レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
仮投下専用スレッド
-
二人が静かに何かを探り合うような時間が流れた。
しばらくすると――どちらかというと落ち着いた声の男の方が、折れたようで「分かった」と声が聞こえる。
「俺は……その戦いで仲間を失った」
「ッ!」
「だが俺は『逃げたもう一人』を討つだけで満足するつもりはねぇ……。本当に叩かねぇといけないのはもっと上だ」
まさか。考えられる最悪のシナリオが頭の中に展開される。
もっと深刻に予想すべきだった。さっきまでの状況が『最悪』ではなかったッ!
「俺たちは主催者を引きずり落とす――そして俺たちの誇りのために、報いを取らせる」
あの会場にいた百人以上の中で、一体何人が夫の命を狙っているの!?
大統領が裏にいることは分かっている。
そして……その他の百人以上の参加者までも、スティーブンを殺そうとしているかもしれない。
もしも誰かがこのゲームの黒幕に近づいたとして、その時に夫が「トカゲの尻尾」にされるのなんて分かり切ったこと。
またしても、私の身体は小刻みに震えている。鉈を両手で握りしめて震えを止めようとしても、荒い息が漏れるのは止められない。
この鉈だけが、私とスティーブンを繋いでくれている証のような気がする。
助けて、と誰に向けているのかも分からない救いを求めてしまう。もうこの世界に希望なんてないような、暗闇の中に彷徨う気分だった。
「……だが、俺にはあの演説かましてた爺が全ての黒幕だとはどうしても思えねえんだよ」
でもその中に小さな火が見える。
あまりにいきなりの事で、私は声も上げられずに男のいるだろう方向を見つめていた。
「あんな何百人から恨まれるって分かり切った状態で堂々と顔晒すなんて狂気の沙汰だぜ。あの爺がそんな狂った奴には思えねぇ」
思わず頷きたくなるのをこらえて、私は彼の言葉を待った。
「黒幕は、暗い穴蔵の中にいる。そっちを叩かなくちゃあ、終われねえ……爺は利用されてるだけかもしれないしなあ」
ドッと、全身から力が抜けたような気がした。今までずっと私を支配していた緊張が消えて、座り込みそうになってしまう。
この人なら、この人たちなら分かってくれるかもしれない!
一歩、二歩と足が彼らの方へ進んでいく。ぼんやりと二人の影を捉えた。
「君は一人かな?一緒に行動しないか。少しでも協力者が欲しい
「え、あ……実は一人、人を待っていて……。彼に聞いてみないと……」
でもきっと、ブチャラティだって協力者が欲しいはず。上手くいく。全て上手くいくわ!
もうひっそりと隠れる必要もないだろう。荷物の中から懐中電灯を取り出して彼らに向けた。
新しく仲間になるだろう二人の姿を確認したい。弾くような高い音が聞こえて、暗闇は瞬間掻き消える。
|
|
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板