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( ^ω^)Secret Gardenのようです

1名無しさん:2024/06/19(水) 22:31:20 ID:15xn.t.w0
7:40

(;^ω^)「ハァッ…ハァッ!」

僕は、珍しく寝坊をした。
いつもならば大通りで朝食をとり終えて、会社に着いている頃だ。

(;^ω^)(…仕方ない。近道するお。)

流れる汗を袖で拭い、足の向きを左斜めにクルッと変えて、また走る。
この道は小学校の通学路でもあるため、速度を緩めて小走りだ。

(;^ω^)(あれ…。あんなの、あったかおっ?) ハァッハァッ

小学校の左斜め向かいに、洋風の生垣が続いている。

519名無しさん:2026/06/12(金) 03:56:55 ID:oQVOL7y.0







ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、間違いありません。」






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520名無しさん:2026/06/12(金) 03:59:15 ID:oQVOL7y.0
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翌日も夫は、この屋敷にやって来た。
カーテンを新調するための依頼で、どうやら『ドクオさんが用事のある方』だったみたい。

ζ(゚、゚*ζ「…どうして、私同席で内藤さんにお菓子を振る舞われたのですか?」

ζ(゚、゚*;ζ「それに、『毎日来ても良い』だなんて伝言を…。」

普段、業者が来た時にドクオさんは、ショボンさんに買ってきてもらった日持ちする茶菓子を出している。

(;'A`)「あ…そそ、それははは…オ、くく…」

ヽζ(゚、゚*;ζノシ「あっ!喋り難い事なら良いんです!」

ζ(゚ワ゚*;ζ「内藤さんが毎日来てくれたら、毎日お菓子が食べられて良いなって!」

ζ(゚ワ゚*;ζb「ほら、私に焼いてくれるのは週一じゃないですか〜。」

たまたま気が向いただけの事を、意図せず冷やかす形になってしまったかもしれない。
もしくは外との交流の、ドクオさんなりの秘密の第一歩だったかもしれないのに。

('A`)「…それはデレが、一週間分焼いても…すぐ食べ切っちゃうから…。」

Σζ(>、<*;ζ「うっ…。」

('A`)、「…冷凍も出来るのに…。」

人ζ(>、<*;ζ「すみません…。」

521名無しさん:2026/06/12(金) 04:00:30 ID:oQVOL7y.0
('A`)「…内藤さんの話を、デレがすごく聞いてくるから。」

ζ(゚ー゚*;ζ「そうですね…。」

私は夫が帰ってから、ドクオさんに何度も『内藤さん』とはどんな話をしたのかを、聞き出している。

ζ(゚ー゚*ζ「話しやすい方なので、興味があって…。」

('A`)「…そう…。」

ζ(゚、゚*;ζ「それにしても…。確かに図書室のカーテンが一番傷んでいますが、他の部屋だってどんぐりの背比べじゃないですか。」

ζ(゚、゚*ζ、「屋敷の主の部屋や、応接室が先の方が見栄えが良いと思いますが…。」

(;'A`)「そこが浮かんだから…。…嫌だった…?」

ζ(゚ワ゚*ζ「嬉しいです!凄く!」

ζ(゚ー゚*ζ「ショボンさんの奥様からお預かりしている本もありますしね。それではお先ですみませんが、ありがたく…。」ソワソワ

522名無しさん:2026/06/12(金) 04:02:09 ID:oQVOL7y.0
ζ(゚ワ゚*ζ「レースカーテンは、お庭をイメージした物を作ってくださるそうなんです。いったいどんなカーテンに仕上がるんでしょうか…?」

私はこの部屋にどんな新しい色味が加わるのかと、待ちきれなくなった。
それもなんと、夫のデザインしたカーテンだ。
私の生きている間には、見る事の出来なかったもの。

ζ(^ー^*ζ


('A`)「……」

('A`)「…ねえ、デレ。」

('A`)「君は、傘…なんだよね…?」

ζ(^ー^*ζ

ζ(゚ー゚*ζ「…。」




ζ(゚ー゚*ζ「なんと答えれば良いのか、私には分かりません。」


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523名無しさん:2026/06/12(金) 04:03:48 ID:oQVOL7y.0
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('A`)「…デレ、今から修理の依頼があるみたい。」

ζ(゚、゚*ζ「随分突然ですね。」

('A`)「今壊れたから…行くって。」

ζ(゚ー゚*ζ「それでは、お迎えに行ってきますね。」

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((ζ(゚ー゚*;ζ(あれー…?見当たらない…。)

ζ(゚、゚*;ζ(結構探したのに、こんな事は初めてね。何処に居るのかしら…。)

そう悩んでいると、見覚えのあるシルエットが現れた。

524名無しさん:2026/06/12(金) 04:05:01 ID:oQVOL7y.0
ζ(゚ー゚*ζ!

ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん!」タッ

( ^ω^)「こんにちはですお。」

スケッチにやって来た夫に頼み、二手に分かれて捜索をすると、小さなお客様が見付かった。

ζ(゚ー゚*ζ「お名前を聞いても良い?」

(;*゚ー゚)「しぃ…です。」

ζ(゚ワ゚*ζ(とっても可愛いお客様ね…。)

しぃちゃんが連れてきた耳が金属で出来た兎を、ドクオさんは図書室の掃除を条件に修理してくれた。
しぃちゃんは夫を気に入ったみたいで、親しげに話す私が気に入らないようだった。

ζ(^ー^*ζ(ふふ。可愛い。)

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525名無しさん:2026/06/12(金) 04:06:19 ID:oQVOL7y.0
夫とのお茶会は、毎度夢のようだった。
こんなに花に囲まれた場所で二人だけのお茶会だなんて、生きていた時でも中々出来ない経験だ。

ζ(゚ー゚*ζ「そういえば、内藤さん。ドクオさんが今度は3段のお皿でお菓子を用意してくれるそうですよ。」

pζ(゚ワ゚*ζq「アフタヌーンティー形式です!」

どういう訳か、夫がやって来てからドクオさんはお菓子作りを張り切っていて、おまけに私の髪のアレンジまでしてくれる。

ζ(゚、゚*ζ(夫がお菓子が好きだとでも言ったのかしら?だけど、初対面の人に言うほどではなかったような…。)

526名無しさん:2026/06/12(金) 04:08:01 ID:oQVOL7y.0
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ζ(゚ー゚*ζ「…内藤さん。よろしければここにいらっしゃる間、私の話し相手になってくれませんか?」

私は夫に頼み込んで、外の話をしてもらえる事になった。
夫は見た事がなくても分かるように丁寧に話していたけれど、私は初めて聞く振りをして、懐かしいなと思い返していた。

話のうちの、半分は。

ζ(゚、゚*;ζ(ショボンさんやドクオさんのお兄さんのお話で聞いてはいたけれど…。夫の会社も街での仕事がメインになるほど、昔よりも栄えているのね。)

ζ(゚、゚*ζ(…夫とよく行ったあの洋食屋は、まだあるのかしら?)

ζ(゚、゚*ζ(私が好きな雑貨屋に、夫がスケッチブックを買っていた本屋も…。)

527名無しさん:2026/06/12(金) 04:09:13 ID:oQVOL7y.0
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( ^ω^)「それでは、また。」

ζ(゚ー゚*ζ「さようなら。」

これから仕事があるという夫を見送った。
私はティーセットを取りに戻り、屋敷へと向かう。

ζ(゚、゚*ζ ))


夫の描いた色が、誰かの夢に寄り添い、街のあちこちに広がっている。


ζ(゚、゚*ζ ))

('A`)「デレ…?」

ζ(゚、゚*ζつ| パタン…

ζ(゚、゚*ζ「…見てみたいなぁ…。」ションボリ


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528名無しさん:2026/06/12(金) 04:10:22 ID:oQVOL7y.0
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ζ(゚ー゚*ζ「この間は、とっても可愛らしいお客様でしたね。」

ζ(^ー^*ζb「しぃちゃん、内藤さんが気に入ったみたいで私の事をライバルだと思ったみたいです!」

(;'A`)つ「あ…動かないで…。」

ドクオさんはスマートフォンでヘアアレンジのHowtoを見ながら、私の髪と格闘している。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオさんのスコーンを渡した時も、キラキラした目で見ていましたよ。」

ζ(^ワ^*ζ「しぃちゃん、また会いたいですね〜。」

('A`)「…」

529名無しさん:2026/06/12(金) 04:11:37 ID:oQVOL7y.0
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|(*゚、゚) ヒョコ

ζ(゚ー゚*ζ「しぃちゃん…?」

ζ(゚、゚*ζ「どうしたの?また時計壊れちゃった?」

私は門の近くまで行き、キョロキョロと周りを見渡しているしぃちゃんに声をかけた。

(*゚、゚)「ううん、今まで見えなかったのに、またお庭が見えたから。…何してるの?」

ζ(゚ワ゚*ζ「アネモネの花をブーケと押し花にしようと思って摘んでいるの。しぃちゃんもやってみる?」

(*゚ー゚)!「うんっ!」

ζ(^ー^*ζ(嬉しい!こんな事もあるのね。人に教えるのは初めてだけど、頑張るわ。)

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530名無しさん:2026/06/12(金) 04:13:08 ID:oQVOL7y.0
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今日は、夫が薔薇のスケッチをしにやって来る日だ。

ζ(゚ー゚*ζ(良かった。丁度見頃ね。)

ζ(^ー^*ζ(本当に素敵な色の花ね…。)

ζ(゚ー゚*ζ!「内藤さんっ!」

門の前で立ち止まる夫を見付けて駆け寄ると、いつもと雰囲気が違った。

ζ(゚、゚*ζ「…。」

(;^ω^)「こんにちは。」

ふわふわと広がってしまいがちだった髪が、今日はしっかりとまとまっている。
それに大学の頃とあまり変わらない服装だけれど、暗めの紺でも色味がはっきりとした、上品なポロシャツを着ている。

ζ(^ー^*ζ「素敵ですっ!」

(*^ω^)「ありがとうございますお。」

ζ(゚、゚*;ζ(最近の美容師さん、恐るべしだわ…!)

531名無しさん:2026/06/12(金) 04:14:11 ID:oQVOL7y.0
( ^ω^)「デレさんも、今日は凄いですお。髪にお花が編み込まれていますお。」

ζ(^ー^*ζ「ありがとうございます。庭の花が綺麗だからと、ドクオさんが編み込んでくれました。」

ドクオさんが今朝、野菜を収穫した帰りに見付けた薔薇だ。

(;^ω^)「ドクオさん、何でも出来て凄いですお…。」

ζ(^ー^*ζ「ふふ。」


そんな話をしながら、夫と薔薇の道をゆっくりと歩く。

私が見る事は出来ないはずの年に生まれた薔薇を、二人で見ている。

.

532名無しさん:2026/06/12(金) 04:15:40 ID:oQVOL7y.0
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( ^ω^)「あれ、これは…?」

スケッチが終わった帰り道、夫がモッコウバラのリースの前で立ち止まった。

ζ(゚ー゚*ζ「ショボンさんの奥さんが作られた物です。帰り際にショボンさんが飾っていってくれました。」

ζ(゚、゚*ζ(…そういえば)


再び会った日から私は浮かれていていて、今までずっと思い付かなかった。

夫が今日お洒落をしているのも、ここに来るためではなくて、他の誰かのためなのかもしれないという事。


((ζ(゚、゚*;ζ チラリ

ζ(゚、゚*ζ(指輪は…、していないみたい…。)


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533名無しさん:2026/06/12(金) 04:16:31 ID:oQVOL7y.0
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( ^ω^)「随分と時間がかかってしまい、申し訳ありませんでしたお。」

ζ(゚ワ゚*ζ「とても素敵です。ありがとうございますっ!」

梅雨の季節に、図書室のレースカーテンが完成した。
夫がデザインしたカーテンは、沢山の機械刺繍が施されている。

ζ(゚ワ゚*ζ(どれも庭で咲いていたお花…。夜でも庭に居られるみたいで、凄く嬉しいわ。)

('A`)「…」

ζ(^ー^*ζ(ドクオさんも、ずっと眺めているわね。)

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534名無しさん:2026/06/12(金) 04:17:58 ID:oQVOL7y.0
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ブーケ対決から少しして、しぃちゃんが遊びにやって来た。

<(*゚ー゚)>「この前は私の勝ちね!」エッヘン

ζ(゚、゚*;ζ「うぅ…。教え子に負けちゃった。」

(*゚ー゚)つ「じゃあ今日は、デレが作ったのやる!」

ζ(゚ワ゚*ζ「じゃあ、使うお花を用意するね。しぃちゃんの手なら、もう少し小さめなお花にしようかな。」

<(*゚ー゚)>「おじさまが好きそうな色にして!」

ζ(^ー^*ζ「いいよー。淡めの色合いで作ってみようね。」

(*゚ワ゚)「うん!」


(;*゚、゚)つ「うーん…」ポロポロッ

(;*>、<)「何度やってもくずれちゃうよー…。」

ζ(゚ー゚*ζ「沢山花を持つから難しいよね。ちょっと休憩しようか。」

ζ(゚ー゚*ζ「お待たせ〜。」コトッ

(*゚ワ゚)「わっ!これケーキ!?タルト!?」

ζ(゚ー゚*ζ「バノフィーパイだよ。しぃちゃん向けに、クリームのコーヒーは入れなかったの。」

(*゚〜゚)Ψ「コーヒー??知らないお菓子だけど、バナナが入ってて美味しい〜!」

ζ(^ー^*ζ「良かった!」

535名無しさん:2026/06/12(金) 04:18:51 ID:oQVOL7y.0
(*゚、゚)「あっ。ねぇ、デレ。」

(*゚、゚)「夏休みの宿題で工作が出るみたいなんだけど、何を作ったら良いと思う?」

pζ(゚ー゚*;ζ「えっ!?うーん…。」

ζ(゚ー゚*ζ(今時の子がどんな工作を提出するのか、想像が出来ないわね…。)

ζ(゚、゚*;ζ「ちょっと待っててね〜。」

焦りながら、私はパラパラと参考本をめくった。
ブーケの他にも、雑貨の作り方が載っている本だ。

536名無しさん:2026/06/12(金) 04:19:52 ID:oQVOL7y.0
ζ(゚ー゚*;ζb「あっ!ワックスバーとかどうかな?」

(*゚ワ゚)「何これ!キレイ!これにする!」

ζ(゚ワ゚*ζ=3 ホッ

ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ夏休みになったら、一緒に作ってみようか。」

(*^ー^)「約束だからねっ!」

ζ(^ー^*ζ「うん!」

ζ(^ー^*ζ(…なんて可愛いのかしら!)


(;*゚、゚)つセッセッ

お茶が終わると引き続きしぃちゃんは一生懸命、小さな手でブーケをまとめていた。
そんなしぃちゃんを見ていると少し切なくなるのは、何故だろう。

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537名無しさん:2026/06/12(金) 04:21:37 ID:oQVOL7y.0
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ζ(゚、゚*ζ(結局仕事以外では、ブーンが今どんな人付き合いをして暮らしているのか、ずっと聞けないでいるわ。)

ζ(゚、゚*ζ(もしも再婚をしていて、奥さんがいるのなら…本当に申し訳ないけれど…。)

真相を知らないのを良い事に、私は花の見頃になる度に夫をスケッチに誘っているのだ。

ζ(゚、゚*ζ(私が死んだ後…実家の家族には、嫌な役を押し付けてしまったでしょうね。)

ζ(゚、゚*ζ(夫は…私の実家との付き合いは、今でもあるのかしら…?)

そんな事を考えながら、夫の横で睡蓮を眺める。

ζ(゚、゚*ζ(実家の仏壇で使っていた、蝋燭みたい。)

お盆やお彼岸の時期になると見かける蝋燭。
だけどそのモチーフは正しくは蓮で、睡蓮とは科の時点で違うけれど、睡蓮の方が蝋燭と大きさが似ている。

ζ(゚、゚*ζ ボー…

538名無しさん:2026/06/12(金) 04:22:37 ID:oQVOL7y.0
(;^ω^)σ「あの…、デレさん。ドレスが前よりもだいぶ解れてはいませんかお?」

氵ζ(゚、゚*ζ「これですか?…そうですね。去年まではこんな風じゃなかったのに、最近はあちこち解れています。」

ζ(゚ー゚*ζ、「でも私が縫ってもドクオさんが縫っても、翌日には戻ってしまうので、どうしようもないんです。」

解れの酷い箇所が出来ると未だに縫ってみてはいるものの、治る気配はない。

( ^ω^)「…もし良ければ、補修させて頂いても良いでしょうか?」

ζ(゚、゚*ζ「えっ…?」

539名無しさん:2026/06/12(金) 04:23:54 ID:oQVOL7y.0
( ^ω^)「失礼しますお。」

断ったものの、夫はスケッチが終わると私のドレスの裾を持ち、針と糸で大きな解れをチクチクと縫い上げていった。

ζ(゚ー゚*ζ「内藤さん、随分と手慣れていますね。」

私がそう言うと、仕事で修繕のために手縫いの練習をしているのだと教えてくれた。
そのソーイングセットも、いつも持ち歩いているのだという。

ζ(゚、゚*ζ「…」

ζ(゚、゚*ζ「あの…奥さんが縫ってくれたりは…?」

( ^ω^)「え…?」

ζ(゚、゚*;ζ「あ…すみません。ショボンさんは奥さんに繕ってもらっていると聞きましたので。」

( ^ω^)「…妻には先立たれていますので。でも僕は仕事柄得意なので、自分で出来ま」

°·∴ζ(>Д<;ζ「ブェ゙ッぐショイィィぃぃ!!!」

∑(;^ω^) ビクッ!!

(;^ω^)「大丈夫ですかお…?」

ζ(゚∩゚*;ζ「すびばせん…お見苦しいところを…。」ズズッ

(;^ω^)「いえ…。」

540名無しさん:2026/06/12(金) 04:25:11 ID:oQVOL7y.0
(;^ω^)「…あの、大丈夫ですかお?」

ζ(゚、゚;ζ「…?」

(;^ω^)「凄く…寒そうに見えますお。」

私が両腕を抱えているからか、夫が心配した。

ζ(゚ー゚*;ζ「大丈夫…です…。」

(;^ω^)「あの、もし良かったら…」

夫は椅子に置いていたバッグから、カーディガンを取り出した。

(;^ω^)つ□「洗ってからまだ使っていないので、寒いよりは良いかと…。」

ζ(゚、゚*ζ「…。」

(;^ω^)「…いくら何でも僕の服を着るのは嫌ですおね。」

(;^ω^)「すみません、もうすぐ縫い終わるので、屋敷までお送りしま」

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、ありがとうございます。」

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541名無しさん:2026/06/12(金) 04:26:26 ID:oQVOL7y.0
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('A`)「…起きたら、すぐ洗うから。」

ζ(゚ー゚*ζ「分かりました。おやすみなさい。」

ζ(゚ー゚*ζ(…温かい。)

ドクオさんに持っていかれそうになったカーディガンを羽織り続けながら、私はカーテンを眺めた。

ζ(゚、゚*ζ(…)

夫は、再婚していなかった。

ζ(゚、゚*ζ(なら…、今もあの家に一人で…?)

時折話に上がる夫の住まいは、私が暮らしていた頃の家の間取りと一致する。

542名無しさん:2026/06/12(金) 04:27:58 ID:oQVOL7y.0
ζ(゚、゚*;ζ(いい人がいたら、あんな言い方はしないだろうし…。)

この街は穏やかな人が多いから、月日が経てば夫はまた誰かと出逢い、日々を過ごしていくのだろうと私は思っていた。

楽観的で、浅はかだった。


ζ( 、 *ζ(私なんかと結婚したから…。こんなに長く、一人にさせてしまった…。)









繋がれた手を、振り解けばよかった。




黄色い花なんて、見なければよかった。





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543名無しさん:2026/06/12(金) 04:29:35 ID:oQVOL7y.0
今の夫の姿を見るのは、嬉しくて、苦しかった。


再び逢うまで、私は好きの一言も言ってあげられなかったから。


悩む日に、話を聞いてあげられなかった。


風邪を引いても、看病してあげられなかった。


庭の落ち葉を掃くあなたを、毎年眺めたかった。


休みの日には、手を繋いで散歩をしたかった。





夫が沢山の人達と作ったカーテンが、街に飾られる度に、一緒に喜びたかった。




一緒に、年を取りたかった。








歳月を感じ取ってしまった私の代わりに、
ポロポロ、ポロポロと糸が涙をこぼした。



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544名無しさん:2026/06/12(金) 04:30:52 ID:oQVOL7y.0


だけど。


困った顔も、驚いた顔も、笑った顔も。


20年経っても、変わらずあなたは優しかった。


髪型を、褒めてくれた。


素敵なカーテンを、作ってくれた。


『行ってらっしゃい』を言える日々が、嬉しかった。


いつものニックネームを呼びたくなって、くしゃみで誤魔化して。


あなたと一緒に花を見て、お茶をした。


その記憶を愛するのならば、時は過ぎていくだけ。











過去に戻る事など、ないのだ。


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545名無しさん:2026/06/12(金) 04:31:57 ID:oQVOL7y.0



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546名無しさん:2026/06/12(金) 04:32:41 ID:oQVOL7y.0


僕は、一歩近付いた。


( ^ω^)「あの時どうして…病気だと言ってくれなかったんだお…?」

( ^ω^)「僕は、頼りなかったのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「……違うわ。」

ξ ⊿ )ξ「あなたの悲しい顔を見ながら、病室で死ぬなんて…嫌だったの。」

ξ ⊿ )ξ「どうせ治らないのならばと、意地を張っていた。…夢があったから。」

ξ ⊿ )ξ「…。」

ξ ⊿ )ξ「だけどそれは、間違っていたわ。こんなに長い間…。あなたを一人にしてしまった。」

ξ ⊿ )ξ「黙っていて、ごめんなさい。」

(  ω )「……」



(  ω )「良いんだお。君の方が…、苦しかったはずだから。」


.

547名無しさん:2026/06/12(金) 04:34:02 ID:oQVOL7y.0
妻は懐かしむように、ゆっくりと続けた。

ξ゚⊿゚)ξ「…私、死んでしまったのに、沢山の人と知り合えたわ。」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさんにショボンさん、ショボンさんの奥さんとお客様に…」

ξ^⊿^)ξ「しぃちゃんも…遊びに来てくれて、嬉しかったなぁ…。」

ξ^ー^)ξ「会えば張り合うように、あなたを取り合って。」

ξ゚⊿゚)ξ「…あなたと一緒にこの庭で、しぃちゃんを見ていると…」

ξ;⊿;)ξ「まるで…。私が求めていた人生のその先を、見ているみたいで…。」

ξ∩ー;)ξ「…そんな事言ったら、しぃちゃんとお家の人に悪いけれど…。」

(  ω )「ツン…」



それはきっと、僕の夢でもあった。


.

548名無しさん:2026/06/12(金) 04:34:57 ID:oQVOL7y.0
ξ∩ー゚)ξ「…この姿になって、景色がはっきりと見えるようにもなったの。」

ξ゚ー゚)ξ「あなたが昔教えてくれた花達も見たわ。」

ξ^ー^)ξ「図鑑も沢山読んで…。ショボンさん仕込みだから、最近の花なら私の方が詳しかったわね。」

ξ゚ー゚)ξ「…だけど、あなたの顔がはっきりと見えたのが、一番嬉しかった。」

(  ω )「…」

549名無しさん:2026/06/12(金) 04:35:36 ID:oQVOL7y.0
(  ω )「…僕は、名前を呼んでほしかったお。」

(  ω )「そうじゃないと、君だと分からないじゃないかお。」

ξ゚⊿゚)ξ「…ごめんなさい。」

ξ゚⊿゚)ξ「怒っていたら、他人のふりをしないと来てくれないんじゃないかと、思っていたから…。」

(  ω )「…そんな事、絶対に無いお。」

ξ゚⊿゚)ξ「…。」

550名無しさん:2026/06/12(金) 04:36:22 ID:oQVOL7y.0
ξ゚ー゚)ξ「ブーン。」

妻が、表情を和らげた。

ξ゚ー゚)ξ「日傘をくれて、ありがとう。」

ξ゚⊿゚)ξ「温かい場所を見付けて、長いこと眠っていたの。」

ξ゚ー゚)ξ「そうしたら。20年後のあなたに逢えた。」



ξ゚ー゚)ξ「…今度こそちゃんと、お別れを言うわ。」


(  ω )「…っ」

551名無しさん:2026/06/12(金) 04:38:16 ID:oQVOL7y.0
( ;ω;)「嫌だお!!」

( ;ω;)「ずっとずっと…っ!!寂しかったんだお!!!」

僕は拳を握って、いつもより大きな声を出す事しか出来なかった。

どうして僕の涙は、滲むばかりで落ちないのだろう。
涙さえ落ちれば、優しい妻のことだ。
憐れんで、『もう一日だけ』と言ってくれるかもしれないのに。



20年間もの間、どんなに素敵なものを見付けても。君との会話には出来ない寂しさを、知ってほしかった。


道行く老夫婦が手を繋ぐ様が、どれほど羨ましかったか、分かってほしかった。


日傘を持った君が側にいないのが、どれほど悲しいかを___




ξ゚⊿゚)ξ「ブーン…。」

ξ゚ー゚)ξ「ありがとう。」

552名無しさん:2026/06/12(金) 04:39:03 ID:oQVOL7y.0
ξ*^ー^)ξ「私…。あなたに手を引かれた日から、あなたの事がずっと好きだったの。」

ξ*゚ー゚)ξ「綺麗なモッコウバラを見せてくれて、私のようだと言ってくれて、嬉しかった。」

ξ゚ー゚)ξ「この場所は…なんだかあの庭に、似ているわ。だからあなたが来るのを、待っていた。」

ξ*゚ー゚)ξ「あなたは変わらず、素敵な人だった。だからまた、あなたに恋をした。」

ξ ⊿ )ξ「…」

ξ*^ー^)ξ「ありがとう。幸せでした。」

( ;ω;)

553名無しさん:2026/06/12(金) 04:40:16 ID:oQVOL7y.0
僕が返事を出来ないでいると、妻は申し訳無さそうな顔をした。

ξ゚⊿゚)ξ「…2つ、お願いをしたいのだけど…。」

ξ゚ー゚)ξ「ドクオさんに、今まで本当にお世話になったから、私の代わりにお礼を言っておいてほしいの。」

ξ゚⊿゚)ξ「何も返せなくて…心苦しいけれど…。」

ξ゚⊿゚)ξつ□「それからこれは、しぃちゃんに…。」

そう言って妻は、僕にメッセージカードを手渡そうとした。

( ;ω;)「…。」

( ;ω;)「嫌だお。」

( ;ω;)「頷いて受け取ったら、君は安心してしまうじゃないかお。」

554名無しさん:2026/06/12(金) 04:42:21 ID:oQVOL7y.0

ξ゚ー゚)ξ「ブーン。」

泣く僕を慰めるように、優しい声がした。

そして妻は僕のすぐそばにやって来て、僕の右手にメッセージカードを握らせた。


ξ゚ー゚)ξ「さようなら。」

ξ*^ー^)ξ「愛しているわ。文高君。」

( ;ω;)「…っ!」



妻は今でも、僕を愛してくれていた。



それなのに僕は、妻の名前すら呼んであげないのか?



( ;ω;)「…」

.

555名無しさん:2026/06/12(金) 04:43:32 ID:oQVOL7y.0

( ;ω;)「つかさ。大好きだお…。」



震える手で、妻の両肩に僕の手を置いた。


温かい。


体温が低くて、触れてからゆっくりと伝わる、つかさの体温だ。



手の震えが、止まった。



僕はゆっくりと、つかさを抱き寄せた。


懐かしい、ガーデニアの匂いがする。









( −ω−)「……愛しているお。」






.

556名無しさん:2026/06/12(金) 04:45:24 ID:oQVOL7y.0




黄色い光が溢れた。



それはまるで、あの日僕達が見た風景だ。



藤色の瞳を、もう見つめる事は出来ない。



目を閉じて、散らないようにと必死につかさを抱きしめた。








立葵と木々の緑が僕達を隠して、この時を永遠にしてほしかった。



.

557名無しさん:2026/06/12(金) 04:47:59 ID:oQVOL7y.0




( −ω−)




どれほどの間、こうしているのだろう。




強く閉じた僕の目を抉じ開けようと、夏の風が吹き続けている。




その隙間から見えた八重咲きの立葵の薄紅色は、君の頬で。



純白は、あの日君が着たドレスであってほしかった。




瞼越しに感じていた柔らかい光は、もう随分と前から感じ取れなくなっていた。







それでも、目を閉じ続けた。


.

558名無しさん:2026/06/12(金) 04:48:55 ID:oQVOL7y.0



.

559名無しさん:2026/06/12(金) 04:49:59 ID:oQVOL7y.0
__________
______
____

( ´ω`)

( ´ω`)「…スマホは…」

いつの間にか、座り込んでいた。
観念した僕が目を開けて時刻を確認するためにスマートフォンの電源を入れると、既に20時を過ぎていた。
もうそんなに経っていたのかと画面を眺めていると、モナーさんから着信が入った。

(;^ω^)∏(そうか、今日は出勤日だったお…)ブーッブーッ

(;^ω^)∏「はい…。」

560名無しさん:2026/06/12(金) 04:52:54 ID:oQVOL7y.0
( ´∀`)∏「やっと出たモナ。家に行っても居なかったから、街中の電柱に迷子のポスターを貼る準備をしてたとこだモナ。」

(;^ω^)∏「無断欠勤で…ご迷惑をおかけして申し訳ございません。近所には居るのですが、これから用事があってまだ家には戻れません。」

( ´∀`)∏「元気なら良いモナ。月曜日はサンタの袋に美味しいおやつを詰めまくって出勤するモナ。」

(;^ω^)∏「はい…。一ヶ月はサンタになりますお。」


モナーさんとの電話が終わり、重い身体を起こして屋敷へと向かう。
妻の最後の願いを叶えるためだ。


((( ^ω^)(…こんな時間なのに、やっぱり昼間と同じ明るさだお…)テクテク


僕は階段を登って建物の中に入り、玄関の扉を閉めた。

( ^ω^)「…」

(;^ω^)(…本当に、外が暗くなっていったお。)

561名無しさん:2026/06/12(金) 04:54:30 ID:oQVOL7y.0


コンコン

カチャ


( ^ω^)「…ドクオさん。」

('A`)「…。」

( ^ω^)、「…あの…」

('A`)「…」


僕がどこから話すべきか悩んでいると、ドクオさんがゆっくりと口を開いた。

562名無しさん:2026/06/12(金) 04:55:13 ID:oQVOL7y.0

【 第八話 立葵のカーテン 】

終わり

.

563名無しさん:2026/06/12(金) 04:55:59 ID:oQVOL7y.0
BGM
ただいま/手嶌葵

564名無しさん:2026/06/12(金) 04:56:34 ID:oQVOL7y.0
最終話は近日中に

565名無しさん:2026/06/12(金) 05:47:44 ID:t6kMnPDM0
夜通し乙

566名無しさん:2026/06/12(金) 07:46:25 ID:LRx/yYgA0
250くらい新着レスついてて何事かと思ったら来てる!
めちゃくちゃ乙!
仕事しながらゆっくり読むわ

567名無しさん:2026/06/17(水) 00:35:54 ID:msB4ezo60
>>565
乙ありがとうございます。船漕ぎながら投下しました。

>>566
ありがとうございます。お仕事お疲れ様です。
お菓子オンパレードでチェック中に胃もたれしたので、ちびちび読んで頂けましたら幸いです。

568名無しさん:2026/06/17(水) 00:37:48 ID:msB4ezo60
それからごめんなさい!記載しているレシピのバターは全て無塩バターです!
製作の際はお気をつけください(((´;ω;`)))ショッパイヨー


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