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剣―TURUGI―
1
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/05/13(金) 18:22:47 HOST:p3141-ipbfp404osakakita.osaka.ocn.ne.jp
どうも、こんにちは。竜野翔太です。
前作品は話が作りこめず、途中で断念しました。
ですが、今作品はそんなことのないように頑張ります。
応援よろしくお願いしますね。
作品へのアドバイスやコメントなどもいただければありがたいです。
282
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/06(金) 21:23:58 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
月峰 夜凪さん>
コメントありがとうございます^^
やぎ座なんですか?だったら、もう少し八木さんの出番多くても良かったかな……でもあれ以上出番増やせそうにないz((
僕もあの二人は結構気に入ってるんですよ。今では普通に名前で呼び合ってますが、『ザン君』『リーちゃん』と呼び合ってた時期もありましt((
そこら辺の話しも出来たらしますかね^^;
魁斗君は主人公なんで、ちゃんと見せ場作りますよー!いやー、腕が鳴ります((
レナさんは……最近ボケキャラへと劣化してしまいました……。クールキャラで通すつもりだったのに……
ラストまでは結構考えてるんですけど、その三角関係はいまいちまとまりません((
でも、眼鏡とアイドルはくっ付かせます!絶対に!
はい、頑張らせていただきます^^
283
:
ライナー
:2012/01/07(土) 23:11:00 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
コメント失礼します。
さーて、あと四つどうなりますかね。
と言うか、天界からの帰還、ご苦労様ッス魁斗さん^^;
自分は天界には行く気がしません、帰りが怖いかr((殴
行きはよいよい帰りは怖いってこの事ですね(笑)
やっと主人公動きますか、見せ場というか、小説の主人公が基本視点なので、見せ場はもっと充分に作った方が良いと思いますよ……(人のこと言えないんですが^^;)
にしても、レナさんクールキャラだとは初耳です!
結構ドジっ娘キャラだと思ってました(汗)
ギャグも程良く入っていて面白かったです。
続き楽しみにしております^^
ではではwww
284
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/07(土) 23:17:55 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ライナーさん>
コメントありがとうございます^^
天界から帰ってくる場合は必ず落下しますw
一回目もああやって人間ピラミッドできましたしねw
今回、人間界にハクアがいなかったらどうなっていたことか((
そうですよね……^^;
こっから魁斗君バンバン活躍するはず、です((
意外とクールなんですよ。
二話目からボケてますが、初めは茶目っ気のあるクールにしようと思ったのですが、中々上手くいきませんね((
今ではボケ&ドジっ娘+天然ですね。わあ、萌え要素がたくさんd((
はい、続きも頑張らせていただきます^^
285
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/08(日) 01:26:36 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十三閃「帰還と訪問」
魁斗は家の扉を開ける。
ハクアによると『レナとサワちゃんが憔悴してた』らしいので、帰ったらとりあえず励ましてやらないと。そう考えながら、ドアを開ける。
すると、何かが飛んできた。
物ではなく、人だ。
「カイト様ー!!」
長い銀髪の髪をなびかせ、抱きつくような態勢で憔悴してたはずのレナが飛んできた。
これなら心配ない、と魁斗が心の中で頷き、ひらりと華麗にかわす。
抱きつく相手がいなくなったレナの身体は空中でブレーキが効かず、そのまま顔から床に倒れた。
魁斗がそのままレナをスルーして部屋へ戻ろうとすると、レナが鼻を押さえながら涙声で引き止める。
「ちょ……カイト様……?冷たくありません?私の事はスルーですか?」
「……今はお前の抱擁を優しく迎えられるほどの体力は残ってねー」
レナは鼻を押さえているせいか、鼻声のような声で話す。
「……向こうで戦われたのですね……。大分苦戦されたのですか?」
いや、と魁斗は言葉を否定する。
それから遠い目でずっと昔の思い出を思い出すように、語りだす。
「強いて言うなら、カテリーナにどつかれたな。フォレストにはおちょくられるし……」
はは、という自嘲もすごく悲しいものに思えた。
思えば天界に行ってから良いことが起きてないような気がする。これも強いて言うなら、フォレストからキスしてもらったくらいだろうか。
こんなことを言えばレナの反応が大変になりそうだし、自分から言うほどの勇気もない。
魁斗はこの事だけを胸にしまい、部屋へと戻っていった。
部屋へ戻ると、とりあえず沢木に電話をしてみる。元気付けてあげないと、と思い電話をかけると、
『ふぁ、ふぁい!?こ、こちら沢木ですけど……』
「あー、サワ?大丈夫か?すんごい甲高い声が聞こえたけど……」
『だ、大丈夫、大丈夫です!それより、カイト君も大丈夫?』
ああ、と魁斗は頷く。
声を聞く限り、相手も思ったより元気でよかった、と魁斗は思う。
『……あの、明日学校来てくれる……?』
「ああ、行くよ。心配すんな」
『分かった……じゃあまた明日』
沢木はそう言って電話を切る。
明日、もう一度『十二星徒(じゅうにせいと)』の残りメンバーを整理しなければならない。
それぞれ、思うことは別々だ。
天界の方でも、今頃エリザが作戦会議をしていることだろう。
(―――あと、四人)
魁斗は気持ちを新たにして、残りの『十二星徒(じゅうにせいと)』と戦う決意を固めた。
「どーなってるの?」
電気が全く点いていない、暗い部屋の中で、椅子に腰をかけ、机に脚を乗せている少女がそう呟く。
その少女は腕を組んでおり、左腕には何かがくっついている。
「残り四人って……藤崎恋音も倒せなかったってことよね?まったく、あの娘が一番弱いのよ?一番弱い奴倒せないでどうするのよ」
部屋にはその少女以外に、三人いた。シルエットからして二人は男、もう一人は女だ。
その少女の苛立ちは納まらない。
恐らくは、この少女が『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーだ。
少女は溜息をつき、部屋にいる女へと視線を移す。
「……アンタ、いけるわね?切原魁斗を叩きなさい」
女はフッと笑みを浮かべ、少女に言葉を返した。
「了解っさー」
286
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/14(土) 19:40:35 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「それじゃあ、ちゃんとノートを写して、明日返してくださいね」
魁斗が帰還してきた翌日の学校からの下校中、魁斗と一緒に校舎から出てきた沢木は人差し指をぴんと立ててそう言う。
魁斗が休んでいる間(一日程度だが)の、授業のノートを魁斗に渡し、家で写してくるように説明しているところだ。
ちなみに、普段魁斗達が下校する際はレナや、稀に桐生と藤崎も一緒なのだが、レナは図書室に用があって『先に帰っててください』と言われ、桐生は藤崎に呼び出しをくらったらしく、今は魁斗と沢木の二人だけだ。
今日写しても良かったのだが、運が悪いことに今日の時間割は、昨日とは全く違う時間割なので、時間割どおり忠実に教科書を入れている魁斗は他の用意を持ってきていないのだ。
「しかし、悪いなサワ。お前だって勉強しなきゃいけねーのに」
「いいんですよ。私に出来ることは任せてください」
沢木は魁斗に笑顔を向けながら、そう言う。
そんな事を話しながら校門へと向かっている魁斗と沢木の目に怪しい人物が目に入る。
校門のところで、長身の男性が立っている。
遠目なので見た目の年齢は分からないが、ハットにスーツを着た、長身の男だということは分かる。
しかし、その男の怪しいところは見た目ではない。
何やら校門の前できょろきょろとしている。
完全に不審者だろう、と思った魁斗は同じく相手を見て表情を引きつらせている沢木に耳打ちする。
「(いいか。門をくぐる時、絶対にアイツを見るなよ。きっとややこしい事になる)」
「(は……はい)」
二人は真っ直ぐに前を見て、相手を視界に入れようとせず、門をくぐろうとする。そのため何処か不自然な感じになっている二人だが、当の二人は気付くはずも無い。
校門を出ようとしたところで、
「……ちょっといいかな」
「は、はいっ!?」
結構特徴のある独特な声で、長身の男に声をかけられ、沢木が甲高い声を上げた。
そんな沢木に魁斗は再び耳打ちをする。
「(アホかー!何で返事するんだよ!)」
「(す、すいません……。つい……)」
返事してしまったなら仕方ないので、魁斗と沢木は長身の男に目をやる。
「……何でしょうか?」
「君達はここの学校の生徒だよね。悪いが、職員室まで案内してくれるかな」
挙動が不審だった割には、意外と普通なお願いだった。
魁斗と沢木は顔を見合わせて頷き、それくらいなら、と先導して長身の男を案内する。
「娘さんが……ですか?」
校舎に向かう途中に、どういう理由で来たのかを、魁斗と沢木は長身の男に聞いていた。
なんでも、自分の娘がこっちの学校に転入するので、そのための手続きのためらしい。
「うん。上手く馴染めるか心配だが……君達の学年は?」
「二年です」
そう答えると、長身の男は嬉しそうな表情を浮かべた。
「実は私の娘も二年でね。もし同じクラスに転入することになったらよろしく頼むよ。葛城千(かつらぎ せん)という名前なんだ」
初対面の割には、かなり気さくな人で話しやすかった。
「ちなみに、貴方の名前は?」
「私かい?私は葛城獅郎(かつらぎ しろう)というんだ、いやあ、よろしくね」
魁斗の質問に、長身の男・葛城は答えてくれた。
二人は職員室の前まで案内し、そこで葛城と別れることとなった。
「いやあ、ありがとうね。助かったよ。最後に、君達の名前を聞いても良いかな?」
二人は僅かに戸惑った後に、名乗るだけならいいか、と思い、自分の名前を口にする。
「切原魁斗です」
「沢木叶絵です」
葛城は二人の苗字を復唱し、暗記する。
「切原君に沢木さんだね。分かった。娘に君達と仲良くするように言っておくよ」
葛城は職員室のドアをノックし、部屋の中へと入っていく。
それと時を同じくして、階段から降りてきたレナが未だ校舎内にいる、魁斗と沢木を見つけて、名前を呼びながら手を振っていた。
287
:
ライナー
:2012/01/15(日) 14:29:06 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
コメント失礼します、ライナーです^^
おおっ!? 新キャラ登場でしょうか、どんな人だか楽しみです^^
それと、『十二星徒』の動きも気になりますね。さてはて、これからどうなる事やr((
続きも楽しみにしております、ではではwww
288
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/15(日) 21:08:17 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ライナーさん>
コメントありがとうございます^^
ただの娘思いのお父さんです。
これからも登場しますので、活躍にご期待ください!
『十二星徒』の方はもう終盤に向かってます。
次の戦いは、魁斗とてんびん座の戦いになりそうですw
289
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/28(土) 13:56:28 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
午後五時過ぎ。
街の雑貨屋に制服を着た男女二人がなにやら話し合っている。
その二人は桐生仙一と藤崎恋音。
行き交う人々は、藤崎恋音が男子高校生と一緒にいる、ということで足を止め、数秒見てから再び歩き始める。
どうやら、桐生のルックスに自分が勝てない、と分かってしまったようだ。
忘れられがちだが、眼鏡イケメンの桐生仙一は、意外とモテるのである。
桐生と藤崎が、雑貨店で選んでいるのはカチューシャだ。
「ねーねー、桐生君。どっちがいいと思う?黄色か白か」
一方で、特に雑貨店で欲しいものはない桐生は、店内をきょろきょろと見渡して、藤崎の方に視線を向けると、
「白」
と短く答える。だが、
「えー、私的には黄色がいいんだけど……あ!こっちの赤いのもラメ入ってて可愛いかも!」
女との買い物には慣れている。
大体、自分の意見は相手に否定されることも分かっていた。
だが、分かっていたが予想通りになると、急に苛立ちがこみ上げてくる。
「久々の休みだって言うから……そもそも何で僕を誘ったんだい?女子と一緒の方が楽しいだろう?」
桐生は、やや不満げな声で藤崎に言う。
藤崎はカチューシャを選ぶのに必死であるが、一応質問は聞いていたらしく、返答する。
「だって、沢木さんとレナさんは切原君と一緒にいたいだろうし……。学校に女友達いないもん」
「同じクラスの……えっと、國崎さんだっけ?彼女は?」
あー、と藤崎は小さく間延びした声を漏らす。
「何か、最近来なくなったの。先生が言うには風邪とかの連絡は受けてないみたいだけど……」
友達のことだから気になるのか、藤崎は困ったような表情で俯く。
桐生は元気が無くなった藤崎の頭を、軽く撫でる。
「気にすることはないよ。何か用事があって、忙しくて連絡が出来ないだけじゃないかな。きっとまた学校に来てくれるよ」
「……でも」
藤崎の元気は戻らない。
桐生は軽く息を吐いて、
「お腹減ってない?今日は機嫌がいいから、奢るけど?」
「ホントに!?」
急に藤崎の元気が戻った。
表情を引きつらせて、桐生は苦笑いを浮かべる。
「……分かりやすいな、君は……」
二人は雑貨店を出て、何処で食事をするかの店選びを始めた。
すると、二人と一人の巫女装束を着た女子がすれ違う。と、
「ッ!?」
桐生の背筋に寒気が走った。
明らかに敵だという反応。桐生の直感がそう告げていた。
(……今のは、まさか!)
桐生の予感が、自然と身体を振り返らせていた。
だが、人ごみのせいかそれらしい女性の姿は見えない。
目立つ巫女装束の姿を着た女性を、見つけることが出来ない。
桐生は、眉間にしわを寄せて、顔をしかめている。
(―――『十二星徒(じゅうにせいと)』か―――?)
見間違いでなければ。
彼女の首に、てんびん座のネックレスがあったような気がした。
290
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/01/28(土) 21:14:12 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
途中の道で沢木と別れ、魁斗とレナは二人で家へと向かっていた。
特に何も話すこともなく、二人はただ黙って歩いている。
その状況に耐えられなかったのか、レナは口を開く。
「あの……カイト様」
レナの呼び掛けに魁斗は顔をレナに向ける。
呼んだからといって、特に何も話すことがないのだが、沈黙よりはマシだろうと思ったのだ。
レナは自然に口から出た言葉を、思わず言ってしまう。
「……何だか、少し会わなかっただけなのに……久しぶりに会ったような気がします」
「……は?」
レナはハッとして、急に頬を赤く染める。
恥ずかしいのか、魁斗から顔を背け頬に手を当てている。
何かいつもと違う、と思い、魁斗は溜息をつく。
「大丈夫か、お前。俺が帰ってきてから可笑しくね?」
「お、可笑しくなんかありませんよぉ!?私はいたって普通です!!」
と言っているが、顔は背けたままだ。
すると、レナの鞄からメールを受信した時の着信音が鳴り響く。曲は藤崎の曲だった。
レナは鞄から携帯電話を取り出して、メールの内容を確認する。
「……ハクアから呼び出しメールです。しかも私だけ」
「内容は?」
「『買い物したいんだけど人手がほしー。だから来てちょ☆手伝ってくれたら何か奢ってあげるから!』だそうです」
ほう、と魁斗は小さく返す。
顔を見せていないが、魁斗はレナがどういう表情をしているか大体予想がついた。
多分『奢る』という言葉に釣られ、ニヤけていると思う。
「……行っていいぞ。一人で帰れるし」
「そ、それは出来ません!もしお一人の時に襲撃されたら……!」
レナはそこで勢いよく振り返ってしまう。
まあ、必然的に顔も見えてしまうわけで。やはりレナの表情はニヤけていた。
自分の下心が丸出しの表情にがっくりするレナの肩に、魁斗はぽんと手を置く。
「行ってこい。大丈夫。人間なんてそういうもんだ」
レナは『はい』と元気が無い声を出し、うわーん!!と声を上げながら走り去っていった。
例のアイドルも、眼鏡少年の『奢る』という言葉に釣られているのだから、決して悪いことではない。
一人になった魁斗の耳に、女性の言葉が響く。
「やーっと一人になってくれたさねー!」
魁斗は勢いよく振り返る。
声は上からだ。電柱の上に立っていた人影が、そこから飛び降りて、華麗に地面に着地する。はずが、
「ひゅべっ!?」
足を滑らせ、甲高い声を上げて地面に倒れこんでしまう。
「……あのー……」
こんな登場をする人は初めてだ。
魁斗もそれなりに低姿勢で相手に声を掛ける。
「……あいたたたー……。やっぱ高すぎたねー。塀からにすべきだったかなー。いや、でもそれじゃ迫力にかけちゃうし」
「……」
降りて来た人影は、身体を起こして座り込みながら一人で反省会をしている。
にしても、奇抜な格好だ。巫女装束に薄紫の髪を、後ろで三つ編みに結っている。見た目は二十代の女性だ。
その女性は魁斗の視線に気付き、きょとんとした表情を向ける。
それからハッとして、すぐに立ち上がる。
「いっけね。忘れるとこだった。私は『十二星徒(じゅうにせいと)』のてんびん座。天草秤(あまくさ はかり)さ」
「……こりゃまた、面倒な奴が来たな……」
思えば、自分は変な『十二星徒(じゅうにせいと)』にばっか絡まれているような気がする、と魁斗は感じていた。
291
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/02/17(金) 22:07:21 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十四閃「天子VS天秤」
天草秤、と名乗った巫女服の女は、魁斗の事をじーっと見つめている。
一度目が合ったと思えば、自分の違うところに目を移したり、自分の事を凝視しているのは分かるのだが、あまり気味のいいものではない。
天草は顎に手を添えて、一人で勝手にうんうんと頷いている。
「……Bだね。付き合うのに丁度いいルックスだよ、君は」
「……はい?」
天草のいきなりの言葉に目を点にする魁斗。
自分を凝視したのは、ルックスの判断のためだけか?と僅かにがっかりする。相手の戦い方のための準備だと思っていた自分が馬鹿みたいだ。
「友達ならさ、どのランクでもいいんだけど、やっぱ恋人となるとAかBが丁度いいよね!Sランクってさ、ちょっと重くない?テレビで活躍してるイケメン俳優とか、アイドル歌手とかさー。世間から嫉妬の視線を永久的に向けられるんだよ?耐えられないよねー」
「知るかッ!!」
天草のマシンガントークに痺れを切らした魁斗が、思わずそう怒鳴る。
怒鳴られた天草は、ありゃりゃと声を漏らし、眉を下げた。
「……お前は『十二星徒(じゅうにせいと)』なんだろ?だったら、俺を狙いに来たんじゃねーか?」
「君はどうよ?」
「あ?」
やはり会話が噛み合ってない。
狙われたことに対して『どうよ?』と聞かれてるのかもしれないが、天草の口から出たのは予想外すぎる言葉だった。
「君は女の子と付き合うなら、SからFのどのルックスの女の子がいい?」
「だから知るかって!お前は戦いに来たのか、雑談に来たのか、どっちだ!」
忘れてた、と天草が言うと、彼女は十字の形をした槍を構える。
だが、槍の先はそれほど鋭さを感じさせるものではなく、先が少しだけ丸みを帯びている。
魁斗は相手の槍を見て、十分に警戒をする。
「……それが、お前の剣(つるぎ)か」
「そう。私の名前は天草秤。『十二星徒(じゅうにせいと)』の―――」
「てんびん座だろ?ちなみに名前もさっき名乗ってたぞ」
当然のように語る魁斗に、天草はぎょっとする。
「何で君が私の司る星座を知ってるのー?しかも名前も知ってたって……何者!?」
魁斗は思った。
―――ああ、コイツ。今までの敵で一番面倒くさいな、と。
魁斗は溜息をついて、双剣である二本の刀を構えた。
「……とりあえず、始めようぜ。天草秤」
「ひゅー。いきなりフルネームを覚えてくれるかー。名前で呼んでくれても良かったのにー」
生憎だな、と魁斗は呟きながら地面を思い切り蹴る。
たったそれだけで、十数メートルあった魁斗と天草の距離が一気に縮まる。
(わお、さすがに速いね)
天子の脚力の高さに、僅かに驚く天草。
話には聞いていたが、ここまでとは予想外だったらしい。
魁斗の横薙ぎに振るわれた刀を、天草は十字型の槍で防ぐが、強力な光を纏っている魁斗の力に負け、天草は横方向に飛ばされてしまう。
だが、天草はすぐに体勢を立て直し、電柱を蹴って、思い切り空に跳び上がった。
「なぁっ!?」
魁斗の視線も、自然と空中に舞い上がった天草へと向けられる。
彼女は宙で身体を舞わせながら、上空から槍先を地上の魁斗に向けた。
「ッ!?」
その状態で、天草は歌うように、短い言葉を紡いだ。
「獄中火葬(ごくちゅうかそう)―――『炎天(えんてん)』」
言葉と同時に、天草の槍先から巨大な柱のように、炎が噴出した。
292
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/02/19(日) 11:46:42 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「獄中火葬(ごくちゅうかそう)―――『炎天(えんてん)』」
天草の掛け声とともに、十字槍の先から巨大な炎の柱が噴き出す。
どんどん迫ってくる炎の柱を、魁斗は刀に光を纏わせ、受け止める。
「ぐ……っ!」
魁斗が歯を食いしばり、両方の刀を使い始める。
そして、纏わせた光をいっそう大きくして、刀を横に薙ぐような形で振るう。
すると、炎の柱は打ち消される。
だが、魁斗が上空に目をやると、さっきまでいたはずの天草の姿が見えない。
魁斗が相手の姿を追おうと、視線を這わせると、不意に後ろから声が飛んでくる。
先程と同じような詠唱を始めとした、先程と同じような技名が。
「天地鳴動(てんちめいどう)―――『雷天(らいてん)』」
魁斗が後ろを振り返ると同時に、頬のすぐ横を、黄色い電撃が一直線に走る。
動きを止める魁斗に、天草は槍を構えながら突っ込む。
「ッ!」
天草の突進に何とか魁斗は反応し、相手の攻撃を刀で受け止める。が、そこで魁斗は相手の意図に気が付く。今まで離れて攻撃していた相手が、急に接近戦に持っていった事に、早めに気付くべきだった。
―――槍の先が、こちらへと向けられたまま鍔迫り合いになっている。
ニィ、と怪しげな笑みを浮かべ、天草はゆっくりと口を開いた。
「裂空激昂(れっくうげっこう)―――『風天(ふうてん)』」
その攻撃は、魁斗の予想通りのものだった。
槍の先から竜巻が起こり、魁斗はそのまま後方へと吹き飛ばされる。飛ばされながら何とか体勢を立て直そうと思う魁斗だが、天草は畳み掛けるように、再び上空へと飛び、槍の先を自分に向けている。
(しまった……!これじゃかわせない!)
「獄中火葬―――『炎天』」
再び炎の柱が魁斗に向かって放たれる。
魁斗は抵抗できぬまま、相手の炎の柱を正面から受け、土煙が舞い起こる。
天草は着地して、その土煙の方へ視線を投げる。
「……君、ルックスはBなのに戦いはDだね。そんなんじゃ、私は倒せないっさよー」
楽しそうな笑みを浮かべる天草。
魁斗は刀を杖代わりに地面に突き刺し、口の端から垂れる血を手の甲で拭いながら立ち上がる。
「……うるせぇよ……!」
魁斗は、久しぶりの実践で感覚を取り戻したのか、口の端に笑みを浮かべる。
293
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/02/19(日) 13:56:28 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
立ち上がった魁斗に、天草は楽しそうな笑みを見せる。
魁斗も立ち上がってすぐは攻撃しようとしない。相手の剣(つるぎ)の能力を探ろうとしているのだ。
相手に正面きって訊ねて、相手が答えてくれるかも分からない。いや、自分の手の内を晒すような真似は、相手だってしないだろう。
「いやー、聞いてた通り結構粘るよねー。私の剣(つるぎ)、『七乱十字(しちらんじゅうじ)』の能力を分かったとしても、君に勝ち目はないってのよ?」
魁斗だって、相手の剣(つるぎ)の能力が全く分かっていないわけではない。
天草が技を出す前の掛け声に合わせて、それに対応した属性の技が出るということは何となくだが分かっていた。
今のところ分かっているのは三つ。『七乱十字(しちらんじゅうじ)』というからには、あと四つあるのだろうか。
「悪いことは言わないよ。諦めなさいって。たとえ私達を倒して『十二星徒(じゅうにせいと)』の真相に辿り着いたとして、君達に何が出来るのさ。希望を潰すようで悪いけど、君の中の誰もリーダーには勝てない。絶対にね」
天草は絶対の自信を持って告げた。
そこまで自分のリーダーを信じているのか。魁斗としても、天草はかなりの実力者だと分かる。そんな彼女に『強い』と言わしめるほどのリーダーが強いのは分かる。
だが、今まで仲間が何人もやられているのに、一向に動こうとしないリーダーを、魁斗ならば信用はしない。
「私にここまで追い詰められている時点で、君のリーダーへの勝機は限りなく薄いよ。諦めなさいって。時には大人の言う事を聞くのも肝心さ」
「……やってみなけりゃ、分かんねぇだろ……!」
魁斗の言葉に天草の表情が変わる。
今まで笑みを浮かべていた彼女の表情が、きょとんとした顔になった。
「……確かにお前は強いよ。そんなお前を下に置いてるリーダーはもっと強いってのは分かる。だけどな、俺達は勝たなきゃいけないんじゃねぇ……、勝つんだよ。お前にも、そのリーダーにも、『六道輪廻(ろくどうりんね)』にも、全部にな!!」
天草の表情に笑みが戻る。
だが、先程までの『楽しい』笑みではなく、『愉しい』笑みだ。
「いいねぇ、そういう気迫!危うく惚れちゃうとこだよ!」
天草は十字槍の先を地面に突き刺し、再び詠唱から始まる技名を口にした。
「氷牢閉鎖(ひょうろうへいさ)―――『氷天(ひょうてん)』」
掛け声とともに、魁斗を氷の檻が囲う。
魁斗は刀を、檻に向けて思い切り力を込めて、横に薙ぐ。氷の檻は音を立てて砕けていく。
天草は地面に槍を突き刺したまま、ニッと笑みを浮かべた。
「残念だったねぇ。『氷天(ひょうてん)』は、砕かれて次の技が出せるようになるんだよ。氷牢決壊(ひょうろうけっかい)―――『水天(すいてん)』」
言葉とともに氷が一点に集中し、水の塊と化す。
その水の塊は、魁斗の腹に吸い込まれるように、突っ込んでいく。
「ぐふっ……!」
魁斗は腹の痛みに耐えながら、体勢を崩さぬように持ちこたえる。
だが、一瞬の隙も与えようとしない天草は、再び魁斗へと突っ込んでいく。
天草が突き出すように、槍を前に出すと魁斗は顔を逸らして攻撃をかわしただけだった。
「同じ手にかかるかよっ!」
魁斗は刀の峰を天草の腹に叩き込み、相手を後方へと飛ばす。
天草は後方に飛ばされながらも、槍先を魁斗に向ける。
「……天地鳴動(てんちめいどう)―――『雷天(らいてん)』」
「待ってたぜ、その技」
魁斗は刀を構え迫り来る電撃を、片手の刀で弾いた。
「この技は威力は弱いが、早い。だからこそ俺は、アンタを飛ばしてその技を出させたんだ。威力が弱けりゃ飛ばされる方向と逆に出しても、反動で遠くに飛ばされないだろうからな」
そして、魁斗は反撃に移る。
天子の高い脚力を利用して、思い切り地面を蹴り、一気に天草へと突っ込む。
(―――速いッ!)
「戦いはDだって?上等だ」
魁斗は巨大な光を刀に纏わせ、相手の十字槍を狙う。
巨大な光を纏った刀を十字槍に叩きつけ、相手の剣(つるぎ)を破壊する。これで天草はもう戦えない。
(……しまった……!)
「俺のDは、ど根性のDだ!」
294
:
館脇 燎
◆SgMmRiSMrY
:2012/02/19(日) 15:06:35 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
コメント失礼いたします。 筆者が竜野様だったので拝見させて頂きました!
竜野様は更新率が多くて、アイディアの豊富さに憧れます。キャラクターも様々な人物が居て、とても面白いです!
僕が一番好きなキャラクターは桐生です。氷系は結構好きなので。
次の更新も楽しみにしております。
295
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/02/19(日) 15:39:15 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
館脇燎さん>
コメントありがとうございます。
もうすぐ300レスだというのに、相変わらずスローテンポなこの作品を読んでくださり、とても嬉しいです^^
ぶっちゃけて言うと、作品を更新する際は、大体三〜四割は思いつきで放り込んでます。そのため、最初から思っていたものとだいぶ違うものになってたりしますw
キャラの個性は一度指摘があったので、出来るだけ目立たせるようにしていますw 一番個性が弱いのは魁斗だと思ったr((
僕も桐生は結構お気に入りキャラですw 彼と恋音を絡ませている時が、一番楽しかったりしますw
氷系つながりでは、まだスノウしか出てませんね……。これから氷系は出てくるのか((
はい、続きも頑張らせていただきます!
296
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/02/19(日) 20:23:19 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
武器が壊されてしまった天草は、そのまま地面に尻餅をつくような体勢で、倒れてしまう。
戦う術がなくなってしまい、天草は剣(つるぎ)を破壊した魁斗を見る。
「……甘いさね……」
魁斗は天草の言葉に、反応する。
天草は尻をついたまま、起き上がろうともせずに、言葉を紡いでゆく。
「……私を直接狙わず武器だけを狙って……情け?それとも、敵でも女だからって優しさを見せたつもり?言っとくけどね、そんな中途半端な情けは必要ない!女を攻撃する勇気がないのなら、初めから戦うな!」
「……別に、情けをかけたわけでも、優しさを見せたつもりでもねーよ」
魁斗は静かにこう切り出した。
魁斗は自分の持っていた二本の刀をブレスレットに戻し、尻餅をついたままの天草に手を差し出す。
「ただ、何となく嫌だったんだ。アンタを傷つけるのは。本当の悪人って感じがしなかったから」
何?と天草は眉間にしわを寄せる。
魁斗自身も、今の自分が何を言っているのか、理解しながら喋っているわけではないだろう。
「俺だって、根っからの善人ってわけじゃない。一目見ただけで、その人が本当に良い人だってのも分かるわけじゃない。でも、戦ってる内に何となく分かるさ」
「知った風な口を……!私はアンタを殺すつもりで攻撃した!本気の本気で―――」
「それは嘘だ」
魁斗が相手の言葉を遮るように言った。
何かを言おうとしていた天草も、途中で言葉が詰まる。魁斗の言葉に圧されたのか、魁斗の言葉には言い聞かせるようなニュアンスが含まれていた。
魁斗は、言葉を続ける。
「俺を殺すチャンスならいくらでもあったはずだ。最初の『炎天(えんてん)』の後、俺の背後に回って『雷天(らいてん)』を出したよな。わざわざ威力の低い技を出さなくても良かっただろ。しかも、あの時俺は振り返るのに精一杯でかわすことが出来なかった。つまり、アンタは俺を狙って『雷天(らいてん)』を当てることも出来たし、違う技で攻撃も出来たはずだ」
確かに、魁斗の言う通りかもしれない。
背後から、全くかわすことが間に合わない相手になら、大技を出すだろう。少なくとも、あそこで『炎天(えんてん)』を出していれば、決定的なダメージは与えれた。
『水天(すいてん)』の後に、接近戦に持ち込まずに、『風天(ふうてん)』か『炎天(えんてん)』かで、遠距離で攻撃することも出来たはずだ。
天草がそれを実行しなかった理由は一つだ。
「―――アンタが善人だから、そうしたんだろ」
天草は顔を逸らして、噛み砕くように呟く。
「……そんな事ない……私は、私は……」
天草は悔しさを隠しきれていない。
そんなところを見せるのも、彼女が全くの悪人ではなく、人を殺すことに躊躇いを持っているからだ。
「剣(つるぎ)なら、俺の知り合いに剣(つるぎ)マニアがいるんだ。そいつなら、治せる人を知っているかもしれない。お前の剣(つるぎ)だって、また使えるかもしれないぜ」
魁斗は、差し伸べた手を一度も引っ込めずに、未だ伸ばしたままだ。
その差し伸べた手は、天草に『立て』と言っているのと同時に、『仲間にならないか』と言っているようにも見えた。
「……天草。お前さえよければ一緒に戦ってくれ。お前がいれば心強いし、『十二星徒(じゅうにせいと)』の情報だって、入手できる」
「……、私は……」
天草の右手が、ピクッと動く。
天草はゆっくりと差し伸べられた手に、自分の右手を伸ばしていく。
「……いいの……?私なんかを、仲間に入れても……?」
「ああ」
天草の疑問に、魁斗は即答した。
「説明なら俺がするし、皆だって納得してくれるさ。俺に任せとけ」
「……ありがとう」
天草は僅かに頬を染めて、自分の伸ばした右手を、魁斗の差し伸べた手に重ねる。
魁斗は尻餅をついたままの天草を引き上げて、立ち上がらせる。
「大丈夫か?」
「ふ、ふん!心配されるまでもないっさね!私はそんなにダメージは受けてないし、君の方が大丈夫か心配っさ!」
天草は腕を組みながら、そう言った。
魁斗はその様子に、僅かに笑みをこぼす。
「そういや、今レナはハクアさんと一緒なんだよな……。まずは二人に連絡して、天草の事を説明するか」
魁斗は携帯電話を開いて、レナとハクア(電話をかけたのはレナの携帯電話)に連絡する。
その時、天草秤は上空からの冷たい視線に悪寒を感じる。
だが、その事は、魁斗に言えず、大きな恐怖を感じながら、彼女は口を塞いでいた。
297
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/03/02(金) 21:31:13 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十五閃「本当の仲間」
天草秤の一件以降、レナのご機嫌はナナメ状態だった。
元『十二星徒(じゅうにせいと)』であるとはいえ、今では武器もないし、反抗の意志もない。更に少ないとはいえ敵方の情報を得られるのは彼女だけではなく皆にとっても利点である。それはいいのだ。
だが、彼女が問題視しているのはそんな利点だらけのところでもなく、天草が仲間になった事でもない。
現在、学校の昼休み。
この時間魁斗達は、屋上に集まって昼食を摂るのがお決まりになっていたため、ハクアも屋上に来ている。
そして何故か、変装など全くせず、巫女装束のまま来た天草秤が、思いっきり魁斗に抱きついている事だった。
レナの心境は今こうだ。
(……この野郎……!!)
普段表情には出さないレナにとって、悟られる事は少ないが、長年の付き合いであるハクアにはお見通しのようだ。
いや、親友でなくとも、自分の主が最近知り合った女に抱きつかれているのだ。平静でいられるわけがない。元敵であるなら余計にだ。
「……しかしまあ、切原君。君は良く好かれるよね、変人系の敵に」
桐生が紙カップの飲み物を飲みながら言う。
それを聞いた天草は、桐生に詰め寄り、ほとんどヤクザみたいな言い方で桐生に言葉を投げかける。
「ああん?誰が変人っさね。私の何処を見て変人だと決め付けとるさ?」
巫女装束に特徴的な口調。
何処と言われても答えに困るほどだ。まず、どこからツッコんでいいか分からない。
ずっと黙っていたら天草に勝ち誇った顔をされた。面倒が減って助かったが、あれはあれで表情に異様に腹が立つ。。
大人な桐生は、特にそこを気に留めずにいられるあたりがすごい。
「ところでさ、天草さん。聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
ハクアが小さく手を挙げてそう言う。
「『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーってどんなのなの?」
それは魁斗達が今一番欲しい情報だ。
その質問に、天草は僅かに黙り込む。
「……私でも分かる事は限られるっさ。ただ、女の人で、年は高校生ぐらい。こんだけしか分からんっさね」
どれも新しい情報だ。
一番最初に捕えた早乙女からは性別すらも聞く事は出来なかったのだから。
ただ、高校生ぐらいというのは少し驚いた。
「高校生かぁ……一気に近くなったね」
藤崎が溜息混じりに呟く。
「そうですね。もしかしたらこの学校に潜んでるかも知れませんし……」
「どの道、注意しても悪い事はないね」
沢木に続き、桐生がそう言う。
なんにしても、年齢と性別が分かったところで、相手を判断する事は不可能だ。
「それと、リーダーさんが言ってた事があるっさ」
全員が眉をひそめる。
天草は、人差し指を立てて説明しだす。
「名前は覚えてないけど……しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』が結構強敵らしいっさ」
「……しし座……か」
まだ戦ってない相手だ、と魁斗は思う。
最後の方に厄介な奴が残ってしまったな、と魁斗は溜息をついた。
「とりあえず、一人で行動すんのは危ないかもね。桐生君と藤崎さん、私とサワちゃん、カイト君とレナと天草さんのチームで行動しない?」
ハクアの提案に、レナは少し大きめな声で意見を述べる。
「私もハクアと沢木さんチームでいいです」
その言葉に、妙にピリピリしてると思った魁斗は、
「……どうしたんだよ、レナ。何か怒ってんのか?」
「私は怒ってなんかいません」
ぷい、とレナは魁斗から顔を逸らしてしまった。
天草の行動に乙女の怒りはマックスなのである。そんな女心に気付かない魁斗であった。
「レナがいいならいっか。じゃあ桐生君と藤崎さん、私とレナとサワちゃん、カイト君と天草さんチームで行動しましょ」
だが、彼らは後に知る。
このチーム編成が、悲劇を生む事になると―――。
298
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/03/03(土) 10:04:19 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
学校が終わった後に、魁斗達はハクアの言ったチームで家へと帰宅していった。
男子と二人きりの状態である藤崎は僅かに頬を赤くして、魁斗と一緒の天草はご機嫌である。だが沢木とハクアの二人と一緒のレナは、相変わらず不機嫌なようだ。
三人で歩いているにも関わらず、ハクアとも沢木とも話そうとしない。
それを見かねたハクアが口を開く。
「……アンタまだ怒ってんの?折角カイト君と一緒にしてあげたじゃない」
「そんな事じゃありません」
レナは少々苛立ったような口調でそう返す。
ハクアはもしかして、と思いレナに質問をしてみる。
「天草さんと一緒が嫌だったの?」
レナは僅かに黙り込み、俯いてしまう。
ありゃ、案外図星?とハクアが思っていると、レナは小さく口を開く。
「……分かっているんです。私は別に、天草さんが仲間になったことを批判しているわけではないのです。……自分に手を差し伸べてくれたカイト様に好意を寄せるのも分かります」
ただ、とレナは一度言葉を区切る。
「……ただ、分かっているのは彼女が良い人だという事……そんな彼女に嫌悪感を抱く自分が、分からないのです……」
恐らく、レナは天草を好きになれていないというより、信用できていないといったところだろう。
初めて会った人間に好意を抱くのは難しい。実のところ、桐生も藤崎もハクアも沢木も、天草を好きになれていないだろうし、心のどこかで信用できていないかもしれない。ただ、魁斗が信用しているから。彼らもつられて信用してしまっているだけかもしれないのだ。
ハクアは溜息をついて、
「馬鹿ね。そんな事、アンタの大親友である私が気付かないとでも思ってたワケ?」
ハクアはレナを言い聞かせるように口を開いた。
「だからわざわざアンタと天草さんを一緒にしたんでしょうが。二人じゃ気まずいだろうから、二人の事を本当に信用しているカイト君も一緒にね」
そういう事を初めから考えて。
だからこそ、ハクアは天草とレナを一緒にしたのだ。彼女はあくまでもレナの事を考えて、チームを編成していた。
「ま、初めて会った人と仲良く出来るなんて相当の猛者よ。普通の人じゃまず無理だわ。カイト君は単に好かれやすいだけなのよ。敵からも味方からも。良い意味でも悪い意味でも、彼は好かれるのよ」
レナは未だに俯いている。
ハクアはそのレナを見て、頭を軽くグーで殴る。
殴られたレナは頭を押さえて、思わず怒鳴ってしまった。
「な、何をするんですか!?デリカシーゼロですか!?今やっと『私は良い友達を持った』と改めて思っているところだったのに!!」
「いーつまでも辛気臭い顔してんじゃないわよ!こっちまで薄幸になったらどうするの!?」
その言葉を引き金として、二人はぎゃあぎゃあと言い合いを始めてしまった。
しかし、どんどんと話の軸がズレて、違う事で文句を言い合っている。
「そんなんだからアンタはたまにカイト君に引かれた目で見られるのよ!」
「な、人の事言えないでしょう!?ハクアだってカイト様に『うわー、何だこの人』みたいな目で見られてますよ!」
「はぁ?この完璧お姉様のハクアちゃんがそんな目で見られるわけないでしょ?」
「言いますけど、貴女は結構抜けてるところが多いですよ!?」
その言い合いを見ていた沢木が口を開く。
いつものように、笑みを浮かべて。
「……何だか、二人って姉妹みたいですね」
その言葉にレナとハクアが言い合いを途端に止める。
「ハクアさんがお姉さんで……レナさんが妹で」
沢木のその言葉に、ハクアがぷっと笑う。
「そう?そんな事初めて言われたわ」
「そうですね。髪の色も、顔も。全然違いますからね」
えへへー、と沢木は笑みを浮かべたままだ。
ハクアは腕を組んで、レナに言う。
「とりあえず『十二星徒(じゅうにせいと)』との戦いが終わったら、天草さんと仲良くさせるプログラムを考えなきゃ」
「大丈夫ですよ。自分で何とかしますから」
三人は、沢木の家へと向かって歩いていく。
299
:
館脇 燎
◆SgMmRiSMrY
:2012/03/03(土) 16:41:21 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
コメント失礼致します。
天草さんが仲間に加わって、一層賑やかになってきましたね。
妬いているレナがちょっと可愛いです^^
獅子座の方も気になります。獅子座の方がリーダーなのでしょうか?
続きも楽しみにしております。
300
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/03/03(土) 23:37:33 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
館脇 燎さん>
天草さんね、結構喋らせて楽しいんだけど台詞がそれほど多くないっていうこのトラップw
初めてと言っていいほど、レナが不機嫌になってますw可愛いと言って貰えると、嬉しいです^^
しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』さんはそろそろ出てきます。
やはり戦うのは……我らが主人公といったところでしょうかね。
はい、頑張らせていただきますね^^ノ
301
:
ライナー
:2012/03/06(火) 19:40:58 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
久々にコメント失礼しますね、ライナーです^^
このところ勉強が忙しく、友人にパソコン貸し出し放置状態になっておりまして……(−−;)
天草さんが仲間に加わって、一波乱ありそうですね。
レナの嫉妬を書くことで、新キャラのイメージが強まっていて良いと思います。
ですが、前回も言ったとおり、人数を意図的に減らしていかないと読者にキャラクターのイメージが追い付いてきません。
第七十五閃「本当の仲間」では少し主要キャラが出ていますが、他に出ていないキャラが空気キャラになってしまっています。
キャラを意図的にカットするには、幾つかの方法があります。まあ、これは誰でも思いつく範囲内ですが……
・学校側のキャラクターを転校させる。
・天界側に何か理由付けして、主人公と一時別れる。
・戦闘時に死亡(これは話が重くなるので、使いすぎに注意)。
・天草さんを『十二星徒(じゅうにせいと)』編だけのサブキャラクターにする。(後も敵が仲間になる場合はこの方法を使用する)
それと、これ以上仲間を増やす場合があるなら、現状で二人以上のカットは必要です。キャラクターが深く掘り下げられていないですので。天草さんが口調でしか差別化できなくなっています。
最後に言っておくと、バトルシーンがあるのは良いのですが、ほぼ何の努力も無しに魁斗達が勝利してしまっています。
ですので、修行シーンを増やすとより心の葛藤なども書きやすく、主人公達の苦労が伝わりやすくなります。
302
:
彗斗
:2012/03/06(火) 22:42:33 HOST:opt-183-176-177-115.client.pikara.ne.jp
コメント失礼します
質問なのですが前作品を見ないと話は分かりませんか?
303
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/03/09(金) 21:39:21 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ライナーさん>
コメントありがとうございます。
本当にお久しぶりですね^^
既にレナの頭の中は天草への嫉妬で波乱状態だと思いますw
彼女の心は意外と嫉妬しやすく、ヤキモチも妬きやすいのでw そういうところでしか彼女の可愛さが見出せなi((
天草さんは『十二星徒(じゅうにせいと)』編が終わったら多分出てきません。
っていうか出せなくなるような……。最低でも二人ですか。
天草……と誰がカットできるだろうか??そこは熟考しておきますね。
それに主要キャラ(魁斗、レナ、ハクア、桐生、藤崎、沢木)の出番も増やさねば……。
ああ、問題が山積みd((
毎回貴重なアドバイスありがとうございます。
これからも頑張らせていただきますね^^
彗斗さん>
コメントどうもです。
いえいえ、大丈夫ですよ。
前作品や、他の作品とはまったく関係のないものなので。
304
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/03/09(金) 21:57:58 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
藤崎恋音の心臓は張り裂けそうだった。
何故かといえば、若干気になっている男子の桐生仙一と一つ屋根の下、しかも桐生の家で当分暮らす事になったからだ。
相手が相手だからこうも緊張しているのか。修行の時などはそんなに気にならないはずなのにどうして?とそもそもシチュエーションが違うから、という事に気付かない少々おバカな藤崎だ。
隣同士で座っているにも関わらず、どちらも話そうとはしない。
今の二人は、まるで初めて付き合ったカップルのようだ。
そんな二人の腰掛けているソファの後ろから、妙に聞き覚えのある声が飛んでくる。
「あららー。二人ともどしたの?何緊張してるの?」
声の持ち主は、ピンク色の髪をポニーテールにした、二人にとってなじみがある人物だ。
桐生はこめかみに青筋を立てて、彼女の胸倉を掴む。
女子といえど、そこら辺は容赦が無い。
「何でいるんだ?ここ僕の家だよな?何でだ?何でお前が僕の家の合鍵を持っている?渡した覚えはないが?」
「……ま、まーまー……落ち着きなさいって……!」
少し首が絞まっているのか、ピンク髪のポニーテール女ことカテリーナはしんどそうな声で言った。
藤崎の制止があって、桐生が彼女の胸倉から手を離す。カテリーナは床に四つんばいになって、首を押さえながら涙目で咳き込んでいる。
カテリーナは正座をして、桐生と向かい合うように座った。
「えー、何故私がここにいるか、という事でございますが、ハクアさんからこのようなメールが届きまして」
カテリーナは携帯電話を開いて、メールの内容を見せる。
それを覗き込んだ桐生と藤崎が、声に出してメールを読んでみる。
「『元敵の天草さんが仲間になりましたぜよー。彼女から手に入れた情報が超ビッグ!なんとしし座の奴が激強だって!だから固まって行動しちゃってよ!』か……大体の理由は分かった。だが」
桐生は眼鏡を指先で上げて、再びカテリーナの胸倉を掴む。
「何で僕の家なんだ?天界に帰ればいいだろ。向こうにはエリザさんやザンザさんや、クリスタさんもいるはずだ」
「ちょ、ちょちょ、タンマタンマ!何で今日の桐生君はこんなにもコワイの!?」
いつも通りじゃない桐生の様子に、カテリーナは激しく動揺する。
藤崎は再び桐生を止めて、話しを本筋に戻す。
「とりあえず、君は僕達と一緒に行動したい、と。だったら不法侵入しなくても直接言ってくれればいいのに」
「だぁってぇ。年上なのに年下の子に『家に泊めて』ってお願いするの恥ずかしいもん」
年上?と桐生と藤崎は首を傾げる。
カテリーナは状況が飲み込めてない二人にきょとんとした表情を見せる。
「……ああ、多分十八歳ってことよね。びっくりしたぁー」
「だよね。冷静に考えればいいんだ」
藤崎と桐生が納得しかけたところで、カテリーナが首を横に振った。
二人は再び頭に疑問符を浮かべる。
「んにゃー、違うよ?私は二十一です」
「何で貴様が学校に来てんだよ?あぁ?」
桐生仙一が、昔の桐生仙一に戻ってしまった。ご丁寧に眼鏡も外している。
彼は再びカテリーナの胸倉を掴んでいる。だが、今回は掴むだけじゃなく、掴んだ上に持ち上げている。
「んにゃー!恋音ちゃーん、助けてー!」
「わー!桐生君落ち着いてー!」
とても騒がしい夕暮れだった。
こんなどうでもいいような、騒がしいやり取りだが、一人だけホッとした人物がいた。
言うまでも無く、以上にどきどきして心臓が張り裂けそうになっていた藤崎だ。
(……良かった……)
彼女は誰にも気づかれずに、心の中でそっと呟いた。
(……桐生君と二人きりなんて……意識しすぎて無理だったもん……!)
305
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/03/23(金) 22:03:04 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
天草と一緒に帰っている魁斗は、どこか落ち着かないような表情をしていた。
それもそのはず、天草とはついこの間知り合ったばかりだし、自分に好意を持ってくれているのは分かっているが、何か異様にベタベタしすぎている気がする。
魁斗は溜息をついて、現在も自分の腕に纏わり付いている天草に声を掛ける。
「……あのさぁ、天草……。もうちょっとだけ離れてくんない?歩き辛くて……」
その言葉を聞くなり、天草は頬を膨らませて魁斗を見つめる。
まるで、遊んでくれなかった親にせがむような、子供の目つきに近い。
「いーじゃーん、別にー。私だって若い男の子に甘えたいモンさー。それが女って奴っさねー」
「それは人によると思うけどな。まあ、一応肯定しておこうか?」
まるで会話の内容も親子のようだった。
だが、年齢は逆転していて、天草が我侭な子供、魁斗がそれを疲れきっているのか華麗に流す親のように見えた。
しかし、天草の仕草は若い男の子に甘える、というより兄か弟にくっ付いているようにも見える。
そう感じたのか、魁斗は天草に問いかける。
「……お前って、兄とか弟とかいたのか?」
「……、うん……。まあ……ね」
今まで快活な喋り口調だった天草にしては珍しく、何処か不鮮明な言葉が混じった。
濁すようなごまかすような。そんな言葉を聞いて、魁斗はドキッとするが、天草は続けて口を開いた。
「……弟がね……いたん、だけども……。あの子、高校卒業したら何処かに出て行っちゃって、それ以来音信不通……。生きてるかどうかも分かんないし……」
珍しく、天草が顔に悲哀の表情を浮かべる。
魁斗は生まれてからずっと一人っ子で育ったため、兄弟や姉妹がいる感覚は正直分かりかねるとこだが、レナを自分の姉と見立てて考えてみた。
今の生活で、レナがいきなりいなくなったらどれだけ不安か。どれだけ寂しいか。音信不通の状態で、どれだけ心配か。
(……まあ、そりゃ……いても立ってもいらんねーよな。もしかして、こいつが『十二星徒(じゅうにせいと)』なったのも……?)
魁斗は考え始める。
もし、彼女が弟を探す、という理由で『十二星徒(じゅうにせいと)』に入っていたとしたら……。
―――彼女は、本当に悪いだけの奴なのか。
天草はハッとして、ごまかすように慌てた口調で話し始める。
「あ、ごご、ごめんさね!?ち、ちっとばかし暗い話にしちゃったね!あ、そーだ。喉渇いてない?私がコンビニで買ってきてあげるさよ」
そう言う天草に、魁斗は厚意に甘える事にし、天草に頼む。
天草は嬉しそうな表情を浮かべ、コンビニへと走っていった。とりあえず、彼女が戻るまでここにいることにした魁斗だが、天草の言っていた『兄弟がいなくなったら』の話を少しだけ思い出してみる。
そして、自分に置き換えて、考えてみる。
(……兄弟か……。レナが急にいなくなる事はないと思うけど……でも、)
―――でも、いつかは―――。
分かっている。そんな事は分かっている。言われなくても分かっている。
いつかはレナも、自分の前からいなくなってしまう事は。
彼女がここに来た理由は、自分の中にある『シャイン』を狙う敵の集団から、自分を守ること。脅威が去ったら、レナも天界に帰ってしまうだろう。
「……なぁーんか……今まで気付かなかっただけに不思議だよなぁ……」
魁斗は、誰にというわkでもなくただ呟いた。
「俺にとってレナって、こんなにも大切な存在だったんだ」
「おや、君は」
魁斗の後ろから聞き覚えのある特徴的な声が飛んでくる。
魁斗が後ろを振り返ると、そこにいたのは以前学校に来ていた、転入する予定の生徒の親である、葛城獅郎だ。
警戒しながら振り返った魁斗としては、ホッとした気分になる。
「久しぶりだね。誰か待ってるのかい?」
「ええ、ちょっと知り合いを」
魁斗は葛城の言葉に答える。
ならちょっといいかな?と葛城は魁斗に訊ねる。
「ちょっとした世間話さ。場所も変えずに、ここで話そうよ」
葛城は、にっこりと笑みを浮かべてそう言った。
306
:
Mako♪
:2012/04/29(日) 00:17:26 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
コレ、ちょー面白いです!!
あ、申し遅れましたが、私はMako♪、まこです。
続きを楽しみにしています!!
では。
307
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/04/29(日) 00:23:59 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
Makoさん>
コメントありがとうございます。
かなり下がってgdgdになってましたが、コメントをいただけるのはありがたいです。
続きは出来ているのですが、文章にするのに少し手間取ってまして……。
もう少しで更新できると思いますので、それまでお待ちください^^
308
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/05/05(土) 19:12:14 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
魁斗は困っていた。
それもそのはず、娘の転校手続きのため、学校の職員室まで案内した際にちょっとだけ話した人とする世間話など、話題がほとんどないに決まっている。
しかもその上、年齢も確実に二十以上は違うだろうし、そもそも相手がどの手の話題を知っているかさえ、魁斗には考えられなかった。
(どーしよー!どーすんだ、俺ー!?ここは相手が話しかけてくるまで待つか?そして分かる話なら乗って、分からないなら適当に合わせてやる!)
魁斗は頭の中でそんな事を考えていた。
しかし、一方で葛城の方もニコニコと笑みを浮かべたままで、何も話してきそうにない。
この空気、耐えられんぜ、と魁斗が諦めかけた時に、
「君、アイドルとかって興味あるかい?」
ふと、葛城からそんな質問がかけられた。
質問の内容が意外だったのか、魁斗はしばらくきょとんとしてから、『普通です』と答えた。
「そうか。君くらいの年なら、興味があっても不思議じゃないのに。中でも、RE-ON!ちゃんだっけ?彼女は君と同じ学校の生徒だそうじゃないか」
つか、連絡先とか知ってるんですけど、と魁斗は心の中で思いながら、乾いた笑いを返す。
葛城は楽しそうな口調で、更に話を進めていく。勿論、彼に悪気などはまったくない。
「いやぁ、娘がね。彼女の大ファンで、『RE-ON!ちゃんと同じ学校に行ける!サインとかもらいたなー』と楽しそうに話しているんだよ。私も娘の影響で、彼女のファンになりつつあるんでね」
「……そ、そうですか……・そういや、サワもファンだったなー……」
サワというのは、この前一緒にいた茶髪の子かい?と訊ねてきた葛城に、魁斗は頷く。そういやサワとは面識があったんだっけ、と魁斗は改めて思い出す。
アイドルの話ももう特に話すことは無いのか、すぐ終わってしまった。
すると、葛城は次の話題として、魁斗のブレスレットに視線を落としながら会話を始めた。
「ところで、一つ聞きたいんだが、君のそのブレスレット。中々見ないデザインだが、どこで買ったものだい?」
その質問に魁斗はドキッとする。
別に触れられてほしくなかったわけじゃない。ただ、これを付けてるのが今となっては普通すぎて、今更これを指摘されるとは思わなかったからだ。
本当の事を話しても、理解出来ないだろうし、魁斗は半分真実、半分虚構の説明をする。
「えっとですね、これは親戚のお姉さんからもらったんです。なんでも、手作りだそうで……」
今の説明で真実なのは『もらった』というところだけである。
レナは親戚のお姉さんじゃないし、手作りなわけがないし。とりあえずは、これで誤魔化せればいいだろう、と思い魁斗は引きつった笑みを浮かべた。
それを真に受けた葛城は、『へぇ』と短く感嘆の声を上げた。
「手先が器用なんだねぇ。これほど精巧に作れるとは。君の親戚のお姉さんは素晴らしいよ」
だったら、と葛城が小さい声で呟くように独り言を言う。
とても、聞き逃す事が出来ないような言葉を。
「―――思ったより早く殺れそうだ」
え?と魁斗が聞く暇もなかった。
気が付けば魁斗の目の前に刀の切っ先が迫っている。
かわすことも『剣(つるぎ)』を発動するのも間に合わない魁斗は、そのまま状況が理解できず立ち尽くすしかなかったが、
「カイト君!」
天草の叫びと共に、天草が魁斗に飛びつき、そのまま横方向へと魁斗の身体が移動した。
勿論、魁斗の顔を捉えていた葛城の刃は、虚空を一閃し、葛城が僅かに驚いた表情をしている。
「あ、天草……!」
「大丈夫っさね?すまんっさ。こいつが近づいている事に、もう少し早く気付くべきだったさ」
知ってんのか?と魁斗は天草に問いかける。
今の状況で、何故葛城が自分を狙ってきたのかが分かっていない魁斗は、未だに葛城を『娘思いの少し変な父親』としか認識できていない。
天草は、魁斗の質問に軽く頷き、
「奴はとてつもなくヤバイっさよ。今名前を思い出したさね!しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』、葛城獅郎!!」
天草の言葉に、葛城は歪んだ笑みを浮かべた。
「……面白い。本当にそっち側についたのかい、天草秤!」
魁斗には信じられなかった。
こんなにも人当たりの良い人物が、自分達の敵である『十二星徒(じゅうにせいと)』のメンバーだという事を。
309
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/05/26(土) 22:33:24 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
二人は睨み合っていた。
今の天草秤の目には、大好きな魁斗の存在など映ってはおらず、同じく葛城獅郎の目にも、話し相手になってくれていた魁斗など映ってはいない。
今の両者の視線の先にあるのは、お互いだけだ。
「……まさか、とは思っていたが……君が私達を裏切るとはね。どういうつもりだい? 天草秤」
「どういう事もないっさね。私はただ、アンタらと一緒にいるより、カイト君達と一緒にいる方が何億倍も楽しいっさよ!」
天草の反論に、葛城は肩をすくめた。
まるで、『UFOを見た!』の一点張りで、無理矢理に納得するように子供に言われている親のように。
彼は腕を組んで、天草を説き伏せるように言葉を紡ぎだした。
「理解できないな。君だって本当は分かっているだろう? 確かに、私達と一緒よりそっちの方が楽しいだろう。だがね、そっちにいても何も得る物なんてないんだよ」
「なくて結構っさ! それに、今から戻ったとしても、リーダーが私にどういう決断下すかはアンタにも分からん事さよね? どうなるか分からん処置を待つより、こっちで楽しく過ごしながら、アンタらに反抗の牙を向けてる方がまだ将来はあるっさ!」
天草の反論に、葛城は更に困ったように溜息をついた。
面倒くさいなぁ、と呟いても可笑しくない葛城の表情が、一瞬にして冷たいものに変わった。魁斗の知ってる『娘思いの父親』の姿は微塵も残されていなかった。
「まあ、君の言い分も分からない事はない。戻って殺されたりなんて嫌だろうし」
だがね、と葛城は言葉を区切った。
天草がこういう反論をした時に、言い返す台詞を用意していたかのように、彼の口からすぐに言葉が出てきた。
「まさか、僕が粛清されるかもしれない状況の君を、何の交渉材料も無しに連れ戻しに来た、とでも思っていたのかい?」
『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーは、天草が今更戻っても何もしない。少なくとも、殺されはしないだろう。
つまり、彼は戻ってきても天草は殺される事はない、という条件を交渉材料に持ってきていたのだ。
さらに、畳み掛けるように葛城の言葉が、天草の耳に突き刺さる。
「それに、私達なら君の弟だって探し出せるさ。なぁに、難しい事じゃない。弟の捜索をしてもらいたかったら、そこにいる男を殺せ」
天草の決意が揺らぎ始める。
天草は心のどこかで、弟の事をまだ気にかけていた。それもそうだ。弟の事が心配にならない姉なんていないだろう。
彼女の心が、葛城にわしづかみにされたように、大きくぐらぐらと揺さぶられている。
「……わ、私は……!」
「さあ、結論を出したまえ。そこの少年を殺すか、我らに牙を剥くか」
錯乱する天草の肩に、魁斗の手が置かれる。
彼は、錯乱し震えている天草を気遣うように、優しく声をかけた。
「あんな奴の言葉に、耳なんか貸すんじゃねぇよ」
「切原魁斗くん。君は何故そうやって私の邪魔をする? 君にとっても、彼女は邪魔なんじゃないのかい?」
んなワケねーだろ、と魁斗は葛城に言葉を返す。
彼は天草の頭に軽く手を置き、二刀の剣(つるぎ)を片手に持ちながら発動する。
「今まで散々仲間がやられたっていうのに、天草がやられた時だけ連れ戻すなんて随分と優しいじゃねぇか。他の奴には声すらかけなかったんだろ?」
魁斗は知っている。
敵に破れ、仲間から救援が来なかった『十二星徒(じゅうにせいと)』を。早乙女瑠璃という少女を。双葉結花・解花という双子を桐生から聞いた。サソリという少年を藤崎から聞いた。八木という男性を、ザンザとカテリーナから聞いた。他にも、やられた『十二星徒(じゅうにせいと』はまだいるはずだ。
なのに、天草だけ連れ戻そうとするのは可笑しいじゃないか。
「お前らは、本当に他の奴らを仲間だと思ってんのか? 何でそいつら見捨てて、天草だけを連れ戻そうとしてんだよ!」
「……無駄に熱いね。そういうの、私は苦手なんだ」
「はぐらかしてんじゃねぇよ! 何で他の奴らに、救いの手を差し伸べなかったのかって聞いてんだ!」
「助けるわけないだろう。ただの捨て駒を、君はいちいち拾っていくのかい?」
その言葉に、魁斗の憤りは限界地を越えた。
メーターを振り切り、魔力を開放して刀に巨大な光が纏い始める。
「……ほぉ」
「カイト君?」
「……許さねぇ……!」
魁斗は噛み付くように呟く。
キッと力強く葛城を睨みつけて、魁斗は力強く宣言する。
「仲間を捨て駒なんて言う奴に俺は負けねぇ! 葛城獅郎、お前は俺がぶっ飛ばす! 本当の仲間がどういうもんか、テメェに教え込んでやるぜ!!」
310
:
Mako♪
:2012/05/26(土) 23:37:51 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
待ってました!
キャー!仲間思いの魁斗君対、葛城獅郎!勝ってくれ、魁斗君!!!!
竜野さん、頑張ってくださいね!
311
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/05/27(日) 10:24:45 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
Mako♪さん>
コメントありがとうございます。
魁斗が出会った敵の中で、一番仲間を道具としか思ってない奴ですね、葛城さんは。
仲間を大事、というか一緒に戦うべき友達、と思っている魁斗からしてみれば、葛城さんは外道の極みです。
だからあんな怒るのも納得できて……あれ? エリザとか一回ザンザとカテリーナ殺しかけてたような……((
魁斗はなんだかんだで、一人で戦う時は勝っちゃう奴です。
だから、今回もきっと大丈夫! なはず((
はい、続きも頑張らせていただきます^^
312
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/05/27(日) 12:20:30 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
またも久々なコメント、元ライナーの森間です。
ついに獅子座の方が出ましたか。しかも意外な登場 Σ(°0°) 読者に不意を突かせると言う点ではずば抜けて凄いですね……感心いたします^^
にしても魁斗が熱いですね! お前こそ本当の男だよとか言いたくなるレベルの((
バトル展開が楽しみですが、正直魁斗のモノホンの剣がそろそろ見たいですねー、読者としてはw いつ頃出るんでしょうか……
簡単にアドバイスをしますと、、「〜『UFOを見た!』の一点張り〜……」の部分ですが、シリアスな雰囲気を壊してしまうので、注意が必要ですね。場の雰囲気に合わせた比喩表現を心がけてみては如何でしょう?
では、続きを待っておりますw
313
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/05/27(日) 21:15:21 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間登助さん>
コメントありがとうございます。
そして、お久しぶりです。
気付ける人は気付いたと思いますよw 下の名前に『獅』って入ってますしねw
まあこの方は初めて出そうという時から、しし座の『十二星徒』に決定していました。
魁斗VS葛城、のカードはもうちょい後かと((
いやぁ、このままじゃ魁斗がボロ負けしそうな感じがします。ので、ちょっと準備期間ですね。
魁斗の剣は『祓魔の爪牙』で決定です。
レナからもらったものなので、彼はこれを一生使い続けるかと((
思いついた表現がそれだったので……比喩表現については僕もまだまだ修行が足りんなぁ、と思わされるところがありますw
以後、気をつけますね。
はい、続きも頑張らせていただきます^^
314
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/01(金) 22:47:10 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十六閃「七日の余暇」
魁斗は鋭い眼光で、敵と化した葛城を睨みつける。
天草は自分のために立ち上がってくれた魁斗を見つめており、一方で葛城は構えもせず刀を下に向けたまま余裕を見せている。
魁斗が今まさに足を踏み出そうとした瞬間、葛城は刀を指輪に戻して、くるっと背中を向けた。
その行動に、魁斗は勿論納得できない。
「……何のマネだよ」
「何って、撤退だよ。今日は君と戦うつもりはない。結果は見えてるからね」
その言葉に魁斗が反応する。
確かに、相手が強いのは言わなくても分かる。現に、先程も不意を突かれたとはいえ、かわせなかった。かわすことが出来なかった。かわすという思考すら出せなかった。
不意を突かれなければかわせた、とも断言できない。
「……結果は見えてるって……やってみなきゃ分からねぇだろ!」
「分かるよ。君と私では実力に差が開きすぎている。それはもはや君の得意な根性論じゃどうにもならないんだよ」
葛城は優しい口調で語った。
だが、いくら言葉を重ねられたところで魁斗の意志は揺るがない。
「だから、やってみなきゃ……!」
「……勝てないっさよ」
食い下がる魁斗を止めたのは、意外にも天草の言葉だった。
「勝てないっさ。私でも、葛城には勝ててないっさ。私相手に苦戦してるカイト君は、奴には天地がひっくり返っても勝てないっさ。……今の状況じゃ」
分かったろう、と葛城は息を吐く。
葛城は振り返らずに、背中だけで語る。
「天草の制止もあるんだ。とりあえず、私は君と戦わない」
魁斗は、葛城と天草の言葉に刀を下ろす。
しかし、葛城の言葉は終わらなかった。それは、魁斗が勝てないと示すような言葉ではなく、ただの宣戦布告だ。
「七日間、君に時間を与えよう。ま、せいぜいすぐにやられないように腕を磨きたまえ」
そう言って、葛城は姿を消した。
現場に残ったのは魁斗と天草の二人のみ。妙な静寂が二人を包む。
魁斗は思い出したように、携帯電話を開いて電話をかける。かけた相手は人間界の人物ではなく、天界の人物だ。
電話が繋がり、この静寂をぶち壊すようなド派手で可愛らしい声が飛んできた。
『ハッアーイ! いっつもニコニコ貴方のために働く女です! 可愛い可愛い貴方だけのメルティちゃんですよ!』
とんでもない挨拶だ。
だが、今はそれを気にしている暇ではない。魁斗はいつもならツッコむ相手の言葉を無視して、一方的に用件を伝える。
「ああ、メルティ。忙しいってのは分かってるんだけど、一つ頼まれてくれないか?」
メルティはしばらく黙って、言葉を紡いだ。
『……えーっと、意外だねぇ。カイト君が私に頼みだなんて……まあいいでしょう。調べも一通り済んで、丁度することがないしね。カイト君の頼みは断る理由がないよ』
魁斗はホッとしたような表情を浮かべると、用件を話し出す。
「そうか、話が早いよ。じゃあ、突然で悪いんだが……一週間、俺の師匠になってくれ」
『…………………………………………はい?』
メルティの驚愕の言葉は、魁斗の受話器に空しく響く。
更に、メルティは言葉を重ねた。
『はい?』
先程と何も変わらない、彼女にしては珍しい間の抜けた声を。
315
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/06/03(日) 08:33:57 HOST:222-151-086-008.jp.fiberbit.net
コメント失礼します、森間です。
久々のメルティ登場ですね、最近は簡単な描写でしか見なかったので完全に忘れていました((
ちょっと気付いたんですが、『十二星徒』の目的が主人公のシャインを狙うためという事になっていますが、わざわざ強くなるまで待つのでしょうか? それにシャインの目的もまだ主人公達の予想段階でしかないような気がしますし。
何故強くなるまで待つのか明確な理由が欲しいところですね。確かに少年漫画によくある手法だったりしますが、安易に使い過ぎかと思います……
それと魁斗の剣は『祓魔の爪牙』で決定とありますが、魁斗に天界の過去があるなら専用の剣があっても良いような…… 少し残念です。
さらに進行具合から言わせていただきますと、悪の組織を倒すと言う単純な作りになっているため、読んでいる内に物足りなさが少々。魁斗の過去が不明になっているならば、それを物語の中に入れても良いような気がします。ですので、もっとバトル以外のストーリー要素を入れられるようになると良いかな〜なんて((
全体的に纏めて言わせていただきますと、全体的なストーリーの流れをキャラクターが動かせていないと思います。
この小説はライトノベル寄りだと思いますので、キャラクターが大切だと思うのです。ですので、なるべくキャラクターの性格を軸にストーリーを書いてみては?
長くなり、またうざったい内容を書いているなと思われたでしょうが、参考にしていただけたら有り難いです。
ではではwww
316
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/03(日) 10:58:42 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間登助さん>
コメントありがとうございます。
自分としてもメルティは確かに久々ですね。
魁斗が一番修行のしやすい相手を選んだ、といった感じですね。レナやハクアの人間界メンバーは現在複数で行動しているため、魁斗も修行を頼み辛かったんでしょうね。
『十二星徒』の明確な目的は後から判明します。
実際葛城は『十二星徒』のリーダーからちゃんとした目的を聞かされていません。だから葛城の魁斗への敵意も『少し興味があるので、成長した彼と戦ってみたい』という感覚ですね。
ぶっちゃけると、『十二星徒』のリーダーと面識があるのは、メンバー内でほとんどいません。
魁斗の天界でのことは、十二星徒編が終わった後にちょこっとだけ話させていただきます。
といっても、真相までは明らかにならないんですが。
魁斗専用の剣は、コメントを頂いてから出そうと考えています。が、かなり後になる恐れが……。
こっから魁斗の修行に入るので、ちょこっとバトル以外のストーリーが入れられると思います。
自分も、バトル描写よりも日常描写の方が結構好きだったりしますので……あ、また魁斗が空気になる予感しかしなi((
ああ、それは自分でも反省すべき点が……。
実際この作品のキャラって動かし辛い奴ばっk(( 戯言は置いといて、キャラを上手く動かせていないということは、自分でもまだキャラの性格をはっきりと認識できていないのか? と思っていたり。
キャラクターの性格を軸に……ですか。難しいですが、やってみます。
いえいえ。いつも参考になるようなアドバイスばかりでありがたいです。
小説をただ読んで、『良い』や『悪い』を表現するだけでは、こちらとしてもどう改善した良いのか、どこの雰囲気を持っていったらいいのか分かりませんし。
続きも頑張らせていただきます^^
317
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/08(金) 21:15:56 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
魁斗の修行の相手として呼び出されたメルティは、かつてアギトと戦った河川敷で、魁斗と数メートル離れて向かい合っていた。
正直、魁斗の修行相手になるのをメルティ本人は潔しとしない。
理由は二つあるが、その内の一つは明らかに私情である『魁斗が好きだから戦いたくない』である。誰でも好きな人と争ったりするのは嫌だろう。メルティの心中にもあることで、異常な程までに魁斗に恋心を寄せているメルティとしては『力になりたいが、自分は戦いたくない』といったところだろうか。
そして理由のもう一つは、自分の本気が出せない事である。これは相手が好きだから、という理由ではなくキルティーアとの戦闘で『時の皇帝(タイムエンペラー)』が暴走したのが大きな理由である。
メルティはキルティーアとの戦いで暴走してから、『時の皇帝(タイムエンペラー)』の使用を控えていた。その証拠に、現在は十六歳の姿で、以前『十二星徒(じゅうにせいと)』に襲われた時だって、十六歳の姿で挑んでいる。
以上の点を踏まえ、メルティは溜息をついて魁斗に言う。
「……あのさぁ、カイト君。これは忠告になっちゃうんだけど……私手加減できないよ?」
「それでいい。いや、むしろそっちの方がいい。お前が本気にならないと、意味がないんでな」
それでもメルティは乗り切らない。
乗り切らない、というより彼とは本気で戦えない。そう思ってるからこそ、相手が『本気でいい』と言っているのに、戦えない証拠だ。
「俺は、葛城から皆を守れるくらい強くなりたいんだ。だから、一番強いお前で来い」
「……はぁ。どうなっても知らないからね」
そこで、メルティは『時の皇帝(タイムエンペラー)』を解放する。
綺麗で長い銀髪を後ろで束ねた、ハルバートを手にした女性。二十五歳のメルティだ。
「……お前、十年近くでかなり変わるんだな」
「まーね。いつまで経っても子供じゃいられないでしょ? さってと、じゃあ始めるけど……いい?」
「ああ、すぐにでも―――」
言おうとした瞬間、魁斗視界からメルティが消える。
魁斗がその光景に驚いている間に、姿を消したメルティは魁斗の背後に移動していた。
(―――速ッ?)
ドッ!! と魁斗の横っ腹に鈍い衝撃が走る。
魁斗はそのまま数メートル飛ばされ、最終的に地面に身体を滑らせるような感じで止まる。
「……そりゃ、いつまでも子供じゃいられないよ。カイト君にだけは無垢で可愛い私をみせていたかったけど、仕方ないな」
魁斗h半分睨みつける様な視線で、メルティを見つめている。
ハルバートを肩に担ぐように持ったメルティは、そんな魁斗を冷たい瞳で見つめながら言葉を放つ。
「カイト君の次の相手はカツラギシローだっけ? 『十二星徒(じゅうにせいと)』の中でもかなり強いんでしょ? 相手が私でよかったね。さっきの一撃がカツラギシローだったら、お前死んでるよ」
メルティが、今まさに教官とかした瞬間を魁斗は見た。
318
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/10(日) 11:26:12 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
魁斗とメルティが修行開始とほぼ同時刻、天草は沢木の家の前で、沢木と話していた。
魁斗は葛城獅郎が与えた七日という猶予をフルで修行に費やすそうで、ハクアが提案したチーム編成が出来なくなったのだ。そのため、魁斗から『サワなら泊めてくれると思う』と言われ、彼女のところに頼みに来ていた。
「全然大丈夫です。むしろ、私も人が増えた方が楽しいですし」
答えは案の定オーケーだった。
ほっと安堵の息を吐いて、天草は家の中に上がる。
家のリビングには、ハクアとレナが座っていた。レナは、天草へ一度視線を向けると、僅かに不機嫌になってから目線を逸らした。
「まー、カイト君ならこーなるんじゃないかと思ってたけど、まさか予想通りになるとはね」
「……それより、葛城獅郎……という名のしし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』と遭遇したというのは、本当のようですね」
レナの問いに天草は頷いた。
魁斗と天草が葛城と出会ってから、魁斗はレナと桐生、更に天界にいる何人かにも情報を伝達していた。しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』の正体を。
それを聞いた時、沢木は驚いたようだったが、彼女も何故わざわざ自分達に接触してきたのか、何となく分かってきたようだ。
「……カイト君は今メルティって人と修行してるさ。……大丈夫だと思う?」
天草は心配そうな表情でレナ達に問いかけた。
そして、ハクアと沢木が間髪いれずに答えを出した。
「んまあ、大丈夫でしょ。メルティさんなら」
「はい。心配はいりませんよ」
二人の早すぎる解答に天草は目を丸くした。
二人はメルティが魁斗にそれなりの好意を抱いている事に感づいている。だが、それを差し置いてもメルティなら大丈夫だと断言した。
何故なら、
「メルティさんなら、カイト君の事をよーく見てるから。限界になったら休憩挟むだろうし、心配要らないよ」
「でも―――」
「大丈夫だと言っているでしょう」
天草の言葉をレナが遮った。
天草はレナに視線を向けると、レナは息を吐いて、
「ちゃんと、カイト様だけではなく、私達も信頼してください。『秤さん』」
信頼の証、となるようなものをレナは口にした。
普通なら、信頼できないような相手にを下の名前で呼ぶことはないだろう。だが、レナは不器用なりに『天草を信用している』という証明のため、彼女の名前を呼んだ。
苗字ではなく、下の名前で。
レナの言葉に天草は表情を綻ばせて、力強く頷いた。
「……うん!」
その光景を見ていたハクアが、レナの耳元で囁くように話しかける。
「(……うふふ、レナってもしかしてツンデレ?)」
「(……なっ、貴女が『仲良くしなさい』とか言うからでしょう!?)」
「(……あららー、人のせいにしちゃって。でも、よくやったんじゃない?)」
「(……褒めるなら、もうちょっと分かりやすくお願いします)」
319
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/06/10(日) 14:37:26 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
コメント失礼します、森間です^^
ついに修行編、楽しみにしております。
それと、沢木宅のガールズトークがなんか和みますね。
>>316
で引っ掛かったところがあったので、少し意見させて貰いますね。
葛城の『少し興味があるので、成長した彼と戦ってみたい』という動機ですが、少々不純かなと思いました。動機というのは本来読者に共感を訴えるものですから、それだけでは読者が納得してくれません。もっと一般人が納得できるような理由を混ぜるといいと思います。
また、リーダーが仲間内でも不明なのはちょっと…… と思ってしまいました。まず、姿の知れない強大な力を持った何者かなんて着いていきたいと思うのでしょうか?
まだ脅しを掛けられているから脱退できない、とかなら分かりますが、裏付けさえもされていないので不安定かなと。
主人公の出番が無いのはズバリ言っちゃいますと、その主人公が動かしにくい性格に設定してしまっているということです。
厳しいことを言っちゃいますと、動かしにくいキャラは主人公向きではありません。こういう場合は、もっと単純なキャラ(極端に熱血、クールなど)にした方が動かしやすいですよ^^
ではでは、ご参考までにw
320
:
名無しさん
:2012/06/10(日) 17:06:12 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
中二臭いよ中坊www
321
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/23(土) 00:36:51 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間 登助さん>
コメントありがとうございます。
修行編……ぶっちゃけ魁斗が本気のメルティ相手に死なないか不安でいっぱいです((
レナとハクアの会話は書いてても、何だか和みます。さてさて、天草がどう入っていくか……。
ガールズトークの輪に入れない、恋音とカテリーナ(( 桐生がハーレムじゃねぇk((
次に書こうと思っていたところをご指摘いただきました。
いや、葛城さんの戦いたい理由の方じゃなく、『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの話ですね。
ぶっちゃけ、葛城さんはリーダーさんに弱みを握られています。
ただ、素顔を知らないだけで、面識自体はあるので(
>>285
参照 この場にいるのは、リーダーとその側近と葛城、天草です)。
単純なキャラ……結構熱血だと思うんですけどね……。
アイツ、いまいち熱くなりきれてないのか。松岡○造の力が必要d((
貴重なアドバイスありがとうございました。
322
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/23(土) 00:58:57 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
電気が全くついていない暗い部屋の中で、一人の少女が顔を机に突っ伏して、睡眠を取っていた。
そんな彼女の首元に、スッとナイフの刃が寄せられる。
ナイフを握る人物が、彼女の首を掻こうとした瞬間、後ろから唐突に声を掛けられる。
「……何をしている?」
後ろから掛けられた声は割りと若く、大体高校生くらいの少年の声だろう。
仮面をつけているため、顔までは確認できないが、黒髪の痩身であることは見た目で分かる。
ナイフを握っていた男も、仮面をつけており、表情は確認できない。
だが、
「参ったね。まさか、君がいるとは予想外だったよ」
特徴的な声のせいで、仮面の効果が全くない。
ナイフを持っていたのは葛城獅郎だ。
葛城はナイフを床に放り捨て、少年から距離を取る。
「……貴様、まさか殺そうとしたのか?」
「まさか。彼女がその程度で殺せるわけないだろう。さっきので私が殺せたら、既に『十二星徒(じゅうにせいと)』の誰かが殺してるさ」
「そーゆーこと」
いつの間にか、葛城が殺そうとしていた少女が彼の背後に立っている。
音も無く、誰にも気付かれず、本当に『いつの間にか』だ。
葛城は仮面を外し、少女へと視線を向ける。
少女は、仮面をつけたまま、腕を組み愉しそうな口調で告げた。
「さっきのアンタの話だと、私って相当嫌われてるみたいね。まったく、どいつもこいつも……私の何が気に食わないんだか」
少女は伸びをしながらそう言った。
隙だらけだ。無防備で、無邪気で、無垢で。今なら殺せそうな気がしないでもない。
だが、葛城にはどうしても彼女を殺せない理由があった。
「そーいえば、そろそろなんじゃない? アンタの娘が転校するのって」
「ああ、そうだね。私は娘の保身のために君らに協力しているんだ。娘が危険な目に遭ったら……その時は分かってるね?」
「あーはいはい。分かってるってば」
少女は面倒くさそうに答える。
それからしばらく考えて、彼女は少年の方に質問をした。
「ねぇ、向こうで残ってる奴らって誰がいたっけ?」
向こう、というのは恐らく魁斗達の戦力の事だろう。
少年は僅かに逡巡し、答えを導き出す。
「天界でなら、エリザ、ザンザ、クリスタ、ルミーナ、ゲイン、フォレストの六人。どれも厄介な奴らです。人間界では、切原魁斗、レナ、ハクア、桐生仙一、藤崎恋音、カテリーナ、メルティ、そして天草秤です」
「……そ♪」
少年の言葉に、少女は面白そうに返事をした。
彼が天草の名前を出したのは、恐らくもう彼女の事をどうとも思っていない理由だろう。仲間でなければ、ただの抹殺対象。そうう認識しか、彼らには出来ないのだ。
少女は、出口へ向かって歩き出し、室内にいる二人に告げるように言う。
独り言のような一言を。
「……葛城が与えた猶予って、確か七日よね。七日後、葛城。アンタは真っ先に天草を狙いなさい」
指名された葛城は、ニッと笑みを浮かべて、最終確認のように問いかけた。
「裏切り者は即刻排除、ですか?」
少女は間髪いれずに答えた。
「当たり前じゃない」
驚くほど、感情の篭っていない無表情で無感情な声で。
323
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/07/08(日) 14:28:12 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
現在、桐生の家にはその家の住人である桐生仙一とハクアの組み分けにより、彼と行動を共にする事になった、藤崎恋音の二人だけである。
本当はカテリーナなども居候していたのだが、今はいない。いつもなら学校から帰ってきたら、おもむろに部屋の中を(何か食べながら)物色しているのだが。
今日は家に帰ると、彼女の代わりにテーブルの上に彼女の残したであろう置手紙が置かれてあった。
『エリザ様から召集かかっちまったぜ! てなわけでバイビー』と書かれてあった。
文面だけでもイラッときたが、とりあえずいなくなってくれてよかった。
桐生はそう思っていたが、一人だけこの二人きりの状況を良く思っていない人物がいた。
言うまでもなく、藤崎恋音だ。
実を言うと、彼女は桐生とペアになった時点でどきどきしており、カテリーナがいてくれた事により、その心臓の鼓動を抑えていたのだが。
(もー、カテリーナさんの馬鹿ー! これじゃ結局同じじゃん! 二人になると余計に意識しちゃうんだってば!)
彼女の頭の選択肢には『意識しない』という解答はないようだ。
藤崎は顔を赤くしながら、桐生との距離を空けながらソファにちょこん、という効果音が似合いそうな様子で座っている。
彼女の顔が赤いことに気付いた桐生は、心配そうな表情をして、
「大丈夫かい、藤崎さん? 顔が赤いけど……熱でもあるの?」
「へ!? べ、別に……私は全然大丈夫だけど……」
「そうか。……何かあったら言ってよ。遠慮とかしないでいいから」
桐生のその言葉に藤崎はこくりと頷く。
部屋に再び沈黙が訪れる。
そんな中、桐生はいろんな事を頭の中で考えていた。
(……しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』との戦いに備え、切原くんはメルティさんと修行してるって聞いた……。ということは、彼は自分の力の足りなさを感じているということか。……また、置いていかれてしまうかもな)
桐生は魁斗より戦っている期間は長い。
しかし、最近ではその魁斗よりも自分の方が弱いと感じてしまう。
『死を司る人形(デスパペット)』との決戦では、自分はスノウと戦ったが、彼はそのスノウより強いディルティールと戦い勝利を収めている。
やはり、置いていかれている。
「……僕は一体、切原くんに何が出来るんだろう……?」
言葉が、口から出ていた。
その言葉を聞いた藤崎が、口を開く。
「そんな、気負う事ないよ」
いつの間にか、彼女は自分のすぐ隣にまで来ていた。
藤崎は桐生をじっと見つめたまま、彼の左手にそっと自分の右手を重ねる。
「何でもできる。力になることも、隣で一緒に戦うことも、傍で支えてがえることも。桐生くんなら何でも出来るよ」
「……藤崎さん……」
「自分に自信を持って! その方が、桐生くんらしいって、私は思うよ!」
にっこりと笑いながら、彼女は伝えてくれた。
桐生はフッと笑みをこぼしながら、藤崎を見つめて一言だけ告げた。
「ありがとう。何だか、自分への自信と、元気をもらったよ」
「いやいや、力になれてこっちも良かったよ!」
一方、天界でも動きがある。
敵の、ではなくエリザ達の動きだ。
現在この場には、エリザ、ザンザ、カテリーナ、クリスタとフォレストが集まっていた。
代表のエリザが口を開く。
「しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』の撃退は、とりあえずカイト君達、人間界の人達に回そう。私達は、彼らがしし座を倒した後、すぐに残りの奴らを倒せるようにアジトを探す」
「まあ、その方がいいだろうな。その方が私達も人間界と天界とを右往左往せずに済むだろうしな」
エリザの言葉に、腕を組んだまま聞いていたクリスタが同意した。
次に、カテリーナに抱きかかえられ、不機嫌な顔をしているフォレストが口を開く。
「ですが、実際どうすんですか。情報収集に特化しているメルティさんは、現在天子の修行に大忙し。僕らだけで特定できるような場所に陣を構えているとも考えられませんが」
「うん。だから最初にこの事を伝えておいたルミーナとゲインには先に捜索に当たってもらってるんだけど……中々連絡が来ないのよね」
「そう簡単に見つかっちまっても面白くねェしなァ」
エリザはしばらく考えて、結論を出す。
「だから私達も手分けして情報を集めるわよ。私とザンザ。カテリーナとクリスタとフォレストちゃんで、分かれるわよ」
その提案に異を唱えるものはいない。
五人は二組に分かれて、捜索を開始する。
エリザとザンザの二人に、黒い影が迫っている事は誰も知らない。
324
:
計ちゃん
:2012/07/11(水) 18:02:25 HOST:ntfkok253193.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
アナタ、シコシコ文章、いつもご苦労様ですね。
あなたのシコりには、感動させられました。
325
:
計ちゃん
:2012/07/11(水) 18:03:57 HOST:ntfkok253193.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
もちろん、良い意味でのことですよ。
悪い意味で言うような、浅はかな女等どもとは違いますから。
326
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/08(土) 21:05:40 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ハクア「ひっさびさのハクアお姉さん登場ー!!
いやぁー、このレス随分ご無沙汰ですなぁ。駄目な作者がずっと放置しててごめんねー。
つーわけで、今日からちょこっとやる気出すらしいわ。実のところ『こっからどうすっかなー』って考えてたらしいから。
しかしこっから始めても、もっかい読み直すのツライじゃん?
ってなわけで、簡単なあらすじを紹介するわ。
紹介っていっても、私がやるわけじゃないのよ? 『説明なら私にお任せ! 動く広辞苑』ことレナちゃんに頼むわ!」
レナ「どんだけ適当なやり方ですか! もう、いいです。やる気がないようですし。
この物語は、私とカイト様が出会うところから始まります。
脚力が高いことだけが自慢のごく平凡なイケメン高校生カイト様は―――」
魁斗「オイコラ。誰がイケメン高校生だ。変な属性追加すんじゃねーよ」
レナ「あら、違いました?」
恋音「つーかこれじゃ一向に進まないわよ? 本当に大丈夫?」
仙一「大丈夫じゃないだろうね。君ら知ってる? これって文字制限あるんだよ」
魁斗「それを早く言えよ! あー、まともにあらすじ紹介してねぇじゃねぇか!!」
レナ「ですから、最初から私がやった方が―――」
ハクア「いやー、今のは無いと思うわー」
レナ「責任を丸投げした貴女に言われたくありません!!」
メルティ「ねーねー、再開だって言うから来たのにさ、いつになったら私の出番?」
フォレスト「ずっと準備してんですけど。もう僕ら待ちくたびれてますよ」
エリザ「私らも来たんだよー? ね、ザンザ。カテリーナ」
カテリーナ「そうだよー。私らの出番くれくれー!」
ザンザ「つーかこれさ、番外編みてーに全員集合してるけどいいのか? いい加減本編始めようぜ」
沢木「では、あらすじは私が!
脚力が高い少年、切原魁斗は天界からやって来た女性・レナと出会い、自分が天界の王の子、天子であることと、自分の身体の中に『シャイン』があると知らされる。
彼はレナやハクア、その他大勢の仲間達と死闘を繰り広げ、『死を司る人形(デスパペット)』をついに倒したのだ!
しかし、次に現れたのは『六道輪廻』! さらには『十二星徒(じゅうにせいと)』とも戦うことに!
カイト君は最強の『十二星徒』葛城獅郎と戦うために、修行を開始したのですっ!!」
全員「あらすじ言われたぁぁぁっ!!」
すいません、おふざけで書きました。
次レスから再開いたしますm(_ _)m
327
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/08(土) 21:28:26 HOST:180.5.55.152
第七十七閃「約束は破るために」
「……」
ザンザはエリザと歩きながら、どこからどう見ても、十人中十人が分かるくらい不機嫌な顔をしていた。
彼の視線の先には傍らにいるちっこい上司に向けられたものではなく、横や後ろの方へと巡らされている。
彼の視線に気付いた上司であるエリザは、ごく軽い調子で彼に訊ねた。
「どうしたの、ザンザ。随分と不機嫌かつ警戒してるわね」
まさかコイツ気付いてないのか、みたいな視線をしたザンザはエリザの方を見ずに、前を見ながら歩いている。
彼の不機嫌さは一向に晴れない。むしろ足を前に進ませれば進ませるほどに彼の不機嫌は募っているようにも見える。だが、上司のエリザを話す時だけは、僅かに苛立ちを緩和させて、落ち着いた口調で話す。
「……いや、なんつーか……」
その様子にエリザは子供らしくくすくすと可愛らしく笑う。
自分の前に萎縮する部下を見て可愛らしいと思っているのだろう。彼女はおそらくドが付くSだ。
「……随分楽しそうに笑ってんなァ。まさかエリザ様、気付いてねェわけじゃねェだろ?」
ぴくっと、エリザの肩が動く。
ザンザの言葉に彼女は楽しそうに口の端を歪めながら、辺りをきょろきょろと見回している。
恐らくは敵の位置を見つけようとしているのか、彼女はちょっとだけふざけて手をかざしながら『どこかなー?』などと言っている。この程度の挑発では敵も乗ってこないだろう。
「オイ、そんなんじゃダメダメだってのッ!!」
ザンザは背負っている巨大な刀を振り回す。
ザン!! と鈍い音を立てて、木が三本切り倒される。大きな音を立てながら巨大な木が地面へと落ちる。
「とっとと出て来ねェと、ここの木全部切り落とすぞ!!」
「やめなよザンザ―――」
彼が再び刀を振り回した瞬間、
ガァン!! という金属と金属の鈍い音が辺りに響き、彼の斬撃がエリザの槍によって阻まれる。
「―――あァ?」
「え?」
止めているエリザ自身も驚いていた。
二人は状況を把握するため、数秒固まっていたがザンザが落ち着いた口調で問う。
「―――どういう事っすか、エリザ様」
彼の目は怒ってはいなかった。
むしろ『止めるなら口で言ってください』と言っているような。
しかしエリザは弁解する。自分の意志でやったんじゃない、と。
「い、いや違う! 今のは私がやろうとしたんじゃなくて、何がなんだか分からないけど身体が勝手に―――!」
ズン!! と何かを貫く気味の悪い音。
ザンザの腹部から血が流れ、彼の腹部にはエリザの槍が深々と突き刺さっていた。刺したのは言うまでも無い、エリザ本人だ。
彼女の幼女らしい小さな手が、しっかりと槍の柄を握っている。
328
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/09(日) 21:28:21 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「「……え……?」」
エリザとザンザは同じ声を同時に漏らした。寸分の狂いも無く、小さい頃から一緒にいる親友のように、以心伝心してるとでも思わせるような、ズレが全く無い、本当に声が揃っていた。
ザンザの腹部にはエリザの槍が、刃の根元まで突き刺さっている。その腹部からは赤い鮮血がぽたぽたと森の地面に生えた草を赤く染めていく。
刺されている側のザンザも、槍の柄を握ったままのエリザも状況が把握出来ていないような表情のまま固まっている。
『何故自分は今刺されている?』というのがザンザの心情で、『何で自分は部下を刺している?』というのがエリザの心情であった。
ザンザは口の端から、一筋の血を流しながら、
「……オイ、どォいうことだよ……ッ!」
「わ、分からないよ……! 私だって、いつの間にか貴方を刺してて―――」
「んな冗談が、通じると思ってんのかよ……ッ!」
ザンザがエリザを睨みつける。
部下から信用されなくなったとほぼ同じ感覚に陥ったエリザは何も言うことが出来なかった。
そんな中、がさっと草を踏みしめる音が二人の耳に届くと同時、若い男の声が届く。
「彼女は嘘をついてなどいない。主を信ずることこそが―――臣の務めではないか?」
現れたのは、高校生ぐらいの少年だ。黒髪の痩身で、一見すると優男という印象を与える少年だ。彼は『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの側にいる少年だ。
そのことを知らない二人は、キッとその少年を睨みつける。
少年は余裕さえを感じさせる笑みを浮かべながら、自分の首からぶら提げているネックレスへと視線を落とした。
「しかし、あの方から頂いたこの神具(しんぐ)の効果は本物だ。『使用者の姿が対象者に見えていなければ、対象者の動作を自在に行える。しかし、自害のみ不可能』。それがこの『動作の決定権(コントロール)』という神具だ」
エリザは眉間にしわを寄せ、少年を睨みつける。
十歳前後の少女とは思えないほど、鋭く怖ささえも感じさせる眼光で。
「……つまり、これはアンタがやったってこと? ザンザの攻撃を防がせたのも、今彼を刺しているのも!」
「今更気付いたか、低脳な小娘め。実力は本物でも知能までは浅ましいただの餓鬼と同じようだな」
少年は僅かに笑みを浮かべながらそう言った。
辛辣な言葉に、エリザは表情を変えることは無い。ただ、彼女は槍の柄から手を離し、手に幅の広い刀を握る。
「……アンタが姿を見せたってことは、もう神具の能力は使えないってことよね。判断を見誤ったわね。貴方は、今姿を晒すべきじゃなかった!」
「……ならばどうする。まさか貴様のそのオンボロ刀で私を倒せるとでも?」
「倒す、じゃないわよ。殺す!!」
エリザが言った瞬間だった。
ドッ!! と彼女の背中から腹へと刀が貫いた。
エリザは背後に立つ犯人の顔を確認する前に、地面に倒れこみ意識を失う。
「うおおおおおおおおあああああああああッ!!」
自身の上司を倒されたザンザは、巨大な刀を背後の襲撃者に向かって振り回す。前に、
背後からの襲撃者が一瞬でザンザの目の前に現れ、彼の身体を切り裂いた。
地面に横たわる二つの身体を見ながら、少年は呆れたように呟く。
「……動くな、と言ったはずですが? 運動不足を理由にしないでくださいよ?」
「えー、言い訳封じられた……。まあ、理由をつけるとしたらそうねー……『約束は破るためのものだから』かな?」
背後からの襲撃者は女子だった。
『十二星徒』のリーダーの声だ。彼女は気持ちよさそうに伸びをしながら、そう答えた。
「でもこれって、切原魁斗を焦らせることも出来るんじゃない?」
少女は二人の血を使い、紙切れにメッセージを残しその場を去っていった。
329
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/14(金) 19:19:11 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
河川敷で金属と金属がぶつかり合うような、ずっと聞いていたら耳が痛くなるような音が響いている。
いるのは二人。
一人はメルトイーア、通称メルティ。彼女は十六歳の姿で、身長よりも長いハルバートを両手で軽々と振り回している。
もう一人は切原魁斗。彼は二本の刀『祓魔の爪牙(ふつまのそうが)』で、メルティに必死に対抗している。
すると魁斗が押し負け、後方へと飛ばされてしまう。地面を数回バウンドし彼は呻きのような声を漏らした。普通なら相手を休ませるためにここで止めてもいいのだが、メルティはそんな甘い考えをしてなどいなかった。
「ほら、立て! カイトくん『十二星徒(じゅうにせいと)』を倒すんでしょ!? 奴らならここで止まらない、さらに追い討ちをかけてくる! 死ぬ気でいかなきゃ本当に死ぬよ!?」
魁斗は今自分の守りたいものを思い浮かべる。
たくさん出てくるが、まず出てきたのは仲間だ。
レナ、ハクア、桐生、藤崎、メルティ、フォレスト、沢木、そしてエリザやザンザ、カテリーナ達元『死を司る人形(デスパペット)』のメンバー。魁斗は彼らを思い浮かべ、ポツリと、
「……負けらんねぇよな……」
彼は呟く。
きつい言葉を浴びせるメルティも、相手を思っているからこそ口から出る言葉だった。
魁斗は一本の刀を杖のようにして身体を支えながら立ち上がる。彼女の言葉が励みになったのか、彼の瞳に再び闘志が宿る。
その表情に満足したのか、メルティは再びゆったりとした動きでハルバートを構える。
しかしそこへ、
「あ、見つけました! 天子さん、メルティさん!」
僅かに聞き覚えのある控えめそうな少女の声が聞こえてきた。
魁斗を『天子』と呼ぶのは天界の人間。天界出身で控えめそうな顔馴染みの人物。一人しかいないのだが、魁斗には名前が思い出せなかった。
振り返ると、そこにいたのは肩までの赤髪にアホ毛が真下に垂れ下がっている、十歳前後に見える少女。
魁斗が名前を思い出そうとしていると、名前を覚えていたメルティが彼女の名前を呼んだ。
「ありゃ、ルミーナちゃんじゃん。人間界に来るなんて、一体どしたの?」
ああ、そんな名前だった、と魁斗が納得し、ルミーナの言葉に耳を傾ける。
彼女は息を切らしており、急いでこっちに来たことは一目瞭然だ。一体どうしたんだろう、と魁斗とメルティが思っているとルミーナの口からとんでもないことを告げられた。
「い、今すぐ天界に来てくれませんか? ザンザさんとエリザさんが敵に襲われて重傷なんですっ!!」
「な……っ!?」
その言葉に魁斗とメルティは目を大きく見開き驚愕した。とりあえず、彼女の言うとおり二人は一度天界へと向かうことにした。
ルミーナの先導に従い、二人は目的地へと走っていく。
魁斗とメルティは走りながらルミーナの言葉を聞いていた。
「……実は、天子さんが葛城獅郎と戦うまでの七日間を無駄にしないために、私達は私達で敵のアジトを掴もうと手分けして探そうとしたんです。それで、二人の帰りが遅かったから探しに行くと、ゲインさんが傷だらけの二人を見つけて……」
なるほど、とメルティが納得したように言う。
魁斗は走りながら、ルミーナに質問した。
「二人が襲われたのって、二人でいたからって理由なのか?」
「……真偽は定かではありませんが、直結はしてると思います。あと、エリザさんが仮にも私達の司令塔だから、とも考えられます」
理由を聞いたメルティは、
「理由としてはそっちが大きそうね。このことを他の人間界の人達には?」
「伝えに行ってもらってます。桐生さんと藤崎さんのところへはカテリーナさん、沢木さん達のところへはゲインさんとクリスタさんが。必ず戻ってきたら皆を連れて、フォレストさんの家に集まってと言ってありますから、大丈夫です」
そう言っている間に、見覚えのある家が見えてきた。
目的地である、フォレストの家だ。
330
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/10/12(金) 22:57:41 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「ザンザ!!」
魁斗はフォレストの家の扉を勢いよく開けた。
そこには身体に包帯を巻いて、無理矢理に身体を動かそうとしているのを止めているフォレストがいた。
魁斗の到着に気付いたフォレストはほっとしたような、安心した表情を浮かべ、それに反してザンザは小さく舌打ちをした。
全快ではないだろうが、とりあえず無事でよかった。魁斗は心から安心すると、
「おはようの挨拶は、必要か?」
「見りゃ分かんだろォが、馬鹿」
とりあえず、いつものザンザでよかった。
とりあえずザンザを上の階でエリザと一緒に寝かせ、魁斗とメルティはフォレストの話を聞くことにした。
しかし、彼女自身も他人から話を聞いたので、詳しくは分かっていないらしい。こういう時に第一発見者であるゲインがいればいいのだが、彼は現在人間界のメンバーを呼んできているところだ。まだ帰ってはこないだろう。時間を無駄にしないために、とフォレストが説明役をしてくれた。
彼女は二人の前にお茶を出し、向かいに座ると話を始めた。
「まず犯人の方ですが、当然というか……まだ情報は掴めていません。ザンザさんとエリザさんの傷口を調べたんですけど……」
フォレストが言いにくそうに言葉を切る。
その様子にメルティは眉をひそめて、
「……けど、何よ」
「はい。二人の傷口は全くの別のもの。つまり、二人は違う人間にやられたということです」
「ッ!?」
魁斗とメルティが言葉を失った。
フォレストは続ける。
「ザンザさんからはエリザさんと同じ傷口が見られましたが、彼は他にも違う傷口がありまして。それはおかしなことに、エリザさんの『剣(つるぎ)』と一致していたんです」
「……どういうことだよ?」
「こういうことよ」
よく理解できていない魁斗に、メルティが説明する。
「エリザとザンザを倒したのは、恐らく同一人物。あの二人を一人で相手取るのは相当難しいだろうけど、同じ傷口があるってことはそう考えるのが妥当。そしてあの二人がやられるってことは、仲間割れでもした……とか?」
ザンザにはエリザの『剣(つるぎ)』で傷つけられたと思われる傷がある。しかし、フォレストは捜索に向かう前は仲が悪いようには見えなかったと語っている。真相は謎のままだ。
すると、フォレストが思い出したように手紙を差し出す。
その紙に書かれていたのは英文だ。英語が全く出来ない魁斗には読めず、メルティも首を傾げていた。フォレストも読めなかったようだ。
すると、後ろから声がかかる。
「『約束は破るためにある』って書かれてるんだよ、それ」
後ろから言ったのは桐生仙一だ。
やはり、彼にかかれば英文の解読など楽勝だったのか。
「これは挑戦状だよね?」
桐生の後ろにいた藤崎がそう言う。
彼は小さく頷くと、
「切原くん。もう時間はない。彼らは、七日も待ってくれないかもしれない」
331
:
一護/泪/恭弥/当麻/高塚凛/亜梨子/安心院紅羽/疾風やみゆ
◆u7pJ1aUXto
:2012/11/09(金) 21:45:18 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十八閃「鬼再び」
魁斗とメルティはゲインとクリスタが呼びに行ったレナ達が来るより早く、人間界へと戻り修行を再開していた。
敵がエリザとザンザに重傷を負わせ、挑発的なメッセージを残した。これ以上誰にも傷ついて欲しくない魁斗は一刻も早く強くなる必要があった。しかし、強さとはそう簡単に手に入るものではない。彼が今まで戦ってきたザンザやエリザ、ディルティールだって血の滲むような努力をしてきたに違いない。
こういう時に思い知らされる。
自分は本当にまぐれのみで勝ってきたのだと。
今魁斗の目の前にいるのは修行の相手であるメルトイーア。彼女は伸びをしながら軽く体操のような動きもしている。
彼女はハルバートを軽く片手で振りながら、
「カイトくん、再開するけど準備はおっけー? ダメでもやるけど」
魁斗は二本の刀を真っ直ぐに構えて、
「ああ、来い!」
瞬間、メルティの姿が視界から消える。
自分の目を疑った刹那、メルティが背後に忽然と現れ、鋭い膝蹴りを魁斗のこめかみにヒットさせる。
魁斗の身体は横向きのまま三メートル程飛ばされ、彼のこめかみから頬にかけて一筋の血が伝っている。
彼は苦しい表情をしたまま刀を杖代わりに立ち上がる。
再び視界に移したメルティは腰まで銀髪を伸ばした、まだ見たことの無い年齢のメルティだった。
「二五歳。今私がなれる年齢の上限だよ。気ィ抜くと『アイツ』がまた出てくるから、本当は使いたくなかったんだけどな。カイトくんに『アイツ』の私見られるの嫌だし」
アイツ? と魁斗は首を傾げる。
彼が知らないのも無理はない。彼女の言う『アイツ』とはキルティーアとの戦いで『時の皇帝(タイムエンペラー)』の暴走により出現した、なれる年齢の上限を超えた二八歳のメルティのことだ。
彼女はあの時の、二八歳の自分の出現に恐れ、年齢を上げるのにかなり抵抗していた。だが、
(今までに無い以上に向上心を見せてる。だったら私も協力しなくちゃね! 私が気を抜かなければいいだけだもん! きっと、カイトくんなら大丈夫!)
魁斗とメルティの修行が再開した。
一方で、ゲイン達が連れてきたレナ達もエリザとザンザの容態を見るなり、ホッと一安心して帰ってしまった。
ザンザは面倒くさそうに溜息をつきながら、
「チッ。何で怪我人なのにアイツらは容赦っつーモンがねェんだ!! これじゃ回復しようにも出来ねェぞ!!」
「まーまー、大勢でお見舞いに来てくれたんだし。私はよくなる気がしてきたよ」
ザンザはもう一度舌打ちをした。
エリザは子供を見てるような親のように笑って見せた。
その様子を見ていたフォレストは壁に背を預けながら、
「とか悪態ついて、実は超嬉しかったりするんでしょ? あー、もういいです。その面倒くせぇツンデレは」
「ざっけんなッ! 何で俺がアイツらが来た程度で喜ばなきゃ―――ッ!」
叫んだザンザは傷口が開いたのか、腹を押さえながらベッドの上で悶える。
「怪我人は大人しくしててください。ちっとはエリザさんを見習えです」
エリザはきちんと布団をかぶって寝ている。怪我人というよりは病人に見えてきた。
ザンザはもう一度舌打ちをした。
「……逆に安心は出来たがな。アイツらの顔見てよ」
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