米ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)紙と米NBC(NBC)テレビが合同で行った世論調査によると、クリントン上院議員の支持率は43%となり、最も有力なライバル候補のバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員が22%でそれに続く。ジョン・エドワーズ(John Edwards)元上院議員は13%で3位につけた。
これだけは認めよう。オバマ氏の声は、低いハスキーボイスで、それは確かに魅力的だ。ちょっといがらっぽい彼のハスキーボイスはおそらく、ヘビースモーカーだったころの遺産なんだろう。しかしながら、彼が発したいくつかの有名フレーズは、実は空疎だ。「Audacity of hope(希望の大胆不敵)」とはいったい何なんだ?(訳注・これはオバマ候補の著書タイトル。邦題は「合衆国再生―大いなる希望を抱いて」)。それよりもむしろ、絶望を掲げてホワイトハウス入りを目指す方が、本当に大胆不敵すぎるのではないか? 希望を約束するというのはただ単に当たり前のこと、常識なのではないか? オバマ語録にはもうひとつ、「今、という強烈に切迫したもの」というのがあるが、何を言いたいのか意味がよく分からない。敢えて言うならば、彼の内なる声が「大統領選に出馬しなさい」と言ったという、それ以上の意味があるのかどうか。
そしてさらに、例の「Yes we can(私たちにはできる)」というあれだが。あまりに感動的だったため、ヒップホップ・グループ「ブラック・アイド・ピーズ」のwill.i.amがあの有名な(悪名高い?)ミュージック・ビデオを作るきっかけとなった、あの演説だ。スカーレット・ヨハンソンやハービー・ハンコックといった映画スターやミュージシャンが集まったあのビデオだ。
チャーチルもケネディもキング牧師も、本当に、真剣に、聴衆に覚悟や行動を要求していた。1940年の英国民にとっては、ドイツへの降伏はありうる現実的な選択肢だったかもしれない。にもかかわらずチャーチルは、「海辺でも」戦い続けなくてはいけないと、国民に求めた。キング師の「I have a dream(私には夢がある)」演説は、米国南部でまだ人種分離政策が実際に行われていた時代のものだ。キング師が「今、という強烈に切迫したもの」と言ったのは(オバマ氏は出典を認めて拝借している)、なぜ自分がベトナム戦争に反対するのか説明する必要があったからだ。JFKの「国が自分のために何をしてくれるかと訊くのではなく、自分が国のために何をできるのか自問しよう」でさえ、聴衆に行動を要求していた。
同氏はここで、米国が直面する戦争、経済危機などの課題を挙げた。「解決には時間がかかる。1年、いや1期をかけてもたどり着かないかもしれない。だが約束しよう、われわれは1つの国民として、必ずそこへ到達すると」と語り、選挙戦のスローガンともなった「Yes, we can(私たちにはできる)」の言葉で会場に呼びかけた。続いて、国民の愛国心や責任感、党派間の分断をいやす精神がなければ、変化は実現しないと強調。「私に投票しなかった人々にも言いたい。皆さんの声に耳を傾けたい。皆さんの助けが必要です。私は皆さんの大統領にもなる」と語った。同氏はさらに、建国者らが「丘の上の輝く町」と表現した米国の理想を、世界にもう一度示そうと訴えた。
オバマ氏はまた、ジョージア州アトランタで投票した106歳のアフリカ系米国人女性がいる、と紹介。「この国のいい日も悪い日も見てきた彼女は、知っているのだ。米国は変われるということを」と語った。そして「われわれの子どもたちが彼女のように長生きできたら、その時米国はどんな変化を、どんな進歩を遂げているだろう」と問いかけ、「懐疑の声にはYes, we canの精神で答えよう」と演説を締めくくった。