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アニメキャラ・バトルロワイアルV

41ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:19:28 ID:jxgFL.CQ0
そういえば名簿に関する情報を全く聞いていない。
怯えて所持品の確認もしていなかったのかと思い、
ゲイツは自分の所持品から名簿を取り出し見るように促した。

「あんた、もしかして支給品をまだ確認してないだろ? ここに思い当たる奴がいないか見てみろよ」

「これは、どのようなことが書いてあるんですか?」

「はぁ? まさか字が読めないのかあんたぁ?」

無学さにイラッとするがそこはまだ堪えてやる。

「ああっ、すみません。私はイエイヌのフレンズなので、文字を読むのは苦手なんです」

まあ世界の識字率から考えれば、読めないやつなんていくらでもいる。
それにしてはちゃんとした教育を受けてそうな小奇麗な格好だが。

「ちっ、私の読みでは知り合いの名前が近くに集まっている可能性が高い、
 あんたの名前の周りの名前を言ってやろう」

「伊集院隼人、キュルル……はさっき言ってたな、G・ロードランナー、雨宮蓮、明智五郎」

「キュルルさんが来てるんですね!」

「G・ロードランナーもきっとフレンズの仲間です!
 もし会えたら、フレンズ同士得意なことを活かして協力できるはずです!」

「なるほど、やはり知り合いの名前は纏まって集められているようだ」

「他の人たちはわからないです。お役に立てずすみません……」

イエイヌが謝るが、ゲイツは気にしていない。
だがイエイヌは名簿を見ることで、多くの人たちが巻き込まれていることを実感する。

「こんなところに急に連れてこられて、きっとみんな怖いはずです」

「皆を元のお家へ帰らせてあげなきゃいけないのです」

まあ自分はそうじゃない方の人間なんだがなとゲイツは思う。
名簿に載っている自分の知る参加者たちはどうしているだろうか。
相良宗介、千鳥かなめ、テレサ・テスタロッサは自分に敵対する側の人間だ。
出来るだけ殺しはせず主催者を打倒するとか、正義じみたことをしようとするのだろう。
恨みはあるが、まずは有利に動ける状況を作ることの方が先だ。同じ失敗はしない。

元同僚のガウルンはアマルガムを抜けた後死んだはずだが奴のことだ、
実は生きていたとか言い出すのかもしれない。
もしくは、想像でしかないがやはり何らかの異能により延命されているのかもしれない。
異能について考えたところで、ゲイツはふと先ほど全く役立たなかった支給品のことを思い出した。

42ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:21:00 ID:jxgFL.CQ0
「あんたイヌなんだってぇ? それならこれを使ってみろよ? ドロンパっ!」

ゲイツがデイパックから取り出し投げた葉は、イエイヌの額にぺちゃっとくっついた。

「ドロン葉ってのがこのチンケな葉の名前だそうだ、
 身に着けると幻覚を見せることができるようになるらしい」

「が、私が使っても何も起きん。イヌ科しか使えないらしい。
 使えないものを配るなんてバカにしやがってぇ!」

ゲイツは自分で試しても何も起こらなかったことにちょーっとムカついてはいた。
しかし自分では効果が実感出来ない類のものかもしれないと思い、
捨てずに取っておいたのである。

「わ、私に使わせてくれるんですね、ありがとうございます!」

「ゲイツさんの期待に応えて見せます!」

イエイヌは目を閉じ精神を集中させる。

「キュルルさん……キュルルさん……」

ドロンという音とともにイエイヌが煙に包まれた。

「どわっ、何が起きた!?」

「わ、私は大丈夫です!」

すぐに煙が晴れると、全く別の人物がそこにいた。

「私の服が変わっています! すごいです!」

口調はイエイヌそのままであり、
ドロン葉の効果が発揮され幻影がイエイヌを別の姿に見せていることをゲイツは悟る。
ゲイツはこいつは本当に犬なのかと一瞬思うが、
それよりも目の前で起こった不可思議現象にテンションが上がる。

「耳や尾が消えて顔まで別人になってるぜ! すっごーい!」

「この服は……キュルルさんの着ていた服です!」

「動物が人になるとか子供向けの童話のようだぜ! 髪は緑で目は青くなってるな!」

「キュルルさんと同じです! つまり私はいま、キュルルさんの姿になっているわけですね!」

キュルルの姿のイエイヌは飛び跳ねて興奮している。
キュルルがどのような人柄かはわからないが、これではイエイヌが化けているとバレバレである。

「こりゃ本当にすごいな、ECSの不可視モードの応用か?」

「思考した任意のものを投影しここまで小型化しているとは、
 一体どれほどの技術提供があったんだか」

ゲイツが持っている知識から分析する。イエイヌには理解の及ばないことである。

43ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:22:06 ID:jxgFL.CQ0
「私、なんだか今とってもすごい事が出来てるみたいですね!
 ありがとうございます!」

「でも、せっかく獣なのに、獣だからいいのに人間になっちゃうのかよ……」

ゲイツが急に悲しがる。イエイヌに負けず感情の激しい男である。

「え、えと、すみません」

「むしろもっと動物らしい姿になってくれても! リアルな四足の子犬ちゃん!」

「と、とりあえず元に戻ってみますね」

再びドロンという音と共にイエイヌは煙に包まれ、元のイエイヌの姿に戻った。
四足ってどんな姿かイエイヌは一瞬考えたが、
よく想像できず新たに幻覚は発動しなかった。
どうやら対象をしっかり思い浮かべられないと幻覚は出せないようだ。

「ふぅ……どうやらこの葉っぱは私には使えなくて、お前には使えるものらしい。持っときな」

使った者自身にも効果を実感できることがわかり、
ゲイツは自分では使えない道具であると理解した。

「私がもらって良いんですか! あーりがとうございます!」

イエイヌは再びすごい勢いで飛び跳ねて喜んでいる。
ゲイツはここまでテンションの高い相手に若干引き気味である。

「キュルルさん、きっと無事でいてください!」

「私、この前は役に立てなかったけど、
 今度はこの葉っぱの力も使って護ってみせます!」

キュルルを護ってくれる2人は、恐らくここにはいないのだろう。
ゲイツと会って、道具だけでなく勇気も得たイエイヌは健気な決意を見せた。

__ゲイツはそんな使命感に燃えるイエイヌにちょっかいを出したくなった。

44ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:23:24 ID:jxgFL.CQ0
「ところで私のもう一つの支給品を見てくれ、こいつをどう思う?」

____瞬きをするような一瞬の間。
ゲイツのデイパックから短銃が出され、そのままイエイヌの頭部に向けられた。

「うわっ!」

イエイヌは咄嗟に獣のようなスピードで飛び退いた。
しかし、怯えも逃げしていない。

「ちょっとびっくりしましたけど、
 そんなに早くバッグから物を出せるなんて、とってもすごいですね!」

「……あんたさー、銃をいきなり向けられて返す反応がそれかぁ?」

ゲイツはここらで一度ビビらせて、完全に自分の支配下にしてやろうと考えたのだ。
殺し合いを回避し助け合うことなど不可能だという、
下衆た現実を突きつけ反応を楽しもうという考えもあった。
しかし、この反応にペースを乱され何だコイツと困惑した表情を見せる。

「これは銃という道具なんですね!
 使い方はよくわからないけど、この先っぽの穴から何かを発射するんでしょうか?」

イエイヌは猟犬、警察犬や軍犬としての性質の影響もあり、
銃が弾を撃ち出し攻撃する物ということは本能で理解した。
ところが犬としての本能はたったこれだけの出会いでも、
自分が撃たれるはずがないという純粋な信頼をゲイツに向けていたのである。

「ちぇっ、お前は本当に私の知るどんな人間とも違うな……」

「私はイエイヌのフレンズですから!」

----

45ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:25:32 ID:jxgFL.CQ0
イエイヌのランダム支給品はゲイツのデイパックに収められた。
「道具を使うのは得意じゃないので、ゲイツさんに持ってもらったほうがいいと思います」
とのことらしい。

ゲイツの視点では、最初の時点では犬っぽい衣装の変人であった。
だが、あまりにも犬っぽい仕草や性格が動物性愛者でもある彼を強く惹きつけた。
ゲイツはイエイヌという存在に興味を持っていた。
またジャパリパークについて少し信じ始めていた。
さすがにこれだけ常識の違いを見せつけられては、
イエイヌが本当に人外の存在だという可能性を捨てることができなくなっていた。

ラムダ・ドライバなど今までの常識では考えられなかった技術が出てきた事もあるのだから、
サンドスターなるブラックテクノロジーが無いとも言い切れない。
イエイヌは上辺の情報しか知らないようだが、専門家ならばもっと詳しくしっかりした説明も可能かもしれない。


二人はとりあえずの指針として、トゥアハー・デ・ダナンが停泊している西を目指している。
ミスリルの旗艦をどうやって会場に運航させて来たのか見当もつかない。
しかし主催者がわざわざ用意したのだから、利用価値はありそうだ。

艦そのものを動かすのは難しいだろうし、
根本から殺し合いのバランスを崩壊させかねないミサイル類も、
使えないよう手が加えられている可能性は高い。
それでもASや戦闘ヘリの一つでも入手できれば戦力を大きく増やせる。
最悪白兵用の武器程度でもあれば良いのだが。
先程の短銃は取り回しが良いが、実は殺傷能力のほぼない道具である。
まともな短銃は欲しい。

また、ダナンの北にあるランドマークの研究所。
文字の読めないイエイヌに地図を見せると真っ先に反応したのがここで、
イラストがジャパリパークの研究所によく似ているらしい。
建物そのものを持ってくるとは考え辛いが、
ダナンを動かせるほどの主催ならば無いとは言い切れない。
行けば科学系の物品が入手できるだろうし、
サンドスターやジャパリパークに関して何らかの手がかりもあるかもしれない。


イエイヌは自分のことを信頼しきっており、自分の言動に予想外の反応を返してくれる面白い存在だ。
ドロン葉により幻覚を操れることといい、手駒としても申し分ない。
殺し合いを理解していないという不安はあるが、まあそれは騙しながら徐々に慣れさせればいいだろう。

まあ飽きてきたらもっと過激なことを楽しんだり、邪魔になるようなら切り捨ててしまったって良い。
安全がある程度確保できたら拷問強姦だって楽しんでみたい。

キュルルとか言う奴もイエイヌの言伝てで手駒にできるかもしれないし、
目の前でどちらかを傷つけ殺し反応を見るのも良さそうだ。
どんな目に合わせてやろうか楽しみで仕方がない。

ジャパリパークには彼女と同じようなアニマルガールがたくさん住んでいるらしい。
このバトルロワイヤルから生還したら乗り込んでやるのもいいか、などとゲイツは思う。

46ペットは飼い主を選べない ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:28:00 ID:jxgFL.CQ0
「キュルルちゃんと遭ったら仲良くできるか心配だなぁ」

「ゲイツさんは私よりずっと賢くて面白い人です!きっと仲良くできます!」

「そーんなこと言ってくれるイエイヌちゃんはいい子だねぇ」

「えへへ」

ゲイツはイエイヌの犬耳を撫で回した。その表情はイエイヌには見えていない。


【B-7/天下一武道会場 深夜】
【ゲイツ@フルメタル・パニック】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、グローブ銃@ドラえもん、ランダム支給品×1〜4
[思考・行動]
基本方針:好き勝手動きこの状況を楽しむ
1:トゥアハー・デ・ダナン、研究所を目指す
2:アニマルガールやジャパリパークに興味。とりあえずイエイヌを観察する
3:異能を持つ参加者と接触し、どのような異能が存在するか知る
4:ミスリルの連中とはまだあまり会いたくない

※参戦時期は本編で死亡後。
※名簿は近い人の名前が近くに並ぶと気付いています。
※キュルルの正確な姿を知りました。

----

イエイヌはゲイツが腐った思考を巡らせていることなど思いもせず、
尻尾を千切れんばかりの勢いで振っている。
人間同士が殺し合いをするなんてことすら、ちゃんと理解できてないのだから仕方ない。
怯えていた感情も去り、アレクシスのような奴の手から人間を護る使命感に火が灯り始めている。

それは風前の灯であるかもしれない。しかし少なくとも今、彼女は幸せであった。


【B-7/天下一武道会場 深夜】
【イエイヌ@けものフレンズ2】
[状態]:健康
[装備]:ドロン葉@ドラえもん
[道具]: 基本支給品一式
[思考・行動]
基本方針:皆で協力してそれぞれのお家に帰る、人間を護る
1:ゲイツと一緒に行動する
2:キュルルや他のフレンズを探す

※参戦時期は本編終了後。
※ドロン葉の効果の制限は次の人に任せます

47 ◆koGa1VV8Rw:2019/04/30(火) 17:29:28 ID:jxgFL.CQ0
投下終了します。
最初の投稿にタイトルを忘れてるのはミスです。
延期してギリギリですみませんでした。

48名無しさん:2019/05/01(水) 01:30:48 ID:smQR3Kxw0
投下乙です
イエイヌちゃんはどこに行っても悲惨な目に遭ってかわいそう…

49名無しさん:2019/05/01(水) 10:53:29 ID:IWWlfZGc0
投下乙
イエイヌ健気すぎる…
ゲイツなんて奴のことも身を投げ打って守るの想像しちゃって辛いわ

50 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:43:59 ID:k1z.Nnig0
投下開始します

51優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:47:12 ID:k1z.Nnig0
ルーラはこの殺し合いを、とりあえず敗者復活戦のようなものかと理解した。
なにより脱落して死亡したはずの自分がここにいる。
アレクシスというやつが、厳ついけどマスコットと言うことなんだろう。
人数が多いのは、他にも何度か魔法少女を減らすためのサバイバルがあったのではと思うことにした。
隔離された島である以上、人間の姿でいる必要性はない。
彼女はとっとと変身して魔法少女の姿となっている。

現状を把握した後、彼女はなぜ自分が脱落してしまったのか考えた。

スノーホワイトの動きを封じキャンディを奪い切った上に、自分に多く分配したはずだ。
スノーホワイトは奪った時点でキャンディが0であり最低だったはずだ。
しかし、同盟相手のラ・ピュセルからキャンディを分けてもらい延命ができたかもしれない。
それならば間違いなく、私はあいつらに裏切られたのだ。
自分の目の届かないうちにキャンディを4人で分配して、残りを差し出されたのである。
思えばキャンディを奪うのにあれだけ手間がかかっていたのに、奪えた数があれだけなわけがなかった。
無能なので時間がかかったものとばかり思いこんでいたのだ。

「あのバカ共アホ共。 私が居なければ無能なやつらの癖に、変なところで頭を回しやがって……」

孤独な状況においても、思わず悪態をついてしまう。
だが一応のまとまりがあったのに、裏切られた原因は何だろうか。
あんなに先輩魔法少女としてマニュアルを作ったり、
世話を焼いてやったのに何故裏切られてしまったのか。
努力家で有能な彼女だが、自分とは違った思考を持つ人々の心理が理解できない。
こればかりは、対等な立場と考えて相手を知ろうとしない限り理解できないものである。
ルーラの限界がそこにあった。

だから彼女はこの殺し合いの場でもやることは変わらない。
自分に御しやすそうな他の参加者を見つけ、同盟を組んで優勝を目指すことである。
ただし最終的に勝ち残れるのは1人。
よって組んだ後は優勝のチャンスがあると希望をもたせながらも、
最終的には自分が出し抜く方法をしっかり考える必要がある。
ルーラは、この殺し合いを優勝しもう一度魔法少女として再起すると決意を抱いた。

ルーラがいるのは街の中である。
しかし人影はなく、夜闇に包まれたゴーストタウンとなっている。
ところがどこからか電力が来ているのか街灯は灯っている。
このような状況では隠密行動に秀でてない限り、参加者同士はお互い発見しやすい。
それでも魔法少女としての特性により夜目が効きやすいルーラは、
別の参加者を相手より先に発見できた。

発見した相手は高校生くらいの男だ。
ルーラはこの状況においても魔法少女に変身せず普段の姿でいるとは、
なんて警戒心の無い奴なのだろうと思った。
こんな奴が役に立つのか。足手纏いになり自分の敗退を加速させてしまうのではないか。
いっそこの場で殺してしまい支給品を奪った方がいいのではとすら思う。
だが、そのようなやり方はルーラの考える魔法少女のやり方ではなかった。
いずれは汚いことにも手を染めて優勝を目指さなければならないときが来るのだろうが、
まだそのような気分になってはいなかった。
まあ少し世話を焼けば、囮や壁程度でも役立つことがあるだろうと思い直すことにした。

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52優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:49:49 ID:k1z.Nnig0
さて、この場においてサーヴァントを従えていない一般人の慎二は完全に無力だ。
慎二は聖杯戦争の最中、突然この殺し合いの場に転送されてきてしまった。
名簿を見たところ、忌まわしい衛宮、セイバーに桜も参加していると来た。
自身の従えるサーヴァント、ライダーさえいればなんとかなるかもしれないとの希望は、
支給品の中に偽臣の書がなく、
参加者にセイバーは書かれているのにライダーがいない事で完全に打ち砕かれる。
これだけでも戦って勝つのは不可能に近い。
さらにあの大勢の中に、複数の異能を持つ参加者までいるとなると勝ち残るのは絶望的だ。

慎二の選択した行動は逃避であった。
とにかく死にたくないので町中で隠れやすい場所を見つけて、
他の参加者から発見されることがないよう隠れる。
そうしてからその後どうするかを考えよう。
出来れば外の様子を伺えるところがいい。
衛宮のようなお人好しなら今までの事を謝り頼ってしまえば、
一般人の自分を殺し合いに積極的な奴らから守ってくれる可能性も高いだろう。
そのようなお人好しの参加者を見つけて、とにかく長く生き残れる可能性を上げたい。
そうしてビクビク怯えながら隠れる場所を探し町中を歩いていたのだ。

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ルーラは組んでいる味方のいない最初は、自分で少しリスクを背負わなければならない。
建物の屋根の上に登り、相手の動きを観察する。
相手は街の構造など把握しておらず、闇雲に周りを見ながら道を歩いているだけである。
もちろん屋根の上などに注意を払ってはいないようだ。
ルーラは上から見ているので、道の構造は容易に把握出来る。

そして、相手が袋小路の突き当りに入ってしまった瞬間、ルーラは後ろに飛び降りた。

「ルーラの名の下に命じる。貴様はその場で身動きするな」

慎二は何かが後ろに落ちた音に驚き振り返る。
だがその時にはすべてが終わってしまっていた。
マントの付いたフリフリの服、キラキラした髪飾りの少女。ステッキをこちらに向けている。
そして自分は体の身動きが全く取れない。
まずい。魔眼の類か。
自分なりに警戒はしていたが、まさか上から来るとは思わず反応できなかった。
もうだめだ。このまま殺されるんだ。
慎二は命乞いの準備を始めようとした。ところが。

53優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:51:38 ID:k1z.Nnig0
「少し聞きたいことがあるんだけど、
 あんたこの殺し合いには乗るつもり?」

少女は殺し合いに乗っているか聞いてきた。
これはどういうことだ。
もしかしたらこの少女、衛宮と同じようなお人好しで、
殺し合いに乗っていない者を保護して、
乗っている者を排除しようとしてるんじゃないだろうか。

「殺し合いになんて乗ろうなんて考えてません!
 だからどうか見逃してください!」

ルーラはなるほど最初の印象と同じだと思う。
この状況においてもとにかく強者に媚びて生き延びたいだけの奴だ。
最後の一人になるまで殺し合わなければならないという趣旨上、
媚びるだけでは結局最後は死ぬことになるのだろうに、何を無駄なことをしようというのだ。
まあいきなり私に主導権を握られた以上、逃げの思考が強くなるのは仕方ない。
もう少し問いただしてみよう。

「なるほど、それはそれはあんたの本心?
 もう少し詳しく説明しなさいな」

「ぼ、僕なんかがこの殺し合いで優勝できるわけない。
 それなら生き残るためには、
 貴方のような強くて殺し合いに乗ろうとしてない人に保護してもらう。
 そして多人数で力を合わせ殺し合いからの脱出を目指していく。
 そっちの方がまだ望みがありそうだと思ったんだ!」

「はあ? 私が殺し合いに乗ってない?」

ルーラは誤解されていると理解した。
殺し合いに乗った人物は、いきなり殺しにかかる奴ばかりだと思ってるのだろうか。
まあこの状況でそこまで考えられないのは仕方ない。
それより注目すべきは相手の発言である。
脱出を目指すのは仕方なく選ぶ方法だとでも言う感じだ。
つまり、もしかするとこいつは優勝を目指したいけど諦めているのではないだろうか。
少し焚き付ければやる気を出してくれるかもしれない。

「貴方、実は優勝して叶えたい願いがあるんじゃあない? それなら……」

「私と優勝を目指して組んでみない?」

まさかの提案に目を見開き驚く慎二。
慎二には確かに願いはある。
聖杯戦争で優勝できたら叶えたかった願い。
自分が魔術師の戦いの中でも勝てることを証明し、爺や桜、さらには衛宮を見返してやる。
そして魔術回路を手に入れ、間桐の魔術師として大成したい。

「私は一人の力だけでこの殺し合いを勝ち残るのは難しいと考えている。

「まあ可能性は低いけれど戦いの中で私が敗れて貴方が生き残れば、
 貴方は私と戦うことなく、有利な状況で残りの殺し合いを戦うこともできる。
 力のないあんたにとって、良い提案だと思うけれど?」

慎二の心が揺れ動く。
組んだとしても、一般人の慎二が優勝できるかどうかは非常に分の悪い賭けであろう。
参加者がかなり減った段階でルーラが相打ちのような形で負けてくれることを祈るか、
さもなくば裏をかいて倒さなければならないのだ。
でもよく考えれば、聖杯戦争だって魔術師のマスターの中で一般人の慎二は優勝を目指した。
リスクはより大きいが、こんな殺し合いに巻き込まれた時点で大きなマイナスとなっているのだ。
それならば優勝を目指した方が納得できる結果になるかもしれない。
そして何よりこの提案に乗らなければ、その後どのような目に合わされるか分かったものではない。
慎二は決断した。

「……わかった。この殺し合いの優勝を目指して、同盟を組もう」

「理解してくれて助かる。私の名前はルーラ。よろしくね」

「間桐慎二だ。これからよろしく」

54優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:53:32 ID:k1z.Nnig0
ルーラが魔法を解き、慎二が動けるようになる。
とりあえず今後の方針でも話そうとルーラは考えるが……すぐにはできないようだ。

やはり夜目が効きやすいルーラが、遠くより近づいてくるもう一人の人物を発見したのだ。
距離的に、こちらの声は慎二の命乞いくらいしか聞こえてなかっただろう。
あるいはそれを聞きつけ、他の参加者に会おうと来たのかもしれない。

相手は表情の暗い中学生くらいの少年だ。
学校の制服を着ているので学生ではあるのだろう。
ルーラはまた無警戒な奴がやってきたと思い、少しがっかりする。
まあ、無力で戦い方を分かっていない奴ほど、肉壁として同盟に引き入れやすいという考え方も無くはない。
二人は曲がり角に入り、相手から見えないようにして小声で相談する。

「あいつもあんたと同じように、動きを封じて尋問して、可能なら仲間に引き入れる」

「上手く行けば味方が増えるってことか。とっても頼もしいな。
 ルーラが頑張れば僕は役に立たなそうだから、ここらへんで待ってればいいのかい?」

「何言ってんの? あんたも協力するのよバカ。
 あの子も今のところ戦う腹積もりを決めてない感じだし、油断させて近づいて取り押さえなさいな。
 暴れるかもしれないけど、すぐに私の魔法で完全に動きを封じるから。
 大きな怪我の心配はない」

「はあ!? 何もわかってない相手にいきなりそんな危険を冒せって!?」

「こっちが"はあ?"って言いたいわよこのグズ。
 せっかく同盟を組んだのに、少しは役立ちたいとかそういう気持ちがないわけ?」

「わかったよ! やるよやるよ!」

いきなり知らない相手にそんなことを仕掛けるのはちょっと弱気になる。
しかしせっかくの同盟相手なのに、ここでいきなり反抗するわけにもいかない。
慎二は覚悟を決めて接触を計りに行った。

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55優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:55:03 ID:k1z.Nnig0
キリヤはプリキュア達との決戦に向けて、河川敷に向かっていたところだった。
だが、急に耐え難い眠気に襲われ、目が冷めたときには謎の会場。
そして説明を聞くままにしていると、目が覚めたときは町中であった。

キリヤは取り敢えず自分が殺し合いの場に呼ばれたことは理解した。
そして生き残った一人には願いを叶える権利が与えられることもを
何が何でも優勝し、ジャアクキングにプリズムストーンを献上するために願いを使うのが、
この場でのドツクゾーンの住人としての自分の使命なのだろう。
しかしキリヤはプリキュアに近づくため学校に潜入している中で知ってしまった。
虹の園の人間たちの暖かさ。学校、雪城ほのかと過ごした時間の楽しさ。
この殺し合いは大勢の参加者がいる。恐らくみんな虹の園の人間たちだ。
それだけの命を奪って優勝するのは、自分が本当に望むことなのか。
プリキュア達との決闘も、他の人間を巻き込まないような場所や時間を指定していたほどである。
キリヤはこの殺し合いの中でどのように行動するか悩んでいる。

人間の声が聞こえた。男のようだ。
方針がまだ固まらないが、取り敢えず接触してみたい。
そして今後の方針を考える参考にしたい。
キリヤは人間の入沢キリヤの姿で、声の方向に向かう。

曲がり角の手前にて二人は接触した。
お互い身構えるも、キリヤは相手が無力そうだと思いすぐに警戒を解く。
慎二も戦意がないことを示すため手を広げて振る。

「ふう。君が戦意の無さそうな相手で良かった。
 さっき他の参加者と接触したばっかりなんだ。
 なんとか見逃してもらえたけどね。

「はあ」

「僕は間桐慎二。よろしく」

「……入沢キリヤといいます」

「君、まだ現状をよく把握できてないだろう?
 僕もなんだ。もしよければ一緒に支給品を出して確認しないか?」

「いいですよ。ここで初めて逢った人が話のできる人でよかったです」

キリヤはデイパックを降ろす。
間桐慎二がキリヤに近づく。

「取り敢えず中身を出してみよう。
 ……暗くてよく見えないな。もう少し近くに寄ってみるかな」

距離が徐々に縮まる。
腕を伸ばせば触れそうなくらいまで近づいた。
慎二はこれならなんとかなりそうだと覚悟を決め、動く。

「今だ!」

キリヤが視線を下にした隙に、慎二がキリヤを羽交い締めにする。
そして慎二の合図と共にルーラが曲がり角の死角から姿を表し、キリヤに王笏を向けた。

「ルーラの名の下に命じる。貴様はその場で身動きするな」

56優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:56:11 ID:k1z.Nnig0
……しかし、キリヤは何が起きたのかと首を動かしている。

「魔法が発動していない……! なぜ?!」

「何やってるんだ! ルーラ!」

何らかの攻撃をされたが発動しなかったようだと感じたキリヤ。
相手がこちらに敵対していると断定し、戦闘に移ることを決意した。
姿が中学生入澤キリヤのものから、ダークファイブの一員キリヤのものへ直ぐに変化した。

「なっ…!?」

慎二は驚いて拘束を緩めてしまう。
すぐ様、猛烈な力でキリヤは慎二を振り解いた。

「うわあっ!」

慎二はその勢いに尻餅をついて転んでしまう。

「こんな変身後の姿って……」

ルーラは言葉をすべて紡ぐことができない。
即座に戦闘態勢となったキリヤの手から衝撃波が放たれ、ルーラを襲ったからだ。
ルーラは躱そうとしたが、魔法が発動しなかったショックにより反応が遅れた。
それでもただの掌打ならばぎりぎり躱すことが出来ただろう。
衝撃波が付いてくるのは予想外であった。

「ぇぐっ!」

衝撃波により弾き飛ばされるルーラ。
大きな音ともに地面を転がってしまう。
手を付くがまだ立ち上がることができない。

「くそっ! 一体どういうことだよ!」

慎二がキリヤの後ろで悪態をつく。

キリヤは自分の葛藤とは関係なく、いきなり襲ってきたこの二人の人間に怒りを感じた。
女の方はそこまでダメージを受けていないように感じ、
こいつは一般人ではないと直感する。
高校生くらいの男は無視し、この女を先に片付けようと、ルーラの方へ走り寄る。

しかし二発目の衝撃波を発する前に、後ろから何かが投げられて来たのに気づく。

爆弾の類だろうかと思い当たるキリヤ。
仲間を巻き添えにする気かと驚くも、姿勢を低くし被弾面積を小さくし、そのまま冷静に蹴り返そうとした。
もし爆発しても、ダークファイブの自分ならば防御ができれば大きなダメージにならないと思った。
だが__

57優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:56:51 ID:k1z.Nnig0
蹴り返すには一手遅く、爆発音とともに予想外の強烈な光がキリヤを襲う。
爆弾は爆発によるダメージを狙ったものでなく、
爆発音と閃光でキリヤの動きを妨害するためのものであった。
月明かりの下で瞳孔は暗所適応しており、閃光で大きなダメージを負ってしまった。

ルーラはそこまでダメージを負っていない。
爆発の前に慎二はキリヤの後ろからルーラに対して、
目と耳を防護するようジェスチャーを送ってから目を背けたのだ。
ルーラは爆発の寸前に目を爆発から背け耳を覆い、
また魔法少女としての身体能力により至近距離でもダメージを免れたのである。

だが、超人的な存在であるキリヤはそれでも気絶には至らなかった。

「ちくしょう! よくもやってくれたな!」

視覚と聴覚が奪われ立ち上がることもできないが、その状態でやぶれかぶれに攻撃しようと、
周囲の様々な方向に衝撃波を放ってきている。

「ルーラ!」

慎二が衝撃波をくらわないであろう、建築物の影になる側からルーラを呼ぶ。

「もっと急げよ! こっちはすぐにでも逃げたいくらいなんだぞ!」

この状況で打算の関係といえども仲間を手に入れた慎二。
おそらくこんな美味い状況はないだろう、
手放すものか、また後で見捨てられてはたまらないと必死である。

「あいつの攻撃に気を配りながらだとこれが精一杯よ!」

先ほどダメージを負ったばかりで、
さらに魔法少女の中では戦闘が得意な方ではないルーラは

なかなか慎二の方へ向かう事ができない。

その間に感覚が徐々に復活してしまったようだ。
攻撃が少し止んだと思ったところで、キリヤが立ち上かってしまっていた。

だが、慎二が聴覚にダメージを受けた相手にも伝わるよう大声で叫び割り込んだ。

58優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:57:51 ID:k1z.Nnig0
「ま、待てよ! あんたは殺し合いに積極的なんだろ!」

まさか相手が語りかけてくると思っていなかったキリヤ。
動きを止めて素の反応を返してしまう。
怒りに任せ戦闘を行ったことで、ダークファイブとして願いを叶える方向性に感情が傾いている。

「別に? それがどうかしたんですか?
 これから貴方達は僕に殺されるんだ。優勝して願いを叶えてもらうためにね」

慎二は、相手が最初人間の姿をしていたことから、
人間らしい性質があるか、あるいは人を騙そうとするだけの考えが出来ると信じ対話を試みた。
また、ルーラは一撃目でしばらく動けないダメージとなっているのに、
躊躇なく追撃を入れようとしたことから相手は殺し合いに積極的と読んだ。

「話が通じると信じて言わせてもらう!
 こちらも殺し合いには乗っていて2人でチームを組んでいる!
 参加者の中には自分たちと同格か、それ以上に強い相手もいると考えているからだ」

慎二の考えを理解したルーラが続ける。

「それに……このままだと死闘になって勝った方も大きなダメージを受ける!
 それは今後の殺し合いを戦うには不都合なはず! わかってくれる!?」

「そうだ! だから殺し合いに乗っている者同士、ここは一度戦うのをやめないか!」

「格上の相手を確実に排除できるまで……ね」

慎二はスタングレネードをすぐに投げられるよう信管に手を掛けているが、
真正面から投げれば恐らく今度は通用しないだろう。
二人は相手が話を聞いて戦闘を回避してくれることに賭けた。

キリヤは考えを巡らす。
相手の先制攻撃は発動しなかったようだが、
先程の自分の攻撃のダメージを受けていながら既に動けているところを見るに、
体術もそれなりに強いはずだ。
さらなる隠し玉の必殺技を持っている可能性もある。
もう一方は一般人のようだが武器を使いこなしてきている。
総合すると、このまま戦うと死闘となるのは確かなのだろう。
協力して格上の相手たちと戦い、その後優勝を懸けて戦うというのも理に適ってはいる。

またキリヤは人間の中に、このように理性的に心を通わせながらも、
なおも他人を蹴落として願いを叶えようとする者がいることに感心した。
自分の今まで見てきた人間の姿は一面でしかなかったのだろう。
それを気づかせてくれた相手をここで倒してしまうのもちょっと惜しい。

「いいでしょう。ここは貴方達の提案に乗って戦いはやめましょう」

59優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:58:51 ID:k1z.Nnig0
ルーラと慎二はまだ警戒は解かないが、ほっと胸を撫で下ろした。
だが慎二は思う。ここまで来たならもう一歩踏み込みたい。本番はこれからだ。

「さっきの通り、君と僕たちの強さは拮抗しているんだ!
 ここにいる僕らがさらに組めば、より確実に格上の相手にも勝つことが出来るはずだと思わないか!?
 急なことで信頼できないかもしれないが、僕らも人数が減るまで生き残るために必死なんだ!
 同盟の提案を聞いてもらえないだろうか?」

ルーラは慎二の胆力に感心する。
臆病なヘタレだけれど、環境さえ整えれば頭は回るようだ。
短い間だが、しっかり指導すればさらに化けるかもしれない。

さっきまで戦っていたのに何を言い出すのかとキリヤは思った。
でも、この今まで会った人間とは違うタイプの二人ともっと色々話してみたい。
そして、この場には優勝して願いを叶えようとする人間はきっと他にもいる。
それぞれの願いは相容れず、殺し合いがどうしても起きるだろう。
やがてはそのうちの誰かが生き残るのだ。
それなら、自分もその中で自分の願いを掛けて戦う権利がある。
他の人間に願いを叶えさせるくらいなら、ジャアクキング様の為に戦って使命を果たしたい。
あやふやながらも、キリヤの優勝に対する決意が定まった。

そういえば雪城ほのかは自分に協力することの大事さを語っていた。
ほのかの望んでいる方向性とは違うのだろうけれどと、苦笑とも嘲笑ともつかない笑みが出る。

「戦ってすぐの相手に協力を頼み込む……
 いかにも人間らしい発想ですね。
 でも、あなた達の考えるところは理解しました。
 僕もあなた達と組んで戦って、優勝を目指すことにしましょう」

こうして、殺し合いに乗った三人の同盟が結成されたのである。

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60優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 20:59:44 ID:k1z.Nnig0
三人はとりあえず更に他の参加者に割り込まれる前に話そうと、近くの適当な小寺院に入った。
寺院なら参拝者のために鍵を掛けず開放されてるだろうし、
適当な広さもあり落ち着いて話すのに丁度よいだろうとルーラが提案したのである。

「さっきの事だけど、あんた結構やるじゃない。
 実は最初は、役に立たなそうだからとっとと殺してしまおうかとも考えてたのよ」

「ひいっ! そんなことわざわざ言わないでくれよ!」

「いちいちビビるとか、あんたバカ?」

キリヤは外見が一番年上の慎二が自分やルーラに怯えるのを見ていると、
ドツクゾーンの上下関係と全然違うななどと想像し、静かに笑いを漏らした。
そんな和やかな雰囲気で、三人が情報交換を始める。

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ルーラが思う。
キリヤと名乗る少年は目の前で変身してこちらを襲ってみせた。
橙のシャツに短パンで、皮膚の色が暗く眉毛のない姿が魔法少女としての姿だとでも言うのか。
今まで出会った魔法少女は例外なく女性型の姿であったし、
ゲームのアバターが反映されるという点から見てもこんな姿はありえないのではと思う。
だが、魔法少女にここまで有効な攻撃をできるのは魔法少女だけのはずだ。
それならこの少年は何者なのかとルーラは思う。

「キリヤ、あんた一体何者?
 人間から変身ができるというと魔法少女なのかとも思ったけど、
 あんたがそんな存在とは思えないのだけど」

「魔法少女? それって一体何だ?
 そもそも僕はこっちのほうが本当の姿で、人間としての姿は人間を騙して近づくための仮の姿だ」

「はあ? じゃあ何なのよ」

「僕は闇の世界ドツクゾーンの住人で、ジャアクキング様に仕えるダークファイブの一員だ」

「はあ?」
「へ?」

ルーラと慎二は、中学生の子供が考えそうな設定だ等と一瞬想像した。
だがキリヤという存在は実際に人外の存在のようであり、変身も見せているのである。

「そもそも人間たちを脅かす異界の存在、ザケンナーやダークファイブと、
 プリキュアが戦っているというのはちゃんと理解しているのか?」

「いやいや聞いたこともない単語ばかりなんですけど?
 それに僕も魔法少女というものはさっぱりわからないのだけれど」

「……それについても詳しく聞かせてほしいわね」

三人の一般常識があまりにも違いすぎる。
三人は自分たちの持っている世界の常識について議論し、細かいところも突き合わせてゆく。
その結果は……。

「なるほど、私達どうやら似ているけれど少しずつ違った、
 別の世界からこの会場に連れてこられていると考えるしかないわね」

三人の基礎的な常識の下で、異界の存在というものを受け入れやすかったのは幸いであった。
キリヤはドツクゾーンの他に光の園、虹の園があるようにさらに他の世界もあるものと想像した。
ルーラも、魔法の国は異世界にあるように他の異世界もあるのだと想像した。
慎二は平行世界の概念は解っているし、平行世界を司る魔法があるようなことも聞いたことがある。
三人は様々な異世界から参加者が集められていることを理解した。

「主催者はそこまでして、僕達に殺し合いをさせようというのでしょうか?」

「まあそれはそれで、そこまで強大な力を持つなら、
 "何でも"一つ願いを叶えるという主催者の言も信憑性が高くなると思うけれどな」

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61優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 21:01:35 ID:k1z.Nnig0
昔は魔法少女の同盟のリーダーであったルーラが話を先導し話題を出す。

「別の参加者に出会った時の方針はどうしようか? ある程度考えてはいるのだけど」

「名簿の衛宮士郎、間桐桜は出来れば最期だけは自分の手で止めを刺し決着をつけたい」

慎二がとりあえず真っ先に自分の意見を出した。
ルーラは個別の参加者ではなく、知り合いでない参加者の場合を考えていたので話の腰を折られた。

「そういう話じゃないんだけれど……まあいいわ、間桐桜は貴方のお身内かしら?」

「まあそんなところさ」

「血縁者とも殺し合わないといけないなんて酷い話ね。
 手を掛ける覚悟は出来てるの?」

「こっちにもいろいろ事情があるんでね。心配の必要はない」

桜は間桐家にとってどうしても必要な存在ではある。
それでも慎二がこの殺し合いで優勝して、間桐の魔術師として成功できればその必要はなくなる。

「それなら僕も」

慎二に従いキリヤが意見を出した。

「美墨なぎさ、雪城ほのかの2人は因縁のある相手なんです。
 接触出来たら、闘うのは僕一人に譲ってください」

「なんだって!? まさか負けたりしないよな!?
 同盟から一人でも欠けたら僕は死活問題なんだぞ!」

「私もそんな感情勝ち抜くためには無駄なものと思うけれどね、
 まあ出来る限り考慮してあげる。
 ただし、状況が悪そうなら因縁とか無視して助太刀したり見捨てることは承知しておいてね」

「わかりました。協力するということはそれが自然なことなんでしょう。
 でも二人との戦いは僕の宿命なんだ。
 決戦の約束を守れず皆がここに連れてこられてしまったけれど。
 もし戦いになった時、助太刀に入るのは二人が僕に本気でとどめを刺そうとした時だけ。
 そういう位で納得していただけませんか?」

「しょうがないわね……。そういうことにしておいてやるわ」

ルーラはキリヤが自分に安々従ってくれる人間だと思っていない。
よってこの場で妥協点も出してくれたキリヤの意見を尊重した。

「ぜ、絶対に助けに入る前に死んだりするなよ!」

慎二は格上である二人の意見を聞かざるを得なかった。

「私も恨みのある相手はいる。スイムスイムという魔法少女。
 遭ったら私を裏切った理由くらいは聞いてやろうかしら」

二人に影響されてか知らず、ルーラもここに来ている元同盟相手のことが少し気になった。
恨む気持ちだけでなく、自分を脱落させてその後あいつらどうするんだと心配する気持ちも少しあった。
名簿を見たときに見つけたスイムスイムの名。
おそらく彼女も自分が脱落した後に連れてこられたのだろう。
同盟の二人が連れてこられた瞬間は特に死亡時などではなかったようなので、
スイムスイムも脱落してから連れてこられたのか、途中で連れてこられたのかは不明である。
そうなると残された奴ら、天使二人は能力があまり戦闘向きでなく考えが浅いし、
たまは能力は強いが頭が悪く、やはり誰かと組まないと実力を発揮しにくい。
恐らくお人好しの誰かに助けられでもしない限り全滅してしまっているだろう。
ルーラは元同盟相手たちの行く末を想像し哀れんだところで、話の趣旨を元に戻す。

62優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 21:05:40 ID:k1z.Nnig0
「個別じゃなくて、知らない参加者に出会った時の方針を話したいのだけれど?
 それくらい理解できなかったの?」

「うっ、そういうことだったんだな……。
 さっき言った衛宮士郎は正義の味方を気取っているようなお人好しだ。
 おそらくこの殺し合いの中でも出来るだけ人を助けて、脱出する道を探しているだろうな」

「エリア外への脱出や主催者への反抗は首輪が爆破されるとルールに書かれているのに、
 ルールに逆らうことをしようとするバカな奴ね。
 まあどの程度で主催者への反抗と見做されるかわからない以上、
 すぐに首輪が爆破されず生き残っている可能性も充分ある」

「それなら僕の知り合いの二人も、人々を助けるために悪と戦っている。
 きっと主催者を打ち倒すことを考えるでしょう」

「私もスノーホワイトやラ・ピュセルは、
 積極的に殺し合いに乗るタイプではないと思っている」

「なるほど、他にも脱出を目指すような参加者が恐らく存在していそうだな」

「殺し合いに勝ち抜くためには、他の参加者の情報はとても大事よ。
 能力がわかれば対策が立てられるからね。
 おそらく脱出を目指すような奴らは、
 殺し合いに乗りそうな危険人物の情報も積極的に共有するはず」
 だから、明らかに危険な雰囲気の奴以外は最初は友好的に接触して情報を得ながら相手の参加姿勢を見極める」

「でもこちらの知り合いでなくとも、伝聞でこちらに危険人物がいると知っている可能性もあるだろ。
 油断はしないほうがいいかな」

「とはいってもこっちの全員が危険人物とばれてることは考えにくいし、
 主催者が気に入らないとか、理由を付ければ殺し合いに乗っていないと騙せるんじゃないでしょうか」

「でも一度警戒されたら、重要な情報を話してくれるとは考えにくい。
 相手がこちらの素性を知っていて警戒してくるようなら、腹芸もそこそこに隙をついて倒す」

ルーラが話を纏める。

63優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 21:13:20 ID:k1z.Nnig0
「それはいいとして、殺し合いに乗った危険な奴を見つけたときはどうするんだよ?」

慎二が他のスタイルの参加者と出会った時の話を挙げる。
一番無力な慎二はが心配するのも無理はない。

「できる限り無視するのが良い。
 放っておけば他の参加者を消してくれるありがたい存在だからね。
 ただあまりにも強そうな場合は、更に他の参加者の支給品を奪って手がつけられなくなる恐れもある。
 そういう奴は早めに消しておくべきね」

「わかりました。
 強そうなやつと戦う時は三人で協力し、全力を尽くしましょう」

----

情報交換はある程度終わり、それぞれ休憩を始めた。

さて、ルーラは自分の魔法がキリヤに効かなかったことを考察した。
キリヤが魔法の通用しない存在であるのか。
あるいは自分の魔法の使用に制限が掛けられているか。
最初に見せしめとして殺された魔法少女には、
不死の魔法に制限が掛かっていたということを考えると、
こちらの可能性が高そうだ。
魔法少女以外の存在もいるこの殺し合いでは、自分の魔法は強すぎるので制限の対象という事か。
今後のために、どのような制限がかけられているか調べる必要がある。
だが、この二人に弱点を漏らすわけにはいかない。
最終的に同盟を組んだ相手をも出し抜き勝利しなければならないのだ。
出来る限り謎を持たせておきながら、制限を検証する方法を考えなければならない。
特にキリヤは今まで自分が組んできた相手と違い、同格レベルではないかとも思っている。
それでも魔法の制限さえしっかり把握して策を寝れば、勝てる相手ではあるはずだ。
キリヤは人間でなく、人間の思考に興味を持っている。
そこをよく掘り下げれば隙が見えるはず。

二人を育てる、でも最後には殺さなければならないと矛盾した思いを抱えるルーラ。
それぞれの叶えたい願いは違うが、目指す方向は一つだ。

64優勝に懸ける者たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 21:16:12 ID:k1z.Nnig0
【G-1/町 深夜】
【ルーラ@魔法少女育成計画】
[状態]:健康、全身に軽い打撲
[装備]:王笏@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:優勝して魔法少女として再起する
1:慎二、キリヤと共に行動。リーダー的立場になりたい
2:対主催は情報を得てから倒す。マーダーは放置、強マーダーは倒す
3:魔法に付けられた制限を把握したい
4:スイムスイムと遭ったら裏切った理由を聞きたい

※参戦時期は本編で死亡後。
※魔法の詳しい制限に関しては次以降に任せます。
※魔法少女の回復力の制限も次以降に任せます。

【間桐慎二@Fate/stay night [Heaven's Feel]】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、スタングレネード×4@魔法少女育成計画、ランダム支給品×0〜2
[思考・行動]
基本方針:生き延びたい。出来ることなら優勝して周りの人間を見返してやる
1:ルーラ、キリヤと共に行動。見捨てられないよう頑張る
2:衛宮、桜を見返してやる。自分の手で倒したい

※参戦時期は次以降にお任せします。

【キリヤ@ふたりはプリキュア】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:優勝して願いを使い、ジャアクキングにプリズムストーンを捧げる
1:ルーラ、慎二とともに行動。協力し合ってみる
2:殺し合いに乗っている人間の思考に興味
3:プリキュアと会えたら、決戦の約束を果たす

※参戦時期は21話、プリキュアとの決戦前。

65 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 21:17:02 ID:k1z.Nnig0
投下終了します。

66 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 21:30:52 ID:k1z.Nnig0
急いでたので、下の方誤字でボロが出てますね……すみません
一応間違いが分かりにくかったり、内容に大きく関わる誤字はないです

67名無しさん:2019/05/07(火) 23:10:34 ID:QSXMgNEo0
投下乙です。
なんといきなり三人も優勝狙いが組んでしまうとは。
キリヤを殺し合いに乗せちゃったルーラ慎二はやってくれたな感が、ほのかは止められるんだろうか
一本だと折れる矢も三本なら折れない理論で慎二も中々厄介になりそうだ…。

68 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/07(火) 23:41:15 ID:GtrRSFtM0
誤字はwiki掲載時もしくは掲載後に、その点だけ修整できたらと思います。

69 ◆WMl/ihM5l.:2019/05/13(月) 19:56:15 ID:VxxT6pFA0
短いですが投下します。

70なぎさと千歌! 恐怖のバトルロワイアル!! ◆WMl/ihM5l.:2019/05/13(月) 19:57:30 ID:VxxT6pFA0
「ありえな〜〜〜〜〜いっ!」

 美墨なぎさことキュアブラックの叫びが深夜の街で響き渡る。
 いつものように、大事な日常を壊してくる奴らをぶっ飛ばして、ほのかやひかりたちと楽しい毎日を時間を過ごしているはずだった。それなのに、怪しくて黒いおじさんから意味わかんないことを突き付けられてしまう。
 当然ながら、あんな変なヤツの言うことなんて聞くつもりはない。なぎさとて、人としてやってはいけないことはわきまえているつもりだ。無意味に誰かを傷付けたりしたら、チョコパフェやたこ焼きだっておいしく食べられなくなるし、憧れの藤P先輩にだって会わせる顔がない。
 
「そうだよね……こんなこと、ありえないよね!」

 そんなキュアブラックの怒りに同意する少女がもう一人。
 浦の星女学院の二年生にして、スクールアイドルAqoursのリーダーである高海千歌もまた、殺し合いに反対している。
 そもそも、戦いのことなんてよくわかっていないし、どうしてスクールアイドルが誰かを傷つけなければいけないのか? 他のスクールアイドルと技術を競い合うことはあっても、命を奪い合うなんてありえない。
 そう思っていた矢先に、キュアブラックこと美墨なぎさと出会った。ちょっと年下だけど、頼りになる雰囲気はある。

「まったく……どーしてあたしたちがこんなことをしないといけないのよぉ!」
「曜ちゃんや梨子ちゃん、それに善子ちゃんもいる……みんな、大丈夫かなぁ?」
「……ほのかにひかり。それに、キリヤって……まさか、彼のこと?」

 千歌とキュアブラックは名簿に書かれた名前に想いを寄せる。
 同じAqoursのメンバーまでもが巻き込まれて、千歌は不安になっている。どうして、彼女達がこんな目に遭わなければいけないのか……考えただけでも、悲しくなる。
 一方でなぎさも、親友のほのかと新しい友達のひかりのことが心配だし、何よりもキリヤの名前が気がかりだった。かつて心を通わせたけど、ドツクゾーンの闇に自ら消えていった少年だ。
 あれから、キリヤらしき少年も見かけたけど、彼がキリヤだったのかどうかは定かではない。同姓同名の他人か、それともキリヤが本当に生きていたのか。
 少女たちの頭の中は、悲しみが広がっていくけど。


 ぐうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜。


 どこからともなく聞こえてきた呑気な音で、思考が中断される。

71なぎさと千歌! 恐怖のバトルロワイアル!! ◆WMl/ihM5l.:2019/05/13(月) 19:58:15 ID:VxxT6pFA0
「…………………………」
「…………………………」

 キュアブラックと千歌の顔は真っ赤になった。何故なら、全く同じタイミングで、二人のお腹が鳴ってしまったからだ。
 年頃の少女が、豪快なお腹の音を聞かれては尊厳の危機だ。

「…………こほん!」

 と、千歌はわざとらしく咳き込んだ。
 そして、この場には合わないほど、穏やかな笑顔をキュアブラックに向ける。末っ子の千歌だが、Aqoursのリーダーも務めているため、お姉さんとしての自覚も多少はあった。
 キュアブラックを安心させようと、胸を堂々と張りながら提案した。

「お互い、おなかを空かしているみたいだし、ご飯にしようか! 私のバッグの中に、グルメテーブルかけってすごい秘密道具があったから!」

 そして、千歌が色鮮やかな布・グルメテーブルかけを広げる。

「スイーツよ、出ろ!」

 千歌の叫びに答えるように、軽快な音と共にたくさんのスイーツが現れた! チョコパフェ、ケーキ、シュークリーム、みかん、りんご、ジュース……よりどりみどりだ。

「え、ええっ!? なにこれ、ありえな〜い!」
「こんな時だからこそ、腹ごしらえをしないと! 腹が減っては…………なんだっけ?」
「腹が減っては戦いはできぬ、ですよ! 千歌先輩!」
「おおっ、すごいね! なぎさちゃん! なら、そうとわかれば……!」
「そうとわかれば……!」

 キュアブラックと千歌の前に広がるのは無数のスイーツ。
 プリキュアとスクールアイドルに問わず、思春期の少女にとっては癒しとなるスイーツ。
 スイーツを前にした少女たちは……

「「やけ食いだ〜!」」

 うさばらしのように、スイーツを口に入れ始めた。
 何がなんだかわからないまま、首輪を付けられた上に戦えと脅されてしまい、挙げ句の果てにどこかわからない場所に放り込まれてしまう。
 やけ食いでもしなければ、やっていられなかった。

 そして、二人を見守りながら、ため息をつく妖精もいる。

「……ふたりとも、こんな時にのんきすぎるメポ!
 ていうか、腹が減っては戦はできぬ、だった気がするメポ……」

 そんなメップルのぼやきは、少女たちの耳に届いているかどうかは定かではない。

72なぎさと千歌! 恐怖のバトルロワイアル!! ◆WMl/ihM5l.:2019/05/13(月) 19:59:18 ID:VxxT6pFA0
【F-8/町 深夜】
【美墨なぎさ@ふたりはプリキュア】
[状態]:健康、キュアブラックに変身中
[装備]:ハートフルコミューン(メップル)@ふたりはプリキュア
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]基本方針:あんな怪しいおじさんの言うことなんて絶対に聞かない。みんなを探す。
0:今は千歌先輩とやけ食いをする。
1:その後はほのかやひかりを探したい。
2:名簿に書かれたキリヤの名前が気がかり。
※参戦時期はMaxHeartにて、少なくともひかりが仲間になった後からです。

【高海千歌@ラブライブ!サンシャイン!!】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、グルメテーブルかけ@ドラえもん、ランダム支給品×1〜2
[思考・行動]基本方針:殺し合いなんてしない。
0:今はなぎさちゃんとやけ食いをする。
1:その後はAqoursのみんなを探したい。
※参戦時期はAqoursが9人に揃った時期ですが、具体的には後の書き手に任せます。

73 ◆WMl/ihM5l.:2019/05/13(月) 19:59:42 ID:VxxT6pFA0
以上で投下終了です。

74名無しさん:2019/05/13(月) 22:53:22 ID:xkDZgmJY0
投下乙です。
二人とも偉いのん気な…
なぎさが変身した状態でこういう事するのって、想像は出来るけどシュールだなぁ
しかしグルメテーブルかけって食料に毒混ぜられるの防げるから地味に当たりか?

75 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:41:20 ID:KMwQmYPk0
鳴海、四葉、キュルル、のび太投下します

76劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:43:42 ID:KMwQmYPk0
中野四葉がこの殺し合いに連れてこられて感じたのは恐怖である。
転送されて目が覚めると、町中のベンチの上で横になっていた。
普通の女子高生である四葉。
人間が理不尽に殺されてしまう場面を初めて目撃したのだ。

街の中には人影一人見当たらない。
殺し合いのためにきっと人払いされているのだ。
つまり、会う相手は必ず殺し合いの参加者ということになる。
怖い。とりあえず何処か開いてる建物に逃げ込まなければ。
四葉は駆け回り空いた建物を探す。

「あっ……」

強面の男だ。5歳から10歳くらい年上だろうか。
怖い。信頼できない。殺されたくない。
四葉は建造物の影に隠れる。
男は追いかけようとしてきたようだが、ふと思い直したようで語りかけてくる。

「俺は加藤鳴海ってもんだ! 殺し合いには乗ってない!
 こんな殺し合いをさせようとする主催者にものすごくムカついている!
 だから殺し合いを起こさせないため、君を保護させて欲しい!
 信じてくれ! どうか出てきて欲しい!」

四葉はとても直情的で優しい人だと感じた。
普段の自分と同じだ。
信頼してもきっと大丈夫なはず。

「中野……四葉です。
 私も殺し合いなんて、するつもりないです……」

四葉の目には涙が溜まっていた。

----

「エレオノールもフェイスレスも俺の宿敵だ。話せば長くなる。
 殺し合いに乗るとは限らないが、警戒はしておいたほうがいい」

「名簿に、私とその周りに載ってる5人はみんな私の家族です。
 私、五つ子の姉妹なんです。姉妹全員で連れてこられてしまったみたいなんです……」

「……辛い状況なんだな。
 家族同士で殺し合いをさせようとするとか、あの主催者は許せないやつだ」

「その前の上杉さんは、私達に……家庭教師をしてくれている同級生です。
 みんな普通の高校生として過ごしてたはずなんです……。
 どうしてこんなことに……」

二人は名簿や地図を見合い、参加者の情報交換を簡単に済ませている。
四葉の要望により、四葉の姉妹、そして上杉風太郎を探して保護する方針にする。
鳴海も知り合いには会いたいが、それなりの強さを持った人物だし何より敵対している。
全員一般人であり、殺し合いに乗らなそうである四葉の方を優先したい。
さて人を探すにしても、闇雲に会場内を歩き回っても仕方ない。
地図に書かれたいくつものランドマーク。
それらなら人が集まってくる可能性が高い。
月と街灯の明かりの中、次に行く地点を探すため街中の見通しの良い場所を探して歩く二人。
その時、遠くの交差点を通過する子供が目に入る。
眼鏡をかけた小学生の少年。何かから死に物狂いで逃げている。

「助けないと!」

四葉が少年の方に駆け出そうとする。
だが、しばらく後から追ってくるのは、少年より少し年上くらいの銃を持った子供であった。

「ああ! あの子、銃を持ってます!」

「あんな子供でも殺し合いに乗ろうっていうのか!」

「男の子が危ないです!
 でも私、銃なんて……。どうしたらいいんでしょう……」

「俺が止めさせる! 君はここで待っているんだ!」

「止めに行って大丈夫なんですか!?
 撃たれたら大怪我していまいますよ!」

「こんな状況で錯乱してる子供や怯えてる子供を見過ごすなんて、俺は絶対に出来ねぇ!
 それに……!」

四葉は何をするのかと思うと、鳴海は四葉に武道の構えを見せつけてきた。
形意拳の構え、三体式だ。

「武術をやってたって言ったろ。
 子供の慣れていない銃撃なんて当たるものかよ」

四葉はそれを見て、この人は達人の動きをしていると直感で理解する。
信頼して行かせてしまってもきっと大丈夫だ。

「加藤さん……,
 絶対にあの二人を止めて、無事に戻ってきてください!」

「おうよ! あと俺の呼び方はナルミでいいぞ!」

鳴海は二人を追っていく。足の車輪をフル回転させて。
四葉は驚きとも困惑とも取れる表情だ。

「……ローラースケート?」

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77劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:45:18 ID:KMwQmYPk0
のび太はキュルルから逃げている。
身体能力で言えばキュルルのほうが上であるのだが、
重いショットガンを持ちながら走っているため速度は拮抗している。

「そうだ! さっきみんなで集まってたとき、バッグに色々入ってるって……!」

のび太は逃げながら、この状況を何とかしてくれる支給品がないか確認する。
1つ目は瓶詰めの薬だ。
細かい説明は読んでいられないが、元気が出る薬という文字が目に入る。

「これを飲めば……うわっとっと!」

のび太は薬を取り出して飲んだ。
そして急いでいたため瓶を取り落としてしまう。
落とすときに1粒くらい服に入った気がする。

「待ってよー! 良いものがあるんだよー!
 この瓶もおんなじような薬かな?」

年上の子は声を掛けながら後ろから追いかけてくる。
落とした瓶は拾われてしまったらしい。
攻撃しようとする意志のある呼びかけは今までないのだが、
銃撃で冷静さを欠いたのび太はそれに気づくことはない。

薬の効果は、今すぐには表れてくれないようだ。
のび太は次の支給品に頼ろうとする。
2つ目の支給品はボタンの付いた小さなカプセル。
ボタンを押すとカプセルが割れ、中から箱のようなものが出てくる。
のび太は慌てて抱え持つ。
よく見ると指が入りそうな穴がたくさん開いたトランクだ。

「わっ! 重たいぃ!」

これを抱えていてはこのまま逃げることはできない。
のび太はすぐ先の交差点を曲がる。

しかしその先は突き当りで行き止まりであった。

「待ってよー! ひゃっ!」

キュルルが躓きバランスを崩し、ショットガンの引き金を引いてしまう。

「ぎゃーーっ!」

78劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:45:53 ID:KMwQmYPk0
のび太は大きく悲鳴を上げるが、銃弾はきっちりすべて躱している。
のび太の射撃の才能は、相手の銃の射線を読んで回避することにも適用されるのだ。
とはいってもショットガンを避け切るのは、普段ののび太では無理だった。
薬の効果が出始めているのだ。
しかし突き当りに追い詰められた状況では乱射されたらきっと逃げられない。もうおしまいだ。

しかしこれも薬の効果か、のび太の思考がマイナスの方からプラスの方へ変わってくる。
すなわち逃げるのが無理ならば、相手にどうにかして引いてもらうしかない。

のび太はトランクの穴に指を入れ、思いっきり引き出してみる。
中から出てきたのは大きな操り人形。どうやって収まっていたのか謎だ。

「なっ! なんだこれぇ!?」

「おおっ! すっごーい!」

キュルルは歓喜の声を挙げている。
銃は相変わらずのび太に向けたまま。
のび太はマリオネットに糸で繋がれた指を動かす。
もちろん最初はまともに動かすことは出来ない。

「あーあーあーー!!」

バランスを崩し建築物に向け倒れ込んでしまうマリオネット。
更に倒れながら鎌がのび太の方に振るわれる。

「うわっ!」

しかし普段ののび太では考えられないような反応速度で跳び鎌を躱した。
キュルルは拍手して喜んでいる。

先ほどのことで、鎌の降り方をなんとなく理解したのび太。
マリオネットを操り、キュルルを脅せそうな攻撃を出そうと必死に動かす。
その動きは奇妙なダンスのようだ。

「すごいダンス! もっと見せて!」

マリオネットはそもそもオートマータの黄金律を利用するため、
戦うための道具でありながら芸のような動きをするように作られているのだ。
そんなことなど知らない世界の住人であるキュルルが、それを見て喜ぶのも自然なことだ。
そして喜びと共にショットガンをのび太に向けてもう一発。

「ぎゃーーっ!」

のび太はもちろん射線を読み切って回避する。
だが操作しながらなので体を動かしきれず、何発かの弾が体をかすめた。
キュルルは祝砲とでもいうのか銃弾をプレゼントしているつもりだ。
照準はのび太に向けたまま。

だがキュルルが安心していられそうなのも今のうちだ。
のび太の持つ才能は3つ。
射撃の才能、昼寝の才能、そしてあやとりの才能。
マリオネットの操作もあやとりも、根本は同じ糸を手繰る行為である。
もちろん両者には共通しない部分の方が多いだろう。
だが先程の薬によりテンションが上がったことで能力の一部がカバーされる。
また、このマリオネット"ジャック・オー・ランターン"は、
のび太と同じ小学5年生である本来の持ち主、才賀勝が扱いやすいと感じた機体でもある。
そのような複数のことが、
のび太がマリオネットに触れるのを初めてにして、少しは操作できている助けになっているのだ。
不思議な動きも、でたらめに動かしているように見えながら、
無意識に実は少しずつ動かすコツをつかもうとしているのである。

「お願い! ぼくから離れて!」

徐々に動きの精度が高まるマリオネット。
鎌の一撃はどんどんキュルルに近い位置になり、寸止めに近い斬撃も飛んできている。
そして、ついに一撃がキュルルに当たってしまった。

「わっ!」

最初の一撃はかするだけに終わってしまったようだ。
キュルルは腕に切り傷を受ける。
しかしコカインの効果でハイになり、鎮痛作用も受けているため恐怖を感じず逃げようとしない。
のび太も薬の効果で判断力が下がっているのか、傷つけたことに気が付かない。

「すごい! もっともっと!」

「__やめろ!」

その様子を到着し目視した鳴海が捉えた。

79劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:48:25 ID:KMwQmYPk0
「マジかよ……」

前にあるのは、カボチャのような頭をして黒いぼろ布を纏い、鎌を持った懸糸傀儡である。
まさか逃げていた少年がこのような力を秘めていたとは。
そして攻撃を受けたはずなのに、何故か逃げようとしないショットガンを持った子供。
この状況を理解できていないのか?
鳴海はショットガンよりも懸糸傀儡の危険性のほうが上だと思い、
ショットガンを持った子供をここから逃がすことを判断する。
鳴海はすぐさま懸糸傀儡から子供を引き離そうと駆けよる。

のび太は後ろから男が叫びながら駆け寄ってくることに気付く。
遠ざけたい対象が一人増えてしまったと思う。
恐怖の対象を排除しようと、マリオネットを動かすことをやめない。
そして、とうとう二撃目までキュルルに当たってしまいそうになる。

__だが斬撃は当たることがない。
鳴海が斬撃を食らう直前にキュルルを引っ張ったからだ。
鳴海はそのままキュルルをのび太の側から引きずり離す。

「とっとと逃げろてめえ! 死にてえのか!」

キュルルは操り人形のダンスをもっと見ていたい。
だが青年のあまりの気迫に押し切られる。こいつに関わるのは面倒そうだ。

「はい! 逃げますね!」

キュルルは軽いノリのまま走り去っていく。

「はぁ、理解してくれたか……」

さてこの小学生の対処はどうするか。
見てすぐにわかったのは、懸糸傀儡の動きが非常にぎこちない。
というか半分ぐちゃぐちゃだ。
懸糸傀儡を学んできたものの動作ではない。
恐らく懸糸傀儡を操る才能があったが、まだ使いこなせていないのだ。

「わー! 来ないで来ないで来ないでー!」

小学生の子供は、とても慌てて錯乱している。
怯える対象が先程の子から鳴海に入れ替わってしまったのだ。
錯乱したまま放置することはできない。新たな殺し合いの種を生んでしまう。
だがこの状態で説得できるのか。

「聞いてくれ!
 絶対に君を傷つけはしない!
 その懸糸傀儡を動かすのをやめてくれ!」

「そんなのうそだ!
 みんながぼくをあぶない目にあわせようとしてくるんだ!」

さすがに今の精神状態では聞き入れてくれないようだ。
一度攻撃をやめさせて、ちゃんと心を通わせなければ。
鳴海はのび太の方へ走り寄り、懸糸傀儡を避けてのび太に触れようと考える。
しかし懸糸傀儡は鎌を振り回し半分でたらめな動きをするため、逆に隙をつかむことが出来ない。
鎌は余裕で周りのコンクリートで造られた建造物の壁を切り裂いている。
防御は不能、少しでも触れたらアウトだ。
左腕の剣で打ち合うわけにも行かない。破壊される可能性もある。
だがもう一人の子供は逃げてくれた、後はじっくり対処できる。

80劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:50:16 ID:KMwQmYPk0
動きが読めない……ならばしっかりこっちを狙って攻撃させればいい。
鳴海は敢えて鎌の間合いに入らない程度に懸糸傀儡の近くまで寄ってみる。
するとでたらめな動きだが、ある程度近くの鳴海を狙うような指向性の鎌の振り方をしてきた。
やがて、鳴海はそのうちの一撃を敢えて大きな動作をして避ける。
追うようにと大振りな一撃が襲いかかる。
それが大きな隙だ。

「はっ!」

鳴海は鎌の柄を蹴り上げた。
この懸糸傀儡は少年の錯乱が解けた後には、貴重な自衛手段になるかもしれないのだ。
破壊してしまうわけにはいかない。
懸糸傀儡は鎌を取り落とす。

攻撃手段を失った縣糸傀儡を尻目に、少年の近くまで寄ることが出来た鳴海。

「おねがい! 来ないで! 来ないでーっ!」

叫ぶ少年に、鳴海は遂に腕を伸ばして触れることが出来た。
だが少年は懸糸傀儡を操作するのをやめていない。
危険を感じ、鳴海は後ろを振り返る。

懸糸傀儡が何とか鎌を拾い、鎌を投げつけ決死の一撃を当てようとしてきていた。
まずい! この攻撃を避けたら少年に鎌が当たってしまう。
二人に当たる直線上に飛んできてしまっている。
軌道は横向きに回転、地面から少し離れたところ。

二人が回避できる方法を鳴海は一瞬で考えなければならない。
鳴海は掴んだ手でのび太を上に放る。
その反動で倒れ込み、地面に体を付き姿勢を低くする。
二人の間の空間を通過していく鎌。
だが、鎌に近い側にいる鳴海の倒れ込みが少し間に合わない。

鳴海の体を斬撃が掠める。
鋭い切れ味のためか、切られた感触はあるが如何程のダメージなのかわからない。

地面に倒れ込んだ鳴海。上を向いている。
そして、仰向けの鳴海の上に、のび太がうつ伏せの形で着地する。
鳴海はそのままのび太を抱き締める。

「お願い! 助けて! 何もしないでー!」

のび太は目を閉じて手足を振るい暴れるが、鳴海は優しく抱きしめるだけだ。
やがて無駄を悟ったのか、のび太は動くのをやめる。
鳴海はそこに優しく語り掛ける。

「俺は何もしない。安心してくれ。
 もう誰もお前を傷つけない」

のび太は、接触しているのに何もしてこないこと、
そしてこの優しい語りかけにより、相手が敵意を持っていないことにやっと気づく。

「気づいていたさ。
 お前はさっきの子へも、俺へも、ギリギリで鎌を当てないように頑張っていた。
 お前は本当はとても優しい子だ。
 どうか落ち着いて、もとの自分を取り戻してくれ」

そうである、操作制度がまだ低いと言っても、
もっと懸糸傀儡を近付けて鎌を振るえば致命的な斬撃を与える可能性は高かったはずだ。
のび太は敢えてそれをしていなかったのだ。
鳴海はそのことにも気づいていた。
のび太の目から涙が溢れ出す。

「怖かったんだな。こんなところに連れてこられて、銃を持った子に追いかけられて。
 今は泣いたっていいさ」

涙が次々にあふれ、鳴海の胸を濡らしてゆく。
そしてのび太は鳴海の胸の上で大声をあげて泣いた。

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81劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:50:58 ID:KMwQmYPk0
「良かった。君を助けられて」

泣き止んだのび太はゆっくり目を開ける。
のび太を抱き締めるさっきの青年。
顔の左側には大きな切り傷。目の付近まで切られたのか片目は閉じている。
傷からは今でも血が流れ出している。

「あ、ああ、おじさん……! ぼ、ぼくが……!」

それを聞いた鳴海は笑顔を見せて答える。

「へっ、大丈夫さ。
 俺はちょっと特異体質でな、怪我をしても自然に治る力がすげー強いの。
 痛ぇのさえ我慢してればすぐ治るからよ」

のび太を安心させるための言葉。
自分がしろがねであることは言わないが、強がりではなく真実だ。

「元気出しな。
 お前だって、今はとても辛くても、いつかは笑ってほしいと俺は思っているぜ。
 さて、逃げた子の様子も見に行かないとな……」

その時。
ショットガンを持った子供の逃げていった方向から聞こえる銃声。

「おじさん!」

「すまん! しばらくそこで待っていてくれ!」

逃げていった方向は鳴海の来た方向と同じ。
四葉は別れた場所で待っているだろうか、もしや追いかけてきているのか。
まずい、二人が鉢合わせしてしまっている可能性がある。
鳴海は全速力で駆ける。

「四葉……!」

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82劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:51:33 ID:KMwQmYPk0
鳴海さんと2人が向かった先からは、何かが暴れるような音がする。
人間の音だけではなく、何か機械が動いて戦っているかのようだ。
鳴海さんがどうしているか心配だ。
自分に行ってもほとんど何もできないだろうけど、ただ待っているだけなんてできない。
四葉は鳴海の向かった方へ駆け出していた。

コカインの効果が切れてきて、キュルルの思考が正常に戻ってきた。
腕の怪我が痛む。
少年に殺されかけたこと、それを青年に逃がしてもらったことを理解し始める。
今まで追っていた少年が急にこっちを襲ってきたのである。
今度はもしかしたら自分のことを、操り人形を振り回し追いかけてくるかもしれない。
何とかこの恐怖から逃れたい。
キュルルは適当なベンチに腰掛けショットガンを下に置き、
ルールブックの上にコカインを注ぎストローで再度摂取し始めた。

四葉はそれを見ていた。
先ほどの子が一人になってルールブックの上に広げた粉を吸っている。
学校の麻薬の乱用を防止する講習会で見たことがある。
名前はわからないがあれはきっとその一種だ。
よく見ると腕に血が付いている。怪我の痛みを紛らわそうというのか。
あの子が薬物中毒になってしまう。止めさせなきゃ。
先ほど少年を追っていた時に持っていた銃は見えない。
きっと鳴海が先に会って奪ってくれたんだ。
決断して四葉はキュルルに向かう。

「やめて! 絶対にそんなものに頼っちゃダメ!」

「え!?」

キュルルはここに寄って来る一人の少女に気付いた。
どうして止めようとするのか。
邪魔されたくない。ベンチの裏からショットガンを取り出す。
冷静になった状態で考えると、
先程の子はショットガンの射撃にはとても驚いて必死に逃げていたようだった。
この子にも1発撃って離れてもらおう。そうキュルルは思った。

「いやっ!」

四葉は銃をまだ持っていたことに気付き、立ち止まる。
キュルルはそれに躊躇なく発砲した。

鮮血が飛び散ってしまう。

「あ……痛い……。私の腕……」

四葉の左腕、左脇腹にショットガンの弾丸が多く命中していた。
キュルルはのび太が銃弾を躱したことから、
撃ってもそうそう当たらないものだと思っていた。
しかしそれは射撃の才能を持つのび太に関しての話であり、四葉は違う。

「あ、あ、ああああ!!」

キュルルは走って逃げだしていた。
初めて銃で人を傷つけた恐怖か、四葉に対する恐怖かはわからない。
とにかくコカインの効果が早く出て恐怖から逃れられることだけを望み、
全速力で走った。

四葉は追いかけることが出来なかった。
怪我をしたショックで座り込んでしまっていた。

自分の体から流れ出す生暖かい血液。
このまま全部流れて死んじゃうのかな、なんて考える。
でもその前に、鳴海さんに会いに行かなければ。
既に何かが暴れる音は止んでいる。

「鳴海さん……、どうか無事でいてください」

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83劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:52:47 ID:KMwQmYPk0
四葉がおぼつかない足取りで歩き始めると、すぐに鳴海と出会った。
銃の音を聞きつけた鳴海が、とりあえずのび太のことを置いてやってきたのだ。

「鳴海さん!」

「四葉! 大怪我じゃないか!? 大丈夫か!」

「鳴海さんもその怪我……早く手当てをしなきゃ……」

「お前の怪我の方が先だ!」

鳴海が四葉に駆け寄る。
その間にも四葉は立っていることが出来ず倒れ込んでしまった。

「ひどいなこれは……さっきの銃か……」

鳴海は四葉の怪我を詳しく確かめる。
ショットガンで撃たれたようだ。きっと先ほど逃げた子供の持っていた物だ。

「鳴海さん……私このまま死んじゃうんでしょうか……」

「バカ言うな! 弱気になるんじゃねえ!」

そう言う鳴海だが、事態の深刻さを把握していた。
即死する致命傷ではなかったようだが、内臓にもダメージが行っているだろう。
ここが病院の近くならば、救急処置できれば助かる可能性は充分あった。
だがこの場ではそうは行かない。失血死するか、止血できても内臓が機能喪失し死ぬかだ。

「あの子、私を打つ前は何かの麻薬を吸ってたんです……。
 しかも撃った後もとても怯えて……きっと本心じゃないんです。
 あの子に麻薬をやめさせてあげてください……」

四葉がキュルルが逃げ出したほうに首を向け指を指す。

「バカ野郎! それをするのは俺じゃなくて実際に会ったお前の役目だろ!」

こんな優しい心を持った子を絶対に死なせてはならないと思う鳴海。
こうなったら手段を選んでいられない。
四葉は姉妹や友人との記憶を思い出している。
人間が死の前に見る走馬燈ってこんなものでしょうか? なんて思ったりする。

「鳴海さん、うえすぎさ」

「言うな! 俺の血を飲んでくれ!」

しろがねの血を人間に飲ませてはいけないという掟など関係ない。

「え……? 鳴海さんの血を?」

「俺の血には怪我を治りやすくする効果がある。
 俺の怪我を見てみろ。端から少し塞がりかけてるだろ。
 血を飲めばその恩恵をお前も受けることができる」

詳しい説明は短い時間ではできない。
とにかく怪我が悪化しないうちに四葉の命を救うことが先だ。
四葉はさすがに人間の血を飲むことに躊躇する。
だが、すぐに決断した。

「わかりました。鳴海さんを信じます」

84劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:53:22 ID:KMwQmYPk0
鳴海は四葉の口を開けさせた。
その上に血糊のついた服を絞り、血液を垂らしてゆく。
四葉は鳴海の血を啜る。

どれだけ飲めばしっかり効果があるか鳴海も四葉もわからないため、止め時がわからない。
鳴海は体に付いた血も手で擦り集め、四葉の口に移し摂取させる。
眺めてるのはなんだか気まずい雰囲気だ。
何度か繰り返すと、四葉が再び口を開く。

「ごめんなさい、私……」

「俺に謝る必要なんてないさ。
 ヤク吸ってるやつを止めに行くのは正しい行動だよ。
 むしろ悪いのは女の子をそのまま行かせちまった俺の方だ」

「ありがとうございます……」

言うや否や、四葉は気絶して体の力が抜けてしまう。

「おい! 四葉!」

すぐに鳴海は地面に頭を打たないよう四葉を支え、容態を確認する。
脈は落ち着いていた。しかも怪我を見ると出血がかなり治まっている。
充分効果のある量を摂取できたようだ。
言いたいことをすべて言ったため、緊張の糸が切れてしまったのだろう。
鳴海は安心して一息ついた。

「おじさん!」

先程の少年が立ち直ったのか駆け寄ってくる。

「来てくれたのか!」

「その女の子! ひどいけがだ! 手当をしてあげなきゃ!」

のび太は血塗れの二人を見ても逃げ出さない。
鳴海の精神を心から理解したからだ。
怪我をした女の子を鳴海が助けているようにちゃんと見えている。

「今は気絶している。ベッドに寝かせて手当をしたい。
 幸いここは無人の街だ。
 悪いがどこかの民家の扉を破ってベッドを使わせてもらいたいと思う」

「わかったよ!」

のび太はトランクから懸糸傀儡を取り出す。

「おい、お前……」

何をするのかと鳴海が思ったときには、
近くにある民家の、扉の鍵廻りを切り裂き開くようにしていた。

「おじさん! ここを使おう!」

機転の良さに驚く鳴海。
威勢良く返事をしてやる。

「おう!」

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85劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:53:56 ID:KMwQmYPk0
二人は民家に四葉を運び込み、ベッドに寝かせる。
血は出来る限り拭いてやった。
鳴海もシーツを裂いて包帯を作り、顔の怪我に巻いてゆく。
のび太は名簿や地図をまだ見てないようだったので、鳴海が確認するよう促す。

「自己紹介がまだだったな。
 俺は加藤鳴海。ナルミとでも読んでくれ。
 一応まだ18歳なんで、おじさんと呼ばれるような歳じゃないぞ」

「ご、ごめんなさい……」

「謝るほどのことじゃねえよ。無理に畏まらなくてもいいぜ」

「ありがとう。
 僕はのび太。野比のび太。小学5年生。
 よろしくお願いします。鳴海さん」

「おう、よろしくな」

お互いの自己紹介を済ませた鳴海は、ベッドから顔を出す四葉の方を向く。
のび太もそっちを見る。

「この子は中野四葉。俺がここにきて最初に会った子さ。
 お前のような優しい心を持った子だよ」

のび太は傷ついた四葉を再び見て沈痛な気持ちになる。
それでも名簿に目を通していると、自分の知った名前を見つけることができた。

「名簿を見たんだけど……郷田武、出来杉はぼくの小学生の友達。
 武はみんなの間ではジャイアンって呼ばれてる。
 体が大きくて凶暴ないじめっ子だけど、優しい心も持ってる。
 きっとぼくらのことを心配してるし、殺し合いに乗ったりしないと思う。
 出木杉は背格好は僕とあまり変わらない。
 勉強もスポーツも何でも得意な優等生。
 ぼくは自分がみじめになるからちょっと苦手なんだけど、
 とてもいいやつだし絶対殺し合いには乗らないと思う」

「ドラえもんは僕の友達の猫型ロボット。一緒に暮らしてる」

猫型ロボット……ロボット……まさか自動人形かと鳴海は一瞬思う。
いや、本当に自動人形とは違う機構のロボットなのかもしれない、
それに自動人形だとしても、パンタローネのように人間を守る行動を取るようになったものもいた。
先入観で計ってはいけない。

「22世紀の未来からぼくの子孫がぼくを叩き直して、未来を変えるために送ってくれたんだ。
 そんなこと関係なく今は友達だけどね」

「ええ? 未来だと?」

「うん、タイムマシンで。
 ドラえもんが出してくれる未来のひみつ道具のおかげで、毎日不思議な生活をしているよ」

鳴海は突拍子も無い話に理解が追いつかないが、
取り敢えず話の先を促す。

「リルルはメカトピアという遠いロボットの国からやってきたロボットの女の子。
 友達になれたんだけど、メカトピアは実は地球を侵略しようとしていて、
 リルルはそのスパイだったんだ。
 でもリルルは地球を救うために協力してくれた。
 メカトピアが地球に侵略しないように、
 メカトピアの歴史を変えたからリルルは消えてしまったはずなんだけど、
 きっと生まれ変わって生きているような気がしていたんだ。
 ここに連れてこられてるってことはきっと生きてる。もう一度会いたいな」

「ギラーミンはコーヤコーヤ星という遠くの星を、鉱山開発で荒らすガルタイト鉱業の手先だったやつ。
 手段を選ばないし、銃の腕前がすごいとっても恐ろしいやつだった。
 ぼくが銃を使った決闘でなんとか勝って、その後逮捕されたはずなんだけど、
 この殺し合いのために連れてこられたみたい。
 なにを考えてるかわからないから気をつけたほうがいいよ」

のび太の話はここで一区切り付く。
鳴海が話す番だ。

86劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:54:59 ID:KMwQmYPk0
「正直俺は状況がよくわかってない。
 というか昔の記憶もないからな。
 俺が目覚めたときはアメリカのゾナハ病治療施設。
 来る前は死にかけていたらしいが、生命の水という薬を飲まされたおかげで生きながらえた代わりに、
 しろがねとかいう自動人形と戦うことを宿命付けられた存在になっちまった。
 そしてゾナハ病をばらまく元凶の自動人形達を壊しまくって世界を回ってた。
 そして自動人形達の首領、フランシーヌ人形にたどり着いたが……最初は偽物だった。
 そして本物にもたどり着くことができたが……失った記憶が疼いて手を掛けられなかった。
 そしてあの野郎、フェイスレスの全人類にゾナハ病をばらまくという宣言。
 俺はアメリカの治療施設に再び行って施設の子供と、やっと完成したゾナハ病の治療マシンを守った。
 その後、汽車に乗って脱出する最中にここに連れてこられた」

「鳴海さん……。
 ぼく、自動人形というのもゾナハ病というのも、フェイスレスという人もわからないよ。
 でも、ぼくはタイムマシンとかドラえもんの道具の力を使って、
 未来や過去に行ったり、別の星や世界に行ったこともあるんだ。
 鳴海さんも、きっと僕たちとは違ったところからここに連れてこられてるんだと思う。
 未来なのか別の世界なのかはわからないけれど」

これも鳴海には信じがたい発言。
だが、世界中がゾナハ病に侵されたはずなのにのび太も四葉はそのような様子がなかった。
もしかしたら、本当に自動人形が存在せずゾナハ病も存在しない世界があるのかもしれない。

「一応、それですべての説明が付くようだな。
 ここは一度お前の話を信じさせてもらうぜ」

「ありがとう。わかってくれて」

「それなら名簿の知ってる名前が俺と同じ世界の存在だとすると、
 フェイスレスはゾナハ病を世界に撒き散らした恐ろしい奴だ。
 ゾナハ病は不治の病で、苦しみながら最後は死んでしまう病気だ。
 フェイスレスは本性を表す前は、アメリカのしろがね達のリーダーという一面も持っていた。
 俺も怪しいと感じる場面はあった。
 だがフェイスレスと共闘したとき奴は死んだふりをして表から姿を消し潜伏したんだが、
 奴の死んだと思わせるための演技と過去の話が迫真過ぎて俺は完全に騙されてた。
 ここでも奴は様々な演技をして参加者を騙していくだろう。
 絶対に信用しちゃだめだ。
 奴の能力は1つ目は分解、触れさえすれば一瞬で機械を壊したりする。
 2つ目は溶解、腕から強い酸を発射して何でも溶かしちまう。
 3つ目もあるらしいが、そこまでは俺は見ることはできなかった」

ゾナハ病は更に段階があるが子供には辛すぎる話だ。
あえて言わなかった。

「才賀エレオノール……は、本物のフランシーヌ人形が俺に語った名だ。
 奴がゾナハ病の元凶で、治す方法を知ってる筈だ。
 だがやつは治す方法を語らない……そして会うと俺の失われた記憶が疼く。
 だが俺の目的は変わらない。いずれ会わなきゃならねえ相手だ。
 殺し合いに乗っているかどうか……は判断できねえ。
 乗っていてくれたほうがやりやすいくらいだが……そんなこと考えちゃいけねぇな」

「うん……いつか、記憶が戻ったらいいね」

「ああ、そうだな……」

87劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:55:44 ID:KMwQmYPk0
鳴海は四葉から聞いた四葉の知り合いのことも軽くのび太に話す。
詳しくは四葉が起きたら聞けばいい。
また、各々の知り合いの容姿の情報も共有した。
そして、のび太が殺し合いに関する話に戻す。

「そういえば四葉さんの怪我……いったいどうしたの?」

きっと自分を襲った銃と同じ銃による怪我だとのび太は感づいていた。
でも自分からはなかなか言い出せなかった。

「……ジョットガンで撃たれたんだよ。
 お前が追いかけられていたあの子、逃げ出した後に四葉と鉢合わせたらしい。
 二人の詳しいやり取りは分からんが、その時に撃たれたみたいだ」

「そ、そんな……。
 きっと僕が鳴海さんを引き止めてしまったせいで……」

「俺も悪かった。武器を持ったまま行かせちまったのはまずかった。
 ……でも過ぎちまったことは仕方ないさ。
 それに一番責めるべきなのは自分でも誰でもないだろう。
 こんな状況に俺たちを追い込みやがった主催者だ。
 それに四葉が言うにはその子は麻薬を吸ってたらしい。
 支給品として配られたんだぜきっと」

「えっ!?
 麻薬って、使うと気持ちよくなるけど体に悪くて中毒になっちゃう、
 絶対に使っちゃいけないあの薬?!」

「そうだ。絶対に使っちゃいけない。
 気持ち良くなる薬以外にも、一時的に集中力を高める薬や、幻覚が見えるようになる薬もある。
 どんな薬かは分からんが暴れる懸糸傀儡を見て喜んでいたし、
 気持ち良くなる覚醒剤やコカインの類か、幻覚剤の類だと思うぜ」

のび太は思い当たる。しばらく前に自分が飲んだ薬。
飲むととても精神も体も元気になり、立ち向かう勇気をくれたあの薬。
でもそのせいで殺し合いに乗っていない鳴海さんを傷つけてしまった。

「じつは、あの子から逃げる間に、僕もバックの中に入っていた薬を飲んだんだけど……」

「なんだって?」

「元気が出る薬って書いてあったんだ。
 そのおかげでぼくは見たこともないマリオネットを動かすことが出来たけど、
 鳴海さんをなかなか信じられなくて傷つけてしまったんだ……」

「ちっ、やばそうな薬だな。
 まさに麻薬の類と考えて良さそうだ。
 その薬はまだ有るのか?」

「それが……そういえば!」

88劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:56:29 ID:KMwQmYPk0
のび太は無い、と言おうとしたが薬を服の中に落としたことを思い出し、
腰のあたりを触ったりポケットを探ったりする。
すると、カラカラ音がしてのび太の下に一つの丸薬が落ちた。
のび太はそれを拾う。

「この薬なんです。
 何粒かで瓶に入ってたんだけど、逃げるのに必死で一粒飲んだあと落としちゃったんだ。
 これは偶然服の中に落ちた一粒。
 瓶はちゃんと見てはいないけど、ぼくを追いかけていた子が拾っているみたいなんだ……」

「なんだって!? 本当かよ!?
 複数の薬を一度に使ったらどうなるかはわからねえが、ヤバそうだって想像は付くぜ!」

「そんな!?
 早くその子を止めに行かなきゃ!」

「ちっ、俺だってすぐにでも行きたかったさ……。
 だがよ、何が起こるか分からないこの殺し合い、三人が長く離れちまうのは危険だ。
 四葉をこのまま置いて追いかけるわけには行かない」

それを聞いたのび太はポケットからカプセルを取り出した。
ボタンを押すと、トランクの姿になる。

「うおっ! カプセルの中にこんなものが入ってんのか!?」

「僕の友達のドラえもんも四次元ポケットからポケットに入らない大きなものを出せるし、
 似たような作りなのかもしれないね」

「す、すげえな未来の技術っつうのは……」

鳴海はこの異常さに、さらにのび太の言う事を信じる気が増してゆく。

「このトランクにはさっきのマリオネット、ジャック・オー・ランターンが入ってる。
 ぼくのバッグの中、もう一度探すとジャック・オー・ランターンの説明書きがあったんだ。
 鎌で切るだけじゃなくて、ベタベタくっつく泡を出したり、
 箒で飛んだりもできるらしいんだ。
 使いこなせるように頑張って練習する。
 危ない人が来たら、泡で動けなくしたり、飛んで逃げたりするよ。
 四葉さんはぼくが守る。鳴海さんはさっきの子を追いかけて」

「確かにお前には懸糸傀儡を動かす才能がある。
 だが懸糸傀儡は俺の世界で使われてるものなんだが、
 本来は何年も掛けて修行していくものだと聞いているぞ。
 俺の役に立ちてえのはわかるが、強がりで言うのはだめだ」

「でもきっと、あの子を放っておいたら四葉さんみたいに撃たれる人が出ちゃうかもしれない。
 さっきのぼくみたいに、慌てて誰かを傷つける人も増えるかもしれない。
 それなら事情を知ってる鳴海さんが止めに行ってあげて。
 殺し合いを止めたいのは、鳴海さんの役に立ちたいとかそういうことじゃなくて、
 今のぼくの本当の気持ちだから」

のび太の表情はさっきの錯乱していた時の物とは違い、決意を持った顔であった。
それを見た鳴海は決断する。

89劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:57:02 ID:KMwQmYPk0
「わかった。さっきの子の向かったのはあっちの方角だ。
 あのまま全速力で走り続けるのは無理だし、今からなら追いつけるはずだ。
 これから2時間くらい追いかけて探して、ここに一緒に戻ってくるぜ。
 どうしても見つからなければ、その時もここに戻ってくる。
 3時間経っても戻らなければ、俺の身に何かあったか、
 どうしても優先しなきゃならない用事が出来たときだ」

鳴海は四葉の方を見る。

「さっき俺は怪我が治りやすい体質だって言ったろ? それはしろがねの血の効果だ。
 四葉に俺の血を舐めさせた。傷の治りが早くなる効果がある。
 傷は全快しなくても、3時間経たないうちに目は覚めると思う。
 その時俺が戻ってなかったら、お前と四葉でどうするか相談して決めるんだ。
 戻らなかったらきっと危険なことが起きている。無理に追って来なくてもいいぜ。
 もちろんお前たちの方が危なかったら、無理に留まらないでここから逃げたっていい。
 そんときは俺を追いかけてくれると合流出来るが、危なそうなら違う方だっていい。
 書き置きでもあればありがたいけどな」

「そうだ! 鳴海さん、これに乗っていって!」

のび太はデイパックから最後の支給品を取り出す。
トランクと同じようにカプセルに入った支給品だ。

「たぶんここじゃ狭いから……」

鳴海とのび太は家の外に出た。
ボタンを押すと、中から出てくるのはスポーツタイプのバイクだ。

「ぼくは子供だからバイクに乗れないけど、鳴海さんなら乗れるんじゃないかと思って。
 それに帰りのときも、これがあれば二人で乗って早く戻ってこれるでしょ?」

「おう! ありがとよ! じゃあ俺からも贈り物だ!」

鳴海も自分のデイパックから支給品を2つ取り出す。
1つは女の子の人形、もう1つはモデルガンのような短銃だ。
女の子の人形はバッグから取り出されるとすぐに渋い顔をして、
低い声でモンスターの危険性を訴えている。

「うわっ、可愛くない人形!」

「これは魔除けの人形というらしい。
 説明によると、近くにモンスターが現れると警告してくれるんだが……、
 どうやら既に警告状態に入っているようだな……」

鳴海は説明文を詳しく読む。

「付記にモンスターってのは人間以外の存在を指すって書いてあるが……、
 恐らく俺がしろがねだから既に反応してしまってるんだろう」

「鳴海さんはモンスターなんかじゃないよ!
 優しい人間だよ!」

「へっ、ありがとうよ。こればっかりは体の問題だからよ、どうにもならんさ。
 つまり人間以外の存在だからって危険とは限らんが、誰かが接近してきた目安にはなるだろうな」

うるさいので、取り敢えずのび太は人形を自分のバッグに一度仕舞う。

「こっちはトカチェフという銃だ。持つとモデルガンのようだがちゃんと撃てるらしい。
 俺は体一つで戦うスタイルだし、銃は持っていてもしょうがない物だ。
 さっきのお前の話を聞く限り、銃の腕には自信があるんだろ?
 お前ならきっと殺し合いを止めるために活用できると信じるぜ!」

「ありがとう。ぼく、頑張るよ!」

「おう! 四葉を頼んだ!」

鳴海はバイクに跨がりエンジンを回し発進させる。

「鳴海さんも頑張って! 戻ってくるって信じてるよ!」

のび太は真剣な眼差しで鳴海を見送る。
鳴海が自分を追いかけていた子を助けて戻ってきて、全員で笑い会えることを信じて。

90劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:57:35 ID:KMwQmYPk0
【F-3/街 深夜】
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:軽傷
[装備]:ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス
[道具]:基本支給品一式、トカチェフ(弾数8/8、予備弾倉1)@PERSONA5 THE ANIMATION、魔除けの人形@魔法陣グルグル、元気が出る薬(1錠)@魔法少女育成計画
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを阻止する
1:四葉を守る、ショットガンの子供(キュルル)を追う鳴海を待つ
2:ジャック・オー・ランターンをもっと動かせるように練習
3:友人たちが心配。いずれ会いたい

※鳴海と知り合いの情報を共有しました。
 鳴海が記憶喪失のため勝については聞いていません。
※キュルルの逃げた大まかな方向は鳴海から聞きました。


【中野四葉@五等分の花嫁】
[状態]:左腕・左脇腹にショットガンによる傷(しろがねの血の効果により治癒中)、気絶中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:誰も殺したくない
1:気絶中
2:ショットガンの子供(キュルル)を麻薬の手から助け出したい
3:姉妹、上杉さんに会いたい

※鳴海の血を飲んだことにより、自然治癒力が上がっています。
 また鳴海の記憶や技能の一部を受け取ります。
※参戦時期は次以降にお任せします。
※鳴海と知り合いの情報を共有しましたが、そこまで詳しくはありません。


【加藤鳴海@からくりサーカス】
[状態]:左目から左胸部にかけて縦の切り傷(治癒中)
[装備]:メローネのバイク@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを阻止する
1:ショットガンの子供(キュルル)を追う。麻薬の手から助け出したい
2:2時間追って見つからなかったらのび太、四葉の方へ戻る
3:フェイスレスの危険性を広める。遭ったら全力で倒す。
4:エレオノールは保留。遭った時は……

※参戦時期は24話、汽車に乗り病院から脱出した後。
※左目は血と瞼の怪我で今は見えないだけか、切り裂かれ失明しているかは不明です。
※四葉と知り合いの情報を共有しましたが、そこまで詳しくはありません。
※のび太と知り合いの情報を共有しました。
※キュルルの逃げた大まかな方向は四葉から聞きました。


【キュルル@けものフレンズ2】
[状態]:腕に切り傷、恐怖、コカイン中毒
[装備]:ベネリ M3@フルメタル・パニック!
[道具]:コカイン×約300g、元気が出る薬(残り8錠)@魔法少女育成計画、基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・行動]
基本方針:おうちへ帰る
1:とにかくここから逃げる
2:眼鏡の少年(のび太)が怖い

※キュルルの逃走方向は次以降にお任せします。
※逃走経路には切り傷による血痕があるかもしれません。

91劇薬の操り人形たち ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 02:58:43 ID:KMwQmYPk0
【ジャック・オー・ランターン@からくりサーカス】
フェイスレスが自分のため作成した懸糸傀儡。
記憶をダウンロードされても精神を乗っ取られなかった勝が使用することになる。
本ロワでは誰でも使えるようにと、支給品説明が操作法と機能が簡単に書かれたマニュアルにもなっている。
もちろん読んだからといって糸の操作は難しく、
才能や経験にもよるがどれだけの練習で使えるかは不明。
また、一部の性能が制限により弱体化している可能性もある。

【メローネのバイク@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
メローネが乗っていたバイク。
詳しい車種は不明(アニメ版ではホンダのCB系のスポーツバイクに似ている)。

【魔除けの人形@魔法陣グルグル】
普段は可愛い女の子の人形なのだが、
モンスターが接近すると急に渋い顔になり低い声で接近を知らせてくれる。
あまりの可愛げのなさに驚いたククリにより破壊された。
本ロワ内では、人間以外の参加者に反応するように調整されている。

【トカチェフ@PERSONA5 THE ANIMATION】
4話で鴨志田のパレスに持ち込むために購入された、短銃のモデルガン。
モデルはおそらくトカレフTT-33。
メメントスやパレスの中では、人々が銃だと認識すれば本物の銃と認められるため、
モデルガンでも銃と認識されれば実銃と同じ威力を発揮できる。
この会場内でも基本は実銃と同じ威力を出せるが、
撃たれた相手が銃をどう認識しているかによって効果が変わる可能性はある。
弾数は8。1回分の予備弾倉がある。

92 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 03:00:17 ID:KMwQmYPk0
投下を終了します。
Wikiに前回投下した話が掲載されたのでこれから修正して来ます。

93 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/15(水) 04:08:41 ID:KMwQmYPk0
修正しました。誤字以外に全体で口調や用語を統一しました。
あとルーラがカラミティメアリに触れる会話が増えてます。
全体の流れは同じです。

94名無しさん:2019/05/15(水) 14:58:52 ID:sZaUgDyg0
投下乙です。
どんどんジャンキーになってくキュルルの明日はどっちだ。
というか完全に中毒になっててちょっと笑った。
四葉が生きててのび太も立ち直ったのでいい方向に転ぶのだろうか。

95 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/15(水) 19:28:35 ID:7Oo6C7Jo0
リルル、スノーホワイト投下します

96名無しさん:2019/05/15(水) 19:31:17 ID:7Oo6C7Jo0
G-4、街中にて、一人の少女がいる。
ついさっきここに送られてきたばかりの彼女―――――スノーホワイト(本名:姫河小雪)は、先ほど目の前で繰り広げられた光景に酷く困惑していた。
アレクシスと名乗る怪人が突如宣言した殺し合いという言葉。まるで自分がつい先日まで体験していた、
魔法少女育成計画のような恐ろしい企画に、彼女は身震いした。

魔法少女育成計画、それは元々魔法少女に憧れていた自分がプレイしていたソーシャルゲームの名前であった。
完全無課金のRPGゲームとして人気を博したそのゲームには、とんでもない秘密があったのだ。
それは、数万人のプレイヤーの中から選ばれた人間は、本当に魔法少女になってしまうというもの。
自分は小さいころから魔法少女に憧れており、いつか自分も人々を救えるような魔法少女になりたいと思っていた。
だから自分が魔法少女に選ばれた時は本当に嬉しかった。
自分の魔法、「困っている人の心の声が聞こえるよ」はその名の通り周囲に困っている人がいると、その人の心の声と
その位置を知ることができるというもの。
その力を使って、実は自分の幼馴染の少年だったラ・ピュセルと共に人助けをしていた。
しかしゲームの運営が突然、増えすぎた魔法少女を減らすと宣言したのだ。
人助けをすることによってキャンディーを集め、一週間で集めたキャンディーの数が最も少なかったものは魔法少女の資格をなくす。
初めはただ魔法少女になれなくなるだけだと思ってた。
しかし、最初にねむが脱落したあと、リタイアしたものは死亡することが判明した。
そしていつしか闘いはキャンディー集めから魔法少女同士の殺し合いへと発展していき、ラ・ピュセルも含めほとんどの魔法少女が命を落とした。
最終的には主催者であるファブを倒し、自分とリップルだけが生き残って殺し合いは終結した―――――――筈だった。
(ようやく終わったと思ったのに...どうしてこんなことをしなくちゃいけないの?)
しかも今回は濁すことなく、殺し合いをしろと言われている。
元々綺麗な心を持ち、人が傷つくことを嫌う彼女は殺し合いを嫌悪した。

彼女が困惑していた理由はそれだけではない
あの会場には多くの人間が居たがその中で確かに見たのだ。
ラ・ピュセルや、死んだはずの魔法少女が居たのを。
そして、自分の目の前で首輪の爆発によって命を散らした彼女―――――――ハードゴア・アリス。
(また、助けられなかった.....)
最初は怖かったけど、接触している内に仲良くなれた彼女。
最初に会ったときに鍵を拾ってあげた自分に、健気に付いてきてくれた彼女。
あの時の戦いでは自分のあずかり知らぬ所で襲われ、自分の目の前で息を引き取った彼女。
今回はちゃんと自分の側にいたのに、助けられた筈なのに...
(ごめんね...ごめんね...)

思えばあの殺し合いの時からそうだった。
自分の知らないところで悲劇がおこり、自分の知らないところで大切な人が亡くなり、結局何も出来ないまま自分とリップルだけが生き残ってしまった。
今回もまたそうなってしまうのだろうか?

スノーホワイトが後悔と懺悔の気持ちから涙を流していると、突然声が聞こえてきた。

⦅助けて!殺される!ドラえもーん!⦆
⦅逃げないでよ〜⦆

「!!誰かが襲われている!助けないと!」
声を聞きつけたスノーホワイトは、すぐさま向かおうと空を飛ぼうとした。...が、飛べなかった。
(嘘!?空を飛べなくなってる...ひょっとしてこの首輪のせいなの?)
そういえばあの主催者は首輪には能力を制限する力があるとも言っていた気がする。
強力な再生能力を持っていた筈のアリスも蘇らなかった。

だが、飛べないからといって放っておくことは出来ない。
(お願い、間に合って...もう誰かが死ぬのは嫌なの...!)

誰も死なせたくない、自分に出来ることをやるんだ...その想いを胸に、スノーホワイトは声の聞こえる方向に駆け出した。

97魔法少女とロボット少女 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/15(水) 19:37:59 ID:7Oo6C7Jo0
――――今度生まれ変わったら、天使のようなロボットに...

――――リルル、あなたは今、天使のようになっているわ

――――嬉しい。涙なんか流すロボットなんか、変よね?

――――二人は、ずっと友達よ

――――...お友達...


少女――――――リルルもまた、困惑していた。
...これは一体どういうことだろうか?
目が覚めたら機械的な謎の空間にいて、そこでアレクシスという奴に殺し合いをしろと言われた。

あれは恐らくロボットだろうが、一体どのような目的で殺し合いを強要するのだろうか?
ただ単に私たちを殺したいだけなら、あの場で全員の首輪を爆発させればよかったのだ。
なのにそれをせず、わざわざ殺し合いという舞台を設けた。
とすれば私たちが殺しあうこと自体に意味がある、ということか?
そもそもなぜ自分は生きている?
自分はあの時、確かに鉄人兵団と共に歴史から消滅した筈なのに。

「あのアレクシス、というのに復活させられたのかしら?」

何のために?この殺し合いに参加させるためだけに、復活させたのか?
...だとしたらこの上なく腹立たしい。

「...考えていても仕方がないわ。まずはどうするかを決めないと。」

この殺し合いに乗るべきか、否か。
ここから脱出するためには、自分以外の参加者を殺して優勝しなくてはならない。

リルルは悩んでいた。
少し前までの自分だったら、躊躇せずに乗っていただろう。

リルルはロボット惑星メカトピアを支配する鉄人兵団の地球人総奴隷化計画の実現のため、
兵団の到着に先駆けてスパイとして地球へ単独潜入した少女型アンドロイドである。
元々地球人のことは奴隷としか思っていなかったし、ここから脱出するために殺すなど造作もないこと。

だが、彼らと出会って、その考えは変わっていった。

のび太くん、そしてしずかさん。

敵である筈の自分を助けて、仲間だと言ってくれた。
彼らと接する中で、人間に対する見方が変わっていった。

「そういえば、のび太くんたちも参加しているのよね...」

先ほど目を通した名簿の中に確かにその名前があった。

野比のび太
ドラえもん
剛田武

少なくとも彼らを殺して優勝するなど今のリルルには無理だ。
とすれば、主催者を倒して脱出することを目指すべきだろう。

そう結論付け、リルルは地図で自分の位置を確認したのち、デイバッグの中を見て
支給品を確認した。

98魔法少女とロボット少女 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/15(水) 19:39:41 ID:7Oo6C7Jo0
と、そこでバッグの中から何かが出てきた。

「あら?これは...」

それは赤くて小さい、ドラえもんにそっくりなロボットだった。

「ドララ、ドラ、ドラ!」

「この子、ドラえもんにそっくりね...ミニドラ、っていうのかしら?」

「ドラ、ドララ」

「私はリルル。あなたと同じロボットよ。のび太くんたちとは...友達だわ」

とりあえずお互いに自己紹介と簡単な状況説明を済ませた。
するとミニドラは地団太を踏んで怒り、ドラえもんやのび太たちが心配だといった。

「私もこれから彼らを探すところよ。協力してくれないかしら?」

「ドラ!」

そういうとミニドラはポケットから小型のピンク色のドアを出した。

「ドララ〜(どこでもドア〜)」

この道具は知っている。確か、行きたい場所を行ってドアを開けると、すぐにそこに
辿り着けるというとんでもない代物だ。しかし...

「...小さすぎて私には通れないわ。」

「ド、ドラ...(ピコーン!)ドラ、ドララ!」

「え?一人でドアを通ってドラえもん達のところに行けないか試してみる?」

そう言ってミニドラはドアに入っていった。が、

パーンッ

ドアに入ろうとするとバリアみたいなものに阻まれてしまった。

「ド、ドラ...」

「...やっぱり無理か。まあ、こんな強力なアイテムを放置しておくわけないわよね
他に何かいいものはないかしら...」

デイバッグの中を漁ってみると、ステッキのようなものが出てきた。

「!ドラ、ドララ」

「成程、たずねびとステッキっていうのね。これを使えばのび太くんたちを探せそうだわ。
早速使ってみましょう」

リルルはのび太の居場所を探すように言った。ステッキは北西方向に倒れた。

「こっちにのび太くんがいるのね。行ってみましょう」

「ドラ!」

リルルとミニドラはステッキのさす方向に向かって進み始めた。

99魔法少女とロボット少女 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/15(水) 19:41:05 ID:7Oo6C7Jo0
「...見つからないわね。本当にこっちであってるの?」

「ド、ドラ...」

実のところたずね人ステッキの的中率は7割程度。あっている可能性は高いが絶対に大丈夫
とも言えなかった。

その時、遠くから人が駆け寄ってくるのが見えた。

「!?誰?のび太くん?」

もしかしたらこの殺し合いに乗っている人間かもしれない。
リルルとミニドラは警戒態勢をとった。

来たのは自身と同じピンク色の髪で、奇妙な姿をした少女だった。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、...あの!貴方ですか?殺されるって叫んでたのは」

「...え?」

少女は自分の前で止まるなり、そんなことを言ってきた。

〜自己紹介&事情説明中〜

「...困っている人の心の声が聞こえる能力、ね。それに魔法少女。地球人にはそんなのもいるのね」

「うん。でもリルルちゃんも凄いよ。どこからどう見ても人間にしか見えないのに。
それに...ミニドラだっけ?可愛いな〜」

「ドララ〜///」

魔法少女。
一応地球を調べた時に名前くらいは聞いたことはあるが、しかし実在していたとは。
いや、或いは...

(パラレルワールド、という可能性もあるわね)

あのアレクシスの力がどれほどのものかは分からないが、もし数多の平行世界から
参加者たちを集めているとすれば、その中には強力な能力を持った奴もいるかもしれない。
殺し合いに乗る参加者が出なければいいが、そんなに甘くはないだろう。

リルルにとって非常に興味深い情報ではあったが、それ以上に聞き逃せない情報があった。

「それで、その追われている声の主は、本当に"ドラえもん"、と言っていたの?」

「うん。リルルちゃんのお友達、なんだよね?」

「ええ。間違いなくのび太くんよ。たずね人ステッキが指している方向も同じだわ。
この先でのび太くんが誰かに襲われているのは間違いなさそうね。」

「ドラ、ドラ!」

「ええ。早く助けてあげましょう。貴方も付いてきてくれる?」

「もちろんだよ!助けを求めている人は絶対に助けてあげないと!」

「なら、急ぎましょう」

こうして二人の少女とミニドラは、のび太を助けるべく声の聞こえるほうに向かっていった。

果たしてリルルはのび太と再会できるのか?スノーホワイトはラ・ピュセルと再会できるのか?
二人の行く末は神のみぞ知る。

100魔法少女とロボット少女 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/15(水) 19:41:46 ID:7Oo6C7Jo0
【G-4/街 深夜】
【スノーホワイト@魔法少女育成計画】
[状態]:少し疲労
[装備]:魔法の杖@魔法少女育成計画】
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。困っている人を助ける。
1:リルルと共に声の主(のび太)を助けに行く。
2:ラ・ピュセルに会いたい。
3:他の魔法少女の行動が気になる。
※ファブを倒して殺し合いが終わった直後からの参戦です。
※魔法「困った人の心の声が聞こえるよ」の可聴範囲は自身のいるところから
 周囲1マス分くらいです。(例:G-4にいる場合、F-3,F-4,F-5,G-3,G-4,G-5,H-3,H-4,H-5
 にいる人の心の声が聞こえてくる)

【リルル@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ミニドラ、たずね人ステッキ、基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針:のび太たちを連れて殺し合いから脱出
1:スノーホワイトと共にのび太を助けに行く。
2:仲間と合流したい。
3:邪魔者は排除する。
※消滅後からの参戦です。
※参加者たちはパラレルワールドから集められているかもしれないと推測しています。

【ミニドラが所持している秘密道具(どれもスモールサイズです)】
 ・どこでもドア(現在使用不可、小さすぎて普通の人間は通れない)
・ひらりマント
・通り抜けフープ(小さすぎて普通の人間は通れない)
・空気砲
・他1〜5個

101 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/15(水) 19:47:09 ID:7Oo6C7Jo0
以上で投下終了です。遅くなって申し訳ありません。
初ssなので稚拙な文章だと思います。
まほいくに関しては最近アニメを全話見たばかりでまだにわかなので
キャラ崩壊等があるかもしれません。
間違っている点、おかしなところは指摘していただけると嬉しいです。

102名無しさん:2019/05/15(水) 20:57:51 ID:3VcvGddk0
投下乙です
困った人の声が聞こえてもほとんど生死に関わる悲鳴だろうから、どうするか葛藤しそうだな
ゲーム後からの参加なら精神的には強くなってそうだけど
リルルの3つ目の行動指針が不穏、後々対立したり響きそうだな
ミニドラは喋れないのが後々どう響くかね……

103名無しさん:2019/05/15(水) 21:58:16 ID:FxqGsCaw0
投下乙です
リルルは消滅後参戦か…対主催やってくれそうだけどちょっと不穏だなぁ
ミニドラも道具次第では役に立ちそうだけど、どうなるかな

104 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/19(日) 13:23:27 ID:zmNtfzsI0
短いですがジャイアン投下します

105おれはジャイアンさまだ! ◆yVXuy0xeGI:2019/05/19(日) 13:25:22 ID:zmNtfzsI0
地図上ではF-6、遊園地ANGEL LANDにて。

「ふぅ...ちくしょう、ここはどこだってんだ...?」
近所ではガキ大将として恐れられている少年、剛田武(通称:ジャイアン)はそう呟いた。

突然変な奴に殺し合いを宣言され、一人の女の子が殺され、気が付いたらここに飛ばされた。

「なんでこの俺様が殺し合いなんてのに参加しなくちゃいけねぇんだ!あのアレなんとかって野郎、
今度あったらギッタンギッタンにしてやる!」

口ではそういったものの、普段の彼を知るものならば意外に思うほど弱気な声だった。
喧嘩は負けなし、町内では好き放題していた怖いもの知らずの彼でもこの状況には流石に
怯え気味になっていた。

元々彼は平和な世界の住人である。スネ夫と一緒にのび太をからかい、近所の子供からおもちゃを
奪い、時にリサイタルを開いたり、母ちゃんに怒鳴られたり。
時に未来から来たロボット、ドラえもんの秘密道具が巻き起こす騒動に巻き込まれることもあった。
彼らの日常の中に、人の生き死には起こらなかった。
たまにドラえもんやのび太の影響で非日常的な冒険に巻き込まれることはあった。
その中で命に関わるような危険を冒したり、命を賭けて戦ったこともある。
だけど、それだって仲間たちや冒険で知り合った人たちが死ぬようなことはなく、常に幸せな結末を
迎えられた。優しい日常に戻ることができた。

だからこそ、あの場所で女の子が首輪を爆破され命を落とす光景は彼の心に衝撃を与えた。
普段から暴力を振るうっている彼だが、その比ではない。
これまでの冒険があったからこそわかっていた。あの化け物は、これまでに戦ってきた相手と同じで、
自分ひとりでは到底勝ち目がないと。

それに、これまでの冒険では常に仲間が側にいた。いつも秘密道具で自分たちを助けてくれる
ドラえもんがいた。普段は弱虫だが、冒険のときになると人が変わったかのように頼もしくなる
のび太がいた。いつも優しいしずかちゃんがいた。自分の子分的存在で頭の回るスネ夫がいた。
だからこそ乗り越えることができた。

しかし今、彼の側に仲間たちの姿はない。ドラえもんやのび太、それに出木杉も参加しているようだが、
どこにいるかわからない。
故に、心の奥底で自分は助からないんじゃないかと思い始めてきた。

106おれはジャイアンさまだ! ◆yVXuy0xeGI:2019/05/19(日) 13:26:19 ID:zmNtfzsI0
ジャイアンは頭を振る。弱気になってはいけないと。自分はガキ大将なんだ。
大丈夫、これまでも乗り越えられた。今度だってドラえもんやのび太がいれば乗り越えられる。

「そ、そうだ。あんな奴に負ける訳がねぇ!俺様としたことが、つい弱気になっちまったぜ」

とにかく今はドラえもんたちを探さないと。
その前に気分転換がしたい。
そう考え、ジャイアンはデイバッグになにかいいものは入ってないか探し始めた。

すると中からカラオケマシンが出てきた。

「お、こりゃいいや。一発、歌でも歌えば不安も吹き飛ぶだろ!」

そういって、ジャイアンは自分の自慢の曲をセットした。
すると懐かしのあの曲が流れだした。

てーてて♪ててててててーて♪てーってててててー♪
てーてて♪ててててててーて♪てって♪ててててててててーて♪

「おっれ〜はジャイア〜ン♪ガーキだいしょ〜う♪
 て〜んかむ〜てきのお〜とこっだぜ〜♪
 の〜び太スネ夫は目じゃないよ♪
 ケ〜ンカスポ〜ツ〜♪
 ドンと来い〜♪
 歌も〜〜〜〜〜〜♪う〜まいぜ♪
 ま〜かし〜と〜け〜〜♪」

ジャイアンはそのまましばらく気持ちよさそうに歌い続けた。

さて、言わずもかな、彼のその魔界のセイレーンすら打ち倒した大きな歌声は遊園地のみならず回りにも響いていた。
果たして彼の歌を聞いてしまった不幸な参加者はいるのか?
彼の歌声が誰かに届き、ドラマを作り上げるのか?はたまた何事もなく無事に終わるのか?

次回へ続く(かもしれない)

107おれはジャイアンさまだ! ◆yVXuy0xeGI:2019/05/19(日) 13:27:14 ID:zmNtfzsI0
【F-6 ANGEL LAND/深夜】
【剛田 武@ドラえもん】
[状態]健康、気分高揚
[装備]なし
[道具]カラオケキング(マイク付き)@ドラえもん、基本支給品一式、
ランダム支給品×0〜2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いから脱出
1:しばらく歌い続ける
2:仲間たちを探す
※F-6周辺にジャイアンの歌声が響き渡っています

108 ◆yVXuy0xeGI:2019/05/19(日) 13:28:58 ID:zmNtfzsI0
以上で投下終了します
ジャイアンに歌を歌わせたかった

109名無しさん:2019/05/19(日) 20:59:17 ID:JdzpQ13M0
投下乙
音痴キャラってこのロワではほかにいないな
体調に変調きたすレベルの音痴の被害受けたことあるのも、トキがいるけもフレのキャラくらいか
未体験の音痴に悶えるキャラたちはどんな感じかね…

110名無しさん:2019/05/19(日) 23:16:26 ID:EG92soYw0
投下乙です。
拡声器ならぬマイクのジンクスになってしまうのか。
まあ聞いた奴は悶絶するだろうから大丈夫だろうけどね。

111 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:54:20 ID:jZJzu3kg0
新条アカネ、ピッコロ大魔王投下します。

112神と神 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:54:55 ID:jZJzu3kg0
薄い紫の髪色の少女、新条アカネは酷く不機嫌であった。
この殺し合いの場に連れてこられた事についてである。
主催者たるアレクシス・ケリヴと彼女は協力関係にある。
盟友と言ってもいい。
新条アカネはツツジ台の神である。しかしそれは彼女個人の力でそうなったのではなく、アレクシスの協力があったからこそだ。
アカネが作った怪獣の粘土模型をアレクシスが「インスタンス・アブリアクション」する事で実際に怪獣に変え、あの街に出現させていたのである。
怪獣と一口にいっても、アレクシスが産みだした怪獣の用途は様々だ。
街を作る怪獣。人を作る怪獣。街を壊す怪獣。街を直す怪獣。人々の記憶を書き換える怪獣…ツツジ台は怪獣によって成り立っている街だ。
怪獣を作るのを実行したのはアレクシスだが、その指示を出したのはアカネだ。
彼女が何故ツツジ台を作ったのか、いや、そもそもツツジ台の基盤となっている異世界―コンピューターワールド―に如何にしてやってきたのか、更に言えば恐らくコンピューターワールドへと手引きをしたであろうアレクシスと如何にして出会ったのかは不明だ。
しかして、アカネとアレクシスが共犯関係にあるという事は間違いないであろう。

(また勝手な事してぇ…)

だからこそアカネは不機嫌なのであった。
こんなイベントを開くなどという通達はアレクシスからは一切されていなかった。
彼女もまた、気が付いたらこの場にいた参加者の一人にされていたのだ。
一体アレクシスはどういうつもりなのか?
アカネと現在敵対関係にある少年―グリッドマンだとアカネは知っている―響裕太が抱いていたのと同様の疑問を、アカネ自身もまた抱えていたのである。

とはいえ、アカネに黙って勝手な行動をとったのはこれが初めてではない。
ついこの間もアンチ―アカネがグリッドマンを倒すために造った怪獣に変身する少年―が宿敵グリッドマンが現れない事に痺れを切らし、あの巨人を呼び寄せる為に怪獣を作る事にアレクシスは力添えをしていた。
アカネに黙って、である。
無論アレクシスとしてもアンチに頼まれた手前断れないという事情はあったのかもしれない。
だが、アカネにとっては不愉快な事であった。
怪獣を作るのは自分の役割である。その領分を他者に侵される事は我慢ならない。
だからアンチを処分するようにアレクシスに命じた。
ともかくアカネにとってアレクシスに勝手をされるのは嫌なのだ。その矢先にこれである。
この殺し合いの目的について考えを巡らせてみたが、アレクシスも暇つぶしをしてみたかったのかな?というところに行きつく。
だとすれば自分に伝えて欲しかった。告知無しに突然巻き込むのは失礼ではないか。

(まあいっか。私には関係ない話だし)

先にも述べた通り、新条アカネはツツジ台の神である。
即ちツツジ台…もっと言えば、コンピューターワールドの住人ではない。
あの街に住まう人々は怪獣によって作られたレプリコンポイドという贋造物であり、アカネとは違う。
それはこの殺し合いの場においても同じ事だろうとアカネは確信している。
会場はコンピューターワールドに新たにアレクシスが設けたものであるだろうし、参加者達も自分を除いて皆レプリコンポイドなのだろうと考えていた。
つまるところ本当の生命を持った者達はいない。
故に、ここで何人死のうがアカネの知った事ではないのだ。
否、ここでという表現は正しくはない。
ツツジ台にいた時から彼女はそこの住人達を生命だとみなさず、怪獣を使って平気で踏み躙っていったのだから。
開催の場で首から上を爆破されたゴスロリ少女に対しては少しグロいなと引いてしまったが、それだけだ。
派手なパフォーマンスとしか彼女は受け取らなかった。

そして神たる自分は死ぬ事など無い。
コンピューターワールドにおいて彼女は睡眠をとる必要もないし、鉄塔から落っこちても平気だ。
それもこの殺し合いの場においても変わらない事であろう。
生物が生きるために呼吸を必要とするのと同じでそれが道理だ。
つまり、自分は殺し合いとは関係の無い部外者だ。
レプリコンポイド達だけで勝手に殺しあえばいい。

「さっさと連絡よこさないかな〜アレクシス〜」

…新条アカネは誤解をしている。
レプリコンポイドは偽物の生命などではない。
産まれが作られた物であっても、彼らもまた自分の意志で考えて生きる一つの生命なのだ。
そしてこの場にいるのはツツジ台の住人達だけではない。
様々な世界から集められた…彼女が定義するところの「本物の生命」達がいる。
そしてその誤解は他者にのみ向けられるものではない。彼女自身もそうだ。
この殺し合いの場においては新条アカネも物を喰わねば腹も減るし、時間が経てば眠くもなるし、大量の血が流れれば死ぬ。
彼女はこの殺し合いに無関係でいられる立場では無い。






つまり、新条アカネはもう神ではないのだ。



113神と神 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:55:27 ID:jZJzu3kg0

「ポコペンポコペンダーレガツツイタポコペン…」

地図ではG-2、高層マンションPENTAGONの前で奇怪な緑色の怪人が意味不明の呪文を唱えていた。
怪人は何度かそれを繰り返していたが、なんの変化も起きない事が分かると唱えるのをやめた。

「駄目か…」

怪人の名はピッコロ大魔王。かつて世界を震撼させた魔族である。
たった今唱えていた呪文は自分の手足となって動く魔族を生み出すためのものであった。
しかし、やはりというべきかこの能力は主催者によって制限がかけられてしまっているらしい。
当然といえば当然だろう。首輪の無い手駒を増やされるような事になればこの殺し合いのルールが破綻してしまう。
そこに考えのないような馬鹿な主催ではなかったということだろう。

「これは少しマズいかもしれんな…」

ピッコロ大魔王は現状を楽観視はしていなかった。
七つ揃えると願いを叶える事が出来る球、ドラゴンボールを集め若返って全盛期の力を取り戻そうとしていた矢先に彼はこの殺し合いの場に召集された。
あのアレクシス・ケリヴなる怪人は一体どうやって自分を拉致しこの首輪を嵌めたのか、まるで知覚できていない。
恐らく首輪が爆発すれば自分も死ぬのであろう。
自身の実力には自身を置くピッコロ大魔王であったが、それは認めざるを得なかった。
この首輪に備えられた爆弾というのもただの爆弾ではないのだろう。
ピッコロ大魔王すら苦も無く捕えるほどの主催者だ。あの開催の場で殺された少女に再生能力があったというのも嘘ではなく、如何なる参加者でも死に至らしめる特別製のものを使っていると考えられる。
悔しいが、主催者と自分とは完全に上下関係にある。
ならば自分はどう動くべきか?

「やはり、優勝するしかないか」

アレクシスは優勝すれば願いを一つ叶えると言っていた。
それが事実なら願ったり叶ったりだ。ドラゴンボールを使わずとも奴に若返りの願いを叶えてもらえばいい。
自分の力を持ってすれば優勝など容易い事であろう。
他者を殺すことになどなんの躊躇もない。



…だが引っかかりはある。
果たして他の参加者を全滅させ優勝し、若返りの願いを叶えて世界征服を達成したところでそれは安寧なものと言えるだろうか?
自身を完全に上回るアレクシスが世界に存在する以上、いつまた自分の立場が脅かされないとは限らない。
何しろこちらの意思など完全に無視して生殺与奪の権を握るような奴だ。
全盛期の力を取り戻した自分なら負ける気はしないが、アレクシスが願いを馬鹿正直に叶えるとは思えなかった。
何とかしてあのアレクシスは排除したい。それがピッコロの望みである。
とは言ったものの、現状その手段はない。
消極的かつ屈辱的な判断ではあるが今は主催者のルールに則り、優勝を目指すしかないだろう。
元の世界に解放されてからアレクシス対策について考えざるを得まい。
若ささえ取り戻せれば手の打ちようはあるのだが…。

そう考えて思考を打ち切ったピッコロは他の参加者を求めて動き出すことにした。

「!?…飛ぶことも出来なくなっているか!」

飛行能力も制限されているようだ。
苛立ちながらもピッコロは自らの脚で歩き出した。



114神と神 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:56:21 ID:jZJzu3kg0

「えっ、響君連れてこられてるの!?それと内海君と六花と…アンチ?…殺せてないんじゃんアレクシス…」

早速他の参加者は見つかった。
その薄紫色の髪の少女はこちらの存在に気付かず呑気に名簿を眺めているようだ。
記念すべき一人目の犠牲者にしてやろう。そう思いピッコロは腕を振り上げた。
…が、少女の脇に置かれた「何か」がピッコロの目に入り、彼はその動きを止めることとなる。

「!?オ、オイ小娘!なんだそれは!?」
「ふぇっ!?な、何!?あなた誰?」

少女の言葉を無視してピッコロは地に置かれたその「球」に駆け寄る。
オレンジ色の艶やかな表面のその球を、ピッコロ大魔王が見紛う筈が無かった。

「ド…ドラゴンボールではないか!」

そう、七つ揃えればどんな願いも一つだけ叶えられるという不思議な球。
ピッコロ大魔王がまさに今求めてやまないものが一つそこにはあったのだ。

「娘!これを一体どこで手に入れた!?」
「ど、どこって、このデイバックの中に入ってたけど…」
「な…なんだとぉ!?」

ピッコロはその返事を聞いて慌てて自身のデイバックの中も確認した。
自分には支給品など必要ないと判断し、今の今まで開くことが無かったのだ。

「あ…あった!」

幸運な事に、自分のデイバックの中にもドラゴンボールは一つ入っていた。
これは如何な事だと混乱したが、事実としてドラゴンボールはここにある。
つまり、支給品として扱われていたのだという事をピッコロは受け入れざるを得なかった。
見れば、丁寧に説明書まで同封してある。そこにはこう書かれていた。
『他のドラゴンボールとあわせて七つ揃えれば一つだけ願いを叶えられます。ただし、主催者の抹殺や他参加者の全滅、死者の蘇生など殺し合いそのものを破綻させてしまうような願いは叶えられなくなっています』

つまりはこういう事だろう。
主催者はこの殺し合いのギミックとして、ドラゴンボールすら取り入れたという事だ。

「ふ…ふははははは!何という幸運だ!」

ピッコロは笑いが止まらなかった。
彼の叶えたい願いは無論若返って全盛期の力を取り戻すことだ。
それは殺し合いを破綻させる願いに当てはまるだろうか?
否、当てはまらない。ピッコロは若返ればどんな相手にも負ける事は無いと確信しているが、そうなったとしてそれはあくまでとてつもなく強い参加者が出来上がるというだけの事である。
若返ったピッコロ大魔王に他参加者が誰一人として敵わず全滅する事になったとしても、それはこの殺し合いのルールの枠組みに入っている。
更に幸運なのは、ドラゴンボールが支給品として扱われている事である。
即ち、ドラゴンボールは七つともこの会場内にあり、他の参加者達にも支給されているという事だ。
この殺し合いの中でドラゴンボールを集める事は、世界中に飛び散ったドラゴンボールを集める事より遥かに容易であろう。
会場の広さは限られており、ドラゴンボールも無造作に設置されているわけではなく人の手にあるのだから。
他参加者を殺害し、支給品をぶんどっていけばいいというシンプルな話となったわけだ。

115神と神 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:56:44 ID:jZJzu3kg0

「ねえ、無視しないでよー。あなたアレクシスの作った怪獣でしょ?」
「…何?」
「アレクシスが迎えによこしたんでしょ?わざわざ宇宙人タイプの怪獣作っちゃって」

ドラゴンボールを見つけた衝撃から気にも止めていなかったが、目の前の少女は自分に声をかけてきていたようだ。
カイジュウ?どういう事だ?こいつは何か誤解をしているのか?
アレクシス・ケリヴを知っている?そもそも見た所なんの力もない一般人に見えるが、何故この殺し合いに放り込まれても平然としていられる?

(…少し探りを入れてみるか)

目の前のこの少女には何かがある。ピッコロ大魔王の直感がそう告げていた。
力に訴えるよりも、ひとまずは話をあわせた方が情報を得られそうだ。

「ああ!すまないな!私も作られたばかりで真っさらな状態なのでな、君が誰だか分からなかったのだ」
「ハァ〜?アレクシス、私に黙って作るからこんな事になるんだよ…また失敗作じゃん…」
「悪いが君の事について詳しく聞かせてくれんか?」
「えぇ…面倒くさい…しょうがないなぁ〜」

そこでピッコロは新条アカネに関する情報を知った。
彼女がツツジ台の神である事、アレクシスと繋がりがある事、怪獣を作って街を破壊し、グリッドマンなる超人と敵対している事…そうした事が伝えられる事になった。

(にわかには信じられん話だ…しかし、自分が主催者と繋がりがあるなどという嘘をつく必要があるか?)

ピッコロは新条アカネという少女に興味を惹かれていた。
そういえばアレクシスは開催の時に自分を既に知っている者もいる、と言っていた。
確信は出来ないが、この少女がでたらめを言っている可能性は低いとピッコロは考える。
嘘だとしたら、そのような嘘を即座に思いついてスラスラと言えるのはサイコパスだろう。
本当だとすればこの少女やグリッドマンなる超人、更にはアレクシス・ケリヴは別世界の住人という事になる。
そう考えると如何な参加者でも死に至らしめるこの首輪の存在も納得がいく。
ピッコロ大魔王すら知りえない未知の技術が「ツツジ台」にはあったという事だ。
無論、ピッコロは自分がツツジ台で産まれた仮初の生命などではない、という事も確信していたが。

(利用価値はあるのかもしれん)

ピッコロは情報を聞き出したら殺すつもりであったが、やめた。
もしかするとこの新条アカネなる少女は主催者アレクシスを打倒する上でキーになりうるのでは…そう思ったからだ。

「申し訳ないが今暫くは君もこのゲームに付き合ってもらわねばならん。その付き添いとして私が来たというわけだ。ただ、君に関する情報が抜け落ちていたのはアレクシスの落ち度だな」
「ふーん…そもそもこのゲームってなんで開かれたの?アレクシスから聞いてない?」
「それも伝えられてはおらん。アレクシスもゆくゆく手を抜く奴という事だ」

その答えが癇に障ったのか、アカネは未開封のデイバックをピッコロ目掛けて投げつけた。
少女の腕力で投げられたものなど、ピッコロ大魔王にとっては止まっているに等しい。
苦も無くキャッチしたピッコロはアカネに対して苛立ちを覚えたが、しかしこのデイバックの中身も気になった。
よもや更にもう一つのドラゴンボールが…?そんな期待も少しある。
中から出てきたのは、大型のストップウォッチのようなものであった。

「ほぉ…」

付属の説明書を読み、ピッコロは声を漏らした。
この支給品の名はドラゴンレーダー。ドラゴンボールの位置を探ることができる探知機だという。
試しにスイッチを入れてみれば、まさしく現在位置に二つドラゴンボールがあるという事が示されている。
それだけではない。縮尺を広げていくと、この会場内に更に五つのドラゴンボールが存在することも表されていた。

(余程私は幸運のようだ)

ほくそ笑むピッコロを知ってか知らずか、アカネは地に置かれたドラゴンボールも彼の方へと転がした。

「それもあげるね」

ピッコロはますます上機嫌になった。
いいだろう。アレクシスを打倒するまでは生かしておいてやる。
それがピッコロ大魔王が新条アカネに対して下した決断であった。



116神と神 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:58:08 ID:jZJzu3kg0

薄い紫の髪色の少女、新条アカネはやはり不機嫌であった。
やっとアレクシスの使いが来たと思ったら、情報をロクに伝えられていないという。
これではアンチ同様の出来損ないだ。
とはいえ、アンチと違って従順ではあるようだからそこは許すが。
願いを叶えるという球に興味を持っているようだが、恐らくはアレクシスがゲーム進行の為に付与した設定なのであろう。
ドラゴンボールなる球を参加者が集めるのを妨害するお邪魔キャラといったところであろうか。
アカネ自身はドラゴンボールの事など信じていない。
優勝報酬にしてもそうだが、アレクシスに叶えられる望みならいつでも叶えられる事だろう。
いつものツツジ台でディスプレイに表示された彼に頼めばいいだけの話だ。
とにかく自分はこの殺し合いとは無関係、というのがあくまでも新条アカネのスタンスであった。
…よもや、ドラゴンボールが別の世界から持ってこられた、正真正銘の願いを叶えられるアイテムだとは思っても見なかったのだ。

一方で、ピッコロ大魔王本人に関しては少し興味を引くところはある。
名前を聞いた瞬間、アカネはフルートの発生楽器ではなく、ウルトラマンタロウに登場したわんぱく宇宙人の方を連想した。
ピノキオのような愛嬌のある見た目でありながら地球人の醜さに絶望して街を破壊した星人だ。
そのピッコロに「大魔王」の肩書きを付ける…アカネはこれまたウルトラマン超闘士激伝に登場したメフィラス大魔王を連想せずにはいられなかった。
彼は知性的なメフィラス星人のキャラを逆手に取った闘争を求める武闘派のキャラクターであったが、ピッコロ大魔王なるこの怪獣もそうしたギャップを狙って名付けられたのでは…。

(ないね、ないない)

それはすぐに考え過ぎだろうとアカネは考え直した。
大体あのピッコロとはまるで似ても似つかない姿をしているではないか。
言うなれば「彗星怪獣ドラコ」と「三つ首怪獣ファイヤードラコ」、或いは「兄怪獣ガロン」と「円盤生物ブラックガロン」のようにたまたま名前が被っただけだろう。

(そういえば宇宙人は作ったこと、なかったな)

ウルトラシリーズの定義でいけば「宇宙人」も「怪獣」の枠組みに入っている。
バルタン星人だってメトロン星人だってウルトラ怪獣図鑑には載っているのだ。
そして、ピッコロ大魔王は誰がどう見たって宇宙人である。
人に非ざる外見をしながら、人と言語で意思疎通が図れる存在は宇宙人だとしかアカネには思えなかった。
そうした枠組みの「怪獣」を作った経験はアカネにはない。
アカネは確かに人間の姿を持つ怪獣としてアンチを作った。それは一緒に食事を取れる相手が欲しかったからなのかは彼女にしか分からない話であるが。
だがアンチは「宇宙人」ではない。「怪獣」だ。
人間の姿を持つ怪獣というのも珍しくはない。スノーゴンやコオクスやアンタレスやアルゴンのように、人間の姿から変身する怪獣だってウルトラシリーズにはいる。
そうしたもののつもりでアカネはアンチを作っていた。
だからアレクシスと自分とでは少し考えが違うのかもしれない。
アカネにも分からない殺し合いの開催の理由…それが分からないのも考えが違うなら当然ではあるかもしれないが、やはりその事もアカネを不機嫌にさせる要因ではある。

ただ、アレクシス以外の「宇宙人」との接触…その事に些かばかりの興奮を覚えているというところはある。
もしかするとこの未知の宇宙人は退屈から救いに来た存在になり得るかもしれない。
グリッドマンたる響裕太に向ける関心に近いものを、アカネはピッコロ大魔相手王に少し抱いていた。

(それにしても…ザラブ星人かヒマラみたいな声してるね)

新条アカネは気付いていない。
ピッコロ大魔王はアレクシスに作られた彼女の為の存在などではなく、正真正銘の悪逆非道の魔族だという事に。
まさしくウルトラマンと人間との信頼関係を壊そうとしたその凶悪宇宙人のように、アカネを騙しているという事に。
その参加者と関わった以上、もう殺し合いと無関係でいる事などできないという事に。

117神と神 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:58:26 ID:jZJzu3kg0

【G-2/PENTAGON 深夜】
【ピッコロ大魔王@ドラゴンボール】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2、二星球@ドラゴンボール、五星球@ドラゴンボール、ドラゴンレーダー@ドラゴンボール
[思考・行動]
基本方針:ドラゴンボールを集めて若返り、最終的にはアレクシスを打倒する。
1:ドラゴンボールを持っている参加者を探し、殺害してドラゴンボールを奪う。
2:障害になる者も殺す。
3:新条アカネは利用価値がありそうなので今は殺さない。
※神龍を呼び出し若返る前からの参戦です。

【新条アカネ@SSSS.GRIDMAN】
[状態]:健康、アレクシスへの苛立ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・行動]
基本方針:殺し合いが終わるまで適当に過ごす。
1:裕太、アンチの動向が少し気になる。
※第7話終了直後からの参戦です。
※この会場をコンピューターワールド、自分以外の参加者をレプリコンポイドだと認識しています。
※ピッコロ大魔王をアレクシスの作った怪獣だと認識しています。

【二星球@ドラゴンボール】
【五星球@ドラゴンボール】
七つ揃えれば願いが叶うドラゴンボール。
ただし本ロワでは、主催者の抹殺や他参加者の全滅、死者の蘇生など殺し合いそのものを破綻させてしまうような願いは叶えられないという制限がかけられています。

118 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/22(水) 00:59:08 ID:jZJzu3kg0
投下終了します。
あとついでにちょっとwikiの裕太の支給品数修正しときます。

119名無しさん:2019/05/22(水) 18:51:52 ID:gaOnBu0I0
投下乙です。
対主催ルートもあり得るかこれ…?
ドラゴンボールはどうなるかわからんな

120名無しさん:2019/05/22(水) 21:20:25 ID:15KT9GT20
なにげにまだ死者0なんだよな
ドラゴンボールも殺し合いを加速させる装置になるかね……

121 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:28:35 ID:4RoZbgYc0
少し遅れました申し訳ない。
投下開始します。

122二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:29:09 ID:4RoZbgYc0
地図のF-3、サーカス場。
背の高いサングラスをかけた男がサーカス場の外壁にもたれている。
彼の名は伊集院隼人、またの名はファルコンや海坊主とも。

隼人は考える。特にスイーパーとして依頼を受けたわけではない。
自分が気づかないうちに無理やり連れてこられたのだ。
ならばこんな殺し合いに乗ってやる義理など全く以て無い。
むしろ最初の会場にいた時、周りには小さい子供の気配も感じていた。
参加者の各々がどんな理由で連れてこられたかは分からないが、
そんな子供まで殺し合いに巻き込む主催に怒りすら感じている。

だが主催者から与えられた条件は厳しい。
ただ脱出しようとしても首輪が爆発する。
主催者に反抗しても駄目だ。
どの程度で反抗と見られるかは分からないが、本拠地に乗り込んだりはまず出来ない。
何にするにせよ首輪を外す必要がある。
だが様々な機械に触れて来た器用な隼人でも、この首輪の内部構造が分からない以上、
下手に外そうとすれば爆発するのでまだどうにも出来ないのだ。

そして今の隼人には帰らなければならない場所がある。
パートナーの美樹。二人で営む喫茶店。
もちろん彼女だって子供を含む大勢を殺して戻ってきたら隼人のことを軽侮するだろう。
だが彼女も裏の世界で生きてきたプロだ。
いずれ時間が解決して、受け入れてくれる時も来るはずだ。
長年傭兵やスイーパーをやってきた隼人には後ろ暗い過去もいくつかある。
そのような過去の一部となっていくのかもしれない。

それでも、少なくとも今は主催者の言いなりになり殺し合いに乗ってやるつもりも無い。
同じように考えて殺し合いに乗ろうとしない参加者が他にもいるはずだ。
彼らと協力して技術を結集し、何とか首輪を外す方法を探らなければならない。

とりあえずはそのために生き残ることを考えなければならない。
主催者からの支給品を確認していく隼人。
視力の弱い隼人は時間をかけ目を凝らして名簿の名前を辿っていく。
そして名簿に載っている名前の中に、自分の名前と並んでよく知る二人、
冴羽リョウと槇村香の名前を発見してしまう。

まさかあの二人もこの殺し合いに連れてこられているとは。
主催者の正体は自分たちに因縁のある相手なのだろうか。
いや70人中の3人だ。他の可能性も高そうだ。
安心できることとしては、二人とも殺し合いに乗る選択をするとは思えないことだ。
協力、保護して主催者を打倒する術を一緒に考えたい。

地図を確認すると、なんと新宿駅が島の中に存在している。
あの東京の、何度も訪れた新宿駅がこの場にあるというのか。
孤立した島だから同じ名前の別の駅の可能性もあるが……、
本当に新宿駅だとしたらあれと同じものを作ることを考えると、
主催者はどれだけの力があるのだろうか。
とりあえずは実際に訪れて確認しないことにはどうにもならないか。

そしてそれ以外の個別のもの……を確認していくことにする。
デイパックを漁ってみるとボタンのついたカプセルが2つ出てきた。
とりあえず1つ、ボタンを押して暫く待ってみる。

「うわっと!」

カプセルが音ともに割れ煙が経つ。そして手には何かを握る感触。
煙が晴れてくる。

「何だこりゃ……? 動物の手か?」

動物の手のようなものが棒の先についている。
しっかり先端には爪のようなものがついている。
慎重に触ってみたが、切れ味はしっかりしており下手に触ると指を切りそうだった。

「一応……これは武器なのか?」

個別のものは多くとも3つしか支給されないのだ。
自分にはあまり合わない気がする装備だが、貴重な武器として取っておかねばならない。

もう一つのカプセルもボタンを押してみる。
今度は目の前で出さず、押してから少し離れてみる。
出てきたのはコーヒーミル、充電式のコーヒーサイフォン、コーヒーカップ。
コーヒー豆の袋と水もついてきた。まとめて棚に入っている。
隼人はコーヒーの袋を読んでみる。

「ルブランという喫茶店で出してるコーヒーね……。
 喫茶店員の俺にこれでコーヒーを作れってことかい」

戦いに役立たない道具であることに少し苛つくが、
まあコーヒーは心を落ち着かせ集中力を高める事もできる飲み物だ。
殺し合いに役立つ物と一応言えなくもない。
技術に少しは自信のある隼人は、いつかこのコーヒーを作ってやると決めた。

まだ支給品がないか置くまで漁ってみる。
なにか小さいものが手に触れた。取り出して見る隼人。

「これは……」

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123二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:29:44 ID:4RoZbgYc0
とりあえず謎の武器を持ち警戒しながら、サーカス場の周りを歩く隼人。
他の人物がいるなら接触したいが、今の状態で戦うのはまずい。感覚を研ぎ澄ます。

壁伝いに歩いていると、彼の警戒網に声が入ってきた。
プロのスイーパーや傭兵としての経験がある彼は、
会話している二人の参加者に相手より早く先に気づくことができた。
自分の音を潜め聞き耳を立ててみる隼人。
この二人は少なくとも殺し合いに積極的に乗る気はないらしい。
しかも二人とも子供と言える年齢のようだ。
本心がどうであれとりあえずこちらも殺し合いに乗る気がないと伝えれば、
友好的に接触できる可能性が高いのだ。
情報を得られる相手は非常に重要だ。
海坊主は察知されないよう、相手からも見える距離まで近づいていく。

「そこのお二人さん。
 失礼するが俺も相談に混ぜてもらいないだろうか」

二人の会話が止まり、緊張した空気となる。やがて少女の方が答える。

「失礼ですが、あなたは殺し合いに乗っていますか?
 私たちが子供という事に気付いて話しているのですよね?
 安心させるために姿を見せてください。
 一応こちらには武器もあります。
 姿を見せないようなら攻撃することも考えます」

「殺し合いに乗る気は無いんだ。安心してほしい。
 そもそも殺し合いに乗っているならお前たちを奇襲してるところさ」

サーカス場の幕の裏から隼人が姿を現す。

「うわあぁぁっ!!」

「ひゃぁぁぁっ!!」

伊集院隼人の出で立ちは恐ろしくも、奇妙であった。
身長2mを超える色黒でサングラスをかけた男が、
動物の手のようなものが棒の先についた謎の武器を持ち、
スキンヘッドに花の髪飾りをしているのだ。
出木杉は恐ろしくて手に持った手榴弾をまだ離すことが出来ない。

「あっと! 驚かせて悪い。
 さすがにこれだけ図体がでかいと驚かれても仕方ないよな……」

周りにバレバレの怪しい変装をしたことがあるように、隼人は衣装に関しては天然気味である。
花の髪飾りを付けたのも、怖い見た目をごまかし安心させようという意図でしかないのだ。
でも、そういう問題ではないというように二人は首を横に振る。

「そうか。一応信頼してくれるか。
 俺は視力が弱い代わりに他の感覚は鍛えていてな、
 君たちの会話はよく聞こえていた。
 殺し合いに乗るつもりがないと容易に判断できたさ」

「そ、そうですか……」

「伊集院隼人だ。よろしくな。
 名簿だと下の方に書かれているようだ」

隼人は本名を伝えた。
名前が伝わって困る相手はいないし、
名簿がある以上コードネームや嘘を話しても怪しまれるだけだ。

「スイーパーや傭兵としては、ファルコンや海坊主という通り名でも呼ばれている。
 まあ裏の世界も知らない子供にその名で呼ばれるのも違う気もするし、
 どう呼んでくれても構わねえよ」

傭兵という言葉を聞いて出木杉は少し身構えてしまう。
金銭のため自分に関係ない戦争に参加する戦争屋というイメージが、
現代の常識では強いので仕方ないことだ。
もちろん出木杉はそういう存在だけでなく、しっかりビジネスの礼儀を持っていたり、
戦争地帯を通過するときの護衛などをする良識のある者もいることは知識として知ってはいるが。

「スイーパーとは、始末屋ということですよね?
 法で裁けない悪人を処分したりされるのですよね」

一方テッサはミスリルに雇われに来る傭兵たちのように、
正義のために雇われ戦うということに誇りを持っている人種を想像した。
今までの態度からするに、少なくともならず者のような傭兵でないことは明らかだからだ。

「ああ。他にもボディガードみたいなこともやってるし、
 危険な依頼を受ける何でも屋みたいなもんさ。
 そっちの坊やは少し怯えてるみたいだが、
 少なくとも俺は悪事に手を貸さない程度の分別はあるつもりだ」

「わかりました。テレサ・テスタロッサと申します。
 テレサやテッサと呼んでください。
 伊集院さん、よろしくお願いします」

テッサが隼人を信用して名前を告げるのを見ると、
出木杉も続いて信用することにしたようだ。

「出木杉英才といいます。よろしくお願いします、伊集院さん」

三人は会場に来てから今までのこと、知り合いの情報なども含めて情報交換を行う。

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124二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:30:18 ID:4RoZbgYc0
テレサ・テスタロッサ、出木杉英才の二人が出会ったのは完全な偶然。
二人とも転移先がサーカスの観客席であったのだ。

出木杉はこんな殺し合いの場にそぐわない小学生であり、とっさに身を隠してしまう。
いくら優等生の天才小学生であろうと、こんな殺し合いの場所では最初は臆病になるのが普通だ。
そこで一応は命のやり取りの場にも場馴れしているテッサが、
出木杉に攻撃の意志がなさそうなことを見ると、戦闘の意志がないことを呼び掛けた。
テッサも怯えたい状況ではあったが流石に年下の子供をこの状況で安心させたい、
心配させるわけには行かないと気を持って頑張った。

二人である程度情報交換しその中で、
取り敢えずお互いの支給品を確認したところこのデカブツの操り人形が出てきた。
小さなボタンのついたカプセルがあり、ボタンを押すと中から突如現れたのだ。
操縦技術の分からない者でも使えるようにとの配慮か、ちゃんと解説のおまけ付きだ。

もちろん二人ともこのような巨大な操り人形など、全く知らない文化の産物だ。
これを使いこなせれば戦うための道具にもなるし、高速な移動手段にもなり得る。
ところがテッサは基本的に頭を動かす方に慣れており、
前線でこのサイズ程度のマシンを動かすことなどなかったし、
出木杉もあらゆることに秀でているといっても平和なところで暮らす小学生であり、
流石に未知の技術の産物にいきなり触れることを躊躇してしまう。
下手に扱って壊してしまっては元も子もないのだ。

テッサは双子の兄レナードのように、
ASのような人型兵器の扱いに秀でている者が使えばすぐに動かせるのかもしれないと思っていた。
でも今は敵対している兄のことを考えても仕方がない。
出木杉も同様に、そういえばあやとりの得意だったのび太ならば、
操作のコツをすぐ掴めるかもしれないのにと思っていた。

そういうことで二人はこれを使えば高速で移動できることを理解しながらも、
未だに操作方法や練習の仕方を議論しているまま先に進むことができなかったのだ。

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125二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:31:27 ID:4RoZbgYc0
「お前たち二人ともすごい良く出来た子供だな!
 ずっと戦いの中で生きてきた俺とは全然違うぜ!」

「きっとテッサさんの方が僕よりも頭はいいんじゃないかって思います。
 大変な殺し合いの中でも、こういう人と遇えたという事はとても嬉しいことですよ」

「いえいえ、私は半分くらいはウィスパードという特殊能力の賜物みたいなものですし。
 出木杉君だって小学生でそこまで出来るのはすごいと思いますよ」

テッサと出木杉があまりに理知的なので隼人は驚いている。
花飾りは二人の視線が痛々しいので外して、女の子のテッサに渡してある。

「すみません、お二人と話したお陰で推察がまとまってきました。
 僕はこの状況を説明できる術を持っています。
 信じられない話かもしれませんが、どうか聞いてください」

出木杉の真剣な表情に応えて、テッサと隼人も真剣に出木杉の方を向いた。

「この名簿に書かれているドラえもん。
 先程彼は僕の友人の野比のび太の一緒に暮らしている猫型ロボットだと言いましたが、
 実は22世紀の未来からタイムマシンで現代にやってきたロボットなんです」

「信じられないかもしれませんが、未来の技術が生かされている証拠は既にあります。
 この操り人形は手のひらに乗る程の小さなカプセルに収められて、
 テレサさんに支給されていたんです。
 伊集院さんももう自分の支給品で体験したかもしれませんが、
 小さなカプセルにこのような物を収める技術は僕のいた時代にはないですし、
 お二方の世界にも恐らく無いのではないでしょうか」

もちろん隼人は自分の支給品で見た経験がある。
テッサと隼人は顔を見合わせるが、
二人ともそんなテクノロジーは思い当たらないという顔である。

「ドラえもんのポケットは四次元空間となっていて、
 どんな大きなものでも幾らでも収められるんです。
 きっと似たような技術が支給品のカプセルでも使われているはずです」

二人は一応納得し、話の続きを促す。

126二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:32:01 ID:4RoZbgYc0
「未来の技術を信じてもらえたところですけど、次は僕らが来た世界を考えました。
 さて、皆さんの世界にはちゃんと日本がある。
 過ごしていた時代も近いみたいです。
 しかし僕と伊集院さんの過ごしていた世界は、
 表の世界と裏の世界と考えれば同じ世界ともなんとか考えられますが、
 テレサさんの過ごしてきた世界だけが大きく異質です」

出木杉も隼人も、人型ロボット兵器が活躍する近代の戦争などというものは、
全く分からない世界の出来事だったからだ。

「テレサさんの世界は僕らの世界から分岐して急に技術の発達速度が上がったような世界、
 パラレルワールドのような別世界なんだと僕は考えてます。
 タイムマシンを使えばあらゆる時間軸から人を集めることができます。
 応用すればきっと別の世界からも人を集めてくることができます」

「……なるほど。
 少なくともテッサは別の世界の出身ってわけか」

「受け入れにくい推論でしょうが、今の状況を説明できていると思います」

「名簿に書かれているガウルン、ゲイツは私たちの宿敵だったはずの人たちです。
 でも相良さんが倒してくれて今は生きていないはず。
 ……なのにどうして名簿に名前があるのか気になっていたんですが」

「そうだな。奴らがタイムマシンで連れてこられて生存してこの場にいる可能性があるというこった。
 奴らの情報も後で教えろよ。警戒するべきだぜ」

「そうですね……。後でお伝えします」

「死んだはずの人もいるという事ですね……。
 それなら他に警戒すべきことは、知り合いと遇っても同じ時期から来たとは限らないという事です。
 タイムマシンならどの時代からも人を連れてこられますから」

「ああ。俺に目の傷を負わせた時のリョウだったりしたら目も当てられねぇぜ」

「もう一つ、彼はどこでもドアという道具を使っていました。
 2つの空間を接続して瞬間移動できるというものです。
 この技術を応用したと考えれば、
 この島のあり得ない建築物の配置も説明できます」

「そうですね……。私が艦長を務めるダナンをそのまま持ってくるなんて考えられません」

テッサは思う。何より地図にはテッサが艦長を務めるトゥアハー・デ・ダナンが記載されている。
本物であるとするなら、アマルガムでも何の前触れもなしにこのようなことができるとは思えない。
もちろん地図が嘘の可能性や、本物でないレプリカの可能性も考えたい。
しかし信じがたい話ではあるがこの少年、
出来杉が語る方法ならば本物を持ってくることも可能かもしれないのだ。

「主催者に関してですが、ドラえもんやのび太君の性格ではこんなことをすると到底思えません。
 ドラえもんと同じ未来の住人のうち、
 悪意のある誰かがこの自体を引き起こしていると考えることが自然でしょう。
 それならば同じ未来の出身であるドラえもんは何らかの手掛かりを持っているかもしれません」

「よし! じゃあとりあえずはそのドラえもんを探せば良さそうだな!」

とりあえず三人の行動指針の一つが決定した。

「そういえばアレクシスの野郎の言っていたスタンドやペルソナや、
 何をしても死なない再生能力とかいう異能は本当にあると思うか?
 俺は人の心を読む超能力者を見たことはあるんだが、
 さすがにそんなレベルとは次元が違うと思うんだが……」

「私がウィスパードということも、もしかしたら異能の一部として制限対象かもしれません。
 私のようなウィスパードは、急に今まで知らなかった知識をいつの間にか得ていることもあるんです。
 例えば……首輪を外す技術の知識が急に湧いてきたりしたら困るでしょうから。
 でもそうだとしたら、主催者は私達でも解明できていない、
 ウィスパードの本質というものまでをも知っていることになります。
 あまり考えたくはないですが……」

「ええ、ウィスパードというのも僕の常識からしたらすごい異能のレベルなんですよ。
 もっとすごい異能、例えばファンタジーアニメのような、
 不思議な能力を持った人たちが存在する世界もあるかもしれないということは、
 一応想定したほうが良いかもしれないと思います」

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127二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:32:35 ID:4RoZbgYc0
情報交換も終わったところで、隼人が最初から気になっていた巨大な操り人形の方を見る。

「ところで……その道化師みたいな操り人形、動かしてみるつもりなんだろ?」

「ええ。この操り人形……グリモルディは私の支給品で、
 足の部分を車輪のように回転させることで高速移動できるみたいなんです」

テッサは地図を広げダナンの場所を指差す。

「ここにある潜水艦トゥアハー・デ・ダナン。私のダーナ。
 その実力は一つの軍事基地と戦えるくらいです。
 殺し合いを望む参加者に悪用されないように私が向かわなければならないんです。
 地図では反対側のダナンまで歩いて移動したらかなりの時間を取ってしまいますが、
 これを使いこなすことができれば、上に乗って速くたどり着けます」

「そうだな。兵器を満載した潜水艦を放置は出来ねえ。
 最優先で対処すべきだ」

「視点も高くなるから、ドラえもんも含めて人探しをするにもちょうどいいと思うんです。
 でも僕もテレサさんもこんな操り人形、今まで触ったことも見たことすらもない。
 どうすれば操作できるようになるか相談していたんですが……」

「おいおい頭で考えてるだけじゃ何にもなんないぜお前ら。
 貸してみな、これでも手先は器用な方なんだ」

流石にテッサは慌てて静止する。

「待ってください! 説明も何も読んでないのに大丈夫ですか!?」

「車輪が付いた巨大なからくり人形だろ?
 車や戦車と動かし方はそう変わらんだろ。
 視力が弱くなってると言ったが、それでも車を運転できるくらい俺は技術があるんだぜ?」

「あっ! ちょっと待ってください!」

出木杉も止めようとするが二人の静止を聞くことなく、
隼人はグリモルディを操る糸の繋がる手袋を探し出しそのまま手にはめてしまった。
とりあえず適当に指や腕を動かすと、グリモルディもふらふらと動き手や帽子を動かしている。
しかしその揺れはだんだん大きく……。

「うわあっ! だから言ったじゃないですか!」

「……腕や手首の大きな動きだけじゃなくて、指もちゃんと使って腕先を制御してみてください!」

「テレサさん!?」

隼人が指示を聞き入れたのか、少しバランスを持ち直すグリモルディ。
しかしフラフラ揺れるのは落ち着かず、やがてそのまま前傾姿勢で盛大にずっこけてしまった。

「ああ、やっぱりだめなようですね……」

「流石に触ったばかりなのにバランスを取るのは無理でしたか……」

「……だがこれで、ずっこけたくらいじゃ壊れないことがわかっただろ?
 あとは特訓ありきだぜ。頑張ろうじゃないか」

失敗してしまってもとても前向きな隼人。
二人はその姿勢に勇気付けられていく。

「わかりました。伊集院さんが操作できるようになることに賭けましょう!
 伊集院さんが操縦の手順を掴めるように、私が指示を出してみたいと思います!」

「へっ、腹積もりを決めてくれたか。
 そっちの坊やはどうだ?」

「……テレサさんと相談している中で、僕が何とかやるつもりになりかけてはいたんです。
 でも伊集院さんが実際に様々な機械に触れている経験はとても大きいと思います。
 力も僕よりずっと強いし多少無理な操作もできると思います。
 伊集院さんがやったほうがきっと短い時間で操作できるようになるはずです!」

出木杉はちゃんと理由も出した上で、隼人が操作することを支持した。

「ありがたい事言ってくれるじゃねえか。
 任せてくれるってことでいいんだな?」

「はい! 僕も伊集院さんがこのグリモルディを操作できるように、
 全力でテレサさんとサポートさせてください!」

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128二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:33:09 ID:4RoZbgYc0
テッサは支給品解説を読みながら、
グリモルディの構造を素早く把握しどのような操縦が適切なのか指示を与える。
艦長を務めるダナンの構造を隅から隅まで把握している頭脳は伊達ではない。
出木杉はその補佐だ。
テッサとは反対側から動きを見たり、隼人の手に触れながら指の動きを支持したり。
弱視の隼人が支給品解説を見ながら操作を習熟するのは至難の業であるため、
この二人の補助は必須なことであった。
糸が絡まってしまったときに解すのは三人の共同作業だ(これはかなりの時間を取った)。

三人が最初に試みたのはグリモルディの変形だ。
グリモルディは通常は二足で歩くか、変形しても足首の部分の二輪のみで走る。
この状態ではバランスを取らせるのは大変で、初心者が操縦慣れするのに全く向かない。
しかしさらに変形させることにより背中の後輪が接地し、
三点で設置することによりバランスが非常に取りやすくなるのだ。
最初の状態で起き上がらせてもすぐに転んでしまうだろうが、
変形させて後輪を伸ばしておけば安定した姿勢で起き上がることができる。
そこから手をついて起き上がるのもやはり大変であったが、
一度起き上がれれば後は上半身の様々な部位の動かし方を転ばせる心配なく練習でき、
車輪も低速で動かせば転倒の心配はない。

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2時間ほど練習した頃。
隼人は何とか全ての可動部の動かし方を覚えることができた。
そしてその組み合わせによる最重要事項。
グリモルディの車輪を動かし走行すること。
急旋回などに不安はまだあるが、
隼人はグリモルディの真価である高速移動を習得できていた。
ある程度走らせてみて糸が絡むようなことは全くなくなった。
こうして三人は人間が走るより、疲れず高速に移動できる手段を手に入れたのだ。
グリモルディを使いこなせているとはまだまだ言えないが、
そろそろ切り上げてダナンへ向かっていかなければならない。

「もう走るのには十分なくらい動かせるよな!
 そろそろ動き始めたほうがいいんじゃねえのか?」

「ええ。まだ不安な点は多いですが、
 これ以上時間を取るわけにもいきません。
 ダナンに向けて出発しましょう!」

「走ってる間も続けてサポートしますね!」

三人は肩など思い思いの場所に乗り(疲れるようならポジションを変えるつもりだ)、
グリモルディは走行を始めた。

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シートベルトすらないこの状況。
障害物に当たり投げ出されたり転んだりしたら大怪我の可能性もある。
テッサと出木杉は弱視の隼人を補い前方を必死で確認し、
左右に避けるように指示している。
ちゃんとした道路の上を走るならば隼人が全てをこなしても何とかなりそうだが、
生憎とそういう道は見つけることができなかったのだ。

「やっぱり僕が動かし方を練習したほうが良かったんですかね……」

「へっ! 自分が決めたことを後悔すんなよ!
 坊やの頭や要領の良さも、いずれもっと活躍できるときが来るさ!」

しかも隼人は走らせながら帽子や腕の操作を練習する気が満々だ。
障害物の視認と操作の指導両方に追われる二人には、気が休まるときは訪れそうもない。
しばらく進み坂道を上った直後、目の前には灌木が出現した。
出木杉が最初に気付き警告する。

「20mくらい先に木があります!右によけてください!」

ところがグリモルディは坂を上り切った後ジャンプし不安定になったため、
なかなか方向を変えることが出来ない。

「右だな! 何とか動かしてるぜ!」

「う、腕を伸ばしたままです! ダメです! 避けきれません〜!」

テッサを筆頭に身構える三人。ところがそんな心配は必要なかったようだ。
グリモルディの腕は走りながら木をなぎ倒してしまった。
その丈夫さは高所から落ちても壊れず、壁を体当たりでぶち破ったりも可能なほどなのだ。
有賀村の懸糸傀儡の中では高性能を誇るだけある。
体幹もそれほどぶれず、しっかり掴まっていた三人が振り落とされることはなかった。

「へっ! どうだ俺の運転はよ!」

「ひ、非常事態じゃなければ絶対あなたには任せたりしませんっ!」

「まあまあ、これからもっと上手になってやるからよ。
 そっちも暗くて大変だろうが、急いでいかなきゃならないんだろ?
 水先案内しっかり頼んだぜ!」

掛け声とともに月夜の中、三人は珍道中を爆走していく。

「はあ……着いたら艦を知り尽くしたテレサさんの案内で、
 まずは休憩室に向かいたいですね」

129二人の天才児!海坊主の未来は? ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:33:53 ID:4RoZbgYc0
【F-3/サーカス場 黎明】
【テレサ・テスタロッサ@フルメタル・パニック!】
[状態]:健康
[装備]:リコの花の髪飾り@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を目指す
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ガウルン、ゲイツを警戒
3:ドラえもんと接触し主催者の手掛かりを得る
4:相良さん、かなめさんは会いたいが、そう死なない人たちだと信頼してるので後でも良い

※参戦時期はIV開始以降のどこかです。詳しくは次以降にお任せします。
※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

【出木杉英才@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、Mk2手榴弾×3@シティーハンター、ランダム支給品×0〜2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を目指す
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ドラえもん含む友人たちと合流し情報を得たい
3:自分なりにこの殺し合いについて考察を深める

※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

【伊集院隼人@シティーハンター】
[状態]:健康
[装備]:グリモルディ@からくりサーカス、ニホンツキノワグマの武器@けものフレンズ
[道具]:基本支給品一式、ルブランコーヒーの材料@PERSONA5 the Animation
[思考・行動]
基本方針:死ぬつもりはない。殺し合いには乗りたくないが、脱出の見込みが無いなら……
1:三人でトゥアハー・デ・ダナンを目指す
2:ドラえもんと接触し主催者の手掛かりを得る
3:冴羽リョウ、槇村香と一度会い協力したい

※参戦時期は完全に失明するより前(シティーハンター91の8話、リョウとの決闘より前)、
 超能力少女に会った後(シティーハンター2の42話より後)。詳しくは次以降におまかせします。
※参加者が様々な世界から来ていると考察しました。
 また知り合いでも呼ばれた時期が違うかもしれないと気付きました。

※三人がどのような経路でダナンに向かうかは次以降におまかせします。


【Mk2手榴弾@シティーハンター】
いわゆるパイナップルと呼ばれる形の手榴弾。
ただ手投げするだけでなく、トラップの道具としても用いられた。

【ルブランコーヒーの材料@PERSONA5 the Animation】
コーヒーミル、充電式のコーヒーサイフォン、コーヒーカップ、コーヒー豆の袋と水がセット。
まとめて棚に入っており、もう一度ボタンを押せばホイポイカプセルに戻すこともできる。
作り手によるがだいたい10杯分ほど作れる。
アニメでは認知世界内でコーヒーを飲むシーンは無かったが、
現実世界でもらったドリンク(タケミナトビオキール)を認知世界で服用して回復するシーンがあるので、
認知世界内でコーヒーを飲んでもゲームと同じようにSP回復効果があると考えられる。
この会場内でもその効果は発揮される。
SP(スピリットポイント)回復効果は魔力やスタンドパワーの回復とも互換性がある。

【ニホンツキノワグマの武器@けものフレンズ】
ニホンツキノワグマがフレンズ化した際に、元の動物の特徴の一部が武器として現れたもの。
棒の先に丸くデフォルメされたツキノワグマの手がくっついている。
ハンマーのように殴るだけでなく、カミソリの如き切れ味の爪により切り裂く効果も期待できる。
原作(1期)ではへいげんちほーの戦いごっこの際に持ち主とともに活躍、
最終決戦の時には自分の武器を壊されてしまったヒグマに託された。

【リコの花の髪飾り@魔法陣グルグル】
花の効力で一度だけ装備者を守ってくれる。
量販品であるので色々な場所で入手できた。
1話ではニケがククリにプレゼントしそれは3話で失われるが、再び購入して装備したりしている。

【グリモルディ@からくりサーカス】
2話から登場した懸糸傀儡。
足の部分が横向きに変形し、足首の突起が車輪となり高速機動できる。
横に長い帽子を動かしたり首を伸ばしたり出来るなど意外と器用。
勝を誘拐しようとする誘拐組の尾崎が最初の所有者。
4話で勝に雇い直された阿紫花英良が尾崎から奪い、
からくり屋敷に突入するのに大活躍した。
13話や23話に登場するのは阿紫花が気に入ったため作られた改良型で装備が増えている。
本ロワでは誰でも使えるようにと、支給品説明が操作法と機能が簡単に書かれたマニュアルにもなっている。
もちろん読んだからといって糸の操作は難しく、
才能や経験にもよるがどれだけの練習で使えるかは不明。

130 ◆koGa1VV8Rw:2019/05/24(金) 00:34:28 ID:4RoZbgYc0
投下終了します。

131名無しさん:2019/05/24(金) 08:34:33 ID:jPRTMkB.0
投下乙です
出木杉は肝が座ってるなあ。
天才二人にスイーパーって中々強力な組み合わせだし支給品も当たりの部類だし中々頼もしそうだ。
でも考察係に回った方がいいのかな?

132 ◆J5IZ9694XQ:2019/05/25(土) 02:01:20 ID:mMoEL9n60
wiki収録のついでに自作について若干誤字を修正したり少し表現を変えたりしました。

133 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:32:19 ID:NRf9D8VE0
フーゴ、渡辺曜、桃白白で予約していた分を投下します。

134 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:32:54 ID:NRf9D8VE0
フーゴが転送されてきたのは森の中だった。
月明かりしかない夜闇の中、周りの様子程度はわかるが遠くは見えず、
主催者からは地図が支給されていると言っても自分がどこにいるのか把握ができない。
とりあえず警戒しながら見通しの良い月明かりのよく届きそうな場所を探し歩いていた。

人影を見つけるフーゴ。暗闇の中の遭遇で姿がよくわからない。
とっさに反応して、フーゴはパープルヘイズを出現させる。

「いやっ!」

声はおそらく同年代くらいの少女。
反応したということはスタンドが見えている、だがスタンドを使う様子がない。
無自覚なスタンド使いだとでも言うのかとフーゴは考える。

「来ないで! お願い!
 絶対誰も殺したくなんてないし、出来れば傷つけたくもないの!
 でもそれ以上近づいたら、その人型や、あなたの脚を撃つよ!」

少女はよく見ると拳銃を持っている。
スタンドが戦うための存在ということは直感で理解したようだ。
だからといって、そんな程度じゃ素人以外には全く交渉にはならない。
怯えた様子で手が震えているからまともに狙いがつくと思えないし、
自分のような近距離パワー型の中でも特に破壊力に秀でたスタンドならば、
銃弾を弾くことすら可能なのだ。
戦う覚悟も生き延びる術も、スタンドの知識も何もが足りていない。
このままでは、この少女は殺し合いの中で長生きできない。
こんな少女が殺し合いに巻き込まれ、このまま死んでいくなんてあまりにも居た堪れない。
フーゴの優しさが、この少女を殺す選択肢や放置する選択肢を塞いでいた。

「確かにこの人型、スタンドは戦うための力だ。
 でも銃を警戒しただけで、君を襲うつもりはない」

フーゴはゆっくりデイパックを外して落とす。
服の中にも何ら凶器をしまっていないことを、裏返したり叩いたりしてアピールする。
パープルヘイズは凶暴性を全面に出した存在だから、
地に伏せさせたりして攻撃するつもりがないことをアピールするのは無理だ。
とりあえずはスタンドを解除して消滅させた。
それでも少女は震えた手で銃を向けたままだ。

「君、そんなことを続けていたらこの先長くないよ」

「そんな、そうかもしれないけど……」

「僕は裏社会と関わりのある人間だから言える。
 君にはこんな殺し合いの場で生きるために色々なものが欠けている」

「裏社会……? そんな怖い世界の人が何で? 何でそんなこと言ってくれるの?」

「君のような何もわからない子がこのまま死んでいくのは忍びないと思った。
 これだけでは不十分か?」

陽はまさかそんな事を言われるとは思ってなかった。
緊張が少し解れ、銃を向けた手を降ろす。

「もう一度言うが君を襲うつもりはない。分かってくれたか?
 僕はパンナコッタ・フーゴと言う。
 しばらく君を保護したい。
 もっと生きる術を学んでいく必要があるんだ」

「……で、でも私、それなら貴方に付いて行ったらきっと足手まといになっちゃう。
 それに、これからAquorsのみんなを探さなきゃいけない。
 ここで初めて会った貴方に、手伝わせるわけにはいかないよ」

フーゴは表情を変えないが優しく言う。

「……君、もっと人の好意を素直に受けたらどうだ?
 僕が君を保護するのは僕が望んだことで、君が気負う必要はない。
 それに僕はまだ目的地とかは決めていないし、
 しばらく君の人探しに付き合うくらいは出来る」

「本当に、本当にいいの……?」

「ああ。今後長く同行できるかどうかはわからないが」

「それなら……とりあえずこの森を出られるまでは一緒にいたいと思う。
 私は渡辺曜。しばらくだけど……よろしく」

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135 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:33:28 ID:NRf9D8VE0

二人は軽い自己紹介を済ませている。
曜は最初こそフーゴの凄みに気圧されていたが、
同年代、1つ年下の少年だとわかると途端に話しやすく感じた。
またフーゴが他の保護対象の参考として曜の知り合いが名簿に載っていないか聞いたことで、
曜は他の参加者でもあるAquorsのメンバーの話や、高校の話をし始めている。

「幼馴染の千歌ちゃん、東京に行ったときスクールアイドルに完全に目覚めちゃって、
 部活としてスクールアイドルを始めることになったんだ。
 私、そのとき初めて二人で同じことに熱中できると思って嬉しかったなあ。
 そして作曲のできる梨子ちゃんが入ってくれたことで、
 何とかAquorsとして活動できる形になったの」

「善子ちゃんは堕天使ヨハネって設定でインターネットで動画を配信してたり、
 その設定を活かしたままスクールアイドルをやってる面白い子だよ。
 意外なんだけど、結構私とは感性とかが合う面が多かったりして仲よくしてるかな」

「梨子ちゃんは転校生なんだけどどんどん千歌ちゃんと仲良くなって、
 Aquorsを盛り上げる中心として頑張った。
 ちょっと幼馴染として悔しくもあったけど、
 千歌ちゃんが私とスクールアイドルをやり遂げたいという気持ちは本当に強くて、
 梨子ちゃんもそれを大事にしているってわかったから、もう大丈夫なんだよ」

曜はフーゴのことも聞いてみようと、話を振り始める。
もしかしたらフーゴも同じ学校の人が連れてこられているのではと少し心配になる。

「フーゴ君も16歳なら高校生?
 イタリアの学校ってどんな感じなんだろう。
 部活とかはあるのかな」

「そうだな。イタリアでもこの歳なら普通は高校生ってところだ。
 でも、もう学校には通ってないんだ。
 ちょっとキレてしまって騒動を起こしたせいで居られなくなった。
 あまりいい思い出もない」

「えっ! 言いづらいことを言わせちゃったかな。
 フーゴ君のことも知らないで、色々学校のこと話しててごめんね……」

「いや、君の話は聞いても嫌な感じにならない。
 それにいくら殺し合いの中と言っても、
 ずっと緊張していては精神が保たないから何気ない会話も必要だ。
 一応実利的には、君の仲間と会ったときどう接するかのヒントにもなる。
 もっと話してくれてもいいんだ」

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136 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:34:02 ID:NRf9D8VE0

曜はフーゴに高校での話、スクールアイドルとして活動してきた話を話した。
イタリア人で常識の違うフーゴにも分かりやすく、面白く。

地域の人々に愛されるスクールアイドルか……。
あのスタンド使いの亀の部屋に置かれていた雑誌にも、
アイドルのことは書かれていた気がする。
アイドルにだってマフィアや裏社会が関わることはある。
でも彼女はそんなこと全く感じさせずキラキラ輝いた存在だ。
日本のスクールアイドルは裏社会など関わりようのない存在なんだろう。
フーゴはアイドル自体に興味はないが、
ねじ曲がらずに充実した学生生活を送る姿は少し眩しい。

とにもかくにも曜は色々話したお陰か、最初の状態から大分落ち着いているようだ。
今なら自分側から、裏社会の話やスタンドの話をしてもちゃんと理解してもらえそうだ。
彼女は既にフーゴのスタンドを見ている。
彼女だって他の参加者たちがどういう経緯で呼ばれたか、ちゃんと知って考察し安心する権利がある。

「先ほど僕は裏社会の人間だって言ったが、
 パッショーネというイタリアのギャングに所属している。
 学校に居られなくなり家も追い出されたところを拾ってもらったんだ」

「そうだ。さっきの銃、フーゴ君と一緒にいる今私が持っててもしょうがないと思う。
 私本当はちゃんとした撃ち方すら知らないし……。
 フーゴ君に持っててもらったほうがいいよね」

フーゴは銃の使い方くらいはギャングとして知っているが、普段はスタンドで戦うので持つことはない。
それでも今の曜が持つよりかは、少しくらいは役立つかもしれない。
そのうち銃の扱いについても教えてやろうと考えて、一度は受け取ることにする。

「そうだな。とりあえずは僕が持つことにする。
 またそのうちに、撃ち方くらいなら教えるよ」

「わかった。じゃあ……これね」

フーゴは手に取るとすぐに気付く。
この銃はミスタが使っていた物と同じモデルであると。
彼らとは離別したはずであるのに、
こんな支給品として縁を感じさせるものが周ってきてしまうとは……。
動揺しながらも、とりあえずフーゴはデイパックに銃を入れてから元の話に戻る。

「僕がさっき出した紫の人型はスタンドという。
 パッショーネの入団試験の時に身につけた物だ」

フーゴは自分がパッショーネに入団してから学んだ裏社会の常識、
そしてスタンドという概念について話してゆく。

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137 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:34:36 ID:NRf9D8VE0

「そうだ、僕はブチャラティ達には付いていくことができなかった……。
 組織の庇護から抜け敵対してしまったら、僕らは生きていくことすら難しい。
 彼らの論理的には馬鹿げた考えこそが、本当は崇高なんだと理解してはいた……。
 でも僕は、正しい馬鹿にはどうしてもなれなかった……」

「フーゴ君、そんなに大変な思いをしていたんだね……」

フーゴは次々に話を広げていき、
自分がブチャラティと離別した経緯までをも全て曜に話してしまっていた。
曜がとても話しやすい雰囲気を持っていたのもあるが、
フーゴとしても誰か組織と全く関係ない者に話して、
楽になりたいという気持ちがあったのかもしれない。

「名簿によると、ブチャラティとジョルノも参加者として連れてこられているようだな……」

「私もメンバーの皆と険悪になりかけた事が一度あったけど、
 今は迷いを振り切って一緒に頑張ってる。
 ギャングとは全く違う世界の話だってわかってる。
 それでも、フーゴ君がチームの皆とまた一緒になれる日が来たらいいなと思うよ」

「僕もそういう未来が来ればいいなとは、思ってはいる。
 でも彼らからしたら、僕のほうが裏切り者だ。
 もう二度と元のように戻ることはできないんだよ……」

「フーゴ君……」

二人が暗い表情になり俯き、沈黙が流れる。
フーゴがそれを振り切り、話題を変える。

「まだ言わなきゃならないことがある。もう一人分、知る名がある。
 ギアッチョは僕らと敵対していた暗殺チームの刺客が名乗った名だ。
 そいつはミスタとジョルノが撃退したはずなんだが、なぜここに居るのか分からない。
 あの二人がとどめを刺しそこねたり見逃したりということは考えにくい。
 奴は氷を操る能力を持っていたと聞いているが、
 それを活かし何らかの方法で死を偽装したのかもしれない」

「それに続くリゾット、ディアボロも連続しているしイタリア系の名だから、
 僕らの組織に関係している者の可能性がある。
 僕も構成員を把握しきれていないから、詳細まではわからないが……」

「それって、私たちの助けになる人かもしれないってこと?」

「いや、組織内にもいろいろ立場があるからな。
 例えば暗殺チームの名前が分からないメンバーや、ボスの親衛隊の可能性がある。
 ギアッチョ達暗殺チームは僕らに恨みはあるだろうが、
 彼らもただの殺し屋じゃなくてちゃんと信念を持ったチームだ。
 殺し合いに乗るかはわからないが、強力なスタンド使いばかりだから警戒すべきだ」

「暗殺が仕事……。やっぱり恐ろしい人たちだけど、
 出来れば殺しとかが関わらない形で、協力できたらいいよね」

「もう一つの想定、ボスの親衛隊だとしたらどう動くかはわからない……。
 もしもこの殺し合いがボスに仕組まれたものだとしたら進行させようとするだろうし、
 そうでないならボスの元へ戻るため優勝するか、脱出するかどちらかを狙うだろう。
 そしてボスに反抗しているブチャラティ、ジョルノ、
 加えて暗殺チームの者を始末しようとするだろうな。
 僕も出来るだけ会いたくはない存在だ……」

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138 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:35:09 ID:NRf9D8VE0

二人はとりあえず森を抜けるために、一定の方向を変えないように意識して進んでいる。
どこへ向かうにしても、夜中にこんな森の中では遠くの様子が把握できない。
とりあえず地図には左上、右上、右下に森があるように描かれていおり、
現在地はそのどこかだとは考えられる。
建物か平原か街か、あるいは海か何処かに抜けられれば向かう場所の方針が立てられる。

「そういえばまだ聞いてなかったけど、
 フーゴ君は私を保護したりしてその後はどうするつもりなの?」

「僕は……! その……」

方針というものから逃避していたフーゴは言葉に詰まってしまう。
それを見た曜が言葉を続ける。

「私はこの殺し合いに巻き込まれてとても怖い。
 誰も殺したくないし、もちろん死にたくもない。
 フーゴ君は色々教えてくれるけど、
 それでも私のような普通の人間が生き残ることって難しいんだと思う」

フーゴはそんなことないと否定しかけるが、確かに事実なので口を挟めない。

「それでも出来るだけ誰も殺さず傷つけずに、みんなと会って一緒に頑張ってみる。
 そして頭が良くて力もある脱出を目指す人たちに協力して、
 一緒に脱出できるのが一番いいから、それを目指す」

曜はフーゴの方を向いて話す。

「それが駄目だったら、せめて生き残る人に私がここでどうしたのか、
 生き様を伝えて憶えていてもらいたい。
 そして出来ることなら殺し合いが終わった後に、
 ここに来ていない私の仲間たちに私のこと、伝えてほしいと思う」

フーゴは自分がどう動くかも決断できないのに、
一般人の少女が既にどう動くかの決断を決めていたことにとても驚く。

「まあ、そのためにどうすればいいかはまだ考えられないんだけどね。
 私って考えるのはそんなに得意じゃないけど、体が先に動いちゃうタイプだから。
 さっきはいきなり銃を向けちゃって……ごめんね」

「……ああ。そのことは特に気にしてない。
 僕も……そうだな。
 ブチャラティとジョルノがどうしているかは、知りたいと思う。
 だけれど、あれだけの大きな決断で離別した今、合わせる顔がない……」

「大丈夫、もし私がブチャラティさんやジョルノ君に会ったら、
 フーゴ君のこと、また仲間に戻れるように頼んでみるよ」

「……ありがとう。
 だが、もしもブチャラティ達と接触して協力していることが組織に知れたら、
 僕まで反逆者の仲間入りとなってしまう。
 組織の関係者が参加者にいる可能性がある以上、そうなってしまうのが怖いんだ……」

「でも……それなら私がフーゴ君とブチャラティさんやジョルノ君の間に入って、
 伝達役になったりしたらどうかな?」

曜がフーゴの方をしっかり向いて言う。向き合う二人。

「確かにそれなら組織に知れずに話ができる可能性は高くなる。
 だが、ばれてしまったら君の命までもが危険だ。
 一般人の君にそんなことを任せるわけにはいかない」

「でも一般人だからこそ、疑われにくいという考え方もできるんじゃないかな?
 それに私、フーゴ君に助けてもらっているし少しくらいは返せる事がしたい。
 私のことも信頼して頼ってくれていいんだよ?」

「……君の言うとおりだな。
 だがやはり出来るだけ君には危険を負わせたくない。
 ブチャラティ達と合える目処が確実に立つまで、この話は保留とさせてくれ」

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139 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:35:44 ID:NRf9D8VE0

フーゴは高い頭脳を持ち生まれたものの、裕福な家の両親からは過度な期待を向けられる。
凶暴な衝動を抑えながらなんとか期待に応え飛び級を繰り返したが、
同級生からは妬まれ会話は少なく社会からの疎外感を感じていた。
さらには大学で、尊敬していた教授に裏切られた事を遂に我慢できず暴行。
大学からは教授との関係を疑われ、両親からも疎まれ孤独の身となった。
そして学生という身分を失って行き着いた先がギャングだったのだ。

でもそんな自分の背景に関係なく、同年代の少年として会話してくれるこの少女。
初対面で目下の護衛として扱い、いきなり苛つかせてきたトリッシュの印象とは真逆だ。
縁のなかったはずの学生としての平穏な日常だが、
もし人生の巡り合わせが違えばこんな会話も毎日していたかもしれない。
もちろんフーゴは今までの人生に後悔など持っていないが、そう思うのを止められなかった。
ブチャラティ達と過ごした日常も落ち着く時間ではあったが、それとはまた違う。
フーゴはこんな時間をもっと過ごしていたいとすら感じ始めていた。
ブチャラティ達と離別したからこそ、さらにそう強く思うのかもしれない。
だが、この殺し合いという場ではそんな状況は長くは続かない。

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140 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:37:14 ID:NRf9D8VE0

「最初のターゲットは貴様らだ!」

森の中から何者かが襲いかかってくる!
人間とは思えないスピードで飛びかかってくる男。
まともに攻撃を食らってしまったら絶対にまずい。

「パープルヘイズ!」

フーゴの手前に紫の人型が現れ、男の勢いの乗った殴打と打ち合う。
人間からの攻撃とは思えないくらいの痺れ、同レベルのスタンドと打ち合ったかのようだ。
一体何者なんだこの男!?

「フーゴ君!」

「何っ!? ガードしただと! なんだその人型は!」

この男まで! 二人ともスタンドが見えているだと!
だが初めて見たかのような反応、また無自覚なスタンド使いとでも言うのか!?
いや、主催者が言っていたスタンドの制限というのは、
スタンド使い以外でもスタンドを見えるようにするということなのか!?
フーゴは取り敢えず言葉を交わす。

「貴様ッ! この殺し合いに早速乗ったというのか!」

「フン。私は桃白白、世界一の殺し屋だぞ。
 私がこの殺し合いの場に呼ばれたのは、他の参加者どもを殺してほしいということだろう。
 優勝したらきっちり代金を請求してやる。
 もちろん願いを叶えてもらうのとは別件でな」

「くッ……! 貴様、あの主催者が本当に願いを叶えると思っているのか!?」

フーゴは曜を守るように後ろにやりながら後ずさる。

「7つ揃えれば何でも願いを叶えるというドラゴンボールを主催者が揃えているとすれば、
 何でも願いが叶うというのも自然なことだろうな。
 まあ貴様ごときに優勝は出来ないがな!」

フーゴは対話不能な相手だと理解する。
主催者に対する疑いを持っていない無慈悲な殺し屋に、
殺し合いの正当性を疑わせることなんて不可能だ。
こちらが殺し合いに乗っているということにして組む提案をする手もあったが、
相手はできるだけ多く殺すことを狙っている以上これも不可能。

141 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:38:12 ID:NRf9D8VE0

「僕のスタンドなら何とか出来るかもしれない! 逃げてくれッ!」

フーゴの合図とともに曜が逃げ出していく。

「ふん! 遠ざかっても無駄だ!」

何をしようというのか桃白白は腕を上に掲げる。
そこに力が集中していくのは、気という概念を知らないフーゴでも感じられた。
フーゴの直感が何らかの遠距離攻撃の危険を感じる。
フーゴは逃げる曜の方へ駆け出していた。

「どどん波!」

桃白白は指を差すような形にし、腕を振り曜が逃げた方に向けてくる。
その瞬間、指の先端から謎の光線が発射されたのだ。

「うおぉぉぉーーッ! パープルヘイズ!」

フーゴは曜が逃げる方を追いかけながら、射程5mの紫の人型を向かわせる。
間一髪、紫の人型が光線の前に立ち塞がり、守らんと腕で光線をガードする。
命中する光線。命中した箇所は強く発光して周りを照らす。
下手な銃などよりはずっと強い威力。
フーゴの腕に焼印を押し当てられるような熱い感覚が走る。

「なっ、何なの!?」

後ろからの発光に驚いた曜が足を止め後ろを振り返る。

「はぁ……はぁ……」

光線が終わった。
しかしパープルヘイズは前に出した左腕表面に広く火傷のようなダメージを負い、
余波は上半身の一部までをも焼いている。
パープルヘイズは近距離パワー型の強力なスタンドだ。
岩を砕き銃弾を拳で弾くこともできる。
それでガードしてこのダメージという事は、
人体に当たればガードした部分の余波だけでも体が焼け即死はしないでも致命的であろう。
パープルヘイズが食らった場合も、
まともに急所に食らってしまえば戦闘不能となるダメージになりかねない。

ある程度自意識のあるパープルヘイズは、怒り狂い桃白白に襲いかかろうとする。
しかし射程外なので攻撃は届かず、腕を振り回し威嚇するだけに留まる。
そこで、思いがけず桃白白が語り掛けてくる。

「貴様、不思議な能力を持っているようだな。主催者が言っていた異能の一種か。
 それでも本気を出せば私が勝つだろうが、
 私もできるだけ多く殺したいのにここでいきなり消耗するのは惜しい。
 ここは取引と行こうか。貴様の支給品を置いていけ。
 そうすれば、この場で殺すのはその女一人分で我慢してやろうじゃないか」

142 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:38:46 ID:NRf9D8VE0

まさかの提案。フーゴは必死に考える。
相手は達人の身のこなしでスタンドも見えている。
パープルヘイズの操作精度は悪く、
ほぼ怒りに任せてしか攻撃できない以上警戒されれば攻撃を当てることは期待薄だし、
本体への攻撃を守り切ることもできるか怪しい。
特に曜を守りながら戦うことはまずできない。
ウイルスをばらまけば感染させることにより倒せる可能性は高まる。
だが夜中ではウイルスを光で死滅させるのは難しい。
森の中は月明かりも陰る場所が多く、ウイルスが完全に死滅することを全く期待できない。
一般人の曜はウイルスを避けるのは難しいし、
感染させた状態で相手に触れられたら自分も非常にまずい。

相手との戦闘に役立ちそうな支給品も持っていない。
一粒で怪我を完治させるという仙豆。
ウイルス感染した状態で体を治しても、
夜では周りにウイルスが死滅せず残る以上再感染する可能性が高い。
曜から受け取った銃も相手がパープルヘイズと殴り合える実力を持つ以上、
ミスタのように銃の達人でもないフーゴが使ったところで、
短銃身で狙いがずれやすいことも含めて通用しないだろう。
そしてもう一つの支給品も、少なくとも今戦うために役立つ代物ではない。

フーゴにはこの状況をどうにかできる成功率の高い策が思いつかないことを、
すぐに理解してしまった。
トリッシュのために命を懸けることを躊躇ったフーゴは、
もちろんここで初めて会った一般人の少女のため命を懸けることもできない。

フーゴは観念したように、支給品の入ったデイパックをゆっくり降ろす。

「そんなっ?! フーゴ君!」

「なるほど、理解が早くて助かる」

殺し屋は納得するとともに、言葉を続ける。

「一つ他の奴の情報をやろう。
 知っているかもしれぬが参加者の中のピッコロ大魔王、
 奴は私の生まれるより過去に封印された存在だが、
 名簿に乗っているということは封印を解かれているかもしれぬ。
 奴は地上を恐怖に陥れた伝説の魔王、人間の命など虫けらとも思わないだろう。
 奴なら私の様に、お前を見逃すなどということは無いだろうな。
 強い仲間を集めるなぞして、せいぜい倒せるか頑張ってみることだ」

「くっ……!」

こいつも危険視するような存在がさらにこの島にいるというのかと、フーゴは恐ろしくなる。

「さあ、私の気が変わらんうちにとっとと行け!」

フーゴは逃げ出そうとするが、足がなかなか動かない。
曜の方を見ることができない。
一歩を踏み出し始めたとき、声が聞こえてくる。

「わ……私、フーゴ君のこと責めない。
 フーゴ君一人でも助かることが大事だよね……。
 どうか、もし私の仲間に会ったら私のこと、忘れないでって伝えて……」

フーゴはそれっきりすべてを振り切るように走り出し、見えなくなった。

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143 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:39:20 ID:NRf9D8VE0

フーゴは後ろを振り返らず必死に走る。

やがて逃げた方から聞こえてくる絹を裂くような叫び声。

フーゴは曜が死の恐怖からは逃れられなかったのだと推察した。
やはり一般人の少女があの場面で死の決心をするなど、到底無理なことだ。
自分を決断させて素早く逃げさせるため、一時的に感情を押し殺していても、
本当の本心では、彼女はもっと生きたかったのだ。
また元の日常に戻りたかったのだ。

フーゴは罪悪感と、死にたくないという気持ちがより強くなっていく。
フーゴがもっと馬鹿だったら、凶暴性以外にも感情豊かだったら、きっと涙を流していただろう。

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144 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:39:54 ID:NRf9D8VE0

私は、自分はどうなってもいいからフーゴ君を逃がす、そういう選択をした。
支給品の中に入っていた不気味な仮面。
少なくとも自分の恐怖を紛らわすくらいはできると信じて被ったんだ。
そうすると自然にフーゴ君を逃がすための言葉が心の中から紡がれる気がした。
そしてフーゴ君は逃げてくれた。良かった。
戦うことのできない私でも、最期に一人でも命を助けられて良かった。
迫ってくる殺し屋。とても怖い。
でも私は決心したんだ。フーゴ君に託した。
……でもどうして? 体の震えは止まらない。

自然に足が動いて殺し屋から遠ざかろうとする。
身体がまだ生きたいと言っている。
心の奥にもまだ生きたいという気持ちがある。

「あ、あっ、ああああぁぁぁぁ!」

逃げなきゃ。生き延びたい。走らなきゃ。
お願い! 私の脚、もっと速く!

……えっ? 目の前に人影。回り込まれた?

「逃げようとしたって無駄だ」

息を吐き出してしまう。
掌で体を叩き飛ばしてきたんだ。
後ろの木に叩きつけられる。

「……お、お願い! やめて! 助けて! 死にたくない!
 みんなと帰ってAquorsを続けたいんです!」

「なるほど。貴様の仲間も後であの世に送ってやるから安心してよいぞ。
 どれ、名前と特徴を言ってみろ。料金は主催者にまとめて請求するし必要ないぞ」

……今この人何を言ったの? 私の仲間もあの世に送る……?
千歌ちゃんに、梨子ちゃんや善子ちゃんも殺されるの?
でもここに来てないみんなもいつか遠い未来には死ぬんだから、
そうしたら天国で集まってスクールアイドルができるのかな。
それも悪くないのかな。

……そんなことあるわけない。
こんなところに急に連れて来られて、
こんな人に私たちの人生めちゃくちゃにされるなんて、
ものすごくものすごく悔しい。
私だってまだ生きたいけどもう駄目、でもこのまま死ぬなんてあり得ない。
せめてこの殺し屋に一矢報いたい。
少しでもAquorsのみんなや、フーゴ君が殺される可能性を下げてあげたい。
でも私にはそんな力全然無くて。
何もできない自分が本当に悔しい。

145 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:40:29 ID:NRf9D8VE0



『……反逆する力が欲しいのだな?』

急に襲ってくる頭痛。前頭部を抑えてしまう。
そして頭の中に響く謎の声。一体誰?

『我は元の魂から引き剥がされ、使役されるだけの存在と成り果てている……』

(まさか、さっき着けた仮面から私に話してるの?
 元の魂っていうのは仮面を元々付けてた人のこと?)

『だが……今のお前の仲間を守りたいという反逆の灯、我の魂と同じだ……』

(そう。私にフーゴ君みたいな戦う力があれば、
 Aquorsのみんなを殺し合いから守りたい!)

痛みをこらえて声が漏れる。殺し屋も異変を察知しているらしい。

「そうか、頼っていた男に見捨てられたショックで頭痛が苦しいのだな?
 哀れな奴だ、せめてこれ以上苦しまないよう一撃で殺してやろう」

殺し屋が攻撃の構えに入った。猶予はない。

(お願い! 力を貸して!)

『よかろう……我は汝、汝は我となる……
 覚悟して背負え……
 反逆のドクロを掲げて出航だ!』

殺し屋がとどめを刺すため、指で額を一突きにしようと突進して来る。
でも分かった。仮面を引き剥がす、それがこの声の主を呼ぶ方法!
手を掛ける。ピタリと張り付いてる気がするが、そんなこと関係ない!

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

生まれてから一度も出したことのないような叫び。
遠くへと森の中に響き渡る。

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146 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:41:03 ID:NRf9D8VE0

しばらく前。森の中の月明かり差す開けた場所。
二人は支給品を確認し合っていた。

曜の支給品は最初の銃とバラバラで入っていた予備弾丸の他には、
小さなカプセルから出てきた衣装ケース。
フーゴがカプセルも亀のスタンドのように大きいものを狭いところに入れられる、
何らかのスタンドなのではと推察した。
中には赤い髪のウィッグと服にヘッドホン。
ウィッグまであるとは変装しろということだろうか。

「これを私がブチャラティさんと接触するときに使えば、
 もっと組織の人たちに察知されにくくなりそうですね!」

「ああ。本当にその時が来たら……よろしく頼む」

そしてデイパックの一番下にまだある何かを取り出す曜。

「きゃっ!」

「曜、どうした?」

曜のデイパックの中から出てきたのは、頭蓋骨のような形のマスクだ。

「ううん、ちょっと驚いたけど本物の骨じゃないみたいだし大丈夫」

「そんなものを支給するとは、主催者も趣味が悪いんだな」

「待って、説明書きもある。
 えーとなになに、この仮面をトリガーにすることで、
 ペルソナ『キャプテン・キッド』を使役することができる……?」

それを聞いたフーゴが考察する。

「使役する……つまりペルソナというのはスタンドの別名だろうか?
 スタンドは持ち主の魂と関係して現れるはずだが、こんなマスクで……。
 いや、亀のスタンド使いもいたのだから物にスタンドが宿っていないとも限らないのか……?」

「つまり、このマスクを使えば私もフーゴ君みたいな人型を出せるようになるのかな?」

「そうかもしれない。
 だが、スタンドの中には本体にも危険を及ぼすデメリットを持つものもある。
 実は僕のスタンドもそれに該当している。
 無闇に試さないほうがよいだろう」

「わかった。でも一応私が持っておくね。
 フーゴ君に私に支給された危険かもしれないものを持たせるわけにいかないし」

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147 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:41:37 ID:NRf9D8VE0

「何っ!?」

指による刺突は私の額を貫くはずだった。
でも寸前でそれは何かにより阻止され、殺し屋は跳ね飛ばされてゆく。

「貴様、先程着けた仮面の力とでも言うのか!?」

殺し屋は跳ね飛ばされたあと受け身を取り、できるだけ離れたところに着地し顔を上げた。
目の前には謎の船が浮遊して立ち塞がっている。
船の上には船長が佇む。

「こ、これが……私の心に応えてくれた、反逆の魂……」

呼び出した霊体……キャプテンキッドは出現した勢いのまま突進したんだ。
指は船のキールに当たって自分を貫くことはなく、そのまま一緒に跳ね飛ばされたみたい。
キャプテンキッドは黒ずくめの服に、顔は被った帽子のマークと同じ……骸骨。
船も黒ずくめで、掲げられた旗はドクロ。れっきとした海賊船。
私の憧れる船乗りの人々に対して、仇なす存在。
でもこの殺し合いという状況では、
殺し合いをしなければならないという決まりこそが悪。
それに反逆するんだから海賊というモチーフはぴったり。

「ふむ、有用な支給品も色々あるようだな……」

殺し屋は何かを思ったのか、フーゴ君が落としたデイパックの方へ駆け寄っている。

「そ、それはフーゴ君の……!」

デイパックから何かを取り出した。暗くてよく見えない。

「こちらも支給品の力を借りさせてもらうぞ!」

殺し屋がその何かを頭から着けるような動きをする。
ところがその瞬間、突如響くミステリアスな音楽。

「な、なんだこれは!?」

殺し屋は何故か手が勝手に動いてしまっているみたい。
前掛けを上げて裏に何もないことを確認させてくる。

「くそっ! 体が勝手にっ!」

「え? ……えっ?」

前掛けをおろし、その下に手を回し暫くすると……。
なんと持ち上げられた両手には大きな花束が抱えられている。

「ハズレもあるということか! 忌々しいっ!」

私は理解した。
あれはフーゴくんの支給品で、付けた者に手品を強制させる効果がある首飾り。
フーゴ君は後のこともしっかり考えていた。
この殺し屋を弱体化させようと、置いた支給品に罠を貼ってくれていた。
もしかしたら私が逃げられるようにと思っていたのかもしれない。
残念ながらそこまで強力な効果ではなかったみたいだけれど、今の私には充分すぎる。

148 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:42:11 ID:NRf9D8VE0

キャプテンキッドは電撃を出すことが出来るみたいだ。
電撃がうまく当たれば、感電してその部分は痺れて動きがにぶくなるはず。
そしたらフーゴ君から奪った他の支給品も、相手の支給品も奪い返してやる。
そして動けなくさせて二度と殺しはしないと誓わせてやる。

「行こう! キャプテンキッド!
 ヨーーソローー!!」

「何をふざけたことをぬかす!
 私の強さは全く弱まってはないのだぞ!」

殺し屋は手品で出した花束を私に投げつけてくる。
森の中だし近くに咲いてた花を集めて作ったんだろうか。
そんな手品の種を考える暇などない。とりあえずはキャプテンキッドに守ってもら……速い!?

花束にしては予想外すぎる速度。
ちぎれた花びらが飛んできた軌跡を描くのは、幻想的で綺麗とすら思ってしまう。
腕で守る反応すら間に合わず体に食らってしまい、一気に花びらが近くを舞い上がる。
体にダメージが入り思わず咳き込んでしまう。
とても痛い。花束なのに。体育の授業でボールを手加減なしにぶつけられたような強さ。
でも、なんとか耐えられる。
それに目を凝らすと、花束を捨てた殺し屋は次の手品の準備をしなきゃならないみたい。
しかもそれをしながら首飾りを外そうとしていて動きが止まっている。
今しかない。

「くそっ、何だこれは! 外れろ!」

「キャプテンキッド!」

キャプテンキッドが大砲となっている腕から電撃を放った。
初めて意志を持ってやり返した一撃は、
手品に戸惑っていたからかまともに殺し屋に当てることができた。

「うおおっ! 貴様っ!」

「全速前進! キャプテンキッド!」

キャプテンキッドは殺し屋に船で突撃を仕掛ける。
でも流石に警戒されていたのか屈んで避けられてしまった。

「ちょっと強くなった程度で調子に乗りおる!
 貴様ごとき手品をしながらでも倒してみせよう!」

でもこの状況、どう考えても私が有利。
手品をしているうちにどうしても大きなスキができるはず。
そこを狙って攻撃すれば……!

149 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:42:45 ID:NRf9D8VE0

そして手品の途中、相手の殺し屋が片手を上に挙げる。
なにか力が集中しているように感じるけど、手品の演出かな。
これも攻撃のチャンスだ!
キャプテンキッドにもう一度電撃を放たせる。
でもそれが届く前に殺し屋は、その手をこちらに振り下ろして来た。

「どどん波!」

「えっ……?」

指が眩しいと思った後、そこから左頬をかすめる謎の光線。
後ろ髪が少し千切られて、首筋に落ちる感触。
後ろで何かに当たって爆ぜたのか、後ろからの光がこちらを照らす。

さっきフーゴ君を襲った謎の光線と同じだ。
全く撃つ前準備がわからなかった。
フーゴ君を撃つ場面を見てなかったせいだ。

さっきの恐怖心がぶり返してくる。
あともう少し正確に撃たれていたら、頭に光線が当たっていたはず。
光線を撃ってきた腕は、電撃を受けてないから痺れてない。
つまり、少しだけ狙いがずれたのは手品を強制されているおかげ。
フーゴ君の残した首飾りが無くて相手が万全だったなら……きっと私は殺されてた。
力を手に入れた万能感に浸ってしまっていたんだ。
私バカだった。
フーゴ君の言ったブチャラティさんみたいに信念のため命を懸けるんじゃなくて、
何もわからず命を捨てようとする大バカ。
今まで人と戦ったことなんてない自分が急に強くなれるわけなんてやっぱりないよね。
既にペルソナのような能力を持っていて、
戦い慣れていそうなフーゴ君が諦めた相手に私が勝てるわけがなかった。
むかつくけど、さっき言われたちょっと強くなっただけというのは正しい分析だった。

駄目だ、今は逃げなきゃ。
もっとキャプテンキッドの使い方に慣れて、フーゴ君やその仲間、
他の殺し合いに乗ってない人たちと協力しないと危ない。
私は全力で逃げるように駆け出した。
海賊が生き残るためには略奪を無闇にするだけでなく、
敵わない相手からはとっとと逃げることも大事、
そんな考えが頭の中に入って来るようだった。
きっとこのキャプテンキッドの元の持ち主も、
準備が整うまでは強敵から撤退したりしていたはず。

「キャプテンキッド! 足止めお願い!」

でも、もう怯えるだけで何もできない私じゃない。
キャプテンキッドが、今の自分に可能な限りの早さで電撃を連発する。
流石に全部は当たらないだろうけど、避けるのに集中させて足止めくらいはできるはず。

「ぐっ……ぐう……。くそっ。これでも喰らってみろ!」

掛け声の後に、木が大きく動くような音。
そして次には後ろから何か大きな物が森の中を飛んでくるような音。
一体何? 後ろを振り返ろうとする。

150 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:43:19 ID:NRf9D8VE0

「うあっ!」

突如前にバランスを崩して体が地に叩きつけられる。
なんとか反応して手を付けたので、顔をぶつことは回避できた。
木の根が足に引っかかり転んでしまったみたいだ。まずい。
……でもその次の瞬間、背中の上を何かが高速で撫でるようにして通過していく。
そしてその先で轟く轟音。

顔を起こす。
目の前の光景が信じられないし理解が追いつかない。
木が二本重なったように倒れちゃっている。
……殺し屋は森の樹を折るか抜くかして、投槍のように投げてきたみたい。
木を盾にして電撃を防ぎ、逃げる相手を追撃する一石二鳥の手。
転んだことは運が良いことだったんだ。もし転んでなかったら……。
後ろからの攻撃と足下の両方に気をつけながらもう一度走って逃げ出す。
キャプテンキッドは限界まで後ろの殺し屋に電撃を放つ。

「ぐわっ! ……憶えていろ!クソガキ共!」

でも恐ろしい攻撃はそれっきりで、捨て台詞の後はそれ以上が襲ってくることは無かった。
あれだけの攻撃をしたその後には隙が出来て、避けきれず電撃が当たったらしい。
手品と電撃による痺れで身体の自由が遂に利かなくなって、一度諦めてくれたんだろう。
痺れながらも執念深く追いかけてくるようなら持久力が切れていたと思う。助かった。
それでもいつ治ってしまうかわからない以上、今は逃げ続ける。

それにしてもこのキャプテンキッド、
私が殺し屋と戦うことを決意したとき喜んで応えてくれたようだった。
私から殺し屋に渡ったほうが活躍自体ならいくらでも出来るだろうに。
この子は支給品として配られて使役されてしまうだけの存在だけど、
きっとこの殺し合いという状況に反逆してやりたいという気持ちがあるんだ。
こんな不思議でロマン溢れた存在、
善子ちゃんが見たりしたらテンション爆上げしちゃうんじゃないかな。
でも今の自分にとっても、完璧に合っている存在だ。

……そう。今はあいつから逃げるけど、いつかもう一度戦ってその時は絶対勝ってやる。
フーゴ君の支給品を奪ったことも、顔に傷をつけられたこともやり返してやる。

絶対にみんなを傷つけさせたりなんてするもんか!

これが今の私の、この状況に対する反逆の意志!

151反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:44:09 ID:NRf9D8VE0


【B-1/森 深夜】
【桃白白@ドラゴンボール】
[状態]:手品の呪い、痺れ、疲労(小)
[装備]:オリーブの首飾り@魔法陣グルグル
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:出来るだけ多くの参加者を殺して優勝する
1:首飾りを外す方法を知りたい
2:首飾りが外れたらあのクソガキ共(フーゴ、曜)を殺す
3:ピッコロ大魔王の危険性を広め、出来れば他の者に倒してもらう

※参戦時期は悟空に敗北してサイボーグ化するより前のどこかです。

【渡辺曜@ラブライブ!サンシャイン!!】
[状態]:気力消耗(大)、軽傷(左頬の火傷のような怪我、体の打撲)、疲労(中)
[装備]:スカルの仮面@PERSONA5 the Animation
[道具]:基本支給品一式×1、三玖の変装セット@五等分の花嫁
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止めさせ、皆で脱出する
1:今は桃白白から逃げる
2:Aquorsのみんな、フーゴ君と合流したい
3:他の人と協力して桃白白を止める
4:フーゴ君の友人や敵との仲を取り持ちたい
5:ピッコロ大魔王の危険性を伝える

※参戦時期は一期終了以降のいつかです。
※ドラゴンボールについて知りましたが、支給品として存在するとは知りません。
※スタンドについての概要を知りました。キャプテンキッドはスタンドの一種だと思っています。
※フーゴとは知り合いの情報を交換しています。

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152反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:44:49 ID:NRf9D8VE0

フーゴは必死に逃げていた。
早く逃げないと、支給品の罠に気付いて逆上した相手に追跡され襲われる可能性がある。
バッグを渡す前、降ろす間に桃白白に見えないよう役立ちそうな支給品を隠し持ち、
マイナスの効果を持つ支給品を押し付けたのだ。
支給品の説明書きも、誰かに盗られたときのことを考え先に捨てていた。
自分は助かり、優勝するにしても主催を打倒するにしても邪魔な殺人者を弱体化させる。
緊迫した状況でも頭が回り、最も合理的ともいえる選択をフーゴは選んだ。
でもそんな自分のことがとても嫌になる。
出来れば例の支給品の効果による隙に曜が逃げてくれればという願望もなくはなかった。
だが叫び声が結果を物語ると感じてしまう。駄目だったんだ。

「こんな殺し合いから早く逃れたい……。
 くそッ! 一体僕はどうしたらいいんだッ!」

ピッコロ大魔王のことをわざわざ伝えてきたというのは、
そいつが桃白白と同格どころか上回る存在であり、
桃白白は自分で戦いたくなく他の人々に倒してほしいということの可能性も考えられる。
そんな奴すら存在する殺し合いの中で、フーゴは一体どのように生き残ればよいのか。
フーゴは何もできない自分に対して怒りを覚えるが、
今既に怪我をしている自分に凶暴性を向けてもどうしようもないことはわかっている。
まだ抑えられる。

「ジョルノ……君が居れば、ウイルスを使いこなす事ができるのに……」

ジョルノの能力ならば、ウイルスの遺伝子は変質していくがそれに合わせた抗体を作れる。
またウイルスに体の一部が侵されても切除してパーツを作ることが出来る。
ゴールドエクスペリエンスとパープルヘイズはかなり相性が良い。
だが、チームの他の全員がボスに離反する中で、
自分だけがついていかなかったことがやはり尾を引く。
会ったとしても合わせる顔がないのである。
さらには最悪の場合、自分が追手と誤解されて戦いになる可能性すらある。

フーゴは、殺し合いに反抗し自分の生きた証を残そうと決意した少女、
自分の利益のため殺し合いに乗ることを手早く決断した殺し屋の二人と遭った。
だがフーゴは未だに自分の行動指針を決めることができない。
しかし取り敢えず目標を建てる。
この行動は現状からの逃避なのかもしれない。
でもフーゴにとってはそれだけ彼女のことは心残りだった。

「曜の仲間に会って彼女の生き様を伝えなければ……。
 それが出来るまで、僕の体をそのために動かそう……」

後ろからは木が倒れる、いや吹っ飛ぶような轟音までもが響いてきた。
殺し屋が新たな獲物を見つけたのだろうか。
正攻法では絶対自分が叶う相手ではないとの認識が強まり、焦りが強くなる。
フーゴは敵からも現状からも逃避を続けてゆく。


【B-1/森 深夜】
【パンナコッタ・フーゴ@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:左腕表面に広く、右腕一部に火傷のような怪我、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:仙豆@ドラゴンボール、ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風
[思考・行動]
基本方針:生きて帰りたい。優勝狙いか脱出狙いかは決めかねている
1:桃白白から逃げる
2:曜を見捨てたことに強い葛藤。せめて曜の仲間に生き様を伝えなければ……
3:チームの元仲間たちの様子を知りたいが、どう接すればいいかわからない
4:ピッコロ大魔王、桃白白の危険性を伝える

※参戦時期は21話、ブチャラティ達からの離別後。
※スタンド使い以外にもスタンドが視認できていると感づきました。
※渡辺曜と知り合いの情報を交換しています。桃白白に殺されたと思っています。
※ドラゴンボールについて知りましたが、支給品として存在するとは知りません。
※フーゴがミスタの銃の予備弾丸をどれだけ隠せたかは次以降にお任せします。

153反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:45:23 ID:NRf9D8VE0
【ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
グイード・ミスタが使用していた銃。
6発装填の短銃身リボルバー。
ミスタは服のあちらこちらに弾丸を仕込んでいた。
そのため予備の弾丸もバラバラで一緒に支給されていた。

【仙豆@ドラゴンボール】
青大豆のような小さな豆。食べると10日ほどは何も食べなくてもよく、
更に体力を回復し全身の怪我をたちどころに治すことができる。

【オリーブの首飾り@魔法陣グルグル】
ぷちアニメ5話に(原作、旧アニメにも)登場。オリーブの果実のような珠で編まれた首飾り。
高名な手品師の念が込められた首飾りだという。
かけると意思に反して何らかの手品を披露してしまう。
呪いの装備なので解呪しないと外せないが、
当ロワでは制限により解呪しなくとも2時間で外せるようになる。

【スカルの仮面@Persona5 the Animation】
2話から登場。坂本竜司が認知世界でペルソナに覚醒した時に現れた仮面。
彼のペルソナ"キャプテン・キッド"との契約の証にして召喚するためのトリガー。
本ロワ内では制限により、誰が付けてもキャプテン・キッドを使役できる。
ペルソナに精神が同調していなくとも、仮面が発動のトリガーと分かっていれば使える。
召喚しないつもりで顔から剥がせば譲渡や奪取も可能。
なおアニメ内の描写ではペルソナに覚醒した者は、
認知世界内での身体能力が上がりさらに一部の武器も使えるようになる。
アニメ、ゲーム内で名言されたことはないが外部で裏設定として言及はされているらしい。
これがどこまで適用されるか、あるいは適用されないかは不明。
(メタ的には次の書き手さんが決めてください。)
竜司の使えるようになった武器はメイス類(ロッド、バット、鉄パイプ等も含む)とショットガン類。

【三玖の変装セット@五等分の花嫁】
7話に登場した五月が三玖に変装したときの道具。
ウイッグとヘッドホンに三玖の私服がセットでホイポイカプセルに入った衣装ケースにある。
姉妹以外が使っても多分遠目ならばれない……はず。
ヘッドホンはダミーでなくちゃんと機能する。

154反逆の精神 ◆koGa1VV8Rw:2019/06/02(日) 03:45:59 ID:NRf9D8VE0
投下終了します。
また途中までタイトル抜けをやらかしてますね……

155名無しさん:2019/06/02(日) 10:30:15 ID:6hV86BVg0
投下乙です。
フーゴ、ただで逃げた訳ではなかったんだね
しかし曖昧な立場だと危ないぞ
果たして覚悟を決められるのだろうか

156名無しさん:2019/09/01(日) 18:29:03 ID:z1D94tSc0
保守

157名無しさん:2021/07/19(月) 01:24:44 ID:mP7oQ3s20
なぁこれもう終わり?


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