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おもらし千夜一夜4

1名無しさんのおもらし:2014/03/10(月) 00:57:23
前スレ
おもらし千夜一夜3
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/2469/1297693920/

845追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。8:2021/12/09(木) 00:49:13
――はぁ…良かった、間に合う、ほんとにもう限界っ……トイレ、んっ…おしっこっ……。

まだ油断していいわけじゃないのはわかっているが、チャイムが鳴るまで押さえていたためか、波の気配はまだ遠い。
限界ではあるけど、トイレまでは十分に間に合う。例え今波が来てもなりふり構わず我慢すれば間に合うくらいの余力はあるはず。

トイレが見えてきた、同時に波が迫るのを感じるが、ここまで来てしまえばあと少し。
それでも溢れそうで手をスカートの前に当てて足早にトイレの中へ入る。
個室も空いてる、大丈夫、間に合っ――

――っ!?

トイレに入ってすぐ、押さえていない方の二の腕が後ろから摑まれる。
直後、振り返る間もなく、強く後ろに引かれ、そのまま振り回されるようにして、背中を壁に押し付けられる。
勢いで頭を壁にぶつけると思って目を塞いでいたが、後頭部には私を引いた人の手が添えられていたらしく、痛みを感じることはなかった。

私はゆっくりと目を開く。

「っ…す、紗!?」

「そんなに急いでどうしたのー?」

目の前にいたのは紗。
私はわけがわからず数回瞬きをして、だけど、すぐに紗の視線が私のスカートへ向けられてるのに気が付き、押さえていた手を離す。

「おしっこ、限界なんだー?」
「え、ち、ちがっ――っ!!」

恥ずかしい指摘に誤魔化すために無駄に前に出した両手。
それを流れるような手つきで両方とも掴む――な、なに? なんなの!?

「こんなにスカート皺だらけにしてー」
「ちょ、一体――」
「行儀の悪い手は上がいいかなー?」

摑まれた両手が頭の上に持ち上げられ、それを片手で壁に押し付け固定される。
手を解くことができない。変に力を入れられないのもそうだけど、そもそも紗の力が強すぎる。
背筋が少し延ばされ、下腹部が圧迫されて――

「っ……ま、待って、離してっ……やぁ、んっ……ふぅ…っ……」

両手を固定されているせいで押さえることもできない。
必死に足を擦り合わせて尿意に耐えるが、そう長くは持たない。
一刻も早くトイレへ――個室へ飛び込まないと、本当に間に合わないのに。

「凄く良い声。それにしても…お腹パンパンで石みたい、どうしてこんなになるまで我慢してたのかなー?」
「っ!! さ、触らないでっ! わ、わかってるなら、離してっ、やぁ…はぁっ……も、もれちゃう…からっ……」

強い力ではないが、中指で下腹部を下から上になぞられる。それを切っ掛けに尿意が更に増した気がして、本当に溢れてしまいそう。
さっきの壁に押し付けられた衝撃で出ちゃわなかったのも、押さえていたとはいえ割と奇跡的な気がする。
今は衝撃はないけど、押さえることも、身体を深く前傾姿勢にすることもできない。
その上、もうすぐだったはずのトイレのお預けとトイレ内にいる意識から尿意が際限なく膨らんで、私を追い詰める。

どうして紗がこんなことをするのか……怒ってるから?
だけど、今はそんなこと深く考える余裕なんてない。
片膝を上げて出口を圧迫して――

「雛倉綾菜、勝負しましょう。たったの20秒我慢出来たら綾菜の勝ちー、解放してあげるー」

【挿絵:http://motenai.orz.hm/up/orz75971.png

846追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。9:2021/12/09(木) 00:50:46
――っ!

ずっと待っていた――求めていたいつもの言葉。
そのはずなのに、私は首を横に振る。
それを見ても紗は何も反応を示さず、数字を数えだす。

「いーち、にー、さーん」

「っ……はぁ、ダメ、本当に、早くしないとっ…あぁ」

足を力一杯閉じ合わせて、擦り合わせて。
全然波が引いてくれない。
それどころか高く激しくなって、弱まる様子は微塵もない。

――はっ…っ……い、一秒が長くない? ず、ずるい……んっ……はぁ、はぁ。

「なーな、はーち、きゅー……」

――っ…あと10秒、あと10秒で、トイレ、おしっこっ……はぁ、はやくっ……。

あともう少し、そう思い目を瞑り力を振り絞っていると、紗が私に一歩だけ近づいたのを感じる。
目を開くと紗の顔は目と鼻の先。真っ直ぐに見つめてくる紗から目を逸らせない。

――な、なに? ……っ!! え、足っ、ちょっ!!

紗の顔に気を取られていると、擦り合わせていた足の間に紗が足を捻じ込んでくる。

「じゅうーよん、じゅう――」
「や、やめっ!? あ、あぁっ!」<じゅう……じゅぅ…じゅぃー……>

――う、うそ、ちょっともれ――っ……ダメ、これ以上は、紗の足にもっ……溢れるっ、あ、でも無理、我慢……だめ、力が入ら――っ、だめっ……なのにっ!!

紗の足が引き抜かれるのを感じて、すぐに閉じ合わせる。
だけど治まらない。下腹部が固く収縮して、もう足の力だけでは到底間に合わない。
今我慢出来たら、きっとトイレに間に合うのに。たったそれだけで助かるのに。おもらしせずに済むのに。
足がガクガクと震える、伸ばしたい手はびくともしない……もう、抑えられない……。

「あぁっ! 放し――んっ……あぁ、やぁ、あぁぁ…」<じゅう…じゅうぅぃぃ――>
「じゅうーなな…じゅうは…――あー、やっちゃった、もうちょっとだったのに……私の勝ちみたいだねー」

熱い流れが足を伝い靴下へ染みこむ。
足に挟まれたスカートの生地が濃く染まり重たくなっていく。
足元に広がった恥ずかしい水溜りに、雫が落ちて音を立てる。
おもらし。トイレの中なのに、すぐそこに済ませることのできる個室が見えているのに。

847追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。10:2021/12/09(木) 00:51:39
「あーあ、この歳でおもらしなんてありえなーい」

――っ……。

本当にそう……もうちょっとだったのに。
すぐそこなのに、あとほんの少し我慢してたら間に合ったのに……。

最後、紗が数えていた数字は17秒だった。
あとたったの3秒。それさえ我慢出来れば手を放してもらえた。
手を使えればトイレまで何とかなったかもしれない。
本当に……本当に、あと少しだったのに。

「っ……はぁー、はぁー…っ、はぁー…はぁー……」

力が抜ける。もうどうしようもない。
摑まれていた手が放されると同時に私はその場にへたり込む。
自分の作ったおもらしの水溜りでスカートがより広範囲に染みを作り、重たくなっていく。
肩で息をして、身体が熱い。

――はぁ…そういえば、私、風邪っぽかったんだっけ?

視界がぼんやりしているのは極度の我慢のせいか、あるいは風邪が悪化したのか。
今もなおおもらしを続けながら、思考が止まっていくのを感じる。

恥ずかしい水溜りの上に一本の赤いリボンが落ちる。

――そっか、負け越した数だけ……今回は紗が勝ったから……。

  「それでさー……――」
  「あー、それいいかもね」

――っ!! 声、トイレの外から……っ、こっちに来る……来ちゃう……。

私は途切れそうになる意識の中、トイレの外から聞こえて来た声に慌てる。
こんな姿見られるわけにはいかない。
とりあえず個室へ隠れれば、どうにかなるかも知れない。
私は立ち上がるために足に力を籠める。

「っ……や、なんでっ」

動かない。
力を籠められない。
身体が重い、頭もふらふらする、視界も揺れる……。
風邪が悪化してるのは明らか……だけど、きっとそれだけじゃない。
極度の我慢による影響、見つかるかもしれない恐怖。
近づいてくる声に私の呼吸が浅く早くなる。

「ばかっ! 何でそうなるのよっ!」

――っ!!?

急に聞こえた大きな声に私は心臓が止まるかと思った。
その声は目の前から聞こえ、同時に全身が冷たくなる。
視線を上げるとバケツを私の上で裏返す紗の姿……。

「え、ちょっと!?」
「や、やばくない? せ、先生呼んでくる!」

――……誰? 紗じゃない声も、廊下から……っ!

思考がさらなる冷水により中断される。
――バケツは転がってる……ホース? っなんで……ダメ冷たくて、呼吸っ……。

冷たい水が呼吸を妨げ、そして……。

848追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。11:2021/12/09(木) 00:52:07
――
 ――

「――……聞…える?」

誰かの呼びかける声に、重い瞼をゆっくり開く。
見えるのは見知らぬ天井と私を覗き込む保健室の先生。

「え……私……」

「良かった、熱も少しあったからどうしようかと思ったけど、とりあえず一安心かな?」

私は上体を起こす。
――えっと何が、どうしたんだっけ?

「雛倉さんが倒れたのは恐らく血管迷走神経反射って奴ね、知ってる?」

私が混乱しているのを察してか説明してくれる。

――血管迷走神経反射……確かあれだよね?

「……血を見ると倒れたり、注射で倒れたりとかする、あれですか?」

私の問いに、その通りだという先生の言葉を聞きながら次第に思い出してくる。
ギリギリまでトイレを我慢していた。
本当に限界が近い状態でトイレに辿り着いた。
それから――

……。

それから、後ろから追ってきた紗が私を掴んで、壁に押し付けた。
今にもおもらししてしまいそうな私に、満足に我慢ができない体勢にされて、そして、私は――……。

失神した理由は、体調不良、過度のストレス、そして……限界まで我慢してからのおもらし……。
さらには冷水を顔に掛けられた……迷走神経が過度に働くには十分すぎる条件下――なのかな? 多分。
すぐに目が覚めなかったのは熱のせいか、あるいは座った状態で後ろが壁だったために、頭が思ったより下がらなかったことが原因だろうか?
あとは……おもらしが信じられなくて起きたくなかったとかあるのかな?

――……いや、っていうか紗は?

周囲を見渡しても紗の姿はない。
時計を見ると6時限目の途中、授業に出てる? それとも――

「彼女なら職員室でお説教受けてるみたいよ?」

「……」

私は彷徨わせていた視線を手元の布団に落とす。
当たり前のこと……紗が説教を受けるのは当然なのだ。
私を失敗に追い込んだことじゃない、あの場で見せた紗の態度。
水を被せ、大声を出していた上、被害者に当たる私は気絶していたのだから。

……。

私はベッドから足を出す。
あの場での紗の行動は明らかに私の失敗を誤魔化す為のもの。
先生たちにも本当のことを言っていない可能性もある。
それで説教が長引いてる、あるいは親とかも呼ばれたりするのだろうか?

私は足を床につけて力を込めて立ち上がる。

――何してるんだろ私……あんなことされて放っておけば良くない?
本当のことを言ってても言ってなくてもどうでもよくない? 関わる方がどうかしてる、悪いのは紗……。
……そうなの? 本当に? 私がわざと負けたりとか不機嫌にさせておきながら謝らなかったからじゃない?
紗の自業自得、だけどそれは……私が招いた事?

……。

「教室に戻る? それとも職員室?」

立ち上がった私に答えを迫る。

「職員室……かな?」

すんなりとその答えは出た。
きっと自業自得とかそんなのどうでもよくて、本当は紗と話したいだけ。
ちゃんと謝って、ちゃんと謝らせて、また前みたいに……。

849追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。12:2021/12/09(木) 00:52:43
――
 ――
  ――

「……その後先生たちには本当のことを言って……だけど、教室では……」

私は気絶していたこともあり、休み時間まで保健室で様子を見るよう言われ、紗だけが先に教室に戻った。
私が休み時間に戻ると、紗へ向けられるクラスメイトからの態度は厳しいもので……。

言わなくちゃいけない、私のおもらしの事を……そう思ったのに。

おもらし……悔しくて恥ずかしくて、それだけじゃない。
皆の前でそれを言うことは凄く怖い事。……私は結局言えなかった。

そして、それは日を置いても言えるようなことでもなく、むしろ余計に言うのが怖くなった。
おもらしを知られることへの恐怖、それが自身のことになってようやく本当の意味で知ることが出来た。
クラスで孤立する紗の為に絶対に言った方が良いと思っているのに、それが出来なかった。

小学校の時おもらししたあの子……周囲から向けられる無慈悲な視線と言葉。
そうなる可能性を覚悟して、自ら進んで受け入れなければいけない。
それに、当時の私は言ったところで自己満足なんじゃないかとも思えた。
おもらしを隠してくれた紗の事を皆が知っても、きっと紗は英雄にはなれない。私がそうだったように……。

でもそれは言わない私を肯定するための理由探し。
結果、訳が分からなくなった私が選んだ選択は現状維持と罪悪感から逃げる事。
おもらししたことは言わない。そして、皆と距離を取り続けることで罪悪感を軽くしたかった。
結果的にきっと私は友達を失うことになる、そんな事わかっていたのに。
おかしな選択だと気が付いていたのに。

『ん……あぁ……またしたくなってきた……』

――あ……瑞希の『声』……私も話してるうちに催しちゃってるけど……。

あの時の苦い思い出から目を逸らす様に、瑞希の『声』に意識を向け、同時に視線も向ける。
すると、瑞希とすぐに目が合い、気まずそうにもじもじしてる……。

「瑞希ちゃんトイレでしょ? 黙ってるとまたおもらししちゃうよ?」

そう指摘されて一気に顔を赤く染めて、悔しそうな顔をした後観念したように口を開く。

「うん……行ってくる」

そう言ってベッドから降りて思ったより確りした足取りで保健室を出ていく。

「……紗、ごめんね……」

今私は改めて何について謝ったのだろう?
勝負で手を抜いたこと?
なかなか謝れなかったこと?
教室で本当のことを言えなかったこと?
あるいは、今まで向き合わなかったことかもしれない。

「必要ないでしょー、そんなの。
勝負で手を抜いたことへの過剰な罰がおもらししてもらう事
おもらしをさせた私への罰がクラスでの孤立、まぁもともと孤立気味だったから罰としては軽すぎたかもね」

そういう考え方は実に紗らしい。

「そして、綾ちゃんは最後に私を庇えなかった罰として自ら孤立を選んだ。
私と違って友達の多かった綾ちゃんがするには重すぎた罰だと思うけどなぁー」

だから謝る必要なんてない。
でも、違う……私のは罪悪感から逃げたかっただけの行動。
むしろ私の中では楽な方へ逃げたつもりだったのだから。

結局、私のその選択は沢山の人に迷惑を掛ける結果になった。
紗だけじゃない、瑞希をはじめとしたクラスの友達だった人。
それに……斎さんも……。

……。

「……とにかく、こうしてまた紗と話せて良かった……」

「わー、嬉しい事言ってくれるー」
「わ、ちょっと!」

急に抱き着いてくる紗に驚きつつ、だけど、抵抗はしない……。
紗の行動のどこからどこまでが演技なのかはわからない。
何考えてるのか全然わからない。
不気味に思えたことも一度や二度じゃない。

――だけど紗は……友達だから……。

850追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。-EX- 1:2021/12/09(木) 00:55:07
**********

「ただい――っ! ちょっと何抱き付いてるの!? 纏衣さん離れてっ!」

トイレから帰ってきて扉を開けると、纏衣さんが綾に抱き着いていて……。
私がトイレに行っている間にどうしてこんな状況になったのか。

「えー、綾ちゃん、もっと私たちの関係を見せつけてあげよー」
「……いやいや、私そろそろ約束があって……」

そう言って綾は纏衣さんから離れるが、綾の顔は少し赤くて……満更でもない感じで。

「……それじゃ、もう行くね……瑞希ももうしばらく保健室で休んでてよ?」

私は綾が保健室を出ていくのを見送って、ゆっくりとした足取りでベッドに戻り
座るか寝るか悩んで、若干の気怠さが残る身体を気遣いベッドに潜り込む。

「わー寝ちゃうんだー」

「悪い? もう後夜祭まで眠りたい……」

私は寝返りを打って、壁の方に身体を向ける。
怠さもそうだけど疲れも凄い。

<ガタッ>

後ろで紗が椅子に座るのを気配で感じる。

……。

「……さっきの話、勝負で綾が手を抜いたのに怒ってあんなことしたって……違うよね?」

「えー、わかっちゃうー?」

綾は本当にそう思っていた見たいだけど、何となく私はそう思えなかった。
纏衣さんは私に、勝負に関しては相手が本気であることが重要とか言ってたし、それはきっと嘘ではないのだろうけど……それでもどこか違和感を感じた。

「そう、それが私を遠くから見ることが出来ていたあなたの認識。
綾ちゃんにはそう思われないような行動をしてきたから、まずわからない」

本当になんなんだろうこの人は。
勝負で負け込んでいて機嫌が悪かったって言うのも違う気がしたし
怒っていたのが嘘だとするなら、綾のトイレを邪魔した本当の理由もわからない。

綾と接する纏衣さんは私と接するときと大きく違わない。
だけど、僅かに感じる印象の違い……私が感じてるそれを綾には見せないようにしてる。
むしろ私には気が付くようにわざと見せている気さえする。

「私と綾ちゃんの勝負なんだよ、外野なんて知った事じゃない」

私が考え込み言葉を発しないでいると
少し語調を強めたような声が聞こえ、私は寝返り纏衣さんの顔を見る。

「全部が計算されてたことじゃないよ、だけど……綾ちゃんが最後に周りとの接触を絶っちゃうのはちょっと出来過ぎだったよねー」

全然表情を変えていなかった纏衣さんは、不気味な事を言い出す。
まるで、多くが望んだとおりに話が進んだみたいに……。

「どうして、わざわざそんなことを私に話すの? 私、綾に言うかもしれないのに……」

「言わないでしょ?」

まるで当たり前のことのように返される。
一体どうしてそんなことがわかる?

「不思議そうな顔してるね?」

そう言ってベッドに椅子を近付けて私の顔へ手を伸ばす。

851追憶6「雛倉 綾菜」と勝負の行方。-EX- 2:2021/12/09(木) 00:55:52
「ちょ、ちょっとなんなの!?」
「撫でてあげるんだよ?」

髪と頬を撫でる手……私は身構えつつもそれを受け入れてしまう。

「瑞希ちゃんは甘えん坊だよねー、私に優しくされて嬉しかったでしょ?」
「っ……ちが――」
「最近、綾ちゃんにも優しくされたんじゃない? その時も嬉しかったでしょ?」

私は否定するために口を開きかけて、それを閉じる。
……纏衣さんの時は正直よくわからない。
だけど、綾に見られた時……どうだったんだろう。
あの雨の日、また話せたことを嬉しくは思った、シャワーを浴びるために家に呼ばれたことも嬉しかった。
それはようするに……嬉しかったということでいいの?

――いや、そんな事じゃなくて……。

「結局なんなの? 何がしたいの?」

纏衣さんは私の言葉に手を引っ込める。
不覚にもほんの少しそれを名残惜しく思ってしまったことに自分でショックを受ける。

「何も……あの頃と違って私も成長したからねー」

何が成長したのか……。
いや、こうして私と話している事……つまり綾以外との関りを持つこと?

「綾ちゃんが誰とも話さなくなって私はとっても嬉しかった、清々した。
私の転校もあったし、これで綾ちゃんは謝ることも出来ず、罪悪感から一生一人……とまでは行かなくても
他者他の間に壁を作って生きていくんだと思うと幸せだったなぁ」

私は目を見開く。
綾が話したさっきの話の裏で纏衣さんはこんなことを考えて行動していた。
転校して会えなくなる悲しみよりも、綾が誰かと話をしてることの方が耐えられないって事?
狂ってる……この人はとても歪んでる……。

「どう? 私の話を聞いて綾ちゃんに逢わせたこと後悔したー?」

……。

「し、してない……成長、したんでしょ?」

もしかしたらそう言わせたいのかなってどこかで思った。
だけど、そう思っても……私は纏衣さんを信じてみたいと思った。
歪んでいた……いや、きっと今もこの人は歪んでる。
それでも、確かにこの人は私の気持ちを汲んで譲歩した。
綾に会うことを目的としてここまで来たのに、事情も何も分かってない私のわがままに付き合ってくれた。

「……ありがとう、瑞希ちゃんは優しいね」

「べ、別に……」

纏衣さんは立ち上がる。
もう、どこかに行ってしまうのだろうか?

「そんな名残惜しそうな顔されてもねー」

「っ……してない……」

――そ、そんな顔してた? してないよね? 揺さぶってきてるだけだよね?

それにしても私、本当にどうしたんだろう……。
流石に気を許しすぎな気がする。ほんの数時間前まで大っ嫌いだったはずなのに。
今は綾に会うことも許可してしまってる。こんな危ない人なのに。
私のこの心の動きすら、もしかして手の平の上なんじゃ……。

「すぐ戻ってくるよ、トイレに行きたいだけだしー」

――あ……そりゃそうだよね、私より多く飲んでたんだから……。
私も気が付いたらそれなりにしたかったわけだし、一緒位に済ませた纏衣さんも話の途中か、私がトイレに行ってる間にしたくなってたんだよね。

扉の前で小さく手を振ってから出ていく纏衣さんを、私は寝ながら見送る。
戻ってきてくれる……一人で心細いとはいえ、ちょっと安心してしまったことが悔しい。

私は嘆息してから目を瞑る。
今はまだ歪で不安定な関係かもしれない……だけど、私と綾と纏衣さんと、三人で会ったりする日も来るかもしれない。
そんな未来あるだなんて思ってもみなかった。

――ちょっと……楽しみ――いや、まぁ不安もあるけど……。


おわり

852名無しさんのおもらし:2021/12/09(木) 19:43:27
>>851 更新おつかれさまです!
待ってました。やはりたまに綾が失敗するのがいいです!今回も最高でした!

853名無しさんのおもらし:2021/12/10(金) 15:14:09
綾菜ちゃん中学生時代から800ml以上我慢出来てたのか

854名無しさんのおもらし:2021/12/12(日) 02:19:26
読み返すと話がつながっていて、面白い。
なるほどー。
次回作にわくわくしています。

855名無しさんのおもらし:2021/12/19(日) 00:50:06
今回も更新ありがとうございます。
中学時代の振る舞いが変わったきっかけが明らかになる回でしたね。
最初は一匹狼の雛さん (自称ではないですが) でしたが、最近、色々な人と繋がってる感じしてきましたよね。

857名無しさんのおもらし:2022/04/07(木) 23:25:23
あげ

858事例の人:2022/06/10(金) 23:51:01
>>852-855
感想などありがとうございます。

実は……此処での投稿最後にするかもです。
しばらく後になると思いますが以降というか加筆修正版をPIXIVで順次行うことになると思います。(その前に掲示板管理者さんへPIXIV掲載許可を得るつもりです)
掲示板小説はここでの活動以外でも長くお世話になってきたので思い入れはありましたが、色々思うところもあったので。
一応今回で文化祭編は完結ですので、お楽しみいただければ幸いです。

859事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。1:2022/06/10(金) 23:54:09
「そんじゃ、私はお暇するぞ」

私と弥生ちゃんは雛乃の別れの言葉に小さく手を振って見送る。
一体文化祭に何しに来たのか……弥生ちゃんを堪能しに来たと言っても過言ではない気がする。

「はぁ……」

隣で弥生ちゃんが深くため息を零す。
トイレまで間に合わなかったこと、濡れタオルで身体を拭いて着替えたとは言えシャワーを浴びたわけじゃないので若干居心地が悪いこと。
それと、……雛乃との時間が終わってしまったことも当然あると思う。

――……普通に、一緒に回りたかったんじゃないかな……?
……ったく、用事があるからって言ってたけど、大した用事とも思えないし、もう少し弥生ちゃんと居てあげたらいいのに。

……。

「……どうする? さっきのバルーンアートのところに行く?」

「え、あ……いえ、もう少しお手洗いの近くで、時間潰そうかなって思ってます」

――……なるほど、二度目、三度目の尿意に備えておくわけか。

飲んだ量がそれなりに多かったんだから当然一度で落ち着くわけがない。
しかも極度の我慢の後ならなおさらトイレが近くにないと不安になって当然。賢明な判断だと思う。
だけどそうなると、私もここに残るべきか、あるいは一人にしてあげるべきか。
どっちの方が弥生ちゃんのために気を遣ったことになるのか……。

「あ……私の事は気にしないでください、一応少しは回れましたし……
それより真弓さんが雛さんと一緒に回れてないと嘆いてましたからそっちに行ってほしいです」

私の迷いを察してか、あるいは一人にしてほしいということを遠回しに言ったのか。
どちらにしてもまゆと文化祭を回れていないのは事実、正直私もまゆとの時間は作りたい。
改まって話したいこともあるらしいし。

――……でも……なんだか気を遣うつもりが遣われた感じ。

「……うん、わかった。だけど、何かあったらすぐ電話してね?」

私の言葉に小さく頷き、少し困ったような笑顔を見せてくれる。
別の感情で強く意識されていなかったおもらし……。
心が落ち着いてきて冷静になればなるほど、おもらししたことを意識してしまうのだと思う。

本当は三人……いや、瑞希も入れて四人で回る時間も欲しかったけど、本当色々とうまくいかない。
私は階段を下りる。とりあえずトイレに行きたいのだけど、三階のトイレは弥生ちゃんが使うだろうしトイレを出たとき鉢合わせるのも気まずい。
二階の更衣室前のトイレ……と考えたが、距離的に言えばまだ弥生ちゃんと近い。
鉢合わせる可能性はほぼないはずなのに、なんとなく気が進まない。

――……はぁ、万が一鉢合わせたところで、そんなに気にするようなことでもないはずでしょ?

そう心の中で思っているのに、そのまま身体は一階へ向かう。
保健室へ視線だけを一瞬向けるが歩みを止めず購買のトイレを目指す。

860事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。2:2022/06/10(金) 23:54:49
――……結局結構我慢しちゃった……今日はそんなつもりなかったんだけどなぁ……。

もう少しでトイレの前――

「っ!」
「あっ!? あやっ――…ひ、雛倉……さん」

トイレに進路を変える直前、購買から出てきた霜ちゃんにバッタリ出くわす。
そして、狼さんとか銀狼とか呼ばず苗字にさん付けなことに意外と動揺してる私……もともとの呼び方も嬉しくなかったはずなのに。

「……霜ちゃん……えっと、元気?」

とても不器用さが前面に出た挨拶……。
相手は他人行儀な呼び方なのに対して私は愛称で呼ぶとても歪なやり取り。

「元気よ、それじゃ、さような――」「待って待って!」

私は手を掴んで引き留める。
それなのに構わず歩き出そうとする霜ちゃん。

「あ、雛倉さん、鞠亜となにしてるの?」

その声に霜ちゃんが足を止めるのを感じて私は手を離す。
私はそのまま声がした方に向き直る。隣では霜ちゃんの大きい嘆息が聞こえてくる。

「はぁ―……別に…何もしてないしされてない」

声を掛けてきた山寺さんに、不機嫌そうにそう言って私とは反対の方向へ顔を向ける。
一体何なんだろうこの態度――……やっぱり霜ちゃん呼びが気に入らないとか?

「えぇ? さっきまでご機嫌だったのに……」
「何よご機嫌って! ボクはいつもこんなでしょ!」

――……そっか、機嫌よかったんだ、それなのに急にこんな態度って……わ、私…とてつもなく嫌われているのでは?

「お、あやりーん! それと山寺さんにまりりん!」

良く知った底抜けに明るい声とともに現れたのはまゆ。
山寺さんは挨拶を返し、霜ちゃんは声には出さず手で応答する。

「どったのー? 皆一緒に回る感じ?」
「別に――」「あ、良いねそれ!」「ちょ、ちょっと、ひとみ!?」

「……」

――……えっと何? 四人で回れる? 私にとってはうれしい限りではあるけど……霜ちゃんは……。

「ボク、一緒に回るつもりなんて――」「ご、ごめん……霜ちゃ――霜澤さんだって都合…とか、あるよ……ね?」

霜ちゃんが断りやすいように助言した――つもりだった。
だけど、想像以上に声が小さくなってしまって……暗い感じで……これじゃ、むしろ断り辛くしてる。

そして私の言葉にまゆと山寺さんが黙ってしまい――

「あぁもうっ! いいよ、一緒に回るよ!」

結果、決定権を嫌な感じに託された霜ちゃんは仕方ないと言った具合に折れた。
私は顔が熱くなる――……私、駄々こねたみたいだ……。

「……ごめん、そういうつもりじゃ……」「いいってもう! はぁ……」

こうして私たち四人は一緒に回ることになった。

861事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。3:2022/06/10(金) 23:55:50
――
 ――

「っしゃ!! 48点! 暫定二位!」

射的、輪投げなど色々な遊戯が用意された教室で、まゆが輪投げで高得点を叩き出す。
それに負けじと山寺さんが身を乗り出して輪投げを始める。
ちなみに一番手だった私は46点、二番手の霜ちゃんは50点満点。

……。

「(ね、ねぇ……なんて呼べばいい?)」

私は輪投げに夢中になってる二人に気が付かれないように、霜ちゃんの隣に行って問いかける。
呼び方だけの問題じゃないかもしれないが、無理に呼び方を押し通した感じになっていたのは事実だし。

「(はぁ…別に……まぁ、でもまだ名前で呼んでもらえた方がマシ……かな?)」

「(……え、えっと…鞠亜…ちゃん? いや、さんかな?)」
「(っ! ……呼び捨てで……もう一回)」

呼び捨て……別に友達という関係なら変ではないのだけど。
急に呼び捨てで呼べと言われると――……えっと、ちょっと緊張しちゃうんだけど……。

「(……んんっ………ま、鞠亜……)」
「(っ!! あ、……ご、ごめんダメ、やっぱり今のなし……苗字にして)」

――えぇ……というか何だろうその反応、あっち向いちゃったから表情は見えないけど……。
にしても……結局苗字とか、全然仲が進展しない。今の鞠亜って呼び方結構しっくり来たんだけどなぁ。

「あぁ! 46点だぁー、綾ちゃんと一緒かー」

山寺さん――ひとみちゃんの輪投げの結果が出て私と同じ46点で悔しがってる。
ちなみに呼び方はここに来る道中の話の中、いつまでも他人行儀な呼び方をまゆに見つかり改めることになった。
改めてまとめると、まゆはあやりん、まりりん、ひとみちゃん――――ひとりんも候補に上がったがボッチみたいなイメージがあるので止めになった―――。
ひとみちゃんは、綾ちゃん、真弓ちゃん、鞠亜。
霜澤さんは、雛倉さん、真弓、ひとみ。
そして私はまゆ、霜澤さん、ひとみちゃん。

……。

――……いやいや、なんで私と霜澤さんの間だけ妙に厚い壁があるの?

私は誰にも聞こえないように小さく嘆息する。
皆、得点に応じた景品――――駄菓子と飲み物が大半――――を受け取り廊下に出る。

「どーする? もうお昼だけど流石に駄菓子でお昼済ませるわけにも行かないし」
「んー、軽食があるのは綾ちゃんと真弓ちゃんとこのメイド喫茶、プールでしてるバカンスカフェにもあるのかな?」
「その二つ以外でボクが知ってるのは中庭と昇降口の外にある出店系かな」

各々が候補を出し終えて私の方を見る――……なんで私……候補出さなかったから、決めるくらいしろってこと?

「……えっと、中庭で適当に調達しようか? バカンスカフェは飲み物やフルーツが中心って椛さ――あ、副会長の人が言っていたし」

私の意見に賛同してくれたらしく、皆で渡り廊下から中庭に降りる。
ちなみにメイド喫茶は銀髪メイドがSNSで拡散されてるので行きたくない。

――……私はまたサンドウィッチでいいかな? 割と手ごろな値段で具材も選べるし。

「私は4人分の飲み物調達してくるねー、あやりん私の分のサンドウィッチも適当におねがーい!」

そう言ってまゆは走って飲み物を探しに行った。
周りに視線を向けると、ひとみちゃんはたこ焼きを、霜澤さんはハンバーガーとトルネードポテトをそれぞれ買いに行ったみたい。
私もさっさと買って、どこかのベンチにでも座ろう。

862事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。4:2022/06/10(金) 23:57:07
サンドウィッチを買って、私は4人くらいが座れるベンチを見つけ場所取りも兼ねて真ん中くらいに腰を下ろす。

――っと……そういえばトイレ、行きそびれたままだなぁ……。

それなりにしたかったはずだけど、色々考えることが多くてあまり気にならなくなっていたのだが
周りに誰もおらず、腰を下ろして一息つくと、結構溜まっていることを改めて自覚する。

――……皆来て食べ終えたら、トイレに行かないと……っ。

尿意の波が来て、ベンチの下で足を絡める。
波はやっぱり高い。昨日、我慢し過ぎた影響……。

高くはあるが短い波を越えた頃、ひとみちゃん、霜澤さんが私を見つけこちらに向かってくる。

「いいとこ見つけたねー、丁度4人座れそう!」

そう言ってひとみちゃんは端の席に座る。

「え、ちょっ!」

霜澤さんが抗議の声を上げる。
どうやら端に座りたかったらしい。
理由は――

――……私だよね? ……。

私は気を使い反対側のベンチの端へ移動する。
これで、私と霜澤さんの間にまゆが座る並びになる。

「……」

私の行動を見ていた霜澤さんが何とも言えない気まずそうな顔をする。
抗議の声を上げたことで私が気を使い移動したのを理解してる。

そんな視線から逃げるように私は手元のサンドウィッチに視線を落とす。

――……どうしてこうなったんだろう? こんな関係になりたかったわけじゃ……。

「おー、みんな早いっ! 見てよこれ、タピオカミルクティー! 旬が微妙に過ぎちゃってる感が逆にいいよね!」

何が逆に良いのか……。
まゆは高いテンションのまま飲み物をまずひとみちゃんへ、次に霜澤さんへ。
そして何を思ったのかまだ座っていなかった霜澤さんの前、つまりひとみちゃんの横の席に勢いよく座る。

「っ!?」

「はいこれはあやりんの分ね! サンドウィッチちょーだい!」

手を伸ばしてミルクティーを差し出してくるまゆに私は手を伸ばしてそれを受け取り、まゆに買ったサンドウィッチを代わりに渡す。
そのやり取りを立ったまま見ている霜澤さん……。

「まりりんどうしたの? 座ろうよ」

まゆは空いている席を小さく叩いて、霜澤さんに座るように促す。
霜澤さんは難しい顔でまゆを少し睨んで……だけど、それを押し殺すようにして小さく嘆息する。
私を一瞥して黙って私とまゆの間に腰を下ろす。

――……これ、ひとみちゃんもまゆもわざとしてる?

私と霜澤さんの関係が微妙なことに気が付いて、接触の機会を増やしてくれているように感じる。
示し合わせているって感じではないから、ほとんどアドリブなんだろうけど。
霜澤さんもそれに気が付いているのだと思う。

863事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。5:2022/06/10(金) 23:58:40
――それにしても、このタピオカミルクティー……悠月さんの飲んでた奴だよね……。

タピオカを抜いても500ml程度ある大容量の物。
流石に今の状態でこれを飲み干すのは辛い。
すぐにトイレに行ったとしても、再度催すのは目に見えている。
かと言って飲み残すとなると、昼食後トイレに行くとき邪魔になる。
持ってもらうか、再度催すことを承知で飲み干してからトイレに行くか。

――まぁ、半分くらい飲んで、持ってもらうのが無難か……。

皆同じものを飲んでいるんだから、この後絶対『声』を聞くことが出来る。
済ませた後、尿意がありませんでは『声』を聞くことが出来ない。

結局、今日も『声』を聞くために尿意を我慢しようとしてる自分に少し呆れる。
普通に回る予定だったのに――……でも、聞ける可能性があるんだからしょうがないよね。

不意に隣からトルネードポテトが差し出される。

「ひ……一口…食べる?」

私に視線は向けず、霜澤さんがそう言ってくれる。
まゆやひとみちゃんの思惑を察して付き合ってくれたのか、あるいは……。

「……うん、一口貰う……」

私はそう言って霜澤さんの手に自分の手を重ねて、自身の口へ誘導する。
ただ、一口貰ってるだけ、食べてるだけ――……なのに、なんか、こう……恥ずかしいんだけどっ!

「ん……美味しい」
「で、でしょ? こういうのボク好きなんだよね」

私の感想に付き合ってくれてはいるが、結局視線はこっちには向けてくれない。
それは多分、まゆとひとみちゃんを納得させるためだけの行動で……。
私も視線を逸らす……私と霜澤さんとの温度差があり過ぎて、辛い。

結局霜澤さんとのやり取りは以降続かず。
食事を済ませつつ、談笑して過ごす。
談笑と言っても、私はまゆが時折振ってくれる話題に参加したり、相槌を打つ程度。
私とまゆの間で、霜澤さんが居心地悪そうにしているのがちょっと気の毒で……。

『はぁ……あ、トイレ……まぁ、ここを離れる良い口実ではあるけど……』

――っ……霜澤さんの『声』……。

今、尿意を催したという感じの『声』。
それを理由に、今の居心地の悪い席を立とうとしている。
私自身、それなりにしたい。霜澤さんには悪いけど、トイレに立つなら便乗しよう。

……。
………。

――……? 全然行こうとしない……。

視線を少しだけ霜澤さんへ向けると手でタピオカミルクティーの容器を転がしていて
居心地の悪さを感じているのがわかる。――……だったらなぜ席を立たない?

「っ……な、なに?」

私の視線に気が付いた霜澤さんが不機嫌そうに問いかける。
私はすぐに視線を逸らして「……別に、なんでも……」と適当な返事で誤魔化す。
そんな私に呆れたのか小さく嘆息されたのがわかる。

『ったく、こんな空気でトイレ行ったら、なんか負けたみたいで腹立つ……もっと自然なタイミングで行かないと……』

――あ……そういうことか。

『声』が聞こえていない皆にとっては、トイレに立つ行為が、尿意によるものなのか、居心地の悪さに耐えかねてなのか判断できない。
そして、霜澤さんは今、居心地の悪さを感じてはいるものの、その居心地の悪さはまゆやひとみちゃんが善意からとは言え故意に作ったもの。
それから逃げ出すことは、負けた気になるというのはなんとなくわかる。

――……そういえば、霜澤さんって勝負事好きそうなイメージだなぁ、体育祭の時も凄く楽しそうだったし……。

ついさっきの輪投げもそう。
いつも本気で勝ちに来てる感じがする。
そこに実力も伴ってるから凄い。成績も朝見さんほどじゃないけどいつも上位――――大体私より一つか二つ上――――みたいだし。

――……まぁ、だからってトイレくらい行こうよって思うけど。
私から声を掛けて一緒に行けば負けたみたいに思わないかな?
それとも、私が誘うこと自体が負けたみたいに感じてしまうかな?

……と言うか、一緒にトイレにってどう声を掛ければいいのか……。
普通にトイレに立てばついてきてくれるといいんだけど、そうはならない気がする。

864事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。6:2022/06/10(金) 23:59:43
「あららー? 鞠亜様じゃないですか? ご学友と仲睦まじい様子で何よりです」

――っ!

「っ……如月、何の用?」

「いやいや、用事だなんてー、ただ文化祭へお嬢様と遊びに来てるだけですよ?」

如月さんはそう言うが、肝心の「お嬢様」である水無子ちゃんは見当たらない。
どこかに置いてきてるのか、ただの出まかせだったのか。

「んー? よく見ると変わった席順ですね、瞳様の隣が鞠亜様になりそうなものですが……」
「っ! た、たまたま、あ――ひ、雛倉さんと隣になっただけだからっ!」

動揺し過ぎ。私の隣っていうか、位置的にまゆも隣だし。
……それと、この人にそういう態度見せるの良くないって霜澤さんならよく知ってるでしょうに……。

「雛倉……さん? 呼び方が変わってますけど、もしかして喧嘩中ですか?」

――……ほら、なんか興味持ち始めたし……ニコニコとした顔で喧嘩中ですか? とか、絶対楽しんでるでしょ。

そして、私はその答えを持ち合わせていない。
喧嘩と言うわけではないと思うが、それならばこの今の状況は何なのか……私にはわからない。
霜澤さんも答えに困ったのか視線を私と如月さんから逸らして黙っている。

「よくわかりませんけど、なんだかギクシャクしちゃってて……」

誰も答えないでいるとひとみちゃんが代わりに答える。
やり取りからひとみちゃんと如月さんは一応顔見知りのような印象を受ける。
そして隣の霜澤さんは視線をひとみちゃんの方へ向けていて――……余計な事言うなっ的な視線かな?

「なるほどねー、雛倉様は困っている感じがしますし、鞠亜様は何やら余裕なさそうな感じ……原因は鞠亜様の方にありそうですね」

――……そ、そうなのかな? なんだかきっかけは明らかに私な気がするけど……。

「まぁ、なんにしても二人の問題なのは間違いないわけですし、それで二人のご学友にも迷惑が掛かってます。
ちょっとしたお仕置きをしてあげますので、二人とも目を瞑っていただけますか?」

そう言って如月さんは私と霜澤さんにニコニコした笑顔を見せる。
隣を見ると凄く嫌そうな顔をした霜澤さんが渋々と言った感じで目を瞑る。
目を瞑るという行為から考えて、デコピンかそれに近い何かだろうとは想像は付くわけで……。
私もいつ痛みが来てもいいように身構えつつ目を閉じる。

「ではそのままで、雛倉様は右手を、鞠亜様は左手を前に出してください」

――……? デコピンじゃない? 手と言うことはしっぺってこと?

だけどどうして私は右手で、霜澤さんは左手なのか。
そして、これって目を瞑る必要があったの?

「では行きますよ」

何が来るかよくわからず身構える。

<ジャラジャラ>

――……何の音? 鎖のような…金属音……。

<カチャン>

その金属音は、私の手首に何かが当たった後、手首を巻くようにしてから聞こえた。
そしてすぐ隣でも同じような音が……。

865事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。7:2022/06/11(土) 00:00:49
――っ!

私はそれが何か察して目を開きすぐに手を自身へ引き寄せる。
だけど二つ目の音が聞こえた時点で手遅れなのはわかっていたこと。

「いたっ、ちょ……え?」

私が引いた手に霜澤さんの手も引かれて、痛みから声を上げる。
そして、目を開いて霜澤さんも困惑の声と表情。

私たちの手首には、手錠がされていた。

「二人にはしばらく離れられない呪いのブレスレットをプレゼントします」

……。

私は手錠を見たまま固まる。
とても外せそうにない本格的な手錠。決してブレスレットなどというおしゃれアイテムではない。

「ちなみに開錠するための鍵は水無子お嬢様がお持ちですので、お二人でお手てを繋いで仲良くお嬢様を見つけてくださいませ」

――……え? ……え??

「うわぁ……私たちよりめっちゃ強引な方法……」

まゆが言葉を漏らす……。そして隣のひとみちゃんに「水無子ちゃんって誰?」とか言ってるのが聞こえる。
――……ちょっと、え? 他人事なの? もうちょっとこう……ないの?

……。

つまり、この手錠を外すには水無子ちゃんを見つけて鍵を貰う必要があるってこと。
そして手錠のせいで別れて探すこともできない。
一緒に校内を……文化祭を回るしかない。
手錠を付けて歩き回るとか周りの視線とかで苦行でしかない。

「ちょっ! ふざけてるの如月! あぁ、もうっ!」

そう言って霜澤さんは鞄から携帯を取り出す。

――……そっか! 電話で連絡を取れば、すぐに水無子ちゃんが見つけられる!

<〜〜〜♪>
「残念ですが、水無子お嬢様の携帯は修理中でして、今私のサブ携帯を持たせておりますので」

如月さんはそう言いながら、着信音の鳴る携帯を取り出して電源を切る。
――……どう考えてもその携帯水無子ちゃんのだよね? 全然修理出してないじゃん!

「っ……」

霜澤さんは座りながら如月さんの顔を睨みつける。
本当に怒ってる……迷惑してる……。

――……そう、だよね……。

迷惑なことだし怒って当然なこと、それなのに……。
私、落ち込んでる? ……霜澤さんが私をそれほどまでに拒絶したいのだと感じて……。
気持ち悪い……胸が痛い……苦しい……。
あれ? ……私、こんなに、霜澤さんの事気に入っていたっけ?
確かに霜澤さんは昔話したことがある紫萌ちゃんだった。でもたったそれだけと言えばそれだけ。
あの病室での絡みなんて一日数時間程度で日数も僅かで――……えぇ……私、なんでこんなに霜澤さんの事好いてるの?

866事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。8:2022/06/11(土) 00:02:26
――っ! え……何?

ふと、右手に鎖が揺れる感覚を一瞬感じる。

視線を手に向ける。
霜澤さんの手は今は動いていない。
さっき少しだけ動かした? なんで?

「如月、後悔しても遅いからっ」

霜澤さんのその言葉と同時に、如月さんの鞄の中で携帯が鳴る。
直後、また右手に鎖が揺れる感覚……。

――合図? 携帯……っ、もしかして、奪うつもり?

今、如月さんの携帯が鳴っているのは恐らく霜澤さんが電話したから。
携帯の位置を把握して、それを奪う。その携帯の中には必ず水無子ちゃんが持つ携帯の番号が登録されているはず。
ロックを掛けられている可能性も高い。それでも霜澤さんはやるつもりらしい。

如月さんが鞄に手を入れ、携帯を確認する素振りを見せる。
同時に霜澤さんが立ち上がるために足と手に力を入れたのがわかった。

――だけど……こっちは座ってるから当然この一手は遅れる……。
手錠をされている以上、はじめの一手を躱されてしまえば一人と言う身軽な立場の如月さんから携帯を奪うのはほぼ不可能……。
だから霜澤さんの一手で必ず奪う必要がある。

相手の初めの一手、離れる動作を封じる手が必要……。
さっきから私にしてる霜澤さんからの合図の意図は――

私は霜澤さんが行動を始める直前、座ったまま足を延ばす。
如月さんの足を越えたところで、つま先を横に倒す。
同時に立ち上がった霜澤さんが動きやすいよう、右手を前に出す。

如月さんの視線は霜澤さんに向けられていて、足元を見ていない。
下がろうとして如月さんの足が私の足に当たる手応え。

「っ!」

行けると思った時、目の前に布が舞う。
スカートの生地……足を引っかけたせいで派手に転んだのだと一瞬思い、焦った。

――あっ……が、ガーターベルト……じゃ、なくて……あれ、ちゃんと立ってる?

舞い上がったスカートの下ではちゃんと二本の足があって……転んでなどいない。
確かに手応えはあったが、バランスまで崩したわけじゃない。
もう少し視線を上げると、霜澤さんがスカートの生地に飛び込む形になっていて……。

――えぇ……うそ? 読まれてたってこと? 目くらましのためにスカートを……え、何? 化け物なのこの人?

スカートに飛び込んだ霜澤さんは如月さんの肘による鉄槌を受けて地面に叩き落され、同時に倒れた手に引かれて私もベンチから前のめりに倒れて地面に手を突く。

「えっと、後悔が――……なんて言いましたっけ?」

――……え、何この人、ニコニコしてる……怖い。

「え、え? 何が起きたんですか!?」
「あー、うん……メイドって強いよね」

まゆとひとみちゃんの呆気に取られた感想……。そしてまゆに賛同、メイドって強い。
何かよくわからないけど、完璧な連携が出来ていた気がしたのに、全く歯が立たず、二人して地面に手と膝をついてる……。

867事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。9:2022/06/11(土) 00:03:16
後頭部を押さえて立ち上がる霜澤さんを抱えてベンチに座る。

「うぅ、ありがと、綾……あっ………ひ、雛倉さん……」

「綾」と呼ばれ一瞬ドキッとしてしまう。
そして同時に違和感……。病室での紫萌ちゃんとの会話の時、「綾」なんて呼ばれ方してなかったはず……。
確か夏祭りの時も私の事を「綾」って呼んでいた覚えがあるけど――

「ふふっ、いい加減素直になられたらいかがですか?」

――……?

如月さんの今の言葉は恐らく霜澤さんに向けられたもの。
どういう意味か分からず、視線を霜澤さんへ向けるが右手で後頭部を押さえながら何やら難しい顔をしてる。
それと同時にさらに視線の先……。

――……えっとまゆ? 何今の表情……?

一瞬しか見せなかったが、霜澤さんを見ていた表情が凄く温かい表情に見えた。
私の視線に気が付いたのかすぐに苦笑いをこちらに向けてきたけど……。

「とりあえず、鍵は水無子お嬢様ですから、……ふふっ、文化祭楽しんでくださいませ」

そう言い残して、如月さんはスカートを翻して校舎の中へ姿を消す。

……。
…………。
………………。

――……え、何これ…本当に手錠して校内歩くの?

「あー、どんまいあやりん」

他人事のようにまゆがいう。どんまいとか久しぶりに聞いた。
額に右手を当てようとして、鎖が音を立てたので止めた。

「……えっと、まゆとひとみちゃんも水無子ちゃん探すの手伝ってくれる?」

まさかこのまま後夜祭まで、あるいはそれ以降もずっとこんな感じとか――っ……え、待って…………トイレは?

……。

――……え、嘘……不味くない? この状況……。ミルクティー半分くらい飲んじゃったんだけど……。

このベンチに座った時には、既に結構我慢している状態だった。
それに加えて、前日の極度の我慢のせいで、たまに来る尿意の波がとてつもなく強烈で……。

「あー、うん、良いよ。流石にその格好で歩き回るのは恥ずかしいだろうし、ここで二人で待ってる?」

――……待つ? いや、待っていられる? ……私そんなに持たないんじゃない? 多分だけどもう6割超えてるんだけど。

「あ……いや、手分けして探そう、これ恥ずかしいけどボクは雛倉さんと探すから」『しまった…トイレ行ってない……ちょっとでも早く水無子を探さないと……』

私と同じように尿意を感じている霜澤さんは、手分けして探すことを提案する。
霜澤さんのミルクティーを見るとすでに8割なくなっていて、飲んだ量は私よりも遥かに多い。
嬉しいこと? いや、全然そんなことない。
明らかに今切羽詰まってるのは私の方だし、楽しみよりも不安のが圧倒的で本当に焦る、何ならすでに動悸が凄い。
考えたくないけど……このまま手錠を外せないまま限界になったら?
この距離でおもらしを見られる? もしくは手錠つけてるのにトイレとか――……な、なんかベタな話だけど、当事者とか絶対嫌なんだけどっ!

「おっけー、私たちは教室棟の方見るから……あーと、水無子ちゃんってどんな感じの子?」

まゆの質問にひとみちゃんと霜澤さんが私を見る。
当然一番わかりやすい見た目の特徴は――

「「「銀髪」」」

「お、おう……銀髪ね」

まゆとひとみちゃんはベンチから立つとこちらに手を振りながら教室棟の方へ歩いて行った。

868事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。10:2022/06/11(土) 00:05:43
「……どうする?」

漠然とした質問。
どこから探すのか、手錠してるけどどうやって歩くのか……。

「布を被せて……いや、余計に目立つ? 並ばず前後で……それは連行してるみたいか」

霜澤さんは私の問いかけを「手錠をしたままどう歩くのか」と言う意味と捉えたらしい。
合理的で不自然に見えない方法……。

「……て、手を…繋いで、身体を寄せて、身体でなるべく手錠を隠す……とか?」

――…………え、何言ってるの私? いや、一番合理的だけど……て、手を繋ぐ? は? 手を?
……身体を寄せるって何? 嫌いな人から密着されるとか絶対拒否されるよね? 拒否……い、言わなきゃよかった……。

「うぅ……そ、それで行こう……死ぬほど嫌だけど」『トイレの事もあるし、もたもたしてるわけにはいかないし、これは…仕方がないこと……』

――……死ぬほど嫌……そんなに? いや、決まり文句なのはわかるけど……。嫌……死ぬほど嫌……か……。

正直言ってとてつもなくショック。……落ち込む。
それでも、手錠が見えるように歩くことで注目を浴びるよりマシだと思ってくれたのは救いか。

「……い、いこっか?」

とりあえずベンチから立ち上がる。
いつまでもこうしているわけにはいかない。
色々混乱することが多いが、一番の問題であるトイレは行動しなければ解決できないのだから。

「教室棟は行ってもらってるし、ボクたちはこっちか……」

立ち上がり視線を教室棟ではない方へ向ける。
……職員室とか音楽室とかいろんな部屋がある棟って一般的な呼び方ってあるのだろうか?
そんなどうでもいいことを考えていると鎖を通して右手が持ち上がるのを感じる。

「は、はい……手……」

まるでエスコートするかのように手を差し出す霜澤さん。
私の手が霜澤さんの手に吊られてさえいなければ、とても紳士的な光景だったはず――……なんだか勿体ない。

「……うん」

差し出された掌の上に、自身の手をそっと重ねる。
な、何ドキドキしてるんだろ……私。

――……いや、ていうか私、手汗とか大丈夫? 手を拭こうにも繋がれてたし……。

『っ……て、手汗とか平気かな?』

同じことを思ったらしくそんな『声』が聞こえてくる。
嫌いな相手でもそういうところは気になるよね……。

……。

どちらからと言うことでもなく、手を下ろす。
私は小さく深呼吸してから身体を寄せて手錠を見え難く――

「な、何してんの?」

突然後ろから掛けられた声に驚き、身体と手を離して距離を取――

<ガチャッ!>

「痛っ……」「っ……」

手錠してるのに離れられるはずもなく、手錠が手首に食い込み――……めっちゃ痛い。

「は? 手錠?」

二人して痛みで蹲る中、私は視線を上げる。そこに居たのは困惑の表情――――引いてると言い換えても良い――――を浮かべる斎さんだった。
嫌なところを斎さんに――いや、誰に見られても嫌だけど。

「……えっと……じ、事情があって――」「意味不明、関係ないし……」

最後まで聞くことなく困惑の表情から不機嫌そうな顔になって通り過ぎていく。
本当に意味不明でごめんなさい。見方によってはまた誰かと仲良くしてるように見える状況でごめんなさい。

869事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。11:2022/06/11(土) 00:06:45
「今の……斎神無よね? 良かったの? 何か不機嫌そうに行っちゃったけど?」

意外と言えばいいのか、霜澤さんは斎さんの事を知っているらしい。
……。

「……うん、関係ないって言われたし……私に対してはいつもあんな感じだから……」

霜澤さんは私の言葉を聞いて気まずそうに視線を逸らしてから小さく「ごめん」と呟く。
別に謝るようなことじゃない。むしろ、暗い感じに話した私が悪い。

……。

いつまでもこうしているわけにも行かない。私たちは立ち上がり無言で手を繋ぎ再度身体を密着させる……今回はさっき慌てたせいで確実に手汗が、ついでに心音もヤバい。
とりあえず渡り廊下を越え校舎に入ったのは良いけど、目の前は保健室……。
保健室にまだ紗や瑞希がいるかもしれないと思うと、早くこの場から移動したい。
階段か、体育館か、あるいは昇降口の方に向かうか……。

――……上は上で……弥生ちゃんがまだ居たり?

正直、どこにも行きたくない。
さっきの斎さんの件でわかったけど、知り合いの場合は今のこの手を繋いで密着してるところを見られるのが思った以上に恥ずかしい。
逆に知らない人の場合は凄く仲が良い二人くらいにしか見られないはずだけど、手錠を見られて好奇の視線が集まるのが辛い。

「た、体育館に行こう」

霜澤さんの提案で体育館へ行くことになる。
人が多くちょっと気後れするが、中に入ってみると出し物中で薄暗くなっていてむしろ助かる。
ただ、薄暗いせいで水無子ちゃんを探すのも難しい。

――……っ…って言うかトイレ……不味い……これ、本格的に……。

飲んでしまったミルクティーが少しずつ下腹部を膨らませてきてる。
立ち止まって周りを見渡す霜澤さんだけど、私としては立ち止まられるのは辛い。
手を繋ぎ密着してるせいで、下手に我慢の仕草を取れない上に、飲み残しのミルクティーで左手も使えない。

――つ、使えないって……まだ押さえなくても……うぅ、でも丁度薄暗いから、押さえてもバレないのに……。

仕草を取れない、押さえられない以上、必死に出口を閉めて、膀胱が暴れないように心の中で言い聞かせるしかない。
それはわかってるんだけど……。

――っ……波っ、じっとしてるとダメ、波が来ちゃう、来ちゃダメ……。

左足を僅かに上げて右足に擦りつける。
今、本格的な波が来たらきっと霜澤さんに気が付かれるくらいの仕草を晒してしまう、それだけは避けたい。
どうにかして宥めて乗り切らないと……。

『うぅ……ミルクティー飲み過ぎた……早く見つけないと……とりあえず、ここにはいない?』

『声』……でも、やっぱり楽しんでいる余裕は今はない。
霜澤さんには一度失敗を知られている――――当時は紫萌ちゃんと名乗っていたが――――からなのか
尿意を悟られるのがいつも以上に恥ずかしいことのように感じる。
それに今の関係性もあって少し怖かったりもする。
怖いと言っても、何かされるとかそういうことではなく……拒絶されたり、今以上に距離を取られたり……それが怖い。

870事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。12:2022/06/11(土) 00:07:36
「えっと次は……」

そう声に出しながら体育館の外に二人で歩みを進める。

……。

このまま闇雲に歩き回っていて大丈夫なのだろうか?
まゆたちには教室棟を見てもらっているので、こっち側を見れば殆ど確認し終えるとは言え、全部覗いて回ろうと思うとまだそれなりに時間が掛る。
入れ違いになるなんて事も考えられるし、そうなれば一時間使っても見つけられない可能性があるわけで……。

私は体育館を出たところで歩みを止める。

「――雛倉…さん?」

霜澤さんが歩みを止めた私に問いかける。

「……水無子ちゃん、誰かと来てると思う?」

私はあまり水無子ちゃんについて知らない。
だけど、椛さんや皐先輩、霜澤さんと言った人と遊んでいるのは知ってる。文化祭に一緒に来るような友達がいるなら、わざわざ年上の人と休日遊んだりするのだろうか?
自分で言ってて割と酷いこと言ってる自覚はあるけど、この推測は間違ってないと思う。

「えっと? 如月が連れてきてただけだと思うけど……?」

そう、だったらなんで如月さんの傍に水無子ちゃんはいなかった?
一人で遊ばせてる? ありえない。 つまり――

「――……だったら、この学校の知り合いのところにいるんじゃない?」

「っ! そっか、金髪んとこか!」
「……あるいは椛さんと一緒なんじゃないかな?」

私たちは近くの段差に腰を下ろして、ミルクティーを置いて携帯を取り出す。
――……本当、このミルクティー邪魔。……美味しかったけど。

「綾は――……こほんっ、……雛倉さんは紅瀬先輩の番号知ってるんだっけ?」
「……うん、椛さんには私が聞いてみる」

携帯の履歴から椛さんの名前を見つけて発信して耳に当てる。

「ねぇ……」

繋がるまでの少しの間に、霜澤さんがこちらに問いかける。
私は視線を向けて反応する。

「トイレ……我慢してる?」

――っ!!?

  「もしもし?」

「っ……も、椛さん!?」

混乱した中、椛さんの声が聞こえて来て、さらに混乱してしまう。

――……え、なんで、バレ――っ、あ、仕草……あ……。

考え事のしていたためなのか、無意識に電話を掛けながら足を擦り合わせていて……。
こんなに近くにいるのにこんな仕草見せてたら――……あぁ、やらかしたぁ……。
頭を抱えたくなるが手が足りない……。

  「電話かけてきたの綾でしょ? なんで私が出て驚いてんの……?」

――……ご、ご尤もです。

私は姿勢を正して仕草を隠し、電話に集中する。
……顔が熱いのはきっと気のせい。

「あ、えっと……椛さんところに水無子ちゃん居たりしませんか?」

  「え? あぁ、いるわよバカンスカフェを満喫――いや、出来てないか」

それを聞いて隣で皐先輩と電話してる霜澤さんに手錠の付いた右手を持ち上げ合図を送る。
それにしても満喫出来てないってどんな状況なのだろう?

「……あ、ありがとう、今からそっち向かいたいんだけど――」
  「あー、はいはいおっけー、水無子に用事でしょ私が案内しに行くから」

流石は椛さん、察しが良くて助かる。
もしほかの人に来店の案内されたら、席に案内されたり待たされたりで面倒だったし。
もう一度お礼を言って通話を切る。隣を見ると、霜澤さんも通話を終えたらしく携帯をしまっているところ。

「……水無子ちゃんバカンスカフェにいるって」

「みたいね、良かった……ボクもトイレ行きたくなってきてたし……」『ボクもだけど、綾も結構したい感じかな? もじもじしちゃうくらいだし……』

――……っ! ……お、落ち着いて……はぁ、大丈夫、もうすぐ鍵が手に入るし、さっきまでとは状況が違う。
もうすぐ手錠外せるね、実はトイレに行きたかったんだー、私もー、みたいなノリでしょ? 全然普通の事だしっ!

トイレに行けない状況で尿意を悟られるのは「え、どうしよう? 我慢できる?」みたいな感じで心配とかされるわけで。
行ける目途がたった今となっては何も恥ずかしいことはない。ないはずなのに、やっぱり顔が熱い。
そもそも、隠していた尿意がバレるのが恥ずかしい……バレたのもトイレに行ける目途が立つ前だったし……。

871事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。13:2022/06/11(土) 00:08:55
「じゃ、行こっか」

私は霜澤さんの言葉に小さく頷きで返して携帯をしまい、ミルクティーを持つ。
いい加減、これ飲み干してしまおうかと迷っていると、隣で霜澤さんがあと少しを飲んでいて、私もつられて口をつける。
ただ、私の方は量が半分ほどあるので結局全部は飲まずにほんの少し残す。
バカンスカフェについてから飲み干して容器をゴミとして捨ててしまおう。

そして二人で立ち上がる。
立ち上がってみると……やっぱりトイレに行きたい。
波がなくても、下腹部が僅かに張ってきてるのを感じる程度には溜まってきちゃってる。
二人してほんの少し足を早めてバカンスカフェへ向かって歩き出す。
場所は体育館の横を過ぎればすぐ、もう入り口が見えてる。

「いらっしゃい綾、……それと、珍しいわね、鞠亜も一緒なんて」

椛さんが霜澤さんを名前で呼び捨てているのを聞いて……なんだかちょっと羨ましく感じる。
当然察してはいたけど、二人は知り合い。共通の知り合いに皐先輩や水無子ちゃんがいるので不思議なことではない。

――っ……。

不意に右手が持ち上げられる。
どうやら、霜澤さんが椛さんに手錠を見せたいらしい。

「あー……あのメイドか……綾、あの人とはなるべく関わっちゃだめだからね」

――……関わりたくて関わってるわけじゃないんですけど? っ……っていうか、こんなことしてる場合じゃ……。

こうして話してる間も尿意は募る一方。
体育館と違って薄暗くもなく、目の前に椛さんが居るのに仕草なんて出せるわけもなく、必死に我慢してるのを隠し続けるのは辛い。

「それで紅瀬先輩、水無子んとこに案内してほしいんだけど?」
「了解、ついてきて」

ついていく中、途中ゴミ箱を見つけて、手に持っていた温くなったミルクティーを飲み干し捨てる。
これでもしもの時は手を使える……使いたくはないけど。

『ふー、もうすぐ……ったく、如月の奴……今度会ったらただじゃ置かないからっ』

霜澤さんの『声』……まだまだ切羽詰まっているわけではないけど、結構我慢してる感じの『声』。
もうすぐ手錠が外れると思うと、私自身の気持ちに余裕が出てきたらしく、霜澤さんの事を素直に可愛いと思ってしまう。

 「キャーほんとに可愛い! ゴスロリ衣装って奴?」
 「すごっ、なんか人形見たい! あ、だからゴシックなんだっけ?」
 「あぁ、もう! ゴスロリじゃなくてクラロリだからっ! (ま、まぁ……ゴスロリも嫌いじゃないけど)」

黄色い声を含む盛り上がりを感じさせる声。
前を歩く椛さんが嘆息しながらこっちに振り向き「この有様なの」と呆れるように呟く。
視線を前に向ければ4、5人の人だかり。その中心に僅かに見える銀髪は水無子ちゃんで間違いない。

「はいはい、散った散った、仕事しなさい!」
 「ちぇー、椛ばっかずるーい」
 「え、何あの子も銀髪? あの子のお姉ちゃんとか?」
 「違う違う、椛の幼馴染の子だよ、小中の時よく遊んでたみたいよ」
 「そうそう、どっちかと言うと妹ちゃん、雪先輩って知ってるでしょ? その妹だよ」

――……意外……私の存在が上級生に割と知られている……。

テーブルに一人残った銀髪の少女がこちらに視線を向ける。

872事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。14:2022/06/11(土) 00:09:54
「あ、鞠亜お姉ちゃんと……っ! 綾菜お姉ちゃん!」

――うぅ、笑顔が眩しい……トイレに行きたいから早く鍵下さいって言いたいのにっ!

私は尿意を押し殺して、小さく手を振る。

「水無子、さっそくで悪いけど如月から鍵的なの預かってない?」『とりあえずトイレ優先、綾もトイレ行きたいくせに水無子に合わせてなくていいって……』

霜澤さんが早速本題を伝えてくれる。
――……ええ、まぁ、トイレ行きたいですよ、とっても行きたいです。

「鍵? 知らないけど?」
「……え? 嘘? 持ってないの?」

――え、如月さん、水無子ちゃんが持ってるっていうのすら罠なの? っトイレ……え、どうするのトイレ?

「み、水無子、他には何か貰ってたりとか、聞いてたりしてない?」『はぁ? 待って……トイレ……き、如月? 本気なの?』

流石の事態に私だけじゃなく霜澤さんも慌てている――……可愛い……可愛いけど、そんな場合じゃない!
もうすぐだと思っていたせいもあり、尿意が膨れ上がってくるのを感じて……。

「あー、うん、なんか箱は貰った」
「箱?」

椛さんが聞き返すと、水無子ちゃんは鞄から金属製の小さな宝箱的な箱を取り出す。
それを椛さんが受け取り、少し観察してから軽く振ってみると、カンカンとした音が鳴る。

「……そ、それ鍵が入ってるんじゃない?」

そんな感じの音のように聞こえ、期待が膨らむ。
早くそれを開けて、鍵を取り出して、手錠を外して……それからトイレに――

「鍵かも……だけど、えっとこれ……」

椛さん困った顔で、箱の正面が見えるようにして私と霜澤さんに箱を差し出す。

「っ! ……え、な、南京錠と……時間?」
「これ……えっとタイマー式南京錠って奴なんじゃ……」

箱には開かないように南京錠が取り付けられていて。
その南京錠には時間が表示されていて……。
その時間は――

「よ、49分? それまで開けられないってこと?」

霜澤さんによって読み上げられた数字は、今の私にとって長すぎる時間……。
心臓の鼓動が早く大きくなる。口の中が乾いていく。
不安を隠しきれず、茫然とその箱を眺めていると、霜澤さんの視線に気が付く。
何か取り繕うと思い口を――

「ねえ、この南京錠を切るための工具ってどこかにない?」

私が口を開く前に霜澤さんが椛さんに問いかける。
時間が来るまで開けられないという常識を早々に打ち破ってくれる。

「えっと――」
「っ! ダメ、この箱は時間になるまで開けちゃダメって櫻香に言われてるんだからっ!」

急に慌てた様子で水無子ちゃんが制止を呼びかける。
その剣幕に驚きつつも、霜澤さんは引き下がらず、鎖で繋がれた左手を見えるように持ち上げて説得を試みる。

「いや、水無子……ボクたち手錠で繋がれてて困ってて、緊急事態だから――」『これから50分近く我慢しないといけないとか――』
「ダメっ! 絶対にダメ!」

説明を最後まで聞く様子もなく、もの凄く食い下がる……。
それにはきっと理由がある。

「えっと……あのメイドになんか脅されてるんじゃない?」
「にゃっ!? な、なんのこと?」

椛さんの言葉に声を詰まらせ、必死に平静を装おうとする水無子ちゃん。
……メイドが主人を脅すってどうなの?

……。

冷静に考えれば、脅されているなら水無子ちゃんに非はないわけで……。
ここは私たちが引き下がるべき状況。
脅されている今の状況自体、私たちの事情に巻き込まれた感じも否めないわけで。
年下の子にこれ以上迷惑は掛けられない。

873事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。15:2022/06/11(土) 00:11:21
「……わ、私は大丈夫、なんとか我慢、出来ると思うし……」

「え、我慢?」

水無子ちゃんの言葉に、はっとなる――……え、私、我慢できるとか言っちゃった? ……え、なんで言っちゃった?
完全に自爆、追い詰められてきて、焦りと不安と動揺で冷静になり切れてない。

――……っ、というかっダメ、これ波っ!

動揺が大きすぎたのか何なのか、急に平静を装えないくらいの波で……尿意が膨れ上がる。
疑問符を上げる水無子ちゃんに我慢の仕草で返答するなんて絶対に出来ない。

私は視線を逸らしてどうにか平静を装おうとする、押さえたい左手がスカートの横の生地を握りしめる。
足踏みや、必死に擦り合わせたい足が、小さく震える。

「あ……(お、お手洗いですか?)」

――っ……。

結局、水無子ちゃんに図星を突かれる。
こんなに必死になってるのに全然隠せてない。

恥ずかしさでまた顔が熱くなる……だけど、同時に我慢してるのがバレたことで気持ちが楽になった気がする。
もう、無理に隠さなくていい、流石に押さえるのは無理だけど、開き直ってとりあえず我慢に集中すればいい。
引かない波に抗うため、足を交差させて我慢する。
大丈夫我慢できる、平気、さっきよりずっと――

「(ちょ、綾、ここ人目あるから!)」

――っ!

ここはバカンスカフェ。
人目があって、仕草を大っぴらに見せて良い場所ではない。
幸いにも右側には霜澤さん、左側には椛さん、正面には水無子ちゃんが居てくれたので
私の身体の大部分は陰になっていたはずで、恐らく恥ずかしい格好は近くにいるこの3人にしか見られていない。

波は引いた……まだ油断は出来ないけど、仕草を抑えることは何とかできる。
顔を上げると、皆が心配するようにこちらに視線を向けていて……居た堪れない。

「と、とりあえず……二人ともこっちに来てっ」

椛さんはそう言うと、私と霜澤さんの前を歩いて……どこかに案内するらしい。
凄く申し訳なさそうにしている水無子ちゃんを残して歩みを進めると、プールの更衣室の隣にある両開きの倉庫――――反対側の隣にはトイレがあるのだけど、意識しちゃダメ……――――へ足を踏み入れ、
椛さんは明かりをつけて、外に誰もいないことを確認して扉を閉める。

「えっと、ここならとりあえず人目はないから好きに使って」

――っ……そ、それって――

此処なら好きなだけ我慢の仕草をしても良い……椛さんの言いたいことはそういうこと?
私のあからさまな我慢を見て、もう取り繕う余裕がないと知ってる……。

「綾もだけど……鞠亜も結構我慢してるんじゃないの? 存分に我慢してよ?」
「――っ……ボクはっ…! ……まぁ、我慢してると言えば……そうだけど」
『き、気が付いてた? いや、違う? 綾のフォローのためにわざわざ鎌をかけてきた感じ?
だったら否定できないし……でも、なんにしても46分は……ボクも実際結構厳しい気がする……』

二人して気を使ってくれる……恥ずかしい。
そして、改めて『聞く』と46分とか途方もない時間……。
万全の状態ならいざ知らず、急に来る高い波をやり過ごすのも今の段階で既にギリギリ。
この手錠が外せない以上、おもらしにせよ放尿にせよ、この距離でしちゃうことになるのが現実味を帯びてきた……。
……鍵なしでどうにかする方法もある。さっき霜澤さんが言った南京錠を破壊するように手錠を破壊する方法。
だけど、南京錠以上に丈夫でペンチのようなものでは無理だし、切ることになるであろう鎖の長さも決して長くないため危険ではある。
それでも最悪の結果を避けるためには黙っているわけにはいかない。

「……ディスクグラインダーとか……借りれないかな?」
「箱の方じゃなくて手錠の鎖をってことよね……文化祭の準備で使ったとこあるかもだけど」
「難しいかもね、ここでもちょっと事故あったし、今は先生たち事故防止に凄く目を光らせてるみたいだから、先生が管理してるなら使用用途の説明や立ち合いとか必要になるかもだし」
「た、立ち合いはダメ……こんな本格的な手錠つけられて外せないからグラインダーでとか、如月が色々やばい……」

――……こんなことされても如月さんの心配をするんだ……。

ちゃんと考えれば当たり前の事ではあるんだけど。
霜澤さんと如月さんの付き合いはそれなりに長いみたいだし、警察沙汰にまで行かなくとも仕事を辞めさせるくらいの問題になっても不思議ではないわけで。
悔しくはあるけど、私自身そこまで望んではいない。

「まぁ、私はダメもとでもグラインダー借りれないか聞いてくる、二人はこのままここに――」
「あ、待って……」

私は椛さんを引き留める。
申し訳なさそうにしていた水無子ちゃん……。

「……えっと、水無子ちゃんには心配しなくても何とかなりそうって伝えておいて」

椛さんは私の言葉を聞いて、少し笑みを零しながら頷いてくれる。
そしてすぐにまた後でと言う感じで片手を上げ、扉を開けて出ていく。

874事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。16:2022/06/11(土) 00:12:17
「……」
「……」

二人して黙り込み、立ち尽くす。

プール独特の塩素の臭い。
閉じ込められているわけではないけど、倉庫で二人と言う共通点から朝見さんと体育倉庫に閉じ込められていた時のことを思い出す。

――……あの時、朝見さんは間に合わなくて……私も本当にギリギリで……っ…はぁ、本当にヤバい……我慢できなくなったら…私……。

体育倉庫の時とは違い、明確な開放時間はわかっている。
先の見えない我慢ではない……だけど――

「ね、ねぇ……立ってるのもアレだし、そこに座らない?」

霜澤さんの言葉に私の思考が中断される。
霜澤さんが指さしているのはビート板が丁度膝くらいまで積みあがった所。
私は頷き二人でそこまで行って、並んで座る。

座ってすぐ、しばらく落ち着いていたはずの尿意が再度膨らみだす気配を感じる。
右手は手錠が付いているため動かすことは出来ない。
左手で押さえることはできるけど……。

――……っ……我慢、我慢して……お願い落ち着いてっ……。

小さく足を擦り合わせて、左手は膝と膝の間でスカートの生地だけを握りしめる。
やっぱりあからさまな仕草はしたくない……尿意が限界まで差し迫ってるなんて知られたくない。

『んっ、結構、辛い……綾も辛そう……』

――っ……やめて、こんな時に……『聞きたくない』っ。

そう心の中で考えて、自己嫌悪する。
いつもは『聞きたくて』我慢してるくせして、都合が悪いときは『聞きたくない』だなんて……。

『我慢できるよね? ボクも……綾も……』

……。
我慢できないなんて思われたくない。
出来る限り、先延ばしにして、可能なら……ちゃんと手錠が外れてから……。

――……可能ならって…なに? ……まだ、諦めてるわけじゃ……ないのに。

仕草を抑えたい――抑えたいのに。
擦り合わせるのをやめると、尿意が膨らんできて……。
大きく動くのが嫌で、足首を絡めて……だけどそれだけじゃダメで、つま先立ちの足が小刻みに縦に揺れて……。

「綾……だ、大丈夫?」『ホントに辛そう……多分、ボクよりずっと……』
「っ……」

こっちに視線を向けられ、問いかけられて……。
言葉を返そうと思っても何を伝えればいいかわからない。
ただ、心が揺さぶられて……尿意が落ち着いてくれなくて……。

――あっ……え、手……。

不意に、右手に温もりを感じる。
視線を右手に向けると……霜澤さんの手が私の手を上から握っていて……。

「だ、大丈夫……あと40分なんてすぐだし……」
『全然進んでない……早く、時間……』

霜澤さんが励ましてくれる……。
そうは言っても40分は、ただ待つには長すぎる時間。
もちろん、『声』からして本音で言ってるわけじゃないのはわかっているのだけど。

875事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。17:2022/06/11(土) 00:13:24
尿意の波はどうにか落ち着いてくれる。
強張った身体を僅かに弛緩させて、小さく息を吐く。

『み、ミルクティーのせい? ボクも急に……じ、事情をちゃんと説明して如月に? いや、無理でしょ、あいつ絶対楽しむし……むしろ知っててこんなことしたんじゃ……』

今度は逆に霜澤さんの『声』に焦りが見られて……。
一瞬可愛いと思いかけて、頭の中で頭を振る。
本当最低……今だけほんの少し余裕が出来たからって……。

(〜〜〜♪)

――っ!

携帯が鳴る。
私は慌てて、携帯を取ると電話に応答する。

「も、もしもし」
  「ごめん、やっぱり駄目だった……」

心配と申し訳なさを含んだ椛さんの声……。

「……別に椛さんが謝るようなことじゃ……」
  「ううん、だとしてもごめん……水無子も見てあげなくちゃだし……」

私はその申し訳なさそうな声にお礼を言って、少し強引に通話を切る。
電話が続けば続くだけ、椛さんは謝罪を繰り返しそうな気がして。

「だ、ダメだったみたいね……」『これで、時間まで我慢しなきゃいけないことが確定したわけだ……』

時間まで……南京錠を確認するとあと37分……。
初め見た時は49分だった、着実に減っているその数字。
減ってるのに……。

「はぁ……っ……」

波も来ていないのに呼吸が少し乱れてきていることに気が付く。
隣に霜澤さんも居る……こんなの嫌なのに……。
足も小さく揺れる、下腹部が徐々に張り詰めてきているのがわかる。

――……っ、これ……我慢が効かないとかそんなんじゃなくて……普通に、我慢できなく……んっ……。

左手が膝の上で意味もなくスカートの生地を撫でる。
落ち着きがない、ちゃんと自覚してる……でも、抑えられない……無理に抑えたらまた波が来ちゃいそうで。

「はぁ……あと、35分か……」『だ、大丈夫かな、ボク……最後にミルクティー飲み干したの失敗だったかな?』

そう、私も全部飲んだ。
もうすぐって希望が見えて油断してた。
こんなことなら飲まなかったのに……。
体育館を出た時に250mlほど残っていたミルクティー。
飲んでしまったそれは、確実にこれから私を追い詰める。

――……っ! あ、あぁ……な、波っ……これ、来ちゃうっ……んっ!!

飲んだもの、それがどうなるかを意識した直後、下腹部が収縮して硬くなる。
閉めて、締めて……我慢しなきゃ……。
足を絡める、息が詰まるくらいの焦燥感、どうしようもない尿意に不規則に身体を捩る。
今までよりずっと大きな波――……我慢しなきゃ、しなきゃ……我慢っ……。
左手は迷った末にスカートに大きく谷を作り、中指をより深く沈みこませる。

876事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。18:2022/06/11(土) 00:14:49
「んっ……あ、あぁ……ふぅ……んっ!」

自身の口から溢れる恥ずかしい声……。
隣に、居るのに――……霜澤さんがいるのにっ!

――こ、これっ……もしかして私、このままっ……んっ……しちゃう? やだ、我慢っ……我慢なのにっ!

「ちょ、ちょっと綾? が、頑張って、ほら、もうすぐ――あ、えっと、30分……切るし」

遠い、遠すぎる。言った霜澤さん本人も「もうすぐ」に繋がる言葉として「30分」は無理があるとわかってるような言い方。

……。

仮に今すぐに手錠が外れても、この波はどうにか超えないとトイレまで間に合わない。
30分……あと何回こんな波が来る? 次からはもっと大きな波で……とても我慢できるような波じゃなくて……。

「っ……だめ、そんなに…はぁっ……我慢っ……で、できな……うぅ……」

口に出してしまった弱音。
どんなに押さえても、どんなに足を絡めても、どんなに息を荒くして力を入れても、どんなに願っても――
30分は無理……10分でさえ――もしかしたらこの波を越えることすら出来ないかもしれない。

額に浮かんだ汗が流れ、頬を伝いスカートに染みを作る。
背中も、スカートの中も汗塗れで気持ち悪い。
尿意を抑えなきゃ、我慢しなきゃ……そう思っているのに、尿意は増すばかりで……そして――

「っ……んっ!!」

下腹部が一際硬く収縮する。
膀胱が私の意志に反して全力で排尿するように促してる。
バタバタと落ち着かなかった足をきつく閉じて硬直させて、指先に目一杯の力を籠める。
息を詰めて、目を瞑り……その切迫した尿意に全力で抗う。

――だめ、だめっ、もれちゃうもれちゃう、ホントにっ……ダメだからっ、我慢、がまん、やだ、我慢だからっ!

どれだけの時間、呼吸もせずに我慢していたのかわからない。
だけど、硬く収縮していた下腹部は、僅かな弾力を取り戻しはじめて……。
どうにか波を越えたらしい……。
当然ではあるけど、下腹部は未だパンパンに膨らんでいて、油断が許されるような状態ではないけど。

「はぁっ…はぁ…はぁ…っ……ふぅ……」

震えるように零れる呼吸。信じられないくらい鼓動も大きく早い。
息をしていなかったというのもあるとは思うけど、全身に力を籠めすぎていて、全身が熱く、まるで短距離走を走った後みたいにも感じる。

――し、下着は……だ、大丈夫?

恐らく大丈夫だと思う。
断言できないのは、汗でいまいちわからないというか……。
でも、失敗したという感覚はなかったはず。

877事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。19:2022/06/11(土) 00:16:00
「あ、綾……?」

その声に右を向くと、私を心配するような表情に加えて少し気まずそうな様子を見せる霜澤さんがこちらを覗き込んでいて……。
さっきまでのなりふり構わない失態を見られていたと思うと……恥ずかしいというかもう消えてしまいたい。

「……だ、大丈夫」

辛うじて言葉を返したが、一体何が大丈夫なのか――……し、下着とか?
でも、ダメ……。大丈夫って言ったけど、このままじゃ絶対ダメ。今度こそ大丈夫じゃなくなる。
言わなくちゃいけない。ちゃんと言わなきゃ……そうでなければ、霜澤さんの前で二度目の失敗を晒してしまう。
そうなったら私は――

……。

あの時とは事情が違う……わかってる、わかってるけど……。
失敗をしたのを最後に、紫萌ちゃん――霜澤さんは私の前からいなくなったのは事実で。
でも、何度も書き直された手紙は、きっと私の事を思って書いてくれた手紙のはずで。
だから……違う。失敗を――おもらしをした私を軽蔑したり関わりたくないって思ったんじゃないって……わかってるのに。

――だったら、許してくれる? もし、我慢できなくても……。でも、そんなの……。

私から距離を置こうとする霜澤さんを感じる度に自信がなくなる。
本当は……軽蔑してたんじゃないかって。
トイレも言い出せない可哀そうな子って思われてて、ただ傷つけないために手紙の内容を吟味してたんじゃないかって……。
そして今、霜澤さんは心配はしてくれてる――……だけど、おもらししちゃったら? 見っとも無く、我慢できないを言えずにすぐ隣で……。

霜澤さんが私の右手に重ねてくれてる左手。そこから私は手を引き抜く。
少し驚くような顔をした霜澤さん……。そしてすぐにその顔は不安を含むものに変わる。

「ごめっ――……い、いやだった?」

――ち、違う私は……!

宙に浮いた霜澤さんの手……私はそれを掴み取る。
また驚いた顔を霜澤さんは見せる。
私は俯き手を強く握る――……言う、言わなくちゃ!

「……っ、霜澤さん……私もう、我慢できないから、トイレに……っ…付いてきて…欲しい」

もし、霜澤さんが本当に優しくて私が本来思っていたような人ならばおもらししても軽蔑なんてされないと思う。
だけど、結局はおもらしをして良い理由にはならない。それは私がさっき考えた通り、トイレも言い出せない可哀そうな子でしかない。
もちろん言ったところで、今度はあと30分も我慢できない恥ずかしい子で、その恥ずかしい姿を間近で披露したいとかいう子でしかないのだけど。

「え、え!? で、でも…あと29分……え? 綾……本当に、もう無理?」

困惑した返しに、私も困惑する。
本当は大丈夫、我慢できる――と強がりたい衝動に駆られる。
だけど、その結果どういう結末になるか想像したくないが、さっきのギリギリの我慢で理解してしまっている。
次は無理かもしれない……。たとえ次が良くてもその次は――……。

「……無理、もう限界……はっ、はぁ……んっ…だ、だからっ」

私は視線を霜澤さんにしっかりと向けて無理なことを伝える。
同時に、これ以上ここで時間を掛けるわけにも行かず、私はビート板から立ち上がる。

「う、うん……わかった」

霜澤さんにも私が本気であることが伝わったらしく、少し緊張した面持ちで立ち上がる。
私はそんな霜澤さんを急かすように手を引いて歩く。
扉を開けるために前を押さえていた手を離し、扉を開く。

……。

――え? 私、さっき話してる間もずっと前押さえてしてたの?

完全に色々麻痺してる。
倉庫を出た後、迷わず手をスカートの前に持って行ってしまうあたり、どうかしてると思う。

878事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。20:2022/06/11(土) 00:17:21
更衣室の横……トイレ。
中に入ると人は居らず、個室が空いているのが見える。
空いている個室と言うか、そもそも個室が一つしかないらしい。

――っ……早くっ、あぁ、波、またっ……来ちゃいそうっ! ふぅ……っ、早く、トイレ、おしっこ……っ。

私は逸る気持ちと尿意を抑えながら、個室に入る。
すると、右手が少し引かれているのに気が付く。

「え、えっと……一緒に入る…の?」
「え? だって、そうじゃないと手錠っ……あぁ、ダメ、は、早くっ」

尿意が膨れ上がっていくのを感じて、溢れそうになるのをどうにか先延ばしにしようと、足をバタバタとさせて足踏みを繰り返す。
僅かな時間、霜澤さんは躊躇っていたが、一度深呼吸をしてから個室に足を踏み入れる。
霜澤さんが鍵をかけて、私は和式の便器を跨ぐ。

「み、見ないようにするから……」

――っ……。

足を開いた事と、不意に投げかけられた言葉に今からする異常な行為を改めて自覚し、我慢の糸が切れそうになる。
それでもあと少し、おもらしはしたくない……どうにか堪えて、下着を手に掛け、下ろ――っ、え、右手っ、ちょっと!?

「っ! ちょ、手、下げっ、あ、あっ…あぁ――!」
「え、あ……ごめっ――」

想定していなかったトラブル。
左手側は問題なく下りたが、右手側が手錠に引かれて、中途半端になって――

<じゅっ、じゅっ……>

ガクガクと震える足。下がり切っていない下着に先走りが染みこむ。
下着を下ろしてすぐに、準備を終えてしてしまうはずだった。ほんの数秒のタイムラグ、その僅かな時間と動揺に気持ちが対応できなくて……。
いつの間にか手錠に引かれていないのを感じて、再度下着を下ろして、スカートを左手だけで手繰って――

「あっ、ぁんっ!」<じゅぅぃぃーー>

【挿絵:http://motenai.orz.hm/up/orz76231.png

我慢をやめたのは確り下着を下ろしきってスカートを手繰った後のつもり……。
実際には下着にはかなりの量が掛ってしまってるし、スカートの裏地にも多少被害が出てると思う。
だけど――……これは、間に合ったで良い……よね?

手錠のせいもあり、髪は持てず、中途半端な中腰で足が辛いけど……間に合った、ちゃんとトイレに……。

879事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。21:2022/06/11(土) 00:18:15
「はぁ……はぁっ……」<じゅうぅぅーーー><コツコツコツ>

……。

私の荒い呼吸と恥ずかしい音の中に床を鳴らす足踏みの音。
普段ならあり得ないこと。個室の中なのに自身以外が出す音がすぐそばにあるなんて……まるで現実味がない。
現実味を感じないのは、極度の我慢からの解放で頭が回っていないのもあるかもしれない。

……。

――……いやいや! 音消し!!

少し頭が回り出し、慌てる。
こんな至近距離から音を壁を挟まず聞かれるとか拷問と言っても差し支えないくらいの羞恥プレイ。
音消しするため、手錠が付いている右手の方にスカートを持ち直し、左手で水を流す。
ゆっくり首を回して霜澤さんの様子を伺うと――

「(っ……ふぅ…んっ……はぁ……)」

見えるのは斜め後ろ姿。
最初からかどうかはわからないけど、言った通り見ないでくれている。
少し安心したと同時に、霜澤さんの呼吸が荒いことと、足踏み音の理由を知ることが出来た。

――……そ、そっか……そうだよね、霜澤さんもしたかったんだから、当たり前だよね?

こっちを見ないと言った霜澤さんを、私が見てるなんて思ってもいないだろう。
霜澤さんは身体を背けてはいるが、右手で前を押さえているのが見て取れるし、足も控え目だけど落ち着きなく足踏みを繰り返していて。
……さっきまでそんなに『声』が聞こえていなかった。
それはきっと私の心配とか、目の前でこんな姿を見せる恥ずかしい私に意識を割いていたからで。尿意があるにもかかわらず、表層に『声』として溢れ出る余裕がなかったのだと思う。
仕草とかそういう部分で、その欲求を見せていたのかもしれない。ただ、私自身余裕がなかったせいで全然気が付かなかっただけ。
今の様子を見れば霜澤さんも十分に追い詰められてきているのがよくわかる……。

――えっと…………うん、ごめん……『声』が聞きたい……。

この様子の霜澤さんなら、間違いなく私よりも自身の尿意に精一杯のはず。
だけど、我慢していない私は『聞く』ことが出来ない。
なので、私は小さく息を吸って下腹部を引き締め、必要のない場面での我慢を試みる。

「(んっ……)」<じゅうぅぅぅーー…じょろっ…じゅうぅ……じゅぅぅぅ>

音消しの音が響く中、わずかに音色を変える恥ずかしい音。なんだかより一層恥ずかしい音になってる気がする。
それにしても止めるつもりで力を入れてるのに――……んっ、あぁ、これ……全然っ…無理っ、我慢が効かないっ。

『っ……我慢、我慢っ……あぁ、こんな時に、こんなの聞かされて、ヤバいっ……ボクはまだしないからっ……落ち着いてっ』

――っ……んっ、き、『聞こえた』……あぁ、でも、もうダメ、我慢無理っ……。

全然止めれてるわけじゃないのに、これ以上我慢しようとすることが出来なくなり、再び脱力してしまう。
もともと途中で止めるというのは私が苦手とする行為。

「んっ、はぁ……」<じゅうぅうぅぅぅぅぅーーー>

一応『聞こえた』。
その『声』はかなり切羽詰まった『声』で、私の恥ずかしい音とトイレと言う空間に当てられてかなり鋭い波を受けているみたいで。
波の真っ只中とは言え、その『声』は限界一歩手前と言う感じで……。

――って、あぁ、音消し終わってるしっ!

音消しの音がなくなり、また私の恥ずかしい音色の単独ライブになっていることに気が付き慌てて水を流す。
霜澤さんの事を考えていた私だけど、今の恥ずかしい私の状態を再認識して――……お、音消しとか言ってるレベルじゃない!
こっちを向いていないとは言え、私、目の前でこんな……っ、し、下着下ろして、恥ずかしい音を立てて、お、お……おしっこ……っ!
霜澤さんの尿意が膨れ上がるくらいには、私がしてることを意識されてるわけでっ……あぁ、本当に消えたい。

同じようなことを悠月さんの前でしたはずなのに、それ以上に頭が沸騰するくらいに恥ずかしい。
恥ずかしさを紛らわすようにその理由を考えて、一つは立場の違いだと気が付く。
悠月さんの時は我慢勝負的なことをしていて、二人とも限界で、尚且つ私が双方間に合わないと判断して、出来る場所に誘導した。私のがちょっと優位な立場だったと思う。
今回は私が我慢できなくて、霜澤さんにお願いしてトイレに来て貰って、全然対等の立場ですらない状態での……。
それともう一つはトイレであること……な気がする。
温泉や銭湯で裸を見られるのはそれほど恥ずかしくないけど、家のお風呂で裸を見られるのは恥ずかしい的な奴。
外で誰かといるのは普通なことだけど、トイレの個室で二人っていうのはそれだけで異常な事。

――……つまり……何やってるの私!?

結局自分の恥ずかしいを分析しただけで、恥ずかしいが収まるはずもなく。
だけど、思考に割いていた時間は思った以上に長く、恥ずかしい音がようやく終わりを告げる。
我慢が効かなかったから短かったというわけでもなく、普通に限界まで我慢したときくらい出てたと思う。それこそ昨日のくらい……。
私は顔が熱いままトイレットペーパーを片手で乱雑に取って後始末をして、立ち上がる。

880事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。22:2022/06/11(土) 00:19:21
「っ……お、終わった?」

後始末の音、立ち上がった気配から霜澤さんが声を掛ける。
振り向くと仕草を抑え込んだ霜澤さんがまだ向こうを向いていて……。

「……う、うん」

私の返事に「そう」とだけ答えて、外の様子を伺いながら扉を開ける。
よくよく考えたら、個室が一つとか誰か来たら順番待ちになって、確実に二人で出る所を見られたわけで。
……考えたくもない。

……。

「……霜澤さんは……しないの?」
「っ……しない、このくらい我慢できるし……」

私の言葉に静かに――でも力強く、自分に言い聞かせるように呟く。
私のを見て、こんなこと出来るわけがないと思ったのか、あるいは最初から絶対に時間まで我慢するつもりでいたのか。
先に楽になってしまった私は、少し後ろめたく思う一方、相反する気持ちも抱いている。
霜澤さんは恥ずかしい思いをしないかもしれない。
我慢出来て、一人で個室に入れるかもしれない。

――……最低じゃない、私? ――でも……あぁ、霜澤さん……とっても可愛い。

手を洗う中、霜澤さんが息を詰まらせて小さく足踏みする姿に心がときめくのを感じる。
こんなに近い、離れられない。
息遣いが聞こえる、足踏みを音じゃなく振動で感じることが出来る、顔がよく見える、身じろぎが手錠を通して伝わってくる、心臓の音さえ共有できそう。
……『声』は聞こえない。だけど、声は十分すぎるほど聞こえる。この距離で聞きたい――……声が聞きたい!

――……いやいや、テンションおかしくない私? もうちょっと冷静にならなくちゃ……。

手をゆっくり洗い終えて、ハンカチで手を拭いてトイレを出る。
戻る先は当然プールの倉庫。
これから私と一緒に、霜澤さんだけの我慢が始まる。

「んっ……ふぅ……あ、あと21分……」

残り時間を見て霜澤さんはどう思ったのかわからない。
あともう少し、あるいはまだ先は長いと思ったのか……。
二人でさっきいた場所、ビート板の上に再度座る。

私は携帯を取り出す。
理由は椛さんへメッセージを送るため。
倉庫へは来ないで欲しいという内容。見っとも無い我慢姿を見せたくないという表向きの理由。
本当は……誰にも見せたくない、霜澤さんの我慢姿――……それは私だけの……。

……。

こんな時でも独占欲が働くことに心底呆れる。
だけど、霜澤さんだって沢山の人、特に水無子ちゃんには見られたくないだろうし、水無子ちゃんに見せるようなものでもない。
だったら、私の邪な気持ちを差し引いても余りある気遣いと言える……言えるはず。

手錠の揺れ、ビート板の揺れ。近いからこそ感じる僅かな身じろぎの揺れ。
小さな波が来てるのか、仕草を抑えられず何度も小さく足を擦り合わせてる。
その様子に私は鼓動を早め、霜澤さんの左手を見下ろす。
震える手、何処か居心地が悪そうに指先が動く。
私はその手にそっと右手を乗せる。
霜澤さんの手が少し跳ねるのを感じて、でもそれを抑え込むようにして上から掴む。
今度は私の番……私が付いていてあげる――……違う、付いていてあげたい。それは私の願望。

「……だめ?」
「っ……」

答えてはくれなかったけど拒否はしてない?
私は手をそのままに、視線を前に向ける。
前に置かれた宝箱に付いた南京錠が示す時間は17分。
隣から霜澤さんの落ち着かない動きを感じる。
ちゃんと我慢できるのか、もしかしたら私のように音を上げてしまうのか、あるいは――

――……霜澤さん、聞かせてよ……どうしたいのか、どんな気持ちでいるのか。ちゃんと……声で。

881事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。23:2022/06/11(土) 00:20:52
眺める南京錠のタイマーは秒刻みで確りと減って行って、残り15分になる。
いつの間にか霜澤さんの動きは僅かに落ち着いていて、波を越えたのだと感じることが出来る。

――……こ、ここまで仕草を抑えてるのに波の有無に気が付けるって……私の時って……。

また恥ずかしくなってきた……。
私の時と比べれば霜澤さんの我慢の仕草はまだまだ小さい……つまり、まだ限界は遠い?
でも喫茶店の時の霜澤さんは、凄くギリギリだったのに落ち着いて我慢出来ていたように思う。
私も今回は我慢が効かなくていつも以上に仕草を見せてしまったけど、普段ならもう少し仕草を抑えることが出来たと思う。

――……そう考えると、思ってる以上に限界が近かったりする? 『声』で判断できないのはちょっと不便……。

「(はぁっ……ふぅ…んっ……はぁ……)」

呼吸は抑えているが、この距離なら荒く熱くなっていることが十分わかる。
少しだけ霜澤さんの顔を覗き込む……不安と恥ずかしさで一杯で、顔には汗が滲み出ていて。
『声』が聞こえない以上、それ以外の部分で確りと観察したい。

……後13分。

「んっ! あぁ、ふぅっ……んんっ……」

今まで以上に熱っぽい息遣い。
大きな波、大きく上下に擦り合わされる足。
だけど、その仕草は長く続けることなく、今度はぴったりと合わされて片方の足を細かく上下に揺する。
それもしばらくすると小さく両足を上下させて、私の握る手――霜澤さんの手を包むように掴んだ指が、震えた指で握られる。
私も返事を返すようにしてそれを握り返す。

「……だ、大丈夫? 頑張って……」

励ます言葉を発して気が付く。
何もできない……霜澤さんの力になる言葉なんて思いつかない。
そもそも、そんな言葉なんてない気がする。結局はどれだけ傍に居ようと、傍観者にしかなりえない。

――っ……。

それでも私の言葉を聞いてかどうかわからないけど、また手を握り返してくれた気がする。
全然気の利かない言葉に、ちゃんと答えてくれようとしてる?

しばらくすると、大きく息を吐いて――……波を越えた?
重ねてる手がじっとりとしてる。手の甲には殆ど汗を掻かないはずだから、殆ど私の手汗……。
このまま重ねてたら気持ち悪い? でも、放したくない……私だったら放して欲しくない。

……後10分。

長い……長いけど、ようやくもうちょっとと言えるくらいの時間になってきた気がする。
さっきの波の間も、手を最後まで使ってなかった。
今も右手は横に……スカートの生地だけを握っているように見える。
ちゃんと我慢できる……時間まで我慢してちゃんとトイレで――

882事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。24:2022/06/11(土) 00:21:41
「あ、綾……っ、んっ……あぁ、だ、ダメかも、また、波っ……待って、我慢っ……」

――っ……しも――……ま、鞠亜……。

「ま、鞠亜っ、大丈夫、あと10分切ってるっ! もうちょっとだよ!」

……。
鞠亜? しっくりくる……呼び方。
綾? どうして? 雛倉さんじゃなかったの?

……。

「っ……わ、わかってるっ……んっ、あぁ……頑張るしっ、我慢できるっ……」

――……っなんで私……鞠亜って……ううん、どうでもいい、今はそんなの……、それより、間に合う? 我慢できる?

私の言葉に素直に頑張るって言ってくれて……少し強がってる感じもするけど。
可愛い……必死に我慢してる姿、上気した表情が凄く魅力的で、艶っぽくて、可愛い。
だけど、それ以上に、健気な我慢姿は凄く応援したくなって……。私自身、気持ちの整理が追い付かない。
私は鞠亜の手を掴む右手に、さらに左手を重ねる。

「あと9……ううん、もうすぐ8分だからっ」
「はぁっ……はぁ、っあぁ、んっ」

ガクガクと揺れる足、鞠亜の右手がスカートの前を押さえる。
額から頬に幾筋もの汗が流れて……。

――……頑張って……頑張ってほしいけど……。

もうすでに、トイレに行こうとしていたあの時の私以上に辛いんじゃないかって思える。
――……こんなに汗かいてたっけ? こんなに息を荒げていたっけ?

「あ、あぁっ……だめ、ダメっ……あぁ、我慢っ……なの、ボクは……ちゃんと……」

確りと閉じ合わせた足に右手を挟み込んで小刻みに、プルプルと震えて……息を詰めて……。
今日一番の波に抗ってて……。

私は何も言えずに、手を握ることしかできない。

「んんっ! っあぁ……はぁっ、ふぅ、はぁっ……っ…ふぅっ…はぁ……」

溢れる呼吸……。
それと同時に殆ど動いていなかった足が、座りながら足踏みのように動く。
波を越えた? だけど、手は前を離れることなく何度も押さえなおすようにして忙しなく動いていて……。

「あ、あぁ……だめ……あと、あと何分? ねぇ、綾っ……はぁっ…お、教えてっ……あぁ」

波はきっと越えたのだと思う。
だけど、代わりに潮は満ちて、もう本当に限界で……。
波がなくても、もういつ溢れてもおかしくないくらい一杯で……。

「あ、あと……7分……」

もう少しのはずの時間。本当にもうちょっとなはずの時間
それなのに、残酷な宣告をしてしまったかのような気持ちになる。

883事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。25:2022/06/11(土) 00:22:41
「7分っ……あぁ、7分っ……早くっあぁ、早く、早くっトイレ、おしっこっ……っ……あぁ、あと、な、何分っ?」
「……まだ……まだ7分、だよ……」

――……もう、いいんじゃない? トイレに行かせて上げるべき……。

「やだ、っ……あぁ、我慢、おしっこ、トイレっ……綾っ、綾っ……ボク、もうっ……」
「……もう、限界? トイレに……行く?」

――……私、もしかして意地悪な事言ってる? もうこんなに見っとも無く、取り乱してるのに……まだ決定権を鞠亜に与えてる。
行こうで良かったんじゃない? トイレに行きたいって言葉をそんなに聞きたい? 私は――だめだ…うん、聞きたいんだ、私……。

直接声で聞きたい。
もう我慢できないって、トイレにって……そう、さっきの私のように……。

「っ……い、行かないっ、我慢して、じっ…時間までっ…あ、綾とは……違う……、ボクは我慢、するっ……しなきゃ」
「え……っ、え?」

想像していなかった言葉。
もう本当にギリギリで、誰の目で見ても限界なのは確かで、こんなに取り乱して……それなのに……。

――……それと……私とは違う? それって――

「あ、あとっ6分……っ、15秒……はぁ、あぁ……我慢、する、……できるっからっ……間に合うからっ」

――……できる? 間に合う? ……本当に?

「ま、鞠亜……」
「っ……やめてっ! ま、鞠亜って、呼ぶなっ! ぼ、ボクは……そんなのっ……んっ…望んでないっ、あぁ、っ……」

急に呼び方が否定される。
――こ、こんな時なのに、なんで今そんなっ! ……っ。

「っ……そ、そっちも! さ、さっきから綾、綾言って――……え、ちょっと!?」

手錠が引かれる。
霜澤さんの両手がスカートの前に添えられて、私の手もそれに引かれたらしい。

「あぁっ、もう、見ないでっ、喋んないでっ、優しくしないでっ! っうぅ……んっ、でちゃ……やだ、やだっ!!」

なぜか言いたい放題言われる……。
いつもと違う、ギリギリまで追い詰められ取り乱し、混乱してる鞠亜――……可愛い。凄く可愛い。
可愛いけど……。

――……後、5分30秒……ちゃんと我慢する気でいる……。出来るかどうかは別だけど……だけど――

私、応援したいって思ってる。
友達としては当然そう思うべきでそれが正しいから、可笑しなことではないはず。

……。

私は首を振る。
見ないでと言った、喋んないでと言った、優しくしないでと言った。
それはきっと鞠亜にとって私のそれが、揺さぶりになってるからだと思う。
動揺して、それが我慢することに影響して、我慢できなくなって……。

だから私の応援したいって気持ちは、きっと本心じゃない。
それをわかっていて、応援したいって思ってるのは……揺さぶりたいから? おもらしさせたいから?
……私は口を噤んだ。

――……応援したいから……嘘でもいい、ちゃんとした意味で……。

だけど、少しの前の鞠亜の言葉……。

――……私とは…違う。

「はぁっ……うぅ……あっ! あぁ! ま、待ってっ……んっ……!」

真っ赤な顔で、全身に力を入れて……。
見ないでとも言われたけど、それだけは譲れない。許してほしい。
それと触らないでとは言われてない。私の右手は鞠亜の左手首に添えて……。

――あっ……本当にもう、限界……なんだ。

押し込むようにスカートに谷を作って……僅かに見えてる谷の部分は濃く染まり始めていて……。
もう本当に限界で……ちゃんと我慢出来てなくて……。

――……っ、わ、私とは違うんでしょ?

いけない……そんな事思っちゃいけない。
たった一言……それが私の気持ちを別の方向へ傾けてる。

884事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。26:2022/06/11(土) 00:23:53
「あぁ、だめっだめっ!」

――っ……。

鞠亜は急に立ち上がる。
バタバタ足を踏み鳴らして……私も立ち上がり、我慢の邪魔をしないように手錠の付いた右手を鞠亜の動きに合わせる。

「いや、もうちょっと、なのっ……だめ、いや、来ないでっ……っ…………やぁ………」

コンクリートでできた床に僅かに雫が落ちて黒い斑を作る。

……。

私は鞠亜の正面に回る。
私に気付いて鞠亜の視線が上に上がり、私と目が合う。
涙で一杯の瞳、額の汗に髪の毛が濡れていて……。
そんな、見っとも無い姿の鞠亜を見ながら私は口を開く。

「……私とは、違うんでしょ? 私と違ってちゃんと時間まで我慢できるんでしょ? 誰かの前でしちゃうような私とは違うんでしょ?」

言って良かったのかわからない。
……いや、ダメだった気がする。
あの言葉は、取り乱し、つい口をついてしまっただけの言葉のはず。
そんな言葉に、冷静で居なきゃいけない私がこんな事……言うべきじゃない。

どうして、そう出来なかった?

……。

――「ま、鞠亜って、呼ぶなっ!」――
――「もう、見ないでっ、喋んないでっ、優しくしないでっ!」――

……。
私は拒絶された気がした。
嫌われてる気がして、ずっと不安で、鞠亜の本心がわからなくて。
どうして私を名字で呼ぶのか、どうして時折愛称で呼んだりするのか……全然鞠亜がわからない……。
一方的に仲良くしたいと思ってる私が馬鹿みたいで、情けなくて……別に鞠亜が悪いわけじゃないのに。

「え? っ……やぁ、あ、違っ……あぁ、ダメ、ダメ、あ、あぁ……や、やだぁ、やぁ……」

視線を下げると、見えるのは必死に抑え込まれたスカート。
少しずつ拡がる染み。再び視線を上げて表情を見ればわかる、まだ我慢を諦めてない。
だけど、その染みの拡がりは止まることなく、下の方へ伸びていって……

「あ、あぁ……見ないでっ、とまっ――」<じゅうぅぅ……じゅっ…じゅうぅ、じゅうぅぅぅ>

手錠で繋がれ、目と鼻の先にいる鞠亜のスカートの中から微かに断続的にくぐもった音がする。
スカートの生地を集めて、失敗が溢れないよう、失敗を隠すように……。
それでも、くしゃくしゃになったスカートの生地――最後に集めた上の方の生地まで濃い色に染まり始める。
さらに視線を下げると、足に幾筋もの流れが光って、そして少しずつ水溜りと言えるものを形成し始めていて……。

「や、やだ、やだやだっ見ないでっ……ぼ、ボクっ……我慢っ……だめ、もう……っ! あ、ぁぁ……」

涙を落としながら必死に我慢を続けて……、だけど最後は糸が切れたように、大きく震える息を吐きだして脱力したのがわかった。

「はぁ…っ、はぁ……んっ…はぁ……」<じゅううぅぅぅぅーーーー>

肩で息をして、斜め下を向いたまま、視線が定まっていない。
スカートの中で勢いを増してくぐもった音を響かせる。
ぴちゃぴちゃと音を立てて、水溜りを大きく拡げていく。
私は横目に南京錠のタイマーを見る。

――……あと1分30秒……、本当に、もう少しだったのに……。

もしかしたら、私があんなこと言わなければ、スカートに染みを作りながらも、トイレに行けたかもしれない。
決して間に合ったとはいえないかもしれない。それでもこんなに見っとも無い姿を晒すことはなかった。
私が動揺させて我慢できなくさせて、結果、おもらしをさせちゃった……。

885事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。27:2022/06/11(土) 00:24:31
「ち、違うの……綾とは違うって言ったのは……そういうっ……んっ……、意味じゃ、なくて……っ、うぅ」

まだ恥ずかしい失敗の音が響く中、荒い呼吸と嗚咽の混じる声が聞こえてきて。

「ぼ、ボク、出来なくてっ……見せたくなくて、言えなくて…勇気出せなくて……綾と違って言えないから、我慢しなきゃってっ……おもらしなんてしなくないからっ」

――……え?

意味が分からなかったわけじゃない。
理解もちゃんと追いついてる。
だけど、私がした勘違いを認めたくなくて……。

「ごめん、綾っ……トイレって、言ってくれたのにっ……意地張って、結局……こんなっ……」

私が現実から目を逸らしてる間に、鞠亜の方から謝られた……。
なんで、違う悪いのは全部――

「え、ちょっ――」

鞠亜の困惑する声。
私は飛びつくように鞠亜を押し倒しつつ抱きしめていて。
自分の不甲斐なさ、申し訳ない気持ち、ついでに鞠亜の可愛さ、全部抑えられなくなって。

「っ……先に済ませちゃってごめん、もっと強引にトイレにって言えばよかった、変な勘違いもして勝手にもやもやしてっ……
鞠亜がどうしようもなく可愛くてっ……全部ごめんっ」

「え、えぇ!? な、何、可愛いって?! って、んっ、待ってまだ、ボク出てっ……ちょっ…やぁ、汚いっ」<じゅうぅぅぅっ…じゅっ……>
「汚くないっ、尊い!」
「尊くはない! じゃなくて、ホントに、ま、待ってっ! あ、あぁっ! あ、綾も濡れちゃうからっ!」<じゅっ……じゅぅぅぅ――>

止めようと必死になって――でも止められなくて。抱き着く私にその音がはっきり聞こえて……。
私は後ろに回した左手により力を入れて、強く抱きしめる。
可愛い。尊い。絶対放してあげない。

886事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。28:2022/06/11(土) 00:25:17
――
  ――

<カチャン>

無事宝箱の中から鍵を取り出し手錠を外す。

「そ、それで可愛いとか尊いってなによ?」

「……ちょっと混乱してただけで、気にするようなことじゃない」

目を逸らしながら答える。
自分でもどうかしてたと思う。
鞠亜は納得いっていないよう様子を見せながらも、諦めたらしく小さく嘆息して見せる。

「そ、それよりどうするの……綾まで――あっ、えっと、雛倉さんまでそんな濡れちゃったら、服調達できないし(ってか、おもらししてる時に、お、押し倒して抱き着くとか、わけわかんないし……)」

――っ……え、呼び方……戻るの?

……。

「……えっと、“鞠亜”も私も一緒に出て、すぐそこの使ってない消毒用シャワーを浴びて誤魔化せばいいよ」
「事情知ってる人は無理な奴か……ボクは本当にしちゃってるし……しかたないけど、雛倉さんまで巻き込んじゃう――というか、雛倉さんの方がしちゃったみたいに思われない?」

――……思われそう。私の我慢がバレてたんだしね……。

「……まぁ、なんでもいいよ、何となく水を浴びて誤魔化すってよくあるし誤魔化したい気持ちが伝われば、追及してこないと思うし」

「水を浴びて誤魔化す……ふふっ、確かに、よくある事かも」

鞠亜は小さく笑みを零す。
何が面白かったのかいまいちわからないけど、笑ってくれて気持ちが少し軽くなる。

……。

「……鞠亜」
「何? あ、――んんっ、雛倉さん」

……。

「……私は鞠亜って呼ぶから、もう絶対拒否されても変えない」
「何その宣言……じゃあボクは…………雛倉さんって呼ぶ……これからも、ずっと……」
「えー……綾、綾、おしっこーって言ってたのに?」「い、言ってない! 絶対言ってない! 次同じような事言ったら蹴るからっ!」

どうして、私をたまに綾って呼ぶの? ……多分聞いても答えてくれない気がする。
きっと理由がある……紫萌ちゃんの事だけじゃなく、何か隠してることがある気がする。
もっと昔に会ってたとか?

……。

――……でももう、私からは聞かない、代わりに今を大事にする……拒否されても、拒否できないくらい、絡んでやる。
まぁ……いつかちゃんと言ってくれると嬉しいけど……。

887事例19「霜澤 鞠亜」と密接距離。-EX-:2022/06/11(土) 00:27:21
**********

「何を見ているんですか?」

「見ての通りです、皐様。後夜祭を上から眺めるのもいいものですよ」

わたくしは櫻香さんの隣に行って同じようにして後夜祭の様子を眺める。
ちょうど目に映ったのは、銀髪の子――綾菜さん。その髪の色はキャンプファイヤーの光を浴びてオレンジ色に光って見え、美しい。
その隣には真弓さんもいる。
しばらく眺めていると、真弓さんは綾菜さんから離れて――……喧嘩?

何となくそう感じたが、少し違うように感じる。
暗い上に遠目ではわかり辛いが雛倉さんも真弓さんも落ち込んでいるように見える。
つまり――……はい、全然わかりません。

「あ、今度は朝見様が雛倉様にアタックするみたいですよ?」
「アタックって死語じゃないですか?」

上から見てると確かに面白いかもしれない。
まず呉葉が後ろに立って、深呼吸してるのが見てて可笑しい。
意を決して隣に勢いよく腰を下ろすと綾菜さんはここから見ても分かるくらいに吃驚していて、とても可笑しい。
そのさらに結構後ろで、鞠亜とその友達が居て、鞠亜が別に気にしていません風を装って視線を向けてるのも、可笑しすぎる。

……。

「皐様も下に行き混ざってきては如何ですか?」

わたくしの気持ちを見透かすように櫻香さんは言う。
だけど、わたくしの中には同時に相反する別の気持ちもあって……。

「……いえ、わたくしにはもうちょっと整理する時間がほしいですね」

少し自嘲気味に言って嘆息して見せる。
余りこの話題を続けられるのも困るので、今度はわたくしが櫻香さんに声を掛ける。

「そういえば、お昼過ぎくらい? イヤホン付けて何聞いていらしたんですか? 盗聴か何かでしょうか?」

「流石、鋭いですね。とある宝箱に付けておいた盗聴器のテストをしていまして、……私の一番のお気に入りの様子を確認してたんです」
「一番とかお気に入りとか……鞠亜が聞いたらドン引きされるじゃありませんか?」
「本人には言わないので問題ありません。それにしてもあの二人には楽しませてもらいましたが……はぁ、とても世話が焼けますね」
「あの二人? 綾菜さんの事? もしかして櫻香さんなら知ってるんじゃありませんか、鞠亜と綾菜さんの間に何があったのか……」

わたくしは鞠亜の隠していることが気になり探りを入れてみる。

「ふふふ、私も詳しくは……ただ、鞠亜は雛倉様の記憶を自身の手で奪ってしまったと思っているのではないでしょうか?
恐らくそれがずっと正しい判断だったのか分からず足踏みをしているものと思います」

――奪う? 記憶を? 要するに失わせたという事になる?

記憶喪失。
事故による記憶の混濁、または損傷などによる後遺症。
そしてストレスやトラウマにより本能的に精神を守るために行われる自己防衛の結果――解離性健忘。
綾菜さんの記憶喪失は最後、おそらく解離性健忘に当たる。
誰かが意図的に狙って行えるようなことではない。
狙って行なったわけではないなら、記憶を失う切っ掛けを与えたということになる。
切っ掛けと言っても、ストレスやトラウマの原因である事故を起こしたのは別の人で、鞠亜は居合わせただけ。
居合わせた鞠亜が、綾菜さんとそのお父様の事故の間接的な原因になっていたという可能性もあるが
それだと櫻香さんの言う、記憶を失わせたことの説明は付くが、それが正しい判断だったのかどうかの下りには少し違和感が残る。

――途中まで合ってる気がするのですが、まだ見落としがある気がしますね……。
櫻香さんの推測が間違ってる可能性は……、いえ、そこは櫻香さんが言うことです間違いはないでしょうし――

「皐様、そこまで気になさらずとも良いのではないでしょうか? 鞠亜が頼ってきたときにお傍に居てあげれば……
それまでは、私も皐様も呉葉様も、好きにちょっかいを出して楽しんでいればいいのです」

――うーん、それは一理あるし、楽しそうかもしれません。
鞠亜が進んで話さないのならば、詮索はしない代わりに、わたくしも呉葉もある程度は好きにさせてもらえばいいわけですし。
本当に目に見えて思い詰めたりし始めたら話は別ですけど……。
あと、櫻香さんはちょっかい出さないでください。

「あらら? あちらの屋上にもどなたか居られますね、えっと……あれは斎様に五条様、それと、あれは……告宮潤様?」
「え、それ暗視双眼鏡ですか? それと、先ほどの聞きなれないお方たちはどなたなのですか?」

言ってから気が付いたが、斎さんって確か保健室の先生? それかその妹の神無さん?
結局、他の人の名前は聞いたことがないのでなんの集まりなのかはわかりませんけど。

「皆様、一部業界では有名な方ですね、告宮様だけは方向性が違いますが……ふむ」

「詳しくは言えませんって言い方ですね。まぁ、わたくしは興味ありません。
では……実は生徒会の仕事がまだ残ってるので……お先に失礼致します」

興味の無いものに割くほど暇ではない。
息抜きに来ていたけど、余り長居すると椛さんから一体何を言われるか……。

「はぁ……でも、来期、椛さんがいなくなるのは本当に困ります……」

おわり

888「霜澤 鞠亜」:2022/06/11(土) 00:31:42
★霜澤 鞠亜(しもざわ まりあ)
ツンデレでお嬢様でボクっ子。
山寺 瞳と仲が良く、同じ1年C組。
何となく新聞部を自分で立ち上げ部長をしているが、部員は自分だけで、実際は顧問が居ないため愛好会。
活動もほぼしていない。

隗」隱ュ繧定ゥヲ縺ソ縺滓婿縲√♀縺、縺九l縺輔∪
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隱槫ーセ縺ォ縲後h縲阪′螟壹>縺ョ縺ッ螟画鋤繧ィ繝ゥ繝シ蟇セ遲悶〒縺吶h

綾菜と過去に出会っている。
くーちゃん、めーちゃんが綾菜と出会う以前からの友達であり、約二年間の付き合いがあった。
めーちゃんとはお金持ちの繋がりでもっと以前からの知り合い。

膀胱容量は平均より大きめではあるが、尿意を感じるタイミングがやや遅め。
何かに集中していない状態でも尿意を感じ難いが、トイレを連想させるようなものや緊張
または、過去の失敗から水に濡れたりすると尿意を意識しやすい。
容量自体は大きいため失敗することは少なく、限界まで我慢することもそれほどない。
また、プライドが高いため、我慢の仕草は限界まで表に出さない。

成績優秀、運動優秀。様々な事に対して多才。
性格はプライドがそれなりに高く、ツンデレで負けず嫌いで悪戯っぽい。それに加えて無自覚な軽度の中二病。
また、祭りを全力で楽しんで満喫していたり、勝負事には常に全力だったりと子供っぽさも持つ。
言動はきついことが多いが、根はそれなりに優しい。
家はお金持ちでありちょっとした屋敷で、お手伝いさんも数人いる。
ただ、それは自分で得たものではないという拘りからなるべく普通に過ごそうとしている。
その拘りのため、親が有名な先生を雇い勧めた習い事も大抵一度は突っぱねる。
ただ、親の期待にはなるべく答えたいとは思っており、後から自分で調べ、最低限以上の知識を独学で身につけてきた。
両親はその頑固な性格から、レールを敷いた上を歩かせるのは無理だと諦めてはいるが、ある意味で娘の将来性に期待もしている。
運動系は優秀でC組では山寺瞳についで成績が良い。
運動神経は良いが、身体能力自体は平均的で、マラソンなどの持久力を要求されるものは平均的な成績。

昔、鞠亜専属メイドとして3歳年上の如月櫻香を雇っていた。
ただし、鞠亜はメイドを必要としていなかったため、友達としてならそばに居て良いと条件を出し、如月はそれを受けたが
後にその関係が理由で如月櫻香は鞠亜のメイドを辞めさせられる。

綾菜の評価では、変なあだ名を付けた迷惑な人。ちょっと中二病で、言動はきついがどこか憎めず、悪い人ではないと感じていた。
自分でも不思議なくらい好いてしまっている相手。
過去に出会った紫萌ちゃんと同一人物であることが分かったが、未だに違和感を感じる人。

※文字化けは意図的です。

889名無しさんのおもらし:2022/06/14(火) 00:00:08
今回も更新ありがとうございます!
なんだかんだで綾菜が友人達と文化祭を楽しんでるところや、鞠亜との関係性が変わってきたところなど、前向きに進み始めてる感じがしますね。
それにしても、なぜ"ひとみん"ではなく"ひとりん"なのかまゆセンス。
最後はやっぱり縁さんに遭遇していまいました。残念。
次回から本編もPIXIVの方に移られるのですね。この先も楽しみにしています。

890名無しさんのおもらし:2022/06/15(水) 16:36:36
綾が限界まで我慢する展開好き
pixivに行かれるそうですが続きも楽しみにしてます

891名無しさんのおもらし:2022/06/15(水) 21:49:52
更新待ってました。
今回の話の綾菜が限界まで我慢して放尿する展開が一番好きです。
次回からpixivでも作品楽しみにしてます。

892名無しさんのおもらし:2022/06/25(土) 16:01:21
わくわく

893名無しさんのおもらし:2022/06/25(土) 21:11:07
>>888 更新ありがとうございます。pixivでの続き楽しみにしています。

894名無しさんのおもらし:2022/07/10(日) 08:56:04
「トイレへ行きたいのかね 」
 八木橋が歩きながら 、やっと声をかけてきた 。
 満里亜は大きく頷いてみせる 。
「そうだろうな 。グリセリンの源液を注入してやったんだから 」
 「 ! 」
 「公園まで我慢しろ 。まさか途中でチビったりするなよ 」
 そう言うと 、踵を返して 、わざと遠まわりをしながら 、公園に向かう 。それは完全な地獄と言ってよかった 。少しでも 、神経をヒップからそらせば 、崩壊が起こるに違いない 。が 、ヒップに神経を注ぐことによって 、疲れきった両脚が 、ハイヒールを穿いた不安定な状態で 、いつバランスを崩すかもしれなかった 。その結果 、躰が倒れ 、ショックで崩壊が起こるかもしれないのだ 。まさに 、針の上を綱渡りしているも同然だった 。
 公園が見えてきたとき 、満里亜はだから 、思わず涙を溢れさせていた 。すでに 、公園を出てから二十分以上が経っていた 。八木橋はしかし 、すぐにトイレに行かせてくれるほどヒュ ーマニストではなかった 。
 「その前にして欲しいことがあるんだろう 」そう言うと 、鉄棒の一番高いところへ連れていき 、両手をバンザイをする恰好に吊り上げた 。続いて 、猿轡が外される 。
 「ああっ … …は 、早く 、おトイレに … …ククッ ― ― 」
 「遠慮することはないさ 。オ × × ×が欲しくてたまらなくなっているんだろう 。眼がそう言っているぞ 。少しは奥さまにも愉しんでもらわないとな 、これはプレイなんだから 」
正面に立つと 、八木橋はブラウスをくつろげ 、ブラのフロントホックを外してくる 。
 「そ 、それより早く 、おトイレに ― ― 」言いかけたものの 、八木橋の手が豊乳を把み上げてくるなり 、 「ほおおっ 」目眩く愉悦に 、全身が溶け出すような感覚の拡がりを覚えて 、あられもない声を送らせていた 。ギュンッ 、ギュンッと力委せに揉まれるほどに 、満里亜の五体に歓喜のうねりが燃え拡がっていく 。
 が 、今の満里亜はその喜びに浸っているわけにはいかなかった 。腹部を襲う便意と痛みはそれ以上に大きい 。ピンクに染まった美しい貌が 、すぐに青ざめるのを見て 、八木橋はバイブレ ータ ーを持ち出して 、ハイレッグの黒いパンティの上から 、ムンッと盛り上がる頂きを押し上げてくる 。
 「ふうっ ! 」ブルッとガ ータ ー ・ストッキングをふくらませる豊かな太腿を慄わせたかと思うと 、満里亜の股間は待ちかねていたように左右に開かれ 、バイブの尖端へ自ら頂きを擦りつけていった 。
 数回なぞり返すと 、八木橋は濡れまみれたパンティを引き下ろし 、直接クレヴァスに当てがってくる 。
 「はうっ ! 」新たな刺戟に 、満里亜は股をあられもなく開いたまま 、たちまち昇りつめそうな快美感に襲われた 。実際 、じかにクレヴァスを擦られて 、便意と痛みがなければ達していたに違いない 。
 神経はヒップの一点に集中はしているが 、バイブによる官能の刺戟は 、一瞬ではあっても苦痛を忘れさせてくれる良薬だった 。濡れに濡れた熱い肉体は 、極太のバイブレ ータ ーを 、押し入れられるままに迎え入れていった 。
 八木橋が手をはなしても 、優秀な満里亜の躰は 、しっかりと咥え込んで落とすようなことは決してしない 。便意とバイブの振動によって 、満里亜は未知の歓喜の中で苦悶するように 、全身をのたうちまわらせていた 。
 いや 、すでにそれが歓びなのか 、苦痛なのかさえわからなくなっていた 。その証拠に 、八木橋が特製鞭の雨を見舞ってきても 、満里亜の躰は痺れきった神経によって 、陶酔に甘く酔いしれ 、洩れる悲鳴には喜悦の響きが混じっていた 。
 鞭 、バイブ 、便意のバランスをきわどく保つ責めにこれまで身悶えしながらも 、耐え続けてきた美しいスチュワ ーデスの躰にも 、ついに完全なる崩壊が近づいていた 。最初に 、肉体よりも意志が限界を迎えた 。ボロボロになっても 、やはり自らその瞬間の決断を下す恥辱感は残っていた 。
 鞭を浴びる度に身をよじり 、呻き声を放って 、貌をしかめていた満里亜は 、その刹那 、握りしめていた鉄棒から手の力を抜くと 、ほとんど穏やかな表情を浮かべて 、屈辱の安楽の中へ身を投じていった 。
 ヒップの方から崩壊がはじまると同時に 、バイブに貫かれた躰は 、四肢を打ち抜くばかりの喜悦の爆発に見舞われていた 。その二つがぶつかり合い 、それは恥辱も苦痛も歓喜も絡め合いながら 、凄まじい法悦の絶頂感となって 、麗しいスチュワ ーデスの五体に襲いかかってきた 。ガクガクガクッと下肢を慄わせ 、その上体は大きくのけ反りながら 、寄せ返す衝撃の荒波みに打ち上げられて 、烈しい痙攣をくり返した 。
 そして 、最後には 、なおも死者に鞭打つように 、満里亜自身の意志とは無関係に 、制服の下の白い豊かな股間はゆばりを放ち 、その前でズボンを下ろした八木橋の股間の持ち物から 、劣情の白液を誘発していった 。


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