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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

1 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:22:52
ずっと前にマーサー王や仮面ライダーイクタを書いてた者です。
マーサー王物語の数年後の世界が書きたくなったのでスレを立てました。

2007年ごろに書いた前作もリンク先に掲載しますが、
前作を知らなくても問題ないように書くつもりです。

SSログ置き場
http://jp.bloguru.com/masaoikuta/238553/top

682名無し募集中。。。:2015/11/11(水) 18:30:24
がんばれまーちゃん
ハルナンに王の座を!
アンジュ王国に新人が!

683名無し募集中。。。:2015/11/11(水) 19:27:42
番長(初期・二期)→舎弟(三期)だから四期は何だろう?パシり?w

684 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/12(木) 08:38:09
久々に一般からの加入でしたね。
キャラを掴むまではなかなか時間がかかりそう……
舎弟になるのか、それとも別の呼び方になるのかは全くの未定ですw

685 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/12(木) 12:58:53
「これくらい……まだまだじゃ。」

並の精神力では耐えられぬ一撃ではあったが、
フクを守るという命題を抱えたサヤシの強さは並ではなかった。
腹への激痛を押し殺しながらマーチャンを睨みつける。
それを見てマーチャンは一瞬ビックリした顔をするが
すぐに笑顔を取り戻し、サヤシへの第二撃を放たんとする。
ところが、アユミンの声によってそれは制されることになる。

「サヤシさんに構うな!フクさんのところに行って!」

アユミンはハルナンと共にエリポンを地に押さえつけながら、指示を出した。
いくら耐えられたとは言え、サヤシへの攻撃は確かに効いている。
実際、膝がプルプルと震えているのがその証拠だ。
ならばそれを無視して敵の総大将を叩くのが良いと考えたのだ。
マーチャンはサヤシを倒せないことがちょっぴり残念ではあったが、
怒った時のアユミンは怖いことをよく知っているため渋々従う。

「しょーがないな。じゃあフク濡らさん倒すね!」

進行方向を変えたマーチャンを見て、カノンは焦りを加速させる。
サヤシとエリポンが動けぬ今、フクを守るべきは自分しか居ないのだが、
ここでどう動くべきか判断に迷ってしまったのだ。
一つはマーチャンと戦う案。もう一つはエリポンを助けにいく案。
前者をとればフクを直接守ることが出来るが、マーチャンを長く足止めすることは難しいだろう。
なんせ敵はサヤシをも圧倒した存在だ。一騎打ちで勝てる見込みは限りなく薄い。
後者の案ならエリポンと協力してマーチャンに対抗できる。
しかしその間はフクを放っておく形になるし、ハルナンとアユミンだって無視できない。
どちらも案も一長一短。よりリスクの少ない方を選択するのに時間をかけてしまった。
そしてその隙がカノンにとって命取り。
すぐ背後まで迫っていた雷への対応が遅れてしまう。

「カノンさん、ハルのこと忘れてない?」
「!!!」
「もう遅いよ!喰らえ!」

686名無し募集中。。。:2015/11/12(木) 14:50:46
天気組の策略にwktk

687 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/13(金) 13:00:32
ハル・チェ・ドゥーは数週間前からアンジュ王国に渡り、
アヤチョ王直々の特訓を受けていた。
その特訓方法は一言で言えば「殺し合い」。
アヤチョが本気の殺意を込めて斬りかかってくるので、ハルも殺す気で対抗するというものだった。
とは言っても相手はアンジュの頂点に立つアヤチョだ。まともにやって勝てるわけがない。
ゆえに特訓時にはタケやカナナンら四番長が常に待機しており、
アヤチョ王がやりすぎないよう、いざという時には静止する役割を任されていた。
ハルとアヤチョの実力差は思っていた通りに大きく開いており、
Q期との決着を一週間後に控えた日も番長らは大忙しだった。
ここではその時のことを回想する。

「ドゥー。トドメだよ。」
「「「わー!待って待って!!」」

一撃目がいきなりトドメだというのもしょっちゅうなので、
番長らは慌ててアヤチョ王の身体にしがみつく。
少しでも止めるのが遅ければ今ごろアヤチョの七支刀はハルの腹を突き破っていたことだろう。
青ざめた顔でペタンと座り込むハルを見るに、余程の殺気を当てられたのだろうことが理解できる。

「こ、こわすぎる……」

涙目になっているハルをだらしないとは誰も思わなかった。
何故なら自分が同じ境遇だったとして、気丈に振る舞える自信が無いからだ。
雷神の構えをとったアヤチョはそれほど恐ろしいのである。

「ドゥー……もう時間がないよ。何か掴めた?」
「一つ、分かったことがあります。」
「え、なになに!?」
「殺意のある攻撃って、普通の攻撃よりずっと威圧感があるんですね。
 身体がビリビリ痺れて全然動けなくなります……
 ハルもそんな攻撃が出来たら必殺技に近づけるのかな……」

ハルの考えを聞いたアヤチョはニコッと微笑むと、七支刀を地に落とした。
そして両手を開き、無防備な態勢をとる。

「ねぇドゥー!竹刀でアヤを叩いて!絶対避けないから。」
「ええ!?」
「もちろん殺す気でだよ。分かってるよね?」

冷たく言い放つアヤチョに、ハルはゾクっとした。
もはやここで日和る訳にはいかない。殺意を放つのは今なのだ。
ハルナンを王にするために……いや、自身が剣士として強くなるために、
殺す気の一撃を打ち込まなくてはならない。

「はぁっ!!」

アヤチョの胸に、ピシャン!と言った竹刀による炸裂音がぶつけられた。
とても聴き心地の良い音であり、クリーンヒットしたことが誰にも分かる。
ところが、アヤチョの顔からは苦しさの一つも感じ取れなかった。

「どうしよう……全然痛くない。」
「えぇー!?本気で打ちましたよ!」
「うん、気合とフォームは良かったよ。でもね、そのね。」
「ハルが非力だからっすか……」
「うーん……なんか、ごめんね。」
「いえ、ハルが未熟なんです……」

結局その日は必殺技は完成しなかった。
いくら殺意が十分でも破壊力が無ければ必殺技とは呼べないのである。
そして現在、ハルはカノンの背中にピシャリと良い一撃を打ち込むことが出来たが、
アヤチョとの特訓と同じように仕留めるまではいかなかった。

(痛っ……ハルったらこんな強い攻撃を出来るようになってたんだ。
 でも、この私にはそんなの通用しないよ。
 誰よりも厚いこの身体。たかが模擬刀が通るほどヤワじゃないからね!)

688 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/14(土) 14:48:23
カノンの背中に向けたハルの一撃は、紛れもなく十分な殺意の込められたものだった。
しかし、いかんせん威力が足りなさすぎる。
やはりハルの細腕ではカノンという壁をぶち破ることは出来なかったのだ。
一ヶ月とは、技を一つ覚えるには十分な期間だったかもしれないが、
そもそもの身体能力を強化するにはあまりに短すぎていた。
よって、ハルは一振りで必ず殺すような一撃必殺は習得できなかったのである。
このままではカノンはすぐに体勢を整えて、反撃してくることだろう。
ただでさえサヤシとのガチンコで消耗しているというのに、
そこにカノンのヘビーな攻撃を受けてしまったらひとたまりもない。
それを知っていたハルは、だからこそ体勢を整える暇を与えなかった。
敵がそうするよりも速く、カノンの後頭部に激痛を与える。

「!?」

ハルがやったのは、ただ背中と後頭部を連続で叩いただけのことだった。
普通の二連撃と異なるのは、一撃と一撃の間隔を限りなく小さくしたという点。
最初の一撃をもらった時点でカノンは無意識のうちに、背中を守ることに全神経を集中させていたのだが、
そのすぐ直後に後頭部への一撃を喰らったために
覚悟も身構えも何も出来ず、攻撃の100%すべてをダメージとして受け止めてしまったのである。
しかもカノンは一ヶ月前の戦いでカリンに後頭部を強くやられている。
その古傷が完全には治りかけていなかったというのも効いていた。
いくら頑強な肉体を持つカノンであろうと、
人類皆等しく肉のつきにくい箇所に対するダイレクトアタックまでは防げなかったらしく、
合計たった二撃で意識を飛ばし倒れ込んでしまう。
そう、ハルの必殺技は一撃必殺ではなく二撃必殺だったのだ。

「勝った……ハルの必殺技が効いたんだ……」

この必殺技はアヤチョが教えたものではあるが、アヤチョ本人は使いこなすことが出来ていなかった。
この技を完成させる鍵は連切りの早さにあったというのがその理由だ。
アヤチョも超スピードを誇る超人ではあり、その突っ走りは誰も付いていけないほどに速いが、
基本的には一途であるために二箇所同時に攻めるということが困難だ。
それに対して、ハルは異常までに手が速かった。
複数同時に攻めることにおいては右に出るものはいない。
一撃で殺せないようならもう一度、もう一度、何回でも連続で切ってみせる。
だからこそハルはアヤチョも使えぬ必殺技「再殺歌劇」を体現することが出来たのである。

689名無し募集中。。。:2015/11/14(土) 14:50:57
二重の極みw

690名無し募集中。。。:2015/11/14(土) 16:31:22
再殺…相変わらず名前付けるの上手いなw

691名無し募集中。。。:2015/11/15(日) 01:54:56
拾ってきた…もしオダがサユ王に勝っていたらこんな未来になっていたのかw

http://pbs.twimg.com/media/CTxLBSdUcAAIaOv.png

692名無し募集中。。。:2015/11/15(日) 09:27:37
有りやなw

693 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/16(月) 12:33:55
二重の極みに似てはいますが、異なる箇所を攻撃する点で違った技ということにしてください><

>>691
このイラストはいったい……
それにしてもかなりの風格ですねw

694 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/16(月) 12:56:52
守りの要であるカノン・トイ・レマーネが倒れたことは、Q期たちに大きな衝撃を与えた。
これからはカノンの指示なしにハルナンら天気組の策に対抗せねばならない。
それに、単純に頭数が減ったことで人数的に不利になったという問題もある。

「ハル!マーチャン!ここが攻め時だよ!」

アユミンは押さえつけていたエリポンをハルナンに任せて、フクの方へと歩みだした。
名を呼ばれたハルとマーチャンだってターゲット目掛けてすぐさま前進していく。
現在の彼女らにはマークは付いていない。言わばフリーの状態なのだ。
誰にも邪魔されることなくフクへと接近する。

「フク!」「フクちゃん!」

エリポンとサヤシは悲痛な声しか上げることが出来なかった。
エリポンはハルナンに羽交い締めにされているし、サヤシは早く歩けるほど回復しきっていない。
ゆえにフクを守りにいくことが出来ないのである。
それならそれでフクに逃げろとでも言えば良い気もするが、2人はそうしなかった。
アユミンはその点から察し、ある事実に気づいていく。

「ははっ、フクさんひょっとして歩けないんじゃないですか?」

Q期一同はギクリとした。
誰よりも強いはずのフクを過剰に守っていた理由がまさにそれだったのだ。
日常生活において歩く分には問題ないが、
真剣勝負の場で、しかも足場の悪い状況下で満足に動けるまでには至ってないのである。
天気組はフク・ダッシュやフク・バックステップが出来ない程度の怪我だと思っていたが、
これは思わぬ好都合だ。

「よし!フクさんにも再殺歌劇を決めてやるぜ!」
「ドゥーずるい!マーチャンがトドメさすんだからね!」
「ちょっと喧嘩しないでよ!ここは3人同時に行こう!」

695名無し募集中。。。:2015/11/16(月) 13:00:08
>>693
元ネタはこれネズミの国に行った時の写真らしい
http://stat.ameba.jp/user_images/20151004/20/morningmusume-10ki/da/8f/j/o0480064113444293221.jpg

反乱が失敗し地下に送られる写真w
http://i7.wimg.jp/coordinate/3yj9v8/20151004094139229/20151004094139229_1000.jpg

696名無し募集中。。。:2015/11/16(月) 20:47:11
ところでイクタ外伝の人はどうしちゃったのかな

697 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/17(火) 12:33:34
>>695
その件に関わってたんですね!
てっきり舞台かSSに関連しているかとw

>>696
長らく更新がないようですね( ; ; )
復活を期待しています。

698 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/17(火) 12:57:37
天気組の3人に同時に襲われるという危機的状況にもかかわらず、
Q期のリーダー、フクは意外にも冷静な顔をしていた。
まるでこの事態を予め想定していたかのような落ち着きっぷりだ。

「さっきのハル凄かったなぁ……私にもあんな殺気、出せるかな?」

独り言を呟き終えるのと同じタイミングで、マーチャンがフクの正面にやってきた。
もともと近い位置に来ていたために、3人の中で一番に到着したのである。
もちろんマーチャンは他の2人を待つ気などさらさら無く、早速攻撃を開始する。

「フク濡らさん!アユミンやドゥーが来る前に倒すからね!」

今日のマーチャンはまだフクの動きを見てはいなかったが、
日々の訓練から得た記憶を頼りに、避けにくい攻撃を何発も繰り出すことが出来ていた。
フクも模擬刀で必至に防御するが、その防御さえもあらたにマーチャンに覚えられてしまう。
次々とUpdatedされるマーチャンの剣技を捌ききれず、身体のあちこちに剣をぶつけられていく。
このままマーチャンと対峙し続けるのは分が悪い。
ならばとっておきをここで使ってしまおうとも思ったが、そうもいかなかった。

(まだダメ……今だったら一人しか殺せない。)

"必殺技を使うには殺人者であれ。"
フクは甘々な自分を戒めるために、そう強く思っていた。
だが自身を殺人者にするのはまだ早すぎる。
今のままでは、"Killer 1 "だ。
たった一人に対する殺人者では状況を変えることなどできやしない。
フクが目指すべきは、複数に対する殺人者なのである。

699名無し募集中。。。:2015/11/17(火) 20:17:35
なかなか物騒な考えだなwフクの必殺技がどんななのか楽しみだww

700 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/18(水) 12:59:17
動けぬフクとマーチャンがやり合っているところにアユミンも合流する。
本当は3人揃ってから仕掛けたいと考えていたアユミンだったが、
既にマーチャンが交戦を開始しているため、もはやハルの到着を待ってられなくなっていた。
アユミンはフクから見て右方向から攻め込み、模擬刀で切りかかってくる。

「あ、アユミンきちゃった……」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!ほらマーチャンいくよ!」

アユミンの手数は(ハルほどではないが)多かった。
一撃一撃の威力は微弱ではあるものの、こうも乱打されるとフクは受けるだけで精一杯になってくる。
そんな状況でマーチャンの攻撃まで防ぐことは難しい。
ゆえにフクはアユミンが来る前よりずっと多くの攻撃を身体で受けてしまう。

「フクちゃん!今助けに……」

少しは動けるようになったサヤシが、アユミンとマーチャンに袋叩きにされているフクを守るため前進を開始した。
ダッシュもバックステップも使えないフクにすぐさま助太刀しなくては、全てが終わってしまうと考えたのだ。
ところが、フクはそんなサヤシの助けを必要としていなかった。
無理して攻撃を受け続けながらも、カッと目を見開きサヤシを制止する。
それに対してサヤシは少し驚いたが、すぐに意図を理解して動きを止めた。

(フクちゃん……アレを使うんじゃな。)

フクの狙いは自身の編み出した必殺技を繰り出すことだった。
だが今はまだ時期が早すぎる。
マーチャン一人の時の"Killer 1"よりはアユミンも加わった今の"Killer 2"の方が効果的かもしれないが、
それでもまだなのだ。
すぐにやってくる彼女までも巻き込んでこそ、フクは殺人者としての真価を発揮することが出来る。

「お待たせアユミン!マーチャン!」

時は来た、とフクは感じた。
残りの一人であるハル・チェ・ドゥーがフクから見て左側から攻撃を仕掛けようとしている。
おそらくはさっきカノンを仕留めた必殺技である「再殺歌劇」を見せてくることだろう。
だが今来たばかりなので準備は整っていないはずだ。
それに対して、フクはしっかりと準備が出来ている。
この決闘が始まるずっとずっと前から、この瞬間をイメージしてきたのだ。

(モモコ様、私、必ず殺せる殺人者になります。)

ハルもやってきたので相手は計3名になった。
ではフクの必殺技は3人殺せる、言わば"Killer 3"を実現する技だったのか?
いや違う。
フクは相手が多ければ多いほど良いと思って技に命名している。
一人や二人や三人ではなく、N人。つまりは複数名を同時に殺す技という意味を込めて、
"Killer N"、と名付けていた。

701 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/18(水) 13:00:25
技名からか確かに物騒な考えになっちゃいましたね。
まぁ、それだけ本気だったということでお願いしますw

702名無し募集中。。。:2015/11/18(水) 14:14:52
それかw

703名無し募集中。。。:2015/11/18(水) 17:42:00
"Killer N"・・・やばいひさしぶりに元ネタが分からんwちょっと悔しい

704名無し募集中。。。:2015/11/18(水) 17:46:22
ブログでよく見るキラーン☆じゃないのか

705名無し募集中。。。:2015/11/18(水) 19:12:34
なるほど!
スッキリしたありがとうw

706名無し募集中。。。:2015/11/19(木) 02:27:47
ネーミングうまいなあ

707 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/20(金) 14:17:00
はい、確かに元ネタはキラーン☆です。
多少苦しかったかもしれませんがw

708 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/22(日) 13:15:09
諸事情により今日も続きを書けません><
今夜遅くか、明日の昼ごろに更新予定です。

709名無し募集中。。。:2015/11/22(日) 22:05:40
まさかこぶし富山行ったとか言わないよね?
僕昼行って楽しかった
早く大佐をこのスレで見たい

710 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/23(月) 02:43:58
こぶしイベは行ってませんでしたね。完全に私用でした。
でも来週はアンジュルム武道館に行きますよ!卒業見てきます^^

711 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/23(月) 04:50:53
フクは左手に握った模擬刀を、今まさに必殺技を放たんとするハルの脇腹にぶつけていく。
攻撃のみに集中しているハルに強打を当てるのはあまりにも簡単で、
線の細い彼女のアバラはただそれだけでバキバキに折れてしまうだろう。

「……ッ!!!!!」

普段ハルはアバラが二、三本折れてもヘッチャラみたいなことをよく口にするが
実際にそれを受けたら息も出来ぬほどに苦しいことが再確認できたに違いない。
これでハルは数分程度の戦線離脱は余儀なくされ、しばらくの無力化が約束された訳なのだが
フクはその程度でよしとはしなかった。

("甘さ"を捨てるのよフク・アパトゥーマ!殺す気で振り抜くの!)

アユミンとマーチャンによる攻撃を右腕ですべて受け止め、
さらに下半身にグッと力を入れてその場から仰け反らぬよう踏ん張った。
すべてはハルに当てた模擬刀を全力で最後まで振り切るため。
受け止めた右腕が壊れようとも、動かぬ脚が更に悪化しようとも構わない。
これから勝ち取る成果を考えればその程度の代償は払って当然なのだから。

「マーチャン!避け……」

位置関係からして、アユミンにはフクの狙いが見えていた。
だがここで気づいたとしてももう何もかもが遅い。
フクがハルに当てた斬撃を振り切ることにより、ハルの身体そのものが吹き飛ばれていく。
その先にいるのはフクの正面にいたマーチャンだ。
至近距離から相方の身体が飛んできた経験なんて、マーチャンはこれまでにしたことがない。
未経験には滅法弱いマーチャンは無抵抗でハルにぶつかってしまう。

「ぐぇっ!」

いくらハルが軽いとは言っても人と人が衝突して無事で済むはずがない。
しかも頭と頭もぶつかったので軽度の脳震盪まで引き起こしている。
これではマーチャンもすぐには起き上がることが出来なくなるだろう。
ここまで来ればもう十分かと思いきや、フクの振り切りは留まらなかった。
そう、アユミンを巻き込むまでこの技は止まらないのである。

「や、やめて」

アユミンの嘆願も虚しく、フクの左腕はハルとマーチャンごと模擬刀を押し込んだ。
先ほどハルがマーチャンに衝突した時のように、今度はマーチャンの身体を最右端にいるアユミンにぶつけたのだ。
人間二人分の重量が飛んできたのだからその衝撃の凄まじさは想像に難くない。
アユミンの体重でそれらを耐えきれる訳もなく、ガレキの床へと転げ落ちてしまった。
つまりアユミンは硬い地面に叩きつけられた上に二人にのしかかられ、
マーチャンはクッション性皆無の2人に挟み潰され、
ハルは最後までフクの強打を受け続けたことになる。
まさにどれもが致命傷。3人の誰もがその場にうずくまってしまう。
模擬刀ルールでなければ全員死んでもおかしくない程のダメージであったに違いない。
これこそがフクの必殺技「Killer N」の力なのだ。
見事な成果を見せたフクに対して、サヤシは歓喜の声をあげる。

「フクちゃん凄い!!3人も倒すなんて!!」

歩くことも困難なフクがピンチを大きなチャンスへと変えたのはとても素晴らしい。
立ち合い人だってこの光景に舌を巻いているのだから大したものだ。
ところが、当のフクはどこか浮かない顔をしていた。

「だめ……倒しきれなかった。」
「?」

フクは己の必殺技の弱点をよく知っていたのだ。
この技の仕組みならば2人は確実に倒すことが出来るのだろうが、1人の安否だけは不確定だ。
そしてその憂いが現実のものとなってしまった。

「ケホ、ケホ……ひどいことするなぁ……でももう覚えたよ。」

712名無し募集中。。。:2015/11/23(月) 08:15:06
うわぁ…マーチャン討ち漏らしたのか…

713名無し募集中。。。:2015/11/23(月) 11:13:05
クッション性皆無w

714名無し募集中。。。:2015/11/23(月) 12:48:40
クッション性大事

715 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/24(火) 02:12:19
フクの必殺技「Killer N」を受けても立ち上がれたのはマーチャン・エコーチームだった。
未経験の攻撃を回避する術を持たぬ彼女は当然のように直撃を喰らった訳ではあるが
斬撃を身体で受けたハルや、地に叩きつけられたアユミンと比べるとまだ軽症で済んでいたのである。
頭はクラクラするし、体中の骨がひどく痛むけれども、なんとか立つことは出来ていた。
このように押せば簡単に倒れてしまいそうな相手を前にして、フクは恐怖する。

(まずい……とっておきを覚えられちゃった)

マーチャンの異常なまでの超学習能力。それをフクは恐れていた。
一度体験した技であれば次からは完全に対応してしまうマーチャンには、もう「Killer N」は通用しないだろう。
ならばそれ以外の技を繰り出そうにも、今のフクの身体は必殺技の代償でひどく痛んでいる。
攻撃を受け続けて骨折した右腕はもう上がらないし、もともと完治していなかった脚も動きそうにない。
この状況でどうやってマーチャンを止めろと言うのか。
おそらくはいくらあがいてもフクには倒すことなど出来ないのかもしれない。
味方の力を一切借りない、という条件付きではあるが。

「喰らえっ!」

フクを窮地から救うために、サヤシ・カレサスがマーチャンの後頭部めがけて模擬刀を振り上げた。
近いところに位置していたのでいち早く援護することが出来たのだ。
フラフラなマーチャンに対する不意打ちは傍からは卑怯に見えるかもしれないが、サヤシは恥じてはいなかった。
"本当に誰かを守りたけりゃ他人の目なんて気になんない"ってやつだ。
この一撃でフクを守ることが出来るのであれば何がどうなってもいいと考えていたのである。
しかしこの攻撃は、マーチャンを倒すにはあまりにも単調すぎていた。

「当たらないよっ!」

マーチャンはしゃがみこむことで体勢を低くし、コサックダンスでもするかのようにサヤシの右足を蹴っ飛ばした。
これまでの実践や訓練の経験から、急所攻撃への対処法は特にしっかりと学習してきていたのだ。
ゆえに頭がちゃんと回っていない時であろうと行動に移すことが出来る。
攻撃のほとんどが急所に対する一撃狙いなサヤシにとって、マーチャンという相手は分が悪すぎるのである。

(くっ、どうしたらええんじゃ……)

それでもサヤシは歯を食いしばって立ち向かおうとした。
攻撃が通用するまでストイックに攻撃し続けようという思いなのだ。
ところが、そんなサヤシの気が急に変わり始める。
そこまで無理する必要は無いと、考えを改めていく。
その理由は、マーチャンのすぐ背後まで迫っていた頼れる存在にあった。

「スマーーーッシュ!!」
「!?」

マーチャンの後頭部を強く叩いたその人物は、さっきまでハルナンに押さえつけられていたエリポンだ。
突然の不意打ちをもらったマーチャンは、鼻血を吹き出しながらひどく困惑する。
急所攻撃には完全に対応する自分の身体が、エリポンの攻撃には反応しないのである。

「え!?え!?なんでエリポンさん!?ハルナンはどうしたの!?」

基本的にニヤニヤと笑いながら戦っているマーチャンが、今は普段見ないほどに狼狽している。
というのも、マーチャンは日ごろからエリポンを怖いと思っていたのだ。
フクの攻撃も、サヤシの攻撃も、カノンも攻撃も、同期やオダの攻撃だってすべて学習できるのに
目の前に現れたエリポンの攻撃だけは何故か覚えることが出来ない。
言わばマーチャン・エコーチーム唯一の天敵なのである。

「マーチャン!これ以上好きにはさせんよ!」
「うわ〜〜〜エリポンさんホント嫌だ……」

716 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/25(水) 12:59:54
「マーチャンはエリポンの行動だけは覚えることは出来ない」と書いたが
実際はちゃんと学習可能であるし、一度見た技であれば問題なく対応することが出来る。
ヤグラから水鳥のように飛んだ時にエリポンの跳躍を軽々とかわしたことからもそれが分かるだろう。
それでは何故マーチャンはエリポンの攻撃を回避できなかったのか。
その理由は、エリポンの使う魔法の多彩さにあった。

「ほら!まだ終わらんけんね!」

エリポンはマーチャンの頭を鷲掴みにしては、グルリと腕を一回転させてぶん投げる。
これはソフトボールのウインドミルと言われる投球法に近い動きだ。
ソフトボールと言うスポーツ一つとっても、複数のピッチング法が存在する。
そしてこの球技には投げるだけではなく、効果的に打ったり走ったりする手段も確立されている。
一つのスポーツでそれだけの動作があるのだから、
あらゆる競技を極めたエリポンは何千何万種類もの技を扱えることになるのだろう。
相手が普通の戦士であれば、いくら多数の技を持とうとも、似た動きを一まとめにして対策されてしまうのかもしれないが、
マーチャンには少しでも動作の違った技はまったく異なる動きに見えてしまっていた。
ゆえにエリポンの攻撃は毎回毎回が未経験。
これこそがマーチャンがエリポンを天敵だとみなす理由だったのである。

「ハルナンどこ!はやくエリポンさんを止めてよぉ!」

頭の中でグワングワンと鳴り響く音に悩まされながら、マーチャンはハルナンの名を呼びあげる。
アユミンとハルが倒れた今、ハルナンしか頼る人物はいないと考えているのだ。
しかしそのハルナンから返事は返ってこない。
マーチャンには見えていないかもしれないが、ハルナンはすぐ側に倒れていたのだ。
全身にひどい打撲を負いながら、血だらけで。

「あの負傷は……ひょっとしてエリポンが!?」

気づかぬうちに敵将が倒れていたので、サヤシは両手を挙げて歓喜した。
思えばエリポンはあのアーリーでさえも力負するほどの戦士だ。
貧弱なハルナンに抑えられるわけがなかったのである。

「勝ちじゃ!マーチャンさえ倒せばウチらの勝利じゃ!!」

717名無し募集中。。。:2015/11/25(水) 18:22:29
血まみれのハルナン…嫌な予感しかしないなw

718名無し募集中。。。:2015/11/25(水) 18:35:14
ハルナン…ゾクゾクするねぇ

719 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/27(金) 12:57:42
マーチャン撃破という最終目標のためにエリポンに加勢しようとするサヤシだったが、
当のエリポンにそれを制されてしまった。

「サヤシとフクは休んでて。ここはエリだけでやる。」
「どうして!?今は全力でマーチャンを倒すべきじゃろが……」
「マーチャンを倒しても終わらんから言ってる。」
「あ……!」

エリポンの言葉の意味をサヤシはすぐに理解した。
無駄かもしれないが、敵側に気づかれないように小声で確認を取る。

「ハルナンは死んだふりをしちょる……ってこと?」

勝利のためならなんでもやるハルナンのことだから、死んだふりくらいは十分やりかねない。
一ヶ月前にフクと直接対決した時もその通りだったので、確証が無い限りは戦闘不能と決めつけるべきではないのだろう。
それによく見てみればエリポンの身体は思っていた以上のダメージを負っている。
おそらくハルナンの押さえつけから逃れる際にいくらか抵抗されたのだろうが
その負傷のどれもが出血や打撲を伴った痛々しいものとなっていた。
あと少しで気絶するくらい弱っていた者がこれだけの強い斬撃を放つことが出来るだろうか?
ハルナンの生存確率をあげるには十分すぎる材料だ。

「そういうこと。だから油断せんと、備えないかんよ。」

死んだふりに関しては、エリポンには苦い思い出があった。
アーリー戦で油断したばっかりに、勝てる勝負を落としたことを今でも悔いていたのだ。
だからもう決して相手の生き死にを決めつけたりはしない。
ましてや勝敗が仲間の進退に直結するのであれば尚更だ。

「マーチャン!そろそろ倒れてもらうけんね!」
「う〜〜……ヤだよ。マーチャン負けたくないもん。」

マーチャンは近くで横たわっていたハルの剣を拾い上げては、利き腕ではない方の右手で掴んんでいく。
元々所持していた模擬刀と合わせて、現在の得物の数は計2本。
即ち、二刀流だ。

「エリポンさんの攻撃は避けられないから、もう避けない。
 マーはずっとずっと攻撃だけするから。」

720 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/27(金) 12:58:36
ハルナンの気絶はやっぱり信じてもらえないみたいですねw

721 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/28(土) 18:57:32
以前からモーニング帝国ではすべての兵に模擬刀が支給されていたのだが、
その模擬刀を今の形状に改良して、より使いやすくしたのがマーチャンだった。
従来の模擬刀は個人の用途によって刀身の長さや重量が異なる"半オーダーメイド型"だったため、
一般兵や研修生が憧れの帝国剣士と同じスタイルの戦闘法をとるのには適していた。
しかしその反面、他の帝国剣士に心変わりした際には剣を一から作り直さなくてはならないため難儀したという。
(この現象を彼ら彼女らは推し変と呼んでいる。)
そこでマーチャンはどんなスタイルにも対応可能な扱いやすい剣を開発し、
汎用的な模擬刀として兵士たちに配布することを決めたのだ。
これによって兵士らは好きな時に好きなだけ戦闘スタイルの色を変更できるようになった。
これが現代の最新型の模擬刀なのである。
そんなマーチャンが作った模擬刀なのだから、性能を最大限に引き出すことが出来る。
二刀流がいかに効果的に相手を痛めつけることが出来るというのも、"覚え"済みだ。

「やぁーーー!!」

マーチャンは両腕をグルグルと回し、エリポンに斬りかかる。
子供が泣いた時に見せるグルグルパンチのような技ではあるが、これがなかなかに避けにくい。
だがそこは帝国剣士一の怪力を誇るエリポンだ。
二本の腕でマーチャンの両方の剣を白刃取り、完全に動きを止めてしまう。

(痛っったぁ……掌の骨がグチャグチャになっとる……でもここで気張らんと!)

激痛ではあるが耐えられない程ではない。
これでマーチャンを無効化出来たのだと思えば活力も湧いてくるものだ。
しかしそう思ってたところで、マーチャンは予想外の行動を取り出した。

「それあげます」
「えっ?」

なんとマーチャンは剣士の命とも言える剣を簡単に捨てては、
白刃取りをした時点で満足したエリポンの腹に目掛けて突進したのだ。
言うならばこれは無刀流。
武器に精通しているマーチャンは武器を失った時の戦い方も覚えていたのである。

「うぐっ……」

鳩尾にマーチャンの肩を打ち込まれたので、エリポンはひどく苦しんだ。
これまでの疲労やハルナンにやられた怪我も相まって、意識が飛びそうになってくる。

722名無し募集中。。。:2015/11/28(土) 20:27:59
そりゃハルナンだもの誰も信じないってwてか推し変ってww

723 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/29(日) 17:27:23
武道館待機中。。。
公演開始までに更新しようと思ってましたが難しそうです……

724名無し募集中。。。:2015/11/29(日) 21:58:41
マロ卒業おめ
作者さんは武道館行ってたんだね〜自分はLVで見てました

725 ◆V9ncA8v9YI:2015/11/30(月) 02:32:52
卒コンは最高でした。福田花音という人の偉大さを再認識した日でしたね。
ライブ中盤の特殊なメドレーはこれまでのハローで(たぶん)見たことのない取り組みだし、
それを息切れもせずに普通にやってのけたのが凄かったです。

あと、関係者席にいる鞘師が開演前に転倒したのはちゃんと目撃しました。
あれもこれまでのハローにない取り組みでしたねw

726名無し募集中。。。:2015/11/30(月) 06:30:43
言葉ではなく歌の継承って感じがして娘。とはまた違った卒コンだったね

鞘師転倒は取り組みじゃねーw
LVだから見れなかったんだよな…

727 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/01(火) 12:29:08
次回更新遅れます。。。深夜頃の予定です。

728 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/02(水) 02:59:13
マーチャンは攻めの手を緩めなかった。
地団駄を踏むようにエリポンの足を何度も何度も連続的に踏みつけることによって
掌の骨だけでなく、足の甲の骨までも砕いていく。

「〜〜〜〜〜!!」

あまりにも非情な仕打ちを受けた結果、エリポンは声にならない声をあげることしか出来なかった
これではもうエリポンの手足は使い物にはならないため、今後はそれらを封じながら戦うこととなる。
しかし、手足を使わないスポーツなんて存在するのだろうか?
手が使えなければどんな器具も持つことが出来なくなる。
足が使えなければ走ることも跳ぶことも出来なくなる。
結論から言えば、こんな状況を覆すような魔法をエリポンは備えていない。
ひょっとしたらこの広い世界には手足を使わないスポーツも存在するのかもしれないが、
流石のエリポンもそこまではカバー仕切れていなかったのである。
だが、これで手も足も出ないと決めつけられるのはエリポンも心外に思っていた。
手も足も出ないならば、他のところを出せばいいのだ。

(頭突きならどうだ!)

エリポンがとった行動は、ただ頭を振り下ろすだけの行為だった。
折れた足では自重を支えることも跳躍することもままならないため、サッカーのヘディングとは大きく異なるが
フクやエリポンの強力な攻撃を受け続けてもうヘロヘロになっているマーチャンにとっては
とても効果的な攻撃手段に見えた。
ただ一撃だけでも良いので、エリポンの頭とマーチャンの頭を衝突させることが出来ればそれで十分なのだ。
エリポンの狙いは相打ち。
自らを犠牲にしてでもここでマーチャンを仕留めることが出来れば、戦況はかなり有利になる。
死んだふりをせざるを得ないほど切羽詰まっているハルナンを、フクとサヤシの二人がかりで倒せば良いのだから
ここでマーチャンを倒すことがどれだけ重要なのかはよく分かるだろう。
ところが、そんなエリポンの思いはあと一歩のところで届かなかった。

「それ、知ってるよ」

マーチャンはただ半歩だけ後退した。
それだけでエリポンの頭突きの軌道から外れることを、これまでの経験で知っていたのである。
エリポンがマーチャンに対してアドバンテージを持てていたのは「魔法」を使っていたからだ。
その「魔法」が封じられたのであれば、もはやマーチャンの敵では無いのである。
エリポンの頭突きは虚しくも回避されることとなる。

729 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/03(木) 12:57:59
頭突きが外れたと自覚したとき、エリポンはひどく絶望した。
もう彼女には体勢を整えるだけの余裕も残されていないので
後はマーチャンにやられるだけだと思ったのだ。
ところが、勝機は完全には途絶えていなかった。
自身の頭が地に落ちる直前、エリポンは股の間から後方を見ることが出来たのだが、
そこから希望とも呼べる存在が迫ってくることを確認したのだ。

「エリポン!そのまま持ちこたえて!」
「サヤシ!?」

すぐそこまで接近してきていたのは、Q期の味方サヤシ・カレサスだった。
ハルナン戦に備えて休めと念押ししたというのに、友だちを助けるため駆けつけてきたのである。
色々と思うことはあるが、エリポンはここでは素直に喜んだ。
そして、サヤシの出した指示に全力で応えようとする。

(そのまま持ちこたえる?……この体勢のままでいろってこと?)

頭突きを避けられて頭が地まで下りたその姿は、奇しくも馬跳びの馬の形に似ていた。
サヤシの声が無ければこのまま倒れこむところだったが、
エリポンは必死に馬の形をキープする。
この体勢こそがマーチャンに勝利する鍵なのである。

「エリポンごめん!ウチ跳ぶけぇ!」
「いっ!?」

サヤシは駆けつけた勢いのままエリポンの背中を強く叩き、その反動で跳躍した。
先ほど天気組が見せたヤグラと比べるとあまりにも低いが、
"馬跳びからの斬撃"という珍しい攻撃を敵に見せる目的は十分に果たしていた。
こんな攻撃、マーチャンにとってはもちろん初体験。
少しの回避行動もとることが出来ず、サヤシの模擬刀を脳天で受けてしまう。

「ぎゃあ!!」

フクの必殺技をはじめとして何度も強打を受け続けていたマーチャンには
今回の攻撃まで受けきることの出来る体力は残っていなかった。
アユミンやハルと同じように、床へと倒れていく。
そして気を失ったのはマーチャンだけではなく、エリポンも同様だった。
サヤシに背中を叩かれたのが決定打になったのか、頭から床にぶっ倒れてしまう。

「あぁ……エリポンがやられてしまった……」

サヤシはエリポンに軽く頭を下げると、ハルナンの方へと目線を移す。
現状は天気組全員が床に伏せる形となっているが
これで終わりだとは少しも考えていなかったのだ。

「ハルナン起きとるんじゃろ?……決着つけよう。」

730名無し募集中。。。:2015/12/03(木) 17:08:05
エリポンwww

731名無し募集中。。。:2015/12/03(木) 17:57:29
ドラマチックきた!!でもちょっとエリポン残念だなw

732 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/04(金) 13:00:19
この場に立っている者はフクとサヤシの2名のみ。
他の帝国剣士はオダも含めてみな倒れてしまっている訳だが、
その内のハルナンが死んだフリをしているという事実は、見届け人たちにもバレていた。
いくら気を失った風を装っても、勝利に対する執念までは隠せなかったのである。

「なかなかの胆力ですね。普通は私たちのような大物に見届けられたら、最後まで堂々と戦い抜くものですけど。」

マノエリナの声は皮肉のように聞こえるが、これは心からの褒め言葉だった。
どんな状況でも勝利のためなら泥を平気でかぶる精神を評価しているのだ。
その反面、厳しい意見も同じように飛び出していた。

「でも、ここからの逆転劇は期待できなさそうですよね。」

マノエリナの意見はもっともだった。
Q期側も満身創痍とはいえ、まだサヤシには普通に戦えるだけの余裕がある。
フクが動けないことを考慮に入れても俄然有利だろう。

「マノちゃん、まだ分からないじゃないか!ここから気合を入れて超パワーで相手を投げ飛ばせば……」
「それはマイミさんだから出来るんです。彼女には無理です。」
「う……」
「断言しますよ。天変地異でも起きない限り、天気組の勝利はあり得ません。 命を賭けてもいいです。」
「そんなに言うかぁ……」

マノエリナの言うことは極論ではあったが、マーサー王とサユ王も概ね同じことを感じていた。
そして、Q期が勝利に近いことはフクとサヤシも理解していたし、
何と言ってもハルナン自身がそうとしか思えていなかった。
全身から滝のような汗を流しながら、ハルナンは思考する。

(どうすれば……どうすれば私は王になれるの!?)

此の期に及んで、ハルナンには勝利するビジョンが描けていなかった。
ここで立ち上がろうとも、このまま死んだフリを続けようとも
サヤシに捕まって終わるイメージしか出来ていないのだ。
とは言え全くの無策という訳ではない。
ただ、「それ」が叶うための事象が発生する確率が限りなく低いのである。
決闘前、作戦を練る段階では「それ」はほぼ確定的に起こりうるものだと信じていたのだが、
ここまで来てもまだ来ないために、ハルナンの焦りが加速していく。

(どうして!?どうして来ないの!?……絶対に来るって信じていたのに……)

絶望に打ちひしがれたハルナンは、死んだフリの最中だというのにもかかわらず、天を仰いでしまった。
もうどうとでもなれと、ヤケになったのかもしれない。
ところがその時、ハルナンの頬へと朗報が舞い降りてくる。

「きた!!!!!」

突然ガバッと立ち上がったハルナンを見て、一同は驚いた。
戦闘中とは思えぬ喜びように、何が何だか分からなくなってくる。
そんな周囲の反応も構わず
ハルナンはフクを指さし、見栄を切る。

「やっと来ました。王の座、もらいます。」

733名無し募集中。。。:2015/12/04(金) 18:22:29
何が来たの?

734名無し募集中。。。:2015/12/04(金) 20:51:24
マイミが居ると言うことは荒れしかない←

735名無し募集中。。。:2015/12/05(土) 11:33:05
頑張れハルナン!

736名無し募集中。。。:2015/12/05(土) 12:43:33
マーサー王国の世界で作って欲しいな

三國志ツクールが発売されるのでハロプロ三國志のアイデアください [無断転載禁止]���2ch.net
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1449236618/

737 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/07(月) 13:00:25
ポツリ、またポツリと水滴が落ちてくる。
それが雨粒だと気づくのには時間は要らなかった。
何故ならば、天候は10秒も経たぬうちに集中豪雨へと変わっていったのだから。

「な、なんなんだこの雨はっ!」

雨どころか強風も伴う暴風雨に打たれたことにサヤシは驚きを隠せなかった。
この訓練場の天井は以前クマイチャンがぶっ壊したために、雨風を防ぐ機能が失われていたことは知っていたが
こうも急に天気が変わるなんて異常にも程がある。
よりによって大事な決闘の時にこんな悪天候に見舞われるなんてとんだ災難だとも思ったが、
Q期の将、フク・アパトゥーマはこれが必然であったことに気付き始めていた。

「……そうか!なんで今まで忘れていたんだろう。」
「フクちゃん!?」
「サヤシ気をつけて!この雨は仕組まれている!!」

フクが叫ぶ位置から少し離れたところ、
見届け人の席ではマイミとマノエリナがバツの悪そうな顔をしながら俯いていた。
サユは自身の上着を動けぬオダに被せると、2人に対してチクリと言い放つ。

「この雨、あなた達のせいでしょ。」
「あぁ……」「おそらくそうかと……」

サヤシは知らなかったようだが、マーサー王国のマイミとマノエリナと言えば超のつくほどの雨女として有名だった。
それは迷信や噂話といったレベルを遥かに超えており、
催し物を延期させたり、移動の足を止めたりすることはしょっちゅうだ。
そんな雨女の2人が見届け人としてやってきたのだから、本日の天気が豪雨になることは決定付けられていたのである。

「そして、あなた達ふたりを見届け人にするよう扇動したのは……」

そう、こうなるように仕向けたのは他でもないハルナンだったのだ。
敵に対して有利に振る舞うには「地の利」を生かすことが鉄則ではあるが
決闘場が誰もが知る訓練場であるためにそれを有効活用することは難しい。
ゆえにハルナンは「地の利」ではなく「天の利」を生かすことを考えたのである。
今こうして雨が降ることはハルナンのみが知っていた。
これからハルナンは誰よりも有利に立ち振る舞えるのだ。

「でもっ!この雨の中じゃあハルナンだって上手く戦えんじゃろっ!」

息も出来ないほどの豪雨。しかも足場も悪いので少し歩くだけでも転倒しかねない。
普通の戦士であれば剣を振るうことすら困難なはずだ。
しかし、ハルナンには自分だけがただ一人動くことの出来る確固たる自信が備わっていた。

「私を誰だと思ってるんですかね……天気組の『雨の剣士』ですよ?」

738名無し募集中。。。:2015/12/07(月) 13:18:47
最初なんでマノチャンが?って思ったけどそう言うことだったのか!?ハルナンオソロシイ…w

739 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/07(月) 13:18:54
>736
こんなのがあるのですね。
手を出してみたいが、時間が無いので断念しますw
続きを書く方に専念せねば、、、

740名無し募集中。。。:2015/12/07(月) 20:34:34
たまんねー!頑張れハルナン!

741名無し募集中。。。:2015/12/07(月) 23:51:56
マーサー王完結したら期待してますw

742 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/08(火) 13:23:04
雨の剣士という通り名は、決して雨天に強いからという理由で付けられたわけでは無い。
敵の身体部位を機能停止させるほどに斬りまくった結果、
そこから発生する血の雨に由来していたのだ。
なのでハルナンも他の剣士同様に荒天ではパフォーマンスが落ちるはずなのだが、
今日の彼女の動きからはそれを全く感じさせなかった。

「サヤシさん、あなたさえ倒せば実質的な勝利なんですよ!」

大雨で足元の悪い中、ハルナンはまったく滑ることなくスイスイと前進していっている。
ただでさえ瓦礫の上は動きにくいというのに、そこに雨水も加わった状況でこうもスムーズに動けるのは異常だ。
訓練とかでどうこう出来るレベルを超えている。
まるで特殊能力者のように振る舞うハルナンを前にして、サヤシは焦らずにはいられなかった。
だが、それでサヤシが圧倒的に不利だと決めつけるのは早計だ。
何故ならサヤシとハルナンの実力には大きな開きがあったからだ。

「ウチは負けない……ハルナンの攻撃の威力はだいたい分かっちょる……
 ガチンコでやったら負けるはずがないんじゃあ!!」

サヤシは己を鼓舞するかのように叫びだした。
この足元の悪さではもはや一歩も動くことは出来ないが、
幸いにも敵であるハルナンの方からこちらにやってきていた。
ならばやるべきは模擬刀と模擬刀のぶつかり合い。
となればいくら雨が降っていようと、剣術に長けているサヤシが有利に違いない。
非力なハルナンの斬撃を受けながら、強烈な一撃をぶっ放せば良いのだ。
サヤシは、そう思っていた。

「まだ分からないんですか?サヤシさん。」
「!?」
「私の繰り出す攻撃は、全てが必殺技級の威力に変わるんですよ。」

ハルナンはサヤシの左肩を、コン、と軽く小突いた。
普通であればなんともない攻撃だ。
むしろ攻撃とすらみなされない行為かもしれない。
しかし、今は状況が異なっていた。
雨水で踏ん張ることの出来ないサヤシはただそれだけでバランスを崩してしまい
大袈裟に転倒し、顔面から地面に落ちてしまった。
それもただの地面ではない。尖ったものがたくさん転がる瓦礫の山にだ。
こうなれば、サヤシの顔は血まみれのグシャグシャになってしまう。

「あ……ああ……」
「女性の顔を潰すのは心苦しいですね。だからサヤシさん、そのまま寝転がることをオススメしますよ。」

743 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/08(火) 13:24:00
三部まで完結するのは来年末とかになってそうですねw

744名無し募集中。。。:2015/12/08(火) 14:15:45
乙女を顔をもぐしゃぐしゃに痛めつける作者はSだなw

745名無し募集中。。。:2015/12/08(火) 17:14:26
S描写には定評のある作者さんだからな

746 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/09(水) 12:58:11
転倒による顔面への強打は痛いなんてものではなかった。
出血量も尋常ではなく、雨水で流される暇もなく溢れかえっている。
ただ肩を軽く叩かれただけでこれだけの大怪我を負わされたため、当然サヤシはパニックに陥る。
ハルナンはその狼狽っぷりを見て満足したのか
くるりとフクの方を向いて歩きだしてしまった。
おそらくはサヤシにやったように、フクも滑らして転ばすつもりなのだろう。

(今のフクちゃんが転ばされたら……もう起き上がることは出来ない!)

サヤシはパニック状態にあるものの、仲間の危機についてはなんとか察知することが出来た。
先ほどハルナンは「寝ててください」などと言っていたが、そんなこと出来るはずもない。
例え自分の顔が傷つこうとも、血液を大量に失おうとも
フク・アパトゥーマの刀として働く使命だけは果たさねばならないのだ。

(背後からやるしかない!ハルナンを斬るんじゃ!)

サヤシは上半身を起こし、この場を去ろうとするハルナンには向かって斬りかかった。
不意打ちではあるが、真剣勝負に卑怯もへったくれもない。
悪いのは相手の状態もろくに確認しないまま背を向けたハルナンの方なのだから。
……と、サヤシは思っていたが
このすぐ後の行動でその認識を改めることとなる。

「やっぱりそう来ますよね。」

なんとハルナンはサヤシの方へと身体の向きを戻し、
低い体勢から攻撃を仕掛けるサヤシの額を強く踏みつけたのだ。

「がっ!!……」
「寝てるわけないですもんね。サヤシさんのストイックさ、本当に感服します。」

『サヤシは必ず起き上がって奇襲をかけてくる』
ハルナンはそう予想していたからこそ、このような行動を取れていた。
サヤシは逆境に立てば必ず死に物狂いで立ち向かってくると、心から信じていたのである。
そして、この時ハルナンが見せた凄技は行動予測のみではなかった。
この滑りやすい環境で、一時的とはいえ蹴りのために片足で立っていたことが既に妙技なのだ。
これにはマノエリナも不思議がる。

「あのバランス感覚はいったい?……まるで雨天の戦いに慣れきっているような……」

マノエリナの発言がヒントになったのか、サユ王は何かに気づき始めた。
そしてマイミの方を向き、自身の考えを述べていく。

「ハルナンはこの一ヶ月間のほとんど、マイミと行動を共にしてたのよね?」
「その通り。訓練中も防衛任務中もずっとついてきていたな。」
「その期間のマーサー王国……いや、マイミ周辺の天気はどうだったの?」
「……言わなくてはダメか?」
「言って。」
「毎日が雨天の連続だ。」
「やっぱり。」

747 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/09(水) 12:59:32
描写は前作比では抑えめにしてるつもりですw

748名無し募集中。。。:2015/12/09(水) 18:05:50
ハルナンスゲー

勝っちゃうんじゃね?
ハルナン王のモーニング帝国も見てみたい

749名無し募集中。。。:2015/12/09(水) 19:58:47
ハルナン王か…勝手なイメージだけどハルナンには参謀がよく似合うw
それか三国志の司馬懿のように国を乗っ取って自らが王となるような…w

750名無し募集中。。。:2015/12/09(水) 20:40:02
>>749
すごく分かるわ

751名無し募集中。。。:2015/12/09(水) 22:01:34
いや俺マジでここのハルナンのファンになって現実の飯窪春菜も推すようになってしまった

勝利の為には手段を選ばず我が身も省みず全力なところはどこか飯窪さんらしいジョジョのキャラっぽくもあって
作者さんの動かし方には感心させられますわ

752 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/10(木) 12:53:37
私の書く飯窪さんモチーフキャラは何故か黒くなりがちなんですけども
好評のようで安心しました。
このまま第一部の終わりまで突っ走っていきます。

あ、今日の更新は夜になります> <

753名無し募集中。。。:2015/12/10(木) 13:08:57
なんか完結する頃にはホントはるなんハロプロリーダーとか就任してそうだよなw

754 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/11(金) 02:49:43
名目上では、ハルナンは罪を償うためにマイミの側につくということになっていたが、
彼女の本当の狙いは「雨に慣れる」ことであった。
超がつくほどの雨女であるマイミの近くにいれば、必ず豪雨に見舞われる。
戦闘中だろうと、食事中だろうと、睡眠中だろうと、雨女パワーが弱まることは無いのだ。
そうすることによってハルナンは雨水にも耐えうるバランス感覚を身に着けようとしたのである。
……とは言っても、四六時中すべてが雨という訳には流石にいかなかった。
今日この日だってハルナンを焦らせる程度には晴れ続けていただろう。
いくらマイミが雨女でも、せいぜい降水確率を大幅に上げることくらいしか出来ないのだ。
ところが、ハルナンは晴れの日にだって雨の経験を積む作戦を練っていた。
それは「マイミの台風のようなプレッシャー」を浴び続けることだった。
マイミが臨戦態勢に入るとき、まるで暴風雨の如き重圧を発することは
アンジュ王国の番長タケやカナナンが身をもって経験している。
特にマイミはハルナンのことを自分を騙した敵だとみなしていたために、
瞬間最大風速計測不能級の台風のようなプレッシャーを絶え間なく放ち続けていた。
それを至近距離で常に浴び続けたのだから、そんじょそこいらの雨に当たるより良い経験になったろう。
正直言って、負傷した身体で緊張し続けることは吐くほど辛かったし、
キュート戦士団の他の4名それぞれから受けたプレッシャーも苦痛だった。
気が狂いそうになった。逃げ出したい衝動に何度も駆られた。
だが、ハルナンはなんとか耐えきったのだ。信念だけは貫き通したのだ。
最終的には、あれほど敵意を抱いていたマイミから認められた程だ。

「雨が降り続ける限り、私は帝国剣士最強です。これは傲慢でもなんでも有りません。事実です。
 サヤシさんよりも……そして、フクさんよりも強いんですからね!!」

ハルナンはフクをキッと睨みつける。
豪雨が邪魔をしてその時のフクの表情はうまく読み取れなかったが、
相当に焦っているということは容易く理解できた。

「動けないんですよね?そこで黙って見ててください。
 サヤシさんにトドメを刺したらすぐに向かいますから。」

755名無し募集中。。。:2015/12/11(金) 06:36:52
キュート戦士団の四人はどんなプレッシャーなのか…そういやアイリも雨の日に強くなるんだよな

756名無し募集中。。。:2015/12/13(日) 01:51:27
>>594
自ら敵陣に乗り込んで、辛さに堪え忍ぶくらいの気概

ハルナンのことか

757 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/14(月) 12:32:06
>>753
残りのベリキューのプレッシャーについては考えています。
前作ネタだったり、いまの活躍を参考にしたものだったりと様々ですが……

>>754
!!
とりあえずノーコメントでw

758 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/14(月) 12:33:07
あ、アンカー間違えてました。
それぞれ>>755 >>756 に対するレスです。

759 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/14(月) 12:59:48
またか、とサヤシは思った。
格下扱いしていた相手に出し抜かれるという構図は、
一ヶ月前にハル・チェ・ドゥーにやられたのと全く同じ。
自分があまりにも成長していないため、落ち込みかけてしまう。

(いや、今は落ち込んでる場合じゃない!)

サヤシが思う通り、ここで落胆しても何も始まらなかった。
もしも諦めればハルナンはフクのところに行くだろう。
このハルナン圧倒的有利の環境で一対一の状況を作るのはまずい。
悔しいが、そうなればフクは長くは持たないだろう。
だからサヤシはここでハルナンを止めるしかないのだ。

(仕留める……までは出来んじゃろな。
 ハルナンは強い。ウチはまだ未熟……ちゃんと認めよう。
 じゃけど、削ることなら出来るはず!!)

サヤシは己の額を自ら地面に叩きつけ、
破片だらけの床であることもお構いなしにグリグリと擦り付けていく。
出血する傷口を更に痛めつけるのには理由があった。

「ウチの十八番は居合いだけじゃない!ダンスもじゃ!!」

サヤシは接地したおでこを起点にして、逆立ちするように両脚を上げていった。
これはヘッドスピンと言われるダンスの技。
本来は平らな床の上で行われるものではあるが、頭部を軸にして高速の回転力を発生させることが出来るのだ。
サヤシは自らが負傷するほどのリスクを負う代わりに、ハルナンに蹴りをぶつけようとしたのである。
ハルナンもサヤシが何かするとは思っていたが、それがダンスの技とまでは想像していなかったので
至近距離でサヤシの回転を受けてしまう。

「ああっ!!」

人間一人分が勢い付けてぶつかってきたので、ハルナンは耐えきれず転倒してしまう。
いくらハルナンが豪雨の中でも転倒しないバランス感覚を身につけたとは言え、
蹴りを受けても転ばない訓練をしてきた訳ではないので、当然の結果とも言える。

760 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/15(火) 12:54:45
転倒した結果、ハルナンは背中を強く打った。
それだけで呼吸が困難になるほどに苦しいし
その上、細かな破片が突き刺さったのか、あちこち出血していることも分かる。
自らが仕掛けた瓦礫だらけの戦場で、自分が傷つくとは皮肉なものだ。
なんとか意識を保ってはいられたが、もう少しサヤシの攻撃が重かったら正直言って危なかっただろう。
サヤシが小柄で細いのが幸いした。
今よりもう少しウェイトがあって、ポッチャリしてたら勝負は決していたのかもしれない。
それだけハルナンはギリギリだったのだ。
だが、そんなハルナンにもそれなりの成果は得られたようだった。

「あれ、サヤシさん……ひょっとして気を失ってます?」

ハルナンの目の前には、頭部から多量に血を流したサヤシが横たわっていた。
おそらくは出血多量と激痛に耐えきれず、気絶してしまったのだろう。
最後の強敵と思っていたサヤシがこうもあっけなく倒れたので、ハルナンはにやけそうになるが
ここは気を引き締めて、冷静に対処することにした。

「ちょっと分からないので、確認させてもらいますね!」

ハルナンはわざと大きな声を出しては
立ちあがって、サヤシの横っ腹を強く踏みつけた。

「念のためもう一発!」

一発と言っておきながら、ハルナンは二発、三発、四発もサヤシを蹴飛ばした。
この行為にはサヤシの安否を確かめるという理由の他に、
Q期最後の生き残りであるフク・アパトゥーマを刺激するという意味も込められていた。

(私の知っているフクさんは仲間を足蹴にされて黙っていられる人じゃないはず!
 さぁ!そのズタボロの脚でここまで来てみてください!!)

761名無し募集中。。。:2015/12/15(火) 15:27:44
ハルナンおっかねえよw

762名無し募集中。。。:2015/12/15(火) 19:20:08
心臓の音を聞くんじゃないのか
確認させてもらいます でDIOを期待したのにw

763名無し募集中。。。:2015/12/16(水) 02:39:39
ハルナン…ゾクゾクするねぇ

764 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/16(水) 10:57:21
激昂したフクが瓦礫と豪雨に手こずっているところを叩くのがハルナンの勝ち筋だった。
味方であるサヤシがこんなにも酷い仕打ちを受けたのだから、
仲間思いのフクならいてもたってもいられなくなるだろうと考えていたのだ。
ところが、フクはハルナンの思った通りには動かなかった。
サヤシを幾度と踏みつけても、彼女は元の位置を離れようとはしない。

(おかしい……いつものフクさんじゃない?)

これ以上サヤシをいたぶるのが無駄だと感じたハルナンはすぐに攻撃を停止する。
サヤシが戦闘不能だというのは十分すぎるほど確認できたので、
黙りを決め込んでいるフクの方へと自ら向かうことにする。

「リスクを冒さないと利は得られないってことですね…
 分かりました。長い長い戦いに決着をつけに行きましょう。」

降りしきる大雨の中、ハルナンは敵将フク・アパトゥーマの元に一歩、また一歩と歩みを進めていく。

765 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/16(水) 10:58:07
ちょっと短めの更新ですが、、、


DIOネタは思いつかなかったですw

766名無し募集中。。。:2015/12/16(水) 12:40:03
静かなるフクが恐ろしい…w

767名無し募集中。。。:2015/12/16(水) 17:25:07
いかに帝国剣士と言えどスタンドなしで心臓止めるのは厳しいやろw

768 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/18(金) 10:49:31
視覚的な情報が雨で遮られていたため、ハルナンは黙するフクを脅威に思っていた。
ところが実際は恐れることなど何もなく、
当のフクはただただ泣きそうな顔で絶望に打ちひしがれているだけだった。
まさに杞憂も杞憂。
限界を迎えた脚が本当に言うことを聞かないため、フクは動きたくても動くことが出来ないのである。
その上、必殺技Killer Nを放つ時に天気組三人から受けた傷が痛むので上半身も満足に動かない。
即ちフクはこれ以上ない程の満身創痍。
二発目の必殺技を繰り出すどころか、這って移動することすらままならないのだろう。
しかも雨風は継続して容赦なく降り注いでいる。
冷たく身にしみる雨粒は体力と熱量を次々と奪っていくため、
フクはあと数分も経過したら立てなくなるくらいに衰弱していた。
空が晴れれば少しは体力も回復するのかもしれないが、それがあり得ないことはフクが一番よく知っている。
食卓の騎士を尊敬しているだけに、マイミの雨女パワーの弱化を想像することすら出来ないのだ。
マイミとマノエリナを凌ぐほどの晴れ女が突然現れることなんてそう有り得た話ではないため、
そこに関してはフクも諦めていた。
だが、この場で立ち続けることだけは決して諦めてはいない。
歯を食いしばり、意識が飛びそうになるのを堪えて、気を引き締める。
もしもここで倒れてしまったらエリポンの、サヤシの、カノンの犠牲が無駄になることを分かっているからこそ
フクは恐ろしい強敵の前でも立つことが出来るのだ。
しかし、裏を返せばフクを支えるモチベーションはたったのそれだけ。
普段は応援という形で勇気を貰うのだが、今のこの状況ではそれが全くと言って良いほど期待できない。
唯一の仲間であるQ期はみな倒れているし、
立会い人は中立であるため、声に出してフクにエールを送ることはない。
つまりこの広い訓練場でフクはひとりぼっちなのである。
応援といった後押しもなく、弱った身体でハルナンに対抗するのは至難の技に違いない。
そうして困窮するフクに向かって、ハルナンがまた一歩近づいてくる。

769名無し募集中。。。:2015/12/18(金) 12:24:58
まさかもう何も打つ手が無かったとは・・・
雨女二人を覆す位の晴れ女なんて彼女達位しかいないけど…

770 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/19(土) 15:04:05
ハルナンがフクの元に到達したちょうどその時、
本来ならばありえないはずのことが起き始めた。

「晴れ……た?」

先ほどまで訓練場を局所的に叩きつけていた豪雨が、嘘のように消え去ったのだ。
黒々とした雨雲も、吹き飛ばされそうなくらいの強風も、今はもう何もない。
唯一存在するのは暖かな日差しのみ。

「ど、どういうこと!?ありえない!」

当然のようにハルナンはパニックに陥る。
マイミとマノエリナといった盤石の布陣を築き上げてきたはずだったので
こうも簡単に雨が止んだ事実を受け入れられていないのだ。
信じられないような顔をしているのはフクも同じ。
だが、フクは知っていた。
雨女二人のパワーをも覆すことの出来る晴れ女集団がマーサー王国に存在することを。

「来てくれたんですね……皆さんお揃いで。」

フクが感激の涙を流すのと同じタイミングで、マイミとマノエリナは互いに顔を見合わせる。

「なるほど!あいつら近くに来ているんだな。」
「はい、この感じからすると6人全員いるに違いありません。」

一連の光景を目にしたマーサー王は、大きな声をあげて笑い飛ばした。
結末が全くと言っていいほど予想のつかない決闘に、心から満足しているようだった。

「フク・アパトゥーマも、ハルナン・シスター・ドラムホールドも
 どちらも勝利のために食卓の騎士の力を利用するとは……なかなか面白いじゃあないか。
 この勝負、どちらが勝つのかいよいよ分からなくなってきたとゆいたい。」

771 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/19(土) 15:05:05
>>769
正解ですw

772名無し募集中。。。:2015/12/19(土) 15:47:00
>>27
マーサ…6人…ハッ!?

松か?松なのか!?

773名無し募集中。。。:2015/12/19(土) 15:47:45
安価ミス

774名無し募集中。。。:2015/12/19(土) 18:40:17
>>771
当たっちゃった…って王国ほったらかしで何してるんだかw

775名無し募集中。。。:2015/12/19(土) 23:48:13
食卓の騎士4人いれば十分なほど強くなっているってことなのだろう

776名無し募集中。。。:2015/12/20(日) 21:46:12
文化番長メイメイがまさかの卒業・・・マーサー王始まってからすでに3人(幻の4人)卒業だなんて…変化激しくて構想狂いまくってそうw

777名無し募集中。。。:2015/12/20(日) 21:47:30
>>775
お留守番のキュート戦士団…今は4人か6人かも気になるな…

778 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/21(月) 13:26:36
モーニング帝国城の城門。
現在そこにはマーサー王国から来たとされる6名の騎士が居座っており、
帝国の門番や、警備研修の真っ只中にある研修生らを震え上がらせていた。

「モモ!本当に私たち全員がここまで来る必要あったのか!?」

モモ、と呼ばれる女性に対して怒鳴り声をあげたのは
鋭い目付き(と顎)が特徴的な女性だった。
怪物のようなオーラを放つ集団の中でも彼女のそれは特に殺人的であり、
兵士らはみな、全身の四肢が鋭利な刃物によって輪切りにされたかのような錯覚に陥っていた。
人体の「普段は見られない裏側」をオープンに晒す感覚は、イメージとは言え恐ろしい。

「あら、ミヤはマーサー王に何かあっても良いって言いたいの?
 私たち全員で帰路を護衛するべきだと思わなかった?」
「マイミとマノエリナがついてるじゃないか!どう考えても十分すぎる。」
「"あの時"みたいなことが無いとも言えないでしょ?」
「うっ……」

通称モモも、ミヤと呼ばれる女性に負けず劣らずの存在感を持っていた。
彼女が発するのは冷気。
戦士として位の低いものはすぐにでも凍死してしまうほどの寒気を感じてしまう。

「ちょっと二人とも!喧嘩はしないの!」
「ほんとだよ!マーサー王を護る私たちが仲間割れしちゃ意味が無いよ!」

二人の仲裁に入ったのは、「色黒の長身」と、「長身の域を超えた巨人」だった。
色黒はとても明るくて、戦いとは無縁のように見えたが
その太陽のような明るさが突出しすぎるあまり、兵士らは業火の如き熱に炙られる。
肌が焼けて真っ黒コゲになる苦痛は並大抵ではなかった。
そして巨人は巨人で、天空から押さえつけてくるかのような重力を発生させている。
門番と研修生の全員がここから逃げ出したいと思っているのに、
それが叶わないのはこのプレッシャーのせいだったのだ。
もう一人、さっきから退屈そうにしている美女もいるが
その美女のオーラも例外なく凶悪。
ゆえに一般兵らは5種類の殺人級オーラをグッチャグチャに浴び続けなくてはならなかった。

「よし分かった!モモの言い分を少しは認めよう!護衛の強化は必要だった。」
「少し?何よその引っかかる言い方は。」
「副団長である私ならびに、ベリーズの構成員4名が王を護るのは認める。
 でも、お忙しい団長のお手を煩わせる必要はなかったんじゃないか!?
 ですよね?シミハム団長!」

視線の先にいたのは、目を閉じて座禅を組んでいる小柄な女性だった。
派手な怪物集団の団長と言うにはあまりにも地味で、弱々しくも見える。
そして不思議なことに、その団長からは全くと言って良いほどオーラが感じららなかった。
他のメンバーが天変地異を起こしているのに対して、彼女は"無"そのものなのだ。
一見して弱き者だというのに、化け物らみなが注視してる。
目をパチリと開いた団長が首をちょっと横に振るだけで、大袈裟に反応をする。

「団長!……団長がそう言うのであれば……」
「ほら〜私の方がシミハムの気持ちを分かってたでしょ?」
「う、うるさい!」

779 ◆V9ncA8v9YI:2015/12/21(月) 13:28:14
芽実の件も驚きましたね、、、
でも二部の内容にはほとんど影響ありません。
まだ固まって無い三部の内容は揺れてますけどねw

キュートの人数はまた今度に。

780名無し募集中。。。:2015/12/21(月) 16:40:28
オーラやべぇw
兵士達は失神して漏らすレベル

781名無し募集中。。。:2015/12/21(月) 20:50:02
団長のプレッシャーは『沈黙』かな?そうか…シミハムの声はもう。。。涙

そっか取り敢えずメイメイは話に影響ないのか〜

キュートはまだひっぱるのねw


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