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1以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/05(金) 20:22:45 ID:R4QiEhY.O


2以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/07(水) 09:16:00 ID:dfIzZ0lQ0
占領した。構わんね?

3以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/19(月) 00:21:20 ID:gXDB7J2I0
開けた
楽しみにしてるよ

4以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/21(水) 14:04:19 ID:0QmVWcBM0
ジョルジュやハインの過去が気になるぜ!

5以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/21(水) 21:27:37 ID:J10H2vS60
次はいつくらいになるかなー
待ちきれない

6以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/23(金) 17:05:16 ID:HSPSAPDE0
誘導補助でageます

今月中くらいに来るつもりですが、ちょっと回線が心配なので、遅ければ9/1辺りでお願いします

7以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/24(土) 00:14:02 ID:1f2iO3L60
やったー!全裸で待ってる

81/78:2013/08/28(水) 06:43:11 ID:D15qh95o0
,(−)(−),「んっ、んっ、あー……久しぶりの外気ナリ」
/└―(;;;┓;;=;/;;.,)"
lw´‐ _‐ノv「……」


顔にへばり付いた男の抜けがらを、シャーミンはべりべりと引き剥がした。
首、腕、胸、千切れた皮の隙間からはじくじくと血が流れ出す。

シューはただ、彼の不格好な脱皮を見送った。
猟師の着ていた黄土色のシャツは主から染み出る血に塗れ、今やどす黒い赤に染まっている。


lw´‐ _‐ノv「……形は人間なのか」

,(・)(・),「あぁ。結局、生前の姿が一番便利が良いだすからね」


一通りの皮を剥いだ姿は、筋肉質だった猟師よりも一回り小さい。
最後に哀れな犠牲者の被っていた帽子を頭に乗せ、彼はようやくシューを振り向いた。

91/78:2013/08/28(水) 06:44:06 ID:D15qh95o0
,(・)(・),「……コレでよし、お待たせしただすね」


“魔導師”、シャーミン松中。
ラウンジ先王バジリオの元で数千の民を生贄に捧げた、異端の精霊術師。

探し求めた仇敵の姿に、シューは静かに目を細める。


lw´‐ _‐ノv「不潔だね。"それ"、いつから着てたって?」

,(・)(・),「あー、三日前? 最近はお客様がおおくてねぇ」


おかげで剥ぎ取る皮に困らなくて、最高ナリ。
シャーミンの返答に、シューは無言で返した。

数歩の距離を、互いの殺気が埋める。

101/78:2013/08/28(水) 06:44:24 ID:D15qh95o0
,(・)(・),「さて、ブチ殺す前に聞いときたいんだすが、お嬢さんは何故おいどんを恨んでるナリか?」

lw´‐ _‐ノv「……『カロン』。八年前にこの森を訪れた、伊藤オサムのギルドは?」

,(,, ゚) ゚),「んっんー、何だったかな? 悪いけど、おいどんは野郎の事はすぐ忘れちゃうナリ」

lw´‐ _‐ノv「……別に構わないけどね。もうお喋りは終わりだ」


シューは何も気にしていないかように、顔色を変えずに言った。
代わりに、ローブの懐から細やかな装飾の施された短剣を引き抜く。

――儀式刀。独特の飾り彫りを見とめ、シャーミンは目を細めた。

シューの胸元のオニキスに、"黒"の輝きが揺れる。
淀んだ呪いの森は彼女の求めに応じ、精霊を差し出した。

11以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2013/08/28(水) 06:46:30 ID:D15qh95o0
a,
wasureteta

konosureddoha,
miseri
jukaiwo
yu
ku
monono
youdesu
ga
nottorimasita

121/78:2013/08/28(水) 06:47:31 ID:D15qh95o0
(・(・),「ま、おいどんも気にしないだすナリ。そんなことより……」
∀'「そのチンケなダガー一本で、どうやって俺を楽しませてくれるんだ、クソアマ」

lw´‐ _‐ノv「……」


シューは答えず、“自ら”の左の掌に短剣を当てた。

白く柔らかい彼女の肌に、赤く禍々しい直線が走る。
滴が落ち、地面を濡らす。否、地面に波紋を起こす。

シャーミンは驚きに小さく声を上げた。
彼女を中心に、放射状に"黒"の波紋が広がってゆく。


lw´‐ _‐ノv「『我が名において命ずる。金色に輝く豊穣、此の地に息吹を満たせ』」
,(・)(・),「……!」

131/78:2013/08/28(水) 06:53:42 ID:D15qh95o0
wvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvwvw
v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w v w
V /V /V /V /V / V /V /V /V /V / V /V /V /V /V / V /V /V /V /V / V /V /V /V /V / V /V /V /V /V / V /V /V /V /V / V /V /V
|| || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || || |


黄金の稲穂が実る、光の大海原。
呪いに満ちた樹海の地が、その表情が、シューの言葉で色付きを変える。

――"黒"の親和。
彼女がその得意とするのは、心に触れる禁忌の術。
対峙する二人を取り巻く黄金の波が、彼女の奥義。
立ち昇る幾千万の光の中に、呪式士は静かに佇む。

眼窩を飛び出した双眸を、シャーミンは眩しそうに細める。

141/78:2013/08/28(水) 06:57:34 ID:D15qh95o0
,(・)(・),「これは……稲穂……?」
lw´‐ _‐ノv「ご名答。美しいだろう?」


シャーミンは輝く稲穂の一つに手を伸ばした。
触れた感覚は無く、ただ微かに温かく感じる。
灯火に手を翳したように、立ち昇る光は遮られて止まる。

心の中の世界を現実とリンクさせたのか。
足元すら見えない光の海を、シャーミンはそう結論付ける。


,(・)(・),「呪式士お得意の幻覚じゃあないみたいだすね。精霊が現実に干渉してるなりだす」
 ∀'「流石に驚いたな。お前の親和が作り出したのか?」

lw´‐ _‐ノv「あぁ、これが私の切り札だよ」


稲穂の海を、シューは悠然と進んだ。
立ち昇る光に遮られ、互いの姿は半ばまでしか見えない。

158/78:2013/08/28(水) 07:00:10 ID:D15qh95o0
,(・)(・),「大した手品だが……それだけだすか?」


シャーミンは腰元のトラッカー・ナイフを引き抜く。
元々は皮と服と同じく、殺した猟師の持ち物だった。

短っぽい挑発の文句に、シューは冷笑を浮かべた。


lw´‐ _‐ノv「あぁ、これだけだよ、魔導師。お前は手品一つで不様に消滅するのさ」

,(・)(・),「へぇ……そりゃ楽しみ、ナリだす、ね!」


黄金の海を蹴って、シャーミンが飛びかかった。
――簡単には殺さない。魔人は考える。
この生意気で愚かな女を、どうやって苦しめてやろうか、と。

そうして踊りかかったシャーミンは――


lw´‐∀‐ノv


――残忍に笑む獲物の……狩人の目の前で不様に崩れ落ちた。

168/78:2013/08/28(水) 07:02:12 ID:D15qh95o0
,(゚,,(゚,, );,「え、な……?」

lw´‐∀‐ノv「どうした魔導師、元気が無いじゃないか」


倒れたシャーミンの頭を、まるで虫けらにする様に踏みつけながら、シューは言う。
哀れにその身体を地面にへばり付かせた魔術師の身体から、どす黒い血が滲み出る。

シャーミンは驚きに目を見開いた。


,(゚,,(゚,, );,「な、なんで……」

lw´‐ _‐ノv「何を驚いているんだ、これは私の切り札だと言ったろ?
       ――この領域の"黒"の精霊は今、すべて私の支配下だ。意味わかってる?」

,(゚,,(゚,, );,「……!」

lw´‐ _‐ノv「ほら、不様に命乞いして見せろ!」

,( ,,( ,, );,「ブビャっ!」


生命が身体と魂を結びつけるのであれば、その役割を別のものに代用させれば良い。

"黒"の精霊を命の代用として蘇った魔人にとって、シューの宣告は生者が心臓を握られているに等しい。
顔面を分厚いブーツの底で蹴り飛ばされ、身を捩って逃れようとする彼を、呪式士は冷酷に見下ろした。

178/78:2013/08/28(水) 07:03:20 ID:D15qh95o0
lw´‐ _‐ノv「おいおい、何処に行くんだよ――『命ず。悠久に座す静寂、永劫の時を此処に開け』」

,(゚,,(゚,, );,「ヒッ……!?」


二つ目の呪言。
シューの宣告を受け、シャーミンの身体が強張った。
うつ伏せに転がった姿勢のまま、振り返る力ことすらままならず、彼はシューの足音を聞く。

ごりっ。左肘の裏に、硬く冷たい感触。


lw´‐ _‐ノv「そうやって這ってろ。それがお似合いだ、よ!」
,( ,,)( ,,),「――、――ッ!」


悲鳴すら上げられずに、シャーミンは目だけを動かし、激痛が走った己の左腕を見た。
シューの濃茶色のブーツと光にぼやけた地面との間に、自身のねじ曲がった腕が覗く。


lw´‐ _‐ノv「……やっぱり私には理解できないね。どう楽しめばいいのさ、こういう拷問って」
,( ,,)( ,,),「ひ……やめ……」

188/78:2013/08/28(水) 07:04:53 ID:D15qh95o0
シューは答えず、シャーミンの強張った身体を蹴って転がした。
仰向けになった魔導師を、呪式士の瞳の冷たい"黒"の輝きが射抜く。


lw´‐ _‐ノv


――美しい。
痛みに喘ぎながらも、シャーミンは自らを見下ろす彼女の姿に目を奪われた。

だから、思い出した。
『カロン』、かつて屠った彼ら、その一人。


,( ,,)( ,,),「ひ……は……素直、キュート……!」
lw´ _ ノv「……ッ!」


呟いた彼の顔を、シューは容赦なく蹴り飛ばす。
首の骨が嫌な音を立てて折れ曲がり、捻じれた口からは血の塊が飛び出し。
それでもシューは構わず、虫けらのように蹲る魔人に足を踏み下ろし続けた。

198/78:2013/08/28(水) 07:07:33 ID:D15qh95o0
lw#´‐ _‐ノv「調子に乗るなよ、このクソ虫が! 貴様が、キュー姉の名前を、口に出すな!」
,冫,,) (゚;;);.,,"「ビョッ――ブゲッ」


生命を持たない死者は、その精霊の供給先――核を破壊しなければ、いくら屍肉を痛めつけても死なない。
激高したシューが折れた首を踏みにじり、肋骨を割って肺腑を裂き心臓を潰しても、魔導師は生きている。

……生きている、それだけだ。
力を生み出す筋肉を根こそぎ踏み壊され、わずかな自由すら呪言に奪われた、ただ生きているだけの死者。

グチャグチャの肉塊を、シューは荒い息で見下ろした。
痙攣を繰り返す身体に、精霊が集中する一点が見える。

核。
この魔導師をこの世につなぎとめる、特異点。

ちょうど腎の辺りにある"それ"に、シューは手を伸ばした。


冫,,) ( ;;);.,,「ッ、お、あ……」
lw#´‐ _‐ノv「苦しいか? 今、楽にしてやるよ……ッ!?」

 ∀"「いや、その必要は無い」


はっきりと届いた重い声に、シューの背筋が凍る。
離れる時間は、無い。
完全に死んだはずの腕が動き、驚く呪式士の細い手首を掴んだ。

208/78:2013/08/28(水) 07:08:35 ID:D15qh95o0
……

ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです

最終話 亡霊王の事情 前


……

218/78:2013/08/28(水) 07:15:06 ID:D15qh95o0
ミセリが引き受けたキュートの依頼は、二つ。

一つは、『カロン』を葬る事。報酬は、200枚の金貨。
ミセリ達三人は、屍術師オサムの繰る数十もの屍を激闘の末に打ち破り、彼に引導を渡した。

ミセリ達に仇敵シャーミンの居場所を示し、彼は祝福された永い眠りにつく。
彼の棺桶に収められていた"遺書"には、金銀の貨幣と種々の増幅器を、これを読む者にすべて譲る旨。
彼が調べ上げ、図らずもその身で体感した宿敵シャーミンの用いる"魔導"とその弱点が記されていた。


そして、もう一つの依頼は。
無謀にも己が命を顧みず、単騎シャーミンに挑む彼女の妹・素直シュールの復讐を止める事。

「シューは既にこの森の深部に到達した」
『根の国』に帰る前に、キュートはミセリに伝えた。

彼女の身を案じたミセリ達三人は、呪いに満ちた湿林を急ぐ。

黄昏の刻は、逢魔が辻。
……そして、先頭を走るミセリは一つの人影の前に足を止めた。

2215/78:2013/08/28(水) 07:16:01 ID:D15qh95o0
('、`*川「……こんばんは、ミセリちゃん。やっぱり来ちゃったか」

ミセ*゚−)リ「ペニサス……さん……」


ペニサス、ギルド『エメロン』が一角。
素直家の召使にしてシュー専属の護衛。
どこか儚げな主を陽に陰に支え続ける、彼女の右腕。
絶対の忠誠と信頼を捧げ、影のように寄り添う従徒。

長い髪を後ろで纏めたもの静かな彼女は暗き森の中、見知った顔に表情は無く。
その手に握られた長柄の画戟は、その穂先の三日月を冒険者達へと浮かばせる。


……シャーミンを追うミセリ達は、樹海の開けた一角で彼女と邂逅した。
行く手を塞ぐように立ちはだかる彼女に、ラウンジで見た優しげな雰囲気は無い。
シューと揃いのアンプは"黒"に輝き、手にした画戟には飾りでない闘気が灯る。

彼女の後ろでは、相方のシラネーヨが大樹の根元に座り込み、顔を伏せていた。

2315/78:2013/08/28(水) 07:16:59 ID:D15qh95o0
(*‘ω‘ *)「っぽ、どうしたミセリ……ッ!」
  _
( ゚∀゚)o「ペニサス……それに、シラネーヨか?」


続いて地面に降り立った二人に、ペニサスは緩やかに視線を移す。
困惑の色を見せたジョルジュも、彼女の手に握られる長柄の狂気を見て押し黙った。

風の音は、無い。
緊迫した沈黙が、空間を満たした。


('、`*川「わかってるけれど、一応聞いておくわ。何をしに来たの?」

ミセ*゚−)リ「……シューさんを助けに来た。シャーミン松中を倒すよ」

('、`*川「そう。本気で言っているの、わかる」

2415/78:2013/08/28(水) 07:17:47 ID:D15qh95o0
('、`*川「でも、引き返して。ここは通してあげられない」

(*;‘ω‘ *)「……どうして」
('、`*川「キューさんに聞いたんでしょ、シャーミンの事。それに、私達の事」

ミセ*゚−)リ”「!」


ごめんなさいね、ペニサスは申し訳なさそうに言う。

三日月の横刃が揺るがずにミセリを見据え、暗い樹海に浮かぶ。

その姿はまさに無慈悲な夜の女王そのもので。
ミセリはその銀の光にシューの姿を幻視した。


ミセ*゚−)リ「シューさんも、そこに居るんだよね」
('、`*川「ええ。私達は反対したんだけれど、どうしても一人で戦るって」


無表情を崩さないままに、ペニサスは答えた。

2515/78:2013/08/28(水) 07:18:36 ID:D15qh95o0
(*;‘ω)「……なんで、アンタは此処に居るんだっぽ」

('、`*川「なんでって、あの娘が『誰も通すな』って言うから」


それだけ。ペニサスは事も無げに答える。

シューが言ったから、シューが命じたから。
画戟の三日月に乗っているのは、それだけ。

シューを助けたい、ミセリ達三人の願いよりも、シューの言葉が優先する。ただそれだけだ。


ミセ*゚−)リ「――」

('、`*川「おかしい、と思うわよね。でも、ミセリちゃん、私達は、あの娘の為に生きているの」


シューを助けたい、ペニサス自身の願いよりも、シューの命令が優先する。ただ、それだけだ。
だから、盲従の使徒として、ただ言命を守るのみ。
はっきりと言い切ったペニサスに、ミセリは唇を噛んだ。

"黒"の親和に目覚めたミセリには、ペニサスに纏わりつく'靄'が見えている。

2615/78:2013/08/28(水) 07:20:06 ID:D15qh95o0
ミセ* −)リ「……それ、シューさんの呪式だね」
('、`*川「さぁ、どうかしら。……あぁ、ここを迂回するつもりなら止めないわよ」


底無しの泥沼を泳ぎきる自信があるならね、ペニサスは冷たく言い添える。

彼女は両手を広げて見せた。その両手の先の地面はじっとりとぬかるんでいる。
陽が傾いて夕闇がますます深まる今、あるかも分からない迂回路を探すのは賢明だとは思えない。

何より、三人が辿ってきた濃密な"黒"の気配の中心はすでに遠くないのだ。

シューが既にこの樹海の奥に向かっている事は、キュートの幽霊から知らされている。
ここで回り道をする時間の余裕など、ミセリ達三人には無い。


ミセ*゚−)リ「……ううん、ここを通るよ」
('、`*川「いいえ、ここは通さないわ」
  _
( ゚∀゚)「……話し合いの余地は、無いんだな」

('、`*川「……」


ごめんなさい、ペニサスは繰り返す。

2715/78:2013/08/28(水) 07:23:59 ID:D15qh95o0
  _
( ゚∀゚)o「だったら、話は早い。倒して、通るぜ」

('、`*川「……そう」

ミセ*゚−゚)リ「!」


背負った大剣に手を掛け、ジョルジュは親和を起動した。
集める精霊は"白"、その圧力にミセリは息をのむ。

その怪力を知るペニサスは、僅かに目を細め、画戟を低く構えなおす。


('、`*川「へぇ、その剣を使う事もあるのね」
  _
( ゚∀゚)o「おう。……まぁ、手加減が難しいから普段は使わねぇけど、な!」


大人の背丈ほどもあるその大剣をジョルジュは無造作に持ち上げ、軽く振って見せた。
ペニサスは目を細め、画戟の握りを僅かに引く。

2820/78:2013/08/28(水) 07:26:31 ID:D15qh95o0
  _
(# ゚∀゚)o「っらぁああああ!」
('、`*川「……」


先に仕掛けたのは、ジョルジュ。
一直線にペニサスに飛び掛かり、剣を無造作に打ちおろす。

豪。
振り下ろされる大剣を、ペニサスは画戟で迎え撃った。

ジョルジュは驚きに目を見張る。
彼の一撃は、ペニサスの脇の地面に落ちた、否、落とされた。


  _
(# ゚∀゚)o「へっ、本当にそこそこ強かったんだなッ!」
('、`*川「お世辞にしか聞こえないけどね。そちらこそ、殺すつもりで来なさい」


言いながらも、ジョルジュは渾身の当て身を繰りだしていた。

肘、肩口から打ち出してゆく、筋肉の砲弾。
至近距離からの一閃は目の前に居たはずのペニサスには当たらない。
たゆたう布を掴もうとしているかのように、彼女は目の前をすり抜けてゆく。

お返しとばかりに、画戟の柄がジョルジュを殴りつけた。

2920/78:2013/08/28(水) 07:29:38 ID:D15qh95o0
ペニサスの渾身の打ちこみは確かにジョルジュを真芯に捉え、その額を強かに打った。
特殊な加工が為された鉄柄は見かけよりもずっと丈夫で、殴られたジョルジュの額に真っ赤な血が滲む。

しかし、それだけだった。

  _
(# ゚∀゚)o「ッ、しゃらくせぁあッ!」
('、`;川「ッ!」


地面に突き立った大剣を引き抜き、怒号と共に振り回す。
往なす事も避ける事もままならない、不利を悟ったペニサスは一足早く飛び退き、間合いの外へ。

ジョルジュは更に一歩踏み込み、その背後が大きく空いた。
そして、その空間こそが、彼の狙いだった。

二つの影が、一気に駆ける。


(*‘ω‘)「! チャンス!」
ミセ*゚ー)リ「ごめんジョルジュさん、ありがと!」
  _
( ゚∀゚)o「おう」


駆け抜ける二人を、無言で見送るペニサス。
ジョルジュは眉根を寄せた。

3020/78:2013/08/28(水) 07:33:50 ID:D15qh95o0
  _
( ゚∀゚)o「おいおい良いのか、ただ見逃したりして」

('、`*川「だって、追おうとしても貴方がそれを許さないでしょ?」
  _
( ゚∀゚)o「まぁな」


ペニサスは手の上でくるくると画戟を回した。

刃の煌きが宵闇を踊り、複雑な軌道を残す。


('、`*川「だから――貴方を倒してから、ゆっくり仕留めるわッ!」
  _
(;゚∀゚)o「っと!」


目の前に迫る三日月の刃を、ジョルジュは左腕で受け止めた。
鍛え上げられた鋼の筋肉を裂いて、鋭い刃が微かにめり込む。

3120/78:2013/08/28(水) 07:36:37 ID:D15qh95o0
  _
( ゚∀゚)o「おいおい良いのか、ただ見逃したりして」

('、`*川「だって、追おうとしても貴方がそれを許さないでしょ?」
  _
( ゚∀゚)o「まぁな」


ペニサスは手の上でくるくると画戟を回した。

刃の煌きが宵闇を踊り、複雑な軌道を残す。


('、`*川「だから――貴方を倒してから、ゆっくり仕留めるわッ!」
  _
(;゚∀゚)o「っと!」


目の前に迫る三日月の刃を、ジョルジュは左腕で受け止めた。
鍛え上げられた鋼の筋肉を裂いて、鋭い刃が微かにめり込む  _
(;-∀゚)o「ったく、一日に二人も俺の身体に傷を……今日は厄日だ」

('、`*川「あら、私以外にも居たの?」


ジョルジュは大剣を捨て、ペニサスの画戟に手を伸ばした。

もともと彼の大剣は、巨大な樹海の生物を斬り倒し、大群を凪ぎ払う為の装備だ。
こうしてテクニカルな動きを見せる冒険者との一対一の戦闘には、向いていない。
彼の膂力の前では小枝同然とはいえ、小回りの利いた立ち回りが出来ないのは、流石にマイナスだ。

ペニサスの反応は素早かった。
阻まれた刃が進まない事を知ると直ちに身を引き、武器もろとも彼の手の届く範囲を抜け出す。

  _
( ゚∀゚)o「っち、チョロチョロと……そんな逃げ腰で、本気で俺を倒せると思ったのか?」
('、`*川「……自信が無い、わね。でも、頑張るしかないと思わない?」


引き戻した戟を、ペニサスは再び鋭く突きだす。

3220/78:2013/08/28(水) 08:14:13 ID:y780oguI0
――挑発的な態度と裏腹に、その戦闘は極めて堅実。
ラウンジの工作兵を瞬殺した時に、ペニサスは彼の本質を見抜いていた。

ジョルジュは首をひねって刺突を避け、再びその得物を掴みとらんと手を伸ばす。

画戟は一瞬早く引かれ、その手は再び空を掴む。
一進とも一退ともつかぬ攻防は、ジョルジュが予想したよりもずっと長く続いた。


('、`;川「っと……私の方が、自分の身を守るだけで精一杯ね」
  _
( ゚∀゚)o「じゃあ諦めろよ。俺はまだ全力じゃないぜ?」

('、`*川「……でも貴方の親和能力では、"今"はそれが出力は限度でしょ?」
  _
(;-∀)o「なんだ、バレてたのか」


ジョルジュは諦めたように肩を竦める。
彼の親和能力――彼自身が名付けた親和の、その弱点は、ペニサスは言い当てた通りだ。

3320/78:2013/08/28(水) 08:14:53 ID:y780oguI0
  _
( ゚∀゚)o「確かに、お前が相手じゃ俺の"巨人狩り"は今この程度が限度だ。だが――」
 ('、`*川「『それはつまり、親和無しでもお前には負けないって事だ』、かな」
  _
(;-∀)o「……お前みたいなのの相手は本気で苦手だよ」
('、`*川「よく言われるのよね。失礼しちゃうわ」


斬りつける一閃、突き刺す一閃。
ペニサスの鋭い、素早い攻撃は、ジョルジュの肌に線を残すに留まる。

互いに決定打を欠きつつも、やはり戦いの結末は見えているようなものだ。
疲れたようにジョルジュが溜息を吐く。

  _
( ゚∀゚)o「……それで、まだ続けるつもりか?」

('、`*川「そうね、あっさり負けるわけにもいかないから」
  _
( ゚∀゚)o「まぁ別に構わんが、それじゃ時間稼ぎにしか――」


時間稼ぎ、そう言い掛けて気付いた。

――シラネーヨは、何処に消えた?

焦燥に息を飲んだジョルジュの前で、ペニサスはその身を地に這わせた。
反応するよりも早く、水面を切るような蹴りが軸足を襲う。

3420/78:2013/08/28(水) 08:16:33 ID:y780oguI0
(、 川「――もう気付いたのね。残念」
  _
(;゚∀゚)o「う……おぉお!」


油断した。
仰向けに受け身を取ったジョルジュを、三日月の刃が襲う。

威力を跳ね上げたペニサスの攻撃は、鋭く、躊躇なく急所、眼を狙ってくる。
顔の前で両腕を交差させ、ジョルジュはその牙を受け止めた。

  _
(;-∀-)o「時間稼ぎをされていたのは、俺の方だったってか」
('、`*川「そう言う事。知ってるわね? ネーヨは私よりもずっと――」


ペニサスの言葉を遮って、凶悪な咆哮が鳴り響いた。
樹海の静穏を引き裂き木霊したのは、恐怖それ自体。
身体の芯を揺さぶる衝撃に、ジョルジュは凍りつく。


('、`;川「始まったか――って、待ちなさい!」


ペニサスの言葉も聞かず、ジョルジュは大剣を掴んで駆け出す。
ジョルジュの心には、追い縋るペニサスは既に存在しなかった。

3520/78:2013/08/28(水) 08:20:00 ID:y780oguI0
……

行手の暗い地面に泥のあとを見つけてからは、二人は樹上を伝って移動していた。

見下ろすと、ぬかるみは一歩ごとに深まっているらしく、進む先では泥海へ変わっている。

樹々の数が、泥海を前に一気に減っていた。それに、よく見ると泥は僅かに流れを持ち、動いているようだ。
おそらく普段は雨水をクラシカ河に送り込む水路なのだろう、生物の気配すら無い泥塊を見てミセリは思う。

……枝上を渡れそうな道は、目の前で泥河を裂いて立つ一本の大樹しか無かった。
迂回しようにも、広がる泥の大河はどこまで続いているかもからない。

その一本の大樹の上で、ネーヨは二人を待っていた。



(∮ − )「……」
(*`ω` ;*)「っ……ぐ……!」
ミセ*;゚−)リ「ぐぬぬ」


ワイヤーで紡がれた刃先を、ぽっぽはワンドで受け止める。
体重の軽い彼女は空中でいとも容易く突き飛ばされ、後方の木々に激突した。

隙を突いて彼に接近したミセリも同じく、変幻自在に舞う刃片に阻まれて引きさがる。

3630/78:2013/08/28(水) 08:21:24 ID:y780oguI0
……強い。二人掛りでも、まるで脇を抜ける気がしない。
ぽっぽの顔に、焦りが浮かんだ。

蛇のように唸る刃片は樹上に立つ持ち主の手元に戻り、大剣の形を為す。


(∮ − )o"「……」ヒュッ,


シラネーヨ、ギルド『エメロン』が一角。
素直家の用心棒にしてシュー専属の護衛。
どこか儚げな主を陽に陰に支え続ける、彼女の左腕。
絶対の忠誠と信頼を捧げ、影のように寄り添う従徒。

右頬に緑の刺青を彫り込んだ大柄な彼は暗き森の中、見知った顔に表情は無く。
その手が振り回す大柄な蛇剣は、連なる数十数百の鱗刃を樹海の空に泳がせる。


(*;‘ω‘)「っく……」
ミセ*゚−)リ「ネーヨさん……か」

3730/78:2013/08/28(水) 08:59:31 ID:y780oguI0
(∮ − )「すまねーな。お前ら二人には大人しくしていてもらうーよ」


剣の形に戻った得物を手に、ネーヨは一気にミセリの立つ枝端へと距離を詰める。
巨体からは想像もつかないほどのスピード、ミセリは身を翻し、足場を飛び降りた。
ネーヨの手の中で何百の小さな欠片に分割された刃が、主の意を辿る様に舞い、踊る。

間合いが長く防ぐことが難しい鞭の利点と、重く殺傷力に長けた大剣の利点。
狙われた太い枝を刃片の激流が舐め尽くし、大樹の生皮を根こそぎ剥ぎ取る。


ミセ*;゚−)リ「っと!」
(∮´ー`)「逃がさんッ!」


ミセリは空中で長剣を引き抜いた。
剣の大河はネーヨの手元でその流れを変え、体制の崩れた彼女に向いている。

目の前に迫った刃片の一群に、ミセリは無我夢中で剣を合わせた。

3830/78:2013/08/28(水) 09:01:06 ID:y780oguI0
(∮#´ー`)「おぁらッ!」
ミセ*;-−)リ「〜〜ッ!」


硬い音が弾ける。
身体を引き裂かれる事は避けた、が、衝撃は殺しえない。
ミセリは一気に真下へと叩きこまれた。

真下……樹下に広がる、泥の海へ。


ミセ*;д)リ「……ぶ!」


深く暗い濁り泥の中に、半身までが一気に埋まる。
身体に纏わりつく泥は重く、極端に手応えが薄い。
身動きを取ろうともがく程にその身は沈み込んだ。

一方で、叩き落としたネーヨはそれ以上の追撃を行わず、ぽっぽの方に狙いを移す。

3930/78:2013/08/28(水) 09:03:43 ID:y780oguI0
(*;‘ω)「っとと……畜生、ちょ、待てや!」

(∮´ー`)「待たねーよ。覚悟決めろ」


砕けた鈍色の刃が集まり、また一つの剣を為す。

どう対処したものか、ぽっぽは低く唸った。

ミセリは視界の外れ、枝下で苦しそうにもがいている。
援護を求める事はできそうになく、むしろ、助けなければ泥に溺れて死ぬ。


(*;-ω- *)「はぁ……覚悟決めたっぽ」


ぽっぽは精霊を棍に集めた。
重量の捩れたバランスの悪い武器が、その意に応じて低く唸る。

4030/78:2013/08/28(水) 09:20:00 ID:y780oguI0
(∮´ー`)「ああ、それじゃ早速」
(*#‘ω‘ *) 「ぽぉいァ!」
  ⊂_彡   ≡"∫゚∫


降りあげられたネーヨの蛇剣が、刃片の幕を広げた瞬間。
攻撃に移るその一瞬は狩人が獲物に見せる最大の無防備。
ぽっぽはその隙を狙って戦棍を振りかぶり、渾身の力で投げつけた。


(∮;´ー`)「うおっ!」


眼前に迫った鈍器に、ネーヨは慌てて腕を振り変えた。
大蛇に巻き付かれた戦棍は大きく削られ、勢いを無くして沼地に落ちてゆく。

4130/78:2013/08/28(水) 09:20:18 ID:y780oguI0
(∮;´ー`)「ッ、得物を手放して何を――あん?」


目を戻した彼の目の前には、既に誰も居ない。

視界を奪った互いの得物が消えた時には、既にぽっぽは視界から消えている。
慌てて刃片を引き戻したネーヨ、その背中を弾丸のような跳び蹴りが襲った。


(*#‘ω‘ *)「喰らえっぽ!」
(∮;´ー`)「ちぃっ!」


蹴られたネーヨは、よろめく足を踏ん張って、辛うじて耐えた。

武器を目晦ましにしてまで大樹の裏を回って、背後を取った目的は。


(∮;´ー`)「俺も、叩き落とすつもりかーよ!」
(*#‘ω‘ *)「正解だっぽ!」


たたらを踏んだネーヨの足に、ぽっぽは渾身のタックルを掛ける。
丸太のような足はよろめき、一歩後退する。

あと一歩。枝上からネーヨを落とすには、あと一歩が足りない。
ネーヨは足を蹴り上げ、纏わりつく少女を鬱陶しげに振り払う。

4230/78:2013/08/28(水) 09:21:34 ID:y780oguI0
(∮#´ー`)「う……おぉおおお!」
(*;‘ω‘ *)「うっげ……マジか!?」


ぽっぽは慌ててネーヨの枝から跳び退いた。
振り下ろされた大剣は空中で刃鞭へと変わり、ぽっぽを襲う。


(∮#´ー`)「鬼ごっこは終わりだーよ!」


避ける術もない空中で、大蛇が唸った。

彼女を守る戦棍は、今は彼女の手元には無い。
捉えた、ネーヨは確信する。

しかし。


(*#‘ω‘ *)「まだまだだぁっぽッ!」

4330/78:2013/08/28(水) 09:28:41 ID:y780oguI0
(∮;´ー`)「……ちッ!」


 ∧ ∧
(*‘ω‘ *)  
 (   )
  v v 
   川
 ( (  ) )


ネーヨは息を飲む。空中で、ぽっぽはもう一度'跳ね'た。
大蛇は空しく牙を噛ませ、獲物は空高く舞い上がる。

原理は単純だ。
ぽっぽの持つ親和は"赤"、純然たる破壊の色。
"赤"の爆発力で、自身を大砲のように撃ち出しただけだ。


(∮´ー`)「だが、流石に連続では――!?」


――連続では跳べまい。刃片を大剣へと引き戻して、終わりだ。

頭の中で組み上げられた展開は、しかし、実現を見なかった。
彼の手元で、大剣に、そして再び大蛇に化ける刃の、その切先はぽっぽに届かずに失速する。

4430/78:2013/08/28(水) 09:34:23 ID:y780oguI0
(∮;´ー`)「な……何だーよ!?」 
(*‘ω‘ *)「フィィーッシュ……!」


刃先が思うように動かなかった、その原因はすぐに見つかった。
蛇剣のワイヤーに、異物――鉤爪付きのロープが巻き付いている。


(∮;´ー`)「あ、く……!」


ネーヨの顔が驚きに引き攣った。
ピンと張られた硬質な鉄紐は、ネーヨの背後、彼が枝に立っている大樹を通し、中空へ。
先ほど背後から急襲を掛けてきた時には、既にこのロープは張られていたのか。

樹々の一本に着地したぽっぽが不敵に笑い、再びネーヨに突貫する。


(*‘ω‘ *)「さぁさぁ、一本釣りだっぽ。覚悟せぇい!」
(∮;´ー`)「はっ、こんなモン速効で引き千切って……え?」


引き千切ろうとしたロープは意外にも、あっさりと手繰り寄せられた。
木々に固定されているんじゃなかったのか、ネーヨは思わず繋がれた先に眼をやる。


ミセ*゚皿゚)リ「ふはへたふはー!」
(∮;´Д`)「うおおおー!?」

4540/78:2013/08/28(水) 11:24:50 ID:y780oguI0
(*‘ω‘ *)「はっは、釣果一点だっぽ?」
(∮;´ー`)「てめ――くそっ!」


釣り上げられた勢いで飛び掛かってくるミセリと、上空から降ってくるぽっぽ。
ロープが絡みついたまま蛇剣はまともに振れず、ネーヨは焦りに身を固くした。


(∮;´ー`)「……ッ!」

(*‘ω‘ *)「お前の負けだっぽ!」
ミセ*゚皿゚)リ「おひおッ!」


二人分のとび蹴り、一人分の落下音。

叩き落とされたネーヨは、身動きの取れ根い泥の中で、茫然と樹上の二人を見上げた。

4640/78:2013/08/28(水) 11:26:04 ID:y780oguI0
……


ミセ*;-д-)リ、「ぺっぺっ……あぁもう、口の中が泥だらけだよ……」

(∮;´ー`)「……あぁクソ、くっそ、納得いかねーよ」
(*‘ω‘ *)「だが負けは負けだっぽ。ほら、沈んで死にたく無かったらそれに掴まれ」


ミセリを釣り上げたロープを、泥面に腰までを漬け込んだネーヨに投げ落とす。
ネーヨは答えず、無言でそれを掴んだ。

上端は、鉤爪が絡んだままの蛇剣でもって、枝にぐるぐる巻きにされている。
手繰り寄せて枝に上がる頃には、二人の少女はずっと先に進んでいるだろう。
奥歯を噛み締めるネーヨを尻目に、ぽっぽは引き上げた戦棍を検めた。

刃片の大渦を真っ向から叩きこまれた相棒は、無残にもその鉄軸をさらけ出していた。


ミセ*゚−)リ「はぁ……ねぇ、ネーヨさん」

(∮´ー`)「あぁ?」

4740/78:2013/08/28(水) 11:27:37 ID:y780oguI0
ミセ*゚−゚)リ「ネーヨさんはどうして、シューさんを助けに行かないの?」


ネーヨは顔を上げた。
既にその身体は胸元まで沈みこんでおり、独力では這いあがれないだろう。


(∮´ー`)「どうして……か。そう命令されたから、だーよ」

(*;‘ω)「またソレかっぽ! なんでそうまでして命令とやらを守ろうとするんだ?」
(∮´ー`)「なんで……ああ、なんでだろうな」


掴んでいたロープから、手を離す。
驚くぽっぽの前で、彼の身体はゆっくりと泥沼に沈んでいった。


(*;‘ω‘ *)「! おい、死ぬ気か!? 早くロープに掴まれ!」
(∮´ー`)「……姐さんは、俺の恩人だ。俺を拾ってくれたから、だーよ」
ミセ*゚−゚)リ「……」

(∮´ー`)「群れに捨てられて、顧みる者も無いまま処刑されてゆく俺を、姐さん達が変えてくれた」

4840/78:2013/08/28(水) 11:29:49 ID:y780oguI0
「姐さん達だけが、俺を人間として扱ってくれた」

泥は既にネーヨの肩を飲み込み、首元を浸している。
顔を上げた彼の瞳に、ミセリは静かな狂気を見る。

シューの呪式に与えられた"命令"、それに劣らぬ自戒の号令。


(∮´ー`)「だから俺は――」


最後の言葉は、泥に飲まれて消えた。
ネーヨを飲み込んだ泥沼は、何事も無かったかのように波紋を消した。

(∮₤゚ )
だから俺は――たとえ姐さんに頂いた人間を捨ててでも、姐さんの意思に従い続ける


……泥の海を裂いて、漆黒の翼が舞いあがった。

4940/78:2013/08/28(水) 11:44:19 ID:y780oguI0
ミセ*;゚д゚)リ「」
(*;‘ω‘ *)「」


黒い一対の翼を持った、巨竜。
全樹海で、全世界で、最強と伝えられる一族。
ミセリは、ぽっぽは、ただその姿を見上げた。


            ∧ ∧  
    /\<\,  (∮₤ −)
 /| <,,,,,,,,,\,\,  > /  
 | \___>\|/./
  \        /
    ∪∪ ̄∪∪



翼の巻き起こす暴風が、二人を、樹々を揺さぶる。
美しい、見とれるミセリの前で、"彼"は大きく首をもたげた。

5040/78:2013/08/28(水) 11:46:55 ID:y780oguI0
(∮₤ д)<3  スゥー…

ミセ*;゚−゚)リ「! 耳を塞いで!」
(*;‘ω‘ *)「ッ!?」

(∮₤ д), …ーッ、



息を吸い込んだ彼の竜に、ミセリは慌てて叫んだ。
――二人が耳を塞ぐと同時、超音量の咆哮が樹海に響き渡る。


ミセ∩; −)リ「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っく、」
(*∩; ω)「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」


身体の芯が、ビリビリと震える。
もし耳を塞ぐのが少しでも遅れて、この大音量をまともに貰っていたら、恐らく一撃で気絶していた。

衝撃から立ち直る間もなく、二人は枝からバラバラに跳び退いた。


ミセ*;-д)リ「ッ……んな、常識外れな……!」


黒竜が羽ばたき、その巨体を打ちつける。
たった一回のその突撃で大樹は抉れ、砕け、傾いで倒れた。

竜は満足げに、まるで巨大な敵を打ち倒したとでも言わんばかりに、岸まで戻った二人を振り返った。


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