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【ネタのメモ帳】文章置き場
1
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 21:55:21
思いついたネタや文章を保管しておく場所です
ここからネタを拾って本編に生かすのも大アリ
2
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 21:55:57
せっかくかいたからっとっとこ
「NEWDIVIDEはどんなカードを持っているのか?
手札がわからないいじょうは大人しく従っているほかないのかも知れないが…。
腑に落ちないこともある。…俺たちは事故で死んだのか。それとも殺されたのか。
もし殺されたのだとしたら殺した相手を生かしておくべきなのか?」
廃ビルの屋上には猫の缶詰があちこちに置いてあり何匹かの猫がむぐむぐと赤茶色の肉の塊を食べている。
「……」
新聞紙から目を離して猫たちを見るヴァン。
彼は何気ない風景にヒントが隠されてはいないものだろうかと常々思っていた。
3
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 21:57:11
30 :黎土羅武 ◇qaFFsscyZY:2010/09/03(金) 19:06:44 0
ある昼下がり、緑のブレザーを着た少年が坂道をスキップしながら下っている。
彼の名は黎土羅武。女性のような容姿に低身長なのを除けば普通のぶどうが浜高校の普通科2年次。
降りたところには古いプラモショップが建っていて彼はそのまま足を運んだ。
中には整然と棚に収められたプラモの数々。奥のレジでは老店主がにこやかな表情で
客を招き入れた。
「久しぶりだね羅武坊ちゃん。今日は何を買っていてくれるのかな」
「後ろの棚のを頼みます。…そうHGのザザビーの斜め横…M107の真下です。そのB-29が欲しくて」
「――何で包みましょうか」
「一番濃い赤の包み紙で。シールはタカラトミーでお願いします」
指示通りの品を取ると馴れた手つきで素早く包みこんで、すでに精算も終えていた。
年老いても現職というわけだ。
「5078円になります」
財布から無造作に札をひねり出すと直接手渡した…20万分の福沢諭吉を。
無言で受け取った店長はそれをレジに入れずデスクの裏ポケットに放り込んだ。
「また来てね」
「ええ、もう少し景気が良くなりましたら」
軽く会釈すると足早に店を去った。
***********************************
包み紙の裏にはいつもどおりメモの切れ端が挟まれている。
“頼まれていたHPM(High-Power Microwave) bombだ。約束通りのモノを部下たちに作らせるのは大変で、
何年か振りに徹夜したと散々愚痴られた。
使用法は簡潔。設置箇所から(特殊な電波がなければ)半径2キロ以内でリモコンのボタンを押すだけで
100フィート内の電子機器はオシャカになってしまう。
使用目的は?とか野暮なコトは聞かんが気をつけておいてくれよ。
最近やたら『オレンジのニオイ』がしてなあ…特に坊ちゃんのことを考えてる時にだよ。
ワシは坊ちゃんよりかは『かがやき』が弱いが、予感はいつも確かで明瞭だ。
まあ、落ち着いてやんな”
「いわれなくとも」
今日は空気が乾いていて安いマッチでもよく燃えた。あっというまに紙切れは燃え尽きた。
(ボブさん、九頭さん…僕がんばります)
希望を胸にいだき、固く手を握りしめた。
「さて昼はドルドですまそうかな」
【覚えていますか?レドラムのあの子です。新キャラとはいきませんがちょいキャラに
おじいさんを。関係上「ハローラン」の位置でしょうか】
【ドルドに向かう途中ということで】
4
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 21:57:44
31 :『NEWDIVIDE』 ◇qaFFsscyZY:2010/09/03(金) 19:09:06 0
【本体】
名前:本郷圭八
性別:男
年齢:88歳
身長/体重:179cm/75㎏
容姿の特徴:顔はシワだらけで丸禿頭に巨人のキャップをかぶり、服装はスウェット。ヨボヨボガリ。
人物概要:
小さなプラモ屋を経営する老人。温厚で人付き合いがいい。
正体は朝鮮戦争時代から活躍する武器商人で、数々の戦場を渡り歩き、存在そのものが
戦局を左右させると言わしめられた。しかし年齢的に限界を感じ、湾岸戦争を機に引退。
しかし今もなおその影響力は計り知れない。
【スタンド】
名前:オレンジジュース
タイプ/近距離パワー型:オレンジの皮のようなイメージの人形スタンド
能力詳細:
本体に神通力を与える。
熟練の兵士でもたじろぐ圧倒的なプレッシャーを放つことも。
「シャイニング」と同系統のスタンド(しかしシャイニングは不定形型のスタンド)
らしいが、黎土に比べれば弱いようだ。
圭八が太平洋戦争の頃、敵兵から頭部をかすめた銃弾の影響で覚醒。
破壊力-B スピード-B 射程距離-C(4m)
持続力-E 精密動作性-B 成長性-E
5
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 21:58:27
32 :『NEWDIVIDE』 ◇qaFFsscyZY:2010/09/03(金) 19:10:34 0
北条の地の遥か深く、それは静かにに脈動を続けていた。
悪魔は血肉を吸い、みずからの体液に変え、ゆっくりと復活の時を待ち構えていた。
その更に奥、まどろみの中に佇む影――白くやせ細った少年は空中に映写さている
ディスプレイを眺めていた。
それはマイソンの手を引く灰島の姿がありありと展開している。
「マイソン様お疲れ様でした―さて次の方は…」
その背後には我等が母星、青く輝く美しき地球が浮かび上がっていた。
【本体】
名前:“地球”の少年
性別:男
年齢:当時10代
身長/体重:140cm/30㎏
容姿の特徴:白人の少年…の体を借りている。
人物概要:
生まれてまもなく先天性の失調で五感を喪失してしまうが、直後にスタンドに開花。
スタンドより歩行や会話など日常生活に必要な能力を修得するが、やはり持病のせいで身体能力は低い。
「ワースト」ではなく、今回は管理・進行役を務める。
【スタンド】
名前:ワールド・ワイド
タイプ/特徴:一体化型/青く美しい地球の立体映像が頭上に映しだされる。直径1ミクロン〜等身大。
能力詳細:
地球上で起こった、起こっているあらゆる事象を把握・記録することができる。
(つまり本体はがリアルタイムに更新されるアカシックレコードになる)
また記録を映像として空中に映しだしたり他人の脳内で再生させる事も可。
アルカナ/21THE WORLD
破壊力-なし スピード-なし 射程距離-なし
持続力-≒∞ 精密動作性-A 成長性-≒∞
【人間スパコンのキャラ使ってみたいなと思って考案してみました実はボブより先に思いついたキャラです】
【ミカエル君と能力が被っている?まっさか〜】
6
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 21:59:23
ユニバースって言うよりもマルチバースな宇宙。
宇宙っていっぱいあるってことなんだけど、この宇宙の中にいる人には外の宇宙は見ることができないそうだ。
もう科学と言うよりも哲学的なお話で、つまりはぜんぜんわからないお話。
>「さて昼はドルドですまそうかな」
と少年が言っていたのを、佐藤ひとみとドルドプラチナで待ち合わせを予定していた神条はすれ違いざまに聞いていたのだが
「そうなんですか?これからボクもドルドプラチナに行くんですよー奇遇ですねー」とか赤の他人に話を出来たりするような
気さくな少年ではなかった。ここでは重なることもなく平行線で終わる運命の軸。
【>30-32発展させることができないかなって思って練習のつもりで書いてみたんですけど外にベクトルが向いていないというか
ベクトルが全部内側に向いていて返しようがないかなーって思います。よく言うひとりよがりな感じな印象をうけます】
7
:
名無しさん
:2010/09/16(木) 22:00:05
キャミワンピの裾からショートパンツがちらちらしていてサンダルがかつかつと音をたてる。
友達と北条市のお祭りに来ていた生天目有葵(なばためゆあ)は友達と別れたあと人が溢れている神社の周りを一人歩いていた。
落ちかけている夕陽が空を真っ赤な血の色に染めて水平線にぽつぽつと浮かんでいる桃色の雲が千切れた臓物を想起させる。
これはあの日と同じ風景だ。
周りには、これだけ沢山の人がいるのにみんな知らない顔。目に映ったすべての顔はただ亡霊のように通り過ぎてゆくだけ。
「…わたし…この雰囲気好き…」
8
:
生天目
◆gX9qkq7FNo
:2010/09/19(日) 16:13:31
黒い巨躯の赤子の問いによって流れた沈黙は赤い唇によって破られる。
>「人もモノも自らに付いた傷を払い落とすことは出来ない……
>すなわちガラスの水面に巣食う細いクモの巣……」
「大あたり〜」
影貫の頭上の巨大コップが音をたて砕け散ると
「あぇ〜まあ〜う〜あ〜〜」
などとボブもどきは意味不明の声をあげ影貫の部屋から去る。
「…なんなんだよ…あいつは…」
ことの成り行きを部屋に置いてある魔術書の隙間から見ていたヴァンだったが、
この部屋に来ると数ヶ月前に盗み聞きした嫌なことが思い出してしまう。
「材料って何なんだよ。もとから胡散臭い話だったんだ。
俺たちワーストのディスクが最初っから22枚手元にあったんなら
何で生贄にそれを使わなかったのかとかはこっちだって疑問に思っていたんだ。
汚れた俺たちのディスクじゃダメってことや、NEWDIVIDEの優しさってことも考えてみたんだが
とどのつまりは俺たちは人柱扱いされているってことだよな?
はぁ?ディバイドめ。思う壺に壷ごとはめるつもりだろうがそうはいかねーぜ。
どんな道にでも裏道や抜け道ってもんがあるもなんだぜー」
思い出して魔術書の中で切歯扼腕しているヴァン。
彼がワースト仲間の裏切り行為に目をつむっているのもうなずける。
とりあえずスタンド使いとしては弱いほうのヴァンは大人しく道を歩いているしかないだけだったのだが
歩いている道に何か救いのヒントや啓示のようなきっかけがないものだろうかといつも考えている。
ワーストにも救いが必要なのだ。
廊下に出て去っていったボブもどきの音らしきものがしない。
静か過ぎる。ちょっとした異変。
ヴァンは気になって自分を救う手がかりにでもなるものではないのかと
彼を探してみた。するとボブもどきは廊下の奥の薄暗い闇の中で丸くなり石になっていた。
「……なんでだよ…」
ボブもどきはスタンドエネルギーが少なくなったために肉体を肉のままに維持できなくなったらしい。
「こいつは…。やはり悪魔の手のひらと関係しているってことなのかい…」
【ボブもどきは眠るとまた元に戻ります】
9
:
生天目
◆gX9qkq7FNo
:2010/09/20(月) 17:01:54
豆電球や赤と白の垂れ幕で装飾されたトラックの荷台に子供たちが沢山乗っていて
太鼓をトントン叩きながら「えいやー」とか掛け声をあげながらそれはゆっくりと大通りを近づいて来る。
辺りには夜の帳が来つつあって歩道橋の欄干に乗せた腕に顎を乗せた生天目はただボーっとパレードを見ていた。
まったりとしている時間が流れているのを感じて不思議と心地よい。
生天目はお祭りを見ていると人が光っているように思えた。闇に光る星みたいに思えた。
〜〜〜〜〜♪
突然、携帯が鳴り生天目母から電話が来る。有葵のことを心配しているのだった。
欄干に腰をかけて足をぶらぶらさせているステレオポニーが友達の声真似をして
お友達のお家にいることに偽装する。ステレオポニーがいるから大丈夫とか母親にでも言えない。
「…北条市の一部の地域って石ころみたいのを御神体にしているんだよね?なんで石ころなんだろ?」
生天目は唐突にステレオポニーに聞いてみた。
「愚問だね、俺が逆に聞きたいね。しいて言えば人がすごいなって思うものはみんな神様なんじゃないの?
ま、石ころなんてそんなもんになんで人が畏怖するのかはわかんないけど」
ステレオポニーは本体である生天目に乱暴に言葉を返した。
「あ!今日はお祭りだからあの場所へ行ってみよ!」
少女は歩道橋を駆け下りて神社へ走ってゆく。
お祭りの日は神社の扉が開いているから、お参りをすると中に供わっている古ぼけた石が蝋燭の明かりに照らされて見える。
でも生天目はそれがただの普通の石だと知っていた。祖母が本当のお願い事はあの石にしなくちゃね。って言っていたから。
生天目とステレオポニーは神社の裏道をテケテケ登って巨大な岩に辿り着く。
石は仄かに光っているようにも見えた。
「あれ?なんか去年とちがう…」
【生天目が見ているのは混沌のエネルギーを秘めた隕石(悪魔の手のひら?)の巨大な欠片です。
生贄に呼応して光っている?そんな感じです。悪魔の手のひらは他にありまーす。かも。
隕石は精神世界への入り口?力を与えてくれる場所?まー考えていることは適当かも。
落書きみたいな伏線だけをまともに受け取られて名無しさんに指摘されるのも困りものなので弁解しておきますねw
でもこれを見てくれているのって佐藤さんくらいなので安心かも。
まったり金魚すくいでもしようかなーって思ってたらまたこんなんなっちゃたよー…】
10
:
佐藤
◆tGLUbl280s
:2010/09/23(木) 16:02:51
【あらすじ】
N県北条町。
特に目立った産業もなく、海に面した物静かな中都市だが一般には余り知られていない特徴がある。
一つはスタンド使い…と呼ばれる異能力者の出現率が異様に高い事。
もう一つは十年周期で未解決の失踪、行方不明事件が多発することであった。
――この失踪事件を起こしていた者こそ、九頭龍一。
九頭は古来より封じられてきた邪悪なスタンド使いの魂…『魔』なるものを封じるエネルギー確保のために
十年ごとにスタンド使いを狩り集めていたのだった。
――九頭の死から数ヵ月後…
辛くも九頭に勝利した北条市の面々は謎のスタンド使いから攻撃を受ける。
捕らえた敵スタンド使いへの尋問により以下の情報を得た佐藤たち。
・北条市には【悪魔の手のひら】なる異能の源が発現する条件が整っており
その完成を目論む謎の集団が【悪魔の手のひら】完成の為の生贄としてスタンド使いを襲っている。
・首謀者はNEWDIVIDEと名乗る謎の骨男。
スタンドなのか生物なのかすら分からないこの男は、前回の『ゲーム』で九頭と共に暗躍していた
ボブ・バンソンの成れの果て。ゲームで命を落としたボブの肋骨から生まれた新生物らしい。
・ボブ…もといNEWDIVIDEはスタンドと記憶をディスク化する能力を持っており
以前ディスク化したシンシン刑務所の超長期服役囚…通称『ワースト』と呼ばれる22人のスタンド使いに
肉体を与え、生贄収集要員として街に放った。
守りたいものやら好奇心やら克己心やら…それぞれの思いに縛られた北条市のスタンド使い一同は
否応無く【悪魔の手のひら】争奪戦に巻き込まれていくのだった。
※【悪魔の手のひら】の正体はまだ確定していません。言ったもん勝ち、伏線を重ねた者勝ちになるかとw
11
:
佐藤
◆tGLUbl280s
:2010/09/23(木) 16:08:20
【参加希望者の方へ】
★一般スタンド使い希望の方
ワーストは北条市のスタンド使いを無作為に狙っています。
元々殺人狂の多いワースト達、欲望のままに殺人を犯すこともあるでしょう。
街をぶらつくだけで殺人事件に遭遇したりワーストに狙われたり、巻き込まれる理由には事欠きません。
取り合えず導入だけ書いていただければ誰かが敵をけし掛けてくれるでしょうw
自分で敵を用意して戦う導入もOK!
★敵スタンド使い(ワースト)希望の方
未登場のワーストは↓参照
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/9925/1283583602/
ワースト達は肉体の提供にあたりNEWDIVIDEと契約を結んでいます。
・【悪魔の手のひら】完成の暁にはその恩恵を共に受けられる
・肉体の使用は期限付き。
一定期間経過までに22枚のイケニエディスクを集められなければ肉体を奪われディスクに戻ります
(期間は未定w1〜2ヶ月にするかと)
契約とは別にワーストはNDに一部記憶を操作されています。
と言っても『北条市が大好きで何となく街の外に出る気にならない』程度の軽い縛りです。
(北条市に舞台を限定する為の苦肉の策、中の人事情ですw)
★ワースト以外の敵役…黒幕、無所属スタンド使いなども大歓迎!
12
:
生天目
◆gX9qkq7FNo
:2010/09/24(金) 00:08:37
ハリエンジュの花が濃灰色に濡れたアスファルトを黄色に染め、
昨日から降りやまない雨音が市立図書館の窓ガラスを叩き続けている。
「すみませーん」
暗い雨雲を掃ってしまいそうな快活な女の声。
それと同時に受付のテーブルの上に置かれる数冊の本。
「私、この図書館の利用は始めてなの。やっぱり図書カードとか作らなきゃダメなんでしょ?
すごいもんよねー。流石に市立の図書館よねー。当たり前のように欲しい本がそろってるんだもの。
あは。原稿って手じゃなくて足で書くものだって編集長が言ってたんだけどホント。
古い資料も足を使えば見つかるものなんだねー」
若い女はそっぽを見ながら佐藤に話しかけている。
黒ブチメガネに斬新な感じのショートカットの髪型で、耳たぶにはピアスが光っている。
「ひ!!」
突然、黒ブチメガネの女、有沢由香子が悲鳴をあげる。
「…うそ…鈴木幸子?…あなた…鈴木幸子じゃないわよね?」
司書である佐藤ひとみの顔をまじまじと見つめ、ひきつった顔を見せる有沢由香子。
「…鈴木幸子は会社の上司の武田にストーカーされて自殺したはずなのに…」
有沢は驚きのあまりに心の声を肉声として外に出してしまっていた。
13
:
佐藤ひとみ
◆tGLUbl280s
:2010/09/26(日) 15:46:53
外は雨。
昨日から降り止まない雨が街全体を水のベールに包み込んでいる。
雨はどこから降るのか。決まっている。空の上から。
地上から立ち上った水蒸気が冷やされて雲になり、成長した雲は雨に姿を変えて地上に戻される。
降る雨の元の姿は川か、海か、水溜りか。
水は何のために空に昇るのか。どうせ地上に戻るのなら同じ事の繰り返しなのに。
水に感情があったらこの無限の営みを虚しいと思うのだろうか。
馬鹿馬鹿しい。『虚しい』なんてそもそもが無意味な感覚。水に思いを重ねるのも感情を持つ側の勝手な思い入れ。
当の水は何も感じることなくただ流れ、たゆたい、ある時は固まり、ある時は立ち上り、ある時は地上に叩きつけられる。
"思い"を持たぬ物の営みの何と静かなことか。
北条市立図書館――平日、しかも雨となれば利用者は少ない。
佐藤ひとみは窓から見える駐車場のミモザが満開の黄色い房を雨に散らす様をぼんやりと眺めていた。
>「すみませーん」
元気の良い呼びかけにひとみはふと我に返る。
カウンターの上には重ねられた数冊の本。
ショートカットに黒フレームのメガネを合わせたモード系ファッションの女がひとみに話しかけていた。
「新規利用の方ですね。免許証等、ご身分を証明出来る物はお持ちでしょうか?」
顔に仕事用の笑顔を貼り付け事務的な返答を返すひとみ。
>「ひ!!」
しかし女は質問に答えることなく、小さな悲鳴を上げた。
>「…うそ…鈴木幸子?…あなた…鈴木幸子じゃないわよね?」
>「…鈴木幸子は会社の上司の武田にストーカーされて自殺したはずなのに…」
目を見開き、ひとみの顔を差す指を細かく震わせて訳の分からないことを呟く女。
(はあ?何言ってるの?この女?)
どうせ人違いだろうが、ストーカーで自殺なんて縁起でもない…。
ひとみはチラと田所のことを思い出し反射的に嫌な汗をかいた。
「人違いじゃないですか?私は鈴木幸子さん…という方を存じませんが?」
嫌悪感を愛想笑いの下に隠し、ひとみは女に問いかける。
事務的な口調は無意識に固さを増していた。
14
:
よね
◆0jgpnDC/HQ
:2010/09/26(日) 19:38:15
御前等がよね達と接触していた頃、北条市立病院にて。
薄暗い部屋でペンの走る音だけが辺りを占領している。
一部を除いては平和な北条市、病室に4つ配置されたベッドの内3つが空きである。
『ふう…こんなところかな』
綾和は手にしていたペンを置く。
何枚も重ねられた原稿用紙を順番にまとめる。
一枚目、タイトルは《深層心理とその影響》。
米綾和は十年前、九頭によってアブダクトされるまで北条市にある大学で心理学について教えていた。
その時にちょうど書きかけだった原稿を見つけたので、再び筆を執ったのだ。
そこには少なからず自身のスタンド能力の経験も生かされていた。
スタンドと精神、心理学と精神。いずれも関連性はあった。
(今、私のようなスタンドと呼ばれる能力を持つものは肉体の世界を超え、精神の世界に踏み込んでいる…
では、更にその先の世界…すなわち深層心理の世界に踏み込んだなら…スタンドはどう変化してしまうのだろうか)
綾和は自身の中で終わらない探求を繰り返していた。
(いずれにせよ、私にはもはやスタンド能力と呼べるほどの能力は残っていない…)
ほうっと大きな溜め息をつくと、ペンを手に取りそれを指の上でクルリと回してみた。
ペンが美しい円を描き再び手の中に戻る。
そうした刹那に米綾和はふと思い出すのだ。
九頭龍一の手駒として生きていた、生かされていた時の事を。
自身の能力が真に目覚めた時の事を。そしてその能力で自身の息子さえも九頭の操り人形にした事も。
なにも忘れたわけではない。思い出せぬわけでもない。
ただ、あのスタンドの感覚が、まるでもう一人の凶悪な自分が存在するかのような感覚がやけに恐ろしく感じられるのだ。
もしかするとあの時、"精神世界のそのまた向こう側"へと踏み込みかけていたのかもしれない。
そんな事を考えながら綾和は読みかけのSF小説を手にとって読み始めたのだった。
15
:
生天目
◆gX9qkq7FNo
:2010/09/28(火) 16:33:46
室内の蛍光灯で照らされた有沢由香子の驚きの顔はその表情とは正反対に酷く薄っぺらな印象を与える。
>「人違いじゃないですか?私は鈴木幸子さん…という方を存じませんが?」
「うそ?存じない?存じないの?そうね。存じないわよね…。よく見たら貴女は鈴木幸子じゃないもの。
鈴木幸子はもっと気弱で大人しい感じだったし…。ほんと、人騒がせな顔ね…」
有沢はズレたメガネを人差し指で元の位置に戻して
「あ…でもこれで繋がるわ。ちょっとした怪談みたいなものなんだけど」
そう言いながら佐藤ひとみに免許証を見せる。
「でも貴女がオバケの正体だったとしたら怪談は怪談でなくなっちゃうのよね。
まぁ単刀直入にはなしたら鈴木ちゃんをストーカーして自殺に追い込んだ武田が鈴木ちゃんの幽霊を見て
気が狂って自殺しちゃったって話なんだけど…。聞きたい?っていうか大まかに話しちゃったわ」
有沢は小鼻をふくらませて、まだ語り足りないかの様に佐藤を見つめていたが
我慢できなかったらしく勝手に話し始めた。
「鈴木ちゃんは本当に可哀相だったのよ。この不況の中、やっと好きな出版のお仕事に就けたっていうのに
武田にセクハラされて、言うこと聞かなかったらパワハラされて、会社を辞めてもストーカーされちゃって…。
どこの世界にでもいるじゃない?仕事はできるけど性格が悪いやつ。武田ってそんな男だったの。
武田って男は図太くって鈴木ちゃんが死んだあとも会社に来たわ。鈴木ちゃんと武田の関係を知らない社員はいなかったのに。
いけしゃあしゃあとした顔をしながらね。だから私は考えたの。
この女の敵を仕事でやっつけてやるって。そしたらある日、真向かいのドルド・プラチナって喫茶店から私たちの会社を
恨めしそうに見ている鈴木幸子がいるって噂が流れて武田は気が狂って死んじゃった。
結局はその鈴木幸子の霊って貴女だったかも知れないって話なのよ。貴女…ドルド・プラチナによく行かない…?」
雨がさらに強くなり窓を叩きつける。本当に武田は佐藤を鈴木の霊と見間違えて自殺したのだろうか。
窓ガラスには佐藤と有沢が映りこんで外の風景と室内が重なって見え二人はまるで土砂降りのなかに立つ亡霊のように窓に映った。
16
:
佐藤ひとみ
◆tGLUbl280s
:2010/10/03(日) 21:04:37
雨は降り続いている。
湿気に満ちた空気が窓ガラスに触れて結露し、広い窓の所々を白く濁らせていた。
ショートカットの女は暫しひとみの顔をしげしげと眺めていたが、
ひとつ小さな吐息を漏らすと、沈黙の間を取り戻すかの如き勢いで喋り始めた。
>「うそ?存じない?存じないの?そうね。存じないわよね…。よく見たら貴女は鈴木幸子じゃないもの。
>鈴木幸子はもっと気弱で大人しい感じだったし…。ほんと、人騒がせな顔ね…」
>「あ…でもこれで繋がるわ。ちょっとした怪談みたいなものなんだけど」
佐藤ひとみは女から免許証を受け取り、無言でPCに向かう。
この口さがない女――有沢由香子の名前をキーで叩きながら、耳だけで彼女の話を聞いていた。
有沢はひとみの対応などお構いなしでリズミカルに言葉を吐き出し続けている。
彼女曰くの――"ちょっとした怪談話"――を。
――パワハラ、セクハラの挙句部下の女を自殺に追い込んだ男が、女の霊に取り憑かれて死んだ――
概要はベタな幽霊の復讐譚。
特筆すべきは、死んだ女がひとみによく似ていて、
しかも男の見た『幽霊』が、佐藤ひとみ自身だったのではないか…という疑惑だ。
幽霊なんてものは不幸で貧乏臭そうな顔と相場が決まっている。そんなモノに間違われるなんて不愉快もいい所だ。
それを本人目の前にズケズケと話す無遠慮な態度も気に触る。
いつしかひとみの顔から愛想笑いが消えていた。…が、それは不愉快さの為だけではなかった。
……思い当たるフシが全く無い訳ではない。
九頭の"ゲーム終了"から二週間くらい経った頃だろうか。
カフェ・ドルトプラチナに通い詰めている時期があった。―――正に最悪の時期だった。
あの頃ひとみは、頭痛、不眠、眩暈、吐き気等、不定愁訴の症状に悩まされていた。
不定愁訴の主要原因はストレスだが、自分至上主義のひとみは、そもそもストレスを溜めるほど何かを我慢することがない。
考えられる原因といえば精神世界で右目に負った傷くらいだった。(と言っても自身でつけた傷だが)
佐藤ひとみたる者が合コンに行く気にもならず、毎日職場と住まいの往復。
軽く時間を潰そうと思っても、ひとみには用も無いのに呼び出せる程度の友人というものがいなかった。
することの無いひとみは連日ドルト・プラチナの窓際の席を陣取って閉店間際まで時間を潰していた。
あの時の自分なら、あるいは幽霊のように見えたかも知れない―――
知らない男…それも最低レベルの下衆男がどこで死のうと生きようと知ったことではなかったが、
女の話に触発されて、当時の暗鬱たる気分が蘇ってくる。
激しさを増した雨音が図書館内に響き渡る。
曇った窓ガラスの水滴が、なめくじの這うようなスピードで筋をつけながら落ちていく。
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