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剣―TURUGI―

328竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/09(日) 21:28:21 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「「……え……?」」
 エリザとザンザは同じ声を同時に漏らした。寸分の狂いも無く、小さい頃から一緒にいる親友のように、以心伝心してるとでも思わせるような、ズレが全く無い、本当に声が揃っていた。
 ザンザの腹部にはエリザの槍が、刃の根元まで突き刺さっている。その腹部からは赤い鮮血がぽたぽたと森の地面に生えた草を赤く染めていく。
 刺されている側のザンザも、槍の柄を握ったままのエリザも状況が把握出来ていないような表情のまま固まっている。
 『何故自分は今刺されている?』というのがザンザの心情で、『何で自分は部下を刺している?』というのがエリザの心情であった。
 ザンザは口の端から、一筋の血を流しながら、
「……オイ、どォいうことだよ……ッ!」
「わ、分からないよ……! 私だって、いつの間にか貴方を刺してて―――」
「んな冗談が、通じると思ってんのかよ……ッ!」
 ザンザがエリザを睨みつける。
 部下から信用されなくなったとほぼ同じ感覚に陥ったエリザは何も言うことが出来なかった。
 そんな中、がさっと草を踏みしめる音が二人の耳に届くと同時、若い男の声が届く。

「彼女は嘘をついてなどいない。主を信ずることこそが―――臣の務めではないか?」

 現れたのは、高校生ぐらいの少年だ。黒髪の痩身で、一見すると優男という印象を与える少年だ。彼は『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの側にいる少年だ。
 そのことを知らない二人は、キッとその少年を睨みつける。
 少年は余裕さえを感じさせる笑みを浮かべながら、自分の首からぶら提げているネックレスへと視線を落とした。
「しかし、あの方から頂いたこの神具(しんぐ)の効果は本物だ。『使用者の姿が対象者に見えていなければ、対象者の動作を自在に行える。しかし、自害のみ不可能』。それがこの『動作の決定権(コントロール)』という神具だ」
 エリザは眉間にしわを寄せ、少年を睨みつける。
 十歳前後の少女とは思えないほど、鋭く怖ささえも感じさせる眼光で。
「……つまり、これはアンタがやったってこと? ザンザの攻撃を防がせたのも、今彼を刺しているのも!」
「今更気付いたか、低脳な小娘め。実力は本物でも知能までは浅ましいただの餓鬼と同じようだな」
 少年は僅かに笑みを浮かべながらそう言った。
 辛辣な言葉に、エリザは表情を変えることは無い。ただ、彼女は槍の柄から手を離し、手に幅の広い刀を握る。
「……アンタが姿を見せたってことは、もう神具の能力は使えないってことよね。判断を見誤ったわね。貴方は、今姿を晒すべきじゃなかった!」
「……ならばどうする。まさか貴様のそのオンボロ刀で私を倒せるとでも?」
「倒す、じゃないわよ。殺す!!」
 エリザが言った瞬間だった。

 ドッ!! と彼女の背中から腹へと刀が貫いた。
 エリザは背後に立つ犯人の顔を確認する前に、地面に倒れこみ意識を失う。

「うおおおおおおおおあああああああああッ!!」
 自身の上司を倒されたザンザは、巨大な刀を背後の襲撃者に向かって振り回す。前に、
 背後からの襲撃者が一瞬でザンザの目の前に現れ、彼の身体を切り裂いた。
 地面に横たわる二つの身体を見ながら、少年は呆れたように呟く。
「……動くな、と言ったはずですが? 運動不足を理由にしないでくださいよ?」
「えー、言い訳封じられた……。まあ、理由をつけるとしたらそうねー……『約束は破るためのものだから』かな?」
 背後からの襲撃者は女子だった。
 『十二星徒』のリーダーの声だ。彼女は気持ちよさそうに伸びをしながら、そう答えた。
「でもこれって、切原魁斗を焦らせることも出来るんじゃない?」

 少女は二人の血を使い、紙切れにメッセージを残しその場を去っていった。


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