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クレイジー・デスゲーム【長編】

1有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:09:29 ID:B8TFNj92
始めに……
この小説は、バトロワの行われている世界ではありますが、プログラムとは関係なく殺し合いをさせられることになった人達の物語です。
昔プログラムが行われた学校の、別のクラスの卒業生達で、年齢は皆、20代くらいをイメージしています。
登場人物は特殊な性格だったり、命が大切なものだという意識を、あまり持っていない人がけっこう多いです。
それから、私はかなりの初心者なので、ありがちな展開や矛盾だらけの小説になってしまうかもしれません。
人数もけっこう多いので、見せ場やまともな描写もなく死ぬ人達も、かなりいると思います。
あらかじめストーリーの骨組みだけは考えましたが、文章自体はそのつど書いていきますので、時々更新速度が遅くなってしまうこともあると思います。
それでも良いという心の広い方は、ぜひ読んでください。できれば感想を頂けると非常に嬉しいです。
優勝者予想とかいつでも募集してます。もちろん答えはお教えできませんが(笑)
あと、一応偽者防止のトリップは付けておきます。それでは、よろしくお願いします。

2有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:11:13 ID:B8TFNj92
参加者名簿

男性1番 青井 智史(あおい さとし)【元Eクラス・バスケ部】
男性2番 雨霧 蒼(あまぎり あおい)【元Bクラス・演劇部】
男性3番 伊達 雷太(いだて らいた)【元Cクラス・テニス部】
男性4番 大鈍内 政雄(おおとない まさお)【元Fクラス・柔道部】
男性5番 小太刀 修平(おだち しゅうへい)【元Cクラス・卓球部】
男性6番 鏡谷 淳(かがみや じゅん)【元Bクラス・ブラスバンド部】
男性7番 格清 翼人(かくせ よくと)【元Fクラス・バスケ部】
男性8番 間邪 伸夫(かんじゃ のぶお)【元Eクラス・野球部】
男性9番 倉知 司(くらち つかさ)【元Aクラス・パソコン部】
男性10番 剣持 涼士(けんもち きよし)【元Aクラス・陸上部】
男性11番 幸田 陽介(こうだ ようすけ)【元Eクラス・野球部】
男性12番 桜井 透瞳(さくらい とうどう)【元Cクラス・書道部】
男性13番 重岡 包(しげおか つつむ)【元Aクラス・野球部】
男性14番 内海 治(ないがい おさむ)【元Dクラス・写真部】
男性15番 速水 凛也(はやみ りんや)【元Fクラス・サッカー部】
男性16番 細谷 直樹(ほそたに なおき)【元Cクラス・茶道部】
男性17番 闇野 豪(やみの ごう)【元Dクラス・空手部】
男性18番 善積 優一郎(よしずみ ゆういちろう)【元Bクラス・空手部】
男性19番 義村 竜哉(よしむら たつや)【元Dクラス・剣道部】
男性20番 力丸 勝彦(りきまる かつひこ)【元Bクラス・柔道部】

女性1番 赤池 久美子(あかいけ くみこ)【元Eクラス・バレー部】
女性2番 浅川 瀬奈(あさかわ せな)【元Dクラス・茶道部】
女性3番 麻生 児美(あそう いくみ)【元Eクラス・空手部】
女性4番 薄羽 美代子(うすばね みよこ)【元Fクラス・ブラスバンド部】
女性5番 鬼塚 麗美(おにづか れみ)【元Cクラス・英語部】
女性6番 京墓 瑠璃葉(きょうづか るりは)【元Dクラス・美術部】
女性7番 金城 翔音(きんじょう しおん)【元Bクラス・テニス部】
女性8番 黒羽 菊花(くろはね きくか)【元Bクラス・美術部】
女性9番 信太 亜希保(しのだ あきほ)【元Eクラス・パソコン部】
女性10番 正治 春香(しょうじ はるか)【元Dクラス・柔道部】
女性11番 白鳥 美月(しらとり みつき)【元Cクラス・卓球部】
女性12番 土屋 村子(つちや つねこ)【元Aクラス・書道部】
女性13番 名雪 清風(なゆき きよか)【元Bクラス・写真部】
女性14番 早坂 英梨(はやさか えり)【元Aクラス・陸上部】
女性15番 不動 今日佳(ふどう きょうか)【元Cクラス・演劇部】
女性16番 舞草 瑞菜(まいくさ みずな)【元Aクラス・茶道部】
女性17番 武藤 綺観(むとう あやみ)【元Fクラス・サッカー部】
女性18番 弓削 夢乃(ゆずり ゆめの)【元Aクラス・水泳部】
女性19番 油原 福恵(ゆはら ふくえ)【元Fクラス・ブラスバンド部】
女性20番 冷泉 冴良(れいせん さえら)【元Fクラス・英語部】

主催者 乱場 功(らんば いさお)【元Gクラス担任・サッカー部顧問】

3有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:16:56 ID:B8TFNj92
ちょっとしたプロフィールです。性格やその他の特徴はまだ秘密にしておきます。

【番号】男性1番
【氏名】青井 智史(あおい さとし)
【容姿】184cm、73kg。かっこよくセットされたサラサラの茶髪。
    なかなか端整だが、おっとりしていてどこか抜けてそうな顔立ち。

【番号】男性2番
【氏名】雨霧 蒼(あまぎり あおい)
【容姿】170cm、56kg。少しだけボサボサの、微妙に長めな黒髪。
    無気力、無感情な目をしているが、顔はけっこう整っている。

【番号】男性3番
【氏名】伊達 雷太(いだて らいた)
【容姿】163cm、54kg。ワックスで立てた濃い茶髪。
    丸顔で、どこにでもいそうな普通のルックス。

【番号】男性4番
【氏名】大鈍内 政雄(おおとない まさお)
【容姿】167cm、72kg。黒髪の七三分け。
    顔が大きくブサイクな方だが目は優しげ。太っている。

【番号】男性5番
【氏名】小太刀 修平(おだち しゅうへい)
【容姿】162cm、55kg。普通の長さの茶色っぽい黒髪。
    丸顔で、ちょっとだけブサイクだが愛嬌がある感じ。

【番号】男性6番
【氏名】鏡谷 淳(かがみや じゅん)
【容姿】183cm、60kg。長めな、肩に掛かるくらいの黒髪。
    童顔で癒し系の可愛らしい顔立ち。ルックスは良い。細身。

【番号】男性7番
【氏名】格清 翼人(かくせ よくと)
【容姿】178cm、63kg。綺麗にセットした、少しだけ茶色っぽい黒髪。
    かなりの美形で、モデルとして勤まるレベル。

【番号】男性8番
【氏名】間邪 伸夫(かんじゃ のぶお)
【容姿】173cm、69kg。坊主頭。
    顔の骨格がごつくて、歯並びの悪いブサイク。

【番号】男性9番
【氏名】倉知 司(くらち つかさ)
【容姿】175cm、58kg。茶髪のオールバック。眼鏡を掛けている。
    すらっとした感じで、普通にかっこいい方。

【番号】男性10番
【氏名】剣持 涼士(けんもち きよし)
【容姿】181cm、64kg。短めで、少し立てた黒髪。
    きつくて冷たい目。ルックスは割りと良い。

4有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:18:15 ID:B8TFNj92
【番号】男性11番
【氏名】幸田 陽介(こうだ ようすけ)
【容姿】168cm、53kg。少しだけ長めな無造作ヘアーの茶髪。
    ルックスは平均くらいだが癒し系な顔立ち。

【番号】男性12番
【氏名】桜井 透瞳(さくらい とうどう)
【容姿】185cm、70kg。美容室でセットして立てている明るい色の茶髪。
    目が大きいのが特徴で、なかなかの美形。

【番号】男性13番
【氏名】重岡 包(しげおか つつむ)
【容姿】174cm、81kg。天然パーマの短い黒髪。
    色黒でブタのような顔をしている。けっこうブサイク。太っていて筋肉もある。

【番号】男性14番
【氏名】内海 治(ないがい おさむ)
【容姿】178cm、65kg。短めの黒髪。眼鏡を掛けている。
    ルックスは平均的で、少しだけ冷めた目をしている。

【番号】男性15番
【氏名】速水 凛也(はやみ りんや)
【容姿】169cm、62kg。長めの黒い無造作ヘアー。
    なかなか美形でさわやかな顔立ちをしている。

【番号】男性16番
【氏名】細谷 直樹(ほそたに なおき)
【容姿】187cm、59kg。おでこを広く出した硬い黒髪。
    いかにもなよなよしているような女っぽい顔立ち。かなりの細身。

【番号】男性17番
【氏名】闇野 豪(やみの ごう)
【容姿】179cm、67kg。ワックスで所々固めてある量の多い金髪。
    ちょっと爬虫類系の怖い顔立ち。だが、ルックスはどちらかというと良い。

【番号】男性18番
【氏名】善積 優一郎(よしずみ ゆういちろう)
【容姿】172cm、63kg。無造作ヘアーの茶髪。
    少し色黒で、しっかりしていて優しそうな顔立ち。筋肉質。

【番号】男性19番
【氏名】義村 竜哉(よしむら たつや)
【容姿】166cm、61kg。所々立てた金に近い茶髪。
    正義感の強そうなしっかりした顔立ち。ルックスは普通。

【番号】男性20番
【氏名】力丸 勝彦(りきまる かつひこ)
【容姿】174cm、64kg。少しだけ伸びた黒髪の坊主頭。
    ちょっとごつい顔立ちをしているが、ルックスは普通。筋肉質。

5有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:18:57 ID:B8TFNj92
【番号】女性1番
【氏名】赤池 久美子(あかいけ くみこ)
【容姿】164cm、55kg。茶髪で、腰まで伸ばした長いツインテール。
    整ってはいるが、冷たい印象のある顔立ち。

【番号】女性2番
【氏名】浅川 瀬奈(あさかわ せな)
【容姿】157cm、49kg。淡い栗色のセミロングの髪。眼鏡を掛けている。
    おとなしそうな、ごく普通のルックス。

【番号】女性3番
【氏名】麻生 児美(あそう いくみ)
【容姿】166cm、63kg。黒髪のショートヘアーで、少し髪を立てている。
    平均的なルックスで少ししっかりした顔立ち。筋肉質。

【番号】女性4番
【氏名】薄羽 美代子(うすばね みよこ)
【容姿】158cm、52kg。2つに結わえられた短めの黒髪。
    素朴で平凡だけど、ちょっと可愛らしいルックス。

【番号】女性5番
【氏名】鬼塚 麗美(おにづか れみ)
【容姿】153cm、43kg。まっすぐに切りそろえられたセミロングの茶髪。眼鏡を掛けている。
    クールな切れ長のキツい目をしている。なかなか美人。少し細身。

【番号】女性6番
【氏名】京墓 瑠璃葉(きょうづか るりは)
【容姿】161cm、47kg。真っ黒なセミロングの巻き髪で、赤いヘアバンドを着けている。
    可憐な、いかにも女らしい特徴の顔立ち。ルックス自体は普通。少し細身。

【番号】女性7番
【氏名】金城 翔音(きんじょう しおん)
【容姿】157cm、53kg。胸に届くくらいの、少しだけ茶色っぽい黒髪。
    少し計算高そうな顔立ちだが、気品がある。少し巨乳。

【番号】女性8番
【氏名】黒羽 菊花(くろはね きくか)
【容姿】162cm、46kg。腰にぎりぎり届くくらいの綺麗な黒髪。
    色白で相当可愛らしい顔立ち。細身で胸はあまり無い。

【番号】女性9番
【氏名】信太 亜希保(しのだ あきほ)
【容姿】160cm、65kg。金髪で、天然パーマのロングヘアーを一つに結っている。
    丸顔でふっくらした穏やかそうな顔立ち。ぽっちゃりしている。

【番号】女性10番
【氏名】正治 春香(しょうじ はるか)
【容姿】165cm、61kg。茶髪と金髪の中間くらいの色をした短めの無造作ヘアー。
    明るくて快活な感じの顔立ち。けっこう可愛いルックス。筋肉質。

6有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:19:45 ID:B8TFNj92
【番号】女性11番
【氏名】白鳥 美月(しらとり みつき)
【容姿】163cm、52kg。栗色で軽くウェーブのかかった肩に掛かるくらいの長さの髪。
    かなりの美人でアイドル並みかそれ以上のルックス。癒し系。

【番号】女性12番
【氏名】土屋 村子(つちや つねこ)
【容姿】172cm、64kg。耳に掛かるくらいのボーイッシュな短い茶髪。
    少し色黒で全体的に目立たない、鼻が曲がったブス。

【番号】女性13番
【氏名】名雪 清風(なゆき きよか)
【容姿】160cm、43kg。セミロングで、少し乱れた黒髪。
    少しだけ頬がこけている。可憐で、かなり可弱そうな雰囲気。すごく細身。

【番号】女性14番
【氏名】早坂 英梨(はやさか えり)
【容姿】154cm、47kg。茶髪のポニーテール。眼鏡を掛けている。
    鼻が少し大きめで小顔。ルックスはどちらかと言えば良い方。

【番号】女性15番
【氏名】不動 今日佳(ふどう きょうか)
【容姿】159cm、55kg。黒くてかなり短いボーイッシュな髪。
    目が小さく、鼻が潰れているかなりブスなルックス。

【番号】女性16番
【氏名】舞草 瑞菜(まいくさ みずな)
【容姿】148cm、49kg。前髪がまっすぐに切りそろえられた腰まで伸ばした黒髪。
    あまり目立たないパッとしない顔立ち。ルックスも普通。

【番号】女性17番
【氏名】武藤 綺観(むとう あやみ)
【容姿】156cm、50kg。濃い茶髪のセミロングで、前髪は真ん中分け。
    決してキツくは無いが、目の奥の眼光は鋭い。クールで少し美人。

【番号】女性18番
【氏名】弓削 夢乃(ゆずり ゆめの)
【容姿】150cm、46kg。茶色っぽい黒髪のお団子頭(ピンクの髪飾り付き)で、肩と腰の間くらいのロングヘアー。
    色気がある感じで、目はときどき強気に見える。ルックスは普通。巨乳。

【番号】女性19番
【氏名】油原 福恵(ゆはら ふくえ)
【容姿】161cm、54kg。ボサボサで短めの茶髪。
    明るい感じだが、歯並びが悪く、少しブス。

【番号】女性20番
【氏名】冷泉 冴良(れいせん さえら)
【容姿】171cm、51kg。前も後ろも、左側だけ長めにした非対称な黒髪。
    目はくりっとしているが、あまり表情が変わらずいかにも冷静そうに見える。細身。

7有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:20:40 ID:B8TFNj92
それは、奇妙な招待状から始まった。内容は、途中までなら、一見普通の中学校の同窓会の誘いだった。
しかし、その手紙には、おかしな文章が添えられていた。

『この招待状は、先生が昔受け持った中学校の生徒の中から、独断と偏見で選抜した方にのみ送られています。
そして、この同窓会では、あるゲームを予定しています。一旦参加したら、途中で降りることは不可能です。
それでも構わないという方は、参加に○を付けて下記の宛先まで郵送して下さい。
参加者は、男女それぞれ20名を予定しております。希望者多数の場合は、抽選とさせていただきます。
なお、ゲームの内容等についての質問は、一切受け付けておりません』

明らかに怪しい手紙だ。しかし、その送り主は、間違いなく中学の先生のものだった。
とは言え、この先生が、招待状を受け取った人達の担任になったことは無かった。
なぜなら彼は、10年ほど前に行われたプログラムの担当教官だったからだ。
そして、そのプログラムは優勝者無しという結果だった。
つまり、彼が受け持っていたクラスの生徒は、もう全員亡くなっていることになる。
招待状は、どんなに送りたくても、その生徒達に送ることは出来ないのだ。
もし同じ住所に送ったとしても、それを読むのは遺族か、もしくはそこに現在住んでいる人間になる。

もう皆、会わなくなってかなり経つが、その教師は個性が強く、授業中でもたまに変わったゲームを考案しては、クラスの皆にやらせていた。
もう、勉強を教えに来ているのか、遊びに来ているのか分からない状態で、クビにならなかったのが不思議なくらいだった。
そのため、学校中の人気者で、今でもその存在を覚えている人は多く、その手紙のことも『あの先生なら、ふざけてこんな招待状を送っても不思議では無い』と思わせるような何かがあった。

明るくて、ルーモアに溢れていて、大勢の生徒から好かれていた教師。怪しむ者は少なかった。
だからこそ、このゲームは始まってしまったのだ。

8有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:27:32 ID:B8TFNj92
そして、数日後いよいよその同窓会の日は来た。
集まったのは確かに元々同じ中学で過ごしてきた者達だったが、違うクラスの者が大半を占めているため、最初はなかなか打ち解けなかった。
しかし、中には今でも交流を続けている者達もいるらしく、そういう人間を見つけてはいろいろ世間話をする人達もいた。
特に、翼人と福恵はなんと最近婚約をしたらしく、ウェディングプランのことまで周囲に見せ付けるように語っていた。
(もっとも周りからは、なんで翼人ほどのルックスの持ち主が、平均にも劣る福恵と恋人なのかを疑問視する声が多くあったが、それが翼人の趣味なのか、それとも性格やフィーリングがたまたま合っただけなのかは智史には分からなかった)
その2人ほどで無くともカップルはいるようで、優一郎と菊花、修平と美月、竜哉と瑠璃葉などが一緒に話し合っていた。
(ちなみに美月は学校での異性からの人気が高く、彼女に片思いしている男も多かった。翼人と福恵とは逆で、なんで美月ほどの美女が修平と付き合っているのか不思議がられていた。こちらについてもあまり恋愛に興味のない智史にとっては知ったことでは無かった)

逆に仲の悪い者達もいて、涼士と夢乃の間からはしょっちゅう文句や不機嫌な声が聞こえてきたがこれは一種のケンカ友達というやつだろう。
しかし、麗美と冴良のように、表向きは他の人としゃべって楽しんでいるようなフリをしながら、お互い時々視線で牽制しあうようなら、気にしないでおけばいいのにと智史は思うのだった。

とりあえず、一人でいるのも気まずいので、智史は中学時代割と仲の良かった久美子のところに話に行った。
本当は翼人や陽介と男同士の話もしてみたかったが、翼人は福恵にべったりしていて邪魔するのもなんだか悪いし、陽介は持参したコンピューターゲームに夢中だったので、やはり邪魔になると思い、止めておいた。
周りにカップルだと誤解されないかはちょっとだけ気になったが、久美子はさばさばした性格なのでそういう心配も無さそうだった。
男女で話していても、淳と美代子のように、雰囲気で何となくあれはただの友達なんだなと察することが出来る人達もいる。
きっと自分達もそんな風に見られているのだろうと智史は思った。

9有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:28:38 ID:B8TFNj92
そこに、ドアがガラッと開く音がした。入ってきたのはこの同窓会の主催者、乱場功先生だ。
「お〜い。もう全員揃ったかー?今から確認するぞー!」
相変わらず陽気で快活な先生だ。人なつっこいタイプの雷太や春香などはさっそく駆け寄って昔話をしようとしている。
先生はそれに嬉しそうに応えた後、しっかり全員いることを確認した。
「それじゃあ皆〜!今から予定していた船でのツアーの始まりだ。ちゃんと付いてくるんだぞ。はぐれないようにな〜」

船でのツアーは確かに招待状にも書いてあることだった。だが、少しおかしい。そのツアーの行き先が書いていなかったのだ。
それが気になったのか、せっかちな英梨が先生に聞いた。
「先生、このツアー目的地はどこなんですか?もったいぶらないで教えてくださいよー!」
しかし先生は、「着いてからのお楽しみだ」と言うだけだった。
皆もそれで納得し、この先生はどんなサプライズを仕掛けてくれるのだろうとワクワクしていた。

そして船着場に着いたが、皆はその寂れ具合にビックリした。こんなところから41人乗れるくらいの船が出港できるのかと思うくらいに。
いや、操縦士も含めると42人か。それはいいとして……皆、この何年も船が出港していなさそうな港に唖然としていた。
これでは到着先も期待できたものではない。先生は大金持ちで、経費なんていくらでも出せるのだから、もっとちゃんとしたところでやって欲しいと皆が顔に出した。
先生はそれを察したのか笑顔でこう言った。
「いや〜、皆。こんな寂れたとこに連れてきて悪いな〜。でもな、ここ先生の思い出の場所に行くのに都合のいいとこなんだよ。だからこの港ごと先生が買い取ったんだ。船のことなら心配しなくていいぞ〜。ちゃんと先生が買った船があるからな」
そう先生が指さした先には、この船着場に似合わぬ立派な小型船があった。小型といっても50人くらいは楽々乗れるサイズだ。

それからしばらくは皆船に乗り込んで、ますます思い出話は盛り上がった。
先生が一人一人の特徴を面白おかしく話してくれるから、元々同じ学校なだけあって、今まで話したことのない生徒も皆なんとなく覚えるようになっていった。
そして時間はあっという間に過ぎて行き、無人島らしきところに辿りついた。
「これから全員で、この島の廃校まで行くぞ〜。お楽しみまではしばらく時間が掛かるが、まあせっかく皆仲良くなったことだし、話の続きでもしながら待っててくれ」
その言葉に司や綺観、冴良が少し怪訝な表情をした。まるで何かに気付いてしまったかのように。
でも3人とも気のせいだと思ったのか、それとも何か他の考えがあるのか口には出さなかった。
気弱な直樹は、「先生〜、暗い廃校ってなんか怖いですよー」といつも通りのナヨナヨした口調で言ったが、笑い飛ばされ相手にされなかった。

10有紀 ◆PyB831QpqM:2009/10/19(月) 16:32:02 ID:B8TFNj92
そして全員が廃校の一室に集められた。
すると先生は、「お楽しみゲームは明日の6時からだ。今日は皆ここで寝るように!先生は保健室のベッドで寝てくるからな〜」と言い、鍵をかけて出て行ってしまった。
廃校の教室には不釣合いなレベルの電子ロックで、先生がセットすると中からは開けられないらしい。
皆が軽いパニック状態になる。
政雄が「先生ー!お楽しみゲームっていったい何なんですかー!」と、清風は「私たち何日くらいここにいるんですかー?私薬3日分しか持ってきてないんですよー」と叫び、そんな中綺観が、「これってまさか……」と小さくつぶやいた。
それを聞いて、綺観と同じことを考えていたらしい元クラスメートの冴良が「何だと思う?」と聞いてきた。
綺観がすぐ「ううん、何でもない」と答えると、冴良は少しもったいぶった口調で、「そう……私は…………これ、バトルロワイアルみたいだと思うわね」と言い放った。
教室が一気に静まり返る。
「もちろんあれは中学生を対象にしたものだし、催眠ガスとかで強引に連れてきて首輪を付けるものだから、本気で言ってるんじゃないわよ。あれを模倣したサバイバルゲームの真似事みたいなのをするんじゃないかなって考えてるの」
その言葉で教室中から安堵のため息がもれた。しかし、綺観と司の表情は暗いままだった。

11有紀 ◆PyB831QpqM:2009/11/14(土) 11:15:00 ID:WPT8tlWQ
結局その晩は全員、その教室の中で寝泊りすることになった。
寝具も無い硬い床に伸夫辺りは特にグチを漏らしていたが、文句を言っても何も変わらないということで、結局そこから出ることは出来ずに一晩が過ぎた。
そして次の日の5時半ころ、先生が電子ロックを解除し、中に入ってきた。
異様なのはその後ろから、まるでバトルロワイアルのプログラムの見張りをするかのような兵隊の格好をした男達がいっぱい入ってきたことだ。
先生が楽しげに大声を張り上げる。
「おーい、皆ー。ちゃんと逃げ出さずに待ってたかー」
その声と気配でほとんどの者は違和感を感じ、目を覚ました。
(もっとも清風のように不眠症で最初から起きていた者もいれば、淳のようにまだ呑気に眠っているものもいたが)
『逃げ出さずに』という言葉に、教室の中に少しの緊張感が走る。
それでもまだほとんどの者達はこれが、ちょっと大掛かりな『サバイバルゲームの真似事』だと信じていた。
きっとあの兵隊の格好をした男達が持っている銃もモデルガンで、ちょうど用意されているあの大量の首輪にはセンサーか何かが付いていて、それに反応する光線が出るモデルガンとかが用意されていて、(おそらくあのバトルロワイアルで支給品などを入れておくディパックに入っているのだろう)あの首輪を着け、センサーが反応したら負けみたいなルールで皆で遊ぶのだ。
それがきっと先生のいう『お楽しみゲーム』の内容で、優勝者には高価なプレゼントが用意されていたりするのだ。
兵隊の格好をした男達はそのエキストラで、ゲームの臨場感を出すために大金持ちなあの先生が雇ったりしたのだ。
寝ぼけたままの頭で、ほとんどの生徒達が楽観的にそう思考を廻らせる。

しかし次の瞬間、皆はその楽観的思考をふっとばされる光景を目のあたりにする。
「なんだ〜、淳はまだ眠ってるのか〜。皆もまだあんまり目が覚めてないみたいだしな〜。おい、ちょっと一発かましてやれ」
その先生の言葉の直後、兵隊の1人が淳の左腕目掛けて銃を撃った。

バァン!

その銃声に、教室中が一気に凍りついた。
あれはモデルガンなんかじゃない。間違いなく本物の銃。その証拠に淳の腕からは、鮮やかな赤い色をした血が流れ出している。
幸いかすめただけで、あまり深い怪我にはならなかったようだが。
隣にいた美代子が、ビクビクしながら「大丈夫!?」と声をかける。
淳は痛みに顔をしかめながら、それでもまだボーっとした感じで左腕の傷口を手で押さえながら起き上がる。
そして辺りを見渡した後、先生に一瞬だけ普段のイメージとは異なる鋭い視線を向ける。
普段はのんびりしたイメージなのに、淳は時々妙に鋭い一面を見せることがあった。
今回もあの短時間で、これから自分の身に降りかかる出来事を大体理解したようだ。
「何ですか。このバトルロワイアルみたいなの〜。あっ、そうか!先生、このメンバーでバトロワと同じルールのゲームするつもりでしょ!」
呑気な口調でも、言っていることは大変なことだ。それは、最後の1人になるまで殺しあうと言っているのと同じ意味を持つのだから。
この口調で言われると、なんだかそれは冗談のように聞こえるが、先ほどの銃弾が、それが本気の可能性が極めて高いことを物語っている。
ほとんどのメンバーは凍りついたままだ。綺観が、楽しそうに微笑んでいる先生に対して、覚悟を決めた表情で語りかけた。
「やっぱり……そうなんですね?」

12有紀 ◆PyB831QpqM:2009/11/14(土) 11:17:24 ID:WPT8tlWQ
教室中のメンバーの視線が一気に先生に集中する。頼むから否定してくれ……と祈るように。
しかし、皆の望みは叶わなかった。先生は楽しげにこう言ったのだ。

「お〜、よく気付いたな。えらいぞ〜。淳や綺観の言う通りだ。まあちょっとだけ違う点とかもあるけどな。これから皆にはご存知のこの首輪を着けてもらう。無理に外そうとしたり、禁止エリア内に入ると爆発するアレだ。でも安心しろ〜。禁止エリアはこの島の外と、後は廃校の周りだけだ。途中で増えることは無い。しかも廃校の周りは出発時間から3時間経つまでは爆発しないというオマケ付きだ。どうだ〜、これで少しは気が楽になっただろ」

いくらルールを少しだけ緩くしたところで、皆の生存率は変わらないだろう。そう思った司が、間を割って発言した。
「先生。どうせルールを変えるんなら、生存人数とかも変えちゃいましょうよ。優勝者を2人にするとか3人にするとか」
しかし、先生はそれには応じなかった。
「司〜、面白いこと言うな〜。でもダメだ。ルールはもう作っちゃったから今更変えるの面倒なんだよ。先生頭は柔らかい方なんだけどなー。めんどくさいのはちょっと嫌いだなー」
「そこをなんとか……」
「うるさいなー。面倒だって言ってるだろ?それ以上言うと今お前の頭ぶちぬくぞ?」

その言葉を聞いて、司は黙り込んでしまった。先生が説明の続きを始める。
「24時間死者が出なかった場合や、ゲーム開始から3日経っても最後の1人が決まらなかった場合は皆の首輪が爆発するぞ。先生もそんなに暇じゃないからな。面白いゲーム展開を待ってるぞー」
皆はさまざまな反応をした。瀬奈や政雄はかなり怯えているが、意外にも普段大人しげな陽介や美代子、菊花は割と落ち着いていた。今ごろ彼らは頭の中で何を考えているのか。逃げること?仲間を探すこと?どこかに隠れること?それとも……ゲームに乗ること?

最後の1つを想像した智史は少しだけ恐ろしくなり、その考えを打ち消そうとした。しかしダメだった。智史も毎年行われているバトルロワイアルのことはニュースで観ている。その中で2人の逃亡者が出た年は1回だけだった。苗字は確か七原と中川だっただろうか?正直うろ覚えだ。とにかく、自分がその2人のように上手く逃げ出せる自信は無い。それに、それ以外の毎年は1人の優勝者が出るか、時間切れか相打ちなどで全員が死亡するケースしか見たこと無い。死にたくなければ、参加するしかないのだろうか。この殺し合いに……。
きっとそうだろう。それ以外に命が助かる道はほぼ無いに等しい。唯一の例外とも言えるあの2人だって、結局は逃亡して何処に行ったのかも分からないが、平穏な暮らしはしていないんだろう。だったらこのゲームで早めに命を落とした方が楽なんじゃないか?そんな考えが智史の頭に浮かんでくる。しかし、それもとりあえずは打ち消した。自分には特に奥さんや彼女のような特別守りたい人がいるわけではない。しかし、俺が死んだら両親はきっと悲しむだろうと智史は思った。

売れない役者で、フリーターの智史は収入面で家族を支えているとは言えない。自分1人が食べていくのが精一杯で両親に仕送りもしていない。だが、人一倍優しい性格で、いつも両親の心の支えにはなっていた。優柔不断で心配をかけることはあったが、あまり家でも学校でも反発しない優等生だった(それほど成績がいいわけでは無かったが)

とにかく詳しいことはゲームが始まってから考えようか、と智史が思っていると、2発目の銃声が教室内に響きわたった。それはどうやら、ヒソヒソと私語をしていた竜哉と瑠璃葉に腹を立てた兵士が撃ったらしい。幸いにも弾は2人には当たらず、その間の床にめり込んだ。2人の押し殺したような悲鳴が聞こえる。
「あー、言い忘れてたが、これから廃校を出るまで私語は禁止な〜。約束守れない奴は死ぬことになるから気をつけろよ」

先生の注意が入った。智史には、2人の会話内容がよくは聞こえなかったが、竜哉が井戸という言葉を口走ったのは分かった。2人でそこで待ち合わせでもする気だろう。その後どうするのかは知らないが。
私語の禁止を言い忘れるなんて、先生も案外うっかり者なのかな、なんて智史が呑気すぎることを考えていると、さっそく彼の名前が呼ばれた。

「それじゃあゲームスタートだ。男性1番、青井智史。出発しろ」
ディパックを智史の方に投げ、先生がそう言った。

13有紀 ◆PyB831QpqM:2009/12/19(土) 10:17:31 ID:WPT8tlWQ
智史は廃校の外に出ると、さっそくディパックを開けて中身を確認した。出てきたのは登山用のピッケルだった。これも確かに武器にはなる。斧などと比べるとはるかに威力は劣るだろうが、扱いやすそうだ。本当は銃や手榴弾などの方が強力なんだろうけど、ハズレじゃなかった分ありがたい。
そこまで思った時、智史は自分の考えに少しゾッとした。武器の威力を考えるなんてまるでゲームに乗るつもりの人間みたいだ。
そんなことはない、これはあくまで護身用だ。これから自分がどうするのかはまだ考えていないが、少なくとも自分から積極的に人を殺すことはしたくない。それが元クラスメートでも、ただの同じ学校の出身者だとしても同じことだ。
さて、これからどうしようか。確か次に出発するのは同じクラスで昨日まで仲良く話していた久美子のはずだ。彼女は俺と違って行動力があるから、きっと2人で今後の方針について話し合えるだろう。
そう思いながら智史は久美子を待つことにした。想像通り久美子はすぐに走ってきた。見ると手にはすでに支給品の銃が握られている。
相変わらず行動早いなあと思いながら智史が声をかけようとすると、なんと久美子は冷たい目で銃口を智史の額に向けていた。

「久美……」

バァンッ

久美子は走りながら銃を撃った。当然まともには当たらず、弾は智史のほほをかすめただけに終わった。しかし、売れていないとは言え、俳優にとって顔は命だ。いや、それ以前にもし弾が頭にでも命中していたら、本当に命を落とすことになっていた。
とにかく説得しなくては。ほほの痛みと焦りの中で智史が思ったことはそれだった。久美子を刺激しないように、武器のピッケルはかなぐり捨てて、急いで両腕で久美子の手を掴んだ。
「離しなさいよ!私はみんな殺す!それが例え智史であっても!」
「落ち着けよ、久美子!俺にはお前を殺す意思は無いから。……でもただ殺されるのもごめんだ。とりあえず話さないか?」
「そうやって隙を突いて私を殺す気じゃないの?あんたの武器はそのピッケルだけ?」

とりあえず今のところ自分の身に危険が少ないと判断した久美子は、とりあえず智史の話を聞くことにしたらしい。智史が久美子にとって友達だったというのも、久美子を落ち着かせる一つの材料になったようだ。
「そうだよ。俺はお前の敵なんかじゃないから、どうか落ち着いて……」
「それじゃあ……仲間になってくれるって言うの?この誰も信用できないようなゲームの中で」
「もちろんだよ。俺は始めからそのつもりでお前を待ってた。だから急いで校門の前から逃げ出さなかったんだ。分かるだろ?それにこれは、誰も信用できないようなゲームなんかじゃない」

久美子は少しの間考えていたが、やがて落ち着いたように言った。
「じゃあ、あんたが私を守ってくれるわけ?とりあえず手離してよ。痛いから」
「あっ、ごめん!そりゃあ出来るだけ守るように努力するつもりだよ」
「本当ね?出会った奴みんな殺してそして最後の2人になったら自殺して、私を優勝させてくれるとでも言うの?」
早口でとんでもないことを言い放つ久美子に対して智史は一瞬面食らってしまう。
「いや……そこまでは言ってないけど……」

14有紀 ◆PyB831QpqM:2009/12/19(土) 10:18:40 ID:WPT8tlWQ
智史がそこまで言いかけた時、久美子の手首にピッケルが突き刺さった。久美子は悲鳴を上げて銃を取り落とす。何事かと思い、智史がそちらを向くと、そこには先ほど捨てたピッケルを拾い上げている蒼の姿があった。
「あっ!私の銃……」
久美子と蒼では、蒼の方が銃を拾う体勢が整っていた。智史は思わず蒼に体当たりして体制を崩させる。その隙に久美子が再び銃を手にした。そして蒼に向かい引き金を引こうとするその瞬間……智史が、久美子を半ば強引に引っ張り駆け出した。
「逃げるぞ、久美子!」
久美子は逆らおうとした。これが蒼を殺せるチャンスだと。しかし智史は久美子に誰かを殺して欲しくは無かった。それに、久美子の怪我した手で正確に相手を狙えるとは思えない。この近距離なら自分達がピッケルで殺されるかもしれない。それに、戦いに巻き込まれること自体が耐えがたかった。

蒼は冷たい目で逃げていく2人を見送った。ゲームのプレイヤー達が次々と出発する校門前で長々と立ち話とはどれだけ気楽なんだろうと蒼は思った。
しかし、同時にちょっとだけ羨ましいとも感じた。もちろんそれはこのゲームの中では不必要な感情なのだけど。
俺にもあんな気楽さがあれば、少しは人生を楽しむことが出来たんだろうか、と一瞬だけ考えた。その直後、自分の考えがいかにもこれから死に逝く者の考え方だなと思い、すぐに打ち消した。俺は負けない。今までの不運に比べたらこんなゲームは大した障害にはならないはずだから。必ず生き残ってその後は……。
そこまで考えて、蒼は自分のディパックを空けた。生き残った後のことは生き残ってから考えればいいのだから。
中から出てきたのはロープだった。とっさに昔の嫌な思い出が蒼の脳裏に映る。自分はどこまで不運なんだろうか。
「ただの役立たずな支給品ならともかく、よりにもよって……」
思わず口に出していた。まあいい、ピッケルが手に入ったんだから、これを自分の支給品だと思うことにしよう。そう考え、ロープを自分のディパックの中に戻した。
名簿によると次の出発は浅川瀬奈。あまり覚えていないが、確か説明のときにブルブル震えていたあの女だ。問題無いだろう。このまま待ち伏せして殺すことにするか。

蒼がそんなことを考えていると、予想通りビクビクした様子で涙目になりながら歩いてくる瀬奈の姿が見えた。恐怖のあまり、ディパックを開けることも忘れている。
これ以上怯えさせるのも悪いような感じだが、彼女には俺の優勝のため死んで貰う。
瀬奈が蒼の姿を視界に捕らえ、ビクッと肩を震わせた。だが、もう遅すぎた。次の瞬間、蒼のピッケルが瀬奈の頭に浅く突き刺さった。
瀬奈は気絶し、その場に倒れこんだ。ピッケルを引き抜くと頭からはゆっくりと血が流れ出した。
蒼は瀬奈が死んだと思い、(もっとも蒼にとって無害なら、それは死んだとほぼ変わらない意味を持つのだが)彼女のディパックの中を探った。出てきたのは幸運にも銃だった。
これでいい、これまでの人生の不幸を考えれば、自分にもこれくらいの幸運が訪れてもいいはずなんだ。
そう思い蒼は再び待ち伏せをすることにした。

次は伊達雷太。こちらも蒼はあまり覚えていない。ただ、男の分瀬奈よりは苦労するだろうという予感はあった。蒼はそれほど運動能力に自信はない。いざとなったら逃げ出すのは(殺されるのとは思わないようにした、あえて)自分の方かもしれない。
そこに雷太が来た。右手にはレイピア、左手にはナベのフタを盾代わりに持っている。どうやら支給品は1つとは限らないようだ。
雷太は、倒れている瀬奈を見ると、驚いて蒼から逃げ出した。蒼も追いかけたが、相手が近距離武器のときのために、離れた位置にいたためなかなか追いつくことが出来ない。どうやら足は雷太の方が速いようだ。蒼はしばらく追うと諦めた。そして、自分がずいぶん廃校から離れてしまったため、待ち伏せの作戦もそこで打ち切った。今後どうすれば良いか考え、そういえば竜哉と瑠璃葉が井戸で合流する予定だったことを思い出した。誰かにチームを組まれると自分は不利になる。その前に殺しておいた方が都合がいい。そう考え、蒼は井戸周辺に向かうことにした。

15有紀 ◆PyB831QpqM:2009/12/19(土) 10:20:16 ID:WPT8tlWQ
次に出発したのは児美だった。児美は倒れている瀬奈を見つけると、辺りに誰もいないのを確認してからそっと手を触れた。少し震えながら。
「ねえ、起きてよ。しっかりして!あなた名前は?」
すると瀬奈がわずかに呼吸しているのが分かった。ほっとしながら忘れていた自分のディパックを空けてみる。やけに重いと思っていたら、そこにはモーニングスターが入っていた。児美は女にしては力があり、空手部の中でも実力者だ。扱えないことはない。名簿を見てみると、この女の人が瀬奈という名前だということが分かった。(先に出発したもう1人の女、久美子は児美の元クラスメートで名前も覚えていたため、消去法で)
このままここに放置しておいたら、きっと瀬奈は誰かに見つかり止めを刺されてしまう。そうでなくても瀕死の重傷なのだ。そう思った児美は瀬奈を背中に抱え、その場を離れることにした。確実に足手まといだが仕方ない。児美は弱い者を放っておけない性分なのだから。できるだけ急いだ。次の人が危険人物ではありませんように。そう願いながら。

次に出発したのは政雄だった。柔道部に所属していた過去があり腕力はあったが、ゲーム説明のとき男で一番怯えていたのは彼だった。慌てながらディパックを開けても、出てきたのはただのハチマキだった。こんなものでどう戦えばいいんだよ……と政雄はたくましい体つきに似合わない震えた声を漏らした。
戸惑っている間にあっという間に次の参加者の足音が聞こえた。逃げようかどうか戸惑っていると、そこには元クラスメートの中でも大人しい美代子が出てきて声をかけた。
「政雄くん?」
その声でようやく政雄は少し落ち着いた。名簿を見ていなかったから分からなかったものの、自分の次に来たのは美代子だったんだ。嬉しくてほっとする。
「あの……」
おずおずしく美代子が取り出した武器を見て政雄は最初何だか分からなかった。それでも美代子が自分の方に武器を向けてきたことに対して政雄は一気に恐怖に陥った。
ああ、あんなに大人しかった美代子ちゃんでもやっぱり自分の命のためなら人を殺したりするんだ。そう思い、政雄は思いっきり叫んだ。
「うっ……うわあああああっ!」
その声に美代子もびっくりして、ひっと小さい悲鳴を上げる。そして、政雄の恐怖の原因に素早く気付き、手にしたスタンガンをディパックに戻した。
「だっ……大丈夫だから、そんなに大きい声出さないで!他のやる気のある人とかに見つかっちゃうかもしれないわ」
「みっ……美代子ちゃんは大丈夫なんだよな?俺を殺そうとか思ってないよね?」
「もちろんよ。……あ、万が一私たちが最後の2人になったりして追い詰められたら、私もどうなっちゃうか分からないけど今のところは……」

その声色はどこか自分を保つ自信が無さそうだった。例え殺す気でもそんなことは口にしない方がいいのは美代子にも分かっている。だが彼女はどこか正直すぎる節があった。
しかし、その正直さがちょうど政雄を落ち着かせる結果になった。まだ混乱で息は荒いままだったが。
「……信用していいんだよね?」
「ええ、信用して欲しいわ。どうせ私は最後までは生き残れないと思うの。だから積極的に人を殺したりしない。残りの時間どうやって過ごすか考えてみたの。それでどうしても会っておきたい人がいて……。政雄くんにも協力して欲しいわ」
「会っておきたい人って誰?」
「政雄くんは知らないと思うな。私の親友。淳くんっていうの。ほら、この名簿に鏡谷淳って載ってるでしょ」
「ホントだ。この人あと3人で出てくるんだ。じゃあどこかで待つ?」

その時だ。後ろに誰か人がいると気付いたのは。考えてみれば次の参加者がもう現れるころなのに、正門前で長々としゃべっていたのはあまりにも無用心すぎる。しかし2人は混乱していたためか、それとも本来の性格のせいか、そのことをあまり気にかけてはいなかったのだ。
背後にはサーベルを持った修平が立っていた。しかし、いきなり襲い掛かってはこなかった。2人の会話を聞こうと待っていたようだ。
「お前ら、待ち伏せならもっと慎重にやれば?」
修平が呆れたように2人に話しかけた。もちろん修平にも、政雄と美代子が誰かを狙って待ち伏せしていたわけではないのが分かる。しかし、話をほとんど最後の部分しか聞いていなかったため、どんな対応に出るか少し迷っているようだった。再び政雄が恐怖で混乱しだす。


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