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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13

1リリカル名無しA's:2010/03/29(月) 23:42:31 ID:lCNO3scI0
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。

注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板」でどうぞ。

・前スレ
したらば避難所スレ(実質:リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ12)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12701/1244815174/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
・避難所
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12701/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/
・2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/

詳しいルールなどは>>2-5

86リリカル名無しA's:2010/04/17(土) 11:11:44 ID:7Nhuzm920
投下乙です
ユーノ君カッコいいな
そうだな、ユーノ君がいたからみんなの出会いがあったんだよな(バルディッシュナイスフォロー!)
1期の頃から一人で背負いこもうとするきらいがあったけど、よかったよかった
ああ、声が似ているも何も中の人g(ry

87リリカル名無しA's:2010/04/17(土) 13:57:28 ID:8WgSGZyk0
投下乙です
ようやくユーノが濃い考察をした!w
今まで散々だったからなぁ……
ともあれ今後ユーノがどう活躍するのか楽しみです。
無事他の対主催と合流できるか……距離的にはホテルが近いけど……?

88リリカル名無しA's:2010/04/17(土) 21:31:35 ID:pMGUTQ06O
投下乙です
ユーノがカッコイイ!!今までルーテシアの裸体を観察したり胸に挟まれたりチンクの大事な部分を見たりブレンヒルトのパンツを何度も拝んだりサービスシーンを披露していたりしたのが嘘のようなカッコ良さだ!!
ユーノの今後の活躍が楽しみです。クアットロと組むことは叶うのだろうか…?

89リリカル名無しA's:2010/04/19(月) 22:55:41 ID:jXDmTmyk0
―― 使いすぎじゃね
読んでて気持ち悪くなる

90 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:34:18 ID:FwLcIe6A0
リインフォース、アルフ、リニス、ウーノ分を投下します

91暗躍のR/全て遠き理想郷 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:36:22 ID:FwLcIe6A0
 ほの暗い闇の中を蠢く、微かな金属音が2つ。
 さながら小さなネズミのように、屋根裏を這いずり回るのは、1人の融合騎と1匹の使い魔。
 眼下の廊下から漏れ出している、ぼんやりとした電灯の光だけが、この闇の中の光源だった。
《しかしまぁ、ホントに入り組んだ構造になったもんだよ》
 額に皺を寄せながら、使い魔アルフが念話でぼやく。
 肉声での会話をシャットアウトしたのは、盗聴の危険性を考慮した結果だ。
 下の廊下には、ところどころに監視カメラが配置されている。であれば姿のみならず、声まで盗み聞きされる可能性も否定できない。
《やはり、元の時の庭園とは違うのか?》
《そりゃあ、元は別荘施設だったからね。こんな研究室みたいな作りにはなってなかったさ》
 先を行く融合騎リインフォースの問いかけに、答えた。
 かつてのプレシアの研究施設であった時の庭園だが、元々は居住スペースとして設計されたものを、研究用に改築したに過ぎない。
 デバイスルームや研究室こそあれど、それも必要最低限のものであり、あくまでオプションでしかなかった。
 だが今彼女らが潜入しているこの場所は、ただの別荘にしてはいやに複雑な構造になっている。
 廊下にいくつもの扉が並ぶその様は、むしろ時空管理局本局や、大型の研究所を彷彿とさせた。
 無機的かつ平面な壁の様子は、まるで病院の廊下のようで、生活感が感じられない。
《でも、それ以上に分からないのはこの世界そのものだよ。結局、ここは一体どこなんだ?》
 奇妙なのは時の庭園の構造だけではなかった。
 それ以上に不可解なのは、この世界だ。
 転移魔法の着地点は時の庭園のすぐ傍だったが、その周囲を見渡すだけでも、その異質さは見て取れる。
 辺りに散乱する遺跡らしき構造物は、どれもこれも見覚えのないものばかり。
 空気に漂う匂いからは、文明はおろか、自然の気配すら感じられなかった。
 既に滅亡した次元世界だということなのだろうか。
 転移座標から正体を勘ぐろうにも、提示されたのは未知の座標。つまり、まったくのお手上げだった。
《恐らくは――アルハザード》
 ぽつり、と。
 呟くように響く、リインフォースの念話。
「!」
 がん、と。
 返ってきたのは言葉ではなく。
 天井裏の低い天井に、盛大に頭をぶつけた音だった。
《アルハザード、って……そんな馬鹿な。本当に、現存していたっていうのかい……?》
 痛む頭を抑えながら、震える声でアルフが尋ねた。
 それが本当だというのなら、大問題だ。
 アルハザードといえば、幾多の伝承の中で語り継がれる、超古代文明世界の名前である。
 その歴史は古代ベルカよりも更に昔に遡り、その上その古代ベルカよりも、更に優れた技術力を有していた世界だ。
 未だ発見もされておらず、そのあまりにも現実離れした名声から、存在そのものを疑われた、まさに魔法の理想郷。
 そしてプレシアの娘・フェイトの使い魔であったアルフには、更にそれ以上に重要な意味を持つ名前でもある。
 アルハザードは、プレシアが実娘アリシアを復活させる技術を求め、ジュエルシードによって渡航を図った目的地でもあるのだ。
 そしてその桃源郷が、今まさに彼女らのいるこの場所だとするのなら。
 あのプレシア・テスタロッサは、虚数空間の漂流の末に、本当に目的地にたどり着いたということになるではないか。
《そうなのだろうな。この地の空気には覚えがある……そしてそれは、かつてのベルカの地のそれとも違う匂いだ》
《空気に覚えがある?》
《そもそも古代ベルカの魔法技術は、アルハザードとの交流によって発展したものだからな》
 だとするなら、それも真実なのだろう。
 リインフォースがいうには、現代においてロストロギアと呼ばれているベルカの遺産は、
 より優れた技術力を有した、アルハザードからの技術提供によって誕生したものなのだという。
 つまりアルハザードとは、この夜天の書の管制人格にとっては、第二の故郷にも等しい場所ということなのだ。
 そのリインフォースが、この地に漂う魔力の気配に、ベルカのそれとも異なる懐かしさを覚えている。
 ならば真実、この場所は、あの御伽噺の理想郷ということに他ならない。

92 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:39:12 ID:FwLcIe6A0
《……仮にここがそうだとすると、なおさら分からなくなるね……目的地にたどり着いたっていうのなら、何であいつはあんなことを?》
 思い返されるのは、一ヶ月弱ほど前の地獄の光景だ。
 転移魔法を行使し地球を発つ前、彼女らの暮らしていた海鳴市は、プレシアの軍勢の手によって壊滅した。
 未知の技術を取り込んだ大軍団を前に、迎撃に出た魔導師達は、1人残らず返り討ちにあったのだ。
 アルフの元の主人であるフェイトも、そのフェイトやリインフォースを救ったなのはも、あの凄惨な虐殺の果てに死亡している。
 今こうしてリインフォースについているアルフもまた、血と炎の最中で死にかけたのだ。
《プレシア・テスタロッサの目的は、娘アリシアの蘇生……だったな》
《あいつにとってはそれが全てで、他のことなんてどうでもいい、って感じだった。
 その目的を果たす手段を手に入れたのなら、今更他の世界に攻め込む理由も……フェイト達が殺される理由も、ないはずなんだ》
 不可解な点は、そこだった。
 かつてプレシアが事を起こしたのは、アルハザードへの到達という、唯一無二の目的のために他ならない。
 そしてその目的が達成された今だからこそ、あの襲撃の動機が分からなくなる。
 望みは全てアルハザードで叶うというのに、何故彼女は、わざわざ他の世界への遠征を実行したのか。
 管理局に察知されるリスクを冒してまで、今さらよそにかかわる理由など、プレシアにはないのではないのか。
《……何にせよ、調べてみる必要がありそうだな》
 がたん、と。
 念話に合わせ、前方から音が聞こえてくる。
 アルフがそちらの方を向けば、これまで以上に強い光が、眼下の廊下から差し込んでいた。
 金網状のカバーをリインフォースが外したらしい。
《そこに端末がある。幸い、監視カメラもない。この城の中枢へのハッキングを試してみる》
《ハッキング、って……あんた、できるのかい?》
《言っただろう?》
 ふわり、と闇に揺れる銀髪。
 くるり、とこちらを向く真紅の瞳。
 穴へと身を乗り出すような姿勢から、リインフォースがアルフの方へと首を向ける。
《このアルハザードは、私の第二の故郷だと》



 セキュリティを解析。
 ファイアウォールの構造を理解。システムの穴を探索し、突破。
 転送される情報を取捨選択。余剰プログラムを受け流し、必要と思しき情報を取得。
 頭部のメイン回路へと流れ込んでくるのは、複雑な数列で構成された構造式。
 それらを1つ1つ読み解いていき、サイバーデータの深淵へと泳いでいく。
 目を閉じたリインフォースの右手は、廊下に設置されていたコンピューターへとかざされていた。
 手のひらに浮かぶ銀の光は、ベルカ式の三角魔法陣。
 今まさに黒衣のユニゾンデバイスは、この時の庭園のサーバーへの不正アクセスの真っ最中だった。
《ホントにやってのけるとはね》
 感心したようなアルフの念話が、頭の片隅に響いている。
 彼女はリインフォースの傍らに立ち、敵の襲来を察知すべく、警戒態勢を保っていた。
 こうして無防備な姿を晒し、ハッキングに没頭することができるのも、彼女が見張ってくれているおかげだ。
 この狼の命を拾ったのが、人道的のみならず戦力的にも正解であったことを、改めて理解させられる。
《間もなくメインサーバーに到達できる》
 いよいよ大詰めに近づいたと、口にした。
 彼女がこのハッキングを為しえたのは、他ならぬその出自のおかげであった。
 大規模な魔法文明を誇っていたアルハザードでは、この手のデータも魔法術式で構成・管理されている。
 ミッド式でもベルカ式でもない、言うなればアルハザード式だ。並の魔導師や騎士では、解析することすら敵わないだろう。
 しかしこの場にいるのは並の騎士ではない。
 古代ベルカ最大級のロストロギアの1つ・夜天の魔導書の管制人格だ。
 アルハザードの恩恵を最大限に蓄えただけに、アルハザード式の術式にも、ある程度の心得を有している。
 加えてその身はデバイスである。プログラムの解析や操作には、生身の人間よりも長けていた。
 おまけに彼女のスペックは、そんじょそこらのデバイスの比ではない。
 幾多の魔術を蒐集・処理することを義務付けられ、それ相応の演算能力を与えられた、言うなれば史上最高峰のスーパーコンピューターだ。
 この手の作業に関しては、唯一にして最強の専門家と言えるだろう。

93暗躍のR/全て遠き理想郷 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:40:33 ID:FwLcIe6A0
《侵入成功。これは、爆発物の制御システム?》
 メインサーバーへと到達。
 そしていの一番に上げたのは、怪訝な響きを伴う声だった。
 最初に目に留まったデータは、何らかの爆弾の起爆システムを管理するためのものだ。
 質量兵器の管理システムとは、この場には余りにも似つかわしくない。
 魔術の理想郷たるアルハザードらしくもないし、アリシアを蘇生させたがっているプレシアらしくもなかった。
《次は……名簿か?》
 故に次に開示されたデータに、あっさりと意識の矛先を向ける。
 そして今度は深く興味を示し、廊下の端末に映像を映した。
 かつかつと歩みの音が聞こえる。それに気付いたアルフが、モニターを覗き込んだのだろう。
《高町なのはに、フェイト・テスタロッサ……プレシアが殺して回った人間の目録とか?》
《いや、それにしては妙だ。ユーノ・スクライアが生存扱いになっている》
 表示されたのは五十音順に並べられた、合計60人の名の連なる名簿。
 そしてその名前のすぐ横に、「生存」ないし「死亡」のいずれかが追記されていた。
 これも一見しただけでは、意味の理解に苦しむものだ。
 なのはやフェイト、ヴォルンケンリッターらが死亡しているのだから、
 アルフが言うように、既にプレシアが殺した者と、これから殺す者の一覧表にも見える。
 だがそれでは、ユーノが生存にカテゴリされている理由が分からない。彼もまた海鳴の戦闘で、間違いなく死亡したはずだ。
 加えてなのは、フェイト、はやての3人の名前が、それぞれ2つずつ用意されているのも気になる。
 フェイトは両方死亡だったが、なのはとはやては片方ずつ死んでいた。
 これは一体何を示すものなのだろうか。他のデータと比較してみれば、何か分かるかもしれない。
 更なる解析を進めようとした矢先、
《待った》
 アルフに、制止の声をかけられた。
《臭いと音が近づいてきてる。監視がこっちに向かってるみたいだ》
 その言葉にコンピューターへのアクセスを解き、瞼を持ち上げ瞳を見せる。
 赤い双眸の先の使い魔は、耳と鼻をひくつかせていた。
 イヌ科の嗅覚と聴覚を信頼するなら、まだ若干の余裕はあるはず。
 しかしそれも、この場から天井裏へ戻るのに利用した方が有意義だ。
 よってここは素直に従い、元の屋根裏へと飛行する。
 監視の目が近づく前に、極力音を立てぬよう留意して、金網状の蓋を戻した。
《あの卵メカか》
 ややあって、眼下に現れた機影。
 その楕円形のフォルムを見据え、忌々しげにアルフが呟く。
 あれは海鳴の戦闘にも顔を見せていた、正体不明のロボット兵器だ。
 魔力を通さない特殊なフィールドによって、なのは達ミッド式の魔導師は、大いに苦戦を強いられていた。
《……そういえば、何故監視が配置されているんだ?》
 ふと。
 疑問に思い、それを思念の声に乗せる。
《何故って?》
《よく考えてもみれば、ここは秘境中の秘境のはずだ。外部からの侵入者に気を配る必要は、皆無と言ってもいいと思うのだが》
 それが疑念の正体だった。
 ここは失われた地、アルハザード。
 管理局150年の歴史をもってしても、未だ現存を確認できず、半ば御伽噺扱いさえされている場所である。
 こんな所に侵入できる人間など、普通はいないと考える方が自然だ。
 であれば、申し訳程度の監視カメラはまだしも、わざわざ制御の手間を割いてまで、あのロボットを配備する理由が見つからない。
 あるいは、
《……既に見つかっているのか?》
 こちらの侵入を察知し、その捕縛のために放ったというのなら、話は別だが。

94暗躍のR/全て遠き理想郷 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:41:51 ID:FwLcIe6A0


(ガジェットドローンが配備されている……?)
 モニターに映された自律兵器を、使い魔リニスは怪訝な顔つきをして見つめていた。
 事が起きたのは、間もなく夜も更け始めようかといった頃。
 ちょうど転送魔法陣の移動について、モニターの映像ログを漁って調べていた時のことだ。
 デスゲームの参加者達の認識に沿うならば、
 吸血鬼アーカードの遺体が燃え尽き、八神はやてが従者のデイパックを回収した前後といったところか。
 地上本部の崩壊に伴い魔法陣が一旦消滅し、直後に地下に出現したことは、映像から確認することができた。
 誰が何をしてそうなったのかを調べようとしたのだが、
 転送魔法陣に関するデータにはプロテクトがかけられており、リニスの権限では閲覧できない。
 それでより上位の管理権限を持つ存在――プレシアが一枚噛んでいる疑いは固まったが、しかしそれ以上のことはもう分からない。
 ここまでかと落胆していた時に、ふと何の気なしに庭園内の監視カメラへ視線を飛ばすと、そこに映っていたのはガジェットドローン。
 このような経緯を経て、現在に至るというわけだ。
(プレシアが私を監視しているのかしら?)
 最初に考慮した可能性は、それだ。
 オットーの起用といい今回の件といい、どうにも自分は、プレシアに疑われているような気がする。
 とはいえ翻意を抱えているのは間違いないので、弁明のしようがないのが現実だ。
 そしてだからこそこの行動が、自分を警戒しているから、という風に結論づけることもたやすい。
 妙な行動を起こした時に、即座に始末できるように、各所にガジェットを配置したのではということだ。
(でも、それなら精神リンクを繋ぎ直せばいい)
 しかしよくよく考えてみれば、その可能性は薄いかもしれない。
 何せ、リニスはプレシアの使い魔なのだ。
 互いの行動を察知できる、精神リンクという手段を使えば、従者の謀反は主君に筒抜けになる。
 ならばわざわざ監視員を増やす必要はない。むしろ視覚のみに頼るのは、より不確かな手段と言っていい。
(なら、ナンバーズ達に何かが?)
 それなら監視の対象は自分ではなく、あの機械仕掛けの傭兵達だろうか。
 なるほど確かに、客観的な目で見れば、連中も自分と同程度にはいかがわしい。
 何せ“提供者”からしてああなのだ。その面の皮の下で何を考えているのか、分かったものではない。
 それこそこうして味方を装い、信用させたところを裏切って、アルハザードの技術をかすめ取ろうとしても不自然は――
「……?」
 と。
 その時。
 ぴぴぴぴ、と耳を打つ音があった。
 不意に鼓膜に飛び込んできたのは、コンピューターから響く電子音。
 それもこれはアラートだ。何かシステムのトラブルでもあったのだろうか。
 警告を示すアイコンを選択し、報告バルーンを展開する。
 そこに記載されていたのは。
「……っ!」
 不正アクセスの報告だった。
「侵入者っ!?」
 くわ、と瞳が見開かれる。
 さぁ、と顔色が蒼白となった。
 血の気は見る間に引いていき、顔中から嫌な汗が流れた。
 不正アクセスとはすなわちハッキングだ。
 こちらのコンピューターの所在が割れたということは、その時点で外部に居場所を察知されたことを意味する。
 加えてハッキングに利用した端末は、この庭園の廊下のコンピューターだ。
 外部からどころではない、内部からの不正アクセス。
 すなわちそれは、下手人であるハッカーが、ここに侵入を果たしていることに他ならない。

95暗躍のR/全て遠き理想郷 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:43:09 ID:FwLcIe6A0
「くっ!」
 逸る気持ちを抑えながら。
 しかし目に見えた狼狽と共に。
 リニスは制御コンピューターを操作し、全監視カメラの映像を展開する。
 ゲームのフィールドなど後回しだ。外界に構っている暇などないのだ。
 すぐさま庭園内の映像が、ばあっとモニターを埋め尽くす。
「何故だ……何故気付けなかったッ!?」
 右を見ては、左を見て。
 上を見ては、下を見て。
 忙しなく視線を泳がせながら、苛立ちも露わな声を上げる。
 そうだ。
 何故こんな単純な理屈に気付かなかった。
 気付こうと思えば、気付けるはずだったのだ。
 そもそも監視というものは、味方を対象にした概念ではない。外敵が領地に侵入するのを防ぐため、というのが大前提だ。
 それこそ普通に考えれば、味方よりも敵の方に目を向けて当然なはずだった。
 このアルハザードは誰も特定できない、などという言い訳は、今となっては通用しない。
 現に混沌の神を名乗るカオスなる者が、この殺し合いに一度介入しているのだから。
 だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
 過去を悔やむ暇があったら、それを現在の行動に回すべきだ。
 いかにゲームに反対しているとはいえ、プレシアを傷つけるつもりはリニスには毛頭ない。
 故にこうして、プレシアを害するであろう者を、血眼になって探すのも当然の帰結。
 敵はまだこの施設内にいるはずだ。ならば、何としても見つけ出さなければ。
 いや、その前に警報か。庭園の他の人間達にも、警報ベルでこの非常事態を――
「……けい、ほう――?」
 はっ、として。
 警報装置に伸ばした手を、止める。
 焦りも悔やみも苛立ちも、すぅっと遠のいていくのが分かった。
 狼狽に開かれていた瞳が、それとは異なる感情によって、再び丸くなっていく。
 茫然自失とした表情を浮かべながら、やがてコンソールからも手を離した。
 そう、それだ。
 外敵の可能性を排除したのは、それが原因だったのだ。
 そもそもあのガジェットドローンは、プレシアの手によって放たれた可能性が高い。
 そしてもし仮にプレシアが敵の存在を認知し、その対策としてガジェットを配備したというのなら、
 この場の全員に注意を促すためにも、警報ベルを鳴らして然るべきはずなのだ。
 しかし、この現状はどうだ。
 今この時の庭園の中では、物音1つとして鳴っておらず、非常灯の光っている形跡もない。
 故にリニスはほとんど無意識に、敵襲の可能性を否定して、味方を疑いにかかったのだ。
 だが、これが本当に、敵に対する警戒態勢だとしたら。
 敵襲を理解していながら、警報を鳴らさなかったとしたら。
「私は……プレシアに見捨てられたの……?」
 仮にこの非常事態を、“全員”に通達する気がなかったとするなら。
 思い当たる節はいくつかあった。
 側近であるはずの自分を差し置いてまで、余所者に放送という大役を任せたこと。
 本来なら自分が管理するであろうボーナス支給品システムに、アクセス権限を設けたこと。
 転移魔法陣の移動を、こちらに相談することなく強行したこと。
 そして、その魔法陣のデータの閲覧が不可能だったこと。
 のろまな手つきでコンソールを弄れば、他にも様々な動作が、アクセス権限によって制限されていた。
 それこそ、これまでなら問題なく実行できたような、首輪の制御システムへのアクセスさえも、だ。
「私にできることは……もう、何もない……?」
 無力感が、声に滲んだ。
 虚脱感が、顔に浮かんだ。
 これまで有していたアクセス権限の、その大半が凍結された。
 それが意味することは、プレシアが自分を必要としなくなったということ。
 お前はもう当てにしていないから、非常事態を伝えるつもりもない、と、暗に示しているということだ。
 そしてそれは、自分が殺し合いのフィールドに働きかけることが、事実上全くの不可能となったということを意味している。
 そのくせモニターの監視機能は、未だ使用可能ときている。
 これはなんという皮肉だ。
 なんと陰惨で痛烈な三行半だ。
「指をくわえて見ていろと……そう言いたいのですか、プレシア……?」

96暗躍のR/全て遠き理想郷 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:43:56 ID:FwLcIe6A0


「さすがにプレシア・テスタロッサの使い魔……全くの馬鹿というわけではない、か」
 ぽつり、と呟く女の声。
 落ち着いた大人の女性といった声音の主は、黄金色に輝く双眸を、手元のモニターへと向けていた。
 そこに映し出されているのは、かの猫の使い魔リニスの姿。
 己の無力と絶望を噛み締め、呆然とした表情で、1人うなだれる無様な姿だ。
 とはいえ自力でそこまでたどり着けたというのは、さすがは大魔導師の眷属といったところか。
(深刻に捉えすぎてるような気がしないでもないけど、まぁいいお灸にはなったんじゃないかしら)
 リニスの推測通り、彼女は業を煮やしたプレシアの手によって、自らの管理権限を剥奪されていた。
 それまで担当していた職務の数々は、このモニターを見やる女を含んだ、戦闘機人達に分配されている。
 最初はプレシアも、外様に権力を与えていいものか少々迷ったようだが、
 組織のけじめを保つためにも、結局はこうしてリニスへの懲罰を優先したのだ。
 唯一使い魔の認識に間違いがあるとするなら、
 これはあくまで力差を明確に示すための、一時的な罰則に過ぎないということか。
 プレシアが言うには、あくまで第四回放送までの間頭を冷やさせるためのもので、
 それで効果が見られたのなら――余計な行動を取る気が失せたようなら、厳重注意の後に権限を元に戻すつもりだという。
 それにああも深刻なショックを受けているのは、やはりやましい意思があったということなのだろうか。
(さて……問題は彼女よりも、侵入者の方ね)
 思考の矛先を切り替え、監視カメラの映像をシャットアウト。
 その手元に映るモニターへと、ガジェットドローンの制御プログラムを呼び出す。
 リニスの読み通り、この女は――いいや他の戦闘機人もまた、侵入者の存在を認知していた。
 それこそ唯一彼女だけが、蚊帳の外へとはじき出されていたということだ。
(マリアージュはすぐに実戦投入可能だけど、今はまだ必要でもないか)
 視線のみを傍らに流し、内心で呟く。
 その目線の先に存在するのは、ガレアの王と称された少女。
 小柄な身体を薄物に包み、オレンジ色の髪を垂らした、古代ベルカの冥府の炎王――イクスヴェリアだ。
 洗脳プログラムの調整も、指揮権の剥奪も完了している。
 ひとたび彼女を目覚めさせれば、屍の兵士マリアージュは、即座にこの女の下僕となり、彼女の指示するままに働くだろう。
 しかし、今はまだその必要はない。
 所詮ガレアの冥王は、もしもの時の備えでしかない。
 高すぎる攻撃力と自爆能力を有した屍兵では、無用に建物を傷つけてしまう可能性もあるだろう。
 故に、今はまだ必要がない。
 今はガジェット達で用済みだ。
「頼むわよ、ガジェット達。私達のために邪魔者を見つけ出してちょうだい」
 プレシアのために、とは言い切らなかった。
 私達のために、とあえてぼかした。
 女の指がしなやかに踊る。心無き魔導師殺し達へとタクトを振る。
 機械人形のコンダクター――戦闘機人ナンバーⅠ・ウーノは、静かに蜘蛛の糸を張り巡らせていた。


【備考】
※リインフォースとアルフが、「首輪爆破の制御プログラム」「名簿」の二種のデータの存在を確認しました。
※リインフォースによる不正アクセスが、リニスに察知されました。
※第四回放送までの間、リニスのアクセス権限が大幅に制限されるようになりました。
 監視映像の閲覧以外の、ほとんどの権限が凍結されています。
 リインフォースとアルフの侵入も、リニスにのみ通達されていないようです。
※時の庭園内部に、ガジェットドローンⅠ型が複数配備されました。管制はウーノが行っているようです。

97 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:45:34 ID:FwLcIe6A0
投下終了。
今回分でリイン達とリニスを会わせようかとも思ったのですが、残り人数16人とまだまだギリギリ時期尚早だと思ったので、今はこのへんで。

98 ◆Vj6e1anjAc:2010/04/20(火) 08:48:06 ID:FwLcIe6A0
おっとと、いきなり誤字発見。

今はガジェット達で用済みだ。→今はガジェット達で様子見だ。

99少し頭冷やそうか:少し頭冷やそうか
少し頭冷やそうか

100リリカル名無しA's:2010/04/20(火) 17:15:28 ID:OnNgqnOE0
投下乙です。
そうか、リイン&アルフはまだロワやっている事すら知らないのか(当然平行世界の存在も)。でも、もう発見されているからなぁ……オワタ。
流石にリニスは手を出せなくなったか(厳重注意だろうけど、実質ほぼアウトだからなぁ)……だが、見ているだけしか出来ないという事は……逆を言えば見る事は出来るって事だからなぁ……
だが……ウーノの口ぶりから察するに純粋にプレシアに従順というわけでは無いのが気になるが……(次の話でプレシアによって退場というオチもあるわけだが。)

しかし、これ本編扱いなのか? それとも外伝扱いなのか? どっちにすべきだろう……自分は本編でも良い様な気もするが……(でも、本当にあまり大きな動きのない外部話でもあるわけだしなぁ……)判断に迷う

101リリカル名無しA's:2010/04/20(火) 19:14:03 ID:fbjZHEMg0
更に本編に絡む可能性を含むから本編扱いでいいと思うぞ

102リリカル名無しA's:2010/04/20(火) 19:23:22 ID:fbjZHEMg0
改めて投下乙
そうか、二人は知らないのか。でもこれは想像も出来ないだろうな…知ったら知ったで…
リニアは絶望してるみたいだがロワでは見ることも重要だぞ。状況が変化したら或いは…
ウーノはやっぱり裏があるみたいだがこれはやっぱり…
これからどうなるかが物凄く気になるわw

103リリカル名無しA's:2010/04/20(火) 19:24:03 ID:fM4/b7IkO
投下乙です
リニス、お灸をすえられたか
リイン達はどう動くのか…

個人的な意見としては外伝・本編両方扱いでいいかと
既に本編である前の放送に出てるんだし、登場話が本編なのに登場後ずっと外伝ってのもどうかと思うし
前の外伝話は別に無くてもいい話だったから本編扱いはされていないけど、リイン達はロワ完結に向けてこれからも絡んで来るだろうし

104リリカル名無しA's:2010/04/20(火) 21:31:58 ID:urpKK1/Y0
投下乙です
リニスは条件付きだが実質打つ手なしか
そういえば目から鱗だがリインとアルフはロワのこと知らないのか
確かに納得

自分としては外伝扱いにした方が無難かと
けじめつけておかないとロワ本編が薄れかねないから

105 ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:24:46 ID:Zke0Tok.0
それでは、予約分の投下を開始します。

106強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:26:08 ID:Zke0Tok.0
 この短時間の内に、彼はヴィヴィオに会って、帰って来た。
 天道が齎したその情報は、なのはにとっては重要な意味を持っていた。
 何せこの半日以上、片時も忘れはしなかった大切な一人娘に会って来たと言うのだ。
 そんな一大ニュースを聞いて、なのはが慌てない筈は無かった。

「あ、会ったって……!? 何処で!? ヴィヴィオは無事なんですか!?」
「ああ、とりあえずは無事だ」
「とりあえずって……!」

 天道は飄々とした態度を崩さない。
 しかし、それは逆になのはを安心させる事となった。
 これ程までに落ち着き払っているからには、ヴィヴィオの身は安全なのだろう。
 冷静極まりない天道の視線に見据えられて、なのはも黙らざるを得なくなった。

「――すみません……少し、取り乱してました」
「無理もない、気にするな」
「それで……天道さんは、今まで何処で、何をしていたんですか?」

 まずはそこから話を聞かなくてはならない。
 それから天道が話してくれた話は、先程商店街で大混乱を招いたカードデッキに深く関わる話だった。
 コップの水面から、ミラーモンスターに引きずり込まれたのはなのはも既知の事。
 会場中から集められ、ミラーワールドに集められた参加者は、主犯者も含めて十数人居たと言う。
 そして、肝心の主犯者というのが、先程も話した浅倉威という男。根っからの危険人物らしい。
 浅倉はプレシアが最初に行った見せしめと同じ要領で、二人の若い男女の命を簡単に奪った。
 それを受けてか、集められた参加者のほぼ全員が殺し合いに乗り、戦いを始めたと言うのだ。
 そんな中、天道は自分のライダーシステムであるカブトの奪還に成功。
 カブトとして、戦いに乗った他のライダーと戦おうとした、その時。
 乱入して来たのは、金髪をサイドポニーに束ねた、オッドアイの少女。
 それを聞いた時点で、なのはには大方の予想が出来ていた。
 天道は対話を試みたらしいが、金髪の少女――ヴィヴィオは一向に応じなかった。
 というよりも、ヴィヴィオには言葉すら通用しなかったらしい。
 ただただ“なのはママを傷つけた者を殺す”事だけを戦いの理由にしていたのだ。
 結局何の進展も得られず、突如現れた不死鳥によって自分は元の場所へと連れ戻された。
 それが天道の身に起こった全てであった。

「ミラーワールドの中で、そんな事が……ヴィヴィオ、またあの姿になっちゃったんだ……」
「また……だと?」
「あ、はい……」
「なら今度はこっちから質問だ。幼い子供の筈のヴィヴィオが、何故大人になって戦っていた?」
「それは……」

 今度は、天道からの質問だった。
 ここまで情報を教えてくれた天道に、何も教えない訳には行かない。
 天道のお陰でヴィヴィオの安否も確認出来た事だし、何よりも自分の娘が天道に迷惑を掛けたのだ。
 故に、ヴィヴィオの身に起こった事情を秘匿する理由などは皆無。
 だからなのはは、重い口を開いて説明を始めた。

 そんな二人の耳朶を第三回目の放送の音が叩いたのは、話し始めてから暫く経ってからの事だった。

107強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:26:57 ID:Zke0Tok.0





 ソルジャーの持てる全力。
 それは並みの参加者のそれとは比べ物にすらならない、比類なき力。
 体力面に於いても、持久力に於いても。
 あらゆる面に於いて、ソルジャーは優れている。
 それら全てを出し尽くして、市街地を掛ける。
 目的は、只一つ。

「何処だ……チンク! クアットロ!」

 守るべき、大切な家族を保護する為。
 その為に、戦士は駆ける。





 現在位置は、差し込む光も薄れ始めた、薄暗い喫茶店――翠屋。
 今現在彼女を照らす光源は、傾き始めた太陽による僅かな光のみだった。
 誰も居ない喫茶店。横たわる首無しの惨殺死体。垂れ流しになった体液に、立ち込める異臭。
 そんな場所にたった一人佇む彼女の姿は、ともすれば“異様”とも取れるものだった。

(これでよし……と)

 片手にはキッチンから持ち出した大きめの出刃包丁。
 片手には目の前に転がる死体から剥ぎ取った首輪が一つ。
 首輪の裏には、「シャマル」という名前が刻まれていた。
 クアットロがこの翠屋に訪れたのは、これで二度目になる。
 一度目は、八神はやてとシャマルと共に。
 二度目は、死んでしまったシャマルの首輪を回収する為に。

(想像はしていましたけど、やはり死体から外しただけでは首輪は爆発しない、と……)

 心の中で呟きながら、首輪を無事回収出来た事に安堵。
 死体から首輪を外しても爆発しない――これに当たって、考えられる理由は二つ。
 一つは、首輪自身に装着者の生死を認識する能力がある、という可能性。
 一つは、主催側が常に見張っていて、危険と思った時点で爆発する、という可能性。
 何とかして解除するのであれば、機械的な前者の方が都合がいいが。

(……ま、これに関しては、もう少し下調べが必要ですわね)

 何の情報も持たない今、これについて思考しても進展は無い。
 状況を進展させる為には、首輪を解析するだけの設備が整った施設へ向かう必要がある。
 そして、首輪を解析する事が可能なラボとして思い当たるのは、二つ。
 片方は、自分達ナンバーズを生み出したスカリエッティのアジト。
 もう一つは、仮面ライダーを生み出したスマートブレイン本社ビル。
 この二つの施設ならば、首輪を解析するくらいの設備は整っているだろう。

108強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:27:39 ID:Zke0Tok.0

(最も、プレシアが何も対策を講じて居ないとは考えにくいですけど)

 もしも自分が主催側であれば、首輪を解除させるだけの施設なんて態々設置してやる程優しくは無い。
 仮に解除できたとしても、先程考えた通り、会場毎捨てられてしまえばそれでお終いだ。
 故に、迂闊に首輪を解除する様な馬鹿を野放しにする訳には行かない。
 そんな馬鹿は始末するなり自分の管理下に置くなりする必要性がある。
 そして、管理した上で必要となるのが、確実に勝利を収めるだけの戦力と、確実に首輪を解除する為の頭脳。
 後者については他ならぬ自分自身の存在を勘定に入れれば、頭脳としては既に大きな戦力を持っている事になる。
 それらを揃えて、失敗が許されない完璧なタイミングで首輪を解除しなければならないのだ。
 状況は、当初クアットロが想像していた以上に不利。

(不本意ですけど、このゲームからの脱出はもう、私個人の問題では無いという事ですね)

 自分一人ではどうしようもない。
 かといって、自分を警戒している参加者だって多いであろうこの状況下で、下手な演技は逆効果。
 これはあの無能な夜天の主の例から考えても、既に実証された事実だ。
 出来もしない演技に掛けて、窮地に立たされるのは御免被りたい。
 不本意この上無い事だが、ゲームから脱出するまでは、小競り合いをしている場合では無いのだ。
 管理局員や他の世界の勢力と手を組んででも、確実にこのゲームから脱出したいところだ。

(まず、アンジール様は何としてでも味方に付けるとして……でもでも、もうゲーム開始から随分と時間も経ってますしぃ……
 純粋な対主催勢力ってあとどのくらい居るんでしょう……下手をすれば、もう皆死んでしまったって可能性も……)

 無きにしもあらずだった。
 そもそも、殺し合いに乗らず、皆と一緒に戦う……なんて甘ちゃんはこのゲームでは生き残れない。
 シャマルだってそうだ。その甘さ故に、信じて居た主からボロ雑巾の様に捨てられ、死んでいった。
 生き残っているとしたら、純粋にゲームに乗った参加者と、戦えるだけの力を持った対主催勢力のみ。
 現在誰が生き残っているのか、性格な情報が欲しい。
 その為には、6時から始まる放送を確実に聞きたい所だが――

 『こんばんは。
 これより18時をお伝えすると同時に、第3回目の定期放送を行いたいと思います。 』

 おりしも、放送が始まった。
 まずはこの放送を聞いて、残った戦力について考える必要がある。
 ――のだが、それ以前に引っ掛かる事が一つあった。

(え……この声って、まさか……というかやはり……)

 一応、考えてはいた。
 もしかすれば、自分達の創造主であるジェイル・スカリエッティも関わって居るのではないかと。
 クアットロが尊敬する数少ない人物の一人――スカリエッティならばやりかねない、と
 例え自分の手駒だとしても、他の平行世界に存在するクアットロならば容赦なく斬り捨てるだろう。
 そして、淡々と放送を読み上げる声の主は、まさしくスカリエッティの手駒の一人であった。

109強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:28:12 ID:Zke0Tok.0





 まるで早送りの映像でも見ているかのように、街の景色は流れて行く。
 それも全ては、アンジールの人並み外れた走力が成せる業だった。
 アンジールはまだ知らない。
 守るべき、家族の死を。
 斃すべき、友の死を。

「放送――もう6時かッ!」

 耳朶を打ったのは、6時間毎の定時放送。
 自分の周囲で起きている事実など知る訳も無く。
 何も知らないアンジールへと、残酷な運命は付き付けられた。





 6時の放送が終わってから、経過した時間は既に一時間弱。
 たった二人しかいない事務所は今、深い悲しみに包まれていた。
 悲しみの原因は最早語るまでも無く、先程行われた放送だ。

 先程まで共に行動していたペンウッドとC.C.は死んだ。
 誤解を解かねばならない筈だった騎士、ゼストも死んだ。
 大切な教え子であるキャロも、まだ幼いルーテシアも死んだ。
 10年間という長い時間を共に過ごしてきたシャマルも、フェイトも死んだ。
 亡くなってしまった命はもう戻っては来ない。
 皆なのはにとっては大切な人間だった。
 いくら精神が強いとは言え、それに耐えて平静を保てる程、なのはの精神は頑丈では無かった。 
 そして、それが解っているからこそ、天道も下手に声を掛けはしなかった。
 天道にしても、守るべき命を19人も殺されて、全く意気消沈していないと言えば嘘になる。
 例え見ず知らずの人間であっても、罪の無い人が死んで行くのは天道の意思に反する。
 ここまでの自分は、余りに無力過ぎた。
 自分がもっとまともに戦えて居れば、救えた命もあった筈なのだ。 
 デスゲームが始まってからの戦いを振り返れば、そう思うのも仕方が無い。

(それにしても……ヴィヴィオ、か)

 不意に、思い出す。
 今回の放送では、その名が呼ばれる事は無かった。
 戦闘の意思を見せなかったとは言え、カブト相手にあれだけの戦闘力を発揮したのだ。
 そう簡単に他の参加者に殺されてしまう心配は無いだろう。
 というよりも、逆に他の参加者を殺してしまうのではないかと言う懸念すらある。

(そうなる前に、ヴィヴィオを止めたいが)

 ヴィヴィオに関する話は、大体高町なのはから聞いている。
 なのはが初めてヴィヴィオに出会ってから現在に至るまで、あらゆる話を、だ。
 始めは本当に甘えん坊で、一度なのはから離れるとなれば、大泣きは避けられなかった事。
 その度に宥めるのが大変で、それでもなのははヴィヴィオの仮初の母親として接した事。
 やがて正式になのはがヴィヴィオを引き取る事が決まって、晴れて本当の母親になれた事。
 これから本当の家族としての時間を一緒に過ごして行こうと、この親子の未来は輝いていた事。
 それらの話を天道に聞かせる時、なのはは何時になく饒舌で、楽しそうな顔をしていた。
 そんななのはの顔を見れば、どんな思いで母親としてヴィヴィオを世話していたのか等、すぐに解った。

110強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:28:59 ID:Zke0Tok.0

 天道から言わせれば、高町なのはという人間は、間違いなくヴィヴィオの母親だ。
 この親子の間に、血の繋がりだ聖王のクローンだなんて事は一切関係無い。
 揺るぎ無い絆で結ばれた二人は、誰が何と言おうと間違いなく家族なのだ。
 だからこそ、それは天道に決意をさせる十分な理由となり得た。

(もう一度、高町が楽しそうに笑う顔が見たくなった)

 絶対に、もう一度ヴィヴィオとなのはを再会させる。
 そして皆で揃ってプレシアを打破し、このゲームから脱出する。
 その時にはきっと、なのはは再び笑顔を取り戻してくれるだろう。
 彼女ならば、多くの仲間を失ってしまった悲しみを乗り越えられる筈だと、信じて居る。
 だから、もうこれ以上は誰も死なせない。
 生き残った全員の命を救った上で、何としてもこの親子を守り抜いて見せる。
 それが、天道の決めた新たな方針だった。





 守る為に、殺す。
 大切な者を守る為なら、それ以外の命など取るに足らない。
 かつてのアンジールならば、そんな考えは持たなかっただろう。
 だが今は違う。違ってしまった。
 守るべき者を知った時、人は変わるのだ。
 
「また俺は、守れなかったのか」

 そして、守るべき者まで失ってしまったと知った時――





 既に日が落ちた市街地を進む影があった。
 否、それは正確には影と言える物では無い。
 他者からすれば、影すら見えない不可視の物質。
 戦闘機人ナンバーズが4番目――クアットロ。

(頼もしいのはいいんですけど……少し速すぎじゃありません事?)

 クアットロは、心中で思う。
 先程翠屋の中で、自分は確かに見た。
 偽りの兄妹、戦闘機人・アンジールの姿を。
 その桁違いの走力で、市街地を駆け抜けて行く勇姿を。
 戦闘能力はセフィロスにも追随するトップクラス。
 走力・体力・持久力。共に化け物染みたレベル。
 頼もしいったりゃありゃしない。
 ――追い付くことが出来れば、の話だが。

(もう、一体全体この数分間でどれだけ先へ行ったって言いますの……!?)

 事実としてクアットロは、アンジールに追い付けずに居た。
 そもそも前線に出る事のないクアットロが、クラス1stの走力に追い付く事自体が難しい事なのだが。
 それでも、折角見付けた千載一遇のチャンス。
 みすみす逃すわけにはいかない。

(そう……セフィロスは死んだ様ですけど、まだ他の脅威が残っている事に変わりはありませんから)

111強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:29:30 ID:Zke0Tok.0

 セフィロスクラスに対応出来るだけの戦力を味方に付けて置くに越したことは無い。
 あれだけの戦力を持った者が味方に居れば、それだけで戦略の幅は広がるのだ。
 故に、何としてもアンジールを見逃す訳には行かないのだ。
 何としてもアンジールを取り込まねばならない。

(それにしても……はやてさんは一体どんな手を使ったんでしょう。
 まさかあの状況から、セフィロスだけを殺して生き残るなんて……)

 クアットロの知る限り、八神はやては何の道具も持ち合わせては居なかった。
 だとすれば、考えられる方法は絞られてくる。
 他の参加者と合流し、助けて貰ったか、何らかの方法で油断させ、不意を打ったか。
 まぁ、普通に考えたら前者の方がよっぽど現実的だが。

(だとすれば、少々やっかいですわねぇ)

 はやてには少々、余計な事を言い過ぎた。
 自分の悪行を広められてしまっては、余計に動きにくくなると言う物。

 ――否、自分はあの無能な部隊長と違って、まだ人殺しをしてはいない。
 どうせ最初から自分は警戒されているのだ。素直に信じてくれる御人好しなんてそうは居ないだろう。
 それなら、まだいくらでもやり様はある。
 何せ端から日和見に傾く腹積りだったのだ。
「様子見の為の嘘でした、ごめんなさい。もう嘘は付きません」と行っておけば、後は機転を利かせればどうとでもなる。
 故にはやてに関しての問題はそこまで大きな問題とは言えない。
 何せ既にギルモンやシャマルを殺しているはやての方が、状況は圧倒的に不利なのだから。

(で、主催側にはやはりドクターが絡んで居たようですけど……)

 自分を参加させている事から考えるに、「スカリエッティに頼ってゲームからの脱出」は絶望的だろう。
 ゲームから脱出させる為には、“この世界のスカリエッティ”すらも欺かなければならない。
 だが、それに関してはもう悩む必要も無い。
 スカリエッティだって平行世界の自分をこうも簡単に斬り捨てたのだ。
 自分だってそんなスカリエッティに忠義を尽くす義理は無い。
 クアットロが唯一使えるのは、クアットロが居た世界のスカリエッティなのだから。

(故に、この世界のドクターは敵……ま、これに関しては考えるまでもありませんね)

 その判断は、至って単純なもの。
 問題はそれよりも、どうやってスカリエッティを出し抜くか、だ。
 別の世界とは言え、相手はあのスカリエッティなのだ。
 生半可な計画では容易く見抜かれてしまうだろう。
 何とか仲間を集めて、上手くシルバーカーテンと組み合わせて首輪を解除する。
 シルバーカーテンの能力は絞られているとはいえ、頭脳戦に於いてこれ程に心強い物は無い。
 必ずやこの能力は役に立つ。それだけの確信がある。
 だから、今は焦らず仲間を集めるのだ。

112強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:30:03 ID:Zke0Tok.0





 失った者は、この場に残った家族。
 失った者は、この場に残った親友。
 出来る事ならば、家族を傷つけた友は、この手で倒してやりたかった。
 それが友、セフィロスに出来るせめてもの手向けだった。
 だが、それももう出来ない。
 そして何よりも。

「チンク……」

 守るべき者を失った時、人はやはり変わる。
 もうアンジールに、精神的な余裕など残されている筈も無かった。
 守護の対象は、クアットロ一人に絞られた。
 クアットロを守り抜く為ならば、何だってする。
 妹を守る為ならば、他の全員を殺すことも厭わない。
 アンジールは再び、アスファルトを蹴った。
 友と家族の死を、その剣に背負って。





 小さな非常灯に照らされた事務所内。
 音一つ無い、静かな世界だった。
 否、正確には全くの無音では無い。
 声にもならない嗚咽。
 絞り出す様な泣き声。
 それだけが、静寂の中で響いていた。

(ペンウッドさん……C.C.……)

 なのはの心中で、死んでしまった者への
 ペンウッドは臆病で、まるで頼りにならなかった。
 年配者なのに、自分に頼りっぱなしで、戦力としては数えられなかった。
 だけどその半面、彼は誰よりも気高い勇気を持った男だった。
 自分の命を投げ出してまで、なのはを救ってくれたのだ。
 そんな事、簡単に出来る事じゃない。
 C.C.はC.C.で、基本無表情で、何を考えているのか解らなかった。
 だけど、殺し合いに反発していたのは間違いない事実。
 ルルーシュという人物と再会する為に、共に闘う筈だった。
 だけど、C.C.も、ルルーシュも、死んでしまった。
 もう、二人が再会する事は無くなってしまったのだ。

(キャロ……騎士ゼスト……)

 キャロはまだ10歳の女の子で、なのはの教え子だった。
 こんな殺し合いに参加させられて良い訳が無い、将来有望な子供だったのだ。
 それも、なのはが一から魔法のいろはを教えた少女が、こんな下らない戦いで死んでしまった。
 エリオも、ティアナも、キャロも、皆死んでいく。
 ゼストだって、キャロ以上に頼もしいストライカー級魔道師だったのに。
 これからゼストと合流して、誤解を解かねばならないと思っていたのに。
 それも果たすことなく、その命は再び散ってしまった。

(シャマルさん……フェイトちゃん……!)

113強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:30:40 ID:Zke0Tok.0

 何よりもなのはの胸を締め付けるのは、10年来の仲間の死。
 二人とも、この10年間をずっと共に過ごしてきたのだ。
 闇の書事件以来、心強い味方として御世話になっていたシャマルさん。
 辛い時も、楽しい時も、共に数多の戦場を駆け抜けて来たフェイトちゃん。
 特にフェイトの死は、ここへ来てから二度目になる。
 幾ら心を鋼鉄で武装しようにも、耐えられる訳が無かった。

 泣くだけ泣いて、顔を上げた。
 時計を見れば、既に放送から一時間弱が経過していた。
 背後に人の気配を感じ振り向けば、そこに居るのは天道総司。
 この人はまた、自分に気を遣ってくれたのだ。
 一時間近く泣いている間、何も言わずに休ませてくれたのだ。

「ごめんなさい……もう大丈夫です」
「そうか」

 涙を拭って、立ち上がる。
 これ以上、ここで立ち止まっている訳には行かないのだ。
 フェイトだって、死んだ皆だって、きっとここでなのはに挫けて欲しくは無い筈。
 彼女らが成せなかった事を、自分が成し遂げて見せる。
 散って行った皆の意思を継いで、このゲームを破綻させて見せる。
 決意を新たに、天道に向き直った

「ならば、今すぐゆりかごへ向かうぞ」
「え……?」
「何だ、聞こえなかったのか。ゆりかごへ向かうと言っているんだ」
「い、いや……そうじゃなくって、どうして」
「愚問だな。逆にお前がゆりかごへ向かわない理由があるなら聞かせてみろ」

 なるほど、そういうことか。
 天道は、ヴィヴィオを救うつもりで居るのだ。
 だから、聖王と関わりの深いゆりかごへ向かうと言い出した。
 他にヒントが無い以上、ヴィヴィオの手掛かりはゆりかごにしか無いのだ。

「でも、他の皆だって助けなきゃならないのに」
「無理をするな。お前だって本当は一番に助けたいんじゃないのか?」
「……はい。たった一人の、娘ですから」
「それでいい。もしもお前が娘よりも他の参加者を優先していれば、俺はお前に失望していた」

 なのはは思う。
 天道総司という人間は、一見クールに見えて、実は人間臭い。
 金居曰く“正義の味方”という建前の元で戦う男という事だが、それは間違いだ。
 この男は正義だとか、英雄的行為だとか、そんな物に縛られてはいない。
 ただ自分の信じる正義に従って、守りたい道を貫き通す。
 ある意味では、どんな英雄よりも信用出来るタイプだ。

「でも、ゼロはどうするんですか?」
「下らん……奴はキングだ。これ以上奴のお遊びに付きやってやれる程、俺達は暇人でも御人好しでも無い」

 天道が、さもつまらなさそうに言ってのけた。
 なのはも薄々は感づいて居たが、確かにゼロはキングの可能性が高い。
 ペンウッドとC.C.の二人は死んだのに、キングだけは死んでいないのだ。
 それだけでキングを犯人だと決めつけるのはどうかと思うが、もう一つ、犯人をキングだと断定させる理由があった。
 それは、口で嘘を吐く事は出来ても、どうしたって隠し切れはしない物――瞳に宿る光だ。
 キングの瞳に宿った邪気は相当な物だったし、それに気付けないなのはでも無い。
 恐らく、ゼロはキングで間違いないだろう。
 故に、これ以上ここに留まる理由も無い。
 二人はすぐに行動を開始した。

114強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:31:19 ID:Zke0Tok.0





 最早、言葉は必要ない。
 目の前に敵が居るならば、それを駆逐する。
 アンジールの視界に映っているのは、確か管理局のスーパーエース。
 管理局であるなら敵だ。我ら家族の敵だ。
 相手が敵ならば、持てる全力を尽くして叩き潰すまで。
 例え夢も誇りも失ったとしても、最後に残ったものだけは失いたく無いから。
 家族を守る為。そんな大義名分を盾に、八つ当たりにも似た襲撃を開始した。





 放送を聞き終えたヒビノ・ミライは、たった一人市街地を歩いていた。
 その表情は、暗い。ミライの周囲を覆う夜の闇よりも暗い。
 理由は単純明快、先刻行われた放送。
 死んでしまった参加者の人数は、19人。
 前回の放送の比では無い。
 余りに多すぎる。

(こうしている間にも、19人も死んでしまうなんて……)

 その中には、先程目の前で殺されたあの人も含まれているのだろう。
 19人も名前を読み上げられれば、その中の一人を特定するのは難しい事だが。
 そして何よりも、ミライを最も悔やませるのは、その中で呼ばれた一人の名前。

(万丈目君……)

 万丈目準。
 ミライと行動を共にする、おジャマイエローの相棒。
 おジャマイエローが再会を望む、最愛のパートナー。
 絶対に再び合わせると約束したのに、それを果たす事無く、その命は奪われてしまった。
 これでは、おジャマイエローに合わせる顔が無いと言う物。
 幸か不幸か、おジャマイエローはデイバッグに引きこもっていた為に、この放送を聞いてはいない。
 このまま言わなければ、万丈目の死を知らずに済むかもしれないが……

(……いや、そんな訳には行かない)

 脳裏に過った考えを振り払う様に、ミライは首を振るった。
 確かに知ることが無ければおジャマイエローが悲しむことは無いだろう。
 だが、それは間違っている。
 本当の事を言わずに方便の嘘を吐いた所で、それはその場凌ぎでしか無いのだ。
 いつか知ってしまうなら、正直に話すべきだ。
 だが、ミライはそれでも悩む。

(一体、どんな顔をして伝えればいいんだ)

 守ると約束して、守れなかった。
 何も出来る事無く、目の前の男を死なせてしまったばかりか、約束の一つも守れない。
 こんな事で、何が光の国の戦士だ。何がウルトラマンメビウスだ。
 瞳を食いしばって、自分の無力に打ちひしがれる。
 どうしてこんなにも守れないのだろうか、と。
 そんな時だった。

115強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:31:50 ID:Zke0Tok.0

 ――キィン。

 微かに聞こえた、金属と金属のぶつかり合う音。
 全ての思考を一時的にかなぐり捨てて、ミライは顔を上げた。
 これは恐らく、と言うよりも間違いなく、戦闘音だ。
 金属と金属がぶつかり合う、戦闘による効果音。
 誰かがこの近くで、戦っているのだ。

(音は……ここから近い!)

 今ならばまだ間に合う。
 この戦闘を止めるのだ。
 今度こそ、守って見せる。
 その為に、ミライは駆け出した。

116強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:35:22 ID:Zke0Tok.0
 最初にアスファルトを蹴ったのは、アンジールであった。
 標的は、目前に居る男女――家族にとっての宿敵。
 敵が目の前に居るのであれば、殺してでも進む。
 その先に何があろうと、今は関係無い。
 放送を行った人物についてなど、後で考えればいい話だ。
 今は、激情のままに戦うのみ。
 そうだ。これは、家族を傷つけたやつら全てに対しての弔い合戦。
 先刻まで背に装備していたバスターソードを振りかざし、凄まじいまでの初速で距離を詰める。
 アンジールの腕力を以て繰り出された一撃は、しかし赤き閃光によって受け止められた。

「……ッ!?」
「やれやれ。やはり天は俺に試練を与えるか」

 天道総司が、ぼやくように言った。
 カブトムシにも似た赤の閃光は、ドリルの様に回転しながら、その角で正面から大剣を受け止めて居た。
 天道総司にのみ従うカブトゼクターは、地球上で最も硬いとされるヒヒイロノカネを素材としている。
 その硬度を以てすれば、如何にソルジャーと言えど、たった一撃の攻撃を凌ぐ事など、容易い事。
 カブトゼクターはバスターソードを弾き、アンジールは反射的に半歩後退した。

「戦う前に教えろ。お前は何故この殺し合いに乗った」
「家族の為だ……!」
「なるほどな。お前も高町と同じか」

 たった一人の娘を守る為に、戦うと決めた高町なのは。
 家族の為に戦っているという点では、アンジールもまた同じ。
 否――戦う理由は同じでも、この二人は決定的に違う。
 それは、単純な理由だ。

「だがお前は違う……家族の為などと大義名分を振りかざし、人殺しに走るお前は高町の足元にも及ばん」
「……知った風な口を聞くなッ!」

 再び駆け出そうとしたアンジールの行く手を、カブトゼクターが阻む。
 キュインキュイン、と機械音を鳴らしながら、天道総司の周囲を旋回した。
 天道の腰にいつの間にか巻かれていたのは、無機質な銀のベルト。
 そして、カブトゼクターがベルトに滑り込んだ刹那、変化は起こった。

 ――HENSHIN――

 続けて、鳴り響く電子音と共に、ベルトが大量の六角形を形作って行った。
 六角形は男の身体を瞬く間に覆い尽くし、それ自体が強固な鎧を形成。
 不格好な鎧だ。神羅の一般兵の鎧をそのままごつくしたような外見。
 剣を構える男に対し、目の前で鎧を装着する事は即ち、戦闘の意思有りという事。
 無防備な高町なのはを斬り捨てるよりは、幾らか気も楽だ。

117強襲ソルジャー ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:36:34 ID:Zke0Tok.0
 



 最初にアスファルトを蹴ったのは、アンジールであった。
 標的は、目前に居る男女――家族にとっての宿敵。
 敵が目の前に居るのであれば、殺してでも進む。
 その先に何があろうと、今は関係無い。
 放送を行った人物についてなど、後で考えればいい話だ。
 今は、激情のままに戦うのみ。
 そうだ。これは、家族を傷つけたやつら全てに対しての弔い合戦。
 先刻まで背に装備していたバスターソードを振りかざし、凄まじいまでの初速で距離を詰める。
 アンジールの腕力を以て繰り出された一撃は、しかし赤き閃光によって受け止められた。

「……ッ!?」
「やれやれ。やはり天は俺に試練を与えるか」

 天道総司が、ぼやくように言った。
 カブトムシにも似た赤の閃光は、ドリルの様に回転しながら、その角で正面から大剣を受け止めて居た。
 天道総司にのみ従うカブトゼクターは、地球上で最も硬いとされるヒヒイロノカネを素材としている。
 その硬度を以てすれば、如何にソルジャーと言えど、たった一撃の攻撃を凌ぐ事など、容易い事。
 カブトゼクターはバスターソードを弾き、アンジールは反射的に半歩後退した。

「戦う前に教えろ。お前は何故この殺し合いに乗った」
「家族の為だ……!」
「なるほどな。お前も高町と同じか」

 たった一人の娘を守る為に、戦うと決めた高町なのは。
 家族の為に戦っているという点では、アンジールもまた同じ。
 否――戦う理由は同じでも、この二人は決定的に違う。
 それは、単純な理由だ。

「だがお前は違う……家族の為などと大義名分を振りかざし、人殺しに走るお前は高町の足元にも及ばん」
「……知った風な口を聞くなッ!」

 再び駆け出そうとしたアンジールの行く手を、カブトゼクターが阻む。
 キュインキュイン、と機械音を鳴らしながら、天道総司の周囲を旋回した。
 天道の腰にいつの間にか巻かれていたのは、無機質な銀のベルト。
 そして、カブトゼクターがベルトに滑り込んだ刹那、変化は起こった。

 ――HENSHIN――

 続けて、鳴り響く電子音と共に、ベルトが大量の六角形を形作って行った。
 六角形は男の身体を瞬く間に覆い尽くし、それ自体が強固な鎧を形成。
 不格好な鎧だ。神羅の一般兵の鎧をそのままごつくしたような外見。
 剣を構える男に対し、目の前で鎧を装着する事は即ち、戦闘の意思有りという事。
 無防備な高町なのはを斬り捨てるよりは、幾らか気も楽だ。

「そんな鎧で、ソルジャーに勝てると思うなよ」
「俺の事よりも、自分の心配をするんだな」
「何だと」
「お前こそ、そんなナマクラで俺の命を奪えるとは思わない事だ」
「……随分と、ナメられたものだな」

 バスターソードを握る手に、自然と力が込められる。
 この男は父から受け継いだ誇りをナマクラと言った。
 アンジールの夢を、アンジールの誇りを、ナマクラと言った。
 最早この不遜な男との戦闘はどうあっても免れない。
 二人の戦闘の火蓋は、ここに斬って落とされた。

118夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:39:38 ID:Zke0Tok.0
>>116はミスです。このレスから後半になります。

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(どっちも凄い……全くの互角だ)

 高町なのはが、心中でぽつりと呟いた。
 大剣を操る戦士・アンジールと、最強の仮面ライダー・カブト。
 二人の戦いは、熾烈を極めて居た。
 アンジールが大剣を振るえば、カブトが斧で受け止める。
 カブトが斧を翻せば、アンジールの大剣が弾き返す。
 それらを、一般人では感知出来ぬ程のスピードで何度も何度も繰り返す。
 お互いに決定打となる一撃を与えられぬまま、そんな攻防が繰り返されていた。

「どうした。我武者羅に剣を振るうだけでは、この俺には敵わんぞ」
「うおおおおおおおおおおッ!!」
「やれやれ。完全に頭に血が昇ってる」

 高速で刃と刃を交えながら、カブトの仮面の下からため息が漏れた。
 アンジールが振り下ろした大剣を、今度は受け流さずに、回避した。
 その腕に自分の腕を組み、アンジールの動きを封じた上で、カブトがアンジールの顔を覗き込んだ。
 無機質な仮面の、青い視線。激情に身を任せた、青い視線。
 二つの視線が交差する。

「おばあちゃんが言っていた。男はクールであるべき……沸騰したお湯は、蒸発するだけだ。ってな」
「何ィッ!?」
「答えろ。お前の家族は、本当にお前が殺し合いに乗ることを望んでいるのか?」
「俺もあの子らも兵士だ! 殺す事にはもう慣れた!」

 それは、既に何度も口にした言葉であった。
 一度目はヴァッシュに。二度目ははやてに。
 スカリエッティの元で育てられた彼女らならば、なるほど確かに殺しに躊躇いは無いだろう。
 だが、アンジールの返答は、天道にとってはどうにも腑に落ちない返答であった。

「ほう、それは可笑しな話だな。殺すことには慣れた筈のお前が、その剣には迷いを乗せている」
「何を――!」
「お前はどうしようも無い奴だが、平気で人を殺せるような奴じゃないって事だ」

 果たして、カブトの言う事は正しかった。
 しかし、それは以前までのアンジールならば、の話だ。
 かつてのアンジールならば、より多くの人々の為に。人々の命を救う為に。
 そんな目的の為に戦っていた事だろう。
 だが、それはもう過去の話。

「お前に何が解る! お前に俺の気持ちが解るのか!
 大切な家族を、友を失った俺の気持ちが解るのかッ!」
「解るさ。俺にだって」
「黙れぇぇッ!!」

 もう一度カブトと刃を交えれば、アンジールは後方へと跳び退った。
 ほんのひと跳びで、カブトの攻撃が届かない距離まで後退する脚力は、まさに驚異。
 しかし、カブトに驚く暇など与えられはしなかった。

119夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:40:35 ID:Zke0Tok.0

「ほう」

 心を埋め尽くす激情を体現するかの様に、アンジールの身体に変化が起こった。
 右の背中から、まるで蝶がその羽で蛹の殻を破るよう――
 現れたのは、天使の羽と見まごうばかりの、純白の片翼。

「ウォォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 怒号と共に、その翼を羽ばたかせた。
 たった一度の羽ばたきで生み出されるのは、弾丸をも超える超加速。
 重厚な鎧を着込んだカブトに、そんな加速を受け止められる筈が無かった。
 刹那、叩き込まれたのは化け物染みた怪力によって振り下ろされた大剣による一撃。
 咄嗟の判断で、というよりも反射的に、斧を構えたカブトの腕を弾いて、大剣がカブトの胸部装甲を裂いた。
 どすんっ! と大きな音を立てて、組み伏せられたカブトの身体が、周囲のアスファルトと共に地面へと陥没した。
 こうなってしまっては、如何に強かろうが、もうどうしようも無い。
 カブトの身体を踏み締めて、アンジールが叫んだ。

「俺の、勝ちだッ!」

 結果は、アンジールの勝ち。カブトの負け。
 ソルジャーの、それも“1st”を相手に、カブトは良く戦った。
 確かに手強い相手ではあったが、悲しいかなカブトの力はアンジールには届かなかったのだ。
 ともあれこれで、妹たちにとっての脅威を一つ、排除する事が出来た。
 次は、そうだな。この男と一緒に居た高町なのはをどうするか。
 何せ高町なのはは管理局のエース・オブ・エースだ。
 戦力で言うなら、かなりものである事は間違いない。
 しかし、それについて考える時間が訪れる事は無かった。
 さて、どうするか――と考え始めようとしたアンジールの現実は、覆されたのだ。

「甘いな」
「な――ッ」

 声が聞こえた。
 どこから聞こえた?
 アンジールの、真下からだ。

 ――CAST OFF――

 電子音が響いた。
 それからアンジールは、ようやく理解した。
 自分が切り裂いたのは、カブト本体では無い。
 自分が切り裂いたのは、カブトが着込んだ重厚な装甲に過ぎない、と。
 片翼の突進力と、ソルジャーの怪力を以て放たれた一撃を食い止めるとは、何たる装甲か。
 その装甲が、アンジールの眼下、カブトの身体から剥離しはじめた。
 何が起こるのかと理解するよりも先に、アンジールはバスターソードを引き抜こうとした。
 されど、もう遅い。

120夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:41:17 ID:Zke0Tok.0

「く……ッ!!」

 カブトの身を包んでいた装甲が、弾け飛んだ。
 拡散する装甲が生み出したのは、驚異的な加速力。
 バスターソードが食い込んだままの胸部装甲が、カブトから離れる。
 カブトの頭部や腕を守っていた装甲が、アンジールの身体を直撃する。
 押し出される様に、アンジールの身体は後方へと吹っ飛ばされた。
 されど、アンジールもさるもの。
 むざむざアスファルトに叩きつけられまいと、空中で純白の片翼を羽ばたかせた。
 アンジールの身体は空中で一回転を加えて、減速。アスファルトへの着地、成功。
 バスターソードを振り抜いて、食い込んだままの装甲を投げ捨てた。

 ――CHANGE BEETLE――

 見れば、先程までの無骨な銀とは違う、赤の戦士がそこに居た。
 メタリックレッドのスリムな装甲。輝きを放つ青い複眼。マスクの中央の一本角。
 なるほど、確かにカブトムシは夜になってから行動を開始する。
 まさにカブトを名乗るに相応しい、と皮肉を込めた印象を抱いた。
 昼間まで寝たり、まともに戦えなかった天道の事を考えれば、あながちカブトムシという比喩も間違ってはいないのかも知れない。
 何故なら雑木林に住む昆虫のカブトムシもまた、昼間は土の中や木の皮の裏で眠っているのだから。
 まあ、そんな話はどうでもいい。

「それが本当の姿か」
「それはこっちの台詞だ」

 見下ろすアンジールに、カブトが崩れぬ余裕と共に投げ返した。
 純白の片翼を羽ばたかせ、宙に浮かぶアンジール・ヒューレー。
 赤い装甲を煌めかせ、ライダーフォームへの変身を遂げたカブト。
 二人の姿は、揃って先程までとは違っていた。


 カブトの装甲に身を包んだ天道は、思う。
 この男、殺す事に慣れたなどと言ってはいるが、それは正確ではない。
 もしもこれだけの実力を持った男が最初から殺すつもりで挑んでいたなら、マスクドフォームのままで戦っている余裕など無い。
 相手の力量を図る為にあえて様子見をした、と言えば聞こえはいいが、それはそれで不自然だ。
 どうせ殺すつもりなのであれば、最初から片翼を解放して、最初の一撃で仕留めればいいだけの話。
 片翼を最初から解放しなかった理由として、油断していた、というのも考えられるが、やはりそれも無いだろう。
 この男は、激情に身を任せて我武者羅に剣を叩き付けて来た。
 そんな“キレた”奴ならば、尚更最初から一撃で終わらせに掛っていた方が合理的だ。

(恐らくこいつは、放送で家族の名前を呼ばれているな)

 それが、天道が思い至った結論であった。
 家族の名前が放送で呼ばれたからこそ、これだけキレているのだろう。
 大方他の参加者を皆殺しにして、死んでしまった家族を生き返らせようとか、そんな事を考えているのだろう。
 もしもそうだとしたら、こいつには手の付けようがない。
 家族を失ってしまった者の行動は、ある意味天道が一番理解出来て居る。

「なるほどな。参加者を殺して勝ち残れば、死んでしまった者を生き返らせる事が出来るとでも思っているのか」
「それだけじゃない。最後に残った“妹”を守る為にも――他の誰も、あの子には近づけさせん!」
「妹、だと……?」

 仮面の下で、表情を歪める。
 何たる皮肉であろうか、目の前の男が守ろうとしていたのは、妹だという。
 あろうことか、こいつが戦う理由は、天道が戦う理由と同じ。妹を守る為。
 天道は心の奥底で、怒りがふつふつと湧いてくるのを感じた。
 その気持ちが何なのか、すぐには理解出来なかった。

121夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:42:07 ID:Zke0Tok.0
 
「ハッ!」
「チッ」

 カブトの狼狽を知ってか知らずか、先に打って出たのはアンジール。
 再び先程と同じ要領で加速を得て、カブトへと突貫したのだ。
 流石に装甲が無くなった今、正面から攻撃を受け止めるのは拙い。
 横方向へと跳び退りながら、滑らす様にカブトクナイガンを大剣にぶつける。
 突進の威力をそのまま受け流して、体勢を立て直す。
 お互いに万全の状態で得物を構え。

「「ハッ!!」」

 二人の掛け声が、揃った。
 アスファルトを蹴って、駆け出したカブト。
 片翼を羽ばたかせて、加速するアンジール。
 きぃん! と、甲高い金属音を打ち鳴らして、二人の刃が激突した。
 正面からの激突によって発生したのは、二人を襲う衝撃。
 二人の身体は、正反対の方向へとふっ飛ばされた。
 しかし、二人は超人である。
 みすみすコンクリートに身体を打ち付けはしない。

「ハッ」
「フンッ」

 呼吸音と共に、二人が蹴ったのはビルの壁。
 それぞれ向かい合ったビルのコンクリの壁を蹴って、再び跳躍。
 そのままの加速を殺す事無く、二人の身体は再び舞い上がった。
 今度は、空中。

「「ハァッ!」」

 イオンビームを纏った刃が、誇りの象徴たるバスターソードと激突した。
 されど、この戦いは互角では無い。
 空中戦闘に於いては、翼を持ったアンジールの方が圧倒的に有利。
 激突したクナイガンを弾き返し、アンジールは再び翼を羽ばたかせた。
 空中での推進力を失ったカブトに、これ以上の攻撃は不可能。
 それを理解した上での、大剣での追撃。

 ――CLOCK UP――

 バスターソードによる追撃の一太刀は、しかしカブトには当たらなかった。
 大剣の刃がカブトに激突する瞬間に、カブトは腰を叩いたのだ。
 ZECTが開発したマスクドライダーに標準装備された、クロックアップシステム。
 使用者を、通常の時間軸から空間ごと切り取る事で得られる、光速に近い超加速。
 クロックアップが相手では、例えアンジールと言えど太刀打ち出来る訳が無かった。
 この瞬間からは、カブトのみに感知出来る世界。
 
 突き出されたバスターソードの刃を掴んだ。
 そのまま腕に力を込めて、自分の身体を持ち上げる。
 ひらりと翻った身体で、バスターソードの上に爪先で着地した。
 次に右脚を踏み出して、アンジールの肩を踏み締め、跳躍。
 後方の雑居ビルへと跳び、その壁を蹴って、再びアンジールへと加速した。

122夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:42:48 ID:Zke0Tok.0
 
 ――CLOCK OVER――

 しかし、カブトの思い通りには行かない。
 カブトの攻撃がアンジールに届く前に、クロックアップが切れたのだ。
 クロックアップ中に飛び蹴りを当てる戦法、失敗か。
 否、まだ失敗した訳ではない。クロックアップによるアドバンテージは大きい。
 アンジールが感知するよりも速く、キックを当ててしまえばいいだけだ。
 されど、戦いとはやはり思い描いた通りにはならないもの。

「――後ろかッ!」

 アンジールが、片翼を羽ばたかせて、方向転換をした。
 何と言う反射神経だ。この男は、クロックアップによる連携攻撃に生身で着いて来たのだ。
 ライダーやワームですら、これ程の反射神経を持った者はそうはいまい。
 アンジールは、その化け物染みた反射神経を以て、バスターソードを構えた。
 横幅の広いバスターソードを盾代わりに、カブトのキックを受け止めようと言うのだ。
 されど、カブトのキック力は7トン。当然、受け止め切る事など、出来る訳も無く。
 アンジールの身体は、後方へとふっ飛ばされた。


 スーパーの屋上に着地したアンジールは、バスターソードを杖代わりに立ち上がった。
 足場に突き立てたバスターソードの柄を握り締め、アンジールは思う。
 クラス1stのソルジャーと何度もかち合って、未だお互いに決定打無し。
 この男は強い。文句なしに強いと認めざるを得ない。
 何せ、クラス1stの自分と渡り合えるだけの力を持っているのだ。
 強い。文句なしに強い。
 戦闘におけるセンスは自分と同等か、それ以上だろう。
 もしもこんな戦士が神羅に居たならば、さぞかし立派なソルジャーになれた事だろう。

「強いな。大口を叩くだけの事はある」
「当然だ。何てったって、“俺が最強”なんだからな」
「ならば、尚更だ。“最強”のお前を倒せば、妹の安全はより保証できる」
「お前には無理だ」

 その身体能力を以て、カブトが屋上まで駆け上がって来た。
 俺が最強、と言う言葉を強調して、不遜な態度を崩す事無くうそぶいた。
 だが、最強を自負するからには、この男の戦い方は少し甘すぎる。

「お前の攻撃には、殺意が無い……本気で戦う気は無いのか」
「馬鹿馬鹿しい。俺は最初から本気だ。
 最も、あの生け好かない女に従って誰かを殺すつもりは毛頭ないがな」

 なるほど、この男は殺し合いに乗ってはいない。
 不思議な男だ。ヴァッシュとはまた違って意味で、だ。
 剣を交えたからこそ解る、一種の信頼にも似た感情を、抱き始めて居た。
 これから妹以外の全員を殺して回らねばならないというのに、自分は何をしてるんだと、自嘲した。
 そうだ。死んでしまったチンクとディエチの分まで、俺はクアットロを守らねばならない。
 放送を読み上げた人物もまた掛け替えのない家族の一人だが、そんな事は後で考えれば良いだけの話。
 今考えるべきは、クアットロを守る事だけだ。
 その為にも、この男を叩き潰してでも前に進まねばならないのだ。

123夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:43:20 ID:Zke0Tok.0
 
「殺す前に聞いておこう。お前の名前は?」
「俺は天の道を往き、総てを司る男――天道、総司」
「そうか。俺はソルジャー・クラス1st――アンジール・ヒューレー」

 二人は再び、剣を構えた。
 これで、思い残す事は何もないだろう。
 戦士として戦い、戦士として葬ってやるまでだ。
 魔晄の輝きを宿したその瞳に、再び殺意が込められた。

「ハァッ!」

 アンジールはその片翼を羽ばたかせ、カブトへと突貫した。
 振り下ろす大剣を、しかしカブトは難なく回避する。
 そのままカブトの横を通過したアンジールは、振り向き様に片手を翳した。
 刹那、アンジールの手から灼熱の業火が放たれた。
 マテリアルパワーの一つ、ソルジャーが使う“魔法”。

「チッ」
「ハァァァァァッ!!」

 仮面の下で、舌を鳴らしながら地面を転がって回避した。
 しかし、ファイガは容赦なくカブトの周囲を焼き尽くす。
 火球の直撃を避けた所で、周囲の炎による熱がカブトを蝕む事に変わりは無い。
 炎を振り払う様に足掻くカブトに、アンジールは大剣を構え再び突貫した。

 戦力を見誤ったのはアンジールであった。
 マスクドライダーの装甲は、炎に焙られた程度で傷つきはしない。
 それどころか、内部の装着者には熱は全く届かない。
 ただ反射的に腕を振り払ったのを、アンジールは炎による攻撃が利いていると勘違いしたのだ。
 きぃん! と、甲高い金属音が鳴り響いた。
 アンジールの大剣を、カブトクナイガンが受け止めたのだ。
 そのまま大剣の刀身を滑らす様に、クナイガンを振り抜いた。
 切先が胸元を切り裂く前に、アンジールが上体を後方へと逸らす。
 追撃の右回し蹴りを放てば、左腕の厚い筋肉で受け止められた。
 マスクドライダーの蹴りを生身の筋肉で受け止めるなど、考えられない。
 しかし、驚愕の暇など与えられる筈も無く、アンジールはその手で受け止めた脚を弾いた。
 体勢を崩した一瞬の隙に、再び大剣を振り下ろされる。

「プットオン」

 ――PUT ON――

 咄嗟の判断だった。
 アンジールの大剣がカブトに届くよりも先に、重厚な装甲がカブトに装着されていく。
 先程アンジールの一撃を受け切ったマスクドアーマーが、再びカブトの身を包んだのだ。
 腕を交差させ、その装甲でバスターソードによる一撃を受け止める。
 ずどぉん! と、轟音を響かせて、カブトの身体と共に、コンクリートの地面が崩壊した。

124夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:43:54 ID:Zke0Tok.0
 
「……全く、大した馬鹿力だ」

 抱いた感想をそのまま口にした。
 アンジールの怪力が、屋上のコンクリートの耐久力を増していたのだ。
 だが、この程度の事で驚きはしない。
 何せ先程の一撃で既に身を以て体感しているのだから。
 アンジールの大剣に押し切られる様に、カブトの身体が階下へと落下する。
 そしてそれは、カブトの思惑通り。

「この室内では、貴様の翼も役には立つまい」

 スーパーの中には、沢山の商品棚が並んでいた。
 それはアンジールにとっては障害物となり、その動きは封じられる。
 やがて屋上の炎は、天井に空いた穴からスーパーの内部へと侵食。
 スーパー内は燃え盛る炎に包まれて、より一層身動きが取れなくなった。

「チッ……こんな事で、俺を止められると思うな!」

 それでも、アンジールは翼を羽ばたかせた。
 並んだ商品棚を吹き飛ばし、薙ぎ飛ばし、カブトへと迫る。
 しかし、やはり外で戦った時程の加速は生み出せない。
 アンジールの動きは、マスクドフォームのカブトでも捕捉出来た。
 再び甲高い金属音を鳴らして、二人の刃が激突する。

「――ブリザガ!」
「何……ッ!?」

 激突した瞬間に、呪文を唱えた。
 それはアンジールが最も得意とするマテリアルパワーであった。
 クナイガンを構えたカブトを、凄まじい冷気が襲う。
 カブトの上半身が氷漬けになって、後方へと吹っ飛んだ。
 氷の塊となったカブトは、スーパーの壁に叩き付けられて、そのまま壁ごと凍結。
 あとは氷のオブジェと化したカブトを、この大剣で一刀両断するのみだ。

「これで、終わりだァァッ!!」

 身動き一つ取れなくなったカブトに、アンジールが迫る。
 大剣を突き立てるように、突貫する。
 このまま壁ごとカブトを突き刺して、その命を刈り取る。
 これは、妹達を守る為の大きな一歩である。
 夢も誇りも、何もかも投げ捨てて、アンジールは大剣を突き立てた。

「だから言っただろう。お前は甘いと」
「な……ッ」

 カブトの右手が、僅かに動いた。それは大きな誤算だった。
 マテリアルパワーを相殺するのもまた、マテリアルパワーだ。
 氷漬けになったカブトの身体を、先刻自分が放ったファイガの炎が、僅かに溶かしていた。
 といっても、燃え移った炎で溶ける氷などほんの僅かだ。
 しかし、右腕がほんの少しでも動かす事が出来れば、それで十分。

 ――CAST OFF――

 氷漬けになった装甲が、弾け飛んだ。
 ほんの一瞬の動作で、全てのアドバンテージが帳消しにされたのだ。
 しかし、加速を加えたアンジールの身体はもう止まらない。
 弾け飛ぶマスクドアーマーの攻撃を受けながら、アンジールはカブトへと迫った。
 それをカブトは寸での所で回避。脇腹を掠めた大剣は、スーパーの壁に突き刺さった。
 たったの一撃でスーパーの壁は貫通し、周囲の壁に亀裂が走る。

125夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:44:24 ID:Zke0Tok.0
 
「アンジールとか言ったな。お前は確かに強い」
「天、道ォォォ……ッ!!」
「だが、過去現在未来、全ての時代に於いて最強を誇る俺には敵わん」

 アンジールの身体を、カブトが抱きしめた。
 小さな動きで、力のベクトルを別の方向へと変える柔の技。
 それはカブトが最も得意とする戦術――カウンター。
 アンジールの身体を、亀裂の入ったコンクリートの壁に投げ飛ばした。
 バスターソードが壁に突き刺さって、壁に亀裂が走る。これに一秒。
 カブトがアンジールの身体を掴んで、その勢いを受け流す。これに一秒。
 壁が轟音と共に崩れ去り、アンジールの身体が夜の闇へと投げ出される。これに三秒。

 僅か五秒で、戦況は一変した。
 力で押し切る剛のアンジールと、力を受け流す柔のカブト。
 お互いの実力は拮抗していたが、結果はカブトの勝ちに終わった。
 アンジールは、焦り過ぎたのだ。

 ――ONE,TWO,THREE――

 ベルトを素早く三度叩き、眼下のアンジールへ右脚を向ける。
 電子音と共に、タキオン粒子によって加速された稲妻が、カブトの身体を駆け巡る。
 古今東西、仮面ライダーの必殺技と言えばこれに決まっている。
 どんな悪であろうと、この必殺技の前には屈せざるを得ない。
 全身を迸った稲妻が、右脚に集束されて行く。

「ライダーキック!」

 仮面ライダーカブトの全身全霊を掛けた、最強の必殺技。
 全力で放てば、対象を原子崩壊させる程の威力を秘めた絶大な一撃。
 しかし、アンジールを殺すつもりは無い。
 これ程の実力を持つアンジールであれば、咄嗟にバスターソードで受け止めるだろう。
 突き出した右脚に、重力による加速が加わる。
 これで確実に、勝負は決した。





 爆発音が鳴り響く。
 空中で発生した爆発と、爆煙の中から弾き出されたのは、赤の装甲。
 果たして、一瞬の呻き声の後、アスファルトに叩き付けられたのはカブトであった。
 落下を続けるアンジールは、何とかアスファルトに激突する前に、その片翼で体勢を立て直したのだ。
 一体どういう事だ、とアンジールは思う。
 つい一瞬前までは、カブトからの一撃を受けて、自分はこの戦いに負けると思っていた。
 だけど、結果はカブトが空中で爆発。そのまま落下する、という形で終わってしまった。
 原因は解らないが、とにかく自分のチャンスという事に変わりは無い。

「どうやら、天は俺に味方したようだな」

 不敵に口元を吊り上げて、アンジールは立ち上がった。
 空中でその身体を爆ぜさせ、体勢を崩したカブトは重力に引かれるままに落下した。
 天の道を往く者が、天に見放されるとは何たる皮肉であろうか。
 これで、今度こそ自分はこの戦いの勝者となる事が出来る。
 バスターソードを振り上げ、横たわるカブトへと振り下ろそうとした、その時であった。

126夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:45:00 ID:Zke0Tok.0
 
「痛……ッ!」

 V字型の光が、大剣を握るアンジールの手元で爆ぜた。
 予期せぬダメージに、バスターソードを取り落としてしまう。
 右手を押さえながら、光が飛んで来た方向に視線を向ける。
 カブトもまた、ゆっくりと起き上がり、アンジールと同じ方向へ視線を向けた。

「もう止めるんだ! これ以上戦いを続けるというのなら、僕が相手をする!」

 そこに顕在していたのは、銀と赤の戦士であった。
 胸元には青く光り輝く水晶体。銀色の身体に、燃える炎の様な赤を走らせたボディ。
 二つの銀色の目が、カブトとアンジールを鋭く睨んでいた。

「なるほどな」

 カブトがぽつりと呟いた。
 あの銀と赤の戦士を見た時、天道は全てを理解した。
 ライダーキックの邪魔をしたのは、十中八九間違いなくあの戦士だ。
 どういった思惑があるのかはわからないが、この男はカブトとアンジールの両者に攻撃を仕掛けて来た。
 それはつまり、自分達二人に対して敵対心があるという事だろうか。
 と、考えたが、天道はすぐにその考えを振り払った。
 自分達を殺すつもりの相手が、先程のような台詞を吐くとは思えない。
 しかし、出会ったばかりの相手をすぐに信用する天道ではない。
 もしかすると、罠という可能性もあるのだ。
 どうしたものかと思考するカブトの耳朶を叩いたのは、なのはの声だった。

「大丈夫ですか、天道さん!」
「……高町か」

 その言葉を聞いた相手が、ぴくりと反応した。
 なのはの姿に反応したのか。それとも高町、という言葉に反応したのか。
 どちらにせよ、もっと情報を集める必要がありそうだ。





 ミライが駆け付けた時、既にスーパーは炎上していた。
 屋上からはごうごうと真っ赤な炎が立ち上り、夜の闇を照らしていた。
 一体どうなっているんだ、なんて考える前に、再び轟音が鳴り響いた。
 それはスーパーの壁が、何者かによってブチ抜かれた音であった。

「まだ、間に合う!」

 再びミライは走り出した。
 一つ角を曲がれば、目の前で繰り広げられて居たのは、壮絶な戦い。
 赤い装甲を纏った戦士が、落下を続ける翼を持った人間へと、その脚を向けていた。
 その脚に輝くのは、迸る稲妻。どう見たってあれを受けて只で済む訳は無かった。

「メビウゥゥゥゥゥスッ!!!」

 左手に装着したメビウスブレスに触れ、その名を叫んだ。
 先程の変身から、一時間弱。問題無く変身できるかどうか不安ではあったが、どうやら杞憂に終わったらしい。
 問題無くミライの身体は、∞の光に包まれ、ウルトラマンメビウスへの変身が完了した。
 矢継ぎ早に右腕でメビウスブレスに収まった宝玉をスライドさせ、両腕を頭の上に掲げる。
 ∞の光を収束させる両腕を、眼前で十字にクロスさせた。

127夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:45:53 ID:Zke0Tok.0
 皮肉にも、古今東西仮面ライダーの必殺技と定められた攻撃を打ち破るのは、これまた古今東西ウルトラマンの必殺技とされる攻撃であった。
 大量のスペシウムを含んだ光線が、カブト目掛けて真っ直ぐに飛んで行く。
 果たして、殺さない程度に威力を絞って放たれたメビュームシュートは、カブトを直撃した。
 スペシウムによる爆発が生じた後、カブトの身体はアスファルトに引かれる様に落下。
 それから、目の前で未だ戦闘を続けようとする翼の男の戦力を、メビュームスラッシュで奪った。

 そうして、現在に至る。
 目の前に現れたのは、十代後半くらいの茶髪の少女であった。
 だけど、その声には確かな聞き覚えがある。その声を、ミライが忘れる訳が無かった。
 何よりも、その瞳も、髪の色も、その立ち居振る舞いも、ミライが知る女の子に酷似していたのだ。
 そして極めつけは、赤の装甲の男から放たれた「高町」という言葉。
 最早間違いない。この女の子は、きっと未来の「高町なのは」の姿なのだろう。
 だが、もしそうならば一体この状況は何なんだろう。
 赤の装甲の男は、なのはの味方で……だとするならば、悪人はこの翼の戦士だろうか?
 何にせよ話をしない事には、状況が解らない。
 だからメビウスは、高町なのはと思しき少女に、恐る恐る話しかけた。

「なのは、ちゃん……」
「貴方は、銀色の……鬼……?」
「へ?」

 果たして、帰って来たのはそんな訳の解らない言葉であった。


【1日目 夜】
【現在地 D-2 スーパー前】

【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、変身中(メビウス)
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは、ナイトブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、『コンファインベント』@仮面ライダーリリカル龍騎、ブリッツキャリバー@魔法妖怪リリカル殺生丸
    『おジャマイエロー』&『おジャマブラック』&『おジャマグリーン』@リリカル遊戯王GX
【思考】
 基本:仲間と力を合わせて殺し合いを止める。
 0.これ以上誰も殺させたくない。誰にも悲しい涙を流させたくない。
 1.赤い装甲の男(カブト)、翼の男(アンジール)、高町なのはから話を聞いて状況を整理したい。
 2.銀髪の男(=セフィロス)からはやてを守る。
 3.一刻も早く他の参加者と合流して、殺し合いを止める策を考える。
 4.助けを求める全ての参加者を助ける。
 5.なのは、ユーノ、はやて、と合流したい。
 6.ヴィータが心配。
 7.カードデッキを見付けた場合はそのモンスターを撃破する。
 8.変身制限などもう少し正確な制限を把握したい(が、これを優先するつもりはない)。
 9.ゼロ(キング)、アグモンを襲った大男(弁慶)、赤いコートの男(アーカード)、紫髪の少女(かがみ)を乗っ取った敵(バクラ)やその他の未知の敵たちを警戒。
 10.自分の為に他の人間の命を奪う者達に対する怒り。
 11.ブリッツキャリバーを高町なのはに渡し、ゼストの最期を伝える。
 12.おジャマイエローに万丈目の死を伝えなければならないが……。
【備考】
※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
※制限に気が付きました。また再変身可能までの時間については最低1時間以上、長くても約2時間置けば再変身可能という所まで把握しました。
※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。
※おジャマイエローから彼の世界の概要や彼の知り合いについて聞きました。但し、レイと明日香の事を話したかどうかは不明です(2人が参加している事をおジャマイエローが把握していない為)。
※参加者は異なる並行世界及び異なる時間軸から連れて来られた可能性がある事に気付きました。またなのは達が10年後の姿(sts)になっている可能性に気付きました。
※スーパーにかがみが来ていたことに気付きました。
 また、少なくとももう1人立ち寄っており、その人間が殺し合いに乗っている可能性は低いと思っています。
※第2回放送を聞き逃しました、おジャマイエローから禁止エリアとブレンヒルト、弁慶、万丈目、十代の生死は聞きましたがそれ以外は把握していません。またおジャマイエローもそれ以上の事は把握していません。
 おジャマブラック、おジャマグリーンが放送内容をどれくらい把握しているかは不明です。
※ナイトブレスを手に入れた事で、メビウスブレイブへの強化変身が可能になりました。
※黒マントの男=ゼロ(キング)を倒したと思っています。

128夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:46:23 ID:Zke0Tok.0
 
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、混乱、焦り、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、セフィロスへの殺意
【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、チンクの眼帯
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:クアットロを守る。
 1.クアットロを守る為に、参加者を皆殺しにしたいが……
 2.イフリートを召喚した奴には必ず借りを返す。
 3.ヴァッシュと再び出会ったら……
 4.いざという時は協力するしかないのか……?
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。。
※レイジングハートは参加者の言動に違和感を覚えています。
※グラーフアイゼンははやて(A's)の姿に違和感を覚えています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※天道とヴァッシュの事はある程度信頼しています。
※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。
※混乱している為に自分の気持ちを整理出来ていません。

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労(中)、変身中(カブト)
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カブトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.アンジールを改心させる。
 2.目の前の赤と銀の戦士(メビウス)の思惑を確かめる。
 3.高町と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを救出、何としても親子二人を再会させる。
 4.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
 5.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
 6.キングは信用できない。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※SEALのカードがある限り、ミラーモンスターは現実世界に居る天道総司を襲う事は出来ません。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※PT事件とJS事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※なのはとヴィヴィオの間の出来事をだいたい把握しました。
※アンジールは根は殺し合いをする様な奴ではないと判断しています。
※ゼロの正体はキングだと思っています。

129夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:46:55 ID:Zke0Tok.0
 
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、弁慶のデイパック(支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER)
【思考】
 基本:誰も犠牲にせず極力多数の仲間と脱出する。絶対にヴィヴィオを救出する。
 1.出来れば銀色の鬼(メビウス)と片翼の男(アンジール)と話をしたいが……。
 2.天道と共にゆりかごに向かい、ヴィヴィオを探し出して救出する。
 3.極力全ての戦えない人を保護して仲間を集める。
 4.フェイトちゃんもはやてちゃんも……本当にゲームに乗ったの?
【備考】
※金居とキングを警戒しています。紫髪の少女(柊かがみ)を気にかけています。
※フェイトとはやて(StS)に僅かな疑念を持っています。きちんとお話して確認したいと考えています。
※ゼロの正体はキングだと思っています。

【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
 基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
 1.まずは現状確認。
 2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
 3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
 4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 友好的:なのは、(もう一人のなのは)、(フェイト、もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、(シャマル)、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、(キャロ)、(ギンガ)、ヴィヴィオ、(ペンウッド)、天道、(弁慶)、(ゼスト)、(インテグラル)、(C.C.)、(ルルーシュ)、(カレン)、(シャーリー)
 敵対的:アーカード、(アンデルセン)、(浅倉)、相川始、エネル、キング
 要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)
 それ以外:(チンク)・(ディエチ)・(ルーテシア)、紫髪の女子高校生、(ギルモン・アグモン)

130夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:47:25 ID:Zke0Tok.0
 


 雑居ビルの物陰に身体を隠しながら、一同の行動を見守る女が一人。
 二つ括りの茶髪に、若さを感じさせる学生服――クアットロだ。
 何とか走って追い付いたものの、スーパーは既に戦場と化していた。
 まず間違いなく、アンジールが喧嘩を売ったのだろう。
 あちゃあ、手遅れだったか、と額を軽く叩いた。

「いや、でも……まだやり様はありますわ」

 見たところ、あの赤の仮面ライダーは高町なのはの味方らしい。
 この場に高町なのはが居てくれるというのは、何気に非常に美味しい。
 何せ高町なのはの戦力は、魔道師としてはほぼ最強クラス。
 おまけに、クアットロの記憶が正しければ、アンジールはレイジングハートを持っている筈だ。
 上手くアンジールを説得し、高町なのはを味方に付けることが出来れば……。
 それから、セフィロスに対抗できるアンジールと、そのアンジールを追い込んだ仮面ライダー……。
 全員を味方につける事が出来れば、これだけでも戦力としては申し分無い。

「それから、あの銀色の……どうやらアレも殺し合いには乗って居ないように見えますけど……」

 次にクアットロの視線が捉えたのは、ウルトラマンメビウス。
 奴は、赤の仮面ライダーの攻撃を中断させ、トドメを刺そうとするアンジールを制した。
 それでも追撃する様子が見られない事から、どうやら本当に戦いを止めさせたかったように見える。
 となれば、自分の行動一つで、上手く立ち回れば彼ら全員を味方に付ける事だって不可能ではない筈だ。

「ここが正念場ですわよ、クアットロ……上手くいけば、この場の全員を仲間に出来る!」

 自分に言い聞かせるように、頬をぱちぱちと叩いた。
 それからクアットロは、雑居ビルの物陰から躍り出た。
 最早クアットロに、彼らを一方的に利用しようなんて気はない。
 ただゲームから脱出する為に、一時的にでも手を組む為に。
 自分の考えを伝え、ゲーム脱出の為に行動する仲間を作る為に。
 クアットロは、4人の元へと向かった。

131夢と誇りをとりもどせ ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:47:57 ID:Zke0Tok.0
 

【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、左腕負傷(簡単な処置済み)、脇腹に掠り傷、眼鏡無し、髪を下ろしている、キャロへの恐怖と屈辱、焦燥
【装備】私立風芽丘学園の制服@魔法少女リリカルなのは、ウォルターの手袋@NANOSING、ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、クアットロの眼鏡、大量の小麦粉、セフィロスのメモ、血塗れの包丁@L change the world after story、はやてとかがみのデイパック(道具①と②)
【道具①】支給品一式×2、スモーカー大佐のジャケット@小話メドレー、主要施設電話番号&アドレスメモ@オリジナル、医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)、カリムの教会服とパンティー@リリカルニコラス
【道具②】支給品一式、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード、首輪(シャマル)
【思考】
 基本:例え管理局と協力する羽目になったとしてもこの場から脱出する。
 1.アンジールを説得して味方に付けた上で、残りの三人も味方に付ける。
 2.自分の考察を話した上で、ゲームから脱出する為に協力して貰う。
 3.条件(プレシアに対抗できるだけの戦力+首輪・制限の解除手段+プレシアの元へ行く手段)が揃わない限り首輪の解除は実行しないし、誰にもさせない。
 4.デルタギアの各ツールを携帯電話、デジカメ、銃として利用出来るかを確かめたい、変身ツールとしてチンクかタイプゼロに使わせても大丈夫だろうか?
 5.首輪や聖王の器を確保したいが……(後回しでも良い)。
【備考】
※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
※下手な演技をするよりも、ゲームから脱出するまでは生き残る事を優先。
※アンジールからアンジール及び彼が知り得る全ての情報を入手しました(ただし役に立ちそうもない情報は気に留めていません)。
※デュエルゾンビの話は信じていますが、可能性の1つ程度にしか考えていません。
※この殺し合いがデス・デュエルと似たもので、殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。
※デュエルモンスターズのカードとデュエルディスクがあればモンスターが召喚出来ると考えています。
※地上本部地下、アパートにあるパソコンに気づいていません。
※制限を大体把握しました。制限を発生させている装置は首輪か舞台内の何処かにあると考えています。
※主催者の中にスカリエッティや邪悪な精霊(=ユベル)もいると考えており、他にも誰かいる可能性があると考えています。
※優勝者への御褒美についての話は嘘、もしくは可能性は非常に低いと考えています。
※キャロは味方に引き込めないと思っています。
※キングのデイパックの中身は全てはやて(StS)のデイパックに移してあり、キングのデイパックははやて(StS)のデイパックに入っています。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※主催側に居るナンバーズ及びスカリエッティは敵として割り切りました。一切の情はありません。


【全体の備考】
※スーパー内で激しい火災が発生しています。このままではいずれ焼け落ちます。

132 ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 17:53:45 ID:Zke0Tok.0
投下終了です。
4月に入って中々時間が取れず、数行書いては保存、中断。
また数行書いては保存、中断、という作業を繰り返していた所為か、
一つの作品内でシーンごとに文章が違っている所が多々あるかもしれません。
作品としては、主に後半の流れを変更し、わかりにくいかもしれませんが戦闘描写は殆ど書き直しております。
これで変身制限やその他諸々の条件はクリアした、筈……。

タイトル元ネタは、仮面ライダーWから、
第15話「Fの残光/強盗ライダー」
第16話「の残光/相棒をとりもどせ」
の二作です。ファングが登場した回です。
それでは、何か問題などありましたら報告よろしくお願いします。

133リリカル名無しA's:2010/04/28(水) 19:16:13 ID:jDZOkcYI0
投下乙です

いやあ、放送後はどうなるかと思いましたがやっぱりすんなりとは行かなかったか
アンジールと天道の信念をぶつけ合ったバトルがいいw
さて、ミライも来たけど逆にややこしくなりそうだw
そしてそれをまとめようとするクワットロとかなんなんだよwww

134リリカル名無しA's:2010/04/28(水) 19:48:05 ID:BGkiLX8E0
投下乙です

修正前と違い戦いの最中にミライが介入して中断か……
クアットロもまだ介入前だし……
うーん、修正前だったら比較的簡単に団結出来そうだけどこの展開だと難しいなぁ。

しかし冗談とか抜きにしてクアットロの思考そのものは黒っぽいのにグループを団結させようってまさしく対主催の思考なのは本当に何なんだ?
しかも、キャラ崩壊ではなく純粋(?)に対主催寄りというなのは(というかクアットロ)FANから考えたらまず有り得ない状況でって当に何なんだよ。どうしてこうなった……

ところで、1点だけ指摘……というより些細な質問ですが、
名前欄を見たところ今回の修正版のサブタイには修正前にあった『Aの残光』が無くなっているんですが、
今回のサブタイは『Aの残光/強襲ソルジャー』&『Aの残光/夢と誇りをとりもどせ』となるんですか、それとも『Aの残光』はカットして『強襲ソルジャー』&『夢と誇りをとりもどせ』となるんですか……元ネタ的に前者(Aの残光付き)だと思いますが……。

135 ◆gFOqjEuBs6:2010/04/28(水) 21:44:33 ID:Zke0Tok.0
しまった……完全に見落していました。
ご指摘ありがとうございます。仰る通り、サブタイトルは「Aの残光」です。

また、色々と思うところがあるので、収録する際は細かな文章の修正をした上で、後日自分でしておこうと思います。

136リリカル名無しA's:2010/04/28(水) 23:49:56 ID:lxlMKWRI0
投下乙です
前回と違ってミライの介入で決着付かずか
そういえばミライってアグモンを襲った危険人物銀色の鬼容疑が掛かっていたんだっけw
それにしても仮面ライダーとウルトラマンが揃い踏みとか豪華だなw

少し気になった点
>>112の以下の部分

それだけが、静寂の中で響いていた。

(ペンウッドさん……C.C.……)

 なのはの心中で、死んでしまった者への
 ペンウッドは臆病で、まるで頼りにならなかった。

『なのはの心中で、死んでしまった者への』の後がないようなきがするんですが、気のせいでしょうか

137 ◆gFOqjEuBs6:2010/04/29(木) 00:47:45 ID:zbs9bIg60
おぉっと……またしてもミスが……。
多分あれですね、何度も中断して書き始めて、の作業を繰り返してる内に、
中断した所の続きを書くのを忘れてそのまま続きを書き始めたんだと思います。

収録時には、
>>なのはの心中で、死んでしまった者への
の一文を削除しようと思います。その一文無くても大丈夫そうなので。
ご指摘ありがとうございます。引き続き、誤字や脱字があれば、報告お願いします。

138 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:07:23 ID:EoGhWHlU0
遅くなって申し訳ありませんでした
これより本投下を開始ます

139 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:08:00 ID:EoGhWHlU0
デスゲームの会場も再び夜となり、日が沈む事で満月が煌々と輝く天に対して、血で血を争う地には暗い影が広がっていた。
そんな闇の時間へと移行した会場の東方に位置するホテル・アグスタから少し離れた林の中。
月の光さえ満足に通らない林の中で一層暗く影を漂わせている場所があった。
そこには一人の男が木に腕を付いて荒く息を吐いていた。
そして、その男――闇の狩人ジョーカーである相川始は悩んでいた。

(……俺は何がしたいんだ?)

きっかけは先程おこなわれた3回目の定時放送。
なぜか放送の主はプレシアではなかったが、今の始にはどうでもよかった。
それ以上に始は放送を聞いた自分の心境に戸惑っていた。
参加者をミラーワールドに引きずり込み、二人の生贄を無残に殺して新たな殺し合いを目論んだ狂人、浅倉威。
彼の死に僅かな安堵を。
ギンガが気にかけていて、川岸に追い詰めたが突然の禍々しさのせいで殺せなかった少女、キャロ・ル・ルシエ。
まだ一度も会った事はなかったが、天音の友人だったかもしれない少女、フェイト・T・ハラオウン。
彼女達の死にはいささかの哀悼を。
放送を聞き終えた時、それぞれ異なった感情をいつのまにか抱いている自分に気付いたのだ。

そして、その感情は気のせいか前回の放送よりも強い感情のように思えた。

(……俺はジョーカーだぞ!?)

最初はここにいる全員を殺して栗原親子の元へ帰る事が唯一の目的だった。
だからこそ出会った参加者を次々と襲い続けていた。
だがあの神を自称するエネルという参加者の存在を知った時、始の中でこのバトルファイトに対して拭いきれない疑念が生じた。
いや、それがそもそも間違いだったのか。
これはバトルファイトの延長ではなく、ただプレシアが引き起こしたイレギュラーな事態。
それなら別にここで優勝しようがどうしようが、本来のバトルファイトに影響はないのではないか。
本当はそれを口実に目を背けようとしていただけではないのか。

(それがどうした! もう俺は……)

だが今の始は傍目からそれとなく分かるほどとても危うい状態だ。
ミラーワールドでのジョーカー化はこちらに戻った事で解決したが、もしもあのまま戦い続けていれば今の始はいなくなっていただろう。
それほどまでにジョーカー化の欲求を抑えるのが苦しくなっているのだ。
今も放送を聞いただけで胸の奥で先程の感情とは別にどす黒い感情が蠢いている。

だが本来なら1日も経たないうちにここまでジョーカー化の欲求が強まるのは異常だった。
どうやらここに来てから感情の揺れ幅が大きくなりやすい気もする。
それはもしかして殺し合いを促進するためにプレシアが仕掛けた細工か、あるいは――。

(とにかく今は誰にも会わない方がいい)

だが今の始にとって真相は二の次。
こうしているのも全ては今この状態で誰かに会えば自分を抑えきれるか自信がなかったからだ。
だから一度ホテルから離れて心を静めているのだ。


だが、そんな状態だからこそ始は気づく事ができなかった。


「――――ッ!?」

自らに迫り来る鋼鉄の脅威に――。


【1日目 夜】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタから伸びる道路上】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】疲労(小)、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、苦悩、ジョーカー化への欲求徐々に増大
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:皆殺し?
 0.――――。
 1.生きる為に戦う?
 2.アンデッドの反応があった場所は避けて東に向かう。
 3.エネル、赤いコートの男(=アーカード)を優先的に殺す。アンデッドは……。
 4.アーカードに録音機を渡す?
 5.どこかにあるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 6.ギンガの言っていたスバルや他の2人(なのは、はやて)が少し気になる(ギンガの死をこのまま無駄に終わらせたくはない)。彼女達に会ったら……?
【備考】
※ジョーカー化の欲求に抗っています。しかし再びジョーカーになれば自分を抑える自信はありません。
※首輪の解除は不可能と考えています。
※赤いコートの男(=アーカード)がギンガを殺したと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。

140 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:08:30 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


ホテル・アグスタ1階ロビー。
そこは一廉のホテルに相応しくソファーが備え付けられ、荘厳な意匠が凝らされた柱が視界を妨げない程度に立てられた空間。
本来なら来客を穏やかに迎え入れるはずの玄関だが、残念ながら今ロビーにいる二人は真逆の雰囲気を纏っていた。

「もうすぐ放送か……今度もまた……」

死者と禁止エリアを告げる定期放送まであと数分。
緊張した空気が漂う薄暗いロビーに1組の赤い服を身に付けた男女、金髪トンガリ頭に真紅のコートのヴァッシュ・ザ・スタンピードと紫髪サイドポニーに真紅のセーターの柊かがみはいた。
だが放送を待っているはずの二人の様子は少し違っていた。
ロビーに漂う空気と同じように暗くなり気味のヴァッシュとは対照的にかがみの心中は穏やかではなかった。

(浅倉の奴、絶対私が殺してやるんだから!!!)

自らの片割れとも言うべき双子の妹である柊つかさを目の前で殺された今のかがみの心中にあるのは『復讐』の二文字のみ。
今も目を閉じれば鮮明に思い出してしまう。
メタルゲラスに両足をつかまれて傷つきながらも必死に助けを求めていたつかさ。
その目の前で何もできずにただつさかが真っ二つに引き裂かれて殺される様を見ているしかできなかった自分。
それが罪とばかりにつかさだったものから降り注ぐつかさの体液。
あの凄惨という言葉が生ぬるいほどの光景は生涯忘れる事はないだろう。
残念ながら今はまともに戦う術がないので大人しくしているが、そうでなければ今頃憎き仇を探し回っていたに違いない。

(それにしてもさっきまでのこいつ誰かに似ていたような……ああ、騒がしいところがゆいさんに似ているのね)

かがみはソファーに座って顔を落としているヴァッシュの様子を見ながら一人で納得していた。

成実ゆい。
かがみの親友である泉こなたの従姉であり、後輩の小早川ゆたかの実姉に当たる。
苗字が違うのは既婚者だからである。
いつも騒がしくテンションが高い人だが、そういうところがどこかヴァッシュと似ているのだ。

(どこにでもいるのね、こういう人って。そういえばこなたは今どこで何しているのかしら……)

141 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:09:02 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


整然と立ち並ぶ林の中で綺麗にホテルまで続いている不自然な一本道。
その道が不自然に思えるのはそこだけ何か得体のしれない力で消されたかのようになっているからだろう。
道と林の境界付近の木々は揃いも揃って普通ではありえないほど綺麗な切断面があったので尚更だった。
そんな不自然な道に最大限の注意を払って進む二人の青髪の少女、背が高く短髪なスバル・ナカジマと背が低く長髪な泉こなたがいた。

「スバル、やっぱりあの天使さんも参加者なのかな?」
「…………」
「ん? スバル?」
「あ、ああ、たぶんそうじゃないかな……」

スバルはホテル・アグスタの屋上に降り立った天使の姿から一人の人物を連想していた。
少し遠目ではあったが、あの時見えた天使は金髪で赤いコートを纏っていた気がする。
それによって連想する人物はヴァッシュ・ザ・スタンピード。
チンク曰く、危険人物。
もし本当ならこれからスバル達の向かう先は安全ではなく、危険な場所である可能性が極めて高い。
そのホテルにこなたを連れて向かう事にスバルは若干危惧を抱いていた。
戦場になるかもしれない場所にこなたを連れて行って、こなたまで危険な目に遭わせるのではないかと。
幸いな事に天使を発見した時の位置関係からこなたはスバルの影に隠れていた形になっていた。
だからこなたを待たせて一人で行けば共倒れの危険性はなくなる。
しかも道すがらクロスミラージュの状態を念入りに調べていたリインからは芳しくない診断結果を聞いていた。
曰く、基礎構造部分に致命的な破損があり、専門の場所で修理すれば修復できるかもしれないが、今のままだと自動修復もままならず、もし万が一この状態で使用すればそれがクロスミラージュの最期になるだろうと。
つまり今のスバルの力は相変わらず満足に発揮できない状態だ。
スバルとこなたが調べた範囲でデュエルアカデミアに気になる物はなかった事はすでにお互い確認済みだったが、あそこにはまだ幾つか荷物が放置したままだ。
ホテルは後回しにして一度をデュエルアカデミア跡地に戻るという選択肢もありだ。
だがそんなスバルの弱気な心の内を察したのかこなたは声をかけてきた。

「大丈夫だよ」
「え?」
「自分の身は自分で守るからさ。スバルは自分がするべき事をすればいいと思うよ」

こなたの言葉は弱気になりかけていたスバルを落ち着かせるものだった。
これではどちらがしっかりしているの分かったものではない。

「……うん!」

迷いは晴れた。


     ▼     ▼     ▼


そして運命の悪戯と共に出会いはいつも突然に。

「かがみさん!?」
「ス、スバルッ……ヴァッシュ、あ、あいつが私を! いや、た、助けて!!!」
「――ッ、こんな時に!」

そして銃声と共に別れもまた唐突に。

142 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:09:32 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


一瞬にして先程よりさらに緊迫した空気が漂い始めたロビー。
その緊張した空間のソファーや柱を挟んでスバルとヴァッシュは膠着状態にあった。

(一応念のためと言ってこなたを待たせておいて正解だった。まさかかがみさんがいて、その上危険人物のヴァッシュと手を組んでいたなんて……)

いつかは再び対峙しなければいけないと思っていたが、さすがにこの状況下では厳しすぎた。
危険人物二人が手を組んで、話し合う暇もないまま銃撃されるこの状況ではいくらスバルでもこなたを守りきる自信はない。
今まで別行動で良い経験がなかったが、今回に限っては安全確認のために一人で先に入って正解と言えよう。

(でもいつまでもこのままの状態が続くのは好ましくない。どこかで隙を見て一度戻った方がいいかな)

ヴァッシュが放った初撃はギリギリ避けられたが、あの早撃ちを見る限り相当銃の扱いに長けているようだ。
今のように距離が開いた状態で銃を持った相手に対して接近戦が得意なスバルは圧倒的に不利だ。
決着を焦ればまず間違いなくスバルに勝機はなく、ゆえにここは一度戦線離脱した方がいいとスバルは考え始めたのだ。

スバルが離脱の隙を窺っていた時を同じくして、ヴァッシュもまた転機を窺っていた。

(かがみさんには避難してもらったから、あとはスバルを抑えるだけか)

既に保護対象であるかがみには念のため装甲車の鍵を渡して地下の駐車場に避難してもらっておいた。
あそこに駐車してあった装甲車の中なら万が一の事態でも安全だと考えたからだ。

(威嚇のつもりだったけど、あの初撃を避けた動作は大したものだな。でも怪我していたみたいだからなんとかなるかな)

あとはタイミングを見計らって相手を制圧するだけ。

だが突然の邂逅に対処するあまりスバルもヴァッシュも大事な事を忘れていた。

そしてそれを思いださせるかのように時計の針は12と6を指す。

『こんばんは。これより18時をお伝えすると同時に、第3回目の定期放送を行いたいと思います』

二人の膠着状態を破るかの如く無慈悲な放送は始まった。

143 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:10:02 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


新庄・運切の訃報――それはヴァッシュにとってまさしく青天の霹靂だった。

その知らせを聞いた瞬間、ヴァッシュの頭は真っ白になった。
新庄・運切という少年はヴァッシュにとって少し特別な存在だった。
出会いは大した事ない普通なものだった。
傷心の内に沈んでいた自分の前に現われてまず初めにこの身体を心配してくれた。
始まりは本当に何でもない事だった。
ただその気遣いがとても嬉しかった。
それからしばらく黙って隣に座っていてくれた。
もしかしたら死なせてしまうかもしれないと言ったのに、それでも放っておけないと言って一緒にいてくれた。

それが少し心地よかった。

そんな新庄君だからこそ自分を死なせないために無謀とも言える提案をやってのけたのだ。
このままではいつか自分が思いつめて死んでしまうと気付いたから。
多大な危険と隣り合わせだったが、それなりの算段はあった。
新庄君からの提案だったとはいえエネルは自分の力に恐怖を覚えていたはずだ。
実際新庄君が止めなければエネルの死は確実だったので、一見無謀にも見えたが効果は絶大に思えた。
だから新庄君の身は自分が生きている間は大丈夫だと思い込んでいた。

だがそんなある意味楽観的な考えはあっけなく砕かれてしまった。

「……ぁ……ぅあ」

誰のせいだ?
誰のせいでもない。
全ては自分のせいだ。
自分の甘い考えが新庄運切という一つの命が散る原因となった。
少なくともヴァッシュ自身はこの時そう思っていた。

そして、無意識の内に心に広がる罪の意識はヴァッシュをさらに苛むのであった。

「……っ……え?」

不意に失意に沈みこむヴァッシュの上に影が差した。
誰かがヴァッシュの前に立ったせいで人影が光を遮ったのだ。
当然誰が立っているのか確認するために顔を上げないといけないのだが、なぜかそれは躊躇われた。
不思議とスバルではない確信があったので急がなくてもいいが、そういう問題ではない気がする。
ここで顔を上げたら取り返しの付かない事になってしまうような、そんな気がしたのだ。
だがいつまでもこうしているわけにもいかない。
意を決して気力を奮い立たせたヴァッシュが顔を上げると、一人の男と目が合った。

「――ナ、ナイブズッ!?」

ヴァッシュの目の前に立っていたのは死んだはずの兄――ミリオンズ・ナイブズであった。
だが次の瞬間、ヴァッシュはさらに驚く事になる。
いつのまにか自分の周りには人だかりができているのだ。
そしてよく見るとその人々には見覚えがあった。
ミリオンズ・ナイブズ、新庄・運切、フェイト・T・ハラオウン、アンジール・ヒューレー、エネル、それに今まで出会った人々――

――そして、あの忌まわしき事件で消え去ったジェライの人々もそこにいた。

そしてその全員が黙ってヴァッシュを見ていた。
ただ静かに見つめていた。

皆の瞳にはただヴァッシュの姿が映るのみ。

「……っ……止めてくれよ」

そして、その瞳の重さにヴァッシュは――。

144 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:10:42 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


「浅倉の奴、なに勝手に死んでいるのよ! あいつは、私の手で殺さないといけないのよ! つかさを殺しておいて、あいつ……!!」

何台もの車が駐車されている照明も疎らな地下駐車場。
その中にかがみの乗っている装甲車はあった。
ヴァッシュに言われた通り安全のためにここに来たが、黙って待つ気はなかった。
その理由は先程から上の方から響いてくる不気味な振動。
どうやら激しい戦闘が始まっているらしく、さらに徐々に駐車場の天井にヒビが走り始めていた。
どちらが勝つにせよこのままここにいれば生き埋めになるのは必定。
なんとしても一刻も早くここから脱出する必要があった。
キャロが死んだせいかバクラが静かだったので、とりあえず一人でなんとかするしかなかった。

「でも万丈目はいい気味ね。きっと私を殺そうとした報いよ」

憎き相手の死を知って悦になりながらかがみは必死に最低限の運転技術を覚えていた。
実際歩いた方が早いかもしれないが、この装甲車の頑丈さを考えればここで最低限の運転をできるようになっておくほうが後々便利だ。
それにこの装甲車にも他の車と同様に取扱書が付いていたし、実際の運転なら親やゆいなどと見る機会も何回かあった。
さらにAT車なので発進の方法は意外と簡単だったので、発進の仕方はギリギリ理解できた。

「えっと、まずはエンジンを掛けて、ギアは……確かここで……それでアクセルをおおおおお!!!」

ついに小気味いいエンジン音と共に無骨な装甲車は走り始めた。
ただしかがみがアクセルペダルを一気に踏み込んだためいきなりトップスピードで発進するはめになったが。
だが車線上に出口があったのですぐに外に出る事が出来て結果的に良かったとも言える。
さらに幸運だったのは装甲車がAT車であった事だ。
もしAT車ではなくMT車だったらその場でエンストを起こして立ち往生する羽目に陥っていた。

ただそんな事情を他所に当のかがみは初めて運転する車のスピードに少しばかり面食らっていた。

「うそ、ちょっと、早すぎ――って!?」

ふと前を見ると、車線上に誰かが飛び出してきた。
それは数時間前に仮面ライダーと怪物に変身して浅倉と戦っていた奴だった。
ひどく苦しそうにしていてこちらに気付いていないようだったが、それを見てもかがみは車を止める気はなかった。
むしろ――。

「轢いちゃえ」

――そのまま速度を緩めず、クラックションも鳴らさず、その勢いのまま突き進んだ。
先程の放送でこれからは参加者を殺せばボーナスの支給品が手に入ると明かされたのだ。
いまさらかがみが人殺しを躊躇う理由はどこにもなかった。


ドン!!!!!

145 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:11:12 ID:EoGhWHlU0


【1日目 夜】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタから伸びる道路上】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】バリアジャケット、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、やさぐれ、装甲車に乗車中
【装備】ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ホッパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、装甲車@アンリミテッド・エンドライン
【道具】支給品一式、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:みんな死ねばいいのに……。
 1.まず目の前でふらついている奴を轢き殺す。
 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.…………。
 2.当面はかがみをサポート及び誘導して優勝に導くつもりだが、場合によっては新しい宿主を捜す事も視野に入れる。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

146 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:11:48 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


スバルはヴァッシュからの突然の攻撃に驚いていた。
放送の途中で繰り出された白刃による斬撃は驚くべきものだったが、スバルが驚いた原因は別にあった。
一瞬前まで居た場所に刻まれた斬撃の痕。
普通ではありえないほど綺麗に刻まれた傷痕にスバルは見覚えがあった。
ここに来るまでの林で同じような切り口で切られた木が数本――。

――そしてルルーシュの右腕にも同じような傷痕が残されていた。

「ヴァッシュさん、あなたがルルーシュの右腕を……」

あの傷さえなければルルーシュが絶望する事もなかった。
あの傷さえなければルルーシュが死ぬ事もなかった。
そんな想いが沸々とスバルの内に湧き上がってくる。
確かルルーシュを襲った人物は金髪で右腕が腐った男だったはず。
一見すると右腕が腐っていない目の前の人物ではない気がするが、その前提は確実ではない。
実際最初に出会った赤コートの化け物のように再生能力を持っているかもしれない。
それに何よりその刃での特徴的な傷痕を残しているのが疑いようもない証拠だ。

「あなたのせいで!!!!!」

スバルは知らない。
実際にルルーシュを襲ったのはヴァッシュと融合したナイブズである事を。
そのヴァッシュが幻を見る程に精神が不安定になったせいで突発的な暴走状態にある事を。
先程の刃が幻覚からくる本能的な自己防衛行動である事を。

今までヴァッシュの暴走状態が止まっているのは左腕つまりナイブズと向き合ったからだ。
だが同じプラント同士とはいえその左腕は元からヴァッシュの物ではない。
だから最初のうちは暴走していたのだ。
そして今ヴァッシュが精神的に不安定になった事で左腕が再び暴走しかけようとしている。
もちろんある程度精神が安定して落ち着く事ができれば今の暴走も止まるだろう。

だが果たしてそれまでホテルが無事であるか確証は持てない。

147 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:12:20 ID:EoGhWHlU0


【1日目 夜】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ1階ロビー】

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、質量兵器に対する不安、若干の不安と決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容は[[せめて哀しみとともに]]参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.あなたのせいでルルーシュは!!!
 2.スカリエッティのアジトへ向かう。
 3.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 4.準備が整ったらゆりかごに向かいヴィヴィオを救出する。
 5.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 6.かがみを止める。
 7.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 8.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
【備考】
※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、融合、黒髪化九割、、精神不安定(大)、一時的な暴走状態?
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers
【道具】なし
【思考】
 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
 0.新庄君が……死んだ……。
 1.かがみを守りつつ殺し合いを止めつつ、仲間を探す。
 2.首輪の解除方法を探す。
 3.アーカード、ティアナを警戒。
 4.アンジールと再び出会ったら……。
【備考】
※制限に気付いていません。
※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。

148 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:14:12 ID:EoGhWHlU0


     ▼     ▼     ▼


柊つかさの死。
それは泉こなたにとって大きな衝撃となった。
だがこなたもここが殺し合いの場であり、親友が殺し合いに乗る事まで覚悟した身だ。
当然自分の知らない間に死んでしまう可能性も考えて、覚悟はしていた。

だがこなたは幸運であり、不幸であった。

大した力も知識もない女子高校生が並み居る猛者が死んでいく中で生き残っていた。
だから心の底で淡い希望を抱いてしまった。

『もしかしてこのまま生きて再会できるんじゃないか』

かがみは殺し合いに乗ってしまったが、裏を返せばそれだけの力が手に入ったという事は逆に自分の身を守れる事でもある。
つかさにしても保護者がいなくなっても6時間生き延びたのだから大丈夫なのではないかと思った。

だがそんな幻想は呆気なく砕かれてしまった。

そしてこなたはまだ誰かの死、さらに誰かの死体さえ見ていなかった。
駅の時でさえスバルの配慮によってスバルがクロスミラージュを持って出てくるまで待っていた。
確かに心の中では覚悟はしていた。
だが思うだけでは実際に物事に直面した時には足りなかったのかもしれない。

だからこそこなたは前に進むと決めた足を止めてしまった。

「う、そ、つ、つかさ……」

そして、再び歩み出すその足の先にある答えとは――。


【1日目 夜】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ付近】
【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、つかさの死に対する強いショック
【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ(疲労小)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、救急箱
【思考】
 基本:かがみん達と『明日』を迎える為、自分の出来る事をする。
 0.つかさがしんじゃった――。
 1.スバルやリイン達の足を引っ張らない。
 2.かがみんが心配、これ以上間違いを起こさないで欲しい。
 3.おばさん(プレシア)……アリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくてアリシアちゃんがいた頃に戻りたいんじゃないの?
【備考】
※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました。また、下手に思い出せば首輪を爆破される可能性があると考えています。
※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。
※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。
※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。
※PT事件の概要をリインから聞きました。
※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、キングを警戒しています(特にアーカードには二度と会いたくないと思っています)。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。
【リインフォースⅡ:思考】
 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。
 1.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。
 2.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。
【備考】
※自分の力が制限されている事に気付きました。
※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。

149 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:14:46 ID:EoGhWHlU0


【チーム:黒の騎士団】
【共通思考】
 基本:このゲームから脱出する。
 1.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。
 2.首輪を機動六課、地上本部、スカリエッティのアジト等で解析する。
 3.それぞれの仲間と合流する。
 4.ゆりかごの起動を阻止しヴィヴィオを救出する。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。また異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付いています。
※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。
※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は[[守りたいもの]]本文参照。
※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。
※チーム内で、以下の共通見解が生まれました。
 要救助者:万丈目、明日香、つかさ、ヴィヴィオ/(万丈目は注意の必要あり)
 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、クアットロ、アンジール、ルーテシア、C.C./(フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、クアットロ、アンジール、ルーテシアには注意の必要あり)
 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ)、炎の巨人を操る参加者(=ルーテシアorキャロ?)、ヴァッシュ、かがみ、半裸の男(=エネル)、浅倉
 判断保留:キング、天道、スーツの男(=矢車)
 以上の見解がそれぞれの名簿(スバル、こなた)に各々が分かるような形で書き込まれています。
※アニメイトを襲いヴィヴィオを浚った人物がゆりかごを起動させようとしていると考えています。


     ▼     ▼     ▼


ところでいくら新庄がヴァッシュにとって特別な存在になっていたとしても果たしてここまでの衝撃を受けるものだろうか。
だが実際こうしてヴァッシュは新庄の死に少なくない衝撃を受けている。
この会場内で起きた様々な事例を加味すれば、それも無理からぬ事かもしれない。
もしくは始を苦しめるジョーカー化への欲求の増大や普通なら凶行に及ぶはずもない参加者が手を血に染めてしまう事と何か関係があるのだろうか。
または金居の予想が正しいのか。
やはりプレシアの仕掛けた細工か、あるいは――。

150 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 01:15:53 ID:EoGhWHlU0
投下終了です、タイトルは「」突っ走る女」です
誤字・脱字、疑問、矛盾などありましたら指摘して下さい

151リリカル名無しA's:2010/05/14(金) 10:01:12 ID:g6jzJLBs0
投下乙、ホテルオワタ
おかしい……絶対、かがみん無双orジョーカー暴走orヴァッシュ暴走orこなたマーダー化orスバこなリイン退場orかがみん総取りになると思ったのに……普通の繋ぎじゃないか……
とりあえず、原作的に正しい反応だけどスバル落ち着け。ヴァッシュの髪の色は殆ど黒だぞ、一番の悪人はかがみで冷静にならないとこなたを失いかねないぞ。
まぁ、そのかがみは始をひき殺す……わけないよなぁ、変身可能になっているから変身出来るし、変身出来なくても対処されそうだし……ジョーカー暴走で終わりそうな気もするが。

あと、内容とは別に気になる事があるんですが、
仮投下後、氏のコメントがあってから本投下まで6日と少々時間が掛かりすぎだと思うのですが。
勿論、仮投下後の本投下や本投下後の修正の期限に関してはルールで決められていないので無制限という事で問題は一応ありません。
只、正直な所実質1週間という大幅な予約超過と変わらないんですよね。
勿論、ホテルパートは全員予約以外の予約が無く、ここの人達としても待つ分には一向に構わないと思います。
ただ、それはあくまで待つ側の話であって、投下する側がそれに甘え本投下までコメントも無しに大幅に遅れて良い話にはならないのではと思います。
氏にも都合があるでしょうから、遅れる事自体は仕方はありません。しかしそれならせめて『諸事情で2,3日遅れます』というコメント入れるなり、『修正に手間取るので一旦破棄します』とするなりやりようは幾らでもあったと思います。

したらばやwiki管理、多くのSS投下と氏が貢献しているのは理解出来ますが、だからといって根本的な期限のルールもしくはマナーを破っても構わないという話にはなりません。むしろ管理する側だからこそ守るべきではないのでしょうか?
以前にも誰かが指摘した事とは思いますが、今一度その事について考えてください。

152リリカル名無しA's:2010/05/14(金) 13:28:52 ID:I.fSqMX20
投下乙です

確かにスバルは原作通りだがそれは破滅フラグだぞ
そしてこういう時にこなたが危ない…
ああ、誰か助けて

それと俺はあまりぐだぐだ言わないが確かに連絡の一つぐらい欲しかったな
遅れる事自体は仕方ないけど

153 ◆HlLdWe.oBM:2010/05/14(金) 21:43:58 ID:EoGhWHlU0
>>151-152
確かに連絡の一つもしなかったのは自分の落ち度です
このたびは皆さんに迷惑を掛けてしまいどうも申し訳ありませんでした
この忠告は真摯に受け止め、執筆環境を見直し、同じようなことをしないように努力します

あとタイトルが微妙に間違っていました
正しくは「突っ走る女」です

154少し頭冷やそうか:少し頭冷やそうか
少し頭冷やそうか

155リリカル名無しA's:2010/05/19(水) 17:07:28 ID:.b90kewQ0
>>154
そう考えるならこの企画はあなたには合わないね
もうここに来ないことをお勧めするよ
それが双方にとって一番

156少し頭冷やそうか:少し頭冷やそうか
少し頭冷やそうか

157 ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:50:33 ID:XV1/QtKY0
スバル・ナカジマ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、柊かがみ、相川始、ヴィヴィオ分を投下します

158きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:52:05 ID:XV1/QtKY0
 どん、と響いた衝撃音が、始の鼓膜へと突き刺さる。
 ちら、と視線のみを向ければ、馬鹿でかい装甲車のタイヤが空回りしている。
 おおよその目測だが、速度は時速80キロほどであっただろうか。
 人の姿では、直撃を食らっていたなら一発でアウトだっただろうし、あれが堅牢な装甲車でなければ、乗り手も死んでいたかもしれない。
 そう。
 相川始は、強襲する装甲車の突撃を、食らわなかった。
 咄嗟の判断だった。
 一瞬回避が遅れていたなら、まず間違いなく食らっていたと断言できた。
 そのシビアなタイミングを掴むことができたのは、ひとえに前面に灯っていたもの――ヘッドライトのおかげと言えるだろう。
 踏むものもない舗装された道路を走っていた車だ。
 音だけでなく光すらも無く走っていたなら、最期まで気付けなかったのは間違いない。
「!」
 ぶぉん、とエンジンが唸りを上げた。
 標的を外し、勢い余って森の木々にぶち当たった装甲車が、轟音と共にバックする。
 その勢いで車体が反転し、勢い余って回りすぎたところを、戻す。
 もたついた動作は、運転免許を持たない素人のものか。
 マニュアル通りの運転をしているのなら、相手に居場所を伝えてしまうライトをつけっぱなしにしていたのも頷けた。
「変身!」
 一度目はまぐれであっても、二度目はない。
 人間と自動車とではスピード差がありすぎる。このままの姿では、次の突撃は回避できまい。
 故にほぼ反射的な動作で、カリスラウザーへとカードを通した。
『CHANGE』
 低い合成音声と共に、相川始の姿が一変。
 ヒューマンアンデッドの姿から、マンティスアンデッドを彷彿とさせる鎧姿へと変わる。
 漆黒のオーラを振り撒き現れたのは、黒金と緋々色金の戦士――ハートの仮面ライダー・カリス。
 瞬間、ぶおぉ、と吼えるエンジン。
 巨大な鉄の塊が、戦闘態勢へと移行。
 雄叫びと共に加速する体躯が、偽りの仮面の戦士へと殺到する。
「っ……!」
 これを飛び退り、回避する。
 仮面ライダーカリスの最大走力は、およそ時速75キロ。
 純粋な速さ比べならともかく、瞬発力では十二分に対処可能。
 相手もコツを掴んできたのだろう。避けられたのを理解した瞬間にブレーキをかけ、木との衝突だけは防いだ。
 とはいえ、乗り物を運転する上で、急ブレーキが悪手であることは言うまでもない。
 その理解も曖昧なうちは、素人と言って差し支えない。
(それなら、逃げ切れる)
 くるりと踵を返し、疾走。
 アスファルトの道路から飛び出し、手頃な獣道へと突っ込む。
 実のところ、始には交戦する気などなかった。
 理由は第三回放送の直後、すぐに浅倉威と戦わなかった時のそれと同様。
 ジョーカーの欲求と人の情――2つの感情に心を掻き乱されている現状では、とてもまともな状況判断などできない。
 故に無理に戦闘して下手を打つよりも、この場は最初から戦わないことを選んだのだ。
 刹那、背後から迫りくる鋼の咆哮。
 金属の光を放つ猛獣が、ばきばきと枝葉をへし折って肉迫する。
 道が開けているうちは駄目だ。装甲車のパワーとタフネスなら、それくらいの障害はこじ開けられる。
 ばっ、と。
 横跳びで獣道を外れ、茂みの中へと飛び込んだ。
 そのまま木々の密集したところを狙い、幹の合間を縫うように走る。
 これなら装甲車でも追うことはできない。相手が並の人間なら、このままやり過ごすこともできる。
「ちょこまか逃げるんじゃないわよッ!」
 相手が並の人間なら、の話だが。
 少女の金切り声が響いた。
 そのヒステリックな叫びには、覚えがあった。
 つかさなる少女から「お姉ちゃん」と呼ばれていた双子の姉――名前こそ知らないが、過去に2度顔を合わせた娘だ。
 よもやこんなにも短いスパンで、3回も顔を合わせることになるとは思わなかった。
『HENSHIN――CHANGE KICK HOPPER』
 次いで聞こえてきた機械音声は、自分達仮面ライダーのそれを想起させるもの。
 浅倉が変身した紫のライダーのような、自分の知らないライダーへの変身手段を手に入れたのだろう。
 これで機動力は互角となった。
 だが、それでもまだ始の方が有利だ。
 走るスピードが同じなら、互いの距離は詰められない。その隙に、相手に見つからないよう身を隠してしまえばいい。

159きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:53:17 ID:XV1/QtKY0
『CLOCK UP』
 その、はずだった。
「ぐぅあっ!?」
 刹那、襲いかかる鈍痛。
 腹部目掛けて放たれた衝撃と痛覚が、カリスの鎧姿を吹っ飛ばす。
 宙を舞いかけた漆黒の身体が、どん、と木の幹に当たって停止した。
 何だ、今のは。
 未だ抜けきらぬ混乱の中で思考する。
 自分と相手の間の距離は、相手が車から降りるまでに、100メートル近く開いていたはずだ。
 だというのに、攻撃が届いた。発射音が全く聞こえなかったことから、射撃攻撃でないことは分かる。
 ならば一体何をどうやった。射撃でないなら、どうやって攻撃を当てたというのだ。
「――ぉぉぉおおりゃああああああああああっ!」
 びゅぅん。
 がきぃん。
 瞬間、奇妙な情景を見聞きした。
 目の前に立っていた緑色の鎧。
 掛け声か何かのような雄叫び。
 猛スピードで空気を切り裂く音。
 カリスの鎧を叩いた金属音。
 それら4つの映像と音声が、ほとんど同時に再生されたのだ。
 関連性が、見当たらない。
 静かに佇んでいる目の前の敵と、猛然と走り追撃を仕掛けた音声とのイメージが結びつかない。
(音速を超えて動けるのか、こいつは)
 導き出された答えはただ一つ。
 敵の追撃とここまでへの到達が、追撃により発生した音を置き去りにしたということだ。
 音より速く動けるのなら、掛け声より速く手が出たのも納得がいく。
「ったく……手間、かけさせんじゃないわよ。これ、結構、疲れるんだから……」
 鎧の奥から響くのは、やはりあのツインテールの少女の声。
 改めて相川始は、眼前の仮面ライダー――キックホッパーの姿を見定めた。
 ホッパーの名前が指す通り、全体的にバッタの雰囲気を色濃く宿したライダーだ。
 身体は宵闇の中でもはっきりと伝わってくるほどの、鮮やかに輝く緑色に包まれている。
 顔面を覆うマスクなどは、そのものズバリでバッタのそれだった。
 片足に装備された金色のパーツは、これまた名前通り、キック力を増幅させるためのサポーターだろうか。
「どうやらその高速移動も、そう何発も使えるものじゃないらしいな」
 立ち上がり、態勢を立て直し、呟く。
 半ば息を切らした声からも、あれの体力消耗が大きいというのは確かなのだろう。
 ずっとあのままではたまったものではなかったが、短時間しか使えないのなら、どうにかなる。
「関係ないでしょ。どうせアンタ、ここで死刑確定なんだから」
 言いながら、緑のライダーが構えを取った。
「そうか」
 始もまた、それに応じる。
 できることなら雑念が消えるまで、戦うことなくやり過ごしたかったが、この距離ではそうも行かないだろう。
 逃げるにしても倒すにしても、確実に反撃を要求される間合いだ。
「分かったらとっとと……死ねぇぇぇっ!」
「はあぁっ!」
 緑と黒が同時に吼える。
 赤い瞳同士が肉迫する。
 加速し、振りかぶられるキックホッパーの足。
 踏み込み、突き出されるカリスの腕。
 もはや何度目とも知れぬ、仮面ライダー同士の一騎討ちが始まった瞬間だった。



 見る者が見れば、明らかに異常と分かる切り口だった。
 なればこそスバル・ナカジマは、目の前の男を犯人だと断定した。
 いくら鉄には劣るとはいえ、人間の骨は相当に頑強で強靭だ。
 いかな豪剣を持っていたとしても、よほどの達人でもない限りは、完全に平坦な切り口を作ることはかなわない。
 にもかかわらず、止血の際に垣間見た、ルルーシュ・ランペルージの傷跡は、怖ろしいほどに真っ平らだった。
 そしてここに至るまでに見た木々や、あの男が切り裂いた柱も、同じように真っ平らだった。
 故にスバル・ナカジマは、ヴァッシュ・ザ・スタンピードを犯人と断定した。

160きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:53:59 ID:XV1/QtKY0
「オオオオォォォォォォォッ!!」
 怒号を上げる。
 拳を振りかざす。
 獣のごとく獰猛な叫びと、獣のごとく荒々しい動作で。
 獣のごとき金色の瞳を、爛々と憎悪に煌めかせながら、勢いよく床を蹴って飛びかかる。
 びゅん、と反撃に出るのは無数の尖翼。
 袖のない左腕から迫りくる、糸のごとき白刃の雨だ。
 ぐわん、と腕を振るい、薙ぎ払った。
 両足で地面を突いて逆立ちとなり、駒のごとく両足を回した。
 ジェットエッジのスピナーが唸りを上げる。咆哮と共に旋風を成し、迫る凶刃を引きちぎる。
 かつてナイブズだったもの――ヴァッシュの左腕から伸びる尖翼の速度は、これまでに比べると明らかに遅い。
 知覚不可能な速度で放たれていたはずの斬撃が、今ではご覧の有り様だ。
 それは宿主たるガンマンの意志が、かつてほどこの左腕に毒されていないためなのだろう。
 そしてその程度の攻撃では、彼女を死に至らしめることなどできはしない。
「うああぁぁぁぁッ!!」
 今のスバル・ナカジマは全開だ。
 戦闘機人モードを解放し、IS・振動破砕を発動させ、怒りのままに四肢を振るっている。
 情けも容赦も残されていない。
 常人なら即死確定の技を使用することへの躊躇いなど、その目には一片も宿されていない。
 腕を振り、足を振り、轟然と咆哮し立ち回る姿は、まさに金眼の野獣そのもの。
 かつて地上本部攻防戦で、姉ギンガを傷つけられた時以来の、憤怒と憎悪に狂った阿修羅の形相だ。
「どぉぉぉぉぉけえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――ッ!!」
 目の前に立ち並ぶ刃の壁を、両手で強引にこじ開ける。
 超振動の五指が触れた先から、刃を粉々に砕いていく。
 目の前の男が殺したわけではなかった。
 黒髪の少年を死に追いやったのは、猛烈な炎を伴う攻撃だ。
 それでも、この男に負わされた手傷さえなければ、あの場から脱出することもできたはずなのだ。
「アンタ、は……!」
 ブリタニアの少年――ルルーシュの顔が脳裏に浮かぶ。
 この身をきつく抱き締めた、隻腕の感触を覚えている。
 不思議な少年だった。
 あれほどまでにストレートに、誰かに縋られたのは初めてだった。
 それほどに救いを求められたことは、生まれてこの方経験したこともなかった。
 彼の世界にいた自分のことを、それ相応に大切に思っていてくれたのかもしれない。
 ひょっとしたら、好きでいてくれたのかもしれない。
 その好意に応えることは、残念ながらできそうにない。会ってすぐの男になびくほど、自分は軽い女ではないらしい。
 それでも、あの今にもへし折れてしまいそうな背中を、支えてあげたいとは思っていた。
 こうして怒りに狂った獣へと化生するほどには、救いたいと思っていた――!
「アンタだけはああぁぁぁぁァァァァァ―――ッ!!」
 遂にスバルは絶叫した。
 怒号と共に繰り出された一撃は、遂にその防御の全てを打ち砕いた。
 生温かい吐息が漏れる。
 ぎらぎらと豹眼を輝かせる。
 百獣の軍勢のごとき威容と異様を孕み、殺意の魔獣がヴァッシュを睨む。
「く……」
 微かな呻きが、聞こえた気がした。
 目と鼻の先まで迫ったガンマンの顔は、確かに意識を失っているようにも見えた。
 しかしそれらの情報は、瞬きの後にはシャットアウトされる。
 獣が狙うは食らうべき獲物。
 すぐに叩き潰すだけの相手のことなど、いちいち気に留める必要はない。
 迷いなき敵対意識に従い。
 極大の憤怒と憎悪と共に。
 轟転するスピナーの右足を振り上げ、踵落としの姿勢を取る。
「ァアアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!!」
 ヴァッシュ・ザ・スタンピードが目を見開いたのは、ちょうどそれが振り下ろされた瞬間だった。

161きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:54:37 ID:XV1/QtKY0


 奇妙な夢を見ていた。
 否、眠っているのとは違うのだから、夢というよりは幻だろうか。
 ともかくもその幻の中では、彼は真っ暗な闇の中で、1人ぽつんと立っていた。
 上も、下も、右も、左も。
 その他ありとあらゆる方向を、どこまで遠くまで見渡しても、黒い闇しか見当たらない世界。
 地平線さえ塗り潰された、真っ黒くろの世界の中で、彼だけが、たった1人。

 そんな闇の中で立ちふさがったのが、今は亡きミリオンズ・ナイブズだった。
 彼が自らを取り巻く闇の幻に気付いたのも、ちょうどその瞬間だった。
 気付いた瞬間には既に、そこは1人ぼっちの世界ではなかった。
 ナイブズに連れ添うようにして、いくつもの顔が浮かんでくる。
 消してしまったジュライの人々。
 この戦いの中で救えなかった人々。
 自らの手で殺してしまった人。
 それらが彼をずらりと取り囲んで、一様に何かを訴えるような目を向けている。
 その目を見続けていることが耐えられなくて、彼はうつむき、視線を逸らした。

 それからどれほど経っただろうか。
 ふと、妙な気配が彼の身に降りかかった。
 己を見下ろす視線の中に、1つ覚えのあるものの存在を、肌で感じ取ったのだ。
 どこか懐かしいような、それでいて暖かいような感触。
 ふっと顔を上げてみると、人ごみの中に、その顔がある。
 長い黒髪を持った女性は、かつて彼を育てた母だった。
 レム・セイブレム――その名を呼びかけた彼だったが、その声は途中で遮られてしまう。
 彼女に伸ばそうとした手が、目に見えぬ何かに阻まれてしまったからだ。
 面食らったような顔をした彼は、その謎の違和感の正体を探る。
 それは人ごみと己とを隔てる、透明な壁のようなものだった。
 壁の向こうに立っているレムは、ただ穏やかな笑みを浮かべるだけで、彼に何も応えてくれない。
 一番手前にいたナイブズも、何も言葉にすることなく、ひたすらに沈黙を貫いていた。
 ああ、そういうことか、と彼は気づいた。
 自分の目の前に立ちはだかる壁は、死者と生者を分かつ壁だったのだ。
 後ろを振り返ってみれば、なるほど確かに、生きている知り合いは、皆壁とは反対の方向に立っていた。
 生と死の狭間の向こうには、手を伸ばそうにも届かない。
 生と死の狭間の向こうからは、相手の声を聞くこともできない。
 死んだものは、戻ってこない。
 自分はこれまで犠牲にした人々を、そんなところに送ってしまったんだな、と。
 彼は改めて実感し、それきり口を開かなくなった。

 それからまた、しばらく経って。
 いつしか壁の向こうの死者も、生者すらも見えなくなって。
 再び真っ暗闇の中で、赤いコートがたった1人。
 多少は落ち着いたのだろうか。瞳は下を向いてはおらず、ある一点を見つめていた。
 それは生死の壁の反対側。少し前まで、生きていた者達が立っていた場所。
 死者の世界を過去とするなら、未来に続いているであろう方角。
 しかし、そこから先が伴わない。
 ただじっとその先を見ているだけで、立ちあがって進むことができない。
 柄にもなく、怯えているのか。
 何が待ち受けているのか――ろくでもない結末しか切り開けないのではと、怖れを抱いているというのか。
 らしくないぞ、と己を叱る。
 今さら何をブルついているんだ。
 アンジールに救われていながら、何故また同じことを繰り返しているんだ、と。

 ふと、その時。
 闇の世界に、光が差した。
 自分しかいなかった世界の中に、不意にいくつかの光が灯った。
 ふわふわと浮く光の玉だ。地球には確か、ホタルとかいう虫がいるらしいが、ちょうどそれが近いのかもしれない。
 彼の周囲に現れた光は、ふわふわと闇の中に浮かびながら、彼の視線の方へと流れていく。
 ちょうどそれは、立ち止まって動けない彼を、先へと促しているようにも見えた。
 つられるようにして、立ちあがる。
 きょろきょろと、周囲の光を見やる。
 何故だか、妙な既視感を覚える光だった。不思議と、不快に思うことはなかった。
 光に導かれるようにして、一歩踏み出す。
 自分でも驚くほどにあっさりと、あれほど頑なに止まっていた足を動かす。
 ブーツの片足が、ず、と闇を踏みしめた瞬間。

 彼は――ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、唐突に覚醒した。

162きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:55:21 ID:XV1/QtKY0


(あ……)
 闇を抜けたかと思えば、今度は靄の中にいた。
 そう誤認するほどに、視界はぼんやりと霞んでいた。
 薄っすらと確認できる地形から、そこが元のホテル・アグスタだと分かる。
 朦朧としかけた意識の中で、状況を整理した結果、自分が気を失っていたことを自覚する。
 どれほど気絶していたのだろうか。
 その間に彼女は――スバルという少女はどうしたのだろうか。
「―――ぉぉぉけええ―――――――ぇぇぇ―――ッ――」
 と。
 鼓膜に突き刺さったのは、そんな怒声だ。
 意識に割り込んできた声を皮切りに、少しずつ感覚が鋭さを取り戻してくる。
 ほとんど色しか分からなかった視力も、物のシルエットを捉えられる程度には回復してきた。
 目の当たりにしたのは、戦いの構図。
 叫びを上げる青髪の少女が、絶叫と共に暴れまわる様だ。
 敵は人ではない。細く鋭く、徒党を組んで襲いかかるのは、刃を宿したナイブズの翼。
 どうやらまた、自分の左腕がやらかしたらしい。
 意識を失っていた間に、またしても暴走したようだった。
(おいこらヴァッシュ・ザ・スタンピード、寝てる場合じゃないぞ)
 だとしたら、大変な事態だ。
 ぐ、と身体に力を込めて、動かぬ五体を起こそうとした。
 目の前の命が潰えるより前に、左腕を抑え込もうとした。
「――タ、は…――」
 それでも、身体が応えてくれない。
 今までよりはマシとはいえ、やはり左腕の主張は激しく、無理やりにヴァッシュの制御をはねのけようとしてくる。
「―ンタだけはあ―――ぁぁァァァァ――――ッ――」
 負けてたまるか。
 屈してたまるか。
 こんな程度で挫けるのが、ヴァッシュ・ザ・スタンピードであってたまるものか。
 同じ過ちは犯さない。
 かつてと同じように力に呑まれ、誰かの命を奪うなんて真似はしない。
 もう2度も繰り返したのだ。
 ジュライの悲劇を繰り返すものか。
 フェイトの死別を繰り返すものか。
 だから立て。あともう一歩だ。意識を取り戻すところまで来たんだぞ。
 もうあと一歩で届くはずなんだ。
 その一歩を踏み出すんだ。
 さぁ、行くぞ――ヴァッシュ・ザ・スタンピード!
「ァアアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!!」
 くわ、と瞳を見開いた瞬間、絶叫と踵落としが襲いかかった。

163きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:56:50 ID:XV1/QtKY0
「〜〜〜〜〜っ!」
 咄嗟の判断で、腰を落とす。
 するりと滑り落ちるように、相手の股下を仰向けに抜ける。
 はらり、と前髪が散ったのが分かった。
 ぞわり、と首筋を悪寒が襲った。
 おまけに、危うく舌を噛み切るところだった。
 相手のスカートの中身は――OK、覚えてない。ということは見ていない。
 この状況で考えるのもアレだが、紳士として最低限の礼儀と自制は務め上げることができたらしい。
 なんて馬鹿なことを心配している場合じゃなかったことを思い出し、身を起こして姿勢を正す。
「こぉのおおぉぉぉぉぉっ!」
 すぐさま第二撃が襲いかかった。
 ぎゅるぎゅるとローラーブレードを回転させ、猛スピードでこちらへと加速。
 ぎゅん、と唸る鉄拳は、風か嵐か稲妻か。
 当然食らうわけにはいかない。
 故に、身をよじって回避する。
 そのまま勢いに身を任せ、ばっとその場から駆け出した。
 とにかくなるべく遠く離れることだ。ついでに障害物があるとなおいい。
 相手は近接戦特化型で、おまけに足も速いと来ている。接近戦を挑んでいては、命がいくらあっても足りない。
「OKOK、落ち着いたな……そのまま大人しくしといてくれよ」
 軽く抑えた左腕は、今はすっかり静かになっている。主導権を取り戻すことは成功したようだ。
 そうして確認をしているうちに、鉢植えを倒しソファを飛び越え、廊下に差しかかり、曲がり角にしゃがみ込む。
 中腰の姿勢を作ると、壁越しに相手の様子を窺った。
「逃げるなァッ!!」
 荒々しい語気と共に振りかぶられるのは、烈風のごとき打撃の応酬。
 立ちはだかる障害物を粉微塵に砕きながら、じりじりとにじり寄るスバルの姿だ。
 先ほどまで戦っていた相手とは、どうしても同一人物には思えない。
 怒り狂った態度もそうだが、攻撃の破壊力にしたってそうだ。
 ソファを一撃でぶち抜くのもどうかしてるし、よく見れば先ほどの踵落としを食らった床も、見事にクレーターを作っているではないか。
 ぱらぱらと粉塵の舞うロビーの中、まさしく目の前のスバル・ナカジマは、憤怒の炎を燃やす悪鬼羅刹だ。
(さて、どうする)
 考えていられる時間は残り僅かだ。
 その僅かのうちに決めなければならなかった。
 恐らく、もう拳銃の威嚇は当てにならない。アレを生身で組み伏せるのはどうやっても無理だ。
 故に当初のプランではなく、新たな対策を講じなければならなくなった。
 この場を殺さずに切り抜けるには、より強力な拘束力がいる。
 この肉体以上に強靭なもので、相手の動きを封じる必要がある。
(……試してみるか!)
 そして幸いにも、その条件を満たすものは、既に己が右腕に宿されていた。
 ぐ、と右手を前方に突き出す。
 エンジェル・アームの砲弾を撃ち出す時のように、腕の中に“力”をイメージする。
 脳裏に思い浮かべるのは、左腕に刻み込まれたナイブズの記憶だ。
 力尽き死体と成り果てるまでに、数多くの敵を切り裂いてきた、刃の尖翼のイメージだ。
 同じプラント自立種で、同じエンジェル・アームである。兄貴のナイブズにできたことが、弟の自分にできないはずがない。
 兄の発現させた怒りが、殺意の剣であるというのなら。
 人々を守るためのこの身には、外敵を阻む盾がほしい。
 鋭く禍々しい刃を突き立て、誰かを傷つけることのないように。
 されどあらゆる状況からでも、誰かを守れる強靭さと精密さを。
(もう、大丈夫だ)
 もちろん、不安がないわけではない。
 この身体に宿された力への恐怖は、依然として心に残されている。
 少しでも加減を間違えれば、また誰かを殺めてしまうのではないか。
 自分が使い方を誤れば、またフェイトや新庄のように、犠牲を生んでしまうのではないか。
 その心の乱れさえも引き金となって、再び暴走を招いてしまうのではないか、と。
 未だ胸に残された罪悪は、ちくりちくりと痛覚を訴えている。
 それでも。
 だとしても、止まれない。
 ここで立ち止まるわけにはいかない。
 新庄達の死を悼むつもりがあるのなら、それこそ前に進まなければならないのだ。
 自分が動くことで、死ぬかもしれない命もある。だがそれは、自分がそうならないように努めればいいだけのこと。
 それ以上に問題なのは、自分が動かなかったことで、救えた命を救えずに終わってしまうことだ。

164きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:57:48 ID:XV1/QtKY0
 もう大丈夫だ。
 二度と立ち止まることはしないし、立ち止まろうにも立ち止まれない。
 ヴァッシュ・ザ・スタンピードの名が示すのは暴走。
 たとえ困難が立ちはだかろうと、どんなドタバタがつきまとおうとも、ひたすらに突っ走るのが己の性分。
 だから、進め。
 歩みを止めるな。誓った覚悟をより強く固めろ。
 そう。
「――迷うな!」
 今が、その時だ。
 刹那、右腕が眩い光を放つ。
 光輝の中より顕現するのは、いい加減顔を合わせるのにも慣れてきた、危険で過激な天使の翼。
 されど姿を現した力は、命を奪う大砲ではない。
 兄のもの同様細かく枝分かれし、されど柔らかな羽毛の形を成した、ヴァッシュ・ザ・スタンピードオリジナルの尖翼だ。
 ぎゅん、と唸って翼が羽ばたく。
 大気をぶち抜いて羽が舞い躍る。
 さながら雲の巣のように展開された翼の糸が、四方八方からスバルへと迫る。
「くっ……!」
 反射的に飛び退いても手遅れだ。
 本人の明確な意志のもとに、全力で展開された尖翼の速度は、先ほどまでのそれの比ではない。
 制限が外れれば、知覚することすらかなわなくなるほどのスピード。
 たった1枚きりであろうとも、幾百千の銃弾の雨にも耐えきる堅牢性。
 首輪による制限下において、その性能を大幅に落とされたとしても。
 不意を打たれたのであれば、未だ発展途上のスバル・ナカジマに、回避できる余地はない。
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
 ヴァッシュが吼える。
 人間台風が唸りを上げる。
 文字通り翼という名の風を操り、一個の台風となって絶叫する。
 持てる精神力と集中力の全てを注ぎ、無数の枝葉と化した尖翼を操作。
 さながら魚を捕えるイソギンチャクだ。
 360度全方位から伸びる純白の光輝が、標的の手を掴み、足を掴む。
 握り潰すほど強固ではなく、されど逃げられるほど軟弱ではなく。
「う、うわああぁぁっ!」
 僅か数秒の後には、全身を縛り上げられ空中に静止するスバルの姿があった。



「ん……このっ……」
 じたばたと身をもがかせようにも、うんともすんとも動かない。
 振動破砕を当てようにも、手も足も動かせないのでは意味がない。
 ISの効果が及ぶのは、両手両足の先端のみだ。
 故に逃れることもできず、スバルはただ拘束されるがままとなっていた。
 五体を余すことなく包み込む翼が、淡い白光を放って顔面を照らす。
 肌をなめるその光が、いつでも絞め殺すことはできるんだぞと言っているようで、ほんの少し腹が立った。
「さて、と……君にいくつか聞きたいことがあるんだ」
 眼下からヴァッシュの声が響く。
 うつ伏せの姿勢で縛られていたため、相手の顔は直接見下ろすことができた。
「まず1つ。君はどうしてそんなに怒ってるんだい? ひょっとして僕、何か気に障ることでもした?」
 最初の問いかけからして、それである。
 ほんの少しどころではなく、今度は本気で腹が立った。
 こんなにも怒りを覚えるのは、随分とご無沙汰ぶりのことだ。

165きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 12:59:15 ID:XV1/QtKY0
「今さら何を……! ルルーシュの腕を斬ったのはアンタなんでしょ!?」
 語気が荒くなる。
 わなわなと身体が小刻みに震える。
 普段では考えられないほどの、乱暴な語調が口を突く。
 黄金色の瞳が怒りを宿し、きっと男を睨みつけた。
 忘れたとは言わせない。
 お前が負わせた傷のせいで、あの少年は苦しむことになり、命まで落としたんだ。
 直接殺したとまではいかずとも、間接的に殺したと言っても過言ではないんだ。
「僕が……斬った?」
「マントを羽織った黒髪の男の子! アンタのせいで、ルルーシュは……!」
 その上、そうしてとぼけるのだ。
 もはや堪忍袋の緒はほつれにほつれ、ぷつんと切れる直前だった。
 許せない。
 断じて許すわけにはいかない。
 どうしてルルーシュが命を落として、こんな男が生き残っているんだ。
 もしも本当に忘れていたとでも言いだすなら、この拘束を解いてでも、その顔面に拳を浴びせてやる。
 ぶん殴って、引っぱたいて、蹴っ飛ばして、嫌というほど彼の痛みを――
「待った!」
 しかし。
 刹那、一喝。
 吐き捨てかけた言葉は、下方からの声に掻き消される。
 びくり、と肩が震えたのを感じた。
 正直な話、一瞬たじろがされた。
 一瞬前のとぼけたような態度とは違う、確固たる力のこもった声に。
 想像もつかないほど真剣な表情に宿された、あまりにも濃密な意志の気配に。
 有無を言わさぬ、とはまさにこのことか。あまりの迫力に、完全に言葉を失ってしまった。
「確かに、そういうことに心当たりがないわけでもない。実際に俺は、少なくとも1人、この手で人を殺しちまってる」
 す、と持ち上がるヴァッシュの左腕。
 左側だけ袖が破れているという、歪なコートから覗いた腕。
 無数の白刃を展開し、柱を切り裂き、スバルへと襲いかかった針の山だ。
「正直な話、他に何人か巻き込んでても……死なせちまってても不思議じゃないだろうさ」
 一瞬、男の瞳から力が失せる。
 確固たる意志に光っていた眼光へと、暗い弱気の影が差す。
 そこに込められた数多の感情――無念、後悔、そして自責か。
「でも、これだけははっきりと言える」
 ふぅ、と息を1つついた。
 次の瞬間には、顔つきをきっぱりと切り替えていた。
 陰りを振り払ったその視線は、先ほどまで見せていた、意志の炎を宿した瞳だ。
 そこまで認識したところで、いつしかスバルは、自分が彼の一挙手一投足までも、正確に追いかけていたことに気がついた。
 憎むべき敵のはずなのに。
 危険人物であるはずなのに。
 その姿に、少なからず魅入っている自分がいた。
「その子を斬ったのは俺じゃない。その子が斬られた瞬間を――俺は“視ている”」



 我ながら、らしくないとは思った。
 これではまるで言い訳を言っているようで、見苦しいにもほどがあるじゃないか。
 真剣な面持ちを浮かべながら、しかしヴァッシュは、その裏ではそう自嘲していた。
 それでも、その顔に表れた意志に偽りはない。
 スバルとの間に誤解があるのなら、何としても解いておきたかった。
 こうして言葉を交わしてみて、分かったことがある。
 剥き出しの怒りをぶつけられてみて、初めて理解できたことがある。
(この娘は、話せば分かってくれるかもしれない)
 頭上に浮かぶ娘は、柊かがみが言うほど悪い人間ではないということだ。

166きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:00:31 ID:XV1/QtKY0
 彼女はスバルについて、自分に襲いかかってきた、と説明していた。
 それが正しいというのなら、スバルは殺し合いに乗っているということになるだろう。
 だがここにきて、その仮定が信じられなくなってきた。
 この娘は仲間を傷つけた相手――他ならぬヴァッシュ自身をそうだと思っている――に対し、強烈な怒りをぶつけてきた。
 誰かのために怒れるということは、それだけ誰かを深く思いやれるということ。
 それほどの優しさと思いやりを持っていて、それをこの場でも貫いているような娘だ。
 そんなスバルが、殺し合いに乗ったり、かがみに襲いかかったりするとは、どうしても考えにくい。
 かがみを信じないというわけではない。ただ、スバルのことも信じたくなっただけのことだ。
「信じろっていうんですか、それを」
 それからどれほど経っただろうか。
 ややあって、返事が返ってきた。
 口調からは随分と毒が抜けたが、未だ表情には猜疑心が残っている。
「信じられないのも無理ないと思うし、詳しく話しても、信じにくいだろうことだってことは分かってる」
 それだけを、口にした。
 まだそれ以上は語れないし、これ以上語り過ぎることも、できることならしたくなかった。
 事実、ありのままに説明をしたとしても、到底信じられる内容ではないだろう。
「それでも、聞いてほしいんだ」
 だとしても、それはヴァッシュにとっては厳然とした真実なのだ。
 ルルーシュなる者――マントを羽織った黒髪の少年のことは、覚えている。
 ヴァッシュ・ザ・スタンピード自身ではなく、左手に宿されたミリオンズ・ナイブズの記憶に、しかと刻み込まれている。
 その少年の腕を斬ったのは、間違いなく生きていた頃のナイブズだ。
 その記憶を垣間見たからこそ、誤解を解く必要がある。
 彼女がその少年を大切に想い、少年の死を悲しんでいるからこそ、少年の真実を伝えなければならなかった。
「……下ろしてください。話を、聞きますから」
 故に。
 彼女がそう言ってくれた時。
 話を聞くだけは聞いてやる、と返してくれた時。
「ありがとう」
 それだけでも十分だと。
 聞いてくれるだけでも十分に嬉しい、と。
 心底から、そう思った。
 いつの間にかスバルの瞳は、獣のような金色から、元の緑碧へと戻っていた。
 右腕から伸びる翼の糸――言うなれば防衛尖翼、といったところだろうか――を地上へと下ろす。
 スバルが安全に着地できるところまで高度を落とすと、その拘束を解き、腕へと引っ込める。
 すた、という音と共に、少女が床へと降り立った。
「それで、ルルーシュは誰にどんな状況で斬られたっていうんですか?」
「ああ、それは……」
 さて、これからどうするか。
 スバルに問いかけられた時、ほんの少し困ってしまった。
 ルルーシュの真実を語るに当たって、どのあたりから話をすればいいのだろう、と。
 いくらあんな翼を見せたとはいえ、彼女もヴァッシュがプラントであるなどとは思っていないだろう。
 故に自分がナイブズを左腕に取り込んだ、と話した時点で、そんなわけがあるかと突っかかってくるはずだ。
 ならば、もういっそ最初から話してしまうか。
 自分が人間でないというところから、思い切って話してしまうべきか。
 しかしそれはそれで、こいつはいきなり何を言い出すんだと、かえって疑われてしまうのではないか?
 ああでもないこうでもない、と、頭をひねっていた矢先だった。

「――ギンガ……?」

 不意に廊下から、その声が響いてきたのは。

167きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:01:22 ID:XV1/QtKY0
「「!?」」
 知覚したのはほぼ同時だった。
 赤と青。
 ヴァッシュとスバル。
 互いにトークモードから臨戦態勢へと移行し、声の方を向いて構えを取る。
 違いがあるとするならば、それぞれが浮かべる表情か。
 ヴァッシュ自身は油断なく自らの拳銃を構え、現れた相手を見定めている。
「ギン姉の、名前を……?」
 だがスバルの方はというと、怪訝そうな表情と共に、そんなことを呟いていた。
 ギン姉というのは、恐らく相手が口にした名前の主のことだろう。
 そういう反応を示したということは、そのギン姉というのは、スバルの知り合いだったのだろうか。
(っと、いけないいけない)
 とはいえ、今はそれを気にしている場合ではない。
 改めて来訪者へと視線を戻し、その姿を見定める。
 廊下の入り口に立っていたのは、全身漆黒で埋め尽くされた、禍々しい鎧を纏った男だ。
 顔はフルフェイスのマスクで隠れていたが、先ほど呟いた声で男だと判断できた。
 そしてその顔面には、ハートのマークを描くかのように、真紅の複眼が散りばめられている。
 黒と赤――闇と血の色。その上意匠も悪役っぽく、あまりいい印象は受けない。
 見た目だけで人を判断することが許されるなら、一発で悪人と認定できるだろう。
「うぉりゃああぁぁぁーっ!」
 と。
 その時だ。
 そこに、新たな声と人影が割り込んできた。
 少女の甲高い声と共に現れた者は、これまた全身鎧尽くめ。
 しかし、こちらの甲冑は緑色で、複眼もハート型ではなく、昆虫のように2つに分かれている。
「チッ!」
 舌打ちと共に、振り返る漆黒。
 どうやら黒鎧と緑鎧は、互いに敵対関係にあるらしい。
 がきん、という金属音と共に、振り上げられた新緑の回し蹴りを、漆黒の弓で受け止める構図ができあがった。
「しつこいのよ! いい加減、死になさい……ってのぉ!」
 苛立った叫びと共に、緑色の鎧が追撃を放つ。
 パンチ、キック、続いてキック。キックの回数が多いあたり、蹴り技が得意なのだろうか。
 しかしそれ以上に気になるのは、その声だ。
 二度三度と聞いていくうちに、否応なしに気付かされていく。
 聞き覚えがあるぞ、この声は。
 ついさっきまで聞いてたぞ、この声は。
「ってちょっと待った! その声……まさかかがみさんか!?」
「!? しまっ……」
 攻撃の手が止まる。焦ったような反応が返ってくる。
 できることなら、正解であってほしくはなかった。
 それでも、今の反応を見せられた以上、認めざるを得なかった。
 あの中に入っているのはあのかがみだ。
 明確な殺意と共に、黒色の鎧を襲っているのは、先ほどまで保護していた柊かがみだ。
「……あーもーめんどくさい! もういいわよ! 全員まとめて皆殺しにしちゃえばいいんでしょ!」
 苛立ちも極限を迎えたか。
 黒の鎧のもとから飛び退き、ヴァッシュと鎧の中間地点に着地して。
 幾分か捨て鉢気味にすらも感じられる声音で、かがみが殺意を振り撒き叫ぶ。
 それが彼女の本性か。
 ということは、自分は今の今まで騙されていたということか。
 それならば、自分から見たスバル評と、かがみから見たスバル評が食い違うことにも納得がいく。
 ただし、あまりしたくない納得ではあったのだが。
 一難去ってまた一難、か。
「ごめん、どうも説明は後からってことになりそうだ」
 ともかくも、相手が殺意を持っているというのなら、止めなければ。
 傍らのスバルへと、言葉を飛ばし。
 改めてアイボリーを構え直し、戦闘態勢へと移った。

168きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:02:20 ID:XV1/QtKY0


 果たして自分は、このヴァッシュという男を信用していいのだろうか。
 その疑問だけは、未だ大なり小なり残っている。
 彼はルルーシュを斬ったのは自分ではないと言った。
 だが、あのような芸当ができる人間など、他にそうそういるものではないのも事実だ。
 にもかかわらず、何故話を聞こうとしたのか。
(嘘を言ってるようには見えなかった)
 やはりひとえに、その眼差しの真摯さによるところが大きかった。
 訓練校のテストこそ好成績だが、スバルは元来そう頭の回転が早い方ではない。
 故に自分の人物眼など、そんなに信用できたものでもないのかもしれない。
 それでも、少なくともこの瞳に映るヴァッシュ・ザ・スタンピードの姿は、演技をしているようには見えなかった。
 信じてほしいと願う意志も。
 人を殺してしまったことへの自責も。
 どちらもがあまりにも力強く、圧倒的な存在感とリアリティを伴って、自らの視界へと飛び込んできていた。
 この男は本当に嘘をついていないのではないか。
 危険人物というのも何かの間違いで、本当はいい人なのではないか。
(でも、多分まだ信じきるのは早い)
 それは分かっている。
 いくら嘘には見えないといえど、それすらも計算の内である可能性もある。
「ヴァッシュさん……一緒に戦いましょう」
「いいのか?」
「約束しましたから。自分のするべきことをするって……かがみさんを止めるって」
 だからこそ、これは一時的な共闘。
 ヴァッシュ・ザ・スタンピードという人間を理解するための、最終テストを兼ねた共同戦線。
 本当は静観を貫いた方がいいのは分かっている。
 敵かもしれない相手と同じ戦場に立つのが、危険なことであるということは理解している。
 それでも、この戦いに参戦しないわけにはいかないのだ。
 あの時、自分はこなたと約束した。
 自分がやりたいこと、やるべきことをするために、全力全開で戦う、と。
 今自分がすべきことは、彼女の友情を守るために、かがみを殺戮の魔道から、全力で引きずり上げることだ。
(相手が仮面ライダーなら、使える)
 戦闘機人モードを再起動。
 薄暗いホテルのロビーに、2つの黄金灯が光る。
 魔獣の煌めきと共に顕現するのは、一撃必殺の破壊力を宿した禁断の魔手。
 怒りに我を忘れた先ほどのように、人間に対して振るうには、危険すぎる力であることは分かっていた。
 以前にかがみと戦った時も、中身へのダメージを懸念し、結局最後まで使うことはなかった。
 それでも、相手があの紫の蛇人と同じ仮面ライダーであるなら。
 生半可な攻撃では傷一つつかないほどの、強固な鎧に守られているのならば。
 中身を傷つける心配をすることなく、遠慮なく叩き込むことができる。
 この振動破砕の力を存分に振るい、鎧のみをぶち砕くことができるはずだ。
(それに……気になることもある)
 そこで視線を、もう片方へとシフト。
 緑の鎧を纏ったかがみではなく、黒の鎧を纏った謎の男を見る。
 マスク越しにこちらを睨むかがみ同様、今はあの黒と赤の男も、静かに佇んでこちらを見ていた。
 ギンガ――その名を口にしたのは、明らかにあの男の方だ。
 もちろん、仮面ライダーに変身する知り合いなどいない。
 であればあの漆黒のライダーは、このデスゲームの中でギンガと出会い、知り合ったに違いない。
 彼と姉はどういう関係なのか。
 どのようにして出会い、どのような行動を取ったのか。
 今は亡き姉の死の瞬間に、この男は関わっていたのか否か。
「そこの人! どうして、ギン姉の……ギンガ・ナカジマの名前を知ってるんですか!?」

169きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:03:14 ID:XV1/QtKY0


 だからホテルに来るのは嫌だったんだ。
 青髪の少女を見やりながら、相川始は思考した。
 仮面ライダーキックホッパーに応戦し、その中でホテル・アグスタとやらへと舞台を移して、気付けばロビーでこの有り様。
 人と接触するのが嫌だったから、わざわざこの場所を避けていたのに、結局このような結果を迎えてしまった。
 しかも、出会った相手が相手だ。
 金髪と赤コートの方は知らない。だが、青髪の少女の方には見覚えがある。
 正確には、同じ管理局とやらの制服を纏った、彼女の姉の方の顔を覚えている。
「お前がスバル・ナカジマだな」
 ギンガ・ナカジマ。
 目の前に立っていた少女の顔は、あの女の顔と瓜二つだった。
 ロングヘアーだった頃はともかく、髪を短く切った時と見比べれば、ほとんど同一人物と言っていい顔立ちだ。
 少なくとも、初めてスバルの姿を見た始にとっては、そうだった。
「ここから去れ。お前の姉……ギンガには借りがある。できれば、お前を殺したくはない」
 真実だ。
 スバルを殺したくないということも。
 このままではスバルを殺してしまうであろうことも。
 あの少女との戦いの中で、今では随分と頭も冴えてきた。
 今なら全開で戦える。余計な雑念のない今なら、全力で殺戮ができてしまう。
 迷いが消えたということは、ジョーカーの本性に抗おうという気が、その分失せてしまったということだ。
 認めたくはないが、これから始まる戦いの中で、いつジョーカーへと変身してしまうかも分からない。
 そうなればこの場の人間は全滅だ。
 仮面ライダーも、赤コートの男も、スバル・ナカジマさえも死んでしまう。
 他の2人はともかく、スバルを殺すことだけは、できることならしたくはない。
 迷いが消えうせてなお、ギンガの遺志を踏みにじることに、強い嫌悪感を抱いている自分がいる。
 故に最後通告として、戦う前に、スバルへとこの場からの撤退を促した。
「っ……そんなこと言われて、引き下がれるわけがないよっ!」
 ああ、そうか。
 お前もそういう人間だったのか。
 どうやら裏目に出てしまったらしい。こいつも姉同様、人を見捨てることができない性分だったらしい。
 馬鹿正直なのか、それとも正義漢なのか。
 どちらにしても、これで決まってしまった。
 もはやギンガの忘れ形見との戦いは、避けられない運命なのだということが。
「……どうなっても知らないぞ」
 カリスラウザーを構え直す。
 敵意を持って、赤と青の2人組を見つめる。
 こうなってしまったのならば、もはや戦わずにはいられない。
 自分の道に立ちはだかってくるというのなら、力で排除することでしか進めない。
 皮肉にも、今の自分は全開だ。
 意識はクリアーに澄み渡っている。たとえこの乱戦の中であろうと、手加減なしで戦えてしまう。
(だが、何だ? この禍々しい感触は……)
 そしてその一方で、分かったことが1つあった。
 雑念を振り払ったことで、新たに感じられるようになったものが1つある。
 ジョーカーの持つ闘争本能――無意識的に戦いを察知する鋭敏な神経が、嫌な胸騒ぎを訴えている。
 何かのオーラを直接当てられたわけではない。
 本当に、ただ嫌な予感がするだけだ。
 ここにこのまま留まれば、何か強大な力に巻き込まれることになるかもしれない。
 その予感の主は目の前の2人組でも、ましてや緑色の仮面ライダーでもない。
 もっと強大で、醜悪で、おぞましい感触だ。
 そう、たとえばあのもう1人の赤コート――ギンガを殺したと思われる男のような。
 そしてギンガが連れていた仲間――桃色の髪の娘に襲いかかった時のような。
 いずれにせよ、ろくな相手でないことは間違いなかった。
 血のような、闇のような。
 奈落の底を流れ続ける、流血の河を思わせる予感が、絶え間なく危険を訴え続けていた。

170きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:04:11 ID:XV1/QtKY0
 


【1日目 夜中】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ1階ロビー】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、融合、黒髪化九割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish、アイボリー(5/10)@Devil never strikers
【道具】なし
【思考】
 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
 1.殺し合いを止めつつ、仲間を探す。
 2.スバルと共闘し、始とかがみを止める。
 2.首輪の解除方法を探す。
 3.アーカード、ティアナを警戒。
 4.アンジールと再び出会ったら……。
【備考】
※制限に気付いていません。
※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。
※暴走現象は止まりました。
※防衛尖翼を習得しました。

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】戦闘機人モード、疲労(小)、全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、若干の不安と決意
【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー)
【思考】
 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。
 1.ヴァッシュと共闘し、始とかがみを止める。特に始からは詳しく話を聞きたい。
 2.スカリエッティのアジトへ向かう。
 3.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。
 4.準備が整ったらゆりかごに向かいヴィヴィオを救出する。
 5.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。
 6.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。
 7.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。
 8.ヴァッシュの件については保留。あまり悪い人ではなさそうだが……?
【備考】
※仲間がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。
※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。
※万丈目が殺し合いに乗っていると思っています。
※アンジールが味方かどうか判断しかねています。
※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。
※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。
※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。

171きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:04:56 ID:XV1/QtKY0
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】仮面ライダーカリス、疲労(小)、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、ジョーカー化への欲求徐々に増大
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:皆殺し?
 1.この場を切り抜ける。
 2.生きる為に戦う?
 3.アンデッドの反応があった場所は避けて東に向かう。
 4.エネル、赤いコートの男(=アーカード)を優先的に殺す。アンデッドは……。
 5.アーカードに録音機を渡す?
 6.どこかにあるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 7.ギンガの言っていたなのは、はやてが少し気になる(ギンガの死をこのまま無駄に終わらせたくはない)。彼女達に会ったら……?
 8.できればスバルを殺したくないが……
 9.何やら嫌な予感が近付いてきているのを感じる。
【備考】
※ジョーカー化の欲求に抗っています。しかし再びジョーカーになれば自分を抑える自信はありません。
※首輪の解除は不可能と考えています。
※赤いコートの男(=アーカード)がギンガを殺したと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】仮面ライダーキックホッパー、、つかさの死への悲しみ、サイドポニー、自分以外の生物に対する激しい憎悪、やさぐれ
【装備】ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ホッパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、ホテルの従業員の制服
【道具】支給品一式、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:みんな死ねばいいのに……。
 1.この場の人間を皆殺しにする。
 2.他の参加者を皆殺しにして最後に自殺する。
【備考】
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています(たびかさなる心身に対するショックで思い出す可能性があります)。
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間〜1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.…………。
 2.当面はかがみをサポート及び誘導して優勝に導くつもりだが、場合によっては新しい宿主を捜す事も視野に入れる。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

【全体の備考】
※F-9の森の中に、装甲車@アンリミテッド・エンドラインが放置されています。

172きみのたたかいのうた ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:05:46 ID:XV1/QtKY0
 

 一歩一歩踏み出す度に、大地が死に絶えていくようだった。
 アスファルトを踏み締める度に、風化し塵となって流れていくようだった。
 死を纏う者――それを表す端的な言葉があるとするなら、そんなところか。
 そこに死が歩いている。
 死を振り撒く存在が、明確な姿形を持ってそこにある。
 そう錯覚させるほどの、おぞましくも禍々しき気配を孕んでいた。

 究極の闇。
 凄まじき戦士。
 古代ベルカ最後の聖王にして、その高潔な心を怒りと憎しみに枯れ果てさせた狂戦士。
 巨大な漆黒と黄金の鎌を携えるさまは、まさしく伝承の死神そのものだ。
 金色のポニーテールを風に踊らせ、新緑と鮮血のオッドアイを殺気に光らせ。
 まるで何かに引き寄せられるかのように、闘争の舞台たるホテル・アグスタの方角へと、一直線に歩いていく。
 愛する母を守るために。
 母を害するものを皆殺しにするために。
 憤怒と憎悪と敵意と殺意を引き連れて、触れるもの全てを切り裂かんがために、闘争の舞台を闊歩する魔神。

 脳裏に反響し続けるのは、少し前まで同行していた、オレンジの髪の少女の声だ。
 一休みするためにも、ホテル・アグスタという所に行こう――命を落とす前に、彼女はそう提案していた。
 行くあてもなく、求める者もいない彼女にとって、唯一それだけが行く先の指針だった。

 もうすぐ、奴がやって来る。
 四つ巴の闘争の舞台に、最悪の第5人目が現れる。
 死神の刃鎌を手に入れた最強の聖王が、禍々しき波となって、ホテル・アグスタへと押し寄せてくるだろう。
 全てを呑み込み、溺れさせんばかりの。
 行く先に立つ万象一切を、ことごとく血で染め上げんばかりの。

 厄災が迫る時は、近い。


【1日目 夜中】
【現在地 H-7】

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】聖王モード、血塗れ、洗脳による怒り極大、肉体内部に吐血する程のダメージ(現在進行形で蓄積中)
【装備】レリック(刻印ナンバー不明/融合中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式、フェルの衣装、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:なのはママとフェイトママの敵を皆殺しにする、その為に自分がどうなっても構わない。
 1.天道総司を倒してなのはママを助ける。
 2.なのはママとフェイトママを殺した人は優先的に殺す。
 3.頃合を見て、再びゆりかごを動かすために戻ってくる。
 4.ホテル・アグスタに行ってみる。
【備考】
※浅倉威は矢車想(名前は知らない)から自分を守ったヒーローだと思っています。
※矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。キングは天道総司を助ける善人だと考えています。
※ゼロはルルーシュではなく天道だと考えています。
※ヴィヴィオに適合しないレリックが融合しています。
 その影響により、現在進行形で肉体内部にダメージが徐々に蓄積されており、このまま戦い続ければ命に関わります。
 また、他にも弊害があるかも知れません。他の弊害の有無・内容は後続の書き手さんにお任せします。

173 ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:08:32 ID:XV1/QtKY0
投下は以上です。誤字・矛盾などありましたらご意見ください。
あと、Wikiに収録する際の今回のSSの分割点ですが、

「う、うわああぁぁっ!」
 僅か数秒の後には、全身を縛り上げられ空中に静止するスバルの姿があった。



「ん……このっ……」
 じたばたと身をもがかせようにも、うんともすんとも動かない。


ここの◆の部分でお願いします。

174 ◆Vj6e1anjAc:2010/06/10(木) 13:10:06 ID:XV1/QtKY0
っと、ミス発見。かがみの状態表の状態の欄に、「疲労(中)」の追加をお願いします

175リリカル名無しA's:2010/06/10(木) 17:35:10 ID:Ka6taRRo0
投下乙です。
とりあえずスバルとヴァッシュが和解出来……と思ったら始とかがみがやって来た。
始とはギンガとの絡みがあるから何とか出来そうだけど最早かがみはロクデナシだなぁ……それでもスバルとヴァッシュは殺さないだろうからタチが悪すぎる
……で、死をもたらす危険なヴィヴィオが乱入しそうという恐ろしいオチ……『死が歩いている』なんて上手い表現だのう……
ヴィヴィオの接近に気付いているのは始だけか……そういや憑神鎌の脅威の片鱗に触れていたんだっけ。
ヴィヴィオ、ジョーカー、バーサーかがみ……ヴァッシュの金髪も残り少ないから最早ホテルオワタ……

……こなたがハブられたのは、この瞬間まで全く絡んでいないからか……失礼承知で言うけど投下されるまでこなたは予約忘れだと思っていた……

とりあえずこなた伏せやー! そこはアニメイトよりも危険だー!

176リリカル名無しA's:2010/06/10(木) 20:34:44 ID:ZtB.Qidc0
投下乙です
ヴァッシュとスバルは寸でのところで和解に至ったか
それにしても立ち直ったヴァッシュさすがだ
かがみの方は前話での「ドン!!!!!」は気にぶつかった音だったか
素人じゃそれでもよく運転出来た方だな
そして案の定というか行き当たりばったりで正体ばらしているよw
スバル、ヴァッシュ、始、かがみ、それにヴィヴィオ……うんホテルオワタ \(^o^)/

177リリカル名無しA's:2010/06/11(金) 08:48:14 ID:m.ZIbc6I0
投下乙です
ヴァッシュとスバルは一先ず和解出来たみたいで安心した。
さて、問題はいつジョーカーが暴れ出すか分からない始と最早体面お構いなしのかがみか。
毎度ながらかがみは激情に任せて暴れ回っても勝てる気がしないんだよなぁ……。
純粋な戦闘能力じゃ始、ヴァッシュ、スバルの三人全員に敵わないだろうし。
寧ろ今回の戦いで一番危険なのはアルティメットヴィヴィ王か。

178 ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:45:19 ID:m.ZIbc6I0
エネル、金居、八神はやて(StS)分の投下を開始します。

179Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:47:34 ID:m.ZIbc6I0
 深い、濃い市街地の闇の中に、神を自称する男――エネルは居た。
 怒りと憤怒に歪んだその表情を、一言で例えるならばまさしく鬼神。
 激情の余り全身から漏れ出した電流が、鬼のような形相を怪しく照らして、それは余計に際立って見えた。
 本来ならば夜の市街地を照らす筈の電灯も、最早まともに機能してはいない。
 市街地を淡く照らす筈の月明かりも、空を覆う……というよりもエネルの周囲の空を覆う雷雲のお陰で届きはしない。
 ゆらりゆらりと、一歩を進める度に、電灯がちかちかと点灯し、消えていく。
 時たまごろごろと音を立てて、常人なら一瞬で焼け死ぬような雷が、エネルの周囲のアスファルトへと落ちる。
 闇の中を歩く鬼神と、鬼神が伴う雷雲が、周囲のありとあらゆる電力を根こそぎ奪っているのだ。
 電気がまた一つ消える度に、エネルの周囲を走る青白い電流が、夜空で光る雷が、より一層の輝きを放つ。
 首輪で制限されているとはいえ、彼は自然(ロギア)系でも最強の部類に入る、ゴロゴロの実の能力者。
 エネルがスカイピアでやってきた事を考えれば、この程度の芸当は至って簡単な事なのだ。
 しかし、それはエネルが意図してやっている事ではなかった。

「許さん……絶対に許さんぞ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード!」

 それも全ては、自分ですらも抑えきれない激情が成せる業。
 怒りで顔まで真っ赤にしたエネルが、無意識のうちに周囲の電気を奪っていたのだ。
 ここまで歩いた数キロの道のり、未だに電力が残っている建物など一軒も無い。
 初期の電力を遥かに上回る力を身に付けたエネルの標的はただ一人。
 神である自分を跪かせ、あまつさえ神である自分を騙くらかしたあの男。
 赤いコートに、トンガリ頭。白い翼のヴァッシュ・ザ・スタンピード。

 エネルは先程、そのヴァッシュに良く似た白の翼を見掛けた。
 空を羽ばたく白き翼に、はためく赤のコート。それが、南東の方角へと飛翔して行った。
 それを視界に捉えた時には、翼の影はかなり小さくなっていたが、それでも見まごう訳が無い
 スカイピアの奴らに生えたちっぽけな翼とは違う、本当の天使の如き翼。
 神を死の恐怖へと追いやった、憎たらしい翼。偉大なる神を失墜させる、天使の様な悪魔の翼。
 全ての嘘を見抜いた以上、最早神に歯向う不届き者を生かしておく理由も無い。

 殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。
 何度も何度も心中で反芻しながら、翼が消えた南東へと歩を進める。
 ヴァッシュをこの手でブチ殺した上で、全ての参加者を血祭りに上げる。
 最早そうする事でしか、失った威信を取り戻す事は出来はしない。
 それが神の名にすがるちっぽけな男に、たった一つ残されたプライドだからだ。

180Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:48:10 ID:m.ZIbc6I0
 




 金居に追随した八神はやてが、地面に出来たアスファルトを覗き込んでいるのは、ヴィータの死から数分後の出来事であった。
 四方八方どっちを見ても、視界に入って来るのは粉砕されたコンクリやアスファルトのみ。
 これが地上本部のなれの果て。この場所で幾重にも重ねられた、激しい戦いの傷跡であった。
 その中で一箇所、際立った傷がアスファルトに亀裂を走らせて、地下部分を露出させている場所があった。

「調べて欲しいものっていうのは、これの事ですね?」
「ああ、そこの看板を見てみろ」

 金居が指差した方向を見れば、そこにあったのは見覚えのある触れ込みの看板であった。
『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』なんて書いておきながら、実際には嘘八百。
 この転移魔法陣は、望んだ場所などには決して飛ばしてくれない。行き場所はランダム、主催側が設置した罠だ。
 はやては一度、キングと共にこの罠に掛っているからこそ、その真相を知っている。

「残念やけど、これは罠です。望んだ場所やなんて言いながら、実際には違います」
「というと、飛ぶ場所はランダムという事か? 何のために?」
「恐らくは、他者と手を組んだ参加者の戦力を分断する為」
「何故そう言い切れる?」
「私たちも一度、この罠に嵌ったからです」
「ほう」

 このデスゲームが始まってすぐの事、はやてはキングという少年と行動を共にした。
 そのキングがまたとんでもない馬鹿で、何の策も無しにこの罠に自ら嵌りに行った。
 はやて自身は乗り気ではなかったのだが、結局はキングに押し切られる形でこの罠を使ってしまった。
 結果、キングとは離れ離れ。到着した場所は誰もいない図書館。開始早々、はやては完全に孤立したのだ。
 それらを簡潔に、尚且つキングの無能さと危険さを前面に押し出す形で、説明を終えた。

「成程な……ちなみに聞くが、あんたは何処に飛びたいと願ったんだ?」
「それは……私の家族の、ヴィータ達の元にです」
「その図書館に、直前までヴィータ達が居た可能性は?」
「それは……今になってはもう、確かめようのない事です」

 ヴィータは死んだ。そこにヴィータが居たとしても、居なかったとしても、確かめる術は無い。
 当然ながら、死んでしまった人間にはもう、質問する事はおろか口を聞く事すら出来ないのだから。
 ここに居たヴィータは当然、家族なんかでは無い。赤の他人のヴィータだ。赤の他人のヴィータが死んだのだ。
 さっきまでここに居て、一緒に話をして、一緒に行動をしていたヴィータ。
 あのヴィータは、はやてのヴィータでこそ無いが、生きていた。
 ヴィータという名前があって、はやてと過ごした記憶があって……だけど、死んでしまった。
 それを赤の他人と割り切って、忘れてしまうのは容易い事なのだが、どういう訳か心が晴れない。
 ここまで来て、自分は何を迷っているのだ。雑念を振り払う様に、頭を二度三度振った。

「まぁ、キングと離れ離れになるのは当然だろうな」
「え……?」
「家族の場所へと飛びたいと思ったあんたは、どういう訳か図書館へと飛んだ。
 一方で、キングは一体何処に飛んだ? というより、何処へ飛びたいと思ったか?」
「考えるだけ無駄やと思いますけど」
「そうかな? 仮にこの魔法陣が本当にこの看板通りの効力を持って居たとして、
 キングとあんたの望む目的地が一致するとは、俺には到底思えないが」

 眼鏡を押し上げて、舐める様な視線ではやてを見る。至って理知的な表情であった。
 金居の言わんとする事は大体分かった。向き直って、金居の考察をまとめる事にした。

181Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:48:40 ID:m.ZIbc6I0
 
「つまり、金居さんはこう言いたいんですね? 私が飛ぶ直前まで図書館にはヴィータが居た……
 で、私はこの触れ込み通りに図書館に飛んで、キングは自分が望んだ何処かへと飛んで行った」
「その可能性は否定しきれないと思うが」
「確かにそうですけど……なら逆に訊きますけど、金居さんはこの魔法陣をどうしたいと思いますか?」

 こんな考察を続ける事にさしたる意味は無い。はやては、今後の具体案が聞きたいのだ。
 何の考えも無しにこの魔法陣を使いたいだけと言うのであれば、所詮金居もキングと同じだ。
 はやてを唸らせるだけの回答を得られなかった場合は、金居の今後の扱いも考え直さなければならない。

「ならば率直に言おう。俺はこの魔法陣を罠だとは思わない。よって俺はこれを使いたいと思っている」
「もしこれが主催側の罠で、私達が分断されてしまったら?」
「俺は“こいつ”を外す為に、工場を目指している。高町なのはともそこで落ち合う約束をしてる」

 首に装着された忌々しい鉄製の輪っかを、人差し指の爪でつつきながら言った。
 成程、なのはと共に行動していると言ってはいたが、そういう事か。これは使えるかもしれない。

「確かに、あらかじめ目的地を決めておけば、混乱する事もない……」
「そうだ。それに、二手に分かれた方が仲間を集められるかも知れない」
「逆に殺されてしまうという可能性も捨て切られへんと思いますけど」
「その時は逃げてでも生き延びれば良い。それに、お互い戦力には困ってないだろう?」

 眼鏡を押し上げながら、にやりと口角を吊り上げた。
 恐らくこの男は、はやてが既に本来の力を取り戻している事に気付いている。
 その上、お互いにとってもあまり長期間行動を共にしない方がいいという事を心得ている。
 この金居という男、恐らくは対主催に紛れて主催打倒、もしくは乗っ取りを狙う人種……はやてと同じタイプだ。
 だけど、だとしたらある意味でこんなに信用出来る相手は居ない。
 何せ、目的は自分と同じなのだ。手を組めば……もとい使い方によっては、これ以上心強い味方は居ない。

「……わかりました。金居さんがそこまで言うなら、私も信じてみようと思います」
「賢明な判断だな。それに、どうやらお互いに思う所は同じらしい」
「そうですね。ほな、分かり易く工場に飛んでみます?」
「ああ、それがいい」

 この殺し合いの場で、時間を無駄にする事は避けたい。故に、話が決まれば即行動。
 人一人が入れるくらいの亀裂から、二人は順に地下へと侵入した。
 転移魔法陣の上に乗って、はやては考える。
 工場に飛びたいとは言ったが、本当に飛べるとは思わない。
 はやてが今、何よりも欲しているのは“駒”だ。よって、必然的に駒が居る場所へと飛ぶ事になるだろう。
 だけど、駒と言っても有力なものはほとんどが死んでいる筈。残っている参加者で、有力なのは誰だ?
 高町なのは。スバル・ナカジマ。ユーノ・スクライア。戦力として考えられるのは、そんなところだろうか。
 純粋な戦力として考えるならば、一番に高町なのは、次いでスバル・ナカジマだが……。
 同時に、自分を貶めたクアットロのような策士が居る場所は避けたいと思う。
 会ってこの手で殺せればいいのだが、それは別に心から会いたいと願っている訳ではないからだ。

182Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:49:20 ID:m.ZIbc6I0
 
 さて、策士と言えばこの男もまた然りだ。
 この金居と言う男、間違いなくクアットロに近い性質を秘めている。
 当然、心の底からこの男を信頼することなどあり得ないのだが、純粋に利用し合う仲間としてなら心強い。
 その為にも、先程抱いた疑問……金居が持って居た銃は、何処から手に入れたのか。それを質問してみる事にした。

「そういえば金居さん、さっき持ってた銃……あんなん持ってはりました?」
「ああ、銃なら拾った」
「拾った?」
「誰の持ち物かは知らないが、こんな状況だ。武器の一つや二つ転がっていても可笑しくないだろう」
「……それもそうですね」

 言われて納得した。……いや、心底から納得はしていないが。
 今の持ち主である金居が拾ったと言うからには、それまでだろう。
 変に追及して怪しまれるのも得策ではないし、今はこのままでいい。
 当然、クアットロの轍を踏まない為にも、警戒を緩める気は無いが。

「さて、準備は出来ました。いいですか?」
「ああ、構わない」

 ほとんどの魔力を消費してしまった以上、残った魔力はほんの僅か。
 この短期間で少しばかり回復した魔力を、魔法陣へと注ぎ込む。
 キングと一緒に居た時と、殆ど同じ光景だ。
 淡い魔力光が、次第に強く輝き出して――刹那の内に、二人の姿は掻き消えた。





 金居が目を開ければ、そこは既に瓦礫だらけの市街地では無くなっていた。
 周囲には鬱葱とした森林が生い茂る、都会と自然の間と表現するのが相応しい場所。
 舗装されたアスファルトの道路と、その周囲の雑木林。木々の匂いは心地が良く、金居の種としての本能を刺激する。
 ここが殺し合いの場でなければ、クワガタムシの一匹くらい居ても可笑しくはないな、と思う。
 ただ一つ、異様な存在感を放って居るのが、正面に見えるホテルらしき巨大な建物。
 問題は、ここが一体何処なのかという事だが……

「どうやら、罠やなかったみたいですね」
「そうだな。まさか二人揃って飛んで来れるとは。意外だよ」

 傍らに居た低身長の女、八神はやてに嘲笑と共に返した。
 二人は確か、工場へ飛ぼうという話で魔法陣に乗った筈だ。
 それなのに、飛んで来た場所は工場などでは決してない。
 そもそも、表向きには工場に飛びたいと言っていたものの、金居にはそれよりも渇望する相手が居る。
 種の存続を掛けて、何としてでも仕留めなければならない相手が居る。
 この場で工場以外に望む場所とあらば、奴が居る場所くらいしか考えられないが……。

「ここは、何処だと思う?」
「ホテル・アグスタ……私も知ってる施設やけど、何でこないな場所に――」

 どごぉぉぉん!!!
 はやてが言い終えるよりも先に、轟音が二人の耳朶を叩いた。
 反射的にびくんと震え、二人は轟音の方向へと視線を向ける。
 その先は、ホテル・アグスタの正面玄関。そのロビー内で、轟音の主が暴れていた。
 硝子越しに、一瞬見えただけでも、この場には三人以上の人間がいるらしい。
 その三人が三人共、三つ巴状態で争っていたのだ。

183Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:50:04 ID:m.ZIbc6I0
 
「緑の仮面ライダーと、黒の仮面ライダー……それに、スバル!?」
「なるほどな。ここにお前の仲間がいる……そういう事か」
「そうです、スバルは頼れる私の部下で、味方に出来れば大きな戦力になる事は間違いない。
 ……けど、この乱戦の中に入って行くのは……ええい、情報が少なすぎる!」
「いや……そうでもないさ」

 はやては状況を判断しようと考えているらしいが、最早金居にその必要は無い。
 目の前に居るのは、はやてにとっての頼れる仲間と、己が宿敵。それが全ての答えだ。
 金居の中で全ての謎が氷解した。あの魔法陣は、罠などでは無かったのだ。
 なれば、誰が敵で、誰が味方かを視界した金居に、悩む必要が無いのは必然。

「ようやく分かったよ。俺達がここへ飛ばされた理由が」
「……どういうことです?」
「俺には、どうしても決着をつけなきゃならない宿敵がいるんでね」

 薄ら笑みを浮かべて、金居が言った。
 眼鏡の奥の鋭い眼光が捉えたのは、見まごう事無き宿敵・ジョーカー。
 伝説の鎧で身を隠して、戦いに臨む偽りの仮面ライダー。
 奴は敵だ。それも、世界に生きる生命全ての、だ。
 地球に巣くう悪質なウイルス、それがジョーカー。
 この戦いで何度も巡り合い、決着を付けられなかった相手がここに居る。
 カテゴリーキングとしての闘争本能に、火が点いて行くのが自分でも分かるようだった。

「いいか八神。スバルが味方で、あの黒のライダーが敵だ……人類全てのな!」

 嘘は言っていない。ジョーカーが生きている限り、人類も滅亡の危機と隣り合わせなのだから。
 といっても、人類にとってはジョーカーに代わって金居が最後に生き残った所で変わらないのだが。
 どうやらはやては、金居の只ならぬ雰囲気にどうしたものかと考えているらしい。
 そうこうしている内に、気付けば二人を照らしていた月明かりが、届かなくなっていた。

「これは……雨雲? なんでこないな所に……」

 ごろごろと音を立てて、空を覆う暗雲が時たまぴかっ!と光輝く。
 ホテルの屋上に設けられた避雷針が、何度も何度も空から降り注ぐ雷を吸い込むが、それでも足りない。
 信じられない量の雷が、周囲で鳴り響いていた。

「まずい……“アイツ”が来よった」
「アイツ……だと?」

 立て続けに起こる異常事態に、金居も警戒を強めて聞き返した。
 されど、それに答えるよりも先に、二人の視界に飛び込んできたのは一人の男だ。
 男の周囲だけ、他とは比べ物にならないほどの雷が奔っていた。
 空から、男から、空気中から。もはや自然に存在する雷の常識など通用しない。
 男がそのものそのまま発電機だとでも言う様に、縦横無尽に雷を奔らせているのだ。
 青白い光に照らし出されたその姿は、まさしく昔ながらの雷神というに相応しい。
 背中に背負った太鼓と、周囲で轟音を上げる雷とが、金居にそんな印象を抱かせた。

「なんだ……アイツは」

 呆然と立ち尽くす金居が、言葉を発した。
 一時的にではあれ、ジョーカーに対する闘争本能が掻き消える程の存在感。
 それは金居が……というよりも、生物が種として抱く、生理的な本能。
 雷に抗おうとする昆虫など、世界に居る訳がない。雷に触れれば、昆虫などそれで終わりだからだ。
 金居の本能全てが、奴は危険だと警鐘を鳴らしている。
 あのアーカードを初めて見た時と同等か……否、恐らくこいつは、それ以上。
 アーカードはまだ、理性を持ち合わせていたが、こいつにそれは感じられない。
 周囲の全てを焼き焦がしてしまうような怒りが、こっちにまで伝わってくる。
 現れた雷神に、二人は――。

184Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:51:32 ID:m.ZIbc6I0
 

【1日目 夜中】
【現在地:F-9 ホテル・アグスタ前】

【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】疲労(中)、魔力消費(大)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(小)、複雑な感情、スマートブレイン社への興味
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金、
【道具】支給品一式×3、コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、
    トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s 〜おかえり〜、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、
    デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、虚空ノ双牙@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
    首輪(セフィロス)、デイパック(ヴィータ、セフィロス)
【思考】
 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。
 1.神・エネル……!!
 2.スバルは味方にしたいが……この状況をどう切り抜ける?
 3.手に入れた駒は切り捨てるまでは二度と手放さない。
 4.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。
 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。
 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが……
 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。
 8.金居を警戒しつつ、一応彼について行く。
 9.ヴィータの遺言に従い、ヴィヴィオを保護する?
 10.金居の事は警戒しておく。怪しい動きさえ見せなければ味方として利用したい。
【備考】
※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。
※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。
※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。
※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。
※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。
※エネルは海楼石を恐れていると思っています。
※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。
※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。
※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。
【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。
【思考】
 基本:ゼストに恥じない行動を取る
 1.畜生……
 2.はやて(StS)らと共に殺し合いを打開する
 3.金居を警戒
【備考】
※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。
※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。

185Round ZERO 〜GOD FURIOUS ◆gFOqjEuBs6:2010/06/11(金) 18:52:02 ID:m.ZIbc6I0
 

【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、
    デザートイーグル@オリジナル(5/7)、首輪(アグモン、アーカード)、
    アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)
    【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
    【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1〜3))
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.なんだあの化け物は……!
 2.そろそろジョーカーとの決着をつけたい。
 3.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 4.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
 5.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。
 6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。




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