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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか、今度こそ」

405Mii:2021/07/18(日) 13:32:50 ID:E.ElLwKM
しかし、ごっそりFPを吸い取られて行きました…やむなし!
あとは、所在なく佇むダッシュリングを再利用――――!
さすがにこの大きさは、私がポイッと投げる訳にも行きませんから!



ロゼッタ「…………撃ち出しなさい――――!!!」スッ!



杖を振り下ろす先は、当然、あちら。
ダッシュリングの効果に従い、大きな大きな火球が手の為る方へ。
御三方目指してぶっ飛んで行きます!これで、一矢だけでも…いえ、まだまだ足りない!

火球のサイズが大きいのが祟って、速度があまり出ていない。
…作戦ミスですね、仕方がありません。反省はあとで。
ですから、結果を確認するよりも早く、すでに次弾を準備しています!



ロゼッタ「――――――――キラキラ落としっ!!」パアアアアアアアアアアアァァ

チコ「「「「「「「「わああああああああああぁぁぁぁ――――!!!!!」」」」」」」」



チコ8人を、手加減なにそれという感じで限界の限界まで速度を付けさせ、
一気に――――天空から、叩きつけるっ!!容赦は、しません!既にFPはすっからかんになりました!

たとえチコたちが上空にスタンバイしていることはわかっていても、狙われた者たちは為すすべ無し!

406Mii:2021/07/18(日) 13:38:30 ID:E.ElLwKM
前から火球、上から煌めくお星さま!さあ、どうされますか!
…おやおや、無謀にも、火球に条件反射で向かってこられたではないですか――――
キラキラ落としを食らうくらいならばと、妥協したということで――――





マリオ「あっつー!中々あっつー!」 \0.2%/

クッパ「ロゼッタにしては上出来なのだぁ!」\0.2%/

リンク「心頭滅却すれば火もまた涼しっ!」\0.3%/





マリオとクッパとリンクが凌ぎを削るエリアを 飲みこむはずの パイロキネシスは
とっさの反撃をまとめて受けて 10倍速で跳ね返された!▼



ロゼッタ「ふえっ」

ロゼッタ「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁ――――!!」チュドオオォーン!!



デイジー「何この無理ゲー」

407Mii:2021/07/18(日) 13:42:17 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「……あ、れ?まだ、私、K.O.されて…ない?」ムクッ



うつ伏せで、顔だけゆーっくりと上げ、状況確認。
というより、全身が真っ赤というか、プスプス焦げているというか、満身創痍というか。
一言でいうと、まるで動きません。



マリオ「お疲れー。10戦のノルマ達成だな」

クッパ「お疲れさんなのだ」

リンク「ロゼッタ、健闘したな!」



瀕死で倒れ伏す女性を、しゃがみ込みつつ囲む男性3人。悪趣味です。
そして、どんな甘い言葉で励まされようと、まったく健闘した気がしません。
そして、痛覚がマヒしたのか、痛みをあまり感じていないのが怖いです。



そうですか。試合、とうとう…終わってしまいましたか。
…って、どうして残念そうなのですか、私。終わってくれて、よかったよかった。

408Mii:2021/07/18(日) 13:45:22 ID:E.ElLwKM
マリオ「たった今、試合なら終わったぞー。今、しっかりとポイント集計をやってくれてるところだ」

リンク「ここでポイント計算ミスとか、やっちゃいけないからなー。結局ロゼッタ、撃墜できなかったし。
   いやはや、これは大きな誤算だったぜ…」

ロゼッタ「…………どう、してですか?気を失ってから、結構時間が経った気が」



自分ですら、あの跳ね返された火球を食らってすぐ気絶したのか、
それともふらつきながら少し足掻いてから倒れ込んだのか…それすら記憶があやふや。
ただ、倒されるだけの時間は十分すぎるほどあったはずなのに――――





リンク「いやぁ。やっぱり、ここまでフルボッコになってる女性を、
   無情に倒して優勝を勝ち取るってのは、スポーツマンシップから外れてる気がして」

マリオ「途中から狙わなくなったというか」

クッパ「3強同士だけでの真剣勝負に本気になりだしたというか」

ロゼッタ「その心境はもっと前に獲得しておいて欲しかったんですけどっ!!?」



思わず叫んだら、激痛走る。イタッ!本当に痛いっ!?
体のあちこちが千切れそうな感覚!?でも生きていると実感できてちょっと良かった!

409Mii:2021/07/18(日) 13:50:59 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「はやく結果を教えてもらってピーチ姫に回復してもらいましょう…」

ぐっ。ぐぐっ。ぐぐぐっ。
歯を食いしばって、よろよろと立ち上がろうとして…よろけて、よろけて。



観客「ロゼッタァー!よくやったー!お疲れさまー!」



心、少し温まりながら、どうにかこうにか立ち上がって…
今さらながら足の大怪我のせいで片足しかまともに使えないことに気付いて。
また倒れそうになる所、皆さんに腕を掴まれ助けてもらいました。
さ、さすがに倒れ込んで抱き止められるとかは恥ずかしいので、気を付けないと。



マスターハンド「それではぁ!!結果がまとまったようなので発表させていただきます!
       マリオ選手!クッパ選手!リンク選手!3人の最強ファイターたち!
       一体、誰が勝利の女神に愛され、優勝者となったのか!

       各大会、毎度のことですが。わたくし、胸がドキドキして参りました。手じゃんとか言わないで。
       この場をお借りして、盛り上げて下さった観客の皆さんに。関係者の方々に、感謝です――――」



パルテナ「うーん、誰を優勝させるのが一番お得でしょうか。こう、見返り的に」

ピット「女神違いですパルテナ様」

410Mii:2021/07/18(日) 13:57:09 ID:E.ElLwKM
マスターハンド「それでは…どうぞっ!…………ええっ?」



ザワザワザワザワザワザワ・・・・・・・・・・・・・!!!!

私はスクリーンを見上げるのも苦しいのですが、会場が騒がしくなってきました。



スクリーン「最終順位表デス!

     1st MARIO
      1st KOOPA     -0pts.
      1st LINK       -0pts.
     
                               以下省略デス」



マリオ「これはめずらしい!」

クッパ「三権分立…じゃなかった、三者同率とは」

リンク「追いついた!追いついたぞっ!よっしゃああああ!!

   …でも、こんなこと初めてなんだけど!これ、どうなるの?
   い、いくらなんでも1位保持期間が長い順に順位付けとかやめてくれよ!?」

マスターハンド「ええと……これ、どうなるんですかね、大会責任者のピーチさん!」クルッ

411Mii:2021/07/18(日) 14:01:12 ID:E.ElLwKM
ピーチ「…………あ、そ、そうね。私が答えなきゃならないのね。
   マイク、マイクっと。…ありがと。
   
   皆さん!私が、只今の状況について、公正に解説いたします!

   現状、マリオ選手、クッパ選手、リンク選手が同率1位のポイントとなっております。
   2位以下で同率順位のファイターが存在するまま大会が終了した場合、
   特に該当する2人以上について、順位付けは行いませんが――――
   最終戦が終了して同率1位が発生したケースに限っては、その限りではありません。
   優勝者は2人は要らない、が本大会の原則です。

   大会規定により、ポイント差が生じて真の1位が改めて決定するまで――――
   回復を挟まず、最終戦と『同じ対戦カード』で、サドンデスとなります!」



マリオ「」

クッパ「」

リンク「」





ロゼッタ「……………………え?」ドクドクドクドク

――――マダ、タタカワサレルノ?

412Mii:2021/07/18(日) 14:04:14 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――――――――――」



ロゼッタ「…ねえ、クッパさんクッパさん」ニコッ

クッパ「おう。どうしたのだ、ロゼッタ」

ロゼッタ「ちょっと、これ、みてください。私の王冠。
    灼熱の炎に炙られて、結構どろっと融けかけてますよね」ユビサシ

クッパ「…そうだな」

ロゼッタ「これ、実はですね。あの火球を跳ね返される前の、貴方のブレスで融けた結果なんですよ。
    そもそも、炎の温度的にも私の火球なんかより高かったみたいですし」

クッパ「う、うむ」

ロゼッタ「つまり、意図しなかったとはいえ、貴方の攻撃が私の装飾品を駄目にしたんですよ」

クッパ「ああ、ならば弁償してや―――――」





ロゼッタ「言い換えると、私の服を燃やしたようなものですね?」ニコッ

クッパ「え」

413Mii:2021/07/18(日) 14:07:10 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「ねえ、マリオさん。ちょっと聴いていただけますか?」ニコッ

マリオ「な、なんだ?」

ロゼッタ「あんまり時を遡って、こういうことは言いたくなかったのですが。
    本日の第十六試合。覚えていますか?

    マリオさんったら、強烈で猛烈なパンチを繰り出して、
    私の背中から胸部にかけて、あっさりズドンと貫きましたよね?
    
    私も血反吐吐きましたが、目の当たりにしたサムスさんも顔が真っ青になってました。
    本当に痛ましい、すっごく痛い事故でしたよ、我ながら」

マリオ「う、うん、そだね。そ、それが、どうしたの、かな?」





ロゼッタ「要するに、マリオの拳の前面とか側面とか。
     …………私の胸を触ったと言ってもいい状態でしたよね?」

マリオ「…それは暴論じゃないか?」

ロゼッタ「いえいえ、別にセクハラで訴えるとかではないですよ、
    マリオは不埒な人物ではありませんし、真剣勝負の最中ですから。

    ええ、それはもう、かねがね分かっています。…………ただ」ニコッ

マリオ「…………ただ?」

414Mii:2021/07/18(日) 14:12:38 ID:E.ElLwKM



ロゼッタ「 紳  士  協  定 」ボソッ

マリオ「!?」

クッパ「!?」



ロゼッタ「 し  ん  し  きょ  う  て  い 」ドクドクドクドク



クッパ「王冠融かしたから負けを認めろと?それは流石に――」

マリオ「無理やりセクハラをこじつけられても困るぞ――」



ロゼッタ「ねえ」ガシッ

マリオ「い、いや、そんな両肩掴まれても。血がべっとり付くだけじゃないかハハハ」



ロゼッタ「ねえねえ」ユサユサ

マリオ「お、脅しには屈しないぞ!」

415Mii:2021/07/18(日) 14:17:58 ID:E.ElLwKM



ロゼッタ「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」ユサユサユサユサ



マリオ「リンク君が優勝でいいと思いまっす!」ガクガクブルブル

クッパ「仕方がないのだ!ここはリンク君に勝ちを譲ってあげよう!」ガクガクブルブル

マスターハンド「なんとっ!これは意外な幕引きだっ!
        3人の協議の結果――――マリオ選手、クッパ選手が試合放棄っ!!2人は、同率2位ということに!
        これにより、サドンデス待たずして、リンク選手が優勝ということになりましたー!」



ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ――――――――!!



リンク「」

416Mii:2021/07/18(日) 14:23:45 ID:E.ElLwKM
リンク「…………え、本当に俺が優勝でいいの?本当にいいのか!?2人はそれでいいのか!?
   俺が一番納得しがたいんだけど…!すっげえモヤモヤするんだけど…!」

マリオ「まあ、いいんじゃね?確かに紳士協定を作ったのは俺達だし」

クッパ「ぐっふっふ。煙に巻いたまま優勝させて、
   リンクに優勝の実感をさせなくして苦しませるという高度な作戦なのだ…!」

リンク「か、軽いなあ…」

ロゼッタ「よかったですね、リンク。

    貴方の弓矢がドレスを引き千切っていたら、
    貴方から先に優勝辞退させるところでした」ドクドクドクドク

リンク「」



ピーチ「運ぶわよ」ダンッ!

ロゼッタ「…………運ばれます」フワッ・・・

ダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・・・・・。





リンク「あ、うん。そんなに早く休みたかったのね。ほんとゴメン」

417Mii:2021/07/25(日) 13:54:17 ID:kJrWaewE
〜 表彰式の準備中! 〜



ロゼッタ「体中が痛いです…………」

痛いのもそうですが、まるで次の瞬間に大量出血するような恐怖の錯覚が
じわじわと襲い掛かってくる。穏やかじゃありません。

ピーチ「全回復したんだからそんなわけないじゃない。
   単なる思い込みよ、分からなくはないけど。一時的なものに過ぎないわ」

デイジー「それだけ3強にぼこぼこにされたのが脳裏に刻まれたんだね…。
    まあでも、精神面で立て直しが利かなくなるほどじゃあ、全然ない。
    さっすがロゼッタ、余裕ってカンジ?」

一旦場を整え、再度ファイター達が試合会場に集結しての表彰式が予定されています。
あと2時間くらい。長いような、短いような。
もちろん、熱狂する観客たちにとって、2時間程度の待機など、どうってことはない様子。

マリオ「おい、みんな。大会フォトコンテストの優秀作品が決まったみたいだぞ。
   試合会場のすぐそこに張り出されてるから、今のうちに見に行かないか」

ピーチ「ああ、早かったわね。そうね…見に行きましょうか」

ロゼッタ「フォトコンテスト…?」

マリオ「主に観客たちが撮った、試合の一幕が大会期間中どしどし応募されて、
   最も優れた作品を選ぶんだよ。…面白さ部門もあるけど。
   入賞している作品はどれもこれも迫力があるぞ!何気に超人気な催しだ!」

418Mii:2021/07/25(日) 13:59:46 ID:kJrWaewE
リンク「…とは言っても、タブー戦のいざこざで撮影どころじゃなかった人も多いだろうし、
   中々いい写真は撮れなかったんじゃないかな…残念だ」

マリオ「…まあ、そうかもしれんが」

デイジー「ふっとんで叩きつけられたピーチとかも探してみるか、にひひ。
     時たま、弾き漏れでドレスの中をのぞき込まれてる問題作品もあったりするよね…探すぞー!」

ピーチ「…意地も趣味も悪いわね」

これまでの大会に比べて不安要素もあるみたいですが。
面白そうなので、皆さんに連れられて…見に行きたいと思います。



〜フォトコンテスト ギャラリー〜

マリオ「…………」

リンク「…………」

クッパ「…………ワガハイが映っていないのはちと承服しがたいが…」



ロゼッタ「…すごい」

デイジー「ロゼッタったら、自分も映ってるからって贔屓してー」

ロゼッタ「い、いえ!そんなつもりは一切なく…!」

419Mii:2021/07/25(日) 14:05:06 ID:kJrWaewE
一番手前に、剣を握った勇ましい姿のリンクが。その奥には――――
マリオ。
ピカチュウ。
ピット。
むらびと。
サムス。
マルス。
リトル・マック。
ヨッシー。
カービィ。

…そして、私と引き続き。

躍動感あふれる、揃い踏みで今にも動き出しそうな…「生きた」1枚の写真。



「最優秀賞    『大乱闘スマッシュブラザーズ3DS』」



リンク「うっわ!うっわあ!いい1枚じゃん!最終盤、タブーに立ち向かってるとこだな、これっ!
   厳密には試合中の写真じゃないが、文句なしに神懸かって出来がいいぞ!」

マリオ「しかし、この構図…完璧なアングルの為に、フィールドに降り立ってないか!?
   一体何時の間に…!?命張ってるな、ただの写真家じゃないぞ!?」

クッパ「うーむ。専属で雇いたいくらいの見事な腕なのだ。
   …しかし、『匿名希望』とあるな。いやはや勿体ない。
   だが、それも乙なものか。選別者も、よくぞ選んだというところだろう」

420Mii:2021/07/25(日) 14:10:56 ID:kJrWaewE
あまりの見事な構図、もちろん撮影スキルも素晴らしい、究極の1枚。
きらびやかなはずの額縁のほうが、嫉妬のあまり逃げ出してしまいそうな、写真。
皆さんが惚けてしまうのも、無理はないでしょう。

…あ、人気が人気を呼んで、どんどん人が集まってきました。
このままだと目立ちますね、退散しましょう。





ネス「…………やってくれたなあ、まったく」フフッ

ロゼッタ「…ネスさん?どうかしましたか?」

ネス「…ううん、なーんでも。あ、記念に一枚買っておこうかな。すいませーん!」

リンク「俺も俺も!これはいいものだ!」

ピーチ「そうね、じゃあ私も…」

デイジー「…ピーチはどのみち現物が手に入るでしょ?」

ピーチ「ここで買うことに意義があるんだってば」





思いがけない息抜き挟んで、いよいよ、お待ちかねの…表彰式です。

421Mii:2021/07/25(日) 14:15:31 ID:kJrWaewE
〜表彰式〜

もちろん結果は全て確定していますが、ファイター達が登場するや否や、
まるで試合がまた始まるのでは?と勘違いしてしまうほどの大声援。

思えば、私の嘆願のせいで最終戦が中途半端に終わったとも言えなくもなく、
それを不満に思われることもあり得たのですが。どうやら、杞憂だったようですね。


ピーチ「表彰状――――リンク殿。

   貴殿は『第4回 大乱闘スマッシュブラザーズ世界大会』に於いて頭書の成績をおさめたので、
    その栄誉を讃え優勝杯を授与してこれを表彰する。

   20XX年12月6日     キノコ王国当主 ピーチ



   …………ま、こんなところかしらね。はい、どうぞ」スッ

リンク「ありがたく頂戴しまーす!」



パチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・・・・・・・!!!



割れんばかりの拍手が、一斉に湧き起こります。

422Mii:2021/07/25(日) 14:18:06 ID:kJrWaewE
リンク「これ、なにか一言スピーチでもした方がいい流れ?毎回、どうだったっけ。何も考えて来なかったんだけど」

ピーチ「いらないいらない。時間も押してるから余計なことはしなくていいわ」

リンク「…上位8位まで表彰するだけだろ?開始時刻も予定通りだし」

ピーチ「時間が押してるのは『私が徹夜で片づけてる戦後処理』よ」

リンク「…すんませんでした」

ピーチ「大丈夫よ、まだリンクが1人に見えてるわ」

リンク「なんだか末期症状!?」

ピーチ「では続いて2位以下の表彰に――――――――」



キノじい「姫様ぁ――――――――!少々、お待ちくださいっ!こちらの方々から、緊急連絡がある模様ですっ!」

ピーチ「…へ?」



任天堂スタッフ「あ、お邪魔して申し訳ありません。
        実は、このタイミングで発表しておきたいことがございまして」

ピーチ「え、ええ!?」

リンク「…なんだ、なんだ?」

423Mii:2021/07/25(日) 14:20:33 ID:kJrWaewE
突如現れたスタッフさん。表彰式が中断されてしまいました。
でも、ピーチ姫はヤレヤレとため息ついて、大人しくマイクを譲ります。
観客席の皆さんもざわつき始めました。何が起こっているのでしょうか。



ピーチ「…手短にお願いしますね」

スタッフ「あ、えーと。それはちょっと難しいかも、しれません。
    頑張りに頑張って、15分くらいの動画には収めてきたのですが」

リンク「…動画?」

スタッフ「リンクさん、優勝おめでとうございます。
    おかげさまで、ファイさんと我々の努力が無駄にならずに済みました」

リンク「…一体どうしたというんですか?それに、ファイとって、どういう…
   ファイがこそこそ居なくなっていた事と、関係があるってことですか!?」

スタッフ「なーに、リンクさんは幸せ者ですねーと言いたいだけですよ。
    それでは皆さんっ!巨大スクリーンの方を、御覧下さいっ!」



ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・!!!!
    


スタッフの合図とともに、どこかの景色が、鮮やかに映し出されて――――

424Mii:2021/07/25(日) 14:24:00 ID:kJrWaewE
ハイラル王国。
世界で有数の伝説処として知られるこの王国に、ある問題を抱えるお城がありました。

……ハイラル城。
…………この城が抱える問題、それは――――





――――  物件1024 イベントがない城  ――――





堂々たる佇まいを見せるハイラル城は、築100年の、伝統的なハイリア調の造りの伝統建築。

かつて伝説が紡ぎ出されたこの街で、長きにわたって続く誇り高き王家の住まい。
統治の始まりの時から変わらない、由緒正しき指導力と実績を代々受け継ぎ、現在で四代目。

そんな歴史ある城を、2X歳の時から1人で切り盛りしている四代目当主……
それが、かの有名なゼルダ姫。

100年前にここで統治を始めた、これまた別のゼルダ姫による旗揚げ以来、
数々の将を率いて王国を治める、世界でも名高い王国になりました。

今ではすっかり、キノコ王国のピーチ姫と並び立つ稀有の実力者。
やむを得ない王国事情で他国との交流を避けてきたとはいえ、
友好関係を結ぼうとする国々もずいぶん現れてきました。

425Mii:2021/07/25(日) 14:27:29 ID:kJrWaewE
こうして引き継がれていく権威ある城。
しかし、一見趣ある伝統建築も――――観光面、遊興面では悲惨なありさま。

何十年も、他国の者がほとんど誰も足を運んだことがないというその場所は、
完全に堅苦しい公務専用と化し、とても人が集まるような状態ではありませんでした。

建物全体の老朽化も酷く、1階のあちこちに、上層に行かせないためのこんな謎解きが。
この辺りは魔物エンカウント地帯でもあり、夜は更に魔物が狂暴になるため、
素人はとても寄り付けず、問題は深刻でした。

そんな不安を抱えながらも現状に妥協し、家臣たちと暮らすゼルダ姫。



――100年続くハイリア王朝の未来を守るため、
――安心して国を富ませながら観光客を呼び込める城に。



そんな切なる願い(ゼルダ姫は知る由もない)を受け、
1つの企業がふたたび立ち上がりました。



スタッフ「こんにちはー」

ファイ「よろしくお願いします」

スタッフ「よっしゃ!みんな、頑張るぞー!!」オオオオォォォォー

426Mii:2021/07/25(日) 14:31:03 ID:kJrWaewE
使える面積はおよそ1平方キロメートル。
ハイラル城の敷地そのものがその半分以上を占め、
城の入口を飛び出してすぐのあぜ道が、剣の精霊みずからが改装したというスタート地点。
もちろん、簡易的なものにすぎず、まだまだ手入れが必要です。



スタッフ「この石段とかはどなたがやられたんですか?」

ファイ「これは私が敷きました、サルボに運んでもらって」

サルボ「なんだか違う時代にきちゃったみたいだけど、ファイ様のためなら任せてケロ!
   緑のマスターにオイラの凄さを再認識してもらうケロ!」



よりにもよってハイラル城周辺は、魔物が不定期に現れるハイラルの中でも、
特に不意打ち召喚に悩まされるターゲット地帯。言うまでもなく、ガノンドロフの暗躍。

ハイラル城の敷地内にも年に100匹は敵が湧き出し、集客の際は大きな負担となります。
100年以上、毎年のように敵の攻撃を受け続けた城壁は、所々欠けたり崩れたりし、
イメージダウンにもつながっていました。





…これは、根本的な所から、対策が必要なようです。
しかし、怖気づく匠…いえスタッフたちではありません。むしろ腕が鳴るというものです。

427Mii:2021/07/25(日) 14:36:28 ID:kJrWaewE
リフォーム初日。



ハイリア「あ、その大きいベッドはもう要らない!こっちの鏡は…まあ要るかな。
    この趣味の悪い胸像は…作り替えね。あのゲートはもうちょっと簡略化していいわ!」

女神ハイリアの元気な声が、城じゅうに響き渡っていました。

ファイ「お手数をお掛けします」

ハイリア「いいのいいの!私の趣味だか美的センスだか買って、
    わざわざ別の伝説にまで迎えに来てくれて…むしろありがとう!暇してたのよね。

    …ほらそこ、きびきび動く!私だって労働(魔法)やってるんだから!
    不敬罪になっちゃうわよー!まあ、私は楽しんでやってるけど!」

インパ「は、はいいいいいいぃぃぃ……ただ、い、ま……」ガタガタガタガタ



ハイリアさんのスペック:
  ・トライフォースに関して原初にすっごい活躍をした女神
  ・リンクがトライフォースを集めまくりパトロールまでするのでお役御免、自由奔放に
  ・時代を行き来して、いろんな伝説のゼルダを霊体で観察するのが趣味
  ・常に霊体、リンクが平和にした伝説の中なら魔法で人やモノへ干渉できるが魂1つ分のゼルダにも劣るため弱っちい
  ・ただしゼルダに頭を垂れる者ならだいたいは下僕にできる御身分


インパを始めとした、プライドある古参の家臣たちも、ハイリアに言われるがまま。

428Mii:2021/07/25(日) 14:40:59 ID:kJrWaewE
スタッフ「いやはや、借りてきた猫のように皆さん従順ですね。結構こき使っていて驚きです」

ハイリア「ファイに依頼されるがまま私を探し出した貴方たちに言われたくはないけど…。

    そりゃ、主君のゼルダより更に上位の存在には逆らい難いでしょ。女神よ女神。
    このお城を勝手に改築して許されるのって私くらいなんじゃない?見事な人選…いえ神選よ、ファイ。

    『名前区別ができる』おかげで、ゼルダの数ある魂のうちの1つにならずに済んだのが、
    別人として存在できる怪我の功名だったわね!スレ主に盲点を衝いてもらったわ!」

スタッフ「…というかハイリアさん、性格変わってませんか?」

ハイリア「性格を変えとかないとゼルダと区別が付きにくくな…おっほん。
    色々と時代を巡っているうちに学習し感化されたのよ 。

    …あ!そっちの無駄に邪魔な鉄格子も運んでくださいな!」







スタッフ「へえ」トオイメ

スタッフ「あんまりやると原作無視で怒られるな」

スタッフ「今更感もあるけど」

429Mii:2021/07/25(日) 14:44:32 ID:kJrWaewE
複雑怪奇な部屋割となっていた上層からも、次々と荷物が。
何十年ぶりかに、一般人が入った上層。…すると、その時。



魔物「ギャオオオオオン!」

ファイ「――――ハッ!…大丈夫ですか?」シュンッ!

スタッフ「こ、こっわー。魔物が湧きますよ、ここ。死にかけました」

ファイ(身のこなし的に、そうは見えませんでしたが…)

魔物が湧き出すことすら皆無というわけには行かない、このお城。
いつエンカウントするかわからないため、みんな気が気ではありません。
今では使われていないスペースだらけのエリアも多く、埃をかぶったアイテムが何十個も出てきました。

スタッフ「こういうのは作るのがすごく大変で、できる職人さんも随分減ってるのに。
    この王国は道具を得ようとする人に対して厳しすぎるよなあ…
    隠し部屋だったり特別な鍵が必要だったり…。
    ああっ!このルピー、かなり年代物ですね!額面の何百倍もの価値が有りそう!」

ハイリア「まあ、他国に売っ払って小金稼ぎ、なんて目の眩み方をしなくてよかったけど。
    要らないのなら私が持って帰りたいくらい」

ファイ(…どこに持って帰るのでしょう)

――こうして、上層にあった埃まみれの荷物は、
――武器防具、機材、道具、美術品、果ては秘蔵の酒に至るまで、くまなく。
――取捨選択のうえで、廃棄あるいは裏庭に一時保管されることになりました。

430Mii:2021/07/25(日) 14:50:27 ID:kJrWaewE
スタッフ「オーライオーライ、どんどん運んでー!」



壁を壊し、柱を取って、間口を大きく広げると。そこに運ばれてきたのは、
トラック何十台分にもなる、工事用の土と敷石。

スタッフ「さあ、こっから正念場だぞ!夏じゃないのが幸いだ!一気にやっていこう!」

スタッフ「「「「「「「「おりゃーー!!」」」」」」」」

数百人態勢でテキパキと道を作り、それを伸ばしていく工程が待っています。

なんとも原始的な方法ながら、スタッフ、いい仕事をしています。
ただし、石畳は最低限の量で十分。というより、既に石畳となっていた箇所の補強のみ。

立派な道が、城の入口から外へ外へどんどん伸びて行きます。
目標とする経路と城の一部がぶつかってしまう場合…
なんと、城側に頭を下げさせます。城を取り壊す、とも言います。

いきなり大掛かりな土木工事が始まって失神したインパを、気にしてはいけません。
今ある申し訳程度の道では幅も強度も足りないのです。



ここからようやく、城の中も本格的な改築が始まりました。
行く手を遮るような遮蔽物や突起物、低い天井などを剥がし、空間を作っていきます。

そこに一切の容赦は有りません。重臣たちが顔を青白くしてワタワタとしています。

431Mii:2021/07/25(日) 14:54:38 ID:kJrWaewE
インパ「あ、あのっ!ハイリア様っ!僭越ながら申し上げますっ!
   こちらに数多く並べられている物は、歴代の姫君たちが大切になさった、
   この城のカナメであり歴史であり、失い難い思い出でありますっ!何卒ご容赦を…どうか…!」

ハイリア「よく言うわよ。私、霊体で度々うろうろして、よーく知ってるんだから。
    カナメも何も、城が守られるのは全部リンクのおかげでしょ?
    まともに守護像や警報システムが働いた試し、あるの?

    リンクの到着がちょっと遅れたらガノンドロフにあっさり壊されるだけの存在で。
    おまけにゼルダは政務に手一杯で鑑賞することもなくて。
    むしろ…なんかこう、TASで引っ掛かる出っ張りにしかなってないじゃない。邪魔なんだけど。

    流石に捨てたりはしない。ちゃんと保管して、別の場所に置き換えるだけよ。これでもまだ文句ある?」

インパ「う、う…!」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




ゼルダ「」

ピーチ「やっぱりお城はシンプルな方がいいわよね。お尻でワープされることもあるけど」

デイジー「ピーチの場合『自分で清掃や保守管理しやすくて』って文言が行間に隠れてるよね」

432Mii:2021/07/25(日) 14:58:02 ID:kJrWaewE
城の外へ伸びゆく道を、橋の途中であえて途切れさせて落とし穴に。
橋なので当たり前ですが、数十メートルほども高低差がある、大きな穴…むしろ崖。
向こうの崖までは…50メートル、いえ100メートルほどもありそうです。

ハイリア「この距離は、一体なんなの?どうやって向こう側へ行けばいいの?」

スタッフ「簡単な話です。――――飛べばいいんですよ」

ハイリア「へえ、飛ぶんだ!スカイロフトみたい!その技術に驚くわ!
    …でも、物をぶつけられてグラついたりしたら真っ逆さまね」

スタッフ「それはまあ、仕方ないですね。
    落ちる要素はグライダーでぐらついた時ぐらいだー、なんちゃって」

ハイリア「ふふっ」ブッ

スタッフの非常につまらないダジャレが女神のツボに入ったみたいです。



スタッフたちは並行して、敷き詰めた道の上に、更に土や石畳を敷き詰めていきます。
頑丈さに妥協はできません。もちろん、敷き詰め、敷き固めの悪さから、
後々陥没や傾きを作らせるわけにもいきません。

ハイラルに「任天堂の技術力ってこんなものですか」とか笑われたら噴飯物です。



土が何百トン単位で次々と運び込まれていく様は壮観の一言。
敷石も非常に硬くて、ファイが自らの剣戟でせっせと加工処理していきます。

433Mii:2021/07/25(日) 15:02:09 ID:kJrWaewE
スタッフ「歴史を感じさせ見栄えを損なわないことは前提として…
    もちろん、使わせて頂くのは唯の石畳ではない超強化品ですよ。
    このくらい徹底的にしないと、過酷な環境に持たないんですよ。
    しょっちゅう爆発や爆風に巻き込まれますからね。

    石畳はアスファルトに比べ調温・調湿効果がありますが、
    こちらについては、まあ…おまけみたいなものでしょう。
    …あ、走るたび音が出て、迫力があるというのは大きいかもしれませんね」

ファイ「なるほど…迫力は大事ですね」

スタッフ「そりゃあ、もう」



長年の風雨や戦にさらされ、もうボロボロで耐え切れなくなった箇所を、
その周囲もろともしっかりと固め直すことも同時に行っています。

今後の負荷に対する備えを万全にし、更には。
造り続けている大きな道にピッタリと沿う、観光客のためのスペースを新たに設けました。

グラウンドエリアの構造補強を終えると、今度は、がらんとスペースの空いた城内へ。
ファイとハイリアの期待に応えるため、一層頭を絞る、スタッフたち。



スタッフ「何も我々は全ての装飾物を否定したいわけじゃありません。
    何か、『これだけは飾っておきたい』ってもの、ありますか?」

ハイリア「…………うーん、パッとは思いつかないけど…………」

434Mii:2021/07/25(日) 15:05:51 ID:kJrWaewE



ファイ「――――マスターソード」



スタッフ「…え?」

ファイ「――可能ならば、マスターソードを飾りたいです」

ハイリア「でも、今ってリンクがどんどんマスターソードを手元に集めてて…

    …あ!そういえば、うち(スカイウォードソード)の1本だけは…
    元の台座に返したんだっけ、じゃあ残ってるわね!一瞬借りちゃいましょう!」

スタッフ「過去スレの会話について行けなくなる人が多発しそう」

ファイの提案で、懐かしいマスターソードがまだ工事中の城の中へ。
議論しながら配置の微調整を繰り返し、置かれたのはど真ん中。
基礎まで組んだ特等席が用意されました。

スタッフ「通路を通り抜けた先に神秘的な聖剣が佇んでいて…
    こう、ギミック的にロックが解除されていたら加速装置として使える、というのはいかがでしょうか」

ハイリア「それ、謎解きみたいで素敵!もちろんあのお約束メロディも忘れないでね!」



新しいイベントの要となるシンボルとして、聖剣が収まったところで、工事が再開。

435Mii:2021/07/25(日) 15:09:05 ID:kJrWaewE
ハイリア「あら!それって、さっき埃を被ってたルピーじゃないの?」

スタッフ「はい。折角ですから、有効活用したいと思いまして。
    歴代の姫君もきっと思い入れがある品物でしょうから、残せるものは残しますよ」

ハイリア「…と、いうと?」

スタッフ「終了後にコインとの交換という形で回収するとして。
    この立体的でキラキラと輝く宝石がコインの代わりに道に置かれていたら、雰囲気が凄く出ると思いませんか?」

ハイリア「……!!素晴らしいわ!ぜひやってちょうだい!」

スタッフのアイデアはまだまだ尽きません。
今度は道の脇で、何かを作り始めました。

ハイリア「きゃっ!?デクババよっ!?ファイお願い、対処して――――」

スタッフ「待って待って!これ、さきほど植えたばかりです!斬り捨てないで!」

デクババ「ぐるるるるる…………」

ファイ「う、植えた?」

スタッフ「パックンフラワーの代わりです。相当近づかない限り襲ってこないですし、
    攻撃手段は噛みつきだけ、それほど強くもないですから大丈夫ですよ」



ハイラル城100年の歴史を繋ぐ、そのリフォームの全貌を――――
ご覧いただきましょう。

436Mii:2021/07/25(日) 15:13:50 ID:kJrWaewE
100年、四代にわたって受け継がれてきた、ハイラル王家。
ハイラル王国の統治を担う、大きく荘厳なハイラル城は。



歴史を感じさせる伝統的で立派な城であることはそのままに。
あちこち傷ついていた城壁や敷地を、綺麗に化粧直し。

道の傍には、一般の観光客を気遣えるセーフティエリアが作られ、そこには――――
魔物が決して召喚されなくなりました。

その代償として、数か所に押し込められた魔物のホップスポットには…なんということでしょう。
待っていましたとばかりに、特別製のデクババが待ち構えていて、
昼でも夜でも餌として一瞬で飲みこんでしまう頼もしさ。

このデクババは耐久性バツグン、食い溜めができ、人に対しては逆らわず、
レーサーに対してはとりあえず噛みついておくように調教されているため、
すぐさまみんなの人気者になることでしょう。

魔物対策を十分にしたおかげで、仰々しい城郭を一部無くして広く開放することができ。
風なびく芝生の上から光が落ちてくる、明るい広場へと大変身。
かつて兵たちの詰所だったスペースも、依頼者念願の…何千人もが収容できる、バリアフリーの観客席となりました。

道のあちこちに設置されたルピーは、改築のなかで見つけて活用を閃いた…この「コース」ならではのオリジナル。
もちろん、任天堂の許可は下りているため、心置きなくアピールできます。

とっておきの注目ポイントは、城内エリアで煌々と輝き続ける、
思わず拝みたくなるような神秘的なマスターソード。
手前通路にある3つの絡繰りをチェックすると、ソードに触れて加速できるようになるためのスロープが
突如として出現するようなギミックが設けられました。これぞセルダの伝説の真骨頂。

437Mii:2021/07/25(日) 15:21:48 ID:kJrWaewE
使われていないアイテムばかりが場所をとり、あちこちぶつかる城内。



スタッフは、走行ルートの分布を徹底的に研究し、コースの幅の広さを管理できる規模に合わせ。
安全性と臨場感を兼ね揃えた工夫を施しました。
大きなコースで繰り広げられる熱戦は、各所に設置される高性能撮影機で、直接、実況用スクリーンへ。

まるで舗装されたかのようながっちりとした走路は、
雨にも負けず、風にも負けず。

甲羅にもブーメランにもファイアボールにもボム兵にも落雷にもスタックルにも負けず、

激しい乱打戦にも耐え、砂ぼこりも易々とは舞わせず、
鮮明な状況を刻一刻と伝えるための手助けをしてくれることでしょう。



外見は立派でも、相当な老朽化が進んでいたハイラル城。

最後の粗探しとばかりにメンテナンスが済まされたそのお城は、
まるで完成して1年も経っていないかの如く鮮やかに生まれ変わり。
レース目的で観光客が増えてみたら城にガッカリされて却って評判が下がった、なんて心配もありません。



どのくらい素晴らしい改築かというと、最終的に…
あのインパが、「私は信じていました」と掌返しで大絶賛するほどの成果です。
機能性ばかりでなく、デザイン性の面でも、細やかな配慮を忘れないスタッフたち。

438Mii:2021/07/25(日) 15:23:36 ID:kJrWaewE
――――こうして、ハイラル至上最大のリフォームは無事終了。

ちゃっかりしているハイリア様が、使い道が特にないからと…
「スカイウォードソード」の金銀財宝を惜しげもなく差し出したため、
「こちらの伝説」としてのリフォーム費用予算は、なんと、タダ同然で済みました。



果たして、関係者たちは喜んでくれるでしょうか――――――――



パン!パン!パパパーン!





スタッフ「というわけで!
    祝っ!『ハイラルサーキット』、爆誕でーす!!」

ファイ「…………」パチパチパチパチ





リンク「」

ゼルダ「私のお城なんですけどおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!?」

439Mii:2021/07/25(日) 15:27:36 ID:kJrWaewE
    「…何か言いました?」

ゼルダ「…何奴っ!?」クルッ

ハイリア「こんにちはー」

ゼルダ「」

ハイリア「駄目だよ、ゼルダ。あれだけ散々リンクに『ハイラルにもイベントを!』って
    進言されておきながら、数多の伝説で無視し続けるなんて。そのうち愛想つかれちゃうよー?
    まあ、当時は記憶がなかったゼルダに言うのも酷だとは思うけど」ポンッ

ゼルダ「ハイ・・・ハイ・・・」ビクビク



マリオ「なんかゼルダに似た人が登場してきた!そしてなんだか神々しい!
   …で、どうしてゼルダはあんなに逆らう気が失せてるんだ?」

ピーチ「マリオ…伝統を殊更重んじる格式高いハイラル王朝にとって、
    よっぽどヘマをしでかさない限りはご先祖さまって現当主より高位扱いよ?
   ましてや始祖と言っていいお方だったら、逆らう方が愚かってものよ」

デイジー「ゼルダは堅苦しいなー。私なんか、メイドたちとお菓子の争奪戦で鬼ごっこするくらいの気さくな仲なのにー」

ピーチ「アンタはもうちょっと格式ばりなさい」

ルイージ「本物の女神かあ…僕、初めて見たよ。生きてみるものだねえ、兄さん」

パルテナ「えっ」

440Mii:2021/07/25(日) 15:30:32 ID:kJrWaewE
リンク「え、えっと」

リンク「すまん、まだあんまり事態が飲みこめてない。
   要するに、俺のためにハイラルにサーキットを作ったって?
   藪から棒だな、なんのために?そんなこと頼んでないぞ?」

ファイ「その……………………………………私からの、ささやかな、サプライズを…と」

リンク「…え?どうした?サプライズ?」



ファイ「――――――――マスター。







   ――――――――お誕生日、おめでとう、ございます」







その一言に、リンクが頭をハンマーで殴られたかのような顔をしたのでした。

441Mii:2021/07/25(日) 15:38:09 ID:kJrWaewE
リンク「…………た、たんじょう、び?い、いや、だって」

ファイ「…はい、もちろん、存じております。
   マスターは数々の伝説にて人生を送られており、生年月日などというものが定かではないことは。

   ですが、それは――人一倍、人生に振り回されているマスターが。
   こうして生きてくれていることに対する、祝いのための日が設けられないということは。
   とても切ないことではないでしょうか。……そこで、スタッフの方々に相談させて頂いたのです」

スタッフ「ええ。そこで、我々はこうアドバイスしたのですよ。

    11月21日、神トラおよび時オカの発ば…いや伝説の始まり。
    11月23日、スカイウォードソードの伝説の始まり。
    ちょうど、こんな感じに…代表的なものがスマブラ大会終盤にかぶさっていたもので。

    とりあえず、リンクさんの誕生日を11月22日ってことにして
    大会終了直後に、遅ればせの誕生日を祝ってあげたらどうっすか?
    困惑されてもその場の勢いでなんとかなるでしょう!…と!」

リンク「」

スタッフ「ファイさんが、『マスターにふさわしい飛び切りのプレゼントを渡したい』とか
    言うもので。考えた挙句、ハイラルにイベント事を呼び寄せるのが一番かな、と。
    リンクさん、割と不満を垂れてましたからね。
    もちろん無茶振りではあったもので、最初は我々も苦い顔をしていたのですが、

    『賭けましょう。マスターが優勝しなければ如何様にも罰は受けます。企画自体も白紙に戻して頂いて構いません』

    とまで豪語されちゃあ、流石に奮起せざるをえないってもんですよ!
    最後の最後まで、ファイさん自ら手伝ってくれましたし!」

442Mii:2021/07/25(日) 15:42:05 ID:kJrWaewE
スタッフ「これで、遅れがちのマリオカート8の完成にも弾みがつくといいな!
    マリオカート7がまだまだ持ってくれていると言えば持ってくれているけど!」

リンク「」

ファイ「えっと、その。受け取って頂けますか?」

リンク「」

ファイ「あ、あの、マスター?」



ゼルダ「冗談ではありませんっ!勝手に人の城を滅茶苦茶にしておいて!
   私は勿論怒り心頭ですが!リンクだって心底呆れていますよっ!ねえ、リンク!」






リンク「――――――――」ポロポロ

リンクに 効果は 抜群だ!!▼



ヒルダ「泣いてる!?」

ゼルダ「」

443Mii:2021/07/25(日) 15:44:53 ID:kJrWaewE
リンク「――――お、俺。ファイが…言った、通り。
   誕生日、なんてものとは、無縁で。祝われたことなんて、なくて。
   ピーチがみんなの誕生日パーティ開くたび、ずっと羨ましくて。
   でも、勇者の宿命、だからって、半ば…諦めてて。

   こんな、俺の事、祝って…くれる、のか?」ポロポロ

ファイ「―――――――――――もちろんです。私は貴方の半身なのですから。
   今後とも、よろしくお願い致します」

リンク「ありがとう――――!ありが、とう――――!!
   ファイ、お前がいてくれて…ほんとうに、よかった――――!!」グズッ



ウオオオオオオオオオォォォォォォ!!!
ヒューヒュー!



ルキナ「み、見ているこちらが恥ずかしくなってきてしまいますね…」カアァ

ルフレ「この絆、他の人が割り込める隙なんてなさそうだ」



ゼルダ「……………………」ズモモモモモモ

ロゼッタ「や、闇のオーラが!?ゼルダ姫がなんだか黒化してますっ!
    これ、大丈夫なんですか、皆さん!?ねえ、ねえ!?」

444Mii:2021/07/25(日) 15:48:17 ID:kJrWaewE
ゼルダ姫が、再開を待つ表彰式を更に遮って、修羅の顔でリンクとファイの前に躍り出たではありませんか。

感極まっていたリンクが、ゼルダ姫に気が付いて…慌てて涙をゴシゴシ擦って、不思議そうに向き合います。

リンク「あの、ゼルダ姫?今は表彰式の最中ですよ?どうされましたか?」

ゼルダ「――――リンク。貴方、ファイにそこまで言うのならば。そこまでファイを持ち上げるの、ならばっ!
   …私にも、何か、言うことがあるのではないですかっ!」



観客「おおっ!修羅場かー!」

観客「相変わらずリンクは隅に置けないなー」

HAHAHAHAHAHAHAHA!!



…観客は、このハプニングを割と楽しんでいるようですが。



リンク「え?え?何か、言うこと、ですか?」

ゼルダ「そうですっ!私の奮闘に対してっ!――――何か、思い当たる気持ちとか、あるでしょう!!」

ピーチ「お、思いの外、ぐいぐい行くわね、ゼルダったら。もう後に引けなくなったってことかしら…!」

デイジー「これが女の戦いってやつか…!いやまあ私たちも女だけど」

445Mii:2021/07/25(日) 15:52:41 ID:kJrWaewE
リンク「――――ああ、そういえば」

ゼルダ「――――!!」

――はたと、何かを気付いたリンク。



リンク「――――私、勘違いしてしまっていました、貴方のことを想う気持ちに。
   申し訳ございませんでした」

ゼルダ「――――!!!!」パアァ

ゼルダ「――――教えて、ください。貴方の、言葉で。
   どんな言葉も、受け止めます。遠慮なく、思ったままを」

リンク「…えっと。それは流石に身分違いというか、畏まってしまうのですが」

ゼルダ「そんなこと、一切気にしませんから」ウルウル

リンク「そ、そうですか?そ、それじゃあ――――」モジモジ

ゼルダ「―――――――――――――――――――――」ドキドキドキドキ



リンク「ゼルダ姫。私、ようやく分かったんです。ゼルダ姫、貴方は私の――――」

ゼルダ「――――そうです、私は貴方の運命の――――――――」

446Mii:2021/07/25(日) 15:54:21 ID:kJrWaewE





リンク「――――――――――――味方だったんですねっ!!!!!!」





ピーチ「        」

デイジー「        」

ロゼッタ「        」

ヒルダ「        」

シア「        」

ラナ「        」

ルキナ「        」



ゼルダ「        」

ハイリア「――――っ、ははははははは!!」クスクス

447Mii:2021/07/25(日) 16:00:42 ID:kJrWaewE
ゼルダ「        」

ゼルダ「                」

ゼルダ「――――み――――――――か――――――――た…………??」カタカタカタカタ

リンク「伝説のたびにノルマ与えられて、面倒事だけ全部押し付けられて。
   むしろ私に仕掛けられたトラブルメーカーとばかり思うようになってたんですが!
   私の大きな勘違いでした、反省します!普通に、非常事態となったら私を助けて頂けるのですね!

   タブー戦では本当に助かりました!咄嗟に『女神の詩の逆再生』を弾いてくれるだなんて!
   その演出がなんとも心憎かったですね!」

ピーチ「ちょ、ちょっと待ちなさいよリンク!これまでだって、色々とゼルダには恩を受けてきたでしょ!ねっ!」

リンク「…………へ?いつ?」

ピーチ「いつって、そんなの――――――――」


アイテム:あちこち隠されているうえ、過去の伝説のものを使い回すので有難味があまりない
褒賞、爵位:貰ったことがない
催事:呼ばれたことがない、そもそもやってない、勧めてみれば断られる
平和:キノコ王国で生活しているので享受にまるで関係がない
交流:すれ違いからほとんどない
戦闘:リンク1人に任せきりのバランス リンクがまともに使える鍛錬場もない
共闘:ほぼ全てトゥーンゼルダに取られた 「ゼルダ無双編」は一連スレではゼルダが仕組んだ側


ピーチ「…………………………………………」

448Mii:2021/07/25(日) 16:07:18 ID:kJrWaewE
デイジー「なんか一切好感度を上げて来なかった主人公って感じだね。
    …とりあえず、その、友人から目指したら?」

ゼルダ「」

ゼルダ「――――――――はっ!『女神の詩の逆再生』って、一体どういうことですかっ!
   『ゼルダの子守唄』っていうちゃんとした名前が――――」

リンク「『ゼルダの子守唄』…?なんですか、それは」

ゼルダ「――――!?」

マリオ「あ、時オカの頃のリンクは相当に精神分裂の最中にいたから
   教えていたところで歌の響きや名前なんか印象に残っちゃいないぞ、これ豆な」

ピーチ「あー、そういえば…そんなこともあったっけ」トオイメ

ゼルダ姫が、がっくりと地面にうなだれます。肩を震わせ、顔を覆って、静かに泣き出してしまいました。
…見ていられない、もの悲しさ。ですが、私などではどうすることもできません。

ゼルダ「どうして――――どうして。こんなことに、なってしまった――――のですか。
   誰のせいで、そんなに、ファイとだけ、絆を深めて――――」ポロポロ

リンク「誰のせいと、言われましても…………」

リンク「…………強いて言うなら、(スカイウォードソードの)インパのせい?」

ゼルダ「私、ちょっと用事ができました」スクッ

ピーチ「ゼルダゼルダ、すっごく目が濁ってる!」

449Mii:2021/07/25(日) 16:12:16 ID:kJrWaewE
〜 12月7日 祝賀会開幕! 〜



ロゼッタ「…どれも、本当においしいですね…!」

特設会場には、ずらりと並ぶ料理。大勢…というか、ほぼファイター全員が集う。
時折、簡単なスピーチやゲームを挟んでの、7日間の祝賀会の始まりです。



…あのときは、ゼルダ姫を宥めるのに、小一時間掛かりました。リンクも罪な人です。
アタフタしている間に表彰式がいつの間にか終わっていて、ちょっと残念でした。
注目されていなかった側のマリオやクッパは、全く気にせずケラケラ呑気に笑っていましたが。



できるかぎりお淑やかにあちこち歩き回っては、テーブルから溢れんばかりに
並べられた食事に舌鼓。ほっぺたが落ちそうなくらいです。

…なんだか食事量が本当に増えてきて、昔の私に見られたとしたら、
「そんなにガツガツ食べて何がお淑やかですか」とか言われたりして。
…ちょっと食べる速度を落としましょう、はい。

これだけの料理が1週間も続くだなんて、ピーチ姫も用意周到です。
これでもタブー戦の被害を受けて質素にしたというのですから恐ろしい。

何故だか私も、他のファイター達からちやほやされる存在に。
よく頑張っただの、凄い魔法を使えるんだな、だの。
…実力との乖離に恥ずかしくなりますが。まだまだ、です。

450Mii:2021/07/25(日) 16:14:38 ID:kJrWaewE
リンク「いやあ、幾らでも食べられるな!さっすがピーチ、
   ここまで料理の質を高められるとは!料理人たちをいつか紹介してくれ!」

ピーチ「それはお褒めに預かりまして光栄だわ。頑張ったかいがあるものよ」ニコッ

リンク「…………」

ピーチ「…………」

リンク「………………………いい加減、休んだらどうっすか?いつか死ぬぞ。

   まあ、聞いちゃいないんだろうけど。…よし、じゃあ俺からも。
   こんなすっげー料理を用意してくれたことだし、俺からも御馳走をプレゼントだ!」

ピーチ「あら、一体なにかしら?」

リンク「はい、これ!!」サッ







リンクは ハチノコを くりだした!▼

ピーチ「」ピシッ

451Mii:2021/07/25(日) 16:17:48 ID:kJrWaewE
ピーチ「きゃああああああああああああっ!?む、虫っ!!
   ななな、なんてもの持ってくるのよっ!?とっととしまってちょうだい!
   場にそぐわないこと極まりないわっ!!!」
   【見た目の嫌悪感から思い切り拒否して怒る人】

デイジー「うわっ!こ、これが噂に聞くハチノコかっ!グロテスクだね…!
    …いい事考えた!ビンゴ大会の最下位罰ゲームでこれを食べることにしない!?」
   【嫌悪感より好奇心が勝る人】

ゼルダ「リンク、そんなものを持ち込まないでくれますか!?
   リンクが嗜好するのは聞き及んでいましたが…マナーがなっていません、よ!
   (一時の我慢で食べて見せればリンクの好感度が…あ、上がるのでは…?)」チラッ
   【本当は食べたくもないが損得勘定の天秤に掛ける人】

ルキナ「」
   【公認で典型的な虫嫌いの人】

サムス「ふっ、この程度の姿かたち、それほど気にするまでもない。好んで食べたいとは思わないがな」
   【こういったグロテスクさには耐性がある人】





ロゼッタ「…あ、これ罰ゲームで私が食べる展開ですか…
    せめて、調理場から調味料探してきましょう――――」スタスタ
    【自分の運の悪さから色々諦めている人】

デイジー「ちょ」

452Mii:2021/07/25(日) 16:21:45 ID:kJrWaewE
リンク「…え、誰も食べたがらないの?おいしいのに」

ピーチ「いいから片付けなさいっ!誰も欲しがりなんかしないわよ!
   周り全員引いてるじゃないっ!」

リンク「いやいや、男性陣なら流石に…」





マリオ「ま、まあ失敗料理と思えば…いや、でも…」

ルイージ「無理無理無理無理」フルフル

リュカ「あれはおいしい御馳走だ、あれはおいしい御馳走だ、
   泥沼だって思い込めば温泉になるんだから…………」

クッパ「ワガハイは割とグルメだからな」

リンク「あっれえ?」





リンク「しょうがないな……まあ、ヨッシーとカービィなら安牌だろ。
   折角取り出したんだし食べてもらうことにするか。

   ……………………………………ん?」

453Mii:2021/07/25(日) 16:26:09 ID:kJrWaewE
ヒルダ「………………………………」キラキラキラキラ

リンク「………………………………食べる?」

ヒルダ「よいのですか!?ありがとうございます!」

ゼルダ「えっ」



パクッ。

ヒルダ「ん〜〜〜〜!!ロウラルのハチノコも悪くはないのですが、やっぱりリンクの物には敵いませんね!
   リンクお手製の味付けまでされていてまさに高級、絶品です!
   貴重なたんぱく源で栄養面でも言うこと無し、嫌うだなんて勿体ない!」
   【普通にハチノコに慣れ親しんでいた人】

リンク「そうだろそうだろ!ヒルダはわかってるなー!
   なんだったら、あきビンに詰めてやるから持って帰るか?
   遠慮なんてしなくていいぞ!喜んでくれて俺もうれしいよ!」

ヒルダ「よろしいのですか!ぜひ!…あ、えっと。ラヴィオの分も頂くわけには、いかないでしょうか」

リンク「そのくらいお安い御用さ!そんじゃ、あきビン2本ぶんな!」

ヒルダ「わああぁぁ!!!!」パアアァ

ゼルダ「…………出遅れたっ!」ガーン

ピーチ「ヒルダはそんなこと一切考えてないと思うわよ」

454Mii:2021/07/25(日) 16:30:34 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「調味料、調味料っと…」

やや人気のなくなった廊下を歩いていると、剣の精霊さんに出くわしました。



ファイ「…………」



小休憩のためのソファに座り込んで、なんだかあんまり元気が有りません。
…まあ、ちょっと表情は掴みにくい方ですが。こんなところで、一体どうしたのでしょう。

ロゼッタ「あの、どうかされたのですか?もしかして、料理が口に合わなかったとか。
    あるいは、場の雰囲気にあてられて気疲れしてしまったとかですか?」

ファイ「…ロゼッタ様。いえ、そのようなことはありません。
   まあ、私の体はもともと食事を必須とはしないのですが…。
   心配をおかけして申し訳ありません」

ロゼッタ「…………」

なんだか放っておけなくて、ファイさんの隣に座ります。
ちらりと伺うと、やっぱり何かを思い詰めているよう。

ロゼッタ「リンクへのサプライズプレゼントのことで、なにか思う所があるのですか?」

ファイ「…お見通しでしたか」

ロゼッタ「流石にそのくらいしか考えられませんよ」フフッ

455Mii:2021/07/25(日) 16:33:42 ID:kJrWaewE
ファイ「…………衝動的に動いて、後ろめたかったのかもしれません。
   結果的に丸く収まったから多少はよかったものの、多くの方にご迷惑をかけてしまいました」

ロゼッタ「衝動的…なにか、焦っていたのですか?」



ファイ「…そうですね。私は、焦っていました。

   私などより、マスターは何歩も先を歩いている。
   今のままでいいのか、何かできないのか、自問自答して。
   もっと強くなりたい、お役に立ちたいと思っても、何も見つけられなくて。

   結局、贈り物を差し出すという形で終わってしまいました。
   私自身は、何も成長できていません…半身失格です」

ロゼッタ「贈り物だけでも、凄いことではないですか!
    ファイさんの気持ち、しっかりリンクに伝わっていますよ!大丈夫!
    あんなに泣いて喜んでいたではないですか!」

ファイ「…ですが。やはり、半身としては…戦いで貢献したい。
   贅沢な悩みであると分かっては、いるのですが…………」



そこにあるのは、剣の精霊としての、矜持のようなものでしょうか。



ロゼッタ「…………半身としての、意気込み、ですか…」

456Mii:2021/07/25(日) 16:36:19 ID:kJrWaewE
正直、半身って言われても。どういう経緯でどういった立場になったのか、
まるでわかっていません。お恥ずかしながら。

それでも、とにかくパートナーとして恥じないチカラを得たいという気持ち。
それはひしひしと伝わってきました。そして、それが無理難題だという悲しみも。



ロゼッタ「……………………」



でも、第三者の介入があれば、無理難題じゃなくなったりして。



ロゼッタ「…………………………………………ふむ」





ロゼッタ「――――――――閃きましたっ!!!」

ファイ「…!?」



いいことを、思いついちゃいました!!

457Mii:2021/07/25(日) 16:41:11 ID:kJrWaewE
デイジー「あ、ロゼッタがようやく戻ってきた!まったくもう、早とちりが過ぎるんだか――――――――」

ロゼッタ「リンク!リンク!ちょっとお話が!」

リンク「ど、どうしたどうした。今せっせとヒルダのためにハチノコ詰めてるんだけど」

ピーチ「目に毒だから、せめて別の場所でこっそり作業してちょうだいよ…」



ロゼッタ「いつぞや、病院でリンクが私に土下座したときの罪滅ぼしについてですが!」

リンク「ういっ!?」ピタッ

ロゼッタ「祝賀会の間だけ、何も聞かずにファイさんを貸してください!
    ちょっとだけ、試したいことが有るんです!」

ファイ「私からも、お願いします。マスター」

リンク「え、ええ!?……………………まあ、ファイもOK出してるんなら…いいか。そのくらい喜んで。
   ただし、あんまり変な事させないでくれよ?ロゼッタだから大丈夫だと思うけど」

ロゼッタ「ありがとうございます!あんまり期待せずに待っておいてください!
    では早速行きましょう、ファイさん!」

マリオ「え、ちょっと、どこ行くんだ!?何をしに!?」

ロゼッタ「ファイさんとの作戦会議をしっかり済ませたあと、祝賀会抜けさせてもらって、
    適当な原っぱに行ってきまーす!何をするかは…秘密でーす!!」ダダダッ

458Mii:2021/07/25(日) 16:44:39 ID:kJrWaewE
ルフレ「…………んー」



マルス「ルフレ、ワインがぽたぽたと零れて行ってるんだけれど。
    あまり根詰めてないで。たまには息抜きをしよう」

アイク「そうそう!旨いもの食ってりゃ、いい案も浮かびやすいだろ」

ルフレ「そ、そうは言いましても。
    僕の判断次第で、王国が潰れるかどうかが決まっちゃうかもしれないのに…
    うわあ…頭が、痛い…………………!!
    中々名案の糸口も見つかりませんし…………!!」



ルキナ「…………??」





ルフレは未だに悩んでいた。

459Mii:2021/07/25(日) 16:50:03 ID:kJrWaewE
――――ファイさんは、凄い精霊に違いありません。

使えそうな「モノ」の候補を頼んでみたら、予想以上の代物がやってきました。
正六角形8面と、正方形6面とで形成された多面体構造、おおよそ丸っこいその珠は――――――――!



ロゼッタ「…これが、ファイさんの地元の…時を司る鉱物『時空石』を加工した…



    ――――――――神聖な、『時空珠』――――!!



    すごい、すごいですよ、これは!なんて力に溢れているのでしょう!
    私の空間魔法と、これほどまで相性がいいとは…!!
    どんどん術式が浸透していきます、怖いくらいに!これならば、もしかして――――――――」パアアアアァァァァ

ファイ「元の材料である時空石も大量にお持ちしました。持ってくるのに時間が掛かり、申し訳ございません。
   …それで、これを一体、どうするのですか?」





ロゼッタ「これに、私の魔法を編みに編み込んで――――
    ファイさんだけの、新たなる攻撃手段に仕上げて見せます!!」グッ!

ファイ「――――!!」

460Mii:2021/07/25(日) 16:55:41 ID:kJrWaewE
〜 12月11日 〜

リンク「どうしたんだ、ロゼッタ。急にこんな草原まで連れて来て」

ファイ「…………」スッ

リンク「なんだかファイが妙に緊張してるっぽいし。
   ロゼッタが言ってた用事が済んだのか?そんでもって、またもやサプライズ?」

ロゼッタ「…はい!成功するか未確定…駄目元といえば駄目元だったのですが、
    なんとか形になりました!細かい所は後でお二方で詰めて行ってくださいね!」

リンク「形になった?何が?」

ロゼッタ「ファイさんの、新たな攻撃手段ですっ!
    これでもう、ファイさんが力不足を悩むこともなくなる、はず!」

リンク「力不足…?ファイ、そんなことを気にしていたのか。
   もう十分、ファイは頑張ってくれてるぞ。気にし過ぎだよ」

ファイ「…そのお言葉は非常に嬉しいのですが。
   やはり、現状に胡坐をかいていたのでは、あまりにも怠惰でありますので。
   ロゼッタ様に、思わぬ助言を頂いた次第です」

リンク(ファイの胡坐姿とかなんだか想像しがたいな)

リンク「よーし。じゃあ、その新しい攻撃手段とやら、さっそくみせてくれよ。
   そこまで意気込むからには…期待していいんだよな?」ニヤッ

461Mii:2021/07/25(日) 16:59:09 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「うう、ちょっとプレッシャー…ですが、お任せください!
    ターゲットはとりあえず、あの岩ということで!」ビシッ

100メートル程先に、5メートルほどの大きさの、中々大きな岩塊が。

リンク「…ほう?」

ロゼッタ「ちなみに、ここからリンクがあの岩を攻撃するとしたら、どうします?」

リンク「接近禁止が前提だよな。弓矢じゃちょっと荷が重いし、まあバクダンかな…。
   ただ、バクダンの威力は俺の戦闘力と関係ないから、ちょっと時間が掛かるかも」

ロゼッタ「…簡単だよとか言われたら困り果てていたところでした」

リンク「ははは。それで?ファイはどうやってあれを攻撃するのかな?」



ロゼッタ「では、やっちゃってください、ファイさん!」

ファイ「はい!」



深呼吸したファイが、ブゥンと力を籠めると。
目の前に、直径2メートル超えの、青白く文様輝く「時空珠」が現れました。



リンク「うわっ!そ、それって、時空珠じゃんか、懐かしい――――」

462Mii:2021/07/25(日) 17:02:38 ID:kJrWaewE
リンクの呟きは半分正解、半分間違い。

もともとリンクが馴染みのある時空珠は、この半分以下の大きさだったはずです。
ファイさんに時空石の加工をお願いしながら…スペックと相談し、徐々に大きくしていった成果です。
そして、異空間から出現させられるようにしたのは、もちろん私の鉱石…いえ功績です。

ロゼッタ「余所見しちゃいけませんよ、まだまだこれからです!」



ファイさんが自身を剣の形に変貌させて、――――時空珠を、強烈に、叩くっ!!



ガキイイイイイィィィィン!!!

リンク「…!?」



叩く!叩く!叩く!まだまだ、叩く!
短い間の余りの連撃に、激しすぎる衝撃音が響き渡ります!
不思議なことに、浮かんだままの時空珠は、動き出す気配はありません。しかし――!



リンク「なんだこりゃ!?へんなヤジルシ…いやベクトル、か?
   珠っころからグングン伸びて行ってるぞ!?」

463Mii:2021/07/25(日) 17:08:43 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「自他が方向と速度を理解把握しやすいように…
     シンプルながら、視認性アナウンサーを付けさせていただきました!

    そろそろ十分ですよっ!ファイさん!!  3、2、1――――ハイッ!!」



ファイさんが元の体に戻り、最後のトリガーとなる魔力を込めます!

ファイ「――――リスタートッ!!」パアァ

リンク「こ、これって、タブーを仕留めた時の――――!?」



制止した珠に与えられるだけ運動エネルギーを与え続けて、気の済むまで与えたところで、一気に放出――!!
この「静と動」の組み合わせは、思いの外、敵に対して絶大なる効果をもたらすみたいなので!



時空珠は、有り得ないほどの超高速で、岩に向かって突き進み。



ズガガガガガガガアァァァァ―――――ン!!!

リンク「なああぁぁぁぁ――!?」

いともあっさり、遠方の岩を完全粉砕して見せました!
轟音に、上空の鳥たちが一目散に離れていくほどのド迫力です!

464Mii:2021/07/25(日) 17:11:28 ID:kJrWaewE
ファイ「――――――――――――キャッチ」



大地にめり込み、もうもうと土煙を巻き上げながらようやく止まった時空珠は、
これまた私の編み込んだ魔法の賜物で。
ファイさんが一言発せば、「プンプンの持つ手裏剣」のように。
たちまちファイさんの手元にシュンッと戻ってきます。



ロゼッタ「静止状態のまま、威力をチャージしてチャージして…一気に解き放つ!

    これが、リンクを支えるファイさんの新たなるチカラ。
    リンクが欲しがっていた、遠距離攻撃の第一候補となり得るチカラ。
    僭越ながら、私が勝手に命名してしまいました。







   その名も――――――――    ピ  タ  ロ  ッ  ク   !!」



リンク「す、すげええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ――――!!!!」

465Mii:2021/07/25(日) 17:14:18 ID:kJrWaewE
リンクもこれ以上ないほど驚いてくれて、大層満足!

ロゼッタ「これで、ちょっと早いですが、ファイさんはお返しいたします」

ファイ「ロゼッタ様、本当にありがとうございました!私、少し自信が付きました!」

ロゼッタ「いえいえ、ファイさんのパワーと強靭性があってこそ為せる技ですよ!
    私も、お役に立てて本当に嬉しかったです!」

リンク「そっか。いやいや、俺もロゼッタに罪滅ぼしができて本当によかった――――」





リンク「…………………………………………」





リンク「……って、ちっともよくないぞおおおぉぉぉぉ――――――――!?」

ロゼッタ「!?」

リンク「よくない!まったくよくないっ!返せてないよ!?
   こんなすっごいプレゼントまでもらっちゃって、どうすんの俺!?

   これ、借りを返すどころか利子まで付きまくったんですけどっ!?
   ダメじゃん!なんの解決にもなってないよ!悪化してるよ!」

466Mii:2021/07/25(日) 17:20:17 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「駄目…でしたか?」ショボン

ファイ「…………」ショボン



リンク「駄目じゃないよ!すっごく嬉しいよ!だからこそ駄目なんだよ!
   ロゼッタに返せてないよ何もかも!
   というかよく1週間…いや5日で完成できたな!?」

ロゼッタ「私は思いっきり空間魔法を行使出来てスッキリしました!」ムフー!

リンク「そういうことじゃなくてですね!ほんと天然だな!
   …ああもう、俺どうすればいい!?なんでもするから何か言い付けてくれよ!
   なあ!なあ!生き恥は嫌なんだけど!」

ロゼッタ「そ、そんな大げさな…!わ、分かりました、考えておきます」

リンク「絶対だぞ!絶対だかんな!!」



…あれ?なんだか、予想と違う展開になってしまいました。
まあ、こうなったら、適当に負担とならないお願いを考えておきましょう。





祝賀会は、残り2日です。

467Mii:2021/07/30(金) 21:23:47 ID:1j/hfldE
〜 祝賀会 会場 〜

ハイリア「ほんと、キノコ王国のお酒は美味しいわね…幾らでも飲めちゃいそう。
    さあ、次の盃、持ってきなさい!」

ヒルダ「あ、あの、恐縮ながら、いつまで飲み比べを―――」ビクビク

ハイリア「それはもう、どちらかが潰れるまでよ!
    他の人たちはみんな、逃げるか潰れるかしちゃったし!」



サムス「はやく次回作が出てほしいんだあ…………ZZZ」

ファルコ「フォックスっ!酒とノンアルの区別もできねえのか…………ZZZ」

ゼルダ「リンクのばぁかぁ…………ZZZ」

ヒルダ「……………………」

ラヴィオ「は、はい、お二方、どうぞ…………」

ハイリア「――――」ゴクゴク

ヒルダ「――――」コクコク

ハイリア「ほんと、キノコ王国のお酒は美味しいわね…幾らでも飲めちゃいそう。
    さあ、次の盃、持ってきなさい!」ダンッ!

ヒルダ「あ、あの―――?」

468Mii:2021/07/30(金) 21:27:40 ID:1j/hfldE
ハイリア「それはもう、どちらかが潰れるまでよ!
    他の人たちはみんな、逃げるか潰れるかしちゃったし!」

ヒルダ「…………」

ラヴィオ「は、はい、どうぞ、お二方…………」

ハイリア「――――」ゴクゴク

ヒルダ「――――」コクコク

ハイリア「ほんと、キノコ王国のお酒は美味しいわね…幾らでも飲めちゃいそう。
    さあ、次の盃、持ってきなさい!」ダンッ!

ヒルダ「あ、あの、だいぶ酔われていらっしゃいますね?」

ハイリア「酔ってないわ!」

ヒルダ「なんだか言い回しが固定されてきましたよ?」

ハイリア「そんな適当な言い掛かりをつけて、逃げる気ね!」

ヒルダ「い、いえ、滅相も無い…………ですが、そろそろ終わりにしても…」

ハイリア「それはもう、どちらかが潰れるまでよ!
    他の人たちはみんな、逃げるか潰れるかしちゃったし!」

ヒルダ「……………………助けてくださいぃ」

469Mii:2021/07/30(金) 21:30:25 ID:1j/hfldE
ラヴィオ「は、はい、どうぞ、お二方…………」

ハイリア「――――」ゴクゴク

ヒルダ「――――」コクコク

ハイリア「これ、水じゃないのっ!ふざけてるの!」バシャッ!!

ラヴィオ「ひ、ひいっ!申し訳ございませんっ!!」

ピーチ「……ハイリアさんハイリアさん、ここはちょっと酒の趣を変えてみませんこと?」

ハイリア「どういうことかしら、どれもこれも、一級品のお酒ばかりだと思うけど。
    安酒なんてこの場には一つもないでしょう?」

ピーチ「いえいえ、この程度で満足されているようでは、女神失格では?
   こちらのお酒こそが、ぜひ召し上がっていただきたい絶品酒なのですが…」

ハイリア「…へえ?そこまで挑発するのなら乗ってあげる。――――頂くわ」

ヒルダ「あ」



ハイリア「――――――――ZZZ・・・」

ヒルダ「…………さすが『桃葵の誓い』、一瞬で意識を失いましたね。
   恍惚の表情で倒れ込みました、おかげで助かりました」

ピーチ「まったくもう、とんだ女神様だこと」

470Mii:2021/07/30(金) 21:33:53 ID:1j/hfldE
パルテナ「でぇすから!私はっ!好きで人間を攻撃したわけじゃないんですよっ!
    操られてただけなんですよっ!酷いとぉ、思いませんかっ!
    守ろうとしていた者を知らず知らずのうちに苦しめていた、この仕打ちっ!
    やってられませんよっ!神は私がお嫌いですかぁっ!」ヒック

ピット「そうですね。私も分かってますよ、パルテナ様は何も悪くありません」

パルテナ「――――」ゴクゴク

パルテナ「だというのにっ!私のこと、勝手に呑気だとか能天気だとか決めつけて!
    傷ついていないだなんて決めつけてっ!労わるどころか後ろ指指す始末っ!
    みんなして、酷いとぉ、思いませんかっ!もう泣きたいですよっ!」

ピット「もう泣いてますパルテナ様」

パルテナ「そこはツッコむところじゃないでしょう!」バシャッ!

ピット「…………」ポタッ・・・ポタッ・・・

パルテナ「でぇすから!私はっ!好きで人間を攻撃したわけじゃないんですよっ!
    操られてただけなんですよっ!酷いとぉ、思いませんかっ!
    守ろうとしていた者を知らず知らずのうちに苦しめていた、この仕打ちっ!
    やってられませんよっ!神は私がお嫌いですかぁっ!」ヒック



ピット「…………」ポタッ・・・ポタッ・・・

ピット「そうですね。私も分かってますよ、パルテナ様は何も悪くありません」ポタッ・・・ポタッ・・・

471Mii:2021/07/30(金) 21:36:45 ID:1j/hfldE
ピーチ「パルテナ、悪酔いし過ぎよ…………女神ってみんなこうなのかしら。
   いい加減飲むの辞めなさい。はた迷惑だから。
   ピットったら、ずぶ濡れになって…はい、このハンカチで拭いて」

ピット「ありがとう、ピーチ」フキフキ

パルテナ「だというのにっ!私のこと、勝手に呑気だとか能天気だとか決めつけて!
    傷ついていないだなんて決めつけてっ!労わるどころか後ろ指指す始末っ!
    みんなして、酷いとぉ、思いませんかっ!もう泣きたいですよっ!」

パルテナ「――――」ゴクゴクゴクゴク

ピーチ「…………」イラッ

ピーチ「…………ちょっとふん縛って、パルテナを部屋に放り込んでおくわね…
   今の今まで任せっきりでごめんなさい、別の所で楽しんできてちょうだい」





ピット「あ、パルテナ様に信頼され切っている現状に満ち足りているので
   このまま僕たちは気にせず放置しておいてください」キリッ



ピーチ「」

ピーチ「ア、ウン、ヘエ、ワカリマシタ」

472Mii:2021/07/30(金) 21:41:19 ID:1j/hfldE
パルテナ「…………」

パルテナ「――――」スゥッ



パルテナ「酔い覚めの奇跡っ!!」パアアァァァ



ピット「あーっ」

パルテナ「何をがっかりしているのですか、ピット。これ以上迷惑かけられません。
    でもスッキリしました、ありがとうございます」

ピット「勿体ないお言葉です!」ビシッ

パルテナ「それで、ピーチさんピーチさん!今、色々と祝賀会の様子を見て回っているところなんですか、もしかして!
     私も付いて行ってもよろしいですか!」

ピーチ「べ、別に構わないけど…………さ、酒臭いっ!
   酔いは醒めてもアルコールが抜けた訳じゃないの!?」

パルテナ「ありがとうございます!それでは、レッツゴーですね!
    御歓談相手を探しに参りましょう!」

ピーチ「まるで聴いてくれていないし…」

473Mii:2021/07/30(金) 21:45:15 ID:1j/hfldE
ソニック「おー、ピーチじゃないか。楽しんでるか!俺は楽しんでるぞ!」

ピーチ「どっちかというと、管理する立場として…おちおち寝てもいられなくて
   疲労が積み重なっていってるけどね」

ソニック「しかし、こうも体が酒で火照ってくると、あれだな。
    思いっきり走って競争でもしたくなるぜ!」

ピーチ「走り切った後の皆さんが悲惨なことになるからやめてよね?フリじゃないわよ?」

パルテナ「ときにソニックさん、タブー戦ではお疲れさまでした。
    自分も戦いたいのをグッと堪えて、情報収集に努める!
    なかなかできることじゃありませんよ!」

ソニック「まあ、褒められたからには任務を全うしなきゃな!」

パルテナ「ピーチもなにかお褒めの言葉とか、褒賞とか、ないんですか?
    流石になにもなしはどうかと思うのですが」

ピーチ「…言われなくても分かってるわよ。
   ソニック、私が偽ロゼッタ達に隔離されている間、よく頑張ってくれたわね。
   貴方の功績は、数値には現れなくとも、素晴らしい物よ。
   なんなりと欲しい物を言ってちょうだい、可能な限り用意させてもらうから」

474Mii:2021/07/30(金) 21:51:35 ID:1j/hfldE
ソニック「…………ふむ、なら折角だから貰っておくか。
    こう、より己の素早さが鍛えられるアイテムが欲しいぞ!」

ピーチ「『スバヤクカワール』と『センセイサレナイ』、どっちのバッジがいい?」

ソニック「…いや、それはちょっと素早さを鍛えるとは違うだろう」

ピーチ「じゃあパワフルダッシュキノコで」

ソニック「一時的なブーストが欲しいわけじゃない」

ピーチ「…インドメタシン1個っと」メモメモ

ソニック「おい」

ピーチ「…冗談よ、冗談」

ソニック「全く…………」









ピーチ「10個もあればいいわよね?」

ソニック「数の問題じゃないぞ!」

475Mii:2021/07/30(金) 21:54:26 ID:1j/hfldE
ポケトレ「…………」



ピーチ「噂をすれば、ドンピシャな相手が見つかったわ」

ポケトレ「…………」バッテン

ニャース「お酒は二十歳になってから、俺は永遠の10歳だ!…と言ってるニャ」

ピーチ「…みょ、妙にカレーコーナーに群がってるわね。何杯目?」

ポケトレ「…………」モグモグ

ニャース「最新作の販促でもしておくぞ!…と言ってるニャ」

ピーチ「やめて時間軸が狂うから。…聴くところによると、
   偽ロゼッタたちがせっせと設置した爆発物…もとい砲台を、
   ステルス戦法で粗方除去してくれたんですって?

   市民や観光客に死者が出なかったのは、間違いなくあなたのお陰ね。
   いくらお礼を言っても言い足りないわ」

ポケトレ「…………」グッ!

ピーチ「…えーっと、褒賞として、何か欲しい物って、ある?」

パルテナ「なんでも言っちゃってくださいまし。ピーチがささっと叶えてくれますって」

ピーチ「パルテナ、貴方ねえ…まあ、大概のものなら用意できるけど…」

476Mii:2021/07/30(金) 21:56:55 ID:1j/hfldE
ポケトレ「…………」

ポケトレ「…………」

ポケトレ「…………!」ピコーン











ニャース「――――切断のない世界、と言ってるニャ」







ピーチ「――――――――ごめんなさい、私ごときでは無力なの…
   で、でも一応、任天堂に掛け合ってみる、わね…?
   というか、掛け合ってみるだけで許してちょうだいね…?」ガタガタガタガタ

ポケトレ「…………」ショボン

477Mii:2021/07/30(金) 21:59:20 ID:1j/hfldE
ネス「あー!ピーチじゃん!こんにちはー!
   僕、もっといろんなソフトドリンクが飲みたい!ここお酒ばっかりだよ!」

リュカ「あ、あのさあネス、流石に図々しいって。
   ソフトドリンクだって30種類くらいは用意されてるじゃない」

ネス「30種類程度じゃ飽きたっ!お酒は何百種類とあるのにずるくない?」

リュカ「…腹いせというか免罪符にしたというか、料理の方を馬鹿食いしてるけどね…」

パルテナ「そういう時は、ソフドリ同士を混ぜて新たな味を開拓しましょう!」

ネス「子供かっ!いやまあ僕たち子供だけれどもっ!」

ピーチ「…んー、MOTHER組はMOTHER組で、最後の踏ん張りで石化対策。
   見事に大当たりして、持ちこたえてくれたのよね。
   貴方たちが居なかったら、本当にまずいことになっていたわ。
   …ほかのみんなはどちらに?」

ネス「ファイターじゃないのに祝賀会に居座るのは居心地悪いので――
  とかなんとか言って、城下町の方に繰り出しちゃったよ。付き合い悪いなあ。
  ようやく羽を伸ばせるーって、アナとかポーラとかはしゃぎまわっていたけどね。

  …あれ、もしかして皆に用があった?」

ピーチ「あ、急ぎってわけじゃないけれど。何か欲しい物とかあったら――――」

ネス「褒賞っ!褒賞だね!わーい!」

478Mii:2021/07/30(金) 22:02:41 ID:1j/hfldE
ピーチ「…え、ええ。まあ。それでは今から、追加のソフトドリンクを」

ネス「いやいや、そんな褒賞はいやだからね!?何にしようかなー…

  そうだ!サンドイッチ1年分とか、どうかなっ!1年間サンドイッチ食べ放題!」

ピーチ「へえ、やっぱり子供らしくて可愛いわね。サンドイッチ…ロゼッタの出番かしら」

ネス「チョコチップと相性抜群!とっても美味しくて、思わず走り出してスキップしたくなって、
  厄介な敵も、広大な大地も、そしてたくさんの思い出も、一切合財スルーして行ける優れものグフフフフ」

ピーチ「…なんだか禍々しい感情が混ざり込んでない?気、気のせいよね?」











ネス「…あ、そういえば。ちょっといい、ピーチ?」コソッ

ピーチ「なになに、内緒話?」シャガミ

リュカ「…………??」

479Mii:2021/07/30(金) 22:05:44 ID:1j/hfldE
ネス「さっきさ。罰ゲームで黒歴史話す羽目になって、
  『内面世界で素っ裸で延々と歩き回ったことがある』って暴露しちゃったんだけど。
  言ったそばから、無茶苦茶恥ずかしくなった僕のことは一旦置いといて。



  一緒にゲームで遊んでたデイジーが、酔っ払いながら
  『現実世界で裸になったピーチよりはマシじゃーん!』とか言って
  根も葉もない噂、というかホラ話を面白おかしく語り出しながら大笑いしてたんだけど」ヒソヒソ

ピーチ「」グシャッ

ネス「女性陣はえらく引いてたし、ムッツリな男性陣の数名が鼻血出す事態になってたし。
  …変に騒ぎが大きくならないうちに止めといたほうがいいよ?いやほんと」



ピーチ「…………エエソウネ、本当ニアリガトウ、ネス」ゴゴゴゴゴゴゴゴ



ネス「うんうん、そりゃあぶち切れたくもなるよね…わかるわかる。
  あれじゃあピーチが手の施しようのない露出狂みたいな扱いだったもん。
  僕は子供だったことが幸いして逆に冷ややかだったけど」



ピーチ「……………………エエソウネ、本当ニアリガトウ、ネス」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

パルテナ「」

480Mii:2021/07/30(金) 22:09:40 ID:1j/hfldE
デイジー「……おぉぉぇえぇ…謎のピンクの悪魔にフライパンのようなもので背後からしこたま殴られて、
    なんか記憶がぶっ飛んだ気がするんだけど…私、何してたっけ…?
    
    …あるぇ?なんか、周りにも頭から血を流して倒れてる人がいっぱいいるんだけど…?
    みんな、だいじょうぶぅ…?事件?事件なのか…!?」

ピーチ「ねえデイジー、そういえばあなたの褒賞がまだだったわね!」

デイジー「うわっ、ピーチ!?…褒賞?」

ピーチ「遠慮はしないでいいのよ?
   貴方が偶然とはいえゼルダ、ロゼッタ、ヒルダと合流してくれたからこそ、
   そして彼女たちを短期間で強引に鍛え上げてくれたからこそ、
   戦いを打開することができたのだから。

   素晴らしい活躍よ!何が望みかしら!」

デイジー「…………褒賞、かあ」

デイジー「…………」

デイジー「先生。スマブラがしたいです」

ピーチ「よし、認めます」

デイジー「わーい、やったー…………」



デイジー「………………………って、マジっ!?ホントにっ!?ホントッ!?」

481Mii:2021/07/30(金) 22:14:39 ID:1j/hfldE
ピーチ「嘘なんてつかないわよ」

デイジー「ホントなんだね!?嘘じゃないの!?クーリングオフはできないからね!?

    ――――いやったぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!
    最高の褒賞だよぉ――――――――!!
    これであと20年は戦えるぞー!!」

ピーチ「よかったわね!おめでとうデイジー!」

















ピーチ(元から任天堂より通達されたペナルティ期間が終了して、
   次の大会で参戦させるつもりだった、ということは黙っておきましょ!)

482Mii:2021/07/30(金) 22:17:30 ID:1j/hfldE
リトル・マック「褒賞、だと?」

ピーチ「そ。ロゼッタにパンチの極意というものを叩き込んでくれたでしょ?
   結構あれ、意義が大きかったのよ」

リトル・マック「要らない要らない、そんなもの。
       別に対価が欲しくてロゼッタを鍛えたわけじゃない。
       教えるべきだと思ったから教えたまでだ」

ピーチ「そこをなんとか。私の思いを無碍にするのも失礼よ?」

リトル・マック「…………あ、じゃあ…………」

ピーチ「なになに?」



リトル・マック「うちの馬鹿コーチがロゼッタを鍛える合間合間にしでかしたセクハラを
       俺に免じて不問…いやせめて鞭打ち5回くらいにしていただけないでしょうか。
       何度か腰まわりを触ってロゼッタが青筋を立ててたので」ドゲザ

ピーチ「え、あ、うん。一応ロゼッタにも聞いてみる」

パルテナ「正直者ですねー」

デイジー「でも流石にロゼッタでも温情はくれないと思うなあ…」

483Mii:2021/07/30(金) 22:20:05 ID:1j/hfldE
トゥーンゼルダ「…ああ、統率したときの功績に対する褒賞ですね?
       そんなの、要りませんよ。困ったときはお互い様です。
       …なんだか、当時の振る舞いはあんまり思い出したくないですし…」

デイジー「そんなこと言わずに!バシバシ要求しちゃいなよ!」

ピーチ「どうして貴方が付いて来てるのよ」

デイジー「なんとなく面白そうだったから!」

パルテナ「というか、ゼルダにトゥーンゼルダにハイリア様に、
    なんというか出せるだけ出したというゴチャゴチャ具合ですね」

ピーチ「…………空耳が聴こえたわ」

トゥーンゼルダ「…………で、では1つだけ」

デイジー「なに、なにっ!1つと言わず3つでも100個でも――――」



トゥーンゼルダ「トゥーンの私たち…いえ私がもっと強くなる機会をください!
       ヒルダ姫にも追い越されたっぽくて、ちょっと悔しいというか。
       (トゥーン)リンクに相応しいパートナーになりたいんです!」

デイジー「くっ!?純真過ぎてみていられないっ!?ははーっ!」

ピーチ「…HD化だけじゃだめ?…駄目よね、そうよね…新作じゃないと意味がないわよね…」

パルテナ「あらあら」

484Mii:2021/07/30(金) 22:22:50 ID:1j/hfldE
デイジー「いやー、みなさん中々謙虚だよね、もっと欲しがればいいのに」

ピーチ「そんな、ファイターが誰も彼も浅ましいみたいな言い方止めなさいよ」

デイジー「でも、それだけ凄い事やってきたじゃん。
    やってきたからには、ちゃんと認めてもらうことは大事じゃない?
    それがピーチの信条、信賞必罰ってものでしょ?」

パルテナ「そうですよねー」

ピーチ「まあ、それは否定しないわ。
   凄いことをやった分だけ、いくらでも感謝し報いる、それが私のモットーよ」

パルテナ「わああ…!さっすがキノコ王国のトップ!そこに痺れる憧れる―っ!」

ピーチ「ふふっ、おだてても何も出ないわよ」







パルテナ「ということは、体を張ったラジオ番組で王国中を和ませて、ロゼッタの至宝の眼を奇跡の力で実質2度も治して
    スレの説明不足の解説役を一手に引き受けた私もむちゃくちゃ褒賞を期待していいんですよね!」

ピーチ「」

デイジー「」

485Mii:2021/07/30(金) 22:25:53 ID:1j/hfldE
ピーチ「貴方、それが狙いだったのね…妙に不自然についてくると思ったら…」

パルテナ「いぃえぇ、催促したみたいでかたじけない。
    実はですね私っ!欲しい物は既に決めてるんです!
    あの、究極のお酒っ!あれさえあれば他に何も要りません!
    というわけで、『桃葵の誓い』を下賜してくださいませ!
    飲んだ傍から、喉が切望してやまないのです!」

デイジー「まさに傾国の美酒」

ピーチ「下賜って…そんな言い方でいいの、プライドは?全く…
   それで?どれだけ欲しいのよ。言っちゃなんだけど、あげられるとしたら――」

パルテナ「いえいえ!まさか、そんな!
    キノコ王国のピーチ姫ともあろう御方に、こんな素晴らしいお酒を!
    1本で国ひとつが動きかねないような途轍もない価値があるお酒を!
    図々しく『何本ください』だなんて言えませんよ!」

ピーチ「…………え?」

デイジー「…………???」



パルテナ「で・す・か・ら!どれだけ下さるかは――――――――
    ピーチ御自ら、決めてしまってくださいな!」

ピーチ「」ピシッ

デイジー「…………??????」

486Mii:2021/07/30(金) 22:28:59 ID:1j/hfldE
パルテナ「もちろん!

    『こんな些細な功労でこのお酒を欲しがるだなんて図々しいっ!
    ロゼッタを2度も救ったあ?それがどないしたんや?』

    ということなら、それこそ耳かき一杯の量でも構いませんよ!
    ピーチの裁量に全てお任せ致します!」

デイジー「…………あっ」

ピーチ(……………………女狐に嵌められたぁっ!!?私、女だけどっ!)



――――身動き、取れないっ!?
提示する量が少なければ少ないだけ、王国とロゼッタを軽んじたって不名誉が残るっ…!?
結局見栄を張らざるを得なくなって、何本もパルテナに持っていかれることに…!?



パルテナ「回答は祝賀会が終わるまでにしてくださいねー!」タタタタタ

ピーチ「…………くうぅ…やられた…」

デイジー「す、すなおにさっさと1本確約しとけばよかったね…
    別に、今からでも遅くないよ。パルテナの挑発なんて無視して、
    何食わぬ顔で1本だけ渡せばそれでよくない?」

ピーチ「――――それは、私のプライドが」

487Mii:2021/07/30(金) 22:31:23 ID:1j/hfldE
ピーチ「…………頭が痛いわ、ほとんどアルコールなんて摂取してないのに」



――――ぱた、ぱた、ぱた、ぱた。



ロゼッタ「ピーチ姫っ!デイジー姫っ!一体どうしたというのですか!」

デイジー「あ、見かけなかったロゼッタがようやく戻ってきたか。
    おっそいよ、祝賀会も終盤に差し掛かろうとしてるのにー」

ロゼッタ「…い、いまはそんなことはどうでもいいのです!
    どうしてそんなにお二人とも表情が曇って――――

    会場に舞い戻った途端、真っ先に目に付くほどの。
    どんよりとした雰囲気を醸し出しているではないですか!」

ピーチ「だ、大丈夫よ、ロゼッタ。心配かけてごめんなさい。
   私たちで解決できる…解決してみせる。その程度の困りごとだから。
   そんなに深刻な話じゃないの。パルテナにちょっとからかわれただけで」

ロゼッタ「なっ…!そんな!文句を言いに行ってきます!
    親しき仲にも礼儀あり!許せません!」

ピーチ「い、いいからいいから!むしろそれは都合が悪いというか、
   私が惨めになるというか、いろいろとややこしい事情があるの!」

ロゼッタ「ですがっ――――」

488Mii:2021/07/30(金) 22:35:19 ID:1j/hfldE


凛とした、左目。魔眼のチカラが新たに宿った、左目。



ピーチ「…………ねえ、ロゼッタ。それはともかく、ちょっとお願いがあるんだけど。
   私を助けると思って、そのまま30秒ほど…私のこと見つめてほしいの」

ロゼッタ「えっ」



デイジー「…………」

ピーチ「…………」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………」

ピーチ「…………」

ロゼッタ(あ、あれ?何かのドッキリ?罰ゲーム?呪いの儀式?
    それとも隠し撮りされてまた変な挿絵に使われる?あれ?
    祝賀会をすっぽかしすぎて、激怒される5秒前?)ダラダラ



そのまっすぐで純粋な瞳に圧倒されて、わだかまっていたもの、全部飛んで行った

489Mii:2021/07/30(金) 22:40:18 ID:1j/hfldE
ピーチ「…………はい、ちょっとだけお辞儀して頭を下げなさい。ただでさえロゼッタは背が高いんだから」

ロゼッタ「……は、はあ」スッ








ピーチ「いい子いい子」ナデナデ

デイジー「あ、私もやる私もやるー」ナデナデ

ロゼッタ「」

ロゼッタ(何が何だかさっぱりわかりません!?)









ロゼッタの頭をそっと愛おしく撫でて、撫でて。
そうだ、大切なもの、しっかり守れたんだ。
こんなに嬉しくて、心穏やかになれる話はないってこと。

490Mii:2021/07/30(金) 22:42:27 ID:1j/hfldE
ピーチ「…ん。ありがとう、もういいわ」

デイジー「堪能したねー」

ロゼッタ「あ、はい。ええと。ではパルテナのもとへ――――」

ピーチ「それはもういいから。大人しく他の人たちと歓談してなさい。
   ……………………私たちとの約束よ、守ってね?」

ロゼッタ「…………………そこまでおっしゃるのなら」

しぶしぶという感じで、ようやくロゼッタが折れてくれたみたい。
そのまま、人の集まりに吸い込まれて行った。











ピーチ「さてと、デイジー。

   ちょっと、サラサ・ランドのお姫様に向けてご提案があるのだけれど」

デイジー「…………ほうほう、乗った」

491Mii:2021/07/30(金) 22:45:35 ID:1j/hfldE
ピット「え、ええ…?そんな挑発めいたことをやったんですか?」

パルテナ「ふふふ、本当にあのお酒は美味しかったんですから。ピットもさぞや美味しく飲めたでしょう?」

ピット「ま、まあ天にも昇るような味でしたけれど…天使なだけに」

パルテナ「…おや。ピーチが早速息を切らせてやってきましたね。
    ふふ、これでしばらくお酒には事欠きません」

ピーチ「…………パルテナ。話がまとまったわ」

パルテナ「ありがとうございます!話が早くて助かりました!
    それで、結局どうなりましたか本数は!」ニヤニヤ





ピーチ「在庫分10本と、向こう9年の先約90本で、100本あげるわ。あとでしっかり目録も渡すわね」

パルテナ「ふっふっふ、さっすがピーチったら太っ腹―。
    まさか100本も頂けるなんて思ってもみな――――――――」






パルテナ「……………は?」

492Mii:2021/07/30(金) 22:49:38 ID:1j/hfldE
ピーチ「デイジーともよーく話し合って、考えに考えて。
   王国の名誉とロゼッタの為なら、このくらい屁でもないって結論になったわ。
   良かったわねパルテナ、これだけあれば小国のひとつやふたつ、余裕で買収できるわよ?羨ましいわあ」

デイジー「これでパルテナも天界で好き勝手できるねえ、すごーい!」

パルテナ「」

ピット「」



ピーチ「そのかわり、肝に銘じておいてね?
   この決定…向こう10年、キノコ王国とサラサ・ランドに神酒が一切出回らなくなることと同義だから。
   そのことを十分に噛みしめて、余すことなく味わって飲んでね?

   ただの1滴でも地に零したり飲み残したりしたら、最後。
   たちまちもがき苦しんで血反吐吐いて死ぬような呪いを『気持ちだけ』掛けておくから」

デイジー「この神酒を冒涜するような飲み方をしたら、衝動的に夜陰に乗じて
    パルテナの寝首を掻っ切るかもしれないけど、そこんとこ了承して
    平時から遺書を手放さないようにしておくんだよ?

    あと、ここまでロゼッタのことが大事だと明言したこと、よもや忘れないでね?
    ロゼッタのことで次また揺すりタカリを仕掛けてくるようなら
    適当な牢屋に閉じ込めて100年くらい過ごしてもらうかもしれないよ。

    綺麗な綺麗な女神さま…………国同士のパワーバランスって知ってる?」

パルテナ「」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

493Mii:2021/07/30(金) 22:54:23 ID:1j/hfldE
パルテナ「…あ、あ、あ、あの、ややややっぱり、
    1本だけでででもも貰えたらじゅうぶんんだなっててえ」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

ピーチ「嫌でも受け取って貰うから。拒否するようなら天界に送り付けるから」

パルテナ「」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

ピット「」ガタガタガタガタガタガタガタガタ



パルテナ「キノコオウコクバンザイキノコオウコクバンザイキノコオウコクバンザイ…」フラ・・・

ピーチ「…まあ、このくらい脅しておけば問題ないでしょ」

デイジー「…でも、脅しと言えどもしっかりお酒は渡すんだよね?い、痛手すぎるぅ…勿体ないなあ…」

ピーチ「…キノコ王国で70本持ってあげる。サラサ・ランドは30本でいいから」

デイジー「ピーチ愛してるっ!」ダキッ

ピーチ「…………くっつくのは暑苦しいからやめなさい」

デイジー「えへへ…………」



ピーチ「というより、自分の後始末ってことでロゼッタ本人に対価を払わせようかしら」

デイジー「台無しだよ!!」

494Mii:2021/08/01(日) 07:08:57 ID:1bf7iop2
ルフレ「…………………………………………」ブツブツブツブツ

ルフレ「…タイムリミットが刻々と近づいて来てるっていうのに、
   碌な案が浮かばない……………………どうしよう…………………」

ルフレ「……………………」

ルフレ「――――――――」ゴクッ ゴクッ

ルフレ「…………ぷはぁ」

ルフレ「…………ちょっと気分転換に夜風にでも当たってこよう」



カーテンの向こう、月の見えるバルコニーに躍り出て、ぼけーっとする。
アルコールが入ってふんわりした頭が、程よく冷やされて気持ちがいい。

欄干にもたれ掛かり夜の景色を楽しむことが済んだら、
ちょうどいい感じにぽつんと用意されていた丸テーブルと椅子を利用させてもらって…
突っ伏して、そのままキープ。…あ、この体勢なんだか楽だ。ほどよく机が冷たくて気持ちいい。



コン、コン、コン、コン。



別に眠たいわけじゃない。指を1本繰り出して、テーブルの上を小刻みに叩いて暇つぶし。

495Mii:2021/08/01(日) 07:11:17 ID:1bf7iop2
ルフレ「……………………どうすればいいんでしょうね、はあ」



ロゼッタ「あの、大丈夫ですか?気分が悪いとか?」

ルフレ「……………………ここから変えられるのか?うーん」

ロゼッタ「もしもーし」

ルフレ「…………うわあっ!?」



ビックリした!いつの間にか、ロゼッタ姫がテーブル挟んで反対側に。
全然気づかなかった…これ、戦場だったら死んでたな…。

ルフレ「も、申し訳ありません。少し考え事をしていたもので!」

ロゼッタ「考え事、ですか。すごく深刻そうだったんですが、一体どうされたのですか?よかったら話してみてください。

    …なんだか、人の相談を聴いて解決する自信がついてきたところなので!
    一時的な気まぐれ、過信、安請け合いかもしれませんがっ!」

ルフレ「い、いえいえ、そんな。国家間のトラブルを、無関係なロゼッタ姫にいきなり振るというのは流石に」

ロゼッタ「国家間のトラブル!?」ズイッ

ルフレ(あ、口が滑った…!)

496Mii:2021/08/01(日) 07:14:15 ID:1bf7iop2
ますます興味を持たれてしまった。ま、まずい。
口外厳禁な、こんな重要な極秘情報。ペラペラと話すわけには行かないぞ…!
どうにかして話を逸らして、去って貰わないと…!





ルフレ「…………あれ?その割に…口止めされていない?」





よくよく思い起こしてみれば、誰かに相談するなとも口外するなとも…
もちろん情報を漏らした場合の処遇なんかも、一言たりとも釘を刺されていない。



――――してやられました。



最終的な判断を、責任もって下せばよいだけで。
それまでの過程は、もっと融通利かせて自由に振る舞えってことですねピーチ姫。
他の人たちからのアドバイスは進んで聴いてみるべきだった。
…うん、間違った解釈かもしれないけれど、そういうことにしておこう。

目の前には、目をキラキラさせて僕が話し始めるのを待っている麗らかな女性1人。
いつまでも待たせるのも、立たせたままにするのも失礼というものでしょうか。

497Mii:2021/08/01(日) 07:20:26 ID:1bf7iop2
ルフレ「…長い話になるかもしれませんよ?夜風に当たり過ぎて風邪を引きかねないくらいに。
  ちなみに、僕の方はひとまず気にしませんが、ロゼッタ姫が今後『逢引していた』と揶揄されることになって困ることになるかも…」



ロゼッタ姫が、目をぱちくりして、一瞬赤面して、すぐに落ち着いて。

ロゼッタ「ルフレさんとしばらく2人っきりになるだけでそんな噂を立てる方なんていませんよ。ルフレさんも真面目な方ですし」

ルフレ「はは、そこまで品行を評価してもらえているのなら幸いです。あと、どうかルフレとお呼びください」

ロゼッタ「わかりました、ルフレ!よろしくおねがいします」

ルフレ「……………………」



ルフレ(自警団のメンバー同士の恋愛模様に一喜一憂する、微妙に不真面目な人間ですけどね、僕っ!
   仕方ないじゃないか!会話を眺めるだけで、互いの絆の程度が何故か分かるんだもん!
   …あ、思い出したらちょっと不謹慎な興味が湧いてきた!後でコッソリ遊んでみよう!)



ルフレ「では、せめて簡単につまめるものと飲み物を。さすがに何もなしというのも堅苦しいですから――――」



さあ、何からどんなふうに話そうか。
ロゼッタ姫も、キノコ王国民ってことで、一応合っているんだよね…たぶん。
ピーチ姫との接点も多そうだし、何か解決策の糸口を引っ張り出せないか――――

498Mii:2021/08/01(日) 07:24:03 ID:1bf7iop2
〜 12月12日 AM 0:30 執務室 〜

ピーチ「そろそろ日付変わりそう…あ、変わってた。あと2日…………」



――――ごくっ ごくっ ごくっ。



ピーチ「…………そろそろ強壮剤すら効かなくなってきたわね…頑張ろう…」

鏡を興味本位で覗いてみる。
…うわあ、死相が出てる。これは祝賀会にもう出ない方がいいかも。
子供が見たら泣くかもしれない。それくらいヤバイ。化粧で誤魔化せるか分からない。

ピーチ「とりあえず、魔法で扉をロックして。1時間だけ仮眠の為にベッドにだーいぶ――――」



ドンッ! ドンッ! ドンッ!!

ルフレ「ピーチ姫ぇっ!!いらっしゃいますかぁ――――!!」



彼らしからぬ、扉を叩き壊したいの?と思ってしまうような猛烈な殴打音。
…ノックのつもりなんだろうけど。

ピーチ「…………」ドサッ

499Mii:2021/08/01(日) 07:26:59 ID:1bf7iop2
ピーチ「…………ロック解除っと」スタスタ

ピーチ「入ってちょうだい」

うんざり顔で声を掛けてみれば、とんでもない勢いで扉が開けられて。
ズカズカとルフレが入ってきた。えらく興奮しているわね。

ルフレ「申し上げます!不肖このルフレ!
   まだまだツギハギだらけの策かもしれませんが!ピーチ姫に提示するための策をお持ちしました!

   …………って、顔こわっ!」

ピーチ「――――――――ほう?」

ルフレ「失言でしたぁっ!!!」ドゲザ

ピーチ「…ツギハギだらけならまだ持ってこないで。
   今の私、なっかなか気分も機嫌も悪いの。控えめに言って最悪よ」

ルフレ「じょ、冗談です!自信あります!お願いします!」

ピーチ「下らない案だったら窓から放り出すわよ…………あら?
   お仲間を連れてきたのね?ロゼッタと…………リンク?」

ロゼッタ「お仲間その1です!そして若干眠いです!そしてピーチ姫の顔が怖いです!」

リンク「お仲間その2だな!そして割と眠いんだけどな!」

え、なに?たった1日、日付跨いだだけで眠いとか言ってるの?
私の目の前で喧嘩売ってるのかしら。…おっといけない、思考回路がずれて来てる。

500Mii:2021/08/01(日) 07:33:05 ID:1bf7iop2
ルフレ「…それでは、ピーチ姫。
   なんとしてでも、この戦局、変えて御覧に入れましょう!僕たちの未来のために!

   そのために必要なピースは、おかげさまで揃いましたから!」

ロゼッタ「…………」

リンク「…………」



ピーチ「…………」



ロゼッタとリンクが、ちらりと私の顔を伺う。真剣な表情に変わって、嫌いじゃない。

私はというと、ため息ひとつついて、するりと移動し、
ささっと交渉台の机と椅子を用意して。

どっしりと座って、ジト目で3人にも掛けるように促して。



ピーチ「…………さあ、存分に話して貰おうじゃないの」



疲れ切っているけれど…何とも言えぬこの感覚は、捨てがたい。

501Mii:2021/08/01(日) 07:36:20 ID:1bf7iop2
〜 ルキナの部屋 〜

ルキナ「…………いたた、頭が…痛い、です」ズキッ

私なんて、大したことは何もしていないのに。正式なファイターですらないのに。
皆さんに励まされ続けて、促されるままお酒を嗜んで、
生まれてこの方食べたことのない絶品料理に感動して過ごす毎日。

寝る間際はいつも、自分の腑抜けっぷりを自分の内面に罵倒されている。そんな錯覚。
…でも、それと同時に、きっと英気も養われている、はず。
以前のような後ろめたさ、自責の念、絶望感は消え失せてくれました。

目を覚ましてまどろんでいるとほどなくして、ピーチ姫お抱えのメイドが挨拶をしに来てくれました。
これも既に日課。色々と気に掛けて頂いているみたいで、感謝のしようがありません。



メイド「ルキナ様、おはようございます。お体の具合はいかがでしょうか」

ルキナ「おはようございます。おかげさまで万全です、ありがとうございます」

ちょっとした頭の痛みなんて、気にしない方向で。

メイド「ふふ、一昨日は相当に御歓談が弾まれたようで。本当にぐっすりお休みになられていましたね」

ルキナ「そ、そう言われると恥ずかしいですね……………………」

変な寝相を見られたのかもしれないですね。これは確かに府抜けています。

……………………え?一昨日?

502Mii:2021/08/01(日) 07:39:57 ID:1bf7iop2
ルキナ「…ちょっと待ってください、何を言っているのですか。昨日は12月11日、今日は12月12日で――――」チラッ









日付表示「12月13日です」

ルキナ「」









ルキナ「まさか丸一日、緊張感のきの字もなく、ぐぅぐぅ眠りこけたままだなんて…
   本当に腑抜け切っています、だらけ切っています、私…………まずくないですか…?」ズーン

物ごころついた頃からの思い出を探ると、こんなに寝っぱなしだったのは初めての可能性が高いです。
体力面では元気いっぱいなのに、心が低空飛行。

…まあ、それでも。祝賀会最終日、楽しむつもり…なんですけれど。
その後の苦難に挑むにしても――――思い残すことはないようにしておきたい。

503Mii:2021/08/01(日) 07:43:08 ID:1bf7iop2
〜 祝賀会 会場 〜



ルキナ「…………?」



ぐるりと見渡せば。妙に、周囲から変な目で見られている気がします。
悪感情というわけではないのですが、なんだか、こう、避けられているような。

会話しようとすれば一応できるのですが、すぐに切り上げられてしまう。
妙にどもられて、目をそらされて、ビクビクされてしまう。
…私がいない昨日の間に、何かあったのでしょうか。

所在なく佇んでいると、流石に不憫に思われたのか、声を掛けて頂きました。



ルイージ「や、やあルキナ!今日もいい天気だね!」

ルキナ「は、はい、そう…でしたか?小雨が降っていた気がしたのですが」

マリオ「ルイージ、赤点」

クッパ「ぬるい。0点」

デイジー「むしろマイナス100点で国外追放」

ルイージ「酷いよ!」

504Mii:2021/08/01(日) 07:46:18 ID:1bf7iop2
ルキナ「……………」

リンク「…そ、そうだルキナ!ルフレ!とうとう最終日になっちゃったけど…
   祝賀会が終わった今日の晩にでも、最後に1戦、鍛錬場で模擬戦やっとくか?」

ルキナ「ほ、本当ですか!願ってもないご提案です!ぜひお願いします!」

ルフレ「それは僕も嬉しいですね、喜んで!
   流石に食べて飲んでだけだと、体がなまりそうだったんですよ」



ゼルダ「そうやって、またリンクったら口説く!手癖が悪いですよ、少しは自重しなさい!」

ヒルダ「お、落ち着いてくださいゼルダ姫…!」

ラナ「こんな人たちはほっといて。ほらリンク、ワイン注いであげるー!」

リンク「え、いや、割と結構飲んでるから…俺的には…」

シア「そんな情けないこと言わないの、優勝者様」

デイジー「よっ、モテモテだねリンクさーん!」ケラケラ





ルフレ「……………………」

505Mii:2021/08/01(日) 07:51:18 ID:1bf7iop2
ルフレ(全神経を集中させて、じ―――――――――――――――っ!)



実は、僕こと軍師ルフレには、何故か所持している凄い?能力がある。

それは――――――――絆解析能力っ(勝手に命名)!!

ある2人の会話を眺めている、たったそれだけで。
2人の間の共闘、共演により、どれだけ絆が培われてきたかがざっくりとわかる。
互いの好感度のうち「低い方」が唐突に思い浮かんでくるって考えればいいかな。
頭の中に「A」とか「B」とかが湧いて出てくるから、最初はなんだこりゃ!?と思ったものだ。

昔は、高い順にS/A/B/C/表示なし、と本当にざっくりすぎたんだけど、
不謹慎ながら自警団の仲間たちの観察をしていくうちに多少は精度が向上し、
S/A+/A/A-/B+/B/B-/C+/C/C-/D/表示なし…くらいにはなってきた。

…うむ、我ながら意味不明だ。意味不明、なんだが。
妄想とか気が触れているとかではなく、本当に正しく認識できるらしい。
今の所、間違った試しがないから信じるしかない。案外便利だし。誰にも言ってないけど。

ちなみに、自分と誰かの絆の強さは、この変な能力では調べないことにしている。
頑張れば調べられるのかもしれないけれど…なんだか、作戦段階で目が曇りそうで。
そのくらい普通に読み取れないで、何が軍師か。

        Dならば、知り合ったばかりの友人程度。
        Cならば、頻繁につるむことうけあい。
        Bならば、巷で大親友と呼べるくらいには仲がいい。
        Aならば、こいつに背中預けてもいいというくらいの戦友。
        Sならば、多分すでに結婚しています。

506Mii:2021/08/01(日) 07:56:33 ID:1bf7iop2
ルフレ(じ――――――――――――――――――っ!!)



皆の会話を盗み聞き…いや覗き見だ! 黙ってれば、誰にも怒られませんからね!





    マリオ⇔ルイージ   A
    マリオ⇔デイジー   A
    マリオ⇔クッパ     A
    マリオ⇔リンク     A
    ルイージ⇔デイジー A-
    ルイージ⇔クッパ   A-
    ルイージ⇔リンク   A-
    デイジー⇔クッパ   A-
    デイジー⇔リンク   A-
    クッパ⇔リンク     A-





ルフレ(いきなり恐ろしく高いのが出たっ!特にマリオさん、ド安定です!)

まだ上にSやA+があるからといって、AやA-は十分すぎるほど高い。
普通は、どれだけ仲が良くたってB止まりだからね!
Sなんかはもはや結婚前提のランクだから。

507Mii:2021/08/01(日) 08:00:18 ID:1bf7iop2
ルキナ「あの、ピーチ姫とロゼッタ姫はどちらでしょうか」

デイジー「…ロゼッタはちょっと用事があるって自室にこもってた。
    ピーチは、えっと、戦後処理が終わらなーいってぼやいてた」

ルキナ「そうですか、残念です…」

マリオ「気にしない気にしない」



…僕も残念だ。絆の解析ができないという不謹慎な理由のせいで。
マリオとピーチの絆は、Aだろうか、A+くらいはあるだろうか。







まあ、ピーチ姫がいない理由は…僕、というか「一部の人以外」は知ってるんですが。
…ロゼッタ姫はよくわからないけれど。







ふう、結構神経をすり減らしたけれども…もうちょっと続けてみよう!

508Mii:2021/08/01(日) 08:05:06 ID:1bf7iop2
リンク「そういやお礼しそびれてたな。ラナにシア。
   お前たちのお陰で戦いを有利に勧められたのは本当に助かったよ、ありがとう」

ラナ「…リンク――!!えへへ、そう言ってもらえると疲れもパアっと飛んで行くよ!」

シア「…ふん、感謝が遅いのよ」



    リンク⇔ラナ    C-
    リンク⇔シア    C-



うわっ、たった1日の戦闘だけでC-まで登ってきたなんて。何気に凄いぞ、これ。
…まあ、やたらハードな戦闘でしたから絆も深まりやすかったですけど。
これはゼルダ姫にとって強力なライバルになりそうだ…。

いや、別にゼルダ姫贔屓という訳じゃないけど。
あそこまであからさまにアピールしていたら、応援したくなるよね。うん。
まあ、長い付き合いでしょうし、気を抜かなければそうそう負けることは――――



    リンク⇔ゼルダ    D
    リンク⇔ヒルダ    B-



ルフレ「    」

509Mii:2021/08/01(日) 08:08:08 ID:1bf7iop2
ゼルダ「…おや?いきなり私を見て固まって、どうしましたかルフレ」

ルフレ「ななななななななななんでもありませんですハイっ!!」



ゼルダ姫っ!祝賀会に出ている暇じゃないかもしれませんよっ!
もっとリンクに好印象与えて行かないとまずいですよっ!
というよりヒルダ姫に負けているってどういうことですか!?おっかしいぞー?



ファイ「…………何か叫び声が聞こえました。マスター、異常発生ですか?」フワフワ

リンク「ははは、ルフレがいきなりゼルダ姫に問い詰められて叫んだだけだよ」

ゼルダ「どこが『問い詰めた』ですか!失礼ですね!
   その言い回しですと私が悪いみたいではありませんか」





リンク⇔ファイ A+





ルフレ(あ、これもう無理なやつだ)

510Mii:2021/08/01(日) 08:12:58 ID:1bf7iop2
うん、そりゃあ、そうだったね。本命相手に逆転とか無理だね、これ。
相手が3周目の最終コーナー曲がった状態からようやくスタートした程度には絶望だね。

い、いや、でも。ファイさんはあくまで半身、剣の精霊だし。
そうだよ、伴侶は別に他にいてもいいじゃないか。そうとも!まだ可能性はありますよ、ゼルダ姫!
よし、一旦切りが付いたところで、傍のグラスで喉を潤して――――

リンク「さっきからルフレの顔色が目まぐるしく変わってるが、大丈夫かな、あれ。
   まさか祝賀会の最中にも戦術のイメトレを…?マジで末恐ろしい奴だな…!」

ルキナ「ルフレさんなら、そのくらいの芸当はやってのけるかもしれませんよ?
   お父様、そして自警団一同が認める『神軍師』なのですから」

リンク「ああ、今回の大会でまざまざと見せつけられてる所だよ。
   ルフレ、まだまだ弱いけれど…凄いよな。幾らでも伸びるぞ。
   もちろん、ルキナの剣の才覚だって負けてない」

ルキナ「そ、そんな…恐縮です!ですが、お褒めいただきありがとうございます!」





    リンク⇔ルキナ    B+





ルフレ「ぶふううううぅぅぅ!!!???」ブフォッ

511Mii:2021/08/01(日) 08:18:07 ID:1bf7iop2
マリオ「どこからともなく取り出したマントっ!」バサァ!!

ルフレ「…………あ、わ、わわわわわ」

リンク「ちょっとマリオ、やりすぎだろ。自業自得とはいえ、ルフレがびしょ濡れだぞ」



――――てくてく、ダンッ!!

ルフレ「…………ゼルダ姫っ!!どうか…強くっ!強く生きてくださいねっ!!」ボロボロ

ゼルダ「な、なんですかいきなり!?肩から手を離しなさいっ、セクハラですよっ!
   それもお酒で濡れた手でっ!」





ルフレ「…………はあ、驚いた…」

トントンッ。

ルフレ「…………?」



ハイリア「…………あんまりオイタはだめよ?覗き見好きな軍師さん」

ルフレ(能力の事がばれてるっ!?)

512Mii:2021/08/01(日) 08:21:27 ID:1bf7iop2
リンク「それにしても、最後の最後まで料理がふんだんに…これ、残ってたら捨てられるのか?勿体ないなあ」

マリオ「そんな勿体ないこと、当然しないぞ。祝賀会のあと、給仕の人たちが打ち上げで消費してくれるし…
   それにこれから、一気に食ってくれる奴がいるからな」

リンク「…あ、いつもの大食いコンビね」

クッパ「それは違うぞ。ヨッシーとカービィには別口で、料理が既に用意されているのだ」

リンク「…じゃあ誰が食うんだ?」

マリオ「おいおい、前回大会のこと忘れたのかー?」

リンク「前回大会…?たしかあの時は――――

   優勝者のマリオが、優勝祝いとか称して周囲から無理やり
   大皿料理をぐいぐい口の中に詰め込まれて地獄絵図に――――

   ――――――――えっ」

マリオ「…………」ニヤリ

クッパ「…………」ニヤリ

リンク「ちょ、ちょ、ちょっと待った!まさか俺が食うのか!?
   無理無理!結構この1週間食い続けてるんだ!これ以上無理――――」

マリオ「うおーーーーす、みんなー!時間的にも頃合いだ!
    俺とクッパがリンクをがっちり抑えとくから、
   片っ端から料理を食わせてけー!盛大に優勝者を祝ってやるぞー!!」

513Mii:2021/08/01(日) 08:23:47 ID:1bf7iop2
リンク「おいやめろ!こんな古臭いパワハラ演芸会イベントなんか止めちまえ!
   だからみんなやめろって喜々として料理持ってくんな!!」

マリオ「前回はリンクも煽ってた側だがな」

ワリオ「はーい、リンクちゃん、口を大きく開けましょうねー」グイイイィィィッ!!

リンク「もごごごごごごごごごごご」



ゼルダ「とりあえずこのローストビーフから行ってみましょうか。
   軽く1kgはありますけれどリンクなら大丈夫でしょう。
   は、はい、あーんしてくださいねー」ズズッ

フォックス「脂っこい物の後はサッパリしたもので口直ししたいよな!
     ソーメンとかどうだソーメン!ツユごと流し込んでやるから!」

オリマー「栄養が偏ってるから、ここはひとつ野菜を食べないか?
    赤ピーマンに黄ピーマンに青ピーマン!紫ピーマンに白ピーマンもあるぞ!
    もしかしたら2文字ほど字が違うかもしれないが」

デイジー「ヨッシーですら残した激辛トウガラシ、消費してくれる?
    ちょっと舌が悶えるかもしれないけれどなんとかなるっしょ!」

ネス「辛いものは甘いもので中和しよう!ほら、特製ケーキ!
  どれもこれもほっぺたが落ちそうになるくらい甘くておいしいよ!
  とりあえず5ホールほど行ってみようか!」

リンク「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」ビクッビクッ

514Mii:2021/08/01(日) 08:27:49 ID:1bf7iop2
リンク「………………………………ぬおお…は、腹がまだ痛いっ…………!
   あやうく漏らすとこだったぞ、やっべー」ギュルギュル

俺、勇者リンク。死闘のすえ、一目散にトイレに駆け込んで…ギリギリセーフ。
あやうく尊厳を失うとこだった。パワハラはんたい。
なんだかゼルダ姫が一番楽しそうだったのは気のせいか。

…………1時間くらいはトイレの住人にならざるを得なかった。
なんとか耐えきって、めでたしめでたし。
手を洗ったけれど、また腹痛が起こることを警戒して。
ちょっとトイレ内で待機して様子見だ。こんちくしょう。



リンク「それにしても、ピーチのほうは順調かな…。ルフレもなかなか思い切ったことを考えたもんだ」



ルフレの奇策が成立すれば、物事は一気に解決に向かう、かもしれない。
そして今は、ピーチが倒れそうな体を鞭打って「交渉」してくれている真っ只中だ。
多分ピーチなら…吉報をもたらしてくれるはず。信じよう。

リンク「まあ、ひとつ気懸りがあるとするなら、作戦決行中の俺が、
   新たな伝説に召喚されてしまわないかってことだけど…」

それをされると、全部パーになっちゃうんだよなあ。
ほんと唐突に体が光って、新たな魂植え付けられて、俺の意思関係ナシに飛ばされるから。
ほら、ちょうどこんな感じにピカーッと…………。

リンク「……………………」ピカーッ!

515Mii:2021/08/01(日) 08:32:15 ID:1bf7iop2
リンク「ぎゃああああぁぁ――――!?よりにもよってこのタイミングで召喚だとぉ!?
   そんなもん、許可できるかっ!ふざけんじゃねぇ!!
   
   …ピーチ、ごめん!前に嫌というほど忠告はされたけどっ!
   トゥーンのときみたいに、魂を強引に引っぺがすぞっ!!
   勇者分裂の責任問題とか、もう知らん!

   いっせーのー…でっ!!」



ベリイイイィィィィッ!!

ポンッ・・・・・・!!









リンクル「やっほー!!わたし、リンクル!よっろしくー!!」

リンク「」

リンク「」

リンク「…………性転換してる!?」

516Mii:2021/08/01(日) 08:34:52 ID:1bf7iop2
現れたのは、おれと同じく緑の衣を纏った、ボーガン持ってる女の子。
首に掛けたコンパスがキラリとひかる。



リンクル「私だって、もう一人の勇者だもんねー!
    どういうわけか、貴方の生まれ変わりであることと、魂の知識に関しては
    頭にしっかり記録されてるよ!!」

リンク「」

リンクル「…くんくん。
    ところでなんだか変な臭いがするけれど、ここどこ?」

リンク「見ての通り男子トイレっす」

リンクル「嫌あああぁぁぁ!?この人、痴漢ですっ!!
    いたいけな女の子をこんなところに連れ込むだなんて!」ズサァッ!!

リンク「叫ぶなおいっ!誰かに聞かれたらどうする!

   しっかし、まあ、驚いたな…。まあ、帰って来たらしっかり面倒は見てやるから。
   うむ、生活面はお兄ちゃんに全て任せておきなさい、妹よ。
   新たな伝説にむけて、どうぞ召喚されちゃってください。いってらっしゃーい。

   それで、今回はどんな伝説を紡ぐことになるんだろうな」



リンクル「誰が兄で妹よ、冗談じゃない――――うぐっ!?」

517Mii:2021/08/01(日) 08:39:52 ID:1bf7iop2
――――リンク達の活躍によって魔王ガノンドロフは倒され
――――ハイラル城は闇の力から解放されました。

――――これで平和が戻る――
――――誰もがそう思っていたそのとき、ハイラル城に
――――再び魔物の群れが押し寄せてきました。

――――ガノンドロフが倒され統率を失った魔物達が
――――凶暴な本性の赴くままに人々を襲い始めたのです。
――――今はゼルダもリンクもいません。
――――工事現場で働いていた任天堂スタッフ達も、もういません。

――――それでもインパは、ハイラルの人々を守るため
――――まだ先の戦いの傷が癒えていない兵士達から
――――戦える者を集めて魔物を迎え撃ちました。
――――デクババたちも、餌が飛び込んできたと張り切っています。



リンクル「頭の中に、情報が、かき、こまれて、いく…!行かなきゃ…!わたしがみんなを救うんだ!

    ………………………ぐ、ぐ。でも、そ、その召喚、ちょっと、待って。
    私だけじゃ、てんで力不足、かも…!
    こ、これ、新たな伝説、というより…この前の戦いの後半戦、だよぉ!
    ガノンドロフの残党たちが暴れ出してるんだって…………!」ガタガタ

リンク「この前の…って、ゼルダ姫が引き起こした、あの戦いのことか!
   まだ終結してなかったのか…魂1つ分のお前じゃ、ひょっとして荷が重い?」

リンクル(こくこく)プルプル

518Mii:2021/08/01(日) 08:43:15 ID:1bf7iop2
なんか、召喚に抗ってプルプル震えながら涙目になってる。
変な気分にはならないが庇護欲はちょっとあるかな。
…うん、俺に比べると確かにかなり弱っちい感じがする。比較対象があれだけど。

このまま乱戦の舞台に立たせたら結構命が危ないか?
でもすまん、俺が助太刀する訳にいかない事情があるんだ。



――――仕方ない、ちょっと周りを巻き込もう。



リンク「おいリンクル、だっけか。体感で、あとどのくらい召喚に抵抗できる!?」

リンクル「た、たぶん、が、がんばっても2,3分が限界…………!」プルプル

リンク「よっしゃ!こうなったら妹のためだ、手伝ってやるよ!とりあえず…!」

リンクル「と、とりあえず…?」プルプル







リンク「そこの個室に入って30秒でさっさと服を脱げ」

リンクル「」

519Mii:2021/08/01(日) 08:46:13 ID:1bf7iop2
バアアアァァ――――――ン!!



会場の扉が、勢いよく開かれて――――――――



リンク「――――――――はぁっ!はぁっ!はぁっ!」ピカーッ!

ゼルダ「ど、どうしたのですかリンク!そんなに乱暴に扉を押し開けて!
   マナーというものがなっていません!…え、その体の輝き、は」

リンク「ぜ、ゼルダ!大変だ!ハイラル城が危ない!
   ガノンドロフの残党が暴れ出してるらしい、よ!今こそ、勇者の使命を果たすとき――」ピカーッ!

ゼルダ「!?」

リンク「ほ、ほら、お、おれの体、見てくれ!召喚されそう!
   一気にハイラルまで飛ばされるみたい、だっ!この体が、恨めしいっ!

   お願いしますっ!ゼルダ、も、なるべく早く、舞い戻って、くださいっ!
   ハイラル、ゆかりの、他の方々も、ぜひっ!

   先に行って、待ってますからっ!!!」ピカーッ!



ゼルダ「な―――――――!?そ、そんな突拍子もないこと――――」

520Mii:2021/08/01(日) 08:49:01 ID:1bf7iop2





リンク「ゼルダっ!黙って、俺に、付いて来いっ!」ピカァーーー!!

ゼルダ「」

リンク「――――」シュンッ!!



「リンク?」を エリアから ロストしました。▼



ゼルダ「」

ゼルダ「」

ゼルダ「即刻ハイラルに戻りますっ!!」

マリオ「ちょ、ちょっと待てよ――――」

ゼルダ「待ちませんっ!リンクが私を必要としてくれているのですっ!!!」クワッ!



ザワザワザワザワ・・・・・・・・・!!!

521Mii:2021/08/01(日) 08:53:56 ID:1bf7iop2


ヒルダ「…………そーっと」コソコソ



ゼルダ「ヒルダ姫、貴方も当然行きますよね!手伝いなさいっ!ユガ役っ!」ガシッ!

ヒルダ「きゃああああ!!見逃してくださいっ!ユガ役って何ですか!?

   帰りたいですっ!祝賀会が終わったらすぐにロウラルに帰りたいだけなんですっ!!
   これ以上ロウラルを放置したくないんです巻き込まないでくださいぃ――!」ズルズルズルズル・・・

ラヴィオ「ヒルダ様ぁ――――!え、ぼ、僕もですか!?
    ま、まあヒルダ様が向かわれるのなら当然同行させていただきますけれど!」バタバタ

ゼルダ「それでは、みなさん!
   突然のお別れになってしまいましたが、お暇させていただきます!御機嫌よう!」

ヒルダ「たーすーけーてぇ――――」ズルズルズルズル

マリオ「…………リンクがいなくなっちまっただと?やっべ、作戦が…!」ボソッ

ゼルダ「何か言いましたか?」クルッ

マリオ「い、いやなんでもない。わ、忘れてくれ。いってらっしゃい…」

ラヴィオ「この程度の戦い、勇者くん…リンク1人でお釣りがくるじゃないですかぁ…!」バタバタ

デイジー「す、すこしでも早く解決したいってことじゃないのかな、ハハハ」

522Mii:2021/08/01(日) 08:56:19 ID:1bf7iop2
ラナ「私だってもちろん手助けに行くからね!勝手に連れてって許さない!」タタタ

シア「そうね、魔物達を地獄の業火で焼いてあげましょう」タタタ

リンクル「ゼルダ様、ヒルダ様、負けないでくださいねっ!
    お姉さんたちも、頑張って下さーい!」ブンブン

ラナ「ありがとー、名前も知らない女の子―!」タタタ

シア「任せておきなさい、この程度の残党狩りなどあっさりと――――」タタタ







ラナ「――――」ピタッ

シア「――――」ピタッ





ラナ「…………」クルッ

シア「…………」クルッ

リンクル「あ、あの?どうかされましたか?」ギクッ

523Mii:2021/08/01(日) 09:00:05 ID:1bf7iop2
ラナ「……………………」ジーッ

シア「……………………」ジーッ

リンクル「い、いやですわそんなに見つめられて恥ずかしい……………………」

ラナ「…私たちって、さあ。これでもいっぱしの魔女だから。
  観察している人の魂の区別、しっかりできたりするんだよね」

リンクル「えっ」



チャキッ。――――――――カシャッ!



シア「――――お宝写真ゲット。これでご飯3杯は行けるわね」キラキラ

ラナ「あとで私にも見せて見せてー!…状況がよくわかんないけど『貸しイチ』にしとく♪」

リンクル「」

ラナ「よーし!ゼルダ姫!急いでハイラルに戻ろうよ!
  そこに間違いなく『リンク』がいるから!そう、勇者『リンク』が!」タタタ

シア「『リンク』があれだけ懇願していたら、『リンク』を助けるためにハイラルに戻る以外の選択肢などないわね。
   ゼルダ、『リンク』のためにも全力疾走で駆けなさい!」タタタ

ゼルダ「言われなくても当然です!」ダダダダダッ!

524Mii:2021/08/01(日) 09:02:23 ID:1bf7iop2
リンクル「…賑やかに去っていった」

リンクル「…………」

リンクル「だが、よぉし。開き直るぞー。これでスムーズに作戦が進行――」


















マリオ「…………それで、一体あれは誰だったんだ、『リンク』さん?」

リンクル「なぜバレた!?」

クッパ「なぜバレないと思った」

デイジー「いやまあ、素体がいいから女装姿もさまになってるけど」

525Mii:2021/08/07(土) 14:16:13 ID:JgP6WN9o
ロゼッタ「………………………」パアアアァァァ

ロゼッタ「………………………」パアアアァァァ

チコ「ママ、これ何作ってるのー?」

ロゼッタ「ルキナさんに渡すお守りを作っているのよ。まあ、気休め程度の効果かもしれないけれど」



机の上の小さめな魔法陣には。
小さな星型のペンダントが、ふわりと浮かんで光り輝いています。
結構、造形制御が難しいんですよね。



チョール「おー、やっとるやっとる。いつ頃に準備ができるかのう」

ロゼッタ「あ、星の精の皆さん!えっと、あと1時間くらいお待ちください」パアアアァァァ

チコ「…………?」フヨフヨ

チョール「ほっほ、星の子よ。ロゼッタ姫は、かつてピーチ姫がマリオに渡したお助けアイテム――
    そう、『ラッキースター』なるものを作ろうとしておるのじゃ。
    最後に、我々星の精たちが一晩かけて、星々の願いのチカラを降り注いで完成じゃな!」

チコ「…らっきーすたー?」

ロゼッタ「そう、ラッキースター。持っていると、うまくいけばアクションの効果を高めることができるわ。
    ママには原理はまったく分からないけれど」

526Mii:2021/08/07(土) 14:19:43 ID:JgP6WN9o
残念ながら、私の担当箇所は「星の精たちがチカラをこめられる、綺麗な形のペンダントを作る」ところだけ。
空間把握能力を最大限発揮して、ちょっとずつちょっとずつ削り取っていって、
幾何学的にできるだけ完璧な星型を作ります。こうすることで神秘性が増すんだとか。

……マジックアイテムとしての効力に関しては、一切関与していません。
私の領分は空間魔法と回復魔法だけですからね、あしからず。



チコ「アクションの効果を高めるって、どういうこと?」

チョール「例えば、ジャンプ攻撃の回数が1回から2回になるとか」

マール「ハンマー攻撃の威力が格段に上がるとか」

ハール「敵からのダメージを1減らすとか」

ニール「敵からの状態異常付与をシャットアウトするとか」

ネール「いつまでも連続ジャンプし続けるとか」

テール「仲間をノーダメージにするとか」

ダール「ダメージが半分になる代わりに5回攻撃になるとか」



チコ「へえぇー」

ロゼッタ「へえぇー」

527Mii:2021/08/07(土) 14:23:17 ID:JgP6WN9o
マール「…でも、祝賀会最終日とかだったんでしょ?1人こうして自室にこもってるのは、ちょっと残念ね…」

ロゼッタ「まあ、ピーチ姫に是非にと依頼されましたので。こうして私ならではの役割を果たせますし、それに――」

マール「…それに?」

ロゼッタ(『ロゼッタはうっかり屋さんだから何かの拍子に口を滑らせて作戦漏らすかもしれないからね』とか言われちゃいましたし)

ロゼッタ「…なんでもありません」ズーン



ロゼッタ「――――できました!どうぞ!」

魔法陣を解除し、ゆっくり落ちてくるペンダント。
自らの手で優しく受け止め、何度も様子を確認。…うん、いい出来です!

チョール「…うむ、素晴らしい出来じゃ!我々のチカラも馴染みやすいじゃろう!
    明日の朝までには万全の状態でお返しするぞ!楽しみに待っておれ!

    ロゼッタ姫よ、せっかくじゃ!製作者として、改めて銘打つとよい!
    このアイテムならではの、カッコいい名前を付けてやるのじゃ!」

ロゼッタ「め、銘打ちですか!?考えてもいませんでした…。『ラッキースター』そのままではだめなのですか?」

チョール「そういったところで手抜きをすると、意匠登録とか権利関連とかが面倒なのじゃ、たぶん」

ロゼッタ「たぶん」

チョール「そう、たぶん」

528Mii:2021/08/07(土) 14:26:29 ID:JgP6WN9o
ロゼッタ「……わ、わかりました!それでは――――――――ええと。




    
    ――――――――『流星』でお願いします」

ダール「ロゼッタ姫にピッタリ!シンプルながらカッコいいですな!」

ロゼッタ「使って頂くのは私じゃなくてルキナさんですけれどね」



ロゼッタ「ふ――――う、疲れましたー」

周囲に誰もいないことを確認して、ググっと伸びをする私。今はトコトコ、キノコ城まわりを散策中です。
祝賀会会場に向かってしまうとうっかりボロが出てしまうかもしれないので、ええ。
…なんだかあんまり納得できませんが。



大会スタッフ「あっ!ロゼッタさん!ちょうどいいところに!」

ロゼッタ「……はい?」

大会スタッフ「大変申し訳ございませんが…ちょっと来ていただけますか!
       選手登録の際、必須項目の入力不手際があったもので!」

ロゼッタ「…………?わかりました」

529Mii:2021/08/07(土) 14:30:40 ID:JgP6WN9o
〜測定室〜



大会スタッフ「いやあ、ヒルダさんは同スタイル扱いのゼルダさんのデータを完コピすることで強引に乗り切ったんですが!

       飛び入り参加状態だったロゼッタさんの身長と体重、今の今まで登録するのを忘れてたんですよっ!
       ふむ、身長は205.0cm、当初の設定のまま変わらずですね。それでは――――――――」





体重計「こちらへどうぞ」

ロゼッタ「」





大会スタッフ「大丈夫です、私も女ですから!気にせずドーンと!
       体重計に乗るだけで、自動的に値が公式記録に反映されます!」

ロゼッタ「いいいい嫌ですよっ!?記録に残るってことでしょう!?」

大会スタッフ「…………それは他の皆さんも同じですよ?特別扱いはできません」

ロゼッタ(私、大会中に相当ふとっ……たくましくなった自信があるんですけどっ!?)

530Mii:2021/08/07(土) 14:35:11 ID:JgP6WN9o
ロゼッタ「何のために体重なんか載せるんですか!?」

大会スタッフ「ふっとばされやすさの目安ですけれど…
       そもそも運動競技でアスリートの身長体重を載せるのは普通でしょう?」
      
ロゼッタ「くっ、反論できません…!」

大会スタッフ「というわけで、さあさあ――――」

ロゼッタ「…い、嫌っ、ちょっと待ってください――――!!」



ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「自動的に記録される?」

大会スタッフ「……?はい、そうです」

ロゼッタ(つまり、たとえ変な値が出たとしても、この場で突っ込まれて
    測り直しになることはない、ということですか…)



ロゼッタ「…分かりました、ええ分かりましたとも。覚悟を決めました。
    …………チコ、お願いだから来てちょうだい」

チコ「はーい」

531Mii:2021/08/07(土) 14:38:15 ID:JgP6WN9o
大会スタッフ「あはは、自分から重くしちゃってどうするんですか。
       なるほど、合計体重にして有耶無耶にしちゃう算段ですね、まあOKですよ。
       それでは測定しますからねー」





ロゼッタ(――――――――   反   重   力   っ  !)ガシッ!!

チコ「ふおおおおおおおおぉぉぉ!!」↑





体重計「5.9kg、登録しました」ピコーン

大会スタッフ「プリン(5.5kg)よりはおもいけどピカチュウ(6.0kg)よりかるぅい!!?」

ロゼッタ「いやあこれはおどろきですねえ」

チコ「でも、流石に軽すぎたんじゃないの?」ヒソヒソ

ロゼッタ「いいのよ。ふふっ、なんとか難局を乗り切ったわ!
    とくに反重力の強さを調整したつもりはないのだけれど!」ヒソヒソ



ロゼッタ「…………………………………………」

532Mii:2021/08/07(土) 14:42:21 ID:JgP6WN9o
……………あれ?ってことは、私のホントの体重、これよりチコの体重分…40kg重いだけ?
妙に軽くなっているような…………これなら普通に測っても良かったのでしょうか。



…いやいや、そんな馬鹿な。ナニカがおかしい。



あんまり思い出したくはありませんが、いつぞやのタブー戦で、割と体重があることが発覚したはずで…
パルテナさん曰く、あの土煙のせいで、な、70kg超えが確定したとかなんとか。
あの戦闘だけでさすがに何十kgも痩せるとはとても思えないのですが。

大会スタッフ「お、おーい!ロゼッタさんの体重、もう測って貰っちゃったかー?
       くっそー、遅かったかっ!修正ができなくなってるぞ、あっちゃぁ!」

大会スタッフ「…う、うん。何か問題があったの?」

大会スタッフ「もともと、『ロゼッタ&チコ』で1選手扱いだろ?
       でも、公式記録を見る人の大半は、ロゼッタさんの体重と捉えるはずだ。

       一緒に体重計に乗って、重く見られたらロゼッタさんが可哀想だから、
       特別にマイナス40kg計算するように設定されてたんだよ!
       逆にロゼッタさんだけで乗ることを想定もせずに!」





ロゼッタ「        」

533Mii:2021/08/07(土) 14:45:18 ID:JgP6WN9o
大会スタッフ「なぁんだ、それなら大丈夫よ。ちゃんと2人で体重計に乗ってくれたから」

大会スタッフ「…あ、それなら別によかったんだが。要らぬ心配だったってことか」

大会スタッフ「…あれ?じゃあロゼッタさんとチコさんで2人合わせて、
       実際はゴニョゴニョ(45.9kg)だったってことか。
       …チコさんがやたらめったら軽かったのかな…?」



ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「はち、じゅう、ごー、てん、きゅう…………!?」ガタガタガタガタガタガタガタガタ



身長205cm-体重85.9kg   BMI:20.4
普通体重に到達! ロゼッタは 至って健康だ!▼



ロゼッタ「しばらく霞だけ食べて生きて行きたい…」フラ・・・フラ・・・

チコ「ママ!しっかりしてー!ママー!」ペシッ ペシッ

534Mii:2021/08/07(土) 14:48:55 ID:JgP6WN9o
〜 12月13日 22:00 小会議室 〜

マリオ「いやー、最高の祝賀会だったなー。綺麗に幕を閉じられた。
   リンク、優勝の余韻には十分浸れたか?」

リンク「腹を壊した…もとい壊された場面以外はね、うん。
   思い出したくもないぞ…まったく。

   そんで、ピーチ。首尾のほうは?」



ピーチ「……………………」

ピーチ「……………………」ニンマリ

ピーチ「――――――――勝訴っ!!」

マリオ「勝訴て」

ピーチ「――――――――勝訴っ!!!!」

クッパ「お、おう。相当に無理をして頑張ったのだな。
   そんなにコワーイ目を見開かなくても苦労は分かるのだ」

ルフレ「やったっ!本当に!本当にありがとうございます!」ウルッ

マルス「ルフレ、さすがに涙ぐむのはまだ早いよ。最後の仕事が残ってる。
   …いや、無粋か、すまない。これはもう…ただただ感謝するしかないね」

535Mii:2021/08/07(土) 14:51:37 ID:JgP6WN9o
ピーチ「明日の準備と行動段取り、ちゃんと予定通りに…お願いするわよ?」

マルス「ああ、誓って」



ルフレ「…それで、ロゼッタ姫は、どうしてそんなにやつれていらっしゃるのでしょうか」

ロゼッタ「なんでもありません…」ボロッ

ピーチ「…きっと、相当に魔法を行使して疲れちゃってるだけよ。
   ルキナ用のマジックアイテムの作成を依頼してたの」

ルフレ「そ、そんな状態になるまで必死に作業に当たって頂けるとは…っ!
   感服いたしました、本当に…本当に有難く…!」

ロゼッタ「いえ、そんなことは、これっぽっちも…………ははは」

デイジー(ロゼッタの目がなんだか死んどる)



ピーチ「さあみんな!ラストスパートよ!」

オオオオオオオオオ――――ッ!



ロゼッタ「――――――――――――――――おー」

536Mii:2021/08/07(土) 14:56:38 ID:JgP6WN9o
〜 ルキナの部屋 〜

メイド「まあ、そうですか!明日、帰郷されるのですね。ルキナ様のご武運をお祈り申し上げます」

ルキナ「…………あまり芳しくない…いえ、そんな言い方では生ぬるい。
   正直、かなり無謀な戦いが待ち受けてはいます。いつ何時、絶命しても全くおかしくないほどの。

   それでも、勇気と希望、ここにいる間にたくさん、受け取り育みました。
   …やれるだけのことは、やってみようと思います」



既に帰郷の段取りはマルス様やアイク様、ルフレさんと相談済。
…とはいっても、故郷の領域に近づいた途端に各々の時代・世界線へ自動転送されるから
特に用意することも準備するものもない…とかいう、
学のない私には理解が及び難い内容だったのですが。

…………最後まで、ルフレさんは、
「なんだったら僕たちの世界に一緒に来てもいいんだよ」と提案してくれました。
適当に手でも繋いでおけば、私本人の世界線はそっちのけで、連れて行ってもらえるそう。



ギムレーが倒され、完全とは言いませんが平和になった世界。



とても魅力的。とても喜ばしい。思わず頷いてしまいそうになる。
…それでも最後まで、私が頷き切ることはありませんでした。
ここまでの積み重ね、全部無駄にしてしまいますから。

537Mii:2021/08/07(土) 14:59:39 ID:JgP6WN9o
ルキナ「貴方にも、長い間お世話になりました」ペコリ

メイド「メイドの仕事がようやく降ってきて『ひゃっほーい!』って感じです
   (メイドとしての当然の務めですから)」

ルキナ「…え?」

メイド「…………メイドとしての当然の務めですから
   (メイドの仕事がようやく降ってきて『ひゃっほーい!』って感じです)」

  ※キノコ城のメイドは大抵の仕事(雑務含む)をピーチ直々に奪われているため
    どれだけキノコ城が広かろうがたとえ5人しかいなかろうが非常に手持無沙汰です。

ルキナ「そ、そうですか」

メイド「はい!」

流れるような手つきで、紅茶を淹れていく彼女。
一切無駄のない洗練された動きで、武骨な私からするとすこし羨ましい。

差し出されるまま、口を付けます。
…………本当に美味しい。これが飲めるのも、今日…いえ明日で最後ですか。

メイド「とりあえず、明日の正午ごろに起こしに参りますね」

ルキナ「…あ、いえ、できれば明日は…朝から出発したいと考えています。
   延ばしても後ろ髪を引かれてしまうだけですから。

   ああ、そういえば微妙に出発準備が不十分でした!
   就寝前に最後の清掃片付けと持ち物整理を行っておかないと――――」スクッ

538Mii:2021/08/07(土) 15:02:31 ID:JgP6WN9o
メイド「――――いえいえ、たった今から、正午までどうぞごゆっくり」

ルキナ「それって、どういう――――――――」



ぐらっ。



ルキナ「――――えっ」

猛烈な、眠気。足元覚束なく、体を支えられなくなり、メイドの方へ倒れ込んでしまう。
幸い、彼女は驚きもせず…ガシッと私を支えてくれました。

――――そうなることが分かっていたみたいに。
――――そうしているうちにも、瞼がますます重くなる。

ルキナ「い、いったい、なにが、起こって――――」

メイド「――――おやすみなさいませ、ルキナ様」



ルキナ「くぅ」スヤァ

メイド「…本日の睡眠導入剤も、仕込み問題無し。前回より量は抑えて…と。
   推定される覚醒時間帯、明日12月14日の11時から13時までの間。

   これにて任務完了いたしました。ルキナ様、お大事に」

539Mii:2021/08/07(土) 15:04:22 ID:JgP6WN9o
ルキナ「――――――――――――――――」

ルキナ「――――――――――――――――」

ルキナ「――――――――――――――――あ、れ?」パチッ



のそっと身を起こして、しばし静止してまどろんで、違和感。

なんだか、就寝前の記憶が曖昧です。
ベッドには収まっているので、普通に寝静まった…?おや?

…ああっ!そうです、とにかく今は出発の準備をしないと!
昨晩は準備し損ねた感があります!



メイド「ルキナ様、おはようございます」

ルキナ「…あ、おはようございます!すいません、寝過ごしてしまっていたようで…」チラッ



日付表示「12月14日  12時30分です」

ルキナ「本気で寝過ごし過ぎています!?」

メイド「ふふっ」

540Mii:2021/08/07(土) 15:07:58 ID:JgP6WN9o
メイド1「髪をセットさせていただきますね」

ルキナ「あ、あの」



メイド2「お疲れのご様子。消化のよい朝食…いえ昼食を部屋にお持ちしました。どうぞ召し上がって下さい」

ルキナ「え、えっと、そのあたりは端折ってしまってですね…」

メイド2「召し上がっていただけないのですか?」

ルキナ「…………た、食べます」



メイド3「僭越ながら、帰郷用の服装を見繕わせていただきました。
   ピーチ様が仰るには、着の身着のままのご来訪であったということで…。それぞれご試着されてください」

ルキナ「そ、そこまでしていただかなくても…それより出発を…」

メイド4「…ねえ、まだなの?まだ姫様の極秘会合が長引いているの?」ヒソヒソ

メイド5「もうちょっと!もうちょっとだけだから時間稼いで!もう1回様子見てくるからっ!」ヒソヒソ

メイド4「あんまり引き留めるネタもないのだけれど…………」ヒソヒソ

メイド5「『ルキナ様の御出向を祝し、ここで1曲歌わせていただきます!』とかどうかな」ヒソヒソ

メイド4「却下です、そのような幼稚な作戦は」ヒソヒソ

541Mii:2021/08/07(土) 15:09:55 ID:JgP6WN9o
メイド5「…………」



メイド4「…………」



メイド4「ルキナ様!ここはひとつ、チェスでもしましょうか!
    どことなくFEに似ていますし!復活しない所とかも!」

ルキナ「」






メイド5(あんまり作戦レベルが変わってないよ)

542Mii:2021/08/07(土) 15:13:21 ID:JgP6WN9o
〜 17:00 乗船場 〜

ルキナ「…………すっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。
   あれよあれよと時間を潰してしまい、このざまです。

   なんだかメイドの皆さんにそそのかされていたような気もしなくはないのですが」

ロゼッタ「…あはは」

大幅に時間が後ろにずれこみ、ルキナさんが落ち込んでいます。



アイク「いいってことだ。俺達も今来たとこ――――」

マルス「アイク、それは流石に無理がある」

アイク「いや、でも本当に――――」

マルス「――――ア イ ク?」

アイク「なんでもない!なんでもないぞルキナ!」ビクビク

ルキナ「…はぁ」

マルス「……ルキナ。一応、連絡だけしておくよ。ルキナがいた、そして今から戻ろうとしている『絶望の世界』に、
   僕やアイク、あるいはマリオなんかが飛び入り参戦して万事解決…ってことができるのが一番よかったんだけれど、
   事情あって無理なんだ。本当に申し訳ない。お役に立てず、悔しい限りだ」

ルキナ「…!い、いえいえ、そのような!マルス様が謝られることではありません!」

543Mii:2021/08/07(土) 15:16:47 ID:JgP6WN9o
ルフレ「ルキナ、そのかわりといってはなんだけどね。
   リンクさんとロゼッタ姫が、時間の都合が付いたってことで。
   わざわざ見送りに来てくれたんだよ。怪我の功名という奴だね。
   別れるところぎりぎりまで、乗船までしてくれるって!」



まさかこのような待遇を受けるとは露ほども思っていなかったのか、
ルキナさんが大層驚いています。



ルキナ「本当、ですか!…………ひ、日付を跨ぎかねないのに、ご迷惑ではないのですか?」

リンク「いやいや、こんくらいお安い御用さ。弟子たちの見送りはしっかりやってあげないとな、なんちゃって」

ロゼッタ「私の場合は実利も兼ねていますけれどね。ルキナさんにお渡ししたいアイテムがありまして。
    乗船中が最後の機会、使い方を教えておかないと。

    ピーチ姫を始めとして、本当はまだまだ見送りに行きたいという方は
    大勢いらっしゃったのですが。あまり多くても目立つということで…
    戦後処理で手が離せないままのピーチ姫の推薦もあって、リンクと私ががこうして見送りに参りました」

ルキナ「…………!きょう、しゅくです!」グズッ



感極まったのか、とうとう泣き出してしまうルキナさん。
そんな彼女を、私はそっと抱きしめます。

544Mii:2021/08/07(土) 15:19:37 ID:JgP6WN9o
そのまましばし。ルフレも貰い泣きしている様子。
ゆっくりと解放してみるや、眩い笑顔で見上げられて。

ルキナ「…どうかルキナとお呼びください。それで十分…いえ、それが好ましいです」

ロゼッタ「では、ルフレともども『ロゼッタ』と呼んでくれるのですよね?」

ルキナ「…わかりました。ありがとう、ロゼッタ。

   私は、ロゼッタを尊敬しています。あのタブーへ立ち向かう姿も、凄いの一言でした。
   …貴方のような、強くたくましい戦士になりたい。
   戦闘分野は大きく異なりますが、貴方を倣って成長して参りたいと思います」



照れくさそうな表情で、驚きの言葉が飛び出して――――







ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……………………私みたいに、成長、したい?」

545Mii:2021/08/07(土) 15:21:46 ID:JgP6WN9o
〜 妄想中 〜



ルキナ「良かった…!また強くなれました」

ルキナの HPが 1上がった!
ルキナの  力が 1上がった!
ルキナの  技が 1上がった!▼

■■■「おおっ!よかったな、ルキナ!」

ルフレ「うんうん」

・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

ルキナ「この調子で、もっともっと強く…」

ルキナの  力が 1上がった!
ルキナの 魔力が 1上がった!
ルキナの  技が 1上がった!
ルキナの 速さが 1上がった!
ルキナの 守備が 1上がった!▼

■■■「さすがだぞ、ルキナ!いい成長だっ!」

ルフレ「………… 」

546Mii:2021/08/07(土) 15:23:23 ID:JgP6WN9o
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

ルキナ「もう誰も…死なせはしません…!」

ルキナの HPが 1上がった!
ルキナの  力が 1上がった!
ルキナの 魔力が 1上がった!
ルキナの  技が 1上がった!
ルキナの 速さが 1上がった!
ルキナの 守備が 1上がった!
ルキナの 魔防が 1上がった!▼

■■■「凄い!凄すぎるぞ!ルキナ、お前は最高だ!」







ルフレ「…………それにしても。

   何か月も戦っているのに、一向に幸運だけ上がらないね…」

ルキナ「」ギクッ

■■■「そ、そんなのは偶然だ!そのうち上がるだろ!ルキナの幸運成長率を舐めるな!」

547Mii:2021/08/07(土) 15:25:32 ID:JgP6WN9o
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

ルキナ「ここまで強くなれば未来も変えられるかも…!」

ルキナの HPは 限界値です!
ルキナの  力は 限界値です!
ルキナの 魔力が 1上がった!
ルキナの  技は 限界値です!
ルキナの 速さは 限界値です!
ルキナの 幸運が 1下がった!
ルキナの 守備が 1上がった!
ルキナの 魔防が 1上がった!▼









ルキナ「」

■■■「」

ルフレ「動いたと思ったら下がったああああああああぁぁぁ――――!?」

548Mii:2021/08/07(土) 15:29:39 ID:JgP6WN9o
〜 妄想おわり 〜





ロゼッタ「やめましょう」





ルキナ「えっ」

ロゼッタ「それはやめましょうルキナ!本気で!ろくなことになりませんっ!

    ぜっっっったいに、私なんかの模倣成長はなさらないでくださいっ!
    いいですねっ!約束ですよっ!命に関わりますっ!」ガシィッ!

ルキナ「どうしてですか!?」



リンク「見事なまでの後ろ向きだなあ」

アイク「はははははははははははは」

マルス「…くっ…さ、さすがに、これは…くくっ」

ロゼッタ「言っておきますけれど冗談ではありませんからねぇっ!」

549Mii:2021/08/09(月) 13:37:24 ID:28rO9.d.
〜 乗船移動中 〜

リンク「スカイウォードォ!!――――よっしゃ!命中っ!」

ファイ「お見事です」

マルス「…何をやっているんだい、リンク」

リンク「海上遠くに石をぶん投げて着水前にぶった斬る練習!
    爆散させず、適度な力を込めてスパッと斬るって難しいんだぜ!」

マルス「…………危ないからやめてくれないか」



ロゼッタ「えーっと、星の精たちのアドバイスによると…
    タイミングよくアクションをすると、そのペンダント…………
    ルキナが首に掛けたペンダントの効果が発揮されます」

ルキナ「…タイミングよく?」

ロゼッタ「はい、タイミングよく」

ルキナ「…とはいえ、攻撃を敵に当てる、あるいは敵の攻撃を正しく防ぐこと自体が
   既にタイミングを図った結果の産物ではないでしょうか…?

   敵の急所を狙うということでしょうか、それとも不意を衝くということでしょうか。
   はたまた、躊躇せず速やかに仕掛けるということでしょうか。
   もしかすると、攻撃間隔を調節してリズミカルに攻撃しろということでしょうか」

550Mii:2021/08/09(月) 13:41:21 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「もっとちゃんと説明を聞いておけば良かったですね、申し訳ありません…。

    それっ!…ちょっと、このスターピースを試し斬りしてみましょう。
    軽く投げますから、思い切ってズバッと剣を振るってみてください」

ルキナ「わかりました。――――――――ハッ!」ガンッ!!



ヒュウウウウウウウウウウウウウウ――――――――!!!



ロゼッタ「わあっ!素晴らしい精度ですっ!海に飛んで行きました。

    …ですが、斬って真っ二つ、というわけではなかったですね。
    スターピースって頑丈ですから…」

ルキナ「このマジックアイテムがしっかり発動していれば斬れていたかも、
   ということでしょうか。今の所、何か不思議な力が付与された感じはありませんが」

ロゼッタ「も、もう少し続けてみましょう!」

ルキナ「は、はい!」



ルキナ(も、もしかして、私の『技』がまだ低いから発動しにくいのでは…………?
    ロゼッタの厚意を無駄にしないように頑張らないと…!!)

551Mii:2021/08/09(月) 13:46:57 ID:28rO9.d.
〜 海上  PM 22:00 〜


船長『みなさーん!お待たせしましたー!本船は間もなく、イーリス大陸の領海内に入りまーす!

  領海内に入り、更に大陸にある程度近づいたところで、マルス様、アイク様、ルキナ様…
  それぞれの世界線に繋がる時空扉を開きまーす!それを潜ることで、元いた世界線に戻ることができます!

  ロゼッタ様!扉の同時解放のため、空間魔法で出力補助して頂けると大助かりです!
  現状世界線に帰郷されるルフレ様は、このまま港まで乗船しておいてOKでーす!』

ロゼッタ「引き受けましたっ!」タタタッ

船長『ハイラル王国ほどではないですが時間の揺らぎが発生しているので、
  迷子にならないように突入、帰郷されてくださーい!
  万が一間違われても、戦乱の最中に飛び込んでしまっても、私は責任取れませーん!
  なお、次の巡回時期は未定でーす!』

ルキナ「時空、扉…ですか?」

アイク「ああ。最寄りの港、あるいは海岸までひとっ飛びだ。
   距離を離して飛ぶことで、現地人をオーパーツ技術でビックリ仰天させないで済む。
   向こうからすると『なんか人が急に現れたぞ!?…魔法かっ!』って認識になる」

ルフレ「…なんだか想像しがたいですね」

マルス「はは、僕たちにとっては出港にも帰港にも、何度も活用している常識だけれど…
   ルキナの為に放送してくれるとは粋な船長だね、助かるよ。さあ、アカネイア大陸までもうすぐだ」

ルフレ(い、今はイーリス大陸って呼ぶんですけど、言いずらい)

552Mii:2021/08/09(月) 13:50:24 ID:28rO9.d.
船の明かりと月の光だけが照らす、ほぼほぼ真っ暗闇。
船長は、船の現在位置をしっかり把握できているようですが。



ルキナ「――――あ」



キノコ王国で見た、「転生の扉」とは、だいぶ違う。
人が2、3人ほど入ればいっぱいになりそうな…小規模な光の扉が3つ。
本当に、船の甲板上にパッと、現れました。

神秘的で、吸い込まれそうな光の扉。うっすらと光って、私たちを誘い込む。



マルス「…直感で分かるだろう?…自分が、どの扉を潜るべきかは」

ルキナ「――――――――」



たしかに、わかる。
懐かしい匂いというか、運命の導きというか。
3つあるうちの、真ん中の扉が、そう。

甲板に佇むということは、扉自体は船と一緒に動いているということ?
どういった原理で?どんな技術で?正しく機能する保証はどこに?
…そんなことを問いかける気も起こさない、有って当然と主張するその姿。

553Mii:2021/08/09(月) 13:52:17 ID:28rO9.d.
これを通り抜ければ、私は―――――――――――――――――



元の世界に、戻されてしまう。
…いいえ。元の世界に、「戻ることができる」。



マルス様が、アイク様が。それぞれ、左と右の扉に向かって歩いて行って。
扉の目の前まで進んだところで、立ち止まってこちらを振り返って。



マルス「心が整ったら、歩き出すといいよ、ルキナ」

アイク「覚悟は十分だろうな、ルキナ」



ルキナ「――――――――」コクッ



私も、同様に――真ん中の扉に向かって前進、前進。



最後の最後に、身に着けている武器防具、道具、携帯食料をチェック。
かなりの部分について、ピーチ姫の援助を受けることができました。

554Mii:2021/08/09(月) 13:54:20 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「――――いよいよですね、ルキナ」



後ろから掛かるロゼッタの声に振り向く。ロゼッタと一緒に並ぶのは……
緑の衣を身に纏う勇者、神妙に佇む剣の精霊、「知っているけれど知らない」神軍師。



ファイ「貴方ならきっと、大丈夫です」

ルフレ「そちらの世界の『僕』…いや『僕(ギムレー)』にもよろしく。
   いつか必ず、完膚なきまでに何度でも叩きのめしちゃって」

リンク「――――さあ、準備はもちろんできているな!ここからが始まりだ!」

ルキナ「――――はいっ!みなさん!これまで長らく――――お世話に、なりましたっ!」



零れる涙をぬぐいもせず。
扉を再び見据えて。

マルス様が扉の先へ、アイク様も扉の先へ。





そして、私も――――――――

555Mii:2021/08/09(月) 13:57:43 ID:28rO9.d.
ザザァ・・・ ザザァ・・・

波風が、夜の海原に静かに響く。



ロゼッタ「…行ってしまわれましたか」

ルフレ「…行ってしまいましたね」



2人とも、感無量といった感じで、黙りこくる。



ロゼッタ「引き続きルフレの見送り続行というわけですが…………
    私、とりあえず今、無性にやりたいことがあるんです」

ルフレ「ほほう、何でしょうか」

ロゼッタ「驚かれるルキナを想像しながらハイタッチとかどうでしょう」

ルフレ「いいですね、身長差があるのが男としては悲しいですが。
   ちょっとくらいは屈んでもらえると助かるなあって…せぇのっ!」



2人「「大・成・功――――っ!!」」パチーン!!

556Mii:2021/08/09(月) 13:59:28 ID:28rO9.d.
ルキナ「――――――――」

ルキナ「――――――――」

ルキナ「――――――――ここ、は」パチッ

閉じていた目をゆっくりと開ける。



そこにあったのは、潮香る海辺を臨む、傷んだ畦道と、焼け焦げた草原。
キノコ王国からは極度にランクの落ちた、周囲環境。

荒れに荒れ、死と隣り合わせの、絶望の世界。
僅かに生きる人々が、身を震わせ糊口を凌ぐ、悽惨な世界。



――――戻って、来たんだ。



装備などは、一切失っていない。まさに、準備してきたままの万全状態。
でも、人員は、味方は――――すべからく欠落した状態。
お父様もいない。ルフレさんもいない。…誰も、いない。
強大な敵と、魑魅魍魎だけが、数多居る。

ここは、そう。そんな、「過去」の世界。
「未来」からやってくるという裏技を使っておきながら救うことができなかった世界。
時間帯のずれが生じたのか。目に眩しい朝日だけが、僅かに私を支えてくれる。

557Mii:2021/08/09(月) 14:02:57 ID:28rO9.d.
一旦、目を閉じて、物思いにふける。

――――そんな弱気で、どうしますか。
――――死ぬ確率の方が何百倍も高くても、足掻くと決めた。とっくに、決めた。



村人「いやぁっ! 助けて…! だれかぁっ! たすけてぇーっ!」

ルキナ「――――――――っ!!」カッ!



何を、ぼうっと突っ立っているのか。
畦道の少し向こうに上がる火の手。――――休む暇など、ありはしない。

ギムレー本体を倒すことも、大事。
村や町の人々を見つけ次第ことごとく助けていくことも、大事。
異形が蔓延らないよう対策をとることも、大事。

あらゆる自警活動が、一切手抜けないほど、一刻の猶予もないほど――――大事なのに。

ならず者「ぐはははっ! 奪えっ! 殺せっ!奪い終わった家には火を放て!町ごと消し炭にするんだ!
    これを見りゃ、抵抗しようなんて気が起きなくなるだろうからな!」

生き残りの人間同士ですら、強弱が生まれる。心を悪に染めた者が…
異形たちと徒党を組んでまで、略奪、殺戮の限りを繰り返す状況になるなんて。

彼らも、もしかしたら切実な苦しみ…已むに已まれぬ境遇に陥ったのかもしれませんが、
だからと言って無実の一般人を襲っていいはずがない。…当然、成敗対象です。

558Mii:2021/08/09(月) 14:06:07 ID:28rO9.d.
1人1人は私に比べて弱くとも、時として多勢に無勢は起こり得るもの。
気を引き締めて、再臨した最初の一歩を踏み出すことに、いたしましょう。





リンク「考えるより動けだ、ルキナっ!絶対誰も殺させやしないぞっ!!」ダダダダダッ!

ルキナ「はいっ!この剣に誓って、護り抜きますっ!!」ダダダダッ!



私たちの、夢と希望は、ここから始まっていくのです――――――――!!!







ルキナ「…………………………………………?」クルッ



リンク「余所見してんじゃねぇぞルキナ!」ダダダダダッ!

ファイ「マスターに完全に同意します」スイーッ

ルキナ「――――――――!?!?!?!?!?!?!?!?」

559Mii:2021/08/09(月) 14:09:24 ID:28rO9.d.
ルキナ「り、り、り、リンクさんっ!?それにファイさんっ!?
   え?あれ?ど、ど、どどどどうしてここに!?」



リンク「水臭いぞルキナぁ。『タッグ組んでやる』って言ったじゃないかー。
   まだまだ弟子が心配だから、ちょいと派遣されてきましたー!

   おっとぉ、時空扉はとっくに消えてるし、こりゃしばらく帰れないなー!
   しゃーない、1年か2年か、ルキナの御供でも頑張るかー!」





ルキナ「」





ファイ「マスター、ルキナ様が完全に固まっていますが」

リンク「ははっ!ドッキリ大成功ってか!そこまで驚かれるとこちらとしても本望だ!
   村人の救援に向かいながら、種明かしをするとだな――――――――」

560Mii:2021/08/09(月) 14:12:17 ID:28rO9.d.
・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

〜 12月12日 AM 0:30に遡る 〜



ピーチ「…ハァ?リンクをイーリス聖王国に送り込んでギムレーを倒す、ですって?」

ルフレ「はい!その通りです!」



ピーチ「……………………正直がっかりよ、ルフレ。それをして何になるの?
   マリオの代わりにリンクを派遣したところで、今度は――――
   イーリス聖王国が、ハイラル王国の属国になるだけよ?馬鹿なの?

   時間かけて導いた答えが、それなの?」イライラ



ルフレ「…………」フッ

ルフレ「さあ、馬鹿と解釈されるのは、果たして僕の方でしょうか。
   ピーチ姫こそ、実は…とんでもない固定概念に囚われていませんか?」

リンク「いつぞやの袋小路に嵌ってた俺みたいになー」

ピーチ「…………固定概念?」

561Mii:2021/08/09(月) 14:14:46 ID:28rO9.d.
ルフレ「ちょっと質問させていただきますね、ピーチ姫。

   マリオさんって、その強大な戦力がどこの軍の管轄かと言われたら…
   ――――当然、キノコ王国軍ですよね?」

ピーチ「当たり前じゃないの。王国の危機にはマリオに目一杯働いてもらうんだから」

ルフレ「僕もそれに同意しますが、さて。一方のリンクさんの戦闘力って、ハイラル王国軍の管轄ですか?」

ピーチ「もちろんよ、そんなの決まって―――――――――」









リンク「いーや?俺、べつにハイラル王国軍に含まれる戦力じゃねーぞ?」ニヤリ







ピーチ「……………………」

ピーチ「――――――――はああああぁぁぁぁ!?」

562Mii:2021/08/09(月) 14:19:43 ID:28rO9.d.
リンク「驚くことじゃないだろ、考えても見ろよ。

   ハイラルに問題が生じたら、ゼルダ姫やインパの命令もなしに俺が速攻で片づける。
   強いて言うなら伝説の幾つかでゼルダ姫に
   『リンク、お願いですから(部下も軍資金も付けずに)あれやってください』
   って頼まれることがあるくらいで、見返りも何にもないボランティア。
 
   伝説間のパトロールだって、自主的行動だからハイラル軍全く絡んでない。
   
   住んでるのは専らキノコ王国だから、実効従属と言い切るのも無理がある。

   …こんなふうに何の庇護も受けてないのに、管轄されてるって言えると思うか?」



ピーチ「…………」パクパク



リンク「むかしマリオとピーチが言ったんだぞ、『勇者の肩書に縛られるな』って。
   俺の立場は、正式には…せいぜい妙に戦闘力が高い自称勇者ってとこだ。

   …要するに、俺がどっかの国のいざこざにしゃしゃり出ても、
   無所属の旅ガラスが自己責任で暴れたってだけで、国際問題にはあたらないはずだ。
   ゼルダ姫に塩対応され続けていたのが逆によかったってことだな。

   ハイラル王国側からハイラルの名に泥を塗ったとは『マナー違反で』糾弾されるかもしれないが、
   そのくらいはまあ、甘んじて受けるよ」

ピーチ「な―――――――」

563Mii:2021/08/09(月) 14:25:48 ID:28rO9.d.
ルフレ「はい、これでピーチ姫が無意識のうちに却下していた大前提が崩れました。
   あと必要なものは…僕が思うに、3つです。

        『単独行動とはいえ、大義名分があるか』
        『誰がリンクさんに依頼するのか』
        『依頼に対し、万人が納得する正当な対価を払えるか』

  これらについても、幸いながら目途が立ったんですよ。

  大義名分は、なんのことはない。
  ギムレーがキノコ王国に喧嘩を売った。キノコ王国とハイラル王国は軍事同盟関係。
  一個人として、義憤に駆られたリンクさんが動いた。以上です。
  同盟の『効力』としての協力は不可ですが、動機付けにはなるということですね」

リンク「残る2つなんだけどさー。ピーチも知っての通り(プラスアルファあるけど)、
   実は最近、ロゼッタにものすっごい借りができたんだよね、俺。
   で、なんでもしますからって頭を下げたら、ロゼッタがさ。
   『世界平和のため、ルキナさんの世界を守ってあげてください』とか言い出して。
   そんなら渡りに船ってことで。

   俺の時間的拘束とロゼッタへの借りとの価値を比較すると、
   少なく見積もっても丸1年はルキナを手伝って文句は言われないと踏んでる。

   『ロゼッタ』と『リンク』の個人間の仕事依頼で、
   『ロゼッタ』がもたらした恩恵の対価として、『リンク』が世界平和に貢献する。

   何なら貢献できるかなと探してたら、好き放題やってるワルモノ発見。
   調べてみたら俺とファイだけが飛び込む分には国家に迷惑かけなさそう。
   ハイラル王国民のはしくれとしてキノコ王国を助けるのも吝かじゃない、よし決めた。
   …………悪くない筋書きだろ?俺も感心したよ」

564Mii:2021/08/09(月) 14:32:04 ID:28rO9.d.
ピーチ「……………………」

リンク「ふふん、ルフレを存分に褒めてくれてもいいんだぜ。
   あとは、任天堂さんに間違っても抑止力働かせないようピーチが話し合って――」



ピーチ「……………………駄目ね」

リンク「なんでさ!?」

ピーチ「…話はわかった。綻びが有るけど、私の口八丁で埋め合わせできる程度には
   イイ線のツギハギ方をしてると思う。なんとかスタッフを丸め込みたいところ…だけど。
   でも、肝心のところが抜けてる」

リンク「…肝心の?」

ピーチ「にっくきギムレーはね、頭に来ることに――――
   立場上は、キノコ王国に敵対する、なんて宣言はしてないのよ。
   あくまでタブーの暗躍の傍らでちょっとちょっかい掛けてきた扱い。
   さんざん興味本位だったともほざいていたわね…。
   言質を取られないように、あいつもずる賢く動いていたの」

リンク「べ、別に動機づけなんだからいいだろ?
   実際の所は、軍事同盟があろうとなかろうと俺は怒るよ」

ピーチ「その感情はとてもうれしいけれど、交渉では使えない。まるで駄目ね。
   強引にリンク派遣のためのストーリーを組み立てるとしたなら、
   『軍事同盟の効力発動』自体は実際に起こってくれないと主張が弱い。
   リンクが義憤に駆られてそこまで動こうとするには、必須事項」

565Mii:2021/08/09(月) 14:36:16 ID:28rO9.d.
ルフレ「……言質という無形の物だけが後は必要ということならば、なんとかなるかもしれませんね」

ピーチ「…………え?」

ロゼッタ「実はですね。あの戦いで、たっくさんの分身体を、この身に還元して。
    ――――最後の最後で、記憶と経験値、一切合財戻ってきたんですよ。
    忌まわしい内容に恐れ戦き続けましたが、今となっては大戦果です。
    ギムレーと一緒にいた『私の分身体』が、ギムレーをそそのかしてくれてですね。



    ――――堂々とやってくれてるんですよ、キノコ王国への宣戦布告を、ねっ!!」

ピーチ「――――――――!?」

ルフレ「そんでもって、ロゼッタ姫の記憶を頼りに、一直線にイベント現場に向かって、
   手当たり次第に監視カメラの録画結果から探し当てた映像がこちらです。
   はい、プロジェクターどうぞ」



ギムレー『我、ギムレーが、『ギムレー本人』の立場として無慈悲の鉄槌を下そう。

     愚昧なるキノコ王国に対して、我がペレジア王国は――――
     傘下のイーリス、フェリア、ヴァルムとともに――ここに宣戦布告する!
     全てを破壊し尽くし、滅ぼしつくし、奪い尽くして見せよう!』



ピーチ「                」

566Mii:2021/08/09(月) 14:40:04 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「……そ、そんなわけで…大変心苦しいのですが。もうひと頑張り、ですね。
    ピーチ姫には、なんとかリンク派遣のための段取りをしていただきたいなあ、と」



カシュッ・・・。

ピーチ「――――――――」ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク



ロゼッタ「栄養剤一気飲みしました!?」

ピーチ「…やってやろうじゃないの、そこまでお膳立てされたんならね。
   楽しみに待ってなさい、皆。そして、楽しみに首を洗って待ってなさい、ギムレー。フフフフフ…!」



〜 12月12日 おひる 〜

ロゼッタ「ピーチ姫が、2日でやってくれるそうです。大量の原稿と資料片手に、意気込んで会議室に向かわれました。
    『ルキナはベッドに拘束しているから安心ね』とか不穏な言葉を口にしていましたが…」

ルフレ「ピーチ姫には頭が下がりますね…。あ、お分かりかとは思いますが、今回の作戦。
   ルキナは勿論として、リンクさん以外のハイラル関係者に漏らしてはいけませんよ。
   念のため、ヒルダ姫にも。他の方にもよくよく注意しておきましょう」

ロゼッタ「…どうしてですか?」

ルフレ「リンクさんが年単位で居なくなると知ったら一部で暴動が起きます」

567Mii:2021/08/09(月) 14:45:29 ID:28rO9.d.
〜 12月14日 あさ 〜

ピーチ「…と、いうわけで、ファイターの皆!ちゅうもーくっ!
   リンクがギムレーを懲らしめに行く件について、任天堂からの許可が下りたわっ!抑止力は一切発動なしっ!
   
   具体的には、『リンクおよびファイの1年以上3年以下の共闘・支援』!
   そして『ルキナによるハイラル由来品の有効携帯』を勝ち取ったわっ!
   私、凄くないっ!?褒めて褒めてっ!」



デイジー「テンションがおかしくなって私みたいになっとる」

ルイージ「自分で言っちゃう?」

デイジー「ルイージ酷いっ!私のテンションがおかしいですって!?」

ルイージ「」



マルス「それでは、予定調和かもしれないが…宣言しておこう。
   
   英雄王マルスとして宣言する。
   このたびの『ルナティック+世界線イーリス聖王国へのリンク達の介入』について、
   リンク達が意図的にイーリス聖王国に害をなすことがない限り、
   一連の介入を是とし、拒絶・非難・損害請求等の対抗措置を検討・実施しない。

   また、第三者が我々に代わって同等の対抗措置を実施しようとした場合、
   この実施を解消することに尽力するものとしよう」

568Mii:2021/08/09(月) 14:48:45 ID:28rO9.d.
ルフレ「分岐世界線のFE組代表ルフレとして宣言します。
   このたびの介入は現状世界線の意向に沿うと同時に歓迎される類の助力であるため、
   僕たちはリンクさん達が最大限のパフォーマンスを出せるよう、
   必要な物資や情報を彼らに提供することを約束します。

   また、この同意内容について、現状世界線の仲間たち、家族たちに
   十分に浸透・承認させるための努力を惜しみません」

リンク「えーと、ルキナをしっかり護衛しつつ、ルキナを鍛えて自立させ、
   ついでにギムレーをボコってきます。以上」

ピーチ「まじめにやりなさいよ!」

リンク「分かりやすい方がいいじゃん…」

ピーチ「…まあ、いいわ。これで(ハイラル勢除く)全員に内容が行き渡ったわね」

マルス「……とりあえず言えることは。――――ギムレー、ご愁傷さま」

アイク「そうだよな、よりにもよってリンクを送り込まれるとは…」

ファイ「私の計算では。ネオ・マスターソード装備のマスターが駆け回った場合。
   ギムレー8192人までなら……マスターと私のみでも勝つ確率、99%」

パルテナ「ルナティック+のギムレーがいくら強いからって、
    経過成長込みでも基礎体力レベルはたかだかLv.40設定ですからね…
    そこにただでさえ相性絶対有利のLv.148とLv.70の核弾頭を放り込んだらぶっ壊れですよ」

ルフレ「なにそれこわい」

569Mii:2021/08/09(月) 14:53:44 ID:28rO9.d.
リンク「…ところで、『ルキナによるハイラル由来品の有効携帯』ってなに?」

ピーチ「私は、リンクが去った後のことも考えて交渉したってことよ。
   
   リンクは知らないかしら。本来、マジックアイテムの収納には制約が有ってね。
   『所持者の出身』が『アイテムの由来』に合致しないといけないの」

リンク「…………?????」

ピーチ「たとえば、キノコ王国由来の1UPキノコがあるでしょ?
   これを、マリオが鞄に入れようとすると99個だか999個だか入るのよ。
   でも、リンクが自分の鞄に詰め込もうとすると1個か2個しか入らないわ。
   この仕様は、無闇に他国に強力なアイテムを輸送させない役割を持ってる」

リンク「…ああ!要するに圧縮効果が働かなくなるってことか!
   本来なら、適用するアイテムしか碌に持ち運びできないってことだな!」ポンッ!

ピーチ「でも、今回は違う。ハイラル由来のアイテムなら、ルキナは――
   自分の鞄の中にほぼ無尽蔵に詰められるわ。うふふふふ…」

リンク「…でもさ、水を差すようだけど、俺、というかハイラルって、その。
   あんまり有用な、局面を一気に打開できるようなアイテムの候補がなくて…。
   そりゃ、キノコ王国なんかだと、条件次第でとんでもない効果を発揮するアイテムとか、
   俺が知ってるだけでもワンサカあるけどさ」



ピーチ「大丈夫よ、全く問題はないわ。ガワさえハイラル由来のアイテムなら大丈夫だから」

リンク「…どういうことだ?」

570Mii:2021/08/09(月) 14:56:02 ID:28rO9.d.
ピーチ「そういうわけで、リンク。















    ありったけの『あきビン』を出しなさい」



リンク「今んとこ100本くらいしかないけどいいかな?」ドサッ



マルス「」

アイク「」

ルフレ「」

571Mii:2021/08/09(月) 14:58:44 ID:28rO9.d.
ピーチ「さあっ!みんな!…強者どもよ!!」



ザワザワザワザワ・・・・・・・・・・・・・・・・・!



ピーチ「再取得可能な消費アイテムで構わないから…

   便利アイテム!万能アイテム!チート級アイテム!

   ルキナのことを応援したいなら、どんどん出してちょうだいっ!
   あんまり大きいのは入らないけどっ!

   安心して!私の意地で、相場の倍のコインを払わせて頂くわっ!!」



一同「…………………………………………」



マルス「…ま、まさか――――――――」

アイク「え?ちょ、おま――――――――」」



タブーにむかっ腹を立てていたファイター達の心が、いま、ひとつに――――――――

572Mii:2021/08/09(月) 15:07:11 ID:28rO9.d.
マリオ「攻撃アップ、防御超アップっ!言わずと知れた無敵アイテム、『スーパースター』!」

ルイージ「遠くの敵を消費無しで遠距離攻撃、『ブーメランフラワー』!」

カービィ「ハーイ!(『コピーのもと』つめあわせ)」

サムス「破壊力バツグン、なんでも吹き飛ばす『パワーボム』!」

ピット「触れたもの一瞬で凍らせる!『冷却ブレスレット』!」

ポケトレ「…………………………………………」

ニャース「自軍全体を最高クラスの生命蘇生力で全回復っ!『聖なる灰』!…と言ってるニャ!」

ロゼッタ「火球で自在に遠距離攻撃、『ファイアフラワー』!……え?しつこい?そそそそんなことないですよ!」

ルカリオ「ガチ対戦では日陰に隠れるが、攻撃のたびに与えたダメージに応じて体力を回復、『貝殻の鈴』!」

ヨッシー「視界内の敵全員に大ダメージ、『どこでもPOW』!」

ワリオ「謝礼は弾めよ?…ジャンプ力アップ、空まで飛べる!『ジェットの壺』!」

ルフレ「…はっ!僕からの分は別にあきビンってやつに詰めなくてもいいんですよね。
   よし、マスタープルフやらチェンジプルフやら術書やら、あるだけルキナにあげちゃおうか」



マルス「」

アイク「」

573Mii:2021/08/09(月) 15:10:43 ID:28rO9.d.
ピーチ「残りのあきビンには、片っ端から1UPキノコと緊急キノコを詰め込むわ!
   リンク、最初は自分で持っておいて、そのうちルキナに説明がてら渡してね!

   …そういうわけで、ロゼッタ」

ロゼッタ「…な、なんでしょうか?」

ピーチ「依頼主の貴方が、リンクに『ギムレーを殺ってこい』と――――
   最後に気迫篭った指示して締めなさい。私が言うと問題になるから。
   ふふふふふ、結果が楽しみでたまらないわ――――――――」

ロゼッタ「いやですよ、そんな乱暴な言い方はっ!?」

デイジー「あ、ピーチったら何気に怒髪天突いてる」













アイク「ここにギムレーの墓を建てよう、スコップ持ってくるわ」

マルス「駄目だよアイク、ちゃんと街の外に移動してからじゃないと」

574Mii:2021/08/09(月) 15:12:54 ID:28rO9.d.
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

リンク「――――みたいなカンジ?」

ならず者たち「「「「「「「「」」」」」」」」チーン

ファイ「そうこうしている間に、村の暴動の鎮圧が完了致しました」

ルキナ「」



リンク「ま、やってきたもんは仕方がない。世界平和のため頑張るぞ!エイエイ、オー!」

ルキナ「」

リンク「いつまで呆然としてるんだよ。とっととこの王国、平和にしてやろうぜ!
   それがルキナの願いでもあるんだろ!次だ次、さあ行くぞルキナ!
   この瞬間にも、誰が死んでるかわかんねーんだろ!
   とりあえずは、いの一番に、ギムレーさんを〆に行こうぜ!案内よろしくぅ!」スタスタ
   
ファイ「さあ、一歩を踏み出しましょう。でなければ置いていきますよ?」

ルキナ「え、ちょ、ちょっと待ってくださ――――――――い!
   嬉しい、ですけれど!嬉しいんですけどっ!ま、まだお話が終わっていませんっ!!」バタバタ


私たちの、夢と希望は、こ、ここから、始まっていく、みたいです――――――――!?

575Mii:2021/08/09(月) 17:37:37 ID:28rO9.d.
〜キノコ城 城下〜

デイジー「…………はあ」ピッ

デイジー「……………………まずった。
    『桃葵の誓い』をロゼッタのためにパルテナへ差し出すのは後悔してないけど。
    勝手に決められたことに、うちの家臣たちがむっちゃ怒ってる。

    そりゃそうだよね、提供ノルマ30本…年3本計算のうち、
    私個人に割り当てられてるのは1本だけだからなー」

メールで簡易報告だけして済ませようとしたら、怒涛の着信。
10回目あたりで観念して恐る恐る出てみれば、大臣さんのキッツイお叱り。
順繰りに代わられて、ひとりひとり怒られて泣かれて叫ばれて。

いやあ愛されてるなあ、あの神酒。あれだけで財務が動くのは伊達じゃない。
大多数の人にとって、一生で一度飲めたらそれだけで豪運だものね。

デイジー「どうしよっかなー、ちょっと帰るのが怖くなってきた…………
    対策を考えないと…………代わりの物、何か用意できるかな…………
    このままだと冗談抜きで、首輪付けられて執務室に1年くらい閉じ込められるよ…」



――――メールダヨ!メールダヨ!



デイジー「…ん?ピーチからだ、なんだろ」ピッ

576Mii:2021/08/09(月) 17:41:04 ID:28rO9.d.





ピーチ『大事なお話があるから、誰にも悟られずに執務室に来てちょうだい。
   特にロゼッタにバレるわけには行かないから、遠出している今しかないわ。
   下手したら半日、いえ1日掛かる長丁場になるだろうから、食事は先に済ませておいて』





デイジー「…………な、な、なんだろ、ホントに」ビクビク



デイジー「…………」コソコソ

デイジー「…………」コソコソ

デイジー「…………」ササササ

デイジー「誰にも見つかりませんように、見つかっても悟られませんように…」





ルイージ「……ん?」

577Mii:2021/08/09(月) 17:42:24 ID:28rO9.d.
ルイージ「…デイジー、こそこそ壁に張り付いて何やってるの?」

デイジー「のわあぁっ!?」



ルイージ「……?」

デイジー「何でもない何でもない!放っておいて!
    ちょっとピーチと、かくれんぼしてるだけだから!」

ルイージ「…へ、へえ、そうなんだ」

デイジー「じゃ、じゃあ私はこれでっ!」スタコラ



デイジー(よし、ごまかせた!)







ルイージ(…………何あれ怪しい)

578Mii:2021/08/09(月) 17:48:05 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「ルフレも無事に見送って!帰ってきましたキノコ王国!
    余裕で日付を跨いで、かなり眠いししんどいですが…
    とりあえず、ピーチ姫に報告をしに行かなければなりませんね」



何気に海の上の小旅行って感じで、初めての体験で楽しかったというのはあります。
ですから、眠いといえどもちょっと興奮気味でもある。複雑な心意気。

ピーチ姫も、ルフレやルキナのことをとっても気に掛けていましたから。
無事に故郷へ送り届けられたことをお伝えして安心してもらいましょう。



〜キノコ城〜

キノじい「大変申し訳ない、ロゼッタ殿。
    姫様は只今、戦後処理のラストスパートで面会謝絶中ですじゃ。
    ご報告は後日でも全然かまいませんので、本日はお引き取り願いますかの」

ロゼッタ「…そ、そうでしたか。こちらこそ失礼いたしました、お忙しい時に」



若干ぶっきらぼうな門前払いを食らいました。
しかたありませんね、ピーチ姫の体がすでにストレスで悲鳴を上げていそうです。



それでは、ここは諦めるとしましょう、か。

579Mii:2021/08/09(月) 17:55:31 ID:28rO9.d.
〜キノコ城 城下〜

ロゼッタ「それでは適当な喫茶店で遅めの朝食でも――――――――
    あら?ルイージ?どうしたのですか?」

ルイージ「うーん?うーん?むむむ…」

ロゼッタ「…ルイージ?」

ルイージ「あ、やあロゼッタ、ごめんごめん!戻ってたんだね。
    その様子だと皆を無事に送り届けられたようで何よりだよ。

    …うんうん唸ってる、変な所を見られちゃったなあ。いや、ただデイジーが挙動不審だったから…」

ロゼッタ「…挙動不審、とは?」

ルイージ「周りを警戒しながら、人目のつかない裏道脇道進んでるみたいで。
     なんでも、ピーチとかくれんぼしてるんだってさ」

ロゼッタ「かくれんぼ」

ルイージ「そう、かくれんぼ」

ロゼッタ「それは確かに変ですね。しかし、ルイージにはあっさり見つけられたと」

ルイージ「ふふふ、影が薄すぎて警戒されなかったのさ!」

ロゼッタ「…………そ、そ、そうだったんですかー!なるほどー!」

ルイージ「ごめん!今更ながら自虐で苦しみだしてます!」

580Mii:2021/08/09(月) 17:59:16 ID:28rO9.d.
ルイージ「と、とにかくだね!人目を忍んでコソコソ動いて、かくれんぼ中の子供みたいだったけど。
    妙に不自然で怪しかったというか…。気になってさ。
    …でも、ピーチとかくれんぼしているという割にはキノコ城に近かったんだけど」

ロゼッタ「…それ、単純にコッソリとキノコ城に向かいたかっただけじゃないですか?」

ルイージ「あー、そうかもしれない。やっぱり他の人にこそ見つかりたくなかったのか」

ロゼッタ「…わざわざ、戦後処理中のピーチ姫の名前を出すというのも変な話ですね…」



もしかして、ピーチ姫と重大な話を抱え込んでいるのかも。
ちょっと、探りを入れてみるのもアリかもしれません。
私でも少しは手伝えるかもしれませんし。踵を返しましょう。














――――――――この安直な考えが、のちに私を大いに苦しめることになりました。

581Mii:2021/08/09(月) 18:01:38 ID:28rO9.d.
キノじい「ど、どうかされましたかな、ロゼッタ殿」

キノじい、そしてキノピオたちは…どうやら私をピーチ姫に会わせたくないみたいです。
改めてお城に向かってみたら、あからさまによそよそしかったので間違いありません。

…そう、『よそよそしい』。ピーチ姫の時間が取られる、というよりは、
私が向かうことで不都合が生じる、とでも言いたそうな言動っぷりです。
これは、ますます怪しくなってきました。



ロゼッタ「どうしても、執務室に向かってはならないと?」

キノじい「大変申し訳ないのですが、はい――――」

ロゼッタ「…それでは、別にピーチ姫の所ではなくて構わないので、
    どこかで休ませて頂けないでしょうか…?少し、船旅でくたびれてしまいまして」

キノピオ「あ、そういうことならどうぞどうぞ!こっちです!」

ロゼッタ「ありがとうございます」テクテク

皆さんには悪いですが、ここは素直に引き下がった振りをして――――




ロゼッタ(分身体の私。囮役は任せました)

ロゼッタ(分身)「……………」グッ

582Mii:2021/08/09(月) 18:05:28 ID:28rO9.d.
「本体の私」は、何食わぬ顔でコソコソと、逆側を探索していきましょう。
…なんだか、私も悪知恵が働くようになってきましたね。

なんだかんだ言って、私も体が鍛えられてきました。身のこなしは上々。
おまけに、念には念を押して、久しぶりの魔法浮遊歩行…歩行?

音を立てずに、物陰に隠れて逐一キノピオたちをやり過ごし、
割とあっさりと執務室の前までたどり着きました。
監視カメラの類は、流石にわかりません。後でばれてしまうのは諦めましょう。







扉『面会謝絶』ドドーン







…確かに、何か重要なことを中でやっていそう。
ピーチ姫と…おそらくデイジー姫が、大事な打合せでもしているのでしょうか。
いきなりノックするというのも、ましてや扉を蹴破って入るというのも、できるわけがなく。

仕方ありません、はしたないですが身を扉にピッタリ付けて、耳をそばだてて――――
下品とは分かりながらも盗み聞き。割と聴覚は鋭い方ですから――――

583Mii:2021/08/09(月) 18:07:23 ID:28rO9.d.













ピーチ「――ロゼッタは、まだ子供よ。大人の辛さをまるで知らない。
   それでいいの、この議題を対処するのは絶対に不可能よ」














――――ピタリと、体が固まって。頭の中が真っ白になりました。

584Mii:2021/08/09(月) 18:11:15 ID:28rO9.d.
デイジー「そんな言い方は…まあ、わからなくはないけど……」



ピーチ「とにかく、保護者代わりの私たちが全部面倒みることにする、それでいいわね?
   繰り返すけど…ロゼッタに、こんな責任はポテンシャル不足、荷が重すぎるわ。
   全力で助けてあげないと、音を上げて泣きわめくのが目に見えてるじゃない」



デイジー「…なかなかキッツイなあ、その尻拭いの代償、立て替えるの…………。
    サラサ・ランドの大臣たち、ますます無茶苦茶怒るだろうなあ。
    私、しばらく遊びに行けそうにないよ、とほほ。…………でも。
 
    そうだね、そうだよね。…全く、手のかかる子なんだからー。
    ロゼッタは負の面を知らずに、朗らかに笑ってるのが一番だよ。
    あんまりこれ以上、苦労掛けさせてあげないようにしなくちゃね」



ピーチ「いい?今回の議題については、絶対にロゼッタに漏らさないでよ?
   最後の最後まで騙し通さないと、ロゼッタが悲しむからね?
   ちゃんと責任とります、みたいな…勢いに任せた安請け合いをしかねないからね?」




――――なにか、崩れていく、音がする。
――――培ってきたもの、グラグラと、崩れていく、簡単に。
――――嘘だ。こんなこと、お二方が陰で言うはずがない。

585Mii:2021/08/09(月) 18:13:33 ID:28rO9.d.
デイジー「まっかせときなさい!ロゼッタの性格、人となりはしっかり理解してるよ!
    じゃあ、この書類は万が一ロゼッタに見られでもしないよう、処分しといてね!
    大丈夫!私の頭の中に、しっかりとインプットされたから!
    …というか、よくここまでぎっちりと正式文書を試し書きする時間があったなぁ」

ピーチ「もちろんそうするつもりよ。
   ぎっちり書き込んだ理由は…まあ、デイジーにしっかり理解してほしかったからね。
   あとで『忘れた』とか言われるのもなんだったし。…ロゼッタの事、しっかり護りきるわよ」

デイジー「うん!――――さぁて、やっぱりお腹がすいちゃった。
    打合せも終わったところで、何か食べに行こうよ、さあ――――――――」ガチャッ



デイジー「」ピタッ



ピーチ「…どうしたのデイジー、いきなり固まったりし――――――――」



ピーチ「」ピシッ



ロゼッタ「――――――――どう、して」ボロボロ

固まるお二人をよそに、その場に泣き崩れました。

586Mii:2021/08/09(月) 18:16:24 ID:28rO9.d.
ピーチ「…な、なんで?どうして!?人払い、してたはずなのに…!
   ――――――――っ!ロゼッタ!?まさか、聴いてたのっ!?」



うつむいたまま、力なく、頷きます。



――私は、浅はかでした。一人前と認められているだなんて早合点して、調子に乗って。
――まさか、2人の目からは全然対等に見えていなかっただなんて。
――よくよく考えてみれば当たり前のこと、気付けていなかった私がなお恨めしい。

悔しい。悔しい。涙が一向に止まりません。
ピーチ姫とデイジー姫は、顔を青くしてオロオロするばかり。



キッと泣き腫らしたまま顔を上げ、固まるピーチ姫の手から、
分厚い分厚い書類の束をひったくります。

ピーチ「ちょ、ちょっと!ロゼッタ、それは見ちゃ駄目っ!!!」



書類「議題  ロゼッタによる、マリオカート8に向けた新規コースの製作について」



衝撃の事実に目を見開きつつ、ページを手繰る手を止めません。

587Mii:2021/08/09(月) 18:19:44 ID:28rO9.d.
――――このたびのタブー戦での活躍に対する褒賞の一環として。
――――ロゼッタに、新規コースの製作を手掛ける名誉を与える。
――――該当のコースは、絶賛調整中の『マリオカート8』の1コースとして
――――特段の承認工程を踏まず、無条件で正式採用させられるものとする。
――――以降、この文面において、コース名を仮に『スカイガーデン』と呼称することとする。

あまりに慌てたピーチ姫が奪い返そうとする行為を、チコたちに協力してもらって…
私も、上がってきた基礎体力を活かして、なんとか回避。そのまま、どんどん読み進める。

何が援助され支給され、何を自分で考案しなければならないかが、つらつらと。



――――私なんかでは、とても処理できない案件と捉えられたのですね。
――――ちょっと前、『ロゼッタプラネット』を作った実績は有りますが…
――――何も気にせず自由気ままに作っていったのとはわけが違う、ということでしょう。



紙の束から目を離し、フラッと立ち眩み。どうにかなりそうです。

デイジー「…………あわわわわ」

ピーチ「…よ、読んじゃった、の?」オロオロ

ロゼッタ「…………はい」



沈黙が、3人を支配する。

588Mii:2021/08/09(月) 18:23:03 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「そこまで――――私、信頼されて、いなかったんですね」

自嘲するしかありません。なんと滑稽な事か。



デイジー「違うっ!違うよっ!ただ私たちはロゼッタのことを思って――――」

ピーチ「そ、そうよ!ロゼッタにできるわけがないじゃないっ!!」

ぐさりと、言葉の刃が襲い掛かる。
本当に、なんにも、信頼されていなかったんだ。



ロゼッタ「――――どうしてっ!どうして、私に任せていただけないのですかっ!
    私は…私はっ!お二人の子供でも、操り人形などでもありませんっ!!」

ピーチ「――――っ!」

デイジー「――――っ!」

ロゼッタ「…こんな、弱弱しい、私でも。
    出会ってから、ほんのちょっとずつ、強くなって、期待されて。
    それなりに、責任ある仕事を、担って行けるようになって。
    それが嬉しかった、信頼されていると思った…

    私の想いは、ただの幻想、私の想い違いだったのですかっ!?」ボロボロ

ピーチ「そ、そんな、つもりは、ぜんぜん――――」

589Mii:2021/08/09(月) 18:26:19 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「ならば、私に、私自身の責務、果たさせてくださいっ!!
    どれだけ苦難が待ち構えていようと、四苦八苦する私に心無い言葉が投げ掛けられようとっ!
    当然の運命として、打破すべき逆境としてっ!誠心誠意受け止めますっ!

    後ろめたい気持ちを持ちながら今後皆さんと付き合っていくなんてこと、
    私には、できません!お願いしますっ!!」

ロゼッタ「おねがい…………します、どう、か――――」ボロボロボロボロ



滴が、上から、落ちてくる。
ピーチ姫が、私と同じように、ボロボロと泣いていました。



ピーチ「…ごめんなさい、ごめんなさい――――」ボロボロボロボロ

ロゼッタ「――――――――」

ピーチ「私、ロゼッタの事分かってるようで、なんにも分かってなかったのね。
   偉そうに上から目線で、なんでも世話してあげなくちゃって考えて…。
   ロゼッタの気持ち、願い、ぜんぶ踏みにじってきたんだわ。

   貸し借りなしじゃないと、本当の対等な付き合いだなんて、できないわよね…」ボロボロ

デイジー「ピーチ…………」グズッ

ピーチ「私のバカ、バカ、バカ…………!」ボロボロ

590Mii:2021/08/09(月) 18:28:46 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「どうか、その仕事…私に、一任してください。
    精一杯、励みます。そして、必ずクリアして見せますから。
    その出来しだいで、再び私が子供同然だと判断されるのなら…
    もうそれは、甘んじて受けます」

ピーチ姫が、ブンブンと首を振る。とんでもない、と言ってくれているかのよう。



ピーチ「そんなこと、絶対に二度としない。もう、私と貴方は対等なのだから。

   …デイジー、わざわざ私の与太話に付き合ってくれて、ありがとう。
   でもあれは、忘れてちょうだい、全部。一切合財、ロゼッタに…任せるから」

ロゼッタ「…それは、本当ですか」

デイジー「…………わ、私は、別に、そのくらい気にしないけど…い、いいの!?
    ロゼッタの心配はしなくて…!?進捗次第だと、本当に槍玉にあげられるよ!?
    大げさに言うと、牢屋に閉じ込められちゃうかも…っ!」

ロゼッタ「…デイジー、姫」

デイジー「そ、そんな悲しそうな目で見ないでっ!わ、わかった!わかったよ!
    私だってロゼッタのことは信用したい…いや、信じてるから!
    なんとか奇跡的なすっごいことが起きて、ロゼッタが上手くやってくれるって!」



ロゼッタ「――――」ズキッ

591Mii:2021/08/09(月) 18:32:16 ID:28rO9.d.
言葉の刃は、時折、続く。



ピーチ姫にも、デイジー姫にも、まだまだ私はひよっ子に見えている。



…やってやる。ぜったいに、やってのけてみせる。
むしろ、見返したい気持ちで、いまは一杯。
私の精神は、以前からは十分に…強かになったはず。



ピーチ「そのかわり…最後まで絶対に、諦めないで。
   私も心を鬼にして、一旦ロゼッタを突き放すから――――」

ロゼッタ「――――のぞむ、ところです。
     贔屓もなにもない唯のロゼッタとして、そのままに批評してください」

ピーチ「…ああ、ロゼッタがこんなに強い女性になっていたなんて。
   私って、本当に…バカだったわ」グズッ





三者三様に泣いて、泣き腫らして――――
私の想いは、なんとかお二人に届いた、そういうことにしておきました。

592Mii:2021/08/09(月) 18:35:08 ID:28rO9.d.
ピーチ「じゃあ、その書類はそのままロゼッタが持っておいて。
   その書類、もう処分はしないわ。むしろ残しておくべきだし。

   私は、このことを心変わりしないうちに大臣たちにすぐに周知させるから。
   みんな、やきもきしていたのよね…」

ロゼッタ「私を責務から逃がす代償に釈明に追われていた、ということですね…
    大口を叩きはしましたが、本当に…申し訳ありません」

デイジー「改めて、その書類、しっかり細部まで目を通しておいてね。
    なんだったら、そこの椅子と机を使うといいよ」

ピーチ「私の固定席なんだけど…まあ、いいわ。好きに使って。それじゃ」バタン

デイジー「私はご飯でも食べてくるねー」バタン



ロゼッタ「……………………」



ロゼッタ「……………………ほっ」



涙の跡をしっかり拭いて、書類をしっかり握りしめて、示された席へ。

流し読みしてしまいましたから、ちゃんとゆっくりと読み直しましょう。
失敗したり、仕様を勘違いしたり、ずさんな仕事をしてしまったりしてはいけません。

593Mii:2021/08/09(月) 18:38:44 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「製作概要…………」ペラッ

ロゼッタ「期日…………」ペラッ

ロゼッタ「費用…………」ペラッ

ロゼッタ「デザインポイント…………」ペラッ

ロゼッタ「安全性…………」ペラッ

ロゼッタ「レース展開、逆転性…………」ペラッ

ロゼッタ「観客動員、収益性…………」ペラッ



詳細を読めば、ますますピーチ姫の知識と頭のキレに驚愕するばかり。
ここまで丁寧な内容なら、実行する私としてもかなり助かります。
それこそ読むのが面白くて、読みふけってしまうほど。瞬く間に、1時間ほど経って行きました。

…ふう。特段、奇天烈すぎる内容は有りませんでしたね。
真面目にコツコツ工程を組めば、なんとかなりそうです。

チコ「がんばれ、ママー!」

チコ「負けるな、おー!」

チコ「元気出して、ピーチ姫を見返してあげよー!」

ロゼッタ「ええ、もちろんよ。しょげてばかりじゃ、駄目だもの」

594Mii:2021/08/09(月) 18:40:30 ID:28rO9.d.



チコ「…あれ?まだ書類が残ってるよ?」



ロゼッタ「…あ、本当だわ。議題が終わったとばかり勘違いしていたのだけど。
    添付資料でも付いていたのかしら」











書類「議題 ロゼッタに対しての諸費用請求について」








ロゼッタ「………………………………しょひようせいきゅう?」ペラッ

595Mii:2021/08/09(月) 18:43:49 ID:28rO9.d.



  『ロゼッタは、このたびのタブー戦において、キノコ王国に対し
   看過できない程度の被害・損害・特別経理の計上を負わせた。

   そのうち、分身体らによる一切の被害は本人の意思がないため除外するとして、
   以下に挙げる項目について、賠償責任を負うものとする。

   ・スマブラ試合会場ならびにフィールド構成システムを自らの意思で半壊させ、
    実質的に全体を再建築せざるを得なくなったことに対する責

   ついては、ロゼッタはキノコ王国に対し、

   42億9496万7296コイン(430億円相当)の金員、あるいはその額と等価以上の物品を支払うこと。

   支払い完了までの利息は年1%とする』





ロゼッタ「…………………………………………………………………………
    よんじゅうにおくきゅうせんよんひゃくきゅうじゅうろくまんななせんにひゃくきゅうじゅうろくこいん?」





ロゼッタ「――――!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」サァッ

596Mii:2021/08/09(月) 18:47:34 ID:28rO9.d.
デイジー「お腹いっぱいになって戻ってきましたー!」ガチャッ

ロゼッタ「デ、デ、デデデデデデ――――」

デイジー「…デデデ大王?」

ロゼッタ「デイジー姫っ!こ、こ、これっ!
    この損害賠償って、いったいなんですかっ!?!?!?」バンッ! バンッ!

デイジー「……??何を今さら。さっき確認してたじゃん。
    ロゼッタ、最後のでっかい隕石でフィールドぶっ壊したじゃない」

ロゼッタ「え、あの、その」マッサオ

デイジー「已むに已まれぬ不可避行動ならもちろん免責になるんだけどね。
    余裕もって倒せたはずのマリオ達の助力を断って、あの攻撃でトドメを刺したってことは…
    不必要な破壊ってことで、あの場面の被害はどう解釈しても、法律上は…

    100%、ロゼッタの有責器物破損行為になっちゃうんだよ」

ロゼッタ「」

デイジー「おまけに、あのフィールドだけじゃなくてさ。
    根本的なフィールド呼び出しシステムがお釈迦になったみたいで。
    まもなく、試合会場全体を一から建設し直しになるみたいだよ。

    国家プロジェクトで何年か掛けて作ってた施設だし、高くついたみたいだね…
    ピーチが嘆いてたよ。半壊というよりむしろ全壊って言いたいくらいだって」

ロゼッタ「」

597Mii:2021/08/09(月) 18:52:34 ID:28rO9.d.
デイジー「…本当に、どうしたの?」

ロゼッタ「……………………かくかく、しかじか」

デイジー「かくかく、うまうま」

ロゼッタ「……………………」

デイジー「……………………」

デイジー「――――!? 二つ目の議題知らずに大口叩いちゃったのぉ――――っ!?」

ロゼッタ「…………ハイ」

デイジー「えっ、ちょっと落ち着こう。こんがらがってきた。…じゃあ何?ひょっとして、あれ?

     私たちが『ロゼッタにコース製作なんてできるはずありませんわオホホホホ』みたいな
     シンデレラの継母的なイジワルをしてるって思ってたわけ!?悲しくなってくるんだけど!?」

ロゼッタ「すいませんすいませんすいません………!で、ですが、
    それでは一体どうして、私を護るとかいう発言が…?」

デイジー「多大な出費を強いられて難しい顔をする上層部に、信賞必罰のプラマイ相殺を強引に持ち掛けて
    コース製作の名誉を諦めてもらう代わりに借金帳消し・肩代わりに動いてたんだけど…
    賛同した私も、おまけで責任被ることにして…ロゼッタよりはお金の工面の余地があるし…」



ロゼッタ「」

598Mii:2021/08/09(月) 18:56:23 ID:28rO9.d.
ガチャッ!



ピーチ「おまたせっ!しっかりと皆には伝えてきたわ!
   文句垂れていた人たちも、私たちの目を醒まさせた顛末を聴いて、
   『さすがはロゼッタ様だ!素晴らしい責任感と潔さ!』って絶賛してたわよっ!
   しっかり借金返してくれるのなら、なにも文句言わないって!」バンッ!



ロゼッタ「あ、ああ、ああああ」マッサオ

デイジー「」

ロゼッタ「あ、あの、わ、わたし、そんな大金、どこにも――――」ガタガタガタガタ

ピーチ「わかってるわよ、ロゼッタの懐事情くらいは。






   
   大丈夫、これから頑張って体で払ってくれれば問題ないから!算段は付いてるの!」



ロゼッタ「」

599Mii:2021/08/09(月) 19:00:30 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「        」



ロゼッタ「                」



ロゼッタ「………………………………………………………………………………………
    …………………………………………………………………………………………
    …………み……………………う……………………り…………?」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ



ピーチ「」

デイジー「幻滅しました。ピーチのファンやめます」

ロゼッタ「許してください他のことならなんでもしますお願いします」ドゲザ

ピーチ「ちっがーう!何から何まで違うから!…もうっ!ちょっと来なさいっ!」





ロゼッタ「――――――――――――」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

デイジー「ドナドナー」

600Mii:2021/08/09(月) 19:05:21 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「私、どこに連れて行かれるんですか…なにを、されるんですか…?」ガタガタガタガタ



放心状態で書斎に連れて来られたと思ったら、一冊の漫画を押し付けられました。

ピーチ「付箋の付けられたところから読んでみて?」

ロゼッタ「………………………は、はあ――――」ペラッ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ロゼシ「うわああああああぁぁぁぁぁ――――!!」ヒュウウウウ

デイ太「わああっ!ロゼシさんが底も見えない崖から落ちたっ!
   …ああっ、なんとか掴まってるみたいだけど時間の問題!
   早く助けに行かないと一巻の終わりだよ!ピチえもん、なんとかしてよ!」

ピチえもん「だから、便利な道具はみんな置いてきちゃって……あ、待って。あれが使えるかも…………!
     
                      『重力ペンキ』――――っ!!

     これを塗ると、塗ったところが下になる!
     ペンキの道を踏み外したら真っ逆さまだけど、崖に塗りたくって助けに行きましょう!

     それっ、ペタペタペターッと!」ヌリヌリ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

601Mii:2021/08/09(月) 19:12:50 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「…………………付箋の間の箇所は、よ、読み終わりましたけど…???」



ぱたりと本を閉じると、満足気に突っ立ったままのピーチ姫。
私はただただ怖くて、体が震えています。

ご、ごくごく短い量でしたし。ものの2分も掛かっていません。
い、いったいこれに、何の意味があるのでしょうか…………!

それともこれは、思わせぶりのダミーの仕掛けで、既に何かしらの魔法拘束によって
ピーチ姫の都合のよい状況に追い込まれて……まな板の鯉状態、だったり…っ!





ピーチ「そう、読んだわね?」ニヤッ

ロゼッタ「は、はひっ」

ピーチ「さてと、ものは相談なんだけど――――」





ロゼッタ「え、どうして顔を近づけてくるんですか、
    あの…………こ、こわいです――――、誰か、助けて――――っ!」ガタガタガタガタ

602Mii:2021/08/09(月) 19:17:31 ID:28rO9.d.
〜イロドリタウン〜

僕は、ペンキ―!ペンキのことならなんでもお任せの名アシスタントさ!
そしてここは、色彩の楽園と名高いイロドリアイランドの中心部、、イロドリタウン!
大人の雰囲気がするリゾート地のイロドリタウンの一番の観光スポットは、
6つのビッグペンキスターから色とりどりのペンキが枯れることなく湧き出る「イロドリの泉」!

…そんな、ペンキの聖地が、ある日突然――――



クッパ「さあ、どんどんペンキを運ぶのだ―!
   クッパシップに積載してキノコ王国まで運ぶのだー!」

ヘイホー 「ヘイホー!」

ヘイホー「ヘイヘイホー!」

ペンキ―「なにごと!?」

クッパ「うむ!すでにイロドリタウンの市長には話をつけてあるのだ!
   そのご自慢の無尽蔵のペンキ、我々が適正価格で大量に買い付ける!」

ペンキ―「え、ええ?」

クッパ「とりあえず10万リットルくらい第一陣として買い取るが、
   調子が良ければまだまだまだまだ買い取るぞ!
   せいぜいイロドリの泉のメンテナンスは欠かさずやっておくのだ!」

ペンキー「」

603Mii:2021/08/09(月) 19:21:57 ID:28rO9.d.
〜キノコ城〜

キノピオ「オーライオーライ、どんどん運んじゃってくださいっ!特設タンクに流し込んでくださーい!」

トゲノコ「よしきたっ!追加注文は早目にお願いするぞ、輸送手続きにもある程度時間かかるからなっ!」

キノピオ「お気遣いありがとうございまーす!」





〜 キノコ城地下室 研究ラボ 〜

大量のフラスコにビーカー、そして薬品が所狭しと収められている。
他の研究機関の追随を許さない設備を誇る一室――――――――





ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――



          『反重力ペンキってあったらいいな、できたらいいな』――――



    ―――って、なんですかああああああああああああああぁぁぁぁ――――――――っ!!!」パアアアアアアァァァァ

604Mii:2021/08/09(月) 19:24:56 ID:28rO9.d.
ピーチ『本当にごめんなさいっ!マリオカート8の準備が遅れに遅れてて!

   反重力で浮き上がる、未来志向の斬新なコースを作りたくて…
   ずーっと研究に研究を重ねてたんだけど!
   研究班の開発が一向に進まないのよ、やばいくらいに!

   マリオカート7による延命もそろそろ限界なの、実はっ!
   そういうわけでロゼッタの力を借りたいわ!それはもう!
   
   こう、なんというか。塗りたくるだけで反重力場が形成されるような、
   お手軽で使い勝手のいいペンキみたいなもの、作ってくれない!?それも大量にっ!
   とりあえず、素の状態のペンキは用意できるから自由に使って!
   ペンキ発注量は開発進捗次第でロゼッタに委ねるわ!研究ラボも開放するから!

   成果を挙げるまで、ほうき星には帰らないでね!それがけじめってものよ!



   とりあえず、最終目標は――――100万リットルくらい!!
   安全マージンをとると、その3倍量くらいは欲しいんだけどね!!』



ロゼッタ「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」パアアアアァァァァ



ピーチ姫の台詞が繰り返し繰り返し思い起こされます。
いくら呑気な私にも分かりますっ!
これ、下手すると、何十年もほうき星に帰れないっ!準地下牢生活ですっ!?

605Mii:2021/08/09(月) 19:28:44 ID:28rO9.d.
キノピオ「あ、お忙しい所すいません、ロゼッタさん!
    ペンキの第一陣、10万リットルが無事届いたとのことです!
    言われればすぐさま持ってきますからね!お願いします!」

ロゼッタ「ま、まだ理論構築段階、それに試験管レベルから徐々にスタートですからっ!!
    今は1リットルもあれば十分ですっ!プレッシャー掛けないでくださいっ!
    あと、ピーチ姫にどうしても言いたいことがっ!」

キノピオ「…姫様なら、手続きを済ませてバカンスに行ってしまわれましたが」

ロゼッタ「」

キノピオ「あと、姫様からの言伝があります。
    
      『バカンスから帰ってくるひと月の間に、最低限の仕事はしてちょうだいね、じゃないと考えがあるわ』

    とのことです」

ロゼッタ「…………………………」ガクガクガクガクガクガクガクガク

ロゼッタ(ピーチ姫、本気かも、しれま、せん。あまりに酷いと、本当に、身売りの憂き目に遭う、かも)ガタガタガタガタ

ロゼッタ「おとなこわいおとなこわいおとなこわいおとなこわいおとなこわい
    いっしょうこどもでいいですあはははは…………」ガタガタガタガタ

キノピオ「お気を確かにっ!!」

ぐつぐつ。ぐつぐつ。
繰り出す魔法陣の数々と、怪しげな沸騰する液体に囲まれて、
私ロゼッタの…強敵(ピーチ姫)との決死の戦いが、始まってしまったのでした。

606Mii:2021/08/10(火) 08:50:54 ID:VfyrD.AE










〜 第4章 〜








          ロゼッタ、お金を稼ぐ

607Mii:2021/08/10(火) 08:52:31 ID:VfyrD.AE
〜12月24日〜



ルイージ「ジングルベール、ジングルベール、すっずーがー、なるー!
    やっほーロゼッタ、様子を見に来たよー!!」







ロゼッタ「        」ボロッ

ルイージ「出だしから机に突っ伏して灰になってる!?」





ロゼッタ「………………………………………………………
    クリスマス・イヴだというのに………今日も変わらず、実験、実験…。
    体の浄化と食事とお手洗いと僅かな睡眠以外はずっと実験…………。
  
    お風呂に入りたい…………せめてシャワーを浴びたい…………」ボロッ

ルイージ「…………うわあ、魂が抜けかけてる」

608Mii:2021/08/10(火) 08:55:15 ID:VfyrD.AE
デイジー「あ、ルイージじゃん。どうしたの?疲れ切って無防備なロゼッタの姿を眺めて鼻の下伸ばしてる、
    とかなら私じきじきに正義の鉄拳制裁を――――」

ルイージ「違う、違うっ!心配になったから様子を見に来ただけだって。
    ピーチはバカンスに行ってるし、兄さんはピーチの付き添いだし、
    ロゼッタの面倒を見てあげられる人が少なくなってそうだったからね」

デイジー「いまごろ、お二人さんいい雰囲気になってるのかな、いひひ…」

ルイージ「それはないでしょ。ヨースター島にはヨッシーたちがワンサカ居るし」

デイジー「なんでそんなところ選んだ!?」

ルイージ「なんでも、兄さんが口寄せの術の話をしたらピーチが興味津々だったんだって」

デイジー「へ、へええ?」

デイジー(口寄せってなんだろう…忍者?)

ルイージ「ロゼッタも、1日くらいしっかり休んだらいいのに」



ロゼッタ「――――先日、夢を見たんです」

ルイージ「…夢?」

ロゼッタ「はい。…その夢の中では、私は相変わらず借金返済に追われていて。
    頑張っても頑張っても、積み重なる利息分すら支払えなくて。
    ほうき星を借金の一部のカタに取られてしまったんです――――」ウツロ

609Mii:2021/08/10(火) 08:58:31 ID:VfyrD.AE
〜回想(夢)〜

ピーチ「へえ、これだけ?これっぽっちしか返せないって?」

ロゼッタ「…………」ブルブルブルブル

ピーチ「駄目ね、全然足りない。もうちょっと真面目にお金を稼いだらどう?」

ロゼッタ「…………すいません、すいません――――」ブルブルブルブル

ピーチ「もう面倒だわ、ほうき星から呑気にやってきた魔法使いさん。
   いつかは自分たちの彗星に帰りたいと、星を眺めていたわね…
   
   アルティメット・ギャラクシー・ヒステリックボムゥ―ッ!!」

ロゼッタ「…………………え、ほ、ほうき、星」



デイジー「デデ――――――――ン!!」

ほうき星は きれいさっぱり なくなりました。▼



ロゼッタ「あ…あ……ああああああああああああぁぁぁ!!!」ボロボロ

〜回想(夢)おわり〜

デイジー「」

610Mii:2021/08/10(火) 09:01:03 ID:VfyrD.AE
ロゼッタ「ぴ、ピーチ姫に、なんの、前触れもなくっ!
    ほうき星がっ!一瞬の気まぐれで、消し去られてっ!!

    うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」ボロボロボロボロ

ルイージ「ロゼッタ!それ夢!ただの夢っ!
    ちゃんとほうき星はあるから!残ってるから!」

デイジー「なんか私が悪魔の片棒を担がされてるんですけど!?」





ロゼッタ「…手なんか抜けないんだ…死に物狂いでやるしかないんだぁ…」ボロボロ





ルイージ「これは末期症状かもしれない。対策必須だね…!

    …よし、デイジー!ピーチとマリオがいない間、僕たちでなんとかしないと!
    デイジーはとりあえず、この場を収めて、今日は無理やりにでも休ませて!
  
    僕は、なにかロゼッタがストレス発散できそうなイベントを練ってみる!」

デイジー「よしきた!」

611Mii:2021/08/10(火) 09:03:52 ID:VfyrD.AE
〜12月24日 夜〜



ロゼッタ「ねむれません……………………ほうき星を取られるのは、嫌…
    身売りするのも、絶対嫌……………」ガタガタガタガタ

デイジー「そんな要求、ピーチがするわけなかろうに」



ロゼッタ「そんなことどうして言えますかっ!
    心を鬼にしたピーチなら、不出来な私の様子次第では十分あり得ます!」

デイジー「ピーチさーん!なんか脅しが効き過ぎて、
    ロゼッタからの信頼度がものすっごく下落してるぞー!?」



ロゼッタ「……………………」ブルブルブルブル

デイジー「とりあえず、今は、寝れっ!とっとと眠れ!
    疲れたままだとなんにもいいことないよ、健康が資本!」

ロゼッタ「ねむれません、よぉ……………………」

デイジー「じゃあ強引に眠らせる!」

ロゼッタ「…………え?」

612Mii:2021/08/10(火) 09:06:19 ID:VfyrD.AE
デイジー「…ふふっ!まあ、念のためにね、奥の手を用意しておきましたっと!

    星の精のマールさん、おでましー!!」

マール「呼ばれてきたわー!」

ロゼッタ「――――あっ。ど、どうも」

マール「私の子守唄で、多少強引にでも眠って貰うわよ。
   これで今夜はぐっすり眠れるはず!自然に起きるまでそのまま寝かせておくわ!」

ロゼッタ「…わ、わあ!それは助かります!」



なんだかんだ言って、しっかり睡眠をとりたいのは本心ですから…!



マール「――――――――そぅれ!!!」パアアアアァァァァ





ロゼッタ「――――――――くぅ」スヤァ

デイジー「はぁ、これでようやく一安心、だねえ。ありがとう、マール!」

マール「このくらいお安い御用よ!」

613Mii:2021/08/10(火) 09:08:31 ID:VfyrD.AE
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・



ファイアロゼッタ「―――――――――」パチッ

ファイアロゼッタ「ここは…………」



ふと目を開けて、しばしのまどろみのあと、起き上がります。
まわりをキョロキョロ見渡せば、不思議な空間。

なにぶんつい最近、似たような目に遭ったため、慌てて立ち上がって警戒しますが…。

なんとも周りがグニャグニャで、おぼろげで。
星がところどころ、キラキラとファンシーに輝いています。
何者かの空間魔法に囚われた、というよりは――――



ファイアロゼッタ「…………って、いつの間にかファイア状態になってる。
        ――――ああ、これ、夢の中ですか」ポンッ

なんとなく分かることがあるんですよね、自分が夢の中にいるってことが。
いざ起きてからは、内容を覚えていないことがほとんどなんですが。

614Mii:2021/08/10(火) 09:10:11 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「これはマールの子守唄がバッチリ効いてくれたみたいですね。
         少しは疲れも取れるとよいのですが…………。
 
         さて。夢の中と分かったならば、一体何をしましょうか」



ファイアロゼッタ「…………………………………………」



ファイアロゼッタ「あんまりはしゃぎまわると、夢の中とはいえ睡眠効果が薄れますよね?」



ファイアロゼッタ「…………………………………………」



ファイアロゼッタ「よし、寝ましょう!寝れないまでも、せめて安静にしておきましょう!
         つまらないと言われようと、より体を休ませるためです!」

ベッドなどありませんが。再び地べた?にコテンと横になり。
ああ、なんだかいい寝心地です。さすが夢の中、万能です。



現実の私と同じく、夢の中の私もすやすやと深い眠りに――――

615Mii:2021/08/10(火) 09:12:37 ID:VfyrD.AE

    「起きてください」



ファイアロゼッタ「――――――――――――」スゥ・・・



    「起きなさい」



ファイアロゼッタ(――――――――――――ん?)



    「もう無理やり起こさないっかなー☆」

    「それもそうですね」

    「じゃあー、さっそく……」



ぽかっ!



ファイアロゼッタ「…!?」

616Mii:2021/08/10(火) 09:14:23 ID:VfyrD.AE
ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!



   「起きろと言っているでしょう」

   「おっきろー☆」

   「起きないと、どんどん力を強めていくのー」



ファイアロゼッタ「痛い痛い痛いっ!
         誰ですかっ!レディの頭を好き勝手にポカポカ叩くのは!」ガバッ!








ハロウィンロゼッタ「Trick or Delete!消されたくなかったら悪戯されなさい!」キリッ

オーロラロゼッタ「やっほー! オーロラロゼッタ、ここに見参☆」キラッ

スイマーロゼッタ「眠いのはわかるのー。私もちょっと眠いのー。
         スイマー…じゃなくて睡魔がガルルーって襲ってくるのー」ウトウト

ファイアロゼッタ「本当にどちら様ですか!?」

617Mii:2021/08/10(火) 09:16:53 ID:VfyrD.AE
私ですか!?それもなんだか不思議な…コスプレ、をした!?



イタズラが好きで、冷静そうな……
魔法帽子被って杖を片手に澄まして見せる、魔女っぽさなら一番の1人目。

ちょっぴり見栄っ張りで、陽気そうな……
アイドルのようにポーズを堂々と見せ付ける、オーロラの色合いを醸し出す2人目。

昼寝を良くする、おっとりそうな……
南国に似合う涼し気なワンピースを着こなす、なんだかのほほんとした3人目。



ファイアロゼッタ「特に2人目っ!イタイ!なんだかすごくむず痒いので、
        控えて頂けませんか!せめてもっと優雅にですねっ!」

オーロラロゼッタ「恥ずかしさは何も生み出さない!ありのままに自分を表現するのが大事よ!
        皆の注目を浴びることが、私を何より輝かせるの!
        さあ貴方もご一緒に!世界が開けるわ!」シャラララーン

ファイアロゼッタ「ハイテンションでウインクとか止めて頂けませんか!?
        本当にお願いしますからっ!悪い意味でトリハダ物ですっ!?」ゾワッ

スイマーロゼッタ「慌てず騒がず落ち着くのー。焦ってもいいことないのー。
        目を閉じて、深呼吸して、そのままふかーいふかーい眠りに…」

ハロウィンロゼッタ「せっかく起こしたのにまた眠らせちゃだめでしょう。
          急ぎ、やって貰わなきゃならなないことがあるんですから」

618Mii:2021/08/10(火) 09:19:29 ID:VfyrD.AE
やってもらいたい…こと?一体なんなのでしょう。

ファイアロゼッタ「それにしても、それ…その、アクセサリ…」

スイマーロゼッタ「それ?どれー?」

ファイアロゼッタ「…貴方がたが付けている、その…黒光りする棘付きの首輪ですよ。
         クッパが付けているような。やたらめったらゴツゴツして、首を回すのも辛そうな。

         なんといいますか、すっごく悪趣味ではないでしょうか…?正気を疑うのですが…」



3人とも漏れなく装備済み。…正直、全然似合わないと思います。まるで奴隷の雰囲気、背徳感までプンプンします。
夢の中の流行ファッションとかだったら二重にビックリです。
クッパならば強面、そして大魔王としてのパワフルさと相まってサマになると思いますが。



ハロウィンロゼッタ「人のこと、言える立場なのですか?ふう…」

ファイアロゼッタ「な、何を言って――――――――」ピトッ



ファイアロゼッタ「………………………………………」サワサワ



ファイアロゼッタ「――――何か首に付いてますっ!?」ガーン!

619Mii:2021/08/10(火) 09:21:32 ID:VfyrD.AE
いつ!?誰が!?どのタイミングで首輪なんて取り付けたのですか!?
あれ?あれれ!?いくら力を加えても一向に外れません!
というより、ロック機能もなにもない唯の輪っか構造で、取り方そのものがわかりません!
…イタッ!?我武者羅に引っ張っていたら、普通に棘で手を引っ掻いて痛いです!



ファイアロゼッタ「ちょっと!これっ!どうにかしてくださいよっ!
         いつまでもこんなもの付けておきたくありません!」

オーロラロゼッタ「お揃いお揃い!みんな仲良しだね☆」

ハロウィンロゼッタ「…………さあ、始めますよ」サッ



アタフタする私をよそに。ハロウィンスタイルの私が、ため息ついてから、杖を一振り。
まばゆい光が、前方の広い、ひろーい空間を包み込みました!



ゴゴゴッ……ズガガガガガガガッ!!



激しい地鳴りが起こり、ギョッとします。

何もなかった…ように、少なくとも私は思っていた、目の前の空間に。
まるでキノコ王国の試合会場に、フィールドがゴゴゴッ…と呼び出されるのと同じように。
氷と星空に覆われた、どこか見慣れたコースが出現しました…!

620Mii:2021/08/10(火) 09:24:10 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「貴方もよく知る、『ロゼッタプラネット』。ちょっと改変した箇所はありますけれどね。
          相似拡大させ、1周あたり21.0975kmの長大コースに作り替えています」

ファイアロゼッタ「――もう、いいです。相手にしてくれないのなら、首輪の外し方は1人でじっくり考えます。

         21.0975km、ですか。1周、凄まじく長いですね…!?おまけにやたら中途半端。
         一体どうしてですか?というより、どうして今、コースを急造したのですか?」

話についていけません。それにしても凄い魔法ですね、私も出来る…かもしれませんが。
私にやって貰いたいことと関わりがあるのは確実そうです。
問題は、どこにもカートが見当たらない所ですが…。



ハロウィンロゼッタ「それが今回の本題ですよ。今から――――」

ファイアロゼッタ「…今から?」










ハロウィンロゼッタ「このコースを2周、全力疾走してきてください」

ファイアロゼッタ「どうして!?」

621Mii:2021/08/10(火) 09:26:30 ID:VfyrD.AE
いきなりそんなこと言われてもですね!?ほかの2人も、特に異論はなさそう。私は大ありです!

ファイアロゼッタ「何が悲しくて、夢の中でそんな疲れることをしなければならないのですか!
         意図があるのでしょうが、お断りします!やりたかったら自分で勝手に走って下さ――――」



ハロウィンロゼッタ「――――『無性に42.195km走りたくなる魔法』!!」ポワワワワーン

ファイアロゼッタ「きゃあああああああっ!?
   
         一体何をしでかすのですか!いきなりっ!
         だいたいですっ!いきなり人の夢の中に乱入してきておいて、
         こんな暴虐、こんな仕打ち!失礼極まりないとは思わないのですか!
         せっかく人が休もうとしていたのにっ!

         あああ、こんな相手に、非効率で無駄な話をしている暇ではありません!
         早く42.195km走り切らなければっ!それが私の使命ですっ!邪魔ですっ!どいてくださいっ!!」

ハロウィンロゼッタ「はいどうぞ。『スイマー』、1周目だけ案内してあげて」

スイマーロゼッタ「2周頑張れとか言われたらどうしようかと思ったのー。
         1周だけならまあ…しぶしぶ合点承知なのー」

オーロラロゼッタ「私もいっくよー!」

ハロウィンロゼッタ「貴方はいいから。気温がもっと下がるわ」

オーロラロゼッタ「ええええー☆」

622Mii:2021/08/10(火) 09:28:38 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「それじゃあ、しっかり付いて来るのー!
         どこもかしこも滑りやすいから気を付けてー!

         あ、私のことは『スイマー』って呼んでほしいのー」タッタッタッ

ファイアロゼッタ「はい、わかりました」ダダダッ

案内、とは言われても。設計者であるからには、このコースは知り尽くしています。
相似拡大以外にも、宣言通り、ちょっと改変されたっぽい箇所はちらほらありますが、
気にするほどの差ではありません。

スイマーロゼッタ「カートじゃないけど、ジャンプアクションすればあら不思議―!
          しっかりと加速できるのー!見てて、こんな風に――――」



ツルッ。



ファイアロゼッタ「あ」

スイマーロゼッタ「ふんぎゃ!?」ベチィ



ファイアロゼッタ「だ、大丈夫ですか?」

スイマーロゼッタ「……滑るとこうなるってことを実演してあげたのー。わかったー?」グズッ

623Mii:2021/08/10(火) 09:30:32 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「は、はい。それでは――――やってみます!」ピョン



――NICE! ――GREAT! ――EXCELLENT! ――FANTASTIC!



ファイアロゼッタ「ふっ!それっ!えいっ!確実に――踏み切って!
       
         …なんだ、簡単じゃないですか!初見でもこのくらい余裕しゃくしゃく!
         特殊なポーズを取らなくていい分、運転時より大幅に楽なのでは?
         速度が落ちなくて不思議な感覚ですが、気持ちいいですね!」ダンッ! ダンッ!

スイマーロゼッタ「な、なにおー!私だって当然そのくらい――――――――」



――――NICE!    ―――NICE!    ――――NICE!



ファイアロゼッタ「……………………」

スイマーロゼッタ「…い、いやー。今日は調子が悪いのー。コンボが繋がらないのー。
         わ、わわっ!?なんかちょっと足を捻ったの!痛い!助けて!」グキッ



ファイアロゼッタ「……あれれ?」

624Mii:2021/08/10(火) 09:33:45 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「はあっ、はあっ…ちゃ、ちゃんとついて来て、るー?
         どうしてもっていうんなら、一休みしてあげても、いいのー」ゼェ ハァ

ファイアロゼッタ「申し上げにくいのですが、むしろ、こっちの台詞なんですけど…。
         『スイマー』、割とフラフラになってきていませんか?
         私は息ひとつ上がっていないのに。…その、案外運動は苦手だったり?
         口笛吹きながらでも余裕で付いて行けるような速度まで落ちていますよ」タタタ

スイマーロゼッタ「何気なく発せられた、上から目線の突き刺さる暴言なのー!
          しょうがないの!私は悪くないのー!脚本が悪いの!
          私、登場したてなの!アプリ内の話でいうならLv1.0なの!」

ファイアロゼッタ「アプリ内…?Lv.1.0…?」

スイマーロゼッタ「しっかたないの!ここは夢の中ってことで、なんでもあり!
         私のステータス見せてあげるの―!貴方も復唱ねー!
         すううぅぅ……ステータス、オープン!」バーン!

ファイアロゼッタ「す、すてーたす、おーぷん!?」バーン!
    


【スイマーロゼッタ  基礎体力レベル Lv.1.0(現実世界換算Lv.10)
          最大HP      00020
            魔法レベル   Lv. 7.0(現実世界換算Lv.70)
           最大FP      00256              】パパッ!


スイマーロゼッタ「ほらね、目の前に、異世界アニメっぽいスクリーンが現れたでしょー!
         これが私の実力なの。ハロウィンとオーロラも大体同じ――――」チラッ

625Mii:2021/08/10(火) 09:38:47 ID:VfyrD.AE
【ファイアロゼッタ  基礎体力レベル Lv.4.6(現実世界換算Lv.46)
       最大HP         00800(通常ロゼッタ時00675)
        魔法レベル      Lv. 13.0(現実世界換算 Lv.130)
        最大FP          02048               】パパッ!

ファイアロゼッタ「ふむふむ…私、強く、なりましたね…」シミジミ

スイマーロゼッタ「」

スイマーロゼッタ「…………うがー!!」

ファイアロゼッタ「!?」

スイマーロゼッタ「ああ、もー!要するに私…ううん、私たち3人はみーんな、
          現実世界でいうところの基礎体力レベル10なの!
          アプリ換算でLv.5に到達せんとする人にはこの辛さが分からないの!
          まとめると、もうちょっと労われーってことなのー!」

ファイアロゼッタ「よく意味が分かりません…私より弱いということだけは分かりましたけど…」

スイマーロゼッタ「むきー!そんなことを言う人は…
          挙動制御できないまま、つららに当たって痛い目に遭えばいいの!」

ファイアロゼッタ「並走する私なんか見ずに、前見てください前っ!!」

スイマーロゼッタ「ほへ?」

つらら「やあ」

626Mii:2021/08/10(火) 09:40:40 ID:VfyrD.AE








スイマーロゼッタ「ふべらっ!」ゴチーン!










スイマーロゼッタ「…………ふえぇ…ポイントは増えたから、いい、のー…」



ファイアロゼッタ「…な、なんだかすっごく懐かしい気分…!!」

スイマーロゼッタ「化石化した前々スレのネタを持ってくるのはアウトなの…」

627Mii:2021/08/10(火) 09:42:21 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「とりあえず1周おわり!2周目です!」ダダダダッ

スイマーロゼッタ「つーかーれーたー。リタイア、なのー」

オーロラロゼッタ「がんばれー☆応援してるよー!」





ハロウィンロゼッタ「…『スイマー』。そのまま2周目も走り続けてください」ヒラヒラ

スイマーロゼッタ「ちょっとちょっとー。約束が違うの―!?」

ハロウィンロゼッタ「1周、48分も掛かってる。遅すぎます。
          このタイム…『下の道』を通っていないでしょう?
          貴方の減速が足枷になったのがまるわかりです。
          ちゃんと全部案内してください!」

スイマーロゼッタ「…え、でも――――
         わ、わかったのー。そうするべきなら、やってみるのー」



ファイアロゼッタ「…………下の道?」



なにか…意味深な助言を『スイマー』にした彼女を通り過ぎて、
私たち2人は2周目に入っていきました。

628Mii:2021/08/10(火) 09:45:09 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「じゃあ、少し違うルートを通っていくのー!覚悟はいーい?」

ファイアロゼッタ「ふふふ、任せてください!この位の速度ならへっちゃらです!」

スイマーロゼッタ「よしきたー!
        
         それじゃあ、氷の割れ目から――――冷たーい水の中に飛び込むの―!!それー!」バッ

ファイアロゼッタ「それー!



         ――――え、水?……………………水ぅ!?」



水の中、コースアウトにならないのですか!?
私、そんなつもりで水を張った覚え、ないのですがっ!?



〜ヨースター島〜

ピーチ「いや、普通に水中コースアウトの概念なくしてレースに採用してるからね?
   ロゼッタ、デイジーと試走したときは走ってなかったけど。マリオカート7舐めないでほしいわ」

マリオ「どうかした?」

ピーチ「…気の迷いで呟きたくなったのよ」

629Mii:2021/08/10(火) 09:47:34 ID:VfyrD.AE
ザッブゥーーーン!

スイマーロゼッタ「ひゃっほー!加速、加速なのー!

         水中は私の庭みたいなものなのー!
         ぶっちゃけ、泳いだ方が走るより速いくらいなのー!」ゴウッ!

スイマーロゼッタは 潜水耐性レベル70で 水中負荷が69%軽減!
減速しにくいうえに 溺れない!▼



スイマーロゼッタ「さあ、遅れないで付いて来てるー? 」クルッ



ファイアロゼッタ「            」ゴボゴボゴボ

ファイアロゼッタは 潜水耐性レベル3で 水中負荷を ほぼモロに受けた!▼



スイマーロゼッタ「…あれれ?」

ファイアロゼッタ「                」ゴボゴボゴボゴボ

スイマーロゼッタ「あ、やばいのー!?残機制度とか、ここには無いのー!
         死なれたら夢から醒めた時に魂が欠落して大変なことになるのー!
         とっととさっさと救助するのー!」ヒュゴウッ!

630Mii:2021/08/10(火) 09:50:09 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「とりあえず連れ帰ったのー!なんだか重かったの!
          ドレスが水をたっぷり吸ったからかなー?」

ファイアロゼッタ「寒い寒い寒い寒い寒い寒い――」ガタガタガタガタガタガタガタガタ



もともと、このコースは確かに気温が低い、ですが。
流石に水の中に飛び込むなんて愚挙をしでかすと、寒さが半端ありませんっ!

ファイアロゼッタは 氷耐性を 持っていない!▼



オーロラロゼッタ「情けないぞっ☆私たちの中で一番厚着なのに!」

ファイアロゼッタ「…え、え?」

オーロラロゼッタ「むしろもっと冷やしちゃえ!ア イ ス ☆ ボ ー ル 3連だーん☆」ブンッ!

ファイアロゼッタ「ひぃあ!?危ない、掠めましたよ、ドレスもろとも凍り付かせる気ですかっ!?
         状況悪化させてどうするんですか寒い冷たい寒い冷たい痛い――!?」

ハロウィンロゼッタ「いい加減にしなさい、『オーロラ』。…仕方ないですね。
           ドライの魔法を掛けてあげますよ」パアアアア

魔法を掛けられたそばから、熱風が凍り付いた体を包み込んで、
体温が正常に戻っていきます。纏わりつく氷は水に戻り、その温度も上がってきて。
ああ、なんとか持ち直してきました!服も徐々に乾いて…乾き切りました!

631Mii:2021/08/10(火) 09:52:09 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「…ありがとうございます!えっと――――」

ハロウィンロゼッタ「『ハロウィン』と呼んでください。ファイアボールには到底劣りますが、
           このぐらいの威力なら他系統魔法もお手の物です」

オーロラロゼッタ「私は『オーロラ』でいいよ☆」

ファイアロゼッタ「わ、わかりました。つまりは――
         ハロウィンが『魔法多彩の私』で。
         オーロラが『氷特化の私』で。
         スイマーが『水特化の私』…ということなのでしょうか」

ハロウィンロゼッタ「おおよそはその解釈で構いません」

スイマーロゼッタ「とりあえず、今回の所はー。
         水中経路はやめておいた方が無難そうなのー。
         うまくやればアクションポイント稼げたんだけどー。

         まあ、そんなわけで、こんどは1人で――
         普通に陸路を、自分なりに走り切ってほしいのー。
         まだ2周目は続いてるのー」

ファイアロゼッタ「そうでしたそうでした!はやく走り切らなければ!
         時間を大幅にロスしてしまいました、急がないと!
         ――――『スイマー』、案内ありがとうございました!」

スイマーロゼッタ「どういたしましてー」ニコニコ

健康状態が良好となったので、ふたたびコースに戻って走り始めます!

632Mii:2021/08/10(火) 09:54:14 ID:VfyrD.AE
〜32分後〜

ファイアロゼッタ「…ゴール!まあまあ疲れました……」キキーッ

オーロラロゼッタ「おめでとー☆42.195kmを80分かあ、まずまずだね!
         がんばればもっともっと短縮できるはずだよ!
         基礎体力レベルの低い私たちが言うのは失礼かもしれないけど☆」

ファイアロゼッタ「体を凍えさせながら全力疾走して、その仕打ち…
         …いえ!そもそも私は一体どうして42.195kmも走って…!?
         まさか操られて…?本当に何をしたのですか!」

ハロウィンロゼッタ「まあ、それはそれとして」

ファイアロゼッタ「置いておかないでください!」

私を無視して話を進めることに少し慣れてきましたが、「ハロウィン」の態度は相変わらず。

そんな彼女に手招きされて、どこからか新たな人物が現れました。男性のようです。
なにか大きな箱を抱えて、ブツブツ言いながら近づいてきます。
な、なんだか影を抱えていますね。振り回されているのでしょうか、私みたいに。



ファイアロゼッタ「は、はじめまして」

「……………………ああ」

ややぶっきらぼうな態度。一体何者なのでしょう。
さすがに敵とかではないと信じたいですが。状況的に。

633Mii:2021/08/10(火) 09:57:44 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「あの、この方は一体、どういった方なのですか?」

するとハロウィンは、ぱちくりまばたきして、ちょっと思案して。
彼のそばに駆け寄り、殊更に明るい表情になって、言いました。

ハロウィンロゼッタ「ダーリンです」

ファイアロゼッタ「ダーリンさんですか、それはそれはってえええええええええええええええええ!?」

え?ええ?えええええ!?寝耳に水にも程があるんですけれどっ!!

ハロウィンロゼッタ「おかしいですか?」

ファイアロゼッタ「…………そ、そうですよね。いくら私と瓜二つっぽくても、夢の中といえば夢の中。
    彼氏がいることくらい、有り得る話ですよね。驚きすぎました」

一体、彼とどんな邂逅があったのか知りませんが。
いえ、そもそも夢の中のそんな設定など、それこそ何の根拠も理由付けも要りませんね。

ファイアロゼッタ「で、では。その、貴方にとって、ダ、ダーリンである彼について。
        うう、聴く方が恥ずかしくなってきます…。改めて詳細なところを紹介して――――」



オーロラロゼッタ「ふふっ!ちなみに、私にとっても彼はダーリンだよー」

スイマーロゼッタ「右におなじくー」

ファイアロゼッタ「ちょっと待ってええええええぇぇぇ――――!?
         なんでそんなインモラルな関係が構築されているんですかぁ――――っ!?」

634Mii:2021/08/10(火) 10:03:35 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「ちなみに、貴方にとってもダーリンだったりしますよ」

ファイアロゼッタ「」

ファイアロゼッタ「」

ファイアロゼッタ「それはいいい一体どういうことですかわけがわかりません正しい王国の言葉で
         話してもらいたいものですねそれとも私の耳が腐ってきたのでしょうか脳が理解を
         放棄していますああもしかして3人とも彼の毒牙に掛かってあるいは催眠にでも掛
         かって服従を誓わされているとかそれで今度は私を巻き込もうとしているのですね
         なんということでしょう一刻も早く助け出さなければなりませんああでも3人が抗え
         なかったからには私も回避の術も自信もありませんもしかして絶望が待っているの
         でしょうか急ぎ夢から目を覚まさなければ一体何をどうすればいえちょっと待ってく
         ださいもしかしてもしかするともしかしなくてもこれは未来視というやつで将来の私
         のパートナーだったりするのでしょうかいえでもですね今の私にはそんな気も覚悟
         も心の準備もまるでできていなくてですね刺激が強すぎてどうにかなってしまいそう
         ですとりあえず失礼かもしれませんが一旦ここはお帰りになって頂いてですね気持
         ちを整理してしっかり心持が定まったら改めてこちらから声を掛けさせていただきま
         すのでどうかお待ちいただけないでしょうか申し訳ございません私もその時になれ
         ば少しはマシな挨拶と落ち着いた言動ができることをここに宣言しておきますから
         何卒、何卒誠に恐縮ですがよろしくお願い申し上げま――――」

スイマーロゼッタ「というより、誰にとってもダーリンなんだけどねー」

ファイアロゼッタ「――――はい?」

ハロウィンロゼッタ「以上、ダーリンもとい『ダークリンク』を使った会心のドッキリでした」

ファイアロゼッタ「ちょっとキレてもいいですか!?喧嘩なら買いますよ!?」

635Mii:2021/08/10(火) 10:06:28 ID:VfyrD.AE
オーロラロゼッタ「私は止めようとしたんだよ!でもハロウィンがどうしてもって☆」

スイマーロゼッタ「だーかーらー、焦りは禁物なのにー」

ファイアロゼッタ「貴方たちも同罪です!」

ダークリンク「さっきから黙ってりゃ、人をダシにして遊ぶなコノヤロウ!」イラッ

ロゼッタ「ご、ごめんなさい!
    …ちょっと待ってください。どうして私だけ謝るのですか。
    貴方たちも謝って下さいよ。理不尽なことこの上ありません」



ダークリンク「チッ、めんどくせぇ。…まあいい、俺は俺の仕事をする。
       お前、42.195km走り切ったんだな?そら、20ルビーやるよ」

ファイアロゼッタ「あ、ありがとう、ございます…?」



ファイアロゼッタは 20『ルピー』 手に入れた!▼



ファイアロゼッタ「…あれ?ルビー?ルピー?ルビーって赤色のはずですよね…?
         これ、思い切り緑色なんですけど…?というより、
         これってルビーじゃなくて、ハイラルの代表通貨であるルピー…………」

ダークリンク「…………」ズーン

636Mii:2021/08/10(火) 10:09:59 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「そこは突っ込んではいけません。どのみち使用してしまえば同じことです。
          何せ、彼は――――



          ルビーとルピーっていう詰まらない繋がりだけで
          わざわざスレ主から『夢の中のイベント管理者』という…
          他に話の広げようもない、地味な出番を貰ってしまった不運な方なので」

ファイアロゼッタ「」



ダークリンク「こんなのってないぜ…スレ主張っ倒してやる…!串刺しにしてやる…!
       リンクの野郎が他所の王国に出張中、ゼルダその他は掃討戦に大忙し…
       だからって残り物の俺を、関連性のへったくれも見出せない、
       こんな意味不明なところに釘付けにするとか。ガノンも引く人権侵害っ…!

       リンクがハーレム状態だからって俺も適当にロゼッタに囲まれとけ、
       みたいな馬鹿な発想してたりしないだろうな…!
       こんな役、チンクルにでも任せとけよ…クソが…!」イライラ



ファイアロゼッタ「」

ハロウィンロゼッタ「ダークリンク、本題に移りましょう」

637Mii:2021/08/10(火) 10:12:07 ID:VfyrD.AE
ダークリンク「…はいはい。俺もこんな仕事さっさと終わらせてぇよ。
       で、今しがた渡した20ルピーを使うとだな。
       こちらの箱から、玉が沢山入ったクジを4個引くことができるんだな。
       白玉がハズレ、赤玉が当たり。

       クジの総数は…そう、97個。
       当たりは、たったの1個だ。分かったら、さっさと4個引いてくれ。

       ちなみに夢ならではのご都合主義、完璧なブラックボックスで、
       のぞき込んでも何も分からないし空間魔法でも内部を解析できない。
       ズルをしようとしても無駄だぞ」

ファイアロゼッタ「それはまた、当選確率が低いですね…まあ、やってみましょう」



クジを引く理由、および当たった時の効果もサッパリですが、
「やって貰いたいこと」の一部なのでしょう。断るのも馬鹿らしいです。



1個目。…………白、ハズレ。
2個目。…………白、ハズレ。
3個目。…………白、ハズレ。
4個目。…………白、ハズレ。



4個目を引く直前に、格好を付けてちょっと時間を溜めてみましたが、
案の定、全く効果なし。まあ、予想通りの結果でしょう。

638Mii:2021/08/10(火) 10:14:02 ID:VfyrD.AE
ダークリンク「…………チッ」

ハロウィンロゼッタ「…………はぁ」

オーロラロゼッタ「ざーんねん!」

スイマーロゼッタ「がっくりなのー…」

ファイアロゼッタ「この結果が一番確率高いのに、そこまで非難される筋合い無いんですけど!」

もうちょっと私のやる気を引き出す努力をしてくださいよ!まったくもう!

ハロウィンロゼッタ「…こうなっては仕方がありません。それでは、今から――――」

ファイアロゼッタ「…今から?」









ハロウィンロゼッタ「このコースを2周、全力疾走してきてください」

ファイアロゼッタ「」

どういう訳か、夢の中。
長い、ながーい旅路のスタートです。

639Mii:2021/08/10(火) 10:15:58 ID:VfyrD.AE
訳が分かりません。
全く訳が分かりません。

ファイアロゼッタ「嫌です!さっき走ってきたばかりなのに!賽の河原の石積みですか!
         鬼ですか、悪魔ですかっ!ですから、勝手に自分で走って来れば――――」

ハロウィンロゼッタ「――――『無性に42.195km走りたくなる魔法』!!」ポワワワワーン

ファイアロゼッタ「デジャヴ――――!?…ぐ、ぐ、ぐぐぐぐぐう…!!

         ああ、あああ、あああああ!はやく走りたい!走らなければー!!」ダダダダダ



ハロウィンロゼッタ「頑張ってください」ヒラヒラ

オーロラロゼッタ「貴方ならきっとできる!」

スイマーロゼッタ「千里の道も一歩から、なのー」



ダークリンク「…………」

BOXの中身が 強制リセットされた!▼



ダークリンク「さて、何時までかかることやら」

640Mii:2021/08/10(火) 10:18:31 ID:VfyrD.AE
〜60分後〜

ファイアロゼッタ「はあっ!はあっ!2周、走り切りましたよっ!…つ、疲れすぎです…!」

スイマーロゼッタ「そう言いつつ、まだまだ余裕はあるよね、凄いのー。
          しかもしっかりタイムを縮めて来てるのー!」
   
ダークリンク「おつかれさん。お前、42.195km走り切ったんだな?
       そら、20ルビーやるよ」

ファイアロゼッタ「…ぐっ、またデジャヴ…ということは…?」

ロゼッタは 20『ルピー』 手に入れた!▼

ダークリンク「…はいはい。俺も同じような事思ってるよ。
      で、今しがた渡した20ルピーを使うとだな。
      こちらの箱から、玉が沢山入ったクジを4個引くことができるんだな。
      白玉がハズレ、赤玉が当たり。

      クジの総数は…そう、97個。
      当たりは、たったの1個だ。分かったら、さっさと4個引いてくれ。
      
      ちなみに夢ならではのご都合主義、完璧なブラックボックスで、
      のぞき込んでも何も分からないし空間魔法でも内部を解析できない。
      ズルをしようとしても無駄だぞ」

ファイアロゼッタ「ハズレクジがもとに戻ってます!?」

周りの3人から、無言の圧力。引けば、引けばいいのでしょう!?

641Mii:2021/08/10(火) 10:20:33 ID:VfyrD.AE
1個目。…………白、ハズレ。
2個目。…………白、ハズレ。
3個目。…………白、ハズレ。
4個目。…………白、ハズレ。

今度は毎回、ちょっと時間を溜めてみましたが、
案の定、全く効果なし。まあ、予想通りの結果でしょう。

ダークリンク「…………チッ」

ハロウィンロゼッタ「…………はぁ」

オーロラロゼッタ「ざーんねん!」

スイマーロゼッタ「がっくりなのー…」

ファイアロゼッタ「ですからっ!その反応は絶対におかしい!
         この結果が一番確率高いのに、そこまで非難される筋合い無いんですけど!」

ハロウィンロゼッタ「…こうなっては仕方がありません。それでは、今から――――」

ファイアロゼッタ「……………え、ちょ、ちょっと待ってください、あの?」





ハロウィンロゼッタ「このコースを2周、全力疾走してきてください」

ファイアロゼッタ「誰か助けてっ!!」

642Mii:2021/08/10(火) 10:22:46 ID:VfyrD.AE
ぶっ通しで走り続けることは、無理難題とわかりました。体力が持ちません。
頑張れば、2周60分は、まあ安定。そのたびに60分休むことにしました。
休む時は、座り込んで、ただひたすらに休みます。



…ええ。こんな計画を立てなければならないほどに――――
サイクルが、延々と繰り返されます。――――延々と。そう、延々と。



〜6サイクル目 走破!〜

ファイアロゼッタ「もう250km以上走って…ます…」グッタリ



これは、もう、あれですね。
当たりをなんとか引かないと、半永久的に走らされるループ仕様のようです。
まったく、末恐ろしい悪夢です。

夢から醒めるのを待った方がいいのかも…と思ったこともありましたが。
『スイマー』から、

    『こちらでミッションを達成するまでは、現実世界の貴方は…
    易々とは起きない仕様になってるのー。むしろ強引に起こされると魂が抜けるのー。
    時間の進み方は違うけど、早くしないと、周りが大騒ぎ、貴方も不幸になるよー?』

という、笑っていられないトンデモナイことをのほほんと宣告されたので、
ただひたすらに走って走って走って…!走るしか、選択肢が、ありませんっ!

643Mii:2021/08/10(火) 10:25:45 ID:VfyrD.AE



    『ちなみに、この夢の世界の14日間が、現実でいう1日に相当するのー。
    つまり、こっちで14時間経つと、現実では1時間経ってるのー』



疲れ果てたまま寝始めた、そのことは周りも知っているので。
現実世界でいうと、8時間なら寝続けても余裕でしょう。
10時間でも、多分放置される。大丈夫。

…12時間も眠りこけると、流石に不審に思われて、無理やり魔法で覚醒させられるかも。
スイマーの言ったことが本当ならば、周りを悲しませ、私も不幸になります。



ファイアロゼッタ「…つまり、最長でも7日間くらいしか猶予がありません…」



2時間ごとにクジを引く。
睡眠や食事は本質的に不要な空間とのことですが、それらを全て切り捨てたとしても――
最大で、1日12回が限度。単純計算で、理論上は84回引けます。
…すでに6連敗しています。

期待値としては、これだけ引けば…相当高い確率で当たる、はずですが。
なにぶん、私は運に見放されがちなので。当たるまでは安心できません。
おまけに、疲労蓄積によるサイクル遅延も無視してしまっています。

644Mii:2021/08/10(火) 10:28:17 ID:VfyrD.AE
    『あと、大事なことー。
    この夢の世界では残機制度が働かないのー。



    それだけじゃなくて、回復魔法が  使 え な い のー!



    アプリゲームならではのダメ要素なのー!スタミナ制、無駄に再現するなんてー!
    よりにもよって、このアプリに関してはスタミナ制じゃないのに、ひっどいのー!
    自然回復に任せるしかないから、HPの管理と怪我の回避には本当に気を配って―!』



ファイアロゼッタ「……もう。意味不明な単語もいくつか出てきましたが――
         現実世界でも、回復も無しにここまで走りつくす人は…そうは、居ませんよ…………」



6敗目のクジを目の当たりにしたダークリンクが、
疲れ果てた私を眺めて呆れた顔をしています。





ダークリンク「…………………」

645Mii:2021/08/10(火) 10:34:00 ID:VfyrD.AE
〜その頃、遠い土地〜

リンク「料理番任せちゃって悪いな、ルキナ。それじゃ、いただきます」

ファイ「いただきます」

ルキナ「いえ、このくらいさせてください、リンク様。
   間違っても料理上手なんて豪語はできませんが…」

リンク「…その『リンク様』って、やめない?」

ルキナ「いいえっ!このような状況になったからには、下につく者として、
    マルス様やアイク様に劣らぬ敬意は当然払ってしかるべきと考えます!」

リンク「…やれやれ、堅苦しいなあ…それ、直してけよ…?とりあえず食べるか。
   はは、俺なんか基本『採ったまま』か『丸焼き』の料理素人だから、俺よりは絶対に上手いって」

ルキナ「全く自信がありません…。
    そういえば、ファイ様と、何を話されていたのですか?伺ってもよろしいですか?」

リンク「いや、そのな?進軍計画を議論してたんだ。俺としては、こんなシナリオを描いてる。

   まず、元凶のギムレーを『速やかに』ぶっ叩く。敵軍の士気もガタ落ちになるしな。
   居城を完全制圧したら、そこから徐々に手を広げて安全地帯を増やす。
   自衛できるくらいの味方を集めて配置して、拠点を盤石にする。
   あとは、遠方に出征して残党も迅速に撃破する」



ルキナ「…素晴らしいシナリオだと思います!」パアァ

646Mii:2021/08/10(火) 10:36:18 ID:VfyrD.AE
リンク「そこまで素晴らしくはないんだよなあ…。

   このあたりの村々に寄り道すれば助けられる命を、
   最速でギムレーの所に向かうがために拾い逃すことがある、かもしれないぜ?

   全体としては被害を一番抑えられるからっていう…
   俺としても苦渋の決断だ。ルキナはそれでも納得するか?」

ルキナ「…はい。大丈夫です。よろしくお願い致します」

リンク「ルキナの知識と記憶によれば、ここからギムレーの本拠地まで、
   直線距離でざっと700km…道なりに進めば1000kmほどあるんだよな?」

ルキナ「はい。通ったことのある道ですし、方角も大体のことはわかっているつもりです」

リンク「…モグ。うん、食べられる食べられる。旨いぞ。
   それでさ、ファイとの打合せで、ギムレーの所に直行するとこまでは、
   問題なく意見が合致したんだけど。ファイが、ルキナの体力を考慮せず、



   『明日の朝一に出発して夕方にはギムレーを討ちましょう』



   とかいうもんで」モグモグ

ファイ「申し訳ございません、思慮不足でした」

ルキナ「」

647Mii:2021/08/10(火) 10:39:01 ID:VfyrD.AE
ルキナ「え、ええ!?そ、そんなの無理です!」

リンク「だろだろ?だから、なんとか俺がファイを説得して大幅に遅らせたよ」

ルキナ「ホッ…どんな強行軍になるのかと…ペガサスでもなければとても無理――
   いえ、それ込みでもとても――――」



リンク「そういうわけで。

    明日の朝一に出発して明後日の朝日と共にギムレーを討とう」

ルキナ「」



リンク「だから、早めにゆっくり休んで明日に備えてくれな。
   最悪、ルキナが嫌がろうと俺が無理やり背負って連れてくぞー。
   体を密着させるのが嫌ってんなら、頑張って厚着しておいてくれー」

ルキナ「」

ルキナ「」

ルキナ「お、お待ちください!リンク様!
   恐れながら、1日、2日でたどり着ける距離ではありません!

   接敵への対処で手間取ることも考慮するならば、
   せめて2週間くらいは所要時間を見た方がっ!」

648Mii:2021/08/10(火) 10:42:11 ID:VfyrD.AE
リンク「え、なんで?

   俺、その気になれば悪路だろうと……
   特に副作用や反動もなしに、時速150kmくらいでまる1日走り続けられるぞ?
   ルキナを背負って、安全面のケアを欠かさないとしても時速100kmは堅い。
   街中でやると、家屋やら道やらズタズタにして周囲からキレられるけど」

ファイ「私はそこまでの高速移動はできませんが、
   ネオ・マスターソードに宿っていれば全くの無問題なので…」

ルキナ「」





ルキナ「……せ、せめて…3日掛けて、くださいませんか…?」プルプル

リンク「その1日の差で、ギムレー軍の被害を被る奴が増えるかもしれないぞ?

   ホントのホントに強行軍で行くなら、それこそ筋肉痛覚悟で…
   ルキナのことをファイに任せて、この瞬間に俺一人で時速300kmで駆ければ
   今日中にカタを付けることもできなくはないんだよ。…道に迷わなきゃ、うん。
   流石にぽっと出の俺1人でそんなことしたら大顰蹙だからやらないけど。

   そっから比較すると、さすがにこれ以上ノロノロ進軍するのはなぁ」

ファイ「マスターのMAXスピードは、ソニックには劣りますがマリオ以上、
   堂々の世界二位設定です」

649Mii:2021/08/10(火) 10:44:27 ID:VfyrD.AE
ルキナ「…時速、300、きろ?…ノロ、ノロ?」



ルキナ「…………」

ルキナ「………………………………ガンバリマス」



リンク「よし、決まり。明後日はどうやってギムレー倒そっかなー。
   この王国内だと耐久力が反映されちゃうから、剣を使うのは論外だな。
   ギムレーなんぞにそんなコストを支払うのは勿体ない。

   面倒だから普通に殴り飛ばして…いや、その辺の石ころで…」

ファイ「また私の唄で消し去るのは如何でしょう」

リンク「それもいいな。……あ、でもそれだと
   『ルキナにトドメの一撃を任せて溜飲を下げる』ことができないな、
   ホントに一瞬で消し炭になっちまう。ちょっと考えさせてくれ」

ファイ「わかりました、期待しておきます」フフッ



ルキナ「え、え、えええええ?冗談、です、よね?そうだと言ってください!」アゼン

650Mii:2021/08/10(火) 10:47:42 ID:VfyrD.AE
〜ロゼッタの夢の中〜

ダークリンク「…そんな馬鹿なら、案外いるかもしれないな」ボソッ


ファイアロゼッタ「…ダークリンク?何かおっしゃいましたか?」

ダークリンク「…いや、何も」



…おっと、彼のことを気にしている余裕なんてありません。
休むことに専念しないと。

ダークリンクにはのぞき込まれないよう、ドレスをほんの少しめくって。
酷使している自分の脚を、見やります。…ちょっと熱を持っている、程度。
ガタガタ震えて動きが鈍ってきたこともなければ、腫れていることもなく。
ねん挫や骨折をしているわけでもありません。

回復魔法なしで250km以上走ったにしては、意外なほどに…持っています。
Lv50間近にまでのし上がってきたらしい、基礎体力の賜物です。
かつての私からすると信じられない光景で、ちょっと嬉しい。



ファイアロゼッタ「ですが…84セット、フルで走ったとしたら…ええっと…
         ……さ、3500km以上ですか、うわあ…………絶対無理な気がしてきました」

651Mii:2021/08/10(火) 10:49:43 ID:VfyrD.AE
…気の滅入る発想はやめておいたほうが良さげです。
ちらりと、『ハロウィン』、『オーロラ』、『スイマー』の方を見やります。



オーロラロゼッタ「クリスマスが〜今年も〜やってくるぅ〜☆
        コインボックスに喜ぶ〜みなの懐、痛めながらぁ〜☆」ネッショウ

ハロウィンロゼッタ「運営さん、Trick or Treat!
           …間違いました。Trick or Ticket!
           …またまた間違いました。――Trick or UR Ticket!」エイショウ

スイマーロゼッタ「15時更新、お仕事ちゅうー。帰ってさっそく、記録かくにーん。
          勝っていても気を抜くなー。追い抜かれてたら追い抜き返せ―!
          でもでもぉ、無理と悟ったら大人しく寝るの―!…ぐぅ――」スリープ



ファイアロゼッタ「いい加減に理解できる会話を聞きたいです…」



ため息付く私に頷き返してくれたかのように。
不本意に首に付けられてしまっている首輪が、コトリ、と小さな音を立てました。
…別に外れてくれたわけではないですけれどね。
ちょっと首輪に触れてみて―――ふたたびため息ついて。



さあ、続きをやっていきましょうか。

652Mii:2021/08/10(火) 10:51:55 ID:VfyrD.AE
〜10サイクル目 走破!(約420km)〜

ファイアロゼッタ「……まだまだ、当たりは遠い感じですね、とほほ…………」ガクッ



――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ!















ハロウィンロゼッタ「…それにしても、暇ですね」

オーロラロゼッタ「何か遊んでおこっか〜☆」

スイマーロゼッタ「Zzz・・・」コックリ コックリ

653Mii:2021/08/10(火) 10:57:37 ID:VfyrD.AE
〜16サイクル目 走破!(約675km)〜

ファイアロゼッタ「…………さす、がに。足腰が、きつく、なって、きました。
         やはり、理想通りには、いきま、せん…………」フラッ

――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ!

ハロウィンロゼッタ「1番、ハロウィンロゼッタ、物真似やります。
           『この面汚しめ』と侮蔑の形相で目前の相手を見下す、バケーションピーチ姫!」ハッ!

スイマーロゼッタ「わ、迫真の演技!怖い、怖すぎる顔なのー!」ビクッ

オーロラロゼッタ「よりにもよって、清楚系のバケーションピーチ姫が
         誰相手だろうとそんな顔する訳ないよ〜☆名誉棄損〜☆」



ハロウィンロゼッタ「ただし目の前にいるのは探検家ピーチ姫とする」

オーロラロゼッタ「それなら納得ですね」マガオ

スイマーロゼッタ「探検家ピーチ姫が何をやったっていうの!風評被害なの!」ガーン!

ハロウィンロゼッタ「ちなみにスレ主は、マリカツに限っては。派生数が多い=CPU妨害が目に付く、
          おまけに悪役or黒色でイメージに合うわけでもないのにボム兵キャノン持ちの影響で…
          誰かをリストラしなければならないと運営に言われたら
          クッパ7人衆でもなくそのほかのクッパ軍の人気低めの誰かでもなく
          即答で『マリオかピーチをリストラして』と答えます」

スイマーロゼッタ「」

654Mii:2021/08/10(火) 11:00:59 ID:VfyrD.AE
〜24サイクル目 走破!(1000km突破)〜

ファイアロゼッタ「…………まずい、まずいです、タイムがみるみる落ちてきました。
         試行回数が狂ってきてしまいます、どうにかしない、と…!
         で、も、脚がぁ…!!期待値的には当たってもよくなってきた、のに…!

         …駄目です、よね。ここまでで当たっていたら運が悪いとは言いません。
         ふふ、分かっていましたよ、ふふふ……はあああああぁ……」

―――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ!





スイマーロゼッタ「――――リイィィィーーッチ!!」ドンッ!

ハロウィンロゼッタ「…………ぐっ!?…………これは、通るっ!!」バチッ





スイマーロゼッタ「…………ふーっふっふっふ。
         ――――その『トゲゾーの甲羅』、貰いーなの!出た、一発ロンッ!!」ジャラッ

ハロウィンロゼッタ「…え゙」

オーロラロゼッタ「あ、やっちゃった☆」

655Mii:2021/08/10(火) 11:04:08 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「リーチ一発で二翻!
          緑甲羅、赤甲羅、ハテナボックス+の『三暗刻』で二翻!
          さらに『甲羅三色』で二翻!
          さらにさらに、現状1位のハロウィンに最下位からトゲゾー牌でトドメを刺した『下剋上』で一翻!」

ハロウィンロゼッタ「ああああああ……あっという間に最下位に転落…
           くっ、なんとか盛り返さないと…!!」



スイマーロゼッタ「…………何を言っているの?」

ハロウィンロゼッタ「…………はい?」

スイマーロゼッタ「さらにさらにさらに、ハテナボックス+は『1牌あたり二翻』だから
         六翻追加で役満なの。ハロウィンが断トツの最下位で終局なの」

ハロウィンロゼッタ「」

オーロラロゼッタ「」

スイマーロゼッタ「ダッシュリングやアイスフラワーごときと一緒にしないでほしいのー」



ハロウィンロゼッタ「…………」ボカボカボカボカ

オーロラロゼッタ「…………」ゲシゲシゲシゲシ

スイマーロゼッタ「痛い、痛いのー!?冗談、冗談なの!」

656Mii:2021/08/10(火) 11:08:14 ID:VfyrD.AE
〜28サイクル目 走破!(約1180km)〜

ファイアロゼッタ「脚が…重い、です…へとへと…!なんとかしたいぃ…!
         なのに、全然、進展してくれない…!」

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ハロウィンロゼッタ「思えば、私たちって…物凄く優遇されていますよね」

オーロラロゼッタ「どういうこと〜?」

ハロウィンロゼッタ「考えてもみてください。

          スレでもまさに取り上げられているロゼッタツアーで
          満を持してファイアロゼッタとメタルマリオをリセマラゲット、
          手に入るルビーを片っ端から後半ドカンにつぎ込んで私たち3人をゲット。

          ニューイヤーツアー後半ドカンでURマリオを効率的にゲットでき、
          アーバンスタイルドカンでほどなく探偵ベビィロゼッタが手に入り、
          通常ロゼッタ・ベビィロゼッタはゴールドパス等で自然入手。
 
          ちゃんと計画を立ててさえいれば、
          ゴールドパス以外は無課金でも、かなりの高確率で…
          ほんの数か月で全ロゼッタが揃い、副産物でかなりのマリオも揃い、
          おまけにログインボーナスが豪華な期間をしっかりと味わえる。

          ご存知の通りスイマーに集中投資しておけば
          それだけでスコアが初心者と思えないほど鰻登りになり、
          更には戦力が高まってきたころにトータルポイントチャレンジ等の
          利便性の高いミッションが開始されたという」

657Mii:2021/08/10(火) 11:18:40 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「スレ主も思う存分あやかったみたいですが、
           怖くなるくらいの至れり尽くせりっぷりではないですか?」

スイマーロゼッタ「確かに、キャラの中で一番…
         控えめに言ったとしても、マリオの次くらいには優遇されてると思うのー!
         取り立てて嫌われるスペシャルスキルもないのー。

         ファイアロゼッタは『ロゼッタ(ファイア)』表記じゃなくて
         しっかりとモデル確立しているのも隠れた評価点だし、
         このスレを作ってた影響でさっさとLv.6にしてみたら…
         どういう風の吹き回しか、思いのほか痒い所に手が届く最適性だったの!

         よりにもよって忍者道場と野球場に貰うとか、このスレを製作者が見てるんじゃないのー?」

オーロラロゼッタ「まっさかー☆」

ハロウィンロゼッタ「ふふ、でも恵まれているのは確かですね」









オーロラロゼッタ「でもロゼッタプラネットの適性についてだけは一言――」

ハロウィンロゼッタ「それは禁句です」

658Mii:2021/08/10(火) 11:21:16 ID:VfyrD.AE
〜32サイクル目 走破!(約1350km)〜

ファイアロゼッタ「はぁ、はぁっ…また、げき、てきに、タイムが……脚の動きが、おか、しい…!
         このまま、…はぁ、行くと…はぁ、脚、壊れ、ます…!
         や、休む時間、90分…いえ、120分に伸ばし、ましょう…はぁっ!

         ずる、ずる、伸びて…96時間も、ここまでに使ってしまったのです、か!?
         もく、ひょう、64時間、なの、に…!大変なビハインド、ですっ!!

         現実時間に換算して…ほ、ほぼ7時間も経ってしまいました…!!」



――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!



――――――――当たり!



ダークリンク「――――おっ!」

ハロウィンロゼッタ「――――っ!!」

オーロラロゼッタ「――――ああああっ!それって!」

スイマーロゼッタ「わあ――――」

ファイアロゼッタ「――――――――え?」

659Mii:2021/08/10(火) 11:22:56 ID:VfyrD.AE
どうせ外れるものと早合点して、碌に確認もせず引いたクジ。
その、4個目に引いたクジは――――



それまで散々引いてきた白さなど、まるでなく。
綺麗な綺麗な、赤色をした玉でした。



ファイアロゼッタ「これって――――まさか――――」



突如として、私の体に異変が。
天空から、玉と同じく赤色の光が、避ける間もなく、私に祝福として降り注ぎ。



ポンッ!!



ファイアロゼッタ「わ、いきなりビックリしました――――
         って、あれ?首輪が、無くなってます!」



首元から――散々嫌がっていた首輪が、真っ二つに切断された状態で、
がっしゃんと地面に落ちました。

660Mii:2021/08/10(火) 11:24:37 ID:VfyrD.AE
パチパチパチパチ・・・・!!

一拍おいて、周りの皆さんが、拍手で私を迎えます。



ハロウィンロゼッタ「おめでとうございます。ミッション完遂、お疲れさまでした」

オーロラロゼッタ「凄く頑張った!褒めてあげてもいいよ!
         それとも賛美のダンスを踊ってあげようか☆」

スイマーロゼッタ「長い、長い旅だったの―!やきもきさせるだなんて、悪い子なのー。
        でもでも、本当におめでとうなのー!」

ダークリンク「…はあ、ようやくお役御免か。まあ、運が悪いと言ってた割には、
       そこそこの回数で終えられたんじゃないか?」

ファイアロゼッタ「はぁ、はぁ…あ、ありがとう、ござい、ます――――!」

そもそも、この苦行が始まった理由も分からずじまいですが。
なんとか無事に終えられたようで、よかったです――!



ハロウィンロゼッタ「…………それでは。…うん、許可が下りていますね。
           ――――それっ!!」パアアアアアア



目の前に、光り輝く扉が、現れました。

661Mii:2021/08/10(火) 11:26:31 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「今の状態なら、貴方は支障なく元の現実世界に戻れます。
          さあ、扉の先の通路を、振り返らず走り抜けてください。
          精神疲労は少しあるでしょうが…夢から醒めることができますよ」

ファイアロゼッタ「――――はいっ!えっと、色々ありましたけど、お世話になりました!
         ちょっとは筋力が付いてくれていると嬉しいですね、夢の中ですけど!」

なんだかんだ、体感で4日間も一緒にいたので、ちょっと情が湧いた気がします。
でも、夢の中ですから。私の脳波次第で、なんだってありじゃないでしょうか。

ファイアロゼッタ「また、いつかお会いしましょう!それでは!」



ハロウィンロゼッタ「――――――――ええ、そうですね」

オーロラロゼッタ「――――――――また会える日、楽しみに、してるよ」

スイマーロゼッタ「――――――――もちろん、なのー!健康には気を付けるの―!」



少し後ろ髪引かれながらも、私は――――その場を後にして扉を潜って。



ばたん、と扉を閉めて、前を見てみれば。
わあ。光り輝く通路が、私の通過を心待ちにしています。

私は、迷いもくれずそのまま――――

662Mii:2021/08/10(火) 11:28:39 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「――――――――――――」

スイマーロゼッタ「――――――――――――」

オーロラロゼッタ「――――――――――――――――」フラッ



ファイアロゼッタが駆けて行ってから、1分ほど、経過したか。
糸が切れたかのように、『オーロラ』がその場に、へたり込む。

ダークリンク「…おいおい、大丈夫かよ」

オーロラロゼッタ「…うん、大丈夫」

ハロウィンロゼッタ「――――――――『オーロラ』…」

オーロラロゼッタ「ねえ、みんな。

         私、ちゃんと…笑えてたかな?」



この声は、さっきまでとは…打って変わって、震え声。

スイマーロゼッタ「うん、最後がほんのちょっと怪しかったけど、大丈夫だと、思うのー。
         よく頑張ったのー。よく堪えたのー」

オーロラロゼッタ「――――――――そっか。そっかあ。――――よかった、な」

663Mii:2021/08/10(火) 11:30:15 ID:VfyrD.AE
ポタリ。ポタリ。

オーロラロゼッタ「――――あ、れ。
         どうして、わたし、泣いてるん、だろう」ポロポロ

ハロウィンロゼッタ「…………泣いても、いいんですよ?」

スイマーロゼッタ「そーなの。むしろ泣くべきなの。
         本体が生還できたからって、私たち自身がどうでもいいなんて…
         そんな達観、する必要は――どこにも、ないのー」

オーロラロゼッタ「――――っ!―――――――うわあああぁぁぁぁ…」ポロポロ



すすり泣きはやがて号泣へ。
『ハロウィン』と『スイマー』が、優しく『オーロラ』を抱き止める。



オーロラロゼッタ「――――――――死にたく、ない、よぉ」ポロポロ

ハロウィンロゼッタ「――――――――まったく、です、ね」

スイマーロゼッタ「――――受け入れがたい、苦難、なの…」ションボリ

ダークリンク「…………」

ハロウィンロゼッタ「…あ、関係のないダークリンクは大丈夫ですよ。
         普通に『本体の覚醒』と同時に元の世界に戻れますから」

664Mii:2021/08/10(火) 11:32:31 ID:VfyrD.AE
ダークリンク「…あ、ああ。だが何とも後味の悪い結末、だよな。
       前もって聞かされてはいたけれどよ。

      そんなに辛くて悲しいんなら、本体に言えばよかったじゃないか。
      『どうかもっと苦労して、私たちを助けてください』って」

オーロラロゼッタ「…そんな、こと、言えない、よぉ」

ダークリンク「じゃあ、せめて真実を伝えるくらいの努力はしろよ。一瞬だろ?
       結局、本体自身、相当に悔やむんじゃないのか?
       …まあ全てを闇に葬るつもりなんだろうが」

スイマーロゼッタ「そんな酷な話、絶対に伝えられないの―…」



ハロウィンロゼッタ「そうですよ――――いくらなんでも。

          『このまま本体が覚醒したら、首輪が締まって私たちの命が事切れる』

         なんてこと、伝えられるわけ、ないじゃないですか。
         伝えたら最後、どんな行動に出るか、分かるでしょう?

         所詮私たちは、夢の産物。命の優先順位は、はっきり、させておかないと」

ファイアロゼッタ「私はそういう考えは嫌いです。大嫌いです!
         命の貴賤なんて悲しいこと言わないでくださいよ…」

ハロウィンロゼッタ「そうは言っても、これは譲れない所なので
          どうか分かって頂けないで、しょう、か…………?」

665Mii:2021/08/10(火) 11:34:19 ID:VfyrD.AE
オーロラロゼッタ「……………………??」

スイマーロゼッタ「……………………???」

ダークリンク「……………………????」





ファイアロゼッタ「……………………………………」ニコッ





4人「「「「…………………………………………」」」」ダラダラダラダラ





ファイアロゼッタ「とりあえず。まずは一言。



         ――――全員、正座しなさいっ!!!!!!」

ダークリンク「何で俺まで!」

666Mii:2021/08/10(火) 11:36:15 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「何か、おかしいと思ったんですよ、全くっ!
         私にも付いていた首輪と同じ首輪をしていて、
         私の首輪が当たりを引いたとたんに砕け散るってことは、
         何か別の『当たり』によってそれらも解除できるんじゃないかって!
         …いえ!解除しないと、大変なことになるんじゃないかって!

         ちょっと、懐を改めさせてください!はい、Trick or Treatですよっ!」

ハロウィンロゼッタ「……ああっ!?なん、です、か、いきなり…!」ヒュッ

オーロラロゼッタ「……きゃっ!?」ヒュッ

スイマーロゼッタ「…ちょ、ちょっと、何するの―!?この人、痴漢なのー!
          基礎体力レベル差の暴力なのー!!」ヒュッ



ファイアロゼッタ「……こんなことだろうと、思いました」ガシッ



3人からそれぞれ奪い取ったもの。



『ハロウィン』からは、ちょっぴり怪しげな紫の。
『オーロラ』からは、凍てつくほど冷たさを感じる青色の。
『スイマー』からは、透き通るような清らかな水色の。

明らかに白くはない、綺麗な綺麗な、玉でした。

667Mii:2021/08/10(火) 11:40:06 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「私を帰らせることを最優先にした結果――――

         どういう原理かは相変わらずさっぱりですが、
         自分たちの当たりクジ、あらかじめ、抜いておいたんですね。
         総数97のクジとか、いかにも中途半端です」



ダークリンク「…おっといけねえ。

       今更ながら、注意です。本当に、正真正銘の注意です。
       スレ内で取り扱う『クジ』は、その構成、キャラ確率などが、
       実際のアプリの内容とは…それはそれは大きく異なります。

       『どのURロゼッタも同時に1%ピックアップか!』と信じた結果生じた…
       皆様の懐事情や友人関係への一切の損害についてスレ主は責任を取りません。
       くれぐれも、あらかじめご了承ください。楽しくドカンしようぜ!

       …まあ、ツアー期間はとっくに終了してるけどな!」



スイマーロゼッタ「…………そ、それ、どうする、の?」

ファイアロゼッタ「決まっています!ダークリンク!クジの箱を貸してください!」

ハロウィンロゼッタ「――――だ、駄目っ!!」

ハロウィンに、これからやることをなんとなく悟られましたが、関係ない!
そこには歴然たる体力差、私を止めることなんてできないですから!

668Mii:2021/08/10(火) 11:42:38 ID:VfyrD.AE
『ハロウィン』の制止も難なく振り切り。ダークリンクから箱をひったくって。
確保したばかりの3つの玉を、箱の中に強引に放り込んで――――



ファイアロゼッタ「えい、やああああああっ!!」



箱ごと砕けよとばかりに、あらんばかりの力をもって、地面に叩きつけました。



ぐしゃりという不吉な音と共に、中の玉が大量に零れ出します。
3人が息を呑むのがわかりました。
じっと私を見つめる、最後の1人に問いかけます。



ファイアロゼッタ「ダークリンク!イベント管理者とかいう、よくわからない役職の貴方に問います!
         このクジの取り扱いは、不正行為に相当しますよね!」

ダークリンク「……ああ、そうだな。それでは処置を言い渡す。

      ――――先刻のクジの結果、無効!――――最初からやり直し!
      クジの構成内容に変更あり!――クジの総数、100!――当たり、4!」

BOXの中身が 強制リセットのうえで再構成!▼

3人「「「!?」」」

669Mii:2021/08/10(火) 11:45:02 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「よしっ!予想通りです――――うぐっ!」

クジの結果が無効となり 再び首輪に囚われた!▼



ファイアロゼッタ「…………これでいいです、うん!」ブルブル

唖然としたままの3人。

さあ、時間の猶予など、これっぽっちも…ありません!



ファイアロゼッタ「さあ!もうひと頑張りしてみますか!よーい…どんっ!」ダッ!

ハロウィンロゼッタ「――――!!無茶ですっ!!無茶すぎますっ!!
          4個中4個を当たりにするなど、貴方でなくても不可能です!」

オーロラロゼッタ「…………そん、な――――」

スイマーロゼッタ「…………こうなること、わかってたのー」

ファイアロゼッタ「そんな境遇を。そんな理不尽さを。――そんな泣きそうな顔を。
         ――――放って、見過ごしてしまえるわけ、ないでしょうがあああぁぁ――!!」



「唖然」が「絶叫」に変わっても、私の想いは変わりません!
新たな思いを背負い、再びコースを走り始めますっ!

670Mii:2021/08/15(日) 19:56:29 ID:yi3EbC9s
去りゆく背中は、すでに遠く。



ダークリンク「…………ははっ」

ハロウィンロゼッタ「何が。…何がおかしいのですか!」

ダークリンク「いや、そりゃあな。あいつ自身が貧乏クジの塊みたいな行動選択をしているのに、
       よりにもよってあいつが一番諦めずに頑張ってんだ。なのに、観てるだけのお前らが投げ出すのが滑稽で」

オーロラロゼッタ「滑稽…って…………!私たちの気も、知らないでっ!!」

ダークリンク「そいつは、偉い御身分からの大層な逆恨みだな。
       正直なところな。俺は御免被りたい。終わったと思ってた面倒事が延びたんだぜ?
       冗談じゃねぇやと言いたい。あいつに割と腹を立ててる。

       でもよ、お前らだけは応援してやらなきゃ駄目だろ。
       『あいつ』は『お前ら』で、『お前ら』は『あいつ』なんだから」

ハロウィンロゼッタ「―――――――――っ!!」

オーロラロゼッタ「――――――――っ!」

スイマーロゼッタ「――――なんだかちょっとカッコイイと思っちゃったのー。
         一生の不覚―。ダークリンクの癖に生意気なのー」

ダークリンク「剣の錆にするぞこのアマァ!」

スイマーロゼッタ「もっちろん海女なのー!」

671Mii:2021/08/15(日) 20:04:08 ID:yi3EbC9s
〜33サイクル目 走破!(約1390km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「うぐぅ…」

ハロウィンロゼッタ「……ほら、みなさい」

スイマーロゼッタ「……」

オーロラロゼッタ「…………どうしようどうしよう」



〜34サイクル目 走破!(約1430km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「ダメですか…」

ハロウィンロゼッタ「……本当に、貴方、大変なことをしたのですよ!」

スイマーロゼッタ「……まったくなのー」

オーロラロゼッタ「…………」グズッ



テーレッテレー!
(ファイア)ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv.47に 上がった!▼

672Mii:2021/08/15(日) 20:08:46 ID:yi3EbC9s
〜35サイクル目 走破!(約1480km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「な、なんてことないです!」ダラダラ

3人「「「……」」」




〜36サイクル目 走破!(約1520km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――青玉!  ――ハズレ!



オーロラロゼッタ「――――っ!!」パリーン! ガシャーン!

オーロラロゼッタの 首輪が 外れた!▼



ファイアロゼッタ「あ!やった!ひとつ外せました!」

ハロウィンロゼッタ「どこがですか!当然リセットですからねっ!」

スイマーロゼッタ「なんにも解決してないの!」

オーロラロゼッタ「…わあ…これが首輪が外れた…解放、感…」ウツロ

673Mii:2021/08/15(日) 20:11:22 ID:yi3EbC9s
〜37サイクル目 走破!(約1560km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「…あ、うん。別に当たり出すとか、ないですよねー。ははは」



ハロウィンロゼッタ「笑っている場合ですか!!」ボカッ!

スイマーロゼッタ「このバカー!!」バシッ!

ファイアロゼッタ「痛くないけれど心が痛い!!」





オーロラロゼッタ「」





オーロラロゼッタは 動く気力が 残っていない!▼



ファイアロゼッタ「」

674Mii:2021/08/15(日) 20:15:30 ID:yi3EbC9s
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・



〜41サイクル目 走破!(約1730km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!



ファイアロゼッタ「………………………ちょっと、きゅう、けい」バタッ



このままだと、いくら足掻いても、やっぱり、駄目。
なにか、策を、かんがえ、ないと…!



ファイアロゼッタ「…………長めに…6時間だけ、休ませて、くだ、さい」

ハロウィンロゼッタ「…はい」



半ば、諦めてしまったような顔の3人から…眼を逸らすような形で、
汗びっしょりのまま、ゴロンと横になりました。

675Mii:2021/08/15(日) 20:22:09 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「……………………」



窮地に陥った時、私はこれまでどのように解決してきましたっけ。
仲間がいるならば土下座してでも頼ればよいのですが、あいにくそれは難しそう。



…ああ、そうだ。久しぶりに禅問答でもやってみましょう。



疲れ果てつつ、大の字に寝ころんだままで。

――――なるべく、呼吸を、ゆっくり、ゆっくりにしていきます。
――――目を閉じて、心落ち着かせて――――



ファイアロゼッタ「……………………」スゥッ



――――問題は、なにか。



当たりが4個ある100個のクジから4つ引いて、全て当たりにするという、
超低確率の前にまるで歯が立たない。

676Mii:2021/08/15(日) 20:28:14 ID:yi3EbC9s
――――問題は、なにか。



当たりを覗き見することも、ハズレを当たりと偽ることもできない。
そもそもの「首輪を外すために当たりクジが必要」という所からしておかしい話だが、
この前提を覆すことは…この夢の世界では出来ない模様。理不尽さを嘆くのは後にするべき。



――――問題の噛み砕き、実行。



当たりを4個とも引くには、取り出し個数が4個というのは少なすぎる。
どうにかしてこれを緩和し、たとえば「8個までOK」となれば、
チャレンジ数が増えるほど、成功率は劇的に、指数関数的に変わってくる。



――――問題の噛み砕き、実行。



そもそも、取り出し個数は何によって決まるか?
…そう。コースを2周し、42.195km走り切ると、ルビー20個が与えられ、結果的に
クジ4個分の取り出し権が得られるらしい。全く意味がわからないが、そういうものだと飲みこんでおく。
更に、あくまで私が走り切らないとクジを引く権利は得られない様子。

なら、この権利を溜め置いて、一気に使うことはできないか。

677Mii:2021/08/15(日) 20:32:25 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…………………………………………そうだ!
         あ、あの!ダークリンク!ちょっとよろしいですか!

         たとえば、まとめて50周走ってからクジを引くことにして、
         通常の25倍である100個引きをするというのは可能ですか!?」

瞬いた名案に、思わず体を起こして問いかけます。
これが可能なら、問題は一気に解決に向かうはず!



ダークリンク「駄目だ」

…あっさり却下されました。



ダークリンク「…俺も、脳内に叩き込まれたルールを参照するしかない立場なんだが。
       あくまで42.195km以上走り切った報酬として、ルビーが与えられ、
       クジを引く権利が与えられるらしい。『42.195kmごとに』じゃない」

ファイアロゼッタ「え、えっと。それでは…そもそもの対価であるルビーをストックしておけば…
         500ルビーまとめて使えば、問題ないですか?」

ダークリンク「それも駄目だ。42.195km再び走り出そうとクジ箱から離れるたびに、
       残しておいたルビーは自動消滅する。ストックは効かないそうだ」

ファイアロゼッタ「そんなあ…」ガクッ

消沈して、ふたたび大の字に寝転がる。…………八方塞がり、ですか。

678Mii:2021/08/15(日) 20:39:36 ID:yi3EbC9s
――――問題の噛み砕き、再開。



つまり、42.195km走り切った段階で、ルビーをどうにかして大量に確保しなければならない。
しかし、ルビーを大量に確保したかったら、その分、42.195kmという距離をたくさん走らなければならない。ああ矛盾。



ファイアロゼッタ「……………………」



ファイアロゼッタ「……………………猫の手も借りたいです…」



ファイアロゼッタ「……………………」







ファイアロゼッタ「……………………………………ちょっと、待ってくださいよ?」



一か八か、妙案を思いつきました。

679Mii:2021/08/15(日) 20:41:50 ID:yi3EbC9s
宣言通り、十分休んで、体力を回復して。
起き抜けに、溌剌とした声を、頑張って張り上げます。



ファイアロゼッタ「――――――――実分身《リアルアバター》っ!!」

ハロウィンロゼッタ「…え!?」



ボカン! ボカン! ボカン!



とりあえず、頭の中で計画を立てた、おためし実験ということで。
分身体を3人、出現させてみせました。



ファイアロゼッタ「2人は私に付いて、一緒に42.195km走り切ってください!残る1人は待機でお願いします!」ダダッ

ファイアロゼッタ(分身体1)「はい、わかりました!」ダッ

ファイアロゼッタ(分身体2)「さっさと走りましょう!猶予が有りません!」ダッ

ファイアロゼッタ(分身体3)「お待ちしております!」

当然ながら、私の分身体たちは「私の意図」をしっかり理解。
素早く行動に移ってくれます。さあ、本当に急ぎましょう!!

680Mii:2021/08/15(日) 20:47:14 ID:yi3EbC9s
〜42サイクル目 走破!(約1770km)〜

ファイアロゼッタ「…ふう、休んだおかげで…それなりに余裕がありますね。さて、と」


待機していた、3人目の分身体と合流。そして、何を思ったか、私。



ファイアロゼッタ「あの、『オーロラ』。技量に不満かもしれませんが、彼女らと踊ってあげていただけますか?」

オーロラロゼッタ「…え、えええ?べ、別に、いいけど…何のために?時間が、勿体ない…」



目を逸らして、気まずそうに、怖気ている『オーロラ』を強引に呼び込んで。
音楽など掛かっていませんが、小さなダンスパーティの開幕です。
そう、自分を大きく鮮やかに表現するのが、なにより『オーロラ』らしい。

…さすが『オーロラ』、脚の運びが見事です。非の打ちどころがありません。
くるくる回って、ステップ踏んで、アクロバティックに飛び跳ねて。まさに踊り子といった感じです。

分身体たちは、それに比べると動きがなんとも粗いですが、楽しそうに踊っています。
…そう。1人は『オーロラ』と一緒に、残る2人も組になって。



ハロウィンロゼッタ「……いい光景ね」

スイマーロゼッタ「皆、とっても輝いてるのー!」

681Mii:2021/08/15(日) 20:50:57 ID:yi3EbC9s
最初は、後ろめたさか何かで表情が優れなかった『オーロラ』も。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、ダンスにノッてきたのか、明るい表情になってきました。躍動感が増していきます。
ならば負けじと、『オーロラ』に比べて基礎体力で優れる分身体たちも、それに追随。
ナチュラルに組替えをしていきながら、踊り、踊り、踊り尽くします…!!



15分ほどの宴が、無事に終了しました。



オーロラロゼッタ「――はあっ!――はあっ!――はあっ!…………とっても楽しかったぁ☆みんな、ありがとう!!」

ファイアロゼッタ(分身体)「いえいえ、こちらこそ!」

ファイアロゼッタ(分身体)「本当に楽しかったです!」

ファイアロゼッタ(分身体)「ここまで踊りに酔いしれるとは考えてもみませんでした!」



皆、とてもいい笑顔。企画した甲斐があったというものです!
…まあ、一旦それは、おいといて。



ファイアロゼッタ「それでは、踊りに惚けていたダークリンク。クジを引きたいのですが、構いませんか?」

ダークリンク「…はっ!?惚けてないし!勝手な事言うんじゃない!
       ほら、さっさとルビーを俺から貰ってクジを引けよ。いつまで待たせるつもりだ」

682Mii:2021/08/15(日) 20:53:31 ID:yi3EbC9s
言われた私は、さっそくルビー20個を貰いました。
ただ、クジを引く前に…ちょっと聞いてみます。

ファイアロゼッタ「あのー。あとルビーを20個貰いたいのですが、特例とか認められませんか?」

ダークリンク「認められるわけないだろう、馬鹿」

ファイアロゼッタ「馬鹿とは酷いですね…」

すごすごと引き下がって…………では、テスト開始です。



ファイアロゼッタ(分身体)「では、私もついでにルビーを――――」

分身体の1人がルビーをついでに貰おうとしたところで。
ダークリンクが、たちまちその腕を掴みます。

ダークリンク「駄目だ。お前にルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ(分身体)「え?そ、そこをなんとか――――」

ダークリンク「駄目ったら駄目だ」

ファイアロゼッタ(分身体)「…はい、わかりました」シュン



1人目、許可されず。

683Mii:2021/08/15(日) 20:55:46 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ(分身体)「それでは、私ならどうでしょう――――」

別の分身体がルビーを貰おうとしたところで。
ダークリンクが、再びその腕を掴みます。

ダークリンク「駄目だ。お前にルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ(分身体)「しょうがないですね…」シュン



2人目、許可されず。



ファイアロゼッタ(分身体)「では、今度こそ――――」

最後の分身体がルビーを貰おうとしたところで。
ダークリンクが、みたびその腕を掴みます。

ダークリンク「駄目だ。お前にルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ(分身体)「ちょっと、冷たくないですか?もう…」シュン





…………3人目、許可されず。――――結果、全滅。

684Mii:2021/08/15(日) 20:58:58 ID:yi3EbC9s
スイマーロゼッタ「なんだ、そういうことをやりたかったの…?でも、見事に無駄に終わっちゃったの…」

ファイアロゼッタ「いえ、もうちょっとだけ足掻いてみましょう」

スイマーロゼッタ「…え?」



……そう。もうちょっとだけ、テストは続いているのです。



ファイアロゼッタ「ところでダークリンク。私は全然余裕なんですけれど…
         貴方、分身体3人の区別って、付いていますか?」

ダークリンク「…なに?」

彼は、つい先ほど順番に会話をした3人を見やります。
ただでさえ外見が同じ上に、ダンス中に頻繁に位置替えを繰り返しました。
まず間違いなく、断言できるまで分かっているのは私だけです。

ダークリンク「いや、さっぱりわからん。それがどうかしたか?」

ファイアロゼッタ「いえいえ、その回答で十分です。
         貴方は、どの分身体が『42.195km走らなかった分身体』か、断言することができない。
         つまり、貴方の主観で、分身体たちに…何かしらの待遇差を、
         付けることはできないとみてよろしいんですね?」

ダークリンク「…?そういうことになるな?」

685Mii:2021/08/15(日) 21:02:10 ID:yi3EbC9s
さてと、仕掛けは済みました。ここからが…本番。
唐突に。私は、分身体の1人を消し去り、経験値を「還元」します。

ファイアロゼッタ(分身体)「後のことは任せましたよ!」シュウ・・・

ファイアロゼッタ「任されました!」

ダークリンク「!?」

ファイアロゼッタ「さてさて、それではいい加減クジを引きたいのですが、その前に。
         私に追加のルビーを下さいな」

ダークリンク「あのなあ!さっきから言ってるが、そんなこと、できるわけないだろう!」



ダークリンクはそう捲し立てて――――――――





――――――――私に、20ルビー差し出したのでした。



ダークリンク「全く…で、今しがた渡した20ルビーを使うとだな。
       こちらの箱から、玉が沢山入ったクジを4個引くことができ――あれ?」

――――第一関門、突破です!!

686Mii:2021/08/15(日) 21:06:01 ID:yi3EbC9s
ダークリンクが激しく混乱していますが。クジを引くのを更に待ってもらって、第二の作戦。
残った分身体のうち更に1人を、同じように還元します。…その結果。



ファイアロゼッタ「はい、追加で20ルビーくださいな」

ダークリンク「駄目だ。追加でルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ「ですよねー。さっきの分身体は42.195km走ってないですもん」

ダークリンク「な…」

ファイアロゼッタ「つまり、今の私は、『42.195kmを2重に走った私』として
         判定を受けているみたいですね」

ダークリンクの意思とは別の、超越的な判断から、分身体の走破フラグまで認識されたうえで、
ルビーが貰えるかどうかが決まるみたいです。掻い潜り甲斐がありそうです。

では、今度こそクジを引いてみましょう。



――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!
――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!



ファイアロゼッタ「あちゃあ…相変わらずというか、なんというか…」

687Mii:2021/08/15(日) 21:08:59 ID:yi3EbC9s
さて、それでは最終テスト。

最後に残っていた、「42.195km走り切った分身体」を還元します。
これで、今の状態としては「42.195kmを3重に走った私」扱いになるはずですが…?

ファイアロゼッタ「ぐっ…脚が…!…さてさて。追加のルビーを貰えるはずですよね?」





ダークリンク「駄目だ。追加でルビーを渡すことは許可されてない…え、そうなのか?」





オーロラロゼッタ「え、どうして!?」

ハロウィンロゼッタ「何故…!?」

スイマーロゼッタ「頭がこんがらがってきたのー!」

ファイアロゼッタ「…………」

ファイアロゼッタ「試しておいて、よかったあ…!!」ホッ!



そして、今さらながら、我慢していた脚の痛みに…倒れ込んだのでした。

688Mii:2021/08/15(日) 21:13:39 ID:yi3EbC9s
結論その1。

分身体にもコースを走らせて、クジを引く前に経験値を還元しておけば…
ダークリンクの拒絶とか非難とかは関係なく、その分だけ、追加のルビーが手に入り、
結果としてクジを沢山引くことができる。

ただ、クジを引く権利とともに肉体負荷までまるごと引き継ぐので、
一度に還元しすぎると最悪…脚への負担が一気に跳ね上がって大ダメージ、再起不能になる。



結論その2。

一旦クジを引き始めると、その時点で新たにルビー報酬を受け取る権利を失う。
後付けでクジを引く回数を増やすことはできない。

要するに、「クジを引き切った、当たらなかった、もうちょっとルビーを足そう」という
チマチマとした日和見の安全策が使えない。
最初から、最終的に引きたいクジ数に相当する分身体を一度に還元し、
ルビーを大量確保しておく必要がある。



皆に解説したのは、ざっとこんな感じです。たぶん、合ってる、はず。





ファイアロゼッタ「…ということで、このクジには…苦しむこと必至ながら、単純明快な必勝法が有ります!」

689Mii:2021/08/15(日) 21:25:23 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…………必勝法!?」

オーロラロゼッタ「…………ほんとうに!?」

スイマーロゼッタ「どんなのどんなの!?」

ファイアロゼッタ「ズバリ!分身体を24人作って、私含めた25人全員で42.195kmを走り切り、
        経験値を全て私に還元して、クジを4×25で…100個分、箱の中全てを一気に引けばよいのです!」

3人「「「おおおお――――っ!」」」

ダークリンク「…ずるくね?…あ、いや、なんでもないぞ。そんな目で見るな、睨むな」

感心する3人。これは私も自画自賛したくなるナイスアイディアです!
…ん?3人が感心すること自体が自画自賛なんでしょうか?ややこしいですね。

オーロラロゼッタ「…で、でも、それって。脚は…脚は、大丈夫なの?負担が集約されて大変なことに…」

ファイアロゼッタ「ふふふ、大丈夫ですよそのくらい」

オーロラロゼッタ「そうなんだ、よかった〜☆」



ファイアロゼッタ「ちょっとバキボキっと原型留めないくらいに複雑骨折して、
         骨が飛び出ちゃったりして、周囲を赤く染め上げるかもしれませんが、
         まあ数時間くらいは絶命しないでしょう。クジは引けます」

オーロラロゼッタ「全然だいじょばない!?」ガーン!

690Mii:2021/08/15(日) 21:34:09 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…あの、そもそも24人も…分身体を作れるのですか?」



――――痛い所を衝かれました。



ファイアロゼッタ「…そこがネックなんですよね。今まで目一杯頑張って、最高で11人ですから…。
         あのときはアドレナリンがドバドバ出ていたので気にも留めませんでしたが、結構、魔法回路が飽和状態でした。
         まあ、その時の感覚からするに、ちょいと分身体の出来を落とせば…きっとなんとかなるでしょう」

というより、なんとかしなくてはありません。魔法レベルの成長はほぼない状態ですが…!
体力的にも、時間制約としても、ラストチャンスに近い状況です…!



ダークリンク「あ、ちなみに『450ルビーあれば100個引けるんじゃね?』
      ……っていうツッコミはなしな。この夢の中に10連ドカンとかないから」

スイマーロゼッタ「融通利かないの」ボソッ



ファイアロゼッタ「それでは、改めて最後の休憩を行い、できるだけ万全の状態から作戦を開始したいと思います」

スイマーロゼッタ「勝っても、負けても、最後、なの…」

オーロラロゼッタ「……………………がんばって」

691Mii:2021/08/15(日) 21:37:13 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…一つ、忠告しておきますね。

          その作戦を実行し、貴方が助かると知れた段階で。
          私たち3人の中から『救いの手から漏れる者』が居たとしても――

          今度こそ、そこで終えて、元の世界に戻ってもらいますから」

ファイアロゼッタ「――――え?」



ハロウィンロゼッタ「……あまりにも未練がましい、その時は――――
          私が代表して、責任を持って――――




          救いの手から漏れた者の首を掻っ切ります。…諦め、つけてもらいます」



ファイアロゼッタ「そんなこと――――」ギリッ

ファイアロゼッタ「そんな、こと――――」ギリリ





――――絶対に、させませんっ!!

692Mii:2021/08/15(日) 21:40:35 ID:yi3EbC9s
休憩、終了。スタミナ、回復。
回復魔法が使えないせいで完全回復ではさらさらないのが、ちょっと気懸り。

『ハロウィン』が。『オーロラ』が。『スイマー』が。ダークリンクが。
それぞれ私のことを見守ります。期待には、応えたい。

神妙に、両手を組み合わせて印を結び。――――全神経を集中させて……いざっ!!



ファイアロゼッタ「参りますっ!!
 
         ―――――――― 実 分 身 っ!!!」



ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!
ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!
ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!
ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!



ハロウィンロゼッタ「お、おお!この数の分身体を、よくも見事に…!!」

オーロラロゼッタ「凄い!凄い!凄すぎるよ〜☆」

スイマーロゼッタ「さすがオリジナルなの〜!」

ダークリンク「――――こりゃあ、壮観だな、おい」

693Mii:2021/08/15(日) 21:43:13 ID:yi3EbC9s
ちょっと1人1人の出来は悪いですが…分身体、見事に作成完了!いい感じですっ!
我ながら、惚れ惚れしますねっ!走り切るくらいまでは余裕で持つでしょう!
さあ、ここから反撃!そのまま終止符を打ってしまいましょう!



ファイアロゼッタ「さあみんな!しっかり42.195km走り切りますよ!
         ゴールは目の前です!私たちの勝利が近付いていますよ!
         ――――心の準備は…よろしいですかー!」



ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」







ハロウィンロゼッタ「…………む?」

オーロラロゼッタ「…………あれ?」

スイマーロゼッタ「…………ひい、ふう、みい…」



3人「「「――――!?」」」

694Mii:2021/08/15(日) 21:50:53 ID:yi3EbC9s
スイマーロゼッタ「ちょ、ちょ、ちょっと!!ちょっと待つのっ!
         ファイア、分身体が23人しかいないのっ!1人足りないの!!」

オーロラロゼッタ「ね、ねえ!あと1人くらい、ちゃんと増やしてからにしよう!」

ファイアロゼッタ「え?あ、本当です…!それでは、えいっ!」





ぽすんっ。

【ERROR! キャパシティオーバーです!】





ファイアロゼッタ「…………あ、私の魔法制御限界でこれ以上増やせないっぽいです。
         まあ、ただでさえ超高難易度の魔法なので仕方ありませんね。
         幾ら私の魔法レベルが高くても厳しいということでしょう。

         でも、私より格段に魔法レベルが低いタブーにはできたのに。
         がん細胞みたいに悪人化すると増殖制約が無くなる…?」ブツブツ

ハロウィンロゼッタ「…まさか…全体人数が4の倍数にしかなれないというマリオゲーの呪縛……!?」

オーロラロゼッタ「」

695Mii:2021/08/15(日) 21:56:21 ID:yi3EbC9s
スイマーロゼッタ「だ、だったら考え直すの!保留にするのっ!私たちが悪かったから!
         何か別の案を探してみるの!1人でも引けなかったら後悔するんでしょ!?」

ファイアロゼッタ「まあ、いくら私の運が悪くても大丈夫ですよー!なんといっても、これで…
         100個のクジから96個も引けるんですよ?勝ったも同然ではないですか!」

スイマーロゼッタ「あああああ!?嫌な予感がするの!オチが見えたのー!!
         ハロウィン!オーロラ!ファイアを、本体を止めるのっ!」

ハロウィンロゼッタ「もちろんっ!」

オーロラロゼッタ「あたりまえだよねっ☆」



ファイアロゼッタ「…………くどいっ!!」バッ!!

妙に心配性が過ぎる3人に必死に抱き着かれつつも、
体のバネだけであっさり振りほどいてしまいます。身体能力差万歳。

ファイアロゼッタ「行ってきまーす!!」ダダダダダッ!

ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――ゴー!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」ドドドドドドド・・・



3人「「「」」」チーン

ダークリンク「」

696Mii:2021/08/15(日) 21:59:01 ID:yi3EbC9s
〜 1人+23人、まとめて走破っ!! 〜

ファイアロゼッタ「――――走り、きり、ましたっ!」

ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――とうちゃーく!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

3人「「「――――」」」

ファイアロゼッタ「…………すぅ、はぁ。深呼吸して、痛みの覚悟決めて――――
         ―――――――――――――――――全員、経験値、還元っ!!!」

ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――それっ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

流れるように、分身体の皆が私にタッチしては消えて行き―――――――――



ファイアロゼッタ「――――――――はうっ」



ぐちゃっという不吉すぎる音。
一瞬にして脚の感覚が消失し、前のめりになって顔面から倒れ込みました。



テーレッテレー!
(ファイア)ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv.48に 上がった!▼

697Mii:2021/08/15(日) 22:03:18 ID:yi3EbC9s
3人「「「――――」」」ビクゥッ!



ファイアロゼッタ「―――――――――――――――――っ!あああああああっ!!!
         ――――――――あ、あの、い、ま。私の、あ、し。どう、なっ、て」ボロボロ

スイマーロゼッタ「…だ、だいじょうぶ!真っ赤なドレスのおかげで、そんなに血が目立ってない…気が、するの!
         具体的にはちょっとバキボキっと原型留めないくらいに複雑骨折して、
         骨が飛び出ちゃったりして、周囲を赤く染め上げて――――――――」

ファイアロゼッタ「やっぱり説明はもういいです!痛いっ!とにかく痛いぃっ!!」



とりあえず、この夢の中では、少なくとも。もはや私の脚は使い物にならなくなりました。
まさにラストランだったというわけです。

あ、そうか。今は残機制度が働かないから、特に精神が不安定になっているんですね。
タブー戦で学習しました。平時の切羽詰まった戦闘にも身を投じなければいけませんね。
涙堪えて…みることは無理っ!ですが、歯を食いしばって、痛みに耐えて、耐え続けます!



ファイアロゼッタ「…………る、ルビーを、わたしに、くだ、さい、な!」ドクドク
   
ダークリンク「…ほ、ほれ。480ルビー、やるよ。
      …しつこいようだが、45ルビーで10個分引くとかはできないからな。話の進行的に」

ファイアロゼッタ「なんですか、それぇ…………!」ドクドク

698Mii:2021/08/15(日) 22:08:16 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…ほ、ほかの、事に意識を、傾け、ない、とっ!!
         痛みをいちいち、意識、して、たら、追いつかないっ!キリがないっ!
         そ、それでは、さっそくクジを引いていきましょう!
         幸先よく、1個目から当たったりして――――せーの!」ガシッ

わざわざ身を屈めて箱を傍に持ってきてくれたダークリンクに心の中でお礼を言いつつ、
震える手をのろのろと箱の中に投じ、ボールを1個、掴みますっ!それっ!



――――――――1個目、白玉。



ダークリンク「…箱を近づけた俺が言うのもなんだが…引き始めちまったか、もう俺も知らん。
       ここに箱置いとくぞ、勝手に引いてけ。俺はあっち行ってる」

ファイアロゼッタ「…………むむ、この、玉…ぱっと見で、白玉の、ようですが、
         よーく、見ると、うっすらと、水色っぽくありませんかっ?
         ひょっとして、『スイマー』の、当たりクジ――――」プルプル

スイマーロゼッタ「目の錯覚なの。御覧の通り、私の首輪もそのままなの」

ファイアロゼッタ「……………………フンッ!」ブンッ

ダークリンク「うおぉい!あっぶねぇ!どこ投げてるんだ!?」

ちょっとバツが悪くなって、および流血の痛みから目を背けたくて、
背後に広がるロゼッタプラネットのコースの方に思いっきりぶん投げました。
ほぼ寝そべりながらの手投げの割には、良く飛びましたー!

699Mii:2021/08/15(日) 22:13:28 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…………大人げない」



オーロラロゼッタ「さて…もう、あなたと一蓮托生☆」



スイマーロゼッタ「あとは野となれ山となれ、なの…」



ファイアロゼッタ「――――それだけ文句を言う元気が有れば、十分ですね。
         私が貴方がたを見事救い出す瞬間を、心待ちにしておいてくださいまし!」



ハロウィンロゼッタ「…貴方と心中ですか…それも、まあ、悪くは有りませんが――――」

ファイアロゼッタ「心中とは失礼な!気を取り直して、気持ちゆっくり――――



        さあ、どんどん引いていきますよっ!!」バッ!



私には、明るい未来が見えています!4人で喜び笑い合う、そんな未来が…!!

700Mii:2021/08/15(日) 22:18:06 ID:yi3EbC9s
〜 2時間後 〜



ファイアロゼッタ「……………………」



1分間に1個くらいの、贅沢に時間を使ったクジの引き方。
体力が徐々にすり減り、動きが鈍くなっていくのですから、仕方ありません、ね。

…もとい。なかなか当たらなくて、少し冷や汗かいてきて、慎重に引くようになっていったので、仕方ありません、ね。

とはいえ、100個のうち96個引けるという、圧倒的有利な物量攻めの威力は絶大。
そして、とうとう…4個の当たりクジが。…赤と、紫と、青と、水色の、真ん丸な玉が。見事に集ったのです―――――!!





レアリティごとの残数:
        ウルトラレアピックアップ・・・4/4
        ウルトラレア       ・・・0/0
        その他          ・・・0/96

……………………もともと100個の玉が入っていたらしき、BOXの中に。



ファイアロゼッタ「                 」

701Mii:2021/08/15(日) 22:22:00 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「                 」

スイマーロゼッタ「ふわああああぁぁぁぁ…!!す、凄いのっ!!!
         こ、こ、これは感動ものなのっ!奇跡なのっ!!
         96個も引いて、全てのハズレクジを引き切るだなんてっ!!
         神懸かってるとしか言いようがないのっ!!悪運ここに極まれりなの――――っ!!!」

ハロウィンロゼッタ「そんなこと言って感動している場合ではないでしょうが――っ!!」

オーロラロゼッタ「あ、あ、ああああああ…」マッサオ

ダークリンク「マジか。これ、最初の4個引きで当たり4個全部かっさらう確率と一緒だぜ」

ファイアロゼッタ「」

ファイアロゼッタ「」



ファイアロゼッタ「    」サァッ

とんでもないことを、わたしは、やってしまいました。



ハロウィンロゼッタ「運がないのにも程が有りますよっ!どうしてくれるのですっ!?
          ああもう、色仕掛けでもなんでもしてあと4個引かせて貰いなさいよっ!」

ファイアロゼッタ「ふえっ!?」

702Mii:2021/08/15(日) 22:26:30 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「ななな、何をいきなり言い出すのですか!冗談はよして――――」



ハロウィンロゼッタ「…………そのくらい、そのくらい、我慢してでも――――っ!
          助かるのなら、どんなに、よかったこと、か――――」ポロポロ

ファイアロゼッタ「――――」



私の首元掴んで必死の形相でとんでもないことを言い出していた『ハロウィン』も、
10秒もしないうちに無駄だと悟り、力が抜けてしまいました。

私は自分の考えの甘さを呪います。『ハロウィン』の言葉は冗談なんかではありませんでした。
…いえ、色仕掛けでなんとかなるとか言われたらそれはそれで大問題なんですけどね!

もはや策なし…悲しみのあまり、彼女はへなへなと地に伏します。



ハロウィンロゼッタ「……………」グズッ

ファイアロゼッタ「…………あ、あの」

ハロウィンロゼッタ「…………」キッ

――パンッと。涙ぐんだまま、乾いた音の平手打ち。避けることができませんでした。
――あまり痛くはないのですが、心はとても痛いです。
――彼女も、せめて私だけはどうにか夢の世界から脱出させたいと必死なのでしょう。

703Mii:2021/08/15(日) 22:29:33 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「――――行きますよ」スクッ

ファイアロゼッタ「――――行くって、どこ、へ」ドクドク

ハロウィンロゼッタ「躊躇している暇などありません――――こうなったらっ、貴方を担ぎ上げてでも、
          コースを回らせて限界が来るまでクジを引き直させます。…諦めて、なるものですか」



――――それは、無茶すぎる。
――――仮に私を庇い、背負いつつコースを2周することが有効だとしても、
――――いったいそれにどれだけの時間がかかることか。



ハロウィンロゼッタ「さあっ!!一刻の猶予もありませんっ!2人ともっ!少しは手を貸しなさいっ!!」

オーロラロゼッタ「あ―――う、ん」

スイマーロゼッタ「…わかった、の」

――――『ハロウィン』のほかに『スイマー』と『オーロラ』が助太刀してくれたとして、
――――満身創痍の私が2周するのに、優に3時間は経ってしまうでしょう。
――――おそらく、それより前に――――出血多量でHPを刻一刻と失う私の命が、儚く消える。

――――そもそも、それでぎりぎり間に合ったところで、ルビーは20個しか集まらない。
――――つまりクジを引ける個数は再び4個に逆戻り。一方のBOX中身はリセットされている。

――――はっきり言って、絶望です。
――――結局、自分の運のなさを過小評価していた私が、全て悪かったのです。

704Mii:2021/08/15(日) 22:33:36 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「でも――――ほかに、てが、ない」ドクドク

ハロウィンロゼッタ「そういう、ことですよ」

ファイアロゼッタ「すいません、ダークリンクさん!後生です、からっ!
         あと4個だけ!4個だけ、クジを、引かせてくださいっ!!」

ダークリンク「断る。今のお前はそのためのルビーを持ってない」

ファイアロゼッタ「です、よ、ね――――」ガクッ



悲しみの渦に包まれる私たち。ダークリンクすら、呆れた面持ちでこちらを見やります。

……って、呆れた表情?え?ダークリンクってこんなに薄情だったのですか!?
彼も本心では私を助けたいと思っている、みたいな考えは間違っていたのですか…!?しょ、衝撃、です…。



ダークリンク「…………」

自立できない私の体が、ゆっくりと3人の手によって持ち上がり。
脚の感覚がないせいで、千切れ落ちていたり、して。
血濡れが拡がることなんてみんな気にせず、ただ悲痛で死んだ目をして持ち上げられ。



このまま歩かれて行ったら、垂れる血が道を作っちゃう、なあ――――
そんな、とてもくだらなくて無駄が過ぎる現実逃避を――――

705Mii:2021/08/15(日) 22:41:42 ID:yi3EbC9s
ダークリンク「…そういうわけだから。とっととその――――
       20ルビーで、クジを4個引けよ。アンタ。やってることがまどろっこしいんだよ」ハァ

ファイアロゼッタ「――――はい?」



全然深刻そうにみえないダークリンクが、ある方向を向いて、訳知り顔。
意識朦朧としながら、私も、釣られて同じ方向に視線を投げました。



   「――――――――わっかりましたー!でも、やっぱりクジを引くのは『引くべき人』がっ!」



『ハロウィン』、『スイマー』、『オーロラ』も、今更ながら、気付いた。

誰かが、いつの間にか、傍にいた。
…そうか、クジを引くことに躍起になって、他のことにまるで気が付かなくて…!



ファイアロゼッタ「――――え?」

ハロウィンロゼッタ「な…………」

オーロラロゼッタ「…いったい」

スイマーロゼッタ「なんなの…………!?」

706Mii:2021/08/15(日) 22:47:43 ID:yi3EbC9s
口をポカンと開け、動揺するしかない私たちのもとに「到着していた彼女」は。
まだ軽く疲れたような雰囲気で、しかし表情は晴れやかで。

    「『ハロウィン』、『オーロラ』、『スイマー』・・・
    彼女たちが走ったところで、夢の世界の住人ということでマラソンを走ったことにはならない。
    でも…『自分自身』が走る分には、しっかりカウントされるんです!

    そして、『クジを引き切る前』になら、ルビーもしっかり貰えましたっ!
    これは盲点、思わぬ先入観というやつですね!」

ファイアロゼッタ「――――――――!!」

    「まあそれにしても…運よく、1個目に拾い上げてくれて、よかったぁっ!
    なん、とか!作戦を、投げ出される前に、走り切れてっ!!頑張りましたよっ!
    乱暴にポンッと投げられてタンコブができたことは大目に見てさしあげますっ!

    ――――――――――――――――そういう、わけでっ!!」ニコッ!









ロゼッタ(R)「私の分の、20ルビー……………………ミンナニハ ナイショダヨ!」ポンッ

ファイアロゼッタ「あ――――――――」キャッチ

707Mii:2021/08/15(日) 22:54:39 ID:yi3EbC9s
シュパッ――――――――!

彼女が光の粒となり、私の体に融け込んで――――――――



レベルアップ!!
(ファイア)ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv50に 上がった!
第一レベルキャップに到達! レベルが極端に上がりにくくなります!▼

ファイア状態時 ハイスピンジャイロファイアが 使えるようになりました!!▼



――――ひとまずの、強さの到達点に来た、感覚……これは!?



まじまじと、そのルビー(ルピー)を見て、ぎゅっと握り締めて。



ダークリンク「お前らがクジ箱の前でアタフタしてる間に、
       コッソリ近づいて驚く顔が見たかったんだと。困った奴だなあ。

       そんで、どうよ。クジ、引くか?」



ファイアロゼッタ「――――――――はい」

708Mii:2021/08/15(日) 22:59:20 ID:yi3EbC9s
1個目…………紫。天空から、玉と同じく紫の、『ハロウィン』への光の祝福。

ハロウィンロゼッタ「……ああ、これが――――」



2個目…………青。天空から、玉と同じく青の、『オーロラ』への光の祝福。

オーロラロゼッタ「…なんて、綺麗――――」



3個目…………水色。天空から、玉と同じく水色の、『スイマー』への光の祝福。

スイマーロゼッタ「…とてもやさしくて暖かい光なの――――」



4個目…………赤。天空から、玉と同じく赤の、私への――――フィナーレとなる、光の祝福。

ファイアロゼッタ「――――――――」



4人の、全員分の――忌まわしい首輪が。
がっしゃんと、地に落ちて…消えて行きました。
       
ファイアロゼッタ「――――――――や」

4人「「「「やったああああぁぁぁぁ――――――――っ!!!!」」」」

709Mii:2021/08/15(日) 23:02:20 ID:yi3EbC9s
私含めて、みんなして。わんわん泣きながら笑って、拳高く突き上げて。
気持ちが高揚したまま、抱き合って、4人仲良くハイタッチ!!
わわっ!気付いたら、脚のケガもいつの間にか完治していますっ!
ミッション完了のご褒美ってことですか、嬉しいです!

オーロラロゼッタ「…う、うわあぁぁーん!よ、よかった、よかったよぉ――――」ポロポロ

スイマーロゼッタ「一時はどうなることかと思ったの…ヒック」グズッ

ファイアロゼッタ「…ふふっ、だから何とかしてあげると言ったでしょう?」ジワァ

ハロウィンロゼッタ「…全くっ、ほんと、調子がいいのだから――――」ホロリ



ダークリンク「ははっ、ようやく俺もお役御免か」

ファイアロゼッタ「…あ、ダークリンク…………」

ダークリンク「――――よせやい。そういう目で見るな。
       単に暇つぶしに付き合ってやっただけだ、感謝の言葉なんていらねぇ」

ファイアロゼッタ「…………それでも。ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました」ペコリ

ダークリンク「…まあ、なんだ。1人じゃ無理な事でも、4人もいれば何とかなるもんだ。
      これからは精々助け合って生きていってくれ」

ファイアロゼッタ「――――はいっ!!」

彼はすっごく照れくさそうに、視線を横に反らしつつ。

710Mii:2021/08/15(日) 23:09:51 ID:yi3EbC9s
ダークリンク「そんじゃ、もう会うことも無いとは思うが…じゃあな」

少しずつ、体が透けて行って――――フッと、消えて行きました。
お役目御免というのは、どうやら本当のことだったみたいです。



ハロウィンロゼッタ「…はっ!まだ気を抜いてはいけません。
         いつ、現実世界の貴方がむりやり起こされるかわかりません。
         安全のため、一刻も早く現実世界に戻るべきです。

         ――――さあ、帰りの道を作りました。
         ――――今度こそ、振り向かずに通り抜けてください」パアアアァァ



『ハロウィン』が作り出したるは、
ベッドから起き上がり、仲間たちと再び会うための…光り輝く脱出口。
ええ、もう心残りは…ありません。

ハロウィンロゼッタ「では、もう…この長大な『ロゼッタプラネット』も、
          要らなくなりましたね。消しておきましょう――――
          …って、なんですその目は」

ファイアロゼッタ「…………い、いえ。特に支障がないなら、このまま私の夢の中に残しておけないかなーと」

夢の中に残したまま目を醒ますことで、また夢に出やすくなるのかな。
走り出した最初のころはなんでこんな目に遭うのかとゲンナリさせるばかりのコースでした。
…今は、ちょっと名残惜しい、記念に残しておきたいと思ったり。

711Mii:2021/08/15(日) 23:12:50 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…ふふ、それならば残しておきましょうか」

オーロラロゼッタ「4人の思い出のコースだもんね☆」

スイマーロゼッタ「それはグッドアイディアなの!」



こころが絆で温まる。とてもいい感じです。



ファイアロゼッタ「――――――――それでは帰りましょうか、現実世界へ。
         …というより、貴方たちは私が夢から醒めたらどうなるのです?
         もしかして、起きた私の周りにポカンと次々に現れて、
         これから賑やかな4人での共同生活が始まるとか…ですね?

         私もあんまり裕福ではないですが、というより絶賛借金返済中ですが、
         めげずにくじけずに一緒に楽しく暮らして――――」






ハロウィンロゼッタ「…ええ、そうですね」

オーロラロゼッタ「…そう、これからはずーっと一緒☆」

スイマーロゼッタ「しょうがないから、貴方のこと、陰ながら応援してあげるの―」

712Mii:2021/08/15(日) 23:14:49 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…あ、あれ?みんな?なんだか急にしんみりとして――――
      
         って、体、薄れてきていませんか!?
         お、おっかしーなー?私はまだまだそんな事態になってないのにー?」



ハロウィンロゼッタ「…大丈夫、いつか、会える」



オーロラロゼッタ「もう、二度と会えないなんてことはないから」



スイマーロゼッタ「じゃあ、またねー!」



ファイアロゼッタ「――――!?」







3人の体が、ダークリンクの時みたいに、光の粒と化して――――
ぐるぐると私の体を何度か回ったあと、私の胸の中に――――
吸い込まれて、消えて行きました。

713Mii:2021/08/15(日) 23:17:49 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…………………………………………」

ファイアロゼッタ「…………………………………………」



ファイアロゼッタ「ここまでやっておいて結局消えちゃうんですかっ!?
         なにそれ酷い!酷くないですかっ!?感動を返してくださいっ!?
         い、いえ、別に貴方がたが嘘をついていたとは思いませんけれどっ!?
        
         これ、皆を助けたことになってるんですか!?ねえ!?誰か答えて下さいっ!?この――――」



ファイアロゼッタ「馬鹿ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!」





・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・



ロゼッタ「馬鹿ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!」ガバッ!

デイジー「きゃああぁぁぁ!?」ビクッ

714Mii:2021/08/15(日) 23:20:44 ID:yi3EbC9s
ロゼッタ「…………あ、れ。デイジー、ひめ?」

デイジー「いきなり大声上げないでよ!?心臓止まるかと思ったよ!」

ロゼッタ「――――もどって、きた?夢の世界から…………」

デイジー「…マールの子守唄で眠っておきながら悪夢を見るとか、
    ほんとロゼッタってついてないというかなんというか…
    その悪運には同情するよ、可哀想になってくる…。

    それでそれで?どんな夢見てたの?悪い夢は人に話すことで正夢じゃなくなるってよく言われるよね!
    最初から最後まで話してごらんよ!面白…興味深いから!!」



ロゼッタ「…………あれ?私、どんな夢、見てましたっけ」



デイジー「あらら、忘れちゃったかあ…ざんねーん。
    ロゼッタの深層心理を見抜けそうで興味深…面白そうだったのに」

ロゼッタ「ええ…………」アキレ

ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「でも、なんだか。楽しい夢だったような気がします。
    心の奥底に残るような、心がほんのりあったかくなるような」

715Mii:2021/10/24(日) 00:01:00 ID:nJa12BZA
デイジー「あんなに叫んだのに…?忘れっちゃったのに…?
    ま、まあ。ロゼッタを幾ら責めたてても意味ないか。
    
    それよりさあ、今日は12月25日だよ!クリスマスだよ!
    遅めの朝食でも、食べにいこ!今日も念のため体を十分休ませるべきだよ!
    おいしい紅茶とケーキを出してくれる店、最近見つけたんだ!」

ロゼッタ「…わかりました。借金返済に焦りすぎるのもよくない、ですね。
    それでは、エスコートしていただけますか?」

デイジー「お任せあれ!一緒に食べ放題コースで食い倒れるぞ、おー!!」

ロゼッタ「そ、それはちょっと!あ、あの!太ってしまいます!
    普通!普通のメニューをばご検討ください!お願いします!
    ちょ、ちょっと!話を聞いてくださいよー!!」パタパタ



――――今日は、いいことありますように。







ロゼッタの 魔法経験値が 少し貯まった!
ロゼッタは 氷耐性Lv.10を 会得した!
ロゼッタは 潜水耐性Lv.10を 会得した!▼

716Mii:2021/10/24(日) 00:06:08 ID:nJa12BZA
とりあえず、デイジー姫イチオシのお店で小腹を満たして。
紅茶をこくこくとゆっくり味わっています。
さすがイチオシ、甘すぎないケーキは美味の一言でした。

ぐーるぐると、2杯目に選んだコーヒーをかき混ぜ中のデイジー姫に、唐突に尋ねられました。



デイジー「ところで前々から気になってたんだけど、ロゼッタの収入源ってなんなの?
    別に遺産があるとかでもないよね?」

ロゼッタ「……」ギクッ

デイジー「ほうき星で、パンづくりのための小麦くらいは育てられるかもしれないけどさ。
    他の食材とか、その他にもいろんなもの、必要になってくるでしょ?

    ロゼッタは確かに倹約家っぽいし、ことさらに大きな出費行事とも無縁だけど、
    それでもひもじくならない程度にはお金は使うよね?」

ロゼッタ「…………えっと」

デイジー「うん」

ロゼッタ「…………ト、トレジャーハンター的なことを少々」モジモジ

デイジー「一攫千金!?なにそれカッコいい!意外だなあ!!今度私も連れてってよ!」



ロゼッタ「あの、いえ、そんな高尚な話でも何でもなくですね…………」

717Mii:2021/10/24(日) 00:13:08 ID:nJa12BZA
〜回想、ほうき星〜

ざくっ! ドドドドドドドドド・・・・・・・・

ざくっ! ドドドドドドドドド・・・・・・・・

ざくっ! ドドドドドドドドド・・・・・・・・



ロゼッタ「コース作成(ロゼッタプラネット)のために魔法で岩肌を削って削って…………
   ふふふ、もうちょっともうちょっと…!私の予感が正しければ…!」パアアアアア

チコ「ママ、ごきげんー!」



ガキンッ!

魔法で衝撃を与え、掘り進めていた岩肌が、突如として明らかに異質な音を立てる――――



ロゼッタ「うわあ…!!あいかわらずこの星は、素材の宝庫ね!
    ちょうど、いい感じの鉱脈にぶつかれたみたいだわ!
    天の恵みよ、これでなんとかあと1か月は凌げる…っ!

    採掘、採掘!頑張るわよ!」パアアアアア

チコ「キノコ王国で高く売れるといいねー!」

718Mii:2021/10/24(日) 00:16:18 ID:nJa12BZA
〜回想(take2)、ほうき星〜

チコ「ママー!また新しい子がママに会いたいんだってー!
  とっても元気で明るくて、それでもって礼儀正しい子なんだよー!」

チコ「は、はじめましてっ!新入りのチコですっ!
  ずーっとロゼッタさんに…ママに、こうして会いたかったの!嬉しいなっ!わーい!」

ロゼッタ「ふふ、丁寧にありがとう。歓迎するわ、ゆっくり過ごしてね。
    いつお出かけしてもいいし、いつ戻ってきてもいいのよ。
    困ったことがあったら何でも言ってね」ニコニコ

チコ「あ、そうだ、例のもの」

チコ「あ、わ、忘れてたっ!はいっ!お近づきになったしるし!



  ――――――――ダイヤモンドの原石ですっ!故郷にあったの!」キラッ!

ロゼッタ「」

チコ「これをあげると、ママがとっても喜んでくれるんだよ!」

チコ「ぜひ受け取って!お願いします!」

ロゼッタ(上納金!?)

719Mii:2021/10/24(日) 00:19:17 ID:nJa12BZA
チコ「…………」ジーッ

ロゼッタ「…………」ダラダラ



ロゼッタ「う、うわぁー!ありがとう!いただいていいのかしらー?
    ちょ、ちょうど欲しかったところなのよー!」ナデナデ

チコ「わあっ…!本当に喜んでもらえたぁっ!!ありがとう先輩!」

チコ「えっへん、どういたしましてー!」









ロゼッタ(後ろめたくならない後ろめたくならない後ろめたくならない)

チコ「???」フヨフヨ

チコ「…や、やっぱり要らない?」



ロゼッタ「…………欲しいですごめんなさい」

720Mii:2021/10/24(日) 00:23:14 ID:nJa12BZA
〜回想(take3)、キノコ城〜



ロゼッタ「いきなり呼び出されましたけれど、どうされましたか?」



ピーチ「ロゼッタ、ちょっと肩もんで。書類とにらめっこばっかりで疲れちゃった」

ロゼッタ「…は、はい」モミモミ



ピーチ「ロゼッタ、今日1日お料理は任せるわ。たまには息抜きしたかったの。
    拒否権なんてないからね」

ロゼッタ「簡単なものしか作れませんが…」シャカシャカ



ピーチ「ロゼッタ、適当に城の隅々まで掃除しておきなさい。
   私は優雅に会議に出かけるけど、手抜きはしちゃ駄目よ?魔法を使ったズルも禁止ね。

   はい、モップと雑巾、ホウキとチリトリ」

ロゼッタ「…わ、わかりました」サッ サッ

721Mii:2021/10/24(日) 00:26:17 ID:nJa12BZA
ピーチ「さてと、ロゼッタ。お友達料金なんだけど」

ロゼッタ(来てしまいましたっ…………)ズーン







ピーチ「とりあえず残高が心もとなくなってきたみたいだから、
   口座に10万コインほど振り込んでおくわ。今日はありがとうね」

ロゼッタ「ですからっ!!そんな大金いりませんっ!!
    これ見よがしに雑用させて対価として押し付けて!!」

ピーチ「私が自由に使えるお金に限っても、10万コイン程度、はした金なんだけど…
   そのお金を有効に使って、もっとお姫様らしく過ごす努力も、多少はしなさい。
   いつ、部下を抱えて政を行うようになるか、わからないんだから」

ロゼッタ「ほうき星の主としてチコたちと楽しく暮らす現状で十分ですよ…」

ピーチ「とにかく!いいから、受け取っておきなさい。
   鉱脈狙いとか…経済基盤不安定にも程があるんだからね。
   なんやかんやで入用なんだから。襤褸を纏って過ごしたいの?」



ロゼッタ「…………わかりました」ズーン

722Mii:2021/10/24(日) 00:34:00 ID:nJa12BZA
〜回想おわり〜

ロゼッタ「偉そうなことを叫んでおいて、確かに全く自立できてない…」

デイジー「……………………お、おう。気付くのが遅いと言って欲しい?」

ロゼッタ「…………仕事しなきゃ…バイトでも探しましょうか…
    求人広告はどちらで手に入るでしょう…」

デイジー「面接官や客がビックリ仰天するだけだからやめい」



デイジー姫と別れて、さあ働こう。気落ちしようが、地下牢、もとい仕事場に戻ります。
…あれ?今日はもう働かないことにしたような…あれ?

まあ、国家プロジェクトに携わっている、と考えれば立派な、立派過ぎる仕事ですよ!
給料だってしっかり出ている勘定です。出たそばから借金返済に消えていくお金ですが。



今回のことで、思い至ったのは…………
定職に就くのは無理でも、機会あるごとにキノコ王国でこまめにお金を稼いだ方が
とっさの支出にも余裕で対応できていいに決まっています。
生活だってきっとよりよくなります。派遣の魔法研究職とか、いいかも。

「ロゼッタを易々と民間で働かせられないわよ!」というピーチ姫の叫びが
心の中に響いて…まさか、ありえませんね。幻聴です。働けるなら御の字です。
働かざる者、食うべからず。うん、頑張ろう。

723Mii:2021/10/24(日) 00:40:51 ID:nJa12BZA
また研究室に篭って、こそこそと実験を開始しようとしたところ。
様子を見に来たキノピオに、とある提案をされました。
きっと、昨日までの私を観察して、見るに見かねたというところでしょうか。



キノピオ「実験三昧に気が滅入るようでしたら、気分転換として。
    『スカイガーデン(仮称)』の建設に取り掛かってもいいんですよ?」



ロゼッタ「…………え?」



キノピオ「姫様は抜かりありませんから。ふふん。

    既に建設予定地は確保済、やろうと思えば近日中に
    作業に取り掛かれるような状況です。…色々と準備は必要でしょうけど。

    まあ、いますぐ作り始めるのは難しいにしても、たとえば下見――――
    ひろーい建設予定地に、ささっと案内いたしましょうか?
    汽車に乗ってざっと30分ってところですが」



私はその提案に、ものすごーくあっさり飛びつきました。

724Mii:2021/10/24(日) 00:48:07 ID:nJa12BZA
〜スカイガーデン建設予定地〜



ロゼッタ「…………ふわぁ」



見上げるは、広い広い、青空。ところどころに、白い雲。
まさにイメージにぴったり。



キノピオ「要するになんにもない、簡易柵で囲っただけのだだっ広い空き地ですけど」

ロゼッタ「気にしていたことを!!」



…いやでも、とにかく広い。やたらめったら広い。柵の内側、全部!?
高台から見渡せば、500メートル四方くらいは余裕である、茶褐色の土地が広がっています。
全部使っていいんですか、太っ腹!

キノピオ「まず、地上でコース全体をしっかり作成します。
    必要な機材、備品、人員…すでに構想を練り始めてくださいよ。

    でも、スカイガーデンは空中コースにするっていう注文が姫様から来ていますからね。
    コースに固定化魔法を掛けたあと、キノコ王国お抱えの魔法使いたち総出で、ふわりと浮かび上がらせます。
    少なくとも、ざっと100メートルくらいは。
    …あ、これはロゼッタさんにお任せした方がいいくらいですか」

725Mii:2021/10/24(日) 00:52:53 ID:nJa12BZA
ロゼッタ「せっかくですから雲も一緒に固定化して、足場にしてみたりですね…。
    浮遊足場と雲を飛んで、渡っていくコース!ああ、胸が高まります。
    でも、浮遊足場をそんなにたくさん、作成できるでしょうか。

    …いえ、怖気づいてはいけません!大丈夫!
    隔壁で、バディブロックで片っ端から支えてやればいいのです!善は急げ!」バッ

キノピオ「……!?お、お一人で、それもたった今から造られるおつもりですか!?
    そんなことができるのは、マリオさんくらいのものですよ!?無謀すぎます!」

ロゼッタ「これ以上時間を掛けていたら『反重力ペンキ』の方が間に合いません!
    基礎体力Lv1でロゼッタプラネットをなんとか造ることができたくらいですから!
    このくらい、たぶんお茶の子さいさいです!!

    さあ張り切っていきましょう!危ないかもですから後ろに下がっていてください!」





キノピオ「…………そんなに研究の方、ノイローゼ気味だったんですね」



――――ばれてます。

726Mii:2021/10/30(土) 06:44:41 ID:/W4lGY0Y
タララッ タッタッタッタッ。

タララッ タッタッタッタッ。

ロゼッタの3時間メイキング!



だだっぴろい空間が、目前に広がっています。
ここにどんどん物を設置して、私だけのコースを建設していくわけですね。

え?さっきキノピオに「まずは地上で建設しろ」って言われた?
ふふ、最初から空中にとどめておけるならば、それに越したことはありません。
全体像を常に把握するうえでも、ベストであるに決まっているではないですか。



さてさて、運び込まなければならない物は数多ありますが。
なによりも必要なのは…そうですね、基礎となる足場です。つまるところ、土砂とか岩盤です。
舗装、飾りつけの体積、重量だなんて、その下の土台に比べれば微々たるものです。

ちなみに、土砂や岩盤といった資材は、国有地から持ち出してよいそうです。なんとタダ!
「業者に頼んで大型トラック、浮遊船等で運んでもらえ」というのが通常の作戦になるんでしょうが。経費も出るみたいですし。



空間魔法使いの私の場合、ちょっと違った様相を呈します。
ロゼッタプラネット建設の際に得られた過去の実績もふまえて、なんとも小狡い手を使います。

727Mii:2021/10/30(土) 06:51:40 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ「当然、この建設予定地も国有なんですよね?巻き込みそうな配管なんかもなさそうです」

キノピオ「…それがどうかしまし――――――――」



すたすたと何メートルか歩いて行って――――突然、地面に土下座。
…もとい、ぺたんと両手を地面にくっつけます。



ロゼッタ「人払い、よし。安全、確認。…今の私の魔法制御力とFP量から鑑みて…
    2mくらいなら、きっとだいじょうぶ――――――――えいっ!!」パアアアアアア



さくっ!
シュインッ!



幅、約2メートル。  奥行、約2メートル。  そして深さ、約2メートル。



一瞬、地面に光り輝く切れ目がさくっと入ったと思ったら、次の瞬間。
立てた両ひざのすぐ前に、突如として、2m角の四角い穴が空きました。
中のキューブが、ごっそり消えた状態です。

キノピオ「」

728Mii:2021/10/30(土) 06:55:29 ID:/W4lGY0Y
…おっとと、あやうく前のめりに落ちる所でした。
落ちても2メートル程度、今の私には頭から落ちようと痛くもかゆくもないですが。

キノピオ「えっ?えっ?ええっ???」

慌てふためくキノピオを他所に、杖を片手にふわりと浮かび上がって、上昇、上昇、ぐんぐん上昇――――

キノピオが豆粒くらいに見えるところまで、慎重に慎重に上昇して。
うわっ、結構風がきついですね。ふらつかないように気をつけないと。



ロゼッタ「というわけで、足場用に用意した土が…はい。こちらになります」パアアアアアア



PON!!!!

キノピオ「…………!?」



私のすぐそば、上空100メートルあたりに、突如として。
1辺が私の身長とおんなじくらいの、綺麗にカットされたサイコロ足場が現れました。
準備がいいですねー。…異空間に収納してたのを出しただけですが。
あとは、角度や位置を微調整してですね。



ロゼッタ「はい、ストップ!それでは、空間に固定化させますね…設置おわり!!」パアアアアアア

729Mii:2021/10/30(土) 07:01:08 ID:/W4lGY0Y
ここまで重くて巨大な物を扱うと、流石に杖は不可欠ですが。
魔法をレジストするなんてもこともないただの地面でしたし、問題なし問題なし。
注ぎ込むFP量さえ潤沢ならば。見事、上空100メートルに小島がひとつできました。
まだ1つ。たったの1つですが、これが最初の一歩になります。

この足場はしっかりと絶対座標で固定化したので、もう落ちてきません。…落ちてきませんよね?
久しぶりでちょっと不安だったので、1分ばかり傍で様子を見守ります。

…ふう、大丈夫大丈夫。ひゅるひゅると降下していって着地。
キノピオはどうやらさっきから口をあんぐり開けたままです。



ロゼッタ「さあ、このやり方で問題なさそうなので、…この調子で――――」パアアアアアアアアアア

キノピオ「ま、ま、まちがっても上空で制御しそこねて落としたりしないでくださいねっ!!」

ロゼッタ「勿論ですよ、命に関わりますしね!安全第一!」



キノピオ「…………」





キノピオ(…………こんなことができるんだったら、攻撃手段に乏しいとか言いながら
    重量物を敵の上から落とせば普通に攻撃できるんじゃあ……………)

730Mii:2021/10/30(土) 07:04:57 ID:/W4lGY0Y
地面に降り立ち、地面をキューブ1つぶん異空間に格納し。
上空に舞い上がり、切り出したばかりの地面を取り出してセットする。
ケーキを切り分けて配膳していくみたいに、地面がさくさくと切り出されていきます。…負荷は、大きい、ですけど。

アバウトながら、事前に考えていた構想に沿って…上空にて、整列、整列っ!!
…こういったクリエイティングって、妙に面白かったりするんですよね!

キノピオ「…マインクラフト?」



さくっ!
シュインッ!
PON!!!!

さくっ!
シュインッ!
PON!!!!

さくっ!
シュインッ!
PON!!!!

さくっ!
シュインッ!
PON!!!!



キノピオ「うっわー…………」ドンビキ

731Mii:2021/10/30(土) 07:45:16 ID:/W4lGY0Y
コースの幅は、どうしましょうか。一般的なコースを思い起こすなら――
ざっと言うと、舗装面を20メートル、後は悪路部分を両側10メートル、そして壁……。

いえいえ、折角の空中コースということでしたら、開放感を出すためにも
狭い幅の方がいいですよね。こう、柵として蔓(つる)を這わせてオシマイ、とか。
うん、空中庭園に根付くツタや蔓。想像してみましょう、幻想的でいい感じです。



そうと決まれば、キューブは10個ほど並べてくっつけてコース幅として…
曲面を描くのは次工程にお任せして、とにかく思いつくままに並べて、並べて、
ただひたすらに並べ倒してしまいましょう!!

工期を6か月…いえ3か月くらいにして、ここに試走も含めてしまいましょう。
やるべきこと、用意するものは山積みです。計画をしっかり立てないと。
そうです、ピーチ姫のお怒りをすっかり忘れてしまっていました。油断してはいけません!

工夫すべきところは…ああ、そうだ。
FP枯渇の心配はしすぎることはないですから、チコたちにも応援に来てもらいましょう。
あと、ある程度の固定化は、キノコ王国お抱えの魔法使いさんたちに委ねるべきですね。
ひとりで抱え込もうとすると自滅しそうです。

…あ。人海戦術は相変わらず有効なのですよね、そういうことなら――――



ロゼッタ「キノピオ!いくらか、お借りしたい物や援軍があるのですが――――!」

キノピオ「は、はい!どうぞなんなりと申しつけ下さい!」

732Mii:2021/10/30(土) 07:50:31 ID:/W4lGY0Y
〜3時かn…………6時間後〜

キノピコ「…………様子を見に来たんだけど、なにこれ」



ロゼッタ(分身体)「オーライ、オーライ!あと50cm近づけて!」パアアアアア

ロゼッタ(分身体)「せーのっ!…よし、ドッキングOK!
         ズレなし、凹みなし、たわみなし!次持ってきてください!」パアアアアア

ロゼッタ(分身体)「そこの分身体!魔法のキレが悪くなってます!
         地上に戻って休憩とってください!10分離脱!」

ロゼッタ(分身体)「はらひれ……夕闇がぐるんぐるん回って見えます…疲れましたあ…」フラッ

ロゼッタ(分身体)「はい、FP欠乏してる人にメイプルシロップ配って回りますよ!とっとと口を開けてください!」

ロゼッタ「2番と6番っ!キューブの繋ぎ方が間違ってます!修正してください!そう、それ!
    今目の前にある経路方向、約10ブロック分!そろそろカーブを描き出しますから!」

ロゼッタ(分身体)「…うわ、確かにこのままだと…あっちのキューブ群と連結できない…!
        急ぎ固定化を解除してやり直します!見つけていただき感謝します!!」パアアアアア
        
ロゼッタ(分身体)「あ、すいません!そろそろマップがおぼろげになってきて…
         その予定図、もう一度みせてください!」

ロゼッタ(分身体)「そろそろ今日はやめにしませんかー!
         ちょうど、照明用の強力ライトも電池切れっぽいのでー!」ガシッ

733Mii:2021/10/30(土) 07:58:26 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ(分身体)「もうちょっとだけ!切りのいいところまで進めましょうよ!」

ロゼッタ(分身体)「駄目です!そういうメリハリのない作業が事故のもとになるんです!」

ロゼッタ(分身体)「そろそろ、別の所から土を持ってこないと限界に近いですね…まだまだ足りない。
           土壌汚染もない、いい質の土のありかを探っておきましょう」



キノピオ「…………土砂支給、最前線活動、ダブルチェック、救護、回復、監督、照明…
    役割分担を持ち回りでこなしてます、あのロゼッタさんたち」

キノピコ「ロゼッタさん1人いるだけで、建設業の人たち上がったりだねー。
    …っていうか、コースの下の地面が抉れに抉れてるんだけど。採掘場か何か?」



ひとまず、スタートダッシュでノリにノッてみて、いい感じに作業が捗りました。
でもさすがに3時間では気が済みませんでしたね!





…時間は掛かろうとも1人1人によく聞いて回って本日の進捗確認をすればよかったのに、
分身体に消えてもらって全員の経験値を還元したところで…極度の疲労でぶっ倒れる羽目になったのは内緒です。
みんなの気付いた点も含めて手っ取り早く把握しようとして横着しましたが、駄目でしたね。

もう二度としません。おそらく。

734Mii:2021/10/30(土) 08:06:42 ID:/W4lGY0Y
ほうほうの体でキノコ城に帰って、一晩空けて、目覚めのいい朝。

肉体的には大層疲れていたはずなのに、それでも精神的に参っていた時よりはいい感じの体調です。
今日なら、なんだか実験も上手くいきそうな気がします。さえずる小鳥の鳴き声に応援されているかのよう。

…よし。これからも、実験に躓くたびに、思う存分コース作りに邁進する、ということに。
城の片隅にいつの間にかドンと陣取った超巨大タンクと、大量の大量のペンキさんたち、
もうちょっと待っておいてくださいね。





都合よく重力を操れる魔法を完成させ。

それを、ただのペンキに基本特性として馴染ませ、浸透させ。

時間の経過や繰り返し使用、荒れたレースでも劣化しないことを十分に検証し。

仮にそこまでできたとして、無尽蔵とも言える膨大な量をただひたすら製造していく、
スケールアップの方法を思いつかなければならなくて。





…気が滅入りそうな話ですが、着実にこなしていきたいと思います。

ロゼッタ「魔法使いとして…そう、腕が鳴りますよね!」

735Mii:2021/10/30(土) 08:10:12 ID:/W4lGY0Y
〜12月31日〜



ガヤガヤガヤガヤ・・・・・・・・



技術者「よし、皆、準備はいいか!覚悟はできたか!
   怖気づいて年の最後までだらだらと延ばしてしまったが…しかと責務を果たすぞ!
   微力ながら、ロゼッタ様をお助けするのだ!」



技術者「私たちにできるだろうか…」

技術者「不安だ…足手まといになるだけなのでは…」

技術者「…ええい、いつまで不安がっている!情けない!
   確かに、ロゼッタ様の魔法の実力は物凄い!まぎれもない事実だ!

   だが、姫様より言いつけられた、塗料のマジックアイテム化には
   手がかりがつかめず、なかなか難儀されている模様!
   数年前から研究を重ねて来て、実績もある我々が指導してやらなくてどうする!」

技術者「『実績もある』っていうけど…これだけの人数がよってたかって研究重ねて、
   達成したのは、たかだか反重力作用効率0.5%じゃあないですか…
   まだまだ使い物にならない、有って無いような実績っすよ…」

技術者「情けない弱音を吐くな!」ドンッ!

736Mii:2021/10/30(土) 08:15:43 ID:/W4lGY0Y
反重力作用効率とは、すぐ上に位置する物体に対して及ぼすことのできる反重力が
もともとの重力の何パーセントまで到達しているかを表す数値である。



0%ならば、それは唯の地面である。物体の全重量が塗布面にかかり、
単純に接触による反作用によって支えられる。

50%ならば、重力の半分を反重力作用が打ち消してくれる。
いつもの半分の力を加えるだけで、物体は持ち上がる。
多少なら塗布面から離れた位置にも、反重力作用は働くからだ。

100%ならば、重力まるごと、反重力作用が打ち消してくれる。
指にちょっと力を加えるだけで、持ち上がる、押し出せる、引っ張れる。
面白いのが、重力が塗装面と逆向きにはたらいていれば、
反重力は塗装面に吸い付く向きにはたらく。
つまり、「上下さかさまのコースを走っているときでも落ちなくなる」。

ただし、反重力作用効率100%という一定値を常時発揮しているのでは困ってしまう。
このままでは、段差でのジャンプ、クラッシュなどで塗装面からの距離が変化した場合、
距離が変わったままになってコースに復帰できない。
いつもなら当たり前の「重力に従ってコース上に戻り距離が(0に)保たれる」流れがないからだ。



カートが塗装面に近づき始める、離れ始める瞬間瞬間に、即座に反重力作用効率を100%を中心に上下させて、
「浮かせつつも、気持ち吸い付かせ続ける」効果をもたらしてくれる必要がある。
そうすることで、レース中のカートは抵抗なくふわりと浮き上がって走ることができる。

この臨機応変、ご都合主義な制御力をただのペンキに付与する…並大抵のことではない。

737Mii:2021/10/30(土) 08:19:32 ID:/W4lGY0Y
…まあ、そもそも現状では1%にも到達しておらず、先は長い。
それも、トップデータで1%である。そして、たった1滴作るのにも莫大な時間と経費が掛かっている。
研究とは、中々骨の折れる、そういう地道なものである。



技術者「我々の研究成果自体は既にロゼッタ様に資料でお渡ししてますし、
   別にわざわざ出向かわなくてもいいじゃないですか…。
   目の前でアッサリ我々の成果が追い抜かれていくところ、見たくないよ…」

技術者「…それは、仕方のないことだ。それでも!
   いくらロゼッタ様と言えど、0から1を生み出すことはできんのだ!
   ロゼッタ様が研究の最初の一歩を踏み出すところのアシストこそ、我々の役目!
   王国お抱えの技術者としての矜持、自尊心というものはないのか、みんな!

   一仕事したあとで、ロゼッタ様が1から100を生み出すところを
   ニマニマしながら眺めようじゃないか!今のロゼッタ様の功績があるのは我々のお陰だ、と!」

技術者「…………!!」

技術者「…………!!」

技術者「…………!!」

技術者(…ようやく目が醒めたか……やれやれ。世話が焼ける部下たちだ。
    でも分かってくれたようで何より。その想い、その輝き、忘れるなよ)

技術者「いざ、ロゼッタ様が彷徨う実験室へ、レッツゴー!」

技術者「「「「……………おおおおおー!!!」」」」

738Mii:2021/10/30(土) 08:25:47 ID:/W4lGY0Y
〜実験室〜

やや荒っぽく打ち鳴らされるノック音。



技術者「「「「「「「「ごめんくださーい!!!!」」」」」」」」ドドドド・・・!!



ロゼッタ「わわっ!お、大勢でいらっしゃいませ!どうかなさいましたか?」

技術者「実は私たち、反重力作用のアイテム研究における先駆者として居ても立ってもいられなくなりまして!
   大したことはできない技術者揃いではありますが、お困りの様子のロゼッタ様の手助けになればと、駆けつけた次第であります!
   少しでも気持ちを楽にして新年を迎えて頂きたいので!」

ロゼッタ「まあ、まあ!それは大助かりですっ!大したことはできないだなんてとんでもない!!
    まさしくグッドタイミング、意見を伺いたかったところなんですよ!
    はい、どうぞこちらの椅子にお座りください!」パアァ



――――技術者たちは思った。我々が来たのは無駄ではなかったと。



技術者「そうでしょうそうでしょう、さすがのロゼッタ様も研究開発方針を決めかねていたことでしょう!
   敵は超難題、100年に1度ともいえる世紀の大仕事ですから!

   資料は一応お渡ししておりましたが、やはり直接打ち合わせをするのが一番――」

739Mii:2021/10/30(土) 08:28:37 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ「そう、それです!頂いた資料の内容の課題点を1個1個潰していってですね!
    必要に応じてどんどん改変、改良もしていってですね!

    



    この1週間であれこれ挑戦して試行錯誤した結果、とりあえず。
    反重力作用効率 10% の『1次ペンキ』が10Lばかり完成したんですが
    使用感を確かめて頂けないでしょ――――――――」



技術者「「「「「「「「お邪魔しましたー!!!!!!!!!」」」」」」」」バタンッ!!!

技術者たちは 逃げ出した!▼





ヤッパリ アドバイスナンテ イラナイジャネーカ、リーダー!キテソンシタ!
テンサイハ ボンジンノドリョクナンテ アッサリ ダシヌイテイクンダ・・・・
エエイ、サケダ!サケモッテコイ!ノマナキャ ヤッテラレネェ!





ロゼッタ「…………え?ええ?」ズルッ

740Mii:2021/10/30(土) 11:55:22 ID:/W4lGY0Y
チコ「体重計に塗ってから乗るとー!あら不思議!
  ボクたちの体重も、ママの体重も、10%軽くなるー!!」

チコ「だから何だと言われると…なんだろー」

ロゼッタ「痩せた気になれてちょっといい気分ー!」



ロゼッタ「…………………………………………」



ロゼッタ「そ、それ元の場所に隠しておきなさい!気の迷いの暴挙だからっ!
    見られてないわよね!?ちゃんと隠せてたわよね!?
    …体重計をこんなところに持ち出したママもママだけど!」

チコ「まっかせなさーい!」フヨフヨ

チコ「気にしなくてもいいのに、体重なんか」フヨフヨ

ロゼッタ「んもう。…………第一段階まではクリアしたことにしておきましょうか。
    そうですね、新年もなんとか心置きなく迎えられそうですね」



年末…………午後の時間を軽く使って、実験室の掃除でもやっておきますか。
あとは街角で買い物でもしながら、つかの間の休息を楽しみましょう。
最近どうにもおろそかになりがちな身だしなみを整え終えたら、デイジー姫に声を掛けてみましょうか。

741Mii:2021/10/30(土) 12:00:25 ID:/W4lGY0Y
結局、掃除を済ませた後は運よくデイジー姫と都合が付き、
いつもどおりと言いますか、あれこれ見て、食べて、年越しイベントに参加して。
デイジー姫はアルコールまで少し飲んでいましたが、私は遠慮しておきましょう、か。

もうすぐ日付を跨ぐというのに、花火が賑やかに、人々の心を潤します。
カウントダウンを心待ちにしている人たちで、イベント会場は大賑わい。
…というか、クリスマスの段階で薄々と感じてはいましたが。
タブー戦からの復興、恐ろしく早いです…。



ルイージ「兄さんもピーチもいないし、クッパに任せるのもなんだしってことで、
    どういうわけが僕が巡回パトロールやってるよ、はあ…」

デイジー「お勤めご苦労様―!まあ、そんなに問題起こすような人もいないでしょ!
    ほれほれ、配られてたお酒の余りを進ぜよう」

ルイージ「とりあえず、目の前に問題を起こしそうな人が1人いるんだけどね…」

デイジー「どこどこ?」



テンションが低いルイージとも合流しました。
マリオとピーチ姫がバカンスで不在なこともあって、抜擢されたということで。
責任重大ですね、頑張ってください。ささやかながら回復魔法を掛けておきました。
効いてきたのか、ちょっと笑顔になってくれました。

…ところが、どうしたことでしょう。不可解です。
私を見るなり、一転して本当に元気になって、ニヤケ笑いを浮かべ出したのですから。

742Mii:2021/10/30(土) 12:03:12 ID:/W4lGY0Y
ルイージ「ところで、ロゼッタ!ちょうどいいところに!
    というか、あやうく伝えそびれるところだったよ!ほんと危なかった!

    最近ためてばっかりのストレスを発散するための、
    ナイスなイベントを企画したんだけど!」

デイジー「おおっ!例の件か!」

ロゼッタ「例の件?」

デイジー「私も内容までは知らないけど!憔悴したロゼッタを気分転換させる策!」



あらま。そこまで気を遣ってもらっていたとは、かたじけない。



ルイージ「元旦から、さっそくキノコ城前に集合してくれるかな!詳しいことはその手紙に書いてあるから!」

そのままニマニマと笑いながら、手紙を差し出してきました。…手紙?



ロゼッタ「はあ…読ませて頂きます――――」

特に拒否することもなく、すなおに受け取ってみますが。
あ、デイジー姫も同じように受け取っていますね。興味津々なご様子。
それにしても、元旦からとは……。

743Mii:2021/10/30(土) 12:05:51 ID:/W4lGY0Y



ロゼッタ「…………元旦、から?」ピタッ

ルイージ「うん!」





ちょっと、日付を確認してみます。
…あ、つい先ほど1月1日になりました。ハッピーニューイヤー。ぱちぱちぱち。



ロゼッタ「あと数時間で何かイベントが始まる、と?」

ルイージ「そうだよ!正確には午前8時頃にまずは集まってもらうけど!
    準備が間に合ってよかった!観客も無事に動員できそうだ!」フフン

ロゼッタ「…………かん、きゃく?」

デイジー「…………」



デイジー「話が急すぎるわアホンダラァ――――!!?」ドゴォ

ルイージ「」チーン

744Mii:2021/10/30(土) 12:15:11 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ「よ、よ、用意とか何にもしていないのですがっ!!」

こういった観客を呼び寄せる催し事って、常識的には
もっともっと前から関係者には内容を伝えられるんじゃないでしょうか。

ルイージ「…と、とくに用意はいらないです。
    早く寝て、起きて、集まってくれさえすればいいです。
    あとはこっちでお膳立てしますです、はい」ボロッ

デイジー「ったく、無責任な仕切り方をしてくれるんだから…
    どうなっても知らないよ、ルイージが全責任負ってね。
    …とにかく、明日の朝に城の前に集まればいいんだね?

    …ってか、観客まで集めるってことは私たちへの情報統制までやってたんかい。
    全くイベントとやらに気付かなかったよ。努力の方向音痴とはこのことだね」

ルイージ「え?別にそこまで隠そうとはしてなかったけど…?正直、ある程度ばれているものとばかり…」

デイジー「企画担当の影が薄いとイベントにも伝染するのか」

ルイージ「」グサッ



いったい、何のイベントでしょうか?しっかり手紙の内容を読んでおかないと。
明日が…いえ、日付的に今日が非常に心配です。



とりあえず、一にも二にも、早く寝て備えましょう。

745Mii:2021/10/30(土) 12:19:16 ID:/W4lGY0Y
〜1月1日 AM 7:30 キノコ城前〜

ワルイージ「おうおう、お揃いで。お前らもルイージに呼ばれたクチか?」

ロゼッタ「ワルイージではないですか!お久しぶりです!」

デイジー「妙な組み合わせだなあ…いや、違うか。
    今回のイベントとしては、むしろ… ベストメンバー か。憎いことをするなあ」



とりあえず軽く睡眠をとって、言われた通りに集まってみれば。
すでにスタンバイ状態の人が。そう、ワルイージでした。
彼も、ルイージから手紙を送られて、面倒だけどやってきたそうです。



ワルイージ「イベント事に参加できるってだけでもありがたいことだからな」

デイジー「切実感がひしひしと伝わってくるね。私も身に染みてわかってるよ…」

ロゼッタ「なるほど、私にもよくわかります…」





2人「「嘘つけ」」

ロゼッタ「なんでですか!?」ガーン!

746Mii:2021/10/30(土) 12:21:54 ID:/W4lGY0Y
あ、駄弁っているうちにルイージも現れました。



ルイージ「よーし!皆、集まってるね!
    不肖ながら、今日だけは僕が リーダー を務めさせてもらうよ!
    困ったことがあったらなんなりと聞いてね!」

ワルイージ「ええええええ」

デイジー「ええええええ」

ロゼッタ「きょ、今日だけと言わずいつでもどうぞ!」

ルイージ「ロゼッタの優しさが眩しい」



――――さて、さっそく会場に向かいましょう…!





ルイージ「会場に向かいたくてうずうずするのも分かるけど、まずは初詣に行こう!」



――――違ったようです。

747Mii:2021/10/30(土) 12:25:41 ID:/W4lGY0Y
〜神社〜



デイジー「勝利祈願?また、大層な」

ワルイージ「とにかく勝利の為に、藁でも縋りたい気持ちなのは察するけどよ」

ルイージ「進行役なのに酷い言われよう!」

ロゼッタ「お賽銭箱にコインを投げ入れて、今年1年が良い年であるよう願うと共に
    願いごとや目標を誓えばいいんですよね」



人払いでも、されているのでしょうか。他の参拝客が、不自然なほど見当たりません。



デイジー「くっ!こんな場所に来るんなら浴衣を着て来たらよかった!」

ルイージ「いや、着物ならともかく浴衣は駄目でしょ。なんで浴衣?」

デイジー「なんかピンときた」



鳥居をくぐって進んで行って、お賽銭を入れて、鈴を鳴らして。
…スーパーベルが取り付けられている気がしますが気のせいです。絶対に気のせいです。

748Mii:2021/10/30(土) 12:28:05 ID:/W4lGY0Y
ぱちりと両手を合わせて、心の中でお願いごと。
横目でちらりと伺えば…皆さん、真剣な顔つきです。私も、ええっと。





ルイージ(ルイージの年が末永く続きますように)



ワルイージ(せめてマリオカートで大活躍できますように)



デイジー(ピーチは一応大丈夫とは言ってくれたけれど…
    次回スマブラにしっかり参加できますように)



ロゼッタ(3Dワールドに新要素とか追加されちゃったりして、いつかまた脚光を浴びますように…
     ハッ!?変な電波が飛んできました!?)





いよいよ本当に、会場に向かうことになりそうです。

749Mii:2021/10/30(土) 12:31:01 ID:/W4lGY0Y
〜ミニゲーム会場〜

キノピオ「司会進行をさせていただきますキノピオです!」

キノピコ「同じく、司会進行役のキノピコでーす!」



ワー!ワー!



――――何度かイベントを経験する中で、流石に怖気づくことはなくなりましたが。
――――大勢の観客に恥ずかしいところを見られやしないかとヒヤヒヤです。



キノピオ「それではっ!これより!

    『マリオパーティ100 ミニゲームコレクション大会』を開催いたします!

    これまで開催してきたマリオパーティ大会に収められてきたミニゲームを、
    ドドンと100種類もピックアップ!有効活用ですね!

    懐かしい、あのミニゲーム!楽しかった、そのミニゲーム!
    さまざまなミニゲームが、再び皆さんの目の前に現れますよ!
    本日は存分にお楽しみください!」

ウオオオオオオオオ!!!

750Mii:2021/10/30(土) 12:39:34 ID:/W4lGY0Y
観客「俺、初代マリオパーティの第1回大会から観戦してるもんね!」

観客「すっげー!暇じ…熱心なんだなー!この迫力と駆け引き、たまんないよな!」

観客「今回はボードを動き回ることはせず、ひたすらミニゲームで争うんだってよ!
  なになに…ほほう、午前の部がチュートリアル、午後の部が本戦って感じか…」

観客「なにそれ、どういうことなの?」



観客「ええっと、今回はメンバーが固定されているんだって。



   初代から皆勤賞、ベテランのルイージさん。
   
   それに立ち向かうのが、第2回以降の大会に向けてモニターも兼ねた
   デイジーさん、ワルイージさん、そしてロゼッタさん。



   慣れている人と慣れていない人を集めて、
   観客にはギャップを楽しんでもらおうっていうコンセプトらしいぞ、パンフレットによると」

観客「それって、ルイージさんが超有利ってこと?」

観客「いや、そこはしっかりと配慮されているらしくて――――」

751Mii:2021/10/30(土) 12:42:27 ID:/W4lGY0Y
〜生中継、ミニゲームアイランド〜



キノピオ「ミニゲームがいっぱいの島、『ミニゲームアイランド』へようこそ!
     ミニゲームのウデだめしをしながらどんどん進んでいきましょう!

     それでは、さっそくスタートです!
     まずは、ルイージさんの待つ本戦会場をめざして進みましょう!」



ロゼッタ「…本戦会場?」

ワルイージ「一体どういうこった?そこまで詳しいことは手紙にも書いてなかったぞ?」

デイジー「ありゃ?そういや、ルイージがいない?」キョロキョロ

キノピオ「はい。ルイージさんは、皆さんに比べてミニゲームの経験値が高いですよね。
    なにせ、初代マリパから参戦してますから。

    このままぶっつけ本番だと慣れ不慣れの差が思いっきり効いて、ルイージさんの圧勝になってしまいます。
    そこで、午前の部では…このミニゲームアイランドで幾ばくか鍛えてもらうという流れです。
    ルイージさんは実況解説のゲストとして本戦会場でひたすら頑張ります。

    このミニゲームアイランド攻略中は、特に順位付けや得点勝負の要素はありません。
    御三方でミニゲームに慣れ親しんで行ってください!

    そして、いよいよ午後の部で、満を持してルイージさんを加えた4人で本戦を行います!」

752Mii:2021/10/30(土) 12:47:06 ID:/W4lGY0Y
デイジー「…とは言っても、しょせん1回ずつこなすだけでしょ?
    やっぱりルイージとの経験の差は如何ともしがたいんじゃないのかな」

キノピオ「もちろん分かっていますから、特別ルールを適用し…今日午後の本戦は。

    『3人の1位獲得数合計』と『ルイージさんの1位獲得数』で勝敗を決めます。

    ルイージさんもそれで大丈夫大丈夫、と高を括っていましたよ」

デイジー「ちょっ!?」

ワルイージ「なあっ!?そいつは流石にハンデ貰い過ぎだろ!ルイージの奴、舐めてんのか!気に食わねえ!」

キノピオ「ちなみに、会場で販売されている公営賭博のベットとしては
    ルイージさん側にちょっと分がある…勝つと見込まれているみたいですね」

デイジー「むっきー!!よしワルイージ!カメラに向かってルイージに宣戦布告だ!
    ふんぞり返って調子に乗って、あとで泣き面見せるのはどこのどいつになるだろうな、って!」

ロゼッタ(…『ハンデ貰えるのなら貰っておきましょう』と呑気に言えない雰囲気です)



色めき立つデイジー姫とワルイージをまあまあと宥めながら、
午前の部では…ミニゲームアイランド、というチュートリアルをこなしていくことになりました。
…わわっ!こちらにも結構観衆が集まってますっ!?て、テレビ中継まであるんでしたっけ!?

最終的な勝敗も大事ではありますが、なによりも…みっともない結果をお見せしませんように!

753Mii:2021/10/30(土) 12:50:58 ID:/W4lGY0Y
〜まきわりNo.1【マリオパーティ9】〜



ヨッシー「ミニゲームの対戦メンバーでーす!」

ワリオ「給料くれるんならなんだってやるぜー!」

ヨッシー「じゃあまずは私から――――」



ワルイージ「なるほど、このミニゲームアイランドじゃ…
       ヨッシーとワリオ、2人のうちどっちかが、毎度4人目として入ってくれるんだな」

デイジー「マリオとピーチがバカンス中、ルイージはシードだから仕方ないね。
    よーし、さっそくやっていくよ!やったことないのはロゼッタだけか。頑張って!
    いちはやく薪(まき)を3本割ったら勝ちだからね!

    ボム兵に斧を振り下ろすと1回休み!
    斧をかざして防御していなかった他の人も、爆風受けて休みになるから気をつけて!」

ロゼッタ「わ、わかりました!」



デイジー姫に急かされて。4人の中央にある切り株にむけて、斧をしっかり構えます!
観客の皆さんがたも、しぃんと静まり返り、固唾を飲んで見守ります!

754Mii:2021/10/30(土) 12:53:06 ID:/W4lGY0Y
――――ハイヨッ!

薪が 置かれた!▼



ロゼッタ「薪だから振り下ろしてだいじょ――――」スッ



ワルイージ「どりゃああああああ!!!」スパコーン!! +1pt

デイジー「負けるかああああああ!…って言ったそばから負けたああああぁぁ!」スカッ!!

ヨッシー「私は『ふつう』に頑張ります。慣れてもらわないと意味がないですから。
    …でも、あんまり気遣う意味がないですか?」

ロゼッタ「」



振り上げた状態で固まって、何もできませんでした。
…ああ!そういう早い者勝ちミニゲームなんですね!!理解が遅くてすいません!





はい、気を取り直して、次!

755Mii:2021/10/30(土) 12:56:07 ID:/W4lGY0Y
――――ソイヤッ!

薪が 置かれた!▼



ロゼッタ「(腕に小さなダッシュリングを嵌めて)高速で振り下ろすッ!!」スパコーン!!

デイジー「おおおっ!!」



審判「魔法を使用してミニゲームを有利に進めるのはルール違反です。
  ロゼッタ選手、得点無効のうえで1回休み」

ロゼッタ「」

ワルイージ「ま、当然だな!ズルはいけないぜぇ?」



――――ホイッ!

薪が 置かれた!▼



デイジー「今度はもろたでぇ!!」スパコーン!!

ワルイージ「ちぃっ!」

756Mii:2021/10/30(土) 13:00:14 ID:/W4lGY0Y
ヨッシー「だーかーらー。ロゼッタさんに慣れさせましょうってばー」

デイジー「手を抜くのは好きじゃない!」

ワルイージ「同じく!」



――――アラヨットッ!

ボム兵が 置かれた!▼



ヨッシー(しょうがないなぁ、ボム兵の爆風の防ぎ方を学んでもらうためにも
    あえて振り下ろしてあげますか。親切心親切心っと)スゥッ

デイジー(血迷ったか、ヨッシー!)

ワルイージ(男だな、ヨッシー!…男だっけ、ヨッシー?)





ロゼッタ(……………………!!)

757Mii:2021/10/30(土) 13:02:24 ID:/W4lGY0Y



デイジー「…………!」

斧を前に据えて ガード!▼



ワルイージ「…………!」

斧を前に据えて ガード!▼



ロゼッタ「…………こ、こうですか!」



斧を前に据えて ガード!
しかし 体に対して 斧が小さすぎて すり抜けた爆風が 普通に当たった!▼



ヨッシー「ぶわぁあー!」チュドーン!

ロゼッタ「ぶふぅっ!?」バタッ!

デイジー「審判さん!審判さん!ロゼッタの斧が不良品っ!取り替えてあげて!」

758Mii:2021/10/30(土) 13:04:19 ID:/W4lGY0Y
〜カウント1・2・3【マリオパーティ2】〜



ウロウロ、キョロキョロ。ゴソゴソ、ガサガサ。



ボム兵「動き回るぜー!頃合い見て爆発してくぜー!」



デイジー「うっわ、嫌っちゅう程に大量のボム兵だ…!
    これは、私やワルイージもやったことないや。
    似たようなミニゲームを探せば割とありそうではあるけど」

ワルイージ「ほうほう…最後に残ったボム兵の数を数えるのね。りょーかい」

ワリオ「給料出てるからな、まあ程々にいい成績出してやるぜ」









ロゼッタ(…………えっと、今が34体で…)

759Mii:2021/10/30(土) 13:09:08 ID:/W4lGY0Y
デイジー(ひい、ふう、みい……おいこら、重なって動くんじゃない!)

ワルイージ(こういうのは落ち着いて、グループを考えて各個カウントするといいんだよな。
     あんまり発生しないグループ間の行き来は視界の端で捉えて処理する。
     これぞ頭脳プレイってやつ?)

ワリオ(こんなもん、端っこから数えて、あとは雰囲気でプラスかマイナスに振れば大体何とかなるだろ)



ロゼッタ(…………………………………………………あれ?



    舞台の外から不定期に乱入してきたりするわけじゃない?
    特に面白いことも起きず、34体ですよね、うん。何かの引っ掛け?
    …あ、1体爆発して33体になりました。

    というより。数がどう変化しようと、終了1秒前に舞台を眺めれば一瞬で答えが出ますね。





    …もしかして今は寝てていいんでしょうか。いや、起きておきますけど)

760Mii:2021/10/30(土) 13:11:18 ID:/W4lGY0Y
〜ボタンでクライミング【マリオパーティ9】〜



ロゼッタ「」ポツーン



デイジー「どうしたのロゼッタ!早く登らないと!」ドドド

ワルイージ「カベのボタンをすばやく押して、てっぺんを目指せ!」ドドド

ヨッシー「棒立ちになって一体どうしたというのですか?さあ早く!
    A、B、A、B、X、Y、X、Y、上、下、右、左、リズムよく!」ドドド

ロゼッタ「何故か腕が動かないんですけど!?皆さんには何が見えているのですか!?
    AとかBって一体なんのことですか!?」

ヨッシー「やっていればそのうちわかります!
    登りたい気持ちが強ければ、おのずとナニカが思い浮かんでくるはず!
    その通りに心の中で叫びましょう!」

ロゼッタ「え、えええ!?」

ロゼッタ「…の、登る!登りますっ!なんでもいいのでこの崖を登りますっ!!
    意地でも登りますからねえっ!!」ガシッ!



案外 なんとかなった!▼

761Mii:2021/10/30(土) 13:13:58 ID:/W4lGY0Y
〜チョロプーのリベンジ【マリオパーティ7】〜

ロゼッタ「地上のチョロプーに叩かれないように、それでいてできるだけ
    地上に顔を出すと勝ち…体が砂だらけになりそうで億劫なのですが」

デイジー「そう言いつつも芸人さながら潜っていこうとするロゼッタを私は評価したい」

ロゼッタ「その言い方はやめてください。
    …これ、同じ穴から顔を出そうとする人が2人以上いたらどうなりますか?」

ワルイージ「そりゃ、少しでも後から来た奴は出られなくて真下で待ちぼうけだぞ?」

ロゼッタ「……………………真下からドレスの中を覗かれる!?嫌らしい!」サササッ!

ワルイージ「覗かねぇし覗けねぇよ!任天堂の不思議パワー働いてるよ!
     そんな心配が必要だったらマリパのミニゲームの半分は出来なくならぁ!」

ワリオ「そうだぞロゼッタ!言い掛かりもいい加減にしろよ!」

ロゼッタ「…す、すいません」



ワリオ「ったく――――さてと。金の臭いがするから一応カメラ用意しとくか」

ロゼッタ「ちょっとした冗談だと訂正しますよね?ね?今ならば許します」

デイジー「ミニゲームの話をしよーよ!」

762Mii:2021/10/30(土) 13:20:20 ID:/W4lGY0Y
〜まめのきジャンプ【マリオパーティ5】〜

デイジー「でりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃー!!登れ登れ登れー!!
     馬鹿と煙とデイジーちゃんは高い所が好きなんだー!」ゴオオオオ

ワルイージ「お前は馬鹿の範疇でいいだろ」ゴオオオオ

デイジー「このミニゲーム終わったら張っ倒す」ゴオオオオオ

ヨッシー「ひたすらジャンプして高く、高くっ!ちょっとでも高い所まで!」

ワルイージ「それにしても、ジャンプするほど一緒に伸びていくこの豆の木は一体何なんだろう」

ロゼッタ「…………これ、ミニゲームの特性的にどんなに頑張っても
    ジャンプ力自慢のルイージに勝てなくないですか…?まあ、いいですけど…
    ひょい、ひょい、ひょいっと…」






ロゼッタ「そして何より問題なのが、観客から様子が見えません!!」

ジュゲム「高い所の撮影もお任せをば!!」シャキーン

ロゼッタ「あ、はい」

デイジー「高さ1000メートル踏破ぁー!!」

763Mii:2021/10/30(土) 13:22:55 ID:/W4lGY0Y
〜ぜんまいヘイホーレース【マリオパーティ2】〜

デイジー「なるほど、ただひたすらにぜんまいを巻けばいいのか。
    巻き過ぎて壊れちゃったりしない?」



ワルイージ「壊れるらしいぜ、風の噂によれば」



デイジー「…え、壊れるの?」

ワルイージ「いや、ぜんまい仕掛けのヘイホー側じゃなくて。
     力をこめ過ぎた手のひらが、ボッロボロに壊れるらしい」

ロゼッタ「なんですかそれ、怖いですね…やめておきましょうか?」

ワルイージ「怖気づくのもカッコ悪いから、やるけどよ。所詮は唯の噂だ。
     おおうロゼッタちゃん、まさかビビったか?」

ロゼッタ「…び、ビビってなんかいません!」グルグルグルグル




ワリオ「……………………噂だったら良かったんだけどな。
   良い時代になったもんだなあ」トオイメ

デイジー「顔に似合わず達観されている方がこちらに1人」

764Mii:2021/10/30(土) 13:25:14 ID:/W4lGY0Y
〜クリボーボウリング【マリオパーティ9】〜



クリボー「整列して道幅方向に往復してやるから、倒したいんなら
    投げる向きを合わせてできるだけたくさん倒しやがれー!」

クリボー「「「「「「「「うおおおおおおお―――――――――っ!!」」」」」」」」ゾロゾロ



ロゼッタ「なるほど、投げる角度と位置を微調整して微調整して…
    クリボーたちの移動速度と、投げる甲羅の左右方向のベクトルの大きさを
    できるだけ揃えれば、クリボーの軌道に追随できるという寸法ですね。

    摩擦だとか壁との反発係数だとかは未知数ですが…えいっ!!」



クリボー「「「「「「うわあああああ――――――――っ!?」」」」」」ポコーン



ロゼッタ「…よしっ!先陣切ったので不安でしたが、うまくいきました!
    16体にヒット!8割倒すことができましたよ!どうですっ!!」

765Mii:2021/10/30(土) 13:26:39 ID:/W4lGY0Y
デイジー「要するに、深く考えずに角度なんて差し置いて、移動時間を与えないくらい
    ものすっごい剛速球で投げればいいんだよねっ!!知ってる知ってる!!」ゴオオオオオオッ!!! 18タイ!!

ワルイージ「変に理論計算とかやってると環境に左右されるからな!」ゴオオオオオオッ!!! 19タイ!!

ヨッシー「さながら、2次元の1直線に最初から身動き取れず1列に並んでいるがごとく!
    …ハッ!?わたしとしたことがつい本気で」ゴオオオオオオッ!!! ストライーク!!





クリボー「「「「「「「「ぎゃ――――――――っ!?」」」」」」」」ポコポコポコーン





ロゼッタ「競技の趣旨と駆け引きを無視しすぎていませんか!?
    指摘されてみると確かにそうですけれどもっ!?」

766以下、名無しが深夜にお送りします:2022/03/01(火) 04:25:16 ID:J.banIVQ
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/

767以下、名無しが深夜にお送りします:2023/03/26(日) 12:22:27 ID:o5kdvGlI
幕張メッセ・47ストリーマー
配信者ハイパーゲーム大会
DAY2(最終日)Supported by Openrec

□タイムテーブル
▼マリオカート8DX▽PUBG▽VALORANT
(10:30〜放送開始)

ttps://www.openrec.tv/live/em8xge3dvr2


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