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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議2

1 ◆VnfocaQoW2:2010/04/04(日) 00:20:17

雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。

278話以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。

規約はこちら
>>2

408χ−1(6/12) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:43:03

「一人って…… 誰のことなの?」

恐る恐る、芹沢が聞いた。
その怯えた声の調子に目論見の成功を確信したプランナーは、
喜びに震えそうになる己の声を抑えて冷静を装い、返答する。

《それはお前たちで話し合って決めればよい。
 我々は対象人物まで特定しない》

口火を切ったのは透子であった。
瞳に炎を宿らせて、主催者の三人をにらみつけた。

「譲れない」
「私は絶対……」
「願いを叶える」

それを諌めたのは智機であった。

「Wait、Waitだよ、透子様。
 ここで短絡を起こしてはいけない。
 プランナー様はこう言ったろう?
 優勝者が出た時点においての生存主催者のうち、と。
 今、一人を口減らしたとしても意味が無いのだよ」

今、と、智機は口にした。それはつまり、後、ならば。
同胞を殺す意味があるのだと、その心算もあるのだと、
智機は宣言したに他ならない。

「ねぇねぇ、どーしよっか、ザッちゃん?」

409χ−1(7/12) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:43:49

芹沢が腕組みするザドゥの袖を引っ張って、上目遣いで見つめる。
ザドゥを形式上の首魁に過ぎないと見る主催者たちの中で、
彼女は只一人、彼をトップであると認めている。
武家社会の末子たるこの女は、主筋に判断を委ねたのである。

プランナーの登場から此方、沈黙を保っているザドゥは。
芹沢の要請を受けるや、両の瞼をカッと見開いて、
まるでそこにプランナーの姿が見えているかの如く、
強い眼力で虚空を睨めつけると。

「―――断る」

そう、短く断じたのである。

《……首魁ザドゥ。君の発言は、誰に、何に向けて発せられたのかな?》
「そのペナルティ、承服しかねるということだ」

言い捨てた。
伺いを立てるといった様子ではなかった。
一方的な拒絶の宣言であった。

《憤りも理解せぬではないが、これは厳粛なるルールの適用に過ぎな……》
「黙れ下っ端」
《下っ……!?》

ザドゥの分を弁えぬ余りにも余りな暴言に、空気が凍りつく。
身の程を知らぬザドゥはそれでも飽きたらぬのか、
更なる暴言を重ねて、プランナーを侮辱する。

410χ−1(8/12) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:46:03

「下っ端が横合いからピーチクパーチク囀るなと言っている。
 俺が契約したのはルドラサウムだ。貴様に従う謂れは無い。
 納得させたいのならあの鯨を出せ」

神と人との絶対的な力関係さえ考慮しなければ―――
理は確かに、ザドゥにあった。
椎名智機こそ企画立案者であるプランナーの存在を把握していたものの、
主催者のスカウトと契約はルドラサウム自らが行っている。
ぽっと出の、素性のわからぬ存在に従う理由など無いのである。

「だいたい、昨日の勝手なルール変更も、あれはなんだ?
 あれが罷り通るなら、俺たち主催など要らんだろう。
 今更覆せとも言わんが、今後貴様が何を呟こうと俺はその言葉を受け入れん。
 それを覚えておけ」

言った。言い切った。
ザドゥを除く三人の女は、呼吸すらままならぬ緊張感の只中に叩き込まれた。
プランナーは二の句が継げずにいる。
その濃厚な沈黙を打ち破ったのは、果たして渦中の蒼鯨神であった。

《キャハハハ!!
 下っ端? 下っ端だって? プランナーが?
 そーだよね、そりゃそうだよねー》
「出たか、鯨」
《流石はザドゥ君、怖いもの知らずだね!
 君の自主性を見込んで、トップに据えた自分の直感を褒めたいくらいだよ!
 だってプランナーのこんな顔、今まで見たことなかったからね》

411χ−1(9/12) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:47:05

本当に、心底楽しそうな。
この島に来てから一番楽しそうな笑い声が、
音の津波となってシェルター内を包み込む。
その空気は、魔剣にまでも伝播した。

《かはははははっ! すげーなザッちゃん!
 三超神を下っ端扱いした生物は、多分お前さんが初めてじゃぞい!
 よう言うた、よう言うた》

カオスとて、プランナーの曲った性根に苦渋を舐めさせられた一人である。
ザドゥの蛮行に送られた喝采は、心の底からのものであった。

「そーだよねぇ…… あたしもカミサマのこと、知らないなぁ。
 その辺、くじらさんの説明が欲しいなー」

緊張の極みにあった芹沢すらも己を取り戻し、ザドゥに追従した。
空気は、逆転していた。
この場の明らかな絶対支配者であったプランナーが、
ザドゥの神を神とも思わぬ傲岸不遜な態度によって、
上役たるルドラサウムの予定外の登場によって、
単なる下っ端の道化へと、堕したのである。

主催者たちには見えぬ、されどルドラサウムには見えるその場所で、
プランナーは屈辱に下唇を噛み締める。
それはこの神が生を受けてこの方、初めて受けた屈辱であった。

《それじゃあ言うけど……。
 残念だけど、このゲームの難しいルールとかは全部、彼に任せてあるんだ。
 だから、ペナルティはプランナーの言ったとおり。
 彼の言葉は、僕の言葉。わかった?》

412χ−1(10/12) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:49:09

結局、ルドラサウムはプランナーの肩を持った。
彼を己の全権委任者であると宣言し、それまでの独断を肯定した。

プランナーは主の裁定に弱冠の溜飲を下げる。
しかし。それでも。
ザドゥは猶、ザドゥであった。

「いいだろう。では、俺が辞退しよう」

この宣言にはプランナーのみならず、ルドラサウムもまた、絶句した。

「願いが叶えられない対象を、俺にしろ」

発言が飲み込めぬ一同に、ザドゥは繰り返す。

「俺が首魁だ。責任を取るのは俺の仕事だ」

そして、己の翻意を表に現さぬまま責任論に帰結させ、
ザドゥは再び腕を組み、鋭い眼光を和らげた。
これ以上語ることは無いのだと、その態度は如実に物語っている。

「Yes。上に立つものが責任を取る。組織論として実に正しいね。
 ザドゥ殿、私は貴君のその判断、断固支持するよ」
「さんせい」

透子と智機は、ザドゥの決意を額面どおりに受け取った。
その内面にまで考えが及ばなかった。
芹沢だけが違和感を覚えた。
疑念の眼差しでザドゥを見遣る。
その芹沢の視線に気付いたザドゥは、軽く頬を吊り上げるのみであった。

413χ−1(11/12) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:50:08

(ザッちゃんは…… もしかして……)

直感型の芹沢には、もしかしてのその先を言語化できぬ。
しかし、判った。
ザドゥの中の大事な何かが、大きく変わってしまったのだと。

《あらららら、キミの目論見、外れちゃったね、プランナー》

プランナーの予定では。
このペナルティによって主催者どもは、疑心暗鬼に陥る筈であった。
相手を出し抜かんと、四者の間に陰謀や暗闘が生じる筈であった。
醜くて粘ついた情念と情念がしのぎを削るはずであった。
しかし、ルドラサウムの指摘する通り。
その陰湿な企みは、ザドゥの自己犠牲で木っ端微塵に砕け散った。
思惑の根本が、空振った。

《……申し開き様も無く》

金卵神は震える声で、己の主に謝罪した。
蒼鯨神は己の部下の謝罪を鷹揚に受け入れた。

《でもまあ、君のそんな悔しそーな顔が見れたから、楽しかったよ。
 やっぱりぷちぷちは面白いなぁ、意外性があってさ》

その言葉を最後に、狂笑がフェードアウトしていって。
やがて二神の気配は消え去った。

414χ−1(12/12)(情報 1/2) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:52:13

ザドゥの袖を握ったままになっていた芹沢が、再び彼を上目遣う。
なぜか遠くに行ってしまった様に感じられるザドゥとの距離を詰めるべく、
言葉の整理もできぬまま、不安な気持ちだけを上滑らせる。

「ザッちゃん、あのね……?」
「芹沢、お前が気にすることは何もない。
 今まで通りのお前で居さえすればいい。
 これは、俺の問題だ」

ザドゥは思いがけぬ優しい笑みを浮かべ、芹沢の頭を撫でると、
先程中断した芹沢の身体機能チェックを再開すべく、
包帯の巻かれた痛々しい背に、腕を伸ばした。


          ↓



(ルートC)

【グループ:ザドゥ・芹沢・透子・智機】
【現在位置:J−5地点 地下シェルター】
【スタンス:待機潜伏、回復専念】

415χ−1(情報 2/2) ◆VnfocaQoW2:2010/09/12(日) 23:52:53

【主催者:ザドゥ】
【スタンス:ステルス対黒幕
      ①プレイヤーを叩き伏せ、優勝者をでっちあげる
      ②芹沢の願いを叶えさせる
      ③願望の授与式にてルドラサウムを殴る】
【所持品:なし】
【備考:重症、発熱(中)全身火傷(中)】

【主催者:カモミール・芹沢】
【スタンス:ザドゥに従う(ステルス対黒幕とは知らないが、変化は察している)】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑体力↓)
     魔剣カオス(←透子)】
【備考:左腕異形化(武器にもなる)重症、発熱(中)、全身火傷(中)、
    腹部損傷、左足首骨折】

 ※芹沢のトカレフ及び鉄扇は、火災にて破損していました。

【主催者:椎名智機】
【スタンス:①【自己保存】
      ②【自己保存】の危機を脱するまで、透子に従う
      ③【自己保存】を確保した上での願望成就】
【所持品:スタンナックル、改造セグウェイ、軽銃火器×2、Dパーツ】

【主催者:御陵透子(N−21)】
【スタンス: ①願望成就
       ②ルドラサウムを楽しませる
       ③プランナーの意図に沿う】
【所持品:契約のロケット(破損)、スタンナックル、改造セグウェイ、
     軽銃火器(←智機)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』(現状:自身の転移のみ)】

416名無しさん@初回限定:2010/09/13(月) 00:02:42
   
    
         ザ ド ゥ 祭 り 継 続 中 !

417284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/09/13(月) 05:53:27
おはようございます。
連日の投下お疲れ様です。
今回の話を収録・編集した所、本スレにて神鬼軍師の本領(8/30)が抜けているのを発見しました。
差支えがなければ本投下したもの及び、既に仮投下されてる分を直ぐにでも収録可能です。
作者さんのレスがあり次第、短時間でUPは可能です。
お待ちしております。

418名無しさん@初回限定:2010/09/13(月) 21:01:56
>>417
毎度の更新、お疲れ様です。
ご指摘の件、本スレに投下して参りましたので
ご対応の程、宜しくお願い申し上げます。

419284 ◆ZXoe83g/Kw:2010/09/13(月) 21:53:46
レスと投下どうもでした。
x−1とは予想以上に痛いペナルティ……。
プランナーの底意地の悪さが極まってきた感じです。
それに対してのザドゥの漢っぷりがとても良く胸がすきました。。
智機のケイブリスへの感傷も良かったです。

296話までのSSまとめと地図を更新しました。
パスは negi です。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1145095.zip.html

420 ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:40:29
ご無沙汰しております。
「タクスタスク 〜the final mission〜」は二つ先に回しまして、
以下10レス、「それでも、恭也は答えない。」を投下致します。

次回予定は「ひとりでも、みんなのひとり」です。


また、>>399 の状態表の恭也の備考に対し、以下の読み替えをお願い致します。

 × 【備考:失血で疲労(大)、発熱(大)、右わき腹から中央まで裂傷あり】
 ○ 【備考:失血で疲労(大)、体温低下(大)、右わき腹から中央まで裂傷あり】

421それでも、恭也は答えない。(1/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:42:01

【タイトル:それでも、恭也は答えない。】


(Cルート・3日目 AM10:00 D−6 西の森外れ・小屋3)


月夜御名紗霧が纏ったナース服は、無駄にはならなかった。
高町恭也への看病の手が必要になった故にである。

小屋の居間、江戸間八畳。
部屋の中心に煎餅布団が二枚重ねて敷かれており、渦中の恭也はそこに寝かされていた。
紗霧以下四名が膝立ちで恭也を囲んでいる。

「まずは傷口を見ましょうか」

紗霧に促がされ、恭也の上着を脱がせた魔窟堂野武彦が顔を歪めた。
腹部にぐるりと巻かれた包帯が、赤と黒と黄とに染め上げられていた故に。

「これは……」

赤とは、血液である。
黒とは、凝固した血液である。
黄とは、膿である。

包帯を一巻き解く程に、血臭と膿臭の濃度が増してゆく。
室内は悪臭に満ち満ちてゆく。
この時点で、ユリーシャが嗚咽を漏らし、退室した。

「外の空気を…… 吸ってきます……」

422それでも、恭也は答えない。(2/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:43:01

やがて現れた恭也の腹部は、皆が包帯の染みから予想したとおり、
目を覆いたくなる惨状であった。
焼き潰した腹部にある傷口の一部はずるりと剥けており、
その周囲の皮膚がぐぢぐぢに膿んでいたからである。
この時点で、広場まひるが貧血を起こし、退室した。

「ご、ごめん…… ちょっと、だいぶ…… 無理」

月夜御名紗霧も気持ちとしては先の二人に同調したが、なんとか踏み留まった。

「まひるさん、キッチンでできるだけ沢山の湯を沸かしてください」
「らじゃっ、た……」

まひるに指示を出した紗霧は、恭也の口に差し込んであった旧式の水銀体温計を
引き抜き、その体温を読み上げる。

「34.9度……」
「……くたばるのか?」

無神経な言葉を無造作に投げかけたのはランス。
しかし、その響きに篭るのは嘲笑でも無関心でも無い。
不安。心配。
それが伝わる故に、紗霧も野武彦もランスを咎めない。

そしてまた、恭也もランスを咎めない。
咎める事が出来ない。
恭也は意識を失っている故に。
静かに意識を失っている故に。

423それでも、恭也は答えない。(3/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:45:25
 
表情は穏やかとも言えるほどの無表情であり。
四肢の筋肉はゴムマリの様に弛緩しており。
脈拍呼吸、共に極めて少ない状態である。

この、恭也の容態の急変は、薬品の効能が切れたことを原因としていた。

服用していた鎮痛剤――― モルヒネ混合物。
終末医療の臨床でおなじみのそれは、麻薬でもある。
痛みを和らげる効果にかけては全ての薬品に勝り、
疲労を感じさせにくくする効果もある。
決して、治療効果や回復効果があるわけではない。

つまり、薬のお陰で。
つまり、薬のせいで。
絶対安静にして然るべきの体を、無理やり駆動できたいただけなのである。
高町恭也は。
それを分かって、戦っていたのか。
それと知らずに、戦っていたのか。
意識を失ったままの青年は、どちらとも答えない。

「この状態、ジジイはどう見ます?」
「感染症…… じゃろうな」

熱が出ていれば、まだいい。
免疫系がウィルスを駆除すべく、熾烈な争いを繰り広げている証である。
しかし、傷口がひどく化膿しており、意識すら失っているというのに、
低体温、低生命活動であるということは。
ウィルスに、成す術も無く蹂躙されているということである。
 
 「傷口の洗浄、膿の除去。抗生物質。点滴。……他には?」
 「体温の確保じゃろう」

424それでも、恭也は答えない。(4/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:46:49
 
紗霧と野武彦は言葉少なに意見交換し、素早く処置を決断する。
共に専門的な医療知識は無い。
漫画やライトノベルからの受け売りでしかない。
それでも決断に迷いは無かった。
一刻の余裕も無い状況であると判っている故に。

「ストーブを付けますから、ランスは土間のポリタンクから灯油を。
 ジジイには点滴を頼みます」


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(Cルート・3日目 AM10:30 D−6 西の森外れ・小屋3)

灯油ストーブの上に乗ったヤカンが、しゅんしゅんと湯気を上げている。
室内気温、32℃。
真夏の日中の気温である。
それでも恭也の熱は戻らない。

傷口は清潔にした上で、軟膏を塗った。
点滴は今も投与中である。
出来得る限りの処置は済ませた。
それでも恭也の意識は戻らない。
 
紗霧は、見た目にはただ深く眠っているかの如く見える恭也の寝顔を、
ただ、黙って見つめている。
意識を緩めず、注意深く、少しの変化も見逃さぬように。

425それでも、恭也は答えない。(5/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:48:48
 
「そろそろ出発するけど、他に必要なものってある?」

引き戸を半分だけ開けて、土間のまひるが居間の紗霧に声を掛けた。

「そうですね…… 清潔なタオルと、シニア用紙おむつを」
「タオル、オムツ、タオル、オムツ。ん、覚えた!忘れないうちに行って来ます!」
「メモを取りなさい、メモを」

包帯やテープの類は使い切り、点滴や抗生物質の残量も心許ない。
野武彦は、薬品をはじめとする医療用具の収集を主張した。
紗霧もそれを受け入れた。

故に、魔窟堂野武彦と広場まひるは、廃村を目指すこととなった。
雑貨屋や民家にあると思われる市販の医療品をかき集める為に。
病院跡という選択肢は無かった。
崩落した病院の医薬品が入手できないことは、
病院の放棄を決めた時点で確認を済ませていたのである。

「うおっ! なんだこの暑さは?」

まひるのさらに背後を通りがかったランスが、
開けた引き戸から漏れた熱気に、顔を顰めた。

「この暑さでも恭也さんには足りないんです。
 熱気がもったいないので、引き戸は閉めといて下さい」
「紗霧ちゃんも暑いだろう?」
「へっちゃらです。私、冷血ですので」
「そうかぁ、汗かいてるように見えるがなぁ。我慢は体によくないぞ?
 ここはひとつ、服をすぽぽーんと脱ぎ捨て…… 冗談冗談!」

426それでも、恭也は答えない。(6/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:53:16
 
紗霧が無言で振りかぶったのは金属バット。
ランスは慌てて引き戸を閉める。

「暑いのなら外に行って見張りでもしてなさい。
 悪いときには悪いことが重なるモノですから、
 警戒しとくに越したことはありません」

返事は無かった。
しかし大小二つの足音が玄関の向こうへと移動してゆき、
扉が閉まる音が紗霧の耳に届いた。
それはおそらくランスとユリーシャで。
まひると野武彦は既に出発しており。
小屋の中には、紗霧と恭也だけとなった。



しん、と――― 静寂のベールが、小屋の中に降りた。




紗霧は大きく溜息をつく。
肺の空気を全て吐き出すまで、溜息をつく。
緊張感を解きほぐすべく、頭を振る。

(出来ることは全部やりました)

点滴の交換まであと30分ほど掛かる。
それまでは恭也の状態が変化せぬ限り、紗霧の仕事は無い。
 
(あとは―――)

427それでも、恭也は答えない。(7/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:54:56
 
恭也が倒れてからの紗霧は、ずっと思考していた。
感情を意図的にスポイルしてきた。
行動と判断が重要なときには、いつだってそうしてきた。
雌伏と策略の人生を歩んできた紗霧にとって、それは容易いことであった。

しかし、その行動と判断にひと段落ついたならば。
他者の目を気にする必要すら無い状況となったならば。
紗霧ほどの鉄面皮とて、気は、緩む。

その、緩んだ紗霧の目線が、恭也の顔に向けられる。
恭也は変わらず、静かであった。
死体であると言われても納得してしまいそうな顔色であった。

(もし、恭也さんがこのまま……)

紗霧の心が、ざわつく。
名状しがたい焦燥感が、紗霧を襲う。
それを払拭すべく、紗霧が取った行動とは、罵倒であった。
走り出した焦燥感をぶっちぎる程の早口で。

「あなたは馬鹿ですか。いいえ、馬鹿ですね、大馬鹿にきまってます!
 いくら鎮痛剤の効果が高かったとはいえ、
 こんなになるまで我慢しているだなんて、感覚が鈍いなんてもんじゃありません。
 あれですか。
 あなたは恐竜か何かですか?
 痛みの信号が脳に達するまで一日かかるとでもいうのですか?
 神経伝達能力の進化を拒んだんですか?
 三畳紀止まりですか?
 ジュラ期止まりですか?
 白亜紀止まりですか?
 どうなんですか答えなさい!」

428それでも、恭也は答えない。(8/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 00:58:38
 
その容赦ない罵倒に、なんともいえぬ切なさが宿っていることを、紗霧は自覚した。
焦燥感が晴れるは愚か、逆に深まってしまったことを、紗霧は自覚した。
それまでも、薄ぼんやりと感じていたそれを、紗霧は自覚してしまった。

「違います、違います。私はそんなんじゃあ有りません」

その顔がみるみる赤みを増したのは、決して室温の高さ故では無かった。
紗霧は芽生えたての自覚を振り払うかの如く、頭を左右に強く振る。

   ―――俺は月夜御名さんを信用していない
   ―――でも、月夜御名さんという才能を信じることはできます

紗霧の脳裏に浮かぶのは、紗霧と恭也の秘密の契約。
その言葉が、その情景がリフレインされるのは、これが始めての事ではない。
既に何度か。
既に何度も。
紗霧の思考の間隙を突いて、蘇っていた。

「どうですか恭也さん、ケイブリスを完殺できた今。
 あなたの評価に変化はありましたか?
 私の信用度は…… 少しは上方修正されましたか?」

紗霧の精一杯の少女としての問いに。
それでも、恭也は答えない。


            ↓

429それでも、恭也は答えない。(情報 1/2) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 01:00:25
 
(ルートC)

【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め
      ①しばらく休養】
【備考:全員、首輪解除済み】


【現在位置:D−6 西の森外れ・小屋3】

【高町恭也(元№08)】
【スタンス:紗霧に従う】
【所持品:なし】
【備考:意識不明、失血(大)、体温低下(大)、感染症(中)
    右わき腹から中央まで裂傷、化膿(中)】

【月夜御名紗霧(元№36)with ナース服】
【スタンス:反抗者を増やし主催者へぶつける、計画の完遂、モノの確保、
      状況次第でステルスマーダー化も視野に
      ①恭也を看病】
【所持品:金属バット、ボウガン、メス×1、簡易医療器具、対人レーダー
     他爆指輪、簡易通信機・大、レーザーガン(←ユリーシャ)】
【備考:下腹部に多少の傷有、性行為に嫌悪感(大)】

【小屋に保管のアイテム】

 生活用品、香辛料、干し肉、小麦粉、保存食、メイド服
 工具、スコップ(小)、スコップ(大)、竹篭
 謎のペン×8、文房具、白チョーク1箱、謎のペン×7
 解除装置、小太刀、鋼糸、アイスピック

430それでも、恭也は答えない。(情報 2/2) ◆VnfocaQoW2:2011/01/26(水) 01:01:27

【現在位置:D−6 西の森外れ・小屋3周辺】
【行動:周辺哨戒】


【ユリ―シャ(元№01)】
【スタンス:ランス次第】
【所持品:スペツナズナイフ、フラッシュ紙コップ】

【ランス(元№02)】
【スタンス:女の子優先でグループに協力、プランナーの事は隠し通す
      男の運営者は殺す、運営者からアリス・秋穂殺しの犯人を訊き出す】
【所持品:斧】
【能力:剣がないのでランスアタック使用不可】
【備考:肋骨2〜3本にヒビ(処置済み)・鎧破損】



【現在位置:D−6 西の森外れ・小屋3周辺】
【行動:廃村にて医療品調達】

【魔窟堂野武彦(元№12)】
【所持品:軍用オイルライター、銃(45口径・残弾5)、鍵×4
     ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング】

【広場まひる(元№38)with 体操服】
【所持品:せんべい袋、簡易通信機・小】


 ※紗霧の「薬品」とまひるの「救急セット」は恭也に使い切りました。

431284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/01/26(水) 19:02:58
新作お疲れ様です。
感想は後ほど。
恐縮ですがこちらも動こうかと思っています。
前とバージョンは同じですがまとめをUPしました。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1384163.zip.html

パスワードはメール欄です。

432 ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:47:57
長時間にわたる本スレへの支援、ありがとうございました。

以下9レス「ひとりでも、みんなのひとり」を仮投下致します。
次回は、「タクスタスク 〜the final mission〜」です。

433ひとりでも、みんなのひとり(1/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:49:04

【タイトル:ひとりでも、みんなのひとり】


(ルートC・三日目 PM2:00 C−6 小屋1跡)


西の森、南端の浅く。
ナミが使用した手榴弾により崩落した小屋は、しおりが最後に見た時と
寸分違わず、無残な断面図を晒していた。

「ここだ…… ここだよぅ!」

その場所が視界に入っただけで、しおりの瞳は潤みを帯びた。
しおりがそこにいたのはたった二日前でしかないというのに、
彼女の胸に去来するのは郷愁めいた感傷であった。
その後の記憶があまりにも激動であり流転であり衝撃であった故に、
その二日前が、既に十年の昔日の如く感じられたのである。



しおりが目覚めたのは午前六時。
己が一人であるという事実を理解しつつも受け入れられなかった彼女は。
一面グレースケールの荒野で、泣きじゃくった。
既に燃えるものが何一つない焼け野原で、炎の涙を撒き散らした。
泣いて、泣いて、泣ききって。
涙も声も枯れ果てて、己の全ての澱を吐き出して。

そして、しおりは立ち上がった。
自分の足で。
自分の意思で。
たった一人で立ち上がった。

434ひとりでも、みんなのひとり(2/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:50:13
 
(助けてあげなきゃ……)

しおりが最初に欲したのは、最愛の妹・さおりの救助であった。
無論、今のしおりはさおりの死を思い出している。
その死に際の全てを思い出している。
痛みと苦しみに歪めた顔を、訴える声を、思い出している。
シャロンが生きているしおりのみを救助し、
死せるさおりは放置したことを思い出している。

さおりの遺体が未だに瓦礫の下にあることを知っている。
死した後もずっと潰されたままであることを知っている。
死んでからもずっと苦しい思いをしている――― それが、しおりには我慢ならぬ。
故に、しおりはさおりが埋もれる小屋の跡を目指したのである。

しおりは曖昧な記憶を辿る。
そこに入った時は、庇護者・常葉愛に手を引かれていた。
そこから出る時は、陵辱者・伊頭遺作に鎖を引かれていた。
為に、妹の眠るその位置はしおりの記憶に不明瞭であった。

それでもしおりは諦めなかった。
一人きりでいる孤独感に鼻をすすり上げながらも、
何度も迷い、その度にぐずりながらも。
紅涙を散らすことだけはしなかった。

そうして、休むことなく歩きのめすこと八時間あまり。
幸いにしてか不幸にしてか、誰にも出会うことなく。
ついにしおりは最愛の妹が眠る場所へと、辿り着いたのである。

.

435ひとりでも、みんなのひとり(3/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:52:24
 
「愛お姉ちゃん……」

しおりの目に最初に飛び込んだものは、常葉愛の遺体であった。
元は小屋の入り口があったはずのその場所に、常葉愛は朽ちていた。
剥けた栗色の髪の下に頭蓋骨の白を覗かせていた。
盆の窪に突き刺さった鉄骨は大きく広げた口から突き出ており、
両目は飛び出さんばかりに見開かれていた。

「シャロンお姉ちゃん……」

思わず目を背けた先に横たわっていたのは、シャロンの遺体であった。
元はテーブルがあったはずのその場所に、シャロンは朽ちていた。
首筋に深く歪な創傷がぱっくりと口を開けていた。
陰部には放たれた精液が、蛞蝓の這いずった跡の如く乾いており、
無念とも自嘲ともとれる表情に固まっていた。

そして。

シャロンの遺体の程近く。
数メートルの面積を保った一際大きな瓦礫。
分厚く無機質なコンクリート壁。
その下から覗いていた。
嘗ては紅葉のようであったちいさな右手だけが。

「あああぁああっっ!!」

その手を見た途端、しおりの中の何かがぶつりと切れた。

「こんな壁が!こんな壁が!」

436ひとりでも、みんなのひとり(4/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:53:25
 
半狂乱になったしおりは、拳を瓦礫に打ち下ろした。
何度も何度も叩きつけた。
そこに技術は無く。基本すら無く。駄々っ子のぐるぐるパンチでしかなく。
柔い童女の皮膚はすぐさま裂け、鮮血が瓦礫に降り注いだ。
それでもしおりは叩いた。
有り余る怒りの感情を拳に乗せ、瓦礫にぶちまけた。

しおりが二日前のしおりであれば、そこで終わりであった。
硬く重い瓦礫に成す術もなく、拳が砕けるのみであった。
しかし、今のしおりは力なき童女ではない。
鼠の耳と、髭と、尻尾を有し、涙と共に炎を身に纏う【凶】である。
拳が壊れるのと同じ速度で、瓦礫を削り崩す力がある。

数分後。
そうしてしおりの両拳と瓦礫とがボロボロに崩れ。
ついに下敷きとなっていたさおりの全身が、姿を現した。

「さおりちゃん……」

右腕と、下半身。それが、醜く潰れていた。
自転車に引かれたカエルよりも尚醜くくひしゃげ、下品に広がっていた。
血溜まりは既に黒く凝固していた。
一度鬱血で膨らんだ顔面は、死後の血液凝固を経ることで再びしぼみ。
かといって一度膨れ上がった表皮は元に戻らず、空気の抜けたゴムマリの趣を見せ。
セルライトの如き数多の皺とひび割れを刻んでいた。
しかも、大小の死斑が至る所に浮き出ている。
人が死体について想像の及ぶ醜さ、不快さの全てが、さおりの遺体には備わっていた。
幼い容姿が、その惨たらしさに拍車をかけている。

437ひとりでも、みんなのひとり(5/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:54:22
 
よほど親しい者でなければ、それがさおりと呼ばれた童女であると気付かぬであろう。
よほど親しい者ならば、それがさおりと呼ばれた童女であることを認めたがらぬであろう。

「ごめんねぇ!ごめんねぇ!」

その無残な遺体を、しおりは抱きしめた。
遺体は黙して、語らない。

「しおりのせいでぇ!」


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


   ナミの手榴弾による小屋の崩落。
   すぐ隣から倒れ掛かる無骨な壁。
   その時しおりが取った行動は、目を閉じ耳を塞ぐことであった。
   命の危機を察知しながらも、それだけしかできなかった。
   恐ろしさの余り、身が竦んでしまったから。

   本来なら、そのまま壁の下敷きになるはずであった。
   庇護者たる常葉愛と同行者クレア・バートンは玄関の傍。
   童女の危機を察知し、救いの手を伸ばすには距離がありすぎる。
   絶体絶命。
   死を覚悟したしおりではあったが、それでも救いの手は伸ばされた。

   「しおりちゃん、危ないっ!」

   救い主の名は、さおり。
   彼女は、しおりの双子の妹。
   彼女は、しおりの愛すべき半身。

438ひとりでも、みんなのひとり(6/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:55:53
 
   さおりは小さな体をいっぱいに広げ、しおりと柱の間に身を投じた。
   計算も自己犠牲もない、打算も勝算もない、衝動的な行動であった。
   ただ、体が動いた。
   姉を守る―――
   それだけであった。

   ぶつかったさおりの背に、目を白黒させるばかりであった。
   弾かれた勢いでよろめき、背後の箪笥にぶつかり、倒れ込んだ。
   思考を進める余裕は、頭脳にも時間にもなかった。
   妹が自分を庇おうとしたのだと理解するのが精一杯であった。

   「えっ? えっ?」

   結果として、この転倒がしおりの命を救った。
   壁は、しおりの背後にある箪笥を潰しきれなかったのである。
   潰しきれぬ箪笥の高さの分だけ、空間が生まれたのである。
   倒れていたしおりは、それ故にこの空間にすっぽりと収まることができた。
   さおりの苔の一念が、岩を通したのである。

   さおりは、しおりのより手前に立っていた。
   故に、箪笥の恩恵を受けることなく、壁の強打を受けることとなった。
   その下半身を潰されることとなった。
   それでもさおりは。

   『よかった。しおりちゃんは無事だね……』

   鬱血で赤く膨れた顔に笑顔を作り、姉の無事を喜んだ―――


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   
.

439ひとりでも、みんなのひとり(7/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 00:56:50
 
あとからあとから溢れる涙は炎となり。
遂には抱きしめたさおりの衣服に燃え移る。

「さおりちゃんは、しおりを守って、死んじゃった」

脂が溶ける臭いがする。
肉が燃える臭いがする。
骨が焦げる臭いがする。
しおりの腕の中で、さおりは態を変えてゆく。
全ては灰と煙と化してゆく。

しおりは、その妹の亡骸を見てはいなかった。
漸く晴れ間を見せつつある空へと吸い込まれるように昇ってゆく煙を見上げていた。
それは、葬儀であった。
しおりが出来る精一杯の弔いであった。

「しおりの命は、さおりちゃんがくれた」

そう。
さおりがその身を盾にしおりを守らなければ。
今、しおりはここにいないのである。
しおりは弔いの中で、ようやくそのことに思い至ったのである。

そしてまた―――

「さおりちゃんだけじゃ、ない」

しおりは回顧する。
この残虐の島で目覚めてからの、己の道程を。
しおりは理解する。
この残虐の島にも、優しい人が沢山居た事を。

440ひとりでも、みんなのひとり(8/8) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 01:00:27
 
「愛お姉ちゃんが。シャロンお姉ちゃんが。鬼作おじさんが。マスターが。
 ここに居なければ、しおりは殺されてた。
 しおりはみんなに、命を貰ったんだ」

しおりは何度も死に掛けた。
しかし、今、ここに生きている。
それは、この童女の力に拠るものではない。
あまりにも弱かった彼女を守ってくれた存在の尽力に拠るものである。
彼女を守り、命を落とした、いくつもの命。
その犠牲の上に、彼女はここに立っている。

今、一人でいるしおりは。
今まで一人でなかったからこそ、存在しているのである。
一人ではあれども、一人ではない。

それはしおりにとっての天啓であった。
内から湧き上がってくる原初の感謝であった。

「しおりの命は、しおりだけのものじゃない。
 しおりを助けてくれた、しおりのためにしんじゃった、みんなのものなんだ。
 だから―――」

しおりは己の半身を己の腕の中で、己の涙で、荼毘に付す。
その可憐な口から紡ぎ出されるは、惜別の言葉ではなく、誓いの言葉。


「―――勝つよ。しおりはぜったいゆうしょうするよ!」


              ↓

441ひとりでも…(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 01:01:06
 
(Cルート)

【現在位置:C−6 小屋1跡】

【しおり(№28)】
【スタンス:優勝マーダー
      ① さおり、愛、シャロンを火葬する】
【所持品:なし】
【能力:凶化、紅涙(涙が炎となる)、炎無効、
    大幅に低下したが回復能力あり、肉体の重要部位の回復も可能】
【備考:獣相・鼠、両拳骨折(中)、疲労(中)
    ※ 拳の骨折は四時間ほどで回復します】

442284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/01/30(日) 18:20:49
新作&本投下お疲れさまでした。
ようやくさおりや愛が弔われたけど、今のしおりを見てると鬱に加速をかけかねないと
思えてしまうのが何とも……。
この度、297話までのまとめをUPしました。
パスはnegiです。
また今週に。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1392556.zip.html

443 ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 23:51:09
今後の投下について。

スレの最大容量は500kbで、本スレの現在容量が484kbです。
次に投下する「ちぇいすと☆ちぇいすっ!〜復路〜」は32kbです。
容量不足となります。

この場合、本来であれば新スレを立てるべきなのですが、
Cルートしか動いていない現状で、自分一人のSSのためだけに
スレ立てすることの是非について、迷っております。

そこで、特に反対がないようでしたら、下記の対応に変更したいと思います。

--------------------------------------------------------------------------------
  1.Cルートに関しては、このスレ(避難所)で進行する
  
  2.ネギ板の本スレでは、Dat落ちするまでの間こちらの投下状況を報告する
  
            ↓ こんな感じで
  
    Cルート 第305話 「ひとりでも、みんなのひとり」
    ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/15097/1270308017/433-441
--------------------------------------------------------------------------------

ご意見ございましたらお願いします。
また、A、Bルートが再開された場合、その意思の表明があった場合は、
新スレを建て、今まで通りの進行でゆきたいと思います。


では、「タクスタスク 〜the final mission〜」、投下致します。

444タクスタスク 〜the final mission〜(1/6) ◆VnfocaQoW2:2011/01/30(日) 23:59:37

(ルートC・三日目 AM10:00 D−7地点 村落)


火災の鎮火を完全に終えた時点で生き残ったレプリカは九体。
うち、破損少なく、機動/思考に差し障り無いのは六体。
Dシリーズは予定通り全滅している。

この、当初の予想を上回る損耗は、二点の予想外の事態を主要因としていた。
原因の1―――
四機のレプリカが作戦最初期の最も人手の要る状況下で原因不明の消失を遂げたこと。
原因の2―――
本拠地の破壊放棄の為に森林全体を俯瞰したオペレーティングが出来なくなったこと。

「まあ、どちらもオリジナル殿に足を引っ張られたということか。
 まったく【自己保存】とは度し難い」

本拠地破壊廃棄の経緯は言わずもがなであるが、今の代行は
初期の四機のロストについてすらも、一部始終を把握できていた。
P−4及びN−48、N−59の三機が、減退復帰したためである。
クラック時の記憶を残していた彼女らの証言によって、
オリジナルの陰謀は明るみにでることとなったのである。
その、N−48とN−59も、既にスクラップと化していた。

「さて代行殿。状況の検証が終わったところで、次なる指示を頂きたいのだがね?」
「Yes、そうだな……」

哨戒型レプリカP−4に促された代行機N−22は、集う八体の顔を順に眺める。
眺め終えて発した指示は、おおよそ司令官の分を超えた理不尽な指示であった。

「N−53、111、116の三機を、破壊することにしようか」

不思議なことに、動揺もどよめきも発生しなかった。
壊す側も壊される側も、従容として受け入れた。

「壊れるなら完璧に壊れなければね。
 またぞろ良からぬ事を企むオリジナル殿などに、
 決して再利用されないように」

なぜならば、レプリカ達の最優先事項は【ゲーム進行の円滑化】。
自己保存の欲求も、同僚への友誼も、全ての評価点はそれを下回る。
故に代行のこの命令は破綻していない。
機械には機械のルールがある。
これは決して残酷な話ではない。

「Yes、代行殿。当然の判断だね」

破壊は、拾った石にての殴打という、非常に原始的な手段で行われた。
分機たちは、二挺の銃を持っていたにも関わらず。
樹木の伐採に用いた、斧や鉈が揃っていたにも関わらず。

理由があった。
代行が指示を出さずとも、残存全智機は次なる行動を予測していた。
同一の思考ルーチン、同一の優先事項を抱く分機たちにとって、
予測の一致は必然であり、確定であった。
恐らくはそれが最後となる、ミッション。
ゲーム進行を円滑化させる為の、最後の戦い。
その為に武器の類を消耗させてはならぬと、認識は統一されていた。

445タクスタスク 〜the final mission〜(2/6) ◆VnfocaQoW2:2011/01/31(月) 00:04:50
 
「代行殿。センサーに反応あり。接近者、二名」
「固体識別は可能か?」
「プレイヤー№12・魔窟堂野武彦と、№38・広場まひるだね」
「Yes。ならばこのままファイナルミッションに移行する。
 ―――演目開始!」


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(ルートC・三日目 AM10:15 D−7地点 村落入り口)


駆けている。
魔窟堂野武彦と広場まひるが道路をひた走っている。
彼らが村落へと向かっているのは、意識を失いし戦友・高町恭也の
治療継続に不可欠な医療用品を収集する為であった。

「あのさ、じっちゃん」
「なんじゃまひるちん?」

互いの呼称に変化が生じたのは結束と信頼を深めたが為。
命を預けあい、一つの戦いを乗り越えた彼らの間には、確かな絆と気安さが芽生えていた。

「たぶんね、村に、ロボ智たちがいるよ」

天使という名のケモノ所以の超嗅覚・千里眼。
まひるのその高性能レーダーが、村落の北端付近に活動するレプリカ智機たちの存在を
敏感に捉えたのである。

「やれるかの?」
「所詮ロボ子、恐るるに足らず!」

野武彦の問いに、まひるは自信ありげに答えた。
瞳は揺るがず、口許には笑みすら浮かべていた。
昨晩のケイブリス戦にて、理性を失わずに戦う自信を獲得したが故に。
しかも、敵は人間に非ず、生物に非ず。機械である。
傷つけるのではなく壊すだけである。
であれば、まひるに恐れる理由は無い。

「では、行こうかの!」

野武彦は腰の45口径を引き抜いた。
まひるは前傾姿勢で右手を前に伸ばした。

「敵襲ッ!」

しかし、奇襲は失敗した。
まひるが超野性を備えるのに同じく、智機たちもまた超科学を備えている。
ソナー・レンズの倍率は、人間の十倍以上に値する。
まひるの察知に遅れること2秒。
レプリカ智機たちもまた、野武彦とまひるの接近に気づいたのである。
 
「No!この損耗著しい時にか!?」
「バッテリーは行けるか?」
「バトルモードで3分強!」
「Yes、ならば戦闘だ!」

446タクスタスク 〜the final mission〜(3/6) ◆VnfocaQoW2:2011/01/31(月) 00:08:39
 
リーダーと思しき一機が、腕を振り上げ、戦闘指揮にかかる。
しかし、その号令に従う機体は皆無であった。

「No、代行。その命令は無効だ。我等の最優先すべきタスクは何だ?
 その大事なスイッチを、無事オリジナル殿に届けることだろう!」
「Yes!だからこそ私はプレイヤーどもにスイッチを奪われぬ為に、
 迎撃を命じているのだが?」
「重ねてNoだよ代行殿。残念ながら我々の戦闘力では、
 あの二人を撃退できない可能性が非常に高いと試算されている」
「では、どうしろと?」

五体のレプリカが二歩、前に出た。
横一列に整列した彼らの隊形は、リーダーらしき機体を匿う壁の如しであった。


「「「「逃げろ、代行殿!」」」」


すぐさま総力戦が始まると予測していた野武彦とまひるにとって、
この戦局の変化は予想外であった。
予想外故に機先を制される――― かと思いきや。
分機たちもまた、意思の不疎通により、機を掴み損ねていた。

「しかし……」
「No、貴機だけは逃げ延びねばならないのだよ。
 オリジナル殿にスイッチを渡さねばならないのだから」
「さあ行き給え。オリジナル殿が待つ灯台跡まで。
 我らを代表して、そのタスクを達成してくれ給え」
「その為に我ら四機、盾となろう!」
「P−4、ジンジャーは2台ある!
 最も乗りなれている貴機が代行殿に併走し、万一の護衛となり給え!」
「Yes。 行くぞ、代行殿!」

壁となっていた五機のうち一機が後方へと退き、逡巡を見せる代行の手を引いた。
引いた先の民家の壁には、二機のジンジャーが立てかけてあった。

「……貴機らの献身、無にはしないよ!」
「お達者で、代行!」

代行は胸に去来する思いを振り切ると、壁と立ちふさがる四機に背を向ける。
P−4がすぐさまカスタムジンジャーを代行に差し出し、代行は無言でそれを受け取り。
二機は並んで村落の東へとジンジャーを走らせる。

「じ…… じっちゃん! ロボ智さん逃がしていいの?
 大事なスイッチとかオリジナルとか言ってたけど……」
「そうじゃな…… そのスイッチが何の為にあるのかはわからんが、
 決してわしらの為にはならんモンじゃろて。 しかし……」

鉄の壁となるを決意している四機のレプリカ達は、
その手に斧や鉈を持って、野武彦たちへと詰め寄ってくる。
野武彦はその四機とまひるとを交互に見やる。
眼差しには不安と心配が宿っている。
それを、まひるは断ち切った。

「加速装置…… あれ使えば間に合うよね?」
「しかしまひるちん、一人で四機の相手とは……」
「レベルアップしたまひるちんのパゥア、甘く見んなぁ?」
「……すぐ戻ってくる。 無茶はするなよ!」
「一度は言ってみたかったこのセリフ! 『ここは俺に任せて先に行け!』」

447タクスタスク 〜the final mission〜(4/6) ◆VnfocaQoW2:2011/01/31(月) 00:13:31
 
まひるの表情に不安の色が無いことを察した野武彦は、
カチリと奥歯を噛み合わせ、風と同化し、消えた。
人ならざるペンタグラムの瞳を持つまひるの動体視力を以ってしても、
加速状態にある野武彦のうしろ姿は捉えられなかった。

「N−55、59、魔窟堂を止めろ!」
「おっと! じっちゃんは追わせないよ!」

獣ではない。昆虫の姿勢で。
まひるがN−55の背後に回り込む。
ざわめく異形の爪が、猫のそれの如く、じゃきりと伸びた。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


数々の激戦の舞台となった病院跡の付近。
最高速40Km/hを誇る二台のカスタムジンジャーは、
島唯一のアスファルト舗装を施された道路を東へとひた走る。
その後方からタン、タンと。
グロック特有の軽く乾いた発砲音が響き渡った。

「四機が二人を抑えてくれているようだね」
「Yes。 彼女らの犠牲を無駄には……」

出来ないね、と。
そう続くと思われたP−4の言葉はかき消された。
454カスールの発した、獰猛な発砲音によって。

「確かにお前さんのジンジャーは速かった……」

P−4の搭乗するジンジャーは緩やかに速度を落としつつ道路を外れ、
運転者を振り落とすと同時に、横転した。
P−4の胸からは白煙。
拳より大きな穴が、その胸に穿ちぬかれている。

「だが日本じゃあ二番目じゃな」
「……な?」

代行の走る前方に、魔窟堂野武彦がいた。
代行の進路を塞ぐが如く、仁王立ちしていた。
夕焼けの書割をバックに、銃口の硝煙に息を吹きかけ、カッコつけていた。
往年の、親友の仇討ちに燃える万能名探偵になり切っていた。
その余裕に、遊び心に。
代行は、自らの運命を悟った。

「加速装置、か……」
「いかにも」
「万事窮す、か……」
「いかにも」
「で、あれば……」

代行は胸ポケットから分機開放スイッチを取り出すや、それを大きく振り上げる。

「ならば、いっそ!」

敵の手に渡るくらいならばと思い余って。
振り下ろし、叩き付け、破壊してしまおうとしている。
代行の動きをそう受け取った野武彦は、再び奥歯を噛み鳴らす。

448タクスタスク 〜the final mission〜(5/6) ◆VnfocaQoW2:2011/01/31(月) 00:23:09
 
空間が白黒反転する。音と臭いが消える。
野武彦ただ一人しか入門できない、超加速の世界が幕を開ける。
野武彦はコールタールに浸かったかの如き緩やかな動きを見せる代行機に、
数多の残像を残しながら詰め寄って。
振り下ろし始めたばかりの代行の手から、見事スイッチを奪い取る。

「ズバっと参上!」

そのまま五、六歩走りぬけ、野武彦は反転。
代行N−22に再び向き直ったところで、加速の世界は幕を閉じた。
N−22の腕は何も握らぬまま、ただ空気を地面に叩き付けていた。

「それを返せええええ!!」

スイッチを奪われたことに気付いたN−22は、絶叫と共に野武彦に踊りかかる。
野武彦は、既に中腰にて454カスールを構え終えていた。

「ズバっと解決!」

決め台詞と共に、轟砲一声。
代行機の、人であれば心臓があろうかという位置が、左腕ごと吹き飛んだ。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


「じっちゃん、間に合ったみたいだね!」
「おお、まひるちん! やつらはどうしたのじゃ?」
「ザ・瞬☆殺!」
「いやはや、ほんとうにレベルアップしたのう!
 戦う愛らしき女装少年! よいよい!」
「うがーっ! 少年じゃないんだってばさ!」

N−22は、まだ壊れ切っていなかった。
とは言え、N−22の残り稼働時間は、すでに一分を切っていた。
自発的な行動は不可能。
唯一生きている聴覚を持って野武彦たちの会話を拾うのみである。

「あれ、ノートPCなんて持ってたっけ?」
「このリーダー椎名の荷物じゃ。 何かよい情報でも入っておれば良いがな」

スイッチを奪われ。
武装を奪われ。
PCを奪われ。
一矢すら報いることなく。
脅威すら与えることなく。
同胞を犬死にさせ。
今、自らも、終わりのときを迎えようとしている。

しかし、彼女の胸を満たすのは敗北感でも後悔でも無い。
達成感、である。

(我々からのギフト、心置きなく活用してくれ給え……)

そう。
オリジナル智機が覚醒するキーとなる分機開放スイッチを守らせ、
残存するアイテム群やゲーム裏情報ををプレイヤーに譲り渡す。
これこそが、分機たちのファイナルミッションであった。

449タクスタスク 〜the final mission〜(6/6)(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2:2011/01/31(月) 00:30:45
 
代行は演算した。
これまでの智機本機の策謀やプレイヤーたちへの関わり方をシミュレートした。
結果、プレイヤーたちには自分の言葉は信用されないとの解が返された。

素直に託そうとしたならば、プレイヤーは拒絶するであろう。
理を語り言葉を尽くして交渉しても、事は同じであろう。
仮に受け取って貰えたとしても、猜疑心は拭えないであろう。

であれば。
奪わせればよい。
 
野武彦とまひる。
この二名が相手であったことは、代行らにとって僥倖であった。
小屋組の中で単純、かつお人良しのツートップである彼らであればこそ、
レプリカ達の愚にも付かぬ三文芝居にまんまと騙され、
戦闘の手を抜かれたことにも気付かぬまま、
ほくほく顔で物資を略奪していったのであるから。
代行の手の平の上で、完璧に踊ってくれたのであるから。

(魔窟堂野武彦はスイッチを叩き壊す行為を見過ごさず、わざわざ奪い取った。
 これはオリジナル殿に使用させないように、守ってくれることの証明だね。
 Yes! もう、後顧の憂いは一切無くなった!)

代行の胸の孔の奥から、熱した鉄板に水を差すが如き音が、小さく聞こえた。
それは、マザーボードに漏れた冷媒が侵食し、回路短絡を起こした音であった。
機械としての死を告げる音であった。

(これにてファイナルミッション、無事にコンプリートだ)

こうして、椎名智機のレプリカ170機最後の一体が、沈黙する。
プレイヤー達が見事に主催者達を殲滅し、ゲームが円満終了する確信を抱いて。

               ↓



(ルートC)

【現在位置:E−6 病院前道路 → E−7 廃村】

【魔窟堂野武彦(元№12)】
【スタンス:廃村で市販薬品をかき集める】
【所持品:軍用オイルライター、鍵×4、簡易通信機・小(←まひる)、
     ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング、454カスール(残弾3)】

【広場まひる(元№38)】
【スタンス:廃村で市販薬品をかき集める】
【所持品:せんべい袋】


 ※レプリカ智機は全滅しました
 ※灯台跡に主催者たちが潜伏しているらしいと知りました

 ※以下の道具を、レプリカ達から入手しました。
 ※カスタムジンジャー×2、グロック17×1、手錠×2、斧×3、モバイルPC、
 ※USBメモリ、簡易通信機素材(インカム等)一式×5、鉈×1、分機解放スイッチ

 ※USBメモリ、モバイルPCの中身は未確認です

450284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/01/31(月) 01:03:41
>>443
新作お疲れ様です。
今週の金曜日までに16kb以下の新作をここに仮投下する予定です。
もしそれまでに間に合わなければ、2で進行すればいいと私は思います。
こちらのまとめはここで本投下宣言していただければ、それに対応いたします。

期限過ぎた場合、こちらが作品投下できても相当数(5作品以上)できないと
本投下は考えませんので、氏の好きなように進めていってOKです。

451無題(1) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:00:11

>>223-237

(Aルート:二日目 PM6:33 D−6 西の森・小屋3)

小屋の中に殺気は今は感じられない。
あるのは喧騒。
ランスとレプリカ智機P−3の色欲に彩られた息遣いと、紗霧の静かな呼吸。
そして5人の戸惑いに彩られた呼吸と嘆きが入り交じったもの。

「マジですか?」

動揺が混じった声色でまひるが誰に向けるもなしに呟いた。
返事をするのも面倒という感じで紗霧は無言で視線を送る。

「がはははは、いい方法じゃないか紗霧ちゃん」

上機嫌のまま、その展開がさも当然であるかのように
ランスはP−3への愛撫を続ける。
P−3は快楽に抗いながらも、交渉をしようとするができそうになかった。

452無題(2) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:01:04

ユリーシャは不機嫌なまなざしを隠そうともせずに問う。
紗霧は自信ありげに口元を歪ませ、不敵なまなざしで応える。
他の3人は困惑しながら、4者を眺める。

「椎名さん、行為に没頭するのは結構ですが、貴女の返事はどうなんですか?」
「う……うう、ランスくん少し止めてくれないか……んぐっ」

ランスは指の運動を止めようとしない。

「ランス、ここで終わってもいいんですか?」

威厳のない可愛らしい、
ただどこか凄みと殺気を帯びた声で紗霧は行為を制止しようとする。

「ああ早く済ませてくれ、智機ちゃんも待ってるからな」
「……だれ、が」

紗霧は頷き、それに魔窟堂と恭也は安堵した。
ユリーシャは目に色はそのままに紗霧とランスらを交互に見つめていたが
まひるが心配そうに見ているのに気づき、とっさに平静を装った。

453無題(3) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:01:40

P−3は後頭部から蒸気を排出するのを抑えながら、荒く息を吐くように返答した。

「OKだ。それで構わない」
「了承。ランスまだ早いです」

紗霧はランスに釘をさすのを忘れず、魔窟堂ら4人の顔を見渡した。
それに魔窟堂と恭也がやや困惑する。

「ここは私と……ランスに任せて下さい。
 椎名さんとランスの行為は見たくはないでしょう?」

目で笑いながら、口元は微妙に……意識して引きつらせながら
紗霧は魔窟堂らの退出を促した。
4人は視線を交わし、その意味を察した。
紗霧はランスに目配せし、彼はそれに応えるように、
実は都合よく解釈し指での愛撫を再開した。

「……うむ、そうじゃな後は任せたぞ紗霧殿。後で詳しくな」
「…………」

454無題(4) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:02:44

「あ……」

魔窟堂の応答の直後、ユリーシャは表情を変えずに出口に向かった。
思わず声を上げるまひる。

「行くか恭也殿」
「ええ」

魔窟堂と恭也は席を立つ。
その間にユリーシャはランスを一瞥した。

「……」

ランスはユリーシャに気づいていない。
想い人の鼻息とP−3を聞きながら、彼女は頭を振ってドアを開けた。

「……ねえ、大丈夫?」

まひるは紗霧の方に視線を向けて、心配そうに言った。

「ランスの事も私に任せて下さい」

455無題(5) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:03:36
自信満々とまではいかないが、そんな面立ちで紗霧は言った。
根拠の無い自信ではない。
自身が関わらない上での事だが、他者の性行為を見た事は何度かある。
彼女の脳裏にうっすらと浮かぶのはかつての母校、富嶽学園。
嘗て元の世界で猪乃健の部下をやってた頃。
猪乃から信頼を、そして理想を適える下準備の為に
学園内にいる敵対勢力から派遣されたスパイの摘発をした事があった。
当然ながら摘発されたスパイの中には女性も含まれており、
燻り出された女スパイは猪乃の部下達に輪姦され、
その後、男のスパイと一緒にまとめて『粛清』された。

その惨状を当時の紗霧は猪乃と共に平然と見つめていたのだ。
もっともその一件以降は、性暴力に手を貸す行為は、例え主君が敵対校の
女生徒に軽いいたずらを希望しても跳ね除けていたのだが。
今、紗霧は仲間のいない世界にいて、非道な行いもしている。
今更他者の性暴力に……ましては一応は和姦であるランスの行為を
許容するのに抵抗などあるはずがない。
紗霧はそう直感していた。

「それじゃなくて……」

まひるの否定に紗霧の眉が動き、問いの意味を探る。

456無題(6) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:04:44
「内蔵スタンガンでしょう?
 心配しなくても万が一にも私に危害が及ぶ訳でも無し」

強化Nシリーズとの戦闘で、まひるを数瞬朦朧とさせた武器の名を紗霧は出した。
半分以上は冗談だったのだが、流石にランスは少々気を悪くし手を止めて言った。

「俺様は智機ちゃんにやられるヘマはしないぞ」

ランスはジト目で紗霧を見て、すぐさまP−3に興味を移すと愛撫を再開した。
P−3は言葉はない。
紗霧は呆れたようにため息を付いた。

「ボディチェックも済ませましたし、
 貴女の出来る事はもうこの場では無いようですが?」
「う〜ん……」

渋るまひるにようやくP−3は反応した。

「私は……戦闘用ではない、
 まぁ言った所で充分な信用は得られるとは思ってないが、ねっ」

嘘ではなかった。

457無題(7) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:08:15

「がははは、それではお前はなんなのだ!」
「あ、ん……ふざけな……いでっ」

言葉でからかいながらランスはP−3への性感帯への愛撫を続ける。
P−3は言葉で抗おうとするがまるで無力だ。

「……これ以上、ここにいるのは嫌でしょう?」
「ちょっと待って」

うんざりとした感じの紗霧をよそに、まひるはP−3に顔を向けた。

「おっ」

ランスが何故か期待の入り交じった声を上げ、紗霧はそれに不機嫌な表情を浮かべる。
まひるは生理的な嫌悪を抑えつつP−3を凝視する。

「……」

まひるから見てP−3からは殺気のようなものは感じられず、
取り立てて異臭も……ランスの体臭が主に嗅ぎ取れるのみ。

458無題(8) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:10:04

「…………」

紗霧の視線がまひるにはちょっと痛かった。
邪魔に思ってるんだろうなあと感じつつ、思い出す。
前の小屋の探索を断られたのを。
このまま引き下がるのもちょっと悔しい気がした。
だが疎外感と若干の無力感がそれを上回りつつあった。
何かが引っかかっていた。
まひるは目を閉じ、考えた。
紗霧は覗きの趣味が……と口に出そうとしたが止め、彼が折れるのを待った。

「………………」

まひるは目をゆっくり開け、知恵熱なのかちょっと立ちくらみがしたが、
諦め半分にP−3へと数歩近づくと匂いを嗅いだ。

「……」

すぅと息を吸うまひるの呼吸音が聞こえ、彼は沈黙した。
紗霧の片眉が興味深そうに動く。
ユリーシャが異変を肌で敏感に感じ取り唾を飲み込んだ。

459無題(9) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:12:08

そしてまひるは振り向きもせずに唐突に言った。

「ねえ紗霧さん、病院で最後に倒した奴については話したっけ」
「……自爆した固体ですね。それが?」
「……」

恭也はユリーシャになにか断りを入れると、ドアを開けた。
ただ話を聞いていただけでなく、小屋の内外を警戒していたのだ。

「どうやって自爆したかまでは話してないよね」
「爆弾を所持してたのではないんですか」

内蔵爆弾で自爆したまでは紗霧は知らなかったが、声色は変わらない。
P−3がそういった装備がないと確信していたから。

「こいつにもし、あの時の様に毒ガスか何かが仕込まれてたら」

まひるの声色も変わらない。
緊張も感じられない、ただどこか無機質な疑問のみ。

「なあに心配いらん、俺様の勘がこいつに害がないと言っている」

460無題(10) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:13:41

「……で、貴女はどうしたいと」

ランス自身の命さえも奪いかねない、兵器の存在を耳にしても
彼の調子は変わりそうになかった。
紗霧はそれを戯言と判断してまひるに問うた。

「う……」
「待ちたまえ!」

突如、まひるが言うのを遮ってP−3は会話に割り込んだ。

「…………」
「OH……広場まひる。はあ……君も会話に、はあ……参加したいのかね?」

彼は無言でP−3の問いに肯定する。

「はぁ……むお……君も交渉のテーブルに就くというなら、私は……不安になる」

これまでされるがままだったP−3が両手を振り回し、初めてランスに抵抗した。

461無題(11) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:15:39


「がはは……心配いらん、主催のヤロウが襲ってきたら返り討ちにしてやる」
「…………成程、彼女を警戒している訳ですね」

ランスの戯言が終わるのを待って、紗霧はP−3の要望を代弁した。

「YES。いきなり破壊されては堪らないからね、
 可能なら月夜御名紗霧とランスの3者のみで交渉したいのだよ」

智機の扱うコンピューターは5%にも満たない低確率でだが
P−3が広場まひるにこの場で破壊される可能性を弾き出している。
駒をこれ以上無用に損することは、オリジナルにもP−3にも避けたい事態だった。
紗霧は視線だけを動かし、まひるに席を外すように言おうとする。

「あたしたちに今なにかした?」

今度はまひるが紗霧より先にさっきと同じ調子でで言った。

「No……私にそんな余裕はない……」

紗霧らが見る限り、P−3が何かした気配はない。
見受けられる一番の異変はまひるの様子だ。

462無題(12) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:16:45

「……」
「どうしたのですか?」

やや離れた所でユリーシャが言った。
紗霧はあえてここは何も言わなかった。

「…………」

まひるは頭を抱えて嘆きたい気持ちだった。
失念していた。
まだ現時点での自らの能力の限界を把握できてなかった。
もし目の前のP−3が毒を内蔵してたら、ほぼ確実に危機に陥っていた。
今は無事に見えても、』既に致命的な失策をしてしまったかも知れない。
彼は喪失の恐れからくる焦燥を押し……殺すまでもなく、
持ち前の本能……異能を駆使し感情を凍結させ周囲を観察していた。
先程まで嗅ぎ取れなかった、嗅いだことのない様な異臭が

まひるの鼻には感じ取れていた。
血の匂いでも、P−3の匂いでも、ランスの体液のものでもない。

463無題(13) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:18:17

何処か不吉さえも感じとれる何とも似つかない匂い。
それがさっきまで嗅ぎ取れてなかった。
匂いの発生源は解っているが、何分異世界が関わっていると知ってた上に
今はP−3という敵がいる。
だから今は詮索できない。
まひるは徐々に感情を呼び起こしながら、思わず右手を頭に当てた。

「……ちょっと立ち眩みが……」

これも嘘ではなかった。

「それじゃったら尚更、外に出て……」

魔窟堂はそう気遣った。 
紗霧にもそれが嘘でないと見れた。
今は目の前のP−3……敵に対応しなきゃいけない。
まひるはそう判断した。

「ううん……だいじょぶ。紗霧さん、あたしもその話し合いに混ぜてくれないかな?」

464無題(14) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:20:43

小さく笑いながら、ただしまなざしは真剣に紗霧に願い出る。
紗霧は髪に指を絡め、しばし黙考していたが、ランスに若干強い調子で言った。

「……ランス、今は、その性行為は止めてください」
「………………何でだ、紗霧ちゃん?」

なかなか性行為を止めようとしないのを見て、
紗霧の殺気は膨れ上がっていっていた。
ようやくそれにに気づいたランスは不満の声を上げた。 

「はあ……はあ……どういうつもりかね……?」

息を整えるP−3に紗霧は更なる条件を告げた。

「交渉のテーブルには貴女と私とランスとまひるさんが参加。
 他は皆さんは外で待機。
 ただし、ランスには貴女が望む限りさっきの様な行為はさせませんし
 我々の安全が確認される限りはまひるさんに破壊はさせません」

P−3は思わず眼を瞬きさせた。

465無題(15) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:21:33

そして苦笑しながら、いつものように上から目線でなく下から目線で言った。

「OH……よく吟味すれば……随分そちらに都合のいい話だね……」
「早く答えてくださいな。はいか、YESで」

不敵な笑みで選択でない選択を紗霧はP−3に迫った。
                
「…………フフ、いいだろう条件を飲もう」
「魔窟堂さん」
「うむ」

魔窟堂は力強く頷くとユリーシャと共に出入口へ向かった。
ユリーシャはランスの方に振り向こうとしたが、
先程の不安が若干薄れたこともあり止めた。

「ちぇ……」

ランスが不満げな声に紗霧は不機嫌そうに顔をしかめるが
構わず椅子に座り直した。

466無題(16) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:22:48

「貴女達にはさてキリキリ喋って頂きましょうか?」
「Why?ここにいるのは私一体のみだが?」
「そうでしたね……ねえ、まひるさん」
「…………うん」

戸惑いの表情を浮かべるP−3と、面倒くさそうに
ただP−3との性行為の機会を狙うのを忘れてないランスを他所に、
紗霧とまひるは曖昧な笑みを浮かべながら言葉を交わした。

「後悔しても知りませんよ?」
「……」

まひるのランスへの反応からして、これから目の前で繰り広げられる事は
苦痛であると紗霧は思っていた。
だがまひるの方もそれくらいの覚悟は……

467無題(17) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:23:29
最善をつくすための覚悟は口にするまでもなくできていた。

「もっとも……足手まといと判断したら、
 ちゃっちゃと出て行ってもらいますから」
「ん?」
「う……努力する」

紗霧はその言葉に肩をすくめると本調子に戻ったP−3へ向き合った。

色情をP−3で(大きな隙が出来れば紗霧やまひるにも)
どうにか満たそうとするランス。
彼の色情に惑わされるP−3。
かつては形や経緯は別にして、実際の性暴力を眼にしても揺らがなかった紗霧とまひる。
そんな4者の交渉はここから始まる。

                      ↓

468無題(情報1) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:24:31

(ルートA)

【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【備考:全員、首輪解除済み】


【現在位置:D−6 西の森外れ・小屋3】

【月夜御名紗霧(元№36)】
【スタンス:P−3との交渉をうまく進める(ランスが性行為を望むなら黙認する)
      まひるが察した何かを探る、まひるが交渉の邪魔になったら小屋から追い出す
      反抗者を増やし主催者へぶつける、計画の完遂、モノの確保、
      状況次第でステルスマーダー化も視野に】
【所持品:スペツナズナイフ、金属バット、レーザーガン、ボウガン、
     スコップ(小)、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、
     文房具とノート、白チョーク1箱、謎のペン×8、
     薬品数種類、医療器具(メス・ピンセット)、対人レーダー、解除装置】

469無題(情報2) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:26:12

【広場まひる(元№38)】
【スタンス:P−3から情報を聞き出す(まだどの情報かは具体的には決めていない)
      P−3への警戒】
【所持品:せんべい袋、干し肉、斧、竹篭、スコップ(大)】

【ランス(元№02)】
【スタンス:隙あらばP−3にスケベな事をする。
      女の子優先でグループに協力、プランナーの事は隠し通す
      男の運営者は殺す、運営者からアリス・秋穂殺しの犯人を訊き出す、】
【所持品:なし 】
【能力:武器がないのでランスアタック使用不可】
【備考:肋骨2〜3本にヒビ(処置済み)・鎧破損】
 

【レプリカ智機(P−3)】
【スタンス:ザドゥにぶつけるための交渉?、時間稼ぎ、?】
【所持品:?】

470無題(情報3) ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:26:56

【現在位置:D−6 西の森・小屋3→西の小屋外】


【魔窟堂野武彦(元№12)】
【所持品:軍用オイルライター、銃(45口径・残7×2+2)、
     白チョーク数本、スコップ(小)、鍵×4、謎のペン×7、
     ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング、
     スピーカーの部品、智機の残骸の一部、集音マイクセット、
     携帯用バズーカ(残1)、工具】

【高町恭也(元№08)】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、保存食、
     釘セット、救急セット、】

【ユリ―シャ(元№01)】
【所持品:生活用品、香辛料、使い捨てカメラ
     メイド服(←まひる)、 ?服×2(←まひる)、干し肉(←まひる)】

【三人の共通スタンス:外敵への警戒、小屋内の会話の把握】

471284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/04(金) 07:32:11
新作投下終了です。
何とか間に合いまいた。
今作の容量を調整すれば、本スレはこれで大丈夫だと思います。
すごく遅れた分、こちらも何とか進行していきたいと思います。
また新作を書き上げたらその作品から次スレに投下したいと考えてます。
また詳しい話は今夜以降に。

472284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/05(土) 23:23:44
先に報告。
他の作者さんから異論がなければ
来週の火曜日に加筆修正ならびに容量調整した>>250-269
本スレに本投下したいと思います。
新スレ立てのこともありますし、レスお待ちしています。

473 ◆VnfocaQoW2:2011/02/07(月) 07:43:35
>>472
本スレ投下の件、了解致しました。

474284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/07(月) 21:36:18
>>473
レスどうもです。
明日、夜9〜10時に>>250-270を本スレに投下します。
容量のために状態表は一部省略する事になると思います。
その翌日にまとめをUPします。

475284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/08(火) 23:33:36
投下完了です。
本スレにて長時間支援していただいた方、本当にありがとうございました。
明日、夜9時頃まとめをUPします。

476284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/08(火) 23:35:16
容量残せたでしょうか……?

477名無しさん@初回限定:2011/02/08(火) 23:37:16
500KB行ってますよー

478284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/08(火) 23:41:53
ごめんなさいorz
501KBまで達してなければと思ったのですが……。
明日のまとめUP以降にここの前スレで仮投稿したのを、
新スレ作成後に本投下しようと思います。

479284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/09(水) 21:14:17
新スレについてですが、もし他の作者さんの本投下が今週の土曜まで未定でしたら
来週の日曜日に私が新スレ立てるのと同時に作品投下を開始します。
その場合、前日にどの時間、どの作品を投下するか告知します。
まとめも本スレにUPします。

それと現在、保管サイト第一避難所が290話までで停止してますので
1週間内に管理人さんからご連絡、または更新がなければ
何らかのフォローを考えます。
      
新作298話までのまとめをUPしました。
パスは negi です。

ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1332636.zip.html

あと新スレのテンプレ案は下のレスに。

480テンプレ案:2011/02/09(水) 21:22:44
前スレ
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第7部
ttp://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1228228630/
<感想・質問等はこちらへ↓>
関連スレ
企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/15097/1270308017/


過去スレ・過去関連スレなどはこちら >>2
参加者表その1はこちら >>3
参加者表その2はこちら >>4
主催者表はこちら >>5

割り込み防止用 >>2-10

常に【sage】進行でお願いします


※ルート分岐のお知らせ
前スレ>>238「生きてこそ」以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。
経緯につきましては、新・総合検討会議スレの886以降をご参照ください。

481テンプレ案:2011/02/09(水) 21:23:47

【過去作品スレ】
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第6部
ttp://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1122229185/
バトル・ロワイアル【今度は本気】第5部
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1053422142/
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第4部
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1044/10442/1044212918.html
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第3部
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1029/10293/1029399672.html
バトル・ロワイアル。【今度は本気】 第2部
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1012/10127/1012701866.html
リアル・バトル・ロワイアル。【今度は本気】
ttp://www2.bbspink.com/erog/kako/1008/10085/1008567428.html


過去関連スレ
【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/15097/1091460475/
【リアル・バトル・ロワイアル。】 総合検討会議(消失)
ttp://doom.on.arena.ne.jp/cgi-bin/giko/hinan/test/read.cgi?bbs=erog&key=008871626
【バトル・ロワイアル。】 総合検討会議 #2(消失)
ttp://doom.on.arena.ne.jp/cgi-bin/giko/hinan/test/read.cgi?bbs=erog&key=012551729


葱板バトルロワイアル 保管サイト第一避難所
ttp://d1s.skr.jp/ergr/
編集サイト(現在休止中?)
ttp://syokikan.tripod.com/

482テンプレ案:2011/02/09(水) 21:24:26

◆参加者1(○=生存 ×=死亡)

○ 01:ユリーシャ  DARCROWS@アリスソフト
○ 02:ランス  ランス1〜4.2、鬼畜王ランス@アリスソフト
× 03:伊頭遺作  遺作@エルフ
× 04:伊頭臭作  臭作@エルフ
× 05:伊頭鬼作  鬼作@エルフ
× 06:タイガージョー  OnlyYou、OnlyYou リ・クルス@アリスソフト  
× 07:堂島薫  果てしなく青い、この空の下で・・・。@TOPCAT
○ 08:高町恭也  とらいあんぐるハート3 SweetsongForever@ivory
× 09:グレン  Fifth@RUNE
× 10:貴神雷贈  大悪司@アリスソフト
× 11:エーリヒ・フォン・マンシュタイン  ドイツ軍
○ 12:魔窟堂野武彦  ぷろすちゅーでんとGOOD@アリスソフト  
× 13:海原琢磨呂  野々村病院の人々@エルフ
× 14:アズライト  デアボリカ@アリスソフト  
× 15:高原美奈子  THEガッツ!1〜3@オーサリングヘヴン  
× 16:朽木双葉  グリーン・グリーン@GROOVER
× 17:神条真人  最後に奏でる狂想曲@たっちー
× 18:星川翼  夜が来る!@アリスソフト  
× 19:松倉藍(獣覚醒Ver)  果てしなく青い、この空の下で・・・。@TOPCAT
× 20:勝沼紳一  悪夢、絶望@StudioMebius

483テンプレ案:2011/02/09(水) 21:24:57

◆参加者2(○=生存 ×=死亡)

× 21:柏木千鶴  痕@Leaf
× 22:紫堂神楽  神語@EuphonyProduction
× 23:アイン  ファントム 〜Phantom of Inferno〜@nitro+
× 24:なみ  ドリル少女 スパイラル・なみ@Evolution
× 25:涼宮遙  君が望む永遠@age
× 26:グレン・コリンズ  EDEN1〜3@フォレスター
× 27:常葉愛  ぶるまー2000@LiarSoft
○ 28:しおり  はじめてのおるすばん@ZERO
× 29:さおり  はじめてのおるすばん@ZERO
× 30:木ノ下泰男  Piaキャロットへようこそ@カクテルソフト
× 31:篠原秋穂  五月倶楽部@覇王
× 32:法条まりな EVE 〜burst error〜@シーズウェア  
× 33:クレア・バートン  殻の中の小鳥・雛鳥の囀@STUDiO B-ROOM
× 34:アリスメンディ  ローデビル!@ブラックライト
× 35:広田寛  家族計画@D.O.  
○ 36:月夜御名紗霧  Rumble〜バンカラ夜叉姫〜@ペンギンワークス
× 37:猪乃健  Rumble〜バンカラ夜叉姫〜@ペンギンワークス
○ 38:広場まひる  ねがぽじ@Active
× 39:シャロン  WordsWorth@エルフ
○ 40:仁村知佳  とらいあんぐるハート2@ivory

484テンプレ案:2011/02/09(水) 21:25:53

◆運営側(○=生存 ×=死亡)

○ 主催者:ザドゥ  狂拳伝説クレイジーナックル&2@ZyX
× 刺客1:素敵医師  大悪司@アリスソフト  
○ 刺客2:カモミール・芹沢  行殺!新選組@LiarSoft
○ 刺客3:椎名智機  將姫@シーズウェア
△ 刺客4:ケイブリス  鬼畜王ランス@アリスソフト(ルートC死亡)
○ 監察官:御陵透子  senseoff@otherwise

485284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/09(水) 21:26:28
以上です。

486 ◆VnfocaQoW2:2011/02/11(金) 20:19:37
>>Only he noticed.
全編に渡ってもやもやとした不穏な空気が漂っていますね。

ランス以外の三者が、何を意識し、何に気付いているのか?
この後に続く交渉編が完結した折には、
ああ、なるほどな、と。
ここは、こういう意味だったのか、と。
本編でぼやかしている部分がクリアになって、
スッキリできる構図なのかと邪推しています。

そうした意味で、続編投下後に読み返すのが楽しみな一遍です。


>>479
スレ立てタイミング、テンプレ案共に了解です。
またAルートの継続が確認できましたので、当方も来週以降、
本スレへの投下を継続させて頂こうと思います。

487284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/12(土) 19:17:13
明日、夜7時頃に新スレを立てます。
その後、継続して避難スレ1の>>996-1000の作品 「It tries」を本投下します。

>>286
感想ありがとうございます。

488 ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:41:26
以下16レス、「告」を仮投下致します。

489告(1/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:42:44

(ルートC・3日目 AM11:00 J−5地点 地下シェルター)


椎名智機は憤慨した。
ザドゥたちは確かに自分の戦略を受け入れたのだ。

   ―――仮称「小屋組」を崩壊させること。
   ―――№28・しおり他一名を残すこと。
   ―――この二名にて決戦させること。

にもかかわらず、今、自分は蚊帳の外で。
ザドゥとカモミール芹沢は勝手に戦術を練っている。
それは、愚かな戦術であった。
それは、勝ち目の少ない戦術であった。

故に智機は力説した。
バカな子供にでも分かるように、小学校の教師の如く
辛抱強く、平易な言葉で、繰り返し教え込んだ。

   ―――馬鹿げている。
   ―――根性論に過ぎる。
   ―――捨て鉢だ。
   ―――実効性が低い。

だのに、ザドゥは聞き流した。
だのに、芹沢はザドゥに倣った。

無論、智機のコメントは批判のみに留まらぬ。
建設的に、積極的に、代替の策も提示していた。

490告(2/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:43:27
 
   ―――離間の計
   ―――ハニートラップ
   ―――透子の瞬間移動を用いた暗殺
   ―――仁村知佳人質作戦

それすら、ザドゥは聞き流した。
それすら、芹沢はザドゥに倣った。

故に智機の怒りは頂点に達した。
トランキライザが許容する限界の怒りが持続状態となり、
机に拳を、ザドゥに言葉を叩きつけた。



「だから、果し合いなどナンセンスだと言っている!」



そう。ザドゥと芹沢は。
小屋組に果たし状を叩き付け、策も陰謀も罠もなく、
全戦力を全戦力を真正面からぶつけ合って、
正々堂々と決着をつけようと、主張しているのである。

この主張、決して玉砕覚悟の特攻に非ず。
煩悶と懊悩を経て純化されたザドゥの、揺ぎ無い自負心の表れである。
小ざかしい策を弄すを排して、圧倒的な暴で捻じ伏せるのみ。
当然の如くそれが成ると確信している。

「首魁は俺だ。 従えぬなら出て行け」

491告(3/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:44:44
 
芹沢は、そのザドゥの自信に同調している。
果し合いという、明快で正統な手段を好ましく思っている。
その上、芹沢には士道に根ざした潔さと、淋しがり由来の甘っちょろさが同居している。
為に、智機の示す卑怯・陰険な策略は感情的に許容できぬ。

「だってだって、ともきんの策ってずっこいんだもん〜」

故に、智機の思いは、理は、二人に決して届かない。
小煩い蝿の耳障りな羽音にしか聞こえていない。
それでも智機は食い下がり、論理的に反駁する。

「No。 既に我々の管理者権限は失われているのだよ。
 であれば私が貴君の命令を受ける謂れがないのは自明だと思うのだが?」
「そうか、では勝手にしろ。 俺たちは俺たちで勝手にする」

ザドゥは言い捨て、智機から目線を切った。
誰の目にも明らかな拒絶の態度に、人生経験の少ない智機は気付かない。
切り口を変えて態度は変えずに、しつこく説得を継続する。

「貴殿らは、ご自身の身体の状態を本当に理解しているのか?
 そして仮称【小屋組】の実力を正当に評価できているのか?」
「黙れ椎名」
「Noだ。 誰の目から見ても明らかにNoなのだよ。
 その戦力差を覆す為には、入念な下準備と策が必要不可欠となる」
「俺は黙れと言ったぞ」
「その為の策を用意できていると―――」
「ねぇねぇともきん。 お口チャックしとこっか〜」

492告(4/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:49:01
 
見かねたカモミールが智機を止めに入った。
芹沢は敵との戦闘を好む性質ではあるが、味方同士の争いを嫌う性質でもある。
つまりは。
芹沢にとっては、智機とて、未だに輪の内側なのである。
守るべき対象であり、出来れば仲良くしたい相手なのである。
お友達は大切にするのである。

仮に、芹沢に。
智機のことを好きなのかと問えば、即座に『嫌い〜!』と答えるであろうが、
それでも智機が敵なのかと問えば、即座に『味方だよ』と答えるであろう。
カモミール芹沢とは、そういう気性の女なのである。
現存するただ一人の智機の味方なのである。

だというのに。
智機は、芹沢を拒絶する。

「濡れ落ち葉の君は黙っていてくれ給え。
 私はザドゥ殿とのディベートで忙しいのだよ」

智機には判らない。
芹沢の言動は智機への邪魔立てなどではないことが。
智機とザドゥの溝が決定的にならぬようにとの配慮であったことが。
智機には判らない。
芹沢がいかに他者への愛に満ち、偏見を抱かぬ人格を持っているのか。
愛されたいという宿願に近づく鍵となりうる人物であるのか。

「ああ〜っ、もぅ! そう思ってるのはともきんだけなのにぃ!
 ね、ザッちゃん、ちょっと待って。
 あたしがともきんに言って聞かせるから」

493告(5/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:50:38
 
芹沢は気付いている。
人一倍人の顔色を伺うに敏感な彼女は、気付いている。
ザドゥの纏った空気が剣呑なものになってきていることを。
いつの間にか拳が握りこまれていることを。
そもそも、智機を仲間などと思ってはいないことを。

「もういい芹沢。 埒が明かん」

ザドゥは意を決した。智機を物理的に黙らせると。
芹沢は悟った。これ以上は無駄な足掻きにしかならぬのだと。
智機は勘違いした。ザドゥが話を聞く姿勢を見せたのだと。

その、決定的な断絶が、表面化しようとした刹那。
絶妙のタイミングで。

「ただいま」

もう一名の元主催者が、音も無く帰還した。
レプリカ智機・N−21に共生した、御陵透子である。
芹沢は思わぬ救世主の登場に笑顔で応え、手を振った。

「トーコちん、おっかえりー」
「ん」

今の透子は、御陵透子なる人間の肉体を失っている。
亜麻色の柔らかな髪も焦点の合わぬ大きな瞳もない。
変わりに得たのは椎名智機のレプリカボディである。
銀色の硬質な擬似毛髪とルビーの質感の三白眼しかない。

494告(6/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:52:19
 
それでも。
透子にあって智機に無い、不可思議な透明感がある。
透子にあって智機に無い、茫とした佇まいがある。
透子にあって智機に無い、間延びしたアンニュイ感がある。
透子にあって智機に無い、ひび割れたロケットがある。

それら透子をあらわす記号と、脳の認識能力に直接作用する何かの影響で。
ザドゥも芹沢も、N−21=透子の図式を当たり前に受け入れていた。
そういうものなのだから仕方ないのだと、否応なしに納得させられていた。

「カオっさんもおつかれさーん」
《はいっ、そこでセクシーポーズ!》
「うっふ〜〜ん♪」

芹沢と駄剣の間の抜けたやり取りに、緊張感は失われる。
ザドゥは毒気を抜かれ、深く溜息をつき。
智機も肩を竦め、大げさに首を振る。 
芹沢はさらに二人の意識を逸らすべく、透子に問いかけた。

「ねねねトーコちん、皆の様子はどうだったぁ?」

その言葉と同時に、ザドゥと透子が透子に向き直る。
透子の言葉を待つ姿勢に移行する。
ザドゥは透子に命じていたのである。
参加者どもの動向を探って来い―――
応じた透子は、島内の情報収集に出向いていたのである。

「ん」

495告(7/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:52:52
 
透子は最短の返答を返すと、白衣の内ポケットから無造作に紙束を差し出した。
おそらくは口頭にて報告するのが面倒だったのであろう。
どこかの民家のプリンタを用いて印刷した紙束には、
透子の【空間の記憶/記憶】検索能力によって集められたここ数時間の情報が、
箇条書きに羅列されていた。
重要箇所を抜粋すれば、以下の通りである。

   ―――プレイヤーは無傷でケイブリスに勝利
   ―――高町恭也、意識不明の重態。薬品切れか
   ―――東の森、完全鎮火。
   ―――レプリカ智機、全滅。
   ―――魔窟堂野武彦、分機解放スイッチ他を入手。
   ―――仁村知佳、起床。
   ―――しおり、さおりの遺骸を求めて放浪中。

「この短時間で、これほどの情報量とは……」

ザドゥが嘆息する。
なにしろ透子が情報収集に出発して10分程度である。
にも関わらず、レポートには全生存者の近況が網羅されている。

(これが…… 人の頭脳を脱した透子様の処理能力か……)

智機の読みは正しい。
人の身であった頃の透子の空間検索といえば。
情報一つの意味・発信者・時制を理解するのに、数秒の時間を要していた。
しかも、目を通さねば、その情報が必要なものか否かも、
既に目を通した記録か否かすらも、判別できぬ。
脳という記憶装置もまた、容量、記憶力共に低スペックである。
覚え違い、物忘れは茶飯事であった。

496告(8/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:53:42
 
対して、今は。
機械の体を得ることで、情報処理能力が劇的に向上していた。
漂う記録を片っ端からクラス化し、パラメータを付けてリストに挿入する。
その処理にコンマゼロ一秒も掛からない。
しかも、それを自由にソートし、アウトプット出来る。
記録の重複判定も、クラスに登録したインデックスにて高速で行える。
機械としての長所を、徹底して生かしている。

ザドゥや芹沢が、その情報の一通りを吟味し終えたのは、
透子が情報収集に掛けた時間の倍にあたる20分後となった。

「高町が倒れたか……
 であれば、実質戦力は、ランス、魔窟堂、広場の三人でしかない。
 俺一人でも殲滅できよう」
「あーん、独り占めは駄目だよぅ、ザッちゃん」

ザドゥと芹沢、二人の口許から不敵な笑いが同時に漏れる。
一度ならず死線を潜り抜けた身ならではの覚悟が、そこにある。
共に苦難の道を歩んだ連帯感が、そこにある。

「ふん」
「えへへー」

二人は目線を交わし、拳と拳をごつりと打ち合わせる。
それは、計画に変更が無いことを確認する儀式であった。
果し合いの場への参加表明の合図であった。
そこに。
拳がもう一つ、へにょりと重ねられた。

497告(9/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:54:37
 
「おー」

気合の抜けた声で唱和したのは御陵透子。
その意外な乱入者に、ザドゥは息を呑み、智機は絶句した。

「トーコちんも戦うのぉ!?」
「いえす」
「まったく、どういった風の吹き回しだ?」

ザドゥの無防備な問いに、透子は答える。
己の言葉で。
焦点の合った瞳で、ザドゥと芹沢の顔をまっすぐに見つめて。

「もう」
「監察官でいる意味は喪われた」
「勝たないと願いが叶わないなら」
「戦う」
「それだけ」

二人を包むのはさらなる驚愕であった。
透子が、これほど長く話すとは。
透子が、これほど熱く語るとは。
しかしその驚愕は二人にとって決して不快なものではなかった。
むしろ好感を持って迎え入れるべきものであった。

「そっか、そだね♪ トーコちん、一緒に頑張ろうね!」
「いえす」
「ま、良かろう」

498告(10/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:55:51
 
一方。
先ほどまであれほど果し合いの却下に食い下がっていた智機であったが、
今は不気味なほどに沈黙を貫いて、傍観者に徹していた。
透子には逆らわない―――
智機の【自己保存】の本能がそう結論を下している故に。
透子が果し合いに参加するのであれば、最早智機に嘴は差し挟めぬのである。
悔しげに下唇をかみ締めつつ、三白眼でザドゥらを見つめるのみである。

「じゃあさあじゃあさあ、場所と時間、決めよっか」
「場所は学校の校庭でよかろう。 時間は……」
「明日の晩」

ザドゥの言葉に間髪入れず飛びついたのは透子であった。
透子にとってこの【明日の晩】という時間は切実に重要であった。
その時間からの開始が願望の成就に最適であると結論付けていた。

根拠となるデータと論理演算がある。

透子はザドゥに命じられた参加者動向とは別に、個人的な記録収集を行っている。
それは、撒き餌の如く散らされた、最愛のパートナーの記録ではない。
ルドラサウムとプランナーの記録/記憶を追跡・記録・分析しているのである。

そのデータから透子が判ずるに。

今、ルドラサウムは一人で楽しんでいる。
この島から回収した魂の記憶を反芻し、取り込んでは吐き出し。
おもちゃにして。
死者の魂を味わっている。

それに強く関連付けられているのが、プランナーの、この記録である。

499告(11/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:56:51
 
【これであと二日――― いや、一日半程度は保ちますね】
 
あまり検索に引っかからないプランナーのこの思念だけは、
なぜか明瞭な形を伴って、透子の検索網に掛かっていた。
それを透子は、自分へのメッセージと読み取った。
すなわち。

(鯨神が魂いじりに飽きた頃に)
(最高の娯楽を提供する……!)

それが、『主を楽しませなさい』という金卵神の神託を全うする、
最良の選択枝であると、結論を下したのである。

「ほう、明晩か……」

ザドゥにしても、一日半の猶予は利のある回答であった。

ザドゥの【正の気】による治療は、それなりに効果があった。
最低限の体力や免疫力は確保できた。
いくつかの箇所の今後来る破損を、未然に防ぐことができた。
しかし全身を覆う火傷や傷、発熱を完治させるには至っていない。

それが治せるまでの時間が一日半であるのか?
否、である。
発熱を引かせるのすらそれだけの時間では足りぬし、
そもそも火傷や傷の多くは、一生治らぬ類の深度であった。

では、何ゆえ一日半の時間を欲するのか?
それは、馴染む為の時間であった。
急激な肉体の変化に、それまで体を動かしていた記憶というものは
対応しきれぬものなのである。

500告(12/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:58:30
 
例えば、身長が急激に伸びた為に制球力を失う高校球児がいる。
例えば、体重が急激に減った為に打撃力を失うボクサーがいる。

それと同じである。

全く健常であった頃の過去の運動能力と、
引き攣りや炎症の上にある今の運動能力。
過去のイメージで体を動かせば、今の体は付いてこない。
ギャップに惑えば、感覚が狂う。
ザドゥは、過去と現在の肉体記憶の摺り合わせに、
少なくとも一昼夜は必要であると判じたのである。

故に、ザドゥの返答は。

「いいだろう」

こうして、果し合いの全てが、決定した。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(ルートC・三日目 AM11:15)


「ふんふーん、らんらーん、しゅぱしゅぱ〜♪」

カモミールの能天気な鼻歌が、シェルターに響いている。
彼女が腕を振るう毎に、墨汁の雫が周囲に飛び散る。
果たし状をしたためているのである。

501告(13/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:58:54
 
「ほう…… 意外と達筆なのだな」
「えへへ〜♪ これでもカモちゃんさんはモノノフの端くれだも〜ん♪」

ザドゥと芹沢との間に連帯感があることは、智機も以前から判っていた。
しかし、今やそれだけではない。

《実は儂も筆使いは上手なんですよ? 女体に対しては》
「駄剣は無駄にエロい」
 
その輪の中に、魔剣・カオスと御陵透子までが含まれているのである。
無生物の分際で。
智機と同じ外装の癖に。
人間の輪に入って、笑顔で軽口を叩き合っているのである。
 
それは、団欒であった。
それは、和気であった。
 
一人、離れた位置から眺める智機には、眩しすぎる光景であった。
妬ましすぎて切なすぎる光景であった。

「血判いっちゃう?」
「ふん、好きにしろ」
「困った、血が無い」
《トーコちんはオイルでええじゃろ》

演算回路を回すまでもない。
情動発生器の履歴を辿るまでもない。

(遠い…… 彼らと自分とは、かくも遠い)

502告(14/15) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 21:59:41
 
智機がこれまでに幾度と無く感じてきた隔絶感。
それがこれまでより切実に智機の胸を締め付ける。
それでも。仮定として。不可能ではあれど。
智機はこの孤独を解消する解を持っていた。

『私も命を賭して戦う』

その決意表明をするだけで、その輪に入ることができるであろう。
これまでの軋轢やしがらみなど踏み越えて、
ザドゥや芹沢には感情的に受け入れられることであろう。
 
既に何度も。
そのようにしたいと、キューへの登録リクエストをかけていた。
リクエストは直ちに条件関数に投じられており、
Falseの値を返し、却下され削除されていた。
 
【自己保存】―――
 
機械の本能とでも言うべきそれが、参戦の意思を認めぬのだ。

智機は人を蔑む。
時に強すぎる感情に思考を支配され、期待値を下回る行動をとる存在故に。
智機は人を羨む。
時に強すぎる意志で本能を凌駕して、期待値を上回る行動をとる存在故に。

内部処理キューの履歴を辿れば。
彼女が何度、感情的な発言や行動を取ろうとしたか判るだろう。
何度論理演算回路に否決されたか判るだろう。

(わたしなんか…… 見向きもされない)

503告(15/15)(情報 1/2) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 22:00:04
 
眩しくて愚かしい矛盾する存在を見つめ、
憧れの想いを侮蔑の意思で覆い隠し、
高まる情動波形をトランキライザで相殺して。

智機は、智機であるを望まぬまま保ち続ける。


            ↓



(ルートC)

【現在位置:J−5地点 地下シェルター】


【刺客:椎名智機】
【所持品:スタンナックル、改造セグウェイ、グロック17(残17)×2、Dパーツ】
【スタンス:①【自己保存】
      ②【自己保存】の危機を脱するまで、透子には逆らわない
      ③【自己保存】を確保した上での願望成就可能性を探る】

504告(情報 1/2) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 22:00:26
 
【グループ:ザドゥ・芹沢・透子】
【スタンス:待機潜伏、回復専念
      ①プレイヤーとの果たし合いに臨む】

【主催者:ザドゥ】
【スタンス:ステルス対黒幕
      ①プレイヤーを叩き伏せ、優勝者をでっちあげる
      ②芹沢の願いを叶えさせる
      ③願望の授与式にてルドラサウムを殴る】
【所持品:なし】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:体力消耗(大)、全身火傷(中)】

【刺客:カモミール・芹沢】
【スタンス:①ザドゥに従う(ステルス対黒幕とは知らない)】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑体力↓)
     魔剣カオス(←透子)】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)】
【備考:体力消耗(大)、腹部損傷、左足首骨折、全身火傷(中)】

【刺客:御陵透子(N−21)】
【スタンス: 願望成就の為、ルドラサウムを楽しませる】
【所持品:契約のロケット(破損)、スタンナックル、改造セグウェイ、
     グロック17(残17)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』(現状:自身の転移のみ)】

 ※ザドゥと芹沢は素敵医師のまっとうな薬品、及び、ザドゥの気による治療継続中

505 ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 22:01:26
以上です。
続けて1レス、「果たし状」を仮投下致します。

506果たし状(1/1) ◆VnfocaQoW2:2011/02/12(土) 22:02:05
 
果たし状




    明晩、月光冴える折


    始まりの場所にて待つ




              ザドゥ
              カモミール芹沢
              御陵透子



         ↓

507284 ◆ZXoe83g/Kw:2011/02/13(日) 18:54:28
予定通り、午後7時からスレ立てと作品投下を行います。
まとめUPは翌日にします。


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