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中学生バトルロワイアル part6
62
:
それでも、しあわせギフトは届く
◆Ok1sMSayUQ
:2014/01/31(金) 20:50:24 ID:swZanmDo0
いつだったか。
そんなに遠くない昔に、こんな話をしたことがある。
喧嘩にもならず、翌日になれば自分自身でもころりと忘れるくらいの。
ささやかな痛みを伴う話。
「……ただいま、黒子」
「あらお姉さま。そんなお顔をなさらずとも、寮監の目は誤魔化してありますから」
湯浴みを済ませ、風呂場の扉を開けて出てきた白井黒子の目に飛び込んできたのは、今しがた『用事』を終えて戻ってきた御坂美琴だった。
本当に丁度戻ってきたようで、鍵を開けておいた窓が開け放たれ、美琴は窓に足をかけていた。靴を脱ごうとしていたのか、片方の靴が床に落ちてひっくり返っている。
加えて黒子がバスタオル一枚というあられもない姿で戻ってきたからか、間が悪いとも思ったようで美琴の表情はばつが悪いといった風情だ。
が、黒子自身は特に気にすることもなくタオルを巻いたまま、すたすたと美琴の元まで歩いてゆきてきぱきと靴を片付け、もう片方の靴も寄越すように指示した。
ほぼ裸なのは問題ない。勝手知ったる美琴との仲であるし、今時分の季節はすぐに着替えずとも体を冷やすこともない。何より、『用事』を済ませた美琴はいつも疲れている。
窓際で待たせるわけにもいかなかった。
「いや、あんた先に着替えな……」
「お姉さまが先です。それとも」
いつも奔放に行動しているくせに、こういうときだけは遠慮というか、自分を後回しにする美琴に、多少腹立たしい思いがないではなかった。
にっこりと笑って「私の裸が見たいんですの?」と言ってやると、素直に美琴は靴を渡してきた。
それはそれで多少残念ではあった。頑固にこちらを優先してこようものなら「私の裸を見たいお姉さまなら襲ってもいいですわよねー!」という屁理屈を捏ねて飛びかかれたのに。
室内用のスリッパを投げてやると、美琴はそれを器用にキャッチして履き、ようやく窓から部屋へと『入った』。
「お帰りなさいませ、お姉さま」
「……ただいま」
美琴は苦笑していた。ただ疲労はかなりあるらしく、そのままベッドに歩いていったかと思うとバタリ、と倒れるようにして動かなくなった。
黒子は『用事』の中身は知らない。だが毎日のように夜遅くまで出て行っては疲弊しきって戻ってくる。それだけで大変どころではないものだとは分かるし、
そこまでして為さなければならない『用事』が、少なくとも美琴にとってはかなりの重みがあるのに違いなかった。
「もう、お眠りになられます?」
「あー……。ううん、違うの。眠くはないんだ。疲れてる、だけ」
ごろりと寝返りを打って、美琴は黒子に返事した。
黒子は丁度着替え終わったタイミングであり、電気を消そうと思えば消せたが、こちらに視線を寄越す美琴は、まだそうしないでくれと言っているように見えた。
一つ息をついて、黒子は自分のベッドに腰掛ける。本来なら無理矢理にでも寝かせるべきなのだろうが――、美琴が夜に殆ど眠れていないのも、知っていた。
「全く、何をしてらしているのか知りませんが」
「うん」
「話してくださる気はないんですのね」
「……うん」
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