そしてこれらのシナリオを裁判さながらに見せられて裁きを下すボランティアの実験参加者66人の頭部には、繰り返し電磁刺激を与えるrTMS(repetitive transcranial magnetic stimulation、反復経頭蓋磁気刺激法) を装着したのだ。しかしながら実際は半数の33人のrTMSが実際に脳のDLPFCを刺激しており、一方の33人のrTMSは作動していない。もちろんこの事実は参加者には知らされずに、様々な犯罪が実際の法廷さながらに解説され、参加者にジョンの罪の重さをジャッジしてもらったのだ。
しかし逆に言えば、このRLPFCの働きを阻害するような要素が加わると、普段何事もなくこなしていることにミスが生じやすくなるという。米・ロードアイランド州のブラウン大学で行なわれた実験では、ここでも前出のTMS(transcranial magnetic stimulation、経頭蓋磁気刺激法)を駆使して、参加者の脳のRLPFCに刺激を与えて機能を阻害した状況で、事前に何度か繰り返して慣れてもらった単純作業をしてもらったという。その結果、やはりRLPFCの活動が邪魔されると、作業にミスが増えたのだ。
米コロンビア大学法科大学院(Columbia School of Law)ジェンダー・性的指向法律センター(Center for Gender and Sexuality Law)のキャサリン・フランク(Katherine Franke)所長は「同性婚反対派は、同性カップルの結婚を禁止しようとする法廷闘争で負けてしまったと認識し、今度はその矛先をトランスジェンダーの人々に向けてきているのだと思う。だが、誰がどのトイレを使うべきかという差別的な規定に関しては、一定のけん引力を持てると考えている」と指摘した。
支援団体「トランスジェンダー法律センター(Transgender Law Center)」のクリス・ハヤシ(Kris Hayashi)事務局長は、「こういった法律は、トランスジェンダーに対してだけでなく、男性あるいは女性はこういう見かけであるべきという既成概念にそぐわない人に対するハラスメントのきっかけを与えることになる」と指摘する。ハヤシ氏は、トランスジェンダーであるかどうかに関係なく、公衆トイレで罪を犯そうとする者から市民を守る法律はすでに存在しており、安全性を疑問視する論点は常識を逸しているという。