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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第115話☆

1名無しさん@魔法少女:2012/12/13(木) 00:09:44 ID:6hLPLV4A
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。


『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

前スレ ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1341065580/

373夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:21:32 ID:x2.F.qT6
「あ、ユーノ君、口の周りにスパゲッティのソースがついてるよ」
リインフォースに見せ付ける様に、すずかが手に持ったハンカチでユーノの口の周りを拭い、夜食で食べたスパゲッティのソースを拭き取った。
「もう・・・ユーノ君てば、だらしないんだから。やっぱりユーノ君には身の周りの世話をする人が必要だよね、うんうん」
わざとらしく頷きながら、すずかが意味ありげな視線をリインフォースに向ける。
その視線を受け、リインフォースの切れ長の紅瞳から光が消える。
彼女から禍々しい瘴気が吹き出し、その手の中の歯車が真っ二つになった。
リインフォースの横に座っているシャマルとしては、もう生きた心地がしない。
魔界の入口に踏み込みかけている同胞を何とかして貰おうと、シャマルは縋る様な瞳でユーノを見た。医務室でお世話になっている湖の騎士の視線に晒されるユーノだが、リインフォースの機嫌が悪い理由について考える。

―――きっとデバイスの組み立てを手伝っているのに、僕がデレデレとしていたから怒ってるんだ。謝らないと駄目だよね。


「ごめん、リインフォース」
「え、ナ、何を言っている、ユーノ?」
「デバイスの組み立てを手伝ってくれてたのに、だらしない態度取っちゃってごめん。きちんとするから許してください」
「あ、そ、その・・・そういう訳ではなくて・・・」
何処かピントのずれた解釈をしてデバイスの製作に没頭するユーノに対し、先程までの不機嫌そうな様子とは一転して、リインフォースはオロオロと視線を彷徨わせた。
そして、そんな彼らを眺めていた、シャマルとすずかは顔を見合わせ、重苦しい溜息をつき、蛍光灯が備え付けてある天井を見上げた。






「だから地球は狙われているのよ、蟹頭の異星人に!!」
「アリサ、お願いだから正気に戻って」
中華料理店『黒龍飯店』の席で、昼食の蟹炒飯を頬張りながら意味不明の事を言う、親友の金髪令嬢の奇行に、フェイトは麻婆豆腐を食す手を休め、頭を抱えた。

街の外れにある「悪魔の階」と呼ばれる岩山を見に行っていたらしく、アリサはきっとそこで幻覚を見たんだろう。この街は不穏な噂は確かに多いが、フェイトの印象ではのどかな田舎町。怪異が蠢いているなんて都市伝説に決まっている。
「アリサちゃん、異星人なんている訳無いよ。きっと疲れてるんだよ。この杏仁豆腐が凄く美味しいよ、アリサちゃんもどう?」
「もう、いいわ・・・」
魔法を使えるくせに、異星人の存在を信じないなのはに対し、アリサは溜息をつくと様々な国籍、人種の人々で混雑する店の喧騒をBGMに残りの蟹炒飯を掻きこんだ。
そんなアリサの横では、なのはとフェイトが百合百合しい空気を漂わせ、いちゃついている。アリサとしては、正直、果てしなくウザイのだが、友達のよしみで黙っていた。

それは彼女達にとって、なんてことは無い、日常。


―――例え、その薄皮一枚隔てた裏側で怪異が蠢いていたとしても。

374黒天:2013/02/06(水) 16:23:24 ID:x2.F.qT6
今日の投下、ここで終了です。
敵側にとらは組から出張してもらいました。
あと、アリサさんが見た物は一体何でしょうか。

375空の狐:2013/02/06(水) 20:16:50 ID:x5HcZJcY
黒天さんお疲れ様です。
変わらずのクトゥルフ節、ますます心配になります。
果たしてアリサはどうなってしまうんでしょうか……安心できねえ。

続いて僕も投稿させていただきます。
タイトル『ユーノくんのパンツ』
微エロ、変態ばかりです。

376『ユーノくんのパンツ』:2013/02/06(水) 20:17:50 ID:x5HcZJcY
 ユーノは悩んでいた。
「……ない」
 目の前に広がった自宅に存在するすべての衣服を睨む。
 現在、自分の服の中から、パンツ二枚、シャツが二枚なくなっていた。
 最初は些細なことだった。休みの日にユーノは纏めて洗濯をするのだが、洗濯をする時にふと気づいたのだ。パンツの数が一枚足りない。
 気づいた捜したものの、見つからなかったからユーノは失くしてしまったのだろうと思った。
 だが、次の洗濯の時に、その失くしたパンツが洗濯機の隙間から出てきた。ああ、なんだこんなところにあったから気づかなかったのかとユーノは見つかったことに安心して洗濯しようとしたら、今度はシャツが足らなかった。そして、後日たまたま他の洗濯ものに紛れていたので見つかった。
 これだけなら、単に普段不精しているからかなとユーノは考えたのだが……
「でも、それが定期的に起こるんだよなあ」
 ユーノの疑念はそれが定期的に起こることだった。
 短くて一週間、長くて一ヶ月の頻度でパンツかシャツが一枚か二枚なくなっていた。時に両方ともなくなることも。一度や二度なら偶然で済ますが、流石にこんなに何度も起きれば偶然じゃすまされない。
 いったいなぜ? それに気づいてからユーノは定期的に服のチェックをするようになっていた。
 なんだか気持ち悪い。なくなったり出てきたり、なんかの事件にでも巻き込まれたのか、それとも未知のロストロギアかとも思ったが、服がなくなる事件なんてあるわけないし。ロストロギアだとして、手元にそんなものはないし、今までに研究のため預かったものにもそんな妙な効果があるものなんてなかった。
「いったいなんなんだよ……」
 このおかしな事態にユーノはそう呟くしかなかった。

377『ユーノくんのパンツ』:2013/02/06(水) 20:18:36 ID:x5HcZJcY
「ていうことがあったんだよね」
「ふ、ふーん、そうなんだ」
「お、おかしなこともあるもんだね」
「大変だねユーノくん」
「気にしすぎじゃないのユーノ?」
 久しぶりに会う幼馴染たち――――なのは、フェイト、アリサ、すずかに話すと、そんな反応を返された。
 それもそうだろう。定期的に服がなくなったり現れたりなんて話にどう反応するべきなのか。振る話題を間違えたかなあとちょっとだけユーノは後悔する。
 なお、はやては残念ながら地上部隊に用事があっていない。顔がにやけていたからゲンヤと会うつもりなのだろう。
 それからお茶を一口飲んでから、なのはとフェイトはなんでか額にびっしりと汗が張り付いているのに気づいた。
「あれ? なのはちゃんとフェイトちゃん、なんでそんなに汗をかいてるの? もしかして心当たりがあるのかな?」
 すずかの問いかけにびくんと二人が反応する。
「ぜ、全然知らないよ。大人になってそんな犯罪行為をするなんて。ねえフェイトちゃん?」
「う、うん、仕事が忙しくてそんなことをする暇なんてあるわけないもんねなのは」
「……まあ、もしかしたら変質者の仕業かもしれないし、なにか対策考えなさいよ」
 と、アリサはユーノに警告する。
「うん、確かになんか対策考えないと」
 どこか挙動不審になったなのはたちを見ながら、ユーノとアリサとすずかは頷いた。

378『ユーノくんのパンツ』:2013/02/06(水) 20:19:06 ID:x5HcZJcY
 お茶会が終わってから、家に帰ってきたなのははそそくさと自室に駆け込んだ。フェイトも同じように自室に飛び込んだ。
 そして、鍵をかけてからベッドに突っ伏する。
「うー、ユーノくんが気づいちゃった。これからは気を付けないと」
 そういいながらなのははベッドの下へ手を突っ込む。
 そして、出てきたのは男物の下着、ぶっちゃけユーノのパンツだった。それになのはは顔を埋める。
「はあはあ、ユーノくんの臭いいいよお、これがない生活なんて考えられないの!」
 深呼吸して、たっぷりとユーノの残滓を肺一杯に満たす。
 一番親しい男の子。子供の頃はただ、横にいてくれて、その匂いを吸うだけで満足していた。
 だけど、大人になって、お互い仕事で隣にいられないようになってから、なのはは段々、あの匂いが恋しくなってしまった。
 できるなら、またユーノが隣にいてもらいたい。でも、そんなことできるわけがない。自分は教導隊のエースオブエース、ユーノは無限書庫司書長、共に戦場に立つことはないのだ。
 だから、なのははユーノのパンツの匂いを嗅ぐことで、ユーノが隣にいない寂しさを紛らわすようになってしまったのだった。
「うう、でももうだいぶ臭いがなくなっちゃったの。そろそろ新しいのに変えなくちゃ」
≪ですが、ユーノもすでに警戒してます。危険です≫
 レイジングハートが警告する。
 確かに、ユーノは気づいてしまったし、おそらく今日の自分の反応に疑いをかけているだろう。あと、気になるのはフェイト。あの反応は不可解だったから、もしかしたらなんか隠しているのかもしれない。
 だけど、
「そのくらいの障害で私は止められないの。ほら、レイジングハート。ユーノくんのパンツだよ」
≪Sweet smell……≫
 レイジングハートをパンツに押し付ける。残念ながらレイジングハートも変態だった。
「ああ、ここにユーノくんのフェレットさんがいたんだよね」
 べろべろとなのははパンツを舐める。仄かにしょっぱい味がした、気がした。
 そうしながらくちゅくちゅと自分を慰め始める。すでにユーノの匂いに興奮していたから、たっぷりと蜜を滴らせているそこをちょっと擦るだけで快感が走る。
「ああん、いいのユーノくんのパンツ、ユーノくんのパンツ!」
 ついには自分のショーツを破くような勢いで脱いでユーノのパンツに足を通し、上へ引き上げ、履いた。
「うふふ、私のあそこ、ユーノくんのフェレットさんと間接キスしているの」
 恍惚となのはは笑うとパンツの上から自慰し始めた。
 荒々しくスリットを擦って、溢れる蜜をパンツに吸わせる。
「あん、ユーノくんのパンツに私の恥ずかしいのが染み込んじゃってるの。これじゃあ洗っても私の臭いが着いちゃってユーノくんが気づいちゃうの」
 そうなれば終わりなのに、むしろそれがなのはを昂らせる。
「はあはあ、ユーノくん、ユーノくん、ユーノくん!!」
 そして、一番敏感な豆を潰し、潮を吹きながら絶頂した。
 荒く息を吐きながら、なのはは恍惚と余韻を味わった。

379『ユーノくんのパンツ』:2013/02/06(水) 20:19:43 ID:x5HcZJcY

「ま、またやっちゃったの……」
 目の前のどろどろのパンツになのはは乾いた笑みを浮かべるしかなかった。いつもいつも興奮のあまりこんな変態行為をしてしまう。
 そして、終わるたびに自己嫌悪するのだけれども、それでも止められなかった。
「と、とりあえず、洗ってからこっそりユーノくん家に片付けなくちゃ!」
 すぐになのはは行動する。
 こっそり部屋を出て、隣のヴィヴィオが出てこないか警戒する。が、部屋からは『明日はトーマと映画館♪』と上機嫌な声と衣擦れがするから、明日のデートのための準備をしてると判断して静かに廊下を横断した。
「抜き足、差し足、千鳥足」
 そして、洗面所に着いて、
『あっ』
 先客のフェイトと鉢合わせした。
 その手にはなんかの体液でどろどろになったシャツが握られている。くんくんと鼻を鳴らせば、仄かな甘い匂いの中に、嗅ぎ慣れたユーノの匂い。
『ま、まさか……』
 どうやら同時に気づいたらしい。目の前にあるのがユーノのものだと。
「犯罪なのフェイトちゃん!」
「犯罪だよなのは!」
 ほぼ同時に二人は互いを批難し、
『人のこと言えないでしょ?!』
 同時に突っ込む。
 そして、少しの間睨み合ってから、二人ははあっと息を吐く。
「とりあえず、さっさと洗っちゃうの」
「そうだね。明日二人で返しに行こうね」
 二人はどろどろになったパンツとシャツを洗濯機に放り込んだ。

 翌日、なのはとフェイトはユーノ宅に侵入し、シャツとパンツを返そうとしたのだが、バニングス社製の新型侵入者探知システムに引っ掛かり、あっさりとユーノに捕まってしまったのだった。
 そして、二人の魔の手からパンツとシャツは回収されたのだが、まだ一枚ずつ足りなかった。
「違うのー! 今回はパンツ一枚しか持ってってないのー!!」
「私だってシャツ一枚だけだよー!!」
 そう二人は主張するものの、一度こんなことした以上、信じてもらえるわけがなかったのだった。
 そして、その肝心の行方不明のパンツとシャツは……

380『ユーノくんのパンツ』:2013/02/06(水) 20:20:19 ID:x5HcZJcY
 エルトリア、シュテルの自室。
「ふーふー師匠のパンツすごくいい匂いがします」
 愛おしそうにユーノのパンツの匂いを嗅ぐ星光の殲滅者。先日、ミッドに行く機会があったのだが、その時にこっそりとユーノの自宅から持ち出したのだ。
「ああ、もっともっと師匠の匂いを間近で堪能したいです。うう、そのためにもエルトリアの復興を急がなければ!」
 微妙に歪んだ形でシュテルはエルトリア再生の意思をさらに強めたのだった。

 そして、もう一つ。地球、月村邸。
「ふふふ、なのはちゃんもフェイトちゃんも甘いね。確かに、新鮮なユーノくんの香りを嗅ぎたい気持ちはわかるけど、そんな頻度でとっかえひっかえしてたら気づいちゃうに決まってるじゃない」
 すーっとすずかは一年間吸い続けたせいか、匂いが弱くなってしまったシャツに顔を埋めて深呼吸したのだった。



おまけ
『明日はトーマとデート、何着ていこうかな?』
 スピーカーから、ヴィヴィオの上機嫌そうな声が廊下に向けて流れている。
 そして、ヴィヴィオ本人は、
「うう、ママたちのせいだよ。私まで変態さんになっちゃったのは」
 すーっとヴィヴィオは愛しい人の匂いが染みついたシャツの匂いを嗅ぐ。
 スピーカーは母たちに自分の変態的行為を気づかれないようにするためのフェイクだった。
「はあ、トーマの匂い、すごくいいよお。汗の匂いですっごく興奮しちゃうのぉ。いいなあリリィはリアクトすれば嗅ぎ放題だもんなあ」
 ちょっとだけ友達であるリリィにヴィヴィオは嫉妬したのだった。

「はあ、ダメなのに私お姉ちゃんなのにトーマの匂いにくらくらする……」
 ナカジマ家でスバルはトーマの洗い立てのシャツに鼻を押し付けながら匂いを嗅いでいた。

「くんくん、はあ、毛づくろいしてもらった場所からザフィーラの匂いがする、あたしザフィーラの匂いに包まれてるんだ」
 狼形態でアルフは自分から立ち上るザフィーラの匂いを嗅いだ。

「うへへー、ゲンヤさんの髪やー!」
 どうやって入手したのか、はやてはゲンヤの白髪を舌でレロレロしていたのだった。

381空の狐:2013/02/06(水) 20:21:15 ID:x5HcZJcY
以上です。
気づけばユーノの周りにアリサ以外まともな女の子がいないことに……

382黒天:2013/02/06(水) 20:24:08 ID:x2.F.qT6
変態しか居ない。
>空の狐さん
どうもっす。アリサは今回、酷い目にはあいません。
メインは夜刀浦のメンバーですので、一人か二人、ラスボス復活のため、陵辱される女性伽羅が居ますが。
(一人は確定、もう一人は誰にしよう)

383名無しさん@魔法少女:2013/02/06(水) 21:45:49 ID:xgFFXA1U
>>374
『戦場の戦乙女 超劇場版:壊』
『円盤王女ヴァルキリー 十二月の狂想曲』
『魔導機神マドカ・マギカ ホムホム復活編』
『装甲戦神ネクサス 金神群獣襲来』 

相変わらずのクトゥルフ臭と本編より気になる小ネタですなw
次回も期待しております。

384黒天:2013/02/07(木) 10:33:51 ID:G1jripyg
>相変わらずのクトゥルフ臭と本編より気になる小ネタですなw
小ネタは息抜きで入れてます。

>CPはユーノとGODのユーリ
アダルトバージョンのムチムチボディになったユーリがユーノにほれて無邪気に甘えてくる展開とか考えちゃったじゃないか。

385ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2013/02/07(木) 17:35:52 ID:Y/DjA8Vo
投下します
>>167-171の続き
死にネタ 閲覧注意






高ケツ圧

386何故ユーノ・スクライアは死んだのか:2013/02/07(木) 17:36:31 ID:Y/DjA8Vo
何故ユーノ・スクライアは死んだのか


 ユーノ・スクライアは高町なのはと結婚し、高町ユーノとなった。
 彼は美人の妻と可愛くてパツキンロリで可愛いパツキンロリのヴィヴィオを義娘として幸せに暮らしていた。
 ただ一つ言える事、それは彼が重度の果てしなくもう治療の余地はないほどに完璧なロリコンであり、夜の営みの時は必ずなのはを九歳時に変身させて行うという事だった。

「あぁ〜! すごい! ユーノくんのフェレットさん凄いよぉ〜! もっと突き上げてぇ〜!!」

「うおおお!!! なのは! ロリマンなのはああああ!!」

 今日もまたベッドの上でユーノのフェレット(暗喩表現)はなのはのロリマン(直喩表現)の中で激しく暴れまわっていた。
 そんな時であった、突如としてドアが爆砕し何者かが室内に侵入してきたのだ。

「きゃぁ! だ、誰……って、フェイトちゃん!?」

 ユーノに馬乗りになりながら器用に振り返ったなのはは驚いた。
 そこに居たのはフェイト・T・ハラオウン、十年来の親友であった。
 バリアジャケット姿のフェイトは怒りの顔でずっぷしと結合して精液と愛液をぐちょどろにしているなのはとユーノを睨んだ。

「なのは! 私を捨ててそんな粗チンフェレットと結婚するなんて! この裏切り者!!」

 と彼女は叫んだ。
 フェイトはとんでもないガチレズでなのはに十年間片思いしていた。
 しかしなのははチンポのない女に興味はなく、世間体が良くて女顔で美形で苛めたり調教したり騎乗位しがいのあるユーノを選んだ。
 
「前にも言ったでしょフェイトちゃん、私は粗チンでもチンチンのある男の人がいいの!」

「ふぅん、それはこれを見ても言えるのかな」

「えぇえ!? そ、それは……!」

 なのはは驚いた。
 誇らしげに突き出したフェイトの腰から先にはなんとチンポがあった。
 それもただのチンポではない、全長30センチはくだらない代物だ。
 バナナのように反り返り、カリも高い名刀である。
 早くもなのはは涎をたらしてそのイチモツに目を輝かせた。

「どう? なのは! なのはのために手術してこさえたチンポだよ!!!」

「なんて女だ……わざわざチンポをつけるなんて……でも駄目だよフェイト! なのははもう僕のロリ嫁なんだ!」

「うるさいよ粗チンフェレット! なのははこう見えて巨根好きで……ひゃぉおおおおおおお!!!」

 フェイトが一瞬にしてだらしない雌顔で喘いだ。
 一体いつ移動したのか、ユーノの上からのいたなのはがその小さな口でフェイトのチンチンを咥えていた。
 ねっとりと舌を絡ませてしゃぶりながら我慢汁を啜り、むちむちの肉尻を掴んでホールド。
 そのまま脚を絡めて押し倒すや跨った。

「んほおおおおおおおおお!!!!!! しゅごいよフェイトちゃんのメガチンポぉおおおお!! 子宮のお口えぐってりゅのっほおおおおおおおおおおお!!!」

 速攻で白目を剥いたアヘ顔でチンポアクメを決めるなのは。
 なりこそロリだが彼女はどこへ出しても恥ずかしくない見事な淫乱痴女であった。
 ユーノの粗チンなどよりでかいふたチンポを選んだのである。
 これではユーノの立つ瀬がない。
 目の前でぬぅぅっちょりと腰をグラインドさせるレズセックスを前に彼は奮い立つ。
 しかし彼のチンコは貧弱が過ぎた。
 なにせ勃起しても小指くらいしかないのだ。
 あまりにも戦力的に乏しい。
 そこで彼は考えた。

「よし! これでいくぞなのは!!!!!」

「ひぎゅあああああああああああ!!!!!!! ふさふさのぶっといのがはいったのにょのほおおおおおお!!!!!!」

 なのはの尻から尻尾が生えた。
 いや、違う、それはユーノの尻尾だ。
 彼はなんとフェレットに変身してその全身をなのはの尻にぶちこんだのだ。
 強引なフェレットファックになのははマン汁を噴出して悦んだ。
 
「んにょのほおおおお!!! フェレットしゃんぶっといのっほおおおおおおお!!!!!! アナルマンコいっぱいりゃりょほおおおおおおおおおおお!!!!!」

 なのはは悦びアヘりながら腰を振り、フェイトのチンポはロリマンコをぶちぬき、ユーノのフェレットボディはケツマンコをぶちぬく。
 その時起こった悲劇は事故としか言いようがなかった。
 デカブツ二本を咥え込んだ穴はただでさえ狭かった上に、なのはは凄まじく深くイってしまったのだ。
 フェイトのデカチンとなのはのロリ穴は凄まじくきつかった。
 そしてなのははイっちゃった。
 きゅっと穴が締まった。
 それが悲劇の原因であったのだ。

 高町ユーノ、享年十九歳、死因:高ケツ圧。



終幕

387ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ:2013/02/07(木) 17:38:34 ID:Y/DjA8Vo
きっと自分以外の人はまじめにユーなのとか書くよね、だからイカレチンポな話書いても良いよね。

って按配でバカ話を書く男、それがシガー。

はい、その・・・サーセンwww

388黒天:2013/02/08(金) 09:54:06 ID:nRUsxkEI
これはひどい。俺のコーヒー牛乳返してよ。
あと死に方としては凄い恥ずかしいですね。
では、おいどんも投稿するでごわす。

389夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:55:59 ID:nRUsxkEI
『鷹樹庵』は、一階にある大浴場があるが、その他に広大な露天風呂がある。
温かい湯に浸かって満天の星空を眺めるのは、最高の贅沢だろう。
「宝石箱を散りばめた様だな・・・」
頭にタオルをのせ、湯船の中に鎮座する巨大な岩に背を預け、ザフィーラは心地良さそうな溜息をついた。
古代ベルカの戦乱時代、血みどろの戦場を駆け抜けていた頃、ここまで余裕を持って星空を眺めた事があっただろうか。時代が移り変わろうと、世界が変わろうと、きっと星々の輝きは変わらないのだろう。

ふと女性用の脱衣場から、誰かが歩いて来る気配を感じる。

「・・・ここの温泉の効能は疲労回復に効果があるそうだ」
「あら、それはいい事を聞いたわ」
タオル一枚のみを纏った姿で、リーゼアリアは微笑んだ。
長い茶色の髪をアップにし、薄闇に浮かび上がる姿は実に妖艶だった。
「失礼するわね」
軽く身体を洗い、リーゼアリアは湯船に身体を沈めた。
位置的には、ザフィーラと大きな岩を挟んで反対側にあたる。
「湯加減はどうだ?」
「悪くないわね」
ザフィーラと同じく、頭にタオルをのせ、リーゼアリアは簡潔な感想を述べた。
心地よさを示すかの様に、彼女の猫耳が小刻みに揺れた。
それに対して特に答えず、ザフィーラは目を瞑り、息をついた。
「そういえば・・・ロッテがリインフォースに食って掛かったみたいね。それに夕食の席でも、あの娘、貴方達を睨んで・・・御免なさい」
「気にする事は無い。お前達の方からすれば、当然の反応だ」
「そう言ってくれると、幾らかは救われるわ。私も貴方達に対する蟠りを捨てきれる訳でも無いけど・・・恨んでも憎んでもクライド君は帰ってこないわ」

だから、もうこの話題は終わりにする。
そんな意味を言外に込め、リーゼアリアは言葉を切った。
―――訪れる沈黙。



「それからリインフォース・・・随分変わったわね」
「ああ、アイツは変わった」
その沈黙を破ってリーゼアリアは口を開き、ザフィーラもその内容に同意する。
『闇の書の意思』は八神はやてに出会い、新たな名を貰い、呪いから解放された。

「・・・・“闇の書の意思”を呪われた宿命から解放し、“祝福の風”に生まれかわらせたのが、はやてならーーー」
「“祝福の風”に新たな生命と未来への希望を与えたのがスクライアか・・・」

今のリインフォースは実に感情豊かになった。
湖の騎士が作る産業廃棄物に呆れ返ったりーー
様々な本を読み漁り、長々と感想を述べて烈火の将をうんざりとさせたりーー
鉄鎚の騎士の秘蔵のアイスを勝手に食べてしまってオロオロしたりーーー
夜天の主の胸揉みの餌食になって身悶えたりーー


そして無限書庫に通っては、そこの長の少年のオーバーワーク振りを心配したりーー

「ところで・・・スクライアの情報処理能力は異常だな。我々の中で情報処理に長けているリインフォースとシャマルとて、ついていけないくらいだぞ」
以前、はやての足の治療についての情報探しも兼ねて無限書庫の業務を手伝った時、一度に検索できる本の数はザフィーラの場合、5冊が限界だった。
ちなみにシグナムとヴィータが3冊、シャマルが10冊、リインフォースが24冊。
それに対し、ユーノは50冊。リインフォースのほほ2倍。
おまけにそれだけの量の本を検索していても、情報の精度は落ちず、周りのサポートまでやってのける。

390夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:56:37 ID:nRUsxkEI
「私達だって似たような物よ。私が7冊、ロッテが4冊で限界だったんだから。そもそも検索魔法自体、スクライア一族発祥なのよ」
リーゼアリアの言葉にザフィーラは低く唸った。
確かにユーノの次に検索できる本の数が多かったのは、スクライア一族出身の司書で彼が確か40冊前後だった筈。
「身のこなしもかなりの物だったな。カートリッジを未使用だったとはいえ、ヴィータの一撃を防ぎ、その動きについていき、『闇の雷』にすら耐えて見せた」
「はっきり言ってユーノに決定的に足りないのは、攻撃力だけよ。支援の的確さと護りの堅さは今更言うまでもないし、あれで攻撃力も加われば、クロノでも返り討ちに出来るわよ」
「随分と高評価だな。確かにジュエルシードの一件でも、魔力不適合を起こしていなければ、事件の過程は変わっていただろう」
「攻撃力不足も応用でどうとでもなりそうだしね」

バインドで相手の首を絞めて窒息させる。
バリアを纏ったまま、相手に突進する。
結界の中に相手を閉じ込め、内部の気圧を変化させ、高山病に追い込む。
リーゼアリアが思いつく限りでも、これだけあるのだ。
他にも色々とやり方はだろう。ちなみに彼女の思考実験の中で、ユーノの“仮想敵”が某執務官だったのはご愛嬌だ。
というよりユーノは、ザフィーラとリーゼアリアが審判を務めた模擬戦で最後の方法を模擬戦で躊躇い無く実行に移し、某執務官を呼吸困難に追い込み、その後、バインドで縛り上げ、地面に叩きつけている。

「ふむ、あの戦いは心肺機能の差が勝負の決め手だったな。歴戦の執務官とて標高数千mの高所で戦った経験は無かっただろう」
「ユーノの場合、色々な場所にある遺跡に赴くから、空気が薄い場所でも平然としていられるんでしょう。それにしても、あの時のクロノの顔は見物だったわよね。顔面がもう蒼白を通り越して、土気色だったもの」
「私はそれ以上にあの後、容赦なく追い討ちをかけるスクライアが恐ろしかったが」
歴戦の猛者たるザフィーラとしても、あの時のユーノは恐ろしかった。
具体的には、呼吸困難で苦しむ某執務官ことクロノの鳩尾と脇腹に貫手。
何れも人体急所の1つであり、ここを攻撃されると息が止まる。
呼吸困難に拍車がかかったクロノの手から氷結の杖デュランダルを叩き落し、無手になった彼の右腕を集中攻撃して使用不能にさせる。
更に死角となった右脇腹に執拗に拳――ご丁寧に強固な障壁を纏わせーーを連続で叩き込み、体力をジワジワと奪う。
「・・・あれを卑怯とは言うまい。スクライアのとった戦術は実に理に適っていた。あれは寧ろ私としては賞賛したいくらいだな」

391夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:57:10 ID:nRUsxkEI
敵の動きを鈍らせ、武器を奪い取り、利き腕を使えなくさせ、体力を奪い取り、確実に追い込み、完全に‘敵’の息の根を止める。
戦場に生きたザフィーラとしては、それは当然の事であり、何も間違っていない。
ザフィーラが恐れたのは、ユーノが顔見知りに対して、それを実行したという事だ。
何の躊躇いも無く、無表情のままで。


「うーん、ユーノにとって、クロノは親しみを持つ相手だったかと言われると、私としては少し疑問だけどね。クロノ、ユーノの事を‘フェレットもどき’と馬鹿にしてたし」
「・・・場を和ませるジョークにしても、確かに出会って間もない相手に対して、使う言葉ではないな」
「ま、クロノも自分はエリートの執務官という事で驕りがあったという事かしら」
「それ以前に、スクライアにとってハラオウン執務官は敵という認識かもしれん」

主に無限書庫の業務中、大量の資料請求をしてくる敵として。
あの模擬戦の勃発した理由は資料請求の期限絡みだった筈。
結局、模擬戦自体はクロノの敗北で終わった。

疲弊の極致にあり、特攻してきたクロノの左鉤打ちをユーノは飛び上がってかわし、背後に回りこみ、首にバインドを何重にも絡め、そのまま締め落としたのだ。
クロノも砲撃魔法で応戦し、ユーノにそれなりの手傷を負わせてはいたが、実質的にユーノの圧勝といってよかった。




「何れにせよ、資料探しが得意なだけの少年ではないのよね。ま、それはさて置いて・・・リインフォースがあそこまで親身にユーノを心配するなんて意外だわ。魔導書という性質上、てっきり“八神はやて至上主義”を貫くとばかり」
「ふむ、アイツに限らず、我々は基本的に主はやてを優先する。だが、そればかりではない。我々だって気になる相手は出来るし、恋もする」
「・・・ふん、私以外にユーノの良さに気付く女が居るなんて」
不機嫌そうに口を尖らせ、リーゼアリアは指でお湯を弾き、身体をそらせた。
こんな事ならば、無限書庫で『闇の書』の情報を探している時、妨害の意味も込めて色仕掛けで迫って摘み食いしておけばよかった。
「何なら、今からスクライアに迫ってきてはどうだ?」
「遠慮しておくわ。正直、女としてリインフォースに勝てる気しないもの」
何処か寂しげに呟き、リーゼアリアは湯船から上がった。
瑞々しい肌の上を、水滴が滑り落ち、思わず息を飲む程の色香が立ち昇る。
「・・・それから、リインフォースに伝えておいて。ユーノを手に入れたいのなら、さっさと押し倒してベッドに引きずり込むのが手っ取り早いと、ね」
「伝えておこう、アイツが実行できるかはさて置き」
「あの娘、へタレなのね。あれだけのルックスとスタイルなのに」
リーゼアリアの裸身を見ない様に、目を瞑っているザフィーラに対し、リーゼアリアは心から愉快そうに笑い、女性用の脱衣場の方に歩いていった。

392夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:57:40 ID:nRUsxkEI
「随分とお楽しみだったみたいだね」
「いきなり何を言う」
リーゼアリアが露天風呂から上がった後、暫くして部屋に戻ってみると、同室に宿泊中の狼娘さんが拗ねていた。人間の娘の形態で犬耳をピンと立て、白い襦袢を纏い不機嫌そうにソファーにふんぞり返っている。
「あの猫姉妹の姉の方から聞いたよ。あんたと“露天風呂で楽しんだ”って」
「・・・紛らわしい言い回しを使ったな、楽しんだのは、会話だ」
「本当かい? アイツ、やたらと色っぽかったし・・・惚れてる相手が居るみたいな事を言ってたから、てっきりアンタと・・・」
そこでアルフは不安そうな面持ちで俯いてしまう。
耳も尻尾も彼女の気持ちを表すかのように、力無く垂れ下がっている。
「彼女、リーゼアリアに意中の相手が居るのは確かだが、それは私ではない」
「そ、そうかい・・・」
「私が選んだのはお前だ」
尚も不安そうなアルフを抱き寄せ、ザフィーラは彼女の頭を撫でた。
アルフは心地よさそうに目を細め、甘える様な声を漏らした。
「じゃ、じゃあ・・・証明してよ。この頃、ご無沙汰だったからさ」
ザフィーラの手の中から抜け出し、アルフは切なそうに頬を染め、襦袢を脱ぎ捨てた。露になる薄っすらと色づいた、下着のみを身につけた豊満な肢体。
薄暗い明かりの下で、とてつもなく妖艶に見える。

「解った、早速期待にこたえよう」
「ああ、それでいいよ。たっぷり可愛がっておくれ」
哀願する様な瞳で見上げてくるアルフは勢いよく、ザフィーラに抱きつくと、そのまま部屋に敷いてあった布団の上に押し倒した。

「もう、こんなになってるのかい」
ザフィーラに跨ったアルフは、薄紫色のショーツに包まれた尻を向け、既に鉄棒の様に固くなった肉棒を手に掴んでいた。所謂、69の体位だ。
「ビクビクと脈打ってるよ・・・」
アルフの熱い吐息を肉棒先端に感じ、肉付きのいい尻が揺れるのを目にして興奮が更に高まり、ザフィーラはそっとアルフの脚の付け根に手を這わせてみた。
「この下着、かなり豪勢な造りだな」
「気付いてくれたのかい・・・これ、アタシの勝負下着だよ」
素人目にも解る、繊細な装飾が施されたショーツ。
ザフィーラの視線を受け、アルフは恥ずかしそうに身体を揺すりながらもザフィーラの股間に躊躇無く顔を埋めていく。
「こうして・・・んふっ、んん・・・んちゅ・・・」
手の中の肉棒を懸命に扱きながら、アルフは舌先を鈴口に這わせてきた。
白魚の様な指が肉竿の表面を滑り、鈴口を湿った感触が襲う。
ザフィーラもお返しとばかりに、アルフの秘所を覆っていたショーツを横にずらすと、直接、割れ目を舌で刺激していく。

393夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:58:29 ID:nRUsxkEI
「ん、はぁ・・・あ、んあぁ・・・はむ、んむぅ・・・」
「もうこんなに濡れているぞ・・・れろ、ちゅぷっ・・・」
「な、中で動いて・・・ビクビクって、はっ・・んあぁんっ!」
ザフィーラの攻めに背中を逸らし、アルフは腰を奮わせる。
手に持った肉棒を刺激するのも忘れるくらい、舌攻めに身をくねらせている。
「・・・アタシばかり、気持ちよくなるなんて・・・はむっ、ん、んん・・・」
そうして意識を肉棒に集中させようとするアルフだが、ザフィーラは更に顔を埋めて、淫核に吸い付き、同時に尻肉をこね回した。
それによってアルフの意識は、再び肉棒から離れてしまう。
「・・・や、駄目ぇ・・・そこ、吸っちゃ駄目・・・や、やめなって、あ、んあぁ・・・」
手を動かす余裕も無く、ザフィーラにされるがまま、身悶えていく。
「ア、アンタがそうくるなら、こうしてやるんだから・・・」
「うおっ!?」
顎を引き、アルフは肉棒を口の中に咥えこんできた。
肉棒を咥えたまま、アルフは舌を咥内で這いまわす。
唾液の温かい感触と共に、舌のザラザラした感触まで伝わってくる。
「・・・あむ、凄く硬い・・・んむ、れろ、れろ・・・」
肉棒の熱さ、硬さを確かめる様に、舌で肉竿を舐めまわして来る。
唾液をたっぷりと塗し、竿全体を味わう様に咥内で動かし続ける。
「アタシが・・・アンタを気持ちよく・・・んむ、じゅる・・・」
ジュルジュルと音を立てアルフは肉棒に吸い付いている。
ザフィーラも負けじとアルフの秘所に吸い付く。
淫穴に舌を突っ込み、更に淫核にも断続的な刺激を加える。
「そ、そこは・・・んあぁ、んひぅ・・・ふぅ、はふっ・・・・んあ、あぁん・・・・」
「じゅる、淫らな汁が溢れて・・・ん、ちゅぱ・・・・はむ、んむっ・・・・・」
一心不乱にザフィーラとアルフは互いの性感帯を攻め立てていく。
余りの快感の為、ザフィーラの肉棒の先からは、既に先走りの汁が流れ出ていた。
同様にアルフの淫穴からも淫蜜がしとどに溢れ出し、ザフィーラの顔を濡らしていた。
「んぐっ・・・そこをそんなに吸っちゃ、んじゅる、あむ・・・口の中で大きくなってぇ・・・ア、アタシ、も、もういっちゃうよぉ・・・」
「むぅ・・そんなに強く扱かれては・・・・私も持たない・・・!!」
それから間もなくザフィーラとアルフは同時に絶頂に達していた。
アルフの咥内へと白濁の塊が吐き出される。
それでもアルフは口を離す事無く吐き出される精液を飲み込んでいった。
やがて、全て飲み干すと、口を離した。

394夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:59:00 ID:nRUsxkEI
「ふぅ・・・いっぱい出たねえ」
「ああ・・・」
口の端から白い物を零しながら、アルフが笑う。

「まだまだ・・・元気一杯だね。それじゃ、今度は・・・」
目を細めたアルフは身体を起こして、ザフィーラの前に跪き、そそり立った肉棒をその乳房の間に挟みこんだ。
「くっ・・・こ、これは・・・・!!」
「ん、はぁ・・・熱い・・・・・」
動きはぎこちないが、心地よく甘い弾力が肉棒の凸凹に合わせて形を変え、左右から挟みこんでくる。肉棒越しに伝わるアルフの鼓動。
肌の温もりと汗と、僅かに緊張するアルフを感じ取り、心の奥が仄かに暖かくなる。
揺れる乳房を押し上げる様に肉棒が屹立し、先走りが肌を汚していく。
「こうすれば・・・この肉の棒をこうやって・・・下から擦る様に・・・・・グリグリってぇ・・・」
肉棒の悦びを悟ったアルフは、更に乳房を差し出した。
左右の膨らみをこすり付けて、ザフィーラの弱点を探り当てる。
竿の凸凹の上には、柔かい乳房の感触だけでなく、コリコリした薄桃色の先端の感触も混じっている。固くしこった突起が幾度もカリを弾き、ザフィーラはその度に腰を前に突き出していた。
「・・・ん、あぁ・・・はふっ、んっ・・・もっと・・・・」
鈴口に口付けできそうな距離で、アルフが喘ぐ。
熱い吐息が絶えず吹きかかるのが堪らず、もっと淫らで強烈な愛撫が欲しくなる。
「・・・はぁ、何かして欲しい事あるかい?」
「そのまま・・・舐めてくれるか?」

395夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 09:59:38 ID:nRUsxkEI
一瞬の戸惑いの後、アルフは自分の胸元に顔を埋め、紅い舌先を伸ばしてきた。
谷間から肉棒の先端を、舌先がチロチロと舐めていく。
最初は掠るだけ。だが、二度、三度と繰り返される。
まるでミルクを舐める子犬みたいに、何度もーーー

「・・・ん、れろ、ちゅっ・・・そうかい、こうされると気持ちいいんだね」
最初は遠慮がちだったが、すぐに艶っぽい笑みを浮かべ、先端を攻める。
舌先を器用に鈴口に沿って往復させ、徐々に肉棒全体にも唾液を塗し、そのたわわな胸で肉竿を締め付けてきた。頭が痺れる程の刺激に、肉棒は震え、貪欲に猛る。
「んんっ・・・ココ、弱いんだね。ぴちゅ、んちゅ・・・れろ、れろ・・・」
弱点が集中していると知るや、執拗に先端を攻め立てていく。
咥内に唾液を含み、チュパチュパと肉棒の先端へ絡みつかせてくる。
時にはちゃんと根元まで舐め、先端まで往復して、自ら塗った潤滑油で乳房の圧迫も滑らかにしていた。潤滑油のおかげで、急激に乳房の密着が増していた。
「アタシの胸の中の・・・肉の棒、凄く熱い・・・ん、あぁ・・・・・」
竿全体を肌で包んだまま、フニフニと形を変えながら乳房が擦りあがってくる。
柔らかな感触が滑りながら、刺激を送り込んでくる。
往復の度に射精欲求がこみ上げてくるが、もっとこの快感に浸っていたくて堪える。
「速くしたら・・・いやらしい音鳴っちゃう・・・アタシの胸ぇ、いやらしい・・・でも、こうして舌で先っぽを・・・んちゅ、じゅる・・・」
「それはくぅ・・・」
速度と圧力を増した快感に腰奥から震え上がった。
だが、逃げられる体勢ではなく、絶頂が見え始めた肉棒に、アルフの献身的な奉仕が容赦なく襲いかかってくる。
「ん、はむぅ・・・いつでもイっていいんだよ・・・んちゅ、ちゅぱ・・・・」
はにかみながら乳房を差し出す。そんなアルフの表情にこそ危うく達してしまいそうになる。鈴口は素直に先走りを溢れさせ、アルフに舐め取ってほしいとテラテラと光る。
すると、すかさず柔かい舌が雫を掬い取っていく。
「ほら、もう意地を張らずに・・・出しちゃいなよ、れろ、んちゅ・・・」
大胆に乳房を擦らせ、淫らに揺らし、ビクビクと震えるカリを唇で弾き続ける。
アルフの、恥じらいと興奮に染まる顔。
淫らな表情に魅入る内、どんどん頭の芯が痺れていく。
「んちゅ・・・苦いのが溢れてきて、はむ・・・・アンタがイクとこ、見せてぇ・・・」
涎とも汗とも先走りとも知れぬ粘液で乳房をべったりと濡らしながら、アルフがそんな事を囁いた。それから先は無言で乳房と舌の動きに集中して、射精を促す様に激しく攻め立てーーー

396夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 10:00:16 ID:nRUsxkEI
「んむっ・・・ん、はあぁん、震えて・・・ごくっ・・・んちゅ、はむぅ・・・・」
「もう無理だ、持ちこたえられんっ!!」
限界を超えたザフィーラは本能の赴くままに白濁を吐き出していた。
乳房によって圧迫されていたせいか、凄まじい勢いでアルフの顔を打っている。
熱い白濁の樹液がアルフの顔をパックする。
アルフの生命力に満ちた美しい顔を、白濁の精液が汚しつくしていた。
だが、それで火照るアルフの肌も、喘ぐ声も、全てが淫らに思えてしまい、ザフィーラの雄の本能が昂ぶってしまう。
「ん、ちゅ・・・白くて濃いの、一杯出てきたねえ」
「すまん。こんなに出るとは・・・」
「別に気にしなくてもいいよ。ん、あむっ・・・」
徐に両の乳房を寄せたかと思うと、白濁をそこに溜めて舌を伸ばしていく。
音を立てて舐める、その光景に肉棒が敏感に反応を見せる。
まだまだ、コレで終わりではない。
「・・・どうし、あ、ふあぁん、ちょ、ちょっと・・・何するんだいっ!?」
「今度は私の番だ」
アルフの火照った身体を布団の上に横たえ、敢えてうつ伏せに寝てもらう事にした。
肉付きのいい尻がこちらに向く様に、手早く体勢を整える。
「・・・この格好、恥ずかしいじゃないか。まあ、アタシ達の場合、原型が狼だから、ある意味では、正しい形とはいえ・・・」
訳が解らぬまま、一瞬で四つん這いにされ、戸惑った様に振り返り、アルフは視線をザフィーラに向けている。尻を突き出して、秘所まで丸見えの格好。
「私としては、狼の本能からか、この体位が好みなのだが・・・駄目か?」
「ふっ、まぁ、しょうがないね。ほら、するんなら、さっさとしな」
『しょうがない奴だね』とでも言いたげな苦笑を浮かべ、アルフは尻と尻尾を振って、続きを促してくる。続きをしたい、その気持ちは双方同じだった。
「・・・ん、はぁ、んんっ・・・や、あぁん・・・・」
さらけ出された淫穴に指を少し突っ込んでみる。
ただ、それだけで、アルフは敏感に身体をしならせ、悩ましく喘ぐ。
思った以上の反応に指が止まるが、アルフの潤んだ声が先を催促する。
「は、速く・・・指じゃなくて・・・アンタの太いのを入れて・・・」
薄っすらと色づいた身体を切なそうに揺すり、アルフは懇願する。
それに答え、ザフィーラは優しくアルフの細い腰を掴み、ゆっくりと自らの一物を淫穴に宛がい、一気に貫いた。不躾な侵入者を追い出そうとするかの様に、アルフの淫筒がきつく締め付けてくる。擦れるだけで精を一気に奪い取られそうな狭い道を、確実に押し進め、肉竿を沈めていく。
「・・・あ、あぁ・・・ふあぁぁ・・・・ふ、太い・・・」
か細い声を漏らし、ビクビクとアルフは身悶える。彼女の状態に配慮してザフィーラは緩やかに肉棒を行き来させる。その度に淫蜜が結合部から零れ出した。
「ふあぁ・・・す、凄い・・・ゴリゴリって・・・ン、はうぅ・・・・き、気持ちいい・・・」
アルフの顔は快感で蕩け、熱い息を漏らしている。
ザフィーラは背中からアルフの2つの膨らみを鷲掴みにしていくと、アルフは切なそうに身体をビクビクと波打たせた。アルフの胸は実に素晴らしい弾力で、手にずっしりと来る重さがあり、揉み応えがある。
「・・・あ、んあぁ・・・そ、そんなに強く・・・はふぅん・・・・」
その形、大きさを確かめる様に、少し乱暴に揉みしだいてやると、アルフは甘い喘ぎを漏らし、小刻みに痙攣した。

397夜刀浦奇譚:2013/02/08(金) 10:01:00 ID:nRUsxkEI
「どうだ?」
「いい、いいよ・・・凄く気持ちいい・・・もっと、もっと激しく動いておくれ・・・」
要請に応じ、ザフィーラはアルフの腰を掴み、猛然と腰を突き出した。
最奥部まで肉棒を突きいれ、強烈に掘削する。
「あ、あぁ・・・・ぉ、奥に、奥に来てるぅ・・・硬いのが、奥にぃ・・・・」
肉襞が貪欲に吸い付き、肉棒の表面をザラザラと刺激する。
締め付けの具合も凄まじく、食い千切らんばかりの勢いだった。
瞬く間に射精欲求が高まっていく。
「あん・・・んあ、ふぅ、な、中に・・・出して、アタシの中を注ぎ込んでぇっ!!」
「・・・いいだろう、中に出すぞっ!!」
苛烈な掘削作業の果て、肉棒は引き抜かれる事なく、そのままアルフの中で果てていった。アルフの温もりを感じながら、それよりも遥かに熱い衝動を注ぎ込む。
「熱いのが来てるぅ・・・いい、いい・・・もっと欲しい、もっと突いてぇ・・・!!」
「了解した」
射精が終わっても、尚逞しい肉棒を一心不乱に動かし、白濁液で満たされた子宮を叩き上げる。収まりきれなかった白濁が結合部から流れ落ちる。
しかし、そんな事はお構い無しにザフィーラは文字通り猛る獣と化して、アルフを容赦なく突き続ける。アルフの方も自分から腰を振り、肉棒を締め上げる。
「ほら、アタシも動くからぁ・・・・もっと一杯、気持ちよくして、アタシがおかしくなっちゃうくらいに・・・ん、はぁうん・・・・!!」
尻肉をしっかり掴み、ザフィーラは狂った様に何度も肉棒をぶち込んだ。
もっと乱れたアルフが見たい、そんな想いからザフィーラは精液で淫蜜で満たされた子宮を肉棒でかき回す。アルフの内部は奥に行く程、狭かった。
更に肉棒を逃すまいと、そこから射精を促す様に肉襞が擦りあげてくる。
それが堪らないほど、気持ちよくザフィーラの射精欲求をもたらす。
「も、もう・・・駄目ぇ、アタシの中、ビクビクと震えてるぅ・・・」
またしても痙攣する様に、子宮の最奥が震え、それがザフィーラにとっては凄まじい快感であった。絶頂はもう直ぐそこだった。
再び肉棒の奥底から熱い物が競りあがってくる。
「ぐっ・・・ぐおぉぉっ!!」
圧倒的な快感の電流がザフィーラの全身を駆け巡り、勢い余って肉棒を引き抜いていた。飛び出した肉棒が淫核を擦りあげていった。
不意打ちを喰らったアルフは、その瞬間、絶頂に達していた。
「ぁ、アタシ・・・いっちゃったよぉ・・・・」
「私ももう限界だぞ」
今度の射精はアルフの肢体にぶちまけられた。
アルフは肩で息をしながら、降りかかる白濁のシャワーを受け止めていた。
射精が終わる頃には、アルフは全身真っ白になっていた。
「・・・凄い格好だな」
「誰のせいだと思ってるんだい、全く・・・」
全身白濁塗れのアルフは、未だに絶頂の余韻が消えないらしく、発情した雌狼の様な淫らな雰囲気を纏っている。ザフィーラはそんな彼女を抱きしめ、優しく口付けた。

398黒天:2013/02/08(金) 10:03:22 ID:nRUsxkEI
ここで一旦切ります。投下される方はご自由にどうぞ。
そういえばザフィアルのエロ書いたの初めてだった。
次回から戦闘パートになります。

399名無しさん@魔法少女:2013/02/08(金) 21:19:47 ID:Q2XJ5iVU
>>398

夜刀浦奇譚、楽しく拝読させて頂いています。
投稿間隔も早くて、読者としては物語の続きがすぐに読めるのは嬉しい限りなのですが、
読み返していて、これは物語のどの辺りだったか分からなくなることが多いので、
話数と投下番号を振って頂けると嬉しいです。

400黒天:2013/02/10(日) 10:02:27 ID:OVaBpspE
了解しました。タイトルの後に数字を入れて投稿してみます。

401アルカディア ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:37:57 ID:ODgWVm/I
人の居ない時間帯なので、投下をさせて頂きます。
かなり長い投下になりそうですので、ご注意をお願いします。

402アルカディア ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:39:57 ID:ODgWVm/I

 注意:この作品は非常に濃い鬱展開や暴力的描写、性描写などが含まれます。
    そのような倒錯的な描写を好まれない方は絶対に目を通さないようにして下さい。

    これらは、倒錯的嗜好の持ち主の読者様のために書かれたSSです。

    鬱展開や暴力描写などを許容できる方、ではなく好んで読まれる方のみ目を通されることをお勧めします。
    
    ユーノ祭り投稿作ですが、熱心なユーノファンの方には、この作品はお勧めできません。
    ユーなのやクロエイカップリングの作品を好まれる方にも、この作品は良くない影響を与える可能性があります。
    閲覧中に気分を悪くした方がいましたら、すぐに閲覧を中断して、原作、もしくはお好みの良SSなどを見て気分転換して下さい。

    作者自身、この作品には非道徳的な面が多く、二度とこのような作品は書くまいと反省しておりますが、
    一度書いてしまったものをお倉入りにするのも忍びず、恥知らずにも恐る恐る公開に踏み切らせて頂きました。
    この程度の温い描写で何を大袈裟に書いているのだと、読者の方に一笑に付して頂ければ、これ以上の幸いは御座いません。

403アルカディア ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:41:29 ID:ODgWVm/I
 春は、すぐそこまできていた。

 頬を撫でる風の掌は日に日に柔らかさを増し、ここ数日は心なしかアブラナの薫りをはらんでいた。
 長く茶色い稲株を晒していた休耕期の田園には、薄紅色のげんげの花が咲き乱れ、冬眠から目覚めた蜜蜂がその周りを取り囲んでせわしなく翅を羽ばたかせていた。
 海鳴の各所に絨毯のように広がるシロツメクサの花畑では、細い花茎の先に白く小さな冠がいくつも頭をもたげている。
 幼き頃に友人たちと花輪を作った記憶を思い出して白い花畑を覗き込むと、小さな四つ葉が背伸びをしていた。
 
 少女はそっと目を細めると、指先ほどの四つ葉を優しく摘み取り、胸ポケットに挿した。

 町の各所に溢れる春の息吹。 
 その欠片を拾い集めるように、少女は海鳴の町を軽やかな足取りで廻る。
 希望に満ちた微笑に、ほんの小さな憂いを落として。

 慣れ親しんだ筈の海鳴の町。あちらこちらで桜の木々が梢の先に小さな薄桃色の綻びを覗かせていた。
 あと二週間も経てば、そこら中で競うが如く満開の桜が咲き乱れる筈だ。
 何度繰り返しても変わらなかった、年月と自然の巡り。人の巡り。
 春は変化の季節だ。
 私立聖祥大学付属小学校に入学した幼き日のこと。かけがえなき友人達との出会い。
 春が巡るごとに繰り返された、進級とクラス替え。
 少女は軽く瞼を閉じるだけで、輝きに満ち満ちているこれまでの人生の思い出へと飛翔することができる。
 
 この世界に生を受けてから十五年。
 己はまだ幼過ぎると言っていいぐらいの若輩ものであることを少女は自覚しているけれど。
 彼女がこれまでに辿ってきた運命は決して平凡なものではなく、常人には決して計り知れない数奇な出会いと別れに満ちていた。


 その始まりの地は。

 少女は静かに足を止めた。
 そこは、とある臨海公園の一角だった。『海鳴』の名を表したかのように、潮騒の音を落ち付いて楽しめる市民の憩いと安らぎの場である。
 中央の大広場をぐるりと取り囲むように樹勢の良いソメイヨシノが立ち並び、毎年の春には花見の名所としても親しまれていた。
 しかし、少女が足を運んだそこは、誰もが足を止める大広場ではない。
 常緑樹による街路樹が鬱蒼とした緑の葉をこんもりと茂らせる、どこか裏路地めいた公園の脇道である。
 何の変哲もない小路。少女はそこを懐かしげに見渡した。  


 もう、あれから六年にもなるのか。あの鮮烈な出会いの日から。
 
 ――六年前の春の日。彼女が小学三年生に進級したばかりの四月。
 少女は、一匹のフェレットと出会った。ほんの小さな出会いのはずだった。けれども、それは彼女のみならず多くの人々の運命を変えた出会いで。

 彼女は胸に手を当て、若々しい春の息吹に満ちた公園の空気をその鼻腔に満たした。
 今まで暮らしてきた世界とは違う、もう一つの世界。その存在を知った時には、その輝きに目を奪われて、自分の生まれ育ったこの世界が色褪せたように思えたこともあったけれど。
 いざ旅立ちの日が近づくとなると、なんと名残惜しいのだろう。
 今日一日、この町のあちこちを巡って歩いたけれど。どこもかしこも、大切な思い出で溢れていた。
 これまで自分を育んでくれた、家族と、友人と、この町に。

 ありがとうございました、と心の中でそっと頭を下げた。 



「やっぱりここにいたんだね、なのは」

 ぽん、と肩に置かれた柔らかな掌。
 振り返ると、馴染みの少年の穏やかな笑顔があった。

「ユーノ君」

 少女――高町なのはは、振り向きざまに、最高の親愛と信頼を籠めた笑顔でそのかんばせを輝かせた。
 そして、ユーノの視線を誘うように、地の一点に瞳を落とした。
 なのはの肩に掌を乗せたまま、少年もじっとその場所を見つめた。
 全ての始まりの地。二人の運命の歯車が動き出した場所。
 二人の間に言葉は必要無かった。
 ただ、出会えたこの数奇な運命に感謝を捧げ、これからの未来の思った。
 なのはは、肩にユーノの掌の熱を感じていた。優しくて、心落ち着かせる彼らしい温かさを。

「行こう、みんなが待ってるよ」
「うんっ」

 なのはは頷くと、自分の肩の上にあったユーノの掌を壊れ物でも扱うかのようにそっと両手で包み、その指に己の指を絡めた。
 
「行こう、ユーノ君」
「う、うん」

 なのはに手を引かれ、頬を紅潮させながらユーノが歩き出す。
 最後に――なのははもう一度だけ公園を振り返り、己の運命が始まった場所に別れを告げるように、小さく手を振った。

404畜生道2 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:42:27 ID:ODgWVm/I
 新暦72年の春のことである。
 中学卒業を間近に控えたなのは達の、ミッドチルダ移住はすぐそこまで迫っていた。
 これまでも私立聖祥大学付属中学校に通う傍ら、魔導師としての活動も続けてきた三人だったが、中学校卒業を機にミッドチルダで魔導師業に専念することになったのだ。
 二足の草鞋を履いていたとは云え、今までの活動も決して生易しいものではなかった。
 新暦65年になのはとフェイトの二人が管理局の武装隊に入隊して以来、多くの過酷な試練が彼女たちを待ちうけていた。
 なのはの撃墜事件。度重なるフェイトの執務官試験への挑戦。
 ミッドに移住して専業の魔導師として活動することによって、彼女たちの戦いはより激しさを増していくだろう。
 それなのに、なのはの表情には不安や翳りは微塵もなく、ただただこれからの未来に対する希望の光に満ちていた。
 ユーノは、そんななのはの横顔を、直視しきれない眩しいものでも見るように、そっと目を細めて見つめていた。

「あ、帰ってきたきた」

 待ちくたびれたとばかりに手を振るのは、友人のアリサだ。

「もう、どこで何やってたのよ! さあ、とっととパーティを始めるわよ! わたしたち皆の中学卒業と、あんた達のミッドチルダ行きの記念パーティ!」
「えへへ、ごめんごめん」

 アリサ、すずかとその家族達、フェイト、クロノ、八神家の面々と、高町家の面々。
 中の良いいつもの面子が、パーティの会場として供されたバニングス家の庭に集っていた。
 ユーノがちらりとフェイトに視線を送ると、委細承知していると告げるような、穏やかな頷きが返ってきた。

「ユーノ、なのはのお目付け役、御苦労だったな。思ったより早く連れて帰ったじゃないか」
「当てが有ったからね」

 素っ気なくそう返事をすると、クロノはからかうような調子で続けた。

「二人の思い出の場所、というやつか?」

 びくり、と背筋が震えた。内心の動揺を悟られないように、

「いや、何となくなのはの行きそうな場所を廻っただけだよ。この町での彼女との付き合いは結構長いからね」

 と嘯くと、クロノは「ふーん」とだけ短く返し、それ以上の追及はして来なかった。
 心中で胸を撫で下ろしながら、ユーノはフェイトと言葉を交わすクロノの後ろ姿を見つめた。
 

『あの日、ユーノ君に会えて本当に良かったって、今でも思うんだ』

 何時のことだろう。あの場所を前にして、なのははそう語った。

『あの日、ユーノ君に会えたお陰で、フェイトちゃんや、はやてちゃんや、クロノ君や――ミッドチルダの、色んな人たちと出会えた、友達になれた』

 語りながら、屈託なく微笑むなのはの顔を、ユーノは忘れない。

『ユーノ君に出会えたから、今のわたしになれた。だから、ユーノ君には感謝してもしきれないんだ』  

 その掛け値なしの親愛の言葉に胸を刺されたような痛みを覚え、ユーノは胸中で頭を振ったものだ。
 
 ――違うよ、なのは。
 ――君に出会えたことこそ、僕の奇跡だった。あの日、君に会えて本当に良かった。
 ――君がレイジングハートを手にとったあの日。桜色の魔力光が溢れたあの瞬間。
 ――疲れてくすんでいた世界が色彩を帯びた。この世に、本当に輝けるものがあることを知ったんだ。
 

「それでは、これから聖祥大付属中学校卒業おめでとう&なのは、フェイト、はやての行ってらっしゃいパーティを始めます!」

 ユーノの回想は、高らかに宣言するアリサの声と、万雷の拍手の音に掻き消されていった。




             ○

405畜生道3 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:43:26 ID:ODgWVm/I
 ローレル・アップルヤードは無限書庫の新人司書である。
 ユーノ・スクライアの司書長就任に伴って、無限書庫は大きな内部改革が行われた。
 膨大なデータを死蔵するばかりだった巨大データベースが、必要に応じて臨機応変に資料を閲覧できる実働可能状態まで変革されたのである。
 ローレルはその改革の際に、外部からユーノに勧誘を受けた司書の一人であり、無限司書では一番の新参者である。
 しかし、彼女は持ち前の愛嬌と誠実な働きぶりで、司書達からの信頼は頗る篤く、ユーノの助手として働くこともしばしばだった。

「それにしても、ユーノ司書長は本当に凄い方ですよ」

 ユーノの指図に従って、本の山を抱えて右に左に歩きまわりながら、ローレルは幾度目か分からないユーノへの賛辞を口の端に上らせた。

「だって、この本棚、ユーノ司書長が改革を始めなかったら、ここからあっちまで、ぜ〜〜〜んぶ、迷宮の底に沈んでたんですよ!
 その上ミッドチルダ考古学界では一流の学士で名前が通ってますし、結界魔導師としても優秀で魔導師ランクも総合Aランク持ちなんですよね!?
 わたし、ユーノ司書長にこの無限書庫に採用して頂けて本当に良かったです。わたし、将来はユーノ司書長みたいな立派な司書になるのが目標なんです」

 屈託の無い笑顔で語るローレルに、ユーノはどこか寂しげな苦笑を返した。

「僕なんて、そんなに褒められたようなものじゃあ無いよ。無限書庫の探索だって、全体を見れば終わったのは1%にも満たない隅っこの浅い領域だけだからね。
 ……それに、魔導師としての僕なんて、二流がせいぜいだ。本当に凄い才能の持ち主に比べれば、僕なんて――」

 ユーノの口調が自嘲的な翳りを帯びた。ローレルは慌てて取り繕うよう手を振った。

「そ、そのユーノ司書長の言う、『本当に凄い才能の持ち主』って、あの高町なのはさんや、フェイト・テスタロッサさんのことですよね?」

 ユーノは、口の端に微かな苦笑を浮かべて肯定の意を示した。

「でもでも、お二人とも最初からAAAランクの魔力を持ってて、今ではSランク魔導師なんですよね!? そんなの、例外中の例外ですよ!
 そんな魔力量、持ってる方がおかしい、っていうか。わたしなんて、何年も試験にチャレンジしてるのに、未だにCランクなんですよ!」
 
 熱弁を揮うローレルの頭にポン、と掌を乗せると、

「今日はこのくらいにして、そろそろ上がろうか。ローレルもお疲れ様」

 と告げた。
 不承不承といった面持ちで口を噤んだローレルだったが、上目遣いにユーノを見上げて、

「確かに、ユーノ司書長は、そんな雲の上のエースの方たちに比べれば凡人だと思います。
 でも、わたしはそんなユーノ司書長の普通の人っぽさが好きですよ。なんていうか、親しみが持てて――ユーノ司書長?」

 どこか遠い瞳で無限書庫の深淵を覗きこんでいたユーノは、ローレルの呼びかけに我に返ったように振り向き、穏やかな微笑を浮かべた。
 眼鏡の下の優しげな眼はいつもと変わらぬユーノのそれで。
 ユーノの顔が、一瞬冷たく恐ろしげなものに見えたことは、単なる自分の錯覚だろうとローレルは自分に言い聞かせた。

「思ったより、まだ日が高いですね」

 無限書庫から出ると、ミッドチルダの春の陽光がユーノ達を照らし出した。
 爽快感がある半面、穴から追い出されたモグラになったような気もする。
 大きく伸びをしていていると、細い指先が柔らかくユーノの服の裾を摘まんだ。

「あのあの、ユーノ司書長、良ければ今日一緒にお食事とかは――」
 
 はにかみながらそう声をかける彼女の視界に、満面の笑顔で大きく手を振る、栗毛の女性の姿が映った。
 伸びた背筋、意志の強そうな瞳、自信に満ちた貌と、迷いの無い立ち姿。一目で分かった。彼女こそ、若きエース・オブ・エース、高町なのはだ。
 手を振りながら駆けてくる彼女に気圧されるように、ローレルは一歩後ろに退がった。
 
「ごめん、ローレル。今日はなのはと先約があるから、またね……」

 社交辞令程度の断わりの言葉を告げて、ユーノはなのはと歩き出す。
 その右手に、なのはが素早く己の左手を絡めたのをローレルは見逃さなかった。

「……何よ、司書長の言う通りじゃない。あんなの、勝てるわけないじゃない」

 残されたローレルはポツリと呟き、親指の爪を噛んだ。

406畜生道4 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:44:26 ID:ODgWVm/I
    ○




 中央区画の馴染みのレストランで食事をしながら、ユーノはどこか上の空だった。 

『でも、わたしはそんなユーノ司書長の普通の人っぽさが好きですよ。なんていうか、親しみが持てて』

 ローレルの声が、耳の奥で反響する。
 ――普通の人っぽさ、か。
 眼前のなのはの横顔をそっと見つめる。
 不屈の、エース・オブ・エース。その称号は、単に生れつきの魔力量によるものではない。
 その純粋で強固な意志。まるで、ピンクダイヤモンドの如き魂の輝き。
 それこそが、彼女をエース・オブ・エースたらしめている由縁だ。
 フェイトだってそれは同じこと。イエローサファイヤのような澄み切った怜悧さと、その奥に秘められた温かな優しさ。
 彼女達は、自分がどうやっても手の届かない、宝石の如き本物の輝きを持っている。 

 なのはは、胸元の大きく開いた紫色のワンピースに身を包んでいた。
 普段以上に女性らしさを感じさせる幼馴染の装いに、朴念仁とクロノにからかわれるユーノも、己の胸が高まるのを自覚していた。
 しかし、彼女の豊かな胸のふくらみの間に挟まれるようにして輝く、ネックレス代わりに吊られたレイジングハートを光沢を目にした瞬間、胸を騒がせる鼓動がすっと引いていくのがユーノには分かった。
 レイジングハート。高町なのはを象徴するように輝く、彼女の魔杖。
 自分では、ついぞ輝かせることができなかった、高級デバイス。
 あの日、海鳴でなのはが初めてレイジングハートを輝かせた瞬間、己の中で溢れた数々の感情。
 驚嘆。歓喜。賞賛。羨望。嫉妬。
 ――あの瞬間、疲れてくすんでいた世界が色彩を帯びた。この世に、本当に輝けるものがあると知ったんだ。
 ――空に輝く宝珠を見つけたあの瞬間、僕は自分の内に黒い井戸を掘った。
 ――どうして、僕はあんな風に輝くことが出来なかったんだろう。そんな、己の内から湧きだす真っ黒いコンプレックスを埋めて隠すための井戸を。
 
 そうして、僕は恥知らずなことに、今もこうして何食わぬ顔でなのはと話をしている。
 
「どうしたの、ユーノ君? わたしの顔に何かついてる?」

 なのはの一声で、ユーノは思考の隘路から引き戻された。 
 ――最近、もの思いに耽る時間が増えている。
 それがあまり良い兆候ではないことをユーノは自覚していたけれど、考えずにはいられなかった。
 自分は、なのはの隣に立つのに、相応しい人間ではないのではないか。自分如という人間は、エース・オブ・エースの翼の重荷にしかならないのではないだろうかと。

「もう、変なユーノ君」

 そう言いながら、なのはは見つめられていたことは満更でも無いと言うかのように、無邪気な笑顔を見せた。
 なのはやフェイトの隣に立つのに、相応しい人物がいるとすれば、それは一体どんなだろう?
 強くて、誠実で、質実剛健な男性。……それは、あっけないほど直ぐに思い当たった。
 
 クロノ・ハラオウン。

 時空管理局の提督であり、L級艦船「アースラ」艦長でもある。
 それでいて、魔導師としても一級のAAAランク。非の打ちどころの無い好漢である。
 クロノの強さは、なのはやフェイトのような、才能の輝きに恵まれた強さではない。
 そう、例えるならば、幾度も幾度も繰り返し鍛え上げた、玉鋼のような強さを持ったような男なのだ。

 ユーノがクロノと出会ったのは、六年前の、なのはとフェイトに出会ってから間もない日のことである。
 その時、クロノに対して言葉に出来ない反感のようなものを覚えたことを記憶している。
 あれは、フェレット野郎とからかわれたことに対する反感だけではない。
 そう。――己は、クロノ・ハラオウンという男が羨ましかったのだ。

「また黙っちゃって。ユーノ君、今日はどうしたの?」

 何でもないよ、と笑顔で返しながら、得体の知れない不安にユーノは怯えた。
 これまで、漠然と抱いていた、『自分ではなのはの隣に居られない』という不安と、才気に恵まれた友人達に囲まれていることのコンプレックス。
 それが自分の中で解体されることで、全く異なる感情へと変化している――そんな、得体の知れない不安だった。
 

       ○

407畜生道5 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:48:06 ID:ODgWVm/I

「珍しいね、君から僕に話があるなんて」

 馴染みの店で手振りだけで注文を済ませ、クロノは半ば自分の指定席となっている椅子に腰を預けた。
 店内には、クロノ達以外の客は居らず、無愛想な店主が独りグラスを磨いていた。
 対面に座ったユーノは、幾分強張った面持ちで、机の木目を見つめている。
 『どうも最近とユーノの様子がおかしい、何か悩み事があるようだ』となのはから聞いてはいたが、彼女の言に間違いは無かったらしい。
 程なくして運ばれてきたジンのグラスに唇を這わせながら、それとなく友人に視線を運ぶこと数分。
 クロノは無遠慮な言葉を投げかけるような真似はせずに、友人が口を開くのを優しく待った。
 店主は二人の間に流れる空気を静かに察して、店のBGMの選曲を落ち着いたクラシックへと換えた。
 クロノは無言で親友の表情を観察していたが、その瞳に強い決意を色があるのを見て、若干の安堵と、これから語られる言葉への期待に口の端を吊りあげた。

「はやての作ろうとしている部隊についてのことなんだ」

 ユーノの、第一声はそれだった。
 クロノは片眉を上げて、静かに続きを促した。

「はやての作ろうとしている部隊に、僕も参加できないかな?」
 
 言葉の意味と、ユーノがそれを口にした決意を余す所無く受け取って、クロノはその黒い瞳でユーノの翠眼を覗きこんだ。
 八神はやてが設立しようと現在奔走している部隊――古代遺物管理部機動六課(仮称)は、現在各方面から優秀な人材を集めている。
 まだ、後見人――カリム・グラシアや、レティ・ロウラン、そして当のクロノ・ハラオウンらが正式に決定したばかりで、部隊の組織に関しては白紙に近い状態だ。
 確実なのは、司令部を総隊長である八神はやてが、2つのフォワード部隊をそれぞれ、航空戦技教導隊と本局から出向扱いになっているなのはとフェイトが隊長として指揮するということだけだ。
 
 構成人数は約50人程度を予定しているが、カリムやクロノらのみが知る、「ある事情」によって、小規模ながら優秀な人員が求められているのだ。
 実戦に携わるフォワード部隊については、Sランク相当の手練を5人という、不自然なほど充実した保有戦力によって、当面は新人の育成を行う余裕があるだろうと予想されている。

 フェイトが保護したプロジェクトFの被害者の少年。
 同じくフェイトが保護した、ル・ルシエ出身の竜召喚士の少女。

 なのはも、陸士訓練学校や陸上警備隊で何人か見所のある新人を見繕っているらしい。

 出生や経歴に事情にある人材は、敬遠されることも多い。
 だが、はやては、出生経歴関係無しに――寧ろ、事情のある子供達の社会復帰の助けにもなるとして――優秀な人材を集めて、部隊を組織しようとしている。
 
 そこに、ユーノ・スクライアという魔導師が活躍する余地があるかと問われたなら――

「ふむ、それは、部隊の後見人を務める身としては、願っても無い話だけどね」

 努めて、クロノは私情を表に出さずに、ゆっくりと言葉を選びながら事務的な口調で続けた。

「知っての通り、フォワード部隊の隊長を務めるなのは達には、大幅な魔力制限が加えられることになる予定だ。
 彼女達の実力なら魔力制限下でも可能な限りの最高のパフォーマンスを発揮することができる筈だ。
 それでも――君が部隊に入ってくれれば、有事の際には、報告を受けて制限解除の決定を下すことしかできない僕達より、もっと小回りを利かせて彼女達の力になれるだろう」

 何より――。そこで言葉を区切り、ジンのグラスを傾けて、クロノ頬を緩めた。

「結界や捕縛に長けた君なら、すぐにでも部隊の即戦力として戦うことができる。
 フォワード部隊のフルバックなんて似合いじゃないかな。君のその豊かな学識を生かして、新人たちの座学の講師を務めてくれてもいい。
 なのはやフェイト達も、きっと喜ぶだろう。彼女達も、君がいればきっと心強いはずだ」

408畜生道6 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:50:29 ID:ODgWVm/I
 予想していなかった過大な賛辞に、かあ、と頬が紅潮するのをユーノは感じていた。
 このフェレット野郎――
 そんな風にからかわれていたのは、幼少時代の過日の話。
 この好漢は、クロノは、自分を見てくれている。評価してくれている。
 そう考えるだけで、どれだけ冷静に努めようとしても頬は上気し、心臓の鼓動は高まる一方だった。

「それで――本業の方はどうするんだい、無限書庫の司書長さん?」

 どう考えているんだ?
 見透かしたように、クロノは目を細める。
 考えていない筈など無かった。
 理想を語るよりも先に、まずこの眼前に横たわる如何ともせん自分の現実を打開しなければ、ここから一歩も進めないことぐらい、ユーノはとうに承知していた。
 
 ユーノは手つかずだったオレンジジュースを一気に飲み干すと、コースターに叩きつけるようにして机を揺らした。

「部隊が本格的に活動を開始するのは、おそらく三年後の新暦75年。
 その三年間で、十年分の成果を出して見せる。
 その三年間で、優秀な人材を集め、未だ混沌から抜け出せない無限書庫を体系立てて整理し、僕抜きでも資料の発掘と整理が進められるように、無限書庫を改革して見せる!
 はやての部隊は実験的な部隊だから、実働期間は恐らく一年間だ。
 その一年間のみの、無限書庫からの出向という扱いにしてもらっても構わない。

 それでも――駄目かい?」

 クロノの瞳が、俄かに見開かれた。
 グラスの底の僅かな残りを飲み干して、酒精混じりの溜息を吐く。

「少し、君が分からなくなってきたよ、ユーノ。
 君がはやての部隊に来てくれる――それは、こちらとしてもいい話なんだ。
 一年間の実験部隊だ、お偉方相手に横車を押さなくても、三年後までにそれなりの成果を出して貰えれば、きっとすんなり出向は通るよ。
 君ならそれぐらい計算できているはずだ。
 それなのに――どうしてそんな苦行のような条件を、自分に課さないといけないんだ?」

 ユーノは、普段の彼からは想像もつかないような熱の籠った視線で、クロノの黒い瞳を覗きこんだ。

「僕の、覚悟を知って欲しかったからだよ」
「覚悟?」

 心当たりがない、とばかりに、クロノは首を傾けた。

「僕は、君達に追い付きたい。君達に並べるような、何者かになりたい」

 その言葉は、やはり、クロノにとって理解出来ないものだったからだ。
 
「ずっと、こんな負け犬のような気分でいるのは厭なんだ。
 自分にとって誇れることが、なのは達と一緒に戦えたことだけ、なんてのは厭なんだよ。
 これ以上、なのはや君に離されていくのは厭なんだ!」
「魔導師としての適性は、人それぞれだ。
 たとえ、空戦で君がなのはに勝てなかったとしても、君には君の良さが――」
「そんな話じゃないんだよっ」

 激情を露にしたユーノを宥めるように、クロノはその肩に両手を置いて、額がぶつかりそうな距離で視線を交えた。

「分かった。全部、最後まで僕が聞くから、最後まで話してくれ」

 すう、と息を小さく吹くと、溜め込んだ悔恨を吐き出すかのように、ユーノはぽつぽつと語り出した。

「駄目だったんだ。無限書庫で何年働いても、多少人に褒められるような成果を出したとしても。
 この仕事が嫌いってわけじゃないんだよ。いや、僕の性格にも能力にもピッタリの、最高の職場だ。
 価値のある尊い仕事だってことも解ってる。きっと、これ以上の職場はどこを探してもなだろう。
 それでも――駄目だったんだ。働いてる途中に、なのはや君と一緒に戦っていた頃の思い出ばかり浮かんできてしまう。
 なのはや君が働いてるところを想像をすると、僕はこんな所で何をしてるんだろう、ってそんなことばかり考えてしまう。
 昔も、君達と一緒に戦った時も、何時の間にか僕は置いてけぼりで――」
「そんなことは無かった筈だ。なのはに魔法の手ほどきをしたのは君だし、闇の書事件の時も、君が無限書庫で探索してくれたお陰で、解決の手がかりが掴めた」

 遠い目で。うっとりとしたような表情で、ユーノは呟いた。

409畜生道7 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:52:55 ID:ODgWVm/I

「ジュエルシード事件に、闇の書事件。悲しい事も辛い事も沢山あったけど、……今思い出すと、懐かしいし、楽しかったよね」
「……ああ、楽しかったな」

 数瞬の逡巡の後に、クロノは静かにそう首肯した。

「僕はあの頃から――君にフェレット野郎と呼ばれていたあの頃から、一歩も進めなかったんだ。
 自分が、君やなのはに劣る人間としか思えなくなった。君達を基準にしないと、物事が量れなくなってしまったんだ」
「――どうして、そんなことに」

 呆然と呟くようクロノに、ユーノは眼鏡を押し上げ、滴り落ちる涙を子供っぽい仕草で手の甲で擦りながら首を振った。

「どうしてなのかは、僕自身も解らない。
 ただ――僕は、君達が羨ましかった。ずっと、君達のようになりたかったんだ……
 でも、もうそんなのは厭だ。なれもしない君達の背中ばかりを見つめる続けるのは厭なんだよ。
 僕は――僕になりたい。君やなのはやフェイトに胸を張れる、自分を君達と比べなくても独りで立てる、自分自身になりたいんだ」

 親友のあまりに重い告白をクロノは唇を震わせながら聞いていた。
 ――こいつは、こんな悩みを独り抱えていたというのか? それも、出会ってから、ずっと。
 ――なのはは、ユーノが何か悩みが有るんじゃないかと言っていた。
 ――こいつは、ずっと悩んでいた、その徴がありながら、自分は気付くことも出来なかった……

「どうして、今まで――」
 
 問いかかって、口を噤んだ。
 これ程の告白を――劣等感の対象である自分に対して行うことは、一体どれだけの覚悟が要っただろう、と。

「いや、すまない。よく話してくれた」
「悪かったね、クロノ。詰らない悩みを聞かせてちゃって。女々しいよな、僕」

 ユーノは目を真っ赤にして、弱々しく微笑んだ。
 クロノは迷い無く、男にしては華奢すぎる肩を抱きしめた。

「すまない、気付いてやれなくて。
 君が自分の事をどう評価しているかは知らない。それは、君が自分で決めることだ。
 それでも。
 僕は、君が僕やなのはやフェイト達に劣った人間だなんて、一度たりとも思ったことはない。
 ユーノ・スクライア。君は、僕が親友に呼ぶに値する、立派な男だと心の底から信じてる。
 だから――そんなに、自分を卑下しないで。自分を大事にして欲しい。
 そして、早く君自身の力で、君の自信と誇りを、取り戻して欲しい。
 僕に出来ることがあれば、何だって言ってくれ。君のためなら、何だって協力するから。

 ――それから。
 ずっと謝ろうと思ってたんだ。
 昔、君のことを『フェレット野郎』だなんて悪口を言って、本当にすまなかった」

 ユーノは暫し呆然としていたが、

「謝るなよ、そんな昔のことで……」

 そう言って、もう少しだけ、涙を流した。




     ○

410畜生道8 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:54:41 ID:ODgWVm/I



 ユーノは、自宅にアパートに戻ると椅子に腰を落とし、愛用のコーヒーサーバーに湯を注いだ。
 膝を抱えて座りこみながら、クロノの言葉を思い出して、また少しだけ泣いた。

 ユーノの自室は、無限書庫の司書長らしく、機能的に整理されていながらも、雑多な本に溢れていた。
 中でも、机に高々と積まれている一連の本は明らかに書店で市販されているものではなく、長い年月を蓄えた稀覯書としての趣を備えていた。
 いや。それらは稀覯書の域にすら留まらない。
 見るものが見れば、一目で解っただろう。
 魔導書。それも、かなり古く解読困難な部類の品々である。
 無限書庫からの発掘品だった。
 元来、無限書庫は図書館としての機能も兼ね備えた施設である。
 正当な手続きを踏めば、禁書の類でもなければ大抵の本は持ちかえることができる。
 これらは別段、司書長としての職権を乱用したものではなく、他の一般の書籍と同様に、ユーノが借りて帰った品々だ。
 尤も、専門家でさえ解読困難なこれらの魔導書を、話題のビジネス書の如き気安さで借り帰るなど、ユーノ・スクライア以外には不可能だろうが。
 
 ユーノはそれをひょいと片手にとると、新聞の三面記事でも流し見るかのような手つきでパラパラと捲りながら、卓上のノートに書き写し始めた。
 原始的な手段だが、魔方陣などに存在する魔力の流れを身体で理解するためには、この方法が最も手っとり早い。
 なのはらも学校で習った基礎中の基礎だ。
 しかし、いくら読書魔法を使用した速読を得意としているとは言え、専門家でも一ページ読み進めるのに数週間かかるレベルの難解な魔導書を、この速度で理解を伴って読み進めるなど、
 
 全く、常軌を逸脱した才としか言いようが無い。
 
 だが当人にそんな意識はまるで無く、ただ己の学習のみに専心している。
 この数年、デスクワークにかかりきりで、実戦の場から離れてしまった己。
 それを自分なりに補うために必要なのは、戦闘訓練ではなく、得意分野をユニークスキルへと成長させることだ。
 ユーノは、そう判断した。
 学んでいる内容は、現在はもう失われてしまった、過去の魔導術式。
 魔力を緻密に編み込むことによって、変わらぬ魔力量でより強力な束縛を可能とするバインド。
 魔力糸にAMF近似のエネルギーを纏っており、攻撃にも防御にも利用できる糸の檻。もしかしたら、なのはやフェイトクラスの魔導師も拘束できるかもしれない。
 なのはのディバインバスタークラスの攻撃魔法の直撃にも耐えられる、バリアタイプの防御魔法。
 秘匿性の高い封時結界。魔力の残り香さえ残さず、「そこに結界があった」ということさえ周囲に知らせない、最高位の結界。

 自分がどれだけ強力な――危険なものを学んでいるのか、知ってか知らずか。ユーノは只管に書に没頭する。



 数時間が過ぎた。
 ユーノは年寄りじみた仕草で肩を回し、嘆息を一つ漏らすと、ベッドに顔を埋めるようにして身体を預けた。
 眠気覚ましに濃く煮出したコーヒーは、既に冷めきっている。
 疲労に身体を預けるようにぐったりしていたユーノだったが、もぞり、と腕を伸ばすと、右手でベッドの下をまさぐった。
 
 取りだしたのは、一冊の雑誌だ。
 どこにでもある、駅前にでも売っていそうなありふれたポルノ雑誌だった。

 ユーノはうつ伏せたまま、無言でベルトのバックルを外してジッパーを下げた。
 女顔と友人から揶揄されることも多いユーノだが、多感な年頃の少年である。
 時折、こうして自慰に耽ることもあった。

 適当な頁を開き、無言で性器を擦り上げる。
 回数は、週に1、2回。
 ユーノにとって、自慰とは熱の籠らない、ただ自分の性欲を鎮静化させるためだけの事務的な行為だった。
 用いるポルノにも、頓着はない。特に偏った性的嗜好は無く、雑誌の中のありふれたセックスアピールをその場限りの対象とした。

 無論、身近に性的魅力に溢れた女性が居なかったわけではない。
 ユーノは出会った時から、なのはを異性として意識していたし、フェイトもはやても、周囲の異性の中では抜きんでて魅力的な女性だった。
 二次性徴の真っただ中のこの数年、ユーノがなのは達を女として意識しなかった筈がない。
 健全な少年なら、自慰の妄想の相手に供するのが普通の――ごく当然の、一般的な心理だっただろう。

411畜生道9 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:55:57 ID:ODgWVm/I

 だが、ユーノはそれを退けた。禁忌とした。

 ユーノにとって、なのはやフェイト達は、己の理想なのだ。尊敬すべき相手なのだ。
 崇高な――もしかしたら、宗教的崇拝にも近いかもしれない感情を、ユーノはなのは達に抱いている。
 そんな相手を、自分の自慰の妄想に供することなど、できよう筈も無かった。
 己が、なのは達に性的魅力を感じることすら、自分の汚点と信じ、己を下衆な人間だと蔑み続けてきた。
 そうして、ユーノは時折鬱屈した性欲を、顔の無いポルノ雑誌の女優相手に、機械的に吐き出すのが常だった。

 ところが、この日、ユーノの感情は己でも制御できないほどに昂り、熱を帯びていた。

『ユーノ・スクライア。君は、僕が親友に呼ぶに値する、立派な男だと心の底から信じてる』

 脳裏に、落ち着いたやや低い声と、自分を抱きしめる逞しい腕の感触が甦った。

「くろのっ……」

 意識しないうちに、その名が口から零れ落ちた。
 逞しい腕が、広い肩が、自分より一回りは高い背丈が。
 両肩に掌を置かれた時の熱が、額がくっつきそうなぐらい顔を近づけられた瞬間の、唇の光沢が、意志の強い黒い瞳が。
 次々と、洪水のように脳裏に溢れ出した。

「クロノ、クロノっ!」

 その名を繰り返し呼んだ。その度に、ユーノの秘所は固く反り返り熱を増した。
 
『昔、君のことを「フェレット野郎」だなんて悪口を言って、本当にすまなかった』

 クロノに耳元で囁かれているような錯覚がして、頭がくらくらとした。

「クロノ、クロノ、クロノ、クロノ、クロノ――――――っっっっっ!!」

 吼えるようにその名を叫びながら、ユーノは己の下腹に精をぶちまけた。
 それは、未だかつてユーノが味わったことの無い、強烈な快感だった。
 恍惚のあまり、口角から垂落ちるよだれを拭いもせずに、ユーノは口を半開きにして虚空に荒い息を吐き出した。

 射精が終わり、冷静さを取り戻した時に脳裏に去来したのは、まずは罪悪感だった。
 あの好漢を――クロノ・ハラオウンを、自分はあろうことか、自慰の妄想に供してしまった。
 その事実は、ユーノにとって、頬に迄鳥肌が立つ程の恐怖と後悔をもたらした。
 涙と鼻水を流しながら、次に抱いたのは、「どうして、」という困惑だった。
 自分はゲイではない。過去の自慰でも、男性を使用したことなど無い。それが、どうして今日に限って。

 だが時間が経つにつれ、困惑はさもありなんという納得へと変化していった。
 しっかりと意識を始めたのは最近のこと。
 だが、ずっと無意識に感じていた。意識に上らせるのを避けていた。

 自分は、なのは達の隣に立つには相応しく無い人間だという劣等感。
 なら、どんな人間ならいいのか? という問いと、クロノ・ハラオウンという答え。
 ユーノは、ずっとクロノのことを意識していた。
 クロノのようになりたいという羨望。
 クロノが羨ましいという嫉妬。
 最初に意識していた筈の相手は、なのはだった。
 それが、劣等感と嫉妬、羨望、あらゆる感情が歪みに歪んで縺れるうちに、その対象をクロノへと変えていったのだ。
 最後の引き金となったのは、今日のあれである。

「ごめんよ、クロノ」

 自分の醜さに怯えて震え、涙しながら、胸中で親友に詫びた。
 もう、こんな愚かな真似はしまいと、二度と、二度としまいと、固く胸に誓った。
 しかし。

「クロノっ」

 その名を呼ぶ度に、クロノのことを意識する度に、ユーノの性器は固さを取り戻し、再び熱く脈打ち始めるのだった。
 先ほど脊髄を駆け上った、麻薬よりも遥かに甘い快楽が脳裏に甦る。
 
「もう一度だけ、もう一度だけだ……」

 血走った目で性器を扱きながら、ユーノはうわごとのようにそう呟き続けた。

「ごめん、クロノ、どうして僕はこんなっ、こんなっ!」

 噛み締めた唇から、血が滴り落ちた。
 ――その行為がユーノの日課に堕ちるのは、ごく当然の結末だった。

412畜生道10 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:57:34 ID:ODgWVm/I
 
     ○ 


 その日は、晴天の霹靂のようにやってきた。
 いや、それは正しくはないだろう。
 ユーノはその日が来ることを、ずっと前から予期していたのだから。

 いつもと変わらない日常業務。本局と通信をしながら、無限書庫の浅い層で解析と検索を続けていた時のことだ。

『ユーノ、そっちのデータはどうだ?』

 通信越しのクロノの声に、

「もう解析を進めてる。なのはたちが戻るころには出そろうよ」

 朝飯前、とばかりに解析作業を続けながらユーノは軽やかに応じた。
 ……クロノを相手に、外面を取り繕うことにも慣れてしまった。
 数日は、罪悪感と羞恥心から、クロノの前で面を上げることが出来なかったというのに。
 クロノはユーノの異変に対して、好意的な解釈をして優しく接した。
 その変調の、真の原因を知らずに。

「はいよ、ユーノ」

 子供程の体躯のアルフが、古書籍の束を抱えて持ってきた。
 手が空いているというので、今日は助手を頼んでいるのだ。

「ありがとうアルフ。
 それにしても、アルフも、もうそっちの姿が定着しちゃったね」
「あー、まーね」

 狼の姿でフェイトと共に戦っていた使い魔は、微笑を口元に浮かべた。

「フェイトの魔力を食わない状態を追及してたらこーなっちゃってな。
 あたしはフェイトを守るフェイトの使い魔だけど、フェイトはもう十分強いしひとりじゃないし。
 ずっと傍にいて守るだけが守り方じゃないし。
 ――家の中のことやるのも結構楽しいし」

 新しい自らの生き方を見つけ、自分の道を誇りを持って歩んでいる使い魔に、ユーノは微かな嫉妬を覚えた。

「来年にはクロノとエイミィも結婚する予定だし、子供とか生まれたらもっと忙しくなるしね」

 その言葉に、ユーノの時間は停止した。
 ――今、何て言った?
 結婚? クロノと、エイミィが?
 エイミィ・リミエッタ。アースラでオペレーターを務めるクロノの幼馴染だ。
 確かに、昔から仲は良かったようだが。
 だけど、
 だけど、
 だけど、
 
 凡人じゃないか!?
 ユーノは胸中で悲鳴を上げる。
 どこにでもいる、ごく普通の女だ。別段突出した才もない、幾らでも代わりがいる、量産品の如きオペレーターだ。
 なのはやフェイト達の持つ宝石のような輝きも、クロノの持つ磨き上げた鋼の美しさもない。
 クロノ・ハラオウンという男に、到底釣り合わない凡婦! それがどうしてクロノの妻に――
 
 果てしなく混乱するユーノに頓着することなく、当のエイミィは秘密をばらしたアルフに口を尖らせる。

『ア〜ル〜フ〜、その話はまだ秘密だってー……』
「あー、まあ、いいじゃん」

413畜生道11 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:58:37 ID:ODgWVm/I
 焼けた鉄の塊を飲み込むような覚悟で、努めて、平静を保った。

「ええと……、おめでとうございます」

 苦笑交じりに、そんな如才ない言葉が出てくる自分が悔しかった。

『うう……、ありがとう……』

 モニターの向こうで、ばつが悪そうに顔を背けていたクロノに、ユーノは声をかけた。

「クロノも、やっと決心したんだね」
『まあ、色々とな』

 クロノは気恥ずかしそうに、けれど幸せそうに、微笑を浮かべて顔を伏せた。
 ――何より悔しいのが。
 ユーノ自身が、そのことを知っていたことだ。
 クロノもユーノも色恋話を好まない性格だったので、本人達から付き合っているという話を直接聞いたことは一度も無かった。
 けれど。
 休日に二人で歩いているクロノとエイミィを幾度と見かけたことがある。
 朴念仁のクロノが、エイミィに渡すクリスマスプレゼントを熱心に選んでいたことも知っている。
 きっと、知っていたのはアルフだけではないだろう。
 なのはも、フェイトも、そして自分自身でさえ、クロノとエイミィが恋人同士であることは、解っていた筈なのだ。
 ただ――誰も、それを言葉にして明言したことは一度も無かったから。
 だから、ユーノはずっと、その事実から目を逸らし続け、無かったことにしていたのだ。
 だが今、全ての真実は白日の下に晒された。言葉として明確な形を持った。
 もう、ユーノの心に逃げ場など無かった。

『というか』

 話を逸らそうとするかのように、エイミィはユーノに問うた。

『そーゆーユーノくんは、なのはちゃんと、ホントに何もないの?」

 ユーノは、にっこりと温和な微笑を浮かべた。
 それは、親友であるクロノが見ても、普段と何ら変わらない、いつもの柔らかな微笑だった。

「なのはは、僕の恩人で、大事な幼馴染みです。友達ですけど、それだけですよ、本当に」

 エイミィは嘆息を漏らす。

『まあ、2人とも仕事好きだしねぇ。まだ当分先かな、そういう話は』

 残念そうに眉尻を下げるその顔は、陽気でお節介焼きの、いつものエイミィだった。


   ○

414畜生道12 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 15:59:31 ID:ODgWVm/I

 なのはの魔力光にも似た、薄い桜色のコットンのワンピースと、バリアジャケットを思わせる、白いウールのカーディガン。
 大きく開いた胸元には、血の雫のような赤いレイジングハート。
 サイドポニーの髪を結えるリボンには、細かい意匠がこらしてある。
 なのはは普段からメイクを好まず、必要な時にも最小限に留めているが、この日は明るいピンクのルージュをその小ぶりな唇に引いていた。
 ――ユーノは最近、自分に会いに来る時のなのはの服装が以前に比べて派手になっていたことには気付いていたけれど、その日はいつにも増して艶やかな装いだった。

「なのは……似合ってるよ、その服」

 食事を共にする男のエチケットとして、軽くそのいでたちを誉めると、なのはの顔は瞬時に朱に染まった。

「本当! ありがとう、ユーノ君」

 屈託のない――まるで、出会ったあの頃と変わらない、少女のような微笑だった。
 
「う、うん。……何にしようか……」

 気恥ずかしさを隠すように、レストランのメニューにぞんざいに目を通しながら、ちらちらとなのはに視線を送る。
 ――今日のなのはは、どこか変だった。浮ついたような雰囲気で、サイドポニーの髪を指先に巻きつけ、ちらちらとこちらに視線を返してくる。

「ね、ねえ、ユーノ君、最近さ、わたし、色んな服を試してみてるんだけど……ユーノ君の好みの服って、どんなかな?」

 間を潰そうと口にしたお冷を、思わず吹き出してしまうところだった。
 本当に、今日のなのはは変だと、ユーノは訝しげになのはを見つめた。

「うーん。この前の紫色のワンピースも似合ってたけど、今日の組み合わせも凄く素敵だと思うよ。
 上手く言えないけど、……すごく、なのはらしさが出てていいと思う」

 咄嗟に口にした当たり障りも無い褒め言葉だったが、なのはは嬉しくて堪らない、とばかりに顔をほころばせた。

「あのね、クロノ君から聞いたの」
「クロノから?」

 一瞬、クロノの前で晒してしまった醜態を思い出す。
 しかし、クロノは友人の秘密や恥を誰かに吹聴する男ではないと、ユーノは即座に思いなおした。
 言いたいことははっきりと口に出すのが普段のなのはの性格だったが、この日は妙に歯切れが悪く、両の人差し指を絡ませるようにして、吶々と言葉を続けた。

「あのね……はやてちゃんの部隊のこと」
「ああ、そのことか」

 それで、ユーノはなのはの変調に対して合点がいった。

「わたし、凄く嬉しかったの。ユーノ君が来てくれる、って聞いて。
 ――ユーノ君が、わたし達と一緒に戦いたいって、言ってくれて。
 わたしも、フェイトちゃんも、はやてちゃんも、みんな不安を抱えてたんだと思う。部隊なんて、初めてのことだから。
 でも、ユーノ君が一緒に戦ってくれるなら、わたし、もう怖いものなんてないよ!」

 そう言って、なのはは両手でぎゅっとユーノの手を握り締めた。

「クロノ君から聞いたよ。ユーノ君、わたし達と一緒に戦うために、凄い覚悟をしてくれてるって。
 ミッドチルダに来て、わたし、時々不安になることもあったんだ。ここは、今までのわたしが歩いてきた道と、繋がってる場所なのかな、って。
 でも、ユーノ君が一緒にいてくれるなら、わたしはいつだって大丈夫。
 ここが、あの日ユーノ君と出会ってから歩いてきた道と地続きの場所だって、心の底から信じられる、安心できるんだ」

 なのはは、恥ずかしそうに頭を掻いた。
 どうやら、クロノはユーノの告白の中の、都合のいい部分だけを抜き出してなのはに聞かせたらしい。
 ユーノは苦笑する。

「まったく、クロノはしょうがない奴だな。全部話しちゃうなんて」
「そうそう、クロノ君のことだよ」
 
 なのはは、身を乗り出すようにしてユーノに語りかけた。

「ユーノ君も聞いた? クロノ君とエイミィさんのこと」

 ゴシップ好きは女の性らしい。内心うんざりしながら、ユーノはなのはの話題に付き合うことにした。

「ああ、まったく、めでたいことだよね」
「うんうん、良かったよね、クロノ君とエイミィさん。あの二人なら、きっと幸せになれるよね!」

 感極まったように声を上げるなのはに、ユーノは段々と自分が苛立っていくのを自覚していた。

「素敵だなあ、結婚かあ……。ねえねえ、結婚式はいつするのかな?
 エイミィさんの花嫁姿、早く見てみたいなあ……」

 胆の奥でぐるりと渦巻くものを押さえながら、ユーノはぞんざいな相打ちを続ける。
 
「クロノ君とエイミィさん、どんな風にして恋人同士になったのかなあ」

 まったく、付き合ってられない。何か適当に理由をつけて席を立とうした瞬間。
 なのはは特大の爆弾を落とした。

415畜生道13 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:00:34 ID:ODgWVm/I

「ねえ、ユーノ君――わたし達の関係も、そろそろ、少し変えてもいいんじゃないかな?」

 その言葉の真意を理解するのに、数巡の思考を必要とした。
 ユーノの沈黙を、どう受け取ったのだろうか。
 なのはは、自分を鼓舞するかのように、そっと作り笑いの微笑を浮かべた。
 いつも気丈な少女だった。その両手が、テーブルの上で不安に震えていた。

「わたし、ユーノ君のことが好きだったの。会った時から、ずっと好きだった――」

 その告白は、ユーノにとって、クロノとエイミィの婚約よりも予想外の出来事だった。
 ユーノにとって、なのはとは崇敬する対象であり、どこまで行っても、恋愛対象とはほど遠い――
 否、自分が恋愛対象とすることを許せない相手だったからだ。
 
「エイミィさんに、アドバイスして貰ったんだ。
 ユーノ君、にぶちんさんだから、わたしから告白しないと、ずっとお友達のままかもしれないぞ、って。
 ――えへへ」

 照れくさそうに額を掻くなのはは、確かに魅力的な少女だ。男なら、こんな少女に告白されて、頷かない朴念仁はいないだろう。
 けれども。
 ユーノの宿痾とも言うべき感情が、胸の中でぐるりと蠢いた。
 自分が、こんな魅力的な、輝かしい少女の隣に居られる筈がない。
 自分なんて、なのはにもフェイトにも及ばない、下賤な凡夫だ。
 己のことを気にかけてくれている親友を、自慰の妄想に使うような、畜生にも劣る最低の男だ。
 それを、どうして、己が最も美しいと尊敬する少女の隣に並べて飾れよう。
 なのはの隣に立つのに相応しい男、それは、あのクロノ・ハラオウンの如き男しか有り得ない。
 ――それが、ユーノの信奉する、最も美しい未来像。
 だが、もうそれが実現されることは無い。全て失われた。崩れ去ってしまったのだ。
 エイミィ・リミエッタという、無能にして厚顔無恥な女によって。

「迷惑だね」

 ユーノの口から発せられた言葉は、自分でも驚くほど冷え切っていた。

「なのは、君は僕の大事な友達だ。でも――それ以上の感情を、君に抱いたことはないよ」

 ぽかん、となのはは凍りついたような表情でユーノの顔を見つめていた。

「ユーノ、君」

 ぎゅっと、下唇を噛むと、なのははふにゃあ、と顔を緩ませて、無理矢理な笑顔を形作った。

「そっかあ、そうだよねえ、いきなりそんなこと言われても、困るよねえ、あはは。
 迷惑かけちゃったかあ、あはは、ごめんねえ、ユーノ君……あはは……、あれ、あれ」

 気丈な作り笑いを浮かべながら、幾筋も、幾筋も、大粒の涙が、なのはの頬を伝い落ちていった。
 なのははそれを拭い、何でも無かったかのように両手を振って取り繕い、気丈に微笑む。
 それでも涙は止まらず、次から次へと、なのはの両目から零れ落ちていった。

「ねえ、ユーノ君」

 零れる涙を拭いながら、鼻声でなのはは問うた。

「わたし達、これからも友達だよね?」

 ユーノはなのはの肩を優しく叩き、力強く頷いた。

「当たり前だろ――君は、僕の大事な友達だ」

 なのはは、安心したかのように、真っ赤になった目を弓にした。

「そっか……えへへ、良かった。ありがとう、ユーノ君」

 感謝の言葉と微笑みを残して、なのはは独り席を立った。
 入れ替わるように、注文していた料理がテーブルへと運ばれてきた。
 なのはが泣きながら席を立つ姿を目にしたのだろう。ウェイターは訝しげな視線をちらとユーノに送り、伝票を差し込んでいった。
 ユーノは湯気立てる料理が冷めきるまで、独りテーブルで呆然と虚空を見つめていた。

「僕は、死ぬべきだ」

 膝の上の拳は、青褪める程に握り締められ、ぶるぶると小刻みに震え続けていた。



     ○

416畜生道14 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:01:58 ID:ODgWVm/I

「あの女のせいだ。
 あの女のせいだ。
 あの女のせいだ。あの女のせいだ。あの女のせいだ。
 凡人の分際で、クロノに取り入ろうとしたせいだ。
 何一つ取り得もない、街を歩けばゴキブリのようにそこらで見かける、平凡な女の癖にっ」

 ユーノは、独り事を呟きながら、いつもの自慰を開始した。
 端正に片づけられていた部屋は無残に散らかり、花畑のように自慰で使用した黄ばんだチリ紙で溢れていた。
 卓上に重ねられていた貴重な魔導書の山は崩れ落ち、代わりに卓上を占めるのは、クロノの写真やクロノの写り込んだ雑誌の切り抜きだ。
 偏執的なまでに集められた数々のクロノたち。
 それに囲まれて、ユーノは己の性器を激しく扱き上げた。

『ユーノ』

 妄想の中で、クロノはユーノを抱きしめ、そのおとがいをそっと持ち上げ、口づけを交わす。
 決して太くはないが、しっかりと筋肉のついた腕で抱きしめ、クロノはユーノを愛撫していく。
  
 ……これが、誤った妄執であることなど、最初から承知していた。

 だけど。
 ふと、疑問に思う。
 己は、クロノを抱きたいのか、クロノに抱かれたいのか。

「どちらでもいいか、クロノなら」

 自嘲じみた笑みを浮かべて、ユーノは再び自慰に没頭した。
 ユーノの妄想は具体性を失い、ただどろどろと己に絡みつく「クロノ」のイメージへと変化していった。
 このまま、性感の高まりと共に、妄想とクロノと同時に精を放つのが、ユーノの自慰の常だった。
 
 ところが、この日は妄想にいつもは入らないノイズが混じった。
 エイミィ・リミエッタ。
 クロノに抱き伏せられ、嬌声をあげるエイミィの姿が、脳裏に広がったのだ。
 ゆっくりとエイミィの性器を愛撫するクロノ。クロノの逞しい性器を口に含むエイミィ。
 クロノはエイミィの豊満な乳房をゆっくりと揉みしだき、片足を優しく持ち上げて己自身を――、
 妄想が無限に広がっていく。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、とうしてあの女が!!」

 ユーノは眼鏡を外して壁に叩きつけ、ガリガリと美しい金髪を掻きむしった。
 息を落ち着かせ、もう一度クロノと自分で妄想を始めようとする。
 しかし――何度思い浮かべてと、クロノに組み伏されるのは自分ではなく、あのエイミィなのだ。
 だって。
 
 自分とクロノの妄想は、本当にどうしようもない、己の下卑た欲望から生まれた下らない妄想だが。
 クロノとエイミィの性交は、恐らく本当に行われただろうことなのだ。

 壁の時計を目にする。
 もう、夜の10時をまわっていた。
 もしかしたら、クロノは今この瞬間もエイミィと抱き合っているかもしれない。セックスしているかもしれない。
 想像するだけで気が狂いそうになって、ユーノは再び叫び声をあげた。

 ドンドン。

 唐突に玄関を叩いた音が、ユーノを正気の世界へと引き戻した。
 誰だろう? 自分の部屋を訪れる相手がいるとすれば、なのはか、――それともクロノか。
 期待に胸を高まらせて、玄関の扉を開けると、アパートの隣人が怯えたような顔をして立っていた。

「すみません、もう夜も遅いので、少し静かにして頂けませんか……」

 おそるおそる、それだけを伝え、隣人はそそくさと去っていった。
 ユーノを見る視線は、以前までの優しい隣人に向ける親しげなものではなく、紛れもない、狂人を見る目だった。
 思わぬ中断に驚かされたが、ユーノはそれでも自慰を再開しようとした。
 払っても払ってもエイミィの顔は浮かび上がった。
 不思議なことに、自分の意中の相手でないにも関わらず、性器は今までと同様に、いや、今までにも増して固く屹立していた。
 不意に、ユーノの脳裏に閃きが浮かんだ。

 ――そうだ。この女の顔が消えないのなら。
 ――僕が、クロノの代わりに犯してやればいいんだ。
 ――僕が、クロノの代わりに、このエイミィ・リミエッタを!!

 数時間後、己の精液に塗れ、ユーノは息を荒げていた。
 素晴らしい時間だった。己がクロノと交わるのではなく、己がクロノの代わりとなることを想像しただけで――
 ユーノの欲望は途絶えることなく、幾度も幾度も繰り返し精を放ち続けた。

 それでも、まだ足りない。
 ユーノは不満げな色を瞳に浮かべ、卓上に転がっていた、一冊の魔導書を手に取った。

417畜生道15 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:02:53 ID:ODgWVm/I

         ○
 


 ――ユーノの取った行動を端的に述べよう。
 第97管理外世界に転移したユーノ・スクライアは、海鳴市から離れた土地に移動し、インターネットで目星をつけておいたペットショップに入店。
 己のフェレット形態に良く似た姿のフェレットを買い求めた。
 一般的に流通している品種とは多少異なる部位も多かったが、流通していた個体数が多かったため、瓜二つと言ってよい程似た個体を買い求めることができた。
 
 ユーノは購入したフェレットのサイズや特徴などを確認すると、迷いの無い手つきで予め用意していた薬物を首筋に注射し、毒殺した。
 その後、死体をアタッシュケースに詰め、遺跡発掘の名目で末端の管理外世界に移動。
 
 作業を、開始した。

 術式自体は、取り立てて変わった所の無い、使い魔の作成術式である。
 人造魂魄の憑依、依り代となるフェレットの肉体の蘇生、魔力リンクの作成。
 直接戦闘には不向きなユーノだが、補助的な魔法の技能の一部は高町なのはをも凌駕する。
 事前に入念な下調べと準備を行ってきたユーノにとって、使い魔の作成は特にこれといった困難を感じない簡単な作業だった。
 使い魔はただ存在するだけで主の魔力を消費する。 
 そのために、作成の際には契約として使い魔が成すべき目的を定め、それに合わせた適度な能力を設定することが重要となる。
 フェイトの従えているアルフなどは、己の分身として働く非常に高度な使い魔であるが、ユーノが求めていたのは、アルフのような汎用性の高い上級使い魔ではない。
 自分の乏しい魔力量でも使役できる、単一能。
 擬似的な知能を与え、自分が常日頃から使用している探索魔法や、情報整理魔法を使用できるように転写する。
 最後に、仕込んだ変身魔法を実行させ、その姿が自分と寸分違わぬことを隈なく確かめた。
 その後、単純な思考ロジックを組み立て、話し掛けられた際に己と良く似た返答を行うように、指示を行った。
 そう。

 ごく短時間、自分の影武者となることにのみ特化した使い魔を作成し、秘匿したのである。

 なのはやクロノといった親しい友人たちを長時間に亘って欺き続けることは、出来ないかもしれない。
 けれども、付き合いの短い無限書庫の同僚たちなら、忙しく仕事に没頭しているような演技をさせれば、十分に騙しきれるだろう。
 
 本物のこの自分には及ばないが、無限書庫の司書として、そこそこの実務もこなせるように仕込んである。
 新人のローレルなどよりは余程有能な司書として働くことが出来る筈だ。
 足りない分は、今晩少々残業をして明日のために備えよう。
 思いを巡らせるユーノの瞳は、これまで近しい友人達も誰一人目にしたことの無い、冷たい翠色に輝いていた。



        ○

418畜生道16 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:05:00 ID:ODgWVm/I


 買い物帰りに、近所の公園のベンチで一休みをするのがエイミィ・リミエッタの日課だった。
 ベンチに座り、時に携帯プレイヤーで好みの音楽に耳を傾け、時に手持ちの文庫本を読み進めたりもする。
 公園で鬼遊びやかくれんぼに興じる子供たちの姿を見るのが、エイミィが好きだった。
 柔らかな頬を赤く上気させて、全身で感情を表現しながら、走り回る子供達。
 エイミィは、そっと自分の下腹を撫でた。
 ……自分とクロノの間に子供が授かったら、あんな風に元気に逞しく育ってくれるだろうか? 
 うん。きっと元気に育ってくれるだろう。
 ――だって、クロノくんとあたしの子供なんだから。
 そう自分の中で納得して、エイミィは頬を染めた。
 ――あたしったら、何て気が早いことを考えてるんだろう。はしたない。
 胸に手を当て気を落ち着かせ、自分を宥めようしているのにも拘わらず、ついつい頬が緩んでしまう。
 仕方のないことだろう。
 エイミィは今まさに、人生の春を迎えていた。長らく付き合ってきた恋人のクロノからのプロポーズ。
 もっと先のことだと思っていたのに。幼馴染の自分でさえ予想もしなかった熱い求婚を受けて、喜ばない筈がない。
 式の日取りはどうしよう、会場はどうしよう、ドレスはどうしよう。
 ユーノやなのはのような親しい人間にはなし崩しのように知られてしまったけれど、親族友人達にはどうやって報せよう!
 頬が緩み、ついつい鼻歌まで歌ってしまいたいような気分になる。
 仕方のないことだろう。
 エイミィは、ぐるりと馴染みの公園を見まわした。
 春の香は消えかけ、若葉が木々の梢に萌え出でている。
 結婚して家庭に入れば、こうして買い物帰りにここで一休みする機会も、自然と減っていくのだろう。
 それを考えれば、少し寂しくもある。

 ――随分、もの思いに耽っていたらしい。
 夕日は西の嶺に消えかけ、街灯の火があちこちで燈り始めている。
 随分、遅くなってしまった。
 空を見上げれば、夕焼け空は灰色に濁り、通り雨を予告するような水気を含んだ風が吹きつけてきた。
 エイミィはベンチから腰を上げた。
 公園のあちこちで見かけていた遊ぶ子供達の姿は、もう影一つ見当たらない。
 ――さっきまであんなに沢山いたのに。きっと、暗くなったからお家に帰ったんでしょう。

 
 あたしも、はやく、かえらなきゃ。


 家路に向けて歩きだしたエイミィの口元を、後ろから男の掌がそっと塞いだ。

「?」

 よく状況の掴めていないエイミィの耳元に、男が囁いた。
 
「動くな」

 瞬時に事態を了解したエイミィの全身を、氷のような悪寒が貫いた。
 どうする? どうする? 管理局の非常時の緊急マニュアルにも、このような状況を想定したものがあった。
 エイミィにとって可能な選択肢は――絶対服従のみ。
 魔導師でも戦闘員でもないエイミィには、一切の反撃の手段は無い。
 素人が下手に反撃などして犯人を刺激すれば、命に係る事態になりかねない。
 だから、どんなことがあっても、犯人に逆らうような真似をしてはいけないと、きつく戒められていた。

 エイミィは粛々と犯人の指示に従った。
 両手を後ろ手にまわされ、手錠をかけられた。猿轡を噛まされた。
 恐怖に満ち満ちた時間を、エイミィは心の中で最愛の婚約者の名前を繰り返し唱えながら耐え忍んだ。
 幸いだったのは、犯人が魔導師ではなかったことだ。
 犯人が魔導師ならば、封時結界を張り、外部からの行き来を遮断した上、手錠などではなく、バインドで全身を束縛された筈だ。
 だから。
 だから、きっと誰かが通りかかる。誰かが自分を見つけて、助けを読んでくれる。
 ――エイミィは、愚かにもそう考えていた。

 犯人は、全身を黒い服に包んだ、不気味な男だった。
 背丈は丁度、クロノと同じぐらい。そんな些細なことに、エイミィは苛立ちを感じた。
 目出し帽をすっぽりと頭からかぶり、その顔と表情は伺い知ることができない。
 ただ、血走った瞳が爛々と狂気を湛えてエイミィを見据えていた。
 犯人――ユーノ・スクライアは、見せつけるようけるようにポケットナイフを取り出して、その刃をちらつかせた。
 今回の犯行に当たって、偽装には細心の注意を払ってある。変身魔法による体格の変形、声色の偽装。
 そして、使用した結界は、ユーノの発掘した秘中の秘。
 それが結界であるということを、魔導師にすら悟らせない、最高に秘匿性の高い結界である。
 エイミィがそれに気付かなかったのは当然といえば当然だ。しかし、エイミィは一般人の犯行であることを確信して、通行人が通りかかる瞬間を待ち続けた。

419畜生道17 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:06:43 ID:ODgWVm/I

 ユーノはナイフをちらつかせながら、エイミィを彼女の愛用のベンチの傍の石畳に押し倒した。
 恐怖に震える彼女を満足げに見下ろすと、その刃で緩慢にエイミィの服を首筋から股下にかけて切り裂いていった。
 ここに至って、犯人の目的が単なる物取りや傷害ではないことを、エイミィがはっきりと理解した――理解できてしまった。

「んんっ……」

 今まで、震えながらも気丈に犯人を睨みつけていたエイミィが、顔を歪めて涙を零した。
 彼女の脳裏に去来したのは、犯人への恐怖か。それとも、これまでの輝かしいクロノとの思い出か。
 歯を食いしばるエイミィの顔面を、ユーノは唇から瞼まで獣のように舐め上げた。
 粘り気のある唾液が、エイミィの唇を汚した。幾度も、クロノから優しい口づけを受けた唇を。
 
「ひぃ」

 猿轡を噛み締め、頤を上げて白い喉元を晒しながら、エイミィは呻いた。
 彼女は恐怖と不快感と、それ以上の屈辱に、必死で耐えていた。
 ユーノの舌は、ねっとりとエイミィの乳房を這いまわり、徐々に股間へ向かって降りていく。
 エイミィは、ナメクジと百足の群れにでも這いまわられているように、不快げに顔を歪めた。
 小雨が、ぽつり、ぽつり地面に黒い染みを作りはじめた。
 夜気に晒されたエイミィの裸体にも、容赦なく雨粒が降り注ぐ。

 ユーノは思う存分にエイミィを辱め、その顔が屈辱に歪み、恐怖に震えるのを愉しんだいた。
 しかし、その瞳の奥に希望の灯火を残していることに気づき、不快げに目だし帽の舌の顔を歪めた。
 きっと、信じているのだ、この女は――クロノがきっと、助けてくれる。
 かっと、激情の炎がユーノの奥で燃え上がった。
 玩弄して屈辱に泣き噎ぶ顔を愉しむのはもうやめだ。助けなど来ないと――クロノはお前如きを助けないと教えてやる。
 ユーノは感情を昂らせれば昂らせるほど、頭の奥が冷えていくのを感じていた。
 
 この女から、何もかもを奪ってやる。

 ぐい、とユーノは落ちつた動きでエイミィの両足を押し開いた。
 エイミィの秘所が、冷たい外気に晒された。


 瞬間、エイミィは緊急時のマニュアルの内容も忘れて、全身全霊の力を籠めて、犯人の鳩尾を蹴り飛ばした。
 これから犯人に犯されるのだと思った瞬間に、脳裏に浮かんだクロノの顔が、エイミィに火事場の馬鹿力を与えていた。
 不意をつかれたのか、ユーノは毬のように跳ね飛び、公園の芝生へと転がった。
 両手を縛られたままエイミィは立ちあがり、必死に駆けだした。
 鳩尾を蹴り飛ばされたユーノは、芝生の上で嘔吐にえずいていた。
 今なら逃げられるかもしれない、そんな希望が、エイミィの足を動かしていた。

 公園の構造は熟知していた。最短経路で出口に向かえば、二分と経たないうちに、外に出られる筈だった。
 エイミィは走って、走って、走って――この公園はこんなに広かったっけ? と疑問を抱き、
 その瞬間、後ろから突き飛ばされるようにしてユーノに取り押さえられた。
 後ろ手に縛られていたエイミィは受け身も取れず、石畳みに顔面から倒れ伏した。
 
「舐めた真似をしやがって」

 目だし帽の中の瞳は、憤怒と狂気に血走っていた。
 ユーノはゆっくりとポケットナイフを取り出し、悪戯をした子供をお仕置きするように、エイミィの顔面を切りつけた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」

 猿轡を噛まされ、エイミィが声無き悲鳴を上げる。
 力任せに顔面に叩きつけられた刃は、運よく猿轡の一端を切り落としていた。
 エイミィの口許から、はらりと猿轡にしていた布片が舞い落ちる。
 その機を逃さず、エイミィは金切り声を上げて叫んだ。

「嫌、嫌ああああっ、誰か、助けてぇ、クロノ、クロノ、クロノっ!」
「その名前をお前が呼ぶなよっ」

 ユーノは理不尽な怒りを露に、組み伏せているエイミィの顔面を切りつける。
 犯人は子供の落書きのように、縦に横に、エイミィの端正な顔を切り裂いていった。
 エイミィは苦痛を恐怖に叫びながら、周囲へ助けを求め、クロノの名を呼び続けた。

420畜生道18 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:08:43 ID:ODgWVm/I
 
 ユーノは鬱陶しげに耳を押さえ、嗜虐的な笑みを浮かべると、顔を隠していた目だし帽を脱いだ。

「そんなに叫ぶなよ、僕ならここにいるよ」
「……嘘、クロ、ノ」

 エイミィが喉を詰まらせた。
 顔中を無残に切り裂かれ、視界の殆どは血で滲んでいても、見紛う筈はない。
 憎むべき犯人の顔は、エイミィの最愛の人、クロノ・ハラオウンと瓜二つだった。
 だが、その瞳は、愛すべき婚約者の優しげな目とはまるで似つかず、

「違う、あなたはクロノなんかじゃない!」

 愛する人の姿を汚した唾棄すべき犯人に、心底からの軽蔑と憎悪を籠めて、エイミィは叫んだ。
 ユーノは、獣じみた唸り声を上げ、怒りを剥き出しにして、エイミィの口中にポケットナイフを差し込んで、乱暴に掻き混ぜた。
 もはや言葉にもならない悲鳴と泣き声が漏れる。

「黙れ、僕はクロノだ、今だけは僕がクロノ・ハラオウンなんだ!
 お前のような凡人がっ、クロノの隣にいる資格なんてないんだ!
 イイザマだ! ははっ、二度と見られない顔にしてやった。
 でも、クロノがそんな程度で君を捨てるような男じゃない。例えどんなに傷物になったとしても――
 いや、傷物になればなるほど、君を深く愛するだろう!
 結局、損をするのは僕じゃないか!
 被害者面するなよ! クロノに愛されてるくせに! それ以上何か欲しいんだ!」

 口から泡を吹きながら叫ぶ言葉は、まるで人間の喋り方の体を為しておらず、獣の唸りのようだった。
 内容も支離滅裂で、まるで意味が通っていない。
 エイミィには、ユーノが何を言っているのか、寸分すらも聞きとれなかった。
 顔中の切創から流れだした血糊でエイミィの顔面は埋め尽くされ、その視界は完全に闇に閉ざされた。

 ユーノは、目の前の女がもはや何の脅威にもならないことを確認して、冷たく見下ろした。

 ――何故、クロノがこの女を選んだのかわからない。何の価値もない凡婦だ。
 ――ただ。
 ――どんな辛い時も、絶望的な時も、この女だけは、笑っていた気がする。

 血まみれのポケットナイフを投げ捨てる。
 両の掌を広げると、どちらも毒々しい程の朱に染っていた。

 ――自分が、狂いかけていることは、解っている。
 ――自分が、間違っていることも、解っている。

 己の顔を撫でると、生臭い鉄の香りがした。
 クロノ・ハラオウンそのものの己の顔を、ペタリ、ペタリとユーノは撫で続ける。

 ――なのは、クロノ。僕は、本当に君達が好きだったんだ、憧れていたんだ。
 ――本当に、君達のようになりたかったんだ。
 ――でもこれで、色々無くしてしまうだろう。
 ――僕の未来、僕の思い出、僕の矜持、僕の友達。

 顔が血で汚れるのも構わず、ユーノは己の顔を押さえる。

 ――クロノ、僕は君になった。君になれた。
 ――今日一日の、偽物の君に過ぎないけれどね。
 ――代わりに、僕が本当の意味で君のようになれる可能性は、完全に失われてしまったけれど。
 ――いいんだ、どうせ僕なんかが、君の隣に並べる可能性なんて、最初から無かったに違いないんだから。

 無残な姿で横たわるエイミィに視線を落とす。

 ――クロノ、君には本当に悪いと思ってるんだ。
 ――けれども。

 ユーノのズボンの下で、性器が熱を持って頭を擡げる。
 これだけの凄惨な場にありながら、ユーノはかついてない興奮に胸を高まらせていた。
 もはや阻む力もないエイミィの両足を掴み、ぐいと押し広げた。
 宝石でも愛でるように、その性器に顔を近づけ、うっとりと頬を緩める。

「ここに、クロノが……」

 その事を考える度に、背筋に電流が駆け抜けるような衝撃が走り、すぐにでも果ててしまいそうになる。
 ユーノは獣のように息を荒げながら、限界まで怒張した己の性器を取り出した。

 ――けれども。
 ――この女を通じてでも、クロノ、君と繋がりたいという欲望を、僕は押さえきれそうにない。

 
 ユーノははち切れそうな己自身をエイミィの入り口にそっとあてがった。
 弱々しくエイミィが地面を掻き、小さな悲鳴を上げる。
 ユーノは、そのまま己の欲望に身を任せた。

421畜生道19 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:09:50 ID:ODgWVm/I


  ○


 
 全てが終わっても、エイミィは身体を縮めて、無残な姿で凍えそうな子猫のように震えていた。
 簒奪者である筈のユーノの顔には、達成感の欠片もなく、空虚な瞳で小雨の降りしきる公園の暗がりを見つめていた。
 ユーノはぼんやりとした視線を、凌辱され尽くされた彼女の秘所に落とす。
 そこに流れる、見まごうことなき純潔の証の血を見つめて、静かに嘆息をする。

「婚約者相手に、結婚するまで貞節を守るだなんて、生真面目な君らしいや」

 小雨は徐々に雨脚を強め、情事の熱の冷め行くユーノの肌を、容赦なく打ちつけた。
 ……全てを幣として差し出して、遂にユーノは何一つとして手に入れられなかった事を悟った。



      ○



「はじめまして、モコ・グレンヴィルです。今日からこの無限書庫でお世話になります」

 少女は勢い良く頭を下げた。

「じゃあ、分からないことがあれば、当面はわたしに聞いてね」
「はい、よろしくお願いしますっ、ローレル先輩」

 ところで、とモコは目を輝かせてローレルに訊ねた。
 
「こちらの無限書庫には、名物になってる凄い司書長さんがいるって聞いたんですが……?」

 その言葉を聞いた職員一同の表情に、苦々しい翳りが生まれたのにモコは気付かなかった。

「ああ、彼ね……」

 そう呟くローレルの言葉の端には、諦めの響きがあった。
 ローレルは手早く手元の端末に、ユーノ・スクライアの顔写真と公開されている個人情報を表示して、モコに突きつけた。

「はい、これがうちの名物司書長、ユーノ・スクライアさんね。もし廊下ですれ違うことでもあったら挨拶しといて。
 ……と言いたいところだけど、そんな機会はまず無いでしょうね」

 モコは、ユーノの顔写真を食い入るように見つめて、瞳を輝かせた。

「うわあ、司書長さん、凄いイケメンじゃないですかぁ!
 齢もあたしと幾つも変わらないし、こんな大きな施設の司書長さんなら年収も凄そうだし、あたし、アタックしちゃおうかなあ!」

 その言葉を聞いて、ローレルは気まずそうに目を逸らして頬を掻いた。

「う、うん、まあ、わたしもちょっと前まではそう思ってたんだけどね」
「? ユーノ司書長、なにか酷い欠点でもあるんですか? 女癖が悪いとか……」
「そういう訳じゃないんだけど、ちょっとね……」

 ローレルに耳打ちされた内容を聞いて、可笑しくて堪らないとばかりにモコは吹き出した。

「何それ、変〜なの! やっぱり、天才肌の人って変人ばっかりなんでしょうかね?」

 やってられない、とばかりにローレルは宙を仰ぐ。

「そうそう、天才サマの考えてることはわたしら凡人には分からんわ。
 せっかく猫被って媚売ってたわたしが馬鹿みたいじゃん。
 あ〜あ、どこかに金持ちでいい男、いないかな〜」


     ○

422畜生道20 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:13:40 ID:ODgWVm/I

 ……その後、ユーノは唯ひたすらに無限書庫での仕事に没頭するようになっていた。
 エイミィ・リミエッタを襲った不幸な事件について、彼女の友人たちは共に悲しみ、義憤した。
 彼女の婚約者であるクロノ・ハラオウンは長期の休暇を申請し、心身に深い傷を負ったエイミィに優しく寄り添い、共に悲しみに身を浸した。
 管理局の担当機関による必死の捜索が行われたが、犯人の足取りは未だ掴めていない。
 目撃者はなく、魔力の残存反応も見られなかったため、非魔導師の一般人による通り魔的な突発的凶行と見られている。
 被害者の証言から、犯人が変身魔法を使った可能性も示唆されたが、数々の状況証拠は一般人による犯行であることを示していた。
 エイミィ・リミエッタが犯人の素顔を目にしたのはごく短時間であり、その最中に顔面に対する複数の切創を加えられていることから、エイミィの見たクロノの顔は、恐慌状態に陥った彼女が見た錯覚だろうと結論づけられた。
 ユーノ・スクライアが捜査の容疑者の線上に浮かぶことは一度として無かった。
 当然と言えば当然だろう。あまりに動機が存在しない上に、犯行の時間帯には盤石なアリバイが存在していたからだ。

 
 影武者を務めた使い魔は、誰一人その存在を知られることなく、ユーノに契約を解除されて塵として消えた。
 ユーノの社会的信用は極めて高く、わざわざ使い魔を作成してアリバイを作らなくとも、彼に嫌疑の瞳が向けられることは無かっただろう。
 なら、何故ユーノは自分の似姿の使い魔などを作ったのか。
 それは、狂い、歪みきっていたが、彼なりの美意識だったのだろう。
 ユーノは、クロノ・ハラオウンになりたかった。クロノ・ハラオウンになった。
 ならば、その時、ユーノ・スクライアという人間が、自分の他に存在していなければならなかったのだ。
 その行為の真意を知るものは無く、知られる必要も無かっただろう。
 だって、それはどこまで行っても、ユーノのマスターベーションに過ぎないのだから。


 ユーノへの取り調べは、エイミィ、もしくはクロノに怨みを抱くものがいないかを尋ねるごく短いものに留まった。
 取り調べの最中、ユーノは内心の恐怖と罪悪感を隠し通した。
 全てを吐露してしまうことで楽になれたのかもしれないが、その時にクロノやなのはが自分にどんな視線を向けるのか。
 考えただけで、ユーノの心は萎縮し、ただただ口を噤むことしか出来なかった。
 結論から言えば、エイミィ・リミエッタを暴行した犯人は捕まらなかった。
 非常に高い検挙率を誇る現在のミッドチルダの官憲を欺ききったユーノの特製の結界は、矢張り凡夫の及ぶものでは無かったということが、最も皮肉な形で証明されたことになる。

 しかし、二度目は無いだろう。
 ユーノがどこかでもう一度同じ術式を使用すれば、それがエイミィ暴行事件の犯行で使用されたものと同一であることを管理局は見抜くだろう。
 再びなのはの隣で戦うために編み上げた秘蔵の結界術式は、ただ婦女暴行の為だけに使用されて、永久に祓うことの出来ない穢れに染まることになった。
 
 ――もう二度と、好きとは言えない。好きと言っていた自分が許せない。 
 ――もう二度と、自分の中のどんな過去も思い出も、愛でることなど許せない。
 ――もう二度と、こんな自分が何かを誇ることなどあってはならない。

423畜生道21 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:14:30 ID:ODgWVm/I

 誇りも、夢も、思い出も、希望も、自分の全てを捨て去っても、償いきれない罪。
 なのは達の出身地、第97管理外世界には、「お天道様に顔向けできない」という言葉がある。
 人倫の道を踏み外した人間を謗る慣用句である。それは、正に自分の事だとユーノは臍を噛みしめる。
 幾度、自殺を考えたことだろう。
 薄汚い自分の命一つでは何の贖いになるとも思えないが、少なくとも楽になることだけはできる。
 自分を苛み続けている、今この苦悩から逃れる。その為だけに命を絶とうという甘やかな誘惑が、幾度脳裏を過ったことか。
 しかし、ユーノの中の冷静で打算的な部分が、この誘惑を退けた。
 今ここで命を絶てば、間違いなく一種の変死として扱われる。
 ただでさえエイミィの事件の直後で管理局が神経質になっている頃合いなのだ。
 ユーノの死後、動機の解明や殺人の可能性の調査、そして今までユーノが無限書庫の司書長として残した成果の業務整理など、様々な形での司直の介入が予想される。
 
 その結果として、自分の犯した罪が明るみに晒されるだろうことが、ユーノには容易に予想できた。
 
 クロノやなのはに己の罪行を知られて見下げ果てられるのは、「死んでもいや」なのだ。
 何という醜悪な自己愛なのだろう。何て見下げ果てた卑屈な自尊心なのだろう。
 
 無限書庫の底の暗闇の中で、ユーノは幾晩も罪悪感と自己嫌悪で噎び泣いた。

 天才達の間でコンプレックスに悩まされてきたユーノ・スクライアという人間は、今ここに、己の価値の全てを喪失した。 
 もう、百の成果も、千の賞賛も、ユーノの心に仄かな焔すら燈すことは無い。
 ユーノ・スクライアという器は、完全に罅割れてしまったのだ。
 もう、何を注いでも満たされることはない。


 残された道は、無限に逃避を続けるのみ。
 司書業に専念し、自分が適切に管理を続ける限り、件の結界術式が外部に漏れる心配はない。
 ――自分の罪行が、明るみに出ることはないと。

  
 償いきれぬ、己の罪の重さから逃げるかのように。
 全てから、なにより自分自身から逃げるかのように、ユーノ・スクライアは人の姿を捨て、フェレットとして無限書庫の底に潜り続ける。
 数週間が過ぎても、数ヶ月が過ぎても、――ユーノはただフェレットとして無限書庫に潜り続けた。
 その働きぶりには無限書庫の司書の誰もが舌を巻き、ユーノの成果をは過去100年の捜索結果を凌駕するものとして、数多くの賞賛を浴び、業績に伴う褒章が決定された。
 しかし、ユーノは受賞式を欠席し、代理としてローレル・アップルヤードが出席した。
 再三に亘る司書達の説得にも耳を貸さず、ユーノは授賞式の当日もフェレットとして無限書庫の捜索に没頭していたという。
 希有な才能を持った無限司書の司書長は、稀代の変人であるとの噂がミッドチルダの各地で囁かれ、その奇癖の原因を憶測する下世話な噂が各地で流れたが、真相に至るものは存在しなかった。
 部隊への参入の話など、最初から無かったかのように立ち消えた。
 外の世界では、目まぐるしく時代は流れ続ける。機動六課の結成、ジェイル・スカリエッティ事件――幾つも大きな事件が、なのはやクロノ達を翻弄したが、ユーノは全てに無関心だった。
 請われることがあればすぐさま必要な資料を検索して提出したが、己から外界に関わることは一切なく、過去の友人達はそんなユーノを案じて声をかけていたが、ユーノがそれに応じることは二度と無く、やがては交流も失われていった。
 事件で心身に深い傷を負ったエイミィだったが、ミッドチルダの最先端の医療と、献身的なクロノの介護の甲斐あって、その後、時折笑顔を浮かべる程度には恢復していることを追記しておく。
 三年遅れのささやかな結婚式が営まれたが、当然のようにそこにはユーノの姿は無かった。
 今日も、ユーノはただひたすら、子鼠が車輪を回すかのように、フェレットの姿で書庫の探索に没頭し続けている。

424畜生道22 ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:15:55 ID:ODgWVm/I


  ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  ちくしょう‐どう〔チクシヤウダウ〕【畜生道】

1 仏教で、六道の一。悪業の報いによって死後に生まれ変わる畜生の世界。
2 非道徳的な情事、性交。近親相姦。


  ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 エピローグ


 ミッドチルダの無限書庫の底には、一匹のフェレットがいる。
 かつては人であった筈のフェレットだ。
 そう遠くない昔、一つの出会いがあった。フェレットと一人の少女の出会いだ。
 その小さな出会いは、多くの次元世界を救ったのかもしれない。――しかし、当のそのフェレットは救わなかった。
 非凡なる才能を持っていた筈のフェレットは、だがしかし、余りに輝かしい才の持ち主を直視し過ぎたせいで、己の才を信ずることができなかった。
 フェレットは、今日もその四つ足で地を這い、黒く濡れた鼻をひくつかせ、黴の香の漂う古書の匂いを小さな胸に吸い込んだ。
 狭く苦しい筈の書架の隙間も、マフラー程度の大きさの身体のフェレットから見れば広過ぎる。
 フェレットは虚ろに、何処までも茫漠と続く書庫の隙間に視線を彷徨わせた。
 ――小動物そのものの貌からは、何の表情も読み取ることもできない。
 円く小さな黒い瞳をしばたたかせ、フェレットは手近な書に視線を落とした。



 ミッドチルダの無限書庫の底には、一匹のフェレットがいる。
 かつては人であった筈のフェレットだ。
 ……だがそれも、今となっては昔の話。


 ――己は人に非ず。心根賤しき、けだものなり。


 フェレットは自らをそう戒めて、今日も深く暗い窖の底で小さな体を丸め、ただ一匹、本の頁を捲っている。


 END.

425アルカディア ◆vyCuygcBYc:2013/02/10(日) 16:21:13 ID:ODgWVm/I
お目汚し、大変失礼いたしました。
お気分を害された方などいらっしゃりましたら、お気に入りのSSなどで気分転換をされて下さい。

ユーノ祭りの中、このようなユーノを貶めるようなSSを書いてしまい、申し訳ありません。
作者なりの歪んだユーノへの愛が籠められています。

さて、大変盛況なユーノ祭りですが、このような後味悪いSSで〆るのは申し訳ないので、
これからも、後味のよい素敵なSSを皆さまどんどん投下されて下さい!

426名無しさん@魔法少女:2013/02/10(日) 17:18:04 ID:QUC/9T7U

 惜しみなくGJ

 単なる欝のための欝なら中指立てて読み飛ばすのだけど、きっちり読ませる欝ほど恐ろしいモノはない

427名無しさん@魔法少女:2013/02/10(日) 19:15:14 ID:2tbTF836
狂気というか病的というか……GJでした
最初ユーノにとってのレイハさんは「輝き」だったのに後半では「血の雫」か
初めは穏やかなはじまりだったのにどうしてこうなった

428名無しさん@魔法少女:2013/02/10(日) 19:35:48 ID:cA8e50ps
万感の想いを込めて、最高だった、と言いたい。

正に至高の欝。

後味が悪くて心地よいとはなんちゅうアンビバレンツやろうなぁ・・・アルカディア氏の筆致の冴えはいつも本当に痺れる。

429名無しさん@魔法少女:2013/02/10(日) 22:11:17 ID:TLm37nGM
いやぁ、すごい…。
読み物で久しぶりに震えとドキドキがきました。
今夜眠れるかな?

430名無しさん@魔法少女:2013/02/10(日) 22:26:39 ID:bgpa3rv2
うんまあ感覚の違いだと思うけどあまりぴんとこなかった
そんじゃね

431名無しさん@魔法少女:2013/02/11(月) 01:16:53 ID:FWqv26sU
おおうなんちゅうものを読ませてくれるんや……
破滅的な展開が待っていると分かっているのにスクロールする手が抑えられなかったぜ……

432KAN:2013/02/11(月) 11:05:21 ID:dQ8saOv6
ご無沙汰してます。遅ればせながらユーノ祭りに参加させていただきます。
・ユーなの
・エロなし
・甘い系
この手の要素が駄目な方はスルーしてください。

433キス 1:2013/02/11(月) 11:08:45 ID:dQ8saOv6

 紙巻き器から取り出した完成品を手に取り、状態を確認する。巻き具合も葉の密度も問題なし。
既に手慣れた作業なので失敗することは稀だが、念のためだ。
 それをシガレットケースに収めて、以前作ってあった一番古い1本を取り出して咥えると、
作業をしていた机の上に置いてあったライターを手に取る。古めかしい装飾が施された、
普通のオイルライターより一回り大きめのそれは、過去の文明で使われていたものを
形だけ模したものだ。
 昔のままならドラムを回転させた摩擦でオイルに点火するところだが、これにオイルは
組み込まれていない。外見は古くても中身は現代のものだ。魔力を燃料に自分の魔力光と
同じ色の炎を点す仕組みになっている、魔導師専用の道具だった。
 それでも雰囲気は必要ということだろうか。機能的には意味がない回転ドラムは備わっていた。
回さなくても発火するが、ドラムを回すタイミングで魔力を込める者が大半だという。
 だからというわけではないが、ユーノもそれを実行した。独特の摩擦音に合わせるように
魔力を込めると翠玉色の炎が起きる。それを紙巻きの先端に近づけると数秒で紙巻きに火が点った。
煙に乗って甘い匂いが鼻腔をくすぐる。もともと『これ』は匂いを楽しむ物でもあったが、
それでは紙巻きにした意味がない。
 ゆっくりと、吸う。口に広がっていくのは甘味と爽快感。疲れた身体に活を入れるような、
意識をはっきりさせてくれるような、そんな感覚。

434キス 2:2013/02/11(月) 11:10:43 ID:dQ8saOv6
 それを十分に堪能し、紙巻きを口から離して、息を吸った時と同じくらいゆっくりと吐き出す。
細い紫煙が揺らめきながらのぼり、霞んで消えていった。
 発掘作業や無限書庫での検索業務、論文執筆で根を詰める時。精神安定と気分転換を求めて吸う、
スクライアが独自配合した紙巻きだ。
 それ程頻繁に使う物ではないのだが、市販されているわけではないので作成にどうしても手間を要する。
空いた時間にこうやって補充するしかないのが欠点だ。それに、作って長い間放置していると
香りも味も落ちてしまうので、大量に作り置きしておくわけにもいかない。
 とりあえず、シガレットケース1箱分。吸うペースを考えると、これが美味いままで吸える適量だ。
 さて、もう一口と紙巻きを咥えようとしたところで物音が聞こえた。それはドアのスライドする音。
来訪者を告げる音だ。当然ロックは掛かっているので、来訪者はそれを解除して入ってきたことになる。
 それができる来訪者はただ1人のみ。足音が徐々に近づいてきて、
「ユーノ君、こんにち――」
 声を掛けながらドアを開けて姿を見せたなのはが、ユーノを見て固まる。その視線はユーノの
手にある物に注がれていて、次にユーノが作業をしていた机に向けられて、
「だっ、駄目だよユーノ君! 管理局員が葉っぱに手を出すなんてっ! 管理局員じゃなくても駄目だけどっ!」
 盛大な勘違いを放ってくれた。タバコは駄目だよ、くらいの誤解を受けることはユーノも覚悟していたが、
まさかそこまで飛躍するとは。

435キス 3:2013/02/11(月) 11:12:15 ID:dQ8saOv6
 とは言え、そうなってしまう部分があるのも仕方ない。普通なら煙草をわざわざ紙巻きで
作る者は少数であるし、なのはは捜査官としての経歴も持っているのだ。その頃にそういった物を
目にしていて、そこから連想した可能性も否定はできない。 
「いや、なのは、これはそんな物騒な違法薬物とかじゃないから」
 ユーノは手招きしながら紙巻きを咥え、吸う。警戒というか不安を隠せないまま近づいてくる
なのはが間合いに入ったところで、煙をなのはに向けて吹いた。
 驚き離れようとしたなのはの足が止まる。ひくひくと鼻を動かして煙を吸い込み、甘い、と呟き、
「これ、ユーノ君のお部屋の匂いだ」
 と聞こえる声で口にした。
「そうだよ。以前、これを焚いた事があるのは覚えてる?」
 ユーノの問いになのはが頷き指した先には一基の香炉があった。なのはの記憶の中では、
それはユーノが香を焚く時に使っていた物であり、先の煙の匂いはその時の香の匂いと同じものだった。
「それと同じ物だよ。香として使う方が一般的なんだけどね。そういうわけだから、これは違法でも危ない物でもない。納得した?」
 意地悪くユーノが笑うと、なのははばつが悪そうに頬を膨らませた。なにせ自分の一番大切な人が
違法薬物に手を染めているなどという勘違いだったのだ。
「で、もしよかったら、吸ってみる?」
 口から離した紙巻きの向きを変え、ユーノはなのはにそれを差し出す。

436キス 4:2013/02/11(月) 11:13:30 ID:dQ8saOv6
「さっきも言ったけど違法薬物じゃないし、煙草でもないから身体に害があるわけじゃないし、
中毒性もない。吸い過ぎると気分悪くなるけど、人体に酷い影響を与えるものじゃないしね」
「え、と……」
「香で嗅ぐのと大差はないよ。場所を選ばない分、こっちがお手軽ではあるけどね」
 躊躇いつつも、なのははそれを受け取った。恐る恐る口にして、吸い、煙を吐き出す。
「甘い……それに、スッとする。うん、お香で嗅いだ時よりも強いというか、濃いね。
ユーノ君、これいつも吸ってるの?」
「いいや、疲れた時とか頭がボーッとする時とかにしか吸ってないよ。今のそれは、在庫処分的な
意味で吸ってたんだ。新しく作り直したからね」
「そうなんだ」
 言いながらもうひと吸いしようとしたなのはであったが。
(今のそれ……?)
 先のユーノの言葉を反芻する。そうだった。この紙巻きは、さっきまでユーノが吸っていた物だ。
つまり、ユーノの口が咥えていた物であるわけで、ということは、
(ゆ、ゆーのくんと、か、かかかか間接キ――!?)
 その事実を認識し、なのはが咽せた。
「ちょ、なのは、大丈夫?」
「だっ、大丈夫だよっ!? 何でもないよっ!? ホントだよっ!?」
 背中をさすってくれながら心配そうに見るユーノに対し、なのはは顔を真っ赤にして
そう誤魔化すことしかできなかった。顔を逸らし、紙巻きを吸う。
 そんな態度を不思議に思いながらもユーノはシガレットケースを手に取った。中から
1本を取り出して咥え、火を点けようとライターに手を伸ばしかけて、なのはを見る。
 先程渡した紙巻きを吸っているなのはの姿がそこにあった。煙草を吸う女性というとあまり
良いイメージがないのだが、赤い顔で必死に落ち着こうとしているその様は何とも可愛らしい。

437キス 5:2013/02/11(月) 11:16:03 ID:dQ8saOv6
 そこで、ふと思い出したものがあった。今とはまったくシチュが違うけれど、映画や小説等で
たまに見かける、煙草を吸う男女による行為。
 もちろん今までにやったことはないし、上手くいくかも分からないが、やってみたくなった。
だから、ライターを手に取るのは中止して、
「なのは、ちょっとこっち向いて」
「え?」
 声を掛け、振り向いたなのはに顔を寄せる。紙巻きを持ち、なのはの咥えた紙巻きに
その先端を近づけた。なのはの火にこちらの紙巻きの先端を触れさせ、火が移ったところで、吸う。
いつもどおりの味と香りが広がった。よし、うまくできた。
 なのははそのまま固まってしまった。顔は赤いままで、しかし紙巻きを吸うことは止めていないようで。
灰が落ちる前に香炉を灰皿代わりに差し出すと、ちゃんと灰をそこに落とした。
 やがて、ユーノもなのはも紙巻きを吸い終える。なのはは未だに固まっている。というか、
どこか惚けているようにも見えた。
「なのは、どうかした? ひょっとして合わなかった?」
 紙巻きが駄目だったのかと尋ねると、なのはは顔を少しだけ逸らして首を振った。
「ううん、そうじゃなくて……えと、さっきの……」
 こちらをちらりと見て、視線を逸らして、またこちらを見て。そんな事を繰り返しながら、
「え、っとね……すごく、ドキリとしたの」
「何が? 何に?」
「ほら、ユーノ君が自分の紙巻きに火を点けるために、顔を近づけたでしょ? あの時。
すごく顔が近くて、でもそれだけじゃなくて……普段は見られない雰囲気というか、大人っぽいというか、
色気があるというか……とにかく、すごくドキリとしたの。それに、紙巻きの匂いというか……
さっき、ユーノ君のお部屋の匂いだって言ったけど、これってユーノ君の匂いでもあるんだよ」
 そう言われると、そうなのかもしれない、とユーノは思う。紙巻きとして吸うのもそうだし、
香として焚くこともする。匂いが染みついていてもおかしくはない。
「だから、ね……この匂いに包まれていると、まるでユーノ君に包まれてるみたいで……」
 潤んだ瞳と紅潮した顔がこちらに向けられた。ゆっくりと、その顔が近づいてくる。
それにどういう意図があるのかは分かった。
 だから、ユーノも顔を近づける。程なく、2人の唇が重なった。
「……ユーノ君の味がする」
 すぐにも触れ合える距離でなのはが呟いた。
「えー、と……僕の方も同じ味がするわけなんだけど……じゃあ、これからは、僕にとってこの味は、
なのはの味ってことでいいのかな……」
 少し困ったような顔をして、それでもユーノはそう言って。
 再度、唇が重なった。今度はより深く、より情熱的に。

438KAN:2013/02/11(月) 11:17:58 ID:dQ8saOv6
以上です。
何だか久々に甘々系のユーなの短編を書けた気がしますが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
それでは機会がありましたら、また。

439名無しさん@魔法少女:2013/02/11(月) 11:41:58 ID:YWKWEHcM
リアルタイム投下に遭遇…
甘めええぇぇえええ

440名無しさん@魔法少女:2013/02/11(月) 11:50:32 ID:ZcgTvy36
>>438
グッジョォォォブ!
エロはないけど自然に甘甘なよいSSでした。

あれ?ユーノ祭りでなのはが相手なのってこれで2作目だ。

441名無しさん@魔法少女:2013/02/11(月) 12:07:36 ID:cUmUctuQ
GJ! なんか、ユーノ祭りが始まると聞いて、「こんなのが来るんじゃないかな」
と俺が予想していたようなSSが初めて来た気がする。
尋常じゃない変化球ばかりで、ストレートが逆に新鮮。

442名無しさん@魔法少女:2013/02/11(月) 18:40:23 ID:2d..PlAc
>>441
あれ?
俺いつの間に書き込んだんだ?

443名無しさん@魔法少女:2013/02/12(火) 03:20:14 ID:OwqWVcZY
ああ、ユーなのはこの甘さがたまらねえ。
結構癖になるよなこの甘さは。

444名無しさん@魔法少女:2013/02/12(火) 07:34:44 ID:6gsQ1JK.
吐き気を催す欝ばかりが氾濫する中、とてもよい中和剤になりました。

445くしき:2013/02/12(火) 22:43:30 ID:aRkxnGuM
甘々も鬱々もよいではありませんか
好きなものを選んで読めるバイキングですよ

では投下いかせて頂きます
・非エロ
・時系列的にはPSPゲームの二作目「GOD」の解決直後の話となります
・ユーノさんとシュテルさんがお話しするお話
・タイトル「太陽と明星」

では次からゆきます

446くしき:2013/02/12(火) 22:44:34 ID:aRkxnGuM
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

夜の闇を払うように、ちりちりと無数の火の粉が舞い踊る。

近くに停泊中の次元航行艦アースラの照明も喧噪も、木々や岩山を隔てたこちら側には届いてない。
荒涼とした無人の管理外世界を、立ち昇る火の粉だけが、淡く照らしている。

その灯かりの中、ただ1人佇む人影があった。

いや―――そもそも火の粉は、何かを燃やして生まれたものではない。
人影の周囲から微細な泡のように次々と小さな火が湧き出し、夜天へと舞い上がっているのだ。

闇の中、己の発する火で映し出される、陰影の強いシルエット。
暗闇に溶け込む紫紺の衣を纏い紅い杖を持った、小柄な少女。

『星光の殲滅者』(シュテル・ザ・デストラクター)。

高町なのはの姿を以って顕現した、理知と冷徹の『理』のマテリアル。
そして内に静かな熱情を秘める、炎熱の魔導師。

シュテルは瞑想するように目を閉じ―――自然体でただ、そこに佇んでいた。

447太陽と明星:2013/02/12(火) 22:45:27 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「あれ、シュテル……? どうしたの、こんな所で」

どのくらいの時間、そうしていたのか。
そんなシュテルの背後から、遠慮がちに柔らかな声がかけられた。

「……」

それまで微動だにしなかったシュテルが、ゆっくりと目を見開いてそちらへと向き直る。

シュテルが侍らせる炎に照らし出されていたのは、少女と身の丈とさほど変わらない、やはり小柄な人影。
炎の織り成す陰影の下でも映える金色の髪をした、少年。
ユーノ・スクライアだった。

「盾の守護獣との再戦の誓いを、先ほど果たして参りました。
 今は、胸の内に燻る戦火の余熱を鎮めているところです。
 ―――心躍る、良き戦でしたから」

不意に声をかけられたはずのシュテルは、驚く素振りもせず、あっさりと少年からの問いに答えた。
その際に身に纏う火の粉の勢いが少し強まったのは、戦いの余韻を反芻しての、感情の昂りだろうか。
少女の怜悧な容貌に一瞬だけ、獣性を充足させた猫の表情が浮かぶ。

「ああ、そうなんだ。
 そういえば、なのはも君と戦う約束をしたって言ってたね。
 ……やっぱりエルトリアに行くまでには、なのはとも決着をつけるの?」

「はい、戦わぬ選択肢はありえません。
 我が師とも思えぬ、愚問ですね。
 それとも私の心の内をすべて見透かした上での、弟子に宛てたあえての問いでしょうか」

「いや勝手に深読みされても。別に何も考えは無いよ。
 なのはも乗り気だったし、当事者同士納得してるならいいと思うけどね」

「ナノハと伍するか、越えられるのか―――後塵を拝するのか。
 いかな結果になろうとまずは決着をつけねば、この胸の炎の昂ぶりは本当の意味では鎮まりません。
 ナノハと私、同門弟子同士の戦いと相成りますが、師匠は手を出さずに見守りください」

鎮まりかけていた火の粉が、闘志という燃料を得て、再度荒ぶる。
何にせよ、シュテルが戦いに気負い、そしてそれ以上に愉しみにしている事だけは確かだった。

「……あと何回も言うけど、僕のことはユーノでいいから。
 君のせいで、未来から来た子たちからの『すごい人たち』の師匠だっていう誤解が解けないんだよ」

「本質は違えど、今の私の駆体も戦技も、ナノハのデータをベースとしています。
 貴方が、ナノハの体に仕込み開発した技術も知識も経験も、同じように私の血肉に刷り込まれているのです。
 ゆえにこの身も、心も、貴方あってのもの―――師匠が、私の師匠である事実は変わらないのですよ」

「いや確かに嘘は言ってなけど、それは相当に語弊がある言い回しだからっ!」
 
「何か問題でも?
 それともナノハに対して誤解を否定せねばならないような、爛れた関係をすでに築いているのですか?
 さすが師匠、隅に置けませんね。あやかりたいものです」

困りきった表情でユーノは申し出るが、シュテルのどこまでが本気は分からない慇懃無礼な振る舞いは、止まらない。
ついにユーノは諦めて、話題を切り替えた。

「うん……まあ、いいや。君に敵わないことだけは分かったよ。
 じゃあ、本題だけど。
 ……僕を、ここに呼び出した理由は?」

「そうですね。理由は、簡単なものです」

そう。
人気の無い夜の森の中、ユーノがここに来た理由は、ただひとつ。
シュテルからの―――より正確には、匿名でのこの場への呼び出しに応じたためだ。
指定された場所で目印とばかりに炎を纏う姿から、呼び手がシュテルであるのは明らかだった。
そしてシュテルも、決め付けたユーノの言葉を特に否定せずに続ける。

「ナノハとの戦いへの勝利に、万全を期すため。
 それまでに師の屍を乗り越え、その死を糧として―――さらなる高みに至りたいと思います」
 
少し不穏な単語が会話に入り混じるが、口調も声のトーンも、全く変わらない。
シュテルにとっては日常の延長上にあるごく自然な思考であり、会話。
そして、ごく当たり前の行動。

「私に殺されてください、師匠」

448太陽と明星:2013/02/12(火) 22:46:06 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「え……!?」

ふっ、と。
それまでシュテルの周囲で揺らいでいた火の粉が、一斉に消えた。
ユーノがここに来る際に使用していた光源は、シュテルの纏う灯りがあれば不要と判断したため、すでに消している。

無人の荒野に不意に降ろされた、夜の帳と。
そして新たに灯し直される、一条の『火』。
いや―――

「!」

ユーノは咄嗟にバリアジャケットを纏い、飛行魔法で真上へと躊躇なく跳んだ。
一閃―――現れた『火』は剣の軌跡を描き、直前までユーノの居た空間を薙ぎ払う。
迸る熱気はその先の岩棚に炸裂し、斬撃の形そのままに岩を溶かし崩した。

シュテルが手にしていたルシフェリオンの先端に炎の魔力を通し、槍のように『斬りつけた』のだ。

「―――シュート」

上空に跳び不意の斬撃をかわしたユーノを、シュテルは逃がさない。
ルシフェリオンの空振りと同時にシュテルの足元に魔法陣が展開、すぐさま6個の紅い誘導弾が宙のユーノを追う。

「チェーンバインドっ!」

ここでユーノは初めて魔法を使う余裕が生まれた。
対象は、ルシフェリオンを振り切って体勢が崩れたシュテル―――ではない。

緑の魔力鎖が展開するのは、ユーノの前面。
複数の魔力鎖が網目状に交差し、放たれた魔力弾そのものを投網のように絡め取った。

「ファイアッ!」

「くっ……」

さらにルシフェリオンを構え直したシュテルの追撃―――魔力弾を捕縛したユーノを、紅蓮の砲撃が狙い撃つ。
抜き撃ちとはいえ、炎に変換された大魔力の砲撃は、絶大な殺傷能力を秘めている。

しかしユーノはその砲撃を見越したように、斬撃や魔力弾には使わなかったシールドを厚く、大きく展開。
バリア越しに溢れる熱気に顔をしかめながらも、シールドは自体は堅牢で、揺るがず。
必殺であるはずの砲撃を、むしろ一連の連続攻撃の中で最も危なげなく受け止めきった。

「よく、すべて止めきれましたね。
 不意打ちから早々に焼滅していただくつもりだったのですけれど」

「……戦うのは2回目だからね。
 最初のをかわせたのは奇跡に近いマグレだけど、そこからの追撃パターンは前と一緒だったから助かったんだ。
 むしろ今のは、君の得意な砲撃で不意を打たれてたら、杖より隙は大きくても逃げられなかったと思う」

「なるほど、師の助言に感謝です。
 隙の少ない近接攻撃を初手に選択しましたが、不慣れゆえにかえって予備動作を気取られましたか。
 戦術構築レベルでの手落ちとは、理のマテリアルにあるまじき失態でした」

シュテルの忌憚の無い賛辞に、ユーノは驚愕と緊張で乱れた息を整えながら答える。

ユーノは今の攻防だけですでに息が上がり、冷や汗が吹き出ている。
一方のシュテルは息ひとつ乱さず、静かに、そして熱い闘志を絶やさずにユーノを見据えている。

少女の殺意は、まぎれもない本物。
そして語られる賛辞も謝意もやはり、一片の皮肉すら含まぬ、心からのものだ。

シュテルは、なのはと戦うためのいわば前哨戦として、ユーノを殺そうとしている。
迷いの無い行動から、シュテルの中でこの理屈は明白なものであることは間違いない。

けれど、とユーノはシュテルの言動に疑問を抱く。
それははたして、シュテルの本意なのだろうかと。

449太陽と明星:2013/02/12(火) 22:47:03 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「……シュテル、少し訊きたいことがあるんだ」

「なんなりと、どうぞ」

シュテルはルシフェリオンをユーノへと照準しながらも、さして戦い自体の続きを促すわけでなく、淡々と答えた。
それを受け、ユーノは息を整えながらゆっくりとシュテルへ問いかける。

「僕と君が戦う理由なんだけれど。
 ……別に僕を倒さなくても、なのはとは何の憂いも無く戦えるはずだよ。
 君自身も最初に言っていた通り、感情の区切りとしてなのはと戦うのであって、勝敗は関係ないはずだから」

「……?」

「だから改めて訊いてみようと思う。その上でで答えが変わらないなら、それでかまわないよ。
 ―――君は、何のために僕と戦うの?」

そう、ユーノはシュテルの言動に齟齬を感じた。
シュテルの言葉通りなら、ユーノを殺すのは、なのはとの戦いに勝利するため。
けれど戦いに勝敗は無関係であると、直前にシュテル自身が口にしているのだ。

「……」

ユーノの問いかけに、シュテルはルシフェリオンをユーノへと向けたまま沈黙した。

なぜこの局面で訊くのかという、疑問からではない。
その言葉を、時間稼ぎや命乞いと受け取ったわけでもない。
自らの言葉と行動の乖離を指摘され、それを否定する言葉が出なかったのだ。

何ら疑念を抱かなかった想いが、ユーノの一言でゆらぐ。

糧を得ねば、なのはに勝てないのか。
そこまでなりふりかまわずに勝たねばならぬ戦いなのか。
そもそも、その相手がユーノでなければならないのか。

改めて理論的に考えれば、導かれる答えはすべて『否』だ。

なのはとの戦いに、勝敗は無関係。
勝つに越したことは無いが、負けてもそれは己の未熟であり、それは受け入れられる。
なのはとの前哨戦であれば、盾の守護獣とすでに戦っており、それでも足らぬのならば、強者はまた別に居るだろう。
いかに技巧者でなのはの師といえ、戦う手段を持たない結界魔導師を戦闘の相手に選ぶ必然性は皆無だ。

ならばなぜユーノと、だまし討ち同然の行為を行ってまで戦いたかったのか。

「……」

「理由は、見つかったかい?」

シュテルが、仮にも戦いの中で無防備に内面を見返す経験は、後にも先にもこの時だけだったかもしれない。
そしてユーノはそんな少女をただ、見守っていた。
友人を気遣う少年の表情であると同時に、弟子の自覚を促す師のような面差しでもあった。

ユーノには、シュテルの行動に対して、ある程度の確信めいた推測がある。

例えば、彼女のオリジナルである高町なのはが戦うには、いつも確固たる理由があった。
なのはにとっての戦いとは、話し合えない相手との対話手段。
伝えたい想いを伝え、伝えきれない想いを読み取るための、声にならない言葉なのだ。

ならば、シュテルがこの戦いを仕掛けた理由は―――

「そう、ですね……見つかりました」

考えに沈んでいたシュテルの瞳に、意思の光が戻る。
けれどその表情は直前までのクールさとは違い、いささか朱が差しているようにも見えた。

「私ですら気付かなかった真意に気付かせていただいた、師の慧眼には感服いたします。
 しかしながら―――同時に、いささか業腹でもあります」

「……え? えぇ?
 なにか僕が、気に障るようなことでも……!?」

それは、ひょっとしたらユーノが初めて間近で見る、シュテル個人の静かな『怒り』だったかもしれない。
そしてその激情は、目の前のユーノへと向けられていた。

「ナノハを越えるため。
 最初に出会ったときにつかなかった、貴方との決着をつける為。
 理由はいくらでも後付けができますけれど、本当のところは……」

足を前後に広げて腰を落とし、ルシフェリオンを水平に構えた、全力砲撃を行う際の、なのはと同じ構え。
その切っ先に、全開の炎熱の魔力が問答無用ともいえる勢いでチャージされていく。

「ちょっと、話を聞いてくれるんじゃ……!?」

「聞きました。答えです。
 とりあえず1度、その記憶も体も余さず焼滅されて下さい。すべてはそれからです」

それまでのクールな言動を翻し、突然感情的になったシュテルによる極大砲火が、ユーノへと放たれた。

450太陽と明星:2013/02/12(火) 22:48:01 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「失礼―――少々、取り乱しました」

「うん。
 冷静に連続攻撃されたときよりも、今のほうが正直もうダメだと覚悟したのは秘密だけどね」

シュテルはいつも通りの涼しげな慇懃さで、スカートの端をわずかに摘み上げながら優雅に一礼してみせた。

地面をマグマ化させる熱量の砲撃をサーチライトのように振り回してユーノを追い駆けた直後とは思えない、平静な姿。
一瞬の激昂を、砲撃の熱として発散させてしまったような変わり身の早さだ。

一方のユーノは全身を燻らせながらも、何とかシュテルと向かい合っている。
砲撃の余波で周囲は焼け焦げ、暗闇の中に点在するマグマ溜まりが淡く照らす、別の意味での異世界の光景だ。

「それで……」

「本心を言えば。
 ただ貴方と、解り合いたかっただけなのかもしれません」

話を続けようとするユーノを遮り、シュテルは先ほどの続きを―――改めて気付かされた本意を、端的に語った。

ほぼ、ユーノの予想していた通りの答え。
相互理解のための最も効率良いコミュニケーション手段として、この少女は理性に基づき『戦い』を選択したのだ。
自分自身ですら気付かずに。

気持ちや考えを、言葉で他人に伝えるのが不器用で。
それどころか周囲の機微に聡くても、自分の事には、まるで鈍感。

やはり高町なのはとシュテルは、外見とはまた違う意味で、どこか似ている。
訥々と内面を語るシュテルを見ながら、ユーノは改めて2人の不思議な縁を感じていた。

「うん……そうだったんだ」

「ただし。
 だからといって、『貴方のことを知りたかった』などと本人も気付かぬことを、気付くように仕向けるとは……
 世界の終わる刻まで後悔に塗れながら煉獄で焼かれ続けられるべき、情緒に欠けること甚だしい行為です」

砲撃後の一礼以降、戦いの気配を収めていたシュテルの瞳が、再び静かに熱を帯びる。
斬撃にも砲撃にも移行できる炎の魔力を宿しつつ、ルシフェリオンの切っ先がユーノに向けられた。

「え……あ、うん、その……ごめん。
 軽々しく、生意気なこと言っちゃって……」

「何故謝らなければならぬのかを理解していない謝辞など、意味がありません。
 ……朴念仁なのは、他人を笑えたものではないでしょうに」

攻撃の脅威よりも、シュテルの静かな激情に晒されたことに戸惑い、とっさに頭を下げるユーノ。
しかしシュテルは、ユーノがその理由もわからぬまま謝罪していることを看破し、ぴしゃりと切り捨てた。

シュテルの矛盾を指摘して動機を見抜く洞察力がありながら、それによる感情の機微はまるで読み取っていないのだ。
そんなユーノのちぐはぐな朴訥ぶりが、シュテルから再燃しかけた炎を冷ました。

451太陽と明星:2013/02/12(火) 22:49:49 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「まあ、よいでしょう。
 貴方の後にはナノハと戦い、そしてその後は―――再会叶わぬ、刻を隔てた世界へと往くのです。
 無粋な我が師も、そして不屈の好敵手のことも。
 戦いの内で余すことなく識り、記憶に留めておきましょう」

依然、炎気を纏うルシフェリオンを構えたままではあったが、雰囲気を緩めてシュテルは語りかける。

「それと、腫れ物に触るように言葉を選ばずとも、もっと明け透けに話していただいて結構ですよ。
 こうして知る機会を設けているように、師としての敬意のほかに、貴方自身にも近しい想いはあるのですから」

「うん……ありがとう」

融解した地面からわずかに照らされるだけの少女の表情は、なのはの話に及ぶと愉しげになり、口数も増える。
だからユーノは、自然となのはの話題を口にした。

「じゃあ、聞かせてもらうけど……君にとって、やっぱりなのはの存在は大きいの?」

「はい。
 心の在り方を好ましく思います。
 ゆえに、もっと知り合いたい―――だから、戦います。師と同じように」

最初の頃のフェイトと話しているようだと、ユーノは1年前の出来事を思い出した。
なのはという共通の知人の話題を経ることで、滑らかに溝が埋まっていくのを感じる。
まるでその場に居ない高町なのはが、2人を繋げているように。

「なのはのことが、好きなんだね……ああ、変な意味じゃなくて」

「すこし、違いますね。
 親愛や友情と言うよりは―――憧憬と郷愁、でしょうか」

「……あこがれている、ってこと?
 それに生まれた世界も時代も違うのに、懐かしむような共通点があるの?」

シュテルの不思議な物言いに、ユーノは会話の流れを掴めずに困惑する。

ユーノの見る限り2人の関係は気の合う好敵手といった雰囲気で、互いの憧れというイメージからは遠い。
なのはの存在に、故郷への想いを感じるというシュテルの言葉の意図は、なおさらだ。

「……」

そしてその言葉を口にした後で、シュテルの表情が少し改まる。
また何も考えずに話しすぎたかと慌てるユーノを尻目に、少女は構えを解いて、唐突にくるりとユーノへと背を向けた。
永い時を歩んできた達観と、幼い子供のような繊細さを背負う、小さな背中だ。

「あ、そのっ……」

「……今からは、独り言です。
 私の言葉は誰にも語らず、夜明け前までに胸の内で焼却してください」

火の消えたルシフェリオンを片手に持ち替えたシュテルが、そのまま夜天を見上げる。
少女の後姿を見ていたユーノも、つられて夜空を見た。

夜といってもまだ夜半にも及ばず、シュテルが仰ぐ夜明け前の紫色の天には、まだ遠い。
けれど少女はそこに想いを馳せるかのように、ユーノに背を向けて、『独り言』を語りだした

452太陽と明星:2013/02/12(火) 22:51:11 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「柄にもなく、取りとめも無く、想うことはあります。
 ……我らマテリアルの出自や、そのパーソナリティの在り方について。
 理のマテリアルとしての理論ではなく、正反対の―――感傷と情動な物言いですけれど」

「……」

マテリアルの出自。
古代ベルカの時代に、紫天の書の構成体として創られたプログラム。
後に夜天の書に組み込まれ、闇の書の中に沈み、けれど意識は保ちながら、外界を観察し続けた日々。
その頃から『星光の殲滅者』の名もパーソナリティも確立し、胸に灯る『火』も確かにあった。

けれど、とシュテルは続ける。

「闇の書の枷から放たれてこの駆体を得たのは、3ヶ月前―――あの街の、冬空の下。
 ナノハのデータを得た『今の私』は、それ以前の私とは明確に異なる存在として顕現しました。
 だから今の私の故郷は案外、あの街と言えるのかもしれません。
 ……ナノハと同じ街の生まれという事になりますね」

永きを過ごしたはずの本来の駆体の感覚を思い出すことさえ出来ないほどに、新たな体は心地良くシュテルに馴染む。
あるいは元来のデータと、高町なのはのデータとの整合性が良かっただけの、単なる偶然の結果なのかもしれない。

ただ唯一、自分のものではないという違和感を感じるとすれば、それは―――胸の内で燃える、炎の熱さだ。
魔力と熱情の双方の源である胸の内の火は、時にシュテル自身が持て余すほどに熱く、強い。

確かに、覚えているのだ。
過去の自分はもう少し冷徹で―――御しきれぬほどに、熱くはならなかった。

原因を求めるとすれば、それは外からの要因。
つまりシュテルは、炎熱変換ではない心の熱を、高町なのはから受け継いだとも結論付けられる。

ゆえに、これはただの憶測であり、叙情であり、あるいは願望であるやもしれませんが、とシュテルは前置きした。

「レヴィは、闇の書に蒐集されたフェイト・テスタロッサが抱えていた心の『痕』から。
 ディアーチェは、闇の書が記録していた八神はやての拭い得ぬ心の『罪』から。
 そして私は―――
 闇の書の管制人格や騎士たちがナノハとの戦いの中で感じ取った、心の『火』から生まれたのではないのか、と」

だから、私の胸の内に在る、想いの源である『火』は、ナノハ自身の輝きなのかもしれません。

少女は、夜天を見上げながら呟いた。

453太陽と明星:2013/02/12(火) 22:52:18 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

過去と形を変えた、今の自分が自分であるが故のデータの、オリジナル。
『同郷』の先達。
それゆえの憧れと、故郷を同じくするものへの親近感。

そこに込められるシュテルの、高町なのはへの本当の想いは―――

「……別れたくないと、思っているんだ?」

「―――!」

思わず、ユーノの口から考えが漏れる。
同時にぴくりと、高町なのはと同じ後姿が震えた。

「……」

「その、ごめん……」

『独り言』という名の内心の吐露に、口を挟んでしまったこと。
そしてその言葉がまたしても、確信を突いてしまったこと。

先ほど、こっぴどくシュテルに非難されたばかりだというのに。
ユーノは自分の無神経ぶりを、本気で自虐する。

「―――このまま、貴方達がいる世界に留まるのも、とても魅力的だと思えるのは確かですね」

けれどシュテルは今度は咎めることなく、淡々とユーノの呟きに答えた。

「シュテル……」

「今更ですよ。
 見識のわりに気の利かない無粋な師匠のことも、記憶に留めておくと申し上げたでしょう。
 ……それに」

と、背を向けたときと同じく唐突に、シュテルはユーノへと向き直る。

いつものクールな立ち居振る舞いとは雰囲気が異なる、外見相応の少女の仕草で。
あるいは、猫の瞳のように気まぐれに燃え移る気性こそが、普段は表に出せないこの少女の本質なのかもしれない。

「私とて、矜持も羞恥もあります。
 出自を同じくする同胞にも話せぬ内心はありますし、それを抱えて葛藤するのも皆と変わりません。
 ……今、この場で話さなければ、おそらくはこの身が朽ちるまで誰にも言えぬ想い。
 ナノハでもなく、もう会うことのない誰かならよいというわけでもなく―――貴方なれば、話せたことです」

「そう……なんだ」

不意に向けられた素直な少女の一面に妙にどぎまぎとしながらも、ユーノはシュテルの胸の内を想う。

シュテルは行き場の無い葛藤を抱え、どこかで発散させる機会を望んでいたのかもしれない。
そんな少女が、自制心を払い内面を晒す事が許される機会と相手を得たのだ。
それが始めは死線をくぐる戦闘への欲求という形で現れ、そして今は取り留めない言葉となっている。

できれば穏便な形が良いのだが、そういった相手として選ばれたこと自体を、ユーノは嬉しく思う。
ならば、気の済むまでは話し相手であとうと、戦いの相手であろうと、付き合うべきだろう。
夜明け前までに忘れろ、ということは、少なくともそれまでは多少踏み込んで話してもいいのだろうから。

454太陽と明星:2013/02/12(火) 22:53:34 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「もし君たちがこの時代に残ったとしたら……そんな『もしも』の未来が、あったなら。
 君は管理局の嘱託魔導師にでもなって、なのはと一緒に空を飛ぶの?」

「それも、好いですね。
 ……けれど私の『故郷』では―――明星は、権威にはまつろわぬものなのですよ。
 ゆえに王のお守でもしながら、晴耕雨読の生活でもいたしましょうか」

唐突に振られた無意味な話題にも、シュテルは満更でもなさそうに考える。

『王』と『盟主』を抱く身でありながら、権威に従わぬという、矛盾に満ちた物言い。
シュテルを従わせているのは、義務や権威ではなく、ひとえに上に立つ者の人柄なのだろう。
ゆえに彼女は未練を断ち切り、未だ見ぬ世界へと旅立つのだ。

「……なのはは、残念がるだろうね。
 きっと君はフェイトやはやてとは違う意味で、いい友達になれただろうから」

「決着がついた後は、共に空を飛ばないかと誘われました。
 それで満足していただきましょう」

「うん……なのはにとっては、最高の親愛の言葉なんだと思うよ。
 なのはが魔法に出会って一番うれしかったのは『空を飛べること』だって言っていたからね」

高町なのはと同じ空を飛ぶことに想いを馳せるシュテルの顔は、まぎれもなく愉しげだった。
けれど、と少女は言葉を続ける。

「それに……ナノハと共に駆ける青空は、私には眩し過ぎるのですよ」

「眩し過ぎる?」

何度目になるかと言う意外な言い回しに、ユーノはただ相槌を打つ。
シュテルは、まだ何か言葉を続けようとしてる。
遮らずに最後まで、その胸の内を知りたかった。

「私が飛ぶのは、闇から暁へと変わりゆく、夜明け前の紫色の天。
 ゆえに私の座は、ナノハの隣ではなくディアーチェの懐にあるのです。
 明星は―――掴み得ぬ太陽に挑むために、紫天の空で一番強く輝く星なのですから」

明星。
太陽が昇る前の空で最も明るく輝くが―――太陽が現れればその輝きにかき消されてしまう星。

シュテルは、自分が明星であり、高町なのはが太陽だと例えている。

世界で、もっとも強い『火』―――並び立たず、それゆえに焦がれ、それでも掴みえぬ『太陽』。
それがシュテルのにとっての、高町なのはという存在なのだ。

「さて―――」

そこまで言い切ると、シュテルは下げていたルシフェリオンを両手で構え直した。

感情に振り回された外見年齢相応の少女は、もうそこに居ない。
目の前に居るのは、戦いによって師を知ろうとする、クールな理のマテリアルだ。

「―――胸のうちに篭る熱を、曝したところで。
 先ほどの続きを、お願いしたいのですが」

455太陽と明星:2013/02/12(火) 22:54:34 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

ユーノの返答を得るまでもなく、息苦しいほどに熱く、2人の周りの魔力が高まってゆく。
どこからともなく、誘蛾のようにゆるゆると焔気が渦を巻き、シュテルの掲げるルシフェリオンに集い始めているのだ。

「そうだね。なるべく期待に沿えるように、がんばってみるよ」

ユーノも特に文句も言わず、そして最初の奇襲のときのような焦燥と緊張に支配されることもなく。
『対話』に逸り、再び殺気すら纏い始めた少女へと向き合った。

「私の全力にして全開の炎―――抗う術は、ありますか?」

ユーノを知るために、全力で。
思いの丈を、全開に。
半身であるルシフェリオンに、すべてを込める。

「期待に添えられるよう、努力はしてみるよ。
 僕も結界魔導師として、なのはの集束砲撃をどう防ぐのかを考えなかったわけじゃないからね」

「はい―――では、魅せてください」

その言葉を合図に、ルシフェリオンの先端へと集まる魔力が、緩やかな流れから火の渦のように一気に高まった。

「疾れ、明星(あかぼし)。すべてを焼き消す焔と変われ」

高町なのはのそれを星屑が集まる様に例えるならば、シュテルのそれはさながら、火の粉の群舞。
あるいは、ユーノを待つ間に吹き上げていた炎の魔力も、この為の布石だったのかもしれない。

「我が魔導の、全てを賭けて」

炎熱の魔力を乗せた、集束砲撃。
魔力変換の資質は大魔力の運用と両立し得ないという常識をも組み伏せる、理の外にある切り札。
集まる魔力が同じと仮定すれば、炎熱変換を加味して、破壊力では高町なのはをも上回る一撃。

熱く、強く、理詰めで組み上げられた理不尽という、この少女自身を象徴するかのような魔法。

「轟熱滅砕―――真・ルシフェリオン・ブレイカー!」

456太陽と明星:2013/02/12(火) 22:55:38 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

底無しに高まる炎熱の魔力に対し、ユーノは臆せず魔法を唱える。
それに応じてユーノとシュテルを隔てるように現れたのは、広大な翠色の魔力シールド。

ただし、大出力の砲撃を受け止める『壁』のような堅牢なイメージはない。
面積自体は集束砲撃の直径を丸ごと飲み込むほどに広いが、相応の厚みがないのだ。
むしろ印象は、通常のシールドをそのまま大きく広げたような『膜』。
そんなシールドが、砲撃発射の瞬間に十数枚、ユーノとシュテルの間に重ねられるように配置された。

シールドを複数重ねて砲撃の威力を削ぎ、止める魂胆か。
いや。
その手段では高町なのはの集束砲撃すら止められないと、他ならぬユーノ自身がデータを検証して結論付けている。

事実、シールドはルシフェリオンブレイカーに触れた瞬間に、全く威力を削ぐこともなく割れ砕けた。

「―――ッ!」

そう、シールドであるにもかかわらず、砲撃の威力は削がれなかったのだ。
ならば『膜』の役割は、単純な防御ではない。

足を止めて砲撃を射出するシュテルが、ユーノの展開した『膜』の特性に気付いた。
最初のシールドを砕き通過した砲撃が、わずかな角度ながら外側へと『逸れた』のだ。
そして2枚目、3枚目と続けて通過するうちに同じ角度ずつ砲撃は外側へと流され―――

屈折角度を計算して、砲撃の射出角度の修正―――不可能。
シュテルは、もてるリソースの全てを砲撃出力と集束制御に割り当てている。
文字通りの全力の一撃であり、この砲撃射出中にリソースの再割り振りを行う余裕が無い。
何かを為すのは、すべて砲撃を撃ちきった後だ。

そして、最後のシールドが砕けた瞬間にシュテルの砲撃は止まる。
ユーノのすぐ脇から後方にかけての大地は大きく抉られ、溶岩流さながらに融解しているが、肝心のユーノは無傷。
全開の一撃は、余波でユーノの肌を火照らせる程度に留まり、全てが受け流されていた。

まるでシュテルの射出時間と総エネルギー量までを計算に入れて配置したような、幕引きだった。

457太陽と明星:2013/02/12(火) 22:58:35 ID:aRkxnGuM
▼▼▼

「……こうまで読み切られると、さすがに自分の不甲斐なさに立腹致します」

開口一番、シュテルは怜悧な表情の下に自分への苛立ちを滲ませる。
怒るというよりは、拗ねるような口調だ。

ユーノのことはこの上なく認めているが、それと悔しさはやはり別物である。
通じないとすれば、仕える王の沽券に係わのだ。

「そこまで褒められるものじゃないよ。
 ……さっきも言ったけど、僕は君の手の内をU-D戦まで含めて全部見ているわけだから、対策も立てられる。
 次はもう効かないし、新しい対抗手段なんて思い付かないから、一度だけしか効かないだまし討ちだよ」

「そこは誇ればいいのです。
 勝者が己を卑下する行為は、破られた側への侮辱になりますから。
 それに、お見せしましょうか―――いかな防御であろうとも、穿ち貫く技を」

水平に構えたルシフェリオンの切っ先に火が灯り、槍の穂先そのものの硬質のストライクフレームが形成される。
同時にその刃を包むように、爆発的な推進力を生み出す炎の6枚の羽が現われた。

「猛れ、甕星(みかぼし)。全てを穿つ、焔槍と変われ」

A.C.S――― 高速突撃砲。
高町なのはがリインフォースとの戦いで見せた、シールドをその穂先で貫いての、零距離砲撃。

意地になって負けを認めない子供のようだ、とユーノはシュテルを見て思う。
もしかしたら、高町なのはの攻撃をすべて受けきれたなら、彼女もこんな表情を浮かべるのだろうか。

「まあ、ここまできたら最後までつき合わせてもらうけどね。
 ……でも極論、僕には君を倒せない。それだけは確かなんだけど」

「簡単です。私に、『参りました』と言わせてください。
 それで最初にして最後の逢瀬は、お開きにしましょう」

「難しいよ……もう手持ちの引き出しも少ないんだし」

「大丈夫。できますよ、私の師匠であるならば。
 では、往きます―――ユーノ・スクライア。
 貴方のすべてを、識るために」

かくしてこの対話は、夜明けまで―――この世界が紫天の空を迎えるまで続けられた。

▼▼▼

翌朝。
戦場の傍らで気絶していた盾の守護獣が、煤まみれのまま1人でアースラに歩いて帰って来たのは、また別の話。

458くしき:2013/02/12(火) 22:59:11 ID:aRkxnGuM
以上でした。

では、失礼いたします。

459名無しさん@魔法少女:2013/02/13(水) 00:15:54 ID:tyeMiXUA
乙乙
砲撃言語って言葉が読んでる間ちらちら頭をよぎったw

460名無しさん@魔法少女:2013/02/13(水) 01:07:18 ID:BXmnE.qk
>>458
投下乙です。
伝えなければならない…分かり合うとはこんなにも物騒だということを(ぉ

461名無しさん@魔法少女:2013/02/13(水) 01:39:24 ID:qQtccN6A
乙乙

何故か前書き部分のユーノとシュテルがお話しのところで
OHANASHIと読んでしまったが砲撃言語という意味では間違ってなかったw

462名無しさん@魔法少女:2013/02/13(水) 13:38:02 ID:OuujjZkY
2人の間なら~確~かに、感じぃぃぃぃらぁれるぅ~♪
先生、続きが読みたいです

463acht ◆bcRa4HtgDU:2013/02/13(水) 21:00:25 ID:qQtccN6A
|д`) どうもおばんです 寒さがきつくて筆が進まず遅刻失礼しました
例によって一晩仕様のゆーなの短編です

・甘さを感じる暇なんてなかった
・Vivid直前
・フェイトそんはまともだけど不憫
・独自設定

以上の要素が含まれておりますのでご注意下さい
タイトルはネタバレなので最後につけます悪しからず

464acht ◆bcRa4HtgDU:2013/02/13(水) 21:01:38 ID:qQtccN6A


世間を騒がせたJS事件から半年。機動六課も無事役目を終えて解散し、高町なのはは原隊である教導隊に復帰した。
しかしながら半年の間、無理をせずに療養していたにも関わらず、未だ後遺症は癒えておらず、デスクワークが彼女の主な仕事になっていた。
もっとも、それだけが彼女が仕事の方向を変えた理由ではない。
ヴィヴィオを引き取り、母としての役割を持つことになったことは無関係ではないはずである。


「ただいまー」

「お帰りなのは」


大抵の場合、まだ仕事をしている同僚たちにちょこっとだけ罪悪感を覚えつつ、なのはは定時で帰ることが多くなった。
寝る時間すら削って指導に全力全開で向かう姿勢から、もしかするとこの若さでワーカーホリックなのではと心配していた周囲は一様に胸をなでおろしたという。
むしろ最近では、今日は珍しく早く帰宅しているフェイトの方が働きすぎなのでは、と言われるほどである。
尚、このことについて人間変わるものだな、と年寄りくさいことを言ったクロノは三十前の人間の台詞じゃないねという妻の“口撃”で轟沈している。


「やあなのは、お邪魔してるよ」

「お帰りなのはママー」


こちらも仕事人間疑惑のある無限書庫司書長がヴィヴィオと戯れていた。フェレット姿で軽く手を挙げる様がどこかキマっているのは気のせいだろうか。
ただしユーノの場合、歴史の資料の宝庫とも言える無限書庫という仕事場は、息抜きのためにこもってもいいとさえ思う空間なので仕事中毒とは少し違うのだが。
ヴィヴィオは休日に結構な頻度で無限書庫の一般開放区画へ行って本を読んでいる。自分なりにJS事件で思うことがあったのだろう。
古代ベルカ関係の文献を解説書片手に四苦八苦しながら読んでいるのを休憩中だったユーノが手ほどきして以来、すっかり仲良しになってしまったようである。


「ただいま。うちの方に来るのは珍しいねユーノくん」


確かにそうだね、とあごに手を当てて神妙な顔をするフェレット。付き合いが長いせいかなのはには表情が分かるのだが、周囲は黙って首を横に振る。
書庫で会った縁とでも言うのだろうか、ヴィヴィオとユーノが出会うのは専ら無限書庫や図書館、本屋など、書物繋がりが多いという。
約束もせずにどうしてそうよく遭遇するのかとなのははいぶかしんだが、行きつけの場所を両者に伝えていたのが本人であることは忘れているようである。
ヴィヴィオがユーノを解放すると彼はぴょんとソファーに飛び乗って変身魔法を解除した。
あごに手をあてたポーズはそのままなのだが、どうして皆にはフェレット姿だと表情が想像できないのだろうか。


「実は最近知ったのだけれど、なのはの故郷では夫婦は結婚指輪というものをするらしいね」

「そうだよユーノくん」


ヴィヴィオの頭を撫でていたフェイトが怪訝そうな表情で顔を上げる。
ユーノは博学ではあるが、管理世界ならともかく、管理外世界の風習を知らなくても無理はない。
だが、この話の流れで何故唐突に結婚指輪とか夫婦という言葉が出てくるのだろう。
フェイトは一瞬、自分がフェイトママ(父)というポジションならば、
なのはママ(母)とおそろいの結婚指輪をするべきなのかと思ったが、いや、それはおかしいだろうと打ち消した。
立ち位置はともかく、それはおそらく法的な夫婦のするものだ。友達感覚のアクセサリーとしてのおそろいならともかく。


「そうなると、僕はなのはとおそろいの結婚指輪か、それに代わるようなものを贈るべきなんだろうか」

「んーでも指輪は教導のときに危ないから外すことになっちゃうからねぇ」


なんだかんだでやっぱりこういうリラックスした時でも仕事思考が入ってしまうんだな、とフェイトは心の中で苦笑しながらヴィヴィオを抱き上げようとして――

465acht ◆bcRa4HtgDU:2013/02/13(水) 21:02:25 ID:qQtccN6A





「え」






停止した。









「えっと、なのは、ユーノ。それってどういう」

「あれ、言ってなかったっけ」

「そういえば六課結成のどたばたで伝え損ねたような気もするね」

「忙しかったから仕方ないね。わたしの里親をどうしようかーとかもあったんだろーし」


あはは、と笑う二人とフェイトママ知らなかったの、と不思議そうな顔で見上げるヴィヴィオ。


完全に凍結状態だったフェイトが解凍され、真相を聞き出して愕然とするまで、もうしばし、時間がかかるのであった。

466acht ◆bcRa4HtgDU:2013/02/13(水) 21:04:20 ID:qQtccN6A

タイトル『結婚したって本当ですか?』
実はなのはさんとユーノは既に結婚していた説。

ワーカホリックさんたちだから式を挙げている余裕がありません。

どうも作中の既婚者さんがデスクワーカーであっても指輪をしている様子がないので結婚指輪の文化はミッドにはないっぽい。
なのはさんは言うまでも無く教導官なので普段はしてない。
→じゃぁなくてもいいか(現実主義者二人が集まるとこうなる

両親
→ユーノ側はそもそも許可をとる相手がいるかすら怪しいし、高町家はなのはが決めたことならなんだかんだで通してしまいそう(中卒→警官を認める家族だし

仕事中毒じゃなかったと見せかけてやっぱり思考が仕事中毒だったでござるという話でした。
ユーノとなのはは一緒にいるのが自然すぎて周りが変化に気付かない甘さというのが似合うんじゃないでしょうか

467acht ◆bcRa4HtgDU:2013/02/13(水) 21:05:40 ID:qQtccN6A
追記

知らないのはフェイトさんだけじゃなくてはやてとか他の面々も全く気付いてません
フェイトそんだけ除け者ってわけじゃないんだよ あたふたさうるふぇいとそんかわいい

468空の狐:2013/02/13(水) 23:36:47 ID:atpqfn56
ありそうで怖い。そして、フェイトそんの慌てる顔が目に浮かびます。

ところで、14日はバレンタインですが、
0時からバレンタインネタのを投稿してもよろしいでしょうか?

469名無しさん@魔法少女:2013/02/13(水) 23:56:27 ID:a4fTjFI6
YOU ヤッチマイナYO !

470空の狐:2013/02/14(木) 00:02:00 ID:z4n2vN.U
ありがとうございます。
それでは、『みんなのバレンタイン』始めます。
ユーノ編、トーマ編、エリオ編の三段構成です。

471みんなのバレンタイン:2013/02/14(木) 00:02:45 ID:z4n2vN.U
 バレンタインデー、それは親しい異性に対してプレゼントを贈る日なのだが、日本ではいつの間にか女性がチョコレートを贈る日となってしまった。まあそこはチョコレート会社の陰謀であろう。
 本来は地球の宗教の祭日が変化したものではあるものの、地球、特に日本からやってきた者たちの手によっていつの間にか管理局でも広まっていたのだった。

「司書長、受け取ってください!」
「ありがとう」
 休み時間に新人の女性司書からチョコを受け取る。本日二十個目のバレンタインチョコだった。
 司書の子を見送ってから袋の中に入れる。
「毎年のことだけど、多いねえ」
「だいぶ慣れたけどこの量はちょっと……ねえアルフ」
「手伝わないよ。ていうかそれは失礼だと思うよ」
 まったくもってその通り。女の子が作ってくれたチョコを他の誰かに食べさせるなんて……
 しばらくは間食は全てチョコかなとユーノは諦めて、
「ユーノくーん!」
 聞きなれた女の子の声に振り向く。

472みんなのバレンタイン:2013/02/14(木) 00:03:30 ID:z4n2vN.U
「なのは」
 そこにいるのは管理局の制服に身を包んだ幼馴染の女性。
 その手には可愛らしくラッピングされたチョコ。
「はい、バレンタインのチョコ」
「ありがとうなのは」
 チョコを受け取ってそれを袋に入れようとしたけど、
「えっと、ユーノくん、できたらすぐに食べてほしいかな」
 そんな風になのはがお願いしてきた。
「え? うーん、そうだね折角もらったんだから」
 ささっとユーノはラッピングを解く。
 出てきたなのはのチョコはハート型の直球なデザインだった。特に変わったところはないなあと思いながらチョコを食べる。
 最初に感じたのはビターな味。砂糖は控えめで、チョコの持つ本来の香りと苦みが口の中に広がる。少しなのはっぽくないなとユーノが思った瞬間に甘みが広がる。
 クリーミーな甘みがビターな甘みと一体となって段々と味が変わっていく。見ればチョコの中にチョコとは違う白いクリームのようなものが入っていた。
「これ、面白いね。二段階に味が変わるんだ」
「うん、毎年普通のチョコだと飽きちゃうかなって思って。どうだった?」
「すごくおいしかったありがとう」
 ユーノの言葉になのはは華やかな笑顔を浮かべる。
 その後ろでアルフはあちーっとワザとらしく汗を拭っていた。




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