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国際政治・世界事情
1
:
とはずがたり
:2005/05/23(月) 02:47:11
世界情勢・世界史ネタなど
軍事問題は安全保障論
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/2246/1043205301/l10
を国際経済問題は国際経済学
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/2246/1060165061/l10
を参照の事
7765
:
とはずがたり
:2014/04/05(土) 15:49:01
>ウクライナの首都キエフで反ロシアの新政権が成立し、ロシアを罵るばかりか、彼らは昔からロシアの勢力圏だったウクライナの東部と南部、さらにクリミアで、ロシア語の使用を禁じるとまで言い出した。これはつまり「ロシア語をしゃべる公務員はみんなクビにして、西ウクライナから新しく人を連れてくる」ということであり、これがロシア国民のナショナリズムを刺激した。
>経済制裁が実施され、ロシアからの天然ガス供給が止まると、最も困るのがドイツとイタリアなのです。フランスには原発があるし、イギリスは、意外と注目されていませんが、北海油田をノルウェーと共同開発しているから、ロシアからのエネルギー供給が止まっても大打撃にはならない。ドイツとイタリアといえば、第二次世界大戦の枢軸国です。戦後の秩序は、枢軸国がエネルギー面で自立できないような仕組みになっている。
>プーチンが強硬な姿勢を崩さない理由の一つとして、プーチン政権の「宮廷化」が考えられます。
2014年04年04日週刊現代
佐藤優のインテリジェンス・レポート
プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ
ロシアの強硬姿勢で、ついに武力衝突が勃発!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38845
戦後65年以上、危ういバランスの上に築かれてきた国際秩序。それを破ったのは、やはりこの男だった。武力で領土を勝ち取る「帝国主義」の時代―ここから先、今までの常識はもう通用しない。
世界史に残る大事件だ
プーチン大統領が、3月18日にクリミア半島の併合にあたって行った演説は、驚くべき内容でした。ロシアは自国の力を過大評価している。それどころか、一方的に国際秩序を変えられる、そう信じているとしか思えません。
そのことは、アメリカに対する挑発的な言辞にはっきりと表れています。プーチンは「アメリカ人よ、あなたがたはアメリカ建国の時、民族自決権にもとづいて独立を宣言したのではないか」「同じことをクリミア人が言うと、文句をつけるのか」、さらには「東西ドイツの統一のときも、アメリカは民族統合を認めたではないか」と述べている。
つまり、「クリミアで行った住民投票は、お前たちアメリカ人と同じ民主主義という価値観に拠って立つものだ。どこが悪いのか」というわけです。非常に挑発的であり、また一言で言えば、露骨に帝国主義的な発想です。
現在の状況は、ちょうど100年前、第一次世界大戦直前の1914年によく似ている。ハンドリングを誤ると、戦争になりかねません。
もし今後、クリミアだけでなく、東ウクライナや南ウクライナに住むロシア系住民までがロシアへの帰属を望んで、クリミアと同様、ロシア編入の是非を問う住民投票を行うことになったとします。そうなれば、やはり「自警団」を組織して周辺地域の安全を担保するということになるでしょうが、その「自警団」の正体はロシアから送られてくる軍隊です。ウクライナ正規軍との衝突が起こり、内戦に繋がる可能性がある。
プーチンが演説を行った日の夜には、クリミア自治共和国の首都シンフェロポリで銃撃戦が起こり、ウクライナ軍に死者が1名出ました。おそらく、興奮のあまり発砲した兵士がいたのでしょう。非常時には、最前線で先走る兵士が必ず出てくる。そのような不測の事態を発端に、大きな戦争は始まるものです。
ただし現在のところ、アメリカがウクライナ新政権の後ろ盾となる保証はありませんから、衝突が起きれば新政権側が一方的に負けるだけです。悪くすると、今度は東ウクライナにも親ロシア政権が生まれるかもしれない。ウクライナの軍隊は弱小なので、アメリカがバックに付いて、絶対に勝てる状況になるまでは戦闘を避けるほかないでしょう。ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、NATO軍が出てくる可能性もまずない。今のEU諸国に、第三次世界大戦を戦う腹はありません。
今回のクリミア併合は、戦後初めて、大国が国際法に合致しないかたちで一方的に領土を拡大したという、世界史的に見ても大きな事件です。一連のウクライナでの動乱は、冷戦のようなイデオロギーの対立ではなく領土をめぐる帝国主義的対立であり、間違いなく米ロ関係は落ち込むところまで落ち込むでしょう。
しかし今後、アメリカがロシアに対してどこまで強く出られるかについては未知数です。経済制裁を強化するだけでなく、ロシアへの情報・技術流出も防ごうとするでしょうが、限界がある。アメリカ国内にはロシア系住民がたくさんいますし、北朝鮮のような国だったらともかく、これだけグローバリゼーションが進んだ世界で完全な経済封鎖など不可能です。
7766
:
とはずがたり
:2014/04/05(土) 15:49:13
問題はやはり、プーチンの頭の中がどうなっているかということです。
プーチンは当初「ウクライナの併合はしない」と明言していましたが、結局「クリミアはウクライナに非ず」という論理でクリミアを併合したうえ、これだけの強硬姿勢を見せている。もしかするとプーチンは、当初からクリミア併合はやむを得なくなると考えていたのかもしれません。
「バカにする奴は許さない」
ただし、一部で言われているような、プーチンが何年も前からクリミア併合を計画していたという憶測は当たりません。現在のロシア経済の状況を考えると、負担が大きすぎるからです。
ロシアにとって必要なのは、セヴァストポリの軍港とヤルタの保養施設だけ。どうしてクリミア・タタール人(クリミア半島の原住民族)の面倒まで見なきゃいけないんだ、というのが一般的なロシア人の感覚です。ここまで強く出る必然性は全くなかった。
では、なぜプーチンは大勝負に出たのか。最大の理由はナショナリズムです。彼は、「ウクライナ人が、ロシア人を侮辱した」と考えているのです。
ウクライナの首都キエフで反ロシアの新政権が成立し、ロシアを罵るばかりか、彼らは昔からロシアの勢力圏だったウクライナの東部と南部、さらにクリミアで、ロシア語の使用を禁じるとまで言い出した。これはつまり「ロシア語をしゃべる公務員はみんなクビにして、西ウクライナから新しく人を連れてくる」ということであり、これがロシア国民のナショナリズムを刺激した。「バカにしやがって、許せん」というわけです。
クリミア併合には、世間で考えられているほどの実質的な意義はありません。ロシアにとっては国際的に孤立を招くうえ、支出だって増える。しかし、ナショナリズムとはそういうものなのです。今回の事態は、合理性では読み解けない。こういうときにロシア人がどんな反応をするかということを分かっていなければ、彼らの行動を真に理解することはできません。
クリミア自治共和国のセルゲイ・アクショノフ首相は、ウクライナ新政権閣僚のクリミア入りを拒むなど、プーチンに負けず劣らず強硬な姿勢を見せています。しかし、これは一種の虚勢でしょう。
北方領土交渉は白紙に
アクショノフの素性は明らかになっていませんが、もともとは食料品店の店長だったと言われている。それが一夜にして世界中の新聞に載るようになり、一時的であるにせよ、国際政治のプレイヤーとして、プーチンにも会えるようになった。どこかのコンビニの店長が突然県知事を任されたうえに、総理の側近になったようなものです。
混乱期には、エリートの入れ替えが起こります。それまでエリートの地位に立つはずのなかった人間が、混乱に乗じて突然権力を握る。ヒトラーの例を引くまでもありませんが、新しいエリートが決まって大きなことを言うのは、自らのポジションの強化を図るためなのです。
EU諸国の中で、ロシアに対して特に強硬なのはリトアニア、エストニア、ラトビアのバルト3国です。この3ヵ国は国内に多くのロシア系住民を抱えていて、ウクライナを「明日はわが身」と思って見守っている。
一方で、ドイツがロシアを宥めようとしているという報道がありますが、その理由を「ドイツのメルケル首相が、プーチンと仲がいいから」などと考えるのは的外れです。プーチン政権が好きだというドイツ国民は3割程度しかいませんし、ドイツがロシアに対して宥和的なことには、もっとドライな理由があります。
経済制裁が実施され、ロシアからの天然ガス供給が止まると、最も困るのがドイツとイタリアなのです。フランスには原発があるし、イギリスは、意外と注目されていませんが、北海油田をノルウェーと共同開発しているから、ロシアからのエネルギー供給が止まっても大打撃にはならない。
ドイツとイタリアといえば、第二次世界大戦の枢軸国です。戦後の秩序は、枢軸国がエネルギー面で自立できないような仕組みになっている。当然日本もその例外ではありませんが、エネルギー面でロシアにあまり依存していませんから、今のところ影響は小さい。国際政治において、首脳の人間関係や、国同士の友好関係という次元で考えていては、事態を見誤ります。
7767
:
とはずがたり
:2014/04/05(土) 15:49:37
>>7765-7767
今回のクリミア併合で、プーチンは「領土不拡張」という戦後国際社会のルールを変えてしまった。ですから、日本とロシアの北方領土交渉も仕切り直すほかありません。今のロシアと交渉をしたところで、意味がない。
仮に北方領土が日本に返還されたとしても、ロシア系の住民が「ロシアに戻りたい」と言い出して、住民投票をすることになれば、クリミアと同じようにロシア軍が出てくるかもしれない。こうなると、北方領土の非軍事化や日本人の移住計画まで考えなければならず、日本は根本的に戦略を見直すほかありません。この3月18日以降、世界は新たなフェーズに入ってしまったのです。
プーチンは、クリミアに関して繰り返し「ロシアにとっての死活的利益」と述べている。今後、北方領土について日本に同じことを言ってくることも十分にあり得ます。
この「死活的利益」というのは、実にいい加減な言葉です。クリミアはついこの前までウクライナの一部だったわけですが、それでロシアが何か困っていたかといえば、まったく困ってなどいない。そのときの状況次第で、何が「死活的利益」かなど簡単に変わるのです。政治家が「政治生命をかけて」と言ったときと同じく、国家が「死活的」と言ったときには警戒しなければなりません。
日本にとってこれからの課題は、ロシアと中国の接近をどうやって止めるかということになるでしょう。今回ロシアがクリミアで行ったような「力による現状変更」を、クリミアとは違い無人島である尖閣諸島で、中国が仕掛けてくる可能性もあるということです。
中東・東欧の二正面作戦を強いられたアメリカが東アジアまで手が回らなくなり、中国が尖閣の実効支配へ動けば、日本も東シナ海の防衛を強化することになるでしょう。日本の先制を恐れた中国が、逆に先手を打つ形で尖閣に上陸するといったシナリオが考えられます。
こればかりは、今のところいい解決策は見当たりません。やはり中国との対話を絶やさないということに尽きるでしょう。
独裁者の孤独
プーチンが強硬な姿勢を崩さない理由の一つとして、プーチン政権の「宮廷化」が考えられます。
ロシアの外務省や対外諜報省は、対外的には強硬なことを言う一方で、内部では冷徹に計算を巡らせています。しかし、現在のプーチンは、そうした官僚組織とは異なる数人の「有力者」の影響で、国際政治の現実からかけ離れた意思決定をしているのではないかと思われます。これは私の推測ですが、その「有力者」としては、例えばロスネフチ(ロシア最大の国営石油会社)会長で、一昨年まで副首相も務めたイーゴリ・セーチンが挙げられます。
プーチンのもとには正確な情報が入らなくなっているのではないか。たとえば、'12年にプーチンは、政権批判の急先鋒であるマーシャ・ゲッセンというユダヤ系ロシア人の女性ジャーナリストと面会しました。しかしゲッセンの手記によれば、プーチンは、彼女がプーチンの不正蓄財やジャーナリスト暗殺疑惑を追及しているのを知らなかったといいます。「独裁者のもとには、不愉快な情報はもたらされなくなる」ということの例証に思えます。
プーチン政権は、いわば曲がったプリズムを通して世界を見ている。当然、国際社会からは大きな反発をくらいますから、軌道修正を余儀なくされるでしょう。それだけでなく、ロシア国内でも、このままでは危ないということに気づく国民が出てくるはずです。
現在、ロシア国民のプーチン政権支持率は70%を超えていますが、これはロシアが「戦争に勝っている」からです。そういうときにはどこの国でも政権支持率は高くなるもので、決して長続きはしません。
ロシアには今後、本格的な経済制裁が待っているほか、他国との人的な交流も減ります。ロシア人がアメリカやヨーロッパに行っても、気分よく過ごせない。そうなれば、プーチンの政策に対して、国内から疑問の声が上がる。
プーチンが、そうしたロシア国民の声を叩き潰すのか、あるいは受け入れて軌道修正するのか。そこが今後、注目すべきポイントになってくるでしょう。
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