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【リポケ外伝 】「李信、魂の卍解」

1名無しさん:2018/01/03(水) 20:26:43
第一の主人公でありながら本編において碌な活躍も無く、第二部特に凪鞘編ではあまり出番が無い李信。

戦歴はエイジスや北条に負け、戦績では水素の足下にも及ばず。
「こいつが居なければどうなっていたか」という場面はアティークの封印くらい。

そんな二次元に行っても落ちこぼれの主人公・李信の知られざる物語が今、始まる。

卍 解 ! !

2名無しさん:2018/01/03(水) 20:27:18
時は移り変わり、凪鞘を倒し世界に平和が訪れた後。これは幕間の話である。

読者の皆様は覚えているだろうか?「この物語の主人公は誰なのか」ということを。

氷河期?確かにそうだ。水素?確かにそうだ。北条?確かにそうだ。この3人は出番も多く活躍も目覚ましい。

…だが1人、忘れられている男が居る。そもそも、この物語はこの男が異世界に転生したことから始まったのだ。この男を中心に物語は進んでいる筈だった。

李信。引き篭もりニートだったところを親に殺処分され二次元に転生した男。憧れのBLEACHの能力を全て手に入れた。現実では個体値が全て逆Vだった分、二次元では憧れの力を手に入れたのだ。

しかし蓋を開けてみればどうだろうか。彼は憧れの力で無双出来たか?彼女を作れたか?世界平和に貢献したか?強敵をなぎ倒して来たか?

答えは全てノーだ。落ちこぼれは二次元に行っても落ちこぼれだった。

強力な力を手に入れたにも関わらず成果を出せない。それは微妙な能力で頑張っている人間よりダサい。

そんな主人公・李信の活躍がようやく(?)見れるのがこの外伝である。

さて、前置きはこのくらいにして次のレスから物語を始めよう。李信よ、今度こそ解き放て!魂の卍解を!

3名無しさん:2018/01/03(水) 20:27:52
ある日のことである。李信の帝都にある屋敷を訪問してくる者があった。

「こんな早くから誰だよ俺は眠いんだよタコが」

インターホンが鳴り続ける。眠い目を擦ってぶつくさ言いながら寝室を出るのだが、時刻は既に9時を過ぎていた。

「誰だよったく…」」

李信が不機嫌なままドアを乱暴に開ける。そこに立っていたのは氷河期だった。

「直江氏まだ寝てたのか?もう9時だぞ?」

李信が寝間着であるジャージ姿なので氷河期はさっきまで李信が寝ていたのを察したようだ。

「氷河期さんか…。俺の中じゃ9時は早朝だ…。で、なんか用?」

「いや、ちょっと爺さんから直江氏を呼んでくるように頼まれてな」

「誰だよ爺さんって」

「俺がこの世界に来てから知り合った爺さんだ。まあ俺とは長い付き合いでな。その爺さんが直江氏に用があるようだ」

「用があるならそっちから来いバーカって伝えといて。じゃ、俺は二度寝するから」

李信はそう言ってドアを閉めようとすると…

「稼ぐチャンスだぞ」

「は?」

「ひょっとしたら数億とか手に入るかもな」

「何の話だ?」

氷河期はドアに手をかけて閉めるのを阻止しながら言う。

「あの爺さん、儲け話は結構持ってくるからな」

「…騙されたと思って付き合ってやる。だが下らない話なら即座に帰らせてもらう」

李信は文字通り騙されたと思って氷河期について行くことにした。氷河期は李信のそのセリフには触れずにさっさと着替えて来いと催促した。

4名無しさん:2018/01/03(水) 20:30:12
爺さん(とレイン)の家

「爺さん、直江氏…じゃなくて李信さんを連れて来たぞ」

氷河期が李信を伴い都の一角に構えられている木造の二階建ての家を訪ねて来ていた。内装は天井に大きなプロペラやお洒落なインテリアが備え付けられており、見栄えは結構良い。広さは100坪といったところか。一階から二階は吹き抜けになっている。

「おお!来たか!エイジスもご苦労!おぬしが噂のニンジンだな?」

爺さんは李信の姿を見るなり目を輝かせてジェスチャーで居間の木製椅子に腰掛けるように促す。

「ニンジン?俺は李信だ。用があるっていうからわざわざ来てやった。用件を聞こうか」

「異世界人の名前は覚えにくくてな…。にしてもおぬし、歳上に対する礼儀ってもんを知らんようじゃな。何じゃその態度は」

爺さんは李信に対してついつい高圧的な態度に出る。

「呼び出したのはそっちだ。説教するなら帰るぞ」

「まったく近頃の若者は…まあいい、まずは自己紹介からじゃ。ワシはエイジスとは古い付き合いで孫がエイジスの喫茶店で働いている。レオン・ヴァントニルというものじゃ」

爺さんは李信が怒って帰るのはまずいと思ったのか、説教をやめてまず自己紹介から始める。

「元グリーン王国軍第二軍長兼軍師参謀、現ポケガイ帝国軍第一軍長の李信、又の名を直江山城守兼続…まあどちらか好きな方で呼べ。みんなは大体直江と呼ぶ」

李信も初対面なので一応名乗り返す。

「で、ニンジン。本題に入ろうか」

「ジジイ、俺の斬魄刀の錆にしてやろうか?」

名乗ったばかりだというのに間違えたまま呼んでくるので流石に李信もカチンときたようだ。

「冗談じゃよ。まったく噂通りキレやすい男みたいじゃな。今日おぬしを呼んだ理由は三つある。一つは一儲けする為におぬしのこれまでの話や能力のことを直に聞きたい。二つ目はおぬしにエイジスの真実を話したい。三つ目はワシの孫含むエイジスに所縁のある者達と和解して欲しい」

爺さん…レオンが提示した3つの用件を聞いた李信は少し考える素振りを見せると

「二つ目の用件までは分かった。だが最後のは…お前の話次第だ、レオン」

と、ニコリともせずに返事する。因みに李信は営業スマイルが嫌いである。理由?散々これを駆使したにも関わらず面接で落とされまくった苦い思い出があるからだ。

面接では笑顔とハキハキと話すことが大事とよく言われているが、やはり学歴と、気の利いたことが言えるかどうかが問題なのだと李信は学んでいた。まあ、李信にはどちらも無いのだが。

5名無しさん:2018/01/03(水) 20:31:19
「ニンジ…じゃなかった、李信。おぬし本当にエイジスの仲間か?エイジスは人当たりも良くワシにも敬語を一応使い、美少女にモテモテだというのに…。おぬしは礼儀もなっとらんし女っ気も無い。陰気で陰鬱で根暗…エイジスとな正反対じゃな。エイジスの友人だとは思えん」

「………。」

嫌味なジジイだ。今すぐ月牙天衝で殺してやろうかとも一瞬思ったが、これでも氷河期の知己だと思い直してその考えを取り止めた。

「おぬしもエイジスと同じ異世界から来た人間というが、異世界ではシュウカツというものがあるそうじゃな。仕事探しをする活動のことを指すそうな。おぬしはそれに見事に失敗したらしいな。ま、おぬしの人となりを見れば分かる。とてもおぬしが他人に好感を持たれる人間には見えん」

「氷河期さん、余計なことを身内に話すな」

氷河期が色々自分について話したんだろうと察した李信は氷河期の方を向いて睨むが氷河期は気づかないふりをしてキッチンでコーヒーを淹れている。

「あと李信。いいことを教えてやろう。これは人生の大先輩からの教えだと思って素直に聞け」

「…何だ」

散々扱き下ろされた李信は結構苛立っていたがレオンの言ってることがあながち間違いではないだけに反論は出来ない。氷河期の顔を立てる為にも、もう暫く短気を起こさず付き合うことにした。

「人間的魅力が無い者はなにをしても上手くいかない。そう、おぬしにはオスとしての魅力が全く無い。おぬし、童貞じゃろ?」

「は?」

いきなり何を言い出すんだこのジジイはと言わんばかりの顔を浮かべる。

「図星じゃろ」

「否定はしない。だがそれが何だ?」

「魅力の無い男は恋人も職も得られないということじゃ。面接官も女も同じじゃ。相手を口説き落とさなければ望む者は得られんぞ。ワシなんて数え切れない程の女を口説き落としてきた」

「…喧しい。与太話するだけなら帰るぞ。お前が氷河期さんの知己だと言うから大目に見てやっているだけだ。力の差を思い知らせてやってもいいんだぞ?」

やはり短気な李信は思い直しても数分後には忘れるらしい。斬魄刀の柄に手をかけている。

「それに今はこの国の将軍だ。これでもクワッタの戦いやスカグル戦では戦果を挙げている」

李信は柄から手を離す。

「おお、すまんすまん!そうじゃったわ!おぬしのこれまで経緯や能力について話を聞かせてくれ」

レオンは本題をやっと思い出したかのような様子を演じて李信の怒りを逸らそうとする。

「ようやくか。あれは今から2年前…いや、3年前だったか…。まあいい、俺にとってはつい昨日の出来事だ。俺には数十通りの名前があるから何と呼べばいいか…。まあ此処は李信でいいだろう」

因みに数十通りの名前とはポケガイで名乗った半値の数である。ともかく、李信はゆっくりと語り始めた。

6名無しさん:2018/01/03(水) 20:32:18
2年前 現実世界 日本 埼玉県のとある市内 李信の部屋

「そんな学歴で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない」

李信は関東地方にある低偏差値大学「穢腐乱大学」に通う大学生だった。休日のある日、久しぶりにリア友である琢蔵と自室で3DSのポケモンで遊んでいた。因みに2人で直接会っているのにそれぞれレーティング対戦で遊んでいる。因みに琢蔵は中堅私大の「中ノ上大学」の学生であり、李信とは格が違う。

そんな中、琢蔵はふと就活のことを話題に出していた。もう少しでレート2000の大台に乗るという時に相手のメガリザードンXのフレアドライブか急所に当たって負けたので気分を落ち着かせる為に休憩していた。

「でも就活って学歴フィルターヤバいらしいぞ」

「そんなの大企業だけだろ。大学さえ出れば仕事はあるだろ。それよりお前、パーティ組み直せば?貴重なメガ枠をフーディンなんかに使ってるからレート2000帯に勝てないんだよ」

就活の話題は底辺大学に通う李信にとってはあまり面白い話題ではなかった。なので即座に話題を変える。

「フーディンは俺の魂なんだよ!フーディン使わないで勝っても意味がねえ。見てろよ今度こそレート2000に乗ってやる!」

琢蔵が3DSを再び手にとってレーティングバトルを再開する。余談だが琢蔵はフーディンが大好きであり、ピカチュウ版の時代からずっとフーディンをパーティに入れている。

「だがフーディン使って1900台だもんな、すげえわお前」

「お前は厨ポケばかりなのに1700台だもんな(笑)メガボーマンダとかクレセリアとかテンプレじゃねえか。もっと自分で考えろよ」

「…あ、また負けたわ。ふざけんなマジで死ねよオニゴーリ」

李信はオニゴーリで運ゲーを仕掛けてきた相手に憤っている。どうやらまた負けたようだ。確かに琢蔵の言う通り、李信はテンプレを真似ているだけだった。

「つかやべえよ次負けたら1600台になっちまう!」

「プッ(笑)1600(笑)あ、気合い球外してんじゃねえよ畜生!あ、ラッキー相手も大文字外してくれたわwよし行け!今度こそ気合い球当てろ!よし!よし!勝ったァ!レート2000だああああああ!!」

見事に李信と琢蔵の実力の対比がセリフになって現れていた。

しかし、ポケモンで負けることなど大したことはない。就活で負ければ人生が終わる。李信はそれをこれから思い知らされることになる。

7名無しさん:2018/01/03(水) 20:33:03
それから数ヶ月後…

李信にとって一生消えないトラウマを刻みつけるイベント…そう、就活が始まった。Fラン大学という重いハンデを背負って。

「まずは自己紹介をお願いします」

東京の従業員200人居るか居ないかくらいのとある中小企業での面接。李信は此処で現実を思い知ることになるのだ。

面接官は30歳くらいの眼鏡をかけた男性で、ニコリともしない常に真顔で見つめてくる。緊張するし精神的に威圧されるのでニコっとくらい笑って欲しいものだが。

「穢腐乱大学から参りました、李信と申します。本日はよろしくお願い致します」

李信は第一印象が大事と指導されていたことを思い出し、割と大きな声でハキハキと話すことに努めようとしていた。面接の練習もしたのでぬかりはない。

「えー、穢腐乱大学の李信さんですね。自己PRを1分程でお願いします」

「はい、私は〜(省略)」

想定していた定番の質問だ。スラスラと殆どつっかえることなく笑顔を意識して答える。こんなものは朝飯前だ。大したことはない。

「ありがとうございます。では、学生時代取り組んだことを教えて下さい」

「はい、私は部活動にて(以下略)」

実際、学生時代など何もしない。ただ毎日ゲームしたりネットサーフィンしたり好きな戦国時代の本を読んだりアニメ見たり漫画を読んでいたり…そんな生活を送ってきただけである。つまり、部活経験など捏造だ。就活に備えて捏造エピソードを作り出してアピールするのである。それも、突っ込まれてもいいように念入りに。

「ありがとうございます。では李信さんの志望動機を教えて下さい」

相変わらず表情を変えずに真顔で聞いてくる。こっちだって緊張しているのだからそんな態度で来られると正直キツいのだが

「はい。私は〜(以下略)」

まあ、考えてきた答えを話すだけだ。問題無い。履歴書のまんまだと自分の言葉で話して下さいと突っ込まれるので多少言葉を変えて答える。

「今までで一番悔しかった経験を教えて下さい」

「はい、(以下略)」

また捏造した部活動での体験を話す。フッ、隙など無い。

「あのー、先程から部活動の話が多いのですが他に無いんですか?」

「えっ…?」

「いや、部活動だけじゃなくてもっとあるでしょう。大学生活4年間もあったんだから。他のエピソードから具体的に教えて下さい」

「いや…その…」

は?何を言ってるんだこの面接官は。あるわけないだろそんなもの。求めるもの多過ぎだろ。大学生がみんなコミュ強でフットワークが軽くて多彩な経験積んでるとでも思ってんのか?これ以上を求めるのか?一つで十分だろうが。

「はぁ…分かりました。結果は近日中に連絡します」

明らかに聞こえるため息をついた面接官のセリフで面接は終了した。李信は殺意を覚えたがグッと堪えて退室する。

2日後、携帯に届いたのはやはりお祈りメールだった。

8名無しさん:2018/01/03(水) 20:33:41
後で判明したのだが、従業員200人もいかないような中小企業で、別にトップクラスのシェアを占めているわけでもない無名企業であるにも関わらず、李信の他にこの企業を受けていたのはFランレベルももちろん居たが、何故かMARCHレベルの高学歴がわんさか居たのだ。

「どういうこった?あんな中小企業に何でMARCHレベルの高学歴が沢山受けに来るんだ?」

因みにMARCHというのは明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の頭文字を取ってつけた東京にある偏差値60前後の私立大学群の総称である。2ちゃんねるではMARCHはFランだの、MARCHなんて大したことないだのとよく言われているが、偏差値60前後はある高レベルの大学であり、決して簡単に入れるわけではない。

そんな高レベルの大学の連中が受ける企業ではないだろと疑問に思うのは当然で、こんな中小企業を受けに来るのはせいぜい良くてニッコマくらいだろうと思っていた。

そして、今度は従業員150人前後の企業の説明会に足を運ぶ。


東京都 某所

◯◯株式会社 説明会 会場と書かれた案内板に従い会場に入る。別に上場もしていない無名の中小企業だ。しかし…

説明会に足を運んだ李信の前には数十人規模の長蛇の列が。

(おいおい、これ倍率何倍だよ。こんな倍率の中面接を3回も突破するなんて無理ゲー過ぎるだろ。俺はそんな優秀じゃねえぞ?)

しかも、受付の人間に大学名と氏名を名乗るのだが、前の連中の名乗りを聞いていると耳を疑うようなセリフが数々…

「立教大学から参りました、池面男です」

「明治大学から参りました、田井育海です」

「早稲田大学から参りました、話巧太です」

「立教大学から参りました、江井御出来太郎です」

(は?MARCHがこんなに来てるだけでもおかしいのにその上早稲田だと?どうなってやがるんだ…。ここ中小企業だよな?上場してないよな?シェアも大してないよな?俺ちゃんとホームページも四季報も見たぞ?!)

信じられない光景を見せつけられている内に李信の番がやってきた。

「穢腐乱大学から参りました、李信です」

(うわ、高学歴ばっかじゃねえかよ恥ずかしくて大学名言いたくねえ…クソが…)

「はい、李信さんですね。あちらのお席にどうぞ」

「はい。ありがとうございます」

マナーに乗っ取り会釈してそう言い放った後、指定された席につく。真ん中より少し前くらいの位置の席である。

9名無しさん:2018/01/03(水) 20:34:27
席に着き、テーブルに置かれていた会社案内のパンフレットを手に取り開く。うん、やはり上場していないし大した企業ではない。どう考えても高学歴が来る場所ではない。

「あの、李信さんでしたっけ。大学はどちらでしたっけ」

隣に座っていたのは先程の立教大学から来た池面男だった。李信に話しかけてくる。

(うわっ…話しかけて来やがった。大学名聞いてくるとか嫌味かよこのクソ野郎…)

「えっ?はぁ、えっと、穢腐乱大学ですけど」

(マジうぜえ…)

内心ウザいと思いつつも人事はこういったところも見ているので無視するわけにはいかない。

「そうなんですかー。遠いですねー。私は立教大学なんですよ。割と此処から近いですねw10駅くらいありますけどw」

悪びれもせず笑顔で勝手に語り出す。李信には嫌味にしか聞こえなかった。

「李信さんって趣味とかあるんですか?私は海外留学してましてね、英会話が趣味なんですよ。後スポーツも好きですね、ホラ、最近だと田中マー君!ファンなんですよ!」

「へ、へえ…そうなんですか。それは凄いですね(趣味?アニメとゲームだよ。田中マー君って誰だ?知らねえよ。野球なんてイチローとか松井秀喜とかしか分からん。つか話しかけてくんな。お前みたいなタイプは嫌いなんだよ!)」

その会話を遮るように、会社の人事担当が「それではお時間になりましたので説明会を始めさせていただきます」と始めた。正直李信は救われた気持ちだった。話の合わない奴との会話など苦痛でしかない。戦国武将やアニメキャラの名前ならいくらでも言えるが英語だの野球だのそんなものは李信の守備範囲外だ。

説明会は無難に終わった。質疑応答の時間では意外とFランレベルの大学生も居たが、MARCH以上も多かった。

「ふう…やっと終わったか。さて帰って録画していたアニメでも見るか」

その日は無事に終わった。が、次の面接で普通に話せたにも関わらずあっさりと落とされた。

「お前は不採用だ。何故不採用か?足りないからだ、学歴だ」という面接官の幻聴が聴こえそうだった。

10名無しさん:2018/01/03(水) 20:35:03
一文字でも書き損じたら書き直しの手書き履歴書、数学レベルが小学生レベルなのに中学生レベルの数学問題が出題される筆記試験、中小でもまともな待遇の企業だと押し寄せてくる高学歴共、圧迫面接、日々届いてくるお祈りメール…

李信の精神は着実に削られていった。李信が他の就活生と比較して、平均レベルに達しているのは国語(言語)分野の学力くらいのものであった。

受けては落とされ、受けては落とされを繰り返した李信はある日、大学の就職課に足を運んだ。

「何か良い求人ありませんか」

李信は藁にも縋る思いで声を絞り出し、就職課の職員に相談を持ちかけた。

「お、李信君!今ちょうどこういう求人が来てるんですよ!」

職員が李信に見せて来たのは何と、飲食業の求人だった。

「すいません、もういいっす…」

李信はその場から立ち上がり、虚ろな目で歩き去る。その胸中は絶望に支配されていた。

Fラン大学の就職課は、大学の就職率を上げる為に学生にブラック企業を進める。就職率さえ確保出来ればノルマ達成出来るし、宣伝にもなる。離職率など掲載しないので彼らは知ったことではないのだ。李信は自分はもうブラック企業に行くしかないのだと思い、頭の中に「死」の文字が浮かび上がっていた。

「おう李信!」

途方に暮れながら学内敷地を歩いていると、友人Aが話しかけてくる。

「おう、Aか…」

「その様子だとまだ内定が無いみたいだな」

「お前は?」

「まだ無いよ。なあ李信、売り手市場って本当なのか?俺もう30社は落ちたぞ?」

李信は申し訳ないと思いながらも内心ホッとした。苦しんでいるのは自分だけではないのだと。仲間が居るのだと。その友人の暗い表情を見ながら李信は安心したのだ。

「売り手市場とは言われているが…それは一定レベル以上の人間に限った話のようだ」

「確かになぁ…この大学、もう10月なのに内定率半分以下だってよ…ハァ…」

「酷過ぎるだろ…やはり学歴なのか…」

友人Aは溜息をつきながら李信に愚痴を吐く。李信ももう気力が萎えかけていた。


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