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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議2

1 ◆VnfocaQoW2:2010/04/04(日) 00:20:17

雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。

278話以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。

規約はこちら
>>2

223神鬼軍師の本領(8/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:34:47

彼女がいつしか手に構えしは、アルミホイルの芯サイズの筒。
至近で見下ろすケイブリスの顔面。
大きくつぶらな、クリアブルーの瞳。
ユリーシャはそこに筒先を向け、筒の尻に取り付けられた紐を一息に引いた。


  ―――ぱん。


それが、真の決戦の開始を告げる喇叭となり。
同時に、この戦いにおける一番槍ともなった。


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224神鬼軍師の本領(9/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:35:03

〜恭也〜


『ユリーシャさんの【フラッシュ・紙コップ】が成功したなら、
 魔獣は数秒間、視覚を失うでしょう。
 その数秒間が、勝負の分かれ目です。
 高町さん、特訓の成果、見せてください。
 眩んでいるだけの目を貴方の【飛釘】で、完全に潰すのです』


ランスの背後、数メートルの地点。
密やかに舞い戻った高町恭也が、目晦ましに惑うケイブリスを見上げていた。

(想定よりも、遥かに――― 易い!)

高さ、約3.5m。
ケイブリスはランスの表情を眺める為に中腰になっていた。
故に、直立時の高さ6mに比して、より鋭く強い飛針投擲が可能となる。
しかも、的が大きい。
魔獣の瞳は、恭也の知るどんな大型哺乳動物の瞳よりも、何倍も大きかった。
象と熊の瞳を想定していた恭也にとって、嬉しい誤算である。

恭也は、それに、高揚しない。
恭也は、それに、慢心しない。
己を律し、己を殺し、呼吸を整え、気を正し。
修練に無言で付き合ってくれた糸杉に、心中で一礼すると―――
飛釘を強く、握り込んだ。

225神鬼軍師の本領(10/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:35:25

体は半身。腰は中腰。
前方に伸びたる左腕は正対する相手を制するかの如く広げられ、
後方に流れたる右腕は正対する相手に秘するかの如く握られる。
この構えこそ御神流・飛針投擲の基本形。
しかし、飛針暗器の類の術理を多少なりとも修めた者であれば、
彼の構えが基本から大きく逸脱していると看破できよう。

奇異なるは射角。
左掌の制する仰角は30度少々。
目線の先にはケイブリス。
射線の先には瞼の閉ざされた瞳。

(小太刀二刀・御神流師範 高町恭也……)

フラッシュに閉じられていたケイブリスの瞼がついに開かれる。
顔面を覆っていた複腕が高く振り上げられる。
恭也の射線イメージと無防備な瞳とが、結ばれた。

「……参る!」


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226神鬼軍師の本領(11/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:36:12

〜まひる〜


『フラッシュ、それに次ぐ真の目潰し。
 魔獣は驚愕し、叫ぶでしょう。
バカみたいな大口をバカみたいに拡げて、バカみたいに喚くでしょう。
 バカだから。
 まひるさん、そこであなたです。
 ケイブリスに駆け寄り、飛び上がり、注ぎ込みなさい。
 獣の口に【この液体】を』


一部始終を草むらに隠れて見物していた広場まひるは、
偽装撤退を計った紗霧と、打ち合わせどおり合流した。
そこで手渡された紙コップには、ラップがかけられており、
中には強酸性の水周り洗浄液がなみなみと満たされていた。

結局は持ってきてくれたレギンスを身に付ける間にも、
まひるの鼓動はどこまでも高鳴りを増してゆく。
興奮。緊張。重圧。責任。
様々な要素が絡み合い、溶け合っている。
とにかく、昂ぶっている。
それでも―――
要素の中に、恐怖感だけは存在しなかった。

(あれ? あたし、意外とイケそう?)

ケイブリスを相手にした、一時間以上に渡る逃走と誘導。
その接した時間の長さが、己の意のままに誘導できた自信が、
まひるのケイブリスに対する恐怖感を、拭い去ったが為に。

227神鬼軍師の本領(12/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:39:48

「げはァ!!?」

ケイブリスが、叫びと共に仰け反った。
一度目の叫びとは違い、明らかに苦痛を伴った叫びであった。
二本の腕が両目を覆い、四本の腕が闇雲に振り回された。
それは恭也が眼球の破壊を成功させた証に他ならなかった。

「いけ、まひるちん…… みんなのために!」

己を鼓舞して意を決したまひるが、夜空高く、跳躍する。


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228神鬼軍師の本領(13/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:40:55

〜野武彦〜


『あなたは言っていましたね?
 万能オタクは軍事にも兵器にも精通すると。
 よろしい。
 その自信を買い上げましょう。
 高町さんとまひるさんの連撃で、ヤツの意識は顔面周辺に集中している筈。
 その意識の隙を突き、バズーカで足を壊しなさい。
 初動の雪崩式四連撃。
 トリを飾るのは魔窟堂野武彦、貴方ですよ!』


(なんたる…… 跳躍力じゃあ!?)

まひるが見せた本気のジャンプに、魔窟堂野武彦は嘆息する。
しかし、その美しさに見とれている場合でもない。
野武彦はまひるの戦果の可否にこそ、集中すべきであると思い直す。

「ごぎぇがおいsf;あおうぃえ!!?」

高高度にて為されたまひるの投擲を、野武彦は目視できなかった。
しかし、喉を抑えて悶絶するケイブリスの姿が、その成功を物語っていた。
ケイブリスは暴れ周り、転げまわる。
野武彦はその動きを観察しながら、魔獣との距離を測り、
距離を開けつつ、駆け回る。

229神鬼軍師の本領(14/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:44:15

M72A2 LAW―――
レプリカ智機よりの戦利品は、奇しくも高原美奈子に配布されし
携帯用バズーカと同型であった。
無論、軍事オタクでもある野武彦は、この兵器を良く知っていた。
評して曰く、戦車以外には非常に有効な対戦車兵器。
装甲厚き戦車を貫きは出来ずとも、ヘリや稼動銃座如きは粉砕出来る。
この微妙さ加減が、野武彦的には【不器用さが愛いヤツ】との認識であった。

やがてケイブリスはうずくまり、嗚咽する。
野武彦はその背後20mの位置へと回り込み、
無防備に晒された尻のその下に照準を合わせる。

「―――ファイエル!」

野武彦は力を込めてトリガーを引く。

ドイツ語的には間違っている、オタク語的には圧倒的に正しい、
その発音は、銀英伝の古来よりの伝統的な発射合図である。


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230神鬼軍師の本領(15/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:45:19

〜ケイブリス〜


ど ぉ ぉ ぉ ん ! !


大きく鳴動した地響きが、自分が転倒した故に発生したのだと、
混乱するケイブリスには解らなかった。

眩しい。それだけのはずであった。

(小娘が何か光らせやがった!?)

一瞬、複腕によって目を覆った後、ケイブリスはそう思い当たり。
小細工を弄した小娘に制裁の鉄拳を食らわせようとして。
瞼を開き、腕を振り上げた刹那。
最初は右。
次いで左。
視界が、強い痛痒感と共に、ブラックアウトしたのである。

「げはァ!!?」

間髪入れずに、喉に理解不能な焼け付く痛み。
咄嗟に嗚咽を発したものの、痛みはじわじわと浸透した。
魔人は喉を焼く異物を吐き出さんと、指を喉に突っ込み、這い蹲る。

「ごぎぇがおいsf;あおうぃえ!!?」

その背後から、衝撃と、爆音。
肉の焦げる臭い。血の滴る臭い。骨の砕ける音。
傾く体。
左腕の一本からは、圧迫感と破裂音。
痛みは後からやって来た。

231神鬼軍師の本領(16/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:45:34

そして――― 今に至る。

なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?

ケイブリスには、判っていない。
なにが起きたか、判っていない。
ケイブリスは、混乱の極みにある。


この間、実に10秒。


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232神鬼軍師の本領(17/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:46:11

〜紗霧〜


『ここまでが初動。
 もしこの段階で魔獣の目、喉、足のうち二点以上を潰せなければ、
 即座に撤退しましょう。
 逆に、二点以上の破壊を達成した場合、戦闘は継続。
 第二波へと、進みます』


目を潰す事で命中率を著しく落とし、
喉を潰す事で唯一のロングレンジ攻撃である炎の魔法を封じ、
足を潰す事で機動力と逃亡可能性を殺ぐ。
そうすることで圧倒的な攻撃力差をカバーできる。
月夜御名紗霧は、うち二つも達成できれば十分と踏んでいた。しかし。

「初動の成果は、両目・喉・左足に加え、左腕一本ですか。
 理想以上の成果です」

左腕の予期せぬ破壊は、初動四連撃のラストアタック時に発生した。
ロケット砲がケイブリスの左ふくらはぎの大半を吹き飛ばした折、
受身を取ることなく倒れた巨獣の自重によって、
無防備に下敷きとなった左第一腕の手首周辺が、解放骨折したのである。

紗霧は震えていた。ケイブリスの予想を越えたダメージに。
紗霧は酔っていた。兵士たちの予想を越えた精強さに。

「やったのう、紗霧殿!」

233神鬼軍師の本領(18/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:47:50

高揚する野武彦を皮切りに、恭也とまひるも駆け寄って来た。
指揮官・紗霧より、新たな指示を仰ぐ為に。
紗霧は興奮を沈め、頭を切り替え。
次なる方針の確認を、仲間たちに求める。

「第一波の連撃とは違い、第二波は連携がテーマです。
 ―――攻撃役!」
「は、はい!」
「回避役!」
「マム!イエス、マム!」
「攪乱役!」
「了解です」
「各々の役割を徹底し、徹底し、徹底してください。
 第二波、開始!」


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234神鬼軍師の本領(19/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:49:29

〜ランス〜


『良い囮とは、囮であるを知らぬ囮です。
 敵の関心を引く囮です。
 と、いうわけで。
 ランスには何も伝えません。
 どーせ勝手に振舞う男ですから、その勝手さを利用しましょう』


ユリーシャのフラッシュ紙コップのあおりを食ったランスが
視界を取り戻したのは、30秒ほど前のことである。
今、彼は阿呆の如くぽかんと口を開け、紗霧の「狩り」を眺めている。

「うそだろ、おい……」

無論、この段に至ってはランスも己が囮とされたことは理解している。
先程、騙したことに対するユリーシャからの謝意も受けた。
本来であれば、このような騙しを、仲間はずれを、ランスは嫌い、怒る。
しかし今のランスには、そのような余裕など存在しなかった。
自分の内で培っていた精強なケイブリス像と、目の前で醜態を晒す惰弱なケイブリス像。
その二つの差異をすり合わせるだけで精一杯であった。

「ケイブリスって、こんなに弱かったか……?」

ランスは魔王城でのケイブリスとの決戦を思い出す。
軍配はランス率いるリーザス軍に上がりはしたものの、
数多の屍山血河を踏み越えた末にもぎ取った勝利であった。
それが、今。

235神鬼軍師の本領(20/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:50:07

魔剣を無くしてダメージが与えられる状況もあろう。
素晴らしい身体能力を持った三人がいることもあろう。
それでもなお。
味方に一切の損害を出さぬまま、一分にも満たぬ時間で、
かの魔人の領袖をここまで追い詰めるとは。
一体、どういう戦略眼か。
一体、どういう深慮遠謀か。

「いいえランス。あの怪獣は強いです。物凄く。
 ただ、明確な弱点が二つあった。初動にて、それを攻むるに成功した。
 それだけです。
 攻むるを損じていれば、こちらの被害は甚大だったでしょうね」

解答は唐突に、返された。
薄い煙のベールを引き裂いて、悠々と歩み寄ってくる紗霧によって。

「紗霧ちゃん、二つの弱点って、なんだ?」
「一つは、的が大きいこと。
 高町さんはともかく、戦い慣れしていないジジイとまひるさんでも、
 適切な個所に的確な攻撃を加えることができますからね」
「もう一つは?」
「オツムが残念なことです。
 私たちの偽装逃亡を鵜呑みにし、囮に意識を取られてしまう程度に」
「がはは! 確かにアイツは単純バカだな」
「流石はあなたのライバルです」

ランスは紗霧にバカにされたことに気付かなかった。


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236神鬼軍師の本領(21/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:57:34

〜第二波〜


そこに、まひると野武彦も合流した。

「恭也のヤツはいないのか?」
「高町さんはサポート役です。より正確には撹乱役ですか。
 いずれにしろ、本人の希望通りの役割です。
 ミドルレンジからの投擲で、ヤツの意識と武装を引きつけるのです。
 私たちに魔獣の攻撃が向かぬよう、まひるが安全に攻撃できるよう、
 牽制し続けるのです」

紗霧の指差す向こうに一人佇む御神流師範。
堂に入った投擲姿勢より放たれた投石連弾が、ケイブリスを襲う。
闇雲に暴れていた触手が矢鱈に振り回されていた腕が、
風切る音と感覚を頼りに、にわかに一方向に寄せられる。

「まひるさん。高い位置に孤立したあの触手を、一掻きだけで」
「りょーかい!」

かさかさ。
まひるは四足歩行で昆虫の如く低く飛び出す。
紗霧はその背を見送りながら、ランスに向けて解説する。

「左右の動きには案外戦いなれていれば対応できるものです。
 だから、上下の動きを積極的に取り入れるといいです。
 まひるさんはその点、理想的な能力を持っています」

237神鬼軍師の本領(22/30) ◆VnfocaQoW2:2010/08/14(土) 03:58:46

タン、と。軽い音を残してまひるは跳んだ。
棒高跳びの国際級アスリートに競る高さまで、バーを使わずして跳んだ。
その高さの頂点で、まひるは蠢く鋭い爪を伸ばす。
先端を浅く引き掻かれた触手は、鮮烈な血液を迸らせる。
まひるはその数滴を背中に浴びたものの、勢いを殺すことなく着地した。

その際を狙ってか、偶然の賜物か。
別の触手の一本が、棍棒の勢いでまひるを叩き潰さんと、襲い掛かる。

「危ないっっ!!」

ランスは思わず叫んだ。
ユリーシャは耐え切れず目を伏せた。
紗霧は涼しい顔で解説を続けた。
野武彦は姿を消していた。

「まひるがヒット&アウェイのヒットを担うなら、
 ジジイはアウェイ担当です。
 攻撃なんてする必要はありません。
 まひるのヒットタイムが終了後、直ちにまひるを抱え上げ、
 魔獣の射程範囲外に離脱させます」

コンマ数秒後。
まひるを叩き潰しているはずの触手は空を切り、まひるに触れることなく、
したたかに地面に打ち込まれていた。

「ふぉふぉふぉ…… 人呼んでオタクのジョーとはわしの事!」

気付けばまひるを抱えた野武彦が、ランスの隣に舞い戻っていた。
加速装置―――
オタクの夢と希望の象徴がここに躍如していた。


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