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国際政治・世界事情
7767
:
とはずがたり
:2014/04/05(土) 15:49:37
>>7765-7767
今回のクリミア併合で、プーチンは「領土不拡張」という戦後国際社会のルールを変えてしまった。ですから、日本とロシアの北方領土交渉も仕切り直すほかありません。今のロシアと交渉をしたところで、意味がない。
仮に北方領土が日本に返還されたとしても、ロシア系の住民が「ロシアに戻りたい」と言い出して、住民投票をすることになれば、クリミアと同じようにロシア軍が出てくるかもしれない。こうなると、北方領土の非軍事化や日本人の移住計画まで考えなければならず、日本は根本的に戦略を見直すほかありません。この3月18日以降、世界は新たなフェーズに入ってしまったのです。
プーチンは、クリミアに関して繰り返し「ロシアにとっての死活的利益」と述べている。今後、北方領土について日本に同じことを言ってくることも十分にあり得ます。
この「死活的利益」というのは、実にいい加減な言葉です。クリミアはついこの前までウクライナの一部だったわけですが、それでロシアが何か困っていたかといえば、まったく困ってなどいない。そのときの状況次第で、何が「死活的利益」かなど簡単に変わるのです。政治家が「政治生命をかけて」と言ったときと同じく、国家が「死活的」と言ったときには警戒しなければなりません。
日本にとってこれからの課題は、ロシアと中国の接近をどうやって止めるかということになるでしょう。今回ロシアがクリミアで行ったような「力による現状変更」を、クリミアとは違い無人島である尖閣諸島で、中国が仕掛けてくる可能性もあるということです。
中東・東欧の二正面作戦を強いられたアメリカが東アジアまで手が回らなくなり、中国が尖閣の実効支配へ動けば、日本も東シナ海の防衛を強化することになるでしょう。日本の先制を恐れた中国が、逆に先手を打つ形で尖閣に上陸するといったシナリオが考えられます。
こればかりは、今のところいい解決策は見当たりません。やはり中国との対話を絶やさないということに尽きるでしょう。
独裁者の孤独
プーチンが強硬な姿勢を崩さない理由の一つとして、プーチン政権の「宮廷化」が考えられます。
ロシアの外務省や対外諜報省は、対外的には強硬なことを言う一方で、内部では冷徹に計算を巡らせています。しかし、現在のプーチンは、そうした官僚組織とは異なる数人の「有力者」の影響で、国際政治の現実からかけ離れた意思決定をしているのではないかと思われます。これは私の推測ですが、その「有力者」としては、例えばロスネフチ(ロシア最大の国営石油会社)会長で、一昨年まで副首相も務めたイーゴリ・セーチンが挙げられます。
プーチンのもとには正確な情報が入らなくなっているのではないか。たとえば、'12年にプーチンは、政権批判の急先鋒であるマーシャ・ゲッセンというユダヤ系ロシア人の女性ジャーナリストと面会しました。しかしゲッセンの手記によれば、プーチンは、彼女がプーチンの不正蓄財やジャーナリスト暗殺疑惑を追及しているのを知らなかったといいます。「独裁者のもとには、不愉快な情報はもたらされなくなる」ということの例証に思えます。
プーチン政権は、いわば曲がったプリズムを通して世界を見ている。当然、国際社会からは大きな反発をくらいますから、軌道修正を余儀なくされるでしょう。それだけでなく、ロシア国内でも、このままでは危ないということに気づく国民が出てくるはずです。
現在、ロシア国民のプーチン政権支持率は70%を超えていますが、これはロシアが「戦争に勝っている」からです。そういうときにはどこの国でも政権支持率は高くなるもので、決して長続きはしません。
ロシアには今後、本格的な経済制裁が待っているほか、他国との人的な交流も減ります。ロシア人がアメリカやヨーロッパに行っても、気分よく過ごせない。そうなれば、プーチンの政策に対して、国内から疑問の声が上がる。
プーチンが、そうしたロシア国民の声を叩き潰すのか、あるいは受け入れて軌道修正するのか。そこが今後、注目すべきポイントになってくるでしょう。
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