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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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どーも作者です。
新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。
半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。
話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。
この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。
まとめ
ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/
大変お世話になっております。
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今回も読みごたえあったわ
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そういやギコしぃが入る時に
一番最後に加入したのはモラって記述があったな
モラが一番好きだわー
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うまくいえないのか
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待ったかいがありました。すごく面白かったです。
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ω・)モララーの人1倍仲間思いの理由が描かれててよかった思う
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乙 くそモララーに泣かされるとは思ってなかった、一気に好きになったわ
残りは流石兄弟と初期メンか、どれにしろ楽しみにしてる
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モララーが和解するタイミングが、加入する時じゃなくて加入した後っていうのが素敵。
心を入れ換えた最後のきっかけが、ショボンでもフサギコでもなく、ツンであったっていうのも素敵。
毎話楽しみにしています。最新話更新、お疲れ様でした。
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乙です
モラ好きだからこういう描かれ方されててすごく面白かった
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読んでて登場人物全員の事が好きになるブーン系は何年ぶりだろ?次の更新まで毎日読み直すぞー
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乙。次回も楽しみにしてます。
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ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1554.gif
( ・∀・)「イケメンの剣技をみたまえ」
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爪で剣技とは さすがイケメン
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>>554
爪でも斧でもソードスキルだろ
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オ、オタ芸?
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>>556のせいでペンライト振るプロオタにしか見えなくなった
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イケメンオタ芸マスターか
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ラブライバーだったのか
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>>556-559のせいでモラが隠れオタのイメージが着いてしまったんだがどうしてくれる
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思ってた以上にモララーの過去がヘビーだった
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ツンとの関係性に納得できた。
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八月ももうすぐ終わりですね。
ということで、十四話を投下します。
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うっひゃあ
今日は最高だぁ
支援
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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
第十四話 双頭の鷲の旗の下に
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0.あの丘をこえて
西暦2023年1月
第二層 戦闘フィールド。
町と街をつなぐこの道には特に名前は付けられていない。
モンスターも出てくるには出てくるが、道の周囲にはまばらに木が生えているだけのこのエリアは
通常の警戒をして、更に相応の経験を重ねた者が装備を整えていれば、危険性は低い場所とされていた。
もちろんゲームの中の死が実際の死に繋がるこの世界では、
モンスターの出てくるエリアでは全ての者が周囲を警戒し、
神経を張りつめているのが常だった。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえショボン、次の安全エリアに着いたらお茶にしよう」
(´・ω・`)「もう?早くないかな」
川 ゚ -゚)「地図によるとそろそろ半分進んだようだし、良いんじゃないか?」
( ^ω^)「今日のお茶とおやつはなんだお?」
(´・ω・`)「まだ街を出て少ししか経って無いのに良いのかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐ十時!おやつの時間よ」
('A`)「大工が家を建ててるんじゃないんだからよ」
川 ゚ -゚)「こんな緊張の連続では、心が休まらん。休めるタイミングで休むのが良い」
( ^ω^)「だおだお。いつ襲われるかドキドキしながら歩くのは大変だおね」
('A`)「はいはい」
(´・ω・`)「ドクオ先生のお許しも出たし、次の安全エリアで休憩しようか。…!」
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呑気に話していたショボンが携えていた槍で空中を指し、構えを取る。
それと同時にドクオとブーンは片手剣を、ツンは細剣を持ってショボンの前に飛び出す。
クーはショボンと同じ槍を構えてショボンの隣に立った。
(´・ω・`)「まず二体!」
ショボンが槍で指した先に現れる巨大蜂と狼。
('A`)「先ずはおれが狼を行く」
ξ゚⊿゚)ξ「蜂は私ね」
前方の警戒を四人に任せて振り返るショボン。
(´・ω・`)「後方、空中に二体。このエリアならおそらく蜂。右は僕が行く」
川 ゚ -゚)「ならばもう一匹は私が行こう」
( ^ω^)「全員のフォローと警戒に回るお!」
既に前方の二匹はポップしており、ドクオとツンは戦闘を開始していた。
('A`)!
ξ゚⊿゚)ξ「は!」
この世界に囚われて二ヶ月と少し、フロアボス戦など要所の戦闘等には参加はしていないものの、
順調に戦闘を重ねてレベルを上げてきた五人にとって、このエリアの敵は脅威ではなかった。
川 ゚ -゚)「とりゃ!」
(´・ω・`)「とう!ブーン!ツンの右側2メートル!足元に一体!」
( ^ω^)「わかったお!」
四人を見渡せる位置で片手剣を構えていたブーンがツンの下に駆け寄った。
すると空間のひずみがブーンの目にも分かり、狼がポップする。
ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐ蜂が倒せるのに!」
( ^ω^)「こいつはブーンの獲物だお!」
狼が完全に実体を現したとほぼ同時にブーンの片手剣が胴を二分割する様に閃いた。
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安全エリア。
広げた絨毯の上に座る四人。
その目の前、一人一人にはカップが置かれ、
中央の籠には丸く茶色い饅頭の様なお菓子が何個も入っていた。
ξ゚⊿゚)ξ「ん。美味しい。これ初めてよね」
カップに口を付けたツンが頬を綻ばせながら更に口を付ける。
川 ゚ -゚)「昨日のより香りが好みだ」
(´・ω・`)「昨日のはちょっとジャスミンっぽい香りが強かったからね。
あれはあれで僕は好きなんだけど」
( ^ω^)「今日のお茶も昨日のお茶も美味しいお」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは花より団子でしょ。それ、三つ目よね。少しは控えなさい」
( ^ω^)「おっおっおっ。おまんじゅうかと思ったら、持つと硬くて、
でも硬い皮を砕くように噛むと中の雲のように軽くふんわりとした生地が口の中に入って、
さらに奥から甘すぎないクリームがとろっと溶け出すんだお」
ブーンの感想を聞いて無言で一つ目に手をのばすツンとクー。
ξ゚⊿゚)ξ「あら」
川 ゚ -゚)「おっ」
食べた瞬間に笑顔を見せる二人。
それを嬉しそうに見つめるショボン。
ほんわかとした雰囲気が四人を包む。
('A`)「おまえら……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたも座ったら?」
ひとり立ったままでいるドクオ。
武器を持ったまま周囲を警戒しているのだが、それでも片手にはカップを持っている。
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('A`)「安全エリアとは言え圏外だからな。
モンスターが出ないってだけだ」
(´・ω・`)「ドクオのスキルがあれば周囲に来る人も分かるわけだし、座ってもいいんじゃない?
エリアに入ってきたら流石に警戒もするからさ」
('A`)モウアンナキマズイオモイハイヤダ
(;^ω^)「ああ…」
(;´・ω・`)「あれはね」
ドクオの呟きに、同意を見せる男二人。
しかし女二人は気にせずお茶をすすっている。
('A`)「一人立って警戒してりゃあまだ体裁が整うだろ」
(´・ω・`)「あれはちょっと肩身が狭い思いしたからね」
(;^ω^)「あの気分を『ちょっと』と言ってしまうショボンもなかなかだお」
つい先日も同じような場所でお茶にしたのだが、今いる場所と決定的に違うのが、
現在かなり需要のある道のため、通るプレイヤーがかなり多かったという事だった。
他のプレイヤーの視点で考えると、
安全エリアとは言え圏外で絨毯広げて呑気にお茶とお菓子を食べている彼らは、
かなり複雑な思いを抱かせてしまうに十分だった。
しかも五人パーティーのうち二人が容姿端麗な女性なのだから、
嫉妬も入り混じっていたことであろう。
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ξ゚⊿゚)ξ「まったく変なことを気にするんだから」
川 ゚ -゚)「この道は、と言うよりこれから行く町はもう需要も少ないから人も通らないし、
良いだろう。というか、ここまで来て人目を気にしても仕方あるまい」
ξ゚⊿゚)ξ「で、ショボン、これってどこで買ったの?」
(´・ω・`)「ああ、中身は昨日行った街のショップだよ。それを軽く揚げてみたんだ」
( ^ω^)「ショボンは凄いおね。もうそんなことできるんだから」
(´・ω・`)「調理スキルのレベルは槍より上だよ」
川 ゚ -゚)「ほお!今日のお弁当も楽しみだ」
('A`)「いいのかそれ」
呆れるドクオをよそに出発の準備を始める四人。
今日はあるエクストラスキルを得るために進んでいる五人だった。
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1.テイク・オフ
予定通り昼過ぎに町に辿り着き、圏内の広場で再び絨毯を広げる五人。
今度はドクオも大人しく座っている。
(´・ω・`)「さて、ここからが目的地への本当のスタートなわけですが。
っていうか、ほんとにみんなもやるの?」
( ^ω^)「おもしろそうだお」
(´・ω・`)「話によると結構大変らしいけど」
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず私は見学かな。
別にすぐ取らなきゃいけないスキルってわけじゃないし」
川 ゚ -゚)「そうだな。ゆくゆくは取ってみるのもよさそうだが。
それに全員これにかかりっきりになるのも不味くないのか?
取得クエスト中はそこから動けなくなるとかいう話だし。
ドクオはどうするんだ?」
('A`)「おれか?おれは…」
(´・ω・`)「クーとツンが取らないなら、二人が別行動する時にそっちで一緒に行動してほしいけど、
でもドクオも取っておいたほうが良いよね。あれ」
それぞれの手には黒パンで作ったサンドイッチがあり、更に目の前にはお茶の入ったカップがある。
また中央にはソーセージや野菜スティックが入ったバスケットが置かれていた。
そんな穏やかな空気の中これからの事を話しているのだが、
ドクオは一人気もそぞろに周囲をきょろきょろと見回していた。
( ^ω^)「さっきからどうしたんだお?」
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('A`)「あーうん」
( ^ω^)「もしかして、先輩を捜してるのかお?」
('A`)「…ああ」
(´・ω・`)「ドクオが時々言ってた?」
('A`)「ゲーム、先輩も手に入れたって言ってたから」
川 ゚ -゚)「黒鉄宮の碑に名前は…って、そうか。
ゲーム内の名前が分からないんだったな」
('A`)「なんて名前でやるかは聞いてなかったし。
おれはほら、もともとお前らと始める予定だったから、向こうで会うのはまた慣れた頃にって話してたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……会えると良いわね」
('A`)「…ああ。先輩も誰かと一緒にやるって言ってたから、独りではないと思うけどさ」
川 ゚ -゚)「ブーンも友達なのか?」
( ^ω^)「ちょっと話したことがあるくらいだお。
ショボンもあるおね」
(´・ω・`)「?」
( ^ω^)「ほら、一つ上の流石先輩だお。ちょっとおかしな」
(´・ω・`)「ああそっか、あの先輩か。発想が面白い。
去年の文化祭で変な格好して歩いてたよね」
( ^ω^)「そうだお!そうだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「あーなんか見た覚えあるかも。なんかアフリカの原住民みたいなカッコしてた人よね」
('A`)「あの時やってた深夜アニメに出てるキャラのコスプレだったんだけど、
似てる小道具が揃わなくてオリジナル要素が強すぎて、一見ただの変人だったんだよ」
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( ^ω^)「確かその元のキャラクターを当てたのがドクオだけだったんだおね」
('A`)「うん。その縁で仲良くさせてもらったんだ」
川 ゚ -゚)「しかし珍しいな。ショボンが一度でも話したことのある人を忘れるなんて」
(´・ω・`)「いや、忘れたわけじゃないんだけど、なんとなくイメージが一致しないんだよね。あの人」
( ^ω^)「?そうかお?」
('A`)「ああ、三年になってから少し落ち着いた気はしたけど、相変わらずだったぞ」
(´・ω・`)「そうなんだ」
('A`)「あ、でも…」
(´・ω・`)「どうかした?」
('A`)「春休みの間に交通事故あったんだよ。先輩。
だから始業式に来れなくって…。二週間くらい遅いスタートだったのかな。
一緒に観に行く予定だった映画の日に待ち合わせ場所に来なくって、
携帯もつながらないから心配してたら、夕方お姉さんから連絡が来て。
前日の夜に結構大きな事故にあったって聞いて…」
ξ゚⊿゚)ξ「大変だったでしょうね」
川 ゚ -゚)「無事でよかったな」
('A`)「運び込まれたのがショボンの所の病院だったからお見舞いに行ったけど会えなかったくらいだしな。
なんか外傷は少ないけど頭を打って意識が戻らなくて、集中治療室ってところにいた」
(;^ω^)「おっおっ」
川;゚ -゚)「助かってよかったな」
('A`)「休み明ける少し前にも行ったけど会えなくて…お姉さんと妹さんにすごく恐縮された」
ξ゚⊿゚)ξ「妹さんもいたんだ。お兄さんがそんな状態じゃあ、心細かっただろうな」
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('A`)「確か男の兄弟もいるはず。
部屋が一緒で、気軽にオナ」
(;^ω^)「ドクオ!」
(;´・ω・`)「ドクオ!」
('A`;)「お、おおう」
ξ゚⊿゚)ξ?
川 ゚ -゚)?
('A`;)「お、おな、同じ部屋だといろいろ大変だって言ってた。
それで結局会えたのは登校してきてからだったけど、
その時はおれの顔見て不思議そうな顔してたっけ。
ちょっと記憶がおかしくなってるって言ってたから、同じクラスの人達も心配してた」
(´・ω・`)「頭を強く打ったのなら、記憶障害とかあったのかな」
('A`)「もっと休んだらどうですかって言ったら、出席日数が厳しいから来てるとも言ってたな」
ξ゚⊿゚)ξ「うちの学校、そんなの気にしてたんだ」
('A`)「そりゃ気にするだろうよ。だろ?ショボン」
(´・ω・`)「一応ね。でも要所要所の行事への出席とテストを受けて、
ちゃんとした成績が取れてれば卒業は出来たはず」
('A`)「え?そうなの?」
(;^ω^)「さすがにゆるくないかお?」
川 ゚ -゚)「だが、確かちゃんとした成績ってのが肝だっただろう?」
(´・ω・`)「うん。学年10位内とか、全国統一模試での上位成績とか」
ξ゚⊿゚)ξ「あらら」
('A`)「じゃあ無理だ……よな。多分」
(´・ω・`)「僕に聞かれても分からないけど…」
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支援
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ξ゚⊿゚)ξ「あら、そこら辺の情報収集もしているのかと思った」
(´・ω・`)「張り出された順位表は見には行ってたけど、さすがに覚えてないよ」
川 ゚ -゚)「(嘘だな)」
ξ゚⊿゚)ξ「(嘘ね)」
( ^ω^)「(ショボンなら全部覚えていそうだけど…)」
('A`)「(別に教えてくれてもいいのに。確か成績悪くはなかったよな。先輩)」
(´・ω・`)「でも、今日はいつにも増して探しているみたいだけど、何かあったの?」
('A`)「いや、あの先輩なら多分あのスキルは取りたいスキルだと思うから、
もしかしたらいるかも…って思って」
ξ゚⊿゚)ξ「でもこの情報って、あの情報屋さんとお金以外の取引で手に入れたんじゃないの?
まだほとんどの人は取れていないスキルって話よね。確か」
川 ゚ -゚)「ツン…」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
('A`)「まあ、そうなんだけどさ。
先輩ならどこかから聞きつけて、やってきてもおかしくないよなって思って。
こういったMMORPGはおれよりキャリア長いしよく知ってるから、
先輩もアルゴから情報を手に入れてたりするかもしれないし」
ξ゚⊿゚)ξ「……ごめん」
('A`)「謝る様な事じゃないさ」
( ^ω^)「会えるお」
('A`)「?ブーン?」
( ^ω^)「会えるお。今日は会えなくても、必ず。会えるお」
川 ゚ -゚)「そうだな」
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ξ゚⊿゚)ξ「ええ。そうね」
(´・ω・`)「そうだね。会えるよ」
('A`)「ああ…そうだな」
何かを吹っ切る様に手に持ったサンドイッチに食らいつくドクオ。
それを見た四人も、それぞれに思いを持ちながら食事を続けた。
全てをたいらげ、食後にもう一杯ずつお茶を飲んだ後出発の準備を始めた五人。
この町には転移門は無いが、東西南北に一つずつ出入り口である門があり、
ショボン達は手に入れた情報通りに東門に向かった。
川 ゚ -゚)「食事はこっちの芝生でもよかったな」
(´・ω・`)「そうだね。こっちも日差しが良い感じだ。
芝生もさっきのところより背が高いかな」
ξ゚⊿゚)ξ「絨毯あるし、そう変わらないでしょ」
( ^ω^)「あの絨毯はお買い得だったおね」
('A`)「ストレージは大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「うん。見た目より容量は小さいから」
('A`)「なら良いけど、いざとなったら捨ててアイテムしまえよ」
(´・ω・`)「うん。分かってる。ありがと」
('A`)「お茶とかも……!!」
会話の途中でいきなり駆け出すドクオ。
(´・ω・`)「ドクオ?」
( ^ω^)「どうしたんだお!?」
その後を追うブーン。
三人もそれに続く。
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支援
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東門のそば。
向かって右側の広場にそびえたつ大樹。
その下で自分のウインドウを操作している青年に向かって走っていくドクオ。
そしてそのまま叫んでいた。
('A`)「せ!先輩!?」
青年が振り向いた。
('A`)「先輩…ですよね……良かった…」
青年に駆け寄るドクオ。
(´<_` )「あれ、えっと…とくなが?」
('A`)「ゲームを手に入れたって言ってたから、ずっと気になってたんです。
このスキルの情報を手に入れた時、もしかしたら会えるかもって…。やっぱり来てたんですね!
タイミングが重なって良かった!」
(´<_` )「え?あ?え?」
ドクオの勢いに押されるように対応する青年。
( ^ω^)「流石先輩!」
('A`)「ブーン!先輩がいた!」
( ^ω^)「おっおっ!すごい偶然だお!」
(´<_`;)「ないとう…だったよな」
('A`)「【体術】スキルの事を知った時、先輩なら絶対取るだろうと思ったんです!
やっぱり、
『俺の妹が宇宙人な訳がないけど
幼馴染がゾンビで生き別れた姉さんが魔法少女になっていたから
もしかするともしかするかもしれない!』、
略して『オレナイ!』、に出てくるポコちゃんをおれの嫁と公言している先輩だったら、
このスキルを取りに来るはずだって!」
ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」
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(;^ω^)「ラノベで深夜アニメをやってたのは知ってるけど、細かいキャラクターは僕もちょっと…」
ξ゚⊿゚)ξ「知ってる事にもひく」
川 ゚ -゚)「なるほど、流石先輩は『オレナイ!』の主要キャラの一人、
主人公のことを陰でずっと見ていて、
暴力的な事件に巻き込まれそうになるといつの間にか傍に現れて敵を片付けて、
驚いた主人公の顔を見ると頬を赤らめてもじもじしながら主人公の髪の毛を一本貰って去っていく、
『拳 法子(けん ぽうこ)』ちゃん、通称ポコちゃんのファンなのか」
ξ゚⊿゚)ξ「何そのストーカー怖い。だいたい髪の毛貰って何するのよ」
川 ゚ -゚)「その事がこの先どう絡んでくるのかがあの小説の肝の一つだ。
32巻まで出ているが、まだその謎は解けていない」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなに出てるの!?ながっ!」
川 ゚ -゚)「年に数冊出してるから、まだ十年少しのはずだ。
ちなみに彼女は確か一巻の終わりにシルエットのみで登場してから毎巻出ている人気キャラだ。
ここに来る前に丁度32巻が出たので読んだが、やっと宇宙に行って戦い始めたな」
ξ゚⊿゚)ξ「…ラブコメなのかと思ったら戦うんだ」
( ^ω^)「(まさかクーが読んでいたとは思わなかったお)」
川 ゚ -゚)「いや、基本オレツエーなハーレム系ラブコメだ」
ξ゚⊿゚)ξ「よくあるやつなのね。でもクーが読んでるなら読んでみようかな」
( ^ω^)「(僕には知ってるだけで引くとか言っておきながらかお)」
ξ゚⊿゚)ξ「だってあんたが部屋で一人でそんなの読んでたら普通ひくし」
( ^ω^)「…普通に心の声に反応するの止めてほしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは顔に思ってることが出すぎなのよ」
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支援
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('A`)「本当良かった。生きて会えて」
(´<_`;)「あ、ああ、そうだな」
(´・ω・`)「……スキルを取りに行かれるところですか?」
四人の勢いに多少引き気味に反応していた青年だったが、
最後に話しかけてきたショボンに落ち着いた笑みを返す。
(´<_` )「あ、いや、おれは」
('A`)「じゃあ一緒に修行しましょう!な、ショボン、良いよな」
(´<_` )「人を……え?」
(´・ω・`)「もうゲットされたのなら色々とお聞きしたかったんですが…。
これから一緒に取りに行くのは、ぼくは別に良いよ。みんなも良いのかな?」
(´<_` )「いや、おい、おれは」
( ^ω^)「いいおー」
ξ゚⊿゚)ξ「見たことある人だし」
川 ゚ -゚)「私も構わん」
('A`)「先輩!」
(´<_`;)「おいおい、」
(´・ω・`)「…じゃあ、行きましょうか」
(´<_`;)「あ、いや、だから…」
('A`)「さあ先輩!きっとポコちゃんの必殺技、スプリングシュガーキックが出来るようになりますよ!
もしかしたらオータムペッパーパンチも出来るようになるかも!」
(´<_`;)「ねえねえ、おれの声聞こえてる?」
珍しく顔全体に喜びをあらわしているドクオ。
それを見ているからこそ四人は青年の声を聞こえないふりをしていた。
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川 ゚ -゚)「相変わらずの笑顔だな」
ξ゚⊿゚)ξ「さすがに私達は慣れたけどね」
( ^ω^)「満面の笑みとかほとんどしないから、顔の筋肉が慣れてなくてどこかぎこちないんだお」
青年の背中を押して、町の外へと足を進めるドクオ。
その後ろを三人が続く。
川 ゚ -゚)「特にこの世界に来てからは、初めて見たかもな」
( ^ω^)「…だおね」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ気にしてるのかしら」
( ^ω^)「それは…きっといつまでも気にしてるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……まったく。ま、それはもう一人もだけど」
川 ゚ -゚)「ああ、そうだな」
ちらっと後ろを見る二人。
そこにはまだ歩き始めていないショボンがいた。
川 ゚ -゚)「ショボン?どうかしたか?」
(´・ω・`)「あ、いや。大丈夫。ちょっとクエスト内容を整理していたらボーっとした」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオがもう出ちゃうわよ。外に」
(;´・ω・`)「いやいやいやいや。
ドクオー!!」
クーに話しかけられて歩き出していたが、慌てて駆け出すショボン。
('A`)「早く来いよ!」
珍しく大声を出したドクオに引っ張られるように、三人も駆け出した。
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目的地への道は、決して楽なものではなかった。
岸壁をよじ登り、小さな洞窟に潜り、スライダーの様な地下水流を滑る。
そして戦闘。
手にした情報通りの場所でのみで起こった戦闘ということもあり、
大きな問題も無く勝つことが出来た。
(´<_` )「君らは強いな」
('A`)「頑張りました!」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、これくらいわね」
( ^ω^)「いっぱい訓練して、戦ったんだお」
川 ゚ -゚)「ブーンはもう少し剣技も練習しないとだけどな」
(;^ω^)「おー」
そして合計二時間ほど移動すると、目的の場所に辿り着いた。
そこは二層の東の端。
ひときわ高くそびえる岩山の頂上の近く。
周囲を岸壁に囲まれた小空間の中に、泉と一本の樹と、一つの小屋があった。
(´・ω・`)「着いたみたいだね。あとはクエストを受けるためのNPCに会って話しかけて…」
ショボンが先頭を歩き、小屋の前に移動する。
一度立ち止まると全員が揃ったことを一度確認し、小屋のドアを開けた。
そしてそこには、情報通り初老の男が一人いた。
土間の上で座禅を組んでいるため身長は分かりにくいが、
筋骨隆々たる体躯とバランスから、大男であることがうかがえる。
スキンヘッドに口の周りの豊かな髭を携えた見た目は、オーソドックスな【拳法の師匠】である。
ξ゚⊿゚)ξ「あれ?」
( ^ω^)「人を指さしちゃだめだお」
川 ゚ -゚)「そのようだな。頭の上に【!】マークもあるし」
(´・ω・`)「さて、多分全員でやれるはずだけど、ツンとクーはやらないとして」
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ξ゚⊿゚)ξ「やっぱやる」
(´・ω・`)「へ?」
川 ゚ -゚)「私もやろう」
( ^ω^)「どうしたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「まーほら、あれよ。またここに来るの面倒くさいじゃない」
川 ゚ -゚)「そういう事だ。食料は充分持ってきたんだろ?」
(´・ω・`)「うん。五人で一週間以上、六人でも一週間は持つはず。
色々器具と調味料も持ってきたから作れるし、
来る途中で採取できそうな食べ物もチェックしておいたから、
万が一足りなくなっても街まで戻らなくて大丈夫だと思う」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、そういう事で」
川 ゚ -゚)「だな」
(´<_`;)「お、おれは」
(´・ω・`)「一応パーティーに誘いますので、受けてください。
同一パーティーにいないと一緒に始められないかもしれないので」
(´<_` )「いや、だから」
('A`*)「先輩!どちらが先に取れるか競争しましょう!」
(´<_`;)「ああ…うん…」
ドクオの勢いに押されて、ショボンが送ったパーティーの誘いにYESのボタンを押す青年。
(´・ω・`)「ありがとうございます。
……ゲームでは【Tei】さんなんですね。
読み方は『テイ』さんでよろしいですか?」
(´<_`;)「あ、ああ…。うん。それで良いよ」
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('A`)「おれは『先輩』で良いですよね?」
( ^ω^)「ブーンもそっちが良いお」
(´<_` )「別に……好きに呼んでくれていい」
('A`)「ハイ!
あ、でもブーン、『流石先輩』は止めろよ。
こういうところでリアルの名前を呼ぶのはマナー違反だからな」
( ^ω^)「おっおっお。ごめんだお。先輩もごめんなさいだお」
(´<_` )「ああ、いや、いいさ。別に」
(´・ω・`)「それじゃあ、話しかけるね」
中央の土間にどっかりと腰と座っている大男の前に立つショボン。
その後ろに全員が並ぶ。
NPC「お前達は入門希望者か?」
(´・ω・`)「はい。そうです」
NPC「修行の道は長く険しいぞ?」
(´・ω・`)「存じております」
ショボンの言葉を受け、初老の大男の頭の上のアイコンが【!】から【?】に変わった。
そして六人全員の前にクエスト受領のログが現れた後、
初老の男…師範に促されて奥のドアから外に出た。
そこは岩壁に囲まれた庭の端に位置し、巨大な岩が六個並んでいた。
一つ一つの大きさは高さ二メートル、差し渡し一メートル半ほどあるだろうか。
一番手前の岩をポンと叩いた師匠は、左手であごひげをしごきながら言った。
(師匠)「汝たちの修業はたった一つ。
両のこぶしのみでこの岩を割るのだ。
成し遂げれば、何時にわが技の全てを授けよう」
.
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(;´・ω・`)「話には聞いていたけど」
('A`;)「…すごく……おっきいです」
(;^ω^)「そんなこと言って、ドクオは余裕あるみたいだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「やっぱりやめようかな」
川;゚ -゚)「ツン、二人で抜けるか?」
(´<_`;)「なにこれ」
(師匠)「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。
汝たちには、その証を立ててもらうぞ」
呆然と岩と見つめる六人に構うことなく、師匠は懐からアイテムを取り出す。
それは、大きく、太い、立派な……筆。
全員が呆気にとられていると、左手にいつの間にか握られていた小さな壺に筆の先を入れると、
電光石火、全員の目の前をすり抜けた。
(師匠)「うむ」
満足そうに頷き、懐に筆と壺をしまう師匠。
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(三´・ω・`三)「えっと…なにこれ」
(へ'A`へ)「へ?」
( s^ω^s)「おお?」
ξシ゚⊿゚リ)ξ「ちょっとまった!!」
川二゚ -゚ニ)「私はどんなだ!?」
(>´<_`<;)「……おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」
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(師匠)「その証は、汝たちがこの岩を割り、修行を終えるまで消えることは無い。
信じているぞ、我が弟子達よ」
騒然とした六人を後目に、悠然と歩いて小屋に戻った師匠。
川#二゚ -゚ニ)「ショボン!」
両頬に二本ずつ髭を書かれたクー。
(;三´・ω・`三)「い、いや、情報にこれは無かった」
ショボンの両頬には三本ずつ。
(ヘ'A`へ;)「おれも聞いてない!」
鼻の下からほうれい線に沿って両側に一本ずつ髭を書かれたドクオ。
某ラーメン男の顔を思い浮かべてもらえると分かりやすいだろう。
(;s^ω^s)「おっおっお」
ドクオと似ているがもじゃもじゃっとしたあからさまにおかしな髭をかかれたブーン。
(>´<_`<;)「これ、これを割らないと消してもらえないのか?」
比較的まともな髭を書かれたテイ。
ξ#シ゚⊿゚リ)ξ「あの鼠!!!!終わったら覚えてろ!!!」
傍の泉で自分の顔を見たツンが唸る。
右の頬には細い三本のありがちな髭。左の頬には失敗したのか縦に二本の髭。
全員が「多分自分のはツンよりましだろう」と思ったとか考えたとか。
しかし切り替えの早さがこの六人に共通した良さであろう。
一度全員絶叫した後、それぞれに闇雲に割り振られた岩に拳を打ち込んでいった。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「鼠を呼べ」
五日後。
六人は最寄りの町のレストランにいた。
川 ゚ -゚)「…途中で食料が切れたのは痛かったな…」
ξ゚⊿゚)ξ「フード付けたままレストランに入るのはもうごめんよ」
(´・ω・`)「まあめでたく全員【体術】スキルゲットおめでとうと言うことで」
('A`)「先輩とブーンとおれが三日で、ショボンとツンとクーが四日か」
(´・ω・`)「パラメーターのどこが一番なのかな。
筋力値は五人はそれほど変わらないはずだけど」
( ^ω^)「ご飯が足りなくなったのは参ったお」
(´・ω・`)「全員食べまくったからね。僕も人のこと言えないけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「何はともかく、とりあえず鼠を呼べ」
('A`;)「まあまあ」
(;´・ω・`)「あとで話はしておくよ」
川 ゚ -゚)「ん?来るのか?」
(´・ω・`)「さっきメッセージを送ったら、また情報の取引をしたいって言われたんだ。
で、後でこっちに来るって。時間も遅いし。今日はこのまま泊まることにしよう」
川 ゚ -゚)「ふーん。そうか」
(´・ω・`)?
( ^ω^)「じゃあそれまでは、お疲れ様の会だおね。
先輩もお疲れ様だお」
(´<_` )「ほんとだよ。あのひげには参った」
ξ゚⊿゚)ξ「テイはまだましでしょ」
(´<_` )「ツンに言われると何も言えんな」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
和気藹々とした空気に包まれる六人。
頼んだ食事がテーブルに並べられ、ささやかな宴は二時間ほど続いた。
.
-
二件目の店を出ると、日は落ちて街灯の明かりがぼんやりあたりを照らしていた。
視界の隅で時間を確認したショボンが口を開く。
(´・ω・`)「じゃあ僕はアルゴさんと話してくるから、
この後の行動はさっきの打ち合わせ通りで」
('A`)「ん。さっき手続きした宿屋に行ってる。けどどうする?一緒に行くか?」
ξ゚⊿゚)ξ「私が一緒に行って鼠に一発…」
(;^ω^)「それはさすがにツンさんおやめになった方が」
ξ゚⊿゚)ξ「冗談よ。クー、さっさと戻ってお風呂はいろ」
川 ゚ -゚)「ん?……あ、ああ。そうだな」
('A`)「じゃあ俺が一緒に」
( ^ω^)「僕が行くかお?」
(´・ω・`)「いや、待ち合わせはこの先のカフェだから、大丈夫だよ。
ただ、何かあったらすぐメッセージは入れるから、
ぼくが戻るまでどちらかはすぐ動ける状態でいてもらえるかな」
('A`)「りょーかい」
( ^ω^)「わかったお」
(´・ω・`)「テイさんも、今日はゆっくり休んでください。
これからの事はまた明日の朝よろしくお願いします」
(´<_` )「あ、ああ。……そうだな。今日はゆっくりさせてもらうよ」
(´・ω・`)「じゃあドクオ、よろしく」
('A`)「おう。みんな行こう」
ぞろぞろと宿屋に向かって歩いていく五人。
ショボンはそれを見送った後、街灯の光の当たらぬ陰をちらっと見てから歩き始めた。
(アルゴ)「ショボン、【体術】スキルゲットおめでとう」
.
-
鼠を呼べにフイタ
-
(´・ω・`)「アルゴさんはもう一回チャレンジしないんですか?」
陰から自分の斜め後ろに現れたアルゴ。
しかしショボンはそれに驚くことは無く、淡々と会話をはじめた。
(アルゴ)「……取れたら捗りそうだから、もう少しレベルが上がって情報を仕入れてからだネ」
(´・ω・`)「ぼく達五人、開始時のパラメーターと、スキルゲット時のパラメーター。
情報はそれでどうですか?」
(アルゴ)「……それは色々捗るネ。でも」
(´・ω・`)「もちろん五人の誰のパラメーターかは明らかにしません。
【体術】スキル以外のスキルに関しても。
五人だから、五分の一だから出来る情報公開の仕方になりますが、
それでも貴重だと思っています」
(アルゴ)「……いくら欲しいんダ?」
カフェの前を通り過ぎ、路地へと入るショボン。
少し奥に入り立ち止まり、後を付いてきたアルゴに向き合った。
(´・ω・`)「アルゴさんにとっても汎用性と有用性の高い情報だとは思いますが、
その分取扱いには細心の注意を図らなければいけない情報だとも思います」
(アルゴ)「ああ、その通りだヨ」
(´・ω・`)「コルではないモノとの交換を」
(アルゴ)「今度はなんの情報が欲しいのかナ?」
(´・ω・`)「今、もう一人の顔は覚えてもらいましたか?」
(アルゴ)「ああ。そういう要望だったからネ。
だからわざわざここに出向いたんだし、彼の情報も持ってきたヨ」
(´・ω・`)「ありがとうございます。情報料はこちらで」
(アルゴ)「…確かに。
これが調べた結果だヨ。」
二人の目の前に浮かぶウインドウ。
ショボンはさっと一読した。
.
-
(アルゴ)「けど知り合いじゃないのかい?ドクオとブーン君が先輩と呼んでいたけど」
(´・ω・`)「ぼくが今考えているのはまだ仮説です。
僕がこれからアルゴさんに頼む情報の結果で、確定するか、間違いだと判明するか。
ですから、まだ分かりません」
(アルゴ)?
(´・ω・`)「お願いできますか?」
(アルゴ)「持ちつ持たれつとは言え、ショボンには色々世話になってるからネ。
わかった。受けるよ」
(´・ω・`)「ありがとうございます。では、詳細と今回の情報を送ります」
(アルゴ)「ああ、頼むヨ」
ウインドウを出し、既に書いてあったメッセージをアルゴに送るショボン。
アルゴは視界の隅にメッセージ到着のしるしが出たのを見て、ウインドウを開いた。
(アルゴ)「………」
メッセージの一文字一文字をじっくりと読むアルゴ。
そして読み終わると、にやりと笑った。
(アルゴ)「なるほど、だからわざわざ……カ。
まったく骨の折れる依頼だヨ」
(´・ω・`)「でも、アルゴさんなら難しくは無いでしょ?」
(アルゴ)「ま、記憶と情報を総動員させるサ。
分かり次第連絡する」
(´・ω・`)「ありがとうございます。追加情報があったら送ります。…よろしくお願いします」
踵を返して路地を出るアルゴ。
その姿はそれと同時に夜の闇に溶け込んだ。
.
-
2.風紋
次の日。
まだ空は暗く、日の光が町を包むまでには一時間以上あるだろう。
宿屋の階段を下りる人影。
(´<_` )
階段を折り切ると、一度だけ振り返った。
そして数秒そうした後、再び出口に向かって歩き始める。
だが、その前に一人の男が立ち塞がった。
(´<_` )!
ロビーのソファーに座っていたショボンが、悲しそうに目の前に立っていた。
(´<_` )「……ショボン…」
(´・ω・`)「こんな時間に、どちらへ?」
(´<_` )「いや、…眠れないからちょっと外の風に…」
(´・ω・`)「フル装備で?」
(´<_` )「何があるかわからんからな」
(´・ω・`)「町の外に出るつもりなんですか?」
(´<_` )「…ああ」
下がっている眉を更に下げて自分を見るショボン。
それは強くは無いが自分を見透かすような冷静さを持ち、十秒ほどで心が折れる。
(´<_` )「どこまで、分かっている?」
(´・ω・`)「おそらくは、すべて」
(´<_` )「白日の下に晒す気か?」
(´・ω・`)「……はい」
.
-
支援
-
(´<_` )「そう……か」
無言でお互いを見る二人。
(´<_` )「わかった。お前の指示に従おう」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
(´<_` )「どうすればいい?」
(´・ω・`)「とりあえず、このまま。パーティーとして行動してください」
(´<_` )「良いのか?」
(´・ω・`)「はい」
(´<_` )「そうか…わかった」
踵を返し、階段に向かう。
(´<_` )「ショボン、お前も早く寝ろよ。
いつも誰よりも早く起きてるようだけど、ちゃんと眠ってるのか?」
(´・ω・`)「はい。ありがとうございます」
階段の手前。
先程と同じ場所で立ち止まり、少しだけ振り返ってショボンを見た。
(´<_` )「こちらこそ…。ありがとう」
そうつぶやいた後、階段を上り始めるテイ。
窓の外から、ほんの少し朝の光が差し込んだ。
.
-
八日後
('A`)「今日の狩り終了!」
(´<_`;)「ふぅ…」
最前線の層でフィールドダンジョンの狩りを終わらせた六人は、
疲れた体を癒すために街に帰ってきた。
( ^ω^)「先輩もコンビネーションに慣れてきたおね」
(´<_`;)「まだ付いていくのに精いっぱいだがな」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり攻撃力が高い人が一人いると違うわね」
川 ゚ -゚)「ああ。狩りがはかどるな」
('A`)「おれ達は基本全員バランスかスピードの軽量系だからな」
【体術】スキルを獲得後低層階で一日狩りをした後、少しずつ狩場を上層階に移していた。
もともと五人はスキル獲得前から最前線の層で狩りをしていたため問題なかったが、
テイは下の層を中心にしていたこととメンバーとのスイッチ等、
コンビネーションを鍛えるために徐々に上げてきていた。
(´<_` )「しかし、前から思っていたんだが、
何故ショボンはあんなに早くモンスターの出現が分かるんだ?
ポップする位置を判別しているようだが」
('A`)「ああ、ショボンは」
(´・ω・`)「ごめんみんな。ちょっと良いかな」
五人の後ろを歩いていたショボンが声をかける。
何事かと振り返る五人。
川 ゚ -゚)「どうした?」
(´・ω・`)「ちょっと行きたいお店があるんだけど、みんなで行かない?」
ウインドウが出したままなところを見ると、今情報が来たのであろうことが伺えた。
.
-
( ^ω^)「夕飯かお?」
(´・ω・`)「そうだね。結構おいしいらしいんだ。転移門で飛べるから、外には出なくていいし」
ξ゚⊿゚)ξ「別に良いんじゃない。美味しかったら後でショボンが再現するでしょ?」
川 ゚ -゚)「私も良いぞ。新しいお茶も欲しい」
(;´・ω・`)「新作のお茶はあるか分からないけど」
('A`)「いいんじゃないか?」
(´<_` )「ああ。おれも問題ない」
( ^ω^)「おいしいのなら問題ないお」
(´・ω・`)「じゃあ行こうか。宿屋も継続じゃないからそっちで探しても良いし」
その言葉に全員が頷き、今度はショボンが先頭で転移門広場に向かった。
.
-
3層西の街。
街外れのカフェレストラン。
ξ゚⊿゚)ξ「ここって前にも来たことなかった?」
川 ゚ -゚)「確か、あった気がするが…」
('A`)「新しいメニューでも出たのか?」
( ^ω^)「味は良かったけど、お肉が硬かった覚えがあるお」
(´<_` )「おれは初めてだ。みんな色々行っているんだな」
周囲にはプレイヤーもほとんどおらず、中にも一組いるだけのようだ。
(´・ω・`)「とりあえず中に入ろう。ダメそうだったら他の店に行っても良いし」
ショボンに促され、中に入る五人。
すると中にいた一組のうち、奥に座った女が軽く手を上げた。
(アルゴ)「遅かったナ。ショボン」
ξ゚⊿゚)ξ「鼠!」
('A`)「…アルゴ?」
(アルゴ)「鼠って呼ぶのはいない時だけにしてほしいネ。ツンちゃん」
楽しそうに語尾を上げてツンの名を呼んだアルゴに、ツンの目尻が吊り上った。
ξ#゚⊿゚)ξ「あんたのおかげであたしはね!」
(アルゴ)「おや、直接取引をしたことは無いはずだけど、何かあったのかイ?
……ひげ……かナ?もしかして」
ξ゚⊿゚)ξ「!……な、何でもないわよ」
(アルゴ)「残念。面白い情報が手に入ると思ったのに」
('A`)「なんでお前がここに?」
(アルゴ)「アフターサービスだヨ」
笑いながら立ち上がり、軽い足取りですり抜けながら出口に向かう。
.
-
(アルゴ)「じゃ、ショボン。依頼はここまでダ。後はヨロシク」
(´・ω・`)「あれ、結果は気にならないの?」
(アルゴ)「…人情話は嫌いなんでネ。また今度聞かせてくれればいいサ」
(´・ω・`)「ありがとう」
(アルゴ)「じゃあナ」
ドアを開け、外に出るアルゴ。
一連の流れを、ショボン以外は不思議そうに見守り、出ていく背中を見送った。
('A`)「おい、ショボン。いったいこれは」
自分に問いかけるドクオを視線で制し、残った一人の座るテーブルに近寄るショボン。
そしてテーブルの横に立ち、会釈をした。
(´・ω・`)「お久しぶりです。先輩」
( )「…生徒…会長?」
(´・ω・`)「良かった。覚えていていただいて」
('A`)?
( ^ω^)?
ξ゚⊿゚)ξ?
川 ゚ -゚)?
(´<_` )
( )「こんなゲームをやるようには見えなかったけど、きていたんだな。
眼鏡じゃないし、ちょっと混乱したが」
(´・ω・`)「先輩もよく知っている友人がやっていたので」
( )「友達?…!あいつか!?いるのか!?」
.
-
(´・ω・`)「ドクオ!こっちに!」
ショボンに呼ばれ、ぎこちなくテーブルに近付くドクオ。
そしてショボンの隣に立ち座っている男の顔を見る。
('A`)「え?」
( )「良かった!生きてたんだな!
気にはなっていたけど、こっちで付ける名前を聞いてなかったから!」
('A`)「どういうこと…」
(´・ω・`)「アルゴさんとの約束だと思いますが、もう立って下さって大丈夫です」
( )「そうか!」
男が立ち上がり、ドクオの正面に立った。
( ´_ゝ`)
(;^ω^)「お?」
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
川;゚ -゚)「なん…だと…」
(´<_` )「……」
その男の顔は、テイと同じだった。
('A`)「せん…ぱい?」
( ´_ゝ`)「生きてたんだな!
なんか、ほら、一層の攻略依頼、色々一部で酷い言われ様になっていたから気になっていたんだ」
ハイタッチをしようと手を振り被るが、ドクオは呆然と自分より高い位置にある顔を見つめている。
( ´_ゝ`)「なんだ、どうした?
久し振りにこの美貌を見て感動してるのか?」
.
-
('A`)「ああ……先輩だ」
( ´_ゝ`)「何言ってんだお前」
(´・ω・`)「先輩、あっちの顔も懐かしくはなですか?」
( ´_ゝ`)「ん?」
目の前のドクオに会えたのが本当に嬉しかったのか、
全く周囲に気を配らずにしゃべり続けていた男だったが、
ショボンに促されてブーン達を見た。
( ´_ゝ`)「おお!お前も来てたのか!こいつの友達の、だよな」
( ^ω^)「は、はい…。おー。懐かしノリだお」
( ´_ゝ`)「可愛い子二人もつれてまったく。
ま、おれの嫁にはかなわないけどな。
みんなおれ達と同じ学校の友…達…………え?」
ブーンの後にツンとクーの顔を見て軽口を叩いた後、
その後ろで自分を見ない男の顔を見て表情が輝いた。
( ´_ゝ`)「弟者!」
駆け寄ろうと踏み出した一歩。
しかし二歩目は出ず、喜びに満ちた表情が戸惑いに変わった。
( ´_ゝ`)「……生きていてくれて、ありがとう……。
いや、生きているのは黒鉄宮の碑の名前を毎日見に行っていたから知っていたが…」
そしてテイと同じように少しだけ顔を伏せ、唇をかんだ。
( ´_ゝ`)「会えて…嬉しい」
最後の呟きは、そばにいたドクオにしか聞こえなかった。
それに対して、全く喋らないテイ。
ただ少しだけ悲しそうに、横を向いている。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「…ちょっと、どういうこと?
ショボン、説明してくれるんでしょ」
川 ゚ -゚)「ああ、そうだな。ショボン。説明を」
(´・ω・`)「もちろん。僕も聞きたいことがあるしね。
ただ、このままここで話すのは不用心だから。
先輩、ここに来る前にアルゴさんと部屋を借りたかと思うんですが」
( ´_ゝ`)「ああ。借りてきた。ちょっと広いリビングのある」
(´・ω・`)「そこで話しましょう。連れて行ってもらえますか」
( ´_ゝ`)「……分かった。でもその前に一つ、聞いていいか?」
(´・ω・`)「なんでしょう?」
( ´_ゝ`)「この状況は、全部お前が作り上げたってことで良いのか?」
(´・ω・`)「はい。そう思っていただいて問題ありません」
( ´_ゝ`)「……わかった」
状況が分からず唖然としているドクオの頭を軽く叩き、
通路にいるブーン達に向かって歩き始める男。
その後ろをドクオを連れたショボンが続いた。
その動きにつられてブーン達が先にドアに向かい、表に出る。
( ´_ゝ`)「こっちだ」
最後に店を出たショボンを確認し、彼は先頭を切って歩き始めた。
.
-
3.追想〜ある遠い日の〜
連れて行かれたのは、高級に分類される宿屋だった。
最上階、といっても四階建てだがその一番奥にあるこの部屋は、
大きなリビングと、ベッドが二つある寝室。
そしてゆったりとした洗面所とバスルームが備え付けてある。
( ^ω^)「すごいおね」
なんとなく、状況は全く分かっていないが状況に順応したブーンが呑気な声を出し、
ツンとクーに睨まれる。
部屋の中央には二人掛けのソファーが二つ。
ローテーブルを挟んで向かい合わせに置かれており、
今は片方にテイが座り、正面に同じ顔の男が座っている。
(´・ω・`)「アルゴさんお勧めの場所なので、外に漏れることも無いと思います。
もちろん聞き耳スキルを鍛えたプレイヤーがドアの外に居たら問題ですが、
場所が奥まっているので、注意していれば分かるでしょう」
二人以外は壁に沿って立っており、
特にドクオは扉のすぐそばに立って、気持ちを半分外に向けていた。
誰も何もしゃべらず、静寂が部屋を支配していた。
(´・ω・`)「……何から説明すればいいか考えましたが、まずは、状況を説明します。
それで良いですか?先輩、テイさん」
( ´_ゝ`)「ああ、頼む」
(´<_` )
テイは喋ろうとせず、ただ頷いた。
.
-
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)
('A`)
残りの四人も黙ってショボンを見ている。
(´・ω・`)「本来ならばマナー違反ですが、あえて紹介させていただきます。
みんな、こちらがぼく達と同じ学校の先輩。『流石 克睦』先輩だよ」
('A`)!
( ^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)!
( ´_ゝ`)「…徳永、内藤、久しぶりだな。こんな場所だが、会えて嬉しいよ。
そっちの美人二人もうちの学校だよな?
なんとなく見覚えがあった」
('A`)「あ、はい。お久しぶりです。おれも、会えて嬉しいです」
(;^ω^)「ぼ、ぼくもですお!で、でも…」
(´<_` )
自分達に久しぶりと声をかけた『先輩』に挨拶をしつつも、
今まで『先輩』と呼んでいたいテイを見てしまう。
(´・ω・`)「そして、テイさんは、先輩の弟さん…でよろしいですか?」
(´<_` )「ああ。双子の弟だ」
四人が息をのむのが分かる。
.
-
(´・ω・`)「よろしければ、リアルの名前を、出来れば漢字も教えていただいてもよろしいですか?」
(´<_` )「ん?ああ、いいぞ」
ウインドウを開き、ショボンにメッセージを送るテイ。
(´・ω・`)「…なるほど。これはみんなにも送ってよろしいですか?」
(´<_` )「好きにしてくれ」
ショボンがメッセージを送ると、四人の視界の隅にメッセージ到着ランプが光った。
そして四人がウインドウ操作を始める前に、ショボンは話を進めようとした。
(´・ω・`)「お二人は…」
(´<_` )「先に聞いていいか?」
(´・ω・`)「はい」
(´<_` )「何故俺が『弟』だと分かった?兄者に…そいつに兄弟構成でも聞いていたのか?」
(´・ω・`)「さっき、先輩が『弟者』と呼んでいらっしゃったので」
(´<_`;)「あ…」
(´・ω・`)「ただ、その前から…。
今回の状況に対して仮説を立てた時点で、おそらく弟さんだと思ってはいました」
(´<_` )「?何故?」
(´・ω・`)「先輩の名前は知っていましたから、もしかしたらと推測しました。
その後アルゴさんが先輩を発見してこちらでの名前を送ってもらった時に、
おそらく正しいだろうと思っていました」
(´<_`;)?
('A`)「どういうことだ?ショボン」
.
-
(´・ω・`)「二人を兄弟と仮定した時に、
先輩の名前、『克睦』の『克』の字には『兄』という文字が入っていたのと、
テイさんの『テイ』が『弟』から来ているとすれば、答えはおのずと」
(;^ω^)「おっおっおっ。普通考え付かないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「ほんとよ」
(´・ω・`)「そして先輩のこちらでの名前は『Kei』。読み方は『ケイ』。
『克睦(かつちか)』のどこにも『ケイ』は入ってないから、
先輩は『兄』を意味する『ケイ』なんだろうと。
川 ゚ -゚)「テイさんのリアルネームは『悌梧(だいご)』。
『悌』の字には『弟』が入っているというわけか」
(´・ω・`)「そう。だから今名前を教えてもらって、推測は正解だったと思ったよ」
ξ゚⊿゚)ξ「で、一番知りたいことが残ってる。
同じ顔をしている理由が双子の兄弟なのも、どちらが兄で弟なのも分かった。
で、なんでテイはドクオとブーンの事を知ってたのよ!」
('A`)「おれ、先輩に双子の弟がいるなんて知らなかった」
( ^ω^)「ブーンもあったことないお」
川 ゚ -゚)「というかショボン、おまえ、
いつからテイさんが私達と同じ学校の先輩じゃないと思っていたんだ?」
三人がクーの顔を見た。
ξ゚⊿゚)ξ「そうか…。そうよね。それでなきゃ、鼠に調査を依頼したりしない…」
('A`)「おい、ショボン」
(´・ω・`)「僕にしてみれば、ドクオが不思議に思ってなかったことの方が不思議だよ」
('A`)!
(´・ω・`)「でも、気持ちは分かる。
生きて会えたことが嬉しくて、多少の違和感には目をつぶってしまったんだろうね。
知らず知らずのうちに」
.
-
('A`)「どういうことだ?」
(´・ω・`)「あの町で会った時に、ぼくは違和感を覚えた」
('A`)!
( ^ω^)「お!?どうしてだお!?」
(´・ω・`)「先輩、ドクオから聞いたんですが、
こういったMMORPGはよくやられていたんですよね?」
( ´_ゝ`)「ああ。もともとネットゲームはやってたし、
ナーヴギアで遊ぶ初期アクションなんかもやっていた」
(´・ω・`)「そして弟さんは、やったことは無かった」
(´<_` )「そうだな…。普通のRPGはやったことあるが、
ネットにつなげてリアルタイムで他のプレイヤーと話したりするようなのはやったことは無い。
兄者がやっていたのを横目でチラ見したことはあるが…」
(´・ω・`)「おそらく、そこからのずれ…というか、
初歩的マナーのずれで、ぼくは違和感を感じました」
(´<_` )「おれ、なんかしたか?」
(´・ω・`)「初めて会った時、弟さんはドクオに向かって『徳永』、
ブーンに向かって『内藤』と呼んだんです」
( ´_ゝ`)!
('A`)!
( ^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ?
川 ゚ -゚)?
(´<_` )?
六人のうち三人は気付き、三人は小首をかしげる。
川 ゚ -゚)「どういうことだ?ショボン」
.
-
(´・ω・`)「ぼくもだけど、ツンとクーもドクオからレクチャー受けたよね。
こっちの世界に来る前に、会った時にリアルの名前は呼ばない様にって」
川 ゚ -゚)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「そっか。言われたわね」
(´<_` )!
(´・ω・`)「そう、こういったゲーム内では、本名を言うのはマナー違反なんだよ。
だから、テイさんが普通に名前を言った時に違和感を覚えた。
ドクオに対して思わず言ってしまったとしても、その後のブーンに対しても言ったからね」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが何に引っかかったのかは分かったけど、
テイがドクオとブーン、そしてあんたのことまで知っていた理由は?」
(´・ω・`)「そう。だから僕も、最初はただ単にドクオに会えたことが嬉しくて、
そういったことをすべて吹っ飛ばしてしまっただけかと思った。
一緒に修行していたら、三年になってからの先輩とイメージが重なったからね。
でもだからこそ、そこに、一つ仮定が頭に浮かんだんだ」
川 ゚ -゚)「どういうことだ?」
(´・ω・`)「ぼくの知っている流石先輩は、二人いる」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
川 ゚ -゚)「へ?」
( ^ω^)「お?」
('A`)!
( ´_ゝ`)!
(´<_` )「…」
六者六様の反応。
呆気にとられるもの、それぞれの思いを持って驚く者。
そして、あきらめた者。
.
-
( ´_ゝ`)「な、何を言って」
(´<_` )「兄者、あきらめろ。そいつは全部わかってる」
( ´_ゝ`)「そ、そんなわけが!」
(´・ω・`)「僕が立てたのは、一つの仮説だけです。
それが真実かどうかなんてわかりません。
でも、それが真実ならば納得できるので、そうであろうと思っています」
(´<_` )「ああ。そうだな」
(;´_ゝ`)「い、いや」
(´<_` )「この世界でなら、ばれても良いだろう。兄者」
(;´_ゝ`)「……言って…みろ」
(´・ω・`)「三年生になってから、お二人は交代で学校に来ていたんじゃないですか?」
('A`)!
( ^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)!
(;´_ゝ`)「そ、そんなことが」
(´・ω・`)「ええ。普通ならできません。
出来るわけがない。それこそ入学時からやっていたのならともかく、
三年生になったタイミングからなんて、出来るわけない」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっとショボン、自分で言っておいて出来ないって…」
(´・ω・`)「普通なら、できやしない。
でも、もし自分の友達が交通事故にあって頭を打って意識不明で二週間くらい昏睡状態で、
やっと会えたと思ったけど、なんかちょっと雰囲気が違った。
それを想像した時に、ぼくはきっと『事故のせいでちょっと雰囲気変わったかな』と、
自分の中で納得すると思う」
川 ゚ -゚)「……事故…か……」
.
-
(´・ω・`)「多少記憶の食い違いや忘れていたことがあっても、
『頭に衝撃を受けたんだよな』
と思って、心配こそすれ不審に思うことなんてないとも、思う。
もし双子の兄弟がいることを知っていたとしても、
まさか入れ替わっているなんて思わないだろうし、
双子の兄弟がいることを知らなければ、全く想像もしない自信があるよ」
(;´_ゝ`)「……」
('A`;)「せ、先輩、ショボンが言っていることは本当なんですか」
(;´_ゝ`)「……………」
(´<_` )「ああ、本当だよ。そいつの推理は当たってる」
(;´_ゝ`)「お、弟者!」
(´<_` )「約束だったよな。誰かに見破られたら、ちゃんと告白して謝るって。
兄者の友達は、みんな良いやつだから」
(;´_ゝ`)「弟者」
(´<_` )「三年生の一学期が始まって、二ヶ月と少し、おれがかわりに通った。
頭に包帯巻いて、まだちょっと記憶が曖昧なことにして。
一年と二年の時のクラスの集合写真の顔を全部覚えて、特徴的な思い出を教えてもらって。
最初はおっかなびっくりだったけど、一ヵ月が過ぎた頃には、楽しくなっていたな。
兄者の周りには、楽しくていいやつしかいなかったし、担任も教科担当も、良いやつばかりだった」
(´・ω・`)「………」
( ^ω^)「……」
(´<_` )「部活はやってなかったから下級生とのつながりは無かったけど、
ドクオはおれを見付けると楽しそうに寄ってきて話してくれたな。
時々はブーンも一緒に。
話を合わせるために『オレナイ!』を30巻読んだのは大変だったけど、
楽しかった…」
('A`)「先輩…」
.
-
(´<_` )「毎日帰ると兄者に今日あったことを説明して、友達の写真を見せて、
過去の思い出を聞いたり、兄者が何を考え、今日おれが何を思ったのかを話し合った」
ξ゚⊿゚)ξ「…なにそれ……」
(´<_` )「楽しかったな。
中間テストが終わって、兄者がちゃんと復帰できるようになった時、
もう行けないんだと思ったら、悲しくなるくらいに。
でも、もともと出席日数が足りなくなるのをフォローする為だけだから、覚悟した」
(´・ω・`)
(´<_` )「そうしたら、兄者が言ったんだ。交代で学校に行こうって。
さぼり癖が付いたから、毎日学校行くの辛いって」
川 ゚ -゚)「…それは…」
(´<_` )「ああ。おれがさみしそうにしていたから、憐れんだんだろうな」
( ´_ゝ`)「弟者!それは違う!」
(´<_` )「違わない!いいんだ、兄者。
そこに関しては、感謝している」
( ´_ゝ`)「弟者…」
(´<_` )「でも、おれはそれにのった。
………楽しかったんだ。学校が、本当に」
川 ゚ -゚)「よくそんな生活が…。ご両親も知っているのか?」
(´<_` )「父者は転勤で飛行機の距離だ。母者は付いていった。妹者を連れて。
家はもともと父者の物だから、家賃とかは良いし。
姉者とおれが居れば、家事はどうにかなったからな。
姉者は、多分知ってる。黙認してた。だろ?兄者」
( ´_ゝ`)「…ああ」
沈黙が部屋を包む。
誰も何も言わず、アバターゆえの呼吸の音すら感じない世界が、ひどく冷淡に感じていた。
.
-
('A`)「お、お二人は何で別行動をしていたんですか?」
それに耐えきれなくなったドクオが口を開く。
しかしそれは兄弟の間に張り詰めた空気を招いた。
(;´_ゝ`)「そ、それは…」
(´<_` )「……」
悲しそうな顔をする兄と、表情を凍らせる弟。
('A`)「え、あ、なんか…」
(´・ω・`)「ひとつ、お聞きしても良いですか?」
('A`)「ショボン…」
(´<_` )「…なんだ?」
思わずホッとしてしまうドクオ。
すがる様にショボンを見るが、なんとなく嫌な予感を感じた。
('A`)「お、おい、ショボン?」
(´・ω・`)「先輩の成績なら中間テストくらいまで休んでも挽回できたでしょうし、
卒業も出来たと思うんですが、学校に相談しましたか?」
(;´_ゝ`)「おい!止めろ!」
(´<_` )「!なん…だと?」
(´・ω・`)「ぼくは二年生の頃の先輩の成績しか知りませんが、
確か上位の方で何度かお名前を見た覚えがあります。
それにうちの学校はそれほど鬼ではないので、
事故で入院したというちゃんとした理由があれば、補習でどうにかなったはずです」
(;´_ゝ`)「お、おい!」
(´<_` )「……兄者…」
静かに自分を呼ぶ弟の声に戸惑う兄。
.
-
(´<_` )「兄者…いまそいつが言ったことは本当か?」
(;´_ゝ`)「い、いや、それは…」
(´<_`#)「兄者!!」
その叫び声は、怒声であり、悲痛な嘆きの声だった。
(´・ω・`)「本当ですよ。うちの学校では、授業態度、出席日数、
成績等何かしらの問題のある生徒の名前は生徒会に連絡が来ます。
これは生徒側からのフォローが出来るようにと言う学校側の救済措置で、
実際に何人かの生徒の卒業までを生徒会や各委員会でフォローした実績があります。
もし先輩が三年に進級する時点で何かしらの問題があったとしたら、
こちらに連絡が来ていたはずですから」
川 ゚ -゚)「ショボン!」
(´・ω・`)「この世界で、そんなことを隠したままでいなくてもいいでしょ」
川 ゚ -゚)「それはそうかもしれないが…」
(´<_`#)「兄者!!!!!」
ショボンの説明を全部しっかりと聞いたのかは分からないが、弟の怒りは収まらない。
(;´_ゝ`)「お、弟者」
(´<_`#)「最初から、おれの事を憐れんでいたのか!バカにしていたのか!」
(;´_ゝ`)「ち、違う!」
(´<_`#)「そうだよな、昔から兄者は友達もいっぱいいて、そんなに勉強しなくても成績良くて、
一見ちゃらんぽらんなのにいざという時は父者も母者も姉者も妹者も兄者を頼る!」
(;´_ゝ`)「そ、そんなことは」
(´<_`#)「だからおれは、兄者が行くことにした日付高に行かないで、
更に偏差値の高い設楽葉高に行ったんだ!」
(;´_ゝ`)「おと…じゃ…」
.
-
(´<_`#)「でもついていけなくなって、鬱になって…引きこもって…」
(;´_ゝ`)「……」
(´<_`#)「ずっと、ずっと、辛かった。兄者は、そんな俺を、やっぱりバカにしていたんだな」
(;´_ゝ`)「違う!」
(´<_`#)「違わない!ずっとバカにしていたん!憐れんでいたんだ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと、あんた…」
(´<_`#)「部外者は黙ってろ!」
ξ;゚⊿゚)ξ!
(;´_ゝ`)「弟者、落ち着け」
(´<_`#)「そうやって兄貴面して、おれを上から見ていたんだろ」
(;´_ゝ`)「そんなことは」
(´<_`#)「じゃあ何故嘘を吐いた。おれの事をバカにしていたからだろ!」
(;´_ゝ`)「そんなことは」
(´<_`#)「ある!昔からずっとだ!ずっとお前はおれの事を!」
ξ#゚⊿゚)ξ「いい加減にしなさい!」
(´<_`#)「いい加減にするのはお前だ!このくそ女が!」
ξ;゚⊿゚)ξ!
('A`;)!
(#^ω^)!
川;゚ -゚)!
(´・ω・`)
(´<_`#)「殺されたくなきゃ黙ってろ!」
.
-
明確な殺意を浴びせられて身をすくませるツン。
ブーンは怒りを隠そうともせずに彼女の前に立った。
(#´_ゝ`)「弟者!」
(´<_`#)「くそが!こんないつ死ぬかもわからないような世界に連れてきて、兄貴面かよ!」
(;´_ゝ`)「あ…」
(´<_`#)「何が一緒に別の世界を楽しもうだよ、
どうせここに連れてきたのだって、
自分のテリトリーの中でうまく生きることの出来ないおれを笑うつもりだったんだろ!」
(;´_ゝ`)「そんなこと!」
(´<_`#)「ざまあねえな!それで自分もこんな世界に囚われて!
ゲームの世界で死ぬんだ!みんな死ぬんだ!お前がおれをここに連れてきたせいで!
俺はこんなところで死ぬんだ!」
(;´_ゝ`)「弟者…」
(´<_`#)「お前のせいでこんなとこに来たんだ!
そしてこんなところで死ぬんだ!
殺されるんだ!!!」
川#゚ -゚)「ふざけるな!」
弟の怒りと苦しみの叫びを邪魔したのは、クーの声だった。
(´<_`#)「お前も黙って」
川#゚ -゚)「黙るのはお前だこの包茎野郎が!」
(´<_`;)「え」
(;´_ゝ`)「え」
それは我を忘れた憤怒の声であり、突き刺すような鋭さを持っていた。
川#゚ -゚)「この世界に来たことを他の誰かのせいにするな!チンカス野郎!」
.
-
(´<_`;)「こ、ここに来たのは兄者が」
川#゚ -゚)「無理やりナーヴギアをかぶせられたのか!
頭でも殴られて意識をなくした時にかぶせられたか!
身体の自由を封じられて無理やりかぶせられたのか!」
(´<_`;)「そ、それは…」
川#゚ -゚)「被った後に起動の言葉を言ったのはお前じゃないのか!」
(´<_`;)「!」
川#゚ -゚)「『リンクスタート』と言ったのはお前の口だろう!」
(´<_`;)「で、でも…」
川#゚ -゚)「でももくそも無い!
面倒くさい接続テストも、キャリブレーションで自分のデータを入力したのも、
最初のアバターを設定したのも、
全部自分だ!他の誰かじゃない、全部自分だ!」
(´<_`;)「そ、それは……」
川#゚ -゚)「どの瞬間にだって来ることを止めることは出来たんだ!
でも私達はここにいる!
それは誰かに連れてこられたからじゃない!
自分で選んだんだ!
自分の意思でここに来たんだ!
自分が選んだからここにいるんだ!
今ここにいることを誰かのせいにするな!」
( <_ )「お、おれは…」
( ´_ゝ`)「もう許してやってくれ!」
突然土下座をする兄。
.
-
( ´_ゝ`)「すまない。弟者はちょっと興奮しているんだ。だから」
川 ゚ -゚)「いつまでそうやって守るつもりだ」
矛先が兄に変わったため多少表情特徴は和らいだが、鋭さは変わらない。
( ´_ゝ`)「!」
川 ゚ -゚)「そうやって全部守ってやるから、こいつはおまえのせいにしているんじゃないのか」
( ´_ゝ`)「……だが、おれが誘ったのは事実だ」
川 ゚ -゚)「誘ったのはおまえでも、来ることを決めたのはそいつだ」
( ´_ゝ`)「…………許してやってくれ」
川#゚ -゚)「だから!」
ξ゚⊿゚)ξ「クー!」
川#゚ -゚)「ツン!おまえまで」
ξ゚⊿゚)ξ「言っても無駄よ!」
川#゚ -゚)「!」
ξ゚⊿゚)ξ「こいつらに、そんなことを言っても無駄よ」
川 ゚ -゚)「……」
ツンの言葉に息をのむクー。
ξ゚⊿゚)ξ「誰かのせいにして楽になったり、
自分のせいにして嘆いたり、
人のせいにしなきゃ立てなかったり、
全部一人で背負おうとして何も背負えなかったり」
その口調は穏やかだが、純粋に兄弟への憐れみを持っている。
そしてその穏やかさがクーの心に冷静さを取り戻させた。
ξ゚⊿゚)ξ「今を嘆くだけで何もしない、しようとすらしないグズに、何を言っても無駄よ」
川 ゚ -゚)「……そうだな」
.
-
('A`;)
(;^ω^)
(´・ω・`)「…」
( <_ :)
(; _ゝ )
ツンは最後に自分らしい毒を吐いてから、汚物を見るように兄弟を見た。
クーは普段の冷静な自分を取り戻すと、興味を失ったように冷淡な表情をしている。
('A`;)「ま、まあ、おちついて」
(;^ω^)「そ、それがいいお。なんかお茶でも…」
('A`;)「先輩もいつまでも床に座ってないで、ソファーに座りましょう」
( ^ω^)「そうだお。そうだお。そうだ、お茶でものんで落ち着いて……」
すがる様にショボンを見たブーン。
しかし彼が出したのはお茶ではなく、更に兄弟を追い詰める言葉だった。
(´・ω・`)「それで、お二人はこれからどうするおつもりですか?」
( <_ :)!
(; _ゝ )!
('A`;)「しょ、ショボン」
(;^ω^)「今はそこまで」
何とか場の空気を穏やかにしようとするドクオとブーンの努力を、
真っ向から打ち崩したショボンの一言。
兄弟のは目に見えて動揺した。
( <_ :)「これ……」
(; _ゝ )「……から?」
.
-
(´・ω・`)「何故二人が離れていたのか、まあ想像はできます。
どうせ最初は二人でいたのにたわいのないことで喧嘩して、
そのまま離れ離れにでもなったのでしょう。
先輩はともかく、弟さんが生きて残っていられたのは、
二人でいる間に先輩が自分の知識をしっかりと教えたからでしょうね」
( <_ :)!!
(´・ω・`)「一緒に岩を割ろうと努力している間、
時折披露される知識はドクオの持っている知識に近い『経験』を感じました。
でもどこか他人事のような話しぶりをされていて、そこも僕が違和感を感じた一つでした」
( <_ :)「…」
(´・ω・`)「フレンド登録からの場所確認も先輩はずっとしていた。
でも修行場所に入ると、その対応から外れてしまうため、ずっと心配されていたようですよ」
( <_ :)!
(´・ω・`)「最後に弟さんの位置を確認した層を中心に、ずっと探していたようです。
黒鉄宮の碑の名前を、数時間ごとに確認しにきながら」
(; _ゝ )「そ、そんなことまで」
(´・ω・`)「アルゴさん…情報屋さんからの報告なので、ソースはどこかわかりませんけど」
淡々と話していたショボンがほんのすこしだけ笑みを見せる。
だがそれは場を和やかにする力など持っておらず、
部屋の空気は冷たいままだ。
(´・ω・`)「この後、お二人はどうするつもりですか?
二人で行くのか、独りずつ生きるのか、ぼく達と共に来るのか…」
(;´_ゝ`)「できるのなら!弟者はお前達と一緒に!」
(´・ω・`)「この一週間、最初に間違えたのはぼく達だとはいえ、
それがばれた後にのほほんと一緒に来れるのなら」
(; _ゝ )「!」
( <_ :)「……五人とも…すまなかった。嘘をついて…」
.
-
(´・ω・`)「何故二人が離れていたのか、まあ想像はできます。
どうせ最初は二人でいたのにたわいのないことで喧嘩して、
そのまま離れ離れにでもなったのでしょう。
先輩はともかく、弟さんが生きて残っていられたのは、
二人でいる間に先輩が自分の知識をしっかりと教えたからでしょうね」
( <_ :)!!
(´・ω・`)「一緒に岩を割ろうと努力している間、
時折披露される知識はドクオの持っている知識に近い『経験』を感じました。
でもどこか他人事のような話しぶりをされていて、そこも僕が違和感を感じた一つでした」
( <_ :)「…」
(´・ω・`)「フレンド登録からの場所確認も先輩はずっとしていた。
でも修行場所に入ると、その対応から外れてしまうため、ずっと心配されていたようですよ」
( <_ :)!
(´・ω・`)「最後に弟さんの位置を確認した層を中心に、ずっと探していたようです。
黒鉄宮の碑の名前を、数時間ごとに確認しにきながら」
(; _ゝ )「そ、そんなことまで」
(´・ω・`)「アルゴさん…情報屋さんからの報告なので、ソースはどこかわかりませんけど」
淡々と話していたショボンがほんのすこしだけ笑みを見せる。
だがそれは場を和やかにする力など持っておらず、
部屋の空気は冷たいままだ。
(´・ω・`)「この後、お二人はどうするつもりですか?
二人で行くのか、独りずつ生きるのか、ぼく達と共に来るのか…」
(;´_ゝ`)「できるのなら!弟者はお前達と一緒に!」
(´・ω・`)「この一週間、最初に間違えたのはぼく達だとはいえ、
それがばれた後にのほほんと一緒に来れるのなら」
(; _ゝ )「!」
( <_ :)「……五人とも…すまなかった。嘘をついて…」
.
-
( <_ :)「なにが…真実だ…」
( ´_ゝ`)「弟者!」
( <_ :)「こんな虚構の世界で、嘘ばっかりの世界で、何が真実だ…」
( ´_ゝ`)「弟者……」
絞り出すような、心からの苦しみを口に出したような、かすれた声で呟く弟。
その言葉に対し言いたいことは全員があったが、その苦しそうな雰囲気から、
ちゃんと口にすることが出来たのは一人だけだった。
( ´_ゝ`)「弟者、はぐれる前も、似たようなことで喧嘩になったな」
( <_ :)「…」
( ´_ゝ`)「あの時は、ちゃんと考えを伝えることが出来なくてすまなかった。
でも今は、言える気がする。
弟者のことが心配で、探していたこの数日間、ずっと、思ってた」
( <_ :)「なんだよ」
( ´_ゝ`)「弟者は、これ以上何が欲しいんだ?必要なんだ?」
.
-
( <_ :)?
( ´_ゝ`)「今おれの目の前には、弟者がいる。
弟者の心がある。
そして、悲しいことに、命もある。
確かに肉体は偽りの物だし、目に映るものも全て仮想世界。
偽りの世界、と言っても良いんだろうな。
けれど、心と命は本物だ。
俺の目の前にいるのは、本物の弟者だ。
そして、おれの心と命もここにある。
おれは、本物のお前の双子の兄だ。
まわりが全部偽物でも、これは本物だ。
おまえは、それ以外の何が欲しいんだ?
何が必要なんだ?
こんなにも明確な『本物』があるのに、おまえは何が更に必要なんだ?ほしいんだ?
それ以外の本物とやらに、おまえにとってどれだけの価値があるんだ?」
( <_ :)「で、でも二人しか本物は…」
( ´_ゝ`)「今、許すと言ってくれた四人も、
おれ達にこんな場所を用意してくれたこいつも、この世界にいる。
その心と、命と、思いは、本物だ。
この世界には偽物の世界でも、ここにいるおれ達は、本物なんだ」
( <_ :)「で、でも…」
( ´_ゝ`)「おれは、弟者におれの心と命をささげるつもりでいた。
たとえ死んでも、弟者だけは生き残らせると思っていた。
でも、違うんだな。それじゃダメなんだ。
二人で生き残って、みんなのところに帰って、そこで、ちゃんと謝る。
だからそれまでは、謝らない。
おれはおれだ。
流石克睦だ!
この世界では『Kei』だ!
お前の兄さんだ!
兄者だ!
おれは、おれらしくこの世界で生きる!」
( <_ )「兄者……」
.
-
( ´_ゝ`)「弟者、一緒に頑張ろう。
生きて、生き抜いて、一緒に帰ろう。
帰ってから、殴られるから。
だから、それまでは、二人で貫こう。おれ達流石の人間として」
( <_ )「…兄者」
( ´_ゝ`)「弟者!」
沈黙。
二人とも何も話さない。
そして、弟者が口を開いた。
( <_ )「『流石の人間として』って、なんだ?」
( ´_ゝ`)「え?」
.
-
( <_ )「初めて聞いた…。うちの家に…そんなの…あったか?」
( ´_ゝ`)「えっと……のり?」
( <_ )「ああ、……そうだな。あんたは…そういう人だ」
( ´_ゝ`)「いやでもほらさ、なんかカッコいいし」
( <_ )「目の前にいるのは、……兄者なんだな」
(;´_ゝ`)「え、えっと…」
ぎこちなくではあるが、兄弟が話しはじめたのを見て部屋を出ていこうとする五人。
途中でそれに気付いた兄が止めたが、
ショボンが明日の朝近くの店で一緒に朝食をとる約束をして、その晩は別行動とすることにした。
(´・ω・`)「これ、夕飯にどうぞ。サンドイッチと飲み物です」
ξ゚⊿゚)ξ「ゆっくり話すことね」
川 ゚ -゚)「そうだな。だが続きを話すのはマナー違反だから止めた方が良い」
( ^ω^)「ケイ先輩、テイ先輩、おやすみなさいだお」
('A`)「また明日、よろしくお願いします」
部屋を出る五人。
閉まるドアが、乾いた音を立てた。
.
-
4.祈りの旅
深夜。
3層主街区。
現在の前線よりは下の層だが、主街区と言うことで人通りはそれなりにある。
しかし大きな街であればあまり使われない外への道もあるもので、
今、男は、そんな出入り口へと向かっていた。
そして簡素な木で出来た門の手前まで来て、足を止めた。
ゆっくりと、身体ごと振り返り、自分が歩いてきた先を見る。
(´<_` )「兄者、すまん」
(´・ω・`)「謝るくらいなら、戻ったらいかがですか?」
後ろから、つまり外の方から声をかけられた。
しかし彼はそれほど驚かずに、声のした方向に身体を向ける。
(´<_` )「…そうも、いかないさ」
(´・ω・`)「何故です?
先輩はあなたを心の底から心配していた。
そして、あなたも先輩に会いたかった。
あの町で会った時、あなたも先輩を、お兄さんを捜していたのでしょ?」
(´<_` )「お見通し…か」
(´・ω・`)「そんなような言葉を口走っていましたから、誰かを捜しているのかなと思っていました」
(´<_` )「ちゃんと聞こえてたのかよ」
(´・ω・`)「はい」
(´<_` )「…ならなぜ、連れて行った?」
.
-
(´・ω・`)「違和感は感じましたが、あなたが先輩である可能性は高かった。
あの時には、双子の兄弟を想定できるほどの情報はありませんでしたから。
そしてあのままあなたを一人にしてはいけないような気がしたから。
ただそれだけです」
(´<_` )「おれ、あの時何か言ったか?」
(´・ω・`)「一人にしたらいけないと思ったのは、ただのカンですよ。
でも、まあ、それ以上に、ドクオが笑っていたのが嬉しかったからですね」
(´<_` )?
(´・ω・`)「今から言うのは極秘事項です。
一応この近辺に誰もいないのは確認しましたが、テイさんも他の人には話さないでください。
……ドクオはβテスターです。
それに参加出来たことを毎日本当に楽しそうに語っていた。
友達であるぼくらは、そのゲームに、『ソードアートオンライン』に興味を持ちました。
…彼は、ずっとそれを気にしています」
夜風が、二人の間を吹き抜けた。
(´・ω・`)「この世界に来て、あの広場でのあの告知の後からずっと、
心の底からの笑顔をドクオは見せてくれなかった。
でも、あなたに会えた時、『先輩』に会えた時、嬉しそうに笑っていた。
だからです。『先輩』に、そばにいてほしかったんですよ。僕は」
(´<_` )「おれを、利用したのか」
(´・ω・`)「はい」
(´<_`;)「あ…うん。そんな簡単に肯定されると思わなかった」
(´・ω・`)「?ぼくはあなたを『利用した』理由を話したつもりでしたけど」
(´<_`;)「ああ、うん。それは分かるけどさ」
.
-
(´・ω・`)「?続けますね。
極端な話、もし『本当の先輩』がこの世界に居なかったら、
あなたには『先輩』で居続けてもらうつもりでした。
アルゴさんに情報収集を頼んだのも、それを確認するのが主だと言っても良い」
(´<_`#)「それは、どういうことだ?」
(´・ω・`)「ナーブギアは高額です。
ゲームのソフトも手に入れるのは困難だったはずです。
『先輩』の代わりにあなただけが来ている可能性もゼロではありません。
そして、たとえ『本当の先輩』もこの世界に来ていたとしても、今もこの世界にいるとは限らない」
(´<_`#)「……おい…」
(´・ω・`)「全て考えうる可能性の一つです」
ショボンを睨むテイ。
しかしショボンは気にすることなく言葉を続ける。
(´・ω・`)「この世界で、人を捜しながら……。
自分以外の誰かを一番に考えながら生き抜けるほど、
この世界は甘くない。
ぼくは、そう考えます。
『先輩』があなたの事を一番に考えながらも生き抜いてこられたのは、
ひとえにネットゲームの知識と、あなたを残して死ねないという使命感からだと、ぼくは思っています」
(´<_` )「おれは、一人で生きてきた」
(´・ω・`)「一人になってから、ほとんど戦闘はされていないでしょう?」
(´<_` )!
(´・ω・`)「ぼく達との戦闘、あなたの戦い方は『誰かと一緒に戦う』戦い方でした。
レベルや経験の違いから、調和はなかなか取れませんでしたが。
あ、これはドクオが気付いたことです。
もしかしたら、ソロの戦闘はほとんどしていなかったのではないか。
彼は気にしていました。
『先輩は、誰かと一緒にいたんじゃないか』って。
もともと『先輩』は誰かと一緒にやるというようなことを言っていたのを聞いていたそうなので、
多分その『誰か』と一緒にいたのではないかと。
そして今一人なのは、もしかしたら…と、心を痛めていました」
(´<_` )「……そうか」
(´・ω・`)「はい」
.
-
じっと互いを見る二人。
(´<_` )「おれにそんな話をしたのは、何故だ?」
(´・ω・`)「分かりませんか?」
(´<_` )「……おまえは、嫌なやつだな」
(´・ω・`)「……」
(´<_` )「こちらはこれだけ本音を話した。
だからお前も本音を話せ…ってところか?」
(´・ω・`)「……」
何も言わないショボンの顔を見て、つまらなそうに少しだけ笑う。
そしてため息をついた後、口を開いた。
(´<_` )「……本当は、分かっているんだ。
兄者がいつもおれのことを考えてくれていたのを。
学校に行けなくなったおれを笑いもせず、けなしもせず、ただいつものように、
おれとして扱ってくれた。
家族でも、腫物の様に扱っていた中で、兄者だけは…。
救われていた。おれも兄者に対しては、おれでいられたから。
学校に行ってほしいって言われた時も、分かっていたんだ。
心の奥底では。そんなことしなくたって兄者は大丈夫だって。
でも、それによって兄者にカシを作れるかもしれないって、おれは心のどこかで思っていた。
心に溜まっていた、兄者に対する劣等感を、それによって解消できたんだろうな。
そして、学校生活は楽しくて、交代で行くなんてこともしてしまった…」
(´・ω・`)「…」
黙って聞いているショボン。
すでにその存在を気にすることなく、独り言のようにしゃべり続ける。
.
-
(´<_` )「でも、学校でのおれはおれじゃない。兄者だ。
その事に目を向けない様にしながら、卒業の影が目の前をちらついたとき、
このゲームを知り、兄者と一緒に始めることにした。
一台は買ってあったから、あとは貯金とバイトして、金溜めて。
ソフトを買うために徹夜で並んで。
おれではないおれになるために。
…流石悌悟ではない、『おれ』として生きてみたくて、この世界に来た。
確かに兄者に誘われたが、ここに来たのは、おれの意思だ。
おれが、来たかったんだ!」
言葉に熱がこもり、最後には吐き捨てるように叫んだ。
(´<_` )「そうだ、おれが来たかったんだ!
自分の意思できた、自分のために来た、自分を変えたくて、やり直したくて来たんだ!
おれがおれとして、おれではないおれとして、本当のおれのまま、生きるために!」
呼吸が荒くなる。
胸を抑え、吐き出す。
( <_ )「正確には、兄者の方がおれに付き合ってきたんだ。
なのにこの状況になった時、兄者はおれに謝った。
『おれのせいだ』って。
おれはその時、何も言えなかった。
そしてその言葉に甘えた。
兄者をなじって、兄者のせいにして、兄者に甘えたんだ。
ほんとうは、おれのせいなのに。
兄者から逃げ出したのも、怖かったんだ。
ずっと兄者に甘えてしまいそうで。
知っていた。学校のことだって。
入れ替わりなんて、うまくいくはずがないんだ。
……兄者の友達たちが、協力していてくれたんだ。
何も知らないふりをして、フォローしていてくれた。
おれは……知っていて……」
(´・ω・`)「………」
.
-
( <_ )「おれは、甘えていた。
分かっていた。甘えていたことくらい。
だから、離れた。
でも、一人でいるのはもっと怖かった。
夜になると、毎日震えた。
会えなくても、その姿を見たかった…。
そんな時だ、お前たちに会ったのは。
久し振りだった。震えないで眠ることが出来たのは。
…そういう意味では、おれもお前達を利用していた…。
でも、どんどん怖くなった。
お前たちに嘘をついているのが。それがばれたらどうなるのかと。
だから、おまえが全部知っていると言った時、ホッとした。
知っているのに、黙っているお前を、おれはおれの中で、勝手に共犯者にしていた。
少しだけ、落ち着くことが出来た……」
強張っていた表情が、少しだけ緩む。
(´<_` )「おまえが全てを話すつもりだと聞いたとき、怖いと思った。
でも同じくらい、ホッとした。
おまえによって、おれの罪を裁いてくれるのが、確定したから。
いつ言わるか分からない恐怖はあった。
でも、決断をお前に押し付けることが出来た。だから……」
そこで言葉を切る。
そして、再び顔を強張らせてショボンの顔を見た。
(´・ω・`)「……」
(´<_` )「おまえ、もしかしてそれすらも分かっていたのか」
それは疑問でも質問でもない、確認の言葉。
テイの心の中では、確定の事実。
(´<_` )「そうか……。
完全に、手の中で踊らされていたんだな」
(´・ω・`)「そんなつもりはありません。
ぼくも利用させてもらっていたのですから」
ほんの少しだけ笑顔を見せるテイ。
.
-
(´<_` )「それでも、おれには安らぎだったよ」
(´・ω・`)「それなら、良かったです」
(´<_` )「なあ、…こんなおれが、これからも兄者と一緒にいても良いと思うか?」
笑顔で、吐き捨てるように問いかける。
(´<_` )「お前なら、おれの心も、兄者の心も、」
(´・ω・`)「しらんがな」
(´<_` )「……え?」
(´・ω・`)「そんなこと知らないって言っているんです」
(´<_`;)「え?え?この流れで?なんかないの?」
(´・ω・`)「ぼくは、友達を守りたいだけです。
友達と、一緒に元の世界に帰りたいだけです。
攻略なんて怖くてできないけど、せめて誰かがこの世界を壊してくれるまで、
友達と一緒に生き続けたいだけです。
先輩とはいえ、二人の心とかどうすればいいのかなんて、分かりません。
そして、分かるつもりもないです」
(´<_`;)「え?え?」
(´・ω・`)「言っときますけど、ぼくだってあなたに騙されていたんですからね。
利用したのは悪いと思いますけど、あなたに対する責任なんてありませんから」
(´<_`;)「あ…うん……そうだよね…」
(´・ω・`)「だから、そんなことは、後ろにいるその人ともっといっぱい話し合ってください」
(´<_` )!
慌てて振り返るテイ。
そこには、彼の兄が立っていた。
.
-
(´<_`;)「いつ…から?」
(;´_ゝ`)「えっと…アルゴさん経由でそいつから連絡貰ってて…」
(´・ω・`)「ドクオがそうであることを話したあたりからいらっしゃいましたよね」
(´<_`;)「それってほぼ最初から」
思わず両膝を地面につけて項垂れるテイ。
ケイはそれを見ておろおろとする。
(;´_ゝ`)「す、すまん弟者。
こちらから言うかばれるまでは声をかけるな気配を消せって言われてて」
(´<_`;)「何故いう事を素直に聞く」
(;´_ゝ`)「お前の本心が聞けるかもって言われて」
兄であるケイの言葉で、大きなため息を吐くテイ。
(´・ω・`)「じゃ、そういう事で。後は二人でやってください」
( ´_ゝ`)「え?」
(´<_` )「え?」
涼しい顔で何事も無かったかのように宿に向かって歩き始めるショボン。
それを呆然とみる兄弟。
(´・ω・`)「ぼくが出来るのはここまでです。
テイさんを利用させていただいた代償として、先輩に引き合わせ、その本音を吐露させた。
先輩は実際にこちらにいることを確認させていただいて、探していた弟さんと引き合わせた。
名前は確認させていただいたので、黒鉄宮で確認もさせていただけるようになりましたし。
後はお二人でどうするのか決めてください」
(´<_`;)「あ、そう…」
( ´_ゝ`)「あーうん。そういえば、お前ってそういうやつだ」
.
-
(´<_`;)「え?そうなの?」
( ´_ゝ`)「二年の文化祭で、こいつ一年から副会長とかやってたんだけどさ、
おれがコスプレしてて教師に捕まった時に
『こういう人がいた方が、一部では盛り上がりますし、
引く人にはバカなことをしない様に抑制になりますよ。
この人以上に問題行動をする人にも、
この人と同一視されるって言えば止めると思いますし』
って言ってたのを思い出した」
(´<_`;)「まじか…」
(´・ω・`)「でも、そのおかげであの格好で三日間楽しめたでしょ」
( ´_ゝ`)「あーうん。それに関しては感謝してる。
あの教師のおれを見る憐れんだ眼も忘れられないけど」
(´・ω・`)「じゃ、そういうことで」
二人の視線を事も無げに受け流し、二人の横を通り過ぎようとするショボン。
しかし通り過ぎると、すぐに立ち止まった。
.
-
(´<_` )?
( ´_ゝ`)?
(´・ω・`)「テイさん、ぼくはあなたを利用した。
それは紛れもない事実であり、弁解の余地はありません。
でも、これは信じてください。
スキルを手にする修行の日々も、一つのパーティーとしてダンジョンを歩いたのも、
楽しかったです。
きっと、他の四人も。
僕達五人のスキル、戦い方、それを見せることが出来たのは、
プレイヤー『Tei』を信用したからです」
(´<_` )!
(´・ω・`)「そして先輩、お会いできてよかった。
ドクオからいるかもしれないと聞いてから、いるのならばお会いしたかった。
出来るなら、パーティーになれればと思っていました。
あの文化祭の時、大人し目だった学校の雰囲気を一掃して楽しい雰囲気にしてくれたのは、
先輩たちでした。
外していいギリギリのラインまで羽目を外していた先輩は、学校のムードメーカーだった」
( ´_ゝ`)!
(´・ω・`)「出来ることなら、最初から二人同時にお会いしたかったです」
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「……」
(´・ω・`)「それでは、おやすみなさい」
再び歩き始めるショボン。
すると建物の陰からドクオが現れ、二人に向かって一回お辞儀をした後、
ショボンにならんで宿へと戻っていった。
.
-
(´<_` )「おれがこの道を選んだのを、ドクオが監視していたんだな。
だからショボンは先回りした。多分他の三人も準備していたんだろう」
( ´_ゝ`)「…完全にやられたな。弟者」
(´<_` )「…ああ。くやしいが、完敗だ」
( ´_ゝ`)「リベンジしたいな」
(´<_` )「……兄者じゃ無理だろ」
( ´_ゝ`)「え?そう?」
(´<_` )「おれでも無理だ。でも……」
( ´_ゝ`)「?」
(´<_` )「二人でなら、出来るかもな」
( ´_ゝ`)!
(´<_` )「ショボンを、あいつらをひと泡吹かせてやろう」
(*´_ゝ`)「あ、ああ!そうだな!」
空には白い明りが差し込み始め、夜が終わろうとしている。
兄弟が、お互いを見て、笑顔を見せた。
.
-
5.夢の明日に
2023年3月某日。
フィールドダンジョンを攻略し、町へと戻ってきた六人。
_
( ゚∀゚)「今日も快勝だな!」
('A`)「スイッチのタイミングがずれてたぞー」
_
(;゚∀゚)「あー。ワーウルフ」
ξ゚⊿゚)ξ「ドレイクもよ」
_
(;゚∀゚)「あれは、ほら、な」
( ^ω^)「ちょっとはやいんだおねー」
川 ゚ -゚)「前に出過ぎるんだな」
(´・ω・`)「フォーメーションとか、見直さないとかな」
_
(;゚∀゚)「え?おれお払い箱?」
('A`)「両手剣でおれ達の中では一番一発の攻撃力が高いから、
今まで通り俺らが作った隙に大きな一撃を与えるポジションでいてほしいところだけど」
川 ゚ -゚)「タイミングがずれると結局防御に回るからな。
先制攻撃、行ってみるか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンとの連携が取れればそれが良いかもね」
( ^ω^)「ぼくとドクオなら多少反応が遅れてもスピードでカバーできるけど、
ジョルジュの場合はタイミングがずれると修正がききにくいおね」
_
( ゚∀゚)「おれのいけんはどうしたー」
.
-
(´・ω・`)「先ずは練習。あと、もう一人くらい重攻撃が出来るとまた違うけど…」
今日の戦いの反省を続ける六人だったが、ショボンの言葉で五人の口が止まった
_
( ゚∀゚)「どうした?」
(´・ω・`)「いや、…前に話したよね。一時期パーティーにいた斧使いの事」
_
( ゚∀゚)「ああ、例のスキルを取る時に一緒だったって」
(´・ω・`)「そうそう」
ξ゚⊿゚)ξ「そろそろジョルジュも取りに行かないとね」
_
( ゚∀゚)「あ、やべ」
川 ゚ -゚)「必須だからな」
_
( ゚∀゚)「話に聞く限りじゃ、めんどくさそうなんだよな」
ξ゚⊿゚)ξ「仲間になった以上、あの屈辱は必ず味あわせる」
('A`;)「ツン…」
(;^ω^)「ツン…」
(;´・ω・`)「ツン…」
川 ゚ -゚)「ツン…。お前よりひどい髭はなかなかないと思うが」
ξ#゚⊿゚)ξ「うるさい」
(´・ω・`)「まあ、有用性の高いスキルだから、取っておいてほしいけど」
ξ゚⊿゚)ξ「必須で」
(;´・ω・`)「…うん。そうだね」
わいわいと喋りながら歩く六人。
最前線の一つ下の主街区と言うこともあり、人通りはそれなりに多い。
人気のあるレストランもあるため、目当ての者も多いだろう。
.
-
六人も、今日はそのレストランに向かっていた。
(´・ω・`)「あの味の秘密がねー」
川 ゚ -゚)「はやく謎を解くんだショボン」
ξ゚⊿゚)ξ「クーはあのスープ大好きよね」
川 ゚ -゚)「だが高い」
( ^ω^)「だおねー」
_
( ゚∀゚)「おれはオルドバードのフライが好きだな」
('A`)「ああ、あれはうまい。コスパも手頃だし」
(´・ω・`)「もしかすると、まだ手に入らないアイテムなのかなー」
大通りを歩く五人。
その前方、人ごみがあった。
_
( ゚∀゚)「なんか騒がしいな」
川 ゚ -゚)「邪魔だな」
( ^ω^)「道の真ん中に何かあるのかお?」
('A`)「っていうより、両側を避けて歩いているような」
それは何かに対して集まっているのではなく、
道の両側を歩くことを避けたプレイヤーが道の中央に寄ってしまったために
起きた混雑だった。
徐々にその人ごみに近付く六人。
.
-
「なにあれ…」
「プレイヤー?」
「原住民的な…イベントじゃないよな?」
「カーソルはプレイヤーだけど」
耳に入る声に、両側を見る六人。
('A`;)
(;^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ
川;゚ -゚)
(;´・ω・`)
_
( ゚∀゚)「どうしたんだみんな?」
ξ;゚⊿゚)ξ「しっ黙って。通り過ぎるわよ」
('A`;)ア…
(;^ω^)「ドクオ、ドクオ」
('A`;)オレニフルナ…
(;^ω^)「だおねー」
川;゚ -゚)「君子危うきに近寄らずだ」
(;´・ω・`)「嫌な予感しかしないとか、久しぶりだよ」
_
( ゚∀゚)?
縦一列になって道の真ん中を進む六人。
俯いて、足早に、迅速に、通り抜けようとしたその時だった。
.
-
(*´_ゝ`)「華麗なるお前たちの美貌の先輩!
きらめきのハンマー使い兄者!ここに推参!」
(´<_`;)「た、頼れる知識…の…厳格なるせん…ぱい…。
轟雷の斧使い…弟者。ここに参上…」
(*´_ゝ`)「われら!」
(´<_`;)「ぶ、VIP…の…」
(*´_ゝ`)「新しき力!」(´<_`;)
両サイドから聞こえるたわごとから逃げるように、
歩いてはいるが走る様なスピードになる五人。
_
( ゚∀゚)「え?今VIPって」
ξ゚⊿゚)ξ「バカジョルジュ!さっさとくる!」
川 ゚ -゚)「おいていくぞ!」
_
( ゚∀゚)「え、でもいいのか?知り合いじゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「知らない人よ」
川 ゚ -゚)「ああ。全く知らない」
両サイドの二人は、鏡の様に対照的なポーズを取っていた。
両手を上げ、腰をひねり、片足を少し上げた特徴的なポーズ。
そして上半身は黒のハーネス。
それは銀のリングを黒の皮でつないだもので、上半身の80%は露出している。
下半身はローライズで股下を極限まで短くした黒の短パン。
ひざ下までの光沢のある黒いブーツ。
兄は右手、弟は左手に黒い手袋もしている。
('A`)ウツダシノウ
(;^ω^)「ダメだおドクオ!早く歩くんだお!」
(;´・ω・`)「あんな服をどこで手に入れたのあの人達」
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