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短編小説

22:2013/07/24(水) 21:14:53 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―1番目彼女―」後編


リコは親同士が仲良くて、小さい頃から時々家に行き来しているような、

世間一般的に言う、幼馴染みに近いものだった。

ずっと好きだったけど、それを言い出せないまま。

高校でリコに彼氏ができ、俺が少しだけ荒れていた時。

そんなとき、リカに告白された。

似ていると思った。

気づいたら「いいよ」と返事していた。

そんな風にして4か月ほど付き合いが続いた時だった。

こんな風に本屋に来たとき、やっぱりリカと別行動をしていた。

帰ろうと思ってリカを探したら、

いつも読んでいる漫画コーナーにはその姿がなかった。

雑誌コーナーをめぐっても会えず。

小説コーナーに踏み込んだ時、リカを見つけた。

でも、それは俺が知っていたリカじゃなくて。

俺が見てきたリカの笑顔じゃなくて。

あんな風に笑うのか。

漠然とそう思って、その笑顔を可愛いと思った。綺麗だと思った。

そこで初めて、リカが好きだと、気づいた。

でもそれと同時に気づいたことが一つ。

リカは、俺がリコを好きなのを知っている。

知っていて真似していたのだから、似ているのは当たり前なのだ。

その日の帰り道、初めて好きだと言った。

多分、焦ってたんだと思う。

言葉にしないと、はやく言葉にして伝えないと



リカは―――……



でも、もう遅かった。

リカはますますリコに近づいた。

笑顔はもちろん、口調も仕草もどことなく似ていて。

多分だけど、ブーツもリコの真似をして履きだしたと思うし、

きっと、漫画は好きじゃない。

リカに、好きかどうかを訊いているのに。

答えはいつも“リコ”で返ってくるのが

とてつもなく、悲しくて寂しい。最近は、料理の味も変わってきた。

その味は、リコの家で出される味に似ている。

リカ、うまかったよ。

リカが作ってくれた料理。

リコの料理より、ずっと、ずっと。

もっと練習しますね!

って、リカはリコみたく笑ってたけど、そんな練習しなくてよかったのに。

目の前のリカを見つめる。

多分、リカは知らないけど、俺は本を読んでる時のリカが一番好きなんだ。

本当に本が好きなんだなぁと思うような、そんな笑顔。

俺が知っている“リカ”はたったそれだけで。

もっと知りたくて、近付きたくて。

なにより「リカが好き」という気持ちが伝わってほしくて。


今日の帰り、もう一度好きだと伝えよう。

今度こそ伝わるといい。

そして、リカの笑顔で笑ってくれたら、それでいい。

俺の願いは、――…ただ、それだけ。

23:2013/08/02(金) 08:23:29 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の記憶―」前編


悔やまれることは、もう二度と君が見えないこと。

後悔しきれないことは、君が罪悪感を抱いてしまったこと。

あの日のことを、わたしは一生忘れないと思う。

這い上がる恐怖と黒色にどんどん浸食されていくような。

あの、感覚。

それと同時に失ったもの、ひとつ。

それと同時に彼が得たもの、ひとつ。

わたしは、一生記憶していると思う。


「沙織、ただいま」

扉が開いた音でわたしは、彼が帰ってきたのだとわかって、

もう慣れた玄関までの移動をする。

「おかえりっ」

わたしが笑うと、春の手がわたしの髪を優しく撫でる。


「え、えとね。今日はお母さんがおかず届けてくれて…

だから晩ごはんはそれをレンジで…」

春に手を引かれながら、そんな風にしか料理を用意できない自分が

情けなくて、惨めで、泣きたくなった。

でも、春は、そんなことを知らないふりして

「ほんと?沙織のお母さん、料理上手いから嬉しいよ」

って、また、わたしの髪を撫でてくれる。

社会人二年目。

働きづめの彼に本当は、ちゃんとした手料理を振る舞ってあげたい。

同棲してるくせに使えない彼女、なんてレッテルを張られたくない。

けど、わたしにはなにもできなくて、

そして、彼もわたしになにもさせなくて。

それは、数ヵ月前の秋のおわり。

わたしが、あの日ーー……

カチャカチャと食器を洗う音がする。

「春、美味しかった?」

「うん。お母さんにお礼言っといて」

「……うん」

わたしは、わたしの手料理を美味しいよ、って誉めて欲しいのに。

「ねぇー……春、」

「ん?」

でも、それはかなり難しくて。

一度、挑戦したけど、わたしは包丁すらうまく使えなかった。

「別れよっか」

彼は、包丁で指を切ったわたしを抱きしめて泣いた。

深く切った指から血がすぅ、っと、流れ落ちてくのが感覚的にわかった。

春は、その指を手当てして、

わたしを抱き締めて、そして弱々しく言った。

『ごめん、ほんとにごめん……っ』

彼の涙が静かにわたしの手のひらに落ちた。











ねぇ。そんな謝らないでよ。

わたしが見えなくなったのは春のせいじゃないよ。

24:2013/08/02(金) 08:33:55 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の記憶―」後編



わたしが見えなくなったのは、

そうなる数ヵ月前から決まっていた。

病気だった。仕方なかった。

角膜提供も迷ったけど、迷ってるうちに

時間は進んで見えなくなる前に、角膜は来なかった。

春にも相談しようとしたけど、その時春は仕事が立て込んでいて

イライラしていたし、帰りも遅かった。

『あ、あのね、春……』

『ごめん、疲れてるから』

そんな感じで。嫌われたくなくて、隠していたら

どんどん言い出せなくなった。


そして、あの日


わたしの目についに限界が来た。

会社のパソコン画面も資料も、景色も。

うまく見えない。

『もしもし…春、あのっ』

『沙織か。なに?』

ケータイ越しにカチャカチャと

キーボードの音がしたのを何故か覚えている。

『あ、今日はやく帰ってこれる?』

『ごめん、今日も忙しいんだ』

いつもならごめんね、で引き下がったと思う。

けど、もしかしたら、これがわたしの見える最後かもしれない。

それなら、せめて最後に春が見たかった。

『……っ、お願い……っ』

『仕事なんだって、いい加減にしてくれ』

春は苛立ったようにそう言って電話を切った。

わたしは見えなくなった。



「……別れよう」

もう一度、しっかりと口に出した。

「嫌だ」

負けじと春も強い口調で拒絶する。

春が近づいてくる足音が聞こえる。

春は縋るようにわたしを掻き抱いて、震える声を絞り出す。

「ごめん、ごめん…いくらでも謝るから。

だから、どこにも行くな…ッ」

子供みたいに、大きな猫科動物みたいに泣く春。

わたしは、自分が彼の邪魔になることを知っていて

それを振り払えない。


もう彼が見えないことを、わたしは後悔するけれど。

それは今の医療がいつか治してくれる。

でも、彼の罪悪感は一生治せない。

わたしは謝ってほしいんじゃない。

ただ単に、愛してほしいだけなのに。

彼はもう単純に愛してはくれない。

最後にわたしを拒絶したことを、わたしに尽くすことで償ってるんだろう。




彼に謝られながら、




わたしは今日も




愛された記憶を反芻する。

25:2013/08/02(金) 08:48:59 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の罪状―」前編


あの日、帰らなかったこと、一生後悔すると思う。

でも、一番の後悔は、彼女が心から笑わなくなったこと。

彼女は、恨んでいるだろうか。

あの日、拒絶したこと。

でも、もし例え恨んでなくても、

その事を一生俺は背負ってくと思う。


「春っ!おかえりなさい!!」

今日も帰ると沙織の笑顔に出迎えられる。

黒い髪が動きに合わせてふわふわ動いて

犬の尻尾みたいだ。

「ただいま」

そう言って沙織の頭を撫でると、くすぐったそうに沙織は微笑んで、

でもすぐ悲しそうな、申し訳なさそうな表情になる。

「あのね、ご飯……またお母さんが…」

「うん、いつもありがとう、って今度伝えて」

そう言うと沙織はますます顔を悲しそうに歪める。


「こ、今度…もう一回料理練習してみようかな」

「ッ…ダメ」

考えるより先に口は動いてた。

忘れられない。

血の流れる沙織の、人差し指。

深く切った指先は、どんどん赤色を流して、

最初見たとき思わず故意に切ったのかと思って頭が真っ白になった。


「でも、春……」

「頼むから!!」

思わずそう声を荒げると、沙織の肩は大きく跳ねて、

怯えたように、目を伏せた。

そんな沙織を失いたくなくて、繋ぎ止めようと強く抱き締める。

「頼むから……もう、」

「……うん、ごめん、ごめんなさい……」


沙織の謝罪は色々な意味を持っている気がする。

震える沙織にキスをすると、沙織は泣きそうに笑って、

切なげに春、と名前を呼んでくる。

俺は、沙織の照れたように笑う時が一番好きだったのに――。

26:2013/08/25(日) 14:41:06 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の罪状―」後編


沙織が申し訳なさそうに笑うのは、俺のせいで。

きっとあの日のことを、俺が後悔してるのに気付いているから。

それに気付いていながら、俺は後悔をやめられない。

沙織を追い詰めているのをわかっていて、手放せない。

あの日拒絶した分そばにいてやりたい。

好きだから、そばにいたい。

それはきっと自己満足だけど。

腕に力を込めて、爪先が白くなるほど指先にも力を入れる。

沙織が「苦しいよ、」と呟いて、そこで仕方なく力を緩めた。

おずおずと背中に回された沙織の腕。その体温に涙が出る。

彼女は、生きてる。

その実感にどうしようもなく泣いてしまう。

彼女が見えなくてよかった。

と、この時ばかりは不謹慎で最低なことを思うけど。

こんな情けない泣き顔を見られたくはない。

後悔するのはあの日のこと。

後悔し続けることは、君が笑わなくなったこと。


願い事は


君がまた、俺の笑顔を見てくれること。


君をまた、笑わせること。


一生かけて、君を幸せにしたい。


償いや、後悔を背負っても、君といたい。

27:2013/08/25(日) 14:58:30 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の未来―」沙織side


「沙織、見える?」


包帯がとかれたと同時、母親の心配そうな声が降ってきて

それを合図に目を開けた。

視界に入った人工的な光に照らされた。

自分の腕を見て、涙が溢れた。

春の出張中、手術を受けた。

担当医からは成功しますよ、と微笑まれたけど

あの時のことを後悔している春には、どうしても言い出せなくて

春のいないこの日を狙って手術をした。


「見、える……」


みえる。その言葉を噛み締める。


「見える、見えるよ。」


病院の壁の白、お母さんの黒い目も、

お医者さんの青いネクタイも。

存在する色彩全部、網膜がとらえてる。

先生は明日には退院できますから、と

微笑んで去っていった。


「沙織、沙織、よかったね…っ」


お母さんが隣で泣き出して、

わたしはそれを見て、さらに幸せを実感して思わず笑う。

網膜が光をとらえて、それがキラキラと瞬く。

――あぁ、なんて綺麗な世界。


「退院おめでとうございます!」


綺麗な看護師さんが笑顔で小さく手を振ってくれた。

わたしは照れ臭さを隠しきれずに、

曖昧に微笑み返して、お辞儀をした。

見える。そう、わかるんだ。

看護師さんが美人だということ。

わたしは、ちゃんと見えてる。

ねぇ、春。わたし、見えてるんだよ。


今日は手料理をしてあげよう。

ハンバーグ?カレー?

それとも中華にしようかな。

ねぇ、春。

春はあの日のことをずっと後悔するかもしれない。

けどね、それだってわたし達の一部なんだよ。

きっといつか、あの日はごめんな、って春が笑って

わたしも、ほんとだよ!って笑える日が来るよ。


―――だから、ねぇ、春。

28:2013/08/25(日) 15:10:28 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の未来―」春side


「ご注文の品はこちらでよろしいでしょうか?」


少し高めの声が確認を促す。

はやくもドキドキしながら視線を落とすと、

指輪は初めて見たときよりもキラキラして見えた。


「はい」


頷いた声が上擦っていたのは自分でもわかった。

出張帰り、1週間前に予約した指輪を取りに向かった。

もちろん沙織への。

王道だけど、給料三ヶ月ぶん。

ダイヤの指輪はきっと沙織の薬指によく似合うと思う。


『あの子、手術するんです』


沙織の母親にそう言われたのは、1ヶ月前だった。

沙織は終わるまで黙っているつもりだったらしいが、

母親は心配そうに続けた。


『春がいつまでも後悔するの、嫌だから。

それに、春の顔、見たいから』


それを聞いた時、涙が止まらなかった。

見破られていた。後悔ばかりだったこと。

罪悪感で抱き締めたこともあったと、

きっと彼女は気づいてた。

でも、それと同時に気づいた。そう、気づけたんだ。

後悔はしていた。でも、不幸ではなかった。

ただ愛しくて、好きで、大切で。

そんな感情があったから、不幸では、決してなかった。


沙織。

後悔ばっかりだった。

きっとお互いそうだった。

だけど、きっと大丈夫。

それを全部背負っても、不幸じゃないから。

背負った分だけ重くなって

大切になって、想いが強くなって。

そんな風に幸せになっていくはずだから。

きっと、そうなれるから。


――だから、なぁ、沙織。

29:2013/08/25(日) 15:14:39 HOST:ntiwte061027.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「―網膜の未来―」春、沙織side


後悔ばっかりだった。

でも、不幸ではなかった。

もう全部振り切って、



――幸せになろう。



大丈夫、未来は明るい。

30たっくん:2013/08/26(月) 15:05:48 HOST:zaq31fa58ad.zaq.ne.jp
馬鹿ピーチ


ドリフのバカ兄弟を再現します。
出演はピーチ&たっくん、です。

ピーチ=いかりや長介役

近日予定・・宜しくお願い致します。

31たっくん:2013/09/26(木) 14:40:27 HOST:zaq31fa59d3.zaq.ne.jp
ピーチのアホさかげんは更に増してゆく・・・。

>>1
ピーチのスレなかなか面白いです。
彼女でないと実現しないスレですな(笑)

ちなみにダイアナというのは
前にもおっしゃいましたが、
ピーチさんの肛門が大きいからです。

大の穴→だいのあな→だいあな→ダイアナ


前置きが長くなって申し訳御座いません。
今後共宜しくお願いします。無能ピーチを宜しく!


次回は、いかりや長介&ピーチスレッドを設立します

32たくや&コルド大王:2014/02/17(月) 23:34:25 HOST:zaq31fa4b61.zaq.ne.jp
君達の妄想力はよく分かった


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