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( ^ω^)は伝説になるようです

1名無しさん:2019/04/24(水) 17:21:09 ID:lttvRft2O
壁。

まだら模様の、苔むす岩壁と金属により築かれた、垂直な壁。

総長二十キロメートルにもおよぶ長大な絶壁を、今一人の若者が登っていた。

2名無しさん:2019/04/24(水) 17:23:49 ID:lttvRft2O
彼は岩場の切れ目に指をかけ、全身の力を用い体を押し上げてゆく。

遮るもののない青空からは絶え間無く太陽が照りつけ、汗ばむその身体には疲労が蓄積されてゆく。

過酷な道のりはまだ序盤の域であり、常人ならば既に心折れそうになる険しさを秘めていたが、この若者はそれすら征服せんとする強靭な意志を持っていた。

3名無しさん:2019/04/24(水) 17:26:53 ID:lttvRft2O
彼の名はブーン。

まだ二十代と若くはあるが、この世界では名の知られた凄腕のクライマーだ。

気を抜けば滑落して即死の危険な岩場で、ブーンは巧みに手を伸ばし、次の足場へ身体を運んでゆく。

歩みは鈍足であり、だが極めて慎重。

それでも運が悪いことに数日前ザイルが切れてしまい、現在命綱なしにここまで登坂してきた彼の熟達した技術は、ひとえに才能であり、またそれを導いてくれた恩人たちのおかげでもあった。

4名無しさん:2019/04/24(水) 17:28:54 ID:lttvRft2O
あと数十メートル登った先に、梁のよう突き出した奇妙な構造物が見える。

ふっ、と浅い息を吐き、全身に力をみなぎらせてより近くまで接近する。

根元の梯子まで手が届いた時、ようやくそこでアンテナの形を取っていることが判った。

( ^ω^)「おお……播種船の遺物だお」

視界いっぱいにそれをおさめながら、感嘆まじりにブーンは呟いた。

5名無しさん:2019/04/24(水) 17:32:52 ID:lttvRft2O
播種船――はしゅせん。

この壁の正体は遠い昔星々の彼方より訪れた移民船なのだ。

長い年月を経て老朽化したものの、船内の電源はまだそこかしこで生きている。

ステップに腰を降ろし、休憩もそこそこに早速荷物をほどくや、ブーンはそこから蛇にも似た一台の機械を取り出した。

6名無しさん:2019/04/24(水) 17:45:18 ID:lttvRft2O
背中に覗く電源スイッチを入れると、とぐろを巻いていた蛇がしゅるりと一本の紐へ変わる。

( ^ω^)「行け! 僕のスクワーム!」

主が命じると、するすると蛇が壁の亀裂へと潜り込んでいった。

ブーンの目的は、この船内に眠る超古代文明の遺物を探すことにある。

たとえ発見できなくとも、どこかで充電が出来ないかと期待しなから報告を待っていると、しばらく後に相手からの通信が入った。

('A`)「おーいブーン、ちょっと来てくれないか?」

どうやら蛇がなんらかの遺物を探し当てたらしい。

( ^ω^)「何かあったのかお? ドクオ」

彼が所有するスクワームに搭載された疑似人格AI・ドクオにブーンは応じた。

('A`)「ああ。なんか人らしきモノが倒れているんだけれどよ。
さすがに俺の力じゃ運べねぇんだわ。手伝ってくれ」

( ^ω^)「おkおk。じゃあ直ぐに向かうお。さて、取りあえずは……っと」

壁面に半ば埋もれるように設置されていた、ハンドル式のドアに指をかけて回す。錆び付いていて硬いドアだが、ブーンの鍛えてられた腕力ならばそれすら容易にこじ開ける事ができる。

7名無しさん:2019/04/24(水) 19:55:21 ID:gRudsYgY0
構わん続けたまえ

8名無しさん:2019/04/24(水) 21:47:05 ID:lttvRft2O
( `ω´)「フッ!」

一息で回したドアが奥へと開いて、そのまま室内へとブーンは侵入する。ドクオの報告にある例の人物のものなのか、埃がつもる床の上に、何者かの足跡が奥へ向け続いていた。

一旦屈んで、その足跡をよく調べてみる。埃の厚さから察するに、この足跡はまだ新しい。

どちらにせよ、こんな辺鄙な場所を訪れるなんて余程の物好きに違いない。

( ^ω^)(ま、僕もその内の一人なんだけれどさ)

思索にふけるのを程ほどに切り上げ、ブーンは更に奥へと進んでいった。

9名無しさん:2019/04/25(木) 13:54:38 ID:PIF6Hy02O
数分後。ドクオのビーコン反応が強まってきた。そろそろだな、とブーンは彼へもう一度通信をつなぐ。

( ^ω^)「ドクオ」

( 'A`)/「おう、こっちこっち」
居場所を告げるためコツコツとドクオが壁を叩いた。首を巡らしようやく彼の下へ辿り着くと、そこには確かに一人の女性が仰向けに倒れている。

川  )

眠っているのかそれとも気絶しているのか。整った顔立ちをした彼女はぴくりとも動かない。その姿を見下ろしながら

「……死んでる?」と相方に訊ねてみるも

('A`)「さぁな」

蛇は首を振るばかり。解らない、というリアクションが返ってきた。

('A`)「取りあえず放っておくのもアレだし運んでやろうぜー」

あとで目覚めたら相手に何者か訊ねてみよう、と二人で決め、ブーンは彼女を背中におぶってやった。

10名無しさん:2019/04/26(金) 20:12:01 ID:YH88/GiIO
広い、広い大きな背中────

記憶の奥に眠っていた、なにか懐
かしい感覚を呼び覚ます優しいぬくもりがある。

(……父上)

( ^ω^)「お?」

( 'A`)「気がついたみたいだな」

休憩地点へもう間もなくというところで、それまで背負っていた女性の目が覚めた。

川;゚ -゚)「ん……?」

目覚めるや否や、突然目の前に見知らぬ男の顔があり彼女は混乱した模様である。

川;゚ -゚)「……えっと」

( ^ω^)

川;゚ -゚)「……どちらさまでしょう?」

11名無しさん:2019/04/27(土) 06:31:17 ID:YXJvIZpIO
そう訊ねる他なく、不安げに発した彼女に対し、肩越しに振り返った男――ブーンはにこやかに自己紹介する。

( ^ω^)「僕はブーンだお」
そう名乗ってから視線を降ろし、
「で、こっちが相棒のドクオ」

と足下を這う金属の生き物を彼が紹介する。

( 'A`)ノ「ヨッ。別嬪だなねーちゃん。
あんたが倒れていたところを俺が発見していま運んでいる最中な訳よ。ここまではおk?」

川;゚ -゚)「あ…ああ……なるほど把握した」

軽口を叩く奇妙な機械と、同じく妙な男──とはいっても、相手の素性をまだ知らぬ所為ではあるか。説明されるがままこくんと彼女は頷いた。

( ^ω^)「別に怪しいものではないからそう緊張しなくてもいいお」

川 ゚ -゚)「……だろうな。君の顔を観るからにどうみたって私を襲う程の度胸があるとは思えない」

(;^ω^)「ちょwwヒドスwww」

突然冷静になるや辛辣な言葉を浴びせられずっこけそうになるブーン。

川 ゚ -゚)「ああ済まない。自他共に私は表裏のない性格と呼ばれているのだ」

(;^ω^)「……ああハイハイそういう事ね。オーケーオーケイ、その様子なら命に別状はなさそうだお。もう降ろしてもいいかお?」

川 ゚ -゚)「君はこんなうら若き乙女に歩けというのかい? なんと鬼畜な……」

(;^ω^)「もうやだなんなのこのひと……」

12名無しさん:2019/04/27(土) 06:35:20 ID:YXJvIZpIO
冷却水のながれるパイプが無数に走っている。その中の適当な一本に傷をつけ、こぼれ出た水を組み茶を沸かす。

自分と相手のために用意したコーヒーを目の前の人物に手渡し、「さて、それじゃ君のことを聞かせてもらうお」とブーンは話を切り出した。

( ^ω^)「いったい君は何者なんだお? どうしてあんなとこに倒れていたんだお?」

川 ゚ -゚)「うん、そうだな。話せば長くなるが」

いれたての熱い飲み物にふうふう息を吹きかけながら、クーと名乗る少女は自分の身にこれまでに起きた出来事を語りはじめた。

川 ゚ -゚)「私の故郷はこの壁のすぐ麓にあってな、君みたいな探索者が持ち帰ってきた遺物の復旧を産業にしていたんだ」

('A`)「おお、ひょっとしてヴィップ村のことか? あそこの技術者たちは凄腕だからな。俺も修理で何回か世話になったことがあるぜ」

川 ゚ -゚)「そうだ。知ってるなら話が早い。私の両親はそこでも名の知れたマイスターでね。特にエンジン関係の修復に定評があるんだ。村だけでなく国中に弟子がいるんだぞ」

( ^ω^)「ほう。それはそれは立派な方だお。素晴らしいご両親をお持ちで君も鼻が高いんじゃないかお?」

川 ゚ -゚)「うん、私は両親をとても尊敬していたし、いずれは後を継ぐつもりでいた。ところが──」

13名無しさん:2019/04/27(土) 13:36:41 ID:YXJvIZpIO
「あれは一昨年の秋のことだった。

私の父の腕を聞きつけ、どうにか動かせないものかと王都からとある品が運び込まれてきた。

でもそれはこれまで私たちが扱ってきた機械とは全く異なる代物だった。
まるで人間だ──本当に人間そっくりの素材で作られた、眠った妊婦だったんだ。

気味悪がりながらどうにか調査を進め、一年がかりで機動までこぎつけた……そこまでは良かったのだか、目覚めると同時にそいつは村人たちへ襲い掛かってきた。

ある者は首をもがれ、またある者は腹を裂かれて死んだ。奴は殺戮機械そのものだった。
私は、両親に庇われなんとか生き延びたのだか……」

すると突然、言葉を切ったかと思いきやクーは上着を脱ぎはじめた。

14名無しさん:2019/04/27(土) 13:41:15 ID:YXJvIZpIO
(; =ω=)「!? ちょ、ちょっと君なにしてんの?!」

あわてて視線を逸らそうとするブーンに、「見てくれ」と彼女が落ち着いた声で言う。

(;^ω^)「い、いや、でも……」

川 ゚ -゚)「良いから。頼む」

動揺するブーンの腕を強引に剥ぎ、クーは素の上体を彼の眼前に晒す。

(; //ω//)「ちょおおおおおおお…………って、え?」

遮るものを奪われ、赤面するブーンの表情が突然、固まった。

( ゜ω゜)「何だ……それは……」

彼は──視た。

クーの白い肌の下で蠢く、異様な隆起の存在を。

麻疹のように点在するそれらが絶えず煽動をくりかえし彼女の身体を作り替えている。特に左脇腹から両胸元にかけてがそれらが顕著で、女性らしき腰のくびれも、膨らみも──何もかもが醜く失われている。

('A`)「化け物かよ」

機械だからだろう。歯にも着せぬ物言いでドクオが感想を告げると

川 ゚ -゚)「そうだ。化け物だ」

言われた当人であるクーもまた、それに憤することなく、ただ頷きかえしていた。

15名無しさん:2019/04/27(土) 16:21:48 ID:kzathJR60
ちょい昔のブーン系みたいでいいな
支援

16名無しさん:2019/04/27(土) 19:20:15 ID:YXJvIZpIO
コメントどもです。
二瓶勉とか飛浩隆みたいなSFが好きなので、そういうの目指して頑張ります

≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒


(; ゜ω゜)「……」

ブーンは動揺を隠しきれなかった。
侵食型の攻性生物──噂くらいは耳にしたことがあるが、まさかその被害がこれほど酷いものであったとは。

(; ゜ω゜)「その……なんだ、苦しくはないのかお?」

川 ゚ -゚)「は? なにを言っているんだ君は。苦しいに決まっているだろう」

だから倒れていたんだと、呆れた表情のままにクーは返事をする。

(;^ω^)「……いや、ゴメン。失言だったお。それにしても放置したままという訳にはいかない筈だお。何か治療の手立ては?」

川 ゚ -゚)「ああ、まさにそれを今探しているところなんだ。この壁の何処かに住むと云うハイ・フロスガーの噂を聞いたことはあるか?」

('A`)「んぁ? 知らねぇな……何者だい、そいつは?」

17名無しさん:2019/04/27(土) 19:27:33 ID:YXJvIZpIO
川 ゚ -゚)「壁が出来た当時、我々ヒトにに知識を与えたという賢者の末裔さ。
莫大な知識を持つ彼等なら治療法を知っていると思う。
だから、そいつらをまずは探さねば」

('A`)「ほほう。しかしだだ闇雲に探している訳ではあるめぇ」

川 ゚ -゚)「うむ。そこのピザと違って聡いな、君は」

「ちょおまw」

思いがけぬ毒舌にまたもやブーンはずっこける。
彼の名誉のため云うが、ブーンは決して肥満体ではない。むしろ鍛えあげた肉体故の肉太りなのだか、相手はそれを理解していない様子なのだ。

川 ゚ -゚)「知らぬ。存ぜぬ。だから君はピザ」

(♯^ω^)「ぶっとばすぞてめぇ」

(;'A`)「いいから話を進めろ」

18名無しさん:2019/04/27(土) 19:34:02 ID:YXJvIZpIO
喧嘩腰になる主人をどうどうとドクオが宥め、クーに説明を促す。

川 ゚ -゚)「おお、済まないな君。えっと、どこまで話したっけか」

( ^ω^)「ハイ・フロスガーを探す手立てがあるという所までは聞いたお」

川 ゚ -゚)「うむ、そうだったな。で──だ。私はこの壁の内部を記した地図を持っているんだ。今は大体このあたりかな」

胸元のポケットから端末機を取り出し、それの画面を映してみせる。

( ^ω^)「おお、これは便利そうだお。これも発掘品かお?」

川 ゚ -゚)「うん。完全ではないが6〜7割はカバーしているはずだよ。少々値は張るがこういうのは大概都に行けば買える。もっともコネは必要だがね……」

('A`)「あんた意外に顔が広いんだな」

「まぁそこは親のコネって奴さ」

もういないけどな、と憂いを含めた表情のまま彼女は乾いた笑みをこぼす。

19名無しさん:2019/04/27(土) 20:51:44 ID:YXJvIZpIO
それからカップの残りに口付け、「ふう……」と一息。

川 ゚ -゚)「旨いな……おかげで喉の乾きも癒えたよ。ありがとう」

クーからのはじめての礼に機嫌を良くし、お代わりをブーンは奨めてみたが、「いや、これでもう充分だよ」と微笑みを返された。

川 ゚ -゚)「うん、身体の具合も良さそうだ。もう少し休んだら私はもう行くよ」

( ^ω^)「おっおっ。無理は禁物だお。本当に大丈夫かお?」

川 ゚ -゚)「なんの、これくらい慣れているさ」

('A`)「おうおう。痩せ我慢は禁物だせねぇちゃん。なぁブーン?」

ニィ、と意味深な笑みをこぼし、足元のドクオは同意を促す。無論その意図が解っているブーンもまた

( ^ω^)「だお」

と一つ頷き、「クー、君さえ良ければ一緒に行かないかお?」と同行を持ちかけてみた。

川 ゚ -゚)「ふぇ?」

20名無しさん:2019/04/27(土) 20:58:14 ID:YXJvIZpIO
思いがけない申し出にクーはきょとんとなる。

「どうかお?」

川; ゚ -゚)「い、いや……それは実に有難いというか、楽しそうな申し出だが……その、なんだ、君達はそれでいいのかい?
 そっちにはそっちの用事があるのでは?」

そんな心配に対し

( ^ω^)「もーまんたいだお」

そう即答するブーン。

('A`)「だって、……なぁ?」

( ^ω^)「うん、実際僕のやっている事なんて道楽の延長みたいなものだし……それなら人助けでもした方が余程有意義というものだお」

('A`)「──だとよ。さぁ後はお前さん次第だ。どうする、お嬢ちゃん?」

ここまで言われればもう断る理由などない。

川 ゚ -゚)「ああ……そうだな。しばらく一人旅ばかりで疲れたよ。君達となら随分楽しめそうだ」

──よろしく頼むよ、とクーはほっそり白い指を差し出した。

('∀`)「よっしゃ! 決まりだな!」

( ^ω^)「こちらこそよろしくだお!」

嬉々とした表情を浮かべ、ブーンは彼女と握手する。

こうして彼らの旅に新たな仲間が加わったのであった。

21名無しさん:2019/04/28(日) 07:37:14 ID:FUb9byxQO
■log.2■


播種船は生きている。

それは周囲の環境を取り込み、そこから老朽化した船体の保持に必要な物質を吸収、加工する。

精製された各種燃料及び部品は『蜘蛛』あるいは『百足』などと呼ばれる自動機械によって運び出され、補修作業が行われている。

時にそれらを捕獲し、解体して下界の住民らに売りさばくのが狩人(マタギ)の仕事だ。

手製のスピアガン表面には無数に貼られたうさぎのステッカー。

プリズム加工されたそれらが天井の照明を反射しキラキラ光る。

ξ#゚⊿゚)ξ「目障り」

二人組の若い女性が瓦礫の森を歩いている。不機嫌そうに顔をしかめ、金髪の少女は相方への不満を洩らした。

从'ー'从「ふええー? ツンちゃんなに怒ってるのぉ?」

22名無しさん:2019/04/28(日) 08:52:16 ID:FUb9byxQO
ツンの不満の対象――後輩のワタナベはいつも能天気な娘だ。
丁度この時はおやつをかじっており、喋る側からビスケットの破片がぽろぽろこぼれ落ちてゆく。

きたない。
そしてムカつく。

ξ# ⊿ )ξ「お・ま・え・は・やる気あるのかaaaaaaaaaaaaa!?」
とうとう堪忍袋の尾が切れ声を荒げて叫ぶ。

从;'ー'从「ふえっ!? ツンちゃん顔が恐いよ! そんなにおやつ欲しかったのならまだまだ沢山あるから怒らないでよ!? 私食いしん坊だけどそれくらいは気が回るよ!」

ξ# ⊿ )ξ「黙れ汚荷物!」


从;'ー'从「どいひぃぃぃ!?!?!?」

怒りまかせにツンは相手の尻を蹴飛ばした。

23名無しさん:2019/04/30(火) 09:31:22 ID:PBCHM9tQ0
続けたまえ

24名無しさん:2019/04/30(火) 17:16:51 ID:8ylKk.TcO
>>22修正

从;'ー'从「ふえっ!?」 

さすがにこれにはびくりと手が止まるワタナベ。

从;'ー'从「ツンちゃん顔が恐いよ! そんなにおやつ欲しかったのならまだ沢山あるから分けてあげ――」

ξ# ⊿ )ξ「黙れ汚荷物!」

从;'ー'从「どいひぃぃぃ!?!?!?」

ツンは豪快に彼女の尻を蹴飛ばした。

ちょうどコンテナの隅に腰掛けていたワタナベは、その勢いで宙へと放り出されて急勾配の斜面を転がり落ちてゆく。

从;'ー'从「目がーあああああ?!?目が回るうううううううううう!!」

ξ゚⊿゚)ξ「気合いで止めろー」


 ソンナゴムタイナーーッ


暫くして、ゴン!と派手な激突音が下から聞こえてきた。



ξ;゚⊿゚)ξ「やべ、力強すぎた」


どうみても後の祭である。

「はぁめんどくせぇ」

自業自得を嘆きながら、ツンは身体をローブにくくり、ワタナベの後を追った。

25名無しさん:2019/04/30(火) 17:44:35 ID:8ylKk.TcO
赤錆の浮いた斜面。

遥か彼方には複雑に絡み合う鉄柱が覗き、谷の狭間には朽ちたまま放置された大橋。どこかから轟々と風の唸り音がきこえる。

ここは一体どこなのか。

予想以上に深いところへと迷い込んでしまったらしい。

川 ゚ -゚)「ナビが反応しない……」

困り果てた顔を浮かべ、クーはこの時出口を探していた。

26名無しさん:2019/04/30(火) 18:57:26 ID:8ylKk.TcO
赤錆の浮いた斜面。

遥か彼方には複雑に絡み合う鉄柱が覗き、谷の狭間には朽ちたまま放置された大橋。どこかから轟々と風の唸り音がきこえる。

ここは一体どこなのか。

予想以上に深いところへと迷い込んでしまったらしい。

川 ゚ -゚)「ナビが反応しない……」

困り果てた顔を浮かべ、クーはこの時出口を探していた。

( ´ω`)「えぇー……そんなぁ……こまるおー」

彼女の隣にはブーンがいて、同じく画面を見つめている。

('A`)「何だろうな。恐らく特殊な地場が働いているのかも知れないぞ。お陰で俺も変型出来なくなっちまってるし」

川 ゚ -゚)「八方塞がりという訳か」

( ´ω`)「だお」

('A`)「おいおい、若者がすぐに諦めるなっての」

( ´ω`)「そうは言ってもなぁ」

27名無しさん:2019/04/30(火) 20:16:18 ID:8ylKk.TcO
彼らは何故こんな事態に陥ったのか?
それを説明するには、およそ半日前まで遡らねばなるまい。

クーを仲間に加えて以来、ブーン達は彼女のナビを従い頂上を目指していた。

川 ゚ -゚)「腹が減ったな……」

仲間が増えれば当然食糧の減りも早くなるもので、それまでの蓄えがわずか数日で無くなってしまった。

クー曰く、少し寄り道となるが最寄りの集落で食べ物が調達できるらしい。

さっそく表示された座標へ向かう途中で、彼らはゴンドラを発見する。

28名無しさん:2019/04/30(火) 21:04:44 ID:8ylKk.TcO
ゴンドラは壁内の階層を結ぶ交通手段だ。遥か古代に造られたものであるため、老朽化して動かないものが大半であるが、どうやらこの路線は使用可能らしい。

中へ乗り込むと自動的にドアが閉まり、そのまま希望の階へ連れていってくれる。

( ^ω^)「凄い眺めだお」

ゴンドラは高速で上昇してゆく。
普段は壁の外側ばかり移動するため、こうして内部を旅するのはブーンにとって新鮮だった。

窓から足下を眺めてみれば、浄水槽を兼ねた巨大な人工湖が広がっている。壁の一部がゆっくりと展開してゆき、外から射し込む光が水面の表面を照らしてゆく。

浮島には停まったままの風車と廃墟が幾つも並んでおり、かつてはそこに人が暮らしていた面影を遺していた。倒壊した風車の根本から伸びるケーブルは、岸から湖の中へ水没し時折スパークを散らしている。

あの箇所に万が一落ちたら命は無さそうだ。

29名無しさん:2019/05/01(水) 13:13:19 ID:aI8XAmocO
倒壊した風車の根本から伸びるケーブルは、湖の中に浸かり時折激しいスパークを散らしている。あそこに落ちたら命は無さそうだ。
退屈しのぎにそんな事を考えていたその時、突然ガクンとゴンドラが停まった。

( ^ω^)「ん?」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

クーと二人で顔を見合わせた次の瞬間、ずるずると車体が下がり始めそのまま急降下していったのだ。

川;゚ -゚)「うわあああああああ!?」

咄嗟に二人は手摺を掴み、屈んで衝撃に備えたものの、想像以上に降下の速度が速すぎてこのままでは不味い。

('A`)「脱出するぞ!」

ドクオは身体を伸ばし二人の手首を絡めると、そのまま反対方向にあった窓を突き破り、勢いよく宙と身を躍らせる。

( °ω°) 「ふぉぉぉおおおおおお!」

なにせこの高度だ。全身を叩く風圧が凄まじい。

('A`)「喋んな!舌噛むぞ!」

声をあげそれを制するや、ドクオは関節の隙間から空気を取り込み、それを圧縮して噴出する。反動効果で落下の速度を緩める狙いだ。

さらに高度を下げるや今度はバルーンを射出。それが破裂したかと思えば中からパラシュートが開いて展開。ぐい、と強引に身体が上方へ引き上げられる衝撃に一瞬襲われた後、そのまま風に流されるようにブーン達は身体が軽くなったのを感じた。

('A`)「このまま降下するぞ」

ドクオの視線が着陸箇所を捕えていた。

30名無しさん:2019/05/01(水) 13:32:06 ID:aI8XAmocO
随分岸の方へ流されていた。
いや、より正確に表現するならば、ここは密閉空間なので『縁』というべきか。

側壁はもう間近にせまり、それが造る影が深い闇を落とす。

( A )「おい。聞こえるか」

蛇が仲間へと声を掛ける。

川 - )「ああ。だがドクオ。君の姿が見えない」

( A )「悪りぃな。今ので大分バッテリー使っちまった。電池節約したいからライトは勘弁してくれ」

川 - )「成程。構わないさ。それは致し方ない」

おいピザ、起きてるなら返事をしろよとクーは相棒を読んだ。

( XωX)「ウェッぺっ……水飲んじゃったお……」

('A`)川 ゚ -゚)「「汚ねぇな」」

(#^ω^)「何故そこだけ意気投合するのか甚だ理不尽なんですけど」

川 ゚ -゚)b「大丈夫だ。問題ない」

( ^ω^)「解せぬわ」

31名無しさん:2019/05/01(水) 14:09:47 ID:aI8XAmocO
暗がりに目が慣れるまで少し待ち、再び行動を再開する。

川 ゚ -゚)「まずはなによりも飯だな……」

( ^ω^)「ああ。全くそれには異論なしだお」

言ったそばから腹が鳴る。

Σ川 ゚ -゚)「閃いたぞ!」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「幸い目の前には湖が広がっている」

( ^ω^)「フム」

川 ゚ -゚)「そこでこのピザを餌に魚を釣るというのはドゥーデスカ? オキャクサーン!」

( ^ω^)「やめろおいやめろ」

川 ゚ -゚)「ドゥーデスカー、オマイサーン」

(#^ω^)「聞けよ」

川 ゚ -゚)「ドゥーデスカー、オマワリサーン」

(#^ω^)「ねぇ聞いて。お願いだから聞いて。あと国家権力持ち出すな」

 テリィート
 ドッリィダーヨ
 フタリハ ナッカヨーシ♪

(#^ω^)「その口笛もやめろおおお!!」

川 ゚ -゚)「ええ、埒があかないので無理矢理突き落とします」

(;^ω^)「なんという鬼畜!」

32名無しさん:2019/05/02(木) 18:37:30 ID:gTEzkx120
期待

33名無しさん:2019/05/03(金) 07:48:12 ID:THdV51NwO
川 ゚ -゚)+「そして〜ェ!」

「――おおっとォ!突如理由なき大外刈がピザ(笑)を襲ゥゥ!」


(;^ω^)ファッ!?


そおぃ!という掛け声と共にブーンの片足が払われ、派手な水しぶきを上げて水面へ叩き込まれたのである。

川 ゚ -゚)「決まりました! さぁ、判定の結果は!?」


(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【10.00】
(;'A`)【もう好きにして】



川 ゚ -゚)「出たああああ!!
史上最高記録の更新です!」



(;'A`)【いいからはよ助けてやれ!】



それにしてもこの女
本当にノリノリである

34名無しさん:2019/05/04(土) 20:40:25 ID:xTgmCUV.O
(;^ω^)「モガッ! ブグッ! ちょ、オボッ! 溺れ――」

クーが一人漫才に溺れる一方で、件の犠牲者であるブーンは本当に溺れていた。

川 ゚ -゚)=3
「なんだおまえ……
だらしないな、ピザなのに泳げないのか? 尤も溺れようが何だろうが私には関係ないんですけど……」

(;^ω^)「違ッ! 本当に溺れてるんだっての! 何かが僕の足を引っ張って――」

そう言って懸命に抗議を訴えた次の瞬間

「「あ」」

クーとドクオ二人の目の前からブーンの姿が消えた。

(;'A`)「おいお前ェェェェェェェェェェ!!!? 一体どうすんだよバカああああああああ!! ブーン喰われちまったぞ!? 囮どころか本当に餌になっちまったじゃねぇかああああああああああああ!!」



川 ゚ -゚)「……」




川 ゚ -゚)「うし、閃いた」




川 ゚ -゚)「これは見なかったことにしよう」


(;'A`)「罪悪感をね!
君は罪悪感という感情を覚えようね!? こっわ! なにこのひとめっさ怖っわッッ!!

――って……」

35名無しさん:2019/05/04(土) 20:56:13 ID:xTgmCUV.O
ドクオははたと動きを止めた。

(;'A`)「う」

水面が突如隆起した。
そこから現れた首長竜を思わせる巨大な機械。

ショベルカーにも似た金属製の歯の内側にはブーンの姿が。

(;°ω°)

捕われていたブーンはこちらと目を見合わす。直感――コイツは『ヤバい』。

「クー!」

言うが早くドクオは腕を引く。

逃げろ。

それを伝える間もなく二人もまた触碗に捕らわれ、バケットの中に閉じ込められてしまう。

川;゚ -゚)「くっそ! なんだこいつ! わっ、馬鹿! 沈むな! 水が――」

水が滝の様に注ぎ込まれてゆく。
それと同時に機械全体がブルブルと震え出す。

(;'A`)「コイツは――」






そのまま機械は、突如光と化し空間を転移したのだ。

36名無しさん:2019/05/04(土) 21:25:46 ID:xTgmCUV.O
眼も眩むばかりの激しい光と、鼻腔をツンと刺激するオゾン臭。

( ーωー)「ウッ……」

頭の奥には鈍い痛み。
立ちくらみを覚えながら、それでも徐々に目を慣らしてゆくと、いつのまにか知らない空間に来ていた。

( ^ω^)「何が……起こったんだお……?」

自分と同様に身を起こすクーに手を貸し、それから冷静に周囲を見渡した後でブーンは呟く。

('A`)「空間……転移させられたらしいな……こりゃどうも」

川 ゚ -゚)「まさかのイリュージョン」

( ^ω^)「それな。……ってどうするお? こんな場所僕は見覚えがないお」

川 ゚ -゚)「そりゃ私もだよ。しかし参ったな……」

37名無しさん:2019/05/05(日) 06:24:28 ID:KSs2zg7QO
静電気で乱れた髪を整えた後に、クーは荷物から端末機を取り出す。早速起動し地図を立ち上げようとしたのだが、この場所は該当するデータがなく、空白地帯と表示されたのだ。

( ^ω^)「アチャー……」

ブーンは失望に天を仰ぐ。視界一面を覆うのは赤錆の浮いた鉄骨の群れ。それが上下一面規則的に、途中からは珊瑚の森のよう複雑に絡み合い、奇抜な谷を形成しているのだ。

('A`)「こりゃ飯どころの話じゃねぇよ。早いとこ抜け出さないと延々迷っちまう」

川 ゚ -゚)「そうだな……はぁ……なんだか災難続きだ」

(;^ω^)「僕はクーと出逢ってから得にそれが顕著な気がするお」

川 ゚ -゚)「気のせいだ」

(;^ω^)「アッハイ」

川 ゚ -゚)「オラ、さっさと出口に案内しろバトラー」

(;^ω^)「執事にクラスチェンジした覚えは無いんですけれど……」

川 ゚ -゚)「うるせぇ黙れ」

(;^ω^)「罵倒されるのがデフォとか僕悲しい。ごめん、ちょっと泣いてもいいかな?」

川 ゚ -゚)「うるせぇ黙れ」

( ;ω;)「運命って残酷ゥ!」

38名無しさん:2019/05/07(火) 18:06:30 ID:LWVxTDP2O
(;'A`)「泣くなよ」

僕(しもべ)の同情を受け、「ドックンだけが味方だお……」とブーンは顔を拭い歩き始める。
バッテリーを持たせるため、ドクオにはスリープモードに入るよう命じた。

川 ゚ -゚)「いいのか?」

( ^ω^)「いざという時の切り札になるから今は休ませておくべきだお」

川 ゚ -゚)「成る程。そりゃ確かに」

その後、二人は会話もなく宙に掛けられた橋を渡る。機械の壁に囲まれた世界は絶えず明滅を繰り返している。

まず一本目の橋を渡りきり、それから少し階段を登ってまた橋を渡る。途中で途切れた箇所は無理をせず引き返し、新たなルートを探る。

( ^ω^)「……」

黙々と歩き続けるが一向に進めている実感が湧かない。徐々に苛立ちが募り始め、気の短いクー等はおいまだなのか、何時になったら着くんだと執拗に彼の背中に声を浴びせていた。

( ^ω^)。oO(クソ面倒臭い女だお)

39名無しさん:2019/05/07(火) 18:25:09 ID:LWVxTDP2O
配管から汚水が染み出ており、それの作るあぶくが床を濡らす。

時に酸性の成分が含まれており、床が脆くなっているからとクーへ注意を促す。

( ^ω^)(……しんどくなってきたお)

半日――いや、もう二十四時間を経過している筈だ。その間碌に水分すら摂れていないのだ。全身にだるさを感じ始めている。

後ろを歩くクーの様子が心配で、ブーンは足を止め彼女の方へ振り返った。

ξ゚⊿゚)ξ「――」

( ^ω^)「……お?」

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「……ありゃ?」

何時の間にか見知らぬ女の子が背中に立ち、こっちを見つめている。

ξ゚⊿゚)ξ「……誰よ、あんた」

こっちが聞きてぇよ。

40名無しさん:2019/05/07(火) 18:40:33 ID:LWVxTDP2O
気配を全く感じなかった。だから気づけなかった。いや、もしかした疲れの所為なのかも知れないが、それにしてもこの娘は何者だろう。

( ^ω^)「お?」

臆しもせず、こちらをじっと見つめる彼女をブーンもまた見つめ返す。

ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」

流石に警戒心はあるのか、相手が一歩退き腰に吊るした武器と思わしき何かに手を伸ばしかけた。

(;^ω^)「ちょっ、ちょっとちょっと待った! 別に怪しい者じゃないからそれは降ろして欲しいお! それにこっちも聞きたい事があるんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「…………。どうやら敵ではないみたいね」

鞘から引き出しかけた刃物を少女は仕舞う。

(;^ω^)「話が通じる相手でよかったお。ええと……はじめまして。僕は登山家のブーンという者だお」

41名無しさん:2019/05/07(火) 19:18:06 ID:LWVxTDP2O
やや強張ったままに自己紹介を済ますと、

ξ゚⊿゚)ξ「ツン」

と素っ気なく相手も名乗った。付け加えるように「マタギのツン」と。

聞き慣れない単語に「お?」とブーンは首を傾げる。マタギ? それは姓かなにかだろうか? 

( ^ω^)「ええと……ごめん、知らないから教えて欲しいんだけどマタギってなんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「これで」

ツンと名乗る少女は背中に回していた長銃を取りだし、

ξ゚⊿゚)ξ「獲物を駆る。要するにハンターよ」

ブーンの目の前でそれを構えてみせる。声には自信がみなぎり、眼光共々修羅場を潜ってきた気配が窺えた。


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