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( ^ω^)Secret Gardenのようです
5
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:35:08 ID:15xn.t.w0
( ´∀`)「今日は随分とお寝坊さんだモナ。」
(;^ω^)「おはようございますお。」
なんとか遅刻せずに済んだ僕は、ロッカーに置いていた替えのシャツに着替えて、急いでタイムカードを押した。
からかう上司に挨拶をして、朝礼が終わってから外回りの準備をする。
今日は一ヶ月点検が一件と、納品が二件だ。
( ^ω^)「行ってきますお。」
行ってらっしゃい、と事務所に残る人達から返事をもらった。
6
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:35:34 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)ガラガラ
(;^ω^)つ□「よいしょっと!」
一時保管室から品物を探し出しては台車で運び、社用車に乗せる。
台車を戻して車に乗り込みエンジンをかけると、聴き覚えのある軽快なイントロがラジオから流れ出した。
( ^ω^)「随分と懐かしい曲だお。」
7
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:38:07 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
从*゚∀从「いやー、内藤さんに頼んで良かったよ!」
( ^ω^)「ありがとうございますお。空調との相性は、いかがですかお?」
从 ゚∀从b「そっちもバッチリ!」
( ^ω^)「それは良かったですお。ではこれから、点検に入らせて頂きますお。」
从 ゚∀从「ああ、よろしく頼むよ。」
『onnellisuus』は、美容師のハインさんとヘアケア品を取り扱うフォックスさん夫妻が経営する美容室だ。
色とりどりの商品がずらりと並ぶ受付の奥には、木枠で仕切られた半個室が3つある。
それぞれの入口の天井には半円状の枠が取り付けられていて、そこからオーガンジー素材のカーテンを垂らす事で、カット台の鏡から見るとまるで鳥かごの中にいるように見えるのだ。
ハインさんが子どもの頃に描いた夢を叶えるため、オーダーカーテンを取り扱う我が社に依頼を出したのは、1年近く前の事だ。
「今の私の雰囲気とは違うから」と悩んでいたハインさんのために、内装業者と案を出し合いながら調和を図った。
二重で袋状のカーテンの中には花火や鱗、薔薇の立体素材を縫い付けており、それぞれの部屋で違う様相が楽しめる。
( ^ω^)「異常無しでしたお。数値としては閉めていても問題なかったのですが、ヘアカラーやパーマの時はカーテンを片方にまとめておいた方が安心ですお。」
从 ゚∀从「ああ、そうするよ。」
从 ^∀从「内藤さんも、良かったら切りに来てくれよ。
旦那のヘアセットレクチャー付きだぜ。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。掛け持ちで通わせてもらいますおw」
从 ^∀从「ああ。よろしく!」
( ^ω^)「それでは失礼しますおー。」
____________________________
8
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:39:44 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
( ^ω^))(うーん…。)モグモグ
一件の納品を残して、かなり早めの昼食をとる。
空腹のまま取り付け作業をしたので食事に集中したいところだけど、考えるのは今朝の事ばかりだ。
( ^ω^)?(あの人は、誰だったんだお…?知り合いや、お客様ではないお…。)
この仕事に就いてからおよそ25年の記憶を掘り起こしても、思い当たる人はいなかった。
( ^ω^))(もしかして、お客様のお子さんやお孫さん…?うーん…違う気がするお。)モグモグ
(;^ω^)(二十代半ば…いや、後半くらいの女性。しかも、ドレスを着ていたお。…もしかしてあの場所は結婚式場か何かで、PRイベントでもしていたのかお?)
(;^ω^)(…あんな朝早くに…?しかも呼び込むのが、アラフィフの僕かお…?)
もしかして、仕事関係で呼ばれていたけれど僕が忘れていただけなのだろうか。
さわらの塩焼きをほぐしながら考えても、何も思い出せなかった。
( ^ω^))(…とにかく、行ってみれば分かるお。もしも後ろの人に声をかけていたとか、そんな人違いだったのであれば謝れば良いだけだお。)モグモグ
( ^ω^)ゴクン
( ^ω^)「さて、午後の仕事だお。」
____________________________
9
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:41:24 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
残り一件の納品を済ませ、会社に戻り後処理を終えた僕は、パソコンで専用のソフトを立ち上げた。
( ^ω^)(今日の報告と次回の打ち合わせがしたいし、今週中に工場の方に顔を出すお。手土産のお菓子、何が良いかおー。)
僕が主に担当している個人店向けのデザインカーテンは、雰囲気や技法がその都度変わる。それを毎度形にしてもらっているので、工場の方々には頭が上がらないのだ。
(;^ω^)(その後に来てる依頼は、若い女性向けのポップな雑貨屋さんかお。僕に務まるのかお…?)
(;^ω^)) チラッ
後輩の芹沢さんが代わってくれないかと、机を見る。
ミセ;゚Д゚)リ 「うぉりゃぁぁ!!」カチカチカチ
(;^ω^)(修羅場中っぽいから話しかけられる雰囲気じゃないお…。)
____________________________
10
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:42:54 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
16:20
ほぼ定時に仕事を終えた僕は、寄り道せずに今朝の通りまでやって来た。
( ^ω^)「…。」テクテク
小学校から出てきた高学年の子供達が、ワイワイと下校している。
誰もこの立派な生垣には、興味がないようだ。
( ^ω^)(ここを見て物珍しく思うのは、僕だけなのかもしれないお。)
( ^ω^)(…もう着くお。)テクテク
11
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:43:52 ID:15xn.t.w0
門まで来ると、花かごを持った今朝の女性がこちらに気付いて駆け寄ってきた。
ζ(゚ー゚*ζ「お待ちしておりました。」
(;^ω^)「…こんにちは。」
ζ(^ー^*ζ「こんにちは。どうぞお入りください。」
そう言われても、足を動かすわけにはいかない。
(;^ω^)「えっと…」
(;^ω^)「あの…。僕はあなたの事を知りませんお。人違いではありませんかお…?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、間違いありません。」
ζ(゚ー゚*ζ「ここにいらっしゃる方は、ドクオさんに用がある方か、ドクオさんが用がある方ですから。」
( ^ω^)「ドクオさん…?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。屋敷に案内しますので、ついてきてください。」
(;^ω^)「はぁ…。」
12
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:44:52 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ (^ω^;)) テクテク
僕は、女性の後ろを歩いた。
彼女は背が高い。
しかし生成りがかったドレスの丈はそれよりも長く、彼女が石畳の道を歩く度に、ドレスの裾がするすると滑っている。
( ^ω^)(…60、70年代風のアンティークドレス…。やっぱり、ここは式場か何かなのかお?)
ジロジロと見たつもりはなかったが、職業柄少しは知識があるのだ。
( ^ω^)(…!)
13
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:47:08 ID:15xn.t.w0
進んだ先で、溢れんばかりのネモフィラが僕を囲んだ。
そこには少しスノーポールが混じり、奥には数色のチューリップがランダムに咲いている。
(*^ω^)(綺麗だおー…)
視線を前に戻すと、道の先にはボーダーガーデンが延々と広がっている。
(*^ω^)(こっちは、すずらんにクリスマスローズとオダマキに…ネメシアかお。)
( ^ω^)(奥の木は…クラブアップルかお?桃色の花が咲いているお。)
(*^ω^)(こんな場所があったなんて…知らなかったお。)
僕の住む街は、近年花の名所として紹介されるようになった。
ちょっとした公園や図書館などの公共施設が、ガイドブックに載るほどだ。
それでも、これほどまでに豊かな場所は今まで一度も見たことがなかった。
(*^ω^)(…って…)
∑(;゜ω゜)「えぇっ!??」
ζ(゚、゚*ζ「…?どうしましたか?」
女性が、石造りの装飾鉢に植えられたイベリスの前で立ち止まった。
14
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:49:03 ID:15xn.t.w0
(;^ω^)「あの…僕が知っている以前のこの土地は、すぐ隣に住宅街があって…こんなに広いはずは…ないんですお。」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですか?」
ゆっくりとはいえ、もう2分近く歩いている。
それなのに、まだ目的地には着かない。
もしかして、住宅街ごと買い取られてここが出来たのだろうか?
だけどこの場所が何らかの施設だとすると、公共か商業かを問わずとも、もっと人がいても良いはずだ。
それに壁や所々に置かれた庭椅子も、なんだか昔からあったように、年季が入っているように見える。
(;゜ω゜)
不思議な事は、他にもある。
庭を飛ぶ蜂や蝶。
よく目を凝らして見ると、それらが金属で出来ているように見えるのだ。
(;^ω^)(僕は、夢でも見ているのかお…?)
15
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:51:14 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)(あ…。)
更に少し進んだところで、やっと二階建ての屋敷が見えてきた。
茶鼠色で、石造りの屋敷だ。
そのアプローチには、一人で立ち止まっている老人が見えた。
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。修理は無事に終わりましたか?」
女性が歩み寄り、そう聞いた。
( ´W`)「ああ。よぅーく、見てもらったよ。」
( ´W`)「悪いけれど、少し庭を歩いても良いだろうか?ここに来た時の楽しみでね。」
そう言いながら老人は、曲げた指を見せた。
翅がほんのりと青い蜻蛉がとまっている。
それは、どこか眼鏡を思わせるようなべっ甲と硝子の蜻蛉で、老人の指先に留まっては飛びを繰り返している。
ζ(゚ー゚*ζ「それでは私が、ご案内いたします。」
僕達が歩いてきたのは、所々でカーブのあるメインらしき通り道だったが、その間には横に逸れる道がいくつもあった。
少し隙間のある石畳もあり、足の動きにもたつきのあるその人を一人で散策させるのは心配なのだろう。
だけど彼女の案内がなくなったら、僕はどうすれば良いのだろうか。
(;^ω^)「あの…」
ζ(゚、゚*ζ「申し訳ありませんが、ここからはお一人で。ドクオさんは人が多いのが苦手ですし、丁度良いです。」
ζ(゚ー゚*ζ「玄関からホールに入り、正面から右に2つ目の部屋です。大きな扉なのですぐ分かりますよ。」
(;^ω^)「はぁ…。」
16
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:52:37 ID:15xn.t.w0
二人の後ろ姿を見送った僕は、玄関扉の前に数段ある石段を登った。
(;^ω^))(インターホンが見当たらないお…。)キョロキョロ
(;^ω^)「……失礼しますおー…。」
(;^ω^)つ| カチャ…
硝子が嵌め込まれたアーチ型の木製扉をゆっくりと開けると、下駄箱とスリッパが置かれた玄関がある。
僕は靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた。
17
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:54:21 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)つ|「…。」
先程と似たような扉を開ければ、ここが玄関ホールか。
床一面には煉瓦色の絨毯が敷かれており、白塗りの壁に焦茶の柱、美しい木製階段。
それらが、木が豊かであった時代に造られた建物である事を示している。
( ^ω^))「…。」
見回しただけでも、8つは部屋があるようだ。
(;^ω^)(2階もあるんだおね…。もしかして、街一番の豪邸じゃないかお…?)
(;^ω^)σ(えぇっと…右に2つ目は…。あそこだお。)
他の部屋よりも大きい両開きの木製扉には、薔薇の花や蔦が彫られている。
( ^ω^)(見事だお…。)
( ^ω^)q コンコン
シーン
(;^ω^)
何度か扉をノックしたが、返事はない。
( ^ω^)(…扉が厚いから、聞こえないのかもしれないお。)
( ^ω^)つ| カチャ…
( ^ω^)「あの…失礼しますお…。」
18
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:56:03 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「…」
20帖ほどの、広い部屋だ。
( ^ω^)(……?)
( ^ω^)(…何だろう…この音…?)
どこか遠くで、クリスタルボウルやガムランがゆっくりと鳴っているような…不思議な音がする。
( ^ω^)(それに…この壁と床は、一体どんな素材で出来ているんだお…?)
壁と床には金や銀、銅色の柄が広がっている。
その中央に、胡座で座り込む男性の後ろ姿があった。
19
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:57:32 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「あの…。」
そう声をかけても聞こえないのか、男性はぴくりともしない。
男性が何か工具を持って手を動かし始めた、その時。
∑(;゜ω゜)「わっ…!!」ヨタタ…
アラベスクか何かだと思っていた壁や床の柄が歯車のように回りだし、僕はよろけた。
目がぐるぐると回り、乗り物酔いのような感覚になったため、僕はたまらず大声を出した。
(;^ω^)「あのっ!!すみませんおっ!!!」
20
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:58:18 ID:15xn.t.w0
男性の動きと、部屋の歯車が止まる。
僕がホッとして瞬きをした瞬間。
(;^ω^)「……えっ?」
部屋の内装が、深紅の壁に純白の天井、木製の床へと様変わりしていた。
('A`)「…」
気付けば男性が手をつき身体をひねって、こちらを見ている。
21
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 22:59:26 ID:15xn.t.w0
(;^ω^)「あの…お庭にいる方に案内されて、ここまで来たんですお。」
そう言い切ったと同時に、男性が早足に近付いてきた。
('A`) サッサッ
(;^ω^)「…?」
男性は僕の横を通り過ぎ、どこかへ行ってしまった。
すると三十秒もしないうちに何かを持って戻ってきて、部屋の奥の硝子のキャビネットを開き、小瓶を取り出した。
('A`) コポコポ
( ^ω^)(水の入ったコップに何かを入れているお…。常備薬か何かかお…?)
それをグイッと飲み、袖で口を拭うと、男性はまたこちらにゆっくりと近付いてきた。
22
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:00:32 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「…」
年齢は、先程の女性と同じくらいだろうか。
女性以上に背が高く、僕を見下ろしている。
縁が金色の華奢な丸メガネをかけていて、年季の入っていそうな柔らかいシャツとウールのズボンを身に着けている。
ズボンはサスペンダーで吊るしており、今時というよりはセピアの写真から出てきたような出で立ちだ。
黒髪で目が隠れ、表情は分からない。
( ^ω^)(え…この匂い…)
(;^ω^)(酒…!?)
一瞬、甘いリキュールのような匂いがした。
23
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:01:46 ID:15xn.t.w0
('A`)「…」
(;^ω^)「…。」
男性は、何も喋らない。
(;^ω^)「…貴方がドクオさん…ですおね?」
(;^ω^)「お庭にいた方が、言っていたんですお。ここに来る人は、ドクオさんに用があるか、ドクオさんが用があると…。」
( ^ω^)「僕は貴方とは初対面ですお。僕からの用事はないので、もしかしたら僕の仕事と関係があるのかもしれませんお。」
( ^ω^)「僕はカーテンを作る会社に勤めているんですお。今、名刺を…」
('A`)「ああ」
男性は、思い出したように言った。
('A`)「図書室のカーテンを作ってくれ。内藤さん。」
24
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:03:11 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「いかがでしたか?」
玄関を出ると、女性が僕を待っていた。
( ^ω^)「仕事のご依頼でしたお。図書室にカーテンを作ってほしいとのことですお。」
( ^ω^)「明日またプラン決めと、計測に伺いますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「そうでしたか。では、入口までご案内いたします。」
( ^ω^)「よろしくお願いしますお。」
来た時と同じく、僕は女性の後ろを歩く。
途中、すずらんの葉にとまる銅色の天道虫を見かけた。
やはりこの場所は変だ。
けれど、不思議と嫌な感じはしない。
家で勉強をしていただけなのに、窓から吹く風が心地良くて不思議と心が躍った学生時代の春休みのような。
そんな感覚に似ている。
それはきっとこの庭から、春の匂いがするからだろう。
25
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:04:22 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「あの…その裾…、傷んでしまいませんかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ^ω^)「ドレスですお。土で汚れたり、石畳で擦れたり…」
ドレスの裾は、既にほつれや擦れが所々に見られる。
ζ(^ー^*ζ「お気遣いありがとうございます。ですが、そうなった事はありませんので、大丈夫です。」
( ^ω^)「え…?」
26
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:06:00 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「私は先程の蜻蛉や、庭の蜂や蝶と同じようなものです。この庭と屋敷の中では、生き物の形をしているのです。」
ζ(゚ー゚*ζ「元は別のかたちをしていて、この姿は比喩のようなものです。ですから、大丈夫なんです。」
(;^ω^)「はぁ…。」
話からすれば、『この女性も人ではない』という事になる。
にわかには信じがたいが、僕の心配については問題がないそうなので、ひとまず安心だ。
(;^ω^)「あの…ここは一体どんな場所なんですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「ここは、ドクオさんのお家。小さめな金属製品の修理屋さんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「庭をお花屋さんに貸していて、そちらの方が主な収入源なので、地主さんと言った方が正しいかもしれませんが…。」
(;^ω^)「そうなのですかお…。」
27
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:06:55 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「それではまた明日、お待ちしております。」
( ^ω^)「はい。本日は案内して頂きありがとうございましたお。それでは失礼しますお。」
ζ(^ー^*ζ「さようなら。」
( ^ω^)「さようならですお。」
門から一歩外に出ると、外はもう真っ暗だった。
( ^ω^)(四月といえど、まだまだ日は短いおねー…)
( ^ω^)(あれ…?でもたった今までいた庭は明るかったはず…)
(;^ω^)??
____________________________
28
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:08:44 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
翌日も僕は、仕事帰りに屋敷へ寄った。
ドクオさんと一緒に図書室まで行って、今使っているカーテンを見せてもらうと、経年の傷みがだいぶ見られた。
( ^ω^)(確かに…そろそろ取り替えた方が良さそうだお。)
計測も済ませ、僕はドクオさんにどのプランにするかを聞くことにした。
('A`)「丈夫な物の中から、なるべく早いプランで。」
( ^ω^)「では、こちらのベーシックベルベットと、レースカーテンはいかがでしょう。今の雰囲気に近いと思いますお。」
('A`)「…」
('A`)「…これは?」
ドクオさんが、右下のプランを指差した。
( ^ω^)「あ、そちらはカーテンのオーダーですお。僕が個別でデザインをするので、お渡し予定日は先程の提案よりもふた月近く先になりますが…。」
('A`)「…じゃあこれで。」
( ^ω^)「よろしいのですかお?」
( ^ω^)「…。あの、それではレースカーテンのみオーダーされるのはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「『なるべく早く』とのご希望は、今お使いのカーテンの傷みが気になるからですおね?」
( ^ω^)「遮光用のカーテンは在庫の有る物なら明日明後日にはご用意できますので、先にそちらだけ設置する事も出来ますお。」
('A`)「それで構わない。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
29
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:09:50 ID:15xn.t.w0
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「お疲れ様でした。」
玄関から出ると、女性に声をかけられた。
今日も屋敷まで案内してくれたのだ。
( ^ω^)「ありがとうございますお。すぐ決めて頂けたので、とっても助かりましたお。」
( ^ω^)「デザインカーテンをオーダー頂きましたお。」
ζ(^ー^*ζ「そうでしたか。よろしくお願いします。」
ζ(゚ー゚*ζ「よろしければ、少し休んでいかれませんか?ドクオさんがお茶の用意をしておりますので。」
( ^ω^)「では…。せっかくなので、ありがたく頂きますお。」
ζ(^ー^*ζつ「こちらを進むとテーブルがあるので、座ってお待ちください。」
女性が、横の小道へと目を向けるよう促した。
( ^ω^)「わかりましたお。」
30
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:10:52 ID:15xn.t.w0
言われたままに、道を歩く。
( ^ω^)(この道は、ハーブがメインのようだお。使い切れないくらい取れそうだおー。)テクテク
( ^ω^)「…」テクテク
( ^ω^)「…!」
円状に開けた場所だ。
中央には2人用の、真っ白なテーブルセットが置かれている。
白いクロスがかけられた円卓と、背もたれが装飾されている椅子。
ネモフィラにウィンターコスモス、ウィンティーや色とりどりのデルフィニウムが、それらを囲むように咲いている。
(*^ω^)「…」
僕は見惚れながら、椅子を引いて腰掛けた。
31
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:12:03 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「お待たせいたしました。」
少しして、女性がティーセットをトレーに乗せて戻ってきた。
( ^ω^)「ありがとうございますお。えっと…なんとお呼びすれば…」
ζ(^ー^*ζ「デレです。」
デレさんはそう言いながら、僕のティーカップにお茶を注いでくれた。
( ^ω^)「デレさん。ありがとうございますお。」
ζ(^ー^*ζ「いえいえ。」
そう言いながらデレさんは、向かいの椅子に腰掛けた。
( ^ω^)「あの…ドクオさんは?」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんは来ません。どうぞ、お召し上がりください。」
(;^ω^)「そうなんですか…。頂きますお。」
もしかしてドクオさんは忙しい中お茶の用意をしてくれたのではないかと、申し訳ない気持ちになった。
32
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:12:44 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「どうぞ。ディンブラです。」
( ^ω^)「ありがとうございます。頂きますお。」
( ^ω^)) コク
(*^ω^)「美味しいですお。」
ζ(^ー^*ζ「ディンブラは、渋みや甘み、香りなどのバランスが良い茶葉だと言われています。」
(*^ω^)「確かに紅茶と言われて想像する味はこんな感じですお。」
33
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:13:36 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「こちらのカップケーキは、とても可愛らしいですお。」
お茶請けに、小さめなカップケーキが2つ。
ケーキに乗ったクリームの上には、ケーキと同じ生地で作られたリボンのような飾りが乗せられている。
ζ(゚ー゚*ζ「バタフライカップケーキです。こちらもドクオさんが作りました。」
( ^ω^)「それはそれは…。次に伺った時に、お礼を言いますお。」
ζ(^ー^*ζ「きっと喜ぶと思います。」
https://imgur.com/a/iHO6lwD
34
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:14:31 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)(…そうか、これは蝶を模した飾りだったのかお。)
僕はカップケーキの紙を少し広げて、一口食べた。
( ^ω^)) モグ…
(*^ω^))「これは、とてもクリーミーですお。クリームもなのですが、生地自体も。」
市販のカップケーキよりも、やや重めで素朴な味だ。
ほんのりとバニラの香りもする。
ζ(゚、゚*ζ「きっとスキムミルクですね。ドクオさん、何にでも入れるんですよ。もう充分大きいのに。」
( ^ω^)「ふふ。今から伸びるならどんどん入れてほしいですお。」
35
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:15:29 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「あの…。失礼ですが、デレさんは食べ物を食べても大丈夫なのでしょうか?」
頬に手をあて、うっとりしながらカップケーキを食べるデレさんに聞く。
ζ(゚ー゚*ζ「私が、人ではないからでしょうか?」
(;^ω^)「昨日、そう聞いていましたから…。」
ζ(゚ー゚*ζ「意外と平気なんですよ。なんならこのケーキも、10個はいけそうです。」
(;^ω^)「凄いですお…。」
ζ(゚、゚*ζ「だけどドクオさん、あまり数は作ってくれないんですよね…。」
(;^ω^)「きっと修理屋さんとケーキ屋さんは、兼業不可なんですお。」
36
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:17:01 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「お願いしますお。」
ζ(^ー^*ζ「では、少々お待ちください。」
(;^ω^)つ「あ…」
てっきりティーポットの中にお茶が残っているのかと思ったが、新たに用意をしてくれるようでデレさんは屋敷に戻っていってしまった。
(;^ω^)、(悪いことをしてしまったお…。)
また少しするとデレさんが戻ってきて、先程とは色が違うお茶を注いでくれた。
ティーポットは陶器製から、丸く透明な物へと変わっている。
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「ペパーミントティーです。苦手ではありませんか?」
( ^ω^))「いいえ。ミントティーはたまに飲みますお。」ゴク
(*^ω^)「爽やかですおー。」
ζ(^ー^*ζ「良かったです。」
37
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:18:25 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「ミントティーには抗炎症作用や、胃の不調を助ける効果があるのだそうです。」
( ^ω^)「そうなのですかお。ガッツリ食べ過ぎた時なんかに、意識して飲みたいですお。」
ζ(゚、゚*ζ「ガッツリした物、よく召し上がるのですか?」
( ^ω^)「ああ、繁忙期などは気が抜けて、割とそうかもしれませ」
°·∴ζ(>Д<;ζ「ブェ゙ッぐショイィィぃぃ!!!」
∑(;^ω^) ビクッ!!
(;^ω^)「大丈夫ですかお…?」
ζ(゚∩゚*;ζ「すびばせん…お見苦しいところを…。」ズズッ
(;^ω^)「いえ…。」
(;^ω^)(びっくりしたお…。)
__物も、風邪や花粉症になるのだろうか?
38
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:19:31 ID:15xn.t.w0
ミントティーに明るい庭。
あまりにも爽やかで、僕は思わず時計を確認した。
( ^ω^)(もう、17時半近いお…。)
( ^ω^)「デレさん。このお庭は、ずっと昼間のままなのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。庭に誰も居なくなれば、季節の日没通りに暗くなりますよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「私がお客様を見送り終えて、屋敷の扉を閉める時。扉の向こうがだんだんと暗くなっていくのが見えます。」
( ^ω^)「そうでしたかお。花にも夜は必要ですし、あまり長居してはいけませんね。」
( ^ω^)「…」
ミントティーで頭がすっきりしたからか、僕はドクオさんのオーダーカーテンの案を思い付き、カップを置いた。
39
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:20:42 ID:15xn.t.w0
( ^ω^)「ご馳走様でしたお。一度戻ってドクオさんにお願いしたい事が出来たので、今日はこの辺で…」
ζ(゚ー゚*ζ「よろしければお伝えしますよ。」
( ^ω^)「えっと、ドクオさんからのご注文のカーテンは、この庭をイメージしたものにしようと思うんですお。」
( ^ω^)「それで一度、この庭をスケッチする機会を頂けたらなと…」
ζ(゚ー゚*ζ「それならきっと、許可を取らなくても大丈夫ですよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんから内藤さんに伝言があるんです。『いつでも来てください』と。」
(;^ω^)「…。それは、社交辞令では…?」
ζ(゚、゚*ζ「いいえ。『何なら毎日でも』と言っていましたし…。」
∑(;^ω^)「毎日、ですかおっ!?」
ドクオさんの雰囲気からは想像も出来ないような、フレンドリーな言葉だ。
ζ(^ー^*ζ「はい。」
(;^ω^)「…ではお言葉に甘えて、しばらく週に一度ほどお邪魔しますお。」
ζ(^ー^*ζ「分かりました。伝えておきます。」
40
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:21:25 ID:15xn.t.w0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、よろしかったらこれを。」
門の手前で、デレさんに呼び止められた。
( ^ω^)「…?何でしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「栞です。今年のネモフィラで作りました。」
(*^ω^)「…とても綺麗ですお。ありがとうございますお。」
花だけではなく、かへいや葉も含まれるその栞は、植物標本のようで美しかった。
ζ(゚ー゚*ζ「さようなら。またお待ちしております。」
( ^ω^)「さようなら。」
41
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:23:53 ID:15xn.t.w0
17:50
暗くなった道を歩きながら、僕は考える。
( ^ω^)(図書室のカーテンはかなり傷んでいたから、早く新しいものにしてあげたいお。)
( ^ω^)(レースカーテンの方は、スケッチをしたら、家のパソコンでパーツを作っておくお。作り終えたら会社でまとめて発注するお。)
会社でもう長くベテランの枠に入っている僕が、このように仕事を家で進め過ぎるのはあまり良くない事だ。
仕事量に差が出て、新人や家庭を持つ社員へのプレッシャーになる。
けれど家に帰っても、家事以外他にする事がないのだ。
平日の食事は外でとるか、街の飲食店の弁当を取り扱う無人コンビニで済ませているし、洗濯は休日にまとめて出来るように替えの服には余裕がある。
家の床がバリアフリー仕様のため、ロボット掃除機もほぼ全ての部屋を走る。
特別大変な事は、秋に庭に落ちる葉の掃除くらいだろうか。
何より花のスケッチは、僕の学生の頃からの唯一の趣味だ。
だからあの庭を見たら、何かに留めておきたい。そう思うのは当然だ。
( ^ω^)(家で作業した分は、会社でマニュアル作りの時間にでも充てれば良いお。)
( ^ω^)(……。)
不思議な庭と屋敷に、不思議な人達。
( ^ω^)(…いや、デレさんは人じゃないそうだけれど…。)
僕は、その人達が喜ぶようなカーテンを作れるのだろうか?
【 第一話 ネモフィラの咲く庭 】
終わり
42
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:24:56 ID:15xn.t.w0
【登場人物】
( ^ω^)
内藤文高
カーテンメーカーの営業兼デザイナー
アラフィフ
平均よりも背が低い
ζ(゚ー゚*ζ
デレ
人ではないらしい
アンティークドレスを着ている
見た目は20代半ば〜後半
背が高い
('A`)
ドクオ
小さな金属製品の修理屋
年齢はデレと同じくらいの見た目
背がとても高い
43
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:26:15 ID:bsQbGWnk0
続きが楽しみだー!!
乙
44
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:27:01 ID:15xn.t.w0
【バタフライカップケーキ】
・バター 70g
・てんさい糖70g
・卵SMまたはMサイズ2個(Lは1.5)
★薄力粉120(うち20gは分離防止用に分けておく)
★ベーキングパウダー小さじ1
★スキムミルク5g
★牛乳大さじ2
★バニラオイル10滴
□生クリーム100ml
□てんさい糖大さじ1/2くらい
【作り方】
1.バターと卵を常温にしておく。作り始める頃にオーブンを180度に温めはじめる。
2.常温にしたバターとてんさい糖をフードプロセッサーに入れて混ぜる。
3.そこに溶いた卵を4回くらいに分けて入れる。2回入れたら小麦粉を20gほど入れると分離防止になる。
4.小麦粉(残100g)、ベーキングパウダー、スキムミルク、牛乳、バニラオイルを入れてフープロ混ぜ。
5.かなり膨らむので、液はカップの半分まで。180度のオーブンで約20分焼く。
【飾り付け】
1.ケーキの粗熱をしっかり取る。
2.生クリームは、砂糖を入れながら固めに立てて冷蔵庫で冷やしておく。
3.ケーキの上部を包丁で丸くくり抜き、半分にカット(半円状になる)。
4.ケーキの穴にスプーンか絞り袋でクリームを埋める。
5.半円の生地を蝶に見立てて置き、好みで粉砂糖を振る。(生地の置き方を内カーブにするか外カーブにするかで雰囲気が変わります。作中は外カーブ。)
45
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:28:48 ID:15xn.t.w0
最後の連載なので、ゲームをしましょう。
・全話の作中に登場した花を、品種まで全て知っていたら
・もしくは内藤が車のラジオで聴いた曲が当てられたら
お好きな花とキャラクターで短編を書いてプレゼントフォーユーします。
よろしくお願いします。
絵やレシピは各話有ったり無かったりです。
絵は撮った写真から線画を起こし、描き足した物が多いです。塗り絵だけしてたいです。
46
:
名無しさん
:2024/06/19(水) 23:31:16 ID:15xn.t.w0
あ、あと準備中にずっとしくれがと呼んでいたので、そう呼んで頂けたらとても喜びます。
47
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 07:18:32 ID:hj1yl5Rs0
乙!!優しい世界観ですね。あと、イラストが上手い。
48
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 21:52:11 ID:D2vuZELQ0
最後!?
49
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 21:56:24 ID:AvX.tj9U0
乙乙
雰囲気いいねぇ
バタフライカップケーキおいしそう!絵もめちゃ好き
花も曲も詳しくないくやしい
そして最後の連載寂しい…
50
:
名無しさん
:2024/06/20(木) 22:08:40 ID:ap0DLUYk0
おつ
素敵な雰囲気
51
:
名無しさん
:2024/06/25(火) 00:28:50 ID:yPo9iWtM0
乙!綺麗なイラストと雰囲気めちゃ好き!
52
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:05:43 ID:uUhGkg420
>>43
ありがとうございます!
ゆっくり進行ですが、よろしくお願いします!
>>47
ありがとうございます!
水彩でスプレーワークという技法に挑戦しました〜
>>48
はい!早く支援側に回りたくて全力で書いてます!
>>49
ありがとうございます!
バタフライカップケーキはちょっとした工夫の飾り付けなのに、食べるとなんだか倍幸せな気持ちになるのでぜひお試しください。
曲は最後のタイトルヒントから別のヒントを逆算するといけるかも!
居座ります
>>50
ありがとうございます!
行ってみたいブーン系観光地上位目指します!
>>51
ありがとうございます!
そう言って頂けると、絵も用意して良かった!
今もある場所と、もう無い場所がモデルになってます。
コロナのせいです。
53
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:09:57 ID:uUhGkg420
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
知っている花ゲームは、(プリムラ)ウィンティーで何割かは仕留められたのではないでしょうか。
ノーマルなプリムラもゲームの世界から飛び出してきたような可愛らしさがありますが、ウィンティーはふんわりと儚げなところが素敵なお花ですよね。
【曲ヒント1】
その曲は、軽やかなアコースティックギターで始まります。(楽器に詳しくないのでおそらくですが)
曲ヒントは投下した日に1つ追加されます。
ヒントでその歌手にピン!ときたら、発表曲のリストを遡れば確実に当てられるようなヒントを最後に出す予定です。
予想は投下後の乙と同じタイミングで書き込んで頂けるとチェックしやすくて助かります!
その際は「◯◯の〜」、と歌手の短縮名や苗字を軽く添えてください。
予想タイム中は反応せず、曲名は最終話まで明かしませんが、最初に的中させた方のみ、完結後にご希望のお花とキャラクターを伺いに参ります。
仕上がり次第このスレか、ご希望であれば総合に短編として投下する予定です。
月一の投下を目指し、全9話くらいで7回の投下になる予定です。
よろしくお願いします。
54
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:13:07 ID:uUhGkg420
(∩^ω^)∩ パシャパシャ
( ∩ω∩) フキフキ
( ^ω^)「ふぅ…。」
( −ω−)人 ナムナム
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「ツン。僕は顔を洗ったそばからテカテカになっていくおっさんになってしまったお。」
( ^ω^)「…。」
( ^ω^)「君はいつまでも、綺麗なままだおね。」
僕は、白いドレスを着て微笑む妻の写真に向かって、そう言った。
( ^ω^)「行ってきます。」
55
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:15:37 ID:uUhGkg420
【 第二話 かすみ草の時 】
https://imgur.com/a/H2ygCI8
.
56
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:17:00 ID:uUhGkg420
(*゚ー゚)「えへへ…。」
『今度の水曜日は、腕時計などの小さな時計を持ってきてください。』
先生がそう言っていたのを、お母さんに言うのをわすれたわたしは、こっそりとお母さんの小さな"かい中時計"をポケットの中に入れてきた。
金色で、とってもキレイ。
手をポケットに入れると、シャランとすてきな音がする。
(*゚ー゚)(家に帰ってから、すぐにもどせばいいよね…?)
三(,,゚Д゚) 三(-@∀@)
三(-@∀@)「やーいやーい!のっろまっのし〜ぃは!」
三(,,゚Д゚)つ「ちっこくっする〜!!」
(;>ー<)「きゃっ!!」バンッ!
うしろから、いつもの二人にランドセルをたたかれた。
57
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:17:58 ID:uUhGkg420
(*゚ぺ)q「のろまじゃないもん!!」
走るのがクラスで一番おそいから、二人にはそんな悪口を言われる。
(*゚ぺ)(あーぁ、朝からイヤな気分。男子ってどうしてこんなにコドモなの?)
だけど、いいもん。
きっと私の時計は、クラスで一番キレイなんだから。
( ^ω^) テクテク
( ^ω^)「おや、お嬢さん。ハンカチを落としましたお。」
( ^ω^)つ□「はい。可愛いひまわりの柄ですお。」
∑(*゚ー゚)「あ!ありがとうございます!」
いつの間にか、かい中時計の反対がわに入れていたポケットから落ちちゃったみたい。
( ^ω^)ノシ「いえいえ。お勉強、頑張ってくださいお。」
(*゚ー゚) 「…」
(*゚ー゚)「…ステキな人…。」
58
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:19:04 ID:uUhGkg420
( ^ω^) テクテク
4月も後半に入る頃。
民家の花々が彩りを見せ、僕の前を歩く子ども達は今日の休み時間は何で遊ぼうかと相談をしている。
ζ(^ー^*ζ「おはようございます。」
( ^ω^)「おはようございます。」
ドクオさんからのオーダーを受けて以来、僕は家で朝食をとり、小学校の通学路でもあるこの道から通勤するようになった。
それは毎朝ここを通れば、デレさんが門の近くまでやって来て挨拶をしてくれるからだ。
ζ(゚ー゚*ζ「行ってらっしゃい。」
(*^ω^)「行ってきますお。」
朝の光を浴びながら誰かに『行ってらっしゃい』と言ってもらえると、清々しい気持ちになる。
59
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:20:11 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「おはようございますお。」
( ´∀`)「おはようモナ。内藤、今日は僕と一緒にシュールさんのお家に挨拶に行く日だモナ。」
( ^ω^)「はいですお。」
_____
___
__
( ´∀`)「おはようございます。」
( ^ω^)「おはようございます。」
車を少し走らせて着いたのは、立派な和風の家だ。
モナーさんが門のインターホンを鳴らすと、70代くらいの和服を着た女性がゆっくりとやって来た。
lw´‐ _‐ノv「おはよう。さぁさ、上がって。」
( ´∀`)「お邪魔します。」
60
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:21:58 ID:uUhGkg420
lw´‐ _‐ノv旦「ほら、玄米茶。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
( ´∀`)「シュールさんの玄米茶は香り高いモナ。」
lw´‐ _‐ノv△「おだてても、おにぎりしか出ないよ。」
( ´∀`)「頂きます。」
お茶請けとして、梅干しのおにぎりが出された。
( ^ω^))「塩気が絶妙で、仕事を忘れてしまいそうなほど美味しいですお。」モグモグ
lw´‐ _‐ノv「私も、遊びに来たのかと思ったよ。」
lw´‐ _‐ノv「それで、今日は何?」
61
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:23:46 ID:uUhGkg420
( ´∀`)「今日は、挨拶とお伝えする事があり伺いました。」
( ´∀`)「僕はいよいよ社長になります。それで、今後のシュールさんの担当は、内藤がさせていただくこととなりました。」
モナーさんは公共の施設や、昔からの縁がある邸宅への営業、デザインを担当している。
現社長の息子で、僕よりも少し歳上だ。
入社当初は緊張したけれど、この人がこののほほんとした態度を崩したところを、僕は一度も見たことがない。
lw´‐ _‐ノv「私のお迎えなんてもう少しだし、うちだけ最後まで付き合ってくれてもいいじゃないか。」
( ´∀`)「そうはいきません。急ぎ仕事で済ませないのが、御社のモットーですモナ。」
( ^ω^)「よろしくお願いします。」
lw´‐ _‐ノv「しょうがないね。よろしく。」
廊下の房掛けにタッセルで纏められている朱色のカーテンは、広げると雲や鶴、富士の柄が現れる。
モナーさんが前回制作したものだ。
62
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:25:46 ID:uUhGkg420
( ´∀`)「今年もここの梔子は、随分と早く咲きますモナ。」
モナーさんが、お茶を啜りながら庭を眺めた。
lw´‐ _‐ノv「ああ。植えてもらった時からそうなんだよ。だからといって早く散る訳でもない、庭孝行な花さ。」
シュールさんが庭がよく見えるようにと、窓を開けてくれた。
僕達は廊下まで行ってそれを眺めると、甘い桃のような香りが鼻まで届いた。
( ´∀`)「梔子の香りは、待ち合わせをしている恋人が僕に気付いて駆け寄ってきてくれた時の香りと、そっくりだと思いますモナ。」
モナーさんが、背中に手を組みながら言う。
lw´‐ _‐ノv「それはモナーと奥さんで想像しろという事かい?いきなり大昔の惚気話を始めるんじゃないよ。」
( ´∀`)「それ以外に例えが思い付きませんでしたモナ。」
( ´∀`)「…この屋敷と庭に、僕は育てて頂きました。本当に、ありがとうございました。」
lw´‐ _‐ノv「そんなこと言って、たまにはここへ来るんだろう?」
( ´∀`)「はい。お茶を飲みに来ますモナ。」
63
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:26:54 ID:uUhGkg420
_____
___
__
( ^ω^)「モナーさんは、キザですお。」
車内は、モナーさんがシュールさんからもらった梔子の盆栽の香りで満ちている。
僕は運転をしながら、モナーさんを少しからかった。
( ´∀`)「思った事は、悪い事じゃなければ言うモナ。そうしないと誰にも見付けてもらえないモナ。」
( ^ω^)「…」
聞いた人がどう噛み砕けば良いか分からないような事を、モナーさんは時々言うのだ。
( ´∀`)「さあ、戻って仕事するモナ。」
( ^ω^)「そうですね。」
64
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:28:20 ID:uUhGkg420
____________________________
_____
___
__
(*゚ー゚) テコテコ
わたしが持ってきた時計を、となりのせきのヒートちゃんが『カッコいい!』って、すごくほめてくれた。
今日はとってもいい日だったな!
(*゚ー゚)(早く帰って、バレないようにもどさなくちゃ。)テコテコ
三(,,゚Д゚) 三(-@∀@)
三(-@∀@)「おっせ〜!おっせ〜!のっろまっのし〜ぃは!」
三(,,゚Д゚)つ「かっえれっない〜!!」
(;>ー<)「きゃっ!!」バンッ!
カシャンッ
(;*゚ー゚)「あっ…!!」
(;,,゚Д゚)「えっ…」
三(;-@∀@)「いこーぜ!」
65
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:29:37 ID:uUhGkg420
(;*゚ー゚)「どうしよう…こわれちゃった…!」
かい中時計が道路に落ちて、中の部品がちらばってる。
全部集めたけど、どうやってくっつければいいのか分からない。
(*;ー;)「元通りにならない…どうしよう…。」
お母さんが、おじいちゃんからもらった時計なのに。
(*;へ;) グスッ…ヒック…
(*;ー;)「……あれ…?」
(*;ー;)(朝まで、畑だったところが葉っぱでいっぱいだ…。)
もう家に帰らなくちゃいけないのに、どうしてもそのお庭が気になる。
(*;ー;)(どうせおこられちゃうもん。ちょっとより道しちゃお…。)
_____
___
__
____________________________
66
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:31:03 ID:uUhGkg420
16:15
((ヽ‘ω`)ゲソ…
僕は未だに慣れないファンシーな案件に苦戦し、精神を削って退社した。
後輩の芹沢さんにはよく、『乙女男子』と評される僕だ。
確かに先進的な機械のデザインよりも淡い色の花を見た時の方が心躍るし、工場に駆り出されてミシンを踏んだ事もある。
だけど流石に十代の女の子がメイン層の、キラキラとしたイメージに沿うのには骨が折れる。
その子達の気持ちになって、尚且つ三歩は先を行かなければいけない。
いくつか案を作って送ったので、そこから反応の良い部分をまとめて仕上げるしかない。
((ヽ^ω^)(こういう時は、自信失くすおね…。今日はちょっとだけ、ドクオさんのお庭に寄らせてもらうお。)
67
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:32:27 ID:uUhGkg420
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん!」
門に入ろうとしたところ、デレさんが僕を見付けて駆け寄ってきた。
デレさんが走る度に、ドレスが左右へと少し揺れる。
その時、フワッと梔子の香りが、僕を包んだ気がした。
(;^ω^)
____________________________
( ´∀`)「梔子の香りは、待ち合わせをしている恋人が僕に気付いて駆け寄ってきてくれた時の香りと、そっくりだと思いますモナ。」
____________________________
僕は、今朝のモナーさんの言葉を思い出して戸惑った。
(;^ω^)(僕の服に、香りが付いていたのかお…?)
68
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:33:44 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*;ζ「こんにちは!」
今日はシニヨンをふわっとさせたような髪型をしているデレさんが、息を切らし気味で僕に挨拶をした。
( ^ω^)「こんにちはですお。今日もスケッチにお邪魔してもよろしいでしょうか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「大丈夫ですが、ちょっと困った事がありまして…。」
( ^ω^)「?どうかされましたか?」
ζ(゚ー゚*;ζ「先ほどお客様が一人いらっしゃったようなのですが、見付からないんです。」
そう言いながら、デレさんは辺りをキョロキョロと見回している。
( ^ω^)「そうなんですかお?よろしければ、一緒に探しますお。」
ζ(゚ー゚*;ζ「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
69
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:35:31 ID:uUhGkg420
僕はデレさんと二手に分かれて探し始めた。
メインの道から逸れた場所を、一つずつ見ていく。
木製のベンチと、トレニアの鉢。
こぼれるように咲くポリゴナムと、まっすぐに育った虹色のルピナスを横目に進む。
(;^ω^)ゞ(カラフル過ぎて、僕まで迷子になりそうだお…。)
そう思い、立ち止まった時。
何かが僕の横を通り過ぎた。
(;^ω^)(…!ミヤマカラスアゲハかお…!?)
昔図鑑で見た、高地に棲息する珍しい蝶に似ている。
黒と、光るような青緑の色。
けれど翅にはいくつか穴が空いており、どこか蝶番を思わせた。
その蝶が、桃色のラナンキュラスの辺りで留まろうとしていた。
だけど僕が気になったのは、その先のベンチだ。
茶色い鞄が置かれている。
70
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:36:34 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「お…?」
(;*゚ー゚)
近付いてみると、かすみ草に囲まれて、しゃがんで困ったような顔をした女の子。
その目線の先には、モシャモシャと何かの葉を食べている子兎。
だけどその耳は、金属で出来ているようだった。
( ^ω^)(そしてこの子は…今朝の子だお。)
( ^ω^)「お嬢さん、どうされましたかお?」
∑(;*゚ー゚)「あ…朝の…!」
(;*゚ー゚)「あの…時計がこわれてしまって…」
(*;ー;)「学校の近くに知らないお庭があったから入ってみたら…時計がウサギになっちゃって…」
(*;Д;)「どんどん遠くまで走っていくから、まいごになっちゃった…!」
∑(;^ω^)「だ、大丈夫!僕が来た道を戻れば帰れるお。」
71
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:37:30 ID:uUhGkg420
(;^ω^)つ ソーッ…
(;^ω^)「捕まえたお…ベンチの鞄を持ってくださいお。道を戻りますお。」
(;*゚ー゚)「は…はい…。」
兎が驚いて飛び跳ねないように、僕が小声でそう言うと、女の子は素直にそれに従った。
(;^ω^)(…我慢だお。)
ラグラスのような尻尾が、手首に当たってくすぐったい。
72
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:38:57 ID:uUhGkg420
本筋の道に繋がったところで、デレさんが合流した。
ζ(゚ー゚*;ζ「良かった…!」
(;^ω^)「デレさん、この子の時計が壊れてしまったそうなんですお。」
そう言いながらそっと、胸に抱いた兎を見せた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんのお客様ですね。ご案内いたします。」
デレさんはしゃがんで、女の子に目線を合わせた。
ζ(゚ー゚*ζ「お名前を聞いても良い?」
(;*゚ー゚)「しぃ…です。」
ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃん。ここは修理屋さんだから大丈夫よ。時計、直してもらおうね。」
(;*゚ー゚)「は、はい…。」
73
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:39:54 ID:uUhGkg420
屋敷の中に入ると、ドクオさんがどこかの部屋から出てきたところだった。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさん。こちらの方の時計を修理してほしいんです。」
デレさんがそう言うと、僕の胸にいた兎はドクオさんの肩へとピョンと飛び移った。
(;*゚ー゚)「あの…お金は…」
( ^ω^)「僕が立て替えておくお。」
おそらく修理代は、小学生の小さなお財布では払えないような額だろう。
(;*゚ー゚)「でも…。」
('A`)「……」
僕達のやり取りを聞いていたドクオさんが、口を開いた。
('A`)「…図書室の掃除を。」
____________________________
74
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:41:32 ID:uUhGkg420
_____
___
__
( ^ω^)「しぃちゃんはこれを持っていってお。」
僕は案内された事務室の掃除用具入れの中から羽根ばたきを取り出して、しぃちゃんに手渡した。
それから掃除機と雑巾を持って、図書室に向かう。
ζ(゚ー゚*ζ ))「こちらを、真っ直ぐです。」
('A`)つ「…デレは、こっち」
そう言ってドクオさんが、デレさんの腕を軽く引いた。
ζ(゚、゚*ζ「えー…」
ζ(゚ー゚*ζ「お二人とも、後から行きますね。真っ直ぐ突き当りにある部屋です。」
( ^ω^)「分かりましたお。」
75
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:43:29 ID:uUhGkg420
図書室の中に入ると奥は窓で、少しクリームがかった壁に木の床と暖炉がある。
先程開けた扉の両サイドには、大きな本棚が1台ずつと、その近くには1人分の椅子とテーブル。
僕は遮光用のカーテンを取り付けるため、つい最近もこの部屋に入った。
( ^ω^)(本棚も窓も、高さがあるお。しぃちゃんには低い場所と…掃除機を頼むことにするお。)
電気を点け、窓を開けて換気をした。
窓の外からは草花の瑞々しい香りがして、まるで僕を庭へと誘っているようだった。
( ^ω^)「僕は脚立を持って来るお。しぃちゃんは手の届く高さまでで良いから、壁の木枠に付いている埃をはたきで取っておいてほしいお。」
そう言い残して、僕は先程の事務所に向かった。
( ^ω^)「…」
その途中で、僕がドクオさんと初めて会った時の部屋を通る。
ドクオさんとデレさんが、少し前に入っていった部屋だ。
((( ^ω^)(…とても仲が良さそうだったお。)
76
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:44:11 ID:uUhGkg420
('A`)「……………ダメか」
ζ(゚ー゚*ζ「…。」
.
77
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:46:44 ID:uUhGkg420
僕が図書室に戻るとしぃちゃんは頼んだ通りに、一生懸命羽根ばたきを振るっていた。
( ^ω^)「ありがとうだお。今度は僕が窓の埃を落とすから、それが終わったら窓側から本棚に向かう感じで掃除機をかけていってほしいお。」
(*゚ー゚)「はい。」
やる事が出来たからなのか、しぃちゃんは少し元気を取り戻したようだ。
僕は窓の埃を落とし終わり、脚立を持ってシャンデリア、それから本棚へと移動した。
(;^ω^)(掃除機に追いつかれないように、急がないといけないお。)パタパタ
本棚の中にはブックブラシが備えられていたため、それを使う。
まじまじと見ないようにはしているが、タイトルが自然と頭の中に入ってくる。
( ^ω^)(…花やお菓子の本以外は、僕でも知っているような有名な小説ばかりだお…。)
国内で発表された、わりと最近の本が多い。
この屋敷の本棚の中身としては、少しアンバランスな印象だ。
( ^ω^)(右下の棚に…小箱があるお。この部屋自体そこまで掃除が必要でもない状態だけど、この辺りは特に埃がないお…。)
埃取りが終わると、僕はバケツと水が必要な事に気付いて事務室へと向かった。
( ^ω^)「デレさん。」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ。」
その途中には、図書室とは反対方向に向かうデレさんがいた。
ζ(゚、゚*ζ「すみません。ドクオさんに用事を頼まれたので、まだそちらに向かうには時間がかかります。」
( ^ω^)ノシ「あとは全体を拭けば終わりなので、大丈夫ですお。お気になさらず。」
78
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:50:24 ID:uUhGkg420
僕が必要な物を持って図書室に戻ると、掃除機をかけ終えたしぃちゃんが待っていた。
( ^ω^)「これから僕は、窓拭きをするお。しぃちゃんはまず机に椅子と、部屋の中の木枠を拭いてほしいお。終わったら僕も手伝って、最後は一緒に床を拭くお。」
(*゚ー゚)「分かりました。」
( ^ω^)つ□ キュッキュッ
タッセルでまとめられた緑色のカーテンの横の、窓を拭く。
そこから見えた庭は、少しだけ日が傾いていた。
( ^ω^)(庭もだけど、屋敷も英国風だお。)キュッキュッ
( ^ω^)「…そういえば、しぃちゃんの時計は、もとはどんな見た目なんだお?」
少しでも緊張が解れるようにと、話しかけてみる。
(*゚ー゚)「金色の、かい中時計です。丸くてつるんとした…」
( ^ω^)「それは素敵だお。懐中時計なんて、僕よりずっと前の人が持っていたような物だけど、最近の物かお?」
(;*゚ー゚)「いえ、お母さんの時計で…学校で使うのに今日だけ…ないしょで持ってきてたんです…。」
( ^ω^)「そうだったのかお…。」
してはいけない事ではあるが、今日が初対面の僕がどうこう言う話ではない。
大人の持ち物を羨ましがる年頃なのだろうと、僕は自身の子供時代の失敗と照らし合わせてしみじみとした。
(;*゚ー゚)「だけど、同じクラスの男子にせなかをはたかれて落としちゃって…」
Σ(;^ω^)「えぇっ!?それは酷いお!」
79
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:51:51 ID:uUhGkg420
(*゚、゚)「…。あーぁ、クラスの男子もおじさまみたいにやさしければいいのに…。」
(;^ω^)「…?おじさまって?」
(*゚ー゚)σ「おじさまですっ!朝もステキでした!」
そう言って、しぃちゃんは僕をうっとりするように見つめた。
ドクオさんのような、若い人相手ならまだ分かる。
しかし、アラフィフの僕に向けるような目ではないのだ。
(;^ω^)「気が付いたら、みんなする事だお。」
(*゚、゚)「そんな事無いです。知らない子だったら、私…勇気出ないかも…。」
(;^ω^)ノシ「いやいやそんな。」
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「…そういえば。僕もその男の子達みたいな頃があったお。」
(;*゚、゚)「えー!?」
(;*゚、゚)「ほんとにっ?」
しぃちゃんが目を丸くして、僕を見た。
( ^ω^)「そうだお。女の子の手を強く引っ張って、困らせてしまった事があるお。」
(;*゚、゚)「えぇー、ちょっとイヤかも…。」
(;^ω^)「ウッ…」グサッ
80
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:53:42 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*;ζ「お待たせしました。」パタパタ
デレさんが、早歩きで図書室にやって来た。
( ^ω^)「もう、終わるところですお。」
しぃちゃんと一緒に雑巾がけ競争をしていたら、あっという間に床は綺麗になった。
( ^ω^)「広くてダンスが踊れそうなお部屋ですお。」
2台の本棚と机セット以外は、ほぼ何もない部屋だ。
ζ(゚ー゚*ζ「持て余してしまいますよね。ここ、今は私の部屋なんです。」
(;^ω^)「そうなんですかお?知らずにお掃除してしまいましたが…」
ζ(^ー^*ζ「お気になさらず。ありがとうございます。」
(*゚、゚) ムム…
しぃちゃんがパタパタと近付き、僕達の間に立った。
(;^ω^)「あっ、暇だったおね。ごめんお。」
ζ(゚ー゚*ζ「修理も終わったそうなので、行きましょうか。」
そう言われても、しぃちゃんは何故だか不機嫌そうな表情を変えず、今度は僕の横に立った。
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら…。うーん…?」
ζ(^ー^*ζ「…恋敵ですかね?私。」
デレさんがそう言って悪戯っぽく首を傾げた。
僕は苦笑いして、『流石に違うと思いますお』という視線をデレさんに送った。
ζ(゚ー゚*ζ「だけど、日が暮れきる前に帰りましょうね。」
(*゚ー゚)「はい…。」
デレさんが先頭に立って、僕達は図書室を後にした。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ζ(^ー^*ζ「…ふふっ!」
デレさんは自分で言った言葉がツボだったのか、時間差で笑っていた。
81
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:56:58 ID:uUhGkg420
('A`)「…」
僕達が事務所の水道で手を洗い廊下に出ると、ドクオさんが待っていて兎をしぃちゃんに手渡した。
(*゚ー゚)「わ…」
時計の針のような形の金属の耳が、カチカチと小刻みに一定の音で動いている。
( ^ω^)(さっき僕が連れてきた時は耳は動いてなかった。…ということは、直ったみたいだお。)
ζ(^ー^*ζ「一番最初に来た門から出れば、もとの懐中時計に戻るよ。」
(;*゚ー゚)「えっ…?あ、ありがとうございます…?」
しぃちゃんがドクオさんに、よく分からないままお辞儀をしてお礼を言った。
未だに身体はふわふわとした兎の形で、本当に本来の物として直っているのか、確認の仕様がないのだろう。
それからデレさんが僕達を玄関へと向かうように促し、僕とデレさんでしぃちゃんを門まで送る事にした。
( ^ω^)「ウサギさん、大人しいお。」
(*゚ー゚)「はい。それに、あったかいです。」
しぃちゃんは胸に兎を抱いている。
(*゚、゚)「だけど、なんで時計がウサギになっちゃったんだろう…?」
( ^ω^)「不思議だおねー。」
ζ(^ー^*ζ ニコニコ
82
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 01:59:29 ID:uUhGkg420
(*゚、゚)σ「…あれっ?あの花、ウサギに似てる!」
(;^ω^)「おっ!?本当だお!」
しぃちゃんが指差した小さな植木鉢には、本当に兎の形をした花が咲いていた。
ζ(゚ー゚*ζ「名前もウサギゴケと言いますよ。とても小さくて、可愛いですよね。」
ζ(^ー^*ζ「ちなみに、食虫植物です。」
(;^ω^)「お…」
どう返せば良いのか分からなかった僕は、気不味さを隠すために自分の腕時計を見た。
( ^ω^)(もう、17時半だお。)
( ^ω^)「しぃちゃん。ここは明るいけれど、門を出ると図書室で見た時のお庭みたいに、少し暗くなっていると思うお。良かったらお家の近くまで送っていくお。」
(*゚ー゚)「あ!大丈夫です!すごく近くだし、GPSもあるし…」
(;^ω^)「でも…」
ζ(゚ー゚*ζ「ウサギさん。しぃちゃんがお家に着いたら、ドクオさんに教えてくれますか?」
デレさんがしぃちゃんの抱く兎に顔を近付けて、そう話しかけた。
すると兎は、耳を忙しなく動かして『まかせて!』と返事をするような仕草をした。
ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。これなら大丈夫ですね。」
83
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:00:43 ID:uUhGkg420
( ^ω^)?「どうして大丈夫なんですかお?」
僕は気になって、デレさんに聞いてみた。
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんはお客様の持ち物とお話が出来るんですよ。」
ζ(゚ー゚*ζ「来る時なんかも、遠くにいる時点から『行くよ』と物が教えてくれたり、会話したりするそうなんです。」
Σ(;^ω^)「ええっ!?」
(;^ω^)「そうなのですかお…。それは凄いですお。」
もはや、嘘だなどと疑う事もない。
ここはとても不思議な場所なのだから。
(*゚、゚) ムム…
気付けばしぃちゃんがまた、不機嫌そうな顔をしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「あ。しぃちゃん、これ良かったらお家で食べてね。」
そう言ってデレさんが透明な袋に入った焼き菓子をしぃちゃんに手渡した。
中の小さな瓶には、ジャムも入っているようだ。
(*゚、゚)「…ありがとうございます。」
嬉しいのにそれを隠すような複雑な顔をして、しぃちゃんはそれを受け取っていた。
84
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:02:23 ID:uUhGkg420
(*゚ー゚)「かい中時計を直してくれてありがとうございました。さようなら。」
ぺこりとお辞儀をして、しぃちゃんは門から家へと帰っていった。
( ^ω^)ノシ ζ(゚ー゚*ζノシ
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん。ちょっと遅いですが、よろしければお茶を飲んでいきませんか?」
( ^ω^)「では、ありがたく。」
こういう時は予め用意しておいてくれて誘うものなのだ。
少しお腹も空いていたし、お言葉に甘えてしまおう。
_____
___
__
(*゚ー゚)(…。フシギなところだったなぁ…。)
お花がいっぱいのお庭に、大きなお家。
それから、ステキな朝のおじさま。
(*゚ー゚)「…あれっ?」
私はだっこしていたウサギが急にいなくなったのにびっくりして、下を見た。
(*゚ー゚)「時計に戻ってる…。」
____________________________
85
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:04:56 ID:uUhGkg420
(*^ω^)「…今日も、凄いですお。」
前回と同じく、庭のテーブルセットのある場所に通された僕は、周りのその美しさに感嘆の声をあげた。
ζ(^ー^*ζ「アルメリア バレリーナホワイトに、ラナンキュラス ラックスです。ウラノスなど、絶妙な色合いが素敵ですよね。」
(*^ω^))「大人が好きな色ですお。」
86
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:08:00 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「それでは本日は、メレンアッサムとスコーンです。」コトッ
デレさんが屋敷に戻り、ワゴンを持ってきてお茶を僕の前のテーブルに置いてくれた。
( ^ω^)「ありがとうございますお。頂きますお。」
( ^ω^)) コクリ
( ^ω^)「…アッサムはミルクティーのイメージがあったけれど、ストレートもとても美味しいですお。」
(*^ω^)「このメレンアッサムというお茶は、半音上がって華やかになった感じの味がする気がしますお。飲みやすいですおー。」
ζ(^ー^*ζ「それは良かったです。」
ζ(゚ー゚*ζ「インドにあるメレン茶園は、アッサムの中でも特に歴史のある茶園なのだそうです。」
( ^ω^)「そうなのですかお。風味に古めかしさを全く感じないので、驚きましたお。」
ζ(^ー^*ζ「そうですよね。私、アッサムの中ではこれが一番好きです。」
https://imgur.com/a/YAMntb5
.
87
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:11:08 ID:uUhGkg420
お茶の温度がもう少し下がるまで、僕達は話をする事にした。
ζ(゚ー゚*ζ「お茶のセットを取りに行った時に、しぃちゃんは無事お家に着いたとドクオさんが教えてくれました。」
( ^ω^)「それは安心しましたお。」
( ^ω^)「…デレさんも、遠くからドクオさんと会話をする事が出来るのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえ。私は人の姿ですし普段ドクオさんの近くに居るからなのか、普通に会話をしに行かないと話せません。」
ζ(^ー^*ζb「もしかしたらドクオさんとの会話の手段は、一種類しか持てないのかもしれませんね。」
デレさんは今思い付いたのか、楽しそうにそう言った。
ζ(゚ー゚*ζ「私は他の物達との会話も、ちゃんと出来ている訳ではないんです。だけど言いたい事などは、なんとなく分かります。」
( ^ω^)「そうなんですかお。程度はあっても、デレさんは人や物とお話が出来るなんて羨ましいですお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふ。ありがとうございます。」
僕は、『自分が作ったカーテンなら一体どんな話をしてくれるのだろうか?』と、少し気になった。
88
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:14:24 ID:uUhGkg420
ζ(゚、゚*ζ「…だけど、お話相手は少ないです。門から外を眺めていても、ここにやって来るお客様しか私は見たことがありません。」
( ^ω^)「ここを出た場所は、通学路で人通りが多いはずなのに…。不思議ですお。」
ζ(゚、゚*ζ「はい…。すぐ近くに学校があるのは、門から見えるのですが…。」
( ^ω^)(外の景色は、僕やしぃちゃんが見ているものと同じ…。)
( ^ω^)∂「…ではデレさんは、僕の事がなぜ毎朝見えるのでしょうか?」
この場所に来ない日でも、僕達は朝に顔を合わせて挨拶をしている。
ζ(^ー^*ζ「おそらく、ご縁がある間は継続してお会い出来るのでしょう。」
( ^ω^))「なるほど。ドクオさんから依頼されたお仕事の間、という事ですかお。」
そう話しているうちに、お茶を一杯飲みきってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、よろしければミルクティーでもアッサムを試してみてください。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
89
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:15:30 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「失礼します。」
そう言いながら、デレさんは空になった僕のカップにミルク、紅茶の順で注いだ。
その動きは自然だが、じっとよく見ると機械的で、彼女も何かしらの「物」である証のようであった。
ζ(゚ー゚*ζ「ミルクを先に入れるのは、熱によるタンパク質の変質を防ぐためなのだそうですよ。」
( ^ω^)「そうなのですかお。僕はコーヒーにもミルクを入れるので、家でも試してみますお。」
ζ(^ー^*ζ「ぜひ。」
( ^ω^)「では、まだ頂いていなかったスコーンから。」
僕はデレさんに倣いスコーンを手で半分に割り、クロテッドクリームとジャムを塗った。
90
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:17:37 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「こちらのジャムは、ラズベリーです。やっぱりイチゴやブルーベリーが主流かもしれませんが、個人的に延々と食べられるのはラズベリーですね。」
( ^ω^)「僕はスコーンをラズベリーで食べるのが初めてなので、楽しみですお。」
そう言ってスコーンに目を落とすと、暗い赤紫のジャムがピカピカとしていて綺麗だ。
僕は一口でジャムに辿り着くように、大口で食べることにした。
( ^ω^)) モグッ
(*^ω^))「サクほくですお。」ホクホク
素朴で、ボリュームがある。
ラズベリージャムは少し酸味があるけれど、甘みと共に主張が控えめで、そこが小麦の風味を引き立てている。クロテッドクリームがお菓子を食べている満足感を後押しして、僕はもう一口と頬張った。
口いっぱいに味わいが広がると、そろそろ飲み物が欲しくなってくる。
( ^ω^)) コクリ
(*^ω^)フゥ…
ティーコゼーで保温され、よく抽出されたメレンアッサムはミルクティーにしてもなお芳香で、僕は思わず目を閉じた。
https://imgur.com/a/YAMntb5
.
91
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:19:59 ID:uUhGkg420
_再び開けた目が、デレさんの目と合った。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、内藤さん。ドクオさんが今度は3段のお皿でお菓子を用意してくれるそうですよ。」
pζ(゚ワ゚*ζq「アフタヌーンティー形式です!」
Σ(;^ω^)「!?」
(;^ω^)ノシ「いえいえ!僕はこのくらいで、お腹がいっぱいですお!手間もかかりそうなので悪いですし!!」
ドクオさんは、どうして僕をここまでもてなしてくれるのだろう?
もしかしてお菓子作りが得意なことを、誰かに披露したかったのだろうか?
ζ(゚、゚*ζ「……そうですか…。」
期待を裏切られたのか、デレさんは残念そうな顔をしている。
ζ(゚、゚*ζ「内藤さんは、クリームティー派でしたか…。」
( ^ω^)「クリームティー…?」
ζ(゚ー゚*ζ「こんな風に、スコーンと紅茶がセットのおやつの事です。」
(;^ω^)「そうですお。クリームティー派ですお!」
92
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:20:55 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ…内藤さん。よろしければここにいらっしゃる間、私の話し相手になってくれませんか?」
( ^ω^)「僕が…ですかお?」
(;^ω^)∂「若い女性が好まれるような話を、こんなオジさんが出来るか不安ですお…。」ポリポリ
ζ(゚、゚*ζ「そんな事ないです。…実は私、外の事がとても気になるんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんはめったに家から出ないですし、修理のお客様も頻繁には来ませんし…。」
人ζ(>、<*ζ「お願いします!一生のお願いですっ!」
デレさんが子供のようなお願いの仕方をするので、僕は思わず笑ってしまった。
(*^ω^)「良いですお。」
93
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:21:21 ID:uUhGkg420
【 第二話 かすみ草の時 】
終わり
94
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:22:05 ID:uUhGkg420
【登場人物】
lw´‐ _‐ノv
素直珠瑠
立派な日本家屋に住んでいる
米料理が絶品
(*゚ー゚)
詩衣(しぃ)
小学校中学年
内藤を格好良いおじさまだと思っている
小柄
95
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:28:10 ID:uUhGkg420
途中で画像載せる場所ミスっちゃった
紅茶ってもし仮に、最初にミルクで飲んで次にストレートで飲みたくなった時、カップは変えてくれるものなんですかね?
いくつか紅茶の本を読んでも謎のままです…
96
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:30:13 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「外の事というと、この街の事でよろしいでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。内藤さんやしぃちゃん、ここにいらっしゃるお客様がどんな場所に住んでいるのか。それが知りたいです。」
( ^ω^))「分かりましたお。」
97
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:30:45 ID:uUhGkg420
【 第三話 ルピナスの街 】
.
98
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:32:35 ID:uUhGkg420
僕はスコーンにジャムを塗りながら、何から話そうかと考える。
デレさんもスコーンにたっぷりのクロテッドクリームを塗っては、美味しそうに頬張っていた。
( ^ω^)「…僕が住んでいる街は、農地と、他と比べれば大規模とまではいかない工業地域の間にある土地なんですお。」
( ^ω^)「ここは、その両方の地域を支えるような業種の人達のベッドタウンだったそうなのですが、元々の住宅街からずれた場所に大学と駅が建ち、再開発によってだんだんと賑わいが出て、近年は観光地としての知名度も上がってきていますお。」
( ^ω^)「僕は、大学が設立されて間もない頃に進学でこの街へ来て、そのまま定住しました。」
ζ(^ー^*ζ
デレさんは、時々頷きながら聞いてくれる。
( ^ω^)「僕が学生だった頃はまだ、大学の近くは広い道路に歩道、学生寮とお店が少しあるくらいで…。新たな店が開店する度に、学生達がこぞって行くほどでしたお。」
( ^ω^)「それが今では、お店ばかりの街になったんですお。主に小規模で、各々にコンセプトがあるような。」
99
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:34:57 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「小さなお店、ですか?」
( ^ω^)「はい。飲食店が主ですが、美容室、服屋に雑貨屋、専門店など。街の人が始めたものが殆どなので、小さなお店が多いんですお。」
( ^ω^)「古い住宅街方面にはスーパーやチェーン店もありますが、駅周辺の大通りは車を使わずに見て回る事が出来るようなお店が多いですお。」
( ^ω^)「駅前には古い建物を再利用して、小さなお土産屋がひしめき合う場所もありますお。そこでは街の特産の薔薇を使ったお菓子が人気ですお。」
ζ(゚、゚*ζ「古い建物…。それは、『北野工房のまち』のようなものでしょうか?」
Σ( ^ω^)「ご存知なのですかお!?」
だいぶ離れた土地の例を挙げられたので、僕は驚いた。
ζ(^ー^*ζ「庭師さんの奥さんが、読み終えた本を私にくださるんです。実際にお会いした事はありませんが…。」
ζ(゚ー゚*ζ「その頂いた本の一つで、登場していました。」
( ^ω^)「そうでしたかお。あそこまで立派ではないですが、そんな感じですお。」
100
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:37:35 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「他の特徴といえば、高さ制限がある事ですお。消防技術は近隣の工業地域に重点を置いているため、この街は省エネで救助活動が出来るようにとシンプルな街の造りになっていますお。」
( ^ω^)「高さ制限の都合で、丘の上にある白くて大きな図書館が目立つので、学生の間ではふざけて『神殿』などと呼んでいましたお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふっ。」
( ^ω^)「そして図書館や公園などには見事な花が咲いていますお。最近始まった街おこしらしくて流石にこの庭ほどの規模ではありませんが、それこそがこの街が観光地となった一番の理由なので、とても綺麗ですお。」
( ^ω^)「まとめると、ロケーションとショッピングを楽しめる、日帰り旅行にぴったりな街ですお!」
(*^ω^)∂「そして僕は、この街のお店のカーテンをデザインするような仕事をしていますお。」
僕は照れ隠しで、戯けるようにそう締め括った。
101
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:38:54 ID:uUhGkg420
ζ(^ー^*ζ「それはとても素敵ですね!」
Σζ(゚ー゚*ζ ハッ
人ζ(゚ワ゚*ζ†+「もしや、街中のカーテンが内藤さんのデザインだったり…!?」
( ^ω^)「いいえ。でも、遠からずですお!街のカーテンの殆どは、僕の働く会社で手掛けているんですお。僕の他にも数名のデザイナーがおりますお。」
ζ(^ー^*;ζゞ「あら、そうでしたか。えへへ。」
ζ(゚ー゚*ζ「…子供っぽくてダメですね。そうだったら楽しいのにという想像を、すぐしてしまう癖があるんです。」
( ^ω^)「構いませんお。僕の話をよく聞いてくださって、嬉しいですお。」
102
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:40:26 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「あっ。」
ζ(゚、゚*ζ「どうされましたか?」
(;^ω^)「危なかった…。予定を忘れるところでしたお。今夜は仕事で、夜に飲食店に伺う予定があるんですお。」
ζ(゚、゚*;ζ「そうでしたか!引き止めてしまって、すみませんでした…!」
( ^ω^)「いいえ、時間に余裕はあるので大丈夫ですお。閉店直前に行く約束ですので。」
ζ(゚、゚*ζ「…遅くまでお仕事、大変ですね。」
( ^ω^)「こういう事はたまになので、大丈夫ですお。」
( ^ω^)「最近は就業時間も短くなったし、こうやってお邪魔させてもらう余裕もありますおw」
ζ(^ー^*ζ「そうだったのですね。来てくださって、嬉しいです。」
( ^ω^)) コクッ
僕は、ミルクティーの最後の一口を飲み干した。
( ^ω^)「ご馳走様でしたお。そろそろ帰りますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「お見送りいたします。」
103
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:43:17 ID:uUhGkg420
_____
___
__
僕達は、青紫の花が咲くローズマリーとオルレアが並ぶクネクネとした道を抜け、ハナビシソウとかすみ草の広場を横目に進み、門の前までやって来た。
( ^ω^)「ありがとうございましたお。ドクオさんにもご馳走様でしたと、よろしくお伝えください。」
( ^ω^)「それでは、また。」
ζ(゚ー゚*ζ「さようなら。」
((( ^ω^)
僕は日が暮れて暗くなった帰り道へと、歩きだした。
°·∴ζ(>Д<;ζ「ブェ゙ッぐショイィィぃぃ!!!」
∑(;^ω^) ビクッ!!
(;^ω^)「大丈夫ですかおっ?」
駆け寄って、デレさんに声をかけた。
ζ(゚∩゚*;ζ「すびばせん…お見苦しいところを…。」ズズッ
(;^ω^)「いえ…。」
104
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:44:13 ID:uUhGkg420
ζ(゚ー゚*ζ「…」
( ^ω^)「…デレさん?」
ζ(^ー^*ζ「お話を聞いたら…。私も街に行って、内藤さんの作ったカーテンを見てみたくなってしまいました。」
昼間のような明るさの庭を背に、そうデレさんは微笑んだ。
( ^ω^)「…。」
( ^ω^)「…僕の休日でよろしければ、お連れしますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「…」
ζ(゚ー゚*ζ「…しぃちゃんの兎は、ここを出たらもとの姿に戻ります。」
___________________________
105
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:49:18 ID:uUhGkg420
_____
___
__
21:30
( ^ω^)「ご馳走様でしたお。とても美味しかったですお。」
(,,^Д^)「改めて、本日はお越し頂きありがとうございます。」
僕はデミグラスソース仕立てのポークカツレツを堪能し、タカラさんにお礼を言った。
タカラさんは、西洋料理店のオーナーシェフだ。
ここは居抜きの建物で、今までは昼のみの営業をしていた。
それをお子さんが大きくなった事を期にディナータイムの営業へと切り替え、その際に夜の印象に合わせるカーテンをオーダーしてくれたのだ。
(,,^Д^)「お伝えした通り、明るさが気になるのです。吹き抜け天井のライトからの光は程良いはずなのに、なんだか料理が美味しそうに見えなくて…。」
(,,^Д^)「今より少しでも明るければ違うのか。もとの白いカーテンに戻すべきなのかと…。」
( ^ω^)「そうでしたかお…。配慮が行き届かず、申し訳ありませんでした。」
僕は席を立ち、タカラさんに頭を下げた。
(,,^Д^)「いえ!カーテンは気に入っているので、出来れば替えたくないのですが、何か知恵をお貸し頂けたらと…。お願いします。」
( ^ω^)「分かりましたお。」
106
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:50:54 ID:uUhGkg420
( ^ω^)(…。)
僕は店をゆっくりと見渡してから、天井を見上げた。
( ^ω^)(明るさや色温度がそこまで悪いという訳ではなさそうだけど…。夜に料理を美味しそうに見せるには、もう少し工夫が必要なのかもしれないお。)
タカラさんがオーナーになる以前のこの店は、昼間のみの営業をしていたそうだ。
( ^ω^)(…ん?)
卓上に点々と置かれている蝋燭。
( ^ω^)(あれなら…。)
( ^ω^)「…天井よりも、お料理に近い場所をもう少し明るくするのはどうでしょうか。」
( ^ω^)「例えば…こちらの蝋燭の器を、もっと光を拡散させるような硝子の器に変えるのはいかがでしょうか?」
( ^ω^)「僕が以前担当したお店で、良さそうな品を取り扱っていますお。一つ借りて試せないか、明日聞いてみますお。」
(*,,^Д^)「本当ですか!よろしくお願いします。」
____________________________
107
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:53:12 ID:uUhGkg420
_____
___
__
16:40
((( ^ω^)
世の就業時間は、僕が働き始めた頃よりも1時間短くなった。
それは大人を早く家に帰して子どもの睡眠や生活のリズムを整えるための政策であるけれど、この街の場合は寄り道による各々の店の収入アップの効果もあるのだそうだ。
僕も例に倣い、今日は大通りで買い物をしてからドクオさんの屋敷へと向かう事にした。
いつもお茶やお菓子を頂いてばかりなので、お返しの気持ちとして土産を用意するためだ。
( ^ω^)(えーと…営業時間がC形態なら、あの店にするかお。)
飲食店の場合、営業時間がモーニングからブランチまで、ランチとティータイム、遅いティータイムからディナーまで等と区分がある。
観光寄りの店や、一般客向けの店もそれに近い営業形態を取っているため、知らない店に行く時などは一度営業時間を調べてから行かなくてはいけない。
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。」
( ^ω^)「こんにちは。今日も少しだけ、寄らせて頂きますお。」
ζ(^ー^*ζ「はい。」
108
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:55:09 ID:uUhGkg420
僕は最初に、ドクオさんがいつも居る大広間を訪ねた。
( ^ω^)「こんにちは。」
( ^ω^)「いつも美味しいお茶とお菓子をありがとうございますお。ドクオさんは甲殻類がお好きだとデレさんから聞きましたので、よろしければこちらをどうぞ。」
そう言って、僕はいくつかのパウチが入った紙袋を部屋の入口にあるテーブルに置いた。
海に隣接していない県で畜産の食材を扱う店の方が多いため、土産に魚介類を選ぶという選択肢がこの街にはあるのだ。
( ^ω^)「蟹のクリームスープですお。」
( ^ω^)「以前食べて美味しかったので、ドクオさんにもぜひと思いましたお。」
('A`)「…」
ドクオさんが、テーブルの紙袋をチラッと見た。
('A`)「大した事は、してない。」
( ^ω^)「そんな事はありませんお。こんなに素敵なお庭でお茶を頂けて、もっとお礼をした方が良いくらいですお。」
('A`)「…」
____________________________
109
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:58:03 ID:uUhGkg420
_____
___
__
ζ(゚ー゚*ζ「カーテンの進行は、どうでしょうか?」
デレさんがプリンを掬った手を止めて、僕に聞いた。
( ^ω^)「あとちょっとですお。メインの花をどれにしようかと悩んでいるところですお。」
ζ(゚ー゚*ζ「でしたら、薔薇はいかがでしょうか?」
( ^ω^)「薔薇、ですかお…?」
僕は、辺りを見回した。
( ^ω^)「薔薇の木は、無いようですが…。」
ζ(^ー^*ζ「5月になったらすぐ咲きますよ。ぜひいらしてくださいね。ご案内しますから。」
(;^ω^)「…分かりましたお。」
どういう事なのか分からないけれど、デレさんが言うのだからきっと正しいのだろう。
110
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 02:59:52 ID:uUhGkg420
(*^ω^))「今日のおやつも、とても美味しいですお。」
器に溢れそうなほど盛られた、たまごの風味も感じられる硬めかつしっとりなプリン。
頭には帽子のようにホイップクリームが乗っていて、器の底にもクリームとベリーが数種類敷かれている。
紅茶はウバ・ハイランズで、爽やかなサロメチール香がプリンの甘味を邪魔しない。
ζ(゚ー゚*ζ「生地にも、生クリームが入っているんです。」
(*^ω^))「それは豪華ですお。全部の層をすくって食べると、ケーキみたいですお。」
ζ(^ー^*ζ「幸せな気分になれますよね。」
(*^ω^))「はいですおー。」モグモグ
https://imgur.com/a/OlHmjnJ
.
111
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:03:38 ID:uUhGkg420
話を聞きながら、僕は庭に生えている昼咲月見草に目をやった。
ζ(゚ー゚*ζ「昼咲月見草は、桃色月見草とも呼ばれています。」
ζ(^ー^*ζ「この花を見ていると、なんだかしぃちゃんを思い出しますよね。」
( ^ω^)「確かにピンク色で丸くふわっとしていて、しぃちゃんの髪型みたいですお。」
しぃちゃんはチョコレートのような髪色だけど、日が当たる部分はピンク色に見えるような髪色だった。
ζ(^ー^*ζ「しぃちゃんはたまにここに来てくれるのですけれど、習い事が内藤さんの来る曜日と被っていて、やきもきしてるみたいです。」
(;^ω^)「え…?あの、しぃちゃんの時計は直って、もうここに用事はないのでは…?」
ζ(゚、゚*ζ「そうなんですよね。言われてみれば…何故でしょう?」
ζ(^ー^*ζ「ここの門は、可愛い子に弱いのかもしれませんね。」クスクス
112
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:04:38 ID:uUhGkg420
( ^ω^)「しぃちゃんはここに来て、何をしているんですかお?」
ζ(^ー^*ζb「私と押し花を作ったり…。あっ、この間はお庭の花でブーケを作りました!」
ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃん、何かと競争にしたがるんですよね。何故でしょう?」
(;^ω^)q「うーん…何故でしょうね…?」
113
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:08:56 ID:uUhGkg420
_____
___
__
19:30
( ^ω^)「ふぅ…。」
庭がずっと昼間なせいか、時間も忘れてついデレさんと話し込んでしまった。
玄関を開けて、家の中に入る。
鞄を置いた僕は、下駄箱の上に置かれた白くて丸い花瓶の埃を取るために雑巾を探した。
もうずっと使っていない花瓶なので洗った方が良いと思い、途中で台所へと向かった。
( ^ω^)つ ススッ
( ^ω^)「よし、だお。」
デレさんから貰ったブーケを、花瓶に挿した。
(*^ω^)「丁度いい花瓶があって良かったお。」
それから僕は部屋着に着替えて、パソコンの前に座った。
二間続きの和室で、ダイニングキッチンからすぐの方の部屋にパソコンと本棚を置いている。
( ^ω^)「えっと…取り込んでない絵はまだあったかお?」
スケッチブックを捲った。
デレさんからもらった栞が挟んであるので、どこまで済んでいるのかが、すぐに分かる。
( ^ω^)「…。」
『しぃちゃんの兎は、ここを出たらもとの姿に戻ります。』
( ^ω^)(…お客さんが修理に持ってくる物達は、ドクオさんと話が出来ると言っていたお。)
( ^ω^)(人の姿でなくとも、デレさんが物の状態で外の様子を見る事は出来ないのだろうか…?)
だけどきっとあれは、断りの言葉だ。
僕は、デレさんから貰った栞をしばらく眺めていた。
114
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:09:54 ID:uUhGkg420
【 第三話 ルピナスの街 】
終わり
.
115
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:14:04 ID:uUhGkg420
【プリン】
(150mlカップ約2個分)
※プリン液がなみなみなので、カップは3個用意しても良いです。
カップはフッ素樹脂加工の物、またはガラスのカップを使用。
[カラメル]
てんさい糖 20g
水 大さじ1
バター 少量
①砂糖と水を鍋に入れて混ぜ、中火で加熱、動かさない。
③キッチンペーパーを使いプリンカップにバターを塗っておく。
②茶色っぽくなったらなべを揺すり、好みの色になったらヘラで鍋端に集めつつプリンカップへ。カラメルはカップ底に綺麗に伸ばさなくても良い。
116
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 03:18:23 ID:uUhGkg420
[プリン液]
全卵2個
卵黄1個
てんさい糖37g
牛乳190g
生クリーム40g
バニラオイル10滴(またはエッセンス。あれば。)
①ボウルに卵を全て入れほぐし混ぜる。
②小鍋に牛乳と生クリーム、てんさい糖を入れフツフツとし始めるまで温め混ぜ、バニラオイルと共に卵液へ少しずつ加える。
③出来た液を網で濾す。濾した液をカップに入れていく。
④キッチンペーパーで表面の泡を取り除き、カップにアルミホイルを被せる。
⑤鍋に並べたカップの半分くらいの高さになるまで水を入れ、カップを取り出し水だけを沸騰させる。(水の量を調節する工程)
⑥沸騰した鍋底に布巾を敷き、カップを並べる。蓋をして中火で加熱。グラグラしだしたら弱火4分からのとろ火4分。(計8分。IH使用時の時間です。)
⑦予熱で5分くらい放置。取り出して表面が固まっていたら全て引き上げ、粗熱が取れるまでキッチンに放置。
表面が緩かったらまたグラグラ+弱火で少し加熱する。
⑧粗熱が取れたらよく冷えるまで冷蔵庫に入れる。完成!
*ポイント
鍋で作る場合、水からではなくお湯からカップを置く事で、すが出来にくい。
鍋だと硬めに出来るので、牛乳はお好みで10〜20g増やしても良い。
117
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 08:19:27 ID:uUhGkg420
市販のラズベリージャムなら、明治屋がおすすめです。
是非一度スコーンとお試しください。
118
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 11:46:53 ID:JqNjJpSI0
おつ
素晴らしい空気感
続きをどんどん読みたくなる!
119
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 19:43:15 ID:6uKV1jww0
乙です
120
:
名無しさん
:2024/07/13(土) 22:55:27 ID:TOOVocQo0
待ってたぜ
乙
121
:
名無しさん
:2024/07/16(火) 00:45:33 ID:eIMBzCgs0
乙 めっちゃ雰囲気好きだ
花は無理そうだから曲当てに賭けるぜ!!
122
:
名無しさん
:2024/07/19(金) 17:22:18 ID:yM7nOYYA0
乙
このスレほんと良い香りする
ウサギゴケ初めて知った。すごくかわいい!
イラストのお菓子たちがとても美味しそう
美味しそうな絵を描けるのってすごい尊敬する
123
:
◆vgPkwiFs66
:2024/07/20(土) 01:29:13 ID:Af9zJ.yQ0
乙!!
124
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:13:20 ID:eT9BLvak0
>>118
ありがとうございます!どんどん投下します!
>>119
ありがとうございます!
>>120
待っててくれてありがとう!
>>121
好きと言ってくれてありがとう!
ぜひ当ててくれー!
>>122
香りまで想像出来るの凄いです!お花屋さんみたいな匂いしますか?
同じようなのでクリオネもあるそうです。そっちも似てます。
ありがとうございます!焼き色を意識して描いてます〜
>>123
ありがとう!!
もう色々と天候が不安定で恐怖なので、絵は後で投下するという感じでガンガン進めて行こうと思います!
125
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:17:55 ID:eT9BLvak0
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
前回の仕留め役になったであろうウサギゴケは、ミニチュアのように小さな植物です。
私もいつか、実物を見てみたいです。
【曲ヒント2】
その曲の発売日は2010年ですが、2014年に一度だけドラマのEDとして使われました。その歌手のその頃は、色々な曲をカヴァーしている事の方が有名だったかもしれません。
126
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:18:48 ID:eT9BLvak0
从 ゚∀从「いらっしゃいませー。待ってたよ。」
( ^ω^)「よろしくお願いしますお。」
【 第四話 モッコウバラの祝福 】
.
127
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:22:16 ID:eT9BLvak0
从 ^∀从「本当に掛け持ちで来てくれるなんて、嬉しいよ。」
( ^ω^)「これもご縁ですし、内装がお客さん側からどう見えるのかも体験してみたかったんですお。」
僕が選んだのは、薔薇のカーテンの半個室だ。
全体が白く、背景となる鳥籠状のカーテンの中に縫い付けられた立体の薔薇にだけ色がある。
三畳より少し広い程度のスペースだが、実際よりも広く感じる上に静かな空間で、僕は雑誌を手に取らずに瞑想や空想にでも浸ろうかと考えた。
从 ゚∀从「それで今日は、どんな風に切る?」
( ^ω^)「えっと…僕に似合うような髪型はありますかお?」
从 ゚∀从「シーンは仕事?デート?」
(;^ω^)「えっ…?」
僕は一瞬、デレさんの姿を思い出した。
从 ゚∀从「おっ?」
(;^ω^)「…ビジネスベースで、ちょっと今風にも挑戦してみたい…ですお。」
从*゚∀从「…へぇ…?ビジネスねぇ…?」
(;^ω^)「そうですお…。」
从*゚v从 ニムニム
ハインさんは僕の僅かな動揺を逃さず、かといって失礼になるからと不自然に上がる口角を隠そうと戦っているようだった。
从*゚v从「内藤さんの天パは、後ろに流すようにコンパクトにすると良さそうなんだよな。」
从*^∀从d「よしっ!パーマもかけてみよーぜ!」
Σ(;^ω^)「ええっ!?」
128
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:23:05 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
爪;'ー`)y‐「急に滞在時間を増やしちゃってすみませんね、ウチのが…。」
(;^ω^)「いいえ…。」
爪'ー`)y‐「初パーマは、疲れたでしょう?」
爪'ー`)y‐「今度仕事の帰りにでもお立ち寄りください。2、3通りワックスの付け方を教えますから。」
(;^ω^)「お願いしますお。」
129
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:25:15 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
13:30
昼食をとった僕は、再び街へと繰り出した。
( ^ω^) スッキリ
いつもより纏まりのある髪を見ると、今度は服が買いたくなってきた。
( ^ω^)(休日用の服を買うなんて、何年ぶりだお?)
( ^ω^)∂ ヒーフーミー…
(;^ω^)(5年ぶりだお…。)
以前モナーさんが担当したカジュアル紳士服の店に着いた僕は、店内をグルっと見て回った。
そこで僕は、店に入ってすぐのマネキンが着ていた物とは色違いの、紺色無地のポロシャツを試着する事にした。
(;^ω^)(男性物ってバリエーションが少ないおね…。質はともかく、学生の頃に着ていたような型とそんなに変わらないお。)
(;^ω^)(今はその頃より1サイズ違うけど…。)
行くたびに髪型が違うデレさんとは、大違いだ。
____________________________
130
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:28:23 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
10:00
翌日、僕は屋敷へと向かった。
カーテンのメインを埋める最後のスケッチをするためだ。
((( ^ω^)(もう庭に薔薇が咲いているのだと言うけれど…。僕がまだ見ていない場所に案内されるのかお?)
今まで僕が見てきた場所は、庭の半分ほどだろうか?
屋敷とは別方向の道にも、まだまだ庭は続いていそうだ。
僕の家から屋敷までは5分もかからず着くため、門はすぐに見える。
( ^ω^)(あれ?門の前に車が…?)
入って右手の石畳のスペースに、茶色のバンが停まっている。
その車体には、ベージュ色の文字がプリントされている。
( ^ω^)(ショ…ボーンヌ…?)
Σ(;^ω^)「って、…えぇっ!?」
門の先には、溢れんばかりの薔薇が奥まで続いていた。
131
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:30:54 ID:eT9BLvak0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さんっ!」
僕がポカンと口を開けて立ち止まっていると、デレさんが駆け寄るようにやって来た。
かと思うと、いつもの距離より3歩前の位置で立ち止まった。
ζ(゚、゚*ζ「…。」
(;^ω^)「こんにちは。」
デレさんは数秒間僕を眺め、満面の笑みになった。
ζ(^ー^*ζ「素敵ですっ!」
(*^ω^)「ありがとうございますお。」
(*^ω^)ゞ テレテレ
髪型か…、それとも新調した服装まで気付いてくれたのだろうか?
気恥ずかしいけれど、久しぶりにお洒落をして良かった。
( ^ω^)「デレさんも、今日は凄いですお。髪にお花が編み込まれていますお。」
今日のデレさんの髪型は、低めのサイドポニーだ。
耳上の大きなコーラルピンクの薔薇を始めとして、毛先まで小さな生花が編み込まれている。
ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。庭の花が綺麗だからと、ドクオさんが編み込んでくれました。」
(;^ω^)「ドクオさん、何でも出来て凄いですお…。」
132
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:35:30 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「デレさんが言った通り、本当に薔薇が咲いていますお…。」
僕はいつもより更に遅い足取りで庭を歩いた。
ここに来ると見る場所が多くて、ついそうなってしまうのだ。
迷路のように辺りを隠す薔薇は白く、それでいて中央から淡いピンクがグラデーションに広がっている。
カップ状に咲いているものが多く、その可愛らしさに僕は見惚れた。
ζ(゚ー゚*ζ「この薔薇は、『フランシス バーネット』という品種です。海外の小説家の名前が由来ですよ。」
( ^ω^)「秘密の花園の作者ですかお?僕は社会人になってから読みましたお。」
ζ(゚、゚*ζ「大人になってから、ですか?」
児童書ではないのかと、デレさんは小首を傾げた。
( ^ω^)「僕が営業の仕事からデザイナーも兼任するようになった時に、上司が『Secret Garden』と名付けてくれて、それがきっかけでしたお。」
( ^ω^)「うちの会社は、デザイナーそれぞれにシリーズ名が付くんですお。僕は会社の通販用に自由に作って良いという時は、草花ばかりなので。」
ζ(^ー^*ζ「そうでしたか。」
僕の話を聞き終えたデレさんは、再び薔薇に目線を戻した。
ζ(゚ー゚*ζ「フランシス バーネットは、ロサ・オリエンティスという国内のブランドで、日本の気候でも育てやすい品種なのだそうです。」
133
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:36:44 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「デレさんの髪に飾られている薔薇は、何という品種なのでしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「『イーハトーブの香』です。こちらも日本で作出された品種ですよ。」
( ^ω^)「そうでしたかお。鮮やかながら可愛らしさもあるお花ですお。」
その薔薇は、デレさんのラテ色の髪に似合っている。
( ^ω^)(って、あれ…?)
道の先から、誰かがやって来る。
134
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:42:17 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「ん?ドクオのお客さんか?」
筋肉質で若い男性だ。
ドクオさんやデレさんよりも、少し年上のように見える。
男性はポケットの沢山付いたエプロンを身に着けていて、専用の台車で何かの苗を運んでいる。
ζ(゚ー゚*ζ「ショボンさん。こちらは、図書室のカーテンを作ってくれている内藤さんです。」
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、こちらは庭師のショボンさんです。お庭の花は全てショボンさんが手入れしてくれているんですよ。」
ζ(^ー^*ζ「そして以前話した図書室の本は、ショボンさんの奥さんに頂いているんです。」
( ^ω^)「そうでしたかお。初めまして。」
(´^ω^`)「よろしくな。」
ショボンさんは、溌剌とした笑顔で挨拶してくれた。
( ^ω^)「とても素晴らしいお庭ですお。でも、ついこの間までは別の花が咲いていたのに、今日来てみたら薔薇がこんなに咲いていて…驚きましたお。」
(´・ω・`)「ここは特別な庭だからな。薔薇なら赤子みたいな苗でも植えれば3日くらいで見頃になるんだ。」
(;^ω^)「3日…!?」
135
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:46:02 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「大体の花もそうさ。流石に樹木なんかは1ヶ月くらいかかるけどな。」
(;^ω^)「とんでもなくハイペースですお…。」
(;^ω^)「…あの、そういう話は僕なんかにしても良いのですかお?」
(´・ω・`)「ああ。デレの茶飲み友達なんだろ?最近ドクオが練習した茶菓子を子どもの土産にってくれるようになったから、知ってるんだ。」
(´・ω・`)「デレが屋敷に現れてから三年くらい経つけど、ここまでお客さんに懐いてるのは初めてだ。きっとあんたは良い人なんだろ?」
(;^ω^)ゞ「え?うーん…。どうでしょう。」
(´・ω・`)「ここへはドクオの客もたまにしか来ないし、特別な場所だからあまり外の人には話せないんだ。一人で作業してると、合間に無性に気分転換したくなる。」
(´^ω^`)「だから俺とも友達になってほしいってワケだ!あっはっは!」
(*^ω^)「そうでしたか。ぜひ。」
僕が続けてお客さんと遭遇したのは、珍しい事だったようだ。
( ^ω^)「あの…。デレさんが現れて三年くらいとは?それ以前はここに居なかったのですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「…。」
二人に聞くように顔を向けたが、デレさんから話そうとする素振りはなかった。
(´・ω・`)「そうだ。俺が丁度この庭を再生し終えた頃に、いきなり現れたんだ。」
136
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:47:59 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「いきなり…ですか。」
ζ(^ー^*ζ
デレさんは普段と同じ表情で、ふんわりと微笑んだ。
(´・ω・`)「ドクオからは何も聞いてないけど、この屋敷の古くからの調度品なのかもしれないな。祖父の手入れした庭を真似たから、きっと懐かしくて出てきたんだろう。」
(´・ω・`)「間は空いてるけど、ドクオとは長い付き合いなんだ。」
ショボンさんは、近くにあった木製のベンチに寛ぐように腰掛けた。
ζ(゚ー゚*ζ「お茶をお持ちしますね。」
それを休憩と判断したデレさんは、屋敷へと向かっていった。
僕もショボンさんの隣に座って、話の続きを聞くことにした。
137
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:54:56 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「俺は子供の頃から、庭師の祖父に連れられてここへ遊びに来ていたんだ。と言っても、ドクオはドクオのじいちゃんに引っ付いててちょっかいかけても反応悪くてさ。」
(´^ω^`)「今でも仕事と頼まれ物以外は、こっちが喋りどおしだけどな。ガハハ!」
( ^ω^)「…」
確かにドクオさんは、僕に対してもそんな感じだ。
かといって無愛想な訳ではなく、こちらから話す挨拶の延長のような短い雑談に、いつも一言は返事をくれる。
(´・ω・`)「俺が中学生の頃に祖父が亡くなった。本家の方で跡を継ぐ人もいなかったから、庭師は廃業したんだ。」
(´・ω・`)「その頃はそんな気全くなかったんだけど、俺の進路と就職先は祖父の仕事に近い花屋になった。ジワジワと良さがわかってきたんだな。」
(´・ω・`)「隣の県の花屋で働いてた時に客だったカミさんが同郷だったのが縁で知り合って、結婚した。それからすぐにコウノドリが来てな。」
(´・ω・`)「三つ子だって分かった時は、嬉しい気持ち以上に途方に暮れたよ。核家族だし金銭的にも育てられない。何より多胎児はカミさんが死んじまう確率がうんと上がるんだ。」
( ^ω^)「…」
(´・ω・`)「幸い全員無事に産まれてくれたし、カミさんのご両親の協力が得られる事になった。俺だけが職場のある街で暮らすことになったけれど、その頃この街は花屋があまりなかったし、職を変えるか俺だけ都会に出て出稼ぎするかなんて、買い物の帰り道で悩んでいた時さ。」
(´・ω・`)「懐かしいこの庭を見付けたんだ。」
138
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 05:59:09 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「といっても、記憶にある庭とは別物だった。庭の中に入ってすぐのド真ん中に、立派な松が植えてあったからな。」
(;^ω^)「松…ですかお…?」
(´・ω・`)「ああ。ドクオのじいちゃんが屋敷の隅で育てていた盆栽を、全部庭に植えちまったらしい。横には昔と変わらない位置に洋風のアンティークファニチャーが置かれてた。」
(´・ω・`)「俺はドン引きしたね。祖父の造った庭とは、かけ離れてたから。屋敷に入ってみるとドクオだけ居たから、せめて入口だけでも整えさせてくれって頼んだ。」
(´・ω・`)「実家から水やりがあまりいらないような植物を持ってきて、職場の余りを貰って。こっちに来るついでにちまちまと植えていった。」
(´・ω・`)「そしたら、そこでようやくこの庭が変な事に気付いた。いつ来ても昼間だし、花の時期が終わりきっても、植えた花がまだ見頃なんだ。」
139
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:02:56 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「思えば土が豊かといえど、夏場に週一しか来ない場所で水やりの事も気にせず植え続けた俺も変だった。特に俺がいじってた入口には乾きやすい小さめな花壇も多かったし、焼け石に水だ。」
(´・ω・`)「庭の奥にあるキッチンガーデンだけ使ってるドクオに聞いてみたら、ここは植物の成長速度も尋常じゃなかった。」
(´・ω・`)「葉物は翌日に収穫出来るし、ニンジンなんか3日で穫れるときたもんだ。連日来れる日に観察したら、花も大体そのくらいのペースで咲くようだった。」
(´・ω・`)「俺はショックだったね。今までやってきた事や、学んできた事は何だったんだと。」
( ^ω^)「そうですおね…。」
いつ自分の仕事がAIに取って代わられるのかと、ヒヤヒヤしている僕だ。
自分が無力だと感じる恐ろしさは分かる。
140
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:04:39 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「ムカついたから3日で育った薔薇を101本、カミさんにプレゼントしたんだ。そしたら食べられる品種だったから、ジャムやらクッキーにしてくれた。」
(´・ω・`)「忙しいのに無理すんなって言いたいのを我慢して食べたらさ、すっげぇ美味かった。」
(´・ω・`)「じいちゃんに付いて回ってた頃にかいだ香りだ。ちっこくて、時間がたっぷりあった頃の。」
(´・ω・`)「久しぶりに茶を飲んで、ゆっくり甘い物を食べた。そうしたらカミさんが隈作った顔で笑って、『お疲れ様』って言ってくれた。」
(´・ω・`)「離れたままじゃ駄目だって、思ったんだ。」
141
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:09:08 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「俺はまず、街中の菓子屋に庭で育てた薔薇を売り込んだ。同級生のツテで一軒だけ受け入れてくれて、ロールケーキやゼリーなんかに取り入れてくれた。」
(´・ω・`)「それから、街の観光業や写真屋に署名を募って公共施設を花の名所にしたいと希望を出した。」
(´・ω・`)「市長がドクオと俺の祖父を知っていたからなのか、通してもらえた。予算は全く出なかったけどな。」
( ^ω^)「…凄いですお…。」
(´・ω・`)「景観を整えつつ、街の店に土産の材料として薔薇を売り込んで手広くしていったら、今の観光地が出来たってワケさ。」
(;^ω^)「…。」
(;^ω^)「…あの、出荷はショボンさんがお一人で全てなさっているんですかお?それに凄く野暮なんですけれど、この規模だと税金とか…。」
庭の規模は少なくとも、昔行った事のある30ヘクタールの植物園ほどはある。
それらを全てショボンさんだけで賄っているのだろうか?
(´・ω・`)「その辺りは大丈夫だ。確かにここの管理は俺だけだが、土地については、普段はここが小さな平屋と畑に見えるからな。その分しか取り立てられないのさ。」
( ^ω^)「そうでしたか…。」
( ^ω^)(…つまり、用事が無い場合はずっと前に見たこの土地の風景が見えている、という事だおね…。)
142
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:14:34 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「それに、ここで育てた苗は外に植えても花付きが良いしかなり長持ちするんだ。肥料や水やりはそこそこ必要だけどな。」
(´・ω・`)「だから外にも畑を借りて、人を雇って育ててもらってる。街の土産品や施設に使われる分の花はそこで作っているんだ。」
(´・ω・`)「ここでは育てるのが難しい花や、通販用の苗なんかを庭の奥の畑で育てている。」
(´^ω^`)「街の店からの花の依頼は、食用や香料以外は案外少ないんだ。何せ街中が花で飾られてるから、自分の店まで飾ったら、埋もれて見えなくなっちまうからな!ガハハ!」
(´・ω・`)「そんで、この広い庭では花の組み合わせを試しつつ、子どもの頃に見た記憶を頼りに庭を戻していった。祖父の庭にそっくりになった頃に、デレが現れたワケだ。」
( ^ω^)「そうでしたか…。」
143
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:19:47 ID:eT9BLvak0
ζ(゚ー゚*ζ「お待たせしました。」
デレさんが戻ってきて、僕達にプラスチック製のボトルを手渡してくれた。
ζ(゚ー゚*ζ「レモンタイムです。」
(´・ω・`)「ありがとうな。」
そう言って、ショボンさんがボトルの半分の量まで一気にお茶を飲んだ。
ζ(^ー^*ζ「レモンタイムはコモンタイムとラージタイムの交配種です。爽やかで飲みやすいですよ。」
( ^ω^)「頂きますお。」
( ^ω^)) ゴクッ
温度はショボンさんが飲みやすいようにするためか、ややぬるめだ。
Σ( ^ω^)「本当に、レモンのような香りがしますお。」
ζ(^ー^*ζ「良い香りですよね。レモンタイムには、抗菌作用やリラックス効果もあるそうですよ。」
( ^ω^)「そうですかお。結構好きな味ですお。」
(´・ω・`)「苗いるか?鉢植えで雑に育てても勝手に増えるぞ。」
(´・ω・`)「喉にも良いんだ。俺も風邪引きそうな時は予防で飲んでる。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。お願いしますお。」
144
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:25:44 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「…僕はてっきり、花での町興しは市の方で始めたものだと思っていましたお。」
( ^ω^)「仕事柄街の事はまあまあ知っているつもりでしたが、何も知らずに…お恥ずかしいですお。」
デレさんが現れたのが三年くらい前だという事は、ショボンさんはそれらを二十代でやってのけたのだ。
僕が想像も出来ないような苦労だったのだろう。
(´・ω・`)「いいや、ワザと表にウチの名前が出にくいようにしてるから、それはしょうがないんだ。」
(´・ω・`)「外の畑や通販も、市の名前を使わせてもらってる。やっぱり少人数でこの量を売り出すのはあり得ないから、人手のカモフラージュにな。」
(´・ω・`)「その代わり、有事の際にはここを全部畑にしたり、避難場所にするって約束を市と結んでるんだ。」
(´・ω・`)「まぁそれは、ドクオのじいちゃんの頃から生きてる約束らしいけどな。」
(;^ω^)「そのような取り決めがあったので…えっ!?」
ζ(゚ー゚*ζ「『用事のある人には見える』、という事なのでしょうね。」
(;^ω^)「…。そうなる事がないと良いですお。」
それからショボンさんは、このような場所は全国的にいくつかあって、それぞれに同じような協定を結んでいるのだと市長から聞かされたと教えてくれた。
そして、本当にごく少数の人だけが知っている事なのだと。
145
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 06:27:21 ID:eT9BLvak0
続きは夜に投下します
146
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 22:33:48 ID:eT9BLvak0
投下します
147
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 22:37:09 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「あの…。どうして僕なんかに、ここまで話をしてくれるのでしょうか…?」
( ^ω^)「僕は言ってしまえば、ドクオさんに一時的にご縁があるだけの業者ですお。」
納期内に収めるつもりとはいえ、頼まれてもいないのに庭をモデルにすると決めて、ここまで頻繁にお邪魔している事すら図々しくて申し訳ないと思っているのだ。
(´・ω・`)「…デレもだけど、ドクオがここまで人を持て成す事が今までなかったからだ。」
pζ(゚、゚*ζq「そうですよ!内藤さんが来てから、お菓子への気合いが全然違います!」
Σ(;^ω^)「えっ?僕はてっきり、寡黙で親切な方なのかと思っていましたお…。」
( ^ω^)、「もっと、お礼が出来ればいいのですが…。」
†+pζ(゚ワ゚*ζq「そうしたらきっとドクオさん、もっと張り切りますよ。いよいよアフタヌーンティーが登場してしまいますね…っ!」ワックワック!
(;^ω^)ノシ「いえ!お手間をこれ以上増やすわけにはいきませんし、僕もトシだから食べきれませんお。」
ζ(゚、゚*ζ「そうでした…。」 シュン…
148
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 22:40:42 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「デレさんにいくつか教えてもらいましたが…。ショボンさんは、ドクオさんが何がお好きかを知りませんか?」
(´・ω・`)=3「俺もあんま分かんねーな。仕事と料理する以外は質素な生活してるからな。」
ショボンさんは、腕を組んでそう言った。
(´・ω・`)「ドクオに渡してる土地の賃料から庭師代を引いてもまとまった金はあるはずなんだが、ドクオはじいちゃんが使ってた物で済ませてるからな。服とか。」
(´・ω・`)「超じいちゃん子なんだよ、あいつ。」
( ^ω^)「なるほど…。」
僕はドクオさんの服がレトロな理由に、納得した。
( ^ω^)q「そうですかお。うーん、僕が出張に行った時に食べて美味しかった物でも取り寄せてみますお…。」
†+ζ(゚ワ゚*ζ パアァ
(;^ω^)(…。デレさんの分も、多めに用意するお。)
149
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 22:53:23 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「話は戻るけど、ドクオがこんなに人に構うのは本当に珍しいんだ。デレは別としてな。」
(´・ω・`)「あいつには交友関係がほぼ無い。親とも子供の頃からそりが合ってないみたいだ。」
(´・ω・`)「ドクオには兄貴がいて、俺とも知り合いだ。だけど地主の跡取りとして、親に期待され過ぎてる。」
(´・ω・`)「…兄貴の方は、殆どかまってやれないまま大人になってしまったと、ずっとドクオの事を心配してる。」
そう言いながら、ショボンさんは向かいに咲くフランネルフラワーを眺めた。
(´・ω・`)「だから…もしあいつが何かに悩むような事があった時に、話だけでも聞いてくれる人が居たらと思ったんだ。俺は気質が違うから、役に立たねーだろうし。」
( ^ω^)「…。初対面の僕にそんな事を頼むのは、かえってドクオさんを危険に晒すのではないでしょうか?」
( ^ω^)「経済環境は?宗教は?」
( ^ω^)「他にも調べておく事は、沢山有るのではないでしょうか。」
僕がそう返すと、ショボンさんは真っ直ぐな目でこちらを見た。
(´・ω・`)「内藤さんは、そそのかしてここを悪用しようなんて気は起こさないだろう?」
( ^ω^)「…」
(;^ω^)「……負けましたお。僕がこの場所に来られる間で良ければ。たったの一ヶ月くらいですが…。」
(´^ω^`)「よろしくな。」
フラックスとスノーフレークが見守る中で、僕達は握手をした。
150
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 22:57:20 ID:eT9BLvak0
(´・ω・`)「さて、俺はそろそろ行くぜ。ごちそうさま。」
ショボンさんが、デレさんに空になったボトルを手渡した。
ζ(゚ー゚*ζ「ショボンさん、朝採れたお野菜をまとめてありますので、帰りに屋敷に寄ってくださいね。」
(´・ω・`)ノ「おー、いつもありがとな。」
ショボンさんはこちらに手を振り、またすぐに歩いていった。
見送ると、デレさんが僕の方に向き直った。
ζ(゚ー゚*ζ「それでは内藤さん、ご案内します。」
151
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 22:59:29 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
僕は最初に、庭に入ってすぐの場所をスケッチする事にした。
先程見て感動したこの薔薇をメインに、カーテンを作ろうと決めたからだ。
( ^ω^)φ「時間がかかりますから、デレさんは日陰かお屋敷で待っていてくださいお。」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。ドクオさんが軽食を用意しているので、途中で受け取りに行きますね。それまでは、後ろで見ていても良いでしょうか?」
( ^ω^)φ「良いですお。ありがとうございますお。」
僕は帽子を被り、持ってきたスケッチブックと水彩色鉛筆で下描きを始めた。
152
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:05:29 ID:eT9BLvak0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さんは、どんなお花が好きですか?」
少しして、デレさんが後ろから尋ねた。
( ^ω^)φ「そうですね…。どちらかと言えば、薔薇なら淡い色合いの方が好きですお。」
( ^ω^)「僕は花には詳しい方だと思いますが、薔薇は種類が多過ぎて…あまり詳しくはないですお。なので、今日は色々と教えてくださいお。」
僕は花の影を描きながら、そう答える。
ζ(^ー^*ζ「分かりました。午後は淡い薔薇が咲いているところも案内しますね。」
( ^ω^)φ「お願いしますお。」
( ^ω^)?「ちなみに…この奥に咲いている薔薇は何でしょうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ハンスゲーネバインとジュード・ジ・オブスキュアですね。」
(*^ω^)「そうですか。そちらも柔らかい色合いで、可愛いですお。」
ζ(^ー^*ζ「奥に行くにつれて、濃い色も増えていく構成ですよ。」
(*^ω^)「それは楽しみですお。」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと早いですけど、そろそろ昼食の準備をしに行きますね。キリが良くなったらいつものテーブルまで来てください。」
(;^ω^)φ「何から何まで、すみませんお…。」
屋敷まで向かうデレさんを見送ると、僕は筆洗器で筆に水を含ませて、色を塗った。
153
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:06:24 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
( ^ω^)つ キュッ
( ^ω^)フキフキ
テーブルのある小道の近くには、小さめな手洗い場がある。
僕は手を洗い、いつものハーブが茂る小道へと向かった。
( ^ω^)(おっ。今日は矢車菊が咲いているお。)
154
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:08:27 ID:eT9BLvak0
(*^ω^)「ありがとうございますお。」
円状のいつもの場所に咲く花は、意外にも薔薇ではなかった。
普段は何種類かの花で構成されているが、今日はヒメウツギ一色だ。
デレさんは既に、軽食をテーブルに並べてくれていた。
クラッカーにチーズやミニトマトが乗ったカナッペに、ハムやキュウリのサンドイッチ。それからポットとカップ。
ζ(^ー^*ζ「どれでも、お好きな物からどうぞ。」
そう言われたので、僕は「頂きます」と言い、カナッペに手を伸ばした。
(*^ω^))「…!このトマト、凄く美味しいですお!」
噛みしめると酸味も旨味も濃くて、まるでトマトソースだ。
下に添えられたクリームチーズとバジルが、より風味を豊かにしている。
ζ(^ー^*ζ「ドワーフトマトのプリティーベルです。草丈がとても低いのに実付きが良くて、見ているだけでも楽しいトマトですよ。」
( ^ω^))「フルーツトマトとはまた違った魅力ですお。」
(*^ω^)「このカナッペに乗っている青い花も、可愛いですお。」
ζ(^ー^*ζ「ルリジサですね。お茶としても使えるハーブです。」
155
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:11:27 ID:eT9BLvak0
出されたメニューの一巡が、そろそろ終わりそうだ。
( ^ω^)「おや?こちらは…?」
ζ(゚ー゚*ζ「そちらは、薔薇ジャムのサンドイッチです。奥の畑で育てている食用薔薇で作ったものですよ。」
( ^ω^)つ□「頂きますお。」
( ^ω^)) モグ…
(*^ω^))「意外と癖がないですお。美味しいですお。」
ほんのりフルーティーで、食べやすい味だ。
(*^ω^))「ジャムの色が桜色で可愛いですお。花びらは、美味しいぶどうの皮のようですおー。」
ζ(゚ワ゚*ζ「美味しいぶどうの皮…本当にそんな食感ですね!」
ζ(^ー^*ζ「紅茶のおかわりもどうぞ。こちらにも薔薇ジャムを入れて飲んでみてください。」
( ^ω^)Φ「では…。」クルクル
( ^ω^)) コクッ
(*^ω^)「うーん、これも良い…。」
紅茶の温度によって、今度は香りが広がった。
( ^ω^)) コクコク
(*^ω^)(おお…。)
カップを置いても、まだどこからか香りがする。
喉を通り越し、温かくなった胃やお腹の全てが、薔薇の香りになってしまった気さえする。
156
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:13:44 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「デレさんがお好きな薔薇は、どれですかお?」
カーテンをかける図書室はデレさんの部屋でもあるので、要望を聞いておきたいと思ったのだ。
ζ(゚、゚*ζ「そうですね、今お庭で咲いているものですと…」
( ^ω^)(デレさんの事だから、きっと可愛らしい…)
ζ(゚ワ゚*ζ「ジェーン・オースチンとノスタルジーでしょうか。初めて見た時に、ゆで卵と…りんごの皮で作った薔薇みたいだとビックリしたんです!」
(;^ω^)?「ゆで卵にりんご…?すみません、ちょっと想像出来ないですお…。」
ζ(゚ー゚*ζ「では早速、見に行きましょうか。行けば内藤さんにも分かるはずですよ!」
(;^ω^)「はい。ご馳走様でしたお…。」
157
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:15:34 ID:eT9BLvak0
目的の薔薇を見に行く間にも、デレさんは説明をしてくれる。
⊂ζ(゚ー゚*ζ「こちらのオベリスクに誘引されている薔薇は、プシュケです。」
( ^ω^)「アプリコット色でふわっとしてますお。空の色に映えますおー。」
今日は今まであまり通った事のない、広めの通路だ。
庭は木に囲まれている場所もあるが、ここからは空がよく見える。
⊂ζ(゚ー゚*ζ「こちらはザ フェアリーにドリスリッカーで…」
Σ(*^ω^)「これは…かっ…可愛いですおっ!!」
ζ(^ー^*ζ「花が小さい、ポリアンサ系です。」
(*^ω^)「ミニチュア感にキュンと来ると言いますか…。蕾の丸っこさがアクセントになっていて、とにかく可愛らしいですお!」
ζ(^ー^*ζ「内藤さんのお気に入りですね。」
(*^ω^)「はいですお!」
158
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:21:41 ID:eT9BLvak0
ζ(゚ワ゚*ζつ「そしてこちらが、ジェーン・オースチンとノスタルジーですっ!」
Σ(;^ω^)「おっ…!?確かに咲き始めの丸いのは、ゆで卵みたいですおっ!?」
ζ(^ー^*ζ「ですよね!」
ジェーン・オースチンは、中〜大輪で外側が白く、内側が黄色の薔薇だ。
咲き始めの丸い状態の物は内側の黄色が濃く、まるで半分に割ったゆで卵のようだ。
https://imgur.com/a/jEV4X35
159
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:23:35 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)「ノスタルジーは、僕は林檎を上から中央だけくり抜いた物のように見えましたお。」
ノスタルジーは外側が赤く、内側が白い。
物によっては飾り切りで薔薇の形を模した林檎に似たような色付き方をしている。
https://imgur.com/a/7iHgkdi
(;^ω^)「…実際に見ると、いい得て妙ですお。ただ、僕達が食いしん坊なだけかもしれませんが。」
ζ(^ー^*ζb「食べ物に見えるお花シリーズ、内藤さんも見付けたら教えてくださいねっ。」
( ^ω^))「分かりましたお。」
160
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:27:39 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)φ「ではまた、ここで描くことにしますお。」
僕は近くにあったベンチに座った。
ζ(゚ー゚*ζ 「では私も…」
デレさんが、僕の隣に座ろうとした。
(;*^ω^)φ「あ、あのデレさん、本当に時間がかかりますから…。」
ζ(゚、゚*ζ?「大丈夫ですよ?あまり話しかけないように気を付けます。」
σ(;*>ω<)「ほらっ!僕は帽子を被っていますお。帽子や日傘などがなければ、お屋敷で待っていてくださいお。」
ζ(^ー^*ζ「分かりました。」
(;^ω^) ホッ
デレさんは、素直に屋敷の方へと向かっていった。
161
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:29:22 ID:eT9BLvak0
(;^ω^)「…。」
ζ(゚ー゚*ζ「傘立てにあった物を、借りてきました。」
隣に座るデレさんは、深緑の傘をさしている。
傘は雨傘だが、70cmを越えるほど大きくて、僕の方にまで影を作ってくれている。
(;^ω^)「すみませんお…。」
ζ(^ー^*ζ「いえいえ。」
僕は気恥ずかしさを感じながらも、絵に集中する事にした。
( ^ω^)φ(カーテンに描く花は、これで埋まりそうだお。)
そういえば妻も、出会った頃は暗い色の傘をさしていた。
.
162
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:30:37 ID:eT9BLvak0
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163
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:34:32 ID:eT9BLvak0
細い黒縁の窓の先の新緑が、輝く季節。
大学二年生になった僕は、教室の端の席に座り講義が始まるのを待っていた。
从'ー'从「今日は午後から学校閉まるじゃん〜?どこか食べに行かない〜?」
川 ゚ -゚)b「最近出来たアルゼンチン料理の店はどうだ?」
ξ゚⊿゚)ξ、「あ、ごめん。今日は親が迎えに来るから私はまた今度で。」
从'ー'从「じゃ〜行くのも今度にしよっか〜。クー、実家からもらった蕎麦余りまくってるから食べに来ない?」
川 ゚ -゚)「薬味を買いにスーパーへ寄ろうか。」
斜め前の方の席から、楽しそうな声が聞こえる。
友人の誰一人としてこの授業が被らなかった僕とは違い、いつも三人でかたまっている人達だ。
( ^ω^)(今日は13時までは学校が開いてるはずだから、少しだけスケッチをしてから帰るお。)
164
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:37:22 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
講義が終わりノートを取るのに少し手間取った僕は、人がまばらになった教室で片付けをしていた。
( ^ω^)(…お?)
先程の三人組のうちの一人が、窓から何かを眺めている。
( ^ω^)(あっちは…)
((( ^ω^)
( ^ω^)「…あの、何を見ているんだお?」
Σξ゚⊿゚)ξ「えっ…?」
(;^ω^)「話したこともない奴が、急にごめんお…。何か気になっちゃって。」
ξ゚⊿゚)ξρ「あ…。あのね、木が沢山あって分かりにくいけど、この下に…森の方に向かって延びる細い道があるじゃない?そこに、扉みたいな物が見えるなって。」
ξ゚⊿゚)ξσ「その先に…ほら、花みたいな物も…見えない…?」
( ^ω^)「ああ。そこには、小さな庭があるんだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「庭…?全然気付かなかった。」
少し驚いた表情をした彼女が小首を傾げると、ふわふわの髪が揺れた。
( ^ω^)「棟はここが一番奥だし、その先に何も無いって思うおね。僕もたまたま…」
( ^ω^)「…。」
( ^ω^)「あっ…!」
165
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:38:43 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)つ「見に行こうお!」
そう言って、僕は彼女の手を取った。
教室を抜けて、階段を降りて、早く早く。
棟の外へ出る手前に来て、彼女が僕に声をかけた。
ξ;−⊿−)ξつ「ごめん、ちょっと、待って。」ゼェ…ハァ…
(;^ω^)「あ…」
息を切らした彼女は、トートバッグから黒い折り畳み傘を取り出した。
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんね。もっとゆっくりで良い?」
(;^ω^)σ「こちらこそごめんお…。こっちだお。」
166
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:39:49 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)テクテク
ξ゚⊿゚)ξ テクテク
( ^ω^)「…。」
(;|||^ω^)(僕は、なんて事を…。)
初めて声をかけた女の子の同意も得ずに、手を引いて連れ出した。
小さくて柔らかい手の温かさを思い出して、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
横並びに歩く、日傘をさした彼女の表情を見るのが怖い。
だけどそれを見たらきっと、『本当だ。』と。
そう、彼女も驚くはずだ。
167
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:41:49 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)つ| キィ…
打掛錠を外して、小さな木の扉を開けると、人一人通るのがやっとなハーブの茂る道。
それを数歩で抜ければ、背丈の低い草花が僕達を出迎えてくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「…すごい。」
地植えのフラックスとスノーフレークから始まり、桃色タンポポやカラフルなキンギョソウが奥へと広がっている。
彼女は立ち止まってそれらを見ているけれど、僕が案内したいのは、もっと先だ。
( ^ω^)「こっちだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「え…?」
僕は、どんどん進んでいった。
168
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:42:57 ID:eT9BLvak0
(*^ω^)つ「ほらっ、君の花だお!」
(*^ω^)つ「モッコウバラだお!」
庭の中央にある、アイアン製の仕切り壁。
それを覆い尽くしきる勢いでモッコウバラは溢れ、下へと流れるように咲いている。
(*^ω^)「きっと今が一番見頃だおー。」
ξ;゚⊿゚)ξ「…?」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうして、私の花なの…?」
Σ(;^ω^)「えっ!??」
169
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:44:17 ID:eT9BLvak0
(;^ω^)「…黄色いモッコウバラは、花びら1枚で見るとクリーム色なんだお。」
(;*^ω^)「今見比べてみてもほら、君の髪の色と似てるというよりはおんなじで…」
ξ;゚⊿゚)ξ
(;*^ω^)「だから…?えっと…。」
物凄い発見をした気になっていた僕は、だんだん恥ずかしくなってきた。
僕にとっては驚きでも、誰もが花や色味に興味があるわけではない。
それに、モッコウバラは民家でもよく見かける花だ。
見慣れたもので例えられて、彼女はがっかりしたのかもしれない。
(;* ω )「あ…う……。」
170
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:46:15 ID:eT9BLvak0
気不味い沈黙を破ったのは、彼女だった。
ξ゚⊿゚)ξ「…内藤君、だよね。」
(;^ω^))「そうだお。」
ツリ目がちな瞼に、ビー玉のような丸い瞳がこちらを見つめている。
モッコウバラの奥で咲いている、藤と同じ色の瞳だ。
ξ゚⊿゚)ξ「席が近い時にノートの名前を見て、なんとなく覚えていたの。」
ξ゚⊿゚)ξ「たまに、外でしゃがんで何かしてるよね…?」
(;^ω^)「あ…校内の花のスケッチをしているんだお。猫でもかまっているのかと、たまに声をかけられる事があるお…。」
芸術学部の無いこの大学では、そんな習慣があるのは僕くらいだ。
(;^ω^)「趣味なんだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ。」
171
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:48:09 ID:eT9BLvak0
ξ゚⊿゚)ξ「ここって、何なんだろう?」
( ^ω^)「理事長とか偉い人のお散歩コースらしいお。ここで描いてる時に、造園のおっちゃんが教えてくれたお。」
ξ;゚⊿゚)ξ「…勝手に入ってもいいの…?」
( ^ω^)「確認したらパンフレットにも載ってたお。だけどほら、みんな興味があるのは…」
ξ゚⊿゚)ξ「あぁ…。」
学生はみな、大学の外の世界に夢中だ。
毎月のように新しいお店が出来るので、友達と連れ立って行くのが流行っている。
( ^ω^)「流石に不審者だと思われたくないから、最近はいつもここで描いてるんだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「そっか…。」
彼女は、モッコウバラを眺めながら呟いた。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、内藤君…。」
ξ゚⊿゚)ξ「…また来ても、良い?」
172
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:50:31 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
それから彼女とは、講義の前に軽く話すようになった。
大抵が今日はスケッチをしに行くのかなどの、短いものだ。
僕が行くと言えば、都合が良ければ彼女もやって来る。
ξ゚⊿゚)ξ「…内藤君も、帽子は被った方が良いよ。熱持って頭痛くなっちゃうから。」
(;^ω^)φ「えぇ…?ちょっとおっさんぽくて嫌だけど…。分かったお。」
津出さんは陽当りの邪魔にならないようにと、僕の斜め後ろに立っている。
( ^ω^)φ「津出さんはいつも日傘だお。やっぱり女の子はお肌に気を使うおね。」
ξ゚⊿゚)ξ「ううん。私の場合は、あまり直射日光に当たらないようにしないといけないの。」
( ^ω^)φ「え?」
173
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:53:40 ID:eT9BLvak0
松葉菊をスケッチしていた僕は、見上げるように津出さんを見た。
( ^ω^)「…。海外の人が外でサングラスをかけるのは、色素の薄い目が光に弱いからだって聞いたことがあるお。」
( ^ω^)「津出さんは、ハーフだったのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ。両親は日本人よ。家系もね。」
( ^ω^)「…じゃあ、津出さんは…アルビノなのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。髪や肌に色味もあるし、その中では軽度と言われているけど…。」
ξ゚ー゚)ξ、「私は、加えて皮膚が少し薄いの。だから目が開きやすくて眩しいからよけいに、ね…。」
そう言って津出さんは、日傘を少し揺らした。
ξ゚⊿゚)ξ「…日陰になってない?」
( ^ω^)φ「大丈夫だお。」
174
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:55:05 ID:eT9BLvak0
σ( ^ω^)「日差しには強いけど、実は僕もこれ、地毛だお。」
僕の髪はほんのり茶色寄りで、そこからごく僅かな色差で細かくメッシュが入っているような色だ。
( ^ω^)「僕は三人兄弟の末っ子だから、色素が上二人に取られすぎたとか、家族から冗談を言われるんだお。」
( ^ω^)「僕達、頭髪検査が面倒臭かった仲間だお。」
ξ゚⊿゚)ξ「…そうね。」
ξ゚ー゚)ξ「お花を見るのが好きなのも、一緒。」
( ^ω^)「ホントだおw」
175
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:56:37 ID:eT9BLvak0
_____
___
__
やけに長く咲き続けたモッコウバラが散る頃にはもう、僕達は友人になっていた。
( ^ω^)φ「津出さんは、地元の人なのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。内藤君は?」
( ^ω^)「僕は遠くから引っ越してきて、アパートから通ってるお。」
( ^ω^)「みんなここの学生だから、仲良くしてもらってるお。」
ξ゚ー゚)ξ「楽しそうね。」
176
:
名無しさん
:2024/08/19(月) 23:58:18 ID:eT9BLvak0
( ^ω^)φ「あーあ、来年からは就活かお…。」
(;^ω^)φ「僕、口が回らなくて『だよ』が『だお』になるし、語尾におって付けるのが癖付いちゃったから、ちゃんと採用してもらえるか不安でいっぱいだお…。」
ξ゚⊿゚)ξ「…親しみやすいと思うけど。」
(;^ω^)「ありがとだお。」
( ^ω^)「津出さんは、どんな分野の仕事を目指すんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「…家業を手伝う予定よ。」
( ^ω^)「そうなのかお。就職先がもう決まっていて、羨ましいおー。」
ξ゚⊿゚)ξ「…。」
177
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:00:56 ID:GGnScXIU0
津出さんは、ぽつりぽつりと話し始めた。
ξ゚⊿゚)ξ「…私の家の近くにね、幼稚園があるの。いつも楽しそうな声が聞こえてくるわ。」
ξ゚⊿゚)ξ「小学生の頃は別の病気もあって、病院や家で過ごす事が多かったの。退屈だったけれど…、その声を聞くのは楽しかった。」
ξ゚⊿゚)ξ「目を閉じながら想像するの…。その子達と同じ年になって、日傘もささずに半袖で駆け回る自分を。」
178
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:03:13 ID:GGnScXIU0
ξ゚⊿゚)ξ「病気が良くなって中学に通うようになった頃に、その幼稚園から帰ってくる子供とすれ違ったの。」
ξ゚ー゚)ξ「落ち葉をニコニコしながら見せてくれたわ。紅葉した葉が、面白かったのでしょうね。」
ξ゚⊿゚)ξ「掃除の時間に友達とうんざりしながら掃いていた葉っぱと同じはずなのに、その葉はとても鮮やかで濃くて、綺麗だったの。」
ξ゚⊿゚)ξ「私…心の中ではつい、卑屈な事を考えてしまいがちで。だけどその時は、とても素敵な言葉ですぐ返事が出来たわ。」
ξ*゚⊿゚)ξ「まるで、その子の魔法にかかったみたいね。」
ξ*゚⊿゚)ξ「そうしたらね、その子もとっても喜んでくれた!」
ξ゚ー゚)ξ「…思えば、そこの幼稚園の子にはいつも励まされていたわ。だから将来、その幼稚園の先生になれたらなって、憧れるようになった。」
179
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:04:52 ID:GGnScXIU0
ξ゚⊿゚)ξ「…だけど、言えなかった。向いてる身体ではないし、主治医にも私達家族への励ましで、『実家で働けるなら安心だ』と言われていたから。」
ξ゚⊿゚)ξ「これ以上迷惑をかけたくないし、高校を出たら働くつもりだった。だけど両親は、『もう少し学生でいたら?』って。」
ξ゚−゚)ξ「…大学なんて来ちゃって、良かったのかな…。」
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「何も知らずに言って、ごめんお。」
Σξ;゚⊿゚)ξ「…あ、愚痴っぽくなっちゃってごめんなさい。」
( ^ω^)「その幼稚園は、今もあるのかお?」
ξ゚ー゚)ξ「ええ。」
180
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:06:47 ID:GGnScXIU0
_____
___
__
( ^ω^)「……」テクテク
津出さんと別れてアパートに帰る中、僕は考える。
彼女は幼い頃から、どれだけの制限があったのだろう。
黒い傘に加えて、彼女はいつも黒い服を着ている。
話を聞いてしまった後では、まるで彼女の夢への喪服だ。
( ^ω^)「…」
通りかかった小さな店のショーウインドーに映る僕は、僕が思っている以上に猫背で格好悪い。
( ^ω^)「…お?」
店の奥から店主らしき人が出てきて、ショーウインドーのディスプレイを変えていた。
( ^ω^)「…。」
181
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:08:33 ID:GGnScXIU0
カララン
( ^ω^)つ|「あの、その傘を見せて頂けますかお?」
気付けば僕はその店の中に入って、声をかけていた。
(;゚∋゚)「え?ああ…。」
50代くらいのその人は困ったような顔のまま、傘をこちらに手渡してくれた。
( ^ω^)「…。」
不思議な形の日傘だった。
緩いS字のような、積分記号のような。上は丸っこいけれど端がほんの少しはねている骨組みだ。
( ^ω^)「外に出て、試してみても良いでしょうか?」
(;゚∋゚)「えっ!?」
182
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:10:28 ID:GGnScXIU0
从´ヮ`从トつ「どうぞ。一緒に行きましょう。」トコトコ
店の奥から、男性と同じような年の女性が穏やかにやって来た。
僕は促されて、店の外へと出て傘をさす。
( ^ω^)つ
( ^ω^)つ「凄い…。びっくりするほど涼しいですお。」
アイボリー色の表面に対して、内側は黒っぽい色だ。
無地ながら特徴的なカーブがどことなくフェミニンで、深さがある。
そのため涼しいのだろう。
从´ヮ`从ト「しっかりしているでしょう?生地自体がUV素材なの。だから、長く使えるわ。」
从´ヮ`从ト「取引先の人が余った生地をくれたのよ。うちは鞄屋だけど、主人が色々作るのが得意でね。」
183
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:12:24 ID:GGnScXIU0
カララン
( ^ω^)「あの、こちらの品を売っては頂けないでしょうか?」
店内に戻った僕は、二人にそう申し出た。
(;゚∋゚)ヾ「えっ…?うぅーん…。」
(;゚∋゚)ヾ「銀婚式の記念のつもりだったんだけどなぁ…。」
(;゚∋゚)) チラッ
从´ヮ`从ト「良いじゃないですか。ずっと展示するつもりだったんだから、私も使えないですし。」
店頭ディスプレイはボストンバッグやトランクなど、旅行を意識したような品揃えで、日傘はそこに飾りとして加えるつもりだったのだろう。
(;−∋−)「まぁ…いいか。」
(*^ω^)「!ありがとうございますおっ!!」
184
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:13:52 ID:GGnScXIU0
_____
___
__
ξ゚⊿゚)ξ「内藤君、今日は…」
( ^ω^)「あ、ごめんお。今日からバイトがあるんだお。夏くらいまでスケッチには行かないんだお。」
ξ゚⊿゚)ξ、「そう…。」
僕は店に日傘を取り置きしてもらい、短期のバイトをする事にした。
この街では新店舗の内装の手伝いなどで、期間限定の求人が割と出ているのだ。
( ^ω^)(バイトは初めてだけど、頑張るお!)
( ^ω^)〜♪
185
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:14:47 ID:GGnScXIU0
_____
___
__
(ヽ‘ω`) ゲソ…
ξ;゚⊿゚)ξ「大丈夫…?」
(ヽ‘ω`)「だいじょぶだお…」
ξ;゚⊿゚)ξ「…。」
壁紙を貼ったり、無垢床に色付きのオイルを塗ったり。
慣れない体勢や緊張からか、労働時間の割に僕はやつれた。
186
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:15:47 ID:GGnScXIU0
____________________________
_____
___
__
( ^ω^)「津出さん。今日の授業が終わったら、庭に来てくれるかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ…?」
しばらくその場所に行っていなかった僕からの誘いに、津出さんは少し驚いていた。
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、行くわ。」
187
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:17:08 ID:GGnScXIU0
ξ゚⊿゚)ξ「あれ…?今日は、スケッチブックを持っていないのね。」
( ^ω^)「今日は、スケッチをしに来たんじゃないんだお。」
( ^ω^)「津出さんにこれを渡したくて…」
そう言って僕は、細長い包みを渡した。
ξ゚⊿゚)ξ「え…?」
( ^ω^)「開けてみてお。」
ξ゚⊿゚)ξ「…?」
津出さんは、紙の包みをぺりぺりと丁寧に剥がしていく。
ξ゚⊿゚)ξ「…日傘…?」
( ^ω^)「兼用傘だお。さしてみてお。」
188
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:18:45 ID:GGnScXIU0
ξ゚⊿゚)ξつ「…」
ξ゚⊿゚)ξつ「…これ、とても良いわ。」
ξ゚⊿゚)ξつ「持ち運びやすいからいつも折り畳みを使っていたけれど、涼しさが全然違う。」
ξ゚⊿゚)ξ「だけど…どうして…?」
( ^ω^)「えっ?」
(;^ω^)
僕はここでようやく、前回と同じ失敗をしている事に気付いた。
この日傘をさしてモッコウバラの前で笑う津出さんの姿が浮かんで、それだけで行動していたのだから。
(;^ω^)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「…私が使っちゃっても良いの?」
(;^ω^))「うん。津出さんのだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「…ありがとう。」
189
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:20:46 ID:GGnScXIU0
ξ゚⊿゚)ξ「私、重い話しちゃったから…避けられてるのかと思った。」
(;^ω^))「それはないお!」
( ^ω^)「…何も言えなくて、ごめんお。」
ξ゚⊿゚)ξ「ううん、…ありがとう。」
ξ゚⊿゚)ξ「…内藤君って、不思議な人だよね。」
津出さんは馬鹿にする訳でもなく、本当に不思議だという表情で僕を見た。
(;^ω^)「いつもはこんな感じじゃないんだお。だけどなんとなく、僕が面白いと思ったものを津出さんなら同じように思ってくれるんじゃないかって…本当になんとなくだお。」
窓の下を眺めていたその姿を見た日から、僕は津出さんに親近感を覚えていたのだろう。
それまで一度も学生がこの庭に来た事は、なかったから。
190
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:22:23 ID:GGnScXIU0
( ^ω^)「僕は学校に来て花を描いて帰るだけの、ただの陰キャ学生だお。友達と出かけたりはするけど、サークルにも入ってないし…」
( ^ω^)「自分から女の子に声をかけたのだって、津出さんくらいで…」
(;*^ω^)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「…サークル?」
(;^ω^)「…お?」
ξ゚⊿゚)ξ「…そっか…!」
ξ゚⊿゚)ξ「今まで授業だけで精一杯だったけど、大学って色々な活動をしている人がいるものね。」
ξ゚ー゚)ξ「お仕事じゃなくて短時間やたまになら…私にも何か出来るかも。読み聞かせのボランティアとか…。」
(*^ω^)「おっ!それが良いお!人手が必要なら、僕も手伝うお。」
ξ*゚ー゚)ξ「ありがとう。」
191
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:23:25 ID:GGnScXIU0
ポツ…ポツ…
( ^ω^)「ん…?」
僕が上を見た途端、サァッと横殴りの細い雨が降ってきた。
(;^ω^)「わっ!隣の棟に行くお!」
ξ゚⊿゚)ξつ「内藤君、これに入って。」
(;^ω^)「ありがとうだお。」
192
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:25:46 ID:GGnScXIU0
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい、早速雨に濡らしてしまったわ。」
自分の傘もあったのにと、津出さんは畳まれた黒い傘を見るように俯いた。
( ^ω^)「頑丈だから、大丈夫だお。沢山使ってお。」
棟の入口には広い屋根があるので、僕達は雨が止むまでここに留まる事にした。
( ^ω^)「天気雨だから、すぐ止むお。」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。」
用事のない人は帰っている時間だし、外でサークル活動をしていた人達は他の棟に避難したようだ。
雨の音しか聴こえない。
まるで、僕達以外は世界に誰もいないみたいで、心細くなった。
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
僕達は、どちらからともなく手を繋いだ。
.
193
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:26:21 ID:GGnScXIU0
_________________________
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194
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:27:27 ID:GGnScXIU0
ζ(゚ー゚*ζ「お疲れ様でした。」
( ^ω^)
気付けば僕は、いつもの白いテーブルセットに座っていた。
目の前にはブルーベリーとラズベリーが乗ったクリームケーキが1ホールと、紅茶が置かれている。
(;^ω^)「凄いですお…。お昼も頂いてしまったのに、申し訳ないですお。」
ζ(^ー^*ζ「クリームには、水切りヨーグルトが少し入っているそうですよ。」
そう言いながら、デレさんがケーキを切り分けてくれた。
(;^ω^)「では、頂きますお。」
195
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:30:02 ID:GGnScXIU0
( ^ω^))「…!」モグッ
(*^ω^))「生クリームが使われているケーキなのに、後味が軽いですお。」モグモグ
水切りヨーグルトが、クリームのコクを穏やかにしているのかもしれない。
(*^ω^))「スポンジの間に挟まれているのがバナナなのも、良いですお。」
ζ(^ー^*ζ「甘さ控え目な分、バナナが際立ちますよね。」
それに加えて、ブルーベリーやラズベリーの瑞々しさ。
お店の物とはまた違う、素朴で優しい味わいのケーキだ。
ζ(゚ー゚*ζ「バナナはスーパーでショボンさんが買ってきてくれた物ですが、ベリーは朝採れたものです。」
なんでもドクオさんは、庭で手に入らない物はショボンさんに買ってきてもらうのだとか。
( ^ω^)「そうですかお。知り合いにブルーベリー農家の人がいますが、そこよりも実がなるのがだいぶ早いですお。」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですよね。プリンの時に使っていたのも今期の物ですし…。いっぱい採れるので、終わり頃には冷凍したりもしますよ。」
ζ(゚、゚*;ζ「ただ、ブルーベリーは冬の終り頃にストックがなくなってしまうので、今の時期を心待ちにして過ごします。」
(*^ω^)「とっても美味しいから、そうなってしまうのも分かりますお。」
196
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:31:59 ID:GGnScXIU0
ζ(゚ー゚*ζ「本日の紅茶は、ただにしきです。国産の紅茶で、明治時代に外国から持ち帰って改良された品種なのだそうです。」
( ^ω^)「お?キラキラしてますおー。」
ζ(゚ワ゚*ζ「新芽の産毛ですね。美味しい証拠なのだとか。」
( ^ω^))「では。」コクッ
(*^ω^)「おお…。」
(*^ω^)「和紅茶は遠出の土産などでたまに買ったりもしますが、それよりも味がしっかりしているような気がしますお。」
飲み進めるとなんだか目も冴える気がしたので、カフェインも他の物より多いのかもしれない。
ζ(^ー^*ζ「そうですね。なので、ミルクも合います。」
(*^ω^))「おっ、そうなんですかおー。」コクッ
197
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:34:19 ID:GGnScXIU0
ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん。酸味のあるハーブティーなのですが、マロウブルーもいかがでしょうか?」
( ^ω^)「マロウブルー…、ですか?飲んだ事はないですが、頂きますお。」
ζ(゚ー゚*ζ「ウスベニアオイと言った方が分かりやすいでしょうか?喉や胃の不調にも効くそうですよ。」
( ^ω^)「ほぅ…。」
ζ(゚ー゚*ζ ))
デレさんが僕の近くまでやって来て、乾燥した青紫色の花が入ったガラスのティーポットを、テーブルの上に置いた。
そこに湯を注ぐと、たちまち青い色へと変わっていく。
それからガラスのカップにそれを注ぎ、こちらに差し出した。
(*^ω^)「綺麗ですお。ちょっと緑っぽいブルーですおー。」
ζ(゚ー゚*ζ「…良いですか?カップの中をよく見ていてくださいね。」
( ^ω^)「?はい。」
198
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:36:07 ID:GGnScXIU0
僕がそう言うと、デレさんは小さなボトルから、レモン汁を数滴垂らした。
Σ(;^ω^)「わ!ピンク色に変わりましたおっ!」
ζ(゚ワ゚*ζ「マロウブルーに含まれるアントシアニンは、アルカリ性は青、酸性になると赤になる性質があります。」
(;^ω^)「なるほど。…頂いても良いですかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「どうぞ!」
(;^ω^)) コクッ
(;^ω^)「ちょっと酸っぱいですお。」
ζ(^ー^*ζ「ふふっ。」
ζ(゚ー゚*ζ「…」
ζ(゚、゚*ζ「あのぅ…、面白いのでもう一度やっても良いですか?」
( ^ω^)「良いですおw」
199
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:38:21 ID:GGnScXIU0
ζ(゚ー゚*ζ「マロウブルーは、草木染めにも使えるんです。重曹でアルカリ性の液にして布を染めると、ブルーグレーのような色に布が染まりますよ。」
デレさんの目は、不思議な色をしている。
まるで鏡のように、デレさんが見た色がそのまま目に映るような。
普段は庭の緑や空の青、それから花の色が混じる色だ。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふふ…。」
今度は、マロウブルーの入ったティーポット自体にレモン汁を入れるようだ。
ζ(^ー^*ζ「魔法使いの気分になれますよね。」
( ^ω^)「…。」
ブルーからピンクに変わるその瞳を、僕は眺めていた。
200
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:40:24 ID:GGnScXIU0
_____
___
__
( ^ω^)「あれ、これは…?」
帰る途中、車輪梅の小道を抜けた先の一人用の椅子に、リースが立て掛けられていた。
今朝は見なかった物だ。
ζ(゚ー゚*ζ「ショボンさんの奥さんが作られた物です。帰り際にショボンさんが飾っていってくれました。」
ζ(^ー^*ζ「花径が小さくて、沢山集まっていて可愛いですよね。これは…」
( ^ω^)「…知っていますお。」
ドライフラワーで作られたリースの花は、乾燥の影響か濃い黄色だ。
だけど、葉の形で僕には分かる。
( ^ω^)「モッコウバラですお。」
201
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:42:32 ID:GGnScXIU0
( ^ω^)「今日はありがとうございました。おかげで、良いものが出来そうですお。」
僕は庭から出ていつものように振り返り、挨拶をした。
ζ(^ー^*ζ「良かったです。よろしくお願いします。」
( ^ω^)「それでは、失礼しますお。」
((( ^ω^)
°·∴ζ(>Д<;ζ「ブェ゙ッぐショイィィぃぃ!!!」
∑(;^ω^) ビクッ!!
(;^ω^)「大丈夫ですかおっ?」タタッ
ζ(゚∩゚*;ζ「すびばせん…お見苦しいところを…。」ズズッ
(;^ω^)「いえ…。」
デレさんは、僕の帰り際によくくしゃみをする。
(;^ω^)「…あの、もしかして外の空気が合わないとか…?見送りはギリギリじゃなくて、もう少し内側でも良いですお。」
ζ(゚ー゚*;ζ「あ…違います。大丈夫です。」
( ^ω^)、「でも…」
202
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:44:47 ID:GGnScXIU0
ζ(゚、゚*ζ「…あの。次はいつ、いらっしゃいますか?」
( ^ω^)「次ですかお?納品の日になりますお。」
ζ(゚、゚*ζ「そうですか…。」
ζ(゚、゚*ζ「…ショボンさんが、今日はクレマチス・テッセンを植えてくれたんです。とても綺麗に咲くと思うので、またスケッチに来ませんか…?」
(;^ω^)「え…?あの…?」
『製作に入るので』と返そうと思ったけれど、なんだか悲しそうな顔のデレさんを見ると、そうは返せなかった。
デレさんの奥で、ニコチアナが手招きをするように揺れている。
(;^ω^)「…分かりましたお。お邪魔しますお。」
((ζ(゚ー゚*ζ パッ
ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。お待ちしております。」
203
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:47:11 ID:GGnScXIU0
( ^ω^)「…」テクテク
デレさんは、別れ際はいつもあんな感じだ。
だから僕は、後ろ髪を引かれるような気分で家に帰らなくてはいけない。
以前言っていたように、外に出て街を見てみたいのだろうか?
あんな悲しそうな表情を見せられるくらいなら、本当に僕が街を案内してあげたい。
デレさんは、どんな場所へ連れて行ったら喜ぶだろうか?
ドクオさんの庭とは違う種類の花が沢山咲いている、図書館?
それともお菓子が好きだから、ケーキ屋はどうだろう。
僕が担当した店のカーテンを見せたら、笑ってくれるだろうか?
けれど、
僕が手を引いて連れ出した妻は、幸せだったのだろうか。
.
204
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:47:45 ID:GGnScXIU0
【 第四話 モッコウバラの祝福 】
終わり
205
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:48:34 ID:GGnScXIU0
【登場人物】
(´・ω・`)
植苗勝盆(うえなえしょうはち)
3児の父
造園業
マッチョ
ξ゚⊿゚)ξ
津出つかさ
大学2年生
内藤より小さい
206
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:50:27 ID:GGnScXIU0
【ヨーグルトクリームケーキの作り方】
・スポンジケーキ(市販可)
◯生クリーム35% 200ml
◯ホイップクリーム用の砂糖 20gくらい
◯水切りプレーンヨーグルト 大さじ1〜2
【飾り付け】
☆バナナ
☆ミックス冷凍ベリー(解凍して水分を切っておく)
[作り方]
①生クリームに砂糖を少しずつ入れ、ホイップする。
②クリームにプレーンヨーグルトを入れて混ぜる。
③スポンジにクリーム、バナナ、クリーム、スポンジの順で重ねる。
④外側をクリームで白く整え、ミックスベリーを中央にスプーンでラフに乗せる。
⑤絞り袋で上部外側、ミックスベリーを囲うような飾りホイップを施す。
207
:
名無しさん
:2024/08/20(火) 00:53:41 ID:GGnScXIU0
ドリスリッカーではないのですが、これも多分ポリアンサローズっぽい品種です。
激マブじゃないですか??
https://imgur.com/a/zYnYEdI
208
:
名無しさん
:2024/08/21(水) 00:06:48 ID:SrcWG/F20
余談ですがドクオの収入は、そこそこいい立地の中〜大型店舗に駐車場を貸してる相当の金額です。
リアルで畑として貸してたら到底そんな額にはならないはずですが、避難所として指定されてるとか金持ちに囲われてる的ななんか区分とか控除がチート状態です。
固定資産税やらも用事のない人に見える土地の分しか取られません。
209
:
名無しさん
:2024/08/22(木) 22:04:53 ID:7NHBmZaI0
乙!バラから食べ物を彷彿とするセンス、可愛いし独特だし分かるしでめちゃ好きだ〜!!
大型店舗の駐車場経営くらい設けてるってことは、立地にもよるだろうけど大体月に500万くらい…?しかも税金はチートで控除受けまくり!?ズルだ…!!
210
:
名無しさん
:2024/08/24(土) 07:52:25 ID:ffdEZsjQ0
ありがとうございます!オースチンのゆで卵感はガチです。
詳しい人だ…。すみません、モデルケースがもっと田舎な上に土地の一部でしか計算してなかったという鈍ミスを犯してたので、実際はそれよりもっと少ないです。
家庭も持てるレベルではあるけど、入場料を取らない文化財(屋敷と庭)の修繕費込みとして考えると、丁寧な暮らし以上の贅沢は厳しい感じです。
ローズウッドとか育てまくって成金になっちゃえよと悪魔の案が浮かびますね。
211
:
名無しさん
:2024/08/24(土) 07:55:23 ID:ffdEZsjQ0
すみません。
>>210
は
>>209
への返信です。
212
:
名無しさん
:2024/10/30(水) 19:01:48 ID:uL3HVFXw0
クイズ中だというのに、中々投下が進まずごめんなさい。夏の暑さと秋の行事の多さを侮っていました。
11月中に更新予定です…
213
:
名無しさん
:2025/02/02(日) 17:40:26 ID:CvaJxDUc0
【こぼれ種1】
Σ(;^ω^)「おっ…!?タコさんウインナーが宙に浮いてますお!??」
ζ(^ー^*ζ「クレマチスですね。ヴィオルナ系、テキセンシス系、インテグフォリア系の咲き始めは、よくタコさんウインナーのようだと表されます。」
(;^ω^)σ「色によって、見え方の差が激し過ぎますお。ヴィオルナ系のティンクルピンクは空想の植物のようにファンシーだし、インテグフォリア系のロウグチは妖艶なドレスのように美しいですお…。」
ζ(^ー^*ζ「見かけるとびっくりする花なのは変わりませんね!」
ζ(゚ワ゚*ζ「花がタコさんウインナーにそっくりなのは、クレマチスだけではありませんよ。ザクロの花や、ペンデンス、オヒルギなどもそっくりです。」
(;^ω^)σ∏「本当だ!オヒルギはオクラみたいなのまでくっついてますお!」
214
:
名無しさん
:2025/02/15(土) 19:07:55 ID:XtawK0JU0
【こぼれ種2】
ζ(^ー^*ζ「白玉星草という、白玉のように丸くて可愛らしい花があるんです。」
( ^ω^)「針金みたいに、ピーンとした茎径ですお。」
ζ(゚ワ゚*ζ「これが沢山集まると…」
(*^ω^)「茹で上がりゆく大量の白玉…。幻想的だお…。」
215
:
名無しさん
:2025/05/08(木) 01:52:07 ID:eoQ6IK9s0
乙!こぼれ話全然気づかなかった。
タコさんウインナーに例えるセンスめちゃ好き、もうそうにしか見えない。白玉星草も調べたら超可愛かった……!
続きずっと楽しみにしてる!
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