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おんJ艦これ部SSの会

1名無しのおんJ提督:2015/10/29(木) 13:12:22 ID:RHlKpXUc
えすえすをとうかするところ

2名無しのおんJ提督:2015/10/29(木) 13:15:17 ID:RHlKpXUc
もしも初期艦が大戦艦大和だったら。
発端はこ↑こ↓
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1446032616/918-



薄汚れた壁紙、段ボールの転がる小さな部屋で、ただ二人の体温だけがあった。
そんな時代を思い出しながら、少女は自らを慰める。
二人で肩を寄せ合った部屋と同じ狭さの個人部屋に、今は独り。
それが日常だった。

輝かしい戦功と裏腹に、彼女の気持ちは鈍く曇っていた。
二人きりのあの頃とは違い、大所帯となった鎮守府ではたくさんの艦娘がせわしなく生活している。
今となっては自分も艦隊の火力の一員でしかない。
いや、大飯食らいで入渠ドックを占拠する分厄介者なのではないか。
自分が傷を癒している間に、彼は欲を癒しているのだろう。
自分以外の誰かと。
やはり戦艦と?自分によく似て、しかしより燃費のいい後輩と?
それとも軽巡や重巡のような身軽さが本当は好みだろうか?
空母たちも、魅力的な人ばかり。そういう対象になっても不思議はない。
駆逐艦や潜水艦のような子を手にかけてはいないと思いたい。
最近は直接戦闘に関われない者も、異国からの新人も増えた。
彼女たちが、彼に取り入るために?
そこまで考えて、はっと頭を振った。
傷に身を痛めようと、不満を心に溜め込もうと、健気な仲間たちを貶めることを考えてはならない。
のぼせているのは薬湯にではなく、自分にだったらしい。
小さく頬をはたき、ため息をつき、そして目を閉じる。
思い出すのは戦火の中の仇敵でも、陽だまりの中の仲間でもなく。
ただ、深い夜の中のあの人だけ。
心身共に火照るのは、これもまた、薬湯のせいではないのだろう。

3名無しのおんJ提督:2015/10/29(木) 13:16:43 ID:RHlKpXUc
目を覚ますと、そこは真白だった。
いつか北方で見た白よりも無機質で、いつも思い出す白よりも純潔な色。
耳を澄まさずとも、はしゃぐ駆逐艦の子たちの声が聞こえる。
涼やかな風と花の香りに紛れて、薬品臭がつんと鼻腔を刺す。
喉の渇きを癒そうと体を起こして、やっと自分が浴衣を着ていることに気付く。
本当にのぼせて医務室に運ばれたのだと理解するまでにそう時間はかからなかった。

それからしばらくしないうちに、カーテンが手繰られた。
顔を覗かせたのは、「しばらく安静」のメモを残した明石ではない。
意外と言うべきか、ちょうどと言うべきか、提督その人であった。
「大戦艦が倒れた」と、その片言だけを真に受け駆け付けた彼は、この季節にあって大粒の汗をかいていた。
艦隊を束ねる勇士らしからぬ表情は、かすり傷におろおろしていた新人君と同じ顔で、思わず笑みがこぼれる。
それを、快復ととったか皮肉ととったかはわからない。けれど、釣られて彼も笑ったことは紛れようもなく事実だ。
二人きりで笑顔になれば、当然話も弾む。
新任の提督に手違いで配属された日のこと。仲間が増えていったこと。
最近の間宮の新メニューのこと。秋祭りのこと。クリスマスのこと。
いつの間にか手が重なっていること。赤く染まったお互いの顔のこと。

彼の口づけが昔よりも不器用になっていること。
彼女の薬指だけに輝くことになるこれからのこと。

二人の話は終わらない。

4名無しのおんJ提督:2015/10/29(木) 13:27:47 ID:RHlKpXUc


5名無しのおんJ提督:2015/10/29(木) 19:10:37 ID:D/nlOWdo
乙やで

6名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:40:12 ID:G/jPi8z.
書いたので一応投稿しておきますが、内容がまとまってない上に文章力も酷いのでご注意下さい。

「榛名は大丈夫です。」
彼女はいつもそう言っていた。
榛名を置いて最終決戦に出撃したあの日も、他艦娘に指輪を渡したあの日も、榛名はいつも通り私に微笑みかけてくれていた。
だから私は気が付かなかったのだ。
彼女の想いを・・・、そして彼女の苦悩を・・・。

7名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:41:05 ID:G/jPi8z.
榛名を一等秘書艦娘に指名したのは、まだ戦艦も数隻しか着任しておらず、ろくな戦力が揃っていない弱小鎮守府の頃であった。
「嫁艦(ヨメカン)」。提督個々人が様々な理由をもって特別に感じる特別な艦娘・・・私の鎮守府にもその嫁艦が初めて誕生したのだ。
艦娘が嫁艦たる存在になる経緯は鎮守府ごとに様々だ。
容姿や性格、愛しさ、衝撃的な出会い・・・色々ある。私の鎮守府の榛名の場合は「絶大な信頼」というものが嫁艦に選ばれる最大の理由であった。

着任した当時の榛名はとてもか弱く見え、先に着任した戦艦たちと比べてどこか頼りなく思えていた。
思わず本当に戦艦なのか心配になってくるほどだった。
しかし彼女は私の予想を大きく反した活躍を見せた。
我が鎮守府初の高速巡洋戦艦であることを武器に、彼女は他の艦とは比べ物にならない戦果の山を築いていった。
そんな彼女に私は知らぬ間に魅了されていた。

8名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:41:42 ID:G/jPi8z.
ある日、大本営から書類が送られてきた。
「ケッコンカッコカリ許可申請書」と書かれたそれは、所有艦娘の強化改修を拡充できる申請書であった。
欲を言えば所有艦娘全員分を申請したかった。だが当時大本営は一隻分しか寄越さなかった。まぁ向こうの懐事情もあるのだろう・・・。
私は迷うことなく榛名に対してこの申請を行った。
これは私が榛名に対する信頼の気持ちを初めて形として表した瞬間であった。
加えて執務室隣の部屋を改装し、ケッコン艦専用の個人部屋を作った。(通常艦娘の部屋は相部屋なので、これは破格の待遇である。)
大本営から承認艦を識別するために指輪をつけさせろと指示が来たので、私は有り金を全て叩いて指輪を作り、彼女に渡した。
彼女は精一杯の平静を装っていたが、指輪を受け取るその手は小刻みに震え、目は潤んでいた。私はそれを見てとても嬉しかった。そして心の底から今までの頑張りに感謝した。
それ以降、榛名を主軸とした私の鎮守府は数々の作戦で奮戦し、遂に現存艦娘をすべて保有する大規模戦力にまで発展した。
私も多くの艦娘を従えることが出来て楽しかったし、榛名も大艦隊を束ねることに尽力してくれた。

9名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:42:23 ID:G/jPi8z.
しかし、今思えばこの頃から少しずつ環境が変わっていったのである。
大規模作戦における超強力な敵艦隊、それに対抗する新改装技術の導入や大火力を持つ大和型の配備。
榛名に対する信頼は変わらなくとも、大規模拠点として勝利を掴むという義務に縛られた新戦力の投入が活発になり、相対的に榛名が作戦の第一線へ出撃する機会は減っていった。

そんな中ある夏の日、私は大本営に書類を出した。大和のケッコンカッコカリ申請だ。
新戦力として加入した彼女は重要作戦で大戦果を挙げ、私はその感謝の気持ちを込めて指輪を贈ったのである。
その1年後、続けて比叡にも指輪を渡した。彼女も数々の作戦遂行の功労者であった。
このころになると、私は榛名に対して特別な行動を起こすようなことをしなくなっていた。
「榛名は何もしなくても私の鎮守府の最高戦力であり、もっとも信頼のある艦娘だ。それは決して揺るがない。」そう思っていたからだ。
そして榛名も私にいつも通り微笑みかけてくれていた。その心に抱える不安を押し殺して・・・。

次第に榛名の戦果が落ち込んできていることに気付いたのはそれから暫くしてからのことであった。
私は榛名を執務室に呼んだ。

10名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:43:15 ID:G/jPi8z.
「榛名、最近出撃してもあまり良い戦果をあげてないようだがどうかしたのか?調子でも悪いのか?」
「い・・・いえ、榛名は大丈夫です!戦況に余裕がありそうでしたので他の子に経験値を譲ろうと思いまして・・・。」
「そうか。お前がそう判断したんだったらそれで良いんだ。すまんなわざわざ呼び出して。」
「すみません提督、ご心配おかけして・・・。」
「いや、別にいいんだよ。ちょっと心配になっただけだから。」
「・・・・・。」
「何かあったのか?」
「!?・・・あ、いえ、ええっと・・あ、さ・・・秋刀魚漁の方はどうなってるのかなーと気になりまして・・・。」
「ああ。あっちは比叡が頑張ってくれてるよ。数を確保するために出撃が多いからね。高速戦艦でケッコンしてる彼女のおかげで助かってるよ。」
「・・・そうですか。・・・では私は用事があるので失礼致します。」
「ああ。」

私はこの時何も違和感も感じなかった。なぜなら榛名が私に隠し事をすることは今まで一度も無かったからだ。
私は榛名を心の底から信頼している。だから榛名の行動・言動を探るという発想には至らないのだ。
しかしこれは私の慢心だった。この時既に私の知らないところで榛名には限界が来ていたのである・・・。

11名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:43:46 ID:G/jPi8z.
その日の夜、日付も変わり演習リストの更新手続きをしていると、執務室のドアをノックする音が聞こえた。
遠征艦隊は1時間前に長時間遠征に出撃したばかりだし、ほかの艦娘はもう就寝している時間だ。
一体誰だろうと扉を開くと、そこには大和が立っていた。

「大和?こんな夜更けにどうしたんだ?今日は秘書担当艦でもないだろ?」
「提督、少しお話を聞いて頂いても宜しいですか?あ、ほら!大和ホテルの特製クッキーも持ってきましたので。」

笑顔を交じえ気楽そうにそう話す大和であったが、その眼から普段感じない真剣な面持ちが感じ取れた。
私は彼女を部屋に入れた。

「で、話ってなんだ。」
普段座っている執務机の長い背もたれ椅子ではなく、応接用の対面ソファーに座りながら大和に尋ねた。
「まぁまぁ、とりあえずクッキーでも食べて気楽にしてください。」
大和はテーブルにクッキーの入ったカゴを置き私の対面に座った。
大和とはこういった感じでよく2人で話をする。流石に今日は来る時間が異例ではあるが、彼女は大戦艦であり我が艦隊のエース艦だ。
作戦についてだったり鎮守府運営についてだったり、積もる話はある。
ただ今回はいつもと少し違うようだ・・・。

12名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:45:36 ID:G/jPi8z.
「来月開始されるっていう秋作戦についての相談か?」
小さめのクッキーを口に入れながら気楽に尋ねた。
「いえ・・・、その話ではなくて・・・。」
「だろうな。」
「こういうことをするのは提督に大変失礼だと思うですが・・・。」
「前にここで金剛と砲戦おっぱじめて、1週間私が工廠で寝る原因となった君が今度は一体どんな失礼をしてくれくれるのかな?」
私は軽い冗談を言った。堅苦しい空気が嫌いなのである。
「・・・・。」
大和が無言になった。これは本当に大事な話なのだと再認識した。私は姿勢を正した。
「すまん、言ってくれ。大事な話なのだろう?」
「・・・はい。」
大和が重そうな口を開いた。
「先ほど榛名が私の部屋に来ました。」
「・・・榛名?」
「はい。とても落ち込んでいました。あんな榛名を見るのは初めてでした・・・。」
「は、榛名が?さっき会ったが、いたって普通だと思ったが・・・。」
「・・・提督、今から無礼なことを申しますがお許し頂けますか?」
「ああ、続けてくれ。」
「最近の榛名をどう見ておられましたか?」
「榛名を・・・?」
「彼女は今とても不安に襲われています。不安で不安で、でもどうしようもなくてとても精神的に弱っています。」
「不安・・・?あいつは今まで激戦を戦い抜いてきた私の自慢の艦娘だぞ?一体どんな不安が・・・」
「そうじゃないんです。」
「え・・・?」
「・・・提督は、榛名という子をどう想っておられるのですか?」
「・・・。」
「いえ、わかってます。榛名はこの鎮守府の中心艦娘・・・提督も彼女には全幅の信頼を寄せていらっしゃいます。」
「私はうちの子はみんな信頼している。まぁその中でも彼女は特段信頼しているよ。」
「榛名は、この鎮守府がまだ未熟な時期からここにいます。」
「ここに来て、一生懸命頑張って戦果をあげて、提督に信頼され、そしてケッコン艦になるまで成長しました。」
「・・・・。」
「つまり榛名は、今まで出撃を重ねに重ね、提督との信頼を築いてきたんです。」
「まだ着任して1年ちょっとしか経ってないのによくそこまで理解できるな、お前は。」
「吹雪ちゃんが話してくれるんです・・・、この鎮守府の歩みを。1つ1つ丁寧に・・・。」
「初期艦の鏡だな、あいつは。」
「でもここ最近、提督は榛名を第一線から退かせましたよね?」
「ああ・・・、私も作戦成功の責務があるからな。最近の作戦は君みたいな高火力艦や防空艦のような特殊艦の運用に重きを置いているよ。それがどうかしたのか?」
「榛名は・・彼女はそれでとても不安だと言っていました・・・。」
「不安・・・?」
「『私は提督の信頼を失ってしまったのだろうか?』『私はこの艦隊の戦力にはなってないのだろうか?』と。」
「馬鹿を言うな!彼女は私が持つ最高で最強の艦娘だ。誰が何と言おうとそれは変わらん!」
思わず語調が強くなってしまった。しかし大和は冷静だった。

13名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:46:07 ID:G/jPi8z.
「では、彼女にそれを伝えたことはおありですか?」
「・・・!」
「提督は彼女に思っていること、感じていること、そういったものを行動で示したことはおありですか?」
「・・・あまりないな。」
「そうでしょう。私も提督からそのようなお言葉を頂戴したことはありません。」
「でもいいんです。言葉にしなくても伝わってくるんです。提督が私たちをどれくらい信頼しているのかが・・・。」
「・・・そうか。」
「私は指輪を頂いた時、提督は私のあるべき姿というのを一度だけ教えてくれました。」
「『我が鎮守府で君を常用するのは無理かもしれない。ただ君は我が鎮守府の砦だ。これからの戦いにおいて最後には必ず君に出番が来る。だからその時までしっかり準備をしておいておいてくれ。』と・・・。」
「・・・。」
「そうおっしゃって下さったので、私は出撃がなくこうして鎮守府でのんびりしていても何も思うところはありません。(少しは寂しいですが・・・。)」
「比叡には聞いていませんが、彼女は今秋刀魚漁に出撃していたりと出撃が忙しい身。特に思うところはないと思います。」
昼間の榛名との会話が頭をよぎった。
無神経にも彼女の前で比叡の活躍を口にしていたことを思い出した。
「でも榛名は違います。彼女はそういうボジションに居たくないんです。」
「榛名は・・・提督と一緒に出撃して、一緒に戦って、そして提督に自分を見ていてほしいんです。」
「・・・榛名。」
「だ、だが、それなら何故そのことを相談してくれないんだ・・・?榛名が隠し事なんていままでしたことなんか・・・。」
「提督!」
大和が突然叫んだ。大和級の威圧が私の全身を走り回った。
「まだお分かりにならないのですか・・・?」
その眼には涙が浮かんでいた。
「榛名は言わないんじゃくて言えなんです・・・。」
「何も言わないのに私たちへの思いを伝えている提督に、言葉にして伝えるなんて考えに彼女がなるとお思いですか?」
「・・・。」
「ああ見えて彼女はプライドの高い子です。提督と長年付き合っている彼女なら、提督みたいに言葉にしなくても伝えられると考えるでしょう。」
「・・・。」
「提督は明らかに私を信頼してくれている。でも最近提督が私を必要と思ってない気がする・・・。でもそれを言葉にして聞けば自分の未熟さを提督に見せてしまう。」
「その葛藤が彼女を苦しめているのです・・・。お気づきでしたか?」
私は頭を垂れた。発する言葉が思い浮かばなかった。大和を見てられなかった。
私は提督・・・いや人間として失格なのだと思った。
そう昼間の会話、あの時気づくべきだったのだ。秋刀魚の話をしたとき、私は比叡の話をした。
彼女も榛名と同じ高速戦艦のケッコン艦だ。そんな比叡が出撃して自分が出撃しない。そのことを疑問に思わないわけがない。ちょっと考えればわかることだ。
私は身勝手だったのだ。榛名という子を勝手に自分の理想的な存在と決めつけ、何もせず、何も与えず、何も気にせず、ただ放っておいたのである。
榛名ならわかってる。榛名ならわかってくれる。そういって彼女のことを考えるのを怠ったのである。これほど腐った人間は他にいないだろう。

14名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:46:48 ID:G/jPi8z.
「私は・・・私は上に立つべき人間ではないのだな。大和・・・私はどうしようもなく無神経な人間なんだな・・・。」
そんな事を言った瞬間、とても温かい抱擁が私を包み込んだ。大和だった。
「提督、・・・私は提督からたくさんのものを頂きました。多くの幸せ・出会い・感動、そして数えきれない思い出を頂きました。」
顔は見えなかったが、明らかに涙声だ。
「着任歴が浅い私がこんなに沢山の物を頂いたんです。きっと榛名は、私の何倍も素晴らしいものを頂いているはずです・・・。」
「些細なことなんです。榛名に言葉にする勇気を与えてあげてほしいんです。」
「提督・・・あの子を助けてあげてください。私の知ってる提督ならそれができるはずです。」
大和は抱擁を解きながら両手をそっと私の両顔に添えた。左手の薬指に嵌った指輪が頬に触れた。
ヒヤリと頬に感じた感覚が自分のすべきことを教えてくれたかのようだった。私の決心が固まった。
「ありがとう大和・・・、お前もケッコン艦だもんな。迷惑をかけたな・・・。」
「いいえ、提督。今夜は冷えますので、早めに寝室にお戻りくださいね。」
大和が優しく微笑み彼女の頬を涙がつーっと流れた。
「ああ、行ってくるよ。」
私は立ち上がり、出入り口に向かった。
扉に手をかけたところで私は立ち止まり、大和の方を見た。
「大和」
「はい?」
「言おうか迷っていたが、やはりちゃんと言っておこうと思う。」
「何をです?」
「クッキー、何か分量を間違えてるぞ。」
驚いた顔をした大和が慌ててクッキーを口に含んだ。
「・・・提督・・・それは伝えるべきことではないのでは?」
大和は顔を赤くしながら頬を膨らました。
「ははっ。」
私は大和を残して執務室を出た。

15名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:47:30 ID:G/jPi8z.
榛名の部屋は執務室の隣だ。大和と比叡の個室と3部屋並んでいる。
ノックをしたが返事はなかった。扉が閉まりきっていなかった。鍵は開いているようだ。
「榛名、入るぞ。」そういって部屋に入った。艦娘の自室に入るのはこれが初めてであった。
真っ暗な部屋には誰も居なかった。大和は榛名を自室に帰したと言っていたが、どこかに行ってしまったのだろうか・・・。
「ん?」
よく見ると奥の隠し扉が開いた形跡があった。有事の際にとケッコン艦の3部屋に取り付けたもので、扉の先は私の自室と繋がっている。
私は隠し扉を開け自室にそっと入った。

明かりが消えた暗い部屋に秋月の青白い光が差し込み、部屋の一部を明るく照らしていた。
その奥の暗闇に、ぼんやりと人影がベッドの上に横たわってるのが見えた。榛名だった。
姿ははっきりとは見えない。でも彼女とは長い付き合いなのだ。雰囲気で分かる。

「お前が私の部屋に来るのはあの日以来か。」
そんな話し出しだった。
「覚えていらっしゃいましたか。」
暗闇からこの鎮守府で一番聞き覚えのある声が聞こえた。
「ああ、あの日は特別な日だからな。今でも鮮明に覚えているよ。」
あの日・・・彼女に指輪を渡した日だ。
「普段自分のお気持ちをあまり言葉にしない提督が、形あるもので私への思いを伝えてくれたのはあの時が初めてでした・・・。」
「そうだったな。」
「榛名はとても嬉しかったです。提督のお心を初めて目で感じる事ができた気がしました。」
「ああ。」
私は月明かりで照らされたベッドの縁に腰掛けた。すると彼女は上体を起こ直ぐ側まで寄ってきた。
こんなひどい仕打ちをした私にそれでも寄ってきてくれる榛名を見て胸が痛かった・・・。
「でも、最近提督は榛名のことをあまり気になさらなくなりました・・・。」
「・・・。」
「最初は特に何も感じなかったんです。提督は私に雰囲気で伝えてくれていました。私への信頼を。」
「でもそれに対してだんだん自信がなくなってきてしまったんです・・・。」
「他の子達が頑張ってるのに、私には出番が無いことが多くなってきた・・・。それが不安になってきたんです。」
「提督は今まで言葉にしなくても伝わるものというのを私に見せてくれました・・・。」
「だから私も提督のように・・・いつか自分も言葉にせず自分の思いを伝えられると・・・そう思っていました。」
「でも出来ませんでした・・・。大和に・・・そして提督に打ち明けてしまいました。やはり私は未熟でした・・・。私は嫁艦失格で・・・」
私は榛名を抱きしめた。
「え・・・ていとく・・・?」
「もういいんだ。そういうのはいいんだ。そんなのに縛られなくていいんだ、榛名。」
「・・・でも私・・・提督との信頼関係を壊したくなくて・・・」
声が震えていた。顔は見えなくても泣き出しているのがわかった。私は彼女の背中をポンポンと叩きながら言った。
「私は間違っていたよ。私は君に理想を押し付けていただけなんだ。君は悪くないんだ。」
「ううう・・・。」
「私は実に不甲斐ない男なんだ・・・。君の優しさに甘えていただけなんだ・・・。すまない・・・。」
「提督・・・私は・・・。」
「・・・言葉にするべきなんだ。言いたいことはきちっと言うべきなんだ。」
「提督・・・私・・・提督のお側を離れるのは嫌です・・・。少しでいいので榛名にそのお心をお聞かせを下さい・・・。」
絞るような声で榛名が訴えた。

16名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:48:30 ID:G/jPi8z.
私はやっと自分の罪深さを実感した。私はなんと愚かだったのだろうか。なんと自分勝手だったのだろうか。
これまで彼女に行ってきた行動や言動が走馬灯のように頭を流れた。
今まで私は気持ちを率直に言葉にすることを躊躇っていた。恥ずかしかったのだ。だから私は言葉にしなくても伝わるという考えに至ったのだ。
榛名は優しく、そして強い子だ。だからこんなことが許されたのだ。私は彼女のそういうところに甘えたのだ・・・。
今までは運良く私の思いが彼女に伝わっていたのかもしれない。でも今は違う。きちんと伝えなければいけないのだ。自分の言葉で。自分の声で。

17名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:49:05 ID:G/jPi8z.
私は抱擁を解いて彼女の顔を見た。月明かりに照らされた彼女の顔は、この世のものとは思えないほど美しかった。
彼女の目元に溜まった涙を拭って言った。
「榛名、君は私の唯一の嫁艦だ。君も大和も比叡もケッコン艦だ。でも榛名、嫁艦はこの鎮守府に一人しかいないんだ。それが君なんだ。」
「君の指にはまっている指輪・・・それは特別なものなんだ。うちに1個しかない、君だけの指輪なんだ・・・。」
「でも指輪は・・・。」
「確かに大和と比叡にも指輪を贈った。もちろん2人上げた指輪も特別だ。しかしあれは彼女らの功績を讃えたものだ。君のとは少し違うんだ。」
「君の指輪は、信頼の証・・・。私が君に思っている感情を全て込めたんだ・・・。」
「私は昔も今も君を中心にしか物事を考えられないんだ。だから榛名、どうか私のそばから離れないでくれ・・・お願いだ。」
私は頭を下げた。すると彼女が両手を差し伸べ私の顔を上げた。
「提督・・・それは榛名には勿体無いお言葉です・・・。」
「勿体無くなんかない。言い足りないぐらいだ。」
「提督はずーっと榛名に示していてくれていたのですね・・・。」
「示してないよ。示していても伝わらなけでば意味が無いんだ・・・。」
「でも提督、榛名には今しっかりと伝わりました。そしてこれからもずっと伝わり続けます。ありがとうございます、提督。」
「榛名・・・明日も私のために頑張ってくれるか?」
「はい!」
この曇りのない彼女の笑顔を、私は忘れないだろう。この教訓とともに・・・・。

18名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:49:57 ID:G/jPi8z.
榛名を部屋に戻し執務室に帰ろうとすると、榛名もついてきた。
もう夜遅いので休めといったのだが、今日は執務作業を手伝いたいらしい。私も断りきれなかった。
執務室に入ると大和と比叡がいた。
「比叡?どうしたんだこんな時間に。」
「あ!司令!戻ってきましたね!執務が大変だと思ったので、私お夜食を作ってきました!!」
「え・・・?」
「お姉さま・・・この時間にカレーは・・・。」
「あれ?榛名?どうしたのこんな時間に。」
「ええっと・・・それは・・・・。」
「・・・私が連れてきたんだ。悪いか?」
「ひえーっ!もしかして、執務室でいかがわしいことをするつもりで・・・ゴクリ」
「なわけあるか。ところで比叡、どうしてこの時間まで起きてる?いつもはとっくに寝てる時間だろ。」
「え!?ええっと・・・それは・・・。」
姉妹揃って困惑すると同じ反応か。
「比叡も榛名と提督が心配だったんですよ。」
大和が割って入ってきた。
「い、いやいやいや!違うし!ほら、金剛お姉さまの夢を見ていたらたまたま目が覚めちゃって・・・。(ちょっと大和ぉ!)」
「そうか・・・ありがとな比叡。」
比叡が黙りこんだ。おー、赤くなってる赤くなってる。
「さぁ、揉め事は片付いたみたいですし、4人でちゃっちゃと執務終わらせちゃいましょう!」
「はい!」
「・・・はーい。」

19名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:50:49 ID:G/jPi8z.
私は仲良く作業をしている3人をじっくりと眺めた。
私は幸せものだな。これほど頼りになる子たちを持つことができて・・・・。

「榛名、大和、比叡。」
私は3人を呼んだ。
「もうすぐ秋イベだ。気を引き締めていくぞ。」
「「「はい!」」」

終わり

なにを言いたかったというと、まぁ榛名は強くて可愛いってことです・・・。

20名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 08:52:12 ID:G/jPi8z.
あ・・・すみません最後ミスりました。

私は仲良く作業をしている3人をじっくりと眺めた。
私は幸せものだな。これほど頼りになる子たちを持つことができて・・・・。

「榛名、大和、比叡。」
私は3人を呼んだ。
「もうすぐ秋イベだ。気を引き締めていくぞ。」
「「「はい!」」」
「榛名、いつもどおりお前が総旗艦だからな。しっかり頼むぞ。」
「はい!榛名は大丈夫です!」

言葉にしなくても通じ合う信頼関係いうものは確かにある。だが、言葉にしなくては伝わらないこともいっぱいあるのだ。
そんなことを学んだ、とある秋のある鎮守府のお話である。

終わり

こうです・・・。

21名無しのおんJ提督:2015/11/03(火) 21:35:04 ID:RHlKpXUc
男はいつも傲慢だ。そうは言うけど、ついわかってるって思っちゃうのよね…
いいお話をありがとうございました。

22名無しのおんJ提督:2015/11/13(金) 15:22:06 ID:J4j6LpMo
暇だし書いたろ!



着任して数日後。秘書艦に怒られてばかりだけど、少しは慣れてきた気がする。
ドンドン ガチャ
「手紙よ!何度言わせんのよ、このクズ!」
とまぁこんな感じに・・・。鬼教官に謝ってばかりだ。提督とは何だったのか。
「まぁいいわ。話があるからついてらっしゃい。」
あっ…(察し)
また説教か(心が)壊れるなぁ。


「司令官、嫌なら変えていいのよ。秘書艦。」
説教じゃなかった。
「毎日怒られるだけで嫌になるでしょ。遠慮しなくていいのよ。そう言っても遠慮するかもしれないから、一週間日替わりで変えてみなさい。所属艦も増えたし、相性の良い秘書艦がいるかもしれないわ。」

23名無しのおんJ提督:2015/11/13(金) 15:23:31 ID:J4j6LpMo
月曜日
「もーっと頼っていいのよ?」
火曜日
「司令官!ご命令を。」
水曜日
「那珂ちゃんスマイルー!」
木曜日
「不幸だわ…」
金曜日
「駆逐艦?あぁ、ウザイ。」
土曜日
「なんだー?司令官。」
日曜日
「白雪です。よろしくお願いします。」

というわけで一週間後。
「クズ司令官、話って?良さそうな子は見つかった?何?用があるなら目を見て言いなさいな!」
「あー、それだけど、やっぱり秘書艦は霞に戻す。」
「はぁ?何で?」
「えっと、深い理由は無いんだけど・・・何て言うか、いつか認められたいからな?」
「ふーん・・・手加減しないからね。」
本当は違うけど。本当は、放っておく遠くに行ってしまうような気がしたから。何となく。
「あともう一つ大事な話が。」
「何よ。」
「今から補給。」
「何よ、補給なの!?…まあ、必要だけど。」


おわり

24名無しのおんJ提督:2015/11/14(土) 21:47:17 ID:LQlclkZ2
瑞雲太郎

昔、とある鎮守府に提督と秘書艦である鳳翔が居た。
鳳翔は今月のEOを進めるため対潜哨戒、一方の提督は戦力増強をと建造をするとの事だった。
次の日、鳳翔が資源を見ると驚愕した。資源がまるで深海棲艦にでも襲われたかの如く減っているのである。
「提督!一体どうなさったのです!?」思わず声を上げて聞くと提督はこう答えた。
「ただの建造をしただけだ」声だけでも大ウソと分かるぐらいに上擦っているのが分かる。大型建造と間違えてしまったのだ。
「してしまったものはしょうがありません、一体誰を建造したのですか?」ため息を付きながらも鳳翔は問いかけた
「貴方が提督か?」
答えるように伊勢型2番艦、日向が工房から姿を現した。


提督と鳳翔はそれは立派に日向を育てた。しばらくすると日向は10レベルになってた。
もうその時分には立派な航空戦艦となっており、早くその力を試したくってうずうずしていた。
その頃、鎮守府内ではとある噂が流れていた。なんでも深海棲艦の中でも強い「鬼」と呼ばれる深海棲艦が鎮守府に攻撃をかけようとしているらしい。
話を耳にした日向は執務室へ行くと「提督、私に鬼のいる海域攻略をさせてほしい」と自信に満ちた態度で言い放った
提督はびっくりして「しかしまだお前のレベルでは…」と尻込むも日向の「多分大丈夫だ」の強引な一言により攻略をすることを許した。
鳳翔は「あのような鬼を倒しにいくには装備がいるでしょう」と瑞雲を開発し、それぞれのスロットに装備させた。
「それでは、航空戦艦日向、出撃するぞ!」


なんでこんな物書こうと思ったんや…

25名無しのおんJ提督:2015/11/14(土) 23:47:31 ID:RHlKpXUc
シンプルに信頼の芽生えを感じるほっこり話と剛腕で信頼を勝ち取っていく瑞雲

26名無しのおんJ提督:2015/11/17(火) 23:03:31 ID:2xnjYf0w
「満潮、ちょっと話が。」
「何?」
「今度の共同作戦についてちょっと。作戦要領はこれ。」
「・・・・・・。」
概要
南方の諸島に飛行場が発見され、他鎮守府と合同で叩きに行くこととなった。他艦隊が円滑に作戦を実行できるよう、敵護衛隊を飛行場から引き離して戦力を分散させよ。敵はそこまで強力ではない。練度の高い艦を出すように。


「上層部はバカなの?近くの海域で戦艦や正規空母が沢山出るのに、強力じゃないわけがない。」
「そうなんだ。見直すように進言したが聞き入れられなかった。」
「・・・で、どうするの?」
「えーそれだが・・・。」
「何よ。」
「旗艦は満潮にしたい。」
「えっ・・・」
「今の艦隊のエースなんだ、一番強いのを出せと言われているのもあるが、一番信頼できる。最も可能性がある。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「そう・・・。」
「できることは全てする。」
「私がいなくても困らないよね。他の子も増えてきたし。」
「そんなこと」
「こんなつまらない作戦、誰がやっても同じ。上の命令だから仕方ないわよね。明後日ね、それじゃ。」
そう言うと、足早に部屋を出ていった。

27名無しのおんJ提督:2015/11/17(火) 23:10:51 ID:2xnjYf0w
作戦の日の朝、提督と満潮は鎮守府の屋上にいた。
「今日の海は穏やかね。補強増設、数日前までなかったはずなんだけど。どこで手に入れたのかしら?」
「さぁな。」
「急に応急修理女神が6個納品されたし。」
「さぁな。」
「出撃する子にどこまで話したの?」
「全部話した。補強増設も揃えておいた。」
「帰還が前提なのね。」
「上はどう思ってるか知らないけど。つまらない作戦は70年前に滅んだ。」
「ふーん。そんなことより、わざわざ呼んだ理由は?」
「うむ・・・。これを、受け取って欲しいんだ。」
「えっ・・・はぁ?・・・最初よりはマシな戦いになってるんじゃない?・・・・・嫌いじゃないわ。」
「ありがとう。」
「明日にはいないかもしれないのに・・・いいの?」
「今日も明日も5年後もずっといるぞ。」
「相変わらずバカな司令官ね・・・」ムギュ
「そうだな・・・」
「しばらくこのままにさせて」
「そうだな・・・」

「そろそろだな、ほっぺ拭いとけよ。」
「ぐす・・・ふん。」

穏やかな秋の海に、6人の艦娘が並んだ。
「今度は僕がみんなを守るから。」
「対空戦なら摩耶様に任せとけ!」
「さぁ、行きましょう!やるわよー!」
「はい、榛名は大丈夫です。」
「榛名がいれば今度は大丈夫デース!アイライクハルナサン!」
「旗艦満潮、出るわ!」

鎮守府の全員に見送られて、6人の艦隊が水平線に消えていく。
「空母がいないっぽい?」
「提督に聞いてみたけど、空母4隻くらいじゃ艦載機が足りないって。」
「時雨ならきっと大丈夫っぽい。」

28名無しのおんJ提督:2015/11/17(火) 23:21:34 ID:2xnjYf0w
・・・・・・・・・・・・
「被害状況は!?」
「満潮以外は大破だよ。中破1大破5。護衛隊は振り切ったけど、帰るまでが任務とは言ったものだね。」
「軽巡くらいなら私がなんとかするから!索敵を怠らないで!」
「ん・・・。10時の方向に戦艦ル級2、重巡リ級1、軽巡へ級1、駆逐ハ級2。さすがにこれは」
「支援射撃くらいはできマース!Fire〜!」
「勝手は!榛名が!許しません!」
「駆逐艦2隻撃沈デース。でもここまでみたいデース・・・。」
「満潮、あとは僕達が引き付けるから・・・。」
「ふざけたこと言わないで。すぐに片付けるわ。」
「いやっさすがにあれは」

・・・・・・・

「それで、ル級を投げ飛ばして全部撃破してた。」
「えぇー!凄い人かも!」
「大井さんが教えてくれたの。本当にやる機会があるとは思わなかったけど、っていうか時雨、なんで全部知ってるのよ!?」
「青葉さんが・・・いやなんでもないよ。そんなことがあったりして、満潮がこの鎮守府を支えてきたんだ。頭にフレンチクルーラー乗せてるけど凄いんだよ。」
「時雨には失望したわ・・・。」
「ふふ。今日はあれからちょうど1年だからね、何か買ってきてくれるんじゃないかな。」
「榛名、提督がケーキ屋に入っていくところを見ました。」
「全員分買ってきてくれたり、しないかな?」
「持ちきれないでしょ。」
「大艇ちゃん使えば運べるかも!様子見してくるかもー。」



なんかしっくりこないな

29名無しのおんJ提督:2015/11/24(火) 01:01:11 ID:EmvzrzuQ
「あぁ^〜薄い毛布をかけて寝る、最高やな」
「執務室で寝るんですか…あと何故寒がりの癖に薄いのを選ぶんですか?」
「軽いから」
「え?」
「『布団の重みは人生の重み』って言わへん?重すぎると辛い。かと言って重みが全く無いのもダメ」
「言わないし聞いたこともないです。また司令官の思いつきですよね?」
「せやで」
「重い布団が好きではないと言うことですね」
「そういうこと。ほな、おやすみ」
「おやすみなさい」

何やろこの文

30名無しのおんJ提督:2015/11/25(水) 02:05:24 ID:vo3i/US2
こういうさらっとした文から誰やろ?って考えるのもええなぁ
ワイには不知火が見えたわ

31名無しのおんJ提督:2015/11/27(金) 12:57:47 ID:NzG5i6wI
ワイは鳥海

32名無しのおんJ提督:2015/11/29(日) 23:44:07 ID:h3z3.s2E
「ごめんね・・・迷惑かけて・・・」
今日はバニラ湾の殲滅作戦。なのだが、急に大破が続いて足踏みしている。
「大破1中破1ほか無傷。夜戦は楽しいね!」
「まろ〜ん・・・」
「お疲れ様。しばらく休憩。ドッグも空けてある。それじゃ解散。」
各々部屋を出て思い思いの方向へ散らばっていった。執務室には自分と時雨だけになった。
「どうした、何か用か?」
「提督・・・やっぱり怒ってるよね・・・僕が大破ばかりで・・・僕のせいで・・・。」
「いや、そういうときもある。気にするな。」
「提督は優しいね。でも申し訳ないよ。だから提督のこと、気持ちよくしてあげるよ。」

言われるがまま仮眠用のベッドに横になった。
「それじゃ触るね。」
時雨の暖かい手の感覚が伝わってくる。
「すごい硬くなってるね。」
「そりゃまぁ・・・うっ」
「くすぐったかったかな。」
「いや、最高だ。」
「それはよかった。」
時雨との二人きりの時間がゆっくり過ぎていく。
「実は初めてなんだけど、どうかな。」
「気持ち良すぎて逝ってしまいそうだ・・・」
「ここらへんとか・・・気持ちいいかな。」
「ああ^〜」
「ふふっ・・・本で勉強しといた甲斐があったね。」
「初めてとは思えない手付きだ・・・」
「こことかも・・・」
「ああ^〜Fooooooo↑」

・・・・・・・・・・

「こんなところかな。」
「最近仕事が多くて肩凝ってたんだ。助かったよ。」
とても初めてとは思えないマッサージで体が軽くなった気がする。
「ねぇ提督・・・本当は少し怒ってるでしょ?」
「いや・・・命懸けで任務に当たってくれているんだ、感謝してるよ。俺にはできないことだしさ。」
「やっぱり提督は優しいね。」
「あー、その格好は風邪引くから早く直した方がいいぞ。」
「ん・・・そうだった。ドッグ入りするね。」
本当はもうちょっとだけ見ていたかったけど、時雨に悪いからね。
この海域は簡単にはいかないかもしれないけど、時雨がいればきっと大丈夫。

33時雨食わせニキ ◆W36K5qGE4Q:2015/11/29(日) 23:55:27 ID:w8/UJCug
もっと書いて。あくして

34名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 01:31:51 ID:WWC4aFlE
ここってR18描写満載でも投下してええんかね?

35名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 03:37:25 ID:s.mvhQlI
ワイも思った、まあ投下してええやろ 

ピュアJ民なんかこんなところには来ない

36名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:31:05 ID:s.mvhQlI
という訳で、ワイがエロSS一発目や

37名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:31:47 ID:s.mvhQlI
「司令官、こんなことしてどうするつもりなのさ?」

「敷波…今日はちょっと俺の趣味に付き合ってもらうぞ」

「へ?」

状況はこうだ、アタシは全裸でX字に拘束されてて司令官と部屋に二人っきり
部屋には特に家具そのはなく殺風景としている
こんな部屋が鎮守府にあったのかと半ば驚いてる

「どうせエロいことしたいんでしょ?
でもケッコンしてるんだしさ?拘束解いてくれない?逃げたりしないよ」

「絶対ダメだ」

「何その顔怖い…」

「でも全裸拘束されてる敷波はかわいい」

「それが趣味?」

「半分合ってるけどそうじゃない」
と、男はローションの瓶とタオルを持ち、女に近づく

「ま、最初は慣らさないとな…」
手にローションを馴染ませながら男は笑う

女も特に憶することは無かった、いつもの笑顔に安心したのだ

38名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:32:27 ID:s.mvhQlI
「拘束されてる以外はいつもと一緒だね」

「まあな、正直前戯のほうが好きだ。」
鎖骨の辺りからじっとりとローションを塗す
あまりローション塗れにせず、指の感触がはっきりわかる様にするのが俺のやり方
と、言っていたことを女は思い出す

両の腕は鎖骨、二の腕、手先へと伸び、じっくり体を解していく

「司令官ってマッサージ得意だよね絶対」
「わかるか?これでも部下にやってやったこともあるんだぞ」
「アタシにもやってほしいよ〜」
「子供はダメだ」
「今の状況で、よくいうよ…」クス

男の手は女の脇腹に伸びていた、手のひらを使って揉み、離すときに指先で引っかくように刺激する

「く、くすぐったい…」
「敷波はここが弱いなあ」グニグニ
「あっ…はっ…… なんか今日気合入ってない?」
「そりゃ、こういうシチュエーションだからな」

しばらく二人っきりの甘い時間を過ごす、体の自由が利かない以外はとても幸福な時間だった

「あれ…下半身はしないんだ…」
「今日は後でな」
「う〜」
「拗ねるな」
「あ…あのさ…30分以上やってるのに胸まだやってくれてない」
「じゃあやる?」
「うん」コクコク

(素直になったなあ…最初は言うまで焦らして遊んでたのに…ちょっと残念)

39名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:32:57 ID:s.mvhQlI
男は女の後ろに回って乳房を抱えるように持った
まあ房というほど豊かでもなく、後ろから女を抱きしめるような格好だが

「まあ正攻法も…あれだしな」
ちょっと悪戯心で不意に乳首を摘んだ

「あひゃっ…」
「お〜いい反応…やっぱ敷波かわいいわ」
今度は手のひらを胸の上で滑らせる
「うるひゃい…あんっ」

まるでおもちゃのように跳ね動く女の肢体を
男はまるで童子のように弄んだ

転がす、滑らせる、摘む

「やっぱ司令官、なんか今日キツイよぉ…」
吐息が荒い
「言ったろ?趣味に付き合って貰うって」
「胸だけでイかせるのが趣味?」
「ちょっと合ってるけど違う」
「早く教えてよ〜」
「そんな気分じゃないから、いじめちゃう」

さっきよりも力を込める
「あひん!!!」
「まだまだ」
しばらくおもちゃ遊びが続いた、「休憩!休憩させて!」の声が響くまで

40名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:33:48 ID:s.mvhQlI
「はあ…はあ…  司令官…ちょっと気になったんだけどさ…このお腹にあるの、何?」
休憩(と言っても責めが弱まっただけだが)のおかげか、少し息を整える余裕ができると、女は下腹部に違和感を感じた
そこにはタオル地のような包帯が巻かれていて、ローションを吸って重い不快な感触を与えていた

「ん?ああ、不純物が入らないようにな。ローションとか」
「?」
理解が追いつかない
「ちょうど良いな、良い感じだろう。例の作業行ってみよう」

男は銀色のトレイとヘラのような物を取り出した
そして女の股間に顔を近づけた

「濡れ濡れの宝箱だな」
「ちょっ!」
「冷たいけど我慢しろよ」

と、ヘラを太ももの付け根にあてがい、べっとりと濡れた柔肌を掬い取るように滑らせる
そして器用に付着した液体をトレイに集めだした

「や、やめっ…て…おかしくなる…」

ヘラは縦横に動くが、秘部を直接刺激することはしない 爆発しそうでさせてもらえないもどかしさが女を襲う
ただただ、液が掬い取られる感覚に耐えるしかなかった

「やべえな…どんどん溢れてくる…キリがない」
自然と語調が興奮を帯びる
そんな男が普段見せない変化を察する余裕もなく、女は淡い甘美に嬌声が漏れるのを堪えるしかなかった

永遠に思われた快楽がふと止んだ

「だいぶ採れたな…くっくっく…」
「あ、ああ…」

銀盤に光る滴を眺める男

「こう容器に移すと、艶っぽさが増すよなあ」
「うう…この…ヘンタイ…それが趣味だったのか」
怒りに任せて吐き捨てる
だが恥辱と憤り以外の感情が彼女の中でふつと湧いた

41名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:35:04 ID:s.mvhQlI
「やっぱり…怒ってる?ごめん、こういう趣味なんだ…俺…」

「違う、そうじゃない、怒ってなんかない、司令官の馬鹿……」

「そりゃ恥ずかしいさ、恥ずかしいよ?顔真っ赤っかでしょ?怒ってるよ。
 でもなんでいままで言ってくれなかったのさ?それが一番悔しいよ…」

「え…?」

「だって、アタシを一番に思ってくれてるんじゃないの?だったら言ってくれればいいじゃん
今思えばクンニとかしてくれたことないし…気を遣ったんだろうけど、それはアタシが望む司令官じゃない
そりゃ確かにヘラで愛液集めるのが趣味って言われて、はいそうですかってわけじゃないけど
それも司令官の一部だと思うし、隠し事は良くないとおもうなあ」

(敷波…クンニとか何処で覚えたんだ…確かにやると理性が吹っ飛びそうだったから自粛していたが…)
「いや、そのな…敷波 こんな司令官でもいいのか?」
「そんな事どうでもいいくらい、司令官が好きだよ!」

「あ…」(司令官に初めて好きって言っちゃったかも…いままで夜戦でも言わないようにしてたのに)
「え?」(好き…か…初めて聞いた…良い響きだな…)

「ねえ司令官?」モジモジ
「ん?」
「アタシの体液好きなんでしょ?じゃあさ…ここ早くして?」
「あ、そうだな!そうだよ!調子狂うなあ アハハ」
「あとさあ、拘束解いてよ、たぶん引かれると思ったからなんだろうけど、そんな気全然ないし」
「アッハイ」

自由が得られた体、解放感ってこんなに大きかったっけと小さな胸で感じた

「さあさあ、自由にすると良いぞ」フン!
ベッドに座った女は言い放つ

攻勢逆転である

42名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:35:44 ID:s.mvhQlI
「じゃあ、頂きます!」

男は獣が池の水を貪るかのように女の秘泉に食いかかった

女の肢体が跳ねる、今まで体験し得なかった感覚にすぐにでも堕ちてしまいそうになる

男は全く配慮ということもせず、湧き出る泉から離れようともしない

むしろこぼれるのを惜しむかのように深く深く溺れるように潜っていく

女も呼応し、拒むことなく一緒に堕ちるように快感の沼に沈んでいく…




「司令官!司令官!」

「なになに今忙しい…」

「なんかおしっこでそう!」

「そういや利尿剤飲ませてたの忘れてた!」

「なんだよ〜先に言ってよ〜 ちょっと待ってて、トイレ!」

「ダメだ!それも立派な“体液”だ!」

「え…やっぱりそう来るの…」(あと、まだイキそうでイッテないんだけど…)

「じゃ、じゃあ…だ、出すよ…」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「唐突だが、深雪様だぜ!」
「吹雪です…」
「ここからは自主規制だぜ!」
「えぇー!?あと急にギャグぽくなってません?」
「まあ、しっくりこないってのもあったらしい、規制されたシーンは

夏の部活終わりの学生が水道の蛇口に食いつくようなもん とでも想像してくれ!」

「あっ…そうですか…」

43名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:36:23 ID:s.mvhQlI
(人に飲まれるの見るのってちょっと興奮するかも…)ドキドキ

(ああ、なんかおかしくなりそう…散々焦らされたから…)

(このまま本番…敷波!機関はバッチリ準備オーケーです! なんて…エヘヘ…)ニヤニヤ

「敷波?」

「あっ…はい!」

「その…ありがとうな…付き合ってくれて…」ズイ

「え!! えっと最初はビックリしたけど、別にいいかな〜って」ニヘラー(顔近い!近すぎるよー)

「あ、あのさあ…司令官…つづk「サンプル採ったから、鮮度が落ちない内にちょっと調べたいので俺もう行くわ」

「ファッ!?」

「すぐ戻るから心配すんな〜」ドアシメー


「…」


「司令官の馬鹿! 甲斐性なし! 一度でも許したアタシが馬鹿だったよ!」

結局、司令官は戻ってきませんでしたよ〜

意地でも慰めたりしないって思ったけど、朝までもちませんでしたよ〜

44名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 04:37:08 ID:s.mvhQlI
―翌日―

今日も変わらない鎮守府の朝は気持ちいいですね
でもちょっと執務室で事件みたいです
いつもどおり司令官にお茶を入れに行こうとしたら…

「? 磯波ちゃん?」
「あ、綾波ちゃん…ちょっと提督が敷波ちゃんと喧嘩してるみたいで困ってるんです…」

『ちょっと!昨日のことはどうなのさ!』
『大変、反省しております…興奮のあまり研究室で完徹してて…』
『謝ってすむ問題じゃない!』

「これ、止めに入ったほうが…」
「ううん、それはしなくても良いかも知れませんよ?」
「え?」

『えっと…ちょっと待って!? 服引っ張っちゃ、やだあ』
『昨日!司令官の部屋に夜襲をかけたけど居なかったんだ!もう我慢の限界だよ!』
『ふええ…敷波のキャラがなんかおかしいよぉ〜』
『服ぬげ! 今ぬげ!朝から夜戦の時間だああああ!!』
『ご無体でござる!ご無体でござる!』


「でしょ?」
「あわわわ…」(敷波ちゃん…恐ろしい子…)


「今日の午前はお休みになりそうですね、うふふ」

―おわり―

45名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 11:27:15 ID:vo3i/US2
研究してどうする気なんだ…香水でも作るつもりなのか…

46名無しのおんJ提督:2015/11/30(月) 19:36:56 ID:09CC36qU
あ、キスシーンのこと完っ全に忘れてましたね(痴呆)

研究は組成調べて、艦娘冷却水(意味深)製造したい…したくない?

47名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 01:01:37 ID:EmvzrzuQ
したい

48名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:18:57 ID:vwIN8G02
とある所で投稿してた奴で申し訳ないんやが、投稿させてもらうやで

霞ちゃんのR18や

49名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:20:54 ID:vwIN8G02



「こ、こんなの……着させるなんて、ほ、ほんと何考えてんの!?」

 そう喚く霞の姿を、提督は満足気に眺めていた。
 壁に立てかけてある時計の短針は23の時を指し示している。夜が更けていく時刻。鎮守府周りも、明かりこそ灯っているものの、昼時のような喧騒さは無く、夜の静けさに呑まれていた。そんな夜更けの提督の自室。何時ものように、営み……を交わす筈だった。提督が何もしなければ、そうなるはずだった。

「こ、これ……か、隠す場所……ないじゃないの!」

 灯籠が淡い光を照らす室内に浮かぶ霞の身体には恥部や胸といったところに布生地が申し訳程度しか覆われていなかった。俗に言う、マイクロビキニである。その上、ただのマイクロビキニではなく、布生地が特殊な素材で出来ていた。
 シースルーという、透明性が高い生地である。要所要所マイクロビキニが隠してはいるものの、この生地のせいで布越しの大事な部分は全て丸見えだった。

「……似合ってるぞ?」
「ば、ば……っ! っ……」

50名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:21:55 ID:vwIN8G02
 似合ってる、その一言で羞恥が鬼灯色に染まり、反射的に言い返そうとした言葉を飲み込んで霞の唇を閉ざした。下唇を噛み締め、僅かに目元は潤み、何処か色気に満ちた雰囲気を醸し出す。
 何も喋らず、沈黙に佇む霞の様子に彼は胡座をかきながら手招きをした。次いで、ポンポンと太ももを叩き、ここに来るように合図をすると、彼女は下唇を噛み、彼を一瞥すると徐に近づいた。

 ゆっくりと、対面座位の形で彼に寄り添うと彼女は彼の頬に触れた。彼は彼女の左手にある銀色に光る物の冷たさを感じながら、視線を交わす。
 彼女は彼の体を沿うように、手をゆっくりと、ゆっくりと這わせていく。頬から首、首から胸部、胸部から服の裾へと……彼の体躯や体温を味わうような、愛撫に近い触り方は僅かに興奮を誘う。
 裾まで手をかけ、彼はされるがままにシャツを脱がされる。露わになった肉体を彼女に触れられつつ、尚も視線は外さない。

「……」

 鬼灯に染まった彼女の頬は、羞恥によるものではなく段々と愛欲の色に移り変わっていく。形の良い眉を八の字に顰め、何時もの鋭い目つきは愛しい彼にだけに見せる潤んだ瞳に変わっていた。温もりを求めるように忙しなく彼女の手は彼の躰に触れ、彼を見つめる。

「霞……」

 彼女の名を呼びながら、顔を近づけた。それだけで彼が何をしようとし、何を望んでいるのか理解出来た。吸い込まれるように、そっと……口づけを交わす。互いの温もりを確かめ合うような、やんわりとした物。

51名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:22:32 ID:vwIN8G02
「っ、ふ……ん……」

 ふぅ、ふぅと小さく吐息を漏らす彼女が艶めかしくも愛おしく思う。保った意識はだんだんと愛欲に塗られていき、理性を容易く溶かしていく。優しげな唇の触れ合いに対して、彼は彼女の背を、彼女は彼の首を、もう離さまいとばかりに激しく掻き抱く。
 密着する体躯。燻る劣情に、肌は熱を帯び始め、滲み出る汗で空気を湿らせる。

「ふ、ぅんん……ぷぁ……はぁ……」

 名残惜しく、切なげに唇を離す霞。彼への愛情と肉欲が、確実に、着実に、正確に……彼女の理性の箍を外しているのは言うまでもない。同時に、彼もまた……彼女と同じように、彼女の色香と表情、彼女そのもの……どれ一つとして、彼を狂わすのには十分なものだった。

「もう……終わり……?」

 桜色の唇から囁くように言い、挑発的に微笑んだ。自信家であり勝気な彼女だからこそ似合う仕草。その裏には、もっと彼を求めて止まない自分を押さえ付けて彼から自分を求めて欲しい、彼だけに見せる彼女らしい感情があった。
 無論、彼はそれに気づいている。素直ではない彼女の、誘い文句。売られた言葉に買わない訳もなく、要望に応えるように彼女の背中にあった手を蠢かせる。
 未熟ながらも女性らしく発達している身体つきに、女性特有の柔肌。華奢な彼女を壊れ物を扱うかのように、丁寧に指を這わせる。

「ぁ、っ……ふ……」

 こそばゆそうに身を捩るが、決して拒否しようとはしない。寧ろ、嬉々として受け入れているようで、挑戦的な微笑みから色欲に染まった、悦びの微笑みに変わっている。
 つつ、と指は肌の感覚を確かめるように、ゆっくりと辿る。背からくびれ、くびれから胸部へ……指先が示す目的は、既に見えている。

「っ、っ……」

 詰まったような息遣い。指先は丸見えの蕾の輪郭をなぞるように這う。こそばゆく、優しげな愛撫は何とももどかしく、脳に甘い痺れを齎し、興奮を煽る。それ故か、薄桜色はピンと布越しからでも分かるほど張っていた。
 目に見えるほどの主張。しかし彼は決して総本山に触れようとはせず、あくまでも控えめな乳肉に触れる程度に留めている。やわやわとした手つきで、密かに膨らんだ胸の周りを弄ぶ。

52名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:23:24 ID:vwIN8G02

「……ぁ?」

 しかし、唐突に去った感覚。疑問を覚える彼女は彼を見ると、彼はマジマジと白磁のような乳肉に咲く、淡い桜色の乳頭を見ていた。何をしているのかと思えば、じわりじわりと顔を近づけて――――

「――――――――っ!!」

 突然、霞の視界が明滅した。次いで、胸から強い快感が身体中を走り、緩んでいた筋肉が強張る。ピンと張っていた蕾に湿った何かが這う感覚……正体は明らかだった。そう、彼は敏感になっていた彼女の其処に向かって吸い付いたのだ。ちゅるちゅる、と水っぽい音を響かせ、シースルー素材のビキニ越しから彼女の胸を味わう。

「ぅんんっ、んっ……!」

 先程の優しげなものから一変して、空いた片方の胸には指を這わせ、勃っていた乳頭を軽く摘んだり弾いたりして双方から彼女を責め立てる。閉ざした口は小さい嬌声が漏れ始め、丁寧な愛撫でありながら暴力的な快楽に身を任せる。

「ぅ、ふぅ、っんんっ……あ、あんたってば……ほん、とに……あっ♡おっぱいが、すきね……♡」

 嘲るような物言いだが、彼女の行動は反していた。彼の頭に腕を回し、嬉しそうに微笑みながら受け入れている。母性がありながら何処か淫猥な笑みを浮かべて、一生懸命に胸に啜りつく彼を見つめ、優しく抱き留めている。

「はぁ、っぅん……っ♡」


 断続的な快楽に、僅かながら湿り気を覚える下腹部。とうにスイッチの入った彼女の身体は、彼を受け入れる準備を始めていた。その証拠に……シースルーで出来たボトムには汗とは違うもので濡れ滴り、ただでさえ透明性の高い素材のためか彼女の秘所をより一層露わにしてしまっている。

 そこから見えるピタリと閉じた、小さな蜜壺。駆逐艦や幼い体躯のせいもあるだろう、まだ毛一つも生えておらず外見相応の見た目だが、それに反し止めどなく溢れる蜜液は彼と重ねた情事の数を物語っている。
 直ぐにでも彼を求め、小さな胎は疼いてやまないが、彼女は直接触れて欲しいとは言わない。芯が強い性格ゆえもあるだろうが、それ以上に彼に気が済むまでやらせておきたい、そんな気持ちもあった。しかし、されるがままというのは性分には合わないのが彼女である。
 吸い付く彼をよそに、彼女は回していた手を下に潜り込ませた。彼女の嫋やかな指先が彼の身体を這い、その指は彼の下腹部を捉える。

53名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:25:06 ID:vwIN8G02
「っ」
「はぁ……♡ん、っ、がちがちね……♡」

 下着越しでも分かる硬質感と弾力感が指先から伝わる。生地が張って形が浮かぶ下着をなぞり、瞥見すると悪戯っぽく表情を変える。そして、何度も触れ合いを通して分かった彼の弱点を中心に、布越しから指を優しく這わせる。

 限界まで屹立した陰茎の裏筋を、撫で上げる。それだけでピクリと震え、亀頭部分にあたる布がじわりと湿り始めた。それを一瞥すると、慣れた手つきで前開きから肉幹を露出させた。ぶるんと、反り返り赤黒い肉棒。パンパンに張った亀頭からは止めどない先走り汁で溢れ、彼がどれだけ興奮状態にあるのか表しているよう。優しく小さな掌で包み込むと、ピクリと震えて僅かに彼の腰が浮かんだ。

「……っ」
「ふふっ……きもち、いいのね……♡」

 溢れる我慢汁で滑りを持たせ、適度に力を加えつつ撫で上げる。果てるまではいかない、弱々しい快感。しかし、時折掌で亀頭を責め立てるため、突然の強い快楽に肉槍が跳ねる。あまりの快感のためか乳頭を咥えていた彼の口元は緩み、彼女の手淫に陶酔する。その反応に霞は嬉しそうに淫らな笑みを浮かべていた。
 不意に彼女は手を止めるとクスクスと微笑みを湛えたまま、彼の上半身を押し倒し、対面から騎乗位に近い状態に持ち込む。

54名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:26:06 ID:vwIN8G02
「……お楽しみは……これからよ、司令官……♡」

 彼の太腿に手を置くと、引き締まった太腿で彼の肉棒を挟み込んだ。ぎゅっと、適度な力が入り、快感と共に締め上げる。彼女の、傷一つない白い肌の太腿が、黒々とした肉槍を包み込んでいる。幼い外見の彼女が行っているからなのか、何とも淫猥な光景で背徳感を唆る。
 舌舐めずりをしながら、パンパンに張った怒張を擦る。全体的に扱くように撫で上げたかと思えば、部分的に挟むことに力を入れたりと、責める場所を転々とする。たらたらと垂れる先走り汁に太腿を濡らしつつ、ピクリと跳ねる肉槍を愛おしそうに見つめ行為を続けていく。立て続けの愛撫で、もう限界が近いせいもあってか彼が達するのにそう時間はかからなかった。

「はぁ……っ、ん、ほら……もういきそうなんでしょ……? さっさと、出しなさいよ……♡」
「っ、くぁ……!!」

 そう言って霞が軽く締めた事を皮切りに、彼の腰が浮き、白濁液が飛び跳ねた。勢いよく飛び出た精液は、彼女の太腿から鼠蹊部に渡り白く汚した。彼は荒い息を漏らしつつ、彼女に目をやると満足げな面持ちをしていた。

「はぁ……はぁ……」
「……♡」

 青臭い独特の仄かな性臭、鼻につく匂いに彼女は蕩けたような悦楽に顔を歪ませる。
 粘つく子種を拭く間もなく、そのまま彼に背を向けて膝立ちになる霞。彼の目の前に映るのは彼女のほっそりとした体型。傷ひとつない、可憐な肌と華奢なボディラインが印象的である。
 霞はチラリと横顔を向けると、尻を突き出した。小ぶりながらも、程よく肉付いたヒップ。ゆらりゆらりと揺れる様は魔性の魅力を秘めている。まるで男を誘う娼婦の様だった。

55名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:27:04 ID:vwIN8G02

「ふふ……♡」
「っ……」

 しかし、娼婦にしては成熟していない体躯……幼さ故に、蠱惑的な劣情を持ち、矛盾した魅力は背徳感を煽る。愛しくも幼い彼女の劣情を唆る姿に、精を吐き出したばかりだというのに硬度を持ち始める。
 彼女は下腹部から感じる熱と硬さに目を細め、更に強調するように尻肉を見せつける。最早、水着として機能していないボトムからはピッタリと張り付いた彼女の秘所が見える。既にそこはしとどに濡れ、際限無く溢れる蜜露は彼が来るのを今か今かと待ち望んでいるようだった。


「……霞……そろそろ」

 彼女の気持ちを汲み取ったのか、それとも彼の我慢の限界が近いせいなのか、そう彼が声を掛ける。すると……彼女は動きを止め、自分の腰あたりに手を置いた。熟した果実をまだ取ろうとはしない……甘美な果実を啜るのは、後からでも遅くはないからだろう。

 そしてポールダンスで踊る艶美な女性こように、手は彼女のボディラインに這う。やおら、ビキニとして形を保たせている紐に手を掛けた。蝶結びであるそれを解いてしまえば……

「……」

 もう間もなく、である。焦らされているからだろうか、何とは無しに緊張混じりの興奮が心臓を高鳴らせ、煽情的な仕草に呼吸が更に速くなる。するり、するりと……少し力を入れて引っ張るだけで最も簡単に解け、重力に従って落ちる。
 落ちる瞬間……媚糸が引いていたのは見間違えではないだろう。その証拠に、ぬらぬらとした光沢を帯びた媚肉がほんのりと鬼灯色に染まり艶かしく蜜露を滴らせている。

56名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:29:48 ID:vwIN8G02


「……あんたの、せいなんだから……♡」

 非難めいた言葉を吐き捨て、尻たぶを広げて彼に濡れそぼった秘所を見せつける。 とろとろになったそこは、白く濁った愛液を溢れさせ、彼の腹部を濡らした。その体勢から、彼の剛直に手をかけた。優しく包み込み、数回ほど感触を確かめるように扱く。

「……責任、とってもらうわよーーーーーー」

 小さく呟いて、やおら腰を下ろす。その先にあるのは屹立した、彼の肉棒。しとどに湿った陰唇に先端が宛てがわれる。つぷりと、亀頭が膣内に入ると、ゆっくりとゆっくりと……飲み込まれていった。とろとろになった膣内が迎え悦ぶように、小さく痙攣しながら奥へ、奥へと導いていく。


「んんん……っ♡」

 下唇を噛み締めながら、背筋に走る快感に耐え忍ぶ。体格差のある彼女との交わり。身体に見合った狭さの膣内はぎゅうぎゅうと締め上げ、じくじくと愛液を滲ませる。奥まで到達したのか先端に膣内とは違う、僅かに硬さを持った物に阻まれる。子宮の手前まで、飲み込んだのだ。

「はぁぁぁぁ……♡」

 甘美な感覚に陶酔する溜息。その感覚を反芻しているのだろう、ぺたりと彼に背を向けながら跨るような体勢のまま特に動きもなく、甘い吐息ばかり吐いていた。

「か、霞……」
「ん……♡」

 彼の呼びかけに頷き、腰を徐に上げていく。ぞりぞりと狭い襞が肉槍を締め付け、張った亀頭が粘膜を擦る。それだけで今にも果ててしまいそうな快感が走り、衝動的な興奮が互いに襲いかかる。しかし、まだ限りある理性が踏みとどらせ、淀んだ快楽を味わう。
 そして、ずるずる、と、抜けそうなまでに持ち上げて――――

「っっっっ――――♡♡♡」

 一気に、躊躇いもなく腰を落とした。彼女の比較的弱い部分である膣奥に、あまりにも強い衝撃か駆け抜け、同時に暴力的な快感が巡り、彼女の視界が明滅した。弓形に背筋を反らした後は、はぁ、はぁ、と息も絶え絶えな様子で小さく痙攣していた。

「っっ、はぁーーーー♡はぁーーーー♡」
「……いったのか」
「ぅ、るさい……♡あんた、はぁ……だまって……見て、なさいよ……♡」

 吐き捨てて、先ほどよりか幾分か速い速度で腰を持ち上げて、降ろした。達したお陰か、幾分か余裕があり、多少速度を上げてもオーガズムまでは遠かった。とはいえ、達した身体は筋肉が強張り、敏感になった膣内は擦れるだけで視界が眩むような明確な快感で惑わしてくる。プルプルと震える足を使い、懸命に断続的に腰を揺らす。湿ったようなぶつかる音が部屋に響いて、むせ返るような官能的な空気が立ち込めていた。

「ふっ、んっ、っ、んんっ♡」

 小ぶりな尻が跳ね返り、結合部から泡立った愛液が溢れ、交わりで熱くなった肌からは汗で湿る。理性なぞとうに擦り切れていた。縋り付くものもなく、あるのは愛に濡れた劣情のみ。沼のような、ドロドロとした愛情を交えつつまぐわう。

57名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:30:39 ID:vwIN8G02


「っ、っ、あっ、ぅん、っ♡」

 断続的だった速度が、緩やかに速さが増していく。ぶつかる音も大きくなり、無数の襞は早く達せと急かすように蠢いている。彼の限界はとうに近かった。愛撫で焦らされ、遠慮のないストローク、彼女とは違い一度も達してない事が積み重なり、最奥部に亀頭が到達した瞬間。いとも簡単に限界点は決壊した。

「っ、でる……っ……!!」
「っっ、ぅぅんんんんっ!??」

 彼は彼女の嫋やかな腕を掴んで引き寄せ、力の限り腰を押し込んだ。ゴリュッ、というあまり聞きなれない感覚は子宮口が勢いのあまりに穿たれた証拠。最奥部を貫かれて驚く彼女を見向きもせずに、彼女の胎を白濁液で汚す。一度二度弱く脈打ち、次いで勢いよく精液が溢れる。彼は吐精の心地よい悦楽に酔いしれ、彼女は子宮に直接注がれて感じる熱と劣情、何度も何度も痙攣する肉棒の快感に意識を飛ばしかける。

「そ、ん……な、ぃ、ぃきな……りぃ……♡♡」
「っっ、ぐっ……ぅ……」

 甘ったるい声で非難する彼女を余所に、彼女を孕まさんとばかりに太腿を掴んで、更に奥へと精液を吐き出す。子宮口を穿たれながら注がれるのが心地いいのか、膣内は忙しなく痙攣していた。子種を更に強請るようにきゅっと締まる。

「ま、まだ……でて……♡」
「か、すみ……かすみ……っ」

 吐精はまだ止まらず、ドクドクと、力強い脈打ち、子宮一杯に子種を満たす。粘り気のある白濁液は小さな胎をあっという間に満たし、膣内には許容量を超えた白濁液が子宮から溢れて汚していた。

「っ、はぁ……っ! はぁ……っ!」
「ん、んん……♡」

 掴んだ腕から手を離し、背後から掻き抱く。小柄な彼女はすっぽりと彼の腕の中にはまり、密着した状態となる。彼の温もりに包まれ、汗ばんだ肌が熱い。なんとはなしに、抱き着かれると愛おしさと下半身の疼きが満たさられるような感覚を覚える。一頻り、射精が続くと彼がブルブルと震えて僅かに脱力した。数分間に及ぶ、長い吐精が終わったからだ。


「っ、っ、……♡も、う、いっぱいぃ……♡」

 回された腕を、銀色に輝く指輪の付いた左手で優しく撫でなから震えた声で呟く。彼女のうっとりとした表情は、余韻を反芻している証拠だろう。彼はというと、荒い呼吸のまま彼女のうなじに顔をくっつけていた。汗ばんだ肌から香る匂いは甘酸っぱく、愛おしい彼女の匂いだけでなく興奮によるものだろうか、官能的とも言える彼女の香りを胸いっぱい取り込むだけで興奮を駆り立てた。そんな彼を察しないわけもなく、彼女は膣内で未だ硬さを保っている彼の肉槍を感じながら彼の頬を撫でた。

「霞……」
「……わかってるわよ、まだまだ……これから、でしょ……♡」

58名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:31:57 ID:vwIN8G02
――――――――


「……霞……今度は……俺から、していいか」

 背面座位で、挿入したまま優しく抱き留めてながら囁いた。腕の中で包み込まれている彼女は嫌とは言わなかった。沈黙は肯定ともいう。彼女は嫌な事は嫌だというはっきりとした意思表示をするし、肯定する時も直接言う性格だった。しかし、2人きりで営みを共にしているときは……そのイエスという言葉は沈黙に変わるときがある。
 意識的にしてるのか無意識的にしてしまっているのか分からないが、彼女は何も言わずにただひたすら黙り貫いている。彼女の答えは自ずと理解できた。

「……」

 彼は回した腕をゆっくりと解くと彼女のくびれの上に手を置いた。くびれをなぞるように、円を描くように。優しく、撫でるような手つきで愛でる。

「っ、んん……♡」

 くすぐったそうに、笑みをこぼす。艶やかながら未熟な身体を一つ一つ手に取って確かめるが如く……感触を味わう。温もりを帯びた柔肌は何処か魅力に満ちていて、ずっと触っていたくなるような柔らかさだった。女性らしい肉付きはまだないが、スレンダーで引き締まった身体は所々女性らしい柔らかさに富んでいた。艦娘と言えど、幼い身体。駆逐艦である彼女なら殊更で、背徳感がないわけがない。
 この営みはケッコンカッコカリにより合法的に許されてる。それにも関わらず、未成熟な果実は彼を惹かせるのに十分な材料だった。あまりの背徳感に膣内を貫いている肉槍が僅かに震える。

「んっ……♡」

 彼に嬌声を聴かせるのは恥ずかしいのか、彼女は無意識的に、唇を噛み締めてくぐもった声を漏らしていた。無論、彼は彼女の性格からそのことは重々承知だった。気が強く、素直になれない気性。反面、裏は健気で甘えたがり。そんな彼女が尚愛おしく思えた。

「ふ、ぅぅ……♡」

 焦らすような愛撫は興奮を燻り、吐息は熱く帯びる。優しげな手の感触は安心するような心地よさがあり、彼女は好きだったが……段々とそれだけでは物足りなくなってくるのだ。
 たまに彼が堪らなく欲しくなる。貪欲な部分がある事は彼女自身理解していた。そんな自分を浅ましく、馬鹿らしいと思える。一昔の前自分に、今の自分を見せると何と言われるだろうか。恋に現を抜かすなと言われるのは容易く想像出来る。

 彼女は貪欲な部分が嫌と感じているが治そうとは思っていない。治すのにも苦労はするだろう。それもあるが、決定力に欠ける理由だ。

本当の理由は――――――――

59名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:33:32 ID:vwIN8G02


「っっ、っんんんっっ♡♡」

 直接的な快感に視界が眩み、声が湧く。彼の太い指が、胸にある小さな蕾を摘み上げていた。はっきりとした快楽に身体が強張り、思考が霞む。


 ――――――――彼が、満たしてくれるからだ。


 渇いた愛欲は、彼という甘い蜜を求めている。その彼が、無償で、ひたすら注いでくれる。わざわざ治す必要性もなかったのだ。

「っぅ、んぅ、く……ぅんんんん♡♡」

 欲望は滴る蜜を吸い、興奮を更なる高みに押し上げる。布越しとはいえ、指の腹が擦り上げるだけで軽く達した。それを見計らったかのように、彼は腰を突き上げた。下半身から甘い痺れが走り、逃げ場のない快感は断続的な快楽の波の幅を更に大きくさせる。

「ふぅっ……! ふぅっ……!」
「だ、だめ、そ、そこ……そこ……♡♡」


 密着してるせいか動きも取れず、深く突き刺っている肉棒は膣奥を短い間隔で抉る。弱い部分でもある所を短いスパンで責められては彼女も耐えられるわけがなかった。頭を横に揺らし、逃れようのない快感に喘ぐ。彼女の色気に当てられた彼は理性的に踏み止まる事もなく、既に彼女という甘美な沼に沈んでいていた。

「っ、ぅ、ぁ、ふ、ぅうう♡♡」

 彼女の二回りほど太い彼の腕は彼女の体躯を逃さないように包み込み、彼女の動きさえも封じている。

 ――――――――こ、これだめ、これだめ……♡♡

 狭い膣内を何度も何度も貫かれて、身体は肉感的な快楽に痺れて痙攣しっぱなしだった。その中で、僅かに残っている彼女の理性が警鐘を鳴らしていた。とはいえ何度も襲いかかってきている狂いそうな感覚、最早理性を留まらせるのは難しい。

 ――――――――うごけない……こ、こんなの……も……もう……♡♡♡

 彼の腕の力は一向に緩む気配はない。それが警鐘を鳴らしている理由だった。犯されているような感覚。強姦されてるわけではないが、彼にされるがままで動きが取れない。それだけの要因だけだが、彼女にとってはそれでも十分だった。拘束されて、狂いそうな快楽から逃げられない。そう理解するだけで……容易く理性が壊れた。

60名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:36:10 ID:vwIN8G02


「――――――♡♡♡♡♡♡♡♡」

 声にならない絶頂。ふわふわとした感覚の後、スパークしたかのように視界が弾ける。身体は大きく痙攣し、思考は瞬間的な快楽に漂う。緩んだ口からは舌を覗かせ、潤んだ瞳からは快楽の涙が伝う。筋肉が弛緩し、余韻に震える彼女を気にせず責め続ける。収縮して締められる快感を貪欲に貪る。敏感な膣内が、快楽の悲鳴を上げる。


「ふぅ……♡ふぅ……♡」
「かすみ……かすみ……っ!」
「……っ、ま、まって、まだ、いった、ばかりぃっっ♡♡」

 余韻を味わう余裕もなく、彼の腕の中では休息を取ることさえ許して貰えない。だが、やめてとは一言も言わないのはこれが彼女が望んでいる事に他ならない証拠。
 彼女は基本的に彼を組み敷いている。生活面でもそうだし、艦隊業務や、秘書艦としても彼を組み敷いていた。
 だが、この夜の営みでは別である。主導権は最初こそ彼女が握っているのが殆どだが、途中から彼に押されてしまう。何処か抜けていて、寡黙な彼が夜では獣のように、彼女を食らう。

「か、すみ……!」
「あ……♡」

 背面座位から、うつ伏せになるよう押し倒される。その状態から彼に覆い被さられ、動きをさらに拘束される。うつ伏せになり体重は腕などを通して分散しているお陰か、ほどよい圧迫感と先程よりも増した密着感が心地良かった。
 それ以上にこの体勢のためか、ある程度体重が掛かった下半身が先よりも一層深く貫き、彼女を狂わせる。



 ――――――――ふ、ふかいぃ……♡


 甘く苦しい波に溺れる。呼吸も、動きも、何もかも制限されている。それだけで、支配されている喜びが身体全体に染み渡る。数往復ほど慣らすように軽く小突いた後、乱暴と言えるほどストロークを繰り返す。一往復の度に下腹部から痺れるような重い快感が響き渡る。

「ふっ♡ふっ♡ふぁ、っんんっ、ぅっ、うっ♡」

 男らしく筋肉質な彼の身体が彼女の華奢な体を遠慮なく貪る。傍から見れば年端もいかない少女が屈強な男に犯されている。しかも押さえつけて。壊れてもおかしくない勢いでも、彼女は全て快感として受け入れている。流石艦娘だろうか。
 提督はというと、ただひたすら彼女に溺れていた。彼にしては珍しくテクニックも何もない、ペース配分を考えない営み。肉と肉のぶつかり合い。愛こそはあるが本能的に近い交わり。最早、交尾とも言えるような物だった。

「かす、みっ……かすみっ……好きだ、愛してる……っ」
「っ、ぅ、っ♡あ、っんぅ、ぅぅん♡」

 彼が愛おしい彼女の名前を呼びながら、彼女に対する純粋な感情をぶつけながら、狂ったように腰を振るう。彼が熱っぽく自分の名前を呼びながら愛を囁く。
 それだけで彼に対する愛おしさと歯止めのない劣情が、彼女を壊す。子宮は震え、甘い痙攣に酔う膣内は彼の精液を求め始める。視界は既にぼやけ、思考や理性的な判断能力も粉々になっていた。


 ――――――――だめ、だめ……好きって言われる、と……♡♡


 正直な身体は、彼がする事全てを受け入れている。乱暴なピストンは暴力的な快感として視界を揺らし、それに対し囁くような甘い言伝。相反する行為は彼女をいとも簡単にオーガズムに導く。
 彼女は彼の下で壊れたようにぶるぶると震える。その度にじゅんと濡れた感触が広がると膣内は短い間隔で収縮し、狭い秘肉が肉棒を締め上げる。

61名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:38:35 ID:vwIN8G02


「っ、っっ、っぅ、っっ♡♡♡」

 身体全体が、熱に溶け込んでしまっているのではないか、そう思える程の快楽が何度も何度も駆け抜ける。逃れようのない、強過ぎる快感。呼吸もままならず、もう何回と絶頂に喘いでいる。瑞々しい素肌からは雫が滴り、だらけきった口元はくぐもったような嬌声が漏れ、黄金色の瞳は愛欲に染まりきっている。

「そろ、そろ……いくぞ……っ、中に、だすからな……っ」
「っ、っ♡ぅ、ぅ♡っっ♡」

 彼女の限界を知らない絶頂と見境のない収縮に彼も限界が近いのか、耳元で呟く。数え切れないほどのオルガズムに痺れた口はまともに声を出すのすらままならないのか、小さく頷いた。
 ラストスパート。最奥まで強く、深く、刻むように突き挿れ始める。腰を揺する様にして奥の奥まで突き入れる、乱暴なもの。カリ首が襞を強く撫で上げ、膣奥が断続的に抉られる度に生まれる暴力的な快感が霞の脳髄奥深くに叩き込まれる。単純な運動故に生まれるはっきりとした快楽。

「っ、ぅぅぅ♡♡ふぅぅ♡♡ぅ、っぅう♡♡」
「っ、ぐ、ぅ……も、もう……出るっ……! 」

 歯をかちかちと音を鳴らすほどの快感から湧き上がってくる絶頂。眩みそうな意識の中、彼女を本能的に求める。段々と速くなる音が、もう終わりまで間もない事を告げている。彼が最後の重い一突きをした瞬間……互いの限界は決壊した。


「うぐっっっ♡♡♡♡ぅうっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「ぐぅぅ……あっ……くっ……」

 背骨から下半身にかけて砕けるかのような凄まじい快感が襲う。淀んだ意識とぼやけた視界はオーガズムによりはっきりとした感覚を取り戻す。粘り気の強い精液を吐き出しながら脈打つ肉棒。その微かな動きさえ気持ちいいのか、肉棒が跳ね返る度に彼女の身体が震え、注ぎ込まれる大量の精液をまるで喉を鳴らして飲み干すように膣が収縮を繰り返している。

「っ、っっ♡♡ふぅ、ぅ……♡♡♡」
「う……っ、ぅ……」

 彼女は枕に頭を押し付けて、ただひたすら彼の吐精を受け入れ、彼は限界まで腰を突き入れて子宮口をぐりぐりと圧迫しながら射精を繰り返す。満たされる感触。子宮からは灼ける程の熱を感じ、幸福感を覚える。射精はまだ止まらない。彼女を孕ますまで止めないとばかりに肉棒は子種を吐き出す。

 ――――――――膣から溢れた精液が彼女の太腿から滴るまで注いだ頃、やっと長いオーガズムが終わった。お互いに息も絶え絶えで、長い時間行為に勤しんだ筋肉は絶頂のためか震えていた。程よい気怠さと余韻が浸る。

「はぁ……はぁ……抜く、ぞ……」
「ふぅ……♡♡ん、ぅ……♡」

 甘美な余波に浸りつつ、半ばまだ硬度のある肉棒をゆっくりと引き抜いた。2回戦も立て続けにやったせいだろう、抜くと同時に粘っこい白濁液の残滓がこぷりと音を当てて溢れる。桜色の、充血した膣内は彼の肉槍をずっと受け入れていたからか開きっぱなしで止めどなく精液を溢れさせていた。

62名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:39:52 ID:vwIN8G02


 ーーーーーー仰向けに直り、外に溢れる子種を感じ、自らの腹を撫でながら霞はうっとりとした声で呟いた。


「こど、も……出来ちゃう、かもね……♡」

 艦娘といえど女性であり、人間の男と交じり合えば妊娠をする事もある。無論、人間と女性と比べ受精する確率は低いが、彼女と彼のように毎晩のように枕を交わし、遠慮無く、何度も何度も膣内出しを繰り返せば子供が出来る可能性だって高くなる。当然の事だった。彼はそれを聞いて怒ったり、慌てふためいたりする様子はなく、愛おしげに彼女の腹部にある手を重ねながら言った。なんとはなしに、独り言のつもりで言った言葉だった。

「……子供、か……悪くないかもな」

 彼が黙っているであろうと思っていた彼女は驚いた。それに子供を産める環境でもなければ産む暇もない環境だからだ。彼だって提督という海軍としては重要な役割を置く人間である。その人間との子となれば騒ぎが起こるし、何より前線で戦っている自分が妊娠した事で前線から下がらなければならない。つまり……双方にとってデメリットにしかならないのだ。
 その彼が、否定しなかったのだ。

 彼女は嬉しそうに微笑みながら、何時ものような強気な言葉を投げつける。

「……あんたってば、物好きね……あたしの子供よ? 生意気で可愛げのない子供に決まってるわ」
「あぁ……それなら余計欲しいな……」
「どうせ口に悪いわよ? あたしに似るだろうからね」
「……なら俺似の子供も……作らないとな」
「ふふっ……それも、良いわね」


 霞は彼に寄り、徐に身体を持ち上げると腹部に跨った。頬を撫でながら艶美に微笑んだ。


「……じゃあ頑張らないといけないわね、司令官……?」
「……お手柔らかに……な」





 ――――――――

63名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:40:32 ID:vwIN8G02
ーーーーーーー



 午前10時半過ぎ。窓の外では鎮守府の喧騒が飛び交い、眩しいほどの太陽の光が地平線の海を照らす。
 そんな外とは対照的に、執務室は静かだった。その理由は誰が見ても明白だった。口煩くも的確に指示を飛ばす霞の姿も、その傍らで椅子に腰掛けている提督の姿も無かったからだ。

「……もー……鈴谷待つの嫌いなんだけどぉ……」

 淡い緑髪を揺らして提督の机にへばりつく鈴谷。ここで霞がいるならば、こんなことをしている鈴谷に喝を入れるものだが……その霞もいない。
 そう、何時も通りならば、提督も霞もいて、10時になれば今日行う作戦の説明等をされる筈なのだが、肝心の2人がいない。鈴谷の様子に、ソファーに腰掛けて提督を待つ最上が苦笑い気味に返答する。

「まぁまぁ……もしかしたら何かあったのかもしれないし、もうちょっと待とうよ」
「……」

 もう一人、彼らを待つ艦娘もいた……朝潮型ネームシップの朝潮だ。長い事、提督や妹の霞を影ながらずっと見守っていた。

 心配そうに時間を見ながらせわしなく動く朝潮。もう既に30分近く過ぎている。
 朝潮は霞と相部屋。霞がケッコンしてから部屋に帰る事は少なくなったが、随時、連絡のやり取りはしていた。故に、心配だった。昨日も何時も通り、あいつの部屋で寝るからという事だけ伝えられただけ。それならば何時も通りの時間に来てないとおかしい……何があったんだろうか、という気懸りと焦燥が朝潮の心に忍び寄る。

 
 そんな時、ドタバタと騒がしい足音が響き渡り、そのまま執務室の扉が勢いよく開かれた。そこには、皺のあるワイシャツを着た提督と、しっかり者の霞が珍しく、髪を結ばず、ワイシャツのボタンを着けきっていなかった。身支度が明らかに整っていない様子が見て取れる。

「……す、すまん、遅れた」
「……ごめん、少し寝坊したわ」

 同じようなことを言う2人はぜえぜえと息を切らしながら最上が腰かけているソファーに座った。

「しっかし、珍しいねぇ。提督と霞ちゃんが寝坊だなんて」

 何かやってたのかなぁ、と言わんばかりににやけ顔を浮かべる鈴谷は2人が遅れた理由を何となく察しているようだった。霞は鈴谷を睨みつける。鈴谷は即座に謝り、最上はそれを見て苦笑い気味にお疲れ様、と言い、朝潮は2人に水を手渡していた。

「どうぞ、急いでいたから2人とも喉渇いてるてしょう」
「……ありがとう」
「あぁ、ありが……とっ!?」

 朝潮から手渡されたグラスを受け取ろうとしたところ、手元が狂ったのか水が霞の身体を濡らした。グラスは透明な飛沫を上げて、霞のワイシャツを湿らせてしまった。

「つめたっ……」
「大丈夫!?」
「平気よ、別に怪我したわけじゃないし……ただ、肌に張り付いて気持ち悪いわね……」

 ビショビショになったワイシャツを気持ち悪そうに仰いで立ち上がるとタオルを探し始めた。タオル、タオルと呟きつつ、部屋にある箪笥に向かった。彼女の後ろ姿を視線で追う鈴谷がふと疑問を投げかけた。

「霞ちゃんブラは?」

「え、着けてるわよ」

 ほら、と向き直った彼女を見て提督は驚愕の面持ちになり、鈴谷は吹き出し、最上は苦笑いを浮かべ、朝潮は目頭を押さえた。首をかしげ、何でそんな反応するのか腑に落ちない様子の霞は自分の姿を見て瞬間に確信した。
 そして、見る見るうちに顔が真っ赤に染まり、言葉に詰まった。

「……」

 それもその筈……昨夜着けていたマイクロビキニを、そのまま着けていたのだから。水で透け透けになったワイシャツは、シースルー素材のビキニを容易く透かし、彼女の小さな乳房を露わにしてしまっていた。

「……」
「……」

 沈黙に立ち尽くす2人。提督は無言のまま、箪笥の中のタオルを引っ張り出すと彼女に羽織らせ、着替えるよう促した。霞は茹で上がったタコのように顔を赤く染めたまま、何も言わずに去っていった。






「やっぱお楽しみだったんだねぇ……」
「こらこら……」


おわり

64名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 19:41:08 ID:vwIN8G02
お目汚しセンセンシャル!!

いやらしい霞もいいかなぁって……

65名無しのおんJ提督:2015/12/01(火) 22:23:05 ID:RgMurCNY
おつやで

こいつはいい(恍惚)

66名無しのおんJ提督:2015/12/02(水) 00:57:47 ID:vo3i/US2
いいですねぇ、いいと思います

67名無しのおんJ提督:2015/12/04(金) 15:06:49 ID:BJz40fog
艤装を外された伊勢へ次々と暖かみを帯びた湿り気のある触手が襲いかかる。
「ちょ、やめてってば!」
必死に体を動かし、手足に纏わり付こうとするそれを避けようとするが、艤装が無ければただの人間も同然である。
痺れを切らした触手たちによって、狙われていた手足から下腹部へと鋭い一閃が走る。
「あがっ……」
腹へと強い衝撃を受け、だらしなく開いた口元から涎を垂らしながら身悶える。
その瞬間を狙わずに待っているなどと言う情、情けは持っていないのだろう。次々と襲いかかる触手になすすべもなく手足を絡めとられてしまった。

68名無しのおんJ提督:2015/12/04(金) 15:07:41 ID:BJz40fog
しまった、という顔を浮かべ伊勢は必死にもがき、触手を振りほどこうとする。が、先程のダメージがまだ残っているのか、体を上手く動かすことが出来ない。
手足を完全に拘束しきった触手たちは次の段階へと移行した。
体に巻き付いた触手が次々と伊勢の体中を服の上からなぞり始める。
「あっ…やめて……あっ…!」
伊勢の制止を求める声を聞く様子もなく、撫で上げるスピードは上がっていく。
撫で上げる箇所も脇腹、腰、臀部と徐々に際どいものとなっていく。
その体験した事の無い快感に思わず顔を赤らめ、声をあげる。
「うっ……くぅっ……!」

69名無しのおんJ提督:2015/12/04(金) 15:11:02 ID:BJz40fog
なぶるように体中をまさぐる触手の群れは増えることはあれど減ることはない。
その中に今まで現れなかった奇妙な触手が現れた。
まるで注射器のような先端部分を持ち、他の触手よりも一回りちいさいその2対の触手は未だ他の触手たちの接触の無かった胸部へと向かう。
快感に身悶える伊勢の乳房へと触手の先端が突き刺さり、ドクドクと何らかの液体を流し込む。
「あっ…胸が…胸が…!」
変化は一瞬であった。瞬く間に乳房が膨らんでいき、タイツがその膨張に耐えられずに弾ける。心なしか、腰や太ももの肉付きもよくなってきている。

70名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:05:09 ID:vwIN8G02
ーーーーーーー


 深くなり始めた夜、時刻は既に11時を指していた。既に職務は全うし、夕食も終え、風呂も入り、1日すべきことは殆ど終わらせた2人には就寝という選択肢を選ぶのは必然であろう。
 窓の向こうはしとしとと雨が降り、部屋には雨の雫が地を叩く音と時計が時を刻む音、2人の静かな呼吸音だった。

 ――――雨で濡れる夜、カッコカリ記念に贈呈された煎餅布団に2人は潜り、提督は小さな明かりとなる灯篭を手元に寄せて仰向けの状態で読書に勤しみ、反対に霞は彼に背を向けるようにして丸まっていた。

 特に会話もなく、ゆっくりと流れる雨音と共に時間が進んでいく。



 ――――暫くして霞はモゾモゾと身体を動かした。
 寝返りを打った訳ではなく心寂しさを紛らわす為に動いたのだが……一向に寂しさは消える様子はない。ならば、と目を瞑り眠ろうとするが、中々寝付けない。胸奥に何か張り付いたような物悲しさが、全ての試みを邪魔をする。
 やがては、火に油を注いだの如く小さな寂しさは直ぐに身体全体へと回ったーーーー

71名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:05:47 ID:vwIN8G02

 ーーーーーこの心寂しさは彼を求めれば消えるだろうが彼女の性格による強過ぎる自制の意思が、そうはさせまいと理性を踏みとどませる。

 しかし、自分を抑え付ければ抑え付けるほど、比例して反動が大きくなるのは言うまでもない。
 彼に抱かれた時に感じた、充足感と幸福感が頭を過る――――。

 ――――大きな腕に抱かれ、彼に求められ、時には獣のように後ろから組み敷かれ、時には優しく手を繋ぎあったり、抱き合いながら。
 抱かれる情景を思い出したところで、心臓が高鳴った気がした。次いで、自分の中の悪魔が想像に甘い毒を添えて理性を溶かしてくる。


 ――――想像してみなさいよ。


 ――――あの口で愛を囁かれたら。

 愛してる、その言葉を耳元で呟かれた事を想像するだけで甘美な陶酔に襲われ、思考が鈍る。

 ――――あの指で好きなように身体を弄ばれたら。

 ゴツゴツとした指先は、外見に似合わず繊細な動きで弱い所を狙って快感を高めてくれるだろう。そう思い浮かべるだけで、身体はたちまち甘い痺れに囚われる。

 ――――あの逞しい物で突かれたら。

 下腹部辺りが熱く疼く。女としての本能なのか……求めて止まず、胎は彼の物で満たされる事を望んでいる。熱持った身体は今にも暴走しそうな、欲望に染まりつつある。

 ――――本当、いやらしいわね。

 違う、違う――そう否定したいが、彼に馴染んだこの体躯は、想像だけでもう蜜が滲み始めている。考えてしまうだけで、この心は、この身体は彼を欲してしまう。

 ――――でも、彼はこんなあたしでも受け入れてくれるわ。
 悪魔が、そう呟く。媚びるような、艶やかな声で。

 ――――そう、彼が愛しているのはあたしだけ。あたしも愛しているのは彼だけなんだから――――

72名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:06:39 ID:vwIN8G02

 ――――彼女は今まで向けていた背を逆にし、向き直った。彼の横顔に黄金色の瞳を移すと、彼の服の裾を引っ張った。興奮して、速くなった吐息や鼓動に気付かれないよう願いながら。

「ねぇ……」
「ん?」

 そして、声を掛けると腕を掴んで小さな体躯を彼の腹部の上に動かし、馬乗りのような体勢となった。掛けて合った掛け布団は捲り上がる。
 本を退けると視界一杯に彼女の身体が映る。彼の顔は疑問が映り、彼の瞳から見える彼女の顔は期待しているような面持ちだった。

「……どうした」
「……言わないとわからないの?」

 僅かに孕む怒り気味の声色、小さな左手で頬を触られる。ほんのりと温もりと冷たさを帯びた掌が心地よい。灯篭の明かりが照らす彼女の顔は声に反して赤らんでいるように見える。何時もは結んでいる銀色の髪は解けていて、何処と無く色気づいているように感じられた。
 その様子にふ、と彼は微笑むと本に栞を挟まず、畳に置くと彼女の顔をゆっくりと引き寄せた。静かに口付けを交わす。
 最初は啄ばむような、優しい接吻から、身体を擦り付けるマーキングのような深い口付けになる。吐息も段々と速い物となり、血液がふつふつと滾るような火照りを帯びる。

「ちゅ、る、んっ、ふぅ……ん」
「っ、ぅ、ちゅ……ぅ、ふ……」

 ふぅふぅ、と彼女の弱々しい吐息が当たってなんともこそばゆい。
 彼も、強弱をつけながら彼女との深い接吻を楽しむ。

「ん、ふっ……ぅ、ちゅる……」
「く、ふ……ぅんん……」

 搦めるように這わせ、2人の間からには唇と舌が絡む音が漏れている。唾液が混ざり合い、 舌が擦れる度に走る仄かな快感に身を任せる。
 それでも足りないと言わんばかりに滑りを纏った小さな舌がより深く求めるように蹂躙する。興奮も昂まり、程よい劣情が2人を蝕み始めた頃になると口が離れた。
 彼女は口付けの余韻を反芻するように味わっていると、跨った箇所から熱を感じた気がした。

「……もう大きくなってるわよ、変態司令官……?」
「……誰のせいだか、な?」

 挑発的な発言に応えるように、彼は器用に片手で彼女のパジャマのボタンを外していき、対して彼女は彼の身体に指を這わせつつシャツを捲り、剥き出しになった肌を撫でる。
 彼女の指が悩ましげに彼の胸を伝っていると既にボタンは全て外され、パジャマが取られた。幼さが残る彼女のシミ一つない体躯を露わにした。女性的な成長を感じさせつつも未成熟さがある身体つき。幼さ故に肌はハリがあり、瑞々しさがある。
 また、最前線の戦場に常に立ち、駆逐艦故に他の艦より速く動く事は多々ある。その運動の賜物だろう、腹回りは引き締まっていて、ボディラインをはっきりとさせている。

「……綺麗だ」
「あんた、いつ見てもそればっかね」

 呆れたように言う霞だが、声質は優しげであり、口元は少しであるが微笑みを浮かべている。

73名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:07:51 ID:vwIN8G02

「……触るぞ」


 短く呟くと、くびれが出来始めた腰に手を触れる。まだ成熟しきってないせいか、ほっそりとしてはいるものの、成長過程である彼女の体は肉が付き始め、女性らしい柔らかさが掌に馴染む。

「あ、ぅ……くすぐったいわ……」

 ぺたり、ぺたりと身体の触り心地を確かめ、手は上へ上へと進む。やがては胸を覆う布……ブラジャーへと辿り着いた。少し膨らむ双丘を柔柔と触れる。布越しでありながら、柔らかさと弾力が伝わる。
 食い入るように見つめ、壊れ物を扱うかのような手つきと彼の真面目な様子にふ、と霞は微笑を湛えた。

「……あ、あんたってば、本当……胸好きよね……」
「……惚れた女の胸は男なら誰だって……触りたがるものだろう」
「そういうものかしら……っ、ぁ……♡」
「……少し、大きくなったか……?」
「……っ、ん……ぁ……確かめて、みる……?」

 小さな甘い吐息を漏らしていた彼女はそう提案すると、彼は小さく肯定した。焦ったそうに声を漏らしていた霞は彼の手をやんわりと退かす。不思議な表情を浮かべる彼をよそに彼女はスポーツブラジャーとも呼ばれるそれを脱ぎ捨てて、胸を晒した。

「……」

 彼は思わず固唾を飲んだ。なだらかでありながら、白磁の肌の中でツンと上を向き、淡い桜色に色づく乳頭。幾度も見たが、何度見ても止まぬ新鮮味と慣れぬ劣情。
 乳房はうっすらと形状を表す程度の大きさでしかないが、形は整っていて清楚な雰囲気を感じさせられる。
 徐に、触れる。霞はピクリと反応しながら、切なそうな顔を浮かべつつ受け入れる。まだ芯の残る乳頭の弾力と、相反した乳房の柔らかさ。掌に収まらない大きさに得も言われぬ背徳感が興奮をそそる。

「っ、んっ、ぅ……ふぅ……」

 今度は円を描くように、優しく揉む。手に吸い付くような、しかしながら一方で吸い寄せられるような魔性の魅力を放つ小さな乳肉は感度は良好で、こうやって静かに愛撫されているだけで、弱々しい心地よさが霞の身体をくすぐる。

「……可愛いな」
「ぁ、っう……ば、ばか……♡」

 手にとって一つ一つ揉み解くような、丁寧な愛撫。じんわりと、馴染ませるような快感が興奮を燻る。細い喉から出る小さな嬌声が段々と大きくなっていく。
 彼は頃合いを見計らい胸から手を離すと、指でピンと主張する淡い桃色の小さな乳首を弾いた。

「ぁあっ♡」

 敏感になっていた部分に、幾分か強い刺激。あまりの刺激に腰が浮くが、それだけでは終わらなかった。

「ふ、ぅんんっ♡」

 彼は指の腹で摘みあげた。断続的な快楽の波が局部に集中し、あまりの暴力的な快感に抑え気味だった口元が緩む。一気に押し寄せる快感に肌には汗が浮かび、身体が火照る。
 しかし、攻めに徹していた彼は急に手を止めた。かと思えば、霞の身体をゆっくりと押し倒し、慣れた手つきでズボンを取り去ってしまった。

「あ……」

 露わになる淡い水色のショーツ。彼が見つめる先のクロッチ部分が、生地の色より濃く染まっているのは錯覚ではない。
 流石に、間近で見られるのは抵抗があるのか華奢な太腿を寄せて隠そうとする。彼はその様子に釘付けになりつつも、自らのズボンも脱ぎ捨てた。
 互いに、下着一枚。隔てる物は、殆ど無くなった。

「……んっ、む……ふぅ」
「ちゅる、ん……ぅ、ぅん……」

 再び、深い接吻。今度は抱き合いながら、身体を擦り合わせつつ交わす。肌と肌が重なり、温もりが直に触れ合う。
 すっかり情欲に染まりきった興奮は簡単に理性の箍を外す。より深く、より強く求めるように、彼は彼女の背中に手を回し、抱き締める力を強める。

74名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:08:28 ID:vwIN8G02

「ぅ、んふ……ちゅ……」
「っ、ぅぅ……ふぅ……っん!?」

 口付けをしていた霞の表情が驚きの表情を浮かべると、唇の間から嬌声混じりの水音が漏れる。それもそのはずである、彼女の引き締まった美尻が揉みしだかれてるのだから。
 胸とは違い弾力性が強いが、もっちりとした柔らかさがある彼女の尻は揉む事に適している、そう思える程の物で、夢中になって愛撫を続ける。
 彼女は嫌がる素振りが少しはあったものの、直ぐに受け入れ順応する。昂ぶった性的興奮は収まる事を知らず、寧ろ先程感じた嫌悪も快感として変換されているようで、強く揉まれて、屹立とした物を押し付けられてるだけで彼女の下腹部には熱が集まる。

「っ、んんぅ、ふぅう……ぷぁ、はぁ……♡」

 離れた口から漏れる甘い息。さりげない仕草でも劣情を燻り、幼い外見に似合わぬ色香と艶やかさで一層、彼を惑わす。
 愛欲に濡れた意識の中、彼女は膝立ちになると、スルスルと蜜を吸った下着をまるで見せつけるように脱いでいく。興奮によるものなのか、濡れやすい体質のせいなのか、クロッチ部分から媚糸が引いていた。

「……っ」

 一糸纏わぬ彼女の身体。傷一つなく、瑞々しい素肌には熱りからか汗が伝う。下腹部には、ぬらぬらとした光沢を帯びた媚肉がほんのりと鬼灯色に染まり艶かしく蜜露を垂らしている。灯籠の明かりで照らされる姿は何とも妖艶で彼の視界を揺らす。
 媚態に見惚れて動けない彼を余所に彼女は彼にしなだれかかると、下着に手をかけて少しずつ、少しずつ脱がして行く。自己主張するそれに引っかかったものの、慣れた手つきで難なく脱がす事に成功した。

「はぁぁ……♡」

 待ちに待った物が手の届くところにあるという喜びの溜息。
 それは限界まで勃起していて肉幹は全体的に薄黒く、血管が浮き出てグロテスクな印象を受ける。ふっくらと膨らむ亀頭からには我慢汁が止めどなく滴る。
 裏筋に指先を這わせばピクリと揺らし、僅かな快感に震える。

75名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:09:28 ID:vwIN8G02

「ぅあっ……」

 霞は桜色の唇を舌舐めずりすると、人差し指で亀頭周りを刺激し始める。カウパーの雫を指の腹に塗ると、鈴口から肉竿にかけて全体にまぶす。弱々しい悦楽、もどかしい愛撫はなんともむず痒い。絶頂とまでは至らない快感に身を任せていると、彼女は指を離し、我慢汁で濡れた人差し指を親指で弄ぶ。粘り気が強く、糸を引く光景を数回程眺める。

「……ん♡」

 仄かに鼻につく雄臭い性臭。それだけで、思考がぼやけ、蜜が垂れ、表情も悦楽に蕩ける。
 霞は指についた先走り汁を舐めとると、そのまま膝立ちの姿勢から彼の肩を掴み、馬乗りに転じた。腰の下ろした位置が丁度、肉竿が彼女の恥丘に下敷きの形へとなった。

「じゅる……はぁ、っぅん、ぁっ……はっ……♡」

 溢れかえる蜜露を擦り付けるように、腰を前後に動かす。湿った水音が耳を刺激し、先程よりもはっきりとした快楽に視界が眩む。
 霞も霞で、腰を巧みに使うことで小さな肉芽を擦り上げて、砕けそうな快感に意識が淀む。蜜は既に彼の太腿を濡らす程まで溢れかえっており、我慢していたせいもあるのか霞の限界も遠くはなかった。

「はぁ、はぁっ、んっ、ぁ、ぁっ♡」

 淫する霞の腰の揺れる速度は遅くなる所か速くなっていた。愛液でしとどに濡れた陰茎は擦られる度にくぐもった淫猥な音を奏でる。
 数往復ほど、回数を繰り返した時だった。体重を支えている彼が矢庭に動いた。
 持ち上げた両手を小ぶりな胸へと矛先を向ける。しかし、柔らかな触り心地を堪能するわけでもなく目的はピンと主張して震える小さな乳首。指の腹で捕らえると、優しく捏たり少し力を入れて引っ張ったりと弄ぶ。

「―――――――ッ♡♡♡」

 それだけで容易く限界点が決壊し、声にならない詰まった嬌声を彼に囁く。
 許容を超えた快感が津波の如く押し寄せ、彼女を思考もろとも飲み込む。過剰な快楽の余波が下腹部から背筋を通り抜けて、目の前が白く光ったかのような錯覚の後、陶酔感と脱力感の残滓がそっとのしかかる。

「――――はぁ……♡♡はぁ……♡♡んっ♡」

 暫く小刻みに躯を痙攣させて心地よい確かな余韻を味わうと、彼に接吻を交わしつつもたれ掛かった。オーガニズムによる快感が身体の中から抜け切っていないのか震えは止まらず、交わした口付けは覚束ない物だった。それでも、最後の一滴まで搾り取るように貪り合う。

「っ、ん……ちゅる……っ♡」

 暫し抱き合いつつ、安心感のある快感を感じあっていると絶頂の海に漂っていた霞がやおら動いた。肩で息をして、持ち上がった白い身体はうっすらと血色良く紅色に色付いている。
 動向を見守っていると、華奢な体躯を布団の上に広げた。そのまま、肩で息をしつつ脚をM字に折り畳むと小さな声で呟いた。

76名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:10:10 ID:vwIN8G02

「……そろそろ……お願い」

 無いなだらかな恥丘。陰唇は閉じていて幼い印象を与えるが、箍が外れた肉壺は汗と共に愛液が滴り、灯篭がほとを暗い中でも反照させ卑猥さがより一層強調されている。

「はやく、しなさいよ……♡」

 強烈な視覚的刺激。それを更に追い討ちをかけるかのように、彼女は自らの蜜液で潤った陰唇を人差し指と中指で開き、挿入を誘う淫靡な格好で彼を煽る。にちゃりと卑猥な音を立てて、白く濁った愛液が垂れる。
 普段はしっかり者として振舞っている彼女が目の前で、娼婦のように誘って来ている。普段とは違う、蠱惑的な魅力に心臓は早鐘を打ち鳴らす。なくなった理性を袋叩きにし、脳が彼を本能的な衝動に駆り立てる。
 淫らな甘い匂いに誘われるがまま、彼女に寄り掛かる。小さな輪郭に合わせるように身体を重ねと、彼女は来て、と囁いた。
 ぬらぬらと濡れる陰唇に先端をつぷり、とあてがう。潤滑油が充分過ぎるぐらいに溢れかえってるせいだろうか、少し力を入れるだけで亀頭は埋まり、すんなりと入ってしまった。

「ん、はぁぁぁ……♡」

 とろとろに蕩けた粘膜。狭い襞を掻き分け、ゆっくりと、ゆっくりと押し進める。膣肉は待ち望んだ物を歓迎するように歓喜に震え、潤んだ膣内を更にじくじくと蜜を溢れさせる。

「くっ、はぁ……」

 張ったエラが擦れる度に腰が浮きそうな快感とこのまま一気に突き込んでしまいたいという獣の本能が意識に混じるが、まだこの幸せに満ちた充足感と甘美な悦楽は手放したくはなかった。

「んんっ……♡」

 纏わり付く膣肉を抉った先には、コツンと膣内とは違った感触が。膣奥まで到達した、そう理解すると同時に彼女はくぐもった喘ぎ声を漏らす。体格差があるせいか4分の1程秘肉に埋まり切らず、肉竿の根元が見えている。

「はぁっ……♡はぁっ……♡」

 彼女は息も絶え絶えといった様子だが、愛液をだらしなく垂らす肉壺は意思を持っているかのように蠢き、もっと動けと言わんばかりに締め付ける。

77名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:11:56 ID:vwIN8G02

「……動くぞ」

 言葉が出る頃にはもう行動に移していた。恋人繋ぎで彼女の片手を絡め、太腿を掴んで動きを固定すると、密着状態だった子宮口に先端で小突く。それだけで彼を逃がさないようにと膣内をきゅうきゅうと収縮させるが、そんなことはお構いなしに節操のない肉棒は収縮する襞を無視して容赦無く穿いて引き抜き、より強く突き入れた。

「あっ、ぁん、ふぅ、んんっ♡」

 胎の隔てる入口を突かれる感触は筆舌に尽くし難い気持ち良さがあるらしく、トントンと小刻みにノックされたり、押し付けられる圧迫感だけで身体の芯から快楽の波が響き、ゾクゾクと皮膚の逆立つような感覚が彼女は好きだった。

「っ、ぅ、んぅぅ、あっ、ぅっ♡」

 初めのうちは単調な前後の往復だけだった動きが縦長の螺旋を描くように、膣奥から膣の側壁までくまなく刺激する。そして、ある程度彼女の反応を確かめるとピストン運動に切り替わる。
 しかし、先程のような小刻みな振り幅ではなく、一往復毎にゆっくりではあるが間隔は大きくなって、肉棒が抜けるぎりぎりから一気に腰を叩きつけて奥の奥まで突き入れる、乱暴な挿入と抽出だった。
 カリ首が襞を強く撫で上げ、膣奥が断続的に抉られる度に生まれる暴力的な快感が霞の脳髄奥深くに叩き込まれる。単純な運動故に生まれるはっきりとした快楽。
 肉と肉がぶつかるような音が、部屋を支配する。

「っふ、ぁ、ぁあっ、んんぅ♡」

 立て続けに襲う快楽に瞳に涙が零れ、噛み締める力もなくなったのか、緩んだ口元から段々と嬌声が漏れる。結合部には泡立った愛液で溢れ、行為の激しさが増しているのを表している。

「っ、っ、ふぁ、んっ、ぅ、ぅ♡」

 瞳を閉じて半開きの小さな唇からは、切なげな吐息が漏れている。往復する腰は段々と動きが速く、そして振り幅が大きくなってくる。数往復毎に彼女の身体がぶるぶると震える。その度にじゅんと濡れた感触が広がると膣内は一瞬収縮する。

「っ、っっふ、っんん♡♡」

 肉棒が子宮口を穿つ毎に詰まったような嬌声を上げて、形の良い眉に皺を寄せて唇から先よりも幾分か甘い声を上げた。軽く達したのだろう。その証拠に子種を強請るようにぎゅうぎゅうと肉壺が引き攣っている。
 狭い秘肉が搾り取ろうとしてくる。乱暴にストロークを繰り返している彼も、余りの快感につられて絶頂しかけるものの歯を食いしばって、悦楽に震える筋肉を無理やり動かす。

「っ、っ、っ……」
「ひ、ぃ、ひってる♡ひってるから、ぁぁっ♡」

 舌が攣っているのか、呂律は回っていない。オーガズムを迎えたばかりの膣内は敏感で、それこそ肉芽を弄られたかのような強過ぎる快感が連続して襲ってきている。

78名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:17:40 ID:vwIN8G02


「っ、ひぅ、ぁっ、あっ、ぁくっ、あっ♡♡」

 膣奥まで到達する度に、子宮口を押し拡げられる。その都度、彼女は壊れそうな刺激に何度も何度も絶頂を迎え、弓なりに痙攣しっ放しである。律動的に腰を揺すると、一突き毎に悲鳴が上がり、絶頂。引き抜けば張ったカリ首が敏感な襞を抉り、また絶頂。それでも彼女の膣内は彼を離そうとしない。
 挿入する度に肉棒を締め上げる膣内。限界を知らない絶頂と見境のない収縮に彼も限界が近づく。ラストスパートに入口から最奥まで強く、深く、刻むように突き挿れる。

「はっ、はっ、はっ……!」
「ひ、っ♡あっ♡っ♡ま、またっ♡」
「ぐ、ぐっ……っっっ!!」
「く、は、ぃ、い、いっひゃぅぅうっ!! ああぁぁぁっっ!!!! ――――っっっっっっ!!!!!」


 最後の一突き、奥に到達した瞬間。彼女の絶頂の断末魔が響いた時。彼の目の前が白く弾け、同時に背骨から衝撃が突き抜け、下半身が砕けるかのような凄まじい快感が襲う。二度、三度と弱く脈打ち、次いで歯止めが利かなくなった欲望の塊が一気に噴き出して、子宮一杯に拡がっていく。

「――――――っっっ♡♡♡♡」

 何度も何度も脈打つ肉棒。その微かな動きさえ気持ちいいのか、同じリズムで肉棒が跳ね返る度に身体が震え、注ぎ込まれる大量の精液をまるで飲み干すように、膣が収縮を繰り返している。だが、射精はまだ止まらない。彼女を孕まさんとばかりに肉棒はまだ子種を吐き出す。


 ――――――5分をも時間を掛けて漸く射精が治まった。
 彼は大きく息を吐き出す。強張った身体から力が抜け、心地良い余韻が訪れる。強張った筋肉は緊張が解け震えているものの、まだ動かせる。

「はっ♡ひっ……♡ぁ……♡♡」

 吐精が終わったのを見計らい、結合部に目をやると白濁液が胎入り切らずに漏れ出ていた。まだ硬度がある肉槍を引き抜けば、膣内に残った白濁液の残滓がこぷりと溢れてシーツを汚す。何度も突き上げたせいだろう、陰唇は閉じず膣内がヒクついて愛液と混じった子種汁が流れる様子を露わにしてしまっていた。
 その淫猥な光景にまた肉棒が臨戦態勢に入るが、彼女の事が気にかかった。
 視界を彼女の方に向けると、余韻を反芻しているのか少し視線が危うい。しかし、まだ意識はあるようで瞳は虚ろではなかった。絶頂の連続で体力は相当消耗した筈だというのに平気な辺り流石、艦娘だろうか。

「はぁ……♡はぁ……♡……ん……っ……はぁぁ……♡♡♡」

 陰唇を拡げ、零れる子種を見て嬉しそうに笑む。それだけで、彼に再び火を付けるには充分だった。徐に近づいて彼が優しく覆いかぶさる。彼女は僅かに驚いた様を見せたが、直ぐに抱き留めた。
 掻き抱くように、温もりを離さまいと言わんばかりに強く強く力を込めて、彼の欲望を受け止めた。
 夜の暗がりが昇り始めた朝日が空を青く色付けるまで……営みは続く。

79名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:19:09 ID:vwIN8G02
――――――――


 朝。昨夜の雨はもう止んでいて、外には何時も通りの、鎮守府の喧騒が窓の外で慌ただしく鳴り響いている。喧騒に混じるように、目覚まし時計が起きる時刻だとけたたましく騒ぎ立てる。

「んん……ぁ……?」

 顔に感じる温もり。頭が何かに包まれているような感触もある。耳に聞こえる騒がしい音と共に、ゆっくりと彼は目を覚ました。
 寝惚け眼に映る視界は肌色と淡いピンクの……
 脳がそれが何であるか認識すると、その正体が動いた。

「ぅ、ん……」

 頭上から聞こえる愛らしい声。何かに包まれて動けない頭を動かし何とか上げてみればーーーーー

「……あら、やっと起きたのね。お寝坊司令官」

 うっすらと目を開けて、優しげに微笑みを湛える彼女と目が合った。何気無く彼女の小さな左手で頬を撫でられ、温もりと冷たさを感じる。
 同じように彼が彼女の頬を撫でればくすぐったそうに笑って言った。



「おはよう」と。


 そして、おかしそう言うのだ。


「酷い顔よ。一緒にシャワー浴びなきゃね」と。

80名無しのおんJ提督:2015/12/06(日) 01:19:39 ID:vwIN8G02
過去作品ばっかですまんな、終わりやで

ほなまた……

81名無しのおんJ提督:2015/12/07(月) 20:15:05 ID:IleeSgxg
瑞加賀やで






 今日は冬の風が吹く12月7日。

 明日、12月8日はかの昔、真珠湾攻撃があった日である。ある空母娘はその当時を想起し、噛み締め、またある空母は栄光の日々を懐かしんでいた。はたまたある空母は自身が経験したことがないこの出来事の大きさを味わっていた。

 ここに2人、空母娘がいた。名前は加賀と瑞鶴、どちらもあの大海原の戦いに口火を切った者である。

「加賀さん、なんか用事?寒いんだけど。」
「少しぐらいはいいじゃない、瑞鶴。」
「だーから用事ってなんなのよ!少しぐらいは、ってどういうことなのよ!?」
「突然だけど、貴方に明日のプレゼントを予約済みなのよ。」
「え?プレゼント?」
「ええ、食べ物よ。意外と思ったかしら、瑞鶴?」
「いや、別に……明日はただ、真珠湾攻撃があった日だけじゃない?確かに私の初陣だけど……記念日とはちょっと違うと思うんだけど……。」
「まあ、いいじゃない。初出撃記念日なんだから。」
「そうね……ちょっと不思議な感じはするけど、もらっておくものはもらっておくことにするわ。で、プレゼントは何?」
「七面鳥。」
「七面鳥ですって!?冗談じゃないわ!ってなんでなの?」

 七面鳥。瑞鶴はその言葉に一瞬凍りつき、そして苛つきを覚えた。瑞鶴にはマリアナの戦いで艦載機が七面鳥撃ちと揶揄されるほど撃墜されていった記憶があるからだ。そして、加賀の口からたびたび煽り文句として耳にタコが出来るほど聞かされているということもある。ヒートアップする思考を抑えつつ、瑞鶴は理由を尋ねる。
「あら、どうしたの瑞鶴、要らないの?それなら葛城にあげようかしら。彼女ならきっと喜んでくれると思うわ。」
「そ、それは……」
 ずるい。葛城は瑞鶴を尊敬している空母娘である。しかし、葛城には七面鳥のくだりを知らない。彼女なら純粋に豪華な食事の前で目を輝かせるだろう。そして、瑞鶴自身も葛城から尊敬される先輩でありつづけるため、出来る限り不甲斐ないところを見せたくはなかった。今でも、葛城に見せたくない姿であるのに。
 加賀は瑞鶴の案の定の反応に見て、さらに追撃をかける。
「と言うより、もう予約しているからキャンセルは出来ないわ。」
「ったくー!最初から食べさせる予定だったでしょう!?」
 瑞鶴はやっぱりな、と思いつつ、美味しそうな七面鳥に想いを馳せていた。
「ええ、ただの七面鳥よ、瑞鶴?おいしそうな七面鳥。せっかく私が予約したから、食べてほしいわね。」
「加賀さんったら……もう……わかったわ……七面鳥いただくわ。」
「決まりね。明日の夕方には自室で待機しておくのよ、瑞鶴。」
「分かったわ……。」
「自室にいなかったら私が食べることになるから。」
「わかった、わかったわ。そうね!七面鳥を食べたかっただけだから!!もう!!!」
 瑞鶴はそう早口でまくし立てると、そそくさと自室へと戻っていった。
 こうして瑞鶴は加賀の作戦にまんまとはまり、七面鳥を食べることとなった。

82名無しのおんJ提督:2015/12/07(月) 20:16:48 ID:IleeSgxg
 12月8日当日。日が落ち、小宴会場では8名ほどの正規空母が騒いでいた。机の上にはサラダ、焼き鳥、七面鳥、そして鍋とごった返していた。特に瑞鶴はジューシーな七面鳥に夢中である。
「ん〜最高!加賀さんありがとう!」
「食べる方の七面鳥は良いでしょう、瑞鶴?」
「もちろん!葛城もほら!」
 既に葛城も七面鳥を頬張っていた。葛城は食べることに夢中になっており、ただただ無言で幸せそうに七面鳥にありついていた。

 正規空母の会の夜は長い。

(終)

83たまにはジョイナス:2015/12/08(火) 05:20:26 ID:ahcvioM2
秋イベ反省 おちんぽジョイナスだ!


高木「さて今日でイベントもおしまい秋刀魚からの長い秋もおわりです。でもおじいちゃんは寒い冬は苦手ですねえ」
福谷「今回のメンテナンス・アップデートではクリスマスmodeやクリスマスボイスを用意しているそうですね。
   やはり今回のアップデートの目玉は今まで無かった高雄型への追加要素があるというところですね」
高木「クリスマスmode?性なる夜にはやはりちんぽがふさわしい。
   田島!寒空に高々とちんぽ出せ!」
浅尾「田島君は年棒大幅アップでホクホク中だ!シーズンの反省も含めて僕が代わりにジョイナアアアアスゥ!」
小田「イベント反省! THE END猛省! こんだけやっても図鑑未完成! 備えろ遠征! 次の育成駆逐が安定!」
高木「小田、ロリコンだったのか(呆れ)憲兵には通報しておいた
   しかし、あのJP?、なんですかあれは、私の自慢の駆逐艦たちの主砲がまるでジョイナスできないじゃないですか」
福谷「監督、ジェルミー・パウエルではありません、PTです…
   これでも史実どおりのステ調整だという意見もあります。
   ただやはりS逃しの原因になりやすいので、おっしゃってることはよくわかります」
荒木「群れる馬…?落合さんならただ一人の駿馬を愛してくれるから、こんな敵実装しないのに」ヒヒーン
高木「黙れ素人が! あの幼子イメージはおじいちゃん新たな境地に辿りつきそうです」
坂井「もうすぐ3周年でも新たなエロ需要を提供し続けるその姿勢
   艦これの未来は明るい(ガッツポ)」
吉見「なんてことだ…なんてことだ…」

84名無しのおんJ提督:2015/12/17(木) 01:04:41 ID:h3z3.s2E
昨日から新たな海域の輸送作戦が始まった。歴戦の猛者はもうバニラ湾まで達したらしい。一方で戦力に乏しい我らは先任者の情報を待つことにしたが・・・。


提督「もう我慢できねぇ!出撃だ!」
霞「待ちなさいクズ!約束が違うでしょうが!」
提督「だって他所の提督は出撃してるのに・・・ちょっとくらいなら・・・」
霞「情報が揃うまで待機って何度言えばわかるのよこのクズ!朝まで待機!」
提督「うぅ・・・E1くらいなら・・・」
霞「あーもうめんどくさい縛り付けてやるわ!」
提督「えっ・・・ま、待っ・・・」



提督「何も手も足も縛らなくてもいいのではないでしょうか」
霞「だめです」
提督「うぅ・・・」
霞「小娘にこんなことされて恥ずかしくないの?」
提督「恥ずかしいです・・・」
霞「みじめよね。ふふっ…」スリスリ
優しく股間を撫で始めた。
提督「ぅ・・・」 
霞「もうおっきくなってきたわ」ジジー
社会の窓が開かれ、イチモツが溢れてくる。
提督「うっ・・・」ボロンッ
霞「ちょっと触っただけでビンビンね」シコシコ
提督「くっ・・・あっ・・・アーイキソ・・・イクイク」
霞「誰がイっていいって言ったかしら?」
提督「もうイきそうです・・・イかせてください・・・」
霞「どうしようかしら」シコシコ
提督「くっ・・・」
霞「まだ駄目よ」 
提督「そんな・・・」



およそ30分に渡る寸止め地獄で、イチモツはパンパンに膨れ上がり、我慢汁でベトベトになってしまった。
提督「うぅ・・・許して・・・」
霞「出してないのにビクビクしてるわ」
提督「はぁはぁ・・・」
霞「さて」
そう言うと、向き合う形で私の上に股がってきた。すぐ目の前に霞の頭が見える。
提督「まてまて、付けないとまずいだろ」
霞「そうね、出したら妊娠しちゃうかもね・・・んっ・・・」
いきり立ったイチモツが霞の中に飲み込まれていく。極限までシゴかれたイチモツは気を抜けばすぐにでも爆発しそうだ。
霞「いくら提督でも妊娠させたらマズいわねぇ」
そういいつつ腰を動かしていく。
提督「うっ・・・くうっ・・・」
霞「んっ・・・出したら妊娠しちゃうかもね・・・我慢しないとね」ズンズン
提督「そんなっ・・・うっ」
霞「ほら我慢しなさいな」ズンズン
提督「もう出るっ・・・!」
焦らされ続けたイチモツから精液が鉄砲水のように溢れ出し、目の前が真っ白になった。
1分も持たずにぶちまけてしまった、




提督「ふぅ・・・たっぷり出してしまったな」
霞「出しすぎよ、本当に妊娠しちゃったかもね」
提督「そしたら二人で育てていけばいいんじゃないかな」
霞「そうね・・・」
提督「さて、一発出したし何発出しても同じだな」
霞「随分と元気なのね、いいわよ」







朝霜「よっ!昨夜は帰ってこなかったけどどうしたんだ?」
霞「ちょっと仕事が終わらなくて」
大淀「その割には目がキラキラしているようですが」
霞「な″っ」
足柄「ふぅ〜ん?そっか〜そうだったんだ〜」
霞「な何よ司令のこと少しくらい感謝してるし…ち違う!」
清霜「まだ司令も何も言ってないよ」
大淀「熱い夜を過ごされたようでなによりです」
霞「〜〜〜〜ッ!!」




って感じの薄い本を読みたい。

85名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 04:48:14 ID:2QA0o0tE
しば駆でジョイナス!2016元旦ともに!

敷波「みんな新年あけおめことよろだよ、正月といえばビッグな臨時収入!司令官!お年玉は?」

綾波「司令官はいま1-3任務の羅針盤とダンス中です、だから代わりに綾波が明〜けました〜!!!!!!」

深雪「オショウガ・ツー! カドマ・ツー! 改ツーフラグもいよいよ立った! 
   晴れのしおいは 彼の気負い! きたよーきたきた期待の時が!」

敷波「深雪ちゃん、今年も衝突には気をつけるんだよ。でも2016年は何か起こる気がするよね…」

白雪「駆逐はもちろんほかの艦種でも機運が高まってますね。ちなみに改二候補有力な初雪ちゃんのコメントはこちらです」

『ちゃんと挨拶できたし、もう今年はがんばらなくても良いや…』

叢雲「そんなことより、私の僚艦の機運も高まっているのよ? なっ!別に一人で寂しいわけじゃないんだから!」ツンデレー

吹雪「艦これのメイン絵師の復活…、3周年を迎えてもまだまだ私たちの活躍は終わらないんだから!」ガッツポ

磯波「なんてことだ…なんてことだ…」

86名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 04:51:44 ID:2QA0o0tE
あ、アゲとこ

磯波はぶったのはもう許せるぞオイ!

深雪磯波ラインとはなんだったのか…

87名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 16:32:15 ID:eq2u.35M
サカサカサ…スタコラー

「ZZZ…」

「ちゃんと寝てますね…皆さん、用意はいいですか?」
「バッチリだよー」
「ウイー」ヒック
「ムニャ…ムニャ…眠い…帰りたい…」
「ダメだよ、折角今日はみんなで迎えるって決めたんですから」
「そうだぜ、お祭りは楽しまなくちゃな!」
「あ、そろそろですよ。3…2…1…」


 2 0 1 6 年 1 月 1 日 00:00


綾波「しんねん!あーけましら〜!!」チュドーン!!

「ファッ!?」

深雪「深雪スペシャル!2016verだぜ!」カタメー

「」

深雪「落ちたな(確信)」

吹雪「私がやっつけちゃうんだから!」ドサー

(おお…視界がめっちゃ白い…)

吹雪「着地をミスった!?」

白雪「吹雪ちゃんは相変わらずね。司令官 明けまして、おめでとうございます」ニッコリ

「あ…おめでとうございます… えーと…これはどういうことなのかな…?」

吹雪「そりゃもちろん!新年の挨拶ですよ!挨拶!」

「パンツも含めてちょっと刺激的じゃないですかね…あと寝正月にしたいから起こしたりするなって言ったような…」

敷波「そんなの水臭いんだよね〜あったあったポチ袋♪」

「あ、こら勝手に引き出しを漁るな」

敷波「いいじゃんいいじゃん♪………!?」

メッチャスクナイ…
ニンズウガオオイカラネ…

88名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 16:33:16 ID:eq2u.35M
初雪「ん…」ポンポン

「え?」

初雪「……」ブツブツ

「はい?」

初雪「明けまして…おめでとうございます!」キリッ

「お、おう…」

初雪「じゃあ…もう寝る…」ピュー

「そこ俺の布団…」

初雪「あ! そうそう艦娘対抗歌合戦で優勝したんだよ、じゃあ」バサ

「だから俺の布団… そうなんか寝てる間に昨日はみんなでそんなことやってたのか…」

深雪「全く子供みたいな奴だよなー司令官はよー 8時に寝るとかいろいろ正月を損してるぜ」

吹雪「司令官がいなくても大晦日のイベントは楽しかったですけど、ちょっと寂しかったんですよ」

白雪「そうですよ、隼鷹さんたちも飲ませて潰す奴がいないって残念がってましたし」

綾波「エッヘヘーwwおかげでしれーかんの分まで一杯のめらしら〜」フラフラー

敷波「もう綾波は帰ったほうがいいんじゃないかな…(綾波の分チョロまかそうっと…)」

「付き合い悪くてすまんな、ちゃんと蕎麦食べたときまではいただろ?たっぷり寝られる幸せを子供は理解できんのだよ」

吹雪「毎日疲れてるから、お正月くらい休ませてあげても良かったんですけど折角なので」

深雪「明日寝ればいいじゃん!今日の昼間は羽根突きで動きまくってもらうからな〜ぼろ雑巾のようにしてやるぜ」

敷波「初詣とか…行ってもいいんだよ?あ、みんな一緒でいいから」

「そうなるから今日寝ようって思ってたんだがな…」

綾波「らめですよ〜きょうは〜ねかせませんからね〜」ダキッ

(酒臭い綾波……ええな…)

「しょうがない子やな〜w」

吹白深敷(なるほど…酔ってたら許されるんだ…)


白雪「さて、まあこの時間なら今から寝ても大丈夫でしょうから、私たちはお暇しますね」

吹雪「朝8時に起こしに来ますからね」

深雪「まあこの深雪様は日の出まで起きてるけどな!」

敷波「じゃあまた朝にねー ちょっと綾波連れていくから誰か手伝って」

深雪「しかたねえな〜」

ヤンヤヤンヤ…



「行ったか…やれやれ…とんだ年越しだったな…でも来年からは日付変わる瞬間まで起きてやるとするか…」
「まあいい、来年の話をいまからしたら鬼が笑うどころじゃないしな、さて寝正月の続きを…」

膨らんでいる布団

「おいおい…初雪忘れてるじゃねえか…」
「しかたない…一緒寝てても大丈夫だろう」フトンメクリー

初雪「ハッ!」

「ちょっと待て!布団の中でPC出して何やってるんすか!初雪さん!てかどこからPCでてきた」

初雪「待って、今大事なところ…司令官の布団の中から生放送してるから…視聴者数100超えてる…」ビッ

「そのサムズアップはなんなの…」

初雪「視聴者から 凸キタコレ!とか、追い出して寝室占拠しようずwww とかっていうコメントがたくさん…」

「艦娘がコメントしているとはにわかに信じがたいな」


初雪「ということで、ちょっとこの部屋借りるから出てって…」
「ええ…」

初雪「全艦娘が注目してるんだよ?」

「マジかよ…逆らったら、後日大変な目に遭いそうだな、わかった好きにしな、なんか物が無くなったりしても何も言わない」

初雪「話がわかる人でよかった…しのびねえな」

「かまわんよ」



―――
――――――
―――――――――――――――

89名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 16:33:59 ID:eq2u.35M
「さて、というわけで無事追い出され、手持ち無沙汰な俺は外で一服してるわけだが…」

「寒い…寒すぎる…上着着ただけで寝巻きだし…それに日の出まであと6時間以上あるんだよなあ…」

「簡単に部屋を明け渡したのは間違いだったな…」

「どこかに人がいそうなところは… ! 食堂だ!あそこならおせちやら何やらで人がいるはず」

「鳳翔さんなら、どこかで寝させてくれるかも知れん、行くぞ」


  (移動中…)


「着いた!明かりもついてる!ここが避難所や!」

「おじゃましまーす!」バーン!

「!?え!誰ですか!?」

「鳳翔さんじゃない!?」

「磯波!? どうしてここに!? あとここには磯波しかいないのか?」

磯波「え、あ、はい…おせちはもう出来てあるのでもうここには私以外誰もいません」

「そうなのか…そういえばさっきの騒動のときに磯波はいなかったな…」

磯波「そ、それは…これをお持ちしようかな〜って…でもちょうど良かったです今出来たところなので…
   参加しないか?って深雪ちゃんに誘われたんですけど、その話を聞いて私も何かしてみようって思って…
   でもやっぱりなんかおかしいですよね…」

「…… いやおかしくなんかないぞ、すごく嬉しいぞ磯波…」

磯波「本当ですか!あ、いまお持ちしますね。はい、お汁粉です。」

「お汁粉かあ、外寒かったから地獄に仏だよ…」イタダキマスー

磯波「お雑煮にしようと思ったんですけど、好みを聞き出せなくて…」 

「お汁粉のほうが俺は好きだぞ。うむ、間宮のと比べて小豆の粒が残ってて俺好みの味だ。暖かい甘さで生き返るようだよ」

磯波「嬉しいです!お代わりもあるんですよ。」

「いいねいいね!」

磯波「よかった頑張って…提督が起こされたあと寝ちゃうと思ってたので、朝の忙しい時間だと迷惑かな?と思ってたんです」

「あーそうだな、朝は絶対やつらに囲まれてると思うわ、ある意味初雪はグッジョブだったな」

磯波「へ?初雪ちゃんが?」

「まあこんなことになっててな…(事情説明)」

磯波「じゃあ今日は朝まで部屋に帰れないんですか…」

「そうなるな、悲しいことに」

磯波「提督の睡眠時間が心配ですぅ… は! じ、じゃあ隣の宿直室なら気兼ねせず眠れますよ!私がここを使った後そこで寝るつもりだったので」

「本当か!良かった、これで寝られる…」

磯波(良かった…朝一で届けようと思ってた準備がうまくいったみたい…)
  「じゃあ私は後片付けするので、提督は先に行っててください」

「いや俺も手伝うよ、それから一緒に行こう」

磯波「え?いいんですか?」

「少しくらいはお礼をしないとな」


―――――しばらく後――――――


提督!泡が残ってますよ!
きゃあ!水出しすぎです!

90名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 16:34:33 ID:eq2u.35M
「布団はあったけえなあ…」

「でもちょっと疲れました…」

「ホントごめん…」

「あんなに下手クソだとは思わなかったです」クス

「家事は向いてないって良くわかった」

「私は毎日手伝ってますよ、でも冬の洗い物はつらいので今回提督に押し付けようと思ったら逆効果でしたね」

「水跳ねさせて磯波にかけてしまって、すまん」

「良いんですよ…提督にくっついてると本当に暖かいです」

「手…大分冷たいな…ヒンヤリして落ち着かん」

「ご、ごめんなさい…」

「安眠を邪魔する冷たい手はこうだ!」

「ひゃあ!急に握らないでください! は、恥ずかしいです…」

「でもこうしないと温まらないだろう?」

「ううう…」

「そもそも、二組布団敷こうって言ったのに、一緒に寝るって言ったのは磯波のほうなんだよなあ」

「もうやめてください!それは水かけた提督も悪いんですよ!」

「だから謝ってるだろう?それじゃあこうしよう」

「きゃあ!?」

「そら逃げられないぞ、このまま磯波が寝るまで俺が抱きかかえたままだからな」

「うう意地悪ですぅ…」

「おやすみ、磯波」

91名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 16:35:12 ID:eq2u.35M
深雪「ちっくしょー!寝過ごした!日の出まで起きようと思ってたら知らない間に寝ちまってたぜ!」

深雪「ん?なんか食堂のほうが騒がしいな…」

ワイワイガヤガヤ…

深雪「すまん、何かあったのかい?通るよ!通るよー!あっ…」


司令官「スヤァ…」
磯波「スヤァ…」


「一部の過激派が発見し、ここで晒すように仕向けたらしい」
「これ起きたらどうするんだろ」
「新年早々ネタですか!?」
「さすがにやめたほうが…」

「Don't touch ! デース! 規制線の中には立ち入らないで欲しいデース!」



深雪「新年早々大変だなあ、司令官…」


―おわり―

92名無しのおんJ提督:2016/01/01(金) 16:37:57 ID:eq2u.35M
(*^◯^*)磯波の正月ボイスがないから無理やりポジってやったんだ!後悔はないんだ!

(*^◯^*)嫁をお年玉要求銭ゲバ野郎にキャラ崩壊させるのは意外と楽しかったんだ!後悔はないんだ!


あけましておめでとうなんだ!これからもよろしくなんだ!

93名無しのおんJ提督:2016/01/03(日) 10:02:43 ID:flTzcc1E
う〜んこのほのぼの感 ええねぇ…
よろしくやで〜

94名無しのおんJ提督:2016/01/03(日) 23:24:10 ID:ZNlifuIA
読みづらいですが、投下しておきますね
取り敢えず突っ込みどころがあったらアドバイスの方をお願いします
艦娘との出会い

西暦2027年12月10日
F135エンジンの唸る愛機のF-35の前に私は緊張しながら乗り込もうとしていた。訓練ではなく初めての実戦に行くからである。
 西暦2025年12月7日に突如米国ハワイを襲った生命体、深海棲艦は各地で撃破されつつも数が減ることなく、物量を生かして着実に制海権を奪いつつあった。そしてその魔の手は日本にも及ぼうとしており、既に硫黄島付近に連中の姿は見せ始めていた。それを迎撃するために日本に取り残された米国海軍第7艦隊および国防海軍(海自)や国防空軍(空自)が展開しつつあった。それに私も加わろうとしていた。
管制塔「発進を許可、幸運を祈ります」
私は「了解」と言い、スロットルを思いっきり引いて空に上がった。
「隊長、敵は遠距離からの攻撃で仕留められるらしいですよ。これだと訓練よりは楽かもしれませんね」
慢心は駄目だと私は言ったが、各国からの戦闘記録を見てから私も楽勝だとは思っていた。
「隊長、下を見てください、すごいですよ」
と別の部下が言ったので下を見たら、下に第7艦隊と第1護衛隊群の艦隊が見えた。あまりの壮大な姿に息をのんでいたが、突如無線が入ったので、慌てて応答した。
「こちらはAWACS、敵機の大編隊を確認、直ちに米軍や他の飛行隊と協力して迎撃せよ」
私は了解と答えると前方から来ている敵編隊50機のうちの2機にロックオンしてアムラームミサイルを撃ち撃墜した。他の飛行隊の迎撃もあって第一次攻撃隊は壊滅させた。
この調子なら初陣は無事帰れそうだと思っていた時に突如海上の旗艦いずもから緊急通信があり別の敵飛行隊がこちらに来ていると通信があった。レーダーを慌てて確認すると微弱ながら反応があったので他の飛行隊とその方向に行き、迎撃したがかなりの数が残っていたので、
ドッグファイトに持ち込むことにして敵機に接近して絶句した。
ほぼ球体ものが空を飛んでいたからである。しかもそれは生きているかのように口を上下に動かしながら編隊を組んでいるのである。腰が引けながらも他の友軍と機関砲で撃墜しながらも数が減らずに艦隊上空までドッグファイトしていたその時、
一機の敵機がイージス護衛艦こんごうに体当たりをしようとしていた。それを見て私はとっさに操縦桿を下げ脱出し機体を敵機に体当たりさせた。私はこんごうを守れたことに安堵しつつ艦隊の外れの海面にパラシュートで落下したが対艦ミサイルの迎撃を生き残った敵戦艦の砲撃が艦隊を襲い始めていた。

95名無しのおんJ提督:2016/01/03(日) 23:29:16 ID:ZNlifuIA
もう駄目だと思ったとき海面を浮ぶ深海棲艦とは違う人型の姿が複数見えた。彼女たちは弓を持っており、弦を引いて矢を放つとそれらがかつての太平洋戦争で活躍した零戦や97艦攻、99艦爆になって飛び立っていった。
それとは別方向から私に接近してきた彼女はセーラー服を着ており、私があっけにとられているとこう言った。
「私は大日本帝国海軍所属駆逐艦吹雪です。大丈夫ですか?」
言葉も出なかったが無線の「海に少女が浮かんいでる!」「敵戦艦、沈黙!当方の攻撃ではありません!」や「隊長が…」という声で我に返った。
その後、私はその吹雪を名乗る少女にお助け出され、海戦自体はいくつかの艦艇の損傷があったぐらいと数機の戦闘機を失ったことで勝ち、さらに深海棲艦により対抗できる存在である艦娘を手に入れ、人類は本格的な反攻を作戦が始まろうとしていた。
それから2週間後、私は初めて艦娘と遭遇した人物として「提督」に選ばれ、海軍に出向し、他の「提督」に選ばれた人たちと練習巡洋艦の3人(香取、鹿島、香椎)から指導を受けた。
その後に海軍の航空隊の基地がある鹿屋基地に隣接している鹿屋鎮守府に着任することになった。
私が鎮守府に入り、執務室に入った時に配属されている艦娘が入ってきて敬礼した後に横一列に並んで自己紹介を始めた。
祥鳳「私は軽空母祥鳳です。小柄ですが、妹の瑞鳳と頑張ります。」
瑞鳳「私は瑞鳳です。練度が上がれば正規空母並みの活躍をして見せます」
伊勢「航空戦艦伊勢です。この部隊に配属されて光栄です。」
日向「同じく航空戦艦日向だ、航空戦艦の戦い方を見せてやるさ。」
摩耶「よ、アタシ、摩耶ってんだよろしく!」
鳥海「摩耶が失礼な言葉遣いしてすいません、あ、私は鳥海と言います。」
秋月「秋月型防空駆逐艦、一番艦、秋月。ここに推参致しました。防空戦闘はお任せください!」
照月「秋月型防空駆逐艦、二番艦の照月よ。秋月姉さん同様、どうぞよろしくお願いします。」
皐月「皐月だよっ。よろしくな!」
卯月「卯月でっす! うーちゃんって呼ばれてまっす!」
深雪「深雪だよ。よろしくな!」
吹雪「はじめましてってあれ?…失礼しました!吹雪です。よろしくお願いいたします!」
一通り自己紹介が終わったので私が自己紹介をした後に訓示を言って解散させた後に吹雪を引き止め礼を言った。
「あの時はありがとう。吹雪。」
吹雪「いえ、その…私は当然のことをしただけです…それよりもこれからよろしくお願いします。」
その後私はこの部隊の特性を見極めるため資料を見た。
どうやら他の部隊の防空の手助けや対潜戦闘をするための遊撃隊染みた部隊のようだ。
資料を一通り読み終わって窓開け海を覗きながら私はこれからの事を考えてため息をついた。
-終わり―
戦闘シーンはないですがこんな感じです
続編は評判次第で書こうと思います
しつこいですがアドバイスの方をオナシャス

96名無しのおんJ提督:2016/01/03(日) 23:53:01 ID:ck0Ms3To
真面目路線いいゾ〜これ

ここは気軽に投下してええから、どんどんやってクレメンス。
これでS(しばふ)S(専)の会にせんでええわ

97名無しのおんJ提督:2016/01/04(月) 00:07:36 ID:ZNlifuIA
>>96
サンガツ
しばふニキについて話し合うのも楽しそうやな

98名無しのおんJ提督:2016/01/04(月) 00:16:32 ID:ck0Ms3To
早めにするんやで、ワイがしばふ艦SS降下作戦考えてるから(制作中並感)

99名無しのおんJ提督:2016/01/04(月) 18:04:11 ID:ZNlifuIA
>>95の続編やで
初めての演習
時間が昼を回っていたので食堂に行くことにした。食堂には鎮守府の設立を祝って給糧艦間宮を名乗る子が横須賀から来ていた。聞くところによると彼女も艦娘だという。私は金曜だったので海軍の風習に従ってカレー(中辛)を頼んだ。そして配属された子達が机に固まって雑談しながら昼食を食べていたのでそこに向かうことにした。
「祥鳳だっけ?ちょっとそこに座っていいかな?」
祥鳳「提督!ええ大丈夫です!」
私は座るとともに質問攻めにあった
特に聞かれたのは空軍とはどんな組織だということと、なぜパイロットの私が提督になったのかということだったので一から説明することにした。
提督「空軍、もとい日本国防空軍は航空自衛隊という組織の発展で…」
といった具合にカレーを食べながらかれこれ20分間説明し最後に提督になった理由を答えた。

提督「私は味方の船を守るために敵に体当たりをして脱出し、海面に漂っていたところを吹雪に助けてもらったのが世界で初めて艦娘と遭遇した事例らしくそのおかげでな。」
深雪「お、吹雪赤くなってるぜ」
吹雪「深雪ちゃん!」
摩耶「それにしてもあたしらが海の底にいる間に色々あったんだな」
日向「そうか瑞雲みたいな水上機は消えたのか…」
伊勢「そういえば日向、私たちは水上機を訓練でしか積んだことないのになんで日向は瑞雲などの水上機の事が気になるのさ?」
日向「なぜか知らんが、この体を手に入れたら瑞雲や空を飛ぶものにあこがれるようになってな…」
鳥海「そういえば私も摩耶みたいに防空改修してないのに対空戦闘が気になります」
秋月「私と照月も元から対空艦なのですが、同じような事思っていました。」
照月「私も秋月姉と同じものを感じます」
提督「そういえば気にしているメンツが護衛艦に居るから関連があるのかもしれんな」
卯月「うーちゃん、難しい話ししていて退屈だぴょん」
皐月「卯月ちゃん、失礼だよ」

提督「卯月の言っている事も一理あるな…そうだな、君たちの興味を持ったことや趣味とかについて話そうか」
瑞鳳「私は最近、料理にはまっていますね。」
祥鳳「私は茶道とか気になりますね…機会があればやってみたいです!」
日向「私は艦載機の整備だな…」
伊勢「私も同じだなあ…物をいじくるのが好きになったなあ」
摩耶「あたしは趣味なんてないし…」
鳥海「そう言ってるけど雑誌のモデルの服装見てショッピングとかに行きたいって言ってたでしょ」

100名無しのおんJ提督:2016/01/04(月) 18:09:38 ID:ZNlifuIA
摩耶「そんなことねえし…」
提督「まあ戦闘が落ち着いたら暇ができるからそれまでの辛抱だな」
鳥海「そうですね」
秋月「私は照月と共に鎮守府の裏で野菜を育てようと思ってます」
照月「テレビを見て新鮮な野菜が食べられたらいいなと思っていてそこからですね」
提督「野菜つくりは大変だからたまには手伝うよ、こう見えても実家は農家でよく手伝いをしてたからね」
秋月照月「その時はよろしくお願いします」
皐月「ボクと卯月ちゃんは趣味決めてないなあ」
卯月「うーちゃんは楽しければ何でもいいぴょん!」
吹雪「私は釣りですかね…深雪ちゃんとテレビの釣り番組見ていたら興味を持っちゃって…」
深雪「私も吹雪と同じだぜ!」
提督「そうか…近くにちょうど海沿いだし、釣り道具は近くのお店から調達してこよう」
吹雪「司令官がそんな事しなくても大丈夫ですよ」
提督「恩返しみたいなものだから気にしないでいいよ、さて食器を戻すか…」
そして私は食器を戻し執務室に戻った。

連絡があったみたいなので折り返し問い合わせたら、明日の10時にあぶくま(Ⅲ)型護衛艦×4隻とこちらの駆逐艦で演習してほしいとの事だった。
目的は人型の深海棲艦に対抗するためのデータ取りらしい。
そのことを鎮守府内放送で伝えて鎮守府の散策したのち、工廠に居た整備の人達と妖精さんに挨拶して、みんなと夕飯を食べたのちに21時に就寝することにした。
そして翌日私は演習するメンツと呉にUS-2で行き、艦娘の体に演習用の器具を取り付けさっそく演習を開始した。

敵役の護衛艦は防御重視の輪形陣を取りながらMk45 5インチ砲の射程距離に詰め寄ろうとしていた。
提督「モジュール装備の対艦ミサイルはないのか…単縦陣で移動だ!小回りを利かして敵艦隊の左側面に回れ!」
吹雪「はい!私が先頭で深雪ちゃん、皐月ちゃん、卯月ちゃんの順で行きます!」
綺麗な単縦陣になり敵の左側面に突入した。敵役からは砲撃を表す演習器具の光が頻繁に見えるが吹雪たちには当たる様子はない。
そうこうしているうちにあっという間に左側面にいた「じんつう」の右側面に攻撃が命中し、撃沈判定を貰ったらしく、機関と砲撃が停止した。
その後輪形陣の後ろにいた「なか」が左翼に行こうと移動したが後方に回り込んだ吹雪たちにより艦尾に攻撃が当たり撃沈判定を受けた。
その後敵役の艦隊の後ろに回りながら、右側面後方に回り込み敵役の「せんだい」、「あぶくま」に攻撃をし、演習上では撃沈する形になった。
わずか30分にも満たずに演習は終わった。演習後のミーティングが終わりUS-2で鹿屋基地に戻った。
吹雪たちは疲れていたため寝ていたが私は今回の演習で彼女たちに恐ろしさを少し感じていたが気にしないことにした。

101名無しのおんJ提督:2016/01/04(月) 18:11:53 ID:ZNlifuIA
最後に用語解説
あぶくま(Ⅲ)型護衛艦(現DE-X)
先代あぶくま型(今は現役)などの一部護衛艦の後継として開発建造されたコンパクト護衛艦で配備数は25隻。
モジュール装備によって装備の入れ替えが可能になっており対艦仕様、掃海仕様などになったりする。小中規模の作戦においては艦娘の指揮所兼母艦として活躍する。
武装(素の仕様)
Mk45 5インチ砲、MARLIN-WS×2門、ヘリコプター格納庫上にSeaRAM×1基
参考画像
http://i.imgur.com/heKs3AQ.jpg
http://i.imgur.com/BYG1XSS.jpg
http://i.imgur.com/L1xs8o2.jpg

US-2
みんな大好き大艇ちゃんの子孫。本来の用途は救難だが、哨戒機や輸送機として運用されている。

なんか気になるところや誤字があったら意見をオナシャス

102名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 03:00:35 ID:RgMurCNY
艦娘が人型やから、砲撃が当たらん、現代の装備では対抗できないっていう感じなのかな?
あと旧海軍の記憶引き継いでるんか、ええな

103名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 08:25:39 ID:PLQxJaOA
>>102
読みづらいがそんな感じやで
あと一部の子に旧軍時代だけではなく、自衛隊に居たもしくは居る記憶が微かながらあるって感じやで

104名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 16:30:57 ID:eq2u.35M
「失礼します、綾波です」コンコン

「お、入っていいぞ」

ガチャ

「司令官、出来た書類大淀さんに持っていってきましたよ」

「おう、ありがとう。こっちも明日の作戦計画終わったぞ…」

「これで今日のお仕事終わりですね!」

「そうだ…仕事始めとはいえ結構溜まってたな…大体年末年始の経費関連だったが…」

というか紙で管理する必要はあるのかという疑問は綾波に言ってもしょうがないので愚痴るのはやめることにした

「領収書貰ってきてもらうの大変でした〜」

「全くだな、何でも経費で落ちると思ってる癖にその辺適当だからな、あいつら…。雑用頼んですまなかった」

「大丈夫ですよ、司令官と一緒にお仕事は年末以来だったので、張り切っちゃいました!」エヘー

「元気がいいな、こっちは久しぶりの書き仕事で手がだるいよ…、手が攣りそうだ…」

受け答えしつつ、仕事の緊張が解けると、今まで酷使していた右手に不意に違和感を放ってきた
低い気温のせいか手全体の血色も余り良くなく、見た目も全体が冷たく硬そうな印象で
親指と人差し指の間の固いコリをグイグイと押してみると
鈍い痛みと硬い感触が跳ね返ってくる。

「ここ自分で押してもあんまり効いてる感じしないんだよなあ…」

「自分でやるのはリラックスできないので効かないのは当然ですよ?
 あ、そうだ!良かったら綾波がやって差し上げましょうか?」

「え?いいのか?」

「綾波がやりたいだけなんですよ」

「なんかいやらしいこと考えてない?」

「それは司令官のほうこそじゃないんですか…? でも、司令官の手触りたいってのは正直ありますよ」


「…正直だな、実は俺も誰かの人肌が恋しくてな…冬だからだろうか」(本当にド直球で言ってくるよなこの子は)

「そうかもしれませんね、冬は人恋しくなりますよねーでもさすがに正月早々磯波ちゃんと一緒で寝てたのはー…」

「だからそれは誤解だと…」

あれから、ロリコンが輪をかけて酷くなったとみんなから呆れられ(長門は理解してくれたが)
そして、なぜ最後までしなかったのかという、甲斐性なしキャラもついてしまうやら
それについて敷波から『いつもアタシには甲斐性ない鈍い奴だったから、今更だけどね』という皮肉を貰うやらで
いろいろダメージを受けてしまっているのだ。

「綾波までいじめる…うう…みんな冷たい、俺の手も冷たい」

「別にいじめようって訳じゃ…」
(対抗しようと思っただけなんですよ…、やっぱり司令官って鈍感です)
「はいはい司令官もやってほしいし、綾波もやってあげたい。これで決まりですね、じゃあちょっと準備してきますね」トテテー

「その間机片付けといてくださいね」

105名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 16:31:28 ID:eq2u.35M
「はいお待たせしましたー洗面器にお湯、そしてハンドクリームです!」

「おお!いいぞ、なかなか本格的だな」

お湯を張った洗面器は目にも温かですぐに手を漬けてみたい衝動に駆られる

「あ、勝手に始めちゃダメです!それはまだです」

「ええー」

「さっきも言いましたが、まずリラックスしないとマッサージの効果は薄くなっちゃうんです
 最初は深呼吸!お腹を意識して腹式呼吸で10回です」

「しかたない綾波先生の言うことを聞こうか…」

「肩の力は抜いてー、あと吸うからじゃなくて吐くのから始めるんですよ『呼』『吸』って書くでしょ?
 古い空気を出すことを意識するんです」

「なるほど」ハースーハースー

「次は手をプラプラさせてー肩の力は抜いたままですよー」

「ぷらぷらー」プラプラー

水泳にでも行くのかというツッコミはよしたほうが良いみたいですね、綾波先生

「はい、じゃあお待ちかねのお湯にどぼーん!しちゃってください、本当に勢いつけなくてもいいですよ?」

言われなくても分かっておるわいと、ようやく洗面器に両手を浸す


 温 っ け え …


手だけなのに、身体全体がほぐれるような感覚は何でだろうか、湯加減もちょうど良い
思わず大きく息を吐く、もうこれだけで良いんじゃないですかね…

「気持ちよさそうですねえ、しばらく温めたらいよいよほぐしにかかりますよ」

「痛くしないでくれよ?」

「どうしよっかなあ〜♪」

不敵に笑ってるが、洗面器に浸している俺の手に優しくお湯をかけてくれている

「冗談ですよ。はい、もういいでしょうか。水気を取りますね さあ、揉んで行きますよー」

タオルで肌を痛めないように優しく水分を拭き取った後、クリームを手に取りのばしていく
綾波のやわらかい手指が滑らかに手の甲を滑り、極上の感触を残してゆく
指先から手首にかけて押し流すように滑っていき、
疲労が流されていく感覚、血行が復活して行く様な感覚を覚える
手がみるみる赤みを帯びていくのは決してお湯で温めた効果だけではないのだろう

「全体はこれくらいにして、先端のほうから始めますよ」

と親指人差し指で俺の指を一本ずつ挟みこみながらくるくると回す

くるくるくる

爪の生え際辺りに疲労が溜まりやすいんですよといいながらそこを重点的に刺激していく
力の強弱のリズムに合わせて鈍い痛みが、ぎゅっと発生して、ぱっと散っていく
かすかな痛みとこそばゆさのバランスがちょうどいい

指が終わると、指の付け根 谷の様になっている部分をつまんで刺激
自分でやっていても気持ちが良い部位 人にやってもらって気持ち良くないわけが無く
チリチリとした痛気持ち良い感覚に思わず唸ってしまいそうになる

「司令官、力んじゃダメです、深呼吸ですよー」

綾波が優しく囁く
普段は結構快活な声なのだが、今は大分丸く落ち着いた声だ
そんな声出せるんだなあ、と感心しながら目を閉じ大きく息を吐く

目を閉じていてもはっきりと手の触覚が快感を脳に運び
文字通り、手に取るように、綾波の指先を知ることが出来る

すすーっと手の甲の骨が浮いてきている部分を滑らかに
かと思えば、手のひらの側面を力強く
まるで自分の手が違う生き物のようにドクドクと脈打っていく

「気持ちがいいな…」

「手だけでいろいろな感覚があじわえるでしょう?」

「ああ、全く飽きる気がしないよ…」

「次は手のひらです」

手を裏返され、今度は手のひらを刺激される、結構硬く締まってしまった手のひら
この前、深雪が手の大きさを比べようと言って、お互いの手を合わせた時硬さの違いに驚いたっけ…
と、そんなことを思い出しながら、ちょっとは柔らかくなるかなと、ちょっと期待しながら

綾波に親指が手のひら押し込んでいく感覚を楽しむ

106名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 16:32:15 ID:eq2u.35M
「はい最後は、やっぱりここですよ」グイグイ

親指と人差し指の間をぐにぐにと押し込む

「あ、やはりそこかあ…」

「ちゃんと力抜いてくださいね」

包み込むようにいて手で握ると親指で押し込むように力を加えてくる
リズミカルにそして力強く、だが痛いと感じることは無く、逆に強い快感が襲ってくる

「ここ、合谷は直接脳への刺激が出来るツボらしいです」

ぐにぐに
脳に直接の言葉通り、脳が快感を伝える信号で埋め尽くされる
真っ白になるというより、あたたかな光に満ちるような
大変幸福な時間が訪れる

「…もっと押して……」

「ここは強いツボだから、あんまり押せないんですよ、ごめんなさい、ほかのところをやりますね」

余韻を残しながら、惜しむように綾波の指が滑る

だがそれすらもわからなくなるほど、俺の意識は深く深く落ちて行った

107名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 16:32:55 ID:eq2u.35M
「ふう…こんなものでしょうか…」

「司令官?左手これからやりますよー?」

スースー……

「あれ…寝ちゃってます…」

「仕方ないですね、左手終わってから起こしてあげましょうか…」

「………司令官の右手………」

今なら誰にも見られてないし司令官は寝てる

ちょっと出来心で指を絡め合わせてみる


「えへへー恋人繋ぎですよー」キャッキャッ



「でも…もっと思い切っても…いい…かな…」

と、力なく椅子から垂れている右手を手に取り
そして口を近づける

「んっ…」
そっと人差し指に口付けすると、そのまま舌でなめずる
リップ音が心なしか大きくなる、起こしてしまうんじゃないかという不安が
さらなる衝動を呼び起こし、行為を止める理性を吹き飛ばしてしまう

そしてついに指を頬張ってしまう

(やだ…止められない……)
唾液の水音が次第に大きくなっていき、息をつくことも忘れるほどに指に吸い付く

(ダメ…ダメなのに…)
淫らな方へ力なく流されていく自分を責め、恥じながらも
己の欲を抑えることが出来ない

ジュッポジュッポ…
グチュグチュ…ズーッチュ…
レロレロレロ…

―――
――――――
―――――――――――――――

(はあ…どうしちゃったんでしょう…)
唾液まみれになった司令官の右手を拭いながら、ついさっきまでの行為を恥じる

(早く…帰らないと…この状態のまま起こすのは司令官には悪いけど、恥ずかしすぎます)
手早く道具を片付けて退散の構えをとる

(司令官、ごめんなさい。綾波は悪い子です)
心の中で謝罪を唱えながらドアを開けようとしたその時


「綾波?」


(!?)
もう時間空間全てが停止してしまった様に感じた

「また続きやってくれよな」

「ん〜っ!!!!!」
返事など出来るはずも無く、ましてや振り返ることなど出来るはずもなかった

―おわり―

108名無しのおんJ提督:2016/01/05(火) 16:34:38 ID:eq2u.35M
(*^◯^*) この時期は手が荒れて大変なんだ、みんなも気をつけて欲しいんだ

109名無しのおんJ提督:2016/01/10(日) 22:33:15 ID:Ig4yNLbg
※注意:提督は女性です


提督「お久しぶりです、先輩」

木曾「あぁ、久しぶりだな…そうか、もう提督になったんだな」

提督「えぇ」

木曾「……」

提督「……」


そこは、鎮守府内のバー
夜になっても轟音鳴り止まぬ鎮守府において、ここだけはいつでも静かで温かい
海の薫りを忘れ、酒の香りに浸る…それが、この殺伐とした時代における提督の唯一の楽しみでもあった

木曾は彼女の通っていた女性士官学校の先輩だった
しかし司令部に艦娘としての素養を見出されると、予定より早く学校を去ってしまったのだった
そして転戦の後にやって来たこの鎮守府で…『提督』と『艦娘』は出会った


木曾「…もう結婚してんのか」

提督「…えぇ」

木曾「そうか」


木曾が静かにグラスを傾ける
二人の間に『フォアローゼス』の香りがそっと訪れた

110名無しのおんJ提督:2016/01/10(日) 22:34:28 ID:Ig4yNLbg
(続きは明日のこの時間ぐらいに書きます)
(非エロです、ごみんに♪)

111名無しのおんJ提督:2016/01/10(日) 23:08:16 ID:4D4FjH.s
あら^〜いいですわゾ〜

112名無しのおんJ提督:2016/01/11(月) 22:33:55 ID:Ig4yNLbg
(木曾先輩の続きです)
提督「…先輩、改二になられたんですね」

木曾「ああ。先の撤退作戦でな」

提督「一騎当千のご活躍だと伺いましたよ」

木曾「別に、俺だけの力じゃないさ。艦隊の皆のおかげだ」

提督「…」

木曾「…」


キャンドルの焔がグラスに映える
静かな時が、ただ滔々と流れてゆく


提督「…怖く、ないんですか?」

木曾「うん?」

提督「その…艦娘として、戦う事が…」

木曾「まぁ…怖くない、と言ったら嘘になるな。けど、俺達が怖気づいてちゃダメだろ?」

提督「…強いんですね、先輩」

木曾「どうだかな…」

提督「今でも、私達の憧れの先輩なんです」


ふと、木曾の横顔を見遣る
茜色に染まる隻眼の横顔は、どこか嬉しそうにも、悲しそうにも見えた


木曾「…俺にしてみたら、お前達の方が強いと思うぜ」

提督「えっ?」

木曾「艦娘になってみて、初めて分かったよ。お前達の『強さ』がな」


先輩はいつまで経っても憧れの存在なのだ
ならば…先輩にとっての憧れとは、何なのか?


提督「…」

木曾「…まぁ、成長したって事だよ。お前も、俺も」

提督「先輩…それって、」

木曾「これからよろしく頼むぜ、『提督』よ」


そう言って、木曾は席を立つ
どこかぎこちない、寂しげな笑顔を残して

去り際にそっと提督の頭を撫でる
温かく優しい、震える手で

提督は慌ててその背を見遣る


提督「あ、あのっ…!」

木曾「うん?」


木曾は振り向かない


提督「…こちらこそ、よろしくお願いします…『先輩』」

木曾「…」


何も言わず、木曾は店を出ていく

一人残った提督は、グラスの酒を煽る
苦く、仄かに甘く、潮臭く…『スキャパ』の香りが鼻腔をくすぐった

113名無しのおんJ提督:2016/01/11(月) 22:36:09 ID:Ig4yNLbg
(続くような気がします…構想が出来次第投稿していきます)

114名無しのおんJ提督:2016/01/12(火) 03:46:13 ID:KTg9GEps
おう続きあくしろよ

115名無しのおんJ提督:2016/01/12(火) 22:59:53 ID:Ig4yNLbg
(木曾先輩、なんとなく続き)
翌日の鎮守府バーにて


加賀「…久しぶりね」

木曾「…お久しぶりです」


秘書官・加賀の左手には、指輪が輝く
彼女が席に着くだけで、何も言わずにグラスが出てくる
『ハイランドパーク』


加賀「それで、私に何の用?」

木曾「…ただの挨拶ですよ」

加賀「その割には、随分とお酒の進みが早いわね」

木曾「…」


木曾はちらりと加賀の横顔を窺う
航空機動部隊総指揮艦、共同連合艦隊旗艦、一航戦、加賀…彼女の横顔はどこまでも冷徹だった


木曾「…別に、用なんてないですよ…それとも、用がなくちゃダメですか?」

加賀「お好きにどうぞ」

木曾「…」

加賀「少なくとも、私に何か言いたい事があるのではないのかしら」

木曾「何か、って…」

加賀「――そう。決心がつかないのなら、別にいいわ」


そう言うと、加賀は瞬く間にグラスを空けた
氷が溶ける暇もなく、乾いた音がバーカウンターに響く


加賀「まぁ…よろしくお願いするわ…『重雷装巡洋艦 木曾』さん」

木曾「ッ…」


言葉と屈辱を置き去って、秘書官・加賀は席を立った

116名無しのおんJ提督:2016/01/12(火) 23:14:43 ID:Ig4yNLbg
執務室…もとい、提督の自室にて


提督「…加賀さん」

加賀「何かしら」

提督「今日は…どうしたの?なんかすごく怒ってるように見えるけど」

加賀「…そんな事、ありません」

提督「ほら、やっぱり怒ってる」

加賀「そんな事ッ…!」

提督「…」

加賀「……あっ…ごめんなさい」

提督「う、うん、いいよ…」

加賀「…」

提督「何か、悩んでるの?」

加賀「…いえ」

提督「もしかして、先輩の事?」

加賀「ッ……」

提督「やっぱり、そうなん…」

加賀「『先輩』じゃありません、提督。彼女は『艦娘』、雷巡木曾です」

提督「…」

加賀「…私達艦娘は何があろうとあなたにお仕えするのが矜持。私情を捨て去り、任に徹するのが至上。…その事だけでも、ご理解ください…『提督』…」

提督「…」

加賀「…」

提督「私はさ、」

加賀「…?」

提督「艦娘のみんなは大事な仲間だと思ってる。先輩も…勿論、加賀さんだって」

加賀「…」

提督「…飲みましょう、今日は」

加賀「…はい」

117名無しのおんJ提督:2016/01/12(火) 23:29:02 ID:Ig4yNLbg
次の夜…鎮守府バーにて


木曾「…」

提督「…」


二人の間で沈黙が踊る
二人のグラスにそれぞれ注がれた酒…その水面に、寂しげな二人の顔が映る


木曾「…これから言う事は全部独り言だ」

提督「…」

木曾「俺は『提督』になりたかった。だけど、なれなかった。今の俺は一人の艦娘…ただ一つの砲弾として生きるしかない」

提督「…」

木曾「憧れも届かない。嫉妬も追いつかない。逃げた運命を掴む事なんてできやしない…わかってる」

提督「…」

木曾「ただ…できるのなら。俺は…」


声が震えている
隣の席を覗き見る事が、提督にはできなかった
そっとグラスを手にして、黙したまま待つ


木曾「……できるのなら、俺はいつまでもお前の『先輩』でいたい」

提督「…」


全てを吐ききって、木曾は一気に酒を流し込む
目頭に刺激が訪れ、すぐに抜けて行った


提督「…『艦娘ハ人ニ非ズ 兵器トシテ扱フ事』」

木曾「…」

提督「そう、習ってきました。先輩と出会った、あの学校で」

木曾「…」

提督「…私は悪い子ですね、先輩」


木曾が、沈んだ瞳を提督に向ける
提督は――あの時の、自分自身によく似た――悲しい笑顔を浮かべていた


提督「…これからも、よろしくお願いします。『先輩』」

木曾「っ……あぁ、よろしくな…『  』」


グラスを置く二つの音が重なり、そして再び沈黙が訪れた

118名無しのおんJ提督:2016/01/12(火) 23:30:18 ID:Ig4yNLbg
(ひとまずおしまいです。描写不足な上に内容もうっすくなり申し訳ないです)

119名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:40:09 ID:Ig4yNLbg
(引き続き、今度はスレにて予告していた『ノーパン摩耶様』です)
(こっちはちゃんと完結させましたので、どうぞ)

120名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:40:27 ID:aJs6NF3w
しっとりといい話やね…

121名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:40:41 ID:Ig4yNLbg
鳥海「あのね、摩耶…すっごく言いづらい事なんだけど」

それはある朝の鎮守府
神妙な顔でそう切り出した姉妹艦に、摩耶は訝しみながらも聞き返す

摩耶「ん、なんだ?」

鳥海「あの…昨日さ、出撃から帰って疲れたーって、すぐに寝たじゃない?」

摩耶「ああ」

鳥海「それで今日、朝風呂してからこうして出てきたわけじゃない?」

摩耶「ああ、それがどうした?」

鳥海「……あのさ、摩耶の…下着…たしか、全部洗濯中だったと思うんだけど…」

摩耶「えっ?」

鳥海「今さ…ちゃんと、穿いてる…?」

摩耶「…えっ」

… … …
しばらくの沈黙の後…摩耶の顔が一気に紅潮していった

摩耶「えっ、あっ…うそ…」

鳥海「やっぱり…」

摩耶「きッ、気付いてたんなら言えよバカ!…うわ、もう時間ねーし…」

鳥海「今気付いたのよ…たしかこれから出撃だったわよね、摩耶?」

摩耶「うぐ…やべぇ…ど、どうしよ…」

鳥海「私もこの後演習だから…そうね、私の方が先に終わると思うから、終わったらここで合流しましょ!その…私の替えになるけど、持ってきておくから…」

摩耶「なっ…そ、それもそれで…うぅ…でも、穿いてねぇよりかは…」

鳥海「ほら、とりあえず急ぎましょ!」」

摩耶「わ、わかったから走るなって!スカートめくれるだろーが!」

122名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:41:18 ID:Ig4yNLbg
執務室…


提督「では、以上が作戦概要だ。各自慢心せず取り組むように」

「「「「「了解!」」」」」

摩耶「…」モジモジ

提督「…ん?どうした、摩耶」

摩耶「ふぇっ!?」

提督「今日は珍しく元気がないな。具合悪いのか?」

摩耶「そ、そんな事ねーよ!」

摩耶(うぐ…あんまり見ないでくれよ……クッソ恥ずかしいじゃねぇかよ…)

提督「?…そうか、それならいいが。今回の海域には敵潜水艦も出るからな、一撃喰らわないようにしろよ」

摩耶「お、ぉぅ…」

123名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:42:09 ID:Ig4yNLbg
出撃中…


霞「あんたにしては静かねぇ?どうしたのよ」

摩耶「は、はぁ?べべべ別になんともねぇし…」キョロキョロ

霞「…もしかして、あんた」

摩耶「!」

霞「私のレベリングの随伴が嫌なわけ?」

摩耶(…よかった…さすがに気付かれちゃいねぇな…)

摩耶「んな事ねーって…前見てろっての」


満潮「まぁまぁ霞、きっと摩耶先ぱぁ〜いは女の子の日なのよ」

霞「あらぁ^〜それは気付かなくって申し訳ないですわね^〜」

摩耶(クッソこいつらむかつく……)イラッ

摩耶(それにしても…あれだな…)

摩耶(あたし…穿かねーまま出撃しちまってるんだな…)

摩耶(もしバレたら…どうなっちまうのかな…)

摩耶(…)カァァァァ…

摩耶(だっ、ダメだ!そんな事考えるな、あたし!)

摩耶(うぅ…でも…スースーするし……クッソ…考えたくねーのに変な事考えちまう…)

霞「…!」

摩耶(あ、あたし…変になっちまったのかなぁ…)

霞「摩耶ッ!」

摩耶「えっ?」

ふと気づくと、目の前に敵艦がいた
正確には目下――海面下から今まさに浮上してきた状態の――潜水ヨ級elite

124名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:42:44 ID:Ig4yNLbg
ヨ級「…ヨ?」

摩耶「…よ?」

その敵艦の視線は、必然的に海面から上空を見上げる形となっている
それが、自分の足元に
…つまり、その視線の先は…

摩耶「…」

一瞬遅れてその答えに気付いて…摩耶の頭の中で何かが爆発する音がした

摩耶「ひゃあああいあいあいあいあいあい!!!!」ズドドドド

ヨ級「ヨヨヨヨヨ…」

満潮「ちょ、ちょっと!あんたは対潜攻撃できないでしょ!」

霞「ったく…バカ!」

霞の三式爆雷投射機からの対潜攻撃がヨ級に命中する
目前に生じた派手な水柱に、摩耶は思わず海面に尻もちをついた

摩耶「はぁ…はぁ…」

摩耶はしばらくへたり込んだままだった
混乱している頭を、なんとか切り替えていく

満潮「敵艦は!?」

霞「…撃沈したわね」

満潮「そう、よかった」

霞「よくないわよ!ちょっと摩耶!」

摩耶「!」

名前を呼ばれ、呆けたままだった摩耶の思考が現実に引き戻される
慌てて脚を閉じてスカートの裾を引っ張ると、注意深く立ち上がった

霞「何よ今の!?あんたの役目は索敵でしょう!?わかってるの!?」

摩耶「あ、あぁ、すまん…」

霞「撃沈できたからいいけど、私が気付かなかったらあんた今頃海の藻屑よ!?」

満潮「ちょっと霞!」

霞「なに…よ……えっ」

ふと我に返った霞は…目の前で、今にも泣きそうな摩耶の顔を見た

霞「ちょ、ちょっと…泣く事はないじゃないの!わ、私こそ警戒を怠って悪かったわよ…」

摩耶「グスッ……」

満潮「…」

125名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:43:19 ID:Ig4yNLbg
帰投後…

摩耶(くそが……あれじゃあたしがヘタレみたいじゃんか…)

摩耶(……でも……敵艦とは言え…み、見られちまった…)

摩耶(あ、あたしの…恥ずかしいとこ…)カァァァァ…

摩耶「だぁあああ!」

満潮「うわっ」

摩耶「はぅわっ!? …な、なんだ、満潮…まだいたのか…」

満潮「いたのか、じゃないわよ。あんたの様子がおかしいから何かあったのかと思って見に来ただけよ」

摩耶「べ、別に何ともねーって言ってるだろ!」

満潮「嘘。いつもはあんなに…その、かっこよく、敵艦をぶちのめしていくあんたが、今日に限ってなんであんなだったのよ?」

摩耶「…」

満潮「…何か隠してないでしょうね?」

摩耶「し、しつけーぞ!このっ…」

詰め寄って来た満潮を、思わず振り払う
適当に振り回した手が

満潮「えっ、ちょっ…」

満潮の服に引っ掛かり、そして…

どんがらがっしゃーん

満潮「…う、うぇえええええええん!!!摩耶に殴られたぁああああ!!!」

摩耶「えっ、ちょっ、ち、違っ…!」

126名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:43:52 ID:Ig4yNLbg
再び、執務室


提督「――で、どういう事だ?」

摩耶「…ほんと、すまねぇ」

提督「満潮は膝を擦り剥いただけで済んだからよかったが、もし大怪我したらどうするんだ?艦娘同志の喧嘩は御法度って言ってたよな?」

摩耶「…」モジモジ

提督「……それと、さっきから気になっていた。なんでずっとスカートの裾を押さえているんだ?」

摩耶「えっ…い、いや、別に…」

提督「……」

摩耶(な、なんだよ…そんな見るなって言ってんだろーが…)

摩耶(クソ…なんで…なんであたし……提督に見られて…身体が熱くなっちまってんだよぉ…)

提督「……ふむ、どうも熱があるみたいだな。とりあえず、今日の事は不問に伏す。早く休むように」

摩耶「お、おう……」

127名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:44:27 ID:Ig4yNLbg
鳥海「……」

摩耶「な、なんだよ…」

鳥海「…ふぅん?」ニヤニヤ

摩耶「は、早く、それ寄越せよ!」

鳥海「それよりも…どうやら随分と『お楽しみ』だったみたいね?」

摩耶「はぁ!?」

鳥海「そんなに顔真っ赤にしちゃって。脚も震えてるし、目も潤んでるし」

摩耶「う、うるせぇ…」

鳥海「もしかして、ちょっと気持ちよかったり?」

摩耶「う、うるせぇよ!さっさとしろ!」

鳥海「あらあら怖い怖い」フフフ♪


摩耶(気持ちよくなんか…あるわけねぇだろ…)

摩耶(気持ちよくなんか…)

摩耶(…〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!)


鳥海(意外とそういうとこは乙女なのね、摩耶)

鳥海(…ふふ♪ パンツ隠しておいて正解だったかもね♪)

End

128名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 01:45:07 ID:Ig4yNLbg
(いい話からの変な話でした)
(長くなりました…おやすみなさい)

129名無しのおんJ提督:2016/01/13(水) 03:20:28 ID:TnRs5Wd.
草生える

末っ子をガンガン弄っていくスタイルいいゾ〜これ

130名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:03:25 ID:Ig4yNLbg
今度は真面目なお話(?)
入院ニキに贈る『看護師秋津洲と病床提督』

131名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:04:24 ID:Ig4yNLbg
秋津洲「提督、ご気分はいかが?大丈夫かも?」

提督「あぁ…まぁ、そこそこだな」


鎮守府医務室。
提督はまっさらなシーツの上で横になっていた。
傍らに立つのは、春から艦隊の仲間入りを果たした秋津洲だ。

提督は肺に持病を抱えている。
普段は至って健康だが、稀にこうして寝たきりになってしまう事があるのだ。
幾度か手術も経験しているが、提督業を諦めるつもりは毛頭なく、病床においても常に中将の腕章を着けている。
その真摯な性格と確かな手腕から、艦娘たちからの人望も厚い。

そして秋津洲の方はと言うと、元々工作艦として活動していた事もあり、支援向きの改修を施されている。
その為戦闘は不得手ながら、本人なりに鎮守府を支えて行こうと、今は医務室長・大淀の下で看護師見習いとして働いているのだ。
いつも彼女の傍らにいる二式大艇は、今は部屋の隅で眠っている。


提督「秋津洲がいてくれて助かったよ、すまないな」

秋津洲「いえいえ!私で良ければ何でも手伝うかも!」

提督「ん?」

秋津洲「え?」

提督「…いや、なんでもない」


苦笑したまま、提督はそっと上体を起こした。
過度な運動はできないが、多少身体を動かす程度なら問題ないと大淀に言われている。


提督「今日は…暇なのか?」

秋津洲「ええ。提督の御容態も安定しているようですし!」

提督「あぁ、いや…他の業務とかあるんじゃないか?」

秋津洲「今の私の役目は看護師として提督を見守る事かも!」

提督「はは、俺だけの看護師、か。なんだか贅沢だね」


ふと、窓の外を見る。駆逐隊が演習をこなしている様子が見えた。

冬の海は寒いだろう。
それでも彼女達はめげる事なく鍛錬に励んでいる。
その心意気は…提督として椅子に座すしかない彼にとって、とても有り難く、そしてとても嬉しい事であった。


秋津洲「第七駆逐隊のみんなだね。ちょっと寒そうかも」

提督「強いな、お前達は」

秋津洲「えへへ…そう、かも」


ベッドの上、二人並んで窓の外の景色を眺める。
長閑な日だ。こんな平和が、いつまでも続けばいいのに。

132名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:04:54 ID:Ig4yNLbg
秋津洲「…」


ふと秋津洲の方を見ると、彼女の視線も目下の駆逐隊に注がれていた。
だが、その優しい表情からは…どこか寂しさと、悔しさが垣間見える。


提督「…」


そうだ。彼女も戦う為に鍛えられた艦娘なのだ。

今自分があの場にいない事が。
今自分が戦力として数えられていない事だ。
彼女にとってどれほどの屈辱なのか…。


提督「…秋津洲」

秋津洲「はい?」

提督「ごめんな」

秋津洲「へっ?」

提督「お前を…前線に立たせてあげられなくて」

秋津洲「…ううん、大丈夫かも。私には私の役割があるから」


そう吐き捨てるように言って、秋津洲は顔を伏す。
膝の上の拳が握られているのを、提督は黙って見つめる。


提督「…」

秋津洲「……前にいた、鎮守府でね」


顔を伏したまま、秋津洲は囁くような声で喋る。
その声色は、いつもの明るい彼女とは違う。
か弱い、一人の少女の声色だ。


秋津洲「私、無能だ無能だって言われて……それで、結局一度も出撃させてもらえなかったの」

提督「…」

秋津洲「それでね……その…この前の深海棲艦の襲撃で…そこの鎮守府が、潰されちゃって」

提督「…」

秋津洲「私、何もできなかった……怖くて、ずっと物陰で震える事しかできなかった……悔しかったな…みんなを、守れなくて」

提督「…」

秋津洲「私が戦っても…きっと誰も守れない。きっと何もできない。…わかってるんだ、わかってる…」

提督「…」


『艦娘"秋津洲"、出撃ニ能ウ兵装ニ非ズ』。
秋津洲が来た時に上官より手渡された彼女に関する資料…その一頁目に書かれていた言葉が提督の脳裏に過る。

133名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:05:29 ID:Ig4yNLbg
提督「…秋津洲」

秋津洲「…はい?」

提督「こんな事を訊くのは『艦娘』たるお前には屈辱的かもしれないが…」

秋津洲「…」

提督「…お前の本当の名前、何ていうんだ?」

秋津洲「へっ?」


唐突な質問に、秋津洲は顔を上げる。

艦娘は『艦娘』になる前はごく普通の少女だ。
適正のある少女が選抜され、艦船の力と名を与えられて『艦娘』になる。
秋津洲にとってもそれは同じ事。


秋津洲「え、えっと…『×××××』です」

提督「へぇ…×××××…かわいい名前だな」

秋津洲「そ、そんな事ないですよぅ…」


ほんの少し照れくさそうに、秋津洲の顔が綻ぶ。
そんな彼女の…×××××の表情を見て、提督も優しい微笑みを浮かべる。


提督「なぁ、×××××」

秋津洲「な、なんですかぁ?その名前で呼ばれると、恥ずかしいかも…」

提督「はは……そう、もしもだ。お前がここにいなかったら、俺は一人でこの部屋にいただろうな」

秋津洲「え、ええ…」

提督「けど、今こうしてお前がいてくれる。すぐ傍で、こうして語り合っていられる。それが一つの安らぎになっている」

秋津洲「えっ、えっ…」

提督「喩え周りの奴らが艦娘『秋津洲』をどう言おうとも……お前は…×××××は、俺にとって必要な存在だ」

秋津洲「提督…」


ほんの少し、秋津洲の頬に朱が差す。

134名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:06:03 ID:Ig4yNLbg
提督「×××××」


名を呼びながら、提督は少女の頭に手を置く。
月白の髪を撫でると、微かに海風の香りがした。


秋津洲「んぅ…」


彼女も、一瞬ぴくりと反応したものの、従順に撫でられる。
掌が髪を撫でる度に顔がどんどん紅潮してゆく様は、純情な乙女の表情そのものだ。

そんな彼女の顔をまっすぐ見つめながら、提督は言う。


提督「ありがとう。ここにいてくれて」

秋津洲「……てぇとく…」


潤む瞳が上目遣いで提督の視線と合わさる。
純真な少女の瞳と、優しい青年の瞳。
互いに見つめ合う内に、遂に少女の方が決壊した。


秋津洲「う、うわあああああああああん!!」

提督「おっと」


滂沱の少女が、彼の肩に顔を埋めた。
そっと身体を抱き寄せると、そのまま彼女も身を委ねる。

そのまま二人は静かに、二人きりの時間を過ごした。

135名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:06:40 ID:Ig4yNLbg
大淀「ただいま帰りました。提督、ご気分はいかがです?」

提督「うん、おかげさまで。とりあえずは何も問題ないよ」

大淀「それはよかったです……あら?」

提督「ん?…あぁ、ちょっとしばらくこのままにしてあげてくれ。彼女も…色々と疲れているだろうからな」

大淀「…あぁ、成程。ふふ、わかりました」

提督「よし、それじゃ残ってる報告書、こっちに運んでおいてくれるか?」

大淀「ええ、少々お待ちを」


秋津洲「くぅ…くぅ…」スヤスヤ…


(長くなりましたが『看護師秋津洲と病床提督』完)

136名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 03:25:46 ID:doGtP0Jg
(秋津洲で)勝てる訳ないだろ! 
馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前(錦大帝)


ほんまええ子やでぇ…

137名無しのおんJ提督:2016/01/17(日) 12:26:34 ID:vRdDhS7g
ええこや…秋津洲ちゃん…だから早くドロップしてくれ

138名無しのおんJ提督:2016/02/16(火) 21:45:07 ID:IleeSgxg
グラーフ・ツェッペリンとルミナリエに行くお話。

〜三宮駅〜
グラーフ「ヒトハチサンマル……集合場所はここで合っているみたいだが、アトミラールはどこだろうか?」
提督「待たせたな、グラーフ。早速地下鉄に乗るぞ。」
グラーフ「ちか、てつに乗るのか?どうしてだ?」
提督「ああ、グラーフ。それはな、県庁前から行く方がいくぶんか楽だからさ。その代わりそこそこ歩くが。あと、これ渡しておくぞ、ラガールカード。これを改札に入れておけばいい。」
グラーフ「なるほど……これは有り難い、アトミラール。」
提督「ああ、行くぞ、グラーフ。」
グラーフ「ああ、そうだな、アトミラール。」

〜地下鉄三宮駅〜
グラーフ「アトミラール、ふと思ったのだが、山手線、ミドリと来ればこの列車はおそらくだが、ぐるぐる回るのだな?」
提督「それは東京の路線だ……。」
グラーフ「……あ、ああ、そうだったな。すまない。」
提督「それはともかく、2番線の西神中央行きに乗るぞ。」
グラーフ「了解した。あのエスカレーターを下って行くのだな。」
提督「そうだ。エスカレーターしか無いのが不便だがな。乗車位置は……あまり前でなくて問題ないはずだ。」
グラーフ「なるほど……。」

グラーフ「アトミラール、降りる駅はどこだ?」
提督「県庁前さ。まあたった一駅だけどな。」

〜県庁前駅〜
提督「県庁前だ、グラーフ。ここから南東に向かって歩いて行くぞ。」
グラーフ「出口はこれで間違いないはずだ、アトミラール。私もついていく。」

グラーフ「……なあ、アトミラール?これから先は歩道は行き止まりみたいなのだが……?」
提督「……あっ迷った。来た道を戻るぞ。」
グラーフ「しっかりしてくれ……アトミラール……。」
提督「お、ここに兵庫県庁の案内図があった。よし、この方向で問題ないはずだ。」

〜元町駅前〜
グラーフ「ヨットエル……いや、ジェイアール元町駅前だな。アトミラール、この先はどうするんだ?」
提督「先に南に降りたほうが良かった気がするが、まあいっか。警備員が案内路を作っているからそれに沿っていくぞ。」
グラーフ「了解した。」

〜移動中〜
グラーフ「提督よ、教えてくれ。私たちはどこまで歩くんだ?」
提督「混雑回避の為に迂回路を設けられている。近くにあと15分ほどの標識があったな。」
グラーフ「そうか……わかった。」
提督「混んでいるときは途中で止められて待機させられることもあるが、今日はスムーズに流れていそうだ。」
グラーフ「!アトミラール!見えたぞ!」
提督「慌てるな、まだその時じゃない。まだ迂回させられている途中だ。その間に三宮近辺をいろいろ紹介しようじゃないか、ツェッペリン。」
グラーフ「……ほう……アトミラール、頼む。」
提督「まず、JR元町付近に商店街があっただろう?それを東にいけばセンター街がある。」
グラーフ「ふむふむ。」
提督「センター街西館は一言で言えばアニメグッズとか同人誌がある場所だな。私もよく行っている。とらのあなとか、アニメイト、メロンブックスとかがあるぞ。」
グラーフ「ほう、そんなところがあるのか。私も……行ってみようかな。」
提督「別に構わんが……責任は負わんぞ、ツェッペリン。」

提督「次に見えるのはホテルケーニヒスクローネだな。グラーフは知っているか?」
グラーフ「む、それは、私の国の言葉で言うと、勝利の王冠という意味だな。つまり……どういうことだ?」
提督「あー、特に深い意味はないよ。洋菓子屋さんだよ。主にドイツ菓子を取り扱っているんだ。」
グラーフ「ほぅ……つまり、日本でも祖国の味を楽しめるということだな?」
提督「それは分からないな、グラーフ。そうそう、ここのお薦めはクローネという菓子だ。コルネみたいなものだが、パイ生地でカスタードクリームが包んであって、サクサクふわふわといった不思議なお菓子だな。」
グラーフ「……気になるではないか、アトミラール。今度買って食べようではないか。」
提督「後でだぞ、わかったな。」
グラーフ「ああ。」

提督「お、大丸が見えたな。」
グラーフ「百貨店、だな。ここにもあるのか。」
提督「そうだ、こっちのほうが大きい。だけど三宮のそごうがとても行きやすいからなぁ。ここには余り行かない。そうだグラーフ、もうすぐルミナリエのお出ましだ。」
グラーフ「お、そうなのか、アトミラール。流石にこの私も……気分が高ぶる。」

139某所との関係はないです:2016/02/16(火) 21:46:14 ID:IleeSgxg
〜会場へ〜
グラーフ「アトミラール、光の廊下が見えてきたな。……きれいなものだ。」
提督「今回の電飾は屋根付か。流石にこれは凄いな。」
グラーフ「……アトミラール、なぁ、アトミラール……?」
提督「どうした?」
グラーフ「美しいなぁ……あと……いや、なんでもない……。提督、ゆっくり歩こうではないか。」
提督「ああ、そうだな。この時間を、噛みしめよう。」

〜東遊園地〜
提督「ここがメイン会場となる東遊園地だ。段差に気をつけろよ。」
グラーフ「ほう、回廊とかいろいろあるのだな。どれも、美しい。」
提督「今日は平日だからそこそこ空いているな。じっくり見ていくぞ。」
グラーフ「ああ。」

グラーフ「回廊、柱の電飾……どれも綺麗だ。心が奪われるとはまさにこういうことなんだろう……な……。」

グラーフ「ところで、この行列はなんだ?」
提督「これか、これは鐘を鳴らすための行列のようだ。ツェッペリン、一緒に鳴らしてみるか?」
グラーフ「いや、いい……。これ以上時間をかけるのもまあ……なんだ……。」
提督「そうか。ツェッペリンもだいぶ見ていっただろう。ここからは引き上げるぞ。」
グラーフ「ああ、そうだな……。」

〜フラワーロード、神戸市役所〜
グラーフ「アトミラール、次はどこへ行く?」
提督「市役所だ。24階に展望台がある。ルミナリエを上から見に行くぞ。」
グラーフ「上から……か。良いな、アトミラール。これなら寒くなさそうだ。」

グラーフ「すぐに展望台に着いたな……ここのエレベーターは速いな。」
提督「ここならゆっくり見れるだろう、グラーフ。」
グラーフ「ああ。上から見る、ルミナリエもなかなか、いや、とてもいい。」
提督「グラーフ、気に入ったか?」
グラーフ「ああ……もちろんだ。そうだ、少し調べたのだが、ルミナリエはここで起きた大地震の犠牲者を弔うものなんだな、アトミラール?」
提督「そうだ。……もともとはな。今は冬のイルミネーションの代名詞の1つになり、観光のメインにもなっている。」
グラーフ「そうだな。確かに人も多かった。このことについては……アトミラールはどう思う?」
提督「……少し食傷気味なところはあるな。ルミナリエ継続のための募金活動も行われているし、本来の目的からは乖離している部分はある気がする。」
グラーフ「そうか……。」
提督「伯爵よ。こんな暗い話はよそでしよう。今日はドラマチックな夜にしようではないか。」
グラーフ「そうだな、アトミラール。私も、貴方との夜を愉しむとするよ。」

〜エピローグ〜
提督「さて、駅に戻ったな。ってなんだこの大混雑は?」
グラーフ「アトミラール、何故こんなに混んでいるんだ?」
提督「ルミナリエの影響としか言えないな……。」
提督「そうだ、伯爵殿。シュトーレンを売っているところを見つけた。時間稼ぎに買うか?」
グラーフ「シュトーレン……流石に気分が昂ぶる。ああ、アトミラール。もちろんだ。」

-fin-

140くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:26:43 ID:aO3uRXqk
ミ゛ーンミンミンミンミ゛ー!



もう何度目の夏でしょうか…。


梅雨が明けたばかりでベタつくような湿気と、ジリジリと照りつける太陽によってもたらされる酷暑。

そして外の木々からはミンミンゼミたちの大合唱が強烈な日光を引き立てる、これぞまさしく日本の夏。



「ううう…」


(ドイツはこんなに暑くないのになあ、日本の夏は何でこんなに暑いんだろう…)



私の生まれ育ったキールの港町はドイツでも北部に位置していて、7月でも20℃をやっと超えるくらい、時には10℃位になるので長袖も必要です。


日本ではそれは全く必要ないみたいですが…。



そうだ、ご紹介が遅れましたね!
私の名前はPrinz Eugen。
アドミラル・ヒッパー級3番艦です。

幸運艦とも呼ばれていますが、そんな幸運な私でもこの夏の暑さは…。



「はあ…」


私は古い家屋のベランダでそんなお昼時にうだっていました。
仰向けに寝転んでジッと目を閉じています。


(暑い、暑い…)


私の今の服装は『戦っていた頃の』長袖。キールでの通常のスタイル。それに帽子を顔の上に乗せて、日光が顔に当たらないように隠していました。


「んぅ……」


しかしジワジワ蒸し焼きのような暑さに汗が流れます。


…ああ、もうダメ…!


「Ich kann es nicht ertragen!(もう我慢できない!)」



私には無理でした、日本の夏の暑さに負けたよ!

寝転んだ体勢からピョンと飛び上がると、イソイソとじんわり汗の染みた服を脱ぎます。


「あー暑い、暑いけれどまだマシかなぁ…」

それからブラジャーとパンティの下着姿になった私は再び寝転びました。

真夏の太陽の光に直接肌を晒すことになってしまいますがやむを得ません。



(またこんがり真っ赤に焼けちゃうなあ…)



毎年毎年、日本の夏は痛いというのが私の思い出になっています。真っ赤にヒリヒリに焼けますから。


もちろん健康的です!
ドイツでは日焼けは魅力の象徴にもなります。夏になると南の海へ身体を焼きに出かける人も珍しくありません。



(でも焼くならカリブ海より日本が1番かもね…)



誰に力説するでなく、日本のおひさまのパワーに私は打ちのめされていたのでした。

141某所で書いたものの転載です:2016/02/17(水) 00:27:45 ID:aO3uRXqk
ブァーン…

(ああ、自動車? この音は配達のトラック?)


キュルキュル、クー。

「あっ」

しばらく横になって、遠くから珍しく自動車の走る音が聞こえた頃、私のお腹からもだらしない音が聞こえました。


(お腹すいたなあ…)


暑いからでしょうか、朝はきちんと食べたはずなのにお昼すぐに音がするなんて…。
戦艦や空母みたいに燃費が良くないな…。


(今月はピンチなのに……)



『あの頃』と比べて、収入が減り、特に厳しい最近は1日1食と決めていましたが、私のお腹はペコペコ。我慢してもどうにもなりません。



「仕方ないか…」



汗をたくさんかきながら、私は立ち上がって冷蔵庫へと向かいます。

室内なのに暑い…。

142くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:28:20 ID:aO3uRXqk
ガチャ、ヴィーン…


「知ってたよ…」

唸る冷蔵庫、そのドアを開けた私は自分に言い聞かせるように呟きました。


冷蔵庫の中身はそこそこの量のもやしと豆腐。昨日安売りしていたので買ってきたもの。

日本に来て食べるようになった2つですが、安価で売られている素晴らしい食品です。


ただ、ただ…。


(この厳しい暑さを乗り切るには動物性タンパク質が欲しいっ!)


ソーセージ、ハンバーグ、ステーキ……そんなものはここにはありません。高いですからっ!

暑さから考えた僅かな期待は現実に打ちのめされて私はへたり込んでしまいます。


(大人しく冷奴を食べよう…)



諦めて冷蔵庫から豆腐を一丁取り出そうとした、その時…。



「プ、プリンツさーん、お届け物です」コンコンコン



幸せを告げるノックと声が外から聞こえてきました。

143くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:28:59 ID:aO3uRXqk
ドタドタドタ…!

「今、行きまーす!」

普段なら『どうしよう、服を着なきゃ!』や『はしたない!』なんて気持ちが先に回りますが、空腹と酷暑だったからでしょう。

「おあ! 私がプリンツ! プリンツ・オイゲンです!」

「は、はい?!」

下着姿のまま勢い良く扉を開けて、配達員さんをびっくりさせてしまいました。

配達員さん、ダンボールを抱えて持っていたのに、こんな受け答えをしてしまってごめんなさい!

「プ、プリンツさんですねお荷物がきていたので…!」

「いただきます!」

配達員さんもビックリしたのでしょう。顔を真っ赤にして帽子を目深にかぶり直しています。
荷物を抱えているのに器用だなあ。

抱えるような大きなダーンボールを受け取るとヒンヤリして冷たい!これはクール便ね!


「えーっと送り主はビスマークさん?」

「ビスマルク姉さまから!?」

「あー、ビスマルクさん…?」


そんな喜びを一層高めてくれたのが、この贈り物がまさかのビスマルク姉さまからのものだということ!

確かに包装紙は懐かしいドイツの言葉が書いてあった。


やったあ!



「そ、それじゃあサインしてもらえますか?」

おっといけないいけない。

目があっちを見たりこっちを見たりと落ち着きがない配達員さんを放置したまま喜んでちゃいけないよね。


私はペンを借りてサインをスラスラと書きました。

宛名は日本語なのに送り主の名前はドイツ語。
ビスマルク姉さまの日本語は長門さんの固そうな字では無くて柔らかい丸い字だから大好きです。


「ありがとうございましたっ!」


私のサインを貰うと礼儀よく一礼して配達員さんは去っていった。すごい、あれがヤーパンニンジャ…!

どうして股間を抑えていたのか分からないけれど、お仕事頑張って!

144くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:29:32 ID:aO3uRXqk
カチカチカチ! ガサガサガサッ!


さてさて、再び1人になった私の部屋。


残されたのは私と大きなダンボール。ダンボールの側部には『Matjes』と書かれている。


「わーい! Matjesだぁっ!」


うん、嘘は無し!
ダンボール箱をカッターで開けてみると、Matjesのパックがギッシリ詰められてました!

http://i.imgur.com/v0o3zpu.jpg
http://i.imgur.com/e9TqDVk.jpg

※画像はオランダのMatjesです。

「Matjesを贈ってくれるなんて、ビスマルク姉さまありがとうございますっ!」



あっと、Matjesといきなり言われても、分かりませんね。

Matjes(マトイェス)とは新物の若いニシンの塩漬けのことです!
ドイツではちょうど6月頃、つまり初夏にニシン漁が解禁されます。
そこで獲れたニシンを2枚に開き塩漬けにして膵臓から出る酵素で発酵させた食品をMatjes(マトイェス)と呼んでいるんですよー!

お店ではパックや缶詰で売られていますが、私はパックで売られている方が好きかな。中身の様子がしっかり見えるので!


一時期はニシン漁も行われなくなりましたが、こうしてMatjesが作られるほど、海に平和が訪れるようになったのは嬉しいことです。


「ふっふっふーん♪」


…もっとも平和な祖国の海よりも私の胃袋にお魚さんが訪れる事の方が今の私にとっては一大事ですが。



「よーし料理しちゃおう!」オー!

145くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:30:08 ID:aO3uRXqk
ポンポンポン……。


さて、パックで贈られて来たこのMatjesですかどう料理しようかな…。
とりあえず包丁で切ってみて……。

シャリシャリ…

パックから出してみると水が少し溶けてシャーベットみたい…。
普段ならちゃんと解凍するけれど、今日は暑いし…。


「よし、決めた!」






まずはもやしをさっと茹でることにします。
鍋に水を貼ってコンロをカチリと強火に…。


もやしは茹ですぎるとシナシナ、生だと泥臭いような青臭いようなとなかなか難しいお野菜です。


(私は少しシナっとしてるのが好きだから…)

鍋の水が沸騰したのを確認したらもやしを投入。
時計を確認して20秒!

もやしの入った鍋をザルにめがけて、流しへ!
ザルの上には茹でられたもやしが残りました。


「味見!味見!」

もやしを1本口へと運ぶと、シャキッと軽やかな音が。
よーし!シナっとしなかったけど、泥臭くなかった!これは成功!




皿へもやしを乗せて、その上へ半分凍ったMatjesをそのまま乗せて。
最後にゴマ油を少し垂らしたら、完成っ!


茹でもやしのMatjes乗せ!


茹でたもやしにMatjesを乗せただけの簡単な料理ですけどね。

146くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:30:38 ID:aO3uRXqk
パンッ!


手と手を合わせた軽い音が部屋に広がりました。
テーブルの上にはお昼ご飯、その前には目を光らせている私。



「いただきます」

昂りそうな声を落ち着けて静かに言いました。

そして合わせた両手の指と指の間に箸をはさみ、もやしとMatjesを口へ。

そうそう、日本での生活が長いので私は箸の使い方も完璧ですよ、えへん!


「んー!!」


シャキッという口の中の音がすると同時にブルっとブルっとしました!


「Das schmeckt sehr gut!(とっても美味しいー!)」


Matjesは塩漬けした発酵食品ですから、かなりしょっぱくて、そして酸味が後から来るのですが美味しい!

もやしのシンプルな味とMatjesの強い味がバッチリ!


(ごま油も2つの味を引き立てる香ばしさ…。 ちょっと冒険だったけどかけてよかった!)


もやしの余熱で半生の氷のような感じも無くなったしこれは解凍しなくて正解!


久しぶりの動物性タンパク質、久しぶりの故郷の味、私の口とお腹と頭は幸せいっぱいです!

脂がよく乗ってますし、小骨も無いからおいしく食べれます。





ピンポーン!



幸せを噛みしめるように食べている時に現実に戻すチャイムの音。


またお客さんなんて、いったい誰かしら?

147くーねるぷりんつ:2016/02/17(水) 00:31:24 ID:aO3uRXqk
バタンッ!



「す、すみません! ペンを忘れてしまいました、返していただけますか!」



鍵を開けたら、戸が勢い良く開きました。
その外に立っていたのは、さっきの配達員さん。
酷暑の中走ってきたみたいで、汗がダクダク、お腹と肩が大きく揺れていました。


「あ!」

ダンボールの脇には確かにさっきしたペンが。
私としたことが、うっかりで…。

これはお詫びをしないといけませんね。


「ごめんなさいっ! これですね」
「ありがとうございます、助かりました!」

ペンを渡すと速やかに後にしようとした配達員さん、そうはいきません!
「すみません、忘れ物ですよ?」
「えっ?」
「これもどうぞ!」
「あぐっ!?」

即座に箸で挟んだMatjesを私は配達員さんのお口へ入れました。
モグモグと口を動かし飲み込んだ配達員さんの顔は満更でもないようで…。
「…美味しい」

飲み込んで喜んでくれました!やった!



「ですよねっ!」
「この魚、あれですね。 ショウガ醤油とかネギとかで食べても良いかも…」
「ショウガ! それは素敵ですねー!」
「ビールにも合うんじゃないかな…」
「bier!! 最高ですっ! そうだ、レントラー踊りましょうレントラー!」
「ええっ、配達が!?」
「ほらほらほらー!」



そして暫く私は配達員さんとレントラーを踊りましたとさ。
配達員さんごめんなさい!







こんな日本での生活、少し貧しいかもしれないけど私は今をとても楽しんでますっ!


【続くかも?】

148名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:02:52 ID:98XSotw.
スレの方でも言ったけど投下しますよーするする

(台本形式じゃ)ないです。
若干の百合要素があるかもしれない。

149名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:03:56 ID:98XSotw.


僕が。
ここに着任してから、随分と経つけれど。
山城とは、長い付き合いで。
僕が山城を好きになったのも、きっとずっと前の話で。
それに気付いたのは、ほんの最近の事で。

どうして僕が山城を好きになったのかは、分からない。
けれども、艦娘がたくさん、集まっている時は。
僕の目は必ず山城を最初に探している。

大勢の艦娘がおしゃべりをしていて、僕も誰かと話している時も。
僕の耳は、どこかから聞こえてくる山城の声を手繰り寄せようとしている。

150名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:04:32 ID:98XSotw.

ぼくが最初に山城に会った時は。
山城は少し怖い目をして、ぼくを品定めするようにじっと見ていた。
そして、ぼくに取られないようにするみたいに。
一緒にぼくの所に来た、扶桑の手をずっと握っていた。

しばらくはずっとそんな調子だったけれど。
ぼくが扶桑と打ち解けていくに連れて。
本当に少しずつだけれども。
山城も、ぼくと話をしてくれるようになっていった。

多分。
この時には、ぼくはもう山城を好きになっていたんだと思う。

151名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:05:02 ID:98XSotw.

山城は。
扶桑のことが、ほんとうに好きで。
僕が山城と話をしたい時は、いつも扶桑の事を聞く。
その方が、山城が楽しそうだから。
……本当は、もっと別の話がしたいけれど。
もっと言うと僕の事を。
山城の事を。
話したいのだけれど。

でも、僕は。
山城が笑ってくれるなら、それでいいって。
思ってしまう。
ねえさまはね、ねえさまはね、って。
僕の目を見ながら。
僕を見ないで話す山城は。
とても綺麗で。
僕は時々、それがとても悲しい。

152名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:05:49 ID:98XSotw.

ぼくは、山城が扶桑といつも一緒にいることが。
一緒にいなくても、山城はいつも扶桑の心の隣にいることが。
だんだん、煩わしくなってきて。
そんな自分が、とても醜く思えて。
それがつらくて。
なにかをせずにはいられなくなって。

ぼくは、思い切って山城を食事に誘ってみた。
山城はとても驚いた様子で。
ぼくは、なんてバカな事をしてしまったのか、と。
思ったのだけれど。
山城は、しばらく考え込んだ後。
ねえさまに聞いてみます、と言ってその場を離れて。
それから少しして。
戻って来た山城の頬は、少しだけ赤くて。
ぼくの前で随分悩んでいたのだけれど。
いいですよ、と。
言ってくれて。

153名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:06:22 ID:98XSotw.

夕立が教えてくれたのだけれど。
扶桑は、少しだけ山城と一緒にいる時間が短くなったみたいで。
山城も、少しだけ扶桑の話をしなくなったようで。
僕は、一体どうしたのだろう、と心配になったけれども。
扶桑も。山城も。
なんだかほんの少しだけ、楽しそうで。
そんな山城を見るのが、僕も少しだけ楽しくて。

154名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:07:00 ID:98XSotw.

あれから、ぼくと山城は時々一緒に食事をするようになって。
たまに休みが合った時、扶桑と3人でどこかに行く事も増えて。
山城も、だんだん自分の事を話してくれるようになって。
ぼくの事も、尋ねてくれるようになって。
そんな僕たちを。
扶桑はずっと、楽しそうに見ていて。

ああ、扶桑もすごく素敵な人なんだな、って。
山城にずっと、ずっとそう言われていたのに。
ぼくは今さら気づいて。

……それから、また随分時間が経って。

155名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:07:48 ID:98XSotw.

僕は、前より扶桑と話すことが増えた。
山城とも話すけれど。
時々、扶桑と二人で会うようになった。
する話と言えば、山城の事ばかりだけれど。

僕が扶桑と会うのが増えると。
山城と会う事は、前より少しずつ減っていった。

でも、山城も。
誰かに会いに行っているようで。

僕は今でも山城が好きで。
でも。

156名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:08:29 ID:98XSotw.

ぼくたちは、ふたりで会うことが多くなっていった。
周りの艦娘も、だんだん勘付き始めた。
ぼくは臆病だったから。
ウワサになるのは、嫌かな、と。
そう聞くと、彼女は。
すこし考えて。
嫌ではないです、と。
言ってくれて。
それで、もう。
歯止めが利かなくなって。


それから。
少し、時間が経って。

157名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:09:11 ID:98XSotw.

ある時、山城がなんだかぼうっとしていたから。
僕が、どうしたの、と聞くと。
山城は少しだけ躊躇ったけど。
大切な人が、増えたかもしれない、と。
答えてくれて。
僕は。それは、だれ?と。
聞く事は。
出来なくて。
どんな人?と聞いたら。
あなたに少しだけ似ているかもしれない、って。
言われて。
ああ、聞かなければ良かったと。
僕は。


それから、また。
少しだけ時間が経って。

158名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:09:53 ID:98XSotw.

僕は、結婚式に呼ばれていた。

……山城の結婚式だ。
僕の隣には、扶桑がいる。

山城の隣にいるのは。
僕じゃない。

山城は、僕を見つけると。
柔らかな笑みを浮かべて。
今までずっとありがとう。もちろん、これからもずっとお世話になるけども。
私たちの新しい門出を、どうか祝ってください。
そう言った。

159名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:10:50 ID:98XSotw.


僕は、やっぱり、泣きそうになったけど。
うん、幸せにね、と。
どうにかそれだけ言って。
山城と。
その手を取って歩く。
提督を。
見送った。

扶桑は、その姿を見送った後。
山城にとって、今までも、これからもずっと。
あなたは大事な存在なのだから。
泣かないで、時雨。
そう言って、僕の頭を優しく撫でた。

僕は、うん、と言ったけど。
やっぱり、泣いた。

160名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:11:26 ID:98XSotw.


161名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:21:23 ID:y7swjfoQ
乙やで〜
時雨の届かぬ思いが儚くてええな

162名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:24:09 ID:pc3QkV36
人の夢と書いて儚いンゴねぇ・・・

163名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 12:32:33 ID:3ScQeaWA
切ないなぁ…
近くなることはいいことかもしれないけれど、
恋を超えて愛になることで実らないものもあるんだなぁ

164名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 20:46:33 ID:98XSotw.
帰ってきて見たらわりと反応あって嬉しいわ
しかし改めてわかりづらいなコレ
一人称やっぱ揃えちゃった方が提督が浮気してるっぽくなったな
反省

165名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 21:38:27 ID:Ig4yNLbg
えー、球審の不知火です(半ギレ)
弟に温泉をテーマにSSを書くよう言われたので投下し、弟を退場処分としてスレを再開します

というわけで蔵王温泉+最上SS(短編)



最上「提督ー!見てたー!?」

提督「ああ、見てた見てた」


白銀の世界を軽やかに滑り降りてきた最上は、ゴーグルを額に上げて笑顔を見せた。

ここは山形県山形市。
蔵王山は多くのスキー場があり、また樹氷などの観光資源も豊富だ。
そして何より、火山である蔵王山の代名詞はやはり温泉である。
提督と最上は束の間の休日、最上の故郷である山形の、この温泉地へとやって来たのであった。

しかし風呂の前に一汗かきたいという最上の要望に応え、二人はゲレンデに来ていた。
スキーウェアに身を包みながらも軽快な動きで雪原を堪能する最上。その動きは海上と殆ど同じと言っても過言ではない。他の艦娘もスキーは得意なのだろうか。


提督「それで、もう満足なのか?」

最上「うん、ちょうどいい運動になったよ」

提督「どうする?もう温泉入るか?」

最上「うーん、その前に小腹が空いたなぁ」

提督「ん、そっか…じゃあちょっと街を歩いてみようか。何かおいしいものあるだろ」

最上「うん、そうしよう!」

166名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 21:38:57 ID:Ig4yNLbg
最上「へいほふー!ほれおいひい!へっひゃおいひい!」

提督「とりあえず飲み込んでから喋ろうか」


温泉街というのは独特の風情がある。ましてや雪国の温泉街ともなれば猶更だ。
立ち込める湯煙の中、雪景色と共存する街…どこか浮世離れした、異世界のような空気感。
しかしその中にはしっかりと人が住み、人が往く。
この風景こそが温泉旅行のお醍醐味ではなかろうか。

そんな風景に居て、最上は露店で買った玉こんにゃくを頬張っていた。
マフラーに顔を埋めながらもぐもぐやっている姿は年相応の少女らしく、かわいらしい。


最上「ごくん」

提督「そういや温泉卵とかないのかな」

最上「んー、蔵王温泉は酸性の泉質だから卵の殻が溶けちゃって作れないんだってさ」

提督「なにそれこわい」

最上「硫黄温泉だからね。火山の活動が激しい時は硫化水素がゲレンデにも吹き出すんだってさ」

提督「なにそれこわい」

最上「というわけで、旅館に到着だね」

提督「はしょったな」

最上「今日は空いてるね」

提督「俺達しか宿泊客がいないらしいぞ。どうする、一緒に温泉入るか?」

最上「あ、いいね!」

提督「えっ」(冗談のつもりだったんだけど…)

最上「えっ?」

167名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 21:39:36 ID:Ig4yNLbg
温泉街に旅館は数あれど、選択基準として好ましいのは『源泉に近い事』だ。
分湯升というお湯を汲み上げて各旅館に送る装置、それがすぐ近く、或いは敷地内にある旅館は源泉から殆ど劣化していない良質な温泉を提供してくれるのである。
まさに源泉掛け流し。
二人が選んだのもそんな旅館だ。


最上「…提督、あんまりじろじろ見ないでよ?さすがにボクも恥ずかしいからさ」

提督「いや、まさか本当に一緒に入って来るなんて思わないだろ?」

最上「誘ったの提督じゃん…」


そんな事を言いながらも、最上は特に体を隠す様子もなく、提督と並んで露天風呂に浸かっていた。
ほんの少し体を預け合うように、肩が重なる。

ただ、こうして沈黙に身を任せ、二人並んで星空を見上げる…。
それもまた、温泉旅行の風情なのかもしれない。


提督「…なぁ、最上」

最上「うん?」

提督「なんかいい地酒、知ってるか?」

最上「酔っ払いたいの?」

提督「ああ、いいだろ?」

最上「…うん、じゃあ『出羽桜』とかどう?」

提督「いいな…一緒に飲もうか」

最上「……うん」


ほんの少し、最上が笑顔を見せる。
彼女の短い髪を撫でながら、提督も小さく笑顔を浮かべていた。

雪国の夜は長い。


(終)

168名無しのおんJ提督:2016/02/19(金) 23:35:58 ID:VTEiJNrk
温泉いいゾ〜
もがみんは地酒にも詳しいのか

169名無しのおんJ提督:2016/02/20(土) 00:55:06 ID:3ScQeaWA
いいですねぇ
さらっと混浴しちゃう距離感きゅんきゅんする

170名無しのおんJ提督:2016/02/21(日) 02:41:24 ID:8lqGJGu2
沖波による沖波の沖波ためのSS
ケッコンボイス聴いたら書かずにはにはいられなかったンゴ




「司令官……」

 入って間もない頃、右も左もわからない私を丁寧に教えてくれた私の上司。失敗しても、あまり戦果を上げられなくても私に対して決して怒らない寡黙な人。やつれた頬と鋭い目つきは最初の頃こそ怖かったけど、今はもう違う。司令官は優しい。
 私はドジだ。良く失敗するし、慌てん坊で眼鏡が気がかりで仕方がない。それでも司令官は、怒らない。頭を撫でて次頑張れと、口数少なくそういうだけ。
 ……多分、物心ついた時にはこの気持ちがあった。司令官は私の中で大きな存在になっていった。

「……」

 今もまた、寡黙な彼は鋭い目つきを一つも変えず、椅子によりかかっている。私は向かい合ってちょこんと座っているだけ……窓を眺めて、ぼーっとしている彼につられて私も窓を眺める。
 快晴の蒼穹。眩いほどの太陽の下には、鎮守府の喧騒が忙しなく聞こえる。

 そんな事を考えつつ、彼に目を移すと、彼は見計らったように机の上から私に見えるように1枚の紙を差し出した。
 見覚えのある、1枚の紙。艦娘が極限まで練度を上げて、そこで漸くサインする事を許される紙。
 ケッコンカッコカリの、書類だった。

「……司令官」
「……まぁ、なんだ」

 言いにくそうに彼は口籠ると、紙の横に小さな箱を置いた。箱は既に開いていて、中身は白銀に輝く小さな指輪。ここからでも見えるリングの内側には、私の名前が刻まれていたーーーーオキナミ、と。恐らく、私のために特注で作ってくれたのだろう。私なんかのためにーーーーー

「……君と、その」
「受け取れません」

 反射的に、言ってしまった。彼は面食らったような表情をする。そして、私は即座に後悔した。
 ……そうじゃない、言いたい事は、そうじゃないのに。
 喉元から言葉がつっかえて出てこない。司令官も折角切り出してくれた事なのに、私は否定しか出来なかった。そんな自分が酷く惨めで、哀れで……不甲斐なかった。
 本当は嬉しい、嬉しい気持ちで溢れているのに、自分なんかがケッコンしてはいけない、もう一人の自分がそう言ってくる。ドジで失敗ばかりしてて、いつも迷惑かけてる自分なんかが、受け取る資格はない。
 ……悪魔がそう言ってくる。

「……沖波」
「……ごめん、なさい、そういうつもりじゃ、なくて……」

 声が震えてくる。涙で視界が滲んで、レンズの向こうの司令官の顔がぼやける。言葉が出てこないーーーーーー

「っ、ぁ」
「……大丈夫か」

 ひんやりとした、大きな掌が私の頬を包んだ。目の前には、彼の顔が。優しく撫でて、頬を伝う涙を拭うと、もう耐えられなくて……押さえつけてた私の中の何かが堰を切った。
 止めどなく溢れる溢れ出る思いを目を閉じて、小さく吐き出した。

「しれい、かん、は……いつ、も優しくて……あったかくて……それなのに私はお返しすら出来なくて……」

 ぽたり、ぽたりと伝う雫がどんどん増えていく。行き先を無くした涙は私の頬を濡らして、彼の手を湿らした。
 彼は跪きながら、私の手を握って、私の言葉を静かに聞いている。

「お返し、できてないのに……わたし、なんか、が……その指輪、受け取る資格は、ないって……そう思って……」
「そうか……」
「失望、しましたよね……私は、やっぱり、それは……受け取れません」

 彼はゆっくりと立ち上がり箱の中の指輪を手に取ると、私の左手を握った。

「……沖波」
「……私は、君を失望した事一度もない。失敗は誰でもするものだ。私は……君が一番強い事を知っている」

 彼の指先が、私の薬指を捕まえた。

「……失敗して立ち上がろうとする君は健気で……その……私は君と会ったあの時からずっと……好き、だったんだ」
「……だから、もし嫌では無ければ……この指輪を、はめさせてくれ」

 真っ直ぐ私を見つめる彼の瞳は何時もよりも優しくて……温かった。私の周りで聞こえていた否定する声は既に無かった。
 しゃっくり混じりの、情けない声で私は絞り出すように、何とか言葉を出した。




「ふつつか、者ですが……よろしく、お願いし、ます……」

 彼は少し微笑んで、ゆっくりと、指輪を私の指にはめた。指先から感じる銀色の感触は冷たかったけど、彼の想いと、掌は温かったーーーー。

171名無しのおんJ提督:2016/02/21(日) 02:52:00 ID:TKJgeS2o
幸福になる権利 愛される資格
そういうものって複雑で曖昧なようで単純で明快
勝ち取ったり受け入れたりは、時に難しいこともあるかもだけど
誰かに認められるだけでそれは簡単に満たされるかもしれないね

172名無しのおんJ提督:2016/02/25(木) 13:13:32 ID:IleeSgxg
鎮守府では毎週金曜日はもちろんカレーである。ここの決まりでは2人1組で作ることになっている。理由としてはいろいろあるが、1つは艦娘同士の親睦交流を深めるため、もう1つは艦娘の負担軽減のためである。もちろん間宮も手伝いには参加するが、ここでは材料の加工のみにとどまり、具体的なアドバイスをしないことになっている。

今日のカレー当番は浦風と霞。ちなみに当番は前日の晩にくじ引きで決まる。
2人は既に厨房に入り、カレーの準備に取り掛かっている。
「で、カレーの具はどうするの?」
「うちは玉ねぎと人参と大きいジャガイモ、肉は牛肉やね。」
「普通ね。私も問題はないよ。」
「普通って言われてるんじゃねぇ・・・、そうだ、蓮根を入れるのはどうじゃ?」
「いい考えだと思うわ。その代わりアク抜きしっかりね。」
「まかしとき!」

ある程度具材の準備を済ませ、間宮さんに牛肉の調理をお願いしたところで2人は蓮根のアク抜きにとりかかった。
「こんな感じけ?」
「ああ、もうアク抜きすぎ!栄養分が逃げちゃうでしょう!」
「なんかすまんのう。」
「べ、別にそういうわけでは・・・・・・ないんだけど。まあいいわ、後もう少し、頑張りましょ。」
「まかしとき!」

煮込む段階も佳境に入り、カレーの匂いが厨房から漂ってきた。
「いい匂いじゃけ。」
「隠し味、入れてみたけど分かってくれるかな。」
「隠し味は隠し味のまんまがええんよ。」
「そうね。」

ヒトフタマルマル。霞と浦風の特製れんこんカレーが完成した。
早速萩風や野分、天龍に鹿島といった陣容が食堂に集まってきた。
配膳も当番のうちだ。カレー作りより忙しい。
「萩風ね。今日はジャガイモたっぷりのれんこんカレー。どうぞ。」
「あ、ありがとうございます!素敵ですね!」
2人と間宮は手慣れた笑顔やぎこちない笑顔を振りまきながらカレーを届けた。

「おかわり・・・してもらってもいいか?」
「よく食べるけ。ええ子やのお。」
新入りの秋月型駆逐艦が笑顔いっぱいにおかわりを頼む。その食べっぷりには幸せの笑顔が常についてきた。
某正規空母や某重巡洋艦も大満足のようで、おかわりを要求してきた。特に空母の方は大盛りで3杯もののカレーを平らげていった。

ヒトサンマルマル。
カレーは遠征係の子の用に小鍋をとっておく。
当番も後片付けを残すのみだ。2人は大鍋を洗う。既に間宮さんが他の食器の洗浄も済ませて、食器拭きに取り掛かっている。
「この大きな鍋を洗うんやね!」
「ちゃっちゃと手分けして終わらせましょ!」
「わかったで。」

後片付けも終わり、2人きりの食堂。
とっておいた小鍋からカレーをすくい、ライスの上にかける。
2人分のカレーライスを用意し、2人は食堂の端で対面になって座る。
「どう?2人で作ったカレーは?」
「もちろんばっちしや!」
「今回のカレー当番は良かったわ。ほら、このレンコンだって美味しいんだもの。」
「それはよかよか。また2人になったらよろしくね。今日は感謝するで。」
「こちらこそありがとう。また作ろうね!」

173名無しのおんJ提督:2016/02/29(月) 22:13:58 ID:zojxy8P.
R-18注意報




失礼するよ〜てーとくさんが呼ぶなんて珍しいねぇ……どうしたんじゃ?うちを呼ぶって事は……

ああ……やっぱり……♡こがぁに膨らませて……♡
じゃあうちがえぇっと溜まった提督さんのおちんちんすっきりさせんといけんねぇ……♡

んん……?なんじゃ……?
えっ……うちはええけど……げにやりたいんか……?

……そんにいごいごせんでな、分かったけぇ……んもう……♡

ほら、こっちにけぇ……はだかんぼーになってそこに寝転がって……ん、大きいのう……♡


提督さんもげに変わった人じゃねぇ……うちのおっぱい吸いながら扱いて欲しいなんて……

あ、こぉら♡がっつきすぎはいかんよーふぅ、んっ♡大丈夫じゃけぇ、うちは逃げん……

しゅっしゅってするたびにびくびく震えとる……気持ちええんか?ほら……♡ほら……♡

んん、頭撫でながらしゅっしゅってして欲しいって……?

……んもう、てーとくさんは甘えん坊じゃねぇ……♡ほら、いいこ……♡いいこ……♡

好きな時に出してええんじゃよ……♡

しーこしーこ♡ふふ、お汁がもう垂れてきとるねぇ……♡
我慢する必要もないんじゃ、えっと出してすっきりするんよ♡ほら♡ほら♡ほら♡


びゅくっっ♡びゅぷッ♡びゅッ♡びゅるるッ♡びゅっ♡ぴゅっ♡ぴゅくっ……♡♡



でたぁ♡♡♡はぁ♡♡ぅん……♡んんんん♡こりゃすごいのぅ……ほらぁ、てーとくさんので手がべとべとじゃ……♡♡♡

凄い、匂いぃ……♡てーとくさんの匂いで染まりそうじゃ……♡♡はぁ……♡

ん、すっきりしたって? そりゃ良かった……うちで良ければ、またお手伝いするよ♡

174名無しのおんJ提督:2016/03/04(金) 21:15:45 ID:Ig4yNLbg
えー、唐突ですがスレで話題になったので睦月如月SS投下します

175名無しのおんJ提督:2016/03/04(金) 21:16:20 ID:Ig4yNLbg
睦月「…ッ」


12.7mm連装砲を構えたまま、睦月は固まっていた。
ここは南方海域。鎮守府から遠く離れた絶海であり、そして深海棲艦前線基地の目前でもある。
しかしその場所で、駆逐艦・睦月は無防備な体勢のまま固まっていた。


睦月「如月、ちゃん…?」

???「…」


睦月の眼前には、一人の深海棲艦。
長い髪と、睦月に似た体格。見覚えのあるその顔立ちは、かつて爆撃により轟沈した僚艦のそれに似ていた。
睦月の妹艦、駆逐艦・如月に。


如月「…睦月チャン」

睦月「なん、で…」


砲撃の音も遠く。
睦月の聞いた声は、紛れもなく彼女の…如月の声であった。
目の前の敵の正体を、睦月は依然として受け入れられないまま。ただ、呆然と立ち尽くす。

刹那、睦月の脳裏に蘇る思い出。
鮮やかに彩られた光景、そこにはいつでも如月の姿があった。

最も傍にいてほしい人だった。
そして今は、最も傍にいてほしくない人だった。


睦月「なんで、そこにいるの…?」

如月「…」

睦月「どう、して…」

如月「睦月チャン」


冷え切った声が、睦月の身体を震わせる。
錆びた潮風が、二人の間を駆け抜けてゆく。

176名無しのおんJ提督:2016/03/04(金) 21:16:55 ID:Ig4yNLbg
如月「…ゴメン」

睦月「ッ……なんで…なんで謝るのさ」

如月「…ゴメン」

睦月「謝らないでよ…」

如月「…」

睦月「…」


ふと、二人の上空を機影が通過する。
彩雲。本隊の空母が搭載する偵察機。それは、先遣隊である睦月の下に、既に本隊が接近している事を示していた。
靡く髪を押さえながら、如月だった深海棲艦が顔を上げる。
その表情は、どこか清々しささえ感じられる。


如月「…アノ彩雲ハ、加賀先輩ノカナ。ソレトモ、瑞鶴サンカナ」

睦月「…」

如月「烈風ノ機影モ見エルワ。モウスグ爆撃隊ガ来ルノデショウネ」

睦月「…」

如月「痛イノハ、嫌ネ…」


睦月は、もはや言葉を返す事もできなかった。
抑えようにも溢れ出す涙は止められず。噛み締めようとも漏れ出す嗚咽は止まず。
手が震え、脚が震え、直立する事もままならない。


如月「天候、曇。視界ハ不良。今ノ彩雲カラ、私ノ姿ハ見エタノカシラ」

睦月「…」

如月「コノママ沖ノ海路ヲ進メバ"敵"ノ後背ニ着ケル。単縦陣モ、T字有利モ関係ナイ、挟撃ガデキルワネ」

睦月「…」

如月「私ハタダノ駆逐艦ジャナイワ。所謂後期エリート、水雷戦ニオケル掃討ヲ目的ニ"再設計"サレテルノ。空母ガ艦隊ニ居ルノナラバ、先ンジテソレヲ中破ニ追イ込ム。ソレダケノ装備ハアルワ」

睦月「…」


駆逐イ級後期エリート型が。
敵艦が、近寄ってくる。

艦娘・睦月は。
動く事もできずにその姿を見る。

177名無しのおんJ提督:2016/03/04(金) 21:17:28 ID:Ig4yNLbg
如月「…」

睦月「…」


既に圏内。
互いの砲弾が、確実に敵を沈められる距離。


如月「艦娘…駆逐艦…睦月型一番艦、ネームシップ、睦月」

睦月「…」


"敵艦"が、囁く。


如月「己ノ任務ヲ果タシナサイ」

睦月「…ッッッ!!!」


その声に、睦月は顔を上げた。
涙で濡れた顔を、まっすぐ"敵艦"に向けて。歯を食い縛る。覚悟の表情と共に。


睦月「…敵艦…発見…!」

如月「…」

睦月「掃射…ッ!」


――轟音が響く。

波を撫で、風を貫いて。
12.7mm連装砲が、硝煙を撒いた。

178名無しのおんJ提督:2016/03/04(金) 21:17:58 ID:Ig4yNLbg
瑞鶴「睦月!怪我はない?」

睦月「大丈夫にゃし!」

瑞鶴「敵艦隊は?」

睦月「前方13海里、重巡リ級を旗艦とした水雷戦隊、計五隻を確認したにゃし!」

瑞鶴「うん、ありがと。後は私達に任せて」

睦月「はい!」




翔鶴「…」

瑞鶴「…どうしたの、翔鶴姉」

翔鶴「あ、いえ…少し」

瑞鶴「うん?」

翔鶴「睦月ちゃんって……あんなに明るい子だったかしら?なんだか…吹っ切れたみたいな顔だったわ」

瑞鶴「そうかな?睦月は前からあんなんだったような気がするけど」

翔鶴「…勘違いなら、いいんですけれど」


空母二隻、護衛艦四隻。
航空機動部隊、五航戦。

水面に揺蕩う蔓日々草に気付く事はなく、前線へと向かう。


(完)

179名無しのおんJ提督:2016/03/04(金) 22:17:04 ID:H.7skMUA
ツルニチニチソウ。魔除けの草でもあり、友情や思い出を詠われる花です。
それを深海に堕ちてなお持っていた如月ちゃんを思うと切ないものがありますな。
一方で向き合う睦月もまた決断をせねばならない。あぁ、まったくつらいもので。

180かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:17:05 ID:mFgValIo
秋津洲SS

私が艦娘になった理由は、ちょっと変わっている。
お母さん、お父さん、妹。皆で静かに、でも賑やかに暮らしていた。
嬉しいこと悲しいこと、たくさんあって、友達はー・・・どんくさいからよくいじめられててあまりいなかった。
そんな私でも友達はいた。

地元の男の子とは違った雰囲気で、お互い名前はわからないけど、その子は私のことをいじめなかった。
海の見える木陰で色んなことをお互いにお話して、笑って、泣いて、怒って、でも仲直りして。

男の子はいつも決まって、お昼にそこにいた。
だから私も決まってその時間にそこにいた。

181かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:17:56 ID:mFgValIo
長くも短くもあった彼との世界。
ある日、彼は私に背を向けて
「明日から帝都の家に帰る。もう会えないかも。」と言った。
表情を見ることはできなかったけど、悲しそうな声だったような気がする。
私は「そう。」としか返せなかった。
その時の私はまだ幼かったから、戦争中だって実感がなかった。
沈黙が続いて、彼は歩を進めた。動かなかった私の口もようやくもごもごと動きだす。
「じゃあまたいつか会おうね。」
私の声は大きな風に吹かれて海に消えていった。
彼が私の声を聞いたかどうかはわからなかった。


彼と会えなくなって暫く経って、帝都で大規模な空襲があったとニュースで見た。
テレビの中では建物が燃えて、黒い煙が出ていて、人が倒れて動かない。
私の知っている現実はそこにはない。
大人たちが大騒ぎをしているけれど、子供には関係ないもんね。
あの男の子の事を考えたりもしたけど、そんな余裕はあまりなかった。

それから幾日も立たないうちに私は全てを失った。
凄い音と風、赤と黒と灰色に支配された世界。
死んだと思っていた。

でも私は生きていた。
運よくつぶれた家からはい出ることができた。
ああ、生きているんだ。しばらくぼーとしてなんとなく、私はあの木の下に向かった。

そこには地獄にはなかった色があった。
ここは大丈夫だったんだね。と誰に言うわけでもなく私は呟いた。
木に茂った緑が揺れる。

182かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:18:36 ID:mFgValIo
そこからの記憶はあまりない。
聞いた話によると私は木の下でいるところを救援の軍に見つけられ保護された。
そのあと、親戚の家で生活をさせてもらった。

中学を出て、高校を出た。
学力的にはそこそこ優秀だったので大学も無事卒業した。
就職活動はしていなかった。
何をするわけでもない。とにかく私は中身のない日々を過ごしていた。
だって、今ここに何があったか書こうと思ったけれど、何も書けない。

ある日、ふとあの場所へ行きたくなった。
私の足は電車に向かっていた。
窓の外を見ると、私の知らない街がある。
知っているのに、知らない。もう考えるのもめんどくさかった。

駅には人がたくさんいた。
知らない、知らない。
私の頭はあの場所だけ考える。
駅からは少し遠い。
無心で歩いた。距離的には40分くらいかな。でも感覚的には5分くらい。

木が見える。
ああ、あの時の木だ。私はただそう思った。
木が近づいてくると、誰かがいる。
そういえば昔もこんな感じだったかもしれない。
なんだかこの感覚懐かしいな。心臓の音が少し早くなったような気がした。

183かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:19:26 ID:mFgValIo
木の近くには、男性が立っていた。
顔が見えてくる。
どこか見たことのある面影だ。

私が彼を見ていると
「久しぶり・・かもな」彼が言った。
私はすっとんきょんな声を上げる。
人と喋ることも久しぶりだ。
私は彼を知っているし、覚えている。
でも声がでない。
それでも絞りだした声。

「久しぶり・・かも」

彼は小さく笑っている。
そういえば彼の口癖は語尾に「かも」を付けていたっけ。
思い出した私もまたつられて笑った。
久しぶりに笑った気がする。
顔の筋肉が固い。

そこからしばらく会話が続いた。
どうも彼は今、軍に所属していて、若くしてお偉いさんになっているらしい。
どうにも耳がいたい。
だって私は何もしていないのだから。

だから私は今までの事、全部彼に言った。
あれからの生活のことを。
最後に私は、戦争を早く終わらせてよ。と冗談まじりで言った。
私は家族を失ったんだから、軍人である彼にそれくらい言ってもバチは当たらないだろう。
当たったとしてももういい。失うものなんてない。


すると彼の口からは予想もしていなかった言葉が出た。

「一緒に戦わないか。」

笑ったよ。
冗談を言ったから冗談で返されたと思った。
でも彼は本気だった。
笑っている私の目を見て、また言った。

「俺と一緒に戦ってくれ。」

意味がわからない。
私は何もできないと言っても、「できる」の一点張り。
最終的に折れた。
給料の話とかいろいろされたけど、結局仕事の内容は教えてくれなかった。
機密なんだって。

184かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:20:04 ID:mFgValIo
彼と会ってからすぐに私は家を出た。誰も止めやしない。私一人が消えても特に困らないから。
私は指定された場所に向かった。
そこには大きい建物がいくつも並んでいたけれど、それよりもまず銃を持った人がいっぱい立っていて怖かった。

私がうろうろしていたら、突然大きな声で止まれ!と言われた。
銃を持った人が私に近づいてくる。
逃げないとと思っても身体は動かない。

ああもうだめだと思ったら、彼がいた。
「すまんすまん。遅くなってしまったかもな」


色々と最初にあったけど、無事建物に入ることができた。
安心したのも束の間、私を待っていたのは、「艦娘」として生きる事。
危ない仕事らしいけど、私は後方任務がメインらしい。

名前は「秋津洲」
どうやら日本という意味もあるらしい。
とてもじゃないが背負いきれない名前だ。

そこでは色んな人に出会った。
戦艦や空母の名前を貰った方、駆逐艦の名前を貰った子。
私より歳が上の人も下の人もいた。

一番衝撃だったのが、幼稚園くらいじゃないかと思うくらい小さい子でも艦娘として生きていたということ。
でも詳しくは聞けない。どうやら身の上話は厳禁らしい。
士気に関わることだからと。

私はなんとなく彼と知り合いであることを隠していた。
彼は気づいていたが、何も言わなかった。

艦娘としての私は本当にだめだめだった。
珍しい「水上機母艦」の私は皆の期待を一身に背負った。
でも期待通りの仕事はできない。

それでも彼は私をよく任務に就かせてくれた。
たまに周りからの不満があったと聞いたけど、彼が諌めてくれていたらしい。
そんな話を聞いて、私はさらに彼と話をすることができなくなっていた。

185かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:20:53 ID:mFgValIo
そんな日々が1年以上続いて、色んな艦娘の人と出会った。
この間私はなぜか演習の旗艦をずっと勤めていた。
装備と言われる武器もここでは最新のものを使わせてもらっている。
きっと彼が私に気を使っているのかもしれない。彼とはあれ以来会話をしていない。

練度ももうかなり高まっている。
十分戦闘に出ても大丈夫だろうと私は思った。
思ってしまった。

大規模作戦の時、彼は会議で泊地へ向かっていた。
作戦の指揮は戦艦の大和さんが執っていた。
私は慢心からか、嫉妬してしまったからかはわからないけど、戦闘に出たいと申し出た。

大和さんは少し悩んだ顔をして、あなたには後方任務をやってもらいたいのですが・・・と言った。
それでも私は固辞し続けた。
最終的に大和さんは折れた。

私が無理矢理作戦を変えてしまった。


結果は惨敗。
不運も重なった。
敵の戦力が予想よりも大きくて、艦娘の「喪失」が多数報告された。

空母1隻喪失、駆逐艦2隻喪失、戦艦1隻大破
支援艦 駆逐艦3隻喪失、空母1隻大破、戦艦2隻小破


私が索敵を、間違った。
演習とは違った雰囲気にのまれてしまった。
その結果がこれだ。

戦力の差が大きく、私がいてもいなくてもこういう結果になっただろうという見方もある一方、私が作戦を変えな

ければ被害は小さくなっていただろうという見方もあった。

もうだめだ。
彼に会わす顔がない。
私は、まただめな私に戻っていった。

作戦が終わって、悲しみに暮れる鎮守府。
私は逃げた。
軍の警備は把握している。

追われる身になるだろうけど、逃げた。
どこへ?
よくわからないけど、とにかくあそこへ。

186かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:21:35 ID:mFgValIo
木の下はとても涼しい。
私の全てを癒してくれる。
軍法会議とか色々と考えたけど、考えるのをやめた。
そのまま私は寝てしまった。

次の日のお昼、目が覚めた。相変わらず緑が広がっていた。
隣に誰かがいる。
彼だ。

彼は私を見つけて連れ戻す気なのかもしれない。
でも私はもう戻れない。

彼が言った。
「久しぶり。」

私は無言で彼の顔を見る。

「君にずっと・・これを渡したかった」

そういって彼はポケットから何かを出した。
何かはわからなかったが、小さな、手のひらに収まるサイズの箱だ。

彼はそっと箱をあけた。
そこに指輪が入っていた。

私はそれをぼーっと見ていたけど、彼はこう言った。
「これはしばらく前に開発された艦娘のための指輪。各鎮守府に1つだけ配布される。一番大切な人に渡すと決め

ていたんだ。」

一番大切な人?
それが私?

「私はもう艦娘ではいられない。」

彼は私がそう言うと、

「僕が上を納得させる。地位を捨ててでも。絶対に君を守るから。」


「また僕と一緒にいてくれませんか?」

187かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:22:05 ID:mFgValIo
それから幾日か経って、結局私は彼の言葉を信じてまた艦娘となった。

結論から言って、彼は遠くの泊地の提督となった。まあ左遷・・だと思う。
私も彼とは違う場所に異動することになった。

軍では今回のような出来事が起こらないよう、艦娘の戦力データに対して働く抑制機構を開発した。
もう私のような不適応者が難度の高い作戦に参加することができなくなった。

でも戦力データでは、私の練度は鎮守府で一番高かったらしい。
無心でやっていたから気が付きはしなかった。

それから私は、水上機母艦「秋津洲」として今の鎮守府で任務をこなしている。
異動の時に、私は制服を「緑」に変えてもらった。いつもあの場所を思い出せるように。

そういえば、最近彼の泊地では深海棲艦による襲撃があったらしい。
でも彼の手腕で見事撃退したとのこと。


辛い事や悲しい事はあるけれど、指輪を見ると思いだす。
私と彼は今も繋がっている。
今度、彼の泊地の近くに遠征任務がある。

久しぶりに彼に合えるかもしれない。

「次は、なんの話をしようか迷う・・かも」

私の言葉は大きな風に吹かれて海に消えていった。

188かもかもアタック!:2016/03/06(日) 20:23:06 ID:mFgValIo
終わりかもかも
書き溜めを一気に放出したかも。

拙い文章でごめんねかも。

189名無しのおんJ提督:2016/03/06(日) 22:38:20 ID:3GIDwqxI
ええぞ!純愛ええぞ!

190名無しのおんJ提督:2016/03/07(月) 18:57:11 ID:MXYrYnw.
秋津洲は愛されてるなぁ!!
「彼」と再会して気持ちに報いるときはいつになるんだろ(遠回しな続編要求)

191名無しのおんJ提督:2016/03/07(月) 19:38:28 ID:u2W2f0yo
【訃報】ワイ、レンタカーを自損事故で破壊する
http://bit.ly/1LDQgqb

192名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:46:30 ID:Ig4yNLbg
さて…酒盛りSS、メインは那珂ちゃんです

193名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:47:05 ID:Ig4yNLbg
神通「なんだかすいません、提督」

提督「いや、たまにはこういう飲み会ってのもいいもんだよ」


今、軽巡寮の一室に提督はいる。

今日は特別目立った戦闘もなく、窓の外は小雨がちらついていた。
「こんな夜には酒盛りだよね!」という川内の一言で、提督を巻き込んだ飲み会が発起されたのはつい一時間程前の事である。

川内型三姉妹の部屋であるその部屋は、三者三様の趣味が展開されてなかなかに賑々しい装いとなっていた。
長女・川内の寝台には忍者漫画やらが散乱し、次女・神通の寝台は質素ながらも綺麗に整頓され、そして末妹・那珂の寝台には雑多な衣装やら小道具が山積みになっている。
そんな『普段』の光景の中でちゃぶ台を囲む四人は、各々に私服に着替えていた。


川内「へぇ、提督の私服ってこんなのなんだ」

那珂「那珂ちゃん的にはバッチリ似合ってると思うなぁ☆」

提督「そうか、ありがとう」

神通「えっと、もう準備しちゃっていいですか?」

提督「あ、すまない。手伝うよ」

神通「いえ、お気になさらず」

川内「あっ、私いつものねー」

那珂「那珂ちゃんも同じー!」


川内はキャミソール姿、神通は浴衣、那珂はパジャマ。
おそらくは寝間着なのだろう。
そんな、ある意味で無防備な三人の姿を、娘を見守る父のような温かい眼差しで提督は見つめる。

194名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:47:39 ID:Ig4yNLbg
那珂「お酒はぬるめの〜 燗がいい〜♪」

川内「あっはっはっは!!」


各々に一本目の生を空け、好みのままに二本目を開ける。
熱唱する那珂と、それを見て馬鹿笑いする川内を脇目に、神通は提督の御猪口に開けたての久保田を注いでいる。


提督「いつもこんなんなのか?」

神通「ええ…すいません、騒がしいの嫌ですか?」

提督「いや、好きだよ。みんなで一緒に仲良く酒を飲むのもいいじゃないか」

神通「よかったです」


神通の柔らかな微笑みに、提督は乾杯で応える。


提督「神通は飲まないのか?」

神通「あ、実は…あまり、強くなくて」

提督「そうなのか、意外だな」


言葉通り、既に彼女の顔はほんのり朱が差している。
まだビール一本なのに。


提督「あまり無理するなよ?酒も、戦闘もな」

神通「…はい、ありがとうございます」


そっと浴衣の襟を正す神通は、少し眠そうな目つきで提督の傍に身を寄せた。

195名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:48:20 ID:Ig4yNLbg
川内「じ〜んつぅ〜、なぁに抜け駆けしてんのさぁ〜」

神通「はわっ!」


神通の背に、川内が寄りかかる。
頬を寄せる、その顔は既に真っ赤であった。
見れば、川内が座っていた座布団の周辺には既に何本か空き缶が転がっている。


提督「…川内、お前飲むペース早すぎないか?」

川内「えへ〜ほめられた〜」

提督「褒めてない褒めてない」

川内「てーとくも飲んで〜、ほら〜」


キャミソールの肩紐が落ちているのも気に掛けずにぐいぐいと火照る身体を寄せてくる。
そんな川内に押し潰されるように、神通は苦笑いを浮かべていた。


提督「ある意味通常運転、だな」

神通「はい、すいません…」

川内「あっ、ちょっと待って〜、おしっこ〜」

提督「女の子がそういう言葉を遣うもんじゃないぞ」

那珂「麦は泣き〜 麦は咲き〜 明日へ育ってゆく〜♪」

196名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:48:50 ID:Ig4yNLbg
飲み会開始から三時間程経って。
那珂ちゃん独演会も終了し、すっかり落ち着いた室内。


川内「すぅ…」

提督「…もう寝たのか」

那珂「姉さんいっつもこんな感じだよぉ?」

提督「わかりやすいやっちゃな」


川内に毛布を掛けながら空き瓶を並べる神通も船を漕ぎ始めている。
時計の針は既に頂を越えているし、朝早い艦娘にとっては普通の事なのだが。
しかし、そんな普通の姿がどこか微笑ましい。


提督「神通も、無理しないで寝ていいからな?」

神通「はぃ…」


なんというか、川内型はみんなわかりやすい子ばかりだ。
水雷戦隊のエース達のごく普通の女の子としての姿は、戦時中という現状の下においても安らぎを与えてくれる。
そんな普通の子達が海を駆け、硝煙に塗れて戦っている事実。
申し訳なくもあり、また感謝も抱かざるをえない。
そんな――


那珂「提督はお酒入ると色々考えるタイプなんだねー」

提督「ん?ああ…」


何時の間にか眼鏡を掛けた那珂がぬるくなったお湯割りに口を付けていた。

197名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:49:32 ID:Ig4yNLbg
提督「お前はまだ酔っ払ってないのか」

那珂「うん?酔っ払ってるよ?」

提督「そうは見えないけどな」


シラフの方がよっぽど酔っ払ってるだろ、とは言わなかった。

いやしかし、実際那珂は落ち着いていた。
普段のアイドルキャラとは全く違う姿だが、これがおそらく那珂の素なのだろう。
眼鏡の奥の瞳はどこか憂いや儚させ感じる。


提督「…お前、そうしてた方がかわいいな」

那珂「えっ…いきなりどうしたの、提督?」

提督「いや、ふと思っただけだ」

那珂「普段の私はかわいくないの?」

提督「そういう事じゃないさ。いつも以上にかわいいって事だよ」

那珂「…なにそれ」


そう言いながらも、満更でもない表情で那珂は微笑んだ。
戦場というステージで輝く花ではなく、ただ静かに咲く月見草。
そう…それは『かわいい』那珂ではなく、『美しい』那珂の姿だ。


提督「…ん、雨、やんだな」

那珂「え?あ、ほんとだ」


窓の外は夜の闇。
輝く月が窓辺に蒼白の光を落とす。

198名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 16:50:10 ID:Ig4yNLbg
那珂「それじゃ、また明日ね、提督」

提督「明日っつーか、もうあと五時間後だな」

那珂「あ、ほんとだ。急いで寝なきゃね」

提督「ああ、そうだな。おやすみ」

那珂「おやすみなさーい」


静寂を残して、提督は部屋を出た。
その背中を見送りながら、那珂は少し頬を染めていた。

自分の素の姿を提督に見せるなんて、以前の自分では考えられなかった。
お酒の力を借りたとはいえ、大きな一歩を踏み出せたように思う。
いつか、艦娘『那珂』としてではなく、一人の少女として自分の事を見てくれたら。
きっと、それは――


川内「なーかーちゃーん♪」

那珂「ふわぁぉう!?」


突然、声と共に重みが背中を襲う。


那珂「な、ななっ…」

川内「んっふっふ〜、まぁた抜け駆けしようとしてる子がいるねぇ〜?」

神通「那珂ちゃんの素顔なんて、私達にもあまり見せませんね?」

那珂「な、神通姉さんまで…!」

川内「それじゃあ、夜戦といこうかぁ〜?」

神通「そうね、探照灯もつけましょう」

那珂「てーとくー!助けてぇぇぇぇぇぇええええええ!!!」


(完)

199名無しのおんJ提督:2016/03/09(水) 17:07:21 ID:MXYrYnw.
那珂ちゃんは周りを良く見てる子だからね 静かに咲くのもよく似合う
酒の色を交えたお付き合いもいいものですな

200かもかもアタック!2:2016/03/09(水) 23:35:16 ID:mFgValIo
かもかもアタックSSスピンオフ編
赤城SS


「―――――――かぎ――ん!!!」

誰かが私を呼んでいる声がする。
私はなにを・・

ここは・・
海の中・・?

ああ、そうだ。
私は沈んでいる。
敵の砲撃で私は・・


どうしてこうなったのだろうか・・・
いや、答えは分かっている。
私の怠慢だ。
私があの時・・・

201かもかもアタック!2:2016/03/09(水) 23:54:02 ID:mFgValIo
父は軍人だった。
父の父である祖父も軍人で、曽祖父もまた軍人だった。
弟も父に触発され軍人となった。


「私」はそんな父が嫌いだった。
人を殺す兵器を扱う軍人の父。
嫌悪すら感じた。
母は弟のお産後すぐ死んだ。顔も写真でしか見たことがない。

そんな家で育った「私」は、よく父と喧嘩をし家出をしていた。
父は決まって、「私」に「男らしさ」を求めてきた。
それに対して、「私」は「女らしさ」を望んだ。

「私」は女。
当たり前のことを否定される毎日に「私」は嫌気を指していた。
父はそんな「私」に妥協案として、武術としての「弓道」を勧めてきた。


「私」は、女としての「私」を否定しないことを条件として父に突きつけ、弓道を

始めた。
父は嫌がっていたが意思が曲がらないことを察してか受け入れた。



武術の苦手な女になりたかった。
でも代々軍人の家系でその血は流れている。
当然弓道も上達が早く、1年もあれば師範も含め道場で「私」よりうまい人はいなく

なった。

普通、道場に入りしばらくはカタの固定や修行と言われるものを課せられる。
やるからには誰よりもうまく、1番に。

人一倍「私」は頑張った。
朝から晩まで「私」が道場の一角を占拠する。
「私」はただひたすらに修行をした。美しく、煌びやかに。
この時だけ、「私」は私の望む女だった。

そんな日々が続き、「私」は上達しきった弓道が怖くなった。
半年間、毎日通っていた日々とは一転、道場に足を運ばなくなっていた。

弓が的に当たる音。
「私」の中にいる「何か」が目を覚まそうとしている。
「私」はそれを認識し、恐怖を抱いた。
必死に抑え込もうとしていた。

「私」は女。
煌びやかでお淑やか。
そう言い聞かせる「私」は「私」でなくなっていった。

私は誰。
私は何。
私は・・・

私は。

202かもかもアタック!2:2016/03/09(水) 23:58:21 ID:mFgValIo
その時は突然やってきた。
戦争が、鉄が、炎が。
一瞬にして、生まれ育った家はなくなった。

父も弟も軍人で、生きているか死んでいるかもわからない。
私は、赤く燃えて崩れる家に潰された。
頭を強く打ち、うまく助けを呼ぶことができない。

いままでの「私」の思い出が、頭の中でこだまする。
気づいたら意識がなくなっていた。




目が覚めると私は、ベッドの上で寝ていた。
医療器具が揃っているように見えるが、病院ではなさそうな場所。
どこかの施設の、医務室らしき場所に私は寝ていた。

私が目を覚ますと、ピンクの髪をした医者らしき女性が私が起き上がるのを制止した。

彼女は私に大丈夫ですかと問うた。
大丈夫なわけがない。
とりあえず、「大丈夫です。」と答えた。

それからしばらくして、男の人がやってきた。
彼との出会いが私の人生を変える。

私の望む「私」に。



彼は軍人だった。

「大丈夫ですか。」

彼は言った。

「大丈夫です。」

私はめんどくさそうな顔をして言った。

そこから彼は私の頭の中にある疑問を透かしているかのように話し始めた。

彼によると、軍が珍しく民間人の救護に当たったらしい。
私が潰されていた家は燃えていたが、火が回る前に燃え尽きたようだ。

そこにたまたま軍が通りかかって私は助けられた。
どうでもいい事だけは仕事をする軍人にため息がでた。

彼はどうやら海軍所属らしい。
父と同じだ。
私の父は「空母」とかいう軍艦の艦長をしていると小さい頃言っていたことを思い出した。

名前は・・思い出せない。

203かもかもアタック!2:2016/03/09(水) 23:59:35 ID:mFgValIo
私は生きている。
でも「私」は確かに死んだ。

話を全て聞いた後、私は軍に志願した。
医務室にいたピンク髪の女性のことを聞いた時に、「艦娘」を知った。

危険が伴うとか、死ぬかもしれないとか、説得されたがどうでもよかった。
とにかく、敵を殺して殺して殺したくなった。

それだけだ。
彼は私の本質に気付いていたのかもしれない。
彼は、「弓」を武器として戦う艦娘として私を軍に登録した。

名前は「赤城」。
どこかで聞いたことのある名前だと思ったが、思い出せない。



「赤城」としての私の生活は、約束された勝利だと確信していた。
自分で言うのもなんだが、「私」は道場の師範すら負かす、弓の名手だ。

頭ではそう思っていても、身体はそうではなかった。
的の真ん中に当てることくらい造作もない。はずだった。

的にすら当たらない。
ふらふらと色んな場所に矢が刺さる。

なぜかわからない。
とにかく弓が、思った場所に飛ばない。

私はひたすら練習場に通った。
でも、一向に当たる気配すらない。

私は、また私がわからなくなった。
いや、最初から分かっていなかったのかもしれない。

204かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:02:57 ID:mFgValIo
私がいつもと同じく、的に当たらない練習をしていると、誰かが練習場に入ってきた。

「あら。赤城さん。こんにちは。」

にっこりと笑いながらそう言った彼女は、この鎮守府で最初に配属された空母「鳳翔」だ。

私は儀礼通りこんにちは。といい、弓を引いた。
また的に当たらない。

「・・それでは1000本弓を引こうが当たりませんよ。」

後ろから彼女が言った。

「そんなはずはありません。少しブランクがありますが、「私」は弓が得意でした。
感を取り戻せばいずれ当たるようになります。」

私はやや興奮気味に言った。
その言葉を聞いて、少し考えながら、ゆっくりと彼女は言った。

「あなたの弓には、「あなた」がいません。」

意味がわからない。
弓に「私」がいない?
しばらく考えたが今の私には理解できそうにない。

「貸してみなさい。」

そう言って彼女は私から弓を取り、弓を引いた。

私は彼女のその姿に釘付けとなった。
魅せられたのだ。

1つ1つの動きに視線が奪われる。
その姿はまるで美しい「鶴」を見ているかのようだった。

その瞬間、ストンという音が場に響き渡る。
矢は、的のど真ん中で揺れていた。

しばらく沈黙が続いた。

沈黙を破るように彼女は言った。

「「私」はこの弓に、「私」の想いをこめました。想いは力になり、「私」を、「あなた」を、そして大切な人を守ってくれます。」

そう言って彼女は弓を私に渡した。

頭が痛くなった。
そんなわけのわからない根性論で私の弓の腕が落ちたとでも?


私が考えを巡らせていると、
「いけない。もうこんな時間。お夕飯の支度しなくちゃね。」

彼女はそう言って小走りで出て行った。

205かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:10:38 ID:mFgValIo
私はその場に立ち尽くした。
こんな敗北感は初めてだ。

敗北感だけではない。
よくわからない、懐かしい感じ。

目を閉じて、畳で横になった。
頭が痛い・・吐き気がする。
このまま寝てしまいたい。

そう思った途端意識がなくなった。




目を覚ますと、当たりは真っ暗だ。
身体には毛布が掛けられていた。
誰がかけてくれたのだろう。

時計を見ると、0時を回っている。
今日はもう部屋でゆっくりしよう。
まだ頭が痛い。


それからしばらく私は練習場に行かなかった。
特に理由はないが、行く気が起こらなかった。

鎮守府をぶらぶら歩いていると、彼に会った。

彼は私を見つけると近寄ってきた。

「昔、弓をしていた時の「君」と今の君。何が違うかを考えると、必要なものが何かわかるかもしれない。」

私が言葉を発する前に、彼はさっさと部屋に戻っていった。


私に必要なもの・・
わからない・・・

そう考えている私の足は、練習場に向かっていた。



静かな練習場。
私は弓を手に取った。

久しぶりの感触。
とりあえず私は弓を射った。

弓は的を大きく外れた。


深くため息を吐いた私は、また頭を悩ませる。
どうしようもない。


昔の「私」・・
彼がそう言っていたのを思い出す。

そういえば昔の「私」は、「私」でいられるここが好きだった。
私が望む「私」、煌びやかな「私」・・
今の自分がどうなっているか、考えたくもない。


深呼吸をして、目を閉じた。
私は彼女の姿を思い浮かべて、彼女の動きを真似て、ゆっくりと。

弓を放った。

ストン。
的に当たった。
初めて的に矢が当たった。
でも真ん中ではない。

もう一度深呼吸をして、目を閉じた。
次は、あの時の「私」を思い浮かべて。ゆっくりと弓を引いた。


ストン。
想いのこもった弓は、的のど真ん中に突き刺さっていた。
その日から、私は「私」として生きることができた。

206かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:11:45 ID:mFgValIo
その日から「私」は、「赤城」は快進撃を繰り広げた。
鎮守府での存在も、「私」がいなくては成り立たないほどにもなった。
常に最前線に出て、全ての戦いで活躍した。

周りからは、本物の航空母艦「赤城」のようだと言われた。
当然だ。
「私」の父は「赤城」の艦長なのだから。

戦闘から帰るたびに彼は「私」を気に掛けてくれた。
だから「私」は、活躍できたし、生きて帰って来ることができたのかもしれない。


戦いの日々の中。
「私」は、恋をした。

207かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:14:40 ID:mFgValIo
ある日、新しい艦娘が鎮守府にやってきた。
艦種を聞くと補助艦艇らしい。

数日経ってから仕事ぶりを聞くと、全くと言っていいほど仕事ができないらしい。
戦闘の邪魔にならない程度に頑張ってもらいたいなとその時は思ったのを覚えている。

それから1年が経って、なぜか彼女は演習の旗艦を務めている。
話に聞くと未だ、仕事はできないままだそうだ。

「私」は彼に、彼女を演習旗艦から外すように頼んだ。
なぜって、彼女ばかり演習旗艦を務めるのはとても異例だから。
いや、違う。
「私」は嫉妬していたのかもしれない。


彼は「私」の意見を聞き入れなかった。
近々大規模作戦が始まるというのに。

―――――――
そんな日々が続き、ついに大規模作戦が発令された。
彼は会議のために泊地へと派遣された。

その間作戦の指揮は戦艦「大和」が執り行うことになっている。


いよいよ、作戦の内容が知らされる。
目を疑った。

あいつが、艦隊の旗艦?
冗談はよしてほしい。
なぜそんな編成をしているのか理解に苦しむ。

「私」は大和にこっそりとどういった意図か聞いた。

「彼女がどうしても戦闘に参加したいと言うから・・演習で索敵は身体に染みるほどやっているから大丈夫だって・・
そこまで言われては断れませんでした・・」

この言葉を聞いたのが間違いだった。


「私」は、「私」ではなくなった。

208かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:16:46 ID:mFgValIo

予想戦闘域まで、まだ距離がある。
索敵は私と彼女の二人で行う。

私は彼女と索敵範囲の打ち合わせを行った。
私は自分が索敵できる範囲を小さく彼女に伝え、彼女が行える索敵範囲を超える範囲を彼女に押し付けた。

この辺の海域はいつも「私」が敵を沈めている、いわば庭だ。
索敵をしなくても大体の敵編成は分かっている。
それよりも、あいつにミスをさせて、彼の目をそらしたかった。


いつも接敵している領域まで到達するが、一向に敵が現れない。
嫌な予感がする。
私は彼女の索敵範囲にも索敵機を飛ばした。
索敵機を飛ばしてからすぐに、敵を発見した。


安全域と思われていた領域に敵はいた。
敵は大戦力で、私たちの戦力では到底勝てない戦力差があった。

私は急いで戦闘機を発艦させる。
が、間に合わない。

発艦できる半分も発艦させると敵の艦上機が艦隊を襲う。
轟音が響き、辺りに水柱が立つ。

私は至近弾を食らった。
飛行甲板が破壊されてしまった。

至近弾で中破。
いつもとは違う違和を感じる。

間違いなく敵は新型。
今の戦力では到底歯が立たない。

209かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:19:30 ID:mFgValIo
長い長い空襲が終わり、静寂が訪れる。
空襲によって、戦艦1隻中破、空母1隻中破、駆逐艦1隻大破、2隻中破

こんなもの、もう戦闘でもなんでもない。
なぶり殺しだ。

とにかく早くこの海域から離脱しなくてはならない。
私は彼女に指示を仰いだ。

彼女は顔が真っ青になっている。
旗艦として、全体へ指示ができない状態のように見える。

「とにかく離脱!急がないと全滅です!!!」
私は声を大きくして彼女に言った。

彼女は、我に返ったように離脱命令を皆に伝えた。
その後、幸いにして近くにいた艦隊支援遠征部隊と連絡が取れた。

損害を報告し、離脱のための援護を要請した。
しかし彼女らはすでに燃料も弾薬もあまりない状態だった。

それでも来てくれるとのことで、皮一枚つながったかと思われた。


でも現実はそんなに甘くない。
第2波の空襲が来た。

耐えられるわけがない。
駆逐艦の子は沈んでしまうだろう。

私もどうなるかわからない。とにかく、可能な限り私は矢を空に放った。
一筋の光にも見えるその矢は、戦闘機に代わり敵に向かって飛んで行った。

ゴゴゴ・・ 

「―――――――――――――っ・・・」

耳を劈くほどの音の後、声にならない声が聞こえたような気がした。
駆逐艦の子が沈んだ。

恐らく直撃弾だろう。
悲しんでいる暇はない。

私も必至だ。
敵の攻撃を避けつつ、彼女をちらっと見た。
彼女はまだ損害を受けていないようだ。

私は、至近弾を浴びてすでに大破状態で航行にも支障が出ている。
もうだめかもしれない。

210かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:20:30 ID:mFgValIo
その時、敵に砲弾が直撃した。
救援が来た。

私たちはその場を急いで離脱した。
私が離脱している際、誰かがかばってくれたりしていたがもはや誰か確認するほどの余裕はない。

無事離脱できた。
でも被害は甚大で、護衛で付いてきた駆逐艦の子は全員沈んだ。

私も沈みそうだ。
航行速度も徐々に落ちてきていて、もはや進む力も出ない。

とにもかくにも離脱には成功した。
救護に来てくれた艦隊がどうなったかはわからない。

そうこうしているうちに、私の足は止まった。


私の足が止まると、他の二人が近寄ってきた。

「戻るな!!進め!!!」

張れるだけの声を張って、私は彼女らを見送った。

211かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:25:30 ID:mFgValIo
今、視界に広がっている海にいるのは私、ただ一人だ。
立っているのも辛くなってきた。私は目を閉じて、海に横になった。

深呼吸をする。


「私」は大人になって初めて泣いた。


彼が彼女のことを好きだということに「私」は気づいていた。
だから私は彼女にミスをさせた。

私は、私の望む「私」になって彼に恋をした。
でも、恋をして「私」は「私」ではなくなった。

私は誰?
私は何?
私は・・・

「私」は

そこまで考えて、「私」の意識は次第に薄くなっていく。
誰かが呼ぶ声が聞こえるがよくわからない。

光がだんだんとなくなっていく。
一人で海の底に沈むのは寂しいな。

「私」の意識はそこで途切れた。

212かもかもアタック!2:2016/03/10(木) 00:35:39 ID:mFgValIo
終わりかもかも
今回は秋津洲編のスピンオフSS

「私」と私の使い分けができるかをテストしてみた
やっぱり難しいかもかも

213名無しのおんJ提督:2016/03/10(木) 01:48:19 ID:MXYrYnw.
苦いなぁ
「私」と私は、哀しいかな、そう簡単に一致はしてくれんのよな
「私」のために歯車は狂うけれど、「私」なくして物は出来なかったわけで
つらいなぁ

214夜戦仮面:2016/03/22(火) 03:23:24 ID:UdtNfjWs
ふと思いついただけ書いてみるクソ雑短い川内SS


波が打ち寄せテトラポットを海が被さる。
月夜の波止場に人影は見えない。
足元に撥ねた滴が当たる。
鼻をつく磯の香りは嗅ぎ慣れたものだがどこか懐かしい。

どこまでも続くようなコンクリートの足場の先にある建物から明かりが見える。
波間の音と一緒に遠くから慌ただしい声も交じっている。

いまごろ「妹」が取り仕切って出撃の準備を進めているのだろう。
年も背も低い後輩たちの前面に立ち、明るい声で扇動するのは彼女の得意分野だ。

あれほどわかりやすくて後ろについていきやすいアイドルのような先輩もなかなかいまい。
誰にでも誇れる妹だ。

215名無しのおんJ提督:2016/03/22(火) 03:29:56 ID:qa4WWiS.
【悲報】ハロワ求人真に受けたニート死亡wwwwwwwwwwwwwwwww
http://bit.ly/1R5A656

216夜戦仮面:2016/03/22(火) 03:40:58 ID:UdtNfjWs
私は夜が好きだ。昼が嫌いなわけじゃない。
暗く静かな夜はどこか閉鎖的だがどこまでも広いようにも感じられる。

真っ暗な空間にいると、私の周りに黒くて大きな何かが体を包み込む。
それは人によっては恐怖を感じるかもしれないが、私には一種の安心感を与えてくれた。

その黒くて大きな何かは私の背中をそっと押す。
まだいける、まだ進める、止まらなくていい、もっと前へ、手を漕ぎ出せ、足を動かせ、ドンドン行け。
黒くて大きな何かに限界はない。安心感と自信を植え付けてくれる。それがたまらないものだった。

私はその黒い大きな何かに高揚する気持ちを限りなく加速させられる。それが制御できないとしても。
おかげで一度じゃきかないほど痛い目にもあってきた。他人に迷惑もかけてきた。
でも恐怖は感じなかった。

その度に私は考えた。理解するために説明しようにもできないもどかしさも感じた。
その黒い何かと向き合うためにどうしたらいいのか。どのように受け止めればいいのか。

217夜戦仮面:2016/03/22(火) 03:41:38 ID:UdtNfjWs
1人波止場の上にしゃがみ込む私はポケットから紙箱を取り出す。
香ばしいような何とも言えない匂いを感じつつ一本を咥える。
夜の冷たい海風を手で防ぎながら火を入れ紫煙をくゆらせた。

白い煙が火元から延びる。ゆらゆらと漂いながら波間に消える。
吐きだす白い息は煙草の煙か寒さのせいかは分からない。

脳の隙間に入り込んでいく感覚が全身に響く。
煙のように真っ白に染まっていく。

正直うまいものじゃない。機会さえ無ければ一生口にすることはなかっただろうし、する気もなかった。
もし今すぐやめろと言われても、すぐに全部ゴミ箱に叩き込んで二度とやらないことも誓える。

でもあえて吸うことにしてみた。体に毒だし不味いものだが求めていた効果として十分だった。
食事とは違う非現実的な感覚は私の頭の中のスイッチを切り替えてくれる。

黒くて大きな何かと向き合うために私は考えた。
結論はとにかく全部ありのままの自分自身で受け止めることだった。

私が夜やその黒い大きな何がが好きなことは変わらない。
だからこそ雑念を取り払った私がただそれだけに注視することが礼儀であり、向き合い方だと思ったのだ。

提督にも相談したし、その私の結論を聞いても、
「すべて君に任せるよ。こっちでどうこう言える問題じゃない。」
「ただ無理とやりすぎだけは駄目だよ。あと最低限のマナーもね。」
と答えてくれた。

こういう一言を言ってもらえるだけでも気持ちが楽になるもんだから不思議なものだし本当に助かる。

218夜戦仮面:2016/03/22(火) 03:42:14 ID:UdtNfjWs
アルミの箱に灰を落としつつ暗い水平線の向こうを眺める。
月が明るい夜は周りが見えるからこそ暗闇以上にその広大さを感じる。

冷たい風が頬を掠め、私自身の体がそこに存在しているのを実感する。

今夜はどうする?私をどこまで押してくれる?どこまで行けばいい?
心の中で問いかける。

あの身震いして鳥肌が立ち、背筋に電流が走り続けるような感覚は今日も感じられる?
目を見開き自然と上がる口角にウソ偽りはない?
その問いかけは私自身にも言い聞かせる。

「姉さん?」

振り返るともう一人の妹が防波堤の下段から呼んでいた。
すぐにアルミ箱の底で火をもみ消し彼女の元へ飛び降りた。

「もう準備はできたの?」
「ええ。あとは最終確認と点呼をしてから10分後には出発できます。」
「そっか。明日のお昼前には帰投できるかな。」
「長引くこともないでしょうしそれくらいの時間でしょうね。」

2人は出撃口まで歩き出す。こういう時に呼び出してくれるのはいつも彼女だった。
普段の生活の場や戦いの時にも、私の手綱を引いてくれる頼れる妹である。

219夜戦仮面:2016/03/22(火) 03:43:13 ID:UdtNfjWs
…」
「…ちょっと臭いかな?やっぱりこの匂いって服に染みつくんだよね。」
「少しだけ。でも正直この匂いは嫌いじゃないですよ。」
「そう?変わってるね。」
「そんな変わってるもの吸ってる姉さんに言われたくないわ。」

談笑しながら夜の海辺を歩く。月明かりで二人の影が伸びていく。

「いつもこの匂いを嗅ぐと私は安心するんです。」
「安心?」
「この匂いがあれば近くに姉さんがいるって分かりますからね。」
「私が吸うのは出撃前だけじゃない。それに他にも吸ってる人いるのに。」

内心そんなにいつも煙草臭いかなと戸惑いつつも安心するという言葉が胸にしみた。

「違いぐらいわかりますよ。なんとなくですけどね。」
「なんとなくねぇ…。」
「私の大切な姉さんのいる証明みたいなものですもの。」
「ふーん…。ちょっと照れくさいけど。」

そうこうしているうちに出撃口の近くまで来る。
中で今回の作戦艦隊のみんなも待ってるはずだ。

「姉さん。準備の方は大丈夫ですか?」
「もちろん。先にちゃっちゃと済ませたからね。いつでも行けるよ。」

「川内!水雷戦隊、出撃します!」

静寂を切り裂くように私は夜の海へと滑り出していった。

おわり

220夜戦仮面:2016/03/22(火) 03:44:26 ID:UdtNfjWs
思った以上に見づらくなってしまったンゴ
すまんち

221名無しのおんJ提督:2016/03/22(火) 13:29:21 ID:MXYrYnw.
自分を包む黒いもの
自分を切り替える白い煙
妹が姉を感じる少しの違い
結局もやもやとよくわからないものばかりなのかね
よくわからないものを傍らに置いて日常に出来るのって、すごいことだよな

222名無しのおんJ提督:2016/03/28(月) 00:44:50 ID:2ChkWu4c
別のところでやってたからここには初投下やで
3時間で書いた習作やけど
「望月があんなナリでケンカ最強だったらな」と思って書いた本当にそれだけの話やで



 一般的に、春といえば出会いの季節である。入学、進級、就職、異動、転勤など形は様々だ。それに便乗して見てくれを変えてみたり、何かを新しく始めてみる者も多い。
そう、高校デビューを機に金髪やピアスで派手さを追求し、初日から制服を着崩してみたり。
「あんたか、ここの頭張ってるのは」
「……うへー、なんか紋切型でめんどそうなの来たなぁ」
 廊下に立つ一方は長い茶髪をぼさぼさのままぶら下げた黒セーラーにアンダーリム眼鏡の女子高生。名は『望月』。制服こそきちんと着こなしてはいるが髪は校則違反そのもの。
地の茶色はまぁ見逃されてはいるがその長さは「肩の上まで」という一文を完全に無視。洗うのも面倒だが、それ以上に短くするのも面倒と適当に自分で切ってしまう。
ついでに言えば胸元の月を模したピンバッジも校則違反ではあるが、もはや咎める者もいない。
 何せこの高校にはこの程度の校則破りはいくらでもいる。学ラン内に色シャツはもはやよくある光景だし、
最寄りの床屋も剃り込み、染髪くらいでは驚かない。望月に食って掛かるこの新入生も一足早く高校デビューを決めたかったのか、今は根元に少し黒の雑じった金髪だ。
「挨拶周り? そりゃどーもお疲れさん。品物はタオルとか洗剤より食いもんが嬉しいな。菓子パンとか持ってない?」
「なっ……こっちは大真面目だ!」
「不良が自分のこと真面目って言ってどうすんのさ。で、何? 連絡先でも欲しいの?」
 飄々とかわす望月。それを見て新入生はさらに激昂する。
「違う! タイマン張れってことだよ! 察せよ!」
「悪いねぇ、あたし別にやりたくてやってる訳じゃないからそういうの疎いんだわ」
「嘘つけ! で、タイマン。受けるんだろうな?」
「断る。……ひょっとしてあたしにボコられたいだけ? SMとか好きなら他所を当たってくれぃ。めんどくせー」
 望月の行動原理はだいたい「めんどくさい」か「めんどくさくない、ないしは楽である」を基準にしている。
多少の利を捨ててもより「めんどくさくない方」を選ぶようになっているのが、その判断基準が一般人よりも「めんどくさくない方」に偏っているのが望月である。
「どこまで俺をコケにしたら……おい、こっち向けや!」

223名無しのおんJ提督:2016/03/28(月) 00:48:57 ID:2ChkWu4c
「んっ……よっ、と!」
 半ば不意打ちのような新入生のパンチを、望月は軽く反り返ってかわす。
背後からの一撃であったが、望月はつんのめった新入生の背中のど真ん中に全体重を乗せた拳で返した。
新入生は肺腑の中の空気がすべて絞り出されるのを感じる。
ごうん、と表現するのが一番近いような揺られる感覚が頭を巡る。振り向くと同時に、彼の顎にはさほど長くない望月の腕が伸びきったポイントで刺さる。
アッパーをもろに食らって、がつんと噛みあった歯のどこかが欠けたらしい。
 なおも新入生は諦める気はないらしい。覆いかぶさるようにして熊のごとく襲いかかるが、完全に見切られていた。
逆に一歩踏み込んだ望月が折りたたんだ肘を鳩尾に押し込んでやる。内臓がぎゅっと潰され、喉元に饐えた味がせり上がる。
「うおりゃっ」
「ぶふっ」
 望月は仕上げにかかる。開いていた学ランの胸倉をぐいっと引き寄せて新入生の巨体を背中に乗せ、ぐるりと大回転。
一本背負いだ。ずどん、と自分の体重分の衝撃を受け、新入生は望月の尋常ならざる立ち居振る舞いにすっかり戦意を削がれたようだ。
「随分大振りだねぃ。あたしみたいにちっこいのが相手だとやりづらいか? なんなら
つま先立ちしててあげるぞぉ?」
「くっそ……」
 身長差は30cm強。16歳になってなおせいぜい145cmの望月が180cm近い新入生を手玉に取っているのはなかなか不思議な光景だ。

224名無しのおんJ提督:2016/03/28(月) 00:50:19 ID:2ChkWu4c
「何で強いか教えてあげよっか? ん?」
「…………」
 新入生は黙りこくる。
無論、興味はある。何せ県下最強と名高い女番長だ、それが自ら手の内を明かそうというのだから聞きたい。
しかし、聞くこと自体が屈服することでもある。自分より強いと認めて教えを乞うのだから。
仮にも中学までは最強と謳われた彼だ、そのプライドを自らへし折って145cmの小学生と見紛うほど小さい先輩、それも女子に膝を折りたくはない。
 ……が、やはり好奇心というものは往々にして他の欲望を上回る。
「教えて、ください…………」
 新入生がそれだけ吐き出すと、望月はふっと表情を暗くした。
恐らく話す気はあったのだろうが、いざ話すとなれば重い話だ。物静かに、滔々と望月は語った。
「…………あたしら艦娘は負けりゃ死ぬ、って状況でいくつも死線潜って来てんだ。それも早い子で十歳から。
あたしもそう。今は単なる女子高生でも、地獄を生き残った奴だけがこうして普通に生活してんだよ。
そんな連中に、つい先月まで中坊だったはなったれの糞ガキが勝てる訳ないだろうが」
「…………」
「ま、勝ちたかったらいっぺん艦娘にでもなってみたら? 股間のそれとっちゃってさ」
「……このっ!」
「はーめんどくせ。大人しくしてくれよなー」
 新入生の地を這うような弱々しい拳をがしっと掴んで、引き起こしてやる。
肩を貸そうとしているのだろうが、身長差がありすぎてほとんど意味をなしていない。
「てんりゅー、てんりゅー?」
 ふた声呼んだだけで、どこからか一回り大きな女子生徒がやってきた。
どうやらケンカの最中はどこかに控えていたらしい。
もはや指定のセーラー服を着るどころか男物のワイシャツにカーディガンと、制服改造もいいところだ。彼女も元艦娘の『天龍』だ。その辺の男子生徒よりは強いが、望月には届かない。この学校で番長を務めるのは2年(つい先月までは1年だったが)の望月で、3年の天龍は幹部のような存在である。
「おう、呼んだか……ってうおっ! 随分デカいのやったなぁ」
「この子保健室ね。あたしは帰る」
「帰るって……まだ1時間目も始まってないのにか」
「朝っぱらからこんなのに絡まれたらそりゃ疲れるよ。んじゃ」
 そういうと望月はぺたんこの鞄を拾い上げ、
本当にすたすたと昇降口へと行ってしまった。

225名無しのおんJ提督:2016/03/28(月) 00:54:50 ID:2ChkWu4c
ひとまず終わりやで、書き溜めはないで
サラリーマン金太郎と喧嘩番長くらいしか知識がないのにこの題材でこれ以上はいやーキツイっす(素
しっかし改行気を付けたつもりが結局幅広になってしまったンゴ

226名無しのおんJ提督:2016/04/01(金) 15:12:15 ID:Ig4yNLbg
一レスだけの超短編
龍驤と提督

227名無しのおんJ提督:2016/04/01(金) 15:12:49 ID:Ig4yNLbg
執務室の窓辺。
昼下がりの長閑な日差しの中で。


龍驤「――んでなぁ、大鳳がユンカースぶわぁーってやってん、タ級もイチコロやったんやで!」

提督「へぇ、大鳳もだいぶ育ってきたんだな」

龍驤「せやせや!うちも育てた甲斐があるわぁ…ほんまええ子やで、あの子は」

提督「一岡さんから引き取ったばかりの頃はあんなに頼りなかったのになぁ」

龍驤「ほんまなぁ」


prrr…


提督「ん、電話か」

龍驤「あぁ、うちが出るわ」

提督「おう」


prr…ガチャ


龍驤「もしもし、こちら執務室――ああ、大鳳か、お疲れ様」

提督(…ん?)

龍驤「ああ、大丈夫、報告は終わってるよ。うん、しっかり休んで、次の出撃に備えておいてね」

提督「…」

龍驤「うん、じゃあね――ふぅ…あれ、提督?なにニヤニヤしとるん?」

提督「ん、いや…お前、他の子と話す時は標準語なんだな」

龍驤「あぁ、せやで?こんなんパーッと話せるんは提督ぐらいやわ」

提督「そうかそうか……という事は、その口調でいる間は俺だけの龍驤なんだな」

龍驤「……提督、ようそんな恥ずい事言えるなぁ」

提督「まぁ……そんな龍驤も、好きだぜ?」

龍驤「っ〜〜……うっさいわアホ!」


春風が流れる、穏やかな鎮守府の中。
二人は今日も肩を並べている。

228名無しのおんJ提督:2016/04/02(土) 22:40:05 ID:T/zVfkXw
>>225
ダウナーな装いの裏側に死線を潜り抜けてきた故のえも言えぬ雰囲気を感じますねぇ
それは生まれ持った性格からなのか、それとも志半ばで散った仲間たちを思ってなのか…

>>227
そういえば龍驤さんは関西生まれじゃないのに関西弁でしたね
それがキャラ付けもとい提督へのアピールだったら……うむ、可愛い(確信)

229名無しのおんJ提督:2016/04/02(土) 22:49:51 ID:O8ZjopLw
>>228
感想サンガツ
別のところで書いてるやつで口悪いダウナーキャラ出してるからその練習も兼ねてたけど
客観的に見て望月のキャラと乖離してへんかがちょっと気がかりや
個人的にはギリ沿ってるくらいかなとは思ってるけど「戦争がこの子を変えたんやな……」くらいの感覚で読んでくれればやな

230名無しのおんJ提督:2016/04/06(水) 02:07:55 ID:UdtNfjWs
そういや
彡(゚)(゚)「えっ!?ワイが提督になるんですか!?」
的なSSはあるのだろうか。

面白そうやから書いてみたいけど先に書いた人がいるならやめたほうがええかな?

231名無しのおんJ提督:2016/04/06(水) 09:55:16 ID:4ZFSqyJ.
>>230
ワイが知る限りやと見たことないな

232名無しのおんJ提督:2016/04/06(水) 12:04:00 ID:UdtNfjWs
>>231
ほーん
そんなら書いてみようかな
ただめっちゃ長くなりそうやからここには書き込まない方がええかもしれんなぁ

233名無しのおんJ提督:2016/04/11(月) 00:48:09 ID:O8ZjopLw
4日前に本スレでID:RW4ニキと約束した舞風SSやで
前半だけやけど置いとくで
あ、ちなワイは先日望月のやつ書いてた者です

「どう、舞風ちゃん」
「んしょ……うわっ!?」
 ずでーん、とあたしは無様に看護師さんにパンツを晒した。
病院着からびりりと不吉な音がした。
女同士とはいえ、さすがに恥ずかしい以外の言葉が出て来ない。
嫌になっちゃうな。足が言うことを聞かないから、手すりを掴んで起き上がろうにも
上半身だけでは支えきれない。
そりゃそうだ、全体重を支える足には想像以上の筋肉がついている。
それをまったく働かない状態でぶら下げたまま腕だけで立つのはかなり難しい。
「えへへ……ちょっと手貸してください」
「ええ、大丈夫?」
「これくらい平気です、多分!」
 強がってみるけど、明日には後頭部にたんこぶのひとつふたつくらいは
出来てるかも。足元にはマットがあるけど、変なところにぶつけたようでじんじんと痛みを感じる。
でも、足が動かなくなった痛みはそれ以上のものだった。

234約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:49:46 ID:O8ZjopLw
『敵機多数来襲!距離7000、12時方向!
各艦、対空戦闘用意! 私も艦戦隊を上げて邀撃します!』
 赤城さんの凛々しい声。先輩方の敵飛行場攻撃作戦に
あたし、野分、嵐、萩風の四駆は護衛として加わっていた。
空母4隻、戦艦2隻を挙げた一大作戦だ、あたしも自然と気合いが入る。
 一方で、この時のあたしには多少の気の緩みがあったように思う。
旗艦の赤城さんは出撃前に慢心を戒めていたけど、あたしはまだこの時作戦を楽観視していた。
 空母機動部隊を出すことで敵陸上航空隊をおびき出し海上でこれを叩き、
仕上げに戦艦の陸上砲撃で飛行場を無力化する。
あたしたちのやることは飛んでくる敵機からの護衛と周辺警戒。
とはいえ事前の艦隊戦でこの海域の敵艦はほとんど掃討していたし
増援の気配もなし、対空戦闘も艦戦隊の本領だ。
夜戦とか雷撃戦とか、それほど派手な仕事もない。
 慢心はいけないとは思いつつ、内心では回避運動のいい練習になるかな、
程度にしか思っていなかった。今考えたら、これが事故の原因だった。

235約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:50:55 ID:O8ZjopLw
(ふっふ〜ん! どーよ、このキレッキレのターン!)
 高角砲をばら撒きつつ、あたしは回避運動を止めない。
一種のトランス状態に近い感覚で、脳内ではテクノポップをかけて
踊るようなイメージでぐんぐん速度を上げていく。
無意識にズンチャ、ズンチャと口ずさんでさえいる。
 ターンするたびに、あたしの眼前を敵機の機銃弾がかすめては
海面に飛び込んでいく。でも、当たってやるつもりなんて毛頭ないんだから。
そう思ってペースを上げつつもばら撒きをやめない。
 時折命中弾で翼をもがれた敵機が落ちていく。
血生臭いのは苦手なんだけど、何だかすごく生きてる感覚がする。
踊って、戦って。夢中になっているあたしは、
同じように回避運動をする野分との接近に直前まで気付かなかった。

236約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:52:41 ID:O8ZjopLw
「舞風!」
「のわっ……いぃ゛っ!?」
 減速するどころか加速したままの激突だった。
野分はどうにかしゃがんでくれたけど、背負っていた野分の艤装を巻き込んで
あたしは前方に吹っ飛んで行く。
ぐるんぐるんと視界が回転してゴン、ガン、ズゴン、と
金属が破壊される音がする。ついでにあたしの身体もあちこち海面に叩きつけられては
嫌な音を立てた。これは大破コースかな、やらかしちゃった。
呑気に思いながらも関節が尋常じゃない方向に捻じ曲げられるのも感じる。
ごきりという大きな音が身体中に響いたりもする。吐き気がする。
 でも事態はそれでは終わらない。
出力低下で下半身を若干水面下に沈めつつどうにか態勢を立て直したあたし。
膝まで海水に浸かった状態でぼろぼろの身体を立ち上げた。
けど、それ以上身体が浮き上がらない。主機の故障で浮力が得られていないようだ。
戦闘海域のど真ん中で、よりによって主機故障。じっとしていれば沈むだけだし、
沈まずに耐えても敵機が続々やってくる。どこで感じているかも分からない骨折の痛みに加え
前世の最期を思い出し、あたしは冷や汗が止まらなかった。

237約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:53:37 ID:O8ZjopLw
「舞風……!」
「野分……野分?」
「よかった……動ける?」
「なんとか……」
 野分が寄ってきて肩を貸してくれた。これも前世と同じだ。
でも、さっきの交錯で野分の機関もダメージを受けている。
あたしを曳航することはできてもほとんど速度は出せないだろう。
『こちら野分! 舞風との衝突により舞風自力航行不能! 当艦も損傷あり!』
『すまねぇ舞風、こっちは手一杯だ! 俺らで食い止めとくから野分の世話んなってくれ!』
 嵐からの応答。はるか遠方で押し寄せる敵機に対して応射する僚艦たちが見える。
あたしと野分を抜いてもまだこちらが優勢ではあるけど、嵐の声からは徐々に疲れが見え始めている。
一度気を抜いてしまえば総崩れも考え得る。ひとまず退避しなくちゃ。
野分に曳かれて、戦闘海域を脱しようとしたその時。

238約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:54:48 ID:O8ZjopLw
『舞風! 野分!』
 萩風の悲鳴のような叫びがインカムを通して響いた。
ふっと振り返ると、3機の敵機が眼前に迫っていた。
というよりも、既に射撃態勢に入っている。
 再三、前世での最期を思い起こす。
香取はいないけど、野分に曳かれてぼろぼろのあたし。
 …………ダメだ、また野分に迷惑かけたくない!
思うと同時に、野分を強引に引き付けて、位置を入れ替える。
敵機に対して、あたしが正対する格好だ。
あたしが何をしようとしたか野分が気付く前に、あたしの身体は射抜かれた。
3機の敵機の掃射で、足元から肩までまんべんなく機銃弾をもろに食らう。
ぐらりと力なく崩れ落ち、頬が海水に浸るのを感じる。

 あぁ、また野分を残して死んじゃうのかな。
迷惑かけたくない、なんて偉そうなこと言ったけど、また野分の目の前で死んじゃうのか。
そっちの方が迷惑だったかな。野分は気にしちゃうだろうから。
そこまで考えたあたりで視界は真っ赤に染まり、
遠くに野分の絶叫じみた呼びかけを聞きながらあたしの意識は途切れた。

239約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:56:27 ID:O8ZjopLw
 …………あれ、生きてた。ラッキーだなぁ。
目を瞑っていても、全身の痛みと耳元の野分や嵐、萩風の呼びかけ、
鳥のさえずり、風の音といった感覚がまだ生きていることを知らせてくれた。
「……、…………」
 喋ろうとするとなんだか胸が痛い。何でかな。
右目を開けると、四駆の皆が泣き笑いしながら喜んでくれた。
嵐は心配かけやがってアホ妹、バカヤローだなんだと喚きながらも
萩風と抱き合って喜んでるし、痛々しく包帯で左腕を巻かれた野分は
あたしの手を握って号泣してる。まだ頭はぼんやりしてるし、
左目は眼帯がされているらしいし開こうとすると鈍く痛む。
 腕は両方ともなんとか動く。右手で野分の手を握り返すこともできる。

 でも、私の下半身はまるで存在しないかのようにしか感じられなかった。
温かな布団の温度や巻かれているであろう包帯、それらの感覚が全くない。
布団の盛り上がりは視認できる。繋がってはいても、動いてはくれないのだ。

 艦娘としての再起。
 寝たきりないし車椅子での生活。
 大好きなダンスとの決別。

 それを悟った瞬間、あたしの目からは大粒の涙が止まらなかった。
野分は必死に拭ってくれるけど、何もない中空を眺めながら落ちる粒は
あっという間に白いハンカチをずぶ濡れにした。

240約束の舞風SS:2016/04/11(月) 00:58:50 ID:O8ZjopLw
 どうやらあたしは二日ほど意識不明で寝ていたらしい。
涙が落ち着いた頃に軍医の先生がやってきて、一通りの説明を受ける。

 負傷の内容は機銃弾による銃傷が20以上。
幸いそれらが脳や心臓、肺など致命的な部分を射抜くことはなかったし、
すべて貫通していたので摘出の必要もなかった。
 けど、より大きな問題は野分との交錯とその後の派手な転倒による内傷だ。
腰椎を損傷しており、生涯を通して再度立つことすらかなり難しいという。
既に満身創痍ながらも野分の身代わりになろうとしたあの行動は火事場のバカ力で、
日常的に動かそうとしてもできるものではない。
 そうでなくても今現在、痛み止めを打っているのに下半身の感覚がないという不快感、
鈍い痛みに苛まれている。この痛みを克服して立つことなんてできるはずがないという
諦めに近い感情があたしにはあった。

241約束の舞風SS:2016/04/11(月) 01:00:26 ID:O8ZjopLw
 一命を取り留めた喜びよりも、後悔や不安の方が先んじて走る。
 慢心、不注意、僚艦への迷惑。
先の作戦自体は成功したらしいが戦線には戻れないだろう。
 そして一生背負わねばならない、動かない下半身。その絶望が何よりも大きかった。

 やっと顔の怪我が治り、多少表情を作っても痛まないようにはなってきた頃。
どうやら鎮守府では応急手術以上のことはできないらしく、
市街の大きな病院に移されて本格的な手術をすることになった。
軍用医務車両に担架で担ぎ込まれ、しばらく揺られて入院。

 窓からの景色は海しか見えない鎮守府の医務室とは違っていた。
海、内側に鎮守府の施設群、造船ドック、岸壁にせり出す市場の倉庫、遊歩道、
鉄道、ビルが背比べをする市街地。意外に新鮮だったけど、病室自体は何も変わりない真っ白だ。
目に染みる白さが、将来の見通しの立たなさを表しているみたいで何だか辛くなった。

 けど、こんな姿見せてちゃ四駆の仲間たちが不安になっちゃうし、
それにピンチを救ってくれた野分に申し訳ない。お見舞いの度にあたしは笑顔を見せた。

242約束の舞風SS:2016/04/11(月) 01:01:23 ID:O8ZjopLw
「舞風? 起きてるかい?」
「のわっち! 会いたかったぁ!」
「……毎回びっくりするくらい元気だね」
「そーお? 元からあたしはこうじゃん?」
 一人の病室なので、あまり他人に気兼ねせずに済む。
もちろんあんまりはしゃいでいれば看護師さんを呼ばれかねないから自重は必要だけど。
「そうだ、これ。皆が千羽鶴折ってくれたの。吊り下げておくね」
「わ、ありがとー! なおさら早く治さなきゃね!」
「いやいや、無理しないで。急ぎ過ぎない方が……」
「舞風さん、いいですか? 次の手術のことでちょっと」
 あたしと野分の会話に、回診にやってきた主治医の先生の声が挟まった。
「あ、はい」
「嬉しいのは分かりますが、あんまりはしゃいで身体に障ることは許しませんよ」
「分かってまーす」
「じゃ、私は外した方がいいかな? また今度ね」
「うん、ありがとー!」

243約束の舞風SS:2016/04/11(月) 01:02:19 ID:O8ZjopLw
 こうやって、お見舞いの度に私は取り繕う。
きっと皆は初めに私が流した涙は、一時的なものだろうと思っている。
けど、そうではない。あの時感じた絶望は、今もあたしの心の中で
ずんずん大きくなっている。いくら元気な振りをしていても、
下半身の状態はよくならないのだ。
「……どうですか、具合は」
「やっぱり、何も……感覚がないんです。動かそうとしても、全然で……」
「そうですか……」
「……先生、お願いです。私を、海に帰してください。あんな風に」
 あたしが窓から指差した先には港。
遠征部隊がちょうど出航するところだ。その中には同じ陽炎型の姿も数人ある。

 彼女たちに交じって、もう一度海を走りたい。
 潮風を感じながら、踊るように戦いたい。
 そして、いつか勝利を遂げて僚艦たちと笑いあって、また踊って。
 ちぎれた雲のように消えてしまいそうな夢を、あたしは見ていた。

244約束の舞風SS:2016/04/11(月) 01:03:10 ID:O8ZjopLw
しかし。
「…………本当のことを言ってしまってもいいですか」
「……ええ」
「……確率は、1%にも届かないと思います。厳しいというほかない」
 先生は目を合わせてはくれなかった。
「…………ですよね。ごめんなさい、無茶言って」
 また涙が零れそうになるけど、何とか耐える。
 涙が出るのは仕方ないが、泣いてばかりいてもこれまた仕方ない。
「ですが、これはあくまで私の所見です。
医学では説明のつかない回復というものが往々にして存在します。
どうしても治したいのなら、舞風さん自身が諦めてしまうことが最悪の手です」
「…………」
「とにかく、治さなくてはならないところはまだまだあります。まずは腰の骨の位置を戻して……」

245約束の舞風SS:2016/04/11(月) 01:07:58 ID:O8ZjopLw
すまんが今日はここまでや
あと2日くらいで仕上げて後編も上げる予定やから
依頼主ニキはもう少しだけ辛抱しててくれや

246約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:28:53 ID:O8ZjopLw
間が空いてすまんな、約束の舞風SS後半やで



 三か月経って、しばらく休みがとれなかったらしい提督がやっと来てくれた。
「すまなかったな、ずっと見舞いに来られなくて」
「いーの! 忙しかったんでしょ?」
「お詫びといっちゃなんだが、ほら。ありあけハーバー」
「……最高。分かってるじゃん提督!」
 普段の病院食はやっぱり味気ない。
しばらくろくに物も食べられなかった頃に比べたら、
三か月経った今はかなり改善した方だ。
お見舞いのフルーツも剥いてもらって食べられる。
初めは全身の痛みや精神的な苦痛で文字通り食べ物が喉を通らずに戻してばかりだった。
栄養不足を補うために点滴を刺され、泣きながらベッドの上で無味淡泊な日々を過ごしていた頃より、
はるかに生活は豊かだ。
「外出許可は出てるのか?」
「車椅子で病棟内なら。外はダメだって」
 自力で移動ができないので、トイレの度にナースコールだ。
ちょっと恥ずかしいけど仕方ない。看護師さんたちは基本的に病室の外には連れていってくれない。
その分、病室での話し相手になってくれる。
ここは普通の市立病院なので艦娘の入院者は珍しいらしく、会話は案外弾む。
「じゃあ、行ってみるか?」
「いいの!?」
「何を遠慮することがある」
「じゃ、お言葉に甘えるね」

247約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:30:12 ID:O8ZjopLw
 提督はあたしを車椅子に乗せて病院内をひとしきり回って、
売店に連れて行ってくれた。暇だろうからと本を何冊か買ってもらった。
ただそれだけでも、あたしは嬉しかった。
 数か月の間、病室から出ることも叶わずに鬱々としながら、
お見舞いの時だけ気丈に振る舞うのは精神的にかなりの苦痛だった。
時には演じることに耐えきれず、四駆の僚艦たちが帰った直後に泣き喚いて
看護師さんに慰めてもらう日もあった。
危うく千羽鶴を引きちぎってしまいそうな時もあった。
こんな小さなことでも、息抜きができたことであたしは確かに救われていた。
「ふー……疲れるね、ただ座ってるだけなのに。普段ベッドの上だとねー」
「じゃあ早くリハビリしなくちゃな。取り戻すのに時間がかかりそうだしな」
「う、うん」
 提督含め、皆には「1年以上時間はかかるかもしれないけど、復帰の見込みはある」で通している。
だから今は臨時で他の駆逐隊から補充の子が入ってるけど、いつでも復帰できるよう籍が残してあるという。
迷惑をかけているという意識はあったけど、こうしないとあたし自身が絶望に負けてしまいそうだから。
 でも、それと同じくらい絶望も大きく育っていた。足は何度力を込めても一向に動いてくれる気配がない。
手術は一通り終わったから、しばらくすればリハビリを始める予定もある。
だけど、まったく動かないものを動かそうとしてできるかどうかは分からない。
車椅子での一生も、あたしは視野に入れつつあった。

248約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:31:40 ID:O8ZjopLw
 時折提督は、リハビリの経過も見に来てくれる。
手すりを使って立つことも今はままならないが、あたしは自分の足で立って、
自分の足で踊って、自分の足で海に戻るためにリハビリを志願している。
ここで諦めて車椅子のままの生活だって選べる。
 だが、あたしは絶望がどれだけ育っても諦めきれずにいる。
10000回ダメでも、10001回目は何か変わるかもしれない。
ドリカムだってそう歌っている。あたしが物心つく前の歌だけど。
 けど、現実がそうなるとは限らない。まずは上半身を鍛え、
平行棒を掴んで転ばないためのリハビリを積む。
そうして転ぶリスクを減らしていって、やっと歩行訓練に移れる。
この日も提督が見ている前でぷるぷると腕を振るわせながら平行棒にしがみついているだけ。
足はわずかにピクリとだけ動かせるが、このまま体重を床に落とした時は間違いなく耐え切れないだろう。
いくら意志があっても、足が動かせないのにリハビリを続けさせては危険ばかり大きい。
先生もいずれ諦めるよう進言するだろう。

249約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:32:25 ID:O8ZjopLw
「舞風、大丈夫か?」
「うん! 腕だけで立てるんだもん、リハビリの成果ですよ! ふふん!」
「決して無理はするなよ」
「分かってるって……!」
 だんだん辛くなってきたのを看護師さんに悟られたらしく、
車椅子へと戻される。あたしも今は足を地面につける自信はない。
力を込めることができない下半身に託すにはまだ早い。
「今日はここまでです。病室に戻りましょう」
 提督が車椅子を押し、あたしはリハビリ室を後にする。
 だんだん、提督の押す車椅子の座り心地がよくなっているあたしがいる。
本来はあたしの不随を表す忌々しい代用品だったのに、これがなくては移動できないという状況、
提督に身を任せているという安心感からどんどん慣れてきている。
この調子じゃ、復活の日は遠いかもしれない。

250約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:33:49 ID:O8ZjopLw
「あっついなー……」
 病院着は結構薄手だけど、夏場はやっぱり暑い。ベッドの布団も変わったけど夜は寝苦しいし、
思い出したようにどこか鈍痛がぶり返すと眠るのもできず辛い夜になる。
 一方の提督はワイシャツにノーネクタイと涼しげなフォーマルスタイルだ。
オフの日でもスーツで過ごす真面目な提督は、こんな日でも変わらない。
 病院の中庭は石畳で、中央にはちょっとした水場やそれを囲む花壇もある。
サルビアが赤い花をつけて真っ直ぐ上を目指しているのを見て、少しだけ嫉妬したりもしてみる。
蝉たちの喧しい鳴き声は外だとなおのこと賑やかだ。
ゆったりとぬるいつむじ風があたしたちの目の前で舞う。
かつてのあたしみたいに自由だ。
「ほれ、かち割り」
「うひー気持ちいー」
 提督についてきた嵐がかち割り氷をくれた。
萩風も提督に押されるあたしの車椅子の少し後をのんびりと歩いている。
嵐、萩風、今日はいないけど野分、そして提督はこうして少しでも休みができるとあたしの見舞いに来てくれる。
こないだは夜戦で戦艦をぶっ飛ばしてやったぜ、なんて誇らしげな嵐の武勇伝は聞いていて楽しいし、一層海への想いを募らせる。
 初めは嵐も海のことを思い出させるのは却って苦痛じゃないかと気を遣ってどうしても口数が少なかったけど、
あたしがむしろ積極的に話してほしいと言うと一気に饒舌になったのだ。聞き上手な萩風は嵐の話をうまく促してくれる。

251約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:34:48 ID:O8ZjopLw
「嵐、そろそろ……」
 萩風が胸元の懐中時計を見ながら嵐のマシンガントークに歯止めをかける。
「おう、遠征交代の時間か。いっぺん戻らなくちゃな」
「これで失礼するね。舞風、また今度」
 嵐と萩風はそう言ってそそくさと中庭を去り、鎮守府へと向かう。
だけど、提督はそれにはついて行かない。
「あれ、よかったの?」
「今はあの二人と野分に一通りの管理を任せてる。渉外なら大淀もいるしな」
 元々の秘書艦はあたしだけど、今代理をしているのは四駆の仲間たちだ。
「それにあの二人、どうやら気を効かせてくれたらしいな。ほら」
 見れば、中庭は人払いをしたようにがらんどうだ。
蝉と花が囲む中で、疑似的な静寂があたしと提督を包んでいる。
 なんか、二人きりって改めてなってみると照れる。暑さのせいだけでなく少し赤らむ頬にかち割りを当てた。
 ……けど、あたしには言い出さなきゃいけない話題がある。
 もしかしたら萩風と嵐はいいムードを演出しようとしてくれたのかもしれないけど、
あたしは今それを受け取れる心の余裕がない。

252約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:35:39 ID:O8ZjopLw
「提督……あのね……」
 車椅子を押す後ろの提督に、あたしは振り返らないまま切り出した。
「ん?」
「…………あたしのこと、捨ててもいいよ」
「……!」
「本当はね、嬉しいんだ。こうやってお休みの度に連れ出してくれて。
でもさ、こんな手のかかる子、お世話したくないでしょ?」
 何だか一周回って、笑みがこぼれた。気丈にいたいという呪縛から作られるものではなく、
諦めから生まれる笑みがあるのをあたしは知った。
 言わなきゃいけないことを、言い出すことができた。
 提督がくれたものに、何かを返すことができないって。
 歩く姿や、踊る姿で提督にお返しをできる見込みがない。
 そんな諦めが、あたしの口からその言葉を吐かせた。
「……いや、それは許可できない」
 提督はぐっと考える間もなく大真面目にそう言った。
「一度ならず二度までも見捨てられて、お前は耐えられるのか?」

253約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:37:32 ID:O8ZjopLw
 脳裡に蘇った、トラックでの記憶。香取と一緒に沈んでいった時のこと。
(野分、どこ?助けてよ!嫌……沈むのだけは嫌!)
 野分をいくら呼んでも、それは水泡にしかならない。
人間の形を持った今では記憶が加工されて、海中のしょっぱさと苦さまで手に取るように思い出せる。
克明な味は、まるで野分の涙と苦渋の味を表しているようだった。
あの時のことは野分との間でも半ばタブーとしていたが、互いに一番深い傷として残っている。
もちろん今では当時の野分の状況も知って、あの時あたしと香取を見捨てた判断が最善手であっただろうことは承知している。
それでも「見捨てられた」という恐怖が拭い去られたことは一度もなかった。
 熱を失って引き裂かれ、激痛に見舞われながら呼吸が苦しくなる。
 海底がどんどん近づいてくる。あの恐怖を紛らわせるために、あたしは必死に明るく踊っていた。
「……でも、もう歩けないんだよ? 踊れないし、一人じゃ着替えもおトイレもできないし、何もできないんだよ?」
なのに、踊れなくなった。自力で恐怖に打ち勝つ術を失ったのだ。言うことを聞かないこの足では、やはり前世と同じように踊ることは叶わない。
 だから、提督と一緒にいることでどうにか自分を保っていたのだ。提督は優しいから、あたしを見捨てたりはしない。
そう思って、べったり甘えていたのだ。今思えば、それが提督にとって重荷になっていたのだと思う。
そんなことは絶対口にしない提督だけど、あたしにはそう思えて仕方ない。
 だったら、提督に捨てられてしまえば、お互いに楽になるんじゃないか。そう思って、今日こんなことを切り出したのだ。
あたしのことを見捨てて提督に幸せになってもらう方が、提督につらい思いをさせてまであたしが幸せに生きていくより数万倍いい。

254約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:38:38 ID:O8ZjopLw
 なのに。
「それがどうした。艦娘100人面倒見てるんだから、お前一人を一生面倒見られない道理はないだろ」
「提督、それって……」
「そうだ。俺は舞風を捨てるような真似はしない。練度が上がればケッコンもしよう。戦いが終われば、四六時中傍にいよう」
 伴侶になってくれる、そういうこと。看護師さんみたいにお世話をするとかそういう次元じゃなくて、
一生を共に過ごしてくれるんだ。果てしない迷惑をかけるだろう。そう考えると、なんだか気恥ずかしくって。
けど、途方もなく嬉しくて。ああダメ、言葉全然出て来ない。
「もう……提督はもっと自分の幸せを考えるべきだよ……バカだなぁ……」
 そう言いながら、あたしの目からはぼろぼろと涙が落ちる。

255約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:39:54 ID:O8ZjopLw
「そうだ、俺は大馬鹿者だ……だから、約束してくれないか」
「え……?」
「俺は馬鹿だ。生まれてこの方、船と海のことしか学んでこなかったから医学的なことはさっぱりだ。
けど、先生が言ったんだろう? 『確率は1%にも届かない』って。確率は、0じゃない。
だったら、その1%以下を信じさせてくれ。俺が面倒見るから、舞風は1%以下の確率に挑戦し続けてくれ」
「……当たり前でしょ? あたしがいつ諦めたのさ」
 大嘘だけど。何度も折れそうだったし、今後も折れるかもしれないけど。
……でも、今目の前で微笑んでる提督のために頑張るんだったら、急に勇気が湧いてくる。
提督が支えてくれたから、なんてちょっと恥ずかしくて言えそうにない。
真面目な提督がこんなくさいこと平然と言っちゃってるのにかっこつけるのも反則っぽいけど、提督は笑ってくれた。
提督や四駆の皆を笑顔にするのが、あたしのやること。それはいつでも変わらないんだなって思う。
 だから、もう一度歩いて、踊って、皆を飛びあがるほど喜ばせて、とびきり笑顔にしてやるんだ。

256約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:40:31 ID:O8ZjopLw
「おはよ、て……あなた」
「毎度毎度早起きだな。関白宣言なんかするまでもない」
「あなたが遅いの。もう9時だよ、日曜だからって寝過ごして」
「9時といえば、あれはいいのか。ダンス教室」
「だから今急いでるの。発表会1週間前なのに遅刻してる場合じゃないもん」
「……くれぐれも、急ぎ過ぎるなよ。もう一度怪我されちゃかなわん」
「わかってまーす! ……発表会、絶対来てよね。次の土曜、市民会館で13時から」
「休みはとってある、心配するな」
「わかる旦那で助かるぅ。じゃ、行ってきまーす!」

257約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:41:03 ID:O8ZjopLw
おわり

258約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:45:33 ID:O8ZjopLw
3日でできるとか豪語したくせに結局結構時間かかったンゴ……
舞風のキャラをつかみきれてないからイメージと違ったらすまんな
あとワイは文系やから医学的な部分に間違いあったら勘弁してクレメンス

259約束の舞風SS後半:2016/04/12(火) 23:54:32 ID:O8ZjopLw
(せや、依頼ニキは感想こっちで頼むで
本スレすぐ流れるしワイもそんな頻繁にはいないからな
流れ遅いこっちに書いてくれると確実に読ませてもらうで)

260舞風SS依頼者:2016/04/13(水) 02:36:40 ID:/otekSkw
まずありがとうと言わせてもらうで
ワイのちょっとした構想から物語に起こしてくれて本当に嬉しいわ
特に情景描写と心理描写には恐れ入ったで
今回はワイの依頼やったけど完全オリジナル作品も読んでみたいンゴ!

261名無しのおんJ提督:2016/04/14(木) 18:30:08 ID:Ig4yNLbg
舞風ええなぁ

そしてそんな話の後で申し訳ないが、ホラー(?)SS投下します
苦手な人は注意

262名無しのおんJ提督:2016/04/14(木) 18:30:41 ID:Ig4yNLbg
時雨「これはボクが昔体験した話なんだけど……。

その日、ボクは春雨と一緒に鎮守府近くの道を散歩していたんだ。
けど途中で雨が降って、しばらくバス停で雨宿りをしてたから帰るのが遅くなっちゃってね。
日も暮れて、人通りも少なくなってきたから、早く帰ろうねって春雨の手を引いて歩き出したんだ。

しばらく歩いていると、道の右側に田圃が見えた。
すると、その田圃の中で何人かのお婆さんが農作業をしているのが見えたんだ。
ボクは咄嗟に『ああ、あれはオバケだな』って思ったんだ。
もう遅い時間だし、雨上がりだったし、そんな状況で畑仕事をする筈がないからね。
それに、灯りも少ない中でその人達だけは嫌にはっきりと見えてたんだ。

ボクは春雨を道の左側に寄せて守るような形にして、できるだけそっちの方を見ないで行き過ぎようとしたんだけど…。
春雨が突然、田圃の方を指差して『ねぇ、あのおばあちゃん達、何してるの?』って言ってきたんだ。
しまった、と思ったけど、オバケの方は気付いてないみたいだった。
ボクは隠してても仕方がないと思って『あれはオバケだから、気にしたらダメだよ』って言ったんだ。

そしたら、春雨は…

『ふぅん、じゃあこの人も?』

って言いながら、何もない左側を指差したんだ」


暁「ぴゃあああああああああ!!!!」

時雨「はい、というわけでボクの話はおしまい」

響「ハラショー。いいホラーだった」

伊58「というか、今更百物語をやろうだなんて、響も物好きでちね」

響「うん、暁が怖がるのが面白いかなと思ってね」

暁「そ、そういう魂胆だったのね!…ふ、ふん!でもレディは簡単に怖がったりしないわ!」

時雨「わかりやすいなぁ…」

伊58「仕方ないでちねぇ…次はごーやの番でちか?」

響「よろしく」

263名無しのおんJ提督:2016/04/14(木) 18:31:13 ID:Ig4yNLbg
伊58「ごーやの友人…って、隠しても仕方ないでちね、イムヤが体験した話でち。

その日はオリョクルで一日忙しかったんでち。
疲れたイムヤは鎮守府内のプールで一泳ぎする事にしたんでち。
夜だったし、照明を点けると迷惑かなと思ったイムヤは暗い中で延々と泳いでたんでち。

プールの真ん中でぼんやりしていた時、ふと気付くと奥のプールサイドに誰かいるのが見えたんでち。
よく見ると"その人"は全く見た事のない女の子だったらしいでち。
ごーや達みたいに提督指定の水着を着ているわけでもなくて、真っ白な肌に白いワンピースを着てたらしいでち。
イムヤも最初は新入りの駆逐艦の子かな、いつ入って来たんだろう、ってぐらいしか考えてなかったんでち。
けど、なんとなく声を掛けたらまずい気がして、目を反らすようにしてプールの入口側……つまり"その人"とは斜向かいのプールサイドに上がって帰ろうとしたんでち。
けどプールを出る前にちらっと奥を見たら"その人"はもういなかったんでち。

――っていう話を後日、ごーや達と一緒に出撃してる時に話してくれたんでち。
すると、急にはっちゃんが妙な表情をしたんでち。
心当たりがあるんでちか?ってはっちゃんに聞いたら『その白いワンピースの女性、これこれこんな感じの子じゃないか』って言い出したんでち。
それをイムヤが肯定すると、はっちゃんは、

『それ……殉職した昔の秘書艦の子だ』って言ったんでち」


暁「あうあうあうあうあうあうあうあう」

響「暁が過呼吸になりかけている」

時雨「うーん、なんか怖いような、悲しいような話だね」

伊58「ちなみにごーや自身はまだ見てないでち」

響「プールに現れる元秘書艦……何かを伝えたかったのかもしれないね」

264名無しのおんJ提督:2016/04/14(木) 18:31:54 ID:Ig4yNLbg
望月「ちょっとー暁ぃー、うるさいよー…って、あれ、みんな揃って何してんの」

響「おっと、ちょうどいいところに来たね」

時雨「百物語をやってるんだ。望月も何かお話ししてくれたら嬉しいな」

望月「えー…んー、まぁいいけどぉ…」

響「それじゃあ、お願いする」


望月「んっとー…たしか先週かな?睦月に聞いた話なんだけどさ。

遠征から帰ってきて、大発動艇から荷物を下ろしてた時。
大発動艇の妖精さんが、こんなものを拾ったって、睦月に錆びついた釘を渡してきたんだって。
まぁ大した資材にはならないけど、鋼材の足しにはなるだろうと思ってそのまま成果に足したらしい。

それからというもの、毎回ある場所へ遠征に行くと大発動艇の妖精さんが錆びた釘を拾ってくる。
気になった睦月はある時、妖精さんに案内してもらって釘がよく拾える場所に連れて行ってもらったんだ。

そしたら……そこにあったのは、ずたぼろになった藁人形だったんだって」


暁「あぶぶぶぶぶぶぶぶ」

響「あっ、暁が泡吹いた」

時雨「うーん、それって…その話自体も怖いけどさ…」

伊58「その藁人形に刺さってた釘が、ごーや達の補修とかに使われてたって事でちね…後味悪い話でち」

265名無しのおんJ提督:2016/04/14(木) 18:32:26 ID:Ig4yNLbg
響「さて、いよいよ私が話す時が来たようだ」

時雨「時間的にもそろそろおしまいかな。最後に怖いの頼むよ」

伊58「任せたでち」

暁「もういいわよぉ…」

望月「ねみぃ」


響「うん。これはつい一昨日、私が実際に体験した話だ。

その日、私は炊事当番だったんだが、お恥ずかしながら私は特別料理が得意ってわけじゃない。
どうしようかと悩んでたら、そこに鳳翔さんが来てくれたんだ。
鳳翔さんはとても上機嫌で、一緒に料理したり、面白い話をしてくれたりしてね。
結局、その日はそれなりに上出来の夕飯ができた。
けど鳳翔さんは何か用事があるって言って帰っちゃったんだ。

それで、鳳翔さん居酒屋やってるだろう?そっちの方かなと思って、お礼をしようと訪ねたんだけど開いてなかった。
しばらく待ってたら来るかなと思って店の前で待ってたんだけど、妙に遅い。
開店時間を過ぎても来なくて、さすがにあんまりにも遅いから、私は一旦提督の所に向かったんだ。相談しようと思ってね。
それで、鳳翔さんが…って話を始めた時、突然提督が神妙な表情をしたんだ。
そして、提督はこう言った。

『実は――ついさっきの出撃の時、鳳翔は敵艦の攻撃で大破し、今は危険な状況だ。士気に関わる事なのでみんなには伏せておいた。』

……それじゃあ、さっき私と一緒に料理を作ったのは誰なのか。
私は怖くなって、お見舞いにも行けずに部屋に戻ってきたんだ」

伊58「…うーん、不思議な話でちね」

時雨「うん、まぁ…そうだね」

暁「…」

望月「あー、あのさぁ、響」

響「うん?」

望月「すっごい言いづらいんだけどさ…」

時雨「うん…」

響「?」


一同「「「「鳳翔さんって、誰?」」」」

266名無しのおんJ提督:2016/04/14(木) 18:32:57 ID:Ig4yNLbg
響「ひぅっ!?」


そこで、響は目を覚ました。
慌てて目を開き、上半身を起こすと、そこは医務室だった。


暁「あっ、響!気付いたのね!よかった…」

響「えっ、暁…?」


抱きつきながら泣きじゃくる暁に、響は戸惑いながらも、必死に曖昧な記憶を辿る。

そうだ。
出撃中、暁を庇って攻撃を受けて、"左"舷損傷。
航行不能になって"秘書艦"である時雨の援護を受けて撤退。
しかし修復の為の"資材"を用意する前に気を失った。
どうやらしばらくの間"危険な状態"だったようだ。


響「…ごめん、心配かけたね、暁」

暁「もう、ばかぁ…」


(完)

267名無しのおんJ提督:2016/04/16(土) 16:54:17 ID:O8ZjopLw
最初の話「怖い話」と「田んぼ」でくねくねだと思い込んで都市伝説ラッシュかと思ったら違ったンゴ
主人公が誰だか定めないことで響が見ている夢だと気付かせないのはうまいと思った

268名無しのおんJ提督:2016/04/21(木) 00:00:20 ID:uWKkXELM
艦これ部内で麻雀が流行っているようなので、金剛型麻雀SSを投下します。

269名無しのおんJ提督:2016/04/21(木) 00:01:19 ID:uWKkXELM
こんばんは、金剛デース。
今日は妹達と一緒に麻雀をやる事になったんですヨー。
東風の四人打ちデース!


比叡「次こそ勝ちます!」

榛名「…」

霧島「ちょっと待って、作戦を考えるわ」


うちはみんな個性的な打ち方をするので楽しいデース!
勿論、斯く言う私だってファンタスティックな打ち方を心がけてマース!

――東一局、親:金剛

まず私の親番ネー。
赤ドラを含む好手、いい配牌ですネー。

私はいつでも先手必勝!弾幕を撒いて戦いマース!
下家の比叡が出した白をポン!対面の霧島が出した八萬をポン!
そして上家の榛名が出した四索をチーして!

ツモ!白と赤ドラ700オールデース!


比叡「ひえ〜…相変わらず早鳴きですねお姉様」

霧島「息つく暇を与えない、とはこの事ね」

榛名「…」


ふふん!どーデスか!
私の早打ちは機敏!瞬殺!高速戦艦の名は伊達じゃないのデース!

――東一局、一本場

…けど、そんな私にも弱点はありマース。
それはクソ配牌デース。
鳴きようのない手ではさながら主砲を失ったかの如くなのデース…。


比叡「あ、お姉様、それロンです!」

ひえっ!?

比叡「役牌とホンイツドラドラ、満貫ですね!」

ひえええぇぇ…

270名無しのおんJ提督:2016/04/21(木) 00:01:51 ID:uWKkXELM
そう、私は知っている。お姉様の弱点を!
この比叡、麻雀という戦場においては手加減なし!気合、入れて、和了ります!

お姉様は早鳴きであるが故に手牌に固執する!
圧倒的ツモ切りの多さで手を読み!溜めに溜めた一撃を見舞う!
そう!私の打ち方は弾着観測射撃の如き超火力!
問答無用の鉄槌を浴びせます!

――東二局、親:比叡

さぁ、ここからは私の時間!
手牌は筒子に集中、字牌二種の好手!となればここはやはり混一色!
否!単なるホンイツではなく!そこにイッツーも重ね打ちます!
食い下がりさえ認めません!さぁいきますよお姉様!

リーチ!


金剛「こ、ここでリーチ!?」

霧島「統計学的に考えるとここは殆ど高得点狙い一本…守るしかなさそうね」


霧島、いい読みだよ!そう!形は筒子の単騎待ち!

…と見せかけて!実は既にイッツーの形は成されている!
そう!私が狙うのは字牌!東と發の役待ち!
これによって和了した場合の火力は六飜!跳満確定の航路!
裏ドラ次第で更に高火力に!


霧島「じゃ、まずはここね」一萬

…あれ?

榛名「…」九索

金剛「ふふん!その手には乗らないデスよ、比叡!」五索

…あれれ?


流 局


金剛「いや、ずっと索子と萬子ばっかり出してたら嫌でもわかりますヨー」

霧島「ある意味で正直ですね、すぐに表情に出ますし」

榛名「…」


そう…。
私の弱点…それは、決定的にポーカーフェイスが苦手な事。
そして何より、河ガン無視、捨て牌操作皆無、直線的な突撃…。
いつも結局あがりきれずに負けてしまうのです…。

271名無しのおんJ提督:2016/04/21(木) 00:02:26 ID:uWKkXELM
金剛お姉様も、比叡お姉様も、癖が強すぎるのよ。
麻雀は頭脳戦。直球勝負ばかりでは勝つ事はできないわ。
尤も、変化球ばかりでも勝つ事はできない。大切なのはバランスね。

私、霧島流の打ち方は統計に裏打ちされたデータ麻雀。
お姉様たちが狙ってくる箇所を見極め、競り勝つ。
派手さはないけれど堅実な方法なのよ。

――東三局、親:霧島

手牌はごく普通の並び…ふむ、逆に言えば安牌さえ見切れば大敗はない手。
となれば、冷静に河を見切っていけば勝てる。

榛名は字牌、金剛お姉様は九萬、比叡も字牌…うん、特に飛び抜けて好調な家はいなそうね。
ならば、私が攻めるのは今しかない。
第二の捨て牌、そこで私が出すのは六筒。


金剛「いきなり中張牌を出して来るんデスね…!」

比叡「面白い勝負になりそうです!」

榛名「…」


そう、その動揺を誘うのが計略。
勝負に出たと思わせて……実は手は依然として四向聴、大きく進むわけではない。
逆にお姉様たちが勝負に来れば、待ちを早めに察知する事ができる。
その間に私は着実に手を進める。
完璧な計算ね、さすが私。


…十二巡目。

金剛「ポンデース!ふふん、そろそろいい感じに仕上がってきましたネー」

比叡「負けませんよ、お姉様!」


依然手が進まない。
殆ど全てがムダヅモ。ごく少数の有効牌も、当たり牌は金剛お姉様が副露。
これじゃ、意味がない…。


金剛「霧島!ロンデース!」


っ!しまった…!


金剛「霧島はいっつも思わせぶりで、結局和了らないデスねー」

比叡「何狙ってるのかわからなくて怖いですけどね!」


…くっ、私とした事が…。

いや、これもいつもの事か。
私は徹底的にツモ運がない。結局どんなに緻密な計算も運が無ければ意味がないのだ。

272名無しのおんJ提督:2016/04/21(木) 00:03:00 ID:uWKkXELM
…。

えっと、榛名です。
今日は麻雀をやってます。…あ、えっと、見ての通りです。

榛名は、他のみんなが楽しんでくれたらいいなと思ってます。
はい、榛名は負けても大丈夫です。
けど、榛名が勝ち続けるときっとみんな楽しくないから。
適度にみんなを勝たせてあげるのが榛名の役割かなって思います。

――東四局オーラス、親:榛名。

…。

だけど、不幸にも榛名は幸運艦です。
できる限り大役を和了しすぎないようにしているのに、大役の方からまるで死神のように榛名に近づいてきます。
この配牌も、そんな手なのでしょう。

19①⑨一九東西南北白發中

…第一ツモ、中。
榛名、全然大丈夫じゃないです。
どうしましょう……とりあえず、ツモ切りです。


金剛「むむむ、なかなか難しいデスねー…けど諦めないデスよー!」

比叡「このまま!逃げ切って!みせます!」

霧島「点棒の移動がここまでは少ない…私の推測では、これから一気に解放されるわ!」


…えっと、二十巡しました。
一度も中張牌が来ません。全て老頭牌です。
このままいくと、流し満貫になってしまうかもしれません。ある意味、一番悔いが残る形です。
どうしたらいいんでしょうか。

そうこうしている間に、海底です。
不運にも、海底牌を引くのも榛名です。
そして、その最後の一枚も、東。

…。

273名無しのおんJ提督:2016/04/21(木) 00:03:32 ID:uWKkXELM
榛名「ツモですぅ〜…」

金剛「な、なんですってー!?」

比叡「海底で!ツモですか!」

霧島「…って、ちょっと、国士じゃないの!ってことは、これ今まで打牌全部…当たり牌…」

金剛「Oh...」

榛名「ごめんなさいぃぃ…」

霧島「ちょ、ちょっと!なんで泣いてるのよ榛名!勝ったんだから笑いなさいな!」

比叡「そ、そうです!笑顔です!」

金剛「もう、また気を遣ってたネー?姉妹の間で気を遣うなんてナンセンスデース!」


金剛が優しく榛名の頭を撫でる。
その温かな感触に、涙で濡れた榛名が顔を上げる。


榛名「ありがとうございます…えへ、榛名は、大丈夫です!」




提督「いや、いいんだけどさ、お前らなんで執務室で麻雀やってんの」


(完)

274RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 00:13:03 ID:uWKkXELM
(今更だけど、投下してからIDが変わっている事に気付きました)
(色々と投下してきたID:Ig4yNLbgです)
(今後、このSSの会…及び天鳳の中でのみHNを付ける事にします)

275RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:15:24 ID:uWKkXELM
ついでに、深夜テンション
壁尻青葉の話、一応R-18な感じで

276RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:16:15 ID:uWKkXELM
夜風が涼しい今日この頃。
月明かりの下、鬼怒は妙な表情のまま立ち尽くしていた。


鬼怒「…」

青葉「…あっ、ども…鬼怒、ちょっといいですかね」

鬼怒「どうしたの青葉さん、そのマジパナイ状況は」

青葉「ええ、いえ…ちょっと…あはは…」


ここは軽巡寮……の、外壁。
軽巡量の裏庭と鎮守府の外とを隔てるこの壁は、ごく普通の一般家庭のブロック塀とさほど変わらない。
この外にあるのは市街地であり、そちら側から深海棲艦の攻撃が来る事はまずありえない事から、警備も手薄なのだ。

そして。
その塀を鎮守府の内から見つめている鬼怒の目には、実に珍妙な光景が映っていた。

重巡、青葉。
鎮守府内の新聞を執筆・編集している人物であり、若干過激なパパラッチ行為が賛否両論を巻き起こす、ある意味でこの鎮守府随一のトラブルメーカー。
そんな彼女の『上半身』だけが、鬼怒には見えていた。


鬼怒「えー、つまり?印刷所からの帰りに軽巡寮を覗こうとしたらハマって動けなくなった、と」

青葉「そういう事です!というわけでですね鬼怒、ちょっと悪いのですが青葉の体を曳航…もとい、引っ張ってくれないでしょうか」

鬼怒「…レイテ沖を思い出すね〜」

青葉「そうですねー」

鬼怒「じゃ、また」

青葉「ちょっと待ってー!!!!」

鬼怒「ありゃ、大声出していいのかな、青葉さん?まーたスクープ写真でも撮ろうって算段だったんでしょ?バレちゃまずいんじゃないかな?」

青葉「むむ…ま、まさか強請るのですか!」

鬼怒「相互利益の関係だよ、青葉さん」


鬼怒の楽しそうな笑顔に、思わず青葉もぞっとする。
しかし背に腹は代えられない。この状況を見つけてくれたのが、それなりに親交のある鬼怒であった事をむしろ喜ばなければならない状況だ。
屈辱的ではあるが、悪いのは自分である。
ここは落ち着いて話すしかない。


青葉「わ、わかったよ、鬼怒……もう軽巡寮はパパラッチしないから…」

鬼怒「んー、そんな事はどうでもいいんだけどさぁ」

青葉「?」

鬼怒「人にお願いする時はぁ、ちゃんと『お願いします』って言わないと、ねぇ?」


その微笑は悪魔か鬼か。
青葉は彼女の表情の裏に隠された意図に気付きながらも、選択権がない事も承知している。
やや俯いたまま、青葉は声を潜めた。


青葉「……お、お願いします…助けてください…」

鬼怒「はい、よくできましたー♪」


青葉はようやく知る。
鬼怒がドSであるという事を。

277RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:16:49 ID:uWKkXELM
鬼怒「さて、とりあえず引っ張ってみるかー。手ぇ出してー」

青葉「うん、お願い」


ひょい、と青葉が両腕を前に出す。
その瞬間、鬼怒は素早く青葉の懐に潜り込み――

むに


青葉「ひゃうっ!?ちょ、ちょっと何してるん…!」

鬼怒「んー、ちゃんとお胸が挟まってないか確認しただけだよー」

青葉「ッ〜〜〜〜……も、揉みたいなら後で揉ませてあげるから、今は早く…!」

鬼怒「お、言ったね?」

青葉「……」

鬼怒「んじゃいくよー」


そう言いながら、やっと鬼怒は青葉の両手を取る。
そして、後方に思いっきり体重を掛けた。


青葉「痛い痛い痛い痛い!!!!」

鬼怒「ありゃ、抜けないねー」

青葉「っ……ど、どうやら……完全に引っ掛かっちゃってるみたい」

鬼怒「かと言って塀を崩しちゃったら提督に怒られるしぃ、このまま放置するのが鬼怒にとっては最善手なんだよねぇ」

青葉「い、いやいや、それはやめてよ……朝になったら寮内も外も人が通るし……」

鬼怒「恥ずかしがってる青葉さん見るのも楽しいかなーって思ってねー♪」

青葉「ぐぬぬ…明日の朝刊が間に合わなくなっちゃうよ!?」

鬼怒「あ、それはつまんないなぁ」

青葉「ね、だから早く…」

鬼怒「んじゃちょっと待っててねー」

青葉「えっ、ちょっとどこに行くの!」

278RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:17:26 ID:uWKkXELM
鬼怒は鎮守府の外に回り、青葉の『下半身』と面会した。
軽巡寮のすぐ外は工業地帯であり、今は静まり返っているが朝早くから作業する人もいる。時間的猶予はあまりない。


鬼怒「ぷぷぷwwwww」

青葉「き、鬼怒?外にいるんだね?」

鬼怒「すっごいよぉ、青葉さん。めっちゃ無様!」

青葉「鬼怒、さっきからひどいよ?」

鬼怒「まぁいいや、んじゃこっちから押してみるねー」


むにむに


青葉「あぅっ!…ちょ、ちょっと!お尻撫でてないで……」

鬼怒「ん?お尻じゃなくてこっちがいい?」

青葉「んっ…い、いや、そこはほんとにダメ…あっ……!」

鬼怒「んっふっふ〜♪ 色っぽい声出しちゃってー」

青葉「はぁ…はぁ……ねぇ、ほんとに、早く…」

鬼怒「ところでさぁ、さっきからなんでそんなに焦ってるのさ?一応あと数時間は人通りないと思うよー?」

青葉「! …い、いや、人通りは勿論なんですけどもぉ……」


青葉の足がもぞもぞと動く。
その様子をしばし眺めていた鬼怒は、ふと先程の悪魔的微笑を浮かべた。
黙ったまま、青葉の足元にしゃがむ。


青葉「? …鬼怒、何してるの?」

鬼怒「…」


そして……鬼怒は、青葉のハーフパンツの腰元に手をやると、


青葉「えっ…」


一気にずり下ろした。

279RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:18:03 ID:uWKkXELM
青葉「ひゃっ!?き、鬼怒っ!?」

鬼怒「あ、かわいいパンツだー♪」

青葉「ちょ、ちょっと鬼怒……あんまりふざけてると、いい加減怒りますよ?」

鬼怒「おやおやぁ、そんな態度で助けてもらおうなどと?」

青葉「くっ…」

鬼怒「それからパンツもー」

青葉「えっ…」

鬼怒「えいやっさ!」

青葉「!!!!」


途端に青葉の下半身が涼しくなる。
敏感な部分に夜風が当たっているのが感じられ、壁の向こう側で思わず赤面する。
相手が仲のいい人物だとしても、いきなり局部を露にされた上に何をされるかわからないとあれば、嫌でも最悪の結末を想像してしまう。


青葉「や、やめて……やめてください、鬼怒……」

鬼怒「なぁに、安心してよ。傷つけるような真似はしないからさー」

青葉「! き、鬼怒、まさか…」

鬼怒「さ、ちょっと黙ろうねー」


ぺちん、と鬼怒が平手で青葉の尻を叩く。びくりと青葉の身体が揺れた。


鬼怒「青葉さんさー、今日徹夜仕事だったんでしょー?って事は、お手洗いも行けてないって事だよねぇ?」

青葉「ッ…鬼怒…やっぱり……」

鬼怒「今ズボンもパンツも脱がせてあげたからさ。しちゃいなよ。今」

青葉「そ、そんなっ!き、鬼怒の見てる前で、なんて…」

鬼怒「早く」


もう一度平手が飛び、思わず青葉の目に涙が浮かぶ。
恥辱的だと。屈辱的だと。そう感じるよりも前に、この状況に抗いきれない自分の心が不甲斐なかった。
事実、貯水量ももはや限界に近い。
しかしさすがにそこまで自尊心を蹴落とすのは、この状況下だとしても躊躇われた。


鬼怒「早く、早く、早く」


幾度となく鬼怒の平手が飛ぶ。


青葉「あっ、あっ……」


もう尻は真っ赤になっている事だろう。
仮にも艦娘の攻撃を受け、無事である筈がない。
もはや青葉は心身共に限界だった。

280RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:18:39 ID:uWKkXELM
神通「あの…何をお騒ぎになってるんですか…?」

青葉「っ!?」


その時、突然前方から聞こえた声に思わず青葉は顔を上げた。
そこにいたのは、二水戦の長、神通。
しかも彼女だけではない。


川内「何?夜戦?」

那珂「えー、こんなところでー?お肌が荒れちゃうなぁ」


川内型三姉妹。
青葉も幾度となく彼女達のスクープ写真を収めてきた。あまり頼りたくはない相手だ。
しかし、今はそうも言っていられない。
壁の向こうで鬼怒は未だ平手打ちを繰り返しているし、この機会を逃したら鬼怒の玩具にされて終わりだろう。

青葉は、彼女達を見上げて叫んだ。


青葉「た、助けてくださいっ!お願いですっ!」

神通「えっ……」

川内「どうしたのさ、青葉さんらしくないね」

那珂「ねぇ、青葉さん泣いてるよ?本当にまずいんじゃない?」

神通「そ、そうね…助けてあげましょう……お手を、失礼します」


神通が青葉の右手、川内が青葉の左手をそれぞれ取る。
そして那珂は壁に面して青葉の胴体を抱きかかえた。


神通「いきます!」


――その瞬間、ぐいんと大きな力が青葉の体を揺らした。
軽巡トップクラスの実力者である三人の渾身の引きを受け、ブロック塀の一部が折れるように崩れた。


青葉「わわっ!!」


そして。
そのまま、やや大きめの穴を残して青葉の体は一気に内側へと引き抜かれた。

281RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:19:12 ID:uWKkXELM
神通「きゃっ!」

川内「あいたっ!」

那珂「きゃあ!」

青葉「っ…!」


四人が一気に裏庭の地面に倒れ込む。


鬼怒「んぉ?」


一方で、壁の外にいた鬼怒も突然引っ込んだ青葉に呆然としていた。


川内「いったぁ…みんな、怪我はない?」

那珂「あいたたた…あれ、鬼怒?なんで壁の外にいるの?」

神通「えっ……あら…この時間の外遊は禁止ですよ、鬼怒」

鬼怒「え、あっ…ごめんなさい…」


神通の鬼のような独特の雰囲気に飲まれ、鬼怒は慌てて鎮守府の門の方へと走っていく。
当の青葉は一瞬意識が飛びかけたが、なんとか気を失う事はなかった。


青葉「ども…恐縮です…」

那珂「まぁ、青葉さんが無事でよかっ――」

川内「そうだね、特に何事もな……あっ…」

神通「?」


その瞬間、三人が固まる。
依然立ち上がれずにいた青葉は、その一瞬の沈黙の意味を理解できず、顔を上げた。
三人の視線は青葉の下半身、そしてその下の地面に向いていた。


青葉「えっ?……あ」


三人の視線の先。
青葉は、一瞬の気の緩みから――限界だった貯水槽の門を開けてしまっていた。
しかも、鬼怒に脱がされた為に遮るものなど何もない。
聖水の瀑布が、地面に大きな水たまりを作る……三人は、その瞬間を目撃してしまったのだ。


神通「きゃあああああああああああああ!!!!」

川内「じ、神通!落ち着いて!」

那珂「わわっ…と、とにかく、タオルっ…!」


そして、それを理解した青葉も。


青葉「あ、あ……あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


騒乱の声が夜の鎮守府にこだました。

282RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/21(木) 02:19:43 ID:uWKkXELM
その後。
青葉の痴話で鎮守府内は持ちきりとなった。
青葉はしばらく『壁尻』という渾名を頂戴する事となる。


青葉「いやぁ、まさか記者である青葉が一番のスクープになってしまうとは……」

鬼怒「…」

青葉「…鬼怒?」

鬼怒「……ごめんなさい。マジに調子に乗り過ぎた…よね」

青葉「……いや、いいんです。鬼怒も、まぁ遊びがあったとはいえ、青葉を助けてくれようとしてくれたんですから。だから、提督にもご報告しなかったんですよ。パンツはたまたま脱げてしまっただけだと言い訳しましたから」

鬼怒「……」

青葉「ほら、アイス溶けちゃいますよ?」

鬼怒「ねぇ」

青葉「はい?」

鬼怒「……揉ませてくれるって、言ったよねぇ?」

青葉「……えっ」

鬼怒「後で、いくらでも、揉ませてくれるって、言ったよ、ねぇえ?」

青葉「えっ、いや、それは……た、たしかに言いましたけど、それは、その……」

鬼怒「鬼怒からのお詫び!今夜は寝かせないからねっ!」

青葉「な、なんでそうなるんですかー!!!!」


(完)

283名無しのおんJ提督:2016/04/23(土) 14:26:15 ID:Q71kOBpM
24駆のはなし


江風「二四駆逐隊でお花見するかな〜、明日は二四駆のみんな非番にしてくれよ」
提督「しばらく暇だしいいぞ」
江風「じゃそゆことで〜」

翌日

江風「よっ」
海風「いい天気になりましたね」
涼風「バッチリだね!」
江風「んー、1人足りないな。ちょっと呼んでくるよ。」


江風「おーい、いるかー」
??「何よ」
江風「入るぞー」
江風「なンだ準備できてるじゃんか、どしたー?」
満潮「・・・私が行っていいのかわからなくて」
江風「何言ってんだ、二四駆じゃないか」
満潮「あなたのことよく知らないし・・・」
江風「なら、今から知っていこうぜ。ほら行こうぜー」
満潮「ん・・・」


江風「これで全員揃ったね!」
涼風「いよっ!主役は遅れて登場だね!」
海風「では、行きましょうか」
満潮「・・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・


提督「どうして二人は酔い潰れてるんだ?」
涼風「えーと・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーー
江風「満潮はお子様だからな〜ジュースでいいよな」
満潮「はぁ?お酒くらい飲めるわよ!」
江風「おっならこのウォッカにしよう!」
満潮「え・・・い、いいわ!水みたいなもんね!」
海風「江風ぇ・・・そんなに飲んだら・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーー
涼風「というわけで」
海風「すみません本当にすみません」
江風「ウーン…もう吐くわー」
海風「待ってここではしないで!」
江風「なんてウッソー・・・Zzz・・・」
海風「・・・・・」
満潮「ムニャムニャ…今日は…ありがと…ムニャムニャ…」

おわり

284RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/23(土) 18:54:27 ID:uWKkXELM
満潮かわいい(確信)
という事で今度は初月かわいい話をば

285RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/04/23(土) 18:55:00 ID:uWKkXELM
初月「…」


ここは鎮守府内の食事処。
立ち上る湯気に、初月は目を細めた。

初月の目の前にはラーメンが出ている。
さっぱり系のスープと細麺、野菜をふんだんに使って健康面にも気を遣ったこのラーメンは食事処屈指の人気メニューだ。

温かなどんぶりを前に、初月は一旦息を飲む。
輝く褐色の水面が目に映る。


初月「…いただきます」


丁寧に合掌してから、箸とレンゲを手に取る。
麺を具と絡ませてそっと持ち上げ、そして静かに口に運ぶ。


初月「…うん」


普段は冷徹な初月の表情が、ほんの少し緩む。
宵闇の如き初月の双眸が僅かに輝き、咀嚼の度に柔らかな髪が揺れる。
言葉にせずとも、一口のラーメンが初月に与えた充足感は、その顔を見れば瞭然であった。

続いて、レンゲをスープに沈める。
渦を描いて注がれるスープ。その色を確かめながら、レンゲを浮かす。
初月は指先で側頭の髪を耳に掛けながら、その輝く色を確かめるように唇を寄せた。
僅かに熱かったのか、一旦唇を離し、撫でるような息を吹きかけてから再度口を付け、そして一気に喉に注ぐ。
ふわりと広がったスープの優しい香りに、初月の口角が僅かに上がった。


提督「…なぁ、初月」

初月「うん?」

提督「お前さぁ、ほんとに美味しそうに物食べるよな」

初月「そうかな?」

提督「うん。幸せそうな顔してる」

初月「…なんだか恥ずかしいな」


照れくさそうにはにかみながら、初月は尚も食事を続ける。
食事ができる喜びを噛みしめる、そんな表情で。


(完)

286『春の執務室』01:2016/04/27(水) 11:34:57 ID:j97ucktY
『春の執務室』

フッフーン♪
春の暖かな空気に溢れた鎮守府。
その執務室から、可愛らしい歌声が聞こえてきた。
「はーるがきーたー♪はーるがきーたー♪」
榛名が執務室の飾りを春模様にしている。
「どこへーきたー♪」
綺麗な花がさしてある花瓶を飾りながら陽気に歌っている。

「よし、これで完成です!」
部屋を見渡し、達成感に満ち溢れた表情を浮かべてながら榛名はそう言った。
すると榛名の動きが止まった。視線の先には提督の執務机があった。
榛名の電探がピコンと動いた。回りの様子を伺っているのだ。
そうして榛名は静かに机に向けて歩きだした。

「はーるなきーたー…♪」
「はーるなきーたー…♪」
歌詞もそうだが、歌い方が先程と明らかに違う。
小声で囁くように歌いながら、榛名は机に近づいていく。動きは静かだが、電探が激しくピクピク動いている。かなり周囲を警戒している様子である。
聴かれるのがとても恥ずかしいのだろう。

287『春の執務室』02:2016/04/27(水) 11:36:06 ID:j97ucktY
提督自慢の豪華絢爛執務机の前で立ち止まった榛名は、もう一度周囲を確認した。
そうして体を提督の椅子に預けた。
ギシッっという椅子の軋む小さな音が、何倍にも増幅されたように静寂の中に響き渡った。

榛名は暫く俯いたままだった。小鳥のさえずりが開けた窓から流れ込んできているが、執務室はとても静まり返っていた。部屋の隅にある振り子時計の音だけがリズミカルに音を鳴らしている。
その時計の分針が一目盛り分動いたときだった、ようやく榛名は顔をあげた。榛名には珍しくどことなく勝ち誇ったような顔をしていた。
「はーるなきーたー♪」
「はーるなきーたー♪」
先程よりは大きな声でまた歌いだした。
「ここへーきたー♪」
そのまま机に突っ伏した。
「ふふっ。提督、榛名はここにいますよ♪」
問いかけるように独り言を言っていた。そして伏したまま机を撫で、また歌いだした。
「はーるなきーたー♪はーるがきー…」
「何をしてるんですか?」
「!?」

いつの間にか目の前に大淀が立っていた。

288『春の執務室』03:2016/04/27(水) 11:40:01 ID:j97ucktY
「あ…あ…、あの、これは…。」
顔が真っ赤である。
「お、お掃除です!お掃除をしていたんです!」
「なるほど、そうですか。」
大淀は全てを知っているようにニコッと笑った。
「あの…大淀さん。」
「なんですか?」
「今のことは、提督には内緒にしてください…。」
「いいえ、それはできません。」
「そ、そんな…。この事が提督のお耳に入ったら、榛名、恥ずかしくてもう提督の顔を見ることが出来ません。」
「なんでじゃああんな恥ずかしい歌を…。」
「その…ち、ちょっと気分が高揚して…。」
「はぁ…。」
「なので、あの…提督には…内緒で…。」
「それはできません。」
「なんでぇ!」
半分泣き顔になっていた。

289『春の執務室』04:2016/04/27(水) 11:40:46 ID:j97ucktY
「仕方ないですね、じゃあ条件を出しましょう。」
「え?」
「明日の艦娘幹部会議でその歌を幹部艦娘に披露する。それをやってくれるんでしたら提督には内密にします。」
「ええええ…。そんなぁ…。」
「どうですか?やりますか?」
「そんなの…榛名には…榛名には…」
もはやどうしようもなくなっているようだ。
目を潤めて小刻みに震えている。
「プッ…アハハハハハハ!!」
突然大淀が笑い出した。
「お、大淀さん?」
「いやー、やっぱかわいい奴だなぁお前は。」
バリバリユウバリーっという音と共に、大淀の中から提督が姿を見せた。

290『春の執務室』05:2016/04/27(水) 11:42:54 ID:j97ucktY
「て、提督!?」
「いやー、大和の変装術はなかなかだなぁ。」
「な、何をされているんですか…?」
「何って、いや、大淀に変装してお前を驚かそうと。」
「じゃあ今のやり取りは…。」
「あんなこと大淀が言うわけないだろ、お馬鹿さんめー。」
ようやく状況が飲み込めたらしく、榛名は涙をぬぐいながら、
「いじわる…。」と小声で言った。

「すまんすまん。榛名ならばれるかなーっと思ったんだがなぁ。変装が完璧すぎたか…。」
「…でも安心しました。」
榛名はようやく落ち着いたようで、笑いながら話し始めた。
「大淀さんがあんなことするわけないですよね。榛名も少し考えが浅かったです。
でも凄い変装ですね!榛名全然分かりませんでした。
でもよかったです、これで…。」
突然声が止まった。それを見た提督は不適な笑みを浮かべた。

291『春の執務室』06:2016/04/27(水) 11:45:11 ID:j97ucktY
「ん?これでどうしたのかな?」
「あれ?お、大淀さんが提督で大淀さんがさっきの歌を聴いていて…。」
思考回路がプスプス音をたてているのがはっきりとわかった。
「て、提督…あのぅ…先程のお歌は…」
「あぁ、良い歌だったな。できればもう一回聴きたいな。」
「あっ…、あっ…。」
みるみる顔がさっき大淀に見せたものよりも真っ赤になった。
「ん?どうした?歌ってくれないのか?」
榛名は俯きながら唸り声を上げている。
「なんだ歌ってくれないのか、しょうがないなぁ…。」
提督は執務室全体を見渡した。
「おーい比叡!どうだー?うまくいったかぁ?」
「へ!?」
慌てて榛名が顔をあげた。すると振り子時計の方から「はーい!バッチリですよー!」と声が聞こえた。
「おー、そこにいたか!もう出てきていいぞー。」
と提督が呼び掛けると、振り子時計がヴェルヴェルヴェールヌイーっと音をたてて割れた。
中から比叡が出てきた。

292『春の執務室』07:2016/04/27(水) 11:48:16 ID:j97ucktY
「お、お姉さま!?」
「榛名ぁ、さっきのかわいー歌はバッチリ録らせてもらったよぉー?」
「(*^○^*)そ、そんな…。」
「よし、よくやった比叡。」
「提督!これは一体どういうことですか!」
ここに来て始めて榛名が意見した。
「いやー新年度だし、新規着任艦向けの紹介動画として総隊長の榛名の仕事ぶりを密かに撮ってビデオにしようと思ったんだよ。」
「」でも思わぬものが録れてしまいましたねぇー。」
比叡がニタニタ笑っている。
「それにしても比叡、このビデオどうしようかね?」
「そうですねー、取り敢えずまず金剛おねぇさまに見せてですねぇ…」
「そのあと幹部会で上映といこうかね。」
そんなことを話ながら二人はゲスな笑みを浮かべた。

293『春の執務室』07:2016/04/27(水) 11:49:39 ID:j97ucktY
榛名は黙ったままである。

「なあ榛名?どうだ?」
「これはみんなに紹介しないとねぇ?」
二人が笑いながら問いかけるが、榛名は俯いたままで返事がない。
「おーい?榛名?」
「榛名ぁ?聞こえてるー?」
「・・・バ…」
「「バ?」」
二人が聞き返した。
「バ・・・バカァァァァァァァァ!!!」
榛名は瞬時に艤装を展開し主砲を二人に向けた。
「お、おい馬鹿やめろ!」
「ひ、ヒエエエエエエ!!」
「勝手は、榛名が、許しませええええええん!!」

ドーンという音と共に執務室から黒煙が上がった。

鎮守府は今日も平和であった。
大和に説教を食らっている若干2名を除いて。

294『春の執務室』09:2016/04/27(水) 11:50:14 ID:j97ucktY
完!

295RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 20:58:59 ID:XfcmGDXI
久々に書いていきます
長編になります

296RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 20:59:44 ID:XfcmGDXI
タ級「…」

青年「…」


この日、連合海軍所属の横須賀研究所に一隻の『艦船』がやって来た。

深海より現れ、突如人類に襲い掛かった謎の存在、深海棲艦。
艦船の艤装を軽々と扱い、超弩級戦艦をも沈める圧倒的な戦闘力を持つ。
国連は全世界共同の海軍を設立しこれに応戦するも、通常の艦船では相手にならず、幾百幾千の犠牲を払ってきた。

そして深海棲艦の到来から数年後の8月15日、遂に連合海軍はある『敵艦』の鹵獲に成功する。
全ての艤装を剥がれた上に鎖で全身を拘束されたままの姿で、その『艦船』はこの研究室へ運ばれてきた。
その名は、戦艦タ級。


タ級「……」

青年「……」


この研究室の主任である青年は、運ばれてきた『艦船』を見て驚きを隠せないでいた。
伝え聞いていた『深海棲艦』、その戦闘力や凶暴性から、青年はてっきり男性型だとばかり想像していたのである。
しかし白い肌を晒して苦悶の表情を浮かべるその『艦船』は、姿形こそ異形ではあるが、どう見ても女性型だった。


青年「驚いたな。こんな少女だったとは」

タ級「……舐メテイルノカ?小娘デ悪カッタナ」

青年「ふむ、しかも言語体系も人類と同じか」

タ級「貴様……」

青年「安心しろ、殺しはしない。大事な実験体だからな」

タ級「……」


その日から、『人間』と『深海棲艦』の、奇妙な日々が始まった。

297RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:00:17 ID:XfcmGDXI
二日目。
今日は尋問が主な研究内容だ。
とはいえ、無理に聞き出す事はしない。


青年「……なぁ、キミ」

タ級「キミ、ジャナイ。私ノ名ハ『タ級』ダ」

青年「そうか。ところでキミ、飯は食わないのか?」

タ級「グヌヌ……我々ハ食糧ヲ必要トシナイ。燃料サエアレバソレデイイ」

青年「燃料、か。面白いな」


拘束されて独房に入れられたままのタ級を、青年は檻の外から観察する。

病的な程に白い肌や闇夜で輝く双眸などの特異な点はあるが、外見上は人間と殆ど変わらない。
むしろ顔立ちや体型だけを見れば、美人と言って差し支えないだろう。


青年「キミ達『深海棲艦』は女性しかいないのか?」

タ級「オス個体ハ存在シナイ。必要モナイカラナ」

青年「ほう?となると、生殖能力はないのか」

タ級「我々ハ地球ノ怨嗟ニヨッテ生マレ、海ノ闇ニ育ツ」

青年「ふむ、では確認してみてもいいか?キミに生殖能力があるかどうか」

タ級「ハァ!?キ、貴様、何ヲ言ッテ…!」

青年「生殖能力はないのに羞恥心はあるのだな、不思議なヤツだ」

タ級「クッ……キ、貴様…イズレ殺シテヤル…」

298RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:00:57 ID:XfcmGDXI
八日目。
ようやく枷を外していいという命令が下る。
対深海棲艦用の兵器、特製12cm単装砲が完成したからだ。


青年「これで多少戦況は変わるかな」

タ級「貴様ラ…私ノ仲間ヲ殺シタラ、タダジャオカナイゾ…!」

青年「今まで何万と人類を殺してきたキミ達が言えた義理ではないだろうに」

タ級「クッ……」

青年「ところで、まだ腹は減ってないのか?」

タ級「ハァ?…ダカラ、食糧ハ必要ナイと前ニ言ッタダロウ」

青年「燃料さえ口にしてないじゃないか。それに、目に見えてやつれている」

タ級「……敵ニ施シヲ受ケルツモリハナイ」

青年「そうか、残念だな。ここに一本燃料缶があるのだが」

タ級「!」ガタッ

青年「おすわり!」

タ級「ワン! …ッテ、貴様、何ヲサセルンダ」

青年「かわいいとこあるな、キミ」

タ級「……ウルサイ」

299RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:01:31 ID:XfcmGDXI
十三日目。
研究所側が危害を加える事はないとわかったのか、或いは研究員数名を殺したところで脱走は難しいと判断したのか、タ級も表立った反抗はしなくなった。
すっかり大人しくなったタ級は、青年が持ってくる物などに興味を示すようになる。


タ級「……ナァ」

青年「何だ」

タ級「ソノ、ソレハ何ダ?貴様ガ飲ンデイルノハ」

青年「これか?これはコーヒーだが」

タ級「コーヒー……ウマイノカ?」

青年「食糧は必要ないんじゃなかったのか」

タ級「……別ニ、全ク食ベラレナイワケデハナイ。嗜好品トイウ意味合イデ、食事ヲスル事ハアアル」

青年「そうか。じゃあ飲んでみるか?」


小さいマグカップに、ドリッパーからコーヒーを注ぐ。
それを檻の前に置くと、タ級は両手でそれを取り、くんくんと匂いを嗅いだ。


タ級「……味ワッタ事ノナイ香リダナ」


そう言いながら、マグカップにそっと口をつける。


タ級「……苦イ」

青年「まぁ、そうなるな」

タ級「ダガ…悪クナイ味だナ」

青年「そうか、それじゃあ今度紅茶を持ってきてやろう。それなら飲めるだろ」

タ級「コウチャ……ウン、待っテイル」


その瞬間、少しリラックスしたようにタ級が笑顔を見せた。
優しく、温かい笑顔。

その表情に、思わず青年も目を見張る。
喩え異形の者だとしても、彼女もまた一人の生き物なのだ。
喜ぶ事もあれば、悲しむ事もあるのだろう。

その日、青年は報告書に『人間性、及び感情の起伏を確認』と書いた。

300RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:02:03 ID:XfcmGDXI
十九日目。
人類は深海棲艦に対し有効打を見せ始めていた。
近海の安全圏を確保すると共に、複数の洋上基地を制圧するなど、徐々に防衛面が強化されていく。
研究所のある横須賀も、安全圏の一つとなった。


タ級「……」

青年「どうした」

タ級「声がシナイ」

青年「声?」

タ級「私ヲ探ス、仲間達ノ声。ケド、沈んデハイナイ…命ハ感ジる…」

青年「不思議な力があるんだな、キミ達には」

タ級「人間ニハ無いノカ?」

青年「ああ、人間は不便な生き物だからな」

タ級「……ソウ、カ」


目を伏せながら、タ級は紅茶のカップに口をつけた。
その横顔は憂いさえ覗く。

そんな表情を見て、青年は、


青年「……仲間達のところへ、帰りたいか?」


思わず呟く。
タ級も驚いたように顔を上げた。


タ級「……何ヲ」

青年「今までこうして一緒に過ごしてきたが、やはりキミも一人の人間のようにしか思えないんだ。故郷に仲間がいるのなら、帰りたいと思うだろう」

タ級「……帰りタイ、帰リタイヨ。けド……此処ヲ離れタラ、貴様ニモ責任がアルダロウ?」

青年「意外と真面目なんだな、キミは」

タ級「……私ハ捕虜ダ。捕虜ニハ捕虜ノ信条とイウモノがアル」

青年「……そうか」

301RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:02:38 ID:XfcmGDXI
二十四日目。
この日、タ級は初めて檻の外に出る事が許された。

立ち上がり、大きく背伸びをする。


タ級「んっ……アァ、何ダカ嬉しイナ」

青年「一応、報告書に『抵抗の様子なし』と書き続けた甲斐があったかな」

タ級「良イノカ?モシ私が暴レタラ、貴様の責任ダゾ?」

青年「捕虜には捕虜の信条があるんだろ?」

タ級「……フフ、そうダッタナ」


笑顔を見せるタ級、その頭を青年がそっと撫でる。
気持ちよさそうに目を細める様が、まるで子犬のようだ。

よく見ると、肌は随分と血色が良くなっている。
髪色も今までは真っ白だったのが、今では少し色づいたようだ。
やはりというか、肌色が戻ると普通の少女にしか見えない。


青年「そういえば、キミにあげたい物があってな」

タ級「うん?ナンダ?」

青年「ほら」


青年が差し出したのは着物だった。


青年「ずっと服着てなかっただろう?女の子なんだから、ちゃんと服は着てた方がいいだろうさ」

タ級「あっ……ソウ、ダッタナ……アリガトウ」


羞恥心を思い出したように頬を赤らめつつ、タ級が服を受け取る。
袖を通し、すっかり長くなった髪を整えて、帯を締める。


タ級「……似合うカナ?」

青年「うん、似合ってる」


優しい秋の陽射しを受けて、タ級は柔らかな笑みを浮かべた。

302RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:03:32 ID:XfcmGDXI
三十二日目。
戦況に変化が訪れた。

深海棲艦は今までの尖兵に加え、超火力を誇る『姫』を動員。
弾薬を食らう戦艦棲姫、無限に艦載機を放ち続ける飛行場姫、俊敏な動きで前線を蹂躙する軽巡棲姫。
対深海棲艦用の装備も運用方の限界を迎え、遂に戦線は押し戻され始めた。

そして、戦火は横須賀にも及ぶ。
夜の二時、響くサイレンの中、青年は窓の外を見遣る。


青年「来たか」

タ級「皆が…戻って来タ……」

青年「声は、聞こえるか?」

タ級「マダ、遠い……けど、感ジル」

青年「……」

タ級「……」


思わず、二人の目が合う。
このままでは、すぐにこの研究所も破壊されるだろう。


青年「……よかったじゃないか」

タ級「ウン、ダケド……貴様ト離れるノガ…嫌だ」

青年「馬鹿言え。俺が深海棲艦側に行く筈はない」

タ級「……」

青年「そこの扉から、裏路地に出られる。裏路地からはすぐに港だ。キミはそこから仲間達の所へ行け」

タ級「……貴様ハ、どうするンダ…?」

青年「さぁね。キミに殺されるのなら、嬉しいかな」

タ級「馬鹿ナ事言ウナ……貴様ハ殺せナイ」


そう言いながらも、タ級は足早に扉の下へ駆け寄る。
最後に、ちらりと青年の方を振り返る。


タ級「……さよなら」

青年「あぁ、じゃあな」


扉を開けて、タ級は外に出る。
その後ろ姿を見つめながら、青年は一人、残されたティーカップを見つめる。

303RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:04:07 ID:XfcmGDXI
三十二日目の朝。
横須賀近海に現れた深海棲艦の軍は、結局陸地へ進攻する事なく撤退した。
その理由は不明だったが、研究所内も安堵の空気に包まれる。
ただ一人、青年だけは、タ級が合流した事で撤退したのだろうと察していた。

青年は研究室に籠ったまま、報告書にペンを走らせる。
タ級を取り逃がした言い訳を考えつつ、コーヒーカップに口を付けた。

その時。


ドンドン

青年「ん…?」


扉が叩かれた。
廊下に続く表の扉ではない。つい数時間前、タ級が出て行った裏の扉の方だ。


青年「誰だ?」


声を遣ると、扉ががちゃりと開く。
そこには、


青年「…!」

タ級「……ヤァ、ただいま」

青年「なっ…」


タ級がいた。

しかし、明らかに様子がおかしい。
覚束ない足取りで研究室内に入って来ると、そのまま前のめりに倒れ込む。

青年が慌ててその身体を支えると、既に彼女は満身創痍だった。
息も乱れ、よく見れば背中からは血を流している。


青年「おい、大丈夫か!?」

タ級「ハァ…ハァ……ソノ、デキレバ…鋼材が、欲シイ」

青年「鋼材…?」

タ級「我々…深海棲艦は…鋼材デ傷ヲ癒せる…」

青年「そうか、ちょっと待ってろ」

304RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:04:39 ID:XfcmGDXI
数時間後。
とりあえずの応急処置を済ませ、意識もはっきりしたタ級が全てを話してくれた。

深海の仲間達の下へ、急いで向かった事。
誰にも見つからずに海に出て、なんとか合流できた事。


タ級「けど……ミンナは、私ヲ歓迎しなカッタ…」

青年「何故?」

タ級「ワカラナイ……突然砲撃を受けテ…なんトカ逃げテキタ…」

青年「…」


青年もなんとなく理由を察する。

もう既にタ級の見た目は当初と全く違う。
何故そうなったのかはわからないが、本当の人間の姿に限りなく近くなっているのだ。
彼女の姿を見た深海棲艦は、彼女を敵を判断したのか、或いはもう不要な存在だと判断したのか。
いずれにせよ、タ級はもう『深海棲艦』と認められなくなったのだ。


タ級「ネェ…私は、コレからどうシタらイイ…?」


涙を浮かべ、縋るように訊ねてくるタ級に、青年も考える。
しかし、何も言えない。
彼女の迷いを察してやれない程、彼も鈍感ではなかった。


タ級「もう、みんなト一緒ニハ戦えナイ……ケど、人間にナル事はデキナイ……ドウすれバイイの……」


青年の胸に顔を埋め、涙を流す。
深海棲艦でも、人間でもない、一人の少女がそこにはいた。

青年も、迷って、考えて、そして。
そっと、彼女の肩を抱いた。


青年「そうだ……それなら、こうすればいい」

タ級「……?」

305RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:05:14 ID:XfcmGDXI
時は進み、5月18日。
横須賀研究所は、対深海棲艦用に作られた特製35.6cm連装砲を仕入れる。
あまりの火力故に運用が困難とされた専用大型砲。
その特殊な艤装は、ある『一隻の艦船』に与えられる。


青年「行けるか?」

???「艤装OK、推力OK、行けマス!」

青年「よし、それじゃあ行こうか……戦艦『金剛』、抜錨せよ」

金剛「任せてくだサイ!」


連合海軍に突如としてもたらされた新たな戦力、『艦娘』。
横須賀研究所はこの日より『横須賀鎮守府』と名を変え、深海棲艦掃討の前線基地として始動する。

初代提督は、旧横須賀研究所の元主任。
そして第一号艦娘『金剛』、彼女の経歴を知る者はいない。

後に、提督はこう語る。


『艦娘ハ人ニ非ズ。愛情ニヨッテ成リ、恋慕ニヨッテ成長ス』


(完)

306RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/10(火) 21:06:27 ID:XfcmGDXI
なっが…要約力なさすぎやろワイ…
すまんな

307以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:09:52 ID:O8ZjopLw
ワイ、イベントで忙しいのに何故か突然短編を書く
ろーちゃんとグラーフがラーメン二郎に行く話やで

308以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:10:39 ID:O8ZjopLw
ろー「グラーフさんも日本に慣れてきた頃だと思いますって!」
グラ「うむ、ユーは慣れすぎだと思うが」
ろー「突然ですが、ろーちゃんは提案しますって!
せっかくなので、日本の誇る『ラーメン』を食べてみたくはありませんか!?」
グラ「本当に突然だな。まぁ、ヤーパンに来たからには食べてみるのも悪くないな。
『Andere Länder, andere Sitten.』、『郷に入らば郷に従え』というやつか」
ろー「その通り!ということで、さっそく行きましょう!」
グラ「その前にお願いだから下は穿いてくれ」

309以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:11:45 ID:O8ZjopLw
グラ「何だこの行列は!?えーと、ラーメン……何だ?」
ろー「『ラーメンジロー』ですって。ここ、いっつも混んでるんですって」
グラ(あの黄色と黒の看板……神聖ローマを彷彿とさせるいいデザインだ。
それに並んでいるのは男たち、それに皆屈強だ……
なるほど、ここは男たちが精神鍛錬のため為に長時間並び、
そしてがっつり食べて身体を作るといった趣旨なのだな。実に興味深い)
ろー「グラーフさん、先に食券買いますって! 小と大があるけど……
初めてなら小にした方がいいですって」
グラ「いや、ここは大にすべきではないか?」
ろー「えっ」
グラ「食事も自己鍛錬のうち。しっかり食べて身体を作ることも重要だ」
ろー(多分途中でやられちゃうと思うしこっそり小にしてもバレないですよね。
ろーちゃんはちょっと攻めて小ブタです!)
店員「お客様、大ですか小ですか?」
ろー「小と小ブタでお願いしますって」
店員「かしこまりましたお待ちください」

310以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:12:32 ID:O8ZjopLw
店主「二名様どうぞー」
ろー「さぁ入店です!」
グラ「うむ、失礼する…………!?」
グラ(なんだこの熱気は!?まるでサウナのような……
工廠よりもさらに熱に満ちている……そして蒸し暑い……
あの巨大な釜は!?中身は湯気でよく見えないが……魔女の釜もかくや、といったところか
……そして一心不乱に麺を食す男たち……何とも異様な空間だ……)
グラ「ユーよ、これがヤーパンの『ラーメン』だというのか。イメージとはずいぶん違うな」
ゆー「いやまぁ『ジロー』はちょっとトクベツなんだけど……」
グラ「俗に『チューカソバ』とも呼ばれるものを私は想像していたのだが……」
ゆー「あれとはかなり違いますって。ジローはジローです、はい!」
グラ「そ、そうか……」

311以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:13:28 ID:O8ZjopLw
店員「お客さんニンニクいれますか?」
グラ「わ、私か?」
店員「小ブタの方です」
ゆー「ニンニクヤサイマシアブラマシマシで」
グラ(なんだ今のは……!?呪文としか思えない文言だ……
あの大鍋に今の呪文……いったい何を呼び出すつもりなんだ!?
しかもここは鍛錬の場……ということは何か敵意を持った『ラーメン』が出てきて戦うとか、
そんなことではあるまいな!?艤装も何もない状態で戦わねばならないのか……)
店員「隣の方ニンニクいれますか?」
グラ(いや、ここは己を鍛えるためだ、挑戦するほかあるまい……!)
グラ「とびきり強いのを頼む」
店員「……?」
ゆー「ニンニクアリ普通でお願いしますって」
店員「はーい」
グラ(……………………何か間違ったらしいな、私は)

312以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:14:10 ID:O8ZjopLw
店員「はいこちら小ブタニンニクヤサイマシアブラマシマシです。
んでこちらが普通ニンニクアリです」
ろー「ダンケ、ですって!」
グラ「んなっ……!?」
グラ(なんだこれは……アルプスの峰と見紛うばかりの白いもやしの山、
強烈な刻みたてニンニクの香り、拳ほどもある肉塊……
日本人はこれを完食できるというのか!?)
ろー「いただきまーす!」
グラ(というか、ろーは一切臆しない……それどころか何だ、あの技術は。
山盛りの野菜が一瞬で消えて麺が出てきたではないか。
この一瞬で食べた……いや、ひっくり返したのか。
なかなか面白いことをするじゃないか。)
ろー「グラーフさん、早く食べないと伸びちゃいますよ? ねぇ?」
グラ(…………よかろう、私とてドイツの誇る艦娘だ。
ヤーパンの男たちにだって負けぬ屈強なゲルマン魂で、この試練を食らいつくしてやろう)

313以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:15:30 ID:O8ZjopLw
グラ「うぅ……きつい……」
グラ(舐めきっていた……!小麦とはこんなに重量のあるものだったのか……?
いや、それだけではない。
初めの単調だったただの茹で野菜にショーユをかけ、スープに浸して食べるあのほくほくした食感に
私は騙されていたというのか!? 
ああやってさくさくと食べ進め、ご褒美とばかりに肉にありつく。そこまではいい。
だが肉を食べ終えると、そこには一面極太麺の海だ。
既に野菜で顎が痛いのに、この仕打ちは苦行以外何と表現すればいいんだ?)
ろー「やっぱりヤサイ少なめの方がよかったのかなぁ」
グラ「案ずるな、この程度容易い……!」
グラ(ろーに心配されるようではドイツ空母の名折れ……!
私の誇りはこのようなところで折れたりはしない!)
ろー「おお、かっ込みますねぇ!」
グラ(さっきまでは気にならなかった背脂が、ここに来て口の中に飛び込む感覚が明瞭になってきた。
液体をずるりと重くさせている。できるだけスープを飲まずに、啜る!)
グラ(よし、どうにかなりそうだ。水を補給して……ふぅ。麺はあと半分もない。
これも一気に片付けて、残りはスープか。)

314以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:16:22 ID:O8ZjopLw
グラ(しかし、何故わざわざこんな大盛りのトッピングにするんだ?
豚骨から煮出した濃厚なスープ。普通に食べても美味そうなものだが……)
グラ(否、これはあえてやっているのだろう。
私自身が初めに気付いたではないか、これは精神鍛錬のための店であると。
確かにこれは一種の鍛錬に近いものがある。
野菜、肉、麺、スープと段階を踏んだ試練が次々に押し寄せてくる様は
航空機の波状攻撃にも似ている。そしてこの熱気立ち込める店内も
南方での戦闘に際して暑さに慣れておくためにはちょうどいい。
待機も重要な戦術だ、そのために店内を狭くして行列を作らせるのだろう。
なるほど、日本人の合理主義には見習うべき部分が多いようだ)
グラ「ごちそうさま」
ろー「おぉ……初ジローで完食完飲、すごいですって!」
グラ「この程度、精神鍛錬と思えば何のこゲッフッフフ!!」
ろー「あーすごいむせてますって!大丈夫ですか!?」
グラ「ああ……よし、帰ろうか」

315以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:17:33 ID:O8ZjopLw
アイオワ「Uh?Grafはどうしたの?」
ビスマルク「ごめんなさいね……あの子おとといからお腹下してるみたいで。
なんでもうちの潜水艦と一緒にラーメン食べにいったらしいんだけど」
アイオワ「せっかくMeの歓迎会なのに……Well,まぁいいわ。
あとでPizzaでもお見舞いに持って行ってあげましょ」
ビスマルク「あなた本当に今の話聞いてたの?」

グラ「今度はニンニク……少な目だな……(グルルー」
ろー「ほどほどにしておきましょ?ねぇ?」

おわり

316以前喧嘩望月と約束舞風書いた人:2016/05/12(木) 01:19:10 ID:O8ZjopLw
以上やで
グラーフとろーちゃんは持ってるにしてもビス子とアイオワはいなかったしキャラぶれてたらすまンゴ
ワイは二郎といえば仙台店ばっかり行っとるから皆の行きつけと違うところがあれば勘弁してや

317RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/12(木) 13:33:41 ID:XfcmGDXI
ワイ、普段あんま二郎行かんのだが、こーいうの読むと行きたくなるな
イベントとか仕事とか全部放棄して飯食いに行きたいンゴ

318RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/12(木) 22:09:53 ID:XfcmGDXI
なんとなく、短編をば



午後八時、艦娘専用大浴場の脱衣所での会話。


島風「…あのさぁ」

天津風「ん?何よ」

島風「前から思ってたんだけどさ、その下着ってどうなってるの?」

天津風「はぁ?」

島風「変な形してるよね」

天津風「あんたに言われたくないんだけど」

島風「島風はちゃんとしたパンツだよ、ほら」

天津風「ばっ…み、見せなくていいわよ…」

島風「それで、どうなってるの?」

天津風「……あんまりじろじろ見るんじゃないわよ」

島風「……」

天津風「…ほら」

島風「おぅ」

天津風「もういいでしょ?」

島風「えー、はっやーい!よく見えなかったー」

天津風「っっ〜〜……し、仕方ないわね……ほら、ちゃんと見なさい」

島風「お腹かわいー」

天津風「どこ見てんのよ、ばか」

島風「あーなるほどー、これ全部繋がってるんだー」

天津風「あんたみたいに作戦中に脱げたりしないようにしてるのよ」

島風「脱げないよー」

天津風「いっつもずり落ちかけてるのよ!あんた、自分じゃわからないからって…」

島風「いっつも?」

天津風「いっつもよ!お尻がちらちら見えてて…恥ずかしくないの?」

島風「シースルーの服着てる人に言われたくないなぁ……てゆーかさぁ」

天津風「何よ」

島風「そんなにいっつも島風のお尻見てたの?」

天津風「! な、な、何言ってるのよ!か、勘違いしないでよね!」

島風「あ、ツンデレだー」

天津風「〜〜〜!!! うるさい!」



雷「あー、またあの二人喧嘩してる」

電「いつもの事なのです」

響「喧嘩する程仲がいい…ハラショー」

暁「どうでもいいけど、お風呂入らないのかしら」


(完)

319名無しのおんJ提督:2016/05/14(土) 02:11:17 ID:O8ZjopLw
そういやここで同人活動やってるニキってワイ以外おるんやろか
イベントとかで会えたら交流とかしてみたいもんやけど

320名無しのおんJ提督:2016/05/14(土) 07:37:31 ID:AqIQMXq.
【悲報】天皇陛下、アニメを見ていたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww【画像あり】
http://waranews.livedoor.biz/archives/2468012.html

321RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/14(土) 16:08:47 ID:XfcmGDXI
>>319
ワイはやってないで
まさにここでしか活動してへん

322RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:37:30 ID:XfcmGDXI
スレにて予告してた、提督性転換SSです

323RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:38:05 ID:XfcmGDXI
大淀「提督ー?どちらにいらっしゃいますかー?」


大淀の声が鎮守府内に響く。

執務室には膨大な書類の山、港には待機したままの遠征組、潜水艦組も出撃命令を待っている。
仕事は山積みなのに、そこに提督の姿はない。
普段業務から逃げる事などない彼が姿を消している現状に、大淀は困惑を隠せずにいた。

ひとしきり鎮守府内を見回っても結局提督を見つける事ができず、大淀は思案に暮れる。
もしかしたら、深海のヤツらに身柄を拘束されたのかもしれない。
既に暗殺されているかもしれない。
最悪の想像をなんとか振り払いつつ、もう一度鎮守府内を回ろうと廊下へと出た、その時。


???「あっ、おーい、大淀ぉー!」

大淀「?」


聞き慣れない声が、大淀の耳に届いた。
振り向くと、そこには妙な顔つきの明石と、一人の少女が立っていた。

無論、明石に関しては大淀もよく知っている。ルームメイトで、仲良くしている間柄だ。
しかし、その隣の少女には見覚えがない。
明石と比べると随分小柄で、見た感じの年頃は駆逐艦娘ぐらいか。着ている服はおそらく支給品のブラウスだろう。


大淀「新しい駆逐艦の子ですか?」

???「違う!俺だよ俺!」

大淀「えっと……」


反応に困った大淀が、明石の方を見る。
明石は一瞬気まずそうに俯いたが、すぐに顔を上げた。


明石「えっと、驚かないで聞いてほしいんだけど……」

大淀「……?」

明石「この子……実は、提督なんだよね」

324RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:38:45 ID:XfcmGDXI
大淀「えー、つまり、明石さん製作のレベルリセット薬を混ぜた牛丼を食べた提督が、何故か女の子になった……と?」

明石「なんでだろねぇ」

大淀「いや、笑い事じゃないですよ、明石さん」

提督「そうだよ(便乗)」

明石「まぁ、薬に関してはまだ試作品だったから、一日もすれば効能は消えて元通りになる……とは思うけど」

大淀「その間はこの姿のままでいてもらわなければならないんですね」


むむぅと唸りながら、大淀は視線を提督に向けた。
たしかに提督だと言われれば、やや気だるそうな目付きや動きの癖などにその証拠は散見される。
しかし癖のない綺麗な髪、艶のある白い肌、そして何よりその可憐な顔立ちにはまるで提督の面影がない。
正直、大淀も驚く程の美少女だ。

とはいえこのまま普段の業務に就いても、他の艦娘への説明の手間や提督自身の仕事量を考えればキツい。
他の鎮守府に女性提督もいない事はないが、その殆どは特別鍛えて体力に自信のある人達ばかりだ。
一見したところ着任したての駆逐艦娘が如き非力な少女の姿である今の提督に、仕事を任せるのは酷であろう。

熟考の末、大淀はぽんと手を打った。


大淀「ではこうしましょう。今日は私が提督の仕事を代わりにやります」

提督「それはありがたい」

明石「私も手伝います!」

大淀「明石さんは薬品の管理を怠った罰として私の代わりに鎮守府内の掃除をお願いします」

明石「えー」

提督「残念でもなく当然」

大淀「それで、その間提督は『見学に来た余所の鎮守府の艦娘』として振る舞って頂ければ。見つかっても問題はないし、不自然ではないかと」

提督「なるほど(HMKZ)」

大淀「あと今の提督は女の子である事を忘れないでください。というか、猛虎弁を使わないでください」

提督「えぇ…わ、わかったですわ」

大淀「……ごめんなさい、無理しなくていいです」

325RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:39:35 ID:XfcmGDXI
斯くして、期せずして一日自由となった提督は、鎮守府内をぶらぶらと散策する事にした。

自分の身が女の子になった事。
それはたしかに提督自身も一度考えてみた事ではあるのだが、実際唐突に女性化すると色々と面倒だ。
いつもと違う歩幅。いつもと違う景色。
感覚も、感触も、全てが新鮮である。

その奇妙な不一致感に苛まれながらも、提督は食堂へと到着した。
そこにいたのは、


長門「ん?」

提督「あっ…」


長門だった。
その瞬間、提督の背筋にぞわっと悪寒が走る。
その理由を、提督自身もよく知っていた。


ながもん「き、きみは…? 新しい子か?」

提督「あ、えっと…」

ながもん「駆逐艦だな、そうだな、そうに違いない。うん」

提督「あー、実は、その…」

ながもん「かわいいな、きみは。そうだ、ちょっとこっちへ…」

提督「失礼します!」


慌てて踵を返す。
そのまま、提督は逃げるように食堂を後にした。


ながもん「あっ……くっ、またかわいい子を逃がしてしまった……しかしあの怯えた表情も、なかなか……」

陸奥「あなた、いい加減その性癖治した方がいいわよ?」

長門「おうっ!? い、いたのか、陸奥」

陸奥「さっきからいたわよ」

326RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:40:20 ID:XfcmGDXI
提督「ゼェ…ハァ…」


食堂から逃げ出した提督は、とりあえず外に出た。

そこではたくさんの艦娘たちが鍛錬に励んでいたり、或いは遊んだりしている。
皆、既に大淀からの通達があったようで、特に訝しむような視線を『彼女』に送る者はいなかった。
そしてその間にも、多くの艦娘たちが『初めて会う少女』に声を掛けてきた。


摩耶「おう!隣の鎮守府の子ってあんたか!よろしくな!」

鳥海「あら、かわいい子。よろしくね」

提督「あ、うん……よろしく」


龍驤「提督はなにしてるのかねぇ……あっ、おはよ」

大鳳「もう、そんな事言わないであげてくださいよ……あら、おはようございます」

提督「あはは……うん、おはよう…ございます」


川内「あっ、きみかー。うん、噂通りの美人さんだね!」

神通「もう、姉さん…ごめんなさい、よろしくお願いしますね」

那珂「今度那珂ちゃんステージも見てねー!」

提督「お、おう…」


響「доброе утро…ところで、鳳翔さんって知ってるよね?」

提督「? …え、まぁ、知ってますけど…」


金剛「この手牌ならまずドラ牌即鳴きに決まってマース!…Oh、グッモーニン!」

比叡「いえいえ!これはホンイツを目指します!…あっ、おはようございます!」

霧島「データによるとこのドラ牌は片方切ってしまった方が…あら、ようこそ」

榛名「…」ぺこり

提督「…(まーた麻雀やってんのか)」


青葉「ども、恐縮です!うちの鎮守府について、一言感想いいですか?」

鬼怒「変態カメラマンがいるって言っていいんだよー」

提督「え、えっと、みんないい人です、はい」


初月「よろしく。一緒にらぁめんを食べに行かないか?」

提督「あー、また今度、じっくりと…」


島風「おっそーい!」

天津風「待ちなさーい!」

提督「仲良いなぁ」


提督も、次第にこの状況を楽しめるようになってきていた。
今までとは違う艦娘たちの対応、言動、表情。
それらを観察するのも悪くないと思えるようになっていたのである。

もしかしたら、提督の知らない一面があるのかもしれない。
艦娘たちの素顔に近い、そんな景色。
新鮮で、そしてとても嬉しい事だった。

そんな中で。


時雨「あれ、きみが噂の子だね?」

提督「あ……う、うん」

時雨「ボクは時雨。よろしく」

提督「……よろしく、です」


秘書艦、時雨。
この鎮守府屈指の古参、水雷戦隊の一番槍、夜戦のエース。
そして、数少ないケッコン艦の一人、それが彼女だ。

327RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:41:10 ID:XfcmGDXI
時雨「わざわざお隣から来てもらって申し訳ないんだけど、大淀さん曰く今日一日提督がいないらしいんだ。代わりにボクが案内しろ、って話だったんだけど」

提督「あー…」


なるほど、と提督は心の中で合点がいった。

この鎮守府の中で、信頼して客人を任せられる艦娘といえばこの時雨を置いて他にない。
それだけでなく、もし仮に『少女』の正体がバレても大きな問題には繋がりにくく、且つちゃんと面倒を見てくれる。
そんな人物を近くに置いておく事で安心させようという大淀の考えらしい。

実際、この状況で時雨に会えたのはかなり大きい。
安心感も桁違いだ。


時雨「案内、って言ってもね。工廠の中は一応秘密にしなきゃいけないし、提督がいないのに執務室に通しても意味ないし……」

提督「……」


別にどっちも問題はないのだが。


時雨「外にいるのも辛いだろうし、ボクの部屋に来るかい?」

提督「えっ」

時雨「お茶ぐらいなら出せるよ」


ここで突然の提案に、思わず提督は面食らう。
そういえば、時雨の部屋に入る事なんてあまりない。
艦娘側から誘われない限り、できるだけプライベートに首を突っ込まないようにしている提督にとって、とても希少な体験である。
また、普段彼女がどういう生活を送っているのかにも興味があった。


提督「じゃあ……お言葉に甘えて」

時雨「うん、じゃあ一緒に行こうか」


そう言って、時雨は手を差し出してきた。
なんとなく気恥ずかしくなりながらも、提督はその手を握り返す。

いつもより大きな時雨の手が、温かく提督の手を包んだ。

328RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:41:54 ID:XfcmGDXI
時雨「お茶、どうかな。口に合う?」

提督「……うん、おいしい」


時雨の部屋は、きちんと整っていた。
武功艦であり秘書艦である彼女には個室を与えているのだが、特に内装を変える事もなく、悪く言えば殺風景である。
しかしそれがまた時雨らしいと言えばらしい光景でもあった。

提督は目の前に置かれたマグカップのお茶に口をつけながら、そんな彼女の部屋を見回した。


時雨「そのお茶、すごくおいしいよね。ボクも好きなんだ」

提督「……」


ふと、提督は机上に置かれた茶筒に目をやった。

それはかつて時雨が敵の拠点を攻撃するという大事な任務でMVPを取った時、褒賞として提督がプレゼントした物だ。
時雨の好みに合わせて、尚且つ提督自身も美味しいと思ったからそのお茶を選んだのであり、口に合わないわけはない。

ちなみにその戦闘では傷付いた仲間を庇いながら奮戦し、遂には敵中枢を破壊、鎮守府近海から南方までの制海権を奪取するに至った。
彼女の輝かしい武功からすれば微々たる褒賞かもしれないが、それでも時雨は喜んでくれた。
そんな時雨の優しさと強さが、彼女を最初のケッコン艦に選ぶに至る決定打だったのである。

しかし今提督の目の前にいる時雨は、あの時の鬼の如く激戦を繰り広げた猛者とは思えない、ごく普通の少女だ。
その優しげな表情には、どこか母性というか、包容力さえ感じる。


時雨「ん、どうしたの?」

提督「! い、いや、なんでもない…です」


いつの間にか私服に着替えていた時雨が微笑を浮かべる。
その顔に、思わず提督の顔も赤らんだ。

329RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:43:19 ID:XfcmGDXI
時雨「んー、暇だね」

提督「うん…」

時雨「提督、どこ行ったのかな」


なんとなく窓の外を眺める時雨。
その横顔を見てる内に、提督はふと思い出す。
常々訊きたかったある質問を投げかけてみた。


提督「ねぇ、時雨」

時雨「うん?」

提督「提督の事、どう思ってる?」


あまりに唐突な質問だと、自分でも思う。
時雨も、その問いかけに一瞬きょとんとした顔を浮かべていたが、すぐに笑顔に戻った。


時雨「そうだね……いっつも眠たそうで、だるそうで、無口だなって思うよ」

提督「……」


だろうな、と提督も思う。

実際、ケッコンしているとはいえ普段時雨と会話する事は滅多にない。
忙しいのもあるが、互いに沈黙を気にするような性格ではないからだ。
それに甘んじていると言えばそれまでだが、それでも彼女は全てを理解してくれていると思っていた。

しかし、ある時ふと思った。
何も言わないのは、何も思っていないのと同じなのではないか、と。
一歩踏み出さなければ、信頼を維持する事はできない。

今の自分を思えば、彼女にそう評されるのも仕方のない事だろう。
そう考え、提督は俯く。


時雨「けどね」

提督「?」


時雨は、ふふっと笑うと、優しい声で続ける。


時雨「ボクはそんな提督を見てるだけで、とても楽しいんだ」

提督「楽しい…?」

時雨「うん。仕事熱心だけど、いつもボクの事気に掛けてくれているのはわかるからね」

提督「そう、なの?」

時雨「勿論だよ。そのお茶だって、提督がボクの為に選んでくれたんだ」


その言葉に、提督は思わず驚く。

たしかにそうだ。
仕事に集中していても、常に時雨の事を頭の片隅で考えている。
今自分が立てている作戦を、時雨はどう思うだろうか。他の子で失敗した作戦を、時雨ならどうするだろうか。大規模な戦闘に臨む時、時雨ならどう戦うだろうか。

『時雨なら』

それは、ある意味純粋な信頼だ。
無論他の艦娘を信頼していないわけではないが、それでも彼女への信頼は他の子とは一線を画している。

そして、その想いがちゃんと伝わっている…。


時雨「それにね。ボクが辛い時も、悲しい時も、いつも傍にいてくれる。こんなに安心する事ってないと思うんだ」

提督「……」

時雨「……ごめん、難しかったね」

提督「うん」

時雨「まぁ…素直に言えばね。大好きだよ、提督の事」


屈託のない笑顔で、時雨はそう言った。
提督も、思わず顔が赤らむ。
彼女に気付かれないようにするのが精いっぱいだった。


その日は結局夜まで時雨の部屋で過ごし、そして時雨が寝た頃にそっと部屋を出て、執務室へと戻った。

330RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/19(木) 05:43:52 ID:XfcmGDXI
――翌朝。


提督「あぁ……戻ったわ」

大淀「よかったです。昨日の仕事は私が全て片付けましたので、今日からまたしっかりお願いしますね」

提督「ん」

明石「あっ、あと今回のレベルリセット薬ですけど、今後の運用は…」

提督「使うわけないだろ、アホか」

明石「えー」


その時、執務室の扉が叩かれた。
扉を開けて入ってきたのは、想像通り、時雨だった。


時雨「あっ、提督……戻ってたんですね」

提督「あぁ、ただいま」

時雨「おかえりなさい……あの、隣の鎮守府から来たっていう女の子、見ませんでした?」

提督「……」

大淀「……あぁ、えっと、今朝方隣の鎮守府に戻られましたよ。時雨さんに、ありがとうとの事でした」

時雨「そっか…」しゅん


時雨は目に見えて落ち込んでいる。
提督と大淀も、一瞬目を合わせる。


提督「……どうした、その子に何か用があったのか?」

時雨「ん、ちょっと、ね。言いたい事があったんだけど」

大淀「よろしければ、今度私がお隣に出向く時にお伝えしますよ?」

提督「……おい」

時雨「そう?それじゃ…ちょっと」


そう言うと、時雨は大淀を手招きする。
近づいた大淀に、時雨は耳元で何かを囁いた。

そして、一瞬提督の方を見ると、


時雨「……」


時雨は、急ぎ足で執務室を後にした。


提督「あっ…」

大淀「ふふっ♪」

提督「……なんだよ、大淀。時雨のやつ、なんて言ったんだ?」

大淀「ふふ、それはですね、」



大淀「『自分の気持ちに改めて気づかされたよ。ありがとう』ですって」

提督「……ったく…」


提督も、思わず苦笑する。
その表情を知る由もなく、廊下を走る時雨も笑顔を浮かべていた。


(完)

331RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/27(金) 02:33:28 ID:XfcmGDXI
唐突に、変な短編を

332RJ-72A ◆hU0qIpE8R2:2016/05/27(金) 02:34:01 ID:XfcmGDXI
――深海棲艦ガ、ドウヤッテ生マレテクルカ?

簡単ナ話ダ。
海デ死ンダ者ノ魂ガ、怨嗟ノ色ニ染マル事デ誕生スル。

深海棲艦トシテ生マレタ瞬間ハ、皆黒イ塊ノヨウナ姿形ヲシテイルノダ。
貴様ラ地上ノ者ガ『駆逐イ級』ナドト呼ンデイル個体ガソレニ当タル。
奴ラハ意識モ自我モナク、タダ殺戮ヲ繰リ返ス事ダケヲ考エル。
ソシテ多クノ人間ヲ殺シ、怨嗟ヲ体内ニ取リ込ム事デ姿ハ変化シテユクノダ。

殺害数ガ増エレバ増エル程、深海棲艦ハ小型化シ、人型ニ近ヅク。
我々ノ間デハ『進化』ト呼ンデイル現象ダ。
『進化』スレバ戦闘力モ上ガルシ、自我モ芽生エルシ、ソウ……私ノヨウニ喋ル事モデキルヨウニナル。

貴様ラノ言ウトコロノ『鬼』『姫』ナドヘ変化スルノハ更ニソノ先ダガ、ココデ奇妙ナ現象ガ起キル事ガアル。
ソノ領域ニ至ル程ノ強イ深海棲艦ノ内、突然『恋愛感情』ニ芽生エル者ガ存在スル。
トイウヨリ、ソウイウ奴ノ方ガ多イ。
ソウイウ奴ラハ『鬼』ヤ『姫』ニ比ベ大幅ニ弱体化シ、不要ナ存在トナル。

……ココマデ言エバワカルダロウ?
『艦娘』トハ、ソウイウ『弱者』ノ成レノ果テナノダ。
ワカルカ?
貴様ラガ戦力トシ、我ラヲ攻撃サセテイル『艦娘』ハ、元ハ深海棲艦ナノダ。

ゴク稀ニ、普通ノ人間ガ『艦娘適性』ヲ持ッテイル事ガアル。
ソウイウ奴ラハナ……フフ…生キナガラニシテ既ニ怨嗟ニ塗レタ者ダ。
不思議ダロウ?
ダガ気ヲ付ケタ方ガイイゾ、ソウイウ奴ラハ度重ナル出撃デ心身ガ摩耗スルト『深海棲艦化』スル事モアルカラナ。

ツマリ。
君達ハ実ニ無駄ナ抵抗ヲ続ケテイル、トイウ事ダヨ。
マァ、精々頑張ルトイイ。



ン、ドウスレバ争イヲ止メラレルカ?
無駄ダヨ。
マァ、敢エテ言ウナラバ……


人類ガ滅亡スレバ、イインジャナイカ?




――横須賀鎮守府、とある捕虜艦の証言より。

333名無しのおんJ提督:2016/06/26(日) 21:57:04 ID:IleeSgxg
 この話はMI作戦が目前と迫った頃のことである。

 第四次の潜水艦派遣作戦が成功したという知らせが、秘書艦の加賀に入る。加賀は大淀から任務報酬を受け取る。次いで、大淀が一連の潜水艦派遣任務の最後の任務を伝える。
「これで海外艦との邂逅準備が整いました。遠征任務成功次第、海外の駆逐艦がこの艦隊に加入します。」
「駆逐艦……ね。戦力が増えるのは嬉しいものね。ところでその遠征、また長くかかるものなの?」
「いえ、遠征自体は2時間で終わります。海外艦の方がすぐ近くに来てくれています。ただ……。」
「ただ?」
「潜水艦4隻、旗艦レベルが60が条件ですが、艦隊の合計レベルが200必要です。」
「あっ、潜水艦だけでは合計レベルが足りないわ。」
「現在の状況ではそういうことになります。ですが、潜水艦4隻さえ入れば、後2枠は他の艦娘を入れても構いません。こうすれば合計レベル200は容易に越えられると思いますが、どうしますか?」
「ということは、問題は誰を選ぶかになってくることね。」
「ええ、そうです。」
「……ちょっと考えさせて欲しいわ。」
「了解いたしました。何かあったらすぐに相談してください。」
「ええ、こちらこそ、大淀さん。」
 テーブルに座った加賀は艦娘リストをペラペラめくりながら思いに耽る。ドイツに縁が有る艦娘があればちょうどいいはずだが、思いつかない。高練度となるとなおさらのはず。私は秘書艦業務で手離せないから遠征には出られない。特に思い当たる艦がいないなら鎮守府で2番目の練度である相方を呼ぼうか、と思い彼女の名簿を眺めていると、加賀はあることを思い出した。
 そういえば赤城さん、ドイツに技術の提供をしていたような……。
 向こうで空母を建造するためのノウハウとして赤城の設計図などを渡したのだとか。彼女はもっと細かにエピソードを語っていた気もするが、私はさり気なく聞き流してしまっていたので、その空母の名前さえ覚えていなかった。でもその空母の最終的な顛末だけは聞いていた。何と未完成で終わって自沈されたらしい。私はその部分だけを妹と重ねながら聞き耳を立てていた。
 となれば決まり。早速相方を呼ぼう。
 加賀によって指揮官室に呼びだされた赤城が入室する。
「赤城さん。急ですみません。」
「いえいえ、加賀さん。私に何か用事があるために呼んだのですね?」
「もちろんよ。MI作戦直前ということもあるので、貴方には遠征に行ってもらいたいの。」
「遠征……?どういう遠征ですか……?」
「海外艦と会うための遠征ね。できれば旗艦として潜水艦達と一緒に行ってもらいたいわ。」
「海外艦……もしかして空母ですか?」
「いえ、駆逐艦ね。ドイツから来ているみたい。」
「ドイツの船ですか、分かりました。一航戦、赤城、旗艦として邂逅遠征に向かいます!」
「潜水艦たちは今もやる気満々みたい。今も港で待機しているみたいだからそこで合流ね。」
「ええ、行きます!」
「行ってらっしゃい、赤城さん。」

334名無しのおんJ提督:2016/06/26(日) 21:58:26 ID:IleeSgxg
 2時間後、無事に艦隊が帰ってきた。大淀は私に任務の成功、また報酬として海外艦の加入を伝える。
「Guten Morgen.僕はレーベレヒト・マース。レーベと呼んでくれたらいいな。よろしくね!」
「こんにちは。私は航空母艦の加賀よ。ドイツから来た駆逐艦なのね?よろしくお願いするわ。」
「私は同じく空母の赤城です。またよろしくね。」
 鎮守府の案内役を相棒に任せ、私加賀は再び秘書艦任務に戻っていった。
 
 私も秘書艦業務が終わった頃。赤城が鎮守府案内から戻ってきた。
「おかえりなさい、赤城さん。」
「お疲れ様、加賀さん。いよいよMI作戦本番が近づいてきましたね。」
「ええ、慢心は禁物ね。」
「もちろんです、加賀さん。ところで、何故私を遠征に出したのでしょうか?」
「1つは練度が高かったから。艦隊全体の練度が高いことが必要だったからね。もう1つはMI作戦直前だから。最近出撃していないから海に出てもらいたかったの。最後の理由は貴方がドイツの艦と縁があるみたいだから。かの国の空母の参考になった話しは貴方から聞いたわ。」
「そうだったのですね。確かにピッタリだったじゃないでしょうか?」
「ええ。私もそのことを思い出していたわ。でも貴方からの話、少ししか覚えていないの。赤城さんを参考にした船の名前、聞かせてくれないかしら?」
「えーと、確か、グラーフ・ツェッペリンという名前だったような気が……。うろ覚えでごめんなさい。」
「グラーフ・ツェッペリン……ね。もしかしたらいつかは会えるのかしら。」
「でも完成しなかった子ですよ、加賀さん?」
「ええ、もしかしたらかなり後になるかもしれないわ。でも私の妹も、貴方のお姉さんもいつかは来るとしたら、彼女も来ても不思議ではないと思うの。」
「そうね。その時を楽しみにしましょう。」

 MI作戦は大成功に終わった。今を生きる喜びを知った彼女達に昔の亡霊など敵ではなかった。
 そんな秘書艦加賀の今を妨げる者はまだ、いなかった。

(終)

335RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/18(木) 00:57:03 ID:rsb4/Ys.
天津風は、いつも一人だった。

幼い頃から。
望まぬ女子であった事もあり両親に冷遇され、最終的に孤児院に送られる。
孤児院でも。
他人との会話がなかなか上手になれず、友達と呼べる者は全くいなかった。

そして、今も。


天津風「……」


艦娘としての適性を見出され、海軍に入隊して。
駆逐艦『天津風』の名と、その力を与えられて。
陽炎型の一員として暮らしている。

そんな今も尚、彼女に『友』はいない。

陽炎型は孤児院や保育所から引き抜かれた寄せ集めのメンバーで構成されている。
それ故に、陽炎型駆逐艦は同郷の者同志で派閥とも言えるグループを築いており、天津風が容易く間に割って入れるような場所は皆無であった。

寮でも。
練習場でも。
遠征先でも。
そして、戦場でも。

天津風はいつも一人で駆け抜けていた。


天津風「だから……」


だから、彼女は。
港湾に陣取る要塞群を相手に奮戦し、初めての殊勲を得た今日この日に。
たった一つだけ、たった一度だけ。
提督に『わがまま』を言ったのだ。


天津風「……友達、がほしい」

336RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/18(木) 00:57:37 ID:rsb4/Ys.
島風「おっそーい!」

天津風「こらー!島風、前に出すぎっ!」


硝煙と水飛沫が舞う戦場を、二つの『風』が駆け抜ける。

彼方、白金の風――島風型駆逐艦『島風』。
此方、黒銀の風――陽炎型駆逐艦『天津風』。

艦娘としての船型も違えば、ましてや同郷の者でもない。
二人はただの先輩後輩であり……そして、姉妹以上の絆を結んだ『友』である。


天津風「島風、二時の方向に敵影!いくわよ!」

島風「はいはーい!連装砲ちゃん、やっちゃってー!」


二つの轟音が同時に鳴り響く。
完璧なコンビネーション。波間に顔を覗かせていた敵艦は、一瞬にして砲弾の下に崩れ去る。


島風「やった!」

天津風「よし、いい感じ!」


依然全速で奔りながら、並び立つ二つの船影。
お互いに一度顔を見合わせて、そして笑顔を覗かせて。
次なる目標へと吹き渡ってゆく。

337RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/18(木) 00:58:08 ID:rsb4/Ys.
明石「……まぁ、結果論ですけどね」

提督「うん」

明石「科学の発展って、やっぱり道徳とか倫理に囚われちゃいけないんだなーと、あの二人を見てると思いますね」

提督「……そうだな」

明石「……天津風ちゃんには、本当の事を伝えないんですか?」

提督「伝えられるわけがないさ」

明石「そう、ですよね……」

提督「そうさ」




提督「喩え自身のクローンであろうと、アレは彼女にとってかけがえのない『友』なのだから」

(終)

338RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/18(木) 00:59:09 ID:rsb4/Ys.
#以下が変わっちゃった…けど、久々に投稿してみた

339RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:42:29 ID:4Azsluro
ダーツのSSです

一応予備知識として
・今回やるゲームはゼロワンという物です。
・1ラウンドに3回矢を投げます。
・数字をぴったりゼロにしなければなりません。(マイナスにしたらラウンド無効)
・下のダーツボード絵を参考に、どこらへんに刺さったか考えながら見てもらうと面白いかもしれません。
http://i.imgur.com/IFn8xXF.jpg

340RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:43:01 ID:4Azsluro
鎮守府内、娯楽室。

そこは艦娘が息抜きをする為に設置された部屋であり、中には麻雀やら将棋やら色々なゲームが置かれている。
使用頻度は人によるが、多い人では毎日のように入り浸っている事もあるのだ。

そして、そんな『ヘビーユーザー』の一人には、意外な艦娘の姿もある。


瑞鶴「ほっ!」ダンッ


娯楽室の片隅。
壁際に設置されたダーツボード、その244㎝前方に立つは五航戦、瑞鶴。
片手には、迷彩柄のシャフトと細身のバレルが特徴的な、彼女のマイダーツ。
放たれた第一矢は違う事なくど真ん中…ブルへと吸い込まれる。


瑞鶴「よしっ!調子いいみたい」


そう言いながら、すぐに次の矢を右手に取る。
リズムを崩さず、いい時の波に乗りながらポンポンと投げるのが彼女のスタイルだ。

もうかれこれ一年程、毎日のように娯楽室で矢を投げている。
あまり鎮守府内に同好の士がいない事もあり、ほぼこのボードは瑞鶴の専用板だ。
翔鶴や葛城も誘ってみたが、結局長続きはせず。

少し寂しいなと思いながら。

瑞鶴は今日も矢を放る。


瑞鶴「あっ……」


そんな事が一瞬脳裏に過ったからか、矢を投げる瞬間に瑞鶴の体が僅かにぶれる。
矢は大きく外れ、ガンッという音と共に外枠に当たった。

その瞬間。


加賀「相変わらず寂しい人ですね、あなたは」

瑞鶴「!」


背後から声がする。
振り返ると、そこにいたのは瑞鶴の先輩であり、この鎮守府の空母機動部隊、正規空母隊指揮官、加賀であった。

341RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:43:45 ID:4Azsluro
加賀「熱中するのは結構だけど、周りが見えなくなるのはどうかと思うわ」

瑞鶴「……別に関係ないでしょ、加賀さんには」

加賀「そうかしら」

瑞鶴「……」

加賀「龍驤さんと将棋を指している時にダーツの音が響く身にもなってみなさい」

瑞鶴「わかったわよ、気を付けるから」

加賀「……」

瑞鶴「……」


二人は、単なる先輩後輩ではない。
師弟であり、上官部下であり、そして同じ部隊で研鑽し合う好敵手でもある。

緊張感の中、瑞鶴は床に落ちた矢を取りに行く。
床に落ちた矢を取って、そして顔を上げた瞬間。


加賀「ちょっと、どきなさい」

瑞鶴「は?」


ストン。


瑞鶴「ッ!」


鋭く飛んできた矢が、瑞鶴の頬を掠めてボードへと突き刺さった。
場所は、ブル。

一瞬、瑞鶴もひやりとする。


瑞鶴「……人に向かって投げるのは、いけないと思うんだけど」

加賀「どきなさいと、言ったわ」

瑞鶴「何ですか、挑発ですか?」

加賀「そう受け取ってもらってもかまわないわ」


その時、瑞鶴の中で何かが弾けた。


瑞鶴「……じゃあその喧嘩、買うわ。ダーツでね」

342RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:44:16 ID:4Azsluro
斯くして。
瑞鶴 対 加賀のダーツ対決が始まった。


瑞鶴「ワンセットだと長いんで、501マスターアウト一本勝負でいいわよね」

加賀「お好きにどうぞ」


イラッとしながらも、台のゲームモードを選択する。

お互いの持ち点を減らし、ちょうどゼロを目指すのが501の基本ルールだ。
マスターアウトは、最後の一投をダブル、トリプル、ブルに入れなければならない。
正確性は勿論、計算力も求められる。

ゲームがスタートした。


瑞鶴「あたしからね」


有無を言わさず、瑞鶴がスローラインに進む。
右前、クローズドスタンス。
スリーフィンガー、手首は柔らかく。
狙いをつけて、小さなテイクバック。

全て、決まりきった瑞鶴の形。
矢はぶれる事なく、まっすぐに飛ぶ。


瑞鶴「ふっ!」


タンッ、タンッ、タンッと素早く三投。
ブル、ブル、17シングル。
計117でロートン。


瑞鶴「ま、いい感じね」

加賀「……」


次いで、加賀の投擲。
右前、ミドルスタンス、前傾。
スリーフィンガー、人差し指が立つ。
狙いをつけて、鞭のようなスローイング。


瑞鶴「……!」


その姿は、自然体なようでいて確実。
瑞鶴には、光輝く星が見えた。

矢はストンストンストンと突き刺さる。
20トリプル、20シングル、20トリプルの順で。
計140、同じくロートン。


加賀「トン80にはならなかったようね」

瑞鶴「ッ……もしかして、やってたの?ダーツ……」

加賀「あなたがこの鎮守府に来る前から、このボードはあるのよ」

瑞鶴「……」


思わず息を飲む。
ダーツでなら、加賀を叩きのめせると思っていた瑞鶴にとって、それは誤算だった。

気の抜けない勝負になると確信した瞬間、瑞鶴の頬に冷や汗が流れた。

343RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:44:55 ID:4Azsluro
2ラウンドは加賀95、瑞鶴111。
3ラウンド、残りはそれぞれ加賀266、瑞鶴273。

瑞鶴の投擲はブル2含む119。
残り154、次ラウンドで20トリプル二つと17ダブルを狙う立ち位置だ。


加賀「あなたは随分とブル狙いがお好きなのね」

瑞鶴「……そういう加賀さんも、20トリ狙いすぎでしょ」

加賀「そうね、それじゃあなたの真似でもしましょうか」

瑞鶴「?」


加賀がスローラインに立つ。
そして、


加賀「……」

瑞鶴「!」


立て続けに投げられた三つの矢は、紛う事なくブルを突き刺した。
ハットトリック。
計150で、残りは116。


瑞鶴「うっそ……」

加賀「鎧袖一触よ」


この数字からならば、容易くあがりを狙える。
瑞鶴は追い詰められた状態だ。

344RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:45:27 ID:4Azsluro
運命の4ラウンド目、瑞鶴がスローラインに立つ。


瑞鶴(ブルに当てたら足りない…正確に20トリ狙わないと……)


切迫。
鼓動が高鳴り、唇が渇く。
先ほどより高く、狙いをつけて。
第一投。


瑞鶴「っ!」


僅かに浮いたが……見事、20トリプル。

ほんの少し、瑞鶴の表情が緩んだ。
しかしまだ気は抜けない。
残り94、やはりここもブルではなく20トリプルを狙い、三投目も17ダブルに当てる必要がある。
或いは18トリプルで40残し、20ダブルを狙ってもいいが、18を狙う事でリズムが崩れると再度20を狙うのは難しい。

やはり20トリプルか。
再び表情を引き締めて……


瑞鶴「ふっ!」


矢を放つ。
しかし。


瑞鶴「あっ……」


矢は、僅かに左へぶれた。
5トリプル。
残り79、これでこのラウンドでのあがりはなくなった。

そうなれば、次で加賀はあがってくるだろう。


瑞鶴「……」

加賀「早く三投目を投げなさい」

瑞鶴「……くっ」


狙いはつけなかった。
当たったのは7シングル。
残り72で4ラウンド目終了。

345RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:45:58 ID:4Azsluro
加賀「もらったわね」

瑞鶴「ふん……」


4回目のスローラインに立つ加賀は、余裕の表情だ。
その横顔を見て、瑞鶴は思わず唇を噛む。

いつでも、そうやって。
その表情で。
彼女は悠然と海を駆け、敵を討ち、そして帰って来るのだ。


加賀「……」


ストン。
ブルへ命中、残り66。

瑞鶴にとって、加賀という存在は。
憧れであり、且つ巨大な壁でもあった。
今も尚、彼女の背中には追い付かない。
何歩も、何十歩も先を行く存在だ。


加賀「……」

瑞鶴「……」


ストン。
同じくブルへ、残り16。

本当は、隣に並びたかった。
彼女の隣で、共に戦場を駆けたかった。
しかしいつも、遅れてしまう。
憧憬も、嫉妬も、届かない。


瑞鶴「うぐ……」


そして、形を変えて戦っている今も。
彼女には敵わない。
自信があったはずの事でさえ。

虚しくて。
悲しくて。
悔しくて。

瑞鶴は、いつの間にか泣いていた。


加賀「……」


そんな瑞鶴の姿を。
顔を伏せたまま、肩を震わせるその姿を。
横目で見つめたまま、加賀は8ダブルへと狙いをつけた。

ストン。

346RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:46:29 ID:4Azsluro
加賀「……あら」

瑞鶴「?」


バリーン、という安っぽい効果音。
ダーツボードの上、液晶画面にはBURSTの文字。

瑞鶴は思わず顔を上げ、ボードを見つめた。
加賀の第三投は、僅かに8ダブルの下――16ダブルへ突き刺さっている。
数値は-16。
数値オーバーにより、ラウンド無効。


瑞鶴「へっ……?」

加賀「あなたの番よ、瑞鶴」

瑞鶴「!」


名前を、呼ばれる。
涼しげに、いつも通りの口調で。

その声に、瑞鶴の涙が消し飛んだ。


瑞鶴「……やってやろうじゃねえかよ!」

347RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:47:14 ID:4Azsluro
結果。
瑞鶴の矢は18ダブルに二回、的確に突き刺さった。

瑞鶴の勝ち。


勝負が終わり、二人はテーブルを挟んでソファーに腰を下ろしていた。
加賀はいつも通り淡々とお茶を啜り、瑞鶴は表情を引き締めながらも……嬉しさを隠し切れないでいる。


加賀「負けました」

瑞鶴「あの16ダブル、手加減したんじゃないでしょうね?」

加賀「……私は、あなたに手加減した事など一度もありませんが」

瑞鶴「!」

加賀「……私についてこれるのはあなたぐらいしかいないのよ。しゃんとしなさい」

瑞鶴「……ずるいわよ……もう」


今日も、日が落ちる。
いつも通りの鎮守府で。


(終)

348RJ-72A ◆4x.BscqYyY:2016/08/30(火) 22:48:52 ID:4Azsluro
めっちゃ長かった…クリケットにしなくてよかった。

書き忘れてた予備知識その2
・ボードの外側の赤緑部分がダブル(得点x2)、内側の赤緑部分がトリプル(得点x3)です。
・真ん中がブル、50点です(ルールにより25点部と50点部あり、今回は統一)

349名無しのおんJ提督:2017/02/05(日) 03:52:10 ID:AHp3Dggc
てす

350ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:53:16 ID:AHp3Dggc
ジョジョ×艦これ、始まります!

351ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:53:51 ID:AHp3Dggc
陸奥「悪霊〜?」

長門「うむ」


戦艦寮は一人一人個別の部屋が与えられている。
しかし今、陸奥は長門からの呼び出しを受けて彼女の部屋にいた。
そして、唐突すぎる話を切り出されたのである。


長門「ついさっき、那珂がCD配っていただろう?」

陸奥「ええ」

長門「そのCDを開けてだな、手に取ってみたらこの様なのだ」

陸奥「……」


陸奥が黙って見上げる先。
長門の背後に『それ』はいた。
筋骨隆々の大男が。


長門「名付けて、『クレイジーダイヤモンド』!どうだろうか」

陸奥「そ、そう……別に悩んでるわけではないのね」

長門「うむ、かっこいいだろう?こいつは私の命令に忠実に動いてくれるのだ」

陸奥「え、ええ……そうなの」

長門「陸奥もたしかCDをもらってただろう?開けてみてはどうだ?」

陸奥「……まぁ、考えておくわ」


陸奥はただ、複雑な表情を浮かべるしかなかった。

352ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:54:25 ID:AHp3Dggc
陸奥「ふぅ……」


長門は妙に子供っぽいというか、無邪気な所がある。
今回の件も、困惑したり拒んだりする事もなく受け入れている。
普通なら、正体不明の悪霊が出たら大騒ぎしそうな物だが。


陸奥「……」


それはともかくとして。
陸奥の手には、件のCDがあった。
那珂が配っていた、謎のCD。パッケージには何も書かれておらず、ディスク自体にも何も書かれていない。
普段の那珂なら新曲発表と称した路上ライブの後にCD配布を行うのだが、今日に限って那珂が歌っていたのは『ハレルヤ』だった。
それが妙に不気味で、結局もらったCDを開けていなかったのだが…。


陸奥「よし……」


陸奥は、意を決した。
パッケージを開け、ディスクを手に取る。

その瞬間。


陸奥「!」


突然、ディスクが陸奥の手に突き刺さった。


陸奥「なっ……」


文字通り、貫通している。
しかし痛みはなく、むしろ体の内から何かが沸き出すような感覚があった。


陸奥「なに、これ……!」


そして、ディスクはゆっくりと溶解していき――。
一瞬の後に、陸奥の目の前には謎の『モノ』が立っていた。


陸奥「ッ!」


陸奥は慌てて後ずさる。
『それ』は、まるで感情などないかのような双眸と、妙に艶のある薄桃色の体を持っている。人型だが、到底人には見えなかった。
陸奥は咄嗟に、近くに置いてあった小銭を掴み、『それ』へと投げつける。
『それ』はそれを右手で受け止め、それからポイと放り投げると――。


陸奥「!」


直後に、小銭が爆発した。

その瞬間、陸奥は『知っていた』。
何故かはわからないが、彼女は本能的に『そいつ』が何者なのかを理解したのだ。


陸奥「……『キラー…クイーン』……」


陸奥の呟きに、『そいつ』は応えるように頭を垂れた。

353ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:55:29 ID:AHp3Dggc
――翌朝。


長門「陸奥……お前、随分と趣味が悪いんじゃあないか?」

陸奥「仕方ないでしょ……出ちゃったもんは出ちゃったんだから……」


鎮守府内は、とんでもない事になっていた。
駆逐艦から戦艦まで、ありとあらゆる艦娘に『悪霊』が発現していたのである。

陸奥を含む全ての『悪霊憑き』は、それが一体何なのかを本能的に理解していた。
それは『スタンド』。
自身の精神が具現化した、一種の特殊能力である。


長門「……これは一度、那珂に『教育』しなくちゃあならないみたいだな」

陸奥「ええ、でもどうすれば『スタンド』を消せるのかも聞き出さなくちゃ」

長門「? 消すのか?」

陸奥「え?」

長門「これがあれば、深海との戦いも有利になるだろう。私はこいつを『使って』いきたい」

陸奥「あ、そう……いや、それは勝手だけど……」


しかし、異常な光景である事に変わりはなかった。
例えば鎮守府随一の実力者である正規空母・加賀には、小さなスタンドの軍隊に取り巻かれている。加賀はそれを『バッド・カンパニー』と呼んでいた。
工作艦・明石には、金色の体が特徴的な人型のスタンドが憑いている。曰くその名は『ゴールド・エクスペリエンス』。
そんなスタンドに溢れた鎮守府の風景はまさに『異様』としか形容できない。

陸奥は食堂でぼんやりと、これからどうするべきかを思案している。
消すにせよ使うにせよ、当の那珂が遠征でしばらく帰らない今、どうする事もできない。
『触れた物を爆弾にする』という危険すぎる能力を持ってしまった陸奥は、ただスタンドが暴走しないよう努めるしかないのだ。

と、その時である。


??「大変だー!電のスタンドが暴走したー!」

長門・陸奥「「!?」」

354ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:57:00 ID:AHp3Dggc
電「は、はわわわわわ…!」


声のした、駆逐艦寮の方へ長門と陸奥が向かうと……そこは惨状となっていた。

あらゆる物が溶けている。
木でできた家具や床板は腐り落ち、無機物も殴られたように捻られている。
駆逐艦娘の中には被害を負った者もいるようで、腕や脚が壊死しかけている凄惨な子もちらほら見受けられた。
長門が『クレイジーD』の能力でそれを治癒しつつ、二人は現場である電の部屋へ辿り着く。

そこには、紫色のスタンドがいた。
涎を垂らし、完全に理性を失っているようだ。


長門「陸奥!電を救助できるか?私はアレを止める!」

陸奥「わ、わかったわ!」


陸奥が駆け出すと、そのスタンドが反応する。
しかしその拳が陸奥に向けられるより早く――


長門「させるか!」


クレイジーDが紫スタンドの拳を掴んだ。
両手首を握り、そして長門は理解する。


長門「なるほど……毒のカプセルか」

??「うばしゃああああああ!!!!」


紫スタンドは抵抗するが、クレイジーDは長門以上のパワーを持っている。
到底逃げられるはずはない。

その間に、陸奥は部屋の隅に縮こまっていた電に到達した。


陸奥「大丈夫?怪我はない?」

電「だ、大丈夫なのです……ご、ごめんなさいなのです……」

陸奥「あなたのせいじゃないわ――けど、ドジっ子には過ぎたスタンドね……」

電「あ、あのお化け、『パープルヘイズ』っていうらしいのです」

陸奥「『紫煙』ねぇ……ともかく、一旦部屋から出るわよ」


陸奥は電を抱えると、来た道を戻っていく。
途中長門の背後を抜けて、そのまま廊下へ飛び出した。
そこで怯えながらも待機していた雷に電を託すと、陸奥は再び室内へと目をやる。

長門は――『パープルヘイズ』の腕を受け止めてはいるものの、膠着状態が続いていた。
クレイジーDの力を以てすれば、その腕をへし折るのは容易いだろう。
しかし長門も陸奥も、本能的に理解していた。


陸奥(もしあいつの腕を折ったら……きっと、本体である電ちゃんの腕も……)

355ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:58:04 ID:AHp3Dggc
長門(さてと、どうしたものか)


長門も、至近距離でパープルヘイズの瞳を見つめながら、自問自答する。
如何にして、電を傷つけずにコイツを無力化するか。
要するに、一旦行動不能にしてしまえばいい。
何か――毒で溶解しない無機物で封じられれば。

同じ事を、陸奥も思案していた。
だが奴を止めるには、かなり分厚い金属で拘束してしまうしかない。


陸奥「!」


その瞬間、陸奥は気付く。
雷と電の方に振り返り、咄嗟に問いかけた。


陸奥「ねぇ、二人とも……今、演習用の魚雷筒はあるかしら?火薬が抜かれているのがいいんだけど」

雷「た、たしか電、持っていたわよね!?」

電「そ、そこの布団の上にあるのです……」


電が指差した先。
それは長門とパープルヘイズが睨みあっている場所より奥にあるベッドだった。
確かに、そこに金属の筒が見える。


陸奥「最高よ…!『キラークイーン』!」


それをしっかりと確かめて、陸奥はキラークイーンを発現させた。
キラークイーンは主の意図をしっかり読み取り、室内へ駆け出す。

陸奥のスタンドがこちらへ――正確にはその更に奥へと向かっているのを視界の端に見た長門は、


長門「……! 成程、わかった!」


陸奥の意図する事を、理解した。

キラークイーンがベッドへ到達する。
その右手が魚雷筒へと触れた。


陸奥「行くわよ、長門!」

長門「ああ……いつでもいいぞ!」

パープルヘイズ「うばあああああ!!!!!」


任務を遂行したキラークイーンは即座に陸奥の下へと戻ってくる。
そして、右手を伸ばした。

356ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:58:37 ID:AHp3Dggc
陸奥「いけっ!」


カチッという音が響く。
何かのスイッチが入ったかのようなその音がキラークイーンの右手から聞こえた――その直後、


ドガンッ!


魚雷筒が爆発した。


長門「うぉおおおお!!!!」

クレイジーD「おおおおおおお!!!!」


それに合わせて長門とクレイジーDが叫ぶ。
そして全身のパワーを込めて、パープルヘイズを投げ飛ばした。


パープルヘイズ「!?」


パープルヘイズの体は爆発四散した魚雷筒の方へ飛翔し――


長門「今だぁああああ!!!!!」

クレイジーD「ドラララララララララ!!!!!!」


クレイジーDのラッシュを浴びた。

その拳に込められた能力は『修復』。
喩え爆発された物でも、元通りに直す事ができる。
パープルヘイズを魚雷筒の中へと閉じ込める形で!


パープルヘイズ「うばああああ!!!!!」


――そして、紫煙の猛威は魚雷筒の中に封じられた。

357ながもんの奇妙な冒険:2017/02/05(日) 03:59:08 ID:AHp3Dggc
長門「……ふぅ」


戦いは終わった。

長門がクレイジーDを引っ込める。
陸奥も、キラークイーンを消す。
あとは、ぽかんとした顔で戦況を眺めていた電と雷だけが残った。


長門「とりあえず、急場しのぎだがこれで封印はできたな」

陸奥「ええ……長門、私の考えを読み取ってくれてありがとう」

長門「ふふ、造作もない」


その時、電がおずおずと声を掛ける。


電「あ、あの……ありがとう、なのです」

長門「ああ、お礼は後で私の部屋で…むぐ」

陸奥「いいのよ。後で私たちと一緒に掃除しましょうね」

電「は、はい!今からみんなに謝ってくるのです」


そう言い残して、電はぱたぱたと駆け出した。
雷もその背中を追いかけて去って行き、長門と陸奥が残された。


長門「ぷは!……まぁ、とりあえずこれで一件落着、だな」

陸奥「ええ、けど……このスタンド絡みのトラブル、まだまだ続く可能性があるわね……」

長門「……確かにな」


二人には、何か言い知れぬ『予感』があった。
その予感が当たらない事を、今は祈るしかなかった。

(第一話、終)

358名無しのおんJ提督:2022/01/28(金) 22:57:08 ID:fpd4SejQ
テスト

359名無しのおんJ提督:2022/01/28(金) 23:15:25 ID:2KsGjtDI
てす

360名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 00:00:55 ID:CGUG4iBM
てst

361名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 00:42:25 ID:CGUG4iBM
「久しぶりーお兄ちゃん!」
中央線の駅の改札の向こうに僕の妹、早波が現れこちらにあ手を振っているのを見つけた。
半袖の薄い橙色のか生地に丸で模様が描かれたワンピースを着ていて見ていて涼しげでよく似合っていた。
久しぶりに兄と出会えた喜びからか、早波は手に持っていたキャリーケースを改札機にひっかけて台の上の玉が転がるように躓きそうになっていた。
僕が慌てて近付く頃には無事改札を通って、子供のようにこちらに飛び込んで来た。少し恥ずかしかったが、久しぶりに妹の笑顔を見てこちらも顔が綻んでしまう。
早波も公衆の面前で躓きそうになったことが恥ずかしかったのか頬を少し紅く染めていた。

「久しぶり。元気してたか?」
「元気だったよ!早波ね、高校生になったの!それからね!」
可愛い妹が続けようとするも、僕はここが改札前であることを思い出し邪魔にならないよう早波を出口へと促した。歩き始めた僕は以前会った時はまだ中学生であったことを思い出し、時間の流れを感じた。しかし、さっきみたいな早波のおっちょこちょいは高校生になった今も変わらないらしかった。

静岡から東京への大冒険を果たした早波はタピオカドリンクを所望したので、僕がよく行く喫茶店に行くことにした。そこは少し古い店だったがブームに乗じて最近取り扱いを始めていた。
「ここまで遠かっただろ?迷子にならなかったか?」
「えっとね。途中までお母さんに送ってもらったの」
早波の話を要約すると新幹線を乗り過ごさないよう母が熱海駅まで車で送って改札まで着いて行ったそうだ。早波が今回の旅行を心待ちにしていたのは両親にもありありと伝わったらしく、慌てんぼうの早波が無事新幹線に乗れるよう気を配ってくれたらしい。

高校生の妹である早波が東京に行きたいと言い出したのは夏休み前のことだった。なんでも好きなアイドルグループのライブチケットが当たったらしい。こういう場合は親と東京に行くのが通常であろうが、そうもいかなかった。運輸業の会社で働く母と父は繁忙期を迎えておりとても休むことなどできなかったのである。
東京観光には賛成であるが女子高校生一人で東京は危険である、そう両親は判断したため東京で一人暮らししている僕に白羽の矢が立った。また、両親とも都内の大学を卒業しており娘を東京に送ることには抵抗がなかったらしかった。

「母さんと父さんは元気か?」
早波の話を聞いている間に母と父のことが気になった。最後に帰省したのは年末年始で、春休みはゼミの合宿やら課題やらでそれどころではなかった。もう半年以上会っていない。
「お母さんもお父さんも元気だよ!ちょっとお仕事忙しそうだけど…」
早波は少し寂しそうに言うと、僕も母と父が恋しくなってきた。僕は改めて両親からの学費や一人暮らしの援助に感謝しつつ夏休み中には必ず帰ろうと決心したのだった。

362名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 00:43:00 ID:CGUG4iBM
喫茶店でタピオカドリンクとホットサンドを楽しんだ僕達は、途中スーパーに寄って食料やらジュースやら買ってから僕が根城としているアパートへ向かった。

「わぁー!ここがお兄ちゃんの部屋!」
8畳程の広さのワンルームで台所とユニットバスが付いたよくある部屋だったが早波には物珍しいらしく、あちこち嗅ぎ回るように見て回っていた(ちゃんと掃除しておいて良かった)。

「恥ずかしいからあんまりみないでくれよ」
「ごめんなさーい」
と言つつやはり部屋の小物や装飾が気になるのかソワソワしていた。
「汗かいただろ?シャワー浴びて来いよ」
「じゃあお言葉に甘えて!」
早波がキャリーバッグを開けて中を物色しているのをなんとなく見ていると、急に顔だけこちらに向けた。
「恥ずかしいから向こう行ってて!」
僕は気圧されて逃げるように廊下に出た。そうだよな、早波も年頃の女の子だよなと妹の成長を嬉しいような少し残念なような複雑な気持ちと共に感じる。昔はよく一緒にお風呂に入ったのだが…。

早波がシャワーを浴びている間に僕は晩御飯の用意をしていた。と言ってもスーパーで買ったお惣菜とパックサラダを皿に盛り付けるだけなのだが。しかし、食事と言うのは見た目も大切で、同じ料理でも見た目が違うだけで味や満足度は変わるものだ。
お米が炊けて茶碗によそいインスタント味噌汁と皿に盛り付けられた惣菜達をリビングのテーブルに並べ終わるとちょうど早波のシャワーが終わったようだ。
「お兄ちゃんシャワーありがとう」
「おう、ちょうどご飯できたから…」
振り返りながら言った僕は呆気に取られた。早波が浴衣姿で僕の部屋に現れたからだった。2色の紫のモザイク柄の生地にところどころ藤の枝や花をあしらったデザインだ。帯は後ろで結ぶタイプではなく前でリボン結びにするタイプのものだった。髪はまだ少ししっとりしているように見えた。
「どうかな?」
早波の言葉でやっと我に返った僕は「…よく似合ってる」とありきたりな感想しか出なかったけれども、この紫色の綺麗な浴衣は確かに早波に良く似合っていた。
少し照れながら笑っている早波が座布団に座ると2人でいただきますをして、改めて互いの近況報告を行った。


そして話題は転じて今回の旅行の話になった。早波の東京旅行は10日間だった。
当初の目的であるアイドルグループのライブは八日目でそれまでは大学のオープンキャンパスや若者の街で買い物をする予定らしい。
「それでね、明日はお兄ちゃんの大学に行こうと思ってるの」

起:早波登京
承:早波が微睡んでるお兄ちゃんにキス
転:
結:

363名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 00:47:48 ID:CGUG4iBM
長くて書き込めなかったから分割したドミ

転の部分でライブを見に来たって設定を使うのととこの2人にセックスさせたいんやけどどうすればいいかね?
一応夕立に振られるっていうベタなの考えてるけど

364名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 08:25:11 ID:fpd4SejQ
>>363
どうでも良いけど、上京やぞ
2つ目は流石に一行長すぎや
もう少し改行したほうが良い
で、近親相姦か…。そもそもこの早波は艦娘じゃないんだよな?
この世界に鎮守府はあるん?
あるんだったら例えば鎮守府の召集はかかる、無いんだったら夕立に振られるのと何か一つ欲しいわね

365名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 12:49:43 ID:CGUG4iBM
>>364
ID違うけど>>363
改行とか登京とかサンガツ
現パロだから鎮守府はないわね…。2019年のこの世界に早波がいる感じや。
近親相姦だからセックスのハードルが高くて難しい。

366名無しのおんJ提督:2022/01/29(土) 13:39:30 ID:fpd4SejQ
>>365
まあ正直、エロさを求めるんだったらあんまり前フリされてもちんこが保たないから都合良くするか
ワイはあくまで過程を求める、って言うんだったら、夕立に失恋以外にやっぱりもう一個理由がほしいよな

367名無しのおんJ提督:2022/03/20(日) 03:52:22 ID:1f6YGPpE
秘書艦業務は提督を独占できる時間が作りやすい。早朝から髪を整えて提督の寝室に向かおうとしてる自分がまさにそうだ。この日ばかりの恩恵に預かろうとしてる。
「失礼します…ね」
襖を開けて布団に静かに近づき、枕元に座りながらしばらく寝顔を見つめる。
(あぁやっぱり、まだお休みでしたか)
普段の張り詰めた雰囲気とは違った無防備な、穏やかな表情。この時だけ見せてくれる姿。そう思うと心の底から愛おしく感じる。
「んぅ……」
(寝顔を見るなんてわたし、なんだかいけないことをしてるみたい)
少しだけ口角を上げながら提督の頭を撫でると、ふわっと優しい香りが鼻腔を刺激する。その匂いも大好きだったりする。
そのまま手を頬に滑らせていき、柔らかい肌触りを楽しむ。起きる気配は全くない。
(もうすこし近くに…)
ドキドキと高鳴る鼓動を抑えつつゆっくりと体を近づけていく。自分の吐息がかかるくらいの距離まで近づくと提督の顔がよく見えるようになった。
「………………っ」
自分の鼓動が提督を起こしてしまわないように胸を押さえつけているけど、それでもドキドキする気持ちは抑えられなかった。
(……)
とくん。とくん。とくん。とくん。
心臓の音がうるさい。でもそれが心地いい。提督の唇に触れている快楽の中、不思議な穏やかさに包まれた。
「はっ…はっ…はっ…」
小鳥の囀りとともに朝日が差し込む部屋の中で荒い呼吸を繰り返す。
(わわわわわたしなにを⁉︎なんてことを!!︎いま提督にキ、キスしたの⁉︎やあああどうしようどうしたら!!??)
混乱する頭を抱えながらも無意識のうちに唇を指先でなぞっていた。


「え…」
布団の上からでも分かるくらい膨らんだモノがある。恐る恐る思いながらもやはりそれは男性特有のアレだった。
(キスしたから…⁉︎あんなにせり上がって…どうしよう!)
どきん。どきん。どきん。どきん。心臓が跳ね上がるたびに、自分の体が熱くなる。
「んぅ……」
提督の声を聞くだけでドキッとする。
「あっ……」
布団越しに触れるとビクッとした感触が伝わってきた。
(これって朝勃ちよね……。初めて見た……)
ごくりと唾を飲み込み、ゆっくりと布団をめくっていく。そこにはパンツからはちきれんばかりの男性器があった。
(これが……提督のおちんちん..)
まじまじと見つめてしまう。もっと見たい。触りたい。そんな欲望が生まれてくる。
そっと手を伸ばして触れるとピクンと震えた気がした。
「んっ……」
再び声をあげる提督に思わず手が止まる。
(これを処理するのもわたしのお役目……ですよね…提督)

368名無しのおんJ提督:2022/03/20(日) 03:53:21 ID:1f6YGPpE
無理矢理納得させながら触れ続けると次第に先っぽからは透明な液体が流れ出し始めた。
(すごい……こんなになるんだ……)
興味本位で指で優しく撫でてみる。
ぴくっ。
反応するように動いたのを見てさらに撫でてみるとまた動く。
(かわいいかも……)
愛おしく思うと撫でるだけでなく頬ずりしていた。どんどん液の量が増えていく。
(これは……舐めた方がいいのかしら……)
ごくん。と喉が鳴る。
(はぁ…♡なんていやらしい臭い)
恐る恐る舌を出して先端をぺろっと舐めると少ししょっぱかった。味わうように何度も舐める。
(おいしい……♡)
段々と臭いが濃くなっていく。その度に頭がクラクラしてくる。夢中でしゃぶりつく。だんだんと口の中に苦みが広がり始めてきた。
じゅるるるるるる
(あぁこの匂い……ずっと嗅いでられる……臭さがクセになります……♡♡♡)
下着の上からでは物足りなくなり、直接触れたくなってきた。意を決して脱がせる。
ブルン‼︎
勢いよく出てきた肉棒に驚く。
(こ、これが提督のおちんちん…!おっき……すぎ…すご…♡)
両手を使って優しく握る。熱いくらいの体温が伝わってくる。脈打ちながら大きくなっていくのを感じると嬉しくなった。
気づくと先っぽに吸い寄せていた。ちゅぱっ。という音とともに口から離すと糸を引いていた。
(提督のおちんちん……いただきます……♡)
すっかり発情してしまった私は今度は口に含んでみた。
「んっ♡」びくんと動く。
ぢゅぽっ♡ぢゅぷっ♡ぢゅるるるるるるるるるるっ♡ 卑猥な音をたてながら激しくストロークしていく。
(腰をビクビクさせて、気持ちいいんですね?もっとご奉仕いたしますから、いっぱい気持ちよくなって…♡)
「ふーっ♡ふーっ♡」
「はっ……♡あっ」

頭を撫でられているような感覚がして、思考が一瞬止まった。
「朝っぱらからがっつきすぎだぞ」
「!?︎」
いつの間にか起きていた提督は呆れたように愛おしそうに私の頭を撫でていた。
「お仕置きが必要だな」
(お仕置き……おちんちん…しゃぶれない…)
そんな風に思った私は提督のおちんぽを口に入れたまま腰に手を回した。
「おい、涼…」
「んっ……♡」
返事の代わりに強く抱きしながら口をすぼめて吸った。
がぼっ!ぐぽぉっ!
「うおっ」突然の刺激に耐えられなかった提督は思わず声を上げた。
「んむっ♡」
ぐぽっ!がぽん!
「涼月……まっ……離せっ、このままだと」
「んっ……んっ……んっ……♡」
提督の静止を無視して続けていく。
「はっ……♡はっ……♡」
「はぁ……はぁ……」
「んっ……♡んっ……♡んっ……♡」
「くぅ……!もう出る!」
どぴゅーっ!!︎どぴゅるるるるっ♡♡♡「〜〜〜ッッッ♡♡♡」
大量の精液が吐き出され、口の中を満たしていく。
(のど…奥に出てる…♡すごい量…私の身体で……♡)
提督が射精した瞬間、私も絶頂を迎えてしまった。
(うれしい…♡わたしもイッちゃいました……♡)

369名無しのおんJ提督:2022/03/20(日) 03:55:02 ID:1f6YGPpE
Aiのべりすとで作ったから垂れ流しとくわ(事後報告)


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