したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

Cry for you

1ちんぱる:2013/05/30(木) 23:48:34
島崎遥香メインの王道恋愛小説を書いて行きます!

2ちんぱる:2013/05/30(木) 23:49:04

-春-

桜が咲き誇り、キレイに散っていく。
俺はこの景色を何度見たことだろうか。
隣にいたのはいつも彼女だった。
今までも、これからも、ずっと一緒だ。

3ステージ:2013/05/30(木) 23:49:42
みつけたー!

楽しみです^^

4ちんぱる:2013/05/30(木) 23:50:54

-7年前の春-

「ヤバイヤバイ!入学式早々遅刻じゃねえか!!」
 朝からドタバタうるさいのは、この物語の主人公、神山晴人。

「何で起こさねえんだよ!姉ちゃん!」
「うっさいなぁ、たまには自分の力で起きなさいよ」
 彼女は晴人の姉、神山優子。

 二人の両親は、10年前に他界。
以来、姉の優子が母親代わりとして、晴人を立派に育て上げたのだ。
 だがその立派な息子は、高校の入学式早々遅刻しかけている。

「やっべぇ!行ってきます!」
「晴人!」
 突然呼び止められ、思わず前のめりになる晴人。

「何?」
「高校入学おめでとう!」
「お、おう」
「頑張ってね」
「…ありがとな」
「えっ?」
 思わず聞き返す優子。

「姉ちゃんのおかげで、俺高校にも行けるから…」
「…晴人」
「何?」
「遅刻すんぞ」
「そうだった!行ってきます!」
「行ってらっしゃ〜い!」
 慌てて家から飛び出す晴人。
これから彼には、幸せや悲しみ、あらゆる出来事が彼を待ち受けていた。

「しょっぱなから、縁起でもねえこと言ってんじゃねえよ!」
 おっと、失礼…。
 それでは、物語の始まりです。

6ちんぱる:2013/05/30(木) 23:51:41
>ステージさん
見つかっちゃいましたか(笑)
今後ともよろしくお願いします!

10ちんぱる:2013/05/30(木) 23:59:29

 学校に到着すると、すでに校舎には誰もいなかった。

「もう体育館に行ってんのかな…」
 そのとき彼の耳は誰かの足音を聞きとった。

「もしかして先生?見つかったらマズイな…」
 思わず近くの物陰に隠れる晴人、その足音は確実に晴人に近づいてくる。
様子を見たくなった晴人は、そっと顔を出す。
しかしそこには誰にもいなかった。

「あれ…?」
「何やってんの?」
「へっ?うわぁ!!」
 気付かぬ間に彼の後ろには、女性が立っていた。
でも見た限り、先生では無い。むしろこの学校の制服を着ている。
 正体を知ろうと、あれこれ考えていると。

「もしかして…君も遅刻した?」
「えっ?ああ、うん…」
 すると彼女は、まばゆいばかりの笑顔を振りまいた。

「じゃあ一緒だねっ」
「そうだね…」
 いきなり笑い出した彼女に訳分からない晴人だったが、今はそれどころではない。

「ね、これからどうする?」
「とりあえず、体育館行こうよ」
「行くの!?」
「行かないの?」
 すると上目遣いで晴人の事を見てきた。
晴人の弱点は何を隠そう、「上目遣いで見つめられる事」なのだ。

「うっ…、分かった行こう」
「よし!じゃあ行こっ」
 こうして晴人は彼女、島崎遥香と出会った。

14ちんぱる:2013/05/31(金) 00:03:40

 そうして二人は何事も無く体育館に…、入れるはず無かった。

「なぁ〜にやってんのかなぁ〜?入学式早々」
 廊下を歩いていた2人が後ろを振り向くと、女性が立っていた。

「入学式早々、いい度胸じゃない。アナタたち、名前は?」
「あっ、神山晴人です…」
「島崎遥香です」
 先生らしき女性は、紙に俺達の名前を書いた。

「神山くんと島崎さんね」
「あっ先生、字が違います」
「えっ?」
「“紙”じゃなくて“神”です。神様の“神”」
「わ、分かってるわよ!」
 慌てて書き直す姿から、どうやらこの先生は天然らしいと、晴人は確信した。

「と、とにかく!2人とも入学式が終わったら、生活指導室に来る事!いいね!?」
「はぁ〜い…」
 初日からツイていない晴人と遥香だった。

 入学式も終わり、2人は共に生活指導室までやってきた。
しかし肝心な先程の教師の名前が分からない。
「あれ?そういや、さっきの先生誰だ?」
「ホントだ、名前分かんないね」
「やっぱあの先生天然かも」
 と、軽く小バカにしていると。

「だ〜れが天然よ!」
 2人の後ろに先程の教師が立っていた。

「アナタたち、遅刻したくせにいご身分ね!」
「あ、スイマセン」
「まあいいわ、とりあえず入りなさい」
「あのう」と遥香が教師に尋ねた。

「いつになったらクラスに行けるんですか?」
「それは大丈夫、ほんの5分で終わるから」
 そして5分後、彼女の言った通りすぐに終わった。

「これに懲りたら、もう遅刻しない事!いいね?」
「はい…」
「じゃあ教室に行ってよし!」
 ようやく女性教師からの呪縛から、解き放たれた晴人と遥香。

「じゃあ、私2組だから」
「お、おう」
「晴人くんは何組?」
「俺は4組」

「そっか、じゃあまたね」
「あのさ!」
 晴人は思い切って彼女を呼び止めた。

「何?」
「こ、今度さ、良かったらどっか遊びに行かない?」
 遥香はビックリしていた、だけど誰よりもビックリしていたのは、晴人自身だった。
本当はそんなこと言うつもりはなかったのだが、気付くと口が勝手に動いていた。

「う、うん、いいよ」
「マジ!?」
「じゃあアドレス教えて」
 彼女は晴人に近づき、手を差し出す。

「ん?」
「ケータイ、出して」
「お、おう」
 慌てて携帯を取り出す晴人。
彼の携帯を受け取った遥香は、慣れた手さばきで互いのアドレスを交換した。

「はい、ありがと」
「おう」
「じゃあ、後でメールするね」
 そう言い残し、彼女は自分のクラスへと向かった。
晴人は小さくガッツポーズを決めると、スキップしながら自分のクラスへと向かった。
 しかしクラスのドアを開けると、全員からの冷たい目を一気に浴びることになった。

「あ…、スミマセン、遅れました…」
「君が神山晴人君だね?」
 黒板の前に立っていた男の教師が、晴人に尋ねた。

15ステージ:2013/05/31(金) 00:03:42
でもある程度の展開は知ってるからなんとも・・・orz

22ちんぱる:2013/05/31(金) 00:13:48

「はい」
「よし、これで全員揃ったね。改めて自己紹介を、僕は…」
 黒板に名前を書いていく。

「櫻井翔です。担当は主に公民を担当しています。1年生の担任は初めてですが、皆の夢のために少しでも何か、力になってあげられたらと思っています。よろしく」
 クラス中から拍手が起きた。
 先生の顔立ちはスラっとしていて、世に言うイケメンとは彼の事を言うのだろうと晴人は思った。

「それでは、まず皆の事を教えて欲しい。これから親睦を深めるためにも、自己紹介をお願いします」
 晴人にとって、自己紹介なんてするのは小学校以来だった。

「じゃあ、出席番号1番の"板野"さん、お願いします」
 板野と呼ばれた女子は、気だるそうにしながらも黒板の前に立った。

「板野友美です、高1です。よろしく」
 まるでメールのテンプレートのような自己紹介だった。
 だが、そこに水を差すやつが。

「はいはい!板野さんの好きな男性のタイプは?」
 元気良く手をあげる男子がいた。
しかし、「あんた以外だったら」と彼女に軽くあしらわれてしまった。
 まさか彼が晴人の親友になるとは、本人たちも思っていなかっただろう。
第一、晴人が彼に最初に抱いた印象は「ウザい」と、最悪のスタートだった。

「次は、出席番号2番の"時多"」
「ども、時多 駿太郎(ときた しゅんたろう)です。中学の頃は陸上部に入ってました、よろしく」
 周りの女子たちがざわめきだす。その原因は彼がイケメンだったからだ。

「クールキャラかよ…」
 晴人はそのとき彼と仲良くはなれなさそうだな、と思っていた。
彼も、後の親友の1人になるとも知らず。

「次は、神山」
 ついに晴人の番が回ってきた。

「え〜と、神山晴人です。部活は特には決めてないんですけど、まあ高校生になったからには、何か始めたいと思っています!よろしく!」
あれ?全然面白くないな…。
後悔が重くのしかかった晴人であった。

「じゃあ最後に、"松井"」
「やったぁ〜!やっと俺の番が来た!」
「さっきのうるさい奴かよ…」
「初めまして、松井大貴です!部活はサッカー部に入ろうと思っています!1年間よろしく!」
大貴はとにかく声がデカかった。

 そして時はあっという間に過ぎ、授業終了のチャイムが鳴る。
「それでは、最初のホームルームは以上です。明日から本格的に高校生活が始まるけど、みんな楽しんでください!では!」

 櫻井先生が教室から出ると、一段と騒がしくなった。
改めて自己紹介する者、メアドを交換する者。
 色々いたが晴人はどれにも当てはまらなかった。
 今朝出会った、遥香のことがずっと気になっていたのだ。
「そういや2組って言ってたな…」

 彼女に会いに行こうと思った直後、
「ねー!ねー!」
 残念なことに一番関わりたくないと思っていた奴に、声をかけられてしまった。

「今日、何で遅刻したの?」
 大貴は初対面の晴人に対して、ズケズケと聞いてくる。
彼にとってはそれがあたり前なのだろう。
「まぁ…、ちょっと寝坊して」

すると、晴人に近づく人物がもう一人いた。
「聞いたぞ、お前初日早々、小嶋に捕まったらしいじゃん」
 話しかけてきたのは、あの駿太郎だった。
まさか彼から話しかけてくるとは思ってなかったため、晴人はビックリしている。

「お、おう…。ってか小嶋って誰?」
「お前を説教していた先生だよ」
「もう知ってんだ…」
「まあな、人の顔と名前はすぐに覚えるタイプなんで」
 駿太郎が軽いドヤ顔で話していると、

「じゃあ歴史とか得意でしょ?」
 いきなり大貴がとんでもないものをぶっ込んできた。

「あ、ああ…」
 さすがの駿太郎も、対処できず困っている。
 結局3人はお互いのアドレスを交換し、友達となった。

24名無しさん:2013/05/31(金) 00:18:10
消すなよ!

25ちんぱる:2013/05/31(金) 00:20:37

 大貴と駿太郎と別れた後、晴人は2組にやってきた。
 しかしアウェー感が尋常じゃなかった。
 やはり違うクラスだからだろうかとも思ったが、どうやら1、2組は頭のいい生徒が集まりやすいクラス編成になっているらしい。
つまり、優等生クラスだ。
 そんな事とは知らず、晴人が廊下から遥香の姿を探していると。

「あれ?アナタさっきの!」と聞いたことがある声がした。
 晴人が振り返ると、さっきの女教師が立っている。
駿太郎によると、名前は確か小嶋。

「えっと、小嶋先生…?」
「わあ!何で知ってるのぉ?」
 確かに自己紹介はされていないため、晴人には説明のしようがなかった。

「いや、ちょっと聞いたんで…」
「そっかぁ。あ、ちなみに私の名前は小嶋陽菜。2組の担任です」
 晴人は天然が担任って、遥香さんもかわいそうだなと思った。

「あ、そうなんですか」
「もしかして、島崎さんを待ってるの?」
「えっ!イヤ…別に…」
「島崎さ〜ん!」
 「なぜ呼ぶ!?」と心の中で、彼女をツッコんだ。思わず目を大きく見開いてしまった。
「はぁ〜い」と新しく出来たであろう友達との会話を止め、廊下に出てくる。

「何ですかぁ?」
「"髪"山くんが待ってるよ」
「イヤ、だから先生字が間違ってます!」
「何の話?」
 自分も何にツッコんでいるのか、分からない晴人だった。
そんな彼の存在に、遥香が気付く。

「あっ…」
「イヤ、別に待ってたってわけじゃ…」
「ゴメン、すぐに準備するから待ってて!」
 予想外の返事だった。
彼女はクラスメートに「じゃあね」と言って、クラスを出る。
 気付くと、小嶋の姿はいつの間にか無くなっていた。
意外と彼女には、キューピットの素質があるのかもしれない。

「行こっか」
「お、おう…」
 今朝あったばかりなのに、2人の距離はすでに近くなっていた。

26ちんぱる:2013/05/31(金) 00:21:40
>名無しさん
だってあなた、さっきから批判的なコメントばかりじゃないですか

まだ物語も序盤なんですから、ちゃんと途中まで読んでから批判してください

29シップ:2013/05/31(金) 00:34:41
今までの内容は知っていますがこの後も楽しみです!
頑張って下さい!

30ちんぱる:2013/05/31(金) 00:35:52
>シップさん
一応、最初から書き直すつもりです!
もう少ししたら、新展開しますからおたのしみに!

32シップ:2013/05/31(金) 07:07:01
楽しみです!

自分のペースで頑張って下さい!

33WBX:2013/05/31(金) 15:19:12
応援してるので頑張って下さい! あと他の作品の更新も待ってます!

34シップ:2013/05/31(金) 16:44:55
まだ入れませんね…
どうしたんでしょう…

35ちんぱる:2013/05/31(金) 19:04:21
>シップさん
もしかしたら閉鎖したんじゃないんでしょうか…

36ちんぱる:2013/05/31(金) 19:36:33

高校デビューとは一体何だろうか。
晴人は歩きながら、そんな事を考えていた。
確か何年か前にそんな映画あったな…、最終的にまったく関係ない結論に達した。
そのぐらい緊張していた。
女子と一緒に帰るなんて、晴人にとって何年振りの事件だろうか。

「ねぇ、ねえ!」
「ん、うん?」
「聞いてる?」

どうやら彼女は隣で何かを話していたらしい。
しかし考え込むと周りが見えなくなる晴人は、全く聞いていなかった。

「ゴメン…」
「も〜う、あのね小嶋先生が…」

どうしてこの子は、俺なんかと一緒に帰ってくれているんだろうか。
朝たまたま、一緒に遅刻したってだけなのに。

その理由は明確だ。
単に彼女が、晴人のことを気にしているからだ。
だが鈍感な晴人は、全く気付いていない。

「じゃあ…私ここだから」
「お、おう」
「また明日ね」
「じゃ、じゃあな」

とカッコつけて言ってみたが、声は思いっきり震えていた。
家に入る彼女の後ろ姿を見て、ついつい見とれてしまう晴人の後頭部に、突然衝撃が走った。

「いって!!!」
「ハハハー!な〜にやってんだよ!晴人!」
「何だ…、松井か…」
「何だってなんだ!それに俺のことは大貴でいいって言ったろ?」
「分かった分かったよ!それで?一体どういうつもりだ?」

指をボキボキ言わせながら、大貴に近づいて行く。

「は、晴人くん…?い、一旦落ち着こうか…」
「じゃかぁ〜しぃわ!ボケェ〜!!」

2分後
「だからぁ〜、ホントゴメンって!」
「うるせぇ、いきなり人の頭殴っときながら、それで済んだだけ感謝しろ」
大貴は公園の木に吊るしあげられていた。
しかし、「だぁあ〜!」と野性児のように大貴は叫び、何とかロープから脱出する。

「ったく…、んで?何の用だよ?」
「いやお前がそそくさと帰るからさ、何事かと思って」
「何で今日会ったばかりのお前に、そんなこと思われなきゃいけねえんだよ!」
「なんでかなー、お前とはずっと前から友達だった気がするんだよなぁ」
「意味分かんねえよ」

37ちんぱる:2013/05/31(金) 23:05:49

「あっ!珠理奈ー!」と大貴は突然手を振り出した。
その先には中学生だろうか、その位の歳の女の子がいる。
まさか…、こいつロリコン!?と晴人は思ったが、

「あ!お兄ちゃん!」

違った。

「何やってんの?」
「友達とな!ちょっとダベってた」

大貴の事をお兄ちゃんと呼ぶ子が、晴人の顔を見ると、そそくさと大貴を連れ出した。

「なんだよ!」
「お兄ちゃん、あのカッコイイ人誰!?」
「あ?あぁ神山晴人、俺のクラスメートで親友だ!」
「晴人さん…」
「珠理奈、お前まさか…」
そう、珠理奈は晴人に一目ぼれをしていた。

「紹介して!」
「はあ!?」
「いいから!珠理奈の事、晴人さんに紹介して!」
「ったく、面倒くせえなぁ」

珠理奈にしつこく「紹介して」と言われ続けたので、しぶしぶ紹介することに。
「晴人、紹介するわ、俺の妹」
「あ、そうなんだ」と言いながらも、「だと思った」と心の中でツッコんだ。

「松井珠理奈です!初めまして」
「初めまして神山晴人です、よろしく。元気がいいね」
「ほ、ホントですか?うれしぃなぁ〜」

珠理奈は両手を顔に当て、照れている。

「あの…、は、晴人さんって呼んでもいいですか?」
「ん?別にいいよ」
「は、は、晴人さん…」と言ってみるものの、結局恥ずかしがる珠理奈。

そんな妹の様子を見て、自分まで恥ずかしくなる兄。

そろそろ帰りたいと思っている男。

さまざまな気持ちが、公園内に入り混じっていた。

38ちんぱる:2013/06/01(土) 17:59:36
「はあ…、ただいまぁ〜」
やっと松井兄妹から解放され家にたどり着いた晴人だったが、彼を迎え入れてくれるものは誰もいない。
「姉ちゃん?ん?」
テーブルの上に手紙が置いてあった。
『今日は遅くに帰りそうだから、昨日作ったシチュー食べてて!それと、ちゃんと私の分も残しておきなさいよ! 優子』
「ハイハイ…」
シチューを温め、テレビを見ながら食べた。
優子はある弁護士の秘書をしており、帰ってくる時間が遅くなることは度々ある。
だから晴人にとっては、一人でご飯を食べることは日常茶飯事だった。
「やっぱ姉ちゃんのシチュー、うめえな」
姉の作る料理の中で晴人が好きなのは、シチュー、オムライス、ハンバーグ、カレー。
この4つが彼の中では、すでに殿堂入りを果たしている。
「さてと、風呂入って寝るか」
何度この言葉を言ったことだろうか。
誰もいないのに、一人で呟くこのセリフが晴人は大嫌いだった。
でも何故か勝手に出てきてしまう。
「はあ、寂しすぎんだろ、俺…」

39ちんぱる:2013/06/01(土) 19:07:19

翌朝。
「う〜ん…、おはよう姉ちゃん」
「おはよっ、ご飯できてるわよ」
「Thanks!」
「Your Welcome!」
この謎の英語での会話のくだりは、ほぼ毎日起こっている。

「ふわぁ〜、そういやなんか変な夢見たな…」
「…どんな?」
多少ドキッとしながらも、冷静な表情で尋ねる優子。

「う〜ん…」
晴人が見た夢は…。

『晴人くん…』
『しま…、いや遥香…』
『私、晴人が好き!』
『俺もだ!愛している!』
何ていう夢を見たわけで…。

「まぁ…相当変だった」
「何それぇ〜?」

その後学校に行く支度も完了し、家を出ようとすると。
「晴人!」
「ん?」
「今日お姉ちゃん、早めに帰るから」
「おうっ」
「行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」

こうしてまたいつもの朝が始まった。

40ちんぱる:2013/06/01(土) 19:07:50

「あ、島崎さん…」
学校に向かう晴人の前を遥香が歩いていた。
ゆっくりと桜並木を眺めながら歩く彼女の姿は、とても美しかった。
晴人は走って、遥香のもとへと向かう。

「は、島崎さ〜ん!」
一瞬「遥香」と言いかけたが、すぐにごまかす。

「あっ、は、神山くん」
一瞬「晴人」と言いかけたが、すぐにごまかした。
つまり、彼女も同じ夢を今朝がた見ていたのだ。

「お、おはよう」
「おう、い、いい天気だな」
何を言っているのか、晴人自身も分かっていない。
「そ、そうだね…」

ちなみに今日の天気は曇りである。
そのまま2人は何かを話すことも無いまま、隣に並びながら学校へ向かった。


「ねえ、神山くん」
正門の前まで来たとき、彼女が突然口を開いた。

「帰りも…一緒に帰ってくれない?」
彼女はうつむきながら、恥ずかしそうに言ってくる。
「か、かわいい…」と晴人の心の中は、すでにKO寸前だった。

「い、いいとも…」
「ホント!?じゃあ放課後、正門でね」
「おう」
まだ付き合っても無いのに、恋人気分の2人だった。

41ちんぱる:2013/06/01(土) 19:08:39

教室に入ると。

「おはよー!晴人!」
「朝から、うるせえよ!」
「何イライラしてんの?」
「駿太郎聞いてくれ、コイツな昨日…」
晴人が駿太郎に昨日の出来事を話そうとすると、

「わ〜!わ〜!」
「んだよ!うっせえな!」
「晴人!ちょっと来い!」といい、大貴は晴人を連れ廊下に飛び出た。

「昨日のことは言わないで!」
「何で?」
「イヤ…、だって男が男をつけてたなんて知られたら、完全に俺コッチになっちゃうだろ?」
そう言いながら、大貴は左手をほほに近づける。

「いいんじゃない?ソッチの人でも」
「良くねえわ!」
ちょうどそのとき、授業開始のチャイムが鳴った。


「内閣に不信任決議案を提出できるのは、衆議院だけの特権であって…」
櫻井先生の授業は分かりやすい。
丁寧に図を書いてくれて、なおかつその図を丁寧に説明してくれると生徒達に大評判だった。
「ニュースキャスターになればいいのに…」と晴人は何度思ったことだろう。

「では、今日の授業はここまで」
本日最後の授業が終わり、高校生活2日目が終わりを迎えようとしていた。

「なあなあなあ!」
「もうちょいボリューム、抑えらんねぇのか?」
「晴人さ、今から一緒にサッカー部見学に行かねっ?」
「え?」
「どうせお前、部活何やるか、まだ決めてねえんだろ?」
「ま、まあな…」と適当に答える晴人。

「そういや“なんかやりたい”って言ったけど、何やりたいんだよ?」
「いや、特には…」
「だからさぁ〜!サッカー部見学行こうぜぇ〜!」
「お、おう…」と言いながらも、晴人はあまり乗り気ではなかった。

正直、晴人はサッカーにあまり興味を持っていない。
テレビで試合を見るのは好きなのだが…。

「晴人」と、突然駿太郎から声をかけられた。
「んだよ?」
「本当は乗り気じゃないだろ、お前」
「ギクッ!」

「ギクッ!」というこの音、みなさんは心の中で鳴った音だと思っただろう。
だが実際は、晴人が思わず口から出した音である。

「“ギクッ!”って普通言わねえだろ」
「いやつい…」
「そうなのかぁ〜?晴人〜!」
「だあもう!別にいいだろ?」

「とにかく!今日は俺は先約があるんだよ!」
「おっ!あの子か?」
「誰?」
大貴が話すとややこしい事になると判断した晴人は、ヤツにラリアットをかまし、そのまま教室から出た。

「じゃ〜な〜!」
「痛ぇだろうが!」
「ドンマイ…」
「何で、お前笑ってんだよ!?」

42ちんぱる:2013/06/01(土) 19:09:13

正門に向かっていると、靴箱で遥香とバッタリ会った。
「あっ、神山くん」
「丁度良かった!」
「ねっ」

室内靴から通常のローファーに履き替え、2人は並んで歩きだす。
「そういや島崎さんは部活とか入んないの?」
「う〜ん、まだ何があるのか分かんなくて」
「そっか」

2人の目の前を、野球部の新入部員たちが通り過ぎていく。
「神山くんは?」
「えっ?」
「何か部活やらないの?」
「う〜ん、俺も特には考えてないな…」
「中学の時は何やってたの?」
彼女に質問されたのにも関わらず、晴人は黙っていた。

「神山くん?」
「ねえ、あそこのドーナツ屋で、何か買おうよ」
「う、うん…」
晴人は急ぎ足で、ドーナツ屋に入っていった。

「私、いけないこと聞いちゃったかな…?」
遥香も慌てて、晴人の後を追い店内に入る。

だがこのとき、彼女はまだ知らなかった…、晴人が抱えている爆弾に…。

43ちんぱる:2013/06/01(土) 19:13:42

ドーナツを食べながら、晴人は遥香の中学の頃の話を聞いていた。
「島崎さんはさ、中学の時、部活何やってたの?」
「私?吹奏楽部やってたんだ」
「へえ〜、何吹いてたの?」
「フルートって言うんだけど知ってる?」
「ふるーと?」
晴人は全く分かっていない。

すると店に新たな客がやってきた。

一方で理解していない晴人のために、遥香はフルートを吹く真似をしてみせる。
「こういう楽器なんだけど」
「ああ!横笛ね!」
「横笛…、うん、そんな感じかな」
「あれ?違った?」
「ちょっとだけ」と彼女は笑いながら、ドーナツを食べている。

すると、ついさっき来店してきた客が遥香に声をかけてきた。
「あれ?ぱるちゃん?」
「あっ…」
顔見知りだろうか、遥香はかなり驚いた表情を取る。

「誰?」
状況が読み込めない晴人は、彼女に尋ねた。
「同じ2組のクラスメート、私の友達」
「ふうん」

するとその友達は、2人のテーブルの空席に座ってきた。
「何!? 何!? ぱるちゃん、もう彼氏出来たの?」
「ち、違うってば! 神山くんは友達だよ…」
「へえ〜」と言いながらも、にやけながら二人を見ている“友達“。

「あっ、自己紹介遅れましたね!私、島田晴香です!」
「は、はるか…」
「そう!ぱるちゃんと同じ“はるか”なんです!ねぇ〜?」
「う、うん!」

神様というものがもし本当にいるとするなら、あまりにも気まぐれである。
「同じ名前というだけで、こうも違ってくるのか」と晴人は思った。

こっちの“遥香”は、さっきからずっとモジモジして、恥ずかしそうにしている。
かたや、こっちの“晴香”は元気がよく、正直言うと…うるさい。

「今、うるさいって思ったでしょ!」
「へっ!?」
彼女は人の心が読めるのだろうか。

「どうなんですかぁ?」
「い、いやぁ!そんなこと思ってないよ…」
「何で最後の方、声ちっちゃいんですか!」
「ちょっと!晴香!晴人さん困ってるじゃない」
ようやく“遥香”が助け船をくれた。

結局3人でドーナツを食べ、晴香とはその場で別れた。
島田晴香は嵐のように現れ去っていったのだった。

44ちんぱる:2013/06/01(土) 19:14:57

「ゴメンなさい…晴香が急に」
「いやいや、楽しかったよ!」
晴人は彼なりに、フォローしたつもりだった。
しかしそれが逆効果になるなんて、誰が予測できただろう。

「やっぱ、明るい女の子の方がいいですよね…」
「えええ!!!」
あまりの展開に、晴人は大声で驚いてしまった。
まさかの一言に、動揺している。

「そ、そんなことないって!」
「でも私、あんなに積極的にはなれませんよ…」
「そんなことないよ!」
晴人は肩を掴み、彼女の目を正面から見つめた。

「えっ…」
突然の出来事に困惑する遥香。
しかし晴人は、なおも彼女の瞳を見つめ続ける。

「俺は…、“遥香”ちゃんみたいな子がいいんだよ」
どさくさまぎれに、告白まがいの発言をした晴人。
彼にはそんな気は全くなかったが、心がとってもピュアである遥香は、それを受け入れてしまった。

「ほ、ホント?」
「うん、俺は“遥香ちゃん”みたいに大人しい子も好きだよ…、ん?」
この男はようやく、事の重大性に気付いたようだ。

「あ、あ〜!!!ち、ち、違うんだ!そのぉ〜!違くはないんだけど!違うんだ!」
まだ会って2日だというのに、急展開過ぎる。
読者がどんどん離れて行く気がした。

45ちんぱる:2013/06/01(土) 19:17:18
晴人がおろたえていると、その様子がおかしかったのか、遥香が突然笑い出した。
「アッハハハハ!」
「な、なに?」
「ねぇ!」
「ん?」
「私も…、“晴人くん”のことが好きだよっ」
その瞬間、晴人の呼吸が止まった。


「苦しい…、何で俺は息を止めてんだ…?」と晴人は思っていた。
疑問に思うことすらおかしい位、当たり前のことを考えている。
理由はひとつ、彼女の突然の告白に、晴人の全思考回路が停止したからだ。
そろそろ、空気を補給しないとマズイんじゃないだろうか…。

「ブハッ!」
やっとした。

「大丈夫?」
「ご、ゴメン!ぜ、全然整理できてないんだけど」
「ウフフ」
「ちょっ!笑うとこじゃないでしょ!」
「ゴメンゴメン、ウフフ」
「もぅ…、かえ…ろっか?」
「うん」といって遥香は、左手を差し出した。

「何?」と聞いてみるも。
「ん!」と言っただけで彼女は手を差し出し続けている。

何故、この男は「手をつないで」という女の子のかわいらしい暗黙のメッセージを理解してやれないのだろうか。

「あっ…、手を繋げばいいのか…」
最初からそうすればいいのである。
そうして2人は、出会って2日という異常な早さで付き合い始めた。

そしてここから、2人の永遠に続くラブストーリーが、本格的に幕を開けるのである。

46ちんぱる:2013/06/01(土) 19:24:02

-7年前の夏-

時は過ぎ、夏。
「あっちぃ…、夏ってだけで何でこんなに暑いんだ…」
今年もこの時期がやってきた。
晴人にとっては、高校生になって初めての夏休み。
しかし部活に入っていない晴人は、1日中家で無駄な時間を過ごしていた。

「こら!朝っぱらからダラダラしてんじゃねえよ!」
「んだよ、姉ちゃん!」
「これ、買ってきて」と、優子は晴人にメモを渡した。

「はあ?歯ブラシセットに、シャンプーハットだあ?何に使うんだよ、こんなの」
「いいからいいから!駅前のスーパーで安売りしてたから、早く買ってきて!」

仕方なく買い物に出た晴人は、駅前を歩いているとある広告看板が目にとまった。

『渡辺麻友 NEWシングル発売!!』

今をときめく人気アイドル「渡辺麻友」、クラスでも彼女の話題で盛り上がっていた。


数週間前

「なあなあ!昨日の音ステ見た?」
大貴のテンションは、今日もバカなくらい上がっていた。

『音楽ステーション』、通称『音ステ』、人気のある生放送の音楽番組で、毎回いろんな歌手が出ている。

「見てないけど」
「なぁ〜んだぁとぉ〜!お前昨日の放送見てないとは!人生の半分損してるぞ!」
「じゃあ人生の半分は、得してんだな?」
「うっ」
晴人の反論に何も言えなくなる大貴。

「で?誰が出てたんだよ?」
「“まゆゆ”だよ!“まゆゆ”!」
「“まゆゆ”?」
駿太郎はそういうのには疎いらしく、キョトンとしていた。

「最近人気のアイドルのこと」
「ああ、アイドルね…」
「はぁ〜まゆゆかわいいよなぁ〜、何せあの清純そうな表情、そして時折見せる最強のアイドルスマイル!クゥ〜!たまらねえぜ!」

晴人は、大貴がそんな事を言っていたことを思い出しながら、看板を見ていた。

「ったく、アイツのどこがそんなにいいんだか…」
あたかも知り合いのような言い方である。

「さて、買いもん、買いもん!」
晴人は駅前のスーパーに向かった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板