- 1 :李信 :2018/01/14(日) 15:32:51
- ※タイトルと内容は必ずしもリンクするとは限りません。
〜プロローグ〜 就職活動に失敗し、社会でも家庭内でも立場を失った李信はヤケになって「毎日ラーメン不健康生活」を送っていた。 数ヶ月後、ラーメンの食べ過ぎにより呆気なく病死、魂は天に召された…筈だった。
そして死後…
「やあ。君が直江君だね?待ってたよ」
と、他に何も無い真っ暗な空間の中で意識を取り戻したところに、目の前に立っていた30代くらいの黒髪短髪で鐔付き帽子を被っている男に声を掛けられた。
「此処は…?つか誰だお前。何でポケガイの半値で俺を呼ぶんだ?」
見たこともない顔である。というより、何故自分のポケガイでの半値を知っているのか。そもそも何故自分のことを直江だと知っているのか。此処は何処なのか。疑問が次々と頭に浮かんでくる。
「ま、疑問は沢山あるだろうけどさ。まず説明するけど、僕はポケガイの管理人だよ。で、君が死ぬことを知っていた」
「!?」
いきなり明かされた衝撃の真実に対し李信は思わず絶句する。死ぬことを知っていた?リアルでは初めて会った筈のこいつが?管理人が何故こんなところに?李信の頭は混乱した。
「おいちょっと待て!どういう…」
「悪いね、詳しく説明してる暇は無いんだ。それじゃあ今君が置かれてる状況と、君のこれからのことを説明するよ?」
当然李信は疑問を全て解消すべく管理人に対して質問責めの構えを取るが管理人はそれを最初から遮り、話を無理矢理自分のペースに持っていった。李信は管理人の態度から、いくらまくし立てても無駄だと判断し、話に応じることにした。
「君は死にました!此処はこの世とあの世を繋ぐ狭間といったところかな?こうして僕が前の世界で人生を終えたりした人をあの世に送り出してるんだ!ポケガイ民限定だけどね!色々調整とかあるからね!」
「はぁ…」
いきなりそんなことを言われても信じ難いが、この尋常ならざる闇しかない世界に立たされれば半信半疑くらいにはなる。
「で、あの世ってのは異世界…つまり二次元の世界なんだ!君にも二次元世界に転生してもらうから!あ、君に拒否権は無いよ?これはポケガイ民になった時点で決まった運命だから諦めてね!」
「…」
突拍子も無く管理人は李信に俄かには信じ難いことを次々と言ってくる。こいつ、いい歳こいて厨二病か?などと考え始める李信だった。
「でも安心して!来世では前世と違って絶対に人生楽しくなるから!それは僕が100%保証するよ!なんたって、君は不細工じゃなくなるし、就活とか関係無く自由に生きられるんだ!それどころか、異世界での君の希望スペックは何でも叶えるよ!漫画とかアニメとかに出てくる能力とか使えるようにしてあげるよ!イケメンにもできるし!さあ直江君、君の望みは!?」
わけが分からない内に管理人は勝手に話を進めて一つしかない選択肢の決断を李信に迫っていた。
- 24 :李信 :2018/01/29(月) 10:05:52
- 足音が聴こえる。コツン、コツンと靴と床がぶつかる音が段々と近づいてくる。刑務官が囚人の内の誰かに何かを伝える為だろう。囚人は自分以外にも居ることは分かっている。鉄格子の向こう側にも鉄格子があり、その奥にはオレンジ色の囚人服を着せられた人間がベッドの上で寝息を立てているからだ。
(しかし…)
この世界には留置所または拘置所と刑務所の区別が存在しないのか?と疑問に思う。自分はまだ裁判で判決を受けていないし、服もそのままである。斬魄刀などの装備は手元にない為恐らく強制的に預かられているのだろうが。向こう側の囚人が囚人服を着ているので、恐らく刑に服している罪人だろう。
そんなことを考えていると、歩いてきた刑務官が自分が入れられている牢獄の鉄格子の前で脚をピタリと止め、また直後に此方に向き直った。そして懐から鍵を取り出し牢獄の鍵を開け、中に入り一言も発することなく手錠の鍵も解除する。
「出ろ」
と、一言だけ野太い声で命令してくる。此処では口を開かず黙々と従うのが得策と考えた李信はただ黙って刑務官の後に続いて牢獄を出た。それを確認した刑務官は無表情のまま牢獄の鍵をかけ直してから歩き出す。
(取り調べ、と言ったところか…)
どのような場所に連れて行かれるかは見当がつく。だから余計な質問はしない。こういった手合の人間は面倒で、一言でも発すれば注意を受けるのは明白だからである。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 25 :名無しさん :2018/03/23(金) 10:14:37 ID:PgS/9LIs
- 「まさかお前、近頃世界中で発生しているという異変の民か?別世界の住民が尋常ならざる力を持ってこの世界に転生してくる…」
「それが異変の民と言うならば正解だ」
戸籍も住む所も無いと供述しているあたり、この中年の警察官と思しき男は李信をその異変の民だと勘付いた。李信の方も成る程と色々思うところがあり、暫く頭の中を整理している。中年の男もその李信を敢えて咎めようとはしなかった。
そして、暫くした後に李信は中年の男に事情を全て説明した。
「事情は分かった。追って沙汰するから暫くは行方不明者を保護する国営施設に入ってもらう」
中年の男はそう切り出してくる。短いやり取りではあったが、それから李信の事情や人となりを大体把握出来たのでこれ以上自分が取り調べても仕方ないと判断したのだ。
「器物破損や建造物損壊の罪はどうなる?」
「保留だ。幸いお前の攻撃で死傷者は出ていない。事情を考えれば恐らく不問になるだろう」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 26 :名無しさん :2018/03/24(土) 01:57:34 ID:MGm2xTAE
- 数時間後、ペルシャ帝国の役人数人に伴われてその案内で刑務所から国営施設に馬車で移送された李信は、自身に割り当てられた部屋のベッドの上に寝転がりながら思案を巡らせていた。
取り調べは終わった。中年男の話によれば、ここ数年でこの世界では別の世界…つまり李信から見れば元居た世界から異能を持って転生してくるとのことだった。だがそんなことはこの世界に来る前から管理人に聞いている。中年男から得たものは、それを異世界側の住民からも認識されているという情報だった。
(あの警察官、最初は俺を見下すような態度だったが…話せば分かる奴だった。ああいう人間はこれからも積極的に利用していかねばな)
李信からすれば異世界の原住民などその程度の存在でしかない。"勇者"だのと持て囃されたところで他人の為に動くことはない。原住民がいくら氷河期組に殺戮されようが知ったことではない。
「どうすれば己に利があるか」
李信の行動原理はただそれだけである。会ったばかりの原住民にかける情など持ち合わせていなかった。だがあの時勇者と自分を持て囃した女を見限ったのは失敗だったと反省していた。
そのまま正義の味方という立場を受け入れていれば今回みたいな疑いをかけられることもなく受け入れられ、アティークとの面会が叶う可能性も上がっただろうというやはり打算的な考えだったが。
しかしそんなことを考えても後の祭りである。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 27 :名無しさん :2018/03/25(日) 13:05:45 ID:x09T4xm6
- (何をすべきか)
刑務所で取り調べを受けてからこの国営施設に移送された翌日。李信は暇だった。そもそも自分は今後どうなるのかも分からない。処遇は星屑の働き次第である。しかしあまり期待し過ぎて失敗した時のことを考えてないということになれば面倒なことになる。
だが、李信は考えるのをやめた。元々頭を使うタイプではないのにこの世界に来てから頭を使いっぱなしだったので彼自身の脳のキャパシティを超えてしまったのである。
国営施設には割と広い(200m四方くらい)のグラウンドが備わっている。施設長からの説明で聞いた通り、原住民が遠距離魔法の練習をする際に使用する円形の的や近距離での戦闘訓練の際に使用する人型の的がいくつも立っている。
李信が今すべきなのは、まだ碌に解放出来ていない自身に眠る力を解放していくことである。今の実力のままでは次にリキッドや他の氷河期組に襲撃された時に対処出来ないと思っていた。その為には当然、練習が必要だ。
円形の的から50mほど離れた地点に立ち、李信は真っ直ぐに的を見据える。
『君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ 破道の三十一 赤火砲』 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 28 :名無しさん :2018/03/26(月) 00:52:41 ID:kbBmOaOQ
- 李信は斬魄刀を鞘から引き抜いて3人の男と対峙する。先程までは面倒だと思っていたこの展開だったがそう悪いことばかりではないと李信は考え直していた。
その理由は、一に自身の人望を上げる好機だということ。見れば、やはりこの3人は施設内で相当幅をきかせて他の居住者から金品を巻き上げお山の大将気取りで君臨しているらしく、他の居住者と思われる人々が数十人単位で周りに集まり此方の様子を見守っている。
二に、この3人を力で捩じ伏せて自身の策の駒として使うことが視野に入ることである。李信は瞬時にある策を考えついていた。不確実性の高い星屑の働きに頼らずとも自身の帝都での声望を高める策をである。
三に、実際にこの世界の原住民の実力か如何程のものかを計り知れる。この世界に来て1週間が経過しているが、李信はまだこの世界の原住民の力をきちんと目の当たりにしたことは無いのだ。
「殺しはしないが…腕や脚の一、二本は覚悟してもらう」
「その生意気な口を今すぐ封じてやる!行くぞお前ら!」
李信の挑発めいた冷たい言葉が金髪男の怒りのボルテージを更に上昇させる。脇を固めていた茶髪と赤髪の男も「へい!」と返事をして剣に魔力と思われるオーラを纏わせる。
「おっしゃいくぜえええ!!」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 29 :名無しさん :2018/03/27(火) 09:39:47 ID:XKPTryE.
- しかしそんな拍手喝采を受けて照れたり喜んだりするのはオーソドックスな作品の主人公であり、李信は違う。あくまでも冷静な表情を維持してこう言った。
「俺に恩を感じてるなら頼みがある」
そう言葉をかけられた群衆は隣に居た者と目を見合わせたり目を丸くしたりしている様子だった。成る程この眼帯の男はあまり愛想の無い奴だなという風に僅かな驚きが隠れているようだと李信はどうでもいい観察を少しばかりしている。
「にいちゃん、頼みってなんだ?悪いが金なら無いぞ。そこのボロボロになってるクソ3匹にたかられて俺達苦しかったからな」
群衆の1人が李信にそう返答する。当然ながら要求は金ではない。金を要求すればこの3人と同じになり人望は地に堕ちるからだ。
「金ではない。そう難しいことをしろとも言わない。ただ簡単な働きをして欲しいだけだ」
「簡単な働き?」
「街中にこう流布して欲しい。異変の民である李信は帝都で悪行を尽くしている氷河期組の幹部であるリキッドを撃退したと」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 30 :名無しさん :2018/03/31(土) 17:55:42 ID:0Dyqxh9I
- 「まだ駒が欲しいところだな…。何処ぞで手頃な実力の敵でも襲来しそれを撃退すれば俺の名声は更に上がるのだが…」
李信はまだ不足は感じていた。人の噂は広まりやすいとよく言われてはいるが必ずしもそうとは限らない。広まる前に別の大きな話題に掻き消されたり、広まってもすぐに風化してしまうこともあるのが人間社会である。たかだか30人程度の駒で広い帝都に自身の名を浸透させるには足りないのだ。
李信は額に拳を当てて考えたが名案を思いつくには思考する時間がもっと必要だった。謀略を使いペルシャ帝国を敵視する勢力の侵攻を引き起こすことまでは思いついたがその謀略を練るには時間がかかる。因みにそれによる戦争や破壊で国民が巻き込まれて何人死のうが李信の知ったことではない。
(やはり俺は張良や陳平の様にはいかない。俺の頭脳では謀略を練るのに時間がかかる。頭を使うのは好きじゃないんだが…)
誰も居ない施設内のグラウンドで1人、黒い腹の内を僅かではあったが吐露してしまっていた李信だった。幸い、聞いた者は誰も居ない。李信はそれを確認していた。本性を知られればどうなるかは想像に難くない。
◇◇◇
ペルシャ帝国帝都北方
帝都では無差別殺人犯を帝都から撃退した異変の民がいるとの噂が僅かではあるがしっかり広まっていた。いつ殺されるかもしれないという不安や恐怖、そして家族や友人を殺された無念が晴らされた住民達は殊更その異変の民を評価していた。しかしその異変の民が誰であるかまでは知られていない。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
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