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異界大戦記のようです
1
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。
魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。
きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。
ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。
20
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:53:42 ID:mfVt/ZZU0
だがもう一人の男、ワカッテマスの顔は険しいものであった。
( <●><●>)(ガラス......か?これは)
小屋の窓にあたる部分。
透明な何かが光り、そして手前の草木を写している。
ガラスは決して作るのが難しいものではない。
だがそれは魔法を使えばの話である。
そもそも使わずに作れるものなのか?
そしてここまで透明度の高いガラスが小さな小屋に使われている。
それがどうしても解せない。
少なくとも過去に制圧してきた人間たちの土地にはなかったはずである。
そもそも言語を持っているかすら怪しい猿たちが支配していたという話すら聞いたことがある。
( <●><●>)「......」
だとすればこれはなんなのだ?
どうやってこれを作った?
そんな疑問が沸き上がる。
21
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:54:24 ID:mfVt/ZZU0
『ほ、報告!』
( <●><●>)「......ん?」
そのとき船に備え付けられた通信用の魔法石が震えた。
『何かがこちらに飛んできています!』
( <●><●>)「なにか?なにかとはなんだ?」
『わ、わかりません』
(#,,゚Д゚)「はぁ?なんだそれは?ふざけているのか!?」
『違います、ほ、本当にわからないんです!ただ......』
( <●><●>)「ただ、なんだ?」
『生き物には、見えません......鳥、いえワイバーンに近いようにも見えますが......と、とにかくかなり大きいです。恐らくは30mは超えるかと......』
(,,゚Д゚)「はぁ?」
いきなり突拍子もない報告に思わず声が出てしまう。
生き物に見えないということは何らかの魔道具ということだろう。
22
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:55:05 ID:mfVt/ZZU0
しかしそんな大きなものを飛行させる魔法は存在しない。
正確には技術的に出来なくはないが人程度の軽いものならまだしも大きいものを浮かせるのは出力の問題でかなり難しい。
(,,゚Д゚)「なんだ?酒でも呑んでいるのか?」
( <●><●>)「まぁ待てギコ殿。それだけ大きいのであれば我々も目視できるのではないか?」
(,,゚Д゚)「む、そうですな......それで?方角は?」
『南東です。見ていただければ......』
( <●><●>)「南東、進行方向だな。どれ......」
(;,,゚Д゚)「......なっ!?」
報告に従い、遠視の魔道具を用いて外を見る。
するとそこには見たことの無いものが遠くの空に飛んでいるのが見えた。
23
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:56:14 ID:mfVt/ZZU0
確かに生き物ではない。
細長く白っぽいそれは前方に大きな、そして後方に小さな翼を持っていた。
だが翼のようなものを持っているのに、羽ばたかないで飛んでいるのだ。
明らかに生き物の飛び方ではないし、なぜ飛べているかも理解不能である。
さらにその翼の下には明らかに飛行の邪魔になりそうな円柱状のなにかがくっついており、その異様さが際立っている。
あれは、一体なんなのか。
説明できるものは誰もいない。
( <●><●>)「なんなんだ......あれは」
(;,,゚Д゚)「こちらに、来ていますな」
( <●><●>)「......準備だ」
(,,゚Д゚)「は?」
( <●><●>)「聞こえなかったか?迎撃準備をしろ」
あれがなにか、わかるものはここにはいない。
だがこちらに向かってきている。
そして生き物には到底見えない。
となればあれは、何らかの魔道具である。
さらにそんな魔道具をこちらに向けて飛ばしてくるなど、敵対行動と言っても過言ではない。
24
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:56:58 ID:mfVt/ZZU0
( <●><●>)(だが......どこのだ?我が国では見たことがない。小国がこのようなものを作れるとは思えない......そもそもこちらを刺激するようなことをするはずがない)
兵たちが慌ただしく走り回り、準備を進めるなか、ワカッテマスは思考を巡らせる。
( <●><●>)(となると......やはりソーサクか?鎖国しているため技術体系が違うと聞いたこともある。だが何のために?)
(,,゚Д゚)「司令、魔法陣の形成が完了いたしました。魔石への充填も完了、いつでも迎撃可能です」
( <●><●>)「ほう、早いな。流石はギコ殿だ」
(,,゚Д゚)「道具も良い物ばかりですからな。これくらいできなければ艦の魔法担当は勤まりませぬ」
( <●><●>)「心強いかぎりだ。さて」
改めて空飛ぶ物体を睨む。
信じられない事にどうやら遠くに見えていたはずのそれはもうすぐそこまで、艦隊の周りを飛んでいた。
攻撃をしてくる様子はなく、またこちらを監視するようであった。
またなんの意味があるかは不明ではあるが、チカチカと光をこちらに向けていた。
25
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:58:05 ID:mfVt/ZZU0
( <●><●>)(攻撃はしてこない、か。なるほど、あれは偵察用のワイバーン......のようなものか?クソ、簡単な蛮地制圧と思っていたのにこんなやつが現れるとは)
ただでさえ訓練不足の部隊に、明らかに異常な敵。
なんともいえない不穏な空気が艦隊に漂っていた。
( <●><●>)「偵察ならばさっさと落とすべきか......ギコ殿、一撃であれを落とせるかな?」
(,,゚Д゚)「ふむ、ワイバーンですら一撃で葬ることが可能ですからむしろ落とすなと言う方が難しいですな」
( <●><●>)「よし......では攻撃せよ」
(,,゚Д゚)「はっ!」
合図と共に、魔方陣の周りに兵たちが立ち、魔力を送り込む。
中心に置かれた魔石が輝きを増し、一つの塊となる。
(,,-Д-)「εδɤζφ......」
(#,,゚Д゚)「ёжЭагЯ!」
呪文を唱え終わった瞬間、集まった光から浮かぶ物体に対して、一直線に線が伸びる。
圧縮された炎のエネルギーが解き放たれ、高速で空に向かっていく。
その速度は凄まじく、ワイバーンであれば確実に直撃していたであろう。
26
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:58:36 ID:mfVt/ZZU0
(; <●><●>)「なっ!」
しかし空飛ぶ物体はワイバーンでは考えられない速度で攻撃を避ける。
空の王者とも呼べるようなワイバーンよりも早いとは一体どう言うことなのか。
他の船からも光の線が空に向かっていくが敵の飛ぶ高度が高く、距離もあるせいか未だに命中はしていない。
(#,,゚Д゚)「くっ、まだまだぁ!ёаЯжЭ!」
避けられたことに気づいたギコは素早く手を振り下ろし、呪文を唱える。
それは操作魔法。
まっすぐ伸びていたはずの光の線が手の動きに合わせるように曲がり出す。
その動きが予測できなかったのだろう。
奇跡的に一つの光の線が、翼のような部分に突き刺さる。
その直後、圧縮された炎が解放され、一気に爆発した。
(;,,゚Д゚)「はぁ......はぁ......」
攻撃魔法に操作魔法の併用という高等技術。
帝国でもこの魔法を一人で使えるものはギコを含めても数人だけだろう。
そんな達人レベルの魔法使いが、最新鋭の艦の魔方陣を使用し、尽力して一撃だけしか直撃できなかった。
だが、確実に直撃はしたのだ。
距離が遠いもののワイバーンであれば確実に仕留められる一撃であった。
27
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:59:13 ID:mfVt/ZZU0
しかし。
(; <●><●>)「......バカな」
確かに攻撃はあたったはずである。
事実、飛行物体は翼のような部分から煙を上げている。
しかし、それだけであった。
フラフラとした挙動ながらそれは墜ちずに、こちらから逃げるように飛んでいく。
(; <●><●>)「そんな......一体なんなんだあれは」
(;,,゚Д゚)「くっ......つ、追撃の準備を」
(; <●><●>)「いや、もう遅い」
魔力を再度、練り直すには遠すぎた。
もう攻撃はここからでは届かないだろう。
攻撃があたったというのに信じられない速度である。
( <●><●>)「......」
周りの兵達は高速の飛行物体をとらえた、高度な魔術にざわめき、また退けた事に沸いていた。
ギコもその言葉に少し、浮かれているように見える。
先ほどまでの空気が一気に払拭されていた。
28
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:59:39 ID:mfVt/ZZU0
しかし、一方でワカッテマスの胸中に何ともいえない不安が沸き上がっていた。
あれは、一体どこの国のものなのか。
最新鋭の艦を含むこの帝国艦隊、旧式の艦が多く練度は足りないものの敵はいないと考えていた。
どんな敵であろうとも勝てると。
最大の敵であるソーサクの主力艦隊ですら苦戦はするものの相手にできると考えていた。
だが、たった一つの謎の飛行物体すら撃墜できず、逃してしまった。
あれがもし、攻撃してきたのなら。
そしてあれが予想通り、偵察なのであれば、このあとに待つものは―――
( <●><●>)「......召喚艦に連絡。上空に偵察用のワイバーンを召喚、またあれが逃げた方向にも偵察隊を飛ばし、警戒せよ」
通信魔石でそう通信し、飛行物体が逃げた方角をキッと睨む。
沸き上がる不安を押さえ込み、表情に出さないが考えはどうしてもつきない。
29
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 00:00:10 ID:D4VYmSQ60
簡単な任務であるはずだった。
主力が到着するまでに上陸地点確保をするだけであり、相手になるようなものはなにもない。
蛮族相手に帝国の力を一方的に見せつけるだけ。
それだけ、のはずだったのに。
( <●><●>)「一体、何が起こっているんだ......」
そう呟かずにはいられなかった。
敵が分からない。
素性も、数も、兵器群も。
なにも、分からない。
だが特に被害を受けたわけでもなく、命令を中止するわけにはいかない。
不安はあるものの、止まるわけにはいかないのだ。
30
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 00:00:53 ID:D4VYmSQ60
先ほどまでが嘘のように静かな海を進む。
複数のワイバーンが上空を飛び回り、またその視界を共有した景色が水晶に映され、最大限の警戒している。
何かあればすぐに分かる。
先ほどだってなにか被害を受けたわけではない。
そしてこれほどまでの艦隊のため、どんな敵であっても対処は可能なはずである。
だからなにも、不安になる必要など無いはずなのだ。
しかし、どうしても嫌な予感が拭えない。
( <●><●>)「......ん?」
そして、そのときであった。
水晶に映る、遠方の偵察をしていたワイバーンの視界に光る何かが見えた気がした。
それがなにかと注目しようとした瞬間。
急になにも映らなくなり、ただの水晶に戻ってしまった。
( <●><●>)「なんだ?魔法の範囲外にでも出たのか?」
(;,,゚Д゚)「......いえ、これはっ!?」
( <●><●>)「ん?」
(;,,゚Д゚)「こ、これを!他の水晶も次々と消えています!」
(; <●><●>)「なっ!?なにが......魔法が暴走でもしたのか!?」
(;,,゚Д゚)「複数の魔法が一気に暴走するとは考えられません......ワイバーンに何かがあったかと」
(; <●><●>)「それこそ......あり得んだろう。広範囲に広げていたワイバーンが一気に何かがあったなど」
(,,゚Д゚)「それは......」
31
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 00:01:41 ID:D4VYmSQ60
確かに、と言おうとしたその瞬間であった。
シュン......ズバアァァァン!!
突如、艦隊内で猛烈な爆発音が響きわたる。
(; <●><●>)「こ、今度はなんだ!?」
『ほ、報告!複数の船が爆発!少なくとも10隻以上に被害!』
(;,,゚Д゚)「なんだとぉ!?」
信じられない事態が急激に連発する。
厳重な警戒体制を強いていたというのに、なぜ誰も異変に気づけなかったのか。
(; <●><●>)「原因は何だ!攻撃か!?事故か!?」
『ふ、不明!調査中です!で、ですが我々以外の少なくとも魔力の反応はありません!』
(; <●><●>)「ぐ......艦隊上空を警戒しているワイバーンどもはなにをして」
突如としてはじけるような炸裂音が鳴り響く。
その音は先ほどの爆発音に近い。
だが今度は空から、である。
その音につられ、上空を見上げると晴れているはずなのに、液体が降り注ぐ。
その液体は新しい船体を、赤く染め、汚していく。
(; <●><●>)「なっ......なっ......」
悠々と飛んでいたはずの、空の王者であるはずのワイバーンはそこにはいなかった。
代わりに海に、そして船にバラバラとなった血肉が降り注ぐ。
32
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 00:02:04 ID:D4VYmSQ60
一瞬である。
あの爆発音がした瞬間に、全てが死に絶えた。
常識から考えて、あり得ないことである。
だが、どれだけ否定したくても現実はなにも変わらない。
地獄のような現実は、まだ続いているのだ。
(;,,゚Д゚)「な、なんだあれは!?」
(; <●><●>)「っ!?」
ギコが叫び、見つめる先に視線を移す。
そこには、何かがあった。
波に隠れて見づらいが、何かが急速な勢いで近づいていた。
見つけられたのは奇跡と言ってもいいだろう。
しかし、見つけたところでそれがなんであるか。
分からない。
だが、恐怖を覚えるほどの速度で近づいてくるそれに、本能が先ほどまでの船とワイバーンを攻撃してきたものだと理解する。
(; <●><●>)「げ、げいげ......」
急ぎ指令を出そうとしたその瞬間、それはホップアップした。
空に舞い上がり、そして、光る点となる。
その光の点はまるで飛び込んでくるかのように近づき。
そして、うちに秘めた力を解き放った。
33
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 00:02:46 ID:D4VYmSQ60
続く
34
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 00:18:35 ID:RzLI9oX60
乙乙!
続き楽しみ
35
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 13:07:41 ID:jmZuwHEo0
乙乙
これはまた読みごたえがありそうな作品が来たな!
36
:
名無しさん
:2023/04/02(日) 13:31:54 ID:JG4GfPMk0
きたい
37
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 00:16:36 ID:6lcB9i4E0
壮大なスケールのお話で続きが楽しみです
38
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:36:52 ID:FcjfjRsY0
ルナイファ 中央魔法学園
1463年6月31日
('、`*川「皆さんも知っての通り、魔法は魔石に含まれる魔力を操ることにより発動するものです」
多くの生徒が集まる講堂にて、教師であるペニサスの声と宙に浮く羽ペンが紙に文字を書く音が響く。
('、`*川「魔石が無くては魔法は使えません。これが基本。そして、理論上では魔石さえあれば我々はどんな魔法でも使うことができると言われています」
もちろん理論上ですが、と小さく笑い彼女は指を鳴らす。
その音に反応して動いていた羽ペンは彼女の手の中に引き戻される。
39
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:38:09 ID:FcjfjRsY0
('、`*川「今私が使った魔法は浮遊の魔術と引力の魔術。ではどんなものでも浮かべることができるし引き寄せることができるかと言うとそんなことはありません」
今度は生徒に向かって再び指を鳴らす。
するとその生徒の頭の髪の毛がペニサスに引き寄せられるように逆立ち、その様子に皆が笑う。
('、`*;川「あら、ごめんなさいね。本当はその後ろの置物に使おうとしたのだけど......と、このように大きな力を使おうとすると狙いが定まりにくく、またそもそも今のようにそこまで大きな力を発揮することもできません」
まあ私が下手なだけ、というのもありますがとペニサスは小さく笑い、続ける。
('、`*川「では、なぜ様々な魔法が使えるのか。それは魔方陣、魔道具の存在です」
再び、羽ペンが宙に浮き、紙に大きな円を描く。
そしてその中央に簡単な模様が敷き詰められていき、全てが書き終わるのを確認すると、ペニサスは右手でそれに触れる。
その瞬間、インクで黒かったはずのそれが青白く輝きだした。
40
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:39:00 ID:FcjfjRsY0
('、`*川「即席ですが、発光の魔方陣です。明るいでしょう?ではなにも使わないで発光の魔法を使うとどうなるか」
左手を開き、魔力を込める。
すると、その手を包むように弱い光が現れる。
明らかに魔方陣が放つそれよりも小さな光であった。
('、`*川「と、このように魔方陣は我々の魔法を補助し、より強力な魔法を使いやすくしてくれます。そして......」
再び指を鳴らすと今度は狙いが逸れなかったのか、生徒の後ろのものが宙に浮きペニサスの手元まで飛んでくる。
('、`*川「このように複雑な魔方陣や魔法石を組み込み、複合的な魔法の補助を行う道具を魔道具といいます」
そして手の中に収まったそれは、魔力を込められると教室を包み込むような虹色の光を放つ。
その美しい光に多くの生徒が息を飲む。
41
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:39:26 ID:FcjfjRsY0
('、`*川「このように小さな光を作れない私でも、魔道具さえあればこのようなことができるようになるのです。とはいえ......んんっ!」
七色の光に生徒の意識が向いていることに気がつき、小さく咳き込む。
道具について分かりやすく話すために持ってきたのだが、ちゃんと生徒が話を聞いてくれているだろうかと心配になりながらも、彼女は話を続ける。
('、`*川「あくまで魔道具にできるのも補助まで、です。難易度がベリーハードなものをハードにする程度、と思ってください。難しい魔法を使うには、才能が必要なのです」
そう、魔法も万能ではないのだ。
むしろ、個人差が極端に出てしまう。
魔道具により、ある程度は誰でも魔法を使えるものの、その効力に差は出てしまうし、一定以上の魔法を発動するにはどうしても才能は避けて通れない問題なのだ。
こんな話は皆が知っていることだろう。
だからこそ、基礎の基礎のようなこの授業は退屈で仕方無いことはペニサス自身わかっている。
だがそんな才能を持てなかったものとして、皆にちゃんと知って欲しいからこそ教師になったのだ。
42
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:39:46 ID:FcjfjRsY0
('、`*川「それこそ、最近使用された遺物に関しても、高度な魔道具ですが秘められた魔法もとんでもない難易度だったとか。国随一の大魔導師であるロマネスク様が使用したらしいですが......それでも奇跡的な成功であったとか」
古の国が作り出した、現在の我々では真似できない魔道具ですら、誰でも使えるものを産み出すことは夢のまた夢であった。
誰もが平等に魔法を使えたらどれだけ良い世界になるのだろうか。
そんな、あり得ない世界をペニサスは思い描きながら、授業は続いた。
43
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:41:26 ID:FcjfjRsY0
カーンカーンカーン......
(; ^ω^)「やーっと、終わったおー」
学園の鐘がなり、授業の終わりを告げる。
先ほどまで静かであった講堂が一気に話し声で溢れ、皆がこれこら何をしようかと盛り上がる。
(´・ω・`)「疲れたねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ホント......今日の授業、なんて言うか当たり前のことばっかでつまらないし」
(´・ω・`)「ね。もっといろいろな事を学びたかったんだけどなぁ」
( ^ω^)「まぁまぁ、終わったんだしいいじゃないかお。それよりこれからどうするお?どこか遊びに行くかお?」
(´・ω・`)「あー、ごめん。僕これから教員室にいかなきゃ」
( ^ω^)「お?なんでだお?」
(´・ω・`)「ほら、これだよ」
サッと一枚の紙を取りだし、二人に見せる。
その紙には召喚地制圧に向けた学徒動員に関する募集用紙であった。
ルナイファでは基本的に後方支援のために学生を呼び込んでいる。
人間の奴隷なども使ってはいるのだがやはり魔法が使えるものもいなくては効率が悪い。
そして後方であれば最強の国家であるルナイファからしてみれば敵が弱いこともあり安全と言っても過言ではない。
ボランティア活動と同じような捉え方をされており、就職などに有利になることもしばしば。
またこの活動を通じて実際に自国の強さを再認識させるプロパガンダの側面も存在している。
44
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:42:02 ID:FcjfjRsY0
(; ^ω^)「げっ、まじ?これ行くのかお?」
(´・ω・`)「まぁ、いい経験になるし今後に色々役立つらしいからね」
(; ^ω^)「まー確かにそういう話はよく聞くけど」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、ショボンも申し込むのね」
(; ^ω^)「えっ!?ツンもかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ、ちょうどいい機会だしね」
(; ^ω^)「おーん......」
(´・ω・`)「ブーンは?」
( ´ω`)「カーちゃんから反対されてるから止めておくお」
とはいえブーンの親のように、反対する人も少なくはない。
何しろ後方とはいえ戦争にいくのだ。
戦争することが常になっているこの国でも、嫌と思う人は少なからずいる。
このような光景は、ルナイファでは日常茶飯事なのである。
(; ^ω^)「おーん......しばらくひとりぼっちかお......」
(´・ω・`)「そうだよね......ま、魔信か何かで連絡するからさ」
(; ^ω^)「絶対、絶対だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、全く......子供なんだから」
(; ^ω^)「おー」
三人の学生はそんな話をしながら、別れていく。
この日はまだ、よくあるルナイファの日常の1日であった。
45
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:43:54 ID:FcjfjRsY0
ムー国 統治局
1463年7月6日
ルナイファが存在する大陸から南に遠く離れたそこには大陸と呼ぶには小さい、2つの島からなるムーと呼ばれる国がある。
この国は遥か昔にルナイファによって「チキュウ」なる異界より召喚され、植民地として支配されている。
ここにもともと暮らしていた人間はある程度の文明は持っていたものの、今ではその面影はなく、全てが移り住んできたエルフに塗り替えられ、人間はただひたすら奴隷として生活することを強いられている。
そんな人間を管理するために設置された統治局。
ここに住んでいる人間はもう牙を抜かれたものばかりであること、またムーは島国のため他国と隣接しておらず、また周辺に驚異となるような国がないことからほとんど仕事がない状態であった。
やることといえば本島で盛んな農業の生産物の管理と、もう一つの島に眠る大量の鉱物の採掘管理くらいなものである。
しかしここ最近、珍しいことに統治局内が騒がしくなっていた。
それは数日前に起きた、とある国からの使者が来たことに起因する。
46
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:44:28 ID:FcjfjRsY0
( "ゞ)「まさか召喚地から使者がくるとはなぁ」
そう、新たに召喚した国から使者が来たのだ。
確かにこの国までなら、召喚された国のおおよその位置から考えるにここまで来ることは不可能ではないだろう。
しかしそれはあくまで魔法を使える前提の話だ。
魔法を使えないとなれば、船で進むために使えるものは風か潮の流れ程度のもの。
あとは力業で何とかすることも考えられるが距離から考えてそれは無謀もいいところであろう。
それにも関わらず、彼らは海を越えてこちらまでやってきたのだ。
それも召喚を行った日から考えてごく短い間に、である。
さらに臨検を行った部隊からはかなりの大きさの船であったとの報告もあった。
( "ゞ)「人間にしては、なかなか優れていたようなんだがなぁ」
47
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:45:16 ID:FcjfjRsY0
そう、ポツリと言葉をこぼす。
ただの独り言であったが、それが聞こえたのか、同室の同僚であるアサピーが眉をひそめた。
(-@∀@)「あくまで、人間にしてはですよ。過剰な評価はしない方がいい」
( "ゞ)「あぁ、アサピーさん。えぇまぁ、分かってはいるんですがね」
(-@∀@)「そもそも我々の慈悲も理解できない輩ですよ。そこまで思い悩むことですか?」
( "ゞ)「それはそうなんだけど......理解してくれなかったからこそというか」
ここまで来ることが出来た、そんな船を作ることができる人間にしては優秀な者たち。
ここのムーの人間と同じようにただ使い潰すには惜しい。
さらに言うならこれから行われる制圧で多くの血が流れるだろう。
それを防ぐために、あの使者たちに従属を迫った。
しっかりと我々の力を教え、そしてその力の結晶たる帝国艦隊が既に向かっていること。
だがそれから救われる方法を、ここまで来ることが出来たこの人間たちに慈悲として与えたのである。
無駄な死人を増やさないために、我々に召喚された奴隷として服従せよと。
48
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:46:11 ID:FcjfjRsY0
(-@∀@)「しかし慈悲を理解できないどころかこちらを罵倒までしてくるとは......本当に蛮族のことは理解できませんな」
だが全て断られた。
これだけ懇切丁寧に説明したというのに、理解が出来なかったのだろう。
そして、我々が本気であるということも。
だがそれだけであればまだ許せた。
人間ゆえの愚かさなのだろうと。
しかし、彼らは召喚したことに対する謝罪と、対等な国交とやらを求めてきたのである。
まるで対等な立場にいると言わんばかりの暴挙としか言い様のないその態度はもはや、我々に対する侮辱であり、つまり大罪である。
その外交官達はすぐさま、処刑となった。
そしてその死体はこの国に来ていた船員であろうもの達に叩き返してやったのだ。
これで少しは我々が本気であるということが理解できるだろうと。
( "ゞ)「あの者たちが国に帰る頃には既に上陸は開始しているだろうな。無事に帰れるほどの力があるか分からんが......早く理解してくれるといいんだがな」
(-@∀@)「まあ、無理でしょう。処刑の直前まで罪を理解できずに喚いてるような連中ですからな」
( "ゞ)「そうだな......はぁ」
49
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:46:40 ID:FcjfjRsY0
だからといってデルタは納得しきれなかった。
いくら劣等種といえども、魔法を使えば言葉が通じ、話すことができる者たちにほんの微かにだが同情をしてしまう。
それゆえになぜ、あのとき頭を縦に振ってくれなかったのかが分からない。
そこまで意地になって、死んでしまっては意味がないというのに。
『......』
( "ゞ)「ん?」
『..キコ....カ?』
( "ゞ)「なんだ?通信魔石から......」
(-@∀@)「随分粗いな。魔方陣がどこかおかしくなっているのか?」
( "ゞ)「いや、こっちは......うん、問題ないな。恐らく向こうだ」
(-@∀@)「はて?どこから?」
50
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:47:33 ID:FcjfjRsY0
『...ニュウコ......ガイス......』
( "ゞ)「......ん?これは」
そのとき使用されている魔法の波長からその送り主が判明する。
それはここにいるはずのない者たちからのものであった。
( "ゞ)「先遣隊、だと?」
召喚された土地を制圧に向かったはずの部隊からの通信。
なぜそれがムーに連絡をしてくるのか。
そもそも時期からして上陸地点の確保に向けた作戦中のはずである。
(-@∀@)「はて?なぜ連絡が......それにこの魔力の反応を見るに、近くに来てるのか?」
( "ゞ)「そのようだが......うーん?」
魔力の反応はますます近づいてきている。
相変わらず通信魔石の音は悪く、まともに内容は聞くことが出来ない。
一体なにが起こっているのか分からず、ただひたすら首をかしげることしかできなかった。
51
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:48:33 ID:FcjfjRsY0
ルナイファ帝国 帝城
同日、ルナイファ帝城。
この国のトップである皇帝であるアラマキは、彼から絶大な信頼を誇る大魔導士であるロマネスクからの報告を受けていた。
( ФωФ)「陛下、アリベシへの介入の件、順調に進んでおります。このままいけば今年中にヴィップの複数の都市を攻め落とせるかと」
/ ,' 3「ほぅ、当然のこととはいえそれは良い知らせであるな。それで?ソーサクの方はどうなっておる?」
( ФωФ)「はっ、そちらも情報府の工作員が彼の国へ潜入し、いくつかの州の有力な貴族を我々の味方にすることに成功しております」
/ ,' 3「ふむ......」
( ФωФ)「ただ......まだ一部であること、またあちらもこちらの動きに気づいているような兆候が見られます。これ以上の活動は難しいやも知れません」
/ ,' 3「よいよい、むしろあの国相手によくここまで潜り込めたと褒めるべきであろう」
褒章を考えなくてはな、と顎のひげを撫でながら満足そうに頷く。
その様子に安堵しながら、ロマネスクは報告を続ける。
52
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:49:22 ID:FcjfjRsY0
( ФωФ)「またムーからの報告なのですが」
/ ,' 3「ムーからだと?何かあったのか?」
( ФωФ)「それが、召喚された国の者が使者を送ってきたと」
/ ,' 3「ほう?」
( ФωФ)「どうやらこちらの進軍をやめることと対等な立場での国交を求めてきたようです」
/ ,' 3「物を知らぬ猿とはいえ......不敬であるな」
( ФωФ)「えぇ、ですので外交官は全て処刑したとのこと。それを見て残りの生き残りは慌てて帰ったとのことです」
/ ,' 3「はっはっは!それはよい!猿に相応しい末路......いや、まだこれからか」
( ФωФ)「は?と、言いますと」
/ ,' 3「それだけでは手ぬるいということだ。ちょうどそろそろ上陸して制圧を始める頃であろう。しっかりと教育するよう、伝えておけ」
( ФωФ)「はっ!かしこまりました」
ロマネスクが頭を垂れ、退室をしようとしてそのときであった。
彼の部下である一人が部屋にノックをし、入室してくる。
その顔にはなにやら困惑と焦りの様子が見られた。
53
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:49:52 ID:FcjfjRsY0
二人が何事かと見ていると、そのままロマネスクに近づき耳打ちをする。
ポツポツと伝えられるその内容。
初めのうちは何事かと不思議そうな顔であったロマネスクであったが、飛び込んでくるその情報に思わず驚愕が汗と共に吹き出してくる。
(; ФωФ)「なっ!?た、確か、なのか?」
/ ,' 3「ロマネスク?なにがあった?報告せよ」
(; ФωФ)「へ、陛下......それが、その......」
流れ出る汗を拭いながら、彼は先ほど聞いた報告を簡潔にまとめ、口にする。
(; ФωФ)「せ、先遣部隊が、敗走......ムーへ、撤退した、とのこと」
/ ,' 3「......なんだと!?」
54
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:50:36 ID:FcjfjRsY0
ソーサク連邦 情報戦略室
('A`)「では今回得られたこの記録について、報告したいと思います」
数日前に念写の石板が捉えたとある画像。
その解析、精査のために複数の専門家が情報戦略室に集められていた。
('A`)「こちらの記録については、ルナイファから召喚地へ向かった部隊のものと思われるものが写っておりました。そして......」
ドクオは空中をなぞるように指を動かす。
すると魔石が反応し空中に、件の石板によって捉えられた景色が写し出される。
写し出されたそれに皆が驚愕と困惑の声を上げ、ざわざわと部屋が騒がしくなる。
('A`)「困惑するのはわかりますが、お静かにお願いします。こちらは艦の大きさ、および使用されている魔方陣からこの部隊の旗艦、つまり試験的に運用されていたルナイファの最新鋭艦であると思われます」
(; ´∀`)「うむ、確かに間違えなさそうではあるが......それがなぜ、こんな」
(;'A`)「はい、我々もまだ原因は分かっていませんが......見ての通り、燃えながら沈んでおります」
55
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:51:21 ID:FcjfjRsY0
そこには燃え盛り沈んでいく巨大な先進的な艦が沈んでいく様子が写っていた。
それも一隻だけではない。
周りの旧式の艦も同様に沈み、地獄絵図となっている。
にわかには信じがたい、恐ろしい光景であった。
(; ´∀`)「......試験的運用と言う情報もあったが、事故かね?」
(;'A`)「いえ、我々もその可能性は考えましたがもし事故であるとすると、ここに写っている他の艦が同じように沈んでいる理由が説明できません」
(; ´∀`)「むぅ......ちなみに、この艦のスペックについては?」
川 ゚ -゚)「解析の結果、大きさは150mクラス、使用できる魔法としては遠隔魔炎に複数のワイバーンと連携した偵察魔法。また強度は不明ですが単艦で魔壁についても使用可能であり、まさに要塞と呼べるものであると思われます」
その報告にまた部屋が騒がしくなる。
技術では勝っていると言う誇りを持っている、ソーサクの人々にとって信じがたい言葉であった。
(; ´∀`)「我が国でも主力クラスの艦ではないか」
('A`)「ただ、使われている魔方陣から速度、射程、またエネルギー効率において若干ではありますが我が国が優位かと」
(; ´∀`)「だが若干、なのだろう?」
('A`)「......はい」
56
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:52:31 ID:FcjfjRsY0
( ´∀`)「それが事故ではなく沈んだとするなら......一体どこが」
川 ゚ -゚)「それについては、今だ不明です。少なくとも我が国ではありません」
( ´∀`)「他にこの艦を沈められそうな国は?」
('A`)「あの海域周辺には......そもそも我が国以外にあの艦に匹敵する艦を持つ国は列強ですらないため、大部隊が必要と思われます」
( ´∀`)「そんな大部隊が動いたと言う情報は?」
川 ゚ -゚)「ありません。そして、我が国がそれを見逃すとも思えません」
情報を重視するソーサク。
そんな国が小さな部隊であるならばまだしも大部隊を見逃す可能性など、0に等しい。
( ´∀`)「にもかかわらず、現にルナイファは大打撃を受けているわけか。ふーむ......」
('A`)「旧式が多く混ざっていたとはいえ最新鋭艦を含む大艦隊です。まあ練度は低いとの情報がありますが......とにかく相手がどの程度の損害をおったかは不明ですが、これほどまでに被害を与えるとなると我が国にとっても非常に驚異です」
( ´∀`)「そうだな......どんな方法でどんな規模の魔法を使ったのか、何もかもが不足しているな」
('A`)「はい。ですので引き続き調査が必要かと」
57
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:53:23 ID:FcjfjRsY0
( ´∀`)「そうだな......クー君」
川 ゚ -゚)「はい、なんでしょうか」
( ´∀`)「君、ムーへ向かってくれないか」
川 ゚ -゚)「ムー、ですか?」
( ´∀`)「うむ。戦闘のあった海域で一番近い国がムーだ。なにかしら調査のために動きがあるだろう。それを調べてきてくれ」
川 ゚ -゚)「なるほど、潜入ですか」
( ´∀`)「うむ、変装魔法を使える君にしかできないことだ。転移魔法については準備はしてあるから安心してくれ。まぁ、資源と術師の関係で片道分しかないが」
川; ゚ -゚)「はぁ、分かりました。まあいつものことなのでもう慣れましたよ」
ハハハとモナーが笑い、その声を合図に会議は終了した。
クーが苦笑いをしながら、書類をまとめ、そんな様子を見て、ドクオもつられて笑う。
58
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:54:11 ID:FcjfjRsY0
('A`)「大変だな、クー」
川 ゚ -゚)「そう思うなら変わってくれ」
('A`)「無茶言うなよ。変装魔法も魔法偽装もできないのに」
川 ゚ -゚)「しかし、転移魔法か......便利だがもっと気軽に使えるようにならんかね」
('A`)「それこそ無茶だろ。あんな複雑な魔法を使えるようになったことが奇跡みたいなもんなんだぞ?モナーさんがいなくなったらすぐさまロストテクノロジーだ」
川 ゚ -゚)「分かってはいるんだがな」
('A`)「ま、気を付けてな」
川 ゚ -゚)「あぁ、ありがとう」
ドクオに礼を言いつつ、クーは部屋を出る。
潜入のために、必要なことを頭に詰め込まなくてはとまとめた資料に目を通す。
数枚にまとめられた人物の情報。
魔法により強化された記憶力を用いて一言一句正確に記憶していく。
魔写に写された顔を脳内に思い浮かべ、魔法により作り替えていく。
そうして、完璧に準備が出来た頃、一人の女がムーへと向かうため、光の柱に飛び込んでいった。
59
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 11:54:34 ID:FcjfjRsY0
続く
60
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 13:23:54 ID:nujN5nsg0
乙です
61
:
名無しさん
:2023/04/08(土) 17:10:58 ID:JUn0xYxs0
乙乙
そりゃあいきなり異世界に呼び出されて隷属しろとか言われれば誰だって怒るでしょうが
62
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:02:14 ID:N5F9bWIA0
アリベシ法書国 紛争地帯
1463年7月4日
アリベシ法書国。
遥か昔に書かれたとされる魔導書を多く保管するこの国は世界の図書館と呼ばれている。
その魔導書のうち法書と呼ばれる、魔力を込めることにより神からお告げをもたらすという数冊の本が世界の絶対であると言う考えのもと生まれた国家である。
そのため、これらの本を守ることが神から与えられた使命であり、世界の平穏を守ることであると考えている。
その考えが原因でヴィップが信仰する宗教と対立しており昔から争いが続いている。
そして現在もヴィップからの侵略を防ぐため、大陸の至るところで紛争が起こっていた。
そんな紛争地帯の一つで、また戦いが始まろうとしていた。
( ・∀・)「......すんげぇなぁ」
アリベシの勢力は、ニータと仲良く最下位争いをする程度の力しかない。
一方でヴィップはというとルナイファやソーサクには劣るもののそれに次ぐ力を持つ大国である。
このためアリベシはこれまでの紛争、つまり大規模な戦闘はなかったもののその全てで劣勢か敗北を続けてきた。
信じる神からのお告げにより国民の士気は高いものの、国力の差をどうしても埋めることができなかったのだ。
63
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:03:04 ID:N5F9bWIA0
それが、なんということだろうか。
現在、彼の目の前には自国では決して作れないような兵器、ゴーレムが目の前に並んでいる。
( ・∀・)「これがルナイファの兵器......」
そう、秘密裏に結ばれた同盟によりルナイファより兵器が送られてきたのだ。
恐らくルナイファからすれば旧式なのかもしれないが、アリベシからすれば最新鋭ともいえるほど、高度な魔法陣が組み込まれている。
これが最強の国家なのかと、モララーは身震いをする。
これならば、ヴィップに負けるはずがない。
そんな確信に似た思いが、彼の心を満たしていた。
ゴーレム達が動き出すと、その気持ちはさらに強くなる。
ゴーレムと言えばヴィップでも使われており、低速でしか動けないことが弱点と言われていた。
だがそれでも強固な装甲と強力な攻撃手段を持つそれは、非常に強力であり1体倒すだけでもどれだけの部隊を消費してきたことか。
64
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:03:50 ID:N5F9bWIA0
では一方のルナイファ製のそれはどうかというと装甲や攻撃手段をそのままに時速30km近い快速。
最早、弱点はないと言っても過言ではないだろう。
( ・∀・)「......」
心強いそのゴーレム達の後を追うように、モララーを含む歩兵が隊列を組み、進みだす。
ついに戦闘が始まるのだ。
いつもは不安になる時間であるが、目に写る岩の兵隊達がその不安を打ち消す。
絶対に勝てる。
その思いと共に、モララーは戦場へと向かう。
150人ほどからなる隊列。
奏でられる軍楽にあわせ行進する。
皆が緊張した面持ちで歩みを合わせ、進む。
この歩みのリズムを間違えた時、何が起こるかを皆が理解しているからである。
65
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:04:36 ID:N5F9bWIA0
ギュオオオオン!!
(; ・∀・)「っ!?」
その時、前方の敵陣地の方角から凄まじい鳴き声が、戦場に響きわたる。
4騎のワイバーンが、こちらに向かって来ていた。
そのどれもが、口に魔力を集め、圧縮された炎が輝いているのが見える。
背筋が凍るような感覚。
だが、それでも歩みを止めることなく、ワイバーンに向かって進んでいく。
そして、距離が近づいたその瞬間、ワイバーンが隊列を凪ぎ払うように炎を叩きつける。
炎は全てを燃やし尽くすかのごとく、そこにいたものを包み込む。
が、しかし。
(; ・∀・)「はっ......はっ......はっ......」
乱れることなく作られた、魔壁用の魔方陣として働く隊列により、大部分が防がれていた。
しかし、強烈な攻撃を防ぐために使った魔法による消耗、そして目の前に広がる死の恐怖による精神的な消耗により決して無事とは言えないだろう。
66
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:05:18 ID:N5F9bWIA0
だが、もしこれで歩みを止めたらそれこそ次で死んでしまうのだ。
震える足を叩き、まだ、歩かなくてはいけないのだ。
より深く、戦場の奥地へと。
進めば進むほど、攻撃の密度は増していく。
ワイバーンの火炎だけでなく、敵のゴーレムであろう、巨大な岩石を何発も打ち込まれ、それが魔壁へと吸い込まれていく。
時折、過負荷により魔壁を貫通した攻撃や過度な魔法の使用により動けなくなる兵が出始めてくる。
その度に隊列を組み直し、そして人が減ったことにより弱くなっていく。
それでも魔壁を信じて、ただひたすらに前進を続けていた。
その時、軍楽の曲が変わる。
攻撃用の魔方陣への、組み替えの合図である。
(; ・∀・)「っ......!」
一歩間違えれば死ぬ戦場にて、守りを捨てなくてはならないこの恐怖!
だがそれにより、列を崩すことを許されないのだ。
67
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:06:04 ID:N5F9bWIA0
(; ・∀・)「......ってぇ!!」
そして、兵の整列が終わったその瞬間、作られた魔方陣により増幅された魔力が、複数の光の針を産み出された。
それらは敵ゴーレムに向かって、高速に飛んでいく。
人が走る程度の速度も出せないそれは、避けることもできず、当たりどころの悪かった数発が魔壁と岩石の装甲を貫き、轟音と共に爆散した。
(; ・∀・)「よっし......っ?!」
敵ゴーレムを撃破したのもつかの間、別のゴーレムがこちらに向けて、攻撃の準備をしているのが目にはいる。
今からではもう、防御陣形に戻ることはできないだろう。
そんな状態で、ゴーレムの攻撃を防ぐことは不可能―――
(; ・∀・)「......あっ」
死んだ、そう思ったとき敵のゴーレムが、いや正確には敵陣地が爆発する。
味方のゴーレムからの強力な攻撃、そして。
( ・∀・)「あの爆発......地中からか!」
噂に聞く、ルナイファから送られてきた秘密兵器。
その攻撃に敵はなすすべなく、やられている。
散り散りとなった敵はもはや、軍としての体裁は保てず、ただ逃げ出すことしかできなくなっていた。
ルナイファからの兵器を使用したとはいえまさかここまでとは。
そんな驚きと共に、確信をする。
これならば、勝てる。
我が国は、救われるのだと。
そして、奪われた土地を、取り返せるだろうと。
もはや一方的な虐殺ともいえるその光景に、思わずそう感じずにはいられなかった。
68
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:06:52 ID:N5F9bWIA0
ムー国 統治局
1463年7月9日
( "ゞ)「......それで、撤退してきた兵士達の様子は?」
謎の魔信が入ってから数日後。
またムーの統治局は騒がしくなっていた。
原因は先遣隊が謎の攻撃を受けて敗走、このムーの港まで逃げてきたというのだ。
50近い船がいたはずの艦隊は港に着いたときは4隻しか残っていないという悲惨な状態であった。
そんな異常事態により急遽調査を行うこととなったのだが、周囲に敵がおらずまともな軍が駐在していないムーでは軍のみでの調査が出来ない。
そこで統治局がその原因の調査を行うこととなり、現在の多忙へと繋がっている。
(-_-)「兵のほとんどが極限まで魔法を使ったようで入院中ですね」
(-@∀@)「一応何人かは話が出来たみたいだが......どうやら錯乱してるようだ」
( "ゞ)「錯乱?」
69
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:07:24 ID:N5F9bWIA0
(-_-)「えぇと証言ですが......『ワイバーンよりも早く、大きい謎の飛行物体が現れた』『敵が見当たらないのに高速の光が襲ってきた』『魔壁でも耐えきれずほとんどの艦が一瞬で沈んでいた』......とのこと」
( "ゞ)「なんだそれは?」
(-@∀@)「さっぱりだね。どう考えてもあり得んことばっかりだ。恐らく被害が被害だ。責任を逃れるために隠しているんだろう」
(-_-)「まぁそうでしょうね。攻撃魔法の効果範囲は目視できる距離、理論上20km前後と言われてますし......最大距離だとしても見えないはずはないですね。そんな攻撃がそんな遠くから撃てるとは思えませんし、そもそも当たるはずがありません」
( "ゞ)「まぁ艦隊のほとんどが沈むほどだ。近距離からの大規模な攻撃魔法によるものと見ていいだろう......しかし一体どこの国が?」
(#-@∀@)「考えるまでもない。こんなことができるのはソーサクだけだろう!」
(-_-)「っ」
ダンッ、と机を叩きアサピーは怒りを露にする。
70
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:08:21 ID:N5F9bWIA0
(#-@∀@)「全く忌々しい!不意打ちとは、とんだ卑怯もの達だ!」
(-_-)「......決めつけるにはまだ早いのでは?」
(#-@∀@)「何を言う!戦闘があったと思われる海域はこの国の東!そして東の海域でもっとも近い敵対国はソーサクのみ!」
( "ゞ)「確かに可能性として一番有力ですね。技術力から考えてもまともに敵となるとすればソーサクくらいですから」
(-_-)「......しかし、近いと言っても距離が」
( "ゞ)「そうなんですよね......まああくまでも可能性の話です。我々に真っ正面から対抗してくる国なんてソーサクくらいですし、ほぼ間違いないとは思いますが」
(#-@∀@)「そうだ!奴ら、こちらがなにもしないからと調子に乗っているんだろう!すぐにでも奴らを滅ぼすべきだ!そうだろう、デルタ!」
( "ゞ)「ふむぅ......」
怒りが収まらないアサピーに対し、デルタは難しい顔をしながら顎を擦る。
そしてなにかを考え、答える。
( "ゞ)「確かに、国の面子を考えればそうすべきだし気持ちも分かるが......現実的な話をするなら敵は我らに次ぐ列強だぞ。準備がなくてはこちらの被害もバカにならない」
(#-@∀@)「だからといって引くのか!?」
71
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:08:52 ID:N5F9bWIA0
( "ゞ)「まあ聞け。もしソーサクの仕業なのだとしたら、向こう側はもう準備万端だってことだ。物量でいずれ押しきれるだろうが......それでは被害が出すぎてしまう」
(;-@∀@)「ぐ......」
( "ゞ)「それにまだ、可能性の話だ。ここは様子見......敵の出方を見つつ、守りを固めるべきだろう。攻めるより守る方が簡単だしな。特にソーサクに関しては技術は目を見張るものはあるものの数が少ないんだ。焦る必要は無いだろう」
(#-@∀@)「なっ!?ん、ぐぅ......」
攻撃を受けたと言うのに、反撃をするどころか敵からの更なる攻撃を待つべきと言う言葉にアサピーは更なる怒りが沸き起こる。
がしかし、それに対する反論が見つからなかったのか、言葉につまり、怒りに震えたまま床を見つめる。
( "ゞ)「まあなんにせよ、それは僕たちが決めることじゃない。本国が決めることさ。とりあえず今回の調査結果と先ほどの考えを本国に伝えようと思う。また、ムーにおいても警戒体制を敷くよう、軍部へ連絡をしよう。異論は?」
(-@∀@)「......ないよ、デルタ」
(-_-)「それでは、そのように軍部に伝えて参ります」
( "ゞ)「あぁ、頼んだ」
ヒッキーは一礼をし、部屋を出る。
そうしてふうと一息つき、汗をぬぐう。
(;-_-)(......なにかあるかと潜入したが、まさかこんなことになるとはね)
72
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:09:18 ID:N5F9bWIA0
ヒッキー、いや正確にいえばヒッキーに変装をしたクーはそんな思いであった。
それもそのはず。
先日、この統治局の人員に化け、潜入を開始したところにいきなりこの騒ぎである。
知りたかった情報のオンパレード。
潜入の成果としては万々歳であるが、そうとも言っていられない。
先ほどのアサピーの発言。
とんでもない勘違いがこの国で生まれようとしていることを察知してしまったのである。
(;-_-)(考えてみれば当たり前のことだが......くそ、まさか本当に我が国のせいだなんて勘違いするなんてことはない、よな?)
そんなことになれば、大変なことになる。
ソーサクは攻め込む準備どころか戦争の準備など、それもルナイファと全面戦争をするだけの準備などできているはずもない。
(-_-)「国に......伝えなくては」
そう誰にも聞こえないよう呟き、廊下を歩く。
そうして彼女は持ち込んだ魔信を使用して、国に聞いた話を全て伝えるため、話だした。
73
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:09:44 ID:N5F9bWIA0
ルナイファ帝国 軍務省
(# ^Д^)「くそっ、訳立たずどもが!」
ガンと机を叩きつける音が聞こえる。
机を怒りと共に叩きつけた男、プギャーはルナイファにおける軍の長官である。
最強の軍のトップである彼は特別優秀、というわけでもなくむしろ無能に近い、プライドだけは一人前の男である。
だが、普段であればそんな男がトップでも問題はなかった。
この国が軍を動かすと言えば他国は恐れおののき、それだけで済んでしまうことが大半だったからである。
しかし、現在。
召喚地制圧に向かった部隊から入ったとんでもない報告に、彼は怒り狂っていた。
その様子を数人の部下が真っ青な顔になりながら見ていた。
確かに絶対成功するはずであった召喚地への派遣が失敗したことも彼が怒り狂っている原因のひとつではある。
だが彼がここまで荒れている原因はもう一つ、ある提案をしたことであった。
それは最新鋭の艦のテストを今回の召喚地制圧に使用すると言う案。
74
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:10:08 ID:N5F9bWIA0
実践形式での運用テストが行え、かつ周辺国に自国の力を見せつけることができる。
それにより、うまくすれば他の列強勢力である国家をこちらの陣営に引き入れることができるという皮算用のもと生まれた案であった。
資源の無駄、まともに訓練すら出来ていない状態で遠方かつ味方が少ない海域への出撃は危険すぎるとの反対意見も多くあったが、自らの考えが正しいのだと信じ、自分の地位を利用してごり押しで行われたものであり、成功さえすれば全て自分の成果として称えられるはずであった。
それがどうしたことか。
話によると力を見せつけるどころか、まともに仕事すらできずに海に消えたというではないか!
自分の提案のせいで最新鋭艦を沈ませた。
その事実が彼には耐えられなかったのである。
(# ^Д^)「くそっくそっ!何故だ!報告はないのか!!」
(;*゚ー゚)「い、一応、ムーから報告が来ております。どうやら生き残りの船員達は責任の重さから精神異常を起こしているようでまともな証言は得られなかったとのこと」
(# ^Д^)「......そうか」
75
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:10:48 ID:N5F9bWIA0
苛立ちを込めながら小さく一言だけ返事をし、黙り込む。
明らかに苛立った様子のまま、沈黙を続けたことで部屋の空気はこれ以上ないほどに重苦しいものであった。
( ^Д^)「......召喚地を制圧のために準備していた本隊は?」
そうして、そんな空気のまま数分がたった頃にようやくプギャーが口を開いた。
(*゚ー゚)「え?」
( ^Д^)「本隊だ。先遣隊が上陸地点を確保後に出撃を予定していただろう。今どうしている」
(;*゚ー゚)「え、あ、は、はい!それは、現在、中継地のトウキュで補給、待機をしています。先遣隊が召喚地の正確な位置を特定された後に向かう予定でしたので」
( ^Д^)「そうか......では出撃を急ぐように伝えろ。さっさと制圧し、汚名を挽回しろとな!」
(;*゚ー゚)「え!?し、しかし、正確な位置が分からないというのに本隊を向かわせるのは危険すぎるのでは......今回の事態も原因が分からない訳ですからここは......」
(# ^Д^)「言い訳は聞きたくない!いいから早くしろ!いいなっ!?」
(;*゚ー゚)「は、はい!了解いたしました!」
(; ^Д^)「......くそっ」
76
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:11:12 ID:N5F9bWIA0
ただでさえ、最新鋭艦を潰すと言う大失態をしているのだ。
それに加え、楽勝であるはずの召喚地制圧までも予定が狂ってしまっている。
明らかに軍の失態である。
たが事態が事態。
責任云々よりも、何故こんな異常事態が発生したかを追求すべきだろう。
(; ^Д^)(召喚地はこれでどうにかなるはず......さっさと事態を納めねば......)
だがしかし。
どうにか責任を免れる方法はないか。
早く事態を納めて、うやむやにしなくては。
彼の頭の中にはそんなバカみたいな考えしかなかった。
77
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:11:34 ID:N5F9bWIA0
ムー国 統治軍基地 監視塔
1463年7月13日
ムー本島の東にある、この国一の港。
そこにこの国を統治するために設置された基地が存在する。
普段であれば周囲に驚異がないため、反乱が起きないように監視したり不審な船がないか見回る程度の仕事しかなかったが、現在、基地始まって以来の警戒体制であった。
統治局からもたらされたルナイファに次ぐ強国であるソーサクが攻めてくるかもしれないという情報。
ニータ程度であれば、何とかなるであろうが相手はルナイファに次ぐ強国である。
事の重大さを皆が理解し、警戒の目を光らせていた。
そして現在、ようやく太陽が上り始め、だんだんと明るくなってきた頃。
まだ多くの人が眠る中、基地に設置された監視塔ではムー国周辺を飛び回るワイバーンからの視界情報が共有され、それを睨むようにミルナは見つめていた。
78
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:11:57 ID:N5F9bWIA0
( ゚Д゚)「......」
どの視界も青い、青い海が写る。
この警戒体制に入ってから数日が経っている。
その間、ずっと同じような景色を見続けていた。
この任務が重要なことはわかっている。
現に、先遣隊の船がやられて帰ってきているのを見ている。
だがしかし、ここまで変化がないとほんの僅かだが、心のどこかに油断が生まれてくる。
警戒のしすぎなのではないかと。
そしてひとつ、あくびをしたそのときであった。
( ゚Д゚)「......ん?」
青い海にポツンと。
黒い、シミのようなものが写った気がした。
緩むかけていた心を引き締め、改めて視界の写る水晶を凝視する。
79
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:12:21 ID:N5F9bWIA0
それは、見ていると複数のシミとなり。
そしてそれは、どんどんと大きくなる。
大きくなるそれは、だんだんと輪郭をはっきりとさせ。
それがなんなのか、判別できるようになると、一気に彼の背から汗が吹き出す。
(; ゚Д゚)「......艦!?」
見たことの無い、艦であった。
帆のない、のっぺりとした黒い奇妙な艦であった。
そんな艦が複数、こちらに向かってきている。
それがこちらに対し、何らかの悪意をもって近づいてきていると、本能で理解した。
だからこそ、慌てて報告しようと魔信に手を伸ばし、叫ぶ。
(; ゚Д゚)「ほ、報告!東の海上に謎の艦隊がせっき......っ!?」
チカッ!
ミルナの叫びを遮るように、水晶に写る艦が光輝く。
そしてそれに呼応するように、水晶はなにも写さなくなる。
それが何を意味するのか。
彼は理解し、さらに汗が吹き出した。
(; ゚Д゚)「げ、撃墜!?」
そんな彼の思わずでた声が、魔信を通じ、広まる。
それが、この戦いの始まりの合図となった。
80
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:12:46 ID:N5F9bWIA0
ムー国 統治軍基地 軍港
(# `ー´)「すぐに出撃する!急げ!」
ワイバーンの撃墜が知らされてすぐに、出撃命令が出された。
基地内にいるものたちの脳内に直接、緊急事態を伝える特殊な魔信が響きわたる。
寝ていた者たちも跳ね起き、事態に向けて動き出す。
だが、その動きは遅い。
これまで前線にたったことの無い、また戦いから遠く無縁のこの地。
兵の練度が足りておらず、明らかに初動が遅れていた。
そしてそれが、最悪の事態を引き起こしてしまった。
(# `ー´)「兵舎への連絡を!早くしろと伝えろ!一分もおし......ん?」
想定よりも遅い兵の動きに再度、伝令を送ろうとしたそのときであった。
キィン、と甲高い聞いたことの無い音が聞こえた。
そして、その音はどんどんと大きくなる。
81
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:13:13 ID:N5F9bWIA0
( `ー´)「なにが......」
近づいているのかと、音のする方に顔を向ける。
そこには、見たことの無い、巨大ななにかが飛んでいた。
それも一つだけでない。
複数の影が、迫ってきていた。
( `ー´)「......は?」
空を飛ぶものと言えば、ワイバーンである。
空の王者、支配者と言ってもいい。
他に飛ぶものと言ったら、鳥くらいなもの。
だとすればあれは何なのか。
その答えを、彼は持ち合わせていない。
(; `ー´)「......」
信じられない速度で飛ぶそれは、港を通りすぎ、基地へと向かう。
ワイバーンは何をしてるのかと叫びたくなるが、それと同時にあれほど速いものにワイバーンでどうにかなるはずがないと感じていた。
82
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:14:00 ID:N5F9bWIA0
そしてそれは現実のものとなる。
3騎のワイバーンが、基地から飛び立ち、空の怪物へと向かっていく。
その姿は勇ましく、少し前の彼であれば心強く感じていただろう。
だが、先ほどのあれを見たあとだと何とも頼りなく、無謀な挑戦をしているようにしか見えない。
それほどまでに、速度だけではあるが、隔絶していた。
高速であったはずのワイバーンの飛行がよたよた飛ぶ老人のように感じられる。
だがそれでも何とか風に乗り、戦闘体制が整おうとしたその瞬間。
一騎のワイバーンが炎を包まれる。
上空に爆発音がなり響き、血の雨を降らせる。
ずっとその様子をネーノは見ていたはずである。
だがなにがあったか、まるで理解が出来なかった。
83
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:14:23 ID:N5F9bWIA0
(; `ー´)「なんだ、これは......」
一騎、そしてまた一騎とワイバーンが爆発し、なにもできぬまま消えていく。
空には守るはずものはいなくなり、代わりに謎の飛行物体が支配する。
そしてそれらは、赤い雨のお次と言わんばかりに、新たなものを降らせる。
それは、黒い複数の塊。
(; `ー´)「なんなんだ、これはぁ!!?」
黒い雨は、基地に降り注ぐ。
それは、凄まじい轟音と共に基地を炎で包み込んだ。
84
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:14:46 ID:N5F9bWIA0
続く
85
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 12:48:42 ID:cbpHkiFw0
乙
この量でこの更新ペースは凄い
召還された人達はどう思ってるのか気になるところ
86
:
名無しさん
:2023/04/15(土) 20:54:21 ID:GZf6d6AE0
乙です
87
:
名無しさん
:2023/04/17(月) 00:06:53 ID:rJ3Au5B60
期待!
88
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:46:32 ID:6dVV0mEQ0
アリベシ法書国 旧国境付近
1463年7月13日
進軍は、滞りなく進んでいた。
これまでの苦戦が嘘かのようである。
ルナイファから送られてくる兵器の数々と大量の物資。
これによりアリベシは息を吹き返したかのように前線を押し上げていた。
これまで奪われる立場であったはずが気がつけば過去に奪われた土地を全て奪い返し、逆に奪い取らんとするほどの勢いである。
( ・∀・)「まさか、ここが取り返せるなんてな」
そう独り言を呟く。
戦火によりほとんどの面影は残っていないがそこは、彼にとって故郷であった。
それを、自らの手で取り返したのだ。
まさに歴史的に残る偉業であろうそれを、成し遂げたのだ。
その事実が彼を充実感で満たしていく。
89
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:48:00 ID:6dVV0mEQ0
ルナイファには感謝してもしきれないだろう。
同じ列強と呼ばれていたこともあり、これまでは多少はあれどそこまでの差は無いのではないかと考えていた。
それがどうだ。
彼の国はとんでもない量、そして技術の物資をこちらへ送り込んできた。
その国力、にわかには信じがたい。
ただでさえニータと睨みあっていること、また弱敵とはいえ海を越えた先、召喚地への出兵もあるのだ。
それにも関わらず戦況を一変させるほどのものを簡単に送り込んできている。
今食べている、この携帯食料もそうである。
これまでのアリベシにおける携帯食料と言えば干し肉や燻製などが主であった。
だがルナイファから送られてきたそれは、保存魔法によりどんな環境でも半年という長期の間、腐らずに持ち運べるという調理済みの食べ物。
大量に生産しなくてはいけない食料に、魔法を使うことのできるその国力。
そして長期保存を可能にする高度な魔法。
自国では決して真似できないだろう。
90
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:48:25 ID:6dVV0mEQ0
心強いを通り越し、恐怖すら覚えるほどの、異次元の味方である。
もはや、勝負の行方は決まったのではないかとすら思えるほどだ。
( ・∀・)「だけど、まだ終わりじゃないんだよなぁ」
だが、まだ戦いは終わらない。
むしろこれからと言ってもいいだろう。
ルナイファからの物資がある今ならば、法書で示された道標を辿ることができる。
法書の示す道、大陸統一へと。
そのとき、鐘の音が鳴り響いた。
休憩を終わり、進撃を再開する合図である。
( ・∀・)「......さて」
その音を聞き、まだ食べかけであった食料を腹に詰め込み、立ち上がる。
そうして、睨むように地平線を眺める。
まだまだこの土地の果ては見えそうもない。
だがしかし。
不安はない。
自分たちの後ろには神のごとき強さを誇る、味方がいるのだから。
モララーは希望共に、敵国へと足を踏み入れた。
91
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:49:33 ID:6dVV0mEQ0
ムー国 統治局
1463年7月13日
最悪の目覚めである。
この日のデルタの目覚めはそうとしか言いようがなかった。
最近頻発した異常事態により、珍しく統治局に泊まり込みで仕事をしていたのが昨日のこと。
仕事が区切りがつき、仮眠を取ろうと少し寝ていたのが数時間前。
そして。
たった今、謎の爆発音により彼は目を覚ましたのである。
( "ゞ)「なっ......はっ?......え?」
いったい何事だと飛び起きた彼の目には信じられない光景が広がっていた。
窓の外に見えるのは燃え盛る、建物の崩れた基地であった。
倉庫も、兵舎も、ワイバーンを召喚する召喚陣地も。
全てが壊され、がらくたと化していた。
92
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:50:18 ID:6dVV0mEQ0
ムーに駐在する軍はそこまで強力な軍ではない。
だがしかし、そこにいるのは世界最強のルナイファの兵であることには代わりはないのだ。
辺境の基地とはいえ、下位の列強とも張り合える力はあると、少なくともデルタは考えていた。
だが、その力は。
更なる圧倒的な力により、ねじ伏せられた。
(; "ゞ)「......」
だんだんと頭が冴え始め、これが夢ではないと理解すると身体中から汗が吹き出した。
あまりにも現実離れした光景に、受け入れるのにかなりの時間がかかっていた。
だが、ようやく現実を理解する。
死がそこまで、迫っているのだと。
(; "ゞ)「に、逃げ、ないと......」
有事の際の対処マニュアルがあったことは覚えている。
だが、そんなものを思いだし、実行できるほどの余裕が彼にはなかった。
ただひたすらに燃える炎から逃げるように彼は走り出した。
93
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:50:43 ID:6dVV0mEQ0
そんなデルタが逃げようと走り出した頃。
川; ゚ -゚)「はっ......はっ......はっ......」
彼女、ソーサクの潜入諜報員であるクーは恐怖を押し殺すように短い呼吸を繰り返し、物陰に隠れていた。
そのすぐ近くでは猛烈な爆発音がなり響いている。
彼女が今いる場所。
それは基地の近くであった。
撤退してきた先遣隊の情報を得ようと、基地への潜入を試みていたのだ。
普段であれば簡単に潜り込めたはずであった。
しかし、最近の事情から警戒を強めていた基地に潜入するのはなかなかに困難であり、内部まで入り込めていなかった。
そしてそれが、彼女にとって幸運なことに、この地獄のような攻撃から逃れることができたのである。
とはいえ無傷ではない。
至るところで発生している火事で火傷を、そして衝撃で飛んできたガラスの破片が腕に突き刺さり、出血をしていた。
94
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:51:27 ID:6dVV0mEQ0
だがもし、潜入が上手くいっていたならば。
こんな傷では済むはずがない。
すぐそこに転がる死体が、自分の姿であっただろう。
そんな嫌な考えが頭から離れず、火傷と傷の痛みと戦場特有の極度の緊張感から息が乱れ、変装魔法を使うどころではなくなってしまっている状態である。
さらには逃げなくてはと、頭では考えてはいても体が動かない。
ただただ呼吸をし、理解できない現実を眺めることしかできない。
そうしていると、気がつけば彼女は通信用の魔石を握りしめていた。
定時の報告に使うそれを、なぜ取り出したのか、いつ取り出したのか分からない。
だがそれに気がつくと彼女は、一人の男の顔を思いだし、すがるように魔石に魔力を込めた。
95
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:52:01 ID:6dVV0mEQ0
『......んぁ?なんだこんな時間に......ふあ......』
すると、そこからは自分の望んだものの声が聞こえた。
自分の同僚であり、心を許すことのできる唯一無二の親友の声。
川; ゚ -゚)「ど......くお......」
震える声で彼女は彼の名前を呼んだ。
その声に、魔石の向こうの彼はなにかを感じたのだろう。
すぐに返事が返ってくる。
『......クー?どうした?なにがあった?』
川; ゚ -゚)「分からない......分からないんだ......」
『おいおい、落ち着けよ。な?落ち着いて話を』
川; ゚ -゚)「し、死にたくない。死にたくないよ、ドクオ......」
『く、クー!?お、落ち着け。一旦今の状況を教えてくれ。死ぬってなんだ?まさか......潜入がばれたのか!?』
川; ゚ -゚)「ちが......」
96
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:52:32 ID:6dVV0mEQ0
ドクオの言葉を否定しようとしたとき、その声を遮るように再び、爆発音が辺りを包み込む。
どうやら音の方角から、基地の次は港にある施設や艦が狙われているようである。
『クー!なんだ今の音!?そっちでなにが起こっているんだ!?』
川; ゚ -゚)「あ、あ......」
伝えようにも言葉になら無い。
そもそも見ている彼女にも、なにが起こっているのか理解出来ていないのだから。
『くそっ、クー!なにがあったかわからんが逃げれるならそこから早く逃げろ!さっきの音はヤバい!逃げるんだ!』
川; ゚ -゚)「っ!」
だが、彼の逃げろと言う言葉だけは理解できた。
混乱していた頭に、まっすぐと向けられた命令は意外なほどすんなりと体が受け入れ、これまで動かなかった体が嘘のように動き出す。
そうして彼女もデルタと同じように、生き残るため、逃げるために走り出した。
97
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:54:03 ID:6dVV0mEQ0
ムー国 統治軍基地 軍港
(; `ー´)「ぐっ......」
猛烈な攻撃であった。
基地が攻撃を受け、呆気にとられていたところに追撃とばかりにあの謎の飛行物体が襲ってきたのだ。
だが自分が死んでおらず、周りも全滅していないのは港を攻撃してきた敵が基地を攻撃したそれよりも少ない数であったからだろう。
改めて被害を確認するため、辺りを見渡すと停泊していたいくつもの艦は燃え盛り、敵が上陸しようと接近してきた場合を想定して用意していた魔方陣も叩き潰されている。
これが一瞬にして引き起こされたのだ。
絶望的な被害である。
悪魔か神かのごとき、攻撃。
こんな攻撃ができる存在は、そのどちらかしかないとネーノは感じていた。
そんな奴らが、なぜ我々の敵として現れたのか。
突如現れた強大な敵に恐怖を感じ、震えを抑えることができない。
98
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:55:29 ID:6dVV0mEQ0
(# `ー´)「......くそっ!残った兵を集めろ!艦を出し、敵を迎え撃つぞ!何としても上陸を防ぐんだ!」
だがしかし、彼は軍人である。
どんな敵であろうと、立ち向かわなくてはならないのだ。
必死に指示をだし、人員を集める。
何とか生き残るために必死に行動をする。
だが、集まった人員は明らかに少ない。
これでは艦を出そうにも出せる数は少なそうである。
もっとも、先の攻撃で艦自体の数がかなり減っているのだが。
とはいえ、魔法は各個人の才能に左右され、それを補うには数が必要である。
ただでさえ練度が高くないのにさらに数まで少なければ出来ることは少ない。
敵が強大である以上、それなりの数を揃えなければ抵抗すら出来ない可能性すらあるのだ。
99
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:56:28 ID:6dVV0mEQ0
(; `ー´)(兵舎がやられたのが痛すぎる......あれのせいで兵が足りん。くそ、初動の遅れがこんなにも響くとは。だがだからといって一般人を集めたところで役には......)
(; `ー´)「......いや、待てよ?確か撤退してきた先遣隊の艦は別のところに停泊していたはず。それにそこの兵士も病院......」
そこではっと気がつく。
先ほどの二回の攻撃、そのどちらも基地や港と軍施設のみへの攻撃であった。
街への攻撃はなく、そして被害は無いように思われる。
であるならば、病院はまだ無事であり少なくとも撤退してきた4隻分の戦力は残っているはずである。
精神異常とのことだがそんなことを気にしている余裕はない。
(# `ー´)「病院にいる先遣隊員を召集!出撃するように連絡しろ!」
戦場は、動き続ける。
100
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:57:06 ID:6dVV0mEQ0
ムー国 東沿岸
(,,//Д゚)「......」
まさかこんなにも早く、再び海に出ることになるとは考えてもなかった。
ほんの少し前に味わった死の恐怖。
あの恐怖に再び立ち向かわなくてはならなくなるとは。
包帯を巻いた右目を手で押さえ、海を睨む。
あのとき、海から現れたあの高速のなにか。
あれが突き刺さった艦は抵抗することすら出来ずに、沈んだ。
唯一、魔壁を使用した艦のみ生き残ったが、それも数発耐えたのみで完全に防ぎきることは出来なかった。
あのとき、攻撃を受け沈んだ艦から自分が助けられたのはほんの偶然であった。
旗艦であるギコが乗っていた艦は真っ先に叩き潰され、その後に続く攻撃の嵐に艦隊はもはや崩壊していたと言ってもいい状態であった。
101
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:58:06 ID:6dVV0mEQ0
最早出来ることは撤退のみとなり、必死に逃げようとしていた一隻にたまたま拾われ生き延びることができた。
他にも何人かは助かったが、多くはあの海に沈んだのだろう。
(,,//Д )「......」
あの海戦、いや虐殺で死んだ仲間の顔を思い出す。
今彼が、ここに立っていられるのも彼らの死の復讐、無念を晴らしたいという感情からである。
もし、それがなければこの恐怖に耐えられなかった。
事実、命令により無理やり出撃させられた兵たちのなかには、先の攻撃からあの海で見た攻撃と同じものだと理解しており、すなわちこれから死地に向かうのだと発狂してしまうものもいた。
このままでは戦う前に、崩壊してしまう。
102
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 11:59:14 ID:6dVV0mEQ0
(,,//Д゚)「......いや、すでにか」
そうギコは自嘲気味に呟く。
辺りを見渡せば先遣隊の生き残り4隻とムー国で運よく攻撃に当たらなかった18隻の計22隻が進んでいる。
艦隊としての連携の練度は即席であるためお察しの程度だが、艦数だけで言えば大部隊である。
だがこれを大きく上回る、そして運用法についての訓練は足りなかったものの最新鋭艦までいた艦隊が一方的にやられたのだ。
どうなるか、ギコたちには分かりきってしまっていた。
もう奴らの、どんなやつでどこの国のやつかは分からないが、攻撃を受けた時点で崩壊していたのだ。
103
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:01:52 ID:6dVV0mEQ0
(,,//Д゚)「だが......」
それでもギコはキッと海を睨む。
敵がいるであろう方角を、強く。
ただではやられない。
せめて敵に一泡吹かせなくては死んでも死にきれない。
我々は最強のルナイファ帝国なのだから。
(,,//Д゚)「先に話した通り、4隻のみだが艦隊で防御陣を組み、突撃する」
『......よろしいのですか?』
他の艦から、確認の魔信が届く。
ワカッテマスがいなくなった今、4隻の艦隊についての指揮はギコが執っていた。
そして彼は先の戦い、虐殺から執れる限りの対策を行おうとしていた。
(,,//Д゚)「速度、射程、威力、燃費その他......すべて性能が落ちるがかまわん。魔壁に可能な限り魔力を回し、敵の遠距離攻撃を防ぎ、接近する。敵に近づかなくては話にならないからな」
『いえ、それはその通りだと思います。そうではなく......他の、ムーの艦についてです』
(,,//Д-)「......仕方ないだろう。信じてもらえなかったんだ。我らだけでも、やれることをやろう」
『......了解、いたしました。すぐに準備いたします』
(,,//Д゚)「あぁ」
104
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:03:38 ID:6dVV0mEQ0
そうして、22隻の艦隊から4隻が離れていく。
その様子に驚いたのはムー国の艦隊である。
一緒に戦うはずが急に陣形を変えたかと思うと突然守りの体制に入り、さらにそのまま突撃しだしたのだから。
( `ー´)「何やっているんだ奴らは?」
これには思わず首を捻ってしまう。
敵からの攻撃が複数来ているであれば、守りを固めつつ進軍する必要があるため、あのような陣形になることも分かる。
だが、敵が見えないうちに守りの体制に入るとは何事か。
何もないところで急に防御を始め、まるで怯えるように進む4隻はあまりにみっともなく目に映る。
そうこうしているうちに4隻の艦はどんどんと離れていき、艦隊は二つへと別れていく。
( `ー´)「......くそっ、やはり精神病の奴らに頼るのは間違いだったか?」
確かに奴らは、敵は見えない距離から攻撃できるだの意味不明なことは言っていた。
だが、そんなことはあり得ない。
見えない位置まで攻撃を飛ばすなんてそんな魔法はないし、もしそんなものを飛ばせてもどうやって当てるというのか。
見えないものを当てるなど、不可能である。
105
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:04:23 ID:6dVV0mEQ0
現に、今回攻撃してきた奴らは確かに信じられない速度ではあったが、すべて目視出来ていた。
単に早すぎて見落としていただけなのを奴らは考えすぎているのだ。
そして見落としについては召喚艦により、新たにワイバーンを召喚することが出来ており、上空の警戒も出来ていることからこの問題は解決できている。
( `ー´)「強敵ではあるが、見えるならば何とでもなるはずだ」
さらに運よく、生き残った艦には対ワイバーンに特化した艦が複数ある。
これさえあれば高速の飛行物体を攻撃しつつ、敵が見え次第に他の艦で魔壁を貼り、攻撃を軽減することで優位にことを進められるはずであると考えていたのだ。
そうして二つの艦隊は、海を進む。
その二つの艦隊を見つめる影が近づいていることに気づかないまま。
106
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 12:04:47 ID:6dVV0mEQ0
続く
107
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 14:35:11 ID:QLmRpcNw0
乙です
108
:
名無しさん
:2023/04/22(土) 23:17:12 ID:/jdv75Vs0
わくわく
109
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:45:40 ID:Z3EUAgNQ0
雑な世界地図
https://i.imgur.com/W457DcP.jpg
110
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:46:20 ID:Z3EUAgNQ0
ソーサク連邦 情報戦略室
1463年7月13日
一人の男が手に魔信を握りしめ、必死に叫んでいた。
(;'A`)「クー!返事をしろ!クー!!」
『......』
(;'A`)「......くそっ!」
だが、返事はない。
爆発音がした後、急に音が聞こえなくなった。
それが魔信の乱れなのか、もしくは。
死にたくない。
そう言ったクーの声が思い出される。
不吉な考えが頭を支配し、彼を苦しめる。
111
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:47:04 ID:Z3EUAgNQ0
(;'A`)「......どうする?どうすればいい?」
何も情報などない。
あるのは、クーの周りでなにかとんでもないことが起きたであろうということと、何かしらの大爆発が発生したということ。
それが人為的なものなのか、自然的なものなのか。
助けようにもこれではどうにもならない。
(;'A`)「......そうだ!念写なら!」
ふと、以前クーが持ち込んだ念写の石板を思い出す。
あれならば座標を指定すれば現在の状況を写し出せるはずである。
とはいえ、距離が距離。
念写に優れた魔法使いでなければ写すことはできないだろう。
(;'A`)「早くしないと!」
何が起きているかはわからない。
だが、だからこそ行動しなくてはいけないのだ。
こうして彼も、何の偶然かクーと時を同じくして走り出したのであった。
112
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:48:55 ID:Z3EUAgNQ0
ムー国 東沖
艦隊が二つに別れた後、ネーノ率いる18隻が対ワイバーン用に滞空陣形を構築する。
これにより、遠隔にて操作可能な火炎弾を複数打ち上げることができ、また艦隊全体を覆うように薄くではあるが魔壁を構築することができる、対ワイバーンにもっとも強力な布陣を敷いていた。
( `ー´)「割り振りは魔壁に2隻、火炎弾を10隻、残りは遠隔操作補助だ。リンクの準備は?」
『完了しております』
( `ー´)「よろしい」
そうネーノは言いつつ、心の中で舌打ちをする。
ムーにいる魔術師、さらに寄せ集めの艦隊では一隻の魔方陣だけで火炎弾を生成し、さらにそれを操作することはできない。
火炎弾と操作魔法の役割を分担し、補助のための艦を用意しなくてはならなかったのだ。
ただでさえ少ない艦を、このような形で使わざるを得ない状況にネーノは苛ついていた。
113
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:49:21 ID:Z3EUAgNQ0
だが、話を聞けばあの狂った兵の中にいるギコという男はそんな大魔法を一人で行える凄腕だというではないか。
もし彼が狂わずにいたらそれだけで強力な味方となったというのに。
それがどうだ、いくら強大な敵だからといって敵に怯え、国ではなく自分たちを守るためだけに防御陣を組み、無駄な魔力を消耗している。
はっきり言って、デコイ程度の役割しか果たせないだろう。
( `ー´)「......くそっ」
しかし無い物ねだりをしても現実は変わらない。
彼らもルナイファの兵士なのだ。
精々国のために役立ってくれよと、囮ぐらいにはなればいいと考え、艦隊を進める。
114
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:49:53 ID:Z3EUAgNQ0
不思議なほど、穏やかな海である。
先ほどまでの攻撃が嘘のように敵は見当たらない。
あの高速の飛行物体もどこかに消えてしまっていた。
( `ー´)(......どこからくる?)
ワイバーンが撃墜されたとき、艦隊を見たと報告があった。
敵の上陸はまず間違いないはず。
だが正確な距離は聞いていなかったため、どの程度接近されたかは不明なままであった。
また数も不明であり、相変わらず敵の情報は何もない。
( `ー´)(......)
耳を澄ませ、あの飛行物体が発していた音が聞こえないかとも思ったが聞こえるのは海を進む艦の音のみ。
115
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:50:24 ID:Z3EUAgNQ0
てっきり艦に向かって奴らがくるのではないかと考えていたがまるで近づいてくる様子がない。
( `ー´)「不気味だな、一体なにをしてくるのか」
影すら掴めないその敵。
だが、掴めていないのは彼らのみであった。
ガアアァァァン!!
突如爆発、そして魔壁が叩き割られる音が響く。
驚いて音のした方角を見ると一隻の艦が燃え、沈もうとしていた。
(; `ー´)「なにっ!?」
警戒をし、魔壁を展開していたはずである。
防御に特化したときのものと比較すると、微弱ながらもワイバーンの火炎弾をある程度耐えるほどの効力はあるはずであった。
事実、これまで多くの戦場にて効果を発揮してきたのだ。
だが、全くと言っていいほど防げていない。
理解不能の、圧倒的な暴力。
116
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:50:53 ID:Z3EUAgNQ0
そして、何より理解できないのは辺りを見渡してもその攻撃した主が見つからないことであった。
(; `ー´)「こ、今度の敵は透明だとでもいうのか!?」
必死に頭を捻り、一つの可能性として透明な敵が思い当たる。
だがもしそれが本当なのだとすればとんでもないことだ。
艦隊全体を隠すほどの魔法など、ギコの魔法技術とは比較にならない。
一体どれだけの凄腕な魔術師と魔石、そして巨大で複雑な魔方陣が必要になるか想像もつかない。
そもそもそんなことが可能な魔法使いを見たこともなければ聞いたことすらないのだ。
(; `ー´)「ぐ、ぐぅ......陣形を組み換え、魔壁を強化しろ!また周囲を警戒!近くにいるはずだ!魔力の痕跡と航跡波を探せ!」
だがもし透明でも艦が通ったあと、航跡波は隠せないはず。
またそれを偽装しようとすれば魔力の痕跡が残るはず。
その考えのもと、彼は艦隊に警戒と策敵をよびかける。
117
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:51:38 ID:Z3EUAgNQ0
しかし。
(; `ー´)「まだ見つからないのか!?」
いくら探せども、目的のものは見つからない。
その間にも攻撃は続き、守りを固めようともがいている間にもはや戦力のほとんどを沈められている。
全く理解できない現実を前に彼は、ただただ絶望することしかできない。
そしてそんな犠牲が続く中で、彼は見た。
遥か彼方から迫る、光を。
ようやく、彼は一つの可能性に至る。
見えない位置からの長距離攻撃。
先遣隊の兵たちは狂ってなどいなかったのではないか、と。
だがもしそうなのだとしたら。
(; `ー´)「勝てるわけが......」
ない、そう呟く前に艦隊は炎に包まれる。
そうして何が起きたかもわからないまま。
18隻の艦はムーの海に消えた。
118
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:52:37 ID:Z3EUAgNQ0
一方でギコたち4隻の艦はまだ、海の上に浮かんでいた。
(;,,//Д゚)「ぐ、ごぉ......」
こちらも凄まじい爆発に包まれるが、その攻撃を防ぎきることに成功していた。
防御に魔力を全部回していたこと、また残っていた4隻の艦が魔壁に特化した魔防艦であり、うち一隻は最新鋭艦であったこと。
そしてなにより優秀な魔術師であるギコがいたことで、少数の艦ながらも攻撃に耐えることに成功していた。
(;,,//Д゚)「こ、これほどなのか......敵は!!」
しかし、ギコの顔色はよくはない。
むしろ悪いと言ってもいいだろう。
ここまでギコの考え通り、攻撃を防ぎつつ、艦隊を進めることはできてはいる。
『ま、魔石の消耗が激しすぎます!このままでは!』
『魔方陣が衝撃により一部で不具合が発生!このままだと暴走する恐れが!!』
『魔術師が耐えきれません!!すでに複数名が魔法の使用限界により倒れています!』
(;,,//Д゚)「......」
119
:
名無しさん
:2023/04/29(土) 10:53:10 ID:Z3EUAgNQ0
相次ぐ絶望的な報告。
そして、ギコ自身もこれ以上の攻撃は長く耐えられないことが分かっていた。
しかし、だからと言ってどうすれば良いのか。
もう引くことはできない。
敵も逃がしてはくれないだろう。
だが、まだ見えぬ敵に接近し攻撃を叩き込めるとも思えない。
ならばどうするか。
(,,//Д゚)「......通信術士。本国、及び本隊へ連絡しろ」
『は......は!なにをでしょうか』
(,,//Д゚)「全てだ。今起きていること、我々が相手にしている敵のこと、分かる限りでいい。伝えるんだ」
『しかし、信じてもらえるとは......』
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