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1    【破ァッ!!】寺生まれのTさんスレ    (書き込み数 : 698)

1名無しさん    :2015/03/02(月) 17:10:29    ID:/sxxuDok
寺生まれのTさんのスレッドです。
ちかとものコメ欄に書き込んでいただくのも嬉しいのですが、1レス800字縛りとかもありますし、可読性がよろしくないので、こちらも使ってみてください!
679 暗闇    :2016/04/14(木) 20:40:28    ID:K/BHEQNI
高校でセンター模試を理系で受けると最後まで残ることになるため、帰る頃には外が真っ暗。
当然校舎内は外より一層暗いにも関わらず、気の利かない先生は廊下の電気を点けておいてくれていなかった。
だからTが破ァして出した明かりを頼りに昇降口まで辿り着く。

廊下はほんと真っ暗で、Tが破ァしてなければ段差を摺り足で確かめながら歩くレベル。
唯一明かりを点けてくれてる昇降口に着いたとき、一緒に教室出て来たはずの友人のNがいないことに気付いた。

名前を呼んでると、少し遅れて友人が現れた。
聞いてみると廊下にある姿見で髪を整えてたらしい。

正直ビビってたもんだから、ちょっと苛ついた。
全く呑気に髪なんか気にしてんじゃねーや。

後日、JちゃんからNは夜目が利いて暗闇でも問題ない事を聞き、法力で明かりを作る寺生まれも凄いが、Nも地味に凄いと思った。
680 分からない方が良い    :2016/05/06(金) 22:27:42    ID:lyj56Pac
これは兄が3年目の受験の頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事です。
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた私は、 早速受験勉強が煮詰まっていた兄と外に遊びに行った。
実家のどこか張詰めた様な空気とは違い、空気は穏やかで柔らかい。
私は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。

そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風か止んだ。
と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
私は、『兄様!何かいます!』と、
霊力を高めつつも爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。

すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。

その方向には案山子がある。
『あの案山子がどうしたのですか?』と兄に聞くと、
兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。

私も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。

何だ…あれは。

遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。

しかも周りには田んぼがあるだけ。
近くに人がいるわけでもない。
681 分からない方が良い    :2016/05/06(金) 22:35:44    ID:lyj56Pac
私は奇妙な感じがする妖力を感じられないそれが何なのか首を傾げた。
実家に置いて来た筈の人形のLがこう解釈した。

『あれ、新種の案山子ね?きっと!今まで動く案山子なんか無かった から、農家の人か誰かが考えたのよ!多分さっきから吹いてる風で動いているに違いないわ!』

兄は、Lの解釈に納得した表情でしたが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。

兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、 はりきって双眼鏡を覗いた。

すると、急に兄の顔に変化が生じた。

みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、 ついには持ってる双眼鏡を落とした。
682 分からない方が良い    :2016/05/06(金) 22:41:42    ID:lyj56Pac
私は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』

兄はゆっくり答えた。

『わカらナいホうガいイ……』

すでに兄の声では無かった。

兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
私とLは、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと
落ちてる双眼鏡を拾い、恐る恐る兄が見ていた方角にレンズを向け、
そして驚愕した。

田んぼの向こうでゆらめくもの、それは白いカッターシャツを着たTさんだったのだ。

寺生まれで霊感の強いTさんが、狂ったように笑いながら、くねくね、くねくねと乱舞していたのだ。

人間とは思えない程なめらかな腰使い、がむしゃらながらも確かなキレのあるステップ。
そして満開の笑顔、ほとばしる汗・・・

それは初期衝動としか言いようのない、どんなジャンルにも属さない
オンリーワンのダンススタイル。
なまめまかしく蠢く指の一本一本までもが、何かを表現しているようだ。

夕日というミラーボールに彩られ、人生というダンスホールで
いつまでも踊り続けるTさんを見ながら そろそろ就活の筈だけど、ここで踊っていても大丈夫なのでしょうか心からそう思った。
683 分からない方が良い 後日    :2016/05/06(金) 23:00:32    ID:lyj56Pac
その後、兄は受験勉強で煮詰まる度、あの日見たTさんのダンスを踊り気分転換をして志望校に見事合格した。
良い笑顔で人を呪っても陰に偏るだけだから碌な結果は出ない。人を呪わば穴二つ、当にその通りだったと言う兄のN。
もっと早くに気付くべきよねと呆れ顔で話すLに相槌を入れつつも破ァ無しで兄を更生させたTさんは凄いと心からそう思いました。

あと、あの日、なぜ踊っていたのか聞いてみました。
早朝、田んぼの中でくねくねと動く何かを見掛け除霊しようと近付いてからの記憶が日没まで飛んでいると言っていました。
Tさんが見掛けたそれは何なのか、Lはダイエットをする気が無いなら知らない方が良いと答えてくれません。
兄からアレの正体を聞いた兄の年下の先輩が記憶が飛ぶほど踊る羽目になり筋肉痛で酷い目に遭ったと知り、まだ知らなくても良いと思いました。
684 寺生まれの名無しさん    :2016/05/22(日) 09:35:32    ID:MKKFRhl.

 僕が通っていた学校は怖いですよ。行方不明者の数がハンパじゃない。20年くらい前から、男女合わせて10人以上神隠しにあった学生がいます。それは人食い教室と言われています。西側の校舎の3階にあり、外見に特に問題は無いのです。僕も何回か入ってみましたが、奇妙な感じもしませんでした。
 担任の先生いわく、夏の土曜の放課後にその教室に一人で残っている生徒がいつのまにか消えているそうです。

 僕の友達のI君はそこの教室に残っていた時、強烈な視線を感じたらしいです。そして眩暈がしてきて、そのままじっとしていたらどうにかなりそうだったので、全速力で逃げ出したのです。
 そして廊下まで来て、ふと振り返るとその教室のガラスの所になまなましい程の笑顔の顔が無数に写っていたそうです。教室のガラスは曇りガラスでほとんど見えませんが、その顔は物凄く鮮明に写っていたそうです……そこへ、

「破ぁーっ!」

 突然鋭い叫び声が響き、青白い光が窓ガラスを一枚残らず破壊したそうです。顔の群れも一つ残らず消滅しました。

「危ないところだったな」

 I君に声をかけたのは、霊感が強い事で有名な寺生まれのT先輩。胸騒ぎがしたので駆けつけたとの事でした。
 I君はお礼を言って無事に下校したそうです。

お寺の息子のくせに教室の窓ガラスを全部叩き割り三日間の謹慎をくらったという『Tさんガラス割り伝説』の真相を同窓会でI君から聞かされた僕は、やっぱり寺生まれは凄いと改めて思いました。
685 寺生まれの名無しさん    :2016/05/25(水) 23:14:49    ID:uZVr6oac
常習にも関わらず三日の謹慎で済んだ寺生まれは凄いと思った
686 継呪の老婆>>257からの分岐    :2016/05/25(水) 23:36:23    ID:uZVr6oac
私は、闇の中で眠りについていた。不意に、強烈な渇きを覚えた。
急に、暗闇から引きずり出される。私の喉は張り付いて、一滴のつばも出ない。

「矢ぁ・・・」
力無く呟き呪いを掻き消すと、私は水を一杯飲んで一息吐いた。
「酷い顔」
パサつき傷んだ髪、荒れた肌、窪んだ眼窩 と呪術ダイエットの効果、痕跡がこれでもかと言う程、鏡は映していた。
このウェストなら買った水着は着れるのだが、荒れた肌と傷んだ髪、老婆の様にやつれた体でどこに行けと言うのだ。
「兄様の言う通り、横着しないで普通のダイエットをしておくべきだったな・・・」
浪人中の腰掛程度の経験でも経験者の忠告は聞いておくべきだったと、年頃になったJちゃんはそう思った。
687 名無し    :2016/08/21(日) 14:26:15    ID:xcL40v92
数年前に、本栖湖畔で朝釣りのために
キャンプをしていたときのこと。
夜中のたき火中に、
「たすけてえええだれかあ」と女性の声が湖の方で聞こえてきて、
そちらに目をやると女性が溺れていた。
びっくりしたと同時に、助けなきゃと思い立ち上がったら連れが
「おまえ何する気だよ!」って引き留めるから
「助けなきゃ」と言い返したら、
「おまえ、ちょっと冷静になってよく見て見ろ!
ここから離れていて真っ暗なのに何で顔がはっきり見えているんだよ!」
「可愛いからだろ」
俺は連れを振り切り湖に飛び込んだ。
女性は俺に抱き着くとニヤリと笑い水死体の様に膨れ上がると湖底へと引きずり込もうとした。
元相撲部を舐めるな。俺は踏ん張り女性を湖岸に投げ飛ばす。
女性はぎょっとした表情で空中で骸骨に変わるとそのまま虚空に溶けるように消えて行った。

するとむこうからすごい速度のアヒルボートが!!
寺生まれで霊感の強いTさんだった!
Tさんは俺をボートに引き上げると、とんだ災難だったなとバスタオルを渡した。

「このあたりは水難事故が多いらしいからな、仲間が欲しかったんだろう」
「中々好みの子だったから普通に来てくれれば、恋人に欲しかった」
「破ぁ~、その気持ちよくわかるわ」
アヒルボートでそんな会話をする俺と寺生まれを見て、可愛ければ何でも良いと言い切れる元相撲部と寺生まれは凄いと連れはそう思った。
688 名無し    :2016/08/28(日) 18:35:02    ID:6abCRllw
今から7年ほど前の話になる。俺は大学を卒業したが、就職も決まっていない有様だった。
生来、追い詰められないと動かないタイプで(テストも一夜漬け対タイプだ)、
「まぁ何とかなるだろう」とお気楽に自分に言い聞かせ、バイトを続けていた。
そんなその年の真夏。悪友のT(仮名)と家でダラダラ話していると、
なぜか「ヒッチハイクで日本を横断しよう」と言う話に飛び、その計画に熱中する事になった。

その前に、この悪友の紹介を簡単に済ませたいと思う。
このTも俺と同じ大学で、入学の時期に知り合った。コイツはとんでもない女好きで、頭と下半身は別、と言う典型的なヤツだ。
だが、根は底抜けに明るく、裏表も無い男なので、女関係でトラブルは抱えても、男友達は多かった。
そんな中でも、Tは俺と1番ウマが合った。そこまで明朗快活ではない俺とはほぼ正反対の性格なのだが。


ヒッチハイクの計画の話に戻そう。計画と行ってもズサンなモノであり、
まず北海道まで空路で行き、そこからヒッチハイクで地元に戻ってくる、と言う計画だった。
Tは「通った地方の、最低でも1人の女と合体する!」と女好きならではの下世話な目的もあったようだ。
まぁ、俺も旅の楽しみだけではなく、そういう期待もしていたのだが…
Tは坊主頭で、一見僧侶風の男で(実際盆暮れ、葬式が有れば実家の手伝いとして駆り出されていた)話を聞くのが上手くコイツとナンパに行って良い思いは確かにした事があった。
そんなこんなで、バイトの長期休暇申請や(俺は丁度別のバイトを探す意思があったので辞め、Tは休暇をもらった)、
北海道までの航空券、巨大なリュックに詰めた着替え、現金などを用意し、計画から3週間後には俺達は機上にいた。
札幌に到着し、昼食を済ませて市内を散策した。慣れない飛行機に乗ったせいか、
俺は疲れのせいで夕方にはホテルに戻り、Tは夜の街に消えていった。
その日はTは帰ってこず、翌朝ホテルのロビーで再開した。
にやついて指でワッカをつくり、OKマークをしている。昨夜はどうやらナンパした女と上手く行った様だ。
689 名無し    :2016/08/28(日) 18:36:25    ID:6abCRllw
さぁ、いよいよヒッチハイクの始まりだ。ヒッチハイクなど2人とも人生で初めての体験で、流石にウキウキしていた。
何日までにこの距離まで行く、など綿密な計画はなく、ただ「行ってくれるとこまで」という大雑把な計画だ。
まぁしかし、そうそう止まってくれるものではなかった。1時間ほど粘ったが、一向に止まってくれない。
昼より夜の方が止まってくれやすいんだろう、等と話していると、ようやく開始から1時間半後に最初の車が止まってくれた。
同じ市内までだったが、南下するので距離を稼いだのは稼いだ。距離が短くても、嬉しいものだ。

夜の方が止まってくれやすいのでは?と言う想像は意外に当たりだった。
1番多かったのが、長距離トラックだ。距離も稼げるし、まず悪い人はいないし、かなり効率が良かった。
3日目にもなると、俺達は慣れたもので、長距離トラックのお兄さん用にはタバコ等のお土産、
普通車の一般人には飴玉等のお土産、と勝手に決め、コンビニで事前に買っていた。
特にタバコは喜ばれた。普通車に乗った時も、喋り好きなTのおかげで、常に車内は笑いに満ちていた。
女の子2~3人組の車もあったが、正直、良い思いは何度かしたものだった。
4日目には本州に到達していた。コツがつかめてきた俺達は、
その土地の名物に舌鼓を打ったり、一期一会の出会いを楽しんだりと余裕も出てきていた。

銭湯を見つけなるべく毎日風呂には入り、宿泊も2日に1度ネカフェに泊まると決め、経費を節約していた。
ご好意で、ドライバーの家に泊めてもらう事もあり、その時は本当にありがたかった。
しかし、2人共々に生涯トラウマになるであろう恐怖の体験が、出発から約2週間後、甲信地方の山深い田舎で起こったのだった。
690 名無し    :2016/08/28(日) 18:38:18    ID:6abCRllw
「おっ♪ おっ♪ おま○こ おま○こ 舐めたいなっ♪ ペロペロ~ ペロペロ~」
男友達だけの集まりになると、いつもTは卑猥な歌を歌いだす。その夜もTは歌いだした。
その日の夜は、2時間前に寂れた国道沿いのコンビニで降ろしてもらって以来、
中々車が止まらず、それに加えてあまりの蒸し暑さに俺達はグロッキー状態だった。
暑さと疲労の為か、俺達は変なテンションになっていた。
「こんな田舎のコンビニに降ろされたんじゃ、たまったもんじゃないよな。

 これなら、さっきの人の家に無理言って泊めてもらえば良かったかなぁ?」とT。
確かに先ほどのドライバーは、このコンビニから車で10分程行った所に家があるらしい。
しかし、どこの家かも分かるはずもなく、言っても仕方が無い事だった。
時刻は深夜12時を少し過ぎた所だった。俺たちは30分交代で、車に手を上げるヤツ、
コンビニで涼むヤツ、に別れることにした。コンビニの店長にも事情を説明したら
「頑張ってね。最悪、どうしても立ち往生したら俺が市内まで送ってやるよ」と言ってくれた。こういう田舎の暖かい人の心は実に嬉しい。
それからいよいよ1時間半も過ぎたが、一向に車がつかまらない。と言うか、ほとんど通らない。

Tも店長とかなり意気投合し、いよいよ店長の行為に甘えるか、と思っていたその時、
1台のキャンピングカーがコンビニの駐車場に停車した。これが、あの忘れえぬ悪夢の始まりだった。
691 名無し    :2016/08/28(日) 18:39:19    ID:6abCRllw
運転席のドアが開き、コンビニに年齢はおよそ60代くらいかと思われる男性が入ってきた。
男の服装は、カウボーイがかぶるようなツバ広の防止に、スーツ姿、と言う奇妙なモノだった。
俺はその時、丁度コンビニの中におり、何ともなくその男性の様子を見ていた。
買い物籠に、やたらと大量の絆創膏などを放り込んでいる。コーラの1.5?のペットボトルを2本も投げ入れていた。
その男を、会計をしている最中、じっと立ち読みをしている俺の方を凝視していた。
何となく気持ちが悪かったので、視線を感じながらも俺は無視して本を読んでいた。

やがて男は店を出た。そろそろ交代の時間なので、カズヤの所に行こうとすると、駐車場でTが男と話をしていた。
「おい、乗せてくれるってよ!」
どうやら、そういう事らしい。俺は当初は男に何か気持ち悪さは感じていたのだが、
間近で見ると、人の良さそうな普通のおじさんに見えた。俺は疲労や眠気の為にほとんど思考が出来ず、
「はは~ん、アウトドア派(キャンピングカー)だからああいう帽子か」などと言う良く分からない納得を自分にさせた。

キャンピングカーに乗り込んだ時、「しまった」と思った。
「おかしい」のだ。「何が」と言われても「おかしいからおかしい」としか書き様がないかも知れない。
これは感覚の問題なのだから…ドライバーには家族がいた。もちろん、
キャンピングカーと言うことで、中に同乗者が居る事は予想はしていたのだが。

父 ドライバー およそ60代
母 助手席に座る。見た目70代
双子の息子 どう見ても40過ぎ
692 名無し    :2016/08/28(日) 18:40:24    ID:6abCRllw
人間は、予想していなかったモノを見ると、一瞬思考が止まる。
まず車内に入って目に飛び込んで来たのは、まったく同じギンガムチェックのシャツ、
同じスラックス、同じ靴、同じ髪型(頭頂ハゲ)、同じ姿勢で座る同じ顔の双子の中年のオッサンだった。
Tも絶句していた様子だった。いや、別にこういう双子が居てもおかしくはない、
おかしくもないし悪くもないのだが…あの異様な雰囲気は、実際その場で目にしてみないと伝えられない。
「早く座って」と父に言われるがまま、俺たちはその家族の雰囲気に呑まれるかの様に、車内に腰を下ろした。

まず、俺達は家族に挨拶をし、父が運転をしながら、自分の家族の簡単な説明を始めた。
母が助手席で前を見て座っている時は良く分からなかったが、母も異様だった。
ウェディングドレスのような、真っ白なサマーワンピース。顔のメイクは「バカ殿か」と
見まがうほどの白粉ベタ塗り。極めつけは母の名前で、「聖(セント)ジョセフィーヌ」。
父はちなみに「聖(セント)ジョージ」と言うらしい。
双子にも言葉を失った。名前が「赤」と「青」と言うらしいのだ。
赤ら顔のオッサンは「赤」で、ほっぺたに青痣があるオッサンは「青」。普通、自分の子供にこんな名前をつけるだろうか?
俺達はこの時点で目配せをし、適当な所で早く降ろしてもらう決意をしていた。狂っている。
俺達には主に父と母が話しかけて来て、俺達も気もそぞれで適当な答えをしていた。
双子はまったく喋らず、まったく同じ姿勢、同じペースでコーラのペットボトルをラッパ飲みしていた。
ゲップまで同じタイミングで出された時は、背筋が凍り、もう限界だと思った。
693 名無し    :2016/08/28(日) 18:43:31    ID:6abCRllw
「あの、ありがとうございます。もうここらで結構ですので…」
キャンピングカーが発車して15分も経たないうちに、Tが口を開いた。
しかし、父はしきりに俺達を引きとめ、母は「熊が出るから!今日と明日は!」と意味不明な事を言っていた。
俺達は腰を浮かせ、本当にもう結構です、としきりに訴えかけたが、
父は「せめて晩餐を食べていけ」と言って、降ろしてくれる気配はない。
夜中の2時にもなろうかと言う時に、晩餐も晩飯も無いだろうと思うのだが…
双子のオッサン達は、相変わらず無口で、今度は棒つきのペロペロキャンディを舐めている。

「これ、マジでヤバイだろ」と、Tが小声で囁いてきた。
俺は相槌を打った。しきりに父と母が話しかけてくるので、中々話せないのだ。
1度、父の言葉が聞こえなかった時など「聞こえたか!!」とえらい剣幕で怒鳴られた。
その時双子のオッサンが同時にケタケタ笑い出し、俺達はいよいよ「ヤバイ」と確信した。

キャンピングカーが、国道を逸れて山道に入ろうとしたので、流石に俺達は立ち上がった。
「すみません、本当にここで。ありがとうございました」と運転席に駆け寄った。
父は延々と「晩餐の用意が出来ているから」と言って聞こうとしない。
母も、素晴らしく美味しい晩餐だから、是非に、と引き止める。
俺らは小声で話し合った。いざとなったら、逃げるぞ、と。
流石に走行中は危ないので、車が止まったら逃げよう、と。
やがて、キャンピングカーは山道を30分ほど走り、小川がある開けた場所に停車した。
「着いたぞ」と父。その時、キャンピングカーの1番後部のドア(俺達はトイレと思っていた)から
「キャッキャッ」と子供の様な笑い声が聞こえた。まだ誰かが乗っていたか!? その事に心底ゾッとした。
「マモルもお腹すいたよねー」と母。マモル…家族の中では、唯一マシな名前だ。幼い子供なのだろうか。
すると、今まで無口だった双子のオッサン達が、口をそろえて
「マモルは出したら、だぁ・あぁ・めぇ!!」とハモりながら叫んだ。
「そうね、マモルはお体が弱いからねー」と母。
「あーっはっはっはっ!!」といきなり爆笑する父。
「乗せて貰った手前、いきなり破ァは拙いよな(Tはなにやらブツブツ呟いていた)」
694 名無し    :2016/08/28(日) 18:46:30    ID:6abCRllw
俺達は、車の外に降りた。良く見ると、男が川の傍で焚き火をしていた。まだ仲間がいたのか…と、絶望的な気持ちになった。
異様に背が高く、ゴツい。2m近くはあるだろうか。父と同じテンガロンハットの様な帽子をかぶり、スーツと言う異様な出で立ちだ。
帽子を目深に被っており、表情が一切見えない。
焚き火に浮かび上がった、キャンピングカーのフロントに描かれた十字架も、何か不気味だった。
ミッ○ーマ○スのマーチ、の口笛を吹きながら、男は大型のナイフで何かを解体していた。
毛に覆われた足から見ると、どうやら動物の様だった。イノシシか、野犬か…どっちにしろ、そんなモノを食わさせるのは御免だった。
俺達は逃げ出す算段をしていたが、予想外の大男の出現、大型のナイフを見て、萎縮してしまった。

「さぁさ、席に着こうか!」と父。大男がナイフを置き、傍でグツグツ煮えている鍋に味付けをしている様子だった。
「あの、しょんべんしてきます」とT。「逃げよう」と言う事だろう。俺も行く事にした。
「早くね~」と母。俺達はキャンピングカーの横を通り、森に入って逃げようとしたその時、
「そこまでさ!ハハハ」
夢の国で見かける水分子の様な頭の生き物がいた。
695 名無し    :2016/08/28(日) 18:50:05    ID:6abCRllw
後方で、父と母が何か叫んでいたが、気にする余裕などなかった。
「ヤバイヤバイヤバイ」とTは呟きながら森の中を走っている。お互い、何度も転んだ。
とにかく下って県道に出よう、と小さなペンライト片手にがむしゃらに森を下へ下へと走っていった。
考えが甘かった。小川のあった広場からも、町の明かりは近くに見えた気がしたのだが、
1時間ほど激走しても、一向に明かりが見えてこない。完全に道に迷ったのだ。
心臓と手足が根をあげ、俺達はその場にへたり込んだ。
「あのホラー生物、追ってくると思うか?」とT。
「俺達はあの一家とは関係無いし、そこは追ってこないだろ。映画じゃあるまいし。
 ただの少しおかしい変人一家だろう。最後に見たヤツは、ちょっとチビりそうになったけど…」
「荷物…どうするか」
「幸い、金と携帯は身につけてたしな…服は、残念だけど諦めるか」
「マジハンパねぇw」
「はははw」

俺達は精神も極限状態にあったのか、なぜかおかしさがこみ上げてきた。
ひとしきり爆笑した後、森独特のむせ返る様な濃い匂いと、周囲が一切見えない暗闇に、現実に戻された。
恐怖生物から逃げたのは良いが、ここで遭難しては話にならない。
樹海じゃあるまいし、まず遭難はしないだろうが、万が一の事も頭に思い浮かんだ。
「朝まで待った方が良くないか?さっきのババァじゃないけど、熊まではいかなくとも、野犬とかいたらな…」
俺は一刻も早く下りたかったが、真っ暗闇の中をがむしゃらに進んで、さっきの川原に戻っても恐ろしいので、
腰を下ろせそうな倒れた古木に座り、休憩する事にした。一時はお互いあーだこーだと喋っていたが、
極端なストレスと疲労の為か、お互いにうつらうつらと意識が飛ぶようになってきた。
696 名無し    :2016/08/28(日) 18:54:48    ID:6abCRllw
ハッ、と目が覚めた。反射的に携帯を見る。午前4時。辺りはうっすらと明るくなって来ている。
横を見ると、カズヤがいない。一瞬パニックになったら、俺の真後ろにカズヤは立っていた。
「何やってるんだ?」と聞く。
「起きたか…聞こえないか?」と、木の棒を持って何かを警戒している様子だった。
「何が…」
「シッ」
かすかに遠くの方で音が聞こえた。口笛だった。ミッ○ーマ○スのマーチの。CDにも吹き込んでも良いくらいの、良く通る美音だ。
しかし、俺達にとっては恐怖の音以外の何物でもなかった。
「あの生物の…」
「だよな」
「探してるんだよ、俺らを!!」
再び、俺たちは猛ダッシュで森の中へと駆け始めた。辺りがやや明るくなったせいか、以前よりは周囲が良く見える。

躓いて転ぶ心配が減ったせいか、かなりの猛スピードで走った。
20分くらい走っただろうか。少し開けた場所に出た。今は使われていない駐車場の様だった。
街の景色が、木々越しにうっすらと見える。大分下ってこれたのだろうか。

腹が痛い、とTが言い出した。我慢が出来ないらしい。古びた駐車場の隅に、古びたトイレがあった。
俺も多少もよおしてはいたのだが、あの生物がいつ追いついてくるかもしれないのに、個室に入る気にはなれなかった。
俺がトイレの外で目を光らせている隙に、Tが個室で用を足し始めた。
「紙はあるけどよ~ ガピガピで、蚊とか張り付いてるよ…破ァ これでマシにはなったな」
Tは極小の光弾で紙から虫を払い乾燥させると糞も垂れ始めた。
「なぁ…誰か泣いてるよな?」と個室の中から大声でTが言い出した。
「は?」
「いや、隣の女子トイレだと思うんだが…女の子が泣いてねぇか?」
697 寺生まれの名無しさん    :2017/01/23(月) 21:01:07    ID:4VbAKL5s
カズヤに言われて初めて気がつき、聴こえた。確かに女子トイレの中から女の泣き声がする…
カズヤも俺も黙り込んだ。誰かが女子トイレに入っているのか?何故、泣いているのか?
「なぁ…お前確認してくれよ。段々泣き声酷くなってるだろ…」
正直、気味が悪かった。しかし、こんな山奥で女の子が寂れたトイレの個室で1人、
泣いているのであれば、何か大事があったに違いない。俺は意を決して、女子トイレに入り、泣き声のする個室に向かい声をかけた。
「すみません…どうかしましたか?」
返事はなく、まだ泣き声だけが聴こえる。
「体調でも悪いんですか、すみません、大丈夫ですか」
泣き声が激しくなるばかりで、一向にこちらの問いかけに返事が帰ってこない。
その時、駐車場の上に続く道から、車の音がした。
「出ろ!!」俺は確信とも言える嫌な予感に襲われ、女子トイレを飛び出し、カズヤの個室のドアを叩いた。
「何だよ」
「車の音がする、万が一の事もあるから早く出ろ!!」
「わ、分かった」
数秒経って、青ざめた顔でカズヤがジーンズを履きながら出てきた。と、同時に駐車場に下ってくるキャンピングカーが見えた。
「最悪だ…」
今森を下る方に飛び出たら、確実にあの変態一家の視界に入る。選択肢は、唯一死角になっている、トイレの裏側に隠れる事しかなかった。
女の子を気遣っている余裕は消え、俺達はトイレを出て、裏側で息を殺してジッとしていた。
頼む、止まるなよ、そのまま行けよ、そのまま…
「オイオイオイオイオイ、見つかったのか?」カズヤが早口で呟いた。
キャンピングカーのエンジン音が、駐車場で止まったのだ。ドアを開ける音が聞こえ、トイレに向かって来る足音が聴こえ始めた。
このトイレの裏側はすぐ5m程の崖になっており、足場は俺達が立つのがやっとだった。
よほど何かがなければ、裏側まで見に来る事はないはずだ。もし俺達に気づいて近いづいて来ているのであれば、
最悪の場合、崖を飛び降りる覚悟だった。飛び降りても怪我はしない程度の崖であり、やれない事はない。
用を足しに来ただけであってくれ、頼む…俺達は祈るしかなかった。
しかし、一向に女の子の泣き声が止まらない。あの子が変態一家にどうにかされるのではないか?それが気が気でならなかった。
698 寺生まれの名無しさん    :2017/01/23(月) 21:02:05    ID:4VbAKL5s
男子トイレに誰かが入ってきた。声の様子からすると、父だ。
「やぁ、気持ちが良いな。ハ~レルヤ!!ハ~レルヤ!!」と、どうやら小の方をしている様子だった。
その後すぐに、個室に入る音と足音が複数聞こえた。双子のオッサンだろうか。
最早、女の子の存在は完全にバレているはずだった。女子トイレに入った母の「紙が無い!」と言う声も聴こえた。
女の子はまだ泣きじゃくっている。やがて、父も双子のオッサン達(恐らく)も、トイレを出て行った様子だった。
おかしい。女の子に対しての変態一家の対応が無い。やがて、母も出て行って、変態一家の話し声が遠くになっていった。
気づかないわけがない。現に女の子はまだ泣きじゃくっているのだ。
俺とカズヤが怪訝な顔をしていると、父の声が聞こえた。
「~を待つ、もうすぐ来るから」と言っていた。何を待つ、のかは聞き取れなかった。
どうやら双子のオッサンたちが、グズッている様子だった。
やがて平手打ちの様な男が聴こえ、恐らく、双子のオッサンの泣き声が聴こえてきた。
悪夢だった。楽しかったはずのヒッチハイクの旅が、なぜこんな事に…
今まではあまりの突飛な展開に怯えるだけだったが、急にあの変態一家に対して怒りがこみ上げて来た。
「あのキャンピングカーをブンどって、山を降りる手もあるな。あのジジィどもをブン殴ってでも。
 大男がいない今がチャンスじゃないのか?待ってるって、大男の事じゃないのか?」
カズヤが小声で言った。しかし、俺は向こうが俺達に気がついてない以上、
このまま隠れて、奴らが通り過ぎるのを待つほうが得策に思えた。
女の子の事も気になる。奴らが去ったら、ドアを開けてでも確かめるつもりだった。
その旨をカズヤに伝えると、しぶしぶ頷いた。それから15分程経った時。
「~ちゃん来たよ~!(聞き取れない)」母の声がした。待っていた主が駐車場に到着したらしい。
何やら談笑している声が聞こえるが、良く聞き取れない。再び、トイレに向かってくる足音が聴こえて来た。
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