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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」
768
:
◆V9ncA8v9YI
:2015/12/18(金) 10:49:31
視覚的な情報が雨で遮られていたため、ハルナンは黙するフクを脅威に思っていた。
ところが実際は恐れることなど何もなく、
当のフクはただただ泣きそうな顔で絶望に打ちひしがれているだけだった。
まさに杞憂も杞憂。
限界を迎えた脚が本当に言うことを聞かないため、フクは動きたくても動くことが出来ないのである。
その上、必殺技Killer Nを放つ時に天気組三人から受けた傷が痛むので上半身も満足に動かない。
即ちフクはこれ以上ない程の満身創痍。
二発目の必殺技を繰り出すどころか、這って移動することすらままならないのだろう。
しかも雨風は継続して容赦なく降り注いでいる。
冷たく身にしみる雨粒は体力と熱量を次々と奪っていくため、
フクはあと数分も経過したら立てなくなるくらいに衰弱していた。
空が晴れれば少しは体力も回復するのかもしれないが、それがあり得ないことはフクが一番よく知っている。
食卓の騎士を尊敬しているだけに、マイミの雨女パワーの弱化を想像することすら出来ないのだ。
マイミとマノエリナを凌ぐほどの晴れ女が突然現れることなんてそう有り得た話ではないため、
そこに関してはフクも諦めていた。
だが、この場で立ち続けることだけは決して諦めてはいない。
歯を食いしばり、意識が飛びそうになるのを堪えて、気を引き締める。
もしもここで倒れてしまったらエリポンの、サヤシの、カノンの犠牲が無駄になることを分かっているからこそ
フクは恐ろしい強敵の前でも立つことが出来るのだ。
しかし、裏を返せばフクを支えるモチベーションはたったのそれだけ。
普段は応援という形で勇気を貰うのだが、今のこの状況ではそれが全くと言って良いほど期待できない。
唯一の仲間であるQ期はみな倒れているし、
立会い人は中立であるため、声に出してフクにエールを送ることはない。
つまりこの広い訓練場でフクはひとりぼっちなのである。
応援といった後押しもなく、弱った身体でハルナンに対抗するのは至難の技に違いない。
そうして困窮するフクに向かって、ハルナンがまた一歩近づいてくる。
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