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蝶が舞う時… ―絆―
232
:
燐
:2011/12/29(木) 17:06:39 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「何泣いてなんだよ…。夜那って感傷的なんだな。」
誠はベッドに向かいベッドの淵に座る。
「感傷的?」
「うん。涙脆いって事だ。」
誠にそう言われ私は笑顔を見せた。
「そっか。初めて知ったよ。でもそれでもいい…。」
私は思わず誠に抱きつく。
「何だよそれ…。」
誠は何処か納得のいかない顔をしていた。
233
:
燐
:2011/12/29(木) 20:10:48 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
私は誠の右肩に顔を埋める。
ずっとこうして居たい…。
何でだろう…誠の傍に居ると心が落ち着く。
傷ついた心が癒えてくるような気がする。
ずっと好きだよ…誠。。
貴方が居れば私は何も要らないよ。
他に何も…。
「好きだよ…。」
私は恥ずかしそうに言う。
「俺も好き…。」
誠は私の左手をそっと自分の手と絡める。
「…っ。。」
私はつい言葉を詰まらす。
「夜那?」
誠は私の事に気づき問いかける。
「手を…離して…。」
「何で?」
「いいから…。じゃないと私……。」
そう言うと誠は手をそっと離す。
私は誠から離れ、後ずさる。
「来ないでね…。今来たら私…戻れなくなるから。。」
私は額を両手で押さえながら言った。
「戻れなくなるって…どう言う意味だよ…それ…。」
誠はそう言いながら私にゆっくり近づく。
「来ないでって言ってるのに…来た駄目だよ!!誠まで可笑しくなるよ…。」
私は息を切らして誠に言った。
「そんな暗い事言うなよ。夜那の為なら俺は別に可笑しくなっても構わないから。」
誠は笑顔で言う。
「私の為に命を使うって言うの!?そんなの止めて…!!私の問題なのに誠を巻き込みたくないんだよ。
お願いだから最後ぐらい聞いてよ…。」
「お前また死ぬ気かよ。半年前と全く同じ事言ってねーか?」
誠は呆れた表情をした。
「言ってない…。それに死ぬ気もないよ…。私は誠に幸せになってもらいたいから言ってるのに!!」
その言葉に誠は驚いた表情を見せた。
234
:
燐
:2011/12/29(木) 20:30:43 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「何だよそれ…。」
誠は冷たい視線で私を見る。
「知ってるよ。誠がアメリカで好きな人が出来た事ぐらい…。信じてたのに…。
嘘吐き…。大嫌い!!」
私は泣きながら言った。
「それ誰から聞いたんだ。」
誠は俯きながら言う。
「否定しないって事は本当なんだ…。もう…この指輪なんていらない!!」
私は左手の薬指から指輪を外して地面に投げ捨てた。
「…夜那だって俺を捨てようとしたんじゃないのか。」
誠の気迫が籠った言葉に私は言葉を失った。
えっ…。
何で私が誠を捨てなくちゃならないの…?
誠の言ってる意味が分かんない…。
「意味分かんない事言わないで!!」
私は本能を剥き出しにして誠に突進した。
「お前…夜那じゃねーな。誰だ?」
誠の言葉に私は地面に崩れる。
「私は夜那よ…。何勘違いしてるの…。」
私は誠を睨みながら言った。
「明らかに口調が違うんだがな。」
235
:
燐
:2011/12/29(木) 21:23:59 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「…鋭い人ね。当たりよ。私は夜那の影となってる存在なの。普通は現実世界には出てくる事はないんだけどね。」
影の私は言った。
「元の夜那は何処だ。」
誠は訊く。
「この現実世界に居ないわ。今は闇の世界に居るわ。一人で影憐の事を解決するつもりだと私は思う。」
「影憐って何だ?」
誠は言う。
「闇の世界に居る影の憐よ。人間は必ず“影”と言う存在が自分の中に潜んでる。
ちなみに現実世界の人間は“陽”と呼ばれてるわ。ま…影と陽は対になってる存在なの。」
影の私は言った。
「ふーん。意外と奥が深いんだな。」
誠は何気に関心した。
「で、陽の私を助けに行くんでしょ?夢の中に案内してあげるわ。」
影の私はそう言った。
「何か同じ夜那とは思えない感じだな。お前本当に夜那か?」
誠は納得がいかないのか私の右手を触る。
「つめたっ…死んだ手みてぇ…。」
誠は思わず手を離す。
「影となる存在は生きてる感じがしないの。血も体内に通ってないから冷たいのよ。」
影の私はさらりと言った。
「何か雪女みてぇ…だな。冬だから余計寒い…。」
誠はぶつぶつと影の私に文句を言う。
「あっそ。で、夢の中に行く訳だけど…その赤い蝶と青い蝶を借りていい?」
「あぁ…いいけど…。何でだよ。」
誠は訊く。
「あら知らないのね。蝶の力を借りて夢の中に行く事は可能なのよ。」
影の私は淡々と答える。
「そうなのか…。てか蝶の事はやけに詳しいな…。何か知ってんのか?」
「当たり前よ。私はこの蝶の所有者だもの。」
影の私がそう言うと誠は驚きを隠せなかった。
236
:
燐
:2011/12/29(木) 22:01:29 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「所有者って…どう言う事だよ…。」
「それはあっちに行ってから説明するわ。そうすれば陽の私に逢える事が出来る訳だし…。」
影の私はそう呟く。
「はいはい。分かったよ。お前の説明はいいから。さっさと夜那の所に連れて行ってくれ。」
誠は呆れた表情をする。
「分かったわ。じゃ私の右手に手を翳して。」
影の私はそう言って誠の前に右手を差し出す。
誠は影の私の右手に自分の左手を翳す。
誠の左手に赤と青の蝶が止まる。
止まった瞬間、影の私と誠は光に包まれ、この世界から姿を消した――――…。
237
:
燐
:2011/12/30(金) 09:33:17 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
―――――…
「ん…。」
「起きたわね。着いたわよ。」
影の私に起こされ誠は目を覚ます。
「此処…何処だ?」
誠はぼけてるのか気力のない口調で言う。
「何処って…闇の世界に決まってるじゃない。何寝ぼけてるのよ。」
影の私は呆れた表情で言う。
「実感がねーって言うか…てか、何かが可笑しくねーか?」
誠は頭を掻きながら呟く。
「鋭いわね。たしかにこの世界は可笑しいわよ…。この世界自体が崩れ初めているわ。」
影の私は淡々と答える。
「それって崩壊するって事かよ…。」
「ええ。此処が崩れたら現実世界の夜那もアンタも元の世界に戻れなくなるわ。」
238
:
燐
:2011/12/30(金) 22:02:21 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「そうか…。で、夜那は何処に居るんだよ。」
誠は不機嫌そうに言った。
「この闇の世界の何処か。残念ながら影の私は教える事が出来ない。」
影の私はクスッと笑って言った。
「分かったよ…。俺が自力で探す。」
「…後、アンタの赤い蝶は道しるべとなるわ。居るだけで便利よ。」
影の私はドヤ顔で言った。
「ふーん。てか今ドヤ顔しただろ?同じ夜那でもムカつくんだが?」
「あっそ。と言うか私なんかと話してて大丈夫なの?こうして話してる間でも此処は崩れて来てるのよ?」
影の私は気楽に言った。
「そうだったな…。じゃ俺は行く。お前はどうすんだよ。」
誠は言う。
「さぁ?どうでしょう。此処に残っておく。現実世界の夜那の青い蝶は私が
預かっておくから安心して。」
「…じゃ頼んだぞ。」
誠はそう言い残して、前に足を走らせた。
239
:
燐
:2011/12/30(金) 22:16:27 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
―――――…
「……。」
陽の私は、白い空間に取り残されていた。
此処で決着をつける。
そう心に誓っていた。
私がこの世界に来た理由はただ一つ。
影の憐にちゃんと話を聞いてもらってこの予知夢を終わらせる事だった。
それしかこの世界に来た目的だった。
でも何で白の空間に取り残されてるんだろう。
今まで黒の世界ばっかだったのに…。
そんな事を考えても結果が出るはずもない。
ふいに思ったその時だった。
「何してるの?」
私の背後から低い声が聞こえてきた。
私はゆっくりと後ろを振り向く。
後ろを振り向くと影憐が立っていた。
憐の瞳は輝きを失っていて少し濁っている瞳だった。
「何で此処に戻って来たの?」
影憐は私を脅すように言った。
「真相が知りたくて此処に戻って来た。」
私は冷静な口調で言った。
影憐は私がそう言うと不機嫌そうに言った。
「…夜那は嘘吐きだよね。簡単に人を欺くし…。何時から夜那はそんな人になったの?」
240
:
燐
:2011/12/31(土) 11:55:01 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
憐は明らかに怒っていた。
「それは…どうしても真相が知りたいと言う欲望に溺れてしまったから。」
そう言うと憐は驚きを隠せなかった。
「人間は欲望の塊。人を簡単に欺き、心を支配する。僕はそれが許せないんだ。」
憐はそう言って自分の胸ぐらをそっと掴む。
「それが人間だよ。影の貴方は人間の気持ちになった事がないから分かんないかもしれないけど…私は分かる。」
「嘘だ!!夜那はその欲望の塊の中の人間だ!!夜那には分かるはずがない。僕ら影の気持ちなんて…。
僕だって人間として恋もしたいし…人間のように暮らしたい。。でもね、影として生まれてきた以上、この世界の秩序に従わなくちゃならないんだよ?
影は陽の存在と対になる関係。影の僕が死んだら陽の僕も死ぬよ。死ぬ時は一緒だから…。」
憐は荒い息を吐きながら言った。
私はその言葉に思わず涙を零してしまった。
「辛かったよね…。」
私は泣きながらそう呟き、憐を優しく抱擁する。
241
:
名無しさん
:2011/12/31(土) 13:28:43 HOST:211.110.204.67[27.111.131.180.west.global.crust-r.net]
私ここで結構おいしいおもいしました。
詳細は書けないけど、やり方次第ですね(^O^)
ttp://bit.ly/rRzIgw
242
:
燐
:2011/12/31(土) 17:19:11 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「何で影の僕なんかに構ってくるの…。余計なお世話だよ…。」
憐は冷たい口調を放つ。
「…余計なお世話かもしれない。でも…同じ生きる者としてだから分かるよ。
私だってね…半年前義理のお母さんにたくさん酷い事されてきたんだ。
暴行や外出拒否…。そのせいで私の精神が狂いだし、死ぬと言う気持ちが心や頭の中を支配して行った。
でもね…ある一人の男の子の存在があったから生きる事が出来た。たった一人愛する人が出来たから今の自分があるって思ってるの。
憐は私の事が嫌いかもしれないけど、私は好き。大好きだよ。
たとえ影の貴方でも私は好きだから…。」
私は泣きながら憐に言った。
243
:
燐
:2011/12/31(土) 18:00:09 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「…影の僕でも夜那は構わないって言うの?でも現実世界の憐はもうすぐ死ぬよ。
だから僕も死ぬ…。タイムリミットはもうすぐそこまで来ているんだよ…。」
憐は私の身体から静かに離れて俯いた。
憐の身体が微かに震えていた。
「うん。構わないよ!!憐とは友達だし!!それに…絶対死なせない!!」
私は強く憐の両手を握り締めた。
憐の手はとても冷たい。
でも私はそれでもいい。
「無理だよ…運命は変えられない。たとえ夜那でも無理だよ…。」
憐は弱音を吐く。
「無理なんかじゃない!!絶対死なせたりしないから!それに最初から運命なんて決まってないよ。
と言うか運命なんて人が決めるもんじゃないし。」
私は笑顔で言った。
「でも…。」
「大丈夫だって。辛い時は私に言ってよ。友達なんだからさ。」
私は憐の言葉を遮りポジティブに言った。
「…ありがとう。でももう夜那に逢えるのはこれで最後。最後に夜那の顔が見れて良かった。」
憐のその優しい言葉に私は思わず言葉を失う。
えっ…。最後…?
何で…?
「もうこの世界は崩れて来ている…。此処は元々誰かの理想郷のような世界だった。
その誰かがこの理想郷を作り上げて、この世界を守っていた。
でもね…その誰かが死んでしまって、此処を守る者が居なくなってしまった。
だからこの世界を守る為に僕らのような影と言う存在が生まれた。
影と言う存在はこの世界をずっと守ってきた。何年も…何百年も…ずっと守ってきた。
でももうこの理想郷のような世界は消えようとしている。もう僕らの役目が終わるって事さ。」
244
:
燐
:2011/12/31(土) 18:19:50 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「何で消えようとしてるの!?ねぇ…どうして!!」
私は憐に触ろうとした瞬間、憐はどんどん遠ざかってしまう。
心が落ち着かない…。
涙が無限に溢れてくるよ…。
そう思った直後だった。
「夜那!!」
あの優しくて力強い声が遠くから聞こえてきた。
誠…。
今はまだ…来ては駄目だよ。。
来ちゃ駄目だよ…。
私は両腕で涙を拭いながらそう思った。
「やっと…見つけた。」
私は後ろから誠に抱擁される。
その途端、私の心の中がほんのり温かくなる。
温かい…。
「誠さん…。」
憐にそう呼ばれ誠は顔を上げた。
「…何だよ。」
誠は未だに怒っている様子だった。
「君達は元々から相思相愛の関係のようだね。互いを必要としている。
そんな君達には敵わない。たしかに僕は夜那が好き。でも夜那は僕を必要としていない。
そんな2人には敵わないな。僕は諦めるよ…。その絆を大切にね。
じゃそろそろ行くね。夜那…忘れないでね。たとえ僕が消えても君の傍に居るって…。」
憐はそう言って私に背を向け、歩き出した。
245
:
燐
:2011/12/31(土) 18:57:50 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
「…お前自ら死ぬつもりだろ?半年前の夜那だってそうだったぜ?
毎日顔が沈んでやがる。ま…夜那の義理の母親の呪縛のせいでそうなっただろうな…。」
誠がそう言うと憐は足を止める。
えっ…気づいてたの?
誠は意外と人の表情とか気にするのかな?
「誠さんは夜那に尽くすタイプなんだね。夜那を見てて分かる。
今だってまだ泣いてるよ?その涙を拭き取るのが彼氏ってもんじゃないの?」
憐は意地っ張りに言った。
貴方には何で分かるの…?
私が泣いてる事を…何で分かってしまうの?
私は姿勢を崩して地面に倒れこむ。
その瞬間、誠の身体が離れる。
「待って…憐。。」
私はゆっくりと地面から立ち上がった。
「待てないよ…もう時間がないし…。」
憐は戸惑いながら答える。
「じゃ一個だけ…言っていい?」
私がそう言うと憐は静かに頷いた。
「また何時か逢える?」
私は満面の笑顔で言った。
「…逢えるかもね。その時は僕と仲良くしてね?影としてではなく…一人の人間として…。」
憐はそう言い残して、跡形も無く消えた。
246
:
燐
:2011/12/31(土) 19:09:54 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
※お知らせ※
何か・・小説に多少Fが入ってしまってすみません・・・。
Fがあまり好きじゃないのに入ってしまう・・・。
うぅ・・謎です。
後、明日から里帰りなんで4日まで更新出来ません。
毎年の恒例と言うか・・そんな感じです。
なんで明日は朝から出来たら更新する予定です。
では。
247
:
燐
:2011/12/31(土) 20:06:58 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
さよなら…。
私はそう心の中で呟いた。
私の闘いは終わったんだ…。
これで予知夢が終わるのかな?
何か少し寂しい気がする…。
それでも私は―――…。
私の身体の力が抜け、地面に倒れ込もうとした瞬間、誠が私の身体を支えてくれた。
「無茶しすぎだな…夜那も。これ以上心配かけんな。」
誠は目を逸らしながら言った。
「ごめん…。でも憐を救えた。救えたから良かった…。」
私がそう言うと私の背後で声がした。
「ホントに良かったわ。」
その声に私は後ろを振り向いた。
「えっ…私!?」
驚く私にその人は口を開いた。
「影の貴方よ。ま…多少ズレはあるけどね。」
248
:
燐
:2011/12/31(土) 20:38:35 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
影の私は答える。
「影…。私の?」
「ええ。後、青い蝶…これは元々私の所有物だった。…蝶は私達影の光となり
この世界の安定を保っていた。でも…白い蝶がこの世界から居なくなってしまい、
この世界が崩れ始めた。もうこの世界は止まらない…。静かに朽ち果てていくわ。」
影の私は淡々と言った。
「そ…んな。それじゃ…もう…。」
私がそう言った瞬間、地面に皹が入り真っ二つに地面が割れた。
えっ…。
私には一瞬何が起きたのか分からなかった。
「夜那!!」
誠の声がした。
私の左手は誠の右手でしっかりと握られていた。
「誠…。私って馬鹿だよね…。」
私は泣きながらも笑顔で呟く。
「…馬鹿過ぎるな。無茶ばっかするし…俺に嘘吐くし…。でも俺はどんな夜那でも一番好きだ。」
誠も笑顔で言った。
「そっか。でも…ごめんね。あの時はあんな事言って…。誠を傷つけたくなかったから
そうしただけなんだ…。どうしても自分で解決したくなった。一人で解決したくなってしまったから…。
ついあんな事言っちゃったけど…。」
私は俯きながら呟く。
「…それで正解だったんだろ?ならそれでいいじゃねーか。俺は満足だぞ。」
誠がそう言った瞬間、誠は手を離し、私を抱き締めた。
真っ逆さまに私達は落ちていく。
誠の身体にしがみ付きながら、目を瞑った。
249
:
燐
:2012/01/01(日) 10:25:40 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
誠は私が離れないように私の身体をしっかりと抱き締める。
「アンタ達ってバカップルよね。はぁ…。何か意外と楽しそうね。」
影の私は笑いながら私達と落ちていく。
「本当に私なの?何か物凄く別人なんですけど…。」
私はおそるおそる言った。
「本当に貴方の影よ。納得がいかないようだけど…。もうすぐで着くわよ。」
影の私はそう笑顔で言った。
「着くって…何を?」
「出口よ。この夢の終止符となる所に。」
影の私はそう言うと左手を私に差し出す。
「そこに着いたらこの夢が幕を閉じるのか?」
誠は訊く。
「ええ。きっとこの夢は終わるわ…。さ、握りなさい。」
影の私はそう言うと私は左手で影の私の右手を握る。
影の私の手も冷たい。
でも心は温かい気がする…。
「貴方達2人は目を瞑った方が身の為かもね。」
影の私は言った。
その時。影の私から青い蝶が離れて私の左耳に止まる。
私は言う通りに目を瞑る。
「アンタは目を瞑らないの?瞑っといた方が身の為よ。」
「俺はいい。こんな場面に遭遇しても平気だ。」
誠は淡々と言った。
「案外強いのね。ま、いいわ。」
影の私が言った途端、身体中がとても熱く感じられた。
熱い…。
250
:
燐
:2012/01/01(日) 10:36:21 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
身体が焼け付くような熱さだった。
まるで身体全体が燃えてるような感じだった。
「熱いけど我満して。もう少しだから。」
影の私が必死に言った。
相当、向こうもヤバイ感じのようだ。
私はそんな熱さに耐えながら必死に堪える。
やがて熱さが感じられなくなり、足元が地面に着く。
「此処は何処?」
「言ったでしょ?ここはこの夢の終止符となる拠点だって。」
影の私は答える。
でも見渡す限り、黒い空間だった。
見渡す限り何もない。
まるで私達は取り残されたようになっていた。
「此処はまだ崩れてないみたいね。ま、崩れるのは時間の問題って言った所かしら。」
影の私は呆れた表情をしながら言った。
251
:
燐
:2012/01/01(日) 10:49:45 HOST:zaq7a66fd57.zaq.ne.jp
今日の更新はこれで終わりです。
次回は1月4日の夕方?か夜に更新予定です。
もしかしたら時間上に更新出来ないかもしれませんが宜しくお願いします!!
いよいよ第4章もクライマックスですか・・・いよいよ第5章です!!
ま・・いわゆる最終章ですね。
夢の真相も解決出来ましたが・・まだ終わりません。
ネタバレはしませんが・・・・ヤバイ展開になる事を予想しておいてください。
それにしても・・・影の夜那さんと誠さんの会話は面白いです。
何か・・漫才みたいで・・・。
自分で書いていても思わず笑ってしまうぐらいですし・・・。
ま・・・面白い話もたまには良いですよね。
また何処かで紹介します(*^_^*)←何を!?
で・・・この小説のエピローグはあるかどうかはまだ分かりません。
正直迷っているので・・・。←どーでもいい事。
でも引き続き応援宜しくお願いします!!←強制ないw
ではm(__)m
252
:
燐
:2012/01/04(水) 13:52:48 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
帰って来ましたので
さっそく更新します!!!
253
:
燐
:2012/01/04(水) 16:13:39 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「夜那。」
ふと誠に呼ばれ私は、ん?と聞き返す。
「俺…お前に嘘吐いてる事あるんだ。」
えっ…。
私は誠の身体からそっと離れて平常心を保った。
「何でこんな時に言うの?」
私は震えた声で呟く。
「…ごめん。バレるのはどうしても避けたかったんだ。でももう我満出来なくて…。」
誠はふいに顔を逸らす。
「…何の嘘吐いてたの?それに因るよ…。」
私は掌を握り締めて言った。
「…俺がアメリカに渡って3ヶ月後の事だ。単純かもしれんが…俺…
浮気しちまった…。」
誠はそう言って私に深く頭を下げる。
「…そっか。誠が私に対して我満してたのも分かるよ。私みたいな人が誠と吊り合う訳ないし…。
それに電話で誠と話した時に浮気の事聞いたら必死だったし…。やっぱり好きじゃなかったんだね…。」
私はそう言うと誠に背を向けた。
「…でも俺が好きになった奴はすでに既婚者だった。だから好きになっても無駄だって事が分かっていた。
馬鹿だよな俺…。夜那が居るのに他の奴を好きになっちゃってさ…。」
誠のその言葉はとても弱々しかった。
「誠は今でもその人の事が好きなの?」
私はおそるおそる聞いた。
「…今は正直よく分かんねー…。でもその半年間の間で俺の隣に夜那が居なかったから
精神的に不安定だったのかもな…。」
誠は上の空で言った。
254
:
燐
:2012/01/04(水) 16:27:05 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私は今でも誠が好きだよ。
でも誠がその人と幸せになるのなら私はそれでも構わないよ。
私は応援するよ。
私はそれで満足だよ。
「そっか…。でも私は責めないよ。その人と誠が幸せになっても私は責めない。
誠が幸せになって欲しいし…私なんかよりずっと誠の方が未来の可能性を持ってるし!!
私は応援する。」
私は後ろを振り返って笑顔で言った。
「…じゃあさ、何でそんな辛い顔してんの?」
誠は不機嫌な顔で言った。
「してないよ…。勝手に解釈しないでよ。」
私はブスッとした顔で横を向く。
「ホントお前って嘘下手すぎ…。何無理してんだよ…。」
誠は正面から私を抱き締める。
255
:
燐
:2012/01/04(水) 17:16:08 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…今もその人が好きなら私は別れてもいいよ。」
私は下向きに言った。
「…相手は既婚者だから好きになっても無駄なんだよ。」
誠は私の耳元で言った。
「男の人ってそんな軽いんだね…。もう誠も信じないから…。」
私は強がりに言った。
「あーそうかよ。どうせ俺達の絆ってそんな小さいもんだったんだな。」
誠はそっと私から離れた。
本当は離れて欲しくない…。
ずっと一緒に居て欲しい…。
私は何時から素直じゃなくなったのかな?
「…アンタ達の絆は誰にも負けないわよ。」
影の私はふと呟いた。
そう言われても今は全然嬉しくない。
「さ、行きなさいよ。この空間をずっと歩いて行けば出口に辿り着けるわ。
私はもう此処でお別れだけど…。現実世界に戻ったら私と現実世界の私は一体化になるわ。
だから安心しなさい。」
影の私はそう言うと私の左手と誠の右手を握り締めさせた。
「
256
:
燐
:2012/01/04(水) 17:39:02 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠の手に触れた瞬間、どうしても泣きたくなった。
誠はふてくされているのにも関わらず私の手を離そうとしない。
どうして?怒ってるんじゃないの?
誠の今の本心がちゃんと知りたいよ…。
そう思った瞬間、私の左手を誠は強く引き、走り出した。
「誠…?」
私はつい誠に向かって呟く。
「俺さ…あの時このままでは夜那を裏切ってしまうって思ったんだ。
俺が浮気なんてしたら夜那ずっと根に持ってるだろ?そんな時に俺を救ってくれたのは
一輪の薔薇だった。半年前夜那が俺にくれた赤い薔薇だ。あれを見ていると夜那を思い出すんだ。
薔薇を見てると夜那に見られてる気がしてならなかった。
だから諦めようとした。でも俺が浮気した事に変わりがなかった。
だから手術して無事生きる事が出来たら夜那にちゃんと伝えようとした。
でもこんな遅くなっちまってごめんな…。」
257
:
燐
:2012/01/04(水) 18:10:35 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠は前方を見ながら言った。
そうだったんだ…。
でももし嘘だったら?
それこそ怖い…。
でも信じてみなきゃ相手も信じてくれない。
「私…誠を信じる!!まだ半信半疑な部分もあるけど…信じるよ!!」
「…その言葉をずっと聞きたかった。やっと言ってくれたな。」
誠は振り返り笑顔で言った。
「やっと言ってくれた?その言葉を待ってたって事?」
私がそう言うと誠は頷く。
「後さ…こんな時に言うのもなんだけど、いつか一緒にアメリカ行かね?」
えっ…。何でアメリカ?
「何でアメリカなの?」
私は訊く。
「秘密。でも旅行してみたいんだ。夜那と二人で。旅行してさ…色んな物を夜那と一緒に見て見たいんだ。
半年前だって約束してただろ?それだったら夜那のずっと傍に居られるし…。」
258
:
燐
:2012/01/04(水) 18:48:37 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠は照れくさそうに言った。
「旅行…約束したっけ?憶えてない…。」
私は笑顔で誤魔化した。
本当はちゃんと憶えてる。
忘れる訳ないよ。
「お前また嘘吐いただろ?バレバレなんだけど。」
!?
「私…嘘吐いたらすぐバレるんだね。突き通された事なんてないよ。
やっぱ向いてないのかな…。」
「向いてない向いてない。やっぱ素直な夜那が本来って感じがするし。」
誠に即答で答えられた気がする。
初めから分かってたみたいで恥ずかしい。
259
:
燐
:2012/01/04(水) 19:14:04 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「何か凄く不愉快なんだけど…。」
「気のせい気のせい。そう見えるだけだし。」
誠は笑顔で言う。
何か隠してる気がしてならない。
「ね…まだ隠してない?さっきから誤魔化してるようにしか見えないんだけど…。」
私は訊く。
「…出口が見えてきた。もう少しだ。」
私の言葉は誠によって消されてしまった。
ま、いっか。
私はそう心の中で思っていた。
やがて前方に眩い光が見えてきた。
「夜那…。」
誠はその光に飛び込む前に呟いた。
「ん?」
私は聞き返す。
「ずっとお前を守っていくからな。」
その言葉は私に耳には届かず、私達は眩い光に飛び込んだ。
260
:
燐
:2012/01/04(水) 19:15:51 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
やっと第4章が完結しました!!!
で・・いよいよ最終章です!!
ここで悲しい出来事が起こってしまいますが・・・
涙を惜しんで見てください。
261
:
燐
:2012/01/04(水) 19:30:18 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
episode. 5 絆
――――…
「那…夜那…!!」
何処かで私を呼ぶ声が聞こえて来る。
その声は優しくて力強くてどこか儚い。
あの声はきっと貴方の声だ。
私は無意識に右手を伸ばす。
するとすぐに私の右手を誰かが握る。
温かくて全てを包んでくれそうな感じ…。
だから私はこの人と恋に落ちたんだ。
私はゆっくりと目を開けた。
目の前には誠と誠のお母さんが居た。
私が目を覚ました瞬間、誠のお母さんに抱き締められた。
「何処行ってたのよ!!心配したのよ!?でも無事で良かったわ…。」
「…ごめんなさい。」
私は誠のお母さんの肩で泣きながら言った。
「事情は後で説明してもらうとして。とりあえず手伝ってもらうわよ!!」
262
:
燐
:2012/01/04(水) 19:58:56 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠のお母さんはそう言って私から離れる。
「何を手伝うの?」
私は訊く。
「それは下に行ってからのお楽しみ。早く二人も下りて来なさいよ。」
誠のお母さんは立ち上がって私の部屋を後にする。
誠のお母さんが出て行き、私と誠は二人っきりになった。
「夜那。これ…付けとけよ。」
誠から渡されたのは指輪だった。
そう言えばあの時…私無意識に地面に投げ捨てちゃったんだよね…。
私は震えた手で静かに左手の薬指に指輪を嵌める。
「誠…私ね…。」
私はそこで言葉を詰まらせた
「ん?何?」
誠は訊く。
「私…泣きたくなるの…。。誠が何処かに行ってしまいそうで怖い…。
消えないでね…。ずっと私の傍に居てね…。」
私は泣きながら誠に問いかける。
「…ホントに馬鹿だな夜那は。消える時は一緒。死ぬ時も一緒。
夜那を置いては行けねーからな。」
誠はそう呟く。
「死ぬ時も?ずっと誠と一緒に居られるの?」
私は少しだけ笑顔を見せて言った。
「うん。だからお前だけ先に死ぬなよ。」
263
:
燐
:2012/01/04(水) 21:21:30 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠は笑顔で言いながら私の右手をそっと絡める。
「ちょっと誠…?」
私は戸惑いながら訊く。
「夜那の弱点見つけた。」
誠はそう言って右手で私の耳を触る。
「ひゃっ…。」
私は思わず目を瞑って必死に耐える。
誠は私の耳を触るのを止めない。
「うぅ…。」
私はその仕草にじっと耐えた。
やがて誠は耳から手を離して、私の顎に手を添えた。
顔が上に上がり、私は目を開けた。
「ごめんな。弱点を知った以上何か弄りたくなっちまったんだ。」
…っ…。
何かズルイよ誠だけ…。
私だって誠の弱点を知って弄ってみたいよ…。
そう思っていた途端、誠は私と唇を重ねた。
誠は壊してしまいそうなほど私が好きなの?
何か誠を独り占めしたくなるよ…。
「…夜那…。」
誠は唇を離し、私を見つめながら呟く。
「何?」
私は微笑みながら言う。
「お前と二人で居る時だけ本能のまま動いていい?」
「えっ…。」
私はこの言葉に動揺してしまった。
「本能のままって感情的になるって事?」
私は問いかける。
「…うん。だってもう限界なんだ。俺だって…辛いんだよ。
ずっと夜那の心を満たしてきたつもりだった。でも俺の心は満たされてない。
俺…夜那に必要とされてるのか分からないけどさ。…夜那が欲しいんだ。」
誠はそう言うと立ち上がってベッドの淵に腰をかけた。
「私が欲しいってどう言う事?意味が全然分からないよ…。」
私は静かに地面から立ち上がった。
264
:
燐
:2012/01/05(木) 10:17:02 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
明らかにいつもの誠じゃない。
怒ってるのかさえ分からない…。
私はどうすればいいのかな…。
「ごめんね…誠。。」
とっさに出た私の言葉。
でも誠はその言葉に対して何も言わない。
やっぱり怒ってるの?
「私…誠の本心が分からない…。。誠が何をそんなに欲しがってるのかも分からない。
それに…私本当に誠が好きなのかな?」
私の言葉に誠は何も言わない。
「それさえも分かっていたはずなのに分かんなくなっちゃった…。
やっぱり私は解放されないんだ…。呪縛と言う鎖に…引っ掛かってしまって解けない。
ごめんね…誠自身を傷つけてしまって…やっぱ生きてた駄目だよね…私って。。」
私は誠に背を向けた。
それでも誠は何も言わない。
どうして何も言わないの?
…そっか。私は捨てられたんだ…。
最愛の人を一番早くに失ってしまうなんて何か虚しいね。
私は扉のノブに手をかけて扉を開く。
私は誠を一瞥して部屋を出た。
誠の部屋の扉を閉めた瞬間、私の目に涙が滲んだ。
265
:
燐
:2012/01/05(木) 10:55:14 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
捨てられるって心に穴が空いてしまうほど辛いよ。
何であんな事言っちゃったんだろ…私。。
私は静かに階段を下りて、リビングに向かった。
リビングに向かうと、誠のお母さんが後姿でキッチンに立っていた。
私は静かに席に座り、両手を膝につけ、俯いた。
「夜那ちゃん?」
誠のお母さんが私に気づき、私と向かい合わせの席に座る。
「どうしたの?そんなしょんぼりしちゃって…。」
誠のお母さんが私の顔を覗きながら言った。
「私…誠に捨てられました。」
私は正直に言った。
「捨てられる?誠に至ってはそれはないわね。嫌われるって事もまずないわ。
たぶん誠は夜那ちゃんに嫌われない為にあの子なりに努力してるだけよ。
夜那ちゃんに嫌われる事があの子にとって一番の苦痛だから。
ま…少し感情的な面もあるかもしれないけど誠は第一に夜那ちゃんを考えてるわ。」
誠のお母さんは真剣な顔で言った。
「でも浮気してたみたいなんです…。アメリカで…。それが一番の心残りなんです。」
私は膝に涙を零しながら言った。
「浮気?…それもないと思うわ。あの子…夜那ちゃんに逢う前…一時期は人間不信になったぐらいだもの。
でも夜那ちゃんに出会って誠は以前より自分の気持ちを表に出すようになったわ。
きっと夜那ちゃんに出会って何かが変わったのよね。誠の心の何かが。
だから浮気はないと思うわ。誠は前々から夜那ちゃんしか見てないと思うし…。」
誠のお母さんは笑顔で言った。
266
:
燐
:2012/01/05(木) 11:44:57 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そうかもしれませんけど…何か怖くて…。」
「大丈夫よ。ね、誠。」
誠のお母さんは扉に目をやる。
私もそれにつられて後ろを振り向く。
「母さんには敵わないな。ちょっと偵察に来ただけだしな。」
そう言って誠は扉から姿を現した。
「あら。本当は夜那ちゃんが心配で見に来たんじゃないの?」
誠のお母さんに指摘され誠の頬が赤くなる。
「ま…それもあるかな。」
誠は優しく私の頭を撫でてにっこりと微笑んだ。
「誠…怒ってない?」
私はおそるおそる訊く。
「…多少怒ってるよ。夜那が心にもない事言うから。お仕置き。」
そう言うと誠は身体を締め付けるほど強く私を抱き締める。
「あら大胆ね。誠も。」
誠のお母さんをそう言うと席を外し、キッチンでまた作業を再開させた。
「温かい…。」
私は誠の胸に顔を埋めた。
微かに心臓の音が聞こえる…。
「誠の部屋に行きたい…。今すぐ行きたい…。」
私は顔を上げて泣きながら言った。
「いいよ。行く変わりに俺の願いも聞いてくれる?」
誠は穏やかな口調で言った。
267
:
燐
:2012/01/05(木) 15:59:44 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…うん。何?」
私は少し動揺しながらも訊く。
「2つあるけどちゃんと聞いてくれる?」
「うん!ちゃんと聞く!!」
私がそう言うと誠は抱く力を緩める。
「夜那の身体ってしなやかだよな。天使みたいに身軽だし。」
誠はそう言うと私の両足を左手で持ち上げた。
「天使?じゃ誠は悪魔なの?」
「さぁ?どっちだろうな。」
誠は誤魔化しながら私の身体を抱えて階段を上っていく。
そう言えば私の身体重たくないのかな?
体重はあまり量った事ないけど…前量った時は47㎏だったし…。
それなりに重さはあるんだけど…どうなんだろ?
後で量ろうかな…。
268
:
燐
:2012/01/05(木) 16:33:56 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…夜那!!」
誠の声に私は我に返った。
「はい…?」
「さっきから呼んでたんだけど?」
誠は不機嫌な表情で私の顔を覗き込む。
「ごめん…。少し考え事してた。」
私は赤面になった顔を両手で覆い隠す。
「照れてる夜那も可愛いよ。」
誠はふいにそう言って私を自分の部屋に招き入れた。
「到着〜!!」
誠は何処か暢気に言った。
「ね…私の身体重たくない?」
私は訊く。
「重たくないよ。寧ろ軽い方だし…。」
誠は笑いながら言う。
「それならいいんだけど…。で、願いって?」
私は訊く。
269
:
燐
:2012/01/05(木) 16:48:41 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そんなに訊きたい?」
誠は甘い声で私に訊く。
何か本当に半年前とは全然違う…。
何だろ…半年前より大人びた?
誠が大人びたという事は私はまだ子供みたいな感じだよね…。
うぅ…子供…。。
何か誠に負けてる気がする…。
誠は私を地面に下ろして、ベッドにダイブした。
!?
その誠の行動に私は思わず硬直してしまった。
誠はベッドにダイブしたまま動じない。
270
:
燐
:2012/01/05(木) 16:49:44 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
第5章は長いです!!
やっぱ最終章なんで・・・・。
まだまだ謎多きストーリーですが・・最後までご覧ください。
271
:
燐
:2012/01/05(木) 18:15:26 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「ちょっと誠…?」
私が遠くから問い掛けると誠はゆっくりとした動作で起き上がった。
何か新たな一面発見ってヤツ?
ベッドにダイブって…。
結構大胆かも…。
「何突っ立ってんだよ。早くおいで。」
誠に言われ私は渋々誠に近づく。
「大丈夫。何もしないから。」
誠はそう言いながら私の前髪を左手で掻き分ける。
その仕草がとても愛しいよ…。
愛しくてたまらない…。
「…半年前より少し色っぽくなったな。夜那。」
誠に言われ私は戸惑う。
「色っぽく?どう言う意味?」
私は首を傾げる。
「魅力的になったって事だ。これ褒め言葉だから。」
「そうなの?良く分からない…。」
私は服の裾を握り締めて言う。
「嬉しくないのか?」
誠は心配そうに訊ねる。
「どう喜んだらいいのか分からないんだもん…。」
「素直に喜べばいいさ。お前が思うように素直に喜べばいい。」
誠は冷静な口調で言った。
「そっか…。そうだよね。」
私は何となく納得した。
何か納得がいかない…。
まだ誠は何かを隠している。
人には言えない何かを。
272
:
燐
:2012/01/05(木) 18:46:45 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私みたいに精神的な面なのかな?
でも違う気がするし…。
うーん…。。
「後さ、明日は二人で初詣行かね?」
誠の言葉に私はつい躊躇う。
「えっ…。初詣?」
私は聞き返す。
「うん。二人で神社に参拝すんの。」
誠は嬉しそうに言った。
「うん。行く!初詣なんて初めてだし…。」
「俺も初めてなんだ。一緒だな。」
誠は笑顔で言った。
「うん。一緒だね。…後…少し確かめていい?」
「いいよ。」
私は心に思った事をすぐさまに言った。
「浮気してたって本当は嘘なの?」
私は少し緊張して言った。
「…うん。ごめんな嘘吐くはめになっちまってさ…。
嘘吐いたらずっと夜那は俺の傍に居てくれるって思ったからなんだ。
でも嘘吐いても吐かなくても結果は変わらなかった。本当にごめん…。」
誠は啜り泣きながら呟く。
273
:
燐
:2012/01/05(木) 20:02:04 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
“夜那ちゃんに嫌われる事があの子にとっては一番の苦痛”
誠のお母さんのあの言葉が頭の中を駆け巡る。
私に嫌われる事が誠にとっては苦痛なんだよね。
誠はいつも笑って私に勇気を与えてくれた。
半年前の時も…今現在も…。
でも時々普段見せない顔をする。
冷たい態度を取ったり、愛想の無い言葉を放ったりする。
それが誠なりの“優しさ”だったとしたら―――…?
それとも“何か”から私を守る為とか…。
「…いいよ。誠の辛さはもう十分把握してるから…。」
「そっか…。お前はまだ知らない方がいい。」
誠のその言葉に私は言葉を失った。
えっ…。
まだ知らない方がいいってどう言う事…?
「腹減ったな。下行こうぜ。」
誠は立ち上がって背伸びする。
274
:
燐
:2012/01/05(木) 20:29:00 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「うん…。そうだね…。」
私は浮かない顔で戸惑いながら答える。
誠の嬉しそうな顔を見ると、あの言葉は消えてしまった。
…もういい。忘れてしまえばいいんだ。
忘れてその言葉に鍵を掛けて置こう。
そうすれば安心出来る。
「また顔が沈んでるな。ちゃんと笑えよ。」
誠は乱暴に私の頬を横に引っ張る。
「地味に痛いから…。」
私は笑いながら言った。
「ははは…。そんな事言うともっと弄りたくなんだけど。」
誠は無邪気にそう言うとさらに私の頬を横に引っ張った。
275
:
燐
:2012/01/06(金) 10:14:08 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「うぅ…。」
此処は耐えよう。
そしたらいつか止めてくれるし…。
「お前は笑顔が似合うのに…何でいつも顔だけが沈んでるんだ?」
誠が私の顔を覗き込む。
「…そう見えるだけだよ。本当は気のせい。」
私は笑顔で言った。
「…じゃあさ、この涙は何?」
誠は左手の人差し指でそっと目元に滲んだ涙を拭き取る。
私は答えられない。
「もうさ…我満すんなよ。泣きたい時は思いっきり泣け。
そうすれば気分がスカッってするからよ。」
誠は無邪気に言う。
「気分がスカッと?爽快感みたいな?」
「うん。今から思いっきり泣け!!」
誠にそう言われると余計泣けない。
「ごめん…。自分の部屋で泣いてくる。。」
私はそう言って誠の部屋を出て、自分の部屋に駆け込んだ。
276
:
燐
:2012/01/06(金) 10:57:07 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
部屋に駆け込んだ瞬間、私はベッドに向かい、仰向けに倒れ込んだ。
私はふと左手を天井に翳した。
左手の薬指には鈍色に光る銀色の指輪。
これで良かったんだよね?
何かがまだ終わってない気がするのは気のせい?
気のせいだと思いたい。
でも心の中に密かに残ってしまう。
そんな事を思ってるとどんどん涙が溢れてくるよ…。
あっ…そう言えばアレを付けておこう。
私はベッドから起き上がってパソコンが置いてある机に向かった。
私は机の引き出しの上から2番目を開けるとブレスレットが入っていた。
それは半年前に誠からくれた物だ。
半年前と比べて色褪せてない。
このブレスレットが私を救ってくれる気がした。
ブレスレットの真ん中には透き通った玉がワイヤーに通されていた。
私はブレスレットをしばらく眺めながら左手首につけた。
何かから私を守ってくれる気がする。
277
:
燐
:2012/01/06(金) 12:58:09 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
ずっと私を守ってね。
そう心の中で呟きながらブレスレットを見つめていると自然と涙が顔に滲む。
でも私はふいに思ってしまう。
憐に対する罪悪感を感じてしまう。
影の憐が言ってた事は本当なの?
もうすぐ憐が死んじゃうって…。
嫌だよ…憐が死んじゃうなんて…。
でもまだ確定じゃないし…大丈夫だよね?
何か胸騒ぎがする…。
気のせいだよ。
気のせいと思っておけばきっとなんとかなるし…。
その時。部屋の扉が2回ノックされる。
「夜那ちゃん。」
その声に私は目に滲んだ涙を両手で拭いた。
「はい。」
「夜那ちゃんのお兄さんが来て下さってるわよ。」
その言葉に私は慌てて自分の部屋の扉を開ける。
「祐也お兄ちゃん…。」
目の前には優しい微笑みを浮かべた兄が立っていた。
「元気そうだな夜那。てか、少し綺麗になったな。」
祐也お兄ちゃんの口調は何処か誠にそっくりだった。
「…お兄ちゃんに言われてもあんまり嬉しくない。」
私はふいに顔を逸らした。
「そかそか。そう言えばお前と誠さんだっけ?結婚すんだってな。
妹に先越されるって馬鹿だよな俺も…。」
お兄ちゃんは暢気に言った。
「うん…。でもどうして今日は此処に?」
「俺言ったじゃん。いつか夜那の顔見に逢いに行くって。憶えてねーのかよ。」
お兄ちゃんは苦笑いしながら言った。
278
:
燐
:2012/01/06(金) 15:13:29 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「ごめん…憶えてない。。」
私は俯きながら言った。
「そうか。ま、いいけどな。てか、純にお前をちゃんと紹介したいから後で下に来いよ。」
お兄ちゃんは私の頭をポンポンと撫でながらその場を立ち去った。
「お前の兄貴いい人だな。」
私は廊下に出ると、誠が笑顔で笑って階段に佇んでいた。
「何時からそこに!?」
「さっきからだけど?何そんなに驚いてるんだ?」
誠は無邪気に笑いながら言った。
「いや…。別に…。。」
私は右手の掌を強く握り締める。
「てか…純来てるんだよな?」
誠の表情が徐々に青ざめていく。
「うん。そう見たいだけど…。大丈夫だよ。何かあったら私が守るし。」
私は強気で言った。
「…じゃそれに賭ける。」
誠は笑顔で私の左手を握り締める。
279
:
燐
:2012/01/06(金) 15:39:13 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私と誠は仲良く手を繋ぎ、リビングに向かうとお兄ちゃんと目が合った。
「おっ!やっと来たな。純!挨拶しろ!!」
祐也お兄ちゃんに言われ、扉から純さんが顔を出す。
たしかに超絶美人…。
顔立ちは何処となく誠に似ている。
それに比べて私と祐也お兄ちゃんは全然似ていない。
性格も顔も全然似ていない。
「初めまして。神頼純です!!夜那ちゃんだよね?電話で少ししか喋った事がないから初対面だけど…。
あたしより可愛いね!!」
純さんはハイテンションで言う。
私はそのノリに着いて行けない。
「え、えっと…。」
私はつい緊張してしまった。
「おい純。夜那が困ってんぞ。お前のノリに着いて行けねーみたいだぜ。」
誠は呆れた表情で言った。
「あら誠じゃん。久々ね。後で渇を入れてあげるわ。楽しみにしててね。」
純さんは満足気な笑みを浮かべて言った。
280
:
燐
:2012/01/06(金) 16:51:26 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「いや…止めとく。」
誠はそう言って私の腕を引き、リビングにあるソファに私を座らせる。
「此処に座ってて。純と話つけてくるから。」
そう言って誠は純さんを廊下に出して、リビングから消えた。
「俺完全に空気になってたよな。」
祐也お兄ちゃんはそう言いながら私の隣に座る。
「そう言えばお兄ちゃんと純さんは付き合ってるの?」
私は平然とした顔で言った。
281
:
燐
:2012/01/06(金) 17:23:31 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「馬鹿言うなよな。アイツと俺はただの交友関係。純とは去年音楽関係で知り合っただけ。
純と俺が付き合う訳ねーだろ。馬鹿か。」
祐也お兄ちゃんは私の頭を乱暴に撫でた。
「でも純さんはお兄ちゃんの事好きかもしれないよ?」
「絶対ねーわ。アイツ彼氏居るし。てか、“お兄ちゃん”って呼ぶな。祐也でいいから。」
祐也お兄ちゃんは笑いながら言った。
「…分かった。じゃこれからはそう呼ぶね。」
私は笑顔で言うと、祐也は頬を赤く染める。
「…お前ってズルイよな。兄の俺でも惚れてしまいそうなんだけど。」
祐也はそう言うとソファに蹲る。
「それってシスコンってヤツだよね。申し訳ないんだけど…私には誠が居るし…。」
「知ってるし。こんなシスコン兄貴ですみませんね。」
祐也は不機嫌な表情を浮かべて言った。
282
:
燐
:2012/01/06(金) 18:11:52 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「祐也はいいよね…。外見もカッコイイし、私みたいな人が妹でごめんね。」
私が弱音の言葉を呟くと、祐也は優しく私の頭を撫でてくれた。
「夜那が俺の妹で良かったって思ってるよ。夜那の笑ってる顔初めて見たし。
やっぱ誠さんのお陰だったりする?」
祐也はそっと私の左手を握る。
「うん…。だって誠は私を必要としてくれてる。誠は私にとって私の一部なの。
誠が居たから私は此処まで生きてこれた。あの人からの呪縛も解けかかっている。
たぶん誠が居なかったら私はもうすでに死んでたかもしれない。
やっぱ生きてて良かったんだ私…。誠と言う最愛の人に出会えたんだから…。」
私は泣きながら呟いた。
「…お前がそれでいいならいいんじゃないか。俺はそれでいいと思うし。」
「ねぇ、祐也って彼女とか居ないの?」
私は訊く。
「居ない居ない。俺多分一生独身だわ…。」
祐也は笑いながら言った。
「そんな訳ないと思うよ。祐也にもきっといい人が見つかるよ。」
そんな言葉を言い放った時だった。
283
:
燐
:2012/01/06(金) 19:27:23 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「おいお前。俺の夜那に何手出してんだよ。」
誠は口を尖らせて言った。
「俺の夜那って…誠さんって独占欲とか強そうだね?ま、俺はただ単に夜那と喋ってただけだし。
そんなに自分の物にしたいんだ。」
祐也は余裕ぶってる表情をしながら言った。
「当たり前だろ。お前ってさ…随分余裕なんだな。」
「余裕?余裕はそっちの方なんじゃない?」
祐也はそう言って私の手を握っていた手を離し、立ち上がった。
「誠さんは良いよね。夜那にも愛されてさ。君が羨ましいよ。」
祐也はそう言い残してリビングを出て行った。
「何だよアイツ…。てか夜那アイツに変な事されてなかったか?」
誠はそう言ってズボンのポケットに手を入れる。
「されてないよ。お兄ちゃんと純さんの関係の事聞いてただけだよ。」
私は笑顔で返す。
「ふーん。何か納得いかねぇ。後で俺の部屋来い。」
「うん。分かった。」
私はそう言うと誠はリビングを出て行った。
284
:
燐
:2012/01/06(金) 20:08:53 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「誠も中途半端な奴ね。」
純さんはそう言いながら私の隣に座る。
「純さん…。」
「夜那ちゃん。あんな馬鹿な弟の何処を好きになったの?」
純さんは笑顔で言ってきた。
「…一途で優しい所です。」
「アイツが一途ねぇ…。ま、尽くすタイプだからね。あ、タメでいいよ。
敬語じゃ話しにくいでしょ。」
純さんは言った。
「いえ…遠慮しておきます。年上ですし…。後、祐也と純さんって付き合ってないんですか?」
「付き合ってる?あははは。あたし彼氏居るよ。祐也とは友達みたいなもんだし。」
純さんはお腹を押さえて笑っている。
「そうなんですか…。」
「うん。夜那ちゃんの事もっと教えてよ。あたしすごく興味ある。」
純さんは目を輝かせて言った。
285
:
燐
:2012/01/06(金) 20:30:07 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
それから私は純さんに今まであった事を全て話した。
義理のお母さんの事やお父さんの事…。
半年前の事も今現在の事も全てを純さんに言った。
全てを話し終わると、純さんの両目には涙が滲んでいた。
「そっか…。ずっと辛かったよね。あたし分かるよそんな気持ち。
あたしもそんな扱いされてきたから。」
「そう、なんですか…。」
私はそう言って頭を抱えて蹲る。
何か純さんを傷つけた感じがする。
ごめんね…私人を傷つけてばっかだよね…。
「おい夜那。何で来ない。」
その言葉にドア方面に目をやると誠が怒り顔で立っていた。
「ご、ごめんなさい…。」
私は怯えながら呟く。
「ちょっと誠!!夜那ちゃんが怖がってるじゃない!!」
純さんのその声は今の誠には聞こえない。
完全に誠は怒っていた。
「うるせぇんだよ純…。黙ってろ。」
誠は強引に私の右腕を引っ張り、リビングから私を追い出そうとする。
「止めて…誠。。痛い痛いよ…。」
私は泣きながら抵抗する。
286
:
燐
:2012/01/06(金) 20:59:36 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
それでも誠は私の腕を離さない。
「二人とも止めなさい!!」
真ん中に誠のお母さんが入って来てくれて無理やり誠の手を私の腕から引き離そうとした。
誠の手が私の腕から離れると私は地面に尻餅をついてしまった。
「何やってるの!?誠は!!」
誠のお母さんの怒鳴り声が部屋中に響く。
「止めてください…誠は何もやってません…。私が悪いんです。。
私が誠の言う通りにしなかったから…。」
私はゆっくりと地面から立ち上がった。
「夜那ちゃん。そんな自分を責めないで。」
「…ごめん。」
弱々しい誠の声。
「誠のせいじゃないよ…。誠が何を考えてるのかは分からないけど…。
私は誠に何処までも着いていくよ。そう決めたから。」
「…俺は何時かお前を殺してしまうかもしれないのにいいのか?
こんな俺に着いて行くのか?」
誠は脅すような声で呟く。
「それでもいいよ。何時だって二人で解決してきたし…。
辛い事があっても二人で助け合ってきた。
もし誠が私を殺すなんて事になったらそれは私が助ける。
絶対に助けるよ!!」
287
:
燐
:2012/01/06(金) 21:02:39 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私の決心は固まっていた。
「……。」
誠は黙っている。
288
:
燐
:2012/01/07(土) 08:56:27 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「誠!!何でこんな事したの!?」
純さんが誠に言う。
「…俺だって苦しいんだよ…。夜那が他の男と楽しそうに喋ってる所を見ると
イライラしてくんだよ。怖いんだよ…夜那が俺から離れていくのが…。
純にはそんな気持ち分からんだろ?」
誠はそう言い残して2階に行ってしまった。
「誠があんな事言うなんて…あたし姉なのに…何も気づけなかった。。」
純さんは地面に泣き崩れた。
「純のせいじゃないわ。誠はきっとまだ整理出来てないのよ。あの時の事を…。」
「じゃ誠はあの時の事をまだ恨んでいるの?そ…んな…。。」
私には耳を疑った。
あの時…?
あの時って何!?
でも聞くのが怖い…。
私は静かに階段を上り始めた。
289
:
燐
:2012/01/07(土) 09:47:20 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
どうしても聞かなきゃならない。
誠は私じゃない何かに怯えているのは確かだった。
でもその何かが分からない。
私は誠の部屋の前に着いた。
私は深呼吸を一回して誠の部屋の扉を静かに開ける。
部屋の中に入ってみても誠は居なかった。
ただ屋根裏へ続く扉は開いていた。
その扉の下には脚立が用意されていて私は何の躊躇いもなくそれに足をかけて上へ上る。
屋根裏部屋の扉に手をかけ、静かに部屋の中に入る。
辺りを見回すとベッド方面に後姿で蹲っている人影が見えた。
私は地面から立ち上がり、その人影の所に近づく。
「誠…。」
私が問い掛けるとその人影は動じない。
でも少し啜り泣く声が聞こえて来る。
「ごめんね…誠。。」
私は誠の隣に座り、左手で誠の頭を撫でる。
「…何で来るんだよ。一人にさせてくれよ。」
誠の弱々しい声に私は首を横に振った。
「…一人にさせないよ。誠の中で何が起こってるのかは理解出来ないけど…。
私はそれを解決したい。」
290
:
燐
:2012/01/07(土) 09:47:38 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
290行った!!!!
ひゃっはー!!!
291
:
燐
:2012/01/07(土) 11:31:36 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…一々うるせぇんだよ。何で他人のお前が首突っ込むんだ!!
もうほっといてくれよ…。」
誠は口を尖らせて呟く。
「ほっとけないよ!!過去に何があったのかは知らないけど…。
私は助けたい!!愛する人が困っているのにほっておけないよ!!」
私は誠の右肩を必死に揺する。
「…じゃ俺はお前の何なんだ?」
誠は脅すように私を睨み付けた。
その両目には涙が滲んでいた。
「…っ…。そんなの分からないよ……。。
でも…人間って事に変わりはない。」
私は泣きながらも笑顔で呟いた。
「人間…。俺…お前の役に立ってるかな…。」
誠は涙声で言う。
「…立っているよ。だって私が此処まで生きてこれたのは全て誠のお陰なんだよ。
半年前だって誠は何が合っても私を励まそうとしてくれた。
どんなに辛い事があっても必死に励ましてくれた。
だから私は此処まで生きてこれたんだよ?誠には本当に感謝してるんだ。
今度は私が助けるよ!!どんなに苦しくて過酷な現実が待っていても私は立ち向かってみせるから!!」
292
:
燐
:2012/01/07(土) 11:56:04 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私がそう言った後、誠の両目には涙が溢れ返っていた。
「…ごめんな夜那…。俺…怖かったんだ…。この傷見て。」
誠はそう言って私に左腕を見せる。
そこには何回も殴られた痕跡があった。
私はその傷を見て、泣きじゃくんだ。
「他にもあるけど…今は答えられない。時が来たら話すよ。」
誠はそう言うと私を優しく抱き締めた。
「誠も辛かったんだよね?精神的に…。過去に何かあったんでしょ?
私と出会う前に何か…。」
私の声は震えていた。
そう聞くのも怖く感じる…。
「…うん。その話はまた今度してあげるよ。今は言いたくないから…。」
誠はそう言って私の身体からそっと離れる。
293
:
燐
:2012/01/07(土) 12:40:06 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…うん。話したくなかったら話さなくていいんだよ?
無理しなくていいから。」
私は誠の顔を覗き込む。
「…ありがとう。夜那のその優しい言葉はいつも元気づけられる。
マジ嬉しい…。」
誠の頬が急に赤くなる。
「良かった。喜んでもらえて。さ、明日は初詣に備えて今から寝ます!!」
私はそう言ってすかさずベッドに潜り込む。
「誠も一緒に寝て?私の我儘かもしれないけど…。」
「いいよ。たまには夜那の我儘を聞いてみたい。」
誠もベッドに潜り込む。
「明日の初詣に憐は誘わなくていいの?三人で行った方が楽しいよ?」
「あっ…それなんだが。憐の奴…明日から親戚の家に泊まりに行くらしいんだよ。
ま…アイツが居なくなって清々したが。」
294
:
燐
:2012/01/07(土) 14:00:48 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そうなんだ…。私もう寝るね。おやすみ…。」
私はそのまま深い眠りについていった―――…。
翌日…。
私が目を覚ますと横には誠が寝息を立てて眠っていた。
「うーん…。」
私は起き上がって思いっきり背伸びをした。
「お風呂入って来ようかな…。身体がベタつくし…。」
私はベッドから静かに下りて、足音を立てないように忍び足で部屋の出口に向かった。
私は静かに部屋の出口から下に降りた。
今度は慎重に下に降りる。
足が地面に着くと、青い蝶が私の右肩に止まる。
「蝶さん…大丈夫だよ。私も誠も大丈夫だから。」
そう言うと蝶は私の頭上で一回転をした。
「蝶さんも嬉しいんだよね?私も嬉しいよ。」
私は蝶に向かって笑顔で言った。
すると蝶は私の正面に来た。
「蝶さん…私に何かあったらその時は逃げて。」
その時蝶は私に首を振ったような気がする。
295
:
燐
:2012/01/07(土) 14:55:09 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
もしかして自分だけ助かるのは駄目って事なの?
助かるのは皆一緒だって事なの?
蝶さんは…私を助け出してくれたんだよね。
暗い世界に居た私を助けてくれた。
だからこうして生きているんだ。
誠にも出会えたのは何かの運命なのかな?
もし誠に出会えてなかったら今私は此処に居なかったかもしれない。
生きていればいい事だってたくさんあるんだ。
それを教えてくれたのは誠や蝶さん…。私を支えてくれた人達全て…。
私はこの世界に必要な人間なんだ。
誰も不必要なんてない。
その言葉を信じて私は進んで行くね。
たとえ行き着いた場所が地獄だとしても…。
私は生きているんだ。
生きてる事に感謝しないとね。
たった一つこの命を大事にしていくよ。
もし私が魂だけになっても強く生きていくよ。
296
:
燐
:2012/01/07(土) 15:09:09 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私が積み上げてきた沢山の思い出も経験も全て忘れないよ。
何時までも私の心に刻まれ続けているんだ。
夢の世界の出来事も全て忘れない。
忘れたらその世界の人達が可哀想だから絶対に忘れない。
ふと思い返せば今まで色んな事が私の中で静かに音を立てて流れていく。
流れていく記憶の中で私は思う。
たとえ辛い事があっても自分を信じて乗り越えて来たんだって。
生きてて良かったんだよね私…。
生きてたから好きな人も出来てこんなに自分の事を大事に思ってくれる人達に出会えた。
私って今まで現実から逃げてたのかな?
逃げてたから義理のお母さんにも今まで怯えていたのかな?
逃げてたら全然いい事なんてないんだ。
逃げれば逃げるほど逃げたくなる。
でも私はそんな逃げると言う事を捨てたから今の自分があるんだ。
私の本当のお母さんも今頃何処かで思っていたりするのかな?
“強くたくましくなったわね夜那”って…。
思っていてくれてたりするのかな?
297
:
燐
:2012/01/07(土) 15:26:02 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
今度…お母さんの墓参りにでも行こうかな…。
そうすればお母さんにも会える。
姿は見えなくてもずっと私の傍に居てくれる気がする。
私を何時までも見守ってくれている気がする。
お母さん…ありがとう。
私は笑顔で誠の部屋の扉を開けた。
「蝶さん…これからも宜しくね。」
私はそう蝶に呟くと静かに私の右手の人差し指に止まる。
「さてと、朝風呂でもしておこうかな。」
私はそう呟き、1階に続く階段を降りる。
階段を下りて洗面所に一直線に向かう。
洗面所の扉を開けると、誠のお母さんが笑顔で立っていた。
「お母さん…。」
「朝風呂するんでしょ?はい。」
誠のお母さんから渡されたのは黒いワンピースだった。
それは半年前私が使っていたワンピースだった。
「これって…。」
「そうよ。貴方が半年前に使っていたワンピースよ。
捨てるのもったいなくてね。私が少しワンポイントとして工夫してある所はあるけれどね。」
私は誠のお母さんからワンピースを受け取った。
298
:
燐
:2012/01/07(土) 15:43:38 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
たしかにワンピースの右胸の所に白い花のブローチが付いていた。
何か申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「お母さん…。誠はもう大丈夫です。正気に戻りましたから。」
「本当に夜那ちゃんに感謝したくてもしきれないわ。」
誠のお母さんは嬉し涙を零しながら言う。
「あの…。」
「あ…分かってるわよ。で、朝ご飯は御節よ。お風呂から上がったら誠起こしてきてね。」
「分かりました。」
私はそう呟くと誠のお母さんは洗面所から出て行った。
299
:
燐
:2012/01/07(土) 15:45:12 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
コメ返し。
第2期ももう終わりに近づいてます。
此処で最後の難関みたいな感じが入ります。
此処からが一番夜那さんの苦痛に入って来ると思います。
ではでは引き続きどうぞw
300
:
燐
:2012/01/07(土) 15:45:44 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
300行きました!!!!
これからも応援宜しくお願いします!!!
301
:
燐
:2012/01/07(土) 16:41:07 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私は黒いワンピースを洗濯機の蓋の部分にのせて服を脱いだ。
私はふと右腕を見た。
昨日誠に握られた手形の痕がくっきりと残っていた。
あの時の誠はすごく怖かった。
普段の誠とは何処か違っていた。
私が知らない誠の裏の顔と言うべき感じだ。
私はそんな事も考えながらお風呂場に入った。
青い蝶は洗面所の扉の向こうで待っていてくれている。
私はシャワーを手に取り、身体を丁寧に洗い流す。
身体のベタつき感が一気に解放される気がした。
「はぁ…。」
昨日から気になってる事が一つある。
妙な胸騒ぎが昨日からした。
近々何かが起こりそうで緊張してしまう。
「今日は初詣だし…お正月ぐらい楽しまなきゃね。」
私はそう心の中で呟きながら頭からシャワーを被った。
「…これでよし。」
私はシャワーを壁にかけてお風呂場を出た。
お風呂場からあがってバスタオルで身体を拭いた。
302
:
燐
:2012/01/07(土) 17:17:40 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
身体を拭いて、ワンピースを着ていると扉がノックされる。
「夜那?」
その声に私は安心した。
「うん?何?」
私は聞く。
「…昨日はごめんな。俺…やけになってた。
お前に当たってしまってごめん…。」
「いいよ。気にしてないし…。それにあれは誠の意志でやった訳じゃないって分かってるから…。」
私は言う。
「…そうか。良かった…。」
そう言った瞬間、私は洗面所の扉を開いた。
地面には誠が座り込んでいた。
「誠?大丈夫?」
私が問い掛けると誠は顔を上げた。
「うん。大丈夫だ。俺も朝風呂すっかー!!」
誠はそう言って洗面所に消えて行った。
303
:
燐
:2012/01/07(土) 17:53:22 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私はバスタオルで頭を拭きながらリビングに向かった。
リビングに入ると、誠のお母さんがテーブルにいっぱい料理を並べていた。
「凄い豪華…。張り切って作ったの?」
私は訊く。
「そうよ。せっかくのお正月だもの。」
誠のお母さんは微笑ましい表情で言った。
「そうだよね。あれ?お父さんは?」
私は訊く。
「それがね…お正月なのに会社で飲み会があるって言って昨日の夜から出掛けちゃったのよ。」
304
:
燐
:2012/01/07(土) 19:24:13 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そうなんですか…。」
私はテーブルの席に座った。
「ま、今日の昼ぐらいに帰って来そうだと思うわ。」
「はい…。あの…純さん達は?」
私は訊く。
「純なら祐也君と仲良く帰って行ったわ。また明日来るらしいわよ。」
「そっか。分かりました。」
そう言った瞬間、後ろから誠の声が聞こえてきた。
「あーさっぱりした。」
305
:
燐
:2012/01/07(土) 20:04:48 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠の暢気な声が聞こえて来る。
「もう上がったの?早くない?」
「これぐらい普通だし。てか、お前は長風呂だよな。誰の影響なんだ?」
そう言いながら誠は私の隣に座る。
「分かんないよ。そんなの…。」
私はそっぽを向く。
「はいはい。分かったから。そう言えば母さん…純は?」
「純なら祐也君と一緒に仲良く帰って行ったわよ。」
306
:
燐
:2012/01/07(土) 20:11:35 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「アイツが仲良く…ぷっ。」
誠は腹を押さえて爆笑し始めた。
「笑いのツボにはまったのね。」
対面で誠のお母さんが笑みを浮かべている。
「やべぇ…ガチで腹いてぇ…。」
誠は未だに笑っている。
「笑いすぎだよ…。」
307
:
燐
:2012/01/08(日) 12:41:15 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私がそう言った直後、家のインターホンが鳴った。
「あら。こんな時間に…誰かしら。」
誠のお母さんは席を立ち、リビングを出た。
玄関で扉が開く音が聞こえた。
「あら憐君じゃない。どうしたの今日は…。」
誠のお母さんの声を確認して私は無意識に玄関方面に向かった。
玄関に向かうと、白のトランクを持った憐が笑顔で立っていた。
「憐…。」
私が呟くと、憐は口を開いた。
「夜那…目を覚ましたんだね。良かった…。」
憐は私に優しく問い掛ける。
でもその問い掛けは何処か悲しく感じた。
「うん…。今日から旅行なの?」
「そうだよ。親戚の家に泊まりに行くんだ。1泊2日の旅に行って来るの。
で、行く前に夜那に少しでも顔出しておこうかなって思って今日は来たんだ。」
「そう、なんだ…。楽しんでおいでよ。帰って来たら三人で騒いで遊ぼうよ。」
私は笑顔で言った。
でも心の中に妙な胸騒ぎはまだ続いていた。
このまま憐を見送ったら駄目な気がした。
308
:
燐
:2012/01/08(日) 13:09:16 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そうだね。じゃそろそろ行くね。後…お土産買って来るね。じゃ。」
憐は私に背を向けて歩き出した。
「最後に一つだけ聞いて…憐。。」
私は俯きながら呟く。
その声に憐は足を止める。
「何?」
「これ…持っていって…。」
私は服のポケットからミサンガを取り出した。
白の糸と黒の糸が交互に重なっている。
「左手首貸して。」
私が言うと憐はすんなり左手首を私に差し出す。
私は憐の左手首にミサンガを結び付けた。
「御守りだよ。私からの。」
私は作り笑顔で言った。
「ありがとう。明日僕の誕生日なんだ…。明日は夕方ぐらいに帰って来る予定だから
帰って来たらその時は宜しくね。」
憐は笑顔でそう言うとまた歩き出して外に消えて行った。
309
:
燐
:2012/01/08(日) 13:36:40 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
玄関の扉が閉まったと同時に私は地面に座り込んだ。
「憐…。」
昨日から続く胸騒ぎは何時しか私の中で大きくなっていた。
「夜那。」
後ろから誠の声がする。
310
:
燐
:2012/01/08(日) 17:20:47 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「誠…。」
自然と涙は出ない。
不思議だった。
「憐が来てたみたいだけど…何かあったのか?」
誠が訊く。
「ううん。何でもないよ。リビングに戻って御節食べようよ。」
「…そうだな。」
誠は私の右手を握って私の身体がリビングに向かっていく。
誠と居ると私の心が落ち着く。
一緒に居るから分かる安心感。
「…憐の事で気になる事があるのか?」
そう言った瞬間、私の身体が壁にぶち当たる。
私の身体がぶち当たると誠は私に顔を近づけた。
「誠?また可笑しくなったの!?」
私は誠の身体を両手で揺する。
「…大丈夫だ。気にするな。ちょっと本能的になっただけだ。」
誠はそう言ってリビングに戻って行った。
311
:
燐
:2012/01/08(日) 17:54:36 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
…大丈夫。
誠は可笑しくなんか無い。
きっと大丈夫だよね?
私はそんな事を考えながらリビングに戻った。
リビングに戻ると誠は笑顔で御節を食べていた。
312
:
燐
:2012/01/08(日) 18:30:02 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「夜那も早く食べようぜ。」
誠が私に手招きをする。
さっきまでの誠とは全く違う。
さっきまでの事は嘘のようだった。
「夜那ちゃん。一緒に楽しみましょうよ。」
誠のお母さんは私を椅子に座らせる。
「じゃ戴きます!!」
私は手を合わせて言ってお箸を手で持ち、具を用意してある皿に移していく。
「美味しい…。」
一口、口の中に入れるとどんどん食べたくなる。
「良かったわ。喜んでもらえて。」
誠のお母さんは笑顔で言う。
「夜那ってよく食うんだな。」
隣で誠が呆れた顔をする。
313
:
燐
:2012/01/08(日) 21:26:59 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「美味しいんだからしょうがないじゃない!!」
私はそう言って料理を食べ続ける。
「ご馳走様でした。」
隣に居る誠がそう言った。
「もう食べたの?」
「うん。夜那みたいに俺は大食漢じゃないんで。」
誠にそう言われ私は馬鹿にされたように頬を膨らませる。
「何かムカつく…。」
私は目を逸らして言った。
「…食べ終わったら夜那の部屋で待っておく。渡すものがあるんだ。」
「今此処で渡せばいいじゃない。何で態々夜那ちゃんの部屋なの?」
誠のお母さんが訊く。
「母さんには関係ない。俺と夜那の問題だ。」
誠はそう言って2階へ行ってしまった。
314
:
燐
:2012/01/08(日) 21:30:08 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
※お知らせ※
最終回が迫ってきました。
と言っても最終回まではもう少し先です。
最終回は泣けるかどうか分かりませんが・・・。
読者の皆さんが泣けるように努力します!!
では引き続きお楽しみください!!(*^_^*)
315
:
燐
:2012/01/08(日) 21:35:31 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…あの子も夜那ちゃんに逢ってからだいぶ変わったわね。
良かったわ。あの子があの時の事を恨んでなくて…。」
「あの…あの時ってどう言う意味ですか?」
私は訊く。
「えっ?あっ…何でもないのよ。忘れて。ね?それより御節はもういい?
片付けるわよ。」
「えっ…あっ…はい。。ご馳走様でした。」
私は手を合わせて椅子から立ち上がった。
316
:
燐
:2012/01/09(月) 15:37:32 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
あの時って一体何の事?
何か凄く気になる…。
でもあんま気にする事ないよね?
さてとお腹もいっぱいになったし2階に行くか。
でも渡す物って何だろう?
そんな事を考えながら私は階段に上った。
317
:
燐
:2012/01/09(月) 18:54:23 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
自分の部屋の前に着くと、少し扉が開いていて中の光が漏れていた。
私は静かに駆け寄り、扉の隙間から中をそっと覗く。
誠は中には居なかった。
「何コソコソしてんの?」
背後から低い声がして、私は振り返った。
「…誠。」
「さっさと入ってくれ。」
誠にそう言われ私は部屋の中に入る。
「自分の部屋なのに何で誠に指図されなくちゃならないの?」
私が訊いても誠は答えてくれなかった。
「で、渡す物って?」
「これ。」
誠が右手に持っていたビニール袋を私に差し出す。
中身を見ると、お菓子類が詰め込まれていた。
「お菓子…。渡す物ってこれだったの?」
「うん。それ以外にある?」
誠は言う。
「…何か期待して損したかも…。はぁ…。」
私は肩を下ろして座り込もうとした。
「今のは冗談。本物はこっちだ。」
「えっ?何処?」
私は誠の後ろを見た。
でもそこには何もなかった。
「夜那。口開けて。」
誠にそう言われ私は言われるがままに口を開けた。
私が口を開けた瞬間、私の口の中に飴が放り込まれる。
「飴じゃない。どう言う事なの?」
私は頬を膨らませながら言った。
「気づかない?それさっきまで俺が舐めてた飴。」
誠は意地悪に言った。
「えっ…。」
「嘘嘘。冗談に決まってんだろ。」
誠は笑いながら言う。
「嘘…か。本当だったらいいのに…。」
私は地面に蹲った。
「…今度ちゃんとお前にやってやるよ。」
誠は私の頭をポンポンと撫でた。
318
:
燐
:2012/01/09(月) 19:32:33 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…誠って恥ずかしい事さらっと言うけど恥ずかしくないの?」
私は蹲りながら言う。
「…さぁ?どうだろうな。ま、昔の自分に戻りたくないからそうしてるだけだ。」
誠はそう呟く。
その表情は何処か悲しかった。
どう言う事?とは訊かれなかった。
と言うか訊きたくなかった。
だって誠の過去に触れようとすると誠は答えてくれない。
一体その先には何があるのか私にも分からない。
きっと複雑な事情が絡んでいる。
そう私は思い込んでいた。
「さてとそろそろ初詣行くか。」
誠は笑顔で言う。
「うん!」
私は立ち上がった。
319
:
燐
:2012/01/09(月) 21:37:14 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「後さ…夜那。」
誠はニコニコの笑顔で言う。
「ん?何?」
私は訊く。
「キスしていい?」
誠の言葉に私は思わず動揺してしまった。
「今からするの?」
私が訊くと誠は小さく頷く。
「…うん。だって…夜那が好き過ぎてヤバイからさ。。」
「…いいよ。」
私はそう言って目を瞑る。
「怖いのか?」
誠はそう言った瞬間、誠の唇がそっと私の唇に触れる。
こう言う状況は半年前からまだ慣れていない。
私の右手が微かに震えだす。
誠は私の異変に気づいたのかそっと私の右手を握る。
誠はそっと私から唇を離す。
「夜那って案外素直じゃないな。新たな一面発見だ。」
誠は満足気に言った。
「…恥ずかしいから言えないだけだよ…。」
私はふいに顔を逸らす。
320
:
燐
:2012/01/09(月) 21:42:04 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「恥ずかしい…か。でもその恥ずかしさを晒してみたら少しは変わるかもしれないぞ?」
誠は天井を見上げながら言った。
「晒す?よく分かんないけど…。それっていい事なの?」
私は訊く。
「うん。いい事だと思う…。俺が思うには…。」
321
:
燐
:2012/01/10(火) 15:00:15 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…そうなんだ。そろそろ準備するね。」
私は部屋の隅にあるクローゼットに向かおうとした。
「じゃ俺も準備する。1階で待っててくれ。」
誠はそう言って私の部屋を出て行った。
私はクローゼットに向かい、黒のピーコートを取り出した。
「これを来よう。」
私は袖に手を通してコートのボタンを1個ずつ留めていく。
最後のボタンを留めて、私はクローゼットの下に置いてあった赤のショルダーバックを手に持った。
私は机に向かい、ショルダーバックのチャックを開け、その中に、携帯と財布も入れてチャックを閉める。
これでいいよね?
そう心で呟き、バックを肩から掛け、部屋を出た。
部屋を出た瞬間、隣の扉もほぼ同時に開き、誠が出て来た。
「さ、行こう。」
誠は笑顔で私に右手を差し出す。
でも誠の右手は微かに震えていた。
「うん。」
私は左手で誠の右手をそっと握る。
322
:
燐
:2012/01/10(火) 17:30:44 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
やっぱり怖いの?
誠は何に怯えているの?
私に怯えているの?
そう聞きたくても訊けないよ…。
「夜那?」
誠が私の顔を覗き込む。
「何?」
「何か考え事か?」
誠は言う。
「うん。でも大した事じゃないよ。大丈夫だから。」
「それならいいんだけどな。夜那って隙有り過ぎ。」
誠は私の頬に手を添える。
「…っ…。止めて…。」
「じゃ…帰って来てからしてもいい?」
誠は私の耳元でそっと囁く。
「…うん。それまで我慢だね。」
323
:
燐
:2012/01/10(火) 17:54:37 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…うん。」
誠は呟く。
「夜那ちゃん〜!誠〜!」
下から誠のお母さんの声が聞こえて来る。
「ほら行くよ!」
私は誠の手を強引に引き、階段を下りる。
階段を下りると誠のお母さんは白のダウンコートを着ていた。
「神社まで車で送って行ってあげるわ。さっさと行くわよ。」
誠のお母さんは車のキーを片手に玄関に向かった。
324
:
燐
:2012/01/10(火) 22:16:13 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私と誠は手を繋ぎながら玄関で靴を履いた。
私はベージュのムートンブーツ、誠は黒の中折れブーツを履いた。
「夜那…ガチで可愛い…。」
誠は恥ずかしそうに呟く。
「…誠だっていつもよりカッコイイよ。」
私も恥ずかしそうに言う。
「二人とも出発するわよ!!早く後部席に乗りなさい。」
誠のお母さんに言われ、私と誠は車に乗り込む。
私が先に乗り、誠が後に乗る。
325
:
燐
:2012/01/11(水) 14:37:26 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
誠は右手を離し左手で私の右手を握る。
誠のお母さんは車を走らせて、神社に向かった。
車の走行中、私は車窓から景色を見ていた。
空を見ると雲一つない快晴だった。
「綺麗…。」
私はそう呟くと後ろから誠が私を抱き締める。
「お前の方が綺麗だから。後、初詣行ったら絵馬書こうぜ。」
「絵馬?何それ。」
私は訊く。
「願い事を木の板に書き込んで神社の中の絵馬堂にかけておくらしい。」
誠は私の耳元で囁いた。
「へ〜。誠は何をお願いするの?」
「とりあえず今後の俺達の未来を願い事にするぐらいだ。夜那は?」
誠は訊く。
「私は…まだ決まってない。神社に着いてから考えるの。」
「そうか。…俺…お前に逢えて良かったって思ってる。」
誠は急に私の身体から離れた。
「何でそんな悲しい事を言うの?」
私は訊く。
326
:
燐
:2012/01/11(水) 15:41:02 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…いや、何でもない。忘れて?」
誠は何処か悲しそうな口調で呟く。
「…うん。分かった。」
私は素直に忘れる事にした。
でも何処か忘れられなかった。
「着いたわよ。私は此処で待っておくから二人で行ってきなさい。
何かあったら携帯で連絡するから。」
「分かりました。」
私はそう言って誠と共に車を降りた。
神社にはそれほど人は混んでなくて、小さな神社だった。
神社の前には何かを配っている人が居た。
私は不思議に思い、誠と共に駆け寄った。
「これ何ですか?」
私は屋台に居るおばさんに言った。
「甘酒よ。正月はこれで乾杯なのよ。無料だから飲んでいく?」
「はい…。」
私はおばさんから甘酒が入った紙コップを受け取った。
「そっちの彼氏はどうするの?」
おばさんは笑いながら言う。
「あっ…俺はいいです。お酒は飲めないんで…。」
「そう?でもこの甘酒は少し普通のとは違うのよ。隠し味を使ってるからね。」
おばさんは苦笑いしながら誠に紙コップを渡す。
紙コップを受け取った誠は一気に甘酒を飲み干した。
「はぁ…はぁ…。物凄く美味い…。この甘酒酸味があって美味い。」
誠の言葉に私も一気に甘酒を飲み干した。
327
:
燐
:2012/01/11(水) 16:41:44 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「この甘酒の隠し味って蜂蜜ですか?」
私は尋ねる。
「あらよく分かったわね。当たりよ。」
「ご馳走様です!」
私と誠は声を揃えて言った。
「ふふ。貴方達息ぴったりね。」
おばさんは笑いながら言う。
「じゃ俺達はこれで失礼します。本当にありがとうございました。」
誠は紙コップをおばさんに渡し私の腕を強く引く。
「あの…ありがとうございました!」
私は慌てておばさんに紙コップを渡すと、誠に引き摺られるように境内に入って行く。
328
:
燐
:2012/01/11(水) 17:16:55 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
境内の中はは入口から真っ直ぐに伸びて行った所に本堂が一つあって、右手側には絵馬堂と白いテントがあり、
左手側には小さな壺みたいなのがあった。
それ以外何もない何処か殺風景な神社だった。
「とりあえずお賽銭しよう。」
誠はそう言って財布の中から100円玉を2枚取り出した。
誠はその1枚を私に渡す。
私は訳が分からず不思議に誠に首を傾げる。
「俺の奢り。今日だけは奢らせて。」
誠はニコニコしながら言う。
「うん。」
私は頷く。
私と誠は同時に賽銭箱に100円玉を投げ込んだ。
私は手を合わせて目を瞑った。
たしか此処でもお願い事するんだよね?
じゃ…死ぬまでずっと誠の傍に居られますように…。
それが私の願いでもあり本心でもあった。
私は目を開けて静かに横を振り向いた。
誠はまだ目を瞑って願い事をしている。
329
:
燐
:2012/01/11(水) 17:46:03 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「これでいい。」
誠は苦笑いをして目を開ける。
「何をお願いしたの?」
私は訊いたが誠は答えてくれなかった。
そう思った時、バックから携帯の着信音が聞こえてきた。
私はバックの中を漁り、携帯を取り出した。
誠のお母さんからだった。
私は発信ボタンを押して携帯を耳に当てる。
「もしもし。」
『あっ、夜那ちゃん?今すぐ車に戻ってきて!』
電話の向こうから聞こえる誠のお母さんの声は何処か焦っていた。
「何で?」
『…今、お父さんから連絡があって…憐君が…事故に遭ったらしいの…。』
その言葉を訊いた瞬間、携帯が手元から地面に落ちた。
えっ…。
事故に遭った?
何で…?
「夜那?」
誠が渡しに駆け寄り、地面に落とした携帯を拾う。
早く行かなきゃ…。
憐の所に…。
でも足が竦んで進まれない。
誠は私の異変に気がついたのか、私をそっと抱き上げた。
330
:
燐
:2012/01/11(水) 17:56:05 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…嫌だよ…。」
ぼそっと出た私の言葉。
「どーせ何かあったんだろ?で、母さんが車戻って来いって言われたんだろ?」
誠の図星に私は頭を抱えた。
「…憐が死んじゃうよ…。」
私は泣きながら呟くが、誠は何も言わない。
車に戻り、私の身体が車に押し込まれる。
私はしばらく放心状態だった。
車を走らせて何分立っただろうか…。
私はずっと車窓から景色を眺めていた。
憐…。
私は心の中で何回も憐と言った。
誰か助けてよ…憐を…。
ねぇ…誰か…。
「…な…夜那!」
誠の声で私はゆっくりと振り向いた。
331
:
燐
:2012/01/11(水) 18:30:21 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私の目には涙がいっぱい溜まっていた。
「着いたぞ。」
誠は右手を差し出した。
私はその時手を握る気力すら失っていた。
すると誠は私の左手を強制的に握らせた。
握られた瞬間、凄い力で車から下ろされた。
車から下ろされた瞬間、一瞬バランスを崩して地面に倒れそうになった。
でも危うく誠が私の身体を抱き締める。
「重症だな…夜那。憐の病室まで運んでやるよ。」
誠の口調は落ち着いていた。
「…いいよ。自分で歩けるから…。」
私は静かに誠の身体から離れた。
私は誠の手を握り、身体を引き摺りながら病院内に入って行く。
どうしても足元が不安定で、麻痺してるかのようにあまり感覚がない。
「夜那ちゃん。憐君の病室は708号室よ。と言うか大丈夫?」
誠のお母さんが私に駆け寄る。
「うん…。大丈夫だよ…。気を遣わなくていいから。」
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