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おもらし千夜一夜4
1
:
名無しさんのおもらし
:2014/03/10(月) 00:57:23
前スレ
おもらし千夜一夜3
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/2469/1297693920/
218
:
名無しさんのおもらし
:2015/01/12(月) 01:30:05
妹を肩で押しのけトイレの中に入った菜々美だったが、その真っ白な便器を目にした瞬間、まるでおしっこの穴を塞いでいた栓が抜けてしまったかのような圧倒的な尿意が菜々美を襲う。
(あっ、やっ、だめっ!)
じょろろろろろろ。
スカートを一瞬で黄色く染め上げながら、滝のようにおしっこが溢れ落ち、トイレの床に水たまりを作っていく。
「ちょ、お姉ちゃん!?」
妹がぎょっと目を見開いて、便器の目の前で立ったまま突然おしっこを始めてしまった姉の姿を見つめる。
(やだ、止まってぇ…!)
両手をあてがい必死におしっこを抑えこもうとするが、二度のおあずけを食らってしまったおしっこはもはや止めることは出来なかった。
妹にその一部始終を目撃されながら、菜々美のおしっこはばちゃばちゃと床の水たまりを広げ続けていった。
219
:
名無しさんのおもらし
:2015/01/12(月) 02:02:45
ふむ、オーソドックスな良作です
他も期待しています
220
:
名無しさんのおもらし
:2015/01/14(水) 08:08:39
やっとトイレにいけると思ったら誰かが入っている
いい展開ですね
221
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-&
◆plUe0InTVs
:2015/02/05(木) 19:34:19
「はぁ……」
私は駅に向かって歩く。
結局、保健室から着替えとかを真弓さんに持ってきてもらって事なきを得たが
今回は――――"今回"とか言っちゃう辺り常習犯なのを自覚してて情けない――――そのまま授業を受ける気になれず早退してしまった。
「あぁー、もう、なんで……あぅ……」
私は頭を抱えながら意味のない声を小さく零す。
頭の中に"おもらし"と言う言葉がグルグル回ってる。
何度失敗しても慣れない。恥ずかしさや悔しさ、憂鬱な気持ちやなんとも言えないやるせなさ。
それが複雑に絡み合い、胸が締め付けられているような苦しさを感じる。
――どうして我慢できないかなー、今日だって、隣の個室が開くまで我慢すれば……そうじゃなくても
真弓さんに後一言伝えて、扉を開かないようにしてもらえれば……。
後者の行動はどうしても我慢できそうにない私が取ろうとした行動。非常に恥ずかしい最終手段。
冷静になって考えれば、凄く大胆な行動で……でも、結局それすらも我慢できず……。
「はぁ……」
また嘆息する。わかってる、悪いのは全部私。
飲みすぎたのも、お手洗いに行き忘れたのも、授業中に申告てきなかったのも、我慢できなかったのも全部私。
誰かのせいなんて言い訳しちゃいけない、全部私の責任……。
――あーもう、いいや、早く帰って寝ちゃおう……。
深く落ちていく思考を続けるのが辛くなって、故意に思考を中断させる。
電車に乗り込み、座席に座る。
しばらく私は電車に揺られる。一駅、二駅……。
乗りなれた電車。でもいつもと違う時間。乗車してる人も若干違うし少し違和感のある感じ。
その不思議な妙に落ち着かない感覚を体験することとなった理由……私の失敗。
……考えたくないのに。
「はぁ……」
もう何度目になるかわからない嘆息。
それと同時に、私の小さな下腹部が不快な感覚を感じてしまう。
222
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-&
◆biEzrXRlmM
:2015/02/05(木) 19:36:20
――……そっか……全部、出さなかったから……。
尿意。
それは本当に小さな尿意。
だけど、確かに感じる。今は不快で仕方がない。
いつも降車する駅まであと10分と言ったところ。
余裕を持って我慢できる、途中の駅でお手洗いに行くためだけに降車するなんてありえない。
普段ならそう思うべきはずの場面。
――つ、次で一応……降りようかな?
あれだけ我慢した後というのもあって、出口や膀胱を確りコントロール出来る自信がない。
私は電車の扉前に視線を向ける。
そこには一人の綺麗な――でも可愛い服に身を包む女性が居た。記憶が確かなら、私と同じ駅で乗り込んできた人。
その人は、まだ停車するために電車は減速すらしていないのに、扉の前にいる。
そんなに早くから席を立つ意味……。
なんとなく気になりその人に視線を向け続けていると、あることに気が付く。
ソワソワと落ち着きが無く、何か心配してるような表情で、目が少し泳いでる。
それは……尿意を感じて我慢している……そんな風に見える。
それなりに切羽詰っていなければ見せないはずの仕草。だったら何故前の駅で降車しなかったのか。
いや、それ以前に乗車する前になぜ済ませなかったのか。……人のこと言えないけど。
しばらく観察しているとその綺麗な女性はしきりに時計を気にしている。
何か予定があり、途中で降車することを躊躇している……そんな風に見える。
駅が近づき、電車が減速し始める。私も立ち上がりその女性が降りる扉とは違う扉の前に立つ。
私は視線だけを横に向け、女性の様子を見ていると、少し焦った表情で扉に一歩近づいた。
――あ、降りるんだ。我慢できないのかな? それともここが降りる予定の駅?
どのくらい我慢してるんだろう。
今日私が失敗したときよりもずっと沢山我慢してるのかもしれない。
……。
――そんな事考えてたら、私も……。
沢山我慢した後はお手洗いが近くなる。
変に尿意を意識した為に急激に高まる尿意に私は小さく足をすり合わせる。
223
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-3
:2015/02/05(木) 19:37:45
――うぅ……は、早く止まって開いてよぉ……。
他人の心配なんて出来ないくらいに急激に高まってくる尿意に私は焦る。
膀胱が張っているわけじゃないから沢山溜まってるわけではない。だけど、膀胱が敏感に小さく収縮する。
抑えたい……。だけど、後ちょっとだし、……やっぱり恥ずかしい。
私は極力大きな仕草にならないように必死に我慢する。
片足に体重を乗せ、もう片方の足を軽く浮かせて内側に押し付ける。
そんな不安定な我慢の仕草をしているとき電車が止まり、車内がガクンと揺れた。
「あっ!」
バランスを崩し、浮かせた足が肩幅程度に開いた状態で車内に足をつける。
同時に溢れ出してしまいそうな感覚を局部に感じて、慌てて両手で押さえ中腰になる。
<じゎ…>
だけど、間に合わずほんの少量ではあるが下着を汚してしまう。
――あぁ、学校の下着なのに……んっ! やぁ!?
下腹部にたまる熱水が暴れる。極度に疲労してしまっている括約筋にうまく力が入らない。
手で何度も抑えなおす。少し治まったらすぐに離すつもりでいたのに……もう離せない。
――は、早く! 早く開いてよ!
ほんの少し前までまだまだ大丈夫だと思っていたはずの尿意に信じられないくらい追い詰められる。
<――扉が開きます、ご注意ください――>
扉が開く前の悠長なアナウンスが聞こえたあと扉が開く。
私は急いで足を前に踏み出す。
――あぁ、そ、そうだ、ここいつもの駅じゃなくて……えっとここのお手洗いって……。
いつもと違う景色、でも何度か降りてお手洗いの場所はわかってるのに、混乱してその場で足踏みして左右に視線を巡らせる。
そんな視界に捕らえたのはお手洗いの表記ではなく、慌てて駆けていく先ほど同じ電車に乗っていた尿意を我慢していたであろう綺麗な女性。
駆け出していった方向にお手洗いがあることを思い出すと同時に、ここのお手洗いは狭く個室がひとつしかない事も思い出す。
――っ……嘘、最悪だよぉ……。
必死で後を追うように駆けるが、彼女の後ろに並ぶことになるのは明らかで、もしかしたら、すでに数人並んでいる可能性も十分にあって……。
良くない今の状況に最悪の事態が脳裏を過ぎる。
お手洗いに入ると、さっきの綺麗な女性が前屈みになって何度も小さく足踏みを繰り返していた。
個室の前で熱い息を何度も吐き、彼女も本当に限界まで我慢していることがわかる。
だけど、私がお手洗いに入ってきたことに気が付き、ほんの少しだけ姿勢を正し、でも手は大切な部分から離さずにじっと個室のほうに向いてしまった。
224
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-4
:2015/02/05(木) 19:38:48
――個室の人と……一人の順番待ち……。
たぶん私の番まで5分も掛からない。
大丈夫、我慢できるはず。――しなきゃダメ……。
でも、学校で酷使され続けた大切な部分が待ってくれない。
まだだと分かっているのに膀胱も小さく収縮し出してはいけない恥ずかしい熱水を吐き出そうとする。
身体をくの字に曲げて両手で必死に抑え込む、それなのに――
<じゅゎ……>
――〜〜〜っ!
また溢れ出す、今度はさっきよりも多くその温もりをハッキリと局部の周りに感じる。
それでも膀胱は収縮し続け、我慢する力を失った括約筋が押し広げられる感覚を感じる。
「あぁ……やぁ……」
――だめ、だめぇ……でちゃうでちゃう……またしちゃうの??
立っていることが出来ずしゃがみ込み踵でグリグリと緩みそうな出口を抑え込む。
我慢できそうな感覚を残しながら、それでいて今すぐにでも簡単に開いてしまいそうな異様な感覚。
あとちょっとが凄く遠く感じて、視界が涙で滲む。
一日に2回もおもらしなんてしたくない――したくないけど……。
「だ、大丈夫?」
必死の我慢に顔を伏せていた私に正面から声が掛かる。恐らく個室の前に並んでいた綺麗な女性。
その人の声は私を気遣う内容だった。
……自身の状態を頭の隅で映像に起こして、顔を上げることが出来なくなる。……恥ずかしい。
「えっと、もう少しだけ我慢できる?」
私の状態を察し、目の前でしゃがみ込み肩に手を置く。
伏せたままの視界にその人の足が見える。
もじもじと小さく揺れるその足は、彼女も限界近くまで我慢していることを物語る。
「もうすぐ…個室空くから、もうちょっと…がんばって……」
自身を襲う強い排泄欲を必死に宥めながら、その言葉の意味を理解する。
私は顔を伏せたまま小さく頷く。……頷くしかなかった。
私よりも年上でずっと綺麗なのに、仕草を隠せずに我慢してる……それがどれくらいつらいのか分かっていながら……。
<バシャー>
大きな水音が、個室の奥から聞こえてくる。
「ほ、ほら……んっ、も、もうすぐだからっ」
私はその熱い息遣いの混じった声を聞きながらゆっくり慎重に立ち上がる。
踵が濡れてる感覚がする。下着もさっきよりも広い面積で濡れた感覚を感じる。
225
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-5
:2015/02/05(木) 19:39:49
――あと少し、あと少し、ぁ、〜〜っ!
<じゅっ…じゅぁぁ……>
また少し溢れて下着が濡れる。
スカートの上から抑え込んだ手にも少し温もりを感じる。
――これ以上はダメ、絶対ダメぇ……溢れちゃう、おもらしになっちゃう……。
<ガチャ>
個室が開く、私は滑り込むように中に入る。
「ぁ、やぁ…」<じゅぅぅーー>
下着の中でくぐもった音が控えめに聞こえる。もう止められない。
扉の鍵を慌てて掛け、スカートを上げて便器に跨り、同時に下着を下ろした。
<しゅぅーーーー>
便器を叩く恥ずかしい音。
太腿、脹脛に間に合わなかった雫が光る。
下ろした下着はこれ以上濡れようのないくらいに恥ずかしい熱水を含んでいた。
「はぁ……はぁ……」
――これって……少し失敗したって程度……じゃ…ないよね……。
当然これはちょっとした失敗ではなく、完全な失敗――おもらしであり、私は今日だけで2回もそんな恥ずかしい粗相をしてしまった……。
悔しくて、情けなくて、惨めで、滑稽で――
<コツコツ>
個室の外で足踏みの音が聞こえ、私を現実に引き戻す。
同時に、荒い息遣いも……。
――は、早く出ないと……っ!
私の膀胱は思ったとおり10秒程度に空になったが、スカートの前が握りこぶし程度に濡れて変色していて
個室の中も沢山汚してしまっていた。
――か、片付けなきゃ!
そう思い、紙に手を掛けるが、失敗を処理できるほど紙の残りが無い事に気が付く。
カバンに何かあるかも知れないと思ったが、個室の外でしゃがみ込んだときに手放していて、手元に無い。
このまま出たら、沢山失敗しちゃったことがバレてしまう。
226
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-6
:2015/02/05(木) 19:40:37
「(やぁ……はぁ……んっ、…んはぁ……)」
外から余裕の無い息遣いが聞こえる。
……恩を仇で返すわけには行かない。
私は最小限の紙を取り、局部と足と下着を軽く拭き紙を便器に落とす。
その後レバーを倒し、下着を上げ――――当然冷たく気持ち悪かった……――――スカートのしみを目立たない横に回して身嗜みを整える。
<コンコン>
「あぁ…は、早く……ねぇ?」
「っ! ごめんなさい、今出ます」
突然催促されて、驚く。私は慌てて鍵を外すとこちらが開く前に、外から開かれる。
「あぁ! もうだめっ!」
その人は滑り込むように入って扉も閉めずに便器に飛びついた。
同時に恥ずかしい音が聞こえ、私は慌てて個室を出て扉を外側から開かないように持った。
「はぁ……はぁ……」<じゅううぅぅーーー>
扉の中から聞こえる勢いのある音。
たぶん私も聞かれていた恥ずかしい音。
私は顔が真っ赤に染まる、人前でなんな恥ずかしい我慢姿だけじゃなく、音消しも出来ずにこんな音まで。
それに、個室の中で溢れさせて……ほんの少し間に合わなくて……。
恥ずかしさから私は視線を下に落とす。
――……え?
個室の外に小さな水溜りを見つける。
――私、個室に入る前からこんなに失敗しちゃってた??
……。
個室の中ではまだ、恥ずかしい音が続いてる。
こんなに沢山……私よりずっと沢山……。
もう一度視線を床に向ける。
……。
可能性の話でしかない。
裏付けるものもまだ何も無い。
だけど……。
――これって、私のせいで……あの綺麗な女性が……?
私が出るのが遅かったから。
私が順番を譲ってもらったから。
こめかみから汗が流れ、唾を飲み込む。
もし本当にそうなら、凄く悪いことをしてしまった。
227
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-7
:2015/02/05(木) 19:41:25
<ガチャ>
中から鍵が掛かる音がした。
「あ、あの!」
私は何か言わなくちゃと思い声を上げる。
中からすぐに返事が来ない。……私は続けた。
「ご、ごめんなさい……順番譲ってもらっちゃって」
中の様子が見えないからどうすればいいのか分からず
罪悪感から胸が痛む中ただ、じっと待つことしか出来なかった。
そして一拍の間をおいて中から声が聞こえてきた。
「……"ありがとう"じゃなく、"ごめんなさい"――なのね……」
私が意味を分からずにいると――
「……水溜り見っちゃったんでしょ?」
そう細い声で尋ねられ、さっきの言葉の意味も理解した。
失敗した……"ありがとう"と言うべきだった。――いや、後ろめたさがあった以上、"ありがとう"とは言えなかったと思う。
私はもう一度扉の外で謝る。
「ううん、私が無理せず電車に乗る前に済ませば良かっただけだから……」
中でごそごそと失敗の処理――――きっと気が付かず私の分まで……――――をしながら説明してくれた。
彼女は大学生で、昼からの講義に出るために大学に向かっていたところで
用事があって電車が来るギリギリに駅についてしまったこと、降りる駅は次の駅だったこと、そこまで我慢するつもりだったこと
我慢できそうになくなって、講義に間に合わなくなるけど、この駅で降りてしまったこと。
しばらくして、彼女が出てくる。
228
:
事例8裏「篠坂 弥生」と断水の日。@弥生-後編-8
:2015/02/05(木) 19:42:01
「えっと……目立つかな?」
私に濡れているところを涙目で恥ずかしそうに見せる。
黒っぽい色のスカートで、よく見ない限りは分からない。
「だ、大丈夫だと思います……」
それを訊いて、少し安心したような顔をした。
手を荒い、お手洗いを出て駅のホームに向かう。
「もうっ! 今年はトイレ運ないな〜」
彼女は少しワザとらしく明るく言って見せた。
その後、私を見てから少し不思議そうに言う。
「あなた、高校生でしょ? こんな時間に早退かなにか?」
私は肩を跳ねさせる。
でもそれは当然の疑問だと思う。
「えっと……その、…しちゃったんです」
「え?」
「ま、間に合わなくて……その……」
本当のことなんて言わなくてもいいのに……。
そう思いながらも小さな細い声で遠まわしに言ってしまう。
「あっ! ……えっと、ごめん変なこと訊いちゃった……」
気まずい沈黙が続く。
「わっ、私もね……えっと7月始め頃かな? 失敗しちゃったことがあってね……。
しかも、友達の妹の前でよっ! あれは死にたくなるくらい恥ずかしかったぁ〜」
私を励まそうとして明るく、でも真っ赤な顔で話す。
そのとき電車が来る。
そして、ふと疑問を感じて電車に乗る前に尋ねる。
「えっと、これから大学に行くんですか?」
「あ……、私この電車乗っちゃだめなんだ!」
ですよね。
おわり。
229
:
事例の人
:2015/02/05(木) 19:45:21
①とか②を使うとなぜかトリップに……
あけおめです
230
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/05(木) 20:34:03
覗いたら更新来てたぜ!
弥生ちゃん1日に二回も失敗するとは本当運がないね。そこがいいけど
231
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/05(木) 21:42:16
この女子大学生のシチェ良いね。こうゆうの好きだわ大学生が見られてるのを途中で気付いたらのを考えたら萌えるね。
綾菜も今回のシチェ見たいにならないかなぁ
232
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/06(金) 06:15:52
おっ、きてた
233
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/06(金) 11:30:51
イイハナシダナー
234
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/06(金) 22:28:06
ひょっとして花屋のお姉さんかな?なんにせよ、いつも良作をありがとう!
235
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/12(木) 00:05:08
事例の人が圧倒的で気後れしちゃうな
236
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/12(木) 02:58:25
ほかにも投稿者はいるし、気にすることも無いだろう
そんな理由で投稿者が減ってるとすれば哀しいことだが
実質専用スレみたいな始まり方だったし
事例の人が
>>235
のような意見を気にして投下に影響が出るほうがスレ的にまずい
237
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/15(日) 18:16:32
「じわる」に違う意味を見いだした…
ここの人なら理解してくれる気がした
238
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/15(日) 22:51:04
ま、文脈が出来てる場ではな
239
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 05:03:59
重度の頻尿体質の私にとって、毎週末の礼拝はある種の罰だ。いつもは30分で終わるところ、今日は特に大事な時節なので2時間。始まって10分、すでに尿意は高まっている。神父様の味わい深い説教も耳を素通りしていく。足を組み替えたりもぞもぞさせたりしても尿意はごまかせない。
(説教はもういいから、早よ終わってよぉ)
1時間に満たない高校の授業でさえ毎回膀胱がヤバいのに、2時間の礼拝なんてとても耐えられない。
学校では、授業中に一度はトイレに行かせてもらう。今、そういうことはできない。私が席を立てば、親が周囲から白い目で見られるのだ。
思えば、地味に困るこの体質のせいで今まで損ばかりだった。
中学の修学旅行で訪れた沖縄でも、私一人のためにトイレ付き観光バスを手配してもらったり、夜中に5度トイレに起きたり、海に入って遊んでいるうちに身体が冷え、そのまま許されざる罪を犯したり、といった苦い思い出を作ってしまった。早急に忘れたいと思ってる。
(イエス様、はしたない私を憐れんで下さい)
240
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 05:13:40
水滴が膀胱から数粒降りてきた。そうなってしまうと、お腹に力を入れるのはむしろ逆効果なので、出るに任せるしかない。水滴がパンツに吸われて広がる。きっと染みになっちゃってるだろう。
(ううっ、超みじめだよ)
私が澄ました顔で、既に数度ちびってると知ったら周りの人はどう思うだろう。
もう本当に絶望だ。出した量は相当のものになり、だんだんともわっとしたニオイを帯び始めている。もうちびったとかじゃないレベルだ。死が迫っている。目の前に走馬灯が浮かび、今までの人生での、間に合った場面や間に合わなかった場面が流れる。
(イエス様、私はどうしたらいいですか?)
背に腹は代えられず、席を立つ。案の定、周囲の見知った大人たちがジロジロと私、そして私の両親を見る。肩身の狭いだろう両親に謝りながら、教会堂の離れにあるトイレへ急いだ。長い間耐えたと思ったのに、腕時計を見ると礼拝開始から25分であった。
おもらしでベチャベチャになったパンツを脱ぎ下ろし、色のほとんど付いていないお湯を真っ白な陶器の中に思いっきり注ぎながら、私は神様が自分を頻尿に造ったいきさつについて思いを馳せた。
そして、20分ちょっとというしょっぱすぎるタイムリミットを設定し給うた神様を割とマジで呪った。
241
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 06:30:20
最後の晩餐の時、イエス様はパンツをとり、感謝をささげ、弟子にあたえておおせになりました。
「皆、これを取ってはきなさい。これはあなた方のために渡される私の身体である」
長い晩餐の間、トイレへ立つのは無作法だと考え我慢しつづけ、ついにはしくじってしまった弟子達に
イエス様は慈悲を与えたのです。
食事の終わりに、イエス様は杯を取り、弟子にあたえておおせになりました。
「皆、これを受けて飲みなさい、これは私の血、あなたがたと多くの人のために流されて罪の赦しとなる血である」
せっかく履き替えたパンツが、晩餐が終わるまでにまた濡れてしまった弟子達がいるのを見て取り
イエス様は再び慈悲を与えたのです。
弟子達はワインを飲み、そのいくらかを口からこぼして前にしたたらせ、既に濡れていたパンツをワインで濡れたように
装うことができました。
聖餐とよばれるキリスト教のパンツとワインの儀式は
イエス様の身体と血を分かつという名目のもと、
このような頻尿体質に苦しむ哀れな羊たちに救いを示しているのでした。
242
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 12:47:16
昼休み投下
243
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 12:47:58
急に山に目覚めたお嬢は有り余るほどの金にものを言わせ、上等な登山用品一式をためらい無しに揃えた。
今日はそのお披露目の日。お嬢の山ガールファッションにも気合いが入る。両親譲りの整った顔立ちとスタイルに、付き添い一同はしばし見惚れた。
お嬢の山行の付き添いは、屋敷の若い衆全員だ。南アルプス阿利馬山から西尾根を縦走、珠敷峰の頂きを踏む。初心者にしてはハードなルートだ。お嬢は弱音も吐かず、我々に配慮する余裕まで見せながら一歩ずつじわりじわりと登る。
珠敷峰の頂上まであとちょっとという所で、我々は梯場に到り着いた。ラスト前の最大の難関だ。
「李世が先に昇るわ」
勇ましい勢いで梯を昇るお嬢。我々一同は直下の足場でお嬢の姿を見守る。
しかし、ちょうどお嬢の腰が我々の頭上の高さまで来た時、お嬢の手は止まった。
「お嬢、いかがなさいましたか!?」
捻挫をした? 体調が悪いのか? 我々は急いで救急の準備をテキパキと進める。
「もう昇れないよぉ……」
「何か、支障が!?」
「そうじゃないの……」
お嬢の弱々しい涙声を聞いて、我々は事情を察する。お嬢は「手を滑らせたが最後、3000m下の麓まで落ちちゃうのではないか?」と述べる。もちろんそれは杞憂だ。梯から手を離しても、我々の立つ足場より下に落ちる事はない。
お嬢の小心と泣き虫は18歳を過ぎても未だ治っていなかった。
244
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 12:49:06
「とりあえず下から皆で支えますので、そのまま降りてきて下さい!」
「恩に着るわ」
お嬢の足とおしりを数人がかりでしっかり支える。言葉を探し探し、お嬢をなだめる。お嬢はまだ動かない。昇りも降りもしない体勢でピタッと止まっている。その姿を見て、我々は差し迫った状況なのに笑ってしまいそうになる。
そんな状態のまま数分が過ぎた。 突如お嬢が大声を出す。
「みんな、李世から手を離して!」
むろんそんな無責任は赦されない。我々は支える手に力をいれる。すると、お嬢が全身の力を抜いたようで、おしりのもったりした重たさが急に増した。
「もう、やだぁ……………
…………ぁ、ふぁ………………」
お嬢が声を漏らすと同時に、 我々の手に、頭に、ぬるい雨が降る。お嬢のボトムスがシャワーを浴びたようにひたひたになる。ピチャピチャッ、という水が岩場を打つ音のあと、お嬢の失敗は終わった。自分の無様さを受容できず、お嬢はすみやかに失神し、ふらっと梯から落ちた。……
245
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 12:50:22
我々以外に誰もいない頂き。お嬢は隅のほうの目立たない場所で体に残った水をジョロジョロと放っていた。
あの大失敗のあと、お嬢はぎゃん泣きしながらも梯を昇り切った。一つの事を達成したお嬢を遠巻きに見ながら、それでも我々は、彼女の成長をしみじみ実感していた。
246
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/17(火) 21:01:05
お嬢!我々が紳士だなー
247
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 02:13:12
事例氏応援投下
弾切れです。スレ汚しすみません:
248
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 02:15:03
私はエルサレムにいる。
人として生まれたからにはイスラエルへ行かない道理はない、という両親の思い付きの旅。誰もが知る名所を一通り回る旅に、高校の冬休みを利用し私も連れだって向かう事となった。旅行好きの両親のもとに生まれた出無精の私は、慣れない海外での三日間に一抹の不安を感じていた。
私の最大の問題はトイレ。日本での生活で私は、トイレの位置案内アプリを多用している。日本国内の各都市を網羅し、最寄りのサイトを指し示すものだ。
ただ、イスラエルはもちろん範囲外。アプリがカバーしていない地域を訪れる事は、私にとって自死と同義だ。
「お姉ちゃん、角におトイレがあるぞ? 行かないでいいのか?」
旧市街の埃舞う通りを歩きながら父が言う。
「恥ずかしいからやめて、……まだ大丈夫だよ」
「今行っておきなさい。先週のおつかい帰りみたいになったら大変だわ」
母が直近の失態を持ちだして注意を促す。一緒に付いてきた4歳の弟と7歳の妹は、私に配慮してしらんぷりをしている。ありがたいのと同時に恥ずかしい。弟と妹はトイレが信じられないほど遠い。半日ほど行かずとも全然大丈夫なようだ。トイレの不安があるのは私一人だった。
「もよおしたら、漏らす前にちゃんと言えよ、お姉ちゃん。いつでも寄ってやるから大丈夫だぞ」
直球の言葉に私は赤面した。父はからかっているのではない。マジで言っている。
私の真新しい旅行鞄は、三日分以上の着替えが詰まってパンパンだ。もちろん、予期せぬ事態に備えてのものである。両親にとって、旅行中の私の失敗は想定内なのだ。
朝のうちは、トイレに数度寄ってもらったので、ピンチはなかった。そのたびに弟と妹は待たされて不満そうだったが。昼までに名所のほとんどを回り、お買い物も済ませた。ランチでおなかが満たされるとやっと、イスラエルへ来たという感慨がわいた。
249
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 02:24:20
聖墳墓教会はさすがに凄まじい人だかりだ。それなのに、聖堂の中は人の多さに反して静か。錯覚に陥ってしまった気分になる。イエスの歩いた道、ヴィア・ドロローサの末尾。十字架の上の真理と正対する。
ふいに父が、
「O Jerusalem,Jerusalem……」
と呟いた。そのさまが芝居がかっていたので、そばにいたイギリス人のカップルがニヤニヤする。
母は弟と妹の手をしっかり握り離れないようにしている。
教会の内部を彩る装飾に目を奪われ、私は一人教会内の各部屋を回った。紀行や写真でしか見聞きしなかった憧れの場所に今、自分が居るという事実に胸が高鳴った。旅行に来て初めて素直に楽しいと思った。
教会堂の中央では典礼が絶えず執り行われている。私は伝統的なその儀式を眺めてうっとりした。
250
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 02:29:47
教会の中は簡単に見通せるほどの広さだった。人を見失うはずはない……そう思ってた。
(みんな、どこ行ったの?)
両親、弟、妹。みんなを見失って私は一人だった。心臓が早鐘を打ち、心細さから目が潤んでしまう。周りを見回すが、姿は見当たらない。みんな、もう外に出てしまったのだろうか。私は置いて行かれちゃったのだろうか。
教会の外へ出ると、目の前には砂っぽい異国の街並み。不安がごまかしきれなくなる。
(天にまします我らの父よ……)
思わずとっさに祈る。それしかできなかった。
お腹にたぷたぷと水が溜まってきた。頭が真っ白、そして手のひらの脂汗がひどい。姿勢がつらいのでその場でへたり込んでしまう。
教会の入口で一心に祈りながら地べたに座る私を見て、周りの観光客が手を差し延べる。私が信仰心から感極まり、取り乱していると勘違いしているのだ。私は外国語でなだめられる。彼らの手を取りなんとか立ち姿勢を戻した。
その姿勢がダメだった。
(うぁ……!)
太ももからふくらはぎへ、筋になって温かいものが走る。最初、下着から血を垂らしてしまったのかと早とちりした。でも、血ではない、もっとさらさらした液体だ。父達を探すのに夢中で尿意をすっかり忘れていたが、私は無意識の内におもらし寸前まで我慢していたのだった。恥ずかしさより、湿った下着やタイツが肌にはりついている気持ち悪さの方がまさっていた。
(もう、死ねるわ私)
親切な観光客たちに慰められながら、私は焦点の合わない目でエルサレムの街並みをみつめていた。ローファーの中の足の裏にぶちゅっとした水っぽさを感じながら、今年に入って三度目の信仰否認をした。はっきり意識があったのはそれまでだった。
251
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 12:37:14
水遊びの大好きなお嬢のために我々はマイクロバスでいつもの場所へ向かった。夏に入ってから毎週のようにお嬢にせがまれている。岐阜の山あいの道をしばらく進むと、お嬢お気に入りの水遊び場に到着する。水遊び場といっても、人の見当たらない川の下流の天然の溜まりである。
岸辺に用意したついたての中で水着に着替えたお嬢は待ちきれないとばかりに溜まりへ入る。
「お嬢、水の色の変わってるところへ入ってはダメですよ!」
「承知したわ」
「それから、お疲れの時はいつもの通りアイツが道の駅まで運転しますので、なんなりと」
「ありがと! ねえ、みんなも遊ぼ!」
お嬢は何度来ても非常に楽しそうにするので我々としても連れて来甲斐がある。
252
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 12:41:16
昼、幼い娘を連れた若い夫婦が林道側から溜まりへ入ってきた。溜まりで人を見るのは珍しい。父親は我々を一瞥する。
「ほら、今日はお兄ちゃん達が遊んでるから、また今度な」
「いや! 今日遊びたいの!」
「姫、ワガママ言わないの」
我々は余りにいたたまれないので、帰ろうとする二人を呼び止める。
「占用してしまってすみません、よろしかったら彼女と遊んでやってもらえませんか?
ついたても有りますんで、どうぞお使いください」
母親は明らかに不審な目をしているが、姫ちゃんはとっても嬉しそうだ。
253
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 12:45:24
お嬢と姫ちゃんは直に仲良しになり一緒に遊び始めた。お嬢のふわふわだった髪は濡れてちょっとぺたっとしている。姫ちゃんの両親と我々は二人を岸辺から眺める。
「姫ちゃんは5つなんですか」
「そうなんです。来年は小学生なのに、利かん坊で、気に入らないことがあると大泣きしたりして……」
「お嬢とおんなじだな」
談笑していると、姫ちゃんが不意に我々を呼んだ。
「みんな、李世ちゃんが変!」
お嬢に目をやると確かに顔色が悪い。我々はとっさに足をつってしまったのだと直感した。
「え? 李世なんともないよ? ホントなの、みんな信じて、李世なんともないの!」
お腹まで水に浸かり、屁っぴり腰のまま止まっているお嬢。足をつってしまったのは明らかだ。そのまま一分間、静かな溜まりは時間が止まってしまったかのよう。
目をつむって身体を緊張させているさまはとてもつらそうで見ていられない。我々はもどかしい気持ちだった。
お嬢の頬がホッと緩み、そのままじゃぶじゃぶと岸辺へ歩いてきた。
「なんだかお屋敷に帰りたい気分になっちゃったわ」
「お嬢、足は大丈夫なんですか?」
「足??…………ええ、ええ、大丈夫よ。じゃあ、ついたてでお着替えするね」
目が泳いでいるお嬢。我々につらいそぶりを見せまいとするいじましさが胸を打つ。ついたての中で、鼻歌までうたって。
254
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 12:50:53
「バイバイ、姫ちゃん」
親娘にさよならを言うと我々はバスを発車させた。お嬢の顔には血が戻っており、むしろ頬に赤みがさしているほどだ。お嬢はいつも以上に饒舌だった。
「お屋敷が恋しいの。帰り道、急いでね」
「お嬢、本当に気分はよろしいのですか?」
「ええ、本当に大丈夫。
……遊んだらおなかがすいちゃった、お夕飯が楽しみね」
お尻を落ち着きなさそうに気にするお嬢を乗せて我々は帰路を飛ばした。
「さっきから変なにおいがするの。何のにおいかなぁ?」
「そうですか? 我々には感じませんが……」
255
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 13:42:39
賑わってきたというより
とっ散らかってきたように思えるのはなぜだろう
256
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 17:33:11
失禁描写がアッサリなのがアレだな
257
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/18(水) 19:46:24
確かにもう少し描写が欲しいのは同意だけど、こういうのも嫌いじゃないな
千夜一夜の初期頃はこういう作品のが遥かに多かった
むしろ長編の濃い描写が大作などといわれてた稀な作品だった
258
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/19(木) 00:39:37
1スレ目を思い出す
259
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/19(木) 02:18:55
初期スレ見てきたが勢いとフェティッシュと謎設定に溢れていて笑える
260
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/19(木) 03:40:24
それにくらべると今は・・・
261
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/23(月) 00:02:36
俺は今の方が好き
262
:
名無しさんのおもらし
:2015/02/23(月) 00:53:07
今の看板作品は好き(特に初期)
小説スレとしては申し訳ないがあまり…
昔は珍妙な設定やちょっとした感想のやりとりにもリビドー直撃するようなものが多かった
初期千夜一夜は良くも悪くも独特すぎたな
263
:
名無しさんのおもらし
:2015/03/01(日) 14:11:29
>>256
描写があっさりなせいではないとおもう
264
:
名無しさんのおもらし
:2015/03/21(土) 00:20:46
すっかり過疎ってるな
265
:
名無しさんのおもらし
:2015/03/27(金) 00:58:20
事例さん来て!
266
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/06(月) 14:38:52
事例の人忙しいんかな?
急かしてるふうになると申し訳ないけど
267
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/06(月) 23:57:40
>>4
EX 3/14
>>16
6前 4/17
>>36
6後 6/1
>>60
追3 6/4
>>73
2.1 7/7
>>84
7 7/21
>>156
8 10/18
>>188
8裏前 12/2
>>221
8裏後 2/5
2ヶ月開きってことも珍しいことではない
調べるためにさかのぼってみたが目次代わりにもなるかな
事例作品以外が思ったよりあって意外だったが
書き手同士の交流はほとんどなかったり
事例の人も感想に対するレスポンスがあったりなかったりいろいろなんだな
268
:
事例の人
:2015/04/07(火) 01:07:58
遅筆で申し訳ない
事例9の文章の方は大方出来上がってますが、挿絵が準備できてないので――遅くても4月中には
感想に対するレスポンスはしたつもりで実際はしておらずタイミングを逃したとか
応答すると長くなりそうな場合、他の方が書き込みにくいかな……と悩んでたり色々です
感想などいつもありがとうございます
269
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/07(火) 14:00:09
期待してます!
270
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/08(水) 01:54:12
事例の人の挿絵やイラストは
荒削りだけどなんというかこの趣味における萌え要素をしっかり捉えてて好き
271
:
事例の人
:2015/04/17(金) 00:59:17
>>269-270
ありがとう!
272
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。1
:2015/04/17(金) 01:01:03
静まり返った廊下。
校庭では朝の部活動を行う人もいるが、校舎内にいる生徒は極少数。
私は一人廊下に張り出された“結果”を深呼吸して――覚悟を決めて見上げた。
――っ……朝見さん…やっぱり一番左側……。
そのすぐ隣には一番見慣れた自身の名前が見て取れた。
私は嘆息しながら視線を落とす。
勉強で誰かに張り合おうなんて思ったこと高校入試の時を除いて考えたこと無かったが、今回ばかりはちょっと悔しい。
私はその場を離れ教室へ向かう。
自覚できる程度にはゆっくりとした歩幅……。
思った以上に私は落ち込んでいるらしい。
それは順位で負けたことにではなく、たぶん――
「……」
足を止める。
私はそんなにも朝見さんとの仲を回復したいのだろうか。
回復……もとより好感度がプラス側になったことは無いのだろうけど、今の関係は何かと厳しく言われていた時よりも酷く、そして辛く感じる。
そんなことを考えていると正面から朝見さんが歩いてくるのに気が付く。
教室とは方向が違うから一瞬疑問に感じたが、すぐに理解した。
同時に何もない廊下に立ち止まっている自身の不審な行動を理解して慌てて足を前に出す。
そしてすれ違う。
朝見さんは視線を私に向けず――いや、態と視線を外していた。
「はぁ……」
朝見さんに絶対に聞き取られない程度に離れてから胸を撫で下ろしながら嘆息した。
無視されていようがなんだろうがやっぱり苦手なものは仕方がない。
とりあえず仲直りは失敗。
というか、勝つとなぜ仲直りできるのか知らないけど。
――あとで皐先輩に文句言ってやろう……。
「出来ますよ、綾菜さんなら……」とか言う妄言を信じた――わけではなかったけど
無根拠で無責任な態度に無性に苛立ちを感じてきた。
朝見さんが泣きながら――っと言う件も私と朝見さんを生徒会に入れるための方便だったんじゃないかとさえ思える。
今更ながらではあるが、あの朝見さんが泣くとは思えない。
教室に入り自身の席に座る。
時計を見ると朝のHRまであと30分もある。
クラスでも数少ない話し相手、まゆと弥生ちゃんも居ないとなると時間の使い方が分からない。
そんな理由もあって普段はそれなりにギリギリに来るわけで……。
私は席を立つ。クラスメイトが来た時こんな朝早くから無駄に長時間座ってるところとか見られたくない。
だけど、教室を出たところで行くところもなくフラフラと校舎をふらつく。
気が付くと、また中間テスト順位の張られた廊下にまで来ていた。
273
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。2
:2015/04/17(金) 01:01:46
――っ! 朝見さんまだ居る……。
ここで引き返してもいいのだけど、もし後姿を見られたりしたら
明らかに途中で引き返したことになり……なんだかいやだった。
こっちに来てしまったことを後悔しながら、私は可能な限り足音を立てずに後ろを通り過ぎようとしたが……振り向かれた。
「…っ!」
振り向いた朝見さんは目を丸くして驚いた。
「あ――……」
朝見さんは言葉をつむぎ掛け、すぐに視線をそらし口を手で押さえて逃げるようにその場から居なくなる。
何がなんだか分からず、朝見さんが見ていた順位に自然と目が行く。
何度見ても変わらない。一番左が朝見さん、次点で私。
「やっほーあやりん! 何見てるのーって順位発表かー」
私に駆け寄り、後ろから肩越しに話しかけてくるまゆ。
どうして順位に興味のないはずのまゆがここに居るのか少々疑問に思うが
まゆの行動理由は良くわからないことが多いので、気にするだけ無駄かもしれない。
「……おは――」「わぁ! 凄いじゃんあやりん!!」
挨拶を返す隙もなく順位を見ながら後ろから私の肩を持つ。
確かに2位ってだけでも頑張った方だとは思うけど。
「あやりんも1位なんて吃驚だぁー」
――え?
私は1位という言葉に驚きもう一度順位発表を見る。
確かに一番左は朝見さんで、次点で私。何度見ても変わらない。
だけど……私は名前のもう少し上に視線を向けた。
朝見さんの上には1と言う文字。そして私の上には……。
「……1?」
更に横に視線を移動させると3と言う文字が記載されていた。
つまり――
274
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。3
:2015/04/17(金) 01:02:44
――
――
<キーンコーンカーンコーン>
三時限目が終わり休み時間開始を告げるチャイムが鳴る。
私は席から動かず、惚けてしまう。
「おーい、あやりん?」
気が付くと目の前には呆れた顔のまゆがいた。
「……えっと、なに?」
私のその態度に少し困った様にして言った。
「さっきからずっと呼んでたんだけどねぇ……」
「……え、ご、ごめん」
どうやら、呼ばれる声に私が気づいた時には既に何度も私を呼んだ後だったらしい。
そんなに惚けていたとは……失敗した。
『ん……お手洗い……行っておかなくちゃ』
不意に『声』が聞こえてくる。――この『声』は……弥生ちゃんみたいだ。
横目で弥生ちゃんの姿を捉えると、一人パタパタとした動きで教室を出て行くのが目に入った。
トイレ……『声』が聞こえたのだから当然私も催していた。
朝済ませてから行っていないし、『声』を聞くために朝は多めに水分を取っているから当然といえば当然。
「あやりーん?」
余所見をして考え事をしていると不満げな声が聞こえ、私は再度まゆへ視線を向ける。
すると、嘆息した後周囲を軽く見てから小さめの声で言った。
「呉葉ちゃんとバドミントン組むことになったの気にしてる?」
私は苦虫を噛み潰したような……と、まではいかないものの、図星をつかれて視線を逸らしながら無表情を崩した。
さっきの時間で体育祭――――と言っても運動会のような大きな行事ではなく、いくつかのスポーツをクラス対抗でするレクリエーションのようなもの――――の
出場競技を決めることになって、先生の突飛な企画により、全員くじ引きで競技を決めるという非常に迷惑なこと極まりない方法で
私と朝見さんが、バドミントンのダブルスに決まってしまい、どう接するべきかでものすごく頭を悩ませていた。
275
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。4
:2015/04/17(金) 01:03:32
「何があったか知らないけど、仲直り……したいんでしょ?」
私はその言葉に驚いてまゆの方を見る。
「勉強頑張ってたのも、気を引くためなんじゃないの?」
「ち、ちがっ――……そんなんじゃ……」
私は顔に血が上るの感じる。真っ赤になって否定して馬鹿みたい。
実際仲直りできると聞いて勉強してたんだから強ち間違いではないし……。
――というか、勉強頑張ってたのバレてたんだ……。
学校じゃ頑張ってるのを隠していたつもりだったのだけど――
「バレてないと思った? なんとなく分かったし、ノート見た時に確信できたよー」
らしい。恐るべしまゆ。
もしかしたら朝成績の貼り出しを見に来ていたの私の順位を見るためだったのかもしれない。
――ん……。
不意に尿意の波を感じた。
――トイレ行っておいた方がいいかな……。
弥生ちゃんもトイレへ行ったし、めぼしい『声』も今は無い。
このまま我慢を続けても無駄になる可能性も十分にある。
何より、このまま次の授業を受けるには少し尿意が強すぎる。
私は椅子を引き立ち上がった。
「あ、そろそろ行く?」
「……え?」
「だから更衣室でしょ?」
――あ……そっか、次は体育だっけ?
「……体育って今日何するんだっけ?」
「さっき先生言ってたじゃん、体育祭の練習って、だから……あやりんは呉葉ちゃんとバドミントンだろうね」
……。
私は嘆息して肩を落とした。
276
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。5
:2015/04/17(金) 01:04:27
――
――
私はバドミントンのシャトルを拾いながら、少し後悔していた。
――トイレ…行けなかったなぁ……。
四時限目が体育であることを失念していた事と、着替えた後に向かったトイレが混んでいたことで済ませることが出来なかった。
すでにそれなりに辛いと思えるほどには溜まっているし、更に10月中旬にしては少し肌寒い日であり……辛い。
「はぁ……」
嘆息しようと息を吸った時、朝見さんが嘆息する。私は静かに息を吐き、少し視線を落とす。
だけど、会話しないわけにも行かない。「関わらない」と言った朝見さんもこういう時くらいは多少は反応してくれるはず……。
「……えっと、朝見さん……はい、シャトル」
「えぇ、…ありがと」
――……あー、うん、気まずい。
バドミントンの競技に選ばれたのは私たち以外に4人居る。
とりあえず、ダブルスのもう一組の二人と適当にラリーしているのだが……ほとんど会話が無い。
もともと私も朝見さんも他人と話すほうではないし、相手の二人もくじ引きで選ばれただけあって仲が良い訳でもない。
試合形式にしようとか言うこともせず、黙々とラリーしているだけ……。
トイレには行きたいし、気まずいし、誰の『声』も聞こえないし……早く時間が経つことばかり祈っていた。
横目でバスケットの競技に選ばれたまゆを見る。元気が良くて、周りを巻き込んで汗を掻いて楽しんでる。
改めてまゆがいない時の自分のダメさ加減を理解する。
――ブルッ……
尿意の波に身体が震え、そわそわと動かしたくなる身体をラケットを握り締め宥める。
寒さもそうだけどいつもと違う環境で緊張してしまっているのも原因かもしれない。
私は体育館の壁に付けられた時計を見る。
――……あと10分か。……我慢できないわけでもないし、着替えも後回しにすればいいし……頑張ろう。
「はぁ……」
また隣で少し暗い顔で朝見さんが嘆息する。私はそれに気が付かない振りした。
277
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。6
:2015/04/17(金) 01:05:30
<ピーー>
先生のホイッスルの音が聞こえる。
授業終了3分前、どうやらやっと終わりらしい。
「もう良い時間だからそこまでね、今日の日直は倉庫へ使ったものを片付けてから昼休みにしてね」
先生はそれだけいうと体育館を出て行き、それに続くように他のクラスメイトも順番に出て行く。
――日直か……。
今日の日直は朝見さんと檜山さん……なのだけど、檜山さんの競技はミニサッカーなので外で行われていて、この場にいない。
……凄くトイレに行きたいんだけど――手伝った方がいいよね?
視線を朝見さんの方に向けると既に片付けのために行動していて、私も無言でそれを手伝うことにした。
「あやりーん、呉葉ちゃーん手伝うよ」
まゆがそういって私たちに駆け寄る。
朝見さんが小さくお礼を言ったので、私もそれに続いた。
バスケットボールやバドミントンのネット、ポールはともかく、得点板とか使わないなら出さなきゃ良かったと思いながら、片付けを続ける。
朝見さんと狭い倉庫に入り、得点板をなるべく邪魔にならない奥のほうへ入れ込む。
……?
どうも朝見さんがさっきから何か焦っているように見えるけど……。
「ねぇ、ここ置いておくよ?」
倉庫の入り口の方でまゆの声が聞こえる。
「……それで全部?」
「うん、全部かな? 先教室戻ってるねー」
「……うん、ありがとう」
本当は残って居てくれると気まずくならずに済むのだけど……仕方が無い。
片付けの作業を再開する。だけど――
<ガッシャーン>
大きな音が倉庫の扉の方から聞こえて驚き振り向く。
扉が閉まってる……今の音は何かが倒れる音と、扉の閉まる音。
「黒蜜さんよ。多分ポールの置き方が悪かったんじゃないかしら」
「……そうだね」
朝見さんが私に視線を向けずにつぶやいたその言葉に、私は短い台詞を返す。
会話といえるかどうか分からないが、朝見さんから話してくれるとは思ってなかっただけに――ちょっと嬉しい。
278
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。7
:2015/04/17(金) 01:06:33
倉庫の中での作業を終えて、まゆが運んでくれた物を倉庫に入れるため、扉に手をかける。
<ガチャン>
「……あれ?」
<ガチャン、ガチャン>
上手く開かず再度何度か引くが、何かが引っかかり5cm以上開かない。
ここ数年前に付け替えられた様な綺麗な引き戸で、今までに私が経験した中では、こんなに開き難いなんて事を感じたことは無い。
私はもう一度引いてみるが、やはり開かない。
「開かないの?」
「……うん…あ、もしかして――」
私は引き戸に顔を近づけて隙間――――開く方でない方――――から外を見る。
そこにはバドミントンのポールと思しきものが心張り棒のようになっており――最悪……開かないわけだ。
私の行動を見て朝見さんも状況を察したらしく、すぐに扉を叩いて、体育館の外の誰かに気が付いてもらおうとするが――
「うそ? もう誰も居ないの?」
体育館からは物音ひとつせず、ただ、扉を叩く音が響いているだけ。
皆が出て行った後、まゆだけが手伝っていたし、誰も居なくて当たり前……。
次がお昼休みなのも運が悪い。
「……携帯もないし……閉じ込められた? っ……」
私は落胆すると同時にことの重大性をある欲求から理解した。
――トイレ……どうしよう……。
片付けなんて本当はしたくないくらいにトイレに行きたかったし、着替えも後にして先に済ませようとさえ考えていたくらいだ。
もし、昼休みの間ずっとこのままなんてことになれば、正直危ないかもしれない。
せめてもう少しまともにバドミントンをしていて、汗を掻いていたならその分体内の水分を失うことになっていたと思うが……。
私は横目で朝見さんを見る。また、朝見さんに恥ずかしい姿を見られるなんて事絶対に避けたい。
出来るなら我慢してること事態気が付かれたくない。
思い出したくも無いバスでのことが脳裏をよぎり、息苦しさと、ざわざわした感覚が私を襲う。
――……冗談じゃない、あんな思い二度と感じるなんてこと……。
……大丈夫、まゆや弥生ちゃんが気が付くはずだ。朝見さんと私が居ないとなれば、更衣室や体育館を見に来る。
そんな時間は掛からないはず、30分――いや、早ければ20分程度で……。
……?
横目で見ていた朝見さんの動きがどうも落ち着いていないように見える。
ついさっきも焦っているように感じたし、閉じ込められたと分かってすぐに扉を叩いたのも、いつもクールな朝見さんらしくなく違和感を感じた。
私と一緒に閉じ込められて苛ついている、もしくは単純にこんな事態になったことに不満があるのか。
「……はぁー…」
バドミントンしている時よりも少し深く嘆息して、不安げな顔をしたあと私の視線に気が付き、慌てた様子で身体ごと後ろを向く。
体育をするために後ろで纏められた髪の間から見える耳が、少しだけ赤くなっているように見える。
私も朝見さんから視線を外して、二人っきりである気まずさ感じつつ、彼女の不信な行動について考え、ある答えに辿り着く。
――……朝見さんも我慢してるんじゃ…?
だけど、その答えには疑問が残る。
なぜなら、仕草に出るまで辛い尿意を抱えている朝見さんの『声』が今の私に聞こえていないから。
私はその答えを否定する。
279
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。8
:2015/04/17(金) 01:07:44
――でも……可愛かった…かも。
事態は何も解決していないのにそんなことを考えてしまう。
私は頭の中だけで頭を振り、とりあえずどうすればいいか考える。
人が居るであろう校舎から離れた場所に位置するここからでは、大声を出しても気が付いてもらえない。
だったら、多少の不安はあるが、やはりまゆを待つのが定石……。
そして立っているとどうしても落ち着かないので、それを誤魔化すために体育倉庫の奥のほうにある積み上げられた体操マットのところまで行き
それを背もたれにして膝を立てて座る。立っているよりも我慢の仕草を気が付かれ難い……と思う。
「……あ、朝見さんも…座ったら?」
「そう…ですね」
そう言うと、私に視線を向けずに隣へ来る。
私が手で腰を浮かしてマットの端の方へ移動すると、朝見さんは反対側の端へ腰を下ろした。
……。
1分、2分……5分たっても会話が無い。
「……あ、あの…朝見さんの体育の時のポニーテール…、えっと……可愛い…よね」
――……何言ってるのよ私っ!!
体育の時だけ髪を纏めているポニーテールについて触れようと思ったが後が続かず「可愛い」と言ってしまったことを後悔する。
ちなみに、ポニテが特別に好きなわけでもなく、普通にロングも同じくらい可愛いと思うけど。
「雛倉さんは、ツインテールだかおさげだか、わからないけど……」
「……こ、これ、まゆがいつも勝手に……」
私は髪を触りながら、自身の髪型が不本意であることを説明しつつも、そっけなく答えた朝見さんの声に違和感を感じていた。
少し声が震えてる……それによく耳を澄ませば息も少し荒い。
「無理に会話するのやめにしない……?」
朝見さんは私に言った。
その声はやはり震えていて、視線を向けると膝を抱くようにして何かに耐えるような顔をしている。
体調が悪そう――というより……やっぱり尿意を感じているように見える。
でも相変わらず『声』は聞こえない。……私は朝見さんの『声』を一度も聞いたことが無い。
280
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。9
:2015/04/17(金) 01:09:41
――ぁ……んっ……。
不意に来た尿意の波に私はつま先を上げ、体育館シューズの中で足の指を握り耐える。
波が引き聞こえないように一息ついたときに再度朝見さんについて考える。
これほどまでに我慢してるのなら『声』が聞こえるものだと思っていたが
朝見さんは仕草から我慢しているようには見える――――もちろん、とても可愛い――――が現実問題として『聞こえない』。
根本的に私と朝見さんの波長が合っていないのならば、まゆと同じように滅多に『聞く』ことが出来ないなんてことは確かにある。
だから、今の私の状態で“『声』が聞こえない”=“尿意を感じていない”は確かに成立しない可能性は十分にある。
だけど……正直それは信じられなかった。
尿意の波長に関しては慣れているわけで……実際、朝見さん以外の同級生すべての我慢した『声』を聞いたことがあるから。
確かに逆を返せば、朝見さんだけ『声』を聞いていないのだから、波長が合っていないとも言えるかもしれないが……ん、えっと……――
――ぅ……だめだ、尿意も強くてよくわからなくなってきた……。
私は小さく深呼吸する。
落ち着くために行った行為だが、意識が内面に向くことで尿意をより強く意識してしまう。
下腹部はパンパンとまでは行かないがずっしりと重く、張ってきているのが触らなくても分かる。
閉じ込められてからまだ10分も経っていないと思うが、状況と寒さがより尿意を加速させているのかもしれない。
そしてそれは朝見さんも多分同じで……。
視線を朝見さんに向けると、その横顔には寒い状況でありながら汗が光り、辛そうに見えた。
【挿絵:
http://motenai.orz.hm/up/orz52553.jpg
】
「……朝見さん…えっと、大丈夫?」
私はつい尋ねてしまう。
朝見さんはそんな私に一瞬だけ目を向けた後、すぐに自分足元に視線を戻す。
「大丈夫よ……」
朝見さんは立てられた膝の下に手を回して、太腿を抱くようにして弱弱しくそう答える。
全然大丈夫なように見えない……。
だけど、それ以上追求することも出来ず、私はしばらく視線を外す。
「はぁ……はぁ……」
荒い息、身じろぐ音が微かに隣から聞こえてくる。
『声』は聞こえない……私はダメだと分かっていながら再び朝見さんの方に視線を向ける。
目に映るのは、落ち着かない足、不安で辛そうな顔。
感じ取れるすべての動作が尿意を感じている……そう私には見える。――やっぱり…可愛い。
「っ! ……見ないでよ」
朝見さんは、私の視線に気が付き、弱弱しい声色で拒絶する。
当然の事。我慢してる姿なんて見られたくないだろうし、彼女に限れば私の嗜好を知っている――――と思う――――から尚更で……。
私は「……ごめん」と言って一度視線を外すが……だめだ、気になる。
281
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。10
:2015/04/17(金) 01:11:21
バドミントンをしている時から感じていたであろう尿意。
ラリー中に時折嘆息していたのは嫌気や気まずさからではなく、尿意への不安からだったのかもしれない。
そしてその尿意は、今や私に隠せないくらい強い尿意になり、朝見さんを攻め続けている……そう思うだけで心臓が早鐘を打つ。
どれくらい限界なのか知りたい。『声』が聞きたい……でも、聞こえない。
そんなもどかしさを感じつつもこの状況のままでいいのか不安を感じる。
――……まゆ全然来ないし…このままじゃ朝見さん…下手したら私まで……。
波が来ていないうちはいいが、可愛いとかなんとか言ってられないくらい私自身、気が抜けなくなってきた。
私は立ち上がりもう一度扉に手を掛けるがやはり開かない。
ほんの少し見えるポールを隙間からどうにかできないかと考えるが、ほんの数ミリの隙間では手や倉庫にあるものではとても通りそうに無い。
――んっ! 波が……。
少し大きな波が私を襲う。
平静を保たないと……そう思うが、どうしても身体が言うことを聞かず強く腿を閉じ合わせ小さく腰を揺する。
「ん……はぁ…」
波を越えて熱い息を吐く。
失敗は無かったけど……多分朝見さんに見られたし、気が付かれた気がする。
その証拠に辛い顔をしながらも朝見さんはこちらを何か言いたげに見てるし……。
顔に血が上り、自身の顔が赤くのなっているのが分かる――恥ずかしい。
「そうよ……皆恥ずかしいのよ……それなのに――」
視線を逸らしながら辛そうに一言一言紡ぐ朝見さん。
言いたいことはわかる。――そんな姿を見て楽しんでいるなんて良くない。
「……分かってるけど…仕方ないじゃない……好きを簡単にやめるなんて出来ない……」
私はそんな恥ずかしがってる姿も含めて、我慢している誰かを見るのが、聞くのが、そして『声』が凄く好きで――譲れないのだから。
「し、仕方ないって――んっ、あぁ、んんっ……」
朝見さんが台詞の途中で下を向き太腿を抱える右手だけを大切な部分へと押し当てる。
私はそんな朝見さんを見てやっぱり鼓動が早くなる。
溢れてしまいそうになって、見られてるって分かっていながら、押さえないと我慢できない。
たとえ、見られてる相手が私みたいな嗜好を持っているって分かっていてもその衝動を抑えられない。
そうしなければ、もっと恥ずかしいことになるかもしれない……そう分かってるから。
――でも……だとしたら、朝見さんは今本当にギリギリで……。
それは凄く私にとって嬉しいことだけど――このままじゃ……。
自分で言うのもなんだけど、こんな嗜好を持った人の前って言うのは辛いと思う。――と言うか、私もどう反応していいのか……。
とりあえず、私は朝見さんに近づき口を開く。
「……もうちょっと我慢できない? えっと、きっとまゆがそろそろ気が付くからっ」
そういって私はしゃがみ、朝見さんの肩に手を――
『――』「っさ、触らないで! っ〜〜」
私の手はすぐに朝見さんに払いのけられた。
同時に何かノイズのような『声』が聞こえたような気がしたが、それはすぐに聞こえなくなった。――近づいた影響?
朝見さんは払うために身体を動かした為か今度は両手で確りと抑え込む。
282
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。11
:2015/04/17(金) 01:12:40
「ぁぁ、んっ……ふっ、ぅ……はぁ……」
言葉にならない声を上げて必死に宥めようとして……。
私はどうしていいか分からず、ただその様子に魅入ってしまう。
「んっ! だ、だめぇ……もう、我慢……あぁ」
その声を合図に身体を大きく跳ねさせて呼吸を止める。
時間にして5秒程度。だけど、私にとってはすごく長い時間で、朝見さんにとっては更に長い時間に感じたんじゃないかと思う。
「――んっ、はぁー……はぁー……」
真っ赤になった顔、目は潤ませて深く熱い吐息を何度も吐く。
普段の朝見さんからは想像も出来ない乱れた見っとも無い姿……。
「もうやだ、見ない…で……」
――……朝見さん、本当にもう我慢できないんだ……。
朝見さんの言葉は聞こえた。だけど、私は視線を逸らすことが出来なかった。
手はもう一時も離す事ができないのか、押し当てられたまま。
もしかしたらその手の下には恥ずかしい染みがあるのかもしれないと思ってしまう。
「……もう、我慢できない?」
朝見さんはそれを聞いて身体を震わす。
心配するように言ったがこれは意地悪な質問だ。
朝見さんが凄く可愛くて……反応が見たくて。
「……ねぇ? まゆが来るまで我慢できない?」
――こんなこと言っちゃだめなのに。聞いちゃだめなのに。
「我慢できる……できるから…」
私の問いに答えるようにして、でも自分に強く言い聞かせるように朝見さんは言う。
――でもそれは嘘。我慢できない。見たら分かる。
全身を震わせて、しゃべるのもやっとで、見っとも無く息を荒げて……。
顔に沢山汗を浮き上がらせて、辛い顔で、一瞬たりとも油断できなくて。
凄く……艶っぽくて可愛くて愛おしくて……。
「っ〜〜〜」
朝見さんはまた身体を跳ねさせて声も出せずに力いっぱい抑え込む。
だけど、押さえ込まれた部分のハーフパンツの色が濃く染まっている。
それを見ていると上からポタポタと床に水滴が落ちる。
最初は汗が落ちたのだと思った、だけど視線を上げるとそれは朝見さんの目から溢れた涙で……。
胸が締め付けられる。
――この人を守りたい……。
どこか遠くで同じことを感じたことがある――夏休み前の皐先輩? ……違う、もっと昔……。
283
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。12
:2015/04/17(金) 01:13:36
「だめっ……でちゃ…くぅ…あぁ!」<ジュウ…>
くぐもった音が聞こえ必死に抑えて込んでいる手の隙間から溢れだす。
それはすぐに止まり、ハーフパンツを広い範囲に濃く染め上げほんの少しの水溜りを股の間に残す。
「くぅ…はぁ……はぁ……っ、うぅ…」
チビったなんて量ではなく、それは確かにおもらし。
だけど、まだ朝見さんの膀胱にはまだ沢山の出してはいけない恥ずかしいものが詰まっている……。
それでも懸命に…あきらめずに我慢をやめようとしない。
顔は涙と汗で濡れて、髪は額に張り付いて……。
「ぁ……やぁ……んっ〜〜」<ジュ…ジュウゥ……>
また抑えきれない量の熱水が溢れ出し、水溜りを少し大きくする。
「なんで? ……どう…してよっ……あぁぁ……」
少しずつ少しずつ暖かい水溜りの面積を広げていく。
「……朝見…さん……」
「ぁ……」<ジュウゥーー>
私が名前を呟いたのを切欠に、朝見さんは震えた声を漏らして恥ずかしい音を継続的に響かせた。
必死に抑えて身体に力が入ってるのがわかる。だけど、意に反して恥ずかしい音は止まらない
「くぅ……んっ……」
いくら力んでも勢いが弱まるだけで止まらない。
「……っはぁ……はぁ…ぅ……」
乱れた熱い息を吐きながら、広がってゆく水溜りに視線を向けるようにして俯く。
「っ…みないで……もうゆるして……」
朝見さんは私の視線感じて呟く。
次第に恥ずかしい音が止み、代わりに嗚咽が聞こえてくる。
手を伸ばせば届く距離。それなのにどうすることも出来ず、かけるべき言葉もかわからない。
「こんな状況だから仕方がない」そんな言葉はきっと求めてない。
私はただひとこと「……ごめん」と呟き朝見さんの前を離れた。
284
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。13
:2015/04/17(金) 01:15:54
――
――
「……」
「……」
――気まずい。
扉を背もたれにして私は離れたところで腰を下ろしていた。
結局なにも気の利いたことも言えずに、ちらちらと様子を覗いながら気まずさと尿意に耐えるだけ。
「ねぇ……」
「……は、はいっ」
しばらく声を出さずに泣いていた朝見さんが突然私に声を掛ける。
目の下を赤く腫らして――なんだか凄く艶っぽい……。
「……変態」
ストレートな言葉とじとっとした目が私に突き刺さる。
私は苦笑いをして誤魔化しながら視線を逸らす。
「……うぅ……仕方無いじゃない…朝見さんにだって好きって感情あるでしょ?」
「わ、私は……っ」
朝見さんの動揺した声に目だけで朝見さんの方を見ると真っ赤になって――――もともと真っ赤だったかもしれない――――
目を泳がしていた。
「あ…えっと……ぁ、そういえば雛倉さんはどうして今回成績良かったんですか?」
私の視線に気がつき慌てて話題を換えるようにして言った。よくわからないけど、私の質問が良くなかったらしい。
だけど、その質問はどう答えていいのか難しいところ。
私は悩む。どこまで正直に話すか、気まぐれだと適当に済ませるか……。
……。
「……それは…、ある人に仲直りするにはどうするかアドバイスされて……」
「アドバイス?」
暗い声ではあるが興味を示したらしく尋ね返される。
「……その…まずは仲直りしたい人の順位を越えてって……」
「それって……私のこと?」
私はそう聞かれて顔が熱くなるのを感じながら小さく頷く。
285
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。14
:2015/04/17(金) 01:17:04
「あ…えっと……さっ、皐ね…余計なことを……」
朝見さんまで動揺してしまった。
というか皐先輩のことを皐と呼び捨てている……。
昔からの知り合いだと聞いていたけど、思っていた以上にフレンドリーな関係らしい。
――っ! あぁ、そろそろこっちも……。
朝見さんのことで頭がいっぱいで小康状態にあった尿意が、不意に大波として私を襲う。
仕草を抑えきれず身体を震わし、一瞬だけ大切な部分を押さえてしまう。
「あの、私が言うのも変かもしれないけど……大丈夫?」
「ま、まぁ……なんとか…」
――見られた……恥ずかしい。確かにこんな状態を見られるって言うのは相当辛い。
「おーい、あやりーん、呉葉ちゃーんいるー?」
扉の向こう側から声が聞こえる。
私はすぐに振り向き扉を叩きながら答える。
「まゆ! さっさとあけなさいよ!」
「うぉ、あやりんが怒ってらっしゃる! 今あけるからちょっとまって……っと、ほい」
ポールを取りまゆが扉を開ける。
「ごめんごめん、ポールが……あ、……えっと呉葉ちゃん?」
扉を開けてようやく状況を察したらしく――っていうかトイレ!
私は小さく足踏みをしながら言葉を紡ぐ。
「……えっと、まゆそのね……えっと――」
「雛倉さん……いいから行きなさいよ」
――うぅ……。
私の様子を見かねて朝見さんが私を行くように促す。
実際開いたことによる安心感で本当に危なくなってきてるし……。
「ご、ごめん! 終わったら更衣室から着替えとか持ってるくから! まゆ、後お願い!」
私は二人を置いて身体を前屈みにして駆け出す。
手は確り前を抑えて――ぅ…恥ずかしい。
一番近いのは体育館横のトイレ。
駆け込むとあの時のように扉が閉まっている――みたいなこともなく、慌てて個室に飛び込む。
<ジュワ……>
――っ! ダメ、鍵……いいや! 後!
先走りを感じ、鍵をあきらめ和式トイレを跨ぐ。
ハーフパンツと下着両方同時に手を掛けて一気に下ろすと同時にしゃがみ込む。
「はぁ……っ」<ジュイィィーーー>
相変わらずトイレ前とかに弱い私が少し情けなく感じながらも、安堵から声が漏れる。
多分朝見さんの我慢は今の私よりずっと辛かったんだと思う。
そう思うと――やっぱり可愛い。良い物を見せてもらえた。
それに……よくわからないけど、ちゃんと会話できた気もする……。
1分近く続いた恥ずかしい音が止まりほんの少し濡れて気持ち悪い下着を多少なりとも拭いて履きなおす。
「……はぁ…」
――さて……更衣室で制服に着替えて、朝見さんの服を持って――後は一度教室に戻って下着とか入ってるカバンも取りに行かないと。
昼休み終了まであと15分ほど。
お昼を食べる時間がないことを少し惜しみながら私は更衣室の方へ駆け出した。
286
:
事例9「朝見 呉葉」と聞こえない『声』。-EX-
:2015/04/17(金) 01:20:03
**********
――失敗したなぁ……。
あやりんに後を頼まれたけど、どうしよう……。
「あんまり……見ないでくれる?」
「ご、ごめん!」
私は呉葉ちゃんに言われてすぐに後ろ向く。
余りの惨状に目を背けるどころか呆然としてしまった。
……。
「本当にごめん私のせいで……」
その惨状の原因を作ってしまったことを謝罪する。
「……もう、いいわよ……わざとしたわけでもないんだし……」
その言葉に冷や汗が流れる。
だけど、……言わなくちゃいけない。
「えっと、凄く言い難いんだけどさ……」
一呼吸おいて続けた。
「その…わざとなの……閉じ込めたの」
「……え?」
「い、意地悪でしたんじゃないんだよ! その……二人には二人で話せる機会が必要だと思って……あーもう! 本当にごめんっ!」
私は振り向き膝をついて頭を下げる。
こういう機会を作ってあげないと、あやりんと呉葉ちゃんの性格的にどうにもならない気がしたからした行為だったけど、完全に裏目に出てしまったかもしれない。
「いや、土下座までしなくても……と言うか貴方もなの…?」
私は頭を下げながら「貴方もなの…?」っと言う言葉が何のことか考えるが……わからない。
「はぁ……お節介焼きばかり……このことについては許さず恨むことにさせてもらうから」
その言葉に返す言葉もなく、頭を下げ続ける。
「だけど……、雛倉さんの事で少し勘違いしていたことがわかったし…一応そのお節介に対してはお礼を言うわ……黒蜜さん、ありがとう」
私は良くわからず頭を上げて目をぱちぱちとさせる。
「……こっち…見ないでくれる?」
おわり
287
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/17(金) 01:44:20
更新待ってました。
ついに結果がまさかの二人とも同じ順位、朝見とは少し仲が改善したしね。 今まで朝見の声が聞こえないのは波長がかなり合わなかはって事なのかな。
そして久しぶりに声が仕事した。
288
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/17(金) 15:03:33
ついにきたー
クールな女の子が必死で我慢するのはすごくかわいい
289
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/18(土) 18:42:35
GJ!
朝見さんメイン来た!
それにしてもやっぱり文章も別格感あるな
290
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/19(日) 00:32:14
GJ!!!
291
:
名無しさんのおもらし
:2015/04/22(水) 01:10:48
浅見さん髪長いなww
話が大きく展開した感じ、次回が楽しみ
292
:
事例の人
:2015/04/26(日) 19:23:45
>>287-291
感想とかありがとう!
>声
『声』……仕事したと言えたのかな?
>次回
平常運転(事例10)か伏線回収(裏)か寄り道(小数点)になります
293
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 1
:2015/05/11(月) 20:01:12
『う〜ん可愛いなぁ』
冷水機前でいつもの変態少女が『声』に出して悶えている。
さすがに大きな『声』ではないし、表情自体は崩してはいないわけだけど。
そして、その視線の先は……どうやら篠坂さんの様だ。
……。
仄かな苛立ちと呆れを感じて小さく嘆息する。
私は冷水機から立ち去り更衣室で早々に着替えを済ませ教室へ向かう。
体育で喉は渇いているが私には持参の水筒がある。
わざわざ並んで水を飲むことも無い。
<ゴクゴクゴク>
教室に戻り私は自分の席で水筒のお茶を飲む。
彼女……雛倉 綾菜(ひなくら あやな)は変態的な嗜好を持っている。
他者、特に可愛い子のお小水の我慢姿を見ること。
ただそれだけの変態な女の子ならまだ良かったのだけど、彼女は私と同じテレパシスト。
ただし、私のように特定波長の『声』を聞き取る能力ではなく、彼女の読み取れる波長は可変。
より細かく言えば自身と同波長の『声』を聞き取る能力。
正直言って使い勝手は私と同程度には悪い。
しかし、彼女の嗜好と結びつくと彼女にとっては有益な、他者にとっては非常に迷惑な能力となる。
私には通用しないから、私自身が危惧する必要はないのだけど。
それでも、その嗜好には強い嫌悪感を感じるし止めてもらいたい。
<ゴクゴクゴク>
「はぁ……」
2杯目を飲み干して嘆息する。
294
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 2
:2015/05/11(月) 20:02:12
――やっぱり私が、どうにかしてやめさせないと……。
そう思うが、いい方法があるわけでもない。それどころか今は八方塞――――私にとっては……だけど――――な状態。
なんとか会話しようと思うが……なんというか、きつく当たってしまって……。
彼女が入試一位だったと聞いて、私は素直に喜んだ。
昔、私が憧れた何でも出来る彼女のままなのだと、そう思えたから。
なのに……中間テストの結果では二位ですら無かった。
聞いた話によると、一切テスト勉強をしていないとか……そして順位を見てる彼女は全くの無関心。悔しがる素振りなんて微塵も見せなかった。
私だけが彼女に追いつこうと必死に努力して、勉強して、運動だってして……でも、彼女は成績なんて――私なんて見ていなかった。
覚えていなくても良い……だけど、私の存在を感じて欲しかったのに……。
私はそんな彼女に勝手ながら失望し、トップになっても私を相手にしていないことに落胆し、馬鹿にされた気分となって。
……その気持ちは悲しさや寂しさだけでなく、蟠りを残し、いつしか小さな悪感情を私に抱かせた。
それが、私が彼女にきつく当たってしまった最初の理由。
そして、私はこの時の事を本当に後悔した。
一度きつく当たってしまったせいで、普通に話しかけることが難しくなってしまって。
口下手で不器用な私はきつく当たることでしか、彼女と会話する方法がわからなくなってしまった。
最近ではそれが余りに続くため、無視されるようにもなって――さらに私は話し辛くなって……。
悪循環とはこのこと……。
もとより私はコミュニケーションを取る事が苦手で上手く会話できない。
本当はもっと普通に会話できれば……。
――って違う!! はぁ……今は彼女の変態的な嗜好をどうやって矯正するかって話であって……。
<ゴクゴクゴク>
落ち着こうと思って3杯目のお茶を飲み干す。
飲み終わると大きく嘆息した。
295
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 3
:2015/05/11(月) 20:03:55
――
――
<キーンコーンカーンコーン>
3時限目終了のチャイムが鳴り、数学の授業が終わる。
私は教科書と筆記用具を持って――――次は実験で移動教室――――すぐに人気の無いお手洗いに向かう。
荷物を持ってって言うのは本当ならいやなのだけど、この際仕方がない。
移動教室なので早く人気の無いお手洗いに向かわないと時間が無い。
――あぁ、結構したい……。さっきの休み時間、やっぱり飲みすぎた?
人気の無いお手洗いに向かう理由は、唯単に恥ずかしいから。
普段は水分摂取をある程度控えて、学校でお手洗いを使わないように心がけてはいるが、
我慢できそうに無い日もあるわけで……特に今日は体育のあと飲みすぎたみたいだ。
「呉葉!」
背後からよく知った私を呼ぶ声。
振り返るとその声の主は廊下を小走りで駆け、私の前まで来る。
「何ですか、“先輩”」
「“先輩”って……皐って呼んでって言いましたよね?」
一見笑っているように見える。
けど、良く見ると眉だけ怒っている。
……この人はこの学校の生徒会、会長、宝月 皐子(ほうづき さつきこ)。
面倒なのに捕まってしまった。
「それで……あの話は考えて貰えた?」
「保留って前回話したはずだけど」
可能な限り感情を出さずにそう答えると、皐は不満げな顔で会話を続ける。
「それは聞きましたけど……綾菜さんも誘う計画がありますから……それだけはわかってもらえてますよね?」
私はそれを聞いて目を細めて睨むように皐を見る。
「そんな目で――……はぁ、いい加減素直になって、仲良くしたらいいだけじゃないですか?」『凄く良い目〜』
「簡単に言いうけど……色々あるから」
余計な『声』も聞こえてきたことに少し戸惑いながらも視線を逸らし平静を装う。
「今の綾菜さんも十分良い子ですよ……私は割り切って考えることにしましたし、その上で私は呉葉と綾菜さんの2人に生徒会へ入ってもらいたいわけですから」
本当、簡単に言う……。
私はそんな簡単に割り切れないのに。
でも、私たち2人に拘る皐も、本当に割り切れてるのか甚だ疑問だけど。
私は、大きく嘆息して、再度念を押すように答える。
「とりあえず、今は何度聞いても保留だから」
「……そう、だったらとりあえずは綾菜さんの方を誘う方法を考えます。計画が決まり次第実行しますから。
もし、入ってくれる目処が立ったり、何か進展があればこちらから連絡します。その時に良い返事を期待するとしましょう」
そう言って私の前から立ち去る。相変わらず横暴で、勝手な話。
そっちはそっちで精々頑張ってとしか言えない。
私が答えを出せるのは、私個人の問題が解決してからだ。
目処が立ってもそれに進展が無ければ、保留のままだし、生徒会選挙までに決まらなければ自動的に断るという選択となるだけ。
「はぁー」
私は大きく嘆息して、お手洗いを済ませることが時間的に間に合わなくなったことに肩を落とした。
296
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 4
:2015/05/11(月) 20:05:14
――
――
実験室に入ると多くの生徒が既に席についていた。
空いてるテーブルは一番奥のほうと手前にある雛倉さんのテーブルの二つだけ。
友達がいないのはクラス中に知れ渡ってることなので、わざわざ、奥へ行って座るのも不自然。
と、いうわけで仕方がなく……本当に仕方なく手前の雛倉さんの隣に座る。
残る数名が教室に来て座ってゆく。
<キーンコーンカーンコーン>
チャイムとほぼ同時に最後に入ってきたのは篠坂さんだった。
「おーい、弥生ちゃーんこっちこっち、もう此処だけだよ空いてる席〜」
「あ、うん」
黒蜜さんがそう言うと、篠坂さんは小走りにこっちに来て座る。
『……とっても可愛い』
隣で雛倉さんの『声』が微かに聞こえる……確かにちょっと可愛かったけど――この変態少女。
私は改めてテーブルのメンバーを見る。
まず、私、その隣に雛倉さん、さらに隣が黒蜜さん。
その正面に座るのが篠坂さんで、私の正面が檜山さん。
一人休みなのでこの5人の班となった。
「あぅ……よく見たらこの班、優秀な人が3人も――」
「そうそう、だからこの班選んだのよ!」
篠坂さんが恐縮そうに言うと、檜山さんが被せるよう本音を言う。
酷い理由で選ばれたものだ。
「私はあやりんや呉葉ちゃんほど優秀でもないよ〜」
黒蜜さんはそう謙遜する。
雛倉さんと同じで、テスト勉強なしで成績上位なのだから、優秀であることには変わりないのだが。
「それでは実験を始めます、指定された器具を各班代表で一人、前まで取りに来てください」
いつの間にか先生が入ってきていて、授業開始の合図と同時に実験道具を取りに来るように指示をした。
297
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 5
:2015/05/11(月) 20:06:45
――どうしよう、私の席が一番近いし私が取りに行った方が――
「……私取ってくる」
――良いかな……と思ったが、私がそう決断するより早く雛倉さんが動く。
そして実験器具を一式持ってきて彼女はテーブルに置く。
<ガチャン>
……。
「雛倉さん、もうすこし丁寧に置いてください」
――あぁ……また、私はこういうことを……。
別にそこまで言わなくてもって私自身も思う。
それに、私が早く行かないから雛倉さんが行ってくれた訳で……。
雛倉さんは無表情ながらも、少し気を落とす。
それでも、やっぱり無視……声を聞かせてはくれない。
――はぁ……どう考えても私が悪い。
『授業始まったばかりだけど……やっぱりお手洗い行きたいよ……』
不意に聞こえてきたのは篠坂さんの『声』。
どうしてさっきの時間に済ませなかったのか……。
私のように済ますことが出来ない事情があったのかもしれない。
だけど、そんな『声』を出すと――
『今は朝見さんとかどうでも良くてこっちが大事』
――……どうでもいい? ……。
ちょっと凹む。
私だって我慢してるのに――って、だからってそんな目で見て欲しいとか全然思わないけど……。
結局私は、彼女にとって鬱陶しいだけの人で……。
どうしてこうなってしまったのか。なんで私は……なんで彼女は――
私は心の中で大きく嘆息して、思考を無理やり中断して気持ちを切り替える。
考えても無駄なこと……もう何度も考えたのだから。
『まだ45分もある……あの秒針が45周……気が遠くなるような時間だよぉ』
……始まったばかりだし当然だ。
確り我慢して欲しい。……雛倉さんのこんな『声』なんて聞きたくない。
聞いていたら、また苛立ってしまう……。
298
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 6
:2015/05/11(月) 20:08:32
「それでは、実験の説明をします。まず注意事項は――」
先生が実験の説明を始める。
『説明長そう……あ、でも長くても授業終了時間は変わらないし一緒かぁ……』
――篠坂さんも、もっと別の事考えれば、雛倉さんへ届かないのに……。
「――以上です、各班事故の無い様慎重に行ってください」
説明が終わり、各班作業を開始し始めたようで、各所で話し声や器具を設置する音が聞こえてくる。
「はい、シャー芯」
「……まゆ、私にさせるつもり?」
「うん」
私の隣の2人が実験を始めようとしている。
ちなみに実験内容は炭素棒の代わりにシャー芯を使った電気分解。
シャー芯を受け取った雛倉さんは少し嫌そうにしながらも、嘆息をした後作業に入った。
流石に手際が良い……が、一人でするのは流石に大変だ。
黒蜜さんが手伝うのかと思っていたのだが、どうやら丸投げらしい……。
対面に座る二人を見るが、どうも、不思議そうな顔で作業を眺めているところを見るに、全く理解できていない様子。
……仕方が無い。私は雛倉さんの作業を黙ってサポートすることにした。
『早く終わったら、早くお手洗いに……いけないよね……』
そうでしょうね。
と言うか、その様子じゃ実験レポートかけないような気がするけど……。
私は雛倉さんの実験の進行をスムーズに行えるように器具の配置を換えたり、道具を渡したりする。
何をするか分かっていると言葉を交わさなくても、何とかなるものだと、一人で関心していると――
「……あ、ありがと……」
――実験に使う道具を渡した時に、小さい声でお礼を言ってきた……。
いつも私が話しかけても無視するのに……いや、私が悪いのは分かってるけど。
そんなことを思いながら雛倉さんの方に向いていたのだけど、不意にその直線上に居る黒蜜さんの顔が目に止まる。
その顔は…なんと言うか微笑ましいものを見ているような――あ……全く手伝わなかったのはそういう魂胆……。
余計なお世話だ……。
299
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 7
:2015/05/11(月) 20:09:27
『結構ヤバイかも……こんなに我慢したの最近じゃなかったな……』
『……抑えたい…檜山さんは実験見てるしバレないかな? ……いいや、もう抑えよう……』
作業を淡々と進めている中、篠坂さんの辛そうな『声』が聞こえてきた。
授業終了まではあと30分もある。
――この子……大丈夫なの?
と、言っても実は私も少し辛くなってきた……あの時皐に邪魔されなければ、こんな思いしなくて済んだのに……。
今更そんなことを考えても仕方が無いのだけど……授業が終わったら、どこか人気の無いお手洗い探さないと。
――次は昼休みだし、利用者の少ないのはやっぱり――
そんなことを思っていると、雛倉さんの実験を行う手が止まっているのに気が付く。
確かに一段落付いたけど、まだそれなりに作業は残っている。
私がどう、声を掛けようか迷っていると、雛倉さんは対面の、篠坂さんと檜山さんに視線を向ける。
「……二人ともちゃんと実験内容理解できてる?」
――あ……雛倉さん……。
「全然理解できないです!」「ご、ごめんなさい」
「……まゆ、あとお願い、私は二人に解説するから」
彼女は2人を気遣って、わざわざ解説するために対面の真ん中の開いている席へ座る。
私は、誰も見ていないだろうけど、少し頬が緩むを感じる。
『声』では変態的でも、皐が言う通り良い子なのだ。
「おお、優しいね〜、実験レポート出せなくて困るのその二人だけなのに」
「っ! 真弓ちゃん意外と黒い子だ!」
「……ぁ」『隣に人来ちゃった……もう流石に抑えられない』
『恥ずかしくて流石に離したみたいだけど……どこまで我慢できるかしら?』
……。
やっぱりただの変態かもしれない。
雛倉さんに代わり、黒蜜さんが実験を進める。
私は真面目に解説をしているように見える変態を眺めながら、実験のサポートを続けた。
300
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 8
:2015/05/11(月) 20:10:48
――
――
『やだ……本当にヤバイかも……』
『抑えたい、でも……』
『……わぁ、篠坂さん……足震えてるし、手も握り締めて……凄く可愛い』
雛倉さんは、篠坂さんの辛そうな『声』を聞いて、隣でチラチラとその仕草を眺め、嬉しそうな『声』を上げる。……変態。
『……でも私もトイレ……結構切迫した状態になってきたかも……』
だけど、その変態は少し誤算があったようで、自身もそれなりに尿意が高まっているようだった。
彼女のテレパシー能力の制限で相手の波長に合わせるため、いつも彼女自身、我慢しているのだけど、
今回はちょっと飲みすぎたようであり、随分我慢している。
――そういう私も、実は結構危ないんだけど……。
多分尿意の大きさから言えば雛倉さんと同程度くらいだとは思うけど……。
そして、もう一人は私たちと比較する必要が無いくらいに、切羽詰った『声』を上げていた。
『ぅ……やだ、波がっ――お、お手洗い! 早くぅ! お手洗いに行きたいよぉ……』
その『声』を聞いてか、雛倉さんが視線だけで篠坂さんを見る。
『……つ、ついにスカートの前に手が……』
『嘘……今の雛さんに見られた!?』
――雛倉さん……本当にあなた変態なのね。
ここまで酷い場面初めてだ……。
まぁ、ここまで尿意に切羽詰ってる人の『声』を聞くのも学校じゃ稀だけど……。
『もう、だめ……我慢できないのに……でも雛さんに見られるし……』
……。
どうしよう……このままだと篠坂さん、本当に粗相しかねない。
助け舟を出すべき?
「んっ!」『やだやだ! 出ちゃう、先生に……でも恥ずかしい……』
これ以上我慢を続ければきっとここで――
「……すみません、先生。篠坂さんを保健室に連れて行ってあげてもいいでしょうか?」
――え? 雛倉さん?
先生は篠坂さんの真っ赤になった顔を見て、体調不良だと感じたのか納得して、口を開く。
「そうですか……では保健係の人は――」
「……いえ、もうレポートも完成しましたから、私が連れて行きます」
「それじゃあ、お願いします」
先生がそう言うと、雛倉さんは黒蜜さんに「……ごめん授業終わったら私の荷物持って、教室に帰ってて」と言って、教室を出て行く。
301
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 10
:2015/05/11(月) 20:12:12
……。
私は……結局何も出来ない。
変態の雛倉さんですら、篠坂さんを心配して助け舟を出して上げれるのに……。
『声』が……助けが聞こえてるのに、私は行動できない。助けられない。
私は、昔と何も変わっていない。
行動力が無くて、馬鹿で、誰も守れなくて……。
昔、私は言った。「――……いつか私も正義の味方になってみたい」って。
でも、私はやっぱり駄目なのかも知れない。
……でも、だからこそ……雛倉さんを矯正しないと……そうしなければ。
いつしか時間が過ぎ去り、授業が終わった。
私はレポートを提出して、お手洗いに向かうために教室を出る。
「ねぇ、呉葉ちゃん」
――うぅ……また、変なタイミングで……。
振り向くと黒蜜さんが少し悲しんでる様な怒っているような表情をしていた。
「なに?」
冷たく、無機質な声で応答する。
もう少し、普通に言えたらいいんだけど……。
「あやりんに強く当たるの、もう少しどうにかならないかな……?
事情があるのかどうか、よくわからないし、強制はしない……けど、あやりんは私の親友だから……。
あやりんも無視しちゃってはいるけど……あれでも結構凹んでると思うの、だから……ね?」
私は何も返せない。
少しだけ下を向いて……何て言えばいいのか思考を巡らすが、やはり返せない。
黒蜜さんは廊下の端に寄り、壁にもたれかかるようにして続けた。
「……呉葉ちゃんとは中学の間ずっと同じクラスだったからさ……悪い人じゃないってことは知ってるから……
2人が仲悪いのはちょっと私辛くてさ……」
しばらく沈黙が続く。
「ごめんね……勝手な事言って……」
黒蜜さんは私の脇を通り、教室の方へ行く。
私は心の中で謝る。本当に謝るべき相手は雛倉さんであることは分かってる。
でも、どうすることも出来ない自分の弱さに、今はただ、後姿を見せる黒蜜さんに心の中で謝ることしか出来なかった。
302
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 10
:2015/05/11(月) 20:13:49
――ブルッ
背筋に走る震えが、思いのほか余裕が無いことを告げる。
――っ! い、今は、早くお手洗い行かないと……。
そう思ったが、手に持っていた、教科書と筆記用具……先にこれを片付けてしまおう。
教室に遅れて戻る時に教科書とか持っていると、誰かが詮索しかねない。
教室に戻り引き出しの中に教科書と筆記用具をしまう。
そして、この時間帯でもっとも人気がなさそうなお手洗いの場所へ移動しようと教室をでる。
「あっ!」
「っ……霜澤さん……何の用?」
教室を出たところに最悪のタイミングで接触してきたのは霜澤 鞠亜(しもざわ まりあ)。
新聞部を立ち上げるも、部員が少なすぎて、結局愛好会の域を出れない知人。
ただ、そこそこ優秀な人ではある。
成績も中間テストで10位前後だった気がするし、スポーツも出来る。そして、人間関係も私ほど悪くなく人並み。
「通りかかっただけだけで、ボクは特に用はないけど? まぁ、強いて尋ねるとするなら……その……狼さんの様子はどうって…くらいかな?」
言い初めの方は高圧的な、如何にも彼女らしい態度で話していたが、後半は弱弱しく、声も小さく話す。
変装のため付けられたと思われる似合わない眼鏡を無駄に直しているのを見ていると、彼女も雛倉さんのことを強く気にかけているように思う。
「相変わらずよ……」
私は素っ気無く言葉を返すが、尿意で立ち止まるのも辛く、足踏みしたいのを必死に耐えながら、早く話が終わるのを祈る。
もし、あまりに続くようなら、何か理由をつけて離れないと……。
「そ、そう……分かってると思うけど、変に刺激して記憶が戻ったりしたら許さないから……金髪にも言っといて!」
少し強い口調でそういうと背を向けて離れる。
すぐに話が終わったことに安堵するが、同時に下腹部溜まった恥ずかしい水が主張を強める。
303
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 11
:2015/05/11(月) 20:15:16
今日は非常にタイミングの悪い時に声を掛けられる……。
私は急ぎ足で体育館の渡り廊下の隅にある、お手洗いを目指す。
その道中限界に近い尿意に焦りながらも、心の片隅で皐と霜澤さんの雛倉さんに対する姿勢が私を憂鬱にさせる。
皐は新しい雛倉さんを受け入れようとしていて、
霜澤さんは記憶が戻ることを危惧して、関わることを極力避けている。
そして私は、今の雛倉さんを受け入れられず、だからと言って避けることもできずに居る。
心のどこかで、思い出して欲しいと願い、昔のような彼女に戻ってくれると期待している。
――……やっぱり、過去に囚われているのは私だけね……。
「絶対に思い出させちゃダメだから!」……霜澤さんが泣きながら私たちに言ったあの時の言葉が思い出される。
そう、あの言葉は正しい。私の願いも期待も叶うことはない。叶えてはいけない。
……。
私は小さく首を振り、憂鬱な気持ちを振り払う。
体育館の渡り廊下の隅にあるお手洗いを昼休みにわざわざ利用する生徒は滅多といない。
保健室を越えて、渡り廊下へ、そしてお手洗いが見えると、長い髪をマフラーのようにして首に巻きつける。
それは私にとって用を足すための準備のひとつで……普段ならお手洗いに入ってから行っていること。
良く言えば効率的。でも、それは今、私に余裕がない恥ずかしい証拠でもある。
私は周囲を軽く見渡し、誰もいないことを確認してお手洗いへ駆け込む。
息が少し荒いのは走っているからではない。
手がスカートの前を抑えているのは風で捲れあがるからではない。
――んっ……まだ…あとちょっとだから……。
お手洗いに着いたことで安心した身体が尿意の波を起こし、それを心の中で宥める。
いつも通りの修理中の個室と未使用の個室が並ぶ。
私は未使用の個室へ飛び込み、少し乱暴に扉を閉めて鍵をかける。
304
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 12
:2015/05/11(月) 20:16:31
髪は先に上げて置いたので大丈夫。
私は用を足そうと下着に手を掛けたとき――
<コツコツコツ>
――お手洗いに走って駆け込んでくる音が聞こえて私は、下着に手を掛けたまま固まる。
……個室に入ってしまった以上、出るところを見られる……それにこのタイミングだと音まで聞かれる。
出来れば他のお手洗いに移動して欲しいが、そうも行かないと思う。
『って、嘘? 個室閉まってる??』
――っ! この『声』って……ひ、雛倉さん?!
<コツコツコツ>
個室前までその足音が近づく。
私はもうすぐしてしまえると思っていたため、急激な尿意が襲ってくる。
個室の中なのに……することが出来ない。もししてしまえば、私の“音”が……。
私は必死になって音を立てずにスカートを捲り上げるようにして下着の上から大切な部分を抑える。
『……嘘でしょ?』「ぁ…んっ!」
――っ!! これって……雛倉さん、凄く切羽詰ってる?
『声』も声も今まで聞いたことが無いくらい焦っている。
早く替わってあげたほうが良い――そんなこと判ってる。
でも、よりによって雛倉さんだなんて……。
……ダメだ、出るわけには行かない。
恥ずかしい音を聞かれるなんて耐えれない。終わった後、どんな顔して出れば……。
そして、今出してしまうと我慢していた分、相当長い時間音がする……たとえ音消しをしても雛倉さんなら聞き取りそうだし
そもそも、1回の音消しでは間に合わず、2回行うことになればそれはそれで恥ずかしく、結局我慢していたことが雛倉さんに判ってしまう。
……それだけでも死にたくなるくらい無理なのに……それに加えて雛倉さんは私の『声』が聞こえなかったという疑問を持つことになる。
つまり私にテレパシストの読み取りに抵抗があることがバレてしまうかも知れない。
『何で、どうして?? もう膀胱パンパンなのに……直ぐ入れると思ってたのに!』
――お願い、雛倉さん……早く別のところへ行って……。
私はそう祈る。
それは、開くことが無いトイレに無駄に待つことになる雛倉さんの事を思って祈っただけじゃない。
個室に入って気が緩んでいる私も長く我慢できる自信がないから。
305
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 13
:2015/05/11(月) 20:17:52
「はぁ…はぁ……」
扉一枚隔てた向こう側から小さな息遣いが聞こえる。
とりあえず、雛倉さんは波を越えたのかも知れない。
でも、私は――
「(んっ……)」
左手で声が漏れない様に口を押さえ、右手はスカートのしたから下着を鷲掴みにするようにして耐える。
音を立てるわけに行かず、足踏みも満足に出来ない……。
<コツコツコツ>
それなのに、個室の外からは雛倉さんの足踏みの音が、トイレ内に響き渡る。
『うぅ、これ個室の中の人にも絶対聞こえてる……』
そう『声』が聞こえ、しばらくは音が止むが、またすぐに遠慮がちに音が聞こえてくる。
私はその不快なステップのリズムが、酷く羨ましく感じてしまう。
出来ることなら私も同じようにしたい……でも――出来ない。してはいけない。
小さく身を揺すりながら、音を立てずに何とか我慢を続ける。
でも、数分経った今もなお、外で雛倉さんが我慢を続けている。
『ちょっと…いくらなんでも遅すぎない!?』
『もう、我慢も限界なのに……何してるのよ!』
――それはお互い様ですからっ!
そう思っているなら早く、別のトイレに向かって欲しい。
いくら待たれても、出れないものは出れない。
――それに……早くしてくれないとそろそろ私も我慢が……。
抑え込む手にこれ以上無いくらい力を入れて、何度も抑えなおす。
それでも、溢れてしまいそうになりながらも、これ以上身体を動かし音を出すことも出来ない。
『もしかして、音が聞かれるのが嫌で中で我慢してる? ……いや、『声』が聞こえないしそれは無い?』
――っ!
図星を付かれて動揺する。
その動揺に反応するように膀胱が収縮して波を起こす。
――ぁ…んっ……もうっ限界…! お願い、早くどこか……。
306
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 14
:2015/05/11(月) 20:19:35
『っ! ダメ……余計なこと考えてたらまたっ!』
『やだ……本当限界、なんで空かないの!?』
私が急な尿意に動揺して焦っているのと同じように、外でも限界の尿意に抗う雛倉さんの『声』が聞こえる。
「ぁぅ……」『嘘!? やぁダメ…おしっこ、漏れちゃう! うぅ……』
必死の我慢の『声』が口からもあふれ出している……。
――っ……はぁ、ど、どうしよう……このままじゃ雛倉さん…。
出るべきか否か。
雛倉さんの事を思えば、私の能力とか羞恥心とか気にしていられない……。
出てしまうのが絶対に正しい……なのに……。
――やっぱだめ……出れない、出るにしても済ませてからじゃないと私が持たないっ。
それに……やっぱり音を聞かれるのが嫌で、さらに今更して、後でなんて言えばいいのか分からなくて。
「んぁ! ――はぁ、はぁ……」
どうやら雛倉さんは波を乗り切ったのか、外で熱の篭った激しい呼吸音が聞こえた。
でも、今度は私の膀胱の収縮がピークを迎え、恥ずかしい熱水を力一杯押し出そうとしてくる。
荒い呼吸も身動ぎさえ許されない状態での大波。必死になって足を閉じ合わせ、ただただ抑え込む。
だけど――
<ジュ……ジュー>
【挿絵:
http://motenai.orz.hm/up/orz53686.jpg
】
何度もお預けをされ、個室に入ってからも長時間にわたり我慢し続けてきた大切な部分が限界を迎えた。
そしてその熱い感覚は、どうやっても止めれそうになかった。
視界が涙で霞み、片手で押さえられた口から声が漏れそうになるが、どうにか飲み込む。
『うぅ…ちょっとだけ濡らしちゃった……だめだ、ここから一番近いトイレ……本棟に戻って階段を上れば直ぐだ!』
その直後外から雛倉さんの『声』がして、同時に、足音がトイレの外へ向かうのが判った。
私は、足を開き、口を押さえていたほうの左手でスカートを掴み上げ、和式トイレを跨ぐ。
下着を下ろすことは諦め、すぐにしゃがみ込んで、靴や靴下へ被害を出さないことを優先した。
「はぁ……はぁ……」<ジュウゥーー><ジョロロロ>
下着の中でくぐもった音を出し、あふれ出た熱水は白い陶器の中にある水溜りを打ち、二重に恥ずかしい音を立てる。
そんな音を確かに耳にしながら……ただ、このときは雛倉さんの前で失敗せず済んだことに安堵していた。
307
:
事例2裏「朝見 呉葉」と弱い心。@呉葉 15
:2015/05/11(月) 20:20:21
――
――
「はぁ……」
恥ずかしい失態を終えた私は下着を洗面所で洗う。
被害が下着だけで済んだことと、雛倉さんが気が付かずに他のトイレに行ってくれたのは不幸中の幸いだけど……やっぱり辛い。
雛倉さんはここで多少の失敗はしたようだけど、大丈夫だっただろうか?
もし間に合っていたなら……理不尽だけど怒りたくなる。
――最低の理由で我慢していた雛倉さんが間に合って、私が間に合わないなんて事……。
だけど、もし間に合っていなかったら……それが良い薬になればいい。
そう思うが――やっぱり原因の一端は私であり……凄く申し訳なく思う。
下着を洗い終え、自身がしてしまった失敗を再度自覚する。
「はぁ……あと少しだったのに」
情けない気持ちと、これを今から履くことになる現実に憂鬱な気持ちになる。
おわり
308
:
「朝見 呉葉」
:2015/05/11(月) 20:21:31
★朝見 呉葉(あさみ くれは)
綾菜にきつい態度をとる。
学年一の優等生。
波長限定テレパシスト。綾菜同様受信のみ可能。
非常に大きな主張を持つ波長、その中でも興奮した感情を含むものが受信しやすい。
読み取れるのは表層の『声』のみ。深層意識は全く関係しない。
綾菜と比べると感度は非常に低め。10mも離れればどんな『声』でも聞き取れない。
綾菜同様、聞こえやすさ個人差があり、綾菜や皐子は聞き取りやすい(慣れも含む)。
また、テレパシストによる読み取りを妨害する能力も合わせ持っている。
朝見家は代々テレパシーの能力をある程度受け継いできた家系。
例えば、呉葉の母は直接触れている相手の表層の『声』をすべて聞き取ることが出来る…など。
呉葉のテレパシストによる読み取りを妨害する能力は、非遺伝的な能力。
周囲に波長として漏れ出さないだけであり、触れてさえしまえば、母でも綾菜でも聞き取ることは可能。
膀胱容量は人並みより少し多い程度で最大容量800ml程度。
過去に公園のトイレを利用しようとした際、それを妨害され、それに興奮する『声』を聞いてしまう。
それ以来、そういう類の人に嫌悪感を持っており、同時に、人前でトイレに立つことを非常に恥ずかしいことだと感じている。
そのため、学校ではあまりトイレを使わない。なので比較的我慢しがち。
下校まで我慢出来そうにないと判断したときは、やむ終えず利用者の少ないトイレを使う。
成績最優秀、運動得意。所謂、文武両道。
入試成績2位、1学期の中間テスト、期末テスト、2学期中間テストで学年1位。
綾菜が入試成績トップな事を知り、自身の存在を主張する為にも更に猛勉強して挑むが、綾菜はテスト勉強すらしておらず空回り。
自身が求めていた綾菜と大きくかけ離れた存在であることに気が付き、中間テスト後はもやもやした気持ちからきつく当たってしまう。
その後は綾菜に無視されるようになり、綾菜から自身に向けられる不信感に後悔と遣る瀬無い気持ちを覚える。
性格は正義感が強く真面目で無口。
正義感が強いのに、コミュ力低いので積極的に問題解決には踏み出せない上
口下手で近寄りがたい空気を纏っており、綾菜に対する態度からも、周囲からは怖い人だと思われている。
綾菜のことを変態趣味持ちな面で嫌っていると同時に、助け舟を出したりする行動には多少好感を持っている。
なので、如何にかして変態趣味から脱して欲しいと思い日々悩んでいる。
ただ、皐子の嗜好に関しても知っているが綾菜ほど気にしていない。
表情を取り繕うのが得意で、表情に反して本音では後悔や苦しんでいることが多い。
緊張や動揺、不安に直面すると喉が乾き、持参のお茶をついつい飲んでしまう割る癖があるが自覚していない。
綾菜の評価は最悪であり、天敵。自身の嗜好まで知られてしまっている油断できない相手。
『声』を聞いたことが無い相手であり、いまいち何を考えているか判らなく、自身に対して非常に厳しく理不尽な対応。
ただ、根は悪い人ではないのは判ってはいるし、仲良くなれるのならなりたいと思っていて、妙に意識してしまう相手でもある。
309
:
名無しさんのおもらし
:2015/05/11(月) 21:31:38
丁度覗いたら更新きてた。なるほど事例2の裏ではこんな事があったのか、あの時トイレにいたのはやっぱり朝見だったのか。
310
:
名無しさんのおもらし
:2015/05/11(月) 21:57:01
待ってました
事例の人の小説は久々にスレ覗いて以来最近の楽しみになりつつあるよ
311
:
名無しさんのおもらし
:2015/05/11(月) 23:39:27
偶然にも朝見と綾菜は見事に行動がシンクロしてる。二人とも下着を下ろさないでしてしまって、その後下着を洗ってる所が。これもしも同じトイレで二人同時に個室から出てきたらバッタリと会ったらどうなるんだろう。
312
:
名無しさんのおもらし
:2015/05/13(水) 15:22:02
なんと素晴らしい
313
:
名無しさんのおもらし
:2015/05/16(土) 22:56:18
前回で話が一つ区切りを迎えたかと思えばまた大量の伏線でてきたな
こりゃこれからも目が離せませんわ
314
:
事例の人
:2015/05/21(木) 19:21:57
>>309-313
感想とかありがとう
>大量の伏線
回収した伏線のがきっと多い……はず
315
:
名無しさんのおもらし
:2015/06/07(日) 05:44:36
くノ一つづいてたのか
316
:
名無しさんのおもらし
:2015/07/28(火) 15:34:27
素晴らしい
317
:
名無しさんのおもらし
:2015/08/25(火) 23:05:57
続きはよ
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