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中学生バトルロワイアル part6

1 ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 19:54:26 ID:rHQuqlGU0
中学生キャラでバトルロワイアルのパロディを行うリレーSS企画です。
企画の性質上版権キャラの死亡、流血、残虐描写が含まれますので御了承の上閲覧ください。

この企画はみんなで創り上げる企画です。書き手初心者でも大歓迎。
何か分からないことがあれば気軽にご質問くださいませ。きっと優しい誰かが答えてくれます!
みんなでワイワイ楽しんでいきましょう!

まとめwiki
ttp://www38.atwiki.jp/jhs-rowa/

したらば避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14963/

前スレ
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1363185933/

参加者名簿

【バトルロワイアル】2/6
○七原秋也/●中川典子/○相馬光子/ ●滝口優一郎 /●桐山和雄/●月岡彰

【テニスの王子様】2/6
○越前リョーマ/ ●手塚国光 /●真田弦一郎/○切原赤也/ ●跡部景吾 /●遠山金太郎

【GTO】2/6
○菊地善人/ ●吉川のぼる /●神崎麗美/●相沢雅/ ●渋谷翔 /○常盤愛

【うえきの法則】3/6
○植木耕助/●佐野清一郎/○宗屋ヒデヨシ/ ●マリリン・キャリー /○バロウ・エシャロット/●ロベルト・ハイドン

【未来日記】3/5
○天野雪輝/○我妻由乃/○秋瀬或/●高坂王子/ ●日野日向

【ゆるゆり】2/5
●赤座あかり/ ●歳納京子 /○船見結衣/●吉川ちなつ/○杉浦綾乃

【ヱヴァンゲリヲン新劇場版】2/5
●碇シンジ/○綾波レイ/○式波・アスカ・ラングレー/ ●真希波・マリ・イラストリアス / ●鈴原トウジ

【とある科学の超電磁砲】2/4
●御坂美琴/○白井黒子/○初春飾利/ ●佐天涙子

【ひぐらしのなく頃に】1/4
●前原圭一/○竜宮レナ/●園崎魅音/ ●園崎詩音

【幽☆遊☆白書】2/4
○浦飯幽助/ ●桑原和真 / ●雪村螢子 /○御手洗清志

男子11/27名 女子10/24名 残り21名

2 ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 21:51:47 ID:Sd5reZF20
このたび、総合板に移転させていただきました。

前スレが埋まりましたので、投下の続きをこちらから投下します。

3錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 21:52:51 ID:Sd5reZF20

「よーく、分かったよ」

彫像のように固まって、うつむいていたヒデヨシが顔を上げた。
すっと、右手が半開きになったディパックの中に動く。
素早く引き抜かれたそこには、黒い鉄の塊が握られていた。

「他の参加者に、そんなことを漏らされる前に死んでくれ」
「テメェッ――!」
「やめなよ、浦飯」

逆ギレして襲い掛かってくるぐらいは、予想している。
しかも、他の二人は座っていたのに対して、愛は最初から立っていた。
だから、この時ばかりはもっとも早く動けた。
一挙動で、テーブルへと飛び乗る。右足を回し、振りぬく。
革靴のつま先が正確にヒデヨシの右手首を撃ちぬき、コルトパイソンを弾きとばした。

「だっ……!」

ヒデヨシが痛みにうめいて手首をおさえた瞬間には、既にして第二撃がととのっている。
最短で、まっすぐに、一直線に、前方に、足を放つ、ぶっ飛ばす。
テコンドーの蹴り技、その基本である前蹴り(アプチャギ)が、顔面を直撃した。

「ごっ……!」

猿顔の鼻筋に、蹴りがめり込む。その勢いのまま首をがくんとそらせて椅子ごと巻き込み、ヒデヨシは後方へと倒れ、地面をすべった。
浦飯が、初めて目にする常盤愛のテコンドーに目を丸くしている。

「と、常盤……?」
「勘違いしないでよね。自分でぶっ飛ばしたいから止めたんじゃない。
こんなヤツの命を、アンタがしょいこむことないからよ」

浦飯なら、もしかして血がのぼった拍子にまた殴り殺してしまうかもしれない。
そう思ったから、先に動いた。
人を殺しておいて、それを罪とも認めない。間違っていると指摘されても、さらに人を殺して上塗りするヤツ。
遅すぎる償いかもしれないけれど、こんなヤツを野放しにはしたくない。
何より、こんなヤツを放置したって殺したって、浦飯は救われないだろう。

「とりあえず気絶させてから、秋瀬のところまで連れていくわよ」

ヒデヨシが起き上がってこないかを警戒しながら、愛はヒデヨシを拘束すべくじりじりと距離をつめる。

むくり、とヒデヨシが顔だけを起こし。
愛と目が合って、笑みが浮かんだ。
とても卑屈そうな、しかし『してやったり』と言いたげな笑みが。

4錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 21:54:16 ID:Sd5reZF20



!?



おかしい。なぜ笑う。
まるで、『計画通り』だとでも言わんばかりに。
常盤愛によってぶっ飛ばされることで、ヒデヨシがこうむる利益なんて――







「お前ら!! オレの『仲間』に、何してんだあぁぁぁぁっ!!」







――『木』が、常盤愛に向かって一直線に突進してきた。

5錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 21:55:21 ID:Sd5reZF20
「危ねぇっ!」

とっさに浦飯が飛び出し、愛を抱きかかえるようにして飛びずさる。
太くて茶色くてがっしりした、木の幹にしか見えないものが、
一直線にのびて常盤のいた場所を貫き、東屋の支柱に激突して止まった。

(なんで……!? 『逆ナン日記』の予知からは、ノイズが聞こえなかったのに)

携帯を露骨にチェックするような真似は避けていたけれど、未来予知のノイズには絶えず耳を傾けていた。
『逆ナン日記』では、遭遇する『男』のおおざっぱな印象しか予知できないけれど、
それでも出会いがしらに攻撃してくるほど強烈な印象の『少年』ならば、未来予知が変わらないはずない。
遊歩道ぞいのゆるやかな丘陵地に着地させてもらうと、愛は背負っていたディパックのポケットから日記を取り出し、開く。

「何よ……これ」

宗谷ヒデヨシの“似顔絵”が。
携帯電話の液晶ディスプレイに内側から張り付けられ、日記の文字を塗りつぶしていた。
そして、予知には表示されていなかった少年が、ヒデヨシを介抱するように駆け寄る。

「ヒデヨシ、大丈夫か!?」
「植木っ! ああ、ぶっちゃけこれぐらい何ともねぇよ」

宗谷ヒデヨシの顔に浮かぶのは、安堵したような笑み。
芝草のような緑色の髪をした少年が、意思の強そうな両眼に怒りを宿して二人を見下ろした。





携帯電話のディスプレイは、『液晶』という液体と固体の中間物質から構成されている。
液晶ディスプレイとひと口にいっても、『偏光フィルタ』『ガラス基板』『液晶』『光源』などのパーツに別れているのだけれど、詳しく内部構造を熟知している中学生はむしろ少数派だろう。
とにかく、それは何枚もの薄い板を重ね合わせて作られていることぐらいなら、ヒデヨシの知識でも覚えていた。
そして、“声を似顔絵に変える能力”を使えば、似顔絵を“どこにでも”貼り付けることができる。

情報を聞き出してから殺す上で、未来日記の予知は必要不可欠だ。
交渉が決裂するとあらかじめ分かっていれば、それより先に不意をつくこともできる。
かといって、会話を行いながらもチラチラと携帯を気にしたり、携帯電話から何度もノイズ音を出したりしていれば、相手が日記所有者でなくとも不審に思われてしまう。
では、どうすれば未来変化のノイズを防げるか。
ノイズ音が走るのは、未来予知が書き変わる時に、日記の画面に砂嵐が走るからだ。
ならば砂嵐が走る瞬間に、ディスプレイに別のものを上書きすればノイズは防げるのではないか。
ディスプレイの偏光フィルタに“似顔絵”を貼りつけて、未来予知を塗りつぶす。
ホテルから移動するまでの間に実験をして、効果があるかは確認した。
ディパックを半開きにしてテーブルに置くと、ディスプレイの角度を調節して携帯電話を内部に設置する。
ちらりと視線をうつむけるだけで、未来予知を読めるように。
そして、日記にノイズが走りかけた瞬間に、“似顔絵”でディスプレイのフィルターを上書きする。
ノイズが通過するだけの時間を置いてから“似顔絵”を消せば、変化後の予知はきちんと読める。
画面を書き換えただけで、日記が壊れたわけでも、未来予知が狂ったわけでもないのだから。
ついでに、常盤愛がこそこそとディパックに携帯電話を隠していたようだったので、そちらのディスプレイもあらかじめ“似顔絵”で潰していた。
たとえ未来日記と契約していても、予知が読めなければ意味がない。

6名無しさん:2013/10/14(月) 21:56:50 ID:Sd5reZF20

交渉は、決裂した。
殺し合いで大切な幼馴染を喪った人物なら、上手く唆せば殺し合いに乗ってくれるかもしれない。
そう見込んでいたのが、裏目に出ようとしていた時だった。
無差別日記にはひとつの予知が表示される。
植木耕助が、時をおかずして駆けつけること。
ここから導き出される最善手はひとつしかなかった。
植木と浦飯たちを、協力させてはならない。
『全員が生き返る』と力説したところで、あの植木がそうそう殺し合いに乗るとは思えなかった。
だからその動向と生存とを確認して、ヒデヨシ自身の生還が絶望的になった時にでも、後を託せればいいと考えていた。
いくら植木でも、大切な仲間から『どうかオレを生き返らせてくれ』と頼みこまれてしまったら、無下にはしないだろう。
しかし、『殺し合いに乗らずに生き返らせる方法』を提示されてしまった。
『あの』植木なら、悪党の言いなりになって殺し合いに乗ってからすべてをやり直す方法と、
悪党をぶっ飛ばした後ですべてをやり直す方法とでは、どちらを選ぶだろうか。
考えるまでもない。
その選択肢がある限り、植木耕助は主催者の打倒を諦めないだろう。
ならば、浦飯たちの口をふさぐしかない。

時を同じくして、植木耕助もまた『探偵日記』を確認する。
しかし、日記所有者の予知をするという最強格の日記でも、死角はあった。
いや、それはすべての未来日記に共通する死角。
未来の行動を予知しても、その行動の意図を読むことまではできはしない。
かつて『探偵日記』を使った秋瀬或が、『雪輝日記』所有者の行動を読み切っていながらも『敢えて予知どおりに事を運ばれる』ことで出し抜かれたように。

植木耕助が、探偵日記によって宗谷ヒデヨシの居場所を知る。
宗屋ヒデヨシが、無差別日記によって『植木耕助がこの場にやってくる』という未来を知る。
知った上で、ヒデヨシは行動を決める。
図らずもその結果として、探偵日記にはヒデヨシの予知が更新された。



『ヒデヨシが日記を使って未来を変える。
[結果]ヒデヨシが、リーゼントの男と小柄な女の二人組に襲われる。
小柄な女の蹴りでぶっとばされる。』



そんな予知を見れば、植木は仲間を守るために突撃するに決まっている。





「ヒデヨシ、大丈夫か!?」
「植木っ! ああ、ぶっちゃけこれぐらい何ともねぇよ」

そんな会話を聞いて、幽助たちはマズイと直感する。
おそらく植木は、仲間が殺し合いに乗っていることを知らないのだろう。
ヒデヨシにこれ以上のことを喋らせてはならない。
しかし、幽助たちが口を開こうとするよりも素早く、ヒデヨシは人差し指で常盤たちを指し示した。

「植木、こいつらは殺し合いに乗ってる!
手を組んで、乗ってないふりをして人を殺して回ってるヤバい奴らだ!!」

7錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 21:58:57 ID:Sd5reZF20
常盤が焦って、ヒデヨシを指差し返す。

「な……なに言ってるのよ!!
殺し合いに乗ったのも、先に銃を抜いて撃とうとしたのも、そっちじゃない!」

失言だった。
一瞬にして、植木のまとう空気が更なる怒りで熱くなる。
植木耕助にとっての宗谷ヒデヨシは、優しくて勇敢な少年だ。
ビビりなところもあるけれど、いざという時は命を賭けてでも大切な者を守ろうとする強い意思を持った友達だ。
面倒をみている孤児院の子どもたちから兄貴分のように慕われている、人望のある仲間だ。

「なに言ってんだ。ヒデヨシが、殺し合いなんかに乗るはずねぇだろうが!!」

『あの』宗谷ヒデヨシが、殺し合いに乗っている?
有り得ないを通り越して、想像するだに腹立たしい。
悪党が、仲間を陥れようとして口にする卑劣な虚飾にしか聞こえない。

さらに理由を足せば、植木には時間がなかった。とてもとても、時間がなかった。
どこかを一人で彷徨っている、杉浦綾乃を見つける。
綾乃を見つけ出して、同じく一人で行動している菊地善人を待つ。
二人を守らなければいけないからこそ、無差別に人を襲う者たちをうろつかせることなどできなかった。
それに、仲間を探すために、別の仲間が襲われているのを見過ごすことなんてできない。
だから今の植木にできる最善で最速の方法とは、一刻も早くこの2人を気絶させてからヒデヨシとともに綾乃を探し出すことだった。

「植木が来てくれたなら、もう百人力だ。『仲間』の結束の強さを、アイツらに見せてやろうぜ!」
「ああ!」

偽りの結束でもって、かつての仲間は『殺し合いに乗っている』少年と少女に戦火を交えようとする。
そんな二人を見て、幽助たちは同じ言葉を心中で吐き捨てた。

――この……ゲス野郎っ!!

【E-6/F-6との境界付近/一日目 夕方】

【宗屋ヒデヨシ@うえきの法則】
[状態]:冷静 、右手に怪我(噛み傷)
[装備]:無差別日記@未来日記、パンツァーファウストIII(0/1)予備カートリッジ×2、コルトパイソン(5/6) 予備弾×30、決して破損しない衣服
[道具]:基本支給品一式×5、『無差別日記』契約の電話番号が書かれた紙@未来日記、不明支給品0〜5、風紀委員の盾@とある科学の超電磁砲、秋瀬或の自転車@未来日記
警備ロボット@とある科学の超電磁砲、タバコ×3箱(1本消費)@現地調達、木刀@GTO
赤外線暗視スコープ@テニスの王子様、ロンギヌスの槍(仮)@ヱヴァンゲリヲン新劇場版 、手ぬぐいの詰まった箱@うえきの法則
基本行動方針:植木か自分が優勝して 、神の力で全てをチャラにする
1:常盤愛の問いかけに対して――
2:植木を利用して、浦飯たちを処分する。
[備考]
無差別日記と契約しました。
“声”を“似顔絵”に変える能力を利用して、未来日記の予知を表示できなくすることができます。


【植木耕助@うえきの法則】
[状態]:全身打撲、仲間を傷つけられた怒り
[装備]:探偵日記@未来日記
[道具]:基本支給品一式×3、遠山金太郎のラケット@テニスの王子様、よっちゃんが入っていた着ぐるみ@うえきの法則、目印留@幽☆遊☆白書
    ニューナンブM60@GTO、乾汁セットB@テニスの王子様
基本行動方針:絶対に殺し合いをやめさせる
1:ヒデヨシを守りながら殺し合いに乗った二人を倒し、一刻も早く綾乃を探す。
2:自分自身を含めて、全員を救ってみせる。
3:学校へ向かい、綾波レイを保護する。
4:皆と協力して殺し合いを止める。
5:テンコも探す。
[備考]
※参戦時期は、第三次選考最終日の、バロウVS佐野戦の直前。
※日野日向から、7月21日(参戦時期)時点で彼女の知っていた情報を、かなり詳しく教わりました。
※碇シンジから、エヴァンゲリオンや使徒について大まかに教わりました。
※レベル2の能力に目覚めました。

8錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 22:00:13 ID:Sd5reZF20


【常盤愛@GTO】
[状態]:右手前腕に打撲
[装備]:逆ナン日記@未来日記、即席ハルバード(鉈@ひぐらしのなく頃に+現地調達のモップの柄)
[道具]:基本支給品一式、学籍簿@オリジナル、トウガラシ爆弾(残り6個)@GTO、ガムテープ@現地調達
基本行動方針:認めてくれた浦飯に恥じない自分でいる
1:どうにかして2人を止める。
2:浦飯に救われてほしい
[備考]
※参戦時期は、21巻時点のどこかです。
※幽助とはまだ断片的にしか情報交換をしていません。

【浦飯幽助@幽遊白書】
[状態]:精神に深い傷、貧血(大)、左頬に傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3、血まみれのナイフ@現実、不明支給品1〜3
基本行動方針: もう、生き返ることを期待しない
1:宗谷たちをどうにかする。
2:圭一から聞いた危険人物(金太郎、赤也、リョーマ、レイ)を探す?
3:殺すしかない相手は、殺す……?




「くそっ……何があったってんだよ」

菊地善人が戻ってくると、杉浦綾乃も植木耕助も姿を消していた。
残されていたのは、『綾乃がいなくなったから探す。すぐ戻る』という、植木の簡潔な書き置きだ。

こういう時は迷子の鉄則にのっとって『その場を動かずに待つ』ことで行き違いを回避すべきかもしれない。
だが、こうしている間にも状況は進行している。
碇シンジから託された綾波レイをはじめとする仲間たちが、菊地たちを待っている。それも、戦いの渦中に身を置いて。
第一に、杉浦のことが心配だった。
まだ半日の付き合いでしかないけれど、よっぽどのことでも無い限り勝手な行動をとって人を心配させる少女ではないと確信がある。
彼女の精神状態に、何事かがあったとしか思えない。
そういう時に、追いかけてやらないでどうするのだ。

「問題はどっちに行ったかつかめないってことだが……泣き言は無しだ。
『先生』なら、そんな時にも『生徒』のピンチに駆けつけてやるもんだからな」

最悪の未来を回避するために、菊地は走り出した。

「頼むから、間に合ってくれよ!」


【F-6/一日目 夕方】

【菊地善人@GTO】
[状態]:健康
[装備]:デリンジャー@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品一式×2、ヴァージニア・スリム・メンソール@バトルロワイアル 、図書館の書籍数冊 、カップラーメン一箱(残り17個)@現実 、997万円、ミラクルんコスプレセット@ゆるゆり、草刈り鎌@バトルロワイアル、
クロスボウガン@現実、矢筒(19本)@現実、火山高夫の防弾耐爆スーツと三角帽@未来日記 、メ○コンのコンタクトレンズ+目薬セット(目薬残量4回分)@テニスの王子様 、売店で見つくろった物品@現地調達(※詳細は任せます)、
携帯電話(逃亡日記は解除)、催涙弾×1@現実、死出の羽衣(4時間後に使用可能)@幽遊白書
基本行動方針:生きて帰る
1:植木と杉浦を探して走る。
2:綾波レイたちの元へ再合流。
3:落ち着いたら、綾波に碇シンジのことを教える。
4:次に仲間が下手なことをしようとしたら、ちゃんと止める
[備考]
※植木耕助から能力者バトルについて大まかに教わりました。
※ムルムルの怒りを買ったために、しばらく未来日記の契約ができなくなりました。(いつまで続くかは任せます)

9錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 22:01:54 ID:Sd5reZF20
【スリングショット@テニスの王子様】
吉川ちなつに支給。
弾丸として、大量の小石がつまった袋も付属している。
作中で三船入道コーチの行った『スポーツマン狩り』というサバイバルゲームの最中に、
越前リョーマと遠山金太郎が現地調達した木の枝などを利用して制作した簡単なパチンコ。
ゲーム中に不正をはたらいた高校生の風船(割られたら失格)を狙い撃ちしてリタイアに追いこむ活躍をした。
上記の出来事は、『テニスの強化合宿』の真っ最中に起こったことである。

【目くらまし詰め合わせ@現実】
御坂美琴に支給。
花火、爆竹、発煙筒などなど、とにかく火花とか音とか煙とかを出すモノの詰め合わせ。
これで支給品ひと枠。

【エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に】
御坂美琴に支給。
ファミリーレストラン『エンジェルモート』のウエイトレスの制服。
とても昭和のウエイトレスの制服とは思えないデザインをしている。

10 ◆j1I31zelYA:2013/10/14(月) 22:03:01 ID:Sd5reZF20
投下終了です。
前スレで支援くださった方、ありがとうございました。

これからは、総合板にてよろしくお願いいたします。

11名無しさん:2013/10/14(月) 22:22:35 ID:YNKQnT8Q0
投下乙です!
アスカが…アスカがちゃんと頼れるお姉さんしてる…!なんて頼もしいんだ!
まだ凸凹な上に戦えるのがアスカしかいないトリオだけど、狡猾な光子&御手洗コンビ相手にどう立ち向かうのか、続きが気になるヒキだ!
愛ちゃんは幽助への告白を通して自分の罪、弱さに向き合うことが出来たんだね…良かった、本当に良かった。
一方でヒデヨシィ!植木も巻き込んでどこまで堕ちていくんだぁ!主人公対決はどっちが勝ってもやばそう…

12名無しさん:2013/10/14(月) 22:35:08 ID:S.c5BvRM0
投下乙です
アスカは本当にいい人だなぁ……初春から好感を持たれても当然だな。
初春はどうか立ち直って欲しいです。
で、ヒデヨシは相変わらずだな……今のヒデヨシと組んでしまった植木の今後が不安だw

13名無しさん:2013/10/16(水) 03:00:49 ID:2Z3m1LlI0
大半の参加者が一般人な中で、ついに超人主人公同士の激突か

14名無しさん:2013/10/16(水) 11:14:15 ID:57om3nds0
幽助も愛も冷静だから大丈夫として、問題は植木だな
仲間を大切に想いすぎてまさかそいつが殺し合いに乗るとは思わんだろうし、たとえ真実を知っても説得しようとするんだろうなぁ
あのぶっ壊れた猿は多分もう一人二人くらいは殺しそうだぜ...

15名無しさん:2013/10/17(木) 13:49:47 ID:KJMxlR4gO
投下乙です。

ヒデヨシの能力は原作でも設計図の上書きとかしてたし、絵や文字を媒介にした能力には強いんだな。

16名無しさん:2013/10/17(木) 21:27:12 ID:gjo/7Y1I0
投下乙ですー
光子コンビvsアスカチーム!
スタンスは変えてないけどちなつのおかげもあってカッコイイ…!
綾乃にとっては初春は実行犯でもあるけど償いたいと思っている相手を前にして許すということのあれこれが描かれるのも楽しみ

愛はやっぱり自分の弱さを認めてしまった時の方が素直というか愛っぽいな
ヒデヨシが自分の能力で未来日記を封じたり植木を味方にしてしまうのがずるい立ち回りというか。
幽助が戦う相手がまさかの植木で気になる戦い!
一緒に行動していた綾乃も植木も、それぞれ違う所で戦っててどうする菊池!?

17名無しさん:2013/11/15(金) 00:56:25 ID:LtLpfTfo0
月報です
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
85話(+2) 21/51(-0) 41.2(-0.0)

18名無しさん:2013/11/25(月) 14:49:59 ID:DQ5NpDuw0
予約来てたぞ

19 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:46:34 ID:plMkkY2g0
たびたびの破棄、すみませんでした。
再予約、投下します

20中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:48:51 ID:plMkkY2g0

青春は、やさしいだけじゃない。
痛い、だけでもない。


【再会】


四人の少年少女が白日の下で座り、影を長くのばしていた。

「病院、行かなくていいの?」

綾波レイが、秋瀬或へと問いかける。
その手は救急箱の中身を探っているけれど、視線は彼の右手首へ。
右手のあった場所がすっぱりと割断され、切断面と止血点の位置とが包帯で縛られていた。

「確かに……」

秋瀬から話を切り出されかけた越前リョーマも、そちらへの注目を優先する。
秋瀬があまりにも平然としているので釣られかけたけれど、腕がなくなるなんて、普通は命の心配をする事態だ。
テニスの試合でも、体が欠如するほどの怪我を負うことは(今のところはまだ)有り得ない。
秋瀬は「そうだね…」と携帯電話を左手で取り出した。

「問題は我妻さんが先回りしていないかどうかだけれど、こればっかりは近づいてレーダーで索敵するしかないな。
……もっとも、そう長く電池が持ちそうにないけれどね」

警戒すべき我妻由乃が雪輝日記を持っている以上は、待ち伏せされるリスクが常にある。
しかし我妻は『次に会ったら殺す』ということを言い残して退いた。
最大の障害である秋瀬或には重傷を負わせたことだし、『ここにいるユッキーには執着していない』と言い張る今の彼女ならば、こちらから出向かない限りはそこまで執拗さを発揮しないだろう。
電池の持ちを気にした秋瀬に対して、綾波は小首をかしげてみせた。


「私たちの電話には、まだ電池の持ちがあるけれど……」
「ところが、浦飯君は携帯電話を使ったことが無かったんだ。
バッテリーの持続時間をよく知らずに、電池を消耗させてしまったらしい」

秋瀬がそのことに気づいたのは、レーダーを借りうけた時だった。
浦飯は主催者から携帯電話の使い方をインプットされただけで、携帯電話の扱いそのものには不慣れでしかない。
常に画面を開きっぱなしにしてGPS機能をオンにしていたり、好奇心がてら暇があればいじくり回したり……そんな扱いを半日以上も続けていれば、『充電してください』という警告表示も出るだろう。

「デパートに寄って、充電器を探す?」

合流したい人物や避けたい人物を抱えていて、探知機能が使えなくなったのは痛い。
休息後の安全を確保するためにもと、綾波が代案を出した。

「いや、それがデパートに行くのもリスクが大きい。
ちょうど浦飯君が、その近辺で危険人物を見かけていてね」

御手洗清志という、“水”の化け物を操るらしい危険人物のことがあった。
浦飯は必ず仕留められると息巻いていたようだったが、遠隔操作で化け物を操れるということは、御手洗本人が捕まっていても化け物が野放しになったままということも有り得る。
人質になりやすい一般人を含んだ集団でどかどかと踏み込んだとしても、浦飯の邪魔になるだろう。

21中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:50:12 ID:plMkkY2g0

「……それ、近くを通ってる菊地さんも危ないっすよね」

そこまで聞き終えた越前が立ち上がり、すぐさま来た道を走り出そうとして、

「ダメ」

素早くシャツの裾をつかんで引き止める手があった。
綾波だった。

「その怪我で、戦うのは無謀だから。
右腕もそうだけど、その両脚ではさっきみたいに走れないはず」

指摘されて、越前は足元を見下ろす。
綾波が応急処置をした結果として、膝まわりが冷却スプレーと湿布でがっちりとおおわれていた。
処置の下では、両足が青紫色のペンキでも塗ったような、痛々しい炎症を起こしている。
バロウ・エシャロットとの激戦で乱発された光速移動の“雷”は、本来の使い手である真田弦一郎でさえ負担が大きすぎて滅多に使わないような諸刃の剣だった。
バロウの放つ鉄球から菊地たちを守るために濫用し、さらにその足で我妻由乃の急襲する現場に駆け付けたとあっては、足が根をあげてもおかしくない。

「それに、拳銃が通用しない相手なら、私たちも戦力になれそうにない。
そもそも、大けがしたこの人を病院に連れていく話だったはず。
この人たちを戦場に連れていくのも、ここに放置するのも良くないわ」
「でも……」

思い出した痛みで脚を震わせながら、それでも越前は意固地そうに立った。
駄々をこねる子どものような声で、反発する。

「高坂さんが、もういないのに……また誰か死ぬのは、やだ」

死んでしまった少年の名前が出たことに、綾波もまた肩を震わせた。
それでも、静かに言った。

「高坂君は……もういないから。
あなたまで喪いたくないし、あなたがいなくなったら、きっと色々なことが終わってしまう」

ちらりと座りこんだ秋瀬たちに視線をうつして、続ける。

「……それに、高坂君は、この人たちが死ぬのも、この人たちを放っておくのも望まないと思う。
戦線復帰したいなら、今のうちに休むべき」

淡々とした、しかし刻み込むようにゆっくりとした言葉を聞いて、
越前は叱責された子どものように唇を噛んだ。
焦りをすっと引かせて、素直に頷きを返していた。

「……はい」
「それに菊地くんの近くにいる植木くんは、さっきの人も倒せるぐらい強いらしいから。
合流できていればきっと大丈夫」
「うぃっす」

頷いて、ぺたんと腰をおろす。
足を崩して座りなおすのを待って、秋瀬が尋ねた。

22中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:51:02 ID:plMkkY2g0

「菊地くんというのは、別行動中の仲間のことだね。合流する当ては?」

これまでの話からすると、菊地という少年は植木という増援を連れて戻る予定だったらしい。
しかし、場所を特定する手段もないのに別行動をとったとすれば引っかかった。
越前たちが我妻由乃から逃れるために、この場を移動していた可能性もあったのだから。

「最初は、学校で合流する予定だったんスけど……」
「菊地くんの仲間も、『未来日記』を持っているらしいから。
地図で言う周囲1エリア以内なら、予知が届くって言ってた」

菊地と別れた時のことを、綾波は補足説明していく。
バロウを相手に共闘までしたからには、今の菊地が『友情日記』と契約すれば綾波たちは『友達』として申し分なく予知ができる。
菊地自身はムルムルから契約禁止の叱責を受けているが、そこから既に6時間近くも経過しているし、いざとなったら植木の声真似でも何でもして契約すると、別れる直前に言い切っていた。

「それなら、多少は移動しても差支えないようだね。
見たところ学校からの火の手は鎮火に向かっているようだけれど、危険なことに変わりはないし……」

思案するように、秋瀬は北の方角に目を走らせる。
雪輝たちの走って来た方向から炎上した火災は、学校のある一帯とその南方の雑木林を焦がしただけにとどまっていた。
周囲にある建造物が、公営体育館とその駐車場などなど、耐火造の建物だったり延焼物の無い土地だったりしたことが幸いしたらしい。

「火災から避難するのも兼ねて、ここは素直に病院に移動しようか。雪輝君もそれでいいね?」
「うん……」

雪輝としても、いてもたってもいられない心境ではあるにせよ、腰を落ち着けて方針練り直しをする時間は欲しい。
貴重な味方である秋瀬が重傷を負ったともなれば、休息に反対しない理由はなかった。
話がまとまったのを見て、越前が再び立ちあがる。

「じゃ、出発しようか。秋瀬さんだっけ。歩ける?」
「止血はしたし体力的にも支障はないけれど……むしろ君の方が大丈夫かい?」
「あ、だったら僕が、背負っていこうか?」

遠慮がちに、雪輝が声をかける。
越前が首をかしげ、雪輝の肩あたりを見下ろした。

「いや、そこまではいいって言うか、肩を貸してもらえたら充分なんスけど……」

注視するのは、雪輝の衣服。
肩から背中の部分を湿らせている、まだ乾いていない血の染みだった。

「その血、大丈夫っスか?」

その血が誰のものかを知らずに、聞いた。

23中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:52:20 ID:plMkkY2g0



彼とは、十二時間余りもの時を共に過ごした。
それだけの時間があれば、それだけの会話は交わすことになる。
とはいえ、一万年間も何もせずぼーっとしていた天野雪輝に、話題のバリエーションなどあるはずもなく。
自然と話題は、その少年――遠山金太郎に関することが多くなった。

そうすると、その少年が熱中している『テニス』のことが頻出するのは、必然であって。
その中で、『彼』の名前は、よく登場した。

越前(コシマエ)、と呼ばれていた少年。

とにかく強いのだとか。
何度も勝負を挑んでいるのに、よくつれない態度を取られて逃げられてしまうとか。
しかし、とても楽しそうにテニスをするのだとか。
指から毒素を放ち帽子の下に第三の眼をうんたらかんたらとか。
はっきり真偽の怪しい話も交じっていたし、遠山は『そいつと合流できれば何とかなる』という楽観よりの思想だったから、かなり話半分として聞いていたけれど。

後になって、奇縁だと知った。
同行者である、遠山金太郎の友人だったそいつ。
友人である、高坂王子の同行者だったそいつ。
今の天野雪輝とは、出会わない方が良かったのかもしれない。
元恋人との殺し合いに巻き込んで遠山を死なせたあげくに、
瀕死の遠山を見捨てて、囮として戦わせることで自分だけ逃げ出し、
仇であるところの元恋人は、跡部という他の仲間も殺していて、
二人の戦友を殺した仇であるその我妻由乃と、よりを戻してふたり幸せに星を見に行こうとしている。
誰から非難されても、それが誰かの犠牲の上に成り立つことでも、そうする。
それが、今の雪輝だった。



秋瀬或は、『移動時間を短縮するアテがある』とか言って、重傷人とも思えない軽快さで先行した。
病院へと向けて、進路を西寄りにして。
残った三人で、越前に肩などを貸しながら追っていて。
間もなく、一行はその『彼ら』と再会した。

倒れている人影が離れた場所に小さく見えて、越前が目を見開いた。
一歩を近づくごとに、人影の小柄な輪郭だとか、微風にパタパタと揺れるヒョウ柄のタンクトップだとかが鮮明に見えてくる。
傷ついた両脚に鞭を打つようにして、越前は雪輝たちの手を振り払い、早足で近づいていった。
どんどん近づき、その人影の『切断』があらわになった距離で。
我慢できなくなったように、走り出した。
綾波レイが、そんな彼のそばへと駆け寄ろうと急ぎ足になり、雪輝もそれにつられる。
立ち止まり、じっと見下ろす。
そこにいた。
彼らと言ったのは、ようするに、つい複数形で表現してしまうような状態だったということで。



遠山金太郎が、上半身と下半身とで真っ二つに斬殺されて仰向けに転がっていた。

24中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:53:16 ID:plMkkY2g0
(分かってた、ことだったけどね……)

日本刀を持った我妻由乃の手で絶命させられた。
ならば、その死に様など分かり切っている。
赤く染まりはじめた陽の下に、ふたつ血だまりが広がっていた。
ひとつは、一メートルくらい離れた地面に転がっている下半身から噴き出したもので、
もうひとつは越前の真下に転がる、上半身の腹部より下から流れたものだった。
そちら側の血液は、地面と接する背面からもじわじわと染み出した跡があり、
それは天野雪輝を手榴弾からかばった際に受けた傷口が、開いたものだと分かる。
雪輝は中学校で流れた血の量を知っていただけに、まだこれだけの血が残っていたのかと驚いた。
それだけの血を流した証明として、遺体は凄まじい色合いになっていた。
土気色というよりは、青っぽい粘土で作り上げた人体のような、生前の面影をなくしたそれ。
小柄なりにがっしりとしていた体つきが、血を吐きだしつくした分だけ『しぼんでいる』ことがはっきりと認識できる。
体のそこかしこが、手榴弾の熱風を浴びた火傷で煤けていて。
右手には、テニスラケットを強く握りしめたままで。
左手は、やや不自然な内向きの角度で、腹部にもたれかかるように乗っている。
それは不幸なことに『斬られて』からもしばらく命があって、動いていた証左だろう。
霞んでいく最後の意識で、『何か』に向かって手をのばそうとして、持ち上げて。
そこで命が喪われて、ぱたり。
何を見つめていて何に向かって手をのばそうとしたのか、見開かれたまま絶命した両の瞳からは語られなかった。

そんな変り果てた姿を、越前リョーマが眼球に映していた。
目をそむけることさえできないまま、呼吸すら止める。
足をがくがくと震わせて、無言で。
ただ、己の時間を止めることしかできないでいる。

(きつい、かな……うん)

これは、無理だろう。駄目だろう。
心ある人間ならば、あっちゃいけないと否定したがる。
綾波が、そんな越前に対して、かける言葉を決めかねたように手をのばそうとして。

かくんと、越前の背たけが地面へと低くなる。
足から立っている力がぬけて、膝をついた。
ぴちゃんと、遠山の血液だったものが跳ねる。両膝の湿布が、赤黒い血だまりで汚れる。
綾波が名前を呼んでも、返事を返さない。
膝をついているところなんて想像もできない唯我独尊野郎だと聞いていた少年が、そうなっている。

(意外……でもないよね。こんな友達を、見たら)

雪輝は、そう思う。
だから、こうも思う。

――やっぱり、違う。僕は、“こう”はならない。

越前は、見るからに悲しんでいる。
涙こそ見せていないけれど、それはただ現実に打ちのめされるばかりで、悲しみが追いついていないだけなのは明らかだ。
対して、天野雪輝はどうか。
こうなってしまったことを、悔しいと思う。こうするしかできなかったことを、悲しく思う。


――犠牲とか、殺された人とかそんなのを度外視してでも――僕は由乃に手を伸ばす。

じゃあ、こうなった遠山を度外視して、我妻由乃を迎えに行きたい天野雪輝とは、何者だ?
悲しいはずなのに、泣けない。冷静に死体を観察して、見捨てたことを自嘲している。

25中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:54:43 ID:plMkkY2g0

(昔のことを思い出してきて……僕も学習したってことなのか?)

由乃のように、他の人間を駒だと割り切ることなんてできない。
けれど、三週目世界の由乃も、異世界の両親も、手の届く皆を救おうとした結果が、あの結末だった。
三週目の世界はそれなりに救済されたらしいけれど、いちばんに助けたかった我妻由乃は喪われた。

(だったら、割り切るしかないのか?
これも、由乃と星を見に行くための犠牲だって)

神崎麗美と対峙する前から、分かっていたはずだった。
天野雪輝は神さまのくせに弱くてちっぽけで、遠山金太郎のような理想論者ははいずれ遠からず死んでしまうこと。
無力感が、黒い感情へと反転していく。
泣けなかった罪悪感が、由乃を迎えに行きたいという欲望が、悪魔のささやきを運んでくる。

後ろめたく思うことなんか、何もない。
会いに行きたい由乃は『雪輝日記』を持っている。
迎えに行こうとしても、確実に先手を取られて殺される。
だったら、これからも遠山の代わりに『盾』が必要だ。
ここに、二人いる。
こいつらも、利用すればいい。

皆を救うことなんてどうでもいい。
遠山金太郎に励まされ、神崎麗美と対峙して、気がついてしまったはずだ。
神さまなんだからみんながハッピーになれるように願いを叶える?
そんな願いよりも大切なモノ。
我妻由乃との幸せを掴むことこそが、一番の願いごとであったことに。
遠山も、それを応援してくれた。
『やりたいことも貫けんよっぽどマシやと思うけどな』と、笑って背中を押してくれた。
一万年ぶりにできた大切な友達が、命を捧げてまで願ってくれた。
高坂は、『泣きそうな顔をしろ』と言っただけで、それ以上のことは要求しなかった。
やりたいこと。分かり切っている。
我妻由乃と、星を見に行く。
もっと彼女の声を聞いていたい、彼女の笑顔を見ていたい、彼女の華奢な体を抱きしめたい。
それが、天野雪輝だったはず。

『恋人』のためならば、『友達』だって踏み躙れ。
お前はしょせん、お姫様の為だけの、王子様だ。
そこで膝をついている、弱い雪輝を助けてくれた、やさしい王子様とは違うんだ。

形容しがたい感情から歯を食いしばり、越前リョーマの背中を観察する。
この少年が、早く泣き叫んでくれればいいのに。
まっすぐに悲しんで、その正しさを、王道を、普通の青春を、見せつけてくれたら。
泣きたくても泣けない雪輝は、羨ましいと逆恨みできるのに。
どうしてこんなに差があるんだろうと妬んで、夢を叶えるための犠牲として利用することが――

26中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:56:05 ID:plMkkY2g0



「――馬鹿じゃないの?」

27中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:57:02 ID:plMkkY2g0
押し殺したような声が、耳朶をうった。
己のことを指摘されたような錯覚で、雪輝はどきりとする。
越前は怒りに満ちた声で、見下ろす少年に向かって話す。
ひと言ひと言を、喋るたびに歯を食いしばるように。

「べつに、誰か庇ったりするのは、そっちの勝手だから。
自己犠牲とか、……うちの先輩も、よく、やるし。
オレも、死にかけたり、無茶したから、命賭けるなとか、人のこと、言えないし。
でも……」

越前リョーマは、まだ殺害者である我妻由乃のことを知らない。
『雪輝を逃がすために囮になった』という略された説明でしか理解していない。
だから、怒りを向けられるとしたら、雪輝が見捨てて逃げたことについてだろうと、そう予想したのだが――

「何が、『もう手遅れ』だよ。なんで、そこで諦めてんだよ」

びしゃん、と地団太を踏むように、立ち上がって血だまりを踏みつける。
震える足で、強く。
絞り出すような声で、その声を出すためにありったけの意思で涙をこらえて。

「生きること、諦めるなよ。
いつも、あんなに負けず嫌いだったくせに。
もうすぐ死ぬからって、生きるの止めるなよ。
囮になるのは勝手だけど、『手遅れ』とか『優先順位』とか言うなんて、そんなの。
本気で、やってないっ。そんなんだから、死んだんじゃないの?」

見苦しいまでに、必死に煽っていた。
見ようによってはスポーツマンらしかぬ、鬼か畜生かの振る舞いだ。
絶対に助からない怪我を負って、精いっぱい痛みに耐えて戦った少年に対して、
『そんな無様な戦いをするもんじゃない』と罵っている。
しかも、罵倒していることは理不尽な言いがかり。
仮に遠山金太郎が諦めなかったとして、手榴弾による致命傷はどうにもならない。
さながら、どうしようもなく強い対戦相手に追い詰められても精いっぱいに頑張っている仲間に、『本気でやれ』と冷たく鞭を打つようなものだ。

「そんなの、最後の一球がまだ決まってないのに、諦めるのと同じじゃん。
まだまだだよ。……ぜんっぜん、まだまだだね」

『あの』遠山の友人だったほどの人物なら、
雪輝にも、わだかまりなく手を差し伸べるのではないかと思っていた。
遠山が救おうとした人間だから守ってみせるとか、友達のことを誇りに思うとか、そんな理由をつけて。
それができないならば、怒りにつき動かされて、見捨てた自分を責めるはずだと思っていた。
なんでアイツは死んで、お前が生きているんだと、そんな主張をして。
どちらの立場を取ったとしても、越前の言い分は正しい。
でも、違った。そんな二元論では解決できない。

「一球勝負……引き分けだったのに……」

誰かを責めても解決できないと分かっている。しかし笑って許せるほど立派にもなれない。
それでも、心を殺さないために叫んでいる。
よりによっていちばん悪くないはずの遠山を、怒りをぶつける対象に選んだ。
でも、それが死者の冒涜には見えなかった。
なぜなら。

28中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:58:19 ID:plMkkY2g0



「……オレに引き分けといて、負けんなっ!」



この二人は本当に友達で、好敵手(ライバル)だったから。
だから、こいつは遠山に怒ってもいいんだ。
そんな納得が生まれ落ちた。
のどではなく魂から絞り出すように、越前の呼びかけは続く。



「死にたくなんて、なかったくせに」



綾波が、遠慮したように雪輝の方を振り向く。
その言葉は、ともすれば死ぬ原因を作った雪輝への非難ともなる。
しかし雪輝は首を横に振り、「言わせてあげて」と小さくつぶやく。
不思議と、今はその言葉を聞きたいという心境になっていた。



「生きたかった、くせに!」



心臓がはねる。

――ワイは死にたくないけど、人を殺すのもイヤや。

橋の上で。神様なら手伝ってほしいと懇願された時。
死にたくないと言っていた。
雪輝も、彼のことを死なせたくはなかった。

ほとんど喚くように、乱れた声がなじった。



「『日本一のテニスプレイヤーになる』って、夢があったくせに!」



知らなかった。

冷えていた胸のうちが、熱を注がれたように熱く痛んだ。




29中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 22:59:26 ID:plMkkY2g0


【推測】


秋瀬或がディパックに納めて持ち帰ってきたのは、なんと自家用車だった。
トヨタ・クレスタの後期モデル。X100系。
例の浦飯という男から、車を放置してきたというようなことを聞いていたらしい。
片手の秋瀬或に運転をさせるわけにもいかないので、天野雪輝が車のハンドルを握った。
無免許運転にあたるはずだけれど、運転するのは初めてでもないと天野は言った。

秋瀬或が助手席へ。
綾波レイ自身と、越前は後部座席へ。
あれほど体も口も動かしていた越前は、座席につくや否や、糸が切れたように眠りはじめてしまった。
疲れたとか言っていたのは、確かにその通りだったらしい。
その両腕には、遠山少年の持っていたラケットを抱きかかえるように持ちこんでいる。
そんな姿を見た綾波レイは、胸がチクチクと刺さるような痛覚を感じた。
だから、というわけではないのだが。
一連の出来事に関わった、運転席の天野雪輝に向かって問いかけてみる。

「さっきの『由乃』って、我妻由乃のこと?」

天野が驚いたように身をすくめて、アクセルをベタ踏みしかけた。

「……知ってたんだ」
「高坂君が、言ってた。『私が守る』って連呼したり、好きなひとを閉じ込めたりする怖いひとのこと」

バックミラーから見える雪輝の目つきが、形容しがたい風になった。
「間違ってないのが……」とかなんとか、ぼやく。

「そんな人と、どうして敵対しているの?」

尋ねると、見るからに天野の口が重たそうになった。
しかし、答えを渋っているというよりは、答えを練っているという風な沈黙だ。
ややあって、淡々とした説明が聞こえてくる。

「ざっくり言うと、前の殺し合いの最後の最後で、どちらが優勝するかで喧嘩になったんだよ。
彼女は僕を生き残らせたいと言って、僕は、由乃を殺すぐらいなら死ぬって言った。
そしたら彼女は、僕を捨ててパラレルワールドの僕と結ばれるって言い出した。
その為には優勝しなきゃいけないから、僕のことも殺すんだって」
「…………」

予想以上に、難解かつぶっそうな内容だった。
考える時間がほしいからちょっと待ってと言うべきか、綾波は悩む。
すると、助手席の少年が口を開いた。

「正確に言えば、彼女の“願い”は、優勝した報酬によって雪輝君を手に入れることだね。
全てを0(チャラ)にすることも視野に入れると、さっきそう言っていたよ」
「そんなこと、できるの?」
「させてもらえると思えないから、僕らは彼女を止めようとしているんだ。
優勝者が褒美をもらえるかどうかについて、ある『予知』を得ていてね」

ちらりと運転席へ、変に熱っぽい視線を送る。

「それに、たとえ生き返るのだとしても『友人』に死んで欲しくないのは当然のことだ。
雪輝君が我妻さんを殺せないように、僕も雪輝君が殺されるのは見過ごせない」
「秋瀬くん……」

ずいぶんと友人おもいの人物であるようだが……実はこちらの少年は、少し苦手だ。
どこがどう、とは言えないのだが、声とか、印象とかに奇妙な既視感がある。
まるで少年にそっくりな人から大事なものをかっさらわれたことがあるみたいな、そんな『気に食わない』みたいな感じだった。
そんな秋瀬或に、雪輝が問いかける。

30中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:00:10 ID:plMkkY2g0
「でも、それなら由乃が僕のことを捨てる必要は無いはずだよ?
三週目に行く必要が無くなったんだからさ。
なのに、由乃は僕のことを『愛してなんかいない』って言ってた……」

助手席から、微苦笑を含んだため息が聞こえた。

「雪輝君。我妻さんからすれば、君をつい一日前まで殺そうとしていたんだよ?
別れたばかりの恋人に『振ったけど、生き返ると聞いたから愛します』なんて、言えると思うかい?」
「う……」

人間として男性として気づかないようでは駄目なことを指摘されたように、運転席の少年は肩を落とした。
どんどん、綾波には難しい話になってくる。
けれど、遅れて理解が追いついたこともあった。

「それは、喧嘩になっても仕方がないと思う」

それは、天野と我妻由乃が、殺し合いの中で、お互いを生かそうと動いたらしいこと。

「どうして、そう思うんだよ」

いきなり断定されて、雪輝はやや不機嫌そうになった。

「私は、“好き”が私にもあるのか、自信がない。
でも、私の守ろうとした人が、生きてほしいから止めてって言ったら、きっと困るわ」

菊地善人から聞いた、碇シンジの最後の言葉。
綾波レイも含めた二人の人間を、守ってほしいと言ったこと。
困る。
最初は殺し合いに乗ってまで守ろうとしたのに。
そんなことを言ってもらえるなんて、ぜんぜん思ってもみなかったから。
受け止め方が分からない。

「それは……僕も同じだよ。
僕も、由乃に生きてほしかった。由乃の居場所をつくりたかった。
それがあれば、由乃は僕を追いかけなくても、生きていけると思った」

居場所。
その言葉を、綾波は自分の場合と照らし合わせる。
それは、綾波の言葉で言うところの“絆”のある場所ということかもしれない。
だとすれば。

「そう言ってくれる人がいるだけで、もう居場所はあったと思う」

それは、誰かと繋がったまま終われるということだから。
そんな人を、殺すことなんて綾波にはできそうにない。

「だから、私ならそう言われただけで満足するかもしれない。
好きな人を殺さずに済んで、居場所をもらったまま終われるなら」

今度は、急ブレーキがきた。
反動で四人が前に投げだされかけ、越前が眠ったまま倒れかかってくる。
その頭が綾波の肩にいったん引っかかり、そのままずるずると膝の上にシフト。
つまり、膝を枕にした格好に。
起きないかどうか目を配っていると、運転席の主が「ごめん」と謝った。

「君の言ったことが、昔の由乃と重なったんだ。
あの時は、どうしてそんなことを言ったのか分からなかったから、びっくりして」

31中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:00:54 ID:plMkkY2g0

曖昧な言葉を使ってぼかしている風な雪輝は、あまり良い思い出でないことを匂わせていた。
無遠慮に知ったようなことを言って踏みこみすぎたと、反省する。
いや、そもそも詳しい話を聞くための会話だったのに、『人を好きになる』という話題が出たせいで脱線した。
脱線ついでだと、話題をもどす前にひとつだけ聞いてみたくなる。

「聞いてもいい? 天野くんは、どうしてその人を好きになったの?」

好きになる条件を満たすものは何か、誰かを好きだと言える少年から知りたい。
ハンドルを握る少年は、長くも短くもないだけの間をおいて、答えた。
いつくしみのこもった声で、しっかりと。

「ずっとそばにいてくれたから、かな」
「そう……」

答えを聞いて、思い出す。
学校の教室で、話しかけてくれた少年のこと。
この場所に来てから、ずっと一緒にいた少年のこと。
人を支えようとしたことと、人から支えてもらったこと。

「私と、同じね」

少年の重みを膝に感じながら、言葉はそんな感想になった。
天野がルームミラーごしに、形容しがたい感情のこもった目で自でこっちを見ていた。
その目には、見覚えがあった。
時おり碇ゲンドウが自分を見て、誰かを重ねるような目をする時と、似ていた。
だから天野も、自分たちの姿から過去の誰かと誰かを重ねているのかもしれない。

「そこの彼とは、ずっと一緒にいるのかい?」

秋瀬或が問い返してきた。
越前を見下ろして物思いにふけるのを見て、綾波にとっての『そばにいた』を、その少年だと解釈したらしい。

「うん。今までずっと」
「良ければ、君たちのことも聞かせてほしいな。今まで見てきたことを」
「……構わないわ」

話題の転換と、情報提供を求める会話の導入。
逆らう理由もなく、避けられることでもないので頷いた。
ぽつりぽつりと、順番通りにたどたどしく話を始める。
時をおかずして、白亜の大きな病院が見えてきた。




32中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:01:39 ID:plMkkY2g0


手塚部長が、死んだ。
跡部景吾が、死んだ。
ペンペンが、死んだ。
碇シンジが、死んだ。
真田弦一郎が、死んだ。
神崎麗美が、死んだ。
高坂王子が、死んだ。

そして遠山金太郎が、死んでいた。

嫌だった。
一人前になりたくても、一人になりたかったはずがない。
『死んだ』と言われるたびに胸が穿たれて、うんざりだと叫びたくなる。
だって、『死んだ』ってことは、もう終わったってことで。
ぶつかって勝ち負けを競ったり、遊んだり、新しいことを知ったりすることが二度となくなった。

神崎麗美が、跡部景吾を殺したと言った。
神崎麗美が、ペンペンを殺した。
バロウと呼ばれていた少年が、神崎麗美を殺した。
バロウが、手塚部長を殺したと言った。
バロウが、高坂王子を殺した。

ごちゃごちゃだ。
泣いたり、怒ったり、悩んだり、疲れたり。
背負うべきものがあって、手が届かなかったものもある。
青学の柱だって、べつに聖人じゃない。
仲間を傷つけた相手には痛い目を見せてやりたいし、
部長や副部長のように誰が相手でも公平にするような自制心にはまだまだ及ばないし、
たまには疲れたと根をあげたくなることだってある。

だから、困る。

天野雪輝の大事な人である我妻由乃が、遠山金太郎を殺した。

「何か僕に言いたいことはある? コシ……じゃない、越前くん」

高坂王子の言っていた『救われてもいい天野雪輝』の。

「いや……っていうか」

外科病棟の待合室で。
自嘲じみた笑みをうっすら浮かべて、対面に座る天野雪輝。
一万歳の神様は、自分に起こったことを全て打ち明けて、そして感想を求めた。
だから、答える。

「世界が二週したとか三週したとか、そんなややこしい話をよく遠山が理解できたなぁと思って」
「最初の感想が、それ?」

綾波に横から突っ込まれた。

リョーマは綾波が見つけてきた車椅子の上に座らされ、綾波はその隣にある座席に座っているので、目線はほぼ同じ高さにある。
休めばちゃんと動けるようになる怪我だからとリョーマ自身は車椅子に反対したのだが、綾波は少しでも動かさないようにすべきだと譲らなかった。
ちなみに、骨折した右腕も綾波の手によってがっちりと固定されている。
綾波自身、この手の怪我を見慣れているというか、主に手当される側であり、やり方には心得があったらしい。

呆れとも困惑ともつかない風に顔をひきつらせて、天野は答える。

「知ってる漫画の内容とかに当てはめて考えたみたいだったよ」
「……あ、納得」

33中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:02:39 ID:plMkkY2g0
それなら分かると、疑問が解決した。
話のスケールはとんでもない。
すべてを0(チャラ)にするために神様になろうとしたとか。好きな女を追いかけて時空を超えたとか。
それなのに、天野雪輝は頼りない笑みを口の端に浮かべて目の前にいる。
だがしかし、遠山金太郎があっさり受け入れたという話を、自分が飲みこめないというのは癪だった。
だから、理解がおよぶ部分から言葉にしていく。

「高坂さんが、アンタのこと色々言ってたよ」
「どうせ弱虫とかヘタレだとか、そんなことだよね?」
「うん、あと、バカだとか甘ったれだとか」
「あ、そう……」
「うん、そのイメージ通りの人だった」
「君……その話し方でよく高坂と喧嘩にならなかったね」
「でも、最後に言ってた。『別にアイツを救いたいとか思わないけど、救われてもいいぐらいには思ってた』って」
「高坂、が?」

淡々と話を続けていた顔が、そこではじめて揺れた。
その動揺を見て、ほっとしていることに気づく。
高坂が天野と張り合おうとしていたように、天野も高坂に対して思うところはあると分かったからか。

「じゃあ、君はどうなんだ?
遠山を見殺しにして涙ひとつ見せない神様を、どう思う」

ぜんぜん『神様』っぽくは見えない、と揚げ足を取る。
少なくとも、『神様に勝ちたい』と公言していたリョーマの前に、『僕がラスボスです』と言って現れたのがこいつだったら…………なんか、嫌だ。

「泣きたくても泣けないことがあるのは知ってるし、別にそれはいい」

隣にいる綾波が、右手を自身の胸にあてた。
どう考えたらいいんだろうねと、内心で呼びかける。
遠山が死んだのに、天野が生きていると恨めたら簡単なのかもしれない。
でもそれは簡単なだけで、ぜんぜん楽にはなれそうになかった。
だいいち、天野雪輝に向かって責任追及する権利があるのかどうか。
そこを槍玉にあげるなら、あの神崎麗美が中学校でやらかしたという話には、リョーマ自身の責任も絡んでくるだろうし。
ただでさえ色々とすごく痛いのに、無駄に傷つけあうことになるだけだ。

「高坂さんが殴ったのもあるし。アンタが昔に色々やって、さっきまでグダグダだったってことは別にいいよ。
お年寄りはいたわるものだし」
「お、お年寄り……」

天野雪輝をどうこうしてやりたいというのは無い。
文句を言うべきはそういう選択をした遠山自身であって、それは死体の前で洗いざらいぶちまけた。

「ただ、話を聞いてて気になったんだけど」

でも。

あの死体は、我慢できない。
因縁浅からぬ知り合いをあんな死体に変えたヤツは、許せそうにない。

「もし、その我妻って人が皆を殺したことを悪いと思ってなくても、気にしないの?
一緒に星が見れたら、それでいいの?」
「ああ、それでいいよ」

自信ありげに、うっすらと笑みを口の端にのせて。
即答だった。

34中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:03:24 ID:plMkkY2g0

「――っ!」

今だけは、足を怪我していることに感謝した。
すぐに立ち上がることができたら、たぶん天野の胸ぐらをつかんでいた。
その代わり、本気なのかと抉るように眼力をこめて天野を睨み据える。
天野は動じない。
仮面をかぶったように冷たく、揺るぐものがないように堂々としている。
高坂王子に殴られて、泣きそうな顔をしていた頼りない少年とは別人のようだった。

「遠山は、僕にとっても友達だった。友達だって言ってくれた。
だから僕は、遠山を殺したことについては、由乃に怒ってる。
でも、だからって由乃を諦める選択肢は無い。
皆と一緒に脱出することも考えるし、助けられた借りだって返したい。
協力できることがあれば何でもする。
ただし、由乃のことだけは譲れない」

でも、そんな僕と相容れないならここでお別れだと、天野は言った。

試されるような視線を、向けられる。
勝手だ。
勝手なことを言ったくせに。
見捨てたらこっちの器が小さいかのような態度を取るなんて、勝手だ。
しかも。
きっと、ここで怒りに任せて突き放しても天野は恨まない。
そういうものだから仕方ないと、割り切って別れを選ぶ。
でも、きっと誰も助けてくれないだろうと独りになる。
味方は秋瀬或ぐらいだと、勝手に諦めるのだろう。
それはきっと、遠山も高坂も望んでいない。
誰だって、自分だって、後味の悪い思いをするために、戦ってきたんじゃないはずだから。

じゃあ、どんな言葉をかけたらいい。
気に入らないこともあるけど我慢して一緒にいよう、では足りないと思う。
これから似たような想いをする人と会っても、『俺だって我慢してる。だからお前も我慢しろ』とでも言うのか。
そういう『柱』を、人は信用するのか。きっと信用しない。
考える。難しい。難しい。難しい。

「――大丈夫」

ぽつりと。
リョーマの顔をのぞきこむようにして、綾波が言った。

「越前君が無理なら、私が間に立つから」

念を押すようにひとつ頷くと、雪輝に向かい合って、話す。

「本当に好きな人のこと以外どうでもいいなら、ありのままを話したりしない。
私たちを利用するためにごまかして印象操作をするはず。でもあなたはそうしなかった」
「分かったように話すんだね」
「私のいた場所にも、そういう仕事を専門にした人たちがいたから」

リョーマが感情として我慢できないなら、その間は綾波が代わりに話すということなのか。
さっき寝ている間も、天野たちにこれまでのことを説明していたようだった。
その詳細までは知らないけれど、しっかり天野と言葉を交わして、その上で『言葉が通じないわけじゃない』と判断した。
だったらと、気持ちが少しだけ甘くなる。
綾波を信用している分ぐらいは、彼女に免じたい。
それに、天野の背中は、遠山金太郎の血で汚れていた。
つまり彼は、ギリギリまで遠山を見捨てずに背負って走ったのだろう。
だから、友達だったというのは本当だ。

35中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:05:40 ID:plMkkY2g0
生前の記憶からヒョウ柄シャツの少年を呼び出し、その屈託のない笑顔に向かって、ややこしくなったのはお前のせいだと毒づく。
遠山は、跡部景吾が殺されたことも気にしないと言ったらしい。
一発ぶっとばさなければ気が済まないけれど、それで終わり。
そうするのも、分からないわけじゃない。
自分だってバロウが許せないけれど、だから殺そうとはならなかった。
でも、好きなだけ殴れば気が済むかと言われたら違う。
殴ったぐらいでおさまるのか。あの血だまりを、乗り越えていけるのか。
だいいち、殴るのはすでに高坂が天野にやっている。
我妻に同じことをしても、きっと天野に対しての『あれ』以上の効果は出せない。
じゃあ、部長だったら?
厳しいあの人あったら、こういう時どうす――




……………………あ。


閃く。

冷めた声で、問いかけていた。

「悪いとは思ってるんだよね?
だったら、代わりに責任取ってって言ったら、取ってくれるの?」

そんな風に切り出すと、天野たちの表情が険しくなった。
天野のたつての願いで口を挟まないと診察室に待機していた秋瀬或が、警戒して顔をのぞかせる。

「アイツは一発ぶっ飛ばせば終わりって言ったみたいだけど。
オレ、その時まで我慢できそうにないから。
だから、好きな人のけじめぐらい、ちゃんと自分でつけてよ」

そこまで大事な人のためなら、逃げないよねと。
念を押すように、視線でがっちりと捕える。
覚悟したような顔で、雪輝が頷く。

「いいよ。それで由乃が、少しでも安全になるなら。
もっとも、迎えに行けなくなると困るから、動くには問題ない程度にしてほしい」

場の規律を乱すような者は、どうなるのか。
悪いことをしたら、どんな罰を受けるのか。
最初に会った時から、身をもって体験させられてきた。
絶対に、間違いなく、『100パーセント(CV青学テニス部3年乾貞治)』で、こう言う。

36中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:06:18 ID:plMkkY2g0
子どもじみた意趣返しもあり、たーっぷりと間を置いてから言った。





「じゃあ、グラウンド100周走ろう」





「「「は?」」」

まず反応を示したのは、綾波だった。

「グラウンドが、どこに?」
「こんだけ広い病院なら、運動用の部屋ぐらいあるでしょ。
リハビリに使うようなの。そこの中を100周で」

「越前君? いくらなんでもそれは、雪輝君は足を撃たれているし――」

秋瀬或も、冷静さをやや崩した声で反対する。

「カスリ傷だって言ってたし、さっきまで歩きまわってたじゃないっスか。
それに室内なら学校のグラウンドより距離短いし、筋肉痛とかも心配ないっスよ、たぶん」

「な、なんで急にそんな体育会系の発想が出るの?」

天野雪輝が、見るからにうろたえた。

「これから彼女さんと一万年間の距離を縮めに行くんでしょ?
それに比べたら100周くらい準備運動みたいなもんじゃないっスか」
「上手いこと言ってるつもりっぽいけど、それ全然関係ないよね」
「これが一番すっきりするから」

たぶん口を笑みの形にしながら、リョーマは言った。

「絶対に諦めたくないって、初めて本気になったんでしょ? その本気、見せてよ」





そんな、わけの分からない理由で。
天野雪輝は走っていた。
幾つかのトレーニング器具が設置された、リノリウム張りの理学療法室を。
入り口の靴置場にあったシューズと、更衣室にあった体操服に着替えて。
ダッダッと床に音を刻みながら、壁まわりをグルグルと回っている。
ちょっとうんざりが入ってきた顔で、しかしムキになったように。
最初は軽いジョギング程度の走り方だったけれど、十週目を越えたあたりからしだいに息が上がり始め、今や首から上は汗でべっとりと湿っていた。

「アンタ、結局止めなかったんだね」

室内の入り口、シューズの履き替え場所近くの壁ぎわで。
綾波レイは休憩用のベンチに座り、越前たちとともに経過を見守っていた。
一周を走るごとに、越前がその左手にある数取器のボタンをカチリと押しこみ、周回を計測していく。
車いすをベンチ横につけたまま、秋瀬へと話を振る。
ちなみに、向かって左から越前、綾波、秋瀬の順に座っている並びだった。

37中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:07:15 ID:plMkkY2g0

「殴られるよりは、見ていて辛くないと思ったからね。
僕も一緒に走りたかったところだけれど、ちょっと血を流し過ぎたし」
「そうじゃなくて、天野さんが別れようって言い出しても止めなかったこと。
アンタのその怪我じゃ、人手は欲しかったはずだし」

秋瀬は残っている方の手を使って、越前から手渡されたスポーツ飲料にしきりと口をつける。
血量を失った分を、少しでも補おうというつもりらしい。
車を持って来たりと精力的に動いていたけれど、明かりのついた部屋にいれば、顔色がだいぶ悪いと分かった。

「確かに、彼のやり方はとても不器用なものだった。
我妻さんのことで雪輝君を信用できない人はいるだろうけど、それならそれで誠意を見せるべきだったね。
少なくとも、『いざとなったら対主催よりも由乃を優先するけど受け入れるのか』なんて聞くのは悪手でしかない」
「だったら」
「でも、雪輝君に釘を刺されたんだよ。『遠山の友達には全部をぶちまけてみたい』って。どう転んだとしても」
「…………」
「さすがに、あの時の君の答えしだいでは割って入るつもりだったけどね」

どう答えていいものか分からない風に、越前はふいと顔をそらした。
そんな彼らのいる前を、雪輝が恨めしそうな顔で見やりながら通過しようとする。
綾波はすかさず、用意していた清涼飲料水入りの紙コップを手渡した。
給水を怠らせるのだけはまずいと、越前に言われている。
……何も知らない第三者が見れば、この四人はいったい何をしているのかと困惑するだろうが。

「弁護しておくなら、彼があんな言い方をしたのは、君たちへの負い目があったからだよ。
我妻さんが『雪輝日記』を持っている限り、雪輝君と一緒に行動するだけで危険が伴うからね」

なるほど、と綾波は頷く。
つまり、敢えて不穏当な言い方をして、見捨てることを示唆したらしい。
もっともな話で、『一緒にいるだけで、常に殺人鬼に命を狙われる。しかも居場所や動向がばれている』というハンディキャップは大きすぎる。
脱出派がひとまとまりに集合したりすれば、奇襲されて一網打尽にされるのが見えている。
かといって、あのまま気まずく別れてしまっても、秋瀬としてはまずかったはずだ。
越前が言ったように怪我のこともあるし、仲間を作ろうとしなければ、逆に『泳がせておく意味がない』と判断されて、すぐに襲撃されるかもしれない。
秋瀬が『グラウンド100周』を容認したのも、あのタイミングでの喧嘩別れはマズイという兼ね合いからだろう。

「それより。先輩達に会ったって話……聞きたいんスけど」

38中学生日記 〜遠回りする雛〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:08:28 ID:plMkkY2g0
ぼそりと呟くように、越前が話題を変えた。
天野雪輝のこれまでの経緯を聞く過程で、秋瀬が越前たちの知り合いに会ってきたことはそれとなく伝わっている。
綾波としても、越前が知り合いのことを聞ける機会は欲しい。
碇シンジが放送で呼ばれて色々とあった時も、越前の知り合いの名前は呼ばれていた。
越前だって痛みはあったはずなのに、綾波を支えるために、知り合いのことを思う時間を奪ってしまった。
話が長くなるからと、秋瀬は越前から数取器を受け取る。
数える役割を交代して、切り出した。

「真田君に会ったのは、ゲーム開始から5時間ぐらい経過した頃だよ」

語られるのは、真田弦一郎という古風な中学生との出会い。
そして、月岡彰という、『手塚国光と出会った』少年――のような少女のような、との出会い。
最初に、月岡が手塚との間にあったことを語り始めたこと。
バロウ・エシャロットとの戦いで、命を救われたという告白のこと。
最後までバロウを救おうと諦めず、出会ったばかりの月岡に託して『柱』を示した姿は、月岡の価値観を揺り動かしていたこと。
月岡彰の経験した殺し合いの話を聞き、真田弦一郎から『反逆する』という意思を聞き。
そして、月岡は『新しい自分』になると宣言した。

「『過去に行った攻撃を、再び発生させる能力』のこと。
その情報をもって、彼に対抗する戦力をつくって欲しいこと。
そして、『お前たちが柱になれ』。
確かに、伝えたよ」

カチリと周回をまたひとつ記録して、秋瀬は息を吐く。
綾波からすれば、ただ言葉もない。
綾波レイから碇シンジを奪った少年は、越前リョーマからも大事な人を奪っていた。
越前にとっては既知だったのかもしれないが、閉じこめられていた綾波には初耳だ。
血のにじみそうなほど唇を噛んだまま聞いていた越前は、やっとというように声を出す。

「月岡ってひと、もう放送で呼ばれんだっけ」
「第二放送で呼ばれたね……真田君と一緒に」

それは、手塚国光が助けた命が、もう潰されたということ。
二人の宣言がどうであれ、夢破れたという敗北の証明。

「秋瀬さんから見て、その二人、どうでした?」
「どう、とは?」
「負けるはずなさそうだった、とか。逆に、危なっかしかった、とか」
「そうだね……」

カチリとボタンを押し、思い出すように目を細める。

「できれば後ろも見て欲しいな、とは思ったよ」
「後ろ?」
「新しい道を見つけたばかりで、前だけ見ていたという印象を受けたね。
もちろんそれは良いことだし、最後までそれを貫けそうに見えた。
危うさを感じたとしたら、それが正道だからこそだろうね」

正道に目が眩んでいるからこそ、詭道への備えは怠りがちに見えたということか。
月岡彰は、本来ならばそういう詭道こそに精通していたはずの少年だったという。
もし彼らにもっと時間が与えられていれば、正々堂々と戦わずに背中を狙う者の存在を考慮におけるような余裕が生まれ、その時こそ死角無しの布陣として成立していただろう。

「もちろん、勝手な印象だけどね」
「どうも…………続けて」

印象論で知り合いのことをとやかく言われた割には素直に頷いて、越前は促した。

39中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:10:12 ID:plMkkY2g0
「遠山君のことは、さっき聞いていたね。
跡部君とは、直接に出会っていないよ。
ただ、いちど遠山君たちと別れて間もないころに、彼の話を聞いた」

神崎麗美と、出会った。
その名前を出されて、越前の肩がぴくりと上下する。

カチリ、と周回を刻む音。

「時間から言って、君たちと神崎さんが別れた後、そして学校で雪輝君たちと接触する間のことだね」

秋瀬或に対して神崎麗美が言ったことはは簡略に説明されたけれど、およそ天野雪輝や越前らに話したことと同じベクトルの言葉だった。
ただ、新しく分かったのは、跡部景吾が首輪のことを調べて、それを手がかりとして残していたということ。

「腑に落ちないと言えば、首輪を透視して内部構造を調べたとか言っていたことだけれど……」
「跡部さんなら、できるから」
「君や遠山君を見た後では、『そういう世界なんだ』と思うしかないようだね」

左手親指でカチリと数取器をカウントして、人差し指と薬指で、補修されたメモ書きを持ち上げる。
そこには、診察室で待機する間に書き残したらしい秋瀬の手によるメモ書きも数枚加えられていた。
メモ用紙の下には、ツインタワービルから高坂が持ち出して、綾波が手渡した『未来日記計画』の書類も置かれている。

「彼女は少なくとも、跡部君たちと仲良くやっていたようだね。
メモを完全には処分しきれなかったのも、だからこそだと思う」

雪輝君まで煽ったことに腹が立たないでもないけれど、元をたどれば我妻さんのせいでもあると、走る少年を見て言った。

「でも、最後に菊地君といた時は、安らかだった……」

秋瀬にもすでに伝えたことを、綾波は口にする。

「そうらしいね。僕たちには伸ばせなかった手を、その少年は伸ばしたんだとか」
「あの時……」

言いかけて、越前は言葉を止める。
信じてもらえるか自信がないように躊躇い、顔を伏せて。

「あの人の声で、『助けて』って言われた気がした……」
「私にも、聞こえた。たぶん高坂君にも」
「なら、君たちは間に合ったということだよ」
「そうかな……」

越前の声は、彼らしくもなく自信がなさそうだった。
あったかもしれない和解が目の前で消えたことに、まだ思うことを残しているのかもしれない。
話を締めくくるように、秋瀬が続く経緯を話した。

40中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:11:21 ID:plMkkY2g0

「その後、僕は浦飯君たちと再合流して、レーダーから我妻さんを感知する。
常盤さんが『白井黒子』とか名乗っていたらしいことは引っかかるけど、また会ってみないことになどうにもならないだろう。
そして、学校方面へと進路を変えて今に至るというわけだね」

カチリ、とまた一周。

神崎麗美と同じ制服を着ていたことから、『白井黒子』が菊地たちのクラスメイトの『相沢雅』か『常盤愛』である可能性は高い。
『相沢雅』は第二放送で呼ばれたこともあるし、十中八九で『常盤愛』だろうと落ち着いた。

「僕が直接間接に動向を聞いたのは、その4人だね。
切原君という知り合いのことも、真田君から聞いてはいたけれど」
「あの人はあの人で不安かも。真田さんの名前が呼ばれたし」

話に区切りがつき、全員がそれぞれに分かったことを噛みしめる。

「どうもっス。皆のこと、話してくれて」
「僕としても、義理は果たしたかったからね。
それに、こちらこそツインタワービルのことや、会場の端に関する手がかりも得られたし」

車椅子の手すりに左手で頬杖をついて、越前はぼんやりとしていた。
綾波には疲れているようにも、思慮にふけっているようにも見える。
そんな顔のまま、吐きだすように言った。

「残していったものを貰うのは別にいいんだけど。できる範囲で、貰うけど。
それでも皆、死にたくなんてなかったと思う」

締め切られたカーテンの隙間から西日が差し、細い朱色の光線を室内に走らせていた。
陽が、まもなく沈もうとしている。

「部長は、後悔とかしてないだろうけど。
でも、生きて、プロになるって夢を叶えて、大人になりたかったと思う」

生きている越前が、そう言った。
生きている秋瀬が、答える。

「そうだね。色んな中学生に会ったけれど、皆が生きたいと思っていたよ」

中学生しか、ここにはいない。
出会った人物の話をするうちに、そのことは自然と分かってきていた。
東京の進学校に通っていたという、菊地とそのクラスメイト。
富山県の、ごくごく緩やかな校風の中学校に通っていたという杉浦綾乃。
使徒によって滅ぼされかねない都市で、それでも学校に通っていた碇シンジたち。
常識的に呑み込めない部分はあるけれど、それでも彼らなりの部活動に青春をかけていた越前たち。
平凡な生活をしていたはずが、突然に『神様』の主催する殺し合いに巻き込まれたという高坂たち。
高坂が出会ったマリリンや、何人も殺したというバロウのような、『能力』を持った少年少女たちにも、学校でクラスメイトと笑い合ったりしていたのかもしれない。

「何人かに、動く動機を聞いて回った。
答えられない人。ヒーローになりたい人。反逆者。意思を継ごうとうする者。
みんな、それぞれの世界を持っていたよ。好きな人と星を見に行くことも、その一つだね」

41中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:13:26 ID:plMkkY2g0

眼前を息を切らした少年が通過するのに合わせて、カチリとボタンを押す。
“願い”を認めてもらうための、変わった儀式だった。

「でも、いたんだ」

それだけの短い言葉に、綾波は右隣の少年を見る。

「みんな……ちゃんとここにいたんだ」

それだけ。
声が、感情の発露を堪えるように震えている。
みんな、いた。
その事実が、噛みしめるほど重要なことであるかのように、越前はもう一度繰り返した。
そんなに動揺すべきことだろうかと首をかしげて、綾波は思い出す。
綾波は、最初の放送よりもずっと前から二号機パイロットと遭遇していた。
しかし彼の場合は、遠山金太郎の遺体に出会ったのが最初だった。
次々に名前を呼ばれていった人々は、ちゃんとここにいた。生きていた。
それが、どれほどの重みを持つのか。

「越前君。私や、天野君に遠慮することは無いと思う」

彼が『それ』を堪えるのは、自分や天野雪輝が『それ』を持てずにいるからではないか。
そんな可能性に思い至り、綾波はあてずっぽうに言っていた。
言葉にしてから、不思議なことだと思う。
少なくとも出会った頃の彼は、自分のやりたいことをするのに、他人に遠慮を働かせただろうか。

「……俺、最初の放送の時に、もう済ませてきたから」
「理由になってない」

恥ずかしげに、しかし明確にうろたえつつ言い訳するのを見て、やはりと綾波は反論をふさぎにかかる。
カチリと、またボタンが押されるのを横目にして。

「碇君の名前が放送で呼ばれて、高坂君がいなくなって、分かったことがある」
「…………」
「『悲しい』って、とても辛いものだった」

それまで、誰かの生き死にの話で、壊れそうな思いをすることなんて無かった。
いざという時は、ほかならぬ自分自身が真っ先にそうなるものだったから。

「だから、それを表せない私の代わりに、それが出来るあなたにはそうしてほしい」

……っ、と。
のどを鳴らすような音が、彼の口元から聞こえた。
数呼吸を挟んで、口が開く。

「高坂さん……いい人だったよね」
「うん」

42中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:14:11 ID:plMkkY2g0

ぽつりと、ぼそりと。

「アイツ……暑苦しいくらいに騒々しくて。
顔を合わせたら、いっつも『勝負だ』ばっかり言ってた」

いきなり、別人のことへと話題が飛ぶ。
しかし、誰のことを話しているかは理解できる。
碇シンジの時、高坂の時に、自分は彼からどうしてもらったのか。
それを思い出した綾波は、車椅子の手すりにおかれた左手に、自身の手を重ねて握った。

「うっとうしかったし……楽しそうに乗っかるのも何か気に食わなかったから。
いっつも……適当にいなしてきたんだけど……」

まるで、感情を呼び起こすための契機とするかのように。
声はどんどん、先細りするように小さくなる。
聞いて欲しくないのか、それとも、誰かに告げてしまいたいのか。
息のかかる距離で、綾波は、その懺悔を聞きとった。

「もっと……いっぱい、試合してやればよかった」

言い切るやいなや、越前の左手が右手をつよくかたく握り返してきた。
頭にある帽子は斜め前に深く被られて、綾波たちから表情の上半分を隠している。
かすれるような嗚咽の音が、帽子のツバの向こうから聞きとれた。
もしかすると、人前で落涙させるという行為は、いたたまれないことだったのかもしれない。
それでも越前は、よく表情の変化をごまかす時にするように、顔をふせて深くうつむくことはしなかった。

カチリと。
眼前を通り過ぎる、天野雪輝の『本気』を見届けるために。

頬をつたいきった涙をユニフォームに雫として落とし、それでも、走る少年に視線を向け続ける。
天野雪輝が顔を真っ赤にして、歯を食いしばるように、ただ走って行く。

綾波レイは、こんな時にどんなことを言えばいいのか知らない。
だから。
せめて、涙が止まるまで。
右手が痛いぐらい、我慢することにした。
泣き顔で顔を赤くする少年と、顔を真っ赤にして走る足を止めない少年。


――がんばれ。

そんな言葉を、送りたくなった。


【回帰】

息が苦しい。
足が重たい。
心臓が爆発しそう。
顔が酸欠で発熱している。
全身がもう勘弁してくれと叫んでいる。

なんで、こんな思いをしてまで走ってるんだっけ。

43中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:14:57 ID:plMkkY2g0
今が何十周目なのか、もう雪輝はさっぱり覚えていやしない。
数えられなくなったというより、『あと78周……』など意識すれば絶望的な気持ちになってしまうので、
そのうち数えるのをやめたという方が当てはまる。
周回のカウントは、先ほど越前と交代した秋瀬がボタンを押しているので、まず不正はないはずだが、
その三人がふらふらの体で走っている雪輝をさしおいて、別の話題らしき情報交換で盛り上がっているのも恨めしい。
いや、理屈で考えればじっと100周分を待つよりもこの時間を有意義に使った方が今後の為になることは理解できるのだが、
人が未だかつてないほど走らされている時に……という感情論は止められない。
しかも命令した当人である越前は、なんか泣いてるし。本気を見せろと言ったのはお前のくせに。
しかも、女の子と手とか繋いでいるし。
嫌味か。元恋人から命を狙われている独り身への嫌味か!

それでも、なぜか走っていた。



(まさか、『グラウンド100周』なんて答えるなんて……)

気持に収まりをつける手段として、危害を加えられることは覚悟していた。
しかし、まさか走らされるとは。
断りきれなかったのは、好きな人のために何でもできるなら、それぐらいできるはずだという安易な挑発に乗っかってしまったから。
そして、『本気を見せて』と言った声と顔に、こちらを侮ったり見くだしたりする感情が無かったからか。
走る雪輝を見定めることで、何かを変えようとするかのように。

(そっちに歩み寄ってやるから、僕もこっちに来い……って、ことなのかな……)

疲れた。しんどい。息が切れるなんて感覚ですら、長いこと忘れていた。
体を動かすなんて、まさしく一万年ぶりだ。
殺し合いが始まってからも何回か走ったけれど、逃げるためだったり、助けを呼ぶためだったりで、意識する余裕なんてなかった。
いや、一万年前の殺し合いでも、たぶんそんな風だった。生き残るために、殺すために、必死だった。
いつ以来だろう。
ただ駆けるために、走っているのは。



――ちっぽけでも抗ってみるがいいさ。その想いが親父さんに届くように。



(そうか……病院とか、リハビリ室とか、懐かしく思ったわけだ)

44中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:15:40 ID:plMkkY2g0



父親が、見舞いに来た。
両親が離婚してから会いづらくなっていたから、親子で一緒に何かをするのは楽しかった。
体力測定の種目で勝ったら、願いを叶えてくれると言われたから。
母さんと再婚してほしい、と言った。
一万年経ってから思い返せば、じつに子どもじみた訴えだと分かる。
両親が離婚した原因も知らないのに再婚を要求するなんて、それこそ両親にのっぴきならない事情があったらどうするつもりだったのやら。
(実際、事情はあったしそのせいで後に父が死んだのだが)
雪輝自身も、最後に高台へと競争する頃にはそういったことを自覚していて、諦めかけていた。

――抗い続けることで届く奇跡というのもある。

そうやってすぐに諦めるのがお前の悪いところだと、ある女性から指摘された。
しんどかった。苦しかった。もう無理だと思った。
でも、もしかしたらと、期待した。
今と同じように、赤く染まる夕陽を感じながら、走った。

――ちょっとくらい辛いことがあったって、諦めるにはまだ早いねん。だいたい、そんな簡単に諦めるからジジくさく見えるんやで。
――何が、『もう手遅れ』だよ。なんで、そこで諦めてんのさ。

精いっぱい頑張っても積んでいたのに。
どいつもこいつも、同じことを言う。

――たいがいは届かないんだ。

嘘つき。
後に、同じ女性からそう言われた。

カチリ、という音で、また一周を重ねたのだと知る。
ゼェハァと、荒い呼吸がのどに痛かった。
顎をつたう汗が、体を流れきってリノリウムの床へと落ちる。
なんで、こんな汗を流してるんだろう。
走り切ったからといって、何かが変わるとは限らないのに。
由乃を迎えに行くための方策を考えるとか、すべきことはいくらでもあるのに。
あの時も、届かなかったのに。

再婚を考えると言ってくれた父親は、その為の資金を援助すると唆した11thに殺された。
喪ったものを取り戻したくて、生き返らせるために神様を目指そうとしたら、ワガママだと非難されて、由乃以外の味方がいなくなった。
誰も殺したくなんかないのを我慢して人を殺したのに、生き返るなんて嘘だった。
最後にただ1人だけ、失うまいとした最愛の人は、追いかけたら追いかけないでと拒絶した。

45中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:16:53 ID:plMkkY2g0

流れたものは戻らない。
一度流れた物はどんなに手を伸ばしても掴むことは出来ない。
部活動の練習で流した汗も時間が経てば消えてしまう。
流れた物は形を変えて残ることも在る。
流した汗は努力の結晶となり自分を成長させてくれる結果に変わる。
しかし、それでも、届かない。
目指した頂点を、輝く栄光を掴みとれるのは、ごく限られた人間たち。
努力すれば結果が帰ってくるなんて、夢見る子どもを励ますための方便だ。
流した汗は、報われない。
抗っても、奇跡には届かない。
それが世界だ。それが『願い』に狂った人間たちの作る世の中だ。
『願い』に狂った、大人が嫌いだった。
『願い』を勝ち取る力のない、子どもでしかない自分が嫌いだった。

頭がふらふらする。
苦い記憶ばかりを思い出す。

(なんだ……僕は、けっこう覚えてるんじゃないか)

そんなことを自覚して、苦笑する。

まさしく、走馬灯と言うべきか。
滝のようにどころか、洪水のように汗が噴き出す。
誇張でも何でもなく『死ぬ』と思った。
さっきも水分補給をしたはずなのに、のどが渇いてヒリヒリする。
倒れる。倒れてしまおう。
だいたい100周って、1周が80m足らずだとしても8kmあるじゃないか。
いくら神様でも体はただの中学生なのに、はじめからそんなの無理だって。



カチリ、と音がした。



「あと5周!!」



耳朶をうつ越前の声に、え、と顔をあげる。
振り返れば、越前がいつの間にやら秋瀬から数取器を受け取り、手のひらをパーにして『5』という数字を示していた。

いつの間に。

『5』という数字に、頭が空白になる。
しかし、言われてみれば。
時間の感覚がなかった。
一時間なのか二時間なのか、放送はまだだから三時間はないはずだけれど。
越前たちがあれだけ話し込んだり泣いたり泣きやんだりしていたんだから、
それだけの距離を走っていてもおかしくない。
倒れこもうとしていた足が、次の一歩を踏みしめていることに気づく。

46中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:17:45 ID:plMkkY2g0

もう、走れない。そのはずだった。
でも、あと少しだけ。
100周のうちのたった5周ぐらいなら?
いや、せめて1周でも、100周に近いところで。
乳酸のたまりきって鉛のようだった足も少しだけ軽くなったように感じられ、
そんな自分の現金さがおかしかった。

汗を流して、必死になっている。
生きている、そんなことを思う。

願ってもかなわないと、嫌と言うほど思い知らされた。
ならばなぜ、天野雪輝はまだ“願い”を持っている?
なぜ、彼女のことを諦めない?

『……僕は――――"神様"なんだ』
『……あまのがかみさま?』
『うん、一応神様って事になってるんだ』

神様だと、自認することから始まった。
一万年ぶりに出会う、他者という存在。
誰かに見つけられて、嬉しくなかったと言えば嘘で。
そして、一万年ぶりに彼女を見つけた。
ユッキーと、彼女だけの名前で呼ばれる。
その次に待っていたのが、大好きな少女からの殺意を持った攻撃だった。
二度目のサバイバルゲームは、その手をつかみ損ねるところから始まった。

『大事なのは、天野がどうしたいのかってことやとワイは思うけどなぁ』

新たな友達は、最初からそう言っていた。

『何もやりたいことがないっちゅーんなら、ワイを手伝ってくれんか?』

その言葉に頷いた時、どこまでいっても甘さを捨てられない『天野雪輝』を自覚した。

そう、見捨てられないのが、天野雪輝だった。その相手を、一度でも近しい存在だと意識してしまったら。
9thには、最後までそのせいで怒らせた。
『すべてを救うのは無理だ』と分かっていても、『見捨てられない』と答えてしまう。



「あと4周!」



5周から、4周になった。
のどが痛い。室内が暑い。汗でベトついた体が気持ち悪い。
それでも、また1周ゴールに近づいた。

47中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:19:48 ID:plMkkY2g0



『名前は我妻由乃。できれば止めたいんだけど……』

忘却したつもりだったのに、本当は少しずつ思い出していた。
前原圭一に話していた時には、もうすでに『殺したくない』と意識していて。
彼女のことを想うにつれて。
思い出を、人に語るにつれて。
そして、傍観者の神様ではない、ただの無力な中学生でしかない挫折を知って。

『せやけど、天野の友達は天野を探してたかもしれん。ワイはそのことを考えてへんかった』

日野日向に謝る機会を失ったことで、取りこぼしたものの重さを知った。
雪輝にも、助けてくれたかもしれない人がいたことを、思い出した。

『我妻さんの言葉だけじゃなく、僕たちの言葉にも耳を貸してほしかった。
ご両親が死んだ時だって、暴走する前に僕たちに相談してほしかった。』

過去に喪われた友達から、叱られた。
苦しかったけど、嬉しかった。

取りこぼしてばかりの子ども時代だったけれど。
裏切りと嘘に満ちあふれた世界だったけれど。
かけがえのないものも、たくさんあった。

『由乃の分まで背負えるなら、どんな罰も受けるって思ってたんだ。』

だから。
いちばん『大事なもの』を、選んだ時の気持ちを思い出せた。



「3周!」



足は、止めない。
ノタノタと間抜けにふらつきながら、息を荒くして進む。
きっと、傍目にもみっともないほどにボロボロだ。
それでもいい。みっともなくても、足掻かないよりはいい。

『一兆を超えて、那由多の選択肢があったとしても。
僕は彼女を愛してる。誰に文句も言わせないぐらいに、愛している』

やっと、戻って来れた。
時間がかかって、遠回りして。
記憶を風化させた“時空王”は、“天野雪輝”を、取り戻した。



「2週!」


越前が指をブイサインにして、ぐっと前に突き出した。
泣きはらした目が、それでも強い眼光を宿らせて、推し量るように見ている。
視線と視線が、すれ違う瞬間に交錯した。
走り切ったら山ほど文句を言ってやると、心に決める。

48中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:20:28 ID:plMkkY2g0
(本当に、しんどい……遠山も高坂も、こんなふうに走ってたのかな)

そう言えば高坂も陸上部だったっけ、と余計なことまで思い出す。

『もっと、泣きそうな顔、しろよ……』

一万年前と、同じ痛みを味わった。
友達を殺した時に、泣いていたことを思い出した。
昔の友達から『泣け』と言われて、今の友達からは『笑え』と言われた。

『生きたかった、くせに!』

遠山金太郎にも夢があったように。
その中学生にも、『将来の夢』があった。

――大きくなったら、私がお嫁さんになってあげる。
――大人になったらね。

それだけの『夢』から、全てが始まった。

今になって思えば、お互いに『誰でもよかった』だけ。
お互いが、依存できる相手を探していたら、ぴったりはまった。

いびつな関係だったかもしれない。でも、ずっとそばにいてくれた。ずっと守ってくれた。
ずっとそばにいた。守るために、なけなしの勇気を振り絞ったこともあった。
守るために、死なせないために、必死だった。二人とも、ただの中学生でしかなかった。
あれが、彼と彼女の精いっぱいだった。
『誰でもよかった』は、いつしか『彼女でなければならない』になった。



『私ならそう言われただけで満足するかもしれない。
好きな人を殺さずに済んで、居場所をもらったまま終われるなら』



『好き』に自信のない少女と会話して、理解する。最後まで理解できなかった、最期の彼女のことを。
どうして、居場所をつくると言ったのに、死を選んだのか。
好きだから、殺せなかった。ただそれだけ。

言われてみれば、簡単なことだ。
三週目の世界に舞台をうつして殺し合いを始めてから、由乃はどんどん切羽詰まったようになっていった。
「あなたが好き。でも三週目には戻れない」と言い出した由乃は、雪輝を幻覚空間に閉じこめて隔離した。
きっと、あの時点ではもう殺せなくなっていた。
愛しているから、殺そうとした。愛しているから、殺せなかった。
愛しているから、愛すればこそ。

49中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:21:17 ID:plMkkY2g0

「ラスト1周!」



Question、あなたは、殺したくなるほど、誰かを愛したことがある?



Answer、あの時の、あの子と、同じぐらいには。



理解できたからといって、どうにもならない。
どちらかが死んで神の座を譲らなければ、どうあがいても詰みだった。
ただ、ちょっとだけ後悔した。

(好きな女の子の気持ちが分からない、なんてのは……やっぱり、駄目だよなぁ……)

たったそれだけの後悔が、違う選択肢を選ばせる。

(僕は、由乃に殺されない。もう、僕を犠牲にすることで解決したりしない)

抗いつづけることで届く奇跡もある。
走り続けるための言葉を思い出して、最後のピースがはまった。
また、抗おう。ただし、昔と今では違うところがある。
今度は、幸せにする名前に『天野雪輝』を加えたい。
由乃と『二人』で、星を見に行こう。



(涙も、笑顔も、由乃も、ぜんぶ取り戻す!)



天野雪輝は。



(僕は――!)



前のめりに、倒れた。




【対話】


天野雪輝は、倒れた。
越前リョーマたちの、目の前で。

完走と同時に倒れた。

50中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:21:50 ID:plMkkY2g0

「よく頑張ったね」

秋瀬或が雪輝のそばにしゃがみこみ、危険な症状はないかどうかを確かめる。
あいにくと片腕だったので、ベンチへと寝かせるのは綾波が手伝った。
二人してどうにか、汗だくの体を綾波たちのいた場所へと横にさせる。
リョーマはその様子を車椅子から見つめ、さすがに申し訳なさを顔に出した。

「……怒らないんスか?」
「もし走る途中で倒れたら同調して怒っていたけれど……その結果を見ればね」

秋瀬が見下ろすのは、越前の左手。
手のうちにある計測器の数字は、ぴったりと『90』をカウントしていた。

「ありがとう。雪輝君に歩み寄ってくれて」
「……あんまり足を酷使して、動けなくなっても困るから」

じっさい、ギリギリの見極めではあった。
ランニングでのへばり方を見ながら「この分では持たないな」と判断するのと、
「でも、走り切ったと思わせたい」との境界線を兼ね合わせるのは。

「でも、彼のことを認めてくれたんだね」
「『本気』は、見せてくれたから」

『本気』の何が見たかったんだと、言われたら困るけれど。
けれど、もう駄目だ限界だ助けてくれとボロボロの顔で、
それでも走るのをやめない姿を見た時だった。
高坂が、あれほどぼろくそに言っていたはずの雪輝を放っておけなかった心境が、分かった気がしたのは。
冷やしてある濡れタオルを取ってくると、秋瀬は運動室を出て行った。

「綾波さん……なんか、成り行きで協力を決めたみたいになったんスけど」
「構わないわ」
「一緒にいるとヤバい人に狙われるっぽいけど、それでもいい?」
「…………私、嘘をついた」
「嘘?」
「『碇君が死んだから、もう全部いい』って言ったこと。ごめんなさい」
「謝らなくても……」
「高坂君が死んだ時、悲しかった。今もまだ、痛い」
「…………」
「でも、ちょっとだけ安心した。あなたたちを、碇君の代わりにはしていないって分かったから」
「そんなこと、気にしてたんスか」
「高坂君がいなくなるまで、分からなかった。だから、分からないのは、嫌」
「うん」
「理由は説明できない。でも、自然に『構わない』と思ってたから。
意味はあるかもしれない。自分で分かってないだけで」
「回りくどい言い方だけど、『Yes』ってことっスか」
「越前君こそ、どうして?」
「何が?」
「高坂君のこと、私を責めなかったから」
「神崎さんの時に、オレだけのせいじゃないって言われたし。だったらその逆もそうだから」

そう言えば、と気づく。

「勘違いされてたら困るから言っとくけど……バロウ・エシャロットのことは許してないから」
「そうなの?」

51中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:22:35 ID:plMkkY2g0

天野と我妻のことを容認したことで、バロウも似たような認識だと誤解してほしくはない。

「当然。部長を殺されて、神崎さん殺されて、高坂さんも殺されてんだから」
「でも、その部長さんが助けようとしてた……」
「だから困ってるんじゃないスか。綾波さんだって、碇さんのことがあるし」
「私も、許せない。まだ、菊地君から話を聞けてないけど」
「俺も、知りたい。アイツとは決着つけたいから」
「碇君がどう殺されたのか聞いたら、また殺したくなるかも……」
「その時は一緒に考えればいいし」
「うん、高坂君も、『仲良くやれ』って言ってた」

そう言われて、すごく気恥ずかしいことを言い残されたんじゃないかと気づく。
どう返せばいいんだろうと、完全に言葉に詰まった。
しかし、綾波が先回りして言った。

「じゃあ、今後とも『よろしく』」

――よろしく。

確かに、自分がそう言った。
なら、返事をしなければいけない。

「……今後とも、『よろしく』」





「あ、起きたんすか?」
「ん……おはよう、コシマエ」
「寝ぼけてるんスか? ってゆーか、その呼び方……」
「だって、遠山がずっとこの呼び方だったから……水、のみたい」
「はい、最後のペットボトル」



「どうだった?」
「殴られた方が、万倍マシだった」
「『もう駄目だ死ぬ』って気分になるでしょ?」
「なったよ。もう一生分ぐらい……で、すっきりした」
「したんだ」
「色んなことを、思い出したよ……」
「ふーん」



「ぜんぶ、思い出したんだ。神様になる前の、ただの中学生だった時のこと」

52中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:23:13 ID:plMkkY2g0
「バカだったこと。子どもだったこと。取りこぼしたこと。
でも、必死だったこと。がんばったこと。嬉しかったこと。辛かったこと。
友達のこと。父さん母さんのこと。敵のこと。恋人のこと。
初めて、人を愛したこと。ぜんぶ」
「やっぱり、記憶喪失を治すには体を動かすのが一番っスね」
「なんだよそれ……で、僕に何か言うことがあるんじゃないの?」
「我妻って人のことは許せない。けど、生きて帰りたいなら協力する。
こっちはこっちで菊地さんたちと合流するから、いつまで一緒にいるかは分からないけど」
「8キロかそこら走らせただけで、凶暴な女の子に狙われてもいいんだ。
僕が言うのもなんだけど、お人好し過ぎじゃない?」
「さぁね。危なくなったら、綾波さんと二人で逃げるかも。
……天野さんは、これからどうするんスか?」



「やり直しが、したい」

53中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:23:57 ID:plMkkY2g0
「0から?」
「もう、0(チャラ)にはしない。
1から、やり直す。続きから始める」
「…………」
「何もできない“神様”じゃない。
ただの“中学生”だったけど、頑張ってた頃の僕を思い出したんだ。
なかったことにしない。全部、抱えて進む。もう絶対に忘れない」
「我妻さんが一番だけど、他の人たちも忘れない……なんか、矛盾してないっスか?」
「中途半端でいいよ。“抗って届く奇跡があるなら信じたい”。
これを否定したら、僕がしてきたことの全面否定になる」

「一万歳の“中学デビュー”ってこと?」
「学年は君より先輩だけどね」

ほとんど同時。
挑みあうように睨み合っていた両者の顔から、乾いた笑いが漏れた。





独りぼっちだった“時空王”は、もういない。
ただの好きな人がいる“中学生”になった。


【G-4病院/一日目・夕方】

【天野雪輝@未来日記】
[状態]:発汗、疲労、中学デビュー
[装備]:体操服@現地調達、スぺツナズナイフ@現実 、シグザウエルP226(残弾4)、 天野雪輝のダーツ(残り7本)@未来日記
[道具]:携帯電話、学校で調達したもの(詳しくは不明)
基本:由乃と星を観に行く
1:やりなおす。0(チャラ)からではなく、1から。

※神になってから1万年後("三週目の世界"の由乃に次元の壁を破壊される前)からの参戦
※神の力、神になってから1万年間の記憶は封印されています
※神になるまでの記憶を、全て思い出しました。
※秋瀬或が契約した『The rader』の内容を確認しました。

54中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:24:55 ID:plMkkY2g0
【秋瀬或@未来日記】
[状態]:右手首から先、喪失(止血)、貧血(大)
[装備]:The rader@未来日記、携帯電話(レーダー機能付き、電池切れ)@現実、セグウェイ@テニスの王子様、マクアフティル@とある科学の超電磁砲、リアルテニスボール@現実
[道具]:基本支給品一式、インサイトによる首輪内部の見取り図(秋瀬或の考察を記した紙も追加)@現地調達、火炎放射器(燃料残り7回分)@現実、クレスタ@GTO
壊れたNeo高坂KING日記@未来日記、『未来日記計画』に関する資料@現地調達
基本行動方針:この世界の謎を解く。天野雪輝を幸福にする。
1:天野雪輝の『我妻由乃と星を見に行く』という願いをかなえる
[備考]
参戦時期は『本人の認識している限りでは』47話でデウスに謁見し、死人が生き返るかを尋ねた直後です。
『The rader』の予知は、よほどのことがない限り他者に明かすつもりはありません
『The rader』の予知が放送後に当たっていたかどうか、内容が変動するかどうかは、次以降の書き手さんに任せます。

【越前リョーマ@テニスの王子様】
[状態]:疲労(大)、全身打撲 、右腕に亀裂骨折(手当済み)、“雷”の反動による炎症(数時間で回復)
[装備]:青学ジャージ(半袖)
リアルテニスボール(ポケットに2個)@現実
[道具]:基本支給品一式(携帯電話に撮影画像)×2、不明支給品0〜1、リアルテニスボール(残り3個)@現実
S-DAT@ヱヴァンゲリオン新劇場版、、太い木の棒@現実、ひしゃげた金属バット@現実
基本行動方針:神サマに勝ってみせる。殺し合いに乗る人間には絶対に負けない。
1:休んだら、菊地と合流。天野たちにはできる範囲で協力
2:バロウ・エシャロットには次こそ勝つ。
3:切原は探す。

【綾波レイ@エヴァンゲリオン新劇場版】
[状態]:疲労(小) 、傷心
[装備]:白いブラウス@現地調達、 第壱中学校の制服(スカートのみ)
由乃の日本刀@未来日記、ベレッタM92(残弾13)
[道具]:基本支給品一式、第壱中学校の制服(びしょ濡れ)、心音爆弾@未来日記 、隠魔鬼のマント@幽遊白書
基本行動方針:知りたい
1:休んだら、菊地と合流。天野たちにはできる範囲で協力
2:落ち着いたら、碇君の話を聞きたい。色々と考えたい
3:いざという時は、躊躇わない…?
[備考]
※参戦時期は、少なくとも碇親子との「食事会」を計画している間。
※碇シンジの最後の言葉を知りました。

55中学生日記 〜未完成ストライド〜 ◆j1I31zelYA:2013/12/05(木) 23:26:25 ID:plMkkY2g0
投下終了です。

そしてすみません、タイトル変更箇所を間違えました
>>37 からが「中学生日記 〜未完成ストライド〜」になります

56名無しさん:2013/12/06(金) 01:34:20 ID:2K9ld4s.0
投下乙です

これはいいわあ
みんながみんな、凄くそのキャラらしいてその上で、なんていうか『青春』してるわあ…
雪輝は、越前は、レイは、或は、なんて言っていいのか判らねえ!
ただ由乃と1からやり直せるのか期待してるぜ

57名無しさん:2013/12/07(土) 17:10:10 ID:opoz3o9cO
投下乙です。

0(空っぽ)の時空王から、好きな子とデートに行きたいだけの1人の中学生にジョブチェンジ。
雪輝の中学生生活は始まったばかりだ!

58名無しさん:2013/12/07(土) 22:38:50 ID:hpvaogwE0


ユッキーはこのロワで本当に友達に恵まれてるな

59名無しさん:2013/12/16(月) 18:59:34 ID:524KDu6c0
宣伝

一週間後の12月23日(月)に、交流所にて中学生ロワのロワ語りが開かれます。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/8882/1385131196/

60名無しさん:2014/01/15(水) 02:00:27 ID:UDhiGTqQ0
集計者さんいつも乙です
今期月報
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
86話(+1) 21/51(-0) 41.2(-0.0)

61名無しさん:2014/01/28(火) 01:00:09 ID:F2lyyivw0
予約来てた!

62それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:50:24 ID:swZanmDo0
 いつだったか。
 そんなに遠くない昔に、こんな話をしたことがある。
 喧嘩にもならず、翌日になれば自分自身でもころりと忘れるくらいの。
 ささやかな痛みを伴う話。

「……ただいま、黒子」
「あらお姉さま。そんなお顔をなさらずとも、寮監の目は誤魔化してありますから」

 湯浴みを済ませ、風呂場の扉を開けて出てきた白井黒子の目に飛び込んできたのは、今しがた『用事』を終えて戻ってきた御坂美琴だった。
 本当に丁度戻ってきたようで、鍵を開けておいた窓が開け放たれ、美琴は窓に足をかけていた。靴を脱ごうとしていたのか、片方の靴が床に落ちてひっくり返っている。
 加えて黒子がバスタオル一枚というあられもない姿で戻ってきたからか、間が悪いとも思ったようで美琴の表情はばつが悪いといった風情だ。
 が、黒子自身は特に気にすることもなくタオルを巻いたまま、すたすたと美琴の元まで歩いてゆきてきぱきと靴を片付け、もう片方の靴も寄越すように指示した。
 ほぼ裸なのは問題ない。勝手知ったる美琴との仲であるし、今時分の季節はすぐに着替えずとも体を冷やすこともない。何より、『用事』を済ませた美琴はいつも疲れている。
 窓際で待たせるわけにもいかなかった。

「いや、あんた先に着替えな……」
「お姉さまが先です。それとも」

 いつも奔放に行動しているくせに、こういうときだけは遠慮というか、自分を後回しにする美琴に、多少腹立たしい思いがないではなかった。
 にっこりと笑って「私の裸が見たいんですの?」と言ってやると、素直に美琴は靴を渡してきた。
 それはそれで多少残念ではあった。頑固にこちらを優先してこようものなら「私の裸を見たいお姉さまなら襲ってもいいですわよねー!」という屁理屈を捏ねて飛びかかれたのに。
 室内用のスリッパを投げてやると、美琴はそれを器用にキャッチして履き、ようやく窓から部屋へと『入った』。

「お帰りなさいませ、お姉さま」
「……ただいま」

 美琴は苦笑していた。ただ疲労はかなりあるらしく、そのままベッドに歩いていったかと思うとバタリ、と倒れるようにして動かなくなった。
 黒子は『用事』の中身は知らない。だが毎日のように夜遅くまで出て行っては疲弊しきって戻ってくる。それだけで大変どころではないものだとは分かるし、
 そこまでして為さなければならない『用事』が、少なくとも美琴にとってはかなりの重みがあるのに違いなかった。

「もう、お眠りになられます?」
「あー……。ううん、違うの。眠くはないんだ。疲れてる、だけ」

 ごろりと寝返りを打って、美琴は黒子に返事した。
 黒子は丁度着替え終わったタイミングであり、電気を消そうと思えば消せたが、こちらに視線を寄越す美琴は、まだそうしないでくれと言っているように見えた。
 一つ息をついて、黒子は自分のベッドに腰掛ける。本来なら無理矢理にでも寝かせるべきなのだろうが――、美琴が夜に殆ど眠れていないのも、知っていた。

「全く、何をしてらしているのか知りませんが」
「うん」
「話してくださる気はないんですのね」
「……うん」

63それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:50:58 ID:swZanmDo0
 ごめん、と小さく美琴は付け加えた。
 それだけで追及する気にはなれず、黒子は苦笑する以外になかった。

「そんな私がさ、こういうことを聞くとキレられそうなんだけど」
「はい?」
「黒子、無理矢理聞き出そうとかそういうことしないんだよね。意外に思ってる。なんでか、知りたいっていうか」
「あら、怒って欲しいんですの?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「ふむ」

 理由は、と聞かれられれば。
 お姉さまを信じているから……というのが究極的な答えになってしまう。そうとしか表現しようがないのだ。
 細かい理屈も、道理もない。学園都市第三位、正々堂々にして威風堂々。その上で努力も欠かさず、それを鼻にかけることもない。
 御坂美琴は黒子の考える理想像だったのだ。

「私はお姉さまを信じておりますので」

 恐らくは追及の口を開こうとしたのだろう、納得していなさそうに「それは嬉しいんだけど……」と言いはしたものの、後が続くことはなかった。
 美琴自身言えるような立場ではないからなのだろう。黒子としてもこの感覚的な信頼を上手く言葉にできる自信がなく、ならば『言えないことはお互い様』という落とし所にすることが正しかった。

「……嬉しいんだけどさ」

 それでもなお、美琴は未練がましそうにしていた。
 こういう正直すぎる性格もまた、信頼できる要素の一つだった。

「……もし、私がいなくなったら」
「あり得ませんから」
「そう言うと思った」
「仮定の話でもあり得ません」
「聞くだけは聞いてよ」

 そう言われては頷かざるを得ず、とはいえ真面目に聞くつもりなどひとつもない黒子はわざとらしく耳を塞いでやった。
 舌でも出してやろうかと思ったくらいだったが、それは流石に小学生でもやらないことなので我慢することにする。

「いなくなったらさ、きっと、なくしてしまった自分を責めると思うんだ」
「そうさせないようにお姉さまは頑張ってくださいな。応援はしてますから」
「努力はするからさ」

 冗談めかして言うかと黒子は思ったが、美琴は思いの外真剣な表情を崩さないままだった。
 いつものように寝転がったままの、いつも見ているはずの御坂美琴の、しかしひどく憂いたような言葉が、

「少しは考えてくれると、もっと……嬉しい」

 なぜだか、胸に突き刺さったのだ。

「……人のこと、言えますの?」
「そうね。ごめん。分かってる、でも、ごめん」

 だから刺のある言葉になってしまい、それ以上の会話は続かず、黒子は明かりを消してすべてを打ち切った。

     *     *     *

64それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:51:32 ID:swZanmDo0
 そんな、夢を見た。

 思い出したのは全ての情報を知って、少し間が開いた後。
 食事ということになって、料理が持ってこられるまでの間だった。
 殆ど調理が完了していたために黒子ができるようなことはなく、テーブルについて待つことしかやることがなかったのだ。
 やることがなければ――人は思いを巡らせる。正確に言えば、やることがなかったわけではない。黒子の周囲には人がいる。
 七原秋也に、竜宮レナ。今まさに最後の仕上げに取り掛かっている船見結衣。テンコだっている。
 話そうと思えばできた。できたのだが、できなかった。

『あかりを理由にして諍いを起こすのは、止めてくれねぇか』

 テンコの言葉が痛烈に響いていたことが、黒子に沈思の時間を与え、夢のことを思い出させた。
 なくしてしまったらどうするかなど、考えたこともなかった。いや、考えようとすらしなかった。
 あり得ないと本気で思い込んでいたからなのか。それとも、あり得ることを想像したくなかったのか。
 今の黒子には、本当に分からなかったのだ。

(……私に、正義を名乗る資格はないのかもしれない)

 想像さえしてこなかったことが、最後まで幸せを願っていた赤座あかりの想いを無視する結果になりかけ、
 考えるのを拒否したことが、自分の矮小さをここに至るまで覆い隠してきた。
 他者の想いを遠ざけ、自分に振り向きもしない。……それは、自分自身がもっとも嫌ってきた卑劣な悪ではなかったか。
 美琴は恐らく自分の内奥に潜むものの正体を見破っていた。自分は、気付かれたくなくて痛みを棘にして返した。
 自分は他者に依存しすぎているのだと。

(いいえ、それも少し違う……。信じたかったのは、自分を仮託できるもの……)

 己で結論を出さずとも、それを信じて従っていれば、己を安心させ、満足させてくれるもの。
 大義。正義。人であれ言葉であれ、白井黒子という人間は常にそれを探し続けてきた。
 正しいもの。善いもの。幸せなもの。信じれば、それを実現してくれるもの。
 《風紀委員》に入ったのもその一環だった。学園都市の治安を守り、風紀を取り締まる組織。
 そこで与えられる仕事は黒子の求めるものに近かったことはある。
 与えられた仕事の内容を見るだけで心が納得したものだし、こなしていれば相応に満たされた気分になれた。
 自分で考えずとも、自分が一番欲しいものを与えてくれていたのだ。
 大きくて、立派で、人生の一部を請け負ってくれるだけの価値がある、甲斐というものがあった。

(それでいいと、思ってた)

 黒子の能力はカテゴリーとして、《レベル4》、大能力者と分類される。
 学園都市の能力者としては上位に入るが、最高峰である《レベル5》には到底及ばないクラス。会社で言えば中間管理職的なものだ。
 下のクラスの能力者からはエリート層と妬まれることもあれば、上位の能力者からは歯牙にもかけられない位置でしかない。
 上層にいながらにして、学園都市の方向性を決定づけるような力を持たない。それが《レベル4》だった。
 必然、そんな中途半端な立場の《レベル4》は顧みられることも少なかった。上位能力者という肩書こそあるものの、その実情は《レベル5》の成り損ないというものに近かった。
 適正にもよるが、能力の伸びしろがない場合が多いのだ。黒子の『空間移動』にしても、個人で扱う分には強力無比なのだがあくまで個人レベルの話であり、
 戦術・戦略クラスの応用力を得るには至らない。能力の発動には黒子が触れていなければならないという制約もあり、数百、数千単位の空間移動を行うのは不可能に近い。
 その事実は、黒子の能力では決して《レベル5》には至れないことを示していた。発展性のない能力者に付き合うほど、学園都市の研究者は暇を持て余してはいなかった。
 黒子にとって、レベルがどうであるかはあまり気にすることではなかったが、そうして顧みられず、自由という名の放逐を受けた黒子は何をすればいいのか分からなかった。
 大能力者として正しい行いをしたいという気持ちはあれど、実際どのような形で貢献したらいいのかなど、能力研究者達が教えてくれるはずもなかった。
 だから、身を委ねた。
 何をすればいいのか分からないなら、分かっている者に任せればいい。自分はそれを信じればいいと。
 己が充足できるなら、それでいいのだと断じて。

65それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:52:03 ID:swZanmDo0
(その結果が、これだというのなら)

 後悔も、懺悔も、全てが遅い。
 白井黒子はもとより、全てを守れるような正義を持っていなかったのだから。
 御坂美琴のような、自らの想いを成し遂げるような心根の強さなど、なかった。

「……あの」

 認識の至らなさ。想像の欠如。そんなものしか持ち得ない自分自身に打ちのめされていた黒子にかけられた声は、つい先程まで七原と口論していたはずの船見結衣だった。
 手に持っているのはたっぷりと具が敷き詰められている肉じゃがの皿。見渡してみれば、七原にもレナにも皿が行き渡っていた。

「できたから、食べよう?」

 そんなただの呼びかけが、黒子の胸を突いた。
 こんな自分になにかを分け与えてくれることが、無性にやさしく感じたのだ。
 表情を変えまいとしたが、無理だった。
 口元がへの字に曲がった。瞼が震えた。七原との対話を経て感情を消化し、変えることのできた結衣が羨ましく――自分が、情けなかった。
 悔しい、悔しい。自分で自分を決められる、たったひとつの心を使いこなせない自分に、無力感よりもただ悔しさがこみ上げて仕方がなかった。

「ちょ、ちょっと」

 狼狽した風の結衣。七原もレナもテンコも黒子の異変に顔色を変えていた。
 おかしな話だった。守りたかったはずの赤座あかりの死を聞かされても、どうにか堪えていたはずなのに。
 涙が一筋、流れた。悲しいからではなく、あまりに自分が不甲斐なくて流した涙だった。
 守れなかった無念や罪悪感からではなく、自分がこの場の誰にも及んでいないことが悔しくて流した涙だった。
 こんなこと、少年漫画に出てくるような暑苦しい男でもなければないものだと思っていたのに……。

「なんなんだよ、大丈夫か?」

 結衣は一旦皿を下げようとして――、

66それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:52:22 ID:swZanmDo0
「……ちっくしょーーーーーーー!!!」

 直後いきなり奇声を張り上げた黒子が、
 黒子の豹変ぶりについていけず、硬直した結衣の手から肉じゃがの盛られている皿をむんずと奪い取り、
 まるでジュースを一気飲みでもするかのように、
 がーっと皿を傾け、口の中に流し込み、もりもりと頬張ったかと思えば、

「……ぅ」

 顔を青ざめさせて、

「白井さん!?」
「黒子ちゃん!?」
「お、おい白井!?」
「喉に詰まらせやがった!」

 倒れた。

     *     *     *

67それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:52:42 ID:swZanmDo0
 いつだったか。
 少しだけ遠い昔に、こんな経験をしたことがある。
 翌日になれば自分自身でもころりと忘れるくらいの。
 ささやかな痛みを伴う話。

 道に迷ったことがある。言ってしまえば迷子だ。
 小さかったし、その頃は能力も弱ければ街に慣れていきたばかりの状況でもあった。
 まだ日はそこそこ高かったのだが、このままでは日没になっても帰れない。
 もう道は知っているから大丈夫と、少しばかり近道して帰ろうなどと思ったのが間違いだった。
 気がつけば巡り巡って、黒子は全く知らない場所にいた。
 自分が住んでいるはずの街なのに、そこは別世界のように見えた。
 立ち並ぶ高層ビルも、道を歩く人々の姿も、空の色でさえも、普段見慣れているもの全部が正体不明のものにしか思えなかった。

 正しく恐怖だった。
 どこへ行けばいいのか分からないし、周りを歩いている人も言葉の通じない外国人のようにしか感じられない。
 何も頼れるものはなかった。何をすればいいのか分からなかった。
 いや、何もできなかった。泣き喚くことさえできなかったのだ。
 どうにもならないかもしれないという思いが、やってしまった後の先を想像することが怖いという思いが、感情の発露さえさせなかった。
 当て所もなく歩くしかできなかった。それで事態が解決するのかという問いは端から存在しなかった。出来ないという答えが出ることを恐れたからだ。
 だから、誰も黒子が迷子だなんて気付きはしなかった。普通に歩いているだけの子供にしか見えなかっただろう。
 よく見れば今にも崩れそうな表情で、前に出す足も細かく震えていることは見て取れるのだが、よく観察しないと気付けない程度でしかなかった。

「ねえ、きみ」

 誰にも顧みられない。今にしてみれば自業自得でそんな状況に追い込んだはずの、救いようのない情けない自分に手を差し伸べてくれたのは、

「さっきからずっとうろうろしてるけど、どうしたの?」

 正義、だった。

68それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:53:03 ID:swZanmDo0
「そっか、迷子か。怖かったよね。もう大丈夫だから」
「私? いいのいいの、実はあっちにも用事あったからね」
「にしても、そんなちっさいのにちゃんとお礼言えるのは偉いなぁ」

 どうしたのと言われ、迷ったと答えただけの自分を、その人は意を汲み取って、住所まで案内すると申し出てくれた。
 すみませんと言うと、その人は朗らかに笑って安心させてくれた。
 ありがとうと言うと、その人は褒めてくれた。
 そして、ずっと手を繋いでいてくれた。

「ま、人助けするのなんて《風紀委員》の当たり前の仕事だし、気にしなくていいよ。きみが気にするべきは、きみを待っててくれる人にだ」

 別れ際、もう一度礼を言おうとすると、その人は照れくさそうにそう言った。
 仕事だから。ついでだから。そう言いつつも本気で助けてくれたと黒子は信じたかったし、《風紀委員》の腕章をつけた姿はとても格好のいいもので。
 ただ甘えていただけの自分が、とても恥ずかしくもなって、身が引き締まった思いがして。
 ――そんな自分自身を、変えたかった。その人みたいな『正義』に、なりたかった。

     *     *     *

69それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:53:26 ID:swZanmDo0
「ぅ……」

 うめくような魘され声が静寂を破ると、視線が一斉に集まる気配がした。
 ソファの上に寝かせられていた、白井黒子へと。

「ここは……?」

 覚醒の兆しを見せてから、皆が集まるまでは早かった。

「……ようお姫さま、遅いお目覚めだったな」

 若干呆れるような響きがあり、それが前回とは違う点だった。

「ったく、アホだろお前」
「アホだよね」
「魅ぃちゃんくらいアホだったよ」

 ついでに悪口が三つほどオマケでついてきた。
 げんなりとした気分になったが、不快な気分ではなかった。
 泣いて、無茶して、少しだけ昔のことを思い出したからだろうか。

「そうですわね、私、アホなのかもしれません」

 軽く笑って起き上がる。そこで黒子は、自分に毛布がかけられているのにも気付いた。
 やさしいのだな、という実感が湧く。
 一時は一触即発になりかけた七原と結衣も、自分に冷や水を浴びせたテンコも、互いのことを殆ど知り得ていないはずのレナも。
 心配して、気遣って、仲間のような扱いをしてくれる。
 だから、白井黒子という人間は――。

「やっと、目が覚めました」

 自分で自分を決められる、たったひとつの心を使おうと思うことができた。
 正義や大義がなくとも、敬愛する御坂美琴がいなくなってしまうかもしれないのだとしても。
 その可能性を受け入れ、受け入れたうえで運命を様々に切り拓いてゆくことができるようになりたかった。
 失うことを是としたのではない。失ってしまうかもしれない現実を、ようやく受け止められたのだ。
 見向きさえしてこなかった当たり前のことを……、赤座あかりが、その方向に振り向かせてくれた。
 あかりだけではない。桐山和雄の行動だって、きっと無駄ではなかったはずなのだ。

「そうか、ならまぁいいんじゃねえの?」
「いいのかな……?」
「不満なのかよ?」
「いや、うん、なんというか……頑張って作った肉じゃがあっという間に飲み干されて倒れて、そんでもって自己解決してるみたいだし」

 あぁ、とテンコとレナが、結衣のぼやきに頷いていた。
 七原は涼しい顔をしていた。我関せずである。

70それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:53:47 ID:swZanmDo0
「い、いや、美味しかったですわよあなたの肉じゃが」
「百歩譲ってそれはいいよ」
「え?」
「無駄に心配させるな、ばか」
「……すみません」

 照れ隠しなどではなく、本気で恨みがましい目を向けられれば、素直に平謝りするしかないのが黒子の立場だった。
 それもそうだろう。あかりという大切な友人を喪っている分、結衣の傷は黒子などよりも遥かに深い。
 これ以上自分の目の前で人死にを出したくない気持ちが、辛辣な言葉を吐かせるのだろう。
 小さくなるしかない黒子を助けてくれる者はいなかった。必要なことだと誰もが思っていたからだった。

「反省するんだよ黒子ちゃん。いっちばん心配して看病してくれたの結衣ちゃんなんだからね」
「う……」
「……余計なこと言わなくていいから」

 態度で身に沁みて分かってるだろ、と言葉尻に付け足した結衣に、黒子は頭が上がらない思いをすることになった。
 実際に一番心配していたと言われれば申し訳ない気持ちでいっぱいになる。自分のあやまちに気付くための代償は大きかった。
 けれども、怒られて自分の中に芽生えた思いは『では何をしていたら良かったか』ではなく『この借りを、いつか彼女を助けて返してあげたい』であり、
 少なくとも自責の念を重石にしてしまうようなことは、今はなさそうだと認識し、消化することができている。
 そう。白井黒子は弱い。誰も守れないのかもしれない。守れなかった事実があり、この事実がいつかまた、黒子を苦しめるのかもしれない。
 やっと自覚できた心を引き裂き、潰され、以前よりも巨大になった絶望が自分を襲うのかもしれない。
 でも――。守れなくても、助けられるかもしれない。なにかを届けられるかもしれないし、伝えることができるかもしれない。
 全ては自分次第。自分に従って行動するというのは、きっとそういうことなのだろう。
 でも、ただで潰されてやるつもりだって毛頭ない。それでも自分は、『正義』を目指したいのだ。

(そうですわよね、お姉さま?)

 美琴ならこうするだろう、という問いかけではなかった。
 白井黒子という人間としての考えを示したかったから、空想の美琴に呼びかけてみたのだ。
 案の定、答えてなどくれなかったが……。

「さ、そういうことだし白井にはきっちり責任とってもらわないといけないな? 何しろ俺ら、お前が倒れてから食事に手を付けてないんでな」
「えぇー……」
「自業自得だ。さぁ温めなおしてもらうぞクロコ。給仕やれ、給仕」
「給仕! メイドさんだよ! はぁうぅぅぅ〜! メイド服とか欲しいよね〜!」
「……そういえば、荷物の……支給品かな、ちらっと見たら服があったようななかったような」
「げっ」

 結衣の発言に黒子が頬をひくつかせたのと、レナが瞳を怪しげに光らせたのは同時だった。
 逃げたくなった。七原ががしっと肩を掴んでいた。テンコが頭に乗った。重い。逃げられなかった。
 結衣がふっと小さく笑った。嵌められたと気付いたのはレナが怒涛のように走りだしていったときだった。
 寝ている間に、こいつらはグルになっていたのだ。

「まあ頑張れ。俺じゃあの二人と一匹は止められなかった」

 七原が真顔でそう言った瞬間、黒子は空を仰いで嘆きたくなった。生憎と室内だった。空も太陽も見えない。
 絶望的な気分だった。日本の未来は暗い。

「あぁ……不幸な……」

 皮肉なことに、黒子が発した言葉は、敬愛する美琴をよく困らせているツンツン頭の口癖とそっくりだった。

71それでも、しあわせギフトは届く ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:54:43 ID:swZanmDo0
【D−4/海洋研究所前/一日目・日中】

【七原秋也@バトルロワイアル】
[状態]:健康 、疲労(小)、頬に傷
[装備]:スモークグレネード×2、レミントンM31RS@バトルロワイアル、グロック29(残弾9)
[道具]:基本支給品一式 、二人引き鋸@現実、園崎詩音の首輪、首輪に関する考察メモ
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1:今はとりあえず、飯を楽しみにする。白井は諦めろ
2:食べ終わったら、白井も含めて話す。白井の能力についても確認したい。
3:首輪の内部構造を調べるため、病院に行ってみる?
4:……こういうのも悪くはないか

【船見結衣@ゆるゆり】
[状態]:健康
[装備]:The wacther@未来日記、ワルサーP99(残弾11)、森あいの眼鏡@うえきの法則
[道具]:基本支給品一式×2、裏浦島の釣り竿@幽☆遊☆白書、眠れる果実@うえきの法則、奇美団子(残り2個)、森あいの眼鏡(残り98個)@うえきの法則不明支給品(0〜1)
基本行動方針:レナ(たち?)と一緒に、この殺し合いを打破する。
1:白井さんは諦めろ
[備考]
『The wachter』と契約しました。

【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:穴掘り用シャベル@テニスの王子様、森あいの眼鏡@うえきの法則
[道具]:基本支給品一式、奇美団子(残り2個)、不明支給品(1つ。服っぽいのがある?)
基本行動方針:正しいと思えることをしたい。 みんなを信じたい。
1:黒子ちゃんをおもちゃ……じゃなくてメイドさんにしよう!
[備考]
※少なくても祭囃し編終了後からの参戦です

【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:精神疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式 、正義日記@未来日記、不明支給品0〜1(少なくとも鉄釘状の道具ではない)、テンコ@うえきの法則、月島狩人の犬@未来日記
基本行動方針:自分で考え、正義を貫き、殺し合いを止める
1:不幸だ……。
2:初春との合流。お姉様は機会があれば……そう思っていた。
[備考]
天界および植木たちの情報を、『テンコの参戦時期(15巻時点)の範囲で』聞きました。
第二回放送の内容を聞き逃しました。

※寝ていたのは10数分程度です。殆ど時間は経過していません

72 ◆Ok1sMSayUQ:2014/01/31(金) 20:55:27 ID:swZanmDo0
投下終了です

73名無しさん:2014/02/01(土) 05:36:27 ID:hpa/JGhg0
みんな頑張れ…!

74名無しさん:2014/02/01(土) 11:49:13 ID:yWLTRh42O
投下乙です。

悪い可能性も視野に入れて、その上で最善を目指そう。

75名無しさん:2014/02/01(土) 16:23:18 ID:zaBLbi.60
投下乙です

本当にみんな頑張って欲しい…!

76名無しさん:2014/02/02(日) 02:13:12 ID:PF7mRHN20
投下乙です。
今までやられっぱなしの黒子再起動。
潰されることを覚悟して正義を貫くのは強い。
ブレることはあれど、芯は決して揺らがない黒子はきっとこのグループでは輝くだろうなあ。

77悪魔の証明  ◆Ok1sMSayUQ:2014/02/07(金) 20:33:14 ID:TE2x/vZM0
 雪のように降り積もった記憶も。拵えた傷という名の栄光の残滓も。
 全て、全て。朱で塗りつぶせてしまえばいいのに。

     *     *     *

78悪魔の証明  ◆Ok1sMSayUQ:2014/02/07(金) 20:33:38 ID:TE2x/vZM0
 歩く。
 歩く。
 まるで幽鬼のように。

 ホテルから続く、舗装された道路。
 山の麓にあるホテルは一本道で街と繋がっており、そこを歩いていかなければ目的地にはたどり着けない。
 森を切り拓いて造られた道だからか、切原赤也の左右には等間隔で揃えられた杉の木が並んでおり、威圧的に赤也を見下ろすかのようにそびえ立っている。
 まだ午後に差し掛かるか否かという時間帯であるにも関わらず、森の奥は薄暗く、どうなっているかも窺い知れない。
 昼間でも幽霊が飛び出てきそうな、そんな不気味な道であった。車で駆け抜けるならいざ知らず、人の足で歩くには怖いくらいに沈黙を帯びた道――。

「……うるせぇ」

 打ち破るかのように、ではなく。
 苛立たしそうに、心底腹に据えかねているかのような、低く、敵意の篭った声色で、赤也は『言い返して』いた。
 赤也の覚束ない足取りの原因。全てを殺し、全てを無に返そうと決めて歩き始めた瞬間から。
 世界を全て朱で染め上げてやろうと絶望した瞬間から、赤也の耳には、亡霊の声が聞こえていた。

「うるせぇってんだよ!」

 誰ともつかない……いや、見知った人間全ての声色でなにがしかを囁くそれは、亡霊以外に表現しようのないものだった。
 何を言っているのかすら判別はつかず――、しかしその時には、置き去りにしたはずの顔たちが、過ぎってしまうのだ。
 赤也にはそれが我慢ならなかった。亡霊の言葉の中身が分からないことよりも、自分が一番知っているものをちらつかせる事の方が腹立たしい。
 まるで「思い直せ」とでも言われているようで。「間違いはまだ正せる」と言われているようで。
 そんなに……そこまでして、自分を否定したいのか、と赤也は目を血走らせて、握ったテニスラケットを振るった。

「ネチネチ言ってんじゃねぇよ! いるんなら出て来い! 俺がテニスでブッ殺してやる!」
「俺がそんなに憎たらしいってか!? そんなに俺がおかしいかよ! ヒト殺して叶える夢なんか夢じゃないってか!」
「なら力づくでも止めてみろよ、出来ねぇよなぁ! テメーらは俺を見下ろすだけだ! 降りてくるつもりもない傍観者だ! 俺はそんなの恐れねぇ!」
「そうだよ、テメーらは副部長でも、手塚国光でも跡部景吾でもねぇ! だからそんなツラ見せんじゃねぇ! 声を聞かせんじゃねぇよ!」
「だから!」

 人に見つかっても構わないとばかりに赤也は大声で怒鳴り散らし、感情を発散させ、

79悪魔の証明  ◆Ok1sMSayUQ:2014/02/07(金) 20:33:56 ID:TE2x/vZM0
「だから……! 俺を間違ってるなんて言わないでくださいよ……! 俺を置き去りにして、行っちまったくせに……!」
「自分勝手に死んじまったくせに、俺に強くなれって言うのは、勝手過ぎるんだよ!」
「そこまで言うなら……俺を救ってくれよ……」

 最早涙も出なかった。悲しみさえ流し尽くした赤也の体には紅く流れる悪鬼のような血潮しか残っておらず、
 それでいて尚、腹の奥底に沈殿する哀しみが、赤也を鬼ではなく人たらしめていた。
 故にこそ――、火で体を炙られているかのような苦しみで、喘ぐことしかできないのだ。

「どうせ出来やしない」

 それが分かっているから、赤也は悪魔という仮面で蓋をする。
 償却されない思いを、暗黒の深淵に落とし込んで、自分にはもとより希望などというものはなかったと結論をする。
 絶望が苦しいなら。克服するためには。自らが『それ』になるしかなかった。
 虚無と言う名の狂気に身を委ねたのだ。

「俺は、『悪魔』なんだからなァ! 誰にも俺は救えねェよ!」

 死んでいった仲間たちに、合流できていればという後悔も。
 出会った人間全てに裏切られたという失望も。
 自分だけが残された苦痛も。
 全て押し込めて、忘却する。

「『悪魔』じゃねェならさァ! 俺が『悪魔』じゃないって証明してみろよ!」

 天を仰ぎ、哄笑を撒き散らす。
 赤也の歩く道の後ろには、ラケットで殴られ薙ぎ倒された木々がある。
 悪魔化した赤也ならば容易いことだった。彼は一流のテニスプレイヤーでもあるのだから。
 もう車は通れないだろう。ホテルに戻り、野ざらしのままの『副部長』の遺体を改めて埋葬するという考えも消した。
 ――聖域を、赤也は自ら閉ざした。

「見とけよ」

 亡霊のいるそこに。黙して動かないそれに、赤也は凄絶な天使の微笑みを投げた。

「俺は常勝無敗、立海テニス部の切原赤也だ」

 踵を返す。
 誰もいない方へ。
 敵のいる方角へ。
 もう、戻れない道へ。

80悪魔の証明  ◆Ok1sMSayUQ:2014/02/07(金) 20:34:14 ID:TE2x/vZM0




【C-5/一日目・日中】


【切原赤也@テニスの王子様】
[状態]:悪魔化状態 、強い決意、『黒の章』を見たため精神的に不安定、ただし殺人に対する躊躇はなし
[装備]:越前リョーマのラケット@テニスの王子様、燐火円礫刀@幽☆遊☆白書、月島狩人の犬@未来日記、真田弦一郎の帽子
[道具]:基本支給品一式、バールのようなもの、弓矢@バトル・ロワイアル、矢×数本
基本行動方針:人間を殺し、最後に笑うのは自分。誰にも俺は救えない
1:全員殺して願いを叶える
2:敵のいる方角へ向かう
[備考]:余程のことがない限り元に戻ることはありません。

81 ◆Ok1sMSayUQ:2014/02/07(金) 20:34:40 ID:TE2x/vZM0
投下終了です

82名無しさん:2014/02/07(金) 21:02:24 ID:AouEF8P60
投下乙です。

修羅の道を自分で選んで歩いているのに
選んだ本人が一番苦しんでるというのが切々と伝わる
果たして海洋研究所に降るのは、血の雨か涙の雨か…

83名無しさん:2014/02/12(水) 21:59:10 ID:U8T1c3Lw0
投下乙です

ロワだからなあ
蠱毒の中の地獄に曝された結果だわなあ
だがまだ果てではないはず
救いは訪れるのだろうか…

85名無しさん:2014/03/15(土) 00:25:53 ID:z6lJDEn60
集計者さんいつも乙です
今期月報
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
88話(+2) 21/51(-0) 41.2(-0.0)

86名無しさん:2014/03/22(土) 21:29:52 ID:z20cxyPI0
予約きてるな

87名無しさん:2014/03/22(土) 23:01:21 ID:4SVm960.0
一ヶ月半ぶりだなぁ

88 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:36:16 ID:t8Y9JLNo0
予約分、投下します

89最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:38:33 ID:t8Y9JLNo0
常磐愛と宗屋ヒデヨシの戦いは、膠着していた。
蹴り、掌底とバラエティに富んだ攻撃を繰り出している常磐を、ヒデヨシは嗤って躱す。
見切っているのに、何の反撃もしないといった舐めた姿勢を彼は見せ続ける。
どれだけ踏み込んでも届かない攻撃に歯痒い思いをしながらも、常磐は攻撃を続行した。

「よく見ると、大したことねぇな……オレでも躱せるぜ。ぶっちゃけアンタ、弱いだろ」
「ッ! 舐めるなっ!」

放った蹴りの一撃は全てギリギリの所で躱され続け、徐々に常磐の頭には焦りが生まれていた。
このままだとジリ貧で不利になる。
だが、思いとは裏腹に戦況は悪化していく一方だった。
連続した攻撃を繰り出すことによる疲労、事あるごとに紡がれる口八寸。
一向に閉じることがない彼の口からは挑発、嘲笑といったこちらの心情を逆撫でするものばかりだ。
抱いた決意が揺らぎ、動きが鈍くなる。
彼の言葉によって、冷静さを幾分か失った攻撃は単調になり、相手に付け入る隙を許していた。
ああ、これはやばい兆候だ。緩みかけた綻びを無理矢理に縫い合わせ、常磐は一心不乱に攻め続ける。
誇れる自分でありたい。胸に湧き出る思いを燃料に、常磐は足を前に踏み込んだ。

「負けられない、あんたには絶対!」

ヒデヨシが真正面から戦うタイプではないってことは大体は察知できる。
だからこそ、自分達に対して情報で撹乱するといった戦法を取ってきたのだろう。
身体能力も、積み重ねてきた経験も自分より大したことないはずだ。
そうに決まっている。こんな下種野郎よりも、自分は“かわいそう”なのだから。

「悲劇のヒロインぶってるんじゃねぇよ。そういうの、ぶっちゃけ気持ち悪いぜ?」
「うるさいっ、うるさいっ!」

動いた足は空を蹴り抜くだけで、ヒデヨシには届かない。
それは、誰が見てもわかる当たり前のことだろう。
自分の感情も抑えれない未熟な女子中学生の癇癪が、彼に届くはずもない。
常磐に比べて、ヒデヨシはバラすことが不可能なぐらいに固まっている。決意も、想いも、行く末も!
凝り固まった意志は強く定まっているのだから。

90最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:42:16 ID:t8Y9JLNo0

「うるさいのは、お前の方だと思うんだけどな」

振り絞られたヒデヨシの拳を知覚するまでもなく、衝撃が常磐の腹部を貫いた。
攻撃の隙間をすり抜けた一撃は重く、身体を大きくのけぞらせる。

――ああ、アンタは弱っちいな。

侮蔑の情を受け、常磐は更なる激情に身を焦がす。
絶対、負けてなるものか。せめて、勢いだけは優勢を取り続けていたい。
口から吐き出された息を無理矢理飲み直し、常磐は反撃の回し蹴りを放つが、軽々と避けられる。

「というか、舐めるなって言うけどさ。ぶっちゃけそれさぁ、こっちのセリフだぜ?
 アンタなんか携帯見ながらでも余裕だっつーの。へへっ、どうしたんだよ、その顔は。ムカついたか、三下?」

こんな下種野郎に遊ばれている。いつでも、殺すことができるのに手心を加えられている。
それに気づいた時、常磐の平常心はもうどこにも残っていなかった。
ふざけるな、黙れ。心中に生まれた燃え滾る激情を蹴りに込める。

「ぶっちゃけ、楽勝だよなぁ」
「ふざ、けんなっ!!!!!」

眼前の敵をぶっ飛ばすことしか頭に入っていない常磐は、ヒデヨシが手に握りしめている“携帯電話”に気づかない。
少し考えればわかるはずだ。今までの不自然な点からして、ヒデヨシが自分と同じく日記所有者だということを。
同じく日記所有者である常磐ならば、気づく可能性は格段に上がるのに、何故気づかないのか。

「何で、当たらないのよッッ!」

理由は簡単だ。今の常磐がそんな些細なことに目を向けられないくらいに感情が揺れ動いているからだ。
焦燥感、怒りといった強い奔流に身を任せている常磐が、未来日記なんて想像するはずもなく。

91最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:45:15 ID:t8Y9JLNo0

「ははっ、見え見えだっての!」

こうやっていいようにあしらわれ、嘲りと嘘に塗れて、堕ちていく。
弱いが故に、奪われる。力がないから、何にも持っていないから馬鹿にされるのだ。
繰り出した足に嘲りが絡みつく。瞳に浮かぶ落胆が怒りを増幅させる。
僅かなズレ、ほんの少しのざわめき。
常磐に纏わり付く重りが、動きの精細さを奪い取っていく。

「んじゃ、そろそろオレの願いの為に――消えてくれ」
「冗談っ! 絶対、アンタに殺されてなんかやらないんだから」

加えて、もう一つ。これは根本的な問題だ。

――ヒデヨシは、常磐よりも本当に弱いのか?

考えて見れば簡単な疑問だが、突き詰めると答えには苦しむはずだ。
常磐自身、こんな卑怯な戦法でしか戦えない下衆野郎より弱いはずがないと思っているが、果たして実際の所はどうなのだろうか。
宗屋ヒデヨシが常磐愛より地力で弱いと、誰が決めた?
彼の力が彼女の力より劣っていると、誰が思っている?
よくも知らない猿顔野郎と侮っている彼女の方が、本当は劣っているのではないか?
重なる疑問を全部蹴り捨てて、常磐は愚直に蹴撃を繰り返しているが、現状を見ていると一目瞭然である。

常磐愛は、宗屋ヒデヨシよりも弱い。

認めたくないと目を逸らしていた事実が、彼女を蝕んでいく。
常磐はヒデヨシに押され気味なのだから、弱いと認識されても仕方がないのだ。

「……また、躱された!?」

確かにヒデヨシは弱い。強さのランク付けを行っても、下から数える方が早いだろう。
しかし、この世界は何でもありが推奨されている殺し合いだ。ヒデヨシが弱いという事実は、策と道具で簡単に覆せることになる。
加えて、弱いとは言っても、彼は元の世界でも単独でロベルト十団から無傷で逃げおおせるぐらいはできる“弱者”だ。

92最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:46:56 ID:t8Y9JLNo0

「ぶっちゃけ、全然ッ怖くねぇよ! 悔しいか? なぁ、悔しいかよ!」

あくまで弱いというカテゴリーは元の世界で生まれた能力者の範疇であり、この殺し合いには当てはまらない。
また、今のヒデヨシは殺人、絶命に対して恐怖も迷いもない。
どうせ、汚れてしまった手なのだからと割り切りも覚えてしまった。
ここで自分が死ぬことになったとしても、植木がまだ生きている。
なら、捨て身の突撃といった選択肢も増え、戦術にも幅が広がるのだ。

(ああもうっ! このままだとやられる! どうにか、どうにかしないと!)

追い詰められつつある現状に常磐が頭を回している時。
携帯をちらっと見ていたヒデヨシの顔つきが変わる。
違和感が過った。ただ、携帯を見るだけで? インターネットも繋がらないこの世界で、何を焦る必要がある?

(未来日記……!? そうか、だから!)

そして、その答えに辿り着いた時はもう遅かった。
ヒデヨシは足を翻し、背を向けている。
駄目だ、行かせてはならない。未来日記で何を読み取ったかは知らないが、きっとろくでもないことにきまっている。
気づいてしまったからには、絶対にくい止めなければ。
常磐は、彼に追いすがろうと地面を勢い良く蹴り出した。
脚力はこちらが有利、すぐに追いつけると確信し、前を向くが。

「おいおい、背中を向けたからって安心してんじゃねーよ」

いつの間にか振り返っていたヒデヨシの手にはコルトパイソンが握られ、銃口は常磐に向いていた。

……ヤバイ!

常磐は迫る危機感に動きを止め、横へと跳躍する。
なりふり構わずの急な方向転換だ、当然彼へと追いつけはしない。
常磐が態勢を立て直し、立ち上がる頃にはヒデヨシの姿は遠くに霞み、浦飯達が戦っている方角へと、駆け出していた。



######

93最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:50:02 ID:t8Y9JLNo0
      

  
「っらあああああっ!」

一方、植木と浦飯の争いは激しさを増していた。
互いに元の世界では死闘を経験した猛者同士、戦況の天秤はどちらにも揺れていない。
浦飯は木々の群れを殴り飛ばしながら、距離を詰めようとするが、それを容易にさせる程、植木は鈍くない。
次々と生み出されていく木々は、浦飯の動きを阻害する。

「畜生っ、邪魔すんじゃねー!」
「邪魔はそっちだろ!」

木々を潜り抜け、拳を繰り出した浦飯に対して、植木もクロスカウンター気味の拳を一発。
吹き飛んでは立ち上がり、再び接敵。
このやり取りを幾度繰り返しただろうか。
互いの身体はもうボロボロで、いつ倒れてもおかしくない状態だった。

「ふざ、けんなッ! アイツはどうしようもねークソ野郎なんだぞ!」
「そんな訳あるか! ヒデヨシは、オレの仲間だ。臆病な所もあるけれど、ここ一番って場面では勇気がある奴なんだ!
 オレの仲間が殴られようとしてるのに、黙って見ている訳がないだろ!」
「いい加減気づけっての! あんな奴護る必要ねーんだよ!」

何度言葉を交わしても、二人の想いは平行線だった。
浦飯が言葉を投げかけても、考えは変わらない。
植木がヒデヨシと浦飯達のどちらを信じるかといったらそれは断然ヒデヨシの方だ。
加えて、植木は浦飯達がヒデヨシに危害を加えている場面をばっちりと目撃してしまっている。
その後の言葉も、売り言葉に買い言葉。
元より、口が上手いとはお世辞にも言えない浦飯が説得を行うのは無理な話だ。
これでは、植木でなくとも浦飯達を信用することは厳しいだろう。

(どうすればいい!? このままだとジリ貧だ! それに、常磐だってヤバイ!
 宗屋がどんな手を使ってくるかわかんねーんだ、早く駆けつけねーと)

そして、植木だけではなく浦飯も焦っていた。
宗屋ヒデヨシは危険だ。身体的能力に関してはそこまで重を置いていないが、精神性、頭脳面では間違いなく自分達よりも異質だ。
殺しに躊躇がなく、平然と嘘も吐く。おまけに頭も回るとなっては厄介だ。
それらを真正面から打ち破れる力を持っている浦飯ならば、特段に注意をする必要はないが、常磐は違う。
彼女は浦飯と違ってあくまで普通の一般人だ。ちょっと、格闘技をかじってるとはいえ、大きなアドバンテージにはならない。

94最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:54:40 ID:t8Y9JLNo0

(コイツを倒さねーと駄目なんだ。本気でいかなきゃこっちがやられる)

故に、“手加減”はもうできない。
ちょっと気絶させとこう、後々ダメージにならないようにしようといった手心を加えた戦い方では植木を倒せない。
本気で戦う。戸愚呂弟と死闘を演じた時と同じく、後先を考えずに。
しかし、それでいいのか。そんな戦い方をして、最悪の結末は避けれるのだろうか。

(やるしかねーってことはわかってっけどよぉ)

そうしないと切り抜けられないのは、浦飯自身わかっている。戦闘に関して優れた才覚を持っている浦飯だからこそ、気づいているのだ。

――このままだと、宗屋にしてやられたままだ。

常磐一人でヒデヨシを抑え切ることはたぶん難しい。未知数の実力を持つ彼を相手にして、常磐が無事に勝ち残れる可能性は低いだろう。
それに、最初に一撃こそ入れたが、あれは誘導されていたものであって実力ではない。
あまり長い時間を植木に取られてると、常磐はヒデヨシにやられてしまう。
だからこそ、ここで覚悟を決めなければならない。
何を選んで、何を斬り捨てるか。迷っていては遅いのだ。

「届かなかったチャンスを、俺は今度こそ掴みとる。どうしようもなく畜生な諦めを」

あの時は足が竦んで届かなかった。
前原圭一を、ぶん殴ってでも正気に戻すべきだったのに。
大事な仲間が狂っていくのを、ただ見ていただけだった。
後悔、呆然、狂気、崩壊。
全てが終わった後に悩んで苦しんで、後になってこうすればよかったと思い願う。
そんな最低な結末はもうコリゴリだ、ぶん殴って捨てちまえと吐き捨て、浦飯は走り始める。

「ぶっ壊す!!!!!」

ここで植木を撃破して、常磐を助けることに意志を傾けることこそ、最短の道だと信じ抜く。
仲間の為に、この比類なき両腕を本気で振るうことで、後悔を殴り飛ばせるのだと。
愚直に想いを貫けば見える世界が、きっと最良。
その果てに見えるのが――!

「俺のッ、未来なんだ!!!」

怒号と共に、生み出された木々を全力でぶん殴る。
たったそれだけの動作で、木々の群れはへし折れ、宙を舞い、道から排除されていく。
拳を振り上げ、薙ぎ払い、時には足で蹴り倒す。
走る。ただひた走る。
己が望む最良を今度こそ間違えぬように。

「だから、ここで足止めはゴメンだぜ!」

もう、迷わないと誓いを重ね、植木へと視線を向ける。
その先の道に辿り着く為にも、お前は邪魔だ。ここで大人しくぶっ倒れろ――!

95最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/26(水) 23:59:12 ID:t8Y9JLNo0

「霊丸ッッッ!」

そして、彼は甘さを捨てて撃つことを決めた。
霊気を溜め、銃口をかたどった指先から解き放つ原初にて最強の必殺技、霊丸を。
正直、これを撃つのはためらった。
当たれば、死ぬのではないか。尽きない不安は今も脳裏をよぎっている。
それでも、浦飯はもう決めてしまった。
今は何としても常磐を護らなければいけない、と。
幸い、植木のことは戦ってみて大体の力量は知ることが出来た。
身体は頑強で、自分の仲間達とも遜色はない。
ならば、霊丸が当たったとしても早々に死ぬことはないだろう。
そう“思いたいだけ”だということに気づかないまま、浦飯はトリガーを引いた。

「なっ……」

躱せない。植木に迫る霊丸は、レベル2の能力を使う隙さえ与えなかった。
木々を貫きながら疾走する霊丸は寸分の狂いなく植木へと直撃するだろう。

(これで、切り抜けられる!)

しかし、浦飯の判断には“足りなかった”部分が存在する。
植木耕助が、霊丸を跳ね返すことでもなく。
霊丸が予想だにしない軌道を突然描き、狙いが外れてしまうことでもない。
そう、決定的に足りない部分が一つ。





「あ、ああっ」
「うえ、き……ぶじかよ」





彼を庇う第三者が現れる可能性を、全く度外視していたことだ。

96最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/27(木) 00:02:22 ID:iIJxFi3Q0
           




浦飯達は、宗屋ヒデヨシの目的を“自分以外を殺して回るマーダー”だと誤解したままだった。
彼の方針は全てをチャラにすることであり、殺して回ることはあくまで手段だ。
そして、その願いを託す事ができる仲間がいるなら、ここで自分が礎になっても構わない。

『植木が攻撃を食らって倒れちまう。血反吐を吐いて、今にも死にそうだ!』

無差別日記から読み取った未来を変える為にはこの方法しかなかった。
自分と植木のどちらか一方しか生き残れないならば、ヒデヨシは身体を張って植木を護るしかない。
いつだって前を向いて、願いを叶える強さを持っている植木が生き残る方が願いを叶えるにはベストな選択だろう。
加えて、浦飯達は知らなかった。
本来の彼は仲間思いだという事実も、彼が未来日記により植木の危機を予想したらどのような行動に出るのかも――何にも知りやしない。

「ヒデヨシィィィィィィィィイイイイイイイ!!!!!!!」

決着は、“彼”の願った通り、最良の結末だった。
浦飯の放った霊丸が、ヒデヨシに突き刺さり、血反吐を撒き散らしながらふっ飛ばした。
植木と違い、あくまで肉体的には一般人のヒデヨシに霊丸が直撃したらどうなるか。
想像するまでもないことだ。ヒデヨシの負った傷は、致命傷である。

(違う)

植木の絶叫が、響く。涙を混じらせた声が、自分のやった最良を突きつける。
これが自分が選んだ最良の選択肢。
そうであるはずなのに。

(違うんだ)

何故、こんなにも呆然としているのだろう。
遠くから駆け寄ってくる常磐の姿も、今は霞んで見える。

97最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/27(木) 00:07:05 ID:iIJxFi3Q0

(違うだろうが)

救いようもないゲス野郎が、仲間を護った事実が信じられないから?
もしかすると、致死の傷を負わしてしまったから?
そんな、どうでもいいことではない。
気づいてはならない可能性があるはずだ。
考えろ、考えろ浦飯幽助。

(俺は、俺達は……勘違いをしていたんじゃないのか)

浦飯は知っている。
暗黒武術会時、ドクターイチガキというゲス野郎に操られ、望まぬ戦いを強いられた武闘家達を。
本来の彼らは仲間思いで、高潔な意志を持っていたけれど、イチガキによって思考を操作され、殺人マシーンと化していたのだ。
故に、その経験から彼は思いついてしまった。



宗屋ヒデヨシは、何らかの思考誘導、洗脳をされていただけという可能性に。



無論、あくまで可能性の話だ。
イチガキの時は操られた人間が機械的であったので、今回のケースとは状況が違う。
しかし、裏を返せば可能性が当てはまってしまう。
死の間際に正気を取り戻して仲間を護る。全くありえないと断ずることを浦飯はできなかった。

「お前ら……! 殺すつもりはないなんて嘘じゃねぇか! 少しでも信じようと思ったオレが、間違ってたのかよ!」

ヒデヨシに当てるつもりなんてなかった、そんな言い訳が通じるわけがない。
生き返る可能性があるといった仮定をしても、浦飯がヒデヨシを追いやったという事実は消えやしないのだから。

「どういうことだよ、これは」

そして、最良は更なる最良を呼び寄せる。

「常磐……テメーら、やってくれんじゃねーか。徒党を組んで殺し回ってんのか? よく考えたもんだな。
 あんだけ絞られたのによ、まだ天使の真似事をやってるなんて……ホント、救われねー奴だな」
「ちがっ、違う!」
「今更弁明か? ざけんな。ここにいる植木はオレの友達だ。
 どう見ても、テメーらが襲ってきたとしか思えねーっての。
 つーか、友達を襲っている奴等を信じろってか? 冗談はやめてくれよ、全然笑えねえ」

仲間を助けるべく駆けてきたのだろう、息を切らしたその姿は怒りで包まれていた。
菊地善人が鬼のような形相で睨んでいるのを、浦飯達はただ見つめるしかできない。

「植木、無事か」
「オレは大丈夫だけど、ヒデヨシが!!」
「ああ、わかってる。一旦退くぞ、こいつらから離れて、コイツを治療する。殿は任せとけ」

このまま逃してしまったら駄目だ、対立が決定的になってしまう。
二人は理性がそう告げているにも関わらず、彼らが逃げていくのを追うことはできなかった。
実は操られていた可能性があって間違って殺したかもしれませんと、どんな面で言えばいいのか。

「は、ははっ」

それ以前に、今の状況で反論をしても相手を逆撫でするだけだ。
賽は、もう投げられたのだ。対立はどう振る舞っても埋めきれない溝となって、彼らを分かつ。
彼らの真っ直ぐな思いは、どんな言葉を使っても植木達には受け入れられないだろう。

「俺……どうしようもねぇ人殺し、じゃねーか」

拭っても拭っても取れない罪の汚れが、彼らを地獄へと落としていく。



######

98最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/27(木) 00:08:52 ID:iIJxFi3Q0
    


手遅れだった。菊地の目から見ても、ヒデヨシの状態は重篤だった。
血を口から吹き出し、息も切れ切れ。どう見ても、もう助からない。

「ヒデヨシ、起きろよ、ヒデヨシ……」

何度も何度も植木は声をかけるが、ヒデヨシの反応は血反吐を吐くだけだった。
浦飯達から離れたはいいけれど、治療道具なんてある訳がない。
病院もここからでは遠い。加えて、治療と言っても植木達は医者ではない。
このままヒデヨシの命が消えていくのを見ることしかできないだろう。
冷静な頭脳は、彼らに諦めを囁いていた。

(畜生……ッ! オレがもっと早く駆けつけていたら……!
 碇も、神崎も、コイツも! どいつもこいつも手に届かねぇのかよ!」

唇を噛み締めて、菊地はそっと腰を下ろす。
素人目から見ても、手遅れだ。ならば、最期ぐらいは植木と落ち着いて話させてあげたい。
全身を朱に染めたヒデヨシをそっと地面に横たわらせ、植木は涙を拭う。
拭っても止まらない涙を必死に擦って、無理矢理笑顔を作る。
最後ぐらいは笑ってヒデヨシとお別れをしたい。そして、ありがとうと言いたい。
彼の献身に礼を言わなくては植木は後悔しきれないから。
 
「うえ、きィ……」
「ヒデヨシ! ありがとな、オレ……助けられちまった」
「ぶっちゃけ、オレの方が、植木に……助けられてるっての。今更、だろ」
「オレがっ、オレがヒデヨシの分まで頑張るから! だから、もう……いいんだ……!」

握られた手の感触が、薄い。開けた目の視界は殆どが黒く、植木が何処にいるのかさえわからない。
けれど、まだ生きている。自分の意志は植木に伝えることが出来るのだ。
ならば、最後に頼まなければ。
全部が終わった後、チャラにしてくれ、と。
だけど、悲しいことに口が一言述べる程度の力しか残っていない。
自分の願い事を彼に託すことはできないだろう。

(ま、大丈夫だろ。植木なら、きっと全てをチャラにしてくれる。いつだって前を向いている植木なら……。
 どんな形であれ、元通りにしたいって願うのは間違いなんかじゃねぇんだ。だから、オレはオレのままでこの選択を選んだ。
 ぶっちゃけ、後悔なんかしてねぇんだよ、可能性がまだ残っている限り、オレは生きていける)

それでも、ヒデヨシは信じている。いつか、植木が全てをチャラにできるといった事実に気づく時、きっとまた会える。
だからこそ、ここで言う言葉は一つだけ。
植木に頑張れとエールを送る激励を込めて。

99最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/27(木) 00:12:34 ID:iIJxFi3Q0

「植木。わりィ……後は、任せた」

最後に顔をほころばせ、ヒデヨシは眠るように動かなくなっていった。
そこに残ったのは一人の勇気ある少年の死体。
これこそが、宗屋ヒデヨシが選んだ最良の選択肢。
自分の願いを託すことができる仲間を生かすことで、先の道を切り開く。
きっと、植木ならば――全てをチャラにしてくれる。
だって、自分と植木は“仲間”なのだから。
その想いだけは、誰にも否定させやしない。

「クソッ、クソぉ……! ヒデヨシィ……」
「植木……」

また一人、仲間になれたはずの参加者が死んだ。
植木が仲間の死を悲しんでいる間、菊地はこれからの展望について考える。
最初は植木と杉浦を探して綾波達へと合流する手はずだったが、今では不可能に近い。
これだけ時間が経てば、綾波達も移動しているはずだし、杉浦の居場所は今も不明だ。
南下は無理だ。こちらの戦力が乏しい以上、浦飯達がいる南を闊歩するには心許ない。
幸いのことに、綾波達は複数で行動している。ならば、自分達と違ってそう簡単に撃破されることもないだろう。

(つーことは、オレらが目指す場所は……北か。海洋研究所辺りがいい目星か? 杉浦もそこに逃げ込んでいるとラッキーなんだけどな)

拙い頭脳を総動員して、菊地達は進まなければならない。
いつか、彼らにもリベンジをして、踏み越えてみせる。
最良の選択肢を選び切って、勝ち残るのは――自分達だ。
曇りのない決意を胸に、天高く右手を伸ばす。



だァれもかれもが踊らされていることを知らずに。



見えない観客席に座る誰かが、ニタリと嗤う。



【宗屋ヒデヨシ@うえきの法則 死亡】
【残り 20人】



【E-6/F-6との境界付近/一日目 夕方】

【常盤愛@GTO】
[状態]:右手前腕に打撲 、全身打撲
[装備]:逆ナン日記@未来日記、即席ハルバード(鉈@ひぐらしのなく頃に+現地調達のモップの柄)
[道具]:基本支給品一式、学籍簿@オリジナル、トウガラシ爆弾(残り6個)@GTO、ガムテープ@現地調達
基本行動方針:認めてくれた浦飯に恥じない自分でいる
1:――――。
2:浦飯に救われてほしい
[備考]
※参戦時期は、21巻時点のどこかです。
※幽助とはまだ断片的にしか情報交換をしていません。
※パンツァーファウストIII(0/1)予備カートリッジ×2、
基本支給品一式×5、『無差別日記』契約の電話番号が書かれた紙@未来日記、不明支給品0〜6、風紀委員の盾@とある科学の超電磁砲、警備ロボット@とある科学の超電磁砲、
タバコ×3箱(1本消費)@現地調達、木刀@GTO、赤外線暗視スコープ@テニスの王子様、
ロンギヌスの槍(仮)@ヱヴァンゲリヲン新劇場版 、手ぬぐいの詰まった箱@うえきの法則 が目の前にあります。

100最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/27(木) 00:13:28 ID:iIJxFi3Q0

【浦飯幽助@幽遊白書】
[状態]:精神に深い傷、貧血(大)、左頬に傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×3、血まみれのナイフ@現実、不明支給品1〜3
基本行動方針: もう、生き返ることを期待しない
1:――――。
2:圭一から聞いた危険人物(金太郎、赤也、リョーマ、レイ)を探す?
3:殺すしかない相手は、殺す……?

【E-6/一日目 夕方】

【植木耕助@うえきの法則】
[状態]:全身打撲、仲間を殺された怒り
[装備]:探偵日記@未来日記
[道具]:基本支給品一式×3、遠山金太郎のラケット@テニスの王子様、よっちゃんが入っていた着ぐるみ@うえきの法則、目印留@幽☆遊☆白書
    ニューナンブM60@GTO、乾汁セットB@テニスの王子様
基本行動方針:絶対に殺し合いをやめさせる
1:自分自身を含めて、全員を救ってみせる。ヒデヨシを殺したあの二人に対しては……?
2:学校へ向かい、綾波レイを保護する。
3:皆と協力して殺し合いを止める。
4:テンコも探す。
5:浦飯達を許すつもりも信じる気もない。
[備考]
※参戦時期は、第三次選考最終日の、バロウVS佐野戦の直前。
※日野日向から、7月21日(参戦時期)時点で彼女の知っていた情報を、かなり詳しく教わりました。
※碇シンジから、エヴァンゲリオンや使徒について大まかに教わりました。
※レベル2の能力に目覚めました。
※決して破損しない衣服 、無差別日記@未来日記、コルトパイソン(5/6) 予備弾×30、宗屋ヒデヨシの死体を抱いています。

【菊地善人@GTO】
[状態]:健康
[装備]:デリンジャー@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品一式×2、ヴァージニア・スリム・メンソール@バトルロワイアル 、図書館の書籍数冊 、カップラーメン一箱(残り17個)@現実 、997万円、ミラクルんコスプレセット@ゆるゆり、草刈り鎌@バトルロワイアル、
クロスボウガン@現実、矢筒(19本)@現実、火山高夫の防弾耐爆スーツと三角帽@未来日記 、メ○コンのコンタクトレンズ+目薬セット(目薬残量4回分)@テニスの王子様 、売店で見つくろった物品@現地調達(※詳細は任せます)、
携帯電話(逃亡日記は解除)、催涙弾×1@現実、死出の羽衣(4時間後に使用可能)@幽遊白書
基本行動方針:生きて帰る
1:北上する? 海洋研究所が近いが、どうするか。
2:常磐達を許すつもりも信じる気もない。
3:落ち着いたら、綾波に碇シンジのことを教える。
4:次に仲間が下手なことをしようとしたら、ちゃんと止める 。
[備考]
※植木耕助から能力者バトルについて大まかに教わりました。
※ムルムルの怒りを買ったために、しばらく未来日記の契約ができなくなりました。(いつまで続くかは任せます)

101最良の選択肢 ◆jN9It4nQEM:2014/03/27(木) 00:14:05 ID:iIJxFi3Q0
投下終了です。


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