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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

148ミリアリア・あの子許せない 81:2004/03/23(火) 06:30
第2部 6. 私はキラの特別…… 5/7
[トールとキラの遺品。私が持って行ってもいいでしょうか?]

翌日、ディアッカは釈放され、オーブの係官に連れられてアークエンジェルを降りた。
通路で、それを見かけた私は、軽く会釈して、ディアッカを見送った。

私は、そのまま艦長の部屋へ行き、退艦の意図を告げた。

「そうミリアリア、残念だわ。あなたの働きは、とても優秀で惜しいとも思うけど。
 あなたが、そう思うのなら仕方ないわ」
「済みません。最後の最後に我が侭言って」

私の考えじゃない。キラの命令。私は、それに従う。私は、それで幸せだ。
昨夜は、何も考えずに眠れた。何一つ考えずに……

「それと、お願いなんですが」私は艦長に尋ねる。
「何、ミリアリア?」

「トールとキラの遺品。私が持って行ってもいいでしょうか?」
「どうして? トール君のは分かるけど、キラ君のなんて」

「キラ、あれには手を付けてませんし、私には思い出のものなんで」
「それは、キラ君に直接、お願いしたほうがいいわ。トール君のは、私の方からも、
 お願いする。トール君の両親に渡してあげて」
「はい、艦長」

「本当は、私がお詫びに行かなきゃならないのだけど、私の立場は、あまり良くないから、
 モルゲンレーテからは、あまり外に出られないの。辛いこと、お願いして悪いけど、
 トール君のこと、私からも申し分け無かったと伝えて頂戴。お願いね」

艦長は、私に頭を下げていた。

「分かりました」

今まで、キラのことで誤解していた艦長。私は涙ながらに艦長の言葉を素直に受け止めた。

* * *

<トリィ! トリィ!>

「トリィ黙りなさい。邪魔しないで」

私は、まとわりつくトリィを生きている鳥であるかのように、言葉をかけながら追い払う。
まるで、トリィを生き物だと思っていた、あの子のように。

<トリィ!! トリ、トリィ!!!>

「トリィ邪魔よ! あっち行ってなさい!!」

私は、トリィを追い払うと、ロックのかかっていないキラの部屋から出た。
キラの遺品箱を持って……

私は、キラの部屋から遺品箱を自分の部屋に黙って持ってきた。
私には分かっていた。遺品箱を持って行くのをキラが許さないことを。
そして、あの子が帰ってくるかもしれないから、キラは、このまま置いておきたいということも。
キラに頼みに行っても、そこでキラに持って行くなと命令されれば、今の私には逆らえない。
結局、私は、キラに黙って遺品箱を、密かに自分のバッグに入れた。

自分がしていることが、どういうことなのか、自分でも説明できなかった。
昨夜から、何も考えられなかった。キラの命令だけが頭の中に響いて、何一つ。

149ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/23(火) 06:32
>>流離う翼たち
アズラエル出ましたね。マリューさんは、単に第一印象だけで、もう嫌っているみたいですけど。
しかし、フレイ・アルスター少尉、トール・ケーニヒ少尉、ついにキラとタメですね。
キラとキースが昇進しないのは、関っている相手が相手だからしょうがないですね。

>>過去の傷
ティファがフレイと会えるってどういうこと? それはともかく、フレイ様がついにキラとミリィの
現場を目撃。これから修羅場でしょうか。

150私の想いが名無しを守るわ:2004/03/23(火) 19:34
>>ミリ
㍉視点で見ると、キラはラスボス並みの迫力です。
口調は、いつもと変わらないのに。不殺は端から
見れば、矛盾してますが、気持ちはわかりますね。
「もう、銃を撃ってしまった僕だから」←巧く当てはまってます。
>>過去の傷
ティファもナチュとコーディの区別は分からない
でしょうね。Xを見ましたが、ほんとフレイ様とは
真逆のおにゃの子ですね。アストレイ組も復活して
エターナルは騒々しさ増大ですね。
>>流離う翼たち
民間人さんは相変わらず、軍事や政治に口出しして
ますね。やっぱり、この人出ないと話がしまって
きませんね。マリューのリアクションは、まあ当然
というところでしょうか。
>> The Last War
C.E.最強のコンビ相手に、アプカリプスは引けを取
っていないですね。堂々としてます。アスランは、
普段冷静な分だけこの手の危機の時は安易な死を選択
したりするので見てて危なかっしいですね。

151流離う翼たち・440:2004/03/23(火) 22:17
 これで会見は終わりの筈だったのだが、何故かソファーに座る民間人がキースを呼び止めた。

「まあ待ちたまえ。久しぶりに会ったのだ。どうだい、旧交を温める意味でも一緒に飲みにでも?」
「・・・・・・お前と温めるような関係があったか?」
「酷い事言うね。これでも僕は君を喧嘩友達だと思っていたんだよ」

 やれやれと肩を竦める男に、キースは仕方なくその足を止めた。

「いいいだろう。で、何処に行くんだ?」
「任せておきたまえ。僕が誘うんだ、それなりの所へ案内してあげるよ。ああ、何ならそちらの皆さんも一緒にどうです?」

 男から誘われた7人はどうしたものかと顔を見合わせる。どう考えてもこの男は友達になれそうもない男だが、断ると後で色々と問題になる気もする。

「・・・・・・分かりました。私とフラガ少佐でよければ」
「え?」

 俺も? と言いたげなフラガを目だけで制し、マリューは男の誘いに応じる答えを返したが、何故か男は首を縦には振らなかった。

「僕としてはそちらの少年少女の方に興味があるんだけどねえ」

 そう言って民間人の男はキラとフレイを見やる。その視線を受けたフレイはビクリと身を振るわせてキラの背中に隠れ、キラは何やら息苦しそうに身動ぎした。男はフレイの動きを見て意外そうな表情になった。

「おや、アルスター嬢はその少年を信頼しているのですかな。お父様が見たらどういう顔をなさるでしょうねえ」

 男の言葉にフレイの顔色が変わり、キースが顔を顰めて小さく舌打ちした。フレイはキラの背中から出て男に問いかけてしまう。

「パパを、パパを知ってるの?」
「勿論知ってますとも。まあ、余り付き合いがあったわけじゃないですがね」
「貴方は、一体誰なの。パパと知り合いって、政府の人なの?」
「まあ、政府の人では無いんですが、政府と関わりのある人ですよ。私は連合軍需産業理事を務めています、ムルタ・アズラエルです。君のお父様とも何度かあっていますよ。ついでに、そちらのキーエンスとは昔馴染みなんですよ」

 そう言ってアズラエルはキースを見る。キースは心底嫌そうに、だが真正面からその視線を受け止めていた。

「昔馴染み、ね」
「昔馴染みには違いないだろう。君は相変わらず僕の事が嫌いなようだけど、僕は君の事を結構気に入っていたんだよ。何しろ僕にはっきりと噛み付いてきたのは君くらいだったからね。鬱陶しくはあったけど、1人くらいは君みたいなのが居た方が良い」
「ふん、お前のやり方は過激過ぎる」
「相変わらず、甘い事だね。そんな事だからこんな戦争が起きたんだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あの日、君がパトリックとシーゲルを始末するのに賛同してくれてれば、事態がここまで悪化する前にコーディネイターどもの首根っこを押さえられたのにね」

 アズラエルの言葉にその場にいる全員がキースを見た。キースは表情を殺していたが、強く噛み締めている口元がその内心の憤りの激しさを示しているかのようであった。

152流離う翼たち・作者:2004/03/23(火) 22:31
>> 過去の傷
ティファがどうしてこっちに来れるのでしょう?
しかし、遂にミリィとキラの現場を見られたか。キラの命日は今日なのか?

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィさん、悩むのは後でも出来る。今はそのまま降りて平和を掴んだ方が良い
君の今の仕事はトールの両親に死亡報告をする事だ。

153過去の傷・89:2004/03/23(火) 23:10
「キラ、そんなんじゃ分かんないわよ!」
「もう十分断っただろ!」
「ちょっとキラ!ちゃんと部屋で話し合うわよ!」
強引に自分の部屋にキラを連れ込もうとするミリアリア。
そんな時通路からフレイが歩いて来た。
「あ、フレイ!」
キラはミリアリアの手をなんとか振り払うと逃げるようにフレイに駆け寄った。
「どうしたの?」
「ミリィが・・・付き合えって・・・断ったんだけど、しつこいんだ」
「キラ!!!」
「ミリアリア、もうやめなさいよね」
フレイはキラを守るようにキラの前に立った。
ミリアリアは少し冷静になると・・・。
「フレイには関係ないわ、向こう行ってて、私はキラに話があるの」
「だからそれをやめてって言ってるの、キラだって嫌がってるじゃない、そういえば昼間もブリッジでキラに言い寄ってたでしょう?聞こえたんだから、もうやめてくれない?」
その言葉にミリアリアの顔がだんだんとこわばってきた。
「フレイには関係ないって言ってるでしょう!?私はただキラと話したいだけなのよ」
「関係なくなんかないわよ」
「・・・・・・」
「それにこの状況じゃどう見ても嫌がるキラにあんたが付きまとってるように見えるんだけど」
その言葉にミリアリアの表情が一気に険しくなる。
「なによそれ・・・なにが言いたいわけ?」
「だから迷惑だって言ってるの、もうキラに付きまとったりするのやめて、キラが可哀相じゃない、ト−ルがいない寂しさも分からなくはないけど・・・キラには関係ないでしょ、それに私だって練習で疲れてるのよもうやめてくれないかしら、キラ行きましょ」
そう言うとキラを連れて去ろうとした。
「フレイちょっと待ちなさいよね!!!」
(!この感じ・・・来るわ)
ミリアリアがフレイに背後からつかみかかってきた、しかし知っていたかのようにそれを簡単にかわしたフレイは逆にミリアリアの手をひねるとそのまま地面にたたきつけた。
「きゃあ!」
地面に伏せるミリアリア、その彼女を冷たくけいべつしたような目でフレイは見つめると冷たく告げた。
「いいかげんにして!本気で喧嘩したらあんたが私に勝てるとでも思ってんの!?」
「・・・フレイ・・・」
このフレイの行動にはキラも驚いているようだ。
「とにかく・・・もうやめて、キラ・・・部屋に戻るわよ、私達の部屋に」
「うん」
フレイが先に歩き出す。
「キラ!」
ミリアリアがキラの肩をつかんだ・・・しかしキラはその手を離しミリアリアを少し睨みつけるとフレイのあとを追った。
残ったミリアリアは・・・。
「バカ・・・」
二人の後姿を物凄い形相で睨みつけていた、まるでディアッカをナイフで襲ったときのような表情だった・・・。

その頃・・・。
「フレイの奴、いいかげん遅すぎるぞ」
カガリが部屋で一人呟いていた。

ここはサイの部屋だ。
「・・・・・・」
一人本を読んでいた、そんな時だれかが訪ねてきた。
「サイさん♪」
ジュリだった、この二人は昼ずっとデ−トしていた、読書だけだが・・・気が合うらしい。
「あ、やあ入りなよ」
「失礼しますね」

「サイさん」
「ん?」
「私達って気が合いますね」
「ああ、そういえばいろいろと」
「あのサイさん」
「なに?」
「私・・・彼氏募集中です」
「え?」
「サイさんはいま彼女とかいるんですか〜?」
「ええと・・」
そういえばとサイは思い出した、カガリのことだ・・・しかしだれがみても彼女が本気のようには見えない。
「彼女?いないよ」
「そうですか・・・よかった」(サイさんって優しい)
サイは思った、この子とは付き合っても気も合うし面白そうだな・・・と。
「あのさ・・・」
「なんですか?」
「俺と・・・付き合わない?」
その言葉に嬉しそうに飛び跳ねた。
「もちろんです!」(やった彼氏出来た!それも優しそうだしサイさん顔もいいしやった!マユラ、アサギ・・・先行くね)

154過去の傷・作者:2004/03/23(火) 23:19
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ・・・キラの奴隷だ・・・可哀相すぎるぞ・・・ていうかこのキラはもう普通じゃない、戦争の血についに染まったか。
ミリィもう、キラのことは完全に忘れて自分のこれからの人生切り開いてね。
>>翼たち
アズラエル登場ですか、あいかわらず嫌なやつですね、まあフレイ様のお父様とはお知り合いでしょうね、ブル−コスモスということで。
キ−スさん修羅場に?

155ミリアリア・あの子許せない 82:2004/03/24(水) 05:20
第2部 6. 私はキラの特別…… 6/7
[今度会えたら。君のことミリィって呼んでいいかい]

私が艦を降りることを決めたのを聞いて、サイは、私の四人部屋を尋ねてきた。
サイは残念そうに言った。

「そうか、降りるんだミリアリア」
「うん」

「ミリアリア、君の決めたことなんだから仕方ないな」
「サイ、ごめんね。今まで慰めてくれたのに、私、何もお返しできなくて」

「こっちこそ、そんなミリアリアの想い分からなくて。
 俺ってさ、ミリアリアが降りるはず無いって思い込んでたんだよ。
 俺に付いてきてくれるって勝手に思い込んでて。やっぱり馬鹿だな俺って」
「そんなことない。サイは悪くないから。今でも頼ってる。また会いたい」

サイは、優しい言葉をかける。
「きっと、戦争が終わったら。また会えるよ」

私はサイに熱い視線を送る。私はサイを好きにならなきゃいけない。
キラを忘れる。それが、キラの命令……

サイは、少し迷った素振りを見せた。そして決意したように言った。
「なあ、今度会えたら。君のことミリィって呼んでいいかい。キラやトールみたいに」

「うん、いいわ。でも、不思議だったの。なんで、ミリィって呼ばないのか。
お父さんも、お母さんも、トールもキラも、みんな、そう呼んでたのに」

「遠慮してたんだよ。君とトールとキラ。いつも三人でいて仲良くて、俺達、入りこめなくてさ。
 ミリィは、三人だけの呼び名だと思っていた」
「お母さんが小さい時から、そう呼んでただけだもの。別に特別じゃない」

私は、そう言ってハッとした。気がつかなかった。
『ミリィ』は、私達カトウゼミの中では特別な言葉。それを、キラは最初から使っていた。
私はキラにとって最初から特別だったんだ。トールにとっても。

そして、キラにとっての特別の意味は違う。私が考えたくも無い意味の特別な……
はは、やっぱり、私、特別だったんだ。キラに最初に会った時から、もう既に。
はは、あはは、私って馬鹿だ……

「サイ……」
「ミリアリア……」

私はサイと別れのキスをした。長い長いキスをした。

「じゃあ、行くよ」サイは言った。私は、サイに縋るような視線を送る。

「退艦の準備大変だろうけど。俺も仕事あるから」
サイは何かを振り切るように言った。

「さよなら、ミリアリア。この次はミリィって呼ぶよ」
「さよなら、サイ」

サイは、私の四人部屋を出て行った。真面目なサイは、最後も、やはり私を奪ってくれなかった。
サイが言えば、私は何も言わず身を任せたのに……

私は、サイに心の中で呟いた。
(今度ミリィって呼ぶ時には、私を奪って。キラを忘れさせて……)

156ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/24(水) 05:25
うちのSSで『ミリィ』と呼ぶ人は、最初から意図的にTV本編と変えていました。今回伏線回収します。
昨日のトリィの出番。実は投下直前に入れました。いつも、トリィの出番は、最初、気づかなくて
後から忘れてたってことで慌てて追加してます。難しいキャラですね。

>>流離う翼たち
TV本編では、アズにはアルスター家のこと思い切りスルーされましたが、知ってるはずですよね。
これからフレイ様、アズにパパのこと、いろいろ聞く事になるのかな?

>>過去の傷
想像通り、あの修羅場が再現されましたね。恐いミリィ状態になって、これから一体何が……
ジュリとサイは、いい雰囲気ですが、ジュリはロウはもういいのかな。樹里と争ってたけど、身を引いたみたいだし。

157流離う翼たち・441:2004/03/24(水) 23:08
 アズラエルはキースを楽しげに見やると、小さく笑いながら言い過ぎた事を謝罪してきた。

「悪いね、少し言い過ぎた。あの時に今のような事態を予想しろと言っても無理な話だしね」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ、今日はこれで別れるとしよう。君に殴られたら怪我じゃすまないからね。そう、明日の午後3時ぐらいに人をやるとしよう。ここにいる全員を食事に招待しますよ。何か聞きたい事があるのでしたら、その時にお答えしましょう」

 アズラエルはソファーから立ち上がると、キースの肩をポンと叩き、薄笑いを浮かべて部屋から出て行った。残された人々は何も言わず、ただ棒立ちしているだけのキースに戸惑った視線を向けている。彼がここまで言われ放題になるというのは、いつのも彼を知る者には信じられない事だったから。
 暫くの間、じっと何もいわずにその場に佇んでいたキースであったが、やがて、妙に重々しい息を吐き出すと、スレイマン少将に敬礼をして踵を返した。その背後にナタルが手を伸ばしかけたが、その背中が触れられるのを拒んでいるように見えて、空中で空しく停止してしまう。キースはそのまま何も言わず、黙って司令室から出て行ってしまった。


 キースが出て行った扉を呆然と見ていた7人だったが、ようやく思い出したかのように彼らも司令官オフィスから出て行った。だが、誰もが一様に不満と疲れを見せており、昇進したばかりの軍人にはとても見えなかった。

「アズラエルですか。なんか、人目で嫌な人だと思っちゃいました」
「同感、出来れば2度と会いたくないな」

 キラとトールが愚痴る。よほど印象が悪かったのだろう。いつもなら窘めるナタルやノイマンさえ小さく頷いているのだから、その第一印象の悪さは想像を絶するものがある。ちなみにマリューはアズラエルの名を口にする事さえ嫌だと言いたげに顔を顰め、フラガは不機嫌そうなマリューの様子にどうしたものかと頭を悩ましていた。
 だが、その中でただ1人だけ、アズラエルに興味をもっている者がいた。自分にしか聞こえない程度の声でボソボソと内心を呟いている。

「なんで、ブルーコスモスのTOPと、パパが知り合いなのよ?」

 フレイだ。フレイは父があのような男と知り合いであったという事にショックを受けていたが、同時に湧き上がる疑念を抑えられなくなっていた。そう、自分の父親がブルーコスモスだったのではという疑念を。もしそうならば、父親が自分にコーディネイターを嫌うような言動を繰り返していたのも頷ける。てっきり仕事の都合で問題ばかり起こすコーディネイターを嫌っているのだとばかり思っていたのに、ブルーコスモスに加わる程の憎悪をコーディネイターに対して抱いていたのだろうか。

「もしそうなら、私は・・・・・・」

 ブルーコスモスの父を持つ娘が、コーディネイターに惹かれるなど滑稽を通り越して性質の悪いジョークだ。昔話の敵味方に別れた男女の恋物語じゃあるまいし、現実に起きたら誰もが軽蔑するであろうシチュエーションだ。そして自分は物語の主人公やヒロインを真似できるほどに強くはない。

 ナチュラルとコーディネイター、これまで必死に問題は無いと自分に言い聞かせてきた現実が、再び自分の前に立ち塞がってきたのだ。自分はキラが好きだ、この答えには偽りはない。だが、現実は自分の想いを否定するのではないのか。自分の気持ちが如何であれ、世界の流れは自分の想いを許さないのではないのか。今この瞬間にも何処かでナチュラルとコーディネイターは戦い、血を流している筈だ。その現実を前にすれば、自分の想いなど、暴風の前の蝋燭の灯火にも等しいのではないのか。
 フレイはいつも自分の中にあるもう1つの答えと再び向き合う事態に直面する事になった。そう、自分の想いは、間違っているという答えに。

158過去の傷・90:2004/03/24(水) 23:11
「え?カガリと?」
「そうなの、ごめんね・・・あ、キラその・・・ミリアリアが来るかもしれないから・・・サイのところかどっかに行ってて」
「うん、分かった」
「それじゃ」
フレイは出て行った。

「カガリごめん遅くなっちゃった・・・て・・・寝てるし」
待ちくたびれたのかカガリはベッドの中で寝ていた。
カガリを見ているうちフレイはついカガリの寝顔の可愛さに見とれてしまった。
「・・・可愛い」
ほんとこうしてみると可愛いカガリって、みとれちゃった。
そして自然にベッドの近くまでくるフレイ。
「もう風邪ひいたらどうするのよ」
シ−ツが半分でかかっていたのでちゃんとかけてやる。
「カガリ・・・おやすみ・・・貴女はほんとに可愛いわね」
カガリの頬に軽くキスをすると部屋を出た。

フリ−ダムの前まで来ていたミリアリアは。
「・・・・・・」
フレイ・・・あの子に出来て私に出来ないわけないわ、だいたいさっきのはなによ偉そうに・・・あの子にあんなこと言う資格あるわけ?なによちょっといい子になったからって・・・。
私に説教?あの子がア−クエンジェルでキラやサイにした行為に比べたら私のなんて可愛いものじゃない、それなのになによ自分のやってきた行為を棚に上げてよく言うわ。
フリ−ダムに乗り込むミリアリア。
「私だってやればできるはずよ・・・負けられないわ」
私にとって今日の夜の出来事は屈辱だった、キラ・・・私の気持ちなんで分かってくれないのよ!寂しいのに・・・ト−ルの代わりになってくれるだけでいいのに・・・。


通路に出たフレイは・・・夜といっても艦は明るいのでいつも昼に近い。
「あれれ〜キラさんの彼女!」
マユラと会う。
「あ!あんた!ちょっとねえ!」
「それどころじゃないんです!だれかがハッチを開けたみたいで」
「フレイ!」
「サイ?」
サイとジュリが部屋から出てくる。
「キラは?」
「分からないわ、たぶん部屋にいると思うけど」
「そうか・・・いやそれどころじゃないんだ!誰なんだよ勝手にハッチを開けたのは!」
とにかくまずブリッジに向かった。
「いやミリアリアっていう通信してるお嬢ちゃんがたしかうろうろしてたぞ」
「え!?ミリィが!?」
「・・・ミリアリア・・・」
モニタ−で確認する。

「ええと・・・どうするんだっけ・・・」
なんとか起動したミリアリアだったが。
それからは動かすことが出来ない、歩くことすらできないのだ・・・。
「あ、こうよこう!」
もちろんだがフレイのように動かすことは出来ない・・・それどころか・・・。
「あ、やだ、きゃあああ!!!」
ついにフリ−ダムは転倒してしまう。
「・・・・・・」
そんなはずない・・・あの子に出来て私にできないなんて・・・そんなこと・・・こんな屈辱的なことってあんな閉じこもってた子に私は負けるの?ずっとフレイなんかより近くで戦闘を見てた・・・いつも逃げてた臆病者のあんな子とは違うって思ってたのに・・・。
「いや・・・いや・・・なんで・・・なんでよ・・・いや・・・いやあああああ!!!」
ミリアリアは操縦席で絶叫でして泣いた。
ブリッジにも聞こえた。

「ミリィ・・・」
いま来たキラが虚しそうに呟いた。
(バカだなミリィは・・・)
「キラ行きましょう・・・こんなの見てたってしょうがないわよ」
「そうだね、僕達には関係ないしね」
フレイはキラを優しく抱きしめると・・・手を繋いで二人は部屋に戻った。

159流離う翼たち・作者:2004/03/24(水) 23:14
>> 過去の傷
はわわわ、恐ろしい、フレイ様が昔のサイになってる
一方のサイはなんだか幸せを掴めそうだけど、カガリ、暴走しちゃ駄目だよ

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィは降り、サイは残りましたか
ミリィはオーブ戦をAAの外から見るのでしょうか

160過去の傷・作者:2004/03/24(水) 23:20
>>ミリアリアあの子許せない
うむ・・・ミリィの気持ちもすごく分かるんですよ・・・でもなあ。
サイに奪ってほしかったんですね、ミリィなりにキラを忘れようとしてるんですね、艦を降りた彼女の運命は?ディアッカとはこれで終わりなんでしょうか?
>>翼たち
フレイ様・・・これはいつかは乗り越えなければいけない壁です・・・フレイ様戸惑ってますね、これでなにも影響がなければいいんですが・・・。

161ミリアリア・あの子許せない 83:2004/03/25(木) 04:28
第2部 6. 私はキラの特別…… 7/7
[特別な私に、さよなら……]

翌朝、私はいつもの四人部屋のベッドで目を覚ました。昨夜も、よく眠れた。
キラの命令を反芻して、それに従っている自分に心地よく体を揺られながら
眠りについていた。夢も見なかった。

私は、真新しい下着に替えると、連合の軍服の代わりに、退艦のためにオーブから
支給された質素な服に着替えた。今までの普段着はワンピースが多かったけど、これは
払い下げらしいシャツとジーンズだった。これからは、戦争から逃げ回るだけになる私には、
この方がいいのかもしれないと思った。

ヘリオポリスからアークエンジェルに乗り込んで、自ら志願して着せられたピンクの
見習い兵の軍服。それは昨夜畳んで、使っていないベッドの上に置いてある。
私の軍服は、このまま置いて行く。悲しい想いの詰まった軍服は、もう必要なかった。

ヘリオポリスのころの私服や、持ち出しを許された身の回り品はバッグに詰め込んである。
トールの遺品箱も入っている。そして、密かに持ち出したキラの遺品箱も……
私のバッグは大きく膨れている。

時間が来た。私は、その大きなバッグを持って、長い間住み慣れた四人部屋を見回した。
上の段のベッドに、相部屋だった時の、あの子のイメージが少しだけ浮かんだ。

「あの子…… 許せない」

私は、一言だけつぶやいて、私の四人部屋を出た。

私は、みんなに見送られながらアークエジェルを降りた。最後の退艦志願者だった。
サイは手を振っていた。艦長とフラガ少佐は悲しそうだった。なぜか、また、カガリさんが
キラと一緒に見送っていた。

「さよなら、ありがとね、みんな」 私は最後の挨拶をかわす。
「さよなら」 みんなは答えた。

キラは、やはり無言だった。無表情な、その顔は、私には冷たくて残酷に見えた。

* * *

オノゴロにあるオーブ政府の受け入れ事務局で、私は故郷の両親に連絡を取った。でも、
両親には連絡がつかなかった。私が降りるまで迷って時間がかかったのと、その間に、
オーブと連合との情勢が悪くなり、自主的に国外退去した人も多くて、両親も、それに
含まれるかもしれなかった。とにかく、私の故郷まで行って、そこから行方の手がかりを
探すしかなかった。

トールの両親とは連絡が付いた。私は、とりあえずトールの両親に会うことにして、
受け入れ事務局を後にした。

オノゴロから、オーブ本土に向かう連絡機が発進した。窓に見えるオノゴロが離れて行く。

私は、最後にそっと呟いた。
「さよなら、キラ」

そして、キラの特別な私に、さよなら……

162ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/25(木) 04:32
ミリィSS、5, 6章終わります。今あるメモだと、これで第2部の半分くらいです。これから舞台はオーブに移ります。
次は、フレイSSに戻ります。ここで新しいオリキャラが登場します。

>>流離う翼たち
お話しの世界では望まれない二人のシチュには憧れますが、実際、自分がそうなると醒める気も分かります。
まわりの環境はフレイ様の自身の心とは関係無いはずなんですけど、実際には、それで壊れてしまう関係も多いのでしょう。
別に、どちらの結論を出しても、間違いでは無いです。

>>過去の傷
ううむ、ミリィがサイの二の舞を…… でもキラとフレイの反応が冷たすぎる。さらに、一波乱ありそう。

163流離う翼たち・442:2004/03/25(木) 21:48

 窓から注ぐ朝日に、ナタルはゆっくりと半身を起こした。何となく頭が重いのは昨日飲み過ぎたせいだろう。昨日は司令部を後にすると、そのまま艦長が買い込んだ酒をフレイの家に持ち込んで・・・・・・

「ふう、艦長の酒豪ぶりも恐ろしいが、まさか子供達があんなに飲むとはな」

 水でも飲むかのように平然とビールを開けていくフレイとカガリの姿には流石に驚いてしまった。ミリアリアはまあ人並みだったが、それでも平然と飲んでいた。マリューに至ってはもう空の酒樽の如く飲んでいたから恐ろしい。
 狂乱の酒宴は怒涛の暴露トークへと雪崩れ込み、マリューの過去やら自分の経歴やら、果てはフレイとキラの経験談にまで及んだのだ。


「何、2人は二桁経験済み!?」
「艦内でそんな破廉恥な事を・・・・・・」
「「・・・・・・・・・(黙って聞き入っている)」」
「うう、でもキラって酷いんです・・・・・・もう疲れたって言っても盛った犬みたいに延々と」
「まあ若いからねえ」
「そ、そんな破廉恥な、事を・・・・・・」
「「・・・・・・・・・(現在妄想中)」」
「一番酷い時なんか5時間ぶっ続けで・・・・・・もう腰が痛くて痛くて」
「・・・・・・超絶倫人ね」
「プシュ〜〜〜(どうやら限界を超えて体内ブレーカーが落ちたらしい)」
「「・・・・・・・・・・・・(現在妄想中)」」


 思い出してしまい、襲い来る頭痛に顔を顰めた。あれは地獄絵図だった。いや、早々に戦線離脱した自分はこうして誰のものかも知れないベッドを占領して朝を迎えたわけだが、果たして下はどうなっているやら。

「余り見たくはないが、そうもいかんだろうな」

 仕方なくベッドから降り、皺だらけになった私服はまあ諦めてトコトコと一階に降りると、案の定残りの4人はリビングで泥酔死体と化していた。マリューは酒瓶抱えて横になっているし、ミリアリアとカガリは背中を合わせるようにして座った姿勢のまま眠っている。どういう訳かフレイだけはタオルケットをかけてソファーを占有していた。全員潰した後に1人だけきちんと寝たのだろうか。
 我が弟子ながら、この辺りは実に侮れない少女だ。すでにハリセンをマスターしたというし、本当に物覚えが良い。

「ふむ、まあ、放っておいても大丈夫だろう」

 そう確信すると、ナタルはリビングを横切って家を出て行こうとしたのだが、リビングの戸に手をかけたところで声をかけられた。

「帰るの、ナタル?」
「艦長、起きていたのですか?」
「ええ、あれくらいで酔い潰されたりしないわよ」

 そう言って上半身を起こしたマリューは、大きな欠伸をしつつきょろきょろと辺りを見回し、潰れている3人を見て優しい笑みを浮かべた。

「まあ、本当ならいけないんでしょうけど、たまにはこういうのも良いかなと思ったのよね」
「艦長は随分楽しんでいましたからね」
「お酒があればとりあえず幸せよ」

 はっきりと言い切るマリューにナタルは額を押さえたが、すぐに立ち直ると扉を開けてリビングを出て行った。彼女も随分と逞しくなったものだ。

164流離う翼たち・作者:2004/03/25(木) 22:00
>>過去の傷
2人とも、なんだか冷たい。ミリィがサイ化してるのはちょっと怖い
1人平和を勝ち取るのはサイなのだろうか・・・・・・

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィさん、やっと艦を降りましたか。とりあえずトールの両親の戦死の報告ですね
ある意味これが一番辛い仕事なのだが。ミリィを見送るキラの冷たさは、はたして錯覚か?

165過去の傷・91:2004/03/25(木) 22:58
部屋の前でフレイはキラだけ先に部屋に戻らせた、カガリのあの可愛い寝顔がまた見たいのである。
「・・・・・・」
カガリはベッドの上で静かに眠っている。
カガリの顔に顔を寄せる。
「カガリ・・・大好きよ」
起こさないようにシ−ツをゆっくりと取るとカガリの胸に顔を埋めた。
「気持ちいい」
数分そうしていたが・・・。
「カガリ・・・おやすみ」
シ−ツをかぶせカガリの頬にキスすると部屋を出た。

「ただいま」
「おかえり」
フレイは思った。
ミリアリアはなぜあんな行動を取ったのだろうか・・・いまだに信じられなかった、私に対抗するため・・・?もしそうだとしたら・・・でもだからといって・・・あそこまでするだろうか・・・機体を動かそうなんて・・・それにしてもこの頃の彼女は変だ・・・フレイがそんなことを考えていると・・・。
ミリアリアが入ってきたのだ。
「キラ入るわよ」
「ミリィ・・・」
「なんの様よ?」
ミリアリアはフレイの言葉を無視しキラの手を取る。
「キラ、部屋に行くわよ」
「いやだよ僕は!」
「来るの!!!私の部屋でちゃんと話し合うわよ」
「話なら十分しただろ!もういいかげんにしてくれ!こんな時間まで押しかけてきて!」
ほんとうんざりするわね・・・ト−ルがいないからって、この女どこまでいつこいのかしら。
仕方ないわね。
フレイはキラの手を引っ張るミリアリアの手を振りほどいた。
「なにするのよ!」
「なにするのよじゃない!」
なんでよ・・・なんでどいつもこいつも・・・。
「出てって!」
なんで・・・唯一の宝まで私から取ろうとするの・・・?
ミリアリアを部屋から突き出すと転んだ彼女を冷たく見下ろすと告げた。
「私が・・・いままでどんな気持ちでいたか・・・」
私の気持ちなんて知りもしないくせに・・・でもキラだけは・・・。
「キラは私を許してくれたわ・・・優しくしてくれた・・・こんな私みたいな女を好きになってくれたわ・・・私みたいな女を・・・キラだけだった・・・」
私はミリアリアを鋭く睨みつけると言った。
「私がどんな気持ちで・・・ザフトにいたか・・・ドミ二オンという艦でどんなに怖い思いをしたか・・・誰を分かってくれようとしなかったくせに!!!私のキラを取ろうとしないで!なんでよ・・・なんであんたもラクスも私のキラを取ろうとするわけ!?私は幸せになっちゃいけないの!?」
これを言うのは卑怯かもしれない、でも・・・止められなかった・・・そうキラだけじゃない、カガリもティファだって私のことを理解してくれている、それは分かっている。
ミリアリアも私の言葉に圧倒されたのかなにも言えずにいた、そして驚いたような表情を浮かべている。
私はドアを閉めた。
外からミリアリアの声が聞こえた。
「馬鹿・・・なによ!!!・・・キラ・・・私あきらめないわよ・・・ト−ルの代わりになってもらうんだから・・・そのことを忘れないでよ」
それから声は聞こえなくなった。

「ミリィ・・・馬鹿だよね」
「え?」
「フレイに敵うはずなんかないのにほんとに馬鹿なんだから」
「キラ・・・」
「うう・・・フレイ・・・」
「大丈夫よ・・・私はキラの側にずっといるわ」
「フレイ・・・」
フレイは軍服の上着の脱ぎタンクトップ姿になるとキラの顔を手で胸に埋めさせた。
「キラ・・・私がずっといるからね・・・」
「うん」

次の日の朝である。
「ミリアリアさん、どうして呼ばれたか分かってますね?」
「はい」
ここはラクス・クラインの部屋だ。
ミリアリアは朝からラクスに呼び出されたのだ、側にはアスランが目を閉じながら立っている。
「なぜあのようなことをなされたのです?」
「それは・・・」
まさかフレイに負けたくないからなんて言えないわよね・・・。
「まあいいでしょう」
「・・・・・・」
「ただ貴女が犯した行動について私は許すおつもりはありません、無断で機体に搭乗するなど」
「でも、私だって軍人だし」
「お黙りなさい!!!たかが二等兵ごときが私に逆らうおつもりですか!?」
ラクスは鋭い視線でミリアリアを睨みつけた。

166過去の傷・作者:2004/03/25(木) 23:11
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ降りましたね、キラそれにしても冷たすぎやしませんかね?まあ分かっていたことではありますけど。
そしてト−ルの両親に彼の死を報告・・・辛いだろうなあ。
>>翼たち
おいおい、いいのかよフレイ様・・・お酒はほどほどに・・・ってそれどころじゃない、カガリもミリィも未成年でしょう!いけませんね、でもさすがというかマリュ−さんは強いですね、ミサトさんといい勝負したりして?

あの聞きたかったのですが・・・ミリアリア・あの子許せないの作者様もミリィお好きですか?私はミリィ大好きですね、SEEDキャラではフレイ様は当然ですがラクスに続いて好きですね、いえそのミリィも主役になってますので一度聞きたかったものですから・・・変な意味はありませんので。

167ザフト・赤毛の虜囚 34:2004/03/26(金) 21:55
7.幼子(おさなご) 1/8
[こんな自分をキラに見られなくて良かった]

パナマでの戦争が終わって、また、私は潜水艦の士官用個室に幽閉されている。

私は戦争の後、放心したままだった。いくら、キラを継ぐ思いを受け入れたとしても、
今の私に出来ることは何も無い。ただ、先の分からない不安に支配されるだけだった。

すでに、自分を守るための銃も失っている。今、私にクルーゼが迫ってきたら、私は
抵抗しきれなかっただろう。でも、クルーゼは逆に、潜水艦に戻って大人しくなった
私に迫ることは無かった。一日、二度、私に食事を運び、机で書類整理の仕事をして、
ときどき、疲れたようにソファーで眠る。そして、夜の時間帯だというのに、部屋を出たまま
帰って来ない。私は、そんな様子をベッドに横たわりながら虚ろに見つめていた。

私に無関心なクルーゼに、以前なら逆に女のプライドを傷つけられたかもしれない。
だけど、今の私には、それが当たり前なのだと思った。今までと打って変わったように、
男を拒む気持ち。もしかしたら、キラに対しても手酷く拒んでいたかもしれない。

それ以外にも、私は、今の自分に女の魅力など、ひとかけらも感じなかった。
私は、アラスカで捕虜になってから、一度もシャワーも着替えもしていない。クルーゼは
士官用個室にあるシャワーを自由に使っていいと言うけど、いつ、クルーゼが入って来るかも
分からない中、おいそれとシャワーを使えるものでは無かった。髪はボサボサになり、
今、私の体からは、酷い匂いがしている。元々、それがいやで、アークエンジェルにキラといる時は、
こまめにシャワーを浴び、香水も付けてキラと寝ていたくらいだから、捕虜になって一週間、
着替えもせずにいたらどうなるか分かるだろう。また、特にショーツの汚れが酷かった。
私は、その嫌悪感に堪えられなくなる一歩手前まで来ていた。パパに恥ずかしかった。
私はかえって、キラがいないことに安堵していた。こんな自分をキラに見られなくて良かった。

元々、クルーゼの部屋であるここには、女物の替えの下着など見つからない。また、クルーゼに
それを頼むのも、クルーゼの寝た子を起こしそうで躊躇われた。仕方ない、せめて、今のを洗わないと。

クルーゼが、朝、私に食事を運んで出て行った後、だいたい昼過ぎまで帰って来ない。私は、
思い切って服を脱ぐとシャワーを浴びた。石鹸は安物で、私がキラの部屋に無理を言って揃えさせた
高級石鹸では無い。私の体臭を、すべて洗い流すものでは無かったけど、久しぶりの熱い湯を全身に浴びて、
心も少し落ち着いたような気がした。私は自分の体を鏡に写してみる。手であちこち触ってもみる。
そこに、以前との変化を感じることはできない。だけど、私はパナマで感じたことはきっと真実
なのだと確信していた。

私は体を奇麗にすると、今度はショーツに石鹸をつけて洗いだした。とりあえず、今はこれで
我慢するしか無い。アークエンジェルの雑用係りのころなら、新しい下着を準備するのは
訳なかったのに、あの時はいやらしい意味でしか仕事の立場を使っていなかった。今は、真面目な
意味で必要だというのに。

洗ったショーツと髪を交互にドライヤーで乾かしながら。私はショーツを穿かずに服を着た。
クルーゼが、いきなり入ってきてもなんとかごまかせるように。私はベッドの毛布で下半身を隠し、
ドライヤーでショーツを乾かしている。スカートの下に違和感を感じる。私は、なんと破廉恥な真似を
しているのだろう。

だけど、私は、この感覚が不快では無い。というか、既にこういうシチュエーションは経験済みなのだ。
キラの前で……

あれは、私が腰痛で動けなかった時のこと。今は私から失われてしまった、キラを狂おしいほどに
求めていた記憶を。

168ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/26(金) 21:58
フレイSS新章開始します。

>>流離う翼たち
フレイ様、ポッ…… マリューさん、猥談にも酒にも平然としてますね。やはり経験が違うか。ナタルさんもガンバレ。

>>過去の傷
ついにラクスまで怒らせてしまいましたか、ミリィの運命や如何に……

私もミリィは大好きですよ。中々、TV本編のストーリーには噛んで行けなかったのですが、
人を気づかう素振りや、それでいてディアッカに激情をぶつけるところが自然で良かったです。
その後は、特に小説版を読むと、もの分かりが良すぎてしまうのが、ちょっと残念でしたけど。

元々のミリィSSは別の意図もありましたが、TV本編のミリィがキラを気づかうシーンを
中心に膨らまして創作した、最初の「私、キラが好き」と言う台詞を書いた途端、ミリィ自身が
徐々に独り歩きを始め今に至っています。

169過去の傷・92:2004/03/26(金) 23:27
「私は逆らったりは・・・」
前にいるピンクの髪の少女を見る、私と年齢は同じぐらいなのに、なぜこんなにこの子に頭を下げなければならないのか、なぜこんなにかしこまなければならないのか・・・だがそれが軍というものだ、彼女はこの艦で一番偉い、それに比べて私はただの二等兵、立場がまったく違う、それに彼女はなにか威圧感があるのだ・・・たとえ彼女が自分と同じ地位にいても敬語を使うだろう。
「それが逆らってるというんです!」
「すいません」
「では処分を申し上げます」
ラクスが怒ってるからして・・・そんな時だった。
「あの・・・ラクス」
「なんです?アスラン」
側にいたアスランが口を挟んだ。
「彼女が行った行為は初めてですし・・・それに怪我人も出ず機体も傷ついてはいないのですから、今回だけは・・・」
「アスラン・・・分かりました、貴方がそうおっしゃるなら」
「ありがとうございます、勝手なことを言って申し訳ありませんでした」
「あ、あの・・・」
「ミリアリアさん、今回だけは一日だけ、謹慎処分とします、ですが食事は一日に一食、シャワ−は当然ですが禁止します、よろしいですね?」
「・・・はい・・・」
「あ、食事は誰に持っていってほしいですか?」
そう言われてミリアリアは・・・。
「サイで・・・サイ・ア−ガイル二等兵でお願いします」
「そうですか、分かりました、ではサイさんをこちらにお呼びください」
「え?」
「聞こえませんか!?サイさんをお呼びくださいと言ってるんです!人の話もちゃんと聞けないのですか!!!」
「あ、ごめんなさい・・・では」
ゆっくりとドアのほうに歩きかけるミリアリア・・・。
そのミリアリアにラクスは隣にいたハロを投げつけた。
「きゃあ!」
「早く行きなさい!私を待たせるおつもりですか!?」
「ごめんなさい」
ミリアリアは急いでサイを呼びに行ったのだった。

ここはカガリの部屋だ、フレイが来ていた。
「アストレイ三機?」
「そうだ、明日は私が指揮を取る、それでお前にはアストレイ三機を相手にしてもらうからな」
「分かったわ」

その夜。
サイとフレイは通路を歩いていた。
ミリアリアの部屋に入ろうとしていたところでサイが足を止める。
「フレイはミリィとは会わないほうがいいよ」
「え?」
「ほら、またミリィが怒り出したりしたらいやだろ?だから・・・」
そう言うとサイは一人ミリアリアの部屋に入って行った。
中から声が聞こえる。
「ミリィ、シャワ−は浴びられないけど一日だけの辛抱だから我慢して、いいね?」
「いいの、ありがとう・・・分かってるわ」

部屋の中からサイとミリアリアの話し声が聞こえる。
だめ、私は入ってはいけない・・・なぜなら私と彼女はいま不仲だから・・・でもそれは私のせいじゃないミリアリアが悪いのよ、キラを誘惑したりキラにしつこく付きまとったりしてるから・・・謹慎が解けたらまたキラに接近してくるだろう・・・。
「そんなことはさせないわ」
ト−ルがいないから代わりを彼女は求めているだけ、彼女には渡さない、キラは私だけのもの・・・誰にも渡さない。
私は自然に歩き出していた。
「・・・ミリアリア・・・自業自得よ・・・ざまあないわ」
そう彼女は自業自得だ・・・私には関係ない。

170過去の傷・作者:2004/03/26(金) 23:35
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様・・・それにしてもクル−ゼ隊長が憎い、よくもフレイ様を・・・そうかシャワ−も浴びられないのか・・・それは辛いでしょうね・・・特にフレイ様は・・・。

それからミリィやはり好きでしたか!答えてくれてありがとうございます、私はミリィのフレイ様とは違った可愛さ、活発なところ、頑張ってるところ・・・いろんなミリィが大好きですね・・・もっとキラと絡んでほしかった気もしなくはないですね、本編にも・・・もうちょっと活躍してほしかったです・・・。
(あ、フレイ様けっして浮気では・・・なぜここに・・・ぐわあああ!!!)

171私の想いが名無しを守るわ:2004/03/27(土) 02:55
>>167
気になるところで終わるなぁ。次回期待してます。
なんというか随所に見られる女性的な表現が好みです。

172ザフト・赤毛の虜囚 35:2004/03/27(土) 17:45
7.幼子(おさなご) 2/8
[素肌にシャツを着ただけの姿で]

アークエンジェルが太平洋を航海していたころ、戦闘でMIAになったカガリを捜しに、
キラが出て行ったことがあった。その時、私は船酔いで、戦闘中にアークエンジェルが
回転飛行をして、それがなお、一層ひどくなっていた。その私を置いてキラは出て行った。
私の心を麻痺させるようにして……

「フレイ愛してる。すぐに戻るから」

キラは、出て行く時、すぐに戻ると言ったのに、結局、一日戻って来なかった。出る時に、
キラがしたこと、言った言葉、それに、私は、いつしか船酔いも忘れドキドキしながら
待っていたというのに……

やっと戻ってきたキラに腹を立てて、回転飛行のせいで散らかったままの部屋にまで、
八つ当たりして文句を言う私を、キラがなだめながら片づけた。そして、その後のこと。

夜、キラと寝るベッドから抜け出した私は部屋のトイレで足を滑らせて腰を思い切り床に打ちつけた。
私は、しばらく立てないくらいだった。滑った理由や、転んだ後にあったことは、恥ずかしくて
思い出したくない。ただ、動けない私をキラが軽々と抱き上げてベッドに運んだことだけは、
ありありと記憶に残っている。私は思いもかけず力のあるキラに驚き、キラがコーディネータであることを
今さらのように意識するとともに、そのキラの逞しさに、感情を揺さぶられていた。

翌朝、私は腰の激痛で動くことさえできなかった。だけど、キラが医務室に連れて行くという申し出を、
私は頑強に断った。キラの部屋を出たくなかったのと、何より、腰痛の理由を聞かれる恥ずかしさが
あった。キラは、私の腰に医務室からもらってきた湿布薬を貼ると、腰に気を使って、私にキラの大きめの
シャツだけを着せて、安静にしているように言った。私はブラもショーツも付けずに、素肌にシャツを
着ただけの姿で、数日間、キラの部屋で暮らした。最初は違和感ばかりを感じていたけど、しばらくして、
慣れてしまった。部屋にはキラしか入って来ない。何を恥ずかしがる必要があるのだろうと思うように
なっていた。

キラは、しばらくは敵襲も無く、休み時間など事あるごとに、部屋に帰ってきて私の面倒を見てくれた。
船酔いに続いてのことだ。それでも、船酔いの時は自分自身が始終気持ち悪くて余裕が無かったけど、
腰痛は痛みで動けない不自由さを除けば、気分そのものは普通の状態だったのが違っていた。
にも関らず、キラは船酔い以上に、優しく世話をしてくれる。私は、これを機会にと我が侭を
言いまくった。キラは船酔いの時と同じく困った顔をしながらも、なんでも言う事を聞いてくれた。

私は、それに加えて、時々、毛布をはだけ、私の素足を見せつつ、わざとシャツの胸元や裾が覗くように
寝返りをうち、それにドギマギするキラの反応を楽しんだ。

「ちょっと、フレイ、その……」
「ん、どうしたの? キラ」

「今はさ、待機中だから。僕は、もう行かないと」
「行けばいいのよ。それともどうしたの? キラ歩きにくい?」

「フレイ!!」

キラはふくれっつらで軽く怒鳴りつける。私は、それに恐そうな素振りをしながらも、顔は笑っている。
キラは、腰が悪い私に、数日間、手出ししなかったから、仕事の途中にも関らず、欲望だけを刺激されて、
それを我慢しなければならないキラは可哀想なくらいだった。でも、この前のカガリの件、そして、
このころ、私はベッドでの主導権をキラに取られていたことと、そもそもの腰痛の原因であるキラの行動への、
ちょっとした復讐でもあった。本当の復讐は別にあったというのに、それとは別に、私は小さな意地悪を
思うまま楽しんでいた。

夜、キラは、ベッドにうつぶせになった私のシャツをめくり、腰をマッサージしてくれる。
時々、ノートパソコンの画面を見ている。マッサージ方法をどこかのデータベースから調べてきたらしい。

「フレイ、昼間は困ったよ、まったく」
キラは、マッサージを続けながら、少しだけぼやく。

「じゃ、今する? できるものなら」
「もう……」

キラは、私のお尻をピシャっと軽くたたく。そして、エッチなことができない代わりに、腰をさすりながら、
私が眠るまで色々な話をしてくれた。砂漠で会った敵将の話。ヘリオポリスでの話。小さい頃暮らしていた
月の話。どちらかというと無口で、あまり自分のことを話さないキラだったけど。この時ばかりは、
私はキラの話に夢中になった。

本当は、あの時に自分のキラへの気持ちに気がついていたはずだった。そうすれば、オーブでのことは
無かったかもしれない。

173ザフト・赤毛の虜囚 36:2004/03/27(土) 17:48
7.幼子(おさなご) 3/8
[ねえ! キラ、早く脱がせて]

腰の痛みは、結局、それほど酷くなかったらしく、湿布薬とキラのマッサージのおかげで
数日でおさまった。でも、その間の開放的な状態、ただ体を求め合うのでは無いキラとのスキンシップ、
そして、そもそも腰痛の原因となった思い出したくもない恥ずかしい体験。それが、一方では、
私の心と体に変化をもたらしていた。

仕事に復帰した時、丁度、洗濯物を持ってきたミリアリアに話をしながら、私は自分の体の
変化への戸惑いを感じていた。

「ハーイ! ミリアリア」 私は、なにか浮かれたようにミリアリアに声をかける。
「フレイ。久しぶりね。船酔いとか、腰とか、もういいの?」

「うん! もう大丈夫。これ洗っとくわね」
「どう、仕事」

「ちょっとサボってたんで、仕事たまってて大変。なんか、洗濯とか掃除とか、
 今まで、自分では、あまりやってなかったことだけど。
 私、こんなことくらいしかできないし。キラも、みんなも戦っているのにね」

ハイな気分のまま、なんだか、ミリアリアを昔からの友達のように親しげに心境を話しかける。
ヘリオポリスの時でも、アークエンジェルに乗ってからでも、あまり快く思ってなかった相手なのに……
そして、ミリアリアも多分、そうだったはず。彼女の本心を知ってしまった今からすれば。

私は、ミリアリアにキラのことを聞いてみる。多分、その時の私は熱い目をしていたと思う。

「キラは、どうしてる?」
「今、ザフトの機影は見つからないから、とりあえず待機中。
 モビルスーツデッキにいると思う。ストライクのメンテとか、スカイグラスパーとの
 連携シミュレーションとか、やってるんじゃないかな」

「ふうん」

私はミリアリアにキラへの伝言を頼む。彼女の秘めた想いに、まるで気が付かないまま。

「私、夕方、早めに仕事上がるから、もし、話できたらキラに言っといてもらえるかしら」
「うん」

ミリアリアは、その時の私を見て、何を考えていたのだろう。
私は、それどころじゃなく、今の自分の体に感じる違和感に戸惑うばかりだった。

「どうしたの、まだ腰痛むの ?」 ミリアリアが聞く。
「ん! なんでも無いの。ちょっとね。きつくて… あ、なんでも無い」

結局、違和感に我慢できなくて、予定よりも、さらに早く仕事を上がった私は、同様に
心配で早く帰ったキラに部屋の前で出会って、今までに無い甘えた声を出していた。

「昨日まで腰痛で、ずっとショーツ脱いだままだったでしょ。なんか、きつくてたまらないの。
 ねえ! キラ、早く脱がせて」

私は自分で脱いではいけない。これはキラの仕事なのだ。

ミリアリアが結局、私の話をキラに伝えていなかったことさえ、その時は気にしていなかった。

174ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/27(土) 17:52
今回の話は、かなり前にミリィSSでやった話の視点変更版です。ただ、今回の章の狙いは、この次以降なので、
あまりこだわらなくても構いません。

>>過去の傷
TV本編2クールのころのピリピリした雰囲気が再燃しているようですね。フレイ様とミリィの戦いは、この後、
本格化するのでしょうか。

175キラ(♀)×フレイ(♂)・41−1:2004/03/28(日) 17:09
万華鏡(カレイドスコープ)のように虹色に乱反射する、サドニス海の美しさを
演出した太陽の日が沈む。すると、夕日に照らされた紅海は、今度は真紅のルビーを
溶かし込んだような鮮やかな赤一色に染まり、新しい顔を覗かせる。
やがて、日は完全に沈む。最後は黒の絵の具をぶちまけたかのように、色彩を失う。
こうして、楽園(サドニス)での一日が終わる。各々リフレッシュ休暇を堪能し、
戦いの疲れを癒やした休暇第一陣のクルーは波止場に集結した。


「ひぃ、ふぅ、みぃ…っと。全員来てますね」
「意外だな。こういう時は必ず一人か二人、門限を破る奴が出てくるものだが」
「俺達はれっきとした軍人ですからね。修学旅行の学生のようにはいかないでしょう?」
点呼を取っていたパルと相方を務めていたノイマンは、互いの顔を見合わせて苦笑する。
「ヘリオポリス組の方は?」
「ここにいるのは俺とサイだけです」
今度はカズイが、隣にいるサイをチラリと見ながら、何故か後ろめたそうに宣告した。
「いないのは、ヤマト少尉、アルスター、ケーニヒ、ハウ二等兵の四人か。
もう集合時間を一時間近く過ぎているし、彼女達は島に滞在するとみて良いだろう」
腕時計で時刻を確認しながら、引率役のノイマンがそう断を下す。半交代での一日オフ
の正規クルーと異なり、キラ達学生組は、二日間のフリー休暇が与えられていたので、
外泊も許可されていた。サドニスの治安の良さは折り紙つきなので、特に彼女達の
身の上を案じる必要性はないだろう。心配なのは、この四人は各々カップルで行動し
ているらしいと推測される点だが、敢えてノイマンはその点には触れなかった。

「キサカ氏。そちらの首尾はどうですか?」
「一時的滞在は許可するけど、悪魔の壁が開くタイミングで出て行ってくれってさ。
人とか物資の出し入れが激しい時期に、中でドンパチされたら困るってことだろ」
領事館での交渉結果を尋ねると、キサカが口を開くよりも先に、カガリが横槍を入れて
きて、ノイマンは胡散臭そうな瞳で二人を見つめる。この凸凹コンビが、オーブに
何やら深い縁があるらしいのは確かだが、その正体についてはサッパリ見当もつかない。
艦長のキサカ氏への信頼度や、フラガ少佐の坊主(カガリ)の可愛がり振りを見ると、
幹部達は彼らの正体を知っているのだろうか。

「キラはあの悪魔と一緒か」
ノイマンの懐疑の視線に気付かず、妹の現在の所在を、そう当りをつけたカガリは
強く舌打ちする。ナンパな娯楽には一切興味のないカガリだが、キラが喜ぶならと、
彼女をアミューズメント・パークに連れて行こうと企図していた矢先に、艦長から
AAの滞在許可交渉を依頼され、サドニス島を紹介した手前断れなかったのだ。
この時間になっても戻ってこない所を見ると、キラはフレイと外泊するとしか思えず、
カガリとしては、鳶に油揚げ…、もとい悪魔に姫を攫われた騎士のような気分だ。
実は今現在、愛妹はとんでもないピンチに陥っているのだが、双子のテレパシーも
フレイへの嫉妬心で曇っていて、有効に機能していないようだ。

「まさか、キラ達だけじゃなく、トール達まで戻ってこないなんてな」
激動の渦の中、そうやって人は大人になっていくのだろうか(ちょっと違う)。
ヘリオポリス組の中で、自分独り取り残されたように感じたカズイは暗い表情で俯いた。
「いや、俺独りじゃないか」
カズイの隣には、彼と同じく、落ち窪んだ表情のサイが佇んでいる。
婚約者(フレイ)に捨てられた彼女。それ以後、サイの笑った顔をカズイは一度も
見たことはない。揉め事には関わらず、長い物には巻かれろ…がモットーの事勿れ主義者
のカズイではあるが、人当たりが良く、明るさと優しさを絶やさなかったサイのこんな
覇気のない姿を見るのは、彼女に密かな憧憬を抱いていたカズイには辛かった。
自然、彼女を苦しめている背徳カップルについて、あまり好意的ではいられない。


大人も子供も、それぞれに複雑な想いを抱えながらも、モーターボートに乗り込んで、
サドニス島を後にしていく。そしてキラは、その窮地を仲間達に知られることなく、
一人島へと置き去りにされる羽目になった。

176キラ(♀)×フレイ(♂)・41−2:2004/03/28(日) 17:09
廃棄された倉庫内で、マイケルはグーンのコックピットに乗り込み、コーディ自慢の
高速プログラミング・モードで端末を操作し、自機の最終調整を行う。ザフト製MS
の特徴である一つ目のモノアイがギョロリと緑色の光を灯らせ、隻腕の右手の指先が、
閉じたり開いたりを繰り返し、接続神経が生きていることを確認する。

「良し。これで悪魔の壁さえ解ければ、島の外に出られるな」
診断パネルには、水深の浅い位置なら十分に水圧にも耐えられるという計算結果が
弾き出されている。武装も含めて、傷ついた部分は徹底的に切り捨てたので、戦闘は
不可能だが、運よくスクリューは生きていたので、水中慣行そのものは可能だ。
この短期間で、スクラップ同然だったグーンを修復した手並みは確かに非凡なモノで、
腐ってもマイケルは優秀なコーディネイターではあるらしい。
「島外に脱出したら、救助信号を送って、仲間に手土産ごと回収してもらうだけか」
グーン頭部の緑色の光点が左側へスライドする。モノアイが捉えた映像の中には、
彼の土産となる少女が冷たい床下に転がされている。僅かにキラの身体が身じろく。
そろそろ目覚めの時が近いことを悟ったマイケルは“お楽しみ”の為に、グーンの
コックピットから降りることにした。


「………んっ……………………ここは……………?」
キラは目を覚ました。彼女の虚ろな視界に、埃臭い倉庫の天井の蛍光灯が映し出される。
「わたし…どうして……こんな………ところに…………!?…い…痛っ!」
記憶の一部が断裂していることに気づいたキラは、眠気マナコでキョロキョロと辺りを
見まわしたが、両手首に激痛を感じて思わず顔を顰める。良く自分の体勢を確認すると、
後ろ手に手錠を掛けられて、床下に寝転がされていた。
「そうだ、私、タカツキ君から…」
ぼやけていたキラの思考が徐々に鮮明になる。必死に記憶の糸を辿っていたキラは、
自分が突如彼に襲われ、布きれのようなモノを嗅がされたのを思い出し、息を呑んだ。
……まさか、寝ている間に乱暴されたんじゃ………。
女性の持つ防衛本能から、まずは彼の真意をそう疑ったキラは、自分の思考に戦慄したが、
身体には特に違和感を覚えなかったので、軽く安堵する。マイケルにはサディストの気が
あり、敢えて目が覚めるまで手をつけないでくれたのは、キラには僥倖だっただろう。
「良い格好だな、ヤマト。気分は良いかよ?」
悦に入った声と同時に、脅えるキラの眼前にマイケルが姿を現した。


「タ…タカツキ君。これは一体どういうこと!?どうしてこんな真似を!?」
既に涙目になったキラだが、気丈にも涙を堪えてキッとマイケルを睨む。
だが、彼はキラを小馬鹿にしたように、ニヤニヤと彼女を見下ろすだけで何も応えない。
キラは芋虫のように身体を揺すって必死に起き上がろうとしたが、後ろ手に拘束された
上に、まだ薬の効果が完全に抜き切れておらず、床下にしゃがみ込むのがやっとだ。
それでも仰向けの状態よりは少しだけマシな姿勢を確保出来たキラは、マイケルの
全体像を確認して唖然とする。
何故なら、現在の彼は私服ではなく、ザフトの緑色の軍服を纏っていたからだ。

「あ…あなた、まさか……」
「ご名答、俺はザフト軍カーペンタリア部隊所属のマイケル・タカツキだ。
地球連邦軍所属、ストライクのパイロットのキラ・ヤマト少尉」
キラから奪い取ったIDカードを、見せびらかすように提示しながら、真相を告白する
マイケルに、御人好しで世事にも疎いキラも、ようやく彼の本意を正確に把握した。
彼は、自分を虜囚としてザフトに連行して、手柄とするつもりなのだ。
かつてキラが見知り嫌悪した、卑下た表情を覗かせるマイケルに、彼はこの三年間で
何一つ変わってなどいない現実をキラは思い知らされて、強いショックを受ける。
何よりも、まんまと彼にしてやられて、こんな窮地へと陥られた自分の御目出度さが
情けなくなって、キラは涙が止まらなかった。

177キラ(♀)×フレイ(♂)・41−3:2004/03/28(日) 17:10
「騙したのね!?」
「そうだよ。けど、それがどうかしたか?騙される方がアホなんだよ」
「卑怯者!」
「ふんっ、俺が卑怯者なら、お前は裏切り者じゃないのか?
お前、一方的に被害者ぶってるけど、これまで何人の同胞を殺してきたんだよ!?」
「あっ!?」
久しぶりに、今まで目を背け続けてきた己が咎を叩き付けられたキラは、苦悩に喘いだ。
ハイエナのような嗅覚で、キラの弱気を嗅ぎ取ったマイケルは、指先でキラの顎を
しゃくり上げながら、悦に入った表情でキラを詰り続ける。
「お前は本当に酷い奴だよな。何の恨みがあって、プラントを守ろうと必死に戦い
続けてきた同胞の生命を虫けらのように捻り潰してきたんだよ?
俺でさえ、実はそっち(殺人)の方はまだ童貞のままだぜ、人殺し非処女さん?」
傭兵隠語を交えながらキラを嬲るマイケルの言葉が鋭い刃物となって、キラの胸を
抉った。今更ながらに、自分の業(カルマ)を正面から突き付けられたキラは涙目に
なってガタガタと震えながら声も上げられない。

「判ったか、ヤマト。ザフトに仇なすユダ(裏切り者)を捕獲した俺は、
プラントでは卑怯者どころか英雄となるんだよ。
もしかしたら、赤服どころか、ネビュラ勲章まで授与されちゃったりしてな」
愛国主義の厚化粧の中に、マイケルはさり気無く本音の野心を漏らしたが、
そんな事はキラにはどうでも良かった。戦場でアスランのような雄敵に討たれるのなら
まだしも、こんな場所でかつての級友に騙されて拿捕されるなど、何とも情けない末路
だが、それこそ同胞を裏切り続けてきたキラに下された神罰なのだろうか。
今の落ち窪んだキラには、現在の自分の立場と、これから自分に訪れるであろう
暗い未来がそれほど不条理なものには思えなかった。


「さて、ようやくお前も自分の罪の重さを自覚出来たようだし、俺が亡くなった
同胞達の無念を晴らしてやるとするか」
観念したかのように無言のまま大人しくなったキラに、マイケルは言葉嬲りを止めて、
次のステップへと移行する。先程からずっと呆けていたキラだったが、ワンピース越し
に自分の豊満な乳房を掴もうとしたマイケルに、反射的に後方に仰け反った。
「ひぃっ!?なっ……何を!?」
「制裁だよ。己の罪深さを、その身体にたっぷりと教え込んでやるよ。
もっとも、反ってお前を楽しませちまうことになるかも知れないけどな」
明らかにキラの身体に欲情を抱きながら、嫌らしい笑顔を閃かすマイケルに、
キラは否応でも彼の本心を悟らざるを得ず、サーッと表情を青ざめさせる。
こ…この人、仲間の復讐に託けて、私を強姦する気なんだ。


「ほ…捕虜への虐待、暴行は、ジュネーブ…いえ、コルシカ条約で禁止……」
「あ〜ん。何、寝言ほざいてんだ?そんなもの、とっくに有名無実化してるぜ。
ビクトリア攻略戦の際に、猿共(ナチュラル)の捕虜が全員虐殺されたのを知らないのか?
もっとも、俺の隊は偽善者の虎が指揮官だったから、参加させてもらえなかったけどな」
「そ…そんな……」
色んな意味でショックを受けたキラは、言葉を詰まらせる。改めて軍人に対する倫理観
が大きく揺れ動いたキラだったが、今は目の前のピンチをどうにかする方が先決だろう。

マイケルがキラに踊りかかり、強引にキラを押し倒すと、そのまま馬乗りになって、
スカートの下の膝元へと手を伸ばした。直に太腿を撫でられたキラは、激しい嫌悪感に
身を震わせて、全身に鳥肌が立った。
「へへっ…、ここでは俺が法律だぜ。観念しろ!」
「い…いやぁ!!!誰か、誰か…助けてぇ〜!!」
狭い倉庫内に、キラの悲痛な悲鳴が木霊した。

178キラ(♀)×フレイ(♂)・41−4:2004/03/28(日) 17:10
「まさか、こんな素敵なショーを拝めるとは夢にも思わなかったな」
先ほどから機材の影に隠れて、この狂乱の舞台を堪能している一人の観客がいた。
あの後、再び考えを改め直して、キラ達の行く末を見届けようと決意したフレイである。
フレイはお嬢様方の御屋敷への夕食のご招待を丁重に断って、彼女たちと別れると、
キラ達の消えた方角へと飛び出し、私立探偵のように地道な聞き込みを繰り返した。
やがて、それらしいカップルが北側の港町に向かったのを聞き出したフレイは、
そこで運よく買出し帰宅中のマイケルに遭遇し、コッソリと彼の跡を尾ける。
マイケルが古ぼけた隙間風だらけの倉庫に足を踏み入れたい地点で、彼の目的を看破
したフレイは、倉庫の裏側に人一人潜れそうな横穴を発見して倉庫内に侵入すると、
マイケルから死角になる位置に上手い具合に橋頭堡を確保するのに成功した。
MSの修理に勤しむマイケルが、直ぐにキラに手を出さないのを確認したフレイは、
一端倉庫の外に出て下準備を整えた上で、再び戦場(倉庫)に帰参したのだが、キラを
救出する機会を窺っているにしては、フレイを取り巻く空気には緊張感の欠片も無い。
というのも、フレイの手の内には、外で購入した魔法瓶構造の缶コーヒーが握られており、
その上で、いかにもツマミかポップコーンが無いのが悔やまれる…とでも言いたげな
横柄な態度で、チビチビとコーヒーを飲み干し、暖を取っていたからだ。


「手変わりの好機(チャンス)が訪れたということかな」
フレイは冷めた瞳でキラの窮地をじっと鑑賞しながら、状況判断に努める。
フレイにしてみれば、キラにアスラン君を討たせた上で、返す刀(合法的暗殺術)で
キラを屠るのこそが最高の結末(グランド・フィナーレ)ではあるが、このまま
アスラン君がキラの前に再び姿を現さなければ、とんだ茶番である。
とすると、ここでタカツキ君とやらにキラを預けるのも一興のような気もする。
軍事には疎いフレイだが、それでもキラがコーディの中でも有数の潜在能力を誇る
最高クラスの戦士であることは知っていた。その彼女が、こんな取るに足らない小物
に足元を掬われて、恥知らずの裏切り者として、冷たい檻の中で従来の仲間達の憎悪と
嘲弄を受けながら、惨めにその生涯を終えるというのは、なかなかに魅力的な末路だ。

「このまま流局(アラスカ到着)覚悟で、あくまで単騎(アスラン君)待ちに固執し、
ひたすら四暗刻の役満を狙い続けるか、この場所でロン上がり(キラを見捨てる)して、
とりあえず三暗刻で満足し、それなりの点棒を拾うかだな」
この年で悪い遊びを覚えているらしいフレイは、今のシチュエーションをそう比喩した。
ちなみに強い直観力と度胸を併せ持つフレイは、学園時代、麻雀でも敵無しである。
一部の生徒間で、闇の帝王と恐れられていたとかいないとかの逸話を残していたりもする。


「さて、どうするべきか……」
フレイにしては珍しくどちらを選ぶか躊躇したが、あまり迷っている時間はない。
その手の恋愛ゲームの主人公のように、フレイの頭の中に二つの選択肢が浮かび上がる。

どちらを、選択しますか?
→「このままキラを見捨てて、この場所から引き上げる」
「キラを助ける。ただし、キラがタカツキ君に犯され終わるまで待つ」

……………………どちらにしても、キラにとって碌な未来じゃない。
アスランと別れて以後、キラの男運の悪さは天中殺を極めているみたいで、仮にキラが、
フレイの助力でこの窮地を脱したとしても、今度は別の地獄が口を開けて待っていそうだ。

179キラ(♀)×フレイ(♂)・41−5:2004/03/28(日) 17:11
「い…いやぁ!!やめてぇ〜!!」
「うるせえ、大人しくしろ!どうせザラの野郎に穴だらけにされた身だろうが!?」
「なっ!?」
かつての想い人への信じられない侮辱の言葉に、涙目のキラの瞳が釣りあがる。
「違うのかよ、それが目当てだったんだろ?そうでなきゃ、誰がお前みたいに直ぐに
ピーピー泣き喚くうざったいガキのお守りなんかするかよ!」
自分がそう生きてきたからだろうが、彼には、友情にも全て打算が伴われるのだろう。
かつてのアスランとの貴重な絆に、汚い汚物を擦り付けられ冒涜されたと感じたキラは、
今現在の自分の窮地も忘れて、毅然とした表情でマイケルを睨んで吠え立てた。
「ふざけないでよ!アスランはそんな人じゃないわ!敵である今も彼は立派な人間よ。
あなたみたいな、暴力で女を手篭めにしようとする最低な人と一緒にしないで!」
「へぇ〜、そうかよ。それじゃ、ヤマト。お前はまだ処女のままなわけか?」
「!?」
プライドを傷つけられ、怒りで顔を真っ赤にしたマイケルは、ヒクヒクと頬を引き攣らせ
ながら、大人気ない質問を発したが、これがキラには意外なクリーン・ヒットとなる。
何故かキラは後ろめたそうに目線を逸らす。その仕草から敏感に彼女の異性体験を
悟ったマイケルは勝ち誇った表情で、キラを嘲笑するように口元を歪めた。
「な〜んだ。偉そうな口叩いておいて、結局、開通済みかよ。それも、あれだけ懐いて
いたザラ以外の男に奪われるとは本当に最低な女だな、このヤリマンの淫乱雌犬が!」
「ひ…酷い!」
あまりに卑猥な侮蔑の言葉にキラの心は傷つき、屈辱に顔を歪めてポロポロと涙を零した。

「もしかして、お前が猿達(ナチュラル)に味方し、ザフトに敵対している理由って、
足付きの中で新しい男(情人)でも出来たからかよ?」
先から無神経だが意外と鋭い質問を連発するマイケルに、キラはドキリと心臓を震わせる。
今現在のフレイとの泥沼の愛憎関係を恋人同士と称して良いのかは甚だ疑問だが、
彼の推測は当らずとも遠からずだ。
「図星かよ?猿に誑かされて同胞を売るなんて、とんでもない売女(ばいた)だぜ。
そういう悪い娘には、キツイお灸を据えてやる必要性があるな」
「やめて!、離してよ、この変態!!」
柔道の押さえ込みのように、上からキラに覆い被さったまま、再びスカートの中へと
手を侵入させる。今度は無作法にも下着に手を伸ばしかけたマイケルに、後ろ手に
縛られ拘束されたキラは、辛うじて動かせる足元をバタつかせて必死に抵抗する。
「へへっ…、無駄だって………!?ぐおぉおおう……!!?」
油断していたマイケルの大事な部分に、偶然、暴れていたキラの左膝がヒットする。
したたかに急所を蹴り上げられたマイケルは、股間を押さえたまま無様に蹲る。

「あ…、あの、大丈夫?」
極めてお人好しのキラは、内心で密かに良い気味だとは思いながらも、情けない格好
で悶絶する彼の様子を心配して、頬を羞恥で染めながら声を掛ける。
だが、そんな心遣いは彼には一切無用なようで、マイケルは激しい憎悪の瞳でキラを
睨むと、彼女の襟首を乱雑に掴んで、手加減無しでキラの頬を複数回張った。
「このアマぁ!!優しくしてやっていたら、つけあがりやがって!もう容赦しねえぞ!」
どこがよ!?
涙目のキラはそう心中で彼を詰りながらも、暴力に屈して心が折れたキラは、恐怖に
打ち震えて声も上げられない。再びキラに馬乗りになった彼は、コーディ特有の怪力で
キラのおべべを力尽くで引き裂いた。白の清楚なワンピースは無残にも単なる布切れと
化し、半裸に引ん剥かれてキラは、ピンク色の下着姿のまま押し倒される。
いよいよキラの貞操(今更という気がしないでもないが)も、風前の灯だ。

180キラ(♀)×フレイ(♂)・41−6:2004/03/28(日) 17:12
「い…いやぁ、助けてぇ、フレイ!!フレイっ!!!」
追い詰められたキラの脳裏に、かつての…ではなく、今現在の想い人の姿が浮かび上がる。
キラはフレイの名を、魔法の呪文のように唱えながら、必死に泣き叫んだが、
今度はブラジャーに手を掛けたマイケルは、キラの乙女思考を嘲笑った。

「フレイ?そいつが今の男の名前かよ?でも、馬鹿だよなあ、お前は。
ドラマや漫画じゃあるまいし、そうそう都合良く助けなんか…」
「ところが、往々にして事実は小説よりも奇なりってね」
突然、耳慣れない第三者の声が彼の耳に届いたのと同時に、ブンっという鈍い音が
彼の後頭部に炸裂して、マイケルは前のめりにぶっ倒れた。
「無事だったかい、キラ?」
突如、マイケルの暴行が中止され、聞き覚えのある声に、恐る恐るキラは目を開ける。
すると、そこには彼女の愛しい人(フレイ)が、凛々しい笑顔でキラを見下ろしていた。

「フ…フレイっ!!?」
泣いていたカラスが何とやら…で、囚われのお姫様を救出にきてくれた白馬の王子様の
出現にキラは一瞬で破顔する。フレイは、マイケルを撲滅した凶器の鉄パイプを
放り捨てると、ガサゴソと気絶した彼の懐を漁った。やがて、手錠の鍵を探り当てた
フレイは、キラの手枷を外してあげると、自分の上着を半裸の彼女に被せて上げる。
キラは瞳を涙で潤ませると、フレイの胸の内に飛び込んで激しく泣きじゃくった。
「フレイっ!フレイ〜!!」
「キラ、無事で本当に良かった」
フレイは彼女を慈しむようにキラの頭を撫でる。白々しくも自身も涙を流しながらも、
内心では軽く安堵していた。マイケルは腐ってもコーディネイターの正規兵であり、
初撃の奇襲で仕留め損なったら、非戦闘員のフレイにはまず勝ち目はなかったからだ。
その昔、どこかの偉いお医者さんが、「女にうつつを抜かした男の背後を取るのは容易い」
と豪語していたが、どうやらそれは真実だったみたいだ。


「お…おのれぇ…、ふざけた真似しやがって!」
倒されたと見せかけて、最後に往生際悪く再び襲い掛かってくるホラー映画のお約束
の怪物役のように、マイケルはゾンビのような緩慢な動作でフラフラと立ち上がった。
怨嗟に満ちたマイケルの血走った目線に、キラはビクッとし、フレイは軽く舌打ちする。
おやおや、殺しても構わないつもりで、手加減無しで振り抜いたというのに、
こんな短期間で回復してくるとはコーディネイターとは随分と頑丈な生き物だね。
もしかすると、彼らならMSの爆発に巻き込まれても生きていられるんじゃないか?
そう関心しながらも、フレイは彼の神経を逆撫でするようにラブシーンの続きを演じる。
「駄目だよ、オイタをしちゃ。この身体は既に売却済みなんだからね」
フレイがキラを身体ごと抱き寄せ、キラは「きゃん」と嬉しそうな悲鳴を上げながら、
ポッと頬を染めて恥ずかしそうに俯いた。

「てっ…てめえ!!」
「タカツキ君と言ったね?僕には赤服とやらの価値は判らないけど、君もMS乗りなら
こんな姑息な真似でなく、MS戦で堂々と、ストライクに乗るキラに挑んだらどうだい?
…などという強者の理論を振り翳すつもりは毛頭ないさ」
最初、彼の卑劣漢振りを詰るのかと思ったが、そうではないようだ。
フレイは軽蔑するよりも、むしろ憐れむような視線でマイケルを見下している。
「生まれついての獅子であるキラやアスラン君達と違って、ハイエナに産み落とされた
君には、強者の残飯に集る以外に餌(手柄)にありつける方法など一つもないのだからね。
いやいや、本当に同情を禁じえないよ」
一見、相手の境遇に同情するように見せかけて、相手を逆上させるのがフレイの得意技
のようである。マイケルは瞬間湯沸かし器のように沸騰して、冷静な状況判断を放棄し、
衝動のままにフレイに自分の殺意を叩きつけた。

181キラ(♀)×フレイ(♂)・41−7:2004/03/28(日) 17:12
「この猿がぁ!!!!ぶち殺してやるぅ〜!!!」
怒りに打ち震えたマイケルが、フレイを射殺そうと腰元に手を当てたが、ホルスター内に、
何故か目当てのブツが見つからずに、「アレっ」と小首を傾げる。
「君の探し物はこれかい?」
ギョッとしたマイケルの視線の先には、銃身をこちらに向けたフレイの姿が映し出された。
どうやら、手錠の鍵を探していた折、フレイは目聡くも彼の拳銃まで徴収していたようだ。
次の瞬間、狭い倉庫内に銃声の甲高い音が連続して木霊する。
「ぐわぁあっ!!」
左膝を打ち抜かれたマイケルは仰向けにぶっ倒れて、片膝を押さえながら痛そうに蹲った。

「やれやれ、この至近距離から四発も放って一発しか当らないとは…。
やっぱり、僕には戦闘の才能はあまりないみたいだね」
「フレイっ、素敵…」
謙遜して軽く頭を掻くフレイを、キラは乙女コスモを満開にして頼もしそうに見上げる。
今の一撃で形勢は完全に定まり、プリンセスを救出するプリンスのミッションを
完璧に果たしたと言えるだろう。ただ、ここで止めておけばカッコ良かったのだが、
キラの想像以上に、彼女の王子様は少し過激すぎた。

「ち…畜生、絶対にぶっ殺してやる!」
グーンに乗り込んでキラ達を捻り潰そうと、片足を引き摺りながら、ズリズリとしぶとく
地を這い続けるマイケルに追いついたフレイは、外れようのないゼロ距離から、今度は
マイケルの右膝を打ち抜いた。
「ぎゃああっ!!」
「流石にこの距離だと僕でも当てられるね。やっぱり的は動けなくするに限る」
激痛にのた打ち回るマイケルや、唖然とするキラの様子には全く頓着せずに、
フレイはキラから回収した手錠を使ってマイケルを後ろ手に縛ると、ダルマのように
身動きの取れない彼の咥内に直接銃身を埋め込んだ。
「ひっ…、ひぃ、ひゃに(何を)を!?」
「誇り高いコーディネイターの戦士は、猿(ナチュラル)の捕虜に甘んじるぐらいなら、
孤高の死を選ぶつもりだろ?介錯を手伝ってあげるよ」
「ひぃ…、ひゃめろぉ(止めろぉ)!!!」
フレイは恍惚とした表情で、マイケルを見下ろしながら、彼の命乞いを無視して、
引き金に力を込めようとしたが、その指先をキラが押さえつけた。
「待って、フレイ。何をそこまでしなくても…」
「邪魔しないでくれよ、キラ。僕は一度人間を殺す経験を積んでおきたいんだよ」
「なっ!?」
フレイの殺人予告にキラは絶句する。人殺しの体験など、知らずに済めばそれに越した
ことはない筈なのに、自らの手を血で染めようとするフレイの思考は理解不能だ。
それと悟ったかのようにフレイはまるで子供をあやすような口調で解説する。

「この先、戦い続けていれば、いつかは僕も銃を取って自分の身を守らねばならない
状況に追い込まれるだろう。その時、人を撃った経験がないと、敵を殺すのを躊躇
するかも知れない。こういう覚悟だけは口先だけじゃ身につかない。判るだろ?」
「で…でも」
「先に撃てば助かったのに、詰まらない道徳観に縛られたが故に生命を落とす。
そんな後悔だけは死んでもしたくはないんだ。別に無抵抗の赤子を殺すわけじゃない。
コイツは僕たちに戦争を吹っかけてきた敵だから、殺すのに支障はないはずだ。
何よりこの手の子悪党は、世界を自分中心で回しているから、ここで助けても、反って
逆恨みされ、しつこく付き纏われるのがオチさ。禍根を断った方が君の為でもあるよ」

相変わらず、筋が通っているのか否か判らない戯れ事を、得意の口八丁手八丁で、
尤もらしい理由付けを加えて相手を丸め込もうとするのが、フレイの真骨頂である。
口下手なキラにはフレイを説き伏せる自信はなかったし、マイケルが改心する可能性
が低いことには同意できたが、それでもフレイにだけは人殺しをさせたくなかった。
何よりも、もう抵抗できない相手を見殺すなど、キラの倫理観が許さなかった。

182キラ(♀)×フレイ(♂)・41−8:2004/03/28(日) 17:13
「へ…平気よ、フレイ。フレイが戦わないで済むように私が守るから。だか…!?」
何とか翻意を促そうとしたが、キラは最後まで言い終えることは出来なかった。
さっきまで飄々としていたフレイの黒い瞳に危険な雷光が閃き、キラは息を呑んだ。
「当てになるかよ!君の約束なんて!」
余裕のないフレイの顔には、かつてキラが見知った狂気と殺意の波動が混在しており、
キラは否応なくモントゴメリが撃墜して、フレイが母を失った瞬間を思い出した。

「大丈夫よ、フレイ。私がきっと何とかするから」
「大丈夫だって確かに言っただろうが!?この嘘つきが!!」
「お前、自分がコーディネイターだから、真面目に戦ってなかったんだろう!?」

「くたばれ、コーディネイター!!」
一瞬、呆然としていたキラが再び我に返った時は、フレイはその殺意を再びマイケルに
突きつけていたが、何故かキラにはその殺気は自分に向けられたものとしか思えなかった。
驚異的な動態視力で、フレイの指先が動くのを確認したキラは、考える前に行動して、
フレイに身体ごと体当たりを敢行した。鳴り響く銃声の音。六連装の最後の一発は、
マイケルの頬を掠めただけで、彼の生命を奪うまでには至らなかった。

「キラぁ〜!!」
「お願い、フレイ。守るから!今度こそ絶対に約束を守るから!
フレイが戦わないで済むように、フレイの敵は全部私が倒してあげるから!
だから、だから…」
ポロポロと涙を零しながら必死に哀願を続けるキラに、暴発仕掛けたフレイの魂は
沈着化を余儀なくされる。この時フレイが何を思ったのかは不明だが、キラに見えない
ように薄い笑いを浮かべると、フレイは童貞(殺人体験)を捨てるのを断念した。
「良いだろう、キラ。僕も大概お人好しだからね。もう一度だけ君を信じてみるよ」
フレイがチラリとマイケルの方を見下ろすと、彼は泡を吹いて失神している。
どうやらコーディの彼も、身体ほどには精神の方は頑丈には出来ていないみたいだ。



「行こうか、キラ」
キラにグーンのOSを弄ってMSを使用不可能にさせている間に、マイケルの両膝を
打ち抜いた弾丸が二発とも綺麗に貫通しているのを確認したフレイは、軽く応急処置を
した上で、彼の為に携帯で救急車を呼んでやることにする。
こうして、この戦いの後始末を済ませた二人は、互いに肩を寄せ合って倉庫を後にした。
「集合時間はとっくに過ぎているね。どこかホテルにでも部屋を取ることにするか」
「ええっ…」
フレイの誘いに機械的に頷きながらも、キラは辛そうに表情を伏せた。その理由は、
さきの後始末の最中に、まだ温度を保った缶コーヒーを偶然発見してしまったからだ。

「もしかして、フレイは私が襲われる様をここで観賞していたの?」
フレイの身体からも微かにカフェインの臭気を嗅ぎ取ったキラは、この二つを結び付けて
戦慄し、そう考えた刹那、自分の踏みしめている大地が崩れ落ちるような錯覚を覚える。
この時、キラはもう自分達の関係はお終いだと密かに予感していた。
フレイが、本当に自分の窮地を楽しんでいたかなど、実はどうでも良いことなのだ。
ただ、本来他人を疑うことと無縁だったキラが、自分の危地を救ってくれたフレイの性根
を真っ先にそう疑ってしまうほど、彼への不信感はキラの心中に根強く蔓延っているのだ。

疑心暗鬼に陥った今のキラには、島内を取り囲む暗闇同様に、自分達の未来も深い闇に
閉ざされているとしか思えなかった。

183キラ(♀)×フレイ(♂)・41−9:2004/03/28(日) 17:14
これで良いはずだ。
軽くキラの肩を抱いて、暖かい笑顔で落ち窪んだキラを慈しみながらも、フレイは胸の奥
に打算を巡らせる。この時フレイは、彼女の落ち込み具合は乱暴され掛けたが故と信じた。
なら、その心の傷を癒やしてやる為に、今夜もキラを可愛がることになるだろう。

一時は、マイケルにキラを売り渡す選択肢も視野に入れたフレイだが、結局断念した。
仮にキラをザフトの虜囚にしたとして、この戦争がプラント側の勝利に終われば、
キラは冷たい檻の中で一生を終えるか、最悪処刑される憂き目となるだろう。
だが、戦況がナチュラル優位に進展すれば、前線復帰を条件に、恩赦を受ける危険性
もあるからだ。戦争とはそういうもので、綺麗事だけでは済まされないのだ。
フレイはそう悪ぶりながら、自分を納得させようとしたが、一つだけ彼が無意識に
目を逸らしていた事実がある。それは、キラが自分の名を叫んだ瞬間に、後先考えず
に反射的に、修羅場に踊りこんでしまったという変えようがない現実だ。

かつてのフレイは、キラに対して憎悪一辺倒の感情しか抱いていなかったが、
今現在のフレイは、明らかに愛憎並存(アンビバレンス)状態へと移行していた。
その己の感情にフレイが気づくのは、二人の関係が本当に取り返しのつかない
地点にまで発展した時である。


キラへの感情を微妙に変化させつつあるフレイと、フレイを想いながらも、彼の想いを
信じきることが出来ないキラ。この平行性を辿っていた二人の心の絆が交差した瞬間、
物語はさらなる佳境へと進化することになる。

184ザフト・赤毛の虜囚 37:2004/03/28(日) 18:07
7.幼子(おさなご) 4/8
[身勝手さは、キラ以上]

私はキラの回想にふけりながら、今の自分との違いを噛み締めていた。オーブに着くまで自分の心に
気が付かないまま、熱く欲望に溺れていった。あの時のことが、まるで嘘のように私の体は、
かたくなに閉ざされている。体は熱っぽい状態が続いているけど、あの時とは、まるで違う。
でも、それは私がキラを継ぐ資格を得たことの証しなのだろう。変わって行くことは恐くない。
これまででも、私は信じられないほど変わってきている。私は、今の自分を受け入れていた。
ただ、忘れてしまうことだけは恐い。キラの記憶をいつの間にか記憶の底に沈めることだけは。

そんなことを想いながらドライヤーでショーツを乾かしていた時、突然、ドアのロックが解除される音が
してクルーゼが部屋に帰ってきた。私は、驚いた。クルーゼの突然の入室に慌てた私は、隠そうとした
ショーツを、なんとベッドの下に落としてしまった。でも、ショーツを履いていない私は腰にかけた
毛布を外してベッドを出る訳にはいかない。なんとか、見つからないように意識して視線をベッド下から
そらし、クルーゼに向けようとする。

クルーゼは、そんな私にまるで気が付かないように、持ってきた書類を溢れそうな
書類入れに放り込み、さらに机の引き出しから書類を探している。そして、目的の書類が
見つかると、私にやっと目を向けて言った。

「おや、フレイ・アルスター。やっと、シャワーを使ってくれたようだな。
 遠慮しなくても良いのだよ。どんどん使ってくれたまえ」

私は、シャワー室のドアをきちんと締めていなかったのに、今さらのように気がついた。
そう言えば、ドライヤーも毛布の上に出しっぱなしだ。

「そうか、そう言えば、替えの下着も無いな。これは気がつかなかった。
 早く言ってもらえれば用意させたのだがな。後で、誰かに持って来るよう
 言付けておこう」

クルーゼは、それだけ言うと、そそくさと部屋を出て行った。私は安堵の声を上げた。

クルーゼの行動は、やはり私には読めない。私が帰って来て欲しく無い時は部屋に帰ってきて、
逆に、いても構わない時には部屋にいない。そして、行動予定を、私に一言も言わずに、
勝手に決めてきて、後から私に言う。その上、一人で訳の分からないことを語りまくって
自己満足すると、私の返事も聞かずに去って行く。その身勝手さは、キラ以上だ。

キラも結構、身勝手だった。砂漠で体を許して、これで大人しく私になびくかと思ったら、
モビルスーツに篭って、何度、私が言っても出て来なかった。カガリのMIAの時だって、すぐ戻ると
約束して、ちっとも守らなかったし、私が、たまにはゆっくり寝たいのに毎日毎日求めてきたり、
その時も私のいやがることばかり、やらせたり……
そのくせ、自分のこと何も言わない。ずっと内に抱え込んでる。腰痛のことが無ければ、私はキラの
昔話なんて知ることもできなかったろう。

本当に二人とも勝手だ。生真面目だったサイが、少し懐かしくなる。

クルーゼが、しばらく帰って来ないのを確認してから、私は、ベッドからゆっくりと降りた。
短めのスカートがまくれあがり、奥を少し覗かせる。今は、自分自身に男を挑発する意識が
無いとは言え、こんな姿をクルーゼに見せる訳にいかなかった。

床に落ちたショーツを拾うと、まだ少し湿っているのも構わず履いて、机の椅子に座った。
うう、気持ち悪い。くんくんと体を匂ってみる。さっきのことに緊張していて、また、
汗をビッショリかいてる。せっかくシャワーを浴びて、さっぱりしたのが台無しだ。

ただ、クルーゼは、どうやら私の下着の用意はしてくれるらしい。こんなことなら早く頼めば
良かったと後悔した。さっきのクルーゼの話だと誰か別の人を、私に寄越すらしい。女性兵士ならば、
今の私に、必要なものをいろいろと頼めるかもしれないと考えていた。

185ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/28(日) 18:10
前振り長かったですが、次回、新しいオリキャラ登場です。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ(♂)様、偉い! そして、二人とも心が動き始めていますね。でも、やはり互いに、すれ違いの方向ではあるのですけど。
ところで、トールとミリィは、どうしました? ひょっとして…… でも、それならば…… あんな悲しい顔は……

186散った花、実る果実38:2004/03/28(日) 20:38
「あの・・・お茶を入れてきました。」
そう言って、お茶を配る毎日。
普通にお茶に口をつける人もいれば、頑なに手をつけないようにしている人もいる。
中には、お茶を置かれた途端自分で入れなおしにいく人も・・・
その行為に傷つかないわけではなかったけれど、しょうがない、ということがいい加減私にもわかってきていたので、特に食って掛かったりすることはしなかった。

「毎日こうやってお茶を配って歩いてるけど・・・だからって特にどうなるわけでもないのね。」
ある日、たまたまリスティアとお茶をする余裕があった時、私はつい愚痴をこぼしてしまった。
「だから言ったじゃないの。コーディネイターとナチュラルがわかりあえるはずはないのよ。だから今戦争をしているんじゃないの。」
そうかな。本当にそうなのかしら。
わかりあえないから戦争をしている?
戦争をしていることによってわかりあえる道を絶っているのではないの?
「でも・・・・・」
でも私は自分の気持ちをうまくいい表す言葉を見つけることができなかった。
なんて言ったらわかってもらえるんだろう。
コーディネイターとナチュラルだって同じ人間だって。でもこの間リスティアにその考えを拒絶されたばかりだ。
同じ言葉ではきっと彼女の心を動かすことはできない。
「いいじゃないの。あなたはナチュラルにも関わらず、この艦で迫害もされずに呑気にお茶汲み程度の労働ですんでるんだから。普通だったらこうはいかないわよ?」
優雅にティーカップを持ち上げながら彼女は言う。
普通の捕虜より私は恵まれている。それは確かだ。だけど違う。それだけじゃだめなのに。
「でも・・・捕虜だから・・・って事でしょ・・・?建前上手を出せないだけで、本当にお互いの関係が改善されているわけじゃないのよね・・・・」
その私の言葉にリスティアは苦く笑う。
「・・・そうでもないみたいよ」
「・・・どういうこと?」
「身内の恥を晒すようだけど・・・・・パナマ戦では捕虜の扱いはひどいものだったと聞くわ。というか・・・・・・パナマではナチュラルの捕虜はほとんど発生しなかったの。何故だかわかる?」
私は首を横に振った。
「ナチュラルの捕虜なんかいらない・・・・そういって、降伏した捕虜を惨殺したらしいわ・・・・」
「そんな・・・・!!」
なんてこと・・・そんなこと許されるはずが・・・・・
「ひどい話よね・・・本来なら許されることではないんだけど・・・・・この戦争は何かが狂っている・・・」
「なんで・・・なんでそんなことが許されるの?捕虜を惨殺って・・・そんな・・・そんな事・・・・・!」
すると彼女は複雑な表情で言った。
「声が大きいわよ・・・外に聞こえたらどうするの。・・・実際のところ、その証拠がないからもみ消されている、というのが現状のようよ。公表されたらただでは済まない、とは思うけど・・・・現実的にザフトを抑えられる機関がない、というのもひとつにはあるわね・・・・」
私は足元が崩れていくような錯覚に陥った。そんなことって・・・・・
「だから、あなたの扱いは破格のものだと考えていいと思うわよ。平時にしても寛容すぎるくらいだもの。だから・・・・これだけは覚えておいて。今、ナチュラルだという事だけで考えられないひどい扱いを受ける可能性は現実にあるの。だから・・・・言動には十分気をつけて。でないと・・私と隊長のフォローがあってもどうなるか・・・・・」
信じられない・・・・・・・
「そんな・・・・同じ、人間なのに・・・・・・・」
思わず口をついた言葉にリスティアはさっき私が考えたほどには反応しなかった。
「そう考えていない人間が多数いると言うことよ。ナチュラルの方だって・・・・・アラスカの時にとった手段はひどいものだったじゃない・・・・」
この戦争は終わらないの・・・・?どこまでエスカレートしていくの・・・・・私、ここで・・・・どうしたらいいの・・・・・・・

187散った花、実る果実39:2004/03/28(日) 20:39
その日、それ以上外にいるのも怖くて、私はクルーゼ隊長の部屋に閉じこもってしまった。
私はひたすら、彼の帰りを待った。
「あのっ・・・・!」
扉が開いた瞬間、私は彼のもとに駆け寄った。
彼は私を抱きとめ、顔を覗き込む。
「どうしたんだね?何かあったのかね。」
「あの、私・・・・っ!」
私の心は恐怖に囚われていた。
「あの・・・・パナマで・・・・・投降した捕虜が惨殺されたって・・・・・」
「ああ、その話かね。」
彼はなんでもない事のようにそう言った。
わからない、彼が何を考えているのか。ナチュラルの死なんてなんとも思わないのだろうか。彼はコーディネイターだから?
「そんな心細い顔をしなくても大丈夫だよ。私の元にいれば君がそんな目に会うことはない。私の言うことに従っていれば・・・それでいいのだよ。」
彼に従っていれば・・・・?私にはわからなかった。彼をそんなに信用していいのかどうか。
「怖いかね。この艦にいるのが・・・それとも私が?」
この人には何もかも見抜かれているような気がする。
私はザフトの捕虜なのではない、この人の捕虜なのだ。
この人は人の人生を玩具にして・・・・一体何がしたいのだろう。
自分の死さえ何とも思っていないようなそぶりで・・一体何が欲しいの?
「あなたは・・・・・誰?」
「不思議な事を言う。私は私だ。ザフトのラウ・ル・クルーゼ。君は何が知りたいのかね?」
知りたい、彼が何を考えているのか。でも・・・・・
知りたくない。彼の考えている事を知ってしまったら、もう後戻りできないような気がする。
彼はただのザフトの軍人とは何かが違うような気がする。何かが・・・・・・・
「私に、させたい事があるって・・・・・」
「まあまだ具体的にどう、と目途がついているわけではないがね。そういえば君はお茶汲みを始めた、と聞いたが・・・」
問うことを許しながらも彼は答えようとはしない。
「そうですけど・・・・・それが何か?」
「君こそ、どうしてそんなことを始めたのかね?」
この人は知りたがり・・なのだろうか。それとも自分の駒のことはすべて把握していたい、と?
「私でも・・・何かできる事があればと・・・・ミリアリアが、お茶汲みくらいなら、と許してくれたので・・・・」
すると彼は満足げな微笑でこう言った。
「では、私にもお茶を入れてきてくれないかね。仕事が終わって戻ってきたばかりで、少しばかりのどが渇いていてね。それに、薬を飲みたいので水が欲しいのだが。」
そう言われて私はお茶と水を用意しに立った。
彼は私を何かに利用したいようだ。・・・という事は彼の目の届く範囲で私が害される事はないだろう。しかし・・・・
「持って来ました。」
そう言って、お茶と水を彼の前に出すと、彼はお茶の香りを満足そうに嗅いで言った。
「ふむ。悪くないね。味も・・・・・うん、フレイはお茶を入れるのがうまいな。」
「ありがとうございます・・・」
やはり、そう言われると悪い気はしない・・・それに・・・・父の声で語られる優しい言葉に幸せだった過去を思い出されるのは私にとってはしかたのないことだった。
「皆も喜んでいるだろう。可愛い娘からおいしいお茶を入れてもらって悪い気のする男はいないだろうからね。」
「そうでしょうか・・・・」
リスティアの話を聞いたばかりの私にはとてもそうは思えなかった。
「まああまり気に病まない事だ。どの道、君にはここにいるしか道はないのだから。」
「でも、私・・・・・・」
「私のために役に立ってくれないかね、フレイ。」
それはもはや彼の切り札だった。
パパに似ているその声。彼は気づいているのだろうか。
「私は他の誰からも君を守る。ここにいれば君が恐れるものなど、何もないのだよ。」
パパに似たパパと似つかぬこの男。私はこれからどうすればいいのだろう。
「その薬は・・・・?」
何の気なしに口をついた質問にも、彼は微笑を浮かべるだけで返答が得られることはなかった。

188散った花、実る果実/作者:2004/03/28(日) 20:51
うーん、フレイ様追い詰められてきました・・・どうしよう・・・・

>>キラ♀フレイ♂
キラの貞操(?)が守られてよかった。しかし、フレイ様の思惑はどうも外れてきたようですね・・・・
でもフレイ様も愛に目覚めてきたようだし・・・・自分の気持ちに気がついてくれるといいのですが。

>>赤毛の虜囚
オリキャラは女性キャラですかな?
クルーゼの元にいるフレイ様は痛々しいけど・・・回想のフレイ様は可愛くていいですね。
こういう痛々しいシーンて中々筆が進まないんですよね・・・・

>>流離う
キラ、絶倫ですね!!(笑)
しかしフレイ様も現実に気がついてきたところで、またここが成長点になるのかな、という気がします。

>>刻還り
シャワーなし・・・これがフレイ様にとって一番きついお仕置きになるのでしょうか。(笑)
懲罰的には妥当な気もしますが、キラのわだかまりがどう消化されるんでしょうね・・・

>>The Last War
自分の道を信じて戦うアスラン。これだけ迷いのない彼は久しぶりに見たような気がします。
しかし右腕を損傷して思うように加勢できないキラ。頑張れアスラン。無事に帰れないとキラのトラウマになっちゃうぞ。

189過去の傷・93:2004/03/28(日) 23:31
キラとフレイは部屋にいた。
「明日は実戦練習だね、頑張ってね・・・」
とキラは言う。
たしかにそれはそう・・・私自身も楽しみにしている・・・でも私はいまそのことよりもキラとミリアリアのことが気になって仕方なかった。
「ミリィ馬鹿だよ・・・」
「え?」
「ほんとに馬鹿なんだから」
キラは下を向くと言った。
「キラ・・・」
フレイは思った。
キラはいまミリアリアのことを考えている・・・絶対そうだわ・・・キラ・・・流石に二ュ−タイプといっても全ての心を見透かすことは出来ないみたい・・・でもキラの顔と言葉を見たら分かる、キラもいまもしかしたらミリアリアの部屋に行きたいのかしら、彼女を元気付けたい気持ちでいっぱいなのかもしれない・・・だめそんなことは私が許さない、絶対に許さない・・・
それときになったのはキラが言った馬鹿という言葉・・・これには文句ではなく可哀相という言葉が隠れて見える・・・。
それからミリアリアとキラの会話を聞くと少しは私の知らないところで恋人に近い関係になっていたのだろうか・・・キスぐらいはしたのかもしれない、ミリアリアだ、彼女から誘ったのよ、絶対そうよ・・・キラを女の色気で誘惑したんだわ、キラはそういうのに弱い子だから、それは私が一番知っているつもり、ミリアリアはト−ルがいないから寂しいのよ、だからキラに関係を求めてきたんだわ。
「フレイ?」
フレイの様子が気になったのかキラが声をかけてきた。
キラ・・・ミリアリアと抱きしめ合う、キスをしている姿を想像してしまう。
フレイは思っていた、キラが手に入った、やっと自分のものになったと思い込んでいた、でも違った・・・キラ自身もミリアリアに心が向き始めているかもしれない・・・そんなことって・・・ミリアリアが優しいから?ミリアリアが可愛いから?認めたくないけど、ミリアリアは確かに可愛い、それに優しい、でも私だって・・・私だってキラに優しくしてきたつもりだ、それに自分で言うのは変かもしれないけど、容姿にも自身はある、ミリアリアにも・・・いえ彼女に勝ってる自身すらある・・・それなのに・・・キラ、私じゃ不満なの?私のゆくもりじゃいやなの?
フレイは勝手にキラがミリアリアを好きだと思い込み始めている。
「フレイ?どうしたの?」
「・・・・・」
「大丈夫だよフレイ、僕ずっと君のそばに・・・君には僕が・・・」
「キラ・・・」
キラがフレイの肩に手を触れてきた。
「や・・・やめて!!!」
その手をフレイは振り払った。
ミリアリアと抱き合った手で触れないで・・・。
次の瞬間フレイは部屋を飛び出していた。
「フレイ!」
キラの声が追ってくる。
しかしかまわずフレイは逃げるように走った。
キラから肩に手を触れてきた・・・いつも誘うのは私からなのに・・・いや違う、キラはただ肩に手を触れてきただけ・・・。
キラはミリアリアに心が向き始めているんだわ・・・。
どうしたら?
どうしたらキラに完全に好きになってもらえるのかしら?
考えながらフレイはカガリの部屋に向かっていた。
私はキラが大好き、私は結婚まで考えてるのに・・・。

「なんか用か?」
カガリが顔を出す。
「ちょっと入れてくれる?」
「入れよ」
フレイはカガリの部屋に入った。
彼女の顔を見ると癒される。
「お、おいなにするんだよいきなり!」
部屋に入ったとたんフレイはカガリに抱きついた、ぎゅっと強く抱きしめる、カガリは離そうとするがフレイはしっかりと抱きついていて離れない。
「このままで・・・」
「え?」
「もう少しこのままでいさせて・・・お願い」
「・・・・・・」
「カガリ・・・好きよ・・・」
「そうか・・・分かった」
カガリも抱きしめ返した。

190ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 13:59
1.24
[可愛い手帳を買った]
手のひらに収まるくらいの小さな電子手帳。
オレンジ色ですごく可愛いので、衝動買いしてしまった。
明日はジェシカ達とショッピングの予定なのに。
ジュブールのお店の新作手帳は見ないようにしよう。
去年は手帳を三度も買えて、パパのお小言をくらったんだった。
今年はこれを使い続けるのを目標にする。

1.25
[授業中]
今日は午前だけだから、これからショッピングの予定だったのに…
最悪、臨時テストなんて聞いてない
できるわけない。夜更かししちゃったし…
史学の授業は得意だけど、電子工学は…キライ
なんていうか、ロマンを感じないのよね。
でも私が、赤点なんてとれるはずがないわ。どうしよう…。

1.27
[信じられない]
ここ数日、あまりにいろいろありすぎて、パニックになっていた。
私が今いるのは、戦艦の中。戦艦は、アルテミスの中にいる。
地球軍が極秘開発した「アークエンジェル」っていう船。
極秘って言っても、私を含め、民間人が乗ってるんだけど。
すごく怖い。ヘリオポリスはなくなってしまった。一瞬だった。
ジェシカとミッシェルはどこにいるのか、会えて無い。
ここの艦長(ラミアスさんというらしい)が言うには、民間人の被

害はほとんどない、
だそうから、二人も無事なんだと思う。大丈夫かな…。
でも少なくとも、私よりは安全だと思う。
この艦は、戦争をしているなんて。あんまりだ。

私を拾ってきたのは、キラというサイの友達。
モビルスーツに乗れる、コーディネイターだった。
ほんものと喋ったのははじめてだ。なんだか平凡な感じだった。
子供っぽい顔だし。
私がテレビで見たのは、みんな大人だったからかな?
でも、やっぱり怖い。
サイ達は優しくていいやつだって言うけど、モビルスーツに乗って
銃なんて撃てる人が、ふつうなわけないわ。


同日:
やっぱりキラって子は怖い。大人のひと、しかも軍人を軽々と投げ

飛ばしてしまった。
コーディネイターなんかと、どうしてみんな仲良くできるの。あれ

を見て怖くないの?わからない。
逆に、私が責められた。私は間違ってない。
なんか、みんな、おかしい。
サイも、もっと私に優しくていいと思う。パパがいないんだから尚

更だ。

ここは嫌。早くパパに会いたい。通信機器も没収された。ほんとう

に最悪だ。


1.29
[凍った大地]
ユニウス・セブンはひどいことだと思う。
ミリアリアの話を聞いて、ますます思った。
核なんて、廃止されてよかったんだと思う。
パパも核使用には反対していた。私もよくないと思う。
死んだ人たちのために、折花を折った。
ちいさい女の子にも、私が教えてあげた。

同日:
お墓泥棒みたいなものだと思ったけど、
水が使えるようになったのは嬉しかった。
化粧品を沢山買っておいて良かったかもしれない。
軍のシャンプーじゃ枝毛が出来そうだし。
あと、においも良くない。年寄りくさいにおい。
やっぱり、ボディソープはエリザリオがいちばん。

191ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 13:59
2.3
[むかつく]
また、コーディネイターが来た。
なんていうか、むかつく女。
話し方とか、癇に障る。なんだか身分が高いみたいだけど。
キラが連れてきた。拾ってきたらしい。
あの子、ほんとうはコーディネイターのほうにつきたいんじゃない

だろうか。
信用ならない。どうしてみんな、キラを信用し続けるんだろう。
無口で、何考えてるかわからないし。

ザフトの子が軟禁中なのに、勝手に食堂に入ってきた。
よくわからないことを言って、握手しようとしてきた。
わけわからない。なんて空気が読めないんだろう。なんで誰も咎め

ないんだろう?
ほんと、イライラする。
なのに、私のほうが空気が読めてないって顔で、みんな見てくる。
違和感を感じる。むかつく。

帰りたい!!


2.6
[パパに会える!]
嬉しい!さっきサイが教えてくれた。パパがこっちに来るって!
ほんとうに嬉しい!でも、私ったらずっと同じ服で情けない。
せめて、お肌くらいはきれいにしよう!
パパの娘として、パパが恥をかかないように。

パパ……パパの顔見たら、私きっと、泣いちゃう。


2.8
[]


パパが、死んでしまった。
なんだか、よくわからない。
ずいぶん寝ていたみたいだ。
起きたくない。

パパ。


2.9
[許さない]
パパが死んだ。パパは殺された、ザフトに殺された。
ゆるせない、ゆるせない、私のパパを返して!!

さっき廊下でサイの話を聞いた。
キラはザフトに友達がいるって。
だから手を抜いたんだ。最初から戦うつもりなんてなかったんだ。
うそつき。最低。ずるい。ゆるせない!
コーディネイターのくせに!

でもいいことを思いついた。
どうせ、みんなキラの味方をする。
前みたいに、私が一人反発したって、意味がないのはもう分かって

る。
私もキラの味方になればいい。
キラが戦わざるを得ないようにすればいい。

そして、パパを殺したやつらを殺して、
そしてキラも死ぬんだ。

あんな子、死ねばいい。
絶対、許したりしない。


2.11
[キラに謝った]
謝るのは二度目だけど、やっぱり前回と同じだった。
キラはお人よしなふりをして、こうやって自分の居場所を作ってる

んだ。
それに気付いてるのは、私だけってこと。
でも内緒にしててあげるつもりだ。

同日:
嫌なニュース。
第八艦隊の本隊と合流するらしい。
これで私達は艦を降りれるって。
みんな喜んでる。私以外、みんなうるさいくらい。

どうしよう。考えてなかった。
折角、キラに敵を殺してもらうつもりだったのに。

どうしよう??


2.12
[決めた]
決めた。私は、軍に志願する。
もうそれしかない。

パパ、大好きよ。


2.13
[地球にて]
砂漠に下りた。アフリカらしい。
当初アラスカに降下する予定だったのに、あの子のせいで、降下ポ

イントがズレたって聞いた。
でもちょうどいい。
ここはザフトの勢力圏内らしいから、いっぱいコーディネイターが

いる。
キラにたくさん、やっつけてもらおう。

そう思ったんだけど、キラは今寝込んでる。
モビルスーツのまま大気圏を突入したから、コックピットはすごい

温度になってたんだって。
ナチュラルだったら生きてない温度らしい。
でももう、だいぶ汗も引いてる。やっぱり違うんだ。

そういえば、昨日…(まだ、今日?時間がわからない)
キラとキスした。
思ったより、なんてことなかった。
好きじゃない人にキスをするのは初めてだったけど、
嫌悪感より、キラが戦ってくれることが嬉しかった。
これは、ご褒美。

今、キラが何か寝言言った?
起きたら、いっしょにご飯をたべよう。

192ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 14:00
2.14
[キラの熱が下がった]
ずっと看病してた甲斐があってキラはもう完治した。
すごい回復力だ。なんだか、ありえない。

サイに、お別れを言った。すごくびっくりしてた。
どうせ、まだパパとサイのご両親が、パーティの席でお話しただけ

だけど、
サイのご両親はとくに、本気だったみたいだ。
サイは優しいし、好きだ。
でも最近のサイは、あまり優しくなかったけど。
でもそんなことはどうでもいい。

私のために、軍に残ったサイには可哀想だけど。
でもサイにはもう、関係ないことだ。

あとでまたキラの部屋に行こう。
ご飯のときはあの子、なんだかぼーっとしてて、あまり喋らなかっ

た。
こっちをあまり見なかったし。
もうちょっと私に興味を持ってると思ったのに…


2.15
[]

体が、痛い。
なんだかさっきから、外がうるさい。

キラが戦ってる音だ。
早く服を着なくちゃ。
シャワー浴びたい。でも今は動けない。

キラは私を守るって言った。
私は成功したんだ。
たぶん。

からだ、気持ち悪い。
くさい。
早く戦闘が終わるといい。

同日:
戦闘が終わったらしい。外が静かになった。
てきとうにひっかけてた服を脱いで、シャワーをさっき、浴びた。
でもなんか寒い。エアコンの調整、済んでないのかな。

わたし、キラとした。
したかったわけじゃないけど、泣いてるキラに、キスしてたら、
キラが夢中になって。胸を触られた。

そのまま心臓を掴まれたみたいな気分だった。
でもここで突き放したら終わりだと思って、私からベッドに誘った


あのときのキラの顔は忘れない。馬鹿みたいな顔。
ぜんぜん嬉しそうじゃなかった。さっきまで泣いてたから当然だけ

ど。

あとはもう分からない。思い出すのもイヤ。
キラが勝手にやった。私は抵抗しなかったけど、痛いのに我慢した

だけ。

キラはいつ帰ってくるんだろう?

193ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 14:01
前にフレイ様大天使日記というのがありましたが、
そういう感じですね。

ちなみにあれの作者さんとは関係ありません。

194流離う翼たち・443:2004/03/29(月) 23:02
 フレイの官舎を出たナタルはどうしたものかと考えたが、とりあえず行きたい所も無いと気付いてしまう。それで暫し玄関の前で悩んでいたのだが、結局浮かんだのは港にあるアークエンジェルの入港しているドックに行くことであった。とりあえず艦の修理状況を聞くだけでも良いだろうと思ったのだ。

「ふむ、1人になるとこうも時間の潰し方が分からなくなるとはな。若い頃はまともに遊びに行った事も無かったから、仕方ないのかもしれないが」

 考えてみれば随分と寂しい青春時代だったように思う。中学の頃にはもう未来は軍人と決めていて、ずっとそれを目指して努力を重ねてきた。おかげで25歳で大尉になり最新鋭戦艦の副長などという大任を任されるまでになった。軍人としてみればまあ順風満帆とまでは言わなくとも、それなりに充実した人生なのだろう。
 だが、フレイやカガリと接するうちに、何となくその生き方が空しく思えてくるようになったのだ。目の前で皮肉の応酬をしたり男女関係でからかい合っている姿は、自分には全く縁の無いものであった。あの頃はそんな物は馬鹿馬鹿しいと気にもしていなかったが、こうして目の前でそれを再現されると、少しくらい横道に逸れていても良かったのではないかと後悔にも似た感情が過ぎってしまう。
 しかしまあ、そんな感傷も内心をよぎる別の思いにあっさりと打ち消されてしまう。
ふと空を仰ぎ見れば太陽は朝と呼ぶにはやや高い所にあり、自分が起きたのが随分遅かった事を教えてくれる。なんだか、こんなに遅い時間に起きたのは随分久しぶりだ。何となく艦長たちと同じ駄目人間になってしまった気がして、ちょっと気落ちするナタルであった。

 アークエンジェルが入港しているドックは海軍の軍港内にある。アイボリーのタイトスカートに白いシャツの上から水色の薄手のカーディガンを羽織ったナタルは身分証明で中に入るとそのままドックに行こうとして、ふと灯台のある堤防の先の方に人影を見つけて足を止めた。

「・・・・・・あれは、何処かで見たような」

 いや、何を馬鹿な事を言っているのだ。あの後姿は何度も目にしている。間違いなくあれはキースだ。しかし、あんな所で一体何をしているのだろうか。

「まあ、あの人の事だから自殺しようとしている可能性は無いだろうが」

 そんな事を呟いて、ふと、何でそんな方向に考えが行ってしまったのかと深刻に悩んでしまった。もし彼女の悩みをキースが知ったら、きっとこう言うに違いない。

「朱に交われば赤くなる」

 と。


 キースは堤防の先でのんびりと釣竿を手に釣りをしていた。ややくたびれている軍服は歴戦の軍人を感じさせるのだが、口に咥えたタバコと脇に置かれたウィスキーのボトルが些かだらしなさを感じさせる。この姿を見ても誰も彼が連合屈指のエースパイロットだなどとは思わないだろう。
 その目は水平線に向けられ、なんだか哀愁を漂わせている。まるで何かに負けたかのような寂しさを見せるその背中は何者をも拒絶する重さを背負っているかのようだ。そんな彼に声をかけられる物などいるはずが・・・・・・

「釣れますか、大尉?」

 たまには居るらしい。そういう変わり者が。ナタルの声にキースは驚いて背後を振り返り、私服姿のナタルを見て馬鹿みたいにあんぐりと顎を落とした。

195流離う翼たち・作者:2004/03/29(月) 23:19
>> 過去の傷
なんというか、フレイ様、百合は不毛ですw!
カガリもサイはどうした。ジュリに負けっぱなしかw
ミリィの大攻勢にキラはどう対応するのでしょう?

>> ザフト・赤毛の虜囚
さて、フレイ様は捕虜生活をどうやっていくのやら
まああの仮面を見て素直に信用する人間が居たら逆に正気を疑いますがw

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ君、だんだん現実の行動と野望が噛み合わなくなって来てますね
キラの方は逆に真実を垣間見ているようですが
とりあえず鉄パイプをフルスイングで食らっても生きてるマイケル君に敬礼w

>> 散った花、実る果実
リスティアさんとなにやら中立状態になってますね。お茶飲み話ですか
まあ、話してる内容は凄くアレですが。ザフトは軍人教育受けてないから軍規への認識が薄いんでしょうねえ
クルーゼが表面まともな人なのがなんだか・・・・・・

>> ヘリオポリス
日記ですね、とりあえずは砂漠の辺りまでですか
次はオーブまでいきますかな。クルーゼの所でも日記は続くのだろうか

196ザフト・赤毛の虜囚 38:2004/03/30(火) 00:56
7.幼子(おさなご) 5/8
[えへ! クルーゼ隊長に言われたの]

しばらく、また、ぼうっと考え事をしていると、部屋のロックの開く音がした。
にも関らずコール音だけ鳴らして部屋に入って来ない。クルーゼであるはずが無かった。
誰なんだろう?

私は部屋の戸を開けた。そこには、赤い軍服を着た女の子が立っていた。前の戦争に行く時に乗った
連絡機で見かけた、私と同年代の子。手には、パックされた官給の下着の束を抱えている。

立ってみると上背は、私よりもあって、丁度キラと同じくらい。比較的プロポーションの取れた体形。
膝まである丈の長い赤い軍服は、そんな体形を見せないように隠しているけど、それでも、その胸の
膨らみは隠せなかった。私と同じくらいか、ひょっとしたら、それ以上あるのかもしれない。
髪の毛は、少し赤みがかった金髪。軍人らしくショートにまとめている。だけど、髪質は、さらさら
していて、私と似た感じ。ロングにすれば、もっと似合いそうだった。そして、その髪型をした顔の
つくりは、かなり童顔に見える。私のキラへの第一印象のように。

その唇が声を発した。
「えへ! クルーゼ隊長に言われたの。これ持って行けって」

(えへ!?)
私は、引きつったような表情を浮かべた。こんなリアクション。私くらいの年だと、
さすがに恥ずかしくてできない。この子って一体……

この子は、私に下着を手渡した。そして、顔には満面の笑みを浮かべている。
そんな笑みの表情はザフトの捕虜になって辛い生活をしている私にとっては、少し心休まるもの
だったけど、今は、あまりの場違いな雰囲気に、逆に戸惑いを隠せなかった。

私は、さっき考えていた、頼み事を思い出した。私と同年代の女の子なんだから大丈夫なはず。
だけど、少し不安を感じながら話しかける。

「あの…… これと、その他にも頼みたいものがあるの」
「何? お姉ちゃん」

その子の返事に、さらに不安を感じながら話を続ける。

「下着、もっとたくさん、この倍くらい用意して欲しいの」
「何で?」

「あの……、よごれるの。それと…… それと念のためナプキンも用意してくれないかしら」
「ナプキン? って何?」

「知らないの? 生理用の……」
「ううん。分かんない。誰かに聞いとく」

そのリアクションに、私は予感が的中したことを知って落胆した。
『お姉ちゃん』だって? この子の幼稚な物言いは、ひょっとしたら……

だけど、この子の次の言動は、もっと私を戸惑わせた。

「ねえ、お姉ちゃんって、アタシのママでしょ」
「え?」

声も出せない私に、この子は抱きついた。私は、それに驚いて下着類を床に落としていた。
この子は、かがんで私の胸に顔をすりつけながら言った。

「ママ見つけた。やっと見つけた。ミコト、いい子にしてたよ」
「ミコト?」

ミコトと言うらしい子の、行動と言動に、私は頭の中が真っ白になったようで、
身動きもできなかった。やがて、ミコトは顔を上げて、いじらしい瞳を、
私に向けながら言った。

「ねえ、ママ、パパはどこにいるの。パパもいるよね」
「ちょっと、なによ。この子……」

私は、この子の行動に驚いていた。だけど、かといって容易に振りほどけないでもいた。
私に触れた髪の毛の質が、見かけどおり私とまったく同じなのが分かり、親近感さえ、
感じていた。

197ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/30(火) 00:59
ご想像通りオリキャラは女性キャラでした。正体は近く明らかに。

>>散った花、実る果実
フレイ様、クルーゼに紅茶と水を…… あのシーンですかな?
でも、フレイ様、クルーゼへの依存度が高まってきましたね。このままでは危ない。なんとかしなくては。

>>過去の傷
ええと、これは フレイ様が20話のキラで、キラがフレイ様で、ミリィが…… ああ、ややこしい。
でも、キラが一人でしゃがみこんで泣いてたのに比べて、フレイ様はカガリに慰めて出もらえて良かった。

>>ヘリオポリス
新作ですね。公式年表に添ってフレイ様の心境を綴る。しかも、もう問題の 2.15 まで。
微妙に漢字が少なくて、フレイたん?って感じも…… 1.29 の「ボディソープはエリザリオがいちばん」が良かったです。

>>流離う翼たち
久々復活おめ。考えていることは真面目過ぎるくらいまともなのに。台詞がボケまくっているナタルに脱帽。

198過去の傷・94:2004/03/30(火) 22:17
「・・・はあ・・・」
自分から肩に手をやろうとした・・・それはフレイに将来決めたからだ、だが拒絶されてしまった・・・なぜ?僕も少しショックを受けた・・・やはりまだ彼女は本気じゃないんだ・・・。
そうだ、ミリィはどうしているのだろう・・・?一応様子でも見に行ったほうがいいだろうか?でも・・・もし行ったらまた・・・でも一度も顔見せないというわけにもいかないだろう。
そんな時電話が。
「はい」
<キラ・・・?>
「ミリィ!」
<寂しいな・・・私・・・外出禁止なんだよ・・・>
「・・・・・・」
<フレイは・・・?>
「フレイ?ああ、いま出かけてる」
<・・・そう・・・ねえ・・・会いたいな>

「あの・・・ラクス」
「何です?アスラン」
ここはアスランの部屋だ、ラクスが訪ねてきたのである。
「いえ、その・・・今日のことなんですが、ラクスらしくない行動や言動が目立ちましたので」
「・・・・・・」
ミリアリアとの出来事のことだ、あれほどまでミリアリアを責め立てたことやハロを投げたことについてである。
アスランは目を疑った、平和の歌姫であり、プラントのアイドルでもある彼女がなぜあんな態度を取ったのか。
クライン邸でハロとはしゃいでいたラクス、誰にも笑顔を絶やさず、いつもスクリ−ンで歌を歌っていた彼女・・・アスランもその歌に心を癒されまたそんな彼女自身が好きだった。
「アスラン・・・私らしくとはなんなんでしょうか?」
「え?」
「アスランにとっての私・・・ラクス・クラインとはどういう女性ですか?」
「ラクス・・・」
「クライン邸のお庭にハロとはしゃいでいる私ですか?ステ−ジで歌っている私ですか?エタ−ナルの指揮官である私ですか?」
「私は・・・」
ラクスはアスランを鋭い眼差しで見つめる。
「アスラン、人は変わるのです」
「!」
「もう以前の私を見るのはおやめください」
「な!」
「ここにいる私はもうプラントの歌姫ではありません、この艦の艦長であり指揮官です」
「・・・・・・」
「分かりましたか?」
「・・・はい・・・」
「ですが・・・クライン邸に帰れば・・・以前の私に戻るおつもりですわ」
「はい」
「ですがそれはこの艦から降りたらの話です、分かりますね?」
「はい、分かっています」
「では私の部屋にお泊りください、これは命令です」
「はい、お言葉に甘えさせていただきます」

ミリアリアの部屋に入るキラ、中の様子を伺う・・・真っ暗だ。
「キラ・・・?来てくれたの?」
「うん、ミリィ・・・」
何を考えてるんだ僕は?昨日言ったじゃないか、迷惑だって、付きまとわないでくれって・・・なのになんで?なんでここに来てるんだ?
「入って・・・ご覧の通り電気もつけちゃだめだって・・・ラクスさん厳しいね・・・シャワ−も・・・」
「それは仕方ないよ」
「シャワ−浴びられないのって女の子にとっては寝れないのに近いくらい辛いことなのよ」
「そう」
謹慎処分を受けて部屋に閉じ込められているミリアリアの様子だが、そんなにショックを受けた様子はないようだ。
そしてキラには聞きたいことがあったのだ。
「ミリィあの・・・なんで?なんで機体に乗ったりなんか」
「フレイに対抗するためよ、あの子にも出来たんだから、私にだって出来るんじゃないかって思ったりして・・・」
「ミリィ・・・」

「ありがとう、少し落ち着いたわ」
「そうか、良かったな」
「じゃあ戻るわね」
「ああ」
あのあとも数分間抱き合っていたフレイとカガリ。
これで少しは気分が落ち着いたようだ。

「・・・・・・」
キラ・・・無意識に貴方を拒絶していまった、貴方の手を振り払ってしまった、つい頭にミリアリアのことがよぎってしまって・・・変な誤解招いてしまったかしら。
「キラ・・・?」
いない、キラが部屋にいない・・・一体どこに・・・?怒ったかな・・・?キラ・・・誤解させてしまったのならごめんなさい、貴方のこと私大好きよ・・・。

199過去の傷・作者:2004/03/30(火) 22:22
>>翼たち
ナタルさん、やはりこういうのは苦手ですか、それにしてもナタルさんの発言に笑いを堪えてます、すいません。
>>ザフト・赤毛の捕囚
な、なんなんだこの子は!?おいおい、フレイ様困惑ぎみ、それにしても一瞬シホちゃんかなと思ってしまいました、この子の正体は一体!?年齢的にはフレイ様と変わらないんですよね・・・。

200流離う翼たち・444:2004/03/30(火) 22:32
 なにやら目を瞬かせていたキースは、袖でごしごしと目をこすり、もう一度ナタルを見てもう一度驚いた。

「え、これは、私服? スカート? 可愛い? 何で?」
「大尉、落ち着いてください。言ってる事が支離滅裂です」

 ナタルに落ち着けといわれてようやく我に返ったキースは小さく頭を振り、何とか吃驚仰天状態を脱する事が出来た。

「バ、バジルール中尉・・・・・・じゃなかった、大尉、何でここに?」
「艦の状況を確かめに来たのですが、大尉を見つけましたので。こんな所で釣りですか?」
「ああ、ここ暫くドタバタしてて忙しかったからな。たまにはこうのんびりして、平和ってのを実感したいのさ」
「大尉は、戦うのが嫌いなのですか?」
「まあ、あんまり好きじゃないな。元ブルコスで色々と悪い事もしてきたが、人を殺すのは余り良い気のするもんじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「と言っても、俺は元々復讐で軍に入ったからな。最初は殺しまくって悔やむどころか清々してた。正気に戻った頃には殺しても何も感じなくなってた。人間の感性なんて、毎日やってりゃどんな事でも慣れちまうもんだな」

 口調は軽いが、それが持つ意味は恐ろしいほどに深刻だ。殺す事に慣れ、死体を見ても何も感じない。それは歴戦の兵士ならば誰でも持つようになる当り前の特徴だ。だが、歴戦の兵士とは大別して二つに分かれる。大半は誰が死んでも自分だけは生き残ろうという生への執着を見せる。だが、ごく稀に磨耗し尽くした神経の負担からか、自分の命さえ軽く感じてしまう者である。
 ナタルはまだ死体を見た事が余り無い。宇宙軍での戦闘は死者を見ることがほとんど無いからだ。仲間が死体となっている時には大抵自分もすぐに死んでしまうので、乗艦が沈むか生き残るか、これが運命の分かれ道となる。加えて艦で指揮をとるだけの身だから人を殺しているという実感も余り無い。キースのように殺すのに慣れるなどという状況には遙かに遠かった。

「・・・・・・私には分かりません。殺すのに慣れるというのは」
「ああ、分からない方が良い。俺みたいになっちまうからな」

 キースは新しいタバコに火を付けて煙を吐き出した。

「大尉だって嫌でしょう。平和な、硝煙の匂いと戦場の緊張感が無い世界に居ると、違和感を覚えるなんてのは」
「違和感、ですか?」
「そう、違和感。何て言うのかなあ、ここが自分の居場所じゃないって言うか、落ち着かないんだな。まあ、そんな事言っても戦場に戻ればまた平和が恋しくなるんだが」

 煙草を吹かせながら釣りをするキース。その背中が妙に人を寄せ付けない重さを見せていたのはそのせいだったのかと理解し、ナタルは不謹慎にも小さく頷いてしまった。しかし、なんで平和を実感するのに釣りなのだろうか。
 何となく話題が無くなってしまったナタルは、立っているだけなのも疲れるのでキースが脇に置いていたクーラーボックスを引っ張ってきてそれに腰掛けた。キース本人は堤防に直に腰を降ろしている。

「うん・・・・・・」

 気持ち良い潮風に吹かれながらナタルは両手を挙げて背を伸ばした。海に来たのは初めてではないが、こんなに何の意味も無く、ただぼんやりとそこに居るだけというのは初めてだ。堤防にうちつける波の音が立てる単調なリズムも妙に心地良いものに聞こえてしまう。
 うなじを流れていく風に表情を緩めたナタルは、子供の頃以来になる無意味な時間を満喫していた。

201流離う翼たち・作者:2004/03/30(火) 22:42
>> ザフト・赤毛の虜囚
何者ですか、この怪しさ大爆発なキャラはw?
とりあえずフレイ様、頼る相手は選んだ方が良い

>> 過去の傷
キラ君、キサカさんじゃありませんが、いいかげんに学びなさい
姉弟揃って経験を生かしてないじゃないですか
フレイ様、このままだとサスペンスドラマのノリでナイフを手にする日が来るかも

202ザフト・赤毛の虜囚 39:2004/03/31(水) 00:02
7.幼子(おさなご) 6/8
[キラはコーディネータよ]

ミコトという女性兵士に抱きつかれて戸惑う私。その時、大きな声がかかった。

「こらあ、ミコトぉぉ〜!!」
聞き覚えのある声、あのイザークという兵士の声だ。

「こら、ミコト! クルーゼ隊長の部屋で何をしている」
「アタシ、クルーゼ隊長に言われたんだもの」

「ん? その女は?」
「イザークお兄ちゃん、アタシのママだよ」

「また、それか。ママを探してだの、いいかげんにしろ! さっさと行け!」
「イザークお兄ちゃんの意地悪。パパが見つかったら、また叱ってもらうから」

「さっきから、何を言っている。まったく……」

ミコトという子は、渋々、私から離れて去って行った。取り残された私に、
イザークという兵士は、イライラした目つきを向ける。

「貴様は何だ?」
「え……」

「クルーゼ隊長の部屋に居付いて。貴様、連合の捕虜だろ。なぜ独房に入れられない?」
「知らない……」
私はポツリと呟く。自分だって不思議だ。私にはそれしか言えなかった。

「まったく!」 イザークは頭をくしゃくしゃとかきむしった。そして、思い出したように、私に言った。

「お前、『足つき』のことを知っているか?」
「『足つき』?」

「連合軍戦艦アークエンジェルのことだ」
「私の艦……」

「何、貴様、『足つき』に乗っていたのか。なら、ストライクはどうなった。アスランが
 撃ったと言っていたが、どうなったんだ。パイロットはどんなやつだ?」
「キラ……」

私は、また涙を浮かべた。止められなかった。泣き虫フレイ。私は、相変わらずダメだ。
キラの死を受け入れたけど、人から言われると、悲しみが再燃してくる。

「おい、どうした? キラって、なにもんだ」
「キラ…… キラ・ヤマト。モビルスーツのパイロット。私のキラ……」

「まさか、貴様、ストライクの……、キラってやつの恋人か?」

私は、コクリと首を縦に振る。私の目から涙が零れ落ちる。
「もういないの…… 燃えて、いなくなってしまったの……」

「そうか、亡くなったのか」
「私が死なせたの。友達と戦わせるように仕向けて…… それを、謝ることもできなくて……」

「なんだと? 何を言っている。ストライクはアスランが…… 友達? 友達って何だ」

ザフトにキラの友達がいる…… 私の復讐のきっかけとなった、立ち聞きしたサイの話。
そして、その友達の名。それも私は知っている。キラがMIAになる前の和解の時に聞かされた名。
そして、私の腰痛の時に聞いたキラの昔話。月の幼年学校の友達の名。私は、それを思い出し、結びつけていた。

「アスラン、そう、アスランって言ってた。友達だって。私、キラをそそのかして、
 その友達と戦わせるようにして…… それでキラは……」

「アスランと友達だと!? アスランは宇宙生まれの生粋のコーディネータだぞ。ナチュラルと友達なぞ」
「キラはコーディネータよ!」

イザークは驚いて顔をこわばらせた。顔に斜めに走る傷痕が苦痛にゆがんでいるようにも見えた。
そして、しばらくの逡巡の後、イザークは私に言った。

「なんだと…… なんだと! なら、コーディネータとナチュラルの貴様が恋人なぞ、おかしいぞ!」

「おかしくなんかないわ! キラがコーディネータでも、私は、もうどうでも良かった。
 最初コーディネータは嫌いだったけど、いつの間にか、そんなこと忘れてた。
 コーディネータとナチュラルでも、私とキラは分かり合った。キラと心が繋がった」
まくしたてるように話す私の言葉にいつしかイザークは言葉少なになっていた。

「そうなのか?…… それで、なぜ戦わせるなど」

イザークという兵士は、本気で混乱しているようだった。でも、私だって混乱している。
それほど、私とキラとの関係は複雑だったのだ。

「私はキラと分かり合えた。でも、遅かったの。分かり合った時には、もう……
 間違った関係だと思っていたのに、間違っていないと分かった時には、もうキラは還って来なかった。
 謝りたかったのに謝ることもできなかった。こんなのってある? 私、どうすればいいのよ!」

声を上げて泣き出した私に、イザークは何も言わず、戸惑うように見つめているだけだった。

203ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/31(水) 00:06
フレイのイザークへのキラ・コーディネータ宣言でした。本当は、この話はミリィのディアッカへの話と
コンボで同時に投下する予定でしたが、あえなくボツ企画となりました。現在、2つは作内時間では、
一週間ほどミリィSSが先行しています。

>>過去の傷
キラもあれだけ迫られて、逆にミリィのことが気にかかるようになっている? フレイ様どうする?
それはそれとして、このホワイト・シンフォニーでの話っぽいラクスの台詞結構好きです。
私的には、この回のラクスが最高でした。フィギュアも今度出るので期待。もち、フレイ様とミリィも。

>>流離う翼たち
緩やかに流れる時間、しみじみしてますな。キースの発言は恐いものがありますけど。
でも、ナタルは、これでキースへ一歩ステップアップ。

204過去の傷・95:2004/03/31(水) 22:15
「アスランさんのような美形もいいけどキラさんのような可愛い子もいいわよね〜」
「ね〜♪ところでそのキラさんの彼女って?でもショック・・・私もあの子狙ってたのに」
「アサギも!?そうなんだ、ええと・・・カガリ様に教えてもらったんだけどね、名前がフレイ・アルスタ−・・・悔しいけど可愛いわよ、すっごい美人、あの燃えるような赤い髪が綺麗なの・・・」
「そう、でもまあ私も彼氏欲しいし・・・奪っちゃおうかな」
「私も同じ気持ち」
「そう、ところでジュリは?」
「サイさんの部屋にいるよ」

僕はなんでこんなところに来てしまったんだろう・・・昨日はあんなにミリィを非難してたのに・・・ミリィに呼ばれたから?いや・・・今日フレイに手を振り払われたから?そうかもしれない・・・。
「ミリィ・・・」
「私・・・馬鹿なことしたかな・・・私才能ないのかな?あの子より・・・フレイよりずっと戦場見てきたのに・・・結局なにも出来ないのね」
私あの子に負けたの?悔しい・・・悔しい・・・悔しい・・・。
「キラどうしたの?暗いね」
「え・・・?いやなんでもないよ」
「話してみて・・・キラがそんな表情のときは隠し事してるときなんだから」
迷った・・・話すべきか・・・。
「あのさ・・・さっき・・・フレイが暗そうにしてたから励まそうと思って肩に手を触れたら振り払われた・・・やめてって・・・」
私はこれはチャンスだと思った。
「そう・・・キラの気持ちよく分かるわ」
「え?」
「私思うんだけどフレイ本気じゃないのよ」
ト−ルはもう帰ってこない・・・だから・・・。
「あの子まだいまでもキラを利用するつもりなんじゃないかしら?」
私は無我夢中だった・・・。
「そんな・・・フレイはもうそんな子じゃないよ」
「分かんないわよ、だいたいほんとにキラのこと好きなら拒絶したりしないわよ」
いいわ・・・この調子よ・・・なんとしてもこの二人を引き裂いてキラを手に入れないと・・・ト−ルの代わりになってもらうわ・・・結婚してもらうわよキラ・・・そのためなら私の唇くらいやるわよ何度でも・・・そして私の体も・・・。
「現実を受け入れなきゃいけないわよね、ト−ルはもう死んだのよね・・・もう・・・」
「ミリィ・・・」
このときばかりは自然と涙が出てきたことには私自身も驚いた、そしてついに耐えられなくなって声を出して泣いた、そしてキラに私は抱きついた・・・。

キラ自身もミリアリアも突き放す気にはなれなかった、キラの胸で泣いている彼女を見るととてもそんなことは出来ない。

その数分後。
「ミリィ落ち着いた?」
「ええ・・・もう・・・ありがとう・・・」
「そう、よかった」
「そうよね、ト−ルはもう死んだんだから」
「ミリィ・・・うう!!!」
そんな時、キラにあの悪夢がよぎった、ト−ルの・・・あの悪夢が・・・。
「キラ・・・」
「僕は・・・ト−ルを・・・君の恋人を・・・守れなかった!!!僕には力があるのに・・・うう!!!」
ミリィの胸でキラは泣き出した、精一杯泣いた。
キラが泣いている・・・こんなとき私は・・・私はこういうのは苦手だ・・・フレイなどは得意かもしれないけど・・・泣きつかれたりされるのは苦手・・・でも・・・こういうとき私は。
「キラ・・・もういいの・・・もういいから」
キラが驚いたように顔を上げる。
「泣かないで・・・もういいから」
そう言うと私はキラを抱きしめキスをした。
じっくりと唇を押しつけた、もうどうなってもいいと思った、キラからも唇を押し付けてきた。

まだキラが帰ってこない・・・一体どこにいるのだろうか・・・。
いまどこでなにをしているのだろうか・・・!
「まさか・・・」
私は部屋を出た。

205流離う翼たち・445:2004/03/31(水) 23:17
「・・・・・・しかし、釣れませんね」
「そうだなあ、釣り糸を垂れて1時間、アタリはあるんだが中々のってくれない。餌だけ取られていく」

 些か寂しそうに答えるキース。ナタルは何となく好奇心が湧いてしまい、キースに頼んでみた。

「あの、大尉。私にも釣らせて貰えませんか?」
「良いけど、釣った事あるの?」
「いえ、無いので一度やってみたいんです」
「なるほど、そういう事か」

 キースはなるほどと頷くと、釣竿をナタルに渡した。

「まあ、そう簡単には釣れないだろうけどな」
「そうでしょうね」

 どこか憮然と負け惜しみのような事を口走るキースに、ナタルはクスクスと噛み殺した笑いを漏らした。それを見てキースがますます憮然としてしまうのだが、形勢が不利なので何も言い返せない。
 その時、いきなりナタルの持っている竿の竿先が下へと強く引っ張られた。

「あ、これがアタリ、というものでしょうか?」

 少し驚きながら竿を上に上げると、いきなりガツンと一気に下に引っ張られた。いきなりの事に驚いたナタルは慌てて竿を立て、キースは口に含んでいたウィスキーを噴出して驚愕している。

「馬鹿な、ビギナーズラックだと!?」
「た、大尉、驚いてないで!」
「しかも何だよこの引きの強さは。大物じゃねえか!」

 これまでの俺は何だったんだあ、とばかりに頭を抱えて苦悩するキース。ナタルは強烈な引きに何時もの冷静さを失い、半ばパニックを起こしかけていた。

「キ、キース、助けてくださいい!!」
「あ、そ、そうだった。その竿高いんだから手を放すなよ!」
「そんな事言われても――――!!」

 必死に竿を立てるナタルの腰を掴んでグイっと堤防に引き寄せるキース。だが、相手は一体なんなのか、キースをして驚くほどの力強さで2人を海に引き摺り込もうとしている。

「た、大尉、これが噂の鯛なのでしょうか!?」
「いや、たとえ磯の石鯛でもこんなにパワフルじゃない!」
「では、マグロでしょうか!?」
「可能性は否定しないぞ!」

 なにやら戦闘中以上の必死さで魚と格闘する2人。遠くから2人をニヤニヤ見ている視線にも気付かず、頑張って魚を釣り上げようとしていた。

206流離う翼たち・作者:2004/03/31(水) 23:24
>> ザフト・赤毛の虜囚
イザーク、このスレでは真人間というのが多いですね。
しかし、お兄ちゃんですか。イザーク、苦労してそうですな・・・・・・

>> 過去の傷
ミリィがどんどん怖いキャラに。キラはどんどんヘタレに
何気にアサギとマユラが可哀想だったw

207ザフト・赤毛の虜囚 40:2004/04/01(木) 01:26
7.幼子(おさなご) 7/8
[ミコト〜 ママはじめまして]

アタシ、ミコト・ヒイラギ。14歳。
アタシはクルーゼ隊の一人。モビルスーツに乗っている。赤い服を着て、みんなえらいと言ってくれる。
でも、アタシさびしい。小さい時、気づいたらひとりぼっちだった。パパもママもいなかった。
他の人はみんなパパ・ママがいるのに、なんで、アタシだけひとりぼっちなの。変だよ。

でも、今日やっとママを見つけた。クルーゼ隊長の部屋にいた、お姉ちゃん。
あれは間違いなく、アタシのママだ。アタシ分かる。見たとたん、ドキドキしたもの。
抱きついた時の暖かさも思い描いていたママのもの。あれが、ママだ。

ママはじめまして。ミコトです。アタシ、いい子にしてたよ。
これから、ずっといっしょだね。

アタシ、ミコト・ヒイラギ。でも、ほんとはヒイラギじゃない。ほんとのほんとはヒビキ。ミコト・ヒビキ。
アタシの先生がヒビキじゃ無いほうがいいって言った。それでヒイラギになった。でも、
ほんとはヒビキの方が好き。ミコト・ヒビキ。ママもこっちの方がいいと思うでしょ。

ねえ、ママ。今度はパパのこと教えてね。パパもいるよね。
アラスカでモビルスーツに乗っていた時、声がしてた。無線で聞こえてきた。
みんな逃げろって言ってた声、あれがパパだよね。ねえ、ママ、そうだよね。
アタシ、パパの言うこと、すぐ分かったよ。だから、みんなにも逃げようって言ったよ。

声がする前、イザークお兄ちゃん、パパにつっかかって行ったけど、パパにはぜんぜんかなわない。
だけど、パパ、イザークお兄ちゃんを殺さずに、ミコトのところへ落としてくれた。だから、
アタシ、ちゃんと拾ったよ。それでパパの言う通りいっしょに逃げたよ。

後で、みんな逃げて良かったって言ってた。パパの言うこと間違ってない。
パパ、アタシのこと思ってくれてるんだ。

ねえ、ママ。いつか、パパを連れてきてね。いっしょにプラントの公園散歩しよう。
とっても気持ちいいよ。そんでパーティしよう。イザークお兄ちゃんも呼んで、
みんなでやろう。

アタシの約束。後で指きりげんまんしよう。ね、ママ。

208ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/01(木) 01:27
>>過去の傷
地文のミリィの心情が結構恐い。でも、互いに涙を流し合って……
キラに泣かれて戸惑うミリィの心境の辺は新鮮でした。
って、ええい、そんな場合じゃないフレイ様、急げ!

>>流離う翼たち
釣りというと三平君しか知らない私、これから外道のウツボでも釣り上げるのでしょうか?
いずれにしろ、ナタルはキースとスキンシップできて、おいしい展開?

209私の想いが名無しを守るわ:2004/04/01(木) 03:21
>>赤毛の虜囚
なんと、あのディンパイロット?
できるな!!この娘。

210The Last War・15:2004/04/01(木) 22:10
「どんな手品を使ったかは知らんが・・・」
「・・・・・・」
「・・・不愉快だな・・・!!」

 乗機を傷付けられた怒りか、それともアスランの変化に気がついたのか、アレクセイの表情が次第に険しくなり始めていた。
 S.ジャスティスから距離を置くと、彼は再びアイオーンに攻撃を命じた。その命に従い、無数のアイオーンが変則的な動きで迫ってきた。この予測不能な動きこそ、ドラグーン、有線式ガンバレルといった誘導端末兵器の醍醐味であり、並のパイロットではこれに対応することが出来ず、為す術無く撃墜されてしまう。
 しかし、この時のアスランはその例外であった。

(・・・上から3、下から2・・・、正面から4、か・・・)

 恐ろしいまでの冷静な判断力で、彼は自分に向かって来る全てのアイオーンの動きを把握すると、瞬時にその攻撃パターンを読みに掛かった。そして攻撃が開始されると同時に、S.ジャスティスが動いた。
 機体を加速させ正面からの砲撃を回避した後、続け様に上下から攻撃が加えられる。そのうちの一つはS.ジャスティスを捉えており、そのまま行けば直撃するコース上にあった。

(終わりだな・・・!)

 だが、アスランは手にしていたビームサーベルでそれを受け止め、無効化した。

「何・・・?」

 思わず驚嘆の声が漏れた。その後何も無かったかのように、アスランはS.ジャスティスの両肩に搭載されたビームブーメランを手に取り、それらを大振りのモーションから前方のアイオーンに向けて投擲した。それに反応したアイオーンがそれぞれ回避行動を取った為に、フォーメーションが崩れそこに僅かな一点の隙間が生じた。それを見逃すことなく、アスランは即座に機体を突進させ、包囲網を突破した。
 アイオーンを振り切ったS.ジャスティスは、その勢いで再びアプカリプス目掛け一気に詰め寄ってきた。その姿をモニターから目視しながら、アレクセイはそこから放たれる強烈な威圧感を機体越しに肌で感じているような感覚に襲われた。強いて何かに例えるのなら、それはまるで狼に喉笛を狙われているような感覚だった。

(ここまで純粋な殺意を向けられたのは初めてだ。こうなると、心地良くさえ感じる。それに、あの動きは・・・)

 アスランの戦闘能力はすでに常軌を逸脱したものと化していた。それについては、アスランがコーディネイターであることや、SEEDを持つ者であることなどでは、最早説明がつかなかった。

(・・・『人』を捨て、修羅にでもなったか、アスラン・ザラ?そうなると・・・)

 先ほどから動きを見せないキラのネオストライクを一瞥し、アレクセイは嘲笑を浮かべた。

(・・・この場に、人間はいないな・・・)

 キラとアスラン、そして自分自身を揶揄すると、彼は迫り来るS.ジャスティスを迎え撃った。

211The Last War・作者:2004/04/01(木) 22:36
 この頃忙しかったので随分間が空いてしまいました。アスランが暴走していますが、次回は番外編として彼に何が起こったのか、そしてキラがその間に何を思っていたか、それぞれの視点からの語りになります。

》赤毛の虜囚
 ミコトちゃん、何だかインパクトのあるキャラですね。何やらプルやロザミィを思い出しました。しかしキラとフレイ様が両親だとか、ヒビキという姓を持つやら謎が多いですね。これからの活躍に期待させて頂きます。

》流離う翼たち
 キース大尉やナタルさんの意外な一面が見れました。この二人お似合いですね。結局魚は釣れたんでしょうか?何だか二人して海に落ちちゃってそうですがw。

》過去の傷
 キラ、また相手のペースでズルズルと引きこまれてますね・・・。まさか今度はフレイ様VSミリィですか!?前以上の修羅場と化しそうです。
 あと最近WやXの面々の出番がありませんが、どうしているんでしょうか?

》ヘリオポリス
 久々に本編を振り返れたようで懐かしかったです。こうしてみると序盤から色々ありましたね。続編をお待ちしています。

212過去の傷・96:2004/04/01(木) 22:55
「あの・・・キラは?」
赤い髪の青年、マ−チン・ダコスタにフレイは聞いた。
「彼は見ませんでしたね」
「・・・・・・」
フレイは無言でダコスタに頭を下げるとブリッジを出た。

一体どこにキラはいるのだろうか・・・。
「フリ−ダムの整備でもしてるのかな」
いえ違うわね、こんな時間に・・・。
やっぱりサイの部屋かな?
私はサイの部屋に歩き出していた。

「サイ、いる?・・・!」
サイの部屋に入った私は・・・サイの隣にピンクのメガネをかけた女の子がいた、年齢的には私と同じで16くらいだろう、でもこんな子見たことない・・・こんな子いたかな?でも二人の様子は恋人同士という感じだった、それにこの子結構可愛い。
「お邪魔みたいね」
「・・・ごめん・・・ちょっといま話が盛り上がってるところなんだ、だから悪いけど・・・」
「・・・でもサイ、それにその子誰?」
サイはため息をつくと私に言った。
「君には関係ないだろ、もう俺達はなんの関係もないんだから教える義理はないね、分かったら黙って出てって」
「分かったわよ」
「・・・さ、話の続きしようか」
私に対するときとは態度があきらかに違った・・・でももう無視してサイの部屋を出た。
仕方なく私は部屋に戻ることにした。

一時間後のミリアリアの部屋では。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ベッドから出たキラは脱いでた軍服を着た。
シ−ツの中からミリアリアがキラを覗き込む。
「帰るの・・・?そうよね・・・フレイが・・・」
「・・・うん、そろそろ行くよ・・・ほらあんまり遅いとフレイに怪しまれるから」
「ねえ、明日は?フレイは・・・」
「明日も来れるよ、いや必ず来るよ、フレイの実戦練習はカガリに任せてあるんだ・・・ミリィ・・・じゃあおやすみ・・・それにしても君をこういう関係になるなんて思わなかったよ・・・」
そう言うとキラは部屋を出た。
「・・・・・・」
そう・・・キラと寝た、私はキラと寝た・・・キラに私の全てを奉げた・・・初めてだった、キラを慰めるつもりで私はキラと長いキスをした・・・そして・・・私からベッドに誘った・・・キラは応じてくれた、キラに抱かれたことに私は後悔していないわ、いえそれどころか私は満足してるわ。
キラ・・・あの時イ−ジスをもっと早く倒していればト−ルは死なずにすんだわ・・・キラ・・・私と絶対結婚してもらうわ・・・それがキラの私に対するせめてもの責任よ・・・ト−ルの代わりになってね・・・じゃなきゃ許さない・・・絶対私と結婚せてもらうわ、私はあの女とは違う、フレイのように戦争の道具として利用しようなんて考えてないわ・・・でも・・・私を抱いたからには結婚してよね・・・結婚して・・・。
そして呟いた。
「キラ・・・結婚してよね・・・結婚・・・」
私はキラと寝たわ・・・これでキラは私の虜よ・・・。
「ははは・・・ははは・・・」
私は笑った・・・頬に涙が溢れているのにも気付かないくらい・・・キラは私の虜よ・・・キラに抱かれることくらいなんとも思わなかった、だって私達夫婦になるんだから・・・それに・・・。

213過去の傷・作者:2004/04/01(木) 23:06
>>ザフト・赤毛の捕囚
ミコトちゃん・・・たいかにプルやロザミィに感じが似てますね、イザ−クも大変そうで、でも彼の以外な一面を見れた気がします。
>>翼たち
ナタルさん頑張ってますね、それよりこの大物は一体?二人とも海にダイビングですか?遠くから見てるのはマリュ−さん?それとも・・・
>>The Last War
アスランが覚醒してますな、カミ−ユみたいだ、この場に人間はいない、ある意味怖いですね。
アスランはアストレイを倒すことができるのか?そして自分は?

214流離う翼たち・446:2004/04/01(木) 23:16
 2人の珍妙な釣りを、停泊しているパワーのウィングから眺めながらアルフレットは大笑いしていた。

「だあっはっはっはっは、キースの奴、今までに見たこともねえような焦った顔してやがる!」
「・・・・・・おっさんよお、流石に覗きは情けなくねえか?」

 呆れたように肩を落として忠告するオルガだったが、アルフレットにはかすり傷も与えられなかったようだ。それどころかアルフレットはいかつい顔にふてぶてしい笑みを浮かべて詰め寄ってくる。

「何言ってやがるオルガ、他人の色恋沙汰なんてのは最高の笑い話じゃねえか。これを楽しまねえで何を楽しむ!?」
「力説するなよな」
「たく、若いくせに枯れてるなあ、お前」
「うるせえ、馬鹿なこと言ってるんじゃねえよ!」

 枯れてる、といわれたのが余程気に障ったのか、オルガは殺気さえ込めてアルフレットを睨み付けたが、それくらいで恐れ入るようなアルフレットではなかった。

「へっ、なら吼えるだけじゃなく、実践してみな」
「な、なにをだ?」
「基地の女の子を引っ掛けて遊びにでも行って来いって言ってるんだよ。面は悪くねえんだし、ガラの悪ささえ何とかすれば結構もてるぞ」
「余計なお世話だ!」

 アルフレットを怒鳴りつけると、オルガは「付き合ってられるか」と言って艦の中に引っ込んでしまう。

「何処に行くんだ?」
「MSの整備だよ!」

アルフレットの問いに叩きつけるように返してオルガは視界から消え去った。それを面白そうな顔で見送ったアルフレットは、やれやれとウィングの手摺に背中を預け、空を流れていく雲に視線を移した。

「余計なお世話だ、か。まあ、少しは成長したって辺りかな」

 オルガは気付いていないのだろう。昔のオルガは話しかけても一言も口を聞かず、全てに興味を持たない男だった。やる事が無ければ一日中寝るか文庫本を読むという奇妙な生活をし、艦のクルーとは決して交わろうとはしなかった。いや、クルーに興味を持っていなかったのだ。
 それが、今では自分のMSの整備をするようになり、整備兵などの僅かな範囲ではあるが言葉を交わすようになった。自分を嫌う素振りは見せているが、こうして話に付き合っているのだから面白い。

「似てるよなあ、お前とあいつは」

 言われれば2人ともそれを激しく否定するだろうが、アルフレットから見れば2人は実に良く似ていた。今、視線の先にある堤防で必死に竿と格闘している男も、昔はああして俺に逆らっていたものだった。今では良い思い出話だが、あの頃には血で血を洗う殴り合いさえした事があるのだ。まあ、その時の経験が今に生かされ、手より先にスタンガンや模擬弾を込めた銃が出るようになったのだが。
 なんとなくオルガがキースの被害者のような気もするが、まあそれはどうでも良い事なので無視する。

「まあ、後はお前に任せた方が良いかもな。俺よりお前の方があいつを分かってやれるだろ。何しろ同類なんだからよ」

 呟くアルフレットの見ている前で、魚とのバトルに敗れた2人の体が堤防の上から海に向けて仲良くダイブしていた。

215流離う翼たち・作者:2004/04/01(木) 23:27
>> ザフト・赤毛の虜囚
赤服、この性格で赤服!? イザークのプライドがどんどん安っぽく思えてきましたw
しかし、ヒビキですか。しかもコーディ。まさか、メルデルさんのお子さんですか?

>> The Last War
アスランがバーサクしてる。アレクセイさんがビビるとは
キラは何処で何をしている?

>> 過去の傷
サイ君、完全に自分の世界を作ってますね
しかしキラ君、今の君の立場は非常に危険だ。連続の浮気はいけない
ところでティファはいつ出るのでしょう?

216私の想いが名無しを守るわ:2004/04/02(金) 01:54
>>流離う翼たち
オルガの描写いいですね。こういう普通のリアクション
を他の二人と違ってオルガには期待してしまいます。
>>過去の傷
もはやキラは光源氏のように寝室を渡り歩いて物語作って
いってますね。しかし本編の台詞が巧く当てはまってますね。
>>The Last War
アスランの修羅覚醒?には興味ありますね。ビームサーベル
で止めちゃうのはすごいですね。あとはキラの次の一手でしょうか。
>>ザフト・赤毛の虜囚
イザークがフレイ様の話に耳を傾ける場面はダムAの漫画みたい
な乱暴者モードを、この時期、脱していたと思うので違和感なく読めました。
>>ヘリオポリス・1.24〜
フレイ様のキラ分析は結構当たっているかも。「キラはいつ帰って
くるんだろう?」←フレイ様の本音かどうかわかりませんが面白いです。
>> 散った花、実る果実
リスティアも少しずつフレイ様の話を受け入れているようですね。逆に
クルーゼはフレイ様とガチで向き合わない分、言葉に嘘っぽさが充満してますね。
>>キラ♀
タカツキの小悪党っぷりが最高でした。エロ台詞がHビデオみたいで
シチュエーションに酔ってますね。しかし最後のフレイ様とキラの心境
の変化はそれまでのタカツキへの関心をふきとばすくらい興味津々です。

217ザフト・赤毛の虜囚 41:2004/04/02(金) 02:31
7.幼子(おさなご) 8/8
[ママ、ミコト悪いことしたの?]

私は、クルーゼの部屋に戻り、ベッドで一人泣いていた。イザークに話したキラのことで、
またキラへの悲しい想いが私を苦しめた。キラを継ぐ思いを受け入れながら、未だ何も
できない私を悲しんでいた。私は、またキラのメモリチップを出して握り締めた。
結局、くじけそうになる私。今、私は切実にメモリチップの中身が見たかった。
オーブで、キラと別れ、一人でくじけそうになっていた私を励ましたキラのメールを、
もう一度見たかった。そのためなら、何でもしようと思った。でも、今は、まだ、
何をすればいいのか分からなかった。

また、ドアのコール音が鳴った。さっきのミコトっていう子だろうか。
ドアを開けると、想像通りミコトが、はちきれそうに一杯の下着の束の入った袋をもって、
やはり一杯の笑顔を私に向けていた。

「ママ、下着いっぱい、いーっぱい持ってきた。それと、あったよナプキン」
「あ、ありがとう」

「それと、これに使ったの入れて。アタシ呼んでくれたら持って行くから」

私は、ナプキンと可愛い模様の入れ物を受け取って、思わず感謝した。
確かに、これで私はずいぶん助かる。さっきは、分からない素振りだったけど、
どうしたのだろう。

「本当に助かるわ。よく分かったわね」

それに、ミコトは嬉しそうに答える。

「えへ、ミコト、全然分からなかったの。それで、イザークお兄ちゃんに聞いたら、
 代わりにいろんな人に聞いて用意してくれた。イザークお兄ちゃんて親切だね」

「なんですって!!」
私は耳まで真っ赤になった。そして、怒鳴りつけていた。

「なんてこと話したのよ! 私を笑い物にする気! 人のこと捕虜だと思って見下してるんでしょ!!」
「ママどうしたの? なんで怒ったの?」

「私は、アンタのママなんかじゃ無いわ。そんな風に呼ばないでよ!」
「ママ、ミコト悪いことしたの? どこが悪かったの?」

「アンタなんか嫌いよ。とっとと、どっかへ行って!!」
「ママ、怒っちゃヤダ。怒っちゃヤダ」

泣きそうな顔で見つめるミコトを無視して、私はドアを閉めた。
まだ、呼んでいるらしいミコトの声がしばらくしていたけど、やがて、小さくなって
聞こえなくなった。

「なによ…… 泣きたいのは、こっちよ」

でも、ミコトの泣きそうな声が耳について、さすがに悪いことをしたような気がしていた。

しばらくして、ミコトのことで、キラへの悲しい想いを、少しの間は忘れられたことに気がついた。

218ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/02(金) 02:36
話は続いてますが、現在の章はこれで終わります。続いて短い次章に行きますが、その前に、
フレイSSの番外的な一編の第二段を挟みます。久々にヴィア先生に登場してもらい、
皆さんの疑問にお答えします。

>>The Last War
お待ちしてました。アスランの異常な戦闘能力の表現スゴイですね。
次のアスラン視点、キラ視点の話も期待してます。

>>過去の傷
キラやってしまいましたか。しかし、ミリィの「結婚」とフレイの「復讐」が同じことに見えるのはなぜ?
キラも後腐れ無くしないと…… って、それはそれで、ナイフ持ったミリィに追いかけられるのだろうけど……
サイもアレだし、フレイ様、男性不審になるのでは?

>>流離う翼たち
アルフレットさん登場。いい感じで忘れかけてました。恥ずかしい過去を暴くだけで無い、
印象が残りましたです。しかし、オルガは、このSSでは、どんどん人間ぽくなってますな。
それにしても戦いに破れた二人、ナタルがアタリをとった魚は、カジキだったのか、それともグラブロだったのか?

219ヘリオポリス・1.24〜:2004/04/02(金) 03:02
>>赤毛
イザーク、どんな顔したんだろう…
ところで彼女、例の萌え隊員ですか?本編では胸はなかったけど…

220過去の傷・97:2004/04/02(金) 21:45
「ただいま」
部屋に戻ったキラは・・・。
フレイはシ−ツを被っている、シ−ツの中から声が聞こえた。
「こんな遅くまでどこ行ってたのよ」
「え?・・・うん、ちょっと」
「ずっと探してたのよ!心配したんだから!」
フレイはシ−ツの中から出てくるとキラを叱りつけた。
「なんで勝手にどっかに行くわけ?私があんたの手を拒絶したから!?」
「・・・・・・」
キラは下を向いた・・・やっぱりそうなんだわ・・・それで・・・。
「馬鹿ねえ・・・なに誤解してるんだか・・・あれは違うのよ、ミリアリアのことが頭をよぎっちゃってついね」
ミリアリア・・・その名前にキラは反応してしまう。
ミリィ・・・僕は今日は彼女と寝た・・・それはなりゆきだった・・・ミリィは優しい、それなのにフレイはこういうふうにすぐ怒る・・・ミリィは優しい。
「そう・・・」
そう言うとキラは寝た。
このところフレイは僕に冷たい、やっぱりそうだミリィの言う通りだ僕のこと本気じゃないんだ、そうか・・・結局そうなんだ、フレイは。

次の日の朝。
「キラ・・・?」
朝起きたらキラがいない。
そうだ・・・今日は実戦だ。
「さあてと・・・ハッチに向かおうかしら」

「で、カガリ・・・アストレイ三機って?」
「ああ、つまりはだな・・・」
「「「カガリ様〜」」」
「お、来たなお前等!」
え・・・?この子達は・・・?まさか・・・。
「あの・・・カガリもしかして・・・」
「その通りだ、こいつ等が今日のお前の相手になる」
キラになれなれしくしているマユラとかいう女と昨日サイの部屋で見かけたメガネの女の子、それにもう一人の子も私と同じくらいの年齢ね。
「よしじゃあ私ブリッジに行ってるからな」
そう言うとカガリは出て行った。
「「「よろしくお願いします〜♪」」」
「・・・ふん」
私この子達なんだか好きになれない。
「あ・・・サイさん」
「邪魔しちゃ悪いか・・・私達は先行くね」
そう言うとアサギとマユラは奥に向かった。
「・・・サイ」
「やあ・・・今日実戦なんだって?」
サイはフレイは無視するように横を通り過ぎるとジュリに歩み寄った。
「はい」
「頑張ってね、あんまり無理しちゃ駄目だよ・・・いいね」
「はい、ありがとうございます、ジュリ頑張ります」(やっぱりサイさん優しい)
そう言うとジュリも二人の方に向かった。
残ったフレイとサイは・・・。
「あの・・・サイ」
「・・・なに」
「なに・・・ってその・・・私も出撃するの」
「そう」
そっけない態度を取るサイ。
「私がモビルス−ツに乗るのよ?」
「・・・そう・・・でも俺は君がモビルス−ツに乗っても乗らなくても関係ないし、興味もないから・・・じゃ」
そう言うとサイは去って行った。
さっきの子と私に対するときのあきらかな態度の違いに私は嫌悪感を覚えた。
サイ・・・そういえばキラは?なんで来てくれないの?

そのキラは・・・ミリアリアの部屋に来ていた。
「ミリィ、良かったね謹慎ラクスさんが軽くしてくれて」
「ええ」
キラ・・・貴方はフレイとは合わないわ、だから私が恋人になってあげる、そして結婚してあげる。
愛してあげる・・・ト−ルの代わりとしてね・・・結婚してあげる・・・きゃはは、一生離さないわ・・・死ぬまで貴方から離れないわよ私・・・。

221私の想いが名無しを守るわ:2004/04/02(金) 23:50
……。この話においてミリィのどこが優しいのか、
それはキラにしかわからないな。

222ザフト・赤毛の虜囚 42:2004/04/03(土) 03:19
番外 2
[ヴィアとミコト]

静かな時間の流れる病室、ひとつだけ置かれたベッド。そこで半身を起こして
外の景色を見る私。外の景色は明るく晴れ渡っている。しかし、その空は
人工的なもの。周期的に訪れる雨に、住んでいる人は、明日の天候に一喜一憂すること
さえなくなっている。いずれにしろ、ずっと病室にいる私には関係ない話だけど。

その時、病室のドアが開いて、年配の男が入って来た。

「ヴィア、その後、具合はどうかね?」
「大丈夫、変わりはありません。ヒイラギ博士」

ロナルド・ヒイラギ博士は、かつて、私がいた研究所の所長を務めたこともある人だ。

「研究所は、その後、どうなりました?」
「またバイオハザードがあってね、研究所は封鎖されている。今、コロニー・
 メンデル自体から退去命令が出て取り調べになっている」

「そうですか」
「君の家も、もう、どうなったのかも分からないな」

「いいんです。ユーレンは死んだから。もう、私もあそこに戻る必要はありません」

私の言葉にヒイラギ博士は辛そうな顔をした。
しばらく、沈黙が流れた。その後、ヒイラギ博士は独り言のように呟いた。

「あの双子は、その後、どうなったかな?」

私は、今だ双子と呼ばれることに顔を曇らせながらも、それに答えた。
「私のカガリは、カリダに任せたわ。私はカリダを信じてる」

地球のオーブに去ったカリダのことが思い出された。あの、いじらしいまでに、
かたくなな瞳が記憶に残っている。

「キラも一緒なのかな?」
ヒイラギ博士の問いに、私は無言で答える。そんなこと言うまでもないでしょ……

私は、もう一人の子供について想いを馳せる。

「あの女の子、どうなったかしら。ユーレンとメルの子」
「人工子宮で育成していたが、ユーレン・ヒビキ博士が亡くなられて、人工子宮の管理が
 うまくいかなくなって、かなり危ないところを、ようやく助かった」

「予定より長い間、子宮に入っていたみたいだけど大丈夫だったの?」
「正直、なにかの後遺症が残るのかもしれない。だが、それは今後のことだ。今は無事、
 成長しているよ」

「名前は?」
「まだ付けていない」

「私が付けていいですか?」
「頼むよ、父も母もいない子だ。君が付ければ浮かばれることだろう」

「ミコト……」
「ミコト?」

「東アジアの漢字で『命』と書いてミコト。あの女の子、ユーレンとメルから命を受け継いだのよ」
私は、想いを確かめるように言った。

「それにミコトは一人じゃないわ。兄妹。お兄さんがいる。それに、私のカガリも、ミコトの
 腹違いの姉よ。ミコトは決して一人じゃない。 …… そう、そうね、キラもね……」

「今は、離れてしまっているけど。そうだな。いつか出会えるかもしれないな」
「きっと出会えるわ」

「一度、ミコトを連れて来ようか?」
「今は、やめておいて。正直、素直な気持ちで、ミコトを抱けるかは分からない」

私は、悲しい気持ちで言葉を続ける。

「私、ユーレンもメルも許せないと思う。でも、二人とも、もう一度会いたくてたまらないの。
 また、仲良く話したいの。初めて出会った時のように。だから、私、こんなこと……」

また、涙が溢れてきていた。もう、涙も枯れたと思っていたのに。

「ヴィア、眠りなさい。君には休息が必要だ」
「はい、分かりました」

私は、ベッドに横になった。窓の天候は、いつのまにか曇り、雨が落ちそうにになっていた。
私がずっと見ている周期とは違う。けど、それが当たり前なのだ思った。
そんな予測できないところが天気というものなのだから。

「おやすみ、ヴィア」
ヒイラギ博士はドアの前で言った。私は言葉を返した。

「おやすみなさい」

223ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/03(土) 03:26
ミコトの正体に関しては、こんなところです。SS中のバイオハザードは公式年表とは別のもので、
まだコロニーの廃棄には至っていません。

ミコトの設定に関してはプルやロザミィは意識に無かったです。メルデルのストーリー上必要だった
キャラを、フレイの話相手として当てはめた結果出来上がりました。TVの萌え隊員はヘアスタイルなど
若干、意識にありましたが、その他の容姿は、設定上から、SSの描写のようになっています。

名前は、わざと某アニメのヒロインにダブらせましたが、まさか、アバレのラストでも出て来るとは……

>>過去の傷
すれ違いまっしぐらですね。ミリィも、いい感じで壊れてる……

224ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/03(土) 09:38
「ザフト・赤毛の虜囚 42」で誤解されそうな表現があったため下記の通り訂正します。
読み直しが足りませんでした。すんません。

>「キラも一緒なのかな?」
>ヒイラギ博士の問いに、私は無言で答える。そんなこと言うまでもないでしょ……

--->

>「キラも一緒なのかな?」
>ヒイラギ博士の問いに、私は醒めた心のまま無言で答える。そんなこと…… そんなこと
>言うまでもないでしょうよ……

225流離う翼たち・447:2004/04/03(土) 23:24
 その頃、フレイとカガリとミリィは家で軽い二日酔いに苦しんでいた。いや、正確にはカガリとミリィが苦しんでいた。

「ううう、頭が重い、気持ちも悪い」
「頭痛がする、艦長って化け物?」

 青い顔をしてソファーに伸びている2人に水を渡しながら、フレイは驚異的な酒量を見せたマリューに恐れを抱いていた。まさか、3人がかりで完全敗北間際まで追い込まれるとは。

「やるじゃない艦長、まさかこの私を潰す寸前まで追い込むなんて」
「フレイ、お前も十分化け物だ〜」

 ソファーから死にそうな声でツッコミを入れて来るカガリに、フレイは少しむっとしてしまった。両手を腰に当ててカガリの前に仁王立ちしている。

「ちょっとカガリ、誰が化け物よ!」
「フ、フレイ〜、大声出さないで〜」
「頭が、頭が割れる〜」

 苦しそうにうめき声を上げる2人。フレイはやれやれと呆れながらもこれからどうしたものかと思案を巡らせた。確か今日はあのアズラエルが3時ぐらいに迎えを寄越すと言っていた。ならばそろそろ来るのだろう。でも、この2人をこのまま置いて行くのもなんだか気が引けてしまう。

「ええと、2人とも、トールか誰か呼んでおこうか?」
「いや、それは困る・・・・・・」
「こんな格好、見せられない〜」

 言われてみて、改めてフレイは頭を抱えてしまった。下着だけのカガリに皺だらけのワンピースを着ただけのミリィ、確かに男どもには見せられない姿だ。いや、ミリィはトールになら構わないかもしれないが。

「確かにカガリは不味いわね。かと言って艦には他に頼めそうな女性はいないし」
「大丈夫だ〜、死んだりしないって」
「フレイは安心して行ってきなさい〜」

 フルフルと片手を上げて答える2人だが、その様子はフレイにはまるで墓場から蘇ろうとするゾンビのように見えた。

「そ、そうなの、頑張ってね。私はとりあえず制服に着替えてるから」
「おお、あの白い制服か」
「いいなあ、私も着たい〜」
「そのうち支給されるわよ」

 頭が痛い割には元気な2人を一瞥して、フレイは着替えをしに自分の部屋へと戻っていった。そこで支給されたばかりの連合士官制服に袖を通す。いくら洒落っ気のない軍服とはいえ、やはり真新しい服を着るのは楽しいものだ。しかも士官制服は見習い制服よりも見た目がカッコよく、少し大人になれた気がしてしまう。
 まあ、フラガやアルフレットが聞いたら「そんな事を言ってるうちは子供だよ」とか言われるのだろうが。
 鏡に向かい、くるりと回ってみる。うん、私は何を着ても似合う、と自画自賛してからようやく空しさに気付き、ちょっと気落ちするフレイだった。

226流離う翼たち・作者:2004/04/03(土) 23:35
>> ザフト・赤毛の虜囚
イ、イザークよ、一体どうやって集めたんだ? 何となく変な噂が立ちそう
しかし、ミコトが妙に精神年齢が低いのは後遺症のせいですか。脳障害でもでたのかな
しかし、障害者は直観力では正常者より優れている場合が多いと聞きますが、ミコトがママと言ったのはそのせい?
でも、何故にイザークがお兄ちゃん?

>> 過去の傷
相手は3人娘ですか。M1という時点で終わってる気も・・・・・・
しかし、これはミリィを危険と言うべきか、浮気者のキラを責めるべきか

227過去の傷・98:2004/04/04(日) 00:06
機体フリ−ダムに搭乗したフレイだが・・・。
キラ、なんで見に来てくれないの・・・?私達付き合ってるのよ、なのになんで?いろんなことをお互い経験した仲じゃない・・・。
(フレイさん、いまは戦闘に集中してください、もうすぐ練習始まりますよ)
(あ、ありがとうティファ)
<よし、じゃあ実戦開始だ!>
「相手はアストレイ三機、あの子達か・・・キラ・・・」

シ−ツの中から出て、ベッドに座る、キラも隣の座る。
「今日一日いてよね」
「分かってる」
キラにとっては昨日ミリアリアに慰めてもらったことは相当キラ自身救われたことだろう、そしてあのあとミリアリアと・・・フレイ以外の女の子と寝てしまった、関係を持ってしまった・・・。
「あのさ、ミリィ」
「なに?」
「その・・・ミリィはディアッカのこと、その」
「ああ、あいつね・・・あいつとはただの知り合いよ、まあ友達に近いかもしれないけどね」
ディアッカ・・・まさかあいつの名前が出てくるなんて・・・キラなにか勘違いしてる、私があいつに惚れてると思ってる、私とあいつが恋人に近い関係だと思ってる・・・違う!あいつとはただの知り合い・・・まあ悪い奴じゃないけど・・・最初の頃は知り合いにすらなりたいとは思わなかった、それどころか私あいつのこと殺そうとしたこともあった、でも・・・それからあいつのことが少しだけだけど分かってきた・・・でも恋愛感情なんて持ってない、いまでも。
「そう、ならいいんだ」
私はキラを抱きしめた、胸まで押し付ける、胸の膨らみをキラに感じさせる、そう・・・キラだ、私はキラと結婚するの・・・そう決めたの、キラには私が相応しい、フレイではキラを幸せには出来ない、そもそもいま私が一人なのは誰のせい?キラには私と付き合い結婚して私を幸せにする義務があるの、キラは私と一緒になるのよ、私がそう決めたの。
「フレイどうだった?」
「フレイ・・・フレイはすぐ怒るよ、でもミリィは優しい」
優しい?私が?・・・キラを慰めてよかった、キラと寝てよかった、そう・・・キラは私の虜になったのよ・・・。
「キラ・・・私ずっと貴方の側にいるわ」
「ありがとう」
「キラ、私フレイよりも貴方との付き合い長いわよ、そしてあの子より・・・フレイよりも貴方のこと知ってるつもりよ・・・」
そう、私はフレイよりキラとの付き合いは長いのだ、キラはフレイに密かに憧れていたというのはキラのフレイに対する反応を見てれば一目瞭然だった、でもキラはフレイをずっと遠くから見ていただけ、そうなのだ・・・私のほうがあの女よりキラとの付き合いは長いのだ。
「ミリィ・・・」
ミリアリアを見つめたキラは思った、今一度見たがこうしてみるとあまり気付かなかったがミリアリアは可愛い、ほんとに可愛い・・・こんな可愛い子が近くにいたなんて・・・フレイだけじゃない、ミリアリアも美少女だ。
「・・・・・・」
結婚・・・キラ、幸せにしてあげるわ・・・そのためならこんな私の唇なんて何回でもやるわ。
「キラこっち向いて・・・」
キラが私に顔を向けた、
「ミリ・・・」
私はキラの肩に両手を回すと唇に唇を強く押し付けた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
驚いていたキラだが、静かに瞳を閉じて自分も唇を押し付けた。
そうそれでいいのよ、これでいいの・・・。

228ザフト・赤毛の虜囚 43:2004/04/04(日) 14:48
8.歓喜 1/6
[この指、この力。これは、キラから貰ったもの]

私は、少し清潔になった。クルーゼの目を盗んで頻繁にシャワーを浴びるようにし、汚れた
下着も替えている。ミコトの持ってきてくれたものも使ってはみている。ただ、結局は、
下着をこまめに変えた方が良いみたいだ。やはりミコトが持ってきてくれた大量の下着が
役に立っている。これで、キラにも、パパにも恥ずかしくない。

でも、泣きそうな想いは変わらない。相変わらず、何も出来ない捕虜の私。キラを継ぐために
できることが何も無い。くじけそうな想いを励ましたい。キラのメモリチップの中身を見たい。
でも、見るためのパソコンが無い。

クルーゼは、自分のパソコンを常に持ち歩いていて、私には決して使わせなかった。
どうすれば、キラのメモリチップを見ることができるのだろう。

クルーゼは、今日は部屋で書類入れに一杯になった大量の書類を片づけている。時々、パソコンで
清書してプリンタで打ち出したりしている。でも、その量は膨大だ。それに、事あるごとに新しいものを
作って書類入れに積みなおしている。とても、終わりそうにない。クルーゼは、疲れているようだった。
時々、ため息をついている。クルーゼの部屋のベッドは、私が占領している。最近はソファで寝ているのを
見るのも希だ。いつ休んでいるのだろう。疲れるのも無理はない。

クルーゼがパソコンで書類を打ち込んでいる時、通信のコール音が鳴った。それと話した
クルーゼは、しばらくぶりに、私の方を向いて言った。

「フレイ・アルスター、私は用事で出て行くが、ちょっと頼まれてくれはしないだろうか」
「はい?」

「この書類を、清書して打ち込んでくれないか。急ぎの書類なのだよ。私が出ている間に
 少しでも進めておいてくれたまえ。ただし、パソコンの他のデータは見ないように。
 見ればログが残るようにしてある。もし、見たことが分かった時は、君は深海に放り出されることになる」
「はい、分かりました」

私は捕虜。抵抗の意思は見せても、抵抗しきれるものでは無い。クルーゼの脅しは嘘ではない。
私は従うことにした。

部屋を出て行ったクルーゼに変わって、机の椅子に座った私。これを使えば、キラのメモリチップを
見ることができる。誘惑が私を襲う。それに、私は耐え、書類に目を通し、パソコンのキーに手を
触れる。その途端、私の指は、私の意思を離れる。別人のもののように動きだす。
それに伴い、目の前の手書きの書類の文字は、私の意識から見えなくなり、指に直接つながったようになる。
それは、文字の羅列としてパソコンの画面に並んで行き、そして、その文字さえ、高速に流れて行き、
私には読み取ることができない。あれよあれよという間に一枚が終わり、書類をめくる。

私の、この指、この力。これは、キラから貰ったもの……

229ザフト・赤毛の虜囚 44:2004/04/04(日) 14:51
8.歓喜 2/6
[素晴らしい、素晴らしいよフレイ・アルスター]

さっき出て行ったクルーゼが、すぐに部屋に帰ってきた。あれから、5分と経っていない。

「フレイ・アルスター、済まないな。用事は必要なかった。やはり、その書類は、私がやる。
 まあ、まだ書き出しもしていないだろうが」
「いえ、終わりました」

私は、プリントアウトした書類を見せた。それは、10ページにも及んでいた。クルーゼは驚いて、
それに目を通した。

「ふむ、間違い無い。誤字も、すべて訂正されている」
クルーゼは関心したように声を出した。そして、別の書類を、私に渡した。

「この書類も清書してみてくれないか」
私は、それを書類台におくと、また、パソコンのキーに触れた。私の指が、再び踊り出す。
それを、クルーゼは信じられないように見つめていた。そして、私の手を止めさせた。

「ちょっと、止めてくれたまえ。今度は、私の話す言葉を打ち込んでみてくれないか」
「はい」

私は、クルーゼの意図も分からず、それに従う。

「ユーレン・ヒビキ、ヴィア・ヒビキ」
┌──────────────────────────
│ユーレン・ヒビキ、ヴィア・ヒビキ

「L4コロニー・メンデル、遺伝子研究所。彼らの研究成果は驚くべき内容だった……」
┌──────────────────────────────────────
│L4コロニー・メンデル、遺伝子研究所。彼らの研究成果は驚くべき内容だった

クルーゼの話す内容は、コンマ数秒の遅れで、パソコンのモニタに文字として並んで行く。
話す内容には、かなり専門的な内容も含まれているようだけど、ただ、聞いて、
その通り打ち込む分には、問題なかった。

クルーゼは言葉を切った。そして、はしゃいだように話し出した。

「素晴らしい、素晴らしいよフレイ・アルスター。まさか、君に、こんな才能があったとは。
 コーディネータなら、この程度のことができるものは珍しくないが、ナチュラルの、
 しかも君ができるとは思わなかった。君は、なんと素晴らしいのだ。
 少し待ってくれたまえ。君専用のノートパソコンを用意させよう。
 私の仕事を手伝ってくれたまえ。やってくれるね」

私に、ノートパソコンをくれる? ということは、キラのメモリチップを見ることができる。
私は迷うことなく答えた。
「はい、やります」

「君は、素晴らしい。ははは。待っていてくれたまえ。今、用意させよう」
クルーゼは、自分のノートパソコンを閉じると、持って部屋を出て行った。

私は、『素晴らしい』を連呼され、少し、くすぐったい思いで、それを見送った。
指だけでなく、私の心も躍っていた。

230ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/04(日) 14:55
フレイSS新章です。
ちなみにミコトは、最初フレイを、お姉ちゃんと呼んでいたように、親しみを持った少し年上の人は誰でも、
お兄ちゃん、お姉ちゃんと呼びます。おじちゃん、おばちゃんとの境目は不明。クルーゼは隊長がついているのでセーフ。
パパ・ママだけは血縁を嗅ぎ取る直感と言うことにさせてください。

>>流離う翼たち
フレイ様の肝臓は化け物か。マリューさんにも匹敵するとは……
とりあえず、TV本編より先に、フレイ様、グレーの連合仕官服に、お着替え。少尉だから肩章も
マークが入って、さらにカッコいいはず。それとも、ナタル専用と同じ黒かな?
そして、ミニとニーソから変わって、ストッキングに映える脚のラインとタイトスカートの腰回りで男共を悩殺?
でも、胸揺れは注意ね。しっかりしたブラをしましょう。

>>過去の傷
キラ、まったく、人の心の裏を読めないのだから。
ミリィもディアッカのこと、そんなこと言うなんて…… ディアッカが、この場にいれば違うのだろうけど。

231流離う翼たち・448:2004/04/04(日) 21:26
 暫くすると、アズラエルからのものと思われる迎えの車がやってきたので、フレイはそれに乗り込んでアズラエルの店とやらに向かった。黒塗りのリムジンという所がいささか怪しさを感じさせる上、完璧な防弾仕様車だったりするのが少し怖い。運転手曰く、「アサルトライフルでも弾けます」だそうだ。
 それを聞いたフレイは表情を引き攣らせたものだが、車は別に襲撃される事もなく無事に目的地に到着した。そこは、一見するとごく普通の小さな中華料理店であった。看板には『海燕』と書いてある。
 一瞬の躊躇の後、フレイはその扉をくぐった。中には自分達以外にも客がいるようだが、奥のテーブルについているアズラエルとノイマン、フラガが自分を見つけてくれた。

「フレイ、こっちだ」
「あ、ノイマン中尉」

 こういう状況では顔を知っている人がいるのは嬉しいものだ。フレイはトコトコと3人の所に来ると、アズラエルにぺこりと頭を下げてノイマンの隣に腰掛けた。そして、ふと視線を感じてそちらを見てみれば、何故かフラガがニヤニヤとこちらを見ていた。

「な、何ですか?」
「いや、馬子にも衣装だなっと思ってさ。なかなか似合うじゃないか」
「それって、褒めてるんですか?」

 馬子にも衣装ってのは余り褒め言葉にはならない。フレイの視線にフラガは右手を顔の前で振りながら悪い悪いと謝った。

「いや、別に悪気はないぞ。似合ってるのはマジだから。なあノイマン」
「ええ、そうですね。でもまだ制服に着られてますか」

 サラリと毒舌じみた事を言われ、フレイはちょっと気落ちしてしまった。まあ、服なんてものは着ていればそのうち板につくものだから、今はまだ仕方が無いのだが。
 それから少ししてやはり支給されたばかりの士官制服に身を包んだキラとトールがキースに引き摺られるようにして現れた。キラにしてみればブルーコスモスと食卓を囲むなんてのは御免こうむりたいだろうから嫌がって当然だろう。でもまあ、連合の士官である以上、我侭を通す事も出来ないのでキースが引っ張ってきたのだが。トールは単純にアズラエルが嫌いだからだったりする。
 そして最後にやってきたマリューとナタルが加わった事で、やっと面子が揃った事になる。だが、アズラエルは時計を見て少し渋い顔になった。

「悪いね。もう少し待ってくれるかな」
「まだ誰か来るのでしょうか?」
「ああ、僕の部下みたいな奴だけどね。今ここに来ているんで、ついでに声をかけておいたのさ。君達も会った事があるはずだよ」

 アズラエルに関係がある人物で自分達が会った事がある。そんな人が居ただろうかとフラガたちは考えただが、生憎とそんな人物は浮かんでこなかった。

232流離う翼たち・作者:2004/04/04(日) 21:38
>> 過去の傷
ミリィさん、前にディアッカを求めた貴女は何処に?
ティファ久しぶりに登場w

>> ザフト・赤毛の虜囚
クルーゼ、何となくマジで仕事減らす事が出来そうだと分って喜んでるのではw?
フレイ様はお茶汲みじゃなく秘書みたいになってしまいそうですな

233The Last War・Inside1/2:2004/04/04(日) 21:54
アスラン・〜Power〜 

 ―――力は魔物だ。それは強大であればあるほど御すことが難しくなる。そうすることが出来なくなった者はその魔力に魅入られ、心を食われる。その先にあるのは自らの破滅だけだ。俺の父、パトリック・ザラがそうだったように・・・。あの日を境に、俺はそう考える様になっていた。
 その所為か、俺は力を持つことに恐れを抱くようになっていった。何時しか俺も自分の力を押さえられなくなって、自分自身を見失ってしまうのではないかという不安が、常に心の中にあったからだ。
 そう言えば、ラクスからS.ジャスティスを渡された時、俺はその不安を彼女にこう漏らしたことがある。

「俺達は、こんな力をどれほどまで持たねばならないんでしょう?」と。

 すると、彼女はこう答えた。

「力を持つ者に必要なのは、それに決して溺れることの無い強い心です。その心を貴方がお持ちだからこそ、私は貴方にこの機体を託すことを決めたのですわ、アスラン」

 彼女が俺のことを信頼してくれていることは分かった。だが俺には、その信頼に応えるだけの自信が無かった。真実を知ったあの時から、俺の心には暗い影が差すようになっていた。

 「戦争による人類の統制」、それが奴等ファントムの掲げる理想というものらしい。・・・そんな下らないものの為に、ニコルは死んだ。それだけじゃない。母上も、ミゲルも、ラスティも、そしてキラの仲間達も死んだ。多くの人々が、死んだ。奴等に、殺されたも同じことだ。
 俺は奴等を憎んだ。徹底的に奴等を叩き潰し、皆の無念を晴らしてやりたいとまで思った。そして改めて誓った。もう二度と、あんな悲劇を繰り返させはしない、と。それなのに・・・、結局全ては奴等が描いたシナリオ通りに進んでいた。

 ・・・俺は、今まで一体何をしてきたんだ?その先に平和な世界があることを信じ、死に物狂いで戦ってきた。だが、それで何が変わったというんだ?・・・何も変わってはいない。あの時のまま・・・、いや、クリスやユフィーといったあの戦いと関わりが無かった者まで巻き込んでしまっている以上、あの頃より悲惨なものになってしまっていると言える。

「どうしてだよ!?どうしてお前が戦わなきゃならないんだ!?戦うこと以外にも平和の為に出来ることなら、幾らでもある筈だ!!」

 カガリ、お前の言う通りだったのかも知れないな。だけど俺は不器用だから、こんな生き方しか出来ないみたいだ。
 俺の手は、すでに血で塗れている。いつか、その報いを受ける時が来るだろう。その時が来るまで、俺の命を次の時代を生きる者達の為に喜んで捧げよう。それが俺に出来る、只一つの償いだから・・・。
 今の俺では、奴には勝てない。奴の力は、人の持ち得るそれを超えている。それなら、俺も人で無くなれば、奴に勝てるかも知れない。

 ラクス、結局俺は貴女の信頼を裏切ってしまった。
 カガリ、俺はもうお前と会うことは出来ない。こんな俺の姿を、お前にだけは見られたくない。
 キラ、お前は新しい時代を生きろ。お前の代わりに、俺が戦う。
 そして皆、済まない。この男を倒すために、俺は今EYESの理想に反する。

 ―――さあ、来い。俺の心を食わせてやる。その代わり・・・、奴を倒せるだけの力を俺に・・・、俺に、よこせ―――。

234過去の傷・99:2004/04/04(日) 22:07
ブリッジにいたカガリは。
「あ・・・アスラン」
「カガリ・・・」
なんだよ、なにしに来たんだよ、こっちは忙しいのに、まったく・・・。
「な、なにか用か?」
「これをお前に返しに来た」
そういうとペンダントのような物をカガリに差し出した。
ハウメアも護り石・・・!?アスラン・・・お前。
「どういうつもりだ?」
「・・・俺にはもう必要なくなった、俺にはこれがある」
と言うとアスランは指輪を取り出した。
なに!?なんだそれは?
「アスランそれは?」
「この指輪はラクスから授かったものだ」
そうか・・・ラクスさんが・・・そうだよな、こいつとあのお方は許婚というか婚約者同士だった・・・そうか・・・よりを完全に戻したんだな。
「そうか、分かった、これは返してもらう」(それならこれはあいつにやるか)

「マユラ!右!」
「まかせて!」
アストレイ三機とフリ−ダムの戦いは互角だった。

(フレイさん頑張ってください)
「いって、いって・・・いっちゃって!!!」
ルプス・ビ−ムライフルをアストレイ三機に放つ。

「皆よけて!」(サイさん見てくれてるかな・・・?)
「「もっち!」」
この三機連携が取れているのかぎりぎりで回避する。

<お前らこれはあくまで練習なんだからな!あまりむきになるなよ!>
カガリの声が四機に聞こえた。
<それから今日の練習はもうすぐ終わるぞ!>

「・・・んん・・・」
私とキラはキスをしている、それも長いキスを。
私ってこんなに積極的な女だったんだ、私はなおを唇を押し付けていた、両手でキラを離さないようにしっかりとかき抱いている。
「・・・んん・・・ミリィ・・・」
キラが私を離してきた、なおも食い下がりキスしようとした私・・・それもキラは離す。
「キラ・・・どうしたの?」
「いまはもうここまでにしよう」
「どうして?私はいいのよ?」
そうか、そうよね、キラはそういう子だもんね、ほんと鈍い子、そこがまたいいんだけど・・・私はまだキスしたかったのに・・・あ・・・ちょっと頭痛が・・・。
「ええと・・・キラちょっと・・・頭痛がしてきた」
「え!?ミリィ大丈夫?先生呼ぼうか?治療室にでも」
「いいの、ありがとう・・・でも大丈夫よ」
キラがミリアリアの額を優しく触る。
「ミリィ、熱があるよ!」
「え?」
「とにかく寝るんだ!」
「え、ええ、ちょっと具合悪くなってきた」
私はシ−ツを被った。
「キラ、付いててくれる?」
「うん、ずっと付いてるよ君の側に・・・」
「ありがとう・・・ねえ」
「なに?」
「私と付き合ってくれる?」
「・・・分かった、分かったから安静にしてるんだよ、ゆっくり寝るんだ」
「ありがとう・・・少し寝るわ」
そう言うと私は寝た・・・そういえばこの頃あんまり寝てないんだっけ・・・睡眠不足も多少あるのかな。
電話をかけたキラは・・・。
「あ、サイ?うん、ミリィがさ・・・うん、分かった」

235過去の傷・作者:2004/04/04(日) 22:23
>>ザフト・赤毛の捕囚
ミコトちゃん可愛いですね!いろんな意味で。
それよりクル−ゼ隊長からあんな言葉が聞けるとは思いませんでした。
でもミコトちゃん可愛いです!(フレイ様浮気ではありません・・・な、なぜここに!?)
>>翼たち
フレイ様大活躍ですね!なにげにお酒強いな・・・。
そしてフレイ様制服もお変わりになられるのですね、またお美しくなられる・・・。
>>The Last War
こ、これはアスランの・・・。
悲しい悲しすぎます、ついにアスラン・・・貴方は・・・力を手に入れる変わりとして・・・恐ろしや恐ろしや。
でもラクス嬢を始めとしていろんなキャラに対しての思いをを述べるところは非常によく出来ていて感動しました。

236流離う翼たち・449:2004/04/05(月) 22:54
 それが出てきたのは、当人が店の暖簾をくぐった時である。長身痩躯の40代の連合士官。その人物を、フラガたちは確かに見た事があった。

「サ、サザーランド大佐!?」

 マリューが吃驚した声を上げる。それでようやくこちらに気付いたサザーランドが何時ものしかめっ面のままでこちらにやってきた。

「アズラエル様、今日はお招き頂き、ありがとうございます」
「いやいや、君はよく頑張ってくれてるからね。たまには労ってやらないと僕の人間性が疑われそうだ」
「心配しなくても誰もおかしいとは思わないだろ」

 サラリとツッコミを入れるキース。アズラエルのこめかみにビシリと青筋が浮かぶがキースは意に介した風もなくお茶を啜っている。アズラエルが特に言い返さないところを見ると、どうやらキースが彼にツッコミを入れるのは珍しい事ではないようだ。
 サザーランドが来た事で面子が揃い、全員の前に料理が並べられていく。中華料理店なので出てくるのは中華ばかりなのだが、それを見たキラは、何故か頭の中で警鐘が鳴り響くのを感じていた。ここ最近酷い目にばかりあっているせいか、その危険を感じ取る嗅覚は異常に発達してきているのだ。何と報われない、幸薄い人生であろうか。
 そして、その料理を口に運んだフラガが一瞬固まり、そしていきなりグラスの水をがぶ飲みしだしたのである。

「フ、フラガ少佐!?」
「何だこれ、無茶苦茶辛いぞ!?」

 フラガの言うとおり、その料理は全てが激辛であった。ナタルは口を押さえ、トールとキースは汗をだらだらと流し、キラはおろおろとしている。男性陣が口に運んでいるので仕方なく女性たちもそれを口に運び、ナタルはフラガのようにグラスを手に取り、フレイはフルフルと身体を震わせてキラを見た。その目からはポロポロと涙が零れている。

「キラ、これ、凄く辛いの」
「う、うん、分かったからフレイ、何も泣かなくても」

 どうやら辛い物が苦手らしいフレイには、この料理はわりと耐えられなかったようだ。だが、そんな中で1人だけ気にした風も無くそれを口に運ぶとんでもない人がいた。それを見たナタルが唖然として問いかける。

「か、艦長、平気なのですか?」
「え、何が?」
「こんなに辛いのですよ?」
「何言ってるのよナタル、これ位じゃないと美味しいとは言えないのよ」

 全く気にした様子も無く真っ赤に染まった麻婆豆腐を平らげていくマリューの姿に、ナタルは戦慄を禁じえなかった。この人の味覚は一体どうなっているのだ、という疑問だけが頭の中を締めている。そして、マリューと同じ物を平然と平らげたアズラエルが嬉しそうにマリューを見ていた。

「いやあ、この味が分るとは、艦長さんは中々に味が分る人ですねえ」
「あら、アズラエルさんこそ、まだまだ食べられそうですね」
「当り前ですよ。後2皿はいけます」
「私も追加をお願いしていいでしょうか?」
「勿論。味の分る人にこそ食べていただきたい」

 アズラエルは随分機嫌が良いようで、平然と追加オーダーを出してくれる。だが、運ばれてくる毒々しい赤色の豆腐を見て他の者は顔を引き攣らせてしまった。キラは相手がブルコスで軍のお偉いさんだということも忘れてサザーランドに小声で問いかけた。

「あ、あの、この人っていつもこうなんですか?」
「・・・・・・うむ、アズラエル様の味覚は常人とはかなりずれていてな。所謂悪食という奴なのだよ」
「これって悪食って言うんですか?」
「そうとしか言えまい。付き合わされる私は必ず体調が悪くなるのだ」

 この人も苦労してるんだなあと知り、キラは天敵とも言えるブルーコスモスの幹部に何となく同情してしまった。ひょっとしたら、自分よりこの人の方が不幸なのではとこの時ばかりは思ってしまった。

237流離う翼たち・作者:2004/04/05(月) 22:57
>> The Last War・Inside1/2
ああ、アスランが壊れた。キラは落ち込んでるのにアスランは壊れるなんて
やっぱりここは精神的に安定しているイザークとシーナをw!
兄貴は何処いったんでしょう?

>> 過去の傷
アスランとカガリが完全に断交状態に!? 
キラはミリィの部屋にいついてるし、フレイ様、こうなったらカガリと百合に!

238過去の傷・100:2004/04/05(月) 23:06
「熱下がんないね」
「ああ」
ミリアリアを見守るキラとサイ。
「あ、サイはもういいよ、あとは僕が見てる」
「そうか・・・分かった」
そう言うとサイは出て行った。

なんとフレイは苦戦していた。
(なによこいつら!連携取れてる)
そう、フリ−ダムの放つビ−ムはことごとく回避される。
「ていうか・・・全然攻撃してこないじゃない!」

「「「だってあの機体怖いんだもん」」」
<お前等ちゃんと戦えよ!もういい!今日は終わりだ!>
「え?もう終わりなの?」

ハッチはら出てくるフレイ。
「カガリ」
「お疲れ」
「ええ、ありがとう・・・」
カガリは何かを取り出すとフレイの首にかけた。
「これは・・・ペンダント?」
「ハウメアの護り石だ、お前これで守ってもらえ」
「え・・・?カガリ・・・ありがとう」
カガリはフレイを見つめると・・・。
「死なせないから・・・お前」
「ええ・・・ありがとう」
その数時間後。
「あ、ミリィ起きた?」
「え?キラ・・・」
あれ?そうか・・・私眠ってたのね。
「具合どうかな?」
「まだ、苦しいわ・・・全然駄目」
「そう、まだ寝たほうがいいよ、安静にしてなきゃ、いいね?ずっと僕は君の側にいるから・・・」
キラ・・・優しい。
「ええ、眠るわ」
そう言うと私は再び眠りについた、キラに看病してもらえる・・・。
話を聞いたのかフレイ、サイ、カガリ、アサギ、ジュリ、マユラが入ってきた。
「キラ、ミリィはどうだ?」
「うん、まだ眠ってる、熱が引かなくて」
そう言うとミリアリアの額から出る汗をタオルで優しく拭う、そしてまた水で冷やした別のタオルでミリアリアの額に乗せた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ミリアリアの看病をしているキラを困惑した表情のフレイが見つめている、そのフレイの視線に気づいているはずのキラだがフレイに目を合わせずひたすらミリアリアを見守る。

239ザフト・赤毛の虜囚 45:2004/04/06(火) 03:47
8.歓喜 3/6
[うーん、悔しい…… キラ、もう一度]

クルーゼは、私に官給のノートパソコンとベッドで使える簡単なパソコン台。それと、
パソコン台に付けられる書類立て、手元を照らすランプなどを用意してくれた。
私は、ベッドに座りながら、いくつかの手書きや訂正の入った書類をクルーゼから受け取り、
それを次々にパソコンに打ち込んで行く。できたものは、部屋のプリンタでプリントアウトするか、
ワイヤレス回線からファイルサーバに送り込む。私のパソコンは、かなりアクセス制限がきつく、
ファイルを送り込む以外は、サーバの何も見ることはできないけど、私は、もとより見る気は無かった。
やがて、書類入れの山は、増える量を越えて、少しずつ減り始めた。

「フレイ・アルスター。君は、まったく素晴らしい。どこで、こんなことを覚えたかね」
クルーゼは、また関心したように話しかける。

「まさか、パパに教えられたのかね」
「…… ご想像におまかせします」

私は、キラの思い出をクルーゼに明かしたくなかった。だから、曖昧に、ごまかした。
私の、この指の動きはキラに教えられたもの。打ち込みを続けながら、私の心はキラの
思い出を彷徨っている。

* * *

キラが部屋で、パソコンを使って戦闘レポートを作っている時、私はベッドで、
トリィと戯れながら、いつも、キラの高速で動く指の動きを目で追っていた。
ときどき、キラを見ながら、指でキーボードを打つ真似をしていたこともあった。

それを見たキラは、口述筆記のゲームをしようと持ちかけてきた。片方がボイスレコーダを
持って喋り、もう片方がパソコンで、それを文章にする。後で、照らし合わせながら得点を
付けて競い合う。当然、私がキラに叶うはずはないので、何回かに一回、私はハンデとして、
トリィを相手にできた。

繰り返すうち、私は少しずつ打ち込みが早くなって行った。キラは私の指を触って打ち方を教え、
私はキラの指を触り、その形、動きを感覚として記憶した。自分でははっきり気づいていなかったけど、
私はキラの指の動かし方を指でも体でも理解していった。

ルールは、二人で話し合いながら、少しずつ変わっていった。打ち込めていても、
誤字は減点対象になった。

「嘘、こんなはずじゃないのに」
「フレイ、ほら、こっちが正しいよ」

「うーん、悔しい…… キラ、もう一度」
「負けたら、どうする」

「負けたら、私を好きにしていい」
「それじゃ、賭けにならないよ」

「それじゃ、アレもらってきて、こうするというのは?」
「…… やってみようかフレイ」

「その代わり、私が勝ったら、今日は無しよ。たまには、ぐっすり寝かせてね」

飽きっぽい私がキラとのゲームにあれこれ賭けながら、のめり込んで行った。
そして、一度だけキラに勝てた。

「よし、正解。満点だフレイ」
「キラ、一文字綴り間違えたわよね! それじゃ……」

「フレイの勝ちだよ」
「え……、わ、わーっ、わーっ、勝った!! 私勝った、キラに勝った!」

私は自分でもびっくりするほど大声を立てていた。トリィのハンデがあったとは言え、私は、
ついにキラに勝った。

「おめでとうフレイ」
「ありがとうキラ」
<トリィ! トリィ!>
「ありがとうトリィ」

二人抱き合って、共に喜んでいた。トリィも一緒に喜んでいた。結局、そのまま朝まで抱き合ってた。
キラがアレもらってきて………………

翌朝、私は、やすらかに眠り、キラは一人寝不足で仕事に行き、夕方、やっと目覚めた私に、
またも、いきなり休んだ私のことで、私の仕事の先輩に怒られてたとぼやいていた。

* * *

この指は、キラからもらった指。私の指にはキラが乗り移っている。それは、私に、このザフトの中で、
キラのメモリチップを見るためのノートパソコンをもたらした。
私はキラの魂に感謝した。

240ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/06(火) 03:55
>>The Last War・Inside
ラクスとカガリ、言っていることは正反対なんですけど、アスランを信じているのは同じなんでしょうね。
その想いを振り切って修羅になったアスラン。彼は戻って来られるのでしょうか。次回、キラ編も期待しています。

>>流離う翼たち
キラも昇進こそしなかったもののグレーの仕官服なんですね。
アズは、サザーランドも、もて余す存在なんですな。私、麻婆豆腐好きなんで、ついマリューさんに同感して
しまうけど、本場の店だと辛いんでしょうか。甘党?のフレイ様には辛いか。アルコールも甘口の日本酒が好きなのかな。

>>過去の傷
連載100回おめ。三人娘は回避能力は抜群?だから助かったのかな。
カガリはアスランからハウメアの護り石を返してもらって、フレイ様に渡した意図は?
そして、病魔に倒れたミリィ。看病するキラ。フレイ様、相手が病気だと言いたいことも言えないですよね。

241過去の傷・101:2004/04/06(火) 23:19
サイがミリアリアの隣で看病していたキラに声をかけた。
「キラ、俺がミリィにはついてるから少し休んだら?」
キラはサイに微笑むとそっけなく、「大丈夫だよ」と答えた。
遠くで聞いていたフレイも慌てたようにキラに声をかけた。
「で、でもキラ、ミリアリアにつきっきりだったんでしょ?ここはサイにまかせていいじゃない・・・」
キラは少し顔を上げて微笑んだ。
「今日はフリ−ダムの整備も終わったし、もうすることないから」
「で、でもキラ!」
気づかうフレイに対してキラは・・・フレイの言葉を封じ込めるような硬い声でフレイに言った。
「ミリィに・・・ついていたいんだ」
そうフレイに言うとミリアリアに顔を向ける。
「フレイ、行くぞ・・・あんまりうろうろしないほうがいい」
カガリがフレイに声をかけた。
「え、ええ・・・そうね」
フレイはキラを気にしていたがカガリについて出て行った。
フレイ達が部屋を出て行った一時間後。
「あ・・・キラ・・・?」
ミリアリアが目を覚ます。
「あ、起きた?」
起き上がろうとしたミリアリア。
もう夜になっていた。
「あ、ミリィ駄目だよ無理しないで」
「そ、そうね・・・ありがとう」
キラの気づかいが私は凄く嬉しい。
「ミリィ・・・その・・・夕食の時間なんだけど、どうする?食事持ってこようか?」
「・・・どうしよう・・・あんまり食欲ないのよね、ヨ−グルトとか冷たいの欲しい・・・」
「うん、ミリィ、ヨ−グルト好きだもんね」
「キラ、ごめんねつきっきりで・・・疲れたでしょ?」
そうか・・・キラずっとついていてくれたんだ・・・キラはやっぱり優しい。
「いいんだ、君に僕もついていたいから」
「ありがとう、ねえキラ・・・その・・・結婚しようね」
「え!?」
さすがにこの言葉にはキラも少し戸惑ったが・・・想像してしまう、ミリアリアとの結婚、そして新婚生活など・・・それもこんな可愛い子とだ。
「うん、結婚したいね、よしじゃあヨ−グルト持ってくるよ・・・僕もここで食べるから」
「ええ、ごめんなさい、具合よければ私がするんだけど」
「いいんだ、そういえば具合どう?」
「ええ、少し落ち着いたみたい」
その一時間後の食堂。
フレイ、サイ、カガリ、アサギ、ジュリ、マユラが同じ席で食事を取っていた。
「あ、キラ」
サイが入り口から歩いて来たキラに気づいた、キラに気づいたフレイは慌ててキラに目をやる。
どうやら食器を戻しにきたようだ。
「どうだ?ミリィの様子は」
「順調だよ、熱も少し下がって落ち着いたみたい、ヨ−グルトを食べさせて、少し元気になったよ」
「そうか・・・良かった」
そしてフレイが慌てた口調でキラに声をかけた。
「キ、キラも疲れたでしょ?ずっとついてたから、少し休んだほうがいいわよ」
気づかうフレイの言葉を遮るようにキラはフレイに冷ややかに告げた。
「僕は大丈夫、食事もミリィの部屋ですませたし・・・ミリィには早くよくなってもらわないと」
キラはフレイに背を向け出て行こうとした。
「キ、キラでも、そこまでキラがすることないじゃない」
慌ててフレイが席から立ち上がりキラの腕をつかんで止めようとした、キラはさっと振り返りその手を振りほどくとフレイに挑むような目つきで睨んだ。
「なに!?」
「え・・・いや・・・なにって・・・」
キラは顔を少し下に向けると冷たく告げた。
「フレイ・・・君とのことはさ・・・ア−クエンジェルであんな関係になって・・・別れを経験したけど・・・もうその時点で君とは終わっていたんだよ・・・もういいと思わないかな?」
フレイは驚愕の表情になる。
「お互い傷ついた・・・君は僕を傷つけた・・・でも僕も君を傷つけた・・・それにまたよりを戻したってお互い傷つくだけだと思う・・・傷つくと分かっていて付き合う必要もない、お互いあの頃に縛られることはないと思うんだ、僕も君も・・・そう、もう呪縛からお互い開放されようよ・・・あの頃の僕たちの呪縛からさ・・・だからこれからは普通の友達でいようよ・・・」
「!!!・・・キラなに言ってるの・・・?そんなこと私が納得するわけ・・・ないわよ・・・」
キラはもうフレイの言葉には耳をかさずに無視するように食堂を出て行った。

「君がいけないんだ・・・僕の手を拒絶したりしたから・・・ミリィは僕を許してくれた・・・僕はミリィと結婚するんだ、そう決めたんだ」

242過去の傷・作者:2004/04/07(水) 14:16
>>ザフト・赤毛の捕囚
おお、フレイ様頑張ってますね、そうかキラと・・・それもキラにハンデとはいえ勝ったとは。
いいですね、これからも期待させていただきます。

ついに目標の連載100を超えました、これからも頑張っていきますので、皆様よろしくお願い致します。

243ザフト・赤毛の虜囚 46:2004/04/08(木) 02:19
8.歓喜 4/6
[思い出が溢れ出した]

夜、また、なんだかんだでクルーゼが部屋を出て行った後、私はシャワーを浴びて、
さっぱりした状態でベッドに横になった。そして、そろそろとベッド横にパソコン台を
引き寄せた。ついに、キラのメモリチップを見ることができる。メモリチップを取り出し、
パソコンの端子に差し込む。開いたフォルダのメールアイコンをクリックする。
メールが開いた。これに添付された動画データをクリックする。パソコンのスピーカから、
キラの声が流れ出した。

「フレイ、この前、通信で裸になったろ。今日は、メールにするよ。
 通信には秘匿かかっているけど、どこで見られているかもしれないから、もうこんなことは
 しないでくれ。フレイ、お願いだ。
 今日はね、フレイ、シナプス融合の代謝速度を向上させて、モビルスーツの動作が、
 かなり軽くなったんだ。でも、逆に姿勢制御が難しくなって、自律神経系を、もう少し
 改良しないといけない。もう少し、かかりそうだよ。
 フレイ、迷惑をかけてごめん。なるべく早く終わらせるから、ちゃんと待っててくれ」

キラの映像は、まるで本当に私を見つめるように、熱い瞳をしている。
その映像に私の心は、これまでに無いくらい解放される。体がふわふわして宙を彷徨うよう。

これは、オーブでキラがモルゲンレーテに仕事に行っている時にくれた唯一のビデオメール。
一週間の約束の日に帰って来ないキラに癇癪を起こして、通信の時に、私が裸になってキラを
誘った翌日に来たもの。今残っている、唯一の動くキラ。話すキラ。
私は、それを何度も何度も繰り返して見た。見るたびに新しい発見があった。
いつまで経っても飽きなかった。

次に、オーブでキラが別れた時に来た二通のメールを見た。

┌──────────────────────────────────────
│題名:フレイ、もう一度だけ弁解させて欲しい

キラが両親と会うことへの戸惑いの真意を告げていたメール。私とキラを繋ぐ言葉を、
私に気づかせてくれたメール。

┌──────────────────────────────────────
│題名:フレイ、僕の部屋に居てくれていい

│ でも、僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する。

ザフトの戦闘中、一人部屋で震える私を勇気づけたメール。
結局、果たされなかった約束。でも、それは、私が逆に守るべき約束をなのだ。
私は、キラを継ぐ。あなたの理想を果たす。
くじけそうな私に勇気が沸き起こる。オーブを出た、あの時、震えていた自分から
立ち上がったように。

さらに、私はキラが大切に持っていた私の写真を開いた。ヘリオポリスで撮った、
みんなの写真。フレームの右側に立って微笑む私、そのそばで優しい顔をしているサイ。
ポーズを付けて立ち上がっているトール、奥で座って作り笑いをするミリアリア。
そして、一番奥にいるキラ。微笑むような切なそうな目をしている。

これは、ヘリオポリスの合コンの写真。カズイが撮ったもの。私も一枚持っていたけど、
ヘリオポリス崩壊で失った。

それを見て、私の中に思い出が溢れ出した。そう、それはまだサイとの婚約を
隠していた頃、そして、キラに初めて出会った時のこと。

244ザフト・赤毛の虜囚 47:2004/04/08(木) 02:24
8.歓喜 5/6
[私、フレイ・アルスター。よろしくね]

私は、サークルの新歓コンパに出ていた。このコンパにはいくつもサークルやゼミも参加している。
その中でも、私を心躍らせたのはサイのいるゼミが参加していることだった。サイは、パパの決めた
私の婚約者。でも、私もサイが大好きだ。小さい頃から家族ぐるみで付き合ってきて、お兄さんの
ような存在。でも、カレッジに入ってからのサイには、特に心引かれるものがある。サイに男を
感じている。サイに近寄る女性に嫉妬する。こんな自分に不安とともに胸が弾むものを覚える。

私はサイの婚約者だと、みんなの前で叫びたい。でも、サイは許してくれない。まだ、隠しておくようにと
サイは釘を差す。私は不満だけど仕方ない。パパも言ってることだから。パパは、私にサイと付き合うように
言う。他の人と、私が仲良くすると怒る。でも、その一方で、パパはサイに冷たい。門限は厳しかったし、
度々、家に電話を入れろっていう。私とサイのこと、パパは応援してるの、どっちなの?
でも、私もカレッジに入学したからには、そんなことは無い。これからは寄宿舎生活。少し、私の
自由もきく。これから、もっとサイとの関係を進めるのよ。

でも、最初からサイにベタベタすると、まずいだろうから。私は、みんなに挨拶して回っている。
サイには後から、ゆっくり会う。それまで、連邦事務次官の娘として、恥ずかしくないようにしなきゃ。

やっと、サイのいるグループのところに来た。サイは、自分のゼミのグループで固まっている。私に、
気を使っているのはみえみえだ。気にしないでいいのよ。私が来たから。

「サイ、こっちに来ない?」 私はサイに話しかける。

「フレイ!」
サイは、そう言って振り向いた。ちょっと、罰が悪そうな表情。でも、そんなサイが、私は可愛くてたまらない。
一緒にいる人達はサイのゼミの仲間、なんだかCPUとかどうとか、おたくっぽい会話をしている。
その内の一人、ミリアリアは、私のサークルでも先輩。女性なのに、ちょっと話題が合わない人。
でも、サイの友達なんだから、愛想良く振る舞わなきゃ。

「先輩たち、難しい話をしていますね」
私は、明るい声でそれとなく話しかける。相手の気を悪くしないように、それでいて、自分に
話題を振られないように防波堤もはっておく。

「ねえ、向こうにドリンクあるわよ。サイ、行きましょうよ」
「うん、フレイ、だけどね、今日はちょっと……」

「今日はどうだっての、サイ?」
意地悪っぽくサイに迫る。サイは困っているようだけど、そんなサイを見るのも、私には楽しい。

「キラ!」
ふいに、ミリアリアが小さく、しかも、きつい声で話すのが聞こえた。ミリアリアの向こうにいる人。
童顔で、まだ少年の面影を残している、その顔はミリアリアの声で視線を外したけど、
それまで、ずっと視線が私に注がれていたのに気がついた。私は興味を覚えて話しかけた。

「その人、キラっていうんですか?」
「ああ、はじめまして、キラ・ヤマトです」

甘いマスクから、想像される通りの優しい声。

「私、フレイ・アルスター。よろしくね」
私も、釣られて自己紹介をした。にこやかな笑顔を見せた。ゼミのグループのところに来て、ほとんど
サイに向かって話していたのが、初めて他の人に視線を向けた。二人の視線が合う感触がした。
横から、誰か話しかけたようだけど、私は聞き流していた。

「みんな撮るよー!」

私の後ろからの大きな声に、やっと、私は視線をそらした。声の主は、大きなカメラを構えている。
知らない人だけど、サイの友達の一人だろう。私は自然に笑顔を作る。カメラを向けられると、つい、
作ってしまう笑顔。パパの呼ばれるパーティで、いつもそうしてる。でも、この笑顔を私は好きじゃない。
本当の自分じゃないような気がするから。いつもの自然な私の笑顔をしなきゃ、サイが写真を撮る時のように。

パシャッ! パシャッ! シャター音が数回響いた。

サイと一緒に、カメラのモニタを覗きこむ。小さい画面では、分からないけど、偽りじゃない
自分が映っているようだ。

「カズイ、2枚分な。フレイにも、後で写真渡すよ」
「うん、サイ」

サイの話す声に、私は頷いた。

私は、チラと横目で、さっきのキラという人を見た。私に注がれていた視線は既に無く、ミリアリアと
親しそうに話している。私は、関係ないと思いつつも、ちょっと不満だった。さっきまで、私に
見とれていたくせに、もう別の女性に目を向けてる。フン、ミリアリアよりも、私の方が、ずっと
美人なのに…… そして、心の中でそっと呟いた。

(キラ、もっともっと、私を見てよ!)

245ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/08(木) 02:28
昨日は、なぜか掲示板に繋がらずに投下できませんでした。
ビデオメールや二通のメールは、前作「オーブ・フレイの心」で出てきたものを補足 or 省略してます。
次の回想シーンは、以前ミリィSSでカズイ退艦に絡めてやったもののフレイ視点版です。このSSでは、
これが、フレイとキラの初めての出会いということにしています。けどね……

>>過去の傷
キラ、フレイ様になんてことを言うんだ!! とは言え、別れ話を、ちゃんと書けない私には勉強になる点も(バキ!)

246流離う翼たち・450:2004/04/08(木) 23:28
 食事も終わり、飲茶などを手にのんびりとした時間が漂うかに見えるのだが、実はわりとヤバゲな空気が漂っている。その発生源はもっぱらアズラエルとキースだ。アズラエルはにこやかに、キースはむっつりとして会話を弾ませている。

「いやあ、あの頃は散々だったねえ」
「お前のせいでな」
「コーディネイターの輸送船に爆弾を仕掛けた事もあったねえ」
「俺はやった覚えは無いぞ」
「一緒にパトリックやシーゲルの命を狙った事もあった」
「・・・・・・あれは貴様の仕業だったのか」
「各国の政界や財界に圧力かけてプラントに強攻策を取らせたり」
「・・・・・・おのれは、人の足引っ張る事しか出来んのか?」
「やだなあ、僕がいつ君の邪魔をしたんだい?」
「とりあえず、今までの自分の台詞を思い出してみろ」

 どう見てもこの2人は友達ではない。いや、と言うか本当に元同僚だったのだろうか。アズラエルはニコニコと笑いながらキースの機嫌を損ねる事ばかり言ってるし、キースは何やら殺気さえ滲ませてツッコミを繰り返している。
 余りの空気の悪さに耐えられなくなったキラはまたサザーランドに問いかけた。

「あ、あの、この人たちって一体、どういう関係なんですか?」
「うむ、まあ、昔に比べればこれでも随分関係改善しているのだよ」
「あの、そんなに酷かったんですか?」

 フレイとトールも話しに加わってきた。サザーランドは3人の子供に視線を向けられて少し戸惑っていたが、それくらいで話に詰まったりはしない。流石は参謀本部の切れ者参謀である。

「元々、キーエンスはアズラエル様に迎えられる形でブルーコスモスに入ってきたのだ」
「あの、キースさんにどういうツテがあったんです?」
「それは彼から聞いてくれ。私が言うべき事ではないだろう」

 どうやらかなり複雑な事情があるらしいと察するフレイとトール。だが、キラだけは前から時折感じているキースの持つ不思議な能力に関係があるのではないかと思っていた。キースはかつて、暴れる自分を取り押さえた事があったし、コーディネイターの歩兵に白兵戦で勝利している。
 ナチュラルが訓練したコーディネイターの兵士に勝てるわけが無いのだ。なのにキースは平然と勝ったと言っていた。敵中に最後まで留まり、帰ってきたら前進返り血まみれだったのだから、それは嘘ではないのだろう。

「あの、1つ教えて欲しいんですが」
「なんだね、キラ・ヤマト少尉」

 サザーランドの灰色の目がキラの顔を射抜く。その視線に晒されたキラは文字通り竦みあがってしまったが、別にとって食われる訳でもないだろうと思い、気を落ち着かせた。しかし、このサザーランド大佐の持つ迫力はどこか桁が違っている。ナチュラルとコーディネイターの分類を超えて、本当に凄い人は凄いということなのだろう。どれだけ力があって知能が高くても、自分などこの人の前では呼吸さえ困難になるほどに気圧されてしまうのだから。

247流離う翼たち・作者:2004/04/08(木) 23:36
>> 過去の傷
キラァ、貴様、とうとう完全に乗り換えたか
これでフレイ様はカガリと百合ルート一直線?
何気に正直な3人娘に少し共感したりw

>> ザフト・赤毛の虜囚
とりあえずフレイ様、音声出すなら防音を考えておきましょうね。潜水艦の艦内の壁は薄いです
でも、もしばれたらクルーゼの興味をかなり引いてしまうような気も


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