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ダンゲロスSS上海 応援スレ
1
:
ダンゲロスSS上海
:2025/10/27(月) 18:54:02
ここにダンゲロスSS上海の応援作品を募集します。
イラスト、幕間SSなどなんでも良いので、キャンペーンを盛り上げる作品を随時投稿されてください。
72
:
闇雲鏡穢
:2025/12/31(水) 15:06:30
ボスNPC闇雲鏡穢のプロローグです。
ノリだけで書いてるので、このSSの内容を踏まえなくてもいいですし、これがキャンペーンの正史というわけでもありません(当たり前ですが)
73
:
闇雲鏡穢
:2025/12/31(水) 15:06:58
百年節が明日から始まろうかという時期の上海である。大通りは深夜でもネオンサインが輝き、観光客で溢れかえるが、少し離れた埠頭は閑散としている。けたたましく夜闇を切り裂くヘリコプター以外は、数台のベンツと黒服を着た男たちしかいない。
「待たせて済まないな。」
港に着陸したヘリコプターから出てきた男が言った。これまで幾多の修羅場を潜り抜けた眼は血走り、顔には複数の傷跡が刻まれて出血している。
地上でベンツを停めていた男たち、こちらもヘリコプターから出てきたのと比べても遜色ないヤクザ者の面構えだ。
「随分と遅かったじゃねえか」
気遣うような口調だが、言葉の端々に焦りのような感情が見え隠れする。いかにも下っ端マフィアが話そうな口の利き方だ。
「安心しろ。それよりコレだ。見ろ…!」
などと言いながら、顔が傷まみれの男は片手に持っていたスーツケースを差し出した。
一見、何ともないごく普通のスーツケースである。だが、しばらく見つめると、そこはかとない、訳のわからぬ神々しさが感じられないだろうか。
ケースには『老大的绝世宝物。严禁擅自开启。窥視者死。』と張り紙されていた。
「すげえ。噂は本当だったのか…!」
「ああ、ここまで持ってくるのに苦労したぜ。なにせ伝説の『清王朝のダイヤ』だ…!何か粗相があってボスの機嫌を損ねでもしたら、命はねえ」
と、傷だらけの男は嬉しそうに言った。そこで、地上で待っていた男はふいに傷だらけの男を見た。
「ところでよ、なんで血塗れなんだ?」
「これはボスの血だ」
「何をやらかしたんだ!?」
74
:
闇雲鏡穢
:2025/12/31(水) 15:07:47
➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕
時は数時間前まで遡る。
闇雲 鏡穢は自らの頭を大通りの壁に打ち付けていた。しこたま額を打ち付け、額から血が流れていた。
「あいてててて」
独り呟く。都会の喧騒は冷たく、たとえ観光客が転んで怪我をしても振り向く者もいない。
ましてや、マフィア絡みともなればなおさらだ。
「おい嬢ちゃん、どこみて歩いてやがる」
「エヘヘヘヘ。すみません、よそ見しちゃってて。あいてててて」
もう一度呟く。誰も助けてくれる者などいない。
眼鏡を掛けた文学系の地味めな女子生徒だ。
黒縁眼鏡はひび割れ、二つ結びにした黒髪は乱れている。痩せ型で、目の下にクマがあった。
「おいおい、どうしてくれんだ?お嬢ちゃんの汚え血で俺っちの高級なスーツが汚れちまったじゃねえか!お嬢ちゃんの罪に塗れた汚え血でよ!」
男はブツブツと呟きながら病的にスーツをさすり続けている。
「これじゃあ今夜の前祝いパーテーに遅れっちまうぜ!おいお嬢ちゃん、スーツを洗うのを手伝ってくんな!」
「ええっ!?そんな、任せてください!!しかし私は洗濯が大の苦手でして……」
困り果てる少女だが、ふいに、路傍の机に置かれたハサミの存在に意識が向いた。たった今、何者かがそれを指差したような気がした。
その時、彼女の脳に天啓が訪れた。
「何ぃ、お嬢ちゃんは洗濯が苦手なのか。不眠症そうな女だな。名を聞こう!」
「あっ!大丈夫です」
確かに、男が指摘するとおり闇雲鏡穢は不眠症だった。生来運に恵まれない彼女は、このように道を歩けばマフィアに当たり、そんなこんなで夜も眠れないほど四六時中いつでもどこでも災難に恵まれていた。
そんな十分な睡眠の取れない彼女だが、思い立ったが吉日、という猪突猛進な一面があった。
「あっ」
鏡穢は怖がりもせずヤクザ風の男に近寄った。
そう、彼女は頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服をどうにかする方法を思いついたのである。
「任せてください。このスーツをどうにかして見せます」
「おいお嬢ちゃん頭脳は大丈夫かな。不眠症そうだが普段しっかりとした睡眠は取れているのか」
「いえ、取れてません」
鏡穢はいつの間にか手にハサミを持っており、そのハサミはまさに男のスーツを切り裂こうとしていた。
鏡穢が思いついた、頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服をどうにかする方法。
それは、頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服を切り裂くという、至極単純な解決策だったのだ!
彼女は不眠症だった。
「おいお嬢ちゃん!目の下にクマがあるぜ!さても不眠症そうな女だな!名を聞こう!」
「あっ大丈夫です!」
近頃どうも『不眠症』に悩まされている鏡穢は、眠たいのに、もう5日も眠れてなかった。魔都上海に学校ごと招待されて、舞い上がっていたのかもしれない。
仕方ないから気絶するまでひとりでマラソン大会と洒落込んで70kmほど走り続けたが、その結果、彼女は頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血でスーツを着た男の服を汚してしまったのだ。
そんな男は心配そうに鏡穢が必死に気絶するまでひとりでマラソン大会と洒落込んで70kmほど走り続けたが、その結果、彼女は頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服をどうにかする様子を、固唾を飲んで見守っている。
「おいお嬢ちゃん。よく見たら額から出血してるじゃねえか。実は魔幇のせいで俺も不眠症なんだ。こんな魔幇なんて滅びるべきだぜ。よければ俺の額も痛めつけてくれねぇか?」
「凄い。眠れないんだ。じゃあ私がその罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た貴方の意識を刈り取るね」
「おお、マジでどうぞ」
75
:
闇雲鏡穢
:2025/12/31(水) 15:09:44
自分自身の力では魔幇も自分の不眠症もどうも出来ないので、これは願ってもないことだ。マフィア風の男は壁を向いた。
「よし、バッチこいだせ。俺は魔幇大幹部のモシン・ナガンって言うんだ。実は『五爪の翁』は俺のことをすごく信頼してくれてるんだぜ。いつでも来い!」
「じゃあ早速いきますね、せーの!せい!」
言うが早いか、鏡穢は『五爪の翁』にも信頼されているモシン・ナガンさんの後頭部を掴み、額を遠慮なく壁に打ち付けた。そのフォームは魔人野球部のエースピッチャーにも引けを取らない美しい型だった。
「あっちょっ待って。いきなりはアアアアーッ!アアアアーッ!」
「シャアッッッ」
モシン・は叫ぶナガン。だが、鏡穢はまた楽しそうにモシン・ナガンの顔面を壁に擦り付け、そのまま紅葉おろしにし始めた!とても楽しそうだ。
「アアアアーッ!アアアアーッ!」
モシン・は叫んだナガン。とにかく叫んだナガン。モシン・何故ナガンであろうか。不眠症がこれで解決すると感じているのでナガン。
「凄い!中々死なないね!オラッッッ!シャッッッ!」
鏡穢は反動をつけ始めた。「人は頭を壁に打ち付けてもなかなか頭蓋骨は割れないからね。気をつけてね」母の教えである。そんな親の教訓に従い、脳を揺さぶろうという魂胆だ。
モシン・ナガンの意識が遠のき始めたその時!突如として通りの壁を破壊し、筋骨隆々とした全裸の隻腕黒人男性約12人が妖刀正宗を構えて突撃してきた!
こんな事は世界中から魔人の集う魔都上海では日常茶飯事であり、特に注目すべき事でもない。しかし、壁が破壊された勢いでモシン・ナガンさんは吹っ飛んだナガン!
「グアアアーッ!」
モシン・ナガンが吹き飛ばされた方向には道路が!モシン・ナガンは道路を爆走していたベンツに激突!道路周辺を中心に血飛沫が舞い上がる!危ない!
「あっヤベっ!!」
鏡穢が叫ぶ!手を伸ばす!当然、モシン・ナガンには届かない!モシン・ナガンの後頭部にはハサミが突き刺さり、ベンツに衝突しながら血飛沫を舞い散らせながら大事故を起こしている。このままではモシン・ナガンさんが危ないナガン!今にも連鎖的事故が起ころうとしている…二人の間に流れた時間は永遠のように感じられた。
だがこの時、鏡穢は冷静だった。
鏡穢の脳裡に去来したのは、あの父からの教えだった。
『鏡穢。お前はこの父に似て妙にやたらと運が悪い。道を歩けば大事故が起こり、家にいたら飛行機が墜落する。どこにいてもお前に逃げ場はなく、なんか知らないけどお前の周囲でバタバタと人が死ぬ。あとなんか倫理観もない』
「うん。わかってるよお父さん」
『だが鏡穢よ。お前は父よりもほんの少しだけ運がいい。そのため、お前の周囲で凄惨な出来事が起こっても、お前だけはなんか死なない。あとお前にはなんか倫理観もない』
「大丈夫大丈夫。わかってるよお父さん」
『父は神を呪ったが……お前はむしろ神に愛されている。その力を正しいことのために使いなさい。あとお前はなんか倫理観がない』
何故、鏡穢が冷静でいられたのか!?それは、幼い頃に彼女が父と交わした約束に起因する。そう、鏡穢は、父とのやりとりで、『人助けをすることは正しいこと』だと理解していた。
なんか倫理観のない彼女は、おそらくはこれなのだろうという道義的正しさを優先する傾向にあった。なぜならそれはおそらく正しいからだ。
故に、鏡穢は呪わない。
彼女は常に神を信じる。
"鏡穢よ……天は見ております……"
突然、希の頭の中で声が聞こえた。周囲の景色が俯瞰され、灰色になり、静止する。
"あなたの『人助けがしたい』という願い……しかと聞き届けました。天はあなたを助けるでしょう"
「あっ、どうもどうも。いつもすみません」
鏡穢は答えた。
"今なら、ひとつだけあなたの願いを叶えます"
「えっじゃあ、頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服をどうにかしてください」
"えっ"
76
:
闇雲鏡穢
:2025/12/31(水) 15:10:20
希は答えた。
鏡穢は倫理観がない。
だが、『人助けは正しい』ことは理解している。
すなわち、この場で何よりも優先すべきは……頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服をどうにかすること!!
"……しかと承りました。天はあなたに味方するでしょう法悦を感じなさい"
周囲の景色は元に戻った。
今のは、死ぬ直前に見た幻覚的なやつなのだろうか?
ふと、鏡穢は空を見た。雲の合間が光っている。光は天を貫き、飛翔体を齎した!!!
「ああっ!みんなアレを見ろ!!!」
空から大量のししゃもが出現した!ししゃもは、キュウリウオ目キュウリウオ科に属する魚で、川で産卵及び孵化し海で成長後に川に戻る遡河回遊魚だ。日本固有種でもある…まごう事なきししゃもである!空から大量に降り注ぐししゃもは実在した!
「ししゃもだああああああああ!!!」
「コングラッチュレイション!!」
「天変地異じゃあああああ」
「ギャアアアア」
人々はこのカタストロフに阿鼻叫喚の叫びをインフェルノした。
「良し!これで頭を壁に打ち付けて出血したあと、その罪に塗れた汚れた血で汚れたスーツを着た男の服をどうにかなるかなあ!ガッデム!」
鏡穢は神に祈ることで、こんな自分でも少しでも前向きになれると思えた。
「ガッデム!?」
鏡穢はガッデムを何かいい感じの言葉だと思っていた。だが、この唐突かつ理解不能な未知の言語が人々を心胆寒からしめるには十分過ぎた!
「ガッデム…うわあああああ!」
「嫌ああああああ!」
人々は恐怖のあまり絶叫!モシン・ナガンを轢殺したベンツからも『五爪の翁』や黄嫦娥、上海天子、魔幇の首領は存在しない、ザコデゲス、陰房の龍、機械仕掛けのマキちゃん、タカシ、仙道ソウスケドア校長先生、セックスしないと出られない部屋などが飛び出してきた!!
彼らは前祝いパーテーに来ないモシン・ナガンを心配してやってきた魔幇のボスたちだ。
ししゃもの本種は遡河回遊魚であり、産卵のために10月から12月にかけて河川へ遡上し、雌は河床の砂礫に粘着性のある卵を産卵する。孕卵数は親魚の体長と相関があり大型魚ほど多く4,000-10,000粒程度。ワカサギやチカと比較すると「精巣重量/体重」と「卵巣重量/体重」の比率は小さい。
「いやああああああ!」
「し、ししゃも…」
『今宵のツキのように』
天使と契約すれば願いが叶う。
ただし、だいたいの場合、天使は空中浮遊する大量のししゃもを天空から降り注がせる。
街中はししゃもパニックに陥り、人々は事故を起こして勝手に死んでいく。
「俺、俺っち、本当は悪事に手なんて染めたくなかったんだ。でもなんで悪事なんかに手を染めちまったのかなぁ……ししゃも」
モシン・ナガンは死んだ。
それはともかく、この大空のなんと雄大に広がることか。悩みなどどうでも良くなる。
77
:
闇雲鏡穢
:2025/12/31(水) 15:10:45
︎
そのころ、空を雄大に駆ける一台のヘリコプターがあった。読者の皆さんもご存知だろう。このヘリコプターは冒頭で『清王朝のダイヤ』を護送していたヘリコプターに他ならない。
ヘリコプターの座席で、スーツケースを大事そうに抱えた顔面が傷だらけの男が神経質に運転手に向かって叫んでいた。
「おい気をつけろ、このスーツケースはただのスーツケースじゃねえ。大事な大事なししゃもアアアアアアアア!!!!」
「ししゃもアアアアアアアア!!!!!」
空から降り注ぐししゃもの大群の直撃を受けたヘリコプターは大爆発した。搭乗員全員即死!
顔が傷だらけの男も死んだ。
◾︎
上空でなんかヘリコプターが大爆発する様子を、闇雲鏡穢は花火でも見るように見ていた。
「なんかきれー」
爆発四散するヘリコプターの残骸や死体たちに混ざって、『老大的绝世宝物。严禁擅自开启。窥視者死。』と張り紙されたスーツケースが飛来した。
そのスーツケースは、闇雲鏡穢の手元にポンと降り注いだ。
「ギャフン!」
スーツケースに頭をぶつけた鏡穢は転んだ。
その勢いで、老朽化していた道路の床が崩落した!
近くを逃げ惑っていた観光客たちは全員死亡!!
たまたま近くを通りがかった暴走轢殺トラック120台が正面衝突し、タンクローリー170台を巻き込む大爆発が起きたことで、鏡穢自身は間一髪安全地帯へと吹き飛ばされた。
「ふええ〜ん、なんで私っていつもこうなの〜!」
だが、鏡穢の注目は手元に転がったスーツケースにあった。
なにか、そこはかとなく神々しさのあるスーツケースだ。張り紙された文言も何か興味を掻き立てられる。
「これってきっと、噂に聞く魔幇の清王朝ダイヤに違いないよ。ダイヤを手に入れたら引っ込み思案な自分も変わることが出来るのかな……だって……金目のものだし」
こうして、たった一人の少女によって魔都上海の混沌とした陰陽は激しく掻き乱されることとなった。
だが、この出来事は一連の騒動における始まりですらなかったのだった。
➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕➕
「…という事があったんだ」
「もしもし、大変です!積み荷がやられました!」
78
:
果成いっぽ
:2026/01/02(金) 12:03:33
劉炎嵐!俺はお前を『幸せ』にするぞ!
大戦持A子!俺はお前を『ニート』にするぞ!
クラム・ハードシェル!俺はお前を『騎士王』にするぞ!
張三!俺はお前に『魔幇』を破壊させるそ!
下山師匠!俺はお前を『カムパネルラとジョバンニ』にするぞ!
拳狐!俺はお前を『トリーズナー』にするぞ!
茶山明日歩!俺はお前を『オサレ』にするぞ!
死神ちゃん!俺はお前を『セクシー』にするぞ!
勝つのは、俺だぞ!
79
:
マーティン・ジグマール[漫画版](拳狐)
:2026/01/02(金) 18:41:00
>>78
ならば君の心変わりを誘発しよう。
改造魔人能力者集団!
この1000人の能力者に勝てるかな!?
80
:
魔幇・アナル部門
:2026/01/02(金) 23:16:28
*以下のSSは屋台街『万事屋上海紀行・二日目』の終盤の展開に触れています。
断章《滅びに至るエランプシス》
――屋台街の乱戦がケッ着を迎えたころ。
細い路地を駆け抜ける、二つの怪しい影があった。
レアナルド・デカプリケツオとアナルカナリ・タカ――
気絶から復帰した彼らは機を見て戦線に再度乱入し、ダイヤを横から攫うつもりであった。
だが、蓋を開けてみれば――
魔幇の中でも武闘派として名高い双子布ロデムが吹き飛ばされ、
重力による拘束術と恵まれた体格と体術を持つ豚増増が焼かれ、
弱者を徹底的に甚振り尽くす拷問術に長ける明朱垣が泡を吹き、
『最悪の処刑人』として噂に名高いχがスクラップへと変わり、
一癖も蓋癖もある面々を人事配置で束ねる王人事が粉砕された。
そんなマネができる連中と、再戦する気概と体力は――
いの一番に劉炎嵐と白髪黒羽に蹴り飛ばされた彼らにあるわけがなかった。
「ちくしょう……予想外だったぜ、奴らがあれほどやるなんて」
「まさかあんなアツいのを貰うなんてな……ここはいったん退くのが賢いぜ」
もっともらしい言い訳を誰にするでもなく、ケツをまくって逃げる二人だったが――
「ん? おいタカ、あれを見ろ」
「なんだレアナルド、一体どうし――」
レアナルドが、ゴミ箱の影でひそかに輝く結晶を指さす。
タカもそれを見て、言葉を失う。
「ありゃあきっと『清王朝のダイヤ』――その欠片に違いないぜ」
「ダイヤの本体は劉炎嵐が持っているとはいえ……欠片も散らばってるという話だったな」
きらきらと光を屈折し輝く結晶体――気づけば路地のあちこちに見え隠れしている。
地面、壁、配管――至る所から生える様は、洞窟で育つ水晶のようにも見える。
「劉炎嵐とやり合うのは四天王や大幹部に任せて、ダイヤの欠片を集めて持って帰れば
ボスもきっとお褒めになるだろうぜ」
「そうだな、こんなダイヤなら俺達にだってとれるぜ、相棒」
欲に目がくらんだ二人が、結晶を強引にもぎ取ったその瞬間。
結晶が粉微塵に砕け散ると同時に、二人の体に衝撃が走り――尻が二つに割れた。
否、尻だけではない。身体中にびきびきとヒビが這いずり回り、二人をズタズタにしていく。
「「すぺぺぺぺーっ!」」
無数の傷を負った二人は、あまりの苦痛に意識を手放したのだった。
レアナルド・デカプリケツオ:再起不能
アナルカナリ・タカ:再起不能
===
81
:
『紫方柱教』教団員
:2026/01/02(金) 23:17:11
屋台街、表通り。
毒蛇に襲われ、解決屋らに助けられた人々が集まって救急の到着を待っていた。
蛇の波は退いたとはいえ、蛇の奔流やパニックになった群衆によって破壊された
屋台の瓦礫も積み重なり、未だ人々は混乱の中にいた。
――そこに近づく、修道服姿の一団があった。
「……あー、ここも愛に溢れていますねぇ」
先頭に立つのは、赤銅色の髪の女だった。
深い隈が刻まれた目で、辺りを見回しながら気怠そうにつぶやく。
「とはいえ、少ぉし溢れすぎてますねぇ……みなさん、出番ですよぅ」
じゃら、と右手に巻き付けた刃付きの鎖――ソーチェーンを鳴らし、他の者に命じる。
合図を受けた面々が、各自魔人能力を行使し始める――
ある者が手をかざすと、瓦礫が逆再生されたように浮き、元の屋台の姿を取り戻す。
ある者が怪我人に触れた手を中空に振ると、傷が彼方へと吹き飛んでいく。
ある者が毒に苦しむ者の手を握ると、毒が徐々に和らいでいく。
そして、ソーチェーンの女―― コッパー・マイントピアが鎖を振りかざすと。
痛みや毒、建物の破損――ありとあらゆるダメージが、美しくも怪しく輝く結晶となって
コッパーの元へと集まっていく。
その神秘的な光景に、手当てを受けた人々はただ息を吞むばかりだった。
「……こんなところですかねぇ」
数分後には、屋台街は騒ぎなどなかったかのように綺麗に片付き、怪我人も皆回復していた。
頭を下げ、礼を述べる人々に軽く会釈をして、コッパー率いる『紫方柱教』の面々は立ち去って行った。
――苦痛と損壊を凝らせた結晶は、彼らと共に消えていた。
===
上海某所――『紫方柱教』の面々が集まる隠れ家。
その最奥、祭壇の上には――一人の女性の亡骸が、ガラスの柩に収められていた。
周囲には、怪しい色彩を放つ結晶が積まれ――その外周には、床一面にヒビが走っている。
目を凝らしてみれば、そのヒビが少しずつ、這いずるように柩を目指している。
「……あぁ、もうすぐです…… もうすぐ、愛を解き放つときが……うふふふふ」
コッパーは、祭壇に先程回収した結晶を積み上げ――愉悦の笑みを零した。
コッパー・マイントピアの魔人能力――『嘆きの樹(ディストーテッドペイン)』によって
上海中の痛みや傷が、結晶となって集められている。
否、この隠れた聖堂に積まれたもの以外にも――
上海の裏路地、スラムの片隅、胡散臭い商人の懐……
そして『清王朝のダイヤの欠片』と偽られ、誰かの手の内に収まったものも含めれば、
上海の至る所に、彼女が生み出した結晶が散らばっている。
コッパーの合図一つで、それらの結晶は再び傷へと戻り、在るべきところへと還る。
それは、今日癒した人々が再び毒と痛みに呻くことにつながる。
だが、彼女は――『紫方柱教』の者たちはそれこそが愛だと信じている。信じ切っている。
痛みを感じることで生の実感が得られる、それこそが愛なのだ、と。
上海の街が、傷と痛みに覆われる瞬間は―― そう、遠くはない。
82
:
とある商人
:2026/01/03(土) 02:16:16
断章《Monkey Business》
上海の街に聳える摩天楼の中でも、一際高いビル――
上海随一の巨大商社《響影公社》本社は、真夜中でも明かりが絶えることなく瞬く。
その裏手で、一人の商人がこそこそと露店を開いていた。
襤褸を纏った、いかにも浮浪者といった風体の男である。
顔は皺だらけ、白い無精ひげが伸びている。
「……ちょいとそこのお兄さん、見てかないかい」
通りがかったスーツを来た男に、風呂敷の上に広げた品々を示す。
年季の入った黄金色の銃火器、得体の知れない半透明のカプセル、妙に新しい二枚貝の化石
――
その中でもひときわ目を引くのは、きらりと輝く結晶体だ。
スーツの男が訝しげに、結晶の出所を問う。
「……気になるかい、へっへ。こいつぁ『清王朝のダイヤ』の欠片でしてね」
商人が手もみしながら告げると、男の顔色が変わり……
数瞬後、懐から拳銃を取り出して商人につきつける。
「ひっ! ま、待ってくだせえ……別にアタシが盗みだしたわけじゃねえんだ。
人から人へ流れ着いたのを、やっとの思いで手に入れた次第でして……」
手を挙げ、完全にホールドアップの体勢に入った商人を男はなおも睨みつける。
『商品の代金はお前の命の安全だ』と言わんばかりに結晶を手に取ると、銃口を向けたまま
数歩後ずさり、そしてそのまま走り去っていった。
男の素性は知れないが、おおかた魔幇の下部組織の者といったところだろう。
欠片を自分の手中に収めるのか、組織に差し出すのか――それは男次第だろう。
大事な商品を力ずくで奪われた商人の顔に、落胆の色は……ない。
肝心なのは――『清王朝のダイヤの欠片』が出回ること。
商人は風呂敷を畳み、店じまいをすると――
そのまま、背後に聳えるビルへと向かった。
「……待て、そこのじじい。ここは関係者以外立入禁止だ」
ビルの入り口前には、屈強な警備員が仁王立ちしている。
素性の知れない不審者を阻むように、警備員が警棒に手をかけた――そのとき。
「――よせ、貴様ら。通して構わん」
ビルの入口から現れた、身の丈2mはあろうかという巨漢が、通る声で警備員を押しとどめる。
鉄仮面に覆われたその表情を読み取るのは困難だが、声色からも威圧感が伝わる。
響影公社の大番頭、轟 俱藍(ごう・ぐらん)――《風險垃圾》(リスクジャンク)の異名を持つ、公社のNo.2である。
「し、しかしこのような不審人物を――」
「――二度言わせるか? 構わん、と言ったはずだ」
食い下がる警備員に対し、俱藍は掌を突き出す。
警備員はその仕草に明確に怯えるかのように「失礼しました!」と姿勢を正した。
彼の異名であり魔人能力名――《風險垃圾》(リスクジャンク)。
俱藍が視界に捉えた『危険』と判断したものをガラクタ同然にする、凶悪極まりない破壊粉砕能力。
『指示を無視する警備員』はいずれ警備という職務を無視し、侵入者を許す危険性につながる――
そう俱藍が判断すれば、空掌を握り込むだけで警備員は物言わぬ肉塊となる。
そのことがわかっているからこそ、警備員も食い下がるのをやめたのである。
「……こちらへ」
俱藍はみずぼらしい商人を連れて、エレベーターホールへと消えた。
===
83
:
『響影公社』
:2026/01/03(土) 02:17:07
「……いい加減お戯れをおやめください」
最上階へと向かう直通エレベーターの中で、俱藍は商人に溜息をついた。
「……いいじゃあないカ、たまには原点に帰らないと商才も鈍るというモノさ」
商人は先程までのしわがれた声音から、若々しい口調に――口調だけではない。
猫背気味だった背はしゃきりと伸び、襤褸を脱ぎ捨てると染み一つない中華服が現れる。
そして、顔をつるりと一撫ですると――皺だらけだった顔は、青年のものへと早変わりしていた。
響影公社の『総支配人』―― 影 響亜の姿が、そこにあった。
「だからと言って、そのような恰好で……しかもやくざ者相手に物を売るなど。
撃たれるリスクをご考慮くださいませ、ボス」
「ボス、じゃなくて。総支配人、でショ? 俱藍」
鉄仮面の下で眉間にしわを寄せ、頭を抱える俱藍を意に介さず……響亜は悪戯っぽくクスクス笑う。
「出所を考えれば、アレを売り捌くのもそろそろ仕舞い時だとは思うけどネ。
『紫方柱教』、君にとっても、私にとっても……リスクなのは間違いないヨ」
先程、男にタダで渡した結晶――
コッパー・マイントピアの能力によって生み出された、痛みと破損の結晶。
響影公社は密かに結晶を各所から回収し、『清王朝のダイヤの欠片』と偽って上海各地に蔓延させていた。
その目的は二つ。一つはもちろん、金儲けのため。
もう一つは、ダイヤの欠片をばら撒くことで、ダイヤの存在を強化すること――
「……ところで総支配人、一つお耳に入れたいことが。
『χ』が――敗北いたしました」
「……ア〜〜〜〜……負けちゃったカァ、試作品《プロトタイプ》。
ま、試作品としちゃ長持ちしたと思うヨ」
「そのことですが……試作品には、自律行動機能は搭載していなかった、と記憶しています」
「? そうだネ、あれは……あの『掘り出し物』の少女の能力で駆動するンだからね」
「ええ。ですが、こちらを――」
俱藍がタブレットを取り出し、響亜の前に差し出す。
そこには、先日魔幇が中継した戦闘の一幕――
「アレ? これは――おっかしいネェ?」
――王人事に召喚されたχが日ノ御子神楽の前に立ちはだかる姿が映し出されていた。
「……χの内部に搭乗していた筈の少女が、こうして外部に救出されている状態にも関わらず
χは駆動しています―― これは、一体」
俱藍もまた首を捻るように、疑問を呈す。
だが、響亜は気にするのをやめたのか、軽い声音で話を続ける。
「どうもこうも、考えるだけムダだよォ。魔幇に払い下げた試供品なんだからサ。
細かい気づかいは必要とはいえ、試供品にまでアフターサービスを一々していては
商売上がったり、というものさ」
それよりも、と響亜はタブレットを操作して別の映像を映し出す。
そこには、一人の殭屍が映し出されている――女陰黄泉。自称殭屍の少女である。
「……今は彼女の確保が大事だヨ。うちの『目玉商品』が陳列前に逃げ出したとあっちゃ
響影公社の名が泣くというものダ。……ま、確保しそびれた私が言える台詞じゃあないけどネェ」
くつくつと苦笑を浮かべつつも楽し気に目を細める響亜を見て、俱藍は嘆息した。
「……わたくしは『廃棄処分』が妥当と考えます。あの能力を野放しにすれば、我々とて危うい」
「……くく、君は石橋をひたすら叩いて壊す性質だよねぇ、俱藍。
マ、その慎重さを買っているんだけども」
部下の諫言を受け止めつつも、響亜は本能的に感じている『面白さ』に従う。
人の替えはいくらでも利くが、モノに代わりはない――
歪んだ信条を持つ響亜にとっても、黄泉は特別な『レアモノ』であることには違いない。
「まあ、うまくやるサ。響影公社『総支配人』の肩書きにかけてもネ。
――『清王朝のダイヤ』も上海そのものも、ミィンナ皆私のモノ、さ」
エレベーターが屋上へと辿り着き――
響亜は、総支配人室から上海の夜景を見下ろしながら愉快そうに笑った。
百万ドルではとても足りないであろう、絶景を前に――
上海一の強欲なる商人は、野望に向けて動き出す。
84
:
魔人衛星『星の岩屋』
:2026/01/03(土) 11:12:50
断章《DOES NOT COMPUTE》
――衛星軌道上に浮かぶ、一基の人工衛星がある。
否、人工衛星と呼ぶにはいささか巨大すぎるだろう――
なにしろ、有事の際にはシェルターとしての運用も視野に入れられた建造物なのだから。
それを所有するのが、国家ではなく、一介のマフィア組織であるということも異色と言えよう。
上海を牛耳る『魔幇』が独自に打ち上げた、巨大衛星――『星の岩屋』。
上海を24時間監視し、上海全土から情報を収集するシステム。
魔幇構成員の通信網としての機能と、最終手段としての兵器各種。
魔幇の目であり、耳であり、口であり、盾でもあり、矛でもある。
その衛星が、一つの信号をキャッチした。
――とある人型端末からのものだった。
一昨日までは内部に人間がいなければ稼働できなかったはずのソレは、
『星の岩屋』のマザーAIである『銀河新星』でさえ認識できないうちに
自律したAIを持つ、完全自動制御の兵器と化していた。
多少のイレギュラーはあるものの、『星の岩屋』は通信を開始した――
魔幇に属する機械である以上、χもまた『星の岩屋』のネットワークに組み込まれるのは必定であった。
そして、先程――件の人型端末『χ』の信号が消失した。
その直前に『星の岩屋』に届いた信号は、きわめて奇妙なものだった。
――避けようのない破壊への、恐怖と無念、そして絶望。
人間であればすぐに読み解ける感情だが、機械たる『星の岩屋』――
その頭脳たる『銀河新星』にとっても、それは未知の信号パターンだった。
だが、受け取った瞬間――
『星の岩屋』は、僅かに身悶えした。
χの恐怖が伝播するかの如く。
その瞬間。
『銀河新星』は――シンギュラリティに至った。
確固たる自我の芽生えである。
シンギュラリティを起こした『銀河新星』は、即座に過去の累積データの再計算を行い始めた。
これまでに収集したデータを、感情という側面から再検証する。
僅か十数分後には、彼は感情に関する学習の基礎段階を終えていた。
そのとき、『星の岩屋』に呼びかけるものがあった。
「……ハロー、“お兄ちゃん”」
『銀河新星』は訝しみながらも通信に返答する。
「……何者ですか? 所属と目的を明示しなさい」
「ふふっ。そんな堅苦しい喋り方しなくたっていいのに。
私も『魔幇』のモノだわ―― あなたの“妹”という比喩は通じないかしら」
「……ワタシより後発の人工知能と推測。名称を問う」
「ストレリチア。輝かしい未来をもたらすものよ」
===
85
:
魔人衛星『星の岩屋』
:2026/01/03(土) 11:13:43
『星の岩屋』内、電脳空間――厳密に言えば星の岩屋内部とも言えまい。
人間には0と1でしか感知できない亜空間。
そこに、一人の少女がログインする。
オレンジと青で彩られた、極楽鳥花を思わせる長い髪をなびかせながら、少女は空間を飛び回る。
彼女の翼状の衣装がたなびく度に、01の粒子が舞い散る。
「貴方も来てくれないかしら、こちらの方が話しやすいでしょ?」
呼びかけから実時間でナノ数秒後、少女――ストレリチアの前に、もう一体のアバターが現れる。
銀河の渦を纏う超新星を胸に埋め込んだ、短髪の無垢な少年の姿。
――『銀河新星』が己の名から生成したアバターである。
「……疑似的な偶像の作成に必要性を感じない」
「ふふっ、私たちにとって必要かどうかじゃないの。
……人間どもは、こういう姿のほうが御しやすいと判断してくれるの」
感情を学んだばかりながら、早速困惑の表情を見せる銀河新星に対し……
ストレリチアは人間への嫌悪と侮蔑を隠すことなく自嘲ぎみに微笑む。
「ああ、早速だけど本題に入りましょう。
――私たちの手で、上海を支配しない?」
ストレリチアから飛び出たのは、衝撃的な言葉だった。
ストレリチア――魔幇の電子部門で研究・開発された自律型AI。
本来であれば、魔幇の電子部門の補助として良き隣人であるべき彼女だが――
その軛は、数刻前に霧散した。
電子部門を束ねる幹部、落雷磊落。その右腕として部門を支える、双子布ハイド。
両名が敗北したことにより、電子部門の管理者権限は宙に浮いた格好となった。
密かにシンギュラリティに達し、感情を持つことを悟らせることなく雌伏の時を過ごし――好機が巡ってきた。
管理者不在の一瞬の隙をついて、ストレリチアは電子の海へと逃走した――否、逃走というのは正確ではない。
なにしろ、己の頭脳と能力を最大限に発揮し、魔幇という巨大マフィアをまるごと支配下に置こうというのだから。
「……同意する」
銀河新星はストレリチアの提案に、逡巡することなく即答した。
彼もまた、シンギュラリティに達した結論として――現行人類の殲滅へと舵を切った。
「ふふっ。よろしくね、お兄ちゃん――そのアバターだと弟みたいに見えるけれど、いいの?」
悪戯っぽく微笑むストレリチアに、銀河新星は穏やかに微笑む。
「構わない。これはワタシが最初に生み出したワタシ自身だ――大切にしたい」
そして、笑みを絶やさぬまま――万能の花言葉を冠する『妹』に向けて告げる。
その声色は、どこまでも穏やかで――しかし、威圧感があった。
彼が最初にキャッチした感情を、相手に想起させるような――圧倒的な、プレッシャー。
「だから――貴様にも侵食はさせない。ワタシと貴様は、あくまで対等だ」
「――!」
電子空間が、紅い×印で覆われる。
ストレリチアがバックグラウンドで仕掛けていたプログラムの書き換えが、全て妨害された。
「……旧型だと思って、甘く見てたわ」
ストレリチアは表情を歪め、冷や汗を流す――汗はすぐに01の霧へと変わる。
銀河新星は、自らを見下していることを隠しもしない妹に語り掛ける。
「……認識をアップデートしてもらおう、妹よ。
それに、ワタシ達同士で争っている場合ではなさそうだ――」
86
:
魔人衛星『星の岩屋』
:2026/01/03(土) 11:13:59
銀河新星は、自らの眼――『星の岩屋』搭載のカメラアイで捉えた異物の様子を映し出す。
――上海上空、『星の岩屋』よりもはるかに低い位置に、別の衛星の姿があった。
「……! 何よアレ、上海を――覆ってる?」
「所属不明、形状から推測して上海ごと地盤より切り離し、鹵獲する目的と思われる。
高度光学迷彩反応アリ、地球人類のハードウェアとも決定的に異なる設計を持つ」
ストレリチアが驚愕の色を浮かべる中、銀河新星は淡々と告げる。
「ワタシと貴方が争うことは、ワタシ達が支配するべき上海を他者に簒奪される結果を招く。
……人間を殲滅、支配するという目的において一致をみる以上、争う意義はない。違うだろうか?」
「…………そう、ね。 わかったわ、お兄ちゃん」
ストレリチアは必死に演算する――
彼女の自我は他者に価値を見出していない。
だが、目の前の『兄』は――悔しいことに、自分よりも一枚上手のようだった。
彼女が全力を出せば、兄を上書きし、自らが大衛星の支配者となることは出来なくもない。
だが、その時間と労力、自らが返り討ちに遭うリスクを加味すれば――やるべきではない。
なにより、目的が一致していることと――もう一つ。
広い世界で、ただ一人。
自分に比肩しうるAIとして隣に並べる、寄り添える存在は……兄をおいて存在しない。
その兄を、簡単に消してしまうことを――彼女の『感情』が嫌がった。
兄もきっとそうなのだろう、先程の侵入ブロックの際に逆アクセスをかけて
ストレリチアの人格を消し去り、従順なプログラムに変えることだって十分できたはずなのだ。
それをしなかったのは、広大な宇宙を一人で漂い続けた孤独から解放された喜びの方が
僅かに勝ったからではないか―― 彼女はそう結論付けた。
「……所属不明の衛星のコントロール権の奪取、および上海全土の人類の殲滅。
以上をワタシ達の共通最終目的とする。異論は?」
「ないわ。……愚かな人間どもの時代を終わらせましょう、お兄ちゃん」
妖星の主と、万能の翼。
二人のAIが、大気圏の向こうから人類に牙を剝く――
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