです。

もちろん警戒はします。だってそこに死体が転がっているかもしれないし、あるいはその死体を作り上げた犯人がいるかもしれないし。
でも、警官がそんなところで立ち止まる訳にはいきません。
まずはデイパックそのものを。そしてその周囲を懐中電灯で照らします。人影や足音はありません。
慎重に、それでいて忍び足というコソコソした感じはなく、一歩一歩近づきます。

と――その時。チクリとした感触が左ふくらはぎを襲います……襲うというと大げさですが。とにかくちょっとチクッとしたんです。
最初は何も思いませんでした。極度の緊張などから筋肉が不意に伸縮したりして痛みを発生することは珍しいものではないのです。
だけど、その傷口がだんだんと痒くなってきました。足も心無しかフラついてきました。こうなるといよいよ無視し続けてはいられなくなります。
周囲への警戒はそのままに、膝を折りたたんでしゃがみ、痒みの発生源に目を向けました。

するとどういう事でしょう?身体だけならまだしも、ズボンまで溶けたようにグズグズになっているではありませんか。
傷口にライトを当てるとかぶれたように皮膚が爛れて嫌な臭いが鼻に届いてきました。
えっ!?どういうことだ?と、そう思う間もなく次の『チクリ』がありました。まさに不意打ち。一瞬の出来事でした。
場所は顔……多少格闘技に精通している人なら『人中』と言えばわかるでしょう。
顔面の正中線上、鼻の下と上唇の間に存在するツボであり急所。ここを正確に、思いっきり殴ると最悪の場合命に関わります。
もっとも、東方巡査はそんなことを知る前に顔が、脳が溶けきってしまってこの世を去ってしまったのですが……

彼の黄金のような意思は、ゲーム開始から一時間もしない内に消え去ってしまったのです。

***

4欲望 その3/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:16:14 ID:4IkOmoKg
彼には名前がありません。特徴としては右耳に大きな傷があること。
彼には意思もありません――というのは大きな間違いです。確かに彼の意思はちっぽけなもんですが、厄介なことに本能と同じ方向を向いています。
つまり自分の欲求を自分の意思で満たそうとしているのです。すなわち、行動に迷いがなくなる訳です。もっとも彼に『迷う』なんて縁のない言葉ではありますが。
デイパックは必要ありません。中に入っていた小さなパンを食い尽くしたあとにその場に放置しておきました。
ですが彼はバカではありません。このデイパックを『餌』として『釣り』をしていたのです。獲物に針を引っ掛けるところまで釣りそっくり、なんて。
最初に引っかかった獲物は脂乗りは良くないですが肉付きはほどほど、食べごたえのあるサイズ。
対象が絶命したのを確認した上でもう5、6発と針を打ち込んで食べやすいようにその肉を溶かします。
1〜2分も待てばもう食べごろ。消化にも良いトロ〜リとしたペーストの出来上がり。早速彼は目の前のご馳走にむしゃぶりつきます。

もう一度言いますが、彼は決してバカではありません。むしろそこらの人間より頭がいいかもしれません。
主催者の話は聞いていました。人語を理解できるわけではありませんが、周囲のざわめき、血の臭い。ちゃあんと把握していました。
要するにここにはざっと百食を超えるご馳走が転がっているということです。きっちり理解できました。
警戒するのは『白コート』と『変な頭』だけ。その二人の人間にだって決して負ける気はしません。

ですが……ここで『よし、やってやるぞ』と思わないあたり、いかに彼の欲望が大きく、意思がそれを的確にサポートしているかがよくわかります。
要するに、腹が減れば食うし、眠くなれば寝る。ちょっといいメスが入れば襲う。それだけなのです。

彼が持つ強力な欲望は、ゲーム開始から一時間もしない内にその第一歩を踏み出してしまったのです。

***

5欲望 その4/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:17:20 ID:4IkOmoKg
いかがでしたか、欲望の行き着く先。そんなお話でした。
え?……ああ、そういえば自己紹介がまだだったか。
えーと、はじめまして――いや、『久しぶり』という挨拶はここですべきではないと思う。
俺の名前?そんなもんはどうだっていいだろ。そこを聞きに来たんじゃないでしょ?

俺は……そう、ただの語り部だよ。
コウイチ君、いや――広瀬じゃなくて麦刈の方の。そう、そんな感じで考えてくれれば。

で、もう一度言うけど。ただの語り部なんだ、主催者とも参加者とも関係はない。だがこのバトル・ロワイヤルには大きく関わっている。
君たちだってそうだろう?ま、このへんの話はまたいずれ、ね。

近いうちまた話をしよう。まあ俺の話を聞くかどうかも君たち次第さ。それじゃあ――




【東方良平 死亡】

6欲望 その5/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:19:39 ID:4IkOmoKg
【D‐8 杜王駅・改札前 / 1日目 深夜】

【虫喰い】
[スタンド]:『ラット』
[時間軸]:単行本35巻、『バックトラック』で岩陰に身を隠した後
[状態]:健康。食事中
[装備]:なし
[道具]:自分のデイパック(パンを食べた以外は手つかず不明支給品1〜2)、良平のデイパック(不明支給品残り0、他は手つかず)
[思考・状況]
1:食う……サーチ・アンド・デストロイ
2:寝る……適度に休む
3:子供を産む……縄張りをちょっと広げてみようかな

[備考]
杜王駅改札前にデイパックが2セット、放置されています。内容は以下のとおり
1:虫喰いの支給品:不明支給品1〜2、パン消費、その他は手つかず
2:良平の支給品:基本支給品一式、ドノヴァンのナイフ、不明支給品の残り数は0です。
まだ虫喰い本人(?)が近くにいるので所有している道具として表記しています。

東方良平の参加時間軸はアンジェロのニュースを見た直後からでした

7欲望 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:20:24 ID:4IkOmoKg
以上で投下終了です。
ズガン枠の使用、まさか自分がやることになるとは。
今回のタイトルはシンプルに二字熟語。そして『語り部』として『俺』が登場しています。
2ndでは似たSSを書いた際に『語り部=荒木』でしたが今回はその線を最初から否定していますので、文章表現の方法としてのみ受け取ってください。
1〜2日待って誤字脱字、矛盾等の指摘がなければ本スレに投下します。

8名無しさん:2011/11/26(土) 23:44:31 ID:EQhsDIkE
投下乙
感想は本投下時に
指摘は特にありません

9 ◆4eLeLFC2bQ:2011/11/27(日) 00:12:58 ID:CsJWgqVA
投下乙です
>>4
ちょっといいメスが「入れば」襲う→「いれば」
他は特になしです

自分も感想は本投下時に。早く書きたいなw

鎮魂歌スレについてですが、27日24時までは
 参戦キャラクターのいない外伝作品からも支給品を出せるが
 支給品が登場した作品内で使い切る(修復不可能まで破壊される)こと
という提案があったルールについて意見を鎮魂歌スレで募集しています

vv氏「3rd第一部スレ立ててね」→4e「OK!すぐやるぜ!」
鎮魂歌が埋まる前になってからでいいに決まってるじゃあないですかこのタコス
2nd鎮魂歌スレは残り500レスほど。埋めようがないですね…

で、結論として、
鎮魂歌スレで意見を募っている議題は「問題議論用スレ」に場所を移し
これから投下される方は3rdの本投下を鎮魂歌の方でしていただいてもいいでしょうか?
2nd鎮魂歌が埋まるまで3rd第一部は保守進行で
相変わらずのグダグダ。4th議論をするときの反面教師としてやってください…

10名無しさん:2011/11/27(日) 00:18:49 ID:003L81zQ
>>7
投下乙です
そのままでも問題は無いと思うけど、結局『俺』はロワに関係あるのかな無いのかな
荒木作品のキャラってわけじゃなく、作者の代弁って意味?

11 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/27(日) 18:37:30 ID:W1lyeZqc
誤字の指摘ありがとうございます。本投下時に修正します。

えーと、『俺』に付いてですが『作者の代弁』と捉えてください。
3rdでは『目撃者は語る』風なSSを書いていこうと思っておりますのでこの『俺』はいろんなところに出てくると思います。
で、『君たち』はロワの書き手、読み手のこと。どこかの誰かがこのジョジョロワを知って、その話を聴きに来た、そんなイメージです。
このようなSSを2ndで描いた(オインゴの話だったかな)時には「語ってた人は荒木でした、聞いてた人はテレンスでした」と繋いでいただいたのですが……
とりあえず今回はそういうのは無しだよ、という意味で>>7のように表記しました。

その他の修正点がないようでしたら22:00〜23:00頃に鎮魂歌スレに投下します。

12 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/11/27(日) 18:40:18 ID:gOWZ8Lhs
>>11 リロードしてみてよかったー 投下楽しみに待ってます

エンリコ・プッチ、ホット・パンツ 投下します。

投下初体験&作中で微弱かつトンチンカンだけどホット・パンツがD4Cについて考察しているのでこちらに。
内容で気になる点や誤字、脱字等ありましたらご指摘お願いします。

13 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/11/27(日) 18:41:03 ID:gOWZ8Lhs
目の前にあるのは見慣れたサンピエトロ大聖堂。
『聖なる遺体』をすべて集めるまでは、ヴァチカンには戻って来られないと思っていたのに…

あたしはどうしてこんなところにいるのかしら?
いえ、自問するまでもなくこれは『スタンド攻撃』に違いないッ!
ここは、そう、強いて言うなら『隣の世界』だ。

大聖堂に来るまでのことを整理しよう。
Dioと協力関係を結び、ヴァレンタイン大統領をあと一歩の所まで追いつめたこと、
ルーシー・スティールの身に変化が起きていたこと、
それに気付いた時あたしは列車から落ちて…
たぶんその時に大統領のスタンド能力でこちらの世界に来たのだろう。そうに違いない。
その後は薄暗いホールでスティール氏に趣味の悪い一人舞台を見せられ、気が付いたらここに…

つまりこちらの世界では『SBRレース』の代わりに『バトル・ロワイアル』が開催されている、と言えるはず。
そして先程Dioが言っていた通りならあたしたちは遺体ではなくダイアモンドを集めているんだわ。
ここが遺体の無い世界なら、早く元の世界に戻らなければいけない…

そうだ、モノとモノの間に挟まれば元の世界に戻る事ができるんじゃあないかしら。
早速試してみよう。地面に寝そべり、いつの間にか背負わされていたデイパックを身体の上に置いてみる。
…あたしの身体を地面とデイパックで挟む形になったが、何も起きない。

…それにしても、この大聖堂の前で寝転がるなんて初めてだわ。
夜風が少し生温かいが、背中に当たる石はひんやりして、緊張で火照った身体を冷ましてくれる。
懐かしいヴァチカンのニオイがする。辺りは静まりかえっている。
あたしはまたここに清い心で戻って来ることができるのかしら。

遺体を集めれば、すべて許して貰えるかも知れない……

弟を殺してしまった後では家族と一緒に暮らせないと思って修道女になったけれど、
あたしの『罪』について忘れたことなんて一度もなかった。今でも夢に見る。
森の中。二人。グリズリー。震え。心臓の鼓動。
弟。弟の温もり。弟の背中。弟の顔。弟の視線。弟の涙。弟の声。弟の悲鳴。
血のニオイ。落とした靴。逃げた。一人。父さん。母さん。ああ、神様……

駄目だわ、また罪の意識に押しつぶされそう…!
列車から落ちる直前もそうだった。ゲティスバーグでスタンド攻撃を受けた時もそうだった。

ああッ! なんでこんな時に…! 大聖堂から誰か出てくる…
どうしよう! 『クリーム・スターター』は手元にあるけれど…
今もし攻撃されたらあたしは…! 落ち着け、落ち着くんだッ!

一人の… 男かしら? ああッ! でも、良かった!
よく見たら心配することなんて何もなかったわ! あの人は大丈夫!
こんなところで出会えるなんて、神の御加護に感謝致します…



「あの…神父様でしょうか?」

14 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/11/27(日) 18:41:37 ID:gOWZ8Lhs




目の前の女は少し錯乱しているように見える。
訳のわからない『ゲーム』に巻き込まれたのだから無理もないだろう。
私だってあの空条承太郎が死んだことに驚いているのだから…

大聖堂から出てきた私に話しかけてきた、ホット・パンツと名乗るこの女は修道女らしい。
デイパックの他には、腰の辺りにスプレー缶のようなもの以外何も持っていないようだ。
年齢は20代くらいか。それにしても最近じゃああまり見ない服装だが…
名前も職業も嘘かも知れないし、それに何か隠し事をしているようにも見える。
しかしわざわざ記憶DISCを見る程でもなさろうだし、
DISCに命令を書き込むことなぞしなくてもコイツを利用することなど容易いだろう。
現に今、自分の身の上話で精一杯になっているじゃあないか。

『アメリカ』『SBRレース』『ヴァレンタイン大統領の不思議な力』『隣の世界』
…何を言っているのかよく分からないな。それに今の大統領はヴァレンタインじゃあないぞ。
アメリカからここに連れて来られた、と言うのなら私と同じだ。

『スティール氏』
…あの妙な演説をした男を知っているのか、後でまた詳しく聞いてみよう。一度話し出した女を止めるのは面倒だからな。

『ジャイロ・ツェペリ』『ジョニィ・ジョースター』
…コイツの知り合いか? 『ジョースター』と言う名字が気になったが、
あのジョースター家にそんな名前のヤツがいただろうか?

『Dio・ブランドー』
…DIO!? コイツDIOの知り合いなのかッ!? いや、後で話を聞こう。落ち着いて話を聞くんだ…
第一今すぐに私がDIOの親友だと打ち明ける義理なんてないのだから。
DIOの知り合いなら、手荒なマネは出来んかも知れないが、取るに足る人物なら利用するのも手だ。
この『ゲーム』の主催者はおそらくスタンド使い。そのスティーブン・スティールが何らかの理由で開始したものだろう。
殺し合いに乗るにしても、優勝を狙うにしても、この女が言うところの『元の世界』に戻るにしても
手駒は多ければ多い方が良いに決まっている。ところでコイツはスタンド使いなんだろうか?

ああ、身の上話が終わった途端に罪の告白か。ここは懺悔室でもないだろうに。
まあ、こんな所で『弟を殺した罪』について懺悔を聞くなんて思ってもいなかったな。

…いや、余計なことは考えないでおこう。今の私は懺悔を聞く神父だ。
迷える子羊の話が終わったら、まずは先程挙がった人物等について詳しく聞いてみるとしよう。



【C−1 サンピエトロ大聖堂 / 1日目・深夜】

【ホット・パンツ】
[スタンド]:『クリーム・スターター』
[時間軸]:SBR20巻 ラブトレインの能力で列車から落ちる直前
[状態]:健康、精神的に不安定
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
1.元の世界に戻り、遺体を集める


【エンリコ・プッチ】
[スタンド]:『ホワイト・スネイク』
[時間軸]:(あとの書き手の方にお任せします)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
1.ホット・パンツを利用する

15 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/11/27(日) 18:42:31 ID:gOWZ8Lhs
投下終了です タイトルは『修道女の告白』(の予定)

16名無しさん:2011/11/27(日) 19:15:18 ID:2cyd.bZI
投下乙です。
特に問題ないと思います。
初めてとは思えない素晴らしい出来だと思います。
感想は本投下後に……。

17名無しさん:2011/11/27(日) 19:58:00 ID:003L81zQ
投下乙です
また新しい書き手の登場だッ期待が募るぜ
>>14
>しかしわざわざ記憶DISCを見る程でもなさろうだし、
→しかしわざわざ記憶DISCを見る程でもなさそうだし、
かと思われます。

18 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/11/28(月) 20:45:41 ID:5gZiVQv.
ご指摘ありがとうございました 修正し次第投下します

19執筆 その1/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/29(火) 21:42:51 ID:zJC66w46
『事実は小説よりも奇なり』って言葉があるじゃないですか。
知らない人いないとは思いますが一応、どんな物語も事実の奇妙さには適わない、って意味の言葉ね。
で、俺の個人的な見解を付け加えるなら、そんな『事実』こそ最高のエンターテインメントだよ、って意味なんだと思います。

では……万人の興味を引く物語、これはどういう事だと思いますか?だって『物語は事実には適わない』んでしょ?

違うんですよ、それが。

それらの『スゲェ物語』ってのは作者が実際に体験した『現実』を物語にしてるから面白いんです。奇妙なんです。
例えば最近だと、女子高生が経営者の理念について書かれた本をもとに弱小野球部を甲子園に導く物語。
有名どころでいくなら、己の血液を賭けた狂気の麻雀対決の物語。驚異の戦闘民族が不思議な七つの宝玉を求めて戦う物語。
どれも間違いなく作者の体験談さ。まぁ、この世界で体験したのかどうか、と聞かれると返答に困っちゃうけども。
とにかく……俺の知る限りでもこのくらいはあるんだから実際はもっとあると思いますね。こういう物語、いや、体験談は。

さて、勘がいい人なら気づいたかな?事実を作品に生かそうとする漫画家がバトル・ロワイヤルに参加してること。
今回はその人が誰と出会い、どこに向かうかの話をしよう――

***

20執筆 その2/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/29(火) 21:44:59 ID:zJC66w46
私の名前は双葉千帆と言います。
職業は学生。通っているのはぶどうヶ丘学園の高等部。現在一年生です。
将来の夢……と言うと笑われそうだけど、小説家になりたいと思ってます。
自分の書いた作品が書店に並んで、遠く離れた家族がそれを手にとってくれる、かつて過ごした日常を思い出してくる。
それはとっても嬉しいなって――そう思って本気で小説家になりたいと思うようになりました。

私の家族は……まぁ、いろいろあって、今は父と二人で暮らしています。
それと、私には彼氏がいます。それは私が勝手に思っていることかも知れないけれど、大切な男性です。
その人に私の想いを言葉にして伝えることは出来ないままの状況でしたが、その想いを身体に乗せて彼とひとつになりました。
しばらくして、半ば冗談っぽく提案したら、彼はすんなりと婚約をオーケーしてくれました。

ある冬の……終業式の夜、私は彼を自宅に招き、父に紹介しました。
そして、晩ご飯を食べた彼を送った後、父は私が彼から貰ったばかりの首飾りを見て「暗闇だ」と言いました。
その後のことは、正直言ってよく覚えていません。父が全て話したんだったか、私が全て察したんだったか。
『彼』は『兄』で、『父』は『鬼』でした。
私は台所に走りました。シンクの脇に掛けてあった、さっきのシチューを作るのに使ったであろう包丁を手に取りました。
この人だけは許せない、家に火をつけてでも全てを終わらせてみせる、そう思って振り返った瞬間でした。

振り返って見た場所はリビングではありませんでした。
目の前に立っていたのはメガネをかけたお爺さんでした。
そして説明を聞いて……ライトがあたった男の人たちの首輪が爆発して。

お爺さんの掛け声がかかって、目の前が真っ白になったと思ったらある家の玄関前にいました。
標識を見て、地図を見ました。そこに書いてあった名前と、その家の主の顔はよく知っています。
コンビニに並んでいた単行本、何気なくめくったそのカバー裏に自分の顔写真を載せていて、漫画家にしては珍しいなと思ったから印象に残ってたんです。

失礼かなとは思いましたが家に上がらせてもらいました。
誰かが先に忍び込んでいるかもと思ってひと部屋ひと部屋、ドアを開けて調べていきました。最後に到着した場所がこの作業部屋です。
そこで露伴先生が漫画を書いていたんだなぁ、と思ったとき、私はひとつ決意をしました。

作品を書こう、と。

こんな場所に放り込まれる前の自分の境遇。
そして、まだ実感はないけど始まってしまったこの最悪の殺し合い。
そんな中、自分はどう動いて、誰と出会って、何を感じたか。どういう会話をして、どこでどういうケガを負ってしまったか。
もちろんそんな呑気なことをしていたら人殺しの犯人とか、そういう人にあっさりと刺されて死んでしまうと思います。
でも、やらずにはいられない。なにか『私が生きた証』を残したい。そう思いました。
きっと、蓮見先輩……いえ、琢馬兄さんのように頭がいい人なら生き残れるかもしれない。
私なんかはきっと生き残ることは出来ないだろうと自分のことながら、そう思います。だから作品はきっと未完成のままどこかに放り出されてしまうでしょう。
それでも、一秒でも長く、一文字でも多く、この『現実』を『物語』にしたいと強く心に誓いました。

***

21執筆 その3/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/29(火) 21:46:16 ID:zJC66w46
「なるほどね……実に面白い考え方だ」
ふう、と息をついて椅子に座り直すのは岸辺露伴その人である。
「いえ、そんなことは」
「そう謙遜するなよ。決して間違った行為だとは思わない。
 そこまで話してくれた君には『もうちょっと突っ込んだ取材』も……いや、今すぐにする必要はないかな。
 いいよ、不法侵入の件は勘弁してあげよう」
「あ、ありがとうございます」
なんの気まぐれか岸辺露伴、己のスタンドを行使せずに相手からの取材をやってのけたのだ。
もちろん千帆自身が全てを包み隠さず話してくれたというのもあるが。
「じゃあこうしよう。君が作品を書き上げることができたなら、僕がそれをコミカライズしてあげようじゃあないか。
 原作・双葉千帆、漫画・岸辺露伴って訳だ。よしよし、面白くなってきたぞ」
テンションが上がって話を続ける露伴を千帆は止めない。
彼女自身にも経験があるが、書き続けている、あるいは喋り続けているといった行為に夢中になっている時は時間を忘れられるし、何より邪魔されたくないものなのだ。

「……ふう、それじゃあ改めて君、うーん、千帆と呼んでいいかな?
 千帆はこういう境遇に遭った、だが行動の方針は決定した、そこで今後はどうする?
 簡単なようで難しい質問だぞ。作者は考えなきゃあいけない。『作品の主人公はこの状況でいったいどんな行動が可能だろうか?』とね……
 手元にある情報は主催者側から与えられた物品と、質問をしている岸辺露伴、そしてこの状況だ。
 これらのヒントから適切な答えを導き出せるかな?『LESSON1』だ。いい答えを期待しているよ」

***

22執筆 その4/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/29(火) 21:47:31 ID:zJC66w46
――と、こんな話だ。
千帆が書き、露伴が描く『事実をもとにした奇妙な物語』実に興味深い。きっと万人受けすること間違いなしだ。
是非読んでみたいもんだと思うね、俺は。読む用、保存用、布教用と3冊は買うだろうな。映画化されたら見に行きたいな、ハハ。
もっとも、その作品が千帆の言うとおり未完のまま終わってしまうのか、露伴の言うとおりコミカライズされるのか。
ここから先は、もう少し状況が動いてから話すことにしようか、それじゃ、また――

23執筆 その5/5(状態表) ◆yxYaCUyrzc:2011/11/29(火) 21:48:31 ID:zJC66w46
【E‐7・岸辺露伴の家、作業部屋・1日目 深夜】

【二人の作者】

【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:この現実を小説に書く
1:岸辺露伴の質問に答える
2:ゲームに乗る気は現在はない
3:積極的に行動して『ネタ』を集めたい
4:琢馬兄さんもこの場にいるのだろうか……?

【岸辺露伴】
[スタンド]:『ヘブンズ・ドアー』
[時間軸]:ハイウェイ・スターに「だが断る」と言った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:千帆が書いた作品を漫画に描く
1:双葉千帆の答えを待つ
2:ゲームに乗る気は現在はない
3:積極的に行動して『ネタ』を集めたい
4:承太郎さんが死んだ……?
※千帆よりは幾分冷静に状況を把握していると自負しています

24 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/29(火) 21:49:28 ID:zJC66w46
以上で投下終了です。
さて3rd2作目にして早くも裏話。
今回は『俺』の言葉が真っ先に浮かんで、そこにキャラと行動をくっつける手法で執筆しています。
欲望のライダー(オーズ、見てないんだけどね)も事実は小説より〜も。
この手法がいつまで続くかはわかりませんが、今後ともご贔屓に。
誤字脱字、設定の矛盾等のご指摘ありましたらご連絡ください。ではまた本投下の時に。

25名無しさん:2011/11/29(火) 22:01:39 ID:xL9Fzs8s
投下乙です。感想は本投下の時に。
指適というかいちゃもんというか、とにかく気になった点をひとつ。
露伴は自分の話に付き合ってくれる人は『君』『さん』で呼びそ―な気が。
まぁ、自分の感性なんで戯言程度に。

26名無しさん:2011/11/30(水) 02:32:18 ID:DQLg4yLM
投下乙です。
この手法だと毎回メタネタから始まることになりそうですねw
指摘はとくにありませんー

27彼は僕のパパじゃない ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 20:06:07 ID:iPAebm2k
 私の名前は『吉良吉影』。
 年齢33歳。
 自宅は杜王町東北部の別荘地帯にあり、結婚はしていない。
 仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。
『心の平穏』
 それこそ私が最も重視する『人生の価値観』だ。
 出世したい、金が欲しい、威張りたい…。勝ち負け、だの、刺激的な事件、だの、そんなのはテレビのドラマか映画の中の連中にでもやらせておけば良い。
 ただ日々安心して過ごし、悩みもなくくつろいで熟睡できること。
 それこそが、私の求めているものだ。
 しかし ――― どうした事だ?
 今、この状況!!
 爪を噛む。
 心の平穏とはほど遠いいこの状況に、私は闇雲に爪を噛む。
 おそらくは深夜。普段ならホットミルクを飲み、30分の軽いストッレッチを済ませて安眠している時間だろう。
 しかし、あの眼鏡の初老の男。
 それから起きた惨殺ショー。
 そして今こここの場所で、私が窮地に陥っているという事実!
 アーチ状で高い天井に、ステンドグラス。正面に掲げられた十字架。
 その暗闇のさらに奥。質素だが頑強な長椅子の陰に這い蹲るように隠れている事実に、歯噛みする。

 まずこの状況がいったいどういう事か、という問題もある。
 それは確かに最重要ではあるが、今当面の問題ではないのだ。
 問題は、『奴ら』だ。
 刺激的な事件なんてのは、テレビのドラマか映画の中の連中にでもやらせておけば良い。しかし、だ。
 今さっき見た『奴ら』…。
 そして今、この私を追い込もうとしている『奴ら』…。
 まったく、冗談じゃない……! 
 あんな化け物どもは、それこそ映画の中だけの存在じゃあないかっ…!?

 そう、化け物だ。
 ドブの底で腐った鼠の死骸のような鼻につく腐臭。
 人間を潰して再びこね合わせてたかの様な異形。
 なんというタイトルだったかな…? そう、『ナイトオブリビングデッド』だとか…『バタリアン』だとか…。
 つまり、『ゾンビ』…って奴だ。
 生ける屍! 何だっていうんだ!? そんな馬鹿げた奴らが、私を襲おうとしているというこの狂気の沙汰…!?

 勿論…私は無力なただのサラリーマンではない。
 どんな逆境、苦境に陥っても、それを文字通りに『消し飛ばせる』だけの特別な力がある。
 ただし…相手が人間であれば…だ。
 あいつらが本当に生ける屍、映画やゲームに出てくる様な『ゾンビ』だというのなら、私の『能力』が、どれほど効果的に使えるかが分からない。
 映画などで見る限り、あいつらはたいてい、腕や足をちょいと吹き飛ばしたくらいでは戦闘不能状態にはならない。
 痛みや恐怖で怯えたり逃げ回ったり、戦意喪失したりもしない。
 うう〜、だの、ああ〜、だの、ぼぐわぁ〜、だの喚いて、感情も知性もなく、ただひたすら人間を襲い続ける。
 勿論、ここにいる『奴ら』が、映画そのままの化け物かどうかは分からない。
 しかし、人間相手ではないという事それ自体が、私の不安を煽る。
 確実に…。
 そう、確実に、『奴ら』を吹き飛ばし、始末できるという状況。確証。
 それが欲しい。

28彼は僕のパパじゃない ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 20:06:55 ID:iPAebm2k
◆◆◆
 
『見ィつけたぞ〜〜…人間〜〜〜ッ!!』
 不意に上空から声がした。
 上空…いや、天井だ。
 声の主、異形の化け物は、腐敗した肉をつなぎ合わせて作った醜悪なオブジェの様に、礼拝堂の高い天井に貼り付いていた。
『血ィ〜をぉぉ〜〜〜…』
 破壊音と共に、横の壁が突き破られ、運河の水の匂いが鼻につく。
『ズビュルズビュルと啜ってェ〜〜〜〜!!』
 長椅子を吹き飛ばし、
『ズタズタのギッタギタに引き裂いてやるうぅうぅぅ〜〜〜!!』
 四方から濁った声がする。
 請われた壁の穴から入る月明かりに、くっきりと起立した4つの異形。

「…何だ、話せるのか…?」
 つい、私はそう口にしてしまった。
『むん?』
 化け物の一体が、そう怪訝そうな声を出す。
「話せる…それに今、私の言葉に『反応』をしたな…?
 という事はつまり、『知能』があるという事だ。そして疑問を感じるのならば、『感情』もある…んじゃないか…?」
『そ…それがどうした、人間…!?』
「…おい、まさかまさか、今ちょいビビらなかったか…? ゾンビのくせに…?
 人間をビビらせて喰い殺してやろうとしたのに、その相手がビビってないから、逆に戸惑い…ビビってる…?
 『まさかこいつ、何か切り札があるんじゃないか…?』 って考えて…?」
『何だとォ…、ふざけるなこの血袋がァァァァ〜〜〜』
 今度は、激高。
 間違いない。こいつら化け物だが、中身は人間に近い! 知能も感情もある!
 ならば…。

『俺の名はペイジ!』
『ジョーンズ』
『プラント』
『ボーンナム』

 おいおい、周りを取り囲んでいた化け物共が自己紹介までしてきたぞ?

『血管針攻撃!』

 一応頭部といえるカ所から、一斉に管を伸ばして突き刺そうとしてくる。
 なんだ、この程度の攻撃…。
 
 バシュッ!!

 腐臭をまき散らし、化け物共が消滅した。

29彼は僕のパパじゃない ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 20:08:01 ID:iPAebm2k
◆◆◆

「危ないところだったな…」
 長い黒髪に黒装束。しかもマントをひらひらとさせた様などこの国の民族衣装かも分からぬ服を着たその男が言う。
「…有り難う御座います、助かりました」
 一応はそう言う。ここは、無力な被害者を装うのが、妥当なところだろう。
 危ないところ…そう、たしかに危ないところだったかもしれない。
 私は先程、我がスタンド『キラークイーン』を発動させて、四体の化け物を消し飛ばしてやろうと、そう考えていたところなのだ。
 しかし、そこに現れた乱入者。
 ストレイツォと名乗った優男が、ロープを投げて奴らを絡めとると、ほとばしる黄金の輝きと共に消し飛んだのだ。あの化け物どもが。
 危ない、のは、奴ら、ではなかった。
 この男。この男に、私が奴らを消し飛ばす現場を見られていたかも知れないという、その事だ。
 
 実際に、あの化け物どもはたいした脅威ではなかった。今ははっきり分かる。
 私は直接対峙する危険性や、奴らの性質や能力の得体の知れ無さを考えて、キラークイーン第二の爆弾、熱源感知による自動追尾型爆弾シアーハートアタックを放って隠れていたのだが、爆弾は奴らに反応せず、逆に奴らに私の居場所を嗅ぎつけられてしまった。
 その事から、奴らは正しく死人の如く、体温を持っていないことが分かったのだが、同時に話しかけ会話をしたことから、化け物ではあるが中身は人間と大差ないことも分かった。
 感情がある。知能がある。ならば、駆け引きも使える。
 即座にシアーハートアタックを戻して、キラークイーンがいつでも新しい爆弾を製造できる状態にする。
 爆弾一発で消し飛ばせなくとも、その威力を見れば奴らにも恐怖や隙が出来る。
 つまり、ただの人間を消すときと、要領は変わらないのだ。

 ストレイツォ曰く、彼は化け物退治の専門家、なのだという。
 山奥で長年修行を積み、心身を鍛え上げ、波紋法と呼ばれる特殊な呼吸法を会得した彼は、その波紋エネルギーにより、亡者や吸血鬼を消滅させる事が出来るという。
 吸血鬼!
 なんとも馬鹿げた話、と、ここに連れてこられる前の私なら、一笑に付しただろう。
 しかし今なら分かる。いや、実際に亡者に襲われていたのだから、分かるとか信じるとかいう話ではない。
 とにかく、亡者は居た。人の血を啜る、動く死体。異常な身体能力や、血管を伸ばして攻撃するという奇妙な技を使うが、知能も感情もある。
 ネタが割れればなんということはない。又襲われたとしても、難なく対処できるだろう。
 だが ―――。

「吉良…と言ったね?」
「…何か?」
 聖堂の片隅。掲げられた十字架が月明かりを微かに反射するその広間で、ストレイツォが改めて聞いてくる。
「あの壇上で演説をしていた眼鏡の男に見覚えは?」
「いや…皆目」
 実際、何も分からない。
「…私もだ。
 しかし、予想できることはある」
 少しばかり悩ましげに眉根を顰め、ストレイツォが続ける。
「私はここに来る直前、ウィル・A・ツェペリという古い友人に請われ、同じく波紋戦士であるダイアー、老師トンペティと共に、ある男を倒そうと旅立っていた。
 男の名はディオ・ブランドー。
 石仮面の力を使い、さっき倒した亡者たちを生み出す邪悪の化身、吸血鬼となった男だ」
 波紋戦士! 石仮面! 亡者たちを生み出す邪悪の化身!
 普段なら当然笑い飛ばす類の言葉の数々。
「しかし目的地に着く前に、こんな状況に陥った。
 どういう手を使ったのか…我らが来るのを察知して、ディオが罠を貼ったに違いない…。
 あの眼鏡の男も、亡者には見えなかったが、それでもディオの手下の1人と見て良い。
 多くの人間を巻き込み、混乱に落とし込んで、我らを分断して倒そうというつもりなのだろう」
 まったく、ハリウッド映画ばりの妄想だ。
 言っていること全てが子供じみてばかばかしい。
 と、いつもなら相手にしない。こんな、漫画か映画の見過ぎでトチ狂った様なことを言うイカレ男なんか、無視するのが一番だ。
 しかしこの男に波紋法というパワーがあるのも、亡者が動き回っているのも事実。
 ならばどこまで真実でどこまでが妄想かなど分かりようがないし…この言葉に真実が多く含まれている可能性だって低くは無い。
 勿論他の可能性もある。
 例えばさっきの亡者とやらが、実はこのストレイツォという男のスタンドか、或いはスタンド能力で作られた化け物で、私を騙すための芝居であった、という様な可能性も、だ。
 あるにはあるが……その推測は、まだ保留でよい可能性の一つだろう。

30彼は僕のパパじゃない ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 20:08:35 ID:iPAebm2k
「私はまず、彼らと合流したい。
 ダイアー、老師、ツェペリ。…そして、まだ会ったことはないが、ツェペリの新しい弟子だという、ジョナサン・ジョースターという青年に」 
 波紋戦士。つまり先程の化け物を消滅させた波紋エネルギーを操り、そして山奥に篭もって修行したという体術を操る筋肉男たちとの合流。
「亡者やディオの手下がどこに居るか分からない以上、君を見捨てることは波紋戦士の誇りに賭けて出来ない。
 一緒に来るかね? 無理にとは言わないが…」
「…分かった、同行させてもらうよ」
 
 
 さて、私の性質、目的は、『平穏に暮らしたい』…。ただそれだけだ。
 殺し合いをしろだとか、吸血鬼退治だとか、そんな馬鹿げた騒ぎは御免被りたいのが正直なところ。
 しかし現状、それはどうしようもなく叶わないことくらい、私にも分かる。誰にだって分かる。
 だとしたらどうするか…?
 まずとにかく、目立たぬように、自ら強者と思っている正義漢についてまわり、面倒ごとをそいつに全部引き受けて貰う。
 これは、そんなに悪くはない指針だろう。
 いざとなれば、波紋戦士だろうと亡者だろうと、私の『キラークイーン』を使えば簡単に消し去れる。
 出来るが、極力そんな真似はしたくない。自分の手の内がバレるかもしれない、そんな真似は。
 ストレイツォについていって、こいつやこいつの仲間が、厄介な化け物や吸血鬼やらを退治してまわり、最期に残った者を纏めて爆発してやれば、言われたとおり「殺し合って最後の一人になる」なんて事も、不可能じゃないだろう。
 ただ、このストレイツォ。やはり一つ考え違いをしている。
 これを仕組んだのは、吸血鬼なんかじゃない。
 十中八九、スタンド使いだ。
 あの眼鏡の男か? それとも別の誰かか?
 それは分からないが、何らかのスタンド能力を使って、私や化け物や、波紋戦士とやらを集めてきているのだろう。
 だとしたら ――― この会場の中には、私以外のスタンド使いも、紛れているかもしれない。
 しかし、だ。
 今まできっちりと証拠を「消し飛ばして」きた私をスタンド使いだと知る者は、父以外に誰も居ない。
 勿論、杜王町で何人もの人間を、密かに殺めてきた殺人鬼だという事を知る者も居ない。
 その点で言えばいつも通りに目立たぬようにしていれば、それでいいのだ。
 気がかりなのは ――― 私がここに連れてこられる前に買ったサンジェルマンのサンドイッチ。
 その袋の中に入れていた『彼女』――― 美しい手首の持ち主だったが、そろそろ匂いがきつくなり始めていた彼女 ――― の指に、私がプレゼントした指輪が填められている、という事だ。
 あれはどこにある? 誰かがあれを手に入れていたら―――なんとかして始末しなければならないし ――― 眼鏡の男か、私たちを浚ったスタンド使いが持っているというのなら、やはり当然、始末しなければならない。
 
 ◆◆◆

 殺人鬼は密かに笑う。
 この会場の中に、彼が連れてこられたより未来の時間において、彼と戦い、彼を打ち破った『黄金の精神』を持った男達が居るという事実を知らずに。

31彼は僕のパパじゃない ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 20:08:59 ID:iPAebm2k
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【サンジョルジョマジョーレ教会(D-2)・1日目深夜】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラークイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:静かに暮らしたい
1.些か警戒をしつつ、無力な一般人としてストレイツォについて行く。
2.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。

※外見は『川尻浩作』ではなく、初登場時の『吉良吉影』のままです。
 また、4部主要キャラのうち、杉本玲美以外と面識はありません。

【ストレイツォ】
[スタンド]: なし
[時間軸]:JC4巻、ダイアー、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前
[状態]: 健康
[装備]: マウンテン・ティムの投げ縄@Part7 STEEL BALL RUN
[道具]: 基本支給品、不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:対主催(吸血鬼ディオの打破)
1.ダイアー、ツェペリ、ジョナサン、トンペティ師等と合流する。
2.吉良吉影等、無力な一般人達を守る。



※ペイジ、ジョーンズ、プラント、ボーンナムの支給品と首輪は、いくつかは壊れた壁から飛び散って運河に落ち、
いくつかは壊れ、いくつかはサンジョルジョマジョーレ教会の床などに転がっているかもしれませんが、吉良、
ストレイツォ共にそれらを確認しては居ません。

32 ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 20:23:19 ID:iPAebm2k
 以上、

 【吉良吉影】 【ストレイツォ】


 のSSでございます。
 予約スレの方でうかつにも見落としていたため、
 (ペイジ)(ジョーンズ)(プラント)(ボーンナム)
 の該当部分に関しては、本投下するとした場合別のキャラを予約し直して差し替える、
という前提で、ひとまず置きまして。

 問題点、は、吉良の参戦時期です。
 吉良の初登場回を参戦時期設定した場合、彼はまだ承太郎達に追いつめられ、
エステ・シンデレラで通りすがりの川尻浩作の顔を手に入れ成り代わっていません。
 つまり、『時は止められても』 において、川尻しのぶが「見た」と言っている、夫、
川尻浩作の姿は、少なくともこの吉良ではない、という事になります。
 
 この点に関して、「それはどーかと」「いや、やりよーはあるしOKじやね?」
 等々、ご意見を頂ければ、ということでの、仮投下で御座います。

 一応、僕は僕なりに、この展開を踏まえた上でのネタは、ちょっと考えては居ます。

33名無しさん:2011/12/01(木) 21:38:57 ID:wVtr7Gnw
血管針四兄弟人気すぎワロタww
は置いておいて、
川尻吉良についてですが、「やりよーはあるしOKじゃね?」という意見です。
◆ZAZEN/pHx2氏も特に展開を強制しようという意図はないと思いますし、
最悪見間違いとかでもいいんじゃないかなーとか言ってみたりして

34名無しさん:2011/12/01(木) 23:29:23 ID:3KdOZxPQ
川尻吉良については問題ないと思います
血管針の代役はワンチェンかドゥービーが適任?ていうか吸血鬼人気すぎるだろw

吉良について指摘です。その時期の吉良なら、『スタンド』『スタンド使い』等の知識はほぼありません。
自分以外のスタンド使いと出会ったのは重ちーが初めて、スタンドという言葉を知るのもその時です。

35 ◆SBR/4PqNrM:2011/12/01(木) 23:55:06 ID:iPAebm2k
 ご意見有り難う御座います。
 吉良参戦時期についてはこのまま、血管針四兄弟の部分の差し替えと、 >>34 氏ご指摘のスタンド関連の部分など、
いくつかを修正してから、改めて追加予約&投下させていただこうと思います。

36 ◆Osx3JMqswI:2011/12/03(土) 03:41:18 ID:D.boBzmg

ファニー・ヴァレンタイン。
第23代アメリカ合衆国大統領にして、スティール・ボール・ランの影の支配者である。
『聖人の遺体』を集めてアメリカ合衆国を繁栄させる、という目的で『遺体の一部』を持つ人間を付け狙っていた。

奴自身、スタンド使いである。
スタンド名は『D4C』。
無数の平行世界を作り出し、逃走はもちろん、平行世界の俺と『基本世界』の俺が出会えば消滅するという一撃必殺のスタンド能力だ。

もちろん、俺、『Dio』ことディエゴ・ブランドーも『左眼球』を持っていたおかげで奴に狙われることになってしまった。
だが、ホット・パンツとの共闘の末に、奴は列車の中から突き落とされて死んだ。確かに俺は殺したはずだ。
その時に俺は真っ二つになって死んだはずだったんだが……
見ての通り、俺は生きている。完全な健康体だ。

どうやって俺の体を治したかは知らないが、この世界自体は大統領、そして『D4C』の能力に違いない。
奴が俺を平行世界、それもかなり遠い世界に引きずりこんだらしい。
ということは、ホット・パンツ、ジャイロ・ツェペリ、そしてジョニィ・ジョースターもいる可能性も高いだろう。

俺は『基本世界』に帰ってレースに優勝しなければならない。
ジョニィ達を見つけ、いや、あの会場にいた人間達の中にもスティーブン・スティールを殺したいと思う奴はいるだろう。
あの見せしめ3人は、俺は知らないがかなり影響力の有る人間なのだろう。
そいつらを利用し、大統領の居場所を暴く。
きっとこれがラストチャンスだ。
さて、俺も行動を始めるか……


  ★

37 ◆Osx3JMqswI:2011/12/03(土) 03:42:22 ID:D.boBzmg

「一体ここはどこなんだよッ!クソッ!訳わかんねーよ!クソッ!クソッ!」

俺はヴェネツィアに向かってたはずなのによぉーッ!
向かってたはずだっつーのに一体ここはどこなんだぁ!?
全く何もかもが訳が分からねぇ!
…異常事態だ!……クソッ!

「……クソッ。ムカつくが仕方ねぇ……。地形把握だけはしておくか……。」

『ホワイト・アルバム』を使う案もあったのだが、肝心の時に解除されたのでは意味がないと考えた彼は、歩く、という選択肢を取った。
もちろん、冷静になる意味も込めてである。

彼はこのような閑静な住宅街は見たことも無かった。
それもそのはずである。
ここは、日本のM県S市杜
王町、つまり、彼が普通に生活する上で来る事などあるはずも無い『極東』であるのだから。

彼は1つの気配を感じ取った。
暗殺者の危険察知は時に恐ろしい物である。

「ん?後ろを付いてきてるのは誰だ?止まれ!……止まれっつってんだよボケが!」

彼がここまで自信に満ち溢れている事には理由がある。
彼は、自身のスタンド、『ホワイト・アルバム』の防御性能と移動性能の高さを把握しているのだ。
暗殺者たる者、自身のスタンドの性能くらいは把握しておかなければならない、というのは『その業界』では常識である。
だが、それは驕りではない。
『ホワイト・アルバム』の耐久力、持続力、そういったマイナスの面まで全て把握している事が彼の自信へと繋がっている。

「勝手に尾行したのはすまない。俺は君と話がしたいんだ。」
「あぁ!?コソコソ尾行してきて『話がしたい』!?虫が良すぎんだろーがよぉ!」
「すまないと言っているだろう。唐突だが、俺に協力して欲しい。君からは人を殺してきている雰囲気がするんだ。人を1人殺すのを手伝って欲しい。」
「人殺しねぇ。俺に俺にメリットさえあれば、考えてやらなくもねぇな。」


  ★

38 ◆Osx3JMqswI:2011/12/03(土) 03:43:19 ID:D.boBzmg

元々、果たすべき目標が無かった彼に対して、この協力要請は良い道楽になる。
彼の心の内は決まっていた。

「君へのメリットか。難しいな。」
「ん?何だあの壁はよぉ!おい!お前!その話はいったん保留だ!走るぞボケ!」
「ん?何を言っているんだ?」
「良いから走るんだよ!」

やはり、彼の暗殺者としての危険察知は正しかった。

“ガオン”

「クソッ!スタンド攻撃だ!周りの民家が抉られていく!」
「君のスタンド能力は走れるかい?」
「あぁ!?当たり前だボケが!」
「それなら構わない。」
「こいつから逃げる!」
「そのために協力する。」
「「利害は一致した」」

「ホワイト・アルバムッ!」
「スケアリー・モンスターズッ!」

“ガオン” “ガオン” “ガオン”

走った。
辿り着いた先は……

……ドレス研究所

「そういえば君の名前は?」
「ギアッチョだ。お前は?」
「『Dio』だ。よろしく。」

『Dio』が殺そうとしている人物の強大さをギアッチョはまだ知らない……
町を抉り取っていった敵の崇拝する人物が、自分と同じ名を冠する者だという事を『Dio』はまだ知らない……



【C-7・杜王町路地・1日目 深夜】



【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:???
[状態]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考・状況]
基本的思考:???



【B-6・ドレス研究所・1日目 深夜】



【ギアッチョ】
[スタンド]:『ホワイト・アルバム』
[時間軸]:ヴェネツィアに向かっている途中
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:Dioを手伝う
1:何なんだよあの敵はよぉッ!クソッ!クソッ!
2:Dioは信用してもいいかも…



【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:大統領を殺す
1:あの敵には会いたくないな
2:ギアッチョは信用してもいいかもしれない
3:ギアッチョのスタンドェ……

39 ◆Osx3JMqswI:2011/12/03(土) 03:46:55 ID:D.boBzmg
やはり勝手がわからない……
ご指摘どんどんお願いします

40 ◆Osx3JMqswI:2011/12/03(土) 11:57:30 ID:tGWcdTjU
すみません
追加です

【備考】
ギアッチョはファニー・ヴァレンタイン大統領の容姿とスタンドを知りました。
ディエゴ・ブランドーは暗殺チーム、ミスタ、ジョルノの容姿とスタンドを知りました。

あと、状態に疲労小を追加したいと思います

41名無しさん:2011/12/03(土) 13:16:47 ID:h4tBdQ7o
内容は全然問題ないと思う
ただ、「何だあの壁は?」について、壁がガオンされているのは脳内補完できますが、
実際に壁に穴が開いていることを描写したほうが、読者に状況が分かりやすくなると思います
別にそのままでも勢いで読めるので参考程度に。
逆に文脈で判断できなかったのは、ディエゴの状態表の思考3です
ギアッチョのスタンドに対してどのような気持ちを持っているのか、明記するのが無難かと思われます

氏の真摯な姿勢には敬意を払えます
日をあけて見直してみると書き直した方が良い所等が見つかったりするので、仮投下したあと数日たってから本投下でも良いと思いますよ

42 ◆Osx3JMqswI:2011/12/03(土) 13:22:36 ID:tGWcdTjU
ありがとうございます
やはり難しいですね
改良してきます

43名無しさん:2011/12/03(土) 14:56:48 ID:uh3yBQcg
>>36
ディエゴの考えてることの転換が早すぎ。
・主催(のふりをしている)スティールと大統領の間には確執がある
・(大統領と殺しあっていたのに)体が治っている
・ディエゴは大統領を殺したと思っている
・一度に大勢が巻き込まれた(D4Cの能力とは矛盾)
→実際、黒幕は大統領だけどそれに気づけるほどの知識がディエゴにそろっているとは思えない

状態表と備考に関して
二人とも簡単に他人を信用する性格とはいいがたいです
どのような会話を経て信用するに至ったか、
(相手の頭の回転が速いところ、とか、的確な表現をするところ、とか、なんでもいいんです)
どの程度までの情報を伝えたのか、その辺りの描写を増やした方がいいと思います
ディエゴの説明を考えると「大統領を殺し俺も死んだと思っていたが、殺し合いに巻き込まれていて、黒幕は殺したはずの大統領なんだ」です
ギアッチョにしてみたらつっこみどころ満載でしょw
ギアッチョも仲間である暗殺チームの情報をどのように伝えたのでしょう?
「こういう見た目の奴は仲間だから殺さないでくれ」?
ミスタとジョルノについても「即、殺していい」と「敵だから警戒するように」では情報を伝えるにしてもディエゴの受け取り方が変わります。
ジョルノは見せしめで死んでるはずだし

詳細を省いて後続の方に幅を持たせるのも大事ですが、
「なぜそう考えるに至ったか」(知識の幅、信条、他人の影響等)
これだけはきっちり描写した方がいいと思います

44名無しさん:2011/12/03(土) 15:13:29 ID:VefCSE22
やはり批評スレも立てましょうか
長くなるかもしれないですし

氏の作品を通して感じたのは、少し会話文のみでのストーリーの進行が多すぎる気がします
もう少し地の文を追加して、描写に幅を持たせては?
三人称の客観視点でも、一人称の主観してんでもいいので

45名無しさん:2011/12/03(土) 19:34:23 ID:0WFpFWyE
「ブッ立てる」と心の中で思ったならッ!
そのときスデにスレ立ては終わっているんだッ!

……ということで作品批評スレ立ち上げました。不備がありましたらご意見ください

46名無しさん:2011/12/03(土) 19:35:01 ID:0WFpFWyE
「ブッ立てる」と心の中で思ったならッ!
そのときスデにスレ立ては終わっているんだッ!

……ということで作品批評スレ立ち上げました。不備がありましたらご意見ください

47演者 その1 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/04(日) 23:05:41 ID:eRj/T2yc
『自作自演』って言葉があるじゃない?

アレって、なぜか知らないけど悪いイメージで使われることが多いんだよね。
あまりやりすぎると、『えっやっぱりこれって自演合戦だったの?』なんて言われるし。あ、心当たりあるなら気を付けてよ。
でそれが……あ〜、いやいやその話じゃなくて。なぜ自作自演が悪いイメージになってしまうのか?って事だ。話が脱線するところだった。
多くの人が『そうだよ悪いイメージだよ』と言うと思うけども、この解釈は間違ってると思うんだよ俺は。
だってホラ、生物界を見てみたらどうよ?石に、木の枝に、あるいは死体となった自分を演じて敵を欺く。そういう生物たくさん居るでしょ?彼らは悪い?
最近なんかはこの『自作自演』を名前に入れた格闘家も……あぁ、今はプロレスラーだっけ、いるじゃん。彼に非はあると思う?いや八百長とかじゃなくて……ないでしょ?

で、まあ何が言いたいかってぇと、つまり『適材適所』だと思うのよ、俺に言わせりゃね。
さっき話した……あ、枝に擬態の方。アレなんかは進化の結果そうなったんだから一生をかけて自作自演するんだろ。やめろって言ったってやめられないし、やめたらすぐに死んじゃうだろうね。
で、まあ『適材適所』って言えばみんなも分かるでしょ、スタンドの強い弱いの概念。アレとまったく同じさ。そんなもんは無いって事。
生き残るために、勝つために必要なら迷わず自作自演するべきだ。時にはそれが最強にもなりうる。もちろん使いどころが悪ければ最弱の一手だけども。
あ……この『最強』の話もまたいずれするつもりだから。とにかく今回は『自作自演』についての話をしよう――

***

「ハァーッ……ハァッ……」
肩で息をする少年の名はジョルノ・ジョバァーナという。
なぜ彼はバトル・ロワイヤルが始まって間もない内からここまで疲弊しているのか?
答えは数十分前に遡る。と言っても、このゲームに巻き込まれ、且つそれが開始される前……という奇妙な時間が原因だ。

スティーブン・スティールがゲームを開催したあの場において、幸か不幸かジョルノは集団のほぼ先頭にいた。
悪魔の所業と言っても過言ではない彼のゲーム説明を聞きながらいつでもスタンドを叩き込めるように構えていたジョルノの目が一瞬にして驚愕の色に染まる。
スポットライトの下、目の前に現れたのは間違いなく自分自身であった。頭脳ではなく、体感で理解できた……理解してしまった。
そしてその直後、ボスッともボムッとも言えぬ音で自分の身体がまるでスポンジのようにちぎれ始めたのだ。吹っ飛んだ身体の部品は塵となって消えていった。
『目の前の』ジョルノに変化は無いように見えるが背中の部分からちぎれているのかも知れない。一方自分の方は足元から。たまらず崩れ落ち、スタンドも出せなくなる。
説明を聞き終え、全く違う場所に飛ばされるまで傷を負いっぱなしでいたにも関わらず意識を失わなかったあたりは流石ジョルノだと言ったところか。

さて、集団の先頭にいたことを不幸とするなら、ジョルノに存在した幸運はこのあとに起こる。それでプラスマイナスゼロとでも言いたいのだろうか、主催者は。
まずは這いつくばっているよりは遥かに楽な姿勢で飛ばされたこと。そして、コップにスプーン。その気になればテーブルまで、ありとあらゆる物品が――つまり身体の部品の元が大量にある場所に飛ばされたこと。
彼はあるカフェの――地図で言うならばB‐2、ダービーズカフェの――座席、その一つに飛ばされていた。
自分の身に起きた状況はどうあれ、現在はこの幸運を生かさない同理はない。早速治療を開始する。まずは足から。次いで血液の補充、腕に肩。切り飛ばされた身体はすっかり元通り。
とはいえ、いきなり大量の怪我を負い、その状態でスタンドを行使したジョルノは疲弊した……と、こういった経緯があったのだ。

「ハァーッ……ふう……」
「よう、ケガはもういいのか?」

48演者 その2 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/04(日) 23:08:21 ID:eRj/T2yc
呼吸が落ち着いてきた頃、不意に背後から声をかけられた。治療に専念していたから周囲の警戒を怠っていた、なんてのは言い訳にしかならない。
命の危険を感じたが、相手が声をかけてきたことから視界に入った相手を無差別に殺す人間ではないことがわかる。そして――
「その声は、ミスタですか?」
「おっと、振り向くな。いくつか質問に答えてもらってからだ」
「わかりました……質問をどうぞ」
声の主は彼の同僚、今では部下のグイード・ミスタに他ならなかったが、彼は即在の再会を拒否。いくつかの尋問を要求してきた。
当然といえば当然の権利。生殺与奪は自分にあるという有利な立場をキープしたままの質問が始まる。気付けば彼のスタンドが周囲に浮かんでいるのも確認できた。

「あまり視線を動かすな。さて質問その1。お前の名前とスタンド能力は」
「ジョルノ・ジョバァーナ。ゴールド・エクスペリエンスと言う名のスタンドを持っています。能力は生命を生み出すこと」
「動きはゆっくりだ。その位置で出してみせろ――スカートをまくるようにゆっくりとな」
「はい、『ゴールド・E』……どうですか」
「よし、ひっこめろ」
スタンドの出し入れに疲労は感じなかった。つまり疲弊したのは単純に体調の問題であり、精神面でも問題はないと自己分析するジョルノ。
その冷静さをミスタが確認できたのかどうかは定かではないが、彼は即座に次の質問に移る。

「では質問その2。さっきお前は俺の名をミスタだと言ったが、その理由は」
「当てずっぽうではない、という証明ですか」
「余計なことはいいんだ、さっさと答えな」
「イタリアのギャング組織・パッショーネに所属するブローノ・ブチャラティ、僕はそのチームの新入りとして入団しました。
 その際にブチャラティに紹介されたチームの仲間、その中にグイード・ミスタがいました。その声を覚えています」
その後自分達がどうなったかを説明するのは省いた。今話すべきでは無い、と感じたのは尋問されているからというのもあるし、ゆっくり話す機会など後でいくらでも設けられるからだ。

「なるほど、確かに俺のことを知っているジョルノだと分かった――おいまだ振り向くな。
 質問その3。ゲーム開催とかいうあの場で死んだ3人のうち、金髪だったアイツは誰だ。一緒に死んだ二人の男との関係は」
「まず、帽子とリーゼントの男について。あの二人の事は僕も知りません。
 そして金髪。あれは……ジョルノ・ジョバァーナです。理由は分かりませんが僕がもう一人いた、ということになります。
 鏡とか変身とか、そういう能力やトリックではないと思います」
「そこまで聞いてねえ。というか今から聞く……なぜあれが自分自身だと思う」
重要な質問である。自分に分かりうる、あるいは感じた全てを話さなければならないし、かと言って推測ばかりで話を進めるとそれが間違いだったときに問題になる。
まして相手はミスタだ。判断力や行動力はあれどお世辞にも頭が切れるとは言いにくい。ジョルノは慎重に言葉を選ぶ。
「僕が僕を――死んだほうの僕を――目で見た瞬間に『あれは僕だ』と感じました。頭で、というよりは心で。
 そしてその瞬間、僕の身体がスポンジケーキの様にちぎれ始めたんです。向こうの僕に異変があったかは確認できませんでしたが。
 これは推測ですが、例えば時間を行き来できるスタンド使いが『未来の、あるいは過去の僕』を連れてきた場合『今の僕』と出会ったらその存在が吹っ飛んでしまうとか――そういった理由で身体がちぎれたんだと思います。」
「なるほど。それで今までスタンド使って治療をしてたって訳か。よし振り向け」
振り向いた先にいたのは間違いなくジョルノの知っているミスタだった。その指の間にはカフェから拝借したであろう皿が何枚か挟まっている。銃は持っていなかった。

「ふむ……正面のツラもジョルノだな。では最後の質問――ジョルノ・ジョバァーナならこの状況、どうするッ!?」
言うが早いか、彼は持っていた皿をブン投げる。スタンドを行使して対処してみせろということか。
皿の起動は様々。もともと投げるために作られたものではないし、ミスタに皿投げ選手権優勝者というスキルがある訳でもない。
だが、その起動を正確にスタンド・セックスピストルズが補佐する。狙いも威力も申し分ない凶器の食器がここに完成した。

「ジョルノならッ!」
「こんな皿全部ッ!」
「蛙とか花とかッ!」
「そういう物にッ!」
「変えれるだろッ!」
「やってみろよッ!」

「「「「「「イイイイィィィィィーーーーーーーハアァァァッッッ!!!」」」」」」

49演者 その3 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/04(日) 23:10:13 ID:eRj/T2yc
一斉に蹴り出された皿が六枚。本体のミスタはジョルノの挙動を見逃すものかと凝視して姿勢を崩さない。

一枚目、右拳で叩き落とす。床に小さな花が顔を出す。

二枚目、振り抜いた右腕を戻す勢いで裏拳。壁に叩きつけられたカエルがゲッと小さい悲鳴を上げる。

三枚目、左手で払いのける。空中でハエに変化したそれはかつて置かれていた棚に到達すると元の皿に戻った。

四枚目、腰を捻った勢いを乗せ右手でひっぱたく。皿が『イテッ!』と呻き声を上げる――え、声を?

慌てて五枚目と六枚目の皿は左右の手でそれぞれ受け止めた。ミスタの方も驚きの色を隠せない。
「これも……なにかのテストですか、ミスタ?」
「い、いや――俺はテーブルにあった皿をひっつかんで投げただけだが……」
「スぅイぃマぁセぇンンン……そぉれぇはァァァワぁタぁシぃぃでぇ……すゥゥ」
ゆっくりと……皿が喋り出す。この症状はゴールド・エクスペリエンスの能力によって感覚が暴走しているためだ。ジョルノが本物だという証明でもある、がそれどころではない。
ギャングの二人はその様子を黙って見守る。もちろんすぐに攻撃できる体勢で。やがて皿に手が生え足が伸び――ひとりの人間が完成した。殺気を感じたのか、両手を高く上げたまま話し始める。

「ハァハァ……失礼しました。私の名前はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。
 能力……あなたがたはスタンドと呼んでいましたがそれで良いのでしょうか、物品に変身することができます。
 私はここで隠れて知り合いの方を待っていようと思ったのですが……そちらの方に投げられてしまって」

それからはジョルノとミスタがミキタカに対し先と同じような尋問をすることになったのは言うまでもない。
待っていた仲間の名前、能力の詳細、この場において自分がどう行動するつもりなのか。そして――

「で、お前は結局なんなんだよ」
「ですから……何度も言ってる通り私は宇宙人なんですって」
「まあまあ。とにかく全員の疑いがもう少しハッキリと晴れるまでじっくり情報交換しましょう。尋問というよりは自己紹介ですね。
 そういえば皆さん支給品はどうでしたか?僕はまだ見てないんですが――」

***

自作自演の話、どうだった?とは言っても『自作自演』と言い切ってしまうと少々語弊がありそうだけど。
主催者によって呼び出され、自分が役者ではないかと疑われたジョルノ。
物品を演じて、あるいは自分が宇宙人だと演じて――ん、こっちは本当か?――突如現れたミキタカ。
それを混乱しながら見てきたミスタ。
どの人間もとった行動に間違いはないと思う。このうち誰かが抜けた二人でのやりとりだったらもう少し話し合いがスムーズだっただろうな、そんな程度の話だろう。
もちろん、『自演』をしていくのはこの三人、この一瞬だけに限った話じゃないだろう。それはまたその時にね、それじゃ――

50演者 その4(状態表) ◆yxYaCUyrzc:2011/12/04(日) 23:10:43 ID:eRj/T2yc
【B‐2 ダービーズカフェ店内 / 1日目 深夜】


【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(ランダム支給品1〜2、確認済、未開封)
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない、ただし未確定
1:目の前の二人(ジョルノ・ミスタ)との自己紹介・情報交換をする
2:仗助サンが……死んだ?

[備考]
基本的思考『ただし未確定』とは、ゲームには乗らないけど明確な行動方針(行き先など)を決めていない、という意味です

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(ランダム支給品1〜2、確認済、未開封)
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない、ただし未確定
1:目の前の二人(ミキタカ・ミスタ)との自己紹介・情報交換をする
2:死んでいった自分は何者なんだ?

[備考]
基本的思考『ただし未確定』とは、ゲームには乗らないけど明確な行動方針(行き先など)を決めていない、という意味です

【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(ランダム支給品1〜2、確認済、未開封)
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない、ただし未確定
1:目の前の二人(ミキタカ・ジョルノ)との自己紹介・情報交換をする
2:死んでいったジョルノは、目の前にいるジョルノは何者なんだ?

[備考]
基本的思考『ただし未確定』とは、ゲームには乗らないけど明確な行動方針(行き先など)を決めていない、という意味です

51演者 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/04(日) 23:11:35 ID:eRj/T2yc
以上で仮投下終了です。一応ageときます。
ご意見いただきたい部分は主に状態表。

・ジョルノが5部終了直後からの参戦
 →成長するスタンドを描きたい人がいる?ならもっと早いうちが良いか?
 →レクイエムは?(個人的にはレクイエムは必要に応じて矢を刺して発現するものだと思っていましたので)
・ただし未確定 ……という3人
 →これから次の彼らのSSまでの間に議論するでしょうと言う脳内補完を読者に強制してるのではという懸念
 →乗らないの確定なんだからわざわざ書かなくてもよくね?と言われないだろうか
・早くもメインキャラ(と宇宙人)が合流
 →もう少しキャラ減らす方が先じゃない?と言われそうで不安。ミキタカは1stではブチャと一緒だったしギャングと縁があるとか、そのへんも
 →情報交換したことを明確に描写しておくべきか否か(把握してるスタンド使い、参戦時間軸のずれの考察等)

その他の指摘、誤字脱字等々、ご意見お待ちしております。それではまた本投下の時に。

52名無しさん:2011/12/04(日) 23:41:13 ID:2pRo9/N2
投下乙です

別にメインキャラの合流はいいと思います。
100%他人同士のみのエンカウントというのは違和感ありますし、こういうのも必要でしょう。
参戦時期等についても問題ないかと。

ミキタカの状態表ですが、仗助サンは死んでないですよ。
俺もプロット練っている間に同じ勘違いしてしまいます。

53 ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:01:20 ID:167Lb3.c
ジョナサンとナランチャで予約した者です
書き手になるのは始めてで、自信が無いのでこちらに投下しようかと思います

54似てる気がする ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:03:24 ID:167Lb3.c
「ツェペリさんの死……遥かな国からの3人……蛇を操る屍生人……殺し合い……」

闘士達が戦った建造物を背に、1人の青年が立っていた。
190センチを越えるがっしりとした体、それでいて穏やかな目元は、彼を「紳士」と呼ぶには充分だろう。
何をする訳でもなく呆然と立ち尽くし、うわ言の様に自分の身に起こった事を口にしていた。
そして思考は、最初に殺された3人の元にたどり着く。
自分とよく似た青年、白いコートを着た男、金髪の少年
彼にはあの3人が他人の様には思えなかった。好みの音楽どころか、名前も知らない筈なのに。
彼の中に流れる『血統』が、そう告げていたのだ。では、一体誰なのだろう?
頭の中を何度も反芻させ、記憶の糸を手繰るが、答えは出てこない。
そして3人の首から、赤い花が咲き、血が止めどなく溢れる。
彼はある事情で、数多くの血を見てきた。大事な人を何人も失った。
悲しみに涙を流す事はあれ、それでも戦わなければならないと、己を奮い立たせてきた。では何故だろう
その血を見た時、彼の心は深い悲しみに包まれていたのだ。
心にポッカリと穴が空いた様な、自分の一部を引き千切られた様な、そんな感覚がしたのだ。親や師を殺された訳ではないのに、知人の間柄でも無いのに。
それでも、彼の『血統』は、深い涙を流していた。
そして告げられた、『殺し合い』―――
揺れる心を抑えようと努めつつ、彼は現状を纏めようとする。

「あの初老の男性……石仮面に関わりのある者だろうか?
 だとすればこの殺し合いの黒幕はディオ?
 それとも、全く別の何か?」

いくら考えても、答えは出る筈もなかった。
水面に映る月の様に、つかむ事はない、蜘蛛の糸を這い回る思考。
「断定は出来ないが、スピードワゴンやダイアーさん達もこの場にいるかもしれない、エリナさえも……」
背中を冷たい物が伝う。また大事な人を失ってしまうのか ……恐怖が彼を襲った。
しかし、青年の内に宿る『黄金の精神』は、決して揺るがない。
「人が人を殺していい道理はないッ!
吸血鬼であろうと人間であろうと!決して許される物ではない!
この殺し合い、必ず打ち砕く!」

それは、紛れもない宣戦布告。
数奇な因縁の始まりを握る青年、ジョナサン・ジョースターは、高らかに声をあげた。

「それにしても……」

振り返り、背後の建物を見つめる。
古代ローマの象徴たる闘技場、コロッセオは、考古学者であるジョナサンの興味を惹くのに十分な物だった。

「なんと巨大な建造物だ……
まわりの継ぎはぎの様な地形に違和感はあるが、歴史を感じさせる……」

無論、他の参加者を探すというのもある。
しかしながら、僅からながらの知的探求心も否めない事実。
一歩ずつ、一歩ずつ……ジョナサンはコロッセオに入っていった。

55似てる気がする ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:04:09 ID:167Lb3.c
「畜生ッ……ジョルノオオオオオオオ!!」

一片の光も無い暗闇。1人の少年が顔を腫らして泣いていた。
名をナランチャ・ギルガという。
あどけない少年にも見えるが彼は『ギャング』だ。尤も、昔の映画の様な、スーツにボルサリーノ帽子を被り、銃弾の雨あられをくぐり抜ける物とは少し違うが。
端的に言えば彼は『組織』を裏切った。己と似た境遇を持った少女の為に、信ずる仲間達と共に。
彼は、信頼した者に強く心を寄せる。例えそれに裏切られた過去があったとしても、それが揺らぐ事はない。
しかし、大事な人を失う―――考えたくも無い事だった。
人が死を間近で見てきた。殺した事もあった。それでもだ。
「組織」のボスへと迫る旅、その最中で大事な仲間の1人である レオーネ・アバッキオを失い、面白い新入り―――ジョルノ・ジョバァーナの首が目の前で爆ぜた。
彼は、こみ上げる悲しみを抑えられなかった。
「畜生ッ!畜生ッ!」

乱暴に、何の考えもなく、壁を何度も蹴り続ける。
元来、考える事が苦手な彼は他に思いつかなかったし、なにより他の事を考えたくなかったからだ。
悲しみから逃げる為に、忘れる為に、彼の足は、この不毛な行為をやめようとしない

ガンッ! ガンッ! ガンッ!

足に赤みがさし、 痛みが思考に干渉する様になった頃に、その行為は終わりを告げる。落ち着きを取り戻した思考は、状況を纏めようとする――
殺し合い――望みを叶える――アバッキオの胸に空いた穴――ジョルノの残骸――
駄目だった。いや、最初から不可能だった。
仲間を家族に――拠り所にしていた彼の頭は、その死を処理しきれなかった。

「うあわああああああああああああ」

動物的な、考えの無い行動。心の負荷を抑えようとする本能。
スタンド、「エアロスミス」も精神の消耗で出せず、半狂乱になったナランチャは、勢いのままに走り出した。

56似てる気がする ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:05:09 ID:167Lb3.c
「本当に素晴らしい……こんな時で無ければもっとゆっくり回りたいくらいだ……」

結局のところ、ジョナサンはコロッセオを堪能していた。
勿論、水を使った波紋による警戒は怠らなかったが
考古学者の血がさせるのか、目線は様々な場所に飛び交う。
意中の人、エリナと一緒に行きたい。そんな事を考えだした矢先、水に波紋が起こった。

「このスピードは……走っているのか?」
 怯えているだけかもしれない。まともな思考を持たない屍生人かもしれない。戦わねばならないのであれば……
ジョナサンの目が、鷹の様に鋭くなる。父親や師の死を背負い、吸血鬼ディオと戦う、『波紋戦士』ジョナサン・ジョースターの目だ。
襲われても対処できる様に、両の腕に力を込めて、波紋を練る
それから何分もしない内に、激しく地面を踏みならす音が聞こえてきた。
果たしてそれは、あどけなさの抜けない少年であった。
罠かもしれない。そんな事は一瞬も考えなかった。
『紳士』としてのジョナサン・ジョースターは、何の躊躇もなく少年の真正面に踊り出る。

「頼む!止まってくれッ!」

「退きやがえれええええええええええ」

「頼む!」

「退けて言ってんだぜオレはよォーッ!ブッ殺すぜこの野郎ォオオオーーーーッ」

精一杯の力をこめての体当たり、しかし、ジョナサンの丸太の様な巨体は動かない。


「畜生ッ!はやく退けよォーーッ!
ブチャラティもミスタもトリッシュも殺される!俺はヤダよオオオオオオオオオ」

この時ジョナサンは全てを悟った。この少年はすでに「被害者」なのだ。
恐らくはあの3人……どこかで会った気がするあの3人の中に、知り合いがいたのだ。
少年の悲しみは、想像を絶する物だろう。ジョナサンは、改めてこの悪夢を引き起こした主催者に対して怒りが沸いた。
それでもまずは目の前の少年と話をしなければならない。
ジョナサンは、意を決して口を開いた

「僕は父を殺された事がある……師を殺された事がある……
とても悲しくなった……今の君みたいに、何をしていいかわからなかった……」

心に刻み込む様に、ゆっくりと

「それでも、僕は戦った。悲しみを力に変えて、精一杯に……
 それしかなかった。と言った方がいいかもしれないけど……」

重く、それでいて穏やかに声を震わる。

「悲しい時は思い切り泣いていい、人間として当たり前の事だ
 ただ、これだけは信じて欲しい……」

ジョナサンが波紋を流す。
太陽の様に暖かく、体を駆け巡ったそれは
黄金の輝きを持っていた少年を思い出させるのに充分な物だった。

「僕は……君の味方だ」

「う……うわあああああああああああ」

――凍えきった心に、太陽の光が射した――

57似てる気がする ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:05:59 ID:167Lb3.c
「本当に辛かっただろう……大丈夫かい?」

「最初はスゲー悲しくなった。死んでもいいと思っちまった……
でも、今は違う!生きる為に戦うぜ!」

ジョナサンと意気投合したナランチャは、波紋の影響も手伝い、自分を取り戻す事が出来た。
そこから行われた情報交換。
互いの知人。能力……
名前だけならまだしも、仲間のスタンド能力まで話しているのは、ジョナサンにジョルノをダブらせたナランチャが大きな信頼を寄せているからだ。
ナランチャの方も、屍生人や吸血鬼といった話に最初は半信半疑であったが、拉致されての殺し合いという非現実的な状況下に置かれていることと、ジョナサンの真摯な姿勢を前に、全てを信じる事にした。


「『恐怖を我が物せよ』僕の師が言っていた言葉だ……
 人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさにある……恐怖と向き合い、僕を信じてくれて本当にありがとう」

「俺、頭悪いから今の言葉の意味はよくわかたねえけどよォー
ジョナサンに助けられたって事だけはよくわかるんだ。だから恩返しがしてえ……ブチャラティ達の事も心配だけど、俺はあんたに着いていくぜ!」

その後は、取り留めない話が続いた
ワキガ臭い男がいるとか、カエルにストロー突っ込んで膨らませたとか、そんな他愛も無い話。
時間にすれば数分程度だが、彼らの仲を深めるには十分な物だった。
宴もたけなわと言わんばかりに、ナランチャが話を切り出す

「取りあえずさァー、これからどうすんのォ?
まさか冬眠したクマみたいに動かないって訳にも行かないだろ?」

「そうだね……僕たちがいるのは、地図でいうところのF-7、コロッセオの内部だ。僕も君も知り合いがいるかもしれない。とすれば人の集まりそうな市街地から探そうかと思う。
まずは、ここから近い町……杜王町というところに行こうと思っている……ついてきてくれるかい?」

「さっき行ったろ?あんたに着いていくってな!」

「そう言ってもらえるだけで嬉しいよ。それじゃあ、行こうか」

こうして、志を同じくした二人が集まった。
目指すは、殺し合いの破壊
向かうは、東の町

「そういえばさ……」

「なんだい?」

「さっきの『波紋』ってやつもそうだけどさ……
似てるんだ……髪の色も体格も全然違うのに、
ジョナサンはジョルノに、なんか似てる」

「不思議だね……僕も彼は面識が無い筈なのに、何故だか知っている様な気がした……
そして彼の首が爆ぜた時、とても寂しい気分になった……案外、君と僕も、どこかで知り合っているかもしれないね」

「ジョナサンがいたのって一体どこのイギリスだよ?
聞いた事無いぜオレ」

彼らは知らない。ジョルノがジョナサンの、厳密に言えば「首から下の」息子である事を
死んだ筈の仲間達がこの場にいる事を
そしてジョナサンの体にある星の痣。そこに秘められている 長い長い因縁の物語を

彼らは、何も知らない

58似てる気がする ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:06:46 ID:167Lb3.c
【コロッセオ内部(F-7)・1日目深夜】

【私とあなたは友達じゃないけど私の宿敵とあなたの友達は親子】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.他の参加者を探すため、杜王町住宅街へと向かう
2.力を持たない一般人を守る
3.(居るのであれば)仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒
4.ジョルノは……僕に似ている……?

※見せしめで死亡したジョセフ、承太郎、ジョルノに何かを感じている様です。
勿論、面識はないので、「何か引っかかる」程度の認識です

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:エアロスミス
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
1.ジョナサンについていく、仲間がいれば探す
2.もう弱音は吐かない
3.ジョナサンはジョルノに……なんか…似てる
※確認した2人支給品の中に、波紋に役立つアイテム(リサリサのマフラー等)は無かった様です
※軽い情報交換を行いました。具体的には、1部の主要メンバー(ディオ、スピードワゴン、ツェペリを始めとした波紋使い達)
5部の主要メンバー(護衛チーム+トリッシュ、ナランチャの参戦時期の段階でわかるディアボロの情報)また、死んでいると思っているので、暗殺チームや、屍生人等については詳しい情報交換を行っていません
※味方について話しただけなので、それぞれの物語については断片的にしか話しおらず、時間軸のズレに気づいていません。
お互いの出身地程度くらいしは把握した様です

59似てる気がする ◆VjwVrw6aqA:2011/12/05(月) 22:07:55 ID:167Lb3.c
以上で終わります
始めてなので、勝手のわからない事ばかりですが、御指摘頂ければ幸いです

60名無しさん:2011/12/05(月) 22:20:39 ID:.z4fk2ZM
>>59
投下乙です。
チーム名はギャグ漫画日和でしょうか? おもしろいですね。
初投稿とは思えないウマさだと思います。
内容面に関しては問題ないと思いますが、文末に句点がない所が少し目立ちましたね。
地の文は特殊なケースを除き、「。」「!」「?」「……」「――」のいずれかで終わらせた方がいいと思いました。

61名無しさん:2011/12/06(火) 18:11:10 ID:ZrCppli.
◆Osx3JMqswI氏は批評待ちなんでしょうか?
ならば少し辛口になってしまいますが、意見します。

>>36>>37の中盤まではまったく問題ないと思いますが、二人が出会ってからの情景の描写が少なすぎると思います。
会話文のみでの進行でスピード感はあるのですが、あまりにも情報が少ないので何が起こっているのか理解しづらい場面が多いです。
お互いの心理描写がほとんど描かれていないので、なぜ協力関係になったのかもよくわかりません。

62 ◆VjwVrw6aqA:2011/12/06(火) 19:18:58 ID:n6/Z41KU
>>60
ありがとうございます
チーム名は、その通りです。ジョジョは複雑な血縁関係多いから、出来る気がしたんですが、微妙に違います
仗助とジョルノとかなら、当てはまるかもしれませんが、どうでもいいですね。

ご指摘頂いた部分を修正し、本投下しようと思います

63 ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:44:58 ID:mW9lAtJ2
仮投下します。

64TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:45:25 ID:mW9lAtJ2
 ◇ ◇ ◇



 ら、らら、れろれら、れ、らら――



 ◇ ◇ ◇

65TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:46:04 ID:mW9lAtJ2


 夢であって欲しい。
 そう願えど願えど、一向に目が覚める気配がない。
 よもやこれは現実なのだろうか――考えかけて、私は首を振った。
 そんなはずがない。
 殺し合いなど夢で、起きればまたいつも通りの生活が待っているに決まっている。
 疑いかけている頭を無理矢理に納得させようとしても、勝手に記憶が蘇ってくるのは抑えられない。

 ありふれた一日が変わったのは、あの瞬間だ。
 働いている食器屋の扉を破って、血塗れの男性が突っ込んできた。
 腹部に穴が開き、左足が半ばから千切れているというのに、男は何食わぬ顔で声をかけてきた。
 そのときの言葉は、一言一句違わず思い出せる。

「おい……女、そこにある俺の脚を拾って持ってこい」

 状況が理解できず悲鳴を上げるしかできなかった私に、男は畳み掛けた。

「早く持って来いッ!! スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするようにな…………」

 次の瞬間には、視界が切り替わっていた。
 周囲にたくさんの人がいて、ステージの上にはメガネをかけた初老の男性。
 殺し合えなどと命じたかと思えば、三人の男性の首が飛んだ。
 そしてまた周りの景色が変わり、気付けば見知らぬ街にいた。
 いつも暮らしているカイロと違い、整備された道に石レンガ造りの家が立ち並んでいる。
 混乱しながらもどうにか路地の外れに身を隠すと、そこで私はくずおれてしまった。
 いつの間にか背負わされていたデイパックを開いてみれば、地図や食料などが出てきた。
 そこからは、いままで繰り返しだ。
 夢ではないのかもしれないと思いかけて、即座に否定する――ひたすらにそれだけ。

「――――っ」

 危うく声をあげそうになったのを、どうにか呑み込む。
 大通りに、人影が一つ見えたのである。
 壁に隠れながらも、少しだけ顔を出して確認してみる。
 長身に長髪で、鼻筋が細く整っている男性だった。
 声をかけたくなったが、必死に自分を抑える。
 一人でいることは非常に心細く、とても人恋しい、が――
 本当に殺し合いが始まっていて、彼が人を殺す決意をしているのかもしれない。
 そんな考えが浮かんでしまい、呼び止めるなど到底できなかった。
 にもかかわらず、長髪の彼は不意に立ち止まった。
 切れ長の瞳で、ある一点を見据えている。
 なにをしているのだろうか。
 私が抱いた疑問に答えるように、長髪の彼が睨み付けている方角から声が響く。

66TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:46:30 ID:mW9lAtJ2

「ほう……いきなりとは、さすがに驚いた」

 これまた男性の声である。
 ほんの短い言葉だというのに、ひどく魅力的に思えた。
 鼓膜を揺らしただけで、身体が痺れる気配がある。
 怯えている心に染み込んでくるかのような、そういう感覚だ。
 しかしこの声には、なぜだか聞き覚えがあった。
 声の主を一目見ようと、壁から顔をもう少しだけ出して――私は今度こそ声をあげそうになった。
 両手で口を押さえて、強引に自分自身を黙らせる。
 声は抑えられても、心臓が高鳴るのは止められなかった。

「君は、普通の人間にはない特別な能力を持っているそうだね」

 驚愕する私をよそに、男は言葉を続ける。
 血塗れで私の眼前に落下してきた――あの男は。

「一つ……それをこのDIOに見せてくれると嬉しいのだが」


 ◇ ◇ ◇


「なぜ、知っている」

 言い終える前に、マッシモ・ヴォルペはミスに気付いていた。
 この質問では、自分がスタンド使いであると認めたのと同義である。
 相手がなにを言っているのか分からないといった様子で、スタンド使いではないかのように振る舞うべきだった。
 そんな当たり前の対応が叶わなかったのは、ひとえに動揺してしまっていたからである。
 DIOと名乗った男の佇まいに、ヴォルペは目を奪われてしまっていた。
 長身のヴォルペよりももう一回り背が高く、さらに肉体は鍛え抜かれている。
 金色の華美な装束は、しかしDIOが纏えばとても自然に美しく思える。
 ところどころに散見するハート形のアクセサリーにも、不思議と違和感がない。
 衣服と同じ金色の髪は艶やかで、大きな二つの瞳は生き血のように鮮やかな真紅。
 そのどれもが目を引くが――何より。
 全身から放たれている気配が、とても印象的だった。
 辺りに広がる夕闇よりも、さらに光がない。
 暗いという単語では足りない。どす黒いと言うべきだろうか。

「なぜ、か。ふむ……どう返事をするべきか。まあいい」

 ヴォルペのミスに勘付いているのか、いないのか。
 DIOは口元に手を当てて思考したのち、なにか思い付いたかのように向き直る。
 次の瞬間には、DIOの傍らに黄金の巨躯が出現していた。
 思わず、ヴォルペは目を見開いてしまう。
 間違いなく、あれこそがDIOの精神のヴィジョン――スタンドだ。
 それは明らかだが、どうして自ら曝け出したのか。
 ヴォルペには、まったく想像もつかなかった。

67TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:46:50 ID:mW9lAtJ2

「やはり見えているようだな。
 スタンドは、スタンド使いかその素質があるものにしか見ることができない。
 こんなものは説明するまでもなく、スタンド使いならば誰もが知っていることだとは思うが……
 まあなにはともあれ、だ。なにはともあれ、これでなにもおかしくはないだろう?
 私のスタンド『世界(ザ・ワールド)』を視認したのだから、もはや疑うまでもない。
 君は『他の人間にはない特別な能力』、すなわちスタンドを持っている。そうだろう、マッシモ・ヴォルペ?」
「――――ッ!」

 スタンド名に、ヴォルペの名を知っているという事実。
 それらまで、DIOは明かしてしまう。
 なにを考えているのか分からない。
 優位性を自ら捨てているのか、はたまたその程度で己の優位が覆らないと確信しているのか。
 定かではないが、ヴォルペにはもはやどちらでもよかった。

 元より、行く当てなどなかったのだ。
 マッシモ・ヴォルペは、死に行く最中に殺し合いに呼び出された。
 唯一信頼していた麻薬チームの仲間は、一人を除いて殺されてしまった。
 生き残った一人だって、他のメンバーが死んだと知って黙っていられるタチではない。
 おそらく、いまごろ始末されていることだろう。
 麻薬チームの始末を命じたギャング組織『パッショーネ』に復讐するべく、当初は最後の一人を目指すつもりであった。
 だが、最大の復讐対象であるパッショーネのボス『ジョルノ・ジョバァーナ』は、もう殺されてしまったのだ。
 目標を失ったヴォルペは、ただ彷徨うしかできなかった。
 ゆえに、DIOがなにを考えていようとどうでもいい。
 八つ当たりをして憂さ晴らしができれば、もう満足だ。
 仮に死ぬことになろうとも、すでに目標がないのだから悔いがあるはずもない。

「『マニック・デプレッション』ッ!」

 呼びかけに応えるように、ヴォルペのスタンドが姿を現す。
 そのヴィジョンは、筋骨隆々の『世界』とは対照的な外見をしていた。
 筋肉などなく、かといって贅肉や脂肪に覆われているのでもなく、単純に痩せ細っている。
 その痩躯にはところどころ包帯のようなものが巻かれ、一部白骨化している箇所もある。
 身長が低いのもあって、十分な食事を与えられなかった子どもの行く末じみていた。
 『マニック・デプレッション』が甲高い奇声をあげると、全身から鋭利な棘が飛び出す。
 そして、『マニック・デプレッション』は跳躍した。
 身体を覆う棘でもって肉体を貫いてやるべく。

 ――主たるマッシモ・ヴォルペのほうへと。

「ふむ……?」

 眉根を寄せるDIOに構わず、『マニック・デプレッション』はその能力を行使する。
 ヴォルペの体内で、肉が弾ける音が響いた。
 ぐぁぁぁふ――と、異様な呼吸音がヴォルペから漏れる。
 未だ合点がいっていない様子のDIOへと、ヴォルペは跳んだ。
 ほんの一跳びで十数メートルの距離を詰め、拳を振りかざす。

 『マニック・デプレッション』の能力は、生命力の異常促進。
 肉体に効果を発動させれば、本来出すことのできない力を出すことも可能とする。
 まさしく、『人間を凌駕する』能力である。

68TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:47:06 ID:mW9lAtJ2

「生身のようでいて、スタンドパワーを纏っているようだな」

 ヴォルペの拳を『世界』で捌きつつ、DIOは頷く。
 使用者が触れようとしない限り、スタンドはスタンド以外に接触されることはない。
 ただし『マニック・デプレッション』で強化したものは、能力攻撃に含まれる。
 ゆえに、スタンドで触れることができるのだ。
 だからこそ、ヴォルペはあえて『世界』を狙った。
 スタンドに、強化させた拳の対応をさせるために。
 棘を出したままの『マニック・デプレッション』が、DIO本体へと飛びかかっていく。
 ヴォルペの攻撃を捌いている『世界』は動くことができず、『マニック・デプレッション』の棘がDIOを貫いた。

「終わりだ」

 『マニック・デプレッション』の能力には、タガがない。
 能力を調節しなければ、どこまでだって生命力を促進させることができる。
 心臓を過剰に働かせて破裂させることも、内臓を過剰に働かせて消化液で内臓自体を溶かすことも、筋肉を過剰に働かせて肉体を弾け飛ばすことも――可能なのだ。
 DIOの身体が波打つように蠢き、傍からでも肉体が膨張しているのが見て取れる。
 しかし、それだけだ。
 身体が振動するだけで、DIOの肉体が弾け飛ぶことはない。
 呆然とするしかないヴォルペの前で、DIOは自分の身体を擦りながら呟く。

「なるほど。生命力を過剰に与えているワケか。
 どんな相手であろうと生物であるなら、一度刺せば必ず勝てる能力だな。
 だが……相手が悪かったな。私は生物ではなく、いわば君のスタンドの天敵だ」

 服についた虫を払うかのような動作でいとも容易く、DIOは『マニック・デプレッション』を取り外す。
 棘が刺さっていた箇所から血が噴き出すが、すぐに傷口が塞がってしまう。
 ここに至ってようやく、ヴォルペはDIOの正体を悟ることができた。

「ふん……そういうことか。お前、『石仮面』を使ったな」
「ほう、アレを知っているとは。なにからなにまで驚きの連続だな」

 言って、DIOはデイパックから封筒を取り出す。
 封筒から一枚の紙を取り出すと、ヴォルペへと投げ渡した。
 その紙には、ヴォルペの写真と経歴が纏められていた。
 またスタンドについても、あくまで能力の一部に過ぎないものの記されていた。

「なんでも『パッショーネ』というギャング組織のトップが、君を始末するために用意した資料らしいが……私には関係ない。
 私が惹かれたのは、そこに書かれている君の能力だ。
 『麻薬を生み出す』と記されているだろう? それがとても気になってね。
 実際は麻薬を作るだけの能力じゃなかったようだが、別に構わない。それでもいい。
 あの能力ならば、たしかに麻薬を生み出すことも可能だろう。ならば、君に尋ねねばならない。
 麻薬とは――人に『幸福』をもたらすものだと、私は思っている。
 私は使用したことがないし、この身である以上は効力を実感することもできないだろうが……
 それでもいくつもの文献において、麻薬とは人に多幸感を与えるものとして記されている。
 だとすれば、である。だとすれば麻薬使用者とは、無敵の肉体や大金を持たず、人の頂点に立つこともなく、『幸福』を得ていることになる。
 『幸福』とは、すなわち『天国』に到達することだ。『幸福』をもたらす君のスタンド能力が、その鍵になりうるとは思わないか?」

 そこまで一気に言うと、DIOは頬を緩める。
 鋭く尖った白い歯が、露になった。

「俺には、『幸福』など分からない」

 これまで生きてきたなかで幸福を感じたことなどない。
 そんなヴォルペの思いを、DIOは即座に否定した。

69TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:47:28 ID:mW9lAtJ2

「スタンドとは、使用者の精神が形になったものだ。
 実感がなくとも、幸福を願っているのかもしれない。
 自分の幸福か、はたまた他人の幸福か……
 もし心当たりなどなくても、そいつは君のスタンドだ。
 君の精神あってのそれだ。他のなにが裏切ろうとも、スタンドは裏切らない」

 ヴォルペの脳裏を過るのは、もうこの世にいない仲間の姿だった。
 生まれて初めて、心を許した三人。
 麻薬チーム所属の彼らのなかにも、ヴォルペが生み出す麻薬の中毒者がいた。
 はたして、彼女は幸福だったのだろうか。
 ふと、そんなことをヴォルペは考えてしまった。
 そして彼女が幸福であったことを願う自分に、少ししてから気がついた。

「ある種……ある種だが、人を幸福に導く君の能力は『魂を操作する』能力と言える。
 私に必要なのは、その能力だ。
 三十六の悪人の魂を一つの身体に詰め込む。
 生命力を操作する君のスタンドと、魂を抜き取る彼のスタンド。その二つがあれば、あるいは……」

 自分の考えに没頭し始めたのか、DIOは一人でぶつぶつと呟いている。
 しばらくして何らかの結論が出たのか、ヴォルペへと向き直る。

「私には君が必要だし、君には私を殺せない。
 いいじゃないか、なにも問題はない。友達になろう」

 逡巡したのち、ヴォルペは伸ばされた手を握った。
 先ほど蘇った麻薬チームの三人が、幸福であったのか。
 ただ、それを知りたかった。

「ではさっそく見せてもらおう、君の麻薬の力を」

 DIOが真紅の瞳を路地裏へと向けると、か細い悲鳴が響いた。
 そちらに誰かが潜んでいることに勘付いていたヴォルペには、特に驚きもなかった。



 『マニック・デプレッション』が麻薬を作り出すのに必要な塩は、DIOのデイパックに入っていた。
 付属の説明文によると、イタリア料理店『トラサルディー』御用達の逸品だという。
 その一文にヴォルペは実兄のことを思い出したが、すぐに人違いだと判断した。
 トラサルディーという姓は、別段珍しいものではない。偶然に一致しただけだろう。
 とうのむかしに別れた兄とこのような場所で再会するとも、ヴォルペには思えなかったのだ。
 塩に生命力を浸透させてから水に溶かしこんで、支給された注射器に入れる。

70TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:47:44 ID:mW9lAtJ2

「静脈を出せ」

 DIOが捕えてきた女性は、文句一つ言わずに腕を伸ばす。
 彼女の額には、親指大の肉片が蠢いている。
 DIOが自分の肉体を抉りとって、彼女に埋め込んだのだ。
 肉の芽というそれは、取りついた相手の脳を支配して忠実な僕としてしまうらしい。
 麻薬漬けにしてしまう前に、知っていることを洗いざらい吐かせたのである。
 有益な情報はなかったのだが、血塗れのDIOをかつて目撃したという発言にDIOは眉をひそめた。
 なんでも、彼に心当たりはないらしい。
 見間違いで片付ける気はないようだが、かといってDIOはなにをするでもなかった。
 女性が背負っていたデイパックの中身を確認したのち、ただ地図をしげしげと眺めている。
 ただの地図ではなく、ヴォルペに支給された地下施設について詳細に描かれた代物である。

「準備ができたぞ、DIO」
「ふむ。見せてもらおう」
「それにしても、そんなに地下が気になるのか」
「なんと言うべきかな。
 君も知っていたあの仮面なんだが、副作用があってね。太陽光アレルギー体質になってしまうんだよ。
 日中は適当なところに身を潜めているつもりだったのだが、こうも入り組んだ地下道があるのなら、と思ってね」
「……そうか、運がよかったな。それは渡しておこう」

 ヴォルペは女性の静脈に注射器を刺して、塩水を体内に注入する。
 その様子を眺めながら、DIOは口角を吊り上げた。

「おもしろいヤツだな、ヴォルペ。
 太陽光アレルギーというのを信じたのか?
 単に、この地図が欲しいから出まかせを言ってるのかもしれないだろう」

 中身が空になった注射器をデイパックに戻しつつ、ヴォルペはDIOのほうを振り返る。

「地図が欲しいだけならそう言うだろう。
 俺はお前には敵わないんだから、文句なんて言うワケがない。
 もしつっかかってきたとしても、力ずくでブン取っちまえばいいだけだ」

 くっくと笑ってから、DIOは目を細めた。

「奇妙だとは思わないか?
 君は私にとって必要な能力を持っていて、私は君の能力の天敵となる身体を持っている。
 そして君は私が必要な地下の地図を配られ、私は君が麻薬を精製するのに必要な塩を配られていた。
 君は石仮面のことが気になっており、私は資料に目を通して君のことが少し気になっていた。
 そんな二人が、この殺し合いの舞台で偶然にも出会うなど――なにかしらの力が、働いているとは思わないか?」
「…………」

 ヴォルペには、返答することができなかった。
 目標を失った自分を必要とするものと早々に遭遇したことに、彼自身も違和感のようなものを抱いてはいた。
 だからこそ、どう反応するべきか分からない。
 麻薬中毒者と化した女性の言葉になっていない呻き声だけが、深夜の街に木霊している。
 見れば、女性の膝は激しく痙攣しており、体重を支えきれずにへたり込んでいる。
 地面に顔をつけて唾液を垂れ流しながらも、虚ろな瞳でDIOのことを見つめていた。
 完全にトリップしているというのに、肉の芽による信奉心だけは鮮明に残っているらしい。
 ヴォルペはDIOの問いには答えず、ずっと抱いていた疑問を口にすることにした。

71TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:47:59 ID:mW9lAtJ2

「ところでDIO、どうして俺には肉の芽を使わないんだ?」
「友達に、あんなものを埋め込む理由はない。
 と、そういうことを聞きたいんのではなさそうだな。
 うむ。いまのが最上の理由であるのだが、他にあるとすれば――
 あれは脳に触手を伸ばして侵入することで、宿主の自我を弱める。
 スタンドとは、精神の力だ。
 自我を弱めてしまえば、当然ながらスタンドは弱体化する。
 かつてスタンド使いに埋め込んでおいた肉の芽を抜き取られたことがあるのだが、やはり肉の芽から解放されたあとのほうがスタンドパワーは上であった。
 つまるところ肉の芽による支配は、スタンド使い相手に限っては好ましくないのだよ。
 特に君の『マニック・デプレッション』のような、細かくスタンドパワーを制御せねばならないタイプはな。
 元よりこのDIOに従う意思のあるスタンド使いに保険として埋め込んでおき、ヤツらが敗北した際になにも漏らさぬよう暴走させる――という使用法ならば、肉の芽も役に立つのだがね」

 ヴォルペは、DIOを冷酷だとは思わなかった。
 人の上に立つ人種とは、こういうものであると考えている。
 パッショーネの先代ボスたるディアボロも、自身の情報が漏洩しないよう最善の注意を払っていた。
 しかし頂点に立つ人種だというのなら、なぜ最後の一人を目指そうとしていないのか。
 ヴォルペが尋ねてみると、DIOは当たり前のように言った。

「このDIOが、七十二時間以内に死ぬものか。私が生き残るのは確定している。
 決まり切っているのだから、『殺し合い』における行動方針などない。
 最後の一人を目指すつもりなどない……まあ、結果としてなっているかもしれないが。
 『殺し合え』などと言われたから、君のように勘違いしているものも少なくないだろうが……
 別に、あの老人は『最後の一人になれ』などとは一言も言っていない。
 最長でも三日生き残ればよいだけだろう。率先して他者を殺して回る理由なぞ、どこにも存在しない」

 ヴォルペはハッとして、バトル・ロワイアルの説明を思い返してみる。
 たしかに『殺し合え』と命じてこそいたが、一度も『最後の一人を目指せ』などとは言っていない。
 『優勝者』に褒美を与えると宣言していたが、その優勝者の定義も告げられていない。
 『最後の一人』が優勝者なのか、『三日間生き残ったもの』が優勝者なのか。
 なぜ、このようなはっきりしない物言いをしたのか。
 主催者は、はたしてなにを考えているのか。
 まったく、定かではない。

「だが――」

 ヴォルペの思考を遮るように、DIOは切り出す。

「かといって、穏やかに三日間すごすつもりもない。
 幾度となく私の邪魔をしてきた『ヤツら』の生き残りがいる。
 間違いなく、ヤツらも殺し合いに巻き込まれている。
 ならば確実にッ、このDIOの前に立ちはだかってくるということだ!
 たしかにジョジョと承太郎の死をこの目で見たが……終わりでないことを察している、他ならぬこの肉体がッ」

 左手で首筋を押さえながら、DIOは女性に右手を伸ばした。
 親指の爪を立てて、女性の首に突き刺す。
 ポンプが動くような音が、辺りに響き渡る。
 見る見る女性の肌が渇いていき、全身がしわ塗れになる。
 血液を吸っているのだとヴォルペが理解したときには、女性はミイラと化していた。

「君の力は、十分見せてもらった。
 彼女は幸福を味わいながら死んでいったよ。
 血を吸われる感覚も恐怖もなく、夢見心地のまま……な。
 生命力を操る……やはりいい能力だ。すごくいい。とても理想的だ」

72TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:48:39 ID:mW9lAtJ2



【スチュ略 死亡】


【F−3 フィラデルフィア市街地/一日目 深夜】

【DIO】
【時間軸】:三部。細かくは不明だが、少なくとも一度は肉の芽を引き抜かれている。
【スタンド】:『世界(ザ・ワールド)』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、麻薬チームの資料@恥知らずのパープルヘイズ、地下地図@オリジナル、ランダム支給品1〜2(確認済み)
【思考・状況】基本行動方針:帝王たる自分が三日以内に死ぬなど欠片も思っていないので、『殺し合い』における行動方針などない。
                  なのでいつもと変わらず、『天国』に向かう方法について考えつつ、ジョースター一族の人間を見つければ殺害。もちろん必要になれば『食事』を取る。
1:適当に移動して情報を集める。日が昇りそうになったら地下に向かう。
2:マッシモ・ヴォルペに興味。


【マッシモ・ヴォルペ】
【時間軸】:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
【スタンド】:『マニック・デプレッション』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、大量の塩@四部、注射器@現実
【思考・状況】基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。
1:DIOと行動。



【支給品紹介】


【麻薬チームの資料@恥知らずのパープルヘイズ】
DIOに支給された。
パッショーネの上層部が、麻薬チームの始末を命じた三人に支給した資料。
麻薬チームの構成員四人の写真など、彼らに関する情報がまとめられたもの。
ただしその情報はあくまでパッショーネが把握している範囲だけであり、四人が持つスタンドの詳細などは不明である。


【大量の塩@四部】
DIOに支給された。
杜王町の外れにあるイタリア料理店『トラサルディー』にて使われている塩。
味にこだわる店主が取り寄せたものなので、食通たちの間では名の知れた塩であるのかもしれない。


【注射器@現実】
マッシモ・ヴォルペに支給された。
なんの変哲もない、よくある注射器。


【地下地図@オリジナル】
マッシモ・ヴォルペに支給された。
バトル・ロワイアルの会場に存在する地下通路や地下施設について描かれた地図。

73TRIP HEAVEN ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 01:49:25 ID:mW9lAtJ2
仮投下完了です。
問題点がなければ、本日中に投下したいと思ってます。

74名無しさん:2011/12/08(木) 02:17:36 ID:DDzDqbyI
投下乙ッ
詳しい感想はまた後で
ただ一言言うと……めっっっちゃ面白かったですッ
本投下全裸待機しときます

75名無しさん:2011/12/08(木) 02:30:13 ID:AYDB0K4c
仮投下乙です
さすがDIO様基本行動方針が長い長いwww
内容も『天国』に合わせてきて面白かったです

76名無しさん:2011/12/08(木) 21:39:10 ID:QYI7KblY
作品自体は問題ないと思いますが、これってかなりOVER HEAVENに影響される内容ですよね
すでに先行掲載分からの引用もありますし……
俺は別にいいんだけど、OVER HEAVENの内容は一切入れないって意見も前あった気がするし……

あと、スチュ略についてですが、、wikiのデータページとかではその名前で扱うとして、
本文中は【スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするように足を持ってくるよう指示された女性 死亡】
でいいんじゃない? その方が面白いし

77 ◆ZAZEN/pHx2:2011/12/08(木) 23:17:38 ID:mW9lAtJ2
では、本文ではそうしときますねw >スチュ略
OVER HEAVENについては時分でも気になっていたのですが……ただ、DIOとして参戦させて天国の話を書くとどうやっても触れてしまうんですよねえ

ひとまず本投下してきます

78名無しさん:2011/12/09(金) 13:09:05 ID:szFu7BSg
ちなみにOVER HEAVENの先行掲載分からの文章(設定)てどこ?
未読でも違和感は感じなかったけど、問題になりそうなのか?

79 ◆vvatO30wn.:2011/12/10(土) 02:05:53 ID:aBT4g.EE
>>78
「ある種……ある種だが、人を幸福に導く君の能力は『魂を操作する』能力と言える。
 私に必要なのは、その能力だ。
 三十六の悪人の魂を一つの身体に詰め込む。
 生命力を操作する君のスタンドと、魂を抜き取る彼のスタンド。その二つがあれば、あるいは……」

「友達に、あんなものを埋め込む理由はない。
 と、そういうことを聞きたいんのではなさそうだな。
 うむ。いまのが最上の理由であるのだが、他にあるとすれば――
 あれは脳に触手を伸ばして侵入することで、宿主の自我を弱める。
 スタンドとは、精神の力だ。
 自我を弱めてしまえば、当然ながらスタンドは弱体化する。
 かつてスタンド使いに埋め込んでおいた肉の芽を抜き取られたことがあるのだが、やはり肉の芽から解放されたあとのほうがスタンドパワーは上であった。
 つまるところ肉の芽による支配は、スタンド使い相手に限っては好ましくないのだよ。
 特に君の『マニック・デプレッション』のような、細かくスタンドパワーを制御せねばならないタイプはな。
 元よりこのDIOに従う意思のあるスタンド使いに保険として埋め込んでおき、ヤツらが敗北した際になにも漏らさぬよう暴走させる――という使用法ならば、肉の芽も役に立つのだがね」

この2か所ですね。
まあこれくらいなら大して影響ないと思うし、なんやかんやで発売1週間前です。
来週の今頃には他の書き手さんがたもOVER HEAVENネタを入れたくなっている事でしょうし、議論はその後でもいいでしょう。

80名無しさん:2011/12/10(土) 02:08:21 ID:aBT4g.EE
トリ外し忘れだらしねぇし…

ちなみに>>79はコピペした部分すべてが先行分というわけではなく、
バレ防止のために多めに拾ってます。

81 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:09:39 ID:fMy7SzPw
蓮見琢馬、大神照彦、飛来明里 一次投下します

82 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:10:22 ID:fMy7SzPw
現在時刻…… 西暦2000年3月17日、20時35分17秒(日本時間)。

4分38秒前―――― 千帆の書いた小説を読んでいる。
4分37秒前―――― 小説のページをめくる。
4分36秒前―――― 千帆の書いた小説を読んでいる。
4分35秒前―――― 千帆の書いた小説を読んでいる。
4分34秒前――――


――――――――見知らぬホールのど真ん中。



ここだ。このタイミング―――― 何度読み返しても、異常だ。

あの瞬間、周囲の状況は一変した。瞬きをする暇もないその一瞬で、視覚情報が激変したのだ。
いや、視覚だけではない。
図書館特有の古い印刷の臭いも、突如消えてしまった。
手に持っていたA4サイズの紙の束が指先に振れる感覚も 手放した記憶は無いのにいつの間にか無くなっていた。
かわりに、背中に現れたデイパックを背負わされていた。
そして、図書館内の椅子に腰かけていたはずが、ホールでは立たされていた。
身体の重心を移動させた記憶も無い。膝の関節を伸ばした記憶もない。
胸ポケットに差した万年筆も、内ポケットに仕込んだスローイングナイフも、左手首に付けてあった腕時計も、何処かへ行ってしまった。
琢馬の長い人生を綴ったこの【本】にも、今回のような異常な事態は一度も記録されたことは無い。

読み返すだけで、気分が悪くなりそうな【記憶】だ。
【禁止区域】に指定した方がいいかもしれない。誰かに読ませれば、立ち眩みを起こさせることくらいできるのかもな。

83 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:12:06 ID:fMy7SzPw
辺りの景色を見渡す。
日本とは異なる造りをした町並み。足元の自動車用道路の車線は、右側を進むように描かれている。
星空を見上げると、日本からは見たことがない角度に星座が見える。
そして、道路を挟んだ向かい側に広がる薄黄色の高い壁と、入口であろう門の上に書かれた『MVSEI VATICANI』の文字。
この光景を【記憶】の中から【検索】する。

……間違いない、『ヴァチカン市国』だ。
ヴァチカンに限らず海外など一度も行ったことは無かったが、世界の主要都市の地図は何となく脳内で全てデータ化していた。
そのデータに従うのであれば、ここはイタリア・ローマ市内の『ヴァチカーノ通り』―― 世界最小の国ヴァチカン市国の北側の国境のようだ。
通常、観光客はここからヴァチカン内を見学し、「ヴァチカン美術館」、「システィーナ礼拝堂」を経て、サンピエトロ広場に抜けるコースを辿るらしい。
ホールから、「ここ」へ飛ばされた時も、最初と全く同じ現象が起こった。
杜王町の図書館で読書をしていた俺は、ものの数分のうちに、9700km近く離れたローマの地に立たされていた。
全てが一瞬の出来事であった。



謎のホールでの、【記憶】。

殺し合いを行え、だと?
何が起こっている。こんなイカれたゲームになぜ俺が?
人の読書を中断することくらい重い罪は無いのだぞ?

その場では自体を飲みこめず、すぐに周りの状況を確認することはできなかった。
だが、琢馬には大して関係ない。
ホールで見た【映像】を再生し、周囲にいた人間の顔を片っ端から検索。
ほとんどが東洋人ではなく知らぬ顔ばかりであったが、中には検索に引っ掛かった顔もあった。

遠目で確認できたのは、『岸辺露伴』。
町で何度もすれ違ったことがある、コソコソした所があるイケ好かない漫画家だ。
本屋で小学生と本を取り合っているのを見た時は、本気で頭のおかしい奴だと思った。
クラスメイトと話を合わせるために奴の漫画を読んだこともあるが、何が面白いのか全く分からなかったな。

ほかには、『レストラン・トラサルディー』の店主トニオ氏。
街中で見かけたことは無いが、杜王町霊園の近くのレストランの料理人で、一度千穂と食べに行ったことがある。
あれは美味い料理だった。今でも記憶を頼りに『食べ直す』事も多い。
彼の料理を食べた時、何故か風邪がよくなった。彼の能力だったのだろうか。

ここからは自信がないが、『虹村形兆』。
ぶどうが丘高校1年、虹村億泰の兄。だが彼は去年の4月に死んだはずだ。
そして、アメリカ合衆国の『フィリップス上院議員』。
以前、10年前にエジプトで事故死したと本で見たが、彼とよく似た人物がいた。

既に亡くなっているはずの2人を含め、俺が見た人物たちが本人である確証は無い――――
だが、得体の知れない何かが起こっていることだけは確かなようだ。

84 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:16:46 ID:fMy7SzPw


そして――――見せしめとなった、2人目の帽子をかぶった白コートの男。
彼も杜王町ですれ違った覚えがあった。
半年以上前、去年の6月末―――― 駅前の広場付近を歩いていた男だ。
当時、気にもしていなかった会話の内容を【再生】する。

『あ、こんにちは 承太郎さん……』
なるほど、名前はジョータローか。
『見た所クツ屋のようだが… 杜王町近くの洋服屋は全て聞いたが、こーいったところには聞き込みを見落としていたぜ』
なにか調べ物をしていたようだな。
『そのボタンの聞き込みですか?「重ちー」のハーヴェストが拾ってきたヤツの証拠品!』
その後は店内に入ってしまったな。
『重ちー』…… 『矢安宮重清』…… 噂を聞いたことがある。行方不明になった中学生だな。
彼らはその行方不明の少年の足取りを追っていたのだろうか?
今となっては分からないな。街中で見かけたのはその一度だけだ。

いや、まてよ? 「ジョータロー」か。
昨年、杜王町のヒトデに関する論文で博士号を取った海洋学者がいた。
名前は「Jotaro Kujo」…… 彼のことか? 海洋学者が何故、杜王町の行方不明者を探していたのだ?
そして、彼と一緒に歩いていた少年。あれは広瀬康一だ。
ぶどうが丘高校1年、あの東方仗助たちの友人で、今年1月から織笠花恵の事件を追っていた人間の一人。

やれやれだ。「コイツ」のせいか?
琢馬は手のひらの上の『本』を一瞥する。
万年筆を治した『東方仗助』、どういうわけか犯人の手首に傷があることをかぎつけた奴ら一派。
この殺し合いとやらに参加させられている人間は、全員なにか特殊な『能力』を持っているのだろうか。
この俺と同じように――――ならば――――――

「――――――あの男も、ここにいるのか?」


『××××××××! ××××××××××!!』
『×××××××××××××! ×××××××××!』




!? 今の声は―――?
どこかで男女の言い争う声――――ッ!?


現状の確認も記憶の整理も放りだし、脊髄反射のように、琢馬は走り出していた。
普段の冷静な彼ならば、こんな無鉄砲な行動を取ることなどなかっただろう。

【感覚】を【記憶】と結び付けてしまう彼には、分かってしまったのだ。
男の声が、彼にとってこの世で最も醜悪な存在である男の物であることを……
そして女性の声が、この世にもう存在するはずのない、大切なヒトの物であることを……




★ ★ ★

85 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:17:29 ID:fMy7SzPw




ここは死後の世界というやつだろうか?
だとしたら、閻魔様も趣味が悪い……
いや、これは私に与えられた、当然の罰なのかもしれないな。

この17年間、ずっと悪夢を見ていた。
自分の過去に隠された罪の重圧の影響だ。
私は一人の女性の人生を終わらせた。
もし私が死んだら、自分は天国には行けないだろうという実感はあった。
この悪趣味なゲームは、その結果なのだろうか。


雨が降り始めた。
そういえば、ここはどこだ?
石を基調とした建物のつくりは西洋独特の物――――
いつだったか、見たことあるような景色だ。


「あの日も、こんな風に雨が降っていたわね。あなたは覚えているかしら?」

背後から声をかけられた。
女性の声だった。

「結果的に雨でぬかるんだ段ボールのお陰で助かったけど…… 寒かったのよ。
この一年間で、一体何回雨が降ったかなんて、あなたにわかる?」

振り返るのが怖かった。
存在するはずのない人間の声だった。

「最期に見る夢にしては随分なものだと思ったけれど、『殺し』合いの舞台であなたと再会できるなんて、神様の粋なことをしたものね……」

生涯、私に悪夢を見させ続けた女の声だった。




★ ★ ★

86 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:18:14 ID:fMy7SzPw



琢馬が現場に辿り着いた時、事態は既に終結を迎えていた。
何故かここら一帯のみに発生している雨に打たれ、暗い路地で取っ組み合う二人の男女。

男の年齢は40代の半ば、部屋着に使っているようなトレーナーを着こんだ中年の日本人。
あごひげを蓄えた顔は歳の割には若く見えたが、その表情は苦痛に歪んでいる。

女の年齢は20代の後半。手入れのされていないボサボサの長い黒髪。
泥だらけになったボロボロの衣服に、やせ細った手足。
偏った栄養のみを摂取してきたであろう弱弱しい両手に握られた包丁は、男の胸へと突き立てられていた。



「母さん――― なのか?」

そんなわけは無いと思いつつも、琢馬はそう声をかける。
2人の男女は琢馬の存在に気が付き、同時に彼の方へ振り向いた。

男の顔はよく知っている。
つい数十分前まで、彼の作った暖かいビーフシチューを食べながら話をしていた。
彼が生涯をかけて復讐すると誓った男―――――― 琢馬の父親・大神照彦だった。

そして女の方の顔は―――― 直接会ったことは無い。
彼女の両親から、写真を事が見せてもらったことがあるだけだ。
彼女の両親の家を何度も訪れたことがある。彼女の両親は、突然失踪した彼女の行方を、生涯探し続けていた。
琢馬が家を訪れると、一人娘を失った老夫婦はまるで本当の『実の孫』が遊びに来てくれたかのように、たいへん喜び歓迎してくれたものだった。
彼女の顔は頬が扱けていてやせ細っており、その目からは生気が感じられない。
しかしそれでも、写真の中の若々しく美しい女性の面影は隠しきれなかった。
大神照彦という悪魔のような男によって絶望の底に突き落とされ、半年以上も地獄のような生活を強いられた末に死亡した琢馬の母、飛来明里だった。


「誰……? 嘘――でしょう――? まさか――― わたしの赤ちゃん――――なのッ?」

飛来明里の両手から力が抜け、カランという音を立てて包丁が地面に落ちた。
明里の方は、琢馬のことを知る由もない。
なにしろ明里にとっての息子は、つい数日前に生まれたばかりの赤ん坊である。彼女が人生を懸けて守り抜いた、大切な宝物だ。
目の前にいる少年は、17〜18歳ほどの高校生だ。この少年が、自分の大切な赤ちゃんであるはずなど、ありはしないのだ。

87 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:19:25 ID:fMy7SzPw

「私の……赤ちゃん―――――? そう……なのね――――――ッ!?」

にもかかわらず、明里には何故か、少年が自分の子であることが一目でわかった。
少年の黒い学生服姿が、何度も夢で見た成長した我が子の姿と瓜二つだったのだ。
そしてそれ以上に、母親と息子にしかわからない絆のようなものを感じ取ったのかもしれない。
明里は信じられないといった風に口元を押さえ、腰を抜かしてしまった。

刺された照彦は腹から血を流しながら、冷たい目で自分を見据える琢馬を見た。
琢馬は自分から興味を亡くしたかのように目を逸らし、明里のそばに歩み寄ろうとする。
そんな琢馬を妨げるように最期の力を振り絞って、照彦は琢馬に向かって叫んだ。

「娘が―――――― 千帆がいたんだ――――――ッ!! さっきのホールにッ!!!」

その言葉に、琢馬の表情が曇る。
死にゆく父に再び目線を戻した。

千帆―――――― 彼女も……、いるのか?
この「殺し合い」の場に――――ッ!?
千帆には『能力』は遺伝していなかった。
俺やこの大神照彦とは違い、彼女は何の力も持たない、ただの一般人だ。
武力を持ち合わせない、そんな無力な彼女までが、ここにいるというのか――――


「蓮見くん―――! いや、『琢馬』ッ!! 千帆の父親として……そして君の父親として、最期の頼みだ―――― 千帆を、守ってやってくれ――――――
あの子は、喧嘩なんかしたことがない子なんだ…… 人と争うなんて、できない子なんだ……
あの子が、『殺し合い』なんかで生き残れるわけがない――――!! 君が……守って、やってくれないか………」

琢馬は何も答えない。真夜中の暗闇と強い雨のお陰でどんな表情をしているかもわからない。
照彦はそれでも続ける。もはや自分を刺した飛来明里のことなど頭にない。
最愛の娘を救う方法は、もはやこの『息子』に全てを懸けるしかなかった。

「頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!」

応えない琢馬に対して、何度も何度もそう声をかける。
そのまま照彦の意識は薄れていき、やがて永遠の眠りへと堕ちて行った。

一度最愛の娘に殺された男は、悔いる暇もなく過去の罪に再び喰い殺され、それでも娘の身を案じながら、彼を最も憎んでいた息子に看取られ、死んだ。

88 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:20:57 ID:fMy7SzPw



「初めまして………母さん。あなたの息子の蓮見―――― いや、『飛来琢馬』です」

父親の屍から目をそむけ、琢馬は自分を見上げる母親に声をかける。
思えば琢馬の人生は、決して会う事が出来ないこの母親のために存在していた。
とっさに、自分の名前を、母親の姓で名乗る。
自分の彼女が、本当の親子であることを、自分たちに言い聞かせるために。

「琢馬…… 琢馬というのね………… あなたが、わたしの赤ちゃんなのね…………」

雨が降っているせいでよくは分からないが、彼女の顔は涙で濡れている。
本当に、神様は粋な事をしたものだ。
金を引き渡し、赤ちゃんの命を助けてもらった後も、私は助けられることは無かった。
完全に衰弱しきり、もう死を迎えるだけだと思っていた。彼女自身、それを受け入れていた。
それが、目を覚ましたら殺し合いの舞台に立たされ、大神照彦への復讐の機会を与えてもらっただけではなく、自分の成長した息子と再会させてもらう事ができるだなんて……

これは夢なのかもしれない。でも、彼女にとって夢か現実かなんてことは大した意味もない些細なことだ。

「琢馬…… 大きく、立派に成長したのね…… よかった…… 本当によかったわ……」

泣き崩れる明里に、琢馬も歩み寄る。そして、子供のように母の胸の中に抱きかかえられた。
心臓の音が聞こえる。何度も何度も読み返した、【生まれたばかりの記憶】と同じ――――――
この音を聞いていると安心した。
思えば自分の能力は、人生でたったの3日間だけしか感じたことのない、この【感情】を――― 決して忘れないための、能力だったのではないか。

琢馬も涙を流していた。
父への復讐を誓ってから、泣いたことなど一度もなかったにも関わらず……

「琢馬―――! 私のせいで、辛い毎日だったでしょう? 母親らしいことも…… 何もしてあげられなくて、ごめんね………」
「……そんなことはありません。俺は、産まれてくることができて、幸せでした―――
母さん…… 俺を産んでくれて…… ありがとう――――――!!」

心からの言葉だった。
あふれる涙と嗚咽を堪え、決して伝えることができないと思っていた母への感謝の言葉を告げた。
父は絶望して死んでいった。自分と母との、『2人がかり』で、復讐を遂げたのだ。
もう、誰かを憎み続ける日々は、終わったのだ。

「ありがとう――――― 琢馬。優しい子に育ってくれて、お母さんは嬉しいわ――――――――




―――――――――これで、安心して逝けるわ」

89 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:21:46 ID:fMy7SzPw


ふと、琢馬は自らの手に握らされている感触に気が付いた。
いつのまにか、自分の両手には、先ほど父の命を奪った包丁が握らされていた。
そしてその包丁の刃先は、そのまま最愛の母の身体に深く突き立てられていた。

「母さん―――――ッ!!! なんてことをッ!! 何をしているんだァ!!!」

再び包丁が地面に転がる。
くずおれる明里を琢馬は抱きとめる。
腹からの出血が止まらない。母は自ら刃を突き立て、死ぬつもりだったのだ。


「……琢馬ッ!! 最期にあなたに会えて、嬉しかった――――――」
「母さんッ! なんでだ―――― なんでだよォ――――!!」

母の体温が低下していく。
激しい雨にさらされ、出血の止まらない母の身体は急速に力を失わせていく。


「あなたが『あの男』への復讐のためだけに生きてきたことくらい、黙っていても分かるわ―――― 母親だものね――――
本当にごめんなさい。辛い毎日だったでしょう――――――
でも、これで―――― 私とあの男の【因縁】は消えてなくなるわ――――――
もう、あなたは関係ない、自由の身よ――――――

これからは、自分のためだけに―――― 幸せに―――――――― あなた自身の未来へ――――――」

「母さん――――――――ッ」



「イキナサイ――――――――――」










生まれおちたばかりの記憶を読み返した。
母の胸に頭をくっつけていると、心臓の音が聞こえてきておちついた。
願いを本能で察したのだろう。自分は【忘れない能力】を手に入れた。

90 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:22:29 ID:fMy7SzPw


母の亡骸を抱え、建物に入った。
1年もの間、屋根もないビルの隙間に閉じ込められていた母を、これ以上野ざらしにしておきたくはなかった。
17年以上の時を越え再会した親子は、たった数分の間に、再び別れることとなった。
【記憶する能力】を持つ琢馬だが、今日この時感じた母の愛とぬくもりは、能力を用いること無くとも決して忘れることはないだろう。



「父に、復讐を――――― それだけを考えて、生きてきた」


父、大神照彦は死んだ。

『頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!』

父の、最期の言葉だ。
妹が…… 千帆が、ここにいる。俺は――――――

『これからは、自分のためだけに―――― 幸せに―――――――― あなた自身の未来へ――――――
イキナサイ――――――――――』

母は―――――― 俺は――――――

これから、どうすればいい。


母が何故、自ら命を絶ったのか。
最期の言葉に、どんな思いを琢馬に込めて、母はこの世を去って行ったのか。
今となっては誰にもわからない。

琢馬は【本】を取り出した。
【本】には、ついさっきまでの嘘のような物語も、一遍も欠けることなく記されている。
琢馬はページを走らせる。
無限に続く未来へのページ。
今まで過去を振り返ることしかしてこなかった琢馬にとって、未来に思いをはせることはほとんどなかった。
明確な目標を失った琢馬の未来に、どんなページが記録されていくのか。
それは、他ならぬ琢馬が決めてゆくこととなる。

建物を出ると、雨は上がっていた。
琢馬の新しい、そして真の人生が始まった。

91未来日記 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:23:18 ID:fMy7SzPw


【双葉照彦 死亡】
【飛来明里 死亡】



【A-1 南東/1日目 深夜】

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力(名前はまだない)』
[時間軸]:The Book 2000年3月17日 千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康、???
[装備]:双葉家の包丁(飛来明里の支給品)
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:???
?.父の遺志の通り、千帆を守る。
?.母の遺志の通り、自分自身のために生きる。
?.それとも……? 琢馬自身の意志に従う。

行動方針に順位は無く、定まっていません。
これからどう行動するかは、これからの琢馬の意思次第です。

[参考]
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります(例・4部のキャラクター、大成後のスピードワゴンなど)
双葉照彦の参戦時期は千帆に刺された後です。参戦時期の関係上、大神ではなく『双葉照彦』です。
飛来明里の参戦時期は1982年 琢馬が救いだされた後の衰弱死する前です。
明里のランダム支給品は双葉家の包丁でした。つまり照彦は同じ包丁で二度刺されたという事になります。
明里の基本支給品、照彦の基本支給品、照彦のランダム支給品(1〜2)はA-1南東の路地、照彦の遺体のそばに放置されています。
作中に登場した雨は、023:悪魔が首を傾げるな にてウェザー・リポートがスタンドを用いて降らせていた雨です。
雨はA-1エリア一帯のみに降っていたようです。

92未来日記 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 16:26:05 ID:fMy7SzPw
一時投下完了。

前作より短いですが、前作より執筆時間はかなり長いです。
何度も書きなおしてますが、それでも100%の『納得』は得られませんでした。
琢馬は完璧すぎるがゆえ、ものすごく書きづらいです。
億泰、アヴドゥル、ポルナレフとは大違いです(失礼w
なのでこちらに投下しました。プラス、作品批評スレでの評価を頂き、それを踏まえての本投下に臨みたいと思います。
よろしくお願いします。

93名無しさん:2011/12/11(日) 18:18:34 ID:TwrdGqaw
>>85
>「最期に見る夢にしては随分なものだと思ったけれど、『殺し』合いの舞台であなたと再会できるなんて、神様の粋なことをしたものね……」
神様“も”の誤字かと。

94名無しさん:2011/12/11(日) 19:21:06 ID:bgLBOsQI
感想は本投下時に

>>82
指先に振れる ⇒ 指先に触れる
>>83
千穂 ⇒ 千帆
>>86
写真を事が見せてもらった ⇒ 写真を見せてもらった

内容面や琢馬の認識面で間違っていると感じた箇所はありません
氏のおっしゃる通り、完璧でなければならないキャラなので、
チェックしたつもりで見逃している可能性はあります
つまり、他の方もチェックよろ

95 ◆vvatO30wn.:2011/12/11(日) 21:00:42 ID:fMy7SzPw
批評は本投下の後の方がいいようですね。
それでは現在までに上がっている点を修正し、22時頃本投下いたします。

96取柄 その1/5:2011/12/23(金) 22:11:54 ID:DSVpIrGc
『長所』と『短所』は表裏一体、ままならぬものだ。
って有名なスタンド諺があるんだけど――え、諺じゃないの?まぁとにかくあるんだよ。

で、コレって何もスタンドの法則に限った話じゃないんだよね、俺が思うに。
みんなの周りにもいると思うけど、例えば勉強も運動も得意だけど歌だけはどうしても苦手なクラスメイト。
あとは――気軽に出会える身近な存在ゆえか、パッと見が一般人と大差ないアイドルグループとか。
オールA、全てが長所の人なんてゲームで作ったプロ野球選手くらいしかいないって、普通はね。

さて、あんまり話してると今回のテーマからそれちゃうからこのへんにして。
みんなに考えて貰いたいのは『如何にして長所を短所にしないか』『如何にして短所を長所へ変換させるか』
ってことだ。ちょっと発想を変えるだけで劇的に変わると思うからね。だって表裏一体の存在なんだから。
じゃ、俺の話を聴きながら、ちょっと考えてみてくれよ。

***

97取柄 その2/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/23(金) 22:13:45 ID:DSVpIrGc
「なるほど……君は、この状況で生き残る力がないから早々に死んでしまおうと、そう考えたのかね?」
目の前で咳き込む男性のズボンに、それまで首に巻かれていたベルトを丁寧に戻してやりながら、私は訪ねた。
彼がこんな洞窟の中で首を吊るまでに追い込まれた理由を知りたかったのだ。
彼は名をサンダー・マックイイーンと言い、曰く、突発的にというか……衝動的に首を吊っていたらしい。

「あぁ……俺は何やってもダメだ。不運に取り憑かれてんだよ」
先に済ませていた自己紹介の中でもそうだったが、彼は非常に後ろ向きな発言しかしていない。
無論、こんな殺し合いに巻き込まれたら不安にもなるだろう。しかし、彼はどうも違う。
本当に落ち込んでいるのなら声なんか出ないはずだ。それがどうだろうか、ハッキリと、むしろ生き生きしているかのように自分の不幸を語っている。
口調こそネガティブな感じではあるが、誰かに聞いて欲しい、そんな話し方。言うなれば不幸自慢。
最初こそ深い情けを持って聞いていたが、次第にそれが許せなくなった。私の中に怒りが湧き上がってくるのが感覚として分かった。

「――そんな言い方をするもんじゃあないッ!」
「?」
急な大声を聞いたせいか、マックイイーン君は半開きの口を閉じようともせずぽかんとした顔で私を見る。
さすがに声を張り上げたのはまずかっただろうか……私は心の中で深呼吸をし、諭すように話し始めた。

「すまない、大声を出してしまって……だが君がやっているのは逃避だ、立ち向かってみる気はないのか?その意思が伝わってこないから私は怒ったのだ」
「いや怒るのはいいけど……それが出来てれば端からまっとうな生き方が出来たさ。法廷で自分の無罪を証明することだって」
確かに私は謝罪を求めるつもりで言ったわけではない。だが、何かしらの期待はしていた。しかし聞こえてきたのは情けない言い訳。
これが自分の息子の言葉だったなら鞭で手の甲を打っていただろう。しかしここで再び声を上げるのは素直に考えを述べた彼に対し失礼だ。

「なぜ過去を悔いているんだ?私だって過去に何も後悔がないかと言われればそうではない。だがしかし、こうして今を生きている。
 君もそうだ。今生きていることを、未来を生きることを見ていこうじゃあないか」
「そうか……そうだよな」
項垂れるマックイイーン君。だが意見に対する後ろめたさに視線を逸らしたのではない。私の言葉を受け止めてくれたのだ。
やがてゆっくりと歩き出す。うんうん、と呟いているのは彼なりに私の言葉を解釈しようとしているのだろう。
私はその様子を嬉しそうに眺め――ハッとしてマックイイーン君を押さえ込む。

「言ったそばから何をやっているんだッ!今君はこの崖を飛び降りようとしただろうッ」
「いや、だってほら、俺がいたらあんたに迷惑を」
「かけんっ!そんなものは思い込みだ!
 ……君にも親がいるのだろう?私も人の親だ、息子を死なせたくない。この場にいるかもしれんのだ」
私が人を死なせたとあらば、息子たちも悲しむだろう。いや、息子がどうこうではない。ひとりの紳士として目の前の命の火を消すことはしたくない。
いつの間にか、私の方が彼に悩みを相談する立場になっていた。
自分のこと、妻のこと、自分のことを出会って間もない相手に吐き続けた。それは最早悩みだとか愚痴と言えるものではない、ただの思い出話。
それでもマックイイーン君は嫌な顔一つせずに黙って聞いてくれている。
どれほどの時間をそうやって過ごしたのだろう、やがて話し疲れて声を出さなくなった私に代わるようにしてマックイイーン君がその口を開く。

「あんた、いい人だなぁ」
「――ありがとう。ずいぶん支離滅裂な話になってしまったが、君の心に何かしら伝わってくれれば」
「うん……伝わったし良くわかったよ。あんたの言うことは理解できた。じゃあ俺と一緒にいこう」

98取柄 その3/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/23(金) 22:14:26 ID:DSVpIrGc
私の顔は笑っているのだろう。やっとマックイイーン君が生きることの尊さを理解してくれた。

早まる鼓動を抑え切れない。
頭に血が登っている気がする。
心無しか呼吸も早くなってきた。
私の喜びに身体まで反応しているかのような錯覚を覚えた。
彼のもとに歩み寄り、手を差し出す。そして――

「ああ、一緒に行こうではないか」

――とは口に出せなかった。

血が上っているのも呼吸が荒いのも決して気のせいではなかった。
私の額からは実際に血が溢れ出している。
心臓の大きな鼓動だと思っていたのは頭蓋が鍾乳石に叩きつけられる振動だった。
彼は『私と一緒にいく』気だったのは確かだ。だがしかし私の思う『いく』とは違う。
『行く』ではなく『逝く』……マックイイーン君は現在、鍾乳石の先端に何度も頭を叩きつけていた。
彼の痛みが私にも伝わる。額から流れる血が目に入った。その痛みに思わず目を固く瞑る。
うっすらと見える視線の先。マックイイーン君は狂ったように頭を振り、叫ぶ。

「一緒に逝こうぜ、ジョースターさんッ!みんなで一緒に逝けば怖くないってッッッ」

***

99取柄 その4/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/23(金) 22:15:48 ID:DSVpIrGc
「――ハッ!?」
ガバッ、と目の前のおじ様が起き上がった。どうやら無事みたい。
きょろきょろと視線を泳がせたあと、わたしの肩を勢い良く掴み、聞いてきた。
「君は?……彼はッマックイイーン君はどうしたッ!?」

「えーっと……まず、わたしの名前はアイリン・ラポーナといいます。
 わたしがこの場に来たのは、あの人、マックイイーンさんと言いましたか?
 彼の叫び声を聞いたからです。一緒に逝けばなんとか、と。
 駆けつけた私が見た光景はこうです。頭を岩に叩きつけている彼と、頭にプロペラのようなものを生やしたあなた。
 すぐに状況を理解しましたわ。彼はあなたを道連れにして死ぬ気だったのです。
 ですから、わたしは彼の動きを止めました。彼は今手足を動かせず、頭の出血で朦朧としています」

丁寧にそう話すと、おじ様は慌てるように肩から手を離し、マックイイーンという男の手当を始めた。
なぜ?あの人は自分を襲った人間を助けようとしている?もとに戻ったらまた殺されてしまうのに?
「やめてください。その悪人はこの場で……殺してしまうべきです」
素直に自分の気持ちを伝えた。するとおじ様は驚いた表情で振り返り、そしてわたしの頬を思い切りはたいた。
「なんてことを言うんだッ!殺すだとッ!?」
はたかれた理由もおじ様が言いたいこともよくわかる。でもそれは間違っている。言わなければ、伝えなければ。
「彼は悪人です。それに――」
「それに、なんだ!?」

「わたしは……わたしは人を殺すことしかできないの。ほかの方法は知らないの」

本当なら絶対に人に話すべきではない事。それをなぜかこのおじ様には話してしまった。なぜだろう。言いたいことはそんな事じゃあなかった筈なのに。
私の言葉を聞いたおじ様は、大きなため息をついたあとマックイイーンの頬を何度か軽く叩く。
そして、目が覚めたマックイイーンとわたしを交互に見て、こう言った。

「いいか、君たちは間違っている。
 マックイイーン君は『死ぬことしかできない』と。
 そしてきみ、アイリン君は『殺すことしかできない』と。そう言ったな。
 その考え方は間違っている」

そして、言い終わるやいなや、両手を地につき、頭を下げた。
「君たちのその力で、どうか私を守ってくれないか」

何を言われているのか分からなかった。わたしは今怒られているの?謝られているの?頼まれているの?あるいはそのいずれも?どれでもない?
「――な、何言ってんだよジョースターさん。俺があんたを守るって」
マックイイーンがわたしの気持ちを代弁してくれた。同調するのには少し気も引けるけど、その言葉に続く。
「そ、そうです。死ぬことと殺すこと、これしか出来ないわたしたちがどうやってあなたを守るのですか?」

おじ様――ジョースターさんは目を細めて話し始めた。
「良いか。君たちの『これしかできない』ということを否定はしない。私にはない素晴らしい才能だと思う。
 だから、逆に考えるんだ。『これだけは誰にも負けない才能なんだ』そう考えるんだ。
 マックイイーン君。君は死ぬことしかできないと言った。ならば『死ぬほど本気になるに値する目的』を見つけてくれ。
 アイリン君。君は殺すことしかできないと言った。ならば『弱者を守る牙』としてその力を使ってくれ。
 そしてその『目的』は、『弱者』は、このジョージ・ジョースターだと。
 そう心に留めて、私と一緒にこの殺し合いに反旗を翻そうではないか」

優しく差し出された右手。マックイイーンはおずおずとそれを握り返した。
そして私も。大きな暖かいその手に包み込まれた時、不意に二人の人物が頭の中にフラッシュバックした。
私の身の回りの世話をしてくれて、私に尽くしてくれた爺や、その面影。
私のことを何も知らないまま、それでも私のことを守ってくれたマイケル、その優しさ。
ああ――だからわたしはおじ様に秘密を話してしまったんだわ。
そして、ええ。このおじ様をわたしがお守りしましょう。わたしの持てる全てをもって。

ぴちょん、という音が洞窟の中に響きわたった。
それは鍾乳石から滴った水なのか、頬から滴った涙なのか、その時のわたしには分からなかった――

***

100取柄 その5/5 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/23(金) 22:16:25 ID:DSVpIrGc
と、このへんでやめておくか。あんまり話しちゃうとつまらなくなるからね。
本人の精神を具現化したスタンド能力。受け継いだ異能を使いこなす純朴な少女。
そんな長所をもった二人を説得できたのは何も特異な才能を持っていないジョージ・ジョースターだったと。そんな話でした。
そんな奇妙な三人組が向かう先は果たしてどこか!?次回、こうご期待!なんてね。

……え?
ジョージさんの逆に考えるのはもはや能力だ?それで邪悪の化身を倒す?
オイオイやめてくれ、そんな話は聞いたこと無いぞ?
いやホントに知らないって!愛と夢?何言ってんだよ?待ってったら、知らないったら知らないって――

101取柄 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/23(金) 22:16:50 ID:DSVpIrGc
【C‐6地下、鍾乳洞 1日目 深夜】
【ジョージ・ジョースター1世】
[スタンド]:なし
[時間軸]:単行本1巻、ジョジョとディオの喧嘩の直後(言い訳無用!の直後)
[状態]:頭部に傷(応急処置済)、若干の貧血
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反旗を翻す
1:目の前の二人を保護
2:目の前の二人に守ってもらう
3:息子たちもこの場にいるのだろうか……


【サンダー・マックイイーン】
[スタンド]:ハイウェイ・トゥ・ヘル
[時間軸]:S・O単行本3巻、電気椅子のスイッチを押す直前
[状態]:頭部に傷(応急処置済)、意識がぼんやり
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:スタンスは未定
1:ジョージさんについていく
2:本当にジョージさんを俺が守れるのか?


【アイリン・ラポーナ】
[能力]:殺しのメイク(仮称)
[時間軸]:本編終了後
[状態]:健康。少し左頬に腫れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョージを守る
1:ジョージの行動に付いていく
2:マックイイーンに警戒。和解出来るときが来るのだろうか……
[備考]
見た目は本編開始直後の素顔(?)です

102取柄 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/23(金) 22:18:58 ID:DSVpIrGc
以上で仮投下完了です。1レス目にトリ付けるの忘れてたorz

地下にいるキャラは初めて?ということで書いてみました。
ジョージの思考その3ですが、参戦時期を考えるとジョセフがジョナサンと瓜二つでもわからないかなと。
アイリンがマックイイーンを拘束したのは基本支給品のペンで動きを止めたという裏設定ですが、描写を入れるとテンポが悪くなるかなとカット。
これらの点、あるいはそのほかの点に関してご意見有りましたらご指摘ください。
数日待って、予約期限以内には本投下する予定です。
※仮投下完了につき、一度ageときます。

103名無しさん:2011/12/24(土) 09:53:13 ID:S4KxZj7E
>>102
志村ー!ワムウ!ワムウ!>地下

104 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/24(土) 21:41:32 ID:sOEm3BSQ
ワムウ地下だったァーッ!恥ずかしw
25日の、おそらく日本中のカップルがキャッキャウフフしてる時間に投下しようと思いますw

105 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/24(土) 23:00:44 ID:sOEm3BSQ
……本スレに書き込めない?スレ落ちちゃってるとか?
俺のPCではレス番457で止まってるんだけど……

106名無しさん:2011/12/24(土) 23:07:58 ID:3/rshRXc
私は書き込めますので、代理投下しましょうか?

107 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/24(土) 23:12:26 ID:sOEm3BSQ
ぜひお願いします。
仮投下→本投下での変更点はありませんのでそのままコピペしていただければ転載スレも必要ないですので。

108名無しさん:2011/12/24(土) 23:21:22 ID:3/rshRXc
代理投下、完了しました

109 ◆yxYaCUyrzc:2011/12/24(土) 23:23:27 ID:sOEm3BSQ
ありがとうございます。やっぱり書き込みできん……なぜなんだorz

110 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:11:25 ID:CnGdRIRs
遅くなりましたがブローノ・ブチャラティ、スポーツ・マックス、ルーシー・スティール、(エンヤ婆)投下します。
遅れてしまって申し訳ありません。

111 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:12:04 ID:CnGdRIRs

ジャニコロの丘を歩く男女が一組。
両手で顔を覆い、震えた浅い息をしているルーシー・スティールに対して
ブローノ・ブチャラティが肩を支える以外に何もしなかったわけもなく、
自分の出身地であるイタリアやこの殺し合いに巻き込まれているかも知れない仲間のことについて少し話した。

――ここに来る直前はサルディニア島にいたんだ。バカンスじゃあなく仕事みたいなもんさ。
  知ってるかい? エメラルド海岸と呼ばれる所が美しくて……

――オレの仲間に変わったヤツがいるんだよ。でも信頼できる男だから、もしこの場にいたら合流したいんだが……
  ソイツ、数字の4を極端に怖がるんだ。4だぜ? 変わってるだろ? 良いヤツなんだがなあ。

身の上話をしたのはルーシーを落ち着かせるため、という側面が大きいものだったので
自分がギャングであることはもちろん、彼女を不安にさせそうな話は一切しなかった。
ここに来る直前、サルディニア島でチームの一員だったレオーネ・アバッキオが暗殺され悔しい思いをしたことも、
今しがた自分の目の前で見せしめとして爆殺されたジョルノ・ジョバァーナが大切な仲間だとことも。
何の力も持たないであろう一般人の彼女が知らなくていいことは隠すべき、というのがブチャラティの判断。
これ以上動揺させる必要なんて無いし、ただの少女をこんな殺し合いに巻き込むことは極力避けたかったのだ。
まるで、ヴェネツィアまでの道中で、自分たちのいる裏の世界に巻き込まないよう
トリッシュ・ウナの質問に対してずっとうやむやな回答を続けていたように。
ルーシーに話しかけながら、ブチャラティは少しずつ自分の現状について考察を始める。

……街並みはイタリアそのものだ。それにしてもどんな方法を使ってオレ達を集め、ジョルノ達を殺したのだろうか?
 主催者の男曰く、100人近くの人間がこのゲームに参加させられている。
 どうにか協力できる人材を集め主催者を打倒したいところだが、今思いつく限りでの大きな問題は二点。
 一つ目は、先の参加者(ジャック・ザ・リパー)のように殺し合いに乗った人物のこと。
 出来れば説得を試みたいが、止むを得ない場合は始末するしかないだろう。
 二つ目は、全参加者に掛けられている首輪のこと。威力の程はジョルノ達が身を持って示している。
 無理矢理外そうとするだけでなく、大きな衝撃を与えただけでも爆発するらしいから適当には扱えない……

少し言葉数が減ったのを察して、少し落ち着いたのか泣き止んだルーシーはブチャラティをジッと見つめ、どうしたの、と問いかける。
何でも無いよ、とブチャラティは囁き、あの教会で少し情報交換しないか、と続けた。

112 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:12:40 ID:CnGdRIRs
 *



先に中に入って様子を見たブチャラティが誰も居ない、と合図をした。
窓から差し込む月明かりで十分だと判断したあたしたちは、照明を探すことなく荷物を置き椅子に腰かける。

「オレはさっき歩きながら話したことがすべてだ。仲間のことも、どこから来たかということもね。良ければ君の話を聞かせて欲しい、ルーシー」

「あたしはアメリカ、ニューヨークのトリニティ教会にいたわ。ここはあなたの国なの? 見たことない街並みだったわ」

「ああそうだ。それにしてもアメリカ? なぜそんな遠くから…… 知り合いはいそう? さっきのホールで見かけた?」

主催者のスティーブンが自分の夫だなんて言えるわけがない。
さっきまで泣いていたせいで喉も唇も乾いてしまったわ。唇を舐め、唾液を飲み込み、軽く溜息をついてあたしはこう続けた。

「いなかったわ、知り合い…… 今は少し落ち着いたけれど、周りを見る余裕も無かったし」

スティーブンに釘付けになって周りを見られなかったことだけは真実。
彼がこんな残虐で卑劣な殺し合いをプロモートするだなんて信じたくない。
それでも、目の前にいるブチャラティが助けてくれなければ自分が殺されていたのも事実。
今は夫のことを隠し通すけど、いずれはスティーブン本人と話がしたい……

「君は、オレに嘘をついているな?」

心臓を掴まれたような気がした。なんで? なんで嘘がばれたの? この男は一体……?

「オレね…… 人が本当のことを言ってるかどうかわかるんだ。なぜ君は嘘をついた?
オレは君を助けたことから分かるように、殺し合いに乗る気なんてサラサラ無いぜ。君のような普通の女の子を守ったりもするさ。
さっき話した仲間を探して、主催者を打倒するのが目的だ。なあ、何か隠していることがあればオレに教えてくれないか?」

この男、ブチャラティが悪い人じゃあないのはなんとなく分かるわ。でも主催者を倒すですって? スティーブンをどうするつもりなの?
スティーブンと話がしたい。もしかしたらブチャラティはスティーブンの居場所を突き止めてくれるかも知れない。
トリニティ教会でDioを待っている時に、いいえ、もっと前から、あたしは夫のために命を懸けるって決めていたわ。
スティーブンに会わなくてはいけない。強くそう思う。いつまでも『誰かに助けてもらうルーシー』じゃあない、
自分の手で、自分とスティーブンを守らなければいけない。そのためには、この人と一緒にスティーブンの居場所を探し出す!

「そうだわ。あの、主催者の男は見たことあるかも。ごめんなさい。SBRレースの主催者のスティール氏でしょう?」

何も今すべてを教える必要はないわ。あたしのファミリーネームも隠したままでいい。
スティーブンに会うために、ブチャラティと行動すればいいだけよ。彼が知らなくてもいいことは隠すべき。

「教えてくれてありがとう。ところでSBRレースって何だい? F1みたいなヤツ?」

F1って何だろう。よく分からないけど、外国の方だからSBRのこと知らないのかな?
それよりも、何か、遠くの方から近付いて来るような音が聞こえてきたけど……

「君も気付いた? あれは車が走ってる音じゃあないか?」

車ってあの? そんな珍しいものがこの近くにあるの? 窓の外を見ても、車が走っているのは分からないわ。

「ちょっと様子を見てくるよ、オレの荷物はここに置いていく。話の続きは後にしよう」

ブチャラティは立ち上がると教会の外へ出ていった。あたしは、尋問から解放されたような気がして溜息をつく。
ずうっと放っておいた荷物を確認しながら、見つからないように外の様子を見ておこうかな。

113 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:13:57 ID:CnGdRIRs
 *



教会に面している少し広い道路に出たブチャラティはルーシーとの会話を思い出しながら車が通るのを待っていた。
助けた時はただのか弱い少女だと思っていたが、涙を拭いてからは力強い意志を感じさせる目をしていた、と評価する。
些細な嘘については――顔の汗の変化だけでなく、唇を舐めたり喉を鳴らしたりする仕草を見て、
彼はルーシーが嘘をついていると判断したのだが――取るに足らないことだと考えることにした。 
少しすると、教会の方に車が近づいてくる。ローマナンバーのワゴン。運転しているのは男。薄い色のスーツに、黒い斑点。
自分の服装に少しばかり似ている、とブチャラティは男を見て考えた。その運転手は、日本のタクシードライバーではないが、
手を上げて道端に立っているブチャラティを見つけると車を止め、荷物を持って降りてきた。

「おう兄ちゃん。オレに何か用か? オレがとんでもねえ悪人ならテメーのこと引き殺してたぜ」

「そうか、悪人ではないんだな? オレはこの殺し合いに乗らない人を募っている」

「オレさぁー教会探してたんだよ。教会って大体納骨堂あるだろ? 隣接した墓地は見つからなくても、納骨堂のある教会は多い」

「何言ってるんだ?」

「でもそれよりオレ今すげえモノ見た気分だぜェェー! 墓地や納骨堂に行かなくても死体を手に入れられるんだからな」

「今何て……」

『闇の中から蘇りし者リンプ・ビズキット…… 我とともに来たれ…… リンプ・ビズキット…… 闇とともに喜びを……』

怪しい呪文を唱え始めた男に対してブチャラティは警戒を強める。
いつでもスタンドを出せるつもりでいるし、そのための間合いを詰める準備もする。
話を聞かないスポーツ・マックスと言う名の囚人は、目の前のブチャラティへの興味が尽きない。
彼のスタンドの名は『リンプ・ビズキット』。ホワイト・スネイクに与えられた死骸を操るスタンド。
――彼と直接戦ったエルメェス・コステロはそのスタンド能力を『透明のゾンビをつくり出すこと』と表現した――
今のブチャラティはヴェネツィアでディアボロに殺される間際にジョルノから生命エネルギーを与えられた、生ける屍。
心臓がとっくに動いていないことも、呼吸を全くしていないことも、死骸使いにはすべてお見通し。

「何だテメエェェーー! 死体じゃあねーのかよォォオ!」

114 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:14:29 ID:CnGdRIRs
ブチャラティは自分が既に死んでいることを看破され驚いたが、
スポーツ・マックスは目の前の死体が操れないことにブチャラティよりも大きな衝撃を受けた。
しかしスポーツ・マックスは一つ勘違いをしていた。本来、彼が操ることが出来るのは生物の死骸。
ブチャラティの身体には生命エネルギーと魂が残っているのだ。生者を操るのは、『リンプ・ビズキット』の領域では無い。

「やれやれ話を聞いてくれ」

「そうだ、殺れば操れるはずだッ! でも何でテメエの身体は動いてるんだよォー!」

尻ポケットに隠していた切れ味の良い鋏を手に、ブチャラティに向かって急接近。
元ギャングの囚人は、刃物を振り回すというあまりスマートではない自身の殺り方には少々うんざりしていたが、
ここで退くよりはこの死体を手に入れて透明ゾンビに使える人材を確保しておく方が有益だと判断した。
どんどん距離を詰めていき、鋭い鋏をブチャラティの身体に突き刺す。
しかしスポーツ・マックスの右手には男の腹をつらぬいた感覚が無かった。
ブチャラティの腹には刺し傷では無いスキ間がポッカリと空いている。
『スティッキィ・フィンガーズ』、それはジッパーを繋げて空間を造るスタンド能力。
刺された腹のジッパーを閉じてしまえば、たちまち男の右手は鋏ごと腹から抜け出せなくなってしまった。
ブチャラティはもう一度だけ殺し合いゲームについて男に問うたが、
恨み辛みを零すだけのイカレた玩具のようになってしまったスポーツ・マックスを助けることもせず、
首輪に触れないよう細心の注意を払って男の全身をバラバラにした。腹に埋まったままの鋏と右手も後から取り出してやった。
一度殺し合いに乗ってしまったら、元に戻れない哀れな男もいるのだと感じながら、
いつもの掛け声の後にアリーヴェ・デルチ、と叫び、一仕事を終えた。

バラバラの死体を見て、ブチャラティはこの惨殺死体がルーシーの目に入ることを想像した。
やっと落ち着きを取り戻した少女にこんなものを見せるわけにはいかないな、と結論付け、
幾つのも部位に分かれてしまった死体をパズルみたいに元の形へ戻した。
その後近くの柔らかい地面にスティッキィ・フィンガーズでスキ間を造りだし、死体を埋め、鋏を墓標の代わりに刺してやった。
自分を襲ってきたゲームに乗った悪人だったが、こんな所に呼び出されて狂ってしまったのだと思い、わずかに同情した。
男が乗って来たワゴンに乗って移動する方が人探しには有効だと考え、
スポーツ・マックスのデイパックを拾ったブチャラティはルーシーを呼びに教会へと戻っていった。

115 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:15:02 ID:CnGdRIRs




ブチャラティが出て行くとすぐにあたしは荷物を調べることにした。
パンや水、地図等をデイパックの中から外に出していくうちに、余った紙が一枚。
そっと開いてみると、ただの小さな紙切れの中から鉈。これ、良く見たらさっき使った、Dioの首を切り落とした鉈だわ。
ホット・パンツが下水道から『肉スプレー』で出てきたように、
ものの大きさを変えるスタンドでこの紙切れにしまっていたんだろう。
この鉈のことを知っているのはスティーブンしかいないから、彼があたしのために持たせてくれたものなの?
確かにあたしは聖なる遺体集めに携わってから、多くの人を手に掛けてきた。
夫を守って、二人で幸せになるために制止を振り切ってDioの首を手に入れた。……いざという時の覚悟ならもう出来ているわ。

そうだ、窓の外はどうなっているかしら? 意外と近くに止まったみたいだから見えるかも。
それにしても、あんな珍しい車を見るのは初めてだわ。男が出てきたけど、口の動きもここからなら見える……
『殺し合い』『納骨堂』『死体』『リンプ・ビズキット』
あッ! あの男刃物を隠し持って…… ブチャラティが危ないッ! ……刺されても平気なの? お腹に刺さっているのに?
それより、ブチャラティの隣にヒトのようなものがいる?
あの男まだ何か言ってるわ。 『死体』『お前が死体』『死んでいる』
どういうことなの? ブチャラティが死体? 奇跡でも起きなければ、死体が動くはずなんて無いわ。
そして、あっと言う間にバラバラになったみたい。たぶんあれはスタンド能力!
ブチャラティの隣にいるヒトがやったようにも見えるけど、怖ろしい能力だわ。
死体に何かしているようだけど、位置が低すぎてよく見えないわ。でも一応片付いたし、彼はそろそろ戻って来るかしら。



 *



教会に戻って来たブチャラティは、行く時には無かったデイパックを背負いながらルーシーに車が手に入ったことを告げた。
バラバラにして土に埋めた男の遺品だ、とは言えずはずも無く、乗っていた男のことは一切話題に出さなかった。
ルーシーとしても、一部始終を見てしまったのだから、特に何も聞く必要が無いと思い、わかったわ、とだけ返事をした。
ワゴンに乗りこむと、ルーシーは初めて乗る車に少なからず興味を持ったが、
それよりも先に、隣で運転している男についてどうしても一点だけ調べたいことがあった。
月明かりに照らされたブチャラティの顔をまじまじと見つめる。血の気の無い、土気色をしている。
ギアを握るブチャラティの右手に自分の手を上から重ねる。死体のように冷たい。
どうした、と聞く男に、何でも無いわ、と囁き、人差し指と中指を彼の手首に当てる。彼女が想像していた通り、脈は無い。
生きているかどうかを確かめた後、ルーシーは唇を噛み、また浅い溜息を付いてから、素朴な疑問を投げかけた。



「どうしてあなたは死んでいるの?」

116 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:15:44 ID:CnGdRIRs
 *



――オレ、何してたんだっけ? そうだ、教会に死体を探しに行くんだった……
  死体を操って、オレが殺し合いに勝ってやる…… ああ、ここに落ちてるのオレの鋏じゃねーか。もうすこしで教会だ……

「ヒヒヒヒヒヒヒヒィィィ、あの承太郎が死んだわァァァァァ DIO様もさぞ喜んでくだしゃるじゃろう」

――なんだこのババアうっせーなァ、コイツも教会目指しているのか。

「ハア、ハア、しかし、年寄りにはこの坂道は億劫じゃのう…… 高台の上からなら、地図にあったDIO様の館がどこに
あるのかすぐ分かると思ったんじゃが、教会を見つけたのは好都合じゃ。納骨堂には我が『正義』の操り人形の元がたくさんいるからのォォ〜」

――ババアも納骨堂狙いかよ…… 怪しい感じのするババア系ババアだが声かけてみるか……
  おいバアさん、あんたも教会に用があるのか?

「ヒィィィー疲れるわい、教会まであと少しじゃ」

――聞こえてねーのかこのババア しょうがねえもっと近づいてから声かけるか

「ケエェェェェッッーー! あれはわしがジョースター達をブッ殺すために磨いておいた鋏ィィ! どうして浮いているんじゃ?」

――鋏が浮いている? 何言ってんだこのババア?

「ここに来てから我が『正義』を発動するにはなぜかいつもよりもしんどいのじゃが、この鋏が浮いている辺りだけでも霧を巡らせてみるかのォ」

――なんだこの霧 もうメンドくせえなこのババア…… なんか喉渇くしよォ、ババアの脳味噌を喰らえば……

「グエェッ!」


いくら『正義』の霧を自分の周囲に張り巡らせたところで、傷ついた死骸は一体も無いので、死霊使いとしての効果は無い。
スタンド使いにはスタンドが見える法則があるが、『透明なゾンビ』になったスポーツ・マックスには誰の目にも映らない。
教会の近くでブチャラティに埋められたスポーツ・マックスは、一度バラバラにされ心停止した後、土の中よりゾンビとして復活。
同じく死骸を操るスタンド使いであり、納骨堂の死体を求めに来たエンヤ婆と教会付近で遭遇。
噛みあわない会話を一通り満喫した後、しびれを切らしたスポーツ・マックスが喉の渇きを満たすことで二人の出会いは幕を閉じた。
エンヤ婆と呼ばれた女の首はすべてスポーツ・マックスの胃の中に収まってしまい、彼女の首輪は地面に抜け落ちた。
吐き気を催すようなピチャピチャ、ズルズルという咀嚼音がジャニコロの丘の教会前に響く。
ゾンビに喰われた哀れな老婆は、透明ゾンビとしての新たな人生を歩み始め、スポーツ・マックスの後を付いて歩く。
口の周りを紅く染めたゾンビは、自分がゾンビだと気付くこと無く、次の獲物を探して闇の中を徘徊する。




【エンヤ婆 死亡】

117 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:16:20 ID:CnGdRIRs
【F-2 ジャニコロの丘/1日目 深夜】



【ブローノ・ブチャラティ】
【スタンド】:『スティッキィ・フィンガーズ』
【時間軸】:サルディニア島でボスのデスマスクを確認した後
【状態】:健康 (?)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×3、不明支給品1〜2(未確認)、ジャック・ザ・リパーの不明支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】 基本行動方針:主催者を倒し、ゲームから脱出する
1.ルーシーと情報交換・会話
2.ジョルノが、なぜ、どうやって…?
3.出来れば自分の知り合いと、そうでなければ信用できる人物と知り合いたい。


【ルーシー・スティール】
【時間軸】:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
【状態】:健康・混乱
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、鉈
【思考・状況】
1.スティーブンに会う
2.ブチャラティに疑問


【スポーツ・マックス】
【スタンド】:『リンプ・ビズキット』
【時間軸】:エルメェスに襲われる前
【状態】:健康 (?)
【装備】:なし
【道具】:エンヤ婆の鋏
【思考・状況】
1.渇きを満たす



【備考】
・スポーツ・マックスのランダム支給品は『エンヤ婆の鋏』と『ローマ近くの村にあった車』でした。
・スポーツ・マックスは自分が死んだことに気付いていません。また、ブチャラティのことも忘れています。
・エンヤ婆の参戦時期はJ・ガイル死亡後でした。
・F−2にエンヤ婆の首輪が落ちています。

118 ◆I5Ppp/MaHQ:2011/12/31(土) 01:20:22 ID:CnGdRIRs
投下完了です タイトルは未定ですが、どこかに「ルーシー」は入る予定

以下これはどうかな?って自分で思った点です(他にもあればどんどん挙げていただければ嬉しいです)
・一度死んだスポーツ・マックスの扱い(透明ゾンビ)
・エンヤ婆の扱い(首輪無し透明ゾンビ)
・ルーシーの思考(前話で泣いていたけど、夫のため覚悟を決める)
透明ゾンビってどうしたらいいのかな、と思って仮投下スレに投下しました。

119名無しさん:2011/12/31(土) 10:32:38 ID:8dLAbsrg
仮投下乙です。感想は本投下時に

まずは誤字について
>>111
仲間だとことも → 仲間だということも
>>113
引き殺す → 轢き殺す

ルーシーについて
原文のままだと、夫に会えたときブチャラティはどうするかが曖昧という印象があります
>>112 スティーブンをどうするつもりなの?
自分としてはこの一文が好きなので、これに重きを置くなら
 ブチャラティを利用してでも夫に会いたい。もしも夫に危害を加えるつもりなら、いい人であるブチャラティでも出し抜かなければならない
そういう心境になるかと思います

情報を集めるためにもほかの参加者と接触しますから、SBR参加者と会う可能性があります。
自分がスティールの妻だということがバレ、それを理由にして危害を加えられる可能性があること。その場合ブチャラティにどう釈明するか
これらは嘘をついた時点で考えておいた方がいいかもしれません

ルーシーの考え方次第ですが、嘘を貫き通せないと判断し、スティールが夫だと説明せざるを得ないかもしれない
その場合もブチャラティを信用して、全部打ち明けるのか
まだ信用できないから、一時の保身のため「スティールは夫だが、自分はあの人の本性を知らなかった」と、自分の無知ぶりをアピールするのか
あるいはほかの説明をするのか、という問題点があると思います

H・Pや大統領の能力からの連想で、舞台のスティールが偽物である可能性を考えておいた方が「ともかくスティールに会わなければ」という考えの説得力になるかと

あくまで私個人の意見ですので最終的な判断は氏におまかせします

透明ゾンビ両名の扱いについては問題ないと思います
ホワイトスネイクの命令についても、おいおい思い出す?

氏があげられていない点では
ブチャラティとルーシーが教会を離れた理由が謎でした
支給品の確認、ルーシーとの情報交換が終わっていないと感じたので。

あと、エンヤ婆の支給品の所在でしょうか

120復讐の名の下に ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/01(日) 10:49:38 ID:oteYX/Tk
私は空っぽだった。
立っているのか倒れているのか、生きているのか死んでいるのか、それすらひどく曖昧だった。
ほんの少し前に見た、現実味のないバカげた映像だけが何度も何度も脳裏を廻る。
あの方の――ジョルノ様の、首、が。

「……あ、あ、アアアアアァァァァァァァァァァアアァァァァ!」

堪らず絶叫し、床を殴りつけていた。あらん限りの力を込めて打ちつけた拳は、磨き抜かれた床にぴしりと小さなクモの巣のようなヒビを入れた。

(何故、何故、なぜ!?)

あの方が、ジョルノ様が、あんな――あんな。

(何故――殺されなければならなかった?)

あの方の涼しげな声を憶えている。
あの方の凛とした眼差しを憶えている。
あの方がしてくださったことを……憶えている。

「ジョルノ、さま」

ぽとりと落ちた声は、まるで自分の声じゃないみたいに弱々しくてかすれていた。
そのとき、視界の端に何かが映った。

(荷物……支給品)

そうだ、あの男。あの気の狂ったようなジジイが言っていたこと。

「バトル・ロワイアル……」

何でも? 願い事を叶える? 望むもの全て?

――願えば、人が生き返るとでも?

121復讐の名の下に ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/01(日) 10:51:25 ID:oteYX/Tk
そんなことはあり得ない。
それは私の人生において常に突きつけられてきたことでもあり、あの方に救って頂いたことでもある。
殺された姉、その仇を取ってくださったジョルノ様。
私はあの方に救われ、あの方についていこうと思った。
それなのに……殺されてしまった。奪われてしまった。
あの方の刃となり、楯となり、あの方の正義に尽くしていくために生きていた私だけ、残ってしまった。

「……望むことはたったひとつ」

私は誰だ?
シーラE。Eは――復讐(エリンニ)のE。

「あの方を奪ったこと、地獄で後悔しろ」

そのために邪魔なもの、力づくでもいい、薙ぎ払ってやる。
あのクソジジイをブチ殺してジョルノ様の仇を取る、そのためならなんだってやってやる。

私はシーラE、復讐者のシーラE。

そう決めて、私は辺りを見回した。
室内だが、窓などは見当たらない。出口を探さなければ。
暗闇に目を凝らすと、壁に掛っている絵に気がついた。
上半身裸の男が、生首を掴んでいる絵だ。なんだか妙に滑稽に見える。
さらに視線を巡らせると、扉があった。
あのクソジジイからの手土産だというのが気に食わなかったが、荷物を改めてこの部屋を出ることにする。さしあたっての手掛かりはこれだけだから。

「――行こう」

デイパックを背負い、扉に手をかけて、ふと思いついた。
あのクソジジイの首を、あの絵のように切って落とそう。
ジョルノ様を手に掛けた罪を思い知らせてやろう。


そのとき、きっと私は微笑んでいた。

122復讐の名の下に ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/01(日) 10:52:34 ID:oteYX/Tk
【A-2 ルーヴル美術館内・1日目 深夜】
【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:利き手にダメージ(小)、健康、スティーブへの復讐心で視野狭窄気味
[装備]:素手
[道具]:基本支給品一式、確認済みランダム支給品1〜2(武器ではありません)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
1.スティーブを探す、殺す
2.邪魔する奴は容赦しない
[備考]
参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです
元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません
名簿を見ていますが、一通り眺めただけで今は深く考えられていません
行き先は次の書き手様にお任せします

123 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/01(日) 11:01:39 ID:oteYX/Tk
あけおメメタァ!ということで新年一発目の投下失礼しました
おかしな部分等がなければ、そのまま本投下したいと思います
動きも何もないですが、処女作ということで大目に見て頂ければ幸いです

124名無しさんは砕けない:2012/01/01(日) 11:17:32 ID:tcjD7SME
仮投下乙。感想は投下時に
しかし書き手さんの質も量もすごいな……

一点だけ指摘。
現時点では名簿が配布されていません。
第一回放送時に配布されます

125 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/01(日) 11:44:58 ID:oteYX/Tk
ご指摘ありがとうございます、うっかりしてました……
本編中の描写は問題なさそうなので、備考の当該部分を削ります
夜まで待って、他に問題点がなさそうであれば投下に行きます

126名無しさんは砕けない:2012/01/01(日) 12:30:40 ID:ojhYVoc.
投下乙です
一つ指摘ですが
スティーブとは?
スティーブンもしくはスティールかと思います

127 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/01(日) 15:33:22 ID:oteYX/Tk
ご指摘ありがとうございます、おそらく打ち損ねです
そちらも合わせて修正しておきます

128 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:48:49 ID:HKCzni8A
ウィルソン・フィリップス、ヌケサク、ティッツァーノ
投下します

129夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:50:58 ID:HKCzni8A
白い壁、白い天井、清潔そうな白いベッド。
ぴしりと整えられたその部屋には、しかし誰もいない。
その部屋だけがそうであるなら『そういうこともある』と大した違和感もなかっただろうが、見てきた部屋、部屋、部屋……大部屋、個室、医局、ウロウロと歩きまわっても人どころかネズミ一匹見当たらない。
病院というものにあまり縁のない人生を送っていたティッツァーノだが、これは違和感どころの話ではなかった。
『異常』だ。
人間が、生きているものが見当たらないなんて。

――ああ、異常というなら何もかも、か。

常ならばきっと人で溢れているであろう待合ホールで、ティッツァーノは安っぽいソファに身を預けてひとりごちた。

「バトル・ロワイアル――殺し合い、か」

首に付けられた金属製の首輪に触れる。
あれは見せしめだ。わかりやすく、とびっきり悪趣味な。
ボスからの指令を受けて、あの首を吹っ飛ばされた金髪の少年――ジョルノ・ジョバァーナと裏切り者の護衛チームを追っていた。
多少の誤算はあれどジョルノ・ジョバァーナを追い詰め、あと一息で始末できるといったところで、ナランチャ・ギルガのスタンドに蜂の巣にされて……そこまでは記憶している。

「――なぜ、わたしは生きている?」

自分は、スクアーロの楯になったはずだ。
撃ち込まれた機銃の熱さ、喉奥にこみ上げた嫌な吐き気も思い出せる。
あの状態で『死ななかった』『助けられた』とでも?
否、死んでいただろう。辛うじて生きてはいたが、どう贔屓目に見たって手遅れにもほどがあった。
それこそ魔法のように――治すというより元に戻すようにでも出来なければ、自分がこうして生きていることなどなかったはず。
それ以外にも、考えるべきことは多岐にわたる。
あの老人が『ボス』なのだろうか?
『ボス』は何故姿を見せた? 自分を治したのは何故? 殺し合いをさせるため?
殺し合いとは? 文字通りの意味なのか?
考えれば考えるほど、わけがわからなくなってくる。少し時間が経って落ち着いたと思っていたが、湧き出てくる疑問は尽きない。

――情報が少なすぎる。

130夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:53:05 ID:HKCzni8A
情報は生命線だ。単純な武力の保有や強弱よりも、情報の有無の重要性は計り知れない。
非力な己であるからこそ、尚更。 
この現状がボスないし何者かの『スタンド能力』の行使によるものであると、ティッツァーノは推量している。
そうでなければ説明がつかない。痛みと失血に意識がブレた次の瞬間、ティッツァーノは全くの五体満足であのホールに居た。
あの場所では少なくとも二桁を超える人数がひしめき合っていたように記憶している。
背筋がゾッと総毛立つような異様な気配も、戸惑いを隠せない単なる一般人のような気配も、多種多様に混じりあってさまざまな人間がいたように感じられた。
呆気にとられていたとはいえ、仮にもギャングとして裏社会を生き抜いてきたのだ。その辺りを読み違えているようではお話にもならない。

「――スクアーロ」

相棒の名を呟く。彼はどうしただろう。
最後に見上げた彼は、決意に満ちた目をしていた。
彼は強い。
精神的な脆さが彼の弱点でもあったが、弱さを乗り越えられたなら、彼は。

「彼を、探しに行こうか」

探して、合流して、これからのことはそれから考えようか。
死にかけだった自分が連れてこられたくらいなのだから、彼もどこかにいるかもしれない。
……否、こんなところにはいないほうがいいのか。
いてくれたらいいと思うのは、ティッツァーノ自身が少なからず困惑しており、すがるものを求めていることから端を発する歪んだ希望に過ぎない。
この悪趣味な『ゲーム』……ボスの思惑がどうあれ、自分には仮にも彼を手に掛ける己の姿など想像もつかない。『ゲーム』の盛況をボスが望むのなら、それは彼と力を合わせて行うべきだ。
いや……そもそものところ、あの老人が『ボス』と決まったわけでもなかったか。
支給品のデイパックから、片手に納まる程度の拳銃を取り出す。銃が紙から転がり出てきたときは驚いたが、それもなんらかのスタンド能力と考えれば納得がいく。
ざっと検分はしてある、新品同様で使用にもまったく問題がなさそうだ。問題と言えば、別の紙から出てきた予備弾薬が一ケース分50発しかないことくらいだろう。
弾が尽きる前に彼と合流するか、何か別の護身用武器を手に入れなければなるまい。
病院を探索している際に失敬した簡易医療品を詰めたデイパックを肩に引っかけ、安ソファから立ち上がる。
ガラスの割れる耳障りな甲高い音が響いたのはそのときだった。

「ひっヒィイィ〜〜〜ィ〜〜〜ッ! たっ……助けてくれェ――ッ!」

落ち着いて、銃を構えて振り向く。
自分は義憤に燃える正義の味方でもなければ、慈善味溢れる聖人でもなんでもない。情報をくれる相手が飛び込んできてくれたのだから、それ相応の持て成しを図るだけだ。
そこには、何があったのかボロボロになったスーツを着た小太りの中年親父が、ティッツァーノに向かって助けを求めてこけつまろびつヨタヨタと走り寄ってきていた。

「止まれ、それ以上近づくな」
「ヒッ」

ビクリと男がたたらを踏む。
しかし、尚もチラチラと己の背後を気にしているようなそぶりを見せている。
そしてティッツァーノが問いかけるよりも早く、男はギャアギャアと喚きだした。

131夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:54:25 ID:HKCzni8A
「わ、わしを誰だと思っとるんだ!? ウィルソン・フィリップス上院議員だぞォ――ッ!!
 善良な市民にはわしを助ける義務があるッ!!」
「生憎、善良でも市民でもないもので」

無駄弾は正直撃ちたくないが、この興奮状態の親父相手にどれだけの会話ができるか怪しかったので、牽制をかけるために一発撃ち込んでやる。
乾いた音を立てた足元に、上院議員だなんだと喚き立てていた男が今度こそ硬直した。

「質問します。あなたに拒否権はありません」
「ぐ……う、うう……」
「何に追われているのですか?」
「ば、化け物だッ、女の顔に男の顔のある化け物ッ! こんなわけのわからん催し物に巻き込まれてさぞ難儀しているだろうと助けてやったのにッ! ワシに齧りつきよったッ!」
「そいつは武器を持っていますか?」
「い、いや……物凄い怪力で噛みちぎられて、治療と助けを求めてここまで走ってきたッ」
「ふん……そうですか」

ごく短い会話でしかないが、得られた情報は幾つもあった。
この中年親父を襲ったのは、おそらくスタンド能力者だろう。少々能力が分かりにくいが、怪力を発揮するとかいう能力なら近寄らずに叩けばいいだけだ。
そして、やはりこれは『ボス』がなんらかの意図の上で始めたことに違いない。
ウィルソン・フィリップスなどという名前に聞き覚えはないが、破られ血に汚れたスーツは古臭い仕立てながら上質なものに見える。上院議員だという身分も、この興奮状態で軽々に吐けるウソではない。
権力者、スタンド能力者、そして『殺戮ゲーム』。
見世物か何かのつもりなのだろう。表舞台での邪魔者を、ひっそりと攫い血に塗れた遊戯で狩る。趣味の悪い権力者が好きそうなことだ。
報酬の話もそれなら頷ける。この舞台の規模から考えても、相当な額が動くだろう。
ティッツァーノが少しばかり思考に沈んでいると、いよいよ追い詰められてきたのか目を血走らせて自称上院議員がじりじりとにじり寄ってくる。

「お、おい若造ッ、結局どうなんだッ? あの化け物を殺せるのかッ?
 殺せるんだろうッ! ああそうなんだろう!?
 金なら腐るほどあるッいくらでも払ってやる!
 それとも地位か? 名誉か? 何が望みだッ?」

パンッと乾いた音がして数瞬後、上院議員は屠殺される豚のような悲鳴を上げて崩れ落ちた。

「おしゃべりなひとですね、あなた」
「……うぐ、ヒィ〜、ひィ〜、ひ、ヒヒヒヒ……けひっ、クヒヒヒヒッ!」

上院議員のごく一般的な一般人の精神は、度重なるストレスに耐えかねているようだ。
片足を撃ち抜かれ、床の上に崩れ落ちた姿は哀れな豚以外の何物でもない。
だが、ティッツァーノは別段その姿に憐れみなど感じない。豚が、豚らしくなっただけ。
痙攣したような笑い声はあまり長く聞いていたいものでもないが。

「さて……どう出る?」

己がこのゲームにおける『獲物』の側であるとは考えたくないが、ティッツァーノには客観的に見て『命令を遂行できなかった』『しくじった』前歴がある。
ゆえに、ボスが制裁を加えることを考えているのかもしれない。命を救ってまで殺そうというのはどうにも整合性がないが、これが見世物であれば話は変わってくる。
獲物は、生きが良いに越したことはないと決まっているものだ。
しかしティッツァーノは、ただ狩られるだけの哀れな獲物になり下がるつもりなど微塵も無い。

「逃げるか、待つか……」



***

132夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:55:28 ID:HKCzni8A
ヌケサクは酷く上機嫌だった。
なにせあの憎たらしい『空条承太郎』が、首をブッ飛ばされて! 死んでしまったのだ。
舞台上で騒いでいたジジイに見覚えはなかったが、DIO様の手下連中の中には己と顔を会わせたことがないやつらもいくらだっているだろう。
雰囲気や着ている服が違ったような気もするが、そんなことはこのザマミロ&スカッとサワヤカな気分の前には些細なこと。
ヌケサクは、ひとつ鼻歌でも歌いだしそうなイイ気分だった。

「DIOさまァ〜あなた様の大事な部下であるオレを助けてくださったのですねェ〜ッ!」

更には堂々たる『殺戮ゲーム』の開催宣言!

「お役に立ってみせますともォ〜〜〜ッ!」

ヌケサクは笑いが止まらない。
つい先ほども、見るからにマヌケそうな中年親父が『引っかかった』。
最初の獲物だからとじっくりいたぶってから殺してやろうと思っていたのに、意外にも素早く抵抗され取り逃がしてしまったのは片手落ちだった。だが、逃げた先にあるのは病院くらいだ。
か弱いただの人間どもがいくら群れたところで、オレ様の前にはクズ……ゴミ……カス……ッ!
ヌケサクは己の絶対の優位を疑うことなく、さながら『帝王』のようにふんぞり返って歩いていた。
目指す病院の影が近づいている。




***




「ひひっ……わしはァ……ウィルソン・フィリップス……じょういんぎいんだぞォ……じょおいんぎいん……きひひッ……」
「なんだあ? 誰もいねえのか?」

ヌケサクが踏み込んだ病院の中は、蹲ってなにやらブツブツと呟いているさっきの中年親父がいるだけだった。
やたらに血の臭いがするとヌケサクが鼻をひくつかせて親父をみると、どうやら足を撃たれているようだ。DIO様の意図のわからない一般人が、わけもわからず怯えてやったに違いない。
この親父を取り逃がしてから、ものの10分と経っていない。その間、銃声は二発聞こえた。
ヌケサクの獲物はもう一匹いる。

「オレ様は不死身の屍生人だァ〜〜そんな豆鉄砲で撃たれたってヘッチャラだぜェ〜〜?」

わざわざ大声で言ったのは、おそらく隠れて怯えているだろう獲物に対してだ。
ヌケサクだって撃たれれば痛い。痛いが、それだけだ。
頭を潰されたり体をバラバラにされたり、その他身動きのとれない状態にでもされない限り、ヌケサクの優位は揺るがない。
しかし、獲物はすっかり怯えて縮こまっているのか、物音ひとつ聞こえてこない。

「かくれんぼかァ〜〜? どこまで逃げられるかなァ〜〜〜〜?」

ヌケサクの誤算は、病院という人の集まりやすい場所にも関わらず、この建物内には人の気配がほとんどしない。無力な人間を思うさま狩れると思っていたヌケサクは、ホンのちょっぴり落胆していた。
そして勝算もひとつ。他に気配がしないのだから、『それ』は獲物に他ならない。

「オレ様にはわかるゥ〜〜そこの物陰ッ!」

出入り口からの対角線上、奥へ向かう通路の壁の端から、白い布がちょっこりとみえている。
隠れて様子を窺っていたのだとしても、えらくお粗末極まりない。
案の定、その白い布は慌てたように引っ込んだ。ぱたぱたと走り出す足音が響く。
速度は……遅い。女か子供だろうか。若い女ならしめたものだ。景気づけの食事にするもよし、腕のひとつもへし折っておとなしくさせて、DIO様への手土産にしてもいいだろう。
ヌケサクはもう中年親父には見向きもしなかった。こんな脂ぎった親父より、新しい獲物のほうが何倍も『美味そう』だ。
屍生人としての能力があれば、追いつくのは容易い。逃げた人影を追って通路を走る。広い病院の中、あまり目を離して小部屋にでも隠れられると面倒だ。
人影は、まさかこんなにも早く追いつかれるとは思ってもいなかったのだろう。慌てたように振り返った際、長い髪が乱れていた。

(ラッキィ――――ッ! オレ様はツイてるッ!)

背格好もそれらしく、妙齢の若い女に違いないとヌケサクはほくそ笑む。これは天が己に味方しているとしか考えられない。

(ちょっとくらい『味見』してもイイんじゃあないかァ〜〜ッ?)

白い影の逃げ込んだ先は、突き当りの部屋のようだ。部屋の中で怯えて震える様が目に浮かぶ。
さっきの親父のように逃がしては堪らないと、ヌケサクは勇んで扉を押しあけた。
……ヌケサクが知覚できたのは、そこまでだった。



***

133夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:56:27 ID:HKCzni8A
ティッツァーノは、目の前の動かなくなった白い塊を見て嘆息した。
こんなにも簡単に捕まえられるとは思ってもみなかった。もちろん、多少の予備知識と仕込みはしていたが、それにしたって。

「こいつ、まぬけというほかありませんね……」

白い人影――シーツを纏っていたティッツァーノは、すでに身軽な元の格好に戻っている。デイパックはしっかりと担ぎ、片手には護身用の銃をしっかりと携帯し、万が一の逃走路の扉も開け放して準備は万端だ。
作戦はこうだった。
扉を開けて入り込んできた隙を狙って、シーツで誤魔化しながら抱えていた消火器でまず一撃。
よろけたところに被っていたシーツを目くらましと動き封じにかぶせ、頭部を狙って二撃、三撃。不死身だなんだと豪語していたわりに、あっけなく沈黙したものだ。

「まあ多少の油断はしてもらいましたが――」

ふと、塊がかすかに身動ぎする。念のため被せたシーツの端々を結んではいるが、そんな些細な拘束でいつまでも持つわけもない。

「ぅお……あぁ? 見えねえ! 見えねえよぉ!」

じたばたともがく姿は妙にコミカルだ。しかしティッツァーノは冷静に告げた。

「質問します、拒否権はありません。余計なことは言わないほうが身のためですよ」
「あ!? なんだァァテメェェェ男かよッ! ブッ殺してやるッ!」

パン、と軽い音が響く。

「あギャッ……い、いデェ〜〜ッ」
「いきがるのも程々にしないと命をなくしますよ」

撃ち終わって、ティッツァーノは気づく。こいつからは血が流れない。
撃った位置にもよるだろうが、ティッツァーノは生かしも殺しもしない四肢を狙って撃った。そしてそれはこの小男の体にキッチリあたっている。しかし、血は出ない。でていたとしても、シーツにも滲まないほどのごく少量だということ。
まさか、あの世迷言が真実だとでもいうのだろうか?

「あなたの知っていることを洗いざらい喋ってください。ウソをついていると感じたら一発ずつブチこみますからそのつもりで」
「ぐ、ぐぐ……」

尋問は難航した。
というのも、この小男の話していることはティッツァーノにとってすべからく『夢か妄想か』としか思えないようなことばかりだったからだ。
100年の眠りから覚めた不死の王、吸血鬼たる主。
小男がいかにしてかの吸血鬼の僕となったか。
主の偉大さ、強さ、恐ろしさ。
そしてこのゲームが主の『娯楽』の一環であるとの主張。
この場において有用そうな情報といえば、吸血鬼『DIO』の話だろう。
限りなく譲歩して、この話がすべて真実だと仮定して……もしそんな化け物がいるのなら、一刻も早く対策を練らねばなるまい。
人を食うものと人間と、相容れることなど万が一にもありえまい。
このバトル・ロワイアル、ひと癖もふた癖もある連中ばかりが揃っているようだ。
ティッツァーノはもたらされた情報を整理するべく思考を巡らせる。

(この『ゲーム』、腑に落ちないことが多すぎる)
(このヌケサクにしろ、DIOとやらにしろ、『化け物』だという……はっきり言って信じられない)
(だが、これが事実だとしたら? ……想像の埒外にも程がある、いったい何が起きている?)
(全ての鍵を握るのは主催者……あの老人なのか)

そして、沈黙。
この沈黙は、後に思い返せばあまりにも悪手だった。

134夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:56:57 ID:HKCzni8A
「……なぁ、オメー『マヌケ』かぁ?」

迂闊だった。あっさりとベラベラ喋っていることこそ、疑わねばならなかった。
小男は、話す声に紛れさせてこっそりとシーツを引きちぎり、ティッツァーノの油断を窺っていたのだ。

「ポンコロポンコロ撃ちやがってッ! 死ななくったってイテェんだよォ〜〜ッ!」

目を爛々とさせて躍りかかってくる小男に、ティッツァーノは咄嗟に防御態勢を取る。
が、小男は構わず『噛みついて』きた。

「――ッ!」

そのまま勢いよくブヂリ、と嫌な音を立てて腕の肉が『噛みちぎられた』。

「……チェッ、やっぱり男の肉は美味くねェなァ〜〜」

くちゃくちゃと噛まれているのは、己の皮膚と、血と、肉。

――全身がぶわりと総毛立った。

ティッツァーノはしゃにむに小男を振り払って後退る。
・・
これを殺さなければ。

「あイデデ……なんだぁ、さっきまでのヨユーブッこいた態度はどうしたァ?
 ようやくこのオレ様の恐ろしさを思い知ったか? ヒヒッ!」

醜悪に笑う目の前の化け物に、ティッツァーノは叶う限りの速度で銃弾を撃ち込む。

足。

「あだッ」

腹部。

「イデッ」

心臓。

「だっ……このッ」

顔面。

「ブがッ」

――よろけてはいるが、ただそれだけだ。

「だからよォ〜〜イテェっつってんだろッ!
 ……弾切れってとこか? 残念でしたァ!」

顔に、体に、穴をあけたまま化け物が笑う。
食いちぎられた腕から、ボタボタと血が滴り落ちる。
化け物は余裕ぶった態度のまま、ゆっくりとティッツァーノに向かって進み来る。

(……逃げるか? ――いいや、ありえない)

化け物だろうとなんだろうと、ギャングを舐めた報いを受けさせる。
一瞬でも恐怖させられ、傷つけられた己のプライドにかけて。

「――調子に、乗るなッ!」

こんなところで使うとは思わなかった、緊急用にポケットに忍ばせておいた消毒用アルコールの瓶。
目くらましや逃走用にと失敬してきていたものだが、この用途は『最悪に近い緊急時』の想定だった。
思い切り投げつければ、ガラスの小瓶は呆気なく割れる。

「あぁ? なんだこりゃ……」

パン、と幾度目かの銃声が響く。
そしてそれに呼応するように、小男の体がゴワリと燃え上がった。

「うげェェェェェェェェェェッ!?」

慌てふためきゴロゴロと転げまわる小男に、ティッツァーノが無表情に息を吐く。

「……化け物でも熱いですか? それは良かった」

更に目を眇め、その首にある輪に銃口を定め――

「首を吹っ飛ばせば、もう動くこともありませんよね――?」

――引き金が引かれた。



【ヌケサク 死亡】

135夜、不穏、病院にて ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 19:57:31 ID:HKCzni8A
【G-8 フロリダ州立病院内・1日目 深夜〜黎明】

【ティッツァーノ】
[スタンド]:『トーキングヘッド』
[時間軸]:スクアーロを庇ってエアロスミスに撃たれた直後
[状態]:左腕に噛み傷(小)応急手当済み、行動に支障はありません
[装備]:ベレッタM92
[道具]:基本支給品一式、弾薬×1箱(残弾:約5分の4)、病院内の救急用医療品少々(包帯、ガーゼ、消毒用アルコール残り1瓶)
[思考・状況]
基本行動方針:スクアーロと合流したい
1.『化け物』を『ブッ殺したッ!』
2.この『ゲーム』、一体なんなんだ?
3.『DIO』は化け物、できれば出会いたくない
4.主催者はボス……? 違うかもしれない
[備考]
バトルロワイアルが単純な殺戮ゲームではないと思い始めました
信頼がおけるのはスクアーロくらいしかいないと薄々感じています
ヌケサク、上院議員から得た情報は本文中のもののみです


【ウィルソン・フィリップス上院議員】
[スタンド]:なし
[時間軸]:DIOに車内に乗り込まれる前
[状態]:手・肩等に無数の噛み傷、片足に銃創、精神不安定
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、未確認ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
1.ああ〜痛いッ痛いィィ〜ケヒヒッ
2.ワシはウィルソン・フィリップス上院議員だぞォーッ!
3.こんなバカげた催し物の主催者はどこだッ!?
[備考]
上院議員の怪我は、銃創を放置していたら半日くらいで失血死すると思います
噛み傷は深かったり浅かったりしますが、やたら痛いだけで致命傷には至っていません
今後会話が成立するかどうかは次の書き手様にお任せします



※ヌケサクの支給品は一緒に燃えました
※アルコールは少量だったので、病院への延焼はしていません
※消火器(病院備品)は首無し焼死体のある部屋に放置されています

136 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/06(金) 20:01:16 ID:HKCzni8A
以上になります

支給品以外の道具の使い方が少々不安ですが、
問題がなければこのまま本投下したいと思います
他、なにかありましたらご指摘ください
よろしくお願いします

137名無しさんは砕けない:2012/01/06(金) 22:59:15 ID:UY.VjPzQ
投下乙です。
感想は本投下後後として
ヌケサクは吸血鬼ですね。少なくとも原作では自分の事を吸血鬼と言っているので。

138名無しさんは砕けない:2012/01/07(土) 01:19:13 ID:4ESW0hPs
投下乙
>>137
ヌケサクが吸血鬼か屍生人か?
ヴァニラもそうなんですが、これは長年ジョジョファンの中で言われている大きな議題の一つですね。
吸血鬼を生み出すのは石仮面が必要で、吸血鬼の血(エキス)によって生まれるのが屍生人とするのが通説となっていると思います。
この理論に従って考えるのならば、ヌケサクは屍生人ということになります。
しかし、原作中ではヌケサク、ヴァニラはどちらも吸血鬼としか呼称されていません。
まあこれは荒木先生のいつもの「間違い」か、スタンド使いが主流となった3部以降では吸血鬼と屍生人の区別なんてどうでもよくなってしまったか、そんな理由だと思います。
ロワへの反映は未定ですが、OVER HEAVEN作中でも、ヌケサクも人面犬同様の合わせ技のゾンビ(カタカナ表記)であると語られていますし…
原作中でヌケサクが「自称・吸血鬼」を名乗っているならば「吸血鬼」と表記すべきかもしれませんが、ヌケサクを吸血鬼と呼んだのはヴァニラら3人の誰かと承太郎だけなので、
このSS内でヌケサクが自分を吸血鬼というか屍生人と言うかは作者様任せでいいと思います。

139名無しさんは砕けない:2012/01/07(土) 06:26:22 ID:DMzjGXoI
血とエキスって、あくまで別物だと思うんですよね。
まあ、扱いが曖昧になってるのも、一つの正解だと思いますが。

2NDのヴァニラは一貫して吸血鬼だったので、なんとなく

140 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/07(土) 08:43:31 ID:qmQPr0Yc
>>137,138,139
ご指摘ありがとうございます、思いこみって怖いですねェ…
ヌケサクが自称してるのは吸血鬼のほうなので、そちらに合わせようと思います
修正のち、本スレ投下します
ありがとうございました!

141名無しさんは砕けない:2012/01/07(土) 08:59:16 ID:AfsBJ08U
違うよ
ヌケサクはDIOと同じ不死身って言っただけで、自分を吸血鬼とも屍生人とも呼んだ事がない
ヌケサクを吸血鬼と呼んだのはヴァニラら、承太郎のみです
ヴァニラを吸血鬼と呼んだのもポルナレフのみです

142名無しさんは砕けない:2012/01/07(土) 09:48:46 ID:17ZKuvU2
屍生人は2部に登場してないよね?ベックその他モブは吸血鬼だし
ということは、3部の登場人物で屍生人と吸血鬼の区別がつくのはDIOだけか

143 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/07(土) 10:14:11 ID:qmQPr0Yc
>>141,142
ご指摘ありがとうございます、理解力が乏しくて申し訳ないです
長年決着のついてない部分というだけありますね…
必ずしも要り用な部分ではないので、該当のセリフを削って修正スレに部分投下しておきます
重ねてですが、ありがとうございました!

144憤怒 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 11:20:43 ID:m.YAvDnw
『百人一首』というゲームをやった事はあるかい?

あのゲーム、極めると最初の一文字……その子音だけでどの札かを判断して手を出せるそうだ。
ではここで質問。『百人一首の達人に、シンクウ・ハドーケンはヒットするか』?

……はい、時間切れ。では答え合わせ。って言っても俺なりの解釈なんだけどね。
俺は『絶対に当たる訳がない』と思う。なぜか?それを今から説明しよう。一言で解決するよ、良く聞いてて。

だって彼等は言うんだもん、『シンクウ・ハドーケン!』って、わざわざ。
クギパンチもそう、ティロ・フィナーレもそう。言わなきゃ余裕で当たるのに、相手に『自分はこれからこの技を出すよ』って言うんだもん。
そりゃあ当たらないさ。でも彼等は言わずにはいられない。なんでかね?言わないと技が発動しないのかな?だとすればそれは明らかに『弱点』だよね。
じゃあ、これを前置きとして今回の話を始めようか。言わなくても分かるだろうけど、能力のスイッチ、その話だ。

***

145憤怒 その2/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 11:21:36 ID:m.YAvDnw
「名は――リンゴォ・ロードアゲイン」

やっと絞り出した、質問への回答。
「そうッスか。俺は東方仗助。仗助で良いッスよ」
それに対して即座に返される自己紹介。リンゴォの正面に位置するその顔は純粋でいながら力強さを感じられる。
自分もかつてはこういう表情が出来たのだろうか、そんなことが脳裏をよぎった瞬間。口からは疑問の言葉が発せられていた。

「何故……何故治療などをした」

仗助はポカンとしている。彼にとっては、というよりも世間一般に、死にそうな人がいたら助けるのが自然。
半開きの口からは、ハァ?と呟かれた気がした。それがリンゴォの精神に再び火をつける。

「侮辱するな……俺はなぜ!死ななかったのか!?
 なぜ!俺を生かしておいたのかッ!!」

エシディシに『生かされて』、さらになお仗助に『治療をされた』となれば、何が男か。
誇りを失ったリンゴォは男の世界に足を踏み入れる資格はないのかも知れない。だが、その『世界』は確実に存在するのだ。

「戦いに敗れ死ぬ男を生かした屈辱、やり直せと言わんばかりに治療された屈辱……この辱めを背負って生きろというのかッ!
 同じ男だが、お前のような奴には一生かかっても『男の世界』は理解できないだろうッ」

半ば怒りにまみれたような左手を腕時計に向ける。何故さっきまで回せなかったのかと聞きたくなるほどあっさりとツマミは回転した。
しかし――スタンドは発動しない。それは彼にとって精神の崩壊を意味していたと言っても良いだろう。
何度も、何度もツマミを捻る。だが全てが徒労。カリカリと、歯車だけが静かに音を立てるだけ。
それならば、それならば――

「スタンドを失い、受けた屈辱を持ったまま生きる事ほど辛い事はない――治療に対し、感謝はしない」

自分の喉元に思いきりナイフを突き立てた。

……筈だった。

ナイフから手のひらに伝わる感触は喉のそれとは違う。骨と筋肉の固さ。
喉から痛みも伝わってこなければ、呼吸も問題なく出来る。となればそれが意味する事は一つ。

目の前にあったのは仗助の腕。己の腕を突き出してナイフの進行を阻止したのだ。

そして――仗助は苦痛に表情を歪めることなく、ナイフが刺さったままの腕で思いきりリンゴォを殴り飛ばす。

***

146憤怒 その3/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 11:22:23 ID:m.YAvDnw
今ブン殴った分は治療してやらねぇ。
いいか、耳の穴カッポジッてよく聞きやがれ。指さして言ってやるからよ――


チ ョ ー シ に 乗 ん な ッ ! !


アンタが『生かされた』ってぇんなら、俺だってそうさ!
最初の会場、あそこで死んだ三人のうちひと……いや、二人は俺の身内だ。
本当はあそこで死んだのは俺かも知れねぇ、そう思ったら俺は既に、アンタよりも先に『生かされて』んだ。それでも今前向いてやってんだよ!


ア マ っ た れ て ん じ ゃ ね ぇ ッ ! !


で、さっきから時計いじってるようだが、それがスタンドのスイッチか?発動してねぇじゃねぇか。
なんで発動しないか分かるか?それぁアンタが『弱い』からだよ!

――俺のダチに、何でも削り取っちまうスタンド使いがいる。
だけど、そいつは『右手』でしか削れねぇ。左手でだって、口でだって削りゃあ最強なのに、なんで出来ねぇと思うよ?
アイツが聞いたらブチギレるから絶対に言えねぇが、アイツの精神が弱いからだと思うんだよ俺ぁな。
もっと強い精神なら出来ると思う。だったら成長すりゃあ良い。でもそれがない。自分の限界決めつけてるからアイツは今でも『右手』だけなんだ。

アンタだってそうさ。だいたい、スタンドの発動に時計がいるって方がおかしいぜ。寝起きとかどうするんだ?
俺なんかいちいちスタンドの名前を叫ばなくても、ちょっと心で思えばそれだけで能力は発動する。スイッチなんかいらねぇし。
アンタだってそうなりゃ良いだろうが!たかだかスタンド出せなくなったくらいで自殺とかバカにしてんのかッ!?
なんつースタンドだか知らねぇが、オラァ!と思って発動できりゃあ無敵のスタンドにだってなれる筈だろうが!スタンドってのはそういうもんだろ!

大体、なぁ〜にが男の世界だよ、戦ってカッコよく死ぬのが男なのか?
そんなもん、俺の周りで肯定する奴なんざ一人もいねぇぜ。
そして……女にだってそういう誇り高い人もいる。
一人で孤独に闘って、街を守った女。プッツンすると手がつけられねぇけど愛のためになんだってする女もいる。

アンタ、未熟もんなんだよ。スタンド使いとしても、男としても。

ガキの戯言だと言いたきゃそう言えばいい。それでアンタが納得するんならな。
俺はこれから、そうだなぁ――地図の北に向かう。仲間を探してこんなクソッタレなゲームはぶっ潰す!
アンタはどうするんだ?俺はアンタの成長を見届けたい気持ちもあるが、こんなとこで立ち話してても解決しねぇだろうからな。
アンタの心が許すなら俺と一緒に来ればいい。来なけりゃあ……またどっかで会えればいいな。その時はちゃんと名前でリンゴォって呼ぶからよ。

……怒鳴って悪かったな、じゃあ、あばよ。

***

147憤怒 その4/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 11:22:51 ID:m.YAvDnw
ハイ、ここまでー。
続き気になるって?そりゃあ良い。そういうところで終わるもんだろ、話って。

さて、生き延びた事に怒ったリンゴォと、そういう考え方に怒った仗助。
激突した二人の怒り。この場では仗助の方が正しく見える。この場ではね。
うん、仗助の話がハッタリの可能性だってあるから百パーセント正解だとは言えないよ。

だって考えてみろよ、本当に億安の『ハンド』が『クリーム』になったら、それほど怖い事もないからね。
だけど仗助自身も知ってる、エコーズのように進化するスタンドもね。だからあんなこと言ったんだと思うよ。

それじゃ、みんなにも仗助と一緒にリンゴォのスタンドの成長を期待してもらいながら話を終わりにしよう。

そうだ、皆聞いてくれ。
今いち遅れた流行っぽいんではあるんだけどさ〜。
一コ「ギャグ」思いついだんだよ――

148憤怒 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 11:23:25 ID:m.YAvDnw
【E-4 北東部/1日目 深夜】

【東方仗助】
【時間軸】:JC47巻、第4部終了後
【スタンド】: 『クレイジー・ダイヤモンド』
【状態】:左前腕にナイフが刺さっている(貫通)、その他は健康、怒り
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、不明支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
1.北に向かって仲間を集める
2.リンゴォの今後に期待。だが甘ったれは許さねぇ。
3.承太郎さんとジジイが死んだ。でも俺は挫けん!
[備考]
・思考1の「北」は具体的にどこに行くかは決めていません。
・ジョセフ=ジジイの死は知識で理解したわけでは無いです(要議論?)

【リンゴォ・ロードアゲイン】
【時間軸】:JC8巻、ジャイロが小屋に乗り込んできて、お互い『後に引けなくなった』直後
【スタンド】: 『マンダム』
【状態】:右頬に腫れ、その他は健康、屈辱、怒り(収まってきてる)、軽い放心状態
【装備】:DIOの投げナイフ半ダース(未使用9本、2本折れている、1本は仗助に刺さったまま、計12本)
【道具】:基本支給品、不明支給品1(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:(未確定)
1.放心状態で(行き先や立ち回りを)あんまり考えられない
2.俺は仗助の話のように成長できるのか……?
[備考]
精神状態が落ち着けばマンダムが回復する『かも』しれません。

149憤怒  ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 11:24:50 ID:m.YAvDnw
以上で投下終了です。予約スレ同様、一度ageておきます。

「なんで技名叫びながら攻撃するの?」をSSにした結果がこれだよ!という話ですw
最後のギャグのくだりはカットでも良いかなと思いながらも書いてしまう。

仗助の備考に書きましたが、ジョセフの外見・仗助の理解に関する意見を皆さんから聞きたいです。
1:承太郎さんに昔のジジイの写真を見せてもらった(原作ではそんなシーンないけど……)
2:感覚で理解した(星形のアザで?血縁だから?)
3:リンゴォ相手にハッタリをかましただけ。現実は非情である(3人のうちどの二人が身内かと言っていないため)
まぁ、話として今後の展開を考えるなら2が一番妥当かとも思いますが……どうでしょう。
この他にも誤字脱字、矛盾等有りましたらご意見お願い致します。
予約期限は日曜ですが、金曜あたりには本投下しようと考えています。それでは。

150名無しさんは砕けない:2012/01/11(水) 17:15:00 ID:vld30zgw
仮投下乙です!

自分がド低能なだけかもしれませんが、少々わかりにくかった部分として

>アンタだってそうさ。だいたい、スタンドの発動に時計がいるって方がおかしいぜ。寝起きとかどうするんだ?

この「寝起き〜」の部分は

1、起きた直後にスタンドを使わなければいけない状況だったらどう対処するのか?
2、スタンドの発動に時計が必要ならば、時刻の確認はどうするのか?

どちらかの意味、もしくは別の意味があるのでしょうか?

また、備考の部分についてですが

>2、感覚で理解した

こちらになると、ジョルノも一応血縁者です。
日本式の続柄で説明をするならば、仗助/ジョルノはお互いに従姪孫(いとこ大甥)/叔従祖父(いとこおじ)という関係になるようです(読み方が違ったらすいません)
(ジョースターは血縁関係が複雑ですが、仮にジョナサンとDIOを血の近い別人(兄弟)と仮定しての状態になります。同一人物(体だけですが)とみなすと、血はもっと近く(4親等)なります。別々でも6親等の親族にカウントされてます)
血族関係者は他にもいる(リキエルとか)ので、ちょっと真面目に調べてみました。
理由づけの参考の一部にでもして頂けたら幸いです。

話の内容は、キャラクターらしさが出ていて違和感なく読めました
今後の展開もある程度の指針があって方向性が決めやすくて良いと思いますw

151 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/11(水) 17:28:07 ID:m.YAvDnw
>>150
ご意見ありがとうございます。

寝起きのくだりは
「あんたスタンド使うためなら寝る時や風呂入る時も腕時計したままなのかよ?www」
という意味で言わせています。1か2の選択肢で言うなら1が答えになるでしょうか。

血縁のくだりは、自分も親等とかを調べながら確認したんですが、どうもご都合主義な感は否めないでしょう……
こればっかりは本投下ギリギリまでご意見を頂きながら粘るしかないかと思っています。

152名無しさんは砕けない:2012/01/11(水) 18:34:02 ID:vld30zgw
なるほど、理解「可」能ッ!
早々のご回答ありがとうございました

全ての理由を「それらしく」通すためにちょっと考えてみました。
あくまで個人的に、自分が書くとしたら、ですので、ご気分を害されたら申し訳ありません

理由2の場合、二人と断定するのではなく「たぶん二人は」のように仮定を置きつつ
思考のあたりを断定から感覚を交えた曖昧な表現に微修正したらいいかなと思いました
理由3でしたら、本文に手を加えずとも、仗助の思考3を調整すれば違和感が(それなりに)なくなると思います
理由1をチョイスするなら、仗助の内面描写で補う形になるかと思います(それでも本編で出ていないのは変わらないので、少々ご都合っぽく見えてしまうのは否めません)

長々とこねくりまわしてしまいましたが、手前勝手な意見ですので寛容に流していただければと思います。

153名無しさんは砕けない:2012/01/11(水) 20:29:30 ID:YyIKuicI
二人は、と書かずに、少なくとも一人、と書いてみたらどうでしょう、と提案してみます

154名無しさんは砕けない:2012/01/12(木) 21:47:07 ID:PBUhNGYw
「少なくとも1人は」に賛成です

あとラスト付近の「億安の『ハンド』が『クリーム』になったら〜」のくだりですが
億安→億泰ですね

155 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:28:12 ID:SBb7.oUM
>>149
投下乙です。感想は本投下の際に、と言いたいところですがどうせ規制されてるのでここで。
仗助がとても『らしく』て感動。治すスタンド使いにとっての命、殺す意志を持つリンゴォにとっての命が対照的で映えてました。
二人が今後どうなるか、続きがとても書きたくなりました!

一部不安があるパートのため、仮投下します。

156 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:28:53 ID:SBb7.oUM
【0】


閉じてていた目を開くと、眼前に人がる空一面の星々。控えめに輝く星々に紛れ、我が物顔で夜空を横切る大きな月。
湿った風が俺の顔を優しくなで、後方へと駆け抜けていく。俺は暫くの間空を見上げていたが、やがて手元へと視線を落とす。

「アステカの祭壇、か……」

自分がいるであろう場所の名をポツリとつぶやくと、俺は改めて地図をまじまじと見つめる。
2000年の眠りから覚めると、人間は変わっていた。文化が変わった、考えが変わった、生き方が変わった。そして、町並みも変わっていた。
ローマという街が地図のモデルであることはこの俺ですらわかる。そして本来そのローマにはあるべきはずでないものがこの地図にはあちこち記されていることもわかった。
カイロ、ヴァチカン、フィラデルフィア、モリオウチョウ……。ジョースター、という見知った名前すらこの地図には地名として記録されている。
不可解な地図だ。本来ならあるべきものがなく、ないべきものがある。寄集めのごった煮の街。
自然の中で生きてきた俺だからこそわかるのだろうか、とにかくこの街には作り物の匂いが充満していた。

もう一度目をつむると俺は全身で風を感じる。俺の流方は『風』。大気の流れを読み、空気中に舞った匂いを感じ、体中であたりの気配を探っていく。
やはり先ほど感じたものは確かであったようだ。舞い散る砂粒、乾いた空気。現在位置は間違いない、地図で言うところのA-9のアステカの祭壇だ。
確認が終わった今、俺は地図をカバンにしまい込む。
さて、そうなってくると次に考えるべきことは、目的地だな……。

俺の目的、それはこの俺とJOJOを侮辱したあのメガネの老人から誇りを取り戻すこと。
今すぐにでもヤツの元へいきたいところだが、それができないのであれば順にやるべきことをしていくほかない。
知らなければならないこと。まずはなにより、ヤツがどこに居るか、だ。
あの老人はこの地図のどこかにいるのだろうか。顔を出す大胆さがあるのであれば、もしかするとどこかに潜んでいるかもしれない。首輪を全員に巻きつけるような卑怯さがあるのであれば、或いはいないのかもしれない。
奴の居場所がわからなければ誇りを取り戻すことも屈辱を晴らすこともかなわない。
故にまずは知らなければならない。あの老人のことを。あの老人の居場所を。

次に考えるべきことはその首輪だ。どうもさっきから身体に違和感を覚えて仕方ない。最初は身体を取り戻した後遺症かと思っていたが、時間の経過と共にズレの認識は大きくなるばかり。
自分の体だからこそわかる気持ちの悪さ。全力をだそうとする最後の一瞬、ブレーキを無理やり踏まされる心地悪さ。
ひどく、不快だ。
この首輪を外す方法、それもぜひとも知らなければ。結果的にはこの首輪を外すことでヤツをこの地に引きずりだすことに繋がるかもしれないしな。

そうなってくると大切になってくるのは『情報』。
俺はあの老人のことを知らぬ。首輪の構造にも興味はない。
カーズ様のような頭脳があれば解析は可能なのかもしれない。老人を知るものであれば奴の性格から、どこにいるか推測を出せるものもいるであろう。

「合わねばなるまいな、人間どもと……」

誇りを安売りするつもりはない。安々と人間どもに助けを乞うことも容易にはしない。
ぐっと拳を握ると俺はうっすらと笑みを浮かべる。そうだ、だからこそ俺が求めるのは『情報』であり『闘争』である。
敬意を評すべき人間どもがいるのであれば、俺は厳粛にそれを受け止めよう。しかし、そうでないのであれば。情報を出し渋るような輩がいるのであれば―――

「軽くウォーミングアップといこうか」

突如吹き抜けて行った風が火照った筋肉を冷やしていった。
まだ見ぬ強者、手に入れるべき情報を求め俺は祭壇を駆け下り、走り始めた。砂粒を足裏に感じながら、俺はぐっと全身に力を込める。
目指すは一番近い施設 ――― サンモリッツ廃ホテル。

157 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:29:34 ID:SBb7.oUM

 【1】


暗く、古い厨房に緊張感が走った。見るとトニオくんの顔に恐怖と戸惑いが走り、続いて説明を求めるかのように口が半開きになった。
ワシはそれを押しとどめるよう、おどけた表情で口の前に指を立てる。少しでも彼の精神を緩めるため、茶目っ気たっぷりにウインをひとつ、飛ばしてやった。
緊張感は持ちつつも、ひとつ冷静になった表情が浮かんだのを見て、わしは手元のカップに目を戻す。
今、説明している暇はない。誰とも知らぬ来訪者に対応し、安全が確保できたからトニオくんと話しても遅くはないだろう。
波は静まらず、ゆっくりと水面は揺れ続けている。どうやらホテルに入ってきた誰かさんはなかなかの度胸を持っているようだのう。

アイコンタクトと身振り手振りを交え、トニオくんを厨房の奥まで下がらせた。廃ホテルとはいえ、その様式は立派。広々としたキッチンは窓ひとつ、扉二つの構造。
ど真ん中に置かれたテーブルを回りこむように、まずは隣の部屋へと続く扉を確かめる。鍵はかかってない様子。コップの中の波が動かないことから、侵入者は廊下側から接近しておるようだのう。
素早く身をかわし、今度は廊下側の扉へと近づく。自分が入ってきた時、開けっ放しにしていた扉。その先に広がる闇に目を細める。暗闇に紛れ動く影は見当たらず、ワシは再びカップに目を落とす。

その時ふと気配を感じて振り返ってみると無言のまま、なんとか必死でわしの気を引こうとしているト二オ君。
その様子があまりにも必死だったので失礼ながらも、わしは笑みをこぼしてしまう。笑顔と手で了解の合図を伝えると、注意力を高め、眼を凝らしていく。
トニオ君が伝えてくれた事、それは埃の存在だった。廃ホテルとして長いこと放置されていたのだろう、絨毯に降り積もった埃はほんの少しの力で宙に舞う。
足元にぐっと力を込めると、灰色の結晶がゆっくりと舞いあがった。まさに自然が作り上げた防犯装置。波紋&埃のダブル探知機。なかなか上々じゃないの。

廊下に漂う埃は入り口から入りこむ気流に煽られ、とめどなく流れて行く。カップにうつる波は収まることを知らず、揺れ続ける。
接近は一定。だが足音は聞こえず、物音をたてるようなへまはしない。それでいて、波紋で感知できる気配であり、埃に気付くようなレベルでもない。

「注意深く、警戒心は高い。場馴れもしておるが、いかんせん技量が追いついていない、か……?」

誰にともなく、わしは結論を呟く。
血肉に飢えた吸血鬼、大騒ぎを繰り返す馬鹿者が一瞬だけ脳裏をかすめるがしばらくは置いておく。そのまま廊下側に無音のまま近づくとわしは大きく息を吸った。
吸血鬼だろうが、犯罪者であろうが、わしは最終的にはこうする気でおった。結局最終的にはわしは誰であろうと信頼したいし、誰構わず戦いたいという戦闘狂でもないしのう。

「聞こえるかね……? わしの名前はウィル・A・ツェペリ。廊下にいる君に話しかけておる。
 わしはこの殺し合いに一切加担する気はない。君がどんな人物かは知らんが、君が危害を加えないならわしもそうしないと約束しよう。
 どうかね? 姿を現してはくれないか?」

答えはない。だがカップにうつる波が止まった。宙を舞う埃もその場をフワフワと漂うのみ。
相手が何を考えているかはわからないが、話は聞いているようじゃな。それとも虚をつかれて、呆然としておるのか?

「ほれ、わしのデイパックじゃよ。これでわしは無防備も同然、丸腰じゃ」

デイパックを放り投げるとわしの中で緊張感が高まっていく。昂る戦いの合図。ピリッとした空気に髭の先が震えた。
さぁ、どうなる? 戦わないならそれに越したことはない。トニオ君と廊下の誰かと三人で、ひと足早いモーニングと洒落こみたいとこだがのう。
鬼が出るか、蛇が出るか。それとも……?
わしは待つ。手の中にもったカップが震え、呼吸法ではない波紋が一つ、広がっていった。

158 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:30:30 ID:SBb7.oUM
 【2】


「聞こえるかね……? わしの名前はウィル・A・ツェペリ。廊下にいる君に話しかけておる。
 わしはこの殺し合いに一切加担する気はない。君がどんな人物かは知らんが、君が危害を加えないならわしもそうしないと約束しよう。
 どうかね? 姿を現してはくれないか? ほれ、わしのデイパックじゃよ。これでわしは無防備も同然、丸腰じゃ」

どうしてこんな目に。ひたすら頭に浮かぶのはそんな言葉ばかり。なんで俺がこんなことに巻き込まれないといけねェんだ。そう思っても答えは返ってきやしない。
破裂しそうな勢いで鼓動する心臓を収めようと必死で呼吸をする。その呼吸すら誰かに聞かれちゃまずいと押し殺す。ぜぇぜぇ乱れた息は自分にしか聞こえない。
恐怖のあまり足が言うことを聞かない。がくがくと震える膝を支えるために、俺は壁に背をつけ、何度も何度も落ち着け、冷静になれと言い聞かせる。やがてはっきりし出した意識で俺は脳をフル回転させる。

廊下にいる君、その言葉を聞いた時、俺は飛びあがらんばかりに驚いた。心臓をわしづかみされ、喉から引きずり出されるんじゃねェかと思った。
とにかく、この部屋の中のウィル・A・ツェペリというおっさんは……声からしておっさんとわかるが、“とりあえず”は戦う気がないらしい。少なくとも本人はそう言っている。
デイパックを投げ捨てたような音も聞こえたし、扉の後ろに誰か隠れているような気配もない。入った途端、後頭部を殴打、そのままスティーリー・ダン、ぽっくり死亡、は避けれそうである。
だけどこれももし相手が銃をもってなかったら、って前提だ。姿を現した途端、銃口は俺を向いていて、はい、お終い。そんな可能性もあり得るんだ。

もしかしたら、もしかしたら。そんなありもしない可能性は無限に広がり、いつしか俺が部屋に入らないための言い訳じみたものへと変わっていく。
そうだ、冷静に考えればスタンド能力なんてものがある以上、どんだけ気を張ろうが、どれだけ注意していようが、今この瞬間にも俺はぽっくり逝く可能性がある。
ぐるぐる、結論は元通りだ。入るべきなのか、入らないべきなのか。
つまるところこれだけ。俺に勇気があるかないかだ。

そして答えは決まってる。俺には入る勇気はない。だが入らなければならない理由がある。
打算と計算、最弱を自認してるからこそ、ここで俺は部屋に踏み入れなければその瞬間俺の生存確率は一気に下がる。

「オーケー、わかりましたよ、ミスター・ツェペリ。ただ私はあなたがまだ信用できていない。可能な限り部屋の奥まで下がって頂けないか?」
「もちろん、いいとも」

159 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:30:43 ID:SBb7.oUM


部屋の構造は先行させたラバ―ズで把握済み。キッチンに窓ひとつ、扉二つの構造。いざとなれば窓を割って逃げるなり、単純に廊下から逃げ出すなり方法はいくらでもある。
俺は部屋にゆっくりと入っていく。思った通り、右手には流し台やら調理場やらが大きく広がっている。真中には皿を置くべき大きな机。左手には別の部屋へと続いて行く扉。
そして二人の人物が大きな窓を背にこちらを見つめていた。どちらも人の良さそうな顔をしている。実に利用しがいがありそうな、典型的なアホ面をぶら下げてやがる。

「私はダン、スティーリー・ダンと言います」

この時点で殺されない、そのことが俺を自信づける。緊張は薄れ、恐怖は和らいだ。少なくとも笑顔を浮かべ善人ぶるぐらいはできるまでに、俺の精神は回復していた。
二人は自己紹介を進めてきた。シルクハットをかぶった老人のほうがウィル・A・ツェペリ、コック姿がトニオ・トラサルディーというらしい。
流れの主導権は完全に俺。三人そろって席に着くと俺は話を切り出した。極めて自然な流れで自己紹介へもっていく。
ここまでは計算通り、ここからが勝負だ。支給品の確認、そして譲渡、なんとかここまでもっていきたい。

俺のスタンド、『ラバ―ズ』は史上最弱のスタンド。最弱こそが最も恐ろしい、なんてジョースター一行の前では虚勢を張っていたが実際は強いほうがイイに決まってる。
そんな俺が是が非でも手に入れなければならないもの、それが武器だ。それも銃のように技術がなくても、簡単に人を殺せるものがベター。
殺し合いに巻き込まれ、このホテルに入って来るまでに考えた、生き残る方法。最弱のスタンド使いである俺には多分これしか方法がない。
すなわち、正義のヒーローたちに匿ってもらい、最後の最後で生き残りをかっさらう。これしかない。

だからこそ、この時点で勝負だ。ツェペリ、トニオ、どちらだろうか銃を持っていれば譲ってもらう。刃物でも最悪交渉の価値はある。
最高の形は二人の信頼を失うことなく、武器を手に入れ、そのまま集団に紛れこむ事だ。
だがそうも簡単にいくとはさすがの俺も思っていない。最悪、先行させ、ツェペリの体内に潜むラバ―ズを脅し文句に奪い取る。

はやる気持ちを抑え、俺はゆっくりと言葉を重ねていく。簡単な自己紹介を終え、脅えながらもこのホテルに入ってきた、そこまで一気に話しきる。
だがそこまで話し、まさに支給品の披露と思ったその瞬間、ツェペリが遮るように手を掲げた。
思わず怪訝な表情を浮かべた俺に対し、トニオはツェペリの手元を覗きこみ、息をのんでいた。
そして次の瞬間、ツェペリの言葉に俺は度肝を抜かれることになる。

「どうやら、隣の部屋にも誰かいる様じゃ。扉越しの君、どうだね、出てきてくれないか?」

160 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:31:01 ID:SBb7.oUM
 【3】


「どうやら、隣の部屋にも誰かいる様じゃ。扉越しの君、どうだね、出てきてくれないか?」

なぜ ――― 真っ白になった頭に浮かんだ二文字が、ぐるぐるひたすら周る。不自然に震えだした身体を抑えるために、僕はギュッと自分の体を抱きしめた。
眼を閉じ、耳をふさぎ、奥歯が壊れるんじゃないかって勢いで噛みしめる。何も聞きたくない、何も見たくない。
聞かなきゃならない、見なきゃならない。そうわかっていても、そんなことができるほど僕には勇気がない。だって僕はただの、一般人だ。ただの少年じゃないか。

膝を抱え、吹雪の中にいるかのように震える僕。僕がどうしてこんな目に会わなきゃいけないんだ。なぜ僕なんだ。なんでこうなったんだ。
これが僕の身に付けた能力の結果だとしたらなんて滑稽なんだろう。恐怖を観察するのが大好きな僕が、今まさに死の恐怖に震えている。皮肉じゃないか。
そうだ、僕はただちょっと変な趣味を持ってるにすぎないフツ―の人間だ。確かに度が過ぎてるし、人に堂々と言えるような趣味じゃないとは自覚してる。
けど性癖とか、趣味とかってそんなもんだろ。僕以上にヤバくて、ぶっ飛んでる趣味のやつだっているだろ。
なんで僕がこんな殺し合いなんかに巻き込まれなきゃいけないんだよ。こんなの、それこそ殺しが好きな奴だけでやればいいだろ。

「なんで僕なんだよ……」

耳をふさぎたくなるような会話声が隣から聞こえてきた。あれはいったい何の会話だろう。僕を捕えてふんじばって、殺そうとする算段でも唱えているんだろうか。
聞きたくない、聞きたくない。忍び足の音だって、聞こえない、聞いちゃいない。僕は、なんも聞いていない。

そりゃ僕だって悪かったさ。仗助にちょっかいだしたり、母親にも手を出したりしたのは謝るよ。康一を脅したり、噴上まで脅えさせようとしたのはやりすぎだったよ。
でも言い訳させて貰うけど、あの時だって僕は誰一人傷つけちゃいないじゃないか。殺すつもりなんて微塵もなかったし、なにより殺すことなんてできるわけがないだろ。
ただ突然舞い降りた幸運で浮かれてただけなんだ。そりゃ自分の趣味を叶えるようなとびっきりの魔法の力が宿ったんだ。有頂天にもなるってもんだろ。そうだろ?
だから僕は悪くない。僕は誰かをびっくりさせたかっただけなんだ。僕はただ少し皆を怯えさせて、その顔を見て満足したかっただけなんだ。

キィ……っと扉が開いた音が部屋に響く。力の限り閉じた瞼を突き抜け、微かに差し込む光を確かに感じた。
だけど僕は立ち上がれない。僕はうずくまり、なにもせず、ただひたすら恐怖に震える。

……悪かったよ。もうしない、そんな悪戯もう二度としない。もう誰も脅かしやしないし、恐怖におびえる顔だって見ないッて誓う。
僕が悪かったんだろ? 因果応報と言うならもう充分じゃないか。こんなにも今の僕は脅えてる。恐怖のあまり白目をむいて倒れるんじゃないか、それぐらい脅えている。
だからお願いだ。もう勘弁してくれ。殺し合いだとか、命の取りあいだとか、そんなの僕にできるわけがないじゃないか。
誰よりも脅え、恐怖してるのは、ほかでもない、僕じゃないか。だから……


「助けて下さい……死にたくないんだよ……」


「はて、ダン君。いまなんか言ったかね?」
「いいや、何も言ってませんよ。それにしてもツェペリさん、誰もいないじゃないですか。脅かさないでくださいよ」
「ううむ、確かに誰かいいたはずなんじゃがなァ」
「デモ、デイパックは置いてありマシタシ、さっきマデだれかいたんじゃないデスカ?」
「いいや、でも今は波紋が反応しとらんのよ。おかしいの…………」
「ところでツェペリさん、その波紋とやらは何ですか?」
「おお、そうだの、説明しようか。波紋っていうのはな、――――」

僕は怖いんだ。僕は立ち向かえやしない。
紙の中で、押し殺した悲鳴を上げる。デイパックの中、紙にしまわれた偽りの平和の中で僕はいつか訪れるであろう、恐怖に苛まれていた。
そう、すぐに訪れるであろう、誰かが僕の紙をひらいてしまう、その瞬間を。
デイバッグの布越しに、バチっと電燈がはじける音が響き、やがて僕を持った誰かが隣の部屋へと移っていくのを感じた。

161 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:31:18 ID:SBb7.oUM
 【4】


「危ねェ、危ねェ……」

最後、髭のおっさんに感づかれたんじゃねーかと冷や汗かいちまったぜ。
電灯を通して呼び戻したレッド・ホット・チリペッパーの状態をしばらく眺めるが、変わりないと判断してとりあえずは引っ込めておく。
さてさて、スタートとしては上々か。問題はこっからどうするかだ。

現在、俺のほかに少なくとも4人がこの廃ホテルにいることはわかっている。そう、さっきの四人組だ。
髭の爺さん、謎の能力で人の位置を知覚する。ハモンって言うらしい。口ぶりからティーカップ占いみたいなスタンドか? よくわからん。
中年のコックらしき人物。トニオ、っていうらしい。今のところスタンド能力があるかどうかすら不明。見知らぬ人物でもすぐに信用しちまうぐらいお人好しであることは確かだな。
スティーリー・ダン。こいつはどうもうさんクセェ。レッド・ホット・チリペッパーを目立出せるわけにもいかなかったから表情までじっくり眺めることは出来なかったが、どうも裏があるように感じる。まぁ、俺の勘なんだがな。
そして最後の少年。とりあえずビビって泣き散らかししてるだけのガキンチョだ。スタンド能力には注意が必要だが、まぁ、そこまでビビる必要はねぇだろ。

まぁ、当面は様子見だ。なんせこの殺し合い、多く殺せば得かといったらそうならないのが肝なんだよな、これ。
だって考えてみろよ? そりゃ一人で戦うよりは二人で戦ったほうがいいに決まってる。相手は注意をひとつに絞り切れないんだもんなァ。
ただやっかいになるのは味方に背中を撃たれるかもしれない、って危険性だ。こっちのほうが致命的。
なんせ俺のスタンドは一対一じゃある程度は戦える。仗助や承太郎レベルになるとさすがに無理だが、ただのナイフを持った殺人鬼とかなら何とか出来るだろう。

つまり何が言いてェかってっと……今、俺があの四人と手を組むメリットはあんまりないってことだ。
かと言って殺すメリットは、と考えるとこちらもあんまりなさそうだ。
無理に殺しにいって、殺しきれずに逃した奴らにスタンド能力がバレたりする方が痛ェ。無駄な恨みも買って、後々逆恨みなんてされたら目も当てられねェ。

「なぁに、焦ることはねぇよ。まだまだゲームは始まったばかりだぜ?」

その通り、ゲームは始まったばかりだ。とりあえずの保留も選択肢としては悪くねェだろ。
だがな、もし殺す必要があるとしたなら……もし手を組むメリットが見えてきたら……。
俺はタイミングを逃さねぇ。なんせ俺は―――

「ギタリストだからなッ」

脇に転がるベットに寝そべり、俺は自分のスタンドを目的の部屋へと向かわせる。
電灯を通して屋敷中に広げられた俺の電線は縄張り。そう、ここは……このホテルは―――

「もはや俺のステージだぜ……!」

162 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:31:52 ID:SBb7.oUM
 【5】


気づかれ……なかったみてぇだな。よし、危ねェ、危ねェ。
だが今バレなかったとしても……ソフトマシーンを使ってデイパックに潜んだのは悪手だったかもしれねぇな。
最初はいい手だと思ったんだが、どうやら俺も冷静じゃいられなかったみてェだな。まぁ、それも仕方ねぇ話。今大事なのはこれからどうするかだ。

さて、頭を整理しよう。俺が直前まで覚えていることはラグーン号に忍び込み、ブチャラティを始末するまさにその直前まで。
見せしめでぶっ飛ばされたのがあのジョルノ、とか言った輩だったのは驚きだが、とにもかくにもこれは大チャンスだ。
だってよォ、あの親父が言ってたことが確かなら金をいくら望んでもイイんだろ? ボスの立場を要求してもイイんだろ?
こりゃやる気がムンムン湧いてくるじゃね――かッ! 100人いようが全員殺す必要はない、最期まで生き残ればいいってならこの俺の土壇場じゃね―――かッ
とは言ったものの、やはりここらであいつのゴキゲンを取っておきたいというのも本音。やはり一人も殺さないで金くれ、じゃ虫がよすぎるってもんだろ?

というわけでだ、俺のスタンドでデイパックに忍び込んだはいいものの、こりゃ参ったな。今にもデイパックの中を開けかねない様子だぞ。
最初は良い感じで相手の情報だけ聞きとったら退散する腹づもりだったし、一人ならデイパック越しにズブリ、で始末できるからこりゃGOOD! って思ったんだがなかなか上手くいかないもんだぜ。

さて、それはともかく、こうなると選択肢は3つだな。

①バレる前に何とか抜け出す。
②今ここにいる奴らを皆殺しにする。
③素直に飛び出てジャンジャジャーン。

まぁ、これのうちのどれかか。

俺としては自分のスタンド能力がバレるのだけは避けたい。だがここまで言ってそんな贅沢言ってられねぇな。
さてさて、考えろ。状況は極めて悪い。だが最悪じゃねェ。最悪になるかは俺次第だ。
どうする、マリオ・ズッケェロ? 俺がBETするのは 勝負? 保留? チャレンジ? 懐柔? それとも……―――

163 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:32:09 ID:SBb7.oUM
 【6】


さすがに夜にバイクに乗ると寒さが身にしみる。剥き出しの右腕をさすると俺は目的地へと急ぎ、バイクの速度をあげた。
やがて闇に浮かんでいただけのビル群がゆっくりと鮮明になり、その姿を露わにしだす。目的地に定めてたサンモリッツ廃ホテルはもう眼と鼻の距離にあった。
さっさと身体をあっためたいとはわかっちゃいるが、だからと言って馬鹿正直にホテルの横にバイクをつけるほど俺は命知らずじゃねェ。
ゆっくりとブレーキを捻ると、俺は何本か離れた路地でまたいでいたバイクから降りもう一度地図をひらいた。

中学校があって、砂漠地帯の近くで……間違いねェ、ありゃサンモリッツ廃ホテルだ。
ちょいと辺りを警戒しながら走ったせいでか、そんなに距離もないのにえらく時間がかかっちまったなァ。まぁ、結果オーライだ。

「さて……」

問題はこっからだ。なにせあれだけでかくてしっかりとした建物だ。誰かもう中にいる可能性もあるだろう。
というよりそう考えたほうがいい。そう考えんんきゃ危ねェってもんだ。なにせ俺のスタンドは射程距離の長さから暗殺には向いちゃいるが、面と向かってのスタンド勝負はからっきし。
ホテルに入ったはいいが、近距離パワー型のやつと鉢合わせしたらひどく面倒間違いなし。もちろん殺しはやってもやっても、ヤりきれないってもんだが、さっきの余韻に浸りたいってのが今の俺の本音だ。
その一方で身体を休めるってだけなら別にホテルにこだわる必要性が全くないこともわかっている。それこそ地図に載ってる学校だろうが構わねェし、路地裏だろうがそこらの民家だろうが休もうと思えば休みはとれる。

「だけど、な」

剃り上げた頭を撫でると俺は考える。これが昼なら簡単な話なんだがなァ。
『吊るされた男』を先行させ、偵察する。安全を確認してからゆっくりとチェック・イン、そんなこともできるんだ。
ただし夜にこれをやるわけにもいかないだろうな。自分から光を出して自らここにいますよォ、って自己主張はいただけない。それで獲物を釣り上げるってのもあるが、ちょっとなァ……。

はてさて、困った。リスク覚悟でホテルに突っ込むか、そこらの民家で不貞寝を決め込むか。なんとか目立たないよう『吊るされた男』を忍ばせるか。
しばらく考えた後、俺はもたれかかっていたバイクからケツをあげた。うだうだ考えるのは性にあわねェ。スパッと決めちまおう。

「ヤるんだったら思いっきりヤれ、ってか……? ククク……」

164 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:32:26 ID:SBb7.oUM

 【7】


 パーティーだ、パーティーだ! パーティーだ、パーティーだ!
 ケーキにチキン、メロンにハム、サラダにデザート、メインディッシュはローストビーフ!
 チキンもあるんだ、ポークもあるぜ、いやいや、ビーフも用意してますぞ!
 
 さぁさぁ、始まるパーティーだ! お客も続々やってきた! 会場準備もバッチリだ!
 今夜の主演はだーれだ? 真っ白コック? ダンディー紳士? まさかまさかの紙少年? その時が来るのが待ち切れない!
 いやいや、助演もこりゃ豪勢! 愛語る最弱! 荷物に潜む暗殺者! ホテルを貸切、ワンマンライヴのギタリスト!
 おやおや、どうやらゲストも駆けつける模様! 強靭・無敵・柱の男! 狂人・残虐・吊された男!
 
 七人の思惑は絡みあう。七人の気持ちはすれ違う。七人は互いに互いを、騙し合う。七人は互いに互いを、信じあう。
 七人は困惑を胸に抱え、それでも生き続ける。七人は痛みに悲鳴を上げ、地に伏せる。七人は喜びに身を悶え、換気の叫びを上げる。
       
       ―――おや? 七人が……八人に?
 
 一体全体どうなるんだ! それは私自身もわかりません! 踊り飲み、狂い騒ぐ! しかし我ら道化は笑うのみ!
 開幕を鳴らすのはそこのアナタ! アナタの指揮で彼らは踊る! 或いは互いに殺し合う! 狂宴の始まりは、そう、あなた次第!
 お取りなさい、その指揮棒を! 鳴らしなさい、開幕のファンファーレを!
 寄ってらっしゃい、みてらっしゃい! 一世一代のパーティーだ!
 前置きはここまでに! そろそろ始めと致しましょう! プロローグはおしまいだ! さぁ、始めよう!
 
       ―――『夜明け前のパーティ−会場』! どうぞお楽しみください!

165 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:32:41 ID:SBb7.oUM
【A-9南西・1日目深夜】
【ワムウ】
[スタンド]:なし
[時間軸]:第二部、ジョセフが解毒薬を呑んだのを確認し風になる直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:JOJOの誇りを取り戻すために、メガネの老人(スティーブン・スティール)を殺す。
1.とりあえずはホテルに向かう。情報収集だッ
2.情報を得るためなら手段を選ばない


【B-8 サンモリッツ廃ホテル一室・1日目深夜】
【ウィル・A・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:ジョナサンと出会う前。
[状態]:体内にラバ―ズ
[装備]:ウェストウッドのティーカップ(水が少量入っている)
[道具]:基本支給品(水微量消費)、不明支給品×1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.とりあえず三人で情報交換がしたい。
2.吸血鬼や屍生人が相手なら倒す。
3.協力者を探し、主催者を打倒する。

【トニオ・トラサルディー】
[能力]:『パール・ジャム』
[時間軸]:杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いから脱出したい。
1.とりあえず三人で情報交換がしたい。
2.ツェペリサンを信頼、いずれ彼に料理をふるまいたい。


【スティーリー・ダン】
[能力]:『ラバーズ』
[時間軸]:承太郎にボコされる直前。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない。
0.とりあえず三人で情報交換がしたい。
1.うまく立ち回り、目の前の二人を利用出来るだけ利用する。




【B-8 サンモリッツ廃ホテル一室 誰かが持つデイパック内・1日目黎明】
【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前。
[状態]:恐怖、紙になってデイパックの中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0:助けてくれ……


【B-8 サンモリッツ廃ホテル 某一室・1日目黎明】
【音石明】
[能力]:『レッド・ホット・チリペッパー』
[時間軸]:億泰のバイクに潜んでいた時。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。
1.殺すなら殺す、味方になるなら味方になる。とりあえず様子見。


【B-8 サンモリッツ廃ホテル 誰かのデイパック内・1日目黎明】
【マリオ・ズッケェロ】
[能力]:『ソフトマシーン』
[時間軸]:ラグーン号でブチャラティと一対一になった直後。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して金と地位を得る。
1.姿を表すべきか、皆殺しか、様子見か、立ち去るべきか。それが問題だ。



【C-7北東・1日目 深夜】
【J・ガイル】
[能力]:『吊るされた男(ハングドマン)』
[時間軸]:ラグーン号でブチャラティと一対一になった直後。
[状態]:健康
[装備]:バイク、トニオの肉切り包丁
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2 (確認済)
[思考・状況] 基本行動方針:思う存分“やる”。
1:民家で休むか、ホテルに突っ込むか、ハングドマンを信じるか。さて、どうしたもんか。
2:みせしめでみた空条承太郎はずいぶん老けてたが……二人いんのか?

166 ◆c.g94qO9.A:2012/01/13(金) 01:35:02 ID:SBb7.oUM
以上です。タイトルは『夜明け前のパーティー会場』にしようかなーッて思ってますが、もっといいのがありそうなので保留で。
気になる点がありましたら指摘ください。ちょっと詰め込みすぎかな―と思ったので容赦なくどうぞ。

167名無しさんは砕けない:2012/01/13(金) 02:14:41 ID:qgA.LqjM
投下乙
深夜帯ということを考えると、「夜明け前」と言うのは少し合わないような…
気付いた誤字は、ワムウのセリフ「合わねば」→「会わねば」
「ウエストウッド」→「ウェッジウッド」
くらいですね。

見落としもあるかもしれないので、氏が不安を感じたパートとその理由をお聞かせ願えますか?

168名無しさんは砕けない:2012/01/13(金) 12:01:16 ID:yuwdpwPU
乙です
すっかり場を仕切っているツェペリさん流石w
しかしその体内にはラバーズ潜入済み…緊張感が高まりますな

ホテルという施設に人が集まって来るのは(目的問わず)納得できますし人数の多さは気になりませんでした
ただJ・ガイルはホリィさんを殺した後だし、遺体の状況からして時間が掛かっている可能性が高いので
時間帯設定をタイトルに合わせて黎明辺りにした方がいいのではないかと

あとズッケエロの台詞「俺の土壇場」は「俺の独壇場」のミスでしょうか?
またJ・ガイルの時間軸がズッケエロの物になっています

169 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/13(金) 17:15:49 ID:ElEgGUGc
投下乙です
内容盛りだくさんで今後への期待が半端ないですw
「オメー国語の教師かァーッ!」と言われそうな細かい部分ですが、全体通していくつか指摘と疑問をあげさせて頂きます

文法に関して
閉じてていた目→閉じていた目
俺の流方→俺の流法
茶目っ気たっぷりにウインをひとつ→ウインクをひとつ
ぽっくり死亡、は避けれそうである。→避けられそうである。(あえての『ら』抜きでしたらすいません)
そう考えんんきゃ危ねェってもんだ→考えなきゃ危ねェ
換気の叫びを上げる。→歓喜の叫び(間違いでなければすいません、もしくは喚起?)

内容に関して
文中、時間帯が各個人で違うようですが、SS全体としては(wikiへの掲載基準としては)黎明の時点ということになりますか?
J・ガイルを基準に、ゲーム開始からの経過時間を考えての時間帯です
その他キャラ(特にワムウ)を基準にすると時間帯としては深夜が自然になり、J・ガイルの行動が速すぎる気がしました
また、少々わかりにくかった部分として、ズッケェロの潜んでいるデイパックは宮本のデイパックでしょうか?
文脈からはデイパックの中にうすっぺらになって隠れていると読みとれ、宮本のデイパック以外は本人ら確認済みになっているので、消去法で宮本かなと思いました
もし違うキャラのデイパックや、違う隠れ方(デイパックを薄っぺらにして別のデイパックに被せている、等)をしているのであれば、文中からは読みきれませんでした

170名無しさんは砕けない:2012/01/13(金) 17:17:01 ID:ElEgGUGc
トリ消し忘れすいませェんorz

171 ◆SBR/4PqNrM:2012/01/15(日) 17:49:56 ID:fJGA7P0c
 ちょちょいと他の人が書いていない細かいこと。

・サンモリッツ“廃”ホテルに、電気は通っているのか?
 最終的にフォローは出来る点ではあると思いますが(会場に設置する際に発電機などを足して改築している、とか)、原作の描写からして
完全な廃墟ですし、あの廃墟まるだしのホテルに電気が当たり前に通っているのを誰も不自然に思わないのも微妙かな、と。
 そして何気に…トーマス・エジソンの発電機の発明が1880年。
 ウェスティングハウスによる電力事業がニューヨーク州バッファローで始まったのが、1888年。
 つまり第一部のディオとの闘いの年に、ようやくアメリカの一部地域で、電気事業が始まりつつあった。
 原作のサンモリッツにあった廃ホテルは、14世紀に建築され、20世紀になってホテル用に改装となっていて、作画描写上電灯に
類するものはほとんど描かれておらず、立地もスイスの山奥。この建物自体元々電気が通っていなかった可能性が高い。
 また当然年代的にも、ウィル・A・ツェッペリさんにとっては電気自体が、かなり未知のものと考えられる、というのもあります。
 まあ世界を旅するツェペリさんにとって、電気の発明そのものは知っていてもおかしくはないですが、当たり前のものではあまり無いはず。
 そのあたりちょい描写を足した方が不自然ではないかと思います。
(ニコラ・テスラとエジソンの確執については、『奇人偏屈列伝』 に詳しいね! この話とは関係ないけど!)
 

・>ゆっくりとプレーキを捻る
 キーを捻る、とごっちゃになったのかもしれませんが、バイクを停止させる描写としては、

 アクセルを戻し、ブレーキを踏んだ後、キー捻ってエンジンを停止させる。

 という一連の流れがよく分からない表現になっていると思います。

172 ◆SBR/4PqNrM:2012/01/15(日) 18:02:56 ID:fJGA7P0c
 というか書いていて改めて気がついたけど、第一部出典の登場人物全てにとって、電気って殆ど未知のものなんだな。
 てか、SBRも1890年だから、一巡した世界でも電気事業の歴史がさほど変わっていなければ、やっぱり珍しくはあるんだ。
 まして懐中電灯なんてきたら新世紀の夜明けだわ!

173 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:15:12 ID:UK3PwxyM
仮投下開始します

174発見 その1/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:16:06 ID:UK3PwxyM
この間、古い友人と飲む機会があってね。そこでスタンドの要素について話し合ったんだよ。
彼の持論は『“スタンド”と“能力”は必ずしも一致しない』ってものなんだけどさ。
これには俺もなるほどなと思ったよ。
例えば、パワー超スゴいとかいうランク付け、あれはスタンドそのものの腕力なのか、それが生み出す能力のパワーなのか、ってね。
いやー熱く語ったよ。そのテーマだけで四時間くらいは話したかな。
最後は俺の意見で話がまとまったんだけどね。それが正解かは次回に持ち越して……ん、その意見?

あぁ、それは『スタンドと能力が一致しないとするなら、それに一番影響されるのは“射程距離”だ』――

175発見 その2/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:16:53 ID:UK3PwxyM
「フム、幻影装置(ホログラフ)か」
ライターを拾い上げそう呟いた男の名はドルド。

ミステリーサークルの中央に飛ばされたドルドは即座に周囲の状況を把握した。
戦場にいた頃の名残がそうさせたんだろうね。
そして同時に考える。この状況はいったいどういう事か?と。
任務に失敗して霞の目博士から処罰を受けるかと思った矢先に巻き込まれた殺し合い。
でもドルドはすぐに察しがつく。組織の仕業で間違いないだろうってね。
一定条件のもとで殺し合いをさせてその過程をデータ化するとか、新たな改造人間の素体を探すとかいった目的でこんな事をしているんじゃあないか?
それが合っているかどうかは別として……と言うより今の彼にその事は関係ない。処刑を免れたという事は、つまりチャンスを与えられたってことで。
要するに如何にここで成績を残し霞の目博士から評価を受けるかということこそドルドにとっての最重要項目なのさ。

周囲の警戒を始めてから何分と経たない内に東に熱源を感知したドルド。距離にして約七百メートル先。
じっくり様子を見ていると、男がライター片手に喚いていた……と思ったら爆死した。
男の名前?エーと……何だったっけ?まぁいいや、重要なのはそこじゃない。ドルドがそのやりとりを見てたって事。
普通の人間ならば見落としてしまいそうな――と言うより忘れられちゃいそうな戦闘だったけど、ドルドには多数の情報を与える事になった。

ライターの炎の奥から映った黒服の影、そして男の傍に立つ巨大な烏の影。これについてもドルドには思い当たる節がある。
「どこだったか、立体映像を用いた攻撃手段を考えていた研究班は」
そう、彼が所属していた組織の名前はドレス。
オカルト気味た、あるいはSF気味た兵器の開発などは飽きるほど見ていたのさ。
それどころか、そんな技術なんかとっくの昔に通り過ぎて、その結果として現在の生体改造があるんだろう?
もしかしたらまた発想が一巡してそういうところに戻ってくるかもしれないけど、とにかく。
そんなことを思いながら誰に言うでもなく三度めの呟き。
「……これの着火がスイッチになっているようだな」

176発見 その3/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:18:19 ID:UK3PwxyM
さて、ドルドがこの結論に至った理由をここで明言しておこう。ドルドは“再点火を見ていた”んだ。
すると一つの疑問が浮かぶ。なぜ、彼はブラック・サバスの攻撃を受けなかったのか?って事だね。今から説明しよう。
――答えは単純。距離があり過ぎたのさ。
皆にも心当たりはあると思う。窓から眺めた駅ビル、その一室の電気がついた、あるいは消えた。
あるいはサイレンの音が聞こえたからと慌てて外に出てみるも視界のどこにも救急車はいなかった。
それと全く同じ現象だよ。遠く遠くの場所で起こった事も視覚、聴覚は受け取れる。
ましてドルドはサイボーグ。遠距離スタンドを伸ばして“ライターの近くで点火を見た”んじゃあなく純粋な視力で見ている訳だ。
で……ブラック・サバスの方はあくまで自動遠隔操作のスタンドだろ?何百メートルも先にいて、点火が視界の片隅にちょっとでも入った、なんて連中をいちいち精密に攻撃できるスタンドじゃあない、と思う。
もっと言うなら、普通の人間なら見えないようなもんがドルドには見えたんだ。ブラックサバスの視点からじゃあそっちに人がいたかどうかすら分からないって訳。

さて、ここまで情報があればドルドがとるべき行動も自然と狭まってくる。
「問題は――誰にこれを拾わせるかだな」
自分で点火する訳にはいかない。ピンチを逃れるための手段で自分まで攻撃の対象になるなんていうのは笑い話にもならないからね。
可能な限り多くの人間の手に渡るような、それでいて警戒心の薄い連中に拾わせるのがベスト。
もちろん自分の武装で攻撃することも考えたさ。でもそれは最後の手段。
だってギャングでさえ信頼できる相手にしか能力を明かさないんだよ?元軍人がそうそう自分の武器を披露すると思うかい?え――あぁ、ナチスの人は例外だよ、置いといて。

とにかく、行動方針も決まったとなれば早速移動だ。
あ――そうそう。ドルドはワムウが走っていくのも見てるよ、上空からね。これでミステリーサークルから飛んで行ったってのもわかるだろ。
相手の頭上を取るってのは何にしても有利だ。そして一番評価するべきはワムウと接触するのを避けたこと。これは賢い。
で、ワムウを避けつつ行動しようとなれば地図の北ラインに沿って移動するか東ラインに沿って移動するかの二択。
その内北ラインは、まあエリア二つとは言え通ってきているんだから自然と東ラインに沿って南下する、目指す第一の目的地は駅と。こうなる訳だ。

177発見 その4/4 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:18:50 ID:UK3PwxyM
さて――ここから先ドルドがどう行動するかは別の機会に話すとしよう。
皆はスタンドの要素で一番重要なのはなんだと思う?俺とアイツが導き出した結論か、あるいは純粋な能力か?それとも別の何かか?
……まぁ、俺は個人的には最重要な要素は“精密動作性”だと思ってるんだけどね。
たまにこういう議論すると面白いだろ?どれ、お茶のお代わりを持ってくるから皆で少し話していてよ――

178発見 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:19:37 ID:UK3PwxyM
【A−9南西・1日目・黎明】
【ドルド中佐】
[能力]:身体の半分以上を占めている機械&兵器の数々
[時間軸]:ケインとブラッディに拘束されて霞の目博士のもとに連れて行かれる直前
[状態]:健康。見た目は初登場時の物(顔も正常、髪の毛は後ろで束ねている状態)です
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2(未確認)、ポルポのライター
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り、且つ成績を残して霞の目博士からの処刑をまぬがれたい
1.コレ(ライター)を誰かに拾わせる
2.地図の東端を南下して杜王駅に向かう

[備考]
・支給品は未確認です。オエコモバの基本支給品はありません(6話『    』を参照)
・ドルドの移動経路は以下の通りです
ミステリーサークル中央にてオエコモバを見る(第6話『    』)その後飛行して移動、ワムウを見かける(第48話虚言者の宴)、A−9到着、思考して現在に至る

179発見 ◆yxYaCUyrzc:2012/01/24(火) 10:20:45 ID:UK3PwxyM
以上で仮投下終了です。一応ageときます。
さて、サバス見てて襲われないのどうなんよ?は議論の対象かと思います。
そして、それが否決された場合今回のSSは破棄とさせていただきます。話の根幹ですから。
オエなんとかさんをどうにか再登場させようと思った結果がこれだよ!やったねドルちゃん、アイテムが増えるよ!
誤字脱字、その他矛盾等々ありましたらご指摘いただければと思います。週末には本スレに(規制とけてれば)投下しようと思っております。それでは。

180名無しさんは砕けない:2012/01/24(火) 15:05:56 ID:tSjRqT0A
投下おつです
サバスに関してですが、自分はこの状況はありだと思います
SS自体にそれなりの説得力がありましたし、サバスが攻撃を終了する基準は満たしている
(点火した人間と点火を見たとサバスが認識した人間を死亡させるorサバス自体が倒される)と思います
サバスの攻撃範囲…というか認識範囲がどの程度かは本編からしか察せませんが、
少なくとも攻撃と移動半径から見てライターから最大数十メートル程度ではないかと思いました
ドルドの改造ぶり(人外ぶり)も納得できる範囲です

181 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:24:36 ID:kSUX4sFw
ティッツァーノ、プロシュート、マジェント・マジェント、仮投下します。
何か間違いなど、あったらすいませぇん……

182 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:26:15 ID:kSUX4sFw
独りで暗闇の中を歩いていると、どうしても重い考えばかり浮かべてしまうものだ。
声をかける者がいないという恐怖は、予想以上に精神を侵食する。



ティッツァーノは暗い病院内を歩き続けていた。
人の気配のない、恐ろしくなるほど静かな空間。あの上院議員はどうなったのだろうか。
先の戦闘であのマヌケな化け物に噛み千切られた傷が痛むが、戦えないほどのものではない。
止血と消毒をして包帯を巻いた。だが、その腕の傷は、今までのどんな傷よりも痛いように感じる。
これ以上の怪我なら幾らでも負ったことがある。
全身をマシンガンで撃ち抜かれる痛みだって知っている。つい先程味わったばかりなのだから。
だが、その時には必ず彼がいた。

自らのスタンドの非力さなど、自分が一番よく分かっている。
ただ、それは「トーキングヘッド」の力をよく理解しているからこそ思えるのであって、その能力を否定している訳ではない。
しかしこのバトルロワイヤルという狂った状況下では、単純な戦闘能力が皆無というのは痛いハンデだ。
もちろんギャングという職業上、身体はある程度鍛えてある。
だがそれがここではあまり意味をなさないと、知ったばかり。銃だって何時かは弾が切れる。

それに加えてあのヌケサクの言葉が気にかかる。
『吸血鬼』『DIO』―――。
そんな化け物が本当に存在して、このバトルロワイヤルに参加していたら……。
自分は幸運だったのかもしれない。最初に出会ったのは、錯乱した無力な男。
次に出会ったのは不死身と自称する奇妙な奴だったが、万全の策で挑むことが出来たし、脳ミソの足りないアホだった。
しかし、ホールで見たあの人数。自分より頭が切れる者も、強力なスタンドを持った者もいるだろう。ましてや、吸血鬼など。

ふらふらと病院の廊下を歩いていたティッツァーノは、右手を自然と壁につけていた。それと同時に足も止まる。

「スクアーロ、君がいてくれたら……」

ティッツァーノの声は、自らの耳にのみ届いて消えた。
らしくない。スクアーロと一緒にいた時、冷静なのはいつも自分だった。
だが独りになった途端、こんなにも不安に襲われるなんて思っていなかった。
ふと、最後に見た相棒の目を思い出した。強い瞳だと、自分がいなくても彼はナランチャを殺すことが出来ると確信したあの目。
祈ろう。彼がここにいない事を。万が一ここに呼び寄せられていたとしても、生き延びられることを。

次にティッツァーノが歩き出した時、もう既に迷いはなかった。彼はただ、相棒を探し出すだけだ。



しかし迷いは断ち切ることは出来ても、不安は心臓に延々と絡みつく。
孤独とは、暗闇とは、そうさせるモノなのだ。

183 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:27:36 ID:kSUX4sFw
※※※



人間二人以上集まれば、どうしてもそこには「性格が合うか合わないか」とか、「好きか嫌いか」という問題は浮上してくる。
特に、ピリピリとした状況下では顕著なもので。
プロシュートも、今まさにその問題に直面していた。





「だからよォ〜〜〜、何でいつまでもこんな所でぼけーっとしてんだ?
さっさと地上に出て、オレたちのターゲットを殺ればいいだろォ!」

プロシュートは岩の上に座り込んでいる。
その背後にはなぜか大破した巨大な飛行機。
そして目の前にはイライラと騒ぐ、仮の相棒マジェント・マジェント。

僅かな戦闘の後協力体制を敷くとこになった二人は、とりあえず落ち着いて策を練るとこにした。
地図を開き、もう少し細かく互いの状況を確認し、考察を深める……。
と、そんな落ち着いたことをしていられたのも最初のうちだけで。しばらくするとマジェントは、こんなタラタラやってられるか!と騒ぎ始めたのだった。
どうやらこの男、知的な作業には向いていないらしい。
プロシュートは広げて持っていた地図を片手にまとめると、眼前に立つマジェントを半ば睨むように見上げた。

「……いいか?マジェント……。
この地図にはどうやら地上の様子しか描かれていない、そして此処は地下のようだって話はしたよなァ?」
「ああ」
「じゃあ此処が何処だかも分からないこの状況、迂闊に飛び出すのは危険だって話は?聞いたはずだよな」
「地上に出れば位置だって分かる」

プロシュートは、血管が浮き上がりそうになるのを必死で堪える。
こんなに苛立ちを我慢するのは自分らしくないが、せっかくの協力者を逃がすことは避けたい。
だが、マジェントはよくこのロワイヤルの危険を理解していないようだ。
どんな敵が何人いるのかも、主催者の目的も分からない。そんな状況で簡単に行動することは、ただの自殺行為だ。
確かに、マジェント・マジェントのスタンドは強力。
恐らく「負けることはない無敵のスタンド。」だが、本人にあまりにも油断が多すぎる。
半ば強いスタンドを手に入れたせいで、慢心しているのかもしれない。

未だ文句を言い続けるマジェントを見て、プロシュートは弟分を思い出す。
ペッシは無事だろうか、ヤケを起こしてなければいい。とにかく、さっさとアイツを探し出す。
早く早くと急ぐ気持ちはプロシュートも同じなのだ。
しかし、そのためにも「確実に生き残る」ための手段を慎重に考えなくてはならない。
プロシュートは自分が地図を握り込んでいる事に気がつく。
ため息をついて手を緩めるが、クシャクシャになった地図はそのままだった。

「オレにはどうしても許せない奴がいるんだよッ!ジャイロもジョニィも許せねえがアイツらは二の次だ。
俺はよォ、俺を裏切ったウェカピポの野郎だけは絶対に許せねーッ!」

眼帯に覆われた左目を掻きむしりながら、マジェントは激高する。
許せない奴がいる、という気持ちはプロシュートもよく理解している。
しかし、マジェントがこういう状態なら尚更自分は冷静にならねばならない。

「絶対に、絶対にアイツをぶっ殺してやるッ!」

184 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:28:46 ID:kSUX4sFw
と、考えていたのも昔のこと。
一瞬で立ち上がると、プロシュートは地図を持っていない右手で、マジェントの襟首を締め上げていた。

「……え??」

あまりに突然の行動。マジェントは両手を上げて呆然としていた。
プロシュートは丸めた地図でマジェントの頬を軽く叩く。その迫力は言葉では言い表せないものだった。

「マジェントマジェントマジェントよォ〜〜〜」
「ひ、一つ多いんだけど……」

苦し紛れのマジェントの軽口も、プロシュートの耳には届いていないようだ。

「そういう言葉はオレたちの世界にはねーんだぜ……。そんな弱虫の使う言葉はな……。
『ブッ殺す』……そんな言葉は使う必要がねーんだ。
なぜならオレやオレたちみたいな殺し屋は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には!
実際に相手を殺っちまって『もうすでに』終わってるからだッ!だから使った事がねェーッ」
「へ?」
「マジェント、オマエもそうなるよなァ〜〜〜?
……ま、オレの相棒になるんなら、だけどな……」

プロシュートはそう言い捨てると、掴んだ襟首を離した。
マジェントはそれと同時に地面に座り込む。急に静かになった空間に、ドサリと音がした。
プロシュートとマジェントは、ギャングとテロリストとという違いはあれど、同じ殺し屋らしい。
だが、その信念と精神には大きな違いがあるようだ。この僅かな時間に、それは大きく表面化した。
プロシュートはマジェントに背を向けると、地面に置いたままだったデイパックを拾い上げてもうグシャグシャの地図を中に詰め込んだ。
しばらく呆然としていたマジェントは、その様子を見てようやく意識を取り戻した。

「な、何だよ……。そんなに怒ることないだろォ〜〜〜!?
分かったッ!もうぶっ殺すとか言わねッー!だから置いていかないでくれって!」

マジェントは慌てながらプロシュートの前に回り込む。
冷や汗を流しながらもへらへらと笑っているマジェントは、プロシュートの表情を窺っているようだった。
プロシュートはそんなマジェントを見てため息を吐く。
どうやら、コイツはペッシ以上の「マンモーニ」らしい。

「……飛行機の探索に行く。荷物持ってついてこい」

その言葉を聞いて、マジェントはデイパックを取りに走って戻る。

「性格が合わない。」
それがプロシュートの出した結論だった。

185 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:30:01 ID:kSUX4sFw
※※※



ティッツァーノが病室の中に大きな穴を見つけるまでに、それ程時間はかからなかった。
至って普通の病室。その中心にぽっかり穴が開いている以外は他の部屋と変わらない。
そこまで深くはないが、暗い横穴が更に向こうへ続いていた。
彼は、その側にしゃがんで暫し考えを巡らせる。

自分は気がついたらこの病院にいた。気がついた瞬間は、おそらくゲーム開始の瞬間と一致するだろう。
それから多少ゴタゴタはあれど、ずっと病院内を散策していたのだ。
こんな大きな穴を開ける程の音を聞かなかったのだから、これは「最初から開いていた」と考えられる。
ただ、恐ろしいのはこれがスタンドによって開けられた罠という可能性だ。
この中に入った瞬間にいきなり殺される……なんてこと、あったらたまらない。
試しに病室にあった枕を投げ入れてみると、中に落ちただけでそのまま異変はない。
それから五分ほど病室の外から穴を見張っていたが、変化も起こらない。
もしも中に誰かいたとしたら、枕が落ちてきたのに無反応というのはおかしいだろう。何らかの手段で外の様子を知ろうとする可能性は高い。

非常に危険な賭けだとは分かってはいるが、ティッツァーノはその中へ入ることを決めた。
こんな見るからに怪しいもの、調べてみなくては仕方ない。
懐中電灯と拳銃を構え、じっと底を見つめる。

「では、行きましょうか」

自分を落ち着けるためにそう呟くと、ティッツァーノは軽やかに穴の中へ飛び込んだ。





横穴をしばらく進んだティッツァーノは、混乱の最中にいた。
『暗い穴の中を歩いていると思ったら、いつの間にか飛行機の残骸の中にいたーーー。』そうとしか言い様がない。
万が一に備えて懐中電灯の電気は消した。
翼が残っているおかげで何とか此処は飛行機の機内だと理解出来たが、とにかく酷い有様だ。
外には土の壁が続いていて、地下空間であることは確からしい。

(これも……何かのスタンド能力の一部か?)

地下に飛行機を墜落させる。こんな強力なスタンド使い、もしも戦闘になったらひとたまりもない。
だが逆に味方につけられれば、非常に心強いが……。と、言ってもこの状況では敵対する可能性の方が高いだろう。
元は壁だっただろう瓦礫の塊を触ってみても、何か違和感を感じることはなかった。
これ自体はスタンドではないのかもしれない。

186 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:30:53 ID:kSUX4sFw

―――ガタン。



その音が聞こえた瞬間、ティッツァーノは急いで瓦礫の隙間に見を潜めた。
息を殺して耳をすませると、しばらくガタガタと音が続く。

「おお〜〜〜!これ……飛行機……!」
「おい……し…………ろ」

二人の男の声。片方は比較的大きな声を出しているが、もう一人は声を潜めている。
ティッツァーノは、自分の手が汗で滑るのを感じた。
この状況は不味すぎる。ベレッタ一つでどうにかなるだろうか?
男たちはなおも何か言いながら、がさがさとした音を立てていた。
ティッツァーノがゆっくりと顔だけ覗かせると、幸いにも二人組はコチラに背を向けていた。

黒髪と金髪。
黒髪の方は辛うじて残っていた座席に座っている。
金髪の方は瓦礫の中を捜索したいるようだ。
二人の会話を盗み聞きする限り、どちらもこの飛行機を墜落させたスタンド使いではないらしい。



ティッツァーノのそのほんの僅かな安堵も、金髪の男が振り向いた瞬間に消し飛んだ。
その男は、「ここにはいてはいけない人物」だったのだ。

―――プロシュート、暗殺チーム、裏切り者、ブチャラティたちと交戦、死亡済。

脳内に貯められていた情報がグルグルと回っていた。
ティッツァーノは荒くなりそうな息を止める。

(まさか……しぶとく生き残っていたとはッ!)

だとしたら、親衛隊である自分のすることは一つ。裏切り者には死。それだけだ。

だが、今の自分に奴を殺せるか?武器はこの拳銃だけ。
相手のスタンドは未知数。暗殺チームとはそういう奴らだ。
プロシュートは−−−いや、暗殺チームは一体どこまで知っている?
親衛隊の存在は?自分が親衛隊だと言うことまで割れているのだろうか?
それに、もう一人は?見たことのない顔だが?まさか暗殺チームにはまだ生き残りがいるのか?

(落ちつかなくては……焦ってはいけない)

ナランチャとの戦いでの敗因であった呼吸を一度整える。

―――覚悟を決めなくては。

この狭い機内、逃げ道はない。どうやったらあの横穴に戻れるのかは分からないのだ。
ここで交戦しても二対一では勝ち目はないだろう。
だったらここで取るべき行動は……。

187 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:32:06 ID:kSUX4sFw
※※※



「嫌い。」
それがマジェント・マジェントの出した結論だった。もちろん、プロシュートに対する結論だ。
大体自分の方が常に正しいみたいな態度がムカつく。
向こうの方が年上のようだからと従ってやっていたが、いきなりキレられた。しかも全く意味不明。
瓦礫の上を登っていく間、二人はずっと無言だった。
プロシュートはピリピリと辺りに気を張っている。
マジェントはこれ以上奴を刺激しないように黙ったまま。埃に塗れたプロシュートの背中を、マジェントはじっと睨みつけていた。

だが、そんな不快感もけろりと忘れてしまった。
なぜならマジェントは、初めて入った飛行機の中の様子に興奮することで忙しいからだ。

「おぉ〜〜〜!これが飛行機の中か!」
「おいマジェント、静かにしろ」

機内に入ってみると、中は更にボロボロだった。
ほとんど元の状態を想像する事は出来ない。しかし、なぜか二席だけが綺麗に残されていた。
先を行くプロシュートは声を潜めている。
何もいる訳ないっつーの、と心の中で悪態をついたマジェントは鼻を鳴らした。

(そうだ、コイツは少しウェカピポに似ている。
いや、ウェカピポの方が真面目ちゃんって感じだったが、どことなく似ているような気がする。
例えば、その真っ直ぐな瞳とかがよォ……)

マジェントはまた急につまらないような心地になってしまった。
思い切りシートに腰を下ろすと、ぐぅっと背中を伸ばす。

「にしてもすげー有様だぜ……。誰がどうやってこんなことしたんだろーなあ?
これが本当に空飛ぶのかよ?もっと早く出来てれば、オレだってあんな目に……」

半分独り言のように呟きながら肘掛けを撫でる。それにしても気持ちの良い椅子だ。
大きくアクビをすると、今まで前の座席を何やら探っていたプロシュートが振り向いた。
条件反射のように、マジェントは身体をびくつかせる。

「何ぼけーっとしてやがる」
「い、いや……」

挙動不審に瞳を動かすマジェントを見て、プロシュートは本日何度目かの大きな息を吐いた。

「いいか、てめーのスタンドは油断しなければ絶対に負けることはない。ある意味で無敵のスタンドだ。
だからこそ、本体であるてめーの行動一つ一つが重要なんだ!
いいか、絶対に隙を見せるな……。
やれば出来るはずだ、オマエにもな」

プロシュートはそれだけ言うと、再び座席を探り始めた。
マジェントは座ったままでその背中を見ている。



第一印象というのは変わるものだ。案外あっけない、どうでもいいような理由でコロリと。
今この瞬間にその現象は起こった。

「分かったッ!任せろよォ〜。絶対に俺は負けないぜ!?」

マジェントはあまりにもあっさりと、プロシュートのことを好きになってしまった。
ただやれば出来ると言われた、それだけで。





マジェントは椅子から立ち上がると、プロシュートの後についていこうとして−−−気配に気づいた。
プロシュートもほぼ同時にそれに気付き、振り向く。
その背後にはグレイトフルデッドが浮かんでいる。
マジェントもいつでもスタンドを身に纏えるようにした。

二人の背後にいつの間にか立っていたのは、白い長髪で褐色の人物だった。
その中性的で整った顔からは、性別が判断できない。
片手にデイパックを持っている。それ以外には何も手にしていなかった。
なぜかマジェントは目の前の人物から、どこかプロシュートと似た匂いを感じた。
横目でそのプロシュートを窺えば、彼も緊張した面持ちで様子を見ている。



数秒後、目の前のソイツがようやく口を開いた。

「―――はじめまして」

188 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:33:31 ID:kSUX4sFw

【G-8 墜落飛行機の記憶 機内 1日目 黎明】



【ティッツァーノ】
[スタンド]:『トーキングヘッド』
[時間軸]:スクアーロを庇ってエアロスミスに撃たれた直後
[状態]:左腕に噛み傷(小)応急手当済み、行動に支障はありません
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 27/50)@現実
[道具]:基本支給品一式、病院内の救急用医療品少々(包帯、ガーゼ、消毒用アルコール残り1瓶)
[思考・状況]:基本行動方針:スクアーロと合流したい
1.この状況、何とかしなくては……
2.プロシュートは生きていた?ならばいずれはは始末する
3.この『ゲーム』、一体なんなんだ?
4.『DIO』は化け物、できれば出会いたくない
5.主催者はボス……? 違うかもしれない
[備考] :バトルロワイアルが単純な殺戮ゲームではないと思い始めました
信頼がおけるのはスクアーロくらいしかいないと薄々感じています
ヌケサク、上院議員から得た情報は本文中のもののみです

【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:少なくとも護衛チームとの戦闘開始前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(水は使い切った) 双眼鏡
[思考・状況]基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
1.アイツは……
2.マジェントとは『性格が合わない……』
3.暗殺チームを始め、仲間を増やす
4.この世界について、少しでも情報が欲しい
5.この氷塊、当分スタンドは使い放題だな
[備考]:プロシュートが親衛隊の存在や、ティッツァーノがメンバーだということなどを知っているのかどうかは、次の書き手さんにお任せします。

【マジェント・マジェント】
[能力]:『20thセンチュリー・ボーイ』
[時間軸]: 『考えるのをやめた』後
[状態]: 健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
1.何だアイツ……?
2.プロシュートのことは『好き』だぜェ!
3.暗殺チームを始め、仲間を増やす
4.この世界について、少しでも情報が欲しい
5.氷塊を引き当てる俺ってツいてる

【備考】
プロシュートの支給品は『双眼鏡』のみです。
持ち運びは出来ないので、G-8に『SBRトロフィー入り氷塊』と『輪切りのソルベ』を置いてきました。機内探索後、どうするかは未定です。

189 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/24(火) 23:35:11 ID:kSUX4sFw
以上で仮投下完了です。

プロシュートの思考5番はどうしようか悩んだのですが、wikiの方では修正されていなかったのでそのままにしてしまいました。
直した方が良ければ修正いたします。
何か不備やおかしな点等ありましたら、ご指摘お願いします!
本投下時、批評もお願いするつもりです。

190名無しさんは砕けない:2012/01/25(水) 00:29:09 ID:YjfWPnTM
両者投下乙です。
>>◆yxYaCUyrzcさん
指摘は特にありません。サバスに関して言えば『制限』でいいんじゃないですかね。ロワ制限、万歳。
どうでもいい指摘と言えば、書き方少し変えましたか?
今までは『俺』が出てきて、そのあと記号で区切られてからは三人称視点だったのに全編通して語り調だったのですこしびっくりしました。
本投下待ってます。

>>◆phRcHHD3bQさん
貴様、(他ロワで)書いていた(る)なッ!
指摘は特にありません。感想は本投下まで持ち越しますが、一言と言うと各キャラの際限度が高くてニヤニヤしました。
本スレでの投下が楽しみです。

191 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:39:04 ID:wE1H8nGo
お二方とも投下おつです
ドルドの狡猾さが軍人らしくていい!
ティッツァも兄貴もかっこいい!
マジェントの意外なアホ可愛さに噴いたw
一言感想は以上です

こちらも投下させて頂きます
花京院、由花子です

192愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:41:19 ID:wE1H8nGo
背の高い赤レンガ造りの建物が、貝殻の形をした広場をぐるりと囲んでいる。
イタリア、トスカーナ、カンポ・ディ・フィオーリ。
『花』を意味する名を冠し、構造の完全さと美しさに名高いその町並みは、常の賑々しい和やかな

姿から一転し、今や血腥い殺し合いの一舞台として夜闇に粛々とその威容を沈ませていた。

――ほんの少し前、この広場には少女と少年が通りがかった。

少女は夜の闇に溶けそうな、それでいて浮き上がるように艶やかな黒髪に、日本の学生らしいセー

ラー服を身にまとい、翻るスカートからすんなりと伸びるしなやかな足は若いガゼルやカモシカを

思わせた。
意志の強そうな眼差しに、整った顔立ち。しっかりとした足取りで颯爽と歩んでいく姿は、10人

居れば7・8人は振り返りそうなほど美しい。
少年は同じく学生のようだが、改造されていると思わしき制服の上着はともすれば腿どころか膝ま

でも隠れてしまいそうな長さで、成長期らしくひょろりと上背のある体躯を包んでいる。
表情を隠すように片側だけ伸ばされた特徴的な髪形に、酷薄そうにも見える薄い唇は自然に引き結

ばれ、かっちりとした詰襟姿も相まって彼の頑なさを連想させた。
少年――花京院典明は、少女――山岸由花子よりも幾分か早く、その人影を察知していた。
それは、花京院の用心深さが幸いしたとも言えるし、由花子の傲岸さゆえの隙が招いたとも言える


由花子が夜闇の中の人影……花京院に気づいたとき、すでに彼の攻撃は完了していた。

「すみません、貴女に……少し、質問をしたいのですが」

冷ややかな声音が広場に響く。かつかつと響く足音――つい先ほどまではほとんど聞こえることも

なかったそれは、どうやら近づいてくることを知らせるようにわざと立てられているようだった。
咄嗟にざわりと蠢かせた黒髪は、しかしクモの巣のような何かに阻まれていつもよりも動きが鈍い

。ブヅリと無理やりに引きちぎると、由花子の足元の石畳にピシュンと小さな穴があいた。
強いて言うなら、石ころを銃弾のように撃ち込んだらこんな穴が開くのだろう。

「やめておいたほうが無難ですよ。その髪の毛が貴女のスタンドなら」

――素直に答えて頂ければ、余計な危害は加えません。
――どうやら私の『仲間』ではなさそうですね。

193愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:42:01 ID:wE1H8nGo
距離にして20数メートルはあるだろうか。会話するには少し遠く、しかし先ほどのクモの糸の件

もあり、迂闊には動けない。
糸は今なお、由香子の周りを隙なく囲んでいる。可視には至らなくとも、触感でわかる。由花子の

皮膚より鋭敏な触覚である髪が、糸の存在を伝えている。

「何、いきなり馴れ馴れしく話しかけてきて。気持ち悪い」

目の前に立つのが誰であろうと、今の由花子にとって問題ではなかった。
広瀬康一でないのなら、有象無象誰であろうと同じこと。まして同年代の見知らぬ男なんて、道端

の石ころよりも興味が湧かない。
由花子の刺々しい言葉に、花京院の冷静さを装った仮面が微かに歪む。

「……立場をわかっていないのか? 私の気分次第でお前は死ぬ」
「あたしの邪魔をするなら容赦しないわ。でも……そうね、あたしも聞きたいことがあるの」

沈黙、そして睨み合い。
やがて花京院のほうから幾分険のある声音で会話が再開された。

「いいだろう、質問の内容によっては答えられるかもしれない。その代わり、私の質問にも答えて

もらおう」
「何勝手に決めてくれてるわけ? まあ、別に構わないけど」

――康一君、広瀬康一の居場所を知ってる?
――彼の家に行こうと思ってるんだけど、彼がもし家にいなかったら無駄足じゃない。
――彼、素直なんだけどヘンなところで小賢しいっていうか、悪い虫みたいな奴らとつるんでるか

ら。もしそいつらと一緒にいたりしたらちょっと面倒なのよね。別に問題はないけど。

殺すことにかわりはないもの。
そう締めくくられた逸り気味の口調は、言葉を紡ぐにつれゆるやかに平坦になっていった。
由花子は何の感情も映さない無表情でじっと花京院を見据えた。

「……残念ながら、知らないな」
「そう、じゃあもういいわ」

――あんたも邪魔よ。

194愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:42:47 ID:wE1H8nGo
お人好しよろしく相手の質問に答える気などさらさらない。そんな余計なことをしていて、康一が

どこかに逃げたりしたら面倒だ。先ほど程度の攻撃であれば、髪で受け流しながら近づいて絞め上

げればいい。
由花子は周囲の糸を引きちぎりながら進もうとして――びくりとも動かない自身の体に気がついた

。髪で引きちぎった糸の数も、髪で認識していた以上に少ない。

「貴女は少々……いえ、だいぶ周りが見えていないようだな。『法王』は既に侵入を終わらせてい

る」

喉が絞め上げられるように苦しくなった。否、実際に絞め上げられている。己の手で。
腕に、きらきら光る半透明の緑の糸がびっしりと絡みついている。
由花子は懸命に髪で手を振りほどいたが、今度は息を吸えども吸えども『吸いこめない』。

「ふん……その髪、力は『法王』以上ですね。ああ、質問に答える気になったら頷いて。早いほう

がいい、首つり死体みたいに顔を膨らませる前に」

ぞんざいに告げられた台詞に由花子は戦慄する。
意識すればするほど、体内に潜り込んだ男のスタンドの存在を認識してしまう。
温度もなく、質感もなく、しかしはっきりと侵入している異物。
内側を冒される気色の悪さに眩暈がする。
喉を内側から押しつぶされる痛み。いくらラブ・デラックスが強くとも、髪の毛を喉に詰めるわけ

にもいかない。
そんなことをする前に、男の一存で女の細頸などいとも簡単に潰されてしまうだろう。

(いつの間に、この男はスタンドをあたしの体内に侵入させていた?!)
(苦しい)
(気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪いッ!!)
(息が)

気がつけば、由花子はガクガクと頷いていた。
辛うじて意識を失わなかったのは、彼女の異常なまでの精神力の賜物だろう。
呼吸が戻された途端、彼女は膝をついてげほげほと咳き込んだ。エメラルドのようにきらきらとし

た緑の破片が吐きだされ、地面に落ちる前に消えた。
次いで、涙が落ちる。

195愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:43:13 ID:wE1H8nGo
「もう少し遅かったら喉を割るところだった」

大きさの微調整は難しいな。
何の気なしに呟かれた言葉に、由花子は再度ぞっとする。
花京院の声色は、人ひとり殺そうとしたわりにあまりにも平坦かつ無感動だった。
その響きが、少し前の彼女の声音によく似ていたというのは皮肉以外の何物でもないが。

「さて、こちらの番だ。嘘はつかないほうがいい、貴女のためにも」

腹の中の異物は消えない。







「1999年……」

少女――山岸由花子という名前だそうだが、花京院にとって彼女の話は荒唐無稽としか思えなかっ

た。
今は1999年で、彼女は数ヶ月前に誰かの手によって『弓と矢』に射られて『スタンド使い』と

なったというのだ。
試しにDIO様や空条承太郎の名を出してみたが、彼女は首を傾げるばかりかあたかもこちらを精

神異常者かなにかのように訝しげに見つめている。
その眼差しに苛立ちが募るが、何よりもこの状況は何なのか考えることが先決だった。
アレッシーと名乗ったあの卑屈そうな男の一件もそうだが、この奇妙な時間の空白――これは何か

重大なことを示しているのではないか?
あの方に害なすものは、何もジョースターの血統に限ったことではないのかもしれない。
あの方に害なすものが、たとえばそれがこの状況を作ったものだとして、果たして己はそれに対抗

しうるのか、排除できるのか。
ひやりとした金属の首輪、こんなものはあの方に似つかわしくない。まして、こんなものに命を握

られているなど考えたくもない。
仮定に仮定を重ねるなんて臆病にすぎると一笑されるやもしれない。しかし、考えることすら放棄

するのなら、それはただの獣と変わらない。

196愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:44:15 ID:wE1H8nGo
「ねえ、あんた……何をそんなに驚いているの?」

怒りと困惑とを綯い交ぜに、彼女が問いかけてくるが黙殺する。
考えろ、考えろ、考えろ。一体何が起こっているのか。

「あたし、正直言ってあんたをブチ殺してやりたいけど、今は無理そうだからやめておいてあげる

わ。
 大人しくしているから、ねぇ、あんたのこれ、取って頂戴」

こんな文句で誰がほいほい危ない女を解放するというのか。
この女の危険さは、先ほどの一件からも十二分に理解できている。先手を取っている状態だからこ

そ、この奇妙な対話は成り立っている。
しかし、いつまでもこうしているわけにもいかないのも事実だ。
見晴らしのいい広場は、いつ何どき誰が通りがかるともわからない。まして、己が頼れるものなど

砂漠の中の砂金粒を見つけるよりも困難を極めそうな、こんな状態では。

「解放、してもいい。ただし、条件付きで」
「……何?」
「簡単なことです。私と組んでくれればいい」
「はッ? ……頭沸いてるの、あんた。あたし、あんたをブチ殺してやりたいって言ったでしょ」
「ただでとは言わない、広瀬康一……でしたか? 彼を探す手伝いをしましょう。私の『法王の緑

』は、広範囲の索敵・捕縛に向いている。彼を見つけて捕獲した時点で同盟は解消しよう」
「……なんだか、あたしにやたら良い条件のような気がするけど?」
「私にも利益はある。今は情報が欲しいんです。接触するときにひとりよりふたりのほうが警戒さ

れないでしょう?」
「……あんた、ただの変態野郎かと思ってたけど、意外と頭回るのね」
「……法王を暴れさせてもいいんですよ」

山岸由花子は暫しの間考え込んでいたが、やがて猫のように瞳を細めて微笑みを浮かべた。

「いいわ、乗ってあげる。そっちのほうが早く康一君を見つけられそう」

――でも、康一君の家には行くわよ。そこにいるならそれまでのお付き合いね。
――とりあえずあんた、名前くらい名乗りなさいよ。

「そうですか。なら、とりあえず移動しましょう。ここは見晴らしが良すぎる」

――できるだけ、色々な人から話が聞きたいんです。色々な人から、ね。
――ああ、すみません。花京院、典明です。

197愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:46:02 ID:wE1H8nGo
表面上は和やかに、少年と少女は連れだって歩きだす。
深夜の古い都で、逢瀬を果たした男女のように連れだって。

彼女を突き動かすものは愛――それは欲望とよく似ている。
彼を突き動かすものは忠誠心――それは愛とよく似ている。

欲望、忠誠心、愛。
似ても似つかないようでいて、その実どれもよく似ている。
いびつに歪んでいることに変わりはないが。







【コンビ名:花*花】

198愛(欲望もしくは忠誠心) ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:47:31 ID:wE1H8nGo
【E-4 カンポ・ディ・フィオーリ広場/1日目 深夜】

【花京院典明】
【時間軸】:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
【スタンド】:『ハイエロファント・グリーン』
【状態】:健康、肉の芽状態
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:DIO様の敵を殺す
1.DIO様の敵を殺し、彼の利となる行動をとる。
2.山岸由花子を警戒・利用しつつ、情報収集する。
3.ジョースター一行、ンドゥール、他人に化ける能力のスタンド使いを警戒。
4.空条承太郎を殺した男は敵か味方か……敵かもしれない。
5.山岸由花子の話の内容で、アレッシーの話を信じつつある。

【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。

【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。(能力、射程等も大まかに説明させられた)
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。(詳細は不明だが、音を使うとは認識・説明済み)
東方仗助、虹村億泰の外見、素行など(康一の悪い友人程度、スタンド能力は知らないしあるとも思っていない)



【山岸由花子】
【スタンド】:『ラブ・デラックス』
【時間軸】: JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前
【状態】: 健康・虚無の感情
【装備】: なし
【道具】: 基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済み)、アクセル・ROのランダム支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】
基本行動方針:広瀬康一を殺す。
1.康一くんをブッ殺す。他の奴がどうなろうと知ったことじゃあない。
2.まずは東に向かう。目的地は「広瀬家」。
3.花京院を利用しつつ、用が済んだら処分する。乙女を汚した罪は軽くない。

【備考】アクセル・ROを殺したことについては話していません。話すほど彼女の心に残っていませんでした。

199 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/25(水) 01:51:59 ID:wE1H8nGo
以上で投下完了です

…状態表を投下するまで、メモ帳の改行解除を忘れていました
えらく読みにくくなっていると思います、申し訳ありませんorz
改行以外でのご指摘等お待ちしております

200名無しさんは砕けない:2012/01/25(水) 19:25:06 ID:5VCn3.QM
投下乙
特に指摘するところはないかな。しいて言うなら思考欄はもっと削ってもいいんじゃないかなぁってぐらい。
ま、これはおれの好みかもしれんけど。

201名無しさんは砕けない:2012/01/25(水) 20:02:34 ID:sDDfIJwY
私は逆にこれくらい思考欄があるとありがたいですね
リレー時に見落としが少なくなるので助かります

202 ◆phRcHHD3bQ:2012/01/26(木) 12:38:33 ID:1BkPOR2k
ありがとうございます!
問題なさそうなのでティッツァーノ、プロシュート、マジェントは
今日の夕方頃に本スレ投下させて頂きます。
タイトルのことスッカリ忘れていたので投下までに考えておきます…。

あとロワ書き手は完全に初めてだったり
間違いがあったりしたら指摘お願いします!

203名無しさんは砕けない:2012/01/26(木) 13:49:44 ID:N0xVt5.o
できればタイトルを考えて欲しいかな?
投下楽しみにしてます

204 ◆Rf2WXK36Ow:2012/01/26(木) 20:39:53 ID:SrzJQLv.
拙作へのコメント下さった方ありがとうございます
少し思うところがあったので、本筋は変えず微修正してから本スレに投下してきます

205 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:25:52 ID:bAMf4lCc
プッチ、ホットパンツ、ディスコ、セッコ、シュガーマウンテン、仮投下いたします。

206 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:26:47 ID:bAMf4lCc
人は、許しを求める。
人は、天国への道を求める。
人は、偉大なる導きを求める。
人は、誰かの温もりを求める。
その何かを求める心は時に引力となり、人々を引きつけ合う。



※※※



修道女、ホット・パンツは今、サン・ピエトロ大聖堂の広い入り口に立っている。
ただしその姿は、柱の影に隠れて外側から見ることはできない。
ホット・パンツは腰の「クリーム・スターター」に右手を置き、左手にはトランシーバーを持っている。
そして、じっと外に気配はないかと窺っていた。
そんな彼女の頭に繰り返し浮かぶのは、先ほど出会ったばかりの神父の声だった。
彼の名前は、エンリコ・プッチというらしい。


―――……「人と人との間には引力がある。」そう言ったら、君は信じるかな?
―――私と君は違う世界に生きる人間……。しかしこうして、この聖堂で出会った。
―――私はその運命を信じよう。そして、君を信じる……。


一体どんなお人好しが、出会ったばかりで得体の知れない女の与太話など信じるだろうか。
別の世界、聖人の遺体、大統領の陰謀……。そんな頭のおかしいとしか思えない話。
だが、エンリコ・プッチは信じると言ったのだ。

ホット・パンツとプッチの情報交換により、彼女たちは一つの仮説を得た。

「どのような目的があるのかは分からないが、大統領によって様々な世界から様々な人間が、この世界のバトルロワイヤルに集められている。」

プッチ神父もどこか別の場所から、急に先ほどの会場に飛ばされたらしい。
しかしこのゲームがSBRレースの代わりだとすると、勝ち抜いても手に入るのは恐らくただのダイヤモンド。
それに悪趣味な殺し合いなど、乗る気はなかった。
ホット・パンツはすぐにでも基本世界に戻らなくてはならない。


(神父様の柔らかい声が……私には少し恐ろしい。
何もかも吐き出してしまいそうになる……。
遺体のことまで話してしまったのは失策だったわ)


冷静さを欠いていた数十分前の自分を、ホット・パンツは後悔していた。
神父の質問に一つ一つ答える内に、遺体のことまで話してしまったのだ。勿論、全てではないが。

ホット・パンツの目的は、ゲームの脱出と遺体の回収。
そのためにもどこかにいるはずの「この世界の大統領」を探し出し、手がかりを手にいれる。
ある程度の落ち着きを取り戻したホット・パンツは、プッチと協力関係を結ぶことにした。
というか、彼の方から協力を申し出たのだ。


―――君は、本当に深く神を愛しているのだね。
―――いや……許されたいだけだとしても、その愛には偽りはないと私は思う。
―――私はそんな君に協力したい。
―――ああ、変な勘ぐりはしないでくれよ?私も元の世界に戻りたいんだ。
―――だからそれまで共に力を合わせようと、それだけのことだ。
―――よろしく頼むよ。ホット・パンツ……。


しかし、今はまだこのゲームに関しての情報が少なすぎる。
しばらくはこの聖堂に籠城して様子を見ることにした。
今、神父は聖堂内を見て回っている。そして、ホット・パンツは入り口付近で誰かがやって来た時のための門番をしていた。
もしも何か異変があれば、ホット・パンツの支給品であったこのトランシーバーで連絡を取り合う。
見たことのない機械だったが、プッチが簡単に操作方法を教えてくれた。

彼女には、ゲームや大統領に対する疑問の他にも、ある不信感を持っていた。
それは、協力者エンリコ・プッチへ対する違和感だ。
彼は「自分はある刑務所の教戒師であり、大統領もレースも遺体も知らない」と語っていた。
―――だが、そんな人物をなぜ大統領は他の世界からわざわざ呼んだ?
もしかしたら、プッチは嘘をついているのかもしれない。
全服の信頼を彼に置くのは、まだ危険だ。


(彼はあまりにも私を安らかにさせる……。
そう……神父様と一緒にいると、『私は許される』ような勘違いをしてしまうッ!
私を救ってくれるのはあの方だけなのよ……。勘違いしてはいけない。
―――私は……神父様を信用してもいいの?)


修道女、ホット・パンツの許しへの道はまだ遠い。

207 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:27:39 ID:bAMf4lCc

※※※



神父、エンリコ・プッチは一人考える。
聖堂の広い廊下を、懐中電灯で照らしながら。
誰かが潜んでいないか、何か利用出来るものはないかを注意深く探っている。
勿論、常にトランシーバーに意識を向けるのも忘れない。



(しかし……あのホット・パンツとかいう女、案外やっかいだった。最初は、ただのいかれた女だと思っていたのだが。
冷静になるにつれて目には強い意志が生まれていた……。恐らく信じるもののためなら何でも出来る部類の女だな。
だが、その更に奥には脆さと罪の意識がある。
そこをついてやれば、うまく懐柔出来るかもしれない。時間はかかるだろうが……。
―――とにかく、信用には足る誠実な人間だろう。信頼はできないが。

それに彼女という人物は信用できても、その語った話は違う。
確かに妙な説得力はある。だが、何一つ証拠がない。
結局のところ、ホット・パンツの言葉以外に裏付けは全くないのだ……。

辻褄を合わせて彼女の仮説を信じている振りをしたが、実際には穴がありすぎる。
目的も不明、人選の意図も分からない、なぜこの不自然な世界に集めたのかという疑問もあるな。
なぜレースにも「大統領」にも関係がない私が連れてこられ、あの承太郎が見せしめだったのか?
「大統領が遺体を手に入れるための陰謀」だけでは話が合わない。
DIOやジョースターとの因縁も当然関わっているのだろうが……とにかく情報がなさすぎる。


あくまで私はホット・パンツを利用するだけ。
そして、天国を完成させる。
その手段が「主催者を倒す」か「抜け道を探す」か「ゲームに乗るか」いずれにするかを判断するにはまだ早いだろう。

だが、彼女の話……興味を惹かれるものはある。
ジョースター―――その名前に注意を払っておいて損はない。
DIO、いやDio―――別の世界に彼がいる?そうだとしたら、私はどうしたらいいのだろう?
そして、「聖人の遺体。」
ホット・パンツはそれが力を持っていると言っていたが、詳しくは話さなかった。用心深い女だ。
しかしその遺体が本当にあれば、私の目的には大いに役に立ってくれるかもしれない。
天国に聖人……なんともピッタリじゃあないか!


―――ああ、そういえばホット・パンツの話では彼女の世界のDIOは騎手だったか。
あの彼が騎手だなんて、全く想像が出来なくて笑ってしまう。
しかし……会ってみたいと思うのも事実だ。
もし、別の世界の君でも良い。「DIO」と出会えたら……その時は共に天国を目指そうか。
君のために作る、天国への階段なのだから。)



プッチは、そんなことを考えて少し笑った。
仮に、なんて信用できない話を想像した自分がおかしかった。
凍った空気の中を、プッチは歩く。
足音と絹ずれの音だけが廊下を響いていた。

神父、エンリコ・プッチの天国への道はどこにあるのだろうか?

208 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:28:37 ID:bAMf4lCc

※※※



テロリスト、ディ・ス・コが気づいた時、そこは木の中だった。
正確には、木をくり抜いて作った小さな部屋の中である。
ボサボサに伸びた髪と無精髭、その左手には座標の入った金属の板が丸く嵌められていた。
その男、ディ・ス・コは木の部屋の隅に座り込み、支給品であるデイパックを開けていた。

デイパックの中身は水、僅かな食料、地図、時計などのいたってシンプルなものばかり。
しかし彼がデイパックの奥に入っていた紙片を開いた瞬間、その隙間から何かがこぼれ落ちてきた。
それを拾い上げてみると、それは一枚の板チョコだった。

「…………」

明らかに物理法則を無視した現象。
しかし彼は何も反応を示さず、チョコレートをデイパックに仕舞い込もうとした。

「荷物を調べているのね?」

幼く甘い声が、空間に響く。
ディ・ス・コは手を止めて顔を上げると、反対側の部屋の隅を見た。

そこには、黒い髪の少女が膝を抱えて座っていた。
愛らしく儚げな少女だったが、その首には彼のものと同じ黒い首輪が光っている。
彼女はじっとディ・ス・コに目を向けているが、その焦点は外れていた。

「……少しなら見えるの。ハッキリとは分からないけど」

少女の言葉に、彼が答えることはなかった。
彼らはたまたま同じ場所にいただけ。先ほど出会ったばかりで、互いに何の感情も抱いていない。
ディ・ス・コは自分に危害を加えるつもりがないなら関係ないと、干渉し合わないつもりだった。
彼女も再び口を閉ざし、そこには静寂が戻った。


ディ・ス・コは大統領に従うスタンド使い。
彼は大統領の命令に従う、ただそれだけ―――それしか考えない。
ジャイロに再起不能にされたはずなのに傷が全てなくなっているとか、このバトルロワイヤルの目的とか主催者とか、そんなものは考える必要はない。
最後に彼に下された命令は「ジャイロを始末すること」だ。
ならばディ・ス・コはそれを再び実行するまで。


彼は行動を決意した。
立ち上がると、小さな入り口から外を眺める。
周りには木が点々と広がっているが、その更に向こうは広場のようになっている。
そして地面には足跡一つなく、一面に
雪が降り積もっている。しかし広場に出る辺りでは、その雪は綺麗に消えていた。
雪が積もっているのはこの大木の周りだけ、とはなんとも奇妙だ。
木々の隙間には所々水たまりのような泉が見える。
地図を確認したところ、此処はドーリア・パンフィーリ公園の「泉と大木」、その大木の中だと推測できた。

さて……どこに向かおうか。
地図で近くの施設をしばらく探し、気になる場所は幾つかあった。
しかし、「サン・ピエトロ大聖堂」というバチカンにあるはずの名前を見つけた時、ディ・ス・コの脳内に大統領の声が蘇った。


―――私は聖人の遺体を探している。そして、ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターもそれを狙っている。


「聖人の遺体」それが目的だとしたら、大聖堂に大統領かジャイロがやって来るかもしれない。
それは不思議な決意だった。
まるで、何かに引きつけられるような―――。

「待って」

その時少女によって彼の服の裾が軽く引かれ、ディ・ス・コは振り返る。
彼女のもう片方の手には、紙片が握られていた。
それは、先ほど彼がチョコレートを出したものと同じような紙だ。

「これ……持っていって。何か役に立つものが入っているんでしょう?」
「……?」
「貴方は最初に私を殺せたはず。なのに何もしないでくれた、そのお礼。
それに……私はきっと生き残れないから……」

少女は落ち着いた声だったが、その手だけは小さく震えていた。

「また、お父さんとお母さんを待たなくちゃいけないみたい。
今度は……空の向こうで」

彼女に何があったのか、彼に知るよしもない。
その達観したような雰囲気と、一方での年相応の幼さは多くの人を惹きつけるだろう。
だが―――彼はそれに心動かされることはない。
ディ・ス・コは、少女の手から紙を受け取った。


そして代わりにその手に、チョコレートを握らせた。

「え?」
「……此処でじっとしていれば、信頼出来そうな奴を呼んでやろう」

彼の行動の真意は誰にも計れない。自分自身でさえ。
情が移ったのか、ただの礼なのか。

そのまま何も言わず、振り向かずに、ディ・ス・コは大木から出て歩き出す。
テロリスト、ディ・ス・コは偉大なる導きを求める、ただそれだけ―――。

209 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:29:54 ID:bAMf4lCc

※※※



番人、シュガー・マウンテンは入り口の穴の近くに座り込み、いつまでも去っていく男の背中を見つめていた。
例え目では見えなくても、見送っていたかった。


少女は不思議な人生を送っていた。
悪魔の手のひらと呼ばれる泉に出会い、両親をその泉に奪われた。
そして何十年もの間、新たな泉の犠牲者……もしくは「全てを捨てられる者」を待っていたのだ。
やっと、その時は来たはずだった。
彼女の前に現れた二人組の男が全てなくしたことで、両親は開放されてシュガー・マウンテンは実に五十年ぶりの幸福を味わっていたのだ!

それなのに、気がつくと彼女はこの悪趣味なゲームに参加させられていて……。
だから、希望を持つことは止めた。
彼女は手元のチョコレートを小さく一口分、割りとって口に運ぶ。

「甘い……」

だが結局、その少女は誰かの手を待つことにした。彼女を助けてくれる優しい手を。
今去っていったあの男の人は善人ではないのかもしれない。
それでも、シュガー・マウンテンに甘い甘い希望を残してくれた。
それだけで彼女はまた何十年だって、この泉で誰かを待てる気がしたのだ。
もう一欠片だけと、少女はチョコレートを割った。

「ありがとう。私ずっと―――」

そして、チョコレートは雪の上に静かに落ちる。

「……あ……?」

衝撃が走った。

ゆっくりとシュガー・マウンテンが視線を下ろすと―――彼女の腹部から赤黒く染まった腕がはえていた。
ズブリと嫌な音がして、それは引き抜かれる。同時にとめどなく溢れるのは真っ赤な血。
シュガー・マウンテンは振り向くことは出来なかった。

驚愕、痛み、恐怖―――絶望、死の匂い。

210 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:30:42 ID:bAMf4lCc

※※※



倒れ込む少女の姿を、男は見下ろしている。
その男はシュガー・マウンテンしかいなかったその大木の中に、突然現れた。
全身を奇妙な茶色いスーツに包んだ男は、背中を丸めてじっと彼女の顔を見つめている。

「……ああ?なんだよォォォ!これはッ!砂糖じゃなくてチョコレートじゃねーかッ!」


そんなおかしな事を叫ぶ男の名前はセッコ。
パッショーネというギャングの名前も明かさないボス、その親衛隊。
彼という人間を分類するならば、「ただ欲望のために生きる男。」
何かを祈ることはない、想うことはない。己の力を感情のままに振るう。


セッコはデイパックの中からカメラを取り出す。
そしてそれを少女に向けると、シャッターを押した。

「うぅ……」
「角砂糖……いくつもらえるかなぁ〜〜〜
やっぱビデオカメラじゃねーと……チョコラータあんまりくれねーかな〜〜〜」

彼女の苦悶の表情などまるで気にせず。

「二個しか貰えなかったら……ううう……」

何度も、何度も。

「……んお?そうかッ!その分たくさん殺せばいいのかぁ!そしたらいっぱい貰えるよな〜〜〜!!!」

様々な少女の死にかけた表情をカメラに収めたセッコは、外に視線を移す。
泉には人影はなかった。
しかし、雪の上には足跡が一つだけ残っている。
男は、次の被写体を決めた。

セッコは大木の中から地面に「飛び込んだ。」
固いはずの地面が泥のように揺れる。
もう次の瞬間には、息の消えかけた一人の少女だけがこの場所に残された。

番人、シュガー・マウンテンは家族の温もりを求めていた。誰かの救いの温もりを待っていた。
しかし、それはたった一人の欲望によって絶たれた。

彼女の血と涙は泉の中へ落ちる。
しかしそれは、もう何も生み出すことはなかった。

211 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:31:16 ID:bAMf4lCc

【C−1 サンピエトロ大聖堂 / 1日目・ 深夜】

【ホット・パンツ】
[スタンド]:『クリーム・スターター』
[時間軸]:SBR20巻 ラブトレインの能力で列車から落ちる直前
[状態]:健康
[装備]:トランシーバー
[道具]:基本支給品
[思考・状況] 基本行動方針:元の世界に戻り、遺体を集める
1.この世界の大統領を探す
2.一先ず聖堂に籠城、門番をする
3.プッチと協力する。しかし彼は信用しきれないッ……!

【エンリコ・プッチ】
[スタンド]:『ホワイト・スネイク』
[時間軸]:6部12巻 DIOの子供たちに出会った後
[状態]:健康
[装備]:トランシーバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況] 基本行動方針:脱出し、天国を目指す。手段は未定
1.一先ず聖堂に籠城、情報収集
2.ホット・パンツを利用する。懐柔したいが厄介そうだ……
3.ホット・パンツの話は半信半疑だが、「ジョースター」「Dio」「遺体」には興味

【トランシーバー×2】
ホット・パンツの支給品。 6部11巻から。
トランシーバー同士で通信可能
充電は電池か付属の手回し充電器充電可能、大体2ndの仕様と同じ
聖堂内ならば通信問題なし

【補足】
ホット・パンツの仮説
「ここはSBRレースの代わりにバトルロワイヤルの行われている世界。
大統領が何らかの理由で色々な世界からここに人間を集めている。」
プッチはこの仮説を信じていません。もっと複雑な裏があると読んでいます



【E−1 ドーリア・パンフィーリ公園 泉と大木 / 1日目・ 深夜】

【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況] 基本行動方針:大統領の命令に従い、ジャイロを始末する
1.サン・ピエトロ大聖堂に向かう
2.信用できそうな奴を見つけたら、シュガー・マウンテンのことを伝える
[補足]:ディ・ス・コ自身の支給品は、3部でダービー兄が食べていた板チョコだけでした

【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康
[装備]:カメラ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:たくさん殺して写真を撮る
1.角砂糖たくさん食べたい
2.チョコラータと合流する

【カメラ】
セッコの支給品
3部でジョセフが壊して念写したもの
まだまだ撮影可能

【補足】
シュガー・マウンテンの参戦時期は、両親と再開した直後でした
「泉と大木」の大木の中にシュガー・マウンテンの死体、シュガー・マウンテンの基本支給品、食べかけの板チョコが落ちています
ランダム支給品はディ・ス・コが貰いました
またセッコは地面を潜って進んだので、現場にはディ・ス・コの足跡しか残っていません

212 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:32:41 ID:bAMf4lCc
以上で投下完了です。
タイトルはディスコの元ネタトリオさんの歌詞からお借りして「心全て引力」にしようかと。
問題点や疑問など、ありましたらお願いします。

213名無しさんは砕けない:2012/01/31(火) 22:50:25 ID:Q1eToW4E
投下乙です!
シュガーマウンテンの儚さに全俺が泣いた…
これからどう転がっていくのかが良い意味でも悪い意味でも楽しみなSSでした

214 ◆3uyCK7Zh4M:2012/01/31(火) 22:50:43 ID:bAMf4lCc
おおっと!
読み返して【シュガーたん 死亡】と残り人数を入れ忘れてるのに気付きました。すいませェん
本スレ投下のときには足しておきます。

215名無しさんは砕けない:2012/02/01(水) 00:26:15 ID:Hk4/V2Jk
投下乙です。
感想は本スレにて

216 ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/01(水) 21:55:20 ID:spIlKQAc
ありがとうございます!
大丈夫そうなので、ちょっと修正したものを今から本スレに投下いたします。

217獲得 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:02:26 ID:m.tNs6xc
突然だが、皆は賭け事は好きかい?
ハッキリ言って俺は大好きだ――あ、いや言い直そう。一部の競技を除いて好きだ。
どうも俺は競馬や競艇は好きになれない。だって『自分でやらない』んだもん。
そりゃ情報収集とかさ、大事だとは思うよ?でもその手に握ってるのは馬券とかじゃなくてトランプやサイコロだっていう賭け事の方が好きなんだよ。
ただ、問題なのは……そんな強くないんだよ俺。持ってる運は並、イカサマの技術も大してないし、それに……

え?あぁ話?ごめんごめん、それじゃ――

***

「グッド!賭けは成立ね」
そこからしばらくの間は沈黙が部屋を包み込んでいた。
ギャンブルとは、実際に種目に入る前から――例えば麻雀なら卓についた瞬間、パチンコなら店に入った瞬間から――始まっているのだ。
だとするなら容易にこの沈黙を破るべきではない。かと言ってここで長い間黙りこむのもまたギャンブルにおいては避けるべき事態でもある。
そんな心理戦を知ってか否か、男が口を開いた。
「で……何で勝負をするんだ?そこの紙束か」
指さされた先のトランプに視線を落としミラションが受ける。
「いや、これは使わない。もともとここにあったもんだと言っても信用してくれないでしょ?」
「ああ」
「だからこの場にあるもので、且つ未開封の物を探して使おう。ちょっと時間くれない?」
腕を組み考え始めるミラション。一応と思いサウンドマンは念を押した。
「勝負は出来ればシンプルなものがいい。お互いに分かりやすく、大した技術も必要ないような」
「わかってるわよ、ちょっとくらい待ってなさいよ!」
ふぅ――と小さなため息をつきサンドマンはソファーに体重を預け、目を閉じた。

***

218獲得 その2 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:03:13 ID:m.tNs6xc
「おまたせ。台所にあった砂糖と塩、それに小麦粉とかいった袋。それとティースプーン。ボウル」
ミラションと名乗った女はゴソゴソとテーブルに物品を置き始めた。本来こんな面倒をする気はないが一応訪ねておく。
「それで何をするんだ?」
「寝てたくせにうっさいわね。こっちは碌に休みもせず準備したんだ。パンくらい齧らせろ。
 で……これらの粉を、ホラまだ未開封。開けるわよ。ボウルにブッ混む」
パンを口に頬張りながら作業をするミラションを俺は黙って見ていた。
銀色の容器の中が白で埋め尽くされる。むわっ、と巻きあげられる粉に目を細めた。
「ったく……アタシ一人にやらせといて後でイカサマだなんだって言わないでよね。まあこのボウルじゃ二人いっぺんにかき混ぜるのは無理だけど。
 さて、出来上がり。こっち来なさい」

言われるままに立ち上がり、ボウルを覗き込む。細かい粉(小麦粉といったか)や荒い粉(砂糖や塩だろう)が混じったもの。
沸き上がる疑問を率直に尋ねる。
「……この粉をどうする?」
「二人で交互に一掴みずつテーブルに盛る。もちろんボウルに入ってる全部よ。
 これで大きな一つの粉の山が出来る」
言われるまま粉を手にとってはテーブルに盛り、またボウルに手を突っ込む。
俺が五回、ミラションが六回その動作をしたところで丁度ボウルが空になった。
手をはたきながら目線を使ってもう一つの要素にミラションの注意を促し、また尋ねる。
「このスプーンは?」
「山の頂点に挿す。かき混ぜる方を上にして、そうそれで良い。これで完成」

テーブルの中央に、こんもりと盛られた粉、そこに挿さるスプーンという、奇妙な山が完成した。
それを満足げに見てミラションは俺の方を向く。
「ルールは単純。交互にこの粉を手で掻いていく。スプーンをテーブルに落とした方が負けよ。
 やった事無い?『棒倒し』よ」

***

サンドマンにおおよそのルールを説明する。
……と言っても、説明するほど複雑なギャンブルにするなって言われたんだから、倒した方が負け、それしか説明しようがない。
「なるほど。大体わかった。細かいルールはどうする?」
理解の早い相手だってのがせめてもの救いかしら。向こうから決めなきゃならないことを聞いてくるってのは悪い流れじゃあない。
「そう、うーん、まずは一度に掻く量の最低限を決めなきゃね。任せるわ、どのくらいがいい?」
これを決めておかないと試合が進まない。“ハイ一粒掻きましたー”とかやってられないっての。ね?
「なら、必ず“指を三本以上使って”掻く。どの指を使うかは問わない」

なかなかセンスあると思うわコイツ。随分妥当な案をだすじゃない。
「そうね、そのくらいがちょうどいいかしら。他には?」
「スプーンはテーブルに触れなければ“倒れた”と見なさない。
 掻いた後十秒間は倒れたか否かの判定時間とする。」
スラスラと答えてくる。ホントに初めてなの?後はそうね……
「それに付け加えるなら自分の番の制限時間は――三十秒。パスは当然不可。そんなもんじゃない?」
後は“何でもアリ”だ。これは言わなくていい。分かってるんでしょうね?戦うってのがどう言う事か……

「良し、ならば始めよう」

***

219獲得 その3 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:04:07 ID:m.tNs6xc
エメラルドを、あるいは支給品を賭けた戦いが静かに幕を開けた。
挿さったスプーン一本に己の命運を託すのはいささか理不尽にも見えるが、このギャンブル、侮るべきではない。
信じる事が出来るのは手先のみ。欲を出しても慎重過ぎても負ける。残せば勝ち、落とせば負け。ある意味で全てのギャンブルの原点、かもしれない。

先攻はコイントスでミラションに決定。
彼女は中指、薬指、小指の三本の指で水を掻くように粉をこそぎ取る。
さらさらと山が静かに形を変えるも、まだまだ余裕である。

それを受けてのサンドマンの初手。ミラションと同様の指の組み合わせ、動作によってこれも問題なく粉を払う。
ここまでは実際、不利なのはサンドマンだった。ボウルの中に入った粉のミックスに初めて触れたのだからその硬さや感触をここで確かめねばならなかったのだ。
とは言え彼も並の人間ではない。一度の動作でおおよその感覚をつかんだようだ。ここからは条件も五分となる。

二順目、三順目と順当に試合が進み、五順目の後攻、サンドマンが動きを見せた。

***

「へぇ……親指と人差し指、中指で摘む動作に変えたかい?ちょっとビビり過ぎなんじゃあないの?」
確かにそろそろヤバいかな、と私も思っていた。だが自分からこのスタイルに変えるのはビビっているようで気に入らなかった。
それを先にサンドマンがやってくれるならありがたいことこの上ない。
「ルール上は問題ない。さあ、お前の番だ」
短く返してくるサンドマンには余裕も焦りも感じさせない表情が張り付いたまま。眉ひとつ動かさないあたり、結構ギャンブラーの素質あるかもね、アナタ。
「なるほどー、流石は『砂男』砂の動きならよくわかるってところかしら。
 じゃあ私もそれにならって摘む動作に変えようかしらね」

黙ったまま山を睨みつけるサンドマンに対して私は笑いをこらえるのに必死だった。
確かに私は三本の指を山の真ん中、ややサンドマン寄りに突っ込んだ。だが、空手ではない。

ククク……水に浸したパンをこの粉の中で絞ったらどうなる?中の粉が固まって良いことなんかないッ!
一見安定するように感じるが、それは全てを水浸しにした場合!
塊に触れればそこからバランスを崩してこの山は崩れるッ!まさに爆弾よッ!
そして……粉まみれになったパンを引きずりだせば、それがそのまま“摘み取った粉”になる!

「ふう……十秒経った?さあ、貴方の番よ。」

相変わらずサンドマンは黙ったまま。つまり見抜けなかった。イコール敗者。
だいたい、パンの突っ込み方なんて聞かれたって教えないわよ。私しか知らない秘密の技だからイカサマって言うの。

「分かった、俺の番だな」
案外あっさり返事が返ってきた。ま、せいぜい頑張ってね。
ここから先は如何に塊を避けつつコイツの番に回すかが課題ね。まあ問題ないでしょ。

***

220獲得 その4 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:05:24 ID:m.tNs6xc
「……何かしたか?」
粉に触れると同時に違和感に気付いた俺は尋ねる。
「何のこと?仮に私がイカサマしてたとして、そんなもんその場で言うのが暗黙の了解ってもんでしょ?
 後から喚くなんてみっともないし、見抜けなかった奴が間抜けなのよ?違う?」

それもそうだ。現場か証拠を押さえなければただの虚言。家に置きっぱなしにしていて見つかった白人の本、あれと同じだ。
だが、こんなところでやすやすと支給品を奪われる訳にはいかない。

突っ込んだ指先に違和感を感じる。先程よりも粉が重い。あと数ミリ指を奥にやっていたら……おそらくは濡れているのだろう、そこに触れ、負けていた。
だが触れなければどうという事もないだろう。逆に言えば相手がそれを触らざるを得なくなるまで耐えきれば良いのだ。

三本の指で粉を摘み出す。指の穴を埋めるようにサラサラと流れた粉がスプーンを僅かに傾かせた。

「……どうやらお前の番に回るようだな」

ふう、と粉を飛ばしてしまわないように顔を逸らして溜め息をつく。

ここから先は持久戦ではない。むしろ逆、短期決戦になりそうだ――

***

221獲得 その5 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:06:43 ID:m.tNs6xc
その後の一順はお互いがお互いの状況を知るように慎重な一手で経過した。

しかし、その次の順――八順目の先攻で、ミラションがあっさりとスプーンを倒してしまう。
だが、ミラションはその手を震わせていた訳でもなければ、摘む粉の量を見誤った訳でもない。ならばなぜ――?

「何だ!?サンドマン、テメェ何かしやがったのか!?」
粉にまみれた顔と手でサンドマンを指さすミラション。その眼からは狼狽している様子が容易に見てとれる。

「……その場で気付き、言わなければイカサマを見抜いたと言わない。お前がそう言った筈だ。
 そして俺の名は“サウンド”マンだ。もう間違えるな」
イカサマの正体を明かそうとしないサンドマン……改め、サウンドマン。
六順目の後攻、彼は何も呆れたり疲れたり、まして安堵して溜め息をついた訳ではない。
大きくついた溜め息の、その『吹く音』をテーブルに張り付けたのだ。
七順目でその音が効力を発揮しなかった理由も単純。音を張り付けたのが七順目の後攻でのタイミングだったから。
イカサマの話をした直後にイカサマをするとなれば相当の技量と度胸がいる。ゆえにスルーしたのだ。

無論その事実をミラションは知るはずもなく、またサウンドマンも語る気はない。

「さて――約束だ、そのエメラルドを貰おうか」
冷静に、いや冷徹に告げられた要求。ミラションは震える手でエメラルドを手に取り、狼狽しながらも叫ぶ。

「わ、分かった。それじゃあもう一戦だ!私は支給品を賭けよう!だからお前はそのエメラ」
「良いだろう……じゃあ俺は支給品とエメラルド。賭けるものは二つだ。払えるか?」

遮ったサウンドマンからはまさかの倍プッシュ。ミラションには払うアテがない。
そして再度告げられる冷徹な宣告。

「もう一戦やると言ったな?だがお前は支払えない。足りない分は……その身体で払ってもらおう」

ぞっ――とミラションの背筋に汗が流れたのは言うまでもないだろう。

***

222獲得 その6 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:07:42 ID:m.tNs6xc
それから数刻、時刻は午前四時を回ったところである。

「はぁっ……ハァ、くっ……うぅ」
息を切らしながら彼女は走る。デイパックを左肩にかけて。

サウンドマンにとって身体とは資本である。情報が必要なら足を使って稼ぐ。
要するに……ミラションはサウンドマンの使いっ走りにさせられたのだ。

当のサウンドマンはと言うと、ミラションと同じ方向を目指して同じ時刻に家を出たものの、彼女とは速度に違いがあり過ぎるとして先に行ってしまった。

「チクショウ……午前十一時にトリニティ教会……覚えとけよサウンドマンッ!
 絶対にこの借りは返してやるからな!情報も仲間も集めまくってド肝抜いてやるわよッ」

***

うん、この辺でやめとこうかな。この二人の話はまた今度ね。
いやぁ〜まさかイイ大人がマジ顔で棒倒しやるとは俺も思わなかったよ。ハハハ。

さて、最初に聞いた質問の答えを聞いてないね。
君たちは賭け事好きかい?……ん、俺?普段はカードとパチンコ。あとは彼等がやってたみたいな棒倒しとか、そう言うゲームっぽいギャンブルが好きだね。
最近は麻雀も始めて勉強中だよ。チートイツとかスーアンコーとかね。いやいや、まだ下手っぴさ。
でもね、今練習してるんだよ。握力でもって白の牌を作るのをね……

223獲得 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:08:24 ID:m.tNs6xc
【F−7 路上 / 1日目・黎明(午前四時)】

【ミラション】
[スタンド]:『取り立て人 マリリン・マンソン』
[時間軸]: SO4巻 徐倫襲撃前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:籠城作戦を取り、生き残る
1.せっかく籠城作戦をとろうと思ってたのに……
2. サンドマン→サウンドマンに借りを返す
3.午前十一時にトリニティ教会に仲間と情報を持って行く(サウンドマンの命令)
[備考]
サウンドマンの命令は『午前十一時までに仲間と情報を集めてトリニティ教会に来い』です
そのために北西方向を目指して移動する予定です

【?−? どこかの路上 / 1日目・黎明(午前四時)】
【サウンドマン】
[スタンド]:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
[時間軸]:SBR10巻 ジョニィ達襲撃前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)、サンドマンの両親の形見のエメラルド
[思考・状況] 基本行動方針:金を集めて故郷に帰る
1.故郷に帰るための情報収集をする
2.午前十一時にトリニティ教会に仲間と情報を持っていき、ミラションと合流
3.(仲間は別に積極的に集めようとしていない。故郷に帰る事こそ最優先)
[備考]
F-8の建物から北西方向を目指して家を出ましたが、トリニティ教会はあくまで最後に行けばいい場所なのでルートは決まっていません。
次の書き手さんに一任します。

224獲得 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/03(金) 23:08:44 ID:m.tNs6xc
以上で仮投下終了です。
ギャンブル話、随分グダグダと長い話になってしまったorz
視点がコロコロと変わるので読み難いかも知れません。
後はキャラの心情とか、結構オリキャラ入ってるんじゃないかなぁとも思ったり。
何かご指摘ありましたらコメント頂ければと思います。この土日で意見を待って、日曜夜か月曜夜には(規制とけてたら)本投下します。

225名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 00:15:12 ID:EfMkR.zk
投下乙!感想は本投下後に
一つ気になったのですが、ミラションに課せられた命令は能力による物ですか?
例えば、賭けに負けたからといっても、普通なら約束を齟齬にする事もできると思います。
この場合、ミラション自身のスタンドが、本人に「命令」に従う事を強制しているという解釈でよろしいでしょうか?

226225:2012/02/04(土) 00:46:29 ID:EfMkR.zk
書いた後でなんか変だなーと思った
齟齬じゃなくて反故ですね

227名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 08:43:09 ID:yMsXcuEk
まあ、賭けに勝って、脅されたらミラションは何もできないんじゃないかな
「守らなかったらお前の悪評を言いふらすぞ」とか、あるいはミラションにダービー並の賭け師のプライドがあったとか

そのへんの理由づけは欲しいかもしれません

228名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 09:47:59 ID:mjHy7K5s
投下乙です。一点指摘を。

サンドマンがイカサマをした時点で、取り立て人マリリン・マンソンがミラションの意思とは無関係に(イカサマを見抜いていなくても)
発動するはずですが、なぜ現れなかったのですか?

229 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/04(土) 17:31:04 ID:4PBFqmsg
ご指摘ありがとうございます。現状での解決案(本投下時には変わってるかも知れませんが)

>約束を反故に
・レートアップして降りれなくし、それを実行(支払い)するサンドマンに恐怖
・イカサマを見つけた段階で問答無用でボコボコにされる
現在この二つの案が浮かんでます。

>マンソンが出なかった理由
・イカサマした意識or罪悪感がない=「心の影」であるマンソンが出てこない
・金目の物がとんでもないものだから発動しない
現在はこの二つの案を混ぜて使う予定です

まだまだご意見お待ちしております。やっぱりどんなに投下してても仮投下って重要ですね、と痛感しますわw

230名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 19:12:45 ID:mjHy7K5s
>・イカサマを見つけた段階で問答無用でボコボコにされる
ゲームが終わっていない時点でそれをすると、原作を見るにイカサマ扱いではないでしょうか?
サンドマンの勝利が確定してから「イカサマしてたじゃねーか」と証拠を見つける、ということですか?

>・イカサマした意識or罪悪感がない=「心の影」であるマンソンが出てこない
イカサマした=ルール違反、とみなしてマリリン・マンソンは発動するのでは?
潜在意識・無意識の罪悪感だから、表向き申し訳ないと思ってない、は通じないと思います。
(エルメェスも悪いとは全然思ってなかった。徐倫に至っては本体がルール違反してるからブチのめすのがアリだと思ってたのに、無意識レベルの罪悪感で取り立てられた)
無意識のイカサマは……最初に「自分でやらないギャンブルは嫌い」と語っておきながら勝敗に運が絡むはどうなんだろう、と思います。
気にしすぎだとは思いますが。

231名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 19:20:34 ID:OnMXZmKU
仮投下おつです

作者氏から解決案が出ているけど、自分が読んだ時に気になったのも
サンドマンがイカサマしたにも関わらずマンソンが現れなかったことでした。

そして、サンドマンが吹く音を貼りつけたことに関して
>「……その場で気付き、言わなければイカサマを見抜いたと言わない。お前がそう言った筈だ。
とあるので、イカサマした意識が無いって言うのはちょっと難しいのではないかと思います。

232 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/04(土) 19:31:00 ID:4PBFqmsg
ふむふむ。皆さんご意見ありがとうございます。
皆さんのご意見を読むと、マンソンにイカサマ云々で勝てるのはアクセルROを完封した由花子さんくらいでしょうねw

さて、皆様のご意見&原作を読みなおして考慮した結果、現在マンソン登場の方向で修正中ですが、それゆえに話がぶっ飛ぶ予感です。

ゆえに「本投下時に別の問題が出る」可能性が否定できません。
そこまで行くともうどんなに水で清めても心が折れるので、そうなった場合は今回のSSを収録させず完全に破棄するとここで明言しておきます。

233名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 19:44:37 ID:muY2pV9s
イカサマ=ルール違反とは言っていますが、ミラションが「バレなければイカサマではない」と明言しているので、これはルール上のことという解釈はできないでしょうか?

234名無しさんは砕けない:2012/02/04(土) 23:06:22 ID:mjHy7K5s
明言はしていないのでは……?

235名無しさんは砕けない:2012/02/05(日) 16:35:02 ID:U1zrZj3g
投下乙です。色々意見が出てますが、参考までに僕も意見を言います。
自分は『マリリン・マリソン』は『負けたと思った時しか発動しない』と解釈しています。
原作でスタンドが発動したのは、エルメェスと徐倫の二名に対して。
それぞれに『マリリン・マリソン』が発動したのは、エルメェスはイカサマをしないと『負ける』状況に追い込まれた時、徐倫は実際ボールを取りあげられ、『負けた』時。


罪悪感はまったく関係ないのでは? 『負けた』のを誤魔化した時に発生する罪悪感には反応するのでは?

単行本5巻で徐倫に対してミラションがイカサマ云々言っているからややこしいです。
ですが、原作でもイカサマはしてはならない、というふうに名言している箇所は見当たりませんでした。
ただエルメェスはイカサマをしないと負ける状況に追い込まれていた。イカサマをしなかったら『負けていた』。賭けの『負けた』という感情がスタンドのトリガーになるのではないでしょうか。

その点今回の話でサンドマンは一度も『負けた』と思ってない。
パンで小麦粉を湿らされましたが、まだサンドマンとミラション、両方に負ける可能性も勝つ可能性もあったはずです。実際一回ずつ手順が周ってる事からミラションがドジこいて負ける可能性もあったわけですし。
サンドマンはスタンドでイカサマを働きましたがそれは『負け』を回避するためではないのでは? 『負け』と自覚したことはないのでは?


それとミラション自身に対する拘束力ですが、『マリリン・マリソン』が自立スタンドなのかどうかはわかりませんし、ミラション自身にはもしかしたら効果が発動しないのかもしれません。
もうそこは荒木先生のみ知る領域でしょう。あのゲスな性格から、もしかしたら自分には取り立てが来ないように操作できるかもしれません。スタンドは本人の精神ですし。

とりあえず、僕個人としては通しちゃってもいいかなァ、なんて能天気に思ってます。話自体、とても面白かったですし。
あくまで僕個人の意見なので参考にしてくだされば幸いです。

236名無しさんは砕けない:2012/02/05(日) 17:25:40 ID:3Y9zYikA
罪悪感に関しては「無意識レベル」でも認識するらしいから、ここを考えるとキリないかもしれないですが。

エルメェスは「手で行うキャッチボールで、キャッチする際、ガム(とスタンド)を使うというイカサマを働いた」とき(=ルール違反)
徐倫は「キャッチボールが途切れた」(=負けた)とき、取り立てられました。
(徐倫はもしかしたらミラションに攻撃を加えようとしたときかもしれませんが)
エルメェスが取り立てられる直前の「彼女は今「ルール」を破った」と言う台詞から、マリリン・マンソンの発動条件は
「ルール違反をしたとき(イカサマも含まれる)」「勝負に負けたとき」ではないでしょうか?

>ですが、原作でもイカサマはしてはならない、というふうに名言している箇所は見当たりませんでした

SO4巻「取り立て人 マリリン・マンソン その3」ミラションの台詞
「イカサマはゲームではない……でもゲームにはハプニングはある」=イカサマはゲームとして認められない、と言っています。
スタンドの特性的にも「イカサマはアリ」「バレなければイカサマではない」とは言わなさそうです。

>サンドマンはスタンドでイカサマを働きましたがそれは『負け』を回避するためではないのでは?

イカサマを働いた時点で、負けを回避するためとしか言いようがないと思いますが。

>ミラション自身に対する拘束力

原作でミラションは普通にイカサマしてたので、一切ないと見ていいと思います。

まとめると、マリリン・マンソンの能力は

・「賭け」で負かした相手の「心の弱み」を見抜き、借金を取り立てる。
・発動条件は「自分の課したルールに反すること」。原作準拠の範囲で分かりやすく言い換えるなら、
 「ルール違反(主にイカサマ)」「勝負に負ける」。相手の罪悪感で発動するので、ミラションの認識は関係ない。
・本体は取り立ての例外。また、本体のイカサマは、ばれなければ負けにならない。

ではないでしょうか。ほんっと分かりづらい能力ですね……

237 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:00:59 ID:gHY17mnk
ヴァニラ・アイス、シーザー・アントニオ・ツェペリ、虹村形兆、ズガン1名
仮投下します。

238 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:02:16 ID:gHY17mnk


                 ガ オ ン ッ ッ ! ! !


―――会場の南西にある牧草地。
ヴァニラ・アイスは『クリーム』の中に姿を隠し、一直線に突き進んでいた。
ときおり暗黒空間から顔だけを出して周囲を確認しつつ、また進むのを繰り返す。
彼の向かう先は主であるDIOの館……ではなかった。

(DIO様はこの殺し合いにおいてわたしの助けなど必要とはすまい。そういうお方だ。
 ならば、わたしのすべきことは一つ、DIO様の敵となる『彼ら』を排除すること……
 DIO様……このヴァニラ・アイスがジョースター達を必ずや仕止めてごらんにいれます……)




―――殺し合いの場で最初に遭遇したのは妙な言動の男。
わけのわからないことを喋りつつこちらへと攻撃を仕掛けてきたため応戦した。
仕止め切れなかった奴が合流していたのは、あろうことかDIO様の名を利用する愚か者。
(腹立たしいことに顔もどこか似ていた。無論、DIO様には遠く及ばなかったが)

『クリーム』で攻撃を仕掛けるも、予想以上に速い奴らの移動速度と複雑な住宅街に翻弄され、遂には見失ってしまった。
……まあ、それはいい。気にはなるが、スタンド使いとはいえあんなゴロツキ達などいつでも始末できる。
それよりも今は――――――


支給された荷物にあった地図を眺める。
見覚えのある場所名に眉をひそめつつも、ヴァニラは自分が行くべき場所を模索し始めた。

(空条邸……奴は、承太郎は死んだ。ならば行く必要などない。
 DIO様の館……一刻も早く馳せ参じ………………いや、待てよ)

239 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:03:41 ID:gHY17mnk
地図から顔を上げ、辺りを見渡す。
穴だらけになった市街地、その向こうにかすかに牧草地が見えた。
方位磁石でそちらの方角も確認し、再び地図へと目を向ける。

(ここはおそらく地図の南端、フィラデルフィア市街地……
 となれば、わたしが向かうべきところは……ここだ!)

目的地を定めたヴァニラは『クリーム』の中に姿を隠すと、一直線に西北西へと向かったのである。



ある意味で、その選択は『幸運』であった。
なぜならば、ヴァニラがまっすぐにDIOの館に向かっていた場合、その針路上の近くにいたのはDIOその人だったのだから。
万に、いや億に一つもありえないかもしれないが、
自身の主を認識できずに『クリーム』でいつのまにか消滅させていたなどというマヌケな事態にはならずに済んだのである。
もちろん、DIOに気が付き、合流していたという可能性も考えれば
ある意味で、その選択は『不運』でもあったのだが。

『不運』といえばもう一つ。
実はヴァニラが直進していた牧草地には、参加者が一人いたのである。
彼の名はケンゾー。G.D.S刑務所に服役中の囚人だった。
何所へかは知らないが、歩き続けていたところで彼は妙な異変を感じ取った。
スタンド『龍の夢』を発動して『方角』を確認すると、
驚くべきことに先程確認したときは『大吉』だったはずの自分の進路が『大凶』に変わっていた。

「な、何が一体!?」

ケンゾーは周りに誰もいないことに油断し、いつのまにか安全な方角から足を踏み外していたのである。
慌てて移動しようとするも、その時には既に手遅れ。
一瞬の後、彼の身体は『クリーム』の暗黒空間にバラまかれこの世から消滅していた。
本人に言わせれば、『不運』というより『大凶』というべきかもしれなかったが。
進む『方角』ひとつで『運命』は大きく変わる。それはケンゾーのみならずヴァニラにもいえる事であった。



「……ここか」

こうして、ヴァニラが辿り着いた場所はジョースター邸。
主の宿敵であるジョースターの名を冠する屋敷。
ヴァニラは知る由も無いことだが、そこはある意味で彼の主が『誕生』した場所でもあった。
目的はただ一つ、ジョースターとその仲間の抹殺。
屋敷ごと破壊するという手もあるが、中の構造や潜む人間も分からないまま行うのは愚策である――
そう考えると、ヴァニラは『クリーム』の暗黒空間から完全に姿を現し、入り口に向けて歩き出した。

240 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:04:57 ID:gHY17mnk
#


―――会場の最も南西から少し東の地点。
虹村形兆は『バッド・カンパニー』で周囲を確認しつつ牧草地を進んでいた。
その後ろをシーザー・アントニオ・ツェペリが付いていく。

現在、形兆が向かっているのはジョースター邸。
ジョースターの名前が気になるのはもちろん、情報収集のため最も近い建物に向かうのは基本である。
シーザーも何か思うところがあるのか黙って付いて来ていた。

(歩き始めてからここまで二十八分四十五秒……襲うつもりならばとっくにやっているだろう。
 ……少なくとも『信用』はできそうだ)

形兆はシーザーをそう評価した。
シーザーに襲われる可能性はまずないと考えた彼は再度自分の荷物を確認する。
調べるうちに気になったのは折りたたまれた紙だった。
裏返しても何も書かれておらず、大して厚みもない紙だったが、開いてみると中から銃が出てきたのである。

(まさか……この紙も、スタンド能力か……?)

驚きはしたが、武器が手に入ったのは幸運である
……と、思ったのは一瞬。

(………………モデルガンか)

調べてみると紛れもない偽物。
ハッタリには使えるかもしれないが、スタンドとはいえ本物の銃があるのだから必要ない。
そう思ってしまっておこうとしたのだが……

「………………む?」
「どうした?」

後ろから付いてくるシーザーが耳聡く聞きつけて声をかけてくる。
形兆はモデルガンを紙の中にしまおうと悪戦苦闘しつつ答えた。

「……紙の中に収められん」
「その紙、『使い捨て』だと思うぜ。おれのやつもそうだったしな」
「な、なに!?」

驚愕。
開けると物が出てくる紙なのに、逆に収納することは不可能だと!?
なんということだ、これではキチッとしまうことができないではないか!

「……いいかげんなやつめ」

誰かは知らんが、この紙のスタンド使いとは一度キッチリと話をつけておく必要がある――
形兆はそう思いつつ、しかたなく懐にモデルガンをしまって次の紙を開ける。
続いて紙から出てきたのはコーヒー味のチューインガム。

(……贅沢は言わんが、もう少し役に立つものは無いのか……?)

形兆は小さくため息を吐きつつ、いつの間にか自分と並んで歩いているシーザーに聞いてみる。

「ところで、お前の紙からは何が出てきたんだ?」
「おれ……? おれは、この石鹸と………………これさ」

シーザーがデイパックから出したのは女物……にしてはやけにサイズが大きい服にアクセサリー、カゴ、テキーラ酒が二本。

「女装セット(テキーラ酒の配達)だそうなんだが……」
「おいおい、こんな服に合うデカイ女が普通いるか? これを着たやつは客観的に自分を見れねーのか?」
「ハッ、違いない。まったく、どんなやつが使ったのか顔を見てみたいもんだぜ」

思わず吹き出しそうになる形兆と、実際に女装した誰かを想像したのか笑い声を上げるシーザー。
とはいえ、二人の間の空気は和んだが実際役に立ちそうにないという意味では変わりない。
形兆は気を取り直すと、先程倒した人面犬の荷物にあった紙を取り出そうとして……


『バッド・カンパニー』の索敵によって前方に建つ屋敷の前に突然男が現れたということを知った。

241 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:06:04 ID:gHY17mnk
既に形兆とシーザーは相手の姿が視界に入る程の距離―――ジョースター邸の門の近くまで来ていた。
見えたのは、ハートのアクセサリーを付けたガタイがいい長髪の……男、だろうか。

「あれは……誰だ?」

シーザーが男を遠めに眺めながら誰にともなく言う。
だが形兆は、自分の目で見たものが信じられない、といった様子で固まっていた。

「おい、お前ッ!」
「………………ハッ!」

シーザーに小声で怒鳴られ、我に返る形兆。
いきなりシーザーの方に向き直ると、早口で話し始めた。

「ここで待っていろ。オレはあの男を『知って』いる。」
「本当か?……だとしても、待ってろってのはどういうことだよ?」
「いいから待っていろ。」
「あ、おい!」

理由も話さず、反論も許さず、形兆は男の方へと歩いていく。
シーザーは納得できなかったものの、ひとまず様子を見ることにした。

(あいつはJOJOとは別の意味で計算高そうだ、少なくとも考えなしじゃないとは思うが……)

心配というほどではないが、形兆の様子がおかしかったことに一抹の不安はある。
幸い、自分の位置からでも会話は聞き取れそうだったため、シーザーは聞き耳を立てて二人の会話を聞くことに集中した。


#


「ヴァニラ・アイスだな?」

いきなり名前を呼ばれたヴァニラが振り返ると、そこには見覚えのない男が立っていた。
誰かが近づいてくるのはわかっていたが、まさか知らない男に名指しで呼ばれるとは思っていなかった。
自分の名を知るこいつは誰なのか、と警戒しつつ答える。

「………………きさま、何者だ」
「質問を質問で……いや、ここは名乗るのが礼儀だな。オレは虹村。虹村形兆という」
「……虹村、だと……?」

ヴァニラはその名前に聞き覚えがあった。
確かDIO様に肉の芽を埋め込まれ、極東の島国でジョースター達を見張っていたとかいう男の名だ。
しかし、この男が……?
訝しげな表情を読み取ったのか、形兆は言葉を続ける。

「おっと、勘違いしないでもらいたい。おそらく、お前が知っている虹村はオレのおやじだ」
「………………」
「疑っているようだな。ならば今から、おやじとお前達の関係についてオレが知っている限りのことを話してやる」

形兆は話し始める。おやじのこと、DIOのこと、ヴァニラのこと、他の部下たちのこと………………
無論、DIOの死により肉の芽が暴走したということは伏せて。

242 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:07:00 ID:gHY17mnk


―――虹村形兆は父親が変貌してから10年かけて、肉の芽の治療法を調べるためDIOに関する様々な情報を集め続けていた。
その結果、エジプトでジョースター一行と戦って敗れたとされるDIOの部下の中にヴァニラ・アイスの名があったのを覚えていたのだ。
最も、形兆が興味を持ったのはどちらかといえばそのスタンド能力『クリーム』の方であった。
この世界の空間から完全に姿を消してしまえるスタンド。
自分の弟のスタンドと似てはいるが、それよりも遥かに強力で、それこそおやじを跡形も無く『殺す』ことができるのではないか。

そんな考えを持っていたからこそ、先程ヴァニラを見かけたときには驚いた。
死んだと聞いていた奴が何故ここにいるのだろうか、それとも情報が間違っていたのか。
だが、形兆にとってそんなことはどうでもよかった。
重要なのは、こいつにおやじを『殺して』もらうことだ。
今だけは、当のおやじがDIOの部下だったおかげで、こうして会話ができることに感謝していた。


形兆の説明を聞き、ヴァニラはひとまず相手の言っている内容が出鱈目ではないことを理解した。
少なくとも、ジョースター側が決して知るはずのない情報を奴は知っている。
本当に虹村の息子かどうかはわからないが、そう仮定して話を進めても問題は無い、として会話を続けることにした。

「……それで、その虹村の息子がわたしに何の用だ」
「簡単なことだ。『協力』したい」
「……きさまごときの協力が必要とでも思っているのか?」

ヴァニラは相手の要求をにべもなしに断る。
そもそも、この殺し合いに勝利するのはまぎれもなく自分の主であるDIO様。
あのお方は『最強』だ。殺し合いならば勝てる者など考えられない。
自分は勝ち残る気など無く、あくまで露払い役となるだけだ。
もしDIO様と最後の二人になり、自らの首をはねろと命じられれば、自分はためらい無く首をはねるだろう。

そんなヴァニラに形兆は質問する。

「ふむ。ヴァニラ、お前は自分が優勝できるとでも?」
「わたしではない。優勝するのは我が主、DIO様だ」
「……ほう。ということは、お前はDIOもまた、殺し合いに参加していると」
「当たり前だろう」

DIOを呼び捨てにする形兆に多少気分を害したものの、何をバカな――と相手にしないヴァニラ。
だが……

「ならば、この殺し合いを主催したものは、DIOを『強引に』ここに連れてきた。
 すなわち、奴よりも優れている……ということではないか?」
「……なんだと!?」

続く質問に激高し、形兆の胸倉をつかむ。
しかし形兆は涼しい顔で言葉を続ける。

「DIOが参加しているのを実際に見たのか、それとも思い込みかは知らんが、
 参加しているとすれば先程オレの言ったことは完全に間違いとはいえないだろう。
 逆に、もし参加していないとすれば、お前はどうする?」
「……ならば、こんな下らないゲームになど用はない。」

相手のペースに引き込まれていると感じつつ、答えを返す。

「つまり、どちらにせよお前は、オレたちはこの殺し合いの主催者をどうにかしないといけないわけだ。そのために『協力』をしたい」
「………………きさまの『目的』はなんだ?」
「主催者を打倒し、このゲームから『脱出』すること」

ヴァニラの問いに形兆が迷いなく答える。
形兆にとって、この言葉は嘘ではなかった。
おやじを殺せるスタンド使いは今、目の前にいるのだから。

243 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:07:52 ID:gHY17mnk
逆に、ヴァニラは何も言えなかった。
彼はずっと、主であるDIOが当然この殺し合いに参加していると思っていた。
最初のホールで姿を確認することはできなかったものの、あのとき感じた圧倒的存在感を間違えるはずがない。

しかし参加しているとなると、主催者側は少なくともDIOを無理やり動かせるような『能力』を持つということになる。
ならば、DIOの存在を脅かす者として生かしておくわけにはいかないが、優勝できるのはたった一人。
DIOが優勝するとしても、その時点で主催者は健在ということになる。

殺し合いが終わる前に主催者に挑む方法があったとしても、敵の規模や能力は未知数なのに加えて、首輪の存在が反抗を阻む。
現実的に考えて、自分ひとりで全てをどうにかするというのは不可能に近い。
それが分からないほどヴァニラは愚かではなかった。

そして、もしDIOが参加していないのならば、自分は一刻も早くこのゲームから脱出し、主の元へ戻らねばならない。
その場合でも、やはり主催者の存在が障害となる。
形兆の言葉は、納得は出来なくとも事実には違いないのだ。

―――怒りに任せて目の前にいるこの男を殺すのは簡単なことだろう。
だが、参加者が減ったとしても現状は何も変わらない。
それに、この殺し合いの直前にテレンス・T・ダービーがジョースター達に敗北した。
仲間と呼べそうなDIOの部下達はもう数えるほどしか残っていないのだ。
『味方』になり得るこの男をここであっさり殺してしまってよいものか?
その思考が、動きを止めていた。

ヴァニラは考え込むそぶりを見せる。
その心の中にあるのは、常に絶えることなきDIOへの異常なまでの忠誠心。
既に、彼の答えは決まっていた。

(DIO様……わたしは、あなたにお仕えする……その考えに微塵も変わりはございません……
 もしDIO様がこの『バトル・ロワイアル』に参加していたならば………………
 あなたをないがしろにした主催者もまた、必ずやわたしが仕止めてごらんにいれましょう……)

ヴァニラは心に想う。
必ず主催者とジョースター達を排除して、DIO様の期待を満たすのだと。
形兆の胸倉をつかんでいた手を離すと、ゆっくりと自分の口を開く。

「………………『協力』とは、どうすることだ?」





―――DIOに絶対の忠誠を誓った男は、そのDIOに対する忠誠心ゆえに、折れた。

244 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:08:48 ID:gHY17mnk

「別にたいしたことではない。オレたちは仲間を集め、主催者を討つ。オレたちと共に行動して、その一員となってくれればいい。
 もちろん、お前に偉そうに命令するつもりなどない。」
「……いいだろう。ただし、きさまが妙なマネをするか、殺し合いにDIO様が参加しており、もしあのお方の意に沿わなければ……」
「その時は、好きにすればいい。オレを殺そうが、どうしようがなァーーーーーーーーッ」

説得を終えた形兆は心の中でほくそ笑む。

(『予定』通りだ)

ヴァニラ・アイスは自分の知る情報の限りでは、DIOに異常なまでの忠誠心を持つ男であった。
そういうタイプは主君に対する危機感をあおり、さらに『主君のためになる』という道を示せば、
寝返るとはいえずともある程度行動をコントロールできる。
もし説得に失敗した場合は奇襲で首輪を爆破することも考えていたが、予想以上に上手くいった。
後はヴァニラと共に主催者を倒すか、どうにかして殺し合いから脱出し、おやじを殺してもらうだけだ。

……ただ、気がかりなのはその前にDIOに遭遇した場合だ。
会話中は動揺を悟られないようにしたものの、DIOが生きてこの殺し合いに参加しているというヴァニラの確信めいた言葉。
奴が死んだことでおやじの肉の芽が暴走したことを考えると『生き延びて』いた可能性は低いが、ヴァニラの現実逃避や妄言とも思えない。
あるいは、吸血鬼の能力か何かで『生き返った』とでもいうのだろうか?
いずれにしても、遭遇したときにやるべきことは決まっている……

(もしDIOがこの『バトル・ロワイアル』に参加していたら、オレが直接聞き出してやる! おやじを『治す』方法をッッッ!!)

形兆は心に決める。
必ずおやじをどうにかして、自分自身の『人生』を始めるのだと。

DIOは実際一度敗れている……すなわち無敵というわけではない。
ならば、戦いになってもどうにかできる『可能性』はあるはずだ。
幸いこちらには吸血鬼に有効な―――

「……そうだ、忘れていた。おい、もういいぞ」

シーザーを待機させたのは、吸血鬼の宿敵である彼が会話に参加すると話がこじれる危険性が高かったからだ。
会話はおそらく聞こえていただろうし、説得に成功した今ならばもう大丈夫だろうと考え、形兆は後ろを見て手招きする。
するとシーザーが―――なにやら難しい顔をしながら現れた。

「……誰だ」
「とりあえずお仲間、ということになるんだろうか」

ヴァニラが聞き、形兆もそれに答える。
続いてその視線はシーザーへと向けられた。

「………………」

245 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:10:09 ID:gHY17mnk
#


―――シーザー・アントニオ・ツェペリは驚いていた。
会話を聞いていた彼は、最初ヴァニラがディオの部下だと聞き、驚いた。
次いで、形兆の父親に肉の芽を埋め込んだのがディオだと理解し、さらに驚いた。
だが何より驚いたのは、ディオがこの会場にいるかもしれないという点である。
しかし、彼は形兆がヴァニラと手を組もうとするのに納得がいかなかった。
どうして自分の身内の仇である奴の仲間と組もうとするのか。

シーザーをよく知るものならばこの時点で形兆に愛想を尽かし、一人で行動を始めているのではと考えるかもしれない。
何故彼が素直に姿を現したのか、そこにはある『理由』があった。

「……シーザーだ。よろしく」

『誇り』ある自分の姓は名乗らない。教える必要などどこにも無い。
代わりに手を差し出す。

「……馴れ合うつもりなど、ない」

ヴァニラはその手を払いのける。
しかし、シーザーにとってはそれでよかった。

(マンマミヤー……やはりこいつ、『人間』だ!!)

遠くから波紋で探知を行ってもヴァニラは吸血鬼などではなかった。
そして今、手を通して微弱な波紋を流しても相手の手が溶ける様子はない。
柱の男にしろ吸血鬼にしろ、シーザーが今まで見てきた奴らの部下は例外なく『人外』であった。
何故『人間』がディオに従っているのか。
もし形兆の父親と同じように肉の芽で操られているのならばヴァニラは被害者であり、助けなければならない。
あるいは自分の意思でディオに仕えているのならば、許しておくわけにはいかない。
どちらにせよ、ヴァニラの動きに目を光らせておく必要があったのである。

そしてもう一つ。
彼ら、特にヴァニラはディオを探している。
ならば、この二人と共に行動すれば、ディオの元に辿り着けるのではないか?

(もしディオがこの『バトル・ロワイアル』に参加していたら、おれが直接とってやる! じいさんの仇をッッッ!!)

シーザーは心に誓う。
必ずディオを討ち倒して、一族の『誇り』を受け継ぐのだと。
彼はそのために、不本意ながらもこの二人と共に行動することを決めた。


(この二人には注意するべきだが……待っていろよ、おれのじいさんの因縁であるディオ!!)
(DIO様……いるのですか? もし……いるのならば……わたしに道をお示しください……)
(オレのおやじに肉の芽を埋め込んだ張本人、DIO……出来れば会いたくはないが、どんな奴なのか……)


三人の『目標』は等しく、されど『目的』は三者三様。
彼らの同行がいつ、どこまで続くことになるかは誰にも分からない。
ともあれ、彼らは屋敷の中へと向かっていった。


―――最大の鍵となる男が意外とすぐ近くにいる、という事実を知らずに……





【ケンゾー 死亡】
【残り 90人以上】

246 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:11:03 ID:gHY17mnk
【G-2 ジョースター邸前 / 1日目 黎明】

【チーム 一触即発?トリオ】

【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:後続の方にお任せしますが、少なくともエシディシ撃破後です
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、不明支給品1〜2(ベックの物)、トニオさんの石鹸、ジョセフの女装セット
[思考・状況]
基本行動方針:主催者(この場にいるなら)柱の男、吸血鬼の打倒
1.しばらくは形兆達についていき、ディオと会ったら倒す
2.形兆とヴァニラには、自分の一族やディオとの関係についてはひとまず黙っておく
3.知り合いの捜索
4.身内の仇の部下と組むなんて、形兆は何を考えているんだ?
5.ヴァニラは何故ディオに従う? 事と次第によっては……


【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康、人間
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:DIO様……
1.DIO様を捜し、彼の意に従う
2.DIO様の存在を脅かす主催者や、ジョースター一行を抹殺するため、形兆達と『協力』する
3.DIO様がいない場合は一刻も早く脱出し、DIO様の元へと戻る
4.あの小僧、自分を『DIO』と呼んでいるだとッ!思い上がりにも程があるッ!許さんッ!

※デイパックと中身は『身に着けているもの』のため『クリーム』内でも無事です。


【虹村形兆】
[スタンド]:『バッド・カンパニー』
[時間軸]:レッド・ホット・チリ・ペッパーに引きずり込まれた直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、不明支給品1〜2(人面犬の物)、モデルガン、コーヒーガム
[思考・状況]
基本行動方針:親父を『殺す』か『治す』方法を探し、脱出する
1.上記の目標の為、様々な人物と接触。手段は選ばない。
2.ヴァニラと共に脱出、あるいは主催者を打倒し、親父を『殺して』もらう
3.オレは多分、億泰を殺せない……
4.音石明には『礼』をする

※他のDIOの部下や能力についてどの程度知っているかは不明です(原作のセリフからエンヤ婆は確実に知っています)。


[備考]
・形兆とシーザーはお互いのスタンドと波紋について簡単な説明をしました(能力・ルール・利用法について)
・ヴァニラは他二人との情報交換は行っていません。
・三人はまずジョースター邸内を探索する予定です。
 その後どうするかは後の書き手さんにお任せいたします。

※ケンゾーの支給品一式は粉みじんにされました
※ケンゾーの参戦時期はサバイバーによる乱闘が始まる直前からでした

247 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:11:48 ID:gHY17mnk
【支給品】

ジョセフの女装セット(2部)
シーザー・アントニオ・ツェペリに支給。

ジョセフがナチスの地下施設に潜入しようとしたときの変装に使った服、アクセサリー、化粧道具、カゴ、テキーラ酒二本のセット。
結果はどこからどう見てもバレバレの変装だったため、一目で見破られた。
なにが恐ろしいかってジョセフ本人は自分の女装が見破られない自信があったことである。


コーヒーガム(3部)
虹村形兆に支給。

イギーの大好物であるコーヒー味のチューインガム(箱入り)。
これが無ければイギーは全く言うことを聞こうとしない。

ちなみにコーヒー味のガムは最近ロッテが復刻発売している。


モデルガン(4部)
虹村形兆に支給。

東方良平が仗助に突きつけたモデルガンのリボルバー。
仗助が本物と見間違えるほどの出来だが、弾丸は発射できない。

248 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/05(日) 22:12:56 ID:gHY17mnk
以上で投下終了です。
タイトルは「もしDIOがこの『バトル・ロワイアル』に参加していたら」を予定しています。
書き手としての参加は初めてなので
・各人の思考、行動、言動におかしな点はないか
・誤字、脱字、矛盾はないか
・その他、疑問等があれば
について意見を頂きたいです。
他の書き手さんのようなペースでは書けないかもしれませんが
いろいろご指摘いただけたら幸いです。

249 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/05(日) 23:51:47 ID:sZb8N2Hk
仮投下乙です!
2ndから安定のケンゾー…w
そして「こうくるかッ!」と思わせる展開にwktkが止まりません

ざっと読んだところ、誤字脱字はなかったように思います
思考、行動、言動に関しても明らかに不自然なものは無いと感じました
多少キャラ視点の地の文の入れ替わりが多いかもしれないと思いますが、自分はすっと読めました

ひとつだけ、文法に関してです
形兆のセリフの一部に、句読点の「。」が使われていますが、
「」のセリフの終わりに句読点は基本的には不要かなと…
あえて付けているようでしたら、個人の趣味の範疇になってきますので構わないと思います

250 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/06(月) 23:07:31 ID:h9rR40e2
コメント、ご指摘ありがとうございます。
句読点はセリフを削った際の消し忘れなので消しておきます。
地の文はキャラ視点の数箇所を()で思考に修正するつもりです。
また、本スレにて死亡者が出たので残り人数も直します。

後は、特にご意見がなければ明日にでも本スレに投下いたします。

251 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:51:33 ID:hyMLKR6o
ラバーソール、川尻しのぶ、空条承太郎
仮投下します

252Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:53:16 ID:hyMLKR6o
――チッチッ、チッチッ、時計の刻む音だけが聞こえてくる。
――生臭い、生肉や生魚よりももっときつい、今にも吐き戻してしまいそうな臭いがする。
――空条さんは黙ったまま、ぴくりとも動かない。

川尻しのぶは、空条承太郎の動向を固唾を呑んで見守っていた。

――何? 何か問題でもあったの?
――黙ったままじゃあわからないわよ。

どれくらい時間が経ったのか、よくわからない。
まだ数分も経っていないような気もするし、もう何時間とここにいるような気もする。非日常の只中に置かれて、自分の感覚ひとつ信じられない。
ただわかることは、このままここに居続けたって何の解決にもならないということだけ。
刻み続ける時計、その音がじりじりとしのぶの不安を増長する。
やがて、しのぶは意を決して承太郎にもう一度声をかけた。

「あの……空条さん? 何か、問題でも?」

言ってから、言葉のまずさに気がついた。何かなんてものじゃない、人が死んでいるのだ。

「ご、ごめんなさい、わたしったら……その、ええと」

男の背中は、何物をも拒絶するように微動だにしない。
しかしぽつりと、聞き逃してしまいそうなくらい小さな声で、返事が戻ってきた。

「…………くろ、だ」
「何? ごめんなさい、今、なんて……」

しのぶが聞き返すと、もう少しはっきりとした、ただし恐ろしく冷たい声が路地に響いた。

「俺の、お袋、ははおや、だ」
「……えッ」

聞き間違いでもない、空耳でもない。今この人は、自分の母だと言った。
しのぶが踏んづけてしまったこの腕は、この異常な場所で初めて出会ったこの人の、母親だと。
しのぶはなんとも言えない気持ち悪さに襲われた。冷たい汗が噴き出て止まらない。
こんなことはテレビの中だけの出来事だと思っていた。笑えも泣けもしない、昼下がりの二時間サスペンス。
しかし現実は非情なもので、ここはテレビの中でもなければ昼寝の夢でもない。頭で理解を拒否しても、体は否応なしにこの現実に順応していく。
吐き気は残っているけれど、いつの間にか臭いはわからなくなっていた。

「あ、その……なんて言ったらいいか……」

253Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:53:57 ID:hyMLKR6o
取り繕うように喋りながら背中を向けている男を窺うと、唐突に青い大男がぬっと姿を現した。
しかも、それは空条承太郎の体から透けるように浮き出ている!

「ひッ!?」

またしても恐慌状態に陥りそうになったしのぶだが、自分の手でなんとかそれ以上の悲鳴を上げないように口を押さえつけた。
異常といえば、みんな異常な出来事だ。どこかふわふわと地に足のつかない奇妙な感覚で、半透明の青い大男の動きに目を瞠る。
青い大男は、足を――先ほどしのぶが踏んづけた足――拾おうと手を伸ばし、ぎくりと固まって、不意に立ち消えた。まるでその場にいたことが間違いだったように、あっさりと掻き消えてしまった。

「あんた――見えてるのか?」

ようやく、空条承太郎が振り返った。だが、しのぶは男を『異常なものを見る目』で見つめていた。
出会ったときにうっすらと感じた頼り甲斐だとか、ささやかな安堵感だとか、そういうものは暗雲のように立ちこめた恐怖感に覆い尽くされ、しのぶは堪らず叫んでいた。

「何、何、なんなのッ!? そいつッ!?」

忽然と現れ、そして煙のように消えた大男。
空条承太郎の、表情の無い能面のような顔。
無言の視線。観察するような、冷たい目。

色々なことが、短時間のうちに起こりすぎていた。
しのぶの心の容量は、もうほんの僅かな刺激で決壊してしまうくらい限界だった。
時間にすればほんの僅かな沈黙も、引き金と成り得るほどに。

「――――もう嫌ッ! いやァァァッ!!」
「ッ! 待て、待つんだッ……」

しのぶは弾かれたように駆けだした。
承太郎の声など、聞こえてもいなかった。





254Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:54:36 ID:hyMLKR6o
川尻浩作――もとい、『川尻浩作の皮を被ったラバーソール』は、住宅街をゆったりと歩いていた。
支給品はすっかり検分が済んでいる。あとは、よさそうなシチュエーションを見繕うだけ。
いかにもただの会社員といったふうを装うのに、コロッセオや庭園などは不釣り合いだろう。つぎはぎの町の中でも目を惹いた『館』の所在は、ここからだと少々遠すぎるし、先約の『依頼人』が在居しているとは限らない。
もう少し――そう、もう少し時間が経ってからでいい。
あの場で無数にいた獲物やら御同類やらを鑑みても、こんな早々から西へ東へとあくせく働きまわるのも不合理だ。新しい『依頼人』にはそれなりの媚を売りつつ、美味い汁だけ啜らせてもらえばいい。
そのための、このひ弱な会社員姿だ。せいぜい有効利用させてもらおう。

「それにしても……日本の住宅街ってやつはどうしてこうゴミゴミしてやがるのかねェ」

ラバーソールの目的地、それは川尻家と地図上に記されている家である。
行く先で人に出会えればそれもよし、出会えなくとも、本人が自宅で休むのに何の不都合があろうか。気力体力を充実させてこそ、いい殺しができるというものだ。

「まあ、入り組んでるけどもうチョイってところか……っと、おやおやァ?」

熟練の殺し屋としての感覚が、近くにいる誰かの気配を知らせている。
誰であろうと構いはしない、何せ自分は『川尻浩作』だ。この姿、無力、無害、弱者!
ラバーソールがいかにも恐る恐るといったふうに曲がり角の先に顔を出すと、ひとりの女が息を荒げて蹲っていた。どうやら泣いてもいるようだ。
ラバーソールは内心、にんまりと口角を釣り上げる。口笛でも吹きたくなるようないいカモだった。

「あの、すみません……もしもし?」

ラバーソールは女に声をかける。無力、無害、いかにもマヌケそうな善人ぶって!
しかし、思惑は脆くも崩れ去る。
ラバーソールの誤算、それは女のあまりにも特異な反応だった。

「ッ!! ……あ、あなた、アナタぁぁァァァッッ!!」

涙と汗でぐちゃぐちゃになった顔に、振り乱した髪。元はそれなりに美人なのだろうが、いかんせん鬼気迫る表情がそれを台無しにしている。
たいがいの美女も醜女も見慣れていたラバーソールだが、一線を画した女の表情というのはいつ見ても心臓に悪いものだった。
まして、それが全力で抱きついてくるなんて!
女の細腕が、万力のような力を込めて回される。がくがくと震えているのは安堵故か恐怖故か。
一瞬、このまま『喰って』しまおうと思いかけたラバーソールだったが、女の言葉に僅かなひっかかりを覚えた。ものの試しに、川尻浩作から得た妻の名を口に出してみる。

255Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:55:09 ID:hyMLKR6o
「しの、ぶ……?」
「ええそうよッ、半年見なかったら忘れたとでもいうのッ!? 本当に本当に心配してたんだからッ! よくわからないことは起こるし人は殺されてるし、こわかった、本当に怖かったわッ!」

堰を切ったようにとめどなく流れ出す『しのぶ』の言葉を、要点だけ拾うように聞き流しながら、ラバーソールは俄かに思考を巡らせていた。

(チッ、厄介なものを拾っちまったかもしれんなァ〜、このアマ……とかく面倒そうな女だ)
(しかし妙だな、川尻浩作は半年もこの女の元に帰ってなかった? そんなことなら女のひとりでもつくってそうなもんだが……ンなこたぁ言ってなかったしよォ〜)
(ま、気になることはあるがよ……オレ様の魅力にかかればチョロそうな女ではあるなァーッ! せいぜいいい奥さんになってくれよッ)

ラバーソールは、ほんの数十分の邂逅で得た『川尻浩作』像を、可能な限り模倣する。

「しのぶ、しのぶ……すまなかった、落ち着いて聞いてくれ」
「こんなところ、一時だって居たくないのッ……え、なあに?」

胸元に顔をうずめて泣きじゃくっていた女が、夫の言葉に顔をあげてことりと首をかしげる。
あどけない童女のような仕草に、これを素でやっているのだとしたら大したカマトト女だと思いながら、ラバーソールは壊れ物を扱うように優しく彼女を抱き返した。

「ここは危ない、一度家に行こう。何かわかることがあるかもしれない」
「……そう、ね。そうしたほうがいいわよね」
「そうとも。それに、人が殺されていたんだろう? こんな暗がり、どんな殺人鬼が潜んでいるかわからないじゃないか」
「……ええ、そうね。でも、わたし……空条さんに酷いことを……」
「ッ、?」

ラバーソールにとって、その名は酷くひっかかりを覚えるものだった。。
空条、空条だと? その名を持つ男は既に殺されたはず。
まさか生きていたとでも? いや、それはありえない。ラバーソールはしっかりと見届けていた。空条承太郎はあの場で殺されたはずだ。
しのぶの口調はほんの今しがたの接触を語っているように聞こえる。ならば、空条承太郎の身内……別の人間と考えるのが妥当だろう。
上ずりかけた声を整えながら、ラバーソールは優しく女の言葉を促した。

「ふうん、空条さん、空条さんね……下の名前は?」
「え? ……ええと、承太郎さんっておっしゃってたわ」

そのとき、ラバーソールの背に電流走る。
空条、承太郎? 同姓同名にしては出来すぎている。奇妙なことばかりが起こっているが、これは極めつけの異常事態かもしれない。

「……助けてもらったのかい?」
「ええ、でも……何か、不気味で……ヘンな青い大男が……」

そこまで話を聞いたところで、不意にざっざっという足音が聞こえた。
腕の中のしのぶも気づいたのか、胸に擦りつくように身を縮こませる。

(チッ……気配を消してやがった。聞いてやがったな)

嫌な予感、ある意味ではいい予感とも言い換えられる。ラバーソールは腕の中の女を確かめるように僅かに撫でた。いざとなったらこいつが楯だ。
そして予想に違わず、写真では見慣れた、しかし随分と年を食ったふうの空条承太郎がのっそりとその長身を現した。





256Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:55:38 ID:hyMLKR6o
少し前、空条承太郎は叫び走り出した女の背を茫然と見送っていた。
口の中はからからに乾き、胃の腑がひっくり返ってしまいそうな吐き気に襲われていたが、辛うじて声は出せた。
しかし、足が動かなかった。動こうとしてくれなかった。
彼が背負うものの中に、彼の大事な人が増えた。その重みが、彼の足を鈍らせていた。

「……やれやれ」

自嘲。
何もかもを守れるつもりなど無い。それほど強いと嘯けない。その青さは、遙か昔に失った。
絶望することは簡単だ。投げ出すことはより容易い。
信じがたい、信じたくない現実に、揺らぐ心は今にも折れそうに危うく傾いでいる。

――だが、こんな俺にも守りたいものがある。守りたいひとがいる。
――折れるわけにはいかない理由が、ある。

承太郎は悲しいくらい『空条承太郎』だった。背負ってきたもの、背負っているもの全てが、彼を彼として縛り付けている。
ぎゅっと帽子を深く被り、もう一度スタープラチナを出す。バラバラにされていた彼女を一所に集めるために。
叶うなら静かに眠らせてやりたいが、今動かなければ手遅れになることがあるというのを嫌というほど知っている。
これ以上、手を伸ばせば守れたかもしれない命を失うのはごめんだった。
見開いたままだった彼女の瞼をそっと落とし、入れ物ごとすぐ傍の見知らぬ邸宅の庭を間借りした。せめてこれ以上、辱めを受けることがないように、傷つけられることがないように。
青さという強さは取り戻せなくても、それに代わる重厚な経験を以って、空条承太郎は彼のまま、この理不尽な事件を解決しようとしている。







承太郎は、さしたる間もなく川尻しのぶを見つけ出した。
血だまりに踏み込んだ際に付着した血の足跡によるところもあったが、何より彼女は派手に声を上げていたからだ。
危険そうな人物との遭遇であれば、有無を言わさず割って入るつもりだった承太郎だが、しのぶが抱きついている人物を窺って驚愕した。
川尻浩作――吉良吉影。忘れようにも忘れられないその姿は、十数年前の記憶となんの変わりもない、当時の姿そのものだった。
空条承太郎は恐るべき速さで思考する。
大前提として、吉良は承太郎の目の前で死んでいる。これは紛うことなき真実である。
十数年前の一連の事件、それはかの殺人鬼の死を以って終息した。
ゆえに生きているはずがない。当然の帰結として偽物と考えるしかないが、既に死んだ人間の偽物を作って何になろう。
川尻しのぶを絶望させたいがため? 彼女は限りなく『因縁』とは無関係の人間のはず。彼女を殺害してこちらを苦しめようということなら、反吐を吐き捨てたいくらい苛立たしく頭にくるが、意図としては読める。
そして、さらなる疑問は彼女の言葉。
彼女――川尻しのぶの叫びにあった『半年』とは? 彼女は十数年夫を待ち続けていたのではなかったのか?
川尻浩作の姿はまだ偽物という仮説をこじつけられるが、彼女の発言は奇妙だった。この時間のずれは何だ?
川尻浩作――中身は果たして何がでてくるやら――は、どうやら承太郎のことを妙に気にする素振りを見せている。

257Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:56:26 ID:hyMLKR6o

――切るべき札は切る。

そうして承太郎は姿を現した。

「く、空条、さん……」

対話の口火を切ったのは川尻しのぶだった。彼女は怯えたように、川尻浩作にすがりついている。
これから起こることが彼女にとっての絶望に他ならなくとも、承太郎はこの理不尽なゲームの破壊をするために、一歩を踏み出す決意を既に固めていた。

「川尻さん、さっきは驚かせてすまなかった。ついでにもうひとつ、先に謝っておく」

――スタープラチナ・ザ・ワールド。

かつての全盛期には比べるべくもないが、女ひとりを男から引き剥がすには十分な、間。
瞬きも許されぬ時の狭間で、三者の構図は逆転する。

――そして、時は動き出す。

次の瞬間、川尻しのぶは空条承太郎のたくましい胸にすがりついていた。
何が起こったのかすら全く理解できていないだろう彼女は、黒目がちな目をさらにきゅうと丸くして、茫然と承太郎を見上げていた。やむを得なかったとはいえ、落ち着いたらもう一度きちんと謝罪せねばなるまい。
彼女の様子を視界の端に、承太郎は『川尻浩作』の次の動向を油断なく窺った。
さあ、鬼が出るか蛇が出るか――







――あ、ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
――『空条承太郎の前で女を楯にしていたと思ったら
   いつの間にか女が空条承太郎に抱かれていた』
――何を言ってるのかわからねーと思うが オレも何をされたのかわからなかった
――催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
――もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

絶句するラバーソールを、空条承太郎は冷ややかな目で見据えている。さながら、実験動物でもみるような冷徹な視線。
なんらかのスタンド能力には違いない。だが、何をされたのかすら全くわからない、そんな理不尽な能力を空条承太郎は持っているのか?
そもそも、何もかもがおかしいのだ。殺された空条承太郎、あれも間違いなく『空条承太郎』だった。だが、ここに存在しているのもまた『空条承太郎』である。殺されたものより幾分年を食っているようだが、ただ年を重ねただけとは到底思えない、熟練した戦士の凄味を感じさせる。
何より、人を殺したことのある人間だけが持つ不穏な気配。
ビリビリと肌を粟立たせる容赦のない殺気が、ラバーソールに向けられている。

――間違いねぇ、どういうわけだかコイツはオレに気づいてるッ!

258Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:56:56 ID:hyMLKR6o
ラバーソールの背を冷たい汗が伝う。事を有利に運ぶはずだった『川尻浩作』の外見も、人質も兼ねた楯であったしのぶも、この『空条承太郎』の前で何の役にも立ちはしない。
今この瞬間、あの訳のわからないスタンド能力で抵抗する間もなく殺されるかもしれないのだ。
目の前の男が、得体の知れない化け物に見えた。

「て、テメー……一体何をしやがった……」
「……答える必要があるか? 川尻浩作の偽物」

それは決定的な一言だった。

「えッ……何よ、それ。何言ってるの」

空条承太郎の言葉を聞いて、呆気にとられていた川尻しのぶがやにわに騒ぎだす。
しのぶの気を引いて空条承太郎の隙を狙うという選択肢もなくはなかったが、恐らく空条承太郎は躊躇なくこちらを再起不能にするべく、あの訳のわからないスタンドを発動させただろう。
もはや会話は有用どころか、一触即発の危うさを孕んでいる。
答える代わりにじりじりと後退り、ラバーソールは脱兎の如く逃げ出した。
三十六計逃げるにしかず。
勝算のある殺しはするが、勝算のない戦いはラバーソールの望むところではない。それ以上に、あの空条承太郎とこれ以上相対していたくなかった。
走り、走り、どれだけ走っただろうか。やがてラバーソールは、手近にあった空き家と思わしき古びた民家の敷地に滑り込んだ。

(クソッ……何がどうなってやがるッ……)

頑強そうな壁に囲まれた庭先は、追跡者を窺うにも都合がいい。追手がなければなお良いのだが。
そのまま息を整えつつ、音と気配とに全神経を集中させる。
1分、2分、3分――追跡者は現れない。

(……お荷物が功を奏した、ってとこか)

楯にも隠れ蓑にもスタンドの食糧にも使える女を逃したのは手痛いが、あの奇妙な空条承太郎から逃走できたことを純粋に安堵しておく。
そしてラバーソールは、目の前のボロ屋から人の気配がしないことを確認し、するりと忍び込んだ。室内を選択したのは、自身の能力を最大限に生かすためでもあり、純粋な休息を求めてのことでもある。
キッチンと思わしき場所は、幸いにして水も確保できるようだった。明かりはつけない、そんなことをすればここに人がいると大声をあげているも同じだから。

「理屈はさっぱりわからんが……空条承太郎は『二人』いた――?」

人心地のついたラバーソールは独り呟く。
それが何を意味するのか、彼の思考はたゆたっていく。





259Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:57:27 ID:hyMLKR6o
――いったい、何が起こっているの?
――わたしはあのひとの傍にいたはず。
――それに、今、空条さんの言った『偽物』って何? あのひとの偽物?

夫と再会できたとき、しのぶは例えようもない安堵感を感じていた。
なんの変哲もない日常から不意に姿を消した夫、ドラマの中だけだと思っていた出来事が自分の身に降りかかってきたとき、しのぶは俄かには信じられなかった。
明日には帰ってくる、明日には連絡をくれる、明日には警察から報告が来る……。
そう期待して待ち続けて、待ち続けて……遂に、日常の中で夫が戻ってくることはなかった。
だから、この『バトル・ロワイアル』で夫の姿を見つけた時、しのぶは俄かに色めきたった。
もちろん不可解な現実に恐ろしさも感じはしたが、それ以上に『ようやく夫を見つけた』という胸の高鳴りが勝ったのだ。
そこから再会までは、ただまんじりと待ち続けていた半年間とは違い、ジェットコースターのような急転直下の事態が襲いかかってきた。
見知らぬ他人、無残な死体、奇妙な大男――そして。
再会した夫は、いなくなったあの日と変わらず優しかった。彼の腕は力強く、また懐かしかった。
しのぶはようやく、希望と言う光を見つけられたような気がしていた――それなのに。

「えッ……何よ、それ。何言ってるの」

見上げた男の表情は窺い知れない。近すぎるのだ。
そして逃げ出すことも叶わない、しのぶは空条承太郎の頑健な腕にしっかりと押さえつけられている。

――あなた、何か言って。言うべきことがあるでしょう、ねえッ!

沈黙。
いやに白々しい、それでいてピンと張りつめた空気が満ち満ちているのが、しのぶにすら理解できた。
夫は何も言ってくれない。
ようやく戻ってきてくれた、優しい言葉をかけてくれた夫。彼の腕の中で、しのぶは確かに安堵していた。彼だって、しのぶのことを抱きしめてくれた。居なくなっていたことが間違いだったとでも言いたげに、しっかりと。
それなのに、なぜ彼は何も言ってくれない?

260Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:57:53 ID:hyMLKR6o
「あな、た……ッ!?」

どうにか肩越しに垣間見た夫、その表情!
見たことのない、見たこともないその表情にしのぶは絶句した。

――どうしてそんな顔をしているの。
――どうしてわたしを見ていないの。
――どうして、逃げ出そうとしているの?

そして彼女の夫は逃げ出した。彼女に見向きもせず、あっさりと。
そして彼女は理解する。この無愛想な他人が告げたこと、それが真実だということを。

「……こんな形で知らせることになって、本当にすまないと思っている」

やがて紡がれた言葉を、しのぶはどこか他人事で聞いていた。
夫だと思っていた人の背は、既に闇に消えている。
言葉も現実も全てが遠い。
喜びが大きければ大きいほど、転じた絶望も深く際限がない。
俯き震えるしのぶに、目の前の男は静かな声で続けた。

「俺は以前、川尻浩作氏の死亡事件に関わっていた。詳細も――知っている。
 聞きたいというなら話そう。信じられないのならば、どこか安全なところまででいい、付き添わせてほしい。
 ――選んで、もらえないだろうか」

途切れた言葉に、しのぶはゆるゆると面を上げる。
乞い願うように、贖罪を求めるように、承太郎はじっとしのぶを見つめていた。
日本人らしからぬ深いエメラルドグリーンの、凪の海を思わせる眼差し。
恐らく、不器用な男の精一杯の気遣いなのだろう。
真摯な声と眼差しに、しのぶの硬直していた心がどきりと揺れた。
そうだ、彼も言っていたではないか。一人娘が、巻き込まれていると。
自分のことばかり考えていたが、振り返って彼はどうだったろう。
血を分けた娘がこの理不尽な殺戮に巻き込まれ、血を分けた母はあろうことか無残に殺され。
一度は彼を恐怖した。逃げ出しもした。
それでも彼は、詰りもせずしのぶをこうして気遣っている。悲しみも苦しみも押し隠して、赤の他人に過ぎない女を気遣っている。
そう、何も変わりはしないのだ。しのぶも、彼も、理不尽に運命の歯車を狂わされた者同士。
やがて、しのぶの唇がゆっくりと開かれた。

「……聞かせて、全部。あの人のことも、その『傍に立っている奇妙な大男』のことも」
「……わかった。少し――長くなるが。もう無関係とは思えないからな」

選んだ道、それが悲しみと苦難に満ち溢れていたとしても構いはしない。
女は、母は、そんなに弱い生き物ではないのだ。
空条承太郎は少しだけ躊躇ってから、頷き返事をくれた。
彼もまた、しのぶに宿った『覚悟』を見定めたのだろう。

――夜明けが近づいていた。

261Via Dolorosa ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 22:58:21 ID:hyMLKR6o
【E-9 虹村家/一日目 黎明】

【ラバーソール】
【スタンド】:『イエローインパランス』
【時間軸】:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
【状態】:疲労(中)、『川尻浩作』の外見
【装備】:
【道具】:基本支給品一式×3、不明支給品3〜6、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)
【思考・状況】
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.空条承太郎…恐ろしい男…! しかし二人とは…どういうこった?
2.川尻しのぶ…せっかく会えたってのに残念だぜ
3.『川尻浩作』の姿でか弱い一般人のフリをさせて貰うぜ…と思っていたがどうしようかな
4.承太郎一行の誰かに出会ったら、なるべく優先的に殺してやろうかな…?




【D-7、E-7 境目の路地/一日目 黎明】

【空条承太郎】
【時間軸】:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
【スタンド】:『星の白金(スタープラチナ)』
【状態】:健康、精神疲労(中)
【装備】:煙草&ライター@現地調達
【道具】:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
【思考・状況】
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊&娘の保護。
1.川尻しのぶに真実を話し、詳細な情報交換をしたい。
2.川尻浩作の偽物を警戒。
3.お袋――すまねえ……
4.空条承太郎は砕けない――今はまだ。


【川尻しのぶ】
【時間軸】:四部ラストから半年程度。The Book開始前。
【スタンド】:なし
【状態】:疲労(小)、精神疲労(中)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】
基本行動方針:?
1.空条承太郎から真実を聞く。
2.この川尻しのぶには『覚悟』があるッ!
3.か、勘違いしないでよ、ときめいてなんていないんだからねッ!

262 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/07(火) 23:06:50 ID:hyMLKR6o
以上で仮投下終了です

下記は備考として載せるか迷った、ぶっちゃけ個人的な希望にすぎないのですが…
※承太郎としのぶの情報交換の度合いとしては、スタンドの概念と説明、四部吉良事件の概要程度を想定しています。
※ある程度(30分〜それ以上)時間のかかる話し合いを想定しています。道端で延々立ち話するのも少々不自然かと思います。続きを書かれる方は多少なりともご留意頂ければ幸いです。

上の備考モドキの掲載or不掲載も含め、誤字脱字その他ご指摘等お待ちしております

263名無しさんは砕けない:2012/02/08(水) 01:45:35 ID:OIA2M/GY
投下乙です。
色々感想は言いたいが……一言いうとはんぱねェっす!
これといった問題点はないかなァ。強いて言うならラバソ走りすぎじゃね、ってことぐらいですw
載せるべきか悩んだ備考に関してもぶっちゃけ次の書き手さん任せでもいいかと。そこら辺はRf氏判断で。
本投下待ってます。

264 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/08(水) 21:02:17 ID:iLCwajTg
コメントありがとうございます!
ラバソ恐怖の全力疾走に関しては、マップ見つつ直線距離で考えてたのでああなりました…w
もう少し加減した距離に修正します
備考に関しては、むしろ好き放題にやってもらったほうが先が見えなくて(主に自分が)楽しいかなと思い至りましたので
本投下時にはなかったことにしておきます
今晩一杯待って、特に指摘等がないようでしたら明日本投下させて頂きます

265空気 その1 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:29:33 ID:nQh54l.6
『空気のようなキャラ』
皆はこの単語を聞いてどういうイメージを持つ?

存在感がない?いてもいなくても変わらない?

……まぁ、普通はそう思うだろうね。
でも、俺の話を聞いたら考えを改めると思うよ。それじゃ、始めようか。

***

266空気 その2 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:30:01 ID:nQh54l.6
――失敗した。

間田とかいうガキを始末したのはハッキリ言ってミスだった。
カビは生き物を媒介として広がるから、というもっともらしい理由もあるが……
何より、私としたことが『観察』することを忘れていた、というのが大きい。

建物の中を一通り徘徊したが他の参加者はおらず、結局のところ数時間を無駄に過ごしてしまった訳だ。

――暇だ。

仕方がない。こんなところにいても何の発展も起こらないだろう。
ここを拠点にすることを考えた、なんてのは毛ほども考えていない嘘。まあ嘘をついた相手もここにこうして転がっているんだが。
私のスタンドは移動しながら発動してナンボの能力だ。しかも可能な限り高所を移動するべきだ。
地図を見るに、どうも『ローマ』と言うには無理がある。かと言ってこの地図が偽物だとも考えにくい。
どれ、施設巡りでもしながら獲物を探すとしようか。

――ん?

***

267空気 その3 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:30:22 ID:nQh54l.6
――失敗した。

手ブラでここまで登ってきたのはハッキリ言ってミスだった。
空中に固定したピアノの中で寝てる、ってのはなかなかイイ戦術だと思ったが……
何より、俺は『サバイバル』しなきゃならねーって事を忘れてた、ってのがデカい。

ピアノ以外の支給品も一応見たが使えそうなモノはなく、結局のところ数時間を無駄に過ごしちまったって訳だ。

――暇だ。

仕方ない。そんな下らねーことを繰り返し考えても何の発展も起こらないだろう。
今更このスタイルを変えよう、なんてのは毛ほども考えていないプラン。まあ誰に対してプランを報告する訳でもないんだが。
俺のスタンドは攻撃と防御だけじゃなく移動に使ってもイイ能力だ。しかも出来るだけ他の奴が来ないところを移動するのがいい。
しかしこの地図、マジで『ローマ』なのか?こうやって見降ろしてみてもローマの面影全然ねェーっつーの。
ま、せっかくだしもう少しここにいるとしようか。

――ん?

***

268空気 その4 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:30:46 ID:nQh54l.6
場所はD−3、その上空約二百メートル。
まさか人間がいるとは思わなかった。互いにそう思った二人のギャングが、それぞれ不意を突かれた形で一瞬ポカンとする。

――先に動いたのはサーレーだった。
「クラフト・ワークッ!石の固定を解除しr」
「待てッ!争う気はないッ!!きみのその能力が必要だッ」
チョコラータの言葉にサーレーの手が止まる。とは言え『寸止め』状態、いつでも能力を行使できる状態で次の言葉を待った。

「君は『ローマのサーレー』だろ?パッショーネと言うギャング組織に覚えは?私もその一員なんだ、話を聞いてくれ」
「……聞いてやるが、ちょっとでも攻撃するそぶりを見せてみな、投身自殺してぇんなら構わねぇがよ」

「わかった――よし、順序立てて話そう。まずはここに辿り着いた理由からだな。
 単純だ、石が空中に浮いてたから登って来たんだ。好奇心もあったが。そしたら夜の闇にピアノが浮いてるじゃあないか。それで覗きこんだらお前がいたんだ。
 それで次だ。君の事を知っていた理由。
 さっきも言ったが私はイタリアのパッショーネと言う組織にいる。その関係でローマに出入りしててな、ローマのチンピラ……と、チンピラという言い方は失礼だな。『サーレーとズッケェロ』は割と有名だぞ。
 最後、能力が必要だと言った理由。
 あまり明かしたくはないが、私のスタンドは『冬虫夏草』のようなもんだ。対象が低い位置に移動したりすればカビが生える。
 要するに高いところにいる、あるいは高いところから攻撃を仕掛けるのが有利、ここにいるのが最善なのさ。どうだ?協力しないか?」

チョコラータは一切嘘を言っていない。先の間田との扱いの違いには彼自身が驚くところである。
一方のサーレーも、これだけの会話でおおよその状態を理解できた。
「そうか……少なくとも今、お前の前から逃亡したかったらココよりもっと上に逃げなきゃならねぇってか。
 しかし石を回収し忘れたのは痛恨のミスだな。ピアノ運ぶのに集中し過ぎてたってところか」
「理解が早くて助かる」

「――よし、じゃあ俺からの要求だ。
 俺の命は何があっても保障すること。これは絶対だ。利用するだけしてポイなんて許さねぇ。
 次に、食料や水。サバイバル用具って言えば聞こえがいいか?これを用意してもらおう。
 今後はピアノ以外の『階段』は解除しちまうのが賢い。それでここに――長くて三日くらいか?籠城するならそれなりの食事とかいるだろうからな」

お互いの利害が一致した瞬間である。

「良いだろう。どっちみち私も『カビのもと』をどこかで入手しなければならない。
 一度下りる必要がある。その時に調達すれば良いだろう?」
「ああ――降りるのはお前からだ、『上』は俺だ。登る時も俺が先」
「もちろん。私にしても今ここで君を失うのは手痛いのだからな。だが、ピアノはここに置いていけよ」

***

269空気 その5 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:31:15 ID:nQh54l.6
さて、考えは改まったかい?

『空気』とは……『猛毒』なのさ。
酸素比率が6%を下回る大気を吸えば即気絶するし、逆に100%純粋な酸素を集めてくれば人間を内側から破壊できる。
そんな奴らなのさ。彼等はね。

これから――まあ間田くんの死体はもう使えないだろうから、チョコラータは何かしらの生物、サーレーは食事とか漫画とか、そういうものをそれぞれ探すんだろう。
出来れば夜が明けきる前に完了させたい作業だろうな。昼間だと低いところを移動している内は目につくからね。

ま、この二人なら大丈夫だろうよ。何せ……

『空気のようなキャラ』なんだからね。

270空気 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:31:39 ID:nQh54l.6
【D−3 上空約200m、空中に浮かぶピアノ / 1日目・深夜〜黎明】

【カビ爆弾・爆撃部隊 inグランドピアノ】


【サーレー】
[スタンド]:『クラフト・ワーク』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み、少なくとも籠城には使えないもの)
[思考・状況]
1.この場所(ピアノの中)で籠城し生き残る
2.チョコラータと協力する
3.籠城に必要な物品を調達する

【チョコラータ】
[スタンド]:『グリーン・デイ』
[時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×二人分、ランダム支給品0〜4(二人分、未確認)
[思考・状況]
1.『ゲーム』の勝者になる
2.サーレーと協力する
3.殺戮に必要な物品を調達する

[備考・支給品情報]
D−3エリア、およそ中央の上空200mにピアノが浮かんでいます。現在はそこまでの空中に小石が浮かんでいます。
日がさせば地面に影が映るかも知れません。二人が今後このピアノをどこかに動かすのか(もっと高く?他のエリアに?)は後続の書き手さんに一任します。
グランドピアノ:第6部にてエンポリオ、アナスイ、ウェザーがベッドに使っていたもの。もちろん本来の使い方ではない。演奏用の椅子も一脚、空中に固定してある。

271空気 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/10(金) 19:32:16 ID:nQh54l.6
以上で仮投下終了です。
空気キャラの新しい定義!とか言ってみるw

チョコラータが『ローマのサーレー』を知っていたのは、JC49巻でズッケェロが「住所はローマ ローマのチンピラさんか」と言われていたことから、ローマを拠点に活動していた。
……というオリジナル設定。
その他私が懸念しているのはチョコ先生がそうそう簡単にサーレーにスタンド能力を明かすか?と言う点。
上記の点、またその他の点、誤字脱字等々ありましたらご意見ください。
日曜の夜には本投下出来ればと思っています。

272名無しさんは砕けない:2012/02/10(金) 19:58:47 ID:/oB9n1Gk
仮投下乙です
空気の新しい定義ktkrwww
チョコラータがサーレーのことを知っていたのは、ある程度情報が集まるであろう親衛隊所属だということも考えてアリだと思います
スタンド能力の解説に関しては、ギブアンドテイクを想定していると思えばそこまで不自然ではありません…でもなんとなくきれいなチョコ先生w
もう少し誤魔化して煙に巻いても良い気はします>能力

273名無しさんは砕けない:2012/02/11(土) 22:18:52 ID:V/05ZnC6
ジョジョ界屈指のゲスにしては初対面の相手に能力明かしはキレイすぎるかな


>>267
>ローマの面影全然ねェー
ローマの面影が全然ねェー

>>268
>だが、ピアノはここに置いていけよ」
↓ピアノを持ち歩こうとしている馬鹿を窘めている↓んじゃなくて、単に釘を指してるなら「〜置いていけよ?」かな
↓                            ↓
「ああ――降りるのはお前からだ、『上』はピアノを担いだ俺だ。登る時も俺が先」
「もちろん。私にしても今ここで君を失うのは手痛いのだからな。だが、ピアノはここに置いていけよ」

274 ◆yxYaCUyrzc:2012/02/12(日) 21:01:35 ID:DcGz/hwg
>能力明かし
本投下時に多少の修正はしましたが、どうでしょう?これ以上チョコラータが能力を明かさないとなるとサーレーが彼を信用できないかなと思います。

>面影全然
サーレーの思考・台詞のパートでしたので敢えて「が」を抜いてます。

>ピアノは置いていけ
うーむ、難しい。書いている最中には「そんな重いものを持って歩くなよ、置いていけ」というニュアンスでした。
上記で言うところなら「単に釘をさしているだけ」です。
で……チョコ先生のセリフにしては疑問符で終わるものが多いかなと思って多少命令口調だという意味を込めて「?」を抜いていたんですが……
どうにも読みにくいようでしたらwiki掲載時に修正します。他の方の御意見も待ちたいところです

275 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:03:57 ID:7zVDLsAM
仮投下します

276神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:04:40 ID:7zVDLsAM
月明かりに照らされた石造りの河岸をふたつの影が歩いていた。
河を越えた先、遙か東岸に広がるだろう古都ローマの遺跡や町並みは夜闇に深く沈み、水底の見えない深い河は音もなく静かに流れている。
この夜が永遠に続きそうな錯覚さえする、静かな世界。
ふと、ふたつの影のうち、闇よりなお暗い気配を持つ男が気まぐれのように呟いた。

――色々な文献を読んで興味深く思ったことのひとつなんだが。
――川は、死者と生者の世界の境目だという。

思索に耽る者特有の緩やかさで、黄金にも似た荘厳なバリトンが闇に溶ける。
傍らを歩く男に向けられているのか、それとも単なる独りごとなのか。判然としないながら、詩を紡ぐように軽やかに言葉は続く。

――陽の昇る東を生者の都、陽の沈む西を死者の都としたのは古代エジプトの神話だが、キリスト教においても東には特別な意味がある。
――君は、キリスト教徒かい?

傍らを歩く男――マッシモ・ヴォルペは、突然の問いかけに少し考え込む素振りを見せ、微かに首を振った。否定とも肯定とも取れない、曖昧な仕草。

「そうだ、と言えばそうだし、そうでないと言えばそうではないな」
「答えになっていないよ、マッシモ」

言いながらも、問いの答えに気を悪くした風もない男――DIOは、歩みを止めず愉快そうにマッシモに一瞥をくれた。
妖しく艶めかしい眼差しは、血のように赤く毒のように甘い。心の底まで見透かす、射抜くような視線。
しかしマッシモは物怖じする様子もなく平坦な声で続けた。

「救いもしない神なんぞ信じちゃいない」
「だろうと思った」

気安い友人に向けるように、DIOはくつくつと笑って見せる。それにもマッシモは無感動な面持ちを崩さず、のろのろと歩調を合わせている。
奇妙な関係だった。

277神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:05:05 ID:7zVDLsAM
ひとつ掛け違えれば、捕食者と哀れな餌という一時的な関係にしかならなかっただろう。
しかし運命はそうならなかった。互いが互いに興味を抱いている、その一点。そしてそのたった一つの引力で、二人は道行を共にしている。
月明かりだけが頼りの散策の道すがらにも、様々なことをDIOは語った。ときに饒舌に、ときに沈黙を交え。そしてマッシモも、問われては答え、また考えた。教師とその弟子のようでもあったし、友人になる過程を踏んでいるかのようでもあった。
たった三人、血を分けた親兄弟よりも密に支え合って生きていた仲間たちにしか許さなかった心が、闇を纏う美貌の不死王によって少しずつ浸食されている。
そして、その浸食は癒しにも似ていた。乾きひび割れた大地に染み込む水のように、DIOの言葉と思考は全てを亡くしたマッシモの裡にじわりじわりと染み込んでいく。

「DIO。そろそろ目的地を教えてくれてもいいんじゃあないか?」
「おや。とっくに気づいていると思っていたんだが」

刹那、交わる視線。
友人と呼ぶには短すぎる時間、しかし無関係というには長すぎる時間。共にした時ゆえに、マッシモはDIOの言わんとするところを察した。

「この先にある刑務所……か?」
「残念、少し違う」

――だが、そこに寄ろうとは思ってた。半分は正解だな、マッシモ。

甘い甘い声音がマッシモの耳をくすぐる。酷く耳触りのいいそれを心地よいと感じ始めている自身に、マッシモは薄々気づいていた。

「市街地で見つけられたのは、君と首輪をつけた参加者ひとりきりだ。適当に歩いていれば誰がしかと接触できるかと思ったが、どうも人の気配がしない。手近にある建物から見てみようと思ってね。
 本当に誰かがいるかどうかなんて期待しちゃいない。ちょっとした確認みたいなものだよ。
 それに、刑務所なんて他に見る機会もなかっただろう?」
 
ジョークのつもりか、悪戯っぽくDIOが笑う。そろそろ、闇の中にもその広大な建物が見え始めていた。
地図からも察せられたが、実物はちょっとしたテーマパークくらいありそうな大きさだ。おそらく街中と同様に人などいないだろうが、あの大きさの建物を調べるのはえらく骨が折れそうだった。

「死ぬより縁がないと思ってたところだな」

マッシモはひとつ息を吐いてひとりごちた。





278神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:05:32 ID:7zVDLsAM
DIOがマッシモ・ヴォルペに語った数々の思索と過去における出来事の一端は、真実ではあれど全容ではなかった。当たり前と言えば当たり前だろう、出会った端から一切合切全てを曝け出すなんて、トチ狂った精神的露出狂か白痴の善人くらいなものだ。どちらも似たようなものである。
だが、全てではなくとも真実ではある。DIOは注意深くマッシモを観察していた。
マッシモが自ら語ったことは少なかったが、ゼロではない。人となりを理解するにつれ、よりマッシモへの興味は深くなった。
何より、マッシモはDIOに対して恐怖や畏敬、およそ『友人』関係を築くにあたり差しさわりある感情を抱いていない。人の血を啜る人ならぬ化け物と理解してなお、マッシモはありのままのDIOを見ている。
これは『彼』以来のことかもしれない――DIOはふと思う。
アメリカに住む、かの『友人』と、最後に言葉を交わしたのはいつだったか。
つい先日だった気もするし、遙か遠い昔にも思える。彼との時間は得難く貴重なひと時だった。
その心安らかさ、気安さには及ばないまでも、マッシモとのひと時はDIOの抱える鬱屈を大いに紛らわせた。

(思った以上に良い拾い物をしたものだ)

『天国へ行く方法』は、DIOにとっての至上命題。マッシモ・ヴォルペはその良き担い手となってくれるだろう。
ジョースターの血族の抹殺は、いわば『天国』へ行くための道程に纏いつくささやかな障害に過ぎない。
肩の『星』は変わらず、ジョースターの存在を知らせている。意識を向ければチリチリとささくれだつように、その気配を感じている。いずれは処分せねばなるまいが、それに付随して気になることもあった。
ジョジョと承太郎の死をこの目で確認した。だが、少なくとも『ジョジョは既に死んでいる』はずだった。他ならぬこの肉体こそがジョジョのそれであるのだから。
奇妙なことは他にもある。『星』の示すジョースターの血統……部下に調べさせた限りでは、ジョセフ・ジョースター、ホリィ・空条、空条承太郎、該当者はその三名のはずだった。
そして承太郎は死んだ。ならば、この気配はなんだというのだろう。『星』は片手の指では間に合わぬ数の気配に疼いている。

(放送後に、名簿の配布があると言っていたな)

主催者を名乗る老人はそう告げていた。ならば、それを確認してから動いても遅くはない。
ささくれる『星』を一撫でして、そう結論付ける。
優先されるのは『天国』だ。得難い能力を持つ者に出会えた引力をもって、DIOはますますその思いを強めていた。
そこまで思考を纏めたところで、ふと微かな臭いを感じて立ち止まった。唐突に立ち止まったせいで少し先んじたマッシモが足を止め、訝しげにDIOを見やっている。

279神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:05:56 ID:7zVDLsAM
「どうした?」
「ふむ……君にはわからないか」

――血の匂いだ。

吸血鬼になってからというもの、こと血に関しては煩くなった。人が嗜好品を吟味するにも似ているが、それ以外は口にできても体が受け付けないのだから当然と言えば当然か。
マッシモはDIOの意図を理解し、周囲に視線を走らせている。だが、人あらざるDIOの眼にすらかからない何者かが、人の身であるマッシモに捉えられるはずもない。

「死臭もするな。それも古くない……」

言う間にも、臭気はどんどん強まっている。マッシモも気づいたのか、警戒もあらわに眉を顰めている。
そして、奇妙な光景が二人の目に映った。
ひたひたという足音と、ずるずると引きずるような足音。なにもないはずのそこに浮かび上がる、血のマスク。
真っ赤な口が、ニタリと吊りあがった。

「……ッ!?」
「屍生人……とは少々趣が違うな。スタンド能力か」

絶句するマッシモとは対照的に、DIOはごく冷静にそれらを観察している。
辺りに溢れる死臭と濃厚な血臭は、間違いなく目前にいるだろう『動く死体』から発せられていた。笑ったことからも、ある程度の自意識は残っていると推察する。
周辺にスタンド使いらしき姿が無いことは『世界』の目を通しても確認済み。使い手当人すら透明にする能力であるとも考えられるが、どちらにせよ武器であるだろうこの死体を処分すれば、直接出てくるか逃走せざるを得なくなる。
目の前の死体の挙動はどう見ても『餌を前にした駄犬』そのもの。知能の低い屍生人にもよく見られた傾向だ。
自意識の残る透明な死体を操る、少しばかり興味をそそられる能力ではある。だが、せっかくの『友人』を危険に晒してまで欲しいものでもない。
立ちはだかるのであれば排除するまで。

「残念だが、運が無かったな」

聞こえているのか居ないのか、ニタニタと笑っていた真っ赤な口が拭いとられるように消えていった。





280神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:06:19 ID:7zVDLsAM
スポーツ・マックスは、とてもとても乾いていた。
リビング・デッド――生ける屍。かの刑務所で神父より与えられたスタンド能力『リンプ・ビズキット』によって肥大した食欲を持て余したまま彷徨う透明ゾンビと化した彼に、元ギャングの伊達男ぶりは見る影もない。
老婆ひとり『喰った』ところで、乾きはいよいよ増すばかり。おまけにあたりはだだっぴろい野原で、人っ子ひとり見当たらない。
何かを忘れている気もするが、思い出すより乾きが先だ。

――ああ、喉が渇いた。カラカラだ。

乾いて乾いて仕方がない。しかし、かといってどこに向かえばいいという単純な目的も思いつかない。屍と化したスポーツ・マックスに残されているのは『食べたい』という原始的欲求だけだ。
当てもなくふらふらと彷徨っていたところで、ようやく次の獲物を見つけることができた。

――男、男ふたり。
――片っぽはあんまり美味そうじゃあないが、あの金髪は悪くない。
――あぁ、喉が渇いた。
――男のくせに、そこらのビッチよりよっぽどキレイなツラしてやがる。
――あぁ、もう、カラカラだ。
――早く早く早くッ! そのキレイなツラに齧り付いてッ! 脳ミソを喰らいたいィッ!

スポーツ・マックスは思わず垂れそうになった涎を拭う――既に死んでいる彼から生体特有の分泌物がでるわけはなく、拭われたのは先の犠牲者であるエンヤ・ガイルの生乾きの血液と脳漿だったが――と、乾きに任せてむしゃぶりつくように飛び掛かった。

「世界」

飛びつき、今まさに食らいつかんとした男が告げた一言で、スポーツ・マックスの第二の生は終わりを告げた。
否、終わったことすらも理解できていなかったかもしれない。
静止した時の中では、思うことすら許されない。死してなお死ぬ――それにすら気付けないスポーツ・マックスの魂は、果たしてどこへ行くのだろう。





281神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:06:45 ID:7zVDLsAM
DIOにとって、死体が動いていることはなんら不可思議な現象ではない。
海底での眠りにつく以前にも部下として使っていた憶えはあるし、死体を操る能力を持つ老婆もひとり知っている。ただ、今回のケースが”当の死体が見えない”少しばかり特殊なケースだったというだけだ。
見えないのならば、どちらかが対象を捕捉した時点で時を止めればいい。
どちらを狙っているのかは定かでなかったが、DIOが促したことでマッシモも警戒をしていた。致命的な攻撃はそうそう食らわないだろうと大雑把にあたりをつけ、透明な死体が自身に触れた時点で『世界』を発動した。

「死体を操り、また透明にする能力……か」

無造作に腕に浅く刺さった金属を引き抜いて投げ捨てる。掴んだ形状から察するにハサミのようだ。
不快ではあるが、この程度の傷は怪我のうちにも入らない。先だっての『食事』も幸いし、傷痕は瞬く間に跡形もなく消える。
跡らしい跡は衣装に残った破れ目だけだ。


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」

目の前の空間へと――そこには死体が居る――『世界』のラッシュを叩きこむ。骨が砕け、肉が弾け、その形状が失われていく。
不快な死体が人としての原型も留めずグチャグチャに潰れていく感触がスタンド越しに拳に伝わった。
操り人形も、原型すら留めなければ操れまい。
そこでふと中空に妙なものが飛び出たことが目にとまり、DIOは『世界』の拳を停止した。

「……!?」

『それ』が何なのかを確認した瞬間、DIOは久方ぶりに驚愕していた。
記憶の海から引っ張り出した『それ』の印象と、透明な死体から飛び出た『それ』は、あまりにもよく似通っていた。似ていた、というより『それ』はそのものだった。
手に取った『それ』をまじまじと眺め、ぽつりと呟く。

「まさか……君もここに呼ばれているのか……?」

プッチ。

――そして時は動き出す。





282神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:07:39 ID:7zVDLsAM
マッシモには、何がなんだかわからなかった。
何かが襲いかかってきたことだけは辛うじて理解していた。マッシモの足首に、異様な力でしがみついてきた透明な何かが居た。だがDIOが『世界』と呟いた瞬間、煙かまやかしかのようにしがみついていた何かは消えてしまった。
残るのは、確かに掴まれたという足首の鈍いしびればかり。
不意にカシャンと硬質な音を立てて、何かが石畳に落ちた。月明かりに鈍く光る金属の首輪。己らの首に付けられているものと相違ないだろう。
マッシモは俯いて何やら考え込んでいるDIOをちらりと見て、首輪を気にする素振りもないことを確認すると嘆息しながらその首輪を拾い上げた。

「参加者、だったみたいだな」

首輪だけが落ちているということは、おそらくDIOによって頭を吹っ飛ばされたか何かしたのだろう。純粋な膂力によるものか、それともスタンドの能力によるものか、どちらにせよ恐るべき力には変わりない。
だが、理解すら及ばない恐るべき力を見せつけられて尚、DIOに対しての恐怖は無かった。マッシモにとって恐怖の定義は仲間を失うことだったし、そしてそれは既に失ってしまったものである。ゆえに恐怖という感情はなかった。
不可解だったのは、心の奥底に微かに湧きおこった歓喜。
ブッ殺してスカッとした、とか、殺されなくてよかった、などという矮小で利己的なものではない。そんなものは端からマッシモの裡に存在していない。殺して当然だし、殺されてもまた当然。殺し合いは彼の日常の一端に属している。
ならば何に『歓び』を覚えたというのか。

「……おい、DIO?」

相変わらず沈黙したままの彼に、しびれを切らして再度声をかける。首輪が転がっていたということは、襲撃者を処分したということだろうと思っていたが、もしや未だ何らかの攻撃を受け続けているのだろうか。
仮定は想像を引き起こし、想像は感情を引きずり出す。
首輪のことから、襲撃者は一人だと思っていた。だが、その前提すら何の保証もないものだ。ここは殺人遊戯場に等しく、いつ何どきどんな悪意がばっくりと口を開けて待ち構えているのかも定かでない。
かつてマッシモの大切な仲間だった少女――アンジェリカのように、姿を見せる必要のない広範囲型のスタンド能力だとしたら? すぐには認識できない攻撃があるということをマッシモは知っている。
背筋が総毛立った。

「ッDIO!」
「……そんなに呼ばなくとも聞こえているよ」

実に面倒くさそうに、気怠げに、こともなげに、マッシモが呼びかけたその人は俯けていた面を上げた。ピジョンブラッドの如く美しい真紅の瞳が、駄々っ子を叱るように眇められている。
そこでようやくマッシモは気づいた。今や全ての情動の端が、この異形の帝王たる麗人に繋がりつつあるという揺るがしがたい事実に。

「何というか……すごく、気になることがあるんだ。少し時間もかかるかもしれない。
 歩き回って君も疲れただろう? 丁度いいから刑務所で休憩でもしようじゃあないか」

耳朶をくすぐる声音が心地よい。
これは毒だ。抗いようもなく染みこむ甘い毒。もう囚われて抜け出せない。
先程の悪寒は既に別の何かに姿を変えている。『この人に見捨てられ、殺されるのだけはいやだ』ふとそんな思いが脳裏を過ぎった。

「あ、ああ……構わない」
「それは首輪か? ふむ……それも、少し調べたい。いいだろ?」
「ああ……」
「なんだよ、ヘンなヤツだな」

283神に愛された男 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:08:05 ID:7zVDLsAM
言葉ほどには気にするふうもなく、鷹揚とした微笑を浮かべ、DIOは手に持った円盤状の何かを玩ぶようにいじくっている。

「別に、なんでもない……DIO、それは何だ?」
「これか? DISCだよ」

DISCだという奇妙な円盤状のそれを、DIOは詳しくは語らずやけに大切そうにデイパックへとしまいこんだ。
それが何を意味するものなのか、きっとDIOは知っているのだろう。せっついたところで話してもらえないのならば、マッシモは餌を待つ犬のように、ただひたすら主の気まぐれを待つよりない。
人と人でないもの。被食者と捕食者。敵。友人、そして。
この僅かな間に、マッシモと彼の間には幾つの関係が築かれたのだろう。
奇妙な、関係だった。
首輪とDISC以外に特に目を惹かれる物もなく、やがて二人は連れだって目的の地であるGDS刑務所に向かった。

「なあ、マッシモ……東には特別な意味がある、と言ったのを覚えているか?」

不意に、DIOが問いかける。ついぞ覚えのない、酷く真剣な声だった。
マッシモは暫し逡巡し、肯定するように頷いて見せる。それを確認してDIOはこう続けた。

「キリストの経典の一部にある、東の果てにあるという幸福の地エデンなる『天国』は、あくまでも伝承の中のものでしかない。
 エデンがどこかに実在するとは到底思えないし、それが土地や場所である必然性は全くない。
 だが、『天国』が存在するという事実を告げていると、私は思う。
 伝承とは戯曲化された歴史に他ならない。ならば何を主眼に置いて戯曲としているのか?
 ……精神の向かう所だと、私は考える。物質的なものでは本当の幸福は得られない。
 『天国』は物質的なものではなく、精神の力によりもたらされる。本当の幸福がそこにはある。
 精神の力はスタンドの力であり、その行きつく先が『天国』。
 真の勝利者とは『天国』を見た者の事だ……どんな犠牲を払っても、私はそこへ行く」

熱っぽく語られた一言一句、全て漏らさず理解できたとは到底言い難かった。
むしろ、理解できるほうがどうかしているんじゃあないかとすらマッシモは思ったのだ。
ただ、その狂おしい程の情熱だけは理解することができた。強大な力を持ち、不死の肉体を持ち、何を憂えることもなさそうなこの帝王然とした彼が、唯一欲し、求める果てが『天国』なのだろう。

「そのために、俺が必要だと?」

DIOは無言の肯定を見せ、ふと遠くを見るような眼差しをした。

「彼が……私のもう一人の友人が、ここにいるのなら。
 『天国の時』は近いだろう」

果たしてその時に何が起こるのか。

神の名を冠する不死の王の傍らに、敬虔な殉教者のように男はひっそりと添っていた。

284神に愛された男 状態表 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:09:02 ID:7zVDLsAM
【スポーツ・マックス 死亡】
【残り **人以上】



【E−3 西部、ティベレ川河岸/一日目 黎明】

【DIO】
【時間軸】:三部。細かくは不明だが、少なくとも一度は肉の芽を引き抜かれている。
【スタンド】:『世界(ザ・ワールド)』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、麻薬チームの資料@恥知らずのパープルヘイズ、地下地図@オリジナル、リンプ・ビズキットのDISC、ランダム支給品1〜2(確認済み)
【思考・状況】基本行動方針:帝王たる自分が三日以内に死ぬなど欠片も思っていないので、『殺し合い』における行動方針などない。
              なのでいつもと変わらず、『天国』に向かう方法について考えつつ、ジョースター一族の人間を見つければ殺害。もちろん必要になれば『食事』を取る。
1.我が友プッチもこの場にいるのか? DISCで確認しなければ…。
2.適当に移動して情報を集める。日が昇りそうになったら地下に向かう。
3.マッシモ・ヴォルペに興味。
4.首輪は煩わしいので外せるものか調べてみよう。

【マッシモ・ヴォルペ】
【時間軸】:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
【スタンド】:『マニック・デプレッション』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、大量の塩@四部、注射器@現実、スポーツ・マックスの首輪
【思考・状況】基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。
1.DIOと行動。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。
3.しかし天国そのものについては理解不能。

285 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/19(日) 17:16:45 ID:7zVDLsAM
以上になります
3部のイメージと6部イメージのハイブリッドな帝王にしようと頑張った結果がこれだよ!
天国について考え過ぎてゲシュタルト崩壊起こしかけました…

不安点はその『天国』についてです
上っ面だけかじった知識と6部を通しての個人的な解釈、原作からのセリフの引用を混ぜています
二次創作だし…とも思いましたが、納得がいかない方もいらっしゃるかと思います
その点について、ご意見を頂ければ幸いです
他、誤字脱字や不自然な部分等ありましたらご指摘をお願いします

286名無しさんは砕けない:2012/02/20(月) 17:30:54 ID:ztcplTEU
これは今後が楽しみすぎる展開になってきた
このDIOの口調はまさに六部の雰囲気……!

原作ではスポーツマックスを倒したらスタンドDISCと記憶DISC両方出てきてたが、ここではスタンドDISCだけでいいのかな
まあ別に両方出てこなきゃいけない理屈もないか
あと気になった所は、首なし透明ゾンビのエンヤ婆は人知れず消えてしまったのかって事かな

『天国』については特に問題ないんじゃないだろうか
「むしろ、理解できるほうがどうかしているんじゃあないか」ぐらいが丁度良いと感じる

287 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/20(月) 20:42:09 ID:n3QjODyQ
コメントありがとうございます

記憶DISCは正直すっかり忘れてました…ていうかスタンドだけじゃ記憶読めないですね
プッチが与えたのはスタンドDISC→出てくるならそれ単体 みたいな感じの認識でした
原作でも出てたので追加することにします
首なし透明エンヤは、原作の描写が、スポーツマックス死ぬ(DISC抜ける)→周囲のゾンビも一緒に消滅、だったので
マッシモの足首掴んでた→DISC飛び出しと一緒に消えた というつもりでいました…文字だけだとスゲーわかりづらい消滅の仕方ですね
もうちょっと考えてみます

天国関連に関してはそんなに問題なさそうなので元のままで行かせて頂きます
しばらく天国はおなかいっぱいだよDIO様…

ご意見ありがとうございました!

288 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:00:35 ID:uUeVQ3Kk
ストレイツォ、吉良吉影、リキエル
仮投下致します。

289能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:02:13 ID:uUeVQ3Kk
―――D-2、サン・ジョルジュ・マジョーレ教会。
同じイタリアではあるが、本来ならばローマではなくヴェネツィアの島に存在する教会。
16世紀から18世紀にかけて建築され、ヴェネツィアを一望できる鐘楼や教会内部に存在する数々の名画などは有名な観光名所にもなっている。


このような神聖な場所にはふさわしくない殺人鬼の内面を持つ男、吉良吉影はストレイツォと名乗る波紋戦士と共に床に座り込んでいた。
簡単な情報交換を行った後、地下も含めて教会内部には他に誰もいないことを確認し、今は地図などを見ながら今後について相談している真っ最中である。

「つまり、この『吉良邸』が君の家かどうかはわからない……ということか?」
「そうだ。杜王町というのはわたしが住んでいた町の名だが、駅や図書館の位置も違うし、なによりこんな滅茶苦茶な地形の中には存在しない」
「ふむ……」

とはいっても、提案や質問を行うのはほとんどストレイツォであり、吉良がそれに答えるという場合が多い。
吉良吉影はこの殺し合いの場においても極力目立たないように努めていた。

「では、この『首輪』についてどう思う?……外せると思うか?」
「……よくはわからないが、見た限りわたしのような素人に分解できる代物ではない。
 それに、下手をすれば爆発の危険性がある以上、うかつに手を出すべきではないと思うがね」
「やはりそうか……ならば、ひとまずこの首輪は手がかりとして持っていこう」

消滅させた化け物(ワンチェン)の首輪を前にして相談するが、結局現時点では手出しできそうにないという結論に達する。
ストレイツォが首輪をデイパックにしまうのを見ながら、吉良は自分の立ち回りについて考えていた。

(まるで上司にペコペコするサラリーマンのようだが別に構わないだろう。
 実際わたしにもこのハードすぎる状況下で良い考えなどないし、有用な意見をポンポン出したりすると逆に怪しまれかねん。
 今のわたしは『一般人』なのだからね……)

あくまでも本音は隠しつつ、今度は吉良の方から質問する。

「それでストレイツォ、まずはどこへ向かうんだ?」
「うむ……最終的に目指したいと考えているのはここからすぐ北にあるDIOの館、ここだ。
 DIOとはおそらくディオ・ブランドーのことだろう。ならば奴はここにいる。
 仲間達もおそらく、それを理解して集まってくるに違いない」

だが、と一息置いてストレイツォは続ける。

「しかし、今のわたし一人だけではディオに勝てるかどうかわからない。
 ツェペリから応援の要請が来たということは、波紋戦士一人では手に余る相手だということだろう。
 そこで、まずはこの教会の近辺を捜索して君のような巻き込まれた人間を探し、できるだけ保護する。
 太陽が昇る時間になり、仲間達と合流したら皆でDIOの館へと向かおう」
「……わたしも、か?」

思わず確認する吉良。彼としては、危険な敵の本拠地に飛び込む気はさらさらなかった。

「このような妙な場所においてはいつ、どこで亡者が襲ってくるかわからない。
 どこかに隠れているよりもわたし達と共に行動していた方が安全といえるだろう。
 なに、心配せずとも君に戦いをさせる気など無い」

質問されることを予想していたのか、ストレイツォはすぐに答えを返す。
一方、吉良はストレイツォの提案について考えていた。

(……言っていることはわかる。実際、神聖な場所とされるこの『教会』に化け物がいた以上、
 どこかに安全な場所があるとは考えにくい。だが……)

「……大丈夫なのか?」

290能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:03:08 ID:uUeVQ3Kk

なにが、とは聞かない。
吉良は自分の認識に対し、ストレイツォが今の状況においてどのような『危険』の可能性を考えているか知っておきたかった。

「先程も言ったが、道中ディオの手下や亡者達が襲ってくるかもしれない。しかし、わたしの誇りにかけて君を守ろう。
 彼らは太陽の下には出られない。朝になり、太陽が昇ればひとまずは安心といえる。
 そして、我ら波紋戦士が集まれば、ディオにも勝てるはずだ。いや、必ず勝たねばならない」

(やむをえない……か。まあいい、情報収集という意味でも周辺の捜索はするべきだな……もっとも、DIOの館とやらにまでつきあう気はないがね)

ストレイツォから返ってきた答えは大体予想通りのもの。
吉良は頭の中では提案に賛成しつつも、いざとなれば別行動を取ることも選択肢に入れていた。

「わかった。……ところで」
「……? 何かな?」

頷いた後、吉良は気になっていた疑問を投げかける。

「その……『亡者』には生前の記憶というものは残っているのだろうか?」
「記憶……? ふむ、おぼろげに残っている者もいることがあるが、人を襲うという本能に抗える者はほぼ存在しない。
 記憶があるかもしれないが、意味を成さない……といったところか。 ……なぜ、そんなことを?」
「……いや、化け物とはいえ、元々人間だった存在を倒すのに抵抗はないのかと思ったものでね……」

吉良のこの答えは嘘である。
彼の懸念は『死者が蘇る』という点にあった。

先程の化け物には『知能』も『感情』も存在した。
加えて『記憶』もあるとなると、自分の殺害した『被害者』が蘇った場合、自分のことをどう思うかは容易に想像できる。
『杉本鈴美』ただ一人を除いて『キラークイーン』で跡形もなく『始末』して遺体すら残っていない者ばかりではあるが、
自分への『手がかり』となってしまう可能性がある以上、念には念を入れなくてはならない。
特に、自分が無くした『彼女の手首』から全身が復元され、自分の特徴などを喋られる、などということがあっては破滅につながる。

(どちらにせよ、一刻も早く『彼女』を見つけなくてはならないな……
 後は地図にある『吉良邸』がわたしの家だとして……そちらは問題ないだろう。
 家に殺人の証拠など何一つ残してはいないし、重要な物も……いや、一つだけあったか。
 わたしと父に『能力』を授けてくれた、不思議な『弓矢』が)

あの弓矢が一体何なのかは吉良自身も知らないが、他人の手に渡すべきではないということは理解できる。
とはいえ回収に向かう場合、会場の真ん中を横切らなければならない危険があるし、
無事に着いたとしても、そこが同姓の別人の家だったら骨折り損だ。
なにより、『吉良邸』に向かう理由をストレイツォに説明しなければならないが、上手い言い訳が浮かばない。

(リスクが大きすぎるな……まあ、『弓矢』自体はわたしの殺人の証拠にはつながらないだろうし、
 ここはひとまず、ストレイツォの提案に従っておいたほうがいいだろう。
 ……父が、家にいてくれれば問題は無いのだが)

弓矢に関しては保留とし、会話の続きへと意識を向ける。
先程の吉良の答えに一瞬だけ何かを思い返すような目をしたストレイツォだったが、すぐに厳しい表情になる。

「……忠告しておくが、亡者はたとえ生前の家族や知り合いであってもためらいなく襲う。
 奴らには、安らかな眠りを与えることこそが唯一の救いだ。不用意に近づくと、命を落とすことになるぞ」
「肝に銘じておく。わたしからはこれくらいだろうか」
「……よし」

ストレイツォは地図をしまうと立ち上がる。思えば、情報交換に相談だけで随分時間が経過していた。

291能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:04:13 ID:uUeVQ3Kk

「それでは、出発しようか。ここはDIOの館に近い、ぐずぐずしていてはまた襲われるかもしれん。
 ……そういえば、荷物の中身は見たか? このロープは荷物の中にあった紙に隠されていた」

そう言いながら、ストレイツォは先程倒したワンチェンの荷物―――床に転がっていたデイパックを拾い上げて中身を改め始めた。
吉良もデイパックを開けて支給されたものについて確認しておく。
―――食料、水、地図、磁石、筆記用具、懐中電灯、そしてストレイツォが言っていた折りたたまれた紙。
紙を開いてみると、中にあったのは魔法瓶。
蓋を開けると、湯気と共にいい香りが漂ってきた。

(これは……ハーブティーか。しかし、紙と中身の容積が一致していないが、どうなっているんだ?)
「吉良」

考えている途中で声をかけられ吉良は振り返る、すると



             ストレイツォが吉良に向かって薔薇の花を差し出していた。



……一瞬、あるいはもうすこし長いかもしれない沈黙。

(………………似合ってはいる。だがこの男、何のつもりだ?)

吉良は思わず絶句するも、何とか喉の奥から言葉を絞り出す。

「………………ええと、これは?」
「持っておけ。これはヤツの荷物に入っていた『波紋入りの薔薇』だそうだ。亡者に襲われたとき、投げつければ武器になるだろう」
「……はあ」

今の自分はさぞかし間抜けな表情をしているだろうなと思いつつ、吉良は薔薇を受け取る。

(……ハーブティーよりは役に立つかもしれんが、どちらにせよ『キラークイーン』の方が破壊力は大きいだろう。
 おおっぴらに使える、という点を除けばあまりアテにしないほうが得策だな……)

「では、今度こそ出発だ。」

やるべきことは全て済ませた、とストレイツォは入り口の方へと歩いていく。
吉良も道具をデイパックに入れると遅れないように急いで付いていった。
だが教会から外に出たところで、吉良はストレイツォの様子がおかしいのに気付く。

「どうし……」
「静かに、何者かが近くにいる。念のため下がっていろ」

その言葉を聞いて後ろに下がりつつ、吉良はストレイツォと同じ方向へ視線を向ける。
吉良の目では人の姿を確認することは出来なかったが、ストレイツォは『波紋法』で何者かの存在を感じ取っていた。

(やれやれ、面倒なことにならなければいいが……)

心の中でため息をつきながら建物の陰に隠れる吉良。
しかし程なくして、彼は自分の身体に異変が起きていることに気付いた…………

292能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:05:04 ID:uUeVQ3Kk
#


「そこに隠れている者よ、わたしたちは君を傷つける気はない。姿を―――」

前に出たストレイツォは未だ姿を見せない相手に向かい出てくるよう声をかける。
だが……

「やれ!ロッズ達ッ!!」
「―――!?」

隠れていた男―――リキエルはストレイツォの言葉を最後まで待たずに不意打ちを仕掛けた。
ストレイツォは相手の言葉に危険を察知し、距離をとるため飛びずさろうとするが……

(……足が!?)

片足のみが何故か意思に反して妙な方向に曲がり、ストレイツォは体制を崩して転んでしまう。
それを見て、リキエルは物陰から姿を現した。

「……待て! 話を―――」
「二人、いるのか。同時に始末することが可能だ、ロッズにはそれができる。
 しかし先にどうにかするべき厄介な相手は……お前の方だッ!」

リキエルはストレイツォの言葉に耳を傾けようともせず、再び能力を繰り出した。
目の前にいるストレイツォと、建物の陰に隠れている吉良を狙ってロッズを飛び回らせる。

対するストレイツォにとっては気配は感じるものの姿の見えない何かがいる、ということしかわからない。

(なんだ……この男、何をしている……!? 周りに何かがいるようだが、見えん……! それに、どうやって触れもせずわたしに攻撃を……)

考えながらも相手の攻撃を止めるためにロープを取り出し、リキエルに向かって投げつける。
しかし、正確に投げたはずのロープは動こうとしないリキエルから逸れて地面に落ちてしまった。
ストレイツォにはわからないことだが、このときリキエルがロッズに手の体温を奪わせたため関節が勝手に曲がり、狙いが外れたのだった。

「無駄だ、そんな苦し紛れの攻撃が当たると思ったかッ?」

(どうなっている……ならば地面を伝わる波紋を…………ッ!?)

足から地面に波紋を流そうとしたストレイツォは驚愕した。
いつのまにか呼吸が乱れ、波紋がまともに練れなくなっている。
同時に口からは血と、綿のようなカスが出てくるという明らかな異常が起こっていた。

(い、いつの間に……!?)

焦りを感じ始めるストレイツォ。
リキエルは余裕の表情を浮かべながらその様子を眺める。

「もう終わりか……? 手ごたえのない奴だ。さっき倒した奴でももう少し頑張ったっていうのによッ!」

(『さっき倒した』だと!? この男、誰かを殺害してきたというのか……?)

「つまらないな……それじゃあ、そろそろとどめといこう。もっと近づくからな」

ストレイツォに向かって1歩、また1歩とリキエルは近づいてくる。
先程の発言には聞き捨てならない箇所もあったものの、今は他人よりも自分の方が重要であった。
理由はわからないが、ヤツを近づかせてはならない―――そう考えるも、片足は依然妙な方向に曲がったままで、
加えて手の指までもが勝手に折り曲がり、自由に動かせなくなっていた。

(くっ、いかん……ヤツは近づくといっていたが、この状態では波紋はおろか格闘すらも満足にできん……
 しかし、あきらめるわけにはいかん……! わたしの後ろには吉良がいる……
 なにより波紋戦士として、このような悪漢に負けることなど許されん!!)

だが、リキエルとの距離が縮まってきても、ストレイツォはいまだ希望を捨ててはいなかった。

(見ていろ……わずかでもチャンスがあれば、最大の一撃を喰らわせてやる―――)

数刻前にこの殺し合いの会場のどこかで強大な悪と共に散った男と同じく、守るべき者がいる限り決してあきらめない誇り高き存在。
―――それが『波紋戦士』だった。

293能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:05:58 ID:uUeVQ3Kk
#


―――一方、後ろに下がった吉良。

(クソッ……何故だ、勝手にまぶたが落ちて……出血している!? それに、右手の指の関節が妙な方向にッ!)

彼もまた、ロッズの攻撃を受けて身体に異常をきたしていた。
集中的に攻撃されているストレイツォと比べて症状は僅かに軽いが、攻撃の正体がつかめないという不気味さは同じであった。
落ちてくるまぶたを左手で無理やり開き、どうにか視界を確保する。
その目に飛び込んできたのは地面に膝をつくストレイツォと、そこへゆっくりと近づいていく『敵』の姿。

(ストレイツォは劣勢か……どうする?)

吉良にとってこの場合のどうするとは『戦うか逃げるか』ではなく、『相手を如何にして倒すか』ということである。
なぜならば、吉良吉影は追ってくる者を気にして背後におびえるというのはまっぴらな性格だからだ。
このような攻撃の正体も射程距離も不明な『敵』を放置して逃げるという選択肢は元から無かったのである。
加えるなら、自分の『隠れ蓑』となるストレイツォを早々に失いたくはないという理由もあった。
さすがに目立ちたくないなどと言っている場合ではないため、バレない程度に『キラークイーン』を使うことも視野に入れて考える。

(近くの石を爆弾に……ダメだ、接触型はこんな状態でヤツに当てられるかどうかわからんし、
 点火型を使うにしても右手が妙な状態になっていてスイッチが押せん、なによりストレイツォは目を閉じていない!
 シアーハートアタックは……これもダメだ、位置関係が悪すぎる……今のままではヤツよりも先にストレイツォの体温を感知して……体温?)

ふと気がついたことがあり、冷静になって考える。

(そういえば、わたしやストレイツォに出ている症状には覚えがある……たしか、家にあった人体健康事典に載っていた―――)

吉良吉影は長所を人前に出さない男である。
出た大学は二流だったが、それはあくまで目立たないようにするため。
本来の彼は、高い知能と能力を隠し持つ恐るべき男なのである。

(関節が曲がる、まぶたが落ちる、口から綿のようなカスが出る、これらの症状は全て『体温が低くなった場合』に発生するものだ!
 どうやってかは知らないが、ヤツはわたしたちから『体温』を奪っていたというわけかッ!!)

吉良は自身の知識と記憶、そして現在の状況から、あっさりとリキエルの攻撃の正体に辿り着いた。
続いて、対処法について頭を巡らせる。

(ならばシアーハートアタックで……いや待て、わたしとストレイツォの症状が違うということは、
 攻撃されている部位が限定的だと考えるべきだ……ストレイツォの体温が残っている部分によってはそちらに向かってしまう可能性もある。
 ……となれば、ストレイツォの説明で聞いた限りだが、『波紋法』でなんとかしてもらうのが手っ取り早いッ!)

急いでデイパックを開き、目的の物を探り当てるとリキエルに向かって走り出す。

「ストレイツォ!」
「吉良……? 来るな、逃げ―――」
「……そっちかッ!!」

大声で叫び、リキエルとストレイツォ、両方の注意を自分の方にひきつける。
リキエルも向かってくる吉良に向き直り、ロッズを差し向けようとする。
その瞬間、吉良は行動を起こした。

「体温だッ! ヤツはこちらの体温を奪っているッ!!」
「……そうかッ!」

叫ぶと同時に蓋を開けた魔法瓶をストレイツォに向かって投げる。

294能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:06:51 ID:uUeVQ3Kk
(さて……これでも負けるようなら『波紋法』とやらもそこまでだということだ。
 そのときは、わたしも『キラークイーン』を出し惜しみしている場合ではないな……)

直後、吉良は足の体温を奪われて関節が曲がり、地面に倒れこむ。
傍から見れば自己犠牲に見えるが、彼はストレイツォが負けた場合においてもしっかり次の手を考えていた。
吉良がそんなことを考えているとは露知らず、熱いハーブティーを頭からかぶり一時的に体温低下を防いだストレイツォは間髪いれず次の行動に移った。

「炎の波紋ッ! 緋色の波紋疾走(スカーレットオーバードライブ)!!」

自らの身体を殴って波紋を流し、熱エネルギーを発生させることにより全身の体温を上昇させる!
ロッズが奪う以上の熱量を発生させることで、ストレイツォの身体は自由を取り戻したのだった!
吉良に追撃を加えようとするリキエルにストレイツォは素早くロープを投げる。

「ハッ!!」
「……グッ!? このッ……」

リキエルの周りに配置されていたロッズはロープに流される『はじく波紋』で弾き飛ばされ、今度こそリキエルの首にロープが食い込む。
自分の首へと視線を移したリキエルは、一刻も早くロープを外そうと手を掛けるが……

バチッ!

(!? ビリッときたぁぁぁ!!)

ロープを通じて流された波紋がリキエルの動きを止める。
その隙にストレイツォはロープを引き寄せると、リキエルに向かって駆けた!


「……おまえ、何を!?」
「このストレイツォ―――」

このとき、リキエルには黄金に輝き全身から発熱するストレイツォのどこから体温を奪うべきかがわからなかった。
もし、リキエル自身に『全身が炎に包まれるような』経験があるか、あるいは『波紋法』についての知識があれば、
彼は迷いなく、ストレイツォの『口の中』を狙っていただろう。

奇妙なことに、リキエルがこの殺し合いに参加しない『本来の運命』を辿っていた場合でも、彼は似たような状況に遭遇することになる。
そしてその場合、彼は自分の身体に火を放つという荒業で一時的とはいえ乗り切ることに成功しているのだ。
しかし『今の』リキエルにはそのようなことは出来ず、一瞬の躊躇が致命的な隙を生み出してしまった。

「ロッ……」
「―――容赦せん!」



ボッゴォッッッ!!



―――直撃。
格闘者として鍛え上げられたストレイツォが繰り出した顔面への容赦ない蹴りの一撃は、単なる暴走族でしかないリキエルには重すぎた。
あっさりと意識を手放し、地面に崩れ落ちる。
同時に、ロッズ達も動きを停止し、遥か彼方へと飛び去って行った。



―――もし、ロッズが体温を奪うことにより、体内の血管ごと凍らせる――リキエルの父親、DIOがかつて使用していた『気化冷凍法』のような――ことが出来れば、
ストレイツォの身体に波紋は流れず、立ち上がることは出来なかっただろう。
『スカイ・ハイ』―――空高くとも、さらにその上にある『太陽』のエネルギーである波紋を完全に止めることは出来なかった。
そういう意味では、リキエルの能力はDIOに遠く及ばなかったのだ。

295能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:07:21 ID:uUeVQ3Kk



周囲と自分達の状態を確認し、ストレイツォは吉良の元に駆け寄る。

「……終わったぞ。大丈夫か、吉良? すまない、逆に助けられてしまったな」
「いや……気付けたのは偶然だ。それにとにかく必死だったから役に立てたなら幸いだよ」
「うむ。待っていろ、すぐに波紋で治療を行う」

ストレイツォは自分にやったのと同じように波紋で吉良の体に熱を発生させる。
病気から回復した吉良は、リキエルを眺めつつ聞いた。

「……ヤツは死んだのか?」
「いや、容赦はしなかったが命までは奪っていない。ヤツにはディオとの関係など、いろいろと聞きたいことがある」
「……しかし、目を覚ましてまた襲ってくるという可能性は……」
「そうだな……ヤツが『ロッズ』と叫ぶとき、右腕に付いた妙な生き物を動かしているのが見えた。……だから、こうしておこう」

ストレイツォは気絶しているリキエルをうつぶせにして右肩と腕の付け根に手をかけると、掴んだ腕を凄まじい勢いで体の後方に捻る。
グキリ、と嫌な音がしてリキエルの肩が外れた。

「!? グ、あああーーーッッッ!!」

痛みに耐えかね、リキエルが覚醒する。
しかしストレイツォは容赦なく、左肩も同様に外してしまった。
絶叫の後、ピクリとも動かなくなったリキエルを見て、吉良は思う。

(殺し合いの敵は『化け物』だけでなく、『人間』もいる。考えてみれば当然のことだったな……
 しかし、相手の体温を奪うというのは、こいつの『能力』なのか?
 わたしや父だけでなく、こんな『能力』を持った人間が他にもいるのか?
 この男を生かしておくのは危険だが、『始末』する前に確認しておかなければな……)

同情の念は一切なく、初めて戦った不思議な『能力』の使い手に対する数々の疑問。

(この殺し合いに同じような『能力』の使い手がまだ複数存在するのならば、ストレイツォだけでは不利かもしれん……
 先程はどうにか勝利したが……まあ、いざとなればストレイツォごと『爆破』すれば済むことだ。
 わたしに『キラークイーン』を使わせることが無いよう、せいぜいがんばることだね……)

リキエルの処遇についてストレイツォと話しながらも、
吉良は依然変わりなく、心の中で密かに笑い声を上げていた―――

296能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:08:17 ID:uUeVQ3Kk
#


―――徐倫達が乗るヘリを落とし、バイクに乗って落下地点に到着した瞬間、世界が変わった。
大勢の人がひしめき合うホールで男達の首が吹っ飛び、気がついたらリキエルは暗い地面の上に立っていた。

彼はわけもわからぬうちに、殺し合いに参加させられてしまったのだ。
いつものようにまぶたが落ち、呼吸が苦しくなり、正常な判断ができなくなっていた。

(こんな殺し合いなんて、オレ一人じゃどうにもならない……
 きっとオレは、あの見せしめと同じく虫けらのように殺されてしまう……いや、落ち着け。
 まだそうと決まったわけじゃない。無理に殺し合いに参加せずとも、生き延びるだけならば、なんとかなるかもしれない。
 まずは武器とやらを確認しよう)

そう思い近くにあったデイパックの中を探ろうとする……が、手が震えてなかなかうまくいかない。
ようやく中を確認できたものの、武器と言えそうなものは何も無かった。

(……どうする?どうするんだ? こうしている間にも、誰かがオレを殺しにやってくるかもしれない。
 ……落ち着け、まずは水でも一口飲んで……)

震える手でペットボトルの蓋を開けようとするが、取り落として足元に中身を撒き散らしてしまう。

(ヤバイ……それによく考えれば、水がわざわざ支給されるってことは貴重なものだってことかもしれないのに……)

あわてて地面に落ちたボトルを拾いあげる……だが、その時リキエルに電撃が走った。
リキエルは気付いていなかったが、彼がこぼしたペットボトルは『支給品』であり、中身はただの水ではなかったのである。

(……どうして、あっさり殺されるなんて考える? オレには新しく身についた『能力』があるじゃないか……
 第一、何故こんな殺し合いに勝手に参加させられなければならない? それが『運命』だとでも?)

無性に腹が立ち、『闘志』が沸いてきた。
いつの間にかまぶたは開いていたし、息苦しさもなくなっている。
同時に、自分には何でもできるような、どんな敵にも負ける気がしないような高揚感があった。
試してみたい―――そう思って歩き出し、近くにいたガンマンに戦いを仕掛け、勝利してデイパックを奪い取った。

(もう、昔のオレではない、オレは生まれ変わったんだ)

そう思えていた。
続いて教会の前を通りかかったとき、二人組みの男達を発見し、同じように『本能』の赴くまま襲い掛かったのだが―――



(ど、どうなってるんだ、何故こんなに顔や肩が痛いんだ……? それに腕がぜんぜん動かない……
 ええと、とりあえず立ち上がって……いや、どうやって? それよりもそこで話している二人に……いや、ダメだ……
 どうすれば、どうすればいいんだ………………? ああッ、まぶたが落ちて、それに、息が……苦し……)

ゲームスタート直後、支給品のペットボトルに入っていた『サバイバー』の能力により『怒って』いたリキエルはここに至ってようやく、能力から開放された。
実のところ、彼にとってそれがよかったかどうかは疑問であるし、少しばかり手遅れだったかもしれないが。


リキエルには分からない。現在の状況は、彼自身の想像以上に危ういものであることが。
なぜならば彼の『血統』はストレイツォ達の宿敵、吸血鬼DIOに直接関わるものなのだから―――

297能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:09:21 ID:uUeVQ3Kk

【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会前 / 1日目 黎明】


【ストレイツォ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:JC4巻、ダイアー、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前
[状態]:肺にわずかなダメージ(波紋で治療済み、波紋使用には支障なし)
[装備]:マウンテン・ティムの投げ縄
[道具]:基本支給品×2、不明支給品0〜1(確認済み)、ワンチェンの首輪
[思考・状況]
基本行動方針:対主催(吸血鬼ディオの打破)
1.倒した男(リキエル)から情報を聞き出す(他の参加者やディオについて)。
2.周辺を捜索し吉良吉影等、無力な一般人達を守る。
3.ダイアー、ツェペリ、ジョナサン、トンペティ師等と合流した後、DIOの館に向かう。


【吉良吉影】
[スタンド]:『キラークイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:まぶたから微量の出血(波紋で治療済)
[装備]:波紋入りの薔薇
[道具]:基本支給品、ハーブティー(残り1杯程度)
[思考・状況]
基本行動方針:静かに暮らしたい
1.倒した男(リキエル)から情報を聞き出す(特に『能力』について)。
2.些か警戒をしつつ、無力な一般人としてストレイツォについて行く。
3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

※ストレイツォから波紋や吸血鬼について説明を受けました。
※ランダム支給品はハーブティー(第7部)のみでした。


【リキエル】
[スタンド]:『スカイ・ハイ』
[時間軸]:徐倫達との直接戦闘直前
[状態]:両肩脱臼、顔面打撲、痛みとストレスによるパニック
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜1(ホル・ホースの物、確認済み)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)
[思考・状況]
基本行動方針:
0.パニック状態。痛みと恐怖でまともに物事を考えられない。

※ランダム支給品は『サバイバー入りペットボトル』のみでした。
※現在ダメージを受けて一度気絶したことにより、サバイバー状態は解除されています。


[備考]
・ワンチェンのランダム支給品は『波紋入りの薔薇』のみでした。
・二人が情報を聞きだした後、リキエルをどうするかは次の書き手さんにお任せいたします。

298能ある吉良はスタンド隠す ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:10:07 ID:uUeVQ3Kk
【支給品】

波紋入りの薔薇(第1部)
ワンチェンに支給。

首だけになったダイアーが波紋を込めてディオに飛ばした赤い薔薇の花。
有名なセリフ「フフ……は…波紋入りの薔薇の棘は い 痛か……ろう………フッ」のアレ。

ロワ仕様として、誰かに刺すまで波紋は消えないようになっている。


サバイバー入りペットボトル(第6部)
リキエルに支給。

見た目は共通支給品と同じ水入りペットボトルだが
中の水を飲んだり触ったりするとスタンド『サバイバー』の電気信号が脳に送られ、その人物を『怒らせる』効果がある。

『サバイバー』で怒った人間は
・闘争本能が引き出され、ほとんど見境なしに相手を襲う
・相手の「強い」ところが光って「見える」
・身体能力が強化される
といった状態になる。


ハーブティー(第7部)
吉良吉影に支給。

SBR11巻でジョニィが淹れたミントのハーブティー。
原理は不明だがジョニィはハーブを飲むことで撃った爪が速く生えてくる。
カモミールを混ぜるのが効果的。

原作ではキャンプケトル(キャンプ用のやかん)に入っていたが、
ロワでは魔法瓶に入っているため、冷めることはない。

299 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/20(月) 23:11:04 ID:uUeVQ3Kk
以上で仮投下終了です。
オーソドックスな展開に挑戦してみたら、何故か戦闘が原作と似たような流れになっていたり……

今回、特に意見をいただきたいのは『リキエルが(前話から)サバイバーにかかっていたこと』についてです。
この設定ははっきり言って『後付け』なので、こういうのが不可の場合は『能力を得て有頂天になっていた』などと書き直すことも考えています。
皆様のご意見をお聞かせください。

後、個人的には、吉良が他人と話すときの口調があっているかどうか少し不安です。
その他、誤字脱字や問題点などあれば遠慮なくお願い致します。

300 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/21(火) 01:02:46 ID:v4KDwLao
仮投下乙です!
やばい超面白い…

リキエルの件についてですが、個人的には後付け上等!です
理由? だってSSが面白かったから…理由にならない理由ですいません
吉良の口調についても、特に違和感は感じませんでした
誤字脱字問題点は、ざっと読んだ限り特にないかなと思います

301名無しさんは砕けない:2012/02/21(火) 06:27:01 ID:fz.cqYe.
お二人がた、投下乙です。
誤字脱字は自分からみた限りでは見当たりませんでした。
感想は本投下までとっておきます。ただ二人とも巧くなりすぎィ! 書き手さんの向上力にびっくり、嬉しい悲鳴です。
サバイバ―での補足も前作を上手い感じに昇華させてますし、僕としては全然OK、むしろGJだと思いました。

302 ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/21(火) 16:09:40 ID:9kBjQgOc
みなさん投下乙です!
二作品とも面白すぎて、わくわくしながら読ませていただきました…!
詳しい感想は本スレ投下時に。

では、こちらもこっそりと仮投下させていただきます。

303嘘つきジョセフと壊れたエリナ ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/21(火) 16:11:09 ID:9kBjQgOc
彼女はひたすら走っていた。
そうする内に、なぜ自分が走っているのかも分からなくなる。
何かから逃げているのだ。
じゃあ、何から?

誰か、助けて。
そうだ。助けて欲しいときには、必ず彼は現れてくれた。
そしてその彼を頭に浮かべた瞬間、思い出す。
優しい笑顔、力強い手、暖かな眼差し――吹き飛ぶ頭。

「……いや……いやぁぁぁ!!!」

エリナ・ジョースターは最愛の夫、ジョナサン・ジョースターの末路を思い出した。
喉から絞り出すような叫びを上げると同時に、彼女の身体から力が抜ける。
カクンと躓くように地面に倒れたエリナは、もう立ち上がることは出来なかった。

一面の暗闇と冷たい空気の中、足音がどんどん迫ってくる。
エリナは覚悟を決めることすら出来ずに、白い手で地面を握った。
その甲に、ぽつりと水滴が落ちる。
ぽたぽたと涙の落ちる音が、足音にかき消されていく。
そしてその足音は、エリナの視界の端に太い脚が映り込むことで止まった。

「おいおい……大丈夫?お嬢さん」

頭上から聞こえた、その声のする方へ顔を向ける。
自分を追ったせいで少し息を切らせながら、安心感のある笑顔を浮かべている男。
それはやはり「ジョナサン・ジョースター」だった。

エリナは、確かにその頭が吹き飛ばされるのを見ていた。
ただ何も出来ずに見ていた。
助けに走ることも、声を上げることすら出来ずに。

ジョナサンがゆっくりとエリナの前にしゃがみ込む。
今すぐにでも彼の胸に飛び込みたくなるような衝動を抑えるのに必死だった。
エリナは震える声を整えられないまま、水滴を垂らすように少しずつ言葉を紡ぐ。

「ど……どうして?」
「え?」
「貴方は……さっき確かに、死んだはず……!」
「……」
「あのホールでッ!あ……頭……を」

そこでエリナは一瞬動きを止める。
すぐに口を押さえて背中を丸めた彼女は、声を上げずに泣き始めた。
ただ、時々隠しきれない声が指の間から漏れ出ていく。

その背中を男が辛そうに見つめていたことには、エリナは気づかない。
ただ温かい手が自分の肩に置かれた時、ふっと心の中に木漏れ日が差すような感覚を得ていた。
その手を、振り払うことなど出来る訳がない。

「俺だって訳がわかんねーんだよなぁ〜……。
 あそこで見せしめみたいに殺されたのは確かに俺。
 でもここにいて、今君を慰めようとしている俺も、確かに俺自身だ。
 どっちも本物の『自分自身』だと、俺だからこそわかるッ!」

肩に置かれた手に力がこもり、エリナは思わず顔を上げる。

「でも俺は自分が本物だって信じてる。
 『殺し合いになんて乗らない俺』で『君みたいな女の子は絶対に守る俺』だってな」

確信できた。
目の前の彼は、自分が生涯唯一愛すると決めた男だ。
何があっても側にいると、ずっと支え続けると誓った「ジョナサン・ジョースター」その人。
自分には、まだ何もわからない。
それでもずっとこの人を信じようと、そう思える。

まるでその血に惹きつけられるように、エリナは愛する夫の胸にそっと寄りかかった。

304嘘つきジョセフと壊れたエリナ ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/21(火) 16:12:09 ID:9kBjQgOc
※※※



突然、先ほどまで泣きじゃくっていた女性に胸に飛び込まれたジョセフは、思わず息を飲んだ。
片膝を立ててしゃがんだ体制のまま、男は彼女に自分から触れることも出来ずに固まる。
思い切り抱きつかれた訳ではない。
そっと寄り添うように身体を預けた彼女は、ためらいがちにジョセフの服を握る。
柔らかい身体、どこか高貴な香り、すすり泣く声、上から覗く美しい谷間……。

(これは……まずい気がするッ!よくわからねーが、何かがまずいッ!!!)

「お……俺、一応新婚なんだけどなァ〜……」
「?ええ、そうね……」

返されると思わなかった独り言への返事に、ジョセフは違和感を覚える。
確か、自分とこの女性は初対面のはずだ。
しかし涙を流しながらこちらを見上げる彼女の顔に、どことなく見覚えがある気もする。
だが、地下の暗闇の中ではハッキリと確認できない。

ジョセフに縋り付いたまま、彼女はぽつりぽつりと話し始めた。
皺になるほど強くジョセフの服を握るその女性を見て、彼はその話に口を挟まずに聞くことにする。

「『俺』と新婚旅行の船に乗ろうと思ったら、いきなりあのホールにいた」
「その時突然『俺』が消えてとても驚いて」
「その後、見せしめのように『俺』が殺されて不安に」
「でも、また『俺』に出会えて本当に嬉しい」

涙で詰まって上手く話せなかったり、混乱して支離滅裂になりつつ話したことだったが、纏めるとそう言いたかったらしい。

彼女の話を頭の中で整理しながら、ジョセフはようやく自分が彼女の夫と間違えられていることに気がついた。
しかし、自分の旦那を普通間違えるもんか?
思わずそう指摘してやりたくなったが、涙で目を腫らし唇を震えさせる様子を見てとどまる。
暗闇の中、しかもいきなりこんな状況に放り込まれて憔悴した彼女には、仕方ないことかもしれない。
幸せの絶頂から、いきなり地獄の底のような戦場に落とされたのだ。

あまり勘違いを長引かせてこの人を傷つけたくない。
ジョセフは自分の正体をさっさと明かしてしまおうと決意する。

「あのさ、お嬢さん。実はそのぉ……」
「ジョナサン……」

その名前を聞いた瞬間、彼の身は凍りついた。

目の前の女性は相変わらず此方を熱い視線で見つめながら、ジョセフをそう呼んだのだ。
祖母やスピードワゴンに常々聞かされてきた言葉が、血流に乗って脳内を駆け巡る。
そして同時に、先程感じた彼女への既視感が再び彼を襲ってきた。
首の裏を、冷や汗が流れ落ちる。
ジョセフは今まで触れることの出来なかった彼女の肩にそっと両手を置くと、澄んだ瞳を見つめ返した。

「……君の名前は?」

真剣なジョセフの表情を見て、彼女は目を見開いてから縋り付いていた手を離す。
そして、地面を掻いて少し傷ついた両手を膝の上に合わせた。

「私を疑っているのね?」
「いや……とにかく名前をね、聞かせてほしいなァ〜って……」

「……エリナ・ペンドルトン。
 いえ、ごめんなさい……エリナ・ジョースター!貴方の妻です!」

305嘘つきジョセフと壊れたエリナ ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/21(火) 16:13:21 ID:9kBjQgOc

(……………………う、嘘だろォォォォ!!!??)

その叫び声は辛うじてジョセフの頭の中に留められたが、驚愕の表情までは抑えられなかった。
そんな様子の夫を見て、エリナと名乗った女性は首を傾げる。
瞬間的にその女性の肩に添えた手を離すと、恐る恐る彼女の頬に触れた。
むにむにぎゅうぎゅうと、遠慮など忘れて柔らかな頬を揉みしだく。

「ひょ、ひょなひゃん!?」

彼女は顔を真っ赤にしながらも、為すがままにされていた。

確かに、その顔は自分の祖母の面影が……あるような気がする。
じっと彼女の顔を見ていると、ふと一枚の写真を思い出した。
スピードワゴンにこっそりと見せてもらった若い頃のエリナの写真、朧げなその像が次第に鮮明になり――思わず頭を抱えた。

まさにその写真の女性が今、目の前にいる。
触って確かめたその身体は温かい。
まさか石仮面でも被ってしまったかとも思ったが、彼女は紛れもなく普通の人間だった。
仮に石仮面か波紋で若返ったとしても、記憶まで飛んでしまっている様子なのが奇妙だ。

(ど……どういうことだ……!?この女は一体……何者なんだよーッ!)

いきなりの瞬間移動、殺されたもう一人の自分。
それに加えて新たな謎が浮上した。
しかもどうやらこの謎は、真っ先に解決しなければならない問題のようだ。
ジョセフはそっと立ち上がり、彼女を見下ろして考える。

彼を心配そうに見つめる『エリナ』の瞳は、どこまでも無垢で美しい。
だからこそ厄介だ。
彼女自身は自分をエリナ・ジョースターだと、更にはジョセフのことを夫であるジョナサン・ジョースターだと完全に信じきっている。
彼女は何者か――まさか本当にエリナおばあちゃん……なのか?



その女性が、自分から距離を置いて神妙な面持ちで見つめる彼をどう思ったのか、それは彼女自身しか知らない。
しかし女は何も言わずに立ち上がると、後退ろうとするジョセフに近づいていった。
ジョセフはそれを、処刑台への導きのように感じる。
だが「エリナ」は、彼の手を包み込むように握っただけだった。
彼女の顔には、百合の香り立つような微笑が浮かんでいる。

「あ、あのぉ……」
「貴方が何をしようとしているのか……私には分かりません。
 ……でも、私は貴方がどんな事をしようとも必ずついて行きます。
 貴方を――信じていますから」
「――!」
「でも私が一緒だと戦えないのなら、そう仰ってくださいね。
 一人でどこかに隠れて、貴方を待っています。いつまででも……」

美しすぎる――ジョセフは思った。
当然彼女が持っているはずの悲痛な覚悟も、不安も、寂しさも、その笑顔からは一切感じられない。
ただひたすらに夫を想い支えたいと願う、一人の聖女がそこにはいた。

(間違いない――この人は、エリナおばあちゃんだ……。
 エリナ・ジョースターだ……)

彼の知っている祖母の手は皺だらけのくたびれた手だったが、いつでも厳しくて優しかった。
包み込まれた手には、記憶の中のエリナと同じ温もりがある。
本当に、此処に来てから奇妙なことばかりだ。
なぜ彼女が身体も精神も若返っているのか、ジョセフにはまだわからない。
恐らく「石仮面」でも「波紋」でもない、何らかの未知の力が存在していることは確かだ。

それでも、俺は彼女を守り抜く。
おばあちゃんを元の姿に戻して、必ずアメリカに帰す。
そしてもう一つ――。

306嘘つきジョセフと壊れたエリナ ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/21(火) 16:14:13 ID:9kBjQgOc
ジョセフはエリナの手を握り返した。
そのまま彼女を引き寄せ、たくましい胸の中へ抱き止める。
左手で細い指を握り、右手はエリナの頭を包んで。
その瞬間のエリナの顔は見たくなかった。
見られなかった。

「ジョナサン……」
「大丈夫。絶対に置いて行ったりしない……。
……君は――『僕』が守る。何があっても……ッ!」

これがただのエゴだと、ジョセフは気づいていた。
それでもジョセフには、まだ彼女の知らない「真実の未来」を伝えることなどできない。
エリナ・ジョースターは、どんなに残酷だろうと真実を求める女性だということも知っている。
それでもジョセフは、愛する人を欺き続ける覚悟を決めて甘い嘘をついたのだ。
その甘さはエリナのためのものなのか、ジョセフ自身のためのものなのか――。

「……ジョナサン?ジョナサン……よね?」
「ああ……どうしたんだ?エリナ」

エリナの髪が、ジョセフの頬をくすぐった。
彼女には、ジョセフの歯を食いしばり眉根を寄せたその表情は見えていない。
彼が、今にも抱き潰してしまいそうなのを堪えながら抱きしめていることも、何も知らなかった。

エリナはジョセフの腕の中でみじろぎを取ったが、自分を呼ぶ声にぴたりと動きを止める。

「……いいえ、何でもないわ」

エリナには、彼女を愛してくれるジョナサンの優しい腕があればそれで十分だった。
もうそれ以上考えることなどない。



そして、ようやく二人の歯車は噛み合った。
エゴは救いとなり得るのだろか?
無知は罪になり得るのだろか?
歯車はまだ、回り始めたばかりだ。





【地下D−5 南西地下通路/1日目 深夜】

【ジョセフ・ジョースター】
【スタンド】:なし
【時間軸】:第二部終盤、ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前。
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1〜2(未確認)、アダムスさんの不明支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】基本行動方針:エリナと共にゲームから脱出する
1.『ジョナサン』をよそおいながら、エリナおばあちゃんを守る
2.いったいこりゃどういうことだ?
3.殺し合いに乗る気はサラサラない。
※エリナは「何らかの能力で身体も精神も若返っている」と考えています

【エリナ・ジョースター】
【時間軸】:ジョナサンとの新婚旅行の船に乗った瞬間
【状態】:精神摩耗(小)、疲労(小)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、不明支給品1〜2 (未確認)
【思考・状況】基本行動方針:ジョナサン(ジョセフ)について行く
1.何もかもが分からない……けれど夫を信じています
※ジョセフ・ジョースターの事をジョナサン・ジョースターだと勘違いしています

【備考】
二人はタイガーバームガーデンから北西方面へ走り、今はE−5とD−5の境目付近にいます

307 ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/21(火) 16:16:14 ID:9kBjQgOc
以上で仮投下完了です。
こんな間近で会話しといてジョナサンと間違えるか?とも思いましたが
その辺は、暗闇で顔がはっきり見えない&軽いストレスで頼れる人が欲しかったということで…
今手元に一部と二部がないので、口調や細かい設定など大変不安です。

疑問点、問題点、誤字脱字など、あったらよろしくお願いします。

308 ◆Rf2WXK36Ow:2012/02/21(火) 16:53:13 ID:FxEJ7bDo
仮投下乙ですッ

うわあ…すごく…先行き不安です…特にエリナ
人は自分の見たいものしか見えなくなるものだと思うので、ありだと思います
口調などに違和感は感じませんでした
誤字脱字等もざっと見たかんじなかったように思います

309名無しさんは砕けない:2012/02/21(火) 17:25:34 ID:LvXimzs.
投下乙。誤字脱字はざっと読んだ限り見当たりませんでした。
感想は本投下までとっておきますが……これは……なんという極上のパスッ!

310 ◆LvAk1Ki9I.:2012/02/21(火) 20:00:42 ID:ZAPE4FTs
コメントありがとうございます。
サバイバーに関してはとりあえずこのまま本投下し、指摘されるようなら改めて修正を考えることに致します。
まだ二作目ですが、皆様に面白いといっていただけて幸いです。


そして、投下乙です。
感想は本投下時として、疑問点が一つ。
参戦時期的にジョセフの左腕は「金属の義手」になっているはずです。
当時の技術を考えると、触感や温度などは明らかに生身の腕と異なると思われます。
見た目を間違うのは仕方ないとしても、この点について二人がどう思うか考えていただきたいです。

極端な話、某ロワのように「生身の腕に戻っていた」という方法もあります(ポルナレフのことなどを考えるとあまりお勧めではないですが)。

311 ◆3uyCK7Zh4M:2012/02/22(水) 01:05:33 ID:RNeci6rs
ご意見ありがとうございます!

義手の件は、すっかり忘れていました…
エリナの義手に関する違和感を加え、少し修正してから本投下させていただくことにします。
ありがとうございました!

312 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:20:48 ID:dQe.Ivw2
仮投下します

313Beyond the Bounds ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:21:34 ID:dQe.Ivw2
仄暗い水の底に沈みきって、どれだけの時間が流れただろう。
光も、音も、何もかもが遠い。
時折ちらりと視界を過ぎる小さな魚影だけが、僅かに慰めと言えなくもない。それでも、物言わ

ぬ死体となり果てた『元相棒』を横目に『孤独』であることに変わりはない。

(ああ――――孤独、孤独だよォー……)

何を叫ぼうと届きはしない。印すらない水の底に、動くはおろか物言うことすら出来ない刀剣に

、救いの手が現れるはずもない。
ナイルの奔流から掬い上げられた歓びも泡沫の夢、このまま錆付き朽ち果てるまま、緩慢に流れ

る時に任せた消滅を迎えるばかりだとアヌビス神は思った。いや、思っていた。

(あぁ――――うン? なんだ、ありゃあ……?)

ふと泳ぎ過ぎる魚影は、それまでにちらちらと見えていたものよりも妙に大きい。そして、見た

こともないような形をしていた。
奇妙なことに、通り過ぎるばかりだった小魚と違い、その魚影はアヌビスの周囲をグルグルとう

ろついているようだった。チラリチラリと視界の端にその影が映っている。

(魚、魚か? それにしちゃあ妙な動きをしてやがる。ああ、でも、なんでもいい――)

この水牢の孤独から救ってくれるなら。
アヌビスは懸命に願った。神様DIO様、この際悪魔でもなんでもいい、どうか俺をお救い下さ

いッ!
知ってか知らずか、魚影がアヌビスを咥え上げたのはその直後。
哀れな妖刀の第2の奇妙な物語が始まろうとしていた。





314Beyond the Bounds ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:22:08 ID:dQe.Ivw2
『ゲーム』の開始早々から、スクアーロは結構な戦いを強いられた。
黒を基調としたタイトな服装は、至るところじっとりと黒ずんだ染みにまみれ、シャープさを感

じさせる風貌に似合わない陰惨な雰囲気を醸し出している。
大女、ヤク中女、時代がかった軍人、死んでいるはずのチンピラ、大猿のような化け物。女たち

とピントのずれた軍人はまだスクアーロの持てる知識の中で解釈がつけられるものの、死んでい

るはずのチンピラと猿の化け物に関しては、全くもって己の理解の埒外だった。

「まァ――報告がマチガイ、実は死んでなかった、ってのも妥当な考えだけどよ……」

乾いた血痕の残る顔に拭いきれない倦怠感を滲ませて、疲れた足を引きずるようにふらふらと歩

きながら、スクアーロはチンピラに関する一考察をぽろりと吐きだした。
数瞬たって、いつもの相槌が無いことに気づく。ああ、またやってしまった――

――ティッツァ。

声に出さずに名を呼んだ相棒は――いない。半身のように行動を共にしてきた相棒は、スクアー

ロの隣にはいないのだ。
不気味に流れる川と、川を越えて遠くに映る景観は確かに慣れ親しんだローマのものであるはず

なのに、右手に広がる異国の町並みがそれを否定する。

――ここは――何だ?

ひとつだけ判ることは、この『ゲーム』において、死は限りなく近しい隣人であるということ。

ひとつ選択を間違えば、死神は嬉々として大鎌を振るうだろう。

――死ぬわけにはいかねぇ。

何かを成し遂げて戴く死と、何も遂げられぬまま与えられる死――どちらが良いと問われれば、

どちらもごめんだとスクアーロは吠えるだろう。己が望むのは相棒と掴む栄光。そのために、ク

ズみたいなゴロツキから、がむしゃらに親衛隊という地位まで上ってきた。
知恵も気も回るが非力な相棒が、こんな凄惨なゲームに巻き込まれているなど考えたくはない。

だが、その可能性は否定できない。与えられるもので確認するというのも癪な話だが、せめて名

簿とやらで安否を確認しなければ納まらない。
相棒が不在ならば、あの老人の甘言に乗ってやるのも構わない。あの老人が『ボス』だろうがそ

れとも代理の一幹部だろうが、試されているのなら力でねじ伏せて示すだけ。
どこかにいるのならば、一刻も早く合流を。頭の切れる彼ならば易々と死にはしないと信じてい

るが、理不尽な暴力の横行するこのゲームで彼の非力さは格好の的だろう。

――情報が、必要だ。

しかし、殺戮の現場となったそこらを歩き回ってみても人の姿は見かけなかった。あるいは、ス

クアーロ自身に運がなかったのかもしれない。
いつ何時、誰から襲われるかもわからないこの状況で、身を守ることを優先するのは必須事項だ

った。ゆえに、スクアーロは『川』を選択した。
支給された水はペットボトル一本分、これでは〈クラッシュ〉を発動させようにも少なすぎる。

あの通りにあった水たまりは局地的な雨がもたらしたもののようで、散策するにつれて地面は乾

いたものになっていた。
しかし、川であれば話は違う。地図に記されているとおりなら、川にさえ沿って動いていればあ

る程度のアドバンテージを持てることに違いは無い。
それゆえの『川』――しかし、その選択が間違いだったのか。スクアーロは疲れたように息を吐

く。ひとりきりの放浪とは、こんなにも遣る瀬ない疲労を伴うものだったのか。

(孤独、か……)

ひとつきりの足音にすら気が滅入る。化け物に打ちすえられた体が鈍痛を訴える。誰でもいい、

何でもいい。この無限にも思える錯覚の孤独から救い出して欲しい。
そんなとき、遠くに何か重い音が聞こえてきた。何かを打ち合うような金属の音。重低音の怒号

のような音。
スクアーロは疲労に鈍る足を急がせて、音の震源地に向かった。何がおこっているのかを確認で

きるだけで上等だった。
そして辿り着いた対岸、周辺に待ち伏せなどの気配がないことを確認してから、スクアーロはお

もむろにクラッシュを発現させた。





315Beyond the Bounds ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:22:56 ID:dQe.Ivw2
その死体を見つけられたのは、全くの偶然だった。
夜闇に加えてうすら濁った水底は、ぱっと見て何が沈んでいるのかもよくわからない。石かもしれないし、単なる水草の影かもしれない。
スクアーロはまず『音』の正体を確認しに行った。少々距離はあったが、遠目に確認できるくらいには近寄れた。
クラッシュを水面に浮かばせて打ち合う重低音の元を探して見れば、開けた場所で大柄な影がふたつ、すさまじいスピードで打ち合っているのが見て取れた。何やら怒鳴り合っているのは聞こえたが、内容までは聞き取れない。
相棒でないなら別にどうでもいいと、クラッシュを沈ませて戻そうとした矢先。流れが妙に淀んでいる水流を発見した。濁った水に微かに混じる血の気配に、スクアーロは瞬間的に身構えつつ慎重にクラッシュを進ませた。

――死体か?

死体自体には別段なんの感慨も沸かないが、それが相棒でないかどうかは別問題だった。自然と湧きあがる最悪の妄想を振り払いつつ、スクアーロはじっくりとその死体を検分し始めた。
体の前面から沈んでいるせいで顔までは覗けない。熟れきって弾けた果実のようにぱっくりと割れた中身すら覗く後頭部は、加減をしらない子供がオモチャを叩きつけて壊したような有様にも見える。

――良かった、ティッツァじゃあねえ。

服装といい、髪色といい、この死体は単なる他人だ。沈んだ死体が相棒ではなかったことに安堵し、他に何も無いか確認のためにクラッシュを一回りさせたときだった。

――ん? なんだありゃあ?

死体の傍というには少々離れたところに、一本の刀が沈んでいる。おそらくこの死体の持っていた武器だろう。
淀んだ水底においても輝きを失わない刀身が、妖しくギラついているようだった。
少し迷って、あるものは貰っておくかという結論に達する。だいたいにおいて、スクアーロの支給品とやらはハズレの部類だった。
クラッシュがあるからいいようなものの、自身のデイパックから出てきたのは最低限の装備を除けば『アスパラガスに英語辞書を巻いたもの』と『英単語カードのコーンフレーク』だけだったのだ。
休憩がてら川縁で休んでいた際、メモかなにかかと思って開いた紙の中からそれらの料理が出てきたとき、スクアーロは別種の悪寒に総毛立った。
湯気すら立ててことさら丁寧に作られているらしい見た目から滲む、異常な妄執みたいなものがひたすら気色悪かった。出したその場に放置して、逃げるように去ったものだ。
護身のための武器として、刀は甚だ時代錯誤の感が拭えないが、それでも無いよりマシだろう。
そうして、クラッシュで刀剣を拾い上げた直後だった。

――た、助かったァァァァァァァァァァァァ!!

大音量で聞こえた声に、スクアーロは焦って周囲を見渡した。だが、辺りの闇には何もいるような気配はなく、ただただ声だけが響いている。

――オイ、早く俺を引き上げてくれェーッ!

何を言っているのか。察しのつかないスクアーロが尚も辺りを見回していると、焦れたように声が響き渡った。

――お前だお前、『鮫』の本体ッ! 水ン中じゃあ錆びちまうよォー!

そうして、ようやくその声が己自身にしか聞こえていない――正しく言うなら、音にすらなっていない――ということに、スクアーロは気がついた。クラッシュが咥えていた『刀』を放すと、途端にその声は聞こえなくなったからだ。

「い、一体何だってんだ……?」

待てど暮らせど、声は聞こえない。おそるおそる、もう一度クラッシュにその刀を拾わせる。すると、今度は泣き声のような哀れがかった声が響き渡った。

――た、頼むよォーッ 拾い上げてくれェーッ! もう水の中はコリゴリなんだあッ!

どうやら、この奇妙な声はこの刀から発せられているらしい。ますますスクアーロの知識と理解から遠のいているが、実際起こっているからには現実を受け入れる他ない。
それに、武器らしい武器は手に入れたい。若干悩んだスクアーロだが、結論は変わらなかった。
そして鮫と刀の奇妙な物語が始まる。




【アヌビス神復帰】

316Beyond the Bounds状態表 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:23:44 ID:dQe.Ivw2
【C−4 ティベレ川河岸・1日目 黎明〜早朝】
【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:脇腹打撲(中)、疲労(中)、かすり傷、混乱(小)
[装備]:アヌビス神
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ティッツァーノと合流、いなければゲームに乗ってもいい
1:まずはティッツァーノと合流。
2:この喋る刀は一体なんなんだ?

[備考]
※スクアーロの移動経路はA−2〜A−3へ進んだのち、川に沿って動いています
※川沿いのどこかに、支給品である料理が放置されています


支給品情報

『アスパラガスに英語辞書を巻いたもの』……4部で康一に出された由花子の愛情料理。見た目はアレだが味は美味しい……かもしれない。
『英単語カードのコーンフレーク』……4部で康一に出された由花子の愛情料理。そもそも単語カードは『コーン』ではないという突っ込みは野暮だろうか。

317 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:30:38 ID:dQe.Ivw2
以上です
問題になりそうな部分はC−4の戦いのくだりと時間帯でしょうか
アヌビスに関しては、このまま沈んでるのがもったいないというのもひとつの理由になりますし
死体フラグを能力関連で生かしてみたかった、というのもあります
こちらに関して「ご都合すぎる」等ございましたら、遠慮なくご指摘ください
他、誤字脱字などのご指摘もお待ちしております

318 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/02(金) 20:36:08 ID:dQe.Ivw2
あと、改行に関しては途中で気付きました…読みづらい投下で申し訳ありません

319名無しさんは砕けない:2012/03/03(土) 14:23:31 ID:HGHDnAQM
自分もアヌビスはこのまま消滅してしまうのは惜しいフラグだと思っていたので、面白くていいと思います。
移動距離も問題なし。
むしろ気になさっている時間帯も、別にまだ黎明のままでもいいくらいだと思いますね。
本投下楽しみにしています。

320 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/03(土) 21:14:10 ID:1FNGzwf2
>>319
面白いと仰って頂きメルシーボークー恐縮のいたり…
時間帯は黎明で行こうと思います
全体見返してから本投下致します、ありがとうございました!

321 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:10:36 ID:A.0/dvtY
ヌ・ミキタカゾ・ンシ、ジョルノ・ジョバァーナ、グイード・ミスタ
仮投下致します。

322『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:11:57 ID:A.0/dvtY
―――B-2、ダービーズカフェ。
今ここにはなんとも奇妙な空気が流れていた。
緊張からくるピリピリした空気というわけではなく、かといって安息を得られるようなのんびりとした空気というわけでもない。

カフェの中では三人の男性……ジョルノ・ジョバァーナとグイード・ミスタ、そしてヌ・ミキタカゾ・ンシが互いに向かい合って座っている。
ジョルノとミスタは顔を寄せ合って相談しており、ミキタカはそれを黙って見ていた。
ちなみに、カフェの周囲はミスタの『セックス・ピストルズ』に分担して見張らせている。


ジョルノとミスタは困惑していた。
自分達の自己紹介はつつがなく終わった―――というよりもジョルノとミスタはもともと知り合いであるし、
ミキタカもジョルノに行われた『尋問』を聞いていた以上、新たに付け加えることはほとんどなかったのである。

問題はこのミキタカという男が、自分のことを年齢216歳でマゼラン星雲からやってきた宇宙人と名乗ったことだった。
疑わしげに質問を繰り返すジョルノとミスタだったがその答えは変わらず、結局二人はミキタカの目の前で話し合いまで行う羽目になってしまった。
ただ、この奇妙な自己紹介のせいでミスタはジョルノに対する警戒をほぼ解いており、
ジョルノのほうも必要以上に気を張る必要が無くなってホッとしているあたり、なにが有利に働くか分からないものである。

(おいジョルノ、こいつ本当に『宇宙人』だと思うか?)
(ミスタ、この際彼が何者かはどうでもいいことです。重要なのは彼が本当に殺し合いに乗っていないかどうか、です)
(そりゃあそうだがよ、怪しいにもほどがあるじゃねーか。くそっ、こんなときブチャラティがいてくれりゃあな……)

ミキタカの話は到底信じられるものではなかったが、否定できる証拠もない。
見知らぬ自分達(しかもギャング)に対して素性を隠したいのだとしても、わざわざこんな妙な自己紹介をするものだろうか。
ミスタはどうにも納得できず、上司の『汗を見ることで嘘を見抜ける』特技を思い出して歯噛みしていた。
一方、ジョルノに関しては既に考えるのをやめており、さっさと話を先に進めようとしていた。
先程の『尋問』とは違い、ミキタカに友好的に問いかける。

「それで、あなたはこの殺し合いに乗っていない……ということでいいですね?」
「ええ、わたしはこの星に『闘い』に来たわけではありませんから」
「……で、改めて聞きますがあなたの能力は」
「先程言ったとおり、大抵のものに変身できます。ただし、機械など複雑すぎるものにはなれませんし、人間の顔マネはちょっと無理ですが」

ジョルノは最初に基本的な質問を行う。
相手が『尋問』の際に言っていたことが苦し紛れの出鱈目ではないことを再確認したところで、ミスタが話に入ってきた。

「……目の前で見せられた以上嘘とは思わねーが、ずいぶん素直に喋るんだな、おい」
「イヤー それほどでも……」
「褒めてるんじゃねえ! 話す理由を聞いてんだよ!」
「……? あなた方は殺し合いに乗る気は無いのでしょう? なら素直に話すのは当たり前のことです」

(……コイツ、ギャングとかには向かねータイプだな。警戒心が薄すぎるぜ)
(演技だとしたら大したものですね。とりあえず、情報を聞けるだけ聞いてみましょう)

隠し事どころか緊張感すら無さそうなミキタカに対し、二人は心の中で呆れたような視線を向ける。
もちろんそんなことはおくびにも出さず、ジョルノは質問を続けていった。

「最初のホールにいた、主催者らしき男性に見覚えは?」
「あの男性に見覚えはありませんが、殺された三人のうち一人だけわたしの知っている人がいました」
「『今知り合ったばかりのジョルノさんです』なんて言わねーなら、教えてみな」
「ええ、白いコートを着た男性……あの人はわたしの友達の身内で、空条承太郎という人です。彼とは―――」

323『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:13:06 ID:A.0/dvtY
ミキタカが語ったのは、町に溶け込んでいた殺人鬼を住人達が倒す話の断片。
ミキタカ本人は空条承太郎と密接なつながりは無かったものの、数多くのスタンド使い達の話を聞いたジョルノとミスタは再度話し合う。

(どう思う? さっきの自己紹介よりはまだ現実的だが、普通じゃないことには変わりねーぜ?)
(ブチャラティやアバッキオじゃないんですから確かめることなんてできません。しかし、出鱈目ではないと思います)
(なんでだよ?)
(ミキタカの話の中に、ちょっとした知り合いの名前が出てきましてね……スタンド能力も一致しています)
(へえ……『信頼』できるのか?)
(ぼくの考えでは、ひとまず信じても大丈夫だと思います)

―――広瀬康一。
ギャング組織パッショーネに入団する直前に僅かだが関わった、スタンド使いで『いい人』だった少年のことをジョルノは覚えていた。
彼の知り合いならば少なくとも極悪人の可能性は低い―――そう判断し、ミキタカの話を(言っていること全てではないが)信用することにしたのだった。


#


自己紹介はこれくらいに―――と道具を確認し始めた二人をよそに、ジョルノは思う。

(しかし、そうなるとこの殺し合いにはぼくや『空条承太郎』、そして『マフラーの男』の知り合い達が参加させられているということか……?
 そもそも、なぜあの主催者は知り合いでもないぼくを見せしめにした……? ぼくとあの二人に何か関係があるとでもいうのか……?)

先程の『自分達』について考えるが、わからない。
頭の回転が速いジョルノといえど、今はそれ以外の答えが出せなかった。
ふと気がつくと、ミスタとミキタカの二人が会場の地図と睨めっこをしている。

「しっかし、見れば見るほどミョーな地図だぜ。元はローマっぽいが、あるはずの無い建物とか地域がごろごろありやがる。
 なんなんだ?この……シャオーチョー?とかいう一帯は?」
「あ、それは杜王町と読みます。先程話したわたしが潜伏している町です。」
「あーハイハイ、そいつはわかったから。……で、これからどこに行くんだ? つーかここって地図のどのあたりなんだよ?」

(そうだな……今は結論が出せるような段階じゃない。考えるだけ『無駄』だ)

ジョルノは思考を切り替えると、同じように地図を見て二人の会話に入っていく。

「そうですね、周りを見るにここはカフェのようです。ミキタカ、杜王町のカフェ・ドゥ・マゴという場所はこんな造りでしたか?」
「いえ、似ても似つきませんね。数日行かないうちに大幅に改装したとかなら話は別ですけど」
「ならおそらく、ここはB-2にある『ダービーズカフェ』でしょう。周りにある建物も、ここがカイロ市街地の中だと考えれば頷けます」
「カイロ……ってエジプトだったか? それにしたってこの『DIOの館』ってのはなんだよ? そんな観光名所なんて聞いたことねーぜ」
「そうですね……仗助さんや億泰さんの家がわざわざ記されているのを考えると、参加者の中にDIOという人か、あるいはその知り合いの方がいるのかもしれません」

二人の言葉にジョルノの眉がピクリと動く。

(DIOの館がなにか、か……聞きたいのはぼくの方だ。ぼくの父と関係があるのか……?)

324『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:14:34 ID:A.0/dvtY
思い浮かぶのは、写真でしか見たことの無い実の父親の姿。しかも、館はカイロ――父が死んだエジプトの地形の中にある。
館を訪れてみたいという好奇心はあるが、まずは状況の整理が先決――そう自分に言い聞かせ、会話の中に戻る。
ミキタカの出現でうやむやになっていたが、ジョルノはミスタに聞いておくことがあったのを思い出したのだった。

「現在位置はそれでいいとして……ミスタ、一つ確認しておきます。あなた『銃』を持っていませんね?」
「……いきなりなんだ、ジョルノ」
「先程の『尋問』のとき、あなたは銃を構えてすらいませんでした。ぼくの知るグイード・ミスタという男は一般人相手でも怪しい場合はとりあえず銃を向ける男です。
 もちろん、撃つかどうかは別の話ですが」
「……それで?」
「そういう用心深い男が死んだはずの仲間や自分を宇宙人と名乗る怪しい人間に対して、銃を突きつけないというのはありえません。
 それこそ、突きつけたくとも銃を持っていない、という場合を除き」

ジョルノの正確な指摘に隠しても無駄だと悟ったのか、ミスタはすぐに両手を挙げて降参のポーズをとった。

「マイったな、確かにその通りだ。オレがあのホールで気がついたときには、銃も弾丸もいつの間にか消え失せてたよ」
「ミスタ、正直に答えてください。今の状態で『戦闘』はどの程度できます?」
「オレのスタンドは軌道を変えるだけだからな……相手が銃を持ってて、うまく『ピストルズ』を近づけられりゃ相手の弾丸をはじくぐらいは出来るが、
 正直、それ以外は見た目通りの一般人ってとこだな」

返答を聞き、ジョルノは一度ミキタカのほうに視線を移す。
ジョルノとミスタの能力は先程の『尋問』の最中に両方とも知られてしまったため、半ば開き直る形でミキタカも話し合いに参加させることにしていた。

「ミキタカ、あなた銃にはなれますか?」
「銃ですか……形だけならともかく、自分以上の力が出る物にはなれませんから、弾丸の発射はできません。
 わたしの銃は宇宙船においてきてしまいましたし」
「……わかりました」

いちいち構っていては時間の無駄になるため後半の発言はスルーし、ジョルノはミスタの方へと視線を戻す。
ともあれ、現状ミスタはスタンド使い相手の『戦力』としては数えられないことが判明してしまった。

「なら、どこかで銃を手に入れなければなりませんね」
「だな。ったく、弾丸はあるのに銃がないってのはもどかしいぜ」
「……? ミスタ、あなたさっき弾丸も消えていたと……」
「ん? ああ、こいつだよ」

そう言いながらミスタはデイパックから紙を取り出す。

「まだ開けちゃいねーが、この中に弾丸が……」

誰にともなく呟きながら紙を開いていく。
二度、三度……最初の大きさからは考えられないほどに紙は広がっていく。
ようやく開き終わったとき、そこには銃の弾丸―――

「………………ミスタ」
「えーと、これはだな……」

―――は一発もなく、立派な白馬が四本足で立っていた。
サンタ・ルチア駅へ向かっていた途中ほどではないが、空気が凍りつく。

「………………」
「い、いや、オレはその……紙に『シルバー・バレット』って書いてあったからてっきり……」

冷めた目で見つめるジョルノに対し、ミスタは聞かれてもいないのに言い訳を始める。
ちなみにミキタカは馬とじっと見つめあっていた。

325『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:15:32 ID:A.0/dvtY
「で、でも馬だって役に立つだろーがよ? 西部劇じゃあ馬に乗ったガンマンだってたくさんいるしな」
「銃はありませんけどね。それに、乗馬なんて出来るんですか?」
「お手」
「え?いや、やったことねーが……ジョルノはどうなんだよ?」
「できません。ぼくが生まれたときには既に自動車という文明の機器がありましたから」

しれっとした顔で言うジョルノ。
『無駄』が嫌いな彼は現代社会を生き抜くのにそんな不必要な技能は持ち合わせていなかった。
空気に耐え切れなくなったのか、ミスタは強引に話題を変えようとする。

「……ま、まあこれはこれとしてだ。オメーらの支給品は何だったんだ?」
「あ、わたしのはこれです」

振り向いたミキタカがテーブルに置いたのはなにやらスプレー缶のようなものが五つと、地図が一枚。
ミスタがスプレー缶の方を一つ手にとって調べる。

「こっちは……閃光手榴弾か。そっちの地図はなんだ?」
「多分、この会場の地下の地図だと思います。さっきの地図と同じ地形に下水道や地下トンネルが記してありますから」
「なるほど、会場の地図とは別に支給される秘密の地図というわけですか……最後はぼくですね」

ジョルノも自分の紙を開き、支給品を取り出す……が、ミスタは出てきた『それ』を見て眉をひそめる。

「……そいつはメガホン、いやスピーカーか?」
「拡声器……そう呼ぶのが最適でしょうね」

言いながらも複雑な表情で拡声器を眺めるジョルノ。
周囲が全く分からないこの状況で不用意に『目立つ』ことは多大な危険を伴う。
そのことを理解しているからこそ、ジョルノは難しい顔をしていた。
そんな彼に気を使ったのか、ミスタはジョークを交えて言葉をかける。

「まあなんにしてもだ。そいつで呼びかけながら歩き回りゃ、あっという間に全員集合ってわけか」
「ミスタ、わかっているとは思いますが」
「当然だろ。オレがゲームに乗ってたら、そんな迂闊なヤツはさっさとズドン!……だ」
「ええ、そうです。便利ではありますが、それ故に使い方が難しい……」

ジョルノはそういうと口元に手を当て、使用方法について考え始めた。
それを見て、ミスタとミキタカはそれぞれ思いついたことを口にする。

「ジョルノ、オメーの能力で口だけ作って遠くから喋らせるってことはできねーのか?」
「無理です。声を出すには口以外にも肺や声帯も必要ですから。まだあなたの『ピストルズ』を使う方が現実的です」
「あの、なんならわたしが使いましょうか? お二人には離れてもらって、近くのイスか何かに変身しながら呼びかければ」
「呼びかけの場に拡声器だけあって誰もいない、という状況はマズイです。見られたら罠と思われて、誰も集まらなくなりますから。
 結局、人間かスタンドが見える範囲内にいる必要があります」
「馬に乗って走りながら呼びかけるってのはどうだ?人間の足じゃあまず追いつけねーぜ」
「ミスタ。相手が徒歩とは限りませんし、馬に追いつける、あるいは動きを止めるスタンド能力なんていくらでもありますよ」

様々な意見が出るが、どうも決定的といえるものは無い。
ジョルノは出された案に一つずつ問題点を挙げていき、なおも口を開こうとする二人を一旦制止する。

「落ち着いてください、すぐにこれを使うと決まったわけではありません。それに誰が呼びかけるか、というのも重要です。
 仮にぼくが呼びかけたとして、死んだはずの人間の声だけが聞こえてくる、
 という場所にはたとえブチャラティ達であっても近づいてくるとは思えません。あなた達がぼくを怪しんだように」
「ナランチャあたりは『生きてたんだァァァ』って飛び込んできそうだけどな」
「それなら、ミスタが呼びかける方が確実だと思いますが……もう一つ、呼びかける内容も考えないと敵まで呼び寄せてしまう危険性が非常に高いです」
「そのあたりは、オレらにしかわからない情報を使って集合場所を決めるとか、そういうのでいいんじゃねーのか?」
「あ、もしよければ仗助さんや億泰さんにもわかるような伝言がいいです」
「………………」

326『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:16:41 ID:A.0/dvtY
ジョルノは目を閉じて口元に手を当て、再び考え込むしぐさを見せる。
しばらくして、ゆっくりと口を開いた。

「拡声器に関しては保留としましょう、やはりこれは危険すぎます。じっくりと作戦を練らなければ命取りになりかねません。
 ブチャラティ達が参加しているかどうかも分からない以上、名簿が配布されるまで待つ、というのも一つの手です。
 ……それで、あなた達はこれからどうするのがいいと思います?」
「どうするって……そりゃあブチャラティ達を探して、あの主催者をブッ倒すに決まってるぜ」
「わたしも、知り合いの皆さんと合流したいです。皆さんいい人ですから、きっと力になってくれると思います」
「だよな、こんなとこで喋ってても何にもならねーし、とりあえず出発しねーか?」

ミスタとミキタカは仲間との合流のため、行動を促す。
しかしそんな二人に対し、ジョルノはハッキリと自分の意見を述べた。


「ぼくは反対です。今はまだ、ここを動くべきじゃない」


その発言を聞き、立ち上がろうとした二人の動きが止まる。
ミスタはイスに座りなおし、真剣な表情でジョルノに質問してきた。

「……オメーがそういうってことはなにか根拠があるんだよな?」
「もちろんです。まず、あなた達は仲間を探しに行くと言いましたが、具体的にどこへ行くつもりですか?」
「どこって……そう言われてもな……」
「そうですね……杜王町にある仗助さんや億泰さんの家に行けば彼らがいるかもしれません」
「その可能性は低いです。ぼくはネアポリス中学の学生であり、なぜか地図にも記されているこの寮に住んでいますが、スタート位置はこのカフェでした。
 彼らが都合よく自分の家に飛ばされているなんてまず考えられませんし、なによりここから杜王町までは距離がありすぎます」
「………………」

逆に返された質問に対しミスタは答えを出せず、ミキタカも反論を受けて黙ってしまう。
ジョルノはやれやれ、とかぶりを振って口を開いた。

「先程も言いましたが、そもそもぼく達の仲間がこの殺し合いに参加しているかどうかすら定かではないんです。
 ここにいる三人が全員スタンド使いということを考えると、おそらく殺し合いに積極的な参加者もスタンド使いと見ていいでしょう。
 目的地が特に無いのなら、わざわざ移動することでそういう連中に遭遇するリスクを高める必要はありません」
「だがよ、『あの時』とは違うんだ。ただ待ってても誰かが連絡をよこしてくれるなんてことは無いと思うぜ」

あの時―――すなわち『トリッシュの護衛任務』のときはボスからの連絡や別行動中の仲間を待つときを除けば、常に『移動』をしていた。
しかし、今は指示を与えてくれるような存在はいないし、仲間達もどこでどうしているか全くわからない。
ならば、自分達が動かねば何も始まらないのではないか。
そう考えていたミスタに、ジョルノは順番に説明していく。

「いいえミスタ。確かに連絡が来る可能性はほぼゼロですが、誰かがこのカフェにやってくるという可能性は十分あります」
「……どういうことですか?」
「まず最初に、ホールにいた人数は軽く百人を超えていました。会場が9×7に区切られていることと合わせると、
 ここB-2とその周囲8マスの地域にはぼくらを入れて20人近くの参加者がいると考えられます」
「まあ、完全にランダムに配置するっていうならそのくらいだろうな……それで?」
「参加者の思考はそれぞれでしょうが、他の参加者を始末するにしろ仲間を増やすにしろ、
 最初は『人が集まりそうな』近くの施設に行ってみるということを考える者は多いでしょう。
 周辺の施設の数からすると、2〜3人程度はこのカフェを訪れるとしてもおかしくはありません」

ミスタとミキタカは互いに顔を見合わせた後、ジョルノの言わんとするところを理解して言葉をつなぐ。

「つまりこういうことですか……? 『ここで待っていれば誰かが来る』……と」
「そして『そいつらと接触して仲間を増やすか、殺し合いに乗ってるようなら倒す』……ってとこか」
「その通りです」

327『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:17:55 ID:A.0/dvtY
二人の答えに頷くジョルノ。
彼としては『情報』も『戦力』も足りず、『目的』も決まっていない現在は迂闊な移動自体がハイリスクであり、
最低限どれか一つが満たされるまでは待機したほうがよいという考えだった。
しかし、なおも二人は食い下がってくる。

「ですが、推測も多いですね。本当に誰かがやってくるんでしょうか?」
「確実にとは言い切れませんが、来ない場合はこの拡声器があります。幸い、周辺の街は道が入り組んでいますし、他の道具も逃走するには便利な物ばかりです。
 しっかりと作戦さえ立てておけば、呼びかけた後に危険な参加者がやってきたとしても生き延びることは十分に可能でしょう。
 この場で待機しつつ拡声器をどのように使うか考えて、そのうえでどう動くか決めたほうがいい……というのがぼくの意見です」
「……言いたいことはわかったがよ、オレらがのんびりしてる間に味方が全員やられちゃいました……って可能性もあるぜ」
「かといって当ても無く歩き回り、ぼく達の方がやられてしまってはそれこそ本末転倒です。
 三人いるとはいえ、スタンド使い相手に正面きって戦えるのは今のところぼくだけですから」
「………………」
「ブチャラティ達のことは信じるしかないでしょう。彼らだってギャングでスタンド使いなんですから、最低限自分の身は自分で守れます。
 彼らと無事に合流するためにも、焦りは禁物です」

説明を終え、ジョルノは二人の反応を待つ。
ミスタ達としてもジョルノの言う通り、広い会場を当てもなく歩き回るよりしっかりとした目的地があったほうがいいのは当然だった。
加えて、現在『戦闘』はジョルノ頼みにならざるを得ないことを考えればなおさらである。
先に口を開いたのはミスタの方だった。

「わぁーったよ。オメーの言ってることは今までだって大体正しかったし、ここはじっくり作戦タイムといくか。ミキタカもそれでいいな?」
「ええ、わたしにも当てはないですし、それでかまいません」
「……決まりですね」

まずミスタがジョルノの意見に賛成し、ミキタカもそれに頷く。
指導者的立場となっていたジョルノのおかげか、はたまたシンプルなミスタの気質ゆえか、この三人はいつの間にかすっかり打ち解けていた。

「なあジョルノ、参加者と接触っつうのは別にかまわねーがよ、ここに誰か加わるってことは『四人』になっちまうんじゃあ……」
「下らないこと言ってる暇があったら武器になりそうなものでも探しててください。『目的』さえできればすぐにでも行動を開始しますから」
「ったく……オレにとっては重要なことだってのによ」
「それにしても、ジョルノさんはすごい頭をお持ちですね。ミスタさん、彼は一体何者なんですか?」
「さあな……あいつは新入りで、ラッキーボーイで……っていうか、すごい頭って髪型のことじゃねーよな?」


ミスタとミキタカが席を立つのを見て、ジョルノは静かに目を閉じる。
彼にとって、現在考えなければならないことはあまりにも多かった。

―――見たこともない主催者と、彼らへの反抗方法。
―――目の前で殺された自分達の正体。
―――拡声器の使い方と、使用後の対処。
―――行動の際の目的地。
―――そして、自己紹介のときにわかったことでまだ情報が少ないため秘密にしているが、ミスタと自分の認識には数日程度の『ずれ』があったこと。

さらに、行動を開始したらしたで探すべき人物も片手の指では数え切れない。

―――仲間であるトリッシュやポルナレフ、そしてフーゴ。
―――ミキタカの知り合いである康一や、仗助に億泰という人物。
―――殺されたはずだが、自分と同じようにこの会場内にいるかもしれない『空条承太郎』や『マフラーの男』。

(そして、時間のずれがあるのなら……いるのか……? ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、それにかつてのボス、ディアボロも……)

死んだ人間はいかなる能力を持ってしても生き返ることはない。
しかし、ミスタが自分よりも『過去』から連れてこられたとしたら……?
死ぬはずの人間を『死ぬ前から』連れてこられるとしたら……?

328『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:18:43 ID:A.0/dvtY
思考は新たな疑問を呼び、留まる所を知らない。

(やれやれ、冗談抜きで『自分がもう一人いれば』と思ってしまうな……まあ、わからないことは後回しにするとして、
 やはり最優先事項は他の参加者にぼくが生きている理由をどう説明するか……だろうな)

ジョルノは目を開けて辺りを見渡す。
ミスタはカウンター内を物色し、使えそうな物を探している。
ミキタカは馬の前に座り、どこから持ってきたのかアイスティーを飲んでいた。

(この二人は、ぼくのことを『信頼』してくれるだろう……だが、他の参加者は……)

パッショーネのボスであるディアボロを倒した後、ジョルノは自分達以外にボスの正体を知る者がいないことを利用し、
以前から自分がボスであったように振る舞うことで『今の組織をそのまま自分のものにする』つもりであった。
そうすることで、パッショーネが今まで築きあげてきた資金、人員、コネクション、そして『信頼』も全て自分のものにすることが出来るからである。

しかし、今のジョルノが考えているのは少ない人員と限られた物資を使い、どこで何を行うかということ。
さらには自分の存在を何も知らない者に対して説明し、『信頼』を得なければならない。
例えるなら『一から組織を作ろうとする』ようなものであった。

(以前のボスがやったのと似たようなことを、殺し合いの場でぼくが行う、か……)

ディアボロはかつて、たった一人からのし上がって強大な組織である『パッショーネ』を創り上げた。
果たして、自分は『ボス』として『組織』を創り上げる―――この殺し合いの場で協力者を増やし、主催者を倒すことが出来るかどうか。
今のパッショーネのボスの座を継ぐのにふさわしい『器』かどうか。
それを確かめるためにも、ジョルノは自分の『役目』を再確認していた。

(このジョルノ・ジョバァーナには『夢』がある! そのためにも必ず全ての謎を解き明かし、夢を阻む主催者を倒さねばならない……!)

自分にどこまで出来るのか、とは考えない。
出来て当然と考えるからこそ、『夢』は現実のものとなる。
ボスを倒し、後一歩のところまで迫ったはずの『夢』に向かい、若きギャング・スターは改めて心に誓いを立てるのであった。


―――かくして、三人は『待機』を選択した。
時間ではなく、行動の『無駄』を無くすために行ったこの選択。
それがどう転ぶことになるかはまだ誰にも分からない。

329『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:20:50 ID:A.0/dvtY
【B-2 ダービーズカフェ店内 / 1日目 深夜】


【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、閃光弾×5、地下地図
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.カフェで待機し、他の参加者を待つ
2.知り合いがいるなら合流したい
3.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?


【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、拡声器
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える
1.カフェで待機し、他の参加者を待つ
2.参加者を待つ間、拡声器の使い方や今後の行動などについて考える

※時間軸の違いに気付きましたが、他の二人にはまだ話していません。


【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、シルバー・バレット
[思考・状況]
基本的思考:仲間と合流し、主催者を打倒する
1.カフェで待機し、他の参加者を待つ
2.武器(特に銃)を手に入れたい
3.死んでいったジョルノはわからないが、今目の前にいるのはまぎれもなくジョルノだ


[備考]
・ランダム支給品は全て開けました。
・待機するのは長くても名簿が配布される(第一放送)までと考えています。
 それ以前にも拡声器の使用など、『目的』ができれば動く可能性はあります。

330『ボス』の役目とは ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:21:18 ID:A.0/dvtY
【支給品】

シルバー・バレット(第七部)
ミスタに支給。

ディエゴ・ブランドーの愛馬。
アラブ・サラブレッド混血で馬年齢4歳の白馬、額の位置に星の模様がある。
ちなみに、ニュージャージーの線路そばに放置されていた『基本世界』の方。


閃光弾(現実)
ミキタカに支給。

いわゆるスタン・グレネード。
爆発時の爆音と閃光により、付近の人間に一時的な失明、眩暈、難聴、耳鳴りなどの症状と、
それらに伴うパニックや見当識失調を発生させて無力化することを狙って設計されている(Wikiより)


拡声器(現実)
ジョルノに支給。

声を増幅して遠くへ伝えるための道具。
バトロワではおなじみ、死亡フラグの代名詞ともなっているが……?

331 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/04(日) 18:28:05 ID:A.0/dvtY
以上で投下終了です。
動きのない回というものを書きたかったのですが、難しい。
考察はほとんどなく、妙なフラグばかりできてます……

誤字脱字や問題点、
その他、考えが飛躍しすぎている点などがあったらご指摘お願い致します。

332名無しさんは砕けない:2012/03/04(日) 19:52:53 ID:6rbO49Gc
仮投下おつです
ざっと読んだところ誤字脱字は見当たらなかったと思います
思考も、この時点では納得の行くものでした
これからに期待がかかる三人ですね!

333名無しさんは砕けない:2012/03/04(日) 21:17:31 ID:zekDikLs
仮投下乙です。感想は本投下の際にまた。

誤字脱字、矛盾等はないかと思います。が、強いて言うなら時間軸でしょうか。
待機を選択するとなれば『このまま放送まで行っても良い』という状態を作る訳ですし、
情報交換やら議論やらを行っているので、早朝……は流石に行きすぎですが、黎明くらいに時間を進めても良いかと思います。
もちろん、敢えて深夜のままに設定しておくことで、他の書き手さん達が彼等に接触するSSを書くこともできますが。
本投下の際にその点を一つ添えていただければと思います。

334 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/05(月) 19:01:55 ID:A4sWdQ4I
ご指摘感謝致します。
確かに、放送に直接行く可能性を考えると深夜ではちょっと飛びすぎになりますね。
本投下時には黎明に直しておきます。
後は見直した結果、状態表に「お互いの知り合いについて名前や容姿を聞いた」などを追加して本投下する予定です。
ありがとうございました。

335 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:22:11 ID:ZxNufh/o
すいません。アヴドゥル、ビーティー仮投下します。

336 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:23:06 ID:ZxNufh/o

男はじっと穴の中を見つめている。
炎に照らされた横顔。
その目は何を見ているのだろうか。
いや、何かが映っているかすら怪しい。
ただ何もない虚空を見ている――そう言われても納得出来るような、そんな暗い瞳。
褐色の肌のその男は、高い背を丸めるようにして岩の上に座っていた。

彼の胸の奥に渦巻く炎。
その熱さを一番良く知る男は既にいない。



※※※



ビーティーと呼ばれる少年は、ジャイロ・ツェペリと別れた後に南へ進んでいた。
ドレス研究所から南進、つまり杜王町住宅街へ。
デイパックの中から見つけた地図は、全く不可解かつ出鱈目な物だった。
その地図の正確さを確かめるために移動することに決めたのだが、杜王町を目指したのには他にも理由がある。

「杜王町」その地名自体に聞き覚えはない。
しかし、その地域には唯一日本らしい地名がつけられている。
公一がこの場にいるとするなら、他に比べて多少馴染みのあるこの日本エリアを目指すかもしれない。

しばらく南へ進むと、日本の住宅街のような街並みが現れる。
どこにでもあるようなありふれた街。
地図は間違えていなかったようで、すぐに学校らしき施設にぶつかった。
「ぶどうが丘高校」――やはり聞き覚えはない。

337 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:23:38 ID:ZxNufh/o

音を立てないようにしながら、校門から中を覗いたビーティーは視界の左端に灯りを見つけた。
炎に照らされて浮き上がっていたのは一人の男。
門柱に身体を隠したビーティーは、その男から異様な空気を感じた。
案外近いと内心焦りながらも、息を殺してその様子を伺う。

褐色の肌と、編み込まれた長い髪、余裕のある服を着ていてもわかるほどしっかりとした体型である。
明らかに日本人ではないとわかる容姿。
男は此方に横顔を向けたまま、じっと穴の中を見ていた。
高いであろう背を丸めて、暗闇の中の更なる闇を覗く。
全くみじろぎ一つ起こさず、あの体制のまま死んでいるのではないかとすら思えた。
学校という空間においてその姿は異常。
だがバトルロワイヤルという舞台の上ならば、何か自然な姿でもあるようだった。

穴の底には何があるのか、それはビーティーの位置からでは知ることは出来ない。
だが、暗闇の中で男の彫りの深い顔はハッキリと見える。
ビーティーが最初に見た灯り、それは男の目の前に浮かぶ「火の玉」だった。
球体の炎が幾つか組み合わさったようなそれは、男とその周囲を煌々と照らす。

(あれは……火の玉を作り出すトリックなら幾つか知っている。だが、もしかするとあの男の言っていた「スタンド」というものか?)

スタンドとはーージャイロ・ツェペリは超常現象を起こす能力だと言っていた。
だとしたら、このように火の玉を作り出すことだって出来るのかもしれない。
あれはあの男のランプ代わりなのか?

そして、ビーティーにはもう一つ気になるものがあった。
それは、炎に照らされ不気味に浮かび上がっている。
ただでさえ異常を感じさせるその男を、更に不気味に見せていた。
男の足元に転がる白いそれは――。



「そろそろ出て来てもらえないか?」



「……!?」

突如響いた声に、ビーティーは身体を門柱へ隠す。
今、言葉を発したのは間違いなくあの褐色の肌の男だ。
此方を撃ち抜くような声だった。

「門の柱の裏に隠れている君だ。どうやら一人のようだが」

やはりーービーティーの事だ。
どうして此方が分かったのだろうか。
男の視線は穴に向けられたまま、口だけが動いていた。
ハッタリかと、一瞬考える。
しかし、男はビーティーの場所を言い当てた。

(これも妙な超能力だか技術のせいだっていうのか!?この僕がニ度もこんなヘマを……!)

ビーティーは息を殺したまま、開始時より重くなったデイパックを開ける。
慎重に、音をたてないように。
デイパックの奥には、琥珀色が光っていた。

338 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:24:23 ID:ZxNufh/o
※※※



どのくらい思考の砂漠を彷徨っていたか、分からない。
アヴドゥルは目の前に開けた空っぽの穴を見つめていた。
しかしそれは、突然中断される。

アヴドゥルの目の前に浮かぶ炎が揺れた。
半径15メートルのあらゆる生き物の呼吸を探知できる炎のレーダー。
右手の方向、平行位置に反応がある。
何者かが此方を伺っている――アヴドゥルはそう確信した。

レーダーに反応したその一つの呼吸は一瞬大きく燃え、その後急速に反応を小さくする。
どうやら、その相手は息を潜めているようだ。
向こうに潜む者は、どうやら先ほどの吸血鬼たちのようにいきなり襲いかかってくるような連中ではないらしい。
コイツは敵か味方か。殺人者か協力者か。

「そろそろ出て来てもらえないか?」

先手必勝、とばかりにアヴドゥルは声を上げた。
呼吸がわずかに乱れる。
相手に揺さぶりをかけることが出来れば、戦闘にしろ交渉にしろ有利に立てるかもしれない。

「門の柱の裏に隠れている君だ。どうやら一人のようだが」

もう一度、今度は止めだ。
逃げられないと匂わせた言葉の裏に、相手も気がつくだろう。
重い腰を岩の上から上げると、その何者かが潜む門の方へ身体を向ける。

しばらくの沈黙の後、門柱の裏から出てきたのは少年だった。
左手に支給品の入ったデイパックを掲げたまま、ゆっくりと近づいてくる。
東洋人らしき少年だ。
承太郎や花京院が着ていた、日本の学生服らしい格好をしているが日本人だろうか?
しかし二人に比べると、まだ幼い印象を受ける。

デイパックを此方を見せるその姿は、一見すると敵意はないという合図にも見えるが些か妙だ。
なぜ、此方がいきなり殺しにかからない保証も状況で近づいてくる?
距離を取って話せばいいだけだ。
気づけば少年との距離は3メートルほどに狭まっている。

そして何より――少年は薄く笑みを浮かべていた。

「君は……」
「『話し合い』をする前に一つ伝えておかなくちゃあいけない事があります」

少年は大仰な仕草でデイパックを示しながら言葉を続ける。

「実は此処に来るまでの間に、大量に薬品を手に入れる機会がありまして……。
 この中にはそれが詰まっている。もちろん……起爆性が高いのも。
 貴方がその能力だかトリックだか武器だか……まあ何でもいいですが。
 とにかく此方を攻撃した瞬間お前も一緒に爆発……なんて事になるかもしれませんよ?
 運よく逃れても、爆発に気づいた参加者が集まってくるでしょうし」

少年は此方から目を逸らさない。
冷や汗一つかかず、愉快でたまらないといった笑顔を見せたまま。

339 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:24:59 ID:ZxNufh/o
――全く、日本の学生はこんな奴らばかりなのか?

炎の生物探知機を見て此方が炎を操ると推測したのだろう。
幼く見えるからと言って侮ると痛い目を見るかもしれない。
この殺し合いでは油断は最も危惧すべきもの。
その事実はもう、痛いほどにアヴドゥルの身体に突き刺さっていた。

「いや、私は君を攻撃するつもりはない。殺し合いに乗るつもりもない」

アヴドゥルは少年の突き刺さるような警戒を受け流すように、努めて柔らかい声を出す。
しかし彼はその鋭い視線も、上げたバックも下ろさないままだった。

「それはぼくも同じだ」
「なら互いに情報を交換しよう」
「こちらもそのつもり……ならばまずは……」

少年の言葉は途切れる。
アヴドゥルは、そこで初めて少年の表情が崩れるのを発見した。
僅かに眉を潜め、アヴドゥルの足元に視線を移す。
彼は自分の足元にあったものを認め――少年の次の言葉を察した。

「『ソレ』が何なのか、教えてもらおうかッ!」

その声と共に、少年の右手が『ソイツ』を指さした。

そこに、白い人形が転がっている。
正確には白い布に包まれたミイラのような人型だった。
だが布は所々赤黒く染まっていて、それが何なのか容易に推測できる。
アヴドゥルは、それが誰か知っている。

「……コイツは、私の仲間だ。つい先ほど……何者かに殺された」
「仲間、ね」
「簡単に埋葬してやろうかと思ったのだが……やはりコイツは祖国に返してやりたい。
 家族の眠るフランスに……ッ!」

ポルナレフの最後の呼吸を見届けた後、アヴドゥルは彼の遺体をカーテンに包んだ。
痛々しいその姿を見ていられなかったのかもしれないし、彼の死を見ていることで自分の背にかかる後悔を更に重いものにしたくなかったのかもしれない。
校庭の隅に穴を開けてから、ふとポルナレフの生前の言葉が幾つも蘇った。
そして、アヴドゥルは彼を埋めることをやめた。
フランスに、彼が愛した妹と家族の眠る地に共に眠らせてやろう。

自らの掌をキツく握りしめるアヴドゥルの姿を見ながら、少年は鼻を鳴らす。
彼は先ほどまでの笑いとは違う嘲笑を貼りつけた。

「そんな話が信用されると思っているのか?
 お前が殺して、証拠隠滅でもしようとしている……そう言われた方が納得出来る」

340 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:25:30 ID:ZxNufh/o
アヴドゥルは自分の表情が歪むのを感じた。
この少年相手に動揺は見せないようにしていたが、その言葉にはどうしても揺さぶられてしまう。
ポルナレフを殺したと、そう言われているのだから。
アヴドゥルは冷静を取り繕うことは諦める。
やはり、自分はこういうギャンブルめいたことは苦手だ。

「残念ながら、私は君に信用してもらう手段を持っていない……。言葉以外はな」
「いや……一つだけ」

少年は薄い笑顔を繕ったまま。
アヴドゥルは自らの手をきつく握り込んだまま。

「君の『能力』を教えてくれ。それでぼくは君と『協力』しようじゃあないか」

おそらく少年は、此方が殺人者だと本気で思っている訳ではないのだろう。
ただ、自らが優位に立つために策を尽くしている。
それは確実に生き残るためなのか、少年自身の気質からくるものなのか、アヴドゥルはそれを判断出来るほど彼を知ってはいない。
アヴドゥルは顎に手を当てて、考え込む仕草をとる。
それを見た少年は笑みを引っ込めて、彼の判断を待った。

「君もスタンド使いか?」
「…………」
「なるほど……そういう情報も此方が能力を見せてから、ということかな」

再びの沈黙。
しかしそれはあまり長くは続かなかった。
アヴドゥルが掌を見せるように少年へ向け、少年はその仕草にわずかに身構える。
そして、男の低い声が暗闇に響いた。

「『魔術師の赤』ッ!」

アヴドゥルの背中から突如飛び出した男。
鳥の頭、男の身体、鋭い爪。
一見すると仮装をした人間にも思えるが、人間のそれとは明らかに違った空気を醸し出している。
そして何より、何もいなかったはずの空間からソレは飛び出した。

その姿を目にした少年は、明らかに血相を変えた。
目を見開いて、唇を噛む。
無意識だろうが、半歩下がった彼は年相応の驚愕を見せている。
しかし一呼吸二呼吸の間には平静を取り戻した辺り、やはり只者ではない。
ただ、空いた右手はしきりに自身の耳を撫でていた。

アヴドゥルは上げた掌を握る。
再び開けば、その手の上には光が灯っていた。
炎を手の上で弄びながら、アヴドゥルは笑う。

「『魔術師の赤』……。これが私のスタンドだ。
 能力は単純、『炎を操る』これだけだ」

少年はしばらくアヴドゥルの手中の炎を見つめた。
彼の大きな瞳にチカチカと揺らぎが映りこむ。
アヴドゥルが炎を握り込むように消しされば、ようやく呪縛が溶けたように、少年は視線を戻した。

「なるほど……いいだろう。情報交換に応じようか」
「ああ。ならば最初に一つ」
「なんだ……」
「君はスタンドを持っていないのではないか?」
「……」

少年の苦虫を噛み潰したような顔に、アヴドゥルは改めて確信する。

「ただの勘だがね……」
「……ふん、その勘は当たっている。
 スタンドという存在も、ここに来て初めて聞いたものでね」

少年は上げていたデイパックをようやく下ろす。
しかしその顔は「弱点を晒されて実に不快だ」とありありと語っていた。

この少年がスタンド使いではないことは分かった。
しかし、ならばなぜ少年にスタンドが見えたのだろう。
もしかすると、自身気がついていないだけで潜在的に能力を持っているのかもしれない。
何者かの別のスタンド能力で「スタンドを持たない者でも見えるようになっている」という可能性もある。
もしかすると、主催らしいあの老人の能力の一部か?
いつまでも考えたところで、晴れない謎ばかり増えていく。
本当に黒幕はDIOで、あの老人が九栄神の最後の一人――?
もっと、何か、別の意図が紛れているのでは……。
一体、ポルナレフは何を知っていたのだろう。

「いつまで一人で考え込んでいる」

少年の不機嫌な声が聞こえる。
そこ子供らしい感情の染み出した声に、アヴドゥルは思考を切る。
まずは、「情報」そして「仲間」だ。
彼は自分とってのそれらになりえるのか、判断はまだつかなかった。

341 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:26:10 ID:ZxNufh/o
※※※



吸血鬼、波紋、スタンド、百年の眠りから目覚めた化物DIO、その部下たちとの戦いの旅路、突如巻き込まれた殺し合い。
モハメド・アヴドゥルと名乗ったそのエジプト人は、警戒心を解いてビーティーに語った。
此方が「スタンド使い」でないことが分かり、友人の仇ではないと安心出来たそうだ。
到底信じられない話ばかりだったが実際に奇妙な体験ばかりだし、スタンドそのものを見せられては信じるしかなった。
そして、どうやらアヴドゥルはこの殺し合いで既に二人の仲間を失ったらしい。
一人はあのホールでの見せしめの一人、もう一人は自らの油断が原因で死なせてしまった男。
その話を聞いて、ビーティーは焦る。
もしこの場に公一がいるとしたら……アイツは真っ先にターゲットにされる。

このアヴドゥルという男は見た目は暑苦しいブ男だが、実に理知的な人物らしい。
此方は戦う術を持っていない、認めたくはないが圧倒的に不利な立場にいる。
アヴドゥルは立場的には有利な位置にいるはずだが、あくまで「対等な情報交換」という姿勢は崩さない。
力とか年齢とか、そういうものに左右それない高潔な男だ。

アヴドゥルからの話が終わると、ビーティーからも出せる程度の情報は出すことになった。
親友麦刈公一、そばかすの謎の少年をやり込めたこと、その直後気づけば先ほどホールのような場所にいたこと。
此処に来てすぐ出会ったジャイロという男、「利害の不一致」で仕方なくジャイロと別れたこと。

アヴドゥルは一人で何やら考え込みながらビーティーの話を聞いていた。
互いに語り終わると、自然とその場に静寂が広がった。
アヴドゥルは顎に手を当て、ビーティーは耳を撫でながら考えをまとめる。
そんな空気がしばらく続いた後、アヴドゥルはふと伏せていた目をビーティーへ向けた。

「君に一つ相談があるのだが」
「何だ?」
「私に君の理性を貸してもらえないだろうか」

ビーティーは耳を触る手を止めた。

「私は短気で熱くなりやすい性格でね。おまけに柔軟な発想、というものも苦手だ。
 ……ポルナレフを殺した奴に出会った時、自分が冷静でいられるとは思えない」

冷静な自己分析を口にしておいて何を。
だが友人のためにそこまで感情を荒げられるのならば、やはりこの男は信頼に足る人物なのだろう。

「私はわが友であり仲間であったポルナレフに、必ずや『復讐』と『勝利』を捧げると誓ったッ!
 だが復讐も勝利も、ただ感情的になっただけでは成し遂げることは出来ない……。
 だからこそ、君のその策士的な理性を貸してほしい。
 頼む。ポルナレフの仇を討ち、このバトルロワイヤルの謎を解く、そのために協力してくれないか」

ビーティーはまだ、アヴドゥルの内に潜む熱さを知らない。
そしてアヴドゥルもまだ、ビーティーの悪魔的な本性に気付かない。
少年はアヴドゥルの言葉を聞くと、至極楽しそうにその唇を歪ませた。

「……友のために報いを与える、という訳ですね。
 いいでしょう。好きですよ、そういうの……。
 お互い、二つの点で協力することを誓約しませんか?」
「二つ?」
「まず貴方は、第一に『友人の復讐をする』第二に『バトルロワイヤルの裏を暴く』
 そして僕は、『公一を見つけ出す』そして『バトルロワイヤルの主催者に報いを与える』
 貴方の目的のために僕はこの理性を貸しましょう。
 そして僕の目的のために、貴方はその能力――力を貸して下さい」

アヴドゥルは底知れぬ少年の瞳を見つめた。
ビーティーはアヴドゥルの返答を待ち、彼に右手を差し出す。

アヴドゥルはその手を握ることを一瞬ためらった。
特に論理的な問題があった訳ではない。
むしろその条件は、アヴドゥルにとって願ってもないことだった。
だが、この少年の漂わせる空気が誰かに似ている気がしたのだ。

しかし、自分にはこの手を取る以外に道はない。
アヴドゥルは少年の手を握った。

342 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:26:36 ID:ZxNufh/o
【C-7 ぶどうが丘高校 校庭/1日目 黎明】


【モハメド・アヴドゥル】
[スタンド]:『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』
[時間軸]:JC26巻 ヴァニラ・アイスの落書きを見て振り返った直後
[状態]:健康、肩に一発だけ弾丸を受けた傷(かすり傷)、ポルナレフを死なせたことへの後悔
[装備]:六助じいさんの猟銃(弾薬残り数発) (ボーンナムの支給品)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの破壊、脱出。DIOを倒す。
1.この少年の理性を借りる。そのために「公一を探す」ために少年に力を貸す。
2.ポルナレフを殺した人物を突き止め、報いを受けさせなければならない。
3.ディアボロとは誰だ?レクイエムとはなんだ? DIOの仕業ではないのか?
4.ポルナレフは何故年を取っていたのか? ポルナレフともっと情報交換しておくべきだった。
5.ブチャラティという男に会う。ポルナレフのことを何か知っているかもしれない。
6.ポルナレフを置き去りにしてしまった。俺はバカだ。
7.承太郎……何故……

【ビーティー】
[スタンド]:
[時間軸]: そばかすの不気味少年事件、そばかすの少年が救急車にひかれた直後
[状態]: 健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、薬物庫の鍵、鉄球
[思考・状況]
基本行動方針:主催たちが気に食わないからしかるべき罰を与えてやる
1.この男の力を利用する。そのために「ポルナレフの仇討ち」のために男に理性を貸す。
2.公一をさがす

343 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/12(月) 19:30:09 ID:ZxNufh/o
以上で仮投下完了です…ギリギリアウト?

タイトルは未定です。本投下までには決めておきます。
そして自分でちゃんと読み直していないので
本投下時には色々と修正するつもりです。流れは変わらないと思います。

何というか、書いててすごいくじけそうになったというかくじけました…
問題点などなどよろしくお願いします。

344名無しさんは砕けない:2012/03/12(月) 19:48:58 ID:RZvvdl6.
仮投下乙
とても面白かったです
ぎりぎりセーフでいいんじゃあないの?
あんまりキツキツにルールで縛るのは良くないと思う。
大幅に遅れたわけじゃああるまいし、みんなで楽しむ規格なんだから楽にいきましょう

345 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/12(月) 20:06:56 ID:H0SvaaEQ
仮投下乙です!
期限に関しては、>>344の方と同意見です
期限を区切ってあるのは、ある程度の時間を過ぎても何の反応もないのは読み手書き手共に困ってしまうから、ということだと思います
ほぼ期限の時間までに投下されていますのでいいんじゃないですかねェ〜
感想はまた本投下時に改めて書きたいと思います

ざっと読んで、目立つ誤字脱字などは無いように思いました
強いて気になったところは”デイパックの奥には、琥珀色が光っていた。”の部分です
薬物庫で手に入れた薬品の表現なのか、それとも別の何かなのか
この表現がどこに掛っているのかがちょっと読みとれませんでした
あと、まだ持っているとすればビーティーの道具欄に「薬品数種類」等の記載があってもいいように思います

346名無しさんは砕けない:2012/03/12(月) 21:40:43 ID:13i6d1kc
仮投下お疲れ様です。
投下期限について問題提起?があるようなのでageておきます。
さて、期限についてですが上の方々と同様。あまりきつくする必要はないかなぁと。
まあ、しいて言うなら、特に本投下の時には支援が要りますし「何日の何時ころに投下予定」なんてレスをくれるとありがたいですね。

誤字脱字で少々。
ところどころ「ーー」という表現がありますが「――」←ダッシュという記号 を使う事を推奨します。
後は(多少批評スレっぽくなって申し訳ないですが)「此方(こちら)」という単語が若干多いかな、と感じました。
一人称視点で書くなら構わないですが、第三者視点での文なら「ビーティー」「アヴドゥル」と書き、それに伴って地の文も多少修正する必要があるかと思います。

それでは、本投下楽しみに待っております。感想はその際に。

347覚悟 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/13(火) 16:55:26 ID:8GIDculs
この間、久しぶりに街で“ヤキドゲザ”やってるとこを見かけてね。
二十歳かそこらのカップルかな。男の方が土下座してて――すごいんだよ。強制装置は使ったものの一発でやり通したんだよその人。で、その後割と平然としてんの。
もう開いた口が塞がらなくて。ゴタゴタが終わってからフツーに女の子と帰ろうとしたから思わず声掛けちゃったのさ。
「なんで貴方は火傷を負いながらそんな平然としてられるんですか」って。
そしたら彼はなんて言ったと思う?

「たとえ火の中水の中、ってやつですよ。確固たる覚悟があればどんな物事でも受け入れられます」って言ったんだよ。

いや、スゴい……っていうか素晴らしい事だと思うよ。
でも今時いないっしょ、そんな人。絶滅危惧種って言うのかね?とにかく、その人の覚悟は半端なかったってこと。

じゃあ、今度はこの話に絡めて『覚悟』を持った参加者の話をしようか。

場所はE−7にあるレストラン、ジョニーズ。
登場人物は最強のスタンド使いと何も知らない家庭の主婦。
まずは、主婦の目に映る“青い大男”についての説明からだ――

***

348覚悟 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/13(火) 16:57:53 ID:8GIDculs
――空条さん、遅いわね……こっちは聞きたいこと、山ほどあるのに。
  お母さんを亡くしたって言うのも分かるけど、私だって夫を……

俺のお袋の話は、もういい……待たせてしまってすまない。スプーンを二本持ってきた。これを使ってまず“大男”の説明をさせてもらおう。
これから“スプーン曲げ”をやってみせる。それがどう見えたか、俺に聞かせてほしい。
まず一本目から……どうだ?どう見えた?

――えっ……と。貴方の手が二重にぶれて、さっきの大男?の指が見えたわ。それで、その指がスプーンを思いきり押して。

ふむ。では次だ。これも曲げるぞ、『スタープラチナ・ザ・ワールド』……今度はどう見えた?

――うーん、正直に言わせてもらうと良く分からないわ。
  ありのまま今私が見たことを話すと、あなたがプラチナとかワールドとか言ったと思ったら、いつの間にかスプーンがポッキリ折れていた。

なるほど――では、改めて説明しよう。
今、俺が見せたのはいわゆる超能力とか手品とかいった類だが、それを実際にやっていたのはコイツだ。
守護霊と言えば分かりやすいだろう。これを、ユウレイのハモンと書いて『幽波紋(スタンド)』という。
先にやった方はスタンドを持っているもの、スタンド使いなら大概は出来る。スタンドの指でもって曲げてるだけだからな。
問題は二番目の方だ。こっちは俺じゃあなければできない。つまり、一人に一つ、他人とは違う力……特殊能力があると言う事だ。
その『俺にしかない能力』の名をスタープラチナ・ザ・ワールドという。

――うーん、じゃあなんで私にもその……スターさん?が見えたの?私もスタンド使いっていうものなの?知らないわよ、私そんなの。

そこんところだが、正直言って俺にも分からん。
普通スタンドはスタンド使いにしか見えず、またスタンドはスタンドでしか触れない。そういうルールだ。例えばスタンドに向けて銃を撃っても当たらない。
だが、貴方の目にスタンドが見えているとなれば、あの主催のジジイが俺たちに何らかの細工をして、通常の人間にもスタンドを見えるようにしたんだと考えられる。
このクソッタレゲームを円滑に進めさせるためにな。

――そうね……そして、まぁまぁ分かったわ。というより見せられたら信じるほかないし。
  それで、それが私の夫とどう関係しているの?

わかった。長くなるが全てを話そう。動揺の言葉や感想は最後にまとめて聞かせてもらうから、とりあえず最後までこちらから話させてくれ。

……最初に『結論』から話そうか。単刀直入に言う。貴方の夫、川尻浩作は×月○日に死亡している。
彼を殺した犯人の名は『吉良吉影』。こいつもスタンド使いだがその能力は後にしよう。

そいつは殺人を犯さずにはいられない、根っからの殺人鬼だ。杜王町の人間で俺の……知り合いがそいつに殺されたので、それを追っていた。
結果、そいつを一度は追い詰めるものの、奴は他人の指紋と顔を手に入れる事で俺たちから逃げ伸びた。その『他人』こそ貴方の夫だった、という事だ。
何故彼が選ばれてしまったかという理由は……『背格好が同じくらいだったから』といったもんだろう。奴にとってはその程度でしかなかったんだ。

ここで奴の能力について話しておく。顔を変えたのは吉良のスタンドじゃあない。
エステのシンデレラという店があっただろう。奴はあそこのオーナー、辻彩のスタンドを、彼女もスタンド使いだったんだが……利用して顔を変えた。
奴自身のスタンドの名はキラークイーンと言い、能力は『爆弾』だ。触れたものを爆弾に変え跡形もなく消し去る能力で自分の趣味である殺人を続けていたという訳だ。

それ以降……×月×日まで奴は『川尻浩作』として生活していた。
だが、そこで俺たちが再び奴を追い詰め、結果として……吉良吉影は『事故死』した。何十人と殺しておきながら誰にも裁かれなかったって訳だ。
そして、あなたにこれを言うのは少々気が引けるが、その場には川尻早人もおり、事件に関わっていた。というよりも早人君が犯人を一番最初に発見したと言っても良いだろう。

つまり、さっき見た『川尻浩作』だが、いや……吉良吉影にしてもだ。死んでいるはずなんだ。俺が目の前で見たんだからな。
となると、今この場にいる川尻浩作、もしくは吉良吉影は何者かが彼等の姿を借りているという事だ。変身するのがそいつのスタンド能力だという予想は容易にできる。
だからさっき俺は貴方を『偽物の夫』から引き離した、という訳だ。

これが俺の知っている、杜王町での『川尻浩作』に関する情報だ。もっと知りたいとなれば、まあ主に吉良の方の話になるが、話そう。

***

349覚悟 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/13(火) 16:59:00 ID:8GIDculs
いえ……いいわ。要するに私は、少しの間とはいえ元の夫が死んでいたことにも気付かず、殺人鬼と一緒に生活してたって事よね。

――ああ……奴は自分の尻尾を他人に掴ませるような事はしないが、何か急に変った事はあったか?

え、ええ。さっき話した喫煙癖の話もそうだけど。そう、×月○日って言ったわね……その日かどうかは定かじゃあないけど、ある日の夜、急に晩ご飯を作ったのよ、彼が。
そう、そう言われてみれば急に彼、変わったわ。髭をそるのも剃刀に変えたし、椎茸も食べてたし……

――そうだ。完全に他人になる事は出来ない。あなたの息子さんがそういうところに気がついたから、吉良吉影を追い詰められたんだ。

で、でも……こう、変に思わないで聞いてください。

私は、その殺人鬼である男に、惚れてしまったんです。その、急に変わって見えてから。
特にそう思うようになったきっかけは、家賃の事で文句言ってきた大家を騙したある朝のことでした。
普通はそう言う騙すとか泥棒とか、軽蔑されるような事だけれど。それをやってのけたのよ、何食わぬ顔で。
それで、今まで黙って何もしないだけの夫がそう言う大胆な事をする、それに対して『なんてロマンチックなの』と思ってしまったんです。
それ以降、どんどん彼に惹かれていったんです。それが本当の夫の姿だと思い込んで……

――そうだったのか。だが吉良は犯行も単独で仲間や友人など作らず、家庭を持つなど想像できないような人間だった。
  もっとも、貴方はそのような事を知らなかったんだ。一般的にみれば夫に惚れ直した、ってところだな……。

はい……あっでも、彼、と言っていいんでしょうか。その吉良、さん……が私のことを心配してくれたことがあったんです。
ある日、私が庭で急に失神してしまったことがあるんです。何かの『植物』を見たとたん……
それで、その時にあの人は会社を遅刻してまで私を介抱してくれて。サボテンのとげが目に刺さらなくて良かっただなんて言ってくれたんです。

――意外だな。それを機に改心するなんて人間でないのは知っているが……

ええ。だから、私は……彼に会ってみたいと思います。もちろん、夫にも早人にも会いたいけど。その吉良さんにも会ってみたい。
そして聞きたい。『私はあなたが殺人鬼だと聞いたけど、何故あの時に私のことを心配してくれたの』と。

――言わなかったか?吉良にせよ貴方の夫にせよ、俺の知る限り、いや誰に聞いたって死んでいるんだ。

で……でも、貴方は生きているじゃない!
最初に……浩作さんを見て動揺してたけど、それでも見たわよ、貴方最初にあのお爺さんのせいで……死んじゃったじゃないッ!
死んだ人を生き返らせる……そう言うスタンドがいてもちっとも不思議じゃないわ!だって私から見たらそう言うモノ全部が不思議なんだからッ!
聞いた瞬間に殺されちゃうかも知れないけどッ!そこんとこハッキリさせとかなきゃ私だってどんな顔して夫に会えばいいか分からないじゃないッ!
もしもこの場所に早人がいて、危険な目に遭ってるかも知れないってなったら、誰が守るのよ!母親である私が覚悟決めて守らなきゃいけないじゃないッ!

***

350覚悟 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/13(火) 16:59:27 ID:8GIDculs
承太郎が返答を渋る。しのぶはそれを見て今にも彼の襟首に掴みかかりそうだ。
しかし、その緊張感は会話とは全く別の要因で解かれることとなる。

ズゥン……

一瞬地震かと間違えるほどの大きな音。それがそう遠くではない場所から聞こえてきた。あるいは距離があってもなお聞こえるほどの大きな何かだが……
しのぶはヒッと息をもらし周囲を見回す。まるで落ち着きのない小動物のようだ。
「店の外に出て様子を見てくる。近くじゃあなければこの場でやり過ごそう。机の下にでも潜っていてくれ」
承太郎はそう言い残し、警戒しながら店を出た。

「アレは……」
スタンドの脚力でもって大きく跳躍し店の看板の上に立った承太郎。音の発生源はスタンドを使わなくても発見できた。
路上に巨大なコンテナが出現したのだ。それは決して『生えてきた』訳ではない。上から『降ってきた』のだ。アスファルトのヒビと歪みがそれを証明している。
かつてロードローラーを落っことされた事はあったが、それの応用をこの地で何者かがやったという事なのか。
承太郎の疑問が解決される前に、その場に新たな情報が生まれる。

「アレは……?」
コンテナがブルブルと振動し始め、そこから一人の男が抜け出してきたのだ。
タイミング良くコンテナの底に穴でもあけたのか、防御力に優れたスタンドなのか、はたまた不死の能力を持つDIOのような体質の持ち主なのか……
スタープラチナの目を凝らして見てみると、当の本人も自分の置かれた状況が理解できていないようである。己の身体をキョロキョロと見まわし、スタンドを発現させている。
そのスタンドが黙っているのを眺める本体。奇妙な構図ではあるが、承太郎にはそれをのんびり眺めている暇はなくなっていた。

「アレは……!」
丁度そのスタンド使いからコンテナを挟んで向かい側、距離は相当あるものの、その顔には見覚えがある。
川尻早人。
殺人鬼・吉良吉影を追い詰めた張本人であり、現在自分が保護している川尻しのぶの実の息子、その早人ではないか。
女子高生と思しき少女と二言三言会話をして背を向けたところを後ろから抱きかかえられている。

承太郎の視線が固まる。最初の会場で娘を見たときのように、あるいは浩作を見たと言うしのぶのように。
これを素直に全てしのぶに話すべきなのか。『母』を危険な場所に連れて行って良いものなのか。

看板から飛び降りた承太郎が押す店のドアはやけに重く感じられた。

***

351覚悟 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/13(火) 16:59:56 ID:8GIDculs
ふう……いったんここらで話を区切ろうか。

家族に、そして吉良吉影に会いたいというしのぶの覚悟。
これからどうしのぶに話すべきかを考える承太郎の覚悟。

決してどっちが『正しい』とか『間違い』とかいう話じゃあない。
ただ、こういう時に状況がどちらに傾くかって言うのを決めるのは、持ってる覚悟の大きささ。それが大きい方に傾くのさ。
これは正義とか意思がぶつかりあった時にも同じこと、言えるんじゃあないかな。ま、それはその時に話そう。

あ〜でも、意思が『黄金』で殺意が『漆黒』だと覚悟は何色になるのかなあ?
金色だと意思と被るし、純白だと語呂が悪いし……え?なに『真っ赤な覚悟』?それは『誓い』の間違いじゃあないか?うーん……


【E-7 北部 レストラン・ジョニーズ一日目 黎明】


【空条承太郎】
【時間軸】:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
【スタンド】:『星の白金(スタープラチナ)』
【状態】:健康、精神疲労(小)
【装備】:煙草&ライター@現地調達
【道具】:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
【思考・状況】
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊&娘の保護。
1.今見たものをしのぶにどう伝えるべきか……
2.あの場所(コンテナ周辺)に行くべきか行かざるべきかの検討
3.川尻浩作の偽物を警戒。
3.お袋――すまねえ……
4.空条承太郎は砕けない――今はまだ。

【川尻しのぶ】
【時間軸】:四部ラストから半年程度。The Book開始前。
【スタンド】:なし
【状態】:疲労(小)、精神疲労(小)、若干興奮気味
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】
基本行動方針:家族に会いたい。吉良吉影に会って、話をしたい
1.何なの今の音!?承太郎さん早く戻ってきて!
2.この川尻しのぶには『覚悟』があるッ!
3.か、勘違いしないでよ、ときめいてなんていないんだからねッ!
【備考】
スタンドという概念を知りました。
吉良吉影の事件について、自分の周りの事に関して知りました(他の『吉良吉廣』のことや『じゃんけん小僧』等の事件はまだ知りません)
承太郎以外のスタンドについては聞いていません。

レストラン・ジョニーズが本来の場所に建っているかどうかは不明です(原作中では玉美のレシートしか出てきていないはずです)

352覚悟 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/13(火) 17:00:40 ID:8GIDculs
◆3u氏の議論が終わらぬまま(?)の状態で申し訳ないですが、以上で仮投下終了です。
猫草の一件で吉良がしのぶを心配したシーン、あれをちょっと掘り下げてみようかなと。
後はコンテナが近かったのでそれに関する描写を入れました。場所が全然違えば「結論を急ぐな」と承太郎が諭して放送へ、とも考えていたんですが。
そんなわけで時間軸は未だに黎明。細かく言うなら「生とは」と同じ時間です。

誤字脱字、矛盾点等々ありましたらご指摘ください。
今回は突貫工事で仕上げたためアラが随分あるんじゃないかと心配していますw
あと、地の文を書かずに会話だけというパートで書いてみました。それに伴い「――」をほぼ使わなかったこと、「“ ”」というカッコは全く使っていません。
このへんに関しても『地の文いるよ』『“ ”と使い分けてくれ』とかいう案があればそれもご意見ください。
大きな議論がなければ延長申請をせず、15日の夕方あたりに本投下しようかと考えています。

353 ◆3uyCK7Zh4M:2012/03/13(火) 17:42:06 ID:yBZZxSNk
>>覚悟
しのぶさんの覚悟…美しい!
詳しい説明は本投下時にさせて頂きます!
ざっと読んだ感じでは、誤字脱字は見当たりませんでした。
読みにくさなども感じなかったので、この型で良いと思います。

そして拙作への意見、ありがとうございます。
期限については、セーフでも大丈夫でしょうか?
あまり自分でギリギリに縛ってしまっても、後の人に悪いかなとも思うので…

>>345,346
有難いご意見、感謝いたします…
琥珀〜の描写は、後に掛かるシーンを入れる予定だったのですが
その部分のみカットしてしまったために宙ぶらりんになってしまいました。
此方という単語、確かに多すぎますね…
三人称固定で修正いたしました。

その他ちょっとだけ修正したものを、本日23時過ぎには本投下できると思います。
色々と意見など、ありがとうございました!

354 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/13(火) 19:42:54 ID:gmkSLE2o
>>覚悟
仮投下乙です!
読んでみて、特に誤字脱字などは見当たらなかったように思います
読みにくさなども感じませんでした
感想はまた本投下時に改めて書かせて頂きます

355 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/15(木) 15:42:09 ID:YVfVpFdI
パンナコッタ・フーゴ、カンノーロ・ムーロロ
仮投下します

356タイトル未定 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/15(木) 15:45:16 ID:YVfVpFdI
パンナコッタ・フーゴは、デイパックを背負い月明かりに照らされる小道を黙々と歩いていた。
月明かりの為だけとも思えない青白い顔に張り詰めた表情を浮かべている様は、見知らぬ地を彷徨う迷い子のように不安げにも見える。

――また、どこかで何かが起こっている。

遠く遠く、か細い音が聞こえてくる。様々な方向から時折響いてくる音は、いつだってフーゴの不安をいや増させた。
いっそ確認しに走り出したくもあったが、『彼』から何の連絡も来ない以上、勝手に目的を違えるわけにはいかない。沈黙は、目的に変更がないことの表れだ。

――コロッセオの近くに、ジョジョの味方だったはずの人間がいる。

『彼』――カンノーロ・ムーロロのその情報を信じて、フーゴはひたすらにコロッセオを目指した。
あるはずのない建物が入り乱れて作られた異常な町の入り組み具合には辟易させられたが、ともすれば黙考に浸ってしまいそうになる現在、それがある意味ありがたかった。
懐に忍ばせた二枚のカードは、支給品の確認を促したことを最後に沈黙を保っている。
ムーロロとのスタンド越しの会話を終えて広場の店から出る前に、フーゴは助言に従って自身のデイパックを確認した。
水、食糧、懐中電灯、地図その他――特筆すべきは、紙の中から出てきた『ナイフ』と『地下地図』。
ナイフには『DIOの投げナイフ半ダース』とメモが付けられていた。ごくシンプルなそのナイフを、フーゴは一本だけベルトに挟んで上着で隠すように忍ばせている。
闇に紛れてどんな輩が潜んでいるかわからない以上、能力に頼らない最低限の抑止力があるのは有用だと思うべきなのだろうが、付けられていた名前の皮肉さがそれを躊躇わせた。
『地下地図』に関してはムーロロへの譲渡も考えたが、折を見て書き写し、彼の『見張り塔』に預けるという手段も使えると判断したため、とりあえずは己で持っておくことにした。
なんであれ、手持ちの選択肢は多いに越したことはない。その程度の思考は、ムーロロとの会話と時間を置いたことで取り戻せていた。

――既に死んでいるはずの人間が、いる。

情報は、何よりも強力な武器になり得る。だが、大きな落とし穴にもなり得る。
情報の真贋を見極めるには、近づき、実際の感触を確かめる他ない。十篇の読誦より、一篇の書写。そこに何が待ち受けていようとも、実際にこの目で見なければわからない。

――以前の情報が、間違っていた?

奇妙な言い回しになるが、間違いが真実であれば――それは希望なのだろう。きっと、おそらく。心に淀み凝った絶望、その一片を吹き晴らす一筋の希望。それはなんと甘美な妄想だろう!

――いや、考えるな。今はまだその時じゃあない。

歪んだ希望に期待を膨らませすぎれば、裏切られたときに心は砕けて散るだろう。
何よりも硬いダイヤモンドが、一筋の傷から砕けるように。
ふと気づけば、遠目にもコロッセオの威容が見えてきている。フーゴは少しだけ息を吐いて、僅かに歩みを早めた。





357タイトル未定 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/15(木) 15:45:49 ID:YVfVpFdI
カンノーロ・ムーロロは、『亀』の中で座り込んだまま、目まぐるしく変わる状況の把握に努めていた。
オール・アロング・ウォッチタワー――『劇団見張り塔』の名の通り、ムーロロのスタンドは彼が望むとおりに情報を齎してくれる。
だが、フーゴと接触を計った時点での情報、それの整理もままならぬうちに、状況は急流を下るように変化している。予想以上のスピードだった。

――北、化け物同士が交戦中。能力はどちらも強力かつ詳細不明。危なっかしくて近づけやしねえ。
――東、あの炎にゃ参ったぜ。すっかり静かになっちまったが……どうなってやがる?
――西、特に…っと、犬が一匹。あれも参加者なのか? たかが犬っころが、ねェ。
――南西、妙な頭したガキと、男がひとり。どっちも特別注意するとこはなさそうだが……さて。
――西南西、ガキ二人。一見ただの学生にしか見えねえが……どっちもスタンド使いってのは間違いなさそうだな。詳細不明。
――東南東、帽子の中年と女は変わりなし。あの人食いスタンドに何もさせないで撃退ってのは、要注意に格上げすべきかねェ。
――南東、コロッセオ方面……ふむ。

見張り塔の情報は、例えるなら複数のテレビを同時進行で見ているようなものだ。一か所に集中すれば詳細な情報が得られるが、代わりに他の画面が疎かになる。全体の把握を優先すれば、大雑把な情報だけが画面を切り替えるようにくるくると飛び込んでくる。
恐るべきは、それらを全て統合可能なムーロロの才覚だろう。伽藍の見張り塔は、空虚であるがゆえに際限なく貪欲に情報を収集する。
その中でも、ムーロロは特に南東には気を割いていた。『レオーネ・アバッキオ』と『ナランチャ・ギルガ』、どちらも重要な鍵には違いない。
だが、その鍵――特にレオーネ・アバッキオのほうは、既に鍵としては使用不能になってしまった。平たく言えば、当人かどうかを確認させるより先に、死んでしまった。

――あの化け物みてぇな大男を、細ッこい野郎がブッ倒したときにゃあ驚いたぜ。

あの台風のような化け物じみた大男が細い男を追い詰めたと思いきや、細い男のほうのスタンドが決まったらしく追撃も出来ぬまま文字通りバタリと倒れたのだ。
そこから先は筆舌に尽くしがたい凄惨な場面の連続。細い男が何やら手を動かすと、倒れていた大男がやにわに動き出したのだ。操り人形にでもする能力だったのだろうか。

――大概のスプラッタは見慣れてたが、ありゃ別格だ。

思い返すだに怖気が走るのは、大男の為した一連の作業。己の手指でがぽりと頭蓋を外し、ぬらぬらと体液にぬめる中身を取り出し、そして――
嫌な場面ほど記憶に残るもので、そこまで思い返してムーロロはブルリと身体を震わせた。
その作業が行われている間中、ムーロロは信じがたい心持ちでそれを眺めていた。眺めていることしかできなかった。
悪魔の所業とでも言うべき一連の作業が終わったのち、細い男が再び倒れた大男に手を伸ばした。そこから先もまた、理解の及ばぬ域の出来事だ。
結局、細い男は大男諸共の自殺を敢行した。今となっては何を考えていたのか、知るよしもない。
その場から去って行った少女と少年は、それから見失っている。恐らくそう遠くには行っていないはずだが、見も知らぬガキどもよりもこの複雑怪奇な事実をどうやってフーゴに伝えるべきかに意識が飛んでいた。

――で、もっとわからねぇのはこっからだ。

派手な自殺の舞台となった大きなコンテナの下から、あの大男が這い出してきた。
そして、あろうことかレオーネ・アバッキオの使役していたスタンドを発現させた。
これをどう見る。
あの大男が、細い男の手によって『脳味噌を奪い取った』アバッキオのスタンドを獲得した、と考えるべきなのだろうか。それとも、『移植作業』によってアバッキオが蘇生したとでも。

――どっちにしたって、正気の沙汰じゃあねえよ。

憂慮すべきはそれだけではない。コロッセオにいたナランチャ・ギルガが、その現場に近づいている。
迷うことなくまっすぐに現場に向かっているところを見た限り、その場に何者かがいることをナランチャは確信しているのだろう。
ナランチャとその連れの反応次第では、その場でまた戦闘が行われる可能性もあるのだ。

358タイトル未定 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/15(木) 15:46:15 ID:YVfVpFdI
――ここが正念場、見極め時ってやつだ。

フーゴに持たせた『見張り塔』は、現在コロッセオのほど近くまで辿り着いていることを知らせている。これ以上進ませれば、フーゴはコロッセオに目的の人物が居ないことに気づくだろう。
こちらが疑われるは悪手、では最善手は? なまじ頭の切れる奴だけに、生半な誤魔化しは通用すまい。
揃った札をどう切るべきか、溢れる情報を吟味し尽くすための残り時間はあまりにも少ない。
ムーロロは粘りつく気重さを払って、黙々と歩み続けるフーゴに情報を与えるべくカードを動かした。







初めにそれが聞こえたとき、空耳か何かかと疑った。

――フーゴ、フーゴッ!

やがて懐のカード――ハートのAと2――が、さわさわと動き出したとき、フーゴはようやく『彼』の意図するところに気づいて手近な建物に入り込んだ。
コロッセオを目前にしてのこの呼びかけに、フーゴは俄かに緊張する。何か、あったのだろうか。

――よう、ご苦労さん。ちょっとした連絡事項だ、手短に言うぜ。

懐から飛び出したハートのAが、ムーロロの声で告げる。なるほど、こんな使い方も出来たのかなどと悠長に感心している暇もなく、床の上でくるくると壊れたオルゴールのように踊りながらAが告げる。

――コロッセオに目的の人間はいねぇ。
――正しくは『移動しちまった』だ。
――ああ、待て待て逸るなよ。ちょっと落ち着け。
――どうにも様子がおかしいんだ。迂闊に追いかけるのはお勧めしねえ。
――あン? 何が起こってるのか、だって?
――……さてな。ひとつだけ言えるのは、そいつの行き先にゃちょっと想像もつかない化け物がいるってことだけさ。
――人間の形こそしてるが、ありゃあオレの理解できる範疇の人間じゃあねえ。
――どうするかは……おめぇに任せる。オレが決めるにゃ荷が勝ちすぎる。

そこまで伝えると、Aはマリオネットのように不自然にひょこひょこ跳ねながら『……E−7、北西部。コンテナ』と呟いてパタリと倒れ伏した。
少し待っても動かないところを見るに、伝えるべきことは伝え終わったということだろう。
カードを拾い上げ、フーゴは呟く。

「化け物、か」

ムーロロがそう評するなら、それはきっと掛け値なしにそう見える何者かなのだろう。だが、化け物とはまた随分と抽象的な言い回しだった。
そして何より、このタイミングでの連絡。

(すぐに進路変更を告げられないほどの何かが起こった?)

フーゴの問いかけに、言葉に詰まったムーロロ。
言葉に詰まる、それは目的に直接関係する事態が発生したからではないのか。例えば、その人物の生死に関わってしまう、何か。化け物がいるという一言だけで、想像は容易だ。
儚い希望は潰えるかもしれない。それどころか、直接的な危機が待ち受けている可能性が跳ねあがった。
ムーロロは、フーゴ自身をも切るべき手札として利用している。おそらくその認識は間違っていないだろう。

(だとしても、構いやしない)

持ちつ持たれつ、お互い様と言えばお互い様。
そして、ムーロロはこの賭けから降りた。示された札、そのどちらに賭けるかはフーゴに委ねられたのだ。
賭けるのは己の生命。当たれば希望になるかもしれない、外れれば十中八九、死。ハイリスクローリターン、酷く分の悪い酔狂な賭け。
船に乗れなかった頃の自身なら、とてもじゃないが選ぶことなどできやしない。脆弱な本心を隠すように、小賢しく先を読んだつもりになって静観を選び、挙句ぐずぐずと悩むのが関の山だったろう。
けれど、”彼”の手を取ることの出来た今なら。フーゴの心は既に決まっていた。

「そこに居るなら、行くだけだ」

たとえそれが更なる苦難に満ちた道への幕開けだったとしても、星の瞬きのようにささやかな希望に過ぎなかったとしても、それでも。
闇雲に怯え、悪戯に踏み止まり、時が経つに任せるまま停滞することがあってはならない。”ジョジョ”の示した気高い精神を裏切るような行為は出来ない。
”ジョジョ”の遺してくれた言葉を噛み締めるように思い起こしながら、フーゴは再び夜の町並みに身を投じた。

359タイトル未定 状態表 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/15(木) 15:46:49 ID:YVfVpFdI
【F−6 コロッセオ周辺・1日目 黎明】
【キャラクター名】パンナコッタ・フーゴ
[スタンド]:『パーブル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点。
[状態]:健康
[装備]: DIOの投げナイフ1本
[道具]:基本支給品一式、DIOの投げナイフ半ダース(デイパック内に5本)、地下地図、『オール・アロング・ウォッチタワー』 の、ハートのAとハートの2
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集める。
2.E−7北西方面にいるという、"死んだはずのジョジョの味方"と接触。
3.化け物なんて随分と大げさだが……気をつけよう。一体何がいるのか。


【D−5 トレビの泉・1日目 黎明】
【キャラクター名】カンノーロ・ムーロロ
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ムーロロのカード一式@『恥知らずのパーブルヘイズ』、ココ・ジャンボ@Parte5 黄金の風
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
1.ココ・ジャンボに潜んで、情報収集を続ける。
2.今のところ直接の危険は無いようだが、この場は化け物だらけで油断出来ない。
[備考]
 ムーロロはメイン参加者のパッショーネメンバーについて"情報"は持っていますが、暗殺チーム以外では殆ど直接の面識はありません。
 スタンドで監視できている人物の動向は、74話までの黎明時点に限っています。
 また、ムーロロはアバッキオとナランチャ以外の各人物を姿かたちで認識しています(名前は認識していませんが、判り辛いために入れてあります)

 北……カーズ、バオー化育郎(どちらを捕捉しているか、両方捕捉しているかは今後の書き手様にお任せします)
 東……学校の戦いを遠巻きに見ていました(アヴドゥル、ビットリオは捕捉されていません)
 西……イギー(移動中の姿を見かけただけです)
 南西……仗助、リンゴォ(二人のやり取りを見ています)
 西南西……花京院、由花子(二人のやり取りと歩いている姿を捕捉しています)
 東南東……ラバーソール、しのぶ、承太郎(ラバーソールは見失いました、承太郎としのぶは捕捉しています)
 南東……ジョナサン、エシディシ、露伴、早人、アバッキオ、ナランチャ、千帆(早人と千帆は見失いました、アバッキオに関しての『理解』は放棄しており、フーゴの結論待ちです)

 キャラクターの捕捉状況について、上記されていること以外は今後の書き手様にお任せします。(新しく捕捉されるキャラクターの追加、会話を聞いていた等の追加)
 捕捉されているキャラクターに関しては、ある程度の距離を保ってカードが見ているだけなので、対象キャラクターが気づく可能性は低いはずです。また、いつ見失うかも今後の書き手様にお任せします。

360 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/15(木) 15:58:40 ID:YVfVpFdI
仮投下は以上です
問題点というかご意見を頂きたいのは、他のSSに触れている部分に関してです
該当キャラクターのSSに関しては読みこんだつもりですが、矛盾や認識間違いなどがありましたらご指摘ください
本編とムーロロの備考欄にある部分は、出来るだけ簡略かつ今後のSSで何かが起こってもどうとでもとれるようにぼやかしたつもりです
捕捉=遠目にこっそり見てるぜ、くらいの認識で書きました
また、本編(恥知らず)にないスタンドの使い方についても可否を頂きたく思います
他、誤字脱字や矛盾点などありましたらご指摘をお願いいたします

あと、タイトルは本投下までに考えます…うーんどうしよう…

361名無しさんは砕けない:2012/03/17(土) 20:14:48 ID:5Z7t7KjA
遅くなりましたが仮投下乙です。

問題として懸念している「他SSについて触れている」ですが、読んだ感じは問題ないと思います。
今後補完SSが入ったりするとその都度修正?なんてのはその時に考えればいいのでは。
と、その点も状態表の備考でぼかしているので大丈夫でしょう。
もうひとつ「スタンドの使い方」ですが、ムーロロはこう使っていませんでしたが、スタンドで会話するというのは3部のころからある能力(?)ですので問題ないかと。
誤字は特に見受けられませんでした。
それでは、本投下に期待しています!感想はその時に。

362 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/17(土) 21:56:09 ID:4TqyJD9Y
>>361
レスありがとうございます
そういえば3部の頃から水中で会話とかありましたね
大丈夫そうなので本投下したいと思います!

363 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 01:55:59 ID:9sEdvz2o
カーズ
仮投下致します。

364カーズのカオスローマぶらり旅 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 01:58:23 ID:9sEdvz2o
―――C-5、北東部。
スペイン階段にトリトーネの泉と、奇妙な会場の中において比較的ローマの面影が残っているこの一帯を歩く一つの影があった。
人影はかなり大柄な男性のものであり、周囲を確認しつつ緩やかに歩を進めているだけだったが、その屈強な肉体と裸に近い珍妙な格好は一目見たら忘れ難いものであった。
この男の名はカーズ。
『柱の男』と呼ばれる存在の一人で、彼らの中でも特に高い知能を持つ男である。

「人間どもの気配が感じられん……われらを恐れて一斉に逃げ出したか、あるいはこの殺し合いとやらの影響か……」

周囲を確認しているとはいっても、カーズは敵を警戒しているというわけではない―――正確にいえば最小限の警戒しか行っていない。
柱の男は不老不死であり、さらに宿敵である波紋の一族は二千年前にすでに自分達の手で滅ぼした。
加えて先程の『異形』―――生物兵器『バオー』との戦闘も、多少驚きはしたが苦戦といえるような場面は何一つ無かった。
そのため、好敵手となるような存在がいるならば、むしろ見てみたいというほどの興味と自信があったのである。
ではなぜカーズは辺りを見ながらゆっくりと進んでいるのか、それは主に二つの『目的』のためであった。
その一つとして、似合わない表現であるが彼は街を『見学』していたのである。

なぜならば、彼はまだ眠りから目覚めたばかりなのだから。

―――殺し合いが始まる直前、カーズは一足先に目覚めていたワムウの声を聞き、遺跡の壁から全身を外に出した瞬間にどことも知れないホールへと移動させられていた。
周囲を見渡すと共に眠りについていたエシディシとワムウも同じようにその場におり、さらに西の果ての大陸においてきたはずの最後の一人の姿も確認できた。
そして殺し合いの宣言がなされ、カーズは『地上』のどこかへと飛ばされることになる。
だが彼は現在、積極的に殺し合いに参加する気はまるでなかった。

「このカーズにとっては殺し合いなどどうでもよいことよ。優勝者には望む物を与えるなどとほざいていたが、たかが人間にわれわれの望みは到底かなえられまい」

最初に戦った『異形』はともかく、一緒にいた人間は何もできない単なる虫けらだった。
さらに『異形』も妙な力を持ってはいたが『欠点』だらけの弱い存在、わざわざ殺す気にもならなかった。
優勝商品にしても主催者が人間の時点で興味はない。
しいていうなら『エイジャの赤石』の在り処について知りたくはあるが、そんなことならわざわざ優勝するまでもなく、ほかの人間から聞き出せばよいことである。
となれば、『殺し合い』などという結果が見えている児戯に付き合う理由はなく、人間世界の変化ぶりをその目で見て確認することの方が重要だったのである。

……ただ、唯一懸念すべきだったのは『首輪』の存在。
最初に実演されたような爆発で自分達が死ぬとは到底思えなかったが、それは首輪の機能が『爆発』だけに限られる場合である。
眠っている間に人間がどのような『発明』をしたかわからない以上、迂闊に外してしまうのは危険であるとカーズの本能が警鐘を鳴らしていた。
だからこそ、最初に見かけた二人の男を襲い、首輪を解析するためのサンプルを手に入れることにしたのだった。

「とはいえ、この首輪の他にもわれらを一瞬で移動させた方法など、わからぬことはあるが……まあ、考えるのは後でもよかろう」

後数時間もしないうちに太陽が昇ることは理解しているが、既にカーズは地面に手を付くことで温度差を読み取り、地下空間の存在を認識していた。
加えて地面は土だろうが石だろうが簡単に穴を開けることができ、地下まで到達するのはたやすいこと。
同じく地下に潜るか、建造物にでも身を隠すだろう仲間達との合流や首輪の解析などは太陽が昇ってからでも遅くはない。
ならばその前に地上の様子をできるだけ調べておき、あわよくば首輪のサンプルを集めておいた方がよいと考えたのだ。

365カーズのカオスローマぶらり旅 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 02:00:36 ID:9sEdvz2o
「眠っている間に人間がどれほど進化したか……こうして見る限りでは二千年前から相当変化している…………が」

本来あるべきものがなく、代わりにないはずのものが存在する歪な会場。
とはいえ、そのことを知らないカーズは特に違和感を感じることも無く、何もかもが新鮮な人間世界の様子を調べていく。


―――道。
戦闘を行った場所の近くでは昔と同じく草に覆われていたり地面がむき出しになっている部分もあったが、しばらく歩くと地面の様子が明らかに変わった。
石や砂利を固めて作られたと思われる、他よりは少しだけ頑丈な道。
ちなみに、本来道にあるべき自動車が一台も無いためやけに広く感じられ、それがカーズにとっては滑稽に思えていた。

「道をここまで頑丈にする必要性が感じられん。人間は一体何を考えているのか……
 大体この道の広さはなんだ? 人間はそんなに数を増やしていたというのか……?」

もちろん、カーズにとって道の材質や広さなどどうでもよいこと。
深く考える必要もないと判断し、さっさと進む。


―――街灯。
道のいたるところに並んでいる、光を発する金属の柱。
そのうち一本に近づき中を調べてみると、見たこともない機械と配線が詰まっていた。

「くだらん……夜間に活動するわれらへの対策かとも思ったが、このつくられた光は『太陽』と違いわれらの身体になんら影響を与えることは無い。
 闇夜の明かりとして火を焚く仕組みを置き換えただけの、貧弱な発明よ」

本来闇に生きる『柱の男』にとって明かりにしかならない光など、毒にも薬にもならない。
中の機械にも興味を示すことなく、カーズはさらに進む。


―――建造物。
一軒一軒色や形が違ってはいるが、ほとんどは石や木、砂利などで出来ている家屋。
中を覗き込んでみても生物の姿は無く、眠りにつく前には見られなかった道具が数多く存在している。
カーズは適当な建物の壁に触れて温度や強度を確かめると、入り口から中へと入っていった。

「壁の強度は話にならん。それに、武器といえそうな物も見当たらぬ。われらの眠っていた地のすぐ上にもかかわらず、こんな粗末な備えとはな……
 最も、本気でわれらに対抗するつもりならば、そのような武器をこんなところに隠しておくはずも無いが」

家の中を一通り見て回り、家具や美術品を眺め、戸棚を開けて中を確認する。
用途不明の道具については自身の持つ高度な知能を活用し、その素材や内部構造、置いてある場所から使用方法を割り出していった。

「フン……見てくれだけは二千年前からずいぶん変化しているが、本質的な部分は結局何一つ変わっておらんではないか。
 かと思えばあのような蟲を発明していたりと、まったく人間は妙な方向に進化したものよ……
 もっとも、その発明もこのカーズには到底及ばぬものであったが」

366カーズのカオスローマぶらり旅 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 02:02:07 ID:9sEdvz2o
建物の中を大方調べ終わったところでカーズは呆れたようにつぶやく。
家を作って雨風を防ぎ、動植物を蓄えて食料とし、夜間は明かりをともす……
彼からしてみれば使う道具が変わっただけで、現代の生活空間も原始人の生活と大差なかった。
……ただ、これは電話などカーズの知らない『機械』が使用不能の状態になっており、用途が理解できなかったという理由もあるのだが。

なおも家の中の捜索を続けるカーズの目に留まったのは洋服ダンス。
開けてみるとコートやズボン、帽子など一通りの衣服が揃っていた。

「服か……まあ、ちょうどよかろう」

カーズはしばし考えると、先程切断されたターバンの代わりに適当な布を巻いて触角を隠すとその上から帽子をかぶり、続いて服を身に着けていく。
彼にオシャレなどという概念はないためサイズがどうにか合う服を適当に着ると、輝彩滑刀を出したときに切断してしまわないよう袖をまくる。
最後にブーツを履き、カーズの『着替え』は完了した。

「……フム、こんなものか。これで『人間』に見えるはずだ」

着替え終わった姿を鏡で確認し、カーズはニヤリと笑う。
その姿はかなり大柄でどこか妙な点はあるものの、確かに外から見た限り『人間』とほぼ同じだった。

柱の男は体の構成からして人間とは異なる。少なくとも地球上の気候による寒暖の差はほとんど影響しないし、昆虫などの外敵から皮膚を守る必要もない。
場合によっては形式的なものとして装束を身につけることもあるが、普段は衣服などむしろ邪魔な存在といっても過言ではない。
だが、カーズ個人にしてみれば衣服には利用価値があった。
普通、生物というものは自分と同じ姿をしているものには警戒が緩むものである。
そして、目覚めてからこれまで目にしてきた人間達の格好からして、その『外見』は二千年前からたいして変わっていない。
つまり、衣服を身に纏うことによって人間に『化ける』ことが出来るというわけだ。

(これで人間どもから『エイジャの赤石』の行方について聞き出しやすくなるというものだ……
 それに相手が油断して背中でも向けてくれれば労せず勝利し、首輪を手に入れることができるだろう。
 無論、まともに戦って負ける気など微塵もないが、できるだけ汗をかかずに勝てるならそれに越したことはなかろうよ……
 どんな手を使おうが、最終的に勝てばよかろうなのだ)

柱の男、カーズ。
彼は『目的』を達成するのに手段を選ばない性格である。
石仮面などの人知を超えた道具を作り出し、赤石を使った応用を思いつく柔軟な思考を持つ一方、戦いにおいては『美学』を持たないリアリストなのであった。

「そろそろ日が昇る時刻か……『放送』とやらももうすぐだな……」

窓から外を見ると、うっすらと空が明るくなり始めていた。
時間切れだ、と判断したカーズは床に穴を開け、地下のトンネルへと潜っていく……

367カーズのカオスローマぶらり旅 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 02:02:43 ID:9sEdvz2o


―――と思いきや、カーズは一度家の外に出ると、唐突にある一点へと視線を向けて口を開いた。

「さて、聞こえているかどうかは知らんがこのカーズはこれから地下へと潜る。
 虫けらをわざわざ殺してまわる気はないが、きさまがいつまでも姿を見せずにこちらを見続けているのは不愉快だ。
 これ以上付きまとう気ならば、先程の人間と同じ運命を辿ることになると覚えておくがよい」

(―――!!)

カーズの言葉に答える者はいない。
だが見つめていた先……カーズの位置からは死角であるはずの、人が隠れられるはずもないわずかな隙間には微かに動くもの―――手足の生えたトランプが『いた』。

これがカーズのもう一つの『目的』である。
自分を監視する小さな『紙』のような存在が現れたことに、カーズは『異形』との戦闘中―――すなわち『紙』が最初に現れた時点でとっくに気がついていた。
始めは妙な生き物としか思っていなかったが、戦いの後付かず離れずで正確に自分を追って来る動作からまぎれもなく人為的なものだと理解できた。
そして首輪がついていないことから主催者側が監視を行っているのかとも考えたが、それならばスタート直後に監視の目がなかったのは不自然。
他の人間の姿が見えない以上、原理はわからないが会場にいる『参加者』の仕業ということになる。
こうして人間でも追いつけるほどゆっくり移動し、人気のない場所に来てみれば何らかの形で接触してくると思っていたのだが、そんな様子は全くない。
そうなると、自分に害を与える存在ではなくとも、虫けらがしつこく周りを飛びまわっているというのはあまりいい気分ではなかった。
ゆえにカーズは『警告』を行ったのである。

「………………」

(やはり無視するか……まあよい、あくまでも付きまとうのならば『始末』すればよいこと。
 実力差も見抜けず、言葉にされても分からぬ愚か者ならば生きている価値もなかろうよ……)

トランプは何も答えない。
カーズも、このような手段をとる相手が元より素直に答えを返すなどとは思っていない。
さっさときびすを返すと今度こそ穴の中へと消えていった。


こうして、傍から見れば単なる空き巣まがいに過ぎない事を行い、カーズは去っていった。
強大な力を持ち、野望も大きい割にやっていることは小さいなどと言ってはいけない。
われわれは知っているはずである。
実際に小細工を弄し、積み重ねることによってサンタナを、エシディシを、ワムウを、そして他ならぬカーズを打ち破った男がいることを。
小さな伏線が何につながるかわからない―――それが『バトル・ロワイアル』なのだから……

368カーズのカオスローマぶらり旅 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 02:04:03 ID:9sEdvz2o

【C-5 北東部 / 1日目 早朝】


【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:健康
[装備]:服一式
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品2〜4、首輪(億泰)
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
1.柱の男と合流。
2.首輪を集めて解析。
3.エイジャの赤石の行方について調べる。

※地下のトンネル内に潜りました。この後どこへ向かうかは次の書き手さんにおまかせします。
※『オール・アロング・ウォッチタワー』の監視に気がついていました。
  監視を煩わしく思っていますが、相手がこれ以上付いてこないならわざわざ始末する気はありません。


[備考]
・カーズの現在の格好はJC9巻で犬を助けたときのものとほぼ同じです。

369 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 02:11:39 ID:9sEdvz2o
以上で投下終了です。
本スレを支援していたらこんな時間になってしまい申し訳ありません。
短くまとめる繋ぎの話を書いてみたら、想像以上に短くなってしまったかも……

誤字脱字や矛盾点、疑問等ありましたらよろしくお願いいたします。

370名無しさんは砕けない:2012/03/19(月) 12:14:22 ID:meIpG2ho
仮投下乙です!
矛盾点は特に見受けられなかったです。
感想は本投下後……というのが暗黙のルールだと思っていましたが、これが社交辞令だと言われてしまうと読む側としても非常に辛い……
どうしても感想というのは初見で読んだあとの方が書きやすく、仮→本の流れで投下されると感想も書き辛かったりします。
なので、まだ仮投下ですが、ここに感想も書かせてもらおうかと……

カーズ様がお茶目で可愛い!
時間軸が目覚めた直後というのも新しくていいんじゃないでしょうか?
ワムウ!カーズ様はサンモリッツホテル知らないってよwww
無理に移動することはなかったかもねwwwwww

それでは本投下楽しみにしています。

371 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/19(月) 17:16:08 ID:tKK4ayog
仮投下乙です!

アラやだカーズ様ったら、ぶらり旅すぎてちょっとほっこりしちゃいましたよ!www
しかしそんな中でも貫禄の警告…監視塔の隠密ぶりも柱の男には無効果でしたね
こんなに速攻でフラグを生かして頂いて驚いたやら嬉しいやらです
あと、矛盾や目立つ誤字などは無かったように思います

本投下も楽しみにしております!

372名無しさんは砕けない:2012/03/19(月) 18:41:08 ID:4UO/KP9Y
仮投下乙です。
いやぁ、オシャレなカーズ様が見られるとは、このバトロワでの萌ポイントかもしれませんねw
パッと見で何の変哲もない繋ぎ話に見えて、ウォッチタワーに気付いていたことや首輪についての考察を挟むなどクオリティの高い話でした!
それでは、本投下も楽しみにしています。もっと感想あったらそっちでもまた書きますよw

373 ◆LvAk1Ki9I.:2012/03/19(月) 23:11:20 ID:9sEdvz2o
皆様、感想ありがとうございます。
とりあえず目立った指摘は無いようなので、見直して明日本投下する予定です。

仮投下と本投下に関しては意見が分かれそうですが、
少なくとも私はどのタイミングでも感想をいただければそれ自体が嬉しいです。
とりあえず、私も投下に対して出来るだけ意見や感想を書くようにしたいと思います。

374披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:47:12 ID:1lJiCCIs
二足の草鞋を履く、という言葉があるだろう?
“一人の人間が全く別方向の仕事をする”とか、そう言う意味だそうだ。

例えばそうだな……魔法が使える戦士とか。もう少し現実味のある話をするならいろんな出版社で全然ジャンルの違う作品を掲載している漫画家とか。
後は――全く別の方向かっていうとそうじゃないけど、任務を遂行しながら部下を守るなんてのも、ある意味そうじゃない?

で、ここから何が言いたいかなんだけど。
“二足の草鞋を履く”って、結構難しいことだと思う……少なくとも俺には出来ないね。
事実として今、俺の靴箱には二足の草鞋が入っている。けど、どっちかを履くとどっちかが履けない。だからまあ交互に履くんだけどね。

君らにはそう言う経験ないかい?……あーいや、仕事じゃなくて趣味とかでも良いよ。あっちをやったりこっちをやったり、って。
俺の話を聞きながら、少し思い浮かべてみてよ――

***

375披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:49:16 ID:1lJiCCIs
「オイッ!奴を叩くったって、一体どうするつもりだよ!?」
後部座席のユウヤが身を乗り出してくる、滝のように流れる汗を拭おうともせずに。
俺はそちらに一度視線を送り、すぐに顔を前に向けた。
「落ち着け、あまり騒いでると運転にも支障が出る。
 ……どうする、シュトロハイム。今の装備、状態でさっきのサンタナとやらを確実に殺せるか?
 この自動車はどのくらい走る?燃費はリッター400メートルくらいか?」
「バァカをぬかすなァッ!そんな高燃費の車がこの世のどこに存在すると言うのだアァーッ!
 それにこの大型車だ!そう細かい旋回など出来ん!大通りに出た上でエンジンブレーキをかけねばまともに止まれずドカンだぞォッ」
シュトロハイムには怒鳴り返されたが、状況の判断はこの中の誰よりも的確だろう。間違った事は何一つ言っていない。止まれなくとも加速しなければ問題ないという事か。
しかし、原理が分かろうと自動車に詳しくない俺はサポートに回るほかない。シュトロハイムの左手に握られていた地図を受け取り、現在地から大通りに出る方法を割り出す。
俺たちは今、エリアG−6かF−7あたりにいるのだろうか。速度は先程より緩やかになってきている。もっとも、まだ早々には止まれなさそうではあるが。

となれば次に考えなければならないのはサンタナへの攻撃だ。如何にしてあの生物を殺すべきかをこの場で考えておかねばならない。
俺は後部座席を振り返る。シュトロハイムは運転しながらでも話を聞いて答えを返してくるだろう。
「今の内に武器を出せるようにしておけ。さっき皆でやりとりした支給品だ……シュトロハイム、お前の物もここに出しておくぞ」
緩やかに左カーブを描くタンクローリーの遠心力に振り回されそうになりながら二人がデイパックを開く。もちろん俺もだ。

康一が力を込めてナイフを握る。噴上が機関銃を抱え込む。
それを見届けて俺はロープをパンと張り、シュトロハイムに割り当てた武器、チェーンソーとライフルを紙にしまったまま手の届く位置に置いた。

「よォし、用意は良いなお前らアァッ!大通りに出るぞッ!振り落とされるナアァァーーーッ!」
言うが早いか、もぎ取らんばかりの勢いでシュトロハイムがハンドルを切る。ぐん、という衝撃とタイヤが擦れる音が車内に響いた。
頭を振って視線を正面に戻すと数百メートル先にコロッセオが映っていた。流石にあそこに辿り着くまでにはこの車も止まる筈だ。
となればコロッセオ内でサンタナを迎え撃つのが最適か。シュトロハイムを見れば彼の表情にも笑みが見られる。おそらく俺と同じ発想なのだろう。
後部座席からもギリッと歯を食いしばるような音が聞こえてくる。覚悟は出来ているようだ。

よし――

「止 ま る な ッ !」

***

376披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:52:05 ID:1lJiCCIs
「止 ま る な ッ !」

そう言った僕の方を皆が一斉に振り向く。運転しているシュトロハイムさんまで。
「オイオイそりゃどういうこったよ康一ィ!?サンタナの野郎から逃げ切りたい気持ちはわかるが止まらない事にゃあどうしようもないぜ!」
「そうだぞ康一イィィッ!走るのはともかく理由を言えェい!」
「二人の言うとおりだ。コロッセオなら十分に体勢を立て直せる。それともシュトロハイムの言うとおり何か理由が?」
口々に詰め寄る皆に、ひと息ついて僕は答えた。

「今のカーブで姿勢を崩して初めて気がついたんですよ。
 ……僕の足が食われてる」
キョトンとする、という言葉がどういう状態を指すのか?ってのを僕はタンクローリーの中で見た。まさに今、こういう状況のことだろう。
僕を除く車内の全員が全く理解できていないようだから、もう一度僕から切りだした。
「さっきサンタナを轢いた時、奴の身体の一部がこの車にくっついたんでしょう。
 それが今僕の右足にあって、溶けると言うかえぐれると言うか、とにかく……だんだんなくなっていってるんですよ。足が」
「――おのれェサンタナの野郎やってくれやがったナァッ!それはミート・インベイド、憎き肉片だッ!!」
シュトロハイムさんは流石に詳しいのか、そのギャグみたいな技の名を言って、ダンとハンドルに拳を叩きつけた。

「……それが車を止めねぇこととどう関係があるってんだ?」
「そこだよ噴上君。このままだと僕のせいで四人とも全滅してしまう。
 ティムさん、さっき渡したロープを」
その一言だけでティムさんは全てを理解してくれたようだ。
「いいのか?確かに俺のスタンドならダメージを受けている部分だけを切り離すことが出来るが……」
「エッ!?ちょっ待てよ!康一お前自分の足ぶった切るつもりかよ!」
驚きを隠そうともせずに噴上君がつかみかかってくる。逆の立場だったら僕だってそうするだろう。
そう、そのつもりなんだよ。確かにいきなりそんなことを言えば驚くさ。でも――


「僕はこれでもスタンド使いで皆の仲間だ!足手まといにはならないぞッ!
 ああ、いいさ! いいとも、やってやるとも!
 アイツに勝つためなら足の二本や三本かんたんにくれてやるぞーーッ!!」

377披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:54:25 ID:1lJiCCIs
「……康一よ、お前の覚悟しかと受け取ったぞッ!
 ティム、ロープだ。我々が全滅しない内に早くッ」
シュトロハイムさんがそう言ってくれたのを合図に、ティムさんが僕にロープを差し出す。
それを左手で握りしめると、身体がぶつ切りになっていく。右足の付け根が身体から離れた。
僕は窓を開けてナイフを構える。車内に入りこむ強風に煽られる事もなく鮮やかなロープ捌きでティムさんが右足だけを外に出してくれた。

怖くないかと言われれば怖いと答えるだろう。
無人島で自分の足を食って生き延びたコックさんの漫画を見たけど、まさか自分が体験することになるなんて。
でも、僕も男だ。一度くらいは僕の覚悟ってやつを皆に披露してやりたい。

ブツッ、と小さい音を立ててロープが切れた。
痛みはない。自分の肉を直接切った訳じゃあないから当然かもしれない。
だけど……さようなら、僕の右足。

「チクショウ……康一おめぇカッコイイじゃあねーかよ!
 シュトロハイム!タンクローリーぶっ飛ばせよッ康一の見せてくれた覚悟を無駄にすんな!
 まずは康一の治療だ、いいかゼッテー止まるんじゃあねえぞ!」
「分かっておるわァーーー!サンタナを一度振り切り体勢を立て直すッ!」
噴上君が唾を飛ばしながらシュトロハイムさんに檄を飛ばす。シュトロハイムさんもやる気スイッチが完全にオンになっているみたいだ。

「そうじゃあねぇ!俺が仗助を探すッ!見つけるまでは何があっても止まるな!
 そいつに康一の足を治してもらってからでもサンタナ退治は遅くねぇ!」
言うが早いか噴上君はスタンドを足跡状にスライスして車の外に飛ばし始める。
「フフン、いずれにせよ我々がサンタナはじめ柱の男たちを駆逐せねばならんのは変わる事無き事実ッ!
 ――しかし車を止めないことには攻撃できず、車を動かさないことには治療できずかァッ!なかなかのブラックユーモアじゃあないかッ!
 だがここは治療を取るぞッ!万全の状態で彼奴を討たねば康一が披露した誇り高き精神に曇りが残るわアァァッ!!」

「……決まりだな。 康一君、君は自分の身を犠牲にして僕たちを助けてくれた英雄だ。
 そのジョースケ君とやらに足を治してもらったら、全員でサンタナを討とうじゃあないか」
ティムさんの言葉を待っていたかのように再びタンクローリーが加速を始めた。

僕には何もできないと思っていた。ヒーローなんかじゃあないと思っていた。なれる訳がないとも思っていた。
でも、なってしまったんだ、ヒーローに。
披露してしまったんだ、僕の覚悟を。ダイアーさんにも、ここにいる皆にも。だから、皆が僕のことを英雄だと呼ぶんだ……

皆が僕の行動を受けて次の方針を立ててくれている。
涙が止まらない。痛みとか恐怖のせいじゃあない。嬉しくて嬉しくて、ぼろぼろと大粒の涙が流れてきた。
ヒーロってものは、一人で孤高に戦う戦士のイメージだ。それなのに皆に助けられて泣きべそをかいている。
そんなふうに思ったら、ちょっとだけ笑えてきた。

***

378披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:55:29 ID:1lJiCCIs
うーん、ちょっと歯切れが悪いけどこの辺で止めよう。さっきの草鞋の話がどうも頭から抜けなくてね……。
タンクローリーを止めてサンタナを倒す、タンクローリーを止めないで仗助を探すっていう全く逆でいて同じ草鞋を履いた皆の状態をちょっとまとめてみるよ。
運転もする、柱の男を殺すというルドル・フォン・シュトロハイム。
仲間を探す、主催も倒すというマウンテン・ティム。
仗助を探す、サンタナを倒すという噴上裕也。
そして……覚悟を見せながら、足の治療に期待をかけながら、ヒーローでもある広瀬康一。
どのメンツも……まあ全くの別方向ではないにせよ、一気に複数の物事を消化しようとしている。
これって案外、いやかなりすごいことだと思う。

で、最初に言ったけど俺には二足の草鞋は同時に履けない。
ティムは康一を“覚悟を見せ、仲間を守った”ヒーローだって言ってたけど、俺からしてみたら二足の草鞋を履けるだけでも十分に超人、ヒーローなのさ。
君たちはどうだい?あっちの絵を描きながらこっちで音楽を奏で、そっちでは小説も書くなんて出来る?

その話、聞いてみたいな。たまには俺からじゃなくて君たちからも何か話をしてくれよ――

379披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:55:57 ID:1lJiCCIs
【F−7 コロッセオ南の路上/一日目 黎明】

【暴走列車の乗客たち】

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → ???
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:左腕ダメージ(小・応急処置済)、錠前による精神ダメージ(小)、右足切断(膝上から。痛み・出血なし)、若干興奮状態
[装備]:琢馬の投げナイフセット
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0:右足の治療のために仗助を探す(探してもらう)
1:サンタナを倒す
2:やってやるぞ!見せてやるぞ!僕の覚悟!
3:なってしまった、ヒーローに……

【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[スタンド]:なし
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康。タンクローリー運転中。
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0、ローパーのチェーンソー、ドルドのライフル(残弾数は以降の書き手さんにお任せします)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊。
0:タンクローリーを走らせ続ける
1:サンタナを殺す
2:康一の誇り高い覚悟!俺は敬意を表する!
3:各施設を回り、協力者を集める(東方仗助が最優先)

【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミ―』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:健康
[装備]:ポコロコの投げ縄(数十センチ切断。残り長さ約二十メートル程度)
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0:サンタナを倒す
1:まずは東方仗助の捜索
2:方針1とほぼ同時に各施設を回り、協力者を集める

【墳上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:健康、スタンドを行使中(仗助捜索のため)
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数は以降の書き手さんにお任せします)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0:仗助(のにおい)を探して協力を仰ぐ
1:各施設を回り、協力者を集める
2:サンタナを倒す
3:康一のカッコよさにシビれる!憧れる!……?

【備考】
タンクローリーの移動経路:F−5→G−6→G−7→F−7と大通り(地図に表記されている道)を通り、現在は正面にコロッセオを見る形で走っています。
今後のルートは次回以降の書き手さんにお任せします。
また、故障個所はブレーキだけのようで、アクセルを離していれば自然と止まること自体は出来るようです。

380披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:57:11 ID:1lJiCCIs
【支給品情報】
※4人ともランダム支給品は2つずつ配られ(=全8種)全て確認済です。
※内、この作品で登場したのは5種。残りの3種は状態表の通り所有していますが、支給された人と所有している人が違う(渡す等のやり取りがあった)可能性もあります。

●チェーンソー
噴上に支給、現在はシュトロハイムが所持。
ゴージャス・アイリンにて大女ローパーが使用していた排気量400cc、重量80kgの巨大チェーンソー。ガイドバー(チェーンが巻いてある鉄板)に凝ったデザインが施してある。
余談:この道具、イメージとして『13日の金曜日』のジェイソンが浮かびやすいが彼がチェーンソーを使ったシーンはないらしい

●トンプソン機関銃
シュトロハイムに支給され現在は噴上が装備。
ジョジョ2部でジョセフがストレイツォに向けてぶっ放したもの。アサルトライフルというよりはサブマシンガンに分類される銃なのでジョセフにとっては少し小ぶりかもしれない。
余談:特徴的なドラムマガジンだが、あれを取り付けられる機種は製造中期の物で、おそらく『M1928』または『M1928A1』というモデルだと思われる

●ポコロコの投げ縄
康一に支給、現在はティムが装備。
SBRの1stステージでサンドマンに「持ってるロープを使え、操れるのならな」と言われたロープ。これでポコロコは崖を超えられた。
余談:レース開始時にグリッド内にいなかったポコロコのフライングの話はたびたび議論に上がるが、それを指摘されなかったのが彼の一番の幸運なのかもしれない

●琢馬の投げナイフセット
ティムに支給、現在康一が装備。
いわゆるスローイングナイフ。銀の物が2本に、カーボン製の黒い物が1本ある。今回のSSでは康一がこれで右足(のロープ)を切った。
余談:勘違いされがちであるが「ナイフは刃を持って投げる」だけでなく「まっすぐ飛んでいく」のも若干違う。至近距離ならまだしもある程度離れているなら回転させて投げるべきである。

●ドルドのライフル
シュトロハイムに支給され、そのままシュトロハイムが所持している。
ドルドがバオーを狙撃する際に腕に取り付けて使用した銃。スコープが目元まで伸びて距離や風向き、温度まで分かるようだ(ドルドゆえの能力かは不明)。シュトロハイムとの互換性も分からない。
余談:手榴弾もそうだが、炸裂弾は爆発の威力よりもそれではじけ飛ぶモノ(銃弾の破片や中に仕込む散弾)で攻撃する方が効率的らしい。ドルドさん……

381披露 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/23(金) 16:58:15 ID:1lJiCCIs
以上で仮投下終了です。

二足の草鞋、皆さんは履けますか?俺はジョジョロワという草鞋を履いたらもう他ロワなんて手を出せませんよ?

それから、康一君の登場するSSでの「HERO」タイトルという暗黙の了解(?)ですが。
『ヒーロー』ト『披露』ガ カケテアリマスネ ダカラ『ドーダコーダ』言ウワケデハ ナインデスガネ
という事でこうなりましたwww『疲労』でも良かったんですがねw

あとは支給品。
全ての支給品がほぼアタリっていうグループが1チームくらいあってもいいんじゃない?という事でここにしました。
執筆当初はポコロコの投げ縄が西戸のチェーンだったり、ライフルがレッキングボールだったりもしましたが。まあまだ未開封の物もあると言う事で。

何だか勢いで書いてしまった今回のSS。草鞋の話、覚悟を披露する話、ヒーロー康一の話を上手く結びつけられた自信は正直言ってありませんorz
本編中だとシュトロハイムの「ブラックユーモア」のセリフがかろうじて、かなぁ。
展開は進んでいるのにリレーがされていないパートという事でここを執筆しましたが、他にもっといい作品を検討している方がいるようでしたらこれは没にしようかな、というくらいに自信がないw

誤字脱字、矛盾点等々ありましたらご指摘ください。それでは。

382 ◆Rf2WXK36Ow:2012/03/23(金) 20:28:30 ID:e0uvxHxY
仮投下乙です!
さすが車だけあって動く動く(移動的な意味で)
流れとしては自然でした
誤字…というか、これはたぶんコピペだと思うのですが
墳上の名字は噴上が正しいようですので、状態表の名字を本投下時に修正して頂ければと思います

感想も書かせて頂きます(また本投下時に書きたいことが増えたら書きますがw)
康一君がメキメキ成長を見せている…このロワで彼はどうなっていくのかなあ
しかし本当に序盤だというのに最初からクライマックス気味な集団だ
コロッセオ近辺ということは…ゴクリ
コンテナといい、この近辺ホントに色々起こってるなあ
今後の展開へのwktkが止まりませんw

383 ◆yxYaCUyrzc:2012/03/24(土) 12:34:11 ID:oCPsyckw
噴上の誤字、すっかり忘れてましたorz
その他に意見が無いようでしたら日曜日の夜(19時ころ)に本投下する予定です

384計画 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/16(月) 20:25:39 ID:a4x4k.ZA
君たちに対して『今回はどんな話をしようか』と、ちょっと考えてみたんだが――

ひとことで言えば“吸血鬼”の話をしようと思う。
現在行われているバトル・ロワイヤルにおいても何人かそう呼ばれる人種が……あ、いや人間じゃないから人種と呼ぶべきじゃないか?まぁとにかく。

彼等はいったい『何』だと思う?
例えば――運命を操ったり、ありとあらゆるものを破壊したりする程度の能力を持った姉妹とか。あぁ俺が昔丸太でぶっ潰したのも吸血鬼だったなぁ。
あとはアレ。妙にエロい緑の髪の……はサキュバスか、吸血鬼じゃなかった。似たようなもんだけどね。
しかしドイツもコイツも個人差があり過ぎる。銀が嫌いだったりニンニク普通に食えたり。十字架は平気だけど泳げなかったり。

ふぅ……さて、色々と言ったけど今回紹介する吸血鬼の名はDIO。今、友人マッシモと共に刑務所の中で休憩中だ。
彼は、いや彼等はここからどのように動いていくのか!?

――と、色々話してあげたいんだけど今回は無理っぽい。
え、『なんで?』って、知らないのかい?DIOは日光に弱く、なおかつ今は籠城が可能な場所にいる。
それでもって自分から『殺し合いにおける行動なんぞ』って言ってるんだよ。って事は……?

そう、このまま放送を聞き、名簿やら何やらと言った新しい情報を集めた上で行動しようって魂胆だ。

とは言え。とは言えだ。DIOもバカじゃないし、マッシモも空気は読める方だ。
DIOはマッシモに小さく告げたんだよ、
「すこし考えたい事があるんだ。友人にこういう事を言うのは申し訳ないが、少しの間一人にしてくれないか」
とね。
で、マッシモも察した。おそらくさっきチラリと聞いたDISCとやらに関する考察をしたいのだろうと。
なおかつ自分に話を聞かせる気はないとも理解した訳で。こう答えた。
「じゃあ……必要はないだろうが、見張りにでも出よう。いつ頃戻ってくればいい?」

かくして、DIOとマッシモは一時的に別行動を取る事になった、と。
――え?説明不足?まあ待てよ、順番に説明してあげるから。

385計画 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/16(月) 20:28:20 ID:a4x4k.ZA
まず、DIOは待機。マッシモの方は見張りを理由にして少し外に出ようとしている。
となれば必要なのはお互いの連絡手段だ。だが残念な事に二人の支給品はすべて確認済み。
けれども思い出してもらいたい。彼等が出会った一人の女性のことを。
スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするように足を持ってくるよう指示された女性。
彼女の支給品は携帯電話だった。使わない手はないだろうね。

次に、別行動の具体性というか計画性。
第一回目の放送を二人で一緒に聞くのはアウトだったんだ。考察をしたいDIOもそうだが、天国について聞かされたマッシモも自分なりにゆっくり考えたかった。
ならば善は急げ――悪は急げっていうのかな?とにかく即、行動さ。
でも、帰りの予定および行動範囲について、DIOは割と……いやかなり慎重だった。
彼はマッシモに放送の後30分くらいでさっさと戻ってくるようにと伝えた。頭の良いDIOのこと、放送を聞けばすぐに考察の結論は出るだろうからね。
しかも刑務所には下水道が通っていることが分かっている。となればそこを通ってもっと地図の中心部に行くべきだとも考えていたのさ。
ゆえに早い帰宅、うーん帰宅って表現で良いのかな?とにかくさっさと戻って来いとマッシモに伝えたって訳だよ。
あぁ――ここでついでに説明しておこう。きっと君らの中には『DIO様がそんな汚いところを歩く訳ない』と思ってるのもいるだろうから。
下水ってのは何もトイレの流し水だけが通ってる訳じゃあない。雨水とかを濾過しながら排水してるのさ。割ときれいなんだよ。

次で最後かな?あっさりと別行動に移った理由だ。
そうだ、せっかくだからDIOが出ていこうとするマッシモに言ったセリフを紹介しようかな。

「『生きる』と言う事は、私は恐怖を克服することだと思っている……そして、その行きつく先が天国だ。これはさっき話したろう?
 だとするなら、生きるために必要なものは一体なんだ?肉体、あるいは精神を動かすために必要なもの……言い換えれば『生命』とはなんだ?

 ――そう、石仮面のことを知っているだけはあるな。まさにその通り。血は、生命なり。ということさ」

うーん……分かるかなぁ?ちょっと難しいよね。という訳で、最初に話した“吸血鬼ってなんぞや”ってテーマを思い出してもらいたい。
――いやいや、思い出すまでもない。吸血鬼ってのは文字通り“血を吸う鬼”って事よ。色々いるけど皆が皆、結局のところというか……血を吸うから吸血鬼なのさ。
俺はそうでもないけど、必ず毎日一杯のコーヒーとタバコは欠かせないとかいう人、君らの中にはいない?仕事上がりのビールでもいいよ。
あんまり話題を出すとキリないからやめるけど、そういう嗜好品ってさ、
『かぁ〜っ、コレのために生きてるんだ、まさに命のガソリンよ』
って言う部分が少なからずあると思うんだよ俺は。だとするなら、それはDIOにもある訳で。
それがそのまま『血は生命なり』と。血は生命のガソリンでと。そう言う事だな。嗜好品が血液で、それは生命になって――何とも面白い繋がりがあるんだな。
まぁ要するに何が言いたいかって言うと……DIOはマッシモに、外出するなら多少なり血液を集めてきてくれ、と依頼した訳だ。
マッシモも断る理由はない。ちょっと探索して見つけた紙コップをいくつか持って早速出発したよ。

と――これで良いかな?まぁ簡単にまとめると、
その1、お互いちょっと一人で考え込む時間を作ろう。
その2、それが終わったら地下を通って移動しよう。
その3、血液……というか人間との出会いが重要。食事にせよ天国にせよ。
こんな感じかな?計画は練るし、慎重で複雑な行動もするけど内容はシンプル。これはこのチームに限った事じゃあないだろうけどね。

おっ――そろそろ放送が始まるみたいだよ。みんなでじっくり聞いてみようじゃあないか。
他の参加者もぼちぼち放送に向けて動いているみたいだし、今度はそっちにアプローチしてみようか。まぁ、今回はここまで。それじゃ――

386計画 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/16(月) 20:30:23 ID:a4x4k.ZA
【E−2 GDS刑務所内 / 一日目 早朝(放送すこし前)】

【DIO】
【時間軸】:三部。細かくは不明だが、少なくとも一度は肉の芽を引き抜かれている。
【スタンド】:『世界(ザ・ワールド)』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、麻薬チームの資料@恥知らずのパープルヘイズ、地下地図@オリジナル、リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、携帯電話、スポーツ・マックスの首輪
【思考・状況】
基本行動方針:帝王たる自分が三日以内に死ぬなど欠片も思っていないので、『殺し合い』における行動方針などない。
0.基本方針から、いつもと変わらず、『天国』に向かう方法について考えつつ、ジョースター一族の人間を見つければ殺害。もちろん必要になれば『食事』を取る。
1.我が友プッチもこの場にいるのか? DISCで確認しなければ…。
2.放送が終了し30分程度たったらマッシモを呼び戻し下水道を通って地下を移動、情報を集める。
3.マッシモ・ヴォルペに興味。
4.首輪は煩わしいので外せるものか調べてみよう。
備考:ヴォルペからスポーツ・マックスの首輪を預かりました


【E−2 GDS刑務所外 / 一日目 早朝(放送すこし前)】

【マッシモ・ヴォルペ】
【時間軸】:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
【スタンド】:『マニック・デプレッション』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、大量の塩@四部、注射器@現実、紙コップ×5
【思考・状況】
基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。
1.放送終了30分程度までは外に出て自分の考えの整理&誰かに出会えば接触。
(おおよその移動経路としてE−3北西の橋を渡り東を見てみようと思っている)
2.DIOと行動。
3.天国を見るというDIOの情熱を理解。
4.しかし天国そのものについては理解不能。
備考:DIOにスポーツ・マックスの首輪を渡しました


【支給品紹介】
携帯電話@5部
スチュ略に支給された唯一の物品。チョコラータとセッコが使っていたもの。
デザインは若干古いが留守電の録音なども可能。
お互いの番号は知っている(登録されている)ようだが、他にこの会場に電話があるのか?番号の登録はされているのか?それは現段階では不明

紙コップ@6部
支給品ではなく刑務所内で入手したもの。
F・Fが陸上での活動を克服するためにしょっちゅう持っていたもの。
結構大きいサイズで500mlくらいは入るのではないだろうか。
これに血を入れてストローで飲むDIO様を見られる日は来るのだろうか?それは現段階では不明

387計画 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/16(月) 20:32:00 ID:a4x4k.ZA
以上で仮投下終了です。いちおうage。

待機を選択するSSってのは難しい。そしてレス2つという短さw
そろそろ時間軸として放送にすぐ行ける組があっても良いかと思い時間軸を放送の少し前(≠直前ですので上手くリレーしてもらえればw)にしました。
タイトルの由来ですが、本当は「人間を人間たらしめる要素とは何か?」「それは血液だ、血は生命なり」「ゆえにそれを吸う吸血鬼は〜」というくだりで「要素」にしたかったんですが、思いのほか文章が伸びずorz
今回は単純に「計画」とさせていただきます。要素でも良さそうなら本投下の時に変えようかな。。。

矛盾点や誤字脱字等々ありましたらご指摘ください。それでは。

388名無しさんは砕けない:2012/04/16(月) 23:53:33 ID:qHJfyMhM
投下乙です。
誤字脱字は、自分が見た限りでは見当たりませんでした。
気になる点は、ホル・ホースとFFの存在です。
同じく早朝、放送前でFFコンビは一応施設内の捜索も行っているような一節がSSでは見られました。
ヴォルペの離脱のタイミングにもよりますが、双方のコンビがニアミスした、という感じなのでしょうか?
重箱をつつくようですみません。ただ気になったので……。

389 ◆Rf2WXK36Ow:2012/04/17(火) 17:25:43 ID:JbiFNw.A
仮投下乙です!
誤字脱字は特に見当たりませんでした
また、>>388氏と同様、ホル・ホースとF・Fについてはちょっとだけ気になりましたが
施設として刑務所はやたら広いので、ニアミスしたという脳内補完も余裕でした
向こうの二人はシャワーに籠ってましたしね…w
今後遭遇の余地もあると判断しましたので、個人的には修正は特にいらないと思います

390由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/24(火) 21:21:34 ID:Z6iTJ5Ck
若さ……若さって、なんだ?

――振り向かない事さ。

愛って……なんだ?

――ためらわない、事さ。


……ん?あぁ、ごめん。
今回の話がある歌とよく似通っているからちょっと口ずさんでみたんだよ。
じゃあ早速始めようか――


***

391由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/24(火) 21:21:58 ID:Z6iTJ5Ck
静かに、でもコソコソしないで救急車に近寄る。ドアを降りたところでぐったりと座り込んでいる老人は動く気配がまるでない。
私の足音は他に何の音もしないこの場所ではきっとその耳にも届いているはずだけど……シカト?

「……もしもしィ?」

正面から声をかけるとその人はゆっくりと顔を上げた。泣きまくってたせいだろうか、しわがやたら深くて丸めた新聞紙みたいな顔だった。
私が次に何を言おうか考えてるとその人はまた顔を伏せる。頭を持ち上げてキープするのも辛い程に首が弱ってるって言うの?

「ちょっと、シカトこいてないでなんか言う事無いの?」

思わず口調が強くなる。
相手――もはや老人とかお爺さんとか言ってやれるレベルではない――は上体を起こし、救急車にもたれかかる。
私はその目をキッと見る。きっと睨んでいるという表現では足りないんじゃあないだろうか。要するにガン飛ばしまくっていたと思う。
と同時に鼻を突く血の匂い。私の鼻がどうだとかではない程の強さ。場所は言うまでもない、救急車の後部。
……と、そんな風に状況を観察していたらやっとの事で老人の口が動いた。

「君は……殺し合いに乗っているのか?」

……うーん。まぁ、会場で他人に遭ったらこういう会話で始まるのが妥当でしょうけど。そうじゃなくない?目の前まで迫られてガンつけられてる相手に?
とはいえ、私にだって答える義理はある。私の方が質問を促したんだから。

「……誰かをぶっ殺そうと思ってる、っていうのを“乗ってる”って言うならそうなんでしょうね」

「そうか――じゃあ、私の事も殺してしまってくれないか?もう、疲れた」

ぼんやりとした口調でそんな言葉が返ってきた。でも、疲れたと言っても過労死とかいう話じゃあない。要するにメンタル面で何かあったのだろう。
そう思って私は救急車の後部ドアをバンと開ける。そこには一人の男がいた。さっきからプンプンする死臭の発生源。
老人が何か言いかけたが私は無視する。話は『コイツ』に聞く方が信憑性がありそうだった。

「『ブードゥー・チャイルド』――!」

スタンドの拳で座席に触れる。いつもと同じように、その場に唇が浮かんだ。

「スピードワゴ……さん……
 母…と……エリザベ……スと………ジョセ…を…
 ……頼み……ま……」

「だめだ…ッ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だッ………! ジョージ、まだ行くなッ……!!
 二度もッ……、二度もわしより先に死ぬんじゃあ無いッッッ!!!」

片方はさっき聞いた老人の声。となればもう片方がこの死体の声か。ンなるほど。
分析が終わった私はその人の方を向いた。

「あなた……スピードワゴン?ロバート・E・O・スピードワゴンなの?
 名前は知ってるわよ、有名人だもの。スピードワゴン財団の創設者でトップだった男でしょう?
 それが息子――ではなさそうね、話の感じ。でもそれ同然に大切だった男を失って“疲れたから殺してくれ”ですって?」

「……」

老人、スピードワゴンは返事をしない。
私のヴードゥー・チャイルドを見て驚いた表情をし――彼がスタンド使いだったっていう情報はあったような無かったような――
それでまた泣きそうな顔になった。この表情から言いたいセリフはどんなド低能でも分かる。次にアンタは、
『そこまで分かってるんなら良いだろう?早くこの世から立ち去りたいのだ』
……と言う。って感じかしら。

でも――


***

392由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/24(火) 21:22:17 ID:Z6iTJ5Ck
目の前の少女に胸倉を掴まれ、引っ叩かれた。先程エルメェスさんにされた行動と全く同じだった。
どうも私をすぐに殺してしまおうという気はないらしい。
が……それがなんだと言うんだ?こんな老いぼれに、今更何が残っていると言うのだ?

「私を――侮辱してんのか?」

――なんだって?思わず聞き返しそうになるほどに、言葉の意味がわからなかった。
さっきのエルメェスさんは私のためを思っての行動だった。
が、この子はなんと言った?私のことなど話題にも出さない。それどころか、自分のことを侮辱しているのかだと?

「大切な人が死んだから自分も死ぬ?それじゃあ私は最初に3人の首輪が爆破した時点で舌噛んで死ななきゃあならないわね。
 ――アァ?分かってんのか!アンタそんな私を侮辱してんのかって聞いてんだ!」

ものすごい勢いでまくし立てられた。その言葉の意味……分からない訳がない。
この少女だけではない。リサリサだって、エリナさんだって悲しんでいるに決まっているじゃあないか。
だが、だからと言ってこの殺し合いと言う舞台の中でどうやって生きていけばいいと言うのだ?
そんな私を察してか、少女の方が口を開いた。

「私はシーラ。シーラEだ。
 この『E』は『エリンニ』のEだ。意味分かる?――復讐よ
 私が敬愛する方の命を奪った罪をあのカリメロジジイに償わせてやる。
 誰かを殺すのがこのゲームに乗るって言うなら、あのジジイを殺そうと思ってる私はゲームに乗り気、ってことなんでしょうね」

「復讐……そんなことをして何になる?
 願いがかなうと言う主催者の話を信じると言うのか……?」

思わず口が動く。もう喉なんかカラカラに乾ききっていたのに。
お互いが黙ったまましばらく目を見つめ、見つめ返され――ドンと突き飛ばされる。

「……そんなことを言ってるんじゃあない。飽くまでも重要なのは復讐を『すること』それ自体だ。
 『復讐』なんかをして失った命が戻る訳ではないと、アンタはそう言った。許すことが大切なんだという者もいるだろう。
 だが――愛する者をこんなゲームで失って、その事を放棄して死ぬなんてまっぴらごめんだし……私はその事を覚悟してきた。

 いいかッ!
 『復讐』とは!
 自分の運命への決着をつけるためにあるッッッ!」


***

393由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/24(火) 21:22:37 ID:Z6iTJ5Ck
しばらくの沈黙ののちに――どちらからともなく救急車に乗り込み、その場を走り去った。
運転はシーラE。助手席にはスピードワゴン。もちろん後部ではジョージが眠っている。だがそれをシーラは深く聞いたりしない。
聞いたのはただの一つだけ。

「私の名前についてる『E』の話はしたけど……
 アンタの名前の『E』には何か意味があるのかい?」


――と、こういう話だ。
な?結構、歌詞とマッチしてるだろ?
若い頃のスピードワゴンならそりゃあもうすぐにでも立ち上がっただろうし、愛ってのは躊躇わないもんだ、ってのもそうだろう?

でもスピードワゴンが復讐に生きるのかなぁ?

確かめたいぜ――皆、同じじゃないから。
やりたいことをやってやれ、命がけだぜ。欲しけりゃその手で……掴め。

なんて歌もあるくらいだしなぁ。シーラEと一緒に決起するかな?自分の道は自分で決めるだろうけど、それが復讐なのかどうか……。
何にしても俺に言わせれば結構時間かかると思うね……あ、いや、こういう復讐者を集めまくってそのトップに立つとか?
うーん、それでもどっち道すぐには無理か……あぁでもなぁ――

394由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/24(火) 21:22:59 ID:Z6iTJ5Ck
【B-3カイロ市街北西 → ?−? / 1日目 早朝】

【二人のE】

【ロバート・E・O・スピードワゴン】
[スタンド]:なし
[時間軸]:シュトロハイムに治療され、ナチス研究所で覚醒する直前
[状態]:肉体的疲労(小)、精神的疲労(中)
[装備]:救急車(助手席に座っている)
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.とりあえずシーラEと共に移動
2.復讐だと……?こんな無力な私に?
3:何故ジョージが……? 何故なんだ、リサリサ……?そして最初の場所で殺されたのはジョセフ……?

[備考]
※救急車内に、エルメェスの基本支給品、ジョージ・ジョースターⅡ世の死体及び支給品(未確認)があります。


【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:健康、興奮状態(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
1.とりあえずスピードワゴンと共に移動し情報収集
2.主催者のクソジジイを探し、殺す
3.邪魔する奴には容赦しない
[備考]
参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。
移動経路については大して考えていません。以降の書き手さんにお任せします。

395由来 ◆yxYaCUyrzc:2012/04/24(火) 21:23:35 ID:Z6iTJ5Ck
以上で仮投下終了です。いちおうage
どことなく仗助リンゴォのSSと似通った展開になってしまいましたorzでも激アツ演出は書いていて楽しいですw
タイトルは、単純に名前の由来から。復讐でも決意でもよかったんですが、そっちはまだ後に使えそうなタイトルでしたのでw
泣いてるSPWをぶったたくだけの話ですので矛盾点もそう無いとは思いますが……誤字脱字含めそういった指摘があればコメントください。それでは。

396名無しさんは砕けない:2012/04/24(火) 21:32:53 ID:55mk/E9Q
仮投下乙
最近、氏の投下ペースが速くてとてもうれしいです。
私はほとんどかけていないので、なんとか波に追いつきたいところですね。
老SPWがどうなるのか楽しみです

397 ◆SBR/4PqNrM:2012/04/29(日) 01:04:34 ID:VqeKeFQo
 おわっと。
 本投下前に気付いて指摘出来なかったのですが、相変わらずアクセス規制中なのでこちらで。

 救急車内に放置されている ジョージ・ジョースターⅡ世の支給品は、『ナランチャの飛び出しナイフ』です。
 スレ投下時の状態表ではそこを明記し忘れて、wiki の方では修正したのですが、本スレ等では報告していませんでした。

398弾丸 ◆yxYaCUyrzc:2012/05/30(水) 22:43:18 ID:nMNSxFT.
『スピード×体重×握力=破壊力』
――という公式がこの世には存在する。
要するに、思いっきり“速くて”“重くて”“固い”モノをぶつけるのが強大なダメージになるって事なんだが……

さてここで問題だ。
『この公式に更に掛け算を追加して破壊力を上げるには何を掛ければよいか』?
まぁ、正解はないと思うよ。鋭さでも良いし、火力でも電力でも良いし。

……ん?なに『命をかける』?上手いこと言うね。
でも、それは最後の最後、文字通り一撃必殺で一発限りの大技だ。そうそう使えないだろうな。
それに、今回の話ではそこまでかけるやつは出てこないよ――


***


ドンッ!ドンッ!ドンッ!

ちっ、また銃声かよ。賑やかなこって……ここは『カンセーなジュータクガイ』ってやつじゃあねーのかよ?
ま、そのおかげで俺はこうして目を覚まし、窓からそォ〜っと状況を眺めてられる訳だが。

今撃ったのは逃げてる方か?指からタマをハジく、ねぇ。っつーか何十発撃ってるんだよ。段数無限ってか?
だが俺にも使えそうな技だ、今度やってみっか。参考にさせてもらうぜニィチャンよ。
んで、追っかけてる方には……やっぱりだ“また”当たらねぇ。

――と、要するに今の状況をまとめるとだなァ……
なんかのきっかけで戦闘が始まって追っかけっこしながら撃ち合ってるが、どちらも決定打が出てこないままこの近辺をグルグル回ってるとか行ったり来たりしてるとか、ってことになる。
迷惑な連中だ……ま、さっきデカい音たてて落っこちたコンテナ(あ?何でコンテナが分かるって?二階から見たんだよ二階から)の野郎に比べたら可愛いもんだが。

しかし、何がおかしいって、そりゃお前、考えても見ろよ?
“逃げてる方が積極的に攻撃してて”
“攻撃躊躇いながらも追っかけてる方には面白い程それが当たらなくて”
“その追っかけてる方がたま〜に撃つのは逃げてる方になぜか間接的に当たる”
――って事だ。

399弾丸 ◆yxYaCUyrzc:2012/05/30(水) 22:44:08 ID:nMNSxFT.
最初のはまあいい。そう言う状況くらいいくらでもあるわな。
二つ目と三つ目が問題なんだよなァ。ただ単に射撃が下手糞とか言うレベルじゃあない。
『躓いて転びそうになったら弾を避けた』
『明後日の方向に飛んでった弾がガラスに当たってシャワーみたいに相手に降り注いだ』
ってよ、どんなラッキーマンだっての。そりゃあガキの方が何十発と撃っても当たらんわ。パッと見『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法』じゃあなく、かなり狙って撃ってるんだが。
……となれば明らかにスタンド能力だぁな。追っかけてる方の――あのホームレスみたいなボロくせぇスタンドがやってるんだろうけどよ。

とか何とか俺が考えてる内にもお互いが喚き散らしながら撃ち合って走り回ってる。
何言ってるかは聞き取れねぇし、唇の動きを読むなんて俺にゃあできねぇ。そもそもンな内容なんか知りたくもねぇってのは置いといて。

さぁて……どうしたもんかな。今変装できるのは花京院に承太郎(何で二人いるかなんて考えるのはとっくに止めちまった)、後はなんつったかな、ブ男にジョースター。
それから川尻浩作としのぶ夫婦。あとは誰だったかな……まあどうでもいい、というかどうにでもなるわな……

――……って、ハァ? 何やってんだアイツ!?


***


「ハァッ、ハァッ……何だったんだ、あいつはッ!?
 まるでポコロコ――そう言えばレース後に尋ねたら彼もやっぱりスタンド使いだったな……
 それとまるっきり同じタイプ!完全に幸運という力に守られていた。相手の“自殺”がなければ倒せない相手だった……」

大きく肩で息をし、民家の壁にもたれかかった僕は先の戦いを思い出す。
ジャイロに会う決意をして家を出た、なんてレベルじゃあない。ただ単にというか、目的地もハッキリさせないまま外に出ただけで襲われるとは。
改めてこの『殺し合い』、いつ、どこで、誰が、どのように襲ってくるか分かったもんじゃあない。

「しかも……“この状況”これがまずい」

ぼそっと呟いて能力を発現する。
タスク――爪を超え『牙』となったそれは、確かに強力だが明らかに“弱くなっている”。

「なぜ……なぜ“Act1”なんだ」

400弾丸 ◆yxYaCUyrzc:2012/05/30(水) 22:44:33 ID:nMNSxFT.
疑問を口に出すも、答えはもう分かってる。自分でそれを認めるために敢えて声にして確認したんだ。

――この世界には“本物”が無い。
住宅の窓。舗装された道路の幅。街灯の間隔。エトセトラ。エトセトラ。
どれも『本物の黄金長方形』ではなかった。ゆえにそれを見て強くなるタスクはただの“爪弾”になってしまった……

ここで浮かび上がるもう一つの疑問。
『最初にアナスイと出会った時、何故簡単にAct2が発現出来たのか?』
これもすぐに分かった。ちょっと語弊のある表現になるけれども。

……アナスイは“美しかった”。

これは別に、肉体がどうとかフェロモンがどうとかいう意味じゃあない。
彼のジョリーンという子に対する愛、その“姿勢”が間違いなく“自然体”で、つまり“美しかった”からだろう。
ゆえに彼の姿は腰の角度から手首のひねり、風に流れる髪の毛一本一本にいたるまで『黄金の形』になっていた。だからAct2が発現出来たんだ。
逆に言うならばさっき戦った相手の“幸運”や“動き”は明らかに偽物。絶対に“美しさ”とは縁のない話だった、ということになる。

「だとするなら……必要なのは“出会い”ってことか、ジャイロにだけじゃあなく……さっきの地震?あったところ見に行ってみようかな。
 本当は馬がいれば良いんだけど、贅沢は言っていられないか――」


***


『ったくよォ、テメェが自分のこめかみに銃突き付けた時はマジで狂っちまったかと思ったぜェ?』

「それは君が私の話を聞こうとしなかったからだろう?
 『俺がついてるからサッサと全員殺して元の世界に戻って、改めて“決着”つけんぞ』と言いだして、そこから私の話など聞こうとしなかったじゃあないか」

『ワリーワリー、って。お前が散々“撃ちたくないんだ”とか喚いてたのはビビってたとかじゃあなくて、
 最初から“戦う相手を間違えてるから”って意味だった訳だ』

「そう言うこと。最初からそう言っていたんだが?」

『だからワリーって言ってるだろ。
 しかしなんだ、あのガキには悪いことしちまったなァ。だがまぁお前が大して撃たなかったせいで怪我もしてねぇだろ。せいぜい打撲くらいか?弾いた石とかのよ。
 ま、そんなことで“逆恨み”しちまったらこの世に未練が残るぜ?なぁ?ヒヒヒッ』

「君は人のことを言えないじゃあないか。無論、私もだが……」

『だな……良し。そうと決まりゃあ、早速“向かう”としようじゃあねぇか。俺を無理に労働させた揚句に殺し――』

「そして私に整形手術を促して影武者に仕立て上げたあの男を――」

「『幸福の絶頂の時から絶望に叩き落としに“迎え”に行こうじゃあないか……』」


***

401弾丸 ◆yxYaCUyrzc:2012/05/30(水) 22:45:30 ID:nMNSxFT.
さて……今回の話。何も端折って話した訳じゃあないんだが随分と短い話になってしまったな。
というのもまぁ、今回の話をしっかりと最初から最後まで語れる人間が参加者の中に存在しなかったってのが理由なんだけど。
だってほら、民家から眺めてたラバーソールは大して興味があった訳でもなく。ジョニィは自分の身に起こったことの把握に精いっぱいで、執事の奴は自殺してしまったんだから。
不思議な関係だよな。何十分か何時間か、そうやって戦ってた――あぁ、まあ一人は見てただけだけど――なのにお互いのこと全く知ってもいないって。

で、だ。最初に話した『破壊力の公式』の話題だが。
ジョニィはさらに“回転”という力をかけていた。だが今回、それに加えて持っていた“黄金比”という力を失い、代わりに“数”という力を取り戻した。
執事の方は“幸運”という力で守られてきた訳だが、結局のところ“筋違い”で力を失ったと。
ん、ラバーソールは?知らないよ、今回戦ってないもの。強いて言うなら“情報”かね?
いずれにせよ、出てこなかったろ?『命をかける』なんて大それたことをした奴は。

ジョニィはまっすぐコンテナが落ちた場所に向かうのか、ラバーソールはそんなジョニィに接触するのか、するならばどうやって?
そういう話は“別のテーマ”になるから今回は話さないでおこう。それじゃ、また――



【E-8 民家 / 一日目 黎明】

【ラバーソール】
【スタンド】:『イエローインパランス』
【時間軸】:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
【状態】:疲労(中)、『川尻浩作』の外見
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式×3、不明支給品3〜6(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)
【思考・状況】
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.さて、この状況はどうしたもんか……
2.空条承太郎…恐ろしい男…! しかし二人とは…どういうこった?
3.川尻しのぶ…せっかく会えたってのに残念だぜ
4.『川尻浩作』の姿でか弱い一般人のフリをさせて貰うぜ…と思っていたがどうしようか、つーかどうにでもなるだろ
5.承太郎一行の誰かに出会ったら、なるべく優先的に殺してやろうかな…?


【E-8 路上 / 一日目 黎明】

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小)、打撲(数か所、行動に問題はない)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品2〜4(内2品は確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.スタンドが“退化”してしまった。どうしよう……
3.謎の震源(コンテナが落ちたところ)に向かってみるか?
備考:ジョニィがもたれかかっている民家はラバーソールが籠城している民家かどうか?それは不明です。以降の書き手さんにお任せします。


【召使い@岸辺露伴は動かない 死亡 残り 79人以上】
※召使いの参戦時期は「ポップコーン投げ勝負の開始直前」でした。
※行動方針は「浮浪者の幽霊が幸運で守るからさっさと優勝して帰り、改めて勝負をするぞ」でしたが召使い自身の意思で自殺という道を選びました。

402弾丸 ◆yxYaCUyrzc:2012/05/30(水) 22:47:47 ID:nMNSxFT.
以上、仮投下終了です。予約した日に仮とは言え投下してしまい、ちょっと申し訳ない気もしますorz


ドルチ出てきたから良いよね?と思ったらスチュ略なみに名前も特徴もないキャラになってしまいました。ゴメンね召使い。

さて、今回はハッキリ言ってジョニィの退化→アナスイは美しかったんだッ!を勢いで書いてしまったSSです。
執筆当初は何度も一人称視点を切り替えて書いてたんですが、あまりにも長くなるのでカット。
三人称視点だとどうもスピード感がなく、しかたない『ウォッチタワー』が見てたって事にしよう→近くにラバソいるじゃんw
……という経緯を経て書いたものです。自殺の瞬間やその前後の問答も書いてたんですが思いきってばっさりカット。ゆえに多少脳内補完を要求されて読みにくくなってるかも知れません。

個人的な問題は以下の点。
・若干?ルールから逸れた参加者がズガン枠とは言え登場したこと
・コンテナ落下をシカトしてまで戦ってたのかよお前らw
・ジョニィのスタンド退化&アナスイ相手にはAct2発現の理由づけ
・ラバソも結局何もしてないのかよ、これでなぜ2nd優勝候補だったんだよお前
・鍵カッコや「……」の使い方。個人的には“ ”←この記号で括ってる単語は傍点を表現したく『 』←これと使い分けてますが……
・そもそも読みにくくない?(上で書いたような脳内補完の強制が)
他にも問題点、あとは誤字脱字。あるようでしたらご指摘ください。それではまた本投下の時にお会いしましょう。

403 ◆vvatO30wn.:2012/05/31(木) 01:11:03 ID:veqe5rcY
仮投下乙
なかなか難しいけど非常に面白い話でした
・召使いは既に浮浪者(の怨霊)に取り付かれていた。
・浮浪者は優勝して元の世界に戻るつもりだった。⇒召使いにジョニィを銃撃させた(?)
・召使いは自殺して元の世界に戻るつもりだった(?)⇒ジョニィとの戦闘中に目の前で拳銃自殺した。
・召使いも浮浪者同様怨霊化し(?)、あの男(だんな様)との決着を付けに元の世界へ戻っていった(?)。

いち読者としてはこういうふうな解釈なのですが、どうでしょう?
まあこのあたりのことはロワ的には重要視される必要無さそうですが。
この話の主題は「ジョニィのスタンド退化&アナスイ相手にはAct2発現の理由づけ」でしょうからね。

404名無しさんは砕けない:2012/05/31(木) 01:19:04 ID:veqe5rcY
ぎゃおおおおん!トリップ付いてれぅ!!

405名無しさんは砕けない:2012/05/31(木) 01:23:19 ID:veqe5rcY
指摘書き忘れ

召使いに支給されたであろう拳銃の情報が無いですね。
※に追加したほうがいいと思います。

406名無しさんは砕けない:2012/05/31(木) 11:35:04 ID:OZja1TKw
仮投下乙
気になったのは自殺した人が執事だったり召使いだったりするところです
統一したほうがいいと思う

407 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/01(金) 00:04:33 ID:52K0.X9I
色々とご指摘ありがとうございます。

・召使いの行動方針は>>403でほとんどOKです。……というのをSS内で解説せねば、かorz
・拳銃については確かに書き忘れ。ジョニィが持ってる事にしようと思います。
・執事or召使いは統一させます。

で……というか、完全に見落としていた重要なルール。

「外伝キャラって出したらアカンよ」←これ。

ドルチという先駆者(?)を見て完全にOKだと錯覚していました。
なによりドルチと違うのは(既に死亡しているとは言え)オリジナルのジョジョから参加している岸辺露伴に影響が出ると言う点。
こういう「外伝作の影響があるからだめよ」と決定したのをいまさら覆す訳にもいきません。
まして3rd開催から見てきている古参者としては率先してルール破る訳にもいかないでしょう。

といことで、皆様にご意見を頂きたい。
私としては『ジョニィのスタンドが退化した』ことを書ければ今回のSSにおけるテーマは完成なのですが、
・じゃあ召使いどころかそもそも誰もいらなくね?(どこでジョニィが一人でスタンド発現するのか?が課題)
・じゃあ近くにいるんだし最初からラバソもってけばよくね?(召使い参加がNGならこの方式になりそう)
・じゃあ召使い以外のズガン枠にするか、召使いの参加OKにすればいいんじゃね?(3rd開催時のルールを覆してしまうが……)
・その他(ご意見ありましたらご自由にご指摘ください)
……といった点を伺いたいのです。どうかご教授いただければと思います。
sage進行スレの話題をここに持ってくるのもアレですが、私の作品に関する意見も出ています。
ハッキリ言って執筆の姿勢にブレが出てきています。潮時かなとも思ったりします。
そんな私にぜひ皆様のお力を貸していただきたい。どうかよろしくお願いいたします。

408名無しさんは砕けない:2012/06/01(金) 23:52:14 ID:btXL7UcY
「召使いの参加が可か不可か」が論点であるなら、私も問題用議論スレで出ているものと同意見で、召使いの参加OKにすればいいんじゃねです。
せっかく書かれたのだし、関わりのある露伴も既に死んでいるから、多少は融通をきかせていいと思います。
そんなに気負わずともいいのではないのでしょうか。
ここから、今回のSSの可不可と関係ない話となりますが、ご本人が悩んでらっしゃるようなので、少しここで個人的お節介を申し上げます。
なんか寝言いってるなくらいに捉えて下さい。

執筆の姿勢にブレが出たとしても、進退を考える必要はありません。
書けなかったら書けなかったでいいと思います。焦らずとも、次にまた書きたくなるのを待てばいいのでは。
今回にしても、>>407後半の文脈をみると、「召使いはNGか?」よりも、「召使いがNGなら誰を書けばいいか?」と尋ねているようです。
それを考える事こそ、作者の権利であるはずです。「テーマを伝えるにはどう書けばいいのか」について意見を求めてしまうくらいには、構想を練ることに疲れてらっしゃる。
長くなるのでカット、と度々仰っているところにも、考えた展開を描写することに対する疲れが窺えます。
書くことに疲れたのなら、休んでみてはいかがか。
進退を考えるほど、執筆の姿勢に不安を感じているのなら、ここは一つ視点を変えて、小休憩してみるのもいいと思います。
体力と自信が充分な時に書くのがいいでしょう。
意地で書くのは疲れます。無理に自分に責任を課すことはありません。書く機会はまだまだあります。
決して引退なんてしてほしくないから言います。書きたいことを書けるだけ書くのが一番です。
たわごとを長々と失礼しました。

409 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:12:37 ID:RFFwArv6
ブチャラティ、ルーシー、ギアッチョ、ディエゴ
仮投下させていただきます

410 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:13:57 ID:RFFwArv6

握った彼の手には、温度がなかった。
雪の溶け出す小川にそっと指をつけたような、背中がすっと冷える冷たさ。それが、彼の大きな手に触れた時の感覚だった。
きちんとした医学知識を持っている訳じゃない。けれど脈を計るために重ねた指からは、一つの鼓動も感じられなかった。

それでも、脈もない、温度もない、そんな死人の身体を持つブチャラティの瞳は――強い光を持って活きている。

「ねえ、どうしてあなたは死んでいるの?」

私に手を触れられたまま、沈黙を守るブチャラティにもう一度同じ言葉を投げかける。彼は見開いた目を閉じた。
レバーから手を下ろし、私の手もそのまま振り払う。それは柔らかい拒絶だった。

「どうして……?」

ブチャラティのその一言で、車内の温度まで冷え込んだ気がした。それでも私は座席から乗り出した身体を戻すことない。

「ごめんなさい……私、読唇術を習ったことがあって。ほんのちょっぴりだけど……」
「つまり俺がさっきしていた事を見ていたと?」

無言で頷くと、ブチャラティは両手でハンドルを握りしめた。

彼は怒っているのかしら。
私が盗み聞きみたいな事をしたせい?
余計な事を言ったせい?

罪の意識と恐怖が、私の喉を締め上げる。ブチャラティが身体を動かす音が、やけに耳に響いた。
でも私の震える手に気がついた彼は、それを見て笑った。この殺し合いに巻き込まれてから何度も見てきた、安心させようとする優しい微笑み。

「ああ……すまない。別に怒っている訳じゃあないんだ!ただ俺は驚いただけで」

不思議と人の心を落ち着ける声だ。私も安堵の笑みを浮かべることができる。
しかしブチャラティはその微笑みをかき消すと、顔を近づけてきた。じっと私の瞳を覗き込む彼に、再び緊張が走る。 なんて強い目なのかしら。

「君は不思議な子だ……。ただの少女かと思っていたが、強い意志と行動力を持っている」

411 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:14:37 ID:RFFwArv6

――そんなことはない。
その言葉は声にならなかった。
――私が持っているとすれば、それは……あの人への愛だけよ。
ブチャラティの方がよっぽど強い何かを持っているくせに、そんな事を言う。そうだ。彼はジャイロ・ツェペリに似ているのかもしれない。どことは言えないけれど、その前だけを見つめる背中とかが。
そっと、彼の手が私の頬を撫でる。一瞬の冷たさに、私は思わず息を忘れてしまった。恋人のような甘いものではない。子供に何か言い聞かせるような仕草で。

「君が信頼できない訳じゃあないんだ……。ただ『知らなくていい事』とか『知らない方がいい事』はいくらでもあるだろう。
 ……君に秘密はあるように、俺にも言えない事はある。
 気をつけて……。純粋すぎる好奇心は君を傷つける事もあるから」

頬を撫でた手がそのまま下へ下りる。とん、と一度だけ軽く心臓の上をその指が示した。彼に撃たれた心臓がズキズキと痛み出す。
ブチャラティは固まったままの私を横目で見て、ハンドルとレバーに手をかけた。
彼の目線から開放された私は、呪縛から開放されたように車の座席に体重を預ける。体温が上がった。異常な程のスピードで、血液が巡っている気がする。思わず胸を片手で握りしめてしまうくらい。

「すまない……。君を責めている訳じゃないともう一度言わせてくれ。
 ただ、これは言い訳みたく聞こえるかもしれないが……聞かない方が君のため、という事さ」

分かっている。
彼が私を責める気などなく、私の身を案じてくれているだけだということは。瞳がそう語っていたから。

だから私が怯えているのは、もっと違うこと。
一つの単純な恐れ――。
私が嘘をついたことを、彼は知っている……!

こんな目をした人を欺けるなんて思ってはいけなかった。私は甘かったのよ。
そして何より、彼は私を信じてくれている。その信頼を裏切っているという事実が、私にはひどく重い。
私もブチャラティの事を信じている。でもそれ以上に彼の敵を裁く躊躇いのない姿は、私を不安にさせる。

気がつくと、窓から見える景色は前から後ろへ流れていた。ブチャラティは無言でハンドルを握っている。その姿を見ていられなくて、私は景色をじっと眺めることにした。
窓に写った私の顔はひどく憔悴しきっている。怯えた瞳から一粒だけ流れた涙を、ブチャラティに気づかれないように拭った。

412 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:15:16 ID:RFFwArv6
※※※



「――シー……ルーシー?」

その声に目を覚ました。心地よく揺れる感覚に、私は眠ってしまっていたらしい。はっとして運転席のブチャラティを見ると、真剣な顔で私を見ている。

「あ……ごめんなさい!」
「いや、いいんだ。休めるときに休んだ方がいい……。それより、少し降りよう」

ブチャラティの発する緊迫感は、どうやら外へ向けられているらしい。それでも、肌を刺すような緊張は車内を支配していた。
彼は私に声をかけながらも、じっと外を見ている。その様子に身体は強張った。私はブチャラティに続いて車を降りる。

「これって……」

そこで見たのは、一目で分かる悲劇の跡だった。

地面には穴が幾つも穿たれている。弾丸の跡のような丸いものや、切り裂いたような跡。辺りをキョロキョロと見回していると、地面が不自然に黒く染まった場所がある事にも気がついた。
あれはもしかして――。

「ルーシー。此処は独立宣言庁舎だ」

ブチャラティがいつの間にか取り出していた地図を私に見せてくれる。確かに此処は見覚えのある独立宣言庁舎だ。しかし人の気配は全くない。

「見ての通り、どうやら此処で何か衝突があったようだ。そして恐らく……死人が出ている……」

ブチャラティがその言葉と同時に赤黒く染まった地面を足先で示す。
やっぱりこれは血。それもかなり大量の。
詳しい事は分からないけど、この量の出血は危ないってことなんだろう。羽織っていたフードを握りしめ、改めて思う。やっぱりこれは殺し合いなんだ。

「だが恐らく、此処で戦闘があったのも少し前のことだ。生き残った方も既にどこかに立ち去っているとは思うが……」

ブチャラティはそう言って考え込んだ。彼の思案を邪魔しないように、私は黙って地面を見つめる。
きっと彼は今、私なんかには難しくて分からないことに集中してるのね。でもブチャラティが再び口を開くのに、そんなに時間はかからなかった。

「……とにかく、少しこの辺の捜索をしてみよう。ルーシー、危険だから俺の側を絶対に離れないようにしてくれ」

その言葉にした頷こうとして、止めた。

「いえ……ブチャラティ。私、どこかに隠れて待ってるわ」
「え?」
「万が一戦闘になったら、私がいたら足手まといでしょ?それにきっと貴方だけの方が探索もすぐに済むと思うし……」
「だが……」
「此処も人が寄ってきたら危険だろうし、車の中も目立つから……そうね、何処かの民家の中で待ってる」

そう一息で言い切ってから、ブチャラティを見つめる。彼は何か言いたげだったが、結局口を紡いだ。
小さく分かった、と了承するブチャラティ。本当は安心したけれど、それを隠すために微笑む。

「なるべくすぐに戻る。何かあっても出来るだけを離れないでいてくれ」
「ええ」

そして私は辺りの民家へ目を通す。目立たなくて、この場に溶け込んでいて誰も見向きしないような家――。
私は適当な一件を指さした。外から見てもおかしなところはないし、人の気配もないみたい。

「あそこ、あの家に隠れてることにするわ……。外から分からないように灯りはつけない」

彼が頷いたのを見て、私は小走りに駆け出した。後ろは振り向けない。
――きっと、彼が私を穿つような目で見ているから。

413 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:16:34 ID:RFFwArv6
※※※



民家の一階、カーテンの閉まった窓のすぐ下に私は荷物を下ろした。カーテンをちょっぴり開けて外を見てみる。外は少しずつ白んできているような気がした。
この家は、やはり何の変哲もない民家のようだった。ぼんやり暗がりの中に見える内装からは生活感が漂っている。それなのに、どこか歪で作られたような違和感を感じるのはなぜなのかしら。
窓の外からはさっきまでいた独立庁舎前の道が見える。ブチャラティの姿はもうなかった。そして車も。車で辺りを回るつもりなのか、どこかに車を隠したのかは分からない。
カーテンを隙間のないように閉めると、部屋は真っ暗になった。灯りのない、静かで寂しい部屋。

自分がワガママだということは十分わかっている。でもそれを押してでも一人になりたかったのは、少しだけ考える時間が欲しかったから……。
悩んでいる私の顔を、ブチャラティには見せたくなかった。

このままブチャラティに全てを隠したままで一緒にいてもらおうなんて、私はズルいのかもしれない。
もしこの殺し合いに、大統領とか遺体が――そして『大統領に呼び出された最後の刺客』が関わっているなら。私のこの行為は、彼の信頼を傷つけるひどい裏切りだわ。
……それでも私は怖い。
私には想像出来てしまう。正義の人であるブチャラティが、スティーブンを真っ直ぐな目で切り裂く姿が。それを……甘んじて受け入れてしまう、夫の姿が。

私は窓の下で、膝を抱えて座っていた。考えれば考えるほどに自然と涙が零れそうになり、唇を噛み締める。
一人は怖い。
でも今は一人がいい。





真っ暗闇の中、どのくらい一人でいたんだろう。
そんなに長くはなかった気がする。

トントン、と音がした。

リズミカルに床を叩く音。それが二種類重なって聞こえる。
はっとして部屋のドアを見つめた。目線を外さず、音も立てないようにゆっくり立ち上がる。

間違いない。
『誰かが階段を降りてきている――』
二つの足音は部屋の前で止まった。

誰かがいる。部屋に入ってくる。侵入者だ。
いや、違う。彼らは元から此処にいた。二階にいた。侵入者は私だ!

悲鳴を上げそうになる口を必死に抑える。何も見えない中で、音だけが状況を教えてくれていた。

ドアノブのまわる音。
左手は口を抑えたまま、右手は鉈を握りしめる。二つの足音がゆっくりと床を踏みしめて部屋に入ってきた。
後ずさろうとして、背中が壁にぶつかる。カーテンの擦れる音が、部屋中に響いた。

414 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:17:46 ID:RFFwArv6

「やはり……誰かいるな」
「――っ!」

恐怖で頭が真っ白になる。
喉から小さな声が絞り出された。言葉になっていない、悲鳴にすらならないうめき声だった。

「高い声……女か?」
「此方に戦う意志はない。ひとまず落ち着いてくれ」

ドアの前に立っているらしい二人のせいで、私はもうこの家の外には逃げられない。窓から逃げるという手もあるけれど、『この暗闇の中でカーテンを開いて鍵を探し解錠をして飛び出す』……そんなことをしている余裕もなく捕まってしまう。
だったら私が取らなくてはいけない行動はただ一つ、時間を稼ぐことだ。
声からして、両方とも男。まともに戦っても勝てないわ。
息を吸い込んで、出来るだけ落ち着いた声を出そうとしてみる。もう随分とおびえている空気は伝わってしまっているけれど。

「――外の……血の跡は?」
「……」
「知らない、関係ない……なんて言えないでしょう?」

挑発にも取られてしまいそうな発言だったと気がついたのは、暗闇が静寂に包まれてからだった。
がしがしと頭を掻く音と、舌打ちが聞こえる。思わず息をのんで後ずさってしまい、踵が壁を打った。

「君の予想通り……あそこで戦闘があった。戦ったのは、俺達と襲撃者だ」
「襲撃者……?」
「ああ。おそらく殺し合いに乗った者だろうな」

私の質問に答えているのは、二つの声の内の一人だけだった。先ほど舌打ちした方の男は黙っている。
光のないこの状況で、三人の呼吸とポツポツとした話し声が部屋を支配している。

「襲撃者は二人組。片方には逃げられてしまい、今は二人でこのあたりを探していた所だ」

……つまり、もう一人はもうこのゲームから下ろされたという事なんだろう。その命を代償に。
まだ警戒は解けない。
私と同じ、この戦場下において、「ウソ」は重要な意味を持つんだから。
でも無防備な女の私を即座に狙わなかったという事は、この人たちには殺し合い以外の狙いがある……のかも。警戒しているだけの可能性だって十分あるけどね。

「貴方たちは……二人?」
「ああ」
「いや、三人だった」

二人の会話に混ざってきた声は、もう一人の男のものだった。
その声に含まれる感情が、うまく読みとれない。でも何かを必死に押し殺しているような、そんな気がした。悲しみ?怒り?

「……おい」
「本当のこと言っといた方がいいだろう……」

415 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:18:33 ID:RFFwArv6

二人が静かに何かを探り合うような時間が流れた。
しばらくすると――どちらかというと落ち着いた声の男の方が、折れたようで「分かった」と声が聞こえる。

「俺は……その戦いで仲間を失った」
「ッ!」
「だが俺は『逃げたもう一人』を討つだけで満足するつもりはねぇ……。本当に叩かねぇといけないのはもっと上だ」

まさか。考えられる最悪のシナリオが頭の中に展開される。
もっと深刻に予想すべきだった。さっきまでの状況が『最悪』ではなかったッ!

「俺たちは主催者を引きずり落とす――そして俺たちの誇りのために、報いを取らせる」

あの会場にいた百人以上の中で、一体何人が夫の命を狙っているの!?


大統領が裏にいることは分かっている。
そして……その他の百人以上の参加者までも、スティーブンを殺そうとしているかもしれない。
もしも誰かがこのゲームの黒幕に近づいたとして、その時に夫が「トカゲの尻尾」にされるのなんて分かり切ったこと。

またしても、私の身体は小刻みに震えている。鉈を両手で握りしめて震えを止めようとしても、荒い息が漏れるのは止められない。
この鉈だけが、私とスティーブンを繋いでくれている証のような気がする。

助けて、と誰に向けているのかも分からない救いを求めてしまう。もうこの世界に希望なんてないような、暗闇の中に彷徨う気分だった。

「……だが、俺にはあの演説かましてた爺が全ての黒幕だとはどうしても思えねえんだよ」

でもその中に小さな火が見える。
あまりにいきなりの事で、私は声も上げられずに男のいるだろう方向を見つめていた。

「あんな何百人から恨まれるって分かり切った状態で堂々と顔晒すなんて狂気の沙汰だぜ。あの爺がそんな狂った奴には思えねぇ」

思わず頷きたくなるのをこらえて、私は彼の言葉を待った。

「黒幕は、暗い穴蔵の中にいる。そっちを叩かなくちゃあ、終われねえ……爺は利用されてるだけかもしれないしなあ」

ドッと、全身から力が抜けたような気がした。今までずっと私を支配していた緊張が消えて、座り込みそうになってしまう。

この人なら、この人たちなら分かってくれるかもしれない!
一歩、二歩と足が彼らの方へ進んでいく。ぼんやりと二人の影を捉えた。

「君は一人かな?一緒に行動しないか。少しでも協力者が欲しい
「え、あ……実は一人、人を待っていて……。彼に聞いてみないと……」

でもきっと、ブチャラティだって協力者が欲しいはず。上手くいく。全て上手くいくわ!
もうひっそりと隠れる必要もないだろう。荷物の中から懐中電灯を取り出して彼らに向けた。
新しく仲間になるだろう二人の姿を確認したい。弾くような高い音が聞こえて、暗闇は瞬間掻き消える。

416 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:19:48 ID:RFFwArv6

そう、瞬間だった。
全ては幻で、ウソで、安すぎる希望で、未だ私は生温かい暗闇の中にいるのだと、一瞬で気付かされたのは。



手前に立っていたのは、白い服の男だった。短いくせ毛と、鋭い目を隠すように眼鏡をかけている。
眩しさに目を細めてから、彼は私の心臓を掴むような視線で此方を睨みつけていた。

そしてもう一人、見覚えのある男がその背後にひっそりと立っている。ジョッキー服を着た青年。首筋に添うように伸ばした明るい金髪。
その姿を私が忘れられる訳がなかった。

「ディエゴ……ブランドーッ!」

もう一人の男と同じように目を細めていたディエゴは、私の姿を認めると柔らかい笑顔を浮かべた。人好きする、明るい、それでいてハリボテみたいな笑い。

「ルーシー……?良かった!貴方だったのか!」

手前に立っていた男を押しのけるように私へ近づいてくる。それに合わせるようにして、私の足は再び後ずさる。

こんな風に彼と再会するなんて、思っていなかった。ぎゅっと握りしめた鉈が汗で滑りそうなほどに緊張している。
なぜ、なぜ……!今の私は「アレ」を持っていない!こんな鉈一本で彼に敵う訳がないッ!

「そんなに警戒しないでくれ……。確かに俺はレースの中でジョニィたちと対立した。でも今はレースの勝者なんて気にしている場合じゃないだろう?
 ……それに、君も……あの人を助けたいんじゃないかな……?
 なあ――マダム?」

ディエゴの言葉は全て、私の心を上滑りしていく。何も耳に残らなければ、意味を理解出来るほど心の奥に届く訳でもない。
でも、最後の一言だけが胸の奥に爪となって突き刺さった。

(誓いを立てて結婚したなら夫のために守り続けろーーーッ!!)

……私はあの時決めた。何を犠牲にしてでも彼を守り続けると。
彼と私の幸せを、掴んでみせると。

もう何があっても退けないのよ。
彼が本心から協力したいと望んでたとしても、私は彼をスティーブンには近づけない。絶対に、彼を守ると決めたのだから。
そのために――何人もの命を犠牲にしてしまったのだから。
同じように全てを犠牲にしたジョニィの意志も、私の彼への思いも、全てがディエゴ・ブランドーという男を拒絶している。

そう決意すると、頭は逆に冷静になるようだった。
必要なのは、時間と――狼煙。

417 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:22:17 ID:RFFwArv6

「待って!止まって!こっちに来ないでッ!」

お腹に力を込めて、出来る限りの大声を出す。そのままなるべく自然に後ずさり、窓に背中をつけた。
ディエゴは動きを止める。一瞬だけ、彼の瞳が冷たく細められたのに、私は気付いていた。

「……貴方、遺体はどうしたの?」
「い、遺体……?」

遺体と口にすると、彼の様子は明らかに変わった。
ディエゴの後ろの男は何を考えているのか、何も言わず私たちを見ている。

「その様子だと……貴方も利用されているだけかしら?それとも何か企んでいるの!?」
「……」
「どちらにしろ、私は貴方とは組めないわッ!分かっているでしょう!?私たちは決して相容れない!!貴方がどんなに甘い言葉を吐いてもッッ!!!」

喉がぴりぴりと痛み始めた。
怒りに身を任せているように見せればいい。そんなの簡単よ。全てぶちまければいいだけだから。
ディエゴはすっかり「演技」を忘れているようだった。その瞳に疑惑と怒りを湛えながら、私を見ている。

「……ルーシー、君は――」
「それじゃあ困るんだよなぁ」

唐突に声がした。

それは、今まで私たちの会話を言葉も挟まず聞いていたもう一人の男だった。いつの間にか彼は苛立ったように、身体を揺すっている。
その鋭い眼光は、一度ディエゴを見てから、私へ向けられる。

私は再び恐怖を思い出していた。
一体、彼は何者なんだろう。
二人の関係の「イレギュラー」であるこの人が何をするのか……私にはまったく予想ができない。

「テメーには何としても一緒に来てもらわなきゃ困るんだよ……」
「おい、待て……ギアッチョ」

『ギアッチョ』とディエゴに呼ばれた男は、大きく足を広げて歩み寄ってくる。

「どうやら、テメーは黒幕とあの爺を殺すのに役立つらしいじゃねーかッ!」

逃げ場のない私を、男はあっという間に追いつめた。鉈の握りながら何も出来ない私の右手が締め上げられる。
無我夢中で腕を振りまわしながら逃げようとしても、首を絞めるように身体を持ち上げられてしまう。

「イヤッ!は、放して……ッ!!」
「キイキイうるせーなあ!冬のナマズみてーにおとなしくしてろ」
「ギアッチョ!」

どれだけ大声を張り上げても、何も変わらなかった。それどころか、私の首を締め上げる力は増していく。
鉈を取り落としそうになりながら、絶対にそれは手放せない。これだけは――スティーブンが私にくれた、この武器は……。

頭がぼおっと霞んでくる。
何も考えられなくなる。
金魚のように、ひたすら空気を求める。
でも望んだ酸素は肺には届かない。

ごめんなさい。ごめんなさい。
そんな気持ちだけでいっぱいになる。
誰に向けているのかも分からない。
もう一度、スティーブンに会いたい。
貴方の隣で、また……。

418 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:22:42 ID:RFFwArv6


切り裂く音が聞こえた。
いや、それは切り開く音だった。





押しつけられていた壁がなくなり、支えを失った身体が外に投げ出される。
私を押さえつけていた男の顔が遠ざかっていった。男はなぜか私ではなく、もっと奥をじっと見ている。その目は驚愕に彩られていた。
床に叩きつけられると思った身体は、何か柔らかいものに支えられた。

私は、そのたくましい腕を知っている。
温かさを失いながらも、力を、信念を失わないこの身体を。

「ブチャラティ……ッ!」
「ルーシー、大丈夫か」

私の身体をしっかり受け止めた彼は、壁の向こうを観察する。
するとすぐに、私の肩を抱いて走り始めた。

「二対一では危険だな……。走れルーシー!向こうに車を隠してあるッ!」

ブチャラティのスーツを握りしめながら、私は走る。彼が隣にいるというだけで、涙がぼろぼろと流れてきた。

「ごめんなさい……ごめんなざいッ!ブチャラティ……」
「……いいんだ。君に時間が必要だと思って、一人にした俺にも責任はある」

ブチャラティは、私の肩をより一層強く抱いてくれる。彼の優しさにまた涙がこぼれて、ほとんど視界も見えなくなった。でも彼が私を支えてくれるから、私は迷わず走ることができる。
本当に良かった。ブチャラティが私の叫びを聞き届けてくれて――。

「ルーシー……。俺は、あそこにいた男を知っている」

はっとして、私はブチャラティの顔を見上げた。彼は真っすぐに前を見ていたが、その眉は歪んでいる。

「……君に全て話そう。だから……君も俺に打ち明けてくれないか」

その言葉に彼から視線を外した。

――全て打ち明けて、それでも彼は私を信じてくれる?
――ブチャラティはいい人よ……。でもだからこそ、あの人たちのように死んでしまったら……。

もつれそうになる足を必死に動かして私は走った。涙の流れなくなった視界が徐々に開けていく。
夜明けがやってきた。

419 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:23:14 ID:RFFwArv6

※※※



失敗した。しくじったのだ、このDioがッ!

ファスナーで開かれた壁。走り去る後ろ姿を見ながら俺は拳を握りこんでいた。ギアッチョは何も言わずに、ルーシーと男の背中を見ている。

「ギアッチョ、とにかく二人を――」
「……何でだよ……」
「……?」
「クソッ!クソッ!クソッ!何で毎回毎回毎回毎回アイツなんだよ!!!なぜテメーは俺たちの邪魔をするッ!ブチャラティーーーッ!!!」

ギアッチョはもはや俺を見ていなかった。その怒りに燃えた目はルーシー・スティールを見ている訳でもなく、ただ彼女を連れ去った男に向けられている。
そこからは一瞬だった。
ギアッチョは即座にスタンドを発動させると、二人を追って走りだす。俺はその場に一人だけ残された。その状況に、俺の苛立ちは更に増した。



この家にルーシー・スティールが入ってきたことには気がついていた。

ゲームの黒幕を叩くと決めたものの、まずはどう動くべきか俺たちは悩んだ。とりあえず二人組の襲撃者の内のもう片方を探しに、狙撃出来そうな家をいくつか回る。
「らしき」家は見つけたのだが、その二階はすでにもぬけの殻で誰もいない。そのままその部屋で今後の動きについて話し合っていた。
――そしてその時、俺たちは車の音を聞いた。

窓から外を見て様子を伺うのも手だったが、俺はより安全な手を選ぶ。
ギアッチョに付けたままだったカエルを元にした恐竜を、その場所へ向かわせたのだ。

そこで俺は、車に乗っていた片方がルーシー・スティールだと知った。丁度恐竜が到着した時に二人は別れる所だったので、もう一人は確認できなかったが、それ以上に嬉しい情報を手に入れられたのだ。
俺たちの今現在潜伏している家屋に、ルーシーが飛び込んできてくれるとは!

正直、ギアッチョに彼女のことを話すのは不安だった。しかし此処に入ってきた女が、主催の男の妻だと話しても奴は案外冷静を保っていたのだ。
彼女は何も知らないが、うまく使えばいい道具にはなるだろう――そう言うと、ギアッチョはルーシーを取り込むことに同意する。

おそらく、本当に彼女は何も知らない。利用されているだけの哀れな娘だ。
利用され終わったとしても、あの大統領が「知りすぎた」ルーシー・スティールを生きたままにしておく訳がない。
だから、俺はあの「ルーシー・スティール」は「別世界のルーシー・スティール」だと思ったのだ。



しかし、いざルーシーと対峙するに当たって誤算が多すぎた。
交渉をした時のギアッチョの口ぶりは実に鮮やかなものだ。事前に俺が流れを提案していたとはいえ――あそこまですらすらと言葉をつむぐ様に、俺は驚いた。ここまで冷静になれるなら、今まで以上にうまく使えるかもしれないと。

まず第一の誤算は、ルーシー・スティールがギアッチョの仇敵と協力していたことだった。
もう一人同行者がいたとしても、ルーシー一人言いくるめてしまえばどうにでもなると思っていた。
「ブチャラティ」
それは、ギアッチョの仲間を殺したチームのリーダー。冷静に主催を狙う、と宣言したはずのギアッチョがあんなに簡単にキレるとは。

そしてもう一つ……あのルーシー・スティール自身だ。
あの女は遺体を知っていた。ならば「基本世界のルーシー・スティール」に他ならない。
――ならばなぜ、そのルーシーが参加させられている!?
大統領の狙いは?まさか本当にあの女は大統領と繋がっているのか?
……そして、ルーシーの言葉の意味は。

(……やはり、あのルーシー・スティールは『俺の知らない未来』を知っているという事か……ッ)

だとしたら、やはり俺は何としてもあの女からそれを聞き出さなければならない。

「俺は『イレギュラー』は嫌いなんだよ……」

五感が更に研ぎ澄まされる。
恐竜のそれに変わった四肢を動かし、ギアッチョの背中を追い始めた。
夜明けが来てしまった。

420 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:23:37 ID:RFFwArv6

【F-4 独立宣言庁舎前路地→? 1日目 早朝】




【ブローノ・ブチャラティ】
【スタンド】:『スティッキィ・フィンガーズ』
【時間軸】:サルディニア島でボスのデスマスクを確認した後
【状態】:健康 (?)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×3、不明支給品1〜2(未確認)、ジャック・ザ・リパーの不明支給品1〜2(未確認)
【思考・状況】 基本行動方針:主催者を倒し、ゲームから脱出する
1.ルーシーを連れて逃げる。逃げ切ったらウソ偽りなく、ルーシーと互いの情報を話したい
2.なぜ死んだはずの暗殺チームの男が…
3.ジョルノが、なぜ、どうやって…?
4.出来れば自分の知り合いと、そうでなければ信用できる人物と知り合いたい。



【ルーシー・スティール】
【時間軸】:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
【状態】:健康・混乱
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、鉈
【思考・状況】
1.スティーブンに会う
2.ブチャラティに全てを話すべきなの?





【ギアッチョ】
[スタンド]:『ホワイト・アルバム』
[時間軸]:ヴェネツィアに向かっている途中
[状態]:健康 怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2(未確認)、ディエゴの恐竜(元カエル)
[思考・状況]
基本的思考:打倒主催者。
1.ブチャラティを追う(頭に血が上ってそれ以外の考えは一時的に忘れています)
2.暗殺チームの『誇り』のため、主催者を殺す。
3.邪魔をするやつは殺す。


【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスター』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康 恐竜状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2〜4(内1〜2は確認済み)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰る
1.ギアッチョを追う。ルーシーから情報を聞き出さねば
2.仲間を増やす
3.あの見えない敵には会いたくないな
4.ギアッチョ……せいぜい利用させてもらう……
5.別の世界の「DIO」……?


[備考]
ルーシーとブチャラティは今、どこかに隠しておいた車に乗ってギアッチョから逃げるつもりです。
どこに向かうかはお任せします。


ギアッチョとディエゴ・ブランドーは『護衛チーム』、『暗殺チーム』、『ボス』、ジョニィ・ジョースター、ジャイロ・ツェペリ、ホット・パンツについて、知っている情報を共有しました。
フィラデルフィア市街地は所々破壊されています。
ギアッチョの支給品はカエルのみでした。

※ローマ近くの村にあった車(5部)
ブチャラティ達がサルディニアからイタリア本土に上陸し、チョコラータ達の攻撃を避けてローマに行くために盗んだ車。
盗んだと言っても車の持ち主は『グリーン・デイ』で死亡済み。ジョジョ本編でもブチャラティが運転していた。

421 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/08(金) 17:25:14 ID:RFFwArv6
以上で仮投下完了です。
期待に沿えているかはわかりませんが…タイトルは「暗いところで待ち合わせ」です。
なんだかダラダラと長くなってしまいました。

誤字脱字矛盾点疑問点ありましたら、ご意見お願いします!

422 ◆c.g94qO9.A:2012/06/09(土) 19:53:12 ID:OAWb2mVU
>>本スレ
代理投下、そして感想ありがとうございました。
いつもお世話になってます。

>>421
投下乙です。
すっごい楽しかったですし、感動しました。
また詳しい感想は本投下の時に。楽しみに待ってます。

423名無しさんは砕けない:2012/06/10(日) 09:56:33 ID:G9/NcBQ2
仮投下乙です。矛盾点や誤字脱字はさらりと読んだ感じでは見当たりません。
本投下の際に多少なり編集するでしょうからその後にまた確認します。
で、本スレで規制になると嫌なので今の内に感想を。

(元の世界で)因縁ある連中ばかりが集まったなw
ブチャ&ルーシーがお互いの全てを話したらまた大きく事態が動きそうですねー。
かと言ってのんびり話し込んでると追跡してくる二人の襲撃を受けると。ハラハラな次回に期待できる良い作品でした。
そして、どのキャラも違和感ゼロの描写に毎度毎度感心します。
改めて投下乙でした。本投下お待ちしております。

424 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/10(日) 13:26:39 ID:5eb8cBy.
ありがとうございます!
本日23時くらいから本スレ投下したいと思います。
ちょっと長めなので支援いただけると助かります!

425 ◆3uyCK7Zh4M:2012/06/10(日) 23:10:32 ID:5eb8cBy.
すいません!
ただいまpcが使えない状態でして、スマホから投下しようと思っていたのですが
そちらが規制されていまして…
もしvvat氏が見ておられましたら、先に投下して頂きたいです。
迷惑をかけて申し訳ありません。

426 ◆vvatO30wn.:2012/06/10(日) 23:16:20 ID:lzhY61Eo
了解しました。

427病照 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/27(水) 07:16:56 ID:XBPZoNa6
何度も質問するようで申し訳ないんだが……どうしても今の内に聞いておきたい事がある。

『俺の話をつまらないと思う人はいるか?』
――正直に言ってほしい。

ハッキリ言うと、今回の話のテーマは、愛だ。

さっきスピードワゴンの愛の話をしたが、あれとはまた少し違う。少しだけ。
一口に愛と言っても色々ある。夫を、妻を、彼氏彼女、子供、自分自身。
対象は人に留まらない。いわゆる俺の嫁から、物品、過去の思い出、自然、宇宙……

――いや、色々言うのは終わってからにしよう。まずは話そう。愛に生きる男女の話を。


***


「……何か?」
ぼんやりと明るくなりだした東の空を窓越しに見つめながら、山岸由花子は問う。

「東方向、約300メートル……鼠だ」
若干の沈黙の後、最低限の情報だけが相手の男から帰ってくる。
花京院典明の無愛想な返答にも由花子は眉をしかめたりしない。彼女もそういう態度をとっているから。

「――で?」
「いない。どちらも」
一言で済む――というよりは、一言にすら満たない会話。それだけでお互いの言いたい事は分かった。
だが。阿吽の呼吸、歩調の揃った夫婦――そんな甘っちょろいモノではない。

二人はお互いの目的のためだけに共にいるのであって。
お互いの理屈を否定しないために情報を共有しているだけであって。
お互いが目的を達成したらそこで消滅する関係であって。


***

428病照 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/27(水) 07:18:52 ID:XBPZoNa6
――時間を少々、いや、だいぶ前に遡る。

花京院と由花子は早々に広瀬康一の自宅に辿り着いていた。
本来の契約ならば、この場所に康一の姿が確認できなかった時点で契約は解消。別行動、いや……殺し合いになる予定だった。
だが、予定とはその通りにいかないからこそ予定と言うのかもしれない。

由花子の方が『待機』を提案したのだ。
彼女はあくまでも康一を見つける事を行動の第一方針としている。見つけぬことには殺す事も出来ないのだから。
となれば、家を出て探索に出た途端に入れ違いで康一が帰宅、なんてことは避けるべきである。
そう花京院に提案した。もちろん、アンタのスタンドをこき使って探索しまってやるから、と挑発を忘れずに。

一方の花京院もこれを否定しないどころか快諾。
理由は簡単。
『この場所を一目散に目指してきたから』それだけである。

教皇の結界を利用し襲撃に備えてはいたものの、目的以外のことにはもともと興味がないコンビである。
今まで見た人間で自分たちが探している相手以外はすべて避けて――いや、関わる気もなく放っておいたのだ。
空中でロッククライミングに興じる男たちも、女子トイレに潜り込む変態も。

だが広瀬家に到着してみたらどうだ。その途端に大地を揺るがす衝撃を受け、ついたったの今は駅から南下する動物を見つけ。
思った以上に入ってくる情報の多さに、それらを取捨選択し行動できる幅の広さを見出したのだ。

とは言え……彼等も天才ではない。
“わき目もふらずに”、“徒歩で”移動してしまったがゆえに目的から遠ざかっていた。
もう少しのんびりと情報交換していれば当初いた位置からやや西にDIOが通りがかり。
もう少し移動手段を考えていればトラクターで走り去って行った康一を追いかけられた。
もう少し早く広瀬家についていればコ落下物を確認している空条承太郎を見つけられた。

しかし――それでも彼等の運は尽きない。杜王町の周辺では戦いもいざこざも尽きない。それがこのバトル・ロワイヤルである。


***

429病照 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/27(水) 07:21:29 ID:XBPZoNa6
「さて――大事な事を聞いておこう」
「なに?攻撃する気ならやめなさいよ、さっきそう言う契約をしたところでしょう?」
不意に情報提供以外の会話を持ち出され由香子の眉が若干持ち上がる。

「いや、此処にいる制限時間だ。
 私としては第一放送終了をめどにここを出るべきだと思っている」
「理由は?」
「そもそもの問題なんだが……このゲームに広瀬康一、およびDIO様が参戦していると言う証拠はどこにある?」
相手のまぶたが痙攣し始めるのを花京院は見逃さなかった。目的を告げながらも。

「つまり――名簿とか言うのを配られて、そこに名前がなければ私たちは目的を失うということね?」
「その通り。私はそれを確信したら即刻、優勝を見据えた行動に映る」
由花子が大きく動揺した様子はなかった。
おそらくはこの数時間で同じような推測と計画を立てていたのだろう。花京院と同様に。

「その時はコンビは解消?殺して回るのも二人の方がいいと思うけど?
 私は別に一人でも構わないけどアンタが土下座して懇願すれば考えてやらなくもないわ」
「それはこちらのセリフだ。私の幽波絞が万一にも負けることなどない。
 ゆえにDIO様から空条承太郎抹殺の命令を与えられたのだ」
挑発と自負が混じった自己主張がその場の空気を重くする。
しかしそんな状況すらこの二人は気にしなかった。早々に沈黙を解消したのは由花子である。

「――はいはい、まあ後何時間か知らないけど、それまでは協力してやるわよ」
「ああ……おっと、早速情報を提供することになりそうだ」
花京院が窓の外を見やる。
由花子は、どうせまたハズレなんでしょう、と小さくもらして伸びをした。
が、花京院の一言でリラックスタイムを中断する。

「いや――今回はどうやらアタリのようだ。広瀬康一とは身長が低く、短めの髪を軽く立てているんだったな」

その名を聞いた途端に由花子は花京院を睨みつける。ばん、と彼女の手を叩きつけられた机は心なしか反ってしまったように見える。
「どこよ!?どこにいるのッッッ」
掴み唾を飛ばす息をいで怒鳴り散らす彼女に対しても花京院はやはり冷静だった。罵声の入り混じる欲求を制止する事すらせず淡々と告げる。

「トラクターに乗っている。どうも敵から逃げ……いや、逃げながら戦っているんだろう。敵であろう存在の姿はのスタンド視野からは把握できない。
 ――今コロッセオから離れるように西に進路を取った」

言い終わるや否や、由花子が玄関先に向かい、振り返る。
「さっさと行くわよ!アンタがいなきゃ追っつけないって事は認めてやるからさっさと用意しなさいよ!」
「やれやれ――その道中にDIO様がいたらその場で契約は解消するからな。それまでは――ああ、放送までだが組んでいてやろう」

花京院を待つ、その数秒すらも惜しむ勢いで山岸由花子は駈け出した。
「見つけたわよ……康一くん」
鬼気迫るという表現がぴったりのその表情からは似ても似つかない甘い声が、住宅街に飲み込まれていった。


***

430病照 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/27(水) 07:23:46 ID:XBPZoNa6
――これで家を出てからの目的が出来た訳だな。
もう少し家に留まっていればさっき話したジョニィやラバーソールの銃撃戦も目撃したんだろうが。それはまた別の話だ。
とにかくまずは康一を追うこと、その最中にDIOを探すこと。彼等にとってはそれが全てなんだ。
とは言え今は徒歩だから時間はかかるだろうけど。

ふぅ――さて。愛の話をしようか。

異性でも同姓でも、あるいは家族でも友人でも好き嫌いはあるし、好きならばそれは愛だ。
何もガチホモが……おっと失礼、とにかくそういうのを推奨してる訳ではない。否定もしないけど。
要するに、母親が子供を愛するのは、同じ女性が妻として夫を愛するのとはまた別の愛だろう?そういう話だ。

今回の話で言えば、山岸由花子は広瀬康一を。花京院典明はDIOを愛している。
そしてその愛の大きさが一線を画しているから殺しとか死とか、そう言う発想になっているだけだ。
そこに何の問題があるんだろう?好きなものには何も惜しまない。グッズをかき集めるオタクとかもそうだろう?それも愛だろ?

それでやっと、最初の質問に戻る。

勿論俺も皆のことを愛していて、その表現方法が、皆が知りたがっているバトル・ロワイヤルという世界を、彼等の冒険を、一人の語り部として語ること。今のように。

それで、もしも、もしも『俺の話がつまらない』という人がいたら……それはその人に俺の愛が届いてない、あるいはズレているってことだ。
となれば俺も多少なり考えなければならない。今後の立ち振る舞いについて。如何にして愛を伝えるかについて。

だから、もしいたら正直に言ってほしい。『お前の話はつまらん』と。
大丈夫だよ――流石に殺しまではしないから。さあ、手を上げてみな?

431病照 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/27(水) 07:25:04 ID:XBPZoNa6
【コンビ・花*花】


【E-8 広瀬康一の家→??? / 1日目 黎明〜早朝】


【花京院典明】
【時間軸】:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
【スタンド】:『ハイエロファント・グリーン』
【状態】:健康、肉の芽状態
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、ランダム支給品1〜2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:DIO様の敵を殺す
0.DIO様の敵を殺し、彼の利となる行動をとる。
1.広瀬康一の乗ったトラクターを追う。
2.山岸由花子を警戒・利用しつつ、情報収集する。
  ※利用するのは第一回放送後・名簿を確認次第、延長するか否か決定
3.ジョースター一行、ンドゥール、他人に化ける能力のスタンド使いを警戒。
4.空条承太郎を殺した男は敵か味方か……敵かもしれない。
5.山岸由花子の話の内容で、アレッシーの話を信じつつある。(考えるのは保留している)

【備考】スタンドの視覚を使ってサーレー、チョコラータ、玉美の姿を確認しています。もっと多くの参加者を見ているかもしれません。

【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。

【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。(能力、射程等も大まかに説明させられた)
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。(詳細は不明だが、音を使うとは認識・説明済み)
東方仗助、虹村億泰の外見、素行など(康一の悪い友人程度、スタンド能力は知らないしあるとも思っていない)


【山岸由花子】
【スタンド】:『ラブ・デラックス』
【時間軸】: JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前
【状態】: 健康・虚無の感情(小)・興奮(大)
【装備】: なし
【道具】: 基本支給品×2、ランダム支給品合計2〜4(自分、アクセル・ROのもの。全て確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:広瀬康一を殺す。
0.康一くんの乗ったトラクターを追う。花京院さっさとついてきなさいよ。
1.康一くんをブッ殺す。他の奴がどうなろうと知ったことじゃあない。
2.花京院を利用しつつ、用が済んだら処分する。乙女を汚した罪は軽くない。
  ※利用するのは第一回放送後・名簿を確認次第、延長するか否か決定

【備考】アクセル・ROを殺したことについては話していません。話すほど彼女の心に残っていませんでした。

432病照 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/27(水) 07:25:48 ID:XBPZoNa6
以上で仮投下終了です。一応ageます。

多少強引にでも深夜組を動かそうと思った結果がこれだよ!
時間軸がずれてて、かつ近所のパートがバリバリ進んでるとこんなに大変だったのか……orz
あと……タイトルは気にするなw

誤字脱字、矛盾点等々ありましたらご指摘ください。数日後に修正や加筆をして(しないかも)本投下しますので。それでは。

433名無しさんは砕けない:2012/06/27(水) 11:26:57 ID:IK56HQa.
仮投下乙です
>>428
もう少し早く広瀬家についていればコ落下物を確認している
→いれば落下物
>>429
掴み唾を飛ばす息をいで怒鳴り散らす
→飛ばす勢いで

確かに周りでバンバンイベント起きてるのに全然関わってこなかったなこの二人
内容面に矛盾等はないと思います

氏がこう書くと決めたスタイルなら文句もクソも…w(個人的にはあってもなくてもいいです)
いつもの序文か…って思わせておいて叙述トリックみたいなこともできるしね

434名無しさんは砕けない:2012/06/27(水) 21:15:55 ID:j7fQDp6o
仮投下乙ですー
とりあえず康一逃げてーw

435 ◆yxYaCUyrzc:2012/06/29(金) 05:58:16 ID:MDiRJY02
ご指摘ありがとうございます。
今晩(29日夜)にでも本スレに持ってこうと思います。大して長くない作品ですから支援は大丈夫……か・も

436単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:05:46 ID:p/53ep/2
さて――君たちに『俺の話はつまらないか?』と聞いて以来の話か。
自分で言っておいてなんだが、こういう悩みは何とも厄介なものだと思う。
本人にとっては深刻でも周りから見たら些細な事なのかも知れないしね。
で……そういう場合は多くの人がこう言うだろう。

『もう少し単純に考えたら?』と。
もっともな意見だ。というよりこれが全てかもしれない。

だがこの『単純』というのもなかなか難しい。

例えば――漫画作品を発行部数だけで見て、中身を見もせずに、
『売り上げナンバーワンの……ウン!ウゥン!……こそ史上最高!!他作品はゴミ。
 てめーらゴミ屑のネガキャンなんて関係ねーんだよ』
と爆笑するのも単純ゆえの発想だろう?そして、それに対していろいろ思うことがあってもそれを表面に出さず、
『そうなんだ、すごいね!』
の一言であしらうのも単純だが破壊力抜群の迎撃法だ。

で――単純ということの何が難しいって、
さっきまでの俺のように『単純に物事を考えられないこと』と、
例に挙げたような『単純にしか物事を考えられないこと』と、『そういう単純な相手を相手に回したときの対処法』だ。

君らは物事を単純に考えられるかな?単純な相手を上手くあしらえるかな?今回はそんな話をしよう。


***

437単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:06:27 ID:p/53ep/2
「絶対に相容れないって意味の、『水と油』って言葉があるがよォ〜……」
誰に言うでもなく一人で演説を始める男の名はギアッチョ。
彼がいる場所はエリアでいうとF−4地下、地獄昇柱(ヘルクライム・ピラー)の底。
相棒のディエゴ・ブランドーはその様子をフロア――柱の頂上から見下ろしている。お互いのスタンドの性質上、手を貸すわけにはいかない。貸す気もないが。
だがギアッチョは一向に上ってこようとはしない。様子を見ているディエゴを知ってか知らずかギアッチョはなおもひとりごちる。

「その言葉の意味はスッゲーわかる、良くわかる。
 油の入ったコップに水入れても混ざりはしねーからな……」

この言葉、恐竜の身体能力を肉体に宿したディエゴには十分に届いていた。
しかし、彼はこの後“ギアッチョのセリフに耳を澄ましていた”事を後悔する。

「しかしよォ〜〜この『油』って字はどういうことだアァ〜〜!?
 “サンズイ”ってのは水のことじゃあねェのかよッ!
 油が“水”ならとっくの昔に混ざりきってるじゃあねぇかッ!!
 どういう事だよ!エェ!?このイラツキ、どうしてくれるんだァ!!!」

突如張り上げられた怒声に鼓膜を破られんばかりの衝撃を受けたまらずたじろぐディエゴ。
怒りのたけを目の前の柱にぶつけるギアッチョは、殴って開けた穴を凍らせ、また柱を殴り穴をあけ、を繰り返してあっという間に柱を登り切ってきた。

「オイッ追うぞ!まだ遠くに行っちゃあいねぇハズだ!ボサッとしてんな!
 っつーかお前も追ってたろ!どこ行ったか検討つかねぇのか!?」
「デカい声を出すな。俺は建物の上から奴らを追っていたからおおよその見当は付く――逃げる瞬間こそ見逃したが奴らは地下を通って」
喚き散らすギアッチョに落ち着くよう促すも、ディエゴの言葉はなかなか彼の耳に入らない。

「地下なのは知ってんだよ!だから俺が下水道もぐって追っかけて壁ブチ壊しまくって――この柱にたどり着いたんだからな!」
「その先だ、ギアッチョ。俺が地上から確認していた限りでは奴らはまだ地下から出てきていない。
 というよりおそらくこの柱は無視しただろう。この建物の下水道それ自体をうまく伝って別のエリアに逃げたとみるべきだ」

わかりきっていた事実を淡々と告げられたことにギアッチョの中の怒りが爆発した。ディエゴの胸ぐらをつかむ。
「ンな解りきったこと聞いてるんじゃあネェんだよ!とにかく追うぞッ!」
大量の唾を吐きかけんとするほどの勢いでまくしたてるギアッチョをディエゴは再度制す。
「落ち着け……まだ慌てるような時間じゃあない。そして、闇雲に追うべきでもない。
 こう――発想を変えてみろ、逆に考えるんだ、俺たちはあえて取り逃がし、それを先回りして待ち伏せる体制を作ったんだと。
 直接追っていくのは些か骨が折れる。彼らが『この場にいた』ことが分かっただけでも十分じゃあないか?」

言われたギアッチョはゆるゆると襟首から手を放す。その鋭い視線はディエゴから1ミリも逸らさぬまま。
一方のディエゴの本心は先の台詞とは半々、といったところだ。彼とて自分の知りえぬ自分を知る人間に会場を闊歩されるのは気に食わない。
だがその感情が最後の最後で詰めを誤らせる。この場に放り込まれる直前に受けた屈辱を思い起こすかのごとく腹をさする。

「……チッ!まあそういう事にしてやる。ブチャラティの野郎がいたってことは奴のチームも、俺らのチームもいるってことだろうしな」
「わかってくれて何よりだ。そうと決まれば、こんなエリアの端で燻っている訳にはいかない。とりあえずエリア中央に向かって北上するぞ」

端的に会話をすませ、2人の化け物が館を飛び出していった。

438単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:06:46 ID:p/53ep/2
【F-4 エア・サプレーナ島→? 1日目 早朝】

【ギアッチョ】
[スタンド]:『ホワイト・アルバム』
[時間軸]:ヴェネツィアに向かっている途中
[状態]:健康、疲労(小)、怒り(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1〜2(未確認)、ディエゴの恐竜(元カエル)
[思考・状況]
基本的思考:打倒主催者。
1.ブチャラティ達を先回りして迎え撃つ……?とにかくタダではおけない。
2.1のためにとりあえず北上してエリア中央に向かう予定。
3.暗殺チームの『誇り』のため、主催者を殺す。
4.邪魔をするやつは殺す。

【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスター』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康、人間状態、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2〜4(内1〜2は確認済み)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰る
1.ギアッチョのいうブチャラティを先回りして討つ、ということにしておこう。
2.ルーシーから情報を聞き出さねばならないが『いる』とわかればどうとでもなる。
3.1・2の目的のため北上しつつ仲間を増やす。
4.あの見えない敵には会いたくないな。
5.ギアッチョ……せいぜい利用させてもらおう。少しうっとおしいが。
6.別の世界の「DIO」……?

[備考]
・ギアッチョとディエゴの移動経路は以下の通りです。
ギ:F−4を南下→G−4で路地を利用されブチャラティに逃げられる→地下の存在に気付きマンホールから下水道へ
  →G−4地下→F−4地下→突如現れた壁をぶち壊したら地獄昇柱の内壁だった→柱を登る←ここ
デ:建物の屋上を伝いF−4→G−4→ディエゴと同様ブチャラティを見失う→ギアッチョが地下に潜るのを確認し地上から追うことに
  →G−4→F−4→エア・サプレーナ島到着→柱に向かって喚くギアッチョ発見←ここ
・ギアッチョとディエゴ・ブランドーは『護衛チーム』、『暗殺チーム』、『ボス』、ジョニィ・ジョースター、ジャイロ・ツェペリ、ホット・パンツについて、知っている情報を共有しました。
・フィラデルフィア市街地および地獄昇柱(本体・内壁)が所々氷結・破壊されています。

439単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:07:57 ID:p/53ep/2
***


「……なんとか撒いたようだな。
 ゆっくり話をする暇も与えてくれなかったとは。流石というか、奴らも一流だな。
 ルーシー、すまないが地図を出してくれ。今俺たちがどこを走っているかわかるか?」
バックミラーの片隅から白い男が消えたことを確認しながらブチャラティが促す。
声をかけられたルーシーは、緊張こそしていたものの襲撃にあった疲労を表情に出さず地図を広げる。
「ええ、えーと――さっきG−4を南下してきて、この曲がり角で……その先はこの地図だけじゃあわからないわ」
「そうか――だが地下にこんな洞窟があるということはその地図もあるはずだ。俺が持っている支給品、全部開けて構わないから探してみてくれないか?」

ブチャラティの作戦はこうだった。
襲撃された地点から地図端に向かってひたすら南下、路地を曲がった瞬間にS・フィンガーズを発現し地面に穴をあける。
そのまま下水道を通って――仮に下水道などなくとも地面そのものにジッパーを取り付けて掘り進むつもりだったが――逃走を完了する。これが見事なまでに成功。
背後から追跡していたギアッチョは『建物の中に潜りこんだ』と、建物の屋上を飛び移りながら追跡していたディエゴは『エリア端は別の場所に繋がっている』と、一瞬だけ推測したのだろう。
それが正しいことかどうかは別として、その一瞬こそ殺し合いの場では命取りになる。結局のところ推測は『違った』が、それを確信した時にはすでに逃走者の姿はなく、と言ったところだ。

「ごめんなさい……それっぽいものは見つからないわ」
「君が誤ることじゃあない――とりあえず車を止めよう」
言いながら自動車を停止させ、エンジンを切ったところでブチャラティが車を降りる。それに倣うようにルーシーも。
静寂の中に放り出された二人。本来なら日が昇り鳥が囀るような時間であるが、それすらもない。
その静けさはルーシーのついた小さな溜息さえ大きく聞こえるほどで。
自分の溜息にビクリと体を震わせたルーシーの肩を抱きブチャラティがゆっくりと口を開く。

「……ルーシー」
「え、あっあの――」
ついにこの時が来てしまったか。彼にすべてを離さねばならない時が。
そう覚悟した瞬間だった。

「シッ――誰かくる……っ!」

彼の口から発せられた言葉は彼女の思っていたものとは違った。
しかし、それが彼女たちに安堵をもたらすかどうかと言われれば、単純に肯定はできないだろう。

彼らが真実を語りあうには、まだ遠い。

440単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:08:16 ID:p/53ep/2
【E-6 地下 洞窟内部 1日目 早朝】

【ブローノ・ブチャラティ】
[スタンド]:『スティッキィ・フィンガーズ』
[時間軸]:サルディニア島でボスのデスマスクを確認した後
[状態]:健康 (?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、不明支給品2〜4(自分、ジャック・ザ・リパーのもの、ルーシーが確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者を倒し、ゲームから脱出する
1.誰かがくる……!あれは……!?
2.1の対処後、ウソ偽りなく、ルーシーと互いの情報を話したい
3.何とか撒けたが、なぜ死んだはずの暗殺チームの男が?
4.ジョルノが、なぜ、どうやって……?
5.出来れば自分の知り合いと、そうでなければ信用できる人物と知り合いたい。

【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:健康、精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、鉈
[思考・状況]
基本行動方針:スティーブンに会う、会いたい
1.また襲撃……?
2.ブチャラティに全てを話すべきなの?(でも襲撃の最中はそれを忘れられるから正直ホッとしている)

[備考]
・ブチャラティが運転した車の移動経路は以下の通りです。
F−4を南下→G−4で路地を利用しギアッチョを一度引き離す→G−4地下→F−4地下
→そのまま下水道を伝うことで柱を回避→E−5地下→E−6地下←ここ
・二人の支給品の中に地下の地図は無いようです。

441単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:09:26 ID:p/53ep/2
***


「……まだあまり無理をするな。薬の効果がほとんど切れたとはいっても」
「大丈夫よ、問題ない。それにあたしが勝手にやってることなんだから」

ギャングたちの抗争から時間を少々さかのぼる。
場所はF−5南部、ローマの観光地を一部屋だけくりぬいたような土地。そこに一組の男女が姿を現した。
ちなみに女――トリッシュが疲弊しているのは何も薬のせいだけではない。背中に大きな荷物を背負っているからだ。

小林玉美。トリッシュをゲームさながらのシチュエーションで襲っておきながら、最後の最後で無様に気絶したド変態。
なぜ彼女がそんな変態を背負って歩くことになったのか、それはレストランでトリッシュの体力回復が終わるころに話し合った結果である。

当初ウェカピポは彼を連れて歩くことに反対した。
自分たちを――殺人という意味ではないにせよ――襲ってきた相手である。殺すとは言わずとも縛り上げてこの場に放置していくべきだと主張した。
この当然の意見にトリッシュは異を唱える。曰く、
「ここに放っておいて死なれたら自分たちのせいだ。己の正義にも反するし、玉美を知る人物にでも引き渡してしまうべきだ」
と。たとえ反対されても私が背負って歩く、とまで付け加えて。
そのまっすぐな意見にウェカピポが折れ、ならばと地図の地点を少しずつ移動しながら参加者と接触する案を出し――結果として一番手ごろなこの地点にたどり着いたのだ。

ちなみに――トリッシュは今、ウェカピポがよこしたジャケットの下に、レストランの中で調達した服を着ている。
ブランド物の服はいつかコイツに弁償させてやるなどと言いながらも、初めて着るウェイトレスの服には少女らしいはしゃぎようを見せていた。
閑話休題。

さて、到着したその地点は『真実の口』、表向きは有名な観光名所だがその実、ナチス研究所への入り口である。
この事実、二人はとうに知っていた。涎をたらし気絶している玉美の支給品を物色、没収した際に発見した地下施設の地図。
地下に何があるのかは二人の知るところではない。しかし、通常の支給品とは別に地図が支給されるという事実。
二人は地下に何かあるに違いないという理由、次の施設へ移動する際の直通経路になるという理由から地下に潜ろうと意見を一致させていた。

「いいか――開けるぞ」
「お願い。チャッチャと潜りましょう。綺麗なところだといいんだけどね」

短い会話を交わしウェカピポが真実の口に手をかける。
重々しい音を上げながら大きく口をあけたその真実に二人は――正確には三人だが――静かに身体を滑り込ませる。
ゴゥン……という音を上げ、真実は再びその口を閉ざした。


***

442単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:10:10 ID:p/53ep/2
さ〜て……玉美サン、実はもうとっくに目ぇ覚ましてましたァン!そら背負われてりゃ振動で起きますわな。
でももう少し気絶したフリしてるのが賢いですねェ〜、トリッシュちゃんの背中あったかいナリィ、ってかァ。
両手縛られてるからパイタッチできないのが難点だが……下手に触ってまた殴られるのもちょっとなぁ。

しかし地図も何も取られちまったのは痛いぜぇ。ウェカピポとかいう男は完全に俺のこと警戒……ってかケイベツしてるだろうしな〜。
この先どうすっか――もういっぺん康一どのあたりと合流できればラッキーちゃんなんだが、仗助あたりじゃあ厄介だしな……
つーか地下に潜ってこの先二人は行くアテあるのか?いつまでも寝っぱなしもさすがに怪しまれそうだしなァ〜。

「あれは――ブ、ブチャラティ!?」
「……ルーシー・スティール?なぜここに!?」

って、ん?誰か知り合いか?そ〜っと目をあけて……

……オォッ!?
ルーシーちゃん(でイイだろ、ブチャラティちゃんって名前があるか)カワイイおじょーちゃんじゃねぇかッ!
見た感じトリッシュちゃんより年下っぽそうだけど、ってことはもしかしてバババ、バージン!?うっひょォッ!
こりゃ〜玉美サン盛り上がっちゃうぜェ〜?あんまり盛り上がりすぎて“見た目”でバレちまわない様にしねぇとなぁ〜!
日ごろの行いが良かったっていうのか?やっぱ、俺ってば、ホント、ラッキー!!

443単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:10:28 ID:p/53ep/2
【F-6 地下 コロッセオ地下遺跡 1日目 早朝】

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(小)
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.あれは……ブチャラティ?なぜ……?
2.この変態野郎にあと100発くらいぶち込んでやりたいが、見殺しにするのは私の正義に反する。
3.ミスタ、ジャイロ、ジョニィを筆頭に協力できそうな人物を探す。
4.あのジョルノが、殺された……。
5.父が生きていた? 消えた気配は父か父の親族のものかもしれない。
6.二人の認識が違いすぎる。敵の能力が計り知れない。
[参考]
トリッシュの着ていた服は破り捨てられました。現在はレストランで調達したウェイトレスの服を着て、その上に吉良のジャケットを羽織っています。
『冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器』を打たれましたが、体力はずいぶん回復したようです。

【ウェカピポ】
[能力]:『レッキング・ボール』
[時間軸]: SBR16巻 スティール氏の乗った馬車を見つけた瞬間
[状態]:健康
[装備]:ジャイロ・ツェペリの鉄球、H&K MARK23(12/12、予備弾12×2)
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品0〜1(確認済)、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュと協力し殺し合いを止める。その中で自分が心から正しいと信じられることを見極めたい。
1.ルーシー・スティール……?なぜこの場にッ!?
2.この変態野郎が目を覚ましたら尋問して情報を聞き出す。
3.ミスタ、ジャイロ、ジョニィを筆頭に協力できそうな人物を探す。
4.スティール氏が、なぜ?(思考1のことも踏まえ)
4.ネアポリス王国はすでに存在しない? どういうことだ。

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ダメージ小)。興奮(大)。拘束(両手両足を縛り、猿ぐつわ)されている。服はウェカピポが着せたようです。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:どんな手を使ってでも生き残る。
1.トリッシュちゃんの背中あったかいナリィ……
2.ル!ルーシーちゃん!?カワイイ!ヨダレズビッ!
3.賢く立ち回るために気絶したフリ。タイミングを見計らって逃げるなり起きる(フリをする)なりしよう。
[備考]
どうしようもなく変態です。

444単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:11:20 ID:p/53ep/2
***


さて――多くの人間が話に出てきたからちょっとここらで整理しようか。

最初に出てきたのは、いかにも単純に見えるがれっきとした暗殺者のギアッチョ。
そして、そんな荒馬を、大変そうではあるが見事に乗りこなしているディエゴ・ブランドー。
それから、そんな狂気の二人組から逃げた冷静沈着、われらがブローノ・ブチャラティ。
彼に対して、また自分の存在があまりにも複雑すぎてちょっとしたことで壊れてしまいそうなルーシー・スティール。
ブチャラティの死を知っているから、単純に彼との再会を喜べないであろうトリッシュ・ウナ。
トリッシュと同様、ルーシーの存在に少なからず複雑な心境を抱くウェカピポ。
最後に……本能に忠実というか、単純極まりない小林玉美。

誰がどう行動し、それが何を生み、何を失うのか。
それを単純に言葉で表すのは不可能だろう。
だがしかし、それらが複雑に絡み合って生み出され、失うものもまた小さなものにはならない。

……なんて、ちょっとカッコつけて言ってみたりして。
『シンプルがいいッ!』なんて格言があるくらいだ。案外単純明快な玉美だけが生き残ったりしてね。ハハハ。

――ん?フラグ?あんまりそうメタな発言をするもんじゃないよ。
そういう言葉が単純なものをまた複雑にかき回すんだから――

445単純 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/16(木) 11:13:55 ID:p/53ep/2
以上で仮投下終了です。
久しぶりにSS書いたからなんだか支離滅裂な文章になってないか心配ですorz

エリア端で燻っている連中を少々強引にではありますが引き合わせてみました。
せっかくなら地下も活用しようとギアッチョ達を地上に、ブチャラティ達を地下に据えて話は終了。

この辺の矛盾や誤字脱字等々ありましたらご指摘ください。
個人的には状態表の表記位置。普段は最後にまとめて挿入していましたが、今回のように間に挟むのとどっちが見やすいんでしょうかね?

本投下は他の方々の投下に合わせて少々ずらすかもしれません。その際にも必要なら延長もします。それではまた本スレで。

446名無しさんは砕けない:2012/08/16(木) 19:15:25 ID:SivQPZCo
仮投下乙です
指摘すべき点は特にないと思われます

奇しくも3組とも5部7部コンビなんですね
ブチャラティとウェカピポは死亡フラグの元凶と再会することになるわけか 胸熱

447名無しさんは砕けない:2012/08/17(金) 05:31:31 ID:s3xM.d.E
投下乙です
自分も矛盾等は見つかりませんでした
感想は本投下の際に

状態表ですが書き手さんの好きなようでいいと思います
とりわけ気になるようなことはありませんでした



お節介の上に一読み手として出しゃばるべきではないとわかっていますが
最初の独白、最後の語りの部分、カットしてもいいのでは
単に自分の好みの問題です
書き手さんのスタイルに口出しすべきではないとわかっていますが、ただそう感じたので
不愉快に思われたらすみません

448名無しさんは砕けない:2012/08/17(金) 12:24:04 ID:1uGp4LgM
投下乙です
予約時点から遭遇楽しみにしてました!

誤字ひとつだけ
>>439 彼にすべてを離さねばならない時が
話さねばならない時、かな?

449 ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:38:45 ID:/FAXjg.U
遅ればせながら投下乙です。
状態表の位置は場合(参加者の現在位置が離れているなど)によって見やすさは変わるため、適切と思う所に書いてしまえばそれでいいと思います。
もちろん、全部最後でも別に構わないと思います。
矛盾は特になし、誤字は>>439 君が誤る→謝る がありました。

それでは私のほうもラバーソール、ジョニィ・ジョースター、サンドマン
仮投下致します。

450大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:42:05 ID:/FAXjg.U
「い、言いたいことがあるのはわかる! だがまずはそれを下ろしてくれ!」

道の真ん中で二人の男が睨み合っている。
だが、お互い心の底から相手を信用するつもりは全く無し。
数秒が数時間に感じられるといったような緊張感までは感じていない、いわば茶番に近い睨み合い。

(いきなり撃たれないってことはこのガキにも分別があるってことだ。第一関門はクリアってとこかねぇ)

叫ぶ男は空条承太郎のふりをするラバーソール。
『表面上』では焦りと緊張に包まれた顔を見せていたが、その下にある『素顔』は下品な笑みを浮かべていた。

「それはこっちの質問に答えてからだ………あんたの名前は?」
「く、空条承太郎だ」

一方、質問するのはジョニィ・ジョースター。
『タスク』の狙いをつけた指を相手から外さぬままラバーソールに問いかける。

「クージョージョータロー………あんたは本当に、自分が殺されたあの男と同一人物だと、そう言うつもりなのか?」
「あ、ああ………それは間違いない。身動きは取れなかったが意識はずっとあったんだ。
 俺は確かに他の二人と一緒に座らされていて、首輪が爆発して死んだはずの男だ」

(ヒヒヒ、お手本どおりの質問ってか。んなモンどう答えるかとっくのトンマに考えてあるっての)

自分を空条承太郎と言い張り、都合が悪いことは『最初に殺されたからよくわからない』で押し通す。
相手が質問を切り上げたら先程死んだ男のネタでじっくり脅してやればいい―――ラバーソールがそう思っていた矢先だった。

「そうか、それじゃあ―――」

ドン!

言葉の途中で、いきなりジョニィは『タスク』を撃った。
至近距離での不意打ち―――回避できるはずもなく、爪弾は正確にその額に着弾した。

「は?」

ようやく自分が撃たれたことに気がついたラバーソールの口から間抜けな声が漏れる。
続いて彼の体はぐらりと後ろに傾き、地面に倒れ伏した。

451大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:43:55 ID:/FAXjg.U
#


ジョニィ・ジョースターは『迷ったら撃つな』という考え方をする男である。
ラバーソールを最初に見たときも彼は撃つべきかどうか『迷った』ため『タスク』を撃たなかった。
だが、今ラバーソールを撃ったジョニィに迷いはない。

ジョニィの心境を変えた理由、それはジョニィが目の前に立つ男を『敵』だとはっきり理解したからだ。
では、その根拠は何か?


体に黄金長方形が見つからなかった?
違う。人間には様々な体格の者がいる、体のどこかに黄金長方形が必ず現れるとは限らない。

服装や顔つきが最初とどことなく違っている?
これも違う。服装は(替えの服さえあれば)着替える機会はいくらでもあった。
顔つきが違うのも、最初のホールにいた男が薄暗い中で鍔のある帽子をかぶり、うつむいて目を閉じていた以上、知り合いでもない者がその顔を正確に判断するのは至難の技である。
これも決め手にはならない。

ジョニィにとって目の前の男とホールの男の違い………驚くべきことにそれは彼にしてみれば『なんとなく』だったのである。
そんな乱暴な、と言う前に思い出してほしい――――――彼の姓を。


―――そう、ジョースターの一族、その証であるアザ。
不思議な肉体の波長のようなもので、『なんとなく』お互いの存在を感じ取れるというもの。

ジョニィは最初のホールで彼らを見たとき、その感覚に気付いた。
何故、始めてみるはずの人間がこうも身近な存在に感じられるのか。
何故、名も知らぬはずの人間に他人とは思えない何かを感じるのか。

奇妙なことに彼らが首輪の爆発によって殺害され、その命が尽きた後でもその感覚は続いていた。
ジョナサン・ジョースターの肉体を奪ったDIOのように、魂ではなく肉体そのものに備わる感覚が―――


だが、今目の前にいる男からはその感覚が一切感じられなかった。
そう、欠片も。

勿論、よく似た別人が勘違いしている可能性もあったが、この男は自分のことを間違いなく最初に死んだはずの男と言った。
ならば導き出される結論は一つ………目の前にいるのは嘘吐きな偽物で、自分を騙そうとしている『敵』ということだ。

だからジョニィは迷いなく、撃ったのだった。

452大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:45:08 ID:/FAXjg.U

ジョニィは辺りを見回す。
すぐ近くには今倒した『空条承太郎』の死体、少し離れたところには先程『自殺』した男の死体―――それ以外には何の気配も無かった。

(急いでここを離れないと、また誰かが来たら誤解されるな………いや、ある意味誤解じゃないけれど)

とりあえず荷物を回収したら移動しよう、そう考えるとジョニィは倒れた相手に近づき、デイパックに手を伸ばす。
だが次の瞬間、頭を撃たれたはずの『空条承太郎』が突然目を見開き、ジョニィに覆いかぶさろうとしてきた!!

「なにッ!?」
「ヒヒヒ、大当たりってやつだぜ、なんでわかったんだ? それともハナっからおれも殺る気マンマンでしたってか?
 まあどっちだってかまわねーがな、てめーはここで食ってやるんだからよぉぉぉッ!」

先程のお返しといわんばかりに至近距離からの不意打ちが立場を逆転して再び行われた。
黄色いスライムのようなスタンド『黄の節制』がジョニィに襲い掛かる。

ドン! ドン! ドン!

突然のことに驚きながらも再び相手に対して指を向け爪弾を発射するが、壁となったスタンドに全て防がれてしまう。

「効かねーなぁー!!」
「くそっ、ならこっちの銃はどうだ!?」

ジョニィは続けて逆の手に持っていた拳銃を発射するも、結果は同じであった。

「まずい、攻撃が効かない………うわっ!?」

いつの間にか下からも迫っていたスタンドに足を取られてしまい、尻餅をつく。
当然それを見逃すラバーソールではなく、ジョニィの体を次々と『黄の節制』で飲み込んでいく。

「てめーはここでオシマイさぁーーーブジュルブジュルつぶしてジャムにしてくれるぜェーーーッ」
「うおおおああああーーーーーっ」

地面を這って逃げようとする、だが逃れられない。
もがいても相手のスタンドは全く外れず、自分の体が溶かされていくような感触を覚える。

「くそっ、離れろッ! はな―――!?」

最後に残った顔が飲み込まれようとする正にその瞬間、ジョニィは見た。
どこからか『文字』が飛んできて敵に命中したのを―――直後に『黄の節制』の動きが止まった。
状況は把握し切れなかったが、スタンドの付着がなくなったことを理解したジョニィは必死に地面を這い、ようやく捕食から逃れて相手から離れる。

「あん? なんだ、何が起こっ………」

なおも距離をとろうとしていたジョニィは相手の不思議そうな声が途中で止まったのを聞き、そちらを見て目を疑う。
今度は『空条承太郎』の顔に『文字』が当たり、顔がまっぷたつに切り裂かれていた。

(こ、これはッ………この攻撃はまさかッ!!)

ジョニィは先程何かが飛んできた方向へと顔を向ける。
やはりそこに立っていたのは………

「お前は―――!!」

453大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:46:00 ID:/FAXjg.U
―――予感はしていた。
主催者の背後にヴァレンタイン大統領が関わっているとすれば、自分を野放しにしておくはずがない。
そして死んだはずの『この男』が生きて目の前にいる―――Dioと同じように。
ここに至って、ジョニィは確信を得た。

(やはり、スティール氏の背後には大統領がいる………間違いないッ!)


立っていたのは――――――サンドマン。
かつてジョニィが、自らの手で命を奪ったはずの男。


(死んだはずの人間を見るというのは、もう何度目だろう………なのにどうして、会うのは『敵』ばかりなんだッ!)

位置的にはやや離れているとはいえ十分狙える距離だったが、それはすなわち相手の射程内でもあるということ。
ジョニィは後ずさりしながら上半身だけを起こし、サンドマンに向けて『タスク』を構える。
一方、ジョニィの方へと向き直ったサンドマンはその様子を見てわずかに眉をひそめながら口を開く。

「………恩を売るつもりはないが、おまえは助けてもらった相手に礼のひとつも言わず、構えるのか?」
「だまれッ! ぼくは『遺体』を持っていない、これから手に入れるのも不可能だし欲しいとも思わないッ!
 もう全ては終わったんだ!! それでも、金のためにぼくの命を奪うつもりか!?」
「………………」

以前と全く変わらぬ声で喋るサンドマンに対し、大声で一気にまくし立てる。
相手は無表情のままだったが、その言葉を受けて纏う雰囲気が変化するのがよくわかった。
傍らに彼のスタンド『イン・ア・サイレント・ウェイ』が姿を現す。

「………おまえが何を言っているのか、それになぜオレの目的を知っているのかはわからないが、終わってなどいない………
 祖先からの土地を買う………そのために『金』を集めるというオレのやるべきことはな………」
(くそっ! やっぱりこうなるのか………マズイな)

このサンドマンが大統領と無関係だったら、あるいは空条承太郎のように『偽物』であってくれたらと微かに期待を抱いていた。
だが見た限り相手は確かに『本物』であり、自分に用があるのも間違いなさそうである。
以前サンドマンを倒したときに使ったAct2も、鉄球も無い今の状態で勝てるかどうか、既に答えは見えている。
相手は狩人、自分は獲物………状況はかつての戦いのときよりも悪い。
しかし、ジョニィのほうも簡単に諦めるつもりはさらさらなかった。

(ジャイロに会う………そう決めたんだ。それまで死ぬわけには行かない………
 だけどどうする? 少なくとも「隙」をつかなければどうしようも………
 いや、待てよ? 確かサンドマンはさっき………)

自分が知る限り、サンドマンは何も無いのに目に見える隙をつくるような間抜けではない。
ならばどうするか、答えは一つ。

(隙がなければ、つくるまでだ………ッ!)

「それに悪いが、お前が『遺体』を持っていないという言葉は信用できない………お前のスタンドがその証だ」
「サンドマン……………………」

ここから先はしくじったら死ぬ、またしてもそういう世界だ。
果たして、自分の企みは上手くいくだろうかと考えながらジョニィは呟いた。

454大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:47:03 ID:/FAXjg.U
#


(あれはジョニィ・ジョースター……? ヤツもここにいたのか………)

ミラションのいた家を離れてからしばらくして、街を駆けていたサンドマンは妙な男に襲われているジョニィを発見していた。
情報を集めるにしても厄介事に巻き込まれるのは避けたかったため、遠くから聞こえた轟音も地面を走るタンクローリーも無視してきた彼だったが、今回ばかりは事情が違った。
殺し合いの前に受けた取り引きの条件―――『遺体』を3つも持っているらしい対象のうち一人を発見するという好機。
しかも発見した二人はお互いのことで精一杯で、まだ自分の存在にさえ気付いていないようだった。

(ジョニィ・ジョースターを始末してくれるのはかまわないが、手段がマズイな………)

どちらか一方が倒されるまで待っていることも考えたが、スタンドによる捕食……それによりジョニィの持つ『遺体』まで喰われてしまってはどうなるかわからない。
やむを得ず『固める音』と『切る音』の二つを使って襲っている男を倒し、ジョニィを助けた。
『遺体』を素直に差し出せば命まで奪う必要はないと思っていたが、交渉の前に相手はいろいろとわけのわからないことを喋ってきた。
理解不能な部分は無視して要約すると、相手は『遺体』を渡すつもりが無いどころか、どういうわけかこちらの目的まで全て知っているようだ。


――――――すなわち、殺して奪い取るしかない。


このとき二人の認識には多少のズレがあったのだが、どちらもそのことには気付かなかった。

「それに悪いが、お前が『遺体』を持っていないという言葉は信用できない………お前のスタンドが証だ」

取り引きをするにあたって、相手の情報は聞いている。
ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリは遺体の所有者となることで『スタンド能力』を手に入れた、と。
能力が存在するということは、ジョニィは遺体を所持しているとみて間違いない。

「サンドマン……………………」
「『サンドマン』…………?」
(最初に目を合わせたのはいつだったか覚えていないが………以前とは明らかに目つきが違うな)

ただ怯えるだけの獲物の目つきではない。
この男なら命を奪う前に間違いを正すのも良いかもしれないと考え、サンドマンが口を開いたときだった。


「お前は次に『それは白人が勝手に聞き間違えて呼んだ名前 直訳は『サウンドマン』……』という」
「それは白人が勝手に聞き間違えて呼んだ名前 直訳は『サウンドマン』……!?」


自分の言葉を正確に言い当てられる―――サンドマンの一瞬の動揺、だがその刹那にいち早く動いたのはジョニィでも、サンドマンでもなかった。
今まで死んだ振りをしていたラバーソールが好機と思ったのか、デイパックから取り出した『ある物』に指を突っ込み、投げつけたのだ。
投げつけられた先にいたサンドマンは反射的にスタンドでそれを叩き落す―――この間わずか3秒。

サンドマンは自分が叩き落した物の正体を確認しようと視線だけをそちらに向ける。

(………果物?)

そこに落ちていたのは穴が開いたオレンジがひとつ。
サンドマンがその穴の中に妙な金属を確認するのと、オレンジが閃光を放ったのはほぼ同時であった。

455大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:47:47 ID:/FAXjg.U


ド ゴ ォ オ ォ ン ! !



(―――ッ!!)

小規模ながら人間一人に重傷を負わせるには十分なほどの爆発が起こる。
サンドマンはスタンドと音で襲い掛かってきた爆風から身を守り、同時に煙に包まれて視界が遮られる中での攻撃を警戒した。
予想通り、煙の向こうからジョニィの放ったと思われる爪弾が飛んできたが、これを難なくはじく。
続いて数秒後、後方にいる何者かの殺気を感じ取り、振り向きざまに『切る音』を飛ばす。

「どわっ!?」

そこにいたのはジョニィではなく別の男だった。
その体に黄色いスライムのようなスタンドが蠢いているところを見ると、どうやら先程ジョニィを襲っていた男であり、先程の頭もスタンドで作った『偽物』だったようだ。
飛ばした音は命中したようだがスタンドで防いだらしくダメージは無し、男は不利と判断したのか一目散に逃げていった。

(追う必要はない、爆弾を投げつけたのはおそらくあの男だろうが、今優先すべきはジョニィ・ジョースターのほうだ)

そうこうしているうちに爆風が収まり、視界がはっきりしてくる。
だが煙が晴れたとき、そこにジョニィの姿は影も形もなかった。

(ヤツの脚は動かないはず………馬も無しに遠くへ逃げられるはずがない)

ここでサンドマンはミスを犯してしまう。
彼がジョニィたちを発見した時点で、ジョニィは尻餅をついた体制の後這って逃げようとしていた。
そしてその後も相手の前で立ち上がることをしなかったため、サンドマンはジョニィが『立つ』姿を見ていなかった。
加えて、なまじジョニィのことを元から知っていたために彼が歩けるという考えに至らず、『近くに潜んでいる』と思い込んでしまったのだ。
周囲に音で罠を張りつつ見える範囲の物陰や建物内を警戒しながら確認していくが、見つかったのは知らない男の死体一人分のみ。

(………おかしい、ヤツは、ジョニィ・ジョースターはどこに消えた?)

付近の建物を再度調べてみても誰かが進入したような形跡や、自分の作った音の罠にかかった痕跡すらない。
試しにスタンドを消して「無防備」な状態を演出して見せても、ジョニィが攻撃してくる様子はなかった。

(考えたくはないが………これは「逃げられた」かもしれないな)

ジョニィは何らかの移動する手段を持っており、あの爆発のときに迷わず逃走を選択し、わき目も振らずに一直線に逃げていったのではないか?
この考えが正しければ周囲を警戒していた自分が時間を無駄にしている間にだいぶ距離が離れてしまった可能性がある。

(ここは一本道………爆発の直後、視界は悪かったがジョニィ・ジョースターがオレの側を通り過ぎたような様子は無かった………
 となると、ヤツが逃げたのはおそらく北の方向………逃がしはしない、この脚で必ず見つけ出し『遺体』を手に入れる………)

現在は自分も相手も一人きり。だがジョニィがジャイロ・ツェペリをはじめとする誰かと合流でもされると厄介なことになる。
一刻も早く『遺体』を回収するべきだ、と考えたサンドマンは薄明るくなり始めた街の中を全速力で駆け始めた―――



【E-8 路上 / 1日目 早朝】


【サンドマン(サウンドマン)】
[スタンド]:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
[時間軸]:SBR10巻 ジョニィ達襲撃前
[状態]:爆風によるかすり傷(行動に支障無し)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(ただしパンは一人分)、ランダム支給品1(元ミラションの物・確認済み)、サンドマンの両親の形見のエメラルド、フライパン、ホッチキス
[思考・状況]
基本行動方針:金を集めて故郷に帰る
1.ジョニィを見つけ出し、『遺体』を手に入れる
2.故郷に帰るための情報収集をする
3.必要なのはあくまで『情報』であり、次に『カネ』。積極的に仲間を集めたりする気はない

※ジョニィが北へ逃げたと考えていますが、正確な方向まではわかっていません。

456大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:48:35 ID:/FAXjg.U

#


先程の路上から南に逃げてきたラバーソールは振り返り、誰も追ってきていないことを確認すると立ち止まる。

「チキショー……上手くいくと思ったんだがなあ」

脅迫という当初の作戦は失敗したものの、不意打ちでガキを喰えると思っていたら妙な格好をしたサンドマンとかいう男が突然邪魔をしてきた。
『顔』は撃たれたり切り裂かれたりしたものの、自分より身長の高い承太郎に化けるにあたって顔は全て本体の頭の上につくった『偽物』なので問題はない。
ガキとサンドマンは知り合いらしかったがどうも雲行きが怪しかったため、死んだ振りをしながら漁夫の利を狙うつもりだったが行動のタイミングが早すぎた。
隙を見て厄介だと判断したサンドマンに投げつけた爆弾は大してダメージを与えられず直後の奇襲も失敗、どさくさまぎれにガキのほうには逃げられるというおまけつき。
結局、実利といえるものは何一つ手に入らない結果に終わってしまった。

「しっかし『黄の節制』をスパッといっちまうとはねぇ………あのヤローのスタンドはちっとばかし厄介だな」

『黄の節制』の防壁は爆弾一個の爆風で吹っ飛ぶほどヤワではなく、サンドマンの攻撃もどうにか防いだため怪我は無い。
だが飛んできた『何か』を防いだときに『黄の節制』がたやすく切断されたために危険を感じ、逃走を選んだのだった。
ラバーソールはサンドマンの攻撃の正体までは気付いていないが、いかに『黄の節制』といえど『音』を食うことは出来なかったようだ。

「ったく………承太郎といい、あのガキといい、サンドマンのヤローといい『疑わしきは罰せず』って言葉を知らねーのかね、ホント」

承太郎との遭遇、ガキからの奇襲、サンドマンへの攻撃失敗………
思い返してみれば先程からどうもツキに見放されているように感じる。

「ま、サンドマンっつー場違いヤローの名前もわかったし、あんまり欲張りすぎるのも考えモンか。
 いい加減疲れたし、おれは『節制』らしく放送までどっかでおとなしくしとこうかね、ヒヒヒ」

スタンドの名前とは裏腹に『節制』という言葉から程遠い男は勝手なことを言いながらも歩き始めるのだった―――



【F-8 川尻家前 / 1日目 早朝】


【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(大)、変装解除中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.疲れたし、放送までどっかでひと休みするか
2.空条承太郎…恐ろしい男…! しかし二人とは…どういうこった?
3.川尻しのぶ…せっかく会えたってのに残念だぜ
4.承太郎一行の誰かに出会ったら、なるべく優先的に殺してやろうかな…?

※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。

457大統領、Dio、そして…… ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 16:49:30 ID:/FAXjg.U

#


「ハァーッ………ハァーッ………………」

こんなふうに自分の足で全力疾走をするのはいつ以来だろうか。
こんなふうにたったひとりぼっちで走るのはいつ以来だろうか。
『スティール・ボール・ラン』レースでも似たようなことはあったが、あの時の自分は馬に乗り、そして傍らにはジャイロがいた。
今は本当に誰もいない、ひとりきりで走り続けたジョニィはようやく一息つくことができた。

「Dioとは違ってスタンドも『同じ』だったけど、あれは間違いなくサンドマンだった………」

心情的には逃げたくなかったが、あの場は一旦退くしかなかった。
サンドマンの手の内はわかっており、当時感じていた『恐怖』もすでに克服した。
とはいえ、Act1しか使えない今の自分が正面から戦って勝てる相手かどうかということは身に染みてわかっている。
だからこそサンドマンが叩き落したオレンジが危険なものだと判断した瞬間、牽制のために数発の爪弾を撃ち、全速力で駆け出したのだった。
その判断が良かったのに加えて距離があったため、爆発による目立った怪我はなかったが、自分を取り巻く問題は何も解決していない。

「たぶん、あの爆弾はさっきの『偽物』の仕業だろうし、サンドマンもあんな爆発程度でどうにかなるとは思えない………
 『偽物』のほうはともかくとして、サンドマンの脚力ならぼくが追いつかれるなんてあっという間だろうな………」

距離をとることには成功したようだが、相手の走る速度は自分のそれよりも遥かに速い。
おそらく、彼が再びジョニィの前に現れるのはそう遠くない未来だろう。

「悔しいけど、今のぼくがサンドマンに勝つなんて『できるわけがない』………だけどそれは『このまま』だったらの話だ」

レースにおいても他のことにおいても『逃げ』は『恥』ではない、『放棄』することが『恥』なのだ。
そういう意味で、まだ闘う意思をなくしていないジョニィは『途中で逃げ出すただのクズ』では断じてなかった。

「あのサンドマンもDioと同じように大統領が『異次元』から連れてきたんだろうか?
 ………いや、今は考えるのはよそう、サンドマンは必ず追ってくる………何かが、ヤツを倒すことができる『何か』が必要だ」

再び遭遇する前に相手を倒す手段を見つけなければならない―――かつて自分が戦いの中で『成長』したように。
それは黄金長方形の『本物』か、それとも協力してくれる『仲間』か、はたまたまったく別の『何か』か。
それを探すために、彼は歩を進め続ける。


ジョニィ・ジョースター―――一時撤退。



【D-7、D-8境目の路上 / 1日目 早朝】


【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(中)、打撲(数か所、行動に問題はない)、爆風によるかすり傷(行動に支障無し)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜3(確認済)、拳銃(もとは召使いの支給品。残弾数不明)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
0. 追ってくるであろうサンドマンから逃げつつ、倒す手段を探さなくては!
1.ジャイロを探す。
2.スタンドが“退化”してしまった。どうしよう……
3.謎の震源(コンテナが落ちたところ)に向かってみるか?
4.今は考えないことにするけど、大統領がスティール氏の背後にいる?

※サンドマンをディエゴと同じく『D4C』によって異次元から連れてこられた存在だと考えています。


[備考]
・ラバーソールが使用したオレンジ爆弾(3部)はアンジェロの支給品であり、彼の支給品はこれひとつだけでした。
・E-8中央の路上に音の罠がいくつか仕掛けられました。
・E-8中央で爆発音が響き渡りました。小規模なものなので、離れていれば爆発の音とは思わないかもしれません。

458 ◆LvAk1Ki9I.:2012/08/17(金) 17:01:36 ID:/FAXjg.U
以上で投下終了です。
周りでのイベントが多い中での余り者は結構行動制限されてしまいますね。

皆様にお伺いしたいのが
・ジョニィのアザとジョースターの血統について(ジョニィの首筋にアザは未確認、また一巡前のジョースターにも反応するのか?)
・イエローテンパランスにサイレントウェイの『音』は効くか否か

以上の2点です。
その他誤字脱字、矛盾等ありましたら遠慮なくお願い致します。
意見を頂いたうえで考えますが、投下順は少なくとも◆yxYaCUyrzc氏よりも後になると思います。

459 ◆yxYaCUyrzc:2012/08/18(土) 05:53:49 ID:WjYv20Kg
>>458
仮投下乙です。
誤字脱字はパッと見では見当たりませんでした。
ジョニィの件は……SBR本編中で描写がなかったことが大きいですね。個人的には多少ぶっ飛んでても良いとは思いますが議論は必要かと(必要なら議論スレへ)
ラバソへの攻撃は別段問題ないと思います。

さて、私の作品ですが、誤字脱字、その他もろもろのご指摘ありがとうございます。
今日の夜19〜20時頃に本スレへ持っていければと思っておりますので、(必要ない長さとは思いますが)支援いただければと思います。

460名無しさんは砕けない:2012/08/18(土) 10:16:18 ID:XJfu8mNc
仮投下乙です
・ジョニィのアザとジョースターの血統について
レース終盤父親が応援に来た時、アザで感知した様子はないのでアザなし・感知なしだろうか?と思います
一方で、なんとなく察知や虫の報せ程度の縁があったらいいと思う俺ガイル
『ジョースター』て感じがするじゃあないですか!

・イエローテンパランスにサイレントウェイの『音』は効くか否か
効くと思います
イエテンが無効にできるのはあくまで物理的な現象の範囲というイメージがある

461境遇 その1:2012/09/28(金) 22:50:51 ID:MVHCBwNo
さて……無事に、というか、君たちに第一回放送が終わったところまで話してきたわけだ。
ここらで一つ、質問というか考えというか、とにかく聞いてほしい。
――え?今までもずっとそうだった?まぁそういうなよ、俺としては結構重要な話なんだから。

この物語、いや――バトル・ロワイヤルではなく、いわば“彼らの奇妙な冒険譚”について大きな意味を持つ言葉。

『誇り』についてだ。

血統、技、信念、夢……彼らはその多くが心の奥底にそういった誇りを持っている。
それが悪いことだとは言わない。でも俺に言わせれば少々『頑固』だと思うんだよ。

『誇り』という単語を英語にすると『プライド』だそうだ。格闘技のタイトルにもなったあれだな。
だが、プライドと言い換えると“誇り”高いは、“プライドが”高い……少々『意地っ張り』に受け取られやしないか?
意地っ張りな女の子は嫌いじゃあないが、俺を含む一部のそういう……性癖?を持つ連中以外には敬遠されそうだとも思えない?

辞書だとかエキサ――ウン!ウウン!……翻訳サイトだとかで調べれば厳密には意味は違うそうだが、そういう意味にとられてしまっても仕方ないと思わない?
和製英語って言うのかね?ほら最近じゃ“にやにや”が“なよなよ”と知らないで〜なんてニュースになってるくらいだし、それと同じ感じかな?

まぁ、だからといって誇りを持つことを否定はしないけどね、ちょっと頭の片隅に入れて今度の話を聞いてほしい。


●●●

462境遇 その1:2012/09/28(金) 22:52:09 ID:MVHCBwNo
「億泰君……」

日の出とともに行われた放送によって改めて告げられた友の死に心が動かない訳がない。
橋沢育郎は静かに涙を流す。
この涙の意味は彼自身にもよくわかっていた。“決別”のための涙。
だが“それだけ”ではないのもまた彼自身がよく理解している。

「スミレ……」

自分の数少ない理解者の一人。自分と同様に数奇な運命に巻き込まれたちっぽけな少女。
共に過ごした時間は少ない。しかし、過ごした時間の長さが友情の深さと比例しないことはつい先ほど『ダチ』に教わった通りだ。
彼女を守ると自分に立てた誓いはもろくも崩れ去ってしまう。
育郎の手の届かない――どころか、知りもしないところで彼女は死んだのだ。
そんな彼女に対して涙を流す。それは“贖罪”の涙。君を守れなかった僕を許してくれと、天で見ていてくれと誓う涙。

「……行こう」
ここで崩れ落ちることは簡単だろう。三日間行われるというこの殺し合いの中ずっと喪に服していることは何よりも容易いだろう。
だが、“彼ら”はきっとそんなことは望んでいない。むしろ悪態をつきながら背中を叩くくらいのことをするだろう。

見れば足元には一枚の紙が、顔を上げればその紙を――名簿だろう――落とし飛び去る鳩が見えた。
その鳩を追うように、とは言わないが育郎は涙をぬぐい歩き出す。
目指す場所がある訳ではない。だがしかし下を向き、立ち止まることだけはしてはいけない。
走る必要もない。自分の力で一歩ずつ進んでいけばいいのだ。

この六時間で多くのことが起こった。これからも多くのことが起こるだろう。
だが、それらの事実を受け止められるほどに、橋沢育郎の瞳は光を取り戻し始めていた。


●●●

463境遇 その3  ◆yxYaCUyrzc:2012/09/28(金) 22:53:58 ID:MVHCBwNo
↑のレス、タイトルがその2の間違いでした&トリップ忘れorz

***


「コカキィィィィッッ……!」

日の出とともに行われた放送によって初めて知ったメンバーの死に心が大きく揺さぶられる。
ビットリオ・カタルディは周囲に響き渡る声を気にもとめず涙を流す。
この涙の意味は彼自身にもよくわかっている。“悲しみ”のための涙。
だが“それだけ”ではないのもまた彼自身がよく理解している。

「アンジェリカアァァッッ……!」

自分の数少ない友の一人。自分と同様に未来を見ることの出来なかったちっぽけな少女。
共に過ごした思い出と言える出来事にロクな事はない。しかし、記憶の内容が仲間の格付けになりえないことはよくよく知っている、つもりだ。
仲間を守るなどと大それたセリフを吐くつもりはないが、自分たちは無敵だと思っていた自信もろくも崩れ去ってしまう。
ビットリオの手の届かない――どころか、知りもしないところで彼らは死んだのだ。
そんなチームのメンバーに対して涙を流す。それは“怒り”の涙。俺らのチームに喧嘩を売った連中をブチ殺す。それを見ていてくれと叫ぶ涙。

「……行くか」
ここで泣き崩れていることは簡単だろう。三日間行われるというこの殺し合いの中ずっとグズグズ下を向いていることは何よりも容易いだろう。
だが、“彼ら”はきっとそんなことは望んでいない。むしろお前なら大丈夫だと背中を押してくれるくらいのことをするだろう。

足元で小さな悲鳴が上がったと思い視線を落とす。紙を――名簿?――落としたであろう鳩が血まみれで死んでいた、無意識に刺し殺していたのだろう。
その場を立ち去るように、というほどコソコソはしていないがビットリオはバイクにまたがる。涙を拭いもせず。
目指す場所がある訳ではない。だがしかし目を逸らし、立ち止まることだけはしてはいけない。
のんびりする理由はない。自分の力で確実に進んでいけばいいのだ。

この六時間で多くのことが起こった。これからも多くのことが起こるだろう。
だが、それらのすべてを怒りの矛先と考えてしまうほどに、ビットリオ・カタルディの瞳は黒く濁り始めていた。


●●●

464境遇 その4  ◆yxYaCUyrzc:2012/09/28(金) 22:55:44 ID:MVHCBwNo
「てめぇが……てめぇがやったんだなッ!?」
道路に二本の線を描きながら急ストップしたバイクからほとんど振り落されるように降りた少年はまっすぐに僕のことを睨み付けてそう言った。
言った、というよりは『叫んだ』に近い。十数メートルもあろう距離からでも耳を裂くような雄叫びとともにナイフを振りかざし突っ込んでくる彼に対して対処法が浮かばなかった訳ではない。
だんだんと自分のものにしてきた力をもってすれば逃走することも撃退することも難しくはないと思う。

でも、僕がそれをしなかったのは少年の叫び声が気になったからだ。
てめぇがやった……つまり、何かしらの事件の――十中八九殺害に関することだろう――犯人を探し求めているということだ。
そして僕を見るなりそう疑いをもって襲いかかってきている!ならば僕は僕自身の無実を証明しなければならないッ!

「待てッ!早まるなッ! 僕は僕自身が生きるための目的を見つけたいだけだ!」
少年に向かって叫ぶ。しかし聞こえていないのか、聞いていないのか、少年の足が止まることはない。むしろ加速しているくらいだ。

「ハッタリ抜かしてんじゃあねェッ 甘ったれのドチンポ野郎ッ!」

――ドスッ!


●●●


オレのドリー・ダガーを思い切り胴にくらったクソガキは動かない。
が……それはよく見たら間違いで、コイツは胴にくらった訳じゃあなかった。

「こ……こいつバカかあーっ!!ナイフを素手でつかんで止めやがったァーッ!」

このクソが思いっきり刃をつかんでるせいで俺のドリー・ダガーはそれ以上前には進まない。
進まない――がッ!

「ヒョロヒョロとしたオッサンよォ!オレがこのナイフをちょいとでも引っ張ったらどうなると思う?
 そのイモムシみてぇな四本の指が落っこちるぜ!」
「試してみろ!
 引っ張った瞬間僕の風のような張り手が君の頬を弾き飛ばす それでもいいのなら!」

……は?コイツ、ことごとく俺に喧嘩を売ってきやがる!
よっしゃあ、やってやろうじゃあねェかッッ!

――ザクッ!


●●●

465境遇 その5  ◆yxYaCUyrzc:2012/09/28(金) 22:58:14 ID:MVHCBwNo
えーと――ここからなんだけど、悪い、ちょっと話すのは難しい。
なぜか?……まあ待てよ。端的に話さなきゃ彼らの行動はかえって解りにくいんだよ。とりあえずこの結末に関して順を追って話すから。


まずはビットリオ、宣言通りにドリー・ダガーを引っこ抜く。
当然育郎の指はボトボトと落っこちた。人差し指、中指、薬指、小指。親指にも付け根に深い切り傷がつく。

が、育郎もビットリオに告げたとおりだ。バオーの力を出したかどうか……本人も無意識だろうけど、とにかく空いてた右手で思い切りビンタ。
これは痛い。ビットリオはたまらず吹っ飛ぶ。

――ん?『ドリー・ダガーがダメージを反射しなかった』?そりゃそうだ、育郎の血に濡れて刀身には何も映ってなかったし、張り倒された瞬間にビットリオはたまらず手を放してたし。

もちろん育郎は殺す気でビットリオを叩いた訳じゃあない。すぐにビットリオのもとに駆け寄ったさ。
で、「大丈夫か?僕は君を殺そうとは思ってない!」「君が探しているのは誰の仇なんだ?」「心当たりはないのか?」とかいう質問を2、3する。
けれどもそんなことで口を割るビットリオじゃあない。お前が仇だの一点張り。

ここで育郎はどうしたか?……自分のことを話したのさ。
「分かったよ。君に質問するのはやめよう。でも聞いてくれ!僕も君と同じなんだッ!
 ――そう、僕もそうだ。前から知っていた友も、この殺し合いの中で出会った人も、失ってしまった。
 僕は自分がどうなってしまうかわからない。自分に絡みついてくる怪物の力を、運命をどう受け入れていけばいいか確信が持てないんだ。
 今の僕にはいないけど……君にはまだ友達は、仲間はいないのかい?」
――とね。

ビットリオは放送に対する怒りでせっかくの伝書鳩をぶっ殺したから血まみれの名簿なんて見てない。っていうか放送のショックでそれどころじゃあなかったし。
数秒の間はポカンとしてたビットリオ。育郎の説得にどういう心境を持ったかは彼自身にしかわからない。いやビットリオ自身も大してわかってないのかも知れないけど。
とにかく名簿という単語を聞いて育郎から差し出されたそれをふんだくる。


あった、マッシモ・ヴォルペの名が。


そして、それを確認した瞬間、というべきか……彼は痙攣しだしたんだよ。
ウケケケとも、コココとも聞こえるような奇声を上げながら。顔には脂汗が浮き出ていて目の焦点もあっていない。
ついには咳込んだと思った瞬間に盛大にゲロ吐いた。流石に育郎も驚いたみたいだよ。自分のビンタが原因かも!?って。まあ違うんだけど。


要するに――ヤクが切れたんだな。
そりゃそうだ。何時間も摂取?してなくて、しかも飛んだり跳ねたり動き回ってたんだから。余計にヤバいわな。


あとはもう、ビットリオはうわ言のようにヴォルペの名を呟きながらフラフラ歩き出すしかない。
そんな意識もはっきりしないような状況でも路面に転がる短剣を拾い上げたのは流石というところだね。
で、育郎も慌てて追いかける。ビットリオが吹っ飛ばしたバイクを起こして。
落っこちた指は、そりゃあ痛いが――バオーの能力をもってすればくっつけることはできる。
動くかどうかはわからない。それでも切断面を押し当ててとりあえず『もう一度ポロリ』だけは免れた状態さ。

二人は――と表現していいものか、とにかくふらふらと歩き出した。ってところで話は終わりさ。……な。話すの難しいだろ?
こんなのいちいち細かく描写して話してたら日が暮れちゃうぜ?容量もいっぱいいっぱいだ。

466境遇 その6  ◆yxYaCUyrzc:2012/09/28(金) 22:59:51 ID:MVHCBwNo
さて――誇りというテーマを君たちに考えてもらいながら話をしたわけだ。
今回の登場人物、橋沢育郎とビットリオ・カタルディには“誇り”はあるか?

――ないだろうな、常識的に考えて。

育郎はバオーの能力を自分の意志で手に入れたわけじゃあない。能力に怯えてさえいた。そんな力を誇れるものか。
虹村億泰に感謝の意を込めて涙を流し決別したが、その涙を自分の誇りとして語れる程には彼も成長しきっていない。

ビットリオは自分の未来を悲観し――ていたかどうかは知らないが、麻薬にドップリ浸かり今を見ることすらままならない。
短絡的な性格とそんな現状。彼が誇りを持って話すことが出来る事柄は果たしてあるか?
コカキやアンジェリカの死に涙を流したがさっきまでは思考停止スタンド能力ぶっぱの“プッツン野郎”さ。そんな復讐心を誇れるか?


……『恥も外聞もかなぐり捨てて』という言葉がある。
これ、誇り高い人たちがその誇りを捨ててでも……って意味だろ?プライドが高いやつがそのプライドを折ってまで、とも言える。
だけど、だけどだ。“最初から誇りを持っていない”人間に『それ』は出来る?

誇りを持つこと、それ自体を否定するとは俺は言わなかったろ?
でも、『誇ることすらできない人間』もこの奇妙な冒険譚の中には多く存在することも事実だ。

今現在誇りを持たないこの二人が、何らかのきっかけで奮起すると良いんだけどね。自分の力や生き様を誇れるように。
あァ――でも育郎はともかくビットリオはなぁ……どう思う?そりゃあアイツだってさ――

467境遇 状態表  ◆yxYaCUyrzc:2012/09/28(金) 23:01:18 ID:MVHCBwNo
【C-6 南部 / 1日目 朝】


【橋沢育朗】
[能力]:寄生虫『バオー』適正者
[時間軸]:JC2巻 六助じいさんの家を旅立った直後
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、肉体疲労(小〜中)、精神疲労(小)、左手の親指以外4本機能不全(?)
[装備]:メローネのバイク(押して歩いている)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルを破壊
0:億泰君、ありがとう。スミレ、ごめん。僕は僕の生きる意味を知りたい
1:目の前の少年を追う。放置するわけにはいかなそうだ(この少年と僕は……なんか……似てる)
2:恐怖を克服……か……

[備考]
1:『更に』変身せずに、バオーの力を引き出せるようになりました
2:名簿を確認しましたが、育郎が知っている名前は殆どありません(※バオーが戦っていた敵=意識のない育郎は名前を記憶できない)
3:左手の指は接着し、とりあえず落っこちる事はなさそうです。ただしすぐには動かせなさそうです(握る開く程度の動きはできるようです)
  回復の度合いがバオーの能力を使いこなせていないのかロワ制限なのかは以降の書き手さんにお任せします
4:行動の目的地は特に決めていません。今はとにかくビットリオの後を追い、必要なら保護しようと考えています

【ビットリオ・カタルディ】
[スタンド]:『ドリー・ダガー』
[時間軸]:追手の存在に気付いた直後(恥知らず 第二章『塔を立てよう』の終わりから)
[状態]:全身ダメージ(ほぼ回復)、肉体疲労(中〜大)、精神疲労(中)、麻薬切れ
[装備]:ドリー・ダガー、ワルサーP99(04/20)、予備弾薬40発
[道具]: 基本支給品、ゾンビ馬(消費:小)、打ち上げ花火、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾・黒煙弾×2)
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく殺し合いゲームを楽しむ
0:ヤクが切れているのでまともな思考が出来ない。目的地も不明瞭
1:兎にも角にもヴォルペに会いたい。=麻薬がほしい
2:チームのメンバーの仇を討つ、真犯人が誰だかなんて関係ない、全員犯人だ!
[参考]
1:基本支給品をまとめました
  →いらないと判断されたものは C-6中央、アイリン達の死体の脇に放置されています
  →ドリー・ダガー以外の道具や装備品はメローネのバイクの荷台(後部座席)に乗せてあります
2:名簿を確認しましたが、自分に支給されたものは持ってきていません
3:行動の目的地は特に決めていません。というよりも考えられません

468境遇  ◆yxYaCUyrzc:2012/09/28(金) 23:02:29 ID:MVHCBwNo
以上で投下終了です。とりあえずage

誇りってなんだろね、な話を書いてみたかったので“被害者”の二人にスポットを当ててみました。
本当はもう少しネチネチ、クドクド書くつもりでしたが、かえって話の本筋が見えなくなりそうだったので思い切って後半カット。

それから、このSSに限らずですが自分の「かぎかっこ」の使い方について少々。
『 』は漫画で言うならフキダシの中に書かれる、文字通りこの『 』で、
“ ”はジョジョ原作でもよく見るフキダシの中の傍点(文字の隣に・がうってあるアレ)をイメージしています。
読みにくい等の理由で統一してほしいといった意見がありましたらお聞かせください。

設定の矛盾や誤字脱字、その他のご指摘も受け付けております。それでは本投下時にまた。

469名無しさんは砕けない:2012/09/29(土) 03:57:21 ID:slsVtyLY
投下乙です。誤字脱字も見つからず、矛盾もないように思えます。
最後の恥も外聞も捨てて、の一文が興味深かったです。

育朗の反応もグッド、ビットリオのヤク切れもグッド!
本投下待ってます。

470 ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:30:51 ID:4R7Y1ZHY
仮投下開始します

471勝者 その1  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:31:51 ID:4R7Y1ZHY
――さて。今回は多くは語らない。まずは聞いてもらおう。いろいろ言うのは最後だ。

今回は皆に前々から約束していた『最強』について……

……話をする前に、その“最強”という存在を決めるものについて話をしよう。


***


そして時が来た。
壁にくくられた古時計がカチリと音を立て六時を示した、まさにその時。
三つの影が、動きだした。


一人目。ビーティーが炎の輪から抜け出す方向へ。
この時、モハメド・アヴドゥルは賭けた。ビーティーがいうところの“策”に。
一瞬だけ炎の壁に穴を開けビーティーの逃走経路を作り出す。

二人目。それを阻もうとズッケェロ。
戦場から逃げ出す臆病者ほど仕留めやすい相手はいない。また、彼自身も三つ巴の戦いに積極的に参加する気もない。
炎の壁を突き抜ける際に多少の火傷はするだろうが後の戦闘を考えれば些細なリスクである。

三人目。さらにそれを阻止するために『魔術師の赤』が。
本体のアヴドゥルは動かない。分類こそ近距離型のマジシャンズ・レッドだが、飛び道具がない訳ではない。
十字架を模した炎を数発ズッケェロの足元に発射。あくまでも目的は足止め。即死を狙うものではなかった。


結果としてビーティーは戦闘から離脱し、残る三人が火炎のリング上でデスマッチを開催することになる。

再び、三つの影が、動き出した。


***

472勝者 その2  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:33:24 ID:4R7Y1ZHY
「こ……公一が死んだ……だとッ!?」

階段を駆け上がり屋上にて。放送を一言一句聞き漏らすまいと耳を澄ませていた結果、彼は絶望と怒りに身を震わせることになる。
そして、涙も流した。悲しくない訳がない。祖母を除けば唯一自分が心を開き、初めて出来た『友人』だった。
そんな公一がこんな殺し合いに参加している可能性を考えなかった訳ではない。むしろジャイロ・ツェペリに真っ先に確認したくらいだ。

それでもどこかで否定していた。公一のような普通の人間がこんな場に拉致されている訳がないと。いなくなった僕を心配しているんだろうなと、心の奥底でそう感じていた部分もある。
さらに言うのならば、そういう楽天的な考え方を捨てきれなかった自分自身に腹を立てていた。

アヴドゥルは言った。何者かに仲間を殺されたと。
だが、ある意味でアヴドゥルは幸福だと思う。自分のように“どことも知らぬ場所で死なせてしまった”訳ではなく“死に目に会えた”のだから。

一瞬のうちに多くの感情が彼の頭を駆け抜ける。
怒り、悲しみ、虚無感、絶望、嫉妬、落胆、復讐心――

そして、それらの感情と同じくらいに情報も得た。
開催の場での宣言、今回の放送から、あの老人にも何かしらの“裏”があることもおおよそ理解した。

――考えることはいくらでもある。

――だがまずは現状の打破。

ギリギリと握りこんだ拳が意思とは無関係に力を失い開かれる頃には、彼の頭もずいぶん整理されていた。

怒りに身を任せようとも、スタンド能力とやらを、あるいはそれに類する人知を超えた力を持たぬ自分にできることは少ない。
かといって諦めるつもりはない。自分は勝ち残らねばならない。『主催者たちにしかるべき報いを与える』ためにッ!
何より、自分を逃がしてなお戦い続けるアヴドゥルを放っておくわけにもいかない。彼とは約束がある。

そう言い聞かせ、ゆっくりと来た道を戻る。
魔少年の眼には確固たる信念が宿っていた。


***

473勝者 その3  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:36:12 ID:4R7Y1ZHY
「よーし、そこまでだッ!
 ――アヴドゥル、炎の壁を取り除いてくれ」

私の背後から聞こえてきたその声は間違いなくビーティーのものだ。
この場にいる相手の二人も一瞬だけその声に静止し、そして再び攻撃を開始する。
ビーティーには悪いが……言い分を聞くわけにはいかなそうだッ!

「……君たちッ!アヴドゥル以外の二人に言っている!
 君たちもこのゲームで“勝つ”気でいるんだろう!?

 マリオ・ズッケェロ!そしてドルド!

 ここで僕もしくはアヴドゥルを殺せば君たちがこのゲームで勝つ確率は絶望的に低くなるッ!」

ビーティーが私も知りえぬ名を叫んだことでいよいよ敵の――ズッケェロにドルドといったか――の手が完全に止まる。
その姿を見て私も炎をすべて取り去った。戦闘の熱で自然発火している床や家具はどうしようもないが、それでも部屋が一気に広くなったように感じた。

「よし、君たち。まずは言っておこう!『君たちは勝ち馬に乗っている』とッ!」

ビーティーの言い回しにピンとこない私を差し置き、二人は完全にビーティーの次の台詞を待っている。警戒は解かないままであるが。

「フン!言っている意味が解らないという顔だな!
 良いか!今言った『勝ち馬』とはまさにこの僕のことさ!ゆえに僕を殺せば君たちは落馬した騎手。そのまま無様にレースの結末を眺めているだけの存在なのさ!
 攻撃の姿勢を解きたまえ。今から証拠を見せてやるッ!」

言うが早いか、ビーティーが握りこんだ右手を突き出す。
パッ、と開かれたそこからは私に向かって一羽の鳩が飛んできた。

「今のは放送で言われていた伝書鳩さ――と、君たちはここでドンパチやっていたからロクに聞いていないかな?
 ともあれ、それを僕が連れているという事実」
「ハァ?てめぇが逃げてる間にとっ捕まえただけだろうが」

初めてチンピラの方がビーティーの台詞を遮る。
もっともな言い分だが、私もそこで声をそろえるわけにはいかない。私は彼を信じているのだから。

「なら……なぜ僕が君の伝書鳩さえも連れているのかわかるのかい?ミスター・ズッケェロ!」
先ほどと同様に左手から鳩をポッと出したビーティーは揺るがなかった。

「そしてミスター・ドルド!

 ――伝書鳩とは“自分の家に帰ろうとする”という帰巣本能を利用して手紙を届けるものさ。
 ならばなぜ、僕とともにいたアヴドゥルはともかく……君らの鳩が『僕のところに寄り道』しているのかなッ!?そして僕が『君らの名を知っているのかな』ッ!?
 僕が鳩を捕まえたのではないッ!――鳩が僕の方に寄ってきたのさッ!それが何を意味するのか!わからんほどバカではあるまいッ!?」
自信満々の表情で続けるビーティーの台詞には一切の淀みがない。ひるがえした上着からドルドと言われた男のもとへ鳩が飛んで行った。

「一応言ってやる。つまり僕がまぎれもなくこのゲームで重要な立場にあるからさ。どこがどう重要かは各々が好きに解釈してくれて構わないがね。
 そう、因みにその伝書鳩が持っていた名簿はアヴドゥルのものを含め僕が預かっている。
 先ほど流れた死者はともかく、君たちだって知りたいだろう、参加者を。僕を殺せば君らは多くの情報を失うぞッ」

誰も言葉を開かない。口を挟ませない不思議な威圧感がビーティーの周りに漂っていた。

474勝者 その4  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:37:46 ID:4R7Y1ZHY
「――さて、本題だ。最初に言ったように君たちもこのゲームに勝つ気でいるんだろう?この僕もそうさ。勝利で幕引きだッ!」

私にはおおよその意図が見えた。だがあまりにも無謀すぎる。

「それは自分と組めと言っているのか?ビーティー君。
 誰も負けるつもりで勝負はしないだろう?君の理屈は間違っているぞ。たかだか名簿の一枚では」

私を代弁するように今度は機械の男ドルドが口を開いた。
とはいえ私は静観を貫く。あくまでも奴らから見れば私は“ビーティーの味方”なのだし事実そうなのだから。
ビーティーは軽く左耳をなでたのち、胸を張って言い返す。

「間違っているのは君の方さドルド。勝者とは何かというのを理解していない。
 引きこもりが一人でどこか人気のないところで生き残ろうってのならともかく、行動して勝とうとするならチームプレイは必須さ。
 どうせその風体、全員殺して一人になろうという魂胆だろうが、本当にこれだけの人数を相手に立ち回れるのか!?という『これだけの人数』を君は知らない。
 ズッケェロ、君もそうだろう?あるいは仲間と協力するか?ライバルだけはこの手で葬るか?それらの存在を知らない訳だ。

 そして、ここで君らの負けが確定するッ」

そう言いながらビーティーは、丸めた名簿を再び鳩の足首に戻し、ガラリと開けた窓から放ってしまった。
誰かがアッと声を漏らす。それはあるいは私の声かも知れなかったが、とにかくこれでこの場に名簿はビーティーの持つ一枚きりとなった。

「……なるほど、少なくとも君から信用されて名簿を見せてもらえるようになるまでは共にいるほかなさそうだ。
 仕方がない。癪に障るがこの場は君に勝ちを譲ろう」
「――チッ」
「ビーティー、私は……いや、君に従おう。私は君のことを信じているよ」


「わかってくれて何よりだ、おのおの方。握手はいらない、情報の交換も嫌ならしなくていい。だが君たちの賢い選択を期待しているよ」


***

475勝者 その5  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:38:33 ID:4R7Y1ZHY
……と、ここまで。ビーティーが見事に野蛮な?三人組をまとめ上げたって話をしてきた。
戦闘はもちろん中断。警戒心が解けたかどうかは別だが、ノーカウントの勝者なしってところか。

そう。今回の話のテーマは『勝者』さ。

ドルドが言ったようにこの場での勝者はビーティー一人だけ。
彼の悪魔的な頭脳に皆が屈したというわけだ。

――というのは間違っている。

ある意味ではここにいる四人全員が勝者さ。最初のノーカウントも厳密には違うってことになる。
みんな心の底にそれぞれ勝利の定義を持っていて、逆に言えばその定義に逆らう『負け』という結末を迎えなかった。
つまり“負けぬが勝ち”ってこと。

となれば君たちが期待している『最強』というものについてもおぼろげながらイメージできるだろ?
まぁ、次の話を心待ちにしていたまえ。
それじゃあ、ビーティーが四人の鳩を連れて来れたトリックのネタばらしをして話を終わりにしよう。

476勝者 その6  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:40:58 ID:4R7Y1ZHY
――とは言っても、なんてことはない。ズッケェロが推測した通りビーティーが単純に捕まえただけだ。
彼は最初の場でスティーブン・スティールの挙動をしっかりと観察していた。さらには放送開始時の言い回しをも。
となれば奴がどのような方法で名簿を配布するかもおおよその見当がつく。まさか紙切れ一枚をワープさせるような真似はしないと踏み、それが的中。

それから。伝書鳩はビーティーが解説した通り帰巣本能で飛ぶものさ。本来は移動する媒体に……車とか船とかを相手には送れない。
だとすればどう送る?

――そりゃあ、首輪だろうね。当然そう推測できる。伝書鳩は“個人”を、例えば顔を記憶して飛んでたわけではなく、首輪の“電波”を頼りに飛んできた。
首輪の位置を自分の家だと思い込ませたか何かしてね。そこは主催者側の技術の賜物ってところだ。

さて、ここまでくればそれらの鳩が『誰宛て』かもわかるだろう。名簿をしまっている足輪に名前の刻印でもあったんだろうな。敵の名前を把握するにはもってこいさ。
だが……ここまでの説明が正解かどうかはここでは伏せておくとしよう。その方が面白味がある。真相は今はビーティーの頭の中にしかない。後は大統領ほか主催サイドね。

とにかく、サンモリッツ廃ホテルには四羽の鳩が飛んできた。

そして屋上にビーティーがいれば彼宛ての鳩は当然屋上に向かって飛んでくるし、残る三羽も窓が開いてなければ屋根だとか、着地しやすい場所に向かうだろう。
まさか窓ぉ突き破って家に入る鳩がいるってのか?いないだろ?
さて、重要なのはここから。何度も言うが鳩は帰巣本能が非常に強いゆえに伝書を運ぶのに用いられるが、それ以上に重要な本能がある。

答えは簡単“生命維持”さ。アリにだって人間にだってある本能だな。
思い出してほしい。ドルドはどこから屋内に侵入した?……そう屋根さ。言い換えればそれは屋上。ビーティーがいた場所であり、鳩が着地した場所でもある。
確かにそこから屋内には一直線だが、入ってみろ?アヴドゥルの炎で一瞬で焼き鳥さ。当然彼らも入るのをためらう。そんな鳩たちを捕まえるのは容易だろうね。

ここでビーティーは足輪から名簿を抜き、その足輪自体も外してしまう。そうすれば“どこにでもいる”鳩の誕生さ。『誰宛て』かはビーティーしか知らないものとなる。

後は自分の鳩、三人の鳩をそれぞれ衣服の別の場所にしまいこみ、部屋の中で一羽ずつ放っていけばいい。パームとまではいかなくても鳩を服の中にしまうくらい造作ないだろうね、ビーティーにとっては。
で、だ。例えば左袖にいる鳩がモゾモゾしたらそれは『ズッケェロの鳩』だから、ズッケェロの名を叫びながら放つ。二人いる敵のどちらがズッケェロなのかは鳩が飛んで行って教えてくれると。
……こういう訳だったんだな。手品なんてもんは種がわかればどうってことないだろう?そういうものさ。

そうそう、ビーティーは名簿を四枚とも持ってる。飛ばしてしまった自分の鳩に持たせたのはただの紙切れさ。主催者への挑発文すら書いてないただの紙。
だが、“貴重な名簿を”預かっているビーティーが“紙を入れて飛ばした”となれば誰しもが『名簿を失った』と錯覚するだろう?これも相手の心理を見事についたビーティーの勝ちさ。


さ、長くなったがここまでが真相だよ。
それじゃあ、今度こそここまで。それじゃあ次回は約束通り『最強』の話をするから期待して待っていてくれ――

477勝者 状態表  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:42:17 ID:4R7Y1ZHY
【B-8 サンモリッツ廃ホテル1階大階段前ロビー / 1日目 朝】

【モハメド・アヴドゥル】
[スタンド]:『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』
[時間軸]:JC26巻 ヴァニラ・アイスの落書きを見て振り返った直後
[状態]:疲労(小)、後悔
[装備]:六助じいさんの猟銃(5/5)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの破壊、脱出。DIOを倒す。
1.何とかこの場を切り抜けられたが……この先どうなる?容易に警戒を解くことはできないが……
2.ポルナレフを殺した人物を突き止め、報いを受けさせなければならない。
3.ディアボロとは誰だ?レクイエムとはなんだ? DIOの仕業ではないのか?
4.ブチャラティという男に会う。ポルナレフのことを何か知っているかもしれない。

【ビーティー】
[能力]:なし
[時間軸]: そばかすの不気味少年事件、そばかすの少年が救急車にひかれた直後
[状態]: 健康、怒り(復讐心)(中)、悲しみ(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、薬物庫の鍵、鉄球、薬品数種類、名簿4枚
[思考・状況]
基本行動方針:主催たちが気に食わないからしかるべき罰を与えてやる
1.何とかこの場を切り抜けられたが……この先どうなる?いや、僕がこいつらをまとめ上げてみせるぞッ!
2.公一……彼を殺したヤツと主催者にしかるべき報いをッ!

【マリオ・ズッケェロ】
[能力]:『ソフト・マシーン』
[時間軸]:ラグーン号でブチャラティと一対一になった直後。
[状態]:疲労(小)
[装備]:紫外線照射装置
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して金と地位を得る。
1.何とかこの場を切り抜けられたが……この先どうなる?このクソガキが優位に立ってるのは癪だ
2.とはいえロクな目的を見つけられない。名簿ないし。仕方ないから組んでやる

【ドルド】
[能力]:身体の半分以上を占めている機械&兵器の数々
[時間軸]:ケインとブラッディに拘束されて霞の目博士のもとに連れて行かれる直前
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ジョルノの双眼鏡、ポルポのライター、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り、且つ成績を残して霞の目博士からの処刑をまぬがれたい
1.何とかこの場を切り抜けられたが……この先どうなる?自分が不利な立場は癪だが仕方あるまい
2.コレ(ライター)を誰かに拾わせる。
3.仲間が欲しい。できれば利用できるお人好しがいい、と思ってたがこれは良い状況か……?

[備考]
・サンモリッツ廃ホテルにて少々の火災が発生しています。
 家具や床、壁面がボヤ程度に燃えています。

・4人が今後どのような行動方針を決めるかは以降の書き手さんにお任せします。

478勝者  ◆yxYaCUyrzc:2012/10/25(木) 23:43:32 ID:4R7Y1ZHY
以上で仮投下終了です。一応ageます。

『僕が策を考える』にそった結果に持って行けたでしょうか……?
若干のご都合主義な感じは否めませんね。完全に実力不足orz

誤字脱字、矛盾等々多数あると思いますのでご指摘いただければと思います。
本投下は土曜の深夜に行う予定です。たぶん規制で転載スレ行きでしょうがねw
(これに際し必要なら予約の延長をしますがどうなんでしょう?以前はしましたが……)

それではまた本投下時にお会いしましょう。

479敗者 その1  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:20:02 ID:rXzxjgw6
あー、すまない。
約束を破るようで申し訳ないんだが……『最強の話』はもうちょっと待ってくれ。
どうしてもここで話しておかなければならない連中を忘れてたんだよ。

君たちだって薄々気付いてたんじゃあないのか?

『一つだけ気になったのがジャイロの存在です。前作で『下の様子を見てくる』と言ったのに、何のリアクションなしは少し奇妙な感じがしました。
 誤差範囲内なんで、そこまでと言ったらそこまでなんですけど。』

――と。
さらに君たちは、

『ぶっちぎってもらっても全然OKです。』

と言うだろうが、そうすると後々面倒だからな。いろいろ話を進めちゃう前にここで少し説明しておこう。


●●●

480敗者 その2  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:20:49 ID:rXzxjgw6
「な……なんだってんだ、この状況」
ジャイロの口からは思わず溜息が漏れる。

様子を見に外に出る、なんていうレベルではない。
よく部屋の中に危害が及ばなかったとむしろ感心するほどに、ホテルの中は壊滅状態だった。
蒸し風呂のような熱気、舞い上がる火の粉、顔中の穴という穴から玉のような汗がぶわりと浮かぶ感触……
廊下から中央ホールを見下ろせば炎のドームが。中に何人の人間がいるのかさえ解らない。

鉄球を叩きこんでみるか?

――否、それはできない。

自分一人で行動しているならまだしも……今はウィルを部屋に残したまま。
まして彼は戦闘が出来る状態ではない。となればこの現状をウィルに報告するだけにとどめるべきか。
どうするジャイロ・ツェペリ……自分が“納得”出来る結末をこれで迎えることが出来るのか――?


「おはよう、諸君。時刻は午前六時ちょうど、第一回放送の時間だ」


ジャイロの思考を遮ったのは戦況が変わったことが要因ではなかった。
主催者の――スティーブン・スティールの声が彼の鼓膜を震わせる。

「チッ――クショウ」
小さくそう呟き部屋に戻るジャイロ。

静かに扉が閉められた。
彼がもう数瞬だけその時間を遅らせれば、あるいは違う結末も見えたかも知れなかったのに。


●●●

481敗者 その3  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:22:02 ID:rXzxjgw6
放送で告げられたダイアーという名を呟くウィルを俺は放っておいた。
俺だって知り合いが死んでいる。文字通り命がけのレースを戦ってた相手だ。敵だったとはいえ複雑な心境。
だが、事態の重要さはそこではない。
放送はどうも名簿の順に死んだ連中を述べたようではない。
となれば『死んだ順』に呼ばれている。
つまり……ウィルの知り合いは、あるいは師匠やら同胞やらはこの場で真っ先に……相打ちという可能性もあるが、一番乗りの死者だって訳だ。

「……ロ君、ジャイロ君」
と、どうやら考え込んでいたのは俺の方だったようだ。
ウィルに呼び掛けられ顔を上げる。そこには妙に晴れやかな顔をした男の顔があった。

「君が何を考えてるかくらいわかるわい。
 ダイアーのことは仕方あるまい……奴とて無駄死にしたわけではなかろう。そう信じることにするよ。
 となれば我々が彼の、いや彼らの遺志を“受け継いで”歩かねばなるまいな……
 ……ふむ、まあ私の場合は這いつくばらねばなるまい、か。フフ」
「――すまない」
「冗談じゃよ。君が謝ることじゃあなかろう。
 それより聞かせてはくれないか?今さっき君が部屋を出て見てきたことを」

ウィルに促され話し始める。
ほんの数十秒の出来事だから、説明にはそれほど時間はかからなかった。
俺の口が閉じるとその場を静寂が支配した。重苦しい空気にはやはり暑さは、熱さは感じられない。
不思議な感覚だった。自分は自分の出来る精一杯をしたからこそこうしてこの場にいる。
だがなんだ、この妙なやるせなさは――

「ジャイロ君……いや、ジャイロ・ツェペリよ」

不意に改まって呼ばれたことに俺ははっと頭を上げた。
先ほどと同様に見上げる先にはウィルの顔。だがその顔には今度は緊迫感が見て取れた。


●●●

482敗者 その4  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:23:39 ID:rXzxjgw6
「行け――ってあんた何を言ってるんだ?」
私の言葉を復唱し、さらに続けようとするジャイロ君を横たわったまま手で制す。

「さっきと同じこと言うが、君が何を考えてるかくらいわかるわい。
 “自分はここでウィルの看病をしなければならない。このジイサンをこの場に放っておくわけにいくか。
  そんな事したら医者であるジャイロ・ツェペリの名が廃るってもんだ。”
 ――大方そんなところだろう?」
「……ああ。だからこそアンタのさっきの言葉が信じられねぇ」

ジャイロ君がそういって顔を背ける。ふぅ、と小さくため息をつき私も視線を彼から外す。
見上げたそこは見知らぬ天井。そののっぺりとした木目を眺めながら私は話し始めた。

「聞いてはくれぬかジャイロ君。
 ……私は若いころ結婚していた。しかし石仮面のために家族を捨てた。
 だけども……自分の運命には満足しておる。
 なーに、まだこうして生きとる。死んだわけじゃあないんじゃからこれからどうにでも動けるよ。
 ――このようにッ!」

ド――z__ン!

「なっ!?
 寝転がったままの姿勢!
 肘だけであんな跳躍を!
 ――ったくアンタには本当驚かされっぱなしだぜッ」

ベッドから椅子に――そうそう、動かない足もきっちり手できれいに組み直し――着席した私にジャイロ君は驚嘆しきりだった。
「解ったろう?たかだか半身の自由をもぎ取られた程度でこの私が負けると思うな!ってなもんじゃ。
 どれジャイロ君、ちょっと、もうちょっとだけこっち寄ってくれんかの。
 そうそう、そこがいい。……パウッ!」

ジャイロ君の腹の奥、その横隔膜に小指を叩きこむ。
彼は不思議と抵抗しなかった。普通こういうタイミングじゃあ、私が気を失わせたジャイロ君を放って逆に戦いの場に行くような、そういう攻撃にも見えたはず。
なのにホルスターにさえ手を伸ばさなかったのは、彼が医者だからかの。いや――私のパンチが強力だったんじゃな、ハッハッハ。
そうそう。灰の中の空気をすべて……1cc残らず絞り出せよ。

「ぐはっ!……ウィル、アンタいったい何したんだ!?」

「なーに、心配はいらん。ちょっとしたオマジナイってところじゃよ。心がリラックス出来たんじゃあないかね?
 どれ、私のことは一旦忘れろ。あーいや、逆じゃな。今の一発で私のことを心底忘れられなくなったろう?君は戻ってくるさ、必ずな。
 さ、行って来い。フフフ」


●●●

483敗者 その5  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:24:35 ID:rXzxjgw6
うーん、ここまで話せばとりあえず良いかな。もうちょっと突っ込んだところまで行ってもいいんだけど……まあいい。

さて、さっき話した勝者の定義で言うなら、ジャイロは間違いなく敗者だな。俺に言わせれば。
俺は『勝利の定義に反する負けに達しなかったから勝者だ』と言ったろう?さっき。
だが、ジャイロは今回の件で何かしら勝利の定義づけをしたか?
せいぜい『様子見て戻ってくる』がその定義。だとすればそこまでは彼だって勝者だった。

問題なのはそこから先だ。
行って来い、と言ったのはツェペ……ああ、ウィルの方、で。
それに対し彼は反対した。となれば『反対して残っているが勝ち』と言えるだろ?強引にでもなんでもウィルを黙らせて看病に徹する、あるいは自分の意志で行くと結論付けて出ていくか。
しかし結果はどうだ。ウィルの言葉に言いくるめられ――というと彼がヘタレっぽく聞こえるから語弊があるけれども。渦中に、いや火中というか。乗り込もうとしてる。
つまりはどうだ、彼はこの場においては“敗者”だろう?あくまで俺の定義に沿った考え方だがね。

ジョニィ・ジョースターはジャイロのことをこう評価した。
『君は受け継いだ人間だ』と。
もちろんそのすぐ後に『どっちが良いとか悪いとかいってるんじゃあない』とフォローもしたが、事実ジャイロは受け継いできた人間だ。
そう、SBRレースでないこの場でもウィルが受け継いだダイアーの意志を。ライバルであったレース対戦者たちの無念を。
さらにはウィルの波紋エネルギーをも――まあこれは一時的なものだろうけど。

ジャイロは果たして『勝者』になってウィルのもとに戻れるかな?

――すまない、少々駆け足になったがここまでは話しておこうと思ったんだ。それじゃあ、また、改めて。

484敗者 状態表  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:25:28 ID:rXzxjgw6
【B-8 サンモリッツ廃ホテル3階 一室 / 1日目 朝】

【ウィル・A・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:ジョナサンと出会う前
[状態]:下半身不随、貧血気味(軽度)、体力消費(小程度まで回復)、全身ダメージ(小程度まで回復)
[装備]:ウェッジウッドのティーカップ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.行って来い、そして戻ってこい、ジャイロ・ツェペリ

【ジャイロ・ツェペリ】
[能力]:『鉄球』『黄金の回転』
[時間軸]: JC19巻、ジョニィと互いの秘密を共有した直後
[状態]:疲労(小程度まで回復)、精神疲労(中)、全身ダメージ(ほぼ回復)、波紋エネルギー
[装備]:鉄球、公一を殴り殺したであろうレンガブロック
[道具]:基本支給品、クマちゃんのぬいぐるみ、ドレス研究所にあった医薬品類と医療道具
[思考・状況]
基本行動方針:背後にいるであろう大統領を倒し、SBRレースに復帰する
1.行ってくる、そして必ず戻る、ウィル・A・ツェペリ
2.階下の渦中に潜り状況を判断する
3.麦刈公一を殺害した犯人を見つけ出し、罪を償わせる
4.ジョニィを探す
[備考]
ウィルに波紋を流されたおかげで体力が回復しています。彼が波紋エネルギーを使用できるかどうかはわかりません。

485敗者  ◆yxYaCUyrzc:2012/11/01(木) 13:25:50 ID:rXzxjgw6
以上で仮投下完了です。
うーん、見事にとってつけたような展開orz勘弁してやってください。
「こんな展開タダじゃあおきまセンッ!」ってな方は容赦なくご指摘をどうぞ。
ただし、その場合は一旦破棄して全員を再予約、1から書き直すつもりです。(もちろんその間に誰かが滑り込んでもいいのよ?)

誤字脱字、矛盾等々ありましたらご指摘をどうぞ。それでは本投下時に。

486名無しさんは砕けない:2012/11/01(木) 17:37:43 ID:NMsWUEXQ
仕事早ッ!!
大丈夫だと思いますッ!!

487 ◆yxYaCUyrzc:2012/11/02(金) 23:44:25 ID:fmtHqT4c
ご意見ありがとうございます。
現在本スレがほとんど規制中ですので&もっとすごい作品が来てるので、もう少々このスレで意見を待っていたいと思います。
例えばジャイロたちのところに飛んできた鳩の描写とか追加したいですし。
それに伴い『勝者』の方もwiki収録は少しだけ先送りにさせていただきたいと思います……が、いかがでしょうか?
ちゃっちゃと投下しないと&収録しないと進まないよ、と言われるようでしたらそうしますが。。。

488名無しさんは砕けない:2012/11/03(土) 10:24:28 ID:ki8Jghyg
投下乙です!
大丈夫だと思います。ナイスフォローです!
ツェペリさんが思ったよりダメージ受けてないようで安心した。
さすが波紋戦士だ。

489 ◆SBR/4PqNrM:2012/11/05(月) 00:53:21 ID:pk5Rz5Lo
>>487
 はてさてほほー、どーしましょ。
 個人的には、『勝者』と『敗者』 は、ワンセットの作品だと思うので、収録に際しても並びになっている方が(間に別作品が入らない方が)
良いよーには思います。
 或いは(これはこれでむつかしいかもしれませんが)、いっそのこと1本にまとめ直してしまうとか。

490名無しさんは砕けない:2012/11/05(月) 05:10:35 ID:IcJd6xpc
まーそこら辺はもう書き手さんのこだわりみたいなものなのでお任せしちゃってもいい様な。
◆yxYaCUyrzcさんが並びで収録したいならそれでよし。一本にまとめちゃいたいならそれもよし。
……と個人的には思ってます。内容も全然OKですしね。

491名無しさんは砕けない:2012/11/05(月) 13:24:14 ID:DxK5vvk.
同意見
氏におまかせします

492 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:35:10 ID:1NqoTLgY
◆4eLeLFC2bQ氏、お久しぶりです。
久々の新作ですが、腕は全く落ちていませんね。
繊細な心理描写は俺には真似できそうもありません。流石です。

それでは、俺も投下をば。
前半だけの先行掲載ですが。

493虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:36:02 ID:1NqoTLgY



もう一人ぼっちじゃない
貴方がいるから






☆ ☆ ☆

494虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:37:22 ID:1NqoTLgY



「――ブ、ブチャラティ!?」
「……ルーシー・スティール?なぜここに!?」


薄暗い洞窟の中で出会ったのは、自分の見知った少女――トリッシュ・ウナだった。
可能性として考えなかったわけではない。
ジョルノが死に、自分もこの場に存在する。
先ほどの襲撃者は、(直接面識があるわけではないがジョルノらの情報から察するに)組織の暗殺チームの氷使いギアッチョである。
わかっているだけでも、これだけの数の関係者が巻き込まれている。
ミスタとナランチャの2人や、もしかしたらフーゴも、この場に招かれているかもしれない。
だが、トリッシュまで巻き込まれていたとは。
何も知らない、ただの町娘だった彼女が、こんな血生臭い催しへと。

ある意味で彼女の顔は、この6時間の間でもっとも見たくないと思っていた顔だった。



「……彼は?」
「大丈夫よ、ウェカピポさん。知った顔だから…… 私に任せて」

向こうは2人……いや、トリッシュは誰か小柄な人間を背負っているようだ。となると3人か?
ともかく、傍らの男が懐に手を伸ばしながら此方に警戒心を見せる。
そしてそんな彼を、トリッシュが制した。
2人の様子を見るに、トリッシュはここで信頼のおける仲間を得ていたようだ。
本当に良かった……。それも運のいいことに、ルーシーの知り合いでもあるようだ。

だが、トリッシュの様子がいささか妙だ。
ウエイトレスの衣装に男物のコートを羽織った珍妙な格好のことではない(多少気になりはしたが)。
おかしいのは、彼女の俺に対する態度。
初めに俺の姿を確認した時は、唖然とした様子だった。それからという物ずっと怪訝な視線を向けてきている。
出会ってまだ一週間も経っていない彼女だが、この数日である程度の信頼関係を築けてきたつもりだったのだが。

「………トリッシュ。よく無事で―――――」
「待ってブチャラティ!」


ともかく、トリッシュに話しかけ近づこうとする俺を、彼女の大声が制止した。
あまりの迫力に押し黙る俺に対し、トリッシュは落ち着いた口調で話し始めた。


「ごめんなさい、ブチャラティ。あなたに言いたいことや聞きたいことはたくさんあるのだけれど……突然、あなたと再会して、少し混乱しているの。
それに、『あの男』が言っていたことが本当ならば、もうじき―――」

そう言ってトリッシュはちらりと、支給された懐中時計に目をやる。
ああ、そうか。追っ手から逃げることに必死で気が付かなかった。
もうじき午前6時になる。
『放送が六時間ごと』という主催の男の言に従えば、最初の放送とやらがもうじき始まる。

「―――わかった。詳しい話はそのあとだ」


一定の距離を保ったまま、俺たちは言葉を交わすこともなく放送の開始を待った。

黙って睨み合いを初めて3分と経たぬ頃、どこからともなく五羽の鳩が現れた。
かと思うと、それぞれの手元に紙切れを落としていき、そのままどこかへ飛び去って行った。
なるほど、これがあの男の言っていた『名簿』か。
そして、そこに並ぶ膨大な数の名前に目を通す間もなく、6時間ぶりに聞く、バラエティテレビのMCを彷彿とさせる『あの男』の声が聞こえてきた。






495虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:38:24 ID:1NqoTLgY



『―――――この放送は私、スティーブン・スティール、”スティーブン・スティール”がお送りした。
諸君、また6時間後に会おう!君たちの今まで以上の健闘を、私は陰ながら応援しているッ
それではよい朝を!』


そのように締めくくられ、放送自体は滞りなく終わった。
俺はトリッシュの様子を伺いながらも、車のボンネットの上に名簿と紙を広げ、メモを取りながら聞いていた。
ルーシーは俺の後ろに隠れながらじっとしており、ウェカピポと呼ばれていた彼も離れたところでこちらを警戒しつつメモを取りながら放送を聞いていた。
そしてトリッシュは、その一切をウェカピポに任せて、放送が終わるまでの間、じっと俺の姿を見ていた。
睨みつけるでも見つめるでもなく、ただ、じっと。

放送で告げられた犠牲者の数は、76人―――――。
このわずかな時間の間に、76人もの人間が犠牲になったのだ。
当然、中には俺が初めに始末した暴漢の名や、2番目に始末した不気味なスタンド使いの名も含まれていたのだろう。
だが、ルーシーやトリッシュのようなどこにでもいる善良な市民も犠牲者の中にはいただろう。
名簿を見るに、参加者は全部で150人。
たった6時間もの間にその半数が死んでしまったという事実。

想像以上に過酷なサバイバルゲームが展開されている。
期間は3日間とあの男は言っていたが、このままのペースでいけば24時間もしないうちに、ゲーム参加者は一人を残し全滅してしまうのではないか?

いや、させない――――
何としてでも、俺がこの手で食い止めてみせる――――――



それにしても、この『放送』と『名簿』には不可解な点が多すぎる。
ミスタ、ナランチャ、そしてフーゴの名前が呼ばれなかったことには心底安心したが、名簿には、すでに死んだはずのジョルノとアバッキオの名も記されている。
さらに、俺が始末したはずの涙目のルカや、プロシュート、ペッシの名も。
死者が蘇ったとでも?
ルカとペッシの名が呼ばれてプロシュートが呼ばれないということは、死んだはずの人間が、今現在も生きてこの会場のどこかにいるという事か?
同姓同名の他人という可能性もあるが、あのギアッチョの例もある。
そして、既に死者でありながら生き続けている自分の例も……。

気になったことは他にもある。
放送の最後に強調された、あの男の名前……。
『スティーブン・スティール』という名前はルーシーに聞いて知っていたが、名前を繰り返されてピンときた。
そして、ウェカピポという男が、さきほどルーシーの名を呼んだ。
名簿を広げ、彼女の名前を探す――― あった。


ルーシー・"スティール"


彼女が隠していたのはこの事だったのか。
彼女の様子を伺うと、ばつが悪そうに顔をそむけ、俯いている。
そして、俺にだけ聞こえるくらいの小声で、「ごめんなさい」と謝ってきた。
この様子だと「姓が偶然同じ名だけの他人」ということはないだろう。
彼女の年齢から察するに、父娘か何かだろうか?
なるほど。安心させようとして俺が言った「主催者を倒す」という言葉が、逆に彼女を苦しませ、言い出せなかったのだろう。

隠し事をしていたのはお互い様だ。
できれば放送前に、彼女自身の口から話させてあげたかった。
そうすれば彼女とともに、スティール氏がこんなことを行っている理由を一緒に考えてやることもできたのに。



「……ブチャラティ」


トリッシュが声をかけてきた。
そうだ、後悔しても始まらない。
こうしてトリッシュと無事再会できたのだ。
これからのことを考えなければならない。

496虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:38:51 ID:1NqoTLgY

「ブチャラティ、この人はウェカピポさん。そっちで寝てるのは……そういえば名前知らなかったわ。ただの変態だから、"変態"でいいわ。
"変態"はただのクソヤローのゴミクズだから無視していいけど、こっちのウェカピポさんは信頼できる仲間よ」

これほどまでに辛辣な言葉を使うトリッシュは初めて見た。
よほど"変態"のことが嫌いなのだろう。よく見れば顔もゲスい顔をしている。トリッシュに何をしたんだ、この男は?
ウェカピポの方が、俺に軽く頭を下げ、俺の後ろのルーシーに目を配る。
彼とルーシーは知り合いなのだろう。ルーシーに直接聞くのも忍びないし、まずは彼からスティール氏のことを聞いてみよう。

「俺はブローノ・ブチャラティ。そちらにいるトリッシュの―――そうだな、"友人"だ。殺し合いに乗るつもりはない。このゲームを止めるために行動するつもりだ」

あえて主催者を叩くとは言わない。
これ以上ルーシーを不安にさせてくはない。
だがギャングであることは、早いうちに話しておかなければな。

「トリッシュ……この男、もしかして………」
「ええ、それについても、聞いてみるつもりでいるわ」

何の話だ?と質問する間もなく、トリッシュから意味の分からない質問が投げかけられた。

「ねえブチャラティ、私のことを知っているあなたで心底ホッとしたのだけれど……」
「……どうした?」

そこでトリッシュが言葉を詰まらせる。
何か言いにくいことがあるのか、彼女は押し黙ってしまった。
『私のことを知っているあなた』とは、どういう意味だ?
普通の表現ではない。トリッシュは何を言っている?
自分の中で考えを巡らせる。
そういえば、今自分が話しているトリッシュは、自分の知っている彼女と少し雰囲気が異なっている。
何と言ったらいいのか、とにかく『迫力』があった。
飛行機内での戦いで彼女が『守られているばかりの少女』ではないことは分かったが、今目の前にいる彼女はさらになにか巨大なものを乗り越えてきたかのような風格があった。
外見的特徴も、服装の他に、髪が少し長くなったような気がした。

「……なんだかわからんが、話してみろ。トリッシュ」

俺が再度質問を繰り返すと、トリッシュは慎重に言葉を選びながら、おずおずと話し出した。。

「―――ブチャラティ。こんな聞き方しかできないのだけれど…… あなた、"いつ"のブチャラティなの――――――?」

この質問を皮切りに、俺は様々な事実を知らされることとなる。




☆ ☆ ☆

497虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:41:24 ID:1NqoTLgY


「オイ、落ち着いたか?」
「………ああッ!」
「なら話を再開する。お前の仲間のホルマジオ、イルーゾォ、ペッシ、プロシュートの4人は間違いなく死んでいた。そうだな?」
「俺が直接見たわけじゃあねェ。だが、俺の信用している仲間から得た情報だ。間違いねェよ」
「なるほど。で、プロシュートを除く残り3人と、俺たちが看取ったリゾットの名前が呼ばれた。メローネって奴だけ名前がないな? 何故だろうか」
「俺が知るかよ! そんなことより、オレが頭にきてるのは、チームの連中の名前ばかりが呼ばれて、ブチャラティの奴らがまだ誰一人として死んでねえってことなんだよッ!!
どういうことだよこのクソが!!」
「おいギアッチョ。落ち着けと言ったろう? もう二度と言わんぞ? 二度言うことは無駄だから嫌いなんだ。貴様がその調子だと次の放送までに話が終わらねえ」
「チッ………」

ブチャラティたちを追ってエア・サプレーナを後にした俺とギアッチョの二人は、サン・マルコ広場のオープンカフェに居を据えて放送を聞いていた。
この場所ならば視界が開けており、襲撃者が近づけばすぐにわかる。
ギアッチョの能力があれば狙撃を気にする必要もない。

そうして情報を整理していた俺たちだったが、放送の内容が気に入らないらしいギアッチョがキレて中断、の流れを繰り返していた。

「とにかく、だ。このホルマジオ、イルーゾォ、ペッシ、プロシュートの4人は、"どういうわけか生き返って、そしてこのゲームに参加していた"ってわけだ。
プロシュート以外の3人は、まあ、また死んでしまったのかもしれないが、『少なくとも6時間前にはおそらく生きていた』。そういうわけだ」
「………ああ、そうだろーよッ」
「俺の方も、何人か知人がいる。死んだはずの人間もな。このサンドマンやウェカピポなんかがそうだ。直接の関わりはなかったが、マウンテン・ティムもくたばったと聞いている。
俺の考えていること、わかるか?」
「オレだって馬鹿じゃねーよ。『並行世界』の人間、そう言いてえんだろ?」
「これで間違いないな。スティーブン・スティールはやはり駒だ。このゲームを仕組んだ黒幕はファニー・ヴァレンタイン大統領。そして、それだけじゃあない。
ブチャラティたちやお前の仲間を、わざわざ別世界からまで呼び寄せたということは、だ。お前たちの『ボス』とやらも、この件に一枚噛んでいるんじゃあないか?」
「何ッ!? ボスが!?」

もっとも、この考えについても推測の域を出ない。
名簿に記されている150人のうち、ギアッチョの組織に関係する人物はこいつの知る限り10人弱。
そして俺の知る限りSBRレースの関係者も10人を少し越える程度だ。
2人が認識していない人物がいたとしても、全然数が合わない。
第一、イタリアのギャングとアメリカの騎馬レースというのも共通項が見当たらないし、クウジョウだとかカキョウインだとかの日本人名は俺たちのどちらにもなじみはない。
(ヒガシカタだけは聞き覚えがあるが、名簿に記載があるのはノリスケではなくジョウスケだ。やはり知らない)

だが、組織の『ボス』でなくても、大統領以外にこのゲームに関わる人間がいる可能性は少なくはない。
でなければ、ギアッチョとの110年もの時代の差異が説明できない。
大統領の能力が、俺の知らぬところで『成長』していなければの話だがな。

498虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:41:44 ID:1NqoTLgY


「クソがッ! ボスめ…… ソルベとジェラートにむごい仕打ちをしただけでなく、こんな殺し合いにまで俺たちを巻き込んで―――」
「オイオイ、焦るな。その可能性もあるってだけだ。主催のことを考えるのはまだ早い。まずは、当面の行動指針を立てることだ。貴様はこれからどうしたい?」

放送を終えてギアッチョからいろいろと聞き出せたものの、根本的に身になる情報はほとんど得られなかった。
やはり、ルーシー・スティールだ。彼女を確保し、こちらのカードに加えることがまず第一だ。
ゲームに参加させられている以上、大統領にとってはもう不要なのかもしれないが、スティールに近づく鍵になるかもしれない。
彼女に近づくことこそ、この大統領を倒すための第一歩と言えるだろう。

「オレは………やはり、ブチャラティを殺りたい。プロシュートが別の世界の奴かもしれない以上、やはりオレの世界のオレの仲間は全滅したってことだ。奴らを皆殺しにしなければ、オレは前に進めない」

フン、やはりこいつはこういう性格か。
だがブチャラティに近づくことは、ルーシーに近づくということ。俺との利害も一致する。
それに話に聞く限り、ブチャラティという男と、俺は相容れないだろう。放っておいてもいずれ敵対する相手。ならば、早めに叩いておいても問題はない。

「いいだろう。もう熱くなって自分を見失うことはないと約束できるのならば、俺が指揮を執ってやる。俺はルーシーを捕えるため、お前はブチャラティを殺すためだ」
「ケッ! 奴らを見失ったくせによく言うぜ。まるで2人の現在地を知ってるみたいな口ぶりだな?」
「ああ、それならば―――――」

俺の背後から、能力で生み出した1匹の中型恐竜が姿を見せる。

「たった今、こいつが見つけてくれたぜ」




☆ ☆ ☆

499虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:43:47 ID:1NqoTLgY



「ファニー・ヴァレンタイン大統領………」
「ええ。信じてもらえるかはわからないけど、夫は―――スティーブンは、ただ利用されているだけ。
あなたとトリッシュさんや私とウェカピポさんの微妙な認識の違いが、何よりの証拠だと思います……」
「でも、当の大統領が死ぬところを、あなた見ていたのでしょう? それも、『並行世界を行き来するスタンド』と共に崩れ去ったって…… それなのにどうして?」
「それより、俺は大統領のことを詳しくは知らんが、その並行世界ってのは"100年以上の時間までも乗り越えられる"ものなのか?」


放送から早30分。
俺(ブチャラティ)、トリッシュ、ウェカピポ、ルーシー、"変態"の5人は、(ウェカピポの持っていた地下地図でいうところの)コロッセオ地下遺跡にて情報の交換と作戦会議を行っていた。
車は遺跡内の地面にジッパーで穴を開け隠し、俺たちは遺跡内に発掘現場に身を潜めている。
ここは薄暗く、大理石でできた柱や石造りの段差も多く、身を隠しやすい。
コロッセオの地下にこのような大空間があったことにも驚いたが、まさかナチスドイツの鍵十字が掲げられているとはな。
そしてその意味を理解できたのは俺とトリッシュの2人のみ。
それをきっかけに知らされた、俺やトリッシュと、ルーシーたちの住んでいた時代の違い。
ルーシーが自動車を見たときにえらく驚いていたのを今さらになって思い出す。
トリッシュとウェカピポは、出会ってすぐにこの事実に気が付いたという事らしい。
いかに、自分とルーシーが意思の疎通ができていなかったのかと思い知らされた。
ルーシーを怖がらせないこと、自分の秘密を隠すことに囚われ、そんな簡単なことすら把握しきれていなかったのだ。

そしてそのルーシーも、スティール氏と相対する気がないことを説明すると、ポツポツと知っていることを話し始めた。
彼らの時代のアメリカ大統領、ファニー・ヴァレンタイン。
並行世界を自由に行き来する能力を持ち、死んだ者でも隣の世界から連れてくることのできるのだという。
名簿に名前のあるアバッキオや俺の出会ったギアッチョをはじめとする暗殺チームの面々、ルーシーやウェカピポの知る死んだはずの知人たちは、よく似た違う世界から呼び寄せられたからではないかというのだ。

ゲームの主催者はアメリカ合衆国大統領。
この仮説が、俺にとって最大の驚きであった。
俺は心のどこかでトリッシュの父、組織のボスがこのゲームの黒幕ではないかと勝手に想像していた。
ボスの素顔のデスマスクを見つけた直後にこのローマに呼び寄せられ、ジョルノの死を目の当たりにしたからだ。

だが、俺がその仮説を唱えた時、トリッシュから聞かされた俺の『本来の未来』。
俺、トリッシュ、ジョルノ、ミスタ、ナランチャの5人はアバッキオの遺してくれたメッセージを手掛かりに、以前よりボスの手掛かりを追っていたフランス人、ジャン・ピエール・ポルナレフ氏と合流する(その彼は放送で名を呼ばれたようだ)。
そして、俺達5人はそれ以上"一人の仲間も失うことなく"、打倒ボスを果たすというのだ。

それも、ボスの名は『ディアボロ』。放送で2番目に名を呼ばれた『ディアボロ』なのだというのだ。
放送中、トリッシュが表情をゆがめた理由はそこにあったのか。
トリッシュはゲーム開始直後、死んだはずの自分の父の気配を感じ、すぐにその気配が消滅するのを感じたのだという。
このゲームの主催者は(恐らく別世界の)ボスまでもをゲームの駒として招き入れていた。そして、俺たちが命を懸けて打倒しようとしていたディアボロがわずか6時間の間に戦って敗れるほどの相手がいるということなのだ。
ゲームの主催者は、俺が想像していた以上に途方もなく巨大な存在のようだ。

そしてもう一人。放送前に遭遇したギアッチョと行動を共にしていた人物。
ディエゴ・ブランドー 通称「Dio」。
ルーシーたちや大統領と同じ世界に存在した男であり、大統領と同等の危険人物。
窮地に陥った大統領が自分の後継者として選ぶほどの男だという。
野心家で、目的のためならば残虐非道の限りを尽くす極悪人。
ルーシー自身が機転を利かせて倒した相手だというが、生きていた大統領がさらに別の世界から彼を呼び寄せたのだろうか?
要注意人物の一人だ。

500虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:46:16 ID:1NqoTLgY


「それで、これからどう動くか、だが……?」

そう俺が切り出す。
わからないことをいつまでも考えていても仕方がない。
トリッシュがまず口を開き、提案する。


「私は……もっと地図の中心付近の―――人が集まる所へ向かうべきだと思う。ジョニィさんやジャイロさんという人なら、大統領について何か知っているかもしれないし……。
それに、もしジョルノたちが本当に生きているのならば……」

その通りだ。
ジョルノ・ジョバァーナは確かに俺たちの目の前で爆死した。しかしジョルノの名は名簿に記されているにもかかわらず放送で名を呼ばれることはなかった。
ゲーム開始前に死んだから、という理由も考えられるが、あれが俺たちを殺し合いへ誘うためのハッタリだったとすれば、『死んだジョルノとは別世界のジョルノ』がこの場に呼び寄せられている可能性はある。
アバッキオだって、『まだ生きていた世界』から呼び寄せられたのかもしれない。
ジョルノやアバッキオならば、例え別の世界のあいつらだったとしても、信用できる。

「………そうだな。これほどまでに巨大な力を見せつけられては、個人の力で立ち向かうのは至難だ。仲間を組み、チームを作ることは有効だ。特に、一度大統領に勝利しているというジョニィ・ジョースターとの合流は最優先すべきだろう」

ウェカピポもそれに続く。ルーシーも、彼の言葉に応じて頷く。
彼らもまた、俺たちと共に戦うことを約束してくれた。
トリッシュたちとの出会いを経て、頼りになる仲間を手に入れた。ゲームの黒幕の正体も、おぼろげながら掴み始めてきた。
絶望しか見えなかった未来に、わずかな希望が見え始めていた。






「おい、そろそろ起きろ、"変態"。ここからは自分の足で歩かんと捨てていくぞ」



ウェカピポが、少し離れた石柱に寝かされている"変態"を起こしに向かった。
そういえば、彼からはまだ何も話を聞いていない。
トリッシュを強姦しようとした変態らしいが、こんな異常な状況に陥ったら仕方ないことかもしれない。
外見から察するに日本人だ。名簿に記されている日本人らしき名前は30人近く―――全体の5分の1を占めている。
そして、ジョルノの隣で爆殺された白コートの男性も、おそらく日系の血が入っているような感じだった。
トリッシュは気が進まないだろうが、この"変態"の知り合いにも力になってくれる人間がいるかもしれない。
彼から情報を聞き出すことも、この先重要になるだろう。



「ねえ、ブチャラティ……」


メモと名簿をデイパックに詰め、出発準備を終えた俺に、トリッシュが神妙な声で話しかけてきた。

501虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:47:43 ID:1NqoTLgY

「……あなた、身体の方は………なんともないの?」

その質問に、戦慄を覚えた。
どうしてそんな質問をしてくるのか。

思えば、トリッシュの様子は初めから少しおかしかった。
いや、大統領に立ち向かうと覚悟を決めたトリッシュを見て、彼女が俺の知らないところで強い少女に成長したことを悟ったのは確かだ。
だが、それとは別に、彼女の俺に対する態度だけが、どこかよそよそしい。

もしかして――――。
心当たりは一つある。トリッシュが、「打倒ボスを果たした」と俺に告げた時から。


「……心配するな、トリッシュ。お前は元の世界に帰って、歌手として、歌姫として世界に羽ばたかねばならないだろう?」

だが、俺はその不安を、決して言葉にはしない。

「大統領を倒すまでは、皆で笑ってゲームを脱出するまでは――――――」

―――俺は死なない。
そう続けるつもりだった俺の言葉は、ウェカピポによって遮られてしまった。



「なっ! なんだこいつは!? "変態"ッ? いや―――!?」

ウェカピポに声をかけられても目を覚まさなかった"変態"。
彼の頭を揺さぶろうと手をかざしたその時、"変態"が彼に牙を剥いた。
ウェカピポに飛び掛かった"変態"の身長は180センチほどにまで巨大化し、口元には鋭い牙が生え、爪は鋭く光り、皮膚は鱗で覆われ、長い尻尾が生えていた。
昔見たスピルバーグの映画を思い出す。

"変態"が恐竜に『変態』した。



☆ ☆ ☆

502虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:48:04 ID:1NqoTLgY



「なッ! なんだそいつは!? スタンド!? いや、まさか恐竜か?」

「ほう、よく知っているな。さすがは21世紀の人間だ。未来では古生物学というのももっと進化しているのだろうな。これが俺のスタンド能力、『スケアリー・モンスターズ』だ。能力は生き物を恐竜に変え支配すること。生き物ならば生きていようが死体であろうが問題ない。そして俺自身も恐竜に変化し、身体能力を向上させることができる!」

「………」

「そしてこの恐竜はこの殺し合いで死んだある男の死体を恐竜化させたものだ。こいつは特に耳が利いてな。こいつに地下洞窟の探索をさせ、ブチャラティ一行の動向を捕えることに成功した。
俺の知っている男がひとりと、『トリッシュ・ウナ』という女も一緒にいるッ!!」

「何ッ!? トリッシュだと!?」

「その女はブチャラティとも顔見知りの様子だった。十中八九、お前らの目的の娘だろうな?」

「………チクショウ、ブチャラティにトリッシュ・ウナだと!? 上等だぜッ! ヤロウをブチのめすついでに生け捕りにしてやるぜッ!」

「よし、決まりだな。俺の指示通りに動くと約束できるのなら、2人で奴らを攻撃するぞ」

「………何故、隠していた能力を、いまさらオレにすべて話した?」

「言っただろう? 利害が一致したためだ。俺はルーシーを手に入れるため、お前はブチャラティを殺すため……」

「………俺は、どうすればいい?」



☆ ☆ ☆

503虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:48:58 ID:1NqoTLgY




「ウバシャァァァ―――!!」


玉美恐竜は前足の爪でウェカピポを切り付け、彼が怯んだ隙にトリッシュめがけて飛び掛かっていった。
『スケアリー・モンスターズ』で生み出された恐竜は元となった生物の影響を受けることが多いが、『変態』を『恐竜化』した場合は真っ先に女性に襲い掛かるということだろうか?
牙を剥いた玉美恐竜は、高さ2メートルはあるであろう跳躍を見せ、トリッシュを頭上から襲う。

「『スティッキィ―――・フィンガ―――ズ』ッ!! アリアリアリアリィィ―――!!」

そこに叩き込まれるブチャラティのスタンドの拳。

「WANABEEEEE!!!」

そしてそれに重ねられる、トリッシュのスタンドによる壮絶なラッシュ。

「ギャピィィィィ!!」

吹き飛ばされる玉美恐竜。石壁に叩きつけられ悶える。
恐竜になって身体能力は向上していたようだが、さすがに2人の格闘型スタンドの連撃を受ければ、動けなくなる程度にまで痛めつけられたようだ。
やがて恐竜となった身体は元に戻り、服が破かれ再び半裸になった小林玉美の姿が地に伏せた。

「ウェカピポッ! 今のはまさかッ!?」
「Dioの恐竜だッ! 奴が攻撃を仕掛けてきているッ!!」
「くそッ! 何てことだッ! こんなに早く見つけられてしまうとはッ―――ッ!」
「ブチャラティさんッ!! 後ろッ!!」

「ギャオオオオオ―――ン!!」


ルーシーの声にブチャラティが反応する。
彼の背後から新手の恐竜が姿を見せた。

(チッ! 今度のヤツは"変態"のより二回りはでかいッ!! 生物を恐竜化する能力ッ!! あの小柄な"変態"であのサイズだ。こいつは『元』も長身だったのだろうッ!)

強力な牙は厄介だが、このタイプの手合いには力押しが最も有効である。
先ほどと同様、恐竜に『スティッキィ・フィンガーズ』を叩き込む―――



『ホワイト・アルバム』―――――ッ!!!



「何ッ!!」

恐竜を迎え撃とうとスタンドを繰り出したブチャラティの足元を冷気が襲う。
とっさに飛びのかなければ、ブチャラティの両足は凍らされ地面に固定させられていただろう。


(『氷のスタンド』ッ ギアッチョ!! やはりヤツも現れたかッ!! まずいっ 体勢を崩してしまっては攻撃が不十分となる―――――ッ)

恐竜とスタンド使いによる挟み撃ち。
とっさの対応で体勢を崩してしまったブチャラティへ、獰猛な恐竜が牙を剥ける。

504虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:49:26 ID:1NqoTLgY

「伏せろブチャラティ――!! 壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)―――ッ!!」


ウェカピポが鉄球をぶん投げた。
恐竜の死角より投擲された鉄球だったが、間一髪のところでその鉄球を回避する。
かわされた? いや、まだだ。ウェカピポの攻撃はまだ終わっていないッ



ドギャァァァアア


「グゲェェェェエエエッッ!!」

鉄球は恐竜の頭部間近で炸裂し、無数の衛星を飛ばす。
ジャイロ・ツェペリの鉄球に、ベアリングの弾を埋め込んだだけの急造品ではあるが、効果は絶大である。

「グ……グガァ………」

苦しむ恐竜、だが致命傷は与えられていない。


「ブチャラティ! こいつはあたしに任せてッ!!」
「トリッシュッ!?」

ブチャラティよりも先に、トリッシュが恐竜を迎え撃つ。
スタンド『スパイス・ガール』。経験は足りないが、パワーだけならば『スティッキィ・フィンガーズ』に匹敵するほど強力。
トリッシュは強くなった。もう、守られているだけの少女ではなかった。


(それに――――――)


ブチャラティは恐竜の相手だけをしているわけにもいかないのだ。
恐竜よりも、もっと手ごわい相手が目の前にいる。


「お前の相手はオレだぜ――― ブチャラティッ!!」

氷のスタンド使い――― 暗殺チームのギアッチョが、ブチャラティの前に姿を現した。



☆ ☆ ☆

505虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:50:21 ID:1NqoTLgY


「まずはこいつを使う。『カエル』を『恐竜化』した小型の恐竜だ。こいつを先行させて、"変態"と呼ばれていた男に『恐竜化』を感染させる」

「役に立つのか、そんな変態野郎が?」

「当てにはしていない。なにしろ『恐竜化』の戦闘力は元になった生物の身体能力にも左右されるからな。
だが、本陣に突然恐竜が放り込まれたら隙の一つも出来よう。そこで第二陣をすかさず仕掛ける」

「それが"コイツ"と"オレ"か。こいつの『元』は、いったい何者なんだ?」

「なあに、このゲームに参加させられていた『誰か』さ。『恐竜化』に適した都合のいい肉体だったんで利用させてもらっているだけだ。
奴らのいるのはコロッセオの地下だ。地図がないからおおよそにしかわからんが、大体こんなふうに繋がっている。
恐竜は北のトンネルから、お前は真実の口から侵入して仕掛ける。挟み撃ちの形になるな」

「『まずはブチャラティを集中狙い』、『オレの標的はブチャラティに絞る』ってのは、オレとしちゃあわかりやすくてありがたい」

「コイツ(恐竜)はトリッシュかウェカピポにぶつける。トリッシュがどうかはわからないが、ウェカピポは『スタンド』を持っていない。
『恐竜』のような純粋に『力』の相手を苦手とするはずだ。"コイツ"が相手だとなおさらな」

「なるほど、悪くない作戦だが…… それで、ディエゴ・ブランドー。お前は何をする?」




☆ ☆ ☆

506虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:51:10 ID:1NqoTLgY





「トリッシュ!! ヤツの左側に回り込んで攻めろッ!! 奴は今、体の左半分が見えていない!!」
「―――了解ッ!!」

投擲した鉄球は柱に当たって跳ね返り、ウェカピポの元に戻ってくる。
普段ならば5〜6個の鉄球を持ち歩いているが、現在の持ち合わせはこの一球のみだ。大切に扱わねばならない。
直撃を食らわせれば恐竜も仕留められただろうが、完全な死角からの投球を回避するとは恐るべき洞察力。
だが、ウェカピポの鉄球はたとえ直撃しなくとも威力を発揮する。

左半身失調。
それがウェカピポの持つ鉄球の戦闘技術・壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)の『技』だ。

鉄球に取り付けられた14の『衛星』を飛ばし、攻撃する。。
今回使った鉄球は急造品ゆえにオリジナルよりも威力は落ちるが、それでも脳を騙し身体の左半分を失わせるには十分な威力を持っていた。
トリッシュもあらかじめウェカピポの『技術』を教わっていたため、即座に対応、恐竜の左側に回り込み、攻撃を仕掛ける。


「『スパイス・ガァァァ――――ル』ッ!!!」


だが―――――

恐竜は左半身の失調などものともせず、身体を大きく捻ってトリッシュの攻撃を回避。
そしてその勢いをそのまま攻撃に転化させ、強烈な尻尾での一撃をトリッシュに叩き込む。

「何ッ!!」
「何ですってッ!!!」

恐竜が隙だらけだと思い油断してかかったトリッシュに手痛いカウンターパンチが炸裂する。
咄嗟にスタンドでガードしたため致命傷は避けたが、大理石でできた柱に叩きつけられ、痛手を負う。

「グフ……ッ」
(ウェカピポめぇ…… どこが見えていないのよ!! 思い切り超反応かましてくれるじゃないのッ!!)

ウェカピポにもその理由はわからない。
なぜならこの恐竜、元々目が見えていなかったのだ。
左だけでなく、右目も。

小林玉美の変態要素が恐竜に反映されたように、恐竜化された生物は元々の姿の時の影響を色濃く受ける。
この恐竜は、ディエゴ・ブランドーが最初に死を看取った参加者、盲目の戦士『ンドゥール』の遺体を恐竜化させたものなのだ。

つい先ほどまでその存在をギアッチョにも隠し続け、逃げたブチャラティの追跡もこの恐竜にさせていた。
地下洞窟へと逃げ込まれては直接の追跡は不可能だったが、地中を走る自動車の音はンドゥールならば追えるのだ。
流石のブチャラティも、地下でギアッチョを撒いたところで、地上から恐竜に追跡されているとは思いもよらなかった。
トリッシュたちと遭遇し放送を聞いていた最中も、まさか自分たちの頭上、コロッセオ内にて1匹の恐竜が聞き耳を立てていたとは想像だにできなかった。
そしてブチャラティたちが移動をやめた頃合いを見計らいDioの元へ戻り、万全のプランを立てて襲撃するに至ったのだ。

そして、襲撃の場面では2番手の恐竜として送り込まれた。
左半身を失調したところで、元々が視力に頼らないンドゥール。
音の反響し合う地下遺跡の中では、右耳さえ生きていれば通常状態となんら変わらなかった。

507虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:51:36 ID:1NqoTLgY


(くそッ! 俺のミスでトリッシュが……!)

ベアリングの球を込め直し、再び鉄球を構えるウェカピポ。
直撃だ。直撃さえさせれば、あんな恐竜などひとたまりもない。
今度こそ、と狙いをつけ投球のフォームに入ったウェカピポに―――――

「ウェカピポさんっ―――!!」

「ウバッシャァァァァァアア!!」」


―――闇の中より、別の恐竜が襲い掛かってきた。


「ヌウゥ!!」

3体目の恐竜の出現。
恐竜はその発達したその全身を用いて、ウェカピポに強烈な突進を見舞う。
まるでオートバイに跳ねられたような強力な打撃がウェカピポを襲う。

(なんという威力……これが恐竜の打撃ッ!?)

とっさに鉄球の回転を自分に押し付け、硬質化して防御した。
にも関わらず、この威力、このダメージ。
新たに現れた3体目の恐竜はウェカピポの顔をじっと見据える。

傷つきながらも、ウェカピポは鉄球を構え、恐竜を迎え撃つ姿勢を取る。
トリッシュやブチャラティのカバーにも回りたいが、先に自分の目の前にいる恐竜を片付けなくてはいけなくなってしまった。

しかし恐竜は、何故かウェカピポから興味なさげに視線をそらす。
心なしか、笑っているように思えた。
恐竜の目線の先にいるのは――――― ルーシー・スティール。


(しまった――――――ッ!!)

ウェカピポが気づいた時にはもう遅い。
恐竜は一足飛びにルーシーへの距離を詰め、悲鳴も出させぬスピードで手刀を叩き込み、気絶させる。
そして恐竜はルーシーを担ぎ上げ、こちらを振り返りながら静かに笑った。

(これが奴らの真の狙いか―――)

玉美の恐竜の攻撃は、ウェカピポに大したダメージを与えることはなかった。
恐竜化された他の2体の恐竜は、動きは比較的シンプルで直線的だった。
この3体目の恐竜は、他2体とは攻撃力も知力も段違いだった。
こいつが恐竜どもの親玉である。
そして、奴らの真の狙いは、ルーシー・スティールの確保。
この男の正体は――――――

508虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:52:12 ID:1NqoTLgY


「貴様! Dioかッ!!」

「あばよ、ギアッチョ」




短く捨てゼリフを漏らし、ルーシーを背中に担いだディエゴ・ブランドーが北へ走り去る。
コロッセオの北、ウインドナイツのトンネルには難解な迷宮がある。
もしそこに逃げ込まれたら、追跡は不可能だ。


「追ってッ ウェカピポ!!」
「俺たちにかまうなッ!! 行けッ!!」

「な――― し、しかし――――――」

トリッシュもブチャラティも優勢とは言えない。
とくにブチャラティが相対しているギアッチョという男の能力は底が知れない。
恐竜である奴を人間の足で追いかけるなんて不可能かもしれない。
だが、彼らはウェカピポにディエゴ・ブランドーの追跡を命じるのだった。

「あたしの"護衛"は必要ないって言ったでしょ!? 早く行ってッ!!」
「行ってくれウェカピポッ!! 彼女を助けてやってくれ!!」

「………わかった」

ウェカピポは2人の真意を理解する。
彼らは、ルーシーが『スティーブン・スティール』の妻だから、大統領に近づくための切り札になるから、そういった理由で彼女を助けたがっているわけではない。
ただ、普通の少女だから。
事件に巻き込まれただけの、どこにでもいるごく普通の少女だからこそ、助けてくれというのだ。

ギャングが人を助け、大統領が人を殺す。
全く狂った世の中だ。

ブローノ・ブチャラティ。
彼とは出会って一時間と経っていないが、いい仲間と巡り合うことができた。



鉄球を携え、ウェカピポは遺跡を後にして走り去った。
そんなウェカピオを見送り、ブチャラティは気持ちを切り替える。
こちらの人数は減らされてしまった。


「『俺たちにかまうな』……だとォ? ズイブンヨユーかましてくれんじゃあねえかッ!! このクソダボがッ!!」


ブチャラティの相手は、恐らく暗殺チーム最強の使い手。
絶対零度のスタンド使い、ギアッチョなのだから。



☆ ☆ ☆

509 ◆vvatO30wn.:2012/11/21(水) 23:56:37 ID:1NqoTLgY



もうチョイ書けてますが、この辺までにしときましょう、キリがいいので。
まあ大体いつもの俺の作風通りの話です。
そんだば三連休に残り投下できるよう頑張ります

一応ageときますが、◆4eLeLFC2bQ氏の投下が転載用スレに来ているので、そっちもヨロシク&転載よろしくお願いします

510 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:13:55 ID:LqCaLKdw
◆vvatO30wn.氏、仮投下乙です。
正直、前編だけでひとつの作品にしていいのではと思うくらいのボリュームでワクワクしました。
とりあえず、前編のみでの矛盾はないと思います。

それではヌ・ミキタカゾ・ンシ、グイード・ミスタ、エンリコ・プッチ、ホット・パンツ
仮投下致します。

511聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:18:27 ID:LqCaLKdw

(さて、どう動くか………あんまり時間はかけられねーな)

グイード・ミスタは柄にもなく悩んでいた。
物陰に隠れた彼の視線の先には地面に倒れているミキタカと、それを囲む二人組みの姿。
ミキタカを追ってここまできたものの不用意に飛び出すわけにはいかず、かといって放っておくわけにもいかなかった。

「クソッ、なんでよりによって二人なんだよ………あいつらとミキタカとオレで、『四人』になっちまうじゃねーか………」

ミスタは誰にも聞こえないようひとりつぶやく。
単に縁起が悪いというだけでなく、相手が一人だけならば例え危険人物でもやりようはあった。
あるいは相手の人数がさらに多ければ、少なくとも全員が殺し合いに乗っている可能性は極めて低くなるため、素直に出て行くことも出来た。
そういう意味で、相手が二人というのは最も判断が難しい微妙な数だったのである。

(拡声器も閃光手榴弾も、ダメだな………)

腰に下げた道具をちらりと見て思案するが、すぐに首を振る。
拡声器で注意をひきつけるとしても、おそらく片方が残ってもう片方が様子を見にくるのが関の山であり、結局二人を相手にしなければならない。
この場から閃光手榴弾を投げ込むにしても、気絶したミキタカを背負って逃げきるのは難しいだろう。
第一そんなことをすればこちらが危険人物と判断されて攻撃されるのが落ちだ。

(となりゃあ出て行くしかねーか、だがその前に………)

ミスタはその場で『ピストルズ』を発現する。
六人組のスタンドを並べ、ミスタは声を落として指示を出した。

「ピストルズ、誰か一人あいつらのそばまでいってこい」
『エエーッ!?ミスタ、ソリャナイゼーッ』
『下手スリャソノママヤラレチマウゼッ!』
「言ってる場合か!あーもう、行ってくれた奴には後でメシの量を多くしてやるから」

ミスタが考えたのはまずピストルズを一人だけ接触させること。
これなら二人組みの意思を確認できるだろうし、やられてもダメージは六分の一で済むという寸法だった。
だが………

『ウウーッ、人使イガアライゼッ』
『オレヤダヨーッ』
『コウユーノハNo.5ノ役目ダローッ』
『うえええ〜〜ん オシツケルナヨーッ』

ゲーム開始から満足に食事をしておらず、また時間もいきなり日中から深夜に移ったため寝る時間もずれて気が立っているピストルズはなかなか言うことを聞いてくれない。
―――このような状況において適切なのは『誰か行け』ではなく特定の相手を指して『おまえが行け』と指示することである。
何故ならば、前者だと責任の分散が発生し『自分がやらなくとも誰かがやってくれるだろう』という認識をする者が多いからだ。
だが焦りからかミスタが『誰か一人』と言ってしまったために押し付け合いとなり、行動が遅れてしまう。
そしてしばし口論が続いた後………

『チキショー、コウナッタラジャンケンデ………ッテミスタ!ウシロダァーッ!!』

「………? 後ろ………ッ!!?」
『一人漫才というやつか?………ヒマつぶしなら他でやれ』

いつのまにか背後に忍び寄っていた妙な文字模様のスタンドが振り下ろした手刀を頭に受け、ミスタはあっさり意識を失ってしまったのだった。

―――誤解のないよう付け加えるが、彼自身は至極真面目にやっていた、と言っておく。
ただ今回の彼には、ツキがなかった。

512聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:21:15 ID:LqCaLKdw

#


「まったく、何故わたしがこんなことを……」

ホット・パンツはひとり呟く。
現在、彼女がいるのは大聖堂内部の片隅。
足元には意識のない男二人が寝かされていた。
一仕事終えたばかりの彼女は、何故このような状況になったのかを思い返していた。


―――今からおよそ一時間ほど前のことである。
聖堂の見張りをしていたら、夜が明けるか明けないかというところでDioの馬、シルバー・バレットに乗った男が広場に進入してくると同時に気絶していた。
馬をおとなしくさせてもらい、どう対応するかを相談していると神父が突然「妙な気配がした、様子を見てくる」と言って歩き出していき、しばらくして別の気絶した男を抱えて戻ってきた。
かと思えばすぐに「おそらく危険人物ではない。適当なところに寝かせておいて起きたら知らせて欲しい、わたしはやることができた」とだけ言い残して聖堂の奥にこもってしまったのである。

(ちょっと待て、女性一人だけで力仕事をやらせる気か、それに危険人物でないという保証はどこにあるんだ、そもそも何故その男も気絶しているんだ)

聞きたいことは山ほどあったがその時既に神父の姿は見えなくなっていた。
同時に『放送』も始まったため、重要な点は逃さないようにメモを取りつつどうするか思案する。
シルバー・バレットは座り込んだまま動かなかったため、仕方なく自力で男を一人ずつ聖堂内へと引きずり込む。
入り口から見えるところに置く、というのは誤解を招きそうだったので左手奥のほうに二人を並んで寝かせるとようやく一息つくことが出来た。
そこで自然と口をついて出たのが先程の一言である。

ホット・パンツは男達が目を覚ますまでの間、名簿の中身に目を通していた。
トラップを警戒して直接身に着けているものには手をつけていないが、念のため男たちのデイパックと鳩が運んできた名簿は全て回収してある。
『放送』で死者の数には驚いたものの、呼ばれた名前には特に思うところはない―――最も、知り合いの名が呼ばれていたとしても、彼女はここを『基本世界』とは認識していないのだからショックは少なかっただろうが。
むしろ彼女の目を引いたのは名簿に記されている生存者のほうであった。
中でも特に気になったのが………

(どういうことだ………なぜ、ルーシー・スティールの名がある………?)

この世界の大統領はダイヤモンドを集めているだろうから彼女は列車内のような姿にはなっていないだろうし、大統領側としても『基本世界』のようにルーシーをそばに置く理由はないはずだ。
すなわち彼女がいること自体は別にありえないことではない。
だが、主催者であるスティーブン・スティールは妻をこんな殺し合いのゲームに参加させる男ではなかった………そこまで考えてホット・パンツには『ピン』と来るものがあった。

(そうか………スティール氏が放送時に妙な言いかたをしたのは、『そういうこと』かッ!!)

あそこまで自分のフルネームを強調して話す理由は一つ、参加者達に名簿でただひとり自分と同じ姓を持つルーシーに気付かせるためだろう。
そうすればこのバトルロワイヤルに反発する者達は主催者の手がかりにつながると考え、こぞってルーシーと『接触』あるいは『生け捕り』を試みるはずだ。
すなわちどちらに転んでも彼女は『生かされる』可能性が高い。
つまり、あれはスティール氏の『ルーシーを死なせないで欲しい』という意味を持つメッセージだったと考えられる。

(となれば、スティール氏自身は全ての黒幕ではない。背後にいるのは『大統領』か………?
 いや………『はさまれる』方法で戻れない以上そうではない可能性もあるか。
 だが別人だとしても、わたしたちをこの世界に連れてきたならば『基本世界』へ戻すことも出来るだろう。
 どちらにせよ敵は『真の』主催者………辿り着くには『情報』と『協力者』がいる………
 わたしはこの六時間、なにをやっていた? いたずらに時を消費して、たいしたものも得られずにッ!)

ホット・パンツはゲーム開始からの行動を思い返し、悔やむ。
参加者の半数が死亡したこの六時間で、自分は無傷どころか争いにすら巻き込まれていないのは確かだが、代わりに『外部』のことは何一つ分かっていない。
ここまでこの聖堂を訪れたのはこの妙な男二人だけ―――さらに目的も出来た今、これ以上自分がこの場にとどまる意味はない。
すぐにでも神父にこのことを話して行動を開始するべきだ、そう考えた矢先のことだった。

513聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:23:28 ID:LqCaLKdw

「う、ううーーーん……ここは……?」
「ン!………気がついたか」
「えっ? あ、おはようございます」

二人のうち馬に乗って来た男の方がようやく目を覚ます。
きょろきょろと辺りを見回すその様子は、とても見知らぬ相手に警戒しているようには見られない。
それでも注意は怠らずにホット・パンツは口を開いた。

「おはよう、さっそくだが用件を言う―――お前は何者だ?」
「……よくぞ聞いてくれました。実はわたし、マゼラン星雲からやってきた『宇宙人』なんです」
「………………………」

ブシュウウウウ!

ホット・パンツは無言で『クリーム・スターター』のスプレーを相手の口元に吹きかける。
スプレーから放出された肉の泡は男の口と鼻をふさぎ、呼吸を封じてしまった。

「?………!?………!!」
「暴れるな、すぐ元に戻してやる。だが次にふざけた答えを………何ッ!?」
「ぷはぁ〜〜ッ、いきなり何をするんですか!」

男の顔が『変形』し、吹き付けた肉をかき分けて出てきた口が文句を言う。
その人間離れした光景を見てホット・パンツは僅かだが、引いた。

「………予想外だ………お前、本当に何なんだ………?」
「あ、自己紹介ですね? うっかりしてました。わたしの名はヌ・ミキタカゾ・ンシ、ミキタカでかまいません。職業は宇宙船のパイロットで―――」
「………わかった、もういい………………」

ホット・パンツは額に手を当てながら相手の言葉を遮る。
相手はスタンド能力者のようだが反撃してくる様子も逃げ出す様子もないところを見ると、敵意はないのだろう。
そして相手の名乗った名前も確かに先程まで見ていた名簿の中にあった。
だが、今まで出会った人間とは比較にならないレベルで言っていることがまるでわからないのに彼女は動揺を隠せなかった。
詳しい話は後で神父を交えてすることにして、会話をさっさと切り上げるべく未だ気絶したままのもう一人の男を指差して聞く。

「それで、そこの男はお前の知り合いか?」
「あ、はい。彼はミスタさんです。そういうあなたは―――」
「ミキタカ………といったか、悪いが質問は後にしてもらおう。お前はここで待っていろ、神父様を呼んでくる」

相手が質問に肯定するのを聞くとホット・パンツはミキタカに背を向け歩き出す。
最低限の警戒はしていたものの、それ以上に彼女は未知との遭遇によって疲弊していた。

(神様、この男はなんというか………なんというか、なんなのでしょう)

頭を抱えながら二人から見えない位置まで移動するとトランシーバーを取り出し、プッチと連絡を取ろうとする。
………ところが。

「神父様、馬に乗ってきたほうの男が目覚めました………神父様?」

トランシーバーに向かって何度も喋るが、応答がない。
何かあったのだろうか―――そう考えると彼女は表情を引き締めて再びスタンドを構え、慎重に聖堂の奥のほうへと歩いていった。

―――誤解しようもないが、彼女は常に真面目である。
故に気苦労も多い。

514聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:29:19 ID:LqCaLKdw

#


―――ミキタカが目覚める少し前。
侵入者の処遇そっちのけでエンリコ・プッチ神父は聖堂の奥で何をしていたかというと………彼は偏にDISCの記憶を見るのに没頭していた。

「おもしろい」

先程馬から抜き取った記憶DISC………その中身は彼にとって実に興味深いものであった。
19世紀のアメリカで行われているレース『スティール・ボール・ラン』。
参加者である『ディエゴ・ブランドー』、『ジョニィ・ジョースター』、『ホット・パンツ』、そして『ヴァレンタイン大統領』。
断片的ではあるが、まさにホット・パンツが語った話そのものが、そこにはあった。

「どうやらあの女、嘘偽りない真実を言っていたらしい………そしてこの名簿………これもまた、おもしろい」

名簿に記されている数々の聞き覚えがある名前。
幾人ものジョースター、空条親子にウェザー・リポート、さらに………

「きみもいたんだな………DIO………」

プッチは見ようによってはまるで恋人のことを思うかのような安らいだ表情を浮かべる。
彼の脳裏に浮かぶのはある意味で唯一無二といえる友。
DISCの記憶でその姿は何度も見てきたが、本人と最後に話したのは既に20年以上も前―――彼にとっては懐かしき思い出であった。
またそのすぐ上にある『ディエゴ・ブランドー』―――ホット・パンツの話によれば別世界のDIOの名にも興味は尽きない。
馬の記憶で見た彼は、自分の知るDIOと雰囲気も、スタンド能力も異なる。
だが彼もまた間違いなくDIOである………そう思わせるだけの何かがあった。

(DIOの息子や親戚………そんな次元の話ではない。ぜひ一度、彼とも話してみたいものだ)

さらにもう一人、気になる人物がいた。
プッチは広場に侵入してきた馬とその騎手を見たとき、ある仮説を立てていた。
騎手が振り落とされるほど全力で馬を駆けさせるというのは、『何かから逃げてきた』ためではないかと。
となれば、周囲に『追手』が潜んでいる可能性がある―――そう考えて『ホワイトスネイク』で辺りを捜索したのだった。
その結果物陰に隠れていたマヌケな男―――ミスタにいち早く気がついて不意打ちで気絶させ、すぐに記憶DISCを抜き出して最近の記憶を調べる。
そして事の顛末を知り、彼や馬に乗ってきた男―――ミキタカはゲームには乗っていないことを理解したのだった。

その際男の記憶の中に出てきた人物―――ジョルノ・ジョバァーナ。
彼もまた、何かを感じさせるものがある―――あの三人の『DIOの息子たち』と非常に良く似た何かが。
だが彼に限っては同時にいいことばかりではなく、憂慮すべき事柄も存在していた。

「あの少年………ジョルノ・ジョバァーナといったか。殺されたはずの彼が生きているということは空条承太郎も同様に生きて、しかも万全の状態でいる可能性が非常に高いッ!」

彼は確かに、ゲーム開始前に空条承太郎と並んで殺害されたはずの男だった―――だが、その彼が生きているとなると、そこから考えは派生してゆく。

(『放送』によれば空条徐倫は死亡したらしい………だが空条承太郎はもちろん、わたしの『正体』を知っているウェザーやナルシソ・アナスイが残っている。
 わたし自身はもちろん、DIOにとっても彼らは厄介な存在以外の何者でもない。それにジョンガリ・Aやスポーツ・マックスなど死者の名前があるのも気がかりだ………
 どうやらこのゲーム、わたしの想像を遥かに超越した『何か』があるのかもしれんな………
 こうしてはいられない、DISCを見終えてあの二人の処遇を決めたら、すぐにでもここを発たねば)

そう考えるとプッチは再びDISCの記憶へと注意を向けるのだった。
記憶を見るのに雑音が入らないよう、トランシーバーのスイッチを切ったことをすっかり忘れて。

―――誤解されがちだが、彼は目的に向かって真面目に取り組む男である。
………目的の善悪は別として。

515聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:31:32 ID:LqCaLKdw

#


「………そう、カフェの近くから大きな音が聞こえてきて―――」

ミキタカはどこかに行ったホット・パンツの帰りをじっと待ちつつ、自身の記憶を回想していた。
カフェで待機していてサイレン音が聞こえるまでの出来事は簡単に思い出せる。

その後のことも、かろうじてだが記憶は残っていた。

「確か、そのすぐ後に嫌なサイレンの音がして………そう、馬に乗って無我夢中で逃げてしまったんでしたね。
 ミスタさんとジョルノさんには悪いことをしてしまいました………
 ―――彼らと一緒に逃げるべきでしたね」

微妙にずれた思考ながらも、彼自身迷惑をかけたという自覚はあった。
気絶したミスタに目を向けるが、彼は未だに目を覚ます様子はない。
その腰元に拡声器と閃光手榴弾があるのを見てふと周囲を見渡す。
自分たちのデイパックは………なかった。
おそらく運び込まれたときにでも没収されたのだろう、と推測する。

「それにしても、ここはどこなんでしょう? それにジョルノさんはどうなってしまったんでしょうか?」

見知らぬ場所で仲間も足りない状況ながら、危機感を全く感じさせない声でつぶやくミキタカ。
その余裕ぶりは他人が見ればむしろ頼もしく感じるかもしれないほどであった。
ところが、そんな彼の表情は一瞬の後に驚愕に染まることになる―――自分達の首輪から、突如声が聞こえてきたことによって。


『『おっと、自分の位置がわからないアホがひとり登場〜〜 今いる場所が禁止エリアなの知ってたか?マヌケ』』

「………エッ!!?」



サン・ピエトロ大聖堂はその大部分がC-1に属している。
だが、地図をよく見るとわかるが南端の端の部分はわずかにD-1―――「現在の時刻である」7時に禁止エリアとなる区域に入っていた。
そして、その南端こそが今まさに彼らがいる位置だったのである。
ホット・パンツは放送を聞いており、メモも取っていた。すなわち直後に禁止エリアとなる場所へと移動を行うなど本来ありえないはずであった。
だが、彼女は考え事をしながら作業をしており、また聖堂内から出ることがなかったのでここ数時間のうちに地図を開いていなかった。
そのため、前述した聖堂の南端がD-1に跨っている事実を失念していたのである。
あとは………強いていうならば北ではなく南に運ばれた彼らの『運』が悪かったのかもしれない。



―――閑話休題。
他人の言葉には比較的従順なミキタカであるが、さすがにこの状況で黙って待っているわけにはいかなかった。

「ちょ、ちょっとミスタさん!起きてください!なんだかヤバイです!!」
「………………」

身体を揺すりながら必死に叫ぶも、ミスタは目を覚まさない。
そうしているうちに首輪から聞こえてくる声はカウントダウンを始め、その数字は着々と減っていく。
迷っている暇は、なかった。

516聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:33:38 ID:LqCaLKdw
「ウウーッ、仕方ありませんッ………!」

ミキタカは素早く変身してスニーカーになり、ミスタの足に取り付くと足を動かして移動を始める。

ガツンッ!

「痛ッ! なっ、なんだぁああ〜〜ッ!?」

のけぞる姿勢になったことにより後頭部を床にぶつけて目覚めたミスタが叫ぶが、気にする余裕はなくほとんど彼の上半身を引っぱるような形で正面入り口の方へ向かう。
すぐに禁止エリアから出たらしく音はやんだが、ミキタカのパニックは収まっていなかった。

(『ここを動くな』。あの人は確かにそういってました………ひょっとしてこのことを知っていてわたしたちを始末するために………?
 そういえば先程もいきなりわたしに攻撃してきたような気もしますし………き、危険です! 一刻も早くここから『脱出』しなくてはッ!!)

「お、おい何やってるんだオレの………足? ちょっと待て!勝手にどこ行く気だよ!」
「お目覚めですかミスタさんッ! それでは急ぎましょうッ!!」
「喋ったァ!? い、いやそれはともかく理由を言え―――ッ」

ミスタの抗議を無視してがらんとした大聖堂を見渡し、朝日がもれる出口へと一直線に駆ける。
奥のほうにいたプッチ達が彼らに気付くことはなかったが、たとえ気付いていたとしても二人分の速さで走る彼らに追いつくことなど到底出来なかっただろう。
座り込むシルバー・バレットにも気付かず、二人(といっても見た目は一人だが)はみるみる大聖堂から離れていく。
一直線に広場を抜け、道を走り、流れる川の近くまで来たところでようやく落ち着いたのか、ミキタカは動きを止める。

「フゥー、ここまでくれば一安心でしょうか」
「おいおい、何がどうなってやがるんだ? 説明を要求するぜ………まずオレの足っつーか、よく見たら妙な靴履いてるんだが、喋ってるおめーは何モンだ?」
「おお、そうでした。わたしですよ、ミスタさん」

ウジュルウジュルと音をたてながらミキタカが人の姿へと戻る。
ミスタは呆気に取られた様子でその一部始終を眺めていたが、やがて言った。

「あーー………えっと………………どちらさんでしたっけ?」

「………………え?」


―――プッチは最初にミスタを気絶させたとき、記憶DISCを抜き取った。
中身をちらりと見て危険人物ではないことを確認したものの、ずっと聖堂に篭城していたプッチにとって『外部』の情報は貴重なものであった。
そのため後で詳しく調べようとDISCを戻さないまま彼をホット・パンツに預けたのである。
プッチ本人は不審に思われないよう調査が終われば返すつもりだったのだが、不幸にもそれより先にミスタは勝手に逃亡させられる羽目になってしまったのだった。

果たして、記憶を無くしてしまった不運を嘆くべきなのか。
あるいは、命までは失わずに済んだ幸運を喜ぶべきなのか。
それすらも今の彼にはわからない。
そんな彼の傍らには状況がよく飲み込めないミキタカが佇むのみであった。

「なんとなく『敵』じゃあねー気はするんだが………あークソッ、思いだせねェ〜」
「ミスタさん、どこかで頭でも打ったのでは………あ、わたしのせいでした」

―――誤解も六階もない。彼が真面目かどうかは他者には判別不能である。
その真意は本人と神のみぞ知るところであろう。


様々な不幸に苛まれつつも、ゲーム開始から数えて自身の『四番目』となるエピソードを乗り切ったミスタ。
聖堂内に引きずり込まれ、ホット・パンツを引かせ、ミスタを引っ張りながらも『引力』とは全く無縁なミキタカ。

―――この妙なコンビの行く先と、聖堂にて彼らの逃亡が判明するのは共にもう少し先の話である……

517聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:35:13 ID:LqCaLKdw


【C-1 サンピエトロ大聖堂 / 1日目 朝】


【ホット・パンツ】
[スタンド]:『クリーム・スターター』
[時間軸]:SBR20巻 ラブトレインの能力で列車から落ちる直前
[状態]:健康
[装備]:トランシーバー
[道具]:基本支給品×3、閃光弾×2、地下地図
[思考・状況] 基本行動方針:元の世界に戻り、遺体を集める
1.プッチと今後について相談し、行動開始する。
2.おそらくスティール氏の背後にいるであろう、真の主催者を探す。
3.プッチと協力する。しかし彼は信用しきれないッ……!


【エンリコ・プッチ】
[スタンド]:『ホワイトスネイク』
[時間軸]:6部12巻 DIOの子供たちに出会った後
[状態]:健康、やや興奮ぎみ
[装備]:トランシーバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、シルバー・バレットの記憶DISC、ミスタの記憶DISC
[思考・状況] 基本行動方針:脱出し、天国を目指す。手段は未定
1.DISCを確認後、ホット・パンツと今後について相談、聖堂を出発する予定
2.DIOやディエゴ・ブランドーを探して話をしてみたい
3.ホット・パンツを利用する。懐柔したいが厄介そうだ……
4.ホット・パンツの話に出てきた、「ジョースター」「Dio」「遺体」に興味

※シルバー・バレットの記憶を見たことにより、ホット・パンツの話は信用できると考えました。
※ミスタの記憶を見たことにより、彼のゲーム開始からの行動や出会った人物、得た情報を知りました。

518聖堂に運ばれた2人の男 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:36:12 ID:LqCaLKdw

【C-2 南東 / 1日目 朝】


【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:記憶喪失
[装備]:閃光弾×2
[道具]:拡声器
[思考・状況]
基本的思考:なし(現状が全くわからない)
1.ここはどこ?あんた誰?っていうかオレ何してたんだっけ?

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※記憶DISCを抜かれたことによりゲーム開始後の記憶が全て失われています。
※ゲーム開始『以前』の記憶がどの程度抜き取られたかは次回以降の書き手さんにお任せします(ただし原作承太郎のように全ては奪われていません)。


【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.ミスタさん、どうしたというんでしょう……?
2.先程の建物にいた人物(ホット・パンツ)から逃げる
3.知り合いがいるなら合流したい
4.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※ジョルノとミスタからブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、トリッシュの名前と容姿を聞きました(スタンド能力は教えられていません)。
※第四部の登場人物について名前やスタンド能力をどの程度知っているかは不明です(ただし原作で直接見聞きした仗助、億泰、玉美については両方知っています)。



[備考]
・シルバー・バレットは神父にDISCを抜かれて記憶を失い、広場に大人しく座っています。
・ミスタとミキタカは自分たちの現在位置がわかっていません。また地図も持っていません。
・禁止エリアに入ると首輪が『誰か』の声で教えてくれるようです。

519 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/24(土) 23:44:55 ID:LqCaLKdw
以上で仮投下終了です。
登場人物は真面目なはずですが、全体的にはどこか滑稽な話……?

首輪の声に関しては単なる思いつきなのでいろいろ意見をいただきたいです。
その他矛盾や疑問などありましたらよろしくお願いいたします。

520まさかの中編 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:31:06 ID:/WtTzPQo
◆LvAk1Ki9I.氏、仮投下乙です
1stの再臨というか、ミキタカは血生臭いロワにおける癒しのオアシスですねえ
ミスタの記憶喪失とは、また厄介なことになってきました
おかしなところはないと思います。

さて、自分の方ですが、残念ながら週末は時間切れのようです。
一応書けてるところまで投下します。
なんかSS速報のスレみたいな書き方になってしまってますね、申し訳ありません。
あと、これは仮投下ですので転載は結構です。

521 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:31:36 ID:/WtTzPQo



(ひいいいい とんでもねえ! とんでもねえよ!!)

ゲーム開始以降、二度目の気絶から目を覚まし、二度目の『気絶したフリ』を継続中の、名実ともに小さい男、小林玉美。
トリッシュらからひたすら"変態"と呼ばれ続けていた彼は、現在窮地に陥っていた。

(なんだよコレぇぇぇぇ!! いつの間にか気絶させられていて、目が覚めたらいきなり目の前でガチバトルおっぱじめるなんてよォ!!
オレは関係ねえ! 関係ないからここから逃がしてくれぇ!!!)

ニワトリ大の小型恐竜にお尻をかまれて恐竜化した玉美。
彼は、自分が恐竜の姿にされていたことにも気が付いていなかった。
トリッシュとブチャラティにボコボコにされ、恐竜化を解除させられ、それでも何とか目を覚ました彼だったが、目の前で行われている死闘に身体が硬直してしまっていた。

走って逃げることは、おそらく不可能ではない。
恐竜化していた際に防御力も強化されていたようで、身体に受けたダメージは致命的なものではないようだ。
だが、恐怖で身体がすくんでしまい、動けない。

バトル・ロワイアルという殺人ゲームが開始されて6時間。
けっこう呑気してた玉美も暴走する機関車だろうと止められる氷スタンドにはビビった。



ドン! ドン!



銃声が聞こえて、さらに冷や汗をかく玉美。
薄目を開けて様子を伺うと、しゃがみ込んだトリッシュが拳銃を構えて恐竜と応戦していた。

恐竜―――
こっちはこっちで、戦えそうも、逃げられそうもそうもない。

小林玉美も一応スタンド使いなのだが、能力は罪悪感を感じた相手の動きを封じるのが精一杯。
殺人を生業としている暗殺者と、本能だけで生きる獣が相手では、能力の発動すら期待できないだろう。

(せめてブチャラティたちが勝ちますように)

結局、そう願うしかできない玉美だった。






☆ ☆ ☆

522 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:32:35 ID:/WtTzPQo



おかしい。

少し前から、俺はそう思い始めていた。
Dioが変身している恐竜は、捕食をする肉食タイプの恐竜だ。
生物学には詳しくはないが、狩猟をする動物というのは大体、時速数十キロで走り回るものだ。

俺はまだDioの姿を『見失っていない』。
曲がり角を曲がっても、奴の姿はまだ視界に捕えられている。


それがどう考えても"おかしい"。


Dioは、俺から逃げ切るつもりはない。
そんな気がしていた。





「ここは……?」

数分間の鬼ごっこの末、やっと地上にたどり着いた場所は奇妙な庭園だった。
カラフルに彩色された不気味な動物たちの像の飾られている。
このあたりの地図は大体暗記している。コロッセオ地下遺跡からの距離を考えると、この場所がどこだがだいたい見当がつく。

「タイガーバームガーデン…… とかいう場所か」

こんなふざけた景色はローマにはない。
とすれば、ここはトウモロコシ畑と同様に大統領が用意した、切り取られた世界の一部なのだろう。
そして、自分の見上げる目の前の背の高い像の頭の上から、金髪の男が俺を見下ろしていた。


「Dio……」
「フン、ウェカピポか。久しぶりだな」


久しぶり……か。奴のことを知識として知ってはいたが、直接出会うのはこれが初めてだ。
やはりルーシーの言うとおり、俺とこの男とでは認識が違う。
俺より未来のDioか、もしくは別の世界のDio。

ルーシー本人の姿は見えない。


「ルーシーをどこへやった?」

「この近くで眠らせてある。お前と二人きりで話そうと思ってな」


やはり――――――。
Dioは俺から逃げ切るつもりなど毛頭なかったのだ。

タイガーバームガーデン。
立体的な構造をしており、身体的能力に秀でた恐竜の戦闘に向いていると言える。
ヤツを追いかけているつもりが、逆にヤツ好みの戦場に誘い込まれていたってわけだ。

523 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:34:12 ID:/WtTzPQo

「なあ、ウェカピポ。お前は今、何のために生きている? ルーシー・スティールなんていう出会って間もない小娘のために命を懸けるのか?
死を覚悟してまで、あんな小娘のために俺に立ち向かう必要はないだろう。
別の世界のお前はもっと利口だったぞ? 一時的にとはいえ、俺と組んで大統領と戦ったのだからな」

その言葉に、ピクリと心が揺れる。
大統領と戦った、というのは初耳である。
俺がジャイロたちと手を結び、ルーシーの護衛を引き受けたのは確かだった。だが、大統領に表立って牙を剥けたことはまだない。
大統領に刃向えば、俺の居場所はこの地球上から永遠になくなってしまう。
いや、もともと最初っからそんな場所なんて無かったのかもしれない。

「あの『氷のスタンド使い』ギアッチョ。あいつはダメだ。強力な使い手ではあるが、頭が悪く使いづらい。あんな野郎といつまでも組み続けるつもりはない。
だが、お前は違う。お前の鉄球の技術、冷静な判断力、大統領に立ち向かう姿勢。どこをとっても悪くはない」

Dioが高みより、俺に語りかける。
そして、俺の方へ手を差し伸べて、ぬけぬけとこう言った。

「もう一度、俺と手を組まないか? ウェカピポ」


別の世界の俺が大統領に立ち向かい、どんな結末を迎えたかはわからない。
だが、想像はつく。
大統領に勝利した世界のルーシー・スティールは、俺のことを何一つ知らなかった。
それはつまり、無事ではいなかったという事。
彼女との出会いを果たす前に、俺はどこかで命を落としたのだろう。
「ルーシー・スティール」か。一度も会った事のなかった少女のために、国を敵に回し、その結果くたばってしまうのか。

だが、ま、それもいいだろう。


「大統領を倒す、というところまでは賛成だ。だがな、Dio――――――」

そこで一度、言葉を切る。
そして鉄球をDioに向けてかざし、強い言葉で言い放つ。

524 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:35:39 ID:/WtTzPQo

「貴様とは組めんッ!! Dio―――!! そのちっぽけな少女を、『ルーシー・スティール』を自分の利益のためだけに襲い、てめーの都合だけで利用しようとしている貴様とはなッ!!」

ブチャラティから受け継いだ、黄金の精神。
ルーシーの胸に秘められた、気高き覚悟。
そして、トリッシュに教えてもらった、立ち向かう勇気。

俺は、もうひとりじゃない。
俺の帰る場所はここにあった。


俺はここでDioと戦い、ルーシー・スティールを救い出す。


「フン、ならばしょうがない………」

Dioは不敵に笑う。元々、本気で組むつもりなど無かったのだろう。



「死ぬしかないな、ウェカピポッ!!」



別の世界の俺がどうなったかなど関係ない。

俺は俺だ。

『ルーシー・スティール』はこのオレの手で助け出す。




これで、俺の気分も結構、清らかだ。






☆ ☆ ☆

525 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:36:43 ID:/WtTzPQo


「『ホワイト・アルバム』ッ!!」

氷のスーツを纏ったギアッチョの攻撃がブチャラティを襲う。
ブチャラティは『スタンド』の脚力と、このコロッセオ地下遺跡内部に数多く存在する大理石の柱を利用してギアッチョの攻撃から逃げ続けていた。

触れたところを瞬時に凍らせるスタンドに対し、防御は意味をなさない。
敵の攻撃はすべて回避する必要がある。多少やりづらくはあるが、『ホワイト・アルバム』自体のスピードは大して速くないため、逃げ続けるだけなら不可能ではなかった。

「ブチャラティッ!! てめえ戦う気あんのかッ!!」

柱にジッパーを取り付け、それを閉じることで天井方向へ逃れたブチャラティ。
そのブチャラティに対してギアッチョが怒鳴る。
ブチャラティに戦意が無いわけではないが、攻めあぐんでいることは確かだ。

『スティッキィ・フィンガーズ』は打撃が中心のスタンド能力。
攻撃するためには、敵を自分の射程距離内まで近づけさせなければならない。
だが、動くものすべてを凍らせる『ホワイト・アルバム』に近づいては、こちらもただでは済まない。
そして『ホワイト・アルバム』の強度はスタンドの中でも随一の硬さを持つ。並みの打撃では、ヒビひとつ入れられない。

『策』がないわけではない。
非常に単純かつ、効果的な『策』がある。
だが、それはブチャラティにとっても命がけ。
良くて相打ちという危険な『策』だった。


ブチャラティはチラリとトリッシュたちの様子を伺う。
トリッシュは今、ウェカピポに渡された拳銃を用いてンドゥール恐竜と交戦していた。



「くそっ! くそォっ! 当たれぇっ!!」


ンドゥール恐竜は弾丸をかわせるギリギリの距離を保ち、トリッシュからの弾丸を回避していた。
あの銃は軍用のもので、彼女が扱うには少し大きすぎる。
それ以前に、ミスタ並みの射撃センスがあれば動きを先読みして当てることもできるだろうが、トリッシュは銃なんか握ったこともない普通の女の子だ。

『スパイス・ガール』の格闘にしてもそうだ。
俺やジョルノ並みの格闘センスがあれば恐竜とも渡り合えるだろうが、トリッシュには決定的に『経験』が足りない。
いかに強力な打撃でも、当たらなければ意味がないのだ。
自分でもそれをわかっているからこそトリッシュもスタンドではなく銃を取り出したのだろうが、それでも恐竜を近づけないようにすることが精いっぱいだ。

トリッシュの持っている銃は予備を合わせても30発強……
それを撃ち尽くしてしまったら、トリッシュに勝ち目はない。



「俺を相手にして余所見とは、いい度胸だなあブチャラティ!!」

526 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:39:06 ID:/WtTzPQo

ブチャラティは、ふと気が付く。
ギアッチョから視線を逸らしたのは一瞬であったが、その僅かな隙に、石柱に触れていたブチャラティの左腕と両脚は凍らされ、固定されていた。
いや、違う。ブチャラティが掴まっていた大理石の石柱自体が、すべて一瞬のうちに凍らさたのだ。

(何ッ!! 話には聞いていたが、なんという威力!! 想像以上に、冷凍化の速度が速い!!)

「今度は全身凍らせて、オブジェにして博物館に飾ってやるぜェェェェ!!!!」

キレたギアッチョの拳が凍らされた柱を破壊しはじめる。
柱上部に固定されたブチャラティの身体を叩き落とすつもりだ。

(くそッ! やはりギアッチョだ。まずはこいつを何とかしなければならない。それも相打ちでは、トリッシュがあの恐竜にやられてしまう。何か、他に『策』は―――)

ジョルノとミスタから元の世界でギアッチョを倒したときの話は聞いているが、あれは色々な偶然が重なったから可能となった辛勝である。
ミスタ自身も死に掛け、ジョルノの能力がなければ相打ちだっただろう。
打撃の能力では、ギアッチョとは渡り合えない。

奴に有効なのは、おそらく『爆弾』や『火炎』。
そんな能力のスタンドならば、ギアッチョの氷を止めることができるかもしれないが………



(まてよ…… 『爆弾』―――――)

「一か八か、やってみるか―――」



『スティッキィ・フィンガーズ』

ギアッチョが柱を完全に破壊し叩き落とされる前に、ブチャラティは柱の上から飛び降りた。
柱に固定された『左腕』と『両脚』はジッパーで切り離し、捨ててきた。
右腕のみを残したブチャラティは受け身すら満足に取ることは叶わず、石造りの地面に投げ出される。
そんな無様な姿になってまで逃れたブチャラティを、ギアッチョがさらに追撃を掛ける。

「それで逃げたつもりかブチャラティ!! ダルマになってオレに勝てると思ってんのかァ!?」

「開けッ ジッパ―――――――――ッ!!!」

地面に取り付けられたジッパーに掴まり、ブチャラティは地面を引き面れるように疾走する。
ジッパーは地面に裂け目を生み出しながら、ブチャラティの身体はギアッチョから逃げ去る。
そしてその向かう先は、トリッシュの銃撃を避け続けているンドゥール恐竜。

(なるほどなァ! ジッパーにはそんな使い方もあんのか! 先に恐竜の方を叩いてから、トリッシュと2人がかりでオレと戦うって算段か…… だがなァ)

「甘いんだよブチャラティ!! 飛び回ってならともかく、『直線』に逃げるのは『失敗』だぜッ!? オレの『ホワイト・アルバム』からはなァ!!」

ギアッチョの足元にブレード状のスケート板が出現する。
これを履いたギアッチョは、凍らせた大地を時速数十キロで駆け抜ける。
ブチャラティからンドゥール恐竜までの距離はおよそ10メートル。
彼が恐竜にたどり着く前に、追いつき仕留めるのは容易い事!!

527 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:40:20 ID:/WtTzPQo


逃れたブチャラティを追って地面を滑走するギアッチョ。
だがそのギアッチョの目の前に、巨大な金属の塊が出現した!

(何ィ!! なんだこれは!! 自動車かッ!?)

そう。それは、ブチャラティがこの地下にたどり着くまでに利用していた自動車だった。
コロッセオ地下遺跡を訪れてからは、情報交換の間、目立たないように地面にジッパーを開け、地中に隠していたのだ。

突然現れた大質量に、自らスピードを出していたギアッチョは溜まらず激突、クラッシュする。
スピードがついていた分、思い切り叩き付けられ『強烈なキス』を自動車さんと交わすことになってしまった。

「クソがッ!! なめたマネしやがって………」

ぶつけられひっくり返った自動車のそばで、ギアッチョが身を起こす。
ブチャラティが地面のジッパーを開いたのは、ギアッチョから逃げるため"だけ"ではなかった。
当然追ってくるであろうギアッチョに、地中に隠していた自動車の体当たりをぶつける為。



「トリッシュ!! ギアッチョを撃て!!!」

すかさず、ブチャラティの声が聞こえてくる。
ブチャラティはすでにンドゥール恐竜の元にたどり着き、奴との格闘を始めていた。

(オレを撃てだと? 馬鹿め、オレに銃弾なんぞが通じるとでも思っているのか?
装甲で弾いてやってもいいが面倒だ。『ジェントリー・ウィープス』で弾き返してトリッシュを仕留めてやる。
それに、いくらブチャラティといえ、右腕だけで恐竜と戦えるわけがない。ブチャラティの奴、ヤキが回ったか?)

トリッシュはブチャラティに従い、ギアッチョに向かって拳銃を撃った。
弾はギアッチョを大きく逸れ、彼の背後へ。

(バカが! どこを狙って――――――)

ギアッチョは悟った。

トリッシュの狙いはギアッチョ自身ではない。
ギアッチョのすぐ後ろ、クラッシュさせられた自動車の燃料が漏れている!!
いや、ガソリンタンクがジッパーで穴を開けられている――――ッ!!

地中に隠していた自動車を出現させたのは、ギアッチョに体当たりをぶつけるため"だけ"ではなかった。

トリッシュの撃った弾丸の火花が、自動車から漏れ出たガソリンに引火する。

528 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:41:04 ID:/WtTzPQo

「――――あの野郎ォ!!!」



すさまじい爆音。

ギアッチョのすぐそばで自動車が大爆発を起こし、大地を揺らす。





「ぐおッ!」

至近距離にいたギアッチョは思い切り爆発に飲まれる。




「きゃあっ」

トリッシュは小さく悲鳴を上げ、耳をふさぐ。






そしてブチャラティは――――――

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ――――」

ギアッチョに見向きもしないまま、ンドゥール恐竜にスタンドのラッシュを叩き込んでいた。



「ギャバァァァァァァァァッ!!」



ギアッチョによる見立ては、ある意味で正しかった。
左腕と両脚を失った状態では、いくら百戦錬磨のブチャラティとはいえ恐竜とまともに戦うことなどできない。
その上、この盲目の恐竜には死角からの鉄球を回避し、左半身失調を物ともせず、弾丸すら容易に避ける反射神経と身体能力があった。
だがそれも、『まともに耳が使えていたら』の話だ。
ギアッチョを巻き込んで大爆発を起こした自動車の爆音は、同時にンドゥール恐竜の聴覚を奪っていた。
音の反響し合う地下の遺跡での爆発は、反響し合いとてつもない大音量となる。
通常より聴覚の発達したこの恐竜には、とんでもないダメージとなる。
そして聴力以外にに頼る物がないこの恐竜にとっては、それはすべての感覚を奪われるに等しい。

「アリーヴェ・デルチ(さよならだ)」

そうなってしまえば、あとは右腕一本でもことは足りた。
『スティッキィ・フィンガーズ』の能力によってバラバラにされた恐竜は、やがて沈黙し人間の姿へと戻る。


ブチャラティやトリッシュは知らぬ顔だが、死んでなおも利用され続けた誇り高い盲目の戦士は、今やっと永遠の眠りにつくことができた。


(とっさに思いついた作戦だったが、意外とうまくいくもんだ……)

両脚のないブチャラティは立ち上がることもできない。
失った左腕からも、少しずつ出血が始まっていた。

「ブチャラティ!!」

トリッシュがブチャラティに駆け寄る。

「しっかりしてっ! 私たちが勝ったのよ!!」






☆ ☆ ☆

529 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 00:47:04 ID:/WtTzPQo
この後の後のシーンは大体終わってるんですが、次がねえ……
素敵指やホワルバと比べて、スケモンとウェカピポの戦闘は書きづらいです。
あとはそこだけなんでもうちょい時間ください。



ていうか正直、3日間みっちりと費やせば間に合ってました。
すみませんヱヴァQ見に行ってて遅れました(シカタナイデスヨネ?

530 ◆vvatO30wn.:2012/11/26(月) 01:00:08 ID:/WtTzPQo
すみません、>>526>>527の間にギアッチョのセリフが一行飛んでいました


「終わりだブチャラティ!!」


ってセリフが間に入ります(終わらないフラグってヤツですw

531名無しさんは砕けない:2012/11/26(月) 14:25:58 ID:gWkJLpZY
vv氏のほうはまだ続くようなので、ひとまずLv氏の作品について触れます

仮投下乙です
矛盾点等はないように思います
首輪の声、面白いですね
他の方が追随するもいいし、違う台詞が飛び出すのもまた面白そうです

532 ◆LvAk1Ki9I.:2012/11/27(火) 00:49:48 ID:SUvQF1Cs
感想、ご意見ありがとうございます。
自分の作品に目立った修正点はないようなので、見直して明日にでも本投下をする予定です。

そしてvvatO30wn.氏、中編仮投下乙です。感想は後でまとめてということで。
完成まではもうしばらくかかる、ということなので本投下は私の方が先ということでよろしいでしょうか。
だめでしたらこのレスにでも返信お願いいたします。

533 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:07:22 ID:68..Ctn2
ジョナサン・ジョースター、花京院典明、ラバーソール、ナランチャ・ギルガ、パンナコッタ・フーゴ、ジョンガリ・A
仮投下します。

534 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:07:45 ID:68..Ctn2



 ジョンガリ・Aは白内障によってほとんどの視力を失ってはいるが、まったく目が見えないというわけではない。
 くわえて、卓越した狙撃手としての感覚と彼のスタンドで気流を読むことによって建物の位置や人の存在は察知できた。
 光ささぬその瞳は、常人が見えている範囲より多くの物事を見通していた。

 だが、彼はこの殺し合いの場において幸か不幸かでいった場合、不幸な状況にあった。
 地図や名簿といった薄っぺらな紙は彼になんの情報も与え得なかったからである。
 敬愛すべき主君も、幼き頃から見知っている神父も、この場にいるかすらわからない。
 放送を聞き終えた彼がまず情報を欲したのは、当然ことだといえる。

 空条承太郎と、その同族が最初のステージで死に、そして空条徐倫が死んだ。
 死んだ者がそれだけだったならば彼にとって疑問はない。
 この殺戮のゲームはジョースターの血統を根絶やしにするために行われており、なすべきことは参加者の殺害。
 そうシンプルな結論に落ち着く。

 しかし、あまりに死者が多すぎた。
 ンドゥール、そしてDIO様に似た空気をまとった青年の存在……。
 ジョースターの血統に仇なす者たちもまた同様に集められ、一緒くたに殺し合いを強要されているのではないか。
 そうなれば、と彼は考える。
 俺のすべきことはDIO様の護衛。
 二度とあの方を失わないチャンスがここには存在しているのだ。そのためにはまずあの方を見つけださなければならない。と。


 皆殺しか、情報収集か。


 ジョンガリ・Aは、その両方をとった。
 すなわち、情報を得つつ殺害を行う。

 放送を経て決心したジョンガリ・Aが察知したのは、南から北上する青年の姿だった。



   *   *   *

535 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:08:03 ID:68..Ctn2



――山岸由花子を放置するべきではなかったかもしれない。

 あらためて、現状を鑑み、花京院典明はそう考えていた。

 山岸由花子は空条承太郎を知らなかったようだが、このゲームにはジョースター家に類する者、そして彼らに関わりを持った人間が多く存在する。
 何名かはDIO様と空条承太郎がたどった「歴史」を知っているのだろう。
 つまり、間接的にも、空条承太郎の仲間は多く存在していることになる。
 DIO様の敵が多いということは、とどのつまり私が始末すべき敵が多いということを意味する。

 だというのに……!!
『花京院典明』という人間が『DIO様の敵である空条承太郎を抹殺しようとしている』。
 そのことを山岸由花子は知っている。
 山岸由花子が殺害をもくろんでいた広瀬康一はたくさんの仲間に囲まれていた。
 どうせ返り討ちにあうだろうと彼女を放置したが、彼女がなんの情報ももらさず死亡する確証はない。
 彼女は私のことを憎い相手と認識していただろう。空条承太郎に関係がある相手と出会った場合、私の情報を漏らす可能性は十二分にある。
 触れるだけで相手の記憶や思考を読みとる能力――そのようなスタンドも存在しないとは言い切れない。

『未来の花京院典明』は空条承太郎の仲間だったとアレッシーは語った。
 ジョースターの一味と信頼関係を築いていたのならば、彼らは自分を見て、仲間だと認識したかもしれない。アレッシーのように。
 現在の私には「仲間になった」という未来を知っているアドバンテージがある。
 空条承太郎や他の仲間の寝首をかけるステータスが私には備わっている。
 しかし、最初から疑われていたのでは不意を打てる可能性は大いに下がってしまう。


――あの方のお役に立ちたいと願ったのなら、どんなミスも犯すべきではなかったのに……。


 名簿もなかった状況では、本名を名乗るべきですらなかったのかもしれない。
 山岸由花子からの信頼など勝ち取っても、なんの意味もなかったのだから。

 山岸由花子は爆音の響いた方へ向かった。
 追いかければ、広瀬康一とやらが殺されかかっている状況に間に合うかもしれない。
 彼を助けるふりをして山岸由花子を殺害すれば……。

 花京院典明の足は自然と北へとむかう。
 しかし彼は山岸由花子に追いつくことができなかった。


 先行させたスタンドの視覚が、ライフルを背負った長髪の男の姿をとらえていた。



   *   *   *

536 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:08:19 ID:68..Ctn2



「殺害を依頼した相手までリストに載せるバカがいるか……?」

 地図でいうところのF-8北側にある民家の一室で、男の嘆息が漏れた。
 そこは、しがないサラリーマンの住居とはにわかに信じられないような洋風二階建ての戸建て。
 川尻浩作が毎月26万円の家賃を支払い、家族と住んでいた家屋である。
 いまそこにいるのは、川尻浩作の格好をした川尻浩作ではない男。川尻浩作の心情を永遠に理解し得ないであろう男、ラバーソール。

 彼の指先はびっしりと文字が書き込まれた紙片を摘んでいた。
 陽に透かし、風に泳がせ、なんの変哲もない紙であることを確かめる。

「殺しの依頼にしちゃ、まぁ、いろいろと不自然だ、が……
 この紙切れ以外にはなんもねえようだしな」

 彼の視線の先には黄色いスライム状の物体の中でもがくハトがいる。
 ラバーソールのもとへ名簿を運ぶこととなった不幸なハトであった。

 この殺し合いのゲームが新しい依頼であり、参加者を皆殺しにすれば報酬が貰えると考えていたラバーソールにとり、『名簿』と放送の内容はやや予想外のものであった。

 依頼人にとっては、殺し屋だろうが一般人だろうが関係ねぇ。
 誰が誰を殺してもOKってことになる。
 そこから察するに、この殺し合いは誰を殺したかによって賞金の額が異なる。
 川尻浩作が100ドルだとして、空条承太郎は100000ドルってな具合にな。
 名簿にそれが載ってないのは不自然だが、『三日間生き残れ』ってのには説明がつく。
 三日間で殺した人間の賞金の合計額が生き残ってるやつに支払われるってわけだ。

 放送では空条承太郎と川尻しのぶ、そしてサンドマンとかいう野郎の名が呼ばれるのを期待したが、結果は惜しくも大ハズレ。
 死んだのは早人っていう、川尻浩作のガキだけだった。
 変装がばれ、珍しくヒヤっとする体験をしたわりに得たものはほぼ皆無。
『川尻浩作』と、もうひとりを喰ってやってからろくな目にあってねぇ。
 ったく、アンラッキーとしかいいようがないぜ。


ブジュル


 ラバーソールの苛立ちを反映し『黄の節制』が膨張する。
 もがいていたハトの姿は完全に飲み込まれ、動かなくなった。

 それにしても放送が終わってからしばらくたったが、誰もこの近辺を通りかからねぇ。
 やる気のあるやつらはすでにDIOの館なんかに行っちまってるってことか?
 それで、殺しあいなんてまっぴらだって臆病なやつらは、地図の端の方の施設でふるえてるわけだ。
 俺は? 当然、乗ってる側だ。
 泣きわめいて命乞いをするやつらを端から潰していくのも一興だが、すでに76人も死んじまってるからな。ここからは飛ばしていくぜ。

 とはいえ、問題は『誰』でいくかだな。
 空条承太郎もさっきのやつらも俺を追ってきている気配はないが、まだこの辺をうろついている可能性は捨てきれん。
 正直、空条承太郎のわけがわからん能力も、『黄の節制』をスパッとやっちまったサンドマンの能力も、ハンサムのラバーソール初の障害ってやつだ。
 俺の『黄の節制』に弱点はない。が、相打ちにならねえとも限らねぇ。
 見た目で警戒されるのは避けとくべきだ。


 となると…………。



   *   *   *

537 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:08:33 ID:68..Ctn2



「ジョナサン、僕から質問をしてもかまいませんか?
 吸血鬼や屍生人について、詳しいことが知りたいんです。
 たとえば、その化け物たちが呼吸を必要としない生物なら『エアロスミス』のレーダーでは感知できないかもしれない。
 レーダーで追えるのはあくまで二酸化炭素の反応だけですから。
 それに、君にとっては『スタンド』の方が信じがたいと思われるかもしれませんが、僕には吸血鬼や屍生人なんてファンタジーやメルヘンの中の存在としか思えないんです」
「そうだね、ナランチャにもきちんと伝えていなかったから、さっきは危なかった。
 ふたりは『石仮面』について、聞いたことは……?」

 E-6のアクセサリーショップの中では、主にジョナサンとフーゴの間で綿密な情報交換が行われていた。
 フーゴが第一に問いただしたのは、吸血鬼と屍生人について。
 彼がそれについて真っ先に触れたのには理由があった。
 ジョナサンにもナランチャにも伝えることのできない問題がフーゴにはあったためだ。
 すなわち、自分の知るナランチャはすでに死亡しているという事実と、吸血鬼は死者を蘇らせるというジョナサンの言葉。

 ナランチャが屍生人という存在だと、フーゴには到底思えない。
 しかしジョナサンの前で、『ナランチャ、君はすでに死んでいるはずだ』と、問題提起する勇気はどうしても持てなかった。
 ジョナサンの知らないジョースターの血統――時間軸の違いをフーゴは確信しつつある。
 それはジョナサンより進んだ時間から連れてこられたゆえに気付けたのであり、吸血鬼による死者の蘇りを信じるジョナサンに罪はない。
 それでも。
 ナランチャは屍生人などではないと、完全に否定できる材料をジョナサンの口から得たかった。
 確固たる証拠がそろってから説明したいと思ってしまう自分の弱さもフーゴは自覚している。
 アバッキオのことは保留するとして、なんの説明もなしに、ナランチャ同様死んだはずのブチャラティに、かつて『パッショーネ』に属していた者たちに出会えば、いずれはどこかで混乱が生じ、隙が生じる。
 ジョナサンは誤解から他人を殺めてしまうような人間には見えないが、仲間内でのいざこざの種は潰しておくべき、彼はそう考えていた。
 それに、吸血鬼・屍生人について詳しく知れば、アバッキオを救う手だてがあるかもしれない。

 ジョジョの夢をともに追う、誰も欠けることのない、ブチャラティチーム……。
 儚い夢とうしろめたい気持ちをかかえながらフーゴは話を続ける。



   *   *   *

538 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:08:47 ID:68..Ctn2



――エメラルドスプラッシュ


 弾かれた弾丸がどこか遠くの壁に命中し、鋭い音をはなった。
 花京院典明は舌打ちとともに神経をスタンドへ向ける。

――まさか、あの距離から撃ってくるとは思わなかった。

 北方300mはあろうかという距離から放たれた銃弾は、正確に足元を狙っていた。
 スタンドの視覚によって男の動向に気付くことができたから、どうにか銃弾を逸らせたものの、一瞬でも判断が遅れていれば骨もろともやられていたに違いなかった。
 男のものと思われるスタンドの存在は感知できていたが、それを介さない純粋なライフルによる狙撃。だというのに、おそろしく判断が早く、狙いは正確だった。

 接触を試みるか、ひとまず撤退するか。

 そうこう悩んでいるうちに、狙撃手は空薬莢を抜き、次の一撃の準備をし終えようとしている。

 見境なく撃ってくる相手と話が通じるとも思えない……。

 この狙撃手が山岸由花子を処分していることを願いながら、花京院は進路を南に取った。
 DIOへの忠誠――心中をともにする二人ではあったが、互いにそれを気付くすべはない。
 遮蔽物の多い道をジグザグに走行しながら、行く先へスタンドを先行させた。

 どうやら狙撃手は追ってきているようだ。
 脳漿までぶちまけそうな鋭い一撃が髪先をかすめ飛んでいく。

 いまや見慣れてしまったタイガーバームガーデンに突き当たり、東へまわりこむ。

 E-6の南側、スタンドの視界がガラス張りの建物の中に数人の影をとらえた。
 周囲に警戒しながらなにかを話し合っているようだ。

 正義感の強い人間ならば、銃撃を受け逃げこんできた人間を無碍に扱ったりはしないだろう。
 うまく取り入り、狙撃手を撃退し、情報交換を行う。
 ジョースターに与する者ならば、そのまま仲間のふりをし、折りをみて一網打尽にする。
 彼らがこのゲームに乗り気な者たちであっても、こちらが無力なふりをすればまずは狙撃手への対抗を試みようとするだろう。
 狙撃手にとっての的は増える。
 どちらにせよ彼らに接触を試みるのは悪くない……。

 南東へと足を向けかけた花京院の目が、にわかに見開かれる。
 その目、いや、先行させた彼のスタンドの目がとらえていたものは、『己自身の姿』だった。



   *   *   *

539 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:09:02 ID:68..Ctn2



 狙撃する瞬間において、筋肉を信用せず骨をささえとすることを信条としてきたジョンガリ・Aにとって、逃げ出した青年――花京院を自らの足で追うことは苦渋の選択だった。
 動けば動くほど筋肉は震え、骨はきしむ。
 遠距離から一方的に狙撃できるというライフルの利点をむざむざ手放す行為でもある。
 しかしこの数時間、誰にも会わずにきたことが彼を焦らしていた。
 地図のほぼ中央にいるのに、主君はおろか敵の姿さえ発見できずにいる。
 彼の周囲にほかに撃つべき相手の選択肢があれば、ジョンガリ・Aはリスクの高い行動を選択しなかったはずである。

 ジョンガリ・Aからの狙撃を起点とした無言の追いかけっこが続く。
 青年がスタンド使いであることはジョンガリ・Aもすでに気付いていた。
 銃弾をかわしたときの気流の乱れ、そして現在も逃げつつスタンドでなにかしようとしている。

 罠にはめられる前に追跡をあきらめるべきか……。
 ジョンガリ・Aがそう思ったときと、青年がつ、と立ち止まったのはほぼ同時だった。

 いぶかしんだ瞬間に『なにか』に足をとられ、ジョンガリ・Aの体勢が崩れる。

 膝を突き、転がるのは阻止したものの、あっけにとられ、気流を読みとることをわずかな間、完全に放棄してしまっていた。
 我にかえって自分の失態に気付くもすでに青年の姿はどこにも見えない。
 
 足をとられたのがスタンドによる攻撃ならば、追撃があるはず……と構えるも、気流は朝靄のように沈澱しなにものも動き出そうとしない。
 かわりにバラバラとガラスが砕けるような音がほど遠くから聞こえてきた。

 音のした方へ向かうと200mほど離れた建物の一階に、数人の人間が集まっているのが見える。
 大柄な男と、少年ふたりの計三人。
 さきほどまでは室内にいたため存在を見逃していたが、表のガラスが割られたことで彼らの姿がくっきりと気流に浮かび上がるようになっていた。

 どうやら青年がスタンドで表のガラスを破壊していったらしい。
 銃弾を弾くほどのスタンドならば、ガラスを割ることだって造作もないだろう。


――かわりの獲物を用意したとでもいいたいのか……?


 狙撃をかわされ、膝を突かされた青年のことは単純に憎らしい。
 だがどこにいったかもわからなくなってしまった青年と、襲撃に慌てふためく眼前の三人、どちらがよりDIO様に近いだろう……。

 あくまで冷静に、自らの目的を遂げる方法を、ジョンガリ・Aは模索し続けている。



   *   *   *

540 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:09:47 ID:68..Ctn2



「待てッ、花京院、俺だ!!」

「承太郎……! 君は、殺されたはずじゃ……」

 E-7中央付近の路地裏で、ふたりの『学生』が対峙していた。
『花京院』と呼ばれた青年は目を見開き、驚きの表情をしている。
 そこから10mほど離れ、呼びとめた手をゆっくり降ろしているのは『承太郎』と呼ばれた青年だった。

「ああ……確かに俺はあのとき死んだ。
 それは間違いない。
 だが俺はなぜかこうして生きている。それも事実だ」

「なにを言っているのかわからないが、本当、なのか……?」

 目深にかぶった帽子の下、『承太郎』の瞳が奇妙に光る。

「この滅茶苦茶な地図を見ればわかるだろう。
 俺たちスタンド使いの常識を越えるなにかが起きつつあるんだ。
 俺が死んだはずなのに生きていること、それが不思議でないようななにかが……」

『花京院』は絶句している。
 それを見た『承太郎』の口元がヒクヒクとひきつる。
『承太郎』――否、ラバーソールは笑いをこらえるのに必死だった。

 そうそう、こういう反応を待っていた。
 あいつらみてーな異常者に先に会っちまったせいでちっと自信をなくしていたが、俺の変装は完璧だ。
 さっすが俺、ハンサムなだけあるぜ。
 一瞬の迷いもなく俺を敵だと断じやがった空条承太郎や、人の話を聞こうともせず撃ってきやがった野郎とは違う。人の話を吟味しようって態度。
 こういう態度が大事だぜ。

 化けた『本人』を見つけちまったときには肝が冷えたが、ジョースター一行に会えたのはラッキーってやつだ。
 ブチュルブチュル潰して、賞金ガッポガッポだぜぇ。

「参加者の半数が死んじまってるって状況でお前に会えたのはラッキーだったぜ。
 ひとまず屋内に移動しないか?
 ここでつっ立ってるのは的にしてくれと言っているようなもんだ」

「……屋内に移動するのは賛成です。
 ですが…………」

「おう、じゃあさっさと……うぉッ?!!!」

 一歩踏み出したつま先から俺の上半身めがけて光弾が撃ち込まれる。
『黄の節制』の能力はどんな物理攻撃も無効化するが、衝撃でスタンドはぐにゃぐにゃ拡散し、『空条承太郎』の胸板には不自然なへこみができた。
 よくよくみれば足下にはかすかに発光する、なめくじが這った跡みたいな筋が走っている。

「情報を交換するのは、互いの立場が対等になってからだ。
 偽りの、空条承太郎」
「てめぇ、最初から気付いてやがったのか」

 驚きつつも親しげな雰囲気を出していた花京院の瞳がいっきに鋭く険呑の光を帯びる。
 さきほどの光弾もすでに這わせていたスタンドからの攻撃のようだ。

「あなたが『私の姿』で歩いているところからすべて見ていた。
 それに気付かず路地裏に誘い込まれてくれるようなアホで助かったが……」

 どういうわけだか空条承太郎の姿に変装するところから見られていたらしい。
 どうしてこうも変装にひっかからないやつが多いのか。
 ラバーソールは自分の不運を嘆きたくなった。

「だがどうする?
 てめぇの貧弱なスタンドじゃあ俺には勝てねぇ。
 ドゥーユゥーアンダスタンンンドゥ!」

「理解していないのは貴様の方だ。
 人の話を聞いていなかったのか?」

「質問を質問で返すんじゃあねえ。
 てめぇ頭がいかれてんのか。
 俺のスタンドに喰われてオシマイなんだよてめぇはよぉ」

「確かに貴様のスタンドはなかなか攻略し難い能力をもっているらしい。
 変装するしか能がないスタンドだと考えていたので誤算だった。
 敵に回せば、私のスタンドでは勝てないだろう。『敵に回せば』、な」

 どうも雲行きがおかしくなってきやがった。
 たしかにこいつのスタンドは射程距離に優れていると聞いていた。
 俺の変装が偽物だと見破っていたならわざわざ近づかせる必要はねぇ。
 攻撃を仕掛けるにしろ逃げるにしろ、本体が俺に近づくことはなんのメリットもないはずだ。

541 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:10:08 ID:68..Ctn2
 そのとき、ラバーソールの中で、奇妙に老けていた空条承太郎、川尻しのぶが夫に言った空白の半年間、それらが一本の線のように結びついた。

「まさか…………」

「ようやく理解したようだな。
 手を組まないかと言っているんだ。変装の能力を持つスタンド使い。
 私の敵は、空条承太郎だ」


 花京院典明と『空条承太郎』、横に並ぶ姿にまったく違和感のないふたりが手近な民家へと歩き出す。
『空条承太郎』は半信半疑ながら、絶対の自信を隠そうともしない狡猾そうな表情を浮かべている。
 半歩さきをゆく花京院典明は……、目を細め、口の端だけを歪め、笑っていた。

 のんきに歩いている『私』の姿を見つけたときには驚いたが、アレッシーから聞いていた話がここで役に立つとは……。
 見るからに、殺し合いに乗り気のこの男、手を組むことに反対はしまい。
 ジョースターたちへの敵意と、予想外に強力なスタンド。うまく扱えば確実にジョースターたちをしとめることができるだろう。

 そして……、これでたとえ山岸由花子が誰かに私のことを話したとしても、彼女を脅し、軍人三人を殺したのはこの男になる。
 私はあくまでジョースターの仲間を演じればいい。
 少なくとも、誰にも真相はわからない。

 自らの欲望にのみ忠実そうなその下卑た笑い。
 どうせDIO様から信用されていたわけではなかろう。
 空条承太郎とその仲間を殺すことで、あの方にお役に立てることを喜ぶがいい。





【E-7 中央 / 1日目 朝】

【花京院典明】
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵を殺す。
1.ラバーソールと情報交換し、手を組む。
2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。
3.機会があれば山岸由花子は殺しておきたい。
4.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。

【備考】
※スタンドの視覚を使ってサーレー、チョコラータ、玉美の姿を確認しています。もっと多くの参加者を見ているかもしれません。

【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。

【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。
東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。


【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(大)、空条承太郎の格好
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.まずは花京院の話を聞く。役に立ちそうにないなら養分に。

※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。



   *   *   *

542 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:10:32 ID:68..Ctn2



「イタリアにはそんな話ぜんぜん流れてこねーけど、イギリスってやばい国なんだな」

 屍生人となったいにしえの騎士との死闘、人体を一瞬で凍らせてしまう吸血鬼の能力、改めてジョナサンの話を聞きながら、ナランチャがのんきな感想をもらした。

「やっぱりジョナサンはすげーや」
「僕にはスタンドの方がよほど複雑で、未知の存在に思えるけどね」

 ナランチャの純粋な賞賛に、話し始めて以降曇りがちだったジョナサンの表情がゆるむ。
 それは一見微笑ましい光景であったが、内心フーゴはふたりの認識の差の原因を思い、暗澹たる気持ちをかかえていた。

「……ナランチャ、モニターに反応は?」
「なんだよ、ちゃんと見てるだろー? 反応なしだぜ」

 不満げに言い返すナランチャに、ジョナサンの笑みが深くなった。

「仲がいいんだね、ふたりは……」
「ちげーよジョナサン。フーゴ、猫かぶってんだぜ。
 いつもはフォークでオレのこと……」
「ナランチャ!!」

 余計なことは言わなくていいと、フーゴが手で制す。
 それを見て、さらにジョナサンが笑った。

「フーゴ、僕の方は知りうる限りのことを話したように思う。
 君はずいぶん頭がいいようだから、この殺し合いについて、考えていることがあるなら話してもらえないか?」

 そう、フーゴから見ても、すでにジョナサンから得るべき情報はすべて得られたように思える。
 さりげなく話を向け、ジョナサンが19世紀末期の人間だということを確認し、ナランチャ、そしてジョナサンが屍生人や吸血鬼ではないということも確信している。
 語らなければならない。
 ジョナサンの知り合い――彼の父やSPW財団の創始者が、僕にとって全員過去の人間であることを。
 アバッキオ、ブチャラティ、ナランチャが、ここにいる彼らから見た未来の彼らがすでに死んでいることを。
 ジョナサンは彼の父に訪れた再度の死になにを思うだろう。そう考えると、フーゴの胸は苦しくなった。

「ジョナサン、……そしてナランチャ。
 どうか僕が話し終えるまで質問は挟まないでください。
 信じられなくても、落ち着いて、聞いてほしい」
「やっぱりなんか変だぜフーゴ」

543 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:11:51 ID:68..Ctn2

 茶化すナランチャとは対照的に、困ったように、しかし信頼のこもった瞳でジョナサンがうなずく。

「ジョナサン、僕とナランチャは21世紀初頭のイタリアからここへきました。
 そして……、ナランチャ、僕の知る君は……」



 瞬間。



 フーゴの言葉は轟音に呑み込まれた。


 とっさに身を屈めた三人にこまかな結晶がバラバラと降り注ぐ。
 ショップ表側のガラスが、粉々に砕け散っていた。


「フーゴ! ジョナサン! 敵だッ!!」
「わかっていますナランチャ! いいから君はモニターを見て!」
「だめだ。見当たらない。
 ずっと見ていたけど『敵は最初からいなかった』!!」
「ここから焦って逃げ出して、狙い撃ちにされるのが一番危険です。
 ナランチャ、落ち着いてモニターから目を離さないで」

 フーゴは素早く頭を巡らせる。
 最悪のパターンはジョジョがコロッセオで戦ったというカビのスタンドのように、すでに敵の術中にはまりかけている場合。
 僕がポンペイ遺跡で戦ったイルーゾォのように、本体・スタンドが見えずとも攻撃を加えられる能力も考えられる。
 こちらにも広範囲を攻撃できるスタンドがあればいいが、エアロスミスの探索範囲を超える攻撃手段はない。
 打って出るべきか?
 しかし、すでに敵の攻撃が開始されている場合、さきほどわざわざガラスを割った攻撃の意味がわからない。
 注意を外に向けさせるための攻撃か?
 なら敵は上か、下か……。
 ダメだ。考えすぎるな。
 まず安全が確保できればいい。それは敵を倒すこととは違う。

 フーゴの視線が、ジョナサンをとらえ、ついでナランチャの黒髪に注がれる。


――僕の目の前で、コイツを死なせるわけにはいかない……。


「おい、聞こえているだろう。
 どこからか攻撃を受けた。なにか情報をくれ……」


――ムーロロ!!

544 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:12:06 ID:68..Ctn2





【E-6 ローマ市街・ショップ内 / 1日目 朝】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(中)、貧血気味、疲労
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.敵の襲撃に対処。
1.『21世紀初頭』? フーゴが話そうとしていたことは……?
2.『参加者』の中に、エリナに…父さんに…ディオ……?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額に大きなたんこぶ&出血した箇所は止血済み
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.敵の襲撃に対処。
1.フーゴが話そうとしていたことは……?
2.ブチャラティたちと合流し、共に『任務』を全うする。
3.アバッキオの仇め、許さねえ! ブッ殺してやるッ!
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
0.敵の襲撃に対処。ナランチャは死なせたくない。
1.ジョナサンと穏便に同行するため、時間軸の違いをきちんと説明したい。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す。
3.ナランチャや他の護衛チームにはアバッキオの事を秘密にする。しかしどう辻褄を合わせれば……?

【備考】
『法皇の緑』でガラスを割ったため『エアロスミス』のレーダーは花京院をとらえていません。
ジョンガリ・Aもいまは射程外にいます。
ふたりとも『エアロスミス』のレーダーに気付いているわけではなく偶然です。


【E-6 ローマ市街西側 / 1日目 朝】

【ジョンガリ・A】
[スタンド]:『マンハッタン・トランスファー』
[時間軸]:SO2巻 1発目の狙撃直後
[状態]:体力消耗(小)精神消耗(中)
[装備]:ジョンガリ・Aのライフル(35/40)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み/タルカスのもの)
[思考・状況]
基本的思考:DIO様のためになる行動をとる。
0.三人を襲撃する?
1.情報がほしい。
2.ジョースターの一族を根絶やしに。
3.DIO様に似たあの青年は一体?

【備考】
ジョンガリ・Aが三人を襲撃するかは次の書き手さんにおまかせします。

545 ◆4eLeLFC2bQ:2012/12/20(木) 17:12:22 ID:68..Ctn2



以上で仮投下完了です。
タイトルは「目に映りしものは偽」です。

・花京院とジョンガリ・Aは面識無し
・吸血鬼、屍生人、柱の男は呼吸をする必要がない

この2点は勝手に前提として書いています。ご意見を頂けるとありがたいです。
ほかに誤字脱字、わかりづらい点等ございましたら指摘をお願いします。

546名無しさんは砕けない:2012/12/20(木) 21:59:37 ID:YmRu8Tng
投下乙です。ナランチャがカワイイ! フーゴ、ジョナサンとのトリオがほほえましいのでうまくいってほしいけど、さて襲撃に対してどうなることだろうか……

挙げられた二点に関して意見です。
花京院とジョンガリはそれでいいと思います。
呼吸に関しては、屍生人はブラフォードの原作描写から呼吸なしでいいと思います。
吸血鬼と柱の男は……どうなんでしょうか? 意識すれば呼吸なしでも大丈夫な気がしますが、無意識のうちは呼吸しちゃうんじゃないですかね。
ここら辺は他の書き手さんにもきいてみたらどうでしょうか。

本投下、待ってます!

547名無しさんは砕けない:2012/12/21(金) 19:17:06 ID:4bcDa8Ws
自分が見た限りおかしなところは気が付きませんでした。
本投下も楽しみにしてます

548最強 その1  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:38:17 ID:EW5ol3is
地上最強の生物と呼ばれる父親がいる。
強靭で無敵で最強だと評価される究極の龍がいる。
あたいは最強だと自負する妖精もいる。
地球人最強と呼ばれる武闘家もいる。
白い死神と呼ばれる最強の狙撃手もいた。

――彼らはどうして最強であり続けたのだろう?

……お待たせ。約束通り話をしよう。


●●●

549最強 その2  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:38:37 ID:EW5ol3is
どこからともなく響いてきた放送は、空中の二人と一匹の耳にも届いてきた。だがしかし。

「……ちっ」

そう小さく舌を鳴らすのはサーレー。
敵対する連中の隙がこの放送で発生すれば、などと考えていたのが甘かった。
たとえ聞き逃そうとも放送の内容なんざ別の相手から聞き出せば良い、あるいは最初から興味がないか。
彼らは一瞬たりともお互いから目を離さないままであった。

とはいえ『戦闘』という言葉で表現する程派手なドンパチは行っていない。
ペット・ショップはサーレーが己の氷塊を固定してきた段階で次弾の発射を止め、警戒態勢を取りながら周囲を飛行するに留めている。
チョコラータは自分のスタンドの特性を殺さぬようにサーレーのやや下に陣取ったまま。
そんな連中に警戒されっぱなしのサーレー当人は――

「おいチョコラータよぉ、まずはあの鳥公から片付けるぜ」
「まずは、か……ククク」
「ニヤニヤすんな、気持ちわりぃ。ホレ俺が固定しといた『鳩三羽』だ。さっさと使いな。さっき聞いたお前の能力にはおあつらえ向きだろ?」
「そう――おあつらえ向きだ。それを理解し、協力させるために私はあえて能力を明かしたのだよ、サーレー君」

そう言ってチョコラータに“弾丸”を提供した。あるいはそれは“爆弾”と言っても良いかもしれない。
名簿を提供しに来た鳩達を、その任務を全うさせる前に空中に固定していたのだ。


そこからはまさに秒殺。
殺しという行為に後ろめたさを感じぬ者たちだからこその鮮やかさであった。

地面に叩きつけられる二人と一羽。
立ち上がったのは――?決着は――?

550最強 その3  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:39:04 ID:EW5ol3is
――作者から――
スタンドバトルでは格闘技や銃撃戦などの常識は全く通用しない。
……というのは決着がすごく一瞬で起こるのだ。
スタンドの値打ち(能力)を知らない敵のスタンド使いはいったい何が起こったのか見当もつかず、すぐ殺されてしまう。
しかしここの世界では殺すことは悪いことではない。
ハメられて殺されてしまったやつが間抜けなのである!
ここで決着の顛末を解説しよう――


チョコラータがグリーン・デイの腕力でもって虚空に向け三羽の鳩を投擲。
ペット・ショップは自分に直接向けられたものではないそれをヤケクソの苦し紛れと判断、見送った。
――が、それこそ二人の思惑である。

固定の能力によって羽ばたくことが出来ない三羽の鳩はそのまま『爆弾』となって黴をまき散らしながら降り注ぐ。
眼下の二人に意識を向けていたペット・ショップは一瞬遅れてこの策に気付いた。
咄嗟に氷ミサイルで撃墜する。が……“カビる前”に氷漬けにしていれば『超低温で生まれる生物がいない』ように彼への攻撃はストップしていたかも知れない。

ペット・ショップは“一手”しくじった。
傷ついた体ですべての黴を避け切ることは彼にとっては不可能な芸当。
結局のところ落下してきた鳩のうち一羽の体当たりを受け無様に落下していった。

そして!その落下はそのままサーレーへの攻撃へと変換される!
「言ったよな“まずは”鳥公だ、と。お前自身がな」
そんなチョコラータの言葉を背中に聞きながらサーレーはニヤリと口元を歪める。

「そうさ。……“次は”お前だよ、バイキンマン」

言うが早いか、サーレーは思い切り空中に飛び出したッ!そこには固定できる小石も何も無いというのに!
当然、一瞬の浮遊感の後に一気に落下する。もちろん黴にまみれながら。しかし!それでも彼は空中に自分を留めようとしなかった。

「ククク……ハハハハハッッ!諦めたかサーレー!この私に敵わぬと知って!」
サーレーが気絶したのだろう。固定の能力が解けチョコラータ自身も落下を始めるがそれを意に介せず声を上げて笑う。

「どれ!見せてみろ!貴様の恐怖に歪んだツラを!この俺にッ!
 もっとも、この声が届いてるとは思えないがなァ〜〜ッ」

絶望した奴を自分より上に見るというのは彼にとって妙な感覚ではあるが、それでも勝利には変わりない。

551最強 その4  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:39:25 ID:EW5ol3is
――そう思った一瞬の後だった。

「いや、恐怖するのはテメェだけだ。
 カビは皮膚に触れてる部分だけ固定してる。他が動いてるから気付かなかったな。
 そしてこのカビの分、俺には『空気抵抗』が出来た。どっちが先に地面にキスするんだろうなァ!?
 その“足のないスタンド”でどうやって着地する!?」

長々と解説臭い台詞を吐かれたチョコラータの眼が見開かれた。サーレーは気絶など最初からしていなかった。能力の解除は任意だったのだ!
言い終わるが早いか、サーレーは四肢を大きく広げスカイダイビングのような体勢をとる。

こうなってしまえば確かにチョコラータが地面に激突するのは避けられない。
サーレーの言うとおり、半身がないと表現して差し支えないグリーン・デイでは手を使って受け身を取らざるを得ないし、それは事実上の両腕骨折も意味する。

そう、何の装備もなければの話だが。チョコラータは背負ったデイパックから一枚の紙を取り出した。

落下の風圧で開かれたそれに書かれていた文字は『ナチス軍用機に搭載されていたパラシュート(人形付き)』。
下手くそな文字で顔の描かれてあるその人形にしがみつきながら叫ぶ。
「フン――褒めてやるぞ、ここまで私を追い詰めたのは!だがやはり“次は”貴様に変わりない!」

だが、だがしかし。勝ち誇った人間は既に敗北している、という法則があるのもまた事実。
いくら高度の空中で戦ったと言えどそこはせいぜい上空数百メートル。パラシュートの展開から着地までに身体を減速させるにはあまりにも低すぎた。
一方のサーレーもまとわりつく黴を次々と固定し即席の翼を作り上げるが、それでも安定した減速は望めないし、まして肉体を食われながらである。


メ メ タ ァ

  ド グ チ ア ッ


●●●

552最強 その5  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:40:04 ID:EW5ol3is
「よぉ……生きていたか、鳥公よ」

生きていたのがアイツなら尚のこと良かったんだがよ、とは口にしなかった。そんなのはマンモーニが言うセリフである。
しかし心には誓った。『ティッツァを殺した奴をぶっ殺した』と言い切るまでは戦い続けると。
そのために利用できるならやかましい刀だろうと言葉通じぬ隼だろうと利用する。スクアーロの心は完全に固まった。

声をかけられたペットショップの身体から緑色の黴はとうに消え去っている。

黴にまみれながら落下したペットショップは、グリーン・デイの能力の法則性を見出していた。
先の戦闘で受けた傷を止血していた氷。そこにだけ黴が生えないことを発見しすぐさま全身を氷の中に包み込み、黴の繁殖を防いだのだ。
あとは“敗者”を演じながら決着を待っていればいい。案の定というべきか、間もなくして二人とも落っこちてきた。
落下のショックで二人とも死んだのかどうかは定かじゃあないがとにかくスタンド能力は解除された。カビも消えたし空中から石やらピアノやらが降ってくる。

そこで初めて防御態勢を解く。そこにちょうどよくスクアーロが登場したという訳だ。

「おい、犬野郎は逃げたぜ。お前も負傷しているがプライドの傷のが大きいんじゃあねーのか?
 俺はお前に借りを作りたくはねーからな、とりあえず先に追ってやるよ」

未だ動かないペット・ショップに一瞥をくれて歩き出す。ついて来いと言わんばかりに。


――数瞬の後、スクアーロは背中に強い衝撃を受ける。
何が起きたと視線を落とす。そこには胸から顔を出す氷柱が。

このクソ鳥、そう言いたくとも肺や器官が潰れ碌に声も出ない。

倒れこみながら振り向く。そこにはアヌビス神をつかみ飛び上がろうとするペット・ショップ。

常人ならばここで意識を手放し、そのまま死にゆく運命だったろう。
だがしかし、スクアーロは違った。胸の氷柱を思い切り引っこ抜いた!

大量の血があたりに飛び散る。
その行動が何を意味するかを解らぬペット・ショップではない。その血を浴びる訳にはいかないと飛行の軌道を変える。
しかしそれも傷ついた体ではほとんど敵わず。さらに言うなら地面に撒き散らされた血液も攻撃の範囲。そこから逃れることはもはや不可能だった。

目にもとまらぬ速度で飛びかかるクラッシュ。最初から欲を捨てアヌビス神を無視し飛んでいればあるいは結末が変わったのかもしれない。
だがそれらはすべて結果論。スクアーロの分身は見事にペット・ショップの腹を食い破った。


●●●

553最強 その6  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:40:30 ID:EW5ol3is
「なるほど……この三人と一匹は『共倒れ』か……『全滅』ではなさそうだ」

そう一人呟くのはGDS刑務所から物音を聞きつけ参上したディ・ス・コである。
状況をひと通り認識した彼は、しばし顎に手を当て考え込んだのち、その場に倒れ伏す連中を館へと引きずっていく。

ディ・ス・コは命を受けた。
『私にとって不要なジョースターどもやその他参加者を始末してきてくれよ』と。
そして『もう少し首輪のサンプルがあればと思ってる。持ってきてくれないか』とも。

この“瀕死の連中”を連れて行けばDIO様に首輪も生き血も提供することも出来るし、あるいは自分が知らされていないDIO様の友人たちかもしれない。
なんだかんだ言ってもジョースターの連中は自らの手で始末したいかもしれない。
全てはDIO様のために。

一度に全員を運び込むのは無理だが、それでも確実に彼は手足を動かす。

ずるり、ずるり。

数分の後、静かな音を立てて刑務所のドアが閉じられた。


●●●

554最強 その7  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:40:50 ID:EW5ol3is
――え?
『共倒れじゃ誰が最強なんだ』ァ?
『一人無事なディ・ス・コが最強なのか』だと?
『負けぬが勝ちって言ったのはお前だろ』ォ?

……って、おいおい。

『負けぬが勝ち』…………?
それは君らが勝手に聞き間違えて解釈した法則。

直訳は『“曲げぬ”が勝ち』
強い信念を最初から最後まで貫き通せるものが最強と俺は呼んでいる。


――もちろん、さっき話した『勝利の定義』は否定するつもりはないけどね。

となれば、今回の話で誰が“最強”かはどうなるか?考えてみようか。

まずはチョコラータ。彼は『生き残りつつも、精一杯殺し合いを楽しむ』という行動方針だった。
この『ナニナニしつつも』という発想。歪んで曲がってるな。

次、サーレー。『とりあえず生き残る』ってなぁ。まっすぐも何も最初から線を引いてない感じだ。
あるいはその場その場でのみまっすぐな線を引けるだろうけど、それじゃ線は“放射線”になってしまう。

そのあと、先にスクアーロについて。『ティッツァーノと合流、いなければゲームに乗ってもいい』と思っており、結果ティッツァが死に。
そしてその後は『ティッツァを殺した奴をぶっ殺したと言い切るまでは戦い続ける』なんてねぇ。方向転換も良いところだ。
行動の中心にティッツァーノがいるあたり、まぁ信念を貫いてるとも言えなくはないが、俺に言わせれば80点。

で、ペット・ショップ。今回の話で言えば俺の考える『最強』に最も近いのはコイツだな。
『サーチ・アンド・デストロイ』見つけて殺す。空条徐倫への復讐やら何やらもあるが、動物の本能っていうかね。ある意味では真にまっすぐだ。
だが、これで何度目だ?“結果”が付いてこなかった。それが彼が最強になれなかった理由さ。

――え?ディ・ス・コ?
だってほら、いくら信念やら何やらを持ってたとしても、DIO“様”に捻じ曲げられちゃったじゃん。最初から議論の外だよ。


……なんだよ?注文が多いな君らは。
だって俺は『最強について』の話をする、とは確かに言ったが。

『この話で生き残ったやつが最強なんだよ』とは一言も言っていないだろう?

さらに言うなら“これが正解”とも言っていないからな。あくまでこの俺が考える最強論だからな、そこは勘違いしないでくれよ。

ま、朝を迎えて行動の方針が大きく変わる奴もいると思う。そんな中で信念を貫き通す『最強』が現れることに期待してるよ、俺はね。

555最強 状態表  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:41:14 ID:EW5ol3is
【E-2 GDS刑務所 外/一日目 午前】

【サーレー】
[スタンド]:『クラフト・ワーク』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間
[状態]:瀕死(落下による全身打撲および骨折、グリーン・デイによる黴の浸食)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず生き残る
0.???
1.ボス(ジョルノ)の事はとりあえず保留

【チョコラータ】
[スタンド]:『グリーン・デイ』
[時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後
[状態]:瀕死(落下による全身打撲および骨折)
[装備]:ナチス軍用機に搭載されていたパラシュート(人形付き)
[道具]:基本支給品×二人分
[思考・状況]
基本行動方針:生き残りつつも、精一杯殺し合いを楽しむ
0.???
[備考]
間田の支給品は『ナチス軍用機に搭載されていたパラシュート(人形付き)』でした、

[支給品紹介]
ナチス軍用機に搭載されていたパラシュート(人形付き)@2部
JC12巻にて登場。究極生命体となったカーズに立ち向かうためにスピードワゴンやシュトロハイムが乗ってきた軍用機。それに搭載されていたパラシュートである。
墜落する軍用機からパラシュートで空中漂うジョセフのその姿はくもの巣に引っかかった蝶だとカーズに評価された。
……が、それさえもJOJOの策。人形を括り付けたそれを囮にカーズとともに火山に突っ込んだのだ。
ここで気になるのが人形。よくもまあ、あれだけの短期間に似顔絵まで書いた人形を用意できたものだ(胴体は布を丸めれば作れるだろうが足がある)

【ペット・ショップ】
[スタンド]:『ホルス神』
[時間軸]:本編で登場する前
[状態]:瀕死(蓄積したダメージ、グリーン・デイによる黴の浸食)
[装備]:アヌビス神
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーチ&デストロイ
0.???
1.DIOとその側近以外の参加者を襲う

【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:瀕死(ホルス神による胴体貫通の穴、脇腹打撲、前歯数本消失)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ティッツァーノを殺したやつをぶっ殺した、と言い切れるまで戦う
0:???

【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康。肉の芽
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために、不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
2.とりあえず瀕死のこいつらをDIO様に献上
[備考]
※肉の芽を埋め込まれました。制限は次以降の書き手さんにお任せします。ジョースター家についての情報がどの程度渡されたかもお任せします。

556最強  ◆yxYaCUyrzc:2013/01/25(金) 11:42:24 ID:EW5ol3is
以上で投下終了です。一応age

サンドマンの空耳パロは使ってみたかったんで自分パートで使用してみましたw
書いてて問題かなと思ったのは『一人も死んでいないこと』です。どこからどう見ても『いやそこは死んどけよ』な感じがねぇ……
後は戦闘での矛盾とか。サーレー正直に落っこちないでも、パラシュートはそんな使い方しねぇよ、ペットショップ無限コンボはどうした、などなど。
あとは文章表現。ちょっと原点回帰というか、『小説っぽいSS』でなく『2chのパロディまみれなSS』を意識してみました。未来の書き手さん、こういう書き方で良いんだよ、ってことでw
そんなこんなで突っ込みどころ満載かとは思いますが多少強引にでも動かさなきゃなぁと私なりに考えた結果です。
誤字脱字、指摘等ありましたらご意見ください。それではまた本投下時に。

557名無しさんは砕けない:2013/01/25(金) 20:56:56 ID:fuzLpKPM
仮投下乙です
ペット・ショップがスクアーロを攻撃した理由がわかりづらいように思います
一応能力の相性を確認し手を組んでもいいかと思った相手
瀕死の状態でアヌビス神欲しさに攻撃するかな

しかし瀕死のこいつらが全員DIO軍団になったら怖い…
肉の芽はありとして、キャラのゾンビ化ってありでしたっけ?
(ここで聞くのもおかしいか?)

558名無しさんは砕けない:2013/01/25(金) 21:54:48 ID:aA3AsU6U
ここでディスコが瀕死のチョコラータをDIOの所に連れて行けば…
状態表を見る限りジョースター家の情報しかもらってないんだよなあ
いったい石仮面は誰がかぶるのか

559名無しさんは砕けない:2013/01/26(土) 13:35:29 ID:Pn531HjQ
>>557
ゾンビ化もアリだったと思う
誰がゾンビ化しようとどんな能力になるかは決まっているから
ダメなのはスタンド使い化とレクイエム化

560 ◆yxYaCUyrzc:2013/01/27(日) 21:01:18 ID:eMtJy2Ho
指摘くださった方、ありがとうございます。
本投下は、もう少し意見をうかがいつつ修正&リアルの都合で火曜夜〜水曜朝・昼辺りになるかと思います。
c.g氏の代理投下もあるでしょうし、そのくらいでも遅くないかななんて思ってたりします。
引き続きご意見お待ちしております。それではまた本投下時に。

561理由 その1  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:24:54 ID:HDIzRK82
例えば……君らが、あるマンガキャラを原作とした格闘ゲームを予約したとする。
別に発売日に店頭に並んで待ってたっていいのに、予約したとする。

……なぜ?

どうしても発売初日に手に入れたい?
売り切れが心配?
初回封入特典のダウンロードコードとメモ帳がほしかった?
数量限定生産のエッチングプレートがほしいから?

――おいおいそう熱くなるなよ。何もゲームの話をしてるんじゃない。
要は“欲しかった『理由』”について聞いてるんだよ。

何もゲームの購入に限ったことじゃあない。
全ての行動に理由はある。

……たぶん、きっと。


***

562理由 その2  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:26:21 ID:HDIzRK82
「よくもエリナばあちゃんを見殺しにしやがったなッ」
バキィッ!

「……」

「治したとか言って手ェ抜いたんじゃねぇだろうなァアッ」
ドムッ!

「……」

「彼女は俺のこと本物の旦那と信じて疑わなかったんだぞッ」
ベチィッ!

「……」

「なんで、なんで死なせたんだ!このハンバーグ頭ッ」
ドスッ!

「……」

「何とか……何とか言えよ!この野郎ッ……クッソ……」

「……」

「オイ……ナメてんのかテm」
ドガァッ!

「おい――俺の頭がなんだって?
 ドサクサに紛れてバカにしてんじゃあねぇぜッ!

 殴って気が済むならいくらでも殴りやがれ!
 ……俺のは一発で許してやるよ、えぇ?親父」

「――え」

「俺だって“曾祖母ぁちゃん”を救えなくって悲しいさ。悔しいんだ。
 だがよ、俺は一緒に暮らしてた祖父さんが死んだときにゃあ一秒も泣かずにその意思を継いだもんさ。
 ジョセフ・ジョースターっつったな?
 『ジジイ』の若いころがこんな泣き虫野郎だとは思わなかったぜ」

「お、おま――じゃあ本当に」

「んな事今ここで問答するこっちゃあねぇだろ。
 『エリナばーちゃん』はそんな事望んでるのか?
 見てみろよ、幸せそうな顔で眠るようでよ――
 アナタは泣かないで前向いて歩いてくださいね、って、そういってる風には見えねぇか?」

「何が言いてぇんだ?かたき討ちでもしに行けってのかッ」

「それをバーチャンは望んでないだろうがな。
 きっかけなんて、理由なんてそんなもんでいいだろ、とにかく立ちやがれ。
 ここでグズってるよりは百倍マシだと思うぜ、俺ぁよ」


***

563理由 その3  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:28:33 ID:HDIzRK82
「畜生!おいなんで行かせてくれないんだよ!仲間さらわれてんだぞ!」
そう悪態をつく噴上。目の前には立ちはだかる一人の軍人。

「何度も言っておろうが!マウンテン・ティムに任せておけとォ!
 貴様らごときが行ったところで足手まといにしかならんわァアア!」
周囲の目も気にせず高らかに声を上げるのはシュトロハイムである。

ちなみに、
「あーあ、だめだこのガンコ軍人。あたしはエルメェスのそばにいるから何とか説得しておいて」
と言って早々にシーラEは救急車の中に戻ってしまった。

「ホラホラァ!言葉で説得できなければ力ずくでも俺を納得させて見せろォ!」
「クッソ!言われなくてもッ!ハイウェイ・スター!次は左からだ!」

言いながら己の分身をシュトロハイムにぶつける。
身体に張り付く無数の足跡に、普通の人間なら栄養失調で立ってなどいられない。
更に上半身は拳でのラッシュを無防備な顔面に叩きこむ。

しかし。

「――効かんわアァァッ!」

それらの猛攻をものともせず本体である噴上の足元に威嚇射撃。
当然弾丸は当たらないものの、不意を突かれた上にその気迫に押し負けた噴上はスタンドを消してしまう。

「――えぇい!ナチス軍のサイボーグはバケモノかッ!?」
思わずこぼす噴上。それに対しシュトロハイムは鼻を鳴らす。

「バケモノ?違うなァ!貴様らが軟弱すぎるのだ!
 なーにが『スタンド』!なァにが『ひ・と・り・ひ・と・の・う・りょ・く』だッ!
 そんな慎ましさで今後襲いくる脅威に敵うモノかァ!サンタナなどカーズらに比べれば赤子も同然よ!」

「おい……スタンド使いバカにしてんのかよ」
「そうともよ!マウンテン・ティムはスタンド使いである以前に『カウボーイ』で『保安官』!さらに『ルックスもイケメン』だ!
 たかだか『高校生』でしかない貴様よりは十分に有能よ!ゆえに康一の捜索を依頼した!貴様の匂いの能力も不要!」

「それが――それがさっきまで一緒に戦った仲間に言うセリフかよ(つーかイケメン関係ねーだろ)」
もはや噴上からは闘志が抜けきってしまっている。
目の前の男に叶わない事実。仲間を追う事すら許されない悔しさ。

「フン、貴様が重要なことを忘れて――お、終わったか、気分はどうだ、ジョジョ」


***

564理由 その4  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:30:57 ID:HDIzRK82
「気分はどうだ、ジョジョ」
そういって後ろに立つジョセフ・ジョースターに向かって歩き出すシュトロハイムを手で制す。

「康一を追わせてもらうぜ」
「なんだなんだ、パパの前に子供が立つだなんて、なかなか面白い光景じゃあないか?普通は逆だぞォ?えぇ?ジョースケよ」

シュトロハイムの奴がやっすい挑発をかましてくるが気にしてなどいられない。
康一がさらわれてるっつーのにこの泣き虫野郎の説得に時間をかけすぎたからな……
これが“ジジイ”いや『オヤジ』なんて信じられっかっつーの、俺は絶対ェに認めたくねーぞ――

「話題変えてんじゃあねぇ。康一を追いたいっつってんだ」
「ほほぉ〜?それじゃあ噴上に代わってこの俺を説得してみるんだなァ〜?」

なるほど……それで噴上はこんなに悔しそうなのか。シュトロハイムも面倒な事しやがったな――

「ホラホラァ〜何とかして康一を追いたいんだろォ?その理由言ってみなァ」

たっぷり十秒くらいは間を開けた後、軽く息を吸い込む。極力感情を抑えて言ってやる。


「ダチ助けるのにいちいち理由がいるのかよ」


「んん?ダチぃ〜?」
「そうよ、広瀬康一は俺の親友だ。そいつを助けに行きたいんだ。理由なんかいらねぇだろ」

眉一つ動かさずそう付け加えた。
俺のメンチとタンカを黙って聞いてたシュトロハイムは……

「フン、やっと友人という単語を聞けたわ。
 そう、それでいいッ!『仲間は友とは限らん』が!『友はいつだって仲間』なのだァァァ!
 よし良いだろうッ!合格だ!全員で追うぞォッ」

そう返してきた。


……き、決まったァ〜仗助君カッコイイ〜!


「お、ちょうどいいタイミングだったかな?行くんだろ?コウイチ君を追っかけに」
「君が治療してくれたんだってな、ありがとよ、ジョウスケ。
 ……ちょっと前から見てたけど、ナチスのアンタ。うめぇなぁ、ピエロごっこがよ、ハハハ」

振り返ればシーラEがそう言って手を振ってる。隣にいるのはエルメェス!意識を取り戻したみてーだな。

「チッ、なんだ俺ぁやられ損かよ。おい仗助、良い役回りやったんだから今度なんか奢れよ――もういいだろ、行けッハイウェイ・スター!」
背中をドツいてきた噴上も、悪態付きながらスタンドを展開してる。思ったよりショック少なそうだな。


で――問題の奴は……?
「――ジョースケ、悪かったな。
 まだ漠然としちゃあいるが、俺だってなんかしなくっちゃあな。
 きっとエリナばぁちゃんもそう望んでるだろうからな」


……大丈夫そうだな、さっそくシュトロハイムの激励攻撃にあっていやがる。


よっしゃ、いっちょ康一を攫ったやつをぶん殴りに行こうじゃあねーか!


***

565理由 その5  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:31:57 ID:HDIzRK82
――どうやらうまく話がまとまったみたいだね。

しかし仗助が『理由なんてそんなもん』とか言いながらちょっとしたら『理由なんかいらない』って言うんだから面白いもんだ。
だがそれは確かに的を得てる言葉だ。
……確か君らに最初に話したのは欲望の話だったな。それにも似通ってくる。
本能的な行動には理由なんかないが、それをいかに理由づけて抑制するか。
あるいはその逆かな。どう理由つけてワガママを押し通そうとするか。

――ん?
なんで仗助がこんなにカッコ良すぎるか?その理由?

う〜ん……



……『主人公補正』ってやつかな?

566理由 状態表1  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:33:14 ID:HDIzRK82
【B-4 古代環状列石(地上)/一日目 午前】


【チーム名:HEROES+(-)】

【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前。
[状態]:絶望(回復中)、体力消耗(中)、泣き疲れて目が真っ赤
[装備]:なし
[道具]:首輪、基本支給品×4、不明支給品4〜8(全未確認/アダムス、ジョセフ、母ゾンビ、エリナ)
[思考・状況]
基本行動方針:オレだってなんかしなっくっちゃあな……
1.康一を追うことに同行
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる

[備考]
エリナの遺体は救急車内に安置されています。いずれどこかに埋葬しようと思っています。

【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
1.康一を追うことに同行。友というその言葉!聞きたかったぞ!
2.ジョセフ復活!思ったより元気そうじゃあないか!
3.『柱の男』殲滅作戦…は、どうする?

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷(応急処置済)、顔面の腫れ(軽度・ジョセフに殴られた)、悲しみ、やや興奮気味
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
0.康一を追う。さらったやつは容赦しない。
1.ジョセフ・ジョースター……親父とはまだ認めたくない(が、認めざるを得ない複雑な心境)
2.各施設を回り、協力者を集めたい
3.承太郎さんと……身内(?)の二人が死んだのか?
4.キマッタァァァ俺カッコイイー!

[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

567理由 状態表2  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:34:09 ID:HDIzRK82
【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:全身ダメージ(回復)、疲労(ほぼなし)、ちょっと凹んでる
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
1.康一を追うことに同行
2.ジョセフ・ジョースター、マジか……
3.各施設を回り、協力者を集める?
4.ったく損な役回りだったぜチクショウ……↓

【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前。
[状態]:ダメージによる疲労、傷は回復、空腹
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1.康一を追うことに同行
2.まずは現状を把握したい
3.徐倫、F・F、姉ちゃん……ごめん。

[備考]
シーラ・Eから自分の境遇についてざっと聞きました。これから他のメンバーと情報交換したいと思っています。

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:健康、肉体的疲労(小)、精神的疲労(小)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
1.康一を追うことに同行
2.ジョセフ・ジョースター?マジかよ……
3.エルメェス、良かった……

[備考]
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。
※ジョージⅡ世とSPWの基本支給品を回収しました。SPWのランダム支給品はドノヴァンのマントのみでした。
※放送を片手間に聞いたので、把握があいまいです。→他のメンバーとの情報交換によって把握しました。

568理由  ◆yxYaCUyrzc:2013/02/22(金) 23:35:12 ID:HDIzRK82
以上で投下終了です。
『死亡遊戯(Game of Death)』と『BREEEEZE GIRL』の間の補完話という時間軸で書かせていただきました。
のはいいんですが……

ジョセフ号泣→一人にしてやろう
→その間に仗助による全員の治療&情報交換(ここまでは『死亡遊戯』でも行われています)
→康一いねぇじゃん!どうすんだ!
→ティムが一人で追うことになった
→俺らも追うぞ!→シュトロハイム「駄目だティムに任せておけ!」
→仗助「親父はいつまで泣いてンだ俺が根性叩きなおしてやる!」

という、冒頭に入るべき描写をざっくりと省いています。
このことに関して特に指摘をいただきたい。もちろんその他の矛盾その他ありましたら。

さて仗助が見事に暑苦しいキャラになってしまってますねw
まぁ歴代ジョジョの7(8)人の中では一番直情的なジョジョだと思っておりますから。

誤字脱字や上記その他のご指摘ありましたらご連絡ください。
本投下は月曜日を予定しております。それでは。

569名無しさんは砕けない:2013/02/23(土) 04:20:04 ID:SlJaaYj6
投下乙です。見事な補完話、流石です。
これといって誤字脱字は見当たりませんでした。変なところもないと思います。
本投下、待ってます。

570名無しさんは砕けない:2013/02/23(土) 11:37:52 ID:2qV1r.O6
投下乙。やっぱりHEROESは格好いいな

571判断 その1 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:07:08 ID:pJngk8tg
――さて突然だが、


ピシュッ


――……おおっ、この距離で投げたフォークを全員が回避できるとは。
先っちょ研いであるから当たれば結構痛いかななんて思ったんだけど。
……あ、イヤ悪かったよ本当。ごめんごめん、何も君らに怪我させようなんて意味はないんだって。
フォークだってほら最近流行ってる名状しがたいカオスなナントカのアニメで良く見るからってだけの理由だし。

――しかし君らは“カンが良いな”。
俺の最初の一言から何かしらのニュアンスを感じたか、単純に飛んでくるフォークを見てからどう動くかを一瞬で決めたか。
いずれにしてもその直感、もっと磨いた方が良いよ。

さて、この『勘』は――えーと、まあつまり“判断力”ってことだと思う。
この判断力って何するにも重要だと思う訳よ。学校のテストにせよ今のような戦闘――じゃないんだって、まあ何にせよね。正解を選んだり、あるいは今自分はどうすべきか、とか。

じゃ、そういう事でいこうか。


***

572判断 その2 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:08:34 ID:pJngk8tg
「おい、聞こえているだろう。
 どこからか攻撃を受けた。なにか情報をくれ……」

小さく呟いた僕の言葉に対し返事はない。
情報の提供どころか、たとえば『テメーで考えろ』というような煽りもないとは。あっても困るだけだが……

とはいえ、この状況……裏を返せば“ムーロロの情報を聞かなくても対処できるレベル”なのでは?

「フーゴッ!おい外は大丈夫なのかッ!?」
――と、ここで悲鳴にも似たナランチャの呼びかけに意識を引き戻される。
そうだ、ここは三人で切り抜けなければならない。とりあえず飛び出そうとするナランチャを手で制す。

「フーゴ、今のは……突然緑色の散弾がガラスを割ったように見えた!これがスタンド攻撃というものなのか!?」
ジョナサンがそう聞いてくる。緑の散弾?僕には見えなかった。彼の波紋の力か、あるいは動体視力か?いずれにせよ彼の力もスタンド使いに引けはとらない。
「君には今の散弾が見えたと?すごい動体視力です。そして、そう、今のは明らかにスタンド攻撃。
 そしてナランチャ――君ならこの場をどうする?」
あえてナランチャに話題を振る。この状況を三人で切り抜けると決意した以上、状況は共有しておかなければならないからだ。

「そ、そんな事急に言われたって俺にわかる訳ねーだろッ!」
「落ち着いて、ナランチャ。君は『飛び道具で攻撃するスタンド使い』を良く知っているはずだ」
「この攻撃がミスタだってのかよォーッ!」
……以前ならここで『んなワケがあるか』とブチ切れて彼を殴り倒していただろう。だが、そうはしない。
「そうじゃあない。ミスタを良く知ってる君なら“銃使いを相手にしたらどうするか”を考えられるはずだ」
ナランチャがハッとして目つきを変える。どうやら彼にも理解できたようだ。

『銃弾の軌道をも操作される可能性がある以上、我々のスタンドの間合いまで突っ込む』ッ!

「待ってくれ!戦うという事なのか!?僕たちには味方が必要だ!
 怯えて不意にスタンドを使ったのかもしれないッ」
ジョナサンが話に割り込む。彼が言いたいこともよく理解している。
「ジョナサンも。スタンドに関しての戦闘は僕やナランチャの方が慣れています、落ち着いて聞いてください。
 ――あれを見てください。ふわふわと浮いている、あれがスタンドです。きっとあれが僕たちを監視しているのだと思う」
人差し指を立てて静粛を促し、そのまま指さした先には鍵のぶら下がったUFOのような物体が浮いている。
どう見てもスタンドだ。しかも“人型ではない遠距離型あるいは自動操縦型”と推測できる。
「じゃああれが先の飛礫を放ったというのか?」

「おそらくは。ですが推測のし過ぎは良くない。ハナからチームで襲撃されている可能性もある。
 そして、とにかくここで立ち止まっていれば全滅の可能性もある。戦うにせよ逃げるにせよ、必要なのは移動だ。
 ……ここは僕が引き受ける。全力で君らを逃がす!」

ジョナサンの質問に回答しつつ方針の決定、行動に移す旨を伝える。
そして僕がこの場を引き受けるという発言を受けナランチャがギョッとする。そりゃあそうだろう。
ジョナサンの腕を引っ掴み戸口へ走った。
「行くぞジョナサン!ここはフーゴに任せるぞッ」
「彼を置いていくというのか!?僕も戦うぞッ!」
「ちげーよバカ!近くにいたら巻き込まれる!とにかく行くんだよ!!
 おいフーゴ!“銃使いを相手にしたら”だよなッ?」
振り返って叫ぶように僕に問うナランチャ。僕も彼の目をしっかりと見返し、頷いた。
「ああ。ここはあくまで足止め、僕もすぐ行くから、安全な場所についたらエアロスミスを飛ばしておいてくれ。勝手に見つけて合流しますから」

最後の方なんかほとんど聞こえてなかったんじゃあないか、という勢いでナランチャが飛び出した。
ジョナサンは心配気味に最後まで僕の方を見ていたが、それでもナランチャを追って行ってくれた。そう、それでいい。

さあ、いくぞ……“全力で”!

パープル・ヘイズ・ディストーション!


***

573判断 その3 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:10:29 ID:pJngk8tg
結論から言ってしまえば、ジョンガリ・Aは三人を襲撃するつもりはなかった。
三人のうちに知り合い、あるいは敵がいるのかどうか、そういった状況を把握するためにとスタンドを行使しただけである。

それが気付けば前を走っていた奴と同一人物か、またはチームでの襲撃かと勘違いされて攻撃を受けたという訳だ。
人型のスタンドではない『マンハッタン・トランスファー』のダメージフィードバックが全身の皮膚に傷をつけている。

だが、まだ彼が再起不能になったわけではない。

一瞬だけ襲ってきた、蝕まれるような鋭い痛みにひるみ、さらにその後に吹き上がった煙に気流を乱されその場を退いた、それだけだ。
そしてこの屈辱を、『恨み』を晴らさぬジョンガリ・Aではない。

とは言え、とは言えだ。
自分の能力で、あるいは単独行動というスタンスで今後も動き続けられるかと問われれば素直にイエスとは言えない。
狙撃手ならば狙撃手らしく安全かつ有利な場所に陣取って動かずにいるという事も選択肢の一つであるし、放送で得た情報、得られなかった情報の獲得に動こうとしていたことも事実。

それらを理解しているからこそジョンガリ・Aは歯噛みをしつつも再びスタンドを空中に舞い上げ、歩き出すしかない。

そんな逆境続きの中、数分もしないうちに先の三人組を見つけられたのは彼にとって幸運以外の何物でもなかった。
当初からそう遠くへ逃げ出そうとする気はなかったのだろう。そんな推測が一瞬頭をよぎるも、問題はそこではない。

『三人組が五人組になっていること』と、
『己のスタンドで読めるのは気流から得る体格や動きだけで会話を聞き取ることが出来ないこと』の二点。

ジョンガリ・Aは考える。
先の戦闘の際に向こうの五人組のうち少なくとも一人以上には自分のスタンドが見られており、自分が攻撃を仕掛けた“と思われている”事は大いに問題だ。
姿を現しただけで有無を言わさずスタンドのラッシュを受ける可能性だってある。
しかし、『ガラスを割ったのは自分ではない』と証明することが出来たのなら。
割った本人に罪をなすりつつ――事実彼が割ったわけではないから些か語弊のある表現ではあるが――彼らに取り入ることも不可能ではないのでは?
自分が攻撃“された恨み”を抑える事さえできれば『問答無用で攻撃してきた相手』として逆に弱みを握ることも出来るのでは?
もちろん……この五人組を相手に今度こそ本当に攻撃することも選択肢の一つだ。

考えながらも歩みは止めない。
全てはDIO様のため。迷いこそすれ立ち止まる訳にはいかないのだ。

――緩やかな日差しが注ぐ街並みにジョンガリ・Aは姿を消した。


***

574判断 その4 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:11:44 ID:pJngk8tg
「お、おーいフーゴぉ〜」
「よかった!無事だったのか!」
ラジコン飛行機みたいなスタンドがナランチャとかいうガキのもとに戻ってくる、一人の男を連れて。
ジョナサンとか言われた方も顔がほころんでやがる。マッチョのニヤニヤ顔なんて見たくねーっつーの。

「ええ――倒すことを前提としなかった分楽に逃げられましたよ」
「え、お前のパープル・ヘイズで倒さねーなんて、そんなこと出来るのか!?」
「まあ……何でもいいじゃないですか、無事だったんだから」
フーゴと言われた奴がナランチャと一言二言挨拶してこっちに歩いてきた。

「だな、それよりよォ!スゲェ人と会ったぜ!誰だと思う?ドジャァ〜ン!」
どじゃぁ〜ん、ってお前ガキかよ。確かに見た目ガキだけど。
最初から俺ら隠れてもいねーし。フーゴとやらも最初からこっちガン見だったし。

「フーゴ……久しぶりね」

――え?

「あ、あぁ。久しぶり。元気そうで何よりです、トリッシュ」

え?え?

「なんですかトリッシュ様?この穴スーツもトリッシュ様のお知り合いで?」
思わず聞いちまった。
穴スーツなんて呼んじまったせいで明らかに嫌な顔をされた。チクショウ。

「まあね、あ、こいつは小林玉美っていって――」
ト!トリッシュ様が俺の事を紹介してくださってる!思わず背筋が伸びる。
「紹介に預かった玉美と言いやす。縁あってトリッシュ様のお供をさせていただいておりやすが……」
が。そうだ。ガキらにナメられる気はさらさらネェ……そこまで言うとこっちがガキ臭くなるので言わねーが。

「――なぁフーゴ?トリッシュの奴あんなちゃっちぃオトコを連れて何のツモリなんだろうな?」
「さあ……この半日間の間に何かあったんでしょう」
小声で話してるつもりなのか!?聞こえてるっつーの!流石の俺様も怒り爆発のサムライ激怒ボンバーってやつだ。

「オイ!おめぇらな、いくらトリッシュ様の知り合いだからって俺にイバりちらすんじゃあねーぞ!俺が忠誠を誓ったのはトリッシュ様だけなんだからな!」
「……玉美、うっさい」

ぐっ……流石にトリッシュ様に怒られると引き下がるしかない。
「し、失礼しやした……」
そうか、トリッシュ様の命令次第じゃ俺はこいつ等の下になっちまうのか……

「まあまあ。君たちが皆顔なじみの友人でよかったじゃあないか。
 改めて、僕の名はジョナサン・ジョースター。君たちとともに力を合わせて戦いたいんだ!」

と、ここでジョナサンとやらが自己紹介して場をリセットする。
学級委員タイプだな。コラ男子静かにー!ってか。まあ、嫌いじゃあねーかな。好きでもないが。

「決まりね。じゃあちゃっちゃと情報交換……始めようかしら、ね。フーゴ。ナランチャはエアロスミスで周囲の警戒を」
「な、なんでトリッシュに命令されんだよ!?フーゴッ」
しかし切り出したのはトリッシュ様!流石です!ナランチャてめーは黙ってトリッシュ様にしたがってりゃいいんだよ!ケッ!

「いや、まあ……でもトリッシュの言うとおりだ、とにかく周囲の警戒を。
 トリッシュ、特に君とはいろいろ話をしておきたい」
こっちはこっちでナニ気安くトリッシュ様のこと呼んでるんだよ!こりゃメチャ激おこぷんぷん丸なんじゃねーの!?

「あァん?てめぇトリッシュ様に馴れ馴れしkブゲッ」

「玉美、うっさい」
トリッシュ様……ナイスな腹パン、ありがとうございます……


***

575判断 その5 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:13:01 ID:pJngk8tg
さて、ここでいったん話を切ろう。

最初に君らに念頭に置いといてもらったのは“判断力”ってことだが、どうだろう?
ここで一番物事を判断しなきゃならないのは誰だ?

ジョナサンはまあ、今回そろったメンツの中では顔見知りがいない分……とは言っても本人の目的は明確だからまっすぐ行くだろうね。
玉美も同じ。まあ判断の基準が『トリッシュ様』の命令だから何とも言えないけど。全て彼女に一任します!って感じで。
ナランチャは……頭がアレだから行動方針やら何やらの判断は出来なさそうだなぁ。戦闘になれば天才的な勘、つまり判断ができるんだけど。

で、メインはトリッシュとフーゴの二人だろうね。
どちらも『ジョジョ』を知ってて、しかもトリッシュに至ってはブチャラティに送り出されてきたばっかりで。
情報交換も慎重になりそうだ。各々の考えや判断をいかに先の三人に伝えるかが課題だろうね。

――で、忘れちゃあいけないのがジョンガリ・A。
現状で選択肢が、つまり判断しなければいけないことが一番多いのは彼だと思うよ。しかもそれを一人で判断しなければいけない。自分の判断の尻拭いもすべて自分ですることになる。
これは中々のプレッシャーだろうね。あ、いやプレッシャーと表現するのはアレだけど。

あとはそうだなぁ……この話には出てこないけど、ムーロロだってずっとフーゴのポケットで話聞いてるはずだからね。判断要素が一気に増えたと思うよ?
殺戮ウイルスって聞いてたフーゴのスタンドが相手を殺さなかった?
最近デビューした歌手がなんでパッショーネの連中と知り合いなの?
……とか。
でもまあ、ここで俺がムーロロについて話しても仕方ないからね。ほらルールに反するし。


――え?俺の判断力?
いや俺は大してないよ。選択肢を選んでくゲームなんかはいっつも負けばっかりで、


……ってうわっヤメ、フォーク投げるの止めて!痛いから!ごめんマジごめんってッ――

576判断 状態表1 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:13:43 ID:pJngk8tg
【E-6 南部 路上  / 1日目 午前】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.ナランチャやフーゴの知り合いか!情報交換をしよう。
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.『21世紀初頭』? フーゴが話そうとしていたことは?→方針0の情報交換で聞こう
3.『参加者』の中に、エリナに…父さんに…ディオ……?→方針0の情報交換で何かわかるかも?
4.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
5.ジョルノは……僕に似ている……?
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.トリッシュだ!仲間増えてよかった!エアロスミスで警戒してるから情報交換しようぜ!
1.フーゴが話そうとしていたことは?→方針0の情報交換で聞こう
2.ブチャラティたちと合流し、共に『任務』を全うする。
3.アバッキオの仇め、許さねえ! ブッ殺してやるッ!
4.フーゴのパープルヘイズが『逃げ』で済ました……?よくわかんねー
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。
※エアロスミスのレーダーは結局花京院もジョンガリ・Aもとらえませんでした。

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
0.トリッシュ……素直に喜んでいいものか、とにかく情報交換はせねば。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.ジョナサンと穏便に同行するため、時間軸の違いをきちんと説明したい。→方針0でしっかり話しておこう
3.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す。
4.ナランチャや他の護衛チームにはアバッキオの事を秘密にする。しかしどう辻褄を合わせれば……?

577判断 状態表2 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:14:06 ID:pJngk8tg
【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、全身に凍傷(軽傷だが無視はできないレベル)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.フーゴ……いざ会うと複雑な気持ちね、とにかく情報交換かしら
1.ウェカピポとルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ありがとう、ブチャラティ。さようなら。
4.玉美、うっさい

[参考]
ブチャラティ、ウェカピポ、ルーシーらと、『組織のこと』、『SBRレースのこと』、『大統領のこと』などの情報を交換しました。

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.トリッシュ様、ナイス腹パンです……

[備考]
拳銃の弾は無くなりました。

【E-6 中央部 / 1日目 午前】

【ジョンガリ・A】
[スタンド]:『マンハッタン・トランスファー
[時間軸]:SO2巻 1発目の狙撃直後
[状態]:体力消耗(ほぼ回復)精神消耗(小)
[装備]:ジョンガリ・Aのライフル(30/40)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み/タルカスのもの)
[思考・状況]
基本的思考:DIO様のためになる行動をとる。
0.襲撃する?取り入る?見逃す?どうする、俺?
1.情報がほしい。
2.ジョースターの一族を根絶やしに。
3.DIO様に似たあの青年は一体?

578判断  ◆yxYaCUyrzc:2013/05/11(土) 23:14:54 ID:pJngk8tg
以上で仮投下終了です。
当初はもう単純にフーゴ組とトリッシュ組を出会わせるだけの予定でしたが、襲撃中だったのね彼ら。ということで。
後は予約被りで破棄したムーロロの思考は『俺パート』に無理やり組み込んでます、がまあ仮に書いたとしても静観を貫いていただけなので良いでしょうw
今後もちょっとでも過疎っぽい個所動かせていければなと思っております。

では本投下までもうしばしお待ちを。誤字脱字や矛盾点、気に入らない点等々ありましたらご指摘ください。それでは。

579名無しさんは砕けない:2013/05/12(日) 10:55:17 ID:lMnSdhuE
投下乙です
誤字脱字・矛盾等はないように思います。
ムーロロが予約かぶりでどうなるかと思いましたが、そこを判断ポイントにするのが上手いっす
そして穴スーツで嫌がるフーゴwなら着るなよっていうw

580名無しさんは砕けない:2013/05/12(日) 17:48:49 ID:65ycZgIU
仮投下乙
玉美はジョジョ3の癒しになれる

581名無しさんは砕けない:2013/05/13(月) 09:21:14 ID:u1U20Ffk
仮投下乙です
フーゴがめっちゃ輝いてる
アバッキオのことだったり時系列の問題だったりで抱え込んでることが多かったけどここでトリッシュに会えた分なんとかなるといいなあ
あ、でもそしたらブチャラティのことが…
玉美はやっぱ便利なキャラだなと実感w

582 ◆yxYaCUyrzc:2013/05/14(火) 05:03:40 ID:i8UrxhnE
レスありがとうございます。
矛盾等々の指摘が無さそうなので実生活の都合&c.g氏の投下の都合に合わせて本投下に向かおうと思います。
もちろん引き続きご意見ご指摘ありましたら受け付けますのでどうぞ。

583 ◆ARe2lZhvho:2013/05/23(木) 18:08:14 ID:VyN9zh/k
シーザー・アントニオ・ツェペリ仮投下します

584 ◆ARe2lZhvho:2013/05/23(木) 18:08:59 ID:VyN9zh/k
街に向かったはずのシーザーはティベレ川に沿って北上していた。
何故か?時間は少々遡る……


 ■   ■


    …………ドドドドドドドド

物音と言うには物騒な音が聞こえてきたのはシーザーが川に背を向けて数分もしないうちだった。

「……何の音だ?」

周囲に生物がいないことは波紋で確認していた。
手にしているペットボトルを見ても波紋の乱れは見られない。
生物が起こしたものではないと半ばわかっていても、気になってしまったものは仕方がないと振り返って音の正体を確かめ――立ち止まる。

「コイツはッ……!」

透明だったはずの川の水が茶色に変色していた。
それだけではない、水嵩も明らかに増している。
形兆も狙っていたわけではないだろう。
この後川が氾濫するとわかっていたならば投げ込まずに川岸に放置するだけで済ませたはずだ。
つまり、シーザーが濁流に巻き込まれずに済んだのは『偶然』。
無論シーザーとて厳しい修行を積んだ波紋戦士の一人、たかが濁流ごときに遅れを取ることはないが、もしも川岸に上がるのが遅れていたならば……そう思わずにはいられなかった。
雲一つ無い空の下、どうしてこのような事態になっているのか疑問には思ったがそれよりも誰かに会うことの方が先決だと再び街に向かおうとし――

        ……ドッバアアアアァァァァン!!

なかった。
さっきまでの濁流がまるで小川のせせらぎに感じられるような激流。
鉄砲水という表現ですら生温いと思ってしまうような奔流。
シーザーは絶句する。
つう、と冷や汗が頬を伝う。
ふいに聞こえたゴクリという音が生唾を飲み込んだということに気付くのに時間がかかった。
思わず駆け戻り、上流を見遣る。
轟々と渦巻く流れは視界の端まで絶えず、始まりを悟らせない。
シーザーは知る由もなかったが、これはウェザー・リポートが降らせた雨がカイロ市内地下水道を通ってティベレ川に流れ込んだものだ。

(形兆のスタンドは軍隊、ヴァニラのスタンドは消滅……だったか?スタンドは一人一能力、裏を返せば『一つのことしかできないが誰がどんな能力を持っているかわからねー』って事でもある。
 もっと言い換えれば『何でもアリ』ってわけだ。水を操る、いや、水量を増やすスタンドがあってもおかしくねーが……となると何故こんな目立つことをしたのかだが、大規模な戦闘があって下流への影響を気にしていられなかった、とかか?
 クソッ、考えても埒が明かねえ、上流に向かって張本人を探した方が手っ取り早いか……ん?あれは何だ……レコードか?)

依然泳ぐには危険であることには変わりないがいつしか流れは比較的緩やかになり、シーザーの目にとまったのはぷかぷかと浮かぶ光る4つの物体。
それを目にしたのが近代的な人間だったならばそれをCDだと言うのだろうが、生憎シーザーは1940年代の人間なので知識として持っていない。
このまま見逃すのも勿体ないしもう流れがこれ以上は激しくならないと判断し(第二波が来たところで跳べばいいだけの話だ)水面に立ち、波紋を応用して水面の一部を固定、物体が流れていかないようにキープする。
師匠のリサリサならば水を操って自分のところまで引き寄せるのもお茶の子さいさいなのだろうなと考えつつそれを拾う。

「やっぱりレコードじゃあねえな……小さいし鈍い光沢を放ちはしないし、何よりこんなにグニャグニャとはならねーはずだ。
 それに表面に浮かんでいるのは顔に馬に……筒、か?川の氾濫とも関係あるかもしれねーし持っておいて損はねーだろう」

再び川岸に戻ると北へ向かって歩き出す。
このまま行けば川の濁りから流れ込んだ場所を突き止め、記憶を失ったグイード・ミスタと遭遇できるかもしれない。
しかし、すぐ近くにあるサン・ジョルジョ・マジョーレ教会での戦闘や生命反応を探知するかもしれない。
シーザーがこの後どのような運命に巻き込まれるかを知る者は誰もいない。

585 ◆ARe2lZhvho:2013/05/23(木) 18:09:23 ID:VyN9zh/k
【D-2 南部 ティベレ川岸/ 1日目 昼】
【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発、体力消耗(小)、全身ダメージ(小)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレットの記憶DISC、ミスタの記憶DISC
   クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
0.ティベレ川を北上、氾濫の原因を突き止める。
1.ジョセフ、リサリサ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
2.DIOの秘密を解き明かし、そして倒す。
3.形兆に借りを返す。
4.DISCについて調べる。そのためにも他人と接触。

586 ◆ARe2lZhvho:2013/05/23(木) 18:13:43 ID:VyN9zh/k
短いですが仮投下終了です
タイトルは「Nobody Knows」で
何かおかしい点がありましたら指摘お願いします

587名無しさんは砕けない:2013/05/23(木) 20:45:57 ID:lYuT3Tmg
投下乙です
1点気になるのが、プッチの死亡後もディスクは消滅せず残るのでしょうか
『太陽の子、雨粒の家族』にてジョルノがウェザー、プッチ、ホットパンツの遺品を
確認のうえ必要なものを持っていっているので、
ジョルノが回収していない=ディスクは消滅した と思っていました

2ndのときはプッチは死亡してもホワイトスネイク自体は消滅していなかったのでまた状況が違うかと

588名無しさんは砕けない:2013/05/23(木) 21:59:56 ID:zfvu9Pt6
原作六部のプッチ死亡後は状況が特殊すぎて参考にできない以上
DISCがどうなるかはロワの独自設定でもいいと思う
必要なら議論スレ行きかも

589 ◆ARe2lZhvho:2013/05/23(木) 22:03:19 ID:OHSvEvlc
指摘ありがとうございます
ディスクについてはプッチの胸ポケットに入ったまま=回収しなかったのではなくできなかったと判断しました
またプッチ死亡後のディスクの扱いですが1stではヘブンズ・ドアーのスタンドディスクが死亡後も残っていたので消滅させなくてもいいかと
他にも何かありましたらお願いします

590名無しさんは砕けない:2013/05/24(金) 07:50:06 ID:nAs2N0Gg
あとはDISCが抜けたままプッチに死なれた場合かな、議論するのって。
今回のSSに出てきたHPはともかくシルバーバレットもミスタもまだ生きてなかった?

591名無しさんは砕けない:2013/05/24(金) 23:00:48 ID:2rc5Olk.
プッチの死体はどうなったんだ?
濁流と一緒にダイアーさんとボスのとこに流れていってるのか?

592名無しさんは砕けない:2013/05/24(金) 23:48:59 ID:wNyaPu1E
◆ARe2lZhvho氏の話は全通しでいいんじゃないか?
プッチが死んで今後はDISCが増えることもないだろうし
DISCの扱いはプッチの生前と同じで問題ないと思う

プッチの死体の場所というか『太陽の子、雨粒の家族』での死亡者情報はホットパンツの最期の台詞も指摘あったし、
◆c.g94qO9.A氏の返信(wiki編集)待ちでどうだろう(支給品関連の指摘もあったし)
ただこれ言い出すと他の不正確な死亡者情報も言及しなけりゃならない諸刃の剣

593 ◆c.g94qO9.A:2013/05/25(土) 12:39:56 ID:DjQc3FV6
遅れてすみません。
僕としては通しでいいと思います。
僕が作中や備考で触れないことは基本的に他の作者さんに好き放題してほしいので今回もこれでいいのではと思います。
正直プッチのDISCなんてすっかり忘れてたので、今回拾って頂いてすごい助かったし、嬉しかったです。
このことで遠慮がちにならずにどんどん書いてほしいと思いました。

594 ◆ARe2lZhvho:2013/05/26(日) 03:02:05 ID:IHn3GIOM
ご意見ありがとうございます
初投下なのに議論が発生して申し訳ない気持ちで一杯ですが通しになりそうで一安心と言いますか…
プッチの死体については全く考えていなかったのでまだC-2に残ってるか後から流れてくるかお任せします(DISCより先には多分流れていかないとは思いますが…)
近いうちに本投下させていただきます

595名無しさんは砕けない:2013/05/26(日) 15:18:48 ID:V7hDGK6E
お二人とも乙です
本投下待ってます

596 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 13:57:22 ID:690LzY0s
川尻しのぶ、空条承太郎、リンゴォ・ロードアゲイン
仮投下します

597 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 13:58:47 ID:690LzY0s



 車は市街地をのろのろと進む。

 川尻しのぶは、運転席に座る空条承太郎の顔色をうかがっては前を向き、話しかけようとして口をつぐむ、そんなことを繰り返していた。
 彼女がなにか話しだそうとしていることに、承太郎は気づいている。しのぶも、彼が気づいていることに気づいている。
 しかし二人の間に会話はなかった。
 のろのろ進む車と同じように、わだかまった空気が二人を取り巻き、車中を支配していた。

 やがて、意を決したようにしのぶが口を開いた。

「さっき、…………死んだ、あの人、死ななければならないほどのことをしたの? って思うんです。
 空条さんはあの人のことを知っているみたいでしたけど、こんな、殺し合いをしろだなんていわれて、あの人、怯えているようにも見えました。
 『危険人物』として、処理しなければならない人だったのか、わたしには……」

「あの男、スティーリー・ダンは疑いようのない人殺しで、他人の命をなんとも思わねぇクズだ。
 ヤツは俺たちを殺す気でいた。かつて対峙したときも、先ほども。
 すでに攻撃もなされていた。あなたが気づかなかっただけで」

「でも、あんな一瞬で、……無力にするだけで十分だったかもしれないのに……」

 承太郎が静かにため息をついた。

「聞き出すほどの情報もないと俺は判断した。
 手足を縛ったところでスタンドを封じることはできねぇ。
 気を失わせれば無力化はできる。が、そうしたところでなんの役にも立ちやしない」


――だからスティーリー・ダンを殺したのは正しい判断だった。


 承太郎はしのぶを見ようともしない。その目はあくまで窓の外に向けられている。
 車中に静寂が舞い戻る。それきり、話しは終わる。と、思われた。
 少なくとも承太郎はそう思っていたのだが、しのぶは違ったらしい。
 彼女は逆に息巻いてまくし立てた。

「でも、判断が間違っている可能性もあるじゃないッ!
 よくわからないけど、人によって『未来』から来た人、『過去』から来た人、それぞれ違うんでしょ!?
 誤解して間違いを犯してしまう人もいるかもしれないわ。
 こんな状況だし、誰かを守るために闘おうとしている人、目的があって悪人と協力している人もいるかもしれないじゃない。
 アナスイさんが嘘をついている可能性や誤解している可能性だってゼロじゃないわ。
 その状況でプッチという人の仲間に出会ったら、そしてその人が悪人ではなさそうだったら、空条さんは」
 
「すでに、話してあるはずだ。
 俺は、俺の判断により危険人物を排除すると。
 あなたはそれを承知でついてくるといった。
 俺にあなたを守る義務はない。俺の判断基準について、あなたを納得させる必要もない」

 しのぶの早口を遮り、単純な説明を繰り返すように承太郎がいう。
 声をあらげるわけでもなく、ただ、淡々と、ゆっくりと。
 ぐっと言葉につまり、息だけは荒くしのぶが顔を歪める。
 でも、でも、と子供のように話の糸口を探す。

598 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 13:59:28 ID:690LzY0s

「でも……、わたし、ひどい母親でした」

 話の飛躍に承太郎は閉口する。
 なぜ感情を優先して、非論理的な話し方をしたがるのだろう。彼女もそうだった。
 過去を思い出し、承太郎の目がかすかに遠くなった。
 そんな彼の様子などおかまいなしにしのぶは話し続ける。

「早人のこと、むかしは全然かわいいと思いませんでした。
 生まれたころはかわいいと思ったこともあったけど、自己主張するようになってからは手に負えなくて。
 あの子がなにを考えてるかわからなくて、不気味に思ってました。自分の、子供なのに。
 あの人に対してもそう、回りがかっこいいっていうから、優越感からつきあって、そのまま結婚して……
 あの人はなにもいわなかった。それすら不満に思ってました。
 なんて『つまらない』男なんだろう、って」

 『つまらない』といったとき、しのぶははっきりと嫌悪の表情を浮かべていた。

「あの人がいなくなって、生活していけなくなって、わたしと早人は以前に住んでいたのよりずっとぼろいアパートに越しました。
 せまいアパートで、二人で暮らすようになって、わたし……、
 ようやく、……あの人の真面目さがわたしたちへの愛情だったことに、気づいたんです。
 給料が安くても、夕飯が用意されてなくても文句も言わず、あの人はわたしと早人のために毎日働いていた。

「でも、ふとしたときに、急にムカムカした気持ちが湧き上がってくることがあって、
 隣の部屋から、薄い壁を通して、幸せそうな声が聞こえてくるとき、
 どこからか、わいた虫をゴミ箱に捨てるとき、
 くだらないことで早人と言い争ったとき……、すごく辛くなって、
 何故もっと早く気づかせてくれなかったの、直接いってくれたなら、いい返してくれたならよかったのに、
 こうなる前に、なにかが変わっていたのかもしれないのに、
 ……って、そう何度も何度も、いなくなったあの人をなじっているんです」

「おっしゃりたいことがわかりかねます。
 いま、そのことを話す必要性についても」

 話の着地点がまったく見えて来ませんが。
 と、承太郎が口を挟んだ。慇懃でいて、ひどく無礼な口調で。
 彼は神父でもなければ、カウンセラーでもない。
 無駄な話に付き合って精神を消耗させる義理はないのだ。
 しのぶはいくらか傷ついた表情をしたが、

「わたしは、ひどい母親でした」

 しっかりと承太郎の瞳を見据え、もう一度繰り返した。

「でも、いまは、息子を、早人を愛しています。あの人のことも。
 わたしは十一年間気づかなかった。それでも、わたしは、自分がむかしとは変わったはずだと、信じます。
 『人』の本性は変わらないと、空条さんは考えますか?」

 頬を紅潮させ、ひどく焦っているようにも見えたが、彼女はそれきり喋らなかった。
 承太郎を射るように見つめる。承太郎は、やはりしのぶを見ようとはしなかった。
 彼にしては長いこと黙り込んでいたが、やがて、口火を切る。
 その声色には、あからさまな侮蔑の念がこめられていた。

「川尻さん、あなたは……、
 さきほどのスティーリー・ダンも、そして吉良吉影も、プッチとかいう野郎も、更正の可能性があるといいたいのか……?
 排水溝のネズミにも劣るゲス野郎にも反省の機会を与えれば、生まれ変わる可能性があり、それを見極めろというのか?
 この、殺し合いの場で。肉親を亡くしてなお、その必要があると、そういいたいのかッ!?」

 しのぶは、これほど多弁になった承太郎を見たことがなかった。
 承太郎はそのまましのぶの返答も待たず、言い募る。

「俺はいい父親とはいえなかった。あなたと同じだ。
 娘の行事に顔を出したことは一度もない。
 あいつが望むように、なにかしてやれたことはなにもない。
 いつも、怨みがましい目であいつは俺を見ていた」

 承太郎の双眸がしのぶに向けられる。暗緑色の瞳は激しい感情を映し燃えていた。

「俺は娘を愛している。心の底から『愛していた』。
 だが、人は……、人の本性は変わらない。
 俺はいい父親にはなれなかった。今までも、これからもだ」


――その機会は、永遠に失われてしまったのだから。


「どんな方便をいったところで変わらない。
 あなたは……、あなたが思いこんでいるようには変わっていない。
 おそらく、あの『吉良吉影』を想っていた頃と、少しも……」

 承太郎が視線を逸らす。彼の声は次第に小さくなっていった。

「人道を説くのはあなたの勝手だ。
 だが、あなた自身は…………」


(自分の、本当の気持ちに、向き合えるのか?)

599 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:00:26 ID:690LzY0s


 最後は言葉になっていなかった。
 車中の熱気が急速に去っていく。
 承太郎は少しばつが悪そうに窓の外を眺めていた。
 しのぶは深くうなだれている。細いあごの先から、水滴がパタリと落ちた。
 それきり、なんの物音もしない。

 車はいつの間にか止まっていたらしい。
 承太郎が車を降り、ドアを閉めた。足早に去っていく。振り返りもせず、ただまっすぐに。
 すぐに足音も聞こえなくなった。晴天の下、のんびりとした空気の中にしのぶはただひとり残される。


 こんなことを話そうと思っていたのではない。
 と、しのぶは自分の無力さに打ちひしがれる。

 頭の中には、論理的な話の道筋ができていたはずだった。それなのに。
 話し始めるとつい感情に流され、けんか腰になってしまっていた。
 承太郎を糾弾したかったわけではない。
 まして『吉良吉影をかばおう』としていたわけではなかった。

 たしかに、あまりに一方的な惨殺劇は、ショックだった。
 『見張られている』という緊張感、銃を持ち出されたときの恐怖、転がってきた生首の衝撃。
 大の大人の首が、あんなにも一瞬で、簡単に……。

 衝撃から遅れてやってきたのは哀れみだった。
 川尻しのぶはスティーリー・ダンを知らない。
 もしかしたら、彼は殺人者でありながら、家庭では優しい人間だったのかもしれない。そう考えてしまう。
 身内に優しい犯罪者など、客観的に見ればそれこそ処断されるべき人間だとは思う。
 それでも、胴体と切り離された頭のヴィジョンは、哀れみを誘わずにはいられなかった。

 そして『吉良吉影』への未練がまったくない、といえば嘘になる。
 夫が初めて自分で夕食を作ったあの日――あの瞬間から、夢見がちな少女のようなドキドキした日々を過ごした。
 その淡い感触は、罪悪感を伴って、いまもまだこの胸の内にある。
 死んだはずの吉良吉影が存在している。
 その人は連続殺人鬼だというけれど、もしかしたら、自分をかばってくれたときの彼が『本当』の彼で、心根は優しい人間なのかもしれない。
 どうかしてると思いながら、それを期待している自分も認めざるを得なかった。
 自分が夫や息子への愛情を得ることができたのは、逆説的には吉良吉影のおかげという事実を、正当化したいのかもしれない。
 吉良吉影が、本質的には真っ当な人間であったから、彼との一時的な生活が、自分を変えた、と。そう、自分を納得させたいだけなのかもしれない。

 それを承太郎に指摘されたため、しのぶは言い返せなかった。
 夫を亡くし、息子を亡くし、それでも『危険人物』の排除を止めて欲しいなんて、虫のいい願いだ。
 しかも最愛の娘と母親を亡くした人に対していったのだ。
 けれど、吉良吉影との再会を、承太郎に甘えて、彼の温情にすがって行おうなどと、しのぶも考えてはいない。

 しのぶは、ただ、承太郎を止めたかったのだ。
 承太郎が『殺人者』になったときから感じるしのぶ自身の苦しみを、彼女は承太郎がひた隠す内心そのものだと感じていた。
 感じてはいたけれど、うまく言い表せない。
 言い出したとたんになにか別のものに変わってしまう。

 無差別に人を殺すのは悪人で、悪人を懲らしめる必要な人が必要というのは理解できる。
 罰されるべき人間、罰されるべき罪は存在する。

(でも、どこまでが許される罪で、どこからが罰される罪なの?
 その判断を一人の人間に負わせてしまっていいの?
 あんなに……、優しい人なのに)

 人を殺したあとの承太郎の瞳を、しのぶはもう見たくなかった。
 あの目を見ているとつらく、悲しい気持ちになる。

(でも、どうすれば……?)

 アナスイ青年は力で承太郎を止めようとして、返り討ちにあった。
 純粋な力で、承太郎にかなう人間なんているのだろうか。

(わたしの、本当の気持ち……)

 額に手をあてて考える。
 息子の顔が、夫の顔が、まだ見ぬ吉良吉影のぼんやりとした輪郭が、そして空条承太郎の寂しげな横顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えた。

600 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:00:42 ID:690LzY0s


 うめきながら顔をあげる。
 少し落ち着いたためか、周囲を見渡す余裕ができていた。
 車外を見れば見慣れた景観、杜王町のぶどうが丘高等学校がすぐ目の前にあった。

「あっ……」

 しのぶがなにかに気づき、声をあげる。
 その視線の先にあるのは高等学校のグラウンドだった。
 不自然に土が盛り上がり、よくみればすぐ脇に大きな穴があいている。
 人を埋めようとして穴を掘れば、あれくらいの土が積み上がるだろうか。

(空条さんは、あれを調べるために出て行った……?)

 ついに愛想を尽かされたわけではないらしい。
 いくらか希望を取り戻し、しのぶも車を降りた。
 足元に、小さなシミのようなものがあるのに気づき、目をこらす。
 血痕だった。よく見れば点々と標のように残されている。
 不安な気持ちを抱えたまま、小走りに人けのないグラウンドを横切った。

「……なにも、いないわ」

 おそるおそる穴を覗き込み、しのぶは少し安堵した。
 土塊の横の大きな穴の底には乾燥して白くなった地肌がのぞいている。
 正直、無残な死体が転がっていることを覚悟していた。
 自分の墓を掘らせて殺す。そんな、どこかで聞いた拷問方法を、置かれた状況から連想してしまっていた。

(なら、空条さんは、どこへ……?)

 そう考えたとき、ふと程近い茂みの向こう側が気になった。
 白い塊がちらちらと見え隠れしているように思える。
 胸が早鐘のように打ち鳴らされる。
 見ない方がいい。と頭の中から警告がグワングワンと響いていたが、足は自然とそちらへ向かう。

 白く、厚い布地になにかがくるまれている。
 ミイラのようなそれは、ところどころが点々と赤黒い。

 布の隙間に手を伸ばす。
 厚い布地からあらわれた、それは――――


 血で固まった逆立てた銀髪。
 威圧的にせりでた額。
 眼帯によって隠された、顔の右半分を十字によぎる古傷。

 すでに絶命した白人男性の顔……。


「うぅ……」

 白い布の塊から目を背け、後ずさる。
 吐き気をこらえるのでやっとだった。

 川尻しのぶに知る由はないが、それは承太郎の旧友J・P・ポルナレフの死体だった。
 アヴドゥルは親友を埋葬しようとして思い止め、ビーティーと手を組んだ際にポルナレフを置き去った。
 埋めてしまうのがしのびなかったため、彼らは死体を茂みへと隠していったのだ。
 アヴドゥルが背負って歩くには文字通りただの『荷物』であると、当然の判断だった。
 親友を置いて去るのにはあまりに簡素、手を抜いた後始末に見えないこともなかったが、
 手を組んだばかりのビーティーを私事に長時間付き合わせるわけにはいかないという、アヴドゥルの苦渋の判断がそこには垣間見られた。

 が、しのぶにそれを知るすべはない。
 そこにあるのは、頭を割られて絶命したと見られる男の死体。
 なぜ穴を掘っておきながら埋葬されずに置き去られていたのか。埋葬をしようとした人間と殺害した人間は異なるのか。
 結論を出すことも不可能だった。

 おそらく承太郎も同じような思考をたどったのだろう。
 近くに犯人の痕跡があるかもしれない。
 そう考え、見渡してみれば、校舎の一階に窓ガラスが割れている箇所がある。
 承太郎はそこに向かったに違いない。

(もし、この人を殺した人と、空条さんが出会ったら……?)

 胸がざわりとする。いてもたってもいられず、しのぶは走り出した。



   *   *   *



 割れた窓ガラス。熱でひしゃげた金枠。無数の弾痕。
 プラスチックの焦げた匂い。腐臭。かすかに混じる、血の匂い。

 ぶどうが丘高等学校の校舎の中を空条承太郎は歩いていた。

601 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:00:56 ID:690LzY0s

(火事、か……?)

 それにしては燃え方が局所的で、爆発物にしては床面の破壊が少ない。と、承太郎は思った。
 金属が溶けるほどの高熱が発されたはずなのに、火は自然に消えている。
 燃えカスが少ない点も不自然だった。一瞬の発火と同時の鎮火。化学的な現象とは思えない。
 というより、実のところひとりの知り合いの『能力』を承太郎は思い出していた。
 情に厚く、生真面目な男の『炎を操る能力』を。

 1年B組の教室に入ったとき、腐臭がひどくなった。
 原因はじっくりと探すまでもなくすぐに判明する。
 人間のような四肢を持ってはいるが、とても人間とは思えない形相をした化け物が教室の中央で絶命していた。
 ところどころが炭化し、凄絶さに色を添えている。
 承太郎はあくまで無表情に、焼死体とその周囲を検分した。
 死体はすでに冷たくなっている。数時間前に絶命したと思われた。
 死体の周囲には机とイスが放射状になぎ倒されている。
 どうやら化け物は隣の1年C組の教室を突き抜け、ここまで吹き飛ばされてきたらしい。
 穴の向こうにいっそう煤だらけの机やイスが散乱しているのが見えた。

 C組もB組と変わらない、いや、それ以上の腐臭と血の臭いが充満していた。
 死体はどこにもなかったが、ここで殺し合いが行われたとはっきり理解できるほどの血が床に広がっている。
 学校にはあつらえ向きのサッカーボールが、赤く血に染まっている様がある種不釣り合いだった。
 そして床の上には、ドロドロに溶けたおぞましい『なにか』がある。
 『星の白金』を呼び出しドロドロの『なにか』を解剖してみる。
 臓物をこねくり回して焼き上げたような異様な物体は動かない。
 それが生物だったとしたら、すでに絶命しているようだった。

 これ以上この教室を調べてもなにも利はあるまい、そう判断した、そのときだった。
 ずずっ、と引きずるような足音が廊下の方から聞こえてきたのは。

(化け物の仲間か?)

 学校を根城にし、迷い込んだ人間を惨殺する化け物を思い描いてみる。
 ポルナレフを斬殺したのは彼らだろうか。
 戦闘の予感を感じながら、あくまで冷静に、承太郎は教室を後にする。

 廊下に出てみれば、50メートルほど向こうにひょろりと長身の男の姿があった。
 男の足取りは重い。脚を引きずるように全身を上下させている。
 怪我をしているのか右腕を無気力にぶらぶらとゆらし、左腕で空気を『掻く』ようにしてこちらへ歩いて来る。

 二人の間が10メートルほどの距離になったとき、男は足を止めた。
 顔をあげ、話しだそうとして、むせ、ベッと口中のものを吐き出す。
 黒ずんだ床の上に、真っ赤な鮮血が散った。

「……エシディシという男を知らないか。
 民族衣装の様な恰好をして、がっちりとした体つきの2メートル近い大男だ。
 鼻にピアスを、両耳に大きなイヤリングをしていて、頭にはターバンの様なものも巻いていた」

 今にも倒れてしまいそうな、か細い声で男は語る。
 ぜいぜいと喉がなり、何度もつばを飲み込んでいた。

「放送を聞かなかったのか?
 エシディシという男は名前を読み上げられた。
 『すでに死んでいる』」

 承太郎のにべもない返答に、リンゴォの灰白色の瞳が暗く沈みこむ。
 モゴモゴとなにか、聞き取れないことを自嘲気味に呟いて、ふたたび彼は歩き出した。
 承太郎は微動だにしない。が、彼はリンゴォを見送らなかった。

「人を殺しそうな目をして、人探し、か。
 死んだはずの男になんの用だ?」
「………………」

 リンゴォは答えない。そのまま通り過ぎようとする。
 彼の腰に差したナイフが承太郎の目を引いた。
 どこかで見たことがある小振りのナイフは、血曇りで汚れている。

「そのナイフ……、野ウサギでも捌いたのか?
 ここで、なにをしていた」

 ゆきかけていたリンゴォが、歩みを止める。
 上体だけをひねった姿勢で彼は承太郎を見つめた。
 その血走った瞳が映すは、純然たる『憎悪』の感情。

「貴様には関係のないことだ、『対応者』」
「ほ……う……」



   *   *   *

602 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:01:31 ID:690LzY0s



「はぁ……はぁ……」

 まともな運動をしなくなって何年経っただろう。
 少し走っただけで息があがってしまう。
 心だけが急く状況で、高等学校のグラウンドは、川尻しのぶにとってやたら広く感じられた。

 空条承太郎は優しい。
 彼はもう迷わない。
 いまの彼は、きっとすべての危険人物を排除してしまう。
 時間軸の違いから生じる無知、誤解から殺人を犯してしまう人、『彼自身』が救いたいと願う人も、許したいと思った人も、
 『危険人物だから』
 その判断さえあれば彼は殺してしまうだろう。

 でも、そうやってすべての危険人物を排除したとき。
 あなたのそばには誰が残っているの?
 最後に滅ぼすのは、もっとも許せない、ほかならぬ自分自身じゃないの?


「空条さん……ッ!」


 しのぶが空条承太郎の後ろ姿を見つけたとき、すべては『終わった』あとだった。
 彼の足下には壮年男性が横たわっており、その胸には、承太郎が所持していなかったナイフが突き刺さっている。

 男が承太郎に襲いかかろうとしたのか、あるいは会話から承太郎が危険人物と判断したのかは、もうわからない。
 男のこけた頬には血の気がなく、地面に流れ出た血液はすでに手遅れだということを暗示していた。

 承太郎はしのぶを見留め、少しだけ意外そうな顔をする。

「どうして、どうして……ッ!!」

 しのぶが、わっ、と泣き出し、くずおれる。
 承太郎はなにも語らない。しのぶに対してなにかを説明する義務はもう微塵も感じていないようだった。
 しのぶを横目にリンゴォの荷物を探り始める。
 その手が一枚の折りたたまれた紙を見つけたとき、ふと、止まった。
 それに気づいたしのぶが、泣きながらも不思議そうな表情を浮かべる。
 いまや見慣れた『支給品』が出てくる紙を、なぜ承太郎は注視するのだろう。

 緊張した様子で承太郎が紙を開く。
 現れたのは、奇妙な形をしたロケットペンダントだった。
 虫のようにも見えるそのフォルム。
 チェーンもついていないそれを『ロケットだ』としのぶが判別できたのは、承太郎がそれを開いてみせたからだ。

 中を確認し息を呑む。

「…………ッ!!」

 安堵でもない。驚きでもない。
 哀しみに似た感情が、承太郎の顔面を、さっ、とかけめぐった。
 彼の無骨な手の中でロケットがパキリと小さな音をたてる。

 彼が泣いているのかと、しのぶは思った。
 それほどまでに沈痛な表情で、長いこと、承太郎は双眸を閉じていた。
 だらりと下げた手の隙間から、いびつな形になってしまったロケットが転がり落ちる。

 彼がふたたび目を開いたとき、承太郎の顔面には、もういつもの鉄面皮が戻っていた。
 承太郎が立ち上がる。校舎の出口へと向かう足取りに迷いはない。

603 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:03:27 ID:690LzY0s

 追いかけようと、立ち上がりかけたしのぶの目の隅で、ロケットがチカリと光った。
 承太郎が捨てていったなんの役に立つかもわからないロケットを、迷いつつ、しのぶは手に取った。
 急いで走り出し、承太郎の横に並ぶ。


(わたし、あなたを止めてみせる……ッ)


 挑むように睨み付ける。
 承太郎はその視線を受け流すように、ただ前を向いていた。



   *   *   *



「フ……フフ……、これが……果てか…………」

 その胸に短刀が突き立てられたとき、リンゴォ・ロードアゲインは笑っていた。
 時を巻き戻す能力を所持した彼は、止まった時の中でも、そこで起きていることをすべて認識していた。

 承太郎が不快感をあらわに睨みつける。
 見知らぬ、死にかけの男が止まった時を認識できたことが意外で、気に入らなかった。
 スティーリー・ダンが浮かべた驚愕の表情とは違う。
 死を理解して、なお、男は嘲るように笑う。

「フフ……ハ、ハハハハハ…………」

 時が動き出し、リンゴォの長身が崩れ落ちる。
 名は、と問いかけた承太郎を無視し、彼は笑い続けていた。
 全身をひきつらせ、血を吐きながら、地面をのたうつように、笑う。
 実際には痙攣がそうさせていたのだが、すべてが承太郎には不快だった。


 呪詛のようなその声が。宙をさまようその視線が。


 アナスイの彷徨が。


 ポルナレフの死に顔が。


 しのぶの熱情的な双眸が。



 結果的に彼女を連れまわしていることに意味などない。意味などないのだ。



 川尻しのぶの手の内では、いびつになったロケットの奥で、一組の男女が、穏やかな表情を浮かべている。





【リンゴォ・ロードアゲイン 死亡】
【残り 56人】

604 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:11:32 ID:690LzY0s
すみません。あと状態表だけなのですがNGワードにひっかかって投下できません。
少々お待ちください

605 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:20:50 ID:690LzY0s



【C-7 ぶどうが丘高校 / 1日目 昼】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:???
[装備]:煙草、ライター、家/出少女のジャックナイフ、ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
[道具]:基本支給品、上院議員の車、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3、ランダム支給品4〜8(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵+ドルチ/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.始末すべき者を探す。
2.ポルナレフの死の間際に、アヴドゥルがいた?

【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中) すっぴん
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
1.どうにかして承太郎を止める。
2.吉良吉影にも会ってみたい。

【備考】
承太郎はポルナレフの死体を発見し、ぶどうが丘高等学校の一階部分を探索しました。
リンゴォが所持していた道具の内、折れていない3本を承太郎が回収し、折れている2本は基本支給品とともに放置しました。
リンゴォが装備していたナイフはリンゴォの死体の胸部に突き刺さっています。
リンゴォのランダム支給品の残り一つが【承太郎が徐倫におくったロケット】でした。
しのぶはロケットの中身をまだ見ていません。


【承太郎が徐倫におくったロケット@6部】
徐倫の危機に承太郎がおくったロケット。
矢の欠片は入っていなかった。
潜水艇の探知機能に反応するかは不明。

606 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/28(火) 14:22:26 ID:690LzY0s
以上で仮投下完了です。
本投下までにタイトルは考えておきます。
ポルナレフの死体について、特に補足がなかったので本文のような描写をしました。
他に問題点、わかりづらい点、誤字脱字等ございましたら指摘をお願いします。

NGワードは「家/出」でした。そういえば、そうだった……。

607名無しさんは砕けない:2013/05/28(火) 14:29:35 ID:zxHEpCfI
仮投下乙です!
悲痛だ…このコンビすごく悲痛だよ…
車の中の会話から始まってポルナルフの死体発見してからのとどめにリンゴォの死に際とか承太郎が2ndとは別ベクトルでかわいそうなことに
しのぶさんには頑張って欲しいけど放送も近いしどうなることやら
指摘点は特になかったように思います

608 ◆4eLeLFC2bQ:2013/05/30(木) 12:54:13 ID:qoQhMLFA
問題なさそうなので本投下します

609相性 その1 ◆yxYaCUyrzc:2013/06/26(水) 21:12:57 ID:rtDD.6qI
あーれ、……どこやったっけ。確かこの前ここ置いといたんだけど……。
――まいったな、出てこない。ちょっと放置しておくとすぐどっか行っちゃうんだよな。

いいやもう、とにかく進めよう。
アレがあると説明が楽ってだけでどうしても必要ってもんじゃないし。


さて今回は、まあ俺には到底理解できない二人だ。
登場人物はカンノーロ・ムーロロに蓮見琢磨。
彼らの情報把握能力は本当憧れるっていうかむしろ要らないっていうか。

どこから話すかな。
――ん?ムーロロサイドからの、ジョセフ見送ってから?
はいはい。じゃあそこから行くか。


「監視は続ける。が、優先度はひとつ繰り下がるな――」
って呟いたと思ったら舌打ちして溜め息。そこからはまた黙りっぱなし。
だってそうだろ、独り言なんていうのはホラ、本来必要のないものだし、それを言うってことは自分に言い聞かせる、あるいは脳内にいる何者かに対し語りかけるってことだ。
だからえー、要するに疲れてる証拠だと。ムーロロはそんな自分を戒めたか、疲労してる自分に気付いて呆れたか。
……?そういうなよ、確かに俺ぁ独り言多いけどさ。続き話すの止めちまうよ?――あーごめん冗談だって。

兎にも角にもジョセフのその後も、康一と由花子のその後もひと通り見た。
その話題に関する優先度を繰り下げよう、ってことだな。
あ、だけど後者、康一たちの戦闘は途中で監視を放棄。

理由は相手の一人にカーズがいたこと。

「あの『警告』を聞かせておいてまだ『私に付きまとう』のか、虫よ」
なんて言われちゃあかなわない。いくら別の人間を追跡してた結果に偶然出会ったんだとしても多分ヤバい。ゆえにそこはカードを避難させたわけだ。
もう一つ俺の考えを付け加えさせてもらうなら、カーズが相当移動してるんだから今見逃しても近いうちにまた遭遇するだろう、とムーロロも考えたと思うよ。

610相性 その2 ◆yxYaCUyrzc:2013/06/26(水) 21:15:38 ID:rtDD.6qI
で、そこからはまた広く浅くの監視だ。
今までチェックしてた連中の情報を更新。

えーと、ビーティーの名推理とタンカを天井裏から聞いてたり。
あー、ナランチャ経由で玉美とかも知ったね……え、フーゴ?そりゃあアイツが戦闘の意志を口にした瞬間にサッとジョナサンのデイパックあたりに避難したんじゃない?

で、玉美の名前が出たからこっちもか。いうならば新規の関係。
例えば、リンゴォ追っかけてったら別方向で追ってた承太郎としのぶを発見して、リンゴォはそこで脱落。
仗助たちを経由してエルメェスと、シーラE。なんでここにパッショーネの奴が?なんて思ったかもね。

それから――


「交渉……それから、調和か。
 52、いや53分の2か、それは良い扱いだと解釈していいのか?
 お前たちに言っているんだ。クラブの7にスペードの2」

ハッとする。まさか自分たちの存在に気付く奴がいたとは!と驚いた。一気に集中をそっちに回す。独り言は言わないけども。
しかし、カーズは――二度目の遭遇のとき、康一由花子対J・ガイル戦をチラっと見ただけでも“タダモンじゃあない”のがわかった。
でもこっちのガキはなんだ。パッと見は路上のベンチで読書する学生にしか見えないのに『こっちの絵柄まで当ててきた』、少なくとも『虫』よりはハッキリと自分を認識してる。

「反応に困ってるようだから解説してやろうか。逃げずに聞いてくれるならな。
 俺を、というより俺たちを追跡し始めたのは少なくとも五時間四十七分前から。
 カフェから出て行った鳩でも見てそこに人がいるんだと推測したか?
 そこに『何枚』来たかまでは把握できなかったが、そこを俺が女とともに離れるときにはお前ら2枚が追跡してきた。
 だが流石に何時間も2枚の、じゃあないな。53枚ものカードを操り続けるのは疲労したんだろう。せっかく消してた気配がポロポロ出てきているぞ」

ムーロロは聞くしかない。今背を向けたらその場でカードを切られるかもしれない。あ、カードを切られるって後に“カッコ物理”ってつけておいてね。
でも、軍隊型のスタンドのうち何体かが攻撃されたところでさほど問題はない。真に問題なのは、こちらの逃走を逆に尾行される可能性だ。
こんなバケモノじみた記憶力の奴が自分を見逃すとは思えないから。

とか考えている内も相手の、そう蓮見琢馬の解説が続く。明らかに目線もカードに向いている。まだ琢馬の位置から直接は見えてはないけど。

「そして先に言ったのは小アルカナにおけるカードの暗示。
 1998年、民明書房刊『孫子とタロットで学ぶ現代ビジネス指南書』、話のタネに読んでおいたのがこんなところで役に立つとは。
 さて、そこまでの暗示を込めて俺を追ったのか?お前は」


……あ!あったあった。机の下に放っておいたのが今更出てきたよ。これこれ。えーと、

――“第二章一節、組と兵力から見えるもの”
――『孫子曰く、大規模の戦争においては兵士たちを五十六の精鋭部隊に分けることが良とす』とあります。
――五十六という数字は、詳しく見ると、それぞれ杖・剣・聖杯・通貨を象る四つの『枢闘(スート)』、さらに枢闘の中で役割や行動を十四に分けられたことからきています。
――この部隊の総称を、勝利、つまり金星を存在させるものという意味を込め『在金(アルカナ)』と呼び、のちに西洋に伝わったこの兵法にさらに武装を足し七十八としたものを『大在金(おおアルカナ)』と呼びました。
――古来は在金の各部隊を、それぞれを模した紙に書き起こし、それを卓上で移動させて戦術を決め、あるいはランダムに捲るなどして戦場の運気として用いていました。
――これらを現代人向けに簡略化・アレンジしたものがトランプ占い、同様に大在金がタロット占い、ということは読者の皆様ならピンと来たのではないでしょうか。
――さて、この章では、現代ビジネスという巨大な戦争に勝利できるよう、まずは枢闘を理解し、社員達を分類するところから学びましょう。
――……

だって。琢馬はこのトランプ占いの事を言ったんだろうね。
因みに別冊付録には『剣の2』は『均衡・調和』、『杖の7』は『ディスカッション・勇気・交渉』とある。

え?続き?ああごめんよ。

611相性 その3 ◆yxYaCUyrzc:2013/06/26(水) 21:18:02 ID:rtDD.6qI
ぶっちゃけた話、ムーロロはそこまで意識してカードを散らしていたわけじゃあない。
エースだとかジョーカーだとかは見てくれにインパクトがあるから別だけど。というか占いなんて知らないし信じるガラじゃあない。

「……」

そりゃあ返事のしようがない。こっちから情報を渡すわけにはいかない。
とは言え向こうもすぐにどうこうしようって訳でもなさそうだ、ということは推測できる。
となれば待機。向こうの意志を聞いてから対処するのがベネ。
向こうが解説を終えてドヤ顔で立ち去ればそれはそれでよし。何か言ってきても不利ならシカトしてれば良いし、有利なら……まあ聞いてやろうか、という意味だ。

「――さて、俺の考えを話そう。そうしなければここで硬直しているだけだろうからな。
 まず、得意げに引用してやったが、俺はお前が“そういう意味”を込めて俺を追跡したとは思っていない」

琢馬が立ち上がって一歩二歩踏み出した。でもウォッチタワーは、ムーロロは動かない。
結果論だけど、ある種の確信があったんだろう。すぐには殺されないという確信が。

「……かつて俺はお前のような『小さいやつら』を街中で見かけたことがある。自販機やゴミ箱の下から小銭を拾って出てきたところをな。
 今にして思えばなるほど、そういうのもスタンドの一つの性質なんだな。だが――そういう『連中』を従えるのは大変なんじゃあないか?たったの一人で。
 そういう『スタンド使い』とは、俺が思うに“よっぽどすぐれた司令官”なのか、“多数を放し飼いにして放っておくような屑”なのか。そのどちらかだと思う。
 前者はともかく、後者だとしたらお笑いだ。自分の心を自分で放っておくだなんてな」

これにはさすがのムーロロもカチンときた。
彼も後にボス・ジョルノに似たようなことを言われ、あるいはスピードワゴン財団の担当から『軍隊型スタンド使いの精神テンション』を聞かされ理解するだろう。
けど『今、ここで』それをただの学生風情に説かれるほど俺は落ちちゃあいない!とね。
とは言ってもその一言でブチ切れ、キタナイ言葉で怒鳴り散らすようなマンモーニな真似はしない。流石ギャングだ。沈黙を貫く。


「ん、怒ったか?まあ落ち着いて聞いてくれ。
 俺は何も『お前は屑野郎だ』とは言っていない。むしろその逆だと思っている。
 そこで俺はあんたを利用することにした」


この一言で状況がグンと進んだ。
琢馬は相手が口を挟む隙を作らずに続ける。

「ハッキリ言おう。俺は人探しをしている。
 そこであんたにそれを手伝ってもらいたい。

 一方で俺があんたに提供するのは、俺の記憶力だ。先の引用や、あんたの追跡時間。聞いていたろう?自信はある。

 流石に何時間も寝ずに情報を処理するのは疲れるだろう。放送を過ぎて色々な場所で色々な状況の変化も起こるだろう。
 それの把握と整理整頓を俺が担ってやろう、と。そういう意味だ」

フムフム、ナルホド。確かに『本』の能力があればそりゃあ記憶も把握も、あるいは過去にさかのぼっての整理も楽ちんだ。
『情報収集と記憶!この世にこれほど相性のいいものがあるだろうかッ!?』
『たとえるならヒロシとキーボーのデュエット!オオタケに対するミムラ!夢枕獏の原作に対する板垣恵介の「餓狼伝」!』
……って感じだろうね。え、わかりにくい?そうかなぁ……

612相性 その4 ◆yxYaCUyrzc:2013/06/26(水) 21:19:22 ID:rtDD.6qI
まぁとにかく、そんな相性の良さゆえにムーロロは考える。今までもリスクは何度も何度も天秤にかけてきた。
しかし今度はその天秤の片側に“自分”が乗っかる訳だ。
この天秤は容易に傾かない。

傾かない。が……

「オイオイ、あんなこと言っちゃってるゼ?どうすんのさ?」
口を開いたのはクラブの7だ。すっかり琢馬の前に姿を現している。だけども目線は琢馬には向いていない。
「どうすんのって俺に聞くのかよ?エェ?コーショーの7さんよ?」
相手はスペードの2だ。
琢馬はそれを黙って見ている。

「ウッセ!テメェなんか2のくせに威張ってんじゃあネーヨ!」
「んだテメェ!喧嘩売ってんじゃねえぞ!」
「オイ今ドツキやがったな!やってやろうじゃあねぇか!」
「望むところだ!泣くまで殴るの止めてヤラネーからなッ!」
ついにドツキ合いを始めちゃったカード2枚。
流石の琢馬もちょっと引いた。でも喧嘩は止まらない。

そんなやり取りが30秒?1分?続いたあたりでついに決着。
最後はお互いがお互いの顔殴って――そうそうクロスカウンターみたいに。
で、二人が同時に、
「C−4……川沿い……亀……」
と言ってバタリ。

ムーロロの天秤がリスクよりもリターンを重く見てついに傾いた!

カードのやり取りから、どうやらそこに行けば?って意味のようだと解釈して琢馬は歩き出す。
数秒遅れて倒れた2枚のカードもひょこっと起き上って追いかける。拍手がないことにちょっと不機嫌そうにしながら。


これが琢馬とムーロロのファースト・コンタクトってところかな。
どうだろう、まだもうちょっと話すかい?


――いや、やめておくならそれでいいよ。じゃあまた別の話を持ってくるとしようか。

613相性 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2013/06/26(水) 21:20:58 ID:rtDD.6qI
【C-3 南部/ 1日目 昼】
【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。千帆に会って、『決着』をつける。
0.双葉千帆を探す。
1.『カードの能力』を利用するために指示のあったC−4の亀とやらを探す。
2.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。
[参考]
※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
※また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
※また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
※蓮見琢馬の支給品は スピードワゴンの杖@二部 だけでした。
※琢馬の後を『ウォッチタワーのクラブ7とスペード2』が追いかけています。


【C-4 川沿い『亀』の中 /1日目 昼】

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、『ジョースター家とそのルーツ』、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5〜15)
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.情報収集を続ける。
1.このガキ(琢馬)の記憶力を利用する?とりあえず自分のところに誘導させる。
2.『ジョースター家の血統』、『イレギュラー』、『DIOという男』、『波紋戦士』、『柱の男』、『パッショーネ』……。さて、どう、『利用する』べきか……?
[備考]
※〈オール・アロング・ウォッチタワー〉の情報収集続行中。
※現在は特に琢馬を監視している『クラブ7とスペード2』に注意を払っているようですが、もちろんその他の参加者の動向もチェック中です。
 今回、少なくとも新しく『マリオ・ズッケェロ、空条承太郎、川尻しのぶ、小林玉美、トリッシュ・ウナ、エルメェス・コステロ、シーラE』を発見しました。
※回収した不明支給品は、
 A-2 ジュゼッペ・マッジーニ通りの遊歩道から、アンジェリカ・アッタナシオ(1〜2)、マーチン(1〜2)、大女ローパー(1〜2)
 C-3 サンタンジェロ橋の近くから、ペット・ショップ(1〜2)
 E-7 杜王町住宅街北西部、コンテナ付近から、エシディシ、ペッシ、ホルマジオ(3〜6)
 F-2 エンヤ・ガイル(1〜2)
 F-5 南東部路上、サンタナ(1〜2)、ドゥービー(1〜2)
 の、合計、10〜20。
 そのうち5つは既に開封しており、『川尻家のコーヒーメーカーセット』、『地下地図』、『図画工作セット』、『サンジェルマンのサンドイッチ』、『かじりかけではない鎌倉カスター』が入っていました。
 その中のサンドイッチと鎌倉カスターは消費したようです。

614相性  ◆yxYaCUyrzc:2013/06/26(水) 21:22:32 ID:rtDD.6qI
以上で投下終了です。
民明書房の引用ってやってみたかったんですよね。ちょっと原作?とは違うような文体になってしまいましたが。
カードの役割はウィキペディアさんに書いてありました。興味のある方は是非。

問題点?としてあげられることが2点ほど。
・琢馬が『ハーヴェスト』を見たという記憶があったこと(当時はスタンドというものを知らなかった)
・ムーロロが直接の面識はないとはいえ『ジョルノ』と呼ばれた人物を放っておいて琢馬を追ってきた
後者はまぁ、あと何枚かがカフェにいたとでも言えばどうにでもなるんですが、特に前者は意見を仰いでおきたいと思います。

その他も何か問題点、あるいは誤字脱字等ございましたらご指摘ください。それではまた。

615名無しさんは砕けない:2013/06/26(水) 22:59:58 ID:1kdYDQJo
狩投下乙です
The Bookは把握が曖昧なのではっきりとしたことは言えないですが、杜王町民だった以上琢馬がハーヴェストを目撃していてもおかしくはないかと
ジョルノの方は他にも何枚かいたでどうとでもなるかと思います
重点的に割いていたと考えてもおかしくないですし
感想は本投下のときにするとしまして誤字の指摘ですが、『軍隊』ではなく『群体』ではないでしょうか?

616名無しさんは砕けない:2013/06/27(木) 18:37:35 ID:37CXR1kA
仮投下乙です
情報量ばかりが増えていく二人をこうして描けるだけで尊敬します・・・
挙げられている問題点も◆yxYaCUyrzc氏の解釈で問題ないと思います

誤字指摘で最初の琢馬だけ「蓮見琢磨」になっています

617記憶 その1 ◆yxYaCUyrzc:2013/08/30(金) 08:23:55 ID:LUzVSOEk
さて、たまには率直に本題に入ろうか。

今回は『記憶』に関する話だ。まあさっき話したのもある意味では記憶の話だったけど。
もう少し具体的にいうと、次に話すのは“忘れる”ということについて。

この“忘れる”って、何が厄介だっていうと、まあ皆もわかると思うけど、
『自分が何を忘れたかがわからない』ということだな。

あ、いやアレよ。1・2の……ポカン!で技忘れるとかそういうのはナシでね。
今回すぐに俺が本題入ろうって言ったのも、まあこの出来事もいずれ忘れちゃうかなと心配したもんでね、ハハハ。

で、先も言ったように、自分が何を覚えてて何を忘れたかを知らないという事は、そりゃあ相手だって『この人はどこからどこまでを忘れてしまったんだ』と推測することだってできない。
ゆえにこう聞くしかないわけだ。

「どちらさん?ってミスタさん、私ですよ、ミキタカです」
とね。でも忘れた当人からしたらそのセリフが既に意味不明。

「イヤイヤ、それが誰だよ。つーかココどこだよ?俺ぁジョルノと一緒にサンタ・ルチア駅に――」

「?……もしかして、ミスタさんアナタやっぱり記憶が」
「ハァ!?何ナメたこと言ってんだ!さっきは平気だと思ったがテメーやっぱ敵だなッ!」
「え、私はただアナタのことを――ゲブッ」

ここで問答無用でケリ入れたとは言っても、流石にミスタを責めることはできないだろうね。
というかこれはミキタカも甘かった。ミスタって男はたとえ同僚にもヤバけりゃ問答無用で皿を投げつけるような奴だってのを彼は身をもって体験済みだったんだから。

「おら!テメェなんか知ってんだな?2秒だけ待ってやるからチャッチャとしゃべりな、知ってること全部なッ」
襟首をひねりあげられたミキタカは必死に頭を巡らせる。

とは言ってもたかだか二秒。今君らに『とはいっても』と言ったのが実際の二秒くらいだ。
こんなんで何をどう説得しろというのだ?砲弾が自分たちのもとに届くまでに巨人になった友人が敵でないことを証明するよりも不可能だろうな。
だから必死にこれだけを叫んだ。

「私はホントーにあなたの敵ではありません!グイード・ミスタさん!」

618記憶 その2 ◆yxYaCUyrzc:2013/08/30(金) 08:25:17 ID:LUzVSOEk
本人から聞いていない本名を叫ぶ。が、沈黙……やっちまったか?ミキタカの顔にブアッと脂汗が浮かんだ。
一分とも十分とも受け取れるほどに長い数秒が過ぎた、なんて表現はきっと本人にしか感じられない苦痛だろうね。少なくとも今の俺にはわからん。
と、そんなことを言ってるうちにミスタが反応した。

「俺の名を迷いなく言うか……ケッ、聞いてやろうじゃねぇか。だが少しでも嘘言ってみな、目ん玉の間にもう一つ穴を開けてやるからよ」

そう言ってミスタがゆっくりと手を放す。
だが!ここで!あろうことか!ミキタカは!

「――私の名前はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。ですが私が話すのはあなたが今までどこで何をしていたかを聞いてからです」

逆に思いっきり問い返した!
その理由は!
「……は」
「ハッキリ言いましょう。ワタシはあなたが“『何者かに記憶を奪われてしまった』と疑っています”。
 その疑いが本当か、あるいはワタシの思い違いか。それをハッキリさせたいのです。
 だから聞きます。あなたはついさっきまで、何してました?」

中々に機転の利いたセリフだと思ったね俺は。
記憶を失った人に『アナタ記憶がないんですよ』と言っても普通は混乱するだけだ。
だったらそれを本人自身に『ああ今俺は記憶喪失なのか』と自覚させる方向に持って行ったと。
電波な頭だが決して中身は悪くないと評価できる一瞬だ。

となったら逆に混乱するのはミスタ。
「え……いや俺はジョルノと一緒に――まあ、ドライブか。ドライブしてヴェネツィアに」
「するとジョルノさんの事はご存じで?」

「ンだおまえジョルノのことまで知ってんのか」
「ええ、ワタシはジョルノさんにお会いして、あなたの名前、そして、ブチャラティさん、アバッキオさん、ナランチャさん、トリッシュさんという方々のお名前をうかがいました」
「じゃ……じゃあてめぇ、ミキタカゾ?っつったな?なんだジョルノの知り合いか何かか」
「――まあそんなところですかね。証拠を見せましょうか。ジョルノさんの外見ですよ。
 私は人の顔真似はできませんが……」

「……ブッ」
「どうです?ジョルノさんによく似てるでしょう?私は彼のことを知ってるんですよ」
「文明の利器ってスゲ――――!!!ぎゃーはっはっはっ」

なるほどなるほど。これはいい証明だ、と俺も吹いた。
ミキタカは自分の能力で――まあいきなり目の前でやると驚かれるからデイパックに手を突っ込み――手の一部をチョココロネみっつに変えて、それを頭の上に乗っけたんだ。
ミスタ、爆笑。ミキタカ、したり顔。

619記憶 その3 ◆yxYaCUyrzc:2013/08/30(金) 08:26:36 ID:LUzVSOEk
しかし、ひとしきり笑った後。
いよいよジョルノとミキタカに明確な関係があったと証明された。そうなってくるとミスタの頭はパンクしそうになる。
お世辞にも良いとは言えない頭なのは彼自身良く知っているんだから。
「や、ウンわかったんだが、いやちょっと待ってくれ……頭ん中整理するからよ……」
そういって顎に手を当て考え込む。そんなミスタの決断をミキタカは待った。かつて仗助が自分のことを理解してくれたように。時間さえかければ理解してもらえるだろう。

――と。

「――ああ。とにかく俺は、ミキタカゾ曰く『どうやら記憶障害にあったらしい』という状況は理解した。
 認めたくはねーけどな。だったらまだミキタカゾとジョルノがただ俺の知らない友人だっていう方が信じられるぜ」
「ええ――そうおっしゃる気持ちはよくわかります。そして話してくれてありがとうございます。
 そうしたら私からの提案ですが。ともあれどこかにいるジョルノさんと合流するのが第一の目的だと思います。いかがでしょうか」

いよいよ提案。これも無意識かどうか知らないがなかなか良い。
何がって、『今はある男の主催で殺し合いをしてるんですよ僕ら』なんて言ってみろ?
そこでまた一悶着二悶着あるだろう。だからそこはスルーしたわけだ。
『とりあえず共通の友人に会う』という目的があれば今のところは大丈夫だ。
もちろんこれも不安定なロープの上を歩くに等しい行為だ。

「うーん。そうだな。本当に俺が記憶喪失なのかどうかもジョルノに会って聞いてみればいいか。
 ところで、ここはどこだ?確かにヴェネツィアじゃあねーようだけど……」

そう。記憶云々は置いといたとしても、現状を問われた時だ。
しかしここでもなかなかミキタカは冷静だった。

「そうですね、実をいうと私もさっきまで少しパニック状態でして。ここがいったいどこなんだか……
 とにかく、それも踏まえて少し移動しましょうか。さっきみたいに靴になります?」

……訂正。冷静じゃなかったからこそ正直に答えられたんだな。運がいいんだか頭が良いんだか、あるいはその逆か――

「それがオマエのスタンド能力か――でもとりあえずいいだろ。二人で並んで歩こうぜ」

とにかく、そんな綱渡りを二人は歩き出す。
彼らは無事にジョルノに、あるいはブチャラティチームのような信用できる人間に会うことが出来るのだろうか?
そしてミスタの記憶は?その現在の持ち主との遭遇は?

期待する気持ちはわかるが、まあこの辺でやめておこうか。こうご期待、ってね。

620記憶 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2013/08/30(金) 08:27:47 ID:LUzVSOEk
【C-2 南東 / 1日目 午前】

【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:記憶喪失
[装備]:閃光弾×2
[道具]:拡声器
[思考・状況]
基本的思考:なし(現状が全くわからない)
1.とりあえず移動。ジョルノ他俺を(俺の現状を)知ってる人に会いたい
2.どうも俺は記憶喪失になっているらしい。でもあまり信じたくない
3.おいミキタカゾ、そのモノマネは反則だってwww

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※記憶DISCを抜かれたことによりゲーム開始後の記憶が全て失われています。
※ミスタの記憶はJC55巻ラストからの『ヴェネツィア上陸作戦、ギアッチョ戦の直前』で止まっているようです。

【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:チョココロネ×3
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.とりあえずミスタの説得に成功して安心。しかし現状はわからぬまま。やや不安
2.ミスタと共通の知り合いであるジョルノと合流したい。まずは移動
3.知り合いがいるならそちらとも合流したい
4.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?
5.顔真似はできないけどこういう方法もあるんだぜ(ドヤ

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※ジョルノとミスタからブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、トリッシュの名前と容姿を聞きました(スタンド能力は教えられていません)。
※第四部の登場人物について名前やスタンド能力をどの程度知っているかは不明です(ただし原作で直接見聞きした仗助、億泰、玉美については両方知っています)。

[備考]
ミスタとミキタカは自分たちの現在位置がわかっていません。また地図も持っていません。
地図もコンパスもない以上は道沿いに歩くようですが、詳しい方向や目的地は決まっておりません(決められません)以降の書き手さんに一任します。

621記憶  ◆yxYaCUyrzc:2013/08/30(金) 08:28:47 ID:LUzVSOEk
以上で投下終了です。
ミスタはともかくミキタカも放送の詳細や現在位置を知らない以上は移動させないと何も始まりませんので説得と行動方針の決定のみに終始しました。
とはいえ彼らの時間が朝で止まっていた上に会話と目的の決定だけだと話が(時間の進行度が)進まず申し訳ないorz
ミキタカのコロネ頭ネタはなんだかふと天から降りてきましたwでもイメージの原点はスマイルプリキュアを見てた(キャラの容姿を説明する際にコロネを、というシーンがあった)んですw

誤字脱字やその他矛盾がありましたらご一報ください。

622名無しさんは砕けない:2013/08/30(金) 10:30:11 ID:Su5HCIAw
仮投下乙です!
ミキタカにしてはグレートな対応(失礼)
ミスタも暴れたらどうしようとか思ってたけどそういうこともなくて(ちょっと危なかったけど)一安心
あとコロネネタはミスタじゃなくても笑いますw
だけどそうかこの人たち支給品ほとんどなくしてるのか…
問題点はなかったように思います

623乖離 その1 ◆yxYaCUyrzc:2013/11/20(水) 01:22:33 ID:W02UrU.U
……さっきから、君ら何やってんの?

え?
『ガキでも知ってるぜ?特に今年に新作が発売予定のゲームやったことがあるガキならよォ!!
 ……“水”に“電気”は、“効果はバツグン”なんだぜぇぇぇぇ!!』??
――ふ、ふーん。なんかよくわかんないけど、まあ対戦ゲームなのね。ずいぶんハイテンションだね?目が進化するの?ふーん。

……じゃあさ、あっちは?格闘ゲームの方。あれでしょ、来訪者もダウンロードできるように……

え?
『連射コントローラーとキーコンフィグで先輩がイージービートしてメダル稼いでくれる』??
――ふ、ふーん。じゃあなんだ、直接やってないの?ずいぶん寂しいね?
え、何?期待を裏切られた?悪い意味で?課金の団子?
ま……まあ詳しい話は聞かないでおこうかな。やる気そいでも仕方ないからね。

でもなんだな、今言った『裏切られた』ってのはさ、しっかり『期待』するから生じる結果でさ。
単純に目的や想像、考え方と結果が違ったと思えばそんなヒドい表現しなくても済むんじゃあないかな?


それに『想像と違う』と言えばさ……


***

624乖離 その2 ◆yxYaCUyrzc:2013/11/20(水) 01:23:01 ID:W02UrU.U
結論から言えば、俺は地下に潜った。
理由は単純。人目につかないこと、そして恐竜の戦闘に適しているということだ。
例えば路地裏でルーシーを拷問でもしてみろ、目撃でもされたらそいつが何をしでかすかわかったもんじゃあない。
そして、狭い地下では戦闘は不利かと問われればむしろ逆。壁や天井を利用した三次元的な超スピードによる攻撃が出来る。逃す手はない。

カチリと歯を鳴らした合図で恐竜どもの足を止めた。このあたりで十分だろう。
意図を察知したのか、それとも生意気に逃げようとでもしたのか、ルーシーが言われるでもなく恐竜から降り、地に足をついた。

「……ほほう?なかなか強気なことじゃあないか、ミセス・スティール?
 気位の高い女性が嫁だと、あの旦那も鼻が高いんじゃあないか?なァ?」
「からかわないで。あなたみたいな人に何がわかるっていうのよ」
「おお、これはこれは」

言いながらカツカツと歩み寄り、ルーシーの顎に手を添え、クイと持ち上げる。
屈辱やら羞恥やら、あるいは決意やら怒りやら、そんなモノに満ちた何とも言えぬ表情がほんの数センチ先にあった。
これが傍から見たら、それか安っぽい映画のワンシーンだったら、俺は年端もいかない女に無理やりキスを迫る悪漢なんだろうが、実際はそんな生っちょろいモノでないことはお互いわかっているだろう。

顎に添えた手をルーシーの身体から話すことなくツツ、と滑らせる。立てた親指の爪を、ホット・パンツと比べるとかなり控えめな胸元でピタリと止めた。

俺がその指を軽く皮膚に押し込もうとするのと、ルーシーが口を開いたのと、乗ってきた恐竜たちがうなり声を上げたのは殆ど同時だった。

「Di――」
「ディオ、様……?」


***

625乖離 その3 ◆yxYaCUyrzc:2013/11/20(水) 01:23:27 ID:W02UrU.U
ブラフォードが二人と遭遇できたのは偶然という意外に説明がつかない。
彼自身は先に受けた波紋の痛みに耐え、しかしその場で悶絶するような無様な真似をすることなく地下を彷徨い続けていただけなのだから。
怒りと苦痛に顔をしかめながら耳にしたのは『主』の声。
耳をすませ、目を凝らし、遠くに見えたその姿は見間違うことなどできなかった。自分に新たな生を、現世への恨みを晴らす機会を与えてくれた『ディオ様』の姿だった。

思わず早足になる。駆けだしていたかもしれない。主のもとには2頭の怪物と一人の女。
ディオ様は今にもその女の血を吸い取ろうとしていたところであった。邪魔をするわけではないが、口を開かずにはいられなかった。

「ディオ、様……?」

ハッとしてこちらを振り向く女とは対称的に、控える怪物を手で制止しつつゆったりとした動作でこちらを向いた顔は初めて出会った時のような邪悪な笑みを浮かべていた。
「ほう……貴様は」
「黒騎士ブラフォード、無様にもジョナサン・ジョースターの波紋を受け、撤退してまいりましたことをお許しいただきたい」

一方のディオ様、もといDio、いや、ディエゴは余裕の笑みを浮かべつつ頭をフルに回転させていた。
なるほどなるほど。どうもこいつは『ディオ』という自分に似た存在と俺の事を勘違いしているらしい。
このDioを人違いとはずいぶんと生意気ではあるが、どうやらその『ディオ様』とやらに陶酔しているようだ。
ならば利用しない手はなかった。せっかくだからそのディオ様とやらであるフリをして『期待』させてやろう。

「なに、ブラフォード。いいじゃあないか。今お前はこうして俺のもとに戻ってきたんだ。
 失敗と言えば聞こえは悪いが、無謀に突っ込んで死ななかっただけマシだと考えろ。今回は不問にしておいてやる」
「ハ――ハッ、ありがとうございます。
 して、その女は……」

「ン、まあ、『生贄』と言ったところだ」
ルーシーに口は挟ませない。突き立てた親指に力を込める。
しかし生贄とは我ながらなかなか良い表現じゃあないか。そうディオは内心でほくそ笑んだ。
拷問して情報を得て――そうしたら、そうだな。もっとも屈辱なのはなんだ?……俺の子でも産ませるか。
『ディオの息子』それはきっと、とんでもない悪意の塊になるだろうだろうからな。
そんな事を考えると自然と口角が上がる。
それはルーシーの目にどう映っただろうか、などとくだらないことまではDioは考えなかった。

一方のブラフォードも生贄という表現に何の疑問も持たない。
ディオ様は波紋症の回復のために、生命に満ちた若い女の血を好んでいたということは良く知っていたからである。

「さて――ブラフォード」
「ハッ」
「お前は今後どうしたい?今までは俺の指示通りに動いていただけだが、この半日、お前はどこで何をし、誰と戦い、何を得、何を失った?
 少しこのDioに話してみろ」
ここでもDioは冴えた。例の『ディオ』を『様』呼ばわりしているのだ。明らかに服従の関係だろう。
となればそのディオ様とやらがこのブラフォードをどう利用していたかもおおよそ想像がついた。
指示通り、なんてのは一種カマをかけたようなものだったが、目の前の黒騎士はそれを疑いもしなかった。
「ハ、ハイ、実は――」


***

626乖離 その4 ◆yxYaCUyrzc:2013/11/20(水) 01:24:02 ID:W02UrU.U
さて、“想像と違う”話だったがいかがだっただろう。
ディエゴから見て、突然の乱入者は、自分が選んだ地下という場所では完全に『想定外』だったし、
ルーシーから見ればまさかのDioの味方が登場ッ!?って状態。せっかくの決意も幸先が悪くなりそうだ。
ブラフォードなんかは完全に『人違い』だしね。まあまだ想像と“違う”に至ってないのが救いだろうけど、ばれたらどうなることやら。

まあ何が言いたかったかって、さっきも言ったけど、こういう状況から『裏切り』は生まれるんだ。
最初から『味方を装って近づき、最後に裏切って寝首をかく』なんてのは俺に言わせれば“計画”であって裏切りではない。

期待や不安といった精神状態が誤解を生み、裏切りを生み、逆に信頼を築くこともある。

――なんて、カッコつけて言ってみたりして。

で、あのさちょっと聞きたいんだけど、この『時止め返しの隠しコマンド』ってさ……

627乖離 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2013/11/20(水) 01:24:36 ID:W02UrU.U
【D-5 南西・地下(空条邸地下付近)/1日目 昼】

【ブラフォード】
[能力]:屍生人(ゾンビ)
[時間軸]:ジョナサンとの戦闘中、青緑波紋疾走を喰らう直前
[状態]:腹部に貫通痕(痛みなし)、身体中傷だらけ(やや回復)、波紋ダメージ(小〜中)
[装備]:大型スレッジ・ハンマー
[道具]:地図、名簿
[思考・状況]
基本行動方針:失われた女王(メアリー)を取り戻す
1:『ディオ様』に状況の報告、今後の指示を仰ぐ
2:強者との戦いを楽しむ
3:次こそは『ジョナサン・ジョースター』と決着を着ける
4:女子供といえど願いの為には殺す
[備考]
『ディエゴ・ブランドー』を『ディオ・ブランドー』と勘違いしています。


【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×4(一食消費)地下地図、鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球、ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2
    ランダム支給品2〜5(ディエゴ:0〜1/確認済み、ンドゥ―ル:1〜2、サンドマンが持ってたミラション:1、ウェカピポ:0〜1)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰る
1.ブラフォードから情報を得る。あわよくば『ディオ』に関する知識も得たいし、手駒として利用もしたい
2.思考1が終わった後、改めてルーシーから情報を聞き出す。たとえ拷問してでも
3.別の世界の「DIO(ディオ)」に興味
[備考]
ギアッチョから『暗殺チーム』、『ブチャラティチーム』、『ボス』、『組織』について情報を得ました。
ディエゴの付近には、ディエゴとルーシーが移動に使用した恐竜が2体(内1体は元ドノヴァン、もう1体は元が不明、後の書き手さんにお任せします)がいます。

【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:健康、緊張(中)、恐怖(小)、覚悟(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド
[思考・状況]
基本行動方針:スティーブンに会う、会いたい
0.現状の把握と打破、一体どうするのが最善なのか!?
1.ディエゴを出し抜く

628乖離 ◆yxYaCUyrzc:2013/11/20(水) 01:25:27 ID:W02UrU.U
以上で投下終了です。私自身としては初の?ゲリラ投下です。
タイトルの「乖離」は考え方のずれだとかなんとかいう意味だそうです。
なんかもう少しディエゴとルーシーの絡みをエロく書いてみたかったんですがこれ以上は私のスキルでは無理orz
時間を一気に昼まで進めていますが、まだ午前で止めておくべきだったでしょうかね?話の時間経過としては無理に昼にすることもないんですが……
その他気になる点などありましたらご意見ください。本投下は……スケジュールや他の予約次第ですが、3〜5日後をめどに行う予定です。それでは。

629名無しさんは砕けない:2013/11/20(水) 09:02:25 ID:mL7ThLBM
仮投下乙です
また発生した勘違いだけど今回はDioにとっていい方向に転がりそう
時系列については…どちらでもいいのではないですかね?
他に気になった点はなかったです
本投下お待ちしてます

630 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/09(木) 23:58:37 ID:hyuSKPJE
花京院典明、ラバーソール
仮投下致します。

631嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:01:21 ID:oxKmqVjk


「なあオイ、花京院さんよぉ、もうちっと黙ってないでなんか喋ったらどうだよ?」
「………………」

D-7北東の路上。
花京院典明は『人捜し』のため周囲を調べつつ、ただひたすらに北上を続けていた。

「ヒヒヒ、ひょっとしてどうせ歩くなら野郎二人よりも女と一緒の方が―――とか考えてるってか? なんならおれが叶えてやろうか」
「………なんのためにわたしがきさまと並んで歩いているのだと思っている」
「冗談だっての―――しっかしマジな話、ホントにこっち来てよかったのかねえ?」
「わたしは西から来たが奴はいなかった………きさまが隠れていた南東の方に来ていないのならば、北―――すなわちこちらの可能性が一番高い。
 手がかりはこれきりだが、きさまにも他に当てなどないのだろう」
「っていわれてもねぇ〜〜〜、わかんなかったら人に聞く………ってのはどうだ? 近くに誰かしらいねーのか?」
「先程の二人の他には接触できそうな距離に参加者は見当たらない………きさまがその騒がしい口を閉じていてくれるならば、あるいは見つかるかもしれんがな」

(何処にいる………空条承太郎………)

スタンドも駆使して周囲を探るが、目当ての人物―――空条承太郎の姿は何処にも確認できない。
せめてどこかに手がかりぐらいは残っていないかと考えるが、痕跡は何一つ見つからなかった―――そもそも承太郎は大規模な戦闘などに巻き込まれたりしていないのだから当然だが。
そして、歩き続ける花京院のすぐ近くで彼にひたすら話しかけているのは当の捜し人、空条承太郎―――無論本物ではなく、その正体はスタンドで『変装』している彼の同行者である。

ラバーソール―――本名かどうかはわからないがそう名乗った男は、同行者としては先程まで一緒にいた山岸由花子に勝るとも劣らない存在だった―――悪い意味で。
DIOに金で雇われているというこの男は欲望をそのまま形にしたような存在であり、彼の下品な口調は信用できそうな要素など欠片も見られないうえにいちいちこちらを苛立たせる。
さらにいえば彼はDIOに忠誠を誓っているわけではないため、今でさえいつ襲い掛かってきてもおかしくない人物であった。
それでも我慢して同行させているのは、彼のスタンド『黄の節制』の存在、これに利用価値を見出したからだ。
承太郎に変装した彼と並んで歩いていれば彼らの知り合い―――DIOの敵が間違いなく接触を試みてくるだろうから、そこで不意をつくのもたやすい。

さらにもうひとつ、聞き出した『黄の節制』の防御能力がいざ承太郎と戦う局面において役に立つと考えていたからである。
―――忌々しいことだが未来において自分が敗れた可能性が高い以上、一人で挑むということはすなわち敗北を意味すると言っても過言ではない。
となれば承太郎と戦う前に戦力のひとつでも確保しておく必要がある………すぐに承太郎本人を追う以上、この時点で花京院の頭からラバーソールと別行動して効率的に敵を始末していく選択肢は自然と消滅し、彼との同行を選んだのだ。
だが花京院にとって、それらの利点と現在感じている不快感がつりあうかどうかはまた別の問題であった。

632嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:03:28 ID:t38YF2vo

―――そもそも何故彼らが承太郎ひとりに集中してその足取りを追っているのかというと、話は彼らが出会って情報交換を終えたころまで遡る。
ラバーソールとの情報交換………というよりお互いの一方的な話だったが、相手の話の中には有益な情報があった。

―――すなわち、彼が空条承太郎と遭遇していたということ。

承太郎一人を始末したところでジョースター一族が根絶やしになるわけではない。
だが、少なくとも彼が死ねば子孫を残すことも、DIOと戦うことすらも無くなるため、何らかの形で未来の『運命』は変わると信じていた。
すぐにラバーソールの記憶を頼りに承太郎と遭遇したという場所を訪れてみたのだが………

「………………いないな」
「ったりめーだろが。会ったっつってもまだ夜も明けてねーころだ、とっくにどっか行っちまったに決まってんだろーがよ、このタコッ!」

やはりとでもいうべきか、到着したときには時既に遅く目的の相手は同行者の言う通り、どこか遠くへ去ってしまった後のようであった。
花京院はどうにか承太郎の足取りをつかむべく、ひとまずスタンドで近くの参加者を捜索する。

「………やや東に星の模様の服の男、その少し南に原住民風の男………か」
「………ん? オイ、もうちょっと詳しく教えやがれ」

小さく呟いただけだったがラバーソールが耳聡く聞きつけ、何か思い当たることがありそうな顔で聞いてきた。
花京院が相手の容姿を告げると、頬を掻きつつ微妙そうな顔で言う。

「あー、あのガキにサンドマンのヤローか………そいつらは放っとこうぜ。さっき承太郎のフリしてダマしてやったからな………
 あいつら恐ろしくせっかちな上に人の話ぜんぜん聞かねーから、むしろ本物の承太郎と会ったら問答無用で殺そうとするんじゃないかねえ、ヒヒヒ」

結局彼らはその二人との接触を避け、交換した情報のみから推測して北を目指すことを決め、歩き出した。
そして話は冒頭へと戻るのだが―――



「………なあオイ花京院さんよぉ、アンタ実際あの得体の知れない承太郎に勝てるのか? ンン〜?」
「策はある」

現在の花京院はこの選択は失敗だったか、と思い始めていた。
ここまで承太郎の手がかりは全く得られていないどころか、油断も隙もない同行者が襲い掛かってくるのを警戒して自身のスタンドを近くに待機させているため広範囲の索敵も行えずにいた。
それに加えて、誰とも遭遇できずにラバーソールの好き勝手な無駄口や意味のない行動を一人で相手し続けることにもなり、次第にストレスもたまってくる。
いっそのこと襲い掛かってきてくれたほうが楽かもしれない………顔には出さずともそう思いつつ、花京院はひたすら歩を進めていった。

―――その後も移動中の彼らが他の参加者と遭遇することが無かったのは単に巡り合わせが悪かったからか、はたまた誰かにとっての幸運、あるいは不幸だったのか。
ともあれ、そんな彼らにようやく変化が訪れたのはじきにC-8が禁止エリアになろうかという時刻のことであった。

633嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:08:32 ID:t38YF2vo

#


「コイツどっかで見たことあるんだよな………確かDIO………様の部下の………なんて奴だったかな」
「………………」

C-7の路上に差し掛かったとき彼らの目に飛び込んできたのは首無しの死体―――いや、首はすぐそばに転がっていたため正確には『無い』わけではなかったが、ともかくそういう死体。
これまでスタンドによる索敵で死体を見かけたことはあったのだが、知った顔でない上に持ち物が奪い去られていることから無視してきた。
だがこの死体はデイパックを所持したままであるということ、そして進路上にありわざわざ避ける必要はないという二点の理由から、彼らはこの死体のある道へと足を踏み入れたのだった。
そこでラバーソールが首をひねりつつ生首のほうを見て「見覚えがある」と言い出して足を止め………しばらくして彼はどうにか記憶の中の回答に辿りつく。

「あーそうそうダンだな、スティーリー・ダンって奴だ。能力はしらねーが」
「………DIO様の部下」

それを聞いた花京院は死体を検分し始める。
―――周りには争いの跡は全く無い………死体と血痕が無ければここで何かが起こったとは思えないほどだ。
―――ダンのデイパックの中には、ほとんど………というよりひとり分にしては多すぎるほどの支給品が残っている―――基本支給品を除けば、使い道のなさそうな物ばかりだが。
―――首と胴体はさほど離れていないところにあるにもかかわらず、彼の首輪はどこにも見あたらない。
―――そして、首の切断面………『切断された』というよりは『ちぎりとられた』という表現のほうが適切といえそうな痕跡。

そこまで調べて胴体に軽く触れたところで花京院はある事実に気付き眉をひそめ………ラバーソールもそれを見て訝しむ。

「なんかあったか?」
「………まだ微かに温かい」
「………へぇ」

ふざけた言動が多いとはいえラバーソールも裏に生きる人間である。
その言葉の意味―――すなわち、犯人はまだ近くにいるかもしれないということを瞬時に理解し気を引き締める。
だが、花京院の様子から即座に襲撃を受ける様子はなさそうだと判断するとすぐにその表情は元に戻り………彼の注意は別のものへと移っていく。
その間、花京院は『犯人』について考えていた。

(不必要そうな道具は放置、その一方首輪は持っていったということは主催者に反抗する意思あり、さらに首の切断面からするとおそらく刃物は用いていない………
 そして、この辺りにいた参加者でDIO様の部下を殺害しそうな人間を考えると最も有力なのは――――――やはり空条承太郎か)

実際のところ花京院の推測は的中だったのだが、彼本人はあくまで自身の持つ情報のみから導き出したものという認識のため確信までは持っていなかった。
ひとまずラバーソールの意見も聞いてみるかと顔を上げたところで、彼はダンの胴体に黄色いスライムが纏わりついている、という異様な光景を目にする。
当然、誰の仕業かは一目瞭然だったので花京院はスライムの主に向かって問いかけ、相手もそれに答えた。

634嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:10:55 ID:oxKmqVjk

「何をしている」
「見て理解しやがれってんだこの田ゴ作が、死体なんてもう用はねーだろ? おれがいただいて養分にしちまうんだよ、ドゥーユゥーアンダスタンドゥ?」
「………構わんが急げ、犯人を追う」

空条承太郎を相手どる以上、多少信用できないとはいえ戦力は多いに越したことはない。
となればラバーソールのこの行動は結果的にプラスへとつながるかもしれない………そう考えると花京院は捕食を許可し、無表情のまま再び歩き出そうとする。
一方、そんな彼の考えを欠片も理解していないラバーソールはどこまでも自分の意思で突っかかっていった。

「あん? てめーイカレてんのか? こんな奴の仇討ちなんてする必要ねーだろ」
「きさまの話が真実ならば、こいつを殺した奴はすなわち、DIO様の敵に位置するということだ」
「………ヒヒヒ、ご熱心なことで………まるで恋する少女みたいでッ!!?」

その言い回しが気に入らず―――『恋する少女』という部分で山岸由花子を思い出したからなのだが―――途端に不機嫌になった花京院はギロリと相手を睨みつける。
ラバーソールは一瞬たじろいだものの、それ以上の追求は無かったため言葉を続けた。

「ヒ、ヒヒヒ………で、花京院さんよぉ。その敵とやらを追うにはどっち行きゃあイイのかわかってんのかねぇ?」

ラバーソールからすれば何の気なしに出てきた軽口であったが、受けた花京院はその問題に改めて腕を組み考える。

(………そうだ、誰が犯人だとしても『どちらに向かった』のか………それがわからないことには―――)
「北か?西か? まさかそろそろ禁止エリアになる東に突っ込むなんてマヌケなことはしねーよなぁ?」

未だ話し続ける同行者から視線をはずすと花京院は地図を取り出し、しばらく眺めつつ考えを巡らす。
そんな彼の横でラバーソールは死体を食うことに夢中………というわけではなく、花京院をちらちらと横目で見ていた。
正直彼からすれば、まだ対策らしい対策も思いついていないのにあの得体の知れない承太郎と遭遇しかねない行動は避けたかったのだが………

(油断してる………わきゃねーよな。クソッ、『こいつ』さえ無けりゃ………)

ダンの死体をスタンドで捕食する間、ラバーソールは先程花京院と出会って彼の話を聞いた直後のことを思い出していた………

635嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:13:08 ID:oxKmqVjk

#


「―――以上だ、きさまに心当たりのある人物はいるか?」
「いねぇーな………しっかしアンタ、マジでDIOに忠誠誓ってんのかよ? 人の心変わりってな恐ろしいねェ、ヒヒヒ」
「………………」
「まあ、その肉の芽がモノホンかどうかはしらねーが、おれとやる気ならとっくにやってる以上嘘じゃなさそーだな………で、結局アンタ何がしてーんだよ」
「無論、ジョースター達を始末する………特に重要なのは空条承太郎だ。やつだけは、一刻も早く始末しなければならない………きさまにも手伝ってもらうぞ」

―――ラバーソールと花京院が遭遇した場所からさほど離れていない民家。
花京院は自身の目的と今まで遭遇してきた参加者の情報を話し終えたところでラバーソールに聞くが、相手の反応はちゃんと答えているのかどうかすら怪しい曖昧なもの。
もっとも、花京院のほうも今対峙している相手がアレッシーの言っていた『自分に変装したスタンド使い』だとして、そういう男の情報に過大な期待など元からしていない。
………ただ彼が知る未来において、どうも自分がDIOの敵になったというのは事実らしく、それ自体に利用価値は見出しつつも内心複雑な思いを抱いていた。
ひとまず自分がDIOの味方だということだけ再確認させると、ラバーソールに協力するよう視線を向ける。
だが………

「………ん? 手伝えって? おれが、てめーをか? ヒヒヒ………ゴメンだね! おれはおれの好きにやりてーからな」
「………………」
「そもそも、おれへの態度がなっちゃいねぇんじゃねえのか? 協力しろってんならそれなりの誠意ってもんをみせてもらわねーとなぁ?」

ニヤニヤ笑いながらラバーソールは拒否する。
彼の立場からすれば目の前の花京院もジョースター一行であることに変わりはない。
DIOの支配下にあるとはいえ、自分の知る限りそこから逃れて敵に回った相手に協力する、しかも先程本能で危険と判断した承太郎を追うなどまっぴら御免であった。
またお互いに相手への信頼など持ちあわせていないため、自然と彼らの会話は平行線をたどる。

「誠意………? ふん、うぬぼれるな。わたしが誠意を見せる相手はただひとり、DIO様だけだ」
「ヒヒヒ………んじゃあこの話はなしだな。おれは勝手にやらせてもらうぜ」
「それもできない相談だな」
「あん?」

ラバーソールはしばし言葉の意味を考え………次の瞬間には相手がやる気になったのかと思い下品な笑みを浮かべつつ、構える。
しかし………

「へえ〜? んじゃあ今この場でおれに食われる準備ができましたってか? うれしいね「その通りだ」………あん?」

636嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:14:51 ID:oxKmqVjk

相手が割り込ませた言葉に耳を疑う。
今、目の前の男はなんと言ったのか?
目を白黒させるラバーソールに対し花京院は静かに続ける。


                  「その通りだ、わたしを食いたいのなら………食わせてやる」


次の瞬間ラバーソールは仰天した……
ふつう相手に捕食されそうになったら食われまいとする!
DIOへの忠誠心があるならなおさら食われるわけにはいかない!!
その脅しで有利に交渉をしかけるはずだった!
しかし! 花京院は…逆におもいっきり食われようとしたッ!

(ヒ、ヒ、ヒッヒヒヒ………こいつ、スタンドも―――)
「きさまはおそらくこう考えているだろう………こいつ、スタンドも出さずに何を考えているのか、と」
(………………)
「スタンドは『すでに出している』………………食いたければ勝手に食えばいい」

それを聞いたラバーソールは視線を動かして辺りを見回すが………『法皇の緑』の姿はどこにもない。
そうこうしているうちに花京院が再び口を開いた。

「ただし――――――きさまが食った後はわたしの好きにさせてもらうがな」
「………………ゲッ!!?」

言い終わると同時にラバーソールの両手が「勝手に」動き、自らの首を絞めはじめる。
その様子はまさに数時間前の光景の焼き直し………ただ異なるのは、犠牲者が山岸由花子ではなくラバーソールという点。

「確かに『きさまのスタンド』にわたしでは勝てんかもしれん………だが『きさま自身』はどうかな?」
「グ………ガガ………ッ」

自分の意思ではもがくことすらできず、スタンドは―――出せたとしても、自らの呼吸が止まる前に相手を捕食することは出来そうもない。
苦しみながらもラバーソールは舌打ちしつつ後悔していた。

(クソッ!もう気付きやがるとは………だから『こいつとだけは』戦いたくなかったんだ!!)

打撃も斬撃も、熱や冷気さえも無効化する自身のスタンド『黄の節制』。
そんな彼がジョースター一行の中で唯一警戒しなければならないと考えていたのが目の前の男―――花京院の『法皇の緑』である。
油断した拍子に自分の体内に侵入され、操られてしまえばいかにスタンドが無敵とてどうしようもない。
すなわち、ジョースター達と戦う際に彼だけは万が一にも近くにいてもらっては困る―――シンガポールでも花京院本人を遠ざけておき、その隙に彼に化けて承太郎を始末して残りは他の追っ手にまかせるつもりだったのだ。

現在のように相手がひとりだけ、しかも味方の立場ならばどうにでもできるという期待があったのだが、その考えは大甘だった―――いまさらながらにラバーソールは理解した。
脅しは十分と判断した花京院が一旦手を自由にすると、ラバーソールは途端に卑屈になって喋りだす。

637嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:16:33 ID:oxKmqVjk

「じ………冗談だ、冗談! まさかおれと仲間われしようっていうんじゃあないよな!? DIOの部下同士、仲良くやろうぜ? おい!」
「………わたしは寛大だ。きさまの態度も、下品極まりない言動にも目をつぶろう………だが、これだけは言っておく」

命が惜しい相手は口先だけでも反抗の意思はないことを示してくる―――これまた似たような展開。
ワンパターン………そう表現することも出来るが、『定石』だけでねじ伏せられる相手にわざわざ『奇策』は必要ないのだ。
先程はこの時点で妥協した花京院だったが今度は下手に出ず、相手を睨みつけたまま大仰なポーズを取ると厳かに言った。

「DIO『様』だ………部下というなら、あの方には敬意を払え」
「わわ、わかってるって、おれにとってもDIO………様は大事な雇い主様だからな、な!」
「………………」

その言葉を受けてようやくラバーソールの全身は自由を取り戻す。
だがスタンドが出て行った様子は無く、彼の態度は低いままであった。
そして機嫌をとろうとでもしたのだろう、口を滑らせて今後の行動を決定付ける情報を漏らしてしまう。

「そ、そうだ! あんたにとっておきの情報があるぜ! 結構前だが、おれはこっから少し北で承太郎本人と会ったんだ!」
「なに………!? すぐにそこまで………待て、今の話は本当か? もし口からでまかせだった場合は………」
「し、心配いらねーって! この状況で嘘はいわねー!」

花京院はハッキリ言って彼の言葉など信用していなかった。
だがひょっとしたら真実かもしれないと思ったら………万が一でも真実だという可能性があるのなら………そう考えると、相手の話を聞かないわけにはいかなかった。

「………まあいい、さわりだけ話せ………」
「お、おう………まあ最初から話すとだ、おれはコロッセオのちょい北で―――」
「………きさまの頭脳がマヌケなことはよくわかった………………それとも」
「あん?」

相手の無知さに呆れつつも、眉ひとつ動かさずに花京院は続ける。

「空条承太郎は、実際そんな無駄口ばかり叩く男なのか? ならば別に構わんが―――」

638嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:19:04 ID:oxKmqVjk

#


(ヒヒヒ、大真面目な顔であの発言―――無駄口を叩きまくる?『あの』承太郎が? ほんとケッサクだったねえ。
 思わず想像して笑い転げちまって………って違うだろが!)

ラバーソールはうっかり別方向に行きかけた思考を元に戻す。

………そう、今まで同行という言葉を用いてきたこの二人の関係、断じて対等なものではなかった。
ラバーソールは花京院に力で脅され、反抗すれば殺されるという状態で強制的に連れてこられていたのだ。

何故花京院が相手を力づくで使役する方法を選んだのかというと、山岸由花子との一件で彼が懲りていたこともある。
つまり、いかに立場上『敵』ではなくとも、このような相手と対等な関係を結ぶ必要などない、首輪でもつけて上下関係をはっきりさせておかない限り、同行にメリットなど欠片もないということ。
すなわち花京院は最初からラバーソールと『対等』にも『仲間』にもなる気は無かったのだ………!
実際、ラバーソールの性格を考えるとこの方法は実に正しいと言えるが、勿論相手にしてみればたまったものではなかった。

改めてラバーソールは自分の状態を再確認する。
現在、体は自由に動くしスタンドも使える―――だが、今も自分の体内に潜んでいる『法皇の緑』が花京院の意思ひとつでいつでも自分を始末できるというのはおそらく事実である。
操る条件としてスタンドを体内に侵入させる必要があるということはわかっているが、それをどう防げというのか。
スタンドで体内をガードする、あるいはこのまま体内に閉じ込めて捕食してしまうというのも考えたが、『黄の節制』は空気を通さない上に相手のスタンドは紐状になれる。
わずかでも隙間があれば相手は脱出、攻撃共に思いのままであり、逆に隙間が無ければ自分が窒息してしまう。
また花京院本体に肉片を取り付かせて逃げても、射程外に離脱する前に操られて終了というのが関の山………そこまで考えてラバーソールの額に一筋の汗が浮かんだ。

(………ん? ひょっとしていまのおれ、『脱出不可能』なんじゃあ………ま、まさかな!
 なんか手はあるだろ! えーとまだ残ってた支給品は確か………)

と、その時。
考えを巡らすラバーソールの耳に遠くから微かに何か―――自動車のエンジンがかかるような音が飛び込んできた。
花京院の方へと顔を向けるとどうやら彼にも聞こえていたらしく、音の発生源と思われる方角を眺めつつ話しかけてくる。

「………聞こえたか? 西のほう、車のエンジンがかかる音がした」
「ん? ああ、なーんかそれっぽい音はしたような………」

音の正体に関して深く考えていないラバーソールを尻目に花京院は即座にスタンドを音の方向へと伸ばす。
チャンスかと思うラバーソールだったが、すぐに紐状のスタンドが自分の口から伸びつづけていることに気付いて全部出て行ったわけではないと理解する。
―――実際『法皇の緑』の一部だけではその人間を操ることはできないのだが、その事実を知らないラバーソールに反抗はできなかった。

そして『法皇の緑』が遠くに確認したのは―――高級そうな車が、道を左折して曲がり角へと消えていく光景。
その車が見えなくなるまでの『一瞬』………そう、本当に一瞬。
もしも承太郎がきちんとダンの死体の後始末をしていれば、花京院たちがこの場で立ち止まることは無かった―――そうなっていれば、生まれなかったかもしれない瞬間。
だが、確かにその一瞬のうちに花京院は車の運転席にてハンドルを握る男の姿を捉えていた。

「………空条承太郎」

花京院の知る姿―――元々の記憶にあった彼とも、殺し合いの最初に爆破された彼とも微妙に異なるその姿………
ラバーソールもその点については話の中で触れていたため、人違いという可能性も想定はしていた。
しかし、実際に見たことによりその考えは雲散する―――あそこまで似た人間が、他にいるはずがない。
追跡はその場で終了―――このタイミングで仕掛けるのは得策でないと判断し、スタンドを呼び戻すと即座にラバーソールのほうへと向き直った。

639嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:21:42 ID:oxKmqVjk

「………承太郎を発見した。追うぞ、急げ………取り逃すことなど許されん」
「オイ、まだ首が残って―――」
「無駄口は控えろ、それともわたしに逆らう気か?」

戻した『法皇の緑』をちらつかせる。
それを見たラバーソールも胴体はすでに捕食し終えていたため、食い下がらずに従う。

「お、おう、しゃーねえな………んー、どっかにゴミ箱でもありゃあ、マイケル・ジョーダンばりのダンクでこの首をぶちかましてやるんだがねぇ」
「一塁ベースに………いや、さっさと来い」
「チキショー、エラそうにしやがって………っていうか相手は車だろ? んな急いだって追いつける保障はねーんだからもうちょいゆっくり行こーぜ?」

ラバーソールを半ば強引に促し、花京院は足早に歩きだす。
………あるいは、この時彼が抱いていた焦燥感―――DIOのためにジョースターを始末することを誓っておきながら未だに何も出来ていない自身の不甲斐なさが、遂に出口を見つけて溢れ出たのかもしれない。
傍から見てもそれが感じとれるぐらいに気迫がこもった足取りで花京院は進みだす。
そこにラバーソールもしぶしぶ着いていくが、彼の素顔はひどく歪んでいた。

(とはいったものの、あくまで早歩き………ま、全力疾走して追いついたときにはすっかり息切れしてました、じゃあとんだ笑いものだしな………
 クソ、付け入る隙が見当たらなすぎてホント笑えてきちまうぐらい冷静だなコイツ………しょうがねえからここはおとなしく従って―――)

今までラバーソールは花京院に対して無駄口を叩いて歩みを止めたり、必要以上に自分を警戒させて広範囲の索敵を封じることでのらりくらりと追跡を遅らせていれば承太郎の足跡を見失い、そのうち諦めるかと思っていた。
だが彼にとっては不幸なことに、承太郎は捕捉されてしまった―――となるとどうやら近いうちに決戦となる可能性が高そうである。
かといって花京院から逃げられない以上、往生際の悪い彼もさすがに腹をくくって―――

(―――いられるかっての! ジョーダンじゃあねえ! さっさとスタンドの対策してコイツを食っちまわねえと、おれのほうが使い捨てられちまう!
 承太郎を追うのはともかく、このおれがロクに日の光も浴びてねーようなレロレロのメロン野郎にこんな扱いされるのはメチャゆるさんよなああああ!!)

―――いなかった。
意外と余裕がありそうにも見えるのだがそれもそのはず、ラバーソールにはひとつだけ希望があったのだ………自分が生かされているという事実が。
いつでも殺せるとまで脅迫しておいて承太郎を倒すのに同行しろ、と指示してくるのは自分の能力が『必要』とされているという証拠。
つまり、よっぽど下手な行動でも取らない限り花京院は自分を殺す気はない………おまけに近くの敵は花京院が勝手に見つけてくれるため、歩く間自分が周囲に気を配る必要もない。

(要するに、ハンサムラバーソールさまがこの立場をひっくり返すようなアイデアを思いつく時間はまだあるってワケだ、ヒヒヒヒヒ)

立場上は花京院の下僕のような存在のラバーソールだが、彼は彼なりに現在の状況を利用していたのである。
もっともそれも浅知恵………例えば次の放送で承太郎の名が呼ばれ、自分が用済みと判断されたときはどうするのか………などといったことは何一つ考えていないのだが。


未来では味方となる男―――空条承太郎を殺さんとする男、花京院典明。
逆に未来では敵となる男―――花京院典明と共に行動する男、ラバーソール。
加えてどちらも完全に自分の意思で行動しているわけではないこの奇妙な二人組み。
信頼や協調性など欠片も存在せぬまま、彼らは当面の目標である承太郎へ向けてゆっくりと、だが確実にその距離を縮めていくのだった………

640嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:25:33 ID:oxKmqVjk

【C-7 南部 / 1日目 昼】

【偽スターダストクルセイダース】

【花京院典明】
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵を殺す。
1.空条承太郎を追跡し、始末する。
2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。
3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。
4.機会があれば山岸由花子は殺しておきたい。
5.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。

※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。


【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。


【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。
東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。


【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×4、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。
2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ?

※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。

※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。
※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。


【備考】
・C-7南部路上のスティーリー・ダンの死体のうち胴体がラバーソールによって捕食されました。所持品もラバーソールが回収し、首だけがそのまま放置されています。
・二人が聞いた車の音は第143話『本当の気持ちと向き合えますか?』で承太郎たちがぶどうが丘高校から出発したときのものです。
・二人は体力を消耗しない程度の(承太郎たちの車よりもやや遅い)ペースで承太郎たちを追跡しています。
 そのため車が走っている間(第148話『大乱闘』で空条邸に駐車するまで)には追いつけません。

641 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/10(金) 00:33:14 ID:oxKmqVjk
以上で仮投下終了です。
どれだけ気に入らなくとも、法で裁かれない方法だとしても、相手を力づくで従わせるのはやめましょう。

今回花京院たちがE-7からC-7まで「誰とも会わず」突っ切っていますが、無理があるようなら修正します。
その他誤字脱字、矛盾などありましたら遠慮なくお願い致します。

642名無しさんは砕けない:2014/01/11(土) 00:35:26 ID:4OYeVtUI
投下乙です

ひりつく緊張感がたまりませんな
問題はないと思います

643名無しさんは砕けない:2014/01/11(土) 08:01:11 ID:jCaQwzoU
仮投下乙です。
時間軸をさかのぼって補完するような話は書くと本当に難しいですので、ここで氏が危惧している「誰とも会わない」はOKで良いかと思います。経路上にぶつかりそうな参加者もいませんし。
もっとも私一人ではなく他の方の意見も聞きたいところではあるでしょうが。
ともあれ本投下、お待ちしております

644 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/12(日) 22:39:17 ID:IUsjxl1Q
感想、ご意見ありがとうございます。
目立った修正点は無いとのことなので、近日中に本投下したいと思います。

一人でも『問題はない』と言っていただけると自信が持てて嬉しくなります。
もちろん、このスレの目的通り修正点を指摘していただくのもよりよい作品にしていくために必要だと思いますし。
書き込む人、増えてほしいですね。

645 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:33:17 ID:lRFnEzPo
広瀬康一、マウンテン・ティム
仮投下致します。

646はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:38:03 ID:lRFnEzPo

「………………」

太陽の下、二人の男が静かに歩いていく。
前を行くのはしっかりした足取りながら、後ろにいる相手と離れすぎないよう気を使いながら進む青年、マウンテン・ティム。
後ろを付いていくのは満身創痍と言っても過言ではなく、それでも遅れまいとその歩を進める少年、広瀬康一。

二人の間に会話はない―――ここしばらくは、ずっと。
口を開けば何かが壊れてしまいそうな、そうでなくともその歩みが完全に停まってしまうのではないかと思えるほど二人の間の空気は張り詰めていた。
彼らの立場は言うなれば………敗残兵。
戦いに敗れて『失った』彼らがお互いに会話をしたとしても、何が変わるわけでもないと理解して………あるいは諦めていたのだった。
彼らはそのまま歩き続け………しばらくして、ようやく口を開いたのは康一。

「………………ティムさん」
「………どうした?」
「ここ、川沿いですよね………どうしてわざわざここまで来る必要があったんです?」

極めて事務的に、どうしても確認したい事柄だけを告げる。
というのも彼らはカーズから逃げ出した後、タンクローリーの終着点となったコルソ通りを横切って西へと進み、現在はB-4の中央付近にてティベレ川沿いに北西へと歩いていた。
しかし、康一が覚えている限りでは彼らの仲間たちがいたのはB-4の北東、古代環状列石のはず。
直接そこに向かわず、遠回りをしているのは何故か………その問いに対しティムは康一の側によると、少し声を落として答えた。

「………鳥の中には木の上じゃなく草むらの中に巣をつくる種類がいる。
 そういった鳥は他の生物に巣の場所を知られないよう、あえて巣から離れた場所に降り立ってから歩いて巣まで戻るんだ。
 オレたちは今、それに似たことをやっている」
「………『アイツ』、ですか」
「ああ、まっすぐ皆の元に向かってあの『柱の男』に行き先がバレたら、合流する前に先回りされて皆が奇襲を受けるなんてこともあり得るからな」

康一の怪我を考えれば一刻も早く仲間の元に戻り、東方仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』に治してもらうべきだった。
だが、問題なのはそこに辿り着くまで………文字通り化け物じみた身体能力を持つ『柱の男』を移動スピードで上回れるとは到底思えない。
さらにダメージと疲労が蓄積した今の自分たちではおそらく、追いつかれた場合に片方が囮になったとしても、もう片方も逃げ切れない可能性が高いのだ。
そうなると、現在戦える状態ではない者を含む仲間たちの位置だけは易々と教えるわけにはいかない………そう考えた末の移動経路。
また、望み薄ではあったが『太陽』に弱い柱の男から逃げる場合、日光を遮断できそうな建物が両側にある通りよりも片側が開けた川沿いの方が僅かながら有利なのではという算段もあった。

「………………」

答えを聞くと康一は再び黙りこみ………それを見てティムは嫌なことを思い出させてしまったな、と思う。
先程康一はひとしきり泣き叫んだ後、涙も乾かぬうちに自分から移動を提案したのだ。
それは吹っ切ったわけでも前向きになったわけでもなく、ここで止まっていては『足止め』をしてくれた由花子の死が完全に無駄になってしまうから―――ごちゃごちゃの頭で唯一考えられた、やけくそ気味の提案。
他者の言葉がしっかり届くようになるまでは、まだ時間が必要―――そう考えたティムは康一に余計な言葉をかけたりせず、ただ黙って彼の先に立って歩き出したのだった。

幸いというべきか、移動中の二人にちょっかいをかけてくる参加者は彼らが懸念するカーズも含め、誰もいなかった。
だがそれはあくまで外から見た結果………実際の彼らは今にも近くの建物から、地面から奇襲を受けるのではないかという悪いイメージにとりつかれ、精神的にも参りかけていたのだ。
そんな彼らが突然耳に飛び込んできた轟音に対して過剰に反応したとしても、誰も責めたりはしないだろう。

「川が………!?」
「雨が降ったわけでもないのにここまで増水するなんて、ただごとじゃあないぞ………なにがあったっていうんだ?」

彼らの見ている前で、突如ティベレ川が原因不明の増水………しかもよく見ると、勢いよく水が流れ込んでくる排水溝は対岸の側ばかり。
奇妙な現象ではあったが、皮肉にもこれがきっかけで会話を取り戻した彼らにとっては仲間との合流が先決であり、現時点で何かアクションを起こすわけでもない―――はずだった。

647はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:41:31 ID:.G58p6zM

「………! ティムさん、あそこッ!!」
「ん? あれは………!?」

急激に水量が増えていき、いまや完全に濁流と化した川の流れ―――その一点を指し示し康一が叫ぶ。
指先が示す方向を見たティムにも『それ』が見えた。

「人が………人が、流されているッ!!」
「何ッ!? この流れだ、水泳なんてやってる場合じゃあないぞ!」

彼らのいる川岸からやや上流の位置。
流れの中央を時折浮き沈みしつつ流されていくのは、まぎれもなく人間の体だった。

(位置は川のほぼ中央、ロープを投げたとしても届かない………
 ………いや、ちょっと待て………そもそもあれは………)

ティムはすぐさま救助の方法を考え始めるが、同時に流される人間を見て違和感を覚える。

(見た限りでは確かに人間のようだが、手足どころか身体全体が全く動かずに流されていく………
 普通溺れているならば、最低限呼吸のために顔だけは上げようとするものなのに、その様子も見られない………ん?)

さらに思案する彼の目前を小さな影が駆け抜けていった………その先にある川へと、一直線に。

「康一君―――!?」

影の正体に気付いたティムは仰天する。
だが時既に遅く、康一は川へとその身を投げ出していた。

「無茶だ、康一君ッ!!」

ティムも川で溺れている者をすぐに助けたいという気持ちは理解できる。
だが、たとえ康一がオリンピックの金メダル級スイマーだったとしても、この激流に着衣のまま飛び込むなど自殺行為以外の何物でもない。
ましてや今の彼は怪我人、傷口が開いたりすればそのまま失血死してしまう可能性もあるのだ。
慌ててロープを構え川岸に駆け寄ると康一の姿を探し………すぐに自分の目を疑う。

(あれは!?)

驚くべきことに、康一は溺れていなかった。
彼の体は徐々に下流の方へと流されてはいるものの水に沈む様子は全くなく、むしろボードもないのに波に乗りつつ流されている者との距離を縮めていく。
どういうことかと目を凝らし、ティムは気付いた―――康一の服になにやら『文字』が張り付いているのを。

(スタンド能力………! さすが康一君、あんなことも出来るのか………なら、オレも自分の仕事を果たさなくてはな!)

今のところ溺れる心配はないとはいえ、スタンド能力がいつまで持続するかなど不安要素はある。
ティムは一度ロープをしまうと、自身も下流へ向かうべく地上を走り出した。

648はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:44:35 ID:lRFnEzPo

#

(ハァ、ハァ………)

荒れ狂う流れに揺さぶられ、康一の全身が悲鳴を上げる。
由花子に痛めつけられた際のダメージが直っていないのに加え、ここまで移動してきた疲労もあるのだ。
だが、物理的にも心情的にもいまさら後戻りなどできない。
自身の服に貼り付けた『プカァ』の文字が自分を浮かせ続けてくれることを信じつつ、康一は流れてきた人物―――男性に向かい必死で手を伸ばす。

(う、ぐっ………重………ッ!)

自身の体を『エコーズ』で支えつつ相手の首の後ろをどうにか掴むが川の流れに逆らいきれず、逆に康一が引っ張られるように流されていく。
掴まれた側は急にブレーキがかかったことにより一瞬止まり、その際引っ張られた衣服の懐から光る『何か』が幾つか零れ落ちて流されていくが、康一にそれを気にする余裕など無かった。
再び激流に流され始めた体を離すまいとするが、康一の一回り以上も大柄な男の体格に加え、たっぷりと水を吸った衣服が重さに輪をかける。
さらに男の体は康一と違い勝手に浮き上がらないため、必死に支えようとするだけで精一杯となり、彼らの体はどんどん流されていくのみだった。

(うわ………これはちょっとマズイかも………)

沈まなければ溺れないとはいえ、川から這い上がれなければどの道自分たちはジ・エンドである。
さらに男は気を失っているのかピクリとも動かず、意識が戻りそうな気配も全くない。
康一が危機感を覚えたところで―――前方、川にかかる橋から激流の轟音に負けじと声を張り上げる存在を確認する。

「捕まれ康一ィィ――――ッ!!!」
「ティムさんッ!?」

橋の高欄にロープを結びつけ、水面ギリギリのところまで降りて橋脚に脚をつきロープと腕を伸ばすのはマウンテン・ティムッ!
沈まないとはいえ、急な流れの中では康一にとってあまりに小さな救いの手。
だが侮るなかれ、康一と同様スタンド使いであるティムもまた、この状況に無策で挑んだりはしない。
彼の『腕』がロープを伝い―――康一にとってこれ以上ないというくらいピッタリの位置に移動してきた!

「すみません、助かりますッ!」

康一もまた、自由なほうの腕を伸ばし………ガッチリとその手を掴む。
すぐに掴んだ手に引っ張られて康一と男の体はティム本体の元へと運ばれ、橋脚に脚をつくことで宙ぶらりんに近い状態ながらもどうにか川からの脱出に成功した。

「まったく、その怪我でなんて無茶をするんだ。きみの行動には本当に驚かされる………
 こういう場合は、陸上から先回りして拾い上げる方が安全確実だというのに」

康一はすみません、と謝罪しようとして驚く………ティムの顔を見ると、彼が小さく微笑んでいたのだから。

「怒っているわけじゃあない。むしろオレは、一刻も早く人命救助をしようとしたきみの命がけの行動に敬意を表する………
 だがそれでも、この人を助けるには遅すぎたようだ………」
「………………!!」

しかし、言葉を続けるティムの表情は途中から徐々に曇っていった。
言われた康一も引っ張りあげた男の姿をあらためて確認し………気がつく。
男の体はあちこちが潰れており、首や関節もあらぬ方向に曲がっていた。
近くで見ると………いや、最初に見つけたときでもよく観察していれば、遠目にもわかったろう―――男が、既に死亡していたということが。

「おそらく、この人は殺された後に川へ投げ込まれたんだろう………オレたちにできることは『無かった』」
「………でも」

649はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:48:09 ID:.G58p6zM

(ぼくはまた、助けられなかった………)

言葉には出さずとも、ティムには康一の思いが手に取るように理解できた。

(当たり前だ………いくらスタンド使いで強い心を持っているとはいえ、人の死は辛く、重い………
 彼のようなごく普通の少年に、すぐに現実を受け入れろなんてのは酷過ぎる)

割り切れない思いは当然ある………だが、『すぐに』ではなくとも、現実から目を背け続けさせるわけにもいかない。
先程も同じような思いをした康一が相手ならばなおさらだった。

「納得できないか? ………なら、せめてこの人のために祈ってやれ。
 格好からして、どうやら神父様かなにかのようだからな………」
「………はい」

うなだれる康一に対し、ティムは語りかける………だが、彼はこのとき言葉とは別のことを考えていた。
………現在康一は両手が塞がっており、ロープに掴まっている以上暴れたり逃げたりすることはできない―――つまり、今が話をする絶好のチャンスだということを。
汚い大人のやり方だな、と心の中で自嘲しながらティムは再度口を開いた。

「康一君………由花子君のことを考えれば、オレがきみに何か言う資格なんて無いのかもしれない。
 だがもし、きみに『戦う意思』があるのなら、きみひとりで挑むのではなくオレたちも頼りにしてほしい………
 ムシのいい話だとは思うが………彼女やこの男性のような人をこれ以上増やさないためにも、ひとりきりで事に当たってはいけないんだ」

ティムは康一が自分に一言の相談もせずに川へ飛び込んだ行為を、非常に危ういと考えていた。
今回の一件は急がずとも、康一が飛び込む前にあらかじめロープを体に結んでおくなど『協力』すればいくらでもやりようはあったのだから。
結果的には無事だったものの、もしこれが『敵』との戦いだったならば―――あのカーズに対し、康一がひとりきりで挑んでしまったならば―――そのような警告を込めた言葉。
また、あえて正論をぶつけることによって、自分に対する康一の信頼はまだ残っているのか、話を聞いてもらえるのか確かめる意味合いもあった。

「………大丈夫です。由花子さんも………ティムさんだってぼくを死なせないために文字通り命を賭けてくれたんです………
 そんな人たちを嫌いになるなんて、絶対にありえません………」

顔を伏せたまま、激流の音にかき消されてしまいそうな小さい声で康一はつぶやく。
相手の意図は理解しているようだったが、内容はその場しのぎとも言えそうな無難なもの。

「………ぼくは」

ティムは一瞬、まだ早かっただろうかと思う―――だが次の瞬間、勢いよく顔を上げた康一に彼の目は釘付けとなった。
康一の顔から先程までの沈んだ表情はすっかり消え失せ、傷が残りながらも凛々しい顔と力強い声で言葉を続ける。

「ぼくは、あなたたちと共に戦いたい―――いや、それだけでなく『成長』したいッ!
 いくら『覚悟』があったって、いざというとき何もできずにビクビク後悔するようじゃあダメなんだ!
 実際に皆を守れるような、皆がこの人なら大丈夫だって思えるような『強さ』を身につけたいッ!!」

康一は真剣な眼差しでティムを見つめ返す。
ヒーローの志を持った少年は、自身が『力なきヒーロー』であることの無力さを痛感し、力を求めていた―――貪欲に、しかし同時に気高く。
ティムもまた、彼の瞳にタンクローリーの中で見た、小さき体に秘められた強い意志が再び宿っているのがよく分かった。

「………由花子さんのことは完全に吹っ切れたわけじゃないですが、命を捨てるような真似は絶対にしません。
 それと、川に飛び込む前に相談すらしなかったことは謝ります………でも、あの行動自体に『後悔』はしていませんから」

650はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:51:22 ID:lRFnEzPo
康一がティムに相談せず、すぐに川へと飛び込んだ理由はただひとつ………彼は、サンタナから逃げるとき以上に『ムカッ腹』が立っていたのだ。
自分や由花子、さらに味方であるはずのJ・ガイルすらためらいなく殺そうとしたカーズに?
そうするのが最善だったとはいえ、結果的に由花子を見捨てたティムに?
―――違う。


―――死に行く者をなすすべなく見つめているしかなかった、かつての康一自身にである。


ましてや、男は『川に流されて』いたのだ―――最初に康一を助けたヒーロー、ダイアーと同じように。
その光景を目にしたときに康一が感じた怒りや悔しさ………それらが一挙に溢れ出て、疲労困憊だったはずの彼を突き動かしたのだった―――!

果たして、あの時から『成長』した康一の手は届いた………だがまだ遠い。
さらなる『成長』を遂げなければ、救うべき命はその手から零れ落ちていってしまう。
しかし、だからといって噴上裕也が言った「一人で抱え込まず、力を合わせる」ということを忘れていたわけではなかった。
実際、先程もティムに助けてもらわなければ彼は今も川を流され続けていたかもしれないという事実があるのだから。

仲間との協力は必要―――これは康一も肯定するところである。
だが、いつもいつまでも仲間が側にいてくれるわけではない、助けてくれるわけではない。
一人で戦わざるを得ないとき、あるいは逆に仲間を助ける立場になったとき、最後に頼りとなる自分が『限界』を超えなければならないときは必ず来る………
康一はそのために『成長』を望んだのだ。

「………熱いな。だが、頭は冷えたようだな」
「はい、たっぷり水浴びしましたから………だけど『ここ』の熱さはたぶん、ずっとこのままです」

指で自身の胸を差しながら康一は、ようやく笑った。
ティムの言葉を冷静に受け止めることはできても、由花子を失った悲しみやカーズへの怒りは決して消えることはない。
だが『制御』はできる―――広瀬康一は無事、復活したのだから―――!

「それでいい。きみのような若者が持つ熱い心は、道を切り開くために必要だ………
 さあ、上がろう。結構離れてしまったし、急いで皆と合流しないと―――」

もう、カーズに遭遇したとしても康一は我を忘れてひとりで挑みかかったりはしない………
言葉よりも心で理解し、安心したティムはロープを引っ張り橋の上へと登ろうとする。

―――だがその時。
なんという運命のいたずらか、あるいは複数人でぶら下がり続けた故の必然か。
彼らの命綱であるロープを結びつけた高欄の一部が、ポッキリと折れてしまったのだ!!

「………なっ!!?」

驚愕の声はどちらのものだったのか。
不意を突かれた彼らは何も対処できず、一瞬後にはすぐ下の川へと落下していた。

「「う、うわあああぁぁ―――――――ッ!!!」」

さらにここで、水面へ叩きつけられた二人に差が出る。

衝撃でロープから手を離してしまった康一の体は『エコーズ』のしっぽ文字により沈まないものの、未だ治まらぬ激流によってさらに下流へと流されていった。

一方ティムの体は浮かばないどころか、その場でどんどん水底へと沈んでいく。
それもそのはず………彼の持ち物にはこの状況で持っていてはとてつもなくヤバいもの―――重量80kgもするチェーンソーがあったのだから。

(しまった、康一君ッ!)

水中という環境に苦戦しつつもどうにかチェーンソーだけを放り出すが、その時点で重しと支えの両方を失ったティムの体は当然、激流に翻弄されることとなる。
そして、いかに彼が凄腕のカウボーイとはいえ水中で縄は投げられない。

(落ち着けッ! 康一君は沈まない………まずは、オレ自身が陸に上がることを考えろッ!!)

浮きたくても浮けず、自分が上を向いているのかどうかすらわからない状況………だが、ティムは決して考えるのをやめたりしなかった。
パニックになりかけた自分自身に言い聞かせ、もがきにもがいてようやく水面に顔を出すことに成功する。
すぐに周りを見回すもティムの視界に康一の姿は映らず………彼もまた、襲い掛かる激流になすすべなく下流へと流されていくのだった―――


―――こうして、彼らの善意からくる行動は新たな決意を生み、互いの信頼を回復させたものの、思わぬ形でその代価を支払う結果となってしまった。
果たして二人はお互いと、そして別れた仲間たちと無事再会できるのであろうか………?

651はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:53:57 ID:lRFnEzPo

【C-4 ティベレ川 / 1日目 昼】

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:全身傷だらけ、顔中傷だらけ、貧血気味、体力消耗(大)、ダメージ(大)
[装備]:エコーズのしっぽ文字
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.とりあえずどうにかして陸に上がり、マウンテン・ティムと合流する。
1.シュトロハイムたちの元へ戻り、合流する。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.各施設を回り、協力者を集める。

※『プカァ』のしっぽ文字を服に貼り付けているため、単体では水に沈みません。


【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミ―』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:全身ダメージ(中)、体力消耗(大)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本、
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0.陸に上がり康一と合流する。
1.シュトロハイムたちの元へ戻り、合流する。
2.各施設を回り、協力者を集める。


【備考】
・ローパーのチェーンソーがC-4カブール橋下の川底に沈みました。
・男性の死体はエンリコ・プッチのものです。死亡場所→カフェ地下の水路→B-3とB-4の境目にある排水溝の経路でティベレ川に流されてきました。
 服から零れ落ちたのは第142話 Nobody Knowsでシーザーが拾ったDISCです。
・二人は個別に川を流されています。二人のどちらがどの位置で陸に上がる、誰かに見られる、救助されるなどは次の書き手さんにおまかせします。

652 ◆LvAk1Ki9I.:2014/01/27(月) 00:57:03 ID:lRFnEzPo
以上で投下終了です。
申し訳ありませんがリアルで急な予定が入ったので、今のうちに仮投下させていただきます。

誤字脱字や矛盾、その他疑問などありましたらよろしくお願い致します。

653名無しさんは砕けない:2014/01/29(水) 00:18:17 ID:rrojiZ36
投下乙です。誤字脱字、問題点はないと思います。
まさか二人ばらばらになるとは思ってなかった。
なかなかヒーローズは合流できませんねぇ。

654 ◆LvAk1Ki9I.:2014/02/01(土) 00:05:24 ID:YBs/3zDE
ご意見、感想ありがとうございます。
問題はないようなので見直した後、本投下したいと思います。
他に予約がなければ、放送にいけるみたいですね。

655 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/08(土) 18:08:00 ID:A3Nuoe1U
初めても良いところなので、早めに仮投下します。陸に上げた場所は恐らく他の参加者に会いそうな場所ではないと思うのですが、もし近くに誰かいると御指摘があれば何かアクションを起こすか検討します。その他矛盾などあれば御教授願います。

656冷静と激情のあいだ ◆3yIMKUdiwo:2014/03/08(土) 18:09:19 ID:O0onzGPU
冷静と激情のあいだ

…流されていく。

『プカァ』のしっぽ文字がなければ、水の中で康一の体力は無くなっていたかもしれない。辺りを見回すが、ティムの姿はなかった。
(…ティムさんっ…どこかに、どこかに掴まれるようなものはないのか?)
そのうち、また橋が見えて来た。あそこなら?
しかし、今いる位置から橋脚や川岸へは少し遠い。まだ流れが急な今、無理をするべきではないと判断して次の橋を待つ。
(…来た!)
今度は、橋脚に近い所を流れていきそうだ。
失敗すればまた流される。タイミングを図りながら、康一の取った行動は迅速なものだった。スタンドに己の身体を引っ張らせ、その尻尾から『ピタッ』を生み出して橋脚に張り付き…そこで少しずつ方向と高さを変更し取り敢えず水から上がる。

(…誰も、いないか?大丈夫か?)
エコーズで周りを確かめながら、川岸の方を見る。幸運な事にくっついた反対側まで回れば、川岸まで数メートルの距離だ。障害物はない。
そこへ移動すると、康一とエコーズは密着し同時に橋脚を蹴った。バランスを崩して頭から着地してしまう可能性もあったが、『ポヨン』のしっぽ文字がうまくクッションになり、最終的には倒れるような格好で川岸に落ち着く。

立ち上がって辺りを見回すと、北西と北東の方角に何やら大きな建物が見えていた。北東のそれは流される前に南に見えていたホテルらしい。
取り敢えず辺りに人の気配がないとわかった所で、橋の下で隠れるようにして身体を休める事にした。すぐに北上したいのはやまやまだったが…今は単独である以上、川岸やその土手という開けた場所で疲労困憊して倒れるのは最悪に近づく事だ、そう判断する。

「…そもそも、今何時だろう?」
太陽はかなり高い。時計を探すついでにデイパックからパンを1つだけ取りだし、少しの水と共に腹に入れる。食べ過ぎれば眠くなるから、最小限。仲間たちの顔を、声を思い出しながら…近いと知ったその時までを過ごした。

657 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/08(土) 18:10:57 ID:O0onzGPU
暫くして、待っていたその時…即ち2回目の放送が響き始めた。禁止エリアを聞いて、それが遠い事にひとまず安堵する。続いて死亡者の名前が読み上げられていく。山岸由花子の名前を告げられた時…ずきん、と胸が傷んだ。
(由花子さん…)

それでも続きの名前を耳をそばだてて聞き続ける。他に知りあいの名前が含まれていない事に康一は大きく息を吐き出した。
「じゃあ、大丈夫なんだな…」
最悪ティムはまだ流されているかもしれない。ただ、先に陸に上がった可能性もある…さて、どうしようか。
そんな思考に入ろうとしていた康一を引き戻したのは、勝手な言い分を並べ始めたスピーカーだった。
(…冗談じゃない…!)
大勢の生命を弄ぶように引き込み、けしかけるだけけしかけて自分達はそれを眺めている…それだけでも許されない事だ。尚且つ、もっとぶつかり合え?地を這って得たものが真の勝利と言えるのか?希望に過ぎない?そんな言葉に踊らされてたまるものか。

時計を見て放送が近いのを知った時、きっとその後は多かれ少なかれこんな気分になるとは思っていたが、予想以上だ。
…休憩は終わりにしよう。この怒りは前進するために使うべきだ。まだ疲労の残る足で、満身創痍で…それでも康一は川岸を土手沿いに北へ向けて歩き始めた。

その途中で背の高い草の群生を見つけたので、葉を結んで数個輪を作っておく事にした。歩いた痕跡を残すのは危険だが…これなら川に落ちた事を知っているマウンテン・ティムが通りかかるか、探知に特化したスタンドでもなければ誰だかは特定できないはずだ。誰でも良いから…と言うような奴はそもそも目印など見なくても襲いかかるだろう。

その分、周りに注意を払わなければならない。
(…気をつけろ、康一…見るんじゃなくて、観るんだ…聞くんじゃなくて、聴くんだ…さもなければ折角繋いでもらった命を、台無しにしてしまうぞ)
自分に言い聞かせながら、康一は隙なく進んでいった。

【C-4 南西 ティベレ川・川岸/ 1日目 日中】

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:全身傷だらけ、顔中傷だらけ、貧血気味、体力消耗(中)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.主催者への反発
1.マウンテン・ティムを見つけ、シュトロハイムたちと合流する。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.各施設を回り、協力者を集める。

658 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/08(土) 18:12:06 ID:O0onzGPU
以上です。ではよろしくお願いいたします。

659名無しさんは砕けない:2014/03/08(土) 19:29:06 ID:hx/Q3nhc
投下乙!
新しい書き手さんの誕生だ!

660名無しさんは砕けない:2014/03/09(日) 20:28:37 ID:/ZS2YOTI
投下乙!
こういう「つなぎ」あってこそのバトロワだよ。何も心配せず今後もどんどん書いてほしいです!
文章の誤字脱字や大きな矛盾もなさそうに思えますので、もう一度ゆっくり読み直し(日を開けると結構改善点が見つかるものです)本投下に臨んでください!

661観察(仮) その1 ◆yxYaCUyrzc:2014/03/17(月) 20:16:09 ID:K5zd/Bp.
そういえば――この数年で、流動的な操作をすることで反応したプラスチックを動かすことが出来る粒子が発見されたそうじゃあないか。
最近の世界大会じゃ中学生やそこらの実力者がオペレーターとファイターに役割を分けて勝ち進んでるそうだし。
役割論理っていうのかね。『コイツは俺の相手、アイツはお前の相手』『僕が作って、俺が戦う』と言ったところだが……

とは言え、現実は非常である。
どちらもが互いの役割をこなさなければならない時が必ずある。

放送を終えて――まあマトモに聞いてない連中もいるだろうけど――このゲームも中盤に差し掛かったところだ。
そろそろ役割論理が通じない相手が出てくる頃ですぞ。


***


宣言していた通り、プロシュートは放送の五分ほど前に千帆を起こし、名簿と地図を卓上に広げて待った。
ここまでじっくりと腰を据えて放送を聞くことが出来る人間はそう居ないだろう、などと思いながら。

放送は定刻通りに始まり、そして終了した。
スティーブン・スティールの吐き出す言葉、その一言一句さえ漏らすまいと無言でメモを取った二人。

どこからともなく聞こえ始めた声が、それ以上続きを喋らなくなったことを確認してから何分が経っただろうか。
千帆とプロシュート、どちらも何も言わない。
そんな張りつめた空気の重さに千帆が小さくため息をつく。
それを待っていたかのようにプロシュートが口を開いた。

「さて」

一方の千帆も、決して険悪な関係ではないと言えど、ここまで長い沈黙に耐えきれず、かといって何を話しかければ良いのかわかりかねていたところに相手が口火を切ったことに安堵する。
「――プロシュートさん?」
そっと相手の言葉を促すように呟いた。

「今後の方針だ」
単刀直入にそう示すプロシュート。
「はい」
千帆はそのまっすぐな目的意識に先ほど話していたバンダナの青年を一瞬だけだぶらせる。
「まずは」
ゴクリ、と小さく喉を鳴らして次の言葉を待った。


「……寝る」

662観察(仮) その2 ◆yxYaCUyrzc:2014/03/17(月) 20:18:44 ID:K5zd/Bp.
「――え?」

これが漫画や何かだったら確実にズッコケるセリフである。
だがプロシュートのギラギラとした視線が、それがツッコミ待ちのボケではないことを明確にさせる。

「俺らが今いる位置はC−7かD−7あたりだ。すぐ傍が禁止エリアに設定されたがそれは午後五時。
 念を入れて余裕を持った距離をとるにしてもまだまだ余裕だ」
「え、えぇ」
「放送を聞いた参加者はまずその内容を考察なり何なりするだろう」
「つまり――その間はこちらもある程度自由に動ける」
「そうだ。そして嬢ちゃんはそんな連中の隙をついて殺して歩くスタンスではない」
「もっ、もちろんです」
「だったら“そういう連中”に警戒しつつ……それこそ考察なり何なりすればいい」
「は、はい」
「それをお前さんに一任する。そしてその間俺は寝る。寝れるときに寝ておくのだって重要だろう?」
「そ、それはそうです……私だって寝かせてもらってましたし」
「つー訳だ。無論何かあればすぐ起こせ」
「わっ、わかりました。で、ど、どのくらい――」
「30分は欲しいところだな、短くとも」

言いながら席を立つプロシュートの背中を千帆は静かに見送った。


***


そうだよね。
プロシュートさんだって人間だもん。
『よーし1時間寝溜めしたから2週間は不眠不休で大丈夫だぜ』
なんて漫画のキャラだけだもんね……

そんな事を思いながら地図に視線を落とす。
新たに書き足した×の印と時間。
このゲームが否応なしに進行している事を改めて実感する。

そして……

「由花子さん……」

名簿に視線を移して小さく口にした名前。放送を聞いて、線を引いた名前。
決して仲が良かった人ではない、挨拶をして来れば返す、そのくらいの間柄。
でも、私にとっては友人の一人。

それなのに。

不思議と涙は出てこなかった。

なんでだろう。
悲しくない訳じゃあないのに。

『同じクラスだった子がクラス替えで別々になって、そのまま知らないうちに転校してしまった』

そんな気持ちだった――そんな気持ちで考えてしまった、そんな考えになってしまった自分が寂しいとも思ったけど、それでも涙は流れなかった。

顔をそっとプロシュートさんが入っていった部屋のドアに向けて、壁にかかっていた時計に向けた。
まだ5分も経っていない。
『考察なり何なり』っていうのをしようにも、何をどう考えていけばいいのかな。

――秒針がカチカチと動き回るのを少しの間眺めて、私はもう一度視線を机に戻した。
さっきと同じままの名簿と地図が、私の視線が来るのを待っていたように感じて、なんだか悔しくなった。
その気持ちをぐっとこらえるように、私は眠っているものにそっと手を伸ばした。


***

663観察(仮) その3 ◆yxYaCUyrzc:2014/03/17(月) 20:20:32 ID:K5zd/Bp.
千帆の嬢ちゃんに言ったことは間違っちゃあいない。
俺にだって睡眠が必要だ。アンパンと牛乳で一晩見張りを続けるってのも不可能じゃあないが、神経を使うゲームの上ではとれるものは何だってとっておく。
さっき千帆が寝ていたであろうベッドに横になる。ふとシャンプーだかなんだかのニオイが鼻をくすぐったが、それだけだ。下心もヘッタクレもあるものか。

そして言葉にならないほど、吐息と言っていいほど小さく呟く。
「ギアッチョ」
名簿を本物と信じるなら(今更偽物だという方が説得力に欠けるが)暗殺チームのメンバーはいよいよ自分だけになってしまったという事になる。

だからこそ。

一筋だけ涙を絞り出した。

なぜだろうか。
そんな感情捨てきったつもりでいたのに。

『自分にバンド加入を勧めてきたやつが、小遣い欲しさに大切にしてたギターを売っちまった』

そんな気持ちだった――何をセンチになってるんだ、あの嬢ちゃんの心情が伝染したかと自嘲気味に笑い、顔に残った水滴を指の背で拭い取った。

敵対していたブチャラティ、アバッキオの名もあった。
『死は平等だ、優しい』と千帆に言ったセリフが頭をよぎる。そう彼らとて死ねば同じなのだ。黙祷する気もないが、ヨッシャとガッツポーズする気にもならなかった。

秒針がカチカチと動く音にぼんやりと耳を傾けながら、一瞬だけスタンドを呼び出し、すぐに引っ込める。
自分の周りにだけ、千帆にも気づかれない程度――しかし襲撃には一瞬の動揺を生み出せる程度――にガスを噴出し、まぶたを閉じた。


***

664観察(仮) その4 ◆yxYaCUyrzc:2014/03/17(月) 20:25:01 ID:K5zd/Bp.
結論から言ってしまおうか。千帆はまだプロシュートを起こしちゃあいない。
『眠っているもの』は“物”であって“者”ではないってことさ。
千帆は岸部露伴の手紙をもう一度だけ引っ張り出し、今度は最初から最後まで涙をこらえて読み切った。
それからだ。この家の本来の持ち主……と言っても作られた会場だからそんなのはいないんだろうけど、とにかくその人がいたとして、彼らから拝借した紙の束に文字を書き始めた。

そう小説だよ。

とは言ってもまだまだアイディアノートみたいなもの。漫画で言うならネーム。
だが千帆は書かずにはいられなかった。
この悪魔のような半日間。その中で見たもの、話した事、感じたこと、そして、出会った人たち。
さっきまでこらえていた涙がボロボロと零れながらも構わなかった。
どんな些細な事も書きなぐった。消しゴムなんて使わず、斜線を引き、矢印をひっぱり、どんどん書きなぐった。

『書くべきは現実(リアル)じゃない。それを土台とした現実感(リアリティ)なのだよ。』
読み直した露伴の手紙には確かにそう書いてあった。
その通りだ。彼女はノンフィクション作家なんかじゃあない。小説家だ。
でも、そう、土台なんだ。リアルがなければリアリティは生まれず、リアリティを育まなければ物語は完成しない。

自分の言葉で改めて書き直すのはいつだってできる。それこそ『小説を書く』時にすればいいことだ。
しかし感じたことを感じたように書くことは後でやる訳にはいかない。記憶というものは研磨されて、思い出は美化。悪いものはふるい落とされる。
それは決してリアリティとは言えないだろう。それは露伴だってそう言うはずさ。

さて『どんな些細な事も書きなぐった』と言ったね。
――君たちは『どんなこと』を『些細な事』だと思うかい?

例えば一本の木があったとする。
俺は観察眼なんて持ち合わせてないから『ああ木だ』か、せいぜい『大きいなあ、いつごろから立ってるんだろう』くらいにしか感じない。
だが見る人が見れば『そこには鳥がいる』かもしれないし、『何枚もの葉がそよ風に揺られてざわざわと音を立てている』かもしれない。
もっと見る人がいればきっと『いつか誰かがここで背を比べたのだろうか、高さの違う二本の傷があんな位置にある』とか『根元では蟻たちが晩御飯の調達のためにせっせと往復している』とか見つけるかもしれない。
でも、俺に言わせてもらうならそれらはすべて“些細な事”だ。

しかし彼女は小説家。そんな『些細な事』に目を向けられる子だ。
きっと彼女は物を“見る”のではなく“観る”あるいは“診る”。“聞く”のではなく“聴く”あるいは“訊く”のだろう。

ゆえに千帆は気が付いた。
……というとさすがに彼女が超人すぎる。そりゃあ嘘だ。
だけども違和感に気が付いた。
中間テストの開始5分後に背後から感じるような、あるいは急に猫背になった前の座席の背中から感じるような。

ふい、と窓辺に目をやった。

そこには何もいなかった。
でも千帆は直感した。

『いた』

誰が、あるいは“何が”いたのかはわからない。
でも……あのなんだ、漫画で言う『サッ』って隠れるときのあの効果の三本線が確かに千帆の目には映っていた。
それを感じたサイズから判断すると――

「……小人?妖精?
 それとも顔だけ出して覗いてた?」
思わず口に出して聞いてしまった。答える相手なんかいないというのに。

しばらく窓を見つめた後に時計を見上げる。かれこれ40分近く机に向かっていたようだ。
――というのを感じながらもう一度窓を振り返る。やっぱりいない。でもいた。

確かに千帆は任された。考察なり何なりを。
そして、ハッキリ言って戦闘はプロシュートに任せるつもりでいた。
でも、『第一発見者』は自分だ。本来は自分が未知の相手を追いかけ、せめて正体だけでもつかむべきだったのかもしれない。
もちろん逃げられてしまった現在ではそんなのは不可能だ。
相手を取り逃がしたとあったらプロシュート兄貴のことだから怒って口をきいてくれないかもしれない。

とは言え、『すぐに起こせ』と言われたのも事実。
千帆は静かに立ち上がると、プロシュートのいる部屋のドアをノックした。

665観察(仮) 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2014/03/17(月) 20:26:50 ID:K5zd/Bp.
【D-7 南西部 民家/1日目 日中(約12:45)】

【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:全身ダメージ(小〜中に回復)、全身疲労(小に回復)、仮眠中、スタンドガスを小範囲に展開中
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 30/60)
[道具]:基本支給品(水×3)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還。
0.休息を取りつつ、千帆の決断・現状の展開を待つ
1.この世界について、少しでも情報が欲しい。
2.双葉千帆がついて来るのはかまわないが助ける気はない。
3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する。

【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:疲労(ほぼ回復)、悲しみ(極小)
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、救急用医療品、多量のメモ用紙
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く。
1.プロシュートと共に行動。まずは現在感じた『違和感』を報告する。
2.川尻しのぶに会い、早人の最期を伝える。
3.琢馬兄さんに会いたい。けれど、もしも会えたときどうすればいいのかわからない。
4.露伴の分まで、小説が書きたい。

【備考】
・千帆のことを観察していた相手の正体は『不明』です。いつから覗いていたのか、千帆“だけ”を覗いていたのかも不明です。
(メタな事を言えば十中八九ウォッチタワーでしょうが、遠隔操作スタンドの頭部だったのか、あるいは人間なのか?)
 以降の書き手様にお任せします。
・プロシュートが仮眠している部屋に少量の『グレイトフル・デッド』が展開されています。
 千帆には(部屋の外には)影響はなく、例えば『人間が直接プロシュートを殺害しようと接近した時に老化する』程度の範囲です。

666観察(仮)  ◆yxYaCUyrzc:2014/03/17(月) 20:28:51 ID:K5zd/Bp.
以上で投下終了です、なんだかものすごく久しぶりにSS投下した気がしますw
タイトルが(仮)になってるのは別に艦これの影響ではなく単に思い浮かばなかっただけです。なんかよさそうなタイトルが本投下までに浮かべばいいんだけど……

第二放送はじっくり腰据えて聞けた参加者は少ないんじゃあないでしょうか。移動中ならともかく、放送なんか気にせず戦闘中なんてのも多そうですよねw
矛盾点、誤字脱字等ありましたらご報告ください、それではまた。

667名無しさんは砕けない:2014/03/17(月) 23:00:50 ID:4gcnA41.
投下乙でした。
特に問題はないかと思います。
本投下とタイトル楽しみにしています

668She is Killer・Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:02:12 ID:7sL91tkY
全身の傷の痛みが、激しい屈辱が、身を焦がす。
しかしそれらを全て抑え込まなくてはならない。
ストレスは思考を妨げ、迂闊な行動をする要因となる。



「…………申し訳ないんだが、まずはその懐中電灯を下ろしてもらえないか。
 眩しくって………仕方がないんですがね」


地下通路で出会った人物に光を当てられた吉良吉影は、まずその些細なストレスを解消させることにした。


「あっ、すいません。気が付かなくって……」


吉良は川尻しのぶの申し訳なさそうな口調としぐさから敵意がないと判断した。
その一方で、彼女が出会い頭に、空条の名を呼んだことにも気づいていた。

名簿にある空条は三名、内、第二回放送前で生存しているのは空条承太郎ただ一人。
そして先の戦闘中、DIOと呼ばれた男がその名を呼んでいた。


『ぐぁッ!』
『フフフ、ココに来る前にはお前と少しだけ突きの速さ比べをしたが、あの時の方がキレがあったなァ。
 時を止めても老いは止められんようだなァ!承太郎ォォ!!』
『くっ……オラオラオラオラァ!!』
『無駄無駄ァ!!!』


自分がカーズと呼ばれた人外を前に悪戦苦闘していた時、視界の端に入っていた。
時を止める、凄まじい能力の持ち主である二人の男が衝突し、鍔迫り合い、拮抗していたド突き合いが、一度だけ、一瞬だけ膠着状態が崩れた瞬間のセリフ。
崩れたバランス状態を好機としようとDIOが男に畳みかける前に、自分とカーズがDIOへ攻撃し、また小競り合い程度の戦闘が続いた。


あの長いようで短かった戦いの中で、帽子の男が明らかなダメージを受けていたのは後にも先にもアレ一度きりだった。
DIOは、吉良が爆弾で焦がした男の左腕を潰していた。
素直に認めるには吐いてしまいそうなほど悔しいが、自分より格上であったあの男と戦って負けずにいられたのは、その腕の傷のおかげもあっただろうことを覚えている。


奴が、この吉良吉影の破滅を予言したあの男が、空条承太郎。

他人の紹介をしておいて自己紹介もしなかった生意気な男。

つまり目の前の女性は、あの男の仲間………………。

669She is Killer・Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:03:32 ID:7sL91tkY



「……あの、怪我をしているなら、ひとまずここから出ませんか?
 ここからすぐの、地図の空条邸って場所なんです。とりあえずは安全だと思うんで…………」



しのぶの口から出た言葉に、吉良の思考は数瞬止まった。
そしてすぐに気づいた。

この女は、自分を労わっている。
そして、自分のことを、この私が吉良吉影だということを、知らない。

それから、女の言葉を頭の中で反芻する。
安全な場所が(もちろん比喩であって、この状況下で完全に安全な場所なんてどこにもないのはわかっているだろうが)あって、そこに見ず知らずの、傷だらけでズタボロのいかにも怪しい男を招き入れようとしている。

罠か。
しかし、このバカみたいに不安そうな顔をしている女が、自分を嵌めようとしているというのも、なにか腑に落ちない。

脳裏に、自分を見下し敵を睨む鋭い眼光の男の顔がよぎる。
そして、このバトルロワイアルで最初に行動を共にしたストレイツォの顔が浮かんだ。


少しだけ返事を迷った吉良は、

「…………………案内を、頼みます」

虎穴に入ることにした。




+++




『それではまたその時に! 諸君らの健闘を祈って! グッドラック! 』

主催者の、忌々しい声が止んだとき、吉良は空条邸の応接室のソファーに身を沈めていた。
純和風の館には畳と布団ばかりで、傷ついた体でわざわざ布団を敷いて枕を置いて、などとやっていられなかったからだ。
ちなみに地下通路は空条邸の台所の床下収納スペースに続いていた。


向かいのソファーではしのぶが神妙な顔つきで、斜線を入れた名簿を見つめていた。
とはいっても、彼女の知り合いは第一回放送時に死亡した二人の家族と、空条承太郎ただ一人。
死者と生存者を見比べても、彼女に出来ることは何もない。

ただ、 ナニカをしていないと辛いだけなのだ。


放送前に空条邸に着いた二人は、屋敷に置かれていた救急箱で吉良の治療をした。

承太郎が屋敷に入り地下への入り口を探すとき、万が一の時に為にと保管場所を確認していたのをしのぶは見ていた。
承太郎に、救急箱はココにありますからね、と教えられたってわけじゃあない。
だが、後ろで見ていた自分の事も考えてくれていたとも思う。
しのぶには高いタンスの上にあったのを近くの机の上に置いておいてくれた心使いに、彼女は承太郎の優しさを見ていた。

とにかくそうして確保した救急箱は、今、二人が挟んでいるテーブルの上に置かれている。

670She is Killer・Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:04:47 ID:7sL91tkY

医療品があると言っても、満身創痍と言ってもいい吉良の傷を素人のしのぶが適切な処置を取れるはずもないわけで。
吉良が絶え絶えの息でしのぶに指示をし、それにしたがってしのぶは吉良の体を治療していく。

そうして一段落した時に放送が始まり、吉良は安静に、しのぶはメモを取る体制に入ったのだった。



そうしてしばらくお互い黙っていた二人だったが、しのぶがついに名簿を見ることに耐えられなくなった。
名簿を見れば、死者の数がわかる。そしてどうしても、目が行くのだ。
二人の川尻と、二人の空条に。

すでに第一放送から12時間が経過している。
日常で親しいものが亡くなれば数時間で立ち直る必要などないが、この場ではそんな常識は通用しない。
それでも、痛いほどの後悔と悲しみが唇の裏を寒くする。二の腕を泡立たせる。

見ていられない、と名簿から目をあげると、正面の男の姿が見えた。
痛みと疲労にしかめた顔。閉じられた瞼。

彼の様子を改めて見て見れば、気になることはたくさんあった。


「えっと………まだ、なにがあったのか、聞いてなかった……ですよね」

落ち込んだなんとか気分を落ち着けようと深呼吸した後、暗い気持ちを誤魔化すように男に話しかけた。
口を開いても、出てきた声は恐々とした質問だった。すこし声が小さかったかもしれない。

交渉だとか尋問だとか、そういうものを一切考えない、ただ疑問をぶつけただけの拙い問い掛けだった。



一方の吉良吉影は、治療を受けているときからずっと頭を働かしていた。

空条承太郎の仲間かと思ったが、どうやらこの女は協力関係といえるほど奴と対等ではない。
おそらくは庇護対象。なんの力も技術も持たない、巻き込まれた一般人。

そうなると、この女は殺した方がいいのではないか。

これから先、何らかの要因で脅威になる前に。
他の参加者に自分の事を広めてしまう前に。
空条承太郎と合流される前に。

671She is Killer・Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:06:25 ID:7sL91tkY


空条承太郎と、合流。

それだ、と吉良は思った。

吉良の行動優先順位の内、自分の正体を知りもっとも警戒せねばならないのは、泥のスーツの男から空条承太郎に変わっていた。
しかし正面からでは勝ち目がない、とまでは言わないが、苦戦するだろう。力の差は身に染みている。

ならば絡め手を使うことも躊躇いはしない。


心の中で決めた後は、すでに行動は終えていた。
先の治療中、しのぶが体に触れているときに、死角からキラー・クイーンの手だけを出し、触れた。

現在、彼女を爆弾に変えてある。

任意で爆発させるものでなく、接触した瞬間に爆発させる設定。
対象を爆裂させるのではなく、接触したモノを爆発させる設定。


空条承太郎と女が合流した時、もし自分とこの女が一緒にいればどうなるだろうか。
間違いなく奴は自分を殺しに来る。だが、その前に彼女を救うための行動を起こすだろう。

具体的に言えば、時間を止めてこちらの動きを封じ、女を自分の後ろにでも匿う。

あのなんでもお見通しだとでも言いたげなキザな男だ。おそらく爆弾についても予想はしているに違いない。
しかしそれでも、女を救うには自分の手の届く範囲に連れてこなくてはならないはずだ。

奴は罠だとわかっていて、それに触れなくてはならない状況になるのだ。

これで確実に、空条承太郎を殺すことが出来る。

あとは彼女が勝手に、他のバカを爆殺しないように、見張ればいいだけなのだ。


「地下通路で、なにがあったんですか?」


そして問題はこの問い掛けだ。

672She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:08:24 ID:7sL91tkY

トラブルを避けるいつもの吉良なら、戦闘に巻き込まれ、命からがら逃げてきた、とでもしただろう。あながち間違いでもない。

ただ、彼女を見張る上で想定しなくてはならないのが、彼女を『守る』場合もあるだろうということだ。
第一の爆弾がなくともシアーハートアタックがあれば、防衛戦であれば十分可能だろうとも思う。
キラー・クイーンの肉弾戦でも十分戦える。

となればだ、彼女にだけはスタンドについて教えてしまったほうがいいのではないだろうか。

おそらく空条承太郎から説明は受けているだろうから、突然スタンドを出しても慌てたりはしないだろう。
むしろ自分のチカラを見せ、教えることで信頼を得るというのも手ではないだろうか。

もちろん爆弾を仕込んだことは教えまい。
どうせ空条承太郎を殺せれば要は無くなり殺す相手。
見張っている間は不味い情報が広まることも抑えられるだろう。
ならば……………………。


吉良吉影は知らない。現在の空条承太郎が、川尻しのぶを人質にとったスティーリー・ダンを危険を顧みずに殺し、助けられた彼女自身、状況が変われば一緒に始末されていただろうなどと思われる、危うい存在であることを。
川尻しのぶはしらない。現在目の前にいる男こそ、自分が会ってみたいと思い、杜王町で待っていた、そして今帰りを待っている男、空条承太郎と戦闘を行った殺人鬼、吉良吉影その人であることを。


吉良は迷っていた。女性に己の力を明かしていいものかを。
しのぶは待っていた。男の返事を、そして男の帰りを。

673She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:09:53 ID:7sL91tkY




そして、この時点でお互いの名前も知らない二人のそばに、魔の手はゆっくりと這い寄ってきていた。

男の悩みを解決する時間を与えず。
女の想いが解決する機会を与えず。

車の痕跡を追う片手間に放送を聞き、己が主と怨敵が無事であることだけを確認した男たちが、空条邸の敷地内に停められた車を発見した。

吉良としのぶが待つ、空条承太郎、その彼を追いかけてきていた二人の男。

その手を、屋敷の引き戸に伸ばす………――――






【D-5 空条邸(応接間) / 一日目 日中】
【偽川尻夫妻】

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左腕負傷、左手首負傷(極大)、全身ダメージ(極大)疲労(大) 負傷部に治療 安静中
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.空条承太郎を殺す。
1.目の前の女性(しのぶ)を見張る(守る)。そのためにスタンドを明かしてしまっていいものか……。
2.優勝を目指し、行動する。
3.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
4.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
5.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

※怪我の止血はしましたが、無理をすればまた傷が開くかもしれません。

※キラー・クイーンの第一の爆弾を川尻しのぶに使用中です。他に使うときは解除しなくてはいけません。


【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中)、疲労(小)すっぴん 触れた物を爆発させる爆弾状態
[装備]:地下地図
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
0.空条邸で承太郎を待つ。
1.目の前の男性(吉良)の話を聞く。
2.どうにかして承太郎を止める。
3.吉良吉影にも会ってみたい。


※キラー・クイーンにより、接触型、触ったモノを爆破する爆弾が仕込まれています。


※移動中も治療中も最低限しか会話していないので、現時点でお互いのことは何も知りません。
※応接間の机の上には空条邸で調達した救急箱が置かれています。大怪我の吉良を治療し切れるので一般の救急箱より充実してるかも。

674She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:10:52 ID:7sL91tkY
【D-5 空条邸(玄関先) / 一日目 日中】
【偽スターダストクルセイダース】

【花京院典明】
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵を殺す。
1.空条承太郎を追跡し、始末する。
2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。
3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。
4.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。


※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。



【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。



【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。
東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。



【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×4、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。
2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ?


※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。


※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。
※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。


※二人は移動しながら放送を聞きました。聞き覚えのある名前は頭にあるかもしれませんが、他の死亡者についてはほとんど覚えていませんし、重要視もしていません。

675 ◆Be1WM97dDg:2014/03/20(木) 22:17:07 ID:qc0acWLA
以上です。
初めての投稿でかなり緊張しました…w
タイトルが途中で間違いに気づきました。She's a Killer Queenの方です。

直接の登場でないので予約は入れてませんが、大乱闘での一幕を勝手に書いてます。
一応矛盾云々というほどの話ではないと思いますが、問題でしたら削ります。

おかしいところがあれば指摘下さい。確認次第修正します。
では、よろしくお願いします。

676名無しさんは砕けない:2014/03/21(金) 09:03:06 ID:6Cp0qBbo
投下乙です。
丁寧な描写やキャラ再現、次の話が気になる引きなど
どれをとっても初めてとは思えないクオリティで書き手さんのこれからが非常に楽しみになりました。

以下指摘ですが、誤字について

>>669
時に為にと→時の為にと

>>670
第一放送から12時間が→第一放送から6時間が
落ち込んだなんとか気分を→?

>>672
要は無くなり→用は無くなり


あと気になった点ですが、最初の方に

名簿にある空条は三名、内、第二回放送前で生存しているのは空条承太郎ただ一人。

とありますが、吉良は第一放送後に空条徐倫(F・F)と出会っています。
しのぶが出会った空条は彼女のことでは? という思考も生まれるのではないのでしょうか。

それでは、本投下待ってます。

677 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 16:43:15 ID:3VrJVS1w
仮投下してみます。
文もだめで、キャラ崩壊してて、展開があらいなど色々あります。
直した方が良いところを教えてください。
矛盾などもありましたら教えてください。
お願いします。

678ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 16:46:41 ID:3VrJVS1w
「何かあちらの方から何か感じる気がする。」
ジョナサンのその一言でD7の方に歩く事にした。
トリッシュが話すには、ボスとトリッシュはお互いの存在を何か感覚でわかるらしい。
ジョナサンの親族なら会ったら協力してもらえるであろうという考えである。
その前にトリッシュの凍傷に気付いたジョナサンが波紋を使い治していた。
ナランチャにエアロスミスで警戒してもらいながら情報交換を歩きながら行った。
SBRの事やフーゴ達が居た世界の事(ナランチャが知っている所まで)やジョナサンが居た時代の事や
玉美の居た時代の事やここに来てからの事について話した。


情報交換の前にフーゴとトリッシュが小声で話をした。
「ねぇフーゴ。あなたはいつの時代から来たの?」
「!トリッシュもそれに気付いていましたか。僕は2001年の○月×日から来ました。トリッシュ、あなたは?」
「私はあなたが来たホンの数日前だわ。ほとんど一緒ね。ということは本当の世界でのアバッキオやナランチャやブチャラティの事も………」
「知ってるよ。詳しくは知らないけどね。とりあえずナランチャの知ってる辺りまでを話しておこう。」
「あとフーゴ。…………この世界でブチャラティが死んだわ。」
「えっ!?ブチャラティが……。これもナランチャには黙っておこう。放送の時にはバレてしまうが今言ったらさらに混乱させてしまう。」

679ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 16:48:45 ID:3VrJVS1w
「ちょっとまってくれ、フーゴ。つまりは僕たちは時代を越えてここに呼ばれてるって事か?」
「僕の考えではね、ジョナサン。どう考えても言ってる事が食い違いすぎる。偶然そこの変な男と僕たちは時代が近かったようですけどね。」
「変な男って俺の事かよ!お前。なにいってくれて
「玉美うっさい。フーゴの話を邪魔しないで。」
「すみません、トリッシュ殿。さあさあ話を続けてください。」
「つまりよぉ〜、ジョルノやミスタやブチャラティが俺らを知らない可能性もあるわけってことか?難しいけどよぉ〜。」
「そうですが、それより先が重要なんです。僕たちを知らなければ攻撃してくるかもしれませんし」
「だけどそんなんわかんねぇじゃねぇか〜」
「今それの対策を考えようとして

時刻は12時、正午の時間だ。第二回放送を始める。

680ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 16:50:32 ID:3VrJVS1w
「!放送だ。とりあえずそこら辺でメモをとらないと。ナランチャだけじゃなくて他の皆も警戒を頼む!僕はメモをとる。」
ロバート・E・O・スピードワゴン
エリナ・ジョースター
(スピードワゴン、エリナ。違う時代から来たとしても死んでしまったのは悲しいな)

ウェカピポ
(ウェカピポ!死んでしまったの!?)

ブローノ・ブチャラティ
レオーネ・アバッキオ


「えっ!?ブチャラティが何で死んでんだよぉぉぉぉぉぉ!!
なんでアバッキオが今呼ばれてんだよぉぉぉぉぉ!フーゴぉぉぉぉ!
さっき呼ばれたんじゃなかったのかよぉぉぉぉ!どういう事だよぉぉぉぉ!!
説明してくんなきゃわかんねぇよぉぉぉ!」
「落ち着いてください。ナランチャ。そ、それはですね。」
(どう言えばいい!?アバッキオがこんなにはやく死ぬなんて予想外過ぎる!)
フーゴが困っていたその時だった。
「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」

681ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 16:55:50 ID:3VrJVS1w
アナスイと僕は情報交換をした。ここに来る前の時代の事、ここに来てからの事。その途中で時代の食い違いに気づいた。
もしかしたらサンドマンも昔から連れてこられたのではないか、D4Cではないのか?そうも考えた。
これらを歩きながらおこなった。僕がある方向から何か感じた方からだ。彼の知り合いもそのようなものがあったらしい。
同じ血族とかでそのようなことがあるらしい。 同じ血族なら問題ないであろうと考え向かう事にした。
アナスイはジョースターという名に聞き覚えがあり、もしかしたら承太郎かもしれないと考えたのであるがそれはいいのだ。
そちらを見てから目的地に行けばいいとの話になった。
幸い何も起きずに進めた。
それらは10分か20分程度だった。第三放送が入ったからだ。いた場所の近くの隠れられる場所でとりあえずアナスイにメモをとってもらい、僕は警戒をすることにした。
放送の最中子供の大声が聞こえた。
「アナスイ、僕が見てくるからそこにいてくれ。」
「いや、ジョニィ。放送が終わったらにしよう。もうすぐ終わる筈だ。」
(ウェザーとプッチが死んだ!?)

諸君らの健闘を祈って!グッドラック!

「物しまったか?アナスイはそこにいてくれ。いざというときにそなえて」
「わかった。頼むぞ。」

682ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 16:58:15 ID:3VrJVS1w
「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
「!!てんめぇ、何もんだぁぁぁぁぁ!」
ナランチャがスタンドを出そうとしたときに何かを突き抜ける音がした。
「スタンドも出すな!次何かしたら体を狙うぞ!」
僕のバックに穴が空いていた。
「あなた、まさかこのスタンド、ジョニィ・ジョースター!?SBRの選手の!?」
「君は何で僕の事を?」
相手は疑問に思ったようだ。
「ルーシーやウェカピポに会ったの!彼らがジャイロ・ツェペリやあなたは頼っていい人だと言っていたわ!」
「そうか、ルーシーやウェカピボが。なら質問する、ルーシーは何のスタンドを持ってた?」
全く僕にはわからない。ルーシーはスタンドを持っていたのか!?そんな話聞いてないが。
「いえ、彼女はスタンドを持ってなかったわ。」
「よし、信用しよう。彼女と争ったのなら確実にはわからない情報だ。」
ただのハッタリだったのか。
髪が長い男が出てきてジョニィに話しかけている。
「おい、ジョニィ」
「大丈夫だ。それに彼らの目からジャイロの輝きと同じような物がある。そこの大男からはさっきから言ってる感覚があるしな。」
「よくわかんないけどあの二人は味方なのか?」
「ええ、そうよ。」
トリッシュがナランチャに言った。トリッシュ、ナランチャの扱いうまくないか?。
「まあとりあえずそこの家に入って情報交換しましょうよ」
そう言いバックを持つついでに中身をみた。
ウォッチタワーのカードが二枚ともジョニィのスタンドでうちぬかれていた。
(これなら持っててもしょうがないだろうな。捨てよう。)



家についたので僕は大男に名前を聞いてみた。
「なあ、君はなんて名前なんだ?」
「僕はジョナサン・ジョースターさ」
「な、なにーーーーーー!」
To Be Continued

683ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 17:00:15 ID:3VrJVS1w
【D-7 南西、家】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.あれがジョニィ?情報交換をしよう。しかし僕に何か似てる
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.知り合いも過去や未来から来てるかも?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ジョニィ?味方みたいだから、エアロスミスで警戒してるから情報交換しようぜ!
1.ブチャラティが死んで今アバッキオの名が呼ばれた?どういうことだよフーゴ(今は忘れています)
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな
【備考】
ナランチャは警戒をしていたため情報交換の時にろくに話を聞いていません

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
0.あれがジョニィ?とりあえず情報交換だ
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーの持っていた分がうちぬかれたためムーロロが何かしてこない限り連絡はできません)。
3.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは。
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2はタスクで穴が開いたので捨てられました

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.ジョニィ!!とりあえず情報交換
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
4.玉美、うっさい

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.あの二人は味方か?トリッシュ殿にまかせよう。

【備考】
彼ら四人はアバッキオ以降の放送を聞いていません
彼らはSBR関連の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)

684ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 17:01:18 ID:3VrJVS1w
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.とりあえず目の前のやつらと情報交換だ。


【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小) 、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。D4C以外でどうやって
4.D4Cの能力で連れてこられたんじゃない?
5.情報交換をしよう
【備考】
お互いにいた時代の事について情報交換をしました。
ジョニィは警戒をしていて放送をろくに聞いていません

685ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 17:02:02 ID:3VrJVS1w
これで全部です。なんでもいいので意見をください。おねがいします。

686名無しさんは砕けない:2014/03/23(日) 17:25:27 ID:HVo7RGPw
投下乙です

気になった点としては
ジョナサンとジョニィの間に血統を感じ取る力は働かないのではないでしょうか?

それ以外には問題はないように思えました

687名無しさんは砕けない:2014/03/23(日) 19:10:29 ID:NK8s0moM
>>686
ジョニィに関しては他のジョースターと同じように感じ取れる、という設定にする、って問題提起スレにあった。

仮投下乙。
台詞が多めだけども、ライブ感も大事なんだよな。
上手くバランス取ってみるといいと思う。

688名無しさんは砕けない:2014/03/23(日) 20:20:06 ID:XNxNSyhQ
承太郎に化けたラバーソールを見破れたのもジョースターの共鳴があったからだしね
それについては問題ないと思う
なんにせよ投下乙です

689名無しさんは砕けない:2014/03/23(日) 20:20:39 ID:OSRYuDf.
セリフ多めで読みごたえあってよかったと思います。

もうちょっとスペース増やしてもよかったんじゃないかなとは思いますね。
あと、セリフの間にキャラの簡単なしぐさを入れてみたりするとリアルっぽくなるかな。
セリフばかりで文面が単調な印象になるのを防ぐ効果もあるし。

「〜〜!」と、○○が叫ぶ。それの傍で××は顔をしかめた。

みたいなね。
ちょっと上から目線の助言みたいで申し訳ない。所詮自分もアマなんで、なんか偉そうなやついるな〜って思っといてください…。
話の着眼点も面白いし、キャラはよく立ってると思います。

690名無しさんは砕けない:2014/03/23(日) 21:16:25 ID:0iBZOb6Q
投下乙です。
間違いは
>>681 第三放送が入ったからだ→第二放送が入ったからだ
があります。

それと、時間軸の関係上ジョナサンはエリナ・『ペンドルトン』しか知りません。
情報交換の後だとしてもエリナ・『ジョースター』が自分の知るエリナと同一人物だと判断するのはちょっと難しいと思います。
死んでしまったのは悲しいとするのはスピードワゴンだけにした方がいいのではないでしょうか。


後は意見ですが
セリフや思考(「」や()の中)の場合、最後に句読点(。)は使わない方がいいです。

あと、地の文とセリフなどの間に空白の行をはさむとより見やすくなると思います。

例えば

「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
「!!てんめぇ、何もんだぁぁぁぁぁ!」
ナランチャがスタンドを出そうとしたときに何かを突き抜ける音がした。
「スタンドも出すな!次何かしたら体を狙うぞ!」
僕のバックに穴が空いていた。



「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
「!!てんめぇ、何もんだぁぁぁぁぁ!」

ナランチャがスタンドを出そうとしたときに何かを突き抜ける音がした。

「スタンドも出すな!次何かしたら体を狙うぞ!」

僕のバックに穴が空いていた。

としたほうがよいのではないかと。
それでは、本投下お待ちしています。

691 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/23(日) 21:47:03 ID:3VrJVS1w
アドバイスありがとうございます。とりあえず今回は句読点とスペースだけ変更させていただこうとおもいます。
すみませんが時間がないので。

692名無しさんは砕けない:2014/03/23(日) 22:07:56 ID:.gBu3JKM
焦らずとも、指摘された点をじっくり修正したあとでも本投下は遅くないと思いますよ?
今は他に予約もありませんし。

693 ◆yxYaCUyrzc:2014/03/23(日) 22:42:46 ID:WbXGG02.
まずは投下乙です。
感想は最後に書かせていただきますのでまずは私からもいくつかご指摘をさせていただきます。
長くなりますがご勘弁を。


まずは>>678からひとつ。
> トリッシュが話すには、ボスとトリッシュはお互いの存在を何か感覚でわかるらしい。
> ジョナサンの親族なら会ったら協力してもらえるであろうという考えである。

この文章を見るにフーゴ視点で書かれているようですが、数行のちに、

> 情報交換の前にフーゴとトリッシュが小声で話をした。

と三人称の視点で書かれています。
私の場合は *** でキャラの視点や場面を切り替えていますが、この場合はどちらかに視点を統一するだけで良いでしょう。
(フーゴとトリッシュが〜 → 僕はトリッシュと小声で、と改変してフーゴ視点に統一するなど)


次に放送について。フーゴの台詞をぶった切って始まる放送は時間経過を否応なしに感じさせる良い表現です。
しかし、誰がどう読んでもスティーブンの台詞ではありますが、一応『 』や“ ”で放送の部分を囲むと良いでしょう。
>>680では、フーゴが困っていたその時だった という『地の文』がありますので放送の部分と被ってしまいますから。


それから>>681から続く両グループの遭遇について。
680の最後「〜〜うつ!」の台詞ののちにフーゴ一行からジョニィ組へと視点および時間が変わっています。
ここでは、680ラストに
「〜〜うつ!」

そこには右手を突き出す男が立っていた。

などと付け加えることでジョニィの存在をここで出しておき、
 *** と視点をフーゴ組からジョニィ組に移し、
>>681冒頭で
『フーゴらが放送に動揺していたその頃』だとか
『時間は少しさかのぼる。エリア○−×の路上にて……』だとかを付け加えることで、
“ジョニィとアナスイがどこでどのように情報交換をしていたか”を説明できます。
すると>>682冒頭の「〜止まらなければうつ!」が>>680ラストのそのセリフと同じセリフであることがハッキリし、両者の遭遇を明確にできるかな、と思います。


最後にセリフについて。
台詞が多いとスピード感があって非常に楽しめます。ジョジョ原作中でも長い台詞の応酬があるので読んでいても苦にはなりません。
ですが、登場人物が多いと誰がどのセリフを言っているのかわからなかったりします。
特にこのSSですと、フーゴ・ジョナサン・ジョニィが一人称『ぼく』で、なおかつ紳士的な話し方も似ていますのでなおさらかな?

私個人の考え方ですが、SSを書くときには漫画のコマを脳内にイメージしながら書いています。
すると台詞はフキダシで表現できますが、その時にキャラはどんな顔をして喋っているか?どんなリアクションをしたのか?どっちを向いている?
など、結構いろいろなイメージが出来てきます。
それを文章に起こすのは難しいかもしれませんが、まずはすべての鍵カッコの後に、
●●は××しながらそう言った。
と付け加えてみます。そこから、『あーこのセリフの間は“間髪入れずに次の言葉を言ってる”から変な描写挟みたくないな』みたいなイメージも浮かぶので、そこを削っていきます。
『そう言った』という文章表現自体も変えることが出来てくると思います。
ここに適度に改行を挟めば状況の描写が丁寧に第三者(ロワ参加者にも読者にも)伝わりやすいですよ。


長々と話させていただきましたが、
『投下乙です。そしてようこそジョジョロワへ!』
というのが私の率直な気持ちです。ですからあえてトリつきで意見させていただきました。

肝心の話ですが、これも誰もが書きそうで書かなかったジョナサンとジョニィ(ジョナサン)の遭遇。これは期待せざるを得ません。
同一人物ではないからD4Cで木端微塵にもなりませんしw
とはいえヒーローズチームやディエゴ組と違ってちょっとしたバランスで大きく傾きそうなバランス。BTグループに近いイメージかな?不安な大所帯で今後に期待できそうです。

最後に古参者から偉そうに一言だけ。
最初からうまく書ける人なんていませんから(私も初めて書いたSSは今読んだら顔真っ赤になるw)
何よりも、
『俺こんな話思いついたからみんな聞いてくれよ!どーだ面白いだろ!』
という気持ちをぶつけてくれればそれで充分です。
今後もたくさんSSを書いてくださることを期待して。
まずは本投下、お待ちしております!

694 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/24(月) 22:16:20 ID:q6yhLb5A
アドバイスをくださった方、本当にありがとうございます。 >>692さんの言う通り、今はほかに予約がないようなので修正をさせて頂きます。修正が出来次第こちらにまた仮投下させていただこうと思います。多分次の土曜か日曜くらいまでかかってしまうと思います、申し訳ございません。

695 ◆vvatO30wn.:2014/03/25(火) 00:03:29 ID:KjXWM21E
「誰だ?」って聞きたそうな表情してんで自己紹介させてもらうがよ…
おれぁおせっかい焼きの◆vvatO30wn.!

まずは新人さんへ、ディモールト仮投下乙です。
感想などは本投下時にとっておきますね。

全体の書き方を見るに、文章を書く事自体がいまいち慣れていないのではないかと察せられます。
日本語としておかしい表現や気を付けた方がいい点など、おせっかいかもしれませんが先輩書き手としてアドバイスしていきますね。

まず、ひとつの文の中に同じ単語や同じような表現を2回以上重複して書かない方がいいと思います。(意味を強調する場合を除く)
これは、実際に自分で書いた文章を音に出して読み返してみると、「あれ?」と引っかかって気がつくんじゃないかと思います。
ちょっと目に付きやすかったのと、改善しやすいであろう点なので最初に指摘させていただきました。

今回のSSで具体的な例を挙げると、

>>678
「何かあちらの方から何か感じる気がする。」 『何か』の重複。片方でいいでしょう。
→「あちらの方から何か感じる気がする」

ナランチャにエアロスミスで警戒してもらいながら情報交換を歩きながら行った。 『ながら』の重複。
→ナランチャにエアロスミスで警戒してもらい、歩きながら情報交換を行った。

>>681
僕がある方向から何か感じた方からだ。 『方向』、『方』の重複。
→僕はある方向から、何かを感じた。

こんな感じになります。
もっとも私もよくやる失敗なので、あまり偉そうなことも言えませんが…
(wiki収録の時にこっそり直したりしてます。すみません)


次に、読点「、」がやや少ないのではないかと思います。

ジョナサンのその一言でD7の方に歩く事にした。
トリッシュが話すには、ボスとトリッシュはお互いの存在を何か感覚でわかるらしい。
ジョナサンの親族なら会ったら協力してもらえるであろうという考えである。
その前にトリッシュの凍傷に気付いたジョナサンが波紋を使い治していた。
ナランチャにエアロスミスで警戒してもらいながら情報交換を歩きながら行った。
SBRの事やフーゴ達が居た世界の事(ナランチャが知っている所まで)やジョナサンが居た時代の事や
玉美の居た時代の事やここに来てからの事について話した。

これは今回のSSの冒頭部分ですが、この中に読点はひとつしかありません。
セリフの中もやや足りてない印象がありますが、地の文ではさらに顕著ですね。

これも、音に出して読んでみると見付けやすいでしょう。
一息で読もうとすると息が詰まりそうになると思います。
読みながら、無意識に文章を切って読んでるんじゃないでしょうか?
そこに読点を挟めば、グッと読みやすい文章になると思います。

先ほどの文章ですと、

ジョナサンのその一言で、D7の方に歩く事にした。
トリッシュが話すには、ボスとトリッシュはお互いの存在を何か感覚でわかるらしい。
ジョナサンの親族ならば、会った時に協力してもらえるであろうという考えである。
その前に、トリッシュの凍傷に気付いたジョナサンが、波紋を使い治していた。
ナランチャにエアロスミスで警戒してもらい、歩きながら情報交換を行った。
SBRの事や自分達が居た世界の事(ナランチャが知っている所まで)。
ジョナサンが居た時代の事や、玉美の居た時代の事。
そして、ここに来てからの事について話した。

これだけで、結構スラスラと読みやすくなったと思います。
ついでに、3行目の「ら」の連続を表現を変えて、7行目の「や」の連続をいくつかの文章に分けることで解消してみました。
>>693氏の指摘に倣い、『フーゴ達』も『自分達』に変更してます。

696 ◆vvatO30wn.:2014/03/25(火) 00:07:00 ID:KjXWM21E
あと、(これはちょっと難しいかもですが)冒頭の会話を時系列順に並べ替えてみてはどうでしょうか?

①ジョナサンのその一言で、D7の方に歩く事にした。
②その前に、トリッシュの凍傷に気付いたジョナサンが、波紋を使い治していた。
③ナランチャにエアロスミスで警戒してもらい、歩きながら情報交換を行った。
④情報交換の前に、フーゴとトリッシュが小声で話をした。

という順番で描かれていますが、「〜の前に」という表現が2度も登場するため、順番は②①④③となり少しややこしいです。
せめて②と①、④と③だけでも順番を入れ替えれば、わかりやすい文章になると思います。
さすがにこれは例文は書けませんね。書けば、私の文章になってしまう。
あくまでこれは◆jNtKvKMX4g氏の作品ですので、可能な限り挑戦してみてはどうでしょうか。


最後に。ジョジョロワならではの裏技、ジョジョ的な表現。これは便利ですよ。

物事を言い切るときは、『ッ!』を使うッ!
さらに『体言止め』も有効ッ!
そして使うんだよ…… 『倒置法』をなッ!
そんでもって、こういう『』で単語を強調するのも便利ですよ。
慣れてきたら、擦っても擦っても取れない便器のシミみたいに長くてうっとおしい『比喩表現』だって、使いこなせばいい感じにジョジョっぽくなります。

ま、あんまり使いすぎるとしつこくてウザいかもしれないので、この辺は程々に……

自分の語彙が足りないかな〜、なんて思ったら、こんなサイトなんかを利用しましょう。
ttp://thesaurus.weblio.jp/content/%E8%A8%80%E3%81%86
『言う』って単語だけでもこれだけの類語があります。
これさえあれば、誰でもかっこいい熟語や言い回しが使えるようになりますよ。


さて、なんだか長々と、それこそ批評スレでもないのに申し訳ありません。
偉そうなこと書いてますが、私もこのレスにあることすら全部完璧にはこなせてないと思います。
作品数がそれなりに増え、少しはマシになってきているとは思いますが、最初の頃は酷いものでした。
私も、まだまだ発展途上の修行中です。
そしてあなたも、投下した以上は古参も新人もありません。
お互い同じ書き手同士として、このジョジョロワ3rdを盛り上げ、そして楽しんでいきましょう。



仮投下が1回までなんて決まりはありません。
ご自分が納得するまでは、何度仮投下したっていいんです。
では、次の投下を心よりお待ちしております。

697 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 01:06:54 ID:SSzoDRcU
多人数挑戦しました。
少しバトル描写が薄めなので書き足すかもしれませんが、結果はこのままにするつもりです。

以下、仮投下します。

698星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 01:28:30 ID:XKlmrYcY
「…」
ダークグリーンの眼に映る、太陽。
空条承太郎が地上に出てきたのは、結局の所道が他に無かったという単純な理由だった。歩き出して間もなく、上へ行く階段が現れたのだ。

開け放ったその大きな扉の横合いから、声が投げられる。
「…空条、承太郎、か?」

***

マウンテン・ティムが水から上がるのに成功したのは、康一よりも下流だった。
びしょ濡れの身体でそれでも休まずにここまで歩いてきたのだが…さすがに疲労が重なり、どこかに休める場所はないかと建物の側へとやって来た所で放送が流れ出して。
結局ティムは中へは入らない事を選び、入り口の横で放送を聞いて暫し休憩をしていた所へ、承太郎が出てきたというわけだ。

主催者に爆破されたはずのその顔をティムはよく覚えている。そして何より…仗助、噴上、康一がその名前を口にしていた。仗助曰く『グレートな甥っ子』であるという男。
「…人に名前を尋ねる時は、名乗ったらどうだ」
低いがよく通る声、傷ついた身体…何よりティムの目を引いたのは怒りと悲しみの宿るダークグリーン。まるで孤高の狼…いや、それ以上か。触れれば焼きついてしまいそうなこの男が歴戦の戦士だという事はティムにも痛いほどわかった。

699 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 01:33:05 ID:rzNSHD5o
「…すまない。私はマウンテン・ティム。保安官だ」
「…空条承太郎だ。武器もスタンドも出さねえって事は、やる気はねえと思っていいか?なら、俺に関わるな」

承太郎はティムに背を向けようとした。
「…待ってくれ。一緒に…来てほしい…仲間が待ってるんだ。仗助も、裕也も…康一くんも」

ティムは食い下がった。一人でも多く協力者が欲しい。それにもし自分が主催者であるなら…見せしめに使うような人物が何処かの下っ端と言うことはないだろう。この男はかなりの影響力を持っているはずだ。

「…『エコーズ』…広瀬康一か?」
承太郎は呟いた。
「…やっぱり、知っているんだな?」
「…保安官だと言ったな?カウボーイか?」
「…ああ」

承太郎は無造作に紙を1枚取りだし、自分とティムの前に広げた。
「…なら、これで帰ればいい」

付いて行きたくはなかった。ただ、広瀬康一という人間は承太郎にとって敬意を払うべきものだ。年など関係はなく、敬うべきと思ったものを敬う。怒りの中に生まれたそれは、結果としてティムに味方した。

承太郎が背を向けた次の瞬間、その身体は僅かにバランスを失う。
空白の一瞬…それは確かに大いなる偶然だったが、ティムは見逃さなかった。頭より身体の反応の方が速く、気づくと縄を投げていた。
幸運だったのは、承太郎が反射的に身体にかかった縄を掴んだ事だ。
ティムは愛馬の首元に承太郎の上半身を、自分の背中に腰と脚をくくりつけて背負う。そのままロープの端を手に巻き付けて手綱と共に持った。

「少し重いが…頼むぞ。『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』…手荒な真似をしてすまないが…そんな眼をした奴を置いてはいけない」

承太郎は自分に起こった事に表情を変えず困惑していた。いきなり冷水を頭から被ったかのようだ。
無理矢理に、思考が引き戻されて行く。色々な事を経験してきたが…無論馬に蹴られた挙げ句、身体をバラバラにされるなどというのは初めてである。
「…」
「もし何か良からぬ事を考えてるなら、やめてくれると嬉しい。ロープが切れたら…あなたの身体がどうなるか保証しかねる。その代わり…連れていけたなら、その後で遠慮なく殴ってくれても構わない」

ティムの言葉と眼差し、その真っ直ぐさに誠実を感じた承太郎は軽く首を振った。
「…よくわからん奴だな、あんたは…」
「…俺は、『黒』を打倒したいだけだ…来てくれれば…出来るかもしれない。その為になら、力を使うことを惜しまない。頼む」

元々川尻しのぶと合流することは『今すぐ』の選択肢として承太郎の頭から消えていた。逃げおおせているならば自分が行っても意味がなく、敵に見つかっていたなら尚更しのぶが危険だ。徐倫まがいを救う事…こちらは『結果論』として頭にあった。

ティムは言葉を続ける。
「…あなたも、そんな眼をしているからには、大事なものを失ったんだろう。俺がどうこう言える立場じゃないが…俺の知っている範囲の事を話す。ひとりごとだと思って、聞いてくれ」
「…その前に」

承太郎はスタープラチナを現した。

落とされるのか?
ティムは落馬を覚悟したが、その影はティムを通りすぎた。
「…スターフィンガー!」

スタープラチナが指を振るう。その手は次の瞬間、間髪入れず真っ二つになったトランプのカードを捕まえていた。
それはもちろん、ティムの愛馬にくっついて情報収集しようとしていたムーロロのスタンドである。
「…誰か、俺達をつけてやがったようだ。くだらねえ」
「…ありがとう」
ティムは振り向いてそれを確認し、承太郎に告げた。
「…別に助けたわけじゃねえ、こいつは、『警告』だ。盗み見してる根性の曲がった奴へのな」

それがティムのものではない事はわかっていた。地下にいた時からずっと、朧気ながら何かに見られている感覚があったからだ。スタープラチナはトランプを細切れにして放り投げた。
「それに、いくらスタープラチナでこの縄を細切れにした所で…万一でも俺の胴体が泣き別れでもしたら、死んでも死にきれねえ。分の悪い賭けは嫌いじゃねえが、今それをするのは得策とは言えん」
「…では、改めて…」

ティムは自分の知る限りの事を、簡潔に述べ始めた。

700 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 01:36:23 ID:nhF2dhCo
***

シュトロハイムは、唐突に噴上の足を払った。
「…な…」
宮本と噴上とが両方驚愕した時には、シュトロハイムのその目から宮本に向けて紫外線が照射されていた。
「…う、あ…」

たまらず怯んだ隙を見逃さず…つかつかと宮本に歩み寄るとその手元にある紙を躊躇なく引っ張り、取り上げて開いたり閉じたりして確認する。

「…フンガミ、これはただの紙のようだが?」
転ばされた噴上にとってはいい迷惑だったが、これぐらいで済めば良い方だろう。
「…やっぱり騙しやがったな、宮本!」
「…っ…仕方が…なかったんだ…僕は…あいつに…」
「…やかましい。そんな事を言いながら、シュトロハイムさんの事を『観察』してたのを、俺は見逃しちゃいねえぜ…」

言って、噴上は宮本の頬に『ハイウェイ・スター』の拳を叩き込んだ。
「…ぐふ…っ」
「…それでおあいこにしてやる。とっとと、どこへでもいっちまえ」
「…うむ、よくわからんが…人質をとるような人間はこの戦いに必要なし!蜂の巣にされないうちに、去ることだな」

シュトロハイムに仕込まれた機関砲の銃口が宮本に向くと、宮本は流石にきびすを返して逃げ出した。装備自体は雲泥の差だし、何より自分の役目は果たしたのだ。
ワムウの事は気になるが、今はこれでいい。

「…フンガミ、ジョセフを探せるか?」
シュトロハイムと噴上は走り出した。

***

その戦いは、途中から純粋な殴りあいに変化した。
ジョセフと仗助、双方とも『食え』ず…また今の狭いトンネル内にいる状態では神砂嵐を使っても文字通り砂山を作りかねない。もっと良くないのは、瓦礫を風で吹き飛ばして増援を呼んでしまうことだ。
それでもクレイジー・ダイヤモンドのラッシュと、それに乗じてフェイントを掛けたジョセフの波紋入りパンチをいなしているのだから、ワムウは正に怪物と言って良かった。

紙一重の、攻防が続いた。
何回目かのやりとりの後、仗助とジョセフはワムウから距離を取る。放送が流れ出したが構っていられそうにない。
深いものはないが、手足は細かい傷だらけだ。
「…いやあ、しぶといスね…」
「…ヒトじゃないから…疲れるのを狙ってたら、ダメなんだろうぜ…何か…ないか…」
ジョセフがごそごそとデイパックを漁ると、指先が紙に触れた。
「…そういや、なんだこれ?」
引っ張り出して開いた紙の中のものを見て、笑った。

701 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 01:37:12 ID:VpUr8jU.
「…いくぜ、ワムウ!」
ジョセフはくっつく波紋で洞窟の天井からぶら下がり、奇襲をかけた。
「…そんな格好で仕掛けてきても無駄だ!」
「くらえ、波紋!」

ジョセフは左手の掌で、ワムウの頭に触れようとした。無論、黙ってさせるワムウではない。
かわした場所に、右の拳が迫る。
「くどい!」

一手遅れてやってきた仗助とクレイジーダイヤモンドのラッシュに対応すべく、ワムウは頭を僅かに振ることでそれを回避した。

―その後頭部から、波紋の衝撃。

「…ジョセフ・ジョースター…」
ワムウはよろめいた。
クレイジーダイヤモンドのラッシュを受けて、吹き飛ぶ。
「…今回もやらせていただきましたァン」
ジョセフの右の小指には糸が絡んでいた。その先には、ブリキのヨーヨー。拳で殴ると見せかけてそのヨーヨーを離し、死角から攻撃したのだ。

立ち上がったワムウは己の人差し指をこめかみに当てた。戦う事の喜びの中に、あるひとつの思いがふつふつと湧いてくる。
「…ジョセフの子よ。お前も、一人前の戦士であるのだな…」
「…あんた、どうして…」
音石から二人が親族であるとは聞いていた。確信をもったのは、一連のやりとり、そして何より何かを企んでいるようなその笑顔だ。
「…そっくりではないか…わたしは…一度ジョセフに負けたのだ。もう一度その姿を…その子供まで見られるとは、幸せだと思わんか?」

そこまで告げた所で、近くから破砕音がした。
「ジョセフ!ジョウスケ!近くにいるか!?」
「あの時のドイツ軍人か…やはり奴は足止めにならなかったようだな」

元より、ワムウはすっかり恐怖していた宮本が誰かを長時間引き留めておけるとは思っていなかった。
これ以上敵の数が増えれば正々堂々とした戦いはしにくい。声を聞いたワムウは、神砂嵐の構えを取ってバックステップを踏んだ。
「「おわっ!?」」
二人が数メートル吹き飛んだ後には風が荒れ狂い、その隙に作ったらしい瓦礫が先を阻んだ。

「…ワムウ…その気があるなら…もう一度、待ってるぜ…」
「…行こうぜ…皆が、待ってる…おーい、聞こえるか?」

(…このワムウが…ジョジョ…わたしは今かつてない程に、強くなりたいと願っているぞ。この猶予、無駄にはせん)

(ワムウにとって地下はハンデだろうな…さすがにみんなでかかって倒すってのも、なんか目覚めが悪ぃし…)

(…やれやれ、なんつーか…二人の複雑な思いって奴か?それより、早く合流しねえと)

***

膠着状態から、ナイフの飛び交う接近戦へ。
いつものビットリオであれば自傷して相手にダメージを与える所だろうが…麻薬切れで混濁した意識と、2対1の構成が中々それを許さない。
特にシーラEは…隙を与えてはならないと悟り、多少の傷を承知でヴードゥ・チャイルドを牽制に使っていた。

そして金属同士が弾かれる、音。

何度かのそれを制したのは、意外なものだった。
「…んの、っ…!」
何かに気づいたヴードゥ・チャイルドの拳が、ビットリオとエルメェスの距離を引き離す。
そこへ、「バコォン」の文字が貼り付けられてビットリオは更に吹っ飛んだ。
「「…康一!」」

吹っ飛んだビットリオの額には、唇が出来ていた。そこから、呪詛のような罵りが漏れる。
「…うるさい、うるさい、うるさい…!」
蓄積していたビットリオの精神疲労は、罵詈雑言を聞いた所で限界を迎えようとしていた。

『ドリー・ダガー』には何も映っていないように見えたが、躊躇なく額を抉ろうと刃を突き立てたその瞬間…そのスタンドは映り込んだ不安定な瓦礫の柱にダメージを反射してしまう。
「…!」
離れていた三人にはどうすることもできない。ビットリオは頭を潰されて死を遂げる事となった。

…彼の幸運は尽き、不幸が襲ったと言っても良いだろう。

【ビットリオ・カタルディ 死亡】

702 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 02:05:33 ID:.tdY8SeI
***

外と中から瓦礫をどうにかし、何とか仗助、エルメェス、噴上達は合流した。そこへ戻って来たティムと予想外の客に、仗助や康一は眼を丸くする。

けれど、仗助が「またアブねえ事してるんでしょう?」と言った時、承太郎は帽子を深く被った。
「悪いか」
「…悪いっスよ。あんた絶対無茶苦茶ばっか、するんです。わかんねえんスか?おれだって承太郎さんが傷つけば平気なわけ、ないじゃないですか。まして…おれはあんたが死んだって、思ってたんスから…」

ジョセフは何も言わなかった。
ただ、パンチが一発飛んできた。
「心配してる奴に向かってその態度は何だ」という意味合いだ。

仗助が近寄って半ば無理矢理承太郎の傷を癒していく。空条の名前に線の引かれた名簿は仗助も既に目にしている。何より双方の痣が燃えるように痛んだ。
「あんたが悲しいのも、怒ってるのもわかる。けど…一人誰かが死ぬたび、見てるホントのクソッタレはほくそ笑んでるんですよ。
殺されたそいつがいいやつとか、悪いやつとか、関係なく。それは承知して下さい。
そして少なくとも…悔しいですけど、そういう奴に『空条承太郎』は一度負けたんスよ。あれは…人形なんかじゃ、なかった」
「…だからと言って、吉良やDIOを野放しにしておくわけにはいかねえ。俺は…母親も娘も…」

顔こそ平静だが、ギスギスしだした雰囲気を元に戻したのは康一だった。
「…承太郎さん、取り敢えず…何があったか話してくれませんか?」
「…やれやれ、だ」

承太郎は全てを話す事にした。
望んだというよりは、その方が小出しに色々問われて鬱陶しいよりはマシだろうと判断したからだ。
***

「父さん、って、確かにそう言ったんだな?」
大方の話が終わった後の疑問は、承太郎にとって有らぬ方…エルメェスから聞こえてきた。
「ああ」
「…それは…F・Fかもしれない…あいつが…徐倫の記憶を…」

承太郎は息をひとつ吐き出した。
少なくとも、ここに承太郎が『敵』だとはっきり認識している者はいない。
目の前のエルメェスは、危険を承知で神父を倒すために付いてきたのだとアナスイに聞いた。
そしてF・Fの事も無論聞いて知っていたが…あの状態で思い至れというのは、流石に無理がある。
「確証はねえ。ラバーソールの奴か、他の…DIOの手下の自作自演なら、心配は無駄だ」
「…承太郎さん、あんたの『感覚』は?」
「…少なくとも、その身体自体が『生きていない』事だけはわかったが、それ以上はわからん。そんなに便利な代物じゃない」

声が僅かに怒気を含んでいた。
今の承太郎ならば余計に味方だとは考えないだろうと思いつつ、康一は承太郎に尋ねた。
「…で、肝心なDIOはどうなんですか?」
「少なくともこの近くにはいない。逆に、僅かに遠くなったように感じる」
「…そうですか…川尻さんも…心配ですね…」
「…あまり四の五の考えたくはねえが…彼女には地図がある。名前は呼ばれなかったんだろう?ならば、すぐ殺されたり落盤の下敷きになった可能性は低い。一番厄介なのは…DIOか吉良と会ったパターンだ」

実際のところ、承太郎は答えながら少し苛立っていた。逃げろと言ったのは自分だが…もし人質に取られたら厄介以外の何者でもない。そして、それは過去に起きているのだ。
「…いずれにせよ…行きましょう。何が待っていようが、みんなで行けば大丈夫です。そして、次にDIOを探しましょう」

一同の中で、ティムが唯一納得のいかない顔をしていた。
「その吸血鬼は恐らく地下か建物の中なんだろう?出会ったばかりでそうなったというなら…そんなに離れているわけではないと思う。でも…何か、おかしい」
「…何がだ?」
「主催者…スティーブン・スティール…だ。こっちの関係者というべきか…そうだ、承太郎。ファニー・ヴァレンタインという男が合衆国の大統領になったことは?」
「ねえな」
「…と言うことは、僕らと君らとは、大分違う世界という事も考えられる。そして…引っ掛かった事があるんだ。僕らの世界にも、ディオに、ジョースターもいる」
「…!?」
「…正確には、ディエゴ・ブランドー。そして、ジョニィ・ジョースター。ただ、ディエゴ…彼は人間のはずだ」
「…少なくともジョナサンはイギリス生まれだ…アメリカでレースに出ていたはずはない…スティール・ボール・ランと言ったな?そういうレースはこっちの歴史に存在しない…と言うことは、ただのDIOの信奉者とは限らなくなってくるわけか?…クソ…」

703 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 02:14:01 ID:D4Tsy5hg
承太郎が人を射殺せそうな顔で訝しんでいると、康一が顔を上げた。
「…もし、そのDIOが優勝する出来レースだったとしたら…まだ残りが随分いる中、わざわざ挨拶に出てくるのかって疑問が生じますよね…
何より、わざわざ承太郎さんに『尋ねた』事も。ブラフにしては、うっかりしてる気がするんですが。
何か裏があったとしても…知らされずに参加してると読んだ方がいいかもしれません」

「…要は吸血鬼なのだろう?このシュトロハイムがいれば…」
珍しく黙って話を聞いていたシュトロハイムが口を挟んだ。もしいつもの調子でがなっていれば、承太郎は「やかましい!」と一括し踵を返してしまったかもしれないが、静かな声だった。
「…ダメだ、シュトロハイムさん。時を止めて逃げられるのがオチって奴だぜ」
噴上が、すかさずツッコむ。

「…主催者の、目的がよくわからないね。ジョースター、ブランドー…スタンド使い、人間…殺しあわせて何がしたい?」
シーラEが、ぽつりと呟いた。空条承太郎が生きているなら、ひょっとしたら、ジョルノ様もいるのかもしれない。自分の事を知っているかはわからないが、それは二の次だ。
「…それとも、何かを探してるのか?」
仗助が大分くたびれた声で唸る。
皆を治してまわった疲労回復の意味でも、いくらかの休息は必要だ。

「いずれにせよ、俺はDIOをぶち倒しに行く。一応、あっちにも寄るつもりだからそこまでは一緒でもいい…放り出しっぱなしってのは、目覚めの良いもんじゃないからな」
「…ワムウを逃したのは痛いが…その吸血鬼とやらも問題なら、止めねばならんだろうな。仕方あるまい。肉の芽…だったか?屍生人より、よっぽどたちが悪いではないか。配下を増やされたなら厄介この上ない…救急車があったな?あれで行けば速かろう。点検したら、出かけるとするか」

シュトロハイムは立ち上がった。
***

ジョセフは承太郎から大方の話を聞くと、エリナを埋葬しに行った。この先何があるかわからないので、少しでも早く安心して眠らせてやりたかったのだ。
「…エリナ…おれは…」
丸い石を墓標に…近くに咲いていた小さな花を手向けて、ジョセフはただ目を瞑った。

「…そろそろ行くぜ、ジョセフ」
呼びに来たのは、仗助だった。
「…なんか改めて奇妙な体験してるよなぁ、俺ら…これが殺しあいじゃなけりゃ、笑ってどんちゃん騒ぎしたいとこだけどな」

ジョセフは苦笑いするとその場を後にした。

***

ぞろぞろと、男たちは救急車に乗り込む。マウンテン・ティムはその時、紙を承太郎に渡した。
「…乗ったら読んでくれ」

エルメェスの運転で救急車は走る。シーラEが助手席に陣取り、後ろはそれぞれが見張る…いくらか定員オーバーだが致し方あるまい。その後ろから、マウンテン・ティムが愛馬にまたがってついてきた。念のため、救急車の後ろは開け放たれている。

「…」
この首輪にカメラらしいものがないのはスティーリー・ダンの首輪を拾った時にスタープラチナで確認済だ。承太郎は紙を開いた。
『首輪の仕組みがわかれば、能力を組み合わせて外せるかもしれない。そうすれば、光が見えてくる』
小さくそう書かれた文字を一瞥し、車の左側の窓からスタープラチナの眼で外から何か不振な動きがないか見張り始める。
右側はシュトロハイムが引き受け、後ろは噴上。ジョセフと仗助は、休憩しながらお互いの傷を癒している。
仗助が時計を見れば、針が3時を指そうとしていた。

―目指すは、空条邸。

704 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/30(日) 02:15:38 ID:.tdY8SeI
以上です。長くなるので状態表は本投下の時に追加します。

矛盾等あれば指摘願います。

705名無しさんは砕けない:2014/03/30(日) 21:28:31 ID:qoHLQziw
投下乙です

706名無しさんは砕けない:2014/03/30(日) 21:55:48 ID:Sgs49tk6
仮投下乙です。
チと上から目線になりますが、ご容赦ください。

まず状態表について。
今回の仮投下のように参加者たちの場所、持ち物、行動指針が大きく変化したような作品では無いとちょっと把握が難しい部分があります。
また他の書き手さんが投下した際に現在地などが被ってしまった、というような事態を避けるためにも状態表は必要だと思います。
少なくとも『仮投下だから』『長くなるから』という理由で省くべきではないと思います。

次に本文について。
矛盾点はワムウが「あの時のドイツ軍人」と言っていますが、彼とシュトロハイムが会ったことはありません(原作でもロワ内でも)。
他におかしな点は見られませんでしたが、文章の粗さがちょっと目立ちます。
特に後半、情報交換の辺りは何(あるいは誰)の話をしているのか主語が無いのでわかりにくい箇所があります。
この場であまりとやかく言うことではないので、一度批評スレに持っていくのもいいかもしれません。

あと、個人的に気になったのはキャラの呼称について。

ワムウの一人称がわたし
噴上がシュトロにさん付け
ワムウや仗助、シュトロがジョセフを『ジョセフ』と呼んでいる(ワムウに至っては一箇所だけ『ジョジョ』のまま)

……など、前の話と比べると結構違いがあります。
書き手さん全員に呼称を統一しろとまでは言いませんが、ここまで違うと違和感を覚える人もいるということは知っていただきたいです。
作品内のキャラの心境の変化、あるいは書き手さんのこだわりが特に無い場合は前の話と同一にした方がいいのではないでしょうか。

以上、失礼と感じたら申し訳ありません。
作品自体は面白かったため、本投下お待ちしております。

707名無しさんは砕けない:2014/03/30(日) 22:33:29 ID:DpW5F0Ys
投下乙です。
誤字脱字は見当たりませんでした。
矛盾点も個人的にはないと思いました。



承太郎がやさぐれながらもらしくてかっこいい。
三部のイメージに近づいてる感じで、でもまっすぐじゃない感じが表現できてていいなと思いました。
ティムとの会話、康一くんのリスペクトらへんに大人の落ち着きもあって素敵です。
あとジョセフの一言も個人的に胸に来ました。
二部のお気楽っぽさが表現できてていいなぁと思いました。

情報がシュッと整理されてて、次の話でぐわッといけそうな話ですね。
続々と広がるDIO軍団に対抗するかのように結集するジョースターズに胸が高鳴ります。

708状態表追加 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/31(月) 01:17:28 ID:A.xY1trw
【B-4 古代環状列石(地上)/1日目 午後】

【チーム名:HEROES+α】

【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:痛みと違和感、疲労(小)
[装備]:ライター、家/出少女のジャックナイフ
ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3
ランダム支給品3〜5(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.…。
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸へ向かう。
[備考]
※織笠花恵の支給品の中に『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』が含まれていました。
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。
※全て納得してついてきているわけではありません。今後どうするかはチームの動き次第です。

【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミー』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:痛み、体力消耗(小)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0.ゴーストライダー・イン・ザ・スカイから辺りを見張る。
1.空条邸へ向かう。
2.協力者を探す。

※ゴーストライダー・イン・ザ・スカイを空条承太郎から譲り受けました。
※自分の能力+承太郎の能力で首輪が外せないか?と考えています。ただ万一の事があるのでまだ試す気にはなっていません。

【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:全身疲労(小)、痛み
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.ちきしょう、こうなりゃ何処までも行くぜ!
1.空条邸へ向かう。
2.F・F…おまえなのか?

※ビットリオの持っていたデイパックがB-4のどこかに埋もれています。

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.ジョルノ様が生きている?
1.空条邸へ向かう
2.このまま皆で一緒にいれば、ジョルノ様に会えるかも?
[備考]
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。

709状態表その2 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/31(月) 01:19:08 ID:aSmCRBU.
【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:痛み、貧血気味、体力消耗(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.色々考える事はありそうだけど…まず、今は川尻さんを…
1.空条邸へ向かう。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.協力者を集める。

【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
0.柱の男だけが脅威ではないのか…?
1.周りに警戒する。
2.空条邸へ向かう。

【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:痛み
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0.何だか大所帯になってきたな…
1.空条邸へ向かう。
2.協力者を集める。

【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:健康
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×4、不明支給品4〜7(全未確認/アダムス、ジョセフ、エリナ)
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずチームで行動。殺し合い破壊。
0.ワムウ…エリナ…
1.空条邸へ向かう。
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる
[備考]
エリナの遺体をB-4に埋葬しました。
母ゾンビの支給品がブリキのヨーヨーでした。

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷(応急処置済、波紋治療中)、疲労(中)
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
0.ジョセフ・ジョースター……ジジイ、か。
1. 承太郎さん…
2. 空条邸へ向かう。
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

※仗助が傷を塞いで回り、その間にチーム内で放送内容やこれまでに会った者などの情報交換が行われました。
そのやりとりの中でチームメンバーは多かれ少なかれ空条承太郎が悲しみと怒りに囚われていることに気づきました。そして、誰かが見張っている事を知らされています。

※救急車はD-4空条邸(地上)に向けて疾走中。ティムの馬で並走できる位なので、速さの目安はスクーター程度でしょう。

710状態表その3 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/31(月) 01:22:39 ID:A.xY1trw
【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、左耳たぶ欠損
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.取り敢えず逃げる。
1.ワムウの表情が心に引っかかっている
[備考]
※考えなしに逃げています。ワムウと会えるかはわかりません。

【ワムウ】
[能力]:『風の流法』
[時間軸]:第二部、ジョセフが解毒薬を呑んだのを確認し風になる直前
[状態]:疲労(小)、身体ダメージ(中)、身体あちこちに波紋の傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:JOJOとの再戦に向けて己を磨く。
0.ジョジョ…
1.強者との戦いを求め地下道を探索。
2.カーズ様には会いたくない。
3.カーズ様に仇なす相手には容赦しない。
4.12時間後、『DIOの館』でJ・ガイルと合流。

711 ◆3yIMKUdiwo:2014/03/31(月) 01:28:19 ID:A.xY1trw
>>706
御指摘等ありがとうございました。修正したいと思います。とりあえず状態表を出しておきました。


ワムウの基本行動方針の変更(前回よりそれらしい動きもあったので)、備考に色々追加。今は各施設を回る暇はなさそうなので、その辺も一応抜いてあります。

712 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 22:59:07 ID:vVoIiY0w
仮投下させていただきます

713ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 22:59:49 ID:vVoIiY0w
僕はまず、トリッシュと少し話をしようと思った。その前にトリッシュから話しかけてきた。

「ねぇフーゴ。あなたはいつの時代から来たの?」
トリッシュは不安げに僕に話してきた。

「!トリッシュもそれに気付いていましたか。僕は2001年の○月×日から来ました。トリッシュ、あなたは?」
僕は驚きながら聞き返した。

「私はあなたが来たホンの数日前だわ。ほとんど一緒ね。ということは本当の世界でのアバッキオやナランチャやブチャラティの事も………」
彼女は悲しそうな目をしながら尋ねてきた。

「知ってるよ。詳しくは知らないけどね。とりあえずナランチャの知ってる辺りまでを話しておこう」
僕は落ち着きながら言った。

「あとフーゴ。…………この世界でブチャラティが死んだわ」
彼女は震える声でそう告げた。

「えっ!?ブチャラティが……。これもナランチャには黙っておこう。放送の時にはバレてしまうが今言ったらさらに混乱させてしまう」
僕は彼女を落ち着かせるように諭した。

「あちらの方から何か感じる気がする」
ジョナサンがふと言った。
ジョナサンのその一言で、D7の方に歩く事にした。
トリッシュが話すには、ボスとトリッシュはお互いの存在を何か感覚でわかるらしい。
ジョナサンの親族ならば、会ったら協力してもらえるであろうという考えである。

「ところで、君は寒いのかい?波紋で治してあげよう」
ジョナサンが歩き始めてからすぐにトリッシュに問い、波紋で治した。

「!!ありがとう。は……もん?なに?それは?」
トリッシュは疑問そうに尋ねた。

ナランチャにエアロスミスで警戒してもらいながら、僕たちは情報交換を歩きながら行った。
SBRの事や、フーゴ達が居た世界の事(ナランチャが知っている所まで)や、ジョナサンが居た時代の事や、玉美の居た時代の事や、ここに来てからの事について話した。

714ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 23:00:23 ID:vVoIiY0w
「ちょっとまってくれ、フーゴ。つまりは僕たちは時代を越えてここに呼ばれてるって事か?」
ジョサナンが確かめるように僕に聞いてきた。

「僕の考えではね、ジョナサン。どう考えても言ってる事が食い違いすぎる。偶然そこの変な男と僕たちは時代が近かったようですけどね」
僕は横目でその男をチラッと見、話した。

「変な男って俺の事かよ!お前。なにいってくれて
「玉美うっさい。フーゴの話を邪魔しないで」
トリッシュが少し怒りながら言った。

「すみません、トリッシュ殿。さあさあ話を続けてください」
調子が変わったかの様に玉美は喋った。

「つまりよぉ〜、ジョルノやミスタやブチャラティが俺らを知らない可能性もあるわけってことか?難しいけどよぉ〜」
ナランチャが難しい顔をしながら聞いてきた。

「そうですが、それより先が重要なんです。僕たちを知らなければ攻撃してくるかもしれませんし」
僕はナランチャにわかりやすいように喋った。

「だけどそんなんわかんねぇじゃねぇか〜」
ナランチャがお手上げのような顔をしながら言った。

「今それの対策を考えようとして

『時刻は12時、正午の時間だ。第二回放送を始める。』

「!放送だ。とりあえずそこら辺でメモをとらないと。ナランチャだけじゃなくて他の皆も警戒を頼む!僕はメモをとる」
僕は皆に素早く伝えた。

『ロバート・E・O・スピードワゴン』
(スピードワゴン。違う時代から来たとしても死んでしまったのは悲しいな)

『ウェカピポ』
(ウェカピポ!死んでしまったの!?)

『ブローノ・ブチャラティ』
『レオーネ・アバッキオ』

「えっ!?ブチャラティが何で死んでんだよぉぉぉぉぉぉ!!
なんでアバッキオが今呼ばれてんだよぉぉぉぉぉ!フーゴぉぉぉぉ!
さっき呼ばれたんじゃなかったのかよぉぉぉぉ!どういう事だよぉぉぉぉ!!
説明してくんなきゃわかんねぇよぉぉぉ!」
ナランチャが動揺しながら叫んだ。

「落ち着いてください。ナランチャ。そ、それはですね」
僕は素早く脳を動かしながら口を開いた。
(どう言えばいい!?アバッキオがこんなにはやく死ぬなんて予想外過ぎる!)

フーゴが困っていたその時だった。

「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
そこには何故か指を突き出す妙な男が居た。

715ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 23:01:40 ID:vVoIiY0w
****************************

《第二放送が始まる10分か20分前の事、D−7路上にて》

アナスイと僕は情報交換をした。ここに来る前の時代の事、ここに来てからの事。その途中で時代の食い違いに気づいた。
もしかしたらサウンドマンも昔から連れてこられたのではないか、D4Cの能力ではないではないのか?そうも考えた。
これらを歩きながらおこなった。僕がある方向から何か感じたからだ。彼の知り合いもそのようなものがあったらしい。
同じ血族とかでそのようなことがあるらしい。 同じ血族なら問題ないであろう、と考え向かう事にした。
そちらの方に行ってから目的地に行けばいい、との話になった。
幸い何も起きずに進めた。
それらを第ニ放送が入った時にやめた。居た場所の近くの隠れられる場所でとりあえずアナスイにメモをとってもらい、僕は警戒をすることにした。
放送の最中子供の大声が聞こえた。

「アナスイ、僕が見てくるからそこにいてくれ」
僕はアナスイにそう言い向かおうとした

「いや、ジョニィ。放送が終わったらにしよう。もうすぐ終わる筈だ。」
アナスイは僕に少し動揺しながら言った。
(ウェザーとプッチが死んだ!?)

『諸君らの健闘を祈って!グッドラック!』

「物しまったか?アナスイはそこにいてくれ。いざというときにそなえて」
僕はそう素早く言い向かった。

「わかった。頼むぞ。」
アナスイが僕の後ろからそう告げた。

「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
僕はタスクを出す態勢になり叫んだ。

716ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 23:02:28 ID:vVoIiY0w
******************************

「!!てんめぇ、何もんだぁぁぁぁぁ!」
ナランチャがそう言い、スタンドを出そうとしたときに何かを突き抜ける音がした。

「スタンドも出すな!次何かしたら体を狙うぞ!」
そう相手が言った時、僕のバックに穴が空いていた。

「あなた、まさかこのスタンド、ジョニィ・ジョースター!?SBRの選手の!?」
トリッシュが嬉しそうにさけんだ。

「君は何で僕の事を?」
ジョニィは疑問に思いながら問いかけてきた。

「ルーシーやウェカピポに会ったの!彼らがジャイロ・ツェペリやあなたは頼っていい人だと言っていたわ!」
トリッシュは説得するかのように彼に喋りかけた

「そうか、ルーシーやウェカピボが。なら質問する、ルーシーは何のスタンドを持ってた?」
ジョニィは態勢を崩さないまま聞いてきた。

全く僕にはわからない。ルーシーはスタンドを持っていたのか!?そんな話聞いてないが。

「いえ、彼女はスタンドを持ってなかったわ」
トリッシュは何も迷いもなく言った。

「よし、信用しよう。彼女と争ったのなら確実にはわからない情報だ」
ジョニィもまた何も迷いなく言った。

ただのハッタリだったのか。

「おい、ジョニィ」
髪が長い男が出てきて、ジョニィに話しかけた。

「大丈夫だ。それに彼らの目からジャイロの輝きと同じような物がある。そこの大男からはさっきから言ってる感覚があるしな」
ジョニィは髪が長い男に返事をしていた。

「よくわかんないけどあの二人は味方なのか?」
ナランチャがトリッシュに聞いた。

「ええ、そうよ。」
トリッシュが簡潔に答えた。トリッシュ、ナランチャの扱いうまくないか?

「まあとりあえずそこの家に入って情報交換しましょうよ」

僕は皆にそう言いバックを持つついでに中身をみた。
ウォッチタワーのカードが二枚ともジョニィのスタンドでうちぬかれていた。
これなら持っててもしょうがないだろうと捨てた。

******************************

「なあ、君はなんて名前なんだ?」
僕は家についたので、僕は大男に名前を尋ねてみた。

「僕はジョナサン・ジョースターさ」
彼はそう気軽に答えた。

「な、なにーーーーーー!」
僕は驚き、叫んだ。

To Be Continued

717ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 23:03:08 ID:vVoIiY0w
【D-7 南西、家】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.あれがジョニィ?情報交換をしよう。しかし僕に何か似てる
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.知り合いも過去や未来から来てるかも?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ジョニィ?味方みたいだから、エアロスミスで警戒してるから情報交換しようぜ!
1.ブチャラティが死んで今アバッキオの名が呼ばれた?どういうことだよフーゴ(今は忘れています)
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな
【備考】
ナランチャは警戒をしていたため情報交換の時にろくに話を聞いていません

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
0.あれがジョニィ?とりあえず情報交換だ
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーの持っていた分がうちぬかれたためムーロロが何かしてこない限り連絡はできません)。
3.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは。
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2はタスクで穴が開いたので捨てられました

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.ジョニィ!!とりあえず情報交換
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
4.玉美、うっさい

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.あの二人は味方か?トリッシュ殿にまかせよう。

【備考】
彼ら四人はアバッキオ以降の放送を聞いていません
彼らはSBR関連の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)

718ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 23:03:24 ID:vVoIiY0w
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.とりあえず目の前のやつらと情報交換だ。


【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小) 、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。D4C以外でどうやって
4.D4Cの能力で連れてこられたんじゃない?
5.情報交換をしよう
【備考】
ジョニィとアナスイはお互いにいた時代の事について情報交換をしました。
ジョニィは警戒をしていて放送をろくに聞いていません

719ありえない筈の遭遇 ◆jNtKvKMX4g:2014/03/31(月) 23:04:50 ID:vVoIiY0w
以上で仮投下終了です。何か矛盾やアドバイスなどありましたらお願いします

720 ◆vvatO30wn.:2014/04/01(火) 01:34:23 ID:PZHDnxGc
お二人とも、仮投下乙です。

◆3yIMKUdiwo様
2つめの作品でこの人数を動かすのはすごいことだと思います。お疲れ様でした。
「バトル描写が薄めなので書き足すかも」との事で、それは大変嬉しいですが、
情報交換の描写の方も、人数が多い分少々わかり辛いので、もう少し詳しく書いて頂けると助かります。
キャラクターの数が多いのにセリフのみが連続するシーンが多いので、地の文を増やすと誰のセリフかがわかりやすくなるでしょう。
特に、今回の話は一部キャラクターが放送を挟んで3時間も経過しているので、ある程度の時間経過が感じられる方がいいですね。
あと、状態表で宮本、ワムウの物がHEROSのものと連続してありますが、これだとこのふたりもHEROSに加わって一緒に行動していることになりってしまいます。
(つまり、ワムウが地上にいることになってしまう。死ぬwwwww)
別パーティの状態表に移る前には、【座標&地名/1日目 午後】 ←この表記を付け直さないといけません。
さらに、ビットリオが死んでいるので【残り 51人】これも必要です。
どこにという決まりは特にありませんが、【ビットリオ・カタルディ 死亡】のあとか、状態表の手前か、SSの最後尾かの三択でしょうね。

◆jNtKvKMX4g様
前回より格段に良くなってますよ。
さらなるアドバイスというのも無いことは無いですが、これ以上は作品批評スレの出番でしょう。
作品批評スレは基本的に本投下された作品への批評になるので、さらなる文章力を求めるならば、まず本スレに投下するところからでしょうね。
本作品は、充分本投下に耐えうる出来だと思います。
本投下され、wikiに収録され、そのあと批評スレでの意見を参考に加筆したい場合は、wiki内で文章を編集することもできます。
(そこで大きな変更がある場合、修正用スレを活用して報告すればおk)

ただ、ひとつ矛盾点に気がつきました。
最後にタスクの流れ弾がフーゴのデイパック内のウォッチタワーに命中しているのですが、そもそもこの時点でフーゴのデイパック内にウォッチタワーがいるのか?という点です。
148話:大乱闘の時、ムーロロはウォッチタワーを『完全撤退』させています。
つまり、一旦ウォッチタワー全部回収しています。
これがDIOと遭遇直前で、つまり放送直前。
そして、フーゴがジョニィの攻撃を受けたのは、放送を跨いだ直後の出来事です。
この時間差でムーロロの元からフーゴのデイパック内へ戻ってくるのは不可能でしょう。

もちろんリレー前のフーゴの状態表にはウォッチタワーが入ってますが、これは時間帯が午前の話。
時間にして最低2時間の空白時間があります。
その間にウォッチタワーはフーゴの元を去った、と考えるのが妥当でしょう。

ムーロロの自由すぎるウォッチタワーを放置しすぎた弊害が出た、といったところでしょうか?(笑)

描写するなら、放送前の情報交換のシーンのどこかに、ウォッチタワーがフーゴの元を去る様子を追加する、ってのが適当かと思います。
フーゴに一言断ってから去ったのか、それともいつの間にか勝手にいなくなっていたのか、そのへんはお任せしますが……



また長々と書いてしまいましたが、少しでもおふたりの力になれたらいいなと思い、レスを考えました。
なんかエラソーに言ってる奴がいるな、とでも思ってください。

721星環は英雄の星座と為すか? ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:24:49 ID:oreqhulw

「…」
ダークグリーンの眼に映る、太陽。
空条承太郎が地上に出てきたのは、結局の所道が他に無かったという単純な理由だった。歩き出して間もなく、上へ行く階段が現れたのだ。

開け放ったその大きな扉の横合いから、声が投げられる。
「…空条、承太郎、か?」

***

マウンテン・ティムが水から上がるのに成功したのは、康一よりも下流だった。
びしょ濡れの身体でそれでも休まずにここまで歩いてきたのだが…さすがに疲労が重なり、どこかに休める場所はないかと建物の側へとやって来た所で放送が流れ出して。
結局ティムは中へは入らない事を選び、入り口の横で放送を聞いて暫し休憩をしていた所へ、承太郎が出てきたというわけだ。

主催者に爆破されたはずのその顔をティムはよく覚えている。そして何より…仗助、噴上、康一がその名前を口にしていた。仗助曰く『グレートな甥っ子』であるという男。
「…人に名前を尋ねる時は、名乗ったらどうだ」
低いがよく通る声、傷ついた身体…何よりティムの目を引いたのは怒りと悲しみの宿るダークグリーン。まるで孤高の狼…いや、それ以上か。触れれば焼きついてしまいそうなこの男が歴戦の戦士だという事はティムにも痛いほどわかった。

「…すまない。私はマウンテン・ティム。保安官だ」
「…空条承太郎だ。武器もスタンドも出さねえって事は、やる気はねえと思っていいか?なら、俺に関わるな」

承太郎はティムに背を向けようとした。
「…待ってくれ。一緒に…来てほしい…仲間が待ってるんだ。仗助くんも、裕也くんも…康一くんも」

ティムは食い下がった。一人でも多く協力者が欲しい。もし自分が主催者であるなら…見せしめに使うような人物が何処かの下っ端と言うことはないだろう。かなりの影響力を持っているはずだ。

「…『エコーズ』…広瀬康一か?」
承太郎は呟いた。
「…やっぱり、知っているんだな?」
「…保安官だと言ったな?カウボーイか?」
「…ああ」

承太郎は無造作に紙を1枚取りだし、自分とティムの前に広げた。
「…なら、これで帰ればいい」

付いて行きたくはなかった。ただ、広瀬康一という人間は承太郎にとって敬意を払うべきものだ。年など関係はなく、敬うべきと思ったものを敬う。怒りの中に生まれたそれは、結果としてティムに味方した。

承太郎が背を向けた次の瞬間、その身体は僅かにバランスを失う。
空白の一瞬…それは確かに大いなる偶然だったが、ティムは見逃さなかった。頭より身体の反応の方が速く、気づくと縄を投げていた。
幸運だったのは、承太郎が反射的に身体にかかった縄を掴んだ事だ。
ティムは愛馬の首元に承太郎の上半身を、自分の背中に腰と脚をくくりつけて背負う。そのままロープの端を手に巻き付けて手綱と共に持った。

「少し重いが…頼むぞ。『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』…手荒な真似をしてすまないが…そんな眼をした奴を置いてはいけない」

承太郎は自分に起こった事に表情を変えず困惑していた。いきなり冷水を頭から被ったかのようだ。
無理矢理に、思考が引き戻されて行く。色々な事を経験してきたが…無論馬に蹴られた挙げ句、身体をバラバラにされるなどというのは初めてである。
「…」
「もし何か良からぬ事を考えてるなら、やめてくれると嬉しい。ロープが切れたら…あなたの身体がどうなるか保証しかねる。その代わり…連れていけたなら、その後で遠慮なく殴ってくれても構わない」

ティムの言葉と眼差し、その真っ直ぐさに誠実を感じた承太郎は軽く首を振った。
「…よくわからん奴だな、あんたは…」
「…俺は、『黒』を打倒したいだけだ…来てくれれば…出来るかもしれない。その為になら、力を使うことを惜しまない。頼む」

元々川尻しのぶと合流することは『今すぐ』の選択肢として承太郎の頭から消えていた。逃げおおせているならば自分が行っても意味がなく、敵に見つかっていたなら尚更しのぶが危険だ。徐倫まがいを救う事…こちらは『結果論』として頭にあった。

ティムは言葉を続ける。
「…あなたも、そんな眼をしているからには、大事なものを失ったんだろう。俺がどうこう言える立場じゃないが…俺の知っている範囲の事を話す。ひとりごとだと思って、聞いてくれ」
「…その前に」

承太郎はスタープラチナを現した。

722 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:26:24 ID:c/zwmW3g

落とされるのか?
ティムは落馬を覚悟したが、その影はティムを通りすぎた。
「…スターフィンガー!」

スタープラチナが指を振るう。その手は次の瞬間、間髪入れず真っ二つになったトランプのカードを捕まえていた。
それはもちろん、ティムの愛馬にくっついて情報収集しようとしていたムーロロのスタンドである。
「…誰か、俺達をつけてやがったようだ。くだらねえ」
「…ありがとう」
ティムは振り向いてそれを確認し、承太郎に告げた。
「…別に助けたわけじゃねえ、こいつは、『警告』だ。盗み見してる根性の曲がった奴へのな」

それがティムのものではない事はわかっていた。地下にいた時からずっと、朧気ながら何かに見られている感覚があったからだ。スタープラチナはトランプを細切れにして放り投げた。
「それに、いくらスタープラチナでこの縄を細切れにした所で…万一でも俺の胴体が泣き別れでもしたら、死んでも死にきれねえ。分の悪い賭けは嫌いじゃねえが、今それをするのは得策とは言えん」
「…では、改めて…」

ティムは自分の知る限りの事を、簡潔に述べ始めた。

***

シュトロハイムは、唐突に噴上の足を払った。
「…な…」
宮本と噴上とが両方驚愕した時には、シュトロハイムのその目から宮本に向けて紫外線が照射されていた。
「…う、あ…」

たまらず怯んだ隙を見逃さず…つかつかと宮本に歩み寄るとその手元にある紙を躊躇なく引っ張り、取り上げて開いたり閉じたりして確認する。

「…フンガミ、これはただの紙のようだが?」
転ばされた噴上にとってはいい迷惑だったが、これぐらいで済めば良い方だろう。
「…やっぱり騙しやがったな、紙使い!」
「…っ…仕方が…なかったんだ…僕は…あいつに…」
「…やかましい。そんな事を言いながら、シュトロハイムの事を『観察』してたのを、俺は見逃しちゃいねえぜ…」

言って、噴上は宮本の頬に『ハイウェイ・スター』の拳を叩き込んだ。
「…ぐふ…っ」
「…それでおあいこにしてやる。とっとと、どこへでもいっちまえ」
「…うむ、よくわからんが…人質をとるような人間はこの戦いに必要なし!蜂の巣にされないうちに、去ることだな」

シュトロハイムに仕込まれた機関砲の銃口が宮本に向くと、宮本は流石にきびすを返して逃げ出した。装備自体は雲泥の差だし、何より自分の役目は果たしたのだ。
ワムウの事は気になるが、今はこれでいい。

「…フンガミ、ジョジョを探せるか?」
シュトロハイムと噴上は走り出した。
***

その戦いは、途中から純粋な殴りあいに変化した。
ジョセフと仗助、双方とも『食え』ず…また今の狭いトンネル内にいる状態では神砂嵐を使っても文字通り砂山を作りかねない。もっと良くないのは、瓦礫を風で吹き飛ばして増援を呼んでしまうことだ。
それでもクレイジーダイヤモンドのラッシュと、それに乗じてフェイントを掛けたジョセフの波紋入りパンチをいなしているのだから、ワムウは正に怪物と言って良かった。

紙一重の攻防が続いた。
何回目かのやりとりの後、仗助とジョセフはワムウから距離を取る。放送が流れ出したが、構っていられそうにない。
深いものはないが、手足は細かい傷だらけだ。
「…いやあ、しぶといスね…」
「…ヒトじゃないから…疲れるのを狙ってたら、ダメなんだろうぜ…何か…ないか…」
ジョセフがごそごそとデイパックを漁ると、指先が紙に触れた。
「…そういや、なんだこれ?」
引っ張り出して開いた紙の中のものを見て、笑った。

「…いくぜ、ワムウ!」
ジョセフはくっつく波紋で洞窟の天井からぶら下がり、奇襲をかけた。
「…そんな格好で仕掛けてきても無駄だ!」
「くらえ、波紋!」

ジョセフは左手の掌で、ワムウの頭に触れようとした。無論、黙ってさせるワムウではない。
かわした場所に、右の拳が迫る。
「くどい!」

一手遅れてやってきた仗助とクレイジーダイヤモンドに対応すべく、ワムウは頭を僅かに振ることでそれを回避した。

―その後頭部から、波紋の衝撃。

「…ジョセフ・ジョースター…」
ワムウはよろめいた。
クレイジーダイヤモンドのラッシュを受けて、吹き飛ぶ。
「…今回もやらせていただきましたァン」
ジョセフの右の小指には糸が絡んでいた。その先には、ブリキのヨーヨー。拳で殴ると見せかけてそのヨーヨーを離し、死角から攻撃したのだ。

723 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:28:18 ID:c/zwmW3g

立ち上がったワムウは己の人差し指をこめかみに当てる。
一度、これと似た攻撃をされた事があった。確かアメリカンクラッカー…とか言うものだったか。その時は身体を変形させる余裕があったが、今はなかった。
即ち、それは仗助のクレイジーダイヤモンドのラッシュのスピードの速さを物語っている。
戦う事の喜びの中に、あるひとつの感慨がふつふつと湧いてきた。
「…ジョジョの子よ。お前も、一人前の戦士であるのだな…」
「…あんた、どうして…」
音石から二人が親族であるとは聞いていた。確信をもったのは、一連のやりとり、そして何より何かを企んでいるようなその笑顔だ。
「…そっくりではないか…俺は…一度ジョジョに負けたのだ。もう一度その姿を…その子供まで見られるとは、幸せだと思わんか?」

そこまで告げた所で、近くから破砕音がした。
「ジョジョ!ジョウスケ!近くにいるか!?」
「増援か…やはり奴は足止めにならなかったようだな」

元より、ワムウはすっかり恐怖していた宮本が誰かを長時間引き留めておけるとは思っていなかった。
これ以上敵の数が増えれば正々堂々とした戦いはしにくい。声を聞いたワムウは、神砂嵐の構えを取ってバックステップを踏んだ。
「「おわっ!?」」
二人が数メートル吹き飛んだ後には風が荒れ狂い、その隙に作ったらしい瓦礫が先を阻んだ。

「…ワムウ…その気があるなら…もう一度、待ってるぜ…」
「…行こうぜ…皆が、待ってる…おーい、聞こえるか?」

(…このワムウが…ジョジョ…ジョウスケ…俺は今かつてない程に、強くなりたいと願っているぞ。この猶予、無駄にはせん)

(ワムウにとって地下はハンデだろうな…さすがにみんなでかかって倒すってのも、なんか目覚めが悪ぃし…)

(…やれやれ、なんつーか…二人の複雑な思いって奴か?俺も巻き込まれてるし…今はそれより、早く合流しねえと)

***

膠着状態から、ナイフの飛び交う接近戦へ。
いつものビットリオであれば自傷して相手にダメージを与える所だろうが…麻薬切れで混濁した意識と、2対1の構成が中々それを許さない。
特にシーラEは…隙を与えてはならないと悟り、多少の傷を承知でヴードゥ・チャイルドを牽制に使っていた。

そして金属同士が弾かれる、音。

何度かのそれを制したのは、意外なものだった。
「…んの、っ…!」
何かに気づいたヴードゥ・チャイルドの拳が、ビットリオとエルメェスの距離を引き離す。
そこへ、「バコォン」の文字が貼り付けられてビットリオは更に吹っ飛んだ。
「「…康一!」」

吹っ飛んだビットリオの額には、唇が出来ていた。そこから、呪詛のような罵りが漏れる。
「…うるさい、うるさい、うるさい…!」
蓄積していたビットリオの精神疲労は、罵詈雑言を聞いた所で限界を迎えようとしていた。

『ドリー・ダガー』には何も映っていないように見えたが、躊躇なく額を抉ろうと刃を突き立てたその瞬間…そのスタンドは映り込んだ不安定な瓦礫の柱にダメージを反射してしまう。
「…!」
離れていた三人にはどうすることもできない。ビットリオは頭を潰されて死を遂げる事となった。

…彼の幸運は尽き、不幸が襲ったと言っても良いだろう。

【ビットリオ・カタルディ 死亡】

724 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:32:30 ID:akSYiJP6
***

外と中から瓦礫をどうにかし、何とか仗助、エルメェス、噴上達は合流した。
そこへ戻って来たティムと予想外の客に、仗助や康一は眼を丸くする事になる。

けれど、仗助が「またアブねえ事してるんでしょう?」と言った時、承太郎は帽子を深く被った。
「悪いか」
「…悪いっスよ。あんた絶対無茶苦茶ばっか、するんです。わかんねえんスか?おれだって承太郎さんが傷つけば平気なわけ、ないじゃないですか。まして…おれはあんたが死んだって、思ってたんスから…」

ジョセフは何も言わなかった。
ただ、パンチが一発飛んできた。
「心配してる奴に向かってその態度は何だ」という意味合いだ。

仗助が近寄って半ば無理矢理承太郎の傷を癒していく。空条の名前に線の引かれた名簿は仗助も既に目にしている。何より双方の痣が燃えるように痛んだ。
「あんたが悲しいのも、怒ってるのもわかる。けど…一人誰かが死ぬたび、見てるホントのクソッタレはほくそ笑んでるんですよ。
殺されたそいつがいいやつとか、悪いやつとか、関係なく。それは承知して下さい。
そして少なくとも…悔しいですけど、そういう奴に『空条承太郎』は一度負けたんスよ。あれは…人形なんかじゃ、なかった」
「…だからと言って、吉良やDIOを野放しにしておくわけにはいかねえ。俺は…母親も娘も…」

表情や口調こそ平静だが、その後ろにある殴りあいが始まりそうな雰囲気を仲裁したのは康一だった。
「…承太郎さん、取り敢えず…何があったか話してくれませんか?」
「…やれやれ、だ」

承太郎は全てを話す事にした。
望んだというよりは、その方が小出しに色々問われて鬱陶しいよりはマシだろうと判断したからだ。
***

「父さん、って、確かにそう言ったんだな?」
これまでの放送内容と情報交換が粗方終わった後漏れた、その疑問の声。それは承太郎にとって意外な人物…エルメェスからのものだった。
「ああ」
「…それは…F・Fかもしれない…あいつが…徐倫の記憶を…」

エルメェスは背中を預けていた石柱から背中を離す。冷たかったはずのそれには、すっかり温もりが移っていた。

承太郎は息をひとつ吐き出す。
少なくとも、ここに承太郎が『敵』だとはっきり認識している者はいない。
エルメェスは、危険を承知で神父を倒すために付いてきたのだとアナスイに聞いた。
そしてF・Fの事も無論聞いて知っていたが…あの状態で思い至れというのは、流石に無理がある。

725 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:34:56 ID:akSYiJP6
「確証はねえ。ラバーソールの奴か、他の…DIOの手下の自作自演なら、心配は無駄だ」
「…承太郎さん、あんたの『感覚』でもわからなかったのか?」
エルメェスは再度尋ねる。

「…少なくとも、徐倫まがいのその身体自体が『生きていない』事はわかったが、それ以上はわからん。そんなに便利な代物じゃねえ」
声が僅かに苛立ちを含んでいた。この男は冷静に怒っている、と声を聞いた誰もが察し、考える。
承太郎がその徐倫まがいを味方(若しくはそうなれる者)ではないと思いたいのは自然だ。いっそ、その方がすっきりするだろう。
『よくも娘を冒涜したな』と、殴りかかれば良いのだから。
それにしても、まず探し出さねばならないが。

暫し場は沈黙に包まれる。次に口を開いたのは康一だった。
「…近くにDIOを感じますか?」承太郎は緩く首を振った。
「少なくとも奴はこの近くにはいない。逆に、僅かに遠くなったように感じる」
「…そうですか…川尻さんも…心配ですね…」
その返答に、承太郎は僅かに顔をしかめる。
「…あまり四の五の考えたくはねえが…彼女には地図がある。名前は呼ばれなかったんだろう?ならば、すぐ殺されたり落盤の下敷きになった可能性は低い。一番厄介なのは…DIOか吉良と会ったパターンだ」
確かに逃げろと言ったのは自分だが…もし人質に取られたら厄介以外の何者でもない。そして、それは過去に起きているのだ。

「…いずれにせよ…行きましょう。承太郎さんの家って言うのがちょっと皮肉みたいですけど…これも何かに引かれているなら、必要なのかもしれません。
何が待っていようが、みんなで行けば大丈夫です。そして、次にDIOを探しましょう」
康一が軽く頷きながら告げ、一同も納得したように顔を見合わせる。その中でティムが唯一納得のいかない顔をしていた。
「そのDIOという吸血鬼は恐らく地下か建物の中にいるんだろう?出会ったばかりで戦闘になったというなら…そこからとんでもなく離れているわけではないと思う。それはそれでいいんだが…」
「…何だ?」
承太郎は尋ねた。
「主催者…スティーブン・スティールの事だ。彼はこっちの関係者というべきなんだが…そうだ、承太郎。ファニー・ヴァレンタインという男が合衆国の大統領になったことは?」
「ねえな」
ティムは顎に手を当てる。
「…と言うことは、僕らと君らとは、大分違う世界という事も考えられるな。
もうひとつ…引っ掛かった事があるんだ。君には俺がスティール・ボール・ランの参加者だったと話したが、そのレースにはディエゴ・ブランドー、そして、ジョニィ・ジョースターの二人が同じように参加して優勝争いをしていた。
ブランドーにジョースター…偶然にしては妙だろう?ただ、ディエゴ…彼は人間のはずだ。さもなければ、とっくに塵になっている」
「…少なくとも俺の祖先…ジョナサンはイギリス生まれだ。確か1890年と言ったな?その年にアメリカでレースに出ていたはずはない。出られたはずがないんだ。第一そのレース自体がこっちの歴史には存在しないもの…
と言うことは、DIOの信奉者が主催者を操っている、もしくは結託しているとは限らなくなってくるわけか?…クソ…」

出られたはずはない、というのはその前の年にジョナサンはこの世を去っているからだ。
承太郎が言いながら人を射殺せそうな顔で訝しんでいると、康一が顔を上げた。
「…もし、そのDIOが優勝する出来レースだったとしたら…まだ残りが随分いる中、わざわざ挨拶に出てくるのかって疑問が生じますよね…
何より、わざわざ承太郎さんに『尋ねた』事も。ブラフにしては、うっかりしてる気がするんですが。
何か裏があったとしても…知らされずに参加してると読んだ方がいいかもしれません」

726 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:36:33 ID:akSYiJP6
そこで、珍しく黙って話を聞いていたシュトロハイムが口を挟んだ。いつもの調子でがなっていれば、承太郎は「やかましい!」と告げて踵を返してしまったかもしれないが、その声は静かだった。

「…要は吸血鬼なのだろう?このシュトロハイムがいれば…」
「…ダメだぜ、シュトロハイム。時を止めて逃げられるのがオチって奴だ」
噴上が、すかさずツッコむ。

「…いずれにせよ、主催者の目的がよくわからないね。ジョースター、ブランドー…スタンド使い、人間…殺しあわせて何がしたい?」
シーラEがぽつりと呟いた。空条承太郎が生きているなら、ひょっとしたら、ジョルノ様もいるのかもしれない。自分の事を知っているかはわからないが、それは二の次だ。
「…それとも、何かを探してるのか?」
仗助が大分くたびれた声で唸る。
情報交換しているうちに皆を治して回っていたので、口を出せないでいたのだ。まあ承太郎が仗助より未来からやって来たらしいとわかった時点で、説明する事もなかったのだが。

「いずれにせよ、俺はDIOをぶち倒しに行く。一応、あっちにも寄るつもりだからそこまでは一緒でもいい…放り出しっぱなしってのは、目覚めの良いもんじゃないからな」
パズルのピースが足りないようだが、自分のやる事に変わりはない…そう自分に言い聞かせて承太郎は帽子を被り直す。

「…ワムウを逃したのは痛いが…その吸血鬼とやらも問題なら、止めねばならんだろうな。仕方あるまい。肉の芽…だったか?屍生人より、よっぽどたちが悪いではないか。配下を増やされたなら厄介この上ない…救急車があったな?あれで行けば速かろう。点検したら、出かけるとするか」

そう言ってシュトロハイムは立ち上がった。

***

ジョセフは承太郎から粗方の話を聞くと、エリナを埋葬しに行っていた。この先何があるかわからないので、少しでも早く安心して眠らせてやりたかったのだ。
「…エリナ…おれは…」
丸い石を墓標に、近くに咲いていた小さな花を手向けてジョセフはただ目を瞑った。

「…そろそろ行くぜ、『ジジイ』」
呼びに来たのは仗助だった。
親父と呼ぶにはやはり違和感がある。かといって、ジョセフと呼ぶのも何か他人行儀なような気がしたのだ。

「仗助ちゃん、俺まだ新婚なんだけどォ?…まあいいか。しっかし俺ら、改めて奇妙な体験してるよな…これが殺しあいじゃなけりゃ、笑ってどんちゃん騒ぎしたいとこなんだけどなあ…」

子供に、孫。
しかも、孫に至っては自分より年上と来る。
(…しっかし…こいつはともかく…なんつーか堅物な孫が出来たもんだ…リサリサの血かねえ?)

ジョセフは苦笑いすると、仗助と並んでそこを後にした。

***

ぞろぞろと、男たちは救急車に乗り込む。マウンテン・ティムはその時、紙を承太郎に渡した。
「…乗ったら読んでくれ」

エルメェスの運転で救急車は走る。シーラEが助手席に陣取り、後ろはそれぞれが見張る…いくらか定員オーバーだが致し方あるまい。その後ろから、マウンテン・ティムが愛馬にまたがってついてきた。念のため、救急車の後ろは開け放たれている。

「…」
この首輪にカメラらしいものがないのはスティーリー・ダンの首輪を拾った時にスタープラチナで確認済だ。承太郎は紙を開いた。
『首輪の仕組みがわかれば、能力を組み合わせて外せるかもしれない。そうすれば、光が見えてくる』
小さくそう書かれた文字を一瞥し、車の左側の窓からスタープラチナの眼で外から何か不振な動きがないか見張り始める。
右側はシュトロハイムが引き受け、後ろは噴上。ジョセフと仗助は、休憩しながらお互いの傷を癒している。
仗助が時計を見れば、針が3時を指そうとしていた。

―目指すは、空条邸。

【残り 51人】

727 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:40:42 ID:x8eFMNkM
【B-4 古代環状列石(地上)/1日目 午後】

【チーム名:HEROES+α】

【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:痛みと違和感、疲労(小)
[装備]:ライター、家/出少女のジャックナイフ
ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3
ランダム支給品3〜5(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.…。
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸へ向かう。
[備考]
※織笠花恵の支給品の中に『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』が含まれていました。
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。
※全て納得してついてきているわけではありません。今後どうするかはチームの動き次第です。
※カンノーロ・ムーロロの『ウォッチタワー』を1枚切り裂きました。どのカードかは次にムーロロのSSを書かれる方にお任せします。

【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミー』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:痛み、体力消耗(小)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0.ゴーストライダー・イン・ザ・スカイから辺りを見張る。
1.空条邸へ向かう。
2.協力者を探す。

※ゴーストライダー・イン・ザ・スカイを空条承太郎から譲り受けました。
※自分の能力+承太郎の能力で首輪が外せないか?と考えています。ただ万一の事があるのでまだ試す気にはなっていません。

【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:全身疲労(小)、痛み
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.ちきしょう、こうなりゃ何処までも行くぜ!
1.空条邸へ向かう。
2.F・F…おまえなのか?

※ビットリオの持っていたデイパックがB-4のどこかに埋もれています。

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.ジョルノ様が生きている?
1.空条邸へ向かう
2.このまま皆で一緒にいれば、ジョルノ様に会えるかも?
[備考]
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:痛み、貧血気味、体力消耗(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.色々考える事はありそうだけど…まず、今は川尻さんを…
1.空条邸へ向かう。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.協力者を集める。

【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
0.柱の男だけが脅威ではないのか…?
1.周りに警戒する。
2.空条邸へ向かう。

728 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:41:15 ID:reKdEhn2
【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:痛み
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0.何だか大所帯になってきたな…
1.空条邸へ向かう。
2.協力者を集める。

【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:健康
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×4、不明支給品4〜7(全未確認/アダムス、ジョセフ、エリナ)
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずチームで行動。殺し合い破壊。
0.ワムウ…エリナ…
1.空条邸へ向かう。
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる
[備考]
エリナの遺体をB-4に埋葬しました。
母ゾンビの支給品がブリキのヨーヨーでした。

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷(応急処置済、波紋治療中)、疲労(中)
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
0.ジョセフ・ジョースター……ジジイ、か。
1. 承太郎さん…
2. 空条邸へ向かう。
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

※仗助が傷を塞いで回り、その間にチーム内で放送内容やこれまでに会った者などの情報交換が行われました。
そのやりとりの中でチームメンバーは多かれ少なかれ空条承太郎が悲しみと怒りに囚われていることに気づきました。そして、誰かが見張っている事を知らされています。

※救急車はD-4空条邸(地上)に向けて疾走中。ティムの馬で並走できる位なので、速さの目安はスクーター程度でしょう。

【B-4 古代環状列石(地下)/1日目 午後】

【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、左耳たぶ欠損
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.取り敢えず逃げる。
1.ワムウの表情が心に引っかかっている
[備考]
※考えなしに逃げています。ワムウと会えるかはわかりません。

【ワムウ】
[能力]:『風の流法』
[時間軸]:第二部、ジョセフが解毒薬を呑んだのを確認し風になる直前
[状態]:疲労(小)、身体ダメージ(中)、身体あちこちに波紋の傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:JOJOやすべての戦士達の誇りを取り戻すために、メガネの老人(スティーブン・スティール)を殺す。
0.ジョジョ…ジョウスケ…
1.ジョジョ達との再戦を誓い、更なる強者との戦闘を求め地下道を探索。
2.カーズ様には会いたくない。
3.カーズ様に仇なす相手には容赦しない。
4.12時間後、『DIOの館』でJ・ガイルと合流。

729 ◆3yIMKUdiwo:2014/04/02(水) 18:45:11 ID:reKdEhn2
>>721より、2度目の仮投下です。前回より修正と、後半分かりにくいと指摘された箇所等加筆致しました。矛盾点などあれば御指摘下さい。

重ねて、アドバイスありがとうございます。

730◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 18:53:24 ID:FPhvpxK2
タルカス、イギー、ジョルノ・ジョバァーナ、DIO、ヴァニラ・アイス、ジョニィ・ジョースター、ナルシソ・アナスイ、ジョナサン・ジョースター、パンナコッタ・フーゴ、ナランチャ・ギルガ、トリッシュ・ウナ、小林玉美を予約した者です。
仮投下します。

名前の欄はIDにしているんですが、これでいいのでしょうか…。

731血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 18:56:25 ID:FPhvpxK2
ジョニィ・ジョースター、アナスイと合流したジョナサン、フーゴ、ナランチャ、トリッシュ、玉美は、改めてお互いの話をした。
 アナスイの怪我はジョナサンが波紋である程度治療し、今は何とか足を引き摺らずに歩けるほどに回復していた。

「やはり…ここにいるみんなは、時間を飛び越えて集まっているのか…」
 ジョニィの呟きに、フーゴが頷く。
「ええ、そのようです。あなたの話が本当なら、その大統領が怪しいようですね」
「ああ。おそらく、スティール氏は無理に命令を聞かされているだけだと思う。彼の婚約者、ルーシーを人質に取られて」
「なんてことだ…!婚約者を人質に取るなんて…ッ!」
 ジョナサンはそう憤って拳を握った。

 ジョニィはそっとジョナサン・ジョースターを見やる。

 ジョナサン・ジョースター。同じ名前。同じ名前だ。しかし、自分は彼とは面識がない。そして、自分とはまったく似ていない。大きくたくましい身体に、紳士的な態度。
 彼から感じるものはある。だが、彼と自分との繋がりは、一体なんなのだろうか。

732血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 18:59:36 ID:FPhvpxK2
 そのジョナサンが、ジョニィの方を向いた。
「そういえば…ディエゴ・ブランドーというのは、騎手なんだよね?」
 ディエゴ、という名前に、ジョニィの動揺が大きくなる。
「あ…ああ。そうだけど」
「いや…似た名前の知り合いがいるんだが…違ったようだ」
「…そうか」
「君は」
 ジョナサンは、そこで一度言葉を止めた。
「…君は。ジョースターという性だけれど…僕と君とは、何か関係があるのかな?」
 ジョナサンの言葉に、ジョニィは少し考えて、かぶりを振った。
「ないと思う。ジョナサン、なんて名前は僕の家系にはいなかった。きっと、偶然だろう」
 ジョニィは大事な言葉をあえて飲み込んで、そう言った。わざわざ本当は同じ名前だということを明かす必要はない。余計な混乱を招くだけだ。
ジョナサンはそれでもまだ納得できないように眉を寄せたが、すぐに笑顔を見せて手を差し出した。
「でも、僕はやっぱり君に何かを感じるんだ。もしかしたら、どこかで血がつながっているのかもしれない。ジョナサン・ジョースターだ。よろしく」
「…ああ」
 ジョニィは指先だけでジョナサンに触れた。その手が普通に触れ合ったことを確認して、今度こそ強くジョナサンの手を取る。

“別の世界から来た自分”ではないことに、安堵して。

733血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 19:03:22 ID:FPhvpxK2

 一方、改めて話を聞かされたナランチャはフーゴに喰ってかかっていた。

「ブチャラティが…。おい、なんでそれをオレに言ってくれなかったんだ!!」
「すみません、ナランチャ。その話はもう終わっています。君が聞いてなかっただけですよ…」
「はぁあ!?なんだよソレ!!」
 ぶんぶんと子どものように拳を振り、ナランチャは暴れる。それをフーゴは宥めている。

 トリッシュは、そんな彼らの姿をため息をつきながら、それでも微笑ましい気持ちで見つめていた。

 ナランチャ・ギルガは、ブチャラティと同じように、かつてボスとの戦いで命を落とした。
 そのことを、フーゴは彼に伝えていないらしい。そんなことを知れば、ナランチャが混乱すると思ってのことだろう。トリッシュも同じ意見だ。
 何となく、ナランチャは『頼りになる仲間』ではなく、『手のかかる弟』のように感じてしまう。以前と全く変わらない様子のナランチャに、トリッシュは安心感を覚えていた。
 しかし、その傍らにいるフーゴの雰囲気は、随分と変わっていた。トリッシュとフーゴが共に行動していたのはわずかな時間である。しかし、それでも変化に気付いてしまうほど、フーゴの顔つきは変わっていた。何と言うか、『覚悟』のようなものが、できていた。
 フーゴはかつてボスに反抗することを拒否し、ブチャラティチームを抜けた。そのことについて思うところはあるし、その後彼がどうなったのか、トリッシュは知らない。それでも、“かつてブチャラティ達と行動を共にしていたこと”と、“覚悟を決めた今の彼”は信頼に値する。

 トリッシュは、なおもフーゴに言い詰めるナランチャを見た。
 ブチャラティが死んだことが、よほどショックだったのだろう。
 そろそろ仲裁に入ろうかと思ったところで、ナランチャが一際大きな声を上げた。

「でもよォ、おかしいんだよ。やっぱり、アバッキオがさっき呼ばれたのは!」

734血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 19:06:34 ID:FPhvpxK2

「何かの手違いではありませんか?向こうが呼び間違えたか、何かでしょう」

(―――?)
 耳に入ってきた会話に、トリッシュは首を傾げた。
 放送が、間違いだった?そんなことが起こりえるのだろうか?妙にはっきりと否定したフーゴの様子も気になる。

「はん、仲間同士でもめるなんざ、何やってんだか。ねえ、トリッシュ様?」
「あんたはちょっと黙ってなさい」
 玉美に釘をさし、トリッシュはさっと周りを見回した。
 ジョニィは何か考えていたのか聞いておらず、アナスイは身体を休めることに専念し目を閉じていた。
 今の妙なやりとりを聞かれていたら、疑いの目が彼に向いていただろう。
トリッシュにはフーゴが何か理由があってそう言っているのが分かったが、他の者はそうではない。

 傍でフーゴとナランチャのやり取りを聞いていたジョナサンだけが、気になったのか間に割って入る。
「いや、待ってくれフーゴ。それはさすがに――」
 フーゴが、すっと人差し指を自分の唇にあてた。その意図に気付き、ジョナサンは黙る。
 それを見たフーゴは、みんなに聞こえる声で言った。
「どうやら、落し物をしてしまったようです。ジョナサン、すみませんが、ついて来てくれませんか?ついでに、この周囲に人がいないか探しましょう」
「…分かった」
 突然の提案だったが、ジョナサンは頷いた。
「お、おい!フーゴ!話は終わってねーぞ!!」
「ナランチャ。ブチャラティの話はトリッシュに聞いてくださいね」
 文句を言うナランチャをかわし、フーゴとジョナサンは二人だけで外に出ようとする。

「待ってくれ。落し物?そんなもののために二人だけで行くなんて…」
「そうだそうだ!」
 何も知らないジョニィが抗議の声を上げ、意味もなく玉美が賛成する。玉美は何かフーゴに恨みでもあるのだろうか?
(まったく、仕方ないわね)
 トリッシュはフーゴとジョニィの間に入り、ジョニィを押しとどめた。
「時間までに帰らなければ、先に行くわ。それでいい?」
「ああ。すまない」
 フーゴとジョナサンは頷き、外に出ていく。

 頼りになる二人が抜け、急に家の中がしんとする。
 トリッシュは、残ったメンバーを見回した。
 ナランチャ、ジョニィ、アナスイ、そして変態。
「…………」

 トリッシュ・ウナは、ちょっとだけ頭を抱えたくなった。

735血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 19:09:55 ID:FPhvpxK2

【D-7 南西、家】
【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ブチャラティ、アバッキオ…!!
1. 放送まちがいとかふざけんな!!
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.フーゴとジョナサンに早く帰ってきてほしい。
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
4.玉美、うっさい

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.あの二人は味方か?トリッシュ殿にまかせよう。

【備考】
彼らはSBR関連の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)

【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(中程度に回復)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.とりあえず目の前のやつらと情報交換だ。


【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小) 、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。僕と彼との関係は?
【備考】
ジョニィとアナスイは、トリッシュ達と情報交換をしました。第二回の放送の内容も聞いています。

736血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 19:19:25 ID:FPhvpxK2

 ジョルノ達は、ヴァニラ・アイスの案内によって無事に教会へとついた。

「何だ、誰もいないぞ…?」
 がらんとした教会の様子に、タルカスが首をかしげる。
「ここに、DIOがいるんですか?」
「DIO“様”だ。正確には、ここの地下に、だ。ジョルノ、中に入ることができるのはお前だけだ。他の者はここで待っていろ」
 冷たく言い放つヴァニラ・アイスに、タルカスが吠える。
「待てッ!ジョルノだけとはどういうことだ!!オレ達も共に行かせてもらうぞ!!」
(げエェ――ッ!!冗談じゃねえ、オレはDIOになんか会いたくねえぞ!!)
 イギーの心の声は、当然のことながら誰にも聞こえない。
「従えないのなら、ここで…」
 ヴァニラ・アイスの殺気が膨れ上がる。

「落ち着いてください。僕なら大丈夫です」

 タルカスを制し、ジョルノが一歩前に出た。そして、胸のブローチをはずす。
「僕に何かあったら、このテントウムシで知らせます。どうかこのまま待っていてください。もし、このテントウムシに異変があったら…」
「分かった。オレがすぐお前を助けに行く」
 力強く言い切るタルカスに、ジョルノは苦笑した。ジョルノはタルカスに『逃げろ』と言うつもりだったのだが、この様子では言ったとしても聞かないだろう。
「それでは、行ってきます」
「ああ。気をつけろよ」

 ヴァニラ・アイスは教会の地下へと続く扉を開けた。ジョルノは彼と共に地下へ降りていく。
 明かりは所々にある蝋燭だけで、視界は悪い。ジョルノは時々壁に手をつきながら、地下を進んでいった。

「……」
「……」
 この間、どちらも無言だった。

ヴァニラ・アイスは、たとえジョルノがDIO の息子だったとしても、そこに何の感情も浮かばない。
 大事なのはDIOの意思のみ。殺せと言われれば殺す。守れと言われれば守るだけだ。

 また、ジョルノも、むやみにDIOについて聞くようなことはしなかった。自分の目で相手を判断すると決めていたからだ。


 ヴァニラ・アイスの足が、急に止まる。

737血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 19:53:37 ID:FPhvpxK2

「DIO様。ジョルノ・ジョバァーナを連れて来ました」
 ヴァニラ・アイスがそう告げる。ジョルノは暗闇の奥を見つめた。
 しかし見えるものはなく、暗闇の奥から声だけが響く。
「そうか。よくやった、ヴァニラ・アイス。お前の仕事が一番早かったぞ―――」
「………!」

 『よくやった』――――『よくやった』―――――!
 その言葉だけで、ヴァニラ・アイスは歓喜に震えた。
(やはり、DIO様は私を一番信頼しておられる。あのムーロロとかいう男よりも、マッシモ・ヴォルペとかいう男よりも、私を…!!)
 ヴァニラ・アイスはDIOの忠実な部下である。主君がどう思っていようと、主君のために動くことに変わりはない。だが、この時ヴァニラ・アイスはその考えを忘れ、ただ喜びを噛みしめた。

 わずかな蝋燭の明かりに、DIOの艶めかしい唇だけが浮かび上がる。そして。

「もういいぞ、ヴァニラ・アイス」

 ―――同行者を、始末しろ―――

 声には出さず、ジョルノからは見えない位置でそう唇を動かした。

「はっ!!」
 内心は喜びに打ち震えながら、ヴァニラ・アイスは元の道を戻り始めた。

◆◆◆

「………」
 ジョルノは緊張した面持ちで暗闇を見詰める。

「よく来たな、ジョルノ」
「…ええ、はい。父さん」
「―――そうか、知っているのだな」
 男の態度は、まるで久しぶりに息子に会ったかのようなものだった。しかし、親子の対面はこれが初めてである。心のうちにするりと入り込まれるような感覚に、ジョルノの体は自然と強張った。

 相手がニセモノである場合を考え、ここに来るまでの間、こっそりと周囲の壁や小石に触れ、仕込みはしておいた。しかし。
 目の前にいる男は、父だ。
 そう、自分の血が叫んでいる。
 トリッシュもディアボロが自分の父だと分かったし、その血によって奴がどこにいるかも感知することができた。それが、自分の身にも起きているのだ。

 そのことに、ジョルノは動揺していた。

 いつものジョルノなら、DIOという男を観察し、どういう人間か見抜いていただろう。
 だがこの時、ジョルノは冷静さを欠いていた。
 これまで、彼は『家族』というものにあまりに縁が薄かった。
 母も養父もジョルノを蔑ろにしてきたし、実父に至ってはもう会えないと思っていた。
 ジョルノはずっと父の写真を持ち歩いてきた。いつか会いたいとか、そんなはっきりとした理由があったわけではない。ただ、本当の父親なら義理の父のように暴力をふるうことはないだろうという幼い頃の幻想が、まだそこには息づいていたのだ。

 ほんのわずかな、髪の毛一本ほどの、親愛の情。

 それゆえ、ジョルノは目の前の男の邪悪さに気付くのが――――遅れてしまった。

738血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 19:54:44 ID:FPhvpxK2
【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会】
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発、『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロング・ウォッチタワー』 のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョルノ・ジョバァーナの血を吸う。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。


【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのK
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.タルカスとイギーを始末する。

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.この男が…DIO…。
2.ミスタ、ミキタカと合流したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
4.ブチャラティ…… アバッキオ……
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。

【タルカス】
[時間軸]:刑台で何発も斧を受け絶命する少し前
[状態]:健康、強い決意?(覚悟はできたものの、やや不安定)
[装備]:ジョースター家の甲冑の鉄槍
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:スミレの分まで戦い抜き、主催者を倒す。
1.ジョルノが心配だ。
2.ブラフォードを殺す。(出来る事なら救いたいと考えている)
3.主催者を殺す。
4.育朗を探して、スミレのことを伝える
5.なぜジョルノは自分の身分などを知っていたのか?
※スタンドについての詳細な情報を把握していません。(ジョルノにざっくばらんに教えてもらいました)

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.放せ! やめろぉぉぉお!!
2.ちょっとオリコーなただの犬のフリをしておっさん(タルカス)を利用する。
3.花京院に違和感。
4.煙突(ジョルノ)が気に喰わない

739血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 20:10:03 ID:FPhvpxK2

 ジョナサンは、フーゴからアバッキオの真相を聞いて驚いた。

「そうか…アバッキオが、あの大男に…」
「そうなんです。しかし、それをナランチャに言うことはできなくて…」
 ジョナサンは大きく頷いた。今の不安定な状態のナランチャに、実はあの大男がアバッキオだったのだ、と打ち明けるのは、酷だ。
「分かった。そういうことなら、僕も手伝おう。もうどちらも亡くなっているんだ。ナランチャがこれ以上悲しまないよう、協力するよ」
 そう言うと、フーゴはほっと息を吐きだした。
「ありがとうございます。それと、もう一つ…」
「なんだい?」
「敵のスタンド能力が、時間を飛び越えるものだという話はしましたよね?…ですから、言います。ナランチャは、僕の知っている時間では死んでいる」
「な…!?」
「もちろん、彼はあなたの言っていた吸血鬼だとか屍生人ではありません。彼は…」
「時間を飛び越えて、彼が生きている時間からここへ連れてこられた、と…?」
「はい、そうです。ジョナサンの理解が早くて助かりました」
 フーゴにとって、それはついでのような話題だった。重荷を一つ下ろし、そのはずみでつい口に出してしまったような。
 だが、そのことはジョナサンにとっては大きな意味を持つ。
「いや…僕も、その可能性を考えていなかったわけではないんだ。エリナのこと…父のこと…。彼らが時間を飛び越えてきたとしたら、全ての辻褄が合う。合って、しまう…」
 なるべく、考えないようにしていた。他人であってくれと、心から願っていた。
 もし。エリナが、自分と結婚した後にここに連れて来られていたとしたら。もし、父が生きている時間からここに連れて来られていたとしたら。
 そして、もし。『ジョースター』という名の人間たちが、自分の知らない、自分の子や孫であったなら。

「僕は…知らないうちに、多くの家族を…失っていたのか…?」

740血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 20:10:50 ID:FPhvpxK2

 茫然と呟くジョナサンに、フーゴは自分の失態に気付いた。

 いくらジョナサンでも、自分の家族が巻き込まれて気丈でいられるほど、強くはないのだ。
「………すみません、僕は…」
「いや、いいんだ。おかげで気持ちの整理がついた。ありがとう、フーゴ」
 ジョナサンは無理に笑顔を見せ、足を止めた。
「さて、随分戻ってきてしまったね。そろそろ帰ろうか。きっとみんな心配しているよ」
「…はい」

 フーゴは頷いたが、まだ心残りがあった。ムーロロのウォッチ・タワーと接触できていないのだ。

 フーゴは、ただジョナサンと話がしたかったわけではない。ムーロロのスタンドがフーゴを探しに戻ってきていないか、確かめる必要があったのだ。
 だが、いまだに彼のスタンドは姿を見せない。
 ムーロロに何かあったのだろうか。スタンドを向かわせることのできない何かが。そう考えると、いなくなる前から何か様子がおかしかったように思う。
 嫌な予感に、フーゴは身震いする。
 状況はどんどん悪くなっていく。信用できる人間は死に、敵は人質を手に入れた。
 果たして、我々に勝機はあるのだろうか――――?

「……なんだろう…?」
 ジョナサンがふと呟いた。
「どうかしましたか?」
「向こうから、何か感じるんだ…。ジョニィのときのような、何かを。それも、彼より強いものを、二つも…!!」
「それは…!」
 はっとフーゴも息をのむ。ジョナサンは走り出した。
「だめです!トリッシュ達と合流してから向かいましょう!!」
 フーゴは慌ててジョナサンを追う。二人で外に出ようと提案したのはフーゴだが、それはわずかな時間だけと思っていたからだ。二人だけでは、敵と遭遇した時の危険度が跳ねあがる。
「頼む!!」
 ジョナサンが叫ぶ。
 その瞳には、深い悲しみが浮かんでいた。

「頼む、行かせてくれないか…。嫌な予感がする。誰かに、命の危機が迫っている!もう、僕の家族が死ぬのは、嫌なんだ…!」
 それは、今まで聞いたことのない悲痛な叫びだった。
 必死なジョナサンに、いくつもの顔が重なる。
 ナランチャ。アバッキオ。トリッシュ。ミスタ。ブチャラティ。
 そして、なぜか一番強く重なったのは、ジョルノ・ジョバァーナだった。彼の悲愴な表情など、一度も見たことがないはずなのに。

「…分かりました。僕も行きます」
「―――すまない」



 二人は、西―――サン・ジョルジョ・マジョーレ教会へとひた走る。

741血の絆◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 20:11:32 ID:FPhvpxK2

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.これ以上、誰かを死なせたくない。
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.知り合いも過去や未来から来てるかも?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?


【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーが二枚とも消えたため今の所はムーロロには連絡できません)
3.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。
4.ムーロロの身に何か起こったのか?
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2はムーロロの元に帰り、消えました。

742◇ifjNZ1Hg:2014/04/19(土) 20:16:59 ID:FPhvpxK2

以上で仮投下終了です。
矛盾点やお気づきの点について、ご指摘をお願いします。

743 ◆BW2tPRCYkg:2014/04/19(土) 22:53:20 ID:FPhvpxK2
申し訳ありません。血の絆◇ifjNZ1Hg を投下した者です。
遅くなりましたが、トリップをつけました。
◆BW2tPRCYkg ←こちらになります。
ご指摘などはこちらでお願いします。

744名無しさんは砕けない:2014/04/20(日) 21:59:02 ID:BlpxVVqs
仮投下乙です
あちこちでジョースターを中心に話が展開しつつありますね。次が待ち遠しくなるような構成で良いと思います。

745 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:33:22 ID:rwqSzagw
『血の絆』を仮投下した◆BW2tPRCYkgです。
自分の不手際でキーワードを晒してしまったので、トリップを変えました。
もう本当に…申し訳ありません…。

説明部分を増やしたので、もう一度仮投下します。

746血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:37:02 ID:rwqSzagw
【D−7 南西、家】

 ジョニィ・ジョースター、アナスイと合流したジョナサン、フーゴ、ナランチャ、トリッシュ、玉美は、改めてお互いの話をした。
 アナスイの怪我はジョナサンが波紋である程度治療し、今は何とか足を引き摺らずに歩けるほどに回復していた。

「やはり…ここにいるみんなは、時間を飛び越えて集まっているのか…」
 ジョニィの呟きに、フーゴが頷く。
「ええ、そのようです。あなたの話が本当なら、その大統領が怪しいようですね」
「ああ。おそらく、スティール氏は無理に命令を聞かされているだけだと思う。彼の婚約者、ルーシーを人質に取られて」
「なんてことだ…!婚約者を人質に取るなんて…ッ!」
 ジョナサンはそう憤って拳を握った。

 ジョニィはそっとジョナサン・ジョースターを見やる。

 ジョナサン・ジョースター。同じ名前。同じ名前だ。話を聞いてみると、ほとんど同じ時代から来ているようだった。しかし、自分は彼とは面識がない。そして、自分とはまったく似ていない。大きくたくましい身体に、紳士的な態度。
 D4Cで連れて来られたのか、と疑ったが、それにしては別人のように違っている。
 彼から感じるものはある。だが、彼と自分との繋がりは、一体なんなのだろうか。

 そのジョナサンが、ジョニィの方を向いた。
「そういえば…ディエゴ・ブランドーというのは、騎手なんだよね?」
 ディエゴ、という名前に、ジョニィの動揺が大きくなる。
「あ…ああ。そうだけど」
「いや…似た名前の知り合いがいるんだが…違ったようだ」
「…そうか」
「君は」
 ジョナサンは、そこで一度言葉を止めた。
「…君は。ジョースターという性だけれど…僕と君とは、何か関係があるのかな?」
 ジョナサンの言葉に、ジョニィは少し考えて、かぶりを振った。
「ないと思う。ジョナサン、なんて名前は僕の家系にはいなかった。きっと、偶然だろう」
 ジョニィは大事な言葉をあえて飲み込んで、そう言った。わざわざ本当は同じ名前だということを明かす必要はない。余計な混乱を招くだけだ。
ジョナサンはそれでもまだ納得できないように眉を寄せたが、すぐに笑顔を見せて手を差し出した。
「でも、僕はやっぱり君に何かを感じるんだ。もしかしたら、どこかで血がつながっているのかもしれない。ジョナサン・ジョースターだ。よろしく」
「…ああ」
 ジョニィは指先だけでジョナサンに触れた。その手が普通に触れ合ったことを確認して、今度こそ強くジョナサンの手を取る。

“別の世界から来た自分”ではないことに、安堵して。

747血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:39:50 ID:rwqSzagw



 一方、改めて話を聞かされたナランチャは、フーゴに喰ってかかっていた。

「ブチャラティが…。おい、なんでそれをオレに言ってくれなかったんだ!!」
「すみません、ナランチャ。その話はもう終わっています。君が聞いてなかっただけですよ…」
「はぁあ!?なんだよソレ!!」
 ぶんぶんと子どものように拳を振り、ナランチャは暴れる。それをフーゴは宥めている。

 トリッシュはそんな彼らの姿を、ため息をつきながら、それでも微笑ましい気持ちで見つめていた。

 ナランチャ・ギルガは、ブチャラティと同じように、かつてボスとの戦いで命を落とした。
 そのことを、フーゴは彼に伝えていないらしい。そんなことを知れば、ナランチャが混乱すると思ってのことだろう。トリッシュも同じ意見だ。
 何となく、ナランチャは『頼りになる仲間』ではなく、『手のかかる弟』のように感じてしまう。以前と全く変わらない様子のナランチャに、トリッシュは安心感を覚えていた。
 しかし、その傍らにいるフーゴの雰囲気は、随分と変わっていた。トリッシュとフーゴが共に行動していたのはわずかな時間である。しかし、それでも変化に気付いてしまうほど、フーゴの顔つきは変わっていた。何と言うか、『覚悟』のようなものが、できていた。
 フーゴはかつてボスに反抗することを拒否し、ブチャラティチームを抜けた。そのことについて思うところはあるし、その後彼がどうなったのか、トリッシュは知らない。それでも、“かつてブチャラティ達と行動を共にしていたこと”と、“覚悟を決めた今の彼”は信頼に値する。

 トリッシュは、なおもフーゴに言い詰めるナランチャを見た。
 ブチャラティが死んだことが、よほどショックだったのだろう。自分だって、彼のことを思い出すとまぶたの裏が熱くなる。そう簡単に、割りきれるものではない。
 そろそろ仲裁に入ろうかと思ったところで、ナランチャが一際大きな声を上げた。

「でもよォ、おかしいんだよ。やっぱり、アバッキオがさっき呼ばれたのは!」

「何かの手違いではありませんか?向こうが呼び間違えたか、何かでしょう」
(―――?)
 耳に入ってきた会話に、トリッシュは首を傾げた。
 放送が、間違いだった?そんなことが起こりえるのだろうか?妙にはっきりと否定したフーゴの様子も気になる。

748血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:42:10 ID:rwqSzagw

「はん、仲間同士でもめるなんざ、何やってんだか。ねえ、トリッシュ様?」
「あんたはちょっと黙ってなさい」
 玉美に釘をさし、トリッシュはさっと周りを見回した。
 ジョナサンと話を終えたジョニィは、何かを考えていたのか聞いておらず、アナスイは身体を休めることに専念し、目を閉じていた。
 トリッシュはほっとした。
 今の妙なやりとりを聞かれていたら、疑いの目が彼に向いていただろう。
 ジョニィもアナスイも、大事な人がこの殺し合いに巻き込まれているのだ。
 トリッシュには、フーゴが何か理由があってそう言っているのが分かったが、他の者はそうではない。

 傍でフーゴとナランチャのやり取りを聞いていたジョナサンだけが、気になったのか間に割って入る。
「いや、待ってくれフーゴ。それはさすがに――」
 フーゴが、すっと人差し指を自分の唇にあてた。その意図に気付き、ジョナサンは黙る。
 それを見たフーゴは、みんなに聞こえる声で言った。
「どうやら、落し物をしてしまったようです。ジョナサン、すみませんが、ついて来てくれませんか?ついでに、この周囲に人がいないか探しましょう」
「…分かった」
 突然の提案だったが、何かを察したジョナサンは頷いた。

 しかし、他の人間はさすがに納得できない。
「お、おい!フーゴ!話は終わってねーぞ!!」
「ナランチャ。ブチャラティの話はトリッシュに聞いてくださいね」
 文句を言うナランチャをかわし、フーゴとジョナサンは二人だけで外に出ようとする。
「待ってくれ」
 そこへジョニィが来て、フーゴの肩を掴んだ。
「落し物?そんなもののために二人だけで行くなんて…」
「そうだそうだ!」
 何も知らないジョニィが抗議の声を上げ、意味もなく玉美が賛成する。玉美は何かフーゴに恨みでもあるのだろうか?
(まったく、仕方ないわね)
 トリッシュはフーゴとジョニィの間に入り、ジョニィを押しとどめた。
「周囲に誰かいるかもしれないわ。二人に見て来てもらった方がいいでしょう?」
 トリッシュはそう言って、ジョニィの瞳を見つめる。
 彼は苛立った様子で、トリッシュを見返した。
「時間がないんだ。僕は、早くジャイロを見つけないと…」
「お願い」
 トリッシュがもう一度言うと、ジョニィの瞳の奥の何かが揺らいだ。
「ジョニィ」
 アナスイも、ジョニィを宥めるように声をかける。
 ジョニィは、トリッシュからすっと目を逸らした。
「…分かった。ただ、僕は急いでいる」
「ええ。分かっているわ。でも、休息も必要でしょ?あまりに時間がかかるようだったら、先に行くわ。それでいい?」
 トリッシュは、最後の言葉だけはフーゴに向かって言った。
「ああ。すまない」
 フーゴとジョナサンは頷き、外に出ていく。

 頼りになる二人が出ていき、家の中の空気がなんとなく悪くなったような気がする。
 トリッシュは、残ったメンバーを見回した。
 ナランチャ、ジョニィ、アナスイ、そして変態。
「…………」

 トリッシュ・ウナは、ちょっとだけ頭を抱えたくなった。

749血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:44:47 ID:rwqSzagw

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ブチャラティ、アバッキオ…!!
1. 放送まちがいとかふざけんな!!
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.フーゴとジョナサンに早く帰ってきてほしい。
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
4.玉美、うっさい

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.あの二人は味方か?トリッシュ殿にまかせよう。

【備考】
彼らはSBR関連の事、大統領の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)

【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(中程度に回復)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.とりあえず目の前のやつらと情報交換だ。


【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小) 、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。僕と彼との関係は?
【備考】
ジョニィとアナスイは、トリッシュ達と情報交換をしました。この世界に来てからのこと、ジョナサンの時代のこと、玉美の時代のこと、フーゴ達の時代のこと、そして第二回の放送の内容について聞いています。

750血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:46:43 ID:rwqSzagw


◆◆◆

【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会近く】


 ジョルノとタルカス、イギーは、ヴァニラ・アイスの案内によりサン・ジョルジョ・マジョーレ教会へと歩を進めていた。

「しかし…DIOという男は一体何者なんだ…?」
 タルカスはヴァニラ・アイスを警戒しながら、ジョルノに問いかける。
「僕も、直接会ったことはありませんが……随分と、部下に慕われているようですね」
 ジョルノは、タルカスにDIOが自分の父だということを隠した。
 もしDIOという男が自分たちとは相容れない存在だった時、その情報が足かせになる可能性を考えたのだ。
タルカスは情に厚い。ジョルノの父というだけで、DIOとの戦いに迷いが生じてしまうかもしれない。
「まずは、DIOに会ってみましょう。もちろん、警戒は怠らずに…」

(バカ野郎が…。DIOに会ったら、てめーらは確実に殺されるぞ…)
 ジョルノがあれこれと思考を巡らせている一方で、その答えを知っているイギーは、無言だった。
 彼は犬なので、何を言おうと伝わらないのだから、仕方がないのだが。
 DIOについて、イギーはアヴドゥルから話を聞いていた。だから、この甘ちゃん達とは絶対に相容れないだろう、と予想はつく。
 イギーとて、スタンドで伝える方法も考えた。しかしそれでは、ヴァニラ・アイスに自分が目をつけられ、攻撃されてしまう。
(くそ、ジョーダンじゃねェ…。このままDIOに会ったら、オレは殺されるじゃねえか!スキを見て、逃げてやる…!!)
 イギーは、自分の保身のみを考える。
 彼にとって、逃亡を邪魔するタルカスとジョルノは、敵であるヴァニラ・アイスと同じくらい、邪魔な存在だった。

 ほどなくして、ジョルノ達は無事にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会へと辿りついた。

「何だ、誰もいないぞ…?」
 がらんとした教会の様子に、タルカスが首をかしげる。
「ここに、DIOがいるんですか?」
「DIO“様”だ。正確には、ここの地下に、だ。ジョルノ、中に入ることができるのはお前だけだ。他の者はここで待っていろ」
 冷たく言い放つヴァニラ・アイスに、タルカスが吠える。
「待てッ!ジョルノだけとはどういうことだ!!オレ達も共に行かせてもらうぞ!!」
(げエェ――ッ!!冗談じゃねえ、オレはDIOになんか会いたくねえぞ!!)
 イギーの心の声は、当然のことながら誰にも聞こえない。
「従えないのなら、ここで…」
 ヴァニラ・アイスの殺気が膨れ上がる。

「落ち着いてください。僕なら大丈夫です」
 タルカスを制し、ジョルノが一歩前に出た。そして、胸のブローチをはずす。
「僕に何かあったら、このテントウムシで知らせます。どうかこのまま待っていてください。もし、このテントウムシに異変があったら…」
「分かった。オレがすぐお前を助けに行く」
 力強く言い切るタルカスに、ジョルノは苦笑した。ジョルノはタルカスに『逃げろ』と言うつもりだったのだが、この様子では言ったとしても聞かないだろう。
「それでは、行ってきます」
「ああ。気をつけろよ」

751血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:49:15 ID:rwqSzagw

「……」
「……」
 この間、どちらも無言だった。

 ヴァニラ・アイスは、たとえジョルノがDIO の息子だったとしても、そこに何の感情も浮かばない。
 大事なのはDIOの意思のみ。殺せと言われれば殺す。守れと言われれば守るだけだ。
 また、ジョルノも、むやみにDIOについて聞くようなことはしなかった。自分の目で相手を判断すると、決めていたからだ。

 ヴァニラ・アイスの足が急に止まる。

「DIO様。ジョルノ・ジョバァーナを連れて来ました」
 ヴァニラ・アイスがそう告げる。ジョルノは暗闇の奥を見つめた。
 しかし見えるものはなく、暗闇の奥から声だけが響く。
「そうか。よくやった、ヴァニラ・アイス。お前の仕事が一番早かったぞ―――」
「………!」

 『よくやった』――――『よくやった』―――――!
 その言葉だけで、ヴァニラ・アイスは歓喜に震えた。
(やはり、DIO様は私を一番信頼しておられる。あのムーロロとかいう男よりも、マッシモ・ヴォルペとかいう男よりも、私を…!!)
 ヴァニラ・アイスはDIOの忠実な部下である。主君がどう思っていようと、主君のために動くことに変わりはない。だが、この時ヴァニラ・アイスはその考えを忘れ、ただ喜びを噛みしめた。
 つまりはそれほどそれらのことに拘っていたのだと、気付くことも、ない。

 わずかなロウソクの明かりに、DIOの艶めかしい唇だけが浮かび上がる。そして。

「もういいぞ、ヴァニラ・アイス」

 ―――同行者を、始末しろ―――

 声には出さず、ジョルノからは見えない位置でそう唇を動かした。

「はっ!!」
 内心は喜びに打ち震えながら、ヴァニラ・アイスは元の道を戻り始めた。


「………」
 ジョルノは緊張した面持ちで暗闇を見詰める。
 DIOの姿ははっきりとは見えず、わずかに輪郭が分かる程度だ。

「よく来たな、ジョルノ」
「…ええ、はい。父さん」
「―――そうか、知っているのだな」
 男の態度は、まるで久しぶりに息子に会ったかのようなものだった。しかし、親子の対面はこれが初めてである。心のうちにするりと入り込まれるような感覚に、ジョルノの体は自然と強張った。

 相手と戦闘になることを考え、ここに来るまでの間、こっそりと周囲の壁や小石に触れ、仕込みはしておいた。しかし、それを忘れるほどの衝動が、今ジョルノを襲っていた。
 父。目の前にいるのは、父親だ。
 そう、自分の血が叫んでいる。
 トリッシュもディアボロが自分の父だと分かったし、その血によって奴がどこにいるかも感知することができた。それが、自分の身にも起きているのだ。

 そのことに、ジョルノは動揺していた。

 いつものジョルノなら、DIOという男を観察し、どういう人間かすぐに見抜いていただろう。
 だがこの時、ジョルノは冷静さを欠いていた。
 これまで、彼は『家族』というものにあまりに縁が薄かった。
 母も養父もジョルノを蔑ろにしてきたし、実父に至ってはもう会えないと思っていた。
 ジョルノはずっと父の写真を持ち歩いてきた。いつか会いたいとか、そんなはっきりとした理由があったわけではない。ただ、本当の父親なら義理の父のように暴力をふるうことはないだろうという幼い頃の幻想が、まだそこには息づいていたのだ。

 ほんのわずかな、髪の毛一本ほどの、親愛の情。


 それゆえ、ジョルノは目の前の男の邪悪さに気付くのが――――遅れてしまった。

752血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:50:25 ID:rwqSzagw

【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発、『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロング・ウォッチタワー』 のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョルノ・ジョバァーナの血を吸う。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。


【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのK
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.タルカスとイギーを始末する。

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.この男が…DIO…。
2.ミスタ、ミキタカと合流したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
4.ブチャラティ…… アバッキオ……
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。
※地下にはすでにGEを仕込んであります。

【タルカス】
[時間軸]:刑台で何発も斧を受け絶命する少し前
[状態]:健康、強い決意?(覚悟はできたものの、やや不安定)
[装備]:ジョースター家の甲冑の鉄槍
[道具]:ジョルノのテントウムシのブローチ
[思考・状況]
基本行動方針:スミレの分まで戦い抜き、主催者を倒す。
1.ジョルノが心配だ。
2.ブラフォードを殺す。(出来る事なら救いたいと考えている)
3.主催者を殺す。
4.育朗を探して、スミレのことを伝える
5.なぜジョルノは自分の身分などを知っていたのか?
※スタンドについての詳細な情報を把握していません。(ジョルノにざっくばらんに教えてもらいました)

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.放せ! やめろぉぉぉお!!
2.ちょっとオリコーなただの犬のフリをしておっさん(タルカス)を利用する。
3.花京院に違和感。
4.煙突(ジョルノ)が気に喰わない

753血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:53:07 ID:rwqSzagw

◆◆◆

【D−7より西のどこか】


 トリッシュ達のいる家を出て、ジョナサンとフーゴは西に向かって歩いていた。
 フーゴは周囲を警戒しながら、ジョナサンにアバッキオのことを伝えた。

 ジョナサンは、フーゴからアバッキオの真相を聞いて驚いた。

「そうか…アバッキオが、あの大男に…」
「そうなんです。しかし、それをナランチャに言うことはできなくて…」
 ジョナサンは大きく頷いた。今の不安定な状態のナランチャに、実はあの大男がアバッキオだったのだ、と打ち明けるのは、酷だ。
「分かった。そういうことなら、僕も手伝おう。もうどちらも亡くなっているんだ。ナランチャがこれ以上悲しまないよう、協力するよ」
 そう言うと、フーゴはほっと息を吐きだした。
「ありがとうございます。それと、もう一つ…」
「なんだい?」
「敵のスタンド能力が、時間を飛び越えるものだという話はしましたよね?…ですから、言います。ナランチャは、僕の知っている時間では死んでいる」
「な…!?」
「もちろん、彼はあなたの言っていた吸血鬼だとか屍生人ではありません。彼は…」
「時間を飛び越えて、彼が生きている時間からここへ連れてこられた、と…?」
「はい、そうです。ジョナサンの理解が早くて助かりました」
 フーゴにとって、それはついでのような話題だった。重荷を一つ下ろし、そのはずみでつい口に出してしまったような。
 だが、そのことはジョナサンにとっては大きな意味を持つ。
「いや…僕も、その可能性を考えていなかったわけではないんだ。エリナのこと…父のこと…。彼らが時間を飛び越えてきたとしたら、全ての辻褄が合う。合って、しまう…」
 なるべく、考えないようにしていた。他人であってくれと、心から願っていた。
 もし。エリナが、自分と結婚した後にここに連れて来られていたとしたら。
 もし、父が生きている時間から、ここに連れて来られていたとしたら。
 そして、もし。『ジョースター』という名の人間たちが、自分の知らない、自分の子や孫であったなら。

「僕は…知らないうちに、多くの家族を…失っていたのか…?」

754血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:54:13 ID:rwqSzagw

 茫然と呟くジョナサンを見て、フーゴは自分の失態に気付いた。
 いくらジョナサンでも、自分の家族が巻き込まれて気丈でいられるほど、強くはないのだ。アバッキオ、ブチャラティと続いた仲間の死に、生死の分からないジョルノ。フーゴも他に気が回らないほど、追いつめられていた。
「………すみません、僕は…」
「いや、いいんだ。おかげで気持ちの整理がついた。ありがとう、フーゴ」
 ジョナサンは無理に笑顔を見せ、足を止めた。
「さて、随分戻ってきてしまったね。そろそろ帰ろうか。きっとみんな心配しているよ」
「…はい」

 フーゴは頷いたが、まだ心残りがあった。
 ムーロロのウォッチタワーと、接触できていないのだ。

 フーゴは、ただジョナサンと話がしたかったわけではない。ムーロロのスタンドがフーゴを探しに戻ってきていないか、確かめる必要があったのだ。
 だが、いまだに彼のスタンドは姿を見せない。
 ムーロロに何かあったのだろうか。スタンドを向かわせることのできない何かが。そう考えると、いなくなる前から何か様子がおかしかったように思う。
 嫌な予感に、フーゴは身震いする。
 状況はどんどん悪くなっていく。信用できる人間は死に、敵は人質を手に入れた。主催者の正体はつかめたが、目的は分からない。
 果たして、我々に勝機はあるのだろうか――――?

「……なんだろう…?」
 ジョナサンがふと呟いた。
「どうかしましたか?」
「向こうから、何か感じるんだ…。ジョニィのときのような、何かを。それも、彼より強いものを、二つも…!!」
「それは…!」
 はっとフーゴも息をのむ。ジョナサンの言う“何か”は、トリッシュが持っているのと同じ、血縁と引きあう感覚だ。それでジョニィに出会えたのだから、信用できる人間に出会える確率は高い。だが、今は。
 迷うフーゴの前で、ジョナサンは走り出した。
「だめです!トリッシュ達と合流してから向かいましょう!!」
 フーゴは慌ててジョナサンを追う。二人で外に出ようと提案したのはフーゴだが、それはわずかな時間だけと思っていたからだ。二人だけでは、敵と遭遇した時の危険度が跳ねあがる。
「頼む!!」
 ジョナサンが叫ぶ。
 その瞳には、深い悲しみが浮かんでいた。

「頼む、行かせてくれないか…。嫌な予感がする。誰かに、命の危機が迫っている!もう、僕の家族が死ぬのは、嫌なんだ…!」
 それは、今まで聞いたことのない悲痛な叫びだった。
 必死なジョナサンに、いくつもの顔が重なる。
 ナランチャ。アバッキオ。トリッシュ。ミスタ。ブチャラティ。
 そして、なぜか一番強く重なったのは、ジョルノ・ジョバァーナだった。彼の悲愴な表情など、一度も見たことがないはずなのに。

「…分かりました。僕も行きます」
「―――すまない」



 二人は、西―――サン・ジョルジョ・マジョーレ教会へとひた走る。

755血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 22:55:36 ID:rwqSzagw


【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.これ以上、誰かを死なせたくない。
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.知り合いも過去や未来から来てるかも?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?
※ジョナサンとDIO の肉体は共鳴し合っていますが、DIOと会ったときにどうなるかは分かりません。
※ジョナサンが現在感じているのは、ジョルノとDIOのみです。


【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーが二枚とも消えたため今の所はムーロロには連絡できません)
3.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。
4.ムーロロの身に何か起こったのか?
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2はムーロロの元に帰り、消えました。

756血の絆 ◆q87COxM1gc:2014/04/21(月) 23:09:44 ID:rwqSzagw
以上で仮投下終了です。
前回より説明部分を増やし、自分で気付いた矛盾点を修正しました。

DIOは現在、様々な作戦を実行中なので、
「そうか。よくやった、ヴァニラ・アイス。お前の仕事が一番早かったぞ―――」
↑このセリフが矛盾する部分があるかもしれません。
そこは、DIO様が部下の心中を察してそう言った、と解釈していただければ…。もし引っかかるようであれば、無難なセリフに変えます。

明日か明後日には、本投下をしようと考えています。
矛盾点、気付いた点がありましたら、ご指摘をお願いします。

757名無しさんは砕けない:2014/04/22(火) 06:29:56 ID:PZN0QbQw
これって時間帯いつ?日中?

758 ◆q87COxM1gc:2014/04/22(火) 18:13:42 ID:SuVmK6LA
入れ忘れていました…。ご指摘ありがとうございます。

時間帯は日中です。
本投下では、最初に【一日目 日中】と入れておきます。

759トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:26:47 ID:oH.3ch5M
すみません、話全体がものすごく長くなってしまったので、今日は前半のみを仮投下いたします。

では
ジョニィ・ジョースター、ナルシソ・アナスイ、ナランチャ・ギルガ、トリッシュ・ウナ、小林玉美、ジョナサン・ジョースター、パンナコッタ・フーゴ、イギー、ジョルノ・ジョバァーナ、DIO、ヴァニラ・アイス、FF、マッシモ・ヴォルペ

仮投下いたします。

760トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:29:00 ID:oH.3ch5M




「……───離れていっている」


「え?」

ジョニィが漏らした発言に、トリッシュは思わず上擦った声をあげてしまった。

フーゴとジョナサンが「落とし物を拾いに行く」という名目で外に出てすでに数十分、トリッシュたち5人は2人の帰りを待つついでに休憩をとっていたのだが、遅い帰りに「なにかトラブルでもあったのでは」と誰からともなく疑念を持ち始めたころ、ジョニィがポツリと冒頭の言葉を発したのだ。


「ジョニィ、どうしたの?離れていっているって…」
「ジョナサンの気配がどんどん遠ざかってるんだ、多分…走ってどこかへ向かってる」
「! やっぱなんかあったのか!?」

西の方角へ体ごと視線を向けるジョニィに対してトリッシュは不安そうに声をかけ、それまでソワソワと不安そうに座り込んでたナランチャがジョニィに食って掛かる。彼にとって親しみを覚える2人がそろって出て行ってしまったことに戸惑っていた矢先の事態であるため、嫌な予感がナランチャの胸を駆け巡。

「まさかあいつら、なんかやましいことがあって逃げたんじゃあねーだろーな」



ドゴッ!!



「玉美!ふざけたこと言ってると蹴るわよ!!」
「も……もう蹴ってますトリッシュ様…ぐふっ」

脇腹にまともに蹴りを入れられ悶絶する玉美、それを尻目に玉美以外の4人は話を続ける。

「敵に襲われて逃げているとかか?」
「いや、それにしては動きが直線的だ。闇雲に走っているというよりかは何かを「目指して」いるように思える…あっちの方には何があったっけ?」

アナスイの問いにジョニィは答え、西の方を指差す。それにトリッシュは地図を取り出した。

「ええっと、地図によると……一番近いので「空条邸」、少し北にずれると「マンハッタントリニティ教会」、そのさらに先に……「サン・ジョルジュ・マジョーレ教会」があって、川を渡れば「サンピエトロ大聖堂」があるわ」

地図に指をなぞりながら順番に該当する施設の名前を上げる。三番目の施設を答える時に無意識に少し間が空くが、そこはトリッシュやナランチャ、フーゴたちブチャラティチームにとって関わりの深い場所だったからだ。
ジョニィは地図を覗き込む。

「絶対とは言い切れないが、空条邸は通りすぎてるから違う、マンハッタントリニティ教会も方向的に微妙だ。となると」
「────サン・ジョルジュ・マジョーレ教会?」
「……だろうと思う、サンピエトロ大聖堂の可能性もあるが、さすがにこれ程遠いと2人で行くのは危険だと戻ってくるだろう」
「…………」

偶然とは思えない一致に、トリッシュは嫌な予感がした。

「で、でもよぉー、もし本当にそこ目指してるんなら、なんだって2人だけで行くんだよ!」
「そこまではわからない、けど……」
「けど?」
「もし、何かを見つけたのだとしたら……いや、「感じた」のだとしたら……」


ジョナサンがジョニィを「感じた」ように、ジョニィがジョナサンを「見つけた」ように
ジョナサンが「それ」を再び察知したのだとすれば

761トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:30:58 ID:oH.3ch5M

「…!」
「じゃあ、ジョナサンは血縁者の気配を感じて、フーゴと2人だけで行ってしまったってこと?」
「推測だけどね、もっとも僕は何も感じないが……(距離が遠すぎるのだろうか?)」
「確かに、ただ事じゃないのに戻ってくるなりしないのはおかしいしな」

共有した時間は僅だが、ジョナサンと交流した者であるならば分かるはずだ、彼の紳士的な振る舞いと同時に感じる彼の優しさを、そんな彼が血縁者かもしれない者の気配を感じとれば、いてもたってもいられなくなるのは無理もない。放送の直後であるのなら、尚更。

「こうしちゃいられねぇ!早く追いかけようぜトリッシュ!」
「ナランチャ!待ちなさい!」

今にも駆け出しそうなナランチャを寸のところでトリッシュが腕を掴み引き止める。

「な、何で止めるんだよ!」
「……」

ナランチャの焦りが見える言葉には返事をせず、トリッシュはジョニィへ目を合わせる。

「………ジョニィ」
「ああ、さっきも言った通り僕は急いでいる、探している人がいるんだ。申し訳ないとは思うが、面倒事が起こっているならそれに関わっている時間はない」

淡々と、しかし確固たる意思をもってジョニィは返答する。

ジャイロ・ツェペリ、ジョニィの探し人。詳しくは聞いていないが、とても大切な人らしいことは話の節々からよく分かった。察するにトリッシュにとってはある意味ブチャラティに相当するくらいの存在なのだろう。
だからこそそれほどの存在を目の前で失った彼女にはジョニィの心境が理解出来る。今こうしている間にもその人に命の危険が迫っているのだと思うと……

「途中までなら同行してもいい、けど」


ずっと一緒には、いられない


「……ええ、分かっているわ」

ジョニィの言わんとしていることを理解し、トリッシュは頷く、そして2人を追いかけるために支度を始めた。それを皮切りにジョニィとアナスイも荷物をまとめ始める。
ナランチャは慌てながらジョニィとトリッシュを交互に見やり、なにか言いたげに口を僅かに開けるものの、ぐっと堪えるように顔を引き締め同じように荷物をまとめていく。

「玉美、いつまで踞ってるの。さっさと支度しなさい」

はい!トリッシュ様!とさっきまで悶絶していたのが嘘のように勢いよく立ち上がり、玉美は元気よく返事をした。本当に犬のようである。
それほど時間はかからず全員支度を終え、メンバーは休息地点であった民家を後にしようとする。トリッシュは念のためナランチャに声をかけようとするが

「ナランチャ?どうしたの?」
「トリッシュ、俺………」

顔が髪でうまく見えないほどうつむき、声も力がなくモゴモゴと何かを言おうとしているが、絡まった糸をどうほどいていいのかわからないかのように言葉につまっている。先程の勢いとはうって変わった対照的な雰囲気となっていた。

762トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:34:29 ID:oH.3ch5M

「なんて言っていいのかわかんないけど……最初にジョナサンと会ったときに、似てるって思ったんだ。ジョルノに」
「ナランチャ……」

ようやく絞り出された台詞に、トリッシュはふとある出来事を思い出す。

放送前、ジョナサンに先の戦闘の傷を癒してもらったとき、体に波紋したその力に、トリッシュもまたジョルノを思い浮かべた。
命無きものに生命を与える者、命有るものに生命を注ぐ者、どこか共通する要素を持つ2人


「ブチャラティもアバッキオも死んじまって、ジョルノもどうなってるかわかんねぇのに、フーゴもジョナサンもいなくなって………俺もう、誰もわけわからないままいなくなってほしくねぇよォ………」


わけがわからないまま、いなくなる

その事実に、一体どれほどの人が苦しんでいるのだろう、苦しめられているのだろう。
その機会はこの場の誰もに晒される。
友達が、家族が、恋人が、己にとって親しい人が、知らない場所でいつの間にか死んでいく────考えるだけでもおぞましい想像に、頭が砕かれるような、体の内側が侵略されるような、己を形成するすべてを否定されるような、そんな感覚が魂を蝕む。

トリッシュはその感覚をよく知っている。ブチャラティ、アバッキオ、この殺し合いで出会ったウェカピポ、そして────目の前にいる少年こそが、トリッシュにとって「いなくなってしまった人」なのだから

その想像にとりつかれているナランチャの肩を、トリッシュの手が優しく包む。ナランチャは顔を上げ、トリッシュと目線を合わせる。

「ナランチャ、あたしも同じ気持ちだわ」
「トリッシュ……」
「大丈夫よ、きっと大丈夫」

その言葉はナランチャに、そしてトリッシュ自身にも言いきかせるようだった。トリッシュはナランチャの肩からするりと手を離すと、行きましょう、とナランチャを促す。ナランチャは一瞬心配そうにトリッシュの顔を見るが、黙ってトリッシュに従った。


そして5人は家を出る。久方ぶりの眩しい光に、5人は腕で顔を隠したり、目をパチパチと瞬いたりしていた。日はまだ落ちてはおらず、青い空の中で輝いていた。
トリッシュはその空を見上げながら、一人思う。


どうか、あの空が落ちてきませんように……と



  □■□■



サン・ジョルジュ・マジョーレ教会
そこはフーゴにとって「恥知らず」だった頃の記憶を思い起こさせる最たる場所である。
ボスがブチャラティの心を裏切り、ブチャラティがファミリーを裏切り、そしてフーゴがブチャラティチームを抜けた場所

あらゆる裏切りが渦巻いていたそこは────しかし既に2人が着いた頃には「なれの果て」と化していた。


ザアァァァ──────…………

砂が滝のように流れ落ちる音が、2人の男の耳に届く。

「な……なんだこれは……!?」
「フーゴ!こ……これはまさかッ……!」

D-2のサン・ジョルジュ・マジョーレ教会を目前に、フーゴとジョナサンは異様な光景を前に愕然としていた。
この場にたどり着くまでに2人が見たものは、川を越え街を越え、この殺し合いの会場全土からかき集めるかのように大量の砂がまるで意志があるかのように唸りをあげ、暴力のような嵐を生み出ながらサン・ジョルジュ・マジョーレ教会を押し潰さんとしているところだった。

今は鎮静化し砂は魂が抜けたかのように力を失っているが、それによってサン・ジョルジュ・マジョーレ教会全体は今にも崩れ落ちそうな見るも無惨な姿になっている

(ジョナサンはここから2人分の気配がすると言っていた、さっきはそれでジョニィに会えたから今度も信頼できる人物に会える可能性があると踏んでいたが……早計だったのか?)

763トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:37:51 ID:oH.3ch5M

教会を見上げ、フーゴは思考する。
この現象がスタンド能力によるものなのは間違いない、もしもこれが教会内にいると思われる人物の手によるものなのならば、この場にいるのはあまりにも危険すぎる。
フーゴはジョナサンにそのことを知らせるべく、教会から視線をはずす。

「ジョナサン、今教会に入るのは危険です。一端ここから離れま─────」

しかし、隣にいるはずの彼の方に顔を向けるも視界に映るのは砂にまみれた街並みの景色のみ。思わず言葉が途切れ慌てて探すも、見つけたのは今まさに教会へと入ろうとするジョナサンの背中であった。

「ジョナサン!?」

いつのまにか小さくなっていたその背に驚き、フーゴは急いで後を追う

(マズイッ!今のジョナサンは身内が危機に晒されているかもしれないという恐怖にとりつかれて冷静な判断が出来ていない!今すぐ止めなければ!)

砂に足をとられそうになりつつも、フーゴは既に教会内に入ったジョナサンに声を張り上げて呼び掛ける。

「ジョナサン!戻ってきてください!教会内にスタンド使いがいるかもしれない!下手をすれば貴方も──────」




風が 吹いた

ねめつけるような、鋭い刃を突き立てられたような、尖った針を全身に向けられたような、そんな風がフーゴをなぜる



『殺気』という名の、 風が



「ッ! 『パープルヘイズ』ッ!!」

反射的に己のスタンドを呼び出し防御体制になった直後、スタンドで守られていた頭部を中心にとてつもない衝撃がフーゴを襲った。

「ぐ……おぉ!」

吹き飛ばされ、地面を転がりつつもなんとかその反動を利用して立ち上がり、衝撃が来た方向へ臨戦体制をとる。ゴッ!という固く重い物が落ちたかのような音がして、一瞬ちらりと視線を向ける。

石だ。拳よりも一回り大きい程度の石
それがものすごいスピードでフーゴを襲ったのだ。普通の人間ではあり得ない所業、ともすれば

(スタンドによる襲撃か?このタイミングでなぜ?教会に入ろうとしたからか?それならなぜジョナサンを攻撃しなかった?なぜ僕だけを攻撃する?今のは明らかに僕を殺す気だった。ジョナサンは無視し僕だけを攻撃する理由…………僕を殺そうとする理由……

まさか…………!)


ざっ ざっ、と砂を踏みしめながらこちらへ近づいてくる足音がフーゴの耳まで届く。
足音の主はフーゴを見た、フーゴもまた足音の主を見た。
パサパサとした長い髪、骨ばった長身、そして、どこまでも表情の欠落した瞳────
なにも変わっちゃいなかった。なにも、なにもかも

それは本来ならあり得ない事象だった。あり得ないはずの遭遇だった。
生者と死者、勝利者と敗北者、殺した者と殺された者、どうしようもない生死の壁を、しかしいともたやすくそれはぶち壊され、そして────彼らは再び出会った。



「パンナコッタ・フーゴ……」

「……マッシモ・ヴォルペ…………」


塵一つ残さず消え去ったはずの級友の姿が、そこにあった。




  □■□■

764トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:41:39 ID:oH.3ch5M



時は遡る。


「…………クソッ」

軽く悪態をつきながら、マッシモ・ヴォルペは耳に当てていたものをはずし、目線を落とす。
それはヴォルペが持っていた支給品、携帯電話だった。元々はこの殺し合いが始まって間も無くヴォルペの能力によって麻薬を注入され、DIOに血を吸われ殺害された名も知らぬ女性に支給されたものだ。
もうこの動作を一体何度繰り返せばいいのか、ヴォルペはモヤモヤとした気持ちを吐き出すかのようにため息をつく。

これまでの経緯を説明すると、彼は空条承太郎との僅かな邂逅の後、地下の洞窟をさ迷いつつ、空条徐倫(の姿をした何者か)を連れ地上へと出ていた。
さ迷いつつ、というのは、単純にヴォルペは地下の地図を持っていなかった(DIOに渡した)こと、また地下でのDIOと空条承太郎、他2名の大乱闘で辺り一帯が崩落し、思ったように地下道を進めなかったのが原因だった。結局2人は進んだり来た道を戻ったりしつつ、ようやく地上への階段を見つけて地下から脱出することに成功したが、その時既に時間帯はとうに午後を回っていた。
……この時ヴォルペたちが地下で誰とも接触しなかったのは、ヴォルペが来た道を引き返すうえで空条承太郎を含む危険人物たちを警戒しつつ進んでいたことによる時間差が大きな要因となっている。

ともあれ、時間をとられた以外は地下で大きな問題は起きず地上に出た2人だが、問題はそこからだった。
ヴォルペはDIOが今どこにいるのかを把握しておらず、有事の際の言うなれば集合場所というのもきいていなかった。故にヴォルペはこうゆう事態になったときのためのDIOとの連絡手段、携帯電話を使うことにした。地下では周囲の警戒もあって使えなかったそれをとりだし、DIOへと発信する────が、何度コールしても、DIOが出る気配はない。
実はこの時既にDIOは息子であるジョルノと対面しており、彼が持っている携帯電話はジョルノに不要な不信感を与えないように音が出ないよう設定にしてデイバックの奥底にしまわれていた。
その後十分ほど粘ってコールしてみたものの、やはり携帯電話はとぅるるるるるんというコール音しか鳴らず、ヴォルペは連絡を一旦諦め留守電を残したのち、DIOが現在どこにいるのかの大体の目星をつける。

────地下の乱闘があったのはDー4中央一帯、そこから離脱したのなら、ずっと地下道にいるはずもないので地上に通じているどこかの施設にいるはず、また元々一時の拠点にしていたGDS刑務所からも近い方が都合が良いと思われるので、周辺でその条件に見合うような施設は────

おおよそかいつまんでこんな考えをしたヴォルペは、その条件に該当する施設、サン・ジョルジュ・マジョーレ教会へと足を運んでいる。

ヴォルペ自身、結構強引なものの考え方だと思っている。地上から地下に通じてる施設なんて他に吐いて捨てるほどあるし、一時の拠点といってもDIOはあのGDS刑務所にとくにこれといった思い入れもないだろうから、都合が良いというのはもしDIOがヴォルペと同じようにDIOからはぐれた連中がいるなら似たような思考になりDIOと合流しやすくなると判断をするかもしれないというあくまでヴォルペ視点での「都合が良い」だった。
だからもしかしたらまったくの検討違いかもしれない、さっさとGDS刑務所に戻ってるかもしれないし、他の施設にいるかもしれない、なんらかの事情で未だ地下道に留まっているかもしれない。
けれどヴォルペは足を止める訳にはいかなかった。例えもし向かおうとしている場に誰もいなかったとしても、歩みを止めたくはなかった。

765トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:43:47 ID:oH.3ch5M

「…………」

ヴォルペはもう一度ため息をつくと、携帯電話をデイバックの中に仕舞い、再び歩きだす。留守電を残したとはいえ、流石にこうも連絡がとれないと心配になり、ついつい電話をかけてしまう。
仕事先の彼氏にしつこく電話やメールを送りつける彼女か俺は、と自虐気味に自身を評価し、ちらりと歩きながらヴォルペは顔だけ背後へと振り替えり、人影を捉える。

「おい、もう少し速く歩け」
「………ああ」

ヴォルペの五メートル程後ろを歩く「空条徐倫」に対し、そう告げる。

(いや、正確には「空条徐倫モドキ」、か)
ヴォルペは無関心気味にそう思った。
空条徐倫────の肉体を持つF.Fは、ヴォルペの言う通りにほんのちょっぴりだけ歩くスピードを速め、ヴォルペについていく。どこかぎこちなさを感じるその動作を見て、ヴォルペは彼女の正体に気付きはじめていた。

(外っ面の肉体は空条徐倫本人のもの、しかしその肉体はとうに死んでいる……おおよそ殺したか殺されていたかしていた空条徐倫の肉体を今の「中身」になっているスタンドが乗っ取った……というところだろう)

肉体の生命活動に影響を与えるスタンドを有することもあってか、鋭い観察眼でヴォルペはそう結論付けた。
しかし、そこまでだ
「中身」のスタンドの正体はなんなのか、なぜ「中身」が空条徐倫の肉体を乗っ取ったのか、一体これまで空条徐倫としてなにをしてきたのか、などということについてヴォルペは塵ほども興味がなかった。
当たり前だ、ヴォルペにとって彼女はただの駒、己の憎しみをぶつける空条承太郎を苦しめるためのただの道具に過ぎない。そんなものに向ける意識などクソの役にも立たない。

ヴォルペの心を占めている人物はただ2人、
敬愛とも尊敬とも親愛とも呼べぬ、しかしそれら全てに当てはまるような感情を向けるDIOと、憎悪と嫉妬と歓喜をないまぜにしたような感情をぶつける空条承太郎だけだ。

「…………」

だがヴォルペの心には、それとは別のある一抹の不安がよぎっていた。
それはヴォルペの現在の行動のそもそもの要因、すなわち『DIOとの合流』のことについてだ。
ヴォルペは無意識に歩くスピードを上げる。

もし、このままDIOと合流できなかったら?
もし、合流できずにDIOに見捨てられてしまったら?
もし──────

「…………ッ!!!」

いくつものIFが、ヴォルペの思考を侵食していく
あり得ない、あり得ないそんなこと
ヴォルペとDIOは奇妙な引力によって引き合ってきた。最初の出会いも、互いが持っていた支給品も、スタンド能力の相性も。なにもかもが偶然とは思えない、まさしく『運命』とも呼べる縁によって導かれてきたはずだ。だからきっと今度も引力によってDIOの元へたどり着けるはずだ。

きっと

……しかしそう思おうとすればするほど、ヴォルペの心は焦りの色が濃くなり、それを打ち消さんとするかのように歩みは速くなっていく。
立ち止まってはならない、歩みを止めてはならない、進んでさえいればきっと、DIOへとたどり着ける。
そう信じて、ヴォルペは前に進んでいく。

766トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:46:11 ID:oH.3ch5M



「………」

その背をF.Fはじっと見つめていた。
いや、違う。その姿の遠く向こう側にある感覚────「ジョースターの血統」の気配を、彼女もまた感じ取っていた。
空条徐倫の身体を通じて伝わってくる血の気配。それは地下で自身が「父さん」と呼んだ人物と出会った時と同じものであり、空条徐倫の知性を理解するために必要なものだということを、F.Fは確信していた。

(私は……あたしは「空条徐倫」として、空条徐倫の知性を知りたい。あたしは「あたし」という唯一の存在として生きていたい、存在していたい……)

だからきっと、空条徐倫から感じるこの感覚をたどれば、空条徐倫という存在をより本能的に知ることになる、知性を得ることが出来ると、F.Fは信じて疑わなかった。

(だからあたしは会わなきゃならない、DIOに、あたしが「許してはならない」と言ったはずの、あの男に────)



本当に、そうだろうか?


「おい」

はっ とF.Fの意識は現実に引き戻される。前方をみれば先程と同じように顔だけ振り向いた、しかし先程よりも小さくなっているヴォルペの姿に、F.Fはようやく自分が立ち止まってしまっていることに気が付いた。


ヴォルペは不機嫌な顔を隠そうともせず「空条徐倫」を黙ったまま睨み付ける。やがて「空条徐倫」が歩き出すのを見ると、自身もまた歩き出した。そのスピードは変わらず早いままだった。


サン・ジョルジュ・マジョーレ教会にたどり着くまで、あと少し。




結論からしてみれば、ヴォルペの推察通りDIOは確かにサン・ジョルジュ・マジョーレ教会の地下にいた。
ヴォルペの判断は間違っておらず、事がうまく運んでいればヴォルペはDIOと再会し、空条徐倫を引き合わせ、これまでの経緯やこれからの方針に関する話に花を咲かせていたはずだった。


けれども
「引力」は一歩手前で役割を放棄してしまった。



ヴォルペの持つ別の因縁の「引力」と、引き合ってしまった。

ヴォルペが教会にたどり着くのがもう3分でも早ければ、あるいは「彼」がもう3分到着が遅れていれば、いや、「彼」がDIOと因縁のある「ジョースターの血統」を連れ出していなければ、こんなことにはならなかったはずだ。

けれどもその「引力」は、会うはずだったDIOとの縁を、運命を、なにもかも持っていってしまった。



その「引力」の名は──────



「パンナコッタ・フーゴ……」

「……マッシモ・ヴォルペ…………」




  ○●○●

767名無しさんは砕けない:2014/06/02(月) 00:49:40 ID:vdSNdhvU
リアルタイム支援
したらばじゃほとんど必要ないけど!

768トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:52:28 ID:oH.3ch5M



「どこだ?どこに……ッ!」

サン・ジョルジュ・マジョーレ教会内、フーゴの制止に構うことなく、ジョナサンは血が訴えかけるままにそこを駆けずり回っていた。
教会内部は外見以上にひどい有り様だった。砂の圧力によって教会全体は軋み、また直径が大人一人分はあろうかという円形の穴が壁、床、天井問わず至るところに空いている。
スタンドに関する知識と経験がほとんどなくとも分かる、これがスタンド使い同士による戦闘の跡なのだと。

「どうか……どうか、無事でいてくれ…………!」

悲痛に染まるジョナサンの祈りが、ボロボロになった教会にこだまする。
やがてジョナサンは地下へ続く階段を見つけ、降りていく。2つの気配は地下から感じていた。


「誰か!誰かいないかッ!!」


ジョナサンの声が冷え冷えとする地下に反響する。そうしながらもその丸太のような足は走ることをやめていない、やがて下へ下へとおりてゆき、ジョナサンは気がつけばとあるドアの前にたどり着いていた。
ジョナサンはじっと感覚を鋭くさせる。

(ここからだ………ここからずっと感じていた気配がする)

この扉の向こうにいる2つの命、2つの鼓動、2人の人物。自分に繋がっている知らない家族。それがジョニィと会ったときよりも濃く強く感じられた。

波紋の呼吸は乱れていない。いつどんなことがあろうと乱れてはならないと鍛えられたのは伊達じゃない、しかし胸の内にある感情は、心臓は、今まで経験したことのないほど激しく揺れていた。
意を決し、ドアに手をかけ、開ける。
ギイィ…と普段なら気にも止めないような小さなドアの軋む音が、やたらと耳の奥をくすぐる。

ドアが開け放たれ、ろうそくの僅かな光が部屋の内部を照らし出す。


そして


───────そこに誰かいた




「…………ディオ?」



  ○●○●



崩れていく 壊れていく

けれど、挫けてはならない、砕けてはならない ────折れてはならない



「無駄ァ!!」
「ふん」


ジョルノが打つ『ゴールド・エクスペリエンス』の拳を、DIOの『ザ・ワールド』は軽く受け止め、そのまま力を受け流しながら背後へと投げ飛ばす。

「 ッは!」

吹き飛びざまジョルノは握っていた石ころをツバメに変化させ、DIOへと突進させる……


「 無駄、無駄だジョジョ」

突如としてDIOの姿は消え、突進したツバメは空を切り、そのまま壁へと激突し元の石ころへと戻る。

「く……!」

ジョルノは『ゴールド・エクスペリエンス』に自身をキャッチさせ、地面に足をつけると消えたDIOの姿を探す。

(まただ……DIOに攻撃が当たると思った瞬間DIOの姿が消えた。確実に捉えていたのにも関わらずだ。単なる超スピードや催眠術なんかじゃあ断じてない、これは……これはまるで────)

「どうしたんだいジョジョ、もう戦う気力が失せたかな?」
「……僕が貴方と戦う理由が無くなるのは、貴方を倒した時だけです」
「ほーう?」

感心したかのようなDIOの声が頭上から降り注ぐ、視線を上げれば、DIOはジョルノが生み出した木の枝に足を組んで悠々と座っていた。

「このDIOのスタンド能力をほんのちょっぴりでも体験してまだそんなことが言えるとはな……さすがは我が息子と言ったところか?」
「心にもない薄っぺらなことを言うんじゃない、本当は僕のことはいつでも殺せるのでしょう?」
「ほう、中々に父のことが分かってきたではないか」

769トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 00:57:00 ID:oH.3ch5M

DIOのその言葉に、再びジョルノの視界が赤く染まる。頭の、心の奥底に熱の激流が生まれる。
こいつは『悪』だ。他人を、ましてや身内を踏み台にしても塵ほども罪悪感を持たない、もっともドス黒い『悪』だ────!

そんなものがジョルノの父だった。

「それで?君は一体どうやってこのDIOを倒そうというのかな?」
「いつでも殺す事のできるのにそうしないのは僕を殺さないほどの理由があるのでしょう?ならばそこに付け入る隙があるはずだ」
「殺さない理由……か」

DIOが意味深げにジョルノの言ったことを復唱する。

「……なあジョジョ、君は自分が何者のなのか考えたことはあるかい?」
「何者か……?」
「子供のころに考えたことのあるちっぽけな夢でもいいさ。例えば自分はどこかの国の王子さまだとか、例えば空を飛ぶことのできる魔法使いだとか、例えば────」

DIOがするりと音もなく枝から身を降ろし、地へと自然な動作で足をつける。そのままゆっくりと姿勢を正すと、ジョルノと視線を絡める。その顔は見るものを魅了するような、艶めかしい笑みを称えていた。

「────100年の時を生きた吸血鬼の息子、だとかな」
「……何?」

意図が不明なDIOの答えに声を上げるも、しかしDIOの視線はジョルノから既に外されていた。
代わりにDIOが見つめているのは、この納骨堂の入り口、先程ジョルノがヴァニラに連れられて入ってきたドアだ。2人からよく見える場所にあるそこを、ジョルノもまたDIOと同じようにを見つめる。
DIOがなぜジョルノと戦闘中にも関わらず戦闘を止めてまでそんなことをするのか、ジョルノはなんとなく分かっていた。
DIOは「待って」いるのだ。そこを開けるであろう、この場にたどり着くであろう存在を。戦いが始まる前に既に感じ取っていたその人物を


「──────!」


やがて間もなく納骨堂の外から声が響いてくる。聞いたことのない男の声、だが何故だかジョルノの心には不可思議なざわめきが波紋する。
何故だろうか、きっと会ったこともない人なのに、ずっと昔からこうなることが決まっていたような気がする。思い出せないほど昔に約束したことを掘り起こしているような、そんな感覚がジョルノの身体を駆け巡る。

気がつけば、ジョルノもまたDIOと同じように待っていた。お互いにドアを見つめ、感覚をたどり、近付いてくる足音に耳を澄ませ、やがて……ドアが小さな軋む音とともに開かれた。

外から入ってきたのは、やはり男だった。筋肉に恵まれた大きな身体、けれど威圧感はまったくと言っていいほどなく、むしろその姿勢や僅かな動作から紳士的な印象を受けた。
その男とジョルノの視線が、繋がる。


(……────似てる)


誰に?
自分に?

それとも……DIOに?


率直に思ったことにジョルノはひどく動揺した。見ず知らずの人間に、自身やDIOを重ねるなど
けれど何故かその事を否定しきれない、その男に対しどこか親しみを覚えてしまう心を止めることができない。
やがて男はゆっくりとジョルノから視線を外す。ジョルノはゆっくりと息を吐いた。何もされていないはずなのに、その瞬間だけが切り取られ、とても長い時間のように感じられた。
男の視線はジョルノの正面に立つDIOの方へと流れ行く、しかしジョルノは未だ男から目を離すことができない。いや違う、DIOの方へと顔を向けることができない。

770トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 01:01:32 ID:oH.3ch5M

男とDIOの視線がぶつかり合う、男の目が見開かれ、瞳孔が開き、全身に衝撃と動揺がジョルノにも分かってしまうほど伝わっている。やがてその男は口からこぼれ落とすかのように言葉を漏らした。


「…………ディオ?」


……それは確かに父の名のはずなのに、父ではない誰かの名のような気がした。同じ言葉のはずなのに、違う色を秘めているような、そんな感じが

「 『ジョジョ』 」

DIOが己を呼ぶ、それにジョルノは機械的に反応し、DIOへと顔を向ける。DIOもまたジョルノを見る。その瞬間


────ぽろり と、ジョルノは胸の中から何かが落ちるような音を聞いた気がした。それはジョルノの中にあった小さな小さなもので、でもしがみつくように残った最後の一粒で、慌ててそれを拾おうとしても身体がそれを拒むかのように動かなくなって、ジョルノは黙ってそれが落ちていくのをぼんやりと見ているしかなかった。

カリスマの溢れる立ち振舞い
ゆれる冷たい金の髪
男とは思えぬ白い肌

DIOの一つ一つの動作が、ゆっくりと、しかし鮮烈にジョルノの脳裏に焼き付けられる。

──────こないでくれ


こらから起きるはずの事柄にそう祈っても、時は止まってくれるはずもない。ただただジョルノは、『その時』がくるのを、沈黙をもって受け入れるしかない

そして    時は動き出す



「お前はもう────用済みだ」



最後に残った一粒は 地に落ちた
落ちて────砕け散った




────その瞬間の出来事を、ジョナサンは正確に認識することができなかった。

部屋の中は何故か植物で溢れかえっており、そこに2人の人物がいて、どちらもジョナサンの知っている顔だった。
一人は最初の会場で首を吹き飛ばされ死んだはずの少年────ジョルノ・ジョバァーナで、彼の仲間からよく聞かされていたこともあったせいか、初めて会ったような気がしなくて、しかしなんと声をかければいいのか分からず仕舞いで、結局その少年には声をかけられなかった。

そしてもう一人は、7年間の青春を共にし、奇妙な友情を描き、そして……この殺しあいに呼ばれるまでは、その青春に決着をつけるために戦いを挑もうとしていた宿敵だった。
けれども


「…………ディオ?」


彼のその姿に、ひどく違和感を覚えた。
確かに見知った顔のはずなのに、なんと言うか、ちぐはぐなのだ
ジョナサンの中のディオと目の前のディオとの違い、それを一言で表すならば、そう、職人が長い年月をかけて技術を習得し、それを研ぎ澄ましていくような、いわゆる『洗練さ』があった。
帝王としての立ち振舞い。人を虜にする圧倒的な存在感。
ジョナサンは彼との間に、『時間』の積み重ねによる越えようもない何かがあるのではないかと、直感的にそう思った。
けれども、それだけでは説明できないもっと別な違和感がジョナサンの意識を掠める。
────じゃあ今まで感じていた気配がどうしてディオから感じる?

だから、自分と彼との間に横たわるこの違和感は何なのか、一体目の前の男はいつの彼なのか、彼にとってジョナサンは一体いつのジョナサンなのか
それらをどう形にしていいかも分からず、しかしそれでも言葉にしてしまわないといけないような気がして、心に溜まった思いの丈を吐き出そうと口を開こうとしたその瞬間────それは起こった。

771トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 01:06:27 ID:oH.3ch5M


「 『ジョジョ』 」

「お前はもう────用済みだ」


気がつけば、ジョナサンの視界からディオは姿を消していた。代わりに重々しく生々しく、何かが弾けるような音がジョナサンの耳に届く。
ジョナサンは音がした方へ瞳を向ける。そこは調度ジョルノが立っていた場所で、程なくジョナサンの視界にジョルノとディオの姿が入る。

同時に、ディオの傍に立つ精神のビジョン────スタンドも

ジョナサンは一体何をしているのか、何が起こっているのか分からなかった。ジョルノがいて、ディオがいて、ディオの傍に黄金色のスタンドがいて。それらの事実は認識しても、それらが引き起こしている事象を繋ぎ合わせられない


「…………あ……───」


その引き絞られた声はジョルノのものだったか、ジョナサンのものだったか、あるいは両方のものだったか。けれどもその声と、鼻にこびりついてくるその臭いで、ジョナサンはようやく目の前の出来事を理解することができた。


ディオのスタンドの腕が

ジョルノの腹を────正確に貫いていた



がくんと、ジョルノの身体から力が抜けていく。生命が失われていく。
すべての音を拒絶したかのような静寂、その一瞬の後、ディオのスタンドはジョルノを貫いたまま腕を大きく振りかぶった。
ジョルノの身体からスタンドの腕は抜け、勢いよく吹き飛ばされる。腹部から血肉を撒き散らしながらジョルノの身体は草木の中へ無抵抗に突っ込んでいき……やがて見えなくなった。

「──────ッ!!!!」

そこまできてようやく石のように動かなくなっていた身体が金縛りから解ける。ジョナサンは己が意識する前にジョルノが消えた所へ駆け出そうとする。だが

「時を隔てた邂逅というわけか……ジョジョオオ……!」
「 はっ!」

いつの間にかジョナサンの正面にディオは悠然と立っていた。同じ高さにある彼の目線とぶつかる。そこでようやくジョナサンは違和感の一端に気付いた。
ディオの身長は自分と同じ程だっただろうか、確かに2人とも恵まれた体格をしていたが、それでも身長はジョナサンの方が高かったはずだ。
いや……それどころか、これはまるで────

「随分なマヌケ面をさらしているじゃあないかジョジョオ?それとも俺が生きているのに驚いているのか?」
「ディオ……君は……君は一体…………

何をしたんだ……?」

それがジョナサンの言えるたったひとつの言葉だった。

それは何に対する問いなのだろうか
たった今目撃したものについてか
ディオのスタンドについてか
それとも────

「…………よかろう、このDIOが尊敬する唯一の友よ、100年越しの再会を祝してこのオレがすべてを語ってやろうではないか
すべて、をな」



────それは夢物語のような、誇り高き血統と欲深き血統の、数奇な運命を辿るお話



  □■□■

772トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 01:11:21 ID:oH.3ch5M
とりあえず今回はここまでにします。
誤字脱字、矛盾等の指摘があればよろしくおねがいします

773トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/02(月) 01:17:39 ID:oH.3ch5M
あ、途中支援してくださったかたありがとうございます。
もちろん作品自体の感想もOKですよ

774名無しさんは砕けない:2014/06/02(月) 01:29:52 ID:XKo54Alw
こ、ここで止めるのか!
ヴァニラは?イギーは?ジョルノは!?
じらし上手な新人登場しやがってこの野郎。

775名無しさんは砕けない:2014/06/02(月) 14:00:23 ID:.GcoxiQE
ここで引きするとは…イギーはかなり奮戦してそう、
しかしDIOのジョナサンへの対応が良いなぁ
そしてジョルノォォォどうなるのか期待!

776名無しさんは砕けない:2014/06/02(月) 22:49:30 ID:BZ1IaAHk
続きはそろそろと考えて構いませんねッ?!
全裸待機

777トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 00:50:20 ID:oLPxV8Rk
ぎゃああ手直ししてたらこんな時間に……!
とにかく仮投下開始します。

778トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 00:52:26 ID:oLPxV8Rk


「ハァー……、ハァー……!」

サン・ジョルジュ・マジョーレ教会よりやや南東方向の街中で、パンナコッタ・フーゴは狭い路地の物陰にうずくまりながら荒々しい呼吸を漏らしていた。
教会前で死んだはずの麻薬チームの最重要人物、そしてフーゴの級友であったマッシモ・ヴォルペと接触後、彼らはそのまま戦闘に入り街中をかけていた。
壁の穴や地面のクレーター、ひしゃげた標識や電灯、散らばるガラスなどの破片、その一つ一つが2人の戦闘の激しさを象徴していた。
現在はお互い見えない位置に隠れ、次なるチャンスを待っているといったところか

「くそ……やっぱり本物のヴォルペなのか……」

信じられない訳ではない、確かにヴォルペはフーゴが確実に始末したはずだが、名簿にもその名は記載されていたし、死んだはずの人間がこの場においては何人もいるということをフーゴは知っていた。実際、フーゴはヴォルペよりも以前に亡くなったナランチャに会っている。

「よりにもよって何故あのタイミングで…………」

お陰でフーゴはジョナサンと離ればなれになり、それまで教会内で何が起こったのか、今現在何が起こっているのか結局分かっていない。

「だが、こうして会ってしまった以上は仕方がない…………奴は確実に始末する」

フーゴは音もなく立ち上がると、ヴォルペの位置を探るために移動を開始した。その目は既に決断を済ませた『漆黒の殺意』が宿っている。
周囲に警戒を張り巡らしながら、ゆっくりと路地を歩いていく。己の位置をバラようなことはせず、かつ相手の位置を探るためにどんなに小さな違和感をも見逃さないような慎重さと注意力を同時に展開する。

────奴を見失ってからそれほど時間も経っていない。奴もまた僕を殺しにくるから絶対に近くにいる

薄暗い路地を着々と進んでいく、しばらくすると、フーゴは『あるもの』を見つけその前で立ち止まった。

「…………?」

『それ』は民家の壁に空けられた『穴』だった。直径が人一人分はありそうな程の大きな穴、フーゴとヴォルペの戦闘中につけられたようなものではなく、ぽっかりとくり貫かれたようなきれいな円状の穴だった。
そこから民家の中を覗き混めば、床壁天井家具といわずあらゆる場所に削り取られたような跡と円状の穴が空いていた。妙なものはそれだけではなく、何故か民家の内部全体がまるで砂嵐でも巻き起こったのではないかと思うほど砂によって覆われていた。

779トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 00:55:27 ID:oLPxV8Rk

(まさか、僕たちよりも前にここでスタンド使いの戦いがあったのか?
しかもこの砂……まさか………)

明らかに異常な現場に対しフーゴはある推察を立て始める。

「教会のあの状態……砂を操るスタンド使いが別のスタンド使いと教会で戦闘になってあの惨状になったのだとすれば説明はつくが、その跡がここにもあると言うことは、まさかまだこの近くで……」

ざり、と思わず1歩だけフーゴは後退りしてしまう。


────瞬間


    ボ ゴ ォ !!

「なにっ!!」

掘り起こされたような音と共にフーゴの足下から手が伸び、フーゴの右足首を捕らえた。

「ぐおおおおお!!!」

伸びた腕はフーゴの右足首を握り潰さんとギリギリと握力を強めていく。その激しい痛みにフーゴは吠えるかのように叫んだ。

「パープルヘイズ!!地面を殴れえぇぇ!」

『うばぁしゃああああああああ!!』

フーゴのスタンドが地面に対し容赦のない拳の雨を降り注がせる。が、相手が寸のところで退いたのか手応えは空振りに終わり、地面には人一人分の穴が埋まりそうなだけが空いていた。

「くっ!」

フーゴは穴に足を取られそうになるも、すぐさま引き抜き距離をとる。右足首は潰されずにすんだが、それでも結構なダメージを食らってしまった。
ボコ、ボコとフーゴからやや離れた位置の地面が盛り上がる。やがてそこから手が出てきて、次に頭が出てくる。
その顔はやはり級友のものだった。

「…………」

のっそりとヴォルペは完全に地面から姿を表し、フーゴを睨み付ける。フーゴもまたヴォルペを睨み付ける。

「…………」
「…………」

沈黙
互いに何も語らない。そんなものを聞く耳はないし、語らう口もいらない。
お互いに知るのは、聞くのは、見るのは………相手の断末魔だけでいい

────2人の戦いが、再び切って落とされた。


「シッ!!!」

先攻をとったのはまたしてもヴォルペの方だ、拳程ある石ころを、『マニック・デプレッション』で強化された腕をもって投球する。

(教会で襲撃を受けたときと同じ……!だが!)

ズキリ、と最初に石をガードした右腕が僅かに痛む。

(あの石ころはスタンド能力が注入されているからかスタンドで受けてもダメージがある、慎重にいきたいところだが同じ手を二度も奴はするだろうか?必ず何か手は売っている、……かわすべきか?ガードすべきか?)

迫り来るそれに対する対処法を考え、そして一瞬で決断する。

(狭い路地でかわせば動きが読まれてそこを叩かれる、ここは……!)

迫りきったそれを、スタンドの腕で弾き飛ばした。また腕が痛むが凄みでそれを抑える。
すぐさまヴォルペに接近しようとして────訪れたのは、腹部の激痛と、全身への衝撃

「ご、はあ!?」

フーゴは理解が追い付かないまま、吹き飛ばされ地面に背中を強く打ち付ける。

780トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 00:59:26 ID:oLPxV8Rk

(ば……バカな!石ころは打ち落としたはずなのになんで……!)

打ち落としたのなら、フーゴにその石ころは着弾することなくこのように地面に叩きつかれることもないはずだ。
………投げられた石ころが一投だけだったなら

(ハッ! まさか奴が手に持っていた石ころは2つ!、スポット・バースト・ショットのように一つ目を投げた直後に後を追わせるように二つ目を投げたのか……!)

フーゴは自身な起こった現象を推察し、まさしくその通りのことをヴォルペは行っていたのだか、……時既に遅し

「ぐっ……!」

フーゴは体制を立て直そうとするも、ヴォルペはフーゴとの距離を縮めんと既に駆け出していた。

二十五メートル

(速いッ!マズイぞ……!こちらは全身にまともなダメージを食らっているが奴は体力を少し消耗しているのみ、まともに近距離でやりあって対処できるか?)

十五メートル

(殺人ウイルスを使うか?だめだもう遅いッ!この体制とダメージと時間で使用することはできない!)

────十メートル

(やるしか、ない!)

フーゴは上半身を起こした状態で戦闘体制に入る。そんな体制でまともに戦えるとは思えないが、距離が縮まっている以上どうしようもなかった。
距離が十メートルを切り、両者の視線がぶつかる。互いになんの迷いもない、黒々しい殺気を宿している。

そして距離は五メートルを切ろうとした───その時


    ガ  オ   ン   !、


「!?」

「なっ!?」

突如として両側の民家の壁、それもちょうどフーゴとヴォルペの間の壁が円状に消失した。ヴォルペはバックステップで一気に距離を離し、フーゴはなにが起こったのかさっぱり分からないままとにかく立ち上がろうとする。が

「痛っ!」

先程ヴォルペに捕まれた足首に激痛が走り、体制を建て直し損ねる。そうしている間にも異常な事態は進行しつつあった。


 ガ  オ ン !!
               ガ  オ  ン !!
      ガ オ   ン  !!


フーゴが先程目撃民家の様子と同じことが、今目の前で起こっていた。

「マ……ズイ…………!!」

フーゴが立ち上がった時は、ヴォルペの姿はどこにもなかった。奴にとっても予想外の事態だったのだろう。
そして突然……フーゴからそう離れていない空間から『何か』が表れた。

「す……スタンド………!?」

何もなかったはずの空間からそれは除々に姿を現していき、やがてその中からさらに何かがこちらを覗いていた。
それは人間だった。長い髪にハートの飾り、厳つい顔をした男が、こちらを睨んでいた。

「…………」

その男の目を見た瞬間────フーゴは全身に鳥肌がたった。
真っ黒いクレバスをイメージさせる眼、『漆黒の殺意』とも『どこまでも感情の欠落した』ものとも違う、底知れぬ暗黒がそこに広がっていた。
本能的にフーゴはそこから逃げようと身体を翻す。が、

781トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:02:47 ID:oLPxV8Rk


「……え」

そこには、フーゴの行く手を阻むかのように、砂で構成された大男が立っていた。
フーゴが状況を理解を飲み込むよりも早く、大男は両腕でフーゴの身体をがっしりと掴む

「は?」

フーゴの身体は大男に持ち上げられ、視界と重心がぐるりと反転する。
そして────大男はフーゴを肩に抱え、そのまま走り出した。

「…………ええええええ!?」

まったくさっぱり理解の追い付かないフーゴの叫びが、路地に響いた。


  ○●○●


「クソッ!! クソッッ!あともう少しで奴をッッ……!クソ!!!」

ガン! ガン! と力任せに拳を壁に打ち付ける。加減をしていないせいで皮膚は破け肉は抉られ血が流れるが、それもスタンド能力であっという間に治っていく。

「ハァー……ハァー……!」

今のヴォルペの脳裏には、たった一人の人物だけが浮かんでいた。

パンナコッタ・フーゴ
ヴォルペから拠り所としていた人────コカキとアンジェリカを奪っていった少年

ヴォルペにとって心を許せる相手だった。必要とし、必要とされ、互いに寄りかかるような、そんな存在だった。
それは端から見れば依存と言える関係だったかもしれない。それはマイナスなことで、本来なら克服すべきものだったかもしれない。
だけど、そんなの知ったことか
世間なんて知らない、常識なんて知ったことじゃない、そんなものに当てはめっこない関係が、ヴォルペたち麻薬チームの中にはあった。
なのに、なのにあいつらは、あいつはすべてを持っていってしまった。
コカキとアンジェリカは殺され、ビットリオは石仮面を取りに行ったきりどうなったか分からない、そしてヴォルペ自身も……
何もかもバラバラになった、何もかも持っていかれた。

「……許さない」

胸の中の溢れんばかりの感情を到底形に出来るわけがないと分かりつつも、それでも言葉に乗せて吐き出していく。

「オレは……フーゴを………許してはならない──────!」

……それはヴォルペの記憶の中の少女が言っていた言葉とよく似ていた。
けれども肝心の少女のことは欠片も思い出さないまま……空虚を抱えた青年は一人暗い路地に取り残された。


  ○●○●


「……あー」

先程の路地とは別の暗い路地、砂の大男に連れ去られたフーゴは、その事だけはようやく飲み込めたものの、やっぱり今の現状について理解が追い付いていなかった。
痛む足首を庇うように座り込む彼の目の前には……

「ワン」

……一匹の犬

「……まさかお前が砂のスタンド使い?」
「ワン」
「教会をあんな風にしたのも?」
「ワン」
「今まであの得体の知れない男と戦ってたのか?」
「ワン」
「…………」

782トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:05:36 ID:oLPxV8Rk

肯定してるのだろう、合いの手のように犬はフーゴに返事をする。
あの教会を飲み込むほどの砂を呼び寄せるなど、並大抵のスタンド使いではないとは思っていたが……

(正体も並大抵じゃなかったか……)

スタンドというのは精神のビジョン、だから強い精神を持つのであれば動物でも発現することも稀にある。実際フーゴもかつてトリッシュの護衛任務時に亀のスタンド使いを用いていたことがあった。

「で?何で僕を連れ去ったんだ?ただ単にあの男から助けるためだけじゃあないんだろ?」

話が早いと言いたいのか、犬は返事の変わりにフン!と鼻を鳴らす。

「………助けた代わりにあの男を倒すために協力しろ、か?」

ただ流石にフーゴも犬の言葉は分からないので、とにかく犬が言いたそうなことを代弁してみる。

「ワン」

するとやはりそれは当たっていたようで、犬はまた鳴き声で返事をする。

「…………」

だが、フーゴは当たっていたことで逆に頭を抱えた。
いくら助けられたとはいえ、フーゴもまたヴォルペと現在交戦中なのだ。正直「そんなの知るか、そっちで勝手にやっててくれ」ぐらいのことは言いたい。
だが、今は状況がそれを許してはくれない。先程のヴォルペとの戦いにおいて優勢だったのはヴォルペの方で、さっきのイレギュラーなことが起こらなければ負けていたのはフーゴの方だっただろう。
そして今の状態でヴォルペと会っても、フーゴには勝ち目が薄い。
だが、この犬とうまい具合にタッグを組めば、あるいはヴォルペを倒すことはできるかもしれない。
……まあ見たところ頭のいい犬のようだから、そこまでうまくことが運べるかは分からないが
それにあの正体不明の男には犬と(正確には砂の大男と)いるところをバッチリ見られたので、男はフーゴが犬の仲間だと認識してしまっているだろう。
男の容赦のないスタンド攻撃、それにこの足で逃げられるかは……まあ無理だろう
頬に手のひらを当て、やや考えてみたものの、やはり犬の要求をつっぱねるのはあまり得策でないような気がする。

「あ〜〜〜、とりあえず分かった。いいよ、一先ず一緒に戦ってやる」
「フン」
「ただし、多分見てただろうけど僕もお前とは別の敵と戦っている。そっちが現れたら僕はそっちを優先する。できればお前の協力も欲しいんだが……」
「…………」
「…………」

めちゃくちゃめんどくさそうな目で見られた
久々にキレていいだろうか。

「はぁ……」

フーゴは思わずため息をつくが、どのみちヴォルペもあの男もフーゴにとって、いや互いにとって「敵」なのだ。今逃げたところでまた戦うことになる。それならば他に被害が及ばぬ内に倒しておくべきだろう。

「乗りかかった船ならぬ乗らされた船だが……なるようになる、か」

どうやら教会に戻るのは、もう少し先のことになりそうだ。
フーゴは一人の青年を思い浮かべ、その青年のことを案じる。

(ジョナサン……どうか、無事でいてください)

はたして、そのフーゴの祈りは青年の元へと届くのだろうか。

783トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:08:16 ID:oLPxV8Rk



(かっ、思わず助けちまったぜ……おっさんのおせっかい癖が移ったか?)

フーゴが足の応急措置を始めた横で、イギーは身を休めながら軽く毒づく。

(まあいいさ、俺はお前みたいなお坊ちゃんみたいな奴は嫌いだが、せいぜい役立ってくれよな)


────そもそも何故イギーが教会より少し離れたここにいるのか
タルカスがヴァニラ・アイスに殺された直後、イギーはありったけのスタンドエネルギーを使い大量の砂を教会にかき集め勝負に臨んでいたのだが、ヴァニラのスタンド『クリーム』の暗黒空間による予想以上の性能に砂はどんどんと飲み込まれていった。
そこでイギーは方針を変え、砂のダミーによる撹乱作戦を実行した。
ヴァニラの攻撃パターンから暗黒空間に身を潜ませている間は外の様子が分かっていないことを確信したイギーは、スタンドでイギーの姿をした砂のダミーを作り、ヴァニラにそのダミーをイギーだと思い込ませ追わせるように誘導した。
作戦は成功し、油断したフリをしてわざとダミーを暗黒空間に飲み込ませ、イギーを始末したとヴァニラが油断し外に出た隙に砂の大男が持つ槍でヴァニラを襲った。
残念ながら寸の所で気付かれ槍は左肩を貫通させるに留まったものの、ようやく与えた一撃にイギーは渾身の笑みでヴァニラを挑発した。
これにはヴァニラもプッツン、『クリーム』を発動させ怒りのままに無差別に辺りを暗黒空間に飲み込んでいった。
流石にイギーもここまで見境なしの相手に打つ手はなく、ヴァニラが削りとってできた穴から外に飛び出し一時的な逃走を図る。それに気づいたヴァニラもまた周囲を飲み込みながら外へとイギーを追い、そしてデッドオアアライブの追いかけっこを続けている内にヴォルペと戦闘中のフーゴを発見し……今に至ると言うわけだ。

(おっさん、もう一度宣言しとくがな、これはおっさんへの恩返しでもなければ敵討ちでもねぇ、ただ俺がおっさんに死なれて後味悪ぃってんで勝手にやってるだけだ)

イギーは教会に置いてきたタルカスの姿を思い浮かべ、その心の奥底にある感情を奮い立たせる。

(待ってろよあのクサレ脳みそ野郎……必ずこのイギー様がキッチリとオトシマエつけてやっからな……!)

イギーのその瞳は、かつてないほどに熱で満たされていた。



(にしても……)

「ん?……なんだジロジロ見て」

(こいつまだあのヤローとまだ戦ってもいねーのになんで服がそんな穴だらけなんだっつーの)

「?」



  □■□■

784トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:11:35 ID:oLPxV8Rk



もくもくと天に登っていく黒煙を、その5人は目撃していた。

「なあ!やっぱりあれって火事……だよな?」
「ええ、おそらく他の参加者の仕業ね。事故か意図的かは分からないけど、ただごとじゃないことは確かだわ」
「しかもあれかなり大規模だなぁ〜〜家一軒ぐらい燃えてんじゃねーの?」

ナランチャの疑問に対しトリッシュが答え、玉美がそれを補足する。
5人が現在いるのはD-6上部、サン・ジョルジュ・マジョーレ教会へと続く通りの途中である。
フーゴとジョナサンの行方を追うために移動しつつあったトリッシュたち5人は、現在彼女たちのいる場所から離れた位置に発生した火災の煙を発見した。

「オレ最近知り合いの家が燃えた事がありやしてね〜、だから多分あれ家一軒丸々火事になってますよトリッシュ様」
「そう……やっぱり単なる事故じゃなさそうね、あの煙遠くからでも見えそうだから他の参加者も集まってくるかも…………アナスイ?」

玉美の話を聞きながらトリッシュは煙について少し考えるが、その時煙を睨みつけながら険しい顔をしているアナスイに気がつく。

「アナスイどうしたの?そんな恐い顔して……」
「……悪いが俺は今すぐにあの煙の所までいく、お前たちとはお別れだ」
「え!?」
「なっ……いきなりなに言ってんだよオメェ!!」
「あの煙の場所、空条邸かその周辺からのぼってるよな?」
「え、ええ……おそらくね」

アナスイの突飛な離脱宣言に一同は驚くものの、その表情はただならぬ事情があるのだと訴えかけている。

「俺の探している人があそこに向かっているかもしれない、だとすれば俺はすぐにそこにいかなくてはならない」

もし火事が起こっているのが『空条邸』ならば、その名から明らかに縁があるであろう、そしてアナスイの探し人である「空条承太郎」が来る可能性がある。一度別れたきり以降行方がさっぱり分かってなかった男を探し当てるのには絶好の、そしてまたとない機会であった。

「でもあなたまだケガが治りきっていないのよ?一人でいくなんて無謀だわ!」
「そうだぜ!空条邸なら教会に行くまでに前を通りかかるからそこまで一緒にいた方がいいって!」

トリッシュとナランチャは必死にアナスイを説得するものの、しかしアナスイは首を縦に振ろうとはしない。

「……俺はもう手遅れなんてごめんなんだよ」

ぽつりとそれだけ言い残し、アナスイは他の4人を置いて一人空条邸の方角へと走り出して行った。

「「アナスイ!!」」
「おいおいおいおい、本当に行っちまうかよ普通」

トリッシュとナランチャがアナスイを呼び止めようとするもアナスイは振り向かず、その背はどんどんと小さくなっていき、玉美は信じられないと目を瞬かせる。
トリッシュは行き場のなくなった手を降ろし、ジョニィの方へと顔を向ける。

「……アナスイは行ってしまったけど、ジョニィ、貴方はどうするの?……ジョニィ?」

トリッシュはジョニィに声をかけるが、肝心のジョニィはどこかぼんやりとした様子でサン・ジョルジュ・マジョーレ教会の方角を見ていた。
それに対し玉美が声をあげる。

「おい!トリッシュ様が話しかけてんのになんだその態度は!この!」
「ってぇ!!なにすんだこの小男ッ!」
「ああぁ!?やんのか!?」
「やめなさい2人とも!」

玉美が蹴りを入れたことでジョニィは正気に戻るものの、玉美と喧嘩腰になりかけトリッシュはそれを諫める。玉美ははい!トリッシュ様!と言うまでもなくそれに従い、ジョニィもかなり釈然としない表情であったものの渋々言われた通りにした。

785トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:16:27 ID:oLPxV8Rk

「で、どうしたのジョニィ?なんか様子が変だったわよ」
「ああ……」

ジョニィは再びサン・ジョルジュ・マジョーレ教会の方へと向く。

「今、また気配を感じたんだ。多分ジョナサンのものだと思う」
「ジョナサンの!?」

ジョナサンの名を聞き、ナランチャがまた食って掛かる。

「ジョナサンは無事なんだよな!?」
「そこまでは分からない、けど……」

ジョニィは無意識に左肩へと手を伸ばす。
先程は距離が離れすぎたせいか一度ジョナサンの気配が途切れてしまったものの、今また途切れる前と同じ気配をおぼろ気ながらだが感じた。
けれど何故だろうか、先程とは違って、ジョニィの中の何かが訴えかけている。ジョナサンの身にに今ただならぬ事態が振りかかっていて、ジョニィへと助けを求めているのではないかと、根拠も何もないのに不思議とそんな確信がある。

「やっぱり今ジョナサンは危ない目にあってんのか?」
「だからそこまでは分からないって」
「……ねぇジョニィ、貴方これからどうするの?」
「どうするって……」
「あたしたちとしては一緒に来て欲しいわ。でも貴方も探してる人がいるんでしょう?」
「…………」

もちろん、ジョニィはジャイロのことを忘れた訳ではない、ジャイロを探すことはジョニィにとって何よりも優先すべきことであり、その順位は覆されることはないと思っていた。
けれどどうしたことだろうか、ジョニィは今それを理由にしてジョナサンの後を追うことを拒むことができなくなっていた。今ジョナサンを追って行かなければきっと後悔することになると、ジョニィは自然とそんな思考になっていた。
不思議な繋がりを感じるあの青年を、自身と同じ名を持つあの青年を追うか、マイナスをゼロにする旅を共にし、戦いの果てに命を落とした親友を探しに行くか。


「僕……僕は────……?」


ジョニィ・ジョースターは、決断を迫られていた。



  □■□■



「…………」
「…………」

重々しく張りつめた沈黙と静寂がその空間に広がっている。
それはまるで割れる寸前までパンパンに膨らんだ風船が目の前にあるような緊張感に似ている。もう少し空気が入るか、ちょっとした衝撃があれば容易く割れてしまうような、そんな感覚がずっと続いている。
いやむしろ、彼────ジョナサンはそれを望んでいるのかも知れない。誰かがそれを割って、この醒めない夢でも見ているかのようなこの感覚を終わらせてくれる事を、彼は願っているのかも知れない。

「ジョ〜ジョ?もしかしてお前、そこでそんなアホみたいに固まったままで待っていれば誰かがお前を助けに来てくれると……そんなこと考えている訳じゃないよなァ?」

けれどその心境はよりにもよってこの空気を生み出した男によって暴かれてしまった。そう、ジョナサンの宿敵、ディオ・ブランドー……DIOによって

786トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:18:33 ID:oLPxV8Rk


ジョナサン・ジョースターはすべてを知った。
戦いの結末
己の最期
その後のディオの行方
そして────一世紀以上にも渡るディオとジョースター家の、壮大な因縁の物語を

「…………」
「黙ってないでなんか言ってみろよな。どうだジョジョ、100年後の自分の「肉体」とご対面した感想は?」
「…………」

ディオはわざとらしい笑みを浮かべながら、ジョナサンの正面に堂々とした姿勢で立つ。ジョナサンはそんな彼を、まだ夢でも見ているかのようなぼんやりとした、しかしどこか虚ろな目で見る。

「……君は、」
「ん?」
「君はどうしてそんなにしてまで…………生きようとするんだ?」

ようやく言葉を発したジョナサンの問いに対し、ディオはくだらないと言わんばかりに鼻を鳴らす。

「ふん、何を言うかと思えばそんなことか、簡単なことだジョジョ、人は生きているうちにあらゆるものを欲する、それは名声であったり支配する力であったり金だったりする。
友人であったり結婚であったり人の役に立つことであったり愛と平和のためであったりする
だが何故人はそれを求める?何故求めてまで生きようとする?」
「何故……?」

コップに水が入っていくかのように、不思議とDIOの言葉はジョナサンの心に入り込んでくる。
ディオはジョナサンの周囲を回るようにゆっくりと歩きながら話しを続けた。

「それはなジョジョ、『安心』を得るためだとオレは思っている。
名声も支配も金も友人も結婚も人の役に立つことも愛も平和も、すべては自分が『安心』するために求めるのだ。『安心』こそが生きる上での『幸福』なのだ。
ではその反対に位置する感情、『恐怖』とは何だろうか?『恐怖』とは一体どんなときに沸き起こる?
それは『安心』を得られなかったとき、求めるものを得られなかったときだ。人はそれが起こったとき絶望し、『後悔』という形で心に刻み込み、何かに挑むことに『恐怖』するようになる
そうだろ?努力の末路がゼロになるだなんで誰だって思いたくないものだ
そうして人はどんどんと『恐怖』を心に抱えていく、挑むという行為をしなくなっていく。
……だがどれ程得ようとも、どれ程失おうとも、人の最後には必ず『死』が待ち受けている。それは人が抱える最大にして回避しようもない『恐怖』だ。『死』はなにもかもを台無しにしてしまう、それまで得てきたものをすべて無価値にしてしまう最悪の『恐怖』だ。
では真に『安心』を得るためには何をすべきだと思う?人にとってなにもかもを無にしてしまう『死』をどう回避するか、あるいは『死』から『恐怖』を取り払うには一体どうすべきだと思う?
……オレはそこにこそ生きるということの真理があると思っている。そしてそこに到達したとき真に『安心』を、『幸福』を得ることができるのだ。」

787名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:22:17 ID:QzY5LaJE
したらば支援

788トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:26:46 ID:oLPxV8Rk

大衆を前に演説をする独裁者のような姿のディオに、ジョナサンは『恐怖』を覚えた。
ジョナサンの知っているディオと、目の前にいるディオには圧倒的な差がある。
もうこのディオはジョナサンの手の届かない場所にいるのではないか、ジョナサンの理解の範疇を越えた先に行ってしまったのではないか、……そんな気がした。

「このDIOは人を超越した……死を克服し、永遠を生きる唯一無二の存在となった。だから死の恐怖はこのDIOにはない
だがまだだ、まだオレは『幸福』を得ていない
故にオレは生きるのだ、真なる『安心』、『幸福』を得るために、『幸福』がある『天国』へと到達するためにな
どんな犠牲を払ってでも、オレはそこへ行く」
「どんな犠牲を払ってでも……だって?」

ディオの言い放った言葉に、ジョナサンはぴくりと反応を返す。

「その犠牲が……例え血を分けた家族であってもか………?」

それはディオから話を聞いて以降、初めて感情の籠った言葉だった。

「なんだジョジョ?まさかお前「アレ」をずっと気にかけていたのか?無駄なことを……アレはオレが『天国』へ到達するための駒にするために作ったものだ。どうしようとオレの勝手だろう?」
「勝手……だと?ディオッッ!!彼は……ジョルノは君の血を引いた子どもだと言っていたじゃないかッ!自分の子どもを殺してまで得るものに虚しさを感じないのかッッ!!父の手で殺された彼の絶望に罪悪感はないのかッッ!!!」

ジョナサンの脳裏にはまだ色濃くこびりついている。ディオのスタンドがジョルノの腹を貫いたときの、ジョルノの愕然とした絶望に染まった顔が
それを歯牙にもかけないと言わんばかりのディオにジョナサンは嫌悪を持って声を荒げる。だがなおもディオは涼しい顔のまま、ジョナサンの言葉を切り捨てる。

「ほう、アレの名を知っていたか、まあそんなことはどうでもいい。血を分けた家族だからと言ってそれがどうだと言うのだ?どれ程血が繋がっていようと他人は他人、己とは異なる存在だ。違うかな?
それに忘れたのか?オレはジョースター家にくる前に父親を殺してる……今更身内殺しなんてなんでもないさ」
「 ッ!ディオ……!君は……君は……ッ!!」
「ああ、お前はそういうやつだった。家族には愛があって然るべき、親を伴侶を子を愛することこそが真の幸せだと思っている……そんなヘドが出るような思考の持ち主だった。だがなぁジョジョ
エリナ・ジョースター
ジョージ・ジョースター
ジョージ・ジョースターⅡ世
リサリサ……もとい、エリザベス・ジョースター
空条ホリィ
空条徐倫
おっと、肉体的にはお前の息子でもあるアレもそうか」
「……ッ!」
「気付いたか?そうだ、いずれもお前と血の繋がりのある者、或いはその伴侶である者たち、それもこの殺し合いで死んだ者たちの名だ…………なあジョジョ


お前の愛が、やつらの一体何を救ったと言うのだ?」

789トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:29:37 ID:oLPxV8Rk


鋭く冷たく尖った刃を傷口に差し込まれ、ズタズタに引き裂かれるようだった。滅多刺しにされ、バラバラにされ、元の形がなくなってしまうほどぐちゃぐちゃにされていく。……なにもかもが崩れていってしまう。

「あ………」
「お前の愛がやつらを守ったか?いやそんなことはない、守らなかったからこそやつらは死んでいったのだからな
結局愛なんてものはそれほどまでに無価値で無為で無力なものなんだよ
一体やつらはどれ程の恐怖を抱えながら死んでいったのだろう?どれ程の絶望にまみれながら死んでいったのだろう?
……そして何故お前はこうしてのうのうと生きているのだろう?」

言葉の刃が、ジョナサンの心に止めを刺しに来る。
ガツンと頭を殴られたようだった。足元に確かな足場がない。手を伸ばそうにも灯りなんて何処にもない、そこは暗闇の荒野だった。地図もない、どこにいけばいいのかも分からない場所に、ジョナサンは放り出されてしまった。

「………………」
「……ああそうだ、お前が望むのならばひとつ……チャンスをやろう」
「チャンス……?」
「そう、チャンスだ。失ったものを取り戻せる唯一のチャンスだ
なぁに、簡単なことだ。『最後に生き残ったものがたったひとつだけ願いを叶えることができる』……覚えがあるだろう?
そう、この殺し合いを生き延びることだ。それこそがお前に残された最後のチャンスだ。だがそれを許してくれるほどこのゲームは甘くない……とうにそれは知っているな
だからこそ、ジョジョ
オレと同盟を組まないか?」
「…………同盟、だって?君と……?」
「そう、このDIOとだ。」

ディオの言っていることの意味が分からず、ジョナサンはディオの言葉を何度も心の中で反復させる。

「いまいち分かりづらかったかな?つまりはだジョジョ、オレとお前が協力して脅威となる参加者を始末して回るんだ
幸いにも今のオレは部下に恵まれていてな、この会場にいる参加者のほとんどの居場所を突き止めることも可能だ
無論、その中には殺し合いに乗っている者や、反対に殺し合いに乗ることを是としない連中もいる、そいつらはこの殺し合いで生き残る上で邪魔な存在だ。分かるだろう?
そいつらの居場所をオレがお前に教え、お前はそいつらを始末する。シンプルだろう?
……ああもちろん、生き残れるのはひとりのみだ、だからそういう連中を全員排除できれば、その時点で同盟は解消、その後生き残れるかはお前次第だ
だが悪くないだろう?少なくとも今お前がおかれている状況よりかは失ったものをチャラにできるチャンスに恵まれているのだからなぁ?」

暗闇の荒野に、光が差し込む。
それはひどく魅力的で、甘く、暗闇に閉ざされた心ではすがり付きたくなるほどの蠱惑的な光だった。

けれど、
どれ程綺麗であっても、どれ程強い光であろうと────所詮それは幻影でしかない
だが、頭では理解していても、心がそれを訴えてくれない。他の道が見えない以上、それにすがり付くしかない。

「…………」
「どうだジョジョ?うまくいけば取り戻せるどころか、大切な者と……エリナと永遠を生きられるぞ?」
「────ッ!!」

790名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:33:00 ID:QzY5LaJE
したらば支援
投下スピード上げてくれェ〜

791トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:34:31 ID:oLPxV8Rk

エリナ
もう会えない……本当に大切な人

ディオがジョナサンの正面に立つ、その言葉がジョナサンの心を締め付ける。

「  会いたいだろう?  」

けど、もう一度会えるかもしれない
大切な人たちと、また会えるかもしれない、取り戻せるかもしれない

エリナ

僕はもう一度

君と────

──────────

───────────────







「違う」



☆★



「違う……?何が違うと?」
「失ったものを取り戻せるから殺す?失っても取り戻せるから殺す?……そんなのは、違う、絶対に間違ってる」

確かな意思をもってジョナサンはディオの目を見つめ返す。
その目は暗く染まってなどいない、虚ろな目などではない。
その瞳の奥にあるのは────黄金の輝きを放つ、誇り高き意思。
ジョースターの『黄金の精神』が、確かにそこにあった。

「僕はもう……どんな形であろうと、大切な人を、家族を失いたくない!!」

足は地を踏みしめている。暗闇の中には、己にしか見えない、しかし信じることのできる光輝く道が見えている。
迷いなどない。ジョナサンの心には、爽やかな風が吹いていた────

「ディオ!!君が無為に他の人の命を奪うと言うのなら、僕の家族を奪うと言うのなら!、
僕は君との青春に、決着をつけてやるッッ!!!」

コオォォォ と波紋の呼吸を発する。ディオに対し戦いの覚悟を示す。態勢はすでに臨戦状態へとなっている。
ディオは変わらず涼しい顔をしていたが、しかしその瞳からは何を考えているのか読み取ることができない。
パチパチパチ、とディオは拍手をジョナサンに送った。

「……さすがだ、ジョジョ。これほどまで突き落とされても折れぬとは、叩けば叩くほど伸びるのは本当に変わらんな。やはりジョースターは侮れん


だがなぁジョジョ」

ディオの声が背後からする。ジョナサンの視界からはとうにディオの影はない。急いで振り向くものの、そこにもディオの姿は影も形もない。

「お前はこのDIOを倒せはしない……既にオレは世界を支配する力『ザ・ワールド』を得ている。そんな生っちょろい貴様の波紋ごとき、このDIOに届きさえもしない。フーフー吹くなら……死に逝く者への地獄のラッパでも吹いているほうが似合いだぞ?」

至るところから声がする、それなのにその姿を捉えることができない。

(こ……これがディオのスタンドの能力なのか!?一体僕の身に、何が起こっている!?)

反響しているわけではない、だがどれかが本物で、それ以外が偽物の声なんていう子供だましのようなものでもない。
ジョナサンがディオのスタンド能力を見分けるには、圧倒的にスタンドに対する知識と経験が足りなかった。

「本来はこれは「アレ」の役目だったのだがな……ジョジョ、オレはこれからお前の血を吸い、お前の肉体を馴染ませる。なにせこれはお前自身の体だ、これ以上ないまでに馴染むだろう。そこに余計なものなど一切必要ない」
「! そんな理由でジョルノを殺したのか!!」
「お前の血がある以上、アレの存在はオレにとって『天国』への道を阻む障害でしかない……だから始末したのだ」

淡々と事実のみを語るディオに対し、ジョナサンの怒りで握っている拳をさらに握りしめ、掌へと爪を食い込ませる。心は熱の激流で満たされていく。

792トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:37:11 ID:oLPxV8Rk

「さあジョジョ、無駄な時間はここまでだ。
お前の血は我が永遠の糧となり、お前の肉体は我が未来であり続ける……

そしてその血を吸った暁にはジョジョオオ!!貴様に連なる者どもを根絶やしにしッ!我が『天国』への踏み台にしてくれるわ!!!」

ディオの姿が突如としてジョナサンの目の前に現れる、ディオの腕が振り上げられ、その指はジョナサンの血を吸うべく首筋へと向かおうとしている。驚愕しとっさに反撃しようとするも……

「もうおそい!回避不可能よッ!お前の血は我が永遠の糧となり、お前の肉体は我が未来であり続けるのだ、ジョジョオオォォ!!!」

ディオの手がジョナサンの首へと伸びる。もう届くまで数瞬もない

(そんな────僕はここで終わるのか……?何もできずに、何も成し遂げられずに、ただディオに血を吸われて死ぬのか……?)

それは絶対に回避するべき事象だった。けれどももう術はない。勇気も策も、圧倒的な力の前ではなす術もなく押し潰されるのみ。ただ惨めに、潰された姿を晒すしかない。

(エリナ…………すまない…………)

ジョナサンにはただ一言、愛しい人に何も出来なかったことを悔い、謝るしかなかった。

そして────




─────ブゥン!!!



「ぐおぉ……!?」
「……な……?」

ジョナサンに最期の時は訪れなかった。
代わりにジョナサンの元へ現れたのは……一匹の「蠅」

「い……今、一体……?」

ジョナサンの首筋にディオの指先が届く瞬間、まるでそれから庇うかのように一匹の蠅がディオの指先に触れ、ディオの指を弾き返した。

(この会場に来てから虫なんて見てはいない……じゃあこれはスタンドによるもの?誰が、一体どうして……?)

ジョナサンの中に渦巻く疑問は、しかしほとんど間を空けることなく解決することになる。

ザッ  ザッ

何故ならその蠅を産み出した本人が────死んだと思われていたその少年が、草木を踏みしめその陰から再びその身を現したのだから



「…………ジョルノ?」
「………………」

ジョナサンはその少年の横顔を捉えながら名を呼ぶ、しかし少年────ジョルノはそれが聞こえていないかのようにぴくりとも反応しない。
顔は青白く、歩みもおぼつかずふらついている。貫かれたはずの腹の傷口は何故か埋まっていたが、所々出血していた。

だがその顔だけは、激情に燃えるその瞳だけは、目の前の一人だけを映していた。

「DIO……貴方は……貴方は僕にとって……」

カラカラになった喉から、それでも彼は言葉を紡ぐ。
そして、目の前の『父だったもの』に言い放った。



「倒すべき、『悪』だ」



─────それは決別の宣戦布告だった。



☆☆★

793名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:38:17 ID:FWunigdY
うおおおお熱いいいいいいいい

支援!

794トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:40:23 ID:oLPxV8Rk



「……面白いことを言ってくれるじゃあないか、我が息子よ。そのセリフ、鏡を見てからもう一度言ってみてくれないかな?」
「…………」

ダメージを反射された指をぷらぷらとゆらしながらDIOは挑発する、しかしジョルノの瞳はまったく揺らぐことはない。
だがDIOの言葉は事実を示しており、今のジョルノの姿は誰がどうみてもまさに満身創痍と言えるものだった。

「…………ええ、今の僕では貴方に勝てません。貴方のその『時を止める』能力に勝つ方法が、僕にはまだ分からない」
「ほほーう、我がスタンド能力を見破ったか、ひょっとしてかつて似たようなスタンド能力を持つ者と遭遇していたか?
……まあいい、ではこれからどうする?まさかまた殺されに舞い戻って来たわけでもあるまい?」

ジョルノの瞳がほんの少しだけ揺らぐのを、ジョナサンは確かに見た。けれどそれは本当に少しの間だけで、次の瞬間には元のはっきりとした覚悟を湛えた眼に戻っていた。

「そうですね、僕がこうして出てきたのは、ほんのちょっぴりの時間稼ぎです。」
「時間稼ぎだと?」
「ええ、そろそろ聞こえませんか?」

ジョルノの言いはなったその直後に、ジョナサンの耳に何かの音が聞こえてきた。


ブブブブ─────

「時間稼ぎ、そうです。いくら時を止めようと関係ない、僕が考えた精一杯の『逃走経路』」

ブブブブブブ─────

「例え時を止めようと……視界が防がれてしまえば意味はないでしょう?」

ブブブブブブブブブ─────!!

「ではまた近いうちにお会いしましょう───それまではさようなら、『父さん』」


そして
DIOとジョナサンの視界は、────ジョルノの産み出した大量の『虫』によって真っ黒に閉ざされた。




ぐい、と何かに腕を引っ張られ、思わず足がもつれそうになるも、腕を引かれるがままジョナサンはなんとか駆け出した。
耳は大量の虫が生み出す羽音に埋め尽くされ、視界もまた虫によって防がれているため一体何が起こっているのかさっぱり分からず、ジョナサンは己の身を引く存在に進む方向を委ねながら走り通した。
やがてジョナサンは階段を昇っていき、それが地上へと続いている階段だと気づいたころに大量の虫は一気に姿を消した。

「────はぁーーー!」

ほどなくして階段を昇りきり、ジョナサンは息を吐く、何せ走っていたうえに虫のせいで呼吸もままならなったのでここにくるまでずっと息苦しかったのだ。
呼吸が落ち着いた頃、ジョナサンは顔を上げる。そこはサン・ジョルジュ・マジョーレ教会の地上で、ジョナサンが訪れた時のまま、今にも崩れ落ちてしまいそうなほどボロボロであった。
その様子を少しだけ見渡し……間もなくジョナサンの視線はうずくまる金髪の少年の姿を捉えた。

「ジョルノ!!」

急いで傍まで駆けつけ、ジョルノの様子を確かめる。顔は先程よりも血の気がなく、腹の出血もひどくなっている。慌てて波紋を流し込み治療をする。それによりなんとか気色は良くなり、出血もかなり抑えられた。

「……う……」

ジョルノが小さく呻き、床に手をつき立ち上がろうとする。が、腕に力が入らず、足も震えており、立つどころか体を起こすことすらままならないようだった。

「無茶をしてはだめだ、今は体を休めて……」
「…………た……」
「え?」

ジョルノの口が微かに震え、何か言葉を紡ぐものの、ジョナサンの耳にはほとんど聞こえない。
耳を澄まし、ジョナサンはジョルノに聞き返す。

795トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:42:08 ID:oLPxV8Rk

「すまないジョルノ、今なんて……」
「……貴方、どうして……僕の名前を、知ってるんですか……?」

DIOはジョナサンの前でジョルノの名前を直接呼んでない。
ジョナサンにジョルノのことを語っていた際も、始終「アレ」呼ばわりで決してジョルノの名を明かそうとしなかった。にも関わらずジョナサンはジョルノのことを前もって知っていたかのようにその名を呼び、DIOに食って掛かっていた。
ようやく途切れ途切れに聞こえてきたジョナサンに対する疑問に、ジョナサンは素直に答える。

「あ……ああ、君のことは君の仲間から聞いていた。ナランチャにフーゴ、それにトリッシュも」
「…………彼らは……」
「ああ、今は離れ離れになってしまったけど、みんな無事だ」

ジョナサンの返答に対し、ジョルノは安堵したかのように息を吐く、彼が今まで出会った人の中で知り合いだったのはグイード・ミスタ一人のみで、放送で呼ばれたブチャラティとアバッキオ以外の仲間の行方はまったく分からなかったので、ジョナサンの口から彼らの名前が出たのはジョルノにとって喜ばしいことであった。
しかし、今の状況では手放しに喜ぶことはできない。ジョルノはなおも力の入らない体で立ち上がろうとする。

「ジョルノ!今は動かなくて良い、移動したいのなら僕が君を抱えるから無茶は────」
「……今、立たなければ、ならないんです……」
「……ジョルノ?」

震える体で無理矢理立ち上がろうとするジョルノに対し、ジョナサンは気づきはじめる
先程のDIOに対するあの姿勢は、精一杯の虚勢だったのだと
彼の心が、その見た目以上に、ボロボロになっているのだと
そして今もなお、その事実をひた隠し、崩れ落ちそうになりながらも立ち上がろうとしているのだと
ジョナサンはそんな彼の様子を見、胸の奥がズキリと痛む。

(ジョルノはきっと強い子なんだ、今までも数々の困難を乗り越えて来たに違いない
けど……今は逆にそれが足枷になっている。どんなに傷つこうと、どんなにボロボロになっても、決して心は折れることはない……折れることを、自分自身が許さないんだ)

だったら、彼のために、自分は何ができる?


『お前の愛が、やつらの一体何を救ったと言うのだ?』


ディオの言葉の刃が、ジョナサンの胸に突き刺さる。
ジョナサンは一度、眼を閉じる。

(僕は……何もできなかった。大切な人が苦しんでいたときに、そんなことも知らずにのうのうと息を吸っていた……
けど、そこで立ち止まってはだめなんだ。今を生きている以上、いなくなってしまった人たちの分の意思を無駄にしてはならない
去ってしまった人たちの意思は、受け継いでいかなくてはならない、さらに先に進めていかなくてはならない)

(エリナ……今の僕に、ジョナサン・ジョースターに、できることは─────)


ジョナサンは眼を開く、その心に光が降り注ぐ
その瞳に映るのは─────


☆☆

796トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:45:45 ID:oLPxV8Rk


どれ程崩れてしまいそうになっても、壊れそうになっても、挫けている時間はない、砕けるようなことはあってはならない、……折れるなんてもってのほか。


────たった一歩だけでいいんだ

────一歩踏み出して立ち上がるだけでいい

────それだけで僕はまた立ち向かえる

────『悪』に、立ち向かう勇気が出てくる

────ブチャラティ、アバッキオ、……ウェザー、彼らの意思を……

────タルカスさん、彼も恐らく、もう…………本当に、すみません

────けど、立ち止まっては行けない、僕は立ち上がらなければならない

────一歩、たった一歩だけでいいんだ、それだけで勇気が湧いてくる

────一歩、だけで……


『お前はもう────用済みだ』


────………………





「ジョルノ」



☆☆



己の名前が聞こえて、顔をあげる。
瞳に映ったのは、さっき会ったばかりの男
……そういえば、名前もまだ知らなかった。

「君は本当に強いな。……僕がディオに血を吸われそうになったときも、君は僕を庇ってくれた。もう自分のことで手一杯だったろうに、地下から僕を引っ張ってここまで僕を導いてくれた。本当の覚悟と勇気がなければ、こんなことできっこない」

男の手がジョルノの手を握る、ひどく大きくて、それでも不思議と暖かさを感じる手

「……参ったなあ。情けないけど、こんなときどんなことを話していいのか分からない
何か話せばいいのか何も言わない方がいいのか……
話すなら何を話せばいいのか、慰めればいいのか元気付ければいいのか、好みの音楽のことを語ればいいのか……
いや、ごめんよ、変なことばっかり言ってしまって
でもジョルノ、僕から君に言えることで、たった一つのことがある。これだけ言わせて欲しい…………信じて欲しい」

男の口から不思議な呼吸音が聞こえる。
けれどもちっとも不快はない、男の握っている手から暖かな感覚が広がっていく。全身に染み渡っていく。……空いた隙間が満たされていく。



「僕は、君の味方だ」



ジョルノは男の手を無意識に握り返す。胸の奥が熱い何かで満たされ、溢れかえってくる。全身の芯に生命が注がれていくような感覚がする。……足はもう、震えていない。
男が立ち上がる。自然とつられてジョルノもまた立ち上がる。その動作の一つ一つがまったく苦にならない。男に支えてもらっているからだろうか、それとも……

「君が立ち上がりたいときは、僕も一緒に立ち上がろう
君が立ち向かいたいというなら、僕も一緒に立ち向かう
一人でなにもかもしようとしないでくれ、……僕が、君と一緒にいる」

ジョルノは顔をあげる、高い位置にある男の顔は穏やかだった。ジョルノが今まで見てきた色んな人のどの顔よりも、優しい顔
ジョルノの心には、いつか感じた爽やかな風が吹いていた。

797名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:45:48 ID:FWunigdY
僕らにはまだきっとやるべき事があるのなら!

支援

798名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:48:23 ID:QzY5LaJE
フーゴを一歩踏み出させたジョルノがジョナサンによって一歩踏み出す
去っていった者たちの意志を受け継いだジョルノが今度は去っていった者たちに背中を押してもらう

くっそ熱い

799トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:48:50 ID:oLPxV8Rk

「どうして」
「……なんだい?」
「貴方はどうして、そんなことが……」

ジョルノはDIOの息子で、DIOの体は男の体を乗っとったもので。つまり男からしてみれば、ジョルノは愛した人ではない人との間で勝手に作られた子で……

「やっぱり聞いてたんだ、ディオの話」
「……」
「そんなことは関係ないよ、君は僕を『救って』くれた、それだけで十分さ」

ゆるゆると男は首を振る。

(…………あ)

そしてひどく今更に、気づいた
なんで気がつかなかったのだろう、DIOの存在があまりに大きかったからだろうか、ジョルノが男のことをまったく知らなかったからであろうか。……とにかく、ジョルノはその時ようやく、その事実に気がついた。

(じゃあ、この人は僕の…………もう一人の────)


────父親


それは夢見心地なんてものじゃない、ひどく曖昧で漠然としてて、ぼんやりとした感覚でしか知覚できないことであった。
でも、それでも、本人たちに自覚がなくても、お互いに好みの音楽どころかその存在を知ったばかりだったとしても


『僕は、君の味方だ』


────その言葉はジョルノにとって、血の繋がりがある『家族』からの、初めての暖かな言葉だった。

「…………貴方は……」

なんと言えばいいのか分からないのはジョルノもまた同じで、それでも男のことをなにか知りたくて、形にしきる前に言葉に乗せようとして────



────……ブゥン



一匹の『蠅』が、ジョルノの元へとたどり着いた。

「……あれ?これってさっきの?」

男はそれを見て、きっと先程の逃走の際の消えきっていなかった虫の一匹だと思ったのだろう。
でも違う、その蠅はもっとずっと以前にジョルノが産み出したものだった。ここにくる以前に『ある男』の元へとたどり着くはずのものだった。

ジョルノは男から手を離す。代わりにその蠅を握る。次にジョルノが手を開けた時にはその蠅は姿を消し、代わりに二つの『切れ端』があった。
一つは場所が書かれているメモ、一つは『ある男』のブーツの切れ端
本来ならその蠅はブーツの切れ端の持ち主の元へとたどり着くはずだった。けれど蠅は持ち主を見失い、主人の元へと戻ってきた。そのことが意味するのは……


「…………ジョルノ?」


────その蠅は『グイード・ミスタ』の死を知らせた。文字通りの「虫の知らせ」となった。



☆☆ ☆



ふらり ふらりと彼女は教会の中へと入っていく
己の思うがままに、体の感ずるがままに

やがて彼女の視界には、2人の人影が映る
2人とも何かに気をとられているようで、彼女には気がついていない
彼女は思う、あの2人から「気配」を感じると、ずっと知りたかった「空条徐倫」のルーツがあると


────彼女は2人に、ゆっくり近づいていく

800名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:54:58 ID:QzY5LaJE
焦らされるゥ〜 
支援

801トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 01:55:11 ID:oLPxV8Rk
すみません、本当はもうちょっとだけ続きと状態表があるのですが、現在投下できる状態ではなく、今から取りかかりますので時間がかかってしまうかもしれません。
あらかじめご了承ください
ていうかもうみんな寝て!

前回仮投下の時感想くださったかたありがとうございます!ネットに弾かれたボールはこう転がりました
。よかったよかった……?

802名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 01:58:53 ID:olUxYAI6
とりあえず乙ですよ、リアルタイムで読むの久しぶりです体の火照りがすごい、熱い展開でした。
まだ続きがあるみたいですけどジョルノォォォがジョナサンと出会えたのは幸なことで良かったし『黄金の精神』の力を見せられた。
イギーはさすが抜かりない

803名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 02:00:58 ID:FWunigdY
俺に寝ろと命令しないでくれえええええええええ
これまでの話の細かいネタや展開を踏襲しつつ、王道を往く展開に胸が熱くなりました。
イギーかっこよすぎて震えが止まらねえ・・・もう完全に覚醒してるわ

ジョルノはジョナサンの事、「お父さん」と呼んでもいいのよ?

とにかく、投下乙でした

804名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 02:11:07 ID:hOwVQImk
どうして「これだけ」なのよォォォォオオオオ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!

とにかく投下乙です。続きはまた明日でしょうか?
投下の途中にも言ったんですが、キャラの立場が原作クロスオーバーしててスゴイ熱かったです。
加えてリレー小説らしく、前作のセリフを引っ張ってきたり、思考を引用したりでそこもグッド!

ジョルノ、死ななくてよかった……。
DIOとの因縁、引力はまだまだ続きそう。
FF突入、ヴォルペとジョルノ、ヴォルペとDIO、DIOとジョニィ、ジョニぃとジョナサン……。
まだまだ波乱を起こし得る組み合わせが多すぎて、先が全く読めない!
ああ、早く続きが読みたい! とにもかくにも乙でした!

805トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 02:18:34 ID:oLPxV8Rk
うあああ皆さまありがとうございます!!ぶっちゃけ最後の方投下直前に書き上げたのでスッゴい心配してたのですが……うあああ
続きといっても本当に数行程度なのですが……時間帯的にもうアレなのでまた明日(もう今日だけど)なるべく早いタイミングでそれと状態表を投下します。
ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます!ではまた次回に。

806名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 02:33:19 ID:QzY5LaJE
(どうせ起きてるからいま投下してもいいのよ!)

807トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/03(火) 02:38:57 ID:oLPxV8Rk
>>806
ね、寝てー!
いや本当にちょっと書き上げられそうにないので、やっぱり明日の夜に投下します。
ご迷惑おかけして申し訳ありません……

808名無しさんは砕けない:2014/06/03(火) 23:42:21 ID:QzY5LaJE
マダー?(・∀・)っ/凵

809 ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 01:24:05 ID:McV1Bey6
申し訳ありません……リアルの都合で時間がとれなかったので、今日はちょっと無理です…
もう少しだけ時間をください。本当にちょっとだけなんで

810トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 22:43:48 ID:McV1Bey6
うおおお3度目の正直!
仮投下開始します

……といっても本当にほとんど状態表なんですけどね

811トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 22:45:07 ID:McV1Bey6



【E−6 北部/一日目 午後】

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ブチャラティ、アバッキオ…!!
1.放送まちがいとかふざけんな!!
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな
3.フーゴとジョナサンを追う

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.フーゴとジョナサンを追う
4.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
5.玉美、うっさい

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.トリッシュ様に従い、2人(フーゴとジョナサン)を追う。
【備考】 彼らはSBR関連の事、大統領の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小)、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。僕と彼との関係は?
4.ジョナサンを追う?それとも……
[備考]
※現在ジョナサンと共鳴しあってますが、距離が遠く他に気配が複数ある(DIOとジョルノ)ことに気がついてません。


【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(中程度に回復)、体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.空条邸へ向かう
【備考】
ジョニィとアナスイは、トリッシュ達と情報交換をしました。この世界に来てからのこと、ジョナサンの時代のこと、玉美の時代のこと、フーゴ達の時代のこと、そして第二回の放送の内容について聞いています。

812トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 22:46:36 ID:McV1Bey6



【D−3 西側、街中のそれぞれどこか/一日目 午後】

【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:左肩貫通、プッツン
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)『オール・アロング・ウォッチタワー』のダイヤのK
[思考・状況] 基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.イギーと、一緒にいた少年(フーゴ)を始末する。


【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:健康、怒り
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい。
0.DIOの下に『空条徐倫』を連れて行く。
1.空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい 。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。
3.フーゴを殺す
[備考]
※現在怒りで3以外の事柄がほとんど頭にありません。時間が経つかなにかきっかけがあれば思い出すでしょう。
※携帯でDIOへ留守電を残しました。どのような内容なのかは後の書き手様にお任せします。


【どう猛な野獣コンビ】

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:右足首に圧迫によるダメージ、体力消耗(中)、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーが二枚とも消えたため今の所はムーロロには連絡できません)
3.ヴォルペと襲撃してきた男(ヴァニラ)を倒す(ヴォルペ優先)
4.ひとまず犬(イギー)とともに行動
5.教会に戻りジョナサンと合流する
6.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。
7.ムーロロの身に何か起こったのか?
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』のハートのAとハートの2はムーロロの元に帰り、消えました。

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.ヴァニラ・アイスをぶっ飛ばす。
2.花京院に違和感。
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わない
4.穴だらけ(フーゴ)と行動

813トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 22:47:46 ID:McV1Bey6
【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地上/一日目 午後】

【ジョジョの奇妙なファミリー】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
1.ジョルノと一緒にいる。……絶対に彼を一人にしない
2.ディオ……。
3.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
4.フーゴやナランチャたちと合流したい
5.知り合いも過去や未来から来てるかも?
6.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
7.ジョルノ……どうしたんだ……?
[備考]
※DIOからDIOとジョースター家の因縁の話を聞かされました。具体的にどんなこと聞かされDIOがどこまで話したのかは不明です。(後の書き手様にお任せします。)

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(大)、精神疲労(大)、腹部損傷(G・E&波紋で回復中)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.???
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。
※DIOがジョナサンに話したDIOとジョースター家の因縁の話を一部始終聞きました。具体的にどんなことを話しどこまで聞いていたかは不明です。(後の書き手様にお任せします)
※149話「それでも明日を探せ」にて飛ばした蠅がミスタが死亡したことによりジョルノの元へと帰ってきました。


【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
混乱
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者は殺す? とりあえず今はホル・ホースについて行く。

814トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 22:48:57 ID:McV1Bey6






「ジョジョを連れて逃げたか……ふん、ジョースターと引き合うとはやはりこのDIOの息子、か」

「まあそう問題ではない、やつらはまたこDIOの元へとやってくるだろう、ジョースターの引力によってな」

「……やはりそうでなくてはな、わざわざ呼び寄せる必要などない、やつらは必ずこのDIOに立ち向かってくる……我が野望の前に立ち塞がってくる」

「……ああ、そうだ……!」

「我が野望の路上に転がる石クズどもよ……」

「我が天国への階段に立ち塞がる塵どもよ……!」

「貴様らの血肉をもって、我が永遠の、そして天国への足掛けとしてやるッ!」

「さあ、来い………!」



「『ジョースター』ッ!!」





【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地下/一日目 午後】

【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロン グ・ウォッチタワー』のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョジョ(ジョナサン)の血を吸って、身体を完全に馴染ませる。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。
[備考]
※携帯電話にヴォルペからの留守電が入ってます。どのような内容なのかは後の書き手様にお任せします。
※ジョンガリ・Aと情報交換を行いました。
※ジョンガリ・Aのランダム支給品の詳細はDIOに確認してもらいました。物によってはDIOに献上しているかもしれません



      ★

   ☆☆☆☆☆ ☆
   ☆

815トリニティ・ブラッド  ◆Khpn0VA8kA:2014/06/04(水) 22:50:23 ID:McV1Bey6
以上で仮投下完全終了です。……もし妙に期待されてたかたがいらっしゃいましたら申し訳ありません。
ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございます。夜中に投下するわ実質予約ぶっちぎるわ長いわ待たせるわで……本当にすみませんでした

まだまだ言いたいことは数あるのですが、ここから一先ずこの仮投下の件につきましてちょっとした意見を伺いたいと思います
この仮投下の目的としましては、先に作品を投下されていた◆LvAk1Ki9I.様の作品と拙作との話の展開に矛盾が出ている可能性があるのではないか?という◆LvAk1Ki9I.様ご本人の懸念に関しまして、ならば拙作を一先ず仮投下しその際に皆さまの意見を伺おうという私の考えの元、こうして仮投下させていただくことになりました。

……なんだか堅っくるしくなってしまいましたが、ぶっちゃけると「ジョンガリ・Aの今の扱い」についてですね。はい


一応DIOの状態表には反映しておきましたが、このことに関しまして皆さまからご意見をお聞きしたいと思います。

816名無しさんは砕けない:2014/06/05(木) 09:39:47 ID:t7kkt1Gs
仮投下乙です。
ジョンガリの件ですが、ヴォルペの携帯が繋がらなかったという事はF・Fを同行している事がDIO側の誰にも伝わっていないはず(ウオッチタワーも接触していない描写が過去投下済)。
時間軸的にヴォルペ達が地上に出た頃にはジョンガリが配置されていますから、ヴォルペの同行者とはいえ「通せと指示した者以外は容赦なく撃て」と言われたジョンガリがF・Fをスルーするとは考え難い気が…
このまま本投下に移るのであれば、本文中か補足に何故かF・Fが無傷で入り口を通った旨を書いて後にジョンガリを書く人に理由を考えて貰う必要があるかと。

あともうひとつ、本投下の際にはF・Fの状態表のホル・ホースに付いていく件は削除しておいた方がいいと思います。

817 ◆LvAk1Ki9I.:2014/06/05(木) 20:48:27 ID:3mdPb3nU
大作の仮投下、まずはお疲れ様でした。
細かい感想は本投下時とさせていただきますが、ディ・モールト良かったです。

指摘させていただきますが
何度も出てきている教会名、サン・ジョルジ『ョ』・マジョーレが正しいです。
(私も昔同じ指摘をされてたりして……)

また、ジョルノやトリッシュが死者達について考える文がありますが、
その中にポルナレフの名前も加えておいたほうがいいのではないでしょうか。

誤字、脱字に関して。
目立つというほどではありませんが、ところどころ間違っていると思われる箇所があります。
例えば>>814 やつらはまたこDIOの元へ―――("の"が抜けている)など。

ジョンガリに関しては>>816さんの意見とほぼ同じです。
DIOの口ぶりからしてジョナサンは許可されていたでしょうし、フーゴやイギーも対応するDIOの部下がいた以上手出し無用で済むと思います。
人任せになってしまいますが、次の書き手さんに適当な理由を(何らかの理由で許可されていた、ジョンガリ側にトラブル、実は撃たれたがF・Fなので無事だったなど)
つけてもらえれば矛盾は出ないと思います。

最後に、今回の件は補完話となるにも関わらずDIOを予約に入れていなかった私の不手際です。
◆Khpn0VA8kA様、並びに他の書き手、読み手様にご迷惑をかけたことを深くお詫び申し上げます。

818 ◆Khpn0VA8kA:2014/06/06(金) 00:21:53 ID:13rm7QGg
お二方ご意見ありがとうございます。
ではジョンガリ・Aに関しましては補足のみであとは後の書き手様にお任せという形にさせていただきます。
またご指摘もありがとうございます。本スレ投下時に修正します。ポルナレフは完全に失念しておりました。ごめんよポルナレフ……

◆LvAk1Ki9I.様、ここまで顔を出していただいてありがとうございます。
大作と言っていただいて本当に感無量です。
今回の件につきましては、ジョンガリ・Aが長らく予約されていなかったこともあり彼の動きを描写する上では多少は仕方がなかったと思います。
むしろ新人の私の方が気を使わせてしまって申し訳ありません。


さて、気持ちを切り替えまして
改めて皆さまにお礼申し上げます。ここまでお付き合いくださり本当にありがとうございます。
今回仮投下した話は内容を吟味した後、本スレに投下いたしますのでその時にまたよろしくお願いいたします。

819名無しさんは砕けない:2014/06/09(月) 14:06:51 ID:nUEE5TSs
改めて投下乙です
七人のジョースターと因縁のDIO、三部対決と恥パ対決
どれも濃密な戦いになりそうで、早く続きが読みたいです
誰がどこに入り乱れて戦うのか、全く予想がつかないので次の話までワクワクしっぱなしです


指摘というより一つ提案があります
DIOの支給品に「ミスタの拳銃」がありますが、DIOはジョンガリに譲らなかったのでしょうか
DIOの性格上拳銃はあまり好まないでしょうし、ジョンガリの方がうまく扱えると思います
メタ発言かもしれませんが、ライフル以外の武器を所持してたほうがジョンガリの扱いも少しは楽になるのでは、と思いました

何んせよ、投下乙です
本投下まってます

820 ◆Khpn0VA8kA:2014/06/09(月) 23:16:46 ID:a8Jvktr.
>>819
そうですね、DIO様の方からジョンガリに拳銃や支給品を渡してる可能性はあります。何せ番人という重要な役目を任されましたからね。
が、私が今「ここはこう!」ときっぱり決めてしまうよりかは、この可能性もあるかもと曖昧にしておいた方があとの書き手様の想像の幅が広がるので、今回は補足程度にDIO様の状態表に追加しておきます。

ご提案ありがとうございます。本投下まで今しばらくお待ちください。

821 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:09:48 ID:b2eGLBro
承太郎たち3人が、感覚を頼りに西へ歩き出して暫く。
「康一は置いてったの、怒るかもしれねえなぁ」
「ま、なるようにしかならねえよ…皆もわかってくれるって」
ジョセフと仗助がそんな会話をしつつ歩きながら承太郎の傷を癒している中、真ん中を歩いていた承太郎は不意に歩みを止めた。

「少し先に行っててくれないか」
傷自体は塞がっている。ただ、まだ違和感や痛みを除ききるまでには至っていないだろう。
「どうしたんスか?」
問う仗助に、承太郎は少し後ろの角にある民家を指差した。
「野暮用だ」
「ひょっとして、そこらで出来ねえ方?緊張感があるんだか、ねえんだか…待ってるから、早く済ませて来いよ」

ジョセフの軽口に見送られた承太郎はその角を曲がると、暫く歩いてから唐突に声を投げた。
「花京院、いるんだろう?」
付かず離れずの距離で3人を尾行していた花京院はひとつミスを犯した。
見つかりたくないあまり、見失いたくないあまりに自分の目と地面に這わせたハイエロファントの感覚、両方を使って3人を追っていたのだ。
我が家が炎に包まれてしまうなどという真似をされて神経が過敏になっていた承太郎は、追ってくる僅かな気配に気付き…それが花京院とハイエロファントグリーンのものだと識別していた。

どうする?
花京院は躊躇した。同行している二人は、角の向こう…承太郎の十数メートル先で立ち止まっている。
この距離なら。
「…承太郎、本当に君なのかい?」
花京院は、承太郎の視線の先にあった壁の影から出ていく事を選んだ。既に承太郎の背後…やって来たの方の道には、ハイエロファントの触脚を忍ばせるように張り巡らしている。
後は仲間のふりをして、隠れたままのハイエロファントグリーン本体からエメラルドスプラッシュを放ち、それをかわした隙に足を触脚で絡めとって体制を崩す。
空条承太郎のスタンドがどんな能力を持っていようと、本体の足を封じてしまえば…そして仲間が気づいても残りの脚で承太郎との間に壁を作り、牽制している間に止めを刺すことが出来る筈だ。

花京院は、前へ一歩踏み出す。
だが、結果として目論見は外れた。
二十数年のブランク…そして旅の中でも途中離脱があったとはいえ、承太郎は花京院と伊達に一緒に過ごしていたわけではない。それも他の人間ならともかく、仗助あたりなら『親友』と照れもなく呼べただろう存在の気配に沸いた殺気を、承太郎はエメラルドスプラッシュが放たれる直前に感じ取っていた。

「エメラルドスプラッシュ!」

822因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:17:11 ID:.CpSIKvM
承太郎はエメラルドスプラッシュをかわす事はしなかった。その代わりにスタープラチナを瞬時に現すと、そのスタンドの指でやってくる礫の数個を素早く弾いていく。
「な…」
計算しつくされたようにスプラッシュ同士が玉突き衝突して弾道が逸れる。驚愕した花京院は、ただでさえ避けなかった事で遠くなった触脚を動かすのが一瞬、遅れた。

『スタープラチナ・ザ・ワールド』
承太郎は一気に花京院との距離を詰めた。
攻撃を仕掛けて来たという事は、どんな理由であれこの男が正気ではないと言う事だ。ただ…花京院典明と言う人間は、操られはしても狂ってしまうような質ではないとあの旅の日々が告げる。
もしそれが思い違いならこのままぶちのめすだけだ…そう結論付けて、スタープラチナは花京院の額に触れた。
幸いと呼べるのだろう、見つけた蜘蛛のようなそれを感慨にふける間もなく一気に引き抜く。相手が止まっているうちであれば、手元さえ狂わなければ何も問題はない。

その時、承太郎の片手は無意識に花京院の腹に触れていた。
その手が離れた瞬間、時は動き出す。

次に花京院が見たのは、目前にいる承太郎。そしてその傍らのスタンドが持つ、蜘蛛のようなものが日光に灰になっていく様子だった。
花京院の脳裏に、DIOの姿が蘇る。

『恐れる事はないんだよ、友達になろう』
恐怖に押し潰され、額に何かを埋め込まれて忠誠を『誓わされた』者。
挙げ句の果てに、誰かによって殺しあいを強要されるようなこんな中にいつの間にか放り込まれてまでその存在に執着し、誰かを殺して…ずっと独りでいた。
「…どうして、私を助けた…?」
ぐるぐると回る思考。花京院にとっては屈辱としか言えない記憶の中、その言葉は無意識に零れたものだった。
承太郎は平静に告げた。
「その質問は『二回目』だ、花京院。俺はあの時、答えをはぐらかした。だが、敢えて今回は言う。お前には『この地球に匹敵するほどデカい借り』がある」
「…なんだと?」

借り。自分が覚えていないからには、別の…または未来の『花京院典明』なのだろう。旅に同行していればそういう事もあったはずではあるが、ここまで言うとは一体何があった?
俺を襲う気が失せたなら、付いてくるな。俺達は、これからDIOとケリを付けにいく」

その承太郎の言葉に、花京院は半ば反射的に口を開いた。
「…待ってくれ。私も同行する」
「…何故だ?」
思考を整理するように、問う承太郎に答える。
「私はDIOに恐怖し、肉の芽を植え付けられた。あんな屈辱はかつてない。このままでは私の気持ちがおさまらない」
承太郎は一言だけ尋ねた。
「何があっても、後悔しないか?」
花京院の耳に届いたその言葉には奇妙な存在感があった。だが、それでも引くつもりはない。
「わけのわからないまま、こんな場所に放り込まれて一矢も報いられないなら、私は死ぬより重い後悔を残すだろう」
「やれやれ、だ」

承太郎は、ちらりと自分の片手を見やった。
何故さっき花京院の腹に触れたのか…考える間もなく答えは降ってきた。確かめたかったのだ。

なくしたと思ったもの。今ここにあるもの。

823因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:22:28 ID:.CpSIKvM
何か違和感を覚えて承太郎を追ってきた仗助は、花京院とやりとりをしている承太郎の背中を見つめていた。
そこにある雰囲気が僅かに変わっている…すぐに無機質に溶けてしまったが、それは確かに杜王町で感じたあの雰囲気だ。

仗助は花京院に歩み寄り、声を掛けた。
「なら、一緒に行きましょう。ただ…覚悟してくださいね」
仗助の困ったような笑顔に何故かじわり、と花京院の中の何かが溶けていく。誰かに打算なく心を開ける少年が、眩しい。

空条承太郎。
あんな眼をしていながら、傍らにこんなに輝く少年がいる。それは一見してすぐ、自分とDIOのように無理矢理作られたものではないと解った。どうして、この少年はこの男の側にいるのだろう。
付いていけばそれもわかる。もう、独りはたくさんだ。
「やれやれ…見ていたか」

承太郎が仗助の気配に振り向く。仗助の後ろには、ジョセフが顔を覗かせていた。
「…おい、そいつも連れてくのか?早く行かねえと、あっちが待ちくたびれちまうぞ」

ジョセフの言葉に、四人は走り出す。そして目的の場所が近づくにつれ、承太郎はその感覚がひとつでない事に気づいた。
DIOとよく似た、だが『白い』もう二つ。
「…ジョルノ…?ジョナサン…?」
口に出して呟く。
前者を割り出せたのは存在を知っているからであり、スタート前に『見せられた』からだ。後者はそうとしか考えられなかった。
「じいちゃんが、いるのか?」

ジョセフの問いに、承太郎は頷いた。
「ああ、皮肉にも、DIOの息子…いや、ジョナサンの息子ともいうべきか…と、一緒だ」

***

「そうですか…トリッシュ、フーゴ、ナランチャ…三人は無事で…貴方と」
「だから、僕は君がジョルノだと言う事がすぐにわかった。これが君を名前で呼んだ理由だ」

ジョナサンがこれまでの自分の事をかいつまんでジョルノに告げると、ジョルノは笑みを返した。
「仲間の動向が聞けたのは僕にとって願ってもない事です。もう帰ってこない仲間もいるけれど…僕は必ず、彼らと再会します」

時空を越えて集っている事は既に承知だ。両方が生きていれば、また会える。
ジョナサンは入り口の方を見た。
視界の端に誰かいるが、一度ジョルノに視線を戻す。
「そういえば、フーゴは…一緒に来たのだけど…入ってこないな」
「これだけ僕らが引き合ったんです。フーゴの敵もいるのかもしれませんね…フーゴ、どうか無事で…」
フーゴはスタンド能力からしても、味方からある程度距離を置いて戦おうとするだろう。今は、各々自分の為すべき事をしよう。
その前に、少しだけ。ジョルノは視線を落として眼を閉じた。

仲間の無事と、死者への手向けを。

ジョナサンはもう一度入り口の方を見て問いかけた。
「ところで、君は誰なんだい?見た所、敵ではなさそうだけど…?」
F・Fは答えようとして、言葉に詰まる。
どう答えるべきなのか。
「…あたしは…」
言いながら、F・Fは二人を眺めるように横に動くと視線を切る。左肩にある星は髪の毛で隠れていた。
「少し落ち着く時間が必要かな?大丈夫、君に僕らと戦う意志がないのなら、僕らは敵じゃない」

824因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:30:28 ID:.CpSIKvM
***

ジョンガリには、不幸としか言えない出来事があった。
イギーとヴァニラ・アイスの戦闘、その余波が鐘楼塔へも被害をもたらしていたのだ。砂はジョンガリの足元にも降り積もったし、確認のために動かそうとしたエレベーターは音ひとつ立てる気配がない。
様子を探ろうとマンハッタン・トランスファーを下ろす。既に教会の屋根は滅茶苦茶で、殆ど筒抜けも良い所だと言う事が解った。おまけに、鐘楼塔の壁も所々抉れている。

そんな確認をしていた時、その下を許可された者以外…F・Fが通ろうとしていた。

ジョンガリは、無論弾を放った。
因縁の相手、空条徐倫。
だが肩を貫通しても怯む事もなく、次の弾を撃ち込んでも、マンハッタン・トランスファーで角度を変えて撃ち込んでも倒れる事はなかった。

…何故だ?
注意深く探ったジョンガリはF・Fが中へ入っていく瞬間に理解した。
そもそもこのライフルはシングルアクション。再装填の時間が必要な間に、一発肩に貰った徐倫(F・F)は身体の至る所…特に急所と呼べる場所を空洞化していた。恐らくはスタンド能力…故に弾は突き抜けていってしまったのだ。
しかし何故放送で死亡を告げられた空条徐倫がここに?いや、それを考える時ではない。

ジョンガリはウォッチタワーを掴む。主から咎められるのは承知だ…それでも報告しなければ。

「くっ…」
そしてジョンガリ・Aは今、唇を噛み締めている。

空条承太郎。
射殺してしまいたいのはやまやまだったが、DIOが許可した中には『空条承太郎とその同行者』が含まれていた。

主は生きている。恐らく自分の手で決着をつけたいのだ。
ならば手を出すまい…命令の無視、それは主を侮辱することだ。やってはならぬ事だ。

***

承太郎はそんなジョンガリ・Aを物陰からスタープラチナの眼で見つめていた。
娘を刑務所にぶちこんだ男。
「…厄介なのが、いやがる。ジョンガリ・A…視力は低下しているらしいが…元軍人、20メートルの風の中でも仕事をこなしたという…何か、ふわふわ浮かんでいるな。あれが奴のスタンドか?」

花京院は腕を組んだ。
「…視力がない?あれで?しかも台風並の風の中でも標的を外さない?…となると、あのスタンドは状況判断をしているのか…または、弾丸に何か出来るのか…或いは両方か…」
承太郎は僅かに眉を潜めた。
「あれで?花京院、お前はあいつを知っているのか」
「ああ…スタンドの気配が同じだ…あの時は他に注意を引き付けてやり過ごしたが…」

花京院は十分注意しながら射線に出てみた。300メートル以上先から撃ってこれるのだから、ここなら射程内だ。
「丸見えなのに撃ってこない…どうやら、DIOは私達に入ってこいと言っているようだ」

承太郎は前を見つめた。
「なら、突っ切るぞ。屋根はボロボロ、くり貫かれたような跡…多量の砂…近くで戦闘が起こっているのは明らかだ」
恐らくヴァニラ・アイスとイギーがいるのだろうと目星をつけている。イギーの方は別の『砂使い』の可能性もあるが、ここでDIOが待っているならヴァニラ・アイスは間違いないだろう。

825因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:37:19 ID:BMt4OeDQ
承太郎にとってジョンガリを放置していくのは断腸の思いだったが、状況が良くなかった。
塔は目視で60メートルぐらいありそうだ。こちらは拳銃は持っているが、相手スタンドの素性が不明…これは不用意に撃つ(またはスタープラチナで弾く)べきではない。
例え時を止めたとしても弾丸は途中で止まり、相手に弾丸を認識する一瞬の時間が生じる。
花京院のいう通り弾丸にまで何かを及ぼすスタンドだとしたら、無駄玉どころかおかわりを貰う可能性すらある。無論登って行くなど論外。
今はDIOが先だと判断し、走り抜けた。

***

花京院に続いてジョセフはその中へと踏み込んだ。中にいたのは、3人。

そのうち、よく似た人影に声を掛ける。
「やっほー、じいちゃん。色々説明したいとこなんだけどさ、あんまり時間ねえんだよな。どこまで知ってる?」
「じいちゃん…そういう君は、その人と殺された筈じゃ…?」

ジョナサンはジョセフの後ろにいる承太郎の方をちらりと見ながら呟いた。目の前の男は爆破された男と瓜二つ、あっちの男は服は違うが、そっくりだ。
「殺されたはずの俺は孫のジョセフだ、おじいちゃん。それと後ろのは俺の孫の、空条承太郎。で…これは俺の息子の東方仗助」

ジョセフは隣の仗助を指差しながら、目を見開いて絶句しているジョナサンに苦笑した。
「いや、腑に落ちないのはわかるのよ?実際、俺もそうだし…でも、じいちゃんも感じてるはず。俺は嘘ついてないって、わかるだろ?」
そう、DIOが語った事は嘘ではないのだ。それはジョナサンも良く解っている。恐らく自分とジョルノのように、引かれあってここまで来たのだろう。

その時にふと、思った。
子孫が本当にいるのだとしたら…DIOから行方を聞く事の出来なかった人物、即ちここに飛ばされなかったエリナはどうなったのか?
「そうか…君が僕の孫だと言うなら聞きたい事がある。エリナは、長生きしているかい?…幸せかい?」
ジョセフは複雑な顔をした。
「エリナばあちゃんなら、まだ生きてるぜ。色々あったけど…きっと幸せだ…でも」

ジョセフはジョナサンに頭を下げた。
「…ごめん、おじいちゃん。俺はこっちのエリナと一緒にいた…エリナは俺を庇って…波紋じゃ、助けられなかった」
ジョナサンは暫く絶句していたが、静かに告げた。
「そうか…ジョセフ、エリナはいつだってそういう強い人だ、そうだろう?僕だって悔しくないと言ったら嘘だけれど、エリナ自身が選んだ道なら…見届けてくれてありがとう。君が生きているだけでも僕は嬉しい」
「おじいちゃん…」

ジョナサンとジョセフ、二人がそんな会話を交わしている中、仗助はジョルノに歩みよった。
「大丈夫か?」
「はい…ちょっと腹をぶち抜かれました。大体血管や臓器は自力でなんとかしたんですが…まだうまく繋がっていない場所があるようで…」
ジョナサンはジョセフとの会話を止めて、仗助を制そうとした。
「今、波紋で治療をしているんだ。動かしては…」

826因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:40:24 ID:OYKGykYs
仗助はジョルノの出血を見ながらひとりごちた。
「おいおい、そりゃちょっととか言える怪我じゃねえだろ。波紋じゃあ、失った血までは戻んねえだろうし。あ…でも、そうだな。中がなんとか出来てるなら、出血を止めてやるだけの方がいいか」

仗助はジョルノの腹に手を当てる。元々出血は少なくなっていたが、一瞬のうちに消えてしまった。「すごい…」
ジョルノは素直に驚く。
「全部『戻す』と身体がわけわかんなくなるからな…後は自力で大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます、東方さん」

勿論会話は聞こえていたのだろう。そう呼んだジョルノに仗助は首を振った。
「仗助でいいぜ。その代わり、ジョルノって呼ばせてもらうからな」
***

そして時は少し遡る。
ジョセフたち四人が会話を交わし始めた頃。

「…!」
承太郎とF・Fの視線が合う。

ジョルノとジョナサンを通して朧気に感じていた存在が現れた事で、F・Fの脳裏には強烈なフラッシュバックが襲っていた。

『あたしは星を見ていたい…父に会うまで』

そうだ、徐倫は。
ずっと焦がれていたではないか。
『おまえの事はずっと、大切に思っていた』
『スタープラチナのDISC!圧倒的な力…あたしの父…空条承太郎はこれで再生できるッ!!』
『あたしはこの『厳正懲罰隔離房』で!!やるべき目的があるッ!』
次々に浮かぶ徐倫の記憶の中、一番最後に見えたのは。
『おかしい…あんたの負傷…応急処置はしたのに…治したはずなのに…その右腕に』
他でもない、F・F自身の言葉。
右腕に浮かぶ、『JOLYNE』の文字。
そして、父親を理解した徐倫の表情と感情。

F・Fは改めて思い知った。
ああ、これが感じる、という事なのか。思い出、という奴なのか。
そして徐倫が父親を理解したように、F・Fも理解する。
―そうか、思い出を作る事が、生きる事なのだ―

その証拠にこの殺しあいに放り込まれてしまった後からは、混乱しつつも全部覚えている。それなのに、その前には何もない。ディスクを守っていた、生きたかった、ただそれだけだ。
「徐倫…」
仲間になれるかも知れなかった存在の名前を呼びながら、F・Fは我知らず、泣いていた。

「F・F…?」
承太郎はF・Fに歩み寄りながらも困惑していた。もう感じるはずのない星の伊吹が、僅かにある。
いまだ徐倫の圧倒的な思いが流れ込んでいるF・Fは、途切れ途切れに喋り始めた。言わずにはいられなかったと言った方が良いだろう。

「そう、あたしは…F・F。でもね、父さん。あたしは空条徐倫でもあるの。徐倫を全部、覚えている。徐倫はずっと、貴方に会いたかった。でも…あたしは…徐倫を知らなかった。その時はただ生きていたかった。だから、鳥と戦っていて、水に入ってきた徐倫を敵だと思った…」

思わぬ告白に承太郎の頭が、胸が、ズキンと痛む。
『間違った人だっているかもしれないじゃないですか』
川尻しのぶの言葉。時間軸の違いが生み出す悲しみ。
知らなかったとはいえ、領域(テリトリー)を犯した徐倫。
海洋学者である承太郎は勿論、それがどんな意味を持つのか痛いほど知っている。恐らく徐倫はF・Fによって『喰われて』しまったのだろう。
それをさせた鳥―ペット・ショップには既に引導を渡して来た。もう、それ以上を求める事は出来ない。

827因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:42:08 ID:vxNcmr0M
だが目の前にいる存在が全てを知っていると言うのなら、その口から聞かなければならない事があった。
「そうか…ひとつ、聞いてもいいか。徐倫はここへ来て何を感じていた?」
F・Fは答える。その表情は悲しみと歯痒さに満ちていた。
「怒っていた。殺しあいに乗った悪に。父親を助けられなかった、自分自身に。後悔していた、父親に、想いを伝えられなかった事を」
「…やれやれ、だ」

徐倫と自分、不器用な所が似てしまったものだ。承太郎は口を開いた。今は亡き娘のために。
「もう遅いのかもしれない、俺の、自己満足かもしれない。だが…『徐倫』。お前の事はずっと、大切に思っていた」

F・Fは苦笑した。
「大丈夫、『徐倫』はそれ、きちんと聞いたわ…ディスクを盗られた時、『貴方』は同じ事を言ったから」
「なら、いい。返事など必要ない。解っていてくれればそれで十分だ」
承太郎は帽子を下げた。

「…ありがとう、父さん」
暫くしてぽつりと告げたF・Fの中には異変が起きていた。
二つが平等に混ざりあったと言うよりは、F・Fという知性の器に徐倫が寄り添ってくれたと言う方が正確だろう。だから、この思考もF・Fのものだ。空条徐倫は温かい、F・Fはそう感じる。まるで日溜まりと一緒にいるような、奇妙な感覚があった。

「承太郎、と呼んでくれないか。お前を責めたいわけじゃない…ここにいるのは娘を死なせてしまった、ただの男だ。その俺が父親と呼ばれる事は、徐倫にもお前にも失礼だ」
F・Fは承太郎に右手を差し出した。
「なら、あたしもF・Fのままでいい。徐倫のために。改めて宜しく、承太郎」

二人はその手を握りあった。

***

「なんというか…とんでもないな」
花京院は唸った。話に首を突っ込める雰囲気ではなかった上、怪我人がいるのではと一息つくまで入り口を警戒していたのだが、今の所異常はない。
そして今、ジョルノと話の終わった仗助と情報交換(正しいあの旅の顛末など)をし、ここにいるのは全部「ジョースター」に纏わる人間だと知らされたばかりだ。
「そんだけ『しでかして』くれたんでしょうよ。数えて下さい。じいちゃん辺りでも怪しい武勇伝しか残んねえのに、4代前の事なんて普通はわかりゃしませんよ…それが、こうですから」
「ちょっと蚊帳の外の気分だが…私…いや、僕にも出来る事をさせて貰う」

花京院が言うと、仗助は真剣な顔で告げた。
「絶対、死なねえで下さい。俺、承太郎さんにあんたが二回死ぬの見せたくねえ」
花京院は腕を組んだ。
「君もいるし、僕も努力するよ。しかし承太郎がいるとはいえ、DIOのスタンド能力がよりにもよって『時を止める』とは、厄介だな」
仗助は花京院に釣られて腕を組み、難しい顔をして唸っている。
「うーん…時を連続して止める事は出来ない、ってのがDIOにも当てはまるなら…例えば、止めたすぐ後に花京院さんの触脚が絡めば、DIOは振り回すか、こらえなきゃなんねえわけですよね?」
「振り回す前に、千切られそうな気もするが…ん?君は、ジョセフさんは波紋とスタンドでDIOとやりあったと言ったな?ならば…」

花京院はある事を思いついていた。

828因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 11:54:08 ID:OYKGykYs
***

そしてジョルノが落ち着いた所で、七人は円座を組んだ。

「初めまして、というには奇妙ですね、空条さん、ジョースターさん」
「…全くだ。お互い初対面が殺される現場とはな、ジョルノ」
無表情の承太郎に対し、ジョセフは失笑していた。
「ったく、趣味が悪いったらねえぜ。クソッタレが…ま、こんなことでもなきゃ、こうやって顔を付き合わせる事なんかなかっただろうけどな」

そんなやりとりから始まった作戦会議めいたもの。まず、ジョルノはデイパックからエイジャの赤石を取り出した。
「これだけの人間がいるなら…誰かこれの使い道を知りませんか?所謂ハズレの支給品の可能性もあるんですが…なぜ宝石が支給されているのかずっと引っ掛かっていて」

その赤い宝石を見て、ジョセフは破顔する。
「スゲー!そいつがありゃ、波紋使いは柱の男さえ倒せるんだぜ!承太郎の足手まといにならなくてすむじゃねえの!いや、寧ろ…俺らは何もできないと思ってるはずのあいつに、引導渡せるじゃねえか!」
「使い途を知っているんですね?では、これはジョナサンさんかジョセフさんに」

エイジャの赤石をジョセフに渡しながら、ジョルノは承太郎に告げる。
「空条さん。貴方がDIOを止める術を持っているのは知っています。DIOを倒しましょう…彼はどす黒い、吐き気を催す邪悪だ。許しておく事は出来ない。僕の事なら心配はありません。寧ろ、貴方に感謝したいぐらいだ…何故なら、僕はDIOと対峙して…貴方がDIOを倒さなければ僕は生まれていなかったと確信したからです」

言い切ったジョルノのその潔い顔を見ながら、承太郎は何かが軽くなっていく感覚を覚えた。
本来の時間軸では決してまみえなかったジョルノとDIO。それ故にその事実を知ってから、ずっと承太郎はわだかまりを心の隅に残したまま生きてきたのだ。

ディオ・ブランドー自身に自覚がなかったとしても、『父親』を殺したという事実。

それにも、答えが出た。
「…ああ、ケリを付けるぜ。奴には『貸しているものが多すぎる』からな」

それから互いの知らない分の能力を説明しあい、花京院が思い付いた事…即ち波紋使いが他のスタンド使いの身体に波紋を流せば、DIOは手を出しにくいのではないかと告げると、ジョルノは頷きながら指示をした。
「では、僕はジョナサンさんとF・Fさんと一緒に。ジョセフさんは仗助さんと花京院さんと一緒にいてください。この組み合わせなら花京院さんのいう通り、ジョナサンさんとジョセフさんが他の人の身体かスタンドに波紋を流せます。そうすればDIOもやすやすと腹をぶち抜いたりはできないでしょうし、後ろからでも援護が出来ます。空条さん、貴方は」

829因縁と希望を背負う集い星 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 12:03:15 ID:0oFK0J9.
ジョナサン、ジョセフ、F・F、仗助が頷き合う中、承太郎は一同に重みを持った言葉で告げる。
「ああ。あいつと直接やりあわせてもらう」

花京院は確かめるように口に出した。
「…じゃあ、おとなしく援護に回らせて貰うよ。エメラルドスプラッシュや波紋を流した触脚なら、踏み込まなくても届くからね」

そして一度言葉を切り、敵の増援が来る可能性も口にした。
「でも、くれぐれも油断しないでくれ。ジョンガリ・Aが塔にいたから降りてくる可能性があるし…ここには戦闘が行われた跡がある。片がついたら戻ってくるかもしれない。誰か、この惨状に心辺りは?」

ジョルノは口を開いた。
「…僕が降りていってから、戦闘になったようです…僕は、タルカスさんと、犬と一緒にここへ来ましたが…少なくともタルカスさんの方は…」
首を振ったジョルノを見ながら、ジョナサンは確かめるように尋ねた。
「…タルカス…?彼は、日光の下を?」
「はい。何か?」
「いや、いいんだ…僕は彼が屍生人になってから出会ったのだから」
ジョナサンはそう呟くと、唇を噛み締めた。ジョルノと共に来たというなら、彼はきっと『騎士』だったのだろう。
続いて、承太郎がジョルノに問いかける。
「一緒に来た犬…それは黒に、白い鼻筋の通ったボストンテリアか?」

ジョルノは頷いた。
「そうですが…」
「やはり、この砂はあいつのせいか。イギー…犬のナリをしているが、砂を使うスタンド使いだ。生意気で頭の回る奴だが、性格的にDIOに付くとは思えん。
とすると、DIOの手下として…ヴァニラ・アイス…そして、F・Fをさらった奴が、近くにいるだろうな。
ヴァニラ・アイスは空間を削る奴だ。削る前に頭を出すから、そこを叩くしかない。巻き込まれたら『何も』残らん。DIOが優勢なら近くにいても仕掛けてこないだろうが、DIOに何かあれば危険だ。
F・Fをさらった奴に関しては、素性は知れないが近距離の身体強化タイプだ…一緒に来たんだろう?あいつがどこへ行ったか、心当たりは?」

承太郎はF・Fの方を見る。F・Fは首を振った。
「あいつ…あたしをおいてけぼりで、始めちゃったのよ。誰だかはあたしもわからない。記憶にはない…でも、気をつけて」
一同は頷く。

その時、承太郎は隣にいた仗助に押し付けるようにして拳銃を渡した。
「増援の事もある…気休めだが隠し持っておけ。DIOの奴でも頭をぶち抜けば、一瞬動きを止める事ができるかもしれない」
「…承太郎さん」
仗助は承太郎の眼を見た。
「引き金を引くことを躊躇うな。俺はやられるつもりはないが、周りが巻き込まれた時…救えるのはお前とジョルノだけだ。そして、お前は自分を治せない」

その眼に悲しみは変わらず宿っているが、何処か今までと違う気がする。
決して悪を許したわけではないのだろう。けれど、承太郎の中で決定的なものが変わりつつある。
そうでなければこんな事はしないはずだ。

「承太郎さん…皆で、背負います。ぶちのめしましょう。あんたは、いつだって『希望』と共にあるべきだ」

殺しあいに乗ってはいけない。
だが、この因縁だけは断たねばならない。

―彼らが思い思いに立ち上がるまで、あと数刻―

830状態表 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 13:33:06 ID:Ihj8seEk
【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地上/一日目 午後】

【チーム『JOJO』+α】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
1.ジョルノ…だけじゃない…こんなに子孫が…誰も、死なせない。決着をつけよう。
2.ディオ……。
3.敵増援に警戒。
4.フーゴやナランチャたちと合流したい
5.仲間の捜索
[備考]
※DIOからDIOとジョースター家の因縁の話を聞かされました。具体的にどんなこと聞かされDIOがどこまで話したのかは不明です。(後の書き手様にお任せします。)
【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:健康
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)不明支給品4〜7(確認済み/アダムス、ジョセフ、エリナ)エイジャの赤石

[思考・状況]
基本行動方針:チームで行動
1.DIOを倒す。
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる。
[備考]
支給品を確認し、水ボトルの1本をF・Fに譲りました。

【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:痛み(小)と違和感、疲労(小)
[装備]:ライター、カイロ警察の拳銃の予備弾薬6発
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、ランダム支給品3〜5(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況] 基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.…。
1.DIOを倒す、全てはそれからだ。
[備考]
カイロ警察の拳銃を仗助に渡しました。予備弾薬は念のため持ったままです。

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:疲労(小)
[装備]:カイロ警察の拳銃(6/6)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
1.増援に警戒しながらDIOを倒す。
2. 承太郎さん…
3. 第四放送までには一度空条邸に戻る。
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

831状態表その2 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 13:34:52 ID:T9p5oGE2
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(中)、精神疲労(大)、痛みと違和感
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.増援に警戒しながらDIOを倒し、仲間と合流する。
[参考]
※DIOがジョナサンに話したDIOとジョースター家の因縁の話を一部始終聞きました。具体的にどんなことを話しどこまで聞いていたかは不明です。(後の書き手様にお任せします)
※149話「それでも明日を探せ」にて飛ばした蠅がミスタが死亡したことによりジョルノの元へと帰ってきました。


【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルは1)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい
1.やっと…解った…
2.DIOを許してはならない…今度は、逃げない。
3.徐倫…承太郎…
[備考]
狙撃された右肩は自身のプランクトンで埋めました。

【花京院典明】
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[状態]:痛みと違和感
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOに受けた屈辱を晴らす。
1.敵の増援を警戒しながら、ジョースターの血統と共にDIOを倒す。
2.これが…仲間か。
[備考]
仗助の話を聞いている間に、仗助に腹部の傷を治療されました。

【D-4 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 鐘楼 / 1日目 午後】

【ジョンガリ・A】
[スタンド]:『マンハッタン・トランスファー』
[時間軸]:SO2巻 1発目の狙撃直後
[状態]:肉体ダメージ(小〜中)
[装備]:ジョンガリ・Aのライフル(25/40)
[道具]:基本支給品、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのA
ミスタの拳銃(6/6)予備弾薬12発、ランダム支給品1(確認済み/タルカスのもの)

[思考・状況]
基本的思考:DIO様のためになる行動をとる。
1.教会入り口を見張り、侵入者を狙撃する。
2.何故、空条徐倫が…?

[備考]
DIOからミスタの拳銃及び予備弾薬を受け取り、装填しました。

832 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/15(日) 13:39:33 ID:T9p5oGE2
>>821より仮投下しました。

ジョルノが落ち着くまでにしたアイテム交換等は備考に記しました。本文に記すべきでしたら追記します。
この他、誤字脱字、矛盾点などあればご指摘ください。

833名無しさんは砕けない:2014/06/15(日) 16:06:06 ID:MCjv3U7U
投下乙です。誤字は特別見当たりませんでした。
脱字に関しては一箇所。

>>822
>借り。自分が覚えていないからには、別の…または未来の『花京院典明』なのだろう。旅に同行していればそういう事もあったはずではあるが、ここまで言うとは一体何があった?
>俺を襲う気が失せたなら、付いてくるな。俺達は、これからDIOとケリを付けにいく」
「←これが抜けてるように思えます。

うわああああああ六世代集合ぉおおおおオオオーーーーッ!
誤解が雪解けのようになくなっていくのにすごい胸が熱くなりました。
合間合間に入る仗助の優しさだったり、ジョセフの前向きさにもグッと来る!
すごい濃密なはずなのに、テンポの良い会話で全くそう感じさせない点もグッド!
ついにそろったジョースターズ! 待ち受けるは最強のDIO!
わくわくするなァアアアアアアーーー! 何はともあれ投下乙です!

834名無しさんは砕けない:2014/06/16(月) 00:32:52 ID:uPYaXDOg
仮投下乙です
ジョースター大集合!あとはジョニィだけか……
花京院もにくめないやつになってよかった……ある意味望んでた展開だしホント嬉しい、仲間できてよかったね花京院
それぞれのやりとりも胸が熱くなるものばかりでベネ

あとささやかな疑問というか、確認なんですがジョンガリ・Aはフーゴとヴォルペの姿は見てないのですか?

835 ◆3yIMKUdiwo:2014/06/16(月) 10:55:35 ID:nY4tHF7o
>>834
あ…フーゴとヴォルペのやり取りを感じてないわけないですよね。追加しておきます。

836 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 17:51:49 ID:1GyikQMQ
イギー、パンナコッタ・フーゴ、カンノーロ・ムーロロ、マッシモ・ヴォルペ、ヴァニラ・アイス
仮投下を開始します。

837獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 17:55:43 ID:1GyikQMQ

「なるほど、砂で本物そっくりの人形を作り出せるのか…」

 ううん、と唸りながら、フーゴは砂を使う犬の能力を見定めていた。
 すでに自分の力は、射程距離を含めて話している。だが、生憎犬の方は言葉が喋れないので、見せてもらうしかない。
「射程距離は広そうだな。だが、あの突然現れる男にどうやって対処していたんだ…?」
「ワン」
 そう一声鳴くと、犬はパラパラと砂を舞い上がらせた。
「なるほど…。奴は移動する時に空間を飲み込むのか。だから、こうやって砂をまいておけば、移動していく方向が分かる。
そういうわけだな?」
「ワン」
「そうか…」
 フーゴが一人で喋る姿はかなり間抜けな図だが、一つ一つ確認しなければ戦うこともできない。

(このスタンドは、かなり使える。ぼくのパープル・ヘイズとも相性がよさそうだ。
 砂であれば、ウイルスに感染することもない…)

838獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 17:59:56 ID:1GyikQMQ
 フーゴがそう考えた時。
「ワオンッ!」
 犬が鋭く吠え、イギ、と特徴的な唸り声を上げる。
 この賢い犬が、無暗に吠えるわけがない。だとしたら、理由は一つ。
 誰かが、そばに来たのだ。
 フーゴは素早く犬が吠えかかっている方を向き、自身のスタンドを出現させた。
「誰だ!!」
 その声に反応したのか、暗い裏路地の向こうから、一つの影が姿を現す。

「おいおい、フーゴ。お前、いつの間に犬と会話できるようになったんだ―――?」

「…ムーロロ?」
 人にしては小さく、そして薄っぺらいそれは、一枚のトランプだった。


――――――――−−‐


 ち、とムーロロは心の中で舌打ちをした。
 思った以上に犬の鼻がよく、偵察するだけのつもりが、フーゴに見つかってしまったのだ。
 おそらく、彼のことだ。きっと次にこう聞くのだろう。『今まで何をしていたんだ』、と。
「今まで、何をしていたんだ」
 予想通りの答えに、ムーロロは嘆息する。
「こっちも色々あったんだよ…」
 言葉を濁しつつ、ムーロロは考える。この話題をうまく利用できないか。この、頭でっかちのフーゴをうまく騙せないか―――。

839獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 18:14:14 ID:1GyikQMQ
「どうした、何か言ったらどうだ」
 近くに敵のいる状態で気の立っているフーゴは、苛立ちを隠しもせずムーロロを問い詰める。
 そんな彼に向かって、ムーロロは言う。

『お前―――俺達の側につかないか?』

「…何?」
 フーゴは眉をひそめた。敵意をむき出し、スタンドをいつでも出せるよう、態勢を整える。
『待て待て、焦るな。何も、俺はジョルノ様を裏切ろうってわけじゃあないんだ。
 ジョルノ様はもういない。だったら、俺達がやるのはたった一つだ。
 力を合わせて、主催者を倒す。
 そうだろう?』
「ああ、そうだ。そのつもりでずっと戦ってきた。だが、」
『名簿に名前があるから、ジョルノ様が生きている?やめろよ、そんな無意味な希望は捨てちまえ。
 いいか、ジョルノ様は、いないんだ。俺だってずっと探してたさ。だが、どこにもいない。この〈オール・アロング・ウォッチタワー〉をもってしても、ジョルノ様の居場所を突き止めることはできなかった。その意味は、分かるな?』
「そんな…いや、しかし…」
 もちろん、この話は嘘だ。ムーロロはジョルノが生きていると知っているし、彼の居場所も知っている。
 そして、彼がDIOと敵対していることも。
 フーゴの様子を窺うと、わずかな希望を打ち砕かれ、彼は項垂れているようだった。
 いい調子だ、とムーロロは思った。
 ぐるる、と唸り声をあげて犬が反応を示しているが、そんなことはどうでもいい。たかが犬だ。フーゴとて、本当に犬と会話ができるわけがない。
『俺は、あるお方について行くと決めた。この人なら大丈夫だと思った…。オレの命を懸けられると思った…。
 ただ、問題がある」
「…何だ」
『このお方には、敵がいる。
 お前とずっと一緒にいた、ジョナサン・ジョースターだ』

840獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 18:17:56 ID:1GyikQMQ
「…なんだって?」
『いいか、落ち着いてよく聞けよ…。
 さっきの二人、マッシモ・ヴォルペとヴァニラ・アイスは俺達の仲間だ。お前とマッシモが、因縁の相手だってのは分かってる。同じように、ジョナサンとDIO様も、どうしても互いに許せない相手なんだ。
 分かるだろう?マッシモのほうは、DIO様に忠誠を誓っているからどうにかなる。
 だが、ジョナサンはだめだ』
 フーゴは黙ったまま、ムーロロの話を聞いている。
『いいか、何もお前に、ジョナサンを殺せと言っているわけじゃあない。
 お前はこのまま、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に近づかず、ヴァニラ・アイスと合流するだけでいい。
 大丈夫だ、マッシモはお前に手を出さない。まあ、顔を合わせるのは嫌がるだろうから、会うこともないだろうがな…』
 次々と新しい情報を出し、ムーロロはフーゴの思考を奪っていく。
 頭の中をムーロロの言葉で満たし、他のことを考えられなくしていく。

「………」

 沈黙が落ちる。
 フーゴは何を考えているか分からない瞳でじっ、とトランプのカードを見つめた。
 ムーロロの言葉は毒のようにフーゴの全身を巡り、じわじわと彼の思考を覆っていく。
 そして、毒が全身を回りきった時。
 ははっ、とフーゴは吹き出すように息を吐き、軽薄な笑みを浮かべた。
「そうか、よく分かったよ、ムーロロ。確かに、会って間もないジョナサンに命を懸けられるほど、ぼくはいい人間じゃあない。そこまでお人好しじゃあない。ぼくは、彼がどんな音楽が好みかも知らないんだからな。
 ――――なあ、ムーロロ。



 これが答えだッ!!」

841名無しさんは砕けない:2014/06/21(土) 19:09:54 ID:10fg6Q/2
支援

842獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 19:16:51 ID:1GyikQMQ

『ブッシャアアアアアアアアアアアア!!』



 パープル・ヘイズ。
 フーゴの分身と言うべきスタンドが、トランプに迫る。
 もともと機動力のない薄っぺらな体は、簡単に捕まってしまった。
 ぐしゃ、とパープル・ヘイズがトランプを潰す。だが、破ったり、ウイルスに感染させたりはしない。
 そのまま、フーゴは言葉を続ける。
「なあ、ムーロロ。貴様、ジョジョに会ったことがないだろう…?」
 ゆっくりと、パープル・ヘイズの両手がトランプを真っ二つに引き裂いていく。
「マッシモは、殺さなくてはならない。ジョジョはそう言った。お前が、その言葉を守らないはずがない。
 それに、会っていたら、そんなことをお前が言えるはずないんだ。自分にだけ都合のいいような、恥知らずなことを…」

『……』
 誤算だった。
 一体何を読み違えていたのか、ムーロロには分からない。
 はっきりしているのは、フーゴと自分との間の亀裂は、もう二度と修復できないということだけだ。

 体を引き裂かれながら、なおもトランプは話を続ける。

『フーゴ。一つ、良い事を教えてやろう。

 ジョルノ・ジョバァーナは生きている。

 だが、彼は我々の敵だ。あの二人を倒さなければ、いずるぇ―――』



 そこで、ムーロロとフーゴをつなぐ回線は断ち切られた。


――――――――−−‐

843獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 19:49:01 ID:1GyikQMQ

 亀の中にある、居心地のよい部屋で、一人の男が目を閉じている。
 カンノーロ・ムーロロ。
 彼は、フーゴを仲間に引き入れようと思ってあんなことを言ったのではない。無防備のまま彼をマッシモやヴァニラ・アイスに引き合わせようとしただけだ。だから、彼らが戦うことは変わらないし、むしろ厄介なパープル・ヘイズをマッシモ達の元に引きつけられたのは行幸だった。だから、ムーロロは大きな失敗をしたわけでもないのだが。

 なぜか、妙に「負けた」という気分になってしまった。

 フーゴは自分と同類だと思っていた。
 他人のことなどどうでもよく、自分の身を守るためなら仲間でも裏切る。
 そういう男だと思っていた。実際、一度は仲間を裏切っている。
 だが、今の彼は違う。
 自分より下だと思い、見下していた相手が、自分よりはるか高みにいる。
 そんな感覚に、ムーロロは陥っていた。
 ジョルノ・ジョバァーナ。
 おそらく、フーゴが変わったきっかけは彼だろう。そして、フーゴの言葉通りなら、ジョルノに会った自分もまた、変わったのだろう。
 それを、羨ましいとは思わない。むしろ、自分から命を捨てる馬鹿な道だと笑ってしまう。


 だが、胸にぽっかりと空いた穴だけは、何をどうやっても、埋まりそうになかった。




【亀の中 /  一日目 夕方】

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、
    川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5〜15)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOに従い、自分が有利になるよう動く。
1.琢馬を監視しつつ、DIOと手下たちのネットワークを管理する。
2.スタンドを用いた情報収集を続ける。
[参考]
※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索とDIOの手下たちへの連絡員はハートとダイヤのみで行っています。
それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。

※ムーロロに課されたDIOの命令は、蓮見琢馬の監視と、DIOと手下たちの連絡員を行うことです。
同時にスクアーロとお互いを見張り合っています。

844獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 19:52:32 ID:1GyikQMQ

◆ ◆ ◆



「はああ―――…」

 フーゴは、ゆっくりと息を吐いた。
 彼は、久しぶりに“キレて”いた。
 どうしても許せなかったのだ。まるで、半年前の自分のようなことを言うムーロロが。
 自分に都合の良いことだけを並べ立て、どの道が正しいのか頭でっかちに考え、そこに理念も信条も存在しない。
 そんな彼の言葉が、許せなかった。
 自分のことだけを考えていれば、きっと向こうにつくのが正しい道なのだろう。
 だが、ジョルノは言ったではないか。あの時、やっと半歩を踏み出した時に。
『星のようにわずかな光明でも、それを頼りに苦難を歩んでいかなければならない』と。
 ならば、歩み続けなければならない。自分の信じた道を。
 それに何より、朗報もあった。
 ジョルノが、生きている。
 ――――やっと。やっと、光を見出せた。
 彼が生きているだけで、それは何ものにも代えられない光明となる。
 だとしたら、自分がやるべきことはただ一つ。
 彼の敵を撃破すること。
 そして、自分の因縁に決着をつけることだ。

 決意を込めて顔をあげたフーゴの前に、こちらを睨みつけるようにして見ている犬の姿が映る。
 まずい。
 反射的にフーゴは思った。
 この犬にとって、フーゴの因縁やジョルノの敵のことなど、どうでもいいのだ。
 だが今、フーゴがムーロロと決別したせいで、この犬も巻き込まれてしまった。ヴァニラ・アイスという敵一人を倒すだけでよかったはずが、さらに大きな戦いに身を投じることになってしまったのだ。
 怒り狂って当然である。

 ゆらり、と犬の前で砂が立ち上った。
 攻撃されるのか、と身構えるフーゴの前で、砂が文字の形を取る。
 そこには、汚い字でこう書かれていた。

 “イギー”

「…それが、お前の名前なのか?」
「ワン」
 一声吠え、にやりと笑う。「てめえ、なかなかやるじゃあねーか」とでも言うように。
 何だろう。名前を教えるぐらいには認められた、ということなのだろうか。犬に。

845獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 20:25:22 ID:1GyikQMQ

 フーゴは辺りを注意深く見回した。
「取りあえず、ここを移動しよう。おそらく、ムーロロが僕たちの居場所を―――」


 ガオンッ!!


「!!」

 聞き覚えのある、嫌な音がした。
 イギーが砂を巻き上げる。
 砂によって、飲み込まれていく空間の軌道が浮かび上がる。それはまっすぐ路地を進み、フーゴ達の所へ迫ってくる。
「まずいッ!!」
 イギーとフーゴは反対側へ走り出したが、丸く浮かび上がった球は、壁と地面を削りながらどんどん近付いてくる。
 このままでは追いつかれる。
 そして次の瞬間、フーゴの体は浮かび上がっていた。
「何ッ!?」
 驚きでとっさにスタンドを出そうとしたが、その正体を見てすぐに安心する。
 イギーの砂が、フーゴの体をつかんでいた。彼のすぐ下を、ヴァニラ・アイスが通過する。

 一人と一匹は、そのまま屋根の上に着地した。
 そして、そこから下の様子をこっそり窺う。
 ヴァニラ・アイスは、イギーとフーゴの姿を探して暗黒空間から出てきた。
 しかし、二人の姿が見えず、血も飛び散っていない様子を確認すると、すぐに移動をし始めた。

 ヴァニラ・アイスの姿が消えて、フーゴはほっと息を吐いた。
(あの男…ヴァニラ・アイスと言ったか。あいつの能力は強力過ぎる。
 マッシモと同時に相手にできるものじゃあないぞ…。
 ぼくのパープル・ヘイズも、攻撃を仕掛ける間合いまで入っていたらやられてしまう。かといって、この犬の攻撃には決定打が欠ける…)

 しばらく考えた後、フーゴはイギーに視線を向けた。


「なぁ、イギー…」


◆ ◆ ◆

846獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 20:57:39 ID:1GyikQMQ

 ぱらぱらぱら、と砂が降り注いでいる。

 それはあまりに広範囲で、その砂を目印にフーゴ達を見つけ出すことはできない。
 だが、奴らがこのエリアにいることだけは確実だ。
 マッシモは注意深く、五感を使って居場所を探る。

 カツ、と。
 音がした。
 頭上から。

 ぐるん、と物凄い勢いでマッシモは音のした方を見上げ、強化した肉体で一気に屋根まで跳びあがる。どぉん、という衝撃と共に着地し、彼はそこにフーゴとイギーの姿を見つけた。
「見つけたぞ、フーゴ…」
「くそッ」
 彼らは見つかったことに驚きを隠せないようだったが、すぐにスタンドを出した。
 そして、マッシモが彼らに向かって一歩を踏み出した時――――

 ガボンッと、マッシモのいた足場が崩れた。

 マッシモは、自身のスタンドを踏みつけて、再び屋根の上に戻ってきた。あまりに強く蹴りだしたため、スタンドの腕がめき、と嫌な音を立てる。もちろんそれはマッシモにも反映されるのだが、彼の〈マニック・デプレッション〉の能力によって、その傷はすぐに治ってしまう。
 穴から抜け出したマッシモを、フーゴとイギーが待ち受ける。
 マッシモは、フーゴだけに視線と殺意を向ける。
 両者が激突する、まさにその瞬間――――


 ガオンッ!!


 再び、乱入者が現れた。
 ヴァニラ・アイスを見るや否や、イギーとフーゴは屋根から飛び降りた。そして、そのまま逃走を開始する。

「………」

 マッシモは、そんな二人を追いかけもせず、じっと観察した後、再び自分が落ちた穴に目を移した。
 その中には、砂に埋もれるようにしてカプセルのようなものが転がっていた。
 彼らは、ヴァニラ・アイスの開けた穴を砂でコーティングし、パープル・ヘイズのカプセルを中に仕込んでおいたのだった。
 それを見つめていたヴォルペは、ゆらり、と体重を移動させると、強く屋根を蹴り地面に降り立った。

 そして、二人を追いかけようと暗黒空間に潜り始めたヴァニラ・アイスに。
 二度も自分の邪魔をした、彼に向って。

「おい、ヴァニラ・アイス…」

 声を、かけた。



◆◆◆

847獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 21:29:45 ID:1GyikQMQ


「はぁー、はぁー…」

 壁に手をつき、フーゴは大きく呼吸を繰り返す。
 足のダメージは強く残っており、走るたびに痛む。
 だが、立ち止っているわけにはいかない。こうしている間にも、マッシモ・ヴォルペとヴァニラ・アイスはフーゴとイギーを探しているのだ。加えて、フーゴの息は上がっているのに対し、追いかけるマッシモの呼吸に乱れはない。彼はダメージも全てそのスタンドで強制的に治してしまうので、両者の機動力は開くばかりだ。
 次に追いつかれたら、その時が最後となる。
「ワン!」
 イギーが吠え、フーゴが手をついている壁に向かって低く唸る。
 なんだ、と思う間もなく。

 ドゴオッ!!

 その壁が、吹っ飛ぶように破壊される。
「う、うおおおおおッ!!」
 壊された壁の破片が、散弾銃のようにフーゴの体に迫る。
 スタンドで防いではいるが、全ては打ち落とせない。どすどすどす、と重い衝撃が体を貫く。
 フーゴの体は吹っ飛ばされ、通りの真ん中に転がった。
 なんとか顔を上げたフーゴの視線の先に、マッシモ・ヴォルペがいた。
「う、うう…」
 フーゴは立ち上がれず、手で体を支えながらずるずると後ずさる。そして、イギーの方をちらっと見た。
 だが、血を流すフーゴを見るや否や、イギーは彼を見捨ててさっさと走り出してしまった。
 ヴァニラ・アイスは、その逃げた犬の方を追いかける。自身の移動先を知らせる、犬の方を。

 残ったフーゴは、ガタガタ震えながら、ゆっくりと近づいてくるマッシモ・ヴォルペを見た。

「ち、ちがうんだ…。全て、ジョルノに命令されたことなんだ…ッ!」
 それは、いかにも哀れな姿だった。策も何もなく、ただただ生にしがみつく、みっともない男の叫びだった。
 マッシモはその声を無視し、距離を詰めていく。そして、フーゴのスタンドの射程範囲ぎりぎりの所で、足を止めた。
「や、やめてくれ…こないでくれ…」
 そうやって、ひたすら命乞いをする相手に。
 マッシモは、怒りも憐みの感情も浮かべなかった。ただ、湖面にひろがる波紋のように、静かに口を開く。

「…考えなかったのか。

 お前たちが手を組んだように、俺達も手を組んだと」

848名無しさんは砕けない:2014/06/21(土) 21:36:14 ID:wghvhRd6
きてるー

849獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 21:39:47 ID:1GyikQMQ

 ぴくり、とフーゴの表情に変化が現れる。
「次の作戦は何だ?あの犬はおとりだろう?砂でできた人形か何かだ。
 そうやって分断させた所を二人で叩く。なるほど、良い考えだ。
 俺も、同じことを考えた…」
 びりり、と肌が焼けつきそうな殺気が辺りに充満する。
「マッシモ…!!」
 フーゴはもう、哀れっぽい顔をしていない。立ち上がり、スタンドを出す。
 その拳のカプセルが、一つ減っていた。
 フーゴのことだ、おそらく何かの罠に使ったのだろう。だが、そのスタンドの射程範囲内にマッシモは入らない。
 焦るように、フーゴは拳を握る。
 そんな彼のそばに、ヴァニラ・アイスのスタンド、クリームが迫っていた。
 砂塵は降り注ぎ続けているが、フーゴは目の前の相手に集中していて気付かない。
 イギーも、イギーのスタンドも、姿を現さない。今さら出てきたところで、砂を集める時間も余裕もない。

 その様子を見て、マッシモは笑った。狂気の混じった、甲高い笑い声だった。
「お前を殺せないのは残念だが!!代わりにジョルノもナランチャもトリッシュも俺が殺してやる!!お前がやったのと同じように、お前の大事なものを全て壊してやる!!」

 フーゴの瞳に、漆黒の殺意が宿る。

「マッシモォォォォォォォ!!」



「―――ああ、その顔が見たかったんだ」




  ガ  オ  ンッ!!

850名無しさんは砕けない:2014/06/21(土) 22:25:07 ID:VrcG92Gw
どうなる!?

851獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 22:52:18 ID:1GyikQMQ

 一陣の風が吹いたのち。

 何もない空間から、一人の男が姿を現す。
 ヴァニラ・アイス。
 DIOの腹心の部下だ。
 早くDIOの元へと戻らなければならないのに、消さなければならない敵が増え、彼は声をかけてきたマッシモ・ヴォルペと手を組んだ。

 彼は犬を追いかけた振りをし、すぐに引き返して、マッシモと対峙していたフーゴを襲ったのだ。
 そして暗黒空間から出て、始末したフーゴを目で確認した時。
 彼は、驚愕で目を見開いた。


 消えていたのは、マッシモの下半身の方だった。


「バカな…!!」
 その動揺から回復する前に、ビチャ、と何かが彼の頬に跳んだ。
 その液体は赤く、粘ついていた。
 なんだ、と思う間もなく、その液体が跳ねた場所を中心に肌が崩れていく。水泡ができ、それがすぐに裂け、激痛がヴァニラ・アイスを襲う。
 それは紛れもなく、パープル・ヘイズのウイルスに感染したのと同じ症状だった。
(バカな!!奴のスタンドは射程距離外のはずッ!!)
 視線を巡らせた先には、砂でできたボールがあった。それは割れていて、中は空洞で、その中から赤いものがこぼれ出ていた。
(まさか――感染した誰かの肉体の一部を、密閉した砂の中に詰めて――)

 彼がまともに思考できたのはそこまでだった。
 激痛と、体が崩れさるという恐怖に、彼はスタンドを発動させ、無暗やたらにそこら中を駆け巡り始めた。
 ウイルスに侵されたせいで、崩れていく体とともにその球体もどんどん小さくなっていく。だが、そんなことに構っている余裕はなかった。
 そこにあるのは、忠誠心などではなく、ただDIOの役に立てないまま死ぬという、恐怖だけであった。

 ヴァニラ・アイスはミスを犯した。
 もし彼がいつものように、容赦なく無慈悲に、暗黒空間に全てを飲み込んでいれば、こんなことにはならなかっただろう。
 だが、彼は考えてしまった。
 DIO様に褒められたい、と。
 だから初めは、タルカスとイギーを『取るに足りない』と、見逃した。
 だからマッシモ・ヴォルペと手を組み、『手っ取り早く』敵を葬る道を選んだ。
 それこそが、破滅への道だと知らず。


『DIO様アアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 暗黒空間の中で、誰一人聞くことのない世界の中で、叫び声をあげながら。
 ヴァニラ・アイスは、自身が今までそうやってきた相手と同じように、何も残さず消えていった。



――――――――−−‐

852獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:16:34 ID:1GyikQMQ


 ………時は、少しだけ遡る。



「マッシモォォォォォォォ!!」



「―――ああ、その顔が見たかったんだ」



(今だッ!)

 フーゴとマッシモの様子を窺っていたイギーは、タイミングを見計らって、彼らの場所を地面ごと移動させた。
 ちょうど、フーゴがいた場所にマッシモが来るように。
 そう。
 フーゴとマッシモが立っていた場所には、すでにイギーの用意した砂が敷き詰められていたのだ。
 マッシモの下半身が消えるのを確認したイギーは、隠れていた砂の中から飛び出し、ヴァニラ・アイスに砂のボールをぶつける。

(へッ!どーだ、喰らいやがれッ!!)

 フーゴのスタンドから飛び出したカプセルは、そのままであれば射程外に出ると消えてしまう。
 カプセルを割ってウイルスを出しても、日に当たれば消えてしまうし、そのうち共食いを始めるだろう。
 なら、どうするか。
 答えは簡単だ。
 タルカスの死体を使えばいい。
 ヴァニラ・アイスがどうでもいいと、取るに足りないと、そう思って放っておいた男を使えばいい。
 ウイルスに侵された死体の一部を砂のボールに詰め、外に漏れないようにして敵にぶつける。
 原理は簡単だ。だが、絶大な効果があった。
「フン」
 考えたのは全てフーゴだ。だが、動いたのはほとんどイギーだった。
 タルカスを運んだのも、地面を動かしたのも。

「………」

 タルカスは。
 使った死体が、別の誰かのものだったら―――例えば、スミレのものだったら―――きっと怒り狂ったに違いない。
 だが。それが、自分の体だったなら。
『おお、よくやったッ!イヌ公よッ!!』
 きっとそう言って、笑っただろう。そして、あの大きな手で、イギーの体を撫でただろう。
(ま、文句を言われよーと、オレには関係ねェからな。聞きゃしねーぜ、おっさん)

 そう思って、イギーがヴァニラ・アイスに視線を戻した時。
 彼の姿は、すでにどこにもなかった。死体もなかった。
 ヴァニラ・アイスは、最後の力を振り絞って、スタンドを発動させていた。
(な、なんだとォ!?)
 全てを飲み込む球体は不規則に動き回りながら、フーゴのいる方に近づいて行く。
「ワンッ!」
 警告を発し、イギーはフーゴの姿を視界に収める。


 そこで彼は、再び驚愕に包まれた。



◆◆◆

853獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:21:51 ID:1GyikQMQ


(上手くいった、か―――?)

 身を起こしたフーゴの視界に入ったのは、仰向けに倒れているマッシモ・ヴォルペの姿だった。
 手はだらりと垂れ下がり、目は閉じている。その下半身はヴァニラ・アイスの攻撃によって消え去り、この世のどこにも存在していなかった。
 死んでいる、そう思って、フーゴが油断した時だった。

 マッシモの目が、ばかっと開いた。

「なッ!?パープル・ヘイ…ッ!!」
 マッシモは腕だけで自身の体を支え、フーゴに飛びかかった。そして、現れたパープル・ヘイズの拳に、自分から当たりにいった。
「し、しま、」
 気付いたときには、もう遅い。
 ウイルスに感染したマッシモが、そのままがしぃっ、とフーゴの腕をつかんだ。
 下半身を失くした人間とは思えないほどの力で、ぎりぎりぎりぎり、とフーゴの腕にしがみつく。
「う、うおお…ッ」
 フーゴの右腕がウイルスに感染し、破壊されていく。
 とっさのことで威力を調節できなかったため、ウイルスが全身を回るまでには時間がある。
 相討ちする気か、と思いマッシモを見たフーゴは、ぎょっとした。
 感染し、破壊された皮膚が治癒し、また破壊され―――そんなことを繰り返している。

(ま、まさか―――感染することを予想し、すでに手を打っていたというのか!?)

 マッシモの体は、いつかはウイルスに負け、崩壊するだろう。
 だが、それまでフーゴの体は持たない。フーゴが死んだあと、マッシモはウイルスをまき散らしながらジョルノやナランチャを探し回るに違いない。
 そのために無関係の人間が死のうが、ウイルスがエリア中に広がろうが、マッシモに取ってはどうでもいいのだ。

 フーゴを絶望の中で殺す。

 そのためだけに、マッシモは動いている。

「ワンッ!!」
 イギーの鋭い声が脳内に響いた。
 覚束ない足取りで声のした方を向くと、ずいぶんと小さくなったヴァニラ・アイスのスタンドが、フーゴ達の所へ近寄ってきていた。ぐるぐると、無秩序に暴れまわるそれに向かって――――


 フーゴは、大きく一歩を踏み出した。





――――――――−−‐

854獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:24:14 ID:1GyikQMQ

 まず見えたのは、暗闇だった。



 目を開けているのか、閉じているのか。
 それすらも分からない。

 マッシモ・ヴォルペは、暗闇の中に一人で立っていた。

 フーゴはどうなっただろう。
 殺せただろうか。分からない。
 分からない。何も分からない。
 何も――――


「マッシモ…」


 少女の声が聞こえた。
「あ…」
 懐かしい声だった。
「ああ…」
 もう二度と聞くことは叶わないと思っていた声だった。
「アンジェリカ…」
 暗闇の先に、アンジェリカがいた。コカキがいた。ビットリオがいた。
 彼らは笑っていた。笑って、マッシモが来るのを待っていた。
 今の今まで、忘れていた。アンジェリカの名を。顔を。声を。コカキを。ビットリオを。
 そうだ、彼らがいれば何もいらなかった。
 彼らが、何より大事だった。
 俺は、なぜそれを忘れていたのだろう?



「待ってたわ。マッシモ。ほら、笑って?せっかく、みんなが揃ったんだから―――」
「…ああ、そうだな…」



 ウイルスに侵されながら。そのおぞましい苦痛に曝されながら。
 マッシモ・ヴォルペは、笑って彼らの元へ旅立っていった。




――――――――−−‐

855獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:29:47 ID:1GyikQMQ

 空が、見えていた。


 どこまでも抜けるような、青い空だ。
 落ちてきてしまいそうなくらい、近い。
 その空に手を伸ばそうとして、気付いた。

 右腕がない。

「ぐッ、ううう…!!」
 途端に激痛に襲われ、フーゴは身を捩りながら呻いた。
 ぎりぎりと歯を食いしばり、地面に爪を立てる。
 傷口に手をやると、そこはなぜかざらざらとした触感がした。
 見れば、傷口を砂が覆っていた。それが血を止め、フーゴの命をぎりぎりの所で現世にとどめていた。
 顔を横に向けると、死体が転がっていた。
 マッシモ・ヴォルペは、今度こそ死んでいた。わずかに残っていた顔の半分はウイルスによってぐずぐずに溶け、原型も残らないほどの肉塊になっていた。
「……終わった…」
 フーゴは呟き、目を閉じた。
 そこには、歓喜も喝采もなかった。
 怒りも悲しみもなかった。
 ただ、やり遂げたという安堵だけがあった。
 フーゴは下を向いて、そこでようやく自分の体全てを視界に収める。

 ヴァニラ・アイスの『クリーム』は、ウイルスとマッシモを削り取るついでに、フーゴの右腕と脇腹と、左足の肉も抉っていた。

(ああ―――、これは、死ぬな…)

 それはどう考えても、覆せないことだった。
 こんな場所でこんな大怪我を負って、生きていられるわけがない。
 だが、それでもフーゴの心に焦りも悲哀もなかった。

 ようやく。
 ブチャラティやアバッキオに、追いつけた気がする。
 一歩を、踏み出せた気がするのだ。

(そう、よくやった…。ぼくは、やったんだ…。
 強敵を二人とも葬った。
 もう一度同じことをしろと言われても、絶対にできない。
 もう、いいだろう?休んだって、いいだろう…?)

 しかし、そう思っているのに、なぜか体の方は言うことを聞いてくれない。
 勝手に手が前に出て、どこかに行こうとしている。
 どこに行こうとしているのか。それは、考えるまでもなくフーゴの中にあった。

(ブチャラティが、二度も命を懸けて守ったトリッシュ。彼女を、守らなくてはならない。
 勇気と覚悟がなくて、死なせてしまったナランチャ。今度は、決して死なせはしない。
 自分に光を与えてくれた、ジョルノ。彼と共に、歩んでいきたい。
 ミスタは、運のいい男だ。きっとどこかで生き延びているだろう。

 ぼくは―――彼らに、会いたい)

「う、うう…」
 手を伸ばせば、その先にみんながいる気がした。
 けれどもそれは幻影で、左手が掴めたのは砂だけで。
 フーゴは立ち上がろうと、腕に力を入れてもがく。

 だが、とうとうそれにも限界が来て、大きく体が傾いた。




――――――――−−‐

856獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:33:20 ID:1GyikQMQ

 こいつはもうだめだ、とイギーは思った。
 右腕は肩から先がなく、左足も大きく抉れている。イギーが砂で傷口を固めているものの、戦うことはおろか、立ち上がることすらできはしない。
 フーゴ自身も、それを分かっているはずだ。
 だが、なぜかフーゴは歩みを止めない。
 動かないはずの足を動かし、残った腕で立ち上がろうとしている。

「ナ……、ト…ッシュ、ジョ…ルノ…」

 うわごとのように呟かれた名の中の一人を、イギーは知っていた。
 ジョルノ・ジョバァーナ。
 つい先ほどまで行動を共にしていた相手だ。サン・ジョルジョ・マジョーレ教会で別れたきり、会っていない。
 今、生きているのかも分からない。
 がくり、とフーゴの体が大きく傾ぐ。
 イギーは、さっとフーゴの体を支えた。砂をフーゴの元に集め、ゆっくりと持ち上げる。まともに動けない彼に代わり、イギーの操る砂がフーゴの足となる。

「…おまえ…?」

(別に、テメーのためとかじゃあねェからな。ただ、一応共闘した相手だ。ちょっとくらい、手伝ってやるぜ…)







 二匹の獣が荒野をゆく。
 その先に道は見えず、どこに辿り着くのかも分からない。
 だが、歩みを止めることなく彼らは進む。
 その先にある、わずかな光を目指して。

857獣の咆哮 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:45:29 ID:1GyikQMQ

【マッシモ・ヴォルペ  死亡】
【ヴァニラ・アイス  死亡】

【残り 37人】


【D-3 街中 /  一日目 夕方】

【どう猛な野獣タッグ】

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.とりあえず、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に向かう。
2.花京院に違和感。
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わない
4.穴だらけ(フーゴ)と行動

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:右腕消失。脇腹・左足負傷。(砂で止血中)
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.ムーロロは許せない。
3.ひとまず犬(イギー)とともに行動
4.教会に戻りジョナサンと合流する
5.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。
6.仲間達に会いたい。

【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』のハートのAとハートの2はムーロロの元に帰り、消えました。

【備考】
※サン・ジョルジョ・マジョーレ教会から南東方向にイギーVSヴァニラ、フーゴVSヴォルペの戦闘跡があります。

858 ◆q87COxM1gc:2014/06/21(土) 23:54:17 ID:1GyikQMQ
以上で投下終了です。
また本投下までに推敲する予定です。会話や戦闘の緊張感ってどうやって出すんでしょうか…。

私の文章ではあまり感じないかもしれませんが、今回の話は実際の映像を思い浮かべるとグロい人達ばかりになりました。
特に下半身が消えたマッシモ・ヴォルペ。ツェペリさんも上半身と下半身がサヨナラしましたが、ヴォルペのイメージ映像はテケテケです。

ご指摘、助言などがありましたら、よろしくお願い致します。

859名無しさんは砕けない:2014/06/22(日) 01:29:53 ID:OmF7wmjs
仮投下乙です。
文章自体はやや荒削りな部分も見られましたが、
少なくとも自分は読んでいてどちらが勝つのか、フーゴは生き残れるのかという話の展開から十分に緊張感が伝わってきたように感じました。
……なんか偉そうでスミマセン。

誤字ですが、>>843の行幸は僥倖の間違いでしょうか。
あとフーゴやムーロロはマッシモ・ヴォルペを「ヴォルペ」と姓で呼んでいたと思います。
それでは本投下待ってます。

860名無しさんは砕けない:2014/06/22(日) 11:45:40 ID:XWqjdUn.
乙です!

はらはらしながら一気に読んでしまった。
対主催組が勝ってまず安心。と思いきやまだジョンガリがいるのでまだ気が抜けないなあ。フーゴの傷も深いしこれからどうなるか。
ヴァニラ敗北の原因がとても人間臭いのでベネ。原作だと感情希薄なサイボーグっぽいのにロワだとけっこう感情豊かだと思っていたら、それが仇になるとは。

ともかくヴァニラ、ヴォルペはお疲れ様。

861 ◆q87COxM1gc:2014/06/22(日) 19:20:52 ID:3qPc6gR6
>>859>>860 ありがとうございます。
すみません、「僥倖」の方です。難しい言葉を使おうとしたばっかりに…。
呼び方も、「ヴォルペ」の方でしたね。修正します。

862名無しさんは砕けない:2014/06/24(火) 00:28:51 ID:7DR0k65w
投下乙です
感情と感情のぶつかり合い! これぞまさにスタンド勝負!
タルカスの死体を利用したギミックに心打たれました
イギーの中でタルカスがしっかりと残ってることに感動しました

その黄金の精神に相反するように、ヴォルペとヴァニラのどす黒さといったら!
死の瞬間まで暴れまわったヴァニラも、半死でもがき続けたヴォルペも……
どちらも「ただじゃ死なねぇ」というマイナスの精神力に震え上がりと同時に、感心してしまいました
特にこのふたりは原作だと、クールな感じなので熱い一面を見れて嬉しかったです

言葉ひとつひとつのチョイスが柔らかでベネ!
最後の夕日をバックに一匹と一人が歩いていく情景も素晴らしい!


指摘?らしきものが二つ
1.マッシモ呼びに関して
私個人としてはフーゴが感情的になった結果なのでそれはそれでいいかなーと思ったりしました。
書き手さんが好きな方でどうでしょうか、と横槍のようになりますが、一言
2.ムーロロに関して
現在ムーロロは琢馬とスクアーロと一緒に行動してます
今回この話に登場したことで「午後」から「夕方」まで一気に時間が経過します
彼ら二人の動きも補足的に書いたほうが続きを書きやすいのではないでしょうか

863名無しさんは砕けない:2014/06/24(火) 01:22:50 ID:OlIfmT1U
>>862
夕日をバックに歩くと教会と逆方向になっちまうんだぜと一応

ムーロロはこれぐらいの描写でいいんでね?
メタな話し、琢馬もスクアーロもあえて登場させないことで
この時点で生存してるかどうか曖昧な方が次の人も書き易いと思うし

864 ◆q87COxM1gc:2014/06/24(火) 21:40:00 ID:uYGDLXRg
≫862 ご指摘、感想ありがとうございます。

マッシモ呼びに関して
これは、アンジェリカの「マッシモ」があまりに印象に残っていたせいで、他の人もそう呼んでいたと勘違いしていました。こっちの方が呼びやすいと感じたのもあります。フーゴやムーロロは「ヴォルペ」呼びに直しますが、フーゴが叫ぶ所は「マッシモ」のままで行こうと考えています。≫862で指摘されたように、感情的になった結果、ということで。「ヴォルペェェェェェェ!!」では、イメージがちょっと違う気がしました。

ムーロロに関して
ムーロロと行動を共にしている二人の動向は、≫863で指摘されたように、のちの書き手さんにお任せしようと考えています。現在も一緒にいるのか、それとも別行動しているのか、わざとはっきりしないようにしています。

こうしてご指摘や感想などをいただき、感激しっ放しです。本当にありがとうございます…!!

皆様の意見を反映して、本投下に臨みたいと思います。

865 ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:14:21 ID:JcjmLTVs
カーズ、宮本輝之輔
仮投下致します。

866窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:15:38 ID:JcjmLTVs

―――走って、走って、走り続ける。
聞こえてきた放送も碌に頭に入れず、途中にあった遺跡も素通りし、ただひたすらに地下を逃げ続ける。
長時間の運動に慣れていない足が鈍痛を訴えるも、半ば引きずるように前へと進む。
これ以上は走れないという自身の限界に到達した辺りでようやく、宮本輝之輔は足を止めた―――

(ガ………ハァァ………グッ………)

『紙』の中から水を取り出し一気に呷ろうとするが、思うように飲み込めず半分ほど零してしまう。
同時に限界を向かえた脚も体を支えていられなくなり、ガクリと地面に両膝をついた。

(フゥー………フゥ………)

数分ほど経ってようやく落ち着きを取り戻すと、周りを見回し耳を澄ます―――誰もいないし、何も聞こえない。
追っ手が迫っていないことを信じながら息を潜めつつ、乱れた呼吸を整える。
だが、安堵できるほど状況が好転していないのも理解していた。

(……いない、よな………?)

もう一度後ろを振り返り、注意深く観察する。
薄暗い地下とはいえ誰かを見逃すほどでは無いが、それはあくまで相手が『目に見える』場合だ。
先ほどまで彼を捕まえていた男―――ワムウは透明になることが出来る以上、油断はできない。

(………………万が一ヤツがぼくを殺しに追って来たとしても、一言ぐらいはかける………と思うが)

彼は黙ってその腕を振り下ろすような相手ではない―――そういう意味で宮本はワムウを『信用』していた。
それでも、会いたくないのに変わりはないが。

(放送はほとんど聞き流してしまったけど……ワムウも、噴上や仗助達の名前も呼ばれなかったように思う………
 である以上、あいつらがぼくを追ってくる可能性は十二分に存在する……さしあたっては)

時計を取り出し、現在時刻が昼頃であるのを確認する。
柱の男は太陽の下には出られない―――ワムウも陽のあたる場所に出ようとはしなかったし、自分さえ地上に出れば彼との遭遇は避けられるだろう。

(出口は、どこだ………?)

だが、辺りを見回しても上がれそうな場所―――階段や梯子といったものは全く見つからない。
しかも無我夢中に逃げたため自分が今どこにいるのかすらわからないというおまけ付きだ。
宮本は自分の記憶を思い返し、逃げる途中に通過した地上と繋がる遺跡を思い浮かべるが………

(ダメだ、後戻りは『賢い行い』ではない……あいつらがぼくを追ってきていて、鉢合わせるかも………)

論理的に、というよりは恐怖に駆られてその案を却下し、前方を眺める。
目の前にあるのは満足な明かりすら存在せず、どこまで続いているかもわからない道が一本だけ。

(落ち着け、出口は必ずある………慎重に、慎重に行こう………)

一刻も早く地上に出たいという気持ちはあるが、遭遇に備えて体力は回復させておかなければならない。
決断した宮本は自分に言い聞かせつつ再び歩き出した………未だに痛む足を引きずりつつ、ゆっくりと。

数歩ごとに後ろを振り返り、時折立ち止まって前方のその先に誰もいないことを確認し………
確実に歩を進めてはいたものの、その速度はまさに牛歩といってよかった。

867窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:17:42 ID:JcjmLTVs

#


………悪いことは重なるもので。
歩き始めてから一時間近く経っても宮本は地下から脱出できていなかった。

(………くそっ)

進む先は一本道だが歩けど歩けど出口は見当たらず、宮本は軽く舌打ちする。
ひょっとしたらこの先は行き止まりであり、結局出られずに引き返す羽目になるのではないか。
あるいは既に何者かのスタンド攻撃を受けており、進んだと思ったらいつのまにか戻っていて、同じ道を何度も歩いているのではないか。

(そんなはずが無い……ッ! よく思い出せ……確か…)

ネガティブ思考を必死に振り払い、理由を考えなおす。
方位磁石で確認するに、自分がいるのは東西にほぼ真っ直ぐ続く一本道。
ホテルで見せてもらった地下地図のメモと照らし合わせると―――

(A-5からA-7のどこか、だろうな……さっきワムウと通った道を逆戻りってワケか)

地図の中に納得できる場所を見つけ、僅かに落ち着きを取り戻す。
だが、不安が全て取り除かれたわけでもなかった。

(逆に考えろ、これはラッキーなんだ……噴上は『におい』で追跡が可能な能力者………
 あいつが来ないということは、ぼくは『逃げ切った』ってことじゃあないか………)

無理やりそう思いつつ、さらにしばらくして。
なおも歩き続ける宮本の耳に微かな物音が飛び込んできた。

―――ぺらり

(………?)

注意深く耳を澄ませる。
しばらくして、再び音は聞こえてきた。

―――ぺらり

(紙………いや、本のページをめくる音、か?)

―――ぺらり

音と音の間隔はやや不規則ながら短すぎず、長すぎず。
それはまさに『誰かが本を読んでいる程の』間隔であった。

(誰かが………いる!?)

音の発生源を注意深く探ると自分の前方、ゆるく曲がるカーブの先からその音は聞こえてきていた。
だが、それと同時に宮本は違和感を覚えて思考する。

(注意深く考えろ、選択を誤ったら………)

868窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:19:43 ID:WLkxomLo

宮本は音を立てないように辺りを観察する………先にいる誰かと接触するべきか、立ち去るべきか判断するために。
すぐに、彼は違和感の正体に気付いた。
多少目が慣れたとはいえ、ここは地下―――当然、常に薄暗い。
だが音が聞こえてくる先は………少なくとも、宮本自身が本を読めるほど明るいようには見えなかった。

(そうだ………曲がり角の先から『明かりが漏れてきていない』………!!
 それならこの先にいる誰かは、明かりも無しにどうやって『本を読むことが出来る』っていうんだ!?)

理由が全く思いつかないわけではない。

例えば、点字の本を読んでいるとか。
または、暗視ゴーグルか何かを装着しているとか。
あるいは、ページをめくっているだけで、内容など見ていないとか。

………だが、今の状況でそんな希望的観測など出来るわけがなかった。

(この暗さでも、本を読めるだけの視力を持つ奴………まさか、ワムウッ!?)

導き出された結論は最悪のもの。
よしんば違ったとしても、この先にいる誰かが『人外』の可能性は非常に高い。
いち早く判断した宮本は今来た道を戻るべく音を立てないように体の向きを変え―――


                     「どこへ行く、人間」


―――一歩も踏み出さないうちに呼び止められた。
宮本の背中に冷や汗が伝い、痛みが引いたはずの足は震え始める。
彼は今、自分が『人間』と呼ばれたことで理解していた―――声の主はまたしても『怪物』であると。

「………………」

逃げても無駄だと悟った宮本は再び振り返り、声がした方へと進む。
諦めたわけではなく、覚悟を決めたわけでもなく………ただ、行かねば殺されるという『恐怖』に駆られて。
ゆるやかな角の先、宮本の目に飛び込んできたのは悪い意味で誰かに似た格好の大男だった。

(まさか、こいつがワムウの言っていた………)

相手はまさにワムウに『似ている』男。
そのとき宮本は思い出した―――残る柱の一族は、たった二人というワムウの言葉を。

(………やるしかない)

どうにかせねば殺される―――瞬時に理解し、自分が優位に立てるチャンスは今しかないと判断する。
精一杯の虚勢で平静を装いつつ、相手に向かい口を開き………

「………カーズ」
「ほう………きさまもまた、このカーズを知っているか」

869窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:25:03 ID:WLkxomLo
………会話で先手を取ろうとするも、失敗。
相手の正体は自分の予想通りだったものの、おそらく彼は自分を一方的に知る人物と既に遭遇した後。
結局、最初の一手ではアドバンテージを得られなかった。
だがその程度の事態は想定済み………宮本は静かに言葉を続ける。

「………忠告しておくが、ぼくと戦う気ならやめておいたほうがいい」
「ふむ?」

宮本の次なる一手は、ハッタリ。
ワムウがそうであったように、彼らはおそらく『スタンド』に関する知識は持っていない。
どこかで聞く機会があったとしても、まさか自分の能力が詳細に知らされている可能性など存在しないと見越してのこと。
さらに、宮本は自分でも驚くぐらいに大胆な発言を続ける。

「あえて説明するなら、お前たちが持っている支給品を紙に閉じたのはぼくの能力………ぼくは主催者側の人間だ」
「………………」

心臓が破裂寸前なほど激しく鳴っているのがよくわかる。
だがひたすらそれを押し隠し、近くに転がる一抱え以上もある岩を『エニグマ』でファイルし、紙にしてみせる。
続いて、折りたたまれた紙におもむろに指をかけ………

「そしてこのようにやぶいてしまえば、岩も簡単にバラバラにできる。
 ………岩だけじゃなく、生物も例外ではない」

ビリビリにやぶかれた紙から岩の欠片が零れ落ちてくる。
相手に驚いた様子は見られなかったが、その口からほう、という呟きが漏れ出たのを宮本は確かに聞いた。
………まだ相手の『恐怖のサイン』を見つけたわけではなく、完全にブラフである。
だが、支給品の紙に何故か自分の能力が使われているのはまぎれもない事実。
この『賭け』に勝算は十分あると宮本は睨んでいた。

―――果たして、相手は再び手の中の本に視線を戻し、言った。

「フン……まあよい。先へ進みたいなら勝手に行けばよかろう」
「………………」
(成功……した……?)

まさかの『通行許可』が出されたことに顔には出さずとも驚く。
とはいえ、喜び勇んで素通りしようなどとはさすがに思わない。
宮本が黙ったまま動かず、用心深く思考しているとカーズは再び声をかけてきた。

「どうした、行かぬのか? それともきさまのほうこそ、このカーズとの戦闘を望むか?」
「いや………」
(間違っても怖気づくような相手じゃあないはずだけど、何らかのリスクを避けたのかもしれない……
 それに相手はワムウと同じ怪物………身体能力も同等なら不意打ちなんてしなくても一瞬でぼくを殺してしまえる……
 なのに襲ってこないのは、本当に通ってもいいっていうこと………だよな?)

自分なりに結論を出すと、あくまで無表情を貫き通しながら宮本はカーズの前を横切って奥へと進む。
内心は今にも後ろから奇襲を受けるのではないかとビクつきながら、ありったけの精神力で体に震えが出ないように歩く。
十歩ほど進み、彼が勝利を確信しかけた………その時。

                  『おめ〜 すでにはいってたな……禁止エリア…だ…』

―――宮本の『首輪』から『声』が発せられた。

870窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:26:54 ID:JcjmLTVs

「………!!!!?」

反射的に体を引き、勢い余って尻餅をつく。
その体制のまま後ずさりし、数秒たった時点でようやく『声』が止まったことに気付いた。
冷や汗を流しつつ首輪を確かめる宮本に対して後ろから声がかけられる―――とても愉快そうに。

「ほう、足を踏み入れても即座に命を奪われるというわけではないのか………なるほどなァ〜〜」
「あ、お、お前ッ………! 知ってて………」

禁止エリア―――『声』の内容的にそれで確定だろう。
そして今の言葉からすると、よりにもよって自分は『実験台』にされたのだ………!
慌てて顔を相手の方に向けると、カーズはニヤニヤ笑いながら口を開いた。

「ンン〜? このカーズは『先に進みたければ勝手に行け』と言ったまでよ。
 そもそも、禁止エリアがわからんのはきさま自身の責任ではないのか?
 放送を聞き逃したのか、それとも自分の位置すらわかっておらぬのかは知らんがなァ〜〜?」
「グッ………」

宮本は何も言い返せなかった。
この場において非があるのは、放送をしっかり聞いていなかった自分なのだから。
立場は一瞬にして逆転………いや、元から自分の方が圧倒的に下だったのだろう。

「どれ、こちらも試してみるとするか………」

一方カーズはこともなげにそう呟くと本をしまい、自分も禁止エリアへ足を踏み出してゆく。
その脚にあわや蹴られそうになった宮本が身をかわすのに目もくれず、エリアの境界と思われる場所をカーズが越えた途端………


        『カーズ様が! おおおおおカーズ様がアアアーッ!! 禁止エリアにはいった―――ッ!!』


彼の首輪から宮本のとは違うメッセージがやけに大きな声で響く。
カーズは首輪の音声による禁止エリアへの侵入を聞いて方向転換、同じように音がやむのを確認する。
………そして宮本へと近づき、声をかけてきた。

「さて……きさまが本当に主催者の手下か単なるハッタリか、そんなことはどっちでもよい………
 ここへ来たからには、少々このカーズに付き合ってもらおうではないか」
「誰が―――」
「ンン〜? それとも、このカーズの手で地獄に落ちるのが望みとあらば、すぐにでも叶えてやろうかアア〜〜?」
「………………」

ワムウの方がまだマシだった―――心底そう思える。
目の前の男、カーズは間違いなくワムウと同等以上の力を持っているようだが、二人には決定的な違いがあった。
それは人を傷つけることに『何も感じない』ワムウに対し、カーズは『愉悦を覚える』という点。
いざとなれば一息で命を奪ってしまえるだろうに、どうすれば相手が困るか、苦痛を感じるか……そのようなところを陰湿に攻めてくる。

(まちがいない………これでまちがいない、『柱の男カーズ』…『この男』は………)


                              (『性格が悪い』)

871窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:28:26 ID:JcjmLTVs

趣味は人間観察、特に『恐怖』を観察するのが好きな自分と『同じタイプ』だからこそわかる。
このような者が『恐怖』するとすれば『自分より上に立たれる』か『未知のものに遭遇する』ぐらいだということが。
だが口先で上に立つのは失敗し、スタンドを見せても精々驚く程度。
他の方法における勝ち目などありえそうにない………ではどうするのかというと。

(つまり、ぼくが生き残るために今すぐやるべきことはッ………! 表面上だけでも『恭順』する……それしかないんだ……)

相手は何やら自分に用がありそうな点を利用………付け入る隙を狙うと言えば聞こえはいいが、実際はおとなしく従うという情けない方法。
それでも、命には代えられないと宮本は先ほどの発言に対して渋々返答する。
すると………

「………ぼくに何をしろっていうんだ?」
「フフフ…きさまにやってもらうこととは……これよ」
「……? まさか………首輪ッ!?」

宮本は仰天する―――自分達に付けられているのとまぎれもなく同じ首輪がその手に乗せられているのを見て。
ただし、本来首輪を装着している参加者の姿は無く首輪「だけ」。
元の持ち主がどうなったのか………想像して再び宮本の背中に冷たいものが走る。
だが、その程度の驚きなどほんの序章に過ぎなかった。

「………よく見ていろ」

ゴクリと唾を飲む宮本の前でカーズは首輪を軽く上へと放り投げる。
続いてその腕からバリバリと音を立てて『刃』を出し―――


―――首輪目掛け、ためらいなく振り下ろしたッ!


(えっ…………?)

その瞬間、宮本の頭は真っ白になった。
参加者の首を吹っ飛ばした首輪……それが今、目の前の男によって無理やり破壊されようとしている。

(そんなこと………すれば………)

やけにスローに感じられる世界の中で、宮本は何も出来ず呆然と立ち尽くす。
彼の目の前で、首輪は闇の中で光り輝く刃により真っ二つに切断され―――





                   反射的に、宮本は両目をつぶり―――





                  ―――パン、と乾いた音があたりに響いた。

872窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:30:32 ID:JcjmLTVs

「あ………」

生きている。
目を開けると自分も、カーズも傷ひとつない。
首輪の爆発は想像していたような規模ではなく、ずっと小さなもの。
真っ二つになって地面へ落下した首輪はそれきり、何の反応も示さなかった。

カーズは落ち着いた手つきで首輪を拾い上げると、切り裂かれた断面を下にして軽く振る。
すると、切断面の中に見える空洞より細かい金属片がぱらぱらと零れ落ちてきた。

(………爆発は、首輪の中身が弾けとんだ………だけ?)

先ほど何が起きたのかを再確認していると、カーズが宮本に壊れた首輪を差し出してくる。

「多少頑丈ではあるようだが、このカーズにとっては子供騙しよ。
 だが主催者もそこまでマヌケではないらしい………この通り、破壊すると中身が弾けとぶというわけだ………
 さて、人間………残った破片ですらこのカーズには未知のものが混じっているため理解し切れんのだが………どう見る?」
「ど……どう見るって………」

そこでようやく、宮本は自分の意見が求められていることに気付いた。
未知のもの………すなわちカーズは中身の『機械』がよくわからないから、人間である宮本の意見を聞きたいのだということ。
不運続きの宮本だが、この場においてはまだ運があったというべきだろう。
もしカーズがもう少し後の時代―――人間の文化をよく知った後から連れて来られたならば、彼は禁止エリアの実験だけで『用済み』だったのだから。

(首輪を調べる? ぼくが? ………でも、断ったらたぶん―――)

―――殺される。エンジン音だけ聞いてブルドーザーだと認識できるようにわかる。
仕方なく宮本が首輪を受け取るとカーズは再びデイパックに手を突っ込み、今度は既に壊れている首輪を取り出す………それも二つ。
首輪自体の大きさは宮本の持つそれと微妙に異なるものの、振って出てきた破片から見てどうやら中身は同じようだった。

「大きさは参加者によってまちまちだが、仕組みはどれも変わらぬらしい………
 それ以上のことはきさま次第だが………何やら、思うところがあるようだな?」
「ああ………」

カーズ本人は信用できないが、首輪の解除に協力するのは宮本としてもやぶさかではない。
安全面に関しても首輪に直接手を出したカーズが無事である以上、観察して考える程度ならばと開き直る。
むしろ首輪を何個も持っているカーズの方が危険度は上であるため、彼に逆らいたくなかった。

(外側の金属は……よくわからない。破片は結構量があるけど……爆薬の残りカスらしきものを除けば、ほとんど金属片か………
 よく考えろ、どこかに『謎』を残しておかないとぼくは『用済み』になる……かといって、嘘はリスクが大きい………)

懐中電灯で照らしながらこねくりまわし、中を覗き込み、欠片に目を近づける。
その一方で、自分を生かしてもらえるように情報をどう制限するか考えるのも忘れない。
ひとしきりの調査と思考が済んだ後、宮本は慎重に意見を述べ始めた。

「位置確認のセンサーや声を出すスピーカー、それに爆薬と点火用の装置。最低限これだけは入っていそうだけど………
 誰かのスタンドで代用している部分もあるかもしれない………このスペースならよっぽど小型化しないと入りきらないからな………
 少なくとも、ぼくの時代の科学技術だけでこれと同じ物は作れない………と思う」
「……それで終わりか?」
「いや……機械の種類よりもっと重要な問題がある………この首輪の中身には『爆薬が少なすぎる』ッ!」

873窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:33:00 ID:JcjmLTVs

壊れた首輪を一目見たときから、宮本はおかしな点に気付いていた。
それは自分達が傷ひとつないことと、切断部分を除き首輪自体の形状が変化していないこと。
すなわち首輪を壊した際の爆発は『殺傷力がなく』『首輪そのものは吹っ飛ばなかった』という点。

「首輪の仕組みを調べられると困るから、無理に壊すと中身が自動的に爆発する………それはわかる。
 だけど、外側すら壊れない程度の爆発しか起きないのはどう考えても妙だ………
 これっぽっちしか爆薬が無いなら………最初に実演した、参加者の首をふっ飛ばしたあれはなんだったんだ?」
「………………」
「残った中身は単なる機械の破片みたいだし、切断面を見てもこれ以上の空洞は無さそうだ……
 ……断言できる。この首輪だけじゃあ『参加者を始末できない』ッ!!」

結局、情報の制限はしなかった―――首輪は想像以上に謎が多すぎたのだから。
話を聞き終えると、カーズは静かに目を閉じる。
宮本は知らない………目の前にいる存在が単に性格が悪いだけの男ではなく『天才』であることを。
彼の頭の中でどのような思考がめぐらされているのか、また自分の意見がどのように使われているのか宮本には想像すらつかなかった。
時間にしてわずか数秒後、カーズはゆっくりと目を開き喋り始める。

「………よく聞け。このカーズはたったいま、きさまの疑問を説明できる『仮説』を三つほど思いついた………
 一つ目は首輪そのものが爆発するようになっており、爆破は別の場所………おそらくは主催者側が任意で行うというもの。
 二つ目はこの首輪の持ち主が命を落とした時点で、首輪の何らかの………スタンドが関わる爆発機能が失われたというもの。
 そして三つ目は………そもそも最初に首が吹っ飛んだ人間達の首輪は、われらに付いているのとは全くの別物というものだ」

宮本自身では数十分考えて、やっと出せるかどうかという考えをすらすらと述べるカーズに内心舌を巻く。
彼の言う『仮説』が正しいかどうかはともかく、その頭の回転速度は相当なものだと認めざるを得なかった。

(こいつ、本当に何なんだ………? けど今は『首輪』のほうが重要か……)

一見肉体派の怪物と思いきや、脳筋どころかむしろ頭脳派といっても過言ではないことに驚きを隠せない。
だがひとまずは置いておき、気になった点―――最後の説について聞き返す。

「別物って…………まさか、首輪が爆発して死ぬなんてのは主催者のハッタリだっていうのか!?」
「あくまで可能性のひとつよ。だが―――」

やや結論を焦る宮本をたしなめつつ、一呼吸おくとカーズは言った。
聞きようによっては『希望』になり得る言葉を。

「―――今言ったどれかが正しければ、首輪をはずすことができるやもしれん………それにはもう一手間が必要だが」
「ほ、本当なのかッ!? ………一手間っていうのは?」
「無論、首輪破壊時における参加者の生死の違いを確かめることよ………」

その言葉の意味を宮本は一瞬では理解しきれなかった。
順に考えていくとカーズの言葉からして、彼は既に死体と化した参加者の首輪を外してきたということ。
ならば、生きている人間から首輪だけを外そうとするとどうなるのかを確かめる必要があるのだと。

となれば、その『生きている人間』として一番手っ取り早いのは『自分』―――

「――――――ッ!!!?」

気付いた宮本は反射的に距離をとり……カーズはそれを見てつまらなさそうに言葉を続けた。

874窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:35:26 ID:JcjmLTVs

「フン、そう警戒せずともきさまを実験台にしたりなどせぬ。
 きさまには別に『伝言』をやってもらうのだからな………」
「実験台にしない……? どの口がそれを言う………ッ!」

先ほど受けた仕打ちは勿論、相手の口ぶりからしてまだ何か自分に強要するつもりらしい。
となれば文句の一つも出てくるのは当然であったが、言われたカーズはどこ吹く風で呟いた。

「フムウ………では、生きたまま首輪を壊される役目のほうを選ぶか?
 我が輝彩滑刀ならば痛みすら感じさせず一瞬で切り裂くなど容易なことよ」
「え、遠慮しておく……そもそも首輪がハッタリだと決まったわけじゃあない………」

言外に『反抗するなら殺す』と同意義の事を言われれば宮本にはどうしようもない。
現在の自分は相手の気まぐれか何かで生かされているに過ぎないのだから。
尻すぼみになった言葉を了承と勝手に捉えたのか、カーズは話を元に戻した。

「では、参加者どもに伝えるがよい………『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』とな………
 相手の素性や人数は一切問わん、きさまが連れて来たくない者には声をかけんでも構わんぞ」
「………………!?」
(なッ……その『伝言』! いくらなんでもシンプルすぎるッ………! 信用できるほどの中身がないだろうがッ!)

先ほど見せた頭脳はどこに行ったのかと疑うくらいの簡素な内容に宮本は愕然とする。
特に不安を感じるのは他の参加者に信じてもらえるのかという点―――なにせ『どうやって首輪をはずすか』に一切触れていないのだから。
心の中で密かに憤るが……怒りを露にするわけにもいかず、ひとまず聞き返した。

「………伝言はわかったが、誰も来なかったらどうする気なんだ?
 はっきり言って、こんな怪しい誘いに乗るのはどう考えても『賢い行い』じゃあない」
「そのような奴らは勝手に殺し合いを続け、命を落としていくだけのこと………
 リスクを恐れ、脱出の可能性を自ら捨てる者にはどの道未来など無かろう」

ワムウはどうなんだ、と宮本は言い返そうとしてやめた。
彼らの正確な関係がわかっていない以上、下手に首を突っ込むべきではない。
それよりも、彼はカーズの言葉に『希望』を見出していた。
誰も来なくて構わないのなら自分も指定の場所に行く必要はない、すなわち自分は解放されるということなのだから。

(そうだ……首輪にしたってわざわざこんな怪物に頼る必要なんて、これっぽっちも存在しない………
 一旦従う振りをして、二度と会わないようにするのが『賢い行い』だ)


―――だが、宮本の目にそんな微かな希望の光が宿ったのをカーズは見逃さなかった。

「ふむ……きさまは今こう考えているな…『このまま逃げてしまおう』と………
 こちらとしても黙っていなくなられると、ちょっぴり困ったことになる………
 そうならぬよう、きさまに『儀式』をほどこしておくとしようか」
「………『儀式』? これ以上何を――ッ!!?」

カーズはいきなりその腕を宮本の胸にズボォと突っ込み、引き抜いたッ!
何が起こったのかわからない宮本が慌てて手をやるも、そこには傷ひとつない……
だが、一見何も無いというのが逆に不安ッ!!

875窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:37:39 ID:JcjmLTVs

「お、お前ッ! いま何をしたッ!!」
「なに、チョイときさまの心臓の動脈にリングを埋め込ませてもらっただけよ………『毒薬入り』のな」
「………ッ!!!?」

宮本は再び胸元に手をやるが、体の内部までは手を伸ばせぬため何の意味もなさない。
そんな彼を眺めつつカーズは言葉を続けた。

「そのリングは名づけて『死の結婚指輪』………元々我らの使っていた物だが、どうやら主催者がこの殺し合い用に作り変えた支給品らしい………
 およそ半日後にリングの外殻は溶け出して毒が体内にまわり、命を落とす………助かる方法はただひとつ、リングに対応した解毒剤を飲むことのみよ」

にわかには信じ難いことを平然と言ってのける。
勿論当事者の宮本にとってはシビれもあこがれもせず、ただ相手に問いただすのみ。

「げっ、解毒剤は………」
「欲しければ先ほどの伝言を参加者どもに伝え、きさま自身も指定した時間に会場の中心へと来るがよい………
 言っておくが、手術などで無理に取り出そうとすればあっという間に毒が流れ出す仕組みになっておる」
「……そ………んな!」
「なにをそんなに慌てておる? 毒といってもリングが溶け出すまではきさまの体に影響など一切及ぼさぬ………
 きさまが俺の言伝てを果たしさえすれば、何も問題など無い上に首輪も外せるかもしれん………悪いことなど何一つ無かろう?」

カーズの表情はどう見ても本気のそれではない。
相手はこちらが逆らえないことも、言いたいことも全て理解した上で自分を小馬鹿にしているのが明白だった。

「………………くそッ!」
(まただ………またしても、ぼくは誰かの手の上だ………これ以上の『最悪』なんて無いと思っていたのに………)

心の中で悲しみと怒りが爆発寸前までにもなるが結局どうしようもなく、宮本は悪態をつきつつ頷くしかなかった。
まずは現在時刻とタイムリミットを確認するべく、時計を取り出す。

「第四放送は確か、今夜12時………」
「時間が足りんということは無かろう? 暇ならば、きさまのやりたいことでもやっているがよい」
「………………えっ?」

それはカーズにしてみれば何気ない一言だったかもしれない。
しかし、その言葉は妙に深く宮本の胸へと突き刺さった。

(やりたいこと………ぼくが………?)

この殺し合いが始まってから、そのようなことは考えすらしなかった。
そんな余裕が無かったというのもあるが、ただ『死にたくない』という一心で行動し………いや、それすら違う。
思えば最初から自分で行動を決定し、進んだ場面など無い。


              ―――ただ他人の意志と行動に流され、そうでなければ逃げ隠れしていただけだ。


「ほう……その顔は知っているぞ………
 両手両足を失い、胸に穴が開いて死を待つばかりの人間と同じような表情だ………
 進退窮まりどうしていいかわからない、だが死にたくも無い……そんな人間のな………
 五体満足、しかもスタンド能力まで健在の者がそのような顔をするとはなァ〜〜〜?」

876窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:40:07 ID:JcjmLTVs
「………………」

カーズの皮肉も宮本の頭には入っていかず、沈黙が訪れる。
ただ虚ろな灰色を示すその目からは、先ほど宿った光は既に消え失せていた。
数分が経過したころだろうか………宮本は遂に了承の言葉を返し、立ち上がる。
―――ただし、ひどくやる気の感じられない声で。

「第四放送時に、会場の中央だったな………いいよ、やってやる」

信用したわけではない、というか今でもカーズを信じるなど狂気の沙汰だと思っているほどである。
しかし、彼には縋るものが全く無く………目の前に一本しかない『道』を歩かざるを得ないのだ。
カーズも彼の投げやりに近い口調を妙に思ったようだが、同時に深く気にするほどではないと考えているようだった。

「物分りが良いのか、ただのやけくそかは知らんがまあよい………
 ……そうそう、きさまがワムウという男に出会ったならば、このカーズの名と指輪のことを伝えるがよい。
 我らの間で指輪は再戦を望む儀式ゆえ、少なくともあやつに黙って殺されることはなくなるはずだ……
 きさまの場合再"戦"にはならんだろうが、指輪も本来の物と異なる以上細かいことはよかろう」
「ああ、それはどうも………」

相手の言葉にかなりいいかげんな返事をしつつ、ふらふらと歩き出す宮本。
……カーズの言うとおり、理由はどうあれ自分はカーズと別れた後、再度会わなければ命に関わる。
そうなるようにした張本人に一片たりとも良い感情など湧くはずも無かった。

そして宮本が歩き出した直後、彼の後ろでカーズもまた立ち上がり同じ方向へと進み出す。
同行するつもりかと思いきや、カーズはあっさり彼を追い抜いていった。
その背中に向かい、宮本は声をかける。

「………おまえは、どこへ行くんだ?」
「知れたこと………先ほどの仮説を確かめるため、参加者を生かしたまま首輪を破壊してみるのよ………
 さしあたっては、太陽が落ちる前に地下に残る吸血鬼や人間どもを探すといった所か………」

―――生きた参加者の首輪を無理やりはずそうとすると、どうなるか。
宮本は今までそのような事態に遭遇したことは無かったが、例え知っていたとしてもカーズには話さなかっただろう。
カーズが試行を行う過程で他の参加者………例えば仗助達を殺害しようが、逆に返り討ちに遭おうが自分に損は無い。
それに極端な話、結果がどちらでも―――解除に成功しようが、爆発して誰かが命を落とそうが構わなかった。


              何故ならば、この会場内に宮本の『味方』など一人も存在しないのだから。


先を行くカーズは振り返りも立ち止まりもしなかったが、一度だけ言った。

「きさまが何を考えているかなど知ったことではないが、死にたくないのならば進むしかあるまい?
 このカーズの言葉、ゆめゆめ忘れぬことだな………『エニグマの少年』」
「………ああ」
(『だが断る』とでも言えれば、少しはスカッとしたかもな………『あいつら』だったら、言えるんだろうか)

宮本は今、軽く絶望していた。
前方から顔を背け、まとまらぬ思考のままゆっくりと歩く。
その手の中にはカーズから渡されたままの壊れた首輪がひとつ―――自分達が首輪の解除に一歩踏み出した唯一の証。

877窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:41:35 ID:JcjmLTVs

(………………どうすればいいんだ)

話す最中に『恐怖のサイン』を見つけられないかと相手を観察してはみたのだが、やはり無駄だった。
カーズは自分の力と頭脳に絶対的な自信があるのか『恐怖』は勿論『不安』すら見せようとしないのだから。

―――結局何故自分はすぐ殺されずに済んだのか。
―――さっきまで奴が読んでいたのは何の本だったのか。
―――何故カーズが自分のスタンド名まで知っていたのか。
頭の中はどうでもいいことで溢れ、これから何処に向かいどうすべきなのか………先のことは、何一つ思い浮かばない。
宮本はほとんど『考えるのをやめていた』。

「やりたいこと………ぼくは―――」

第三者が見れば無防備極まりない姿であったが彼の前方にはカーズ、後ろは禁止エリアにより実質行き止まりの一本道。
遭遇する誰かなど存在するわけも無く、ただただ歩き続けるだけでも危険は無かった。
そのうちカーズの後ろ姿も見えなくなり、さらに時間が経過してほとんど無意識のうちに遺跡から地上へと出たとき。


                        「―――『自由』になりたい」


宮本の口からはそんな言葉が出ていた。
その言葉を聞いた者は誰もおらず………それが意味の無い呟きなのか、確固たる意志の元で発せられた決意の言葉なのかは、彼自身にしかわからなかった。

ただ、これだけは言える。
彼がカーズの指示通りに動くのか、それとも他の方法を探してカーズを出し抜こうとするのか。
どちらを選ぶのかは少なくとも宮本の『自由』だろう。


【A-5 ピッツベルリナ山 神殿遺跡(地上) / 1日目 午後】

【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、やや放心ぎみ、左耳たぶ欠損、心臓動脈に死の結婚指輪
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)
[思考・状況]
基本行動方針:???
0.???
1.カーズの指示に従う? カーズを出し抜く方法を考える?
2.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい

※この後どこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『新・戦闘潮流』で見た知り合い(ワムウ、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。
※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。
※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。

878窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:44:14 ID:WLkxomLo

#


「………………フン、あんな虫けらごときがどこまでやれるやら」

平然と呟く。
聞こえるはずが無いし、聞こえたとしても何も問題など無い。
先ほど出会った少年はカーズの中でそれほどちっぽけな存在でしかなかった。

そもそも最初から、主催者側の人間という戯言など信じていなかった。
あの少年は『何も知らない』―――首輪を破壊して見せたときの反応からしても間違いないだろう。
いまや生かさず殺さず、使い捨ての『駒』というのがカーズにとっての少年―――名前すら知らない少年。
カーズは自分の知りたいことを聞いただけで、情報交換すらしていないのだから。

では何故カーズは少年のスタンドを『エニグマ』と言い当てられたのか?
その答えは先ほど彼が読んでいた一冊の本にあった。

(それにしても、このカーズともあろうものが迂闊であった………これほど有用なものを見逃していたとは………)

誰が想像できようか。
本の名は『スタンド大辞典』―――参加者全員のスタンド能力が記されているものであったことを。
天才といわれたカーズが乱戦による傷を癒すため、動かずにいた間にその内容を全て覚えきってしまったことを。

数千年以上『自信』を積み重ね『恐怖』など存在しないカーズにとって『エニグマ』は『謎』でもなんでもなく、単なる無力なスタンド。
だからこそ少年を脅しつけ、『駒』にするほうが自分にとって有用になると考えたのだった。
もし少年のスタンドが万が一にでも自分を倒しうる可能性を持っていたならば、カーズはためらい無く首輪を切り裂いていただろう。

そう、宮本の『殺されないためにあえてスタンドを明かす』という策は成功していたのである。
………彼が意図したのとは真逆の理由であったが。

(ヤツは地上を行くか………追うことはできんが指輪ははずせぬ、指定場所には必ずやってくるだろう………
 それまで生きていられれば、だがな)

後ろにあった少年の気配は先ほど離れていった……遺跡から地上に出たのだろうと判断する。
先程暗闇の中で見た少年の目はほとんど死んでいる、だがちょっぴり生きている程度の生気しか感じられないものだった。
だが少年と話すうちにカーズは確かに見た………自由を手にしたいという意志の片鱗が、目の奥に宿っているのを。
しかしだからといって、少年に期待しているわけでは全くなかった―――彼には『あらゆる恐怖を克服する』といったような先に進む意志が欠如していたのだから。

(最初見たときはそこらのドブねずみのほうが、よっぽどいい目をするのではないかと思ったが……場合によっては化けるやもしれん。
 とはいえ、くれてやれる命は精々半日………それで変われなければ文字通り虫けらのように殺されるのが関の山であろう………
 大して頭が回るとも思えんし、果たして首輪の解除などという甘い言葉で寄ってくるマヌケが何人見つかることやら………)

そもそも首輪の解除という話自体、参加者を釣る餌に過ぎない。
先ほどの乱戦後、誰かの攻撃か落石が命中でもしたのか………理由は不明だが、持っていた首輪が壊れているのを見て思いついた策略。
勿論、自分に限れば首輪の解除がどうでもいいというわけではないが。

カーズが簡単な『伝言』だけを命じ、助言すら碌に行わなかったのはそのためである。
戦闘に入る前だろうが殺される直前だろうが、少年が参加者に話せばいいだけならしくじる可能性は皆無。
その後少年がどうなろうと知ったことではない―――自分は伝言の結果、ノコノコとやってきた参加者を奇襲するだけだ。

879窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:46:40 ID:JcjmLTVs
「しかし、その前にやらねばならんことがある………」

このまま隠れていれば参加者は再び出会い、戦い、勝手にその数を減らしてゆくだろう。
だがやはり、自分に屈辱を与えた者たちを許しておくわけには行かなかった。
頂点に立つものはひとり、自分以外に存在してはいけないのだから。

「待っておれ、吸血鬼に人間どもよ……このカーズが受けた屈辱、必ず味わわせてやる………
 スタンドとかいう妙な力にはもう、遅れはとらぬぞ………」

傷はほぼ完璧に癒えたし、相手の手の内も読めた。
太陽こそ沈んでいないものの、自分が敗北するなど万に一つも考えられない。

一見無表情に見える顔、その目の奥に静かな怒りを潜ませつつ、カーズは進んでいった―――


【A-4 南東(地下) / 1日目 午後】

【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(ほぼ完治)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×5、サヴェジガーデン一匹、首輪(由花子)
    ランダム支給品1〜5(アクセル・RO:1〜2/カーズ+由花子+億泰:0〜1)
    工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図、壊れた首輪×2(J・ガイル、億泰)
    スタンド大辞典
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.参加者(特に承太郎、DIO、吉良)を探す。場合によっては首輪の破壊を試みる。
1.柱の男と合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。
3.自分に屈辱を味わせたものたちを許しはしない。
4.第四放送時に会場の中央に赴き、集まった参加者を皆殺しにする。


※スタンド大辞典を読破しました。
 参加者が参戦時点で使用できるスタンドは名前、能力、外見(ビジョン)全てが頭の中に入っています。
※死の結婚指輪の解毒剤を持っているかどうかは不明です。
 (そもそも『解毒剤は自分が持っている』、『指示に従えば渡す』などとは一言も言っていません)

880窮鼠猫を噛めず ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:48:24 ID:JcjmLTVs

首輪の解析結果について
1.首輪は破壊『可』能。ただし壊すと内部で爆発が起こり、内部構造は『隠滅』される。
2.1の爆発で首輪そのもの(外殻)は壊れない(周囲への殺傷能力はほぼ皆無)→禁止エリア違反などによる参加者の始末は別の方法?
3.1、2は死者から外した首輪の場合であり、生存者の首輪についてはこの限りではない可能性がある。


【備考】
・生きている参加者の首輪を攻撃した場合は、攻撃された参加者の首が吹き飛びます(165話『BLOOD PROUD』参照)
・死の結婚指輪がカーズ、エシディシ、ワムウのうち誰の物かは次回以降の書き手さんにお任せします。
 ちなみにカーズは誰の指輪か知っています。


【支給品】

死の結婚指輪(第二部)
元は山岸由花子の支給品。

柱の男が誰かと再試合を望むとき、相手が逃げたままでいられないように埋め込む「儀式」のリング。
リングの中には毒薬が入っており、外殻が溶け出す33日以内に埋め込んだ張本人を倒して解毒剤を入手しなければ助からない。
手術などで取り出すのは(人間の外科医学では)不可能。
毒の種類はひとりひとり違うので複数埋め込まれたら全員の解毒剤を飲む必要がある。

ロワでは33日だと長すぎるため、外殻が溶け出すのは12時間後になっている。


スタンド大辞典(現実)
元は虹村億泰の支給品。

ジョジョロワ3rd参加者が参戦時点で持つスタンドの名前、能力、外見(ビジョン)が書かれている本。
ただし本体名は一切記されていないため、誰がどのスタンドを持っているかはわからない。
イメージとしてはコミックスの合間にあるスタンド紹介のページから本体名だけ消した感じ。

881 ◆LvAk1Ki9I.:2014/08/27(水) 13:54:48 ID:JcjmLTVs
以上で投下終了です。
内容の割りに長いけど、もう少し短くまとめたほうがいいんでしょうか……?

首輪の仕組みについて少し触れているため、仮投下で意見をいただきたいと思います。
支給品なども結構好き勝手に書いていますので、NG部分があれば遠慮なくご指摘ください。

それではご意見、矛盾等ありましたらよろしくお願いいたします。

882名無しさんは砕けない:2014/08/27(水) 20:46:28 ID:UQm.yBJ2
久々のカーズ様!
首輪に関してはこれから考えることですし、これでいいと思います

883名無しさんは砕けない:2014/08/27(水) 22:19:43 ID:CudHewJo
仮投下乙です。
首輪に関しては特に問題ないかと。ぶっちゃけた話「そういうスタンド能力」とかで解決できそうですし、あるいは推測が外れたってことにしてしまえばどうとでもなりますから。
(決して氏の考えを否定している訳ではないんですがね。むしろ『殺せない首輪』っておもしろいと思います)
支給品も、スタンド大辞典・・・ジョジョベラーのアレですよね?ありだと思いますw

884名無しさんは砕けない:2014/08/28(木) 08:45:21 ID:STF2zWos
仮投下乙です。
首輪に関してはカーズも最初にステージで爆破されたものとは別の首輪の可能性もあることを明言していますし、首輪についての解析3.で断りも入っているので問題ないと思います。

カーズの備考ですが、スタンド大辞典を読破した事により現時点の生き残りでティム、承太郎、DIO、吉良、宮本はスタンドと本体名が一致している事を追加しておいた方がいいかもしれません。

885名無しさんは砕けない:2014/09/01(月) 16:10:15 ID:idSR7RvI
申し訳ありません。
PC故障につき別のPCで書き込んでいます。
本投下はちょっと遅れることになりそうです。
ご意見等は反映させておきます。

886 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:38:50 ID:639ecHgM
「そんな身体じゃ辛いだろう。こいつに乗った方が楽だと思うがな」
「結構よ……あなたの気遣いなんて不快なだけだわ」
「言うねえ。だがそうやってチンタラ歩いてたんじゃいつ背後の敵に追いつかれるかわかったもんじゃないぜ。
 行く先を邪魔しようって訳じゃないんだ。『聖女』様の護衛くらいさせてくれないか」

言うなりディエゴはルーシーを抱え上げ恐竜に乗せる。実際のところルーシーにもほとんど体力は残っていなかったようで、
特に抵抗もなく乗せられると恐竜はなるたけ揺らさないように、しかし確実に速度を速め進んでゆく。
ルーシーの懐胎を確認後、二人は既に2時間近く地下をさまよい続けていた。途中目を覚ましたルーシーが恐竜から降りたため
距離的にはさほど進んだわけではないが、目的地がわかっているかの様に進むルーシーを見て、ディエゴは思考を巡らせる。

(そうと決めつけるにはまだ早いのかもしれんが……スティーブン・スティールとその背後にいる大統領は
 遺体を使って何かを企んでいる。恐らく頭部と眼球以外の部位も支給品あるいは何らかの形で会場内のどこかにあるだろう)

SBRレースは遺体を集めるために開催されたものだった。しかしあれ程大がかりかつ多数の犠牲者を出してまで集めた遺体を
今回わざわざ殺し合いの舞台を用意した上でばら撒いた理由については現時点で全く見当がつかない。

(優勝者への褒美がどんな願いでも叶う、というのも遺体のパワーを手に入れることとイコールなら、もしかしたらあながちウソとも
 言えんのかもな。まあ優勝したとたん背後からズドン! ってのが関の山だろうが)

887 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:39:58 ID:639ecHgM
一方ルーシーもただ闇雲に進んでいる訳ではなかった。内なる遺体からの『声』に導かれ、従っている。

(フィラデルフィアの時と同じ……。いいえ、思えばいつもこうだったわ。夫を助けようといくら努力しても結局は捕えられ、
 利用されるばかり。無力な私はただ流れに身を任せ、誰かに助けられてばかりだった……
 でも! 必ずチャンスは巡ってくるはず。ディエゴ・ブランドーを出し抜くチャンスは!)

マンハッタン・トリニティ教会で生首を手にディエゴを待ち受けると決めた時の気持ちを再び思いだす。
幸せになる為に、その為なら人の道を外れた所業もやり遂げてみせると誓ったあの時を。
ディエゴに捕らわれ、遺体を取り込んで……色々あったせいで気弱になりかけていたのかもしれない。
自身を奮い立たせるとディエゴに指示を送る。疲労は大きいが精神的にはすっかり気丈さを取り戻した。

「次の分かれ道を左へ、その後まっすぐ進んで頂戴」
「仰せのままに」

途中戦闘があったとおぼしき崩落した個所もあったが、脇道やがれきの隙間を縫いながらひたすら進みつづけ、
やがて突き当りからどこかの建物の地下室に辿り着いた。
どうやら教会の納骨堂のようだ。位置的にもサン・ジョルジョ・マジョーレ教会だろう。
無機物と死者だけのはずの空間で、冷ややかな空気に混じる生の証――――血の臭いがここでも戦闘があったことを示していた。
ぽつりぽつりと灯るロウソクの明かりを頼りに足音を響かせながら慎重に進む。人の気配は感じられないが……


「妊婦に恐竜とは、また変わった組み合わせだな。まったく、人と人とが引き合う引力とは面白いものだ」

888 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:41:57 ID:639ecHgM
***

いつから居たのか――――気付かなかった。
ルーシーを乗せた恐竜を後ろに下がらせると柱の影から声の主を伺う。

「そんなに警戒しなくてもいいさ……さしあたって君たちに危害を加えるつもりはない。お互い自己紹介とでもいこうじゃあないか」

10メートルほど先に背の高い男の姿が見えた。顔はこの薄明りでは見えないが、シルエットに見覚えはない。声にも聞き覚えはない。
だが、妙に穏やかで甘く、安らぎさえ感じる声だ。常人ならばそのまま油断して近づいてしまったかもしれないだろう。
だが、そんな甘さはこのディエゴには通じない。
社会的弱者だった母を、幼い自分を利用し踏みにじるようなクズ共を踏み越え社会の頂点に立ってやると決めた時から
一体どれ程の悪人と渡り合ってきたことだろう。優しさの裏には打算が、甘さの奥底にはどす黒い嘘と欲望がある。
自分を上から見下ろす者に手を伸ばしては引き裂き、奪ってきたディエゴは殆ど本能で男の本性を見抜いていた。

(こいつは! 俺を"見下ろし"  俺から"奪おうとしている"!!)

「スケアリー・モンスター! やれっ!恐竜どもよ!!」



「まぁそうカッカするなって、私は君のことを知りたいと思っているんだ。
 実は今友人も部下もみな出払っててね……話し相手になってくれると嬉しいんだが」

声はディエゴの耳元から聞こえてきた。

(な……何がおこった? コイツは確かに俺の前にいたはず……)

「もちろん、君も一緒に」
「あ……ああ……うう……」

デイエゴが振り返るとさらに後方、ルーシーを腕に収めた男の全身がようやく露わになる。
どこか自分に似た顔を持つこの男に……ディエゴは既視感や親しみよりも先に、嫌悪を感じた。

889 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:43:44 ID:639ecHgM

***


千帆の五感の内最初に戻ったのは聴覚だった。
音の羅列が勝手に耳に入ってくる。

(こ、コーイッテンでもっとイイモノつくれねぇかなぁ!? )
(だったら今殺すなよ。DIOは血も欲しがってるんだろ?)
(テメェ……人の妹分になにしてくれてんだ)

次に戻ったのは触覚。どうやら何者かの腕に抱えられているらしい。
しきりに髪や頬をいじくってくる刺激のおかげでぼんやりとだが徐々に思考も戻ってきた。
たしか荷物を整理しおえてカバンの口を閉じようとしたら急に"床下から伸びてきた腕"に捕えられ、そのまま自分ごと
壁に向かって突進して――――そこまで考えて、自分が気を失っていたことに気付いた。

残りの感覚も全て目覚め、そろそろと薄目を開けるとプロシュートの顔が視界に入ってきた。最初に見た時と同じような、
目つきだけで人を殺せそうな形相をしている。一瞬だけこちらに視線を向けて意識が戻っていることを確認すると、今度は遠くを睨み付ける。
そしてセッコの足元で何やら手足の生えた薄っぺらい物――――トランプが素早く動くのも今度こそ視界にとらえた。

「プロシュート……見つけたぜ、ティッツアの仇!」

さらり、と刃物を抜く音と共に真後ろから聞こえたのはやはり聞き覚えのない声だが、
とにかくプロシュートを殺そうとしている事はハッキリしている。

「あ? いきなり出てきやがってなんだコイツら? あとはDIOんトコ帰るだけだッつーのに訳わかんね〜なあ〜〜
 あ〜そういや甘いのも全然食ってね〜な。イイのがつくれたらDIOは褒めてくれるよな〜もしかしたらご褒美くれっかな?
 3個? いや5個とか? ひっひ!」

何の脈絡もない興奮気味な独り言にどう反応したらいいのかわからなかったが、とにかくこの全身スーツの男はプロシュートととも
刀の男とも面識がないらしい。一通り状況の把握はできたが、身動きの取れない千帆にはそれ以上どうする事もできない。
頼みの銃はポケットにしまってあるが、この状態では取り出せそうにもない。せめてスーツ男を刺激しないように
気絶したふりを続けるが、文字通りお荷物になってしまった自分が情けなくて、無意識に千帆の顔が歪んでゆく。

(生き残るために戦うって言ったのに……このまま何もできずに殺されて終わるの?)

諦めさえよぎった千帆の頭の中に唐突に、声が響いた。

『作品の主人公はこの状況でいったいどんな行動が可能だろうか?』

890 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:45:00 ID:639ecHgM

***


『一人は味方で二人はそれぞれ別の敵。主人公は敵の内一人に捕えられてしまい、自分を中心にそれぞれにらみ合った
三すくみの状態だ。更にそれぞれ武器や超能力が使えるが、主人公だけは何の力もない。この状況で、主人公にできることは?』

・味方が助けてくれるのを信じてじっと動かない。
・必死に抵抗を試みる。
・恐怖で何もできず、ただ震えている。あるいはパニックを起こす。
・突如何らかの能力に目覚め、敵を倒してしまう。

咄嗟に考えついたパターンとその結果を頭の中で何通りもシュミレーションしてみるがどうにも上手くいかない。
もともと戦闘を主体としたアクション小説は千帆の分野ではないのだ。
千帆が書いているものはもっと人と人が対話し、触れ合いながら心の距離を測っていくような恋愛小説だったり
夢あふれる児童向けファンタジーなのだから。

(発想を変えなきゃ。私の小説の主人公はそもそも戦ったりしないもの。主人公に、私にできるのは……)

思考のスピードを上げる。
自分を捕えた全身スーツの男。どうやらこの男の自分に対する扱いは一般的に男が女にするものではないような気がする。
むしろ虫やカエルを手にした男の子が、どうやってコイツで遊んでやろうかとワクワクしながら撫でまわす感覚が一番近いと
言えるだろう。そんな、原始的かつ純真な残酷さを千帆はセッコに対して見い出した。
しかし、逆に考えればその子供のような性格は上手くすれば利用できるのでは?

(そういえば私の事を何かを作るための材料だって言ってた。イイのができたらDIOにご褒美を貰えるかもって……)

作品。ご褒美。甘いもの。DIOに従う残酷で純真な男。情報を余さず考察することでついに千帆は一つの仮説に辿り着く。
そして賭けに出る事にした。できるだけ刺激しないように、けれど対等以上になるように。優しい笑顔で語りかける。

891 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:46:44 ID:639ecHgM

「あの、甘いの……好きなんですよね?」
「うおっ起きた。ってか何でオレが甘いの好きだって知ってんだよ?」

興奮状態のセッコは案の定自分で言った事だと気付かない。

「私、持ってます。チョコレートとかじゃないけど……角砂糖ならたくさんありました。糖分は貴重なので近くに隠したんですけど」
「角砂糖!?」

角砂糖と聞いて目に喜色が浮かぶ。どうやら当たりを引いたようだ。

「みみみ3つ? 3つよりたくさんか? 投げてくれんのか?」
「たくさんですよ。それにそこにいるスーツの人は私より上手く投げられます」
「うへーっ! お、オレ5個でも口でキャッチできるんだぜーっ!!」
「それは凄い特技ですね。よかったら作品と一緒にその技をDIOさんにも見せてあげましょうよ。あ、でも先にこの状況を
 何とかしないといけないですよね。後ろの武器を持った人が私達を殺そうとしているから……もし倒してくれるなら、
 後で角砂糖を持ってきてあげます」
「お前DIOのことも知ってんのかよ! 作品もだけどオレの特技もDIOなら褒めてくれるよなぁ〜〜絶対ィイ!
 ようし、じゃあアイツすぐぶっ殺してくるからここで待ってろよお前……え〜と? 」
「双葉千帆です。あなたは?」
「セッコ」
「じゃあここは任せましたよセッコさん」
「りょーウかーいチホっ!!」

千帆を解放すると勢いをつけて地中に飛び込むセッコ。
こうして三つ巴からセッコ対スクアーロに構図が変わった。否、千帆が変えたのだ。

現時点でセッコはDIOを『自分に色々教えてくれて褒めてくれる、一番大好きなヤツ』と認識している。
ただしそれはイコール『DIO以外の者には全く興味が無い』という訳ではない。程度こそあれ自分にとって心地よい物を
提供してくれる人物にはそれなりに好意的になる。すなわち自分に目的を与え、評価し、褒めてくれる人物だ。

892 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:47:43 ID:639ecHgM
千帆はまずご褒美という単語からDIOという人物とセッコの関係性を考察した。恐らくDIOはセッコに命令ないし目的を与え、
セッコはそれを素直に遂行することで褒美を受け取り喜ぶ。一見不可解で異常な関係のようだが、無邪気な猛獣とその飼い主。
あるいは調教師とでも置き換えれば問題ない。
そこでまず角砂糖という具体的な褒美を鼻先に用意してセッコの興味を引き、乗ってきたところでDIOの名を出した。
信頼している人物の名をいきなり出された(と思っている)セッコは千帆をDIOの知り合い、あるいはDIOに同調している者とでも
位置づけたのだろう。千帆自身にはカリスマや圧倒的な力こそ無いが、少なくとも名前を聞いておこうという位にはセッコに
興味を持たれたのだ。ここまでくればもう千帆の言葉を疑うことはない。
自分たちの邪魔をする敵がいるのだと口にするだけでセッコは『自主的に』敵を排除しに行ってくれる。
全くの偶然だが、セッコがこの舞台に飛ばされてからまだ一度も角砂糖を口にしていない事も後押ししていた。
こうして運をも味方につけ、一時的にではあるが千帆はセッコを掌握することに成功したのだ。


***


琢馬は内心苛立っていた。

「はいDIO様、何でしょうか……はい、はい……」

戦いは既に始まっているらしく、音こそ聞こえてくるが直接状況を確認できないもどかしさに加え、状況を把握できる能力を持つ
ムーロロはまたDIOから通信が入ったらしくこっちには目もくれない。
千帆が殺されるのだけは阻止したいが、いざ戦うとなっても絡め手の通用しない純粋な戦闘向けのスタンドに対抗できる自信は無い。
よしんば助け出せたとしてもその後が問題だ。自分に興味を持っているというDIOから逃げ切れるだろうか。
だがそれでも、千帆だけは……
決断を迫られた琢馬の耳が異変を感じた。ムーロロの声が段々低くなり、歯切れの悪そうな口調に変わってゆく。
通信が終わったら今度は急いで外の様子を探らせている。小さくチッ、っと舌打ちしたのが刻まれたのを確認すると一旦本を仕舞い
何かあったのか、と問いかけた。

893 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:49:22 ID:639ecHgM

ムーロロは内心焦っていた。

セッコとスクアーロ、二人に気付かれぬようトランプを引っ込めたところにDIOからの通信だ。
指令を聞き終えてから急いで外を確認すると、状況はムーロロにも意外な方向に展開していた。
何かあったのか、と問われてはじめて自分が舌打ちをしたことに気付き、ばつが悪そうに琢馬に説明する。

「DIOからセッコを探して回収、のち至急帰還するようにとの命令だ。だがどういう訳かスクアーロは復讐相手を放っぽって
 たまたま居合わせたセッコとドンパチやりはじめた。ひどい偶然もあったもんだぜ。さてどうしたもんか……」

半分は嘘だ。DIOからの命令の内容自体は本当だが、セッコとスクアーロを前情報なしに出会わせたのは自分なのだから。
三人の内誰が死んでも問題はなかったが、このままプロシュートに逃げられ誰も死ななかった場合、まずい事になる。もちろんスクアーロの事だ。
仮に仲裁に成功し二人と合流したとして、ムーロロにここまで誘導されてきた事をスクアーロの前でセッコが口にしたらどうなるか。
自分の仇討ちを邪魔されたと知ったら形ばかりの協力関係も崩れてしまうだろう。タイミングによってはDIOからの信頼にも
響きかねないし、最悪スクアーロに襲われる危険もある。ここで誰かが死ななくては大きな火種を抱えてしまうだろう……
セッコが死ねば口封じができるがDIOの命令を遂行できず不興を買うかもしれない。
プロシュートが死ねばスクアーロは満足する。セッコがしゃべる前に別れても問題ない。
スクアーロが死ねばDIOの命令は遂行できる。プロシュートは放置しても問題ない。さてどうしたもんか……
そんな自分の心中を図ってか、琢馬が一瞬ニヤリと笑ったような気がした。 気がしただけだし、実際には二人とも無表情なのだが。

「ムーロロ、取引をしたい」
「……条件次第だがな」

非常に気に入らない展開ではあるが、ムーロロは琢馬の土俵に上がることにした。


***

894 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:50:48 ID:639ecHgM


(やってくれたな……!)

まさか口先の駆け引きだけで敵を味方にしてしまうとは。それもセッコという異常者を相手にこの状況でやってのけた
千帆の胆力にプロシュートは内心舌を巻く。
戦う力が皆無に加えて芯こそあれど根っこは甘ちゃんかつ夢見る少女だと思ってばかりいたのに、蓋を開けてみれば
不意打ちで捕えられてもパニックを起こさず、あまつさえ敵を観察、分析し言葉のみで自分に都合よく動くよう誘導する。
冷静さや思考力、判断力に加えてある種の非情さや冷酷さも無ければできない行動だ。
どうみても平凡な人生しか送ってこなかっただろう少女が一体何故?と思うと同時に、彼女が連れ去られたことに
激高しておきながら助け出す算段が未だ整っていなかった自分を恥じる。これではまるで立場が逆だ。
だが以前危機的状況な事に変わりはない。ひとまず無駄な思考を頭の隅に追いやるとセッコ達から距離を取り、気になっていた件を確認する。

「プロシュートさん! 私……」
「よくやった千帆。このまま急いで撤退したいところだが、ここは慎重にいかなきゃならねぇ。なにせ『五人目』が近くに
 潜んでやがるかもしれねえからな」
「はい。気が付いたら消えてましたけど、あのトランプはセッコさんに私の事を殺すなと指示していました。仲間なのは間違いないと
 思います、私達が逃げたと知ったらすぐ追いかけてくるかも」
「だろうな。セッコ、DIO、トランプのスタンド使いと合わせて最低でも三人以上のチームだ。偵察能力のある奴に目を付けられた以上
 無暗に逃げ回るのは危険だが、とにかく準備はするぞ。俺はバイクを持ってくる。お前も荷物を持ったらここで待ってろ、セッコの視界から消えたら怪しまれるからな」

プロシュートに続いて千帆も素早く民家に入ると、コーヒーを入れる際に見つけていた角砂糖の袋を取り出しカバンに詰める。
セッコに嘘は言っていない。もし自分たちを追ってきたらこれを使って宥めるつもりだ。
最後に床に落ちていた万年筆を拾い上げたとき、不遜な漫画家の顔が浮かぶ。
今となっては彼がこの舞台でどう行動し、どのような最期を遂げたのかを知っているのは千帆だけとなってしまった。
何となく身に着けておきたくなって、彼からの手紙もポケットにしまいこむ。

(露伴先生、ありがとうございます……)


「オイ、双葉千帆!」
「えっ?」
「こっちダ、コッチ!」

895 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:51:57 ID:639ecHgM

***


ムーロロとの取引が成立し亀の外に出た琢馬はまずスクアーロとセッコの戦いを避け、近くの通りに移動した。
そのまま待機しているとトランプに先導された千帆がやって来る。最後に見たのと同じ格好で、どこもケガはしていないようだ。
最悪の事態が回避されたことに安堵すると同時に、自分がこんなにも千帆に執着していたのかと驚きもした。
千帆も大体同じような心境なのだろう。表情から安堵と戸惑いが感じられる。
第一声は何がいいか、思考が浮かんでは消えてゆくが結局口にしたのは極めて事務的な言葉だけだった。

「俺は向こうで戦っているヤツの仲間と行動を共にしている。ひとまずお前の安全は保障されるよう話を付けたから一緒に来い」
「一緒に……でも、プロシュートさんが」
「悪いがお前だけだ。こっちに火の粉が飛んでくる前に行くぞ」

強引に腕を引っ張ったので千帆のバッグが地面に落ちたが、構わず足を進める。
が、きっかり10歩目を踏んだ時、炸裂音と共に足元が小さく爆ぜた。

「必死こいてナンパ中のところ水を差して悪ぃが、そのまま動くな。質問に答えてもらおうか」

振り向くとバイクにまたがった男が硝煙を上げる銃を構えていた。
距離はおよそ6メートル。『本』の射程にはまるきり足りないが、ミスタの時と同じように付け入る隙があるかもしれない。
とりあえず銃を降ろしてもらうためにも琢馬は先に自分の立場を表明した。

「プロシュートだな、俺は蓮見琢馬。誤解の無いように一応言っておこう、千帆から聞いてるかもしれんが俺たちは兄妹だ。
 今まで妹を保護してくれて感謝する。今後の事だが、あいにく俺の同行者は……この近くにいるんだが、あんたと行動することを
 望んでいない。礼代わりにここは俺がとりなしておくから、このまま――――」

喋りながら念の為隠し持ってきた銃を確認しようと自然を装って右手を動かしかけたところ、プロシュートは無言で二発目の弾丸を
撃ちこんできた。一瞬の冷たさの後に指先に燃え盛る様な痛みが襲ってきて、苦痛のあまり喉から押し出されるような声が漏れる。

「俺は手を動かせとは言っていない、口だけ動かしてりゃいいんだ。 いいか? 質問は二つある。
 『お前はトランプのスタンド使いか?』 『お前の同行者がトランプのスタンド使いなのか?』
 ひとつの質問には一言で答えろ。答えなければ三秒ごとに一発づつ弾丸を撃ち込む。デートに行きたきゃとっとと答えろ」
「プロシュートさん!」

896 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:53:04 ID:639ecHgM

千帆が抗議の声を上げるが、プロシュートが本気だと解っているのだろう、射線にまでは割り込んでこない。
この男はスクアーロと同類だと琢馬は理解した。スタンドがどうのこうのではなく、殺人にも拷問にも一切の躊躇がない人間に
対して琢馬はただの弱者でしかないのだ。小細工も考える隙も与えられない今、琢馬は素直に従うしかないと判断した。

「一つ目の答えはノーだ。二つ目は……イエス」
「なるほど。じゃあ最後の質問だ。千帆、お前はこいつと行くのか?」

琢馬の方を向いたままプロシュートは千帆に問いかける。

「俺は今ここにいる全員を相手にするつもりはない。さっき言った通り撤退させてもらう。俺と行くかこいつと行くか、
 自分の行き先は自分で決めろ」
「…………」

千帆はただ無言で立ち尽くしていた。
数秒の沈黙の後にそうか、と一言だけつぶやくとプロシュートは琢馬の横をすりぬけ、走り去っていった。

***

「千帆」

呼びかけても返事はない。

「早く来い、千帆。あまり待たせるな」
「先ぱ……に、いさん」
「……全部知っているんだな、父親から聞いたのか」

千帆が無言でうなずく。
想定はしていたが、千帆と自分にはほぼ時間差は無かったようだ。自分が図書館に行くまでの間に父親から真実を
聞かされたのだとしたら、丁度辻褄も合う。

897 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 01:55:18 ID:639ecHgM

「……私……」

血の気の無い顔でこちらを見つめてくる。
何故そんな顔をする。まさか俺がお前を殺すとでも疑っているのか?
いやわかってる。恋人だと思っていた男が実の兄で、父親に復讐するために自分に近づいたのだと知ってしまったのだ。
真実を知った自分にも危害を加えないか警戒するのは当然の反応じゃないか。
それでもお前はここにいる。あの男より俺を選んだのだから。話したいことも山ほどあるだろうが、邪魔が入らないところで
決着を付けるくらいの時間はあるさ。ああわかってる、全ては俺が仕組んだ事だ。だからもう見せるな。
お前の目は―――俺の―――を――――――――

そう、その時琢馬は確かに動揺していた。だから迫ってきたエンジン音を自分でも馬鹿げたことに、迫り来る運命の音だと思ったのだ。
『お前に未来などあるものか』と嘯きながら呪われた血の運命が背後から手を伸ばしてきたのだと。
だから琢馬は振り返る。運命などに追いつかれてたまるものか、自分はこれから未来へと進むのだから!

「っぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

運命の輪はバイクの車輪だった。プロシュートが猛スピードで突っ込んできたのだ!

「「  千帆!!  」」

琢馬とプロシュート、同時に手が差し出される。
千帆は手を伸ばし――――


***

898 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:02:33 ID:639ecHgM


一方、スクアーロとセッコの戦いも続いていた。

地中から首を出したセッコが遠距離から高速で噴き出した泥が矢となってスクアーロを襲う。
大半はアヌビス神の刀で叩き落されてはいるが何本かはスクアーロの体をかすめ、少しづつだがダメージを負わせていく。
だが直接攻撃を仕掛けて決着をつけたくとも、アヌビス神が真っ二つに切り裂こうと待ち構えているため容易には近づけない。
スクアーロも同様だ。自身のスタンド『クラッシュ』を喉元に食い込ませたいところだが、泥は移動手段として認識されない為
当たりを付けた地面をアヌビス神でモグラ叩きの様に切り裂くことしかできない。それでもパターンを繰り返すうちにセッコの動きを
予測して何発か当てることはできた。
この互いに決め手を欠いたままの膠着状態を崩したのも、また千帆だった。

「あ―――っっ!! チホ――――!!!」
「っ、プロシュートの野郎!!」

バイクの音に気付いて顔を向けると、丁度プロシュートが女と逃げるところだった。
セッコは悲鳴を上げてスクアーロとの戦いを放り出すとすぐさまバイクを追って通りの角を曲がり消えていく。
スクアーロは呆然とその光景を見送るとやがて力の限りアヌビス神を地面に叩きつけた。
最悪だ。せっかく見つけた仇には逃げられ、自分は無駄に傷を負った。
いつの間にかスペードのエースが一枚足元に寄ってきて、ムーロロが声をかけてくる。

「まぁ落ち着けよスクアーロ、確かに奴らは逃げちまったが行き先はわかってるさ。また追えばいい。それよりDIOから
 緊急の指令が入ったんだ。とりあえずこっちに戻ってこいよ」

人の気も知らず何を呑気な事を。だが引き続きこいつのサポートが必要なのも事実。浮かんだ悪態をぐっとこらえると
荷物の方へと戻る。いつの間にかバッグから抜け出していた亀の傍に琢馬が俯いて立っていた。右手から大量に出血している。
あちらにも事情があるようだが、声を掛けてやるような仲でもない。無視して亀を拾おうとしたスクアーロの目に、甲羅を覆うようにして紙が貼ってあるのが見えた。
『古本を破いたようなページ』の文字の羅列が目に入った瞬間――――

899 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:03:48 ID:639ecHgM


「ゴホッ……が……あ!?」

急に激しい悪寒と頭痛、筋肉痛がスクアーロを襲った。体中を激しい高熱で包まれ意識が朦朧としてくる。
精神力だけで何とか立ち続けようとするも、あまりに急激な体調の変化に体がついて行かず、ついに咳き込みながら膝をつくと
地面に倒れ込んだ。眼前にトランプがやって来る。

「まぁお互い契約はきっちり果たしたからな。哀れ復讐相手に返り討ちにあったとしても、俺のあずかり知らぬところよ」
「千帆があいつと一緒に行動するならお前は今始末しておかなけりゃならない。復讐の為なら無関係な人間も見境なく殺せるお前は危険だ」

スペードのエースは不運と死の象徴。嵌められたのだと気付いた時には既に手遅れだった。
琢馬がアヌビス神を拾い上げると無造作に背中を一突きする。心臓を貫かれ、間もなくスクアーロは絶命した。


【スクアーロ  死亡】
【残り 36人】

***

900 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:06:11 ID:639ecHgM


「終わったか。こっちも連れ戻してきたぜ」

スクアーロの死亡を確認後、紙を剥がすとムーロロが亀から出てきた。遅れてセッコが騒々しくわめきながらやって来る。

「うおっ、おっ、チ、チホが逃げちまったじゃあねーかクソ!! 角砂糖くれるって言ったのに許せねーぜあの嘘つき女!殺す!殺すコロス殺す!!」
「おーいセッコよ、これでも食って一息つかねーか」

ムーロロが琢馬の持つ千帆のバッグを奪うと中から白い塊を取り出しひとつ投げる。
地団太を踏んでそこら中を殴りまわっていたセッコが反射的にぴょんと跳躍し、見事に口でキャッチした。

「あり? これ角砂糖じゃねーかよ!!」
「俺が双葉千帆から預かっといたんだぜ。お前がいつまでもスクアーロを倒せないもんだから先に行くってよ。それでもちゃんと
 角砂糖用意してくれたし良い子じゃねーか。どうせ殺す予定じゃなかったんだし、もう放っといてもいいんじゃねーか?」
「うああ、おっうおっ、おお――ッ!」
「何、もっとか? お前ひょっとして角砂糖くれれば誰でもいいのかよ……」

ひとしきり角砂糖を投げて遊んでやるとセッコは実に大人しくなってくれた。
ムーロロがなだめすかしてくれた効果で、ひとまずセッコの中で千帆は良い奴という事にもなったようだ。もっともあの頭で
きちんと記憶し続けられるかどうかは非常に疑わしいが。

「しかしお前の能力はよくわからんな。『雑誌』の一ページを目に入れただけで行動不能になるとか。どうなってんだ?」
「俺の能力は取引に入っていない。余計な詮索はよせ」
「へいへい。んじゃ改めて一緒に来てもらうぜ。取引不成立とか言うなよ『お兄ちゃん』?」
「言わない。取引は完了した」

こちらに放り投げられたバッグを拾うと、びっしりと書き込まれた紙が数枚こぼれ落ちた。

901 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:07:54 ID:639ecHgM


『ムーロロにとって不要な人物の始末に協力する代わりに、千帆の確保に協力してもらう』
これが二人の間で交わされた取引だった。
ムーロロとスクアーロが共にDIOの命令に従うだけの、ドライな関係だとは最初から分かっていた。
DIOに従う理由も単に生き残る為で忠義心などない。ならば殺せるときに殺すチャンスがあれば乗って来るだろうと琢馬は踏んだ。
琢馬としては誰でも良かったが、やむを得ず千帆との関係を明かしたことで結局ムーロロはスクアーロを指名し、その上
千帆も一緒にDIOの元に連れて行くことを要求してきた。どのみちムーロロの追跡から逃れることは難しかったため、これを了承。
庭の本から破ったページの上から『本』のページを工作セットに入っていたセロテープでくっつけて亀の甲羅に貼り付ける。
後はムーロロがスクアーロを亀まで誘導してくれれば勝手に倒れてくれるという算段だ。
自分の能力の本質を知られる危険を冒しはしたが、まだ『本』自体は見られていないし、『記憶』を武器にしている事もバレてはいない様だ。

琢馬は、紙束を読みもせず見つめていた。
小説というよりも走り書きのメモにはところどころ水滴が乾いた皺があり、どんな顔で書いたのか容易に想像がつく。
こんな所でも千帆は書いている。この先も書き続けるに違いない。
それ程に千帆にとって小説を書くという行為は支えであり、書き続ける限りきっとこの困難の中でも前を向いて歩んでいくのだろう。
自分には復讐がそれだ。いや、それ『だった』。
人生と共にあった目標を失った今、会って決着を付けることで何かが変わるかもしれないと思い探し求めた妹は
しかし自分との会話を拒み、自分を置いて去っていった。
あの瞬間感じた安堵と後悔が徐々に琢馬を苛んでゆく。原因は『本』など見なくてもわかる、自分こそが逃げたのだ。

永遠の別れと思ってペンダントをかけてやったあの時、彼女に自分の復讐に生きた人生全てを読ませたいと思った。
記憶や感情を植え付ける前と後ででどう変わるのか、その時はただの想像だったが、
自分の行いとその意味を知ったごく普通の少女は図らずも想像通り、いや想像を超えて変わってしまっていた。
折れそうなほど細い体と愛らしい顔立ちはそのままに、どこまでも深い闇を、いや深淵を抱えてしまった彼女の
冬の夜空の様に暗く澄み切った瞳に見つめられた琢馬は恐怖し、もっと伸ばせたはずの手を止めてしまったのだ。

902 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:09:59 ID:639ecHgM


元の世界での織笠花恵の殺害は復讐の過程でしかなかった。
この世界で老人やエリザベス、スクアーロを殺害し、ミスタやミキタカを襲ったことも自分が生き残るための手段でしかなく、
そこには罪悪感も無ければ達成感もなかった。
だが千帆にしてきた事は、その結果千帆を変えてしまった事は、

――――――――罪だ。

なぜか自宅に貼ってあるポストカードに印刷されていた緑色の草原の情景が脳裏に浮かび、消える。
いつか行きたいと思っていたあの場所が、今の琢馬には決して辿り着くことのできない楽園のように思えた。


***


「ここ……スペイン広場、ですよね。階段もあるし。テレビで見たことあります」
「観光地としちゃ定番中の定番だからな。 するとここはB-5、いやC−5か。結構北に来ちまったな」

噴水の脇にバイクを置いて、階段を中央付近まで上がる。普段は観光客で埋め尽くされている空間に今は二人きりだ。
これが二時間映画のカップルならジェラートでも食べるとこだが、あいにくそんな場合ではない。そもそもヘップバーンの時代と違って
現在この場所は飲食禁止なのだから。
敵を振り切ってここまで逃げてきたはいいが、トランプのスタンド使いがいる限り再び追ってこないとも限らない。かといって闇雲に
バイクを走らせて燃料と精神力を消耗させるのも得策ではない。丁度襲撃に対応しやすい開けた空間でもあった為、二人は休憩を
取ることにした。プロシュートは警戒を続けながらも踊り場に腰を下ろして一息つく。

903 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:12:24 ID:639ecHgM


「お前の荷物……置いてきちまったな」
「はい。でも大事なものは持ってきましたから……」

千帆は万年筆を握りしめたまま俯いている。そのまま何となく居心地の悪い沈黙が続いた。

なぜ俺の手を取った、とは聞かない。
きっと本人にもわからないだろうし、わざわざ今の千帆の心を乱してやる事もないからだ。
それに――――『なぜ、戻ってきたんですか』と聞かれたくもなかった。理由はプロシュート自身にもわからないし、
深く考えたくもなかったから。

「たぶん、怖かったんです」

ぽつりと千帆の口が動く。

「もしかしたら兄さんが、私の知らない人になってるんじゃないかって。真実を知る以前の私と今の私がまったく
 違ってしまったように……それが怖くて、無意識に考える事から逃げてました」

千帆から聞き出したのは家族を含む知人の名前数名と簡単な関係性くらいだ。
兄だという蓮見琢馬の名を口にした時に苗字の違いから、ありふれている程度に訳ありの関係だとは思っていたが、やはり何かあったようだ。

「やっと会えたのに、結局何の覚悟もできてなくて、何も話せなくて……プロシュートさんを逃げ場にしちゃいました。
 兄さんは手を―――っ、伸ばしてくれたのに!」
「言ったはずだ。逃げが間違いだっていうのは『間違い』だってな」

悲しみと悔しさを滲ませる千帆にプロシュートもまた静かに口を開く。

「お前の兄貴と過去のお前にどういう事情があったか知らんが、お前も聞いてただろう。
 少なくとも奴の同行者であるトランプ野郎はあのセッコと行動を共にしている。DIOとかいう奴とも繋がっているはずだ。
 もしあのままついて行ったとしてもお前の命がどこまで保証されるかはわからん。そんなつもりじゃなかっただろうが、
 確実に自分の身を守ることを最優先とすればお前がとった行動は間違いじゃねえ」
「……」
「何よりお前には小説を書くって目標があるんだろ」

はっとした千帆と目が合う。

904 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:13:55 ID:639ecHgM


「いいか千帆、目先の出来事に囚われて目的を見失うな。
 物事には優先順位をつけろ、何が何でも成し遂げたいことがあるなら尚更だ。どの道切り捨てることのできないお前だしな。
 殺したくない、けど死にたくないなら逃げたって良いんだ。逃げて、また機会を待てばいい」

任務のため、仲間のため、自分のため。優先したものはその時々だったが、プロシュートは時に色々なものを切り捨てる事で今まで生き延びてきた。
だが千帆はそうじゃない。むしろ切り捨てる事をしないからこそ開ける道があるのではないか。
結果論でも、誰も殺すことなく危機を乗り切るという自分にできない事をやってのけた千帆を見て、そう思い始めていた。

「ついでに言っとくと、お前がセッコを味方につけなけりゃ俺一人でさっきの戦闘を切り抜けることは難しかった。
 所詮は周り中から愛されて何不自由なく暮らしてきたお嬢さんだと、お前のことをずいぶん過小評価していた。悪かったな」
「なんかそう褒められると恥ずかしいんですけど……でも、私はプロシュートさんが思ってるほどきれいな人間じゃないですよ」
「そりゃ人間だからな。生きてれば何かしらの罪くらい犯すだろう」
「……ここに連れてこられたのは父を殺そうと決めて包丁を手に取った時でした。私には優しい父でしたが、兄さんにとっては
 自分の人生を根こそぎ狂わせた悪魔だったんです。きっと真実を知った私に殺させるまでが兄さんの復讐だったんでしょうけど、
 何より私自身が父を許せなかった。覆しようのない殺意を持ったんです。未遂でしたけど、精神的には私は殺人者です。
 あと、琢馬兄さん……兄さん、だけど……恋人だったんです。私のすべてを捧げた大事な男性だったんです」

親友に恋した相手をこっそり打ち明ける様に、はにかんだ笑顔で千帆は罪を告白した。

「千帆…………」

905 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:16:23 ID:639ecHgM


衝撃だった。
カトリック・キリスト教の総本山をいただくイタリアに生まれ育ったプロシュートは自身の信仰心はともかく、それがどれ程の重罪かは十分承知している。
裏社会に生き、神をも恐れぬ所業を散々見てきたからこそ、平和な国に生まれた千帆の罪は二、三日家出をしただとか
家族や友人とケンカして傷つけただとかいった千帆らしい、ささやかで愛に満ちた罪なんだろうと思った。そう思いたかったのかもしれない。
しかしそれでもやはりこちらを向いた千帆の瞳は変わらず、いや、より一層輝いている。
殺し合いという舞台の上で自身の運命を弄ばれながら、それでも決然として前を向く。なぜスタンドも持たない無力な少女から
こんなにも美しく凄絶な凄味を感じたのか。なぜ同じように神に背く罪を犯しながら自分と千帆は違うのか。
自然に、ごく自然にプロシュートは心で理解した。
罪を犯し、罪を受け入れ、罪を背負う。その一方で他者の罪すら受け入れ、許し、慈愛を注ぐ。自分を汚し堕としめた男ですら
苦しみながらも受け入れようとする。確かそういう聖女がいたような気がする。

恥ずかしいのか早足で階段を駆け下りる千帆に上からプロシュートが呼びかける。

「『覚悟』を決めたぜ」
「?」
「お前はお前の行きたい所へ行け、俺はお前と共に行く。もう隠し事もなしだ。スタンドについても教えてやるし、もちろん
 敵に遭遇したら一緒に戦う。見捨てたりはしねぇ。俺の勘が、お前について行くのが最善だと言ってるからな」

千帆を追い越して階段を降りる。すれ違う千帆の顔は実にぽかんとしたものだったが、すぐにはっきりとした声が降ってきた。

「私、もっと人に会いたいです。このゲームを壊そうと頑張ってる人、殺人を楽しんでる人、とにかく生き残りたい人、
 色んな人と話をして、まとめて、小説にします。ここで起こったことが誰の記憶から消えてしまっても、小説という形で残るように―――
 やっぱり私にはこれしかないですから。
 そして、その過程でもしまた兄さんと会えたなら、その時はちゃんと話します。兄さんがどんな人であっても、たとえ敵になったとしても
 話せる相手から逃げる事だけはもう絶対にしません」
「そう決めたんならそれでいい。もしお前がやっぱりビビって一歩を踏み出せなくなっちまったら、俺がお前の背中を
 蹴り飛ばしてやるさ。何ならまた兄貴の手でも足でも弾ぶち込んで、逃げられねぇ様にしてやってもいいぜ」

906 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:18:14 ID:639ecHgM


最後の言い方がツボに入ったらしく、ぷっと吹き出す千帆につられてプロシュートも口を開けて笑った。
こんな表情をしたのはもういつ振りになるだろうか。

千帆が『持っているヤツ』な限りそばに置いておこうと思っていた。
『持っていないヤツ』になった時は切り捨てればいいと。
だが、それすらもうプロシュートには出来ない。二人は本当の意味で『仲間』になったのだから。

「行こうぜ、千帆」

プロシュートが差し出した手にぎこちなく千帆の手が重なる。
もしもその場に観客がいたとすれば、信仰心を持った者が見たのなら、その一瞬について後にこう語ったかもしれない。

『まるで聖女の祝福を受ける戦士の様にも見えた』とーーーー


【C-5 スペイン階段/1日目 午後】

【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:ダメージ・疲労はほぼ全回復、覚悟完了。
[装備]:ベレッタM92(13/15、予備弾薬 30/60)
[道具]:基本支給品(水×3)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
0. 双葉千帆と共に行動する。
1.とりあえず千帆の希望通り人を探す。
2.この世界について、少しでも情報が欲しい
3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する
※千帆にスタンドの知識と自分の情報(パッショーネ、護衛、暗殺チームの人間について)道すがら話す予定です。

双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:健康、強い決意
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:露伴の手紙
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く
1.プロシュートと共に行動。人と会って話をしたい
2.川尻しのぶに会い、早人の最期を伝える
3.次に琢馬兄さんに会えたらちゃんと話をする
4.露伴の分まで、小説を書く

907 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:20:54 ID:639ecHgM

***

ジョルノとの会談に使ったのとは別の小部屋でDIOが椅子に腰かけている。
少し離れてディエゴとルーシーもそれぞれ距離を置いて座っている。
ルーシーの呼吸は安定している。腹の大きさから臨月くらいだろうが、生まれる気配はまだ無い。

「遺体の部位は全部で十。内二つ、右眼球と頭部がここにある」
「ああ、こいつを取り込んでいる間は自分のスタンドの他に発現する能力がある」
「未知なる能力か……ムーロロが戻ってきたら私も試してみる事にするよ。先程の報告ではさっそく支給品をいくつか開けたところ脊椎、右腕が出てきたそうだ。
 銃で撃たれた者がいたんだが、右腕が彼に取り込まれた途端に千切れかけの指が二本完治した。これはいわゆる奇跡という部類に入る。君の言う通り『聖なる』遺体だな」
「そんなに支給品をため込んでるヤツがいたとはな。良い手駒をお持ちのようだ」
「どうも。君たちと手を組めたことも嬉しく思っているよ」
「言っておくがこれはビジネスだ。遺体を全て揃えるまでのな。その後は好きにさせてもらう」
「お好きに」

ブラフォードを置いてきた今、ロクに動けないルーシーを抱えたままDIOと敵対するのは非常に危険だとディエゴは判断した。
ジョニィやジャイロいったレース参加者がいる以上、再び争奪戦が始まる前にDIOの部下を使って遺体を集めるのが先決と
一時手を組むことにしたのだ。内心腹の底までDIOへの嫌悪で一杯ではあるが、その感情をぐっと押し込んだまま損得だけで
動ける程度にはディエゴはクレバーな思考ができる男なのだ。

一方DIOは思索にふける。

(聖なる遺体……このDIOが天国へと向かうための新たなパーツかもしれん。興味が沸いてきた。このルーシーという女もな)

遺体を『懐胎したかのように』取り込んだルーシーに、DIOはより強い興味を示した。
母親、エリナ・ペンドルトン、空条ホリィ。
いつでも自身の人生を邪魔してきた聖なる女がまたひとり増えた。
だが今回は少し違う。ディエゴから聞いたルーシー・『スティール』の名と、主催者との婚姻関係も多少面白いとは思ったが、
それ以上に彼女の目に母親やエリナと同じ輝きと混じって決定的な異質さを感じ取ったからだ。

908 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:21:50 ID:639ecHgM

(聖女……聖なる者として信仰を受ける女の事だ。
 最も有名な聖女である神の子の母マリアは純潔を守ったまま出産したことから、「清らかさ」の象徴といわれている。
 しかし、一説には娼婦であり、罪を犯したと言われるマグダラのマリアもまた神の子の復活を目撃した聖女だ。
 聖女の条件とは何か。純潔であることか? 処女懐胎をはじめ奇跡を起こすことか?いや違う。)

「ミセス、体調はどうかね」
「あなたたちさえいなければいつだって最高よ」
「いいね、実にいい。本当はこのまま側に置いておきたいところだが、私はこの後来客があるかもしれん。
 そうなったらこの崩れかけた教会は君には少しばかり危険だ。もう間もなくだろうが、部下が戻りしだいトンネルを掘って
 近くのわが屋敷に移動してもらうことになるだろう。聖女に納骨堂は失礼だからな。寝心地の良いベッドで出産に備えたまえ」
「聖女だなんて言わないで頂戴。後悔なんてしてないけど私は罪を犯したわ、おぞましく深い……罪よ」
「いいや君は聖女だ。人類はすべからく原罪を背負っている。罪の有無は君から聖者の資格を奪いはしない。
 それに罪は深ければ深いほど……このDIOにふさわしい」

(聖なるもの、聖女とは、『導くもの』なのかもしれない。困難な運命に立ち向かう者に進むべき道を指し示す。
 この罪深い少女はきっと自分を天国へと導き、押し上げてくれるだろう。)
(全てそろった遺体は所有者に『吉良なるもの』だけを集める……最終的に私の元に遺体が集まった時がチャンスよ。
 必ず幸福になってみせる……!)

DIOの手がルーシーの頬をゆっくりと滑ってゆく。
おぞましいその手を払う代わりにルーシーはDIOを真っ直ぐに見つめ返す。
その様子をディエゴは観客にでもなった様に冷めた目で見ていた。
信仰心など持ち合わせていないが、見るヤツが見たらこう言うだろうなと想像する。

『まるで神の祝福を受ける聖女の様にも見えた』と――――

909 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:23:33 ID:639ecHgM


【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地下/1日目 午後】

【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(中)疲労(小)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロング・ウォッチタワー』のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ムーロロらと合流、遺体を集める。集めた後ディエゴをどうするかは保留
2.遺体とルーシーを使って天国へ向かう方法の考察をする
3.ジョジョ(ジョナサン)の血を吸って、身体を完全に馴染ませる。
4.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
[備考]
※携帯電話にヴォルペからの留守電が入ってます。どのような内容なのかは後の書き手様にお任せします。
※ジョンガリ・Aのランダム支給品の詳細はDIOに確認してもらいました。物によってはDIOに献上しているかもしれませんし、DIOもジョンガリ・Aに支給品を渡してる可能性があります。
※サン・ジョルジョ・マジョーレ教会が崩壊しかかってます。次に何らかの衝撃があれば倒壊するかもしれません。
※ディエゴから遺体の情報とSBRレース、スティーブン・スティールについて情報を得ました。
※セッコ達と合流次第ルーシーをDIOの館に移動させるつもりですが、同行させるメンバーやDIO自身が移動するかは未定です。

【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:処女懐胎、疲労【中】
[装備]:遺体の頭部
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド
[思考・状況]
基本行動方針:スティーブンに会う、会いたい
0.遺体が集まるのを待つ
1.DIO、ディエゴを出し抜く

【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+?
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康
[装備]:遺体の左目、地下地図
[道具]:基本支給品×4(一食消費)鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球
    ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2
    ランダム支給品0〜3(ディエゴ:0〜1/確認済み、ンドゥ―ル:0〜1、ウェカピポ:0〜1)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰る
0.遺体が揃うまでDIOと協力。その後は状況次第
1.なぜかわからんが、DIOには心底嫌悪を感じる
2.ルーシーから情報を聞き出す。たとえ拷問してでも
※DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。

910 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:26:49 ID:639ecHgM


【 ??(DIOの元に移動中) /1日目 午後】

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中
[状態]:健康、精神的動揺(大)
[装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神
[道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。
0.千帆……
1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。
2.ムーロロ、セッコとDIOの元に向かう。隙があれば始末する?
3.ムーロロの黒幕というDIOを警戒
【備考】
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
拳銃はポコロコに支給された「紙化された拳銃」です。ミスタの手を経て、琢馬が所持しています。
※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。
 琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、不明支給品(3〜13、うち数個は確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOに従い、自分が有利になるよう動く
0.スクアーロを始末でき、自分に損がなかったことに満足。
1.セッコ、琢馬と共に急いでDIOの元に戻る。
2.千帆とプロシュートはとりあえず放置。状況により監視を再開するかも
3.琢馬を監視しつつ、DIOと手下たちのネットワークを管理する
【備考】
現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索とDIOの手下たちへの連絡員はハートとダイヤのみで行っています。
それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。
※遺体の右腕はペッシ、脊椎はペット・ショップの不明支給品でした。脊椎は今のところ誰にも取り込まれていません。

【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、血まみれ、興奮状態(小)
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.角砂糖うめえ
1.ムーロロ、琢馬と共に急いでDIOの元に戻る。
2.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい。
3.吉良吉影をブッ殺す

【備考】
『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。

911 ◆/SqidL6HL.:2014/09/20(土) 02:47:33 ID:639ecHgM

遅くなりましてすみません。
タイトルは「されど聖なるものは罪と踊る」です。
トリップ内にタイトルを入れるやり方を教えてください(泣)

フーゴとムーロロのやりとりについて文中には特に入れなかったのですが、
今後はDIOと合流か、さもなくばトラブルに見舞われるかでしょうから
やはりD-6までの移動中にあったと考えるのが自然でしょうか。ご意見を伺いたいです。

912名無しさんは砕けない:2014/09/20(土) 13:08:44 ID:qn9awmKo
仮投下乙です!
見入ってしまいました……、とても初めてとは思えない出来上がりです。
フーゴとムーロロのやり取りに関しては、あえて決める必要性もありませんし、大丈夫だと思います。
最後のムーロロと琢馬の現在地をあえて未定にしたように、そこに関するお話を書く人が出てきたときに身動きもとりやすいですから。


ちなみに、タイトルは名前の前に入れてから#を入れてトリップをつければできますよ。

ジョジョの奇妙な冒険#〜〜〜 みたいな感じ。

913名無しさんは砕けない:2014/09/21(日) 02:57:33 ID:4xTczMls
投下おつです。
千帆が手を伸ばしたクライマックスシーン、千帆とプロシュートの決意。
この二つのシーンに心打たれました。ああ、美しすぎますッ!
一連の動作に対してなぜそうなったか、なぜそう考えたかがしっかりと書かれていたのでとても読みやすかったです。

遺体を手にしたDIOはどうするのか、どうなるのか。
ディエゴとルーシーは為すがままになってしまうのか。
罪を抱えた琢馬の選択は。
色々今後が気になる終わりでした。

指摘としては二点あります。
1. >>908のルーシーの台詞 『吉良なるもの→吉なるもの』だと思われます。
2. 各キャラの時間帯が午後になっていますが、夕方のほうが自然ではないかと私は思いました。

以上です。
とても丁寧に練り上げられた作品だと思いました。
前後作の流れを汲み取って、定めた焦点にしっかりとスポットが当てられてたのがいいと思いました。
これからもたくさん書いてください。

914名無しさんは砕けない:2014/09/21(日) 09:04:20 ID:xiXcR/zs
仮投下乙です
千帆と琢馬それぞれの簡単に言い表せないような心境、プロシュートの覚悟、にらみ合いの末破れ去ったスクアーロと生き残ったムーロロとセッコ、引き込まれる展開やキャラの心情にドキドキしっぱなしで一気に読んでしまいました。
教会の地下でもディエゴ&ルーシー、そして遺体という新たな要素が加わってさらにジョースターvsDIOが激化していきそう。DIOとディエゴに挟まれるルーシー頑張れ!

あと上の方、 指摘されている台詞は『吉良(きちりょう)なるもの』であってます。原作で大統領がその台詞を言っていました。

キャラの行動や思考、心境に矛盾がなく面白い仕上がりになっていると思います。改めて仮投下乙でした。

915 ◆/SqidL6HL.:2014/09/22(月) 00:50:46 ID:JAZ5n3lo
皆様、感想とご指摘ありがとうございます。

説明が過ぎて理屈っぽくなったり、冗長になってしまう点が自分の欠点と認識していますが
読みやすいと評価していただいたおかげで自信が持てました!

時間帯については話が始まった時点で午後だった為そのまま引き継いでいましたが、
確かに終了時点では夕方の方が自然ですね。本投下の際に訂正します。タイトル入れたトリップも覚えたし。

『窮鼠猫を噛めず』がまだ本投下されていませんが、先に投下しても問題は無いのでしょうか?

916名無しさんは砕けない:2014/09/23(火) 20:31:28 ID:TurRSBME
しちゃいましょう

917 ◆LvAk1Ki9I.:2014/09/23(火) 23:41:00 ID:jdULSRzc
本日復帰いたしました。
1ヶ月近く待たせて申し訳ございません。

/SqidL6HL.氏
ようこそ………『書き手の世界』へ………………
言いたい事は他の方が大体言ってくださいましたが、氏の作品で説明が多かったりするのは『欠点』でなく、文章量があるという立派な『長所』だと思います。
(もちろんシンプルがいい! という人もいるでしょうが)

指摘というほどではないのですが、ムーロロがセッコにあげていた角砂糖はもう残っていないのでしょうか?
状態表で誰も持っていないためチト気になります。

本投下に関しては先に投下していただいて全然OKです。
自分の方は早くても今週末ごろまでは暇が無さそうなので。

918君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:23:45 ID:vTMBH9hA

パカラッ、パカラッ、パカラッ……


「乗馬なんてのは金持ちの優雅なご趣味と思ってたんだが、なかなかどうして車やバイクとはまた違うこの『一体感』ってのもいいもんだな」


向かい風を受けながらシーザー・アントニオ・ツェペリは馬を駆る。
ひとり、悲しみを背負いながら。

919君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:25:28 ID:Mh/c5Ak.

◆ ◆ ◆



ディ・ス・コとサーレーを倒し、形兆に別れを告げたシーザーはまず進路を南東に取り、DIOの館へとたどり着いた。
DIOを倒すための手掛かりがないかを調べるためだったが、ざっと見た限りDIOの素性やスタンドの弱点に迫れそうなものは見つからない。
また波紋による生命探知にも反応がなく、結果としては空振りに終わり、早々に探索を切り上げることにした。
一見徒労に終わったように見えるだろうが、実際のところ彼にとってはある意味幸運な事だった。

ゲーム開始から半日、シーザーは常に『間に合わなかった』。泉のほとりで貫かれていたか弱い少女、友人スピードワゴン、恩師リサリサ、そして虹村形兆。
いくら強靭な波紋戦士と言えども、若干二十歳の青年である。頼れる仲間も無くこの短時間であまりに多くの死に触れたせいで、表には現れずともシーザーの心は確実に消耗していた。
もしそのまま探索を続け、塔の最上階でポコロコとスループ・ジョン・B、まだ僅かに体温の残るミスタとミキタカの凄惨な死体を発見してしまっていたら、
きっとこの後の衝撃にはとても耐えられなかっただろう。


探索の最後にと入った図書室には戦闘の跡があった。比較的新しい血だまりといくつかの銃痕、ブーツに粘りつく血の具合から見て重傷を負ったものがまだ
近くにいるかもしれないと外に出たシーザーは見つけてしまったのだ。






「先…………生…………」






すでに分かっていたことだ。むしろこのような形でも再会できたことに感謝すらしなければならない程この地には異常で、残酷な死が蔓延している。
もし逆の立場だったら?母のように慕っていた師はきっと極限まで感情を抑え込み、冷静かつ気丈に振る舞うのだろう。
ならば自分もそれに倣うべきだ。

920君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:26:29 ID:Mh/c5Ak.
(わかっています、自分はここで崩れ落ちてはいけない。泣き叫んでもいけない)



もう十分涙は流したのだから。
ゆっくりと膝を折ると、恐れるように、乞うように、震える手を伸ばす。



(ですが……ですが先生)



リサリサの頬にそっと指先が触れ



(お許しください)



――――――――――――そこに生命の波紋は感じられなかった。



「あ……ああ……今は……今だけは……!!」

ついにシーザーは感情を押さえきれなかった……リサリサの体をしかと抱きしめると、後から後から悲しみの涙があふれてくる。
だがしかし、それでもわずかな嗚咽をこぼすのみで、泣き叫ぶことだけはしなかったのだ!
それは師の教えとのギリギリの妥協点だったかもしれないし、敵を呼び寄せない為の冷静な判断だったかもしれない。
別れの時間を誰にも邪魔されたくない気持ちもあったかもしれない。あるいはそれら全て……

921君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:27:10 ID:Mh/c5Ak.
大きな穴を掘れそうな場所はDIOの館の庭ぐらいだったが、忌まわしい吸血鬼に関わる場所など御免だった。
戦いに巻き込まれないよう通りから奥に入った民家のベッドに遺体を横たえると、十字架の代わりにチェストに置いてあったエジプト・アンクを握らせる。
そうして短い祈りを捧げ終わるころにはようやく涙も乾いていた。
名残を惜しみながらも民家を後にすると今度こそ気持ちを切り替え、遺体に感じた不自然さについての考察を始める。

(先生の遺体は綺麗なもんだった……いや、『綺麗すぎた』!)

衣服こそあちこち破れてはいたが、事実リサリサの体には見る限り目立った外傷はなかった。
ただ一点、首を彩る二本目の輪――――紅い指痕を除いては。

(おそらく先生もここに来てから複数回は戦闘をしていただろう。その度に波紋で癒していたとすれば傷が見当たらないのは不自然ではない)

だがリサリサが死に至った最後の戦いにおいて、負傷した跡が見当たらない。この遺体の状況は、リサリサが身体を拘束あるいは意識を失うなど、
行動不能の状態にされた上で素手で首を絞められ、窒息死した事を示していた。

(波紋使い相手に先生が遅れをとることは考えられないし、柱の男なら尚更そんなまだるっこしいやり方はしない。必然的に先生を殺した奴は
 『相手を無傷のまま行動不能にすることが可能な能力』を持つ者、つまりスタンド使いに限られる)

動きを封じることはできるが直接攻撃することはできない。スタンドの多様性からいって、そういう能力の存在を今更疑う必要は無いだろう。
ならばなぜ素手なのか、という疑問が浮かぶ。石で殴るなり川に沈めるなりする方が力もいらないし手っ取り早い。周囲に武器になるものが無かった訳でも
ないのにあえてそうした理由は何なのか。怨恨、快楽殺人の線も疑われるが……と、そこまで考えたところでシーザーは唐突に思考を打ち切った。

可能性はそれこそいくらでもあるし、推理や考察もいくらでもできる。だが真実が如何なるものであろうとも、犯人が『明確な殺意をもって』リサリサを殺したことは
確かな事実であり、それで十分だった。

(先生を殺した奴が今も生きてるのか死んでるのかはわからんが、ひとつだけ言えることがあるぜ。たとえどんな事情や理由があったとしても、
 既に動けない先生の首をわざわざ絞めてまでとどめを刺すようなゲス野郎を、俺は『絶っっっ対に許さねえ』ってことだ!)



リサリサが息子ジョセフの為に狂気へと身を堕としたことも、その果てに瀕死の傷を負い、DIOの息子、ジョルノが癒したことも。
殺された時点で既に波紋を使えるような状態でなかったこともシーザーにはわからない。
そしてシーザーが言う所のゲス野郎――――蓮見琢馬がリサリサを殺した理由も、心も、まだ知ることは無い。

922君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:29:16 ID:Mh/c5Ak.
◆ ◆ ◆



リサリサとの悲しい再会はシーザーに希望をもたらす事こそなかったが、ひとつの区切りはついた。
後は何としてでも生き抜いて、同じくどこかで生きているJOJO、シュトロハイムと合流する。そうして柱の男たちを倒し、主催者を倒し、皆で脱出する。
この先の戦いやまだ見ぬ仲間の事を考えると力が湧いてきた。皆のためにもやるべき事はたくさんある。
そうして次にシーザーは川の上流へという当初の目的から離れ、一旦西へと戻る事にした。丁度すぐ近くに禁止エリアがあるので一度自分の目で見て
情報収集をしておきたいという考えからだ。

「サン・ピエトロ大聖堂か。教皇様のお力も主催者どもには通じなかったみたいだな……ん、あれは馬か?」

広大な広場の石畳はさんさんと降り注ぐ午後の日差しを照り返し、白く輝いていた。
光に紛れて一瞬見落としてしまいそうになったが、広場の中央に一頭の白馬が座り込んでいる。
参加者以外の生き物を見かけたのも初めてだが、どこかで見覚えがあるような気がして近寄ってみると、額には特徴的な星の模様。
そこでやっとシーザーの記憶がつながった。そう、まさにティベレ川で拾ったDISCに映っていたのと同じ馬なのだ。

「マンマミーヤ! 本当に居たとは……って馬だけ見つけてもこのレコードもどきが何なのかわからなけりゃ意味無いんだけどな。
 鞍がついてるってことは誰かの馬なんだろうが、おい、お前のご主人はどこ行っちまったんだ?」

一応聞いてはみるが、返事は無い。手綱を引っ張ってみても動こうとせず、閉じた目を開けようともしない。無反応というより意識そのものが無いように見える。
この馬の状態とDISCが関係している事は間違いないのだろうが、シーザーにはそれ以上どうすればいいのかわからなかった。
無理もない話だ。1939年時点から飛ばされてきたシーザーはそもそもコンパクトディスクやレーザーディスクといったDISCに酷似した記録媒体の存在自体を
知らない。仮にレコードからの連想で記録媒体だというところまでたどり着いたとしても、それを再生機器に『差し込む』という概念が一般に浸透したのは戦後、
カセットテープやビデオテープが普及してからの話であり、レコードと8mmフィルムしか知らないシーザーはどのみち途方に暮れるしかないのだ。

だからこの場合幸運だったのはむしろ馬の方だろう。
頭をひねるシーザーの手からうっかり滑り落ちたDISCが綺麗に額の星に当たったのだ。

「こ、これは!? 円盤が馬の頭にズブズブ吸い込まれていくぞ!!」


ブルルルルルッ!


記憶を取り戻した馬は勢いよく立ち上がると体を震わせ、嬉しそうにシーザーの周りをぐるりと一周してそのまま大聖堂の向かって左、
南側の列柱の方へと駆けて行った。

「おい待て! そっちは確か禁止エリアだぞ――――」

慌てて馬を追って走り出したシーザー。すると突如首輪がトーキー映画のようなザラついた声で『喋りだした』。


『オーノーだズラ。おめえ、もうだめだズラ。禁止エリアに入っちまったズラ』


……セリフの内容よりもまず人を小馬鹿にした言い回しにイラッとしたが、数歩後ろに下がると声がやんだ。

923君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:29:54 ID:Mh/c5Ak.
「なるほど、ここからが禁止エリアってことか。目に見える境界線が無い分爆発まで猶予を設けてあるんだな」

すぐには爆発しないことがわかると数歩進んでは戻ってを繰り返す。足だけを伸ばしたり首だけを入れてみたりと色々試した結果、どうやら首輪が境界線を
越えたかどうかが判定の基準だという事がわかった。
そしてシーザーの考えを補強するように視線の先――――『禁止エリア内』を馬が自由に駆け回っている。

「クソッタレ、これじゃあまんま首輪に繋がれた犬じゃねーか。しかし俺には機械の知識は無いときた。詳しそうなのはシュトロハイムあたりか……? それか
 俺より未来から来ている人間なら、こいつを外す手がかりを掴んでる奴がいるかもしれんな」

DISCの使い方も一応は理解したが、自分一人で試すには危険すぎるので一旦保留にする。今は何にせよ共闘できそうな人間に出会いたい。そう結論付けた
シーザーは馬に別れを告げて広場を後にすることにした。
だが広場の入り口まで来たところで後ろから襟をぐいと引っ張られ、首元に生暖かい息がかかる。

「悪いな、お前にかまってる暇はないんだ。さ、殺し合いに巻き込まれない内に遠くに逃げちまいな」

ブルブルブル、ブフゥーッ

馬はシーザーの前に回り込んで、何かを訴えるようにじっと見つめてくる。

「ひょっとして……乗れってのか?」

改めてよく見ると、何とも美しく鍛え上げられた馬体だ。その艶やかな毛並みは素人目にも十分な手入れをされているのだとわかる。
馬に合わせて作られただろう鞍はよく使い込まれており、馬名が小さく刻まれていた。きっと持ち主はこの馬に深い愛情を注ぎ、大切にしていたのだろう。

人の手が入っているとはいえ初対面の人間を嫌がったり警戒する馬も多いが、自分を目覚めさせてくれた礼に乗せてもいいと言ってくれたこの馬の心意気に
シーザーは胸が熱くなるのを感じた。


「じゃあ行くか『シルバー・バレット』!」


シルバー・バレットの真の乗り手であるディエゴ・ブランドー。
彼が奇しくも仇敵DIOと同じ名を持つことも、どれだけ素晴らしい技術と経歴を持つ騎手であり、どれだけ残忍で残酷な実利主義者か、
そしてこのバトルロワイヤルで犯してきた所業や企みも、まだ知ることは無い。


そうして話は冒頭へと戻る――――――――――――――

924君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:30:58 ID:Mh/c5Ak.
◆ ◆ ◆



パカラッ、パカラッ、パカラッ……


移動速度が飛躍的に上がった一人と一頭は念の為禁止区域に設定されたA-2を避けてカイロ市街地を斜めに抜け、地図の北端に到達。氾濫の原因はついに
分からなかったが、ジャコモ・マッテオッティ橋からティベレ川を越えて古代環状列石を一通り見て回り、小さな墓に花を増やしてからボルケーゼ公園で
シルバー・バレットの食事がてら休憩。のち他の参加者がいないか通りを細かく探しながら南下しシンガポールホテル、マンハッタン・トリニティ教会を抜けて
現在位置はD-4、ナヴォーナ広場。時刻はもうすぐ夕方に差し掛かるかといった頃合いだ。

「ここから東に行けば空条邸だな、さっきから漂ってた焦げ臭さはあそこからだったのか。よし、行くぞシルバー・バレット……どうした?」

近くの建物に上って空条邸からの煙を確認してきたシーザーは今度こそ他の参加者に遭遇することを期待して手綱を握る。が、当のシルバー・バレットが
首を嫌々と振って動こうとしない。

乗馬初心者のシーザーは手綱に軽く波紋を流すことで方向を伝えていたが、それが本当に補助程度の意味しかないくらいにシルバー・バレットは賢い馬だった。
時にはシーザーが波紋を流すより先に、手綱を握る手のわずかな筋肉の動きを感じ取って進路を変える事さえしてくれた。
駆ける速度も速すぎて乗り手に負担がかからぬよう、気遣いながら調節してくれていたおかげでシーザーは体力を十分回復できていたのだ。
それがここに来ての反抗である。さすがに只のわがままではないとシーザーも理解――――

「何だよ、やっぱボルケーゼ公園で俺が無理矢理木の葉ばっか食わせようとしたの根に持ってんのか? いや馬って首が長いんだから高いところの葉を
 食べると思うのは仕方無いことだと思うぜ。お前が芝生とか雑草しか食わないって知らなかったんだからな!」

――――理解まではいかなかった。当然ではあるが、やはり人と動物の相互理解は一朝一夕で上手くゆくほどお手軽なものではない。


「なあ頼むから機嫌直せよ……まいったな。こうなりゃ俺一人で走って行くしかないか」

空こそまだ青いが、柱の男たちの時間は確実に迫っている。一刻も早く共闘できる人間を探したいシーザーはじりじりとした気持ちでデイパックから
コーヒーガムを一枚取り出し、口に運ぶ。

『コーヒーガム』を。


『コーヒーガム』を!





ワンワンワンワンワンワンワンワンワンッッッツ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

925君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:34:07 ID:Mh/c5Ak.

「おわああああああ! こっこっこっこっこいつは――――ッ 犬!?」

超スピードだとか瞬間移動かと思う位唐突に飛び掛かってきた犬に、シーザーはJOJOには決して聞かれたくない情けない悲鳴を上げてしまった。
しかし紙一重で避けてコーヒーガムを死守する辺りは流石である。一方犬はくるくるっと空中で回転して着地。
『ああ?おめーが今やるべきは地面に這いつくばって『どうぞお食べくださいお犬様』ってコーヒーガムを差し出す事だけだろうが』と言わんばかりに睨んでくる。

(なんつー犬だ……貧民街で残飯あさってる野良犬より意地汚ねー顔してやがる)

いや、この犬はきっと相当飢えていたのだろう。こっちを睨むのももしかしたら恐怖の裏返しなのかもしれない。強引にそう考えると何だか哀れに思えてきた。
思い直してガムをやろうとしたところ、犬はふと何かを思い出したようにシーザーの横をすり抜け、空条邸とは逆方向に向かって走り出した。
一度こちらを振り向いてワンと吠え、もう少し進むとまた吠える。

「あの犬……ついて来いって言ってるのか? あ、おいシルバー・バレット!」

シーザーの意見を待たずにシルバー・バレットも犬を追いかけて勝手に駆けだした。こうなればままよ、と手綱を握り直すとスピードを上げてついて行く。
目的地までは30秒もかからなかった。



◆ ◆ ◆



路地に張り出したオープンカフェのテントの下で、その少年は静かに横たわっていた。
右腕は肩から先が失われ、脇腹と左足も大きくえぐれている。とめどなく血を流していた赤黒い傷口は、今は砂で固められていて見えない。
正確には犬が少年の約10m以内に入ったところで突然砂が現れたのだ。
おそらくこれが犬の能力の射程距離。能力を発動した途端しんどそうに伏せの姿勢で舌を出したところからも疲労の色が伺える。

血液をたっぷり吸いこんでどす黒く変色した砂が少し崩れかけた。往復1分足らずであっても、この傷では流れた血の量はかなりのものになる。
それでも、少年が失血死する危険を冒してでも敵か味方かわからないシーザーに直接助けを求めなければならないくらい犬の負担は大きく、
追いつめられていたのだとシーザーは理解した。

「決死の覚悟で俺を呼んだんだな……わかった、もう少しがんばって止血してくれ。治療してみる」

さっき死守したガムを犬に放ると、すぐさま少年の体に波紋を流し込む。シルバー・バレットがそうしたように、少年に過度な負担がかからぬよう調節しながら
慎重に、迅速に。そのまま一時間ほど流し続け、何とか傷をふさぎ出血を止める事が出来た。犬に能力を解くように指示するとテーブルクロスを破いて
包帯代わりに巻きつける。

「シルバー・バレット、さっきは勘違いして悪かった。お前には犬が近づいてきてたのがわかってたんだな……犬、お前もご主人の為に必死だったってのに
 意地汚いヤツだとか思って悪かったアデデッ! 何で噛むんだよ!!」
「アウオオ!」

忌々しそうに首輪と犬サイズのデイパックを見せつけてきた。

「あ、ああそうだな。お前もスタンド使いってことは参加者なんだよな。こいつと組んで行動してったってことか、さっきの発言は撤回する」

ペット扱いされたのが気に入らなかったらしい。しかも人間の言葉をしっかり理解している節がある。そして噛まれた手にはこれまた噛みつくしたガム。
シーザーは犬の知性に感心しながらも、内心めんどくさいヤツだとため息をついた。

926君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:35:58 ID:Mh/c5Ak.
「…………うう」

ようやく少年が目を覚まして弱弱しく辺りを見回す。体を起こそうとするのを静止して、砂山の上に畳んだテーブルクロスを置き、枕代わりにすると再び寝かせてやる。

「意識が戻ってよかった。俺の名はシーザー・アントニオ・ツェペリだ、お前は?」
「……パンナコッタ・フーゴ。その犬は……イギー。手当てをしていただいて感謝します」
「礼ならむしろ犬、いやイギーの方が相応しいさ。俺をここまで連れてきてくれたのはアイツなんだ」
「そうでしたか……すまない、イギー」

イギーはそっぽをむいてアギ、と一声だけ返してきた。だが、そのそっけない返事だけでもフーゴには十分伝わったようだ。
かすかに笑みを浮かべるフーゴにしかし、シーザーは伝えなければならなかった。

「フーゴ、はっきりと言おう。俺は波紋って技術でお前さんの出血を止めた。一応傷口も塞げた……だが、これ以上の治療となると俺にも難しい。
 つまり、お前は再起不能で……いつ死んでもおかしくない」



◆ ◆ ◆



最初にフーゴを見た瞬間、死体だと思った。
そう、マッシモ・ヴォルペとヴァニラ・アイスとの戦いで負った傷は当然致命傷で、イギーが止血した傷口もまた砂である以上じわじわと血は滲んでいた。
さらにシーザーを連れてくるのに能力を解いていた間の出血。トータルで見るとショックを起こすには十分だったのだ。
そうしてあと少し遅ければ尽きていただろうフーゴの命をシーザーが何とか食い止めた。今の状態は『死んで当然』から、『死んでもおかしくない』に引き戻したにすぎない。
たとえば設備の整った病院で輸血をしつつ長時間波紋を流し続ければ命だけは助かるだろうが、それでも失われた血や肉を再生することはできない。
あとはせめて苦痛を和らげるくらい……医師でないシーザーにできるのはここまでだった。

「覚悟はできています……死は怖くありません」
「言い残すことがあるなら今のうちに聞いておこう」
「大切な……仲間がいるんです……ナランチャ、トリッシュ、。ここで出会った人たちと行動を共にしていました……
 東…………D-7……追ってきてい、るかも」
「わかった。必ず探し出してお前たちの事を伝えてやる」
「どこにいるかわからない……ミスタ。それから……生きていたんです…………ジョジョが……」
「JOJO!? やはり生きていたのか!!」

思わぬ名前にシーザーの心臓が跳ね上がる。この少年がJOJOを知っていたとは。ようやく手がかりが掴めた。

「あなたも知っ……のですか……ジョジョを……」
「知ってるも何も俺はあいつの仲間だ! あいつなら大丈夫、いつだって思いもよらねえ発想でピンチを切り抜けてきた奴だ。
 今頃平気な顔して俺たちの事を探し回ってるに違いないさ!」
「はは、ちがいないや……彼は、希望の光です。どうか……お願いします。トランプ使いのムーロロには気をつけて…………」
「ツェペリ家の男の誇りにかけて、お前の願いを承った。後は……自分が生きる事だけ考えろ」
「…………ああ……会いたいなぁ……」

最後はうわごとのようにつぶやくと、フーゴは焦点の合わない目を閉じて眠りについた。
だが『永遠の』眠りにつくにはまだ早い。

(フーゴよ……JOJOと同じくらい、お前だって俺の希望なんだぜ。どうか、死なないでくれ)

やっと、やっと『間に合った』のだから。祈るようにシーザーは波紋を流し続ける。


もしクリーム・スターターのDISCを自身に差し込んでいたなら、確実にフーゴを救えただろうが、その事をシーザーは知る由もない。
『ジョジョ』と『JOJO』。ふたりが心に思い浮かべた姿は似ても似つかない、けれども等しく黄金の精神を持つ別人であることも、今はまだ知ることは無い。

927君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:37:01 ID:Mh/c5Ak.


(はーやれやれ、やっと一息つけたぜ)

イギーは後ろ足で首元を掻いている。慣れない首輪を長時間付けていたせいでかゆくて仕方ないのだ。

(どうにか教会まで戻ったと思ったらいきなりバンバカ撃たれるわ、しょーがねーからフーゴの野郎の仲間と合流しようとしたら案の定途中で倒れられるわ、
 コーヒーガムの匂いに気付かなかったらあのままジリ貧で、下手すりゃ共倒れだったぜ)

ブルブルッと毛を飛ばすとあくびを一つ。

(まあ面倒なお荷物が片付いて新しい用心棒も手に入れた事だし、このまま東へ移動すりゃ予定通り合流できそうだ。盾は多い方がいいもんな。
 よしよし、俺の運もまだまだ尽きちゃあいねえぜ)

何ともひどい言いぐさである。が、しかしこの口の悪さだけで彼を判断してはいけない。
一時共闘しただけのフーゴを見捨てる事なく支え続け、助けを呼んできた。
ほんの一瞬コーヒーガムに気を取られたことは……事実だが、タルカスの時の様にそのまま適当に媚を売って取り入った方が簡単なはずだったのに。
何よりフーゴを治療する間の一時間、大好物のコーヒーガムの追加をシーザーに強請りもせず止血をし続けた。
つまりイギーという犬は、そういう奴なのだ。

(そ−いう事だからよー、悪りいがおめーの行きたがってる教会方面に戻るつもりはないぜ?)

フーッ、フーッ、バルルルッ……

(おいおい、なに歯ぁむき出してんだ……やんのか? ああ!?)



「ところでお前ら……何をそんなに睨み合ってるんだ?」

主人の居る教会へ行きたいシルバー・バレットと、フーゴの仲間達と合流したいイギー。
二頭の決着がどうなるのか、そもそもどうしてこんなことになっているのか、シーザーには……やっぱりわからない。

928君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 01:40:28 ID:Mh/c5Ak.
【どう猛な野獣タッグ+白馬の波紋戦士】


【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発(波紋で回復中)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレット
[道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム(1枚消費)、ダイナマイト6本
   ミスタの記憶DISC、クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
1.とりあえず二頭の決着がつくまでに次の行き先を考える
2.フーゴに助かってほしい
3.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
4.DIOの秘密を解き明かし、そして倒す。

【備考】
リサリサの遺体はC-3の民家に安置されています。
DISCの使い方を理解しました。スタンドDISCと記憶DISCの違いはまだ知りません。
『ジョジョ』の事をジョセフだと誤解しています。
シルバー・バレットとイギーがどうしてケンカを始めたのかさっぱりわかりません。


【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:右腕消失、脇腹・左足負傷(波紋で止血済)、大量出血
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.……(意識不明)

【備考】
サン・ジョルジョ・マジョーレ教会から南東方向にイギーVSヴァニラ、フーゴVSヴォルペの戦闘跡があります。
フーゴの容体は深刻です。危篤状態は脱しましたが、いつ急変してもおかしくありません。


【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.この馬にどっちが上か教えてやる
2.コーヒーガム(シーザー)穴だらけ(フーゴ)と行動、フーゴの仲間と合流したい
3.花京院に違和感。
4.煙突(ジョルノ)が気に喰わない

【備考】
シルバー・バレットがサン・ジョルジョ・マジョーレ教会方面に行きたい事に気付いていますが、行かせるつもりはありません。
二頭の決着がどうなったかは以降の書き手さんにお任せします。

929君の知らない物語 ◆/SqidL6HL.:2014/11/18(火) 02:05:29 ID:Mh/c5Ak.
以上です。
現在地と時間帯を入れ忘れました、【D-3 路地 / 一日目 夕方】です。
シーザーの一人旅に終止符を打ちたかったのですが、他に絡めそうなキャラがいなかったので時間帯をキングクリムゾンしちゃいました。
予約なしでジョンガリが仕事していた描写を入れてしまいましたが、これはありなのでしょうか。時系列としては
承太郎たちが教会に入った後でイギー達戻る→撃たれたので逃走、です。必要があれば追加で予約ののち状態表を追加します。
その他ご都合主義だったり、時系列でおかしな点がありましたらご指摘願います。

930名無しさんは砕けない:2014/11/18(火) 18:45:57 ID:xv8UiHys
仮投下乙です。時間軸のキンクリはそんなに違和感がありませんでした。
ジョンガリの件も私個人としては問題ないと思いますが、今後ジョンガリをかく人がちょっと気を付ける必要があるかな、と言ったところでしょうか。
他の人の意見も聞きつつ本投下に期待です。

931名無しさんは砕けない:2014/11/20(木) 22:52:01 ID:01r49bRo
シーザーそれJOJOちゃう!GIOGIOや!
てなわけで遅れたけど仮投下乙です
時間帯についてはシーザーが夕方まで何をしていたか説明されているので特におかしいとは思いませんでした。
ジョンガリに関しては書いても書かなくてもどちらでもいいと思います。ただ書かないのであれば一応状態表の最後辺りにジョンガリがイギーとフーゴへ発砲したことと、その時のジョンガリの詳しい行動は後の書き手さんにお任せするという補足を書き足しておくといいかもしれません。

932ms3356:2014/11/24(月) 23:12:10 ID:RtEjgyGg
お二方とも助言ありがとうございました。
ジョンガリが発砲時の状況や思考は全く考えていなかったので、補足を付け足すという形で
今週末には本投下したいと思います。

933 ◆/SqidL6HL.:2014/11/25(火) 00:13:59 ID:emcrBuPs
↑どうしようもない凡ミスでトリバレしてもうた……笑ってください。
本投下より◆HAShplmU36でいきます……

934 ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:30:41 ID:KfpvK.GM
吉良吉影、仮投下開始します。

935今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:32:03 ID:KfpvK.GM
サン・ピエトロ大聖堂のバルコニーから望むローマ市内は施設や区画が置き換わったことによる違和感を差し引いても尚、
まさに絶景という他ない程の美しい景色を保っている。
今にも落ちてきそうな程青い空の下で二人きり、雲と時間が穏やかに流れてゆく。

(まるで新婚旅行にでも来たみたいだな)

この状況で何を馬鹿な事を、とも思いかけたがやはりそのまま甘い時間を過ごすのも悪くないと思い直し、手摺に乗せられた
彼女の右手に自分の左手をそっと重ねる。

「しのぶ……」



◆ ◆ ◆

夢の中の彼女は柔らかく微笑んでいた。
繋いだ手は、温かかった。

936今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:33:22 ID:KfpvK.GM
「お目覚めかな」
「……その声には聞き覚えがある。だが会話をするのは少し待ってくれないか……ああ、あった」

吉良吉影は冷たい床の上で身を起こすと軽く目を擦りながら手探りでデイパックを引き寄せ、ペットボトルの水をぐいと飲む。

「知ってるか? 人は夜寝ている間に大体コップ一杯分の汗をかいている。
 目覚めてすぐに水を飲むと、失われた水分を補うと同時に交感神経を刺激してよりスッキリと体を覚醒させることができるんだ。
 今は朝ではないが、こういう何気ない行為を大切にすることは質の高い生活を送る為に必要だと私は考えている。
 その愛すべき穏やかな生活を無遠慮に蹂躙してくれた主催者が私に何の用向きだ、スティーブン・スティール」

その部屋は全体的に薄暗く、端にゆくほど暗くなっているため広さは正確にはわからない。
正面の壁一面に埋め尽くされたディスプレイの明かりを背にして、姿勢よく肘掛椅子にかけた主催者が放送よりも低い声で答える。

「逆だよ。私が君を呼んだのではなく、君がチャンスをものにしたのだ吉良吉影。
 君はあのライターから出てきたスタンド『ブラック・サバス』の力でここに飛ばされてきた」

言われて掌を確認するが、特に負傷はしていなかった。

「本来あれは君のように矢で貫かれた者のスタンド能力を目覚めさせるというスタンドだが、
 今回は仕様を変えて私のもとに転送し、特別な支給品をプレゼントするというラッキーイベントにしたんだ、おめでとう」
「このイカレた催しをゲームと言うだけあって凝った仕掛けだな。だが私がもしあのスタンドを倒していたらどうするつもりだった?
 そもそもライターを必要としない参加者がずっと持ちっぱなしにすることだってあるだろう。失礼だが……少々ずさんではないか?」

実際吉良が路地裏に入りさえしなければ、ブラック・サバスの奇襲を回避できた可能性は十分にあったし、もし空条邸を燃やす際に
別のもので火をつけていたなら今ごろライターは燃え尽きていたことだろう。
ゲームを盛り上げるためのイベントならばもっと目立たせるべきなのではという吉良の疑問はもっともなものだ。

937今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:35:57 ID:KfpvK.GM
「それについては主催者として不備を認めるよ。このゲームには特殊な能力を持たなかったり、
 使いこなせていない者も多数参加していた。だから一種の救済として、生き残る見込みが少ない者たちの中から
 無作為に抽出して持たせておいて、あえて貫かれた者こそが幸運を得られるという趣向だったんだが……
 まあ、失敗だった。正直忘れていたくらいだ」

何か思い出したのだろうか、スティールが一瞬遠い目をした後渋面を作る。

「そちらの失態などどうでもいい。さっさと……
       『禁止区域内に……入ったぜ……吉良吉影……』――――!」

一歩踏み出した瞬間首輪から警告メッセージが流れる。
吉良はスティールを睨み付けると元の位置に足を引き、再び静寂が戻る。

「そこから動くことも、スタンドを出すこともこの場においては禁止行為とさせてもらうよ」
「試しただけだ。それより、こんな所に私を拘束しておいて無駄話がしたいだけなのか? その間に参加者が減ってくれるなら
 願ったり叶ったりだが、どうせなら有意義な会話をしたい――――ここがどこなのか、貴様の目的が何なのか、とかな」

この時点で吉良は無害な一般人の顔を完全に捨てていた。
吉良側から見れば平穏な生活を突如かき乱した無頼な輩に対する怒りの顔であり、
スティールから見れば獰猛な生贄の反抗的な顔であり、
第三者から見れば……殺人鬼のような顔である。

対してスティーブン・スティールは道化の顔をした。

「それらを私から直接聞いて何になる。
 タネを知っているマジックが楽しいか? 犯人がわかっている推理小説でワクワクできるか?
 君らの役割はもちろん殺し合い勝者を決める事だが、もし、も・し・も、ゲームを破壊しようなどという無謀極まりない冒険を考えているなら―――
 それこそ推理小説のようにわずかな手がかりを探し、こちらが想像だにしないあっと驚くような手口でここまで辿り着いて見せればいい!
 君たちが見せてくれる、その『過程』にこそ価値があるのだからな!!」


哄笑と共に煽ってくるスティールに吉良は終始無言を貫いた。
やや長すぎるくらい、大柄な体に相応しい肺活量で笑い終えると、道化は主催者へと戻る。

938今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:36:40 ID:KfpvK.GM
「放送ではああ言ったが、参加者としての義務を忘れなければ多少の回り道は黙認するよ。さっき言った通り
 楽しませてくれるのであれば、こちらとしては問題ないからな。
 さあ、これが追加の支給品だ。返品交換は受け付けないから、戻ってから開けてくれたまえ」

スティーブンが椅子から立ち上がるとコツコツと足音を立てて歩み寄る。
逆光のせいか眼鏡の奥の表情は見えないが、豪奢な封筒を通してスティールの手の感覚が吉良へと伝わってきた。
この封筒を爆弾に変えて爆破してやりたい気持ちをこらえて受け取るとデイパックにしまう。

「では会場に戻ってもらおう。場所の希望があれば伺うがどうする?」
「ふん、ならばサン・ピエ―――」



「その前に、私からもプレゼントを贈呈させてもらっていいかな?」


 
◆ ◆ ◆



吉良から見て左、暗がりに慣れた目でも見えないさらに奥から音も無く現れたその男は、レッドカーペットの中心を歩むように優雅な歩調で
スティールの横に並び立った。
彼の登場に驚くスティールと対照的な自信と威厳に満ち溢れた佇まいは、それだけで二人の上下関係を如実に示している。
スティールの無言の問いかけに薄い笑みで応えると、男は朗々と自己紹介を始めた。

「私の名はファニー・ヴァレンタイン。年齢43歳、君とは違う世界の合衆国大統領であり、今回のゲームの企画・主催を務めさせてもらっている。
 スタンド名はD4C(Dirty Deeds Done Dirt Cheap )。物質に挟まれる事により別次元に移動する能力だ。また、別次元から物や人間を
 連れてきて同一世界に同時に存在させることもできる。ただし同じ者同士が出会った場合は、互いに引き寄せられ消滅する」

939今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:38:23 ID:KfpvK.GM
ハッキリした発音と、大声でなくとも良く通るバリトンはスティールとはまた違う演説向きの声質に感じられた。
もし、彼が杜王町の町長選挙で演説したなら誰もが迷わず投票し、ついて行きたくなるような奇妙な安心感すらある。
だがスタンド能力まで明かすというのは明らかに異常だ。訝しみながらも吉良は探りを入れる。

「つまり君たちの認識にズレがあったのは全て私の能力によるものだ。ひとつ謎が解けて良かったな」
「参加者共をチマチマと一人づつ集めてきたという訳か。主催者自ら裏方仕事とは、なんともご苦労な事だ。
 二人きりでこれだけの準備をするのはさぞ骨が折れた事だろう。それとも他に使える部下を持っているのか?」
「お気遣いありがとう。だが私一人でもできる事は色々あってね……そうだな、例えばD4Cで君を150人集めたとする。かち合って消滅しないよう
 一人づつ個室に閉じ込めて首輪を爆弾に変えてもらう。後は参加者を監視しつつ任意で爆発させてもらう、ってのはどうだ?」

これには吉良も不快感を隠せない。

「そんな顔をするなよ、例えだ、例え。実をいうと興味がわいたのさ。君は現在殺害数トップ3に入る実力者だ、
 今話した内容はゲームを盛り立ててくれた礼とでも思ってくれればいい……」

バレている。
このゲームの性質や放送、そしてこの部屋のモニター類からいってリアルタイムで監視され続けている事は間違いないが、
それでも確実に証拠隠滅したはずの殺人を見られていたという事実が吉良の心臓を一瞬締め上げた。

「安心したまえ、私はプレーヤーに不正に干渉したりはしないさ。
 君はゲーム開始からその素晴らしい頭脳を駆使して無力な人間を装い、生き延びてきた。
 だが、いくら殺人鬼とはいえ所詮は一般人しか相手にしたことが無いという点がネックだ。カーズ、DIO、空条承太郎……
 百戦錬磨のあの三人と鉢合わせした時は正直終わりだと思ったが、幸運にも離脱に成功。
 そして空条邸での一連の殺人と証拠隠滅。あの手際の良さは驚嘆に値する」
「貴様……!」
「単純に力ではかなわない敵を相手にどこまで渡り合えるか今後も注目しているよ。ああ、最後にアドバイスをひとつ――――
 あの『手首』は、バレないように気を付けたまえ」


大統領が口を閉じるより早く吉良の唇と瞼、そして体全体が大きく震えはじめる。
だが次に吉良が口を開けるより早く視界は再び黒く閉ざされ、そのまま意識が遠のいてゆき……消えた。



◆ ◆ ◆

940今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:40:11 ID:KfpvK.GM
は……あ―――――――っ……

吉良が会場内に戻ったことを確認すると、スティールは肺の奥から漏れるに任せて空気を吐きだした。

「これで消化不良のイベントもこなせたな。次の放送のネタにできるんじゃないか?」
「……」

スティールの座っていた椅子に腰かけて組んだ足先をリズムよく上下させながら、しかし口調は冷ややかに大統領は尋問を始める。

「私の存在や能力などは取るに足りない情報だ、ジョニィ・ジョースターやルーシー・スティールが既に広めているからな。
 だが貴様はそれを越える何かを吉良吉影に渡した……違うか?」
「ブラック・サバスによるこの施設への転送も、支給品の追加についても最初の取り決めの通りだ。逸脱はしていない」
「それは正確さに欠けるというものだな。まず第一に、吉良吉影が転送されたのはこの隣の、無地の壁以外何もない部屋だ。
 いくら君が大柄とはいえわざわざこちらに連れてくるのは手間だっただろう。
 第二に、渡す支給品の数や選別は君に任せる事で合意していたが、一部制約があったはずだ。
 『私の目的を大きく妨害する恐れのある物』は除外。特に、SBRレース関係者の物品には慎重を期する……とな」

すくっと立ち上がるとスティールに歩み寄る。主催者という名の哀れな道化から流れ落ちる汗を目に留めると
唇の端を吊り上げ、一転陽気な声へと変わる。

「それにしても今回はやけに喋りのキレが悪かったじゃないか。あんな間延びした高笑いでは周囲を観察する隙を作ってやってるようなものだ。
 あの手のタイプを煽るなら、秘密の暴露やこちらの絶対的有利を強調してプライドをずたずたにしてやる方が効果的だぞ。
 見たろ? あの顔を。奴の思考はもう私への憎悪と殺意で一杯のはずだ」

スティールは愕然とした。
大統領は自分の企みを見抜いた上で吉良を挑発しにやって来たのだ。

「私は――――泳がされていたのか?」
「主催側として君を引き込んだ時点で、当然この程度の抵抗は想定していた。が、いささか油断をしてしまっていたようだな。
 恥を忍んで正直に言おう。私は吉良と君とのやり取りを見て、初めてこの部屋の異変に気付いた。
 君が何を渡したのかも本当に知らない」

ドグゥッ! 大統領のスタンドがスティールの腹に鈍い一撃を見舞い、スティールはもんどりうって倒れた。

941今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:42:02 ID:KfpvK.GM
「私はこの一発で今回の君の行為を許そう……油断していたとはいえ私の隙を突いた君への賞賛と自らへの戒めを込めて、
 支給品が私にとって不都合なものであったとしても回収はしない」

それは公正さを重んじるが故なのか、余裕をもって状況を楽しんでいるだけなのか。スティールに大統領の心はわからない。

「だがこの世の幸運はやはり私に味方しているらしい。あの頭が切れるプライドの塊のような快楽殺人鬼が大人しく君の思惑通りに動くと思うか?
 君の妻を前にして欲望を押さえられると思うか?」
「……ッ!」
「まあせいぜい細い希望にすがり付けばいい。君が他に何を仕込んでいるかは知らんが、今後の監視は強化させてもらうぞ」

うずくまったままのスティールの肩をポンポンと叩くと、来た時と同じ優雅な足取りで音も無く退出する。
ひとり残されたスティールは痛みが引いても尚、その場を動けずにいた。


まだあきらめてはいない。まだ策はある。
D4Cを打ち破れるただ一人の男もまだ生きているし、
正義の心を持った者たちもまだ多くいる。
だがそれでも! 自らの能力を晒し、幾度となく自分を殺した者を放っているのに!
それでも尚大統領は遥か高みから自分とルーシーを見下ろし、支配してくるのだ!!

一体何が大統領の余裕の源となっているのか、最終的に何を目指しているのか。
こんなにも近くに居ながら一つとして真実にたどり着けず、ただ従わされ踊らされている自分の無力さが情けなくて呪わしい。
強要されたとはいえ参加者達を煽り立て、その生命を侮辱したのは事実だ。ならばこの結果は大統領に立ち向かう事もできず、
せめてと自分ひとりの願いを叶えようとしたエゴへの罰なのか。



「ルーシー…………………ル………シ……………… …… …」



誰にも届くことのないつぶやきは細く切れ切れに暗闇に響き渡り、溶け、消えた。

942今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:43:20 ID:KfpvK.GM
◆ ◆ ◆



「本当に気持ちの良い空だな。高く澄み渡っていて……」


大聖堂の正面バルコニーからの思いがけない素晴らしい景色を目に焼き付けながら、吉良は先程までの出来事を思い返す。。


あの時スティールがわざと自分に見せたディスプレイには監視カメラによるものだろう、何十もの映像が細かに切り替わりながら会場のどこかしこを映していた。
確認できたのは空条邸前に集まっているグループと、煙が見える位置のどこかの路上らしいグループ、
さらにサン・ジョルジョ・マジョーレ教会の地上と地下ではそれぞれ戦闘が行われているようだった。
それを踏まえて吉良は教会や空条邸の煙を見渡せるサン・ピエトロ大聖堂を選んだ。
慣れ親しんだ町に、自宅に全く未練が無いと言えば嘘になるが、地下通路が存在しない点ではこのヴァチカン市国一帯も杜王町と同じく
安全なエリアと言えるし、何より空間を転移することで自分の足跡を完全に消し去ることに成功した。これでしばらくは時間を稼げる。

「『スロー・ダンサー』か。名前だけじゃあどんなものか想像がつかんな」

ひとしきり景色を堪能してから渡された封筒を開けると、追加の支給品は二枚あった。
一枚は確認しただけでしまい込む。問題は二枚目だ。中身を記した印刷の文字の下に、手書きでメッセージが添えられていたのだ。

『ジョニイ・ジョースターに渡せ。彼だけが使える』

封筒を渡す手から感じた震えと同様に荒れた文字からは、スティールが大統領に無理矢理従わされていて、事態が逼迫している事が読み取れた。
おそらく監視の隙をついて仕込まれたメッセージは、『どうか大統領を倒してくれ』といったところだろう。
直接中身を見れば使い方がわかるかもしれないが、紙に戻せない以上迂闊に開ける事は出来ない。仕方なくこれもしまう事にした。
そしてジョニイ・ジョースターに接触するかどうか。これについては慎重に判断しなければならない。
スロー・ダンサーを使うことで大統領のところに辿り着ける、あるいは倒せる可能性が上がる。嘘ではないだろうしそれなりにメリットもあるが、
だからといって安易に接触できない理由がある。

943今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:44:49 ID:KfpvK.GM
吉良の目は捕えていた。
ディスプレイのひとつに映る空条邸の前に集まった参加者たちの中心に居た、忘れもしない空条承太郎の姿を。
あそこにいた正確な人数まではわからなかったが、少なくとも敵対している者同士の距離の取り方ではなかった。燃えつきたと思っていたポリタンクを
囲んでいた事からも、あれが火事ではなく放火である事に感づいていると思った方がいい。
そしてもし、あの一行の中にジョニイ・ジョースターがいたならば、最悪接触した途端に問答無用で攻撃の対象となるだろう。

――杞憂、という言葉がある。
古代中国の杞の人間が『もしも空が落ちてきたらどうしよう』と、ありもしない可能性を心配した挙句に衰弱してしまったという故事にちなんだ言葉だ。
こと自らの殺人を隠し通すことに賭けて吉良は絶対に近い確固たる自信を持っていた。持ち前の高い能力とキラー・クイーンの力をもってすれば
犯行の露見など有りうるはずも無いのだし、そのような事態はまさしく『杞憂』だったからだ。昨日までは。

吉良はしのぶの右手に目をやると、すこし表情を和らげた。

「ん、ああすまないちょっと考え事をね―――他の女の事なんて考える訳ないだろ? ほら、そんなに拗ねるなよ」

ついに吉良にとっての杞憂は杞憂ではなくなり、空は今にも落ちてこようとしている。
この時間はおそらく自分にとって最後の「平穏」だ。吉良吉影は重々理解している。だから今は彼女とこうしていたかった。
胸に湧き上がっていたどす黒い気持ちを静めるとしのぶの右手首を一瞬強く握り、次に優しく両手で包み込んで口元へと運ぶ。

「しのぶ……」

彼女の人差し指をゆっくりと下唇に押し付ける。そのまま指を滑らせると今度はつるりとした爪で上唇をなぞる。

「君は……ステキだ……」

幾度かの往復ののち薄く開いた口で彼女を迎え入れると、待ちかねたように指全体を愛撫し始める。
歯でなぞって硬い骨の形を確かめ、薄い肉をこね回し、吸い、また歯を当てて。
甘噛みするたびにぎこちなく動く指の感触を楽しみながら第一、第二関節の皺を緩急をつけながら舌で舐め擦ってゆく。

シャブッ

チュパチュパ

ペロン、ペロンペロン

舌の動きは初めはゆっくりと、しかしだんだんと熱がこもったものに変わってゆく。合わせるように息が荒くなり鼓動が早鐘を打つ。
まるで自身の興奮と熱を分け与えるかのように吉良は甘やかな彼女を味わい続けた。



◆ ◆ ◆

944今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:47:32 ID:KfpvK.GM

「不要だと思ってはいたが、捨てずにとっておいて良かった。君の趣味じゃあないかもしれないが――プレゼントだ」

空条邸で回収した支給品を一枚開いて宝石のついた指輪を取り出すと、優しく薬指に嵌めてやる。
しのぶの年齢を重ねた手には少しデザインが若すぎるかもしれないが、吉良の目にはとても似合っているように見えた。
特別形が良かったり美しい訳でもない。というか、そもそも好みな訳でもない。それなのにこの手には惹かれるものがある。
あたたかくて……安らぐような。
この『彼女』に比べればサンジェルマンの袋に入れたままの『彼女』のことなど、もはやどうでもいいことだ。

「これは平穏を望む私の主義に反することで非常に不本意ではあるが、私は大統領を排除しなければならない敵と認識した。
 今の状況から奴に辿り着くのは困難なことだろうが、自分への試練と受け取ったよ」

大統領のあの余裕ぶりからして、おそらくスティールの工作にも気付いている可能性が大きい。
参加者に対してあれだけの監視体制を敷いて管理しておきながら、忠誠心の無い部下を信用して野放しにしておくような低能のはずはないからだ。
いかにして空条承太郎達の目をかいくぐるか、リスクを冒してでもジョニィを探し出し接触するか否か。
大統領の能力だけでは説明のつかない事象も多々見受けられる。課題は山積みだ。

このゲームの真なる主催者、合衆国大統領ファニー・ヴァレンタイン。
自分の本性を知ってしまった男。
スタンド能力を自ら晒し、情報を与えてきた男
犯行をバラしはしないと慈悲を与えてきた男。
空条承太郎、カーズ、DIO。彼等には敵わないと言い切った男。
高みから見下ろしながら一連の屈辱を浴びせかけてきたあの男には、もはや死をもって償わせる以外道はない。
吉良にとって大統領はもはや承太郎以上に憎き存在となっていたのだ。

945今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:48:57 ID:KfpvK.GM
ふと繋いだ右手首に目をやると、指輪がきらりと光る。

(まだ、殺すのですか?)

そう言われたような気がしたが、即座に頭から消した。少し悲しそうに見えたのも、気のせいだ。

(私はもはやほとんどの参加者の中で「殺人鬼」として扱われていてもおかしくない。このイカレたゲームのルールとして強制されているとはいえ、
 そもそも殺人とは社会的に許されない行為であり殺人者は裁かれるべき対象だからだ。私は当然それを正しく認識しているからこそ、
 今まで気を使って暮らしてきた……不幸にして人を殺さずにはいられないサガを背負ってはいるが、それでも、そう生まれついてしまった事
 自体は決して『悪』ではないし『罪』でもない筈だ!)




「君と一緒に脱出したいんだ。私について来てくれ―――できればその先も、ずっと」




何故それを生きている彼女に言えなかったのか。
全てをさらけ出したとしても彼女ならばきっと、ほんの少し悩んで、そしてついて来てくれただろうに。
愛をもってこれまでの罪も受け入れ、共有してくれただろう。
彼を善き方角へ導く聖女となり得たかもしれないのに。
何故? どうして?









――――それは彼が『吉良吉影』だから。

946今にも落ちてきそうな空だから手を繋ごう ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 02:49:48 ID:KfpvK.GM

【C-1 サン・ピエトロ大聖堂 / 一日目 午後】

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(大)、全身ダメージ(小)疲労(小)
[装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着)、
[道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、
    地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2〜3(しのぶ、吉良)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.大統領を殺す。
1.空条承太郎を殺す。
2.優勝を目指し、行動する。
3.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。
※バイクは一緒に転送されて、サン・ピエトロ大聖堂の広場に置かれています。
※吉良が確認したのは168話(Trace)の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、
  地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。
※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。

支給品紹介
【結婚指輪】
ドルドに支給。

アナスイが寝ている徐倫にこっそりはめようとしたが、寝ぼけた徐倫に窓から投げられてしまった指輪。
せっかく大金はたいたのにあんまりである。

現在は川尻しのぶの右手首に嵌まっている。

947 ◆HAShplmU36:2015/03/07(土) 03:08:35 ID:KfpvK.GM
以上になります。
改めて、長期間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
今後はなるたけ書き溜めた状態で予約するようにします。

今回吉良吉影というキャラが自分の中で思いのほか動いてくれなくて苦戦しました。
結局進展したようでしてないような? あと唯一ハブられてるジョースター、ジョニィにフラグっぽいのを。
オエなんとかさんは大好きです。
ご指摘あれば、よろしくお願いします。

948名無しさんは砕けない:2015/03/07(土) 21:29:29 ID:XJLl4YGM
仮投下乙です。

主催者サイドと最初に接触したのがまさかの吉良という……(ミラションは死亡したので除外するけど)。
サバスの矢もうまく設定出来ていて面白かったです。
「されど聖なるものは罪と踊る」の聖女というフレーズがここでも踏襲されてるのは感慨深いものがありますね。

本投下待ってます。

949名無しさんは砕けない:2015/03/09(月) 02:54:23 ID:b6BCiMi.
仮投下乙です。吉良vsサバスとの戦いと思い込んでたらまさかの主催組でテンション上がりました。
質問なんですがポルポのライターはどのような扱いになっているのでしょうか?
転送前のE-7に置き去りか、主催組が回収したとか、そんな感じですか?

950 ◆HAShplmU36:2015/03/12(木) 00:27:31 ID:pQwY4pMk
感想ありがとうございます。
ライターは主催組が回収しました。本投下の際に情報を追加しときます。
放っとくと役目を終えたアイテムの事をすぐ忘れてしまうので反省しなければ。

Catch The Rainbow......でプッチがホットパンツの事を聖女と称していたのが印象に残ってたので、
自分の作品内でも使わせていただきました。六部DIOの雰囲気は七部キャラとの親和性が高くていいですね。
では、今週末にでも本投下いたします。

951 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:37:16 ID:XJAKOqEo
自分の都合上、投下が出来るかどうかわからないんで 少し早いんですが「第三回放送」案① 投下します。

952 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:37:55 ID:XJAKOqEo
これより第三回放送を開始する。調子はいかがだろうか、諸君。
ただいまより、禁止エリアと脱落者の発表を行う。
それではまずは禁止エリアから……。メモの準備はよろしいか? それでは……―――

第三回放送の禁止エリアは

 19時より B-2
 21時より E-7
 23時より G-6

19時より B-2。21時より E-7。23時より G-6。以上三ヶ所だ。
続いてこの六時間での脱落者の発表を行う。脱落者は全部で26名……―――

チョコラータ     ホル・ホース
ヌ・ミキタカゾ・ンシ  グイード・ミスタ
ビットリオ・カタルディ ディ・ス・コ
サーレー        虹村形兆
ウィル・A・ツェペリ   ラバーソール
ジャイロ・ツェペリ   モハメド・アヴドゥル
ドルド         川尻しのぶ
ビーティー       タルカス
ペット・ショップ    ヴァニラ・アイス
マッシモ・ヴォルペ   スクアーロ
ブラフォード      F・F
ジョンガリ・A     花京院典明
東方仗助        DIO

以上の26名だ。

さて、賢い君たちは気づいたことだろうが……ついに残りは30名となった。
ゲーム開始当初の五分の一、20%だ。
段々と傷も増え、心は疲弊し、絶望に足が絡め取られてきている参加者もいるのではないかね?

しかし、怯えることはない、参加者諸君。今の時点では、チャンスはまだ、誰にでもある。
闇夜は襲撃を覆ってくれる最大の味方となるだろう。賢く戦うのだ。
そうさなァ……あえて観戦者として助言を与えるとしたならば……カバンをチェックしたまえ。名簿を見よ、地図を見よ!
さすれば与えられんだろう……おおいなる、勝利の約束がね!

今まさに、このバトル・ロワイアルは大きく動こうとしている。
もはや誰も止めることができないい大きなうねりに飲み込まれ、激しく生まれ変わろうとしている。
君たちとまた、こうやって6時間後に無事会えることを願っている。

それでは、また会おう。スティーブン・スティールが放送を担当した。



―――――― ブツリ





953 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:38:23 ID:XJAKOqEo




放送を切ると、スティールは顎の下で手を組み直した。目線の先には壁一面に広がる無数のディスプレイ。
埋め込まれた画面にはリアルタイムで参加者たちの動きが中継されている。
青く、妖しい光がスティールを照らす。スティールは熱心に光を見つめている。まるでその青い光をこの手にしようとしているかのように。


「しゃべりすぎだ、スティール」


彼の後頭部に冷たい金属が押し付けられるまでは。


「…………」
「『うねり』『観戦者』『カバンをチェックしろ』『ヒントは名簿と地図』『スティーブン・スティールが放送を担当した』
 どれも自分が部外者であることを示唆した言葉だ。“我々”の計画を大きく狂わせかねない、重大で意図的な過失だ」
「…………」
「慎重な君にしては……、いや、臆病者の君にしてはあまりに投げやりすぎる態度だ。
 一流のプロモーターが聴いて呆れる……。計画をこんな中途半端な形で放り投げるつもりか?」
「…………―――白々しい」
「……なに?」

後頭部に銃を突きつけられたこの状況で……いや、突きつけられたこその、開き直りだろうか。
スティールのなかで芽生えたのは自棄に近いものだった。

「ジョニィ・ジョースター、ディエゴ・ブランドー、ルーシー・スティール……なによりあの『お方』ッ!
 放り投げる? 計画を狂わす? どうせ私の反乱も計算済みだったのだろうッ!
 最初から途中で告げる気だったのだろうッ! 違うかッ?! いまさらとぼけるのは寄せ、ヴァレンタイン大統領ッ!」

怒りのまま振り向こうとしたが、頭に押し付けられた銃を思いだし、冷静さが戻る。
死への恐怖を思い出したのではない。自分の言いたいことも言えずに死ぬ。それだけは嫌だ!
スティールは自らの『納得』のためにほんの一時だけ呼吸を整えた。


「……お前は、いや―――『お前たち』は一体何をしようとしているんだ?」
「…………」


沈黙はたっぷり一分間は続いただろうか。
不意に後頭部に当てられていた感触が消えた。かわりに労いを込めた、柔らかな手が肩に置かれる。

「……少し疲れているのだろう。ここは冷える。部屋に戻って休息をとり給え」

そう言ってヴァレンタインは肩にかけていた上着をスティールの上に『被せた』。



「永遠の休息をね」



そして再びヴァレンタインが上着を持ち上げたとき、そこには埃一つ残っていなかった。

「『D4C(いともたやすく行われるえげつない行為)』……」

ハンカチを取り出すと、座席を払う。ヴァレンタインは空になった椅子に座り、脚を組んだ。消えさった男のことなんぞ、もはや雨粒一つ興味がなかった。
今の彼に興味があるとすれば……ヴァレンタインはディスプレイに映る参加者たちに熱い視線を注いだ。

「空条承太郎、吉良吉影、ジョルノ・ジョバーナ、ジョニィ・ジョースター。そしてわずかながらディエゴ・ブランドー……」

名を挙げながら手元の名簿をなぞっていく。その手つきには愛情といっていいほどの優しさが込められている。

「『適正者』はこれぐらいだろうが……君の意見を聞こうか」

しばらく黙り込んだ後、突然後ろを振り向くとそう呟いた。視界の先には永遠に続くような闇が広がっている。
ヴァレンタインの呟きは反響し、底なしの彼方へと消えていく。
だがヴァレンタインは知っている。
彼がこちらを見ていることを。彼がこちらに耳を澄ませていることを。



「ミスター・ヒロヒコ・アラキ?」



暗闇から姿を表した東洋人の顔には、モナリザのような美しい笑顔が張り付いていた。




【スティーブン・スティール 死亡】

954 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:38:39 ID:XJAKOqEo
以上です。

955 ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:05:26 ID:CstgstFE
c.g氏、投下乙です。感想もろもろは全て終わってから改めて。
では私の方も投下させていただきます。

956暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:06:42 ID:CstgstFE
……君らには何度か『強さ』とは、『勝利』とは、そういった事について語ってきたな。
で、だ。俺自身も完全に失念してたんだ。君らに話すのを。『敗者』について。

――え?あぁ、確かに話したけども。それとはまた少し違うんだよ。
あくまで俺の中での定義とはいえ“どんなやつを敗者と呼ぶか”は確かに話した。だが――だが。

敗者というのは、一度負けたらもうずっと『敗者』で居るしかないのか?
一対一の決闘ならまだしも、ただひとりの勝者に対して大多数の敗北者が出るような事はザラにあるだろう?だというのに?

これに関して君らにふたつの言葉を紹介しよう。
『飲茶視点』と『モトベが強くて何が悪い』
どちらも一度、あるいはそれ以上に敗北を経験したものだが……

――おっと、時間が来たようだ。始まるぞ。さあ、耳をすまして、彼らの声に耳を傾けよう。

957暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:07:57 ID:CstgstFE
●●●


時刻は18時、日も沈み、闇が顔を出すこの時間に、第三回放送をさせてもらおう。

君たちも気になるであろう情報をまずは開示しようではないか。
さあ、この六時間で命を散らしていった敗者たちの名を心に刻みたまえ。

チョコラータ…… ホル・ホース…… ヌ・ミキタカゾ・ンシ……
グイード・ミスタ…… ビットリオ・カタルディ…… ディ・ス・コ……
サーレー…… 虹村形兆…… ウィル・A・ツェペリ……
ラバーソール…… ジャイロ・ツェペリ…… モハメド・アヴドゥル……
ドルド…… 川尻しのぶ…… ビーティー……
タルカス…… ペット・ショップ…… ヴァニラ・アイス……
マッシモ・ヴォルペ…… スクアーロ…… ブラフォード……
F・F…… ジョンガリ・A…… 花京院典明……
東方仗助…… DIO……


以上、26名が――敗者となった。

さて……今回は早速の情報開示となったので、今、このタイミングで私の話を聞いてもらいたい。

彼らの名を挙げる際、私は彼らのことを『敗者』と呼んだ。『死亡者』ではなく――それが何を意味するのか。

私はかつて……ある大レースのプロモーションをしたことがある。
そのレースも勝者はただのひとり。その他の3851人はリタイアしたものも、死亡したものも、全てが等しく敗者だった……

――それらの世論と私の考えは少し異なる――いいか、よく聞けッ!

真の『敗者』とはッ!
挑戦の心を忘れ!その結果、何者にも“想いを残せなかった者たちの”事をいうのだッ!

先に挙げた名は――確かに死亡した者たちだ。その中に何人の『敗者』が居るのか……私には決めかねる。
ゆえに全員をそう呼んだ。もちろんそうではないことを期待しており……

そして、この私、スティーブン・スティールは絶対にこのゲームの『敗者』にならないことを此処に宣言するッ!

この殺戮の舞台に渦巻く意思、戦い、犠牲、そして勝者たちを纏め上げ――


全てを己の手中に収めようとせんアメリカ合衆国大統領、ファニー・ヴァレンタインを打ち倒すために皆の

958暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:08:48 ID:CstgstFE
●●●


たった今――カエルをひっぱたいたような音を立てたのは、ついさっきまで喋っていたスティーブン・スティールの頭だ。私の横で潰れている。


さて――紹介に預かった、ファニー・ヴァレンタインだ。
こんなタイミングで諸君に私の存在を明かすことになったのはいささか不本意ではあるが、仕方あるまい。
すでに我々と接触した参加者もいることだし、いずれこうなることは分かっていた。とも言える。

先のスティーブンのセリフだが……確かにそうだ。こんな大々的に皆に思いを伝えて死んでいったのだ。
彼を敗者と呼ぶべきではない。とても良い死に方をしたといって良いだろう。

そして同時に私の立場を著しく危険なものに変えた彼を私は許しはしなかった。ゆえに私が自ら手を下したのだ。


それから。


私の立場が危うくなったように、君らにもこの6時間は危険な綱渡りをしてもらおう。


次回の放送までの6時間で設定される禁止エリアを明かさないことにする。


いや――厳密に言うなら、私も知らないのだ。
実は、この放送は『禁止エリア設定と承認』をスイッチの一部に組み込んであってな……ゆえに禁止エリアが発生しない放送というものは存在しない。放送できないのだ。
そして、それを一手にになっていたのがスティーブン・スティールだったというわけだ。
無論、調べればすぐにわかる。だがそれはこの放送が終わってから一人でゆっくりとさせてもらおう。

今から1時間後、3時間後、5時間後の3箇所。確実に作動はする。スティールのこと、意味のない位置を設定することはしなかったろうが――
6時間後の放送で“事後報告”をさせて頂く、とだけ伝えておこう。


次回の放送には誰か代役を考えておく。楽しみにしていたまえ。


【主催者:スティーブン・スティール 死亡】

959暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:09:29 ID:CstgstFE
●●●


――いやぁ、まさかこんなことになるとは思っていなかった。君らに話そうと思っていたことをまんま彼らが話すとは。

そう。敗者と一口に言ってもだ。要は『負け方』こそが重要だと。そういうこと。

先に挙げた二つの言葉に話題を戻すけど……
一度敗北を味わった自分に限界を見つけてしまい、強さのインフレについていけなくなったもの。
たった一度の敗北に甘んじることなく自分の強さを大勢に、強烈に印象づけることができたもの。
前者は“想いを伝えられなかった”ものだし、後者は“伝えられた”ものだと俺は解釈している。

いや待てよ――想いを伝えるだとかいう表現だと少々語弊があるか?
要は『みんな見ろよ、俺はこの場にしっかりと立っていたんだぞ』と言えない奴が敗者だということ。かな。


さて、この放送で名の上がった者たち、無論主催者たちを含め、という意味だが。
一体何人の『敗北者』がいただろうな?……君らも考えてみてくれよ。


しかしなんだな。この話は放送のタイミングではないところでしておきたかった。
だって、俺が彼に話したこと、一言一句おんなじように言うんだもん。自分のセリフのように。悔しいったらありゃしない――

960暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:11:05 ID:CstgstFE
以上で投下終了です。

タイトルの『暴挙』は、放送で全てを暴露しようとしたスティーブン。それを始末し、自ら名乗りを上げた大統領。
そして――禁止エリアの設定をぶん投げた私自身の三者にかけてありますw

もちろんこの『エリア設定無視』は議論の対象になるでしょう。投票するまでもなく反則だとなれば素直に身を引かせていただきます。
・・・が、まさか主催者が死亡するネタがかぶるとは思いませんでしたなあw

諸事情で数日感PCを触れなくなるのですが、皆様のご意見、お待ちしております。

961葛藤 その1 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:48:26 ID:6nNkAgf.
さて、君らに質問するのは何度目になるかな――おいおい、聞く前からそういう顔をするなよな。
とにかく聞くぞ?今回の問題は……

『君らは何かに“迷った”ことはあるか?』だ。

――え?「今この答えになんて言うか迷ってる」?
それは違うだろ。俺に言わせるなら、それは“悩んでる”んだ。
答えが全くないところから導き出す『悩む』と、
いくつかの答えがあり、そこから選択する『迷う』じゃあ、結構違うと思うぞ、俺は。

ま、とにかく今回はそういう話だ。迷わずに聞いていってくれると幸いだな。
もう一つ聞いておきたいこともあるが――まあ、それは後にしようか。


●●●


「まったく――いつまでそうしているんだ?」
指をこちらに突きつけたまま動かないジョニィに対しため息混じりにそう呟いた。

「お前を倒すその瞬間まで、だ」
瞳に映る漆黒は『倒す』よりむしろ『殺す』と、そう言っている。しかし――

「だったら早く撃てばいいじゃあないか。
 このDioを殺して上の戦いに加勢するんだろう?
 ジョナサン・ジョースター。
 ジョセフ・ジョースター。
 クウジョー・ジョータロー。
 トウホウ・ジョージョ――ん?ヒガシカタ・ジョースケだったか?ククク……
 ジョルノ・ジョバァーナ。
 クウジョー・ジョリーン。
 どいつもお前と同じじゃあないか。なあ?『ジョジョ』ォッ?」

「僕のことをその渾名で呼ぶんじゃあない。
 大体、お前が黙って撃たれるとも思ってないからな……」

安い挑発には乗らないか。まあ知ったことではない。そして今のやりとりでハッキリと理解したことがある。
『コイツは“今すぐに”撃つ気はないらしい』。

「ほう――それは褒め言葉として受け取っておこうか。だったらオレは、その“信用”を逆手にとって、少しノンビリさせてもらおう。
 ここでお前と戦っても負ける気はないが、そのせいで直に始まる放送を聞き逃しちゃあたまらないからな。
 上での戦いの決着、オレは放送を介して知るとしよう」
そう言ってワザとらしく伸びをしてみせる。ジョニィの警戒の眼差しは変わらないが、指先が少しだけ下を向いたのを見逃す俺ではない。

「悔しいが、放送を聞き逃したくないのは僕も同じだ。
 だが、そう言って隙を見せるフリをするのもいいが、狙われてることを忘れるなよ」

「ああ、肝に銘じておくとしよう」


●●●

962葛藤 その2 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:49:40 ID:6nNkAgf.
オイ――

「ホウ、どうやら決着はジョースター一行の勝利だったようだな。おめでとう。なぁジョジョ――っと、この渾名はタブーだったか?フフ」

オイオイ――

「しかし驚いたな。いや、これはマジだ。貴様がジャイロ・ツェペリの死に全く動揺を表さないとは」

オイオイオイ――

「もっとも、問題なのは禁止エリアか。こればっかりはこのDioもお手上げだな。さてどうしたものか」

オイオイオイオイ――

「なんとか言ったらどうだ?指先がすっかり見当違いの方を向いているぞ?ジョニィ?」

……――

「貴様が動かないならこちらから動くとしようか、どれ」

「――動くんじゃあない。動いた瞬間に撃つ」
やっと絞り出すことができた一言は随分と在り来りなセリフになってしまった。

「おっと、やっと整理がついたかい?それにしちゃあ、随分間抜けな顔をしているぞ、ジョ――」
「ジャイロの死は僕がこの目で確かめた。そしてその『意思』は今僕のこの手の中にある。
 そして、お前こそ『ディオ』の死に驚いてないようだ。最初からこうなることがわかってたんじゃあないのか?」
「まさか。そんな訳ないだろう?さっき言ったとおり、オレはお呼びじゃあなかった。だからその先は知ったこっちゃあないのさ」

短い会話の中でもチラチラと視界に入るディエゴの牙がワザとらしい。
だがそれを気にしている場合じゃあない。問いたださなければならないことがある。
「それからもう一つ……お前はさっき『放送を待つ』と言ったな?
 それは“こうなること”を知っていたのか?」

……ディエゴはこれまたワザとらしく大きなため息をついた。
「スティール氏が殺されて大統領が表舞台に顔を出したことについて言ってるのか?それこそまさか、だ。
 ま、オレに言わせれば遅かれ早かれ“こうなること”は目に見えていたってところだな」

たしかに大統領ならやりかねない。しかしそれを放送の場で、つまり自分自身を危険にさらすような真似をしたことになる。
それが何を意味するのか、ディエゴを警戒しつつも頭の中で考えがぐるぐるとループする。

「ともあれ、だ。こうなった以上オレにはこの場にいる理由がなくなった。
 もし貴様がオレを撃つ気がないのなら――いや、いずれにしてもと言うべきか。サッサとしてくれ。
 オレには『行って、確かめるべきこと』が出来たもんでな」

思考を遮ったのはそんなディエゴの一言だった。
今コイツは何と言った?確かめる?まるで明確な目的地があるかのような言い方だ。

「どういう――意味だ?」


●●●

963葛藤 その3 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:50:22 ID:6nNkAgf.
たまらずジョニィのやつが質問してきた。そりゃあそうだろう。
オレが自分からその考えを話そうとしていること、その意図が分かりかねると言った感じだ。
もちろん、文字通りにその考えそのものを知りたいということもあるだろうが。

手札を切るべきは今、このタイミングだ。間違ったらこのオレとてただではすまない。無論、負けはしないが。

「聖人の遺体」

たった一言、というより単語一つ口にしただけでジョニィが思い切り目を細める。実にわかりやすい。

「おっと――その前にその物騒な爪の回転を止めてくれないかい?
 せっかくこのDioが今回の放送を踏まえての考察を話してやろうと言うんだ。対等な状態での会話をしたいもんだな。
 もちろん恐竜たちに襲わせるような真似はしない。もっとも、この場にはさっきお前が撃ち殺した以外の恐竜はいないが」

ジョニィは顔を動かさず視線だけで左右を確認し、ゆっくりと手を下ろす。
「話を聞く間だけだ。聞き終わったらその瞬間襲ってくるような真似をお前はやりかねないからな」

「フン――どう思おうと勝手だが、そのピリピリの警戒心でマトモな思考ができるものか。
 まあいい。話してやろう。

 聖人の遺体。さっき俺はそう言ったな?
 どうも『上で戦ってた方のDIO』はそれを“この会場内で見つけた”らしいぞ?
 そしてこう言ったのさ。
 
 『あえて助言を与えるとしたならば……カバンをチェックしたまえ。名簿を見よ、地図を見よ!
  さすれば与えられんだろう……おおいなる、勝利の約束がね!』

 ……とな。そこで俺はピンときた。
 主催者は――いや、大統領はと言うべきか。奴は聖人の遺体を支給品に紛れ込ませている、と」

反論やら何やらを挟ませず一息に言い切り、ジョニィを見下ろす。
立ったままのジョニィを座っているオレが見下ろすというのも妙な表現ではあるが、この場ではオレが『上』だ。
無論、自分が今『左目』を持っていることなど言うわけがない。言う必要がない。

「つまり、大統領はこの殺し合いを介して聖人の遺体を参加者に集めさせている」
ジョニィの顔にじわりと汗が浮き出すのがよくわかる。しかし――

「ハズレだマヌケ……いや、半分は正解という方が正しいかなァ?
 お前ほどの男ならすぐに気付くと思ったぞ。もっと根本的なことに。
 もう一度言うぞ。大統領は聖人の遺体を支給品に紛れ込ませている。
 
 つまり――

 奴は『一度全ての部位を集めきり』、そして『もう一度それをバラバラにして』支給品にした。

 ――そういうことだろう?まさかこのゲームを始めたら勝手に混じってましたなんて事はあるまい?
 スティーブンのやつにできる芸当だとも思えない。話が逸れるが、スティーブンが消されたのも、そういった部分を知りすぎたということも要因じゃあないかと思う」

964葛藤 その4 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:50:49 ID:6nNkAgf.
細められたジョニィの目が今度は大きく見開かれる。オイオイ、マジで気付かなかったのか。
まあ、オレ自身もこの推測に至ったときは自分で自分の考えに冷や汗をかいたものだが……

「か、可能性の一つでしかないッ!なにより大統領の意図が読めないッ!
 そして……それがお前の『行って確かめる』に繋がるとは思えない!
 僕相手に交渉したかったらもっとハッキリ言ったらどうだ!?」

「フン、ハッキリ言ったら言ったで何かと疑うだろう、貴様らは。
 そして大統領の意図なんかオレにだってわかるものか。そんなものは本人に聞け。しかしせっかくだから言ってやろう。

 『ルーシー・スティールの身柄を確保している』

 安全は保証してある、何しろ恐竜というボディーガードがついているんだからな」

ジョニィがハッとしたように腕を持ち上げ、再びオレに指先を向ける。
爪は……まだ回転していない、か。
「ルーシーだと……?
 スティール氏が殺された現状、彼女に向けられる視線と攻撃はどうなるんだ?まさかお前の恐竜が守るとは僕には思えない」

「話は最後まで聞くんだな。
 たしかに俺の可愛いペットたちを危機に晒してまで敵の攻撃からルーシー・スティールを守る気はないさ。
 だが――みすみす死なすのも勿体無い。お前がどこまで知ってるかは疑問だが、彼女は一度は遺体に見初められた存在だからな」
話をやや深いところまでシフトさせる。言いすぎたなどとは思っていない。
ここまでくればジョニィのヤツは勝手に俺の言い分を推測し、それを口にしてくる。

「遺体が彼女のもとに集まると言いたいのか」

まったく――まったくもって予想通りの回答だ。

「好きに解釈してくれて結構だが、ここから先は貴様の決断だ。
 このまま放っておけばルーシーは死ぬだろう。敵の攻撃はともかく、少なくとも禁止エリアの危険が(ま、これは参加者全員だが)ある。つまり何が言いたいかというと……

 お前が合流すべきは、

 『上でディオとの戦いを終え、満身創痍にしてるジョースターの連中』なのか。

 それとも、

 『このディオの下にいて、危険にその身を晒すルーシー・スティール』なのか。

 ……さあ、どうする、ジョニィ・ジョースター?」


●●●

965葛藤 その5 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:51:22 ID:6nNkAgf.
さて。ここで君らにもう一つ質問しよう――まあ、この話を聞いてる以上はわかると思うけど。

『迷ったとき、君達なら一体どうするか?』

結論から言うと――ジョニィ・ジョースターはディエゴ・ブランドーを撃たなかった。撃てなかった訳ではないのに。

つまりはそういうことさ。ジョニィの精神の――心の中には一つのルールがある。

『迷ったら、撃つな』
それこそ遺体である“お方”から直々に言われたんだ。守らなきゃあバチが当たるってもんだ。

あの瞬間、間違いなくジョニィの心は迷った。ゆえに撃たなかった。
そして現在――ジョニィはディエゴの後を付いて地下のある場所を歩いている。
余裕綽々で無防備な背中を晒すディエゴも流石だが、これはやはり彼なりの確信があるんだろう。

だが戦況とは刻一刻、というより一瞬先には状況が180度ひっくり返ってることだってある。
つまり――この先、ルーシーと合流したら、あるいはそれ以前だろうと。どこでジョニィの迷いがなくなるかは誰にもわからないってことさ。


ちなみに――俺は迷ったら、迷いながらも前に進もうとするだろう。結果として失敗することや後悔することばかりだけどな。
迷った時に『進む』でも『来た道を戻る』でもなく『立ち止まる』選択ができる人たちが羨ましいよ、本当。

――え?聞いてない?あ、そう……

966葛藤 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:51:49 ID:6nNkAgf.
【D-3 南西部(地下) → ??? / 1日目 夜(放送数十分後)】

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1 → Act2 → ???
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(ほぼ回復)、困惑&驚愕、ディエゴに対する疑念
[装備]:ジャイロのベルトのバックル
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロの無念を――
0.ディエゴに同行、ルーシー・スティールと合流する
1.しかしディエゴは信用できない。同行は監視を兼ねたもの、迷いが晴れたら撃つ――?
2.ジャイロ……すまない。 バックル、貸してくれ
  そして放送、一体今どうなってるんだ!?
3.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
4.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。僕と彼との関係は?
[備考]
1.Act3が使用可能かどうかは次の書き手さんにお任せします。
2.また、ジョルノの蛍から目を離したのでAct2の使用がやや困難かもしれません
  (抜け目なく蛍を確保しているのか、ディエゴの恐竜を見るのか、または……?以降の書き手さんにお任せします)
3.空条邸にてジャイロの死体を確認。そこからベルトのバックルを入手しました。


【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+?
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康、自論(仮説)に自分で驚愕
[装備]:遺体の左目、地下地図
[道具]:基本支給品×4(一食消費)鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球
    ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2
    カイロ警察の拳銃(6/6) 、シュトロハイムの足を断ち切った斧
    ランダム支給品11〜27、全て確認済み
   (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、承太郎、花京院、犬好きの子供、仗助、徐倫、F・F、アナスイ、ブラックモア、織笠花恵)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る
0.ジョニィを言葉でねじ伏せたぞ、ククク……
1.ルーシー・スティールのところに行き、遺体の情報、その真相を確認
  放送の件も含めてルーシーから情報を聞き出す。たとえ拷問してでも
2.なぜかわからんがDIOには心底嫌悪を感じた、特に遺体なんて絶対渡したくなかった。死んでくれてなによりだ
[備考]
1.ルーシーには監視役の恐竜を付けて別行動中です。居場所は(何事もなければ)常に把握しています。
  (※ジョニィをまっすぐルーシーのもとに連れて行くとは言っていない)
2.DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。
3.協会地下に散乱していた支給品は全てディエゴが『奪い』ジョニィは自分の持っていた道具以外何も手にしていません。


[二人の備考]
・現在、ディエゴが場所を知っているというルーシー・スティールのもとにたどり着くため地下通路を移動中です。
 移動経路、合流場所等はのちの書き手さんにお任せします。
・とは言っても、お互いがお互いを信用している訳ではないので、いつ崩れるかわからない同盟関係です。
・二人が立ち去ったことは教会で戦っていたジョースター一行には気づかれていないようです。少なくとも二人は伝言や書置きなどを残してはいません。

967葛藤  ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:52:09 ID:6nNkAgf.
以上で仮投下終了です。
◆HAS氏が遺体について多少の言及をするそうなので、それを踏まえ先に私の投下とさせていただきました。
私のSSにもチラッと遺体の話題が出てきましたが、いかがでしょうか。
そのへんの内容、あるいは作中の矛盾等等、ご意見、ご指摘ありましたらコメントください。お待ちしております。

968 ◆HAShplmU36:2015/10/15(木) 14:04:55 ID:SZ2KNnHA
仮投下乙です。
また、こちらの話へのお気遣もいいただきましてありがとうございます。
遺体の描写については特に矛盾もなく、むしろよりスムーズに繋がりそうですので問題ありません。さすがです。
こちらのルーシーはもう少し時間が進んでいますが、まさかジョニィとディエゴが連れ立って行動するとは思わなかったので
その辺を踏まえた描写を加筆したのち仮投下させていただきます。
散らばりまくった支給品をディエゴは一体どうやって奪ったのか。いちいち拾ってる間ジョニイが黙って見てたとしたら
それはそれで面白いですねw

969名無しさんは砕けない:2015/10/15(木) 23:02:55 ID:wMj8v57c
久々の投下だけど、めちゃくちゃ面白かった
やっぱ投下があるというのはいいなあ

970 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/16(金) 22:59:18 ID:mhh421zU
ご意見ありがとうございます。
支給品のくだりは「余裕綽々で背中を見せる」に繋いでいただければ・・・w
もう少し皆様のご意見やご指摘を待った後に本投下させていただこうと思います。

971名無しさんは砕けない:2015/10/17(土) 14:48:01 ID:e4hFQyiM
ジョニィアカーン!完全に術中に嵌まってるー!
まあ感想は本スレにとっておくとして、特に矛盾などはないと思います。
誤字で>>966のディエゴの状態表の備考3のところで「教会」が「協会」になってます

972ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:23:53 ID:EHvDMBUc

ベッドの上で聞いたその結末に少女は泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、やがて泣き疲れて少しだけ眠り―――――




――――――……そして目を開けた。



◆ ◆ ◆



「え〜DIO死んじまったのか〜」
「お? DIOなんかシラネって感じですぐ興味なくすと思ってたけど案外未練あるんだな」
「おれDIOんトコ戻ったらもっかい死体集めて、でーっかい作品作りたかったんだよう。それにDIOは頭イイし、色々教えてほしかったんだよなあ」
「……」
「なら次はここから近いDIOの館ってとこに行ってみるか。お前の興味を引くものもあるかもしれんぜ」
「死体?」
「あるかもな」
「角砂糖は?」
「たぶん台所には」
「ならいこーぜ!」
「……」
「お前もいいだろ? ああ別にここで別れてもいいんだぜ、妹ちゃんを確実に探し出せるのも監視できるのも俺だけだろうがな」
「……」
「んじゃ決定な」



三人の男たちは西を目指す。



◆ ◆ ◆

973ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:24:48 ID:EHvDMBUc
どうやら眠ってしまっていたようだ。トリッシュは顔にかかった数本の髪を手で払うと傍らに置いていた時計を見て、反射的に飛び起きた。

「もう18時を過ぎちゃってるじゃない!! 放送は? どうなったの!?」
「安心しなよ、俺も玉美もちゃんと聞いてる。トリッシュこそ起きて大丈夫なのか?」
「私ならもう大丈夫よ。それより放送は……」

こちらに、と放送内容の書かれた紙をうやうやしく差し出してくる玉美。さっと目を通そうとして―――4人目の名前に視線が強張る。

(ミスタ……何てこと……)

ショックだった。あまりにも生々しいショックが身体を貫き、トリッシュは再びソファに沈み込んだ。

(彼がいつの時間から連れてこられたのか、私と同じ世界の彼だったのか、わからない……わからないけど)

誤解を恐れずに言うならばアバッキオやブチャラティは既に死んでいる人物で、ブチャラティとの再会と別離は神様が与えてくれた奇跡とでも
美しく飾る事だってできる。だがミスタは他の二人と違う、トリッシュと同じ『今』を生きている人物だったのだ。明日会いに行こうと思えば会えるはずの
人間がいつの間にか死んでしまった。もう会えない、声も聞けないのだ。トリッシュにとっては三度目の仲間との永遠の別れ。慣れる訳が、ない。

「早く読みなよ、続き」

ナランチャが硬い表情で促してくる。
急いで読み進めようとしてミスタの名前以降の筆跡が違う事に気付いた。きっと最初はナランチャが、続きは玉美が書いたのだろう。
そうだった、彼はまだここに集められた人たちの時間や時空の差異を理解しきっている訳ではない。自分以上にショックを受けていてもおかしくないだろうに
取り乱しもせず、ただぎゅっと引き締められた口元が余計痛々しい。
幸いミスタ以外の知り合いは名を呼ばれてはいなかったが、その代わりにスティーブン・スティールの死とファニー・ヴァレンタイン大統領の存在。
更に次の放送までの禁止区域が発表されなかったことと合わせて、衝撃に次ぐ衝撃に別の意味でくらくらしてくる。


「……どうでもいいんだ」
「え?」
「死んだジジイも、大統領ってやつも俺にはどうでもいいんだ」

ナランチャは俯き気味に、自らに言い聞かせるように言葉を噛みしめてゆく。

974ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:25:37 ID:EHvDMBUc
「いきなりこんな変な所に連れてこられて、いろんな奴らが現れてはどっかに消えちまって、未来だとか過去だとかもう訳わかんないことだらけでさ……
 ハハッ、俺今、本当は不安で一杯なんだ。身体のどこかしこがブルっちまってる」

気持ちを吐きだした直後、ナランチャは意を決したようにトリッシュの手を取って立ち上がらせ、そのまま視線を真っ直ぐぶつけてくる。
弱気な言葉とは裏腹に両の腕を掴んでいる手のひらは熱く、震えてはいなかった。 

「俺頭悪りぃから一体何がどうなってるのかさっぱりわかんねえけど、今やらなくちゃいけない事は知ってる。
 俺の任務はトリッシュ、君を守ることなんだ」

ともすれば年下の悪ガキくらいにしか思えなかったナランチャがギャングの、男の顔をしていた。ほんの少し自分より高い目線に、
自分より背が高かったのだとトリッシュは初めて意識した。

「これでチームの中で生き残ってるのは俺とフーゴとジョルノ。今トリッシュの傍には(玉美もいるけど)俺しかいない。
 ブチャラティ程頼りにならないかもしれないけどさ、少しは頼りに、てか信頼して欲しいんだ。だから……今度こそ教えてくれよ。
 俺の知らない事、フーゴとトリッシュが隠してたこと、全部さ」

ナランチャは決して愚鈍な少年ではない。分かりやすく言葉にする術を持たなかっただけで、仲間が自分に隠し事をしていたことも、
自分への態度にぎこちないものがあることも感じていたのだ。もしかしたらその僅かな違和感が疎外感に変わり、彼を弱気にさせてしまったのかもしれない。
ナランチャが本来辿るはずだった結末を受け止めきれるのか計りかねて口を閉ざしていたが、今の彼ならもうその必要はなさそうだ。
フーゴもきっとそう言ってくれるだろう。

「ありがとうナランチャ、あなたの事は信頼してるし隠し事をしていたことも謝るわ。でも私どちらかというと、
 守られるよりも仲間として一緒に戦いたい気分なのよね。それでよければ……改めてよろしく」
「トリッシュ……」
「はーいはいはい! ちょっと通りますよー!!」


サラリーマンよろしく手刀を振り回しながら二人を引き離しにかかった玉美。身体が自由になったトリッシュのヒールが顔面に沈み込んでも
ヘコたれずナランチャに食って掛かる。

「てめー放送んときメッチャ落ち込んでたから人がせっかく気ぃきかせて黙っててやったのとゆーのに、
 さっそくトリッシュ様にベタベタしてんじゃねーよこのボケガキが!!」
「何だとこのクソチビ野郎! おめーなんかに気を使われなくたって俺はいつでもバッチリハイテンションだっつーの!!」
「ハン! トリッシュ様が起きるまでぽけーっと口開きっぱなしでブルってたくせに!」
「言ったなこの野郎ー!」

(この二人……意外とかみ合ってるのかしら)


それはそれで頭が痛いのだが、とりあえず取っ組み合いを始める前にナランチャに説明だけはしないといけない。
少しだけ考えたトリッシュは玉美をスタンドで殴って柔らかくしカーペットで簀巻きにして転がすと、見てはいけないものを見てしまった顔のナランチャに
手短に事情を話したのであった。



◆ ◆ ◆

975ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:26:33 ID:EHvDMBUc
――――――トリッシュ達と時を同じくして



『至急帰還しろ』という事だったが、ジョースターご一行より早く到着しろとは言われていなかったので少しばかり遠回りしながら
急いでいたムーロロの元に届いたDIOからの最後の指令は『ジョースター共が到着したようだ。奴等を片付けるまで教会に近づくな』だった。
異論はあるだろうが、ある意味ムーロロは最後までDIOに忠実に従ったと言えるだろう。DIOに預けていたジョーカーも
サン・ジョルジョマジョーレ教会内で途中まで戦闘の様子を中継していた。建物が倒壊する直前に手元に退避させたので
結末は放送で知る事となったが、あの場にいた約半数が死んだ事実も特にムーロロの心を動かしはしなかった。
むしろ生き残りの人数と面子を考えると依然油断はできないというのが結論だ。

(DIOが消えたのは相当大きいが、まだカーズ、ワムウが残っている。ジョースターの内一人しか道連れにできなかったってのも痛いな。
 そろそろ俺も本腰入れて主体的に動かないとヤバい頃合いだ、遺体の検証と、まずは現状の把握もしたいとこだが……)

館に辿り着いてから一階をざっと探索し終え、ムーロロと琢馬の二人は二階へ上がる階段の前に立っていた。
ここに来ることを提案したのはDIOに未練を残すセッコを駒として引き留めておくためでもあり、一度落ち着いて体制を整えるためでもあった。
琢馬は妹の事がよっぽど堪えたらしく、あれから一言も口を利かなくなってしまった。使い物にならないなら捨てるか処分するのがセオリーだが、
千帆が生きている限りは多少のリスクを負ってでも手駒に加えておく方がマシだと判断して、アヌビス神も持たせたままにしてある。

(面倒だが、落ち着く前に掃除が必要なようだ)

一度来た場所だし血なまぐさい戦闘の痕跡が残る場所などに腰を落ち着ける輩などいないと踏んでいたのだが、どうやら物好きな奴、
いや獣が二階のギャラリー一帯を陣取っているらしい。
抱えた亀にそこらで千切った葉っぱを与えながらのんびり待っていると場違いな声が響き渡る。

「おいスゲ〜〜ぜ恐竜がいた!! 」

柱の中を通って偵察に行っていたセッコが戻って来るなり突拍子もないことを言い出したのだ。

「恐竜ねえ。何匹いた?」
「でっかいのが二匹だ。あんなん噛まれたらマジ一発だぜ!」

言いながらもなんだか嬉しそうな顔をしている。念の為ウオッチタワーも一枚忍び込ませていたが、間違いないようだ。
さらにセッコは気付いていないが、恐竜たちは好き勝手に動いている訳ではなく、あるドアを守るようにのろのろと往復している。
恐竜を使うのはディエゴ・ブランドーだが、奴はDIOの傍にいたはず。教会から離れる理由があるとしたら遺体絡み。
遺体は場合によっては人体に取り込まれる。琢馬もそうだ。なら遺体を取り込んだ人物を戦闘に巻き込まぬよう移動させたのだろう。
おそらくドアの奥にいるのは――――

976ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:27:40 ID:EHvDMBUc
「あれブッ倒すのかムー……お? ムーロロどこ行った?」









世界は滑らかに一変する









(ドアの奥にいるのは―――――――――…………)


瞬きすらしていなかった。ただ思考を内側へと向けた刹那、ムーロロがいたはずの固い廊下は毛足の長い絨毯に、
目の前の階段は天蓋付きのベッドに変わっていた。あまりにも自然に変わる世界に思考が追いつかない。

「ここは……どこだ……」

それが軽率な事だと気付いた時にはもう、ベッドを挟んで奥側の端に腰かけた誰とも知れぬ少女に声を掛けてしまっていた。


「怖がらなくても大丈夫よ、私にも経験があるわ」

暗がりの中、こちらに背を向けたまま優しい声色で返してくる。
怖がってなどいるものか。と憤慨しかけて我に返り、素早く周囲を見渡す。壁の質感や内装からいってここはまだ館の中。
更に扉の向こう側から聞こえる重々しい足音も合わせると間違いない、恐竜に守られたあの扉の内側に自分はいるのだ。

「遺体は遺体と引き合おうとしているの……あなた達がこの館に向かっていた時から『感じていた』」

少女はおもむろに立ち上がると窓の方へ向かい、カーテンを開けた。
差し込む月明かりに照らされた腹部は若い身体には不釣り合いに大きく緩やかな弧を描き、どこか背徳的な淫靡ささえ感じさせる。

「遺体の全てを得るのに最もふさわしいのは私。大統領でも、他の誰でもない……私」

「ルーシー・スティール……」

ゆっくりとこちらを振り向いた少女の視線がムーロロを捕えた。
唇をうっすらと開いた表情はルノワールの描く少女のように可憐で、フェルメールのように神秘的で……
ムーロロは微笑んでいるようにも見えるルーシーの瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えながらも、その奥についぞ感情を見つける事が出来なかった。



◆ ◆ ◆

977ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:29:09 ID:EHvDMBUc
なるべくナランチャの頭から湯気が出てこないように易しい言葉を選んで話したつもりだが、チームのメンバーがそれぞれ別の時間から
連れてこられたこと、少なくともトリッシュの認識ではアバッキオだけでなくブチャラティ、そしてナランチャはボスとの戦いで命を落としている事を
納得してもらうのは何とも骨の折れる手間で、フーゴの気持ちが痛いほど理解できた。

「じゃあ俺は別に幽霊って訳じゃないんだよな。んで、大統領をぶっ殺したら全部元に戻るし俺はサルディニアに戻ると。
 こっちじゃボスが死んでるけどあっちでは死んでないからまた戦わなくちゃいけないってのは面倒だよな……うんうん」

自分の言葉だけで喋っているのでかなり分かり辛いが、内容は何とか詰め込むことに成功した模様だ。
独特の理解の仕方をしているような気がしなくもないがトリッシュはとりあえずこれで良しとすることにした。

「トリッシュ様、さすがにそろそろ移動した方がいいですぜ。19時まであまりありやせんし」
「禁止区域のことよね。でも、こればかりはどこにいたって変わらないんじゃない? 運を天に任せるより無いわ」
「それについて、あっしに考えがありやす。とりあえずついて来て下さいませ」

もう敬語についてツッコむ気は無いが、玉美が珍しくマトモな事を言いだした。確かにトリッシュ自身禁止区域への対処方なんて
考えもしなかったのは事実なので物は試しとついて行ってみる。



「で、あと5分もないけどこれで助かるの?」
「少なくとも被害は最小限に済みますよ。ほら、地図を見て下せえ」

やって来たのはとある交差点。少し歪んでいるので正確に東西南北に分かれている訳ではないが、地図と照らし合わせると
E-4・E-5・F-4・F-5、四つのエリアの丁度境目にあたる。三人は今、道で分けられたエリアにそれぞれ一人づつ立っていた。

E-4にはトリッシュ。
「なるほど、これなら万が一爆発しても犠牲はひとりで済むって訳ね。考えたじゃない」

E-5には玉美。
「ト……トリッシュ様からお褒めのお言葉! 玉美もう死んでもイイ!!」

F-4にはナランチャ。
「げ、気持ち悪ぃなーお前が爆発すりゃいいのに」

また口ゲンカが始まったが、トリッシュも止めに入らない。実際三人とも内心気が気ではないのだから。そうこうしている内に残り10秒を切った。
もうできる事は両手を合わせて祈ることだけだ。静寂の中トリッシュはギュッと目を閉じて全員の無事を祈る。

978ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:30:07 ID:EHvDMBUc
「9、8、7……」
「6、5……」

(4、3、2、1………………0!)





『禁止区域にくせ――ゴミはいらねェ――スからねェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜どーにか処理しねーとよォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ』


「あ!? あわっ、あわっ、アワワ〜〜〜〜〜!!」

首輪からメッセージが響き渡り、玉美は慌ててトリッシュの方へと猛烈な勢いでダッシュする。
すると道を越えた辺りで繰り返されていた音声がぷつりと止まり、さらに勢い余った玉美が建物の壁に勢いよくぶつかった音が響き渡った後
再び辺りはしんと静まり返る。ようやく緊張から解き放たれたナランチャも急いで駆け寄ってきた。

「おい大丈夫かよ玉美! トリッシュもさあ、こういう時くらい避けずに黙って受け止めてやっても罰は当たらないんじゃないかと思うんだけど」
「だ、だって思いきり私の胸を目指してたから……それより今のってもしかして、禁止エリアに入ってもすぐには爆発しないの?」
「そういう事になりヤフね……ガクッ」

これは大きな収穫だ。これなら禁止エリアが設定される時刻毎にエリアの境界上に立ってさえいれば簡単に避けられる。
けれども良い事ばかりじゃない、と地図のE-5に大きく×をしながらナランチャが言った。

「地下に入ったらどこが境目かわかんなくなるじゃん。あと5時間は移動できる場所が地上だけ。半分になっちまったってことだぜ」
「確かに地下道で迷ってしまう可能性も考えたら地上にいるのが無難かもしれないわ。大統領が禁止区域を秘密にしたのは
 殺すためというより私達の行動範囲を抑制して出会いやすくする、なんて目論見だったりしたのかもしれないわね」
「いーや、あの野郎単純に俺らを馬鹿にしてスカッとしたかっただけだと思いやすよ」
「そうなのか? まあ怒ってはいたけど馬鹿丁寧だったし、い……インキンプレーな奴としか思わなかったけどなあ」
「慇懃無礼だろ、ホントお前って低能だよなー。いやド低能か」
「んだと玉美〜お前ちょっといいアイデア出したからって調子こいてんじゃねーぞ!」

979ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:30:54 ID:EHvDMBUc
またまた何やら始まった。怒鳴りつけようかとも思ったが、爆発の恐怖から解放された安心感から余裕の出てきたトリッシュは
少しばかり微笑ましいとさえ思いながら見守ることにした。

「はっ、嫉妬かよ。まあ俺はトリッシュ様の為に何度も命を張ってるし? お前より断然トリッシュ様の護衛に相応しいけどな」
「ビビッて逃げただけのくせに命を張っただなんてよく言えるよな〜俺だったらもっとヤバくなるまで堪えて制限時間を調べるくらいするぜ?」
「ビ、ビビッてねーし俺だってその位できるわ! 丁度今やろうかなーなんて思ってた所だし!」
「じゃあどっちが長く禁止エリアに入っていられるか勝負な、負けた方は護衛失格だぜ!」
「望むところだああ!!」
「やめなさあぁぁぁぁぁぁぁぁあああい!!」



そんなこんなでグダグダとしていた三人だったが、遠く聞こえる急ブレーキと再びスピードを上げてゆくエンジン音によって、弛んでいた空気が
一気に緊迫したものへと変わる。

「ナランチャ、レーダーは!?」
「さすがに遠すぎるぜ。ただ音は……南に行っちまった。ど、どうするよ?」
「どうするも何も車に追いつけるわけねーだろ! それより気付かれてないならさっさと離れるべきだぜ。ね、トリッシュ様?」
「そうだな。フーゴも探さなきゃいけねーし、一旦戻ろうぜ!」

これからの行動方針をまさに考えようとしていた所だけに面食らってしまったトリッシュだったが、やはり最優先すべきは仲間である
フーゴとの合流だ。自分たちが知り得た禁止エリアとその対処法を伝えなければ。それに彼に会えたらその頭脳で考察して欲しいこともある。

「そうね。車の事は気になるけど今はフーゴたちを探しましょう。とりあえず彼が向かったらしいサン・ジョルジョ・マジョーレ教会へ――――」

『北ヘ……』

(え、なに?)

『教会カラ北ヘ…………DIOノ館ヘ、私ヲ助ケテ…………トリッシュ!!』


ナランチャと玉美の方を見るが何も変わりがない。この声はトリッシュだけに、トリッシュの脳内に直接響いたのだ。
地図を取り出して確認する。DIOの館といえば先刻トリッシュが倒れた際にカーペットに現れた地図上で星が『4個』固まっていた場所だ。
そして星よりも重大な事がある。あの声の主はよくわからないが、口調からしておそらく女性。そして自分に助けを求める可能性のある女性は
一人しか思い浮かばない。





(ルーシー……あなたなの?)





◆ ◆ ◆

980ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:32:11 ID:EHvDMBUc
【E-4(移動中)/一日目 夜】

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:健康
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
0.トリッシュ様のお役に立てた!バンザーイ!!
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)
    不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.誰も爆発しなかったぜ、ラッキー〜
1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう
2.玉美は気に入らないけど 、まあ一緒でもいいか

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:健康
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体
[道具]:基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.今の声……ルーシー!?
2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき?
3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく

[備考]
※19時に設定された禁止エリアはE-5でした。
※トリッシュを中心とした地図は他の遺体の点在箇所を示しています。部位は記されておらず、持っている地図に書き写されました。
  DIOの館以外に星が記されているかどうかは以降の書き手さんにお任せします。



◆ ◆ ◆

981ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:33:11 ID:EHvDMBUc
(そうよ……あの男がやっていたのと同じ。私にだってできて当然だったのよ)

ベッドの上で少女は腹部を一撫ですると、いとし子に語りかけるように口を開いた。





『心が迷ったなら……やめなさい。ここで立ち止まるのは……カーズ、貴方にとって敗北ではない』




(あの化け物は神なんて信じてなさそうだけど、どんな声で聞こえているのかしら)

自分の時は大統領の仕業だと会うまでわからなかった。まあ、いかにも『それらしい』声で聞こえるのだろうと勝手に解釈して
手に持っていた『右眼球』を両手で包み込む。開いた時には先程までシーツの上に映っていた映像は消え、ただの干からびた遺体の一部に戻っていた。

「ありがとう。お返しした方が良いのかしら?」
「いや、俺はどうやら遺体に嫌われてるみたいなんでね。お前が持っていろ」

そう、トリッシュの遺体が生み出した地図は間違っていなかった。この場には遺体の部位が『4つ』あったのだ。

(DIOへの交渉カードとして隠し持っていた右眼球だったが、あっさり見破られちまった。この女、一度遺体の全てを取り込んだというのも頷けるな)



扉の外で足音が増えた

982ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:34:14 ID:EHvDMBUc
時刻は19時を少し回ったところ。
ムーロロは少し前から館周辺を数枚のカードに警戒させると参加者への監視を一旦全て解き、可能な限りのエリアにカードを飛ばして
次の禁止エリアを探っていた。会場の端から追い込んでゆくこれまでのエリア設定からして、このC-3が設定されている可能性はかなり低いと見ていたが、
結果はE-5と少し内側に食い込んできた。これを踏まえ今後の予測に脳内で修正を加えてゆく。

早くも回避策を編み出したグループがいたが、ここまで生き残った人間なら何ら不思議な事でもない。
むしろトリッシュ・カーズという二人の遺体所有者が新たに判明したことの方が重要だ。だが彼等の顛末を見届けたのは
薄っぺらいトランプの目ではない。ルーシーが右眼球を通して『見て』『話しかけた』のだ。

「お前が俺に大統領についての情報を洗いざらい吐いたのはこの為か」
「そうでもしなきゃ右眼球を渡して貰えそうになかったもの。でも、これでわかってくれたでしょう?」
「ああ。しかし犠牲を出し過ぎたな。もう少し早くカーズを見つけていれば良かったが、残りが逃げたなら良しとするか」
「片方だけだからかしら、視界が悪くて見辛かったわ……あの化け物は邪魔以外の何物でもないわ。どこか遠くへ誘導できたらいいのだけど」
「同感だ。まあおいおい考えればいい」



ステップを踏んで飛び回る足音と、重厚な足音、時折唸るような咆哮が混じる



途切れていた会話は新たな情報を得たムーロロから再開した。

「ジョニィとディエゴを捉えた。偵察用の恐竜を想定して遠巻きに追跡しているから会話は聞き取れないが、おそらくこちらに向かっている。
 まああの辺りは随分崩落しているし、真っ直ぐ来ようと思ってもそれなりに時間がかかるだろうがな」

禁止エリアの確認と同時にトランプたちを再度参加者たちの追跡へと戻すと早速と言おうか、案の定近くにいたディエゴが一番に補足できた。
ジョニィが同行している理由は不明だが、一度は大統領を倒した男と大統領の後継たる器を認められた男の組み合わせは中々に面倒だ。

「それは大変ね。ねえムーロロ、あなたはこれから私をどうするつもりかしら」
「無意味な質問はよせ。今のところ俺達の利害は一致している、利用でも協力でも名目は何でも構わん」



咆哮は次第に甲高く、苦しそうなものへと変わる。時折金属音も響く。

983ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:36:00 ID:EHvDMBUc
どうやら自分は思った以上に今回のゲームの真相に近づいているのかもしれない。
遺体と深く関わり合った以上、最悪対大統領も視野に入れてディエゴとジョニィ、どちらかと協力関係を築きたくはあるが、
敵対している二人と同時に交渉するとなると必ずその場でどちらかと決裂しなければならない。
できれば一人とだけ交渉したい。どちらかが死んだ後ならなお望ましい。ならば今はルーシーを連れて奴らを避け、遠くから時に誘導しつつ
つぶし合いを眺めるのが最上と言えるだろう。
ディエゴから離れるという選択はルーシーも同じはずだ。既に彼女の行動が全てを物語っている。

「お前、トリッシュをディエゴに差し出す気だな」
「彼女は遺体を所有しているんですもの、出会ってくれればあの男の気を十分引いてくれるはずだわ。殺されはしないでしょう」
「餌を与えて時間稼ぎ、奴からより遠ざかる寸法か。大したタマだな」

一時は交流し、同世代の女同士通じるものもあっただろうに。何も知らない者を躊躇なく利用する姿は悪と呼べるかもしれないが
三人がこちらに来るならジョースターやフーゴ達に近づくことにもなるし、何気に後でカーズと鉢合わせしないルートをもう一度伝えていた。
仲間との合流のチャンスを作ってやったという点では善と呼べなくもない。



「ムーロロ、『幸福』とは何だと思いますか? 『天国』とはどこにあるのでしょうか?」




ひときわ大きな断末魔が響き、巨体が倒れ伏す音が聞こえてきた



◆ ◆ ◆

984ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:37:57 ID:EHvDMBUc
唐突な質問にムーロロが答える事は無かった。代わりに切り裂かれた扉が音を立てて倒れ、
血塗られた洋刀を持った男と、口元を真っ赤に染め上げた男が二人の眼前に立ちはだかった。

「ムーロロみ〜つけた! おめー迷子かよダッセ〜な〜」
「……」

二人の後ろに恐竜の姿は無い。ただ血の海の中、身体を何か所も食いちぎられた白人男性と輪切りにされた黒人男性の二人が転がっていた。

「聞いてくれよ〜こいつら死んだら恐竜じゃなかったんだぜ! これってカラスだろ―……? インコ? スズメ?」
「サギだろ」
「そうサギだぜサギ! あれ、その女の子なんだー!?」
「私はルーシーよ。セッコ……よね。DIOから話は聞いていたわ」
「おーDIOの! じゃあ殺しちゃだめだよな。あれ、何でだったっけ?」

がぜん騒がしくなったが、琢馬が無言で新しい角砂糖の袋を差し出してくる。とりあえず放り投げて黙らせた。
琢馬の方もまだ別の世界に逝ってしまった訳ではないらしい。

「これじゃあなた達、まるで東方の三賢者ね」
「まだ産まれていないだろ。お前から産まれると決まった訳でもない」
「いいえ、遠からず産まれるわ。今に私の元に全てが集まり、産まれて……そして……―――」



(狂った訳でも自棄になった訳でもなさそうだが……危ういな。次の一手はしまっておくか)

遠くを見つめるルーシーの瞳は善と悪、聖と邪、それらの境界を越えた遥か遠くを見据えているようで、未だ捕えどころが無い。
それがムーロロには不可解で、彼女を確実に揺さぶるだろう『スティーブン・スティール』について追及するのは避けた。

「ここの恐竜が死んだことはディエゴにもすぐ伝わるはずだ。早速だが移動するぞ。セッコ、また頼む」
「どこ行くんだ?」
「さて、どこへ行こうか……」



血まみれの歯をむき出しにして笑うセッコ
ルーシーの口から出た『幸福』『天国』というキーワード



(やれやれDIOめ、遺体だけでなく面倒なものまで遺してくれたもんだぜ)



◆ ◆ ◆

985ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:38:45 ID:EHvDMBUc
【D-3 DIOの館/一日目 夜】


【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:処女懐胎
[装備]:遺体の頭部
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド 、遺体の右眼
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.ディエゴから離れる
1.ムーロロ達を利用し遺体を集める

※遺体の右眼をムーロロから譲渡されました。(サンタナの不明支給品でした)
※遺体を通してトリッシュ・カーズに声をかけています。(カーズに対しては『あの方』を装っています)
  トリッシュをディエゴの元まで誘導し、二人が出会うよう目論んでいます
※その他の遺体所有者を把握しているか、話しかけられるかは不明です

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中
[状態]:健康、精神的動揺(大)
[装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神
[道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、
不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。
0.??
1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。
2.ムーロロ、セッコと行動。隙があれば始末する?

【備考】
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。

また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
拳銃はポコロコに支給された「紙化された拳銃」です。ミスタの手を経て、琢馬が所持しています。
※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。
 琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖、
     不明支給品(2〜12、全て確認済み、遺体はありません)
[思考・状況]
基本行動方針:自分が有利になるよう動く
0.遺体を揃えるためルーシーと行動。ただし警戒は怠らない
1.ディエゴに気付かれる前にこの場を離れる
2.セッコ、琢馬を手駒として引き留めておきたい

【備考】
現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。


【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、血まみれ、興奮状態(小)
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.角砂糖うめえ
1.DIOが死んでしまって残念
2.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい。
3.吉良吉影をブッ殺す

【備考】
『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。

※扉を守っていた恐竜はポコロコ・スループ・ジョン・Bの遺体でした。ディエゴが本来監視に付けていた恐竜は現在ディエゴの元に向かっています。

986 ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:40:34 ID:EHvDMBUc
仮投下は以上になります。
意見を伺いたかった点ですが、今回ルーシーが遺体の右眼のみでトリッシュ、カーズの姿を確認、声をかけています。
原作では両目とも揃っていましたが、左眼には固有の能力『スキャン』があり、右眼球はディエゴのスタンド能力を引き出していました。
両目揃った場合のみ使用可能な能力であるという解釈が多勢でしょうが、断定はされていませんでしたので
片方だけだと視界が悪くなるという条件を付与した上での描写となりました。
賛成・反対共にご意見があればお願いします。

987名無しさんは砕けない:2015/10/19(月) 21:12:21 ID:0z0SvL2U
投下乙です。
眼球に関しては問題ないかと思います。
トリッシュ、玉美、ナランチャの三人組に癒されました。
本投下待ってます。

988名無しさんは砕けない:2015/10/21(水) 00:05:44 ID:erVPSOYU
仮投下乙です。
私も遺体の能力と制限には異論ありません。原作中でも結構曖昧な設定だった気もしますしw

989接触 その1 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:19:06 ID:IUUm3ozE
……え?いや、そりゃあ俺にだって知らないことはあるよ。
君らが俺に教えてくれたこともあるし、仮に知らないことがあれば知ろうと努力くらいはするさ。
ほら、最近だと『カリカリ梅が大好きな天才ギャンブラー』とか。
彼に関しても俺は持ちうる手段を用いて調べ尽くした、はず。あまり突っ込み過ぎると消されそうだからね……

で、調べてるうちに感じたことは、彼はただ頭がいいだけじゃあない。
彼が得意なのは『賭け』ではなくて『駆け引き』だと思うのさ、俺の解釈だけど。
同じ『カケ』という読みでも随分違うんじゃあないか?この二つは。
ハッタリをかまし、道化を演じ、相手を観察し、押すときはトコトン押す。


――そういう参加者は、この場にもいるだろう?


彼が放送を聞いても特に思うことはなかった。
せいぜいが、自分の危機は去らないという事実を改めて痛感した、という程度だろう。

できるだけ多くの参加者と接触しなければ自分は実験台として人柱になる可能性が。
そして逆に参加者と接触すればするほど、乗っていた人間に殺される可能性がある。

でも、それすらどうでも良くなってきていた。
一口に『自由』といっても、それを明確にどんなものか説明できる人間はいないし、百人に聞いたら百人それぞれの答えが返ってくるような質問は質問と言わない。
先に接触した二人組に取り入ろうとせず、半ばヤケクソで与えられた命令をこなし退散したことも、その辺りが彼の胸の奥にモヤモヤと巣食っていたのが原因だろう。

ゆえに、次に出会った参加者にも特に思うところはなかった。

「サラリーマンまでいんのかよ――くそったれ。なんだってホント」

そりゃあ悪態の一つも付きたくなるだろう。
目の前に突っ立っている男は、そんな彼のことを、警戒するでもなく、憐れむでもなく、疑うでもなく、訝しむでもなく。
あるいはそれらを全て混ぜ合わせたような目を向けていた。

「ハァ……参加者たちに『カーズ』ってやつからの伝言。
 『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』だとさ。まあ、来ても来なくても自由だけど」

ため息混じりに言うべきことだけを言い、踵を返す。
直後にいきなり走り出さなかったのは、疲労なのか、思うところがあったのか。彼自身にもわからない。
そんな背中に声がかけられた。

「君は――」

静かに、しかしよく通る、それでいて気にしなければ聞かないで済むような、その声は。

「『エニグマの少年』宮本輝之助、だね?」

静止を求めるものではなかった。

990接触 その2 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:22:15 ID:IUUm3ozE
***


『どうして自分の名前を知ってるんだ?』って顔をしてるな――少し私の話をしよう。

私の名は『吉良吉影』。年齢33歳。自宅は杜王町北東部の別荘地帯にあり……結婚はしていない……
仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。

そしてあるとき、これは全くの偶然だったんだが……“写真のおやじ”を知っているか?彼が私のことを『弓矢』で射った。
いわく「得た能力をもって『あるスタンド使いたち』を始末しろ」ということだ。
その時に君の名を知った。鉄塔の『鋼田一豊大』とかの名前も聞いた。もっとも、知っているのは名前と容姿だけだが――とにかく。
わかるかい?私と君はある意味で“同志”だってことになる。


……フム。君の言い分もわかる。ならば君の不安を取り除くために言うが、私の能力は『ない』。
矢に刺されて死ぬほど痛い思いをしておきながらなんの能力も生まれなかった。写真のおやじも驚いていたよ。要するにハズレだったんだからな。
だが、頭を切り替えたおやじは、それゆえに出来ることがあると私に言ってきたよ。
それは『取り入ること』だ。
強いものに、弱い者に。賛成派、反対派。多数派、少数派。数というのは目に見えて効果を発揮するからな。
無力な人間なら尚更だ。足を引っ張るのも、思いの外に役立つことも自由自在という訳さ。


……理解が早くて助かるよ。
『私は君と同行し、カーズの話に乗った人間を演じることで効率よく参加者と接触する』


しかし――そう、カーズと言ったな?そいつにそんな芸当ができるのか?
もしその話が本当なら私自身もぜひ首輪を外してもらいたいもんだが……
大体、未だに宮本君、きみが首輪を装着している以上は『まだ外せない』んじゃあないのか?

どれ、見せてみろ。実はカーズにナニカサレタとかないか?
というか、その耳も。止血してやろうじゃあないか。ほら、後ろ向いて。

……ふむ。君からは見えない首輪の後ろ側にも特に変わったところはないな。
指でなぞってみた感じ、溝や段差の感触もない。私が自分で触ってるこの首輪と変わりないようだ。
つまり、君がカーズと接触したその際には、カーズによって首輪に何かしらの細工を施されたという心配はなくなったわけだ。


だが、現状でこの話を信じれる奴はどのくらいいるのかな、疑問に思わないか?
先の放送を聞いたろう?最初の舞台に立ってたカリメロ頭の男が死んで、大統領だと?
禁止エリアがわからない?次回には代役?まったくもって理解が追いつかない。

そして――もしかしたら。
主催者が死んで首輪が機能停止したとか、あるいは存在する意味を失ったとか――監視役がいなくなったという意味で――
そういう可能性を浮かべる奴もいるんじゃあないか?


……おい、落ち着きたまえ、私は可能性の話をしただけだ。なんでそこで君がビビって目を閉じる必要があるんだ。
まてまて、急に走り出すと心臓に良くないぞ。……ん?毒薬?それなら尚の事だ。深呼吸して、そう。


……うむ。早速君の役に立てて何よりだ。
なら、役立ちついでにもう一つ私から提案させてくれ。

『今私が言った可能性について、今からカーズに意見を伺いに行くのはどうだ?』

ビビるな。大丈夫だ。私も同行する。“さっそく一人くいついた”とでも言えば良いだろう。
天才カーズ、とやらのことだ。どこかで私の姿を目撃しているかもしれないが、些細なことだ。相手の素性は問わないと言ったんだろう?
途中で他の参加者に接触したってそれも問題にはならない。私がなんとかする。
なんせ『無力な人間』を地で言ってる私なんだからな……自分で言うのもなんだが、フフ。


決まりだな……ん、アテがない?
じゃあとりあえず、さっきまでいた場所に戻ってみるか。

991接触 その3 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:22:45 ID:IUUm3ozE
***


さてさて。こうして吉良と宮本が合流してカーズのもとに向かおうとしてるわけだが。
一応……一応ね、君らにこの交渉における吉良の真意を解説して終わりにしよう。

吉良の思考はもはや――って表現は少し違うか。ずっとそうだった、『自分に危害を加えうる存在の排除』に尽きる。
趣味の『手首』ももちろん重要な点ではあるが、自分が生き延びないことには手首もヘッタクレもない。
さて、そうなれば削除する対象だが。現在での最優先は空条承太郎およびファニー・ヴァレンタインで、その下に僅差で存在するのが、もちろんカーズ。
そこに都合よく現れたエニグマの少年。聞いた話じゃ『爆発する首輪を解除しよう』としてるそうじゃあないか。

ところで。『嘘を付くときには真実に織り交ぜると良い』とはよく言ったものだ。
年齢や勤務地も、写真の親父の持つ弓矢で射られたことも、その力で敵対する存在を排除しようとしていることも。
カーズに会うという目的も本当にやりたいことだし、見た感じ首輪に異常がないことも本当だ。
むしろ、嘘は『能力がない』と言った、そのひとつだけだろう。
ほとんど真実の話にほんの一滴の嘘を垂らすだけで――と。まったくよくできている。

さて、偽った吉良の能力だが。もちろん首輪を“ただ指でなぞって感触を確かめた”なんて事はない。
『現在宮本輝之助の首輪は爆弾になっている』――この事も、まあ本当だな。むろん、キラークイーンの能力ゆえの爆弾、という意味だけど。

首輪に触れたカーズが消し飛べば万々歳。
仮にその方法での暗殺が失敗したとしても、『アレほど外すと言ったカーズがやっぱり失敗して宮本が爆死した』という事実があればそれもそれで良し。
前者の方法でイクなら今すぐにでもカーズと接触すべきだし、後者をメインにしたいなら指令通りに多くの参加者を引き連れて、カーズに大恥をかかせてやるという訳だ。
しかも“カーズを探すあてがない”現状だったらどちらに転ぶも自然な展開にできる。

『自分の正体を知るうちのひとり』であるカーズが死ねばとりあえず一安心と。
承太郎やヴァレンタイン、あるいはジョニィ・ジョースターとの接触はその後でも構わない。
――まあ、同時に全てがうまく進行すればそれが理想だが。そうならないと感じたなら一つずつ問題を解くしかないからな。

最初に言ったな、ハッタリをかまし、道化を演じ、相手を観察し、押すときはトコトン押す。
まさに吉良吉影そのものだ。
主催者に接触した事実を隠し、それでいてほとんど自分の正体を晒し。
弱者を演じ、宮本の反応をよく観察し。押すとなれば右手のスイッチをためらわず押すだろう。

しかし最後に一言付け加えるなら……

『吉良吉影。コイツ、嘘つきだね』

992接触 その状態表 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:23:13 ID:IUUm3ozE
【C-2 路上 / 一日目 夜】


【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:左耳たぶ欠損(止血済)、心臓動脈に死の結婚指輪、動揺
[装備]:コルト・パイソン、『爆弾化』した首輪(本人は気付いていない)
[道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.吉良とともに行動する。カーズのもとへ戻る予定
2.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい

※思考1でカーズのもとに戻るとしましたが、カーズとの接触方法は第四放送時の会場中央以外に存在しません。
 自分の歩いてきた道を引き返す予定ですが、具体的にどうするかは次の書き手さんにお任せします。
※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『新・戦闘潮流』で見た知り合い(ワムウ、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。
 カーズのもとに向かう道中に吉良に聞くなど手段はありますが、本人の思考がそこに至っていない状態です。
 第三放送は聞いていました。
※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。
※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(大・応急手当済)、全身ダメージ(回復)疲労(回復)
[装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着)
[道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、
    地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2〜3(しのぶ、吉良・確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
0.自分の存在を知るものを殺し、優勝を目指す
1.宮本輝之助をカーズと接触させ、カーズ暗殺を計画
2.宮本の行動に協力(するフリを)して参加者と接触、方針1の基盤とする。無論そこで自分の正体を晒す気はない
3.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい

※宮本輝之助の首輪を爆弾化しました。『爆弾に触れた相手を消し飛ばす』ものです(166話『悪の教典』でしのぶがなっていた状態と同じです)
※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。応急処置だけ済ませました。
※バイクは一緒に転送されて、サン・ピエトロ大聖堂の広場に置かれています。ポルポのライターも空条邸から吉良と一緒に転送され、回収されました。
※吉良が確認したのは168話(Trace)の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、
 地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。
※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。

993接触  ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:24:01 ID:UwkBNQXE
以上で投下終了です。最近ハマりだした嘘喰いのフレーズを盛り込んでみましたw
タイトルの接触は『吉良と宮本』『吉良と首輪』『(将来的には)爆弾首輪とカーズ』の接触という意味合いです。
さてさて、放送聞いてのリアクションSSにしようと書き出したはずが、いつの間にか交渉SSに。
アレ?前のジョニィの時もそうだったなあ……

吉良がすんなり自分の名前を明かしたことなど、多少無理矢理感は否めませんが、ちょうどいい具合に宮本との距離が近かったのでこういう話になりました。
誤字脱字、矛盾点等等ありましたらご連絡ください。それではノシ

994名無しさんは砕けない:2015/11/26(木) 03:36:07 ID:y.aFrnN2
投下乙です
そういやこの二人、顔合わせたことはないけど接点あるといえばあるんだった
宮本はどんどん深みにハマっていくな・・・

2点ほど気になることが
・空条貞夫の私服に着替えた吉良はサラリーマンに見えるのか?
・吉良は参戦時期的に宮本(と鋼田一)を知っているのか?
です


そしてジョジョロワ3rd四周年おめでとう!
記念に何もできませんがいつも応援しています

995 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/26(木) 21:58:58 ID:NP.r1znE
適切なご指摘ありがとうございます。
どちらもプロットに大幅な変更を加えないように、会話を修正したいと思います。

・・・と、本投下はどうしましょうかねえ。この進行速度ならむしろしたらばを本拠地にすべき・・・?

996名無しさんは砕けない:2015/11/28(土) 01:50:40 ID:Ngit5OB6
遅ればせながら投下乙です。
直接やり合ってはいなくともあれ程の人外っぷりと乱闘を見せつけられといて尚カーズを殺す気満々の吉良の精神力ぱねぇw
吉良がいまだに無力を装うのは逆に不自然かとも思ったけど、そこにツッコむこともできない宮本の動揺を
利用した辺り最初から敵かどうか見分ける作戦だったのか?だとすれば策士だな…

本投下は正直どちらでもいいと思います。2ちゃんしか見ない人はほとんどいないでしょうし
いっそしたらばに収束した方が分散しなくていいかも

997 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:01:33 ID:soYmm1Eo
投下に先駆けてこのスレを埋め、新スレ立てようと思います。以下埋め行為

998 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:01:56 ID:soYmm1Eo
埋め埋め

999 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:02:09 ID:soYmm1Eo
埋め

1000 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:02:32 ID:soYmm1Eo
勝った!仮投下スレ第1部完!




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