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【場】『 大通り ―星見街道― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:00:31
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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671鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/08(金) 00:01:24
>>670

「そう、そっか、それならいいんだ。
 キミを誤解してしまってたみたいで、
 なんだか申し訳ないけど――」

        ニコ…

小銭入れをおとなしく、ポケットにしまう。
気持ちいつもより深めに入れておいた。

「ま、ありがたいのは事実だからさ。
 ジュースはともかく気持ちは受け取ってね」

笑みを浮かべて、立ち去ろうとして、
また振り返る前に高宮の表情に気づく。

「……深入りはしないけど、
 なんか嫌な事でもあったの?
 ごめんね、こういうの気になる方なんだ」

鬱陶しがられるかもしれないが、
顔のイイ人間が暗い顔をしているのは、
なんだか、もったいないことのような気がするから。

672高宮『リプレイサブル・パーツ』:2019/03/08(金) 00:34:20
>>671

「……」

俯き気味に小さくうなづいた。
おずおずと、様子を見るように。

「気持ちくらいなら……荷物にはならないから」

重さの無い気持ちなら自分でも持てる。
そうでないものは気が重くなってしまうから。

「嫌なこと、か……」

(そんなにぼくが嫌なことまみれに見えるのか……? くそう……)

「この顔は生まれつきなんだ……」

「いや、気にかけてもらって申し訳ないね」

「あぁでも悩みといえばあるにはあるけど」

673鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/08(金) 00:58:47
>>672

「なら、よかったよ」

       「……?」

頷く高宮に笑みを魅せながら、
内心の憤慨には気付かない。

「ああ、そうだったんだねえ、
 ごめんね、誤解が多くってさ」

「ま、深入りはしないって言ったから」

         スッ

「話し辛い悩みなら聞かないけどさ」

足を一歩引いた。
流石に対話を求められていないと察したし、
地雷原でタップダンスをする気もなかった。

「ボクにあずけて軽くなる荷物なら、
 あずけてみてくれてもかまわないよ」

  「投げつけるのは、やめてほしいけどね」

674高宮『リプレイサブル・パーツ』:2019/03/08(金) 01:28:04
>>673

「……今日の楽しみ方がわからないんだ」

そう言った。
高宮は今日の楽しみ方がわからない。

「つい最近いいことがあってね」

「そのお祝いじゃないけど、今日はいい日にしようと思ったんだけど」

どう一日を楽しめばいいのかわからない。

「君は今日何をしてたのかな。言いたくないのなら、いいんだけど」

「その様子だと多分、楽しい一日を謳歌してたんじゃないかな」

675鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/08(金) 02:14:00
>>674

「楽しみ方、楽しみ方かあ。ボクは方法は考えたことないけど」

「今日は雑貨を買ったり本を買ったり、
 ランチでサラダバーを食べたりしたねえ」

       「でも」

「ボクは今からまだまだ謳歌するところなんだ。
 わざわざバスで着たのにお昼過ぎじゃ終われない。
 もっと、やりたい放題してから帰りたいんだよ」

視線の先は、東の方角。
ここから東に行けば――――川に突き当たる。

それから、視線は高宮をいったん経由して、
この町で一番高い、ここからでも見える塔へ。

「だから今から、スカイモールの劇場に劇を見に行くんだ」

「一緒にどうだい? 楽しみ方が分からないならボクに預けてみなよ。
 予約チケットは一枚しかないけどさ、どうせガラガラだから、
 さすがに、お代までは出してあげられはしないけどさあ」

          クルッ

     「楽しくなくってもボクのせいに出来るし、
      それに、ボクはいつも一人で見るんだけどねえ、
      たまには他人と感想を言い合ったりしたいんだよね」

676高宮『リプレイサブル・パーツ』:2019/03/08(金) 22:30:00
>>675

「さ、サラダバー……?」

(健康志向なのかな……いや、まぁ、最近野菜高いしな……)

少しだけ予想外の答えだった。
寿司や酒を嗜むのとは少し趣が違う。

「劇か」

あまり悩まなかった。
その先のことは。

「行こう」

「こう見えても無駄なものを集めるのが得意でね」

「財布の中はそういうので詰まってるんだ」

少し厚い長財布が上着のポケットからのぞいていた。

「一緒に楽しませてもらおうかな」

677鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/08(金) 22:42:57
>>676

「野菜をね、たくさん食べるとさあ。
 いい気分になるんだ。
 ボクは肉とか魚も全然食べるし、
 今日がそう言う気分なだけなんだけど」

「たまにない? 野菜を食べたい日」

この店なんだけどね、と、
スマホの画面を見せる。
自然派レストランとのことだった。結構高い。

         ニコ

「よし、決まりだ。
 きみ、車で来てるなら載せてってくれない?
 歩きで来たなら、バスの時間は15分後だね」

「どっちにしても……今日は、想像以上に楽しくなりそうだ!」

笑みを浮かべたまま、いずれにせよ、歩きはじめるのだった。

なお、劇は鳥舟がファンをしている男優が出るらしく、その事をしきりに語られた。

678鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/26(火) 22:49:20
人通りの多い交差点。そこの近くにある、待ち合わせによく使われるスポット。
その壁によりかかりながら、鋭い目線で行き交う人々を眺めている青年がいた。
白のインナーに黒いライダース、デニムという格好で、腰には小さめのポーチを付けている。

「・・・・・・・・・・」

近くにベンチが空いているが、そこに座るつもりはないようだ。
何かを、あるいは誰かを探すように、切れ長の瞳を動かしている。

679音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/26(火) 23:50:31
>>678

     カツカツカツカツ・・・

気取ったスーツを着た『ケツアゴ』の男が、
『鉄』の眼前を通り過ぎ、『ベンチ』へ腰掛けようとする。


       スゥゥ...

                     スクッ


   「――――ああ、ひょっとしたら、
    この『ベンチ』で待ち合わせてるのかね?」

半ば中腰の姿勢にまで至ったところで、
『鉄』が視線を巡らせているのに気が付き、腰を上げる。

   「別に、この『ベンチ』は座ってしまって、構わんのだろう?
    私もちょうど、ここで待ち合わせをしていてね。

    少々長くなりそうなんだ。――――いいだろうか?」

『待ち人』を探す『鉄』の視線を遮らぬよう、
彼の脇に立ったまま、話しかける。

680鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/26(火) 23:59:30
>>679

「ああ、いえ。お気になさらず」

声をかけられ、青年は男性の方を見て首を振った。
幾分か、その鋭い視線が和らいだ様に見える。

「オレはあなたと違って、特定の人を待っているわけではないんです」
「ですので、そのベンチは『待ち人』を待つあなたのような方が使うべきだと思います」
「どうぞ」

許可を求めるピエールの言葉に頷き、ベンチへ座ってもらうように手で示す。

681音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/27(水) 00:10:20
>>680

   「どれ、それじゃあ遠慮なく」

座面に付いたゴミや埃を、パッパと手で払ってから、
その頑強な肉体を折り畳むように、ベンチへと腰掛ける。

   「ところで、『特定』の人を待ってないとは、
    随分と妙な話に聴こえるな。

    見たところ、まだ若そうだから、
    『交通量』の調査ってわけでもあるまい」

訝しむように問い詰める声色でもなく、
唯々、不思議そうに問い掛ける。

   「ちょうどここに、空いてる目玉が『2つ』あるのだが、
    ここは一つ、君の『待ち人』を一緒に探してみようじゃあないか」

暇に空いてか、要らぬおせっかいを焼き始める。

682鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/27(水) 00:20:17
>>681

「ああ、いえ…」

自分で口にして思う。特定の誰かを待っているわけではないとは、妙な話だ。
例えばナンパです、なんてうまく嘘でもつければよかったのだが。
自分はそういうのは得意ではない。だが、かといってこの人の善意を無下にするのも心苦しい。

「・・・・・・・・・・」

10秒にも満たぬ沈黙を間に置いて、結局口を開く。

「怪しい人間を探している、なんて言ったら」
「いや、そんな事を言い出す人間が一番怪しいだろ、と思われるかもしれませんが」

683音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/27(水) 00:29:48
>>682
「そうだな。……君が一番怪しいぞ」

重たげな沈黙に応えるかのように、
真面目くさった語調で言葉を返し、


     フフッ

          「フフッ、クッ、」

          「ああ、いや、冗談だよ。失敬、失敬」

含み笑いを浮かべては、傍に立つ少年を見上げた。

「疚しいことを隠せるような人間なら、
 もっと平然として、常人の振りが出来るさ」

「まあ、怪しい人間を探してることと、
 君がそんなに、悪そうに見えないのは解ったよ。

 ――――で、怪しい人間ってのは、どんなのだい?
 ほっかむり被って、唐草模様の風呂敷包みでも担いでいれば、
 私も出ることに出て突き出せるような人間だと解るのだがねェ……」

そう、簡単なものではないだろう、と前置きを入れて、問い掛ける。

684鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/27(水) 00:43:13
>>683

>「そうだな。……君が一番怪しいぞ」

「・・・道理です」

いきなりこんな事を言い出すなど、何を企んでいるのか分かったものではないだろう。
だからそう言われても仕方ない。目を瞑り、自省する。
今日は諦めて、帰るべきかと考えたところで。

>          「フフッ、クッ、」

>          「ああ、いや、冗談だよ。失敬、失敬」

>「疚しいことを隠せるような人間なら、
> もっと平然として、常人の振りが出来るさ」

>「まあ、怪しい人間を探してることと、
> 君がそんなに、悪そうに見えないのは解ったよ。

「・・・・・」「ありがとう、ございます」

彼の言葉に、微笑みながら深く頭を下げる。
この男性が自分のことを悪い人間だと思わなかったように、自分もまた、彼が良い人間であるように思えた。
しかしその次の問いを訊ねられては、表情を曇らせてしまう。

「…いえ、容姿に関しては何も分かっていません」「男性が女性か、若者か老人か、日本人かそうでないのかさえ」
「ただ、恐らく何らかの『凶器』…それも『刃物』を扱っている可能性はあります」

「…それだけです。現れない可能性の方が、かなり多いと思います」

それでも、自分は人の流れを見続ける。可能性は低いが、ゼロではないのだから。

685音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/27(水) 01:04:22
>>684
「刃物、か。

 少なくとも、『持ち歩く』にしても、
 目立つような装いにはしないだろうな……」

『凶器』、とは人を傷つける『道具』に用いる言葉だ。
増してや『刃物』、神妙な面持ちになって、『鉄』の言葉を聞く。

「まるで、……そうだな。

 『邪推』をするようだが、
 君は『待ち人』が来ると思っているのかね」

                   ラウンド・アバウト
老若男女、さまざまな人種が 『 交 差 点 』 を過ぎ去っていく。
目の前を横切っては、背後へと抜け、何百人もの人影が現れては消える。

その光景を目の当たりにしながら、『ピエール』はすっと立ち上がった。

    「『待ち人』が来ないという『結果』を得て、
     
              安心するために見張ってはないか?」


       ズ ア ッ!


『鉄』に近づき、肩を叩く。
その刹那、両刃剣の『ジュリエット』を発現し、
分厚い『刀身』を、少年の肩口にそっと押し当てる。

686鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/27(水) 01:16:12
>>685

>    「『待ち人』が来ないという『結果』を得て、
>     
>              安心するために見張ってはないか?」

「…『通り魔』などいないのであれば、それに越したことは───」

ないだろうが、事実として傷付けられた人間がいる以上、そうでない可能性は限りなく低いだろう。
それはここで『通り魔』が見つかる可能性より、もっと有り得ないものだ。
そう説明しようとした言葉が、全て頭の中から消え去った。
肩口へと押し当てられた、『スタンド』の刃によって。

「『シヴァルリー』ッ!!」

名を叫びながら、己のスタンドを彼が剣を持つ側の方に発現する。
同時に可能であれば、その『切れ味』を奪い取り吸収する。
とっさに剣を持つ側の手に発現したのは、吸収する際の軌道で彼を傷付けないためだ。…今のところは。

「『刃物』を持った…『スタンド使い』ッ!」

687音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/27(水) 01:33:25
>>686

>「…『通り魔』などいないのであれば、それに越したことは───」

      . .
     「いる……」

     「朗らかに話しかけ、あたかも常人のように振る舞い、
                                   . .
      ――――平然と『力』を振るう人間は、この世にいる」


憮然として、しかし真剣味を帯びた眼差しで、『鉄』に告げる。

それは、決して『普遍的』な事実としてではなく。
明確に『存在』すると知っているからこそ、
それと比較した『鉄』を『善人』と評した。

         ビュワッ!

『シヴァルリー』の視認によって、瞬く間に『ジュリエット』は鈍磨する。
己のスタンドであっても、その効果は認識できない。

     「私は、君の言う『待ち人』ではないが、

      ……とまぁ、スタンドを出した以上、
      そう言っても『信用』ならない、かも知れないが、ね」

穏やかに、押し殺すような低い声で、
念を押すように話しながら、『ジュリエット』を解除する。

     「いないのに、越したことはない。同感だ。

      ――――だが、そーいう『人種』がいるかどうかなら、
      間違いなく存在し、振るう刃に『前触れ』はない―――」

     「今の『一刀』は、そうした『警告』のためだ。
      ……正直言って、街中でじっと見てるだけでは、
      努力が実を結ぶ可能性は、低いと見えるがねェ……」

688鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/27(水) 01:42:56
>>687

>     「いる……」

>     「朗らかに話しかけ、あたかも常人のように振る舞い、
>                                   . .
>      ――――平然と『力』を振るう人間は、この世にいる」

「・・・・・ッ!」

息を飲む。そして理解する。
この人は、そういう人間を知っている人だと。実際に目で見て、会ったからこそ、言葉の重みが違う。
そしてここからは想像でしかないが。この人は、そういった人間と、刃を交えた言葉もあるのではないか?

逞しい青年が『スタンド』を解除したことにより、『切れ味』も戻る。
その行動を警戒しつつも、数秒の逡巡の後に、自分も『シヴァルリー』を解除した。

「いいえ、信じますよ」
「以前にも、『スタンド使い』はそういうことができる人間だと教えてくれた人がいましたから」

それに、もし『通り魔』なら絶好の間合いでスタンドを解除する理由がない。
自分が警戒して『シヴァルリー』を出すより早く、斬ることも可能だったかもしれない。

>      ……正直言って、街中でじっと見てるだけでは、
>      努力が実を結ぶ可能性は、低いと見えるがねェ……」

「・・・・・」「何か、手段をご存知なのですか?」

訊ねる。蛇の道は蛇、とは少し違うが。
彼なら、あるいは荒事に関する知識が、あるいはその心当たりがあるのだろうか?

689音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/27(水) 01:58:53
>>688
>「・・・・・」「何か、手段をご存知なのですか?」

  「私も、望んでそういう『人種』に会ったわけじゃあない。

   ――――だが、もしもそうした『人探し』をするのであれば、 
   『仲介人』を名乗る男に、『名刺』を貰ったことはあるぞ」


     スゥ...

                                         バ
『ピエール』は尻ポケットから、二つ折りの『財布』を取り出し、    サ
それをペラペラと捲り、もう一回ポケットにしまってから、                ガサ
胸ポケットから『カードケース』を取り出し、それを数度捲り、                   ゴソ
ポロッと落としたクリーニング屋のポイントカードを拾い上げ、    ペ
カードケースに仕舞い込むと上着のポケットを数度叩き、       ラ     ポロッ    
もう一度財布を取り出しては紙幣入れに指を入れてから、      ラ
ふと思い出したかのように上着のチーフポケットに手を入れ、              パ
一枚の『名刺』を取り出すと、それを『鉄』へと差し出した。                 サ

   「『曳舟』という男は、『需要』と『供給』を操るとか、
    ……少なくとも、そのスタンド能力を利用して、
   スタンド使いの斡旋や、仕事の紹介をしているぞ」

『曳舟利和』。
その名前を確かに見せると、その名刺をカードケースにしまう。

   「――――まぁ、私も正直に言うと、『信用』しているわけじゃあない。
    ちょっと、まぁ、『胡散臭い』ところもあるからな……。

    これをどーするかは、君次第、になるわけだ」

   「おっと、人の名前を出しておいて、
    私の名乗りもないとは、無礼もいいところだったな」

スッと視線を彼方に向けてから、少年へと向き直る。

   「『音無ピエール』だ。
    この町で『柔道整復師』をやっている」

690鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/27(水) 02:13:52
>>689

「・・・」

「・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

青年の動きを待っている間、やはりこの人は『通り魔』ではないんだろうな、と確信を抱きつつ。
家に帰ったら財布の中や、部屋の掃除もまたしておくか、などと思っていた。
そして差し出された名刺。しっかりと、その名前を記憶する。
正直スマホで写真を撮っておくべきかと思ったが、流石にそれは無礼だろう。

「『曳舟』さん、ですか」

代わりにその名前をしっかりと覚えておく。
しかし、思ったよりも『スタンド使い』というのは体系化されているようだ。
『スタンド』に目覚めさせる人間の存在は知っていたが、ひょっとしてスタンド使いの『組織』などもあるのだろうか?
そしてその『曳舟』さんとやらと関わり合うことで、『通り魔』の情報や
それを知ることができる『スタンド使い』と出会うことができるのだろうか?

「『柔道整復師』の方でしたか。もし骨折などしまきたら、お世話になろうと思います、音無さん」
「オレは鉄 夕立(くろがね ゆうだち)。『清月学園高等部二年生』、『剣道部』です」

こちらも同じく名乗り返し、一礼をする。

691音無ピエール『ジュリエット・アンド・ザ・リックス』:2019/03/27(水) 02:25:48
>>690
「よろしく。

 ――――見つかるといいな」

『ピエール』はそう言い終えると、立ち上がる。
視界の端からゆっくりと歩いてくる『老婆』に、
軽く片手を上げて、自らの存在をアピールする。

   「私の『待ち人』は、やっと現れたよ。

    ……では、『夕立』。
    機会があれば、また会おう」

そう言って、老婆を出迎えるように歩み寄れば、
二言、三言話した後、ゆっくりと人混みに紛れていった。

692鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/27(水) 02:36:59
>>691

現れた老婆を出迎えた音無さん、恐らくお客様だろうか。
彼には待ち人が現れたが、自分には現れなかったようだ。もう既に一時間が経過している。流石に潮時か。

「…ありがとうございました。またお会いしましょう、音無さん」

去り行く彼に対して、再度頭を下げる。
手荒い行動ではあったが、彼は自分に対して道を示してくれた。
『スタンド使い』の危険性を教えてくれた平石さんに、『悪意』を持つ人間は必ずいると警告してくれた音無さん。
大人の方からは、学ぶべきことは多い。

「あとは、進むべきか否か、か…」

帰途へと着きながら考える。そもそも、考えたところで詮無きことではあるのだが。
仮に進むことを選んだとして、こちらから『曳舟』さんとやらに接触できるのか?
電話番号でもあれば、話は違うのだろうが。
だが、どちらにせよ覚悟は決めておくべきだろう。もし進むことを選ぶのであれば。
『試合』とは違う、命懸けの争いになる覚悟を。

693サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/10(金) 23:30:15

オープンカフェの一人席に座り、何もない時間をつぶしていた。
布のマスクで隠れた口元も、長いまつ毛の猫のような目も、風景に溶けていた。

     カチッ カチッ カチッ カチッ

人生は『いつかその時』が来るまで、全部暇つぶしだと思うわけで。
暇つぶしなら無難に、サリヱ一人で完結するものを選んできたわけで。
暇つぶしのための暇つぶしのための暇つぶしをする気はしなかったわけで。
そんな風に考えてきたサリヱの人生に『本物』なんてのは何もないわけで。

         カチッ カチッ カチッ カチッ

だけど掌で転がす『フィジェットキューブ』の響きは、今日は意味がある気がした。

「…………」
  
    ミー・アンド・マイ・シャドウ
(『サリヱとサリヱの影法師』だなんて……他人から貰ったものにも、自分しかない)

           『チカッ』

見つめた影は消えて、向かいのビルの壁面に『影法師』が生まれていた。

「ひええ、なんだこりゃほんと……」

そういうありえない光景に思わず声が漏れるのは、暇つぶしの人生としては有意義な気がするからだ。

694彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/12(日) 00:12:35

          『シュワォウ』
                    『シュワオォウ』

サリヱの視界右端から『色彩』が割り込んできた。
道路向かいの灰色のビル壁に、ビビッドカラーのラインが、長く、長く、引かれる。

額にゴーグルを引っかけたパンクなファッションの少女が、手にしたスプレーを巧みに操り、
ビル壁の端っこからストリートアートを仕上げている所らしい。
……絵のモチーフは、騙し絵の巨匠・エッシャーの「メタモルフォーゼ」を意識したようなデザイン。
人間のシルエットが変化していく過程を、目の覚めるような鮮やかな色遣いで仕上げてゆく。

「こいつが思いっきりの一筆(ストローク)だ」

ガンマンが二丁拳銃を持ち替えるように、スプレー缶を手の中でクルクルと弄ぶ。
腰のホルスターから「クロムイエロー」を引き抜くと、スプレーを噴出しながら、
ビルの左端を目指して、ラインを伸ばして――――

「――――っととと。先客か!?」

ビル壁に刻まれた『影法師』に気づき、慌ててブレーキをかけた。

「さっき下見した時はなかったのに、いつの間に描いたんだ?コレェ」

695サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/12(日) 22:04:45
>>694

「ひえ…………!」

視界に入ってきた『目立つやつ』に思わず声が出た。

(絶対やばいやつじゃん……皆見てるんだぞ……)
(……と、とりあえず、知らん顔しておくけどな)
(目立つのに巻き込まれたくないし)

       ポチポチポチポチ

(あと知らん影もしておく……)

手の中の『ボタン』を連打して気を取り直す。

影法師は・・・そのままにしておく。
『座っている人間の影』・・・『形』はない。影だけ。

回収したら秒でバレる。

        ・・・

             ・・・

                  ・・・

今日はいい天気だ。
オープンテラス席は道路に影を描き出す。

確かにそこに座っているが、『影がない人間』は・・・知らん顔でコーヒーを一口飲む。

696彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/12(日) 22:25:30
>>695
そんなサリヱの気も知らず、彩木ミサオは『影法師』を眺めながら首をひねっている。

「しまったな……迷惑はかけないと約束したばかりなのに、
 さっそく他人のキャンパスに踏み込んでしまったぞ……?
 あまりに目立たなかったから、ギリギリまで気が付かなかったけど」

……もし、『コレ』のアーティストが「灰色のビルという背景に溶け込むように」という、
コンセプトで描き残していったのなら、誰かの作品に勝手に筆を足してしまったことになる。
これはいけない!

(★ 「そもビル壁にアートを描く時点で領域侵害ではないのか?」という意見もあるだろうが、
ミサオにとってこの飾り気のないビル壁は「白紙である」と判断されたので、問題はなかった)

「塗料っぽい匂いは全然しない……墨?灰?チョーク?(クンクン)
……そうだ!描かれたばかりなら、近くに作者がいるかもしれない」キョロキョロ

あたりを見回していると、この『影法師』のシルエットとそっくりな子を向かいのカフェに見つけた。
なるほど、アレがきっとこの絵のモデルに違いない――――まさしく影写し!

「おーい、そこのマスクのカノジョ!ココに絵を描いていった人をさァ〜」

道路を渡ってサリヱの方にまっすぐやってくる。

697サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/12(日) 23:34:54
>>696

(あいつ何言ってんだ……? 『影』を『絵』と勘違いしてんの?)

芸術家のことはよくわからない。
何を考えているのか……どういう哲学があるのか。
わかるのは、明らかに自分と違う価値観ってことだけだ。

(……マスク?)

「ひえ……」

(や、やばい……こっちに来る……)
(『描いたヤツ』だって思われたんだ……やばい……)

(なんとか目立たないように……やり過ごさなくっちゃあ)

「なっなんだよぅ……絵なんか『描いてない』っての……」

             チラッチラッ

『影法師』を横目に見つつ、誤魔化しに走るサリヱ。

               カチャカチャ

「か、壁のシミじゃないのか?」
「あるだろ……ほらぁ、『ホラー番組』とかでさ……!」
「そういうのじゃないのぉ〜〜〜っ……」

「私はずっとここ座ってたからな、そんな絵なんて知らないよ……ほんとだよ」

698彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/12(日) 23:57:35

「キミをモデルに描いてたヤツがいたんじゃないかなって。
 違う?ホント?あそこの壁の絵とそっくりだと思うけどなァ」

                    チラリ

「そうかァ?」

サリヱに何か妙な違和感を覚えつつも、その正体が『影』だというところまでは気づいていない。

「ホラーなシミ!なるほど、ここは大通りだからな。 ・ ・ ・ ・
 車も多いし、夜にバイクを飛ばす奴もいる………そういうこともあるカモ」
「(店員を呼んで)すいません、お水もらえます?あとカプチーノを1つ」

サリヱのテーブルの空いてる席に腰掛けた。

「それだったらそれで困ったな。
 こんなカフェの近くに、なんて縁起が悪い……でも死んだ人間が描いたカタチならそれも『作品』だ。
 先人が思いを残していったのなら『敬意』を払わなきゃいけない。悩むぜ」

「美術館だって365日同じ作品を展示し続けている訳じゃあないだろう?
 季節・時代によって展示品を変えてゆく必要がある。
 上から塗りつぶしたものかな?いっそ避けるカタチで同居する構図という手もあるけど」

すごく……しゃべる!

699彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/12(日) 23:59:37
>>697 また安価忘れちゃってた、ごめんネ

700サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/13(月) 00:48:04
>>698

「ひええ、モデルとか……そんな目立つことしないっての」
「こういうシルエットのやつ、他にもいるってぇ絶対ぃ……」

(ウッ、こいつ今足元見なかったか……!)(実はバレてる?)
(っていつの間に座ってんだ! なんだこいつヤバ〜〜〜……)

          カチカチカチカチ

思わずフィジェットキューブのスイッチ面を連打する。
この距離の詰め方……いや詰めているのとも違う気がする。
独特の距離感、芸術家タイプを感じる……苦手なタイプだ。

「か、勝手に描いてるだけなら勝手に塗り潰しちゃっていいだろぉ……」
「いや、描いてるとは限らないけど」「シミを推すけど……」
「ともかく勝手にそうなってるだけだろぉ……?」
「ビルの持ち主が描いたなら別だけどさ……」

『所有権』があるからだ。
『所有権』――――『持ち主』には、権利がある。
持ち物を好きにする権利……あらゆる意味でそれがある。

(なんか話題変えないとこいつのペースに飲み込まれる……)

「あ、そう、カプチーノ頼んだよな」
「ここカプチーノに絵描いてくれるけど」
「あんまり難しいの注文したらすごい雑に出てくるぞぉ……」

「……」

(あっやばい……また『絵』の話にしてしまった…………!)

701彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/13(月) 01:26:22

「そうだな。ストリートアートは自分の家の塀に描くんでもなければ、
 少なからず誰かのキャンパスにはみ出してしまう行為だ。
 しかし、市役所や所有者に問い合わせて『描いていいですか?』でOKとは、なかなかいかない」

「ただボクが描かなかったからビルの壁は白紙(ブランク)のままだろう?
 こんな人目につく大通りに面していながら、只の灰色なんて逆に失礼とも思うけど……」
「周囲との調和、アートが受け入れられる場か……場所と空気は選んでるつもりだけど……」

サリヱの指摘に思うところがあるのか、少し静かになったが――――


「ラテアート!向こうの『絵』を気にしてたからお任せで適当に頼んでしまったな。
 『ハーツ』と『リーフ』の簡単なアレンジならボクも描けるよ。
 色々な絵の画材を試していたとき、パンケーキアートとかその手のものにも挑戦してみたね」
「なくなることを前提とした、コーヒー一杯を飲み終わる間までのアート。
 一筆分の失敗で脆くも崩れてしまう繊細な芸術!刹那的だ!
 得るものは多かったよ――(店員が運んできたカプチーノの絵柄を見て)――『ネコちゃん』だ。そう見える」

カプチーノを一口すする。

「うん、ストリートアートも“ソレでいい”と思うな。今のところは。 
 この大通りを通った人の記憶の端に残って、描いて数日後には市の清掃が消してしまう。
 掃除する人には手間だろうけど、この『殺風景なビル壁やシミ?をどうにかしよう』と考えるきっかけにはなるかも。
 偉そうに語ったけど、絵柄のテーマをあーだこーだいうほどのこだわりは実はまだないんだ!」



「で、やっぱりキミが作者なんだろ。アレ」

702彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/13(月) 01:36:58
>>700
「いや、恥じらう気持ちはわかるさ。公の場に絵を晒すのは勇気がいる。
 作者であることを隠して、クリーンな反応を見たかったとかかな。
 かの有名なストリートアーティストの某も、描いたあと近くでこっそり反応を見るのはやってると思う」

「ふぅ、一方的に語ってしまったな!普段同好の士がいない絵描きはこれだからいけない。
 さぁキミの順番だ。その思いのたけををブチまけてくれ!
 あの地味で目立たなく周囲に溶け込み見向きもされないような影の作品の意図をぜひ聞きたい!野暮かもしれないが素直な感想だ!」

703サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/13(月) 02:09:31
>>702

「『影』だ。『影』に『意図』はない。『消えるまであるだけ』」

と、口が動いていた。

>>701

「…………」
「あ、いや」

それから、反論とか否定とかの言葉が頭をよぎった。
もう遅い気がした。

「ち、違うんだよお……じ、事故っていうかさあ……」

    アセッ

「認めるよ、無関係ってわけじゃないんだけど」
「でも違くてぇ〜ッ」「別に発表したかったわけじゃなくって」
「そういう目立つの嫌だしぃ……ただ、『試した』だけで」

             キョロッ
                  キョロッ

「そういう『芸術論』みたいなの、ないし……」

消えた影を一瞥して、それから影法師を見た。

「ちょ……ちょっと一服」

        ゴッゴッ

「私もカプチーノにしとけばよかった……」
「あとそれ私には『ネズミ』に見えた」

コーヒーを飲む。一口では足りない。
覗き込んだカプチーノの人為的な『模様』に、何を占うわけでもない。

「それで、だからそんな、芸術とかアートとかじゃないんだよぉ……ほんと偶然」
「テーマとかも、ないし」「『影』なのはそうだけど……作品とかそういうのじゃないんだよ」

「それこそ、その、『巡り合わせ』っていうかぁ……『あるからそこにある』だけ……みたいな」

704彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/13(月) 22:02:27
>>703
「…………?」

一寸遅れてビル壁の方を振り向く。
ミサオのアートの色彩にかき消されそうに薄い『影』だが、
呼びかけてくるような存在感を一瞬感じてしまったのだ。


「手癖とか、偶然で付けちゃった模様?」

「なるほど……本当に『意図』はナシ。
 ボクは第一印象であのシルエットが『キミ』そっくりなように受け取った。
 偏見と前提知識次第……受け手は、見たいように見るってことか……」

                ウン  ウン

「あそこの描きかけアートも同じだね。
 新鮮さを覚える人もいれば、古典の安っぽいパロディと受け取る人もいる。
 突き詰めれば、キミの『影』やラテアートのネコちゃんと同じ――――」

       コトバ          カタロ
「どれだけ『色』を尽くして饒舌に描こうとも、真の共感とは幻想のようなもの。
 アーティストは有名・無名・どのジャンルでも本質的に孤独な存在ってワケだ!」

「なら、みんな好きなように描けばいい!『ただ試した』で『あるからそこにある』
 結構なことじゃあないか……それで1%でも波長の合う、
 『巡り合わせ』があれば儲けものだ!(ズズーッ)――うん、カプチーノで正解」

「泡はちょっと足りなかったけど」

                      ブジューッ

手品のように右手に『ホイップクリームのスプレー缶』を出現させると、
泡を吸いきったカプチーノの上にクリームを足した。即席ウィンナーコーヒーだ。

「キミも足すかい?『同じ味』は『共感』だ」

705サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/13(月) 22:58:11
>>204

「手癖というか影癖というか……」
「とにかくそう、ほんとに意図はないからな」
「『攻撃』とかじゃあない」
「受け取り方までは……私が決める事じゃないが」

「『意味がないなら、自分で意味を考えれば良い』」
「『他人の中にこそ意味が生まれる』」
「……嫌いじゃない考え方だ。芸術的に前向きで」

意図はない、意味もない。
そこから勝手にプラスを読み取られるのは、嫌ではない。
他人の感じた中こそ『意味』が生まれる、というのは。

「ヒェッ……今それどこから出したぁ!?」

         カチャッカチャッ

「アーティストか手品師かどっちかにしろよぉ……」
「濃すぎるぅっ」「私がかえって目立つぅ……!」

などと考えていたら突然現れたスプレー缶に目を見開く。

「あっ……いや……まあ」
「なんとなく、分かるけど………………」「うん」

が、すぐにその正体には思い至る。
・・・突然現れた『影』が彼女を呼んだのだから。

「説明すると変に目立ちそうだし……」「嫌だし……」
「食べるには得体知れなすぎるし……悪いけど遠慮しとく」

ただ、タネがなんとなく察せてもいきなり出たものをいきなり食う勇気はなかった。

「…………その『道具』、好きなだけ出せるのか?」
「良いなぁ……」「食費がほとんど浮きそうだ…………」

「あ、いや、探るわけじゃないぞ……答えなくてもいいからな」

706彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/13(月) 23:24:53
>>705
「いらない?ならいいか」

「受け手の気持ちを考えつつ、自分のエゴも押しつつ……。
 今はただ広いキャンパスに描いてるだけで楽しいから、細かいことは気にしないけど!」

ガンマンが拳銃でやるように、スプレー缶を手の上でクルクル弄ぶ。

「最近、“聴かせてもらって”自覚した才能だよ」

チラリと『影法師』の方に目をやり、次にサリヱに視線を移す。
明言はしないが察している態度。

「色々挑戦した中で自分の手に一番なじむ筆さ。
 七色(レインボウ)の絵筆――――『どんな色でも持ってくることができる』」
「多すぎも少なすぎもない、一度に『七色分』まで置いておくことにしている」

ホイップクリームのスプレーが手の影に隠れた次の瞬間、アロマオイルのスプレーに代わっている。

「製品のロットナンバーとかまでちゃんと書いてある本物……生産元の会社が迷惑してなきゃいいけど」

「『影(アレ)』と同じで何となく偶然でできちゃうモノらしいね」
「キミのも、試しててそんなカンジしない?」

707サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/13(月) 23:52:57
>>706

「あっ、いや、お前個人が嫌とかじゃなくてだな」
「まだ『こういうの』を信じ切れてないだけだ」
「私は細かいこと気にする方だからぁ……一応言っとく」

        コロッ

テーブルの上にキューブを置いて、コーヒーを取る。

「……"聴かせて"?」「"描いて"じゃないのか?」
「いや……詮索はしないが……」
「気にはなるが……」

「…………『ソレ』と『アレ』はだいぶ違うがな」
「説明はしない……のはさっきも言ったけど」
「たしかに『理屈』とかそういうのじゃない」

影法師は今も、壁の側を歩く人々の会話を聴いている。
あるいは、そのアクセサリーの真珠の数を数えている。

「なんとなく、出来る」「なぜか『知ってる』」
「……手と足のほかにもう一つ増えた感覚で」

        ズズ…

「…………与えられた物だけど、『自分』なのは間違いない」

それが違和感なく『伝わってくる』。
歩き方を今更説明出来ないように、直感的な認識として。

「お前のも自分……」「……え、『ロットナンバー』!?」
「ヒェッ、それどっかの倉庫から飛んで来たりしてんじゃないのかぁ……!?」

「怖ぁ〜っ……まあ、そういうのとは違うって"聴かされて"? るんだろうがな……」

708彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/14(火) 00:16:43
>>707
「そうだね。鳥やヘビに『手足があるってどんな感じ?』と聞かれても説明には困る。
 最初から体の一部としてあったみたいに、見えるし動かせる……そういうモノ」

あの『影』もミサオのレインボウと同じく、遠くまで見えてるし動かせるモノなのだろう。

「……でも、『スプレー』は違うなぁ。考えて創ってるわけじゃない。
 このメーカーの製品使ったことないし、売り場で見かけても成分表までは気にしてないよ。
 とにかく、想像の及ぶ範囲で『一番ちょうどいい色』を手にする」

「数量限定の貴重品とか出しまくったら、真相がわかるかも(やんないけど)」

                  ズ ズ…
                               カチャ

少し納得いった表情で頷きながら、一息にコーヒーを飲み終えた。

「この感覚の話は、さっきも言った『貴重な共感』だったね。
 いい『巡り逢い』だったよ――――それじゃあ残りを仕上げようかな。ごちそう様」

そう言って支払いを済ませると、ミサオは再び道路向かいに戻ってゆく。
描きかけのアートの仕上げ作業に移るのだ。

709サリヱ『ミー・アンド・マイ・シャドウ』:2019/05/14(火) 00:39:49
>>708

「私のソレは『自分』でしかないからな……」
「既製品」「……にそっくりなもの? 実物?」
「とにかく既製品っぽいのを出せるのは怖い……」

悪用とかそういう話ではない。……少しはあるが。
この奇妙な力は『自己完結』するだけの力ではない。
無限の可能性があるということ……無限の危険性もだ。

(……私のが目立たない部類だと分かったのは良いがな)
(…………こいつのが派手なだけかもしれないが)

「私にも……悪い話じゃなかった。『価値』はあった」
「……って、あ、あれ続き描くのかぁ……!?」
「警察とか呼ばれるんじゃ……いや」

        キョロキョロ

「……誰もそんな事してなさそうか」

「まあ、私は止めないし……」「勧めもしないが……」
「好きに描けばいいさ。言われなくても描くだろうが」

去る姿を目で追っていたが、周囲の視線に気付いた。
あのアーティストの関係者だと思われるのは、まずい。

・・・それは、目立つからだ。

「………………………………………ちょっと目立ち過ぎた」

        『パン』

(場所を変えよう…………暇つぶしの場所を…………)

絵に集中し始めたのを見計らい、影を拾って店を出る。

710彩木ミサオ『レインボウ』:2019/05/14(火) 01:05:24
>>709
「『価値』のある体験、そう思ってもらえるならよかった!」
「モチロン描くよ。このまま尻切れトンボにはしておけないし」

          『 シュワォウ 』
                          『 シュワァォウ 』

そうして、サリヱの視界の端へとフェードアウトしビル壁の左端の方から、
人間が鳥へと変身(メタモルフォーゼ)してゆく図を完成させてゆく。
しばらく後、カフェ向かいのところまで描き進めたところで『影』がいなくなっているのに気づく。

「…………フム」
                 シュワォ      シュワォ

「よし!」

サリヱが去った後のカフェテラスと交互に見比べ、満足そうに頷くとその場を立ち去る。
空白だったビル壁には、クロムブラックの塗料で先ほどの『影法師』がそっくりに再現されていた。
これは……目立つ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★星見町新名物・その〇 → 『駅前カフェのストリートアート』
後日、街の清掃がやってきて消してしまった。『影』に気づいた人は多分いない。

711竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/05/16(木) 22:45:53
「平和だなぁ……」

プラプラとあてもなく歩く。
何も無いことは平和でいい事だが、同時に退屈でもある。
事実、女は退屈していた。
追うものも追われるものもない。
なんと平坦で、平凡なことか。
……日々の支払いには追われているが。

「……」

あたりをみまわす。
何かないだろうか。

712小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/05/17(金) 00:54:59
>>711

その時、近くにいたのは『喪服』を着た女だった。
そこまで突飛な服装ではないが、珍しいと言えば珍しいかもしれない。
女は立ち止まり、何かを見ているようだ。

視線の先にあるのは、通りに設置されている花壇だった。
そこに植えられている花を見ているらしい。
今の所、辺りに他の人間は見当たらない。

713竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/05/17(金) 01:44:23
>>712

「……」

誰かの葬式でもあったのだろうか。
だとしたらご苦労なことだ。
死は誰にでも訪れるが、身近なものが死んだら式を挙げねばならない。
喪に服さないとならない。
多くの人間がどこかで死んでいるが、それを無視して身近なものや尊敬するものを弔わねばならない。
生きた人間のエゴだ。

「やぁ、どうも」

「何かありましたか、お嬢さん?」

「そこのお花が欲しいのかい?」

714小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/05/17(金) 02:28:18
>>713

呼び掛けられて、ゆっくりと顔を上げて静かに振り返る。
相手の姿を確認し、それから丁寧に頭を下げた。

  「――こんにちは」

  「いえ、ただ……」

また、花壇に視線を向ける。
咲いているのは、鈴の形をした小さな白い花々だ。

  「以前に通りかかった時には、まだ花が咲いていませんでした」

  「今、ちょうどスズランが咲いているのを見かけたもので……」

花壇に植えられているのはスズランの花だった。
君影草や谷間の姫百合といった別名もある。

715竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/05/17(金) 18:59:32
>>714

頭を下げた相手にへらへらと笑う。

「ご丁寧にどーもね、どーも」

自分は片手をあげるだけで応じる。
それでいい。
女にとってはこれぐらいのお返しが限界だ。

「鈴蘭の花ねぇ……」

「花言葉とか詳しそー」

そんなことを言いつつも、考えは別の方向。

(毒性の花……)

鈴蘭のことはよく知らないが、それは知っている。

716<削除>:<削除>
<削除>

717小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/05/17(金) 20:30:13
>>716

鈴蘭は、結婚式のブーケに使われることが多い。
慰めの意味も持つため、葬儀の供花としても使われる。
この小さな花を見ていると、自身が経験した出来事が頭をよぎる。

  「花言葉――ですか……」

  「純粋、純潔……謙遜、再び訪れる幸せ……」

  「――そういったものだと聞いたことがあります……」

思い出しながら、鈴蘭の花言葉を口にする。
その時、緩やかな風が吹いた。
空気の流れに乗って、爽やかな香りが辺りに漂う。

  「それから――」

  「鈴蘭の花は香りも素敵ですね……」

鈴蘭の花は、バラやジャスミンと並んで香水として用いられる。
同時に、外見とは裏腹に強い毒を持つ植物でもある。
芳香と有毒――相反する二つの側面を持つ花だ。

718竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/05/17(金) 23:06:00
>>717

「詳しいんじゃん。ちょっと尊敬しちゃうぜ」

「お姉さん的にはね」

クスクスと笑う。
それから鈴蘭のくすぐったそうに体を揺らす。
出来れば何の匂いも嗅いでいたくない気分だった。

「うん、そうね。そう思う」

「この花の香りに包まれてみたいなー」

薄っぺらなことを吐く。
そんなこと、微塵も思ってない。

「お嬢さんもそう思うかい? どうどう?」

719小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/05/18(土) 00:16:39
>>718

  「……そうですね」

穏やかに微笑する。
相手の思惑には気付かなかった。
気付くことはない。

  「それも素敵だと思います……」

  「私はラベンダーの花が好きなので……
   その香りに包まれていると気持ちが落ち着きます」

私の傍には、常に死の誘惑がある。
その足音が近付いて心が乱れた時、ラベンダーの香りが鎮めてくれる。
それでも足りない時には、『鎮静剤』に頼るのだ。

  「――お花はお好きですか?」

720竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/05/18(土) 20:38:25
>>719

「ひゃぁ〜お嬢様みたいだねぇ」

(私トイレの芳香剤ぐらいでしか聞かないなぁ)

失礼なことを思い浮かべながら言葉を返す。
おどけてみせて、心ではそれになんとも思わない。
心と言葉の乖離が平時。

「いんや、ぜーんぜん……ウソウソ、花の匂いは好きだよ。お姉さんが好きなのはねぇ、もっとキツい匂いなんだよなぁ」

「アルコール? 甘いタバコの匂い? そういうのが好き」

今度は乖離しなかった。
気まぐれな距離感で言葉と心が動き続ける。

721小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/05/19(日) 00:05:23
>>720

アルコールと煙草――自分にとっては、どちらも縁が薄いものだった。
『彼』と死に別れた時、そういったものに頼る道もあったかもしれない。
実際にはそうはならず、今の私は別のものに頼っている。

  「私も……お酒は時々いただきます」

  「嗜む程度ですが……」

言葉を交わしながら、不思議な感じのする人だと思っていた。
飄々としているというのとは少し違う気がする。
ただ、捉えどころがないという意味では近いものがあるようにも感じられた。

  「――この辺りには、よく来られるのですか?」

  「もしかすると……またお会いすることがあるかもしれませんね」

奇妙な親近感のようなものを感じたのだろうか。
あるいは、心の中に何かを持っているというような。
だから私は、こんな言葉を言ったのかもしれない。

722竜胆『ブラックシープ・シンドローム』:2019/05/19(日) 20:05:19
>>721

「まぁ、ここに住んでるし来るには来るよ」

「自分の街だしね」

生活圏内ではあるらしい。

「また会うかもねお嬢さん」

「会わないかもしれないけど」

723小石川文子『スーサイド・ライフ』:2019/05/19(日) 22:48:22
>>722

返ってくる言葉を聞いて、口元に微笑を浮かべる。
やんわりとした柔らかい微笑みだった。

  「――はい」

  「もしお会いすることがあれば……またお話をさせて頂きたいです」

おもむろに背筋を伸ばし、姿勢を正す。
そして、出会った時と同じように深く頭を下げた。

  「声を掛けて下さって、ありがとうございました」

  「――それでは失礼します……」

別れの挨拶を告げると、背中を向けて静かに歩いていく。
先ほど感じた不思議な感覚を、心の片隅に残して。

724門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/07(金) 22:24:08

「―――とりあえず、これでいいか」

栗色のソフトモヒカン、ワインレッドのジャケットの男が
駅から少し離れた古ぼけたビルの前に立っていた。
一階にあるテナントには『門倉不動産』とかかれている。

                ………『手書きの張り紙』で。

725日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/09(日) 23:57:40
>>724

           ズイッ

「お兄さん、なぁにコレ?」
「おっ『不動産屋』――――へ〜、儲かるんでしょ?」

「家売るんだもんねぇ」

それを覗き込むのは、学生服の少女。
ビターチョコのような色の髪に、兎の耳のようにリボンを立てていた。

「なのにぃ、『張り紙』? これ、手書き?」
「あんまり景気良くないってやつなのかな」
「ニュースでそういう話してるよねぇ」

      スイッ

            「実際どお? 景気ど〜お?」

後ろに手を組んだ姿勢で、張り紙から『門倉』の顔に視線を向けなおす。

726門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/10(月) 00:22:48
>>725(日下部)

声をかけられた『門倉』は、少女に視線をやる。

「ああ―――うん、そうだな。
 景気はけしてよくはないが、
  それより別の問題が俺とこの『不動産屋』を襲っていてね。
   その結果が、この紙の張り紙というわけだ」

『門倉』は大げさにため息をつく。

「『金が足りない』という事だね―――つまりは。
 目の前にいる少女が『お客』になってくれれば少しは改善されるんだが………
  その学生服を見るに、その可能性も薄そうだ」

よくは分からないが『貧乏不動産屋』という事らしい。
もっとも、およそ真っ当な社会人と思えない『門倉』の格好と、
『紙の張り紙』での社名提示をみるに、儲かっていないのは当然とも思える。

727日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/10(月) 01:08:53
>>726

   スタスタ

笑みを浮かべて、回り込むように動く『日下部』。

「んふふ、正直なんだね〜。
 悪いけど『家』買う予定はないかな。
 おカネ、私も持ってないしな〜」

           スタスタ

「お金持ちそうだからお茶の一杯くらい奢ってもらえるかな〜〜〜って」

          「私も『正直』に言うとそう思ったん、だけどさぁ」

張り紙を見ながら、勝手なことを言っていたが・・・

「……ん〜?」

「なんか思い出してきたかも、もしかしてだけど」
「ここって、ちょい前に『爆破事件』があった不動産屋さ〜ん?」

頭のリボンを揺らしながら、再び門倉の顔に視線を向けなおす。

728門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/10(月) 20:11:09
>>727(日下部)

「………知っているのなら話は早い。
 つまりはそのせいでこのありさま、というわけさ」

 『門倉』は観念したかのように肩をすくめる。
 星見駅周辺の不動産屋で『爆破事件』があったというのはちょっとしたニュースになった。
 警察は『事故』と断定したらしいが、真実がどうだかは分からない―――

「一応それなりの蓄えもあったし『副業』したりして
 ある程度の修繕は出来たし周囲への補償もしている。
 だが、まだ『ある程度』にしか過ぎない。節約できるところは節約しないとね」

 『門倉』は二度目のため息をつく。

「さて―――どうせ客も来ないだろうし店に寄っていくかい?
        『お茶の一杯』くらいなら用意してあげられるよ」

 いかにも怪しい男、『門倉』が誘ってくる。

中に入ればねちっこく長話をしてきそうな予感もするし、
それ以上の事だってあるかもしれない。
それがイヤなら外でのライトなコミュニケーションで満足しておくべきか――

729日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/11(火) 04:13:00
>>728

「なぁるほどね。それで……このありさまってわけだ」

得心して張り紙に頷く。
『爆破事件』――――ないしは、『事故』。
『全国ニュース』になった類似の事故の関係で、覚えていた。

「副業、節約。意外と世知辛いけど〜」
「『命あっての物種』……とも言うもんね」
「少なくとも大けがとかはしてないみたいでよかったじゃん?」

     ニヤ

「……なんて優しいとこを見せてみたりして」
「感動したら一番良いお茶飲ませてね」

           スッ

「家の話とかされても、わかんないし」
「お茶の美味しさでそこをカバーするから」

「ま〜私、お茶の良しあしもあんまし……わかんないけど〜」

ナチュラルに上がりこんで茶をタカる動きを見せる『日下部』。
門倉もいかにも怪しげな雰囲気だが、この少女も価値観が怪しいのかもしれない。

730門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/11(火) 08:04:32
>>729(日下部)

「―――たまたま店に居なかったからね。
     怪我とかはしていないんだよ」

『主(あるじ)のいない状況での事故』………
まあ、そういう事もあるかもしれないが余計に怪しい話ではある。

 それはさておき、

「なァに、『良し悪し』なんて分からない方がいいんだよ。
 なんでも『良し』と思える方が人生は幸せに進む。

 ああ、そうだ。自己紹介しておこう。
    『門倉 良次(かどくら りょうじ)』、一応、不動産屋をしている。

                          ―――さあ、中へどうぞ」

勧められるままに『門倉不動産(手書き)』へと入る事になる『日下部』。

 ………

『不動産』内は控えめに言ってもひどいありさまだった。
壁紙はある程度張り直してあるのだが完全ではなく、
黒こげの壁面がところどころ見えている。

接客用のカウンターはまだ修繕できていない様子で、
申し訳程度に学習塾のような『長机』とパイプ椅子が置いてあった。
何かの間違いでここに入ってきてもマトモな感覚の客ならば、
適当な理由をつけて踵を返す………そんなふうに思わせる風景だ。

731日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/11(火) 22:42:58
>>730

「『気の持ちよう』でモノの『価値』は変わんないけどさあ」
「ま〜でも、『価値観』が違えば、変わってくるとこもあるか」
「良いこと言うね良次さん。あ、私は『日下部 虹子(クサカベ ニジコ)』」

「虹の子供って書いて虹子」
「不吉な名前でしょ〜」

              ザッ

                 ザッ

「不動産屋って入るの初めて……んふふ」

屋内に入ると、再び手を後ろで組んで辺りを見渡す。
焦げた壁とか……中途半端な壁紙とか、カウンターとかを。

「これ〜っ。ここで『家』の相談する席?」
「『大学部』の席みたいで風情がある。ここ座ってもい〜い?」

           ゴソッ

「お菓子でも出そうかな、私も……ね〜。良次さんってチョコレート好き?」
「あ。お茶って『お茶』? それとも〜、『コーヒー』のこと、お茶って言ってる?」

片手をカバンに手を入れて漁りながら、パイプ椅子の背もたれに手をかけた。

732門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/12(水) 01:19:29
>>731(日下部)

「『虹子』―――不吉なのかい?
          いい名前だと思うけれど」

 この『ありさま』にもさほど退かない『日下部』に
 『門倉』はそんな言葉を投げかける。

「そして―――だ。座るのはちょっと待ってほしいな。
  さすがにここじゃあ『おもてなし』するには、殺伐すぎる」

             ガ  チ   ャ   リ

       そう言いつつ、『門倉』が『ドア』を開けた。

 ………

 『日下部』がしっかり室内を確認していたのなら、
  その場所に『ドア』などなかった事に気づいただろう。

 『日下部』が外観からここの間取りを考察できていれば、
  位置的にそこに『ドア』があっても、『部屋』などないと分かっただろう。

 『日下部』がカバンに気をとられすぎていなければ、
  『門倉』の腕に重なるように一瞬だけ発現した『スタンドの腕』が見えただろう。

   しかし、たとえ全ての項目で『NO』だったとしても、
    『日下部』にはその『奇妙さ』が理解できるはずだ。

      『ドア』を開けたその奥には―――

 『不動産屋』の風景とはまるで違う、
  狭いビル内にあるような『数席しかないカウンターの店』があったのだから。


          ドド   ドド   ド  ド    ドド ド ド


                     「―――いらっしゃいませ」

薄暗い雰囲気のその店はどうやら『喫茶店』のような場所らしい。
『カウンター内』に居る長身の男の『店員』が『門倉』と『日下部』にそう声をかける。

 至って普通の対応―――ここが普通の『喫茶店』であればの話だが。

733日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/12(水) 14:19:45
>>732

「『虹』って『雨』の後にしか出ないしさ〜。すぐ消えちゃうじゃん」
「残るのは綺麗だったって感想だけだよ」「あとスマホの写真」

           ニタ ニタ

「『一瞬のために生きろ』って言われてるみたいでしょ?」

           「だから、私は不吉だと思うよ」
 
門倉の言葉に笑みを浮かべる日下部。
真意は、表情からは読み取れない。

「んん? ……?」

                  「あれっ」

日下部は『目に見えるもの』を信じている。
だから『目に見えたもの』はしっかり覚えている。

・・・そんな扉はなかった。
・・・それにこの建物に、その方向に部屋はないはず。

「んんん? なんだこれ」

   キョロッ

「良次さん、なにここ〜。……実はカフェに間借りしてるとか?」

         「ねェ〜、メニューとかって置いてある?」

                  キョロッ

しきりに視界をめぐらせながら、今度こそ席に着こうと動き出す。

734門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/12(水) 20:29:08
>>733(日下部)

『日下部』は唐突な『ドア』に疑問を覚えつつ、
物怖じもせず、キョロキョロしながら『カフェ内』へと侵入していく。

 「フフフ………なんだろうね?
  とりあえず好きなところに座るといいよ」

そんな『日下部』の小動物のような動きが面白いのか、
『門倉』は不気味な笑みを浮かべながら、答えになっていない答えを返す。

L字型になったカウンターの等間隔に椅子は置かれている。
用心のため入口間近に座るもよし、
好奇心を満たす為、奥の席まで行ってみるのもよし―――

 「メニューはそちらにございます」

『長身の店員』が手で示したとおり、カウンターの上に『メニュー』が差し込んである。
表紙を見るに『メニュー』は『フード』『サラダ』『サイドメニュー』
『ドリンク』『デザート』などに分かれているようだ。

『門倉』がそのメニューをヒョイととり、
『ドリンク』のページを『日下部』に向けて開く。

「すぐに出てくる『ドリンク』を頼んだ方がいいと思うよ。

   ………いや、ケチっているとかじゃあないんだ。
        『お茶の一杯』って話だったし、
        なにより、『そう長くはいられないからね』―――」

含みのある言い方で『門倉』はドリンクを薦めてくる。
『ドリンクメニュー』は以下のとおり。

<COLD>
・ミネラルウォーター
・ウーロン茶
・アイスティー
・レモンティー
・コーヒー
・オレンジジュース
・アップルジュース
・グレープフルーツジュース
・コーラ
・ジンジャーエール
・クリームソーダ
・タピオカミルクティー

<HOT>
・ホットティー
・ミルクティー
・レモンティー
・コーヒー
・カフェラテ
・ココア

735日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/12(水) 22:54:02
>>734

        スタスタ

「ん〜? 含みがある。じゃあ、ここにしとこうかな」

   ストン

「入り口側って慌ただしいしさぁ」
「他にお客さんとか、来るのか知らないけど」

最奥の席まで歩いて、そこに座った。
用心などしていない――――ということだろうか。

「ども、ども〜」

「注文は・・・『タピオカミルクティー』」
「タピオカミルクティーってさ〜、良次さん好き?」
「みんな好きだよねえ」「私も好きだけど〜」

「でも、なんでどこも『ミルク』なんだろうねぇ」

メニューを指さしながら、カバンを机の下に置く。

「まそれはいいや、何? なんか『用事』とかあるの?」
「あーいや、それはあるよね。事務所があの状態なんだし〜」

長くはいられない――――という言葉の真意は、さすがに読み取れない。
が、納得のいく予想は出来たので、それ以上特に追及する気もなかった。

736門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/13(木) 08:24:12
>>735(日下部)

『タピオカミルクティー』を頼む『日下部』。

 「あ――― 俺もそれで」

『門倉』がそれに便乗する。
『長身の店員』は『分かりました』と頷く。
『タピオカミルクティー』ふたつがほどなく、用意されるだろう。

「俺も好きだよ―――『タピオカ』。
 最近は流行っているみたいだから色んな味があるみたいだけどね。
 でもまあ『ミルク』が『定番』ってヤツなんだろうな。『定番』は強いよね、やっぱり」

『門倉』も『日下部』の隣に座る。

「いやいや、『事務所』があんな状態だって
 かわいい娘とお茶の一杯くらい飲みたいさ。

 むしろあんな状態だからこそ、君のような娘と何にも考えず語っていたい。
 『虹』の話とか、『タピオカ』がなんの卵かとかそーゆー話をね。
 だから『用事』なんて大それたものは特にはないんだよ」

 『門倉』はそう語る。その言葉にのって
  この場で愚にもつかない『四方山話』に興じるのもアリか。

「ただまあ、たとえば君が『オイシい副業』に
 興味があると言うのならそれを紹介してはあげられるけど―――」

 『オイシい副業』………完全無欠に怪しいワードだ。
 うら若い乙女な『日下部』が気軽にのると酷い目に遭うヤツかもしれない。

737日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/13(木) 20:35:58
>>736

「『タピオカティー』って呼ばれるようにはならないんだろうね〜」
「『タピオカドリンク』って言い方は、聞く気もするけど」

「まあ」

「なんだかんだミルクが一番美味しい気はするかなぁ〜っ」

          クルッ

腰を軸に体を回し向き直る。
頭を飾るリボンが、クラゲの足のように揺れる。

「かわいい? 私かわいい?」
「よく言われるよ〜」

     ニヤ…

「んふふ、『用』がないならいいんだけど」
「長居できないみたいなこと言うもんだから気になってね」

水のコップを手に取り、水滴を拭いとるように掌で回す。

「それで〜? 副業って? 『おカネ』に特別困ってはないけど〜」

    「私みたいなかわいい娘にできる仕事って……なぁに?」

              ズイッ

上体を乗り出すようにして、門倉の話を――――『聞く』ことにした。

738門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/14(金) 08:19:42
>>737(日下部)

「『お金』に困っていないのはいい事だね。
 それなら、そんなに興味はないかもしれないが―――」

                    ピコーン

『門倉』が持っていた『タブレットPC』を起動させ、画面を指でスライドしていく。

「あった、これだ。

    『ひきこもり男子をどうにかして外に出してほしい』。

 ひきこもりの心境というのは正直、俺にはよく分からないんだよね。
 だから断ろうかなと思ってたんだけど。
 でもまあ、男子ってのはかわいい女の子に呼びかけられれば、
 すぐに飛びつくものだろう?

   かわいい女の子―――

               つまり、君にうってつけな仕事というわけだ」

             『門倉』はそう断言する。

『ひきこもり男子』はむしろ女子に
何かしらの苦手意識がありそうだが………
あくまで『門倉感覚』での『オススメ』という事らしい。

 ………

                  「………『タピオカミルクティー』です」

そうこうしているうちに『タピオカミルクティー』が運ばれてきた。

739日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/14(金) 23:44:05
>>738

「『10万』とかもらえるなら話は変わるけどねぇ」
「流石に、普通のバイトじゃそんなに儲かんないし」

「どれどれ〜」

          ズイッ


「――――『引きこもり』ぃ?」

「引きこもりってあの、家にこもって出ないやつのことでしょ?」
「ふうん……まあ、私は可愛いけどね〜。引きこもりかぁ〜」

           カチャッ

     クルックルッ

「話は聞いてもいいけどね。『引きこもり男子』か〜……」

       「あんま変なヤツだと嫌だなあ〜」

ストローを回して、タピオカをかき混ぜる。
別に意味があるわけでもないが……

「とゆーか……良次さんって、『不動産屋』だよねえ? 『斡旋業者』もしてるの?」

740門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/15(土) 00:13:55
>>739(日下部)

「まあ、断るつもりだったからあんまり詳しい情報もないし、
 無理にとは言わないけどね。

   ―――成功すれば『10万円』くらいはあげられるかもだけど」

『門倉』はさらっとそう告げ、ズズイとタピオカをすする。
タピオカが宇宙エレベーターのように高速で上へ上と吸い込まれる。

「そして、俺に様々な『依頼』が舞い込んでくるのは
 何を隠そう、この俺が『超能力者』だからなんだ。
 だから、みんな、俺を頼って来るんだよ―――

     ………

               なァんて言ったら信じるかい?」

『門倉』は冗談めかした口調でそんな事を宣う。

741日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/15(土) 02:00:46
>>740

「ほんと? ほんとに言ってる? ……10万だよぉ?」
「10万円ってさァ〜」「大きいんだよ?」「だって6桁だもん」
「良次さんみたいな『オトナ』にはそうでもないのかなあ?」

「私は、『17歳』だからさ〜……『10万』は魅力的だよぉ」

       クルックルッ

「ただね、友達がちょっとヤバいお仕事して『3万』稼いでた」
「その『3.3倍』ヤバいって認識も〜、できちゃうよね」

           ズズーーーーッ

そこまで言い終えてからタピオカを吸う。
動きはおとなしくなる……タピオカの魔力だろうか?

「……」

「でっ」「超能力者ね。ふぅ〜〜〜ん」「なるほどだね」

            キョロッキョロッ

即座に魔力が切れたのか、周囲を見渡す『日下部 虹子』。

「どうしよっかな、信じてほしい?」
「信じてもいいけどね。信じる『根拠』とかあったほうがい〜い?」

742門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/15(土) 08:52:29
>>741(日下部)

「へえ、『17歳』か―――未成年。

  ふふ………

               ………

 いやまあ、年齢は関係なく、しかるべき『仕事』をこなせば、
  しかるべき報酬を受け取るべきだと俺は思うね。
  『3万の仕事より3.3倍ヤバい』と考えるより、
  『3.3倍』、君が活躍するのだと思ってくれればいい。
  そうすれば『しかるべき報酬』は君のもの、というわけだ。

  あ、そうだ―――この前も、とある事件を解決してね、
             未成年の『パートナー』に『10万円』、ちゃんと渡したよ」

『門倉』は誇らしげに実績を主張するが、
税金なんかはどうなっているのだろう。
(これが噂の『闇営業』というヤツか?)

「そして、『超能力』を信じる『根拠』……だって?
      出せるのかい? そんなもの―――」

『門倉』は首を傾げる。

「あッ!
     ひょっとして君は………

            俺に『一目惚れ』しちゃったとか?

 『愛する者の言葉は無条件で信じる』

                 つまりはそういう事なのか―――?」

『門倉』がどこまで『本気』なのかは窺いしれない。

743日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/16(日) 09:07:00
>>742

「未成年だけど……? なに〜今の笑顔? いかがわし〜」

「まーでも、私のがその子より『3.3倍』……いやもっと可愛いし」
「仕事もね、それくらい出来るって自信はあるから……大丈夫かな〜」

        ニヤ…

「とゆーか、そんな頻繁に『仕事』抱えてるんだ」
「不動産屋っていうか〜、何でも屋さんみたいだねえ」
「その言い方だと、人を斡旋するだけじゃないみたいだし」

高額な『ギャラ』のためなら『闇営業』も仕方ないという気風らしい。
倫理観とかは『取っ払って』しまったのだろうか……これが今風なのか?

「私に惚れられたら、良次さんは嬉しい? ふふふふふ」
「でもね、残念だけど、そういうのじゃないな〜」
「100万円くれたらそういうことにしてもいいけど」

「『好き』も『信頼』も目に見えないんだからさあ」

        キョロ キョロ

「え〜と」「もう、これでいいかな…………」

視界を彷徨わせて……おもむろに食器入れに手を伸ばす。

「根拠はちゃんとあるんだけどね〜」
「ここで出しちゃっていい?」

「汚れちゃうからさ……掃除とか、誰か困らないかなあ?」

そして・・・フードメニュー用の物なのだろう。

            スッ

フォークを手に取り、袖をまくり、切っ先を肌に建てる。

744門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/16(日) 21:57:54
>>743(日下部)

「そりゃあ君のような可愛い娘が好きになってくれるならそれは最良だよ」

 『門倉』はそんな事を言いながら、

「―――?

       何を………何をしようとしているんだ!?」

 フォークを肌にたてる『日下部』に血相を変える。

「こ、『根拠』ってアレか?
  ヤクザの『指詰め』みたいな行為をもって示そうってのかい!?
        いや……病んだ少女の『リストカット』が近いか………?

    いやいや、譬えなんてどうでもいい!
    当たり前のことだが、俺はそんな事を望んじゃあいないよ!」

 『門倉』は『日下部』の行為を止めようとする。

745日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/16(日) 23:19:51
>>744

「『オトナ』も手を焼く『ひきこもり』の『連れ出し』」
「『若くてかわいい』だけの『17歳』を連れてくのも」

「んふふふ、まあね」

        プツッ

止めるよりも・・・手を動かす方が、少しだけ早い。
目を細めて、肌に鋭い先端が突き刺さる。

「それはそれでいいんだろうけどね」
「でも……『仕事相手』はお金払うわけだし」

           『ポコ』 『ポコ』

「良次さんは、私のこと『頼れるパートナー』って紹介するんだよ」
「だから、その辺で捕まえた『17歳』じゃなくって〜」

                ・・・?

今確かに、『フォーク』は突き立てられた。
肌に銀の切っ先が刺さり・・・赤い血が・・・出たはずなのだが。

      ペロッ

「こういう『目に見える』証があった方がねぇ、お互いのためだと思うの」

いたずらな笑みを浮かべ、フォークを口にくわえるその手は、傷一つなく、白い。

746門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 00:53:10
>>745(日下部)

「ああッ!」

 『門倉』の眼前でフォークが『日下部』の柔肌に侵入していく。
 思わず軽い悲鳴のような声を出してしまう『門倉』だったが―――


                    「―――ん? んんん?」

 無傷の手………消えた『傷口』。その事実に目を見開く『門倉』。

 ………

「君―――その傷は……『奇術』か『マジック』で………?

 ………

  いや、止めよう。この現象が『超能力を信じる根拠』だというのなら」

              グ  オ  ン

       『門倉』の傍らに『人型のスタンド』が現れる。

  ・ ・ ・
「『視える』方の人間だという事だね―――虹子ちゃん、君は」

747日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/17(月) 01:40:27
>>746

日下部は――自分の手に視線を落とし、笑みを浮かべる。
それから、顔を上げて。

「うわ。なるほどだね、そういう『形』があるものなんだ?」
「私のは、そういうのないみたいだからね〜」「乱暴しちゃったけど」

「でも、どうしてもね、『見せたかった』の」
「『信頼』なんて見えないもの、担保もナシに出来ないから」

「だからねえ、よろしくね良次さ〜ん」

人型のスタンドをまっすぐと見据える。
この『世界』に立ち入るパスポートは、すでに、持っていた。

「で、よろしくなんだけどね」

「出来れば『日下部ちゃん』って呼んでほしいな〜、」
「『虹子』って呼ばれるのね、あんまり得意じゃなくって」

「こっちも対等に『門倉さん』に変えてもいいからさ〜あ・・・どう?」

748門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 02:08:37
>>747(日下部)

「形(ヴィジョン)がないタイプか―――
  というか、君はそんなに、この超能力、
   『スタンド』については知らないみたいだね。

  呼び方については分かったよ。『日下部ちゃん』。
         ………ああ、俺の方は『良次さん』で構わないよ」

『門倉』は『日下部』にそう告げる。

「それで、『見せてもらった』俺としては改めて訊きたいんだけど、
 『引きこもり男子を連れ出す』ミッション、引き受けてくれるかな?

  イエスにしろノーにしろ、とりあえず連絡先はきいておきたいわけだけど」

749日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/17(月) 02:22:33
>>748

「んふふ、それじゃあ、良次さんって呼んだままにしとく」

「え〜と、ねえ。『スタンド』っていう言葉と……」
「これが『アット・セブンティーン』って名前なのは聞いたけど」
「詳しいって言えるような事は、何も知らないかな〜っ」

「その言い方だと良次さんは詳しそうだし、今度教えてよ」
 
    「あっ今度っていうのはねえ」

        「またいつかとかはっきりしない話じゃなくって」

板チョコを模したケースに収めた、スマートフォンを取り出す。

           ミッション
「――――その『お仕事』の時にでも、ね?」

見せた画面には、『QRコード』。
それから、はっとしたような顔でそれをテーブルに置きつつ。

「あ、良次さんは『ラ●ン』、分かるよね〜? でも私ね、別にメールでも使えるから」
「不便ならメールでもいいよ。オトナの人だと、たまにいるからさあ、そういう人も……」

年より扱い……ではないのだろうが、『世代間の隔たり』を感じなくもない配慮を見せた。

750門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 02:43:38
>>749(日下部)

「ああ引き受けてくれるのか!

             ―――じゃあ、また今度」

『門倉』はスマホを取り出し、『QRコード』を読み取る。
そしてその場で、「門倉だよ」とメッセージを送ってくる。

     「手取り足取り教えてあげよう、色々ね」

 そんな事を言っていると、

   突如―――

     ス ウ ウ ウ ウ ウ ………

              一瞬で、『視界』が変わる。

 ………

今までいた『喫茶店』がまるで夢だったかのように、
『日下部』と『門倉』は、焦げが残る『門倉不動産』に居た。

            「ああ――― もう、『時間』か」

 『門倉』が名残惜しそうに言う。

奇妙な『部屋』、『超能力』、『タイムリミット』―――
『門倉』という男が『日下部』と同じ超能力者、
『スタンド使い』なのだとしたら、
その能力を類推するのはそう難しい事ではないだろう。

751日下部『アット・セブンティーン』:2019/06/17(月) 03:30:03
>>750

「はい、登録」「っと〜」

      スゥッ

「や〜ん、言い方がいかがわしい〜」
「良次さんたまにそういうとこあるねえ」「なぁい?」

メッセージに『スタンプ』を返し、スマホを懐にしまう。
そして飲み終えた飲み物のストローを回していると・・・

>     ス ウ ウ ウ ウ ウ ………       

          「……んんん」

「なるほど、なるほどだね〜」
「こういうのも『アリ』な世界ってことか」
 
         キョロッ

「タピオカ……『飲んだ気』は残ってる気がする」
「カロリーもあの部屋みたいに、なかった事にならないかな〜」

              キョロッ

来た時と同じように、後ろ手を組んで、『来たままの部屋』を見渡す。
が――――少なくとも今日は、それをいつまでも続けてはいなかった。

「ま〜こうやって見てても原理はわかんないか」
「原理なんか、ないのが『能力』なんだろうし」

「それにねえ、私、そろそろ行こうかなって思うんだ」
「『10万円』貰えるなら、いろいろ買いたいものとかあるしぃ」

        ザッ

          「それじゃあ行くね。また仕事でね〜、良次さん」

そのまま、『門倉不動産』を発つ――――次に会うのはおそらく、仕事の席で、だろう。

752門倉『ソウル・ダンジョン』:2019/06/17(月) 03:50:22
>>751(日下部)

「いかがわしいつもりはないんだけれど………
               よく言われはするね。

 そして、残念ながら『飲食』は血肉となる。
       あの部屋が『思い出』の彼方に消えてもね」

 『タピオカ』も『ミルクティー』も高カロリー。
  流行りには文字どおり甘い罠があるという事だ………

「それじゃあね―――
   詳しい日程の調整が出来たら『連絡』するから」

 去りゆく『日下部』の背に『門倉』は手を振る。
  残されたのは彼自身と、まだ完全に修復しきらない彼の『仕事場』。
   『門倉』の次なる仕事は
    自らの傷を癒せる『17歳』の女の子と一緒に、という事になりそうだ。


                                      TO BE CONTINUED…

753エマ『ソルトフラット・エピック』:2019/06/22(土) 21:09:37
古ぼけたキャリーバックを転がし、キョロキョロと見渡しながら商店街を歩いている。
中東系の女性で、服装も少々年季が入っている……端的に言えばボロい。
端から見れば、バックパッカーか何かに見えるかもしれない。

754エマ『ソルトフラット・エピック』:2019/06/24(月) 00:59:25
>>753
立ち去った

755夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/19(金) 00:26:00

趣味の町歩きの途中、オープンカフェで一休み。
少しして、テーブルの上に泡立つジンジャーエールが置かれた。
グラスを持ち上げて、ショウガの利いた炭酸を喉に流し込む。

       グビッ グビッ グビッ

「――――ッかぁ〜〜〜!!」

やっぱ、ジンジャーエールは『カラクチ』だな!!
ベロにガツンとくる、シゲキテキでクセになるようなオトナのあじわい。
ナツいアツはコレにかぎるぜ!!

    《L(エル)》
                     《I(アイ)》
            《G(ジー)》
      
     《H(エイチ)》
               《T(ティー)》

そのまま休憩しつつ、何か面白そうな情報を求めて『町の声』に耳を傾ける。
『ドクター・ブラインド』の『超聴覚』――――それを使って客やら通行人の声を拾う。
なんかミミよりなハナシとかない??

756???『???・????????』:2019/07/19(金) 21:23:18
>>755

夢見ヶ先明日美、そのスタンド、傍に立つ『ドクター・ブラインド』の超感覚が
周囲の喧騒を拾い続ける。

 ガヤガヤ                  「……学校で猫が……」
                  ジャー
   「……幽霊だって!ほんと……」      ワイワイ
                       レロレロ       「……キャー!私のサンドイッチ!……」
コツコツ       「……肝試し?それは……」
                               ジャリンジャリン


その無数の音は絡み合いながら、本来なら雑踏の騒音として私達の耳に入るだろう
だが、彼女のスタンドはそれを確かに聞き分け続ける。

        ……コツコツコツコツ

その中から一つの靴音が方向を変え、貴方の背後からだんだんと近づいてくると
急にサングラスの目の前に、ハンカチで覆い隠された

 「さあ、僕は誰でしょう?」

唐突に背後から質問を投げ掛けられる。
同じくらいの年頃の少年の声だ。
どこかで聞いたことがあるような気がする。

757夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/19(金) 22:19:51
>>756

誰かが背後から近付いているのは『聞こえていた』。
だが、いきなりの目隠しまでは予想していなかった。
ナニモノだキサマ!!
さてはソシキのエージェントか……!!
このミセで『マッケンジー』にうけわたすよていの『ブツ』がねらいだな!!

「ほうほう――」

どこかで聞いたような声を聞き、思案する。
このまま普通に当てるのもいいだろう。
しかし、それじゃあ『ツマらない』とおもわないかね??

「じゃあ――――『あてて』みよっかな」

      シュバッ

『ドクター』を動かし、ハンカチを持っている手に爪で『チクッと』する。
ほんのちょっとでいい。
それだけで十分。
『ドクター』の能力の一つ――『視覚移植』を行うためには。
本来は盲目である『ドクター』だが、それによって一時的に『視覚』を得る事が出来る。

「えっとね〜〜〜」

『ドクター』を振り返らせ、その人物を目視する。
                  ブースト          ブラックアウト
そういえば、前に会った時に『鋭敏化』は見せたけど『盲目化』は伏せていた気がする。
ま、ベツにいっか。

「――『イカルガのショウさん』ににてるっていわれないッスかぁ〜〜〜??」

本人は相変わらず目隠しされたままで答える。 ブラックアウト
ちなみに、『視覚移植』が成功しているなら、彼は『盲目化』しているだろう。
つまり、イマのわたしと『おなじジョウタイ』ってコトになるな!!

758斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティー』:2019/07/19(金) 22:38:27
>>757

「ーーあたり。」
「君みたいには上手くいかないな。」

ハンカチが取り除かれ、視界が開ける
彼が貴方の背後から現れた、夏風に色褪せたスカーフを揺らし、笑みを湛えた少年
斑鳩 翔。

その腕に鎖が巻かれたかと思うと、即座にボロボロと崩れ落ち、ずるり、と影のような腕が現れた
腕が夢見ヶ埼の肩を叩き、そしてテーブルの縁を触りながら、少年を向かいの席へと誘導する。

「やるもんじゃあないなあ、キャラじゃない事は
 今度は僕からからかおうと思ったんだけど、逆にやられてしまった。」

「椅子、椅子……何処だっけな。」

たどたどしい様子でテーブルの周りを回る
肩を竦めつつも、しばらくするとお手上げのようで『4本の腕で降参』しつつ口を開いた。

「……よければ助けて頂けると、嬉しいんだけど。」

759夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/19(金) 23:24:53
>>758

『視覚移植』の持続時間は『10秒』だ。
解除しなくても自動的に元に戻るが、それまでの間に『事故』が起きるかもしれない。
たとえば、テーブルにぶつかった拍子にグラスが倒れるとか。

「ほうほう、ソレはいちだいじですな。よし、すぐ『シュジュチュ』しよう!!」

だから、『持続時間切れ』になる前に能力を解除する。
ただし、そうなると別の問題が出てくる。
いわゆる『ささいなモンダイ』ってヤツだけど。

「――――『アリス』のワンポイントアドバ〜〜〜イス!!」

「さいしょはさぁ、ハッキリあけとかないほうがイイとおもうよ??」

人間の目は、暗い所から急に明るい場所に出ると『眩しさ』を感じる。
しかも、今の季節は『夏』だ。
視力が戻る際に感じる眩しさは、相応に強いものになるだろうから。

「あせらなくてもイイのよ??さぁ、カラダのチカラをぬいてリラックスして……。
 おちついたキブンで、ゆっく〜〜〜りとあけていきましょうね〜〜〜」

さながら保健の先生か何かを思わせるような作り声で語りかける。
テーブルの上のグラスは手に持っている。
眩しさが事故の原因になるとも限らないからだ。

760斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 00:13:18
>>759

急激に戻った夏の日差しに目を細めつつも、どうにか椅子に座って一呼吸入れる
視界に明瞭な世界が入ると同時に、夏の暑さと喧騒が同時に戻る気がした

「ご親切にどうも、アリス。」

涼し気な声と微笑みを返して彼女と対面する
前と会った時と別段違いはなく、何時ものように陽気にすら思えた

「気分はさながらジブリの大佐だったよ」
「最後にめがぁって言いながら彷徨う感じの。」

(影の頭で視界を確保すれば良かった気もするが、まあ気づかなかった事にしておこう
 事実、見えたかは怪しいし……。)

「で、其方は暑い夏に冷えたジンジャーエール?いいね。すいません、そこの可愛い緑のエプロンした店員さん、アイスティーを」

少年は彼女の手に持った結露したグラスを見て
呼ばれてやってきた店員と二言三言かわすと、店員が二人を見てから斑鳩に話しかけた。


「え?キャンペーン?ストロー2本のカップル用の大きいサイズがある?じゃあそれで。」

店員を何でもないように見送った後、目の前の彼女に向き直る
いつも通りの笑顔で。

「それで、夢見ヶ埼ちゃんはどうしたの?散歩の休憩?鏡の世界探し?」

761夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 00:42:13
>>760

「わたしぃ〜〜〜??いつもどおり、この『フシギのセカイ』をボウケンしてる。
 なんかユカイなコトとかないかな〜〜〜って」

「そしたら、ホラ――――ちょうど『みつかった』トコ」

両手でテーブルに頬杖をついて、正面の相手を見つめる。
まるで恋人と語らっているかのように。
そんなワケねーけどな!!カンチガイすんなよ。

「――で、どうよサイキン??あの、アレだアレ。なんかあった??
 こう、かわったコトとか。モグラがサカダチしながらスキップしてるようなカンジの」

「つーかさ、ショウくんはナニしに……いやまて、あぁ〜〜〜。うんうん――わかった」

一人で何事か納得して、何度か大きく頷く。
アリスのカンサツリョクとスイリリョクは、ヒトツのケツロンをみちびきだしたのだ。
ほかのヤツならいざしらず、このアリスのめはごまかせない。

「さては、さっきのウェイトレスをマークするためだな!!やるねぇ〜〜〜」

「ナツはこれからだからな〜〜〜。『アツイよる』をすごすのは、まだまだまにあうぞ!!」

762斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 02:04:13
>>761

彼女にとっては不思議な世界
例え僕にとっては深海の底でも。

生まれた時から、さっきスタンドが見せた光景で、急に光が戻るなら
確かに彼女にとって色に溢れるここは不思議な世界なのだろう

(感受性が豊かというか…一緒にいて退屈だけはしないで済むタイプだな)

そう考えつつも、店員が持ってきたグラスを受け取る
……想像以上にでかい、おまけにハートマークの意匠で作られた
これまたでかい二口ストローが刺さっている。

(安いし興味本位で頼んでみたけど、成程 向かい合わせで飲むんだな
 そうでないと一人では吸えず、飲めない仕組みか。)

「モグラが逆立ちはないなあ、チェシャ猫のようなのなら海で一匹。」

そう言いかけた所で夢見ヶ先……もとい、アリスが自信満々に間違った推理を披露しだした
とりあえず断じておこう、ターゲットが違う、フラミンゴではボールが打てないのと同じだ。

「いや?マークは僕の目の前の、素敵な女の子だけど」

自分でも驚くくらいに、その台詞はあっさりと舌から滑り出した
夏の暑さのせいだろう、きっと たぶん メイビー。

「『アツいよる』に、一緒に夏祭りを見て回るの、どうかなって」 「駄目?」

視線を合わせ、はにかんで言っては見るが、まあ断られたら諦めよう
此方としては散々からかわれた記憶が有るので、目指せ赤面ではある。

(……おかしいな、僕は何やってるんだろう。)
(スタンド使いを探して…いや、夏祭り会場なら人も多いし、スタンド使いも集まるのでは?)
(つまりこれは両親のためにも合理的なお誘い、うん!そう!よし!)

言った後に今更鎖まみれの脳みそが回転を始める。
夏の風景を移すグラスの氷が、ほどけて子気味良い音を立てた。

763夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 03:03:07
>>762

「なるほど??それが『いつものテ』ってワケですな〜〜〜。
 アマいコトバで『ソノき』にさせて、アソんであきたらポイしてツギのエモノを……。
 そうやって、イマまでナンニンなかしてきたんだ??おおん??
 もうショウコはあがってるんだ。ジハクしたらツミがかるくなるぞ!!
 さぁ!!さぁさぁさぁ!!」

やや早口で、テキトーなコトをベラベラ喋る。
そうこうしている間に、目の前にクソでかいドリンクが置かれた。
まぁフタリぶんだし、ナットクだな!!
1ぷんでのみきったら、5マンエンとかない??
たぶんショウくんがチョウセンしてくれるハズだ!!
わたしは『5マンエンをもらうカカリ』をやろう!!
これぞ『チームプレイ』だ!!

「あのさ、いちおういっとくんだけど――」

「『いっていいコトとワルいコト』があるぞ」

「もし、それが『シャレだったら』のハナシで」

「マジだってんならイイよ。イマのトコよていないし」

「――タノシソーじゃん??」

アスファルトから照り返された太陽光を、サングラスのレンズが反射している。
そのせいか、表情は今一つ分からなかった。
しかし、少なくとも声色は普段と同じだ。
ただ平時と比べると、多少静かな感もある。
ほんの少しだけマジメになったような、
あるいは『マジメになったフリ』をしているような――そんな雰囲気だった。

「まぁソレはソレとして――――」

改めて『ドリンク』に視線を移す。
今まで見たコトがない代物だ。
コレはコレでヒジョーに興味がある。

「コイツはスゲーのがきやがったな……!!
 まったく、こんなのチュウモンするヒトのカオがみてみたいぜ。
 ミヂカなバショにも、こんな『フシギ』があったとは……!!イイねぇ〜〜〜」

サングラスの奥の瞳を輝かせ、ストローに口をつける。
しかし、ドリンクが上がってこない。
『同時に吸わなければ飲めない』というコトを知らないようだ。

764斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 04:35:44
>>763

「あ、バレたぁ〜?」

少女の怒涛の追求に、舌先から出た言葉は悪びれも無く軽かった。

「お祖父ちゃんが『女を口説く時はこう口説けって』うるさいんだよ、
まあ顔の方はイケメンに生んでくれた両親に大感謝だけど
僕より上手のアリスには通用しないしなー!参っちゃうよな!」

「ちなみに今は君が初めて使う相手だから、失敗もあるよね!精進します。」

そう言うと肩を竦め、苦笑いで誤魔化そうとした

(ま、それも『今こうなった原因』の一つなんだから複雑と言えば複雑だが……。
 『そのいかした顔がイラつく』だって?まったく、あいつらどうかしているよ。)

「でも、約束の方は『マジ』さ女に礼を失するなって言うのが、僕の家の教えだ。
 それに、僕が約束を破ったのは ……1回だけだからな。」



(もっとも、タイムリミットが先に作動しない限りは、だが。)

タイムリミットとは結局のところ、彼の複雑な人格に終始する
1番目は僕達の生死に興味がない

問題は2番目だ、怒り狂った2番目の人格が『スタンド』で、そこらのチンピラを殺す手段を確保したとたん
まず間違いなく殺して回るのが見えている、そして善人のスタンド使いなら、
『あまりにも証拠が残らない殺人』は見逃さないだろう……そうなると

(最悪なのは、『善人』が『徒党を組んで』襲いかかってくる事だ……
 そうなったら、僕はもう、両親を助ける機会すらなくなる。)

(その前に人格を統合か分離か……やれやれだ、
 何方にせよ『僕が主人格になる保証は無い』、断頭台に向かって歩いているような物だ)

(感謝はしているが、あの人も無茶を言うな『人類そのものを憎んでいる人格』が『熱愛』なんて、できるわけがない)
(だが他の二つは『死線』と『悲劇』……成長できても僕が死んだら意味がない、結局全部困難という事か。)

(『ロスト・アイデンティティ』…これ以上何を無くせと言うんだろうな。)

「ま、それはそれとしてデートの約束ゲット 浴衣姿とか楽しみだな。」

悪い予想を振り払うように首を振って思考を現実に戻す
見ると、丁度夢見ヶ崎がカップル用ドリンクに、(サングラス越しに)瞳を輝かせている所だ
だが、頑張っても吸い出せていない、仕組みを知らないのだろう

しばらく苦戦するのを見ているのもいいと考えたが
流石に少年が見かねたので

「……ノックせずにもしもぉ〜し」
「それ、1人じゃ、飲めない奴 ほら、こうやって……」

もう片方のストローを銜えて、一緒に吸おうとした。

765夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 13:14:22
>>764

「ナニこれ??このストローこわれてる。だってゼンゼンのめないし。
 ストローってのは、のむためにあるんじゃねーのかよ??
 すえないストローなんて、もちてがサカサマについてるヤカンみたいなモンだ。
 つかえねーヤツだな〜〜〜カネかえせ!!」

この『アリス』をコンワクさせるとは、イガイにガッツあるじゃあねーか。
だが……『そのていど』でとめたきになってるんならナメすぎだぜ!!
『アリス』のじゅうなんな『ハッソウリョク』をアマくみるんじゃあねー。
『ストローをつかわなきゃならない』なんてダレがいった??
ストローがつかえないんならよぉ〜〜〜

      ガシッ

「『ちょくせつのめば』すむハナシだぁ――――ッ!!」

役に立たないストローを完全に無視して、グラスを持って直接飲もうとする。
しかし、飲み方を教えようとしているのを見て、ギリギリで手を止めた。
同じように、再び自分もストローに口をつける。

「あ、のめたわ」

ごく自然にドリンクが吸い上がる光景を見て、納得した。
だけど、すこぶるメンドくせーな。
これ、ヒトリでリョウホウくわえてもイケるのかね??

「さすがによくしってるじゃん??
 こうやってオンナつれこんで、いつもおなじようなチュウモンしてるワケだ。
 ついにうごかぬショーコをおさえてやったぜ!!」

「――――で、ナンのハナシだっけ??『ユカタ』がどうとかって??」

「わたしは『ユカタをきる』なんてヒトコトもいったオボエはありませんね。
 イカルガさんが、そういうカッコウをおこのみだというなら、ヤブサカではありませんが。
 ただ、そういうカッコウがスキならスキと、『ハッキリ』おっしゃっていただきませんと」

「――どうなのですか??」

感情を抑えた声色と口調で、容赦なく追及を続ける。
そう、まるで男性社員からデートに誘われた『高嶺の花のエリートOL』のように!!
さぁ、おもいのままにジブンの『シュミ』をぶちまけるがいい!!フハハッ!!

766斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/20(土) 17:22:25
>>765

「フッ、僕のクラスメイトの知識を甘く見るなよ…年がら年中『彼女欲しい』とか言いながら
 学生服の第2ボタンを仮縫いして取られやすいようにしている奴だ…!流石の僕も戦慄する。」

別名:色ボケした馬鹿とも言う。
だが健全な男子生徒とかそんなもんである。

(まあアイツには後で自慢するとして)

悔しがる顔が目に浮かぶが
今度は浴衣が好みなのか等と問われてしまった
声色が抑えられて、真夏のクーラーのような印象を受ける


(話しぶりがころころ変わるなあ、夢見ヶ崎ちゃんは
 とはいえ……)


「そうだなあ。」
「好きと言うよりは、夏の祭りを更に楽しむための装いだと思ってるけど。」


やぶさかではないと言われ、今一度目の前の少女を見直す

セミロングの金糸が夏の日差しを反射して煌めき
ネイルアートの施されたカラフルな付け爪が指先を彩り、
黒目がちの大きな瞳を、ブルーレンズのサングラスが覆う


「元がいいから何着ても似合うとは思うし
 頼んだら着てくれる辺り優しいよね、アリスは。」

本心からそう言うと、アイスティーを更に飲む
冷えた液体が喉を流れ落ちていく

(白地に紫陽花辺りもいいと思うけど、白は汚れが目立つからなぁ。)



「それとも、夏用の特別な装いはお気に召さない?
 他の時期だと着れない物だけど。」

彼女の好奇心をくすぐるように囁く
事実、興味が無いわけでは無いのだ。

「ところでさらっと飲んでるそれ、僕のドリンクなんですけどー!
 資本主義に乗っ取り代金を要求するー!」

767夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/20(土) 18:19:25
>>766

「あー、うん、まぁね、そりゃそうだ、うんうん」

こうもストレートに褒められると、何だかミョーに照れくさい気分になる。
だから曖昧な相槌を打って、この話題を切り上げてしまおう。
だけど考えてみれば、これも『未知』の経験の一つだ。
『全ての未知』を網羅する予定の『アリス』としては、体験しておくべくなのかもしれない。
そう考えていた所に、『ダメ押しの一手』が放たれる。

「くッ…………!!『トクベツ』か…………!!」

心が揺らいだ。
その手の誘いには弱い。
なぜなら『アリス』だからだ。
アリスは『フシギ』を追い求めるモノであり、私は『アリス』である。
つまり、私は『フシギ』を追い求めなければならないのだ。

「――――『のった』ッ!!『きて』やろうじゃないか!!
 わたしを『ソノき』にさせやがって……。コウカイすんじゃねーぞ!!」

    ズズズズー

さりげなくドリンクの量を減らしながら、ビシッと宣言する。
それから顔を上げて、不意にニヤリと笑ってみせる。
何事か企んでいるような――そんな不適な顔だった。

「ヘイヘイヘイヘイッ!!ショウくんさぁ〜〜〜、ヒトツだいじなコトわすれてるよ??
 『わたしといっしょにカフェでくつろぎのヒトトキをすごしてる』ってコトをさぁ〜〜〜。
 『モトがイイからナニきてもにあうアリス』とイッショに。
 ソレが『ドリンクだい』にならないのは、ちょっとシツレーすぎるとおもわないかい??」

            ニヤッ

「ショウくんはわたしとヒトトキをすごす。わたしはドリンクをいただく。
 コレで『つりあい』はとれてるワケだよねぇ〜〜〜??
 ココでわたしがオカネだしたらさぁ〜〜〜
 『ワリ』にあわなくなるんじゃないのぉ〜〜〜??」

「しかもさぁ〜〜〜『デート』のさそいまでオーケーしたよねぇ〜〜〜??
 さらにオカネまでとろうなんて、ソレこそ『シホンシュギイハン』じゃないのぉ〜〜〜??」

ニヤニヤしつつ、ドでかいグラスを挟んで向かい側に座る相手の顔を眺める。
『シホンシュギ』っていうのがナニか、よくしらないけどな!!
さぁ、どうでる??イカルガショウ!!

768斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/21(日) 02:20:39
>>767

「グッド!」

口角が嫌でも吊り上がる
彼女…アリス相手にまず一勝と言う所だろう
好奇心をくすぐるのは成功だったらしい

「そうだね、後悔するのは隣に誰もいないクラスメイトだろうけど。」

動揺して話題を斬り上げられた、
ポイント1-0。
ただし、彼女はただで倒れる相手では無かった
不敵な笑みと共に、即座に反撃の手を刺し始めたのだ

「女生とカフェのひと時での支払い?」

そう言われると困った事になった
なにせ、確かに僕が褒めているのは事実だし
これに下手なNOを突き付けるのは、今までの言葉を嘘にする事になる

(そう言いつつ更にドリンクを減らすあたり抜け目ないなあ。)
(が、どうかな……)

資本主義と言うのは適当にはなった言葉だが
このまま彼女に言わせておくのは男がすたる、気がする。
よろしいこの斑鳩、受けて立つ、ならば『ふたつの』頭をフル回転すべし。

うんうんと唸りながらも、ドリンクが半分を切った頃に、は何とか影の頭共々ひねり出し
説明の為に指を一本ずつ立て、順に折っていく

「……一つ、デートの誘いが無ければ浴衣を着ようなんて『特別』考えてなかったんじゃない?
 つまり僕から君に『教えてる』という体で『デートは双方に利益が有る』、よって、チャラ。」


要は自分は『デートの機会を得る』、彼女は『浴衣を着る機会を得る』
という事で相殺しようという論理だった、彼はそのまま続けて口を開く


「二つ、確かに君は美人だ、それは認めていて、覆えさない
 だが、僕だってそれに負けているとは思っていない、僕は斑鳩家の一人息子で…この顔に生んでくれた両親に感謝しているから」

彼は自分が整っているとは考えていたし、事実その通りではあった
ただ、彼の自信は鏡を見た主観的評価では無く、単に両親への愛で自分も美形だと信じているのだ



      「それに」



「君のような女の子が、たったのドリンク一杯で『デートに誘われた』、なんて自分を安売りしていいわけがない」
「友人にはこう言えばいい、清月学園一のイケメンをタダで『デートさせてやった』…のほうがいいんじゃないか?」

(……我ながら結構苦しいかもしれない!)

斑鳩は言い終えると、こう考えた
世の中の女を口説くのが礼儀だと思っている男性は、皆、同じような苦労をしているのか……と

769夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/07/21(日) 07:01:30
>>768

「『イケメン』だったの??」

今初めて気付いたような口調だった。
客観的に見て自分のルックスがいいのかどうかも、正直な所よく分かっていないのだ。
そう言われたから、深く考えずに同意しただけで。

「まぁ、そういわれてみればそーかもね」

生まれつき視力が働かなかった自分は、顔に対する『優劣の感覚』が薄かった。
それぞれが違っていて、その違いが面白いとは思っているのは事実だ。
しかし、『そこに優劣を感じるか』と言われると、あまりピンとこない。

「うんうん、そのトオリだ。やっぱりイカルガくんはかしこいなぁ!!
 ハンサムでスマートでおまけにアタマもいい!!
 よっ、プレイボーイ!!イロオトコ!!ジェームズ・ボンド!!」

あまりにもアッサリと、ほぼ全面的に同意する。
特に反論してくる様子もない。
ソレはナゼか??

           (――――ニヤリ)

表情には出さず、内心でほくそ笑む。
こちらの目的は最初から、『勝手に飲んだドリンク代の支払いを回避する』ことのみ……。
そのために!!論点を『ウヤムヤ』にして忘れさせるッ!!

「ユカタの『ガラ』は、どんなのがイイとおもう??『トリガラ』いがいで」

さらにダメ押しにッ!!ごく自然な流れで『話題』を転換する!!
もし思い出したとしても、あれだけ力説した後で『カネを出せ』とは言いにくかろうッ!!
『いつまでもコゼニにこだわるミミっちいオトコ』という『ちいさくないマイナスイメージ』が、
『ウワサずきのジョシたち』のあいだでフイチョウされるコトになるぜぇ〜〜〜??

「やっぱ『ブルーけい』か??そこはかとなく『アリス』っぽい。
 コーディーネートがジューヨーだからな。ネイルもあわせないといけないし」

ソレはソレとして、ユカタはタノシミなのだ。
むしろジブンのほうが、それまでのハナシをわすれつつある。
あれ??さっきまでナニはなしてたっけ??モグラのハナシか??

「よし!!これからみにいこうよ!!
 おもいついたら、すぐコウドウしなきゃ!!
 はやくしないとユカタがにげるぞ!!アイツらケッコーはえーからな!!」

「――――イイよね??」

さも当たり前のように提案を持ち出す。
まぁ断られたら一人で行くだけなんだけど。
どうよ??

770斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/21(日) 18:08:45
>>769

「……有難う!」

彼女に感謝をしつつも脳内でゴングが鳴り響く
苦笑しつつも今回の舌先に置いて敗北を喫した

(くっ、これ以上の追求は無理か…!
 すまない、男子生徒諸君、僕が男であるが故の敗北だった…!)

自身の見目を女性に褒められた以上
これ以上の金銭への追求は、男としても『みっともない行為』にしかならないのだ
男のプライドにより始まった戦いは、漢のプライドにより敗北したのであった――

「まあ、(僕以外の男子生徒の尊厳とか、別にどうでも)いいや
 それで?浴衣を見に行くんだったらお祖母ちゃんの贔屓の店を紹介するけど。」

席を立ち、レシートを持って彼女の傍に立つ
夢見ヶ崎を誘うように手を振ると、口を開いた

「何せ、夏の時間は有限だからねアリス?
 お茶会の時間は終わり、お店で君に似合う帯を探す時間だよ。」

意地の悪そうな笑顔と共に、歩きだす。

(――そう、時間は有限だ。僕達にとっても。)

結露したグラスが、夏の風に吹かれて、残されたテーブルを濡らしていた。


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