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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )

1名も無きAAのようです:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品

423名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:27:05 ID:2tZd1sd.0

(*^ω^)ノ「じゃあ、今度はこっちへ行くおー」

(´<_` )「……」


弟者が廊下に出ると、ブーンは先程までいた部屋の向かいを指さし、にこりと笑った。
弟者は指さされた方向を無言のまま見やると、ブーンの指さした入り口をくぐる。


(*^ω^*)「お? ……おおおおお」

(´<_` )「……」


それをみたブーンの頬が、興奮で赤く染まる。
しかし、弟者は相変わらず無言のままだった。


( ´ω`)ヘンジ ナイオー

(´<_` )「……」

.

424名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:29:23 ID:2tZd1sd.0





(;^ω^)「何もないおー」


向かいの部屋は、広さも作りも先ほどの小部屋とさほど差がなかった。
白い部屋は薄暗く、先ほどの部屋の机の代わりに、茶色く退色した絨毯が敷かれている。
しかし、それ以外には何もない部屋だった。


(´<_` )「……ここもハズレか」

( ^ω^)「だおねー」


危険そうなものや、兄者が探す魔法石板の姿はどこにも見えない。
小部屋から引き返して、少し先の小部屋に入ってみるが、それも部屋もこれまでの二部屋と大差なかった。


(;^ω^)「なんか、さっきと同じ部屋みたいだおー」

.

425名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:31:06 ID:2tZd1sd.0

(´<_` )「……」

( ^ω^)「このあたりは、こういう部屋ばっかりみたいだおね」

(´<_` )「……」

( ^ω^)「昔は何があったのかおねー?
      ブーンはここには来たことないから、わからんですおー」

(´<_` )「……」

( ^ω^)「それにしても、ここはすっごく広いお」

(´<_` )「……」

(;^ω^)「オトジャー、やっぱり返事してくれないのかおー?」

(´<_` )「……」


( ´ω`)ショブーン


(´<_`;)「……」


弟者は一瞬表情を崩すが、それでも無言のまま、隣の小部屋に入る。
それから、さらに隣とその向かいの部屋にも足を踏み入れるが、そのどれもが同じような作りの小部屋だった。

.

426名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:33:26 ID:2tZd1sd.0

( ^ω^)「……いっぱい部屋があったけど、何もなかったおね」

(´<_` )「……」

(;^ω^)「あうあうー、オトジャは楽しくなかったお?
      ブーンは結構楽しかったけど、どうかお?」

(-<_-  )「……」


元気をとりもどしたらしいブーンと、弟者は再び廊下へと舞い戻る。
廊下の左右から伸びていた6つの脇道は、全て同じような小部屋があるのみ。
罠や魔力の気配も、兄者の探す魔法石板の影も見えない。


( ^ω^)ノ「んー、オトジャは先に進むのかお? だったら、ブーンもついていくおー」

(´<_` )「……」


弟者は相変わらず、ブーンの言葉に返事も反応も示さない。
その代わりに、自身の前や後ろを飛び回るブーンに暴力を振るうことも、追い払うこともしなかった。


(*^ω^)「早く見て回って、アニジャたちのところにもどるおー」

(´<_` )「……」

.

427名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:35:16 ID:2tZd1sd.0

(*^ω^)「おっおー、楽しみだおー」
 _,
(´<_` )「……」

( ^ω^)「んー? どうしたお、オトジャー」
 _,
(´<_` )「……」


ブーンの言葉に、弟者は答えない。
――ただ、この時だけは少し違った。
弟者の眉がわずかに寄り、ブーンの顔をじっと見据える。


(;^ω^)「……大丈夫なのかお? 不安なのかお?」
 _,
(´<_` )「お前は……」

(;^ω^)「はい」
 _,
(´<_` )「何で俺に話しかけるんだ?
      話したければ、兄者と一緒にいればいいだろう。不愉快なことだが、兄者ならいくらでも話すぞ」


弟者は表情を歪めたまま、ブーンへと問いかける。
それは弟者が、自分の意志ではじめてブーンに向けて放った言葉だった。

.

428名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:37:16 ID:2tZd1sd.0

(*^ω^)「お?」

(´<_`#)「何故だ? 答えろ。返答によっては、今ここで叩き切る」


弟者の手が、腰の刀にかかる。
柄をしっかりと握りいつでも鞘から抜ける状態にしたままで、ブーンの姿を睨みつける。
弟者は実力行使をいとわない。
制止役である兄者がいないこの状態では、ブーンはいつ切られてもおかしくはない。

……それでも、ブーンの顔はいつもと同じ笑みを浮かべていた。


(*^ω^)「それはオトジャが好きだからだおー
       アニジャも好きだけど、ブーンはオトジャともお話したいからだお」

(´<_`#)「俺はだまされない。
      お前らみたいな“あちら側”の連中は、人間のことなんかなんとも思っていない」

(;^ω^)「おー、ブーンもドクオもニンゲンが好きだお」

( <_ #)「それでも、俺は……俺が……」


刀にかかった、弟者の手が大きく震える。
眉は寄り、目は鋭く細められ、奥歯をぎりりと噛み締められた。

.

429名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:39:18 ID:2tZd1sd.0

――しかし、それでも弟者は刀を抜かなかった。


(;^ω^)「オトジャ……」

( <_  )「――これ以上話しかけるな」


弟者はそうとだけ告げると、完全に黙り込んだ。
それっきり視線すらブーンへと向けない。


( ^ω^)「……ブーンは、悪いことしちゃったのかお?」

( <_  )「……」

( ´ω`)「……ごめんなさいだお」


弟者は残された道である、廊下をまっすぐと進んでいく。
ひとりでにつく明かりにも、本物と見紛うごとく精巧な星空の細工にも目も止めない。
ただひたすら、前へ前へと進んでいく。


(´<_` )「……俺は……」


そしてたどり着いた、廊下の果て。
遺跡の入り口にあったのとよく似た黒の両開きの扉を、弟者は開いた。


.

430名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:41:39 ID:2tZd1sd.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


(;'A`)「はへ?」


兄者の言葉に、ドクオの動きは完全に止まった。
これまでさんざん話を逸らし続けた兄者の言葉とは、とても思えない。
ドクオの戸惑いを感じたのか、兄者は目を開くと指をぴんと立てて、薄水色の耳を大きく上下に動かした。


( ´_ゝ`)σ「そこまで言うならドクオさんには特別に手がかりをやろうかなと、俺は言ったわけだ」

(;゚A゚)「いいのか、それ」
  _,
( ´_ゝ`)「散々聞いておきながら、ひどい反応な件」


兄者は顔をしかめていうが、次の瞬間にはその表情をあっさりと変えた。
そこに浮かぶのはどこか飄々とした顔。
そして、「まあいいや」と呟くと、兄者は再び口を開いた。



( ´_ゝ`)「たとえ、人間でもさ。引きずり込まれれば、鏡に落ちるんだよ」


.

431名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:43:05 ID:2tZd1sd.0


――それは、この状況になんら関係のない言葉だった。
しかし、兄者は飄々とした表情のまま、言葉を紡いでいく。


( ´_ゝ`)「精霊はどうかはわからんが、人間にとってそれは、――死ぬってこととそう変わらない件」

(;゚A゚)「――は? だって、お前」



ドクオは息を呑む。

                               ('A`)「なあ、そこの。鏡に落ちた人間がいるって噂、知ってるか?」
羽が奇妙に震え上手く飛べない。

                               ( ´_ゝ`)「……ほう。精霊が話しかけてくるとは珍しいな」
何を言っているのか、理解できない。

                               ('A`)「人間なら知ってるだろ。鏡に落ちた人間なんて、本当にいるのか?」
だって、兄者は……

                               ( ´_ゝ`)「ああ、それは俺だ」
その昔、なんでもないことのように。

                               (;'A`)「……は?」
言ったのではなかったか?


.

432名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:45:21 ID:2tZd1sd.0








                               ( ´_ゝ`)「――俺は昔、鏡に落ちたんだよ」









――と、


.

433名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:47:51 ID:2tZd1sd.0


( ´_ゝ`)「まあ、そういうことだ」

(;゚A゚)「……」

(*´_ゝ`)「いやぁ〜、運が良かった。流石だよな、俺!」


何も言えれなくなったドクオに向けて、兄者は笑いかける。
そこに浮かぶのはいつもとまったく同じ調子の、ヘラヘラとした顔だ。


(゚A゚)「……」


人間にとって死とは、かならず訪れる終焉である。
だから、人は死に怯え忌避するのだと――ドクオはかつて、聞いたことがある。



                               (*'∀`)「鏡に落ちやんのぉぉお!!!
                                    ほんとに人かよぉwwwwwwwww」



ドクオの脳裏に、今朝、自分が口にした言葉が浮かぶ。
――思えば、弟者が激怒したのはその直後だった。


.

434名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:49:06 ID:2tZd1sd.0

殺してやると弟者は言った。
怒りと憎悪を隠そうともせずに、弟者はドクオから羽を引きちぎった。
あの時、制止の声がなかったら……ドクオの存在は、きっと消滅していた。


(;'A`)「……ぁ、」


そして、同じように殺気立った弟者の姿を、ドクオは今日何度も見ている。
石板売りの店主……盗賊の少女のー。そして、つい先ほどの鏡。
その時の弟者の姿と、彼が嫌うものが脳裏で結びつき――ドクオは、自分が嫌われている理由に思い至った。



                               ( <_  )「……兄者はいつもそうだ」



……人間の些細な感情の動きなんてわからなくてもわかるくらいに、その答えは単純だった。


('A`)「――そういうことか」


弟者が魔法や精霊のような生き物が嫌いな理由。その原因。
ドクオは行き着いた回答に二三度頷き……それから、ふと眉根を寄せた。

.

435名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:51:15 ID:2tZd1sd.0

('A`)「……でも、それは変だ」


兄者は鏡に落ちて、死にそうになった。
だから、その身内である弟者は魔法や、精霊なような生き物や、鏡を嫌がっている。
――ドクオにもわかる、馬鹿みたいに単純な理由。


('A`)「……逆なんだよ。
    鏡に落ちたのは兄者、お前だ。弟者じゃない」

( ´_ゝ`)「そうだな」


だが、それにしては――弟者の反応は行き過ぎている。
死に直面したのは兄者ではなく、弟者の方だと言ったほうが、むしろ納得できるくらいなのだ。


('A`)「……でも、今のお前らは、逆だ。
   鏡に落ちたのは弟者で、兄者はそうじゃないみたいだ」


死という絶対的な恐怖に直面したから。
その原因である、人間ではない精霊のような生き物を憎悪する。
人間の領域ではない魔法を拒絶し、原因となった鏡を見れば破壊する。


( ´_ゝ`)「……ああ、たしかにそうだな。でも、」


.

436名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:53:26 ID:2tZd1sd.0


( ´_ゝ`)「同じだよ。弟者にとっては、な」


ドクオの考えを止めるように、兄者はぽつりと言った。
出入り口の方へと向けられていた視線が、ドクオへと向けて合わせられる。


( ´_ゝ`)「鏡に落ちたのがどっちでも、弟者にとっては同じなんだよ。
      ――ああ、これが手がかりな」

(;'A`)「はへ?」

( ´_ゝ`)「お前さんが聞きたいのは、俺と弟者の間に何があるのかだろ」


ドクオを再び混乱させる言葉を投げかけながら、兄者はまたへらりと笑った。
わかっているよと言いたいのか、それともわからないなと言いたいのか。ドクオにはわからない。


σ( ´_ゝ`)「あー、ドクオには言っておくが、俺と弟者は別に仲が悪いわけじゃないんだぞ。
       でも、まぁ ……食い違ってるよな、やっぱ。イタイトコロ ヲ ツキオッテ カラ ニ」


そう言って、兄者は再び笑ってみせる。
眉を寄せたその表情は、困っているようにも見えた。


( ´_ゝ`)「距離を測りかねているだけなんだよ、俺も弟者も。なにせ双子だから」


.

437名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:55:35 ID:2tZd1sd.0

  ,_
('A`)「双子……ねぇ……」


やはり、そこに行き着くのか。
ドクオは眉をしかめて、兄者に向かって再び問いを投げかけようとする。


( ^ω^)「おっおー、ドクオー! アニジャー!!!」


が、ドクオと兄者のもとに、おっとりとした声が割り込んだ。
兄者が顔を見あげれば、硝子のような羽を輝かせたブーンの姿がそこにあった。


( ´_ゝ`)「よーし、内緒話はここまでだな。ドクオー、さっきまでの話は秘密だぞー。
      お兄ちゃんとは、弟にあまり心配をかけてはいけないものだからな」

(;'A`)「どの口がそれを言うか」


続きを追求したい気持ちはあるが、ドクオはそれ以上は問いかけなかった。
どのみち兄者は、もうこれ以上は話さないだろう。
ドクオには、その確信があった。


( `ω´)「あー! ドクオばっかりアニジャとないしょの話をしてズルいおー!
       ブーンだってまざりたいおー」

.

438名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:57:11 ID:2tZd1sd.0

( ´_ゝ`)b「よしよし。ブーンには今度、世界のメシの話をしてやろう」

(*^ω^)「ほんとうかお。わーい! 楽しいおー!」


兄者の軽口に、ブーンが楽しそうに応じている。
それを聞き流しながら、ドクオは視線を周囲に向ける。


(´<_` )「……」

('A`)「弟のお帰りか」


部屋へと入ってくる弟者の姿が、ドクオの視界に入ったのはちょうどその時。
先程まで話題の中心だった弟者は、口を真一文字に結んで、兄者とブーンの方を睨みつけている。
よく見れば、弟者はその手に見慣れない何かを掴んでいた。


(´<_` )「兄者」

( ´_ゝ`)ノシ「お疲れさん、弟者。
        じゃあさっそく、進もうじゃないか――」
  ,_
('A`).。oO(あれは……)

.

439名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 21:59:26 ID:2tZd1sd.0

一体、何なのかとドクオが思った瞬間。
弟者が手にした黒いナニカを、兄者の顔に向かっておもいっきり投げつけた。


(;゚A゚)「ちょ、ま!!!!」

 三[])´_ゝ`)<あべし

( ;゚ω゚)「アニジャ―――!!!」


……弟者が投げつけたのは、黒い光沢のある石だった。
四角い皿ほどの大きさの薄い石板。
兄者はその石板をしげしげと眺めるが、そこには刻印らしきものも術式らしきものも刻まれていない。


ヒリヒリ(:::)´_ゝ`)つ[]「ふむ。弟者、これは?」

(´<_` )「これなら魔法石板に使えるだろ。
      拾ってきてやったから、帰るぞ、兄者」

( ´_ゝ`)つ[]


(#`_ゝ´)「弟者ァァァ!!! お前というやつは何もわかってない!!!!」

.

440名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:01:38 ID:2tZd1sd.0


石板を真顔で眺めた末に、兄者はやだやだーと騒ぎ始める。
腕をバタバタと振り回す兄者の顔は、先程まで真剣な話をしていた人物と同じだとはとても思えない。


o(#`_ゝ´)o「俺達は大冒険に来てるんだぞ!
        それが、いきなりアイテム渡されて終了って――あんまりじゃないか、我が弟よ!」

(´<_` )「あー、はいはい。わかったから帰るぞ、兄者」

o( ;*`、ゝ´)o「帰るぞって――これじゃあ、俺ここでドクオと話してただけじゃないか!!!」

(;'A`)て「その顔キメェな、おい」


そして、対する弟者の顔は段々と険しくなっていく。
眉は寄り、それほど饒舌じゃない口はどんどんと達者になっていく。

 _,
(´<_` )「大市に行った、ラクダに乗った、盗賊に会った、ギコさんたちに会ったし、遺跡にも入った。
      もう十分だろ。まだまだ帰りもあるんだから、さっさとここから出て帰ろう。
      明日は妹者と遊ぶんだろうが」

( ^ω^)「おー、いろいろいっぱいあったおねー」

(#´_ゝ`)σ「異議あり! メインダンジョンの攻略なくして、何が冒険か!!
        楽して重要アイテムゲットとは、俺の方針に大きく反する!」

( ;*`、ゝ´)「っていうか、弟者ばっかり遺跡探索してズルいやズルいや!!!」

(;'A`)て「だから、その顔やめろっての!!!」

.

441名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:03:31 ID:2tZd1sd.0

(#´_ゝ`)σ「そもそもこれは約束違反じゃないかね、弟者くん」

(´<_` )「さて、何のことやら」

τ( ´_ゝ`)η「弟者くんは先に様子を見に行った。それで、俺がここで待機した。
          ――うん。ここまではいい。だって、そういう約束だからな」
 _,
(´<_` )「なら、問題無いだろう? 帰るぞ」

η(#´_ゝ`)η「違うっての! 弟者が先行したのは、安全を確認するためだろうが!
         みつけました。はい、帰りましょうじゃ。意味ないっつーの!」


兄者と、弟者の表情はどんどん険しくなっていく。
これはまた殴り合いが始まるんじゃないかと、ドクオは内心危惧を抱く。


(;^ω^)「アニジャ、オトジャ……」
   ,
(-<_- #)「もう話しかけるなと言っただろう! この羽虫!」

η(#´_ゝ`)η「大体、目的のブツはこれじゃな」


( ;´_ゝ`)「……あ」(´<_`; )


激しく言葉を放っていた兄者と弟者は、同時にそっくり同じ表情をして間の抜けた声を上げた。
二人の顔に浮かぶのは、しまったという表情。

.

442名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:05:52 ID:2tZd1sd.0

(*^ω^)「お?」

(;'A`)「たった今、兄と弟から、ものすごく気になる発言が飛び出したような……」


( ;´_ゝ`)「……」(´<_`; )


( ;´_ゝ`)「……もう話しかけるなと『言った』? ブーンに?」

(´<_`;)「……これじゃな……いのか?」


兄者と、弟者は同じ表情を浮かべたまま沈黙する。
お互いの言葉は気になるものの、追求すれば自分も不利になる――そう思っているのだろうと、ドクオは推測する。


(;´_ゝ`)「……行きませんか、弟者さん」

(´<_`;)「ああ、これじゃないのなら仕方がないな……」

('A`)ノ[]「おい、お前らこれはどうするんだ?」


ぎこちなく話し始めた二人に向けて、ドクオは先程投げられた石板を指さしてみせる。
が、二人は心ここにあらずといった表情のままで、ぎくしゃくと会話を交わす。

.

443名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:07:24 ID:2tZd1sd.0

(;´_ゝ`)「……あ、弟者さん持っていってください」

(´<_`;)「……あ、ああ。今のところただの石だしな」

('A`)「……二人揃って、不自然なことこの上ないな」


互いに深入りしないやりとりに、ドクオは小さくため息をつく。
そして、兄弟から目を離すと、今度はブーンが両手を振り回しながら飛び回っているのが目に入った。


(*^ω^) ニコニコ

('A`)「……お前も、やけに嬉しそうだな」

(*^ω^)「そうかお? ブーンは今、うれしいのかお?」

(;'A`) シルカ

(*^ω^)「おっおっ。うれしいっていいものだおー」


( ´_ゝ`)ノシ「おーい、お前ら行くぞー」

(-<_- ;)「……」


呼びかける声にドクオが振り向くと、既に兄者と弟者は最期の出入り口へと向かっている。
ドクオとブーンは互いに顔を見合わせると、兄弟たちの元へと向かってあわてて羽を動かしはじめた。

.

444名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:09:44 ID:2tZd1sd.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


出入り口から廊下に出た瞬間、兄者はほぅと息をついた。


( ´_ゝ`)「冬の星だ」


これまで通ったのと、ほぼ同じつくりの廊下。
その星空を模した天井をじっと見上げて、兄者は言う。


( ^ω^)「わかるのかお?」

( ´_ゝ`)ゝ「これだけは得意だからな。
        作り物にしては本当によくできている……ほらあれが、天上輝星」

(*^ω^)「おー」

(´<_` )「さっさと行くぞ」


( ´_ゝ`)ノ ハーイ (^ω^ )ノ

.

445名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:11:22 ID:2tZd1sd.0

廊下の中を、兄者と弟者のたてる足音だけが響く。
ドクオは延々と続く、壁の浮き彫りを眺めながら大きく息をはいた。


(;'A`)「この廊下長くないか?」

( ^ω^)「もっと、ずぅーっと続いてるおー」

(;'A`)「……つかれた」

プンプン∩(#`_ゝ´)∩「人の肩に座って楽をしているくせに、何を言うか」


どこまでも続く似たような見た目の廊下は、そこを通る者を知らず知らずのうちに疲れされる。
変化のない光景は、それだけで人間の気力を消費させるものだ。
どれだけ進んだのか。時間の感覚すらも無くなりそうな廊下を、兄者達一行は進んでいく。


(´<_` )「もうしばらく進めば、小部屋への分かれ道にたどりつく」

(*゚_ゝ゚)+

(;^ω^)「でも、中はそんなに楽しくなかったお……」

( ´・_ゝ・`)ショボーン


('A`).。oO(兄者が百面相してる)

.

446名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:13:17 ID:2tZd1sd.0

それからも歩き続け、兄者が再び不満の声をあげようとした頃。
ようやく弟者が口にした分かれ道へとたどり着いた。


(*´_ゝ`)「おお、すごいではないか」

(´<_` )「しかし、俺らはまっすぐに進むからな」

゜ミo(#`_ゝ´)o彡゜「なんで、そんなこと言うし!
            俺は一人でも行くからな!!!」

(´<_` ;)「時に待て、兄者よ」


兄者は肩に乗ったドクオともども、廊下に作られた出入り口の一つへと入っていく。
が、それから幾ばくもしないうちに、すぐに戻ってくる。

  _,
(;´_ゝ`)「あるぇー、おっかしいなぁー」

(´<_` )「……」


そう言いながらも、兄者はその隣に並んだ出入り口へと入っていく。
が、やはりそれほどたたないうちに、兄者は再び廊下へと帰ってくる。


(;´_ゝ`)「……なにもないな」

(´<_` )「そう言っただろう。まったく、兄者は人の話をきかない大王様だな」

.

447名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:15:21 ID:2tZd1sd.0

('A`)「うん、ただの部屋だったわ」

(;^ω^)「ブーンとオトジャは、ここにある部屋ぜんぶ見たお。
      でも、他もみんなそんな感じだったお」

τ(;´_ゝ`)「うーん、全部こんな感じだったのなら、弟者たんは一体どこから石板を拾ってきたのだ?」


兄者は頭をかきながら、首をひねる。
その動きにドクオは、「オレの方に頭を傾けんな!」と不満の声を上げるが、誰も取り合おうとはしなかった。


(´<_` )「もっと先だ。ちなみにだが、他の部屋も見ていくか?」

('A`)「オレは遠慮するぜ」

(;´_ゝ`)「……正直、弟者の話を聞いておけばよかったと思っている」

⊂二(*^ω^)二⊃「じゃあ、張り切って進むお!」


廊下の左右に広がる出入り口を無視して、一同は進んでいく。
兄者が振り返ると、これまで歩いてきた道は照明が消え闇に沈んでいた。


( ´_ゝ`)「おお、こわいこわい」

('A`)「……まあ、大丈夫だろ」

.

448名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:17:34 ID:2tZd1sd.0

(´<_` )「どうした、兄者?」

γ( ´_ゝ`)>「俺のかっこよさにおにゃのこが殺到して、大乱闘になる気がしてな」
 _,
(´<_`; )「そんなの一生無いから安心しろ」


(;'A`).。oO(それで、納得するのか弟!)


そんなやり取りを交わしながら、一同は進んでいく。
廊下の装飾も明かりも、これまでとほぼ変わらない。聞こえるものといえば、足音のみ。
さきほどのような脇道もないから、まっすぐと進む廊下をひとしきり歩くだけとなる。


⊂二(* ω )二⊃「アニジャー、オトジャー、ドクオーあとちょっとだおー」

(*´_ゝ`)「なんと! やったな、ドクオ者!」

(*'A`)「ついに、くるのか」

(´<_` )「……」


そして、ブーンの言葉通りしばらく進んだ先。
そこに黒い両開きの扉があった。
装飾の殆ど無いその扉は、弟者が先行していた時に開いたのと同じものだった。

.

449名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:19:24 ID:2tZd1sd.0

(*´_ゝ`)「弟者ぁ、俺が開いてもいいか!」

(´<_` )「大丈夫だ、問題ない」


兄者は、扉へと手を掛ける。
ひんやりとした廊下の空気と同様に、扉から伝わる熱はしんと冷えている。
それに心地よさと、ほんの少しの恐れを抱きながら兄者は、扉を押した。


ギッ


蝶番が、鈍い音を立てる。
はじめは重く、徐々に軽くなめらかにと扉は動き始める。
そして、それとともに差しこむのは強烈な日差し。


(#>_ゝ<)「まぶしっ」

(´<_-; )「……っ」

(*^ω^)「ついたおー!」


日差しは扉の動きと共に強くなり、辺りを白へと染めていく。
思わず閉じた目を、兄者がふたたび開く頃には周囲の光景は完全に別物と化していた。


.

450名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:21:12 ID:2tZd1sd.0

理路整然と続いていた床の幾何学模様は、崩れかけた石畳と、石が転がる硬い大地に。
星空を模した天井は、白くけぶりながらも青い空に。
そして、浮き彫りを施された壁は一気に開け、広場のような空間が広がっていた。


(;´_ゝ`)「これは……」

(´<_-; )「おそらく庭園だろうな。
      俺達は奥へと向かって進んだ結果、外へと出てしまったというわけだ」


弟者の言うとおり扉の向こうに広がっていたのは、庭園だった。
正確には、かつて庭園だったというべきであろうか。
大地にはかつての名残とみられる、巨木の跡や、背の低い木々や草たちがまばらに生えている。


(;'∀`)「……なんというかここは、ボロボロだな」

( ^ω^)「そうかお? 木とかいっぱいだお!」


ブーンは否定したが、ドクオの主張する通り、ここは荒れ果てていた。
外観や内部が今でも使えそうなほど整っていたのとは、まるで正反対。
壁の至る所にヒビが入り、場所によっては崩れている所すらある。


∩( ´_ゝ`)∩「お兄ちゃん、これにはちょっと驚きましたわ」

('A`)「オレは拍子抜けだ」

.

451名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:24:02 ID:2tZd1sd.0

(´<_` )「まあ、ざっとこんな感じだ」


白かったはずの外壁の色は鈍くかすみ、弟者が触れたとたん表面がパラパラと剥がれ落ちた。
それをぎょっとした表情で見つめた後、兄者は再び周囲へと目を巡らせる。
遺跡の暗闇に慣れた目には外のまぶしさは、まだつらい。


(;´_ゝ`)「……しかし、一気に熱くなったな」

(´<_`; )「仕方がない。外だからな」


被り布を深くかぶり直しながら、兄者は目を凝らす。
まぶしさと目への刺激は少しずつ引いていき、次第に周囲の様子がはっきりと目につくようになる。
兄者はそれを見て取ると、かつての庭園へと一歩踏み出した。


( ´_ゝ`)「――ここはそんなに砂がつもってないのな」

(´<_` )「木があるからじゃないか。
      荒れてはいるが、まだ水は枯れていないようだ」


そのまま、兄者たちは足を進めていく。
そして、木に紛れて据えられている、かつては噴水か美術品だったものの前にたどり着いた。
今はもはや原型をとどめていないそれは、崩れかけた黒い石や岩の固まりと化している。


.

452名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:25:30 ID:2tZd1sd.0

(*^ω^)「石板さんはオトジャがここから見つけたんだお!」

ヽ(*´_ゝ`)ノ「ほう。なるほど、でかしたじゃないか弟者!」


ブーンの言葉を聞いて、兄者は目の前の黒い石や岩達に目を凝らす。
よく見てみれば、その黒い石はつややかで厚みも薄いものがほとんどだ。
確かにこれなら魔力の通りも悪くなさそうだし、しかるべき所で売ればそれなりの金額になるように見えた。


(´<_` )「まあ。先ほどの件を考えると、見つける必要はなかったんだがな。
      そもそも、兄者の目的とは何だったのだ?」

( ;´_ゝ`)「そういう、弟者たんこそ。
      俺とドクオがいない間に、ブーンとなんか話でもしてたのか?」


( ;´_ゝ`)「……」(´<_`; )


兄者と弟者が、同じ表情を浮かべたまま同時に沈黙する。
そのまましばらく顔を合わせた後、二人はようやく声を上げた。


(;´_ゝ`)「……探索、続けるか」

(´<_`;)「……把握した」

('A`).。oO(こいつら、腹を割って話せんのか)

.

453名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:27:14 ID:2tZd1sd.0

黒い石や岩の固まりを越え、兄者は辺りを歩いてみるが他にはめぼしいものは何も見えない。
木と草と石と崩れかけた壁が、彼の視界に入る全てだ。


(´<_` )「俺が見た限りでは、ここが終点だ。
      兄者の目的が何かはわからないが、そろそろ満足したか?」

(;´_ゝ`)「いや、まだ目的のものが見つからない。
      ギコ者も言っていたし、そんなことはないはずなんだが……うーむ」


兄者は辺りを見回しながら、手を顎に置き考え込み始める。
ギコは目的のブツは一番奥の間だと言っていた。それにわかりにくいとも。
では一体どこなんだと、兄者は考えこむ。


( ´_ゝ`)「ギコ者たちがわざわざ神殿って呼んでいるからには、祀られている何かがあると思うわけで……」

('A`)「は?」

( ´_ゝ`)b +「……つまり、もっと奥があるに違いない!」


兄者がぶつぶつとつぶやいた言葉に、ドクオと弟者は眉をひそめる。
ただ、ブーンだけが兄者の言葉を聞き顔をぱっと輝かせた。

.

454名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:29:15 ID:2tZd1sd.0

d(^ω^ )「さすがだお、アニジャ!」

(*´_ゝ`)b「おお、流石だよなブーン者!
        お前もとうとう『流石だよな』の精神を習得したか!」

∩(^ω^ )∩「おっお! やったおー!」


兄者はそう言いながら、再び歩き始める。
行く手を阻むように立つ背の低い木々に近づき、どうにか通る場所はないかと目を凝らす。


( ´_ゝ`)「お、ここか?」

(´<_`;)「まだ、先があると……」


木々のとある一角に、かき分けられたかのように枝が不自然に折れた形跡がある。
弟者の野郎、めんどくさくなって調べるのサボりやがったな。
――そう考えながら、兄者はそこに向けてぐいと体を滑り込ませる。


(;^ω^)「アニジャっ!」

(*´_ゝ`)ノ「大丈夫だ。こっからまだ先へと、進めるようだ」

Σ(´<_` )「なんと! 兄者、今すぐそちらに行くから時に待て!!」

.

455名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:31:07 ID:2tZd1sd.0

木々のそのまた向こうには、石造りのアーチがあった。
よく見れば、その先は再び建物らしき影へとつながっている。
ギコが言っていたわかりにくいとはこのことだろうと、兄者は一人納得する。


('A`)「これはまた……」

(*´_ゝ`)o彡゜「よし、行くか!」

(;'A`)「お前、弟者をまた怒らすつもりか」


ドクオの声に「いいのいいの」と返すと、兄者はアーチを越え屋内へと入っていく。
廊下と思われる場所はこれまでと違い、星空を模した天井や浮き彫りの細工がない。
床と壁は古ぼけた白い石材を積み上げてつくられている。
入り口から差し込む光と、壁の上方に取り付けられた明かり取りの小窓から差し込む光だけが、中をかろうじて照らしていた。


(´<_`#)「兄者っ!」

(;´_ゝ`)て「うおっ、弟者っ。ゴメンナチャイ!」

('A`)「だから、怒られるとあれほど」

( ;ω;)「おいてくなんてひどいおー」


追いかけてきた弟者とブーンの声に、兄者は慌てて足を止めた。
弟者は怒りの表情を浮べ体を震わせ、ブーンはというとその目に涙を溜めている。
兄者にとって弟の反応は予想通りだったが、ブーンの泣き顔にはさすがにその良心が痛んだ。

.

456名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:33:11 ID:2tZd1sd.0

(;´_ゝ`)>「えーと、スマン。
       でも、時に皆。すぐ目の前を見てもらいたい」


彼らが足を止めたすぐ目の前。兄者が顎を向けたその先は……廊下の果て。
その突き当りに、両開きの扉があった。


( ´ω`)「なんかここは、さっきまでとは違うおね。
      昔の空気が残ってるような感じがするおー」


涙を止めたブーンが周囲を見回す傍らで、兄者は扉を見上げる。
石造りの壁に据えられた扉の周囲の壁は、花や植物で細かい浮き彫りがされている。
扉そのものは重厚な金属で造られており、ほどこされた花や鳥の装飾は緑青の錆にくすんでいた。


(´<_` )「随分と立派な扉だな。これまでで一番でかいんじゃないか?」

(;'A`)「……もしかして、この向こうが最奥か?」

( ´_ゝ`)「せっかくここまで来たんだ、弟者。お前も見ていくだろ、この先」


弟者が止めるまもなく、兄者が扉へ手を掛ける。
そのまま力を込めて押すが、扉はなかなか動こうとはしない。


(´<_`#)「罠があるかもしれないのに、不用意に触るな」

.

457名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:35:40 ID:2tZd1sd.0

(;´_ゝ`)b「ギコ者だって入ってるだろうし、大丈夫だいじょーぶ。
        ……てか、重い。弟者よ、早く助けてくれ」

(´<_` ;)「は? ……鍵がかかってるんじゃないのか?」


扉を押す兄者の顔は、今や真っ赤に染まっている。
が、兄者の力が弱いのか。それとも扉がよほど重いのか、まったく開く気配がなかった。


(;^ω^)「開かないのかお?」

(;´_ゝ`)「おとじゃー、はやくー。
      早くしないと、非常に不本意だが緊急手段を使うぞ!!」

(-<_- ;)「あー、把握した。……こんなところで日干しにされたらかなわんからな」

('A`)「……日干し?」


ドクオには意味のわかならない謎の言葉を残して、弟者は扉へと手を掛ける。
彼が力を込めた途端、ギ……と金属の軋む耳障りな音を立てて、扉が少し動く。


(´<_`;)「む、これは重いな」

(;>_ゝ<)「力仕事は任せた、弟者!」


.

458名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:37:04 ID:2tZd1sd.0

(´<_`#)「兄者は、もう少し根性をみせようか」

(;´_ゝ`)σ「根性を見せろって言われてもな……お前さんが加減さえしてくれれば、俺ももうちょっと」

(´<_` )「ふむ。そういえばそうだったな」

(;'A`)「お前らは何の話をしてるんだよ、一体……」


そんな会話を交わしながらも、弟者は徐々に力を込める。
兄者一人では無理だった扉は、二人がかりでようやく開きはじめる。
重い音を立てながら、その向こう側が少しずつ見え……


(;^ω^)「あと、もうちょっとだおー」

(*´_ゝ`)「弟者がんばれー」

(´<_` )「はいはい」


扉の向こうからは光が差し込み、徐々に明るさを増していく。
弟者が更に力を込めると、ようやくその全貌が見えた。


(;'A`)「なんじゃこりゃ」

(*^ω^)「すっごいおー」

.

459名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:39:15 ID:2tZd1sd.0

一同の目に最初に入ったのは、崩れ落ちた天井と、その向こうに広がる青い空。
砂漠の眩すぎて影のようにも見える強烈な青ではなく、高く穏やかな色。
その空の下をそよぐ草の色は、流石邸の中庭でもなかなか見ることの出来ない薄緑――弟者の毛並みの色だ。

扉の向こうに広がる世界――、それは別天地のようだった。


(´<_`;)「なんだ……これは……」

(*´_ゝ`)「すごいな弟者!! ここが最奥だ!!!」


庭園跡の暑さや眩しさが嘘のように、穏やかな光景。
兄者の被り布が風に翻り、そこに取り付けられた金具が涼やかな音を立てた。
マントのフードを外して、弟者は辺りを見回すが。直接日光を浴びてもいつものように目が眩まない。


(;'A`)「季節が……いや、場所自体がズレてるのか?」

(*^ω^)つ「ドクオ見るお、あっちに何か変なものがあるお」

(*´_ゝ`)「……これが神殿か」


そよぐ草のそのまっただ中に、白い石材で造られた祭壇があった。
高さは兄弟の腰位だろうか。これまで見かけたどの石材よりも白い岩には、幾つもの浮き彫りが施されている。
その装飾も、これまで遺跡で見たどの細工よりも繊細で美しい。
しかし、燭台や壺らしきものに囲まれた、祭壇の上には何も祀られてはいなかった。

.

460名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:42:13 ID:2tZd1sd.0

( ´_ゝ`)「なんだろうなぁ、あの祭壇っぽいやつは」

( ^ω^)「なんだろうだおー」

(´<_` )「兄者は待っていろ。様子を見てくる」


弟者の回答に、兄者はわかってるよとばかりにため息を付いた。
祭壇の方角を名残惜しげに見つめると、それからさらに奥を眺めた。


(;´_ゝ`)「はいはい、わかりましたよ。
      俺はおとなしく、あっちのほうで草でも見てるよ」

(´<_`;)「……よりにもよってなぜ、草なのだ」

ε三┌(*´_ゝ`)┘「いいのいいの」

(´<_`;)「――おい、あまり先行するな!」


兄者はその肩にドクオを乗せたまま、奥のより草の茂っている方へと走っていく。
部屋の一番奥には白い壁が、行く手を阻むようにそびえ立っている。
兄者が向かう先の壁だけではない、この最奥の部屋の四方を取り囲む壁は一枚岩で作られたかのようにつややかだ。
扉や祭壇とは違い、浮き彫りなどの細工が一切見えない。


(´<_` )「……廊下もだったが、かなり雰囲気が違うのだな」

.

461名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:43:45 ID:2tZd1sd.0

弟者は祭壇へと向けて歩き始める。
この部屋は何から何まで様子がおかしいが、その中でも一番怪しいのがこの祭壇だ。

祭壇へと向かう弟者を、穏やかな日差しと優しくそよぐ風が包む。
彼らが生まれてはじめて感じる、厳しさを感じない日差しと、風。そして、なによりもこの草原。


(´<_` )「……父者や妹者が見れば喜んだのだろうな」


流石邸の中庭にあるどの植物とも違う、やわらかな草の色。
風に草同士がこすれあい、聞いたことのない楽器のような音を立てる。
この光景を持って帰ったのならば、妹者におくる最高の贈り物になったのにな、と柄にも無いことを弟者は考えた。


( ^ω^)「お父さんと妹さんは、こういうのが好きなのかお?」

(´<_` )「……」

(*^ω^)「ここの風は気持ちいいおね。ブーンにとってはとっても心地いいお」


相も変わらず語りかけてくるブーンを無視し、弟者は祭壇へと向かう。
特定の信仰を持たない弟者には、その祭壇が何のためにあるものかわからない。
かろうじてこういう場所には神の像なり、信仰の象徴となる器物が置かれるという知識が有るだけだ。


(´<_` )「……しかし、何もないな」


つぶやき、祭壇に手をかけようとした所で、
草の音に紛れて響く――奇妙な音の存在に気づいた。

.

462名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:45:09 ID:2tZd1sd.0

  ___―===―_―    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄ ̄―‐―― ___
  ――――    ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ―― __――_━ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―=


低く、唸るような音。
注意深く耳をそばだてて、ようやく聞き取れるくらいの低い音が弟者の耳朶を震わせる。

  _,
( ^ω^)「……お?」


ブーンが怪訝そうに声を上げる。
弟者はざっと視線を巡らせるが、音の源はどこかわからない。

  _,
( ^ω^)「なんだお、すっごくうるさいお」

(´<_`; )「――っ」


そして、ブーンが再び呟いた声に。弟者は凍りついた。
いつの間にか喉がからからに乾き、心臓がいやに早く動きだしている。
動き出す鼓動の音がうるさすぎて、弟者の腕は知らず知らずのうちに握りしめられていた。


(´<_`;)「今、何て言った」
  _,
( ;^ω^)「うるさくてあんまりよく聞こえないお! どうしたんだお、オトジャ?!」

.

463名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:47:19 ID:2tZd1sd.0

低い音が、聞こえる。
ほんのかすかな、弟者が集中してようやく聞こえる音。


(´<_`; )「――兄者っ!!! 耳をふさげぇぇっ!!!」
 _,
(; A )「……弟者?」

(´<_`; )「耳をふさげっ! ここから出るぞ!!!!」


嫌な予感が止まらない。
さっきから、心臓の動きが止まらない。
兄者はどうしている。どうして、俺は兄者と一緒にいなかった?
――弟者は力いっぱいに叫ぶと、兄者を探して視線を巡らせる。


( <_ ; )「兄者っ、答えろっ!! 返事をいや、耳をふさげっ!!!」
 _,
(; A )「おい、兄者っ。弟が何か……」


ドクオの声は聞こえる。
あの精霊は兄者の肩に乗っていたはず。だから、あいつの声が聞こえるなら兄者はそこにいる。
だけど、いつもならすぐに返ってくるはずの返事がない。

  _,
( ^ω^)「なんだお? どうしちゃったんだお?!」

.

464名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:49:21 ID:2tZd1sd.0

祭壇から兄者の向かった方角へと、弟者は駆ける。
その後を、ブーンがふらつきながらも飛ぶが、弟者はそれに目もくれない。


(´<_`; )「兄者っ!!」

(  _ゝ )


そして、駆け出した弟者はようやく兄の姿を見つける。
ゆったりとした服。被り布と腰帯は風にひらめき、腰に幾重にも巻かれた飾り帯がシャラシャラと音を立てる。
薄水色の体の色だけを除けば、――それは二年前の自分そのままの姿だ。


(  _ゝ )「……そうか……そうだな」

(;'A`)「おい、兄者。何を言ってるんだ?!」


そして、立ち尽くす兄者の瞳には何の表情も浮かんではいなかった。
兄者の焦点を失った瞳が、弟者ではなくてどこか遠くを見据える。


(  _ゝ )「……そこに、」

(゚<_゚ ; )「――ドクオォォォ、兄者をとめろぉぉぉ!!!!」

.

465名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:51:19 ID:2tZd1sd.0

兄者が視線を向けた先、――そこには何もない。
しかし、兄者の目は確かに、何かを捉えていた。
兄者の視線が上へ下へ、右へ左へと動き、弟者には見えない何かをたどる。

 _,
(;'A`)「聞こえない! 兄者、弟者! これは一体何だ?!」

(´<_`#)「――兄者っ、ブーンっ!!」
  _,
(;^ω^)「よ、呼んだのかお?」


まるで、星を読むかのようなその動き。
でも、そこには星なんて、無い。


(  _ゝ )「     ……            ……」


兄者の口が、何かをつぶやくのが見えた。
しかし、弟者の位置からでは何を言っているか聞くことが出来ない。
視線は遠くにむけられたまま、その足が壁へと向かう。

――なにかに操られている。
あの音が原因に違いないと、弟者はもはや確信していた。

 _,
(;'A`)「おい、兄者止まれっ! そっちには何もない!!」

(  _ゝ )「……   、         ……」


.

466名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:53:04 ID:2tZd1sd.0

――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐



     ――それは、いつかの焼き直しのようだ。
     忘れられない記憶が、断片のように浮かぶ。


     「なあ、おれ。誰かに、呼ばれてないか」


      あの日も、そうだった。
      あの日も、兄者は俺にはよく聞こえない“何か”の声を聞いたのだ。


      そして、鏡の表面に触れた手が、水面に 溶けて――。




‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

467名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:55:02 ID:2tZd1sd.0

(  _ゝ )「  ……」


白い壁に、兄者の指が伸ばされる――。


(´<_`#)「ブーン、兄者を止めろぉ!!!!」


その瞬間、弟者はさらに速度を上げて駆けだしていた。
腰から青竜刀を外すと、獣の速さで兄の元へと駆ける。

  _,
(;^ω^)「はえ? でも、ブーンには頼らないんじゃ」

(´<_`#)「いいから!
      お前が一番早い! 死んでも止めろ!!」


しかし、それでも兄者の元へたどり着くには遠い。
ブーンの耳に響く音に負けぬように、弟者は声を張り上げブーンを怒鳴りつける。


(;゚ω゚)「はぃいいいい!!!」


耳を震わせる大音量に顔をしかめながらも、ブーンは弟者に言葉を返す。
ブーンの体が周囲の風を巻き込みながら、一直線に飛ぶ。

.

468名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:57:47 ID:2tZd1sd.0

兄者の口が、再び何かをつぶやくように動く。
しかし、その口から出たのは言葉ではなく――


(  _ゝ )  《         

     ⊂二(^ω^#)二二⊃「やめるおぉおおおおおお!!!!」

(;'A`)「ブーンっ!!」


弟者の薄緑の毛並みが一斉に逆立つ。
肌が粟立ち、耳が言葉ともつかない音をとらえる。
弟者は知っている――この肌の感触は、耳を打つ音は兄者の魔力そのものだ。


(´<_`#)「――間に合えっ!!!」


白い壁の兄者の手が触れた部分を中心に、光が広がる。
上へ下へ、右へ左へ――先ほどまで見えなかった何かをたどるように、光は走る。

光の一筋は円を描き。
その円の内側には三つの円が。
その中心を貫くかのようにして多角形がいくつも組合わされていく。
外周にあたる円の外や内には、弟者には読み取れない文字や記号がいくつも浮かび上がる。


(#'A`)「兄者っ、しっかりしろっ!!」

.

469名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 22:59:08 ID:2tZd1sd.0

光によって描かれた何かは、魔法陣に似ていた。
兄者の魔力を使って描かれた、兄者だって知らないであろう術式。
――音で絡めとった獲物の魔力を使って放つ、罠。
あれが発動したらおそらく、ろくなことにはならない。


(#^ω^)「やめるお、アニジャ!」

(; _ゝ )「    …っ」

(#'A`)「口塞ぐぞ、ブーン!」


ブーンとドクオが兄者の顔に殺到し、その動きを何とか止めようと動く。
彼ら精霊は何が起こっているのかわからないなりに、必死だ。
二人の懸命の努力により、兄者の体の動きが少しだけ鈍り、その口も動きを止める。


(゚<_゚ ♯)「こんのぉ、クソ兄者ぁっ!!!」


それだけの間があれば、弟者には充分だった。
盗賊から取り上げた青竜刀が鞘に入ったまま唸り、兄者の腹へと打ちこまれる。
兄者はその動きを全く避けようとはせず、その打撃をもろに食らった。


(;^ω^)「オトジャっ!」

(;゚A゚)「ちょ、ま、え?」

.

470名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:01:02 ID:2tZd1sd.0

予想だにしていなかった弟者の動きに、ドクオとブーンが動きを止める。
その、ほんの一瞬。


(  _ゝ )《        》

Σ(´<_`; )「――しまっ」


一際大きな魔力の奔流が、周囲を蹂躙する。
それは魔法陣を震わせて、金属質の鐘のような音を周囲に響かせる。


(;^ω^)「アニジャっ、大丈夫かお!」

( ;-_ゝ-)「――っ、ぅ」


鐘のような音と、強い光を放って魔法陣は輝き続ける。
兄者の体が力を失って、崩れ落ちる。
それを慌ててブーンとドクオが支えようと動く。


(;´_ゝ`)「――俺、は……」

(;'A`)「しっかりしろ、今は無理してしゃべらなくていい」


――そして、鞘から青竜刀を抜き放った弟者が壁へと走る。

.

471名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:03:09 ID:2tZd1sd.0

その標的は、光を放つ魔法陣そのもの。
抜き身の剣は鈍く輝き、新たな主の命を果たそうと動く。
しかし、そんな弟者をあざ笑うかのように……


(゚<_゚ ♯)「――止まれぇぇぇぇっ!!!」

(#゚A゚)「弟者退けぇぇっぇ!! 危ないっ!!」


魔法陣は一際強く輝くと、飛びかかった弟者の姿を弾き飛ばす。
見えない風のような魔力の奔流に打ち据えられ、飛ばされながらも弟者は体勢を強引に整える。
そして、そのまま猫のように着地すると、再び走りだそうと足に力を込める。


(;^ω^)「オトジャっ!」

(;´_ゝ`)「――ぅ、」


兄者は正気に返ったようだが、まだまともに動ける様子ではない。
自分でやったことではあるが、手負いの兄者を連れて出口まで走ることは不可能。
ならば、魔法陣が本格的に発動する前に止めるしか手段はない。

だが、

そうやって頭を巡らせる弟者の前で。

無常にも魔法陣は一際大きな音を立て――ついに、発動した。

.

472名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:03:55 ID:2tZd1sd.0




そのろく。  俺らの冒険は始まったばかりだ。


   おしまい



.

473名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:05:27 ID:C4jNBwmI0
おつ!
すごく気になるところでおわったな…

474名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:08:08 ID:3Ian1DMs0


475名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:35:40 ID:2tZd1sd.0
ここからはオマケ劇場 全8レス

476名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:37:50 ID:2tZd1sd.0


            
            __ ('A`)ノシ_
         ,r''"  ∠ノ( ヘヘゝ  ゙`'丶、
         r'´                ` 、
       .i     'ー──―‐'      !
        `=ー-、....,,,,,_____,... --‐=''´
         ``" '' 'ー──―‐' ''' "´



おまけ劇場   l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです


.

477名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:40:43 ID:2tZd1sd.0

ドバドバ∬´_ゝ`)つ∪「見るからに胡散臭い魔道具。ここに妹者がもってきてくれた水を注ぎます」


フムフム l从・∀・ノ!リ人


∬´_ゝ`)「でもって水底に刻まれた文字を指でなぞります。
      すると――あら、不思議!」


l从・∀・ノ!リ人「?」


 (#゚;;-゚)『……こちらソーサク遺跡先遣調査部隊』


Σl从・∀・;ノ!リ人


∬*´_ゝ`)「あら、でぃちゃんじゃない! 元気だった? 大丈夫? 困ってない?
      しぃは元気? 馬鹿ギコの野郎が貴女やしぃを困らせてない?」

 (#;゚;;-゚)『……あねじゃ……さま……』

.

478名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:43:39 ID:2tZd1sd.0

l从・д・;ノ!リ人「お水に人がいてお話しててお水とお皿が」


アババババ ゜ミol从・д・;ノ!リ人o彡゜


∬´_ゝ`)「普通は魔道具だって言えば大抵納得するものだけど、流石よね妹者」

l从-д・;ノ!リ人「……こわくないのじゃ、これ?」

∬*´_ゝ`)「怖くないわ、使い方さえ間違えなきゃね」


チラッ l从・〜・;ノ!リ人

 (#;゚;;-゚)『……はじめ……まして?』


l从>д<;ノ!リ人「しゃしゃしゃ、しゃべったのじゃー!!」

∬;´_ゝ`)「ええ、しゃべるわよ。そのための道具だもの」


 (#゚;;-゚).。oO(……どうしよう)

∬´_ゝ`)「馬鹿ギコいる? 嫌だって言っても、無理やり連れてきて」

 (#;゚;;-゚)「でも、ギコさんは今……」

.

479名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:46:18 ID:2tZd1sd.0

∬*´_ゝ`)「いいー? 私一回しか言わないわよ。
       どうしても 、 絶対 、 今すぐに ギコ=ハニャーンを出せ」


 ::(# ;;- ):: ビクッ  Σl从・∀・;ノ!リ人


∬´_ゝ`)「嫌だって言ったらそうね……うん。クソギコが出ないなら、引っこ抜くわよ。
      それに、ギコが隠しているあのことを、しぃにバラして……
      調査隊に回す資金を、打ち切っちゃおうかしら?」


 (#; ;;- )『……だめ……お姉ちゃんが……困る』

∬*´_ゝ`)「じゃあ、早くギコを連れてきてくれるかしら?」

 (#; ;;- ) コクコク


l从・−・;ノ!リ人.。oO(姉者がものすごくこわいのじゃぁぁぁ!!!)

∬´_ゝ`)「あ、妹者。そろそろ、勉強の時間じゃない? 先生来るわよ」


Σl从・Д・;ノ!リ人「のじゃ?!」

.

480名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:49:28 ID:2tZd1sd.0


 スッ|゚ノ ^∀l从・Д・;ノ!リ人て ビクッ


|゚ノ ^∀^)「あらあら、妹者様ー。今日も、ご機嫌麗しゅう。
      それでは、先生と一緒にお勉強しましょうねー」

l从>д<;ノ!リ人「妹者は、姉者といっしょにいるのじゃー
         姉者がこれから何をやるのか見るのじゃぁぁぁ! 勉強しないのじゃ!」


    ガシッ |゚ノ ^∀^)つl从;∀;ノ!リ人「さあ、お勉強しましょう! レモナ先生張り切っちゃう!」


グイグイ |゚ノ ^∀^)つl从;∀;ノ!リ人 三 イヤ ナノジャー


;ノ!リ人 三 ノジャー


∬*´_ゝ`)ノシ「愚弟どもの様子はちゃんと聞いておくから、安心しなさい」


イヤナノジャー!!  アラアラ イモジャサマッタラー


∬´_ゝ`)「……さてと」

.

481名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:52:40 ID:2tZd1sd.0


 (,,゚Д゚)『――何の用だ、クソアマ。死ね』


∬´_ゝ`)「愚弟たちがちゃんとそっちについているか気になってね、クソギコ死ね」

 (,,;゚Д゚)て『そんだけの理由で、でぃを困らせたのか?! あいつが人見知り君なの、お前も知ってるだろ。
       本当、魔神並にタチ悪いな!! 』

∬*´_ゝ`)「ほら、私だってかわいい弟のことは心配なのよ。
      妹者だってすごーく心配しているみたいだったし、久しぶりにアンタの顔も見たかったしね」

 (,,-Д゚)『よくもまあ、いけしゃあしゃあと嘘を並び立てたものだ。
      坊主どもがどうしてるか知りたいなら、直接本人たちを呼び出して聞けばいいだろうが?」


∬´_ゝ`)「そうしたいのは、やまやまなんだけどね。
      ちゃんと着いてるかわからないし、魔道具と鏡の取り合わせじゃ弟者は絶対出ないでしょ」

 (,,;゚Д゚)『確かにあいつら逃げてったが、ありゃあお前が怖』


 (,, ゚Д) ……


 (,,-Д-)『……怖いだけじゃないか。
      わざわざオレを呼び出したのは、それでか』


.

482名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:54:01 ID:2tZd1sd.0

∬´_ゝ`)「そ。こんな話、アンタくらいにしかできないからね。
      他のやつに知られるのはマズイし、しぃだと心配かけちゃうもの」

 (,,゚Д゚)『……弟者の奴は、まだダメなんだな。
      今日ちょっと話しただけでも、そんな感じだった』

∬-_ゝ-)「甘ったれな弟で本当に困ったもんだわ。
      頼りの兄者も年々ちゃらんぽらんになっていくし……どうしてこうなった」

 (,,゚Д゚)『いいじゃねえか。オレは好きだぜ、今の兄者』


 (,,-Д-)『……まあ、』


 (,,-Д゚)『……お前のそういうまっとうな姉ちゃんっぽいところは、ちゃんと弟どもにも見せてやれ』

∬´_ゝ`)「嫌よ。私、そんな柄じゃないもの」

 (,,゚Д゚)『まあとにかく、兄者も弟者も元気だ。
      今はのんびり遺跡探索にくり出してるよ』

 (,,-Д-).。oO(盗賊に襲われた件については黙っておこう)

∬´_ゝ`)「あの子たち二人で?」

 (,,゚Д゚)『いや、精霊と一緒らしいぞ』

   _,
∬;´_ゝ`)て  !?

.

483名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:56:12 ID:2tZd1sd.0






|゚ノ;^∀^)「妹者さまー、ちゃんとお勉強してぇー!!!」


ムニャム l从-∀-ノ!リ人.。oO


l从-〜-ノ!リ人「……おっきい兄者 ……ちっちゃい兄者……」


l从-∀-ノ!リ人.。oO エヘヘー


|゚ノ#^∀^)「妹者様っ!!!」



つぎのはなしに   つづく

484名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 23:58:17 ID:2tZd1sd.0
今日の投下ここまで
乙くれた方々ありがとうございました

今回投下分で書き溜めストックが切れたので、次回の投下はいつになるのか未定です
書けたら6月の中旬〜下旬に投下予定。無理だとしても、報告にはきます

485名も無きAAのようです:2013/05/20(月) 00:00:59 ID:ckcwxeYI0
おつ
山場がきてるな

486名も無きAAのようです:2013/05/20(月) 00:01:03 ID:FNWH6xZY0
おつ
ゆっくりでいいよ生存報告だけでもうれしいからさ
逃亡しないのが大事なんだ

487名も無きAAのようです:2013/05/20(月) 11:57:12 ID:BCwgwJGkO
ふうっ、読み終えたさすがに文字数多くて100レス超えは読みがいがあるな 


488名も無きAAのようです:2013/05/20(月) 18:54:59 ID:VAFHrtKoO
盛り上がってきたなあ
続き楽しみにしてる!

489名も無きAAのようです:2013/06/22(土) 00:30:16 ID:n.w7RJKg0
なんとか完成したのでこの土日のうちに投下します

490名も無きAAのようです:2013/06/22(土) 00:45:26 ID:n.w7RJKg0
訂正:投下は後日になるかも

491名も無きAAのようです:2013/06/22(土) 12:22:01 ID:hZVRUeQQ0
どちらにしろ舞ってる

492名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:00:44 ID:OeiHTfo.0

高らかに鳴る鐘のような音と共に、魔法陣は強くまばゆい白い光を放つ。
――そして、その光が引いた時。

                  ..
祭壇の傍らに、突如としてそれは現れた。


岩と石で作られた。人と馬車の荷台の中間のような形をした、巨大な何か。

足があるべき場所には、音を上げる無限軌道。
手に当たる部分は、男一人ほどの大きさはあろうかという複雑な形をした岩の固まり。
それを支える腕はその体躯に比べ、心細くなるほどに細い。
人や獣ならば顔に当たるべき場所には、細長い穴が数筋平行にあけられている。
――まるで、できそこないの仮面だと思ったのは兄者か弟者か。


(;'A`)「ゴーレム! 何であんなもんがここに」

(; _ゝ )「――ゴーレム……あれが?」


“流石”の街の兄弟よりも、ラクダよりも、竜よりもなお大きな巨体。
身の丈は砂クジラや、天井には届かないが、それは何の救いにもならない。
重要なのは、それが動き出せば彼ら兄弟の命などたやすく奪い取ってしまいそうだという、その一点のみ。


――そして、それは言葉の代わりに、空気を勢いよく噴き上げた。

493名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:01:35 ID:OeiHTfo.0




( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )




.

494名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:02:16 ID:OeiHTfo.0




そのなな。  戦え、その命尽きようとも



.

495名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:03:48 ID:OeiHTfo.0

辺りに響いていた音は止み、魔法陣は光を失い消えていく。
しかし、祭壇の傍らに現れた巨体が消える気配は、微塵もなかった。


( ;´_ゝ`)「何やらゴーレムさんというらしき御仁がそびえ立っているが……俺、何かやらかした?
      っていうか、めっちゃ腹が痛いんですけど……これなんで?」


巨体を呆然と眺めながら、腹を抑えた兄者がポツリと声をあげた。
彼の目は先程までの虚ろな様子から一転し、普段通りのお気楽な調子を取り戻している。
その声は、武器を手に壁へと駆け出そうとしていた弟者へと向けられていた。


(´<_` )「……荒療治を少々。
      まあ、我にかえれただけ上等な方だ。兄者にしてはな」

( ;´_ゝ`)「ぅぇー。今日は楽しい遠出ーくらいのつもりだったんだけどなー」

(´<_` )「よかったじゃないか、兄者。念願の大冒険ってやつだ」

(;'A`)て「大冒険って、何のん気なこと言って」


ドクオの言葉が終わるよりも早く、弟者の体は走り出していた。
その標的は突如現れた、巨体。弟者は岩の巨人の背後に潜り込むと、引きぬいた曲刀でその背を切りつけた。


(;'A`)「ちょ、いきなり攻撃するとか!!」

.

496名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:05:29 ID:OeiHTfo.0

耳障りな、金属音。
曲刀と岩の接触面から、一際鮮やかな火花があがる。


(´<_` )「見た目通り、固いか」

(;^ω^)「お、お、オトジャ、あんまり荒っぽいのは……」


その硬さは、昼に出会った盗賊の比ではない。
切り込んだ時の感触からして、既にあの男とは違う。
それもそうだ。目の前の巨人の体は岩。よほど鍛えられた金属でもない限り、刃は通らない。


(´<_` ;)「――これは、厄介な」


弟者はゴーレムというらしき巨体を見上げる。
岩で出来た巨人は空気を噴き上げながら何事もなかったかのようにそびえ立ち、


/◎ ) =| ) gi


ギリリと上半身だけを動かし、


弟者を、


見た――。

.

497名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:07:07 ID:OeiHTfo.0

ゴーレムに目などない。あるのは顔に当たる部分にあけられた穴だけ。
しかし、弟者は確かに見られたと感じた。


(;^ω^)「動いたお!」

(;´_ゝ`)「なんと、と言いたいところだがやっぱりか」


耳障りな音を上げながら、ゴーレムの腕が動く。
腕を持ち上げ地に叩きつける、それだけの動き。
しかし、それが当たればどうなるかは、考えるまでもなかった。


(#'A`)「馬鹿弟者! 余計なことするから敵と思われたぞ!!」

(´<_`; )「――っ、本気か」


弟者は地を蹴り、その場から離脱を図る。
ゴーレムの腕が唸りを上げて振り降ろされたのは、それと同時。
轟音を立てて地が大きく震え、巨大な腕が地面にめり込んだ。


(´<_`; )「……デカブツめ」

( ;゚ω゚)「オトジャーっ!!」


ざっと、足を踏みしだき弟者は着地する。

.

498名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:09:07 ID:OeiHTfo.0

巨人の腕が振り下ろされたのは、ちょうど先程まで弟者がいた場所。
回避に出るのが遅ければ、ひとたまりもなかった――と、弟者は内心で冷や汗をかく。


( ;´_ゝ`)「弟者、ここは逃げるぞ!」

(´<_` )「しかし、兄者は……」


まだ動けないだろうと言いかけ、弟者は止めた。考えを変えたからではない。
青竜刀を握った弟者の肩を、ブーンの小さな手が叩いていたからだ。
弟者はブーンの姿を見やり、そのおっとりとした顔がはっきりとした意志をたたえていることに息を呑む。


( ^ω^)「ブーンが、アイツの目をひきつけるお」

(´<_` )「……ブーン」

(;^ω^)「アイツはオトジャだけじゃなくて、ブーンのことも見てたお
      だから、ブーンならきっとオトリになれると思うんだお」


ブーンの声は小さく震えている。
しかし、真剣な光を湛える瞳は、その言葉は嘘ではないと、はっきりと伝えていた。
楽しいか楽しくないかしか感情がわからない――かつての言葉とは別人のようなブーンの姿に弟者の胸がかすかに痛む。


(´<_` )「……いいのか」

.

499名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:11:03 ID:OeiHTfo.0

( ^ω^)b「ニンゲンは長生きしているやつの言うとおりにするんだお?
       だったら、ブーンの言う言葉はゼッタイってやつなんだお。きっと」


最後の言葉だけを震えずに言い切ると、ブーンは弟者の返事を待たずゴーレムへむけて飛び立っていく。
弟者は呆然とそれを見送ると、輝くブーンの羽の軌跡から目を外し、扉へと視線を走らせた。


(´<_`#)「扉へと向かう! 兄者も根性で走れっ!!!」

(;´_ゝ`)「……把握」

('A`)「兄者は任せろ!」


体勢を整え弟者は駆ける。向かうのは、扉。
今は一刻の時間も無駄にするわけにはいかなかった。
ゴーレムの姿は見ない。もし、そうすれば今の自分は動けなくなるだろうと、弟者はどこか冷静に悟っていた。


( <_  )「すまない、ブーン」


振り返ることなく、小さく呟く。
その歩みごとに足元に生えた草が潰れ、嗅ぎ慣れない青臭いにおいが周囲に立ち込める。
本当にここはソーサク遺跡の中なのかという雑念を振り払って、弟者はようやく扉の前へとたどり着く。

花や鳥の装飾が施された、緑青の金属の扉。
この部屋と、外とをつなぐ唯一の接点。

.

500名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:13:13 ID:OeiHTfo.0

(´<_` )「兄者は……」


扉の前で軽く息を整えると、弟者は背後を振り返る。
見ればゴーレムやブーンとは離れた位置。そこにドクオに被り布を引っ張られた兄者が、泣き言を言いながら腹をおさえ走っていた。


(; _ゝ )「むり、おにいちゃんこれ以上走れない」

(#'A`)「根性出せこの馬鹿野郎!」

(´<_` ).。oO(こちらは大丈夫そうだな)


弟者は扉に手をかける。
一瞬、手にぴりりとした刺激が走るが、その感触は気づいた時にはもう既に消えていた。

 _,
(´<_` ).。oO(今のは、なんだ?)


魔法というにはかすかな感触。
魔力に似ていたが、あまりにも一瞬だったので本当にそうだったのか判断がつかない。
しかし、悩んだ所で退路はこの扉一つしかない。
弟者は息を吐くと、扉にかける手に力を込めた。


(´<_`#)「――くっ」

.

501名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:15:21 ID:OeiHTfo.0

力を込めるが、扉が開く気配はない。
そういえば最初に開けた時も二人がかりだったなと思いながら、弟者は腰を落とし本格的に力を込め始める。
手には骨と血管が浮かび上がるが、それでも扉はびくともしない。


('A`)「弟者っ、兄者連れてきたぞ!!」

(;; _ゝ )「これは、死ぬる……」

(´<_` )「兄者、早速だが加勢してくれ」

(; ゚_ゝ゚)「……なんと」


兄者も状況の危険さには気づいているのだろう、口では「人使いが荒い」と言いながらも扉へ手を掛ける。
薄水色の毛が一瞬逆立ち、怪訝そうな表情を浮かべるが、すぐに力を込め始めた。


(#`_ゝ´)「ぐぎぎぎぎ」

(´<_`#)「……」

(ノ#゚A゚)ノ「うぉぉぉおお!!!」


二人がかり。いや、二人と一匹がかりで扉を押し続けるが扉が開く気配はない。
もしかしたら、引かなれけば開かないのか。と、試してみるが、やはり扉は動こうとはしなかった。

.

502名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:17:11 ID:OeiHTfo.0

(;'A`)「……なあ、これおかしくないか?」

(;´_ゝ`)「偶然だな。俺も同じ事を考えていた」


扉を見上げ、ドクオと兄者が声を上げる。
もともと二人がかりでやっと開くような重さではあったが、それでも開かないということはなかった。
弟者は扉を慌てて観察するが、鍵らしきものがかかっている気配はない。


(;'A`)「外側からしか開かない扉とか?」

( ;-_ゝ-)「だったらギコ者から警告があったはずだ」

(´<_`; )σ「まさか……あいつを倒さないと出られない……とか」


一同は顔を見合わせる。二人と一匹の顔に浮かぶのはどれも似たり寄ったりの、焦りの表情だ。
念の為にもう一度力を込めて押してみるが、扉はびくともしない。


( ;´_ゝ`)「いや、待て。まだそうだと決まったわけでは……」

(´<_` )「他に脱出の方法があるというのか?」

( ;´_ゝ`)「それは……」


弟者の言葉に、兄者もドクオも沈黙する。

.

503名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:19:11 ID:OeiHTfo.0


/◎ ) =| )  gi   gi  gi


――その瞬間、兄者達の沈黙を切り裂くようにして甲高い音が響き渡る。
それから少し遅れて、空気を噴きあげるような轟音。


(;´_ゝ`)「な……な……やばくないかこれ」

(´<_`; )「――っ」


見ればゴーレムがその二本の腕を振り回し、何かを打ち払おうとしている。
その標的は兄者や弟者の位置からは見えないが、キラキラと光の粒が舞っている姿が見えた。


(;'A`)「おい、弟者っ!」

(´<_` )「兄者を任せた」

(;゚A゚)「任せたってお前……」


弟者の表情が変わる。
焦りを浮かべた表情のまま扉から離れ、ゴーレムの方へと向き直る。
目をつぶり息を呑むと、すぐにその目を開いた。
弟者の顔からは、先程まで浮かんでいた焦りの表情は消えている。
代わりに浮かぶのは、決意の色。

――弟者は扉に背を向けると、自らの意志で駆けはじめた。

.

504名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:21:10 ID:OeiHTfo.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


精霊にとって、時間というのはさして重要なものではない。
光や風や水といった、どこにでもあって消えることがほとんどない存在の精霊では、その傾向はより顕著となる。


( ^ω^)「生まれて……もう何年になるかおね?」


動物や人のように定められた寿命がない。
食事も。睡眠も。生殖の必要もない。
永遠のように続く時間を享受し。ただ、そこにあるだけの存在。


( ^ω^)「やっぱりもうわかんないお」


いつの間にか発生し、そして何らかの要因で消滅するか、本体となった存在が滅びるまで続く命。
そんなものだから、時間の感覚や感情なんてものはいつのまにか摩耗し、消え去っていく。


( ^ω^)「でも……」


( ^ω^)「そのたくさんよりも、今日のほうがずっと楽しかったお」

.

505名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:23:43 ID:OeiHTfo.0

楽しいと、つまらない。それから、寂しいがほんの少しだけ。
そのくらいしか残っていなかったブーンの中に、たった一日で沢山のものが転がり込んできた。

うれしい。
しあわせ。
イラつく。腹が立つ。
危ない。大変。どうしよう。
不安。寂しい。心配。大丈夫。
怖いとか悲しいとか、そういうのもあった。


( ^ω^)「だから、ブーンは……」


――どうしてこんなにもたくさんのことを、忘れてきたのだろうとブーンは思う。
ここにいる誰よりも長く生きてきたはずなのに、みんなが当たり前のように知っていることを知らなかった。


( `ω´)「みんなを守るんだお!!」

/◎ ) =| )


ゴーレムの顔面をかすめるようにして、ブーンは飛ぶ。
巨体の上半身が、ブーンの動きを辿るようにして動く。
顔に当たる部分にあけられた穴は、まるで目のようにブーンを見つめる。

.

506名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:25:11 ID:OeiHTfo.0


(#^ω^)「ブーンはここだお! かかってくるお!!」


ブーンの声が、目の前の巨体に届いているのかはわからない。
しかし、ゴーレムはブーンの動きを執拗に追いかけ続けている。
そのことにブーンは少しだけほっとする。


( <_  )



                  (;´_ゝ`)ゝ‐('A`#)、


走る弟者。兄者と、彼の体をひっぱって飛ぼうとするドクオ。
三人が逃げる時間を、稼がなければいけない。
そのためにはブーンは何としてでも、ゴーレムの目を引き続ける必要がある。

ごくりと、息を呑む。
背中から羽にかけてがぞわぞわとする感触に、ブーンは自分が怖がっているのだとはじめて気づいた。


:::(#^ω^)::「……それが、どうしたお!」


それでも、ブーンはゴーレムから目を離さない。

.

507名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:27:06 ID:OeiHTfo.0

/◎ ) =| ) g


ゴーレムの視線が、不意にブーンからそらされる。
軋むような音を立てながら、顔にあけられた空白が向いた方向は扉。


( ;^ω^)「こっちを見るお!」


空を蹴り敵の眼前へ浮かび上がるが、もはやゴーレムはブーンなど気に留めてはいなかった。
ぎちりと音を立てて、下半身の無限軌道が。そこに埋め込まれた動力が動きはじめる。
その巨体が扉へ向かって進もうとするのを見た瞬間、ブーンは叫んでいた。


(#^ω^)≪吹けお!!≫


その言葉と同時に、周囲に吹く風が勢いを増してゴーレムへと向かう。
地面に生えた草が激しくなびき、ゴーレムの巨体に風が吹きつけられる。
が、岩と土で形作られた巨体は少しも揺らがない。


/◎ ) =| )

(#^ω^)≪鋭く!≫


動きを止めようと、ゴーレムの巨体に向かい再度ブーンの言葉がとぶ。
息を吸う様に魔力を吐き出し、ブーンは風を操る。

.

508名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:29:18 ID:OeiHTfo.0

風が唸りを上げ、甲高い音を立てる。
ブーンの声に応じるように、鋭く激しくなった空気の流れが周囲を駆け巡る。


(#゚ω゚)≪なぎ払うお!≫


その号令とともに、一筋の風が、巨体を打つ。
触れれば物を切り裂く勢いを持った風は、ゴーレムの体を打つと同時にその体を揺らす。


/◎ ) =| )  gi   gi  gi


ゴーレムの体には傷ひとつない。
しかし、足に当たる無限軌道の動きが止まると、上半身から伸びる腕がぎちりと揺れ……
轟音とともに、その全身から蒸気が噴きあがる。

それと共に、振るわれる腕。

細い腕の先に取り付けられた、岩の塊がブーンに迫り来る。
人ほどの大きさのあるそれ。しかし、その勢いはそう早くない。
避けるのは、小回りのきくブーンにはたやすい。


( ;゚ω゚)「お、おおお?!」

.

509名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:31:11 ID:OeiHTfo.0

だが、避けたと思った瞬間。ブーンの体が大きく煽られる。
動く岩が巻き起こした風。それが引き起こした衝撃だけで、ブーンの体は吹き飛び、落ちそうになる。


(#^ω^)「負けないお!」


叫びながらブーンは、自身と飛ばそうとする風を操り、その場に留まる。
そして、体の中を血のようにめぐる魔力を纏め上げると、魔法として放つ。
放つのは風の刃。先ほどかすかながらに反応があった、鋭く研ぎ澄まされた風だ。


(#^ω^)≪早く、強く、鋭く!≫


目の前の巨体の目を引き付けるために、魔力を組み上げ続ける。
一陣、二陣、三陣。
吹き荒れる風はゴーレムの体に傷をつけることこそは叶わないが、揺さぶる程度のことならできる。


( #゚ω゚)≪吹きすさぶお!!≫


魔力を放つブーンへ向けて、ゴーレムの腕が振るわれる。
しかし、体の大きさと重さが害をなして、その動きは重い。
ブーンは羽を羽ばたかせ腕をかわすと、再び風を巻き起こそうとして。


――すぐそばまで迫った、腕に言葉を失った。

.

510名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:33:24 ID:OeiHTfo.0

腕は避けた。
確かに避けたはずだった。

しかし、避けたはずの腕がブーンのすぐ傍らまでに迫っている。


( ;゚ω゚)「な、」


――動いたのは腕ではなく、ゴーレムの上体そのもの。
伸ばされた腕と下半身はそのままに、ゴーレムの上半身だけがぐるりとその場を回る。
一回転。生き物には決して出来ない動きに、ブーンの思考は完全に止まる。

そんな無防備になったブーンの体が、掴まれる。


( ;゚ω゚)「……!!」


そして、そのまま下へと向かって、引きずり降ろされる。
ブーンの視界が真っ暗になり、胸に強烈な不快感が浮かぶ。
それなのに頭はぼんやりとして、やけにはっきりと音を拾う。
ブーンは自分がおかしくなってしまったのではないかと目をつむり。


( <_  )「この阿呆が」


この一日で、随分と馴染みになった声を聞いた。

.

511名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:35:58 ID:OeiHTfo.0

( ;^ω-)「オト、ジャ?」


そっと目を開く。
そこには、弧を描く刀を抜き放ちゴーレムへと対峙する弟者の姿がある。
刀を持たないもう片方の手は、ブーンの体をしっかりと掴んでいた。


(´<_`#)「誰が特攻をしろと言った!
       いくらお前が人間でなくとも、ただじゃすまないぞ」

(;^ω^)「助けてくれたのかお?」
 _,
(´<_` )「……借りを返しただけだ」


弟者は眉をひそめながら、そう告げるとその手を離す。
ブーンは開放された羽で飛びながら、弟者が自分の言葉を否定していないことに気づいた。
それどころか、つい先ほどの怒鳴り声は……ブーンのことを心配しているようにさえ思えた。


(*^ω^)「ありがとうだお」
 _,
(´<_`; )「……礼を言っても何も出んぞ」


そういいながら、弟者は新たに振るわれたゴーレムの腕を避ける。
轟音とともに地面へとめり込む腕に舌打ちをすると、弟者はブーンへと視線を向ける。

.

512名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:37:55 ID:OeiHTfo.0

(´<_` )「お前の風の魔法は、どれだけの大きさのものなら動かせる?」


その言葉は、ブーンにとって予想だにしないものだった。
弟者は魔法が嫌いじゃないのかという言葉を喉の奥に押し込んで、ブーンは恐る恐る声を上げる。


( ;^ω^)「……あんまり重いものはムリだお。
      だから、ブーンじゃあのデッカイのをどこかに飛ばすなんてできないお」

(´<_` )「人間は?」

( ^ω^)「お?」

(´<_` )「お前の力で、兄者をあの天井の穴から脱出させることはできるか?」


視界の端でゴーレムの動きを睨みつけながら、弟者はそう聞いた。
弟者の顔に浮かぶのは真剣な表情だ。
ブーンは弟者に負けぬ様に、真剣に考え込むとこくりと頷いた。


( ^ω^)「ブーンの力じゃ、一度に一人しかムリだお」


……扉は開かなかったのだろうと、ブーンは理解する。
魔法や自分が嫌いな弟者が協力を求めてくるということは、そういうことなのだろう。
嫌っていた自分に、魔法を使えと持ちかける。弟者はいまどんな気持ちなのだろうと、ブーンは思った。

.

513名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:39:18 ID:OeiHTfo.0

(´<_` )「それで十分だ」

( ^ω^)「アニジャを脱出させたら、オトジャの番だお。
      そうじゃないと、ブーンは手伝わないお」

(´<_` )「……」

(#^ω^)「オトジャっ」


言葉を返さない弟者に向けて、ブーンは知らず知らずの間に大きな声を出していた。
胸のあたりがぞわぞわとして、何か言わなきゃという思考がブーンを突き動かす。
一方の、弟者はブーンの声に、一瞬だけ目をきょとんと見開いた。


(´<_` )「……お前、わりと言うんだな」

(;^ω^)「はひ?」


弟者の顔に笑みが浮かぶ。
ブーンはその表情が意味することがわからずに、言葉に詰まる。


(´<_` )「――把握した」


ブーンが再び何かを告げようとした頃には、弟者はブーンに背を向けていた。

.

514名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:42:00 ID:OeiHTfo.0


(<_` )つ==|ニニニ二フ


弟者の足が地面を蹴り、曲刀を持った手はゴーレムへと向けて翻る。

動きの速さにまかせた、叩きつけるだけの単純な動き。
弟者が曲刀をふるうたびに、銀の軌跡が走り火花が飛ぶ。
疲れを感じていないかの勢いで、弟者の曲刀は速く、ひたすら速く翻る。


/◎ ) =| ) g


素早さを生かした速攻と、息もつかせぬ連撃。
それが弟者の強みだ。
そして、彼の攻撃は一つ一つが重い。

――しかし、言葉を変えればその攻撃さえ通らないのであれば、彼の力は役に立たないということになる。


( ^ω^)「……空」


ブーンは天井へと向けて、目を走らせる。
弟者は、天井から脱出できるか?と言った。ならば、その言葉にブーンは応えなければいけない。
すぐ傍らにある巨体の視線は、既にブーンから弟者へと移っている。
行くならば今しかない。ブーンは一直線に天井へと向け、羽ばたいた。

.

515名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:43:19 ID:OeiHTfo.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


('A`)「――そうか天井か!」


未だ扉を押し続ける兄者の傍らで、ドクオははっと声を上げた。
崩落した天井の向こう側には、青い雲ひとつない空が広がっている。
これなら脱出することができると、ドクオは早速空へと向けて飛び始める。


(;´_ゝ`)「時に待て、ドクオ者!
      この部屋は変だ、そもそもソーサク遺跡かどうなのかわからん!」

('∀`)「大丈夫、仮にここがソーサク遺跡じゃなくても外に出れればこっちのも」


(×A×)「――あだっ!?」


一直線に天井へと向かっていた、ドクオの言葉が奇声へと変わる。
兄者がぎょっと目を見開いた瞬間には、ドクオの体は床へと向けて落下をはじめていた。
ドクオの体は一直線へ地に落ち、地面へと激突するスレスレの所でようやく背の羽が動き始める。

.

516名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:45:18 ID:OeiHTfo.0

( ;゚_ゝ゚)「ドクオ!」

('A`;)「ブーン、天井はダメだ――!!!」


紫の光を放ちながら、羽がドクオの体を宙へと引き上げる。
ドクオはかろうじて飛び上がりながら、兄者ではなく、ブーンへ向けて声を上げた。
ブーンにその声が届いたのかはわからない。しかし、羽ばたきながらもドクオは周囲に視線を走らせる。


('A`)「……天井はダメ、扉もダメ。だったら」


呟くと同時に、ドクオの姿は掻き消える。
飛び去ったわけでも、地に落ちたわけでもない突然の消失に、兄者は周囲を見まわす。
それでも、ドクオの姿はどこにも見えない。兄者はしばし呆然として、そしてようやく事実に気づいた。


( ´_ゝ`)て「ドクオがまた逃げた――!!」

(#゚A゚)「逃げとらんわー!!!」

(∩;´_ゝ`)∩て「なんと!」


ゆらりと何もない空間が揺れ、そこからドクオの姿が蜃気楼のように歪み現れる。
兄者が両手を上げ声をあげる頃には、そこにはふらふらと飛ぶいつもどおりのドクオの姿があった。

.

517名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:47:28 ID:OeiHTfo.0

('A`)「……兄者、聞け。マズいことになった」

(∩´_ゝ`)∩「これ以上にまだ、マズいことがあると?」


ドクオは兄者の肩へと座り込む。
兄者は「早く話せ」と促すと、自分の肩のドクオへ視線を向ける。


('A`)「完全に閉じ込められた」

( ´_ゝ`)「それは、今の突然の消失と関係あるのか?」

('A`)「ああ。今、影を通って扉の向こうに出ようとした……が、何かに邪魔された」

( ´_ゝ`)「……影とな」

(#'A`)「畜生。こっちは影の精霊だぞ、どんな障壁組んでやがるんだ」


ドクオの言葉に、兄者は息を呑む。
そして、彼の脳裏にようやく浮かんだ結論は「これはいよいよマズイかもしれない」だった。


(∩´_ゝ`)「確認する。空から出ようとしたときと、影の中で邪魔されたとき、どんな感じだった。違いはあったか?」

('A-)「どっちも、壁にぶち当たった感じだった」

.

518名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:49:34 ID:OeiHTfo.0

ドクオの返事を聞くと、兄者は扉へと手を掛ける。
しかし、先ほどまでとは違い開こうとはせずに、ただ手を扉へと触れるだけだ。
そのまま真剣な目で扉を見上げると、兄者は瞳を閉じる。


(;'A`)「……どうした兄者」

(#-_ゝ-)「そういうことか、この糞ったれめ」

(#'A`)「おい、自分だけ納得してないで答えろ」

(; -_ゝ-)「ここじゃない。何処かにあるはずだ。
       外から閉ざされているのでないならば、どこかに取っ掛かりがあるはずなんだ」


ドクオの言葉に兄者は答えない。
瞳を閉じたままドクオにはまだ意味のわからない言葉を、並び立てるだけだ。
しかし、兄者はひとしきりつぶやき続け。やがて、ドクオの顔を真剣な瞳で見据えた。


( ´_ゝ`)「ドクオ。俺の意識が無い間に、あったことを話せ。
      なんでもいい。あの時なにがあった、どうしてこうなったのだ?」

('A`)「……弟者が祭壇を調べている時に、すごくうるさい音が聞こえた。
    そうしたら弟者のやつが何か叫んで、気づいたらお前が変だった」

(∩´_ゝ`)「……祭壇、音。それから?」

.

519名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:51:28 ID:OeiHTfo.0

('A`)「お前さんは何か呟きながら、一番奥の壁に歩いて行って……覚えてないのか?」

(∩;-_ゝ-)∩「残念ながら。気づいたら、腹がすごく痛かった」


兄者の言葉に、ドクオは頷く。
あの時の兄者の様子はおかしかった、意識がなくてもおかしくはないのだろう。


('A`)「それから、壁に手をやってそう。何か見てたのか……な。
    その頃には弟者が血相変えて、オレやブーンに兄者を止めろと言っていたな」

( ´_ゝ`)「……弟者やお前らの動き以外では、何があった?
       あんなデカブツが、何の前兆もなく出てくることはないだろ?」

(;'A`)「そこも覚えてないのか?!」


ドクオは「ああもう、なんてやつだ」と呟くと兄者の顔を見る。
兄者は自分の疑問を投げかけるだけで、こちらの質問に答えようとする意図はないらしい。
ドクオは兄者の態度に、言葉を荒げながら答えを返す。


(#'A`)「お前は、壁に向かって魔力を放った。何をしたのかはわからん。
    弟者がお前さんの腹を殴りつけて止めたが、間に合わなかった」

(  _ゝ )「俺が、魔力を……」

(#'A`)「全く、お前が魔力を使えるなんて知らなかったぞ」

.

520名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:53:16 ID:OeiHTfo.0

(  _ゝ )「……それで、」

('A`)「ああ、そこから先はお前さんの記憶にあるとおりだ。
   壁に魔法陣ががぁぁっと現れて、光ったりうるさい音がして、気づいたらあのゴーレムがいたと」

(∩ _ゝ )「……」

(;'A`)「……おい、兄者?」


兄者は無言のまま答えようとしない。
ただ、顔に置かれた手の隙間からかすかに見える瞳が、険しい色を湛えていた。
……まるで、兄者ではなくて弟者と話しているようだ。ドクオは脳裏に浮かんだ言葉を慌てて打ち消した。


( ´_ゝ`)「……状況は最悪かもしれんな」

('A`)「自分ばっかり納得してないで、とっとと話せ」

( ´_ゝ`)「外に出られないように結界が張られている」

(; _ゝ )「……俺達は生かしてここから出してもらえそうにないということだな」

(;'A`)「……ウヘァ。つまり」

(;´_ゝ`)b「戦え、その命尽きようとも――ということだ」


兄者の言葉に、今度はドクオが沈黙する番だった。

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521名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:55:58 ID:OeiHTfo.0

――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――


('A`;)「ブーン、天井はダメだ――!!!」


ゴーレムの腕をかいくぐりながら空へ、空へと飛んでいたブーンは、聞こえた声に動きを止めた。
浮かび上がった体はそのままに天井へ、その向こうの空へと向けてそっと手を伸ばす。


( ^ω^)∩「……」


伸ばした手が、何かに触れる。
硬い感触はまるで、壁にでも触れたかのようだった。
空への道を遮るものは何も見えない。しかし、ブーンの手は確かに何かに触れている。


(;^ω^)「オトジャ、ダメだお!!」

(´<_` )「……!」


ブーンには一体どうなっているのか、わからない。
しかし、空中にあるこの“何か”をどうにかしないと、脱出することが出来ないということだけは理解できた。

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522名も無きAAのようです:2013/06/23(日) 20:57:08 ID:OeiHTfo.0


(´<_` )「扉も、天井も無理ときたか……」

/◎ ) =| )


呟きながら、弟者は曲刀を振るう。
ブーンのダメだという言葉に失望しなかったかといえば、嘘になる。
しかし、今は思い悩んでいる場合ではないと、弟者は考えを切り替える。


(´<_` )「……」


扉と天井。目に付く二つの出口は、使えそうにない。
これだけでも厄介なのに、目の前には弟者やブーンを狙って動くゴーレムの姿がある。
――どうすればいい? 弟者が逡巡したのはほんのわずかな間だけ。


(´<_` )「ブーン、お前は兄者を」

(;^ω^)「オトジャ! どうする気だお!」


次の瞬間には弟者は刀を翻し、再びゴーレムへと挑みかかっていた。
狙うは巨体を支える足元、複雑な機構が絡みあう無限軌道だ。

.


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