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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
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「くっ!」
逸る気持ちを抑えながら。
しかし目に見えた狼狽と共に。
リニスは制御コンピューターを操作し、全監視カメラの映像を展開する。
ゲームのフィールドなど後回しだ。外界に構っている暇などないのだ。
すぐさま庭園内の映像が、ばあっとモニターを埋め尽くす。
「何故だ……何故気付けなかったッ!?」
右を見ては、左を見て。
上を見ては、下を見て。
忙しなく視線を泳がせながら、苛立ちも露わな声を上げる。
そうだ。
何故こんな単純な理屈に気付かなかった。
気付こうと思えば、気付けるはずだったのだ。
そもそも監視というものは、味方を対象にした概念ではない。外敵が領地に侵入するのを防ぐため、というのが大前提だ。
それこそ普通に考えれば、味方よりも敵の方に目を向けて当然なはずだった。
このアルハザードは誰も特定できない、などという言い訳は、今となっては通用しない。
現に混沌の神を名乗るカオスなる者が、この殺し合いに一度介入しているのだから。
だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
過去を悔やむ暇があったら、それを現在の行動に回すべきだ。
いかにゲームに反対しているとはいえ、プレシアを傷つけるつもりはリニスには毛頭ない。
故にこうして、プレシアを害するであろう者を、血眼になって探すのも当然の帰結。
敵はまだこの施設内にいるはずだ。ならば、何としても見つけ出さなければ。
いや、その前に警報か。庭園の他の人間達にも、警報ベルでこの非常事態を――
「……けい、ほう――?」
はっ、として。
警報装置に伸ばした手を、止める。
焦りも悔やみも苛立ちも、すぅっと遠のいていくのが分かった。
狼狽に開かれていた瞳が、それとは異なる感情によって、再び丸くなっていく。
茫然自失とした表情を浮かべながら、やがてコンソールからも手を離した。
そう、それだ。
外敵の可能性を排除したのは、それが原因だったのだ。
そもそもあのガジェットドローンは、プレシアの手によって放たれた可能性が高い。
そしてもし仮にプレシアが敵の存在を認知し、その対策としてガジェットを配備したというのなら、
この場の全員に注意を促すためにも、警報ベルを鳴らして然るべきはずなのだ。
しかし、この現状はどうだ。
今この時の庭園の中では、物音1つとして鳴っておらず、非常灯の光っている形跡もない。
故にリニスはほとんど無意識に、敵襲の可能性を否定して、味方を疑いにかかったのだ。
だが、これが本当に、敵に対する警戒態勢だとしたら。
敵襲を理解していながら、警報を鳴らさなかったとしたら。
「私は……プレシアに見捨てられたの……?」
仮にこの非常事態を、“全員”に通達する気がなかったとするなら。
思い当たる節はいくつかあった。
側近であるはずの自分を差し置いてまで、余所者に放送という大役を任せたこと。
本来なら自分が管理するであろうボーナス支給品システムに、アクセス権限を設けたこと。
転移魔法陣の移動を、こちらに相談することなく強行したこと。
そして、その魔法陣のデータの閲覧が不可能だったこと。
のろまな手つきでコンソールを弄れば、他にも様々な動作が、アクセス権限によって制限されていた。
それこそ、これまでなら問題なく実行できたような、首輪の制御システムへのアクセスさえも、だ。
「私にできることは……もう、何もない……?」
無力感が、声に滲んだ。
虚脱感が、顔に浮かんだ。
これまで有していたアクセス権限の、その大半が凍結された。
それが意味することは、プレシアが自分を必要としなくなったということ。
お前はもう当てにしていないから、非常事態を伝えるつもりもない、と、暗に示しているということだ。
そしてそれは、自分が殺し合いのフィールドに働きかけることが、事実上全くの不可能となったということを意味している。
そのくせモニターの監視機能は、未だ使用可能ときている。
これはなんという皮肉だ。
なんと陰惨で痛烈な三行半だ。
「指をくわえて見ていろと……そう言いたいのですか、プレシア……?」
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