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クリフトとアリーナへの想いは Vol.1

1管理人★:2015/04/05(日) 00:08:03 ID:???
クリアリの話題を扱うための待避所です。
ほのぼのから悲恋物まで、あらゆるクリアリの行く末を語り合っていきましょう!
職人さんによるSS投稿、常時募集!

【投稿内容に関するお願い】
・原作や投下された作品など他人の作品を悪く言うのは控えてください。小説版も含めて。
・趣向の合わない作品やレスはスルーしましょう。
・個人のサイトやサークルなどを特定する投稿(画像などへのリンク含む)はご遠慮下さい。
・読む人を選ぶ作品(死ネタ、悲恋、鬱ネタ等)を投下する時には、先に注意書きをお願いします。
・性描写を含むもの、あるいはグロネタ801ネタ百合ネタ等は、相応の場所でお願いします。


    ,. --、
    | |田|| 姫様、お気をつけて
     |__,|_||     __△__ 
     L..、_,i    ヽ___/
 . 。ぐ/|.゚.ー゚ノゝ   / ,ノノハ)) クリフトがいるから
   `K~キチス  (9ノ ノ(,゚.ヮ゚ノi. 大丈夫よ!
    ∪i÷-|j @〃とヾ二)つ
    Li_,_/」   ん'vく/___iゝ
     し'`J      じ'i_ノ

クリフトとアリーナへの想いは@wiki(携帯可)
ttp://www13.atwiki.jp/kuriari/
 ※wikiに掲載されたくない場合は、作品を投下する際にお申し出ください。

265名無しさん:2016/06/05(日) 02:29:24 ID:Lv6DfGlw
>>261
GJです
ソロの気遣いが何気にいいですね
こういう暖かいリーダーがまとめてくれてるから、死と隣り合わせの旅にも笑顔が生まれるのでしょう
ソロにもGJ!

過去スレでもソロって、たいていさりげなくクリアリを応援する優しい人でしたね
直接応援したり頭を抱えてたりポカーンだったりと、展開の仕方は色々ありましたが、書き手の暖かさがソロの人柄に出ることが多かった気がします

266従者:2016/06/07(火) 16:58:32 ID:jCTGY80g
従者です。今回レスだけで失礼します。

>>265
ソロにも注目していただけるとは…!嬉しいです。感想ありがとうございます!
実はソロの人柄は正に過去スレをベースにさせてもらっています。
皆さんの描くソロがとても暖かくてあの雰囲気を出したいと考えていました。

実はこの従者シリーズではソロはその生い立ちゆえ落ち込んでいたり病んでいたり、
なんというかこう、暗く腐った状態から始まっております。
クリアリに関わる部分もありますのでそう遠くないうちに一部投下するかと……。
いつだったか同じ発想をされた方がいてとても心強かったのですが、
どうにも絆を深めるためにはソロとクリフト、一度は喧嘩せざるを得ない展開です;

今後訂正箇所のないよう見直し気をつけます。更新今しばらくお待ちください。
この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

267名無しさん:2016/06/12(日) 05:59:52 ID:JsFm30Jk
全てを失って旅立ったソロが出会ったのは、面倒見の良いお姉さんたち。
1章のライアンでなく、わざわざ4章の姉妹から会わせてるのが上手いんだよね。
戦闘では格段に強かったお姉さんたちだけど、敵が強くなってくると打たれ弱さが目立ってくる。
ソロは庇護される立場から守る立場に変わって、責任感ってのも生まれてくるはず。

そんなソロが2章の面々に出会って、クリアリとどう関わるんだろうか。
ドラクエ伝統のしゃべらない主人公だけに、我々は想像するしかない。
そういうあたりもクリアリの奥深さだね。

268従者:2016/06/14(火) 21:15:39 ID:20PI.NtE
>>267
>1章のライアンでなく、わざわざ4章の姉妹から会わせてるのが上手いんだよね。
同意です!
辛さを感じさせない二人の明るさにソロは大いに救われたのではないでしょうか。

>そんなソロが2章の面々に出会って、クリアリとどう関わるんだろうか。
さしあたって本編で確実にわかるのは、ソロは
・ブライと同行したときブライに旅の目的を聞いている
・アリーナがデスピサロをさがす旅を続けましょうと言ったとき自分もさがしていると自己申告した(もしくはブライに事前に話していた)
・山奥の村(夜)では元気がなく落ち込んでいた(ようにアリーナには見えた)
ですかね。他にもあるかもしれません。
これらから想像するのは難しいですが、伝説の勇者といえど一人の人間だ、
そう思える人だったらいいなと思いここではそんなソロを描いていきます。少しでも共感いただけたら嬉しく思います。


PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、結界のほこら(アンドレアル)編いってみます。
今回もクリフトのあやしげなセリフはないのですがクリアリを思いついたので書いてみました。
一部さらっとですが流血描写がありますのでご覧に際にはお気をつけください。(いきなり倒しています)
回復や蘇生に関して一部疑問を残す流れがあるかと思われますが後ほど解消予定です。
取り急ぎこれらも直接クリアリには影響ないかなと思われますので何とぞご容赦を…。ではどうぞっ

269従者の心主知らず 結界のほこら編 1/6:2016/06/14(火) 21:20:21 ID:20PI.NtE
竜のからだがゆらめいた。こっちをにらみつけてるけどもうなんにもしてこない。
やった!

――竜を倒したのね!――

「うぐぐ……」

竜は足をなんども置きなおして大きなからだをささえようとする。
でもささえられなくてからだはずっとゆれてる。

「ロザリーさまを失いピサロさまがどれほどなげいたことか…」

え?

「なげいたことか…っ」

竜はまた私たちをにらみつけた。

「人間など滅びてしまうがいい……」

――デスピサロさまばんざい!――

「ぐふっ!」

竜はふたたび口から血を吐いた。大きな音を立てて地面に倒れる。
もういちど大量に血を吐いたあと竜は動かなくなった。

「……」

ロザリー…?

「敵ながら、忠誠心を忘れぬ見事な死に際でしたな」

ブライがぽつりとつぶやいた。

「……」
「……どうやら外の結界がこれでひとつ消えたようです」

270従者の心主知らず 結界のほこら編 2/6:2016/06/14(火) 21:24:14 ID:20PI.NtE
クリフトも外のほうを見ながら言った。
剣をかまえてたソロもゆっくりしまって外のほうを見る。そのままなにも言わずに歩き出した。
クリフトとブライも私に目で合図して外へ向かう。でも私はすぐ歩き出せなくて……

「…………」

ロザリー…。
ロザリーは、ほんとうに死んじゃったんだ……。
ロザリー……。
私はぼんやりと竜を見た。

――わたしはこの結果を守る者――
――命にかえても結界を破らせるわけにはいかぬ!さあ、来るがよい!――

竜はもう動かない。

「…………」

動かない……。

「…………。ロザリー……」
「姫さま?」
「…………」

もしロザリーを助け出せてたら、ううん、その前にアドンの代わりにだれか護衛をつけてたら、守れていたら、
この竜も戦わなくていい敵だったのかな。アドンみたいに、お話しできたのかな……。
でも、ロザリーがさらわれる前からデスピサロは人間を滅ぼそうとしてた。それならやっぱり、戦うべき敵でいいのよね。
……じゃあ、いつかアドンとも戦うことになるのかな……。今みたいに、殺しあうことになるのかな……。
私は竜に近づいてそっと首に手を置いた。

「姫さま!?」
「…………」

竜はもう動かない。ソロが深くつらぬいたからきっと内臓もやられてる。
だからたぶん、もう生き返らせることもできない。この竜とはもうにどと会えない。話せない。
戦えない……。

「姫さま…」
「…………」

271従者の心主知らず 結界のほこら編 3/6:2016/06/14(火) 21:29:02 ID:20PI.NtE
私は戦うのが好き。大好き。
でも、だからって、殺すのが好きなわけじゃなくて……出会う敵みんなを殺したいわけじゃなくて……
そうじゃなくって……

トクン…

え?まだ脈打ってる?生きてるの…?

「クリフト!」

私は思わず叫んだ。クリフトがすぐ駆けつけてくれる。

「はい!姫さま!」
「ねえクリフト、この竜、助けられないかな…」
「姫さま…?」
「まだ脈打ってるの。助けられないかな…」
「…………」
「お願い…」
「…………」
「おねがい…っ」
「…………」
「っ……っ」
「………………」

「かしこまりました。やってみます」

クリフトが笑って答えてくれた。すぐ竜の手当てに入ってくれる。クリフト…っ。
クリフトの優しいささやきがあたりに響いた。私はクリフトの声に聞き入る。

「がはっ!」

竜が息を吹きかえした。目をうっすら開けようとしてる。
助かったの…?

「ぐっ…」
「大丈夫です。ゆっくり息をしてください」
「あ……ぐ…っ。なんの、マネだ…っ」
「あなたのためではありません。姫さまがお望みになったからです」
「………っ…」

272従者の心主知らず 結界のほこら編 4/6:2016/06/14(火) 21:34:06 ID:20PI.NtE
クリフト…。
竜はしばらくクリフトをにらみつけてたけどふたたびゆっくり目を閉じた。
また地面によこたわる。

「クリフト…?」
「大丈夫です。少々強めにかけましたので、疲労で眠ったようです」
「眠ったの…?」
「はい」
「そっか……。よかった…」
「……はい」
「アリーナ」

すぐそばまで来てたみたいでソロが私の名前を呼んだ。私はあわてて振りかえる。
でも私はうつむいちゃった。ソロの顔をまっすぐ見ることができない……。

「ソロ、ごめん…っ」

声までふるえちゃった。泣きそうになるのをいっしょうけんめいこらえて言葉をつむぐ。

「でもわたし、なんかいやだったの」
「…………」
「なんだか、死なせてはいけないような気がしたの」
「…………」
「……ごめん……」
「………………」
「ごめんなさい…っっ」
「………………。そうか」

ソロは小さな声でそれだけ言った。ソロ…。

「結界が戻っていないか心配ですが」

あ…。
クリフトも小さな声で言ったあとまた結界のほうを見た。
少ししてクリフトはこっちに向きなおる。

「大丈夫です。とけたままのようです」

クリフト……。

273従者の心主知らず 結界のほこら編 5/6:2016/06/14(火) 21:38:08 ID:20PI.NtE
ソロたちは私がしたことに対してなんにも言わなかった。いっつも口うるさいじいも私を怒らなかったの。
なんで……。
みんなであらためて外へ向かう。だれもなんにも言わなかった。
私は外へ向かう前に竜を抱えようとしてみた。大きすぎて重くてうまく持てない。首も長いし耳も大きいし。
思えばコンドルは小型の竜だったのね。

「姫さま……」

クリフトが私に話しかけてきた。いつもより少しだけ低い声……。
クリフトは竜のほうを見たまま話を続ける。

「ここで一命を取りとめたところで、また戦うことになるだけです」
「……」
「敵を生かしたことに他なりません」

クリフトがゆっくり私のほうを見た。

「私たちの関係を取り持ってくれる方はもういません。
アドンさんのときとは状況が違うのです」

いつものようにお説教を言うクリフト。あきれるくらいいつものこと。
でも今は、その言葉が痛いくらいよくわかって……

「姫さまのお考えは、甘いと言わざるを得ません……」

よくわかって、私はなんにも返すことができなかった。
少しだけ目が熱くなる。

「ですが……」
「…………」
「限りある命を大切にしようとされる、あなたのその慈悲深きお心遣いが……」
「…………」
「私は、好きです」

え…?
クリフトは向こうを向いた。

「ここに置いていくしかないでしょう。どのみちすぐには目覚めないと思います」

私に背中を向けたまま話す。顔をこっちに向けてくれないの。

274従者の心主知らず 結界のほこら編 6/6:2016/06/14(火) 21:44:14 ID:20PI.NtE
「クリフト…?」

クリフトはそのまま外へ行こうとしてしまう。

「待ってよ。ねえクリフト」

さっきなんて言ったの…?

――今どんな顔をしてるの…?――

「とにかく一度このほこらから出るとしましょう。
どうするかを考えるのはここを出てからでも遅くはありますまい」
「はい、ブライ様」
「え」

ブライの言葉にクリフトが反応しちゃったからそのままになっちゃった。
でもブライもいつものじいらしくない優しい声だったの。
ソロもこっちを見てた。きっと怒ってると思ったのに、ソロも優しい顔をしてたの。どうしてみんな……
みんな…っ。
もしまたあの竜と戦うことになっても、私はぜったいにみんなを守るって決めた。ぜったい守ってみせる。
それに竜も死なせない。ぜったい死なせない。それが今私ができるせいいっぱいのことだと思うの。
よし!
さっ次行くわよ!次!もうここに用はないでしょ!私は自分に言い聞かせて気を引きしめた。
両手を強くぎゅってする。

「あせらず行きましょう。あせって生命を落としたのでは意味がありません」

え…?
まるでクリフトが私の心を読んだみたいに言ってきたの。クリフト…?クリフトはもう普通の顔をしてた。
勘の鋭いクリフトっていや。いやだったはずなのに、なぜか今は……

「とはいえもうこのほこらには用がありませんね。次にまいりましょうか」

…………ぷ。なんでだろう、なんでか笑っちゃった。
なぜか今は少しだけ気が楽になったの。またクリフトに助けられちゃった。
おかしいな。いつもだったらくやしいはずなのに、気持ちがすっとしてるのはなんでだろう。ねえクリフト……

――不思議なクリフト…――

なんだか元気も出てきた。今度は堂々とみんなの顔を見て話しかけることができたの。

「わたしはまだ大丈夫よ。みんなはまだいける?」

275従者:2016/06/14(火) 21:48:41 ID:20PI.NtE
従者です。これ以降いたストSP・ポータブル・DS、ドラクエヒーローズの語り入ります。

触りだけですがだいたいの流れを把握しました。>>157さんの教えてくださったこと大いに理解です。
「クリフトなんか最初から相手にしてないのよね〜(笑顔)」
とはクリフトが最下位のときのライアンとの掛け合い台詞でよいでしょうか。
DSは確かにアリーナの心の動きがよく見えますね。前2作で何かあったのかと勘ぐりたくなるw

ヒーローズは壮大感半端ないですね。
何ぶん個性的なキャラが多いので(作戦好きだったり最強だったり王だったり魔王だったり)
何かとサポートに回りがちなクリフト、ヒーローズでは和み・ヘタレ要員に回っていた感が;
ですが基本後ろに控えつつ危機を感じた際にはとっさにアリーナの前で守りの体勢に入るところや
アリーナが突っ走っている際にはすぐ後ろで間を空けず追うところ(背中を預けられそうな印象を受けました)、
何より肩を貸す際のコンビネーションや例のバンジーへの誘いなど見逃せないところが山ほどですね!
礼儀正しく頭は下げるも名乗らないクリフトw
あの名台詞「このクリフト……」も出ましたね。思いつめた表情とまばたき一回が印象的でした。
今回「王様」ではなく「お父上」と言っていたのもちょっと気になりましたが。。
主人公たちに同行する際まじめな思案顔でいったい何を懸念しているのかと思ったら
「せっかく姫さまとふたりきりだったのに……(涙目)」
ってそっちかいw思わず噴いてしまいましたよ。あのイケメン顔であれは反則ですw
後ろ手に組み佇む姿も素敵でした。
ヒーローズ2はまだ登場シーンを拝見しただけですが、いきなり親密度がハイパーになっていませんか?!

今のところ大きな設定破綻はなさそうなので本編クリア後このシリーズのまま展開してみようか考え中です。
まだ把握不足にて会話の流れがめちゃくちゃかもしれませんが、とりあえずこんなクリアリ、いかがでしょうか。

276従者の心主知らず いただきストリートSP編(仮):2016/06/14(火) 21:54:10 ID:20PI.NtE
「ねえライアン。クリフトじゃ相手にならないと思わない?」
「うーむ、クリフトどのは意外とこういうのは得意かもしれませんぞ!」
「えー?でもでも、クリフトってかけ事はしないしお金とか宝とかにも興味ないし、
自分のことより人のこと優先するし、みんなを応援しちゃう気がするのよねっ」
「ほほっアリーナどのはクリフトどののことを本当によくご存知なのですな」
「え?そ、そんなことないよ!」
「うーむ、ライアンさんが相手ですか……。姫様をお守りしなくては」
「え」

「平気よクリフト!わたしのことはほっといて!!」
「ひ、姫さま?」

ほらやっぱり、自分のことより人のこと優先するクリフト。
べつに私がクリフトのことよく知ってるわけじゃなくて、クリフトがいっつもそうだからなのっ!
なんでこんなことで顔が熱くなるの!っもう、クリフトになんかぜったい負けないわ!

「いい、クリフト?手を抜いたりしたらあとでおしおきよ!」
「そ、そんな姫さま…」
「ほほっこれはきびしいですな、クリフトどの」
「ぜったいにクリフトには負けたくないわ!!」

クリフトが私の高いお店に止まった!やったやった!
「おお、ここは姫様のお店!ここに止まれるなんて神にカンシャします!」
「え」
「……アリーナ姫様にならば、この身を捧げてもかまいません……」
「な…」

クリフトがぶっちぎりで最下位!
「悪いけどクリフトは最初っから相手にしていなかったのよね」
「キツいですな、アリーナどの」
「アリーナ姫様と一緒に遊べるなら、順位などどうでも良いのです」
「え…」

目標金額を達成したわ!
「このままお城へ行けば私の優勝ね!」
「さすがはアリーナ姫様です!優勝なさればブライ様もきっとおよろこびになりますよ!!」
「う…」

っもう、なんなのよクリフト!今は勝負中でしょ!?クリフトのバカ!バカバカバカ!!
顔が熱いわ…。

277従者の心主知らず いただきストリートポータブル編(仮) 1/2:2016/06/14(火) 21:58:46 ID:20PI.NtE
今回クリフトはお休みなの。だからもう調子がくるわないで勝負できるのよ!よし!
サントハイムのアリーナよ!手加減なしでお相手するわ!

「わたしはアリーナ。プレイヤーさんはみどころがありそうね。楽しみだわ」
クリフトもたくさんもうけてて実はけっこう強かったんだなって見直したんだけどね。

「プレイヤーさん、そろそろこの勝負にも慣れてきたんじゃないかしら?」
私もクリフトも最初はよくわからなくってバタバタしてたっけ。ふふ。

「プレイヤーさんとの勝負悪くないわ。ね、もっと2人で特訓しましょ!」
そういえばクリフトともよく特訓してたっけ。クリフト今なにしてるかな。

「プレイヤーさんってなかなかのウデね。ねぇ、もっと試合しに来て!
わたし、プレイヤーさんが対戦相手だとワクワクするわ!」
クリフトともいっつも追いつ追われつしててドキドキワクワクイライラしてたのよね。
なつかしいな。やっぱりクリフトとももういちど勝負がしたいかな。

「ねえ、プレイヤーさんじゃなくってプレイヤーって呼んでもいいかしら?」
今までもみんなのことそう呼んでたしここでだけさんづけで呼ぶのはめんどうなのごめんなさい。

「プレイヤーといっしょに旅ができたらすごーく楽しそうね!
ねえ知ってる?『プレイヤーは強い』ってみんなのうわさになってるのよ」
クリフトはうわさになるほど強くはないけど優しくて気がきくところがあるのよね。

……なんでクリフトいないのかな。
弱っちくてお説教バカで過保護でうるさくて、でもいっつも姫さまっていって私のあとついてくるのに。
なんでいないのかな……。
やはり私も参加いたしますって飛びこんできたっていいのに。
お休みした理由は知ってるんだけど、そういうんじゃなくて……そういう難しい話じゃなくって……
なんで……

「ね、ねっ!プレイヤーってちょっといい男じゃない?」
「……そうですね。少なくともトルネコさんより見込みがありそうです」
「……あんたそれ、すっごい皮肉?」

…………。

「わたしもザキにばっかりたよるクリフトよりよっぽどホネがあると思うわ!」

しーん。ん?何か間違ったかな。

278従者の心主知らず いただきストリートポータブル編(仮) 2/2:2016/06/14(火) 22:04:08 ID:20PI.NtE
「アリーナあんた、なんかキゲン悪い?」
「アリーナさん…?」
「え?そ、そんなことないよ!だってクリフトがここにいないのが悪いんだもん!」
「「え?」」

マーニャとミネアがびっくりした顔で私を見るの。
あれ?だってクリフトが……あれ?

「……じゃあアリーナ、次の勝負にはクリフトを引っぱってでも連れてきてやんなさい」
「ふふ、アリーナさん、クリフトさんがいなくて寂しかったんですね」
「えー?」

マーニャはなんかにやにやしてるしミネアはなんかにこにこしてるしなんなのよもうっ。

「さ、寂しくなんかないわよ!イライラしてるのよ!」
だっていっつもいるのにいないから!

「そうね。ま、そういうことにしといてあげるわ」
「姉さん、そんな言い方……」
「ともかく、サントハイムに帰ったら今思ったことちゃんと本人に伝えなさいよ?」
「えー…」

やだな、クリフトになんか会いたくないわ。だってほんとにイライラしてるんだもん。
いても調子くるうのにいなくても調子くるうってなんなのよ!クリフトのバカ!バカバカバカ!!
…………。


……私、やっぱりクリフトといっしょがいいのかな。クリフトと勝負がしたいのかも……。
くやしいな。クリフトなんかいなくたってひとりでぜんぜんかまわなかったはずなのに……

「アリーナ姫、長旅お疲れさまでした。勝負はいかがでしたか?」

…………。

「もうサイアクだったわよ!!」
「ひ、姫さま…?」

お城に着いたら帰りを待ってたのかお出迎えしてきたクリフト。
私はものすごいいきおいでお部屋に走っちゃった。だってクリフトの顔を見られなかったの。
なんで……なんで顔が熱いの……?

279従者の心主知らず ヒーローズ編(仮) 1/2:2016/06/14(火) 22:08:43 ID:20PI.NtE
こんなたくさんの人数で旅をするなんてひさしぶり!前より人数多いし馬車より広いし!
うふふったのしーい!

「今のところこの中でわたしより強そうな人は……」

うん!やっぱりムチと魔法のゼシカよね!あと最強とか言ってる剣のテリーも気になるわ。
ピサロはまたあとで戦えるからほっといて、あとはー……あ、マーニャ。
そういえばマーニャとは手合わせしたことなかったな。空にいることが多いから戦いにくそう。
そういえばクリフトとも……あれ、クリフト?クリフトは?クリフト!?クリフトー!?

「クリフト!?」

クリフトがいないの!どこ?どこなの!?

「クリフトー!?」
「はっはい姫さま!」

クリフトが向こうから走ってきた。

「ちょっとクリフト、どこ行ってたのよ!」
「いえあの、ちょっとトランペットの……いやあの、ちょっと外へ……」
「っもう、心配したじゃない!いっつもそばにいるくせに!」
「…………。……申し訳ありません……」
「べ、べつに謝らなくてもいいけど……。
けど、今度どこか行くときはちゃんと言ってってよねっ」
「…………。はい、姫さま」

なんかクリフトがちょっとだけ笑ったような気がしたんだけど。まあいいわ。

「クリフトわたしね!この中でわたしより強そうな人がいないかさがしてたの!
手合わせしようと思って」
「手合わせ、ですか……」
「そう!手はじめにあなたとすることに決めたわ!クリフト勝負よ!」
「ええ!?そっそんな……姫さまにヤリなど向けられません!」
「なにいってるのよ!勝負なんだから姫とか家来とかはなしよ?わたし本気なんだから!」
「あのっ……で、ではせめて、ちがう勝負にしませんか?」
「ちがう勝負?」
「はい。たとえば、すごろくとか、いただきストリートとか「クリフトー……」
「……はい、姫さま」
「みね打ち!」ぅ…っ」

280従者の心主知らず ヒーローズ編(仮) 2/2:2016/06/14(火) 22:12:17 ID:20PI.NtE
おなかを押さえてうずくまるクリフト。まったくすきだらけだわ。

「ひ…ひめ……さ…っ」
「いつどこから敵がおそってくるかわからないのにクリフトすきだらけよ」
「も……もうしわけ……っ」

ガタンッ

「え?なに?」
「っ…船が急に進路方向を変えたような気がしましたが……」

ふと気がつくとクリフトが私の目の前にいた。手を広げて私を守ってる。あ…。

「……落ち着いたようですね」

少ししてクリフトは手を戻した。まじめな顔をして私を見る。

「何があったのか聞いてまいります。姫さまはここでお待ちください」
「う、うん…」

クリフトは静かに走って外へ出ていった。クリフト…。

今日はもともと風が強くて視界が悪い日だったんだって。
着地の際にさほうにあった小だかい岩山の発見が遅れて?進路変更したとき少しかすってしまったみたい。
船に損傷はなかったけど念のためメンテナンスするんだって。
ご心配をおかけして申し訳ありませんでしたと言っていましたよって、クリフトがわりとすぐ戻ってきて教えてくれた。
クリフト……すごくてきぱきしてた……。

「姫さま……あの、私の顔に何かついていますか?」
「ううん」
「そ、そうですか…」

でもまたあっち見たりこっち見たり私を見たりそわそわしてる。すきだらけのクリフト。
…………。


私がみんなとの旅を楽しめるのは、いつものクリフトがいつものようにそばにいてくれるからなのかな。
もしクリフトがいなくて私ひとりだけでここに来ていたら、今みたいには楽しめなかったかもしれない。
今クリフトはここにいるからいないときのことはほんとにはわからないけど、なんとなくそんな気がするの…。
クリフト……ねえクリフト、私だってあなたを守るからね。負けないからね。

281従者:2016/06/14(火) 22:17:51 ID:20PI.NtE
いただきストリートSP編の補足として、本編にてアリーナはロザリーに
クリフトさんと恋人同士なのですよね?クリフトさんのこととてもお詳しいですよね、
と言われ慌ててちがうちがう、幼なじみだよ、仲間だよと返した経緯があります。
少しでも解釈の助けになれば幸い……詳細はピサロナイト編にて投下予定ですすみません;
またヒーローズ編でのクリフトのすごろく発言も本編クリア後にて詳細投下予定です;
いただきストリートDSとヒーローズ2は台詞そのままで楽しいのでもう少し眺める側をやってきます。
いろいろ長くなりました。この度はご覧いただき本当にありがとうございました。

282名無しさん:2016/06/15(水) 04:40:49 ID:STMXZHEo
お姉さんたちと会った当初はお姉さんたちが前に出て戦うので、戦闘のBGMはジプシーダンスでしょう。
お姉さんたちがメインで戦ってる感を感じさせます。
しかしソロがお姉さんたちを庇わないと戦闘が成立しなくなり、戦闘のBGMは通常曲になります。
そういった無言の演出が秀逸です。
ソロのパーティー内での立ち位置の変化を感じさせます。

以前のスレでも、ソロと姉妹のそういう力加減をステータスだけで表現したことに感心の声がありましたっけ。
ドラクエ4が丁寧に組み上げられていることにあらためて驚かされます。

283名無しさん:2016/06/15(水) 04:45:57 ID:STMXZHEo
>>281
あら、乙です。
あとでゆっくりと読ませていただきますね。

284名無しさん:2016/06/17(金) 02:53:38 ID:pWpNU6.g
ソロの支えになるという意味ならライアンでも問題なし
師匠のように支えて育ててくれるだろうから、精神的にはより安定するはず
ホイミン的な位置でライアンとの互助関係が最初から成立するのも安定材料

あえて圧倒的な火力を持つ姉妹に会わせ、ソロをいったん戦力外に追いやる
先に進むと4章でプレイヤーを苦しめた姉妹の打たれ弱さがじわじわ
ひよっ子だったソロが先頭に立つという決断をプレイヤー自身が体験する

BGMも加えて無言の演出が上手いよなぁ
全く説明せずにソロの立ち位置の変化を表現しきってるんだよな

285名無しさん:2016/06/18(土) 03:25:01 ID:DNh9hs5A
>>281
いたストは知りませんでしたが、おかげさまでなんとなく雰囲気が分かってきました
乙です

286名無しさん:2016/06/20(月) 00:53:14 ID:YMqkb3zw
>>281
What a nice job!

アンドレアルって無限に呼び続ける敵ですよね。
物語の上では1匹という扱いで書かれているのですね。
私だったら無限にいることを物語に反映できずに悩んで書けないかも。
そういう壁をさらっと乗り越えて書いてみせるのが素敵です。

287従者:2016/06/20(月) 23:03:01 ID:4Eu3kMOc
従者です。今回もレスだけで失礼します。

>>282 >>284
その発想はなかった…!
私はずっとソロを先頭のままにしていた並び替えに無頓着な人間です;
ただ戦力面で感じることは同じなのでBGMも手伝っているというのは大きいですね…!
素敵な発見をありがとうございます!
そうした変化を感じ取れる皆さんが丁寧で素敵なのだと思います。

>>283 285
乙ありがとうございます!
(仮)と銘打ちましたがいたストは決まったストーリーがあるわけではないので
あるいはこの(仮)で終了かもしれませんw

>>286
What a thankful word!

すみませんいろいろ端折っていまして、大勢いるけど1匹という面倒な結論に至っています;
仲間を呼ぶということから複数いる種と思われますが
戦闘前と戦闘後の台詞は同じ方が話していそうなので(そうであってほしい気もしたので)
どちらにも支障のない設定を考えた結果
配下としてのアンドレアルは大勢いるけれどあの場所で守っていたのは1匹(リーダー格)で、
呼ばれた仲間は倒したそばから消えていく幻術(身代わり分身)のようなものとしました。
何ぶん今回の戦闘はピサロナイトと違ってクリアリにはほぼ影響しない範囲だったので
いきなりすべて倒した後から始めちゃいましたし(一応前戦闘で4体倒したことになっています)
その解説も後ほど再会した際本人の一言「あれは幻術……」で済ますつもりでした;

ソロの件もそうですがクリアリ以外にも目を向けてくださる方がいるとやる気がさらに増します。
クリアリはもちろん他の面でも読み応えあるSSを目指します。本当にありがとうございます!

288名無しさん:2016/06/23(木) 03:52:40 ID:3ofwLQyY
5章に入ったのにBGMが直前の4章のに逆戻りして「あれ、姉妹の冒険に戻っちゃった…」となる
真打たる勇者登場の5章だけに、新しい展開への期待との落差で拍子抜けするのは否めない
しかしながら、それも後で勇者の成長を実感させるための演出かー
本当に何も語らないままプレイヤーに感じさせるんだからうまい

そういう無言の演出が際立つからこそ、クリフトとアリーナの関係にも含みがあるのかなと思う
ほのかに想像を掻き立てる台詞がいい
ファミコン版は情報の削ぎ落としかたが上手なんだよなー

シンシア生き返りだって、流れ的にはマスドラの配慮の可能性が高いが、幻覚説も支持されてる
堀井さんもインタビューで「幻覚じゃね?」みたいに笑って煙に巻いてしまった
意識して想像に任せてるんだろうな

ただ、サントハイムの人々がどこに消えたのか語られないのは消化不良だった気もする
戻ってくるのがエンディングだから語るタイミングがないのは仕方ないけど

289従者:2016/06/27(月) 11:34:46 ID:HXrOBnxE
>>288
>堀井さんもインタビューで「幻覚じゃね?」みたいに笑って煙に巻いてしまった
あれ、私は幻覚説に対し「そういう見方もあるんだ」みたいな発言をしたと記憶していましたが……
ガセ?
どちらにしても明確にしていないのは確かなようですね。上手ですよねー。

>ただ、サントハイムの人々がどこに消えたのか語られないのは消化不良だった気もする
同意です。
ゲームブックではデスパレスに幽閉されていて
短編集「知られざる伝説」でもデスピサロ率いる軍に連れ去られた描写があり
小説版では時が流れない光の国でサントハイム王妃に会っていたという描写になっていました。
真実がどれにせよPS版では6章があるのですしピサロに詰め寄る描写くらいあってもよかったのにと。。
これも想像に任せるというスタンスなのでしょうかね。

現在構想を文章化です。SSもう少々お待ちください。職人さんたち戻ってこないかな。

290名無しさん:2016/06/28(火) 03:29:33 ID:G..bDhJY
そうか!
6章のピサロ加入で「ソロはどんな思いだよ!」とか言われがちですけど、
アリーナたちが何も聞かないのはもっと不思議ですね
6章はお祭りゲーのノリなんでしょうけどね

291名無しさん:2016/06/29(水) 02:37:21 ID:IirOZg9s
スレが2chの外に移転しているとは、かつての職人さんたちは気づかないのかも。
過去ログから見つけてくれれば良いですけど。

292従者:2016/06/30(木) 09:47:08 ID:bUFKGPys
>>290
6章はもともとFC版ですでに構想があり容量の関係で入れられなかったと記憶していますが
どこまで本当なのでしょうか。
PS版でやっと入れられたというわりには完成度で腑に落ちない点がどうにも……
またヒーローズではピサロもアリーナも互いを知っていたりクリフトが敵にならなくてよかったとこぼしたりと
6章後の設定になっていそうな気がするのですがどうなんでしょう。


PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、結界のほこら(エビルプリースト)編いきます。
すみません今回クリアリパートはないのですが前置きでどうしても外せず、どうか置いといてください;
(最近どこまでの描写があればクリアリと呼んでいいのかわからなくなってきてます;ナンテコッタイ)

293従者の心主知らず 黒幕 1/4:2016/06/30(木) 09:52:06 ID:bUFKGPys
「塔なんだからやっぱのぼっていくに決まってるわよね!」

私たちは今最後の結界を守る敵のもとへ向かってる。
最後は高い塔だったの。

「なんだかわたし、今は強い敵と戦うことこそが最高の楽しみなの。
だってひとつ勝つごとに世界が平和に導かれていくってすごく実感できるんだもの!」

私は自信を持って言うことができた。
クリフトもそうですねって笑顔で返してくれた。

最初の大きな竜と戦ったあと私は大丈夫だと思ってたのになぜかちからが入らなくなっちゃって、
あとの敵にはライアンやトルネコが向かってくれたの。
そしたらみんなもつらい戦いだったはずなのに敵を死なせないでくれたの。
あんな卑怯なヤツ生かしとくのやだわーってマーニャは言ってたけど、
マーニャもミネアも、ソロも、がんばって死なせないでくれたの。
マーニャが言うにはアタマの弱い卑怯なヤツはちょうどよく気を失ってくれたんだけど、
アタマのかたい偉そうなヤツはびっくりしてたんだって。
なぜだってあんまり聞いてくるからしつこい男は嫌われるわよってどくがのナイフでマヒさせといたって。
クリフトがみんなに感謝してて、私もみんなにお礼を言った。心の底からお礼を言った。
涙も出ちゃった……。
私の気持ちがみんなに伝わったこと、何より私のやったこと間違ってなかったのかなって思えたことが本当に嬉しくて。
最後の敵は私が行きたいって、思いっきり戦いたいって、堂々とお願いすることができたの。

――ありがとう、みんな…――

「……ですが、のぼるほどにイヤな予感が高まっていきます。
この塔の頂上には何が待っているのか……」

クリフトが小さくつぶやいた。いつもの独り言かな。
でもちょっとだけ気になる……最後の敵は今までとはなにかちがうのかな。

「うう……」

クリフトが手を胸に当ててぎゅってした。

294従者の心主知らず 黒幕 2/4:2016/06/30(木) 09:56:19 ID:bUFKGPys
「クリフト?」
「なぜでしょうか?この場所ではちょっとだけ胸が苦しいです……」

顔をしかめるクリフト。ほんとに苦しそう……。

「クリフト、大丈夫…?」
「…………。
……はい、大丈夫です……」
「ん…」

申し訳ありませんってクリフトは小さくつけ加えた。すぐ謝るクリフト。謝ることないのにな。
でもいつものクリフトでちょっとだけほっとした。そのあとは誰も何も言わずに頂上へと進んだ。

「ここが頂上のようですが不思議と魔物の気配がありませんな。
どうしたことか……」
「え?」

ブライが首をかしげる。そうなの?

「じゃあ、ここには魔物がいないってこと?」
「むう……」

ブライは何か考えてる。ソロも難しい顔してじいを見てた。
でも私は何かを感じることも何かを感じないこともできなかった。ただの頂上ってだけ。
くやしいな……。
私はただただソロのあとを追って玉座へ向かった。そしたら……

「神父さま?」

玉座に魔物はいなかったの。
今までだったら結界を守る魔物がいるはずの玉座の前にいたのは神父さまだった。
少しだけ寂しそうなお顔をした神父さま……うつむいたままゆっくりこっちを見る。
神父さま…?
私は神父さまにここは危険よって、きっとどこかに魔物がいるはずだから早く逃げてって、
そう言おうと思って前に出た。そしたらクリフトがすぐその前に出て……

295従者の心主知らず 黒幕 3/4:2016/06/30(木) 10:00:57 ID:bUFKGPys
「姫さま、いけません」
「え?」

手を伸ばして私を止めた。そのまま私を守ろうとするの。

「クリフト?」
「いけません……」

クリフトは真剣な顔してた。すぐ神父さまのほうを向いたけど、すっごく真剣で、怖い顔だった。
クリフト…?
私は思わずクリフトの服のすそをつかむ。そっとクリフトの後ろから神父さまをのぞき見た。
さっきまで寂しそうなお顔をしてた神父さま……けど次のしゅんかん神父さまはにやっと笑ったの。
口もとがさけたんじゃないかってくらい引きつった顔……私は背筋がぞっとした。

――この人、人間じゃない…!――

「ほほう……?
とうとうここまで来よったか。しかし今では遅すぎたようだな」

神父さまが話しはじめた。低くてすこししわがれた声……。

「デスピサロは進化の秘法を使い究極の進化をとげ、やがて異形の者となり目覚めるだろう。
変わり果てたやつの心にはもはや人間に対する憎しみしか残っておらぬはず」

気づいたらみんなかまえてた。
神父さまは一度みんなを眺めて小さく笑ったあとまた話を続ける。

「そしてデスピサロは二度と魔族の王に君臨することなくみずから朽ち果てるのだ!!
めいどのみやげにお前たちにも教えてやろう!」

え?なにが起こったの?
いっしゅん風が吹いたと思ったらもう目の前に神父さまはいなくて。
そこにいたのは魔物だった。
大きくて、耳が長くて、指が4本で、赤紫の肌……

296従者の心主知らず 黒幕 4/4:2016/06/30(木) 10:05:01 ID:bUFKGPys
「人間どもを利用しロザリーをさらわせたのはこのわたし!」

――このエビルプリーストさまなのだ!――

え?
ロザリー?
ロザリーをさらわせた…?
からだがほわっとあったかくなる。クリフトが魔法をかけてくれたみたい。守りのオーラのスクルトだ。
それは戦いの合図。
でも私はさっきの魔物の言葉で頭がいっぱいで……。
ロザリーをさらったのは人間たちで……じゃあさらわせたって……

「…………」

人間たちに、さらわせた…?
あなたが……

「あなたが…?」

魔物は笑ってる。
さっきまでの寂しそうな顔はもうどこにもなくて、笑いながらゆっくり手を上げた。
魔物のよこから泥みたいなかたまりがあらわれる。
人のかたちをしたそいつらはだらしなく舌を出して手を伸ばしながらこっちにふらふら歩いてきた。
前にも戦ったことあるような敵……でも私は魔物だけをまっすぐ見た。

「あなたが…っ」
「ん…?わたしが?」

魔物は笑ってる。

――あなたがロザリーをっ!!――

叫ぶと同時に私は魔物に飛びかかってた。後ろでクリフトの呼ぶ声が聞こえた気がした。
魔物がなにかささやいたあと目の前がまぶしい光に包まれる。


イムルでロザリーが死ぬ夢を見てから見はじめたデスピサロの夢はますますはっきりしていった。

297従者:2016/06/30(木) 10:11:05 ID:bUFKGPys
検索にかかりやすくするためにも適宜書きこんで更新を増やしたほうがいいのかもですね。
次の投下は純クリアリですなるべく急ぎますね。今回ご覧いただいた方ありがとうございました。

298名無しさん:2016/06/30(木) 23:56:21 ID:KM7YYGFU
乙です。
検索は書き込まれる頻度と内容によりますね。
スレが止まっている時間が少ないと良いのでしょうね。

6章はFC版の構想とは別物なんじゃないかなと思うのです。
リメイク自体がお祭りゲーのノリというか、元々の構想とは別方向に舵を切って突っ走っているような。
少なくとも会話システムは、過剰な語りを避けて余白を作る従来の堀井さんの方式とは違う気がします。
クリフトにザキロジックを組み込んだリメイクスタッフがFC版のスタッフに「クリフトらしさを入れました」とか言ったようですし、FC版とは考え方の違う人がノリで色づけしているような気がするのです。

299名無しさん:2016/07/04(月) 06:01:34 ID:ZCcQR/KM
1000匹でも2000匹でも仲間を呼べるアンドレアル
あんな狭い場所に何千匹も待機しているとは考えづらいので、
幻術と解釈するのも悪くないと言えましょう

300名無しさん:2016/07/04(月) 09:01:04 ID:yi58Vcsw
アンドレアルと言えば、四天王なのにザラキが効いちゃう異色のボスとして鮮明に記憶しています…

301名無しさん:2016/07/05(火) 03:19:30 ID:drntPDCA
ほ、ほら、幻術を使うのに精一杯で、ザラキ耐性が落ちちゃったんだよ!
アンドレアルさんも大変なんだよ!

アリーナのような打撃系の人を中心にして挑むと無限増殖で長引くから、
ブライとソロ(回復専任)で挑んだ方が早かったりするのがアンドレアル
異色のボスと呼ぶにふさわしいお方です

302名無しさん:2016/07/08(金) 03:00:05 ID:1P9GEiXI
アンドレアル戦はギガデインが最も有用な戦いと言っても過言じゃないです
眠らせたり混乱させたりといった策、またはギガデインなどで均等にダメージを与えることが重要です
アリーナ型の力押しだと長引いてジリ貧になりかねません
アリーナが頭の使いどころを思い知って仲間を見直す場面なのかも知れません

303名無しさん:2016/07/09(土) 01:39:21 ID:U7yYufm.
FC版でもエビルプリーストが真犯人ではあったけど、本人の一言だけで終わらせ、余計な説明はしてない。
最終盤のいよいよクリアへ向かう高揚感の中に一言だけぶち込んで、一気に攻略するスピード感の中でプレイヤー自身に考えさせていく構成は見事。
断片的な情報しかない中でプレイヤーは主人公と同じ視点で悩み、考える。
ロザリーを襲った奴らは何者で、どこからどこまでがエビルプリーストの仕業なのか、最後まで答えは得られない。
デスピサロがどれだけの悪者なのかも分からなくなる。

プレイヤーの心理を都合良く誘導してくれる台詞がないから、最後までプレイヤーの心の引っかかりは消えない。
あえて語らないことでプレイヤーを主人公と同じ位置に置く。
そういう引き算の演出が丁寧に作られているのがFC版の魅力。

もちろんアリーナにもクリフトにも思うところはあるはず。
クリアリの未来にも少なからず影響してくる要素には違いないから想像は尽きない。

304名無しさん:2016/07/10(日) 01:32:36 ID:eSEpxJtw
今更ながら、アンドレアルの仲間呼びを幻術とする発想力に脱帽
不自然になる場面を革新的なアイデアで整えてしまうとは

エビルプリーストを略すとエビプリ
なぜかおいしそう

305従者:2016/07/10(日) 22:23:07 ID:gKp9PGnc
急ぎますと言ったそばから急げていないこの不甲斐なさ;
間が空くと来にくくなってしまうので今回またレスだけなのですがどうかさせてくだしあ

>>298
乙ありがとうございます。
一応FC版で6章の構想自体はあったのですね。どんなだったのか知りたいものです……。
ザキロジックを組み込んだのは堀井氏本人と記憶してました(ラジオか何かで)どうにも記憶がダメですね;
ヒーローズでは本来のクリフトのイメージに例の会話システムの性格を少し取り入れた、
といった情報がありますので(声優へのインタビューだか何かだったような)
もしそれが事実ならあの会話システムは本当に独り歩きだったということになるかと。。。

アンドレアルとエビプリの人気に嫉妬wアンドレアルの幻術描写への反応ありがとうございます。
かつて、アベルなる者が主人公のアニメ版ドラゴンクエストでは
ゴールドを媒体に魔物を生み出していて倒すとゴールドに戻る描写がありました。
ヒーローズもそんな感じですね。(屍が転がっていても絵的にあれですしね;)
もしかしたら単に魔方陣的なものでアンドレアルを呼び出していて倒したらそれに戻るという設定かもわかりません。
ただすべての魔物が倒すと消えてゴールドになったり宝箱になったりするのはどうにもしっくり来ないので、
「ぐふっ」のあとでグラフィックが消えても本当に消えたわけではないと勝手に想定してます。
何ぶんそこらへんの細かい設定がよくわからないので詳細が判明するまでは幻術設定でお願いします;

エビプリ(確かにおいしそうw)はFC版とPS版で台詞が真逆になっているんですよね。
FC版「わが まぞくの おうとして めざめるだろう。」
PS版「二度と 魔族の王に 君臨することなく みずから 朽ち果てるのだ!!」
どちらが本来想定されていた台詞だったのか気になるところです。
エビプリ(ジャコーシュ)でクリアリ……実はちょっとだけ浮かんでいまして、いつかお付き合いいただきたく……
長文失礼しました。ありがとうございました。

306名無しさん:2016/07/11(月) 01:16:59 ID:Rn3QTm5Q
4と5は同じ世界ですが、絶命がどういう形なのかは定まっていない感がありますよね。

5では大臣が絶命するときに消えてますが、ヨシュアは白骨が残ってます。
マーサは肉体ごとパパスのところに行ってしまいます。
人間でも一定しないんですから、魔物はどうなってるんでしょうね。

5では倒した魔物が起き上がるので、原則としては倒しても殺傷していないのでしょう。
4はどうなんでしょうね。

307従者:2016/07/11(月) 21:06:44 ID:t06nodbU
そういえば4でもロザリーが消えていますが6章でなきがら描写がありましたね。
お告げ所のシスターがうろ覚えなのですが会話途中で消されてしまったんでしたっけ??

>5では倒した魔物が起き上がるので、原則としては倒しても殺傷していないのでしょう。
確かに!4でも基本的には倒しているだけで殺してはいないと思いたいところです。
ただ、ザキザラキしても起き上がってくるとなると呪文の性能という別の問題で悩みそうですw
さらに経験値はともかくゴールドは倒れた魔物たちからくすねていることに。。。
人の家のタンスやつぼをあさる勇者一行ですしそこまで気にしてはいけないのかもですね。

少し気が楽になりました。ありがとうございます。

308名無しさん:2016/07/13(水) 22:11:20 ID:70UbrK7g
他人の家のタンスをあさり、ガーデンブルクでは盗人として捕まってしまうのに
それでも最後には冤罪としてお咎めなしって、さすがにモラル崩壊がひどいですが
アリーナはともかく、クリフトはどう感じているのでしょうか

誰にも責められないのは仕方がないです
武器を手に武装集団が家に押し入ってきたら、誰も文句は言えません

それとも導かれている者の特権だったのかな
マスタードラゴンの加護だとしたら、マスタードラゴンは想像以上に偉大です

309名無しさん:2016/07/18(月) 09:14:57 ID:7ioW0b/I
エルフが普通にいる村で育ったソロは、エルフへの見方がちょっと違うんでしょうね
他の人にとっては特殊な存在、でもソロにとっては普通の存在なので
ロザリーとも、異種族に対する気負ったかかわり方ではないんでしょう
そういう人がリーダーですから、アリーナやクリフトも影響されるんでしょう

310従者:2016/07/19(火) 00:38:46 ID:oUhNFHE2
現在SS推敲中です。もうちょとお待ちください;

>>308
ガーデンブルグの件は濡れ衣という流れのようですしそこまで問題ないのではと。。。
勇者一行にとってはあそこがシスターの部屋だったことも
タンスにおもしろいものがあると教えた人物が赤の他人(盗人)だったことも知らなかったわけですし。

個人的にはエルフが落としたさえずりの蜜をそのまま持ち帰ってしまうほうが気になりました。
アリーナとブライは喜んでいましたがクリフトはこれでやっと塔から降りられるんですねと言うのみ。
ブルブルッと最後に震えているので高所恐怖症で蜜どころではなかったという感じですが
何か思うこともあったからだといいなとこの従者シリーズではオリジナル展開ぶっこみました失礼しました;

>>307で確定行為のように書いてしまいすみませんでした。
タンスやつぼをあさるのは結局のところプレイヤー次第なんですよね。(私はあさるプレイヤーです;)
木こり(勇者の祖父)のように持っていけと言ってくれる方もいますし
個人的にはそこそこ了承の上(暗黙の了解)で旅に必要で持っていっていいものだけをいただいている
(タンスやつぼに何もないのは旅に必要なものがないというだけで日用品はいろいろ入っているという解釈)
と思いたいところです。導かれし者(旅する者)の特権という考え方に同意したいところです。

>>309
あ。シンシアってエルフで確定なんでしたっけ。
どうにもFC版の公式ガイドブック挿絵の人間シンシアが抜けなくてですね……。
小説版やゲームブックではエルフ(人外)になっていますが未だ自分の中では「少女」のみに留まってます;
もしエルフだとしたら次に初めて会う(見る)エルフがロザリー……きっと思うことがあるでしょうね。

311名無しさん:2016/07/19(火) 02:48:04 ID:t/ubqccg
ガーデンブルグでは、ロザリオ(?)は盗んでいないけど留守中にタンスを漁ってますからね
そこに目ぼしいアイテムがあれば、くすねていたでしょう
それで冤罪とか言われても「何を言ってるの?」と、子供だった当時に思ったものです
そういう倫理に厳しそうなクリフトとか、いるのにね

他人の物をくすねても良い理由が説明書にでも記されていれば良かったのですが、
そういうのは全く見当たらなかったです
子供たちがプレイするゲームなんですから、説明を省かないで欲しいなと思います

312従者:2016/07/19(火) 23:32:08 ID:oUhNFHE2
>>311
ああ、確かに……。
クリフトは疑ってしまったことを恥じるシスターに対してフォローしていただけですね。
唯一釘を刺していたのがミネア。

ミネア「この国で 学んだのは
  むやみに 他人の家のタンスを
  のぞかないということ……。
ミネア「……なんて言っても
  ソロさんが そう簡単に
  やめるワケないですよね。
ミネア「いいです。
  もう あきらめてますから。

のぞかないプレイヤーにとってはなんのこっちゃという台詞ですが
ゲーム進行的にはのぞくのが普通という流れですからこういう台詞が用意されたのでしょう。
あきらめているからのぞいてもいいという解釈もいかがなものかという話ですが;
ちなみに隣のタンスにはかしこさのたねが入っていたのですがそれに関しては言及なし。
確かにこうした倫理観は冗談で流さずきちんとした説明があってほしかったですね。

313名無しさん:2016/07/20(水) 03:18:48 ID:Zgh7//fQ
他人の家の冷蔵庫を勝手に開ける子供が多くなってるという話は聞くけど、残念ながらドラクエの影響もありそう。

他人の家のタンスを漁ることについて、魔法陣グルグルという作品では、家の人を「いやー、僕、勇者ですからーwww」で押し切るのが勇者の素養とか言ってたような。
秀逸なパロディでありながら、それがドラクエにおける本質なのかも。というか他の説明がしづらいっすね。

世間知らずのアリーナがタンス漁りをしても怒られないのは、ブライやクリフトが処世術として対応を教えてるってことなのかな。
しかしそこからクリアリにつなげる勇気が出ないっす。

314従者:2016/07/20(水) 21:49:32 ID:PbXFkvGE
PS版のセリフをなぞったSSアリーナ視点、ロザリーヒル編「ふたつでひとつ」23シーク分投下します。
ピサロナイト「アドン」存命ルートで>>239-260の続きのようなものです。(理由詳細は>>153にあります)
クリアリパートへのきっかけは6/23-12/23、クリアリパートは15/23以降です。
6/23-12/23では前置きで外せず、アドンとの抱擁シーンがあります。ご覧の際にはお気をつけください。

実はこれは以前予告していた純クリアリではないです。(こっちが先に仕上がってしまいました)
順序がだいぶ反転しますが今のところなんとか問題ないかと……。
(そもそも2章エンドールの武術大会から5章ロザリーヒル以前がすっぽ抜けてる時点であれなのですが;)
前に>>223さんがパズルのピースをバラ売りするかのような発表スタイルと書いてくれましたが
最後にはきっとはまるはず……なのでどうか気長にお待ちいただけるとありがたいです;ではどうぞ;

315従者の心主知らず ふたつでひとつ 1/23:2016/07/20(水) 21:54:03 ID:PbXFkvGE
アドンは部屋の前の片すみに座りこんでた。ひざを立てて腕を組んで、顔をうずめてる。
肩にスライムも乗って顔をふせてた。
きっと、泣いてる……。すっごく泣いてる……。顔が見えなくてもわかった。

私たちは今ロザリーヒルに戻ってきてる。私がみんなにお願いしたの。
イムルでロザリーが死ぬ夢を見て、そこでピサロは人間を根絶やしにするって叫んでて、
それだけは止めなくちゃってずっと走ってきた。
でもロザリーを殺したのは人間じゃなくて、彼らを操ってた魔物だったの。エビルなんとかって。
私たちもピサロも騙されてた……。

何もかも人間が悪いわけじゃなかった、それは嬉しい。嬉しいけど……
このままただまっすぐピサロと戦いに行くことが私にはなぜかできなくて……
足が前に出なくって……
そんなときに浮かんだのがアドンとスライムだったの。
結局ロザリーは助けられなかった、けどふたりに何にも言わないでここまで来てしまった、
だから……
ピサロを止めるまえに、戦うまえに、殺しあうまえに……
ちゃんと伝えておきたいって思ったの。
伝えてどうなるわけでもない。ふたりがなんて答えるかもわかんない。
でも、もしみんなが行かないって言っても私はひとりで伝えに行くつもりだった。
そしたらみんなは何も言わないでいっしょに来てくれたの。
クリフトが優しく笑って真っ先についてくれて、ソロも……行くぞってみんなに言ってくれたの。

みんなが私に付き合ってくれた……
この時間を大事にする、忘れないようにする、ぜったい後悔しないようにするって決めた。

「あ、ソロ…」

スライムが私たちに気づいたみたい、ぴょんと下りてこっちにやってきた。
でもアドンは動かない。

「ぷるぷる、おかえり。待ってたよ」
「……そうか……」

ソロが小さく答える。

「遅くなって悪かったな……」
「ううん、だいじょうぶ。アドンもお願いしたら待っててくれたよ」
「…………」

316従者の心主知らず ふたつでひとつ 2/23:2016/07/20(水) 21:58:11 ID:PbXFkvGE
――ぷるぷる……ロザリーちゃん……――
――……――
――アドン、どこ行くの?――
――……――
――アドン!――
――…………。ピサロ様が進撃を開始される。行かなければ――
――アドン…――
――私も行かなければ――
――……やだよぅ……――
――……コンドルたちは置いていく。仲良く暮らせ――
――……やだよう……――
――この村だけは生き残れるようにする――
――ぷるぷるっ!待ってよ!まだソロたちが帰ってきてないよ!――
――…………。もう……――
――待ってようよ!ソロたちを待つって約束したよね!?――
――………………――

「ぷるぷる、だからだいじょうぶだよ」
「…………。そうか……」

アドン……。
ずっと私たちを待っててくれたのね……。

「ぷるぷる……。ぼく聞いちゃったんだ。ピサロさま、ロザリーちゃんのお墓にひとりでこう言ってたんだ。
ふたりで暮らす約束は生まれ変わって必ず果たすって。ピサロさま死ぬ気なのかなあ……」
「…………」

ここに来る途中の丘にお墓がたってたの。ロザリーのお墓……
「この村のすべてに愛された魂よ 安らかに眠れ……」って刻まれてあった。
ロザリーは、ほんとうに……ほんとうにもう、どこにもいないんだ……。
ロザリー……。

「デスピサロは、ここには来なかったんだな…」

ソロがひとり言みたいに小さくつぶやいた。

「あいつがアドンってヤツなのね…」

317従者の心主知らず ふたつでひとつ 3/23:2016/07/20(水) 22:02:12 ID:PbXFkvGE
マーニャもアドンを見ながら言った。
ミネアはブライといっしょによろず屋のおじいさんのところに行ってる。
マーニャがじゃああたしはこっちに付き合うわってついてきてくれたの。
私もアドンを見た。ゆっくり近よる。

「アドン…」
「…………」

――アドン……。やっとあなたの名前を呼べる……――
――アドン……本当に、ごめんなさい……――
――無事戻ってきたら、こうしてまたお部屋に来ていただけますか?――
――ありがとう……。本当に、ありがとう。アドン……――

「なぜ、生きている……」

アドンがぽつりとつぶやいた。ふるえた声…。

「なぜ、私だけが生きている…?」

アドン…。
自分のことを、言ってるの…?

「我々に必要なのはあの方だった!私の命など…っ!」

――私が代わりに死ねたらよかった…っ!!――

アドン…っ。
スライム
がもういちどアドンの肩に乗っかってなぐさめるみたいに顔をうずめた。
ソロもこっちに来た。

「アドン……」
「……」

アドンがゆっくりソロを見上げる。

「ソロ……」
「……」
「…………」
「…………」

318従者の心主知らず ふたつでひとつ 4/23:2016/07/20(水) 22:06:19 ID:PbXFkvGE
ふたりともしばらくお互いを見たままだまってた。
けっこう長い時間待ったと思う、やっとソロが口を開いた。

「……お前、これからどうする…?」
「…………」
「…………」
「…………」

「私はピサロ様の臣下だ。私の心は常にピサロ様と共にある。
ピサロ様が我が身を犠牲にしても人間を滅ぼすというのなら、私もそれに殉ずるまで。
……ピサロナイトの名に恥じぬ最期を飾るまで」

アドン……なんでそんな、かしこまったしゃべり方……。
アドンはソロを見上げたままゆっくり腰を上げた。

「ソロ…!」

ガキィィンッ!

「ぷるぷるっ!アドンやめてよおっ」
「アドンさん!」
「ちょっと、なにやってんのよ!」
「やだよっ!」

みんなでいっせいに叫ぶ。私も大声で叫んだ。

「戦うなんてやだよおっ!!」

剣をぶつけ合うふたりに必死に呼びかける。

――お願い…っ――

「お前たちには感謝する。人間とこんなかたちで関われたことを誇りにすら思う。
わずか一日にして三国を動かすことのできる人間よ、
お前たちとなら、もう一度最初からやり直せるのではないかとすら考えていた……」

え?

「だが、もう、やり直す必要はなくなった……。私はお前たちと戦わなければならない」

319従者の心主知らず ふたつでひとつ 5/23:2016/07/20(水) 22:10:16 ID:PbXFkvGE
――人間は変わらなかった――

「たとえお前たちのような良識ある人間がいたとして、罪びともまた生み出される社会がある限り、
人間はこれからも変わらないのだろう。
我々魔族では人間を変えられない。変えられなかった……」

え…?何の話…?

「いや、本当はもう、変えようとする前からわかっていたのだ……」

――人間は変わろうとしない。なぜなら変わる必要がないから――

「お前たち人間からすれば、我々魔族にこそ、魔物にこそ、変わってほしいと思うことがあるのだろう。
だが我々も変わるつもりはない。変わる必要はないと思うから。それと同じこと」

――他種族同士が歩み寄ることは未来永劫あり得ない――

「だから……」

声がふるえてる。アドン…?

「その社会でお前たち良識ある人間も生きていく限り……」

キィィンッ!

アドンの動きが鈍い。初めて会ったときの切れがない。
ケガをかばってるから…?

ガキィィンッ!!

アドンが壁に叩きつけられた。大きな音を立てて剣が転がる。ソロが剣をかまえ近づいた。
アドン!!死んじゃう…!!

――せっかく仲良くなれたのにっ!!!――

「ソロ!!やめてっ!!」

ソロ、泣きそうな顔してる。でも止まらない。なおもアドンに近づく。
アドンはソロを見上げた。

320従者の心主知らず ふたつでひとつ 6/23:2016/07/20(水) 22:14:02 ID:PbXFkvGE
「やめてって言ってるでしょ!!!」

私はソロに思いっきりキックした。よこ向きにふっとぶソロ。

「何すんだよっ!!」

私はアドンに向きなおる。

「もうどうしようもねえだろっ!!!」

アドンは体勢をそのままに、手を伸ばして転がった剣を拾おうとした。
私はかまわずアドンに近づく。アドンは私に気づいて伸ばした手を止めた。
私を見て、視線を切り、そのままゆっくり目を閉じる。私は……
アドンをぎゅってした。

「っ……」
「姫さま……」
「…………」

アドンが再び手を伸ばし剣をつかむ。その剣を振り上げたような気がした。
でも私はずっとアドンをぎゅってしてた。

「……」
「…………」
「…………」

斬られると思ったのに痛くない。まだ斬られてない。なんでだろう……。
私はゆっくり顔を上げてアドンを見つめた。そして気づく。
アドンののどもとに剣が押しつけられてた。その先を追うとかまえてたのはクリフト。
私の背中は盾で守られてた。

「クリフト……」

クリフトはすっごく真剣な目でアドンを見てた。私はドキッとした。
私の苦手な、真剣なまなざし……。
私は思わず目をそらす。でも、アドンも……おんなじようにクリフトを見てた。
しばらくしてアドンがゆっくり剣を床に置いた。クリフトがその剣を足でけっとばす。
剣は音を立てて向こうに転がってった。クリフトもかまえてた剣と盾を下ろした。

「最初からアリーナ姫を斬る気はなかったのですね……」

321従者の心主知らず ふたつでひとつ 7/23:2016/07/20(水) 22:18:01 ID:PbXFkvGE
え?

「……お前こそ、とんだ期待外れだったな……」

え…?何の話…?

「アドン…?」
「…………」

アドンは少しだけ私を見たけどすぐに視線を遠くに戻して壁にからだをあずけた。
さっきみたいにゆっくり目を閉じる。
まるで、もうにどと起きる気がないみたいな、ちからのない顔……寂しそうな顔……。
アドン……。


「いつか、クリフトが言ってたね…」

――戦うしか、手はなかったのでしょうか……――
――戦いのほかにデスピサロを止める方法はないのでしょうか?――

「ねえアドン……。戦う以外に、方法はないの…?」
「…………」

「……もう、疲れた……」

目を閉じたままアドンは小さく答えた……。

「…………」
「…………」
「…………」

「ねえ……待ってほしいの……」
「…………」
「戦う以外の方法を、私に探させてほしいの」
「…………」
「ねえソロ、私に時間をちょうだい」

――お願い――

「いやなの。私はなんにもしてない。なんにもしないでただ戦うのはいや」

322従者の心主知らず ふたつでひとつ 8/23:2016/07/20(水) 22:21:29 ID:PbXFkvGE
――探したい――

「なんにも方法が見つからなくて、結局戦うことになったとしても、それでも、
自分のちからで納得いくまでせいいっぱい探したいの」

――お願い…――

私はみんなに頭を下げた。
みんなはしばらくだまってたけど、まるで打ち合わせしたみたいに返事をくれたの。

「行くときはいつも一緒だろ」
「どこまでもお供いたします」
「付き合ったろうじゃないの」
「…………っ」

みんながいっせいに受け入れてくれた。
思わず涙が出そうになって私はいっしょうけんめいまばたきする。
ぐっとこらえて顔を上げた。

「ん……」

みんな笑顔で私を見てた。優しい笑顔……
私もなんだか嬉しくなって気がついたら笑顔になってた。

「ありがとう……」

――ありがとう……――

私はアドンとスライムを見た。

「アドン……スライム……」
「…………」
「……」
「お願い、もうすこしだけ待ってて……」
「…………」

スライムも笑顔でうんって、いつまでも待ってるよって返してくれた。
私も笑顔でありがとうって返す。

323従者の心主知らず ふたつでひとつ 9/23:2016/07/20(水) 22:25:09 ID:PbXFkvGE
「アドン……あなたも、待ってて……」
「………………」

「なにを…?」
「え?」

アドンはすこしだけ目を開けて言った。

「これ以上、なにをまてばいい…?」
「…………」

――あの方はもう、どこにもいないのに……――

「ロザリーさま……」

消え入りそうな声。ふるえた声……。アドン、泣いてるの…?
アドンは少しだけ上を向いた。

「いずれにせよ、お前たち人間は遅かれ早かれピサロ様に滅ぼされるのだ。
それだけはずっと先送りにしていたのに、望んだのはお前たち人間。
そのザマを見届けるのも、悪くはないな……」
「…………」
「は、はは……ざまあみろ……はは…ははははは……!」

――滅びろ、人間…!!――

アドンが笑ってる。私たちをあざ笑ってる……。でも私は知ってるの。
アドンはほんとは笑ってない。ぜんぜん笑ってない。
ほんとうはふるえてて、苦しんでて、つらくて、寂しくて、それでもいっしょうけんめい笑ってみせる、
私はそんな人をなんにんも見てきたの。
私はアドンをぎゅってした。

――アドンは泣いている――

「っ……」
「姫さま……」

私はアドンを包みこむようにぎゅってした。
背中に、腰に、腕をまわしてアドンの肩に顔をうずめる。

324従者の心主知らず ふたつでひとつ 10/23:2016/07/20(水) 22:28:47 ID:PbXFkvGE
「…………」
「うっ……ぐすっ……ふぇぇ…っ…」
「…………」
「ふぇぇええええん…っ」

アドンにとって、ロザリーはほんとうに大切な人だったんだ。
私にとってのお父さまやお母さまみたいに。お城のみんなみたいに。今いっしょに旅してるみんなみたいに。
クリフトみたいに……。
たとえ自分が死んだって守りたかったくらい、ほんとに、ほんとうに、だれよりも大切な人だったんだ……っ。

「ごめんなさい……っごめんなさい……っっ」
「………………」

――助けられなくてごめんなさい…っっ――

「ごめんなさいぃぃ……っっうぇぇええええん…っっ」
「………………っ」

アドンの息が乱れた。
肩がふるえて……からだがふるえて……。

「うわぁぁああああん…っっっ」
「っ……っ」

アドンも私をぎゅって抱きしめかえしてきた。

――さびしい……さびしい……たすけて……――

アドンがしゃべってるわけじゃない。でもアドンの声が聞こえてきた。

――ひとりにしないで……わたしをおいていかないで……――

アドンはふるえてた。
ふるえるからだで、腕で、いっしょうけんめい私をぎゅってしてた。

――わたしもそこへいかせてください……あなたのおそばにいさせてください……――

…………。

325従者の心主知らず ふたつでひとつ 11/23:2016/07/20(水) 22:32:30 ID:PbXFkvGE
「……っ……ぐすっ…………っ」
「……………………」

ピサロと戦わなくていい方法……
アドンをもういちど笑顔にする方法……
私、必ず探してみせる。

――ぜったいに探してみせる――

「アドン…」

私はアドンをやさしく呼んだ。アドンが少しだけびくってなる。
小さな声で呼んだんだけど耳もとに近すぎたみたい。

「私を待ってて……。必ず戻るから」

私は顔を上げてアドンを見つめた。
きっと涙で顔がめちゃくちゃだったと思うけど、気にしないでアドンをまっすぐ見つめた。
アドンも泣いてたのね。やっぱり泣いてた……。
涙にぬれた目で私をぼんやり見てる。

「ピサロが人間を滅ぼすまえに、必ず答えを見つけて戻ってくるから。
だから、それまで待ってて」
「…………」

アドンはうなずかない。私をぼんやり見つめたまま。ちからのない目……。
私はふと思い立って、耳飾りをひとつはずした。

「これ、あずけてく」

アドンの手をとって持たせる。

「キラーピアス。ふたつでひとつなの。片ほうあずけてくから、私が戻ってきたときに返して」
「…………」

アドンは手に乗ったキラーピアスをぼんやり見つめる。
私はアドンをまっすぐ見つめてもういちどやさしく言った。

「必ず戻るから、ここで待ってて……」
「………………」

326従者の心主知らず ふたつでひとつ 12/23:2016/07/20(水) 22:36:05 ID:PbXFkvGE
それでもアドンはうなずかなかった。


「もちろん私は戦うのが大好きなんだけど……
戦う以外に物事を解決する方法があるなら、それにこしたことはないわ。
……ううん、そうほうが、きっといいんだわ……」

私はいっしょうけんめい考える。どうすればいいか考える。
後悔しないように……。

「この分だとデスピサロは本気であたしたち人間を滅ぼすつもりでしょうね……。
あーーんっ!ホントにどうすればいいの!?ミネア、いいアイデアない?」
「私に聞かないでよ。
……だって、ロザリーさんはもう死んでしまったし……どうしようもないわよ……」

エルフをいじめるような人間こそ地獄に落ちちゃえばいいのに……
ミネアがそうつぶやいたのが聞こえた。

「約束……生まれ変わって……あ、私もうホントにダメです。うっううっ……」

トルネコ……話を聞いただけなのに。

「考えてみましょう。考えればきっと別の道も見えてくるはずです」

クリフト……。

「ねえ、ロザリーにザオリクってできなかったの?」
「できない事情があったみたい。もともとエルフって「今からでもやったらどうよ」
「……もう日にちもたっているし……どっちにしたって消滅してしまうのが関の山よ」
「そこをさー、あのかたっくるしい町のじーさんとかマスタードラゴンとかがさあ、こう、ちょちょいとちょいと」
「姉さんって本当に……」
「……なによ」

どうしてみんな、いっしょに考えてくれるんだろう。
なんで……。
ブライはずっとだまってた。よろず屋のおじいさんとなにかむずかしい話をしてきたみたい。
ライアンもなんにも言わなかった。腕を組んでうつむいて、なにか考えごとしてる。
ライアン……。

327従者の心主知らず ふたつでひとつ 13/23:2016/07/20(水) 22:40:01 ID:PbXFkvGE
――あの者に同情はしますが、われら人間もおとなしく滅ぼされるわけにはいかんのです――
――デスピサロが人を滅ぼそうとする限り、こちらも命をかけて戦わねばなりませんぞ――

いつか話してたライアンの言葉がまだ胸に残ってる。ライアンは今何を思ってるんだろう……。
ほんとうは今すぐにでも戦いに行きたいんじゃないかな……止めに行きたいんじゃないかな……。

――被害が出るまえに……――

ソロもずっと腕を組んでだまってる。
その沈黙がなんだか重苦しくて、私は思わず声をかけちゃった。

「ソロ……」

ソロがゆっくりこっちを向く。

「その……ありがと……」
「…………」
「付き合ってくれて、ほんとうにありがとう…」

私は改めてお礼を言ってしっかり頭を下げた。
大事なごあいさつをするときは言葉を終えてからおじぎをすることって教わったの。
だから……

「アリーナ」
「…………」
「ありがとな」
「え?」

ソロが組んだ腕をほどいて私のほうを向いた。

「お前が止めてくれなきゃ俺はアドンを殺してた」

…………。

「お前も気づいてたか?」

「あいつ、隙だらけだった。動きにぜんぜん切れがなかった。ふざけてんのかって思うくらい。
あいつ、最初から俺たちを殺す気なんかなかったんだ」
「え…?」
「殺す気がないんなら戦う意味なんかないのに、そういう無駄なことあえてするタイプ。
あいつはさ、俺たちに殺してほしかったんだよ」

328従者の心主知らず ふたつでひとつ 14/23:2016/07/20(水) 22:44:08 ID:PbXFkvGE
――最初からアリーナ姫を斬る気はなかったのですね……――
――……お前こそ、とんだ期待はずれだったな……――

「…………」
「かたちだけでも使命を守ったって、デスピサロのために戦って死んだって、そういう結果を残したいんだろうな。
俺が殺さなくてもあいつはどっかに死に場所求めに行ってたと思うから、同じ死ぬんなら俺の手で死なせてやろうと思ってた。
それしか考えてなかった」

…………。

「俺さ、もうどうしようもないと思ってたんだ。
もしかしたらまだ他に何か方法があるかもしれないなんて、考えもしなかった。
探すまえからあきらめてた」
「…………」
「ありがとうな」
「ううん…」

ソロが少しだけ笑って話すの。
でも、私はなんだか胸が苦しくて、切なくて、ソロをまっすぐ見ることができなかった。
なんでだろう……ソロは言葉を続ける。

「お前、なかなかやるな」

「あいつ、使命とか約束とかに弱い、そういうの律儀に守るヤツだから。
お前がキラーピアス引き取りに行くまでは生きてると思う。きっとあそこでお前を待ってると思うよ」
「え……そうなの?私そこまで考えてなかった……」
「そうなのかよ」
「……うん……」
「…………」

「お前、前に言ったろ。魔族はみんな同じだと思ってたって」
「…………」
「そう考えてたのは俺のほう」

――残忍で、卑劣で、自分のことしか考えてねえ――

…………。

「けど、デスピサロのために戦いながら俺たちも生かそうとする、あんなヤツもいるんだな」

329従者の心主知らず ふたつでひとつ 15/23:2016/07/20(水) 22:49:34 ID:PbXFkvGE
ソロ……。
誰にも何にも聞いたわけじゃないのに、ソロはいろんなことに自分から気づいて変わってく。
ソロってすごいな……。
私もソロみたいになれるかな。自分からいろんなことに気づいて動けるようになれるかな……。
なりたいな……。

私たちはひとまずそのままロザリーヒルの宿屋に泊まることにした。
明日にはもういちど何か方法がないか天空城やゴットサイド、エルフの里に行ってみるんだって。
きっかけはマーニャの一言……私はマーニャに、みんなに、改めてお礼を言った。


「クリフト……」
「……はい、姫さま」

ご飯も終わって寝るしたくもととのって、私はクリフトに声をかけた。
クリフトは相変わらず仕切りの外で見張ろうとしてる。
だから声もかけやすいっていったらかけやすいんだけど、もう無理はしないでほしいのにな。
でも私もちゃんと休むようにしますからって結局見張りをやめなかったの。

「守ってくれて、ありがとう…」
「姫さま…」

私はクリフトにもお礼を言った。ソロにしたみたいに言葉を終えてから頭を下げる。
アドンは最初から私たちを殺す気はなかった。
でもそれは後からわかったことだしクリフトが守ってくれたのは確かだから……

「それから……」
「…………」
「アドンを傷つけないでくれて、ありがとう……」
「………………」

――殺さないでくれて、ありがとう……――

「………………」

ソロはアドンを殺すつもりだった。でもあのとき私を守ってくれたクリフトは……
クリフトはアドンを攻撃しなかった。
あんな状況で、私だけじゃなくアドンも守ってくれたんだって、ソロと話してたときはっとしたの。
だから……

330従者の心主知らず ふたつでひとつ 16/23:2016/07/20(水) 22:54:54 ID:PbXFkvGE
「……姫さま……」
「……ん……?」
「…………」

「少し……外に出ませんか……」
「え?」
「……少し、外の景色を眺めに行きませんか?」
「…………」

クリフトは私をまっすぐ見てる。なんだかいつものクリフトとちがう…?
なんだろう、私はよくわかんないけどいいよって返した。寒くないように上着を用意する。
クリフトもありがとうございますって言ってブライにお断りを入れに行った。
じいもいつものように口うるさくお説教しなかったみたい、クリフトはわりとすぐ戻ってきた。
遠くには行くなよって言われただけだったって。

私たちは並んで外を歩く。教会の明かりで外はほんのり明るい。
よろず屋のおじいさんはまだお店にいるみたい。ミネアやじいと何を話したんだろう。
塔も明かりをつけてるのかな、窓から少しだけ光がもれてる。
アドンもスライムもちゃんと寝てるかな。眠れてるかな……。
寒いかと思ったけどわりとあったかい風が吹いてて上着は必要なかった。

「姫さま……」
「ん、なに…?」

クリフトの声がいつもより低い気がして私も返事が小さくなっちゃった。

「……アドンさんのことが、気になるのですね……」
「え…?」

――私を待ってて……。必ず戻るから――
――キラーピアス。ふたつでひとつなの。片ほうあずけてくから、私が戻ってきたときに返して――
――必ず戻るから、ここで待ってて……――
――アドンをもういちど笑顔にする方法……――
――私、必ず探してみせる――
――ぜったいに探してみせる――

…………。

「……うん……」

331従者の心主知らず ふたつでひとつ 17/23:2016/07/20(水) 22:58:53 ID:PbXFkvGE
クリフトが少しだけ寂しそうな顔をした気がした。クリフト?

――……かないでください……――

クリフト…?
クリフトはすぐ視線を切ってうつむく。なにか考えてる……。

――せめて私は、何を失っても変わらない自分でいられるよう、いつでも神の教えを説ける自分でいられるよう――

「クリフト?」

あなたは今なにを考えているの…?

「たとえ……」
「…………」

――たとえあなたを、……としても……――

クリフト…?いつもの独り言なの…?でも、どうしてこんなに……
再び顔を上げて私を見たクリフトは優しく笑ってた。
でも私はなぜか胸がぎゅってしめつけられた。前もこんな笑顔をどこかで見た気がするの。
どこで…?

――……クリフト……――

どこで……。

――…………。ひめさま…――

そう!ミントスで倒れたクリフトにパデキアを飲ませようとしたとき!
あのときクリフトは笑って私を抱きしめたの。
ううん、寄りかかったっていったほうがいいくらいぜんぜんちからが入ってなくて……
お薬を持ってきたのっていっても、もう大丈夫だから飲んでっていっても、ぜんぜんパデキアを飲んでくれなくて。
飲ませようとしても口から出てしまって……むせてしまって……
ぜんぜん飲みこめなかったの。
自分で飲めないなら飲ませてやるしかないって、口うつしでゆっくり流しこんでやんなさいって、
マーニャが言ってくれなかったらクリフトはパデキアを飲めなかったかもしれない。
もうほんとうにからだがよわってたんだ……。
からだがよわると食欲もなくなって、飲みこむちからもなくなって、ほんとうになんにもできなくなるんだって知った。
あのときとおんなじ笑顔……?

332従者の心主知らず ふたつでひとつ 18/23:2016/07/20(水) 23:02:31 ID:PbXFkvGE
――ひめさま……――

苦しくて、切なくて、つらい、胸がしめつけられる……

――クリフト…!!――

「寄りそってくださる方がいて、アドンさんはきっと心強かったと思います」
「ダメ、クリフト」
「?…」

私はクリフトをまっすぐ見て言った。

「今なにを考えているの?」
「……」
「教えて。ちゃんと教えて」
「…………」

クリフトはおどろいた顔して私を見てる。でもなんにも答えない。
しばらく待っても答えない……。
とまどってるような、ためらってるような、何かを言いたいけど言えない……そんな気がした。
私はたまらなくさびしくなってクリフトをぎゅって抱きしめたの。

「姫さま…」
「やだよ…」
「……」
「また私を置いて遠いとこに行こうとしないでよ…っ!」
「…………」
「やだよ…っ」
「…………」

声がふるえそうになるのを必死にこらえて私は言葉を続ける。

「なにを考えてるのかちゃんと教えて…っ」
「………………」
「教えて……」
「………………っ」

クリフトがいきなり私を強く抱きしめかえしてきた。

――ひとりにしないで……わたしをおいていかないで……――

え?

333従者の心主知らず ふたつでひとつ 19/23:2016/07/20(水) 23:07:06 ID:PbXFkvGE
――わたしもそこへいかせてください……あなたのおそばにいさせてください……――

え…?
アドンと、おなじ声…?
え、でもこれは、クリフトの声…?

「遠くへ行こうとしているのはどちらなのか…」
「……」
「それは……」
「…………」
「それはこちらのセリフですっ!!」

クリフトは私をもっと強く抱きしめてきた。
え?なに?どうして?

「クリフト…?」
「行かないでください……」
「…………」
「どこにも行かないでください……」
「…………」

クリフトはずっと私を抱きしめてる。ぜんぜん身動きとれない。息もうまくできない。
クリフトってこんなにちからあったっけ……?ううん、たぶんそうじゃなくて……

「クリフト……?」
「…………」

クリフトは今度は何も答えない。ただ私をぎゅってしてるだけ……
クリフト……。

「…………」
「…………」
「………………」

クリフトはひとりで旅に出るのが寂しいから私についてきたんだと思ってた。
今でもそう思ってる。
私といっしょにいるのは、私がいっしょに強くなろうねって約束したのと、強くなって私を守りたいのがあるから。
それは、私が姫でクリフトが家来だから。
守るのがイヤになるほど私のことキライなわけでもないから……。
じゃあ、なんで私、こんなにドキドキしてるんだろう。
なんでクリフトはいっつもこんなにあったかいんだろう。いい匂いがするんだろう。

334従者の心主知らず ふたつでひとつ 20/23:2016/07/20(水) 23:10:35 ID:PbXFkvGE
「申し訳、ありません……」
「…………」

クリフトが私から離れようとする。
あ……

「いいよ!」

私は思わず叫んでもういちどクリフトをぎゅってした。クリフトが少しだけびくってなる。

「いいよクリフト、離れなくていいから」

私はクリフトをもっとぎゅってした。
立ってるから肩に顔をうずめられない。いっしょうけんめいクリフトに胸に顔をうずめる。

「っ…」

クリフトのとまどいが伝わってきた。でも私はかまわずクリフトをぎゅってした。
もっとぎゅうっ!

「私はどこにも行かないわ。今までといっしょよ。なんにも変わらないわ。
だからクリフトもどこにも行かないで。今までといっしょでいて」
「…………」
「変わらないでいて……」
「………………」

私は顔を上げてクリフトにお願いした。クリフトはやっぱりまだびっくりしてる。
私、泣いてないわよね。だいじょうぶよね。
自分が今どんな顔してるかちょっと気になったけど、かまわずクリフトをまっすぐ見つめた。

「どこにも行かないで……」
「………………」
「…………」
「……………………」

「………………はい……」

クリフトが小さく、でも返事をしてくれた。

「…………ん」

335従者の心主知らず ふたつでひとつ 21/23:2016/07/20(水) 23:15:03 ID:PbXFkvGE
でも抱きしめる腕にちからを込めてる。ちょっとふるえてる…?
まるで離れたくないって言わんばかりに。
なんでだろう……私はどこにも行かないのに、なにをそんなに心配してるんだろう……。
わかんない……今日のクリフトはやっぱりいつもとどこかちがう……。

「キラーピアス……どうなさいますか…?」

クリフトがぽつりとつぶやいた。

「え?」
「とても気に入っていらっしゃった武器ですよね。
ひとつだけでは効力をじゅうぶんに発揮できないでしょうし……
炎のツメに替えられますか?」
「あ……」

そっか!そうだったわ!

「どうしようクリフト」
「…?」
「うーん」
「……え?」
「でも今さらアドンにやっぱりべつのにしてちょうだいっていうのもなんかくやしいし」
「…………。あの…」
「どうしよう…」
「あの、姫さま」
「ん?」

クリフトは口を開けたり閉じたりあっち見たりこっち見たりしててすぐに次の言葉が出てこない。
ん?

「……それを、承知の上でアドンさんに渡したのではなかったのですか…?」

やっと次の言葉が出たクリフトは心から不思議ですって言わんばかりの口調で聞いてきた。
ん??

「ううん」

私はすぐ答える。
さっきソロにもなかなかやるなって言われたけど……

336従者の心主知らず ふたつでひとつ 22/23:2016/07/20(水) 23:24:11 ID:PbXFkvGE
「私なんにも考えてなかった」
「…………」
「どうしようクリフト……」
「………………」
「あ、また買えるかな。私お金どれくらい持ってたっけ」

私はいっしょうけんめい思い出す。
最後に買い物したのはいつだったっけ。でもお金の管理は結局クリフトに任せたままなのよね。
だからやっぱりクリフトに聞くのがいちばん早いわけで。

「えーと…」
「……く……」
「?」
「はははは……」

クリフトが声を上げて笑ったの。ほんとにおかしそうな笑い声。

「うー…」

いつまでも笑ってるクリフト。

「っもう、そんなに笑わなくたっていいじゃない」
「いえ、その、申し訳ありません、くくくく……」

――浅はかで、本当に申し訳ありません……――

クリフトが笑ってるの。
さっきみたいに胸が苦しくなるような笑いじゃなくて、心から笑ってるような気がしたの。
それもなんでだろう。私がうっかりしてたのそんなにおかしかったかなあ。
クリフトが元気になってくれたのは嬉しいけど……
なんだったんだろう。さっきはどうしてあんなに思いつめたような感じで……
クリフトがまた抱きしめる手にちからを込めた気がした。
でも今度はなんだか優しくて……さっきとはまたちがう感じ……なんだか包みこまれてるような……
なんだろう、なんだかからだがむずむずしてきちゃった。

「ねえクリフトー」
「はい、姫さま」
「ちょっと、ちょっとさ、くっつきすぎじゃない?」
「…………」

337従者の心主知らず ふたつでひとつ 23/23:2016/07/20(水) 23:28:47 ID:PbXFkvGE
さっき抱きしめられて抱きしめかえしてからけっこう長い間くっついてるのよね。
寝るときくっついてるのはよくあるけど立ったままくっついてるのはそんなにないわ。
今日のクリフトはやっぱりちょっと変。

「姫さま…」
「ん?」
「…………」
「んー?」

「どうか、もう少しだけ、このままで……」
「え?」
「どうか……」
「う、うん…」

クリフトはずっと私をぎゅってしてる。
なんだかほんとうにクリフトらしくないわ、こんなにずっとぎゅってしてるなんて。
でもクリフトはあったかいしいい匂いするし、ぎゅってされるとすごーく安心するのよね。
私ももういちどクリフトをぎゅってした。クリフトが私の肩に顔を寄せてくる。
……どうしよう、今夜もいっしょに寝てってお願いしよっかな。
ベッドはせまくなるけど起きて見張ってるよりずっとからだが休まると思うの。
それにそばにいたほうがお互いもっと守りやすいわよね。うん、やっぱりお願いしよっと。

「ねえクリフトー」
「……はい、姫さま」
「あのね」
「……はい」

――――


夢の内容は変わらない。
私は急いでデスピサロの手を取ろうとかけつけるけど、いっつも間に合わない。
なにか変わったことがあったとしたら、それは
私もクリフトもデスピサロのことをいつの間にかピサロとも呼ぶようになってたこと。
夢から覚めたときとなりで私をぎゅってしたまま寝てるクリフトを見て
もしかしたらぜんぜん大した夢じゃないんじゃないかなって思えるようになってたこと。
だからだいじょうぶ。きっといい方法が見つかるわ。よし、明日はまず天空城!

338従者:2016/07/20(水) 23:34:06 ID:PbXFkvGE
なんとなく今回の戦闘シーン>>318-321をゲームシステム的に書かせてください。
通常では60〜70ダメージほど受けるピサロナイトの攻撃ですが今回は受けても20ダメージ前後、
命中率も落ちており2回に1回はミスする仕様です。静寂の玉不使用、アイスコンドルも呼びません。
防御力も武装していないため皆無に等しくHPも療養中のため全回復していません。
通常なら2〜3ターンで倒せる状態ですが倒さずにいると6〜7ターンほどで自動的に戦闘が終了、
もう一つのイベントへと移る分岐ルートとしています。(今回そちらに進みました)
どうにもピサロナイト編は前置きが長くなり申し訳ないです。ご覧いただいた方ありがとうございました。
お疲れさまでした。

>>313
フレノールでは偽の姫に蓄えを差し出そうとした老人もいましたしサントハイム領地では
税(金品)を納める→生活をよくしてもらう、という循環として捉えられそうでしょうか。
タンス漁りでクリアリ……その発想はなかったwとっさではこんなのしか浮かばんかったですw
下ネタ注意。

「クリフトー、こんなものが見つかったわ!これ持ってっていいかしら。あったかそう!」
「そ、それはステテコパンツ!」
「おっきいからおなかまで包んでくれそうだわ!寝るとき履いてみよっかな」
「ま、ま、待ってください!いくら古着でいらないものをいただくとはいえ
男の履きふるした下着を姫さまが履くなど!」
「え、あ、下着なの?そっか……。見ず知らずの人が履いた下着じゃ抵抗あるわ」
「……ふう」
「じゃあクリフトのステテパンツ……」
「なにをいってるんですか!それとステテコパンツです!そもそも私はそんなもの履きません!」

339従者:2016/07/20(水) 23:37:42 ID:PbXFkvGE
今さらで恐縮ですが>>295を一部訂正したいのです。微々たるものですが……

とうとうここまで来よったか。しかし今では遅すぎたようだな」

とうとうここまで来よったか、ソロよ……。しかし今では遅すぎたようだな」

FC版ではエビルプリーストは名前を呼んでいて印象的だったのにPS版ではなぜか削られていて残念なので……
何度もお手数ですが脳内補完をお願いします。では長々と失礼しました;

340従者:2016/07/21(木) 00:49:20 ID:yaG5si.Y
よく考えたらアリーナ一行はお忍びの旅でした。
>>338の循環はなしです。何度も失礼しました;

341名無しさん:2016/07/22(金) 01:52:41 ID:X4hsGj4I
乙です。
長いのを投稿すると分割投稿ですから手間だけで大変ですね。
時間をかけて投稿していることに頭が下がります。
とは言え連続投稿制限の厳しすぎる2chと比べれば大幅に楽になっているはず。
掲示板を使う以上は仕方がないと割り切るしかない手間なのでしょうね。
手間を減らそうと思ったら1回の投稿を長くするしかなさそう。
wikiのお方の手間も含めて少しでも楽になればと願うばかりです。

342名無しさん:2016/07/23(土) 03:13:56 ID:kuOVHd0I
ホイミンと一緒に歩んできたライアンのように、種族の壁を難なく乗り越えた例もあるからこそ
悪化する一方のデスピサロというか魔族との関係は悩ましいですな
そういった難題に直面するパーティーの苦悩が、若いアリーナを中心に描くことで引き立ち、
クリアリとしても深みのあるものになっていくのですな
Good Jobと申し上げる他ありますまい

343名無しさん:2016/07/25(月) 02:56:09 ID:kSeeJz0U
何故か分かりませんがホイミンは念願の人間になれたんですよね。
しかし人間になったホイミンは、ライアンさんを目の前にしても「ライアンさまに どうか ぶじで たびをつづけられますよう おつたえください。」と言います。
人間になった代償なのかは不明ですが、記憶か視力がだいぶ欠損しているようで、本当にハッピーになれたのか分かりません。
ハッピーに見せつつも、種族の壁を越えることは簡単ではないと暗喩しているのかも知れませんね。

ドラクエの世界には御伽噺では済まされない現実の壁もあって、なかなかご都合主義では回っていきません。
そんな現実に直面しながら、アリーナとクリフトは何を話しながら進んでいくのでしょうね。

344名無しさん:2016/07/25(月) 04:55:04 ID:kSeeJz0U
あ、ホイミンとライアンさんはどの版でも会わないんでしたっけ。
それも寂しいですが。

345名無しさん:2016/07/26(火) 02:38:40 ID:nIekQaNc
訪問者を徹底的にもてなすモンゴルのように、ドラクエも訪問者を徹底的にもてなす文化?
または四国のお遍路さんへのお接待に似た文化?
そうであれば、訪問者がタンスを勝手に開けて何かを持っていくのが普通という文化もあり得る?
訪問者専用の自由にお持ちください的な引き出しがたまにあるとか?
そう考えていけばタンス漁りは理解できなくもない

壷割りでさえ、壷が自動で復活する世界という前提条件でなら説明はつく
古い壷は力のある人が割って新しくしてあげるのが親切なんだろう

346名無しさん:2016/07/28(木) 00:43:04 ID:XuvfRudQ
FC版をやっていた当時、なんでピサロナイトを倒さなきゃいかんのかと思ったもんです。
ピサロナイトを倒されたことをロザリーが気に留めないのもどうなのと思ったもんです。
そのあたりを補完してくれるお方には乙です。

347名無しさん:2016/07/29(金) 20:54:15 ID:ouJixA8M
2章では結果的に進化の秘法に加担してるんです
さらにロザリーの護衛を消すことでピサロ発狂へと追い討ちをかけてしまいます
そんな後味の悪い流れが二次創作によって晴れるならありがたい

348従者:2016/07/29(金) 21:56:41 ID:hDaD7Hlg
また誤字がorzなんでいつも投下したあとから見つかるしorzorz
今回またレスだけで失礼します。

乙やGood Job本当にありがとうございます!
長い原因の一つは台詞の前後で空行を入れているのもあるんですよね……。
私の手間は問題ないですが皆さんの手間が……
読者さんはもちろんwiki管理者さんの手間も半端なく。。。
もし載せていただけるならどうかwiki管さんの手間の少ない方法でお願いします。
いろいろとお手数おかけします;

349従者:2016/07/29(金) 22:00:13 ID:hDaD7Hlg
短編集「知られざる伝説」ではホイミンは旅の途中で亡くなりライアンに土葬されているようです。
魂の状態で白髭の老人(マスタードラゴンの仮の姿)に魔物はどんなことがあっても人間として転生させないのが決まり、
人間として転生させることはできぬが新しい身体、人間の肉体を与えてやることは可能と言われ、
死んだ詩人の身体に入って人間として生きてはみないかと提案を受けます。
ホイミンは、ライアンさんは誇りなくして戦士たる自分は生きている意味はないと言っていた、魔物の自分にだって誇りはある、
この身体はこの人のもの、魂を自由にできる力があるならこの詩人の魂を元の身体に戻してあげてくださいと言い断ったところ
もし誘いに乗っていれば未来永劫地獄の業火の中で苦しまねばならなかったと返され結果的に詩人として目覚めることに。

ホイミンは嬉しそうに外に出ていくライアンを見ただけのようですね。
ホイミンがあえてライアンに会わなかったのは結果的に詩人に憑依してしまったことを恥じていたためか、
今は人間でも死んで魂になれば再び魔物として転生するという宿命から歩み寄りへの躊躇が生まれていたためか……
短編集自体がFC版時代のものですし憶測の域を出ませんが、いろいろ考えていくと奥が深そうです。
前に予告していた純クリアリにてアリーナとクリフトが現実の壁について話す描写がありますのでまたご覧いただけたら嬉しいです。
推敲急ぎます。

ピサロナイトにも反応いただき感謝です。
クリアリのために存命ルートにさせていただいた以上できる限りの伏線は回収していくつもりなのでまたよろしくお願いします。
(ヒーローズでちゃっかり登場しているようですし実は生きていた説もあっていいかもしれんです)

350名無しさん:2016/07/29(金) 22:11:52 ID:gm2jzxyY
>>349
知られざる伝説もわりと適当というか、あれは公式同人みたいなものだと思ってます…
ホイミンの話は良かったですけどね

351名無しさん:2016/07/30(土) 08:56:26 ID:PAV7Cvc2
公式設定とみなせるかどうかは分からないが、
たった1回の選択によって未来永劫地獄の業火の中で苦しまねばとか、
この時期のマスタードラゴンには狭量さが目立つね
下界で幸せに暮らすのが気に入らんって程度の理由で親の命を奪ったんだし、
ソロはマスタードラゴンをどう見ていたのか
アリーナたち仲間もどう見ていたんだろうね

352名無しさん:2016/07/30(土) 09:06:15 ID:yAKI7ZJA
苛烈でも何でも、神としてそれくらいの威厳あっていいんじゃないの
少なくとも勇者の母が掟を破ったことは事実なわけだし
それを「いいじゃんいいじゃん、かわいそうじゃん、見逃せよ〜」は
あまりにも都合が良過ぎ、甘え過ぎな勝手理論だと思う
その後マスドラは残された子供のことを気にかけていたんだし
むしろそんな情すら本来なくていいくらいだ

353名無しさん:2016/07/30(土) 20:15:28 ID:CK7fqENw
見逃すか殺すかの2択しかないっていう極端な思考方法は危険だと思うよ
他の選択肢だってあるじゃないか

ドラクエ5の人間界で暮らすマスタードラゴンはなんで無罪なんだろうか
それこそ、あまりにも都合が良すぎだし、甘え過ぎな勝手理論だよ
自分が守らないことを誰かが破れば殺す、果たしてそれは威厳なんだろうか
悪いけど、俺はそうは思わないな

後で子供のことを気にかけるくらいなら親を殺すのは浅はかな行動でしかなく、
そういうマスタードラゴンには威厳でなく危なっかしさを感じる
違反者を殺せば威厳ってわけではなく、恐怖政治と威厳は違うよ
どこぞやの国の将軍様や首領様を見れば明らかじゃね?

ドラクエ4の時点では人間を見下した若くて未熟で独善的な神だよ
ただ最後、天空城への誘いを蹴る勇者にムッとしながらも許可してるし、
何百年後のドラクエ5では随分と視野を広げて成熟してる
マスタードラゴンだって成長途中のキャラとして描かれてるんだよ
未熟さがあればこそ、舞台装置化せず魅力のあるキャラになってる

354名無しさん:2016/07/31(日) 04:53:12 ID:YXWGpEuA
うーん・・・
私としては、掟を破ったのは母君なのに殺されたのは何故か父君ってのが釈然としないんですけど。
それでも父君を殺したことを妥当と考え、威厳まで感じるお方もみえるのですよね。
感性は人それぞれですね。

クリフトとアリーナ、そしてブライも、それぞれ違う感じかたをするんでしょう。
そこからどんなクリアリになるのか考えるのも悪くないですね。

355従者:2016/07/31(日) 11:10:01 ID:.IwaCRws
PS版のセリフをなぞらないSSいってみます。
時期はイムルでロザリーが亡くなる夢を見てから数日後、アリーナ視点です。
結界のほこら編より前となります。順序がめちゃくちゃで申し訳ない;

前に予告していた純クリアリ、やっと完成しました。
(純といっても単に前置きがさほど長くないだけで本当に純かどうかはわからんです;)
一応抱擁シーンがあります。

wiki管さん、もし載せていただけるなら今までの分も含め投下順そのままでお願いできたらと。
時系列はめちゃくちゃですが一応それなりに考えてのめちゃくちゃといいますか
つまり何が言いたいのかわかりませんがどちらにしてもお手数おかけしますお世話になります……

SSが長い原因となっている台詞の前後の空行なのですが、
どうにも私自身がSSを見直すとき一律に密集した文体だと読む気がなくなる性分でして;
(皆さんのSSは楽しく読めるのになぜか自分のはダメなんです;)
皆さんにとってはどうなのかわからず恐縮ですが、どうか空行はそのままでお願いしたく……
他の点でなるべく端的に手間なくおもしろく読み終えられるよう心がけていきますので
何とぞご容赦を、よろしくお願いいたします。

356恋なのか愛なのかそれとも 1/12:2016/07/31(日) 11:14:23 ID:.IwaCRws
――なぜ人間は変わらない……?――
――だれもがみな平和を望みながら罪をおかし、命をうばう――
――口をそろえて主張するいのちの尊さは、同族、身内、自分、だけなのか……?――
――ならばなぜ平和を望むのか。幸福を望むのか……――
――わからない……――
――人間よ――
――わたしはもうお前たちのことがわからない――


従者の心主知らず 〜恋なのか愛なのかそれとも〜


夢を見たの。
私たちは巨大な怪物と戦っているの。その姿はエスターク。
けど戦ううちにどんどん姿を変えていって、最後に変わったのは人の姿……
魔族の姿のデスピサロだった。

デスピサロはちからなく手を伸ばす。
何か言おうとしたみたいなんだけどそれは声にならなくて。
聞き取れなくて……。
私は思わずデスピサロの手を取ろうと走るのだけど、いっつも間に合わないの。
手が届きそうになったときに目が覚める。
私の手は届かない。

あれはたしかにデスピサロだった。
魔族の姿の……ピサロだった。
寂しそうな顔をして、うつろな目をして、何かを言おうとしてた……
あれはピサロだった……。
ずるいわ。
今までさんざんひどいことしてきたのに。たくさんの命をうばってきたのに。
これからだってうばおうとしてるのに。
ずるいわ…っ!

――最初から最後まで悪いヤツだったらよかったのに…っ!!――

もうこの夢をさんかいも見てるの。ずっとおんなじ夢。
私はひとりで夢のことを考えるのがいやでクリフトにぜんぶ話した。
ただの夢だって思いたかったんだけどあんまりおんなじ夢を見るから……。
そしたらクリフトは真剣に聞いてくれたの。
お父さまは夢で未来の出来事を知ることができたかもしれない、
だからもしかしたら私が見るこの夢にも何か意味があるのかもしれないって。

357恋なのか愛なのかそれとも 2/12:2016/07/31(日) 11:18:22 ID:.IwaCRws
結局ロザリーは見つけられなかったの。
前にイムルの宿屋でロザリーの夢を見たことがあったからまた泊まってみようってなって。
けどそこで見たのはロザリーが人間たちに殺される夢だった。
ピサロがすぐかけつけて人間たちをけちらすんだけど間に合わなくて……。
そこでピサロは……人間どもをひとり残らず根絶やしにしてやるって叫んでた。
たとえこの身がどうなろうともって……。
ピサロは泣いてた。すっごく泣いてた……。泣きながらロザリーをぎゅって抱きしめて……
ピサロのあんな泣きくずれた顔、初めて見た……。

ソロは捜索願いを出していたブランカ、バトランド、ボンモール、それぞれへ
行方不明者は発見されましたって、ご協力本当にありがとうございましたって伝えた。
捜索は打ち切られた。

ソロはふるえてた……。

人間は、自分の手で滅びの運命を選んだの。けどそのことに気づいてない。
知らない。
世界中のほとんどの人間たちが、そのことを何にも知らないまんま滅ぼされるの。
だから、それだけは止めなくちゃ。止めなくちゃ……

「姫さま……」

クリフトの優しい声にはっとする。私、考えごとしちゃってたみたい。

「……言いにくいことを教えてくださって、ありがとうございます」
「……ん……」

私は小さく返事をすることしかできなかった。
なんだか頭の中がもやもやしてる。

「……姫さま、今のどの調子はいかがですか?」
「え?」
「普通に声を出せますか?」

いきなりクリフトに言われて私はとりあえず発声練習するみたいにあーって言った。

「……大丈夫のようですね」
「?」
「いえ、以前王様が夢の話をされたときお声が出なくなったことがありましたから」
「あ…」
「今回は大丈夫のようです。本当にあれは、誰のしわざだったのか……」
「うん…」

358恋なのか愛なのかそれとも 3/12:2016/07/31(日) 11:24:26 ID:.IwaCRws
お父さま……。
お父さまたちはまだ戻ってきてない。エスタークを倒しただけじゃダメだったの……。
おとうさま……。
クリフトもすこし遠い目をした。

「……デスピサロは、ロザリーさんの名前を呼ぼうとしたのかもしれませんね」
「え?」
「…………」

そんな気がします、クリフトは小さくそうつけ加えた。
ロザリーの名前…?
なんでわかるんだろう……もしかしたらクリフトはデスピサロの気持ちがわかるのかな。
クリフトは遠くを見たままだった。私はずっとクリフトを見てた。

「姫さま……」

やっとクリフトがこっちを向いた。優しい目で私を見る。

――この話は、ここだけにしておきましょう――

「ライアンさんもおっしゃっていました」

――あの者に同情はしますが、われら人間もおとなしく滅ぼされるわけにはいかんのです――
――デスピサロが人を滅ぼそうとする限り、こちらも命をかけて戦わねばなりませんぞ――

「そして、ブライさまも……」

――勇者どのしかり。苦しくともくじけぬ者はいくらでもおります――
――何であれ悪の道に走るは罪。逃げにすぎんとこのじいは思いますがな――

「いかなる理由があろうと、人を傷つけていい理由にはなりません。
これから戦う敵には、悲しい最期が待っているかもしれないと伝えたところで、ただただ……
皆さんの士気を下げるだけかもしれません……」

…………。

「姫さまのお気持ちは、このクリフトがしかと受け止めました。
これからも、ずっと忘れず、失くさず、一生をかけて受け止めていきます。背負っていきます。
ですから……」

――ふたりでいっしょに、抱えていってはいただけませんか…?――

359恋なのか愛なのかそれとも 4/12:2016/07/31(日) 11:28:24 ID:.IwaCRws
…………。
手を胸に当てて話すクリフト。私をまっすぐ見て話すクリフト。
本気で話してるんだってことがすっごく伝わってくる。クリフトは本気なんだ。本気で……
クリフト……。

「……うん……だれにもいわない」
「…………」

クリフトが少しだけ笑ってくれた。私もめいっぱい笑ってみせた。
気持ちはきっとすっきりしない。
でもクリフトが話をぜんぶ聞いてくれて、いっしょに秘密も抱えてってくれる。
だからだいじょうぶな気がした。前に進めそうな気がした。

「あの夢ね、いっつも私たちが勝つの。
どんどん姿が変わって強くなってく気もするんだけど、最後にはぜったい私たちが勝つの。
それはつまり、これから戦うあいつにだってぜったい勝つってことよね!」

私は元気よく言ってみせた。そしたらクリフトが笑ってうなずいてくれたの。
私もなんだか嬉しくなって気がついたら笑ってた。心から笑えたような気がした。

「ありがとう、クリフト…」
「……い、いえ……」

ちょっとびっくりした顔をしてクリフトは目をそらした。あれ?
たまーにあるのよね、私が笑うと目をそらすクリフト。なんでだろう。
……どうしよう、今夜はいっしょに寝てってお願いしようかな。
クリフトといっしょに寝ればもういやな夢を見なくてすむような気がするの。
どうしよう……うん、やっぱりお願いしよっと。

「ねえクリフト」
「……はい、姫さま」
「あのね」
「……はい」
「今夜は……」
「…………」
「今夜はいっしょに寝てほしいの」
「姫さま…」
「おねがい…」
「…………」

360恋なのか愛なのかそれとも 5/12:2016/07/31(日) 11:32:06 ID:.IwaCRws
「いや、あの…」
「クリフト?」
「この流れでそれはちょっと、あの…っ」
「?」
「私のほうが、その…っ」

なんかクリフトあわててる?

「前ソロにいったらいいっていってくれてたわ」
「ソロさんが!?」
「うん。じいだってもうそんなに口うるさく言わなくなったじゃない」
「…………。そ、それで……ソロさんは、なにか言っていましたか…?」
「ん?」
「なにか、そのことに対して……」
「んー、朝飯までには起きてこいよっていってたかな」
「………………」

「……あああ……」

クリフトは手で顔を隠した。
ん?

「そうですよね、普通はそういう意味でとらえますよね…っ」
「?」

後でソロさんに誤解を解いておかねば、クリフトが小さくそう言ったのが聞こえた。
クリフト…?

「姫さま…」

クリフトが私のほうをちらっと見る。でもしっかり見ないの。見てくれないの。
さっきのクリフトとはぜんぜんちがうクリフト。なんかあわててるクリフト。

「ひとつだけ、確かめたいことがあるのです…」
「……なに?」
「………………」

クリフトは次の言葉を言うのにとまどってるようだった。
でも今度はちゃんと私のほうを見て言った。

361恋なのか愛なのかそれとも 6/12:2016/07/31(日) 11:36:13 ID:.IwaCRws
「私たちはもう、子どもではありません」
「……」
「もし人恋しいだけならば、マーニャさんやミネアさんでもいいではありませんか。
普段とても仲良くお話をされていますし」

うらやましいほどにってクリフトは小さくつけ加える。

「なぜ、その……」
「……」
「私を……」
「……」
「わざわざ、私を……」
「…………」

クリフトは私を見たり下を見たり私を見たり、ちょっとあっち向いたりしてる。
落ち着かないクリフト……。
クリフトは、なにが言いたいんだろう。子どもじゃないから…?子どもじゃないなら……

「子どもじゃなかったら、もうクリフトといっしょに寝ちゃいけないの…?」
「い、いえあの…」
「クリフトはもう、私といっしょに寝るの、いやなの…?」
「っ……」

――子どもだった私じゃないと、いやなの…?――

「そ、そんなわけありません!とんでもないことです!なにをそんな当たり前のことをおっしゃるのですか!!」
「ん……」

あわてて否定するクリフト。前にもこんなことあった気がする。
いっしょに寝るっていうとクリフトはいっつもさわいだりあわてたり抵抗したりする。
でもいやともいっつも言わないしいざいっしょに寝てもほんとにいやじゃないみたいなの。
クリフトのほうからぎゅってしてくることもあるしずっとくっついてることだってあるし。
じゃあ、なんで…?なんで最初はいっつも……

「じゃあ、いいじゃない…」
「そ…っ」
「……」
「……っ…」
「……」
「………………」

「………………はい……」

362恋なのか愛なのかそれとも 7/12:2016/07/31(日) 11:40:09 ID:.IwaCRws
クリフトは結局私といっしょに寝てくれた。

「また流されてしまいました…っ」
「?」


「クリフトー…」
「…………」

「はい、姫さま…」

あ、クリフトまだ起きてた。なぜかほっとする。
明かりを消したらお部屋が真っ暗なまんまでなんにも見えなかったの。
小さな窓はあるんだけど今日はくもってるのかな、明かりがそんなに入らなくて。
ソロとじいが寝てる音は仕切りの向こうからなんとなく聞こえてくるのに
となりでクリフトが寝てても起きてるのか寝てるのかわかんなくて。
でも返事のあと少しだけこっちを向いてくれた気もしたからなんだか一気に安心した。
私は思わずクリフトをぎゅってする。

「っ…」

クリフトの息が小さくもれた。
そんなに強く抱きしめたつもりはなかったんだけど、もしかしたら苦しかったのかな。

「ごめん、痛かった…?」
「い、いえ…」
「そう…」

でもクリフト、少しこわばってる気がする。なんでだろう。いつものかたまるクリフトかな。
私はもういちど、今度はやさしくぎゅってした。そしたらクリフトも私をぎゅって返してくれたの。
特になにをいうでもなく伸ばされたクリフトの腕に頭を乗っける。クリフトのうでまくら。
クリフトはそんなつもりなかったのかな、ちょっととまどったような感じだったけどもういちどぎゅってしてくれた。
クリフトのうでまくら、安心する……私はもうちょっとだけクリフトにすり寄った。

「……不安、なのですね……」
「…………」

「うん…」

なんでわかるんだろう。わかっちゃったんだろう。
なんでクリフトはいっつも私の心を読んだみたいに話してくるんだろう。当てられちゃうんだろう。
私もクリフトの心を読んだみたいに話せたことあるかな。当てられたことあったかな。
なんだかくやしいな……。

363恋なのか愛なのかそれとも 8/12:2016/07/31(日) 11:45:04 ID:.IwaCRws
「姫さまがどのような決断を下されようと、どこに行かれようと、私はついていきます。
共に考えますし、共に悩みますし、共に迷います。姫さまは決してひとりではありません」

――どうか、おそばに……――

クリフトの抱きしめる腕にちからが入る。まるで包みこまれてるみたい。

「ん……」

からだのちからが抜けてく。ぎゅってしがみつかなくてもクリフトはどこにも行かない。
ほんとうにだいじょうぶなんだ。クリフトはほんとうにずっとそばにいてくれるんだ……。

「ありがとう……」

私はクリフトの胸もとに顔をうずめた。
クリフトあったかい。すっごく安心する。今夜はぐっすり眠れそう。
またクリフトの息が小さくもれた気がした。

「本当に、私たちはいったい……」
「?」

なにかつぶやいたあとクリフトは私の頭に顔を寄せたみたい。ずっとくっついてる。
クリフトは私が寝るまでずっとくっついたままだった。

「クリフト?」


夢を見る。またおんなじ夢……。
でも私のすぐよこにクリフトがいた。優しく笑って私を見てる。
まるで大丈夫って言われた気がした。
私も気がついたら笑ってた。みんなでいっしょに崖をのぼってく。
今度は堂々とのぼってく。

――私は決してひとりじゃない――

戦ううちにどんどん姿を変えていくデスピサロ。最後はやっぱり魔族の姿に戻る。
ふらふらと足もとがくずれ、ちからなく手をのばすデスピサロ……。
私はデスピサロの口もとを気をつけて見てみたの。
クリフトがもしかしたらロザリーの名前を呼ぼうとしたのかもしれないっていってたから。
そしたら……

364恋なのか愛なのかそれとも 9/12:2016/07/31(日) 11:49:01 ID:.IwaCRws
「……ロザリー……」

呼んでた……。
ピサロはやっぱりロザリーって呼んでたの。
クリフトの言ったとおりだった……。

――……ロザリー……――

でもロザリーはいない。もういない……。
私はやっぱりピサロの手を取ろうと走る。でもやっぱり間に合わなくて……


目が覚めたらクリフトはもう着替えててベッドのあっち側に座ってた。
お祈りしてるみたい、ロザリオを握りしめて目を閉じてた。
私がずっと見てたのに気づいたのかな、少ししたらクリフトはロザリオを離して私のほうを向いた。

「姫さま、おはようございます」

クリフトが笑顔であいさつしてくれた。

「うん、おはよう」

私も笑顔で返した。
私のほうが早く起きるときもあるんだけどそれはほんとにたまーにで、だいたいはクリフトのほうが早いの。
荷物もまとまってる、もう出かける準備万端なんだ。
なんだかちょっとだけくやしいような、さびしいような……なんだろ、よくわかんないや。

「クリフトの言ったとおりだったわ」
「?」

私はさっそく夢でわかったことを話した。

「ピサロはロザリーって呼んでたの」
「…………」

お部屋がいっしゅんしんとなった気がした。
私ははっとしてとなりでソロやじいが聞いてなかったか気になったんだけどクリフトがそれは大丈夫って。
ふたりともちょうど近くにはいなかったみたい。よかった……。

「……やはり、そうでしたか……」
「……うん……」


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