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おもらし千夜一夜4
16
:
事例6「紅瀬 椛」と夏祭り。①
:2014/04/17(木) 19:26:18
「あ、綾ー?」
「……なに?」
「来週末には東京もどるからー」
「……わかっ――えっ!」
――東京に戻る?
雪姉から聞かされた衝撃の事実。
「何その反応? 休みはもう少しあるけど、用事は無いわけじゃないんだから当然じゃない?」
そう言うと、私のベッドに寝転びながら漫画の続きを読み始める。
……結局のところ、雪姉が帰ってきてから特に何も無かった。
こんなことなら、家族でレストランとか行く以外にも、市民プールとかどこかの娯楽施設に誘うべきだった。
「ふーんふーんふんふん〜♪」
音程をやたらと外した鼻歌を、機嫌良く歌いながら漫画を読んでる雪姉。
――……あれ? 二人でそういうところ行けなくて後悔してるのって私だけ?
帰ってきた時雪姉は“寂しかった”って言ってたのに……実際のところあれは社交辞令で、
本当に寂しく感じていたのは、私だけだったと言うことかもしれない。
「そうだ、綾! また正月に帰ってくるから、東京土産何か欲しい?」
……。
「……別に、なにもいらないけど? だから、買ってこなくていいし、忙しいなら帰ってこなくてもいいよ」
もやもやした気持ちのまま問い掛けられ、さらに内容が帰ることの話で、不貞腐れた態度で返してしまう。
「あ、綾? な、何か私…嫌われる事したかな?」
私の態度の変化に気が付き、慌てた様子でオロオロしながら問い掛ける。……可愛い。
私は首を小さく横に振った。
「そ、そう……」
そう言って漫画の続きを読み出すが、どうにも納得いかない様子でチラチラを私の様子伺ってる。
折角機嫌よくしていたのに、悪いことをしてしまった……。
私は雪姉に聞こえないように小さく嘆息して、自室の椅子に座りながら先日の見学会の感想をまとめる。
そしてそれを書き終えたとき、ふと、机の隅に置かれた紙が目に入る。
その紙には大きく“夏祭り”の文字が書かれていた。
――……あ、そうだ!
私はこの祭りに雪姉と一緒に行こうと思い、椅子に座ったまま体だけを横に向けて雪姉に向かって口を開いた。
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