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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル13
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どん、と響いた衝撃音が、始の鼓膜へと突き刺さる。
ちら、と視線のみを向ければ、馬鹿でかい装甲車のタイヤが空回りしている。
おおよその目測だが、速度は時速80キロほどであっただろうか。
人の姿では、直撃を食らっていたなら一発でアウトだっただろうし、あれが堅牢な装甲車でなければ、乗り手も死んでいたかもしれない。
そう。
相川始は、強襲する装甲車の突撃を、食らわなかった。
咄嗟の判断だった。
一瞬回避が遅れていたなら、まず間違いなく食らっていたと断言できた。
そのシビアなタイミングを掴むことができたのは、ひとえに前面に灯っていたもの――ヘッドライトのおかげと言えるだろう。
踏むものもない舗装された道路を走っていた車だ。
音だけでなく光すらも無く走っていたなら、最期まで気付けなかったのは間違いない。
「!」
ぶぉん、とエンジンが唸りを上げた。
標的を外し、勢い余って森の木々にぶち当たった装甲車が、轟音と共にバックする。
その勢いで車体が反転し、勢い余って回りすぎたところを、戻す。
もたついた動作は、運転免許を持たない素人のものか。
マニュアル通りの運転をしているのなら、相手に居場所を伝えてしまうライトをつけっぱなしにしていたのも頷けた。
「変身!」
一度目はまぐれであっても、二度目はない。
人間と自動車とではスピード差がありすぎる。このままの姿では、次の突撃は回避できまい。
故にほぼ反射的な動作で、カリスラウザーへとカードを通した。
『CHANGE』
低い合成音声と共に、相川始の姿が一変。
ヒューマンアンデッドの姿から、マンティスアンデッドを彷彿とさせる鎧姿へと変わる。
漆黒のオーラを振り撒き現れたのは、黒金と緋々色金の戦士――ハートの仮面ライダー・カリス。
瞬間、ぶおぉ、と吼えるエンジン。
巨大な鉄の塊が、戦闘態勢へと移行。
雄叫びと共に加速する体躯が、偽りの仮面の戦士へと殺到する。
「っ……!」
これを飛び退り、回避する。
仮面ライダーカリスの最大走力は、およそ時速75キロ。
純粋な速さ比べならともかく、瞬発力では十二分に対処可能。
相手もコツを掴んできたのだろう。避けられたのを理解した瞬間にブレーキをかけ、木との衝突だけは防いだ。
とはいえ、乗り物を運転する上で、急ブレーキが悪手であることは言うまでもない。
その理解も曖昧なうちは、素人と言って差し支えない。
(それなら、逃げ切れる)
くるりと踵を返し、疾走。
アスファルトの道路から飛び出し、手頃な獣道へと突っ込む。
実のところ、始には交戦する気などなかった。
理由は第三回放送の直後、すぐに浅倉威と戦わなかった時のそれと同様。
ジョーカーの欲求と人の情――2つの感情に心を掻き乱されている現状では、とてもまともな状況判断などできない。
故に無理に戦闘して下手を打つよりも、この場は最初から戦わないことを選んだのだ。
刹那、背後から迫りくる鋼の咆哮。
金属の光を放つ猛獣が、ばきばきと枝葉をへし折って肉迫する。
道が開けているうちは駄目だ。装甲車のパワーとタフネスなら、それくらいの障害はこじ開けられる。
ばっ、と。
横跳びで獣道を外れ、茂みの中へと飛び込んだ。
そのまま木々の密集したところを狙い、幹の合間を縫うように走る。
これなら装甲車でも追うことはできない。相手が並の人間なら、このままやり過ごすこともできる。
「ちょこまか逃げるんじゃないわよッ!」
相手が並の人間なら、の話だが。
少女の金切り声が響いた。
そのヒステリックな叫びには、覚えがあった。
つかさなる少女から「お姉ちゃん」と呼ばれていた双子の姉――名前こそ知らないが、過去に2度顔を合わせた娘だ。
よもやこんなにも短いスパンで、3回も顔を合わせることになるとは思わなかった。
『HENSHIN――CHANGE KICK HOPPER』
次いで聞こえてきた機械音声は、自分達仮面ライダーのそれを想起させるもの。
浅倉が変身した紫のライダーのような、自分の知らないライダーへの変身手段を手に入れたのだろう。
これで機動力は互角となった。
だが、それでもまだ始の方が有利だ。
走るスピードが同じなら、互いの距離は詰められない。その隙に、相手に見つからないよう身を隠してしまえばいい。
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